「Ord」と一致するもの

MAD PROFESSOR JAPAN TOUR 2013 - ele-king

 UKダブの伝説、マッド・プロフェッサーが12月13日に東京(代官山ユニット)、14日に大阪(心斎橋CONPASS)で公演をやる。東京公演では七尾 "DRY" 茂大(ドラム)と秋本 "HEAVY" 武士(ベース)からなる、日本最強のレゲエ・リズム・チームドライ&ヘビーの生のダブミックスをマッド・プロフェッサーが手掛けることが決定しているほか、8年振りとなる作品『ANOTHER TRIP from SUN』をリリースしたサイレント・ポエツこと下田法晴もDJで出演。また、「踊ってはいけない国EP」で素晴らしいリミックスを見せたDJヨーグルトもレゲエ・セットを披露。地下のSALOONでは、若きダブ・クリエーターJah-Lightが出演する。そして大阪公演ではBAGDAD CAFE THE trench townが出演。日本人のアクトにも注目が集まるでしょう。

〈東京公演〉
12.13 fri @ 代官山 UNIT
Live Acts: MAD PROFESSOR - Dub Show, DRY&HEAVY - Live Dub Mix by Mad Professor
DJs: Michiharu Shimoda (Silent Poets), DJ Yogurt (Upset Recordings) Reggae/ Dub/ Bass Music Set, Jah-Light
Open/ Start 23:00-
¥3,500 (Advance), ¥4,000 (Door)
Information: 03-5459-8630 (UNIT) https://www.unit-tokyo.com

TICKETS: PIA (P: 217-297), LAWSON (L: 72460), e+ (eplus.jp), diskunion Club Music Shop (渋谷/新宿/下北沢/吉祥寺), DISC SHOP ZERO, DUBSTORE RECORDS, UNIT

〈大阪公演〉
12.14 sat @ 心斎橋 CONPASS
Live Acts: MAD PROFESSOR - Dub Show, BAGDAD CAFE THE trench town
DJ: HAV (SOUL FIRE)
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door) plus Drink Charge @ Door
Open 20:00, Start 20:30
Information: 06-6243-1666 (CONPASS) https://conpass.jp/

TICKETS: LAWSON (L: 53414), e+ (eplus.jp), CONPASS (Mail Reservation: ticket@osaka-conpass.com)


〈出演者プロフィール〉
■MAD PROFESSOR (ARIWA SOUNDS, UK) https://www.ariwa.com

泣く子も黙るダブ・サイエンティスト、マッド・プロフェッサーは1979年にレーベル&スタジオ「アリワ」設立以来、UKレゲエ・ダブ・シーンの第一人者として、四半世紀以上に渡り最前線で活躍を続ける世界屈指のプロデューサー/アーティストである。その影響力は全てのダンス・ミュージックに及んでいると言っても過言ではない。その信者達は音楽ジャンルや国境を問わず、常にマッド教授の手腕を求め続けている。なかでもマッシヴ・アタックのセカンド・アルバムを全編ダブ・ミックスした『No Protection』は余りにも有名である。伝説のリズム・ユニット、スライ&ロビーとホーン・プレイヤー、ディーン・フレーザーをフィーチャーして制作された『The Dub Revolutionaries』は、2005年度グラミー賞にノミネイトされ話題となった。まだまだ快進撃中、止まることを知らないマッド教授である。ここ近年だけでも、伝説的なベテラン・シンガー、マックス・ロメオ、レゲエDJの始祖ユー・ロイ、レゲエ界の生き神様リー・ペリーに見出されたラヴァーズ・ロックの女王スーザン・カドガン、UKダンスホール・レゲエのベテラン・アーティスト、マッカBのニュー・アルバムをプロデュースしている。自身のアルバムも『Bitter Sweet Dub』『Audio Illusions of Dub』『Roots of Dubstep』などをコンスタントにリリース、最新作はリー・ペリー・プロデュースの金字塔アルバム『Heart of The Congos』で知られるThe CongosのCedric Mytonとのコラボ・アルバム『Cedric Congo meets Mad Professor』を2013年にリリースしたばかりである。相変わらずのワーカホリックぶりを発揮している。最新テクノロジーと超絶ミキシング・テクニックを駆使して行われる、超重低音を轟かせる圧巻のダブ・ショーで存分にブッ飛ばされて下さい。

■DRY&HEAVY
https://ja-jp.facebook.com/Dryheavy
https://twitter.com/DRY_and_HEAVY

七尾 "DRY" 茂大(ドラム)と秋本 "HEAVY" 武士(ベース)というふたりからなる、日本最強のレゲ エ・リズム・チーム。90年、VITAL CONNECTIONなるバンド内にてリズム・コンビである〈DRY&HEAVY〉としての活動をスタート。95年にはLIKKLE MAIや井上青らをフィーチャーした編成と なり、97年の『DRY&HEAVY』でアルバム・デビュー。その重量級のルーツ・レゲエ・サウンドと過激なダブワイズが幅広い注目を集める。その後コンスタントにアルバムをリリースする一方、海外での活動も活発に行って各国で話題となる。 だが、日本屈指のレゲエ・ユニットとして活動を続けていた2001年のフジロック・フェスティヴァルにおいて、秋本が衝撃の脱退宣言。七尾は秋本抜きの編成でDRY&HEAVYを継続し、秋本はGOTH- TRADとのREBEL FAMILIAおよび若手と結成したTHE HEAVYMANNERSにて活発な活動を続けた。 そうしたなか、2010年に七尾と秋本によるオリジナルDRY&HEAVYが奇跡のリユニオン。新時代のサウンドを携え、伝説のリズム・チームが新たな一歩を踏み出す。

■Michiharu Shimoda (Silent Poets) https://www.silentpoets.net
1992年 FILE RECORDSより1st アルバム『6 pieces "sense at this moment"』でデビュー。 現在までに通算8 枚のオリジナル・アルバムと多数のリミックス・アルバムやミニ・アルバムなどをリリース。海外からの評価も高く94 年にドイツの99レーベル、Bellisima UKよりヨーロッパでもアルバムがリリースされる。95年に人気コンピシリーズである「Cafe Del Mar Vol. DOS」に日本人として初めて収録されたのをはじめ、現在までアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどで40作品を超えるコンピレーション・アルバムに楽曲が収録される。2000年にはパリのレーベルYellow Productionsよりアルバム『TO COME...』がリリースされ、翌年にはアメリカのアトランティックよりリリースされる。同年より、下田のソロ・ユニットとなる。活動は多方面に渡り、パリ・コレクション等のフアッションショーの音楽の担当や、他アーティストのプロデュース、リミックス、映画等にも楽曲を提供。活動20周年にあたる2012年、トイズ・ファクトリー時代の音源(Potential Meeting ~ To Come)が世界111カ国のiTunes Storeにて配信開始。2013年9月、自身のレーベル ”ANOTHER TRIP" を設立し、New DUBアルバム『ANOTHER TRIP from SUN』、また前作「SUN」の2013年Newエディション『SUN - Alternative Mix Edition -』を11月20にリリース予定。いよいよSilent Poetsの活動を本格的に再開。2014年リリース予定の10thオリジナルアルバムの制作も同時進行中。

■DJ Yogurt (Upset Recordings) https://www.djyogurt.com
いまはなきCISCO テクノ SHOPでバイヤー勤務しながらDJをはじめ、98年には音楽制作ユニットUpsetsと自身のレーベルUpset Recを始動。以後現在に至る15年間に渡ってテクノ~ハウスからDUB、アンビエント等など幅広い作風の楽曲のレコードやCD、MIX CDのリリースを毎年おこなっている他に、曽我部恵一や奇妙礼太郎トラベルスイング楽団等の歌もの楽曲のダンス・リミックスもおこない、リミックスが収録されたレコードは全て完売して中古価格が定価以上に高騰中のものも。2010年にYogurt & Koyasとしてリリースした『Chill Out』 はIdjut BoysのConradやSoft Rocks達から絶賛。2011年にはテクノ・アルバム『Sounds from Dancefloor』をリリースして、テクノをプレイする機会も増加中。2013年12月にはあの故Arthur Russellのバンド・メンバーのユニットArthurs Landingの "Miracle 2" をRemixしたVersionが欧米で流通する12インチとしてリリース。これまでの出演イベントはアンダーグラウンドな小箱でのパーティから、 大会場でのフェスまで多岐に渡り、2010年はエレクトラグライド@幕張メッセに、2011年はSONAR JAPAN等のビッグフェスにも招聘され、2010年から2012年にかけて3年連続でFUJI ROCK FESにも出演。テクノ~ハウスを軸に、レゲエ~Dub、ジャズやアフロ、ブラジリアン、ロック、 サイケデリックやバレアリック、ダブステップ、ワールド・ミュージックそしてアンビエント、数々の最新の流行のリズム・様々なジャンルの音楽性を交錯させた選曲で、毎週のように日本各地の音楽好き、踊り好きが集まるパーティでDJをおこなっている。

■JSH-LIGHT https://www.jah-light.com
"Real Roots Sound" をテーマに2004年からサウンドシステムを開始。2007年、自身のレーベル "LIGHTNING DTUDIO REC" を立ち上げると同時に、1st Singleとなる "Independent Steppers" をリリース。2012年、新レーベル "DUB RECORDS" からリリースされた1st 10" Singleでは、A: Mighty Massa / Warriors March, B: Jah-Light / Diffusion" といったコンビネーション・プレスで純国産ルーツを世界に向けて発信。現在、Youtubeにて自身の楽曲をダブミックスした映像を配信中なので、ホームページ内の "Dublog" をチェック !!!

■BAGDAD CAFE THE trench town https://bagdad-creations.com

進化を続けるCREATE集団! 関西を代表する大所帯REGGAE BAND、BAGDAD CAFE THE trench town。圧倒的なライヴ・パフォーマンスで、FUJI ROCK FESTIVAL, 朝霧JAM, SUNSET LIVE, 頂, WIND BLOW, FESTA DE RAMA, FREEDOMなど、数々のフェスティヴァルを盛り上げる。 2000年結成。1stアルバムで、新人では異例のFM802ヘビーローテーションに選ばれる。その後もアルバムを出すたびに、全国各ラジオ局のパワープレイに選ばれ続ける。タワーレコードのポスターNO MUSIC NO LIFE、テレビやラジオの音楽番組に多数出演。 2013年5月11日、充電期間を終えたVo. maiやコーラスも完全復活! BAND名も、BAGDAD CAFE THE trench townに戻し、最高のメンバーで再始動!! 主な共演者は、 BES, BUN BUN the MC, ET-KING, KURTIS FLY, Keyco, Leyona, Likkle Mai, Metis, Miss Monday, MOOMIN, SHINGO☆西成, Shing02, Spinna B-ILL, RYO the SKYWALKER, RANKIN TAXI, PAPA U-Gee, PUSHIM, 韻シスト, カルカヤマコト, こだま和文, 多和田えみ, プロフェッサーチンネン, 卍LIN……


Ryan Hemsworth - ele-king

 OPNがサウンドトラックに参加していることで話題のソフィア・コッポラの『ブリングリング』は、たしかにこれまでと違って物欲盛んな悪ガキたちを主人公にしているが、結局彼女の少女たちの捉え方は『ヴァージン・スーサイズ』の頃から変わっていないように思える。ただ、思春期の虚無感が融解する先がインターネット・カルチャーとセレブリティ・カルチャーに向かったのが前者で、70年代のノスタルジーに封印されたのが後者だとすれば、より幸福で美しいのは自死を選んだ少女たちのほうなのだろうか。そこでその「揺らぎ」は永遠になり、ソフィアもまたそれをデビュー作に据えたことで、彼女自身がそのイメージを引きずっているように見える。



 カナダ人のDJ/プロデューサー、ライアン・ヘムズワースのことが気になったのは、多くのひとが即座に『ヴァージン・スーサイズ』を連想したであろう“カラー&ムーヴメント”のややサイケデリックなヴィデオを見ていると、そこからエリオット・スミスの“エヴリシング・ミーンズ・ナッシング・トゥ・ミー”のサンプルが聞こえてきたからだ(同曲ではドイツのロック・バンドであるノーツイストのサンプルも使用している)。大きく言ってヒップホップのトラック・メイカーであるヘムズワースだが、突然この世から消えてしまったシンガーソングライターのいまにも壊れそうな歌声を取り入れる彼の感性は、他のトラック・メイカーにはなかなか見当たらないものに思えたのだ。俄然彼に興味が沸き調べてみると、メイン・アトラクションズのトラックを担当することもあるという22歳の青年だという。それが今年の頭のことだ。それから様々なところで彼の名前を見るようになり、本作が現在は23歳の彼のデビュー・アルバムとなる。
 様々なところ、とはライやフランク・オーシャンからカニエ・ウェスト、グライムスまでのリミックスであり、あるいは逆に情報デスクvirtualによるリミックスなどなど、だ。要するにクラウド・ラップ、チルウェイヴにチル・アンド・ビー、さらにはヴェイパーウェイヴまでをまたぐ領域にいるということで、実際、『ギルト・トリップス』からはそれらの反響がすべて聞こえてくる。もう少し離れて見れば、ハドソン・モホーク以降のチップチューンのアップグレード版も微妙にあるし、〈ロウ・エンド・セオリー〉周辺と共鳴するものもあるだろう。ヘムズワースはLA拠点のプロデューサー集団〈WEDIDIT〉のメンバーでもあり、LAビート・シーンはおそらく彼の音楽的アイデンティティの置き場だと考えられる。
 けれども、アルバムを聴いていてもっとも尾を引いて残るのは、「ドレイクのエモ・ヒップホップとサンプルを基調としたエレクトロニカの接続」と説明されるときの「エモ」の部分だ。彼の発言によると10代の頃はエリオット・スミスとブライト・アイズが好きなインディ・ロック少年だったそうだが、『ギルト・トリップス』でももっとも大切に扱われているのは、その、いまなお引きずる思春期性ではないか。オープニングの“スモール+ロスト”でスムースな女性ヴォーカルが演出するメランコリーの純度の高さを聴くとそんな風に思わずにはいられないし、バスが参加した“スティル・コールド”なども、驚くほどナイーヴでささやかなトラックだ。ビートがアグレッシヴなほうの“ハピネス&ドリームス・フォーエヴァー”でさえタイトルから想像されるようなフラジャイルさを湛え、タイトルに自分の名前を出してしまう“ライアン・マスト・ビー・デストロイド”でも電子音が物悲しく歌う。ライアン少年はアコースティック・ギターを持って歌う可能性だってあっただろうが、だがヒップホップ・ビートでこそ彼のエモーションを丹念に滲ませていく。
 ここには現在の彼の「揺らぎ」が漂っていて、しかしそれはサウンドともに今後変わっていくだろうという予感がある。非常な旬な音がヴァラエティ豊かに本作にはあるが、そのコアはまだ見出しにくいからだ。だが、だからこそどんな方向にも行けるだろう。そのとき彼の感情のアウトプットがどのような姿になるのか、僕は強い興味を掻き立てられる。が、『ギルト・トリップス』にはナイーヴな青年の甘美なメランコリーがあり、いまはそれでじゅうぶんだ。

12月の素敵な悪夢をBathsとともに - ele-king

名門〈アンチコン〉から2枚のアルバムをリリースし、フライング・ロータスやデイデラスにつづく血統書付きの才能として注目されてきた「LAビート・シーンの鬼っ子」、バスが、3たびの来日を果たす。 ジブリを愛してやまないこの「大きな子ども」は、子どもなんかよりよっぽど奔放で、ドリーミーで、センチメンタルで、おそろしいほど感情豊かだ。その大きくうねるエモーションの帆布を満帆に張って、めくるめくノイズと旋律を放射していく彼のパフォーマンス、その異形のドリーム・ポップを、あなたはいちど目撃せねばならない。 どことなく浮つく12月の夜の空気を、バスの音はいっそうそわそわとふくらませることだろう。黄色や赤や青の光。オーナメントのシルエット。白い息。凍える梢。その奥に広がる夜空から、バスの魔法はちらちらと降ってくる。そしていつしか激しく吹きすさぶだろう。

各公演を彩るアクトも強力! 名古屋ではDE DE MOUSE + his drummer (Akinori Yamamoto from LITE)、京都ではSeihoとMadegg、東京ではTaquwami(とお馴染みアンチコンのsodapop!)、いまをときめく国内勢がバスと掛け算する、心地よくも濃密な時間を楽しもう。

LAが誇る若きビートメーカーBaths来日公演!!
Tugboat Records presents Baths Live in JAPAN 2013

■12/13(金) 名古屋池下CLUB UPSET
OPEN / START 24:00

ADV ¥4,200 / DOOR ¥4,700(共にドリンク代別)
Act:Baths, DE DE MOUSE + his drummer (Akinori Yamamoto from LITE)
DJ: I-NiO, sau(otopost), LOW-SON(しろー + オクソン)
VJ: Clutch

[Buy] : 9/7(土曜)〜
チケットぴあ(P: 211-365)
ローソンチケット(L: 41184)
e+(https://eplus.jp)

※名古屋公演はオールナイト公演ですのでIDをご持参下さい。

■2013.12.15(日) 京都メトロ
OPEN 18:00 / START 18:30

ADV¥4,000(+1Drink)/DOOR¥4,500(+1Drink)
Act:Baths,Seiho,Madegg

[Buy] : 発売中
チケットぴあ(P: 208-539)
ローソンチケット(L: 59065)
e+(https://eplus.jp)
前売りメール予約→ticket@metro.ne.jpでも受け付けています。
前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。
前売料金で入場頂けます。

■2013.12.16(月) 渋谷WWW
OPEN 18:00 / START 18:30

ADV¥4,500(+1Drink)/DOOR¥5,000(+1Drink)
Act: Baths,Taquwami,Sodapop (anticon. Label Manager)

[Buy] :発売中
チケットぴあ(P: 208-502)
ローソンチケット(L: 79947)
e+(https://eplus.jp)

interview with CORNELIUS - ele-king


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

flying DOG

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 つづら折りになったジャケットには、内側になるにしたがってどんどん小さくなっていくように四角い穴がくり抜かれ、あたかも「記憶」のより深層へと降りていくかのような演出が施されている。キャラ絵や作品タイトルこそを見せたい・見たいはずのアニメのサントラ盤にあって、これほどミニマルでデザイン性の高いジャケットを提示することはずいぶんと挑戦的であるようにも思われるが、これが『攻殻機動隊』シリーズの劇場版最新作のサントラであること、そしてコーネリアスの仕事であることを考えれば納得だ。シリーズに通底するテーマと世界観がとてもシャープに表現されている。

 監督や脚本、キャストが一新され、“第4の『攻殻』”とも言われる『攻殻機動隊ARISE』。特殊部隊「攻殻機動隊」創設までのエピソードを、ヒロイン・草薙素子の過去に光を当てるかたちで描き出す最新作であり、全4部作となるうちの1作め『攻殻機動隊ARISE Border:1 Ghost Pain』が今年6月に公開、つづく『攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers』が11月30日より全国劇場にて公開となり、注目が集まっている。

 コーネリアスはこのシリーズのサントラを手がけるとともに、「ゴースト・イン・ザ・マシーン」と名付けられたブッダマシーンの最新モデルなどの企画も行っている。経典音読マシンがルーツだったというあの四角い箱のコアに素子ともおぼしき女声(=ゴースト)を宿らせたこのモデルに筆者は震えたが、何よりも、コーネリアスの音楽自体が「楽曲を作る」ということで単純に完結してしまうものではないのだろうということを感じさせる。ヴォーカルにsalyu、青葉市子、歌詞に坂本慎太郎を加えた新鮮なコーネリアス・パーティも、期待を掻き立てるものだ。

 インタヴューでは「空気感」という言葉をひとつのキーワードとして感じた。そしてそれは、筆者が『攻殻機動隊ARISE Border:1 Ghost Pain』のトレイラーを初めて観たときのちょっとした違和感と驚きの源でもあったかもしれない。
 コーネリアスは、ロジカルでディストピックな『攻殻機動隊』の世界に奇妙な空間性を開いている。たとえばこれまで激しいブレイクビーツが多用されてきたような、タフでハード、隙間なくテーマ性と論理が敷き詰められたシリーズのなかに、まさに「空気感」という曖昧なものを感受しかたちにするコーネリアスの手つきは、何か新しい光源をもたらしてはいないだろうか。それはシリーズを一新する本作にちょうどふさわしい違いかもしれない。筆者にはその僅かな違和が、相対的な明るさとして感じられる。 

明るい作品じゃないですか?

でもコーネリアスにしてはダークだと思ったよ。
――うん、そうだと思うんだよね(笑)。

映画の劇伴というのは、依頼がまずどーんと来て、テーマ曲から作りはじめるというような進行なんですか?

小山田:そうですね、まさにそんな感じですね。

オーダー・リストみたいなものがあって、それに従って作っていくというような……?

小山田:そうです。そんな感じです。

そのリストというのは、場面みたいなものが書かれているんですか? 感情みたいなものが書かれているんですか?

小山田:まず台本みたいなものがあって、それに従って音響監督が、「このシーンでこういう音が欲しい」というようなことを指定してくるんです。「何秒で落ちる」とか「何秒でまたアップ」っていう感じで。

なるほど作るのも秒単位なんですね。その指定に基づいてどんどん収めていくわけですか。

小山田:基本的にはそうなんだけど、結果として指定された箇所とは違うところで使われたり、まるまるなくなっていたりすることもありますね。場面に合わせて編集されていたりとか。だから、言われたとおりに作るんだけど、言われたとおりに使われるとは限らないという感じです。

お題というよりも、台本に沿ってオーダーがあるんですね。

小山田:そうですね。でも、言われていたシーンと違うところで使われるのが逆におもしろかったりはしますね。

どう使うかということですよね。……ということは、作りはじめる前に台本なりを通して作品への理解がはっきり生まれているわけですか。

小山田:うっすらと(笑)。

(一同笑)

では作品理解ありきというよりは、コーネリアスというアーティストとの綱引きが求められている感じなんでしょうか?

小山田:いえいえ、そこは作品ありきなんですけど、それも感じつつ自分なりの解釈で作っていくということかなと思います。

「サントラってこういうものだな」とあらためて感じられた部分はありますか?

小山田:やっぱり、基本的に暗い話なので、感情も限定されてくるというか。そんなに明るい感情というのはなくて、ちょっとしたユーモアみたいなものはキャラクターによってはあったりするんだけど、中心になるのはダークな世界観ですよね。あとはバトルとか心理的葛藤とか。それも段階がいくつかあって、すごい深いものからニュートラルなものまで幅があるんだけど、基本的なところは限定されていきますかね。この映画の世界観に沿っていくと。
そういうものは自分のなかに日常的に持っているわけではない、パーセンテージとしてはわずかにしかない感覚なので、そこを増幅して作品にできるのはおもしろいなと思いました。

ああー、まさにそこもお訊きしたかったんですが、『攻殻機動隊』って近未来の過剰な管理社会をディストピックに描くものですよね。おっしゃるように基本的に暗い世界だと思うんですが、サントラにはわりと一貫して明るい印象を受けるんです。柔らかい光源を感じるというか。明るさを意識したりはしませんでしたか?

野田:でもコーネリアスにしてはダークだと思ったよ。

小山田:うん、そうだと思うんだよね(笑)。

そうですか。小山田さんの特徴というだけのことかもしれないですが、でも暗いイメージに寄り添う以外に、ご自身のなかにもう少し違うイメージがあったりはしませんでしたか?

小山田:うーん、そんなに強く意識はしてないんですけれど、無意識に自分にちょうどいいバランスに調整している部分はあるので……。まあ、こういう感じになっちゃったというところ(笑)。


「音楽メニュー」と呼ばれる楽曲のオーダー・リストには、カット番号と「混乱」などの簡潔なテーマが記されている。 はじめはミュージック・ヴィデオのように細かくタイミングを合わせて作っていたものの、セリフ等との兼ね合いもあり、その後の段階でのエディットは音響制作側にまかせたとのこと。

音にするときに、とくにポイントになる視覚的要素というとどんなところですか?

小山田:それはたくさんあって、最初はそういうものに偏執的に合わせて作ってたんだけど(笑)、結果ズレていったり修正が大変だったりして。

要素としては動きとかになりますか?

小山田:うん。動きですね。あと、色味が変わるとか、カットが変わるとか。

表情とかエモーションとかっていう内面的な要素よりは、アクションとか場面転換みたいなものに音が影響されるという?

小山田:それは両方ですね。

今回の『ARISE』は、まだ未熟な(草薙)素子の揺れる内面とか、孤独な闘いとかが印象的ですよね。昔のシリーズ(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』)は公安9課というチームワークもあったりしてグルーヴィーなんですけど、それに比べてよりインナーなテンションがあるように感じます。でも、小山田さんの音楽って、そういうインナーなもの……気持ちみたいなものを文学的にしないというか、そういうものをどちらかといえば無視していくもののように思うんです。

小山田:なるほどね。気持ち……。気持ちというより雰囲気という感じですかね(笑)。

ああ、なるほど。空気みたいなものとかでしょうか。

小山田:ストリングスで泣きメロを入れたりとか、そういうハリウッドっぽいスコアリングじゃなくて……。そうですね、メロディってエモーショナルで内面的なものを表すって一般に言われるけど、もうちょっと空気感で内面的なものを表すことができるっていうか。まあ、「内面的なもの」って、わかんないんだけどね(笑)。空気感で「内面」とかその状況を表すという、どちらかというとそんな要素の方が大きいのかもしれないですね。

よくわかります。小山田さんは、近年は『デザイン あ』とか『CM4』ですとか、リミックスとかサントラのリリースが続いていますけれども、そういうものはオリジナル・アルバムでキャリアをつきつめていくというのとは逆で、人と人との間とか、社会のなかで機能する音を考えていくという仕事になると思います。小山田さんには、そうした作品制作を通して見える、社会の色とかってありますか?

小山田:うーん、色って言われて思い出したのは、オウムの事件があったときに「世界は黄色だ」っていうような歌を歌っていたことですかね。テレビで、誰だったか容疑者の人が「世界は黄色だ」って。

ええー、すごい感性ですね。黄色ってちょっと出てきませんでした。それはなんだかインスパイアされるお話です。

野田:すごいねえ。

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アニメOPの条件

アニメのオープニング・テーマって、タイトルも言ってほしいし、必殺技の名前とかもできれば言ってほしい(笑)。


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

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野田:映画のサントラとかって、今回が初めて?

小山田:ちゃんとしたのは初めてだね。

野田:サントラとか好きだったじゃない? いまはないけど、渋谷の「すみや」っていうレコード屋で、日本盤で出てないイタリア映画のサントラとかを漁っていた人なわけだから。

小山田:あははは。そのときからそうなんですけど、観たことない映画のサントラとかを聴いたりしていて、それ自体は何かの映画のなかで機能させるために作られたものなんだけど、iPodとかで聴くとまったく別のもののようにも聴こえるというか。その映画と切り離されたところで楽しめる部分っていっぱいあって。
そういう意味では音楽って器というか、何かのために作られたものが別のかたちで機能することがありますよね。サントラはとくにそうかも。だから、僕はこのサントラを『攻殻機動隊』のために作ったけれども、それを切り離した部分でも聴けるものにしたいなというところはありますね。

アニメ音楽で参照されたものとかはありますか?

小山田:わざわざ聴いたりとかはしていないんですけど、“ゴースト・イン・ザ・シェル・アライズ”っていう『ARISE』のテーマ・ソングでは、頭にあったのは『ルパン三世』のはじめの曲ですね。「ルパン~ルパン~」って、ひたすらルパンっていうタイトルを連呼する曲で、それを意識しました。「ゴースト・イン・ザ・シェル」をひたすら連呼する、みたいな。

へえー。

野田:なんで『ルパン』だったの?

小山田:『ルパン』がっていうより、タイトルを連呼するっていうところですかね。僕のなかでは、アニメのオープニング・テーマって、タイトルも言ってほしいし、必殺技の名前とかもできれば言ってほしい(笑)。ちゃんとそのコンセプトに合ったものが入っていてほしいっていうのがあって。それで、アニメ「らしい」オープニング・テーマというと、どうしても『ルパン』が出てくるという感じです。

小山田さん的なアニメOPの条件みたいなものが、ちゃんと入っているんですね。

小山田:うん。それに、ひたすら繰り返すから曲のミニマルな構造に合うというか。そういう曲って他にないなと思って。

連呼というところでは、「きおくきおくきおく……」(“じぶんがいない”)もそうかと思いますが、「記憶」も『ARISE』のひとつのテーマですよね。記憶が勝手に操作されたりいじられたり、不安定で信用できないものとして描かれています。この曲はそのテーマをそのまんまというか、かなり直接的に使っていておもしろかったんですが、音節ごとに「き」「お」「く」と切ってエディットされているのも、やっぱり「記憶をいじる」というようなテーマを意識してのことなんですか?

小山田:歌詞は坂本(慎太郎)君が書いてるんだけど、それは曲の後にできたものなので、最初から音のなかに「記憶」という言葉が当てはまっていたわけじゃないんだよね。ただ、素子が「義体」というキャラクター――人間とロボットの中間、アンドロイド的なものなので、あんまり人間ぽくない編集で作ったヴォーカル・ラインが合うのかな、とは思っていて。
歌詞は、最初に「き、き、き」ときて、次に「きく、きく、きく」ときて、最後に「きおく、きおく……」となるんですけど、「一文字でも意味があって、二文字でも意味があって、三文字でも意味があって、という構造になっている言葉が何かないかな?」って坂本くんに相談したら、「きおく」っていう言葉を出してきてくれたんです。

へえー、必ずしもテーマから来たものではないんですね。

小山田:もちろん坂本くんは、ちゃんと脚本を読んで言葉を選んできたとは思うんだけれども。

なるほど。戦後詩では最初、谷川俊太郎の『ことばあそびうた』みたいなものが精神的に低いものとして厳しい評価を受けていたようですけれども、言葉遊びみたいなものの方が、逆に空気を受容する器にはなりやすいのかもしれないですね。
 詞が後に上がったということですが、今回、詞のついているものは全部そうですか?

小山田:うん。

それをまた組み替えるということですか。

小山田:あ、組み替えはしないですね。

そのままでしたか。では、本当にうまくはまっているんですね。

小山田:そうですね(笑)。

ブッダマシーンは草薙素子の夢をみるか

あれは、もともと中国にあった「電子念仏機」っていう機械がモデルになっているんですよ。

なるほど。ところで、「ゴースト・イン・ザ・マシーン」という新しいブッダマシーンとダミーヘッド・マイクを使って、動画を撮っておられますね。あれはどこから来たアイディアなんですか?

小山田:ダミーヘッド・マイクに関しては、たまたま使っていたスタジオにあったんですよ。ブッダマシーンを作ったんですけど、あれってたくさんで鳴らすとおもしろくって。いろんな層で音楽が流れていて、ずっとドローンで、ピッチも変えられるし、演奏みたいなこともできるし。あのときは同時に4台使ってるんですけど、おもしろかったですね。

ダミーヘッド・マイクって、まだまだおもしろい使い方があるんでしょうか? ドラマCDみたいなものではさかんに使用されていますけれども。

小山田:ん? ドラマ?

はい。お話とかセリフの朗読が収録されているCDなんですけど、耳もとで甘い言葉を囁かれるとか、そういうことがリアルに感じられるようにダミーヘッドで録音されていることが多いんです。でも、音楽でそんなふうにうまいこと使用されている例はあんまりありませんよね。

小山田:たしかにね。CDでやってもあんまりよくわかんないというか。ダミーヘッドを使ってる例だと、マイケル・ジャクソンとかルー・リードとかもやっているんですよね。

へえー。

野田:ルー・リードも?

小山田:そう、他にもいろんな人がやってるんだけど、「ギター、ドラム、ベース」みたいな音楽で使ってもべつに何もおもしろくないというか(笑)。

それはそうですよね(笑)。以前に読んだインタヴューで、髪の毛を耳元でちょきんと切られる音が立体的に再現されたCDで感動されたというお話をされていたように思うんですが……。

小山田:うん。やっぱりいちばんおもしろいのは髪の毛をきってもらったりとかだよね。

なるほど(笑)。このマイク自体はけっこう歴史の長いものなんですね。

小山田:うん。80年代くらいからかな……。70年代くらいからあったっけ?

その頃からの進歩ってあるんでしょうか?

小山田:だいぶ進歩しているんじゃないですか? ダミーヘッドじゃなくてさ、ヒューゴ・ズッカレリっていう人がいて、知ってる? アルゼンチンかどこかのちょっとマッド・サイエンティストみたいな人で、詳細は明かしていないんだけど、立体音響に関してちょっとすごい録音技術を持っている人なの。マイケル・ジャクソンとかはそのやり方を使っているみたいなんだよね。それはダミーヘッドではないって言われてるんだけど、どういうノウハウかはわかってない。

へえー。

小山田:サイキックTVとかもそうだよね。80年代後半とかに、一時期すごい話題になってた。

野田:あー、そうだったね。

あの動画に関しては、「あ、頭の後ろ通った!」っていう気持ち悪い感触とかが生々しくあって、おもしろかったです。小山田さんにとっては、旋律とかそれがリニアに導いていく物語じゃなくて、こういう体験のようなもののほうにより興奮があるんじゃないかなと思いました。

野田:ほとんどそうでしょう。ライヴとかを観るとほんとにそうだよ。

小山田:はははは。

音響体験のほうが優先される。

小山田:まあ、このサントラに関してはわりとそういうものですよね。

GHOST IN THE MACHINE
https://www.jvcmusic.co.jp/ghostinthemachine/

テーマ性がたしかに色とか空気みたいなものとして感じられます。では、ブッダマシーンのほうはどうでしょう? そもそもはあのガジェットのなかにブッダがいる、というジョークみたいなものだったように思うんですけれども。

小山田:あれは、もともと中国にあった「電子念仏機」っていう機械がもとになっているんですよ。お経を自動で流してくれる機械。それをみんな流しながらお祈りとかをしていたみたいで。それを、中身をミニマルっぽくしてあんなかたちに仕上げたのがブッダマシーン。

実用的なものだったんですか!

小山田:そう。昔、中国に行ったときにお土産でもらったことがあって、それには本当に念仏が入ってた。形とかもだいたいあんなものですね。わりと最近になって中国の若い人がブッダマシーンのかたちにしたっていう。

そうなんですね。わたしもシリーズの最初のマシーンから知っているんですが、てっきりヨーロッパが作り出したオリエンタルなジョークみたいなものだと思っていたんです。そんな日用品だったとは意外ですね。

小山田:うん。ふつうにあったものなんだよね。

なるほど。そうすると余計おもしろいんですが、『攻殻機動隊』には、ロボットとかマシンみたいなものにゴーストが宿ることがあるか、あるとすればどんな条件のときか、っていうようなテーマも通底していますよね。ブッダマシーンの「機械のなかに宿った声(=ゴースト)」っていう性格は、なんてこの作品にぴったりなんだろうって思ったんです。

小山田:はははは。「ゴースト・イン・ザ・マシーン」っていう名前つけてるしね。

野田:あ、意識しているんだ。

小山田:もちろん。

あれ? このブッダマシーンのアイディア自体、小山田さんのものなんですか?

小山田:そうです。

そうなんですか! これ、すごくびっくりしたんですよ。よく『攻殻』とブッダマシーンが掛け合わさったなって、すごく不思議だったんです。いままでのブッダマシーン・シリーズでいちばん気がきいていると感じましたし。実際に声優さんの声が入ってるんですか?

小山田:声優さんの声は入ってなくて……、あ、ちょっと入ってるか。でも基本は声優さんの声じゃないんです。

へえー。「機械のなかの心」みたいなものへのロマンチックな気持ちは、小山田さんのなかにありました?

小山田:……なかったね(笑)。

(一同笑)

野田:そこまで少年じゃなかった(笑)。

ははは。すっごいドライなんですね。バトーさんが天然オイルを与えつづけたタチコマにだけは、ゴーストが宿った? みたいなエピソードもとても印象でしたけれども、そういうロマンティシズムも作品を牽引する強さだと思うんですね。ものに宿るゴースト、みたいなものはぜんぜん感じませんか。

野田:『ファンタズマ』の人だもんね。

小山田:(笑)そういうのとはちょっと違うかもしれないんだけど、何かつかみきれないものというのは意識していて。曲の構造だったりもそう。“ゴースト・イン・ザ・シェル・アライズ”も、ただ「ゴースト・イン・ザ・シェル」って言っているだけなんだけど、頭のなかに残らないというか……。同じように展開しているように聴こえるかもしれないんだけど、実際はぜんぜん解決しないままどんどん進行していくっていう構造になっていて、そこはつかみきれない感じを意識してはいますね。

すごく複雑で、複雑すぎて不透明になっている感じでしょうか。でも、そういうつかみきれない模糊としたものが表現されつつ、やっぱりコーネリアスって、音は透明になる感じがするんです。その透明な感じは、この新しいシリーズのなかにも大きなインパクトを与えていると思うんですけどね。

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おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった

「おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった/ほら 静か」(“外は戦場だよ”)っていうところがあるんだけど、そういうところに共感しますね。


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

flying DOG

Tower HMV iTunes Amazon

ここ数年、音楽シーンのひとつのモードとして、ちょっとニューエイジなものがリヴァイヴァルしているところがあるんですね。(クリスチャン・)ラッセンにスポットが当たったり、「シーパンク」って呼ばれるようなファッションが注目されたり……

小山田:ええ! ラッセンなの?

そうですね。何かとイルカなムードなんです。

野田:ほら、90年代リヴァイヴァルでもあるからさ。

小山田:ああ、(ジ・)オーブとかの感じ。

野田:そうそう。

はい。一方にそういうちょっとドリーミーでメディテーショナルな感覚があって、そこではあんまり暗い気持ちとか、絶望みたいなものは鳴らされていないんですね。どこかでそういうモードを感じられていたりしたところはありませんか?

小山田:そういうムードがあるっていうのは知らなかったけど(笑)。

ふだんは社会というところが暗いというふうに感じますか?

小山田:まあ、暗いといえば暗いし……。

すみません(笑)。「暗い曲が多い」という認識に対して、どこか明るく感じられるところにこだわりたかったので……。90年代リヴァイヴァルということについては、何か感じられている部分はありますか? ハウスとかR&Bを中心にして、いま本当にそんな機運なんですよ。

小山田:あんまり感じないですけど、まあそろそろかな、という気はしますよね。

野田:これからどんどん感じると思いますよ。

小山田:ひととおり80年代の巡回も終わってるように見えるから、90年代にちょっとフレッシュな感じがあるんだろうなとは思います。

野田:フリッパーズ・ギターとかがね。

血を引くような存在が出てきていますよね。

野田:フリッパーズ・フォロワーみたいなバンドが、新鮮な感じで受け入れられているんだよね。

小山田:ほんと? 絶対(フリッパーズのこと)知らないでしょう?

野田:いやいや、ぜんぜん知ってるよ。20歳くらいの子たちにしてみれば90年代ってすごく新しいからね。

小山田:そっか。年齢的には僕らの子どもくらいになってくるよね。その子たちが生まれたころが90年代くらいでしょ? ちょうど、僕たちに60年代とか70年代のものがカッコよく見えたのとまったくいっしょなことなんだろうね。

リヴァイヴァルっていう意味はおいておくとしても、ハウスを意識した部分はなかったですか? わりと「ドッチンドッチン」っていうトラックが入っているんですけれども、ちょっと新鮮でした。

小山田:うん、「ドッチンドッチン」はわりと入ってますね。

躍動感を出すため、みたいな理由でしょうか。いまわりと世間的にこういう気分だっていうふうに感じていた部分はないですか?

小山田:うーん、両方かな……。

野田:でもダンス・ミュージックを作ってるっていうところは、トピックだね。わりと直球なね。

そう思います。

小山田:うーん、そうかもね。

野田:だって、『カメラ・トーク』の福富(幸宏)さんがリミックスした曲(“ビッグ・バッド・ビンゴ”)、あれをいまみんな探してるんだよ!

小山田:ええ、うそ! へえー……。若い子が?

野田:そう。しかも日本人だけじゃなくてね。

小山田:そうなんだ。

あとはクラウトロックっぽいものの気分もありました。2000年代後半は、若いバンドやアーティストにすごく参照されて、スターも生まれて。“スター・クラスター・コレクター”とかも、ちょっとそういう琴線に触れるんじゃないかと思います。

小山田:へえー、そうなんだ。でもまあ、どっちも偶然かなあ。クラウトロックはずっとあるといえばあるし。

それもたしかにそうなんですけど、ジャンルをまたいで一気にメディテーショナルなモードが広がって、そのなかでクラウトロック的なものの存在感はとても大きいものだったんです。
……というムードもまだ余韻を引いているなか、“外は戦場だよ”というボーダー2(『攻殻機動隊ARISEborder:2GhostWhipers』)のエンディング曲が鮮やかでした。小山田さんには「外は戦場」というような感覚はありますか?

小山田:外は戦場……。うーん、どうなんだろうね。

言葉尻からすると酷薄な世界観のようにも見えますけれども。

小山田:いや、そういうことよりも……。なんて言ったらいいのかな……。最後の方に「おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった/ほら 静か」っていうところがあるんだけど、そういうところに共感しますね。

ああ……。それは、「おおきなこえをだすひとたち」は、干渉するものっていうような感じでしょうか。暴力とかもふくめて。

小山田:うーん、そうね……、ほっといてほしい感じ。……何なんだろうな(笑)。

ここはとっても両義的な部分かと思うんですが(※)、「ほら 静か」は、肯定的な感じですか? そうならざるを得なくなってなったという静かさですか?
(※詞のなかばに「心配ない/見て/外は/戦場だよ」という逆説がある)

小山田:うーん。

より自分にとって居やすいところになったのか、その逆なのか……。

小山田:なったんだかなっていないんだか、実際はよくわからないんだけど、どっちも含んでいる感覚なのかな。

RILLA - ele-king

DJスケジュールなどこちらで 随時アップ中です。
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順不同。最近よく聴いたりプレイしているものです。


Don't DJ - RID.EM (Diskant)

Gunnar Haslam - Mimesiak (L.I.E.S)

Muruga & Big Black - Sangoma Drums (Sagittarius A-Star)

V.A - Livity Sound (Livity Sound)

Floorplan a.k.a ROBERT HOOD - Paradice (M-Plant)

Och - Surveillance Network EP (Sect)

Dino Sabatini Meets Donato Dozzy - Journey Back To Ithaca (Outis Music)

Miles - Faint Hearted (Modern Love)

元 ちとせ - ワダツミの木 with Sly&Robbie

Lindamann - Ritual (Golinda Recordings)

LINDAMANN (GOLINDA RECORDINGS) - ele-king

来年1月に新しくスタートしたレーベルGOLINDAより
1st Album”RITUAL”リリースします。

https://soundcloud.com/lindamannn

チャート(順不同)


1
BENJAMIM DAMAGE - 4600 EP - 50WEAPONS

2
LUMIGRAPH - THE YACHT CRUISER EP - MISTERSATURDAY NIGHT

3
ANTHONY NAPLES - P O T - PROIBITO

4
STELLAR OM SOURCE - ELITE EXCEL - RVNG

5
MIX MUP - AFTER THE JOB - HINGER FINGER

6
MM/KM - MIX MUP & KASSEM MOSSE - THE TRILOGY TAPES

7
ONOE CAPONOE - DJRUM VS EP - 2ND DROP

8
DEADBEAT - CLAUDETTE - ZAMZAM SOUNDS

9
V.A - LIVITY SOUND - LIVITY SOUND

10
LEVON VINCENT - HILO EDITION - NOVEL SOUND

禁断のサイボーグかおり! - ele-king

 禁断の多数決の新譜、もう聴きました?
セカンド・アルバム『アラビアの禁断の多数決』ですよ。インタヴューからも本当におもしろい存在だということが伝わってきますよね。
そんな彼らの「ツイン・ピークス集団」にサイボーグかおりが迎えられた模様! 収録曲“トゥナイト、トゥナイト”のスピンオフ・ミュージック・ビデオが公開されています。いったいどんなセッションを見せてくれるのか!?

リズムを刻まずにはいられないお嬢様育ちの女子大生ヒューマンビートボクサー「サイボーグかおり(CYBOG KAORI)」を迎えた“トゥナイト、トゥナイト”スペシャル・ヴァージョンです!!

CYBORG KAORI and 禁断の多数決「トゥナイト、トゥナイト session」


「禁断の多数決」のリーダーである「ほうのきかずなり」が監督を担当。
◆ 禁断の多数決 オフィシャルサイト ⇒ https://kindan.tumblr.com
◆ サイボーグかおり オフィシャルブログ ⇒ https://ameblo.jp/saketoba0212/


〈electraglide 2013〉直前! 物販やります - ele-king

 エレグラ、いよいよ明後日に迫りましたね!
 ele-kingは物販ブースに参加!
『ele-king』バックナンバーや新刊『アナキズム・イン・ザ・UK』(ブレイディみかこ)といったele-king booksシリーズはもちろんのこと、OPNのTシャツや、

なんと久保憲司撮影の額入フォトグラフも販売予定! ブース内では来月発売の『久保憲司写真集 loaded』の中身をパネル展示、生ゲラもチェックできます! 最速11。

 さらには「年間読者ベスト投票箱」も設置。来月発売の年末号『ele-king vol.12』掲載のチャートを当てていただいた方には、抽選で新刊をプレゼントいたします!

 踊り疲れたらぜひ立ち寄ってみてくださいね!
 編集部も参加しております。ビールはおごれないのですが、ぜひぜひお声がけください!

■!!!(チック・チック・チック)から来日直前コメントが到着!!

大合唱!!汗まみれの肉弾戦!!!最狂のモンスター・グルーヴ・バンドがいよいよ帰還! 
ロック・フリーク、パンクス、テクノ・ヘッズをまとめて飲込む狂乱のグルーヴで幕張メッセのフロアがダンサーの洪水で溢れかえること必至!!!

ヴィデオ&メッセージ


★今年リリースされた最新アルバム『THR!!!ER』収録の大ヒットシングル「One Girl / One Boy」のインスト音源と日本語読みの歌詞をフリー・ダウンロード!
歌詞を予習してエレグラで!!!と一緒に大合唱しよう!!!

歌詞/インスト音源のダウンロードはこちら!
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/
Chk-Chk-Chk/%21%21%21_OneGirlOneBoy.zip


DJ Yogurt (Upset Recordings) - ele-king

DJ Schedule
11/22(Fri.)@中野・Heavy Sick Zero
11/24(Sun.)@新木場・Studio Coast(Rovo and System7 Live/Opening DJを午後4時から)
11/30(Fri.)@三軒茶屋・Cocoon
12/4(Wed.)@渋谷・En-Sof
12/7(Fri.)@新宿・Be-Wave(19時-24時開催)
12/13(Fri.)@代官山・Unit
12/19(Thu.)@笹塚ボウル(りんご音楽祭・忘年会。19時-23時開催)
12/20(Fri.)@渋谷・Sundaland Cafe(19時-24時開催)
12/26(Thu.)@原宿/千駄ヶ谷・Bonobo
12/29(Sun.)@代官山・Unit
1/10(Fri.)@神戸
1/11(Sat.)@大阪
1/12(Sun.)@京都
1/18(Sat.)@高円寺・CAVE

HP : https://www.djyogurt.com/
Twitter : https://twitter.com/YOGURTFROMUPSET
Facebook : https://www.facebook.com/djyogurtofficial

2013年11月4日、5日の二日連続で恵比寿Liquid Roomで開催されたElectronic Music Of Art Festival Tokyo・・・
略してEMAF TOKYO 2013で自分はオープニングで50分間DJした後、その後のlive actが交代する間の「転換タイム」にもDJして、結局夕方4時から夜10時の間に計6回のDJをやりました。
このイベントはその名のとおり、基本的には電子音楽が流れ続けるイベントで、自分もこのイベント出演の為に選曲を色々と考えて、普段の週末のクラブプレイとは一味違う、「4つ打ち以外の曲だけをDJプレイする」コンセプトでDJしました。
これが自分でも新鮮で、一部のお客さん達の間でも好評だったので、当日に実際にかけた曲の中から、かけた順に10曲選んでコメント付きで公開します。
読みながら、音を聴いてもらって、当日の雰囲気が少しでも伝わったら・・・!


1
Synkro - Disappear - Apollo
お客さんが少しずつダンスフロアに来始めたPM4時半頃にPlay。
2013年に12inch2枚組"Acceptance EP"の1枚目B-1としてReleaseされた、Acoustic GuitarとElectricな音をセンス良く融合させた曲で、打ち込みだけどオーガニックな雰囲気も感じさせて、メロウなところもある曲。
R&S傘下のAmbient/Electronic Label、Apolloのここ数年のReleaseは気になる曲、興味深い曲が多い印象があり、自分にとって、Releaseする曲はなるべく一度は聴いてみたいLabelのひとつ。
https://youtu.be/-IvMw2DqP1Q

2
Lord Of The Isles - Nustron - Little Strong
2013年Release、"Galaxy Near You Part1"12inchのB-2に収録の"Nustron"は、前半は美しいAmbient、中盤にGroove感が強まって踊れそうなリズムに変化しながらも、後半は再びAmbientに戻る構成も面白く、この日は早い時間からお客さんが来つつあったので、フロアがやや賑やかになってきた時間にAmbientとAmbientの間に挟んで、ちょっと刺激を加える感じでPlay。
https://youtu.be/7BjLQovXkdY

3
Bola - Glink - SKAM
Autechre に作曲方法を教えたとも伝えられているDARRELL FITTONのユニット=Bolaが、Autechreと関係の深いマンチェスターのレーベルSKAMから1998年にReleaseした1stアルバム"Soup"の1曲目。自分はこの曲は90's electronicaを代表する名曲の一つと思ってて、Bolaの曲の中で一番好きな曲でもあったり。
https://youtu.be/pbtfx0h4pnc

4
Four Tet - Sun Drums And Gamelan - Domino
2005年にU.K.の人気レーベルの一つDominoからReleaseされた12inchのB-2に収録。
強烈にFunkyなDrum BreakbeatsのGroove上を、ガムランや笛等がミニマルに響く、ワールドミュージックとクラブミュージックの融合が産んだ傑作。
EMAF初日は自分の2度目のDJ時に既にダンスフロアがほぼ満員で、フロアのテンションが予想していたよりも高い印象を受け、Aoki TakamasaさんのliveもかなりDance Grooveを打ち出したliveになるのでは、と考えて、早い時間からテンションを上げていきました。
https://youtu.be/P7VuxbQB8bw

5
2562 - Intermission - When In Doubt
2011 年に12inch2枚組"Fever"の1枚目B-1に収録。PM4時に自分のDJで始まったEMAF2013も、3度目のDJを始める頃にはPM6時半 に。このあたりでDanceを念頭に置いた選曲でDJを始め、Aoki Takamasaさんのlive後、自分のDJ一発目にこの2562のDub Stepを。
https://youtu.be/aC2BzXUi1Ic

6
Beaumont - Rendez-Vous - Hot Flush Recordings
2012年にReleaseされたPost Dub Step良作。
MellowでJazzyな感覚も漂いつつ、リズムはDub Stepを通過した鋭さを感じさせるGrooveが心地良い。
自分にとっては多くのDub Stepがあまりにもメロデイーを軽視している気が多少していたので、この曲のようなメロディーが美しいDub Stepは待ってました、という感じ。
Hot Flushは他にもメロウな感覚が漂うPost?Dub StepをReleaseしていて、この数年すっかり注目のレーベルに。World's End Girlfriendのlive前、4度目のDJではDub Step~Post Dub Step多めな選曲でDJ。
https://youtu.be/qTn76STVKgQ

7
Throwing Snow - Clamor - Snowfall Records
1分22秒以後のメロデイーとリズムの絡みが生み出す高揚感がとてもカッコよく、2分36秒以後にはバイオリンのメロディーもミニマルに入ってきて、フツーのDub Stepとは二味違う豊穣な音楽性を感じさせるPost Dub Stepの良曲。
https://youtu.be/OAvbyO5q-hs

8
Lapalux - Close Call / Chop Cuts - Brainfeeder
World's End Girlfriendのlive直前に自分がDJ Playしたのがこの曲。
Ninja Tuneのサブレーベルから2012年冬に出た12inch"Some Other Time"のB-2に収録。
これが最新型の歌ものPOPSの理想形と思ったりすることもあるほど好きな、一応「歌もの」曲。エフェクトの使い方が強烈。
https://youtu.be/NIiRPmNmSLg

9
Divine Styler - Directrix(Indopepsychics Remix) - Mo'Wax
EMAF2013を主催したPROGRESSIVE FOrM主宰のnikさんは、以前にはDJ KENSEIさん、D.O.I.さんと3人で"Indopepsychics"という音楽制作ユニットを組んでいて、この2000年作は彼らがノリに乗っていた頃の傑作Remix。
自分がDJ光君と出会った2003年~2004年頃に、光君がよくDJ Playしていた「光クラシック」の1曲。2013年に聴いてもカッコいいと思う。
https://youtu.be/nkJIKH1GW7Y

10
Hauschka - PING(Vainqueur Remix) - Fat Cat
いよいよ大トリのCarsten Nicolai(Alva Noto)のlive直前、自分の6度目のDJの最後にかけたのが、Fat Catから2012年にReleaseされた12inchのAA面に収録の、Dubby Abstruct Electronic Grooveの傑作。
Basic Channelフォロワーの中で一番Basic Channelの感覚を理解しているんじゃないかと思う事もある、Vainquerの最近作をLiquid Roomのメインフロアで爆音で鳴らして、Carstein Nicolaiの登場へ・・・
https://youtu.be/YP7LclEsMWs

ヤマシタトモコ - ele-king

 押井守や北野武が描くアウトサイダーはたいていの場合、組織に属している。いわゆる「お荷物」とか「不良社員」といったやつである。泥棒やドラッグ・ディーラーを主役にして反社会的行為を色とりどりに描く洋画や香港映画に較べて、そのような「アウトサイダー」には当然のことながら「悪いこと」には一定のラインがあり、最終的に主役が手にするものは「美学」ばかりである。実を取る気配すらないし、間違っても生活感などは漂わせない。

 不出来もいいところだった林海象監督『キャッツ・アイ』は論外として、最近だと内田けんじ監督『鍵泥棒のメソッド』や伊藤匡史監督『カラスの親指』でようやく日本の映画でも組織に属していない悪党たちがコン・ゲームを繰り広げはじめたと思ったら(以下、ネタばれ)「どこにも悪人はいなかった」という価値観に終始し、ストーリーの妙もそのような結論から演繹されるものばかりだった。バカバカしい。たかがエンターテイメントだけに、事態は余計に深刻な気がしてくる。犬童一心監督『のぼうの城』でも金子文紀監督『大奥~永遠~』でも権力者の内面に同調させる映画作りは得意なのに、持たざるものからの視点はタブーなのかと思ったり。

 「組織に属するアウトサイダー」は、しかし、新自由主義があっさりと過去のものにしてしまった面もなくはない。 原田眞人監督『金融腐食列島・呪縛』や本広克行監督『踊る大捜査線』以降、「はみ出し者」のレッテルはどちらかというと組織の周縁ではなく、組織を内部から改革しようとする者に貼られるようになり、以後、ストーリー的には「敵は頭の上」という図式がデフォルトと化してしまった感もある。佐藤嗣麻子監督『アンフェア』といい、堤幸彦監督『スペック』といい、警察上層部が悪くない例を探し出す方が最近は難しいし、改革=正義を行うという意識ととらえれば、このことは『沈黙の艦隊』や『デス・ノート』から連綿と続いてきた感覚であり、ゼロ年代よりもさらに強化されていると言える(クエンティン・タランティーノ監督『レザボア・ドッグス』は無意味な殺し合いを描いたものだったのに対し、『ジャンゴ』では人を殺す時に「正義」が持ち出されるという驚くべき変化があった)。

 こうした変化は押井モデルや北野モデルのアウトサイダーを組織内には居ずらくさせ、自主退社を迫られるものにしてきた。『鍵泥棒のメソッド』や『カラスの親指』だけでなく、吉田大八監督『クヒオ大佐』や、国家単位で考えた時には木村祐一監督『ニセ札』が美学の路頭に迷ったアウトサイダーたちを暫定的に詐欺師ものにトランスフォームさせたとも考えられるし、それはそのまま正社員が非正規(=ノンキャリ)にずり落ち、ついにはオレオレ詐欺に手を染めるしか生き延びる方法がなかった時代の写し絵とも見えなくはない(『クヒオ大佐』にはアレックス・コックスばりの政治的センスがあり、『ニセ札』には民衆側の視点というものがあった)。

 さらには「ソーシャル」というキーワードが無条件で是とされ、「自由」に振舞うことが迷惑行為と同義語のようになってくると、「アウトサイダー」は単なる自己愛パーソナリティ障害か時代の変化に気づいていない人にしか見えなくなってくる。松本人志監督『大日本人』は戦闘少女に救える地球はあっても、旧型の男性ヒーローには救ってもらいたい人もいないというカリカチュアとしては有効に思えたし、同時に押井守や北野武の美学が笑われているようなセンスもあった。このような時期に押見修造『悪の華』は意外なほど反社会的行為をストレートに描き、しかも、「受けまくった」。ここには押井モデルのような屈折もなく、同時多発テロ以降、題材にしにくかったテロリズムを心情的に理解させながら話を進めていくことにも成功し、『殺し屋1』のように動機は捏造だったというようなトリックもない。それこそイスラムもないしw、強いていえば思春期原理主義というようなものかもしれないけれど、これに中2病のバイブルというような表現で時代性にフタをしてしまうと、見失しなわれてしまうことも出てくるはずであう。社会が常に変化しているならば、「反社会」も一定ではないはずだし、作者が参考にしたという『太陽を盗んだ男』だけが繰り返し上映されていれば、ほかはいらないということになってしまうし。

 とはいえ、『悪の華』には「反社会」を内面化する決定的なプロセスがない。最も肝心な部分は主人公の外側からやってくる。教室で誰とも口を利かない女子生徒がいわば「反社会」の源泉のように描かれ、主人公はそれに染まるだけである。要するに少年マンガにありがちな「女の子は天使」とか、戦闘美少女と同じく、なぜか絶対なものとして描かれるものが、とくにこれといって位置関係を変えることなく男子生徒に影響を及ぼしているだけで、その女性徒が反社会的なパーソナリティになった理由はまったく明らかにされていない(少なくとも第1部では)。これではレールを踏み出したものがひとりいれば、後はつられて踏み外してもオッケーみたいな感覚に思えてくるし、逆にいえば、ひとりも踏み外す者がいなければ誰も踏み外さないということにはならないだろうか。最初のひとりはどうして反社会へと振り切れたのか。それが描かれていなければ、「反社会」を規定できるのはどの部分なのか、あまりにもわかりづらい。

 ヤマシタトモコがいつもとは作風を変えた『ひばりの朝』が、そして、そのアンサーになっていると思えた。同作は3人の女性がそれぞれに社会と距離を感じていくプロセスが克明に描かれ、その気持ちが何度も上塗りされていくという残酷な作品である(全2巻)。彼女たちにつられて、同じように距離を表現する男性はひとりも出てこない(=だから、『悪の華』のようなテロリストは育たない)。男性たちはむしろ、彼女たちに距離を感じさせる原因でしかなく、ある種の男性たちに対する作者の怒りはみしみしと伝わってくる。彼女がここで描いている女性たちの何人かは、キャラクターをそのままにして男性化させれば吉田秋生の描いたアッシュやヒースと、そうは変わらないものになるだろう(……そう、ヤマシタトモコには、近い将来、吉田秋生の後継といえるような作品を生み出すのではないかとドキドキさせてくれるものがある)。『ひばりの朝』が、そして、とんでもないのは、『悪の華』ではひとりだった反社会的な女性のパターンが3倍になっているだけでなく、それらがさらに憎悪やネグレクトとして絡み合い、女性同士が必ずしも連帯しないという構図にもなっていることだろう。「反社会」性は、そして、なんらかの行動として実行されるものではなく、孤独へと跳ね返ってくるだけで、3種3様の諦めや逃避が描かれる。そして、周辺にいる登場人物たちは反社会に染まるどころか、近づくことさえできないものになっていく。

 「息をとめていたので平気でした」
 「人に興味を持たなければ 傷つかず 良心も痛まない」。

 こうなってくると、もはや「アウトサイダー」という立場が成立していたことさえ奇妙なことに思えてくる。三池崇史監督『悪の経典』のように、一切の理由も正義も省かれている方が納得はできてしまうし、じとーッと『ひばりの朝』を読んでいると、一方では、きっと何も変わっていなかったのだろうと思わせるものがあり、それを普遍性と呼ぶならば、そのように呼べること自体が諦念と結びついているとも考えられる。吉田秋生でいえば『吉祥天女』のようでいて、どれだけ映画化されても悲惨な結果しか生まない(のに、懲りずに映画化される)『桜の園』に近い作品ではないだろうか。「社会」という言葉をもっと分解して考えなければ、ここではこれ以上は先に進めない。

 安直に比較してしまったけれど、『悪の華』と『ひばりの朝』は主題も違うし、読者も効果も何も重ならないに違いない。強いていえば、『ひばりの朝』で克明に描かれているようなプロセスが省略されているにもかかわらず、『悪の華』がこれだけの読者を得たということは、理由もなく、反社会的な行動に駆り立てられている人が少なからずいるということにはならないだろうか。それは、もしかすると新自由主義が生み出したアウトサイダーの変貌がタイムリミットを迎えているのかもしれないし、小泉政権以降、組織に組み込まれなかった人たちが増えすぎて、情緒の受け皿が必要になっているということなのだろう。

(参考)

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