「Ord」と一致するもの

R.I.P. DJ Rashad - ele-king

 シカゴのジューク/フットワーク──更新されるゲットー・ハウス──のプロデューサー、Rashad Harden=DJラシャドが去る4月26日、シカゴのウエストサイドにて死体で発見されたという。

 DJラシャドは、シーンの勢いを象徴するようなひとりだった。彼は、2013年の春、まったく素晴らしい12インチ2枚組の「Rollin」を発表、秋にはジュークとベース・ミュージックとヒップホップとを結びつけるような野心作『Double Cup』もリリースしている。今年に入ってからは初来日もしているし、ちょうど彼の新しいシングル「We On 1」のリリースも控えていたところだった。
 あまりにも早すぎる死に、どうにも感情がついていかないが、ジューク/フットワークという、もっともフレッシュで、もっともエネルギッシュなダンス・シーンにおいて、DJラシャドの作る鮮烈な作品は、ひとつのシーンを越えて、より広く愛されていた。これからが期待されていた人なだけに本当に残念でならない。多くの人が彼をリスペクトしているし、彼の音楽をもっと聴きたかっただろう。(野田努)
 


Love Cult Take Druss - ele-king

 昨年の私的ベスト・レコードの一枚であるグノド・プレゼンツ・ドウェリングス&ドラス(GNOD presents Dwellings & Druss)の衝撃も冷めやらぬ〈トレンスマット(Trensmat)〉からのダメ押しの一枚。

 マンチェスターにて2006年に結成された大所帯サイケ・ヘヴィ・クラウト集団グノド(GNOD)は、現在まで音源/ライヴともに非常に積極的な活動をおこなってきた。残念ながら僕は一度も彼らのライヴを見られていないが、対バンしたことのある友人はみな口を揃えて当時の彼らを賞賛している(それはたとえばヨーロッパ・ツアーに出掛けたサン・アローやポカホーンテッド、または自身の初ツアーでバッグ演奏をグノドに無理矢理頼みこんだ迷惑極まるハイ・ウルフなどなど)。
 ホワイト・ヒルズ(White Hills)やボング(Bong)など、これまでグノドと親交を深めたバンドからもおおいにうかがい知れるように、当初彼らのサウンドはクラウト・ロックのストイックな反復と、ドゥームを通過したドローンによるヘヴィなサイケデリアとまさしくゼロ年代の推移を押さえるものであった。

 2011年に〈ロケット・レコーディングス(Rocket Recordings)〉から発表された『イングノドウィートラスト(Ingnodwetrust)』あたりから明らかにゴッドフレッシュ感全開のインダストリアル・メタルな音作りとダブ処理によるサイケデリアを融合させる試みをはじめた。この頃から前述の〈NNF〉周辺のバンドとはある種真逆な方向性を目指したと言っていいだろう。
 2013年に発表された『グノド・プレゼンツ・ドウェリングス&ドラス(GNOD presents Dwellings & Druss)』はバンドのベース隊であるドウェリングスことクリス・ハスラム、ドラスことパディー・シャインによる打ち込みを全面的にフィーチャーした大胆なアルバムとなった。これまでのグノドの持ち味であった疾走感溢れるトライバルなパーカッションを充分に感じさせる見事なコンポジションが、彼等をポスト・インダストリアル/ミニマル・テクノの領域まで昇華させた素晴らしい出来栄えだ。

 〈パブリック・インフォメーション(Public Information)〉からのデビュー・LP『フィンガー・クロスド(Finger Crossed)』で、短波レディオとロシアン・フォークをマッシュアップしたようなサウンドを展開した、ロシアはペドロザヴォーツクを拠点にする男女デュオ、ラヴ・カルト(Love Cult)とドラスによるコラボレーション4曲と、各アーティスト2曲ずつによるこのレコード。ヴォイス・サンプリングとテープワープ・サウンドに見事なドラム・シーケンスが乗るコラボ曲は秀逸だ。アルバム全体としてストーリーが明瞭であり、また極端すぎる感情的なクライマックスもなく、近年のベースミュージック・リスナー全体に受け入れられても不思議ではない。
 ちなみにラヴ・カルトはDIYレーベル〈フル・オブ・ナッシング(Full Of Nothing)〉を主催、ドラスは身内テープ・レーベル〈テスラ・テープス(Tesla Tapes)〉を主宰する。お互いのアンダー・グラウンド・ネットワークが今回のコラボレーションに発展したのは必然とも言えよう。

 そういえばドウェリングスの〈テスラ・テープス〉からのテープ音源の再発として昨年末にリリースされたドント・セイ・ナッシングは即完売となったようだ。バッキバキに打ちつけるノイズ・ビートからドローンに洗い流されてゆく見事な展開や、キックの濫用を避けつつ長尺で聴かせるものなど、凡百のトレンドとは一線を画す作品だ。

 ちなみにドウェリングスとドラスはかなりのガジェット系ミュージシャンである。その手の連中のライヴにさんざんウンザリさせられている近年、彼等のような存在にはとても勇気づけられる。そういった意味では〈オパール・テープス(Opal Tapes)〉からのゲド・ゲングラスのテクノ名義、パーソナブル(Personable)とドウェリングス&ドラスによるコンピレーション、『Mirror & Gate Vol. III』もガジェット野郎はチェックすべきかも。

Akkord - ele-king

 前回のレヴューで、ジャングルには、「音楽的にもまだ開拓する余地があり、横断的に、そしていろんなアプローチを取り入れることができるのだ」と書いた続き。
 遅ればせながら、僕は新世代ジャングルにハマっている。細かく断片化されて再構成されたパーカッシヴなブレイクビートの、言葉が舌に引っかかって出てこないようなまどろっこしさと、それとは相反して加速していくような滑らかさが同居しているという、ある種分裂的な感覚が実に気持ち良い。
 マンチェスターのアコードは、それをミニマル・テクノとうまい具合に調合する。

 さて、いま僕の隣にいる男が、アコードのふたりはシャックルトンからの影響が大きいとわめいている(彼は昨晩彼らと一杯やってきているのだ)。なるほど、たしかに、たしかにそうだ。それにしても、シャックルトンの影響がこういうかたちで表出するのか……。
 
 〈Houndstooth〉は昨年からファブリックがはじめたレーベルで、本作のリリースも2013年の冬、アルバムより半年ほど前に同レーベルから出している「Navigate EP」をいま聴くと──これまたごく個人的な興味の流れでリアルタムで追っている人には「何をいまさら」な話なのだが──リズムの組み方が新鮮に感じられる。
 シャックルトンのような、お化け屋敷で迷子になったような怖さはないが、フィリップ・K・ディックの描くまやかしの世界に迷い込んだかのようだ。風景が揺れているように感じるほど眩惑的で、ホアン・アトキンスともどこかで繋がっているのではと勘ぐらせる、マシナリーな、ロボティックなポスト・ダブステップ・ファンクといった風でもある。
 アコードのふたりは、いまちょうど来日中なので、興味のある方はぜひパーティに行ってみよう。東京公演は、日本人DJのラインナップも面白い。

 もう1枚、昨年のリリースで「何をいまさら」だが、とくに良いと思ったのはフレデリック・ロビンソンのデビュー・アルバムの『Mixed Signals 』。

 90年代にもジャングルはフュージョン/ブラジル音楽との接続を果たしたものだが、それはレイヴ・カルチャーが共同体に疲れて、なかばうんざりした時期におきた、離反と成熟から生まれたものだった。要は、それ相応の手続きと時間を要したのだが、この21歳のドイツ人青年は、そうした、いかにもシーンで揉まれてきたかのような汗や手垢の一切を感じさせないクリーンさで、しかし似たようなことをやっている。ロマンティックな美しいメロディと、こと細かく編集されたブレイクビートのドリルンベースで魅了したエイフェックス・ツインをフュージョンの側に寄せた感じだとでも言えばいいのか。しかもこの青年はひとりで、さまざまな楽器──鍵盤のみならずバイオリンまで──の演奏をこなしている。なんてクールなヤツだろう。

 ダンス・カルチャーには、フィリップ・K・ディックが『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』で描いたように、そこが楽園だと信じてあれこれ貪ったあげくに世にもおそろい目に遭うという側面がある。ゆえに……と言っていいのだろうか、ダンス・ミュージックには、おそらく直感的に、そこを楽園だとは思わせないような、ダークネスを敢えて描くところがある。
 アントールドやミリー&アンドレアの、暗い衝動を秘めたアルバムを聴き入ったあとでは、憎たらしいほどキラキラしていて、屈託のなさが気になるというか、気持ち良すぎて気持ち悪いのだが、耳に優しいのはフレデリック・ロビンソンだ。叙情に耽ることなく、清々しいまでに前進している。ああ、若いって良いナー。家聴きには最高のアルバムだし、僕は、初期のDJサッセや一時期のスヴェックのような、北欧系の、透明度の高いクラブ・サウンドを思い出す。
 本作は、下北沢のZEROに行けばまだ在庫があるかもしれないので、この音にピンと来た人は早めに駆けつけたほうが良いです。

The Correspondents - ele-king

 エレクトロ・スウィングというUKでちょっとした盛り上がりを見せているシーンがある。スウィング・ジャズとハウス、ヒップホップ、エレクトロ・ダンスの交合によって生まれたこのジャンルは、90年代に出現してなんとなく消えたスウィング・ハウスの流れを汲むと言われているが、数年前から復活の兆しを見せており、わが街ブライトンはロンドンと並ぶその聖地に数えられている。
 2009年にこのジャンル専門の初めてのパーティ、ESC(エレクトロ・スウィング・クラブ)がロンドンに登場すると、それに呼応してブライトンにもホワイト・ミンク・クラブが現れ、ロンドンのESCとブライトンのホワイト・ミンクはUKエレクトロ・スウィング界の2トップになった。ブライトンに同性愛者やアナキストが多いということはこれまでも書いてきたが、ブライトンについて言われているもうひとつの要素としてクラブが多いということがあり、骨董の街ということもある。なのでエレクトロ・スウィングのメッカとなる地盤はあった。UKのイビサとも呼ばれるブライトンのクラブ文化と、骨董品屋や古着屋が立ち並ぶザ・レインをうろつくレトロな若者の文化が交合すれば、それはそのままエレクトロ・スウィングというジャンルそのものになる。
 んなわけで、ブライトンのホワイト・ミンクとロンドンのESCは、このジャンルのアーティストやDJをキュレートして様々なダンス・イヴェントを主催しており、The Correspondentsもその周辺から出てきたアーティストである。ロンドン在住のDJ Chucksとフロントマンのイアン・ブルース(この人は将来を期待される画家でもあり、Courvoisier社の「英国の未来を担う全業界混合500人」のひとりにも選ばれた)のデュオであるThe Correspondentsは、イヴニング・スタンダード紙に「キング・オブ・ヒップホップ・スウィング」と称された。その形容がぴったりだったEP「What's Happened to Soho?」を聴いたときには、わたしは少なからず動揺したのであり、“Washington Square”のPVを見たときには、「オスカー・ワイルドがラップしてる」と思ったものだった。

 同曲や“Jive Man”など6曲が収録された2011年リリースのEP「What's Happened to Soho?」は「これがエレクトロ・スウィングだ!」とジャンルを丸ごとぶち投げて来た点で、本当はあれこそが彼らのデビュー・アルバムになるべきだったと思う。というのも、待ちに待っていた彼らのファースト『Puppet Loosely Strung』は、彼らを以前から知っている(とくにステージ)人間からすると、「へっ?」な違和感があるからだ。
 これはおそらく、彼らがエレクトロ・スウィングという狭いサークルから卒業し、ポップ界への進出を宣言したアルバムなのだろう。だからこそスウィングのエレメントは希薄になり、代わりに80年代エレクトロ・ポップのフレイヴァーが色濃く加味されている。リスナー層を広げたいという野心が本来の持ち味を薄めたと思うと悲しいが、それでも『Puppet Loosely Strung』はここ数カ月間わたしが一番聴いているアルバムである。全くそこにある必要性を感じない冒頭曲をすっ飛ばして2曲目の“Fear & Delight”から聴けば、これはこれでやはり新しいムーヴメントの息吹を感じさせるし、昨年のMelt Yourself Down同様、理屈や薀蓄抜きでまず踊れるのがいい。『華麗なるギャツビー』のリメイク映画のサントラでブライアン・フェリー・オーケストラやウィル・アイ・アムもそれっぽいことをやっていたが、アンダーグラウンドなエレクトロ・スウィング・シーンの熱さを伝えるのはやはり彼らのような人々のサウンドだ。

 それと呼応するのかどうかはわからないが、日本では、菊地成孔がホットハウスというダンスパーティを主催していると聞いた。紙版エレキングで、ペペの新アルバムが『戦前と戦後』というタイトルであることを知り、そう言えば、スウィング・ジャズが流行したのも第二次世界大戦の直前だったのだよなあ。なんてことを考えていた。

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 話は唐突に変わるが、4月前半は日本にいた。
 今回の帰省でこれまでにない衝撃を受けたのは、「(戦争は)100%ないとは言い切れない」と言った人がいたことである。
 スウィング・ジャズが流行したのは……。とまた眉間に皺を寄せて考えそうになったが、ふと、ケン・ローチの『The Spirit Of 45』のBGMにもスウィングが使われていたことを思い出した。終戦直後の英国人たちが、戦争に勝った名相チャーチルではなく、地べたの庶民のための政治を選んだピープルズ・パワーの時代にも、あの音が鳴り響いていたのである。
 そして今。
 21世紀のブロークン・ブリテンのアンダーグラウンドでエレクトロ・スウィングが鳴っている。
 と書くと過剰に浪漫的かも知れないが、そのサウンドをヒットチャートに入れる可能性を持ったアーティストがいるとすればThe Correspondentsだ。というのはしごく現実的なファクトである。

深夜+早朝イヴェント 〈Space Ritual〉#2&#3

 ライブハウス〈四谷アウトブレイク〉では、今年に入ってから隔月で朝5時からの早朝イヴェントを開催しているらしい。朝5時、だと……!? エネルギーとテンションが高まりすぎているひとのためなのか、超健康志向なのか、あるいは修行なのか。いやいや、ちゃんとからくりはある。早朝イヴェントの客層は大きく分けて2つ。「オールナイト明けで帰る前に立ち寄った人」と「早起きして駆けつけた人」。で、その前者に目をつけたのが本イヴェントだ。深夜+早朝の2部構成で開催されるとのこと!

 今回の深夜+早朝イヴェントを企画したのは、東京で活動している3人組スペースロックバンドGalaxy Express 666。「Psychedelic Underground」篇と「Young Fresh Fellows」篇という構成で、夜はディープなアンダーグラウンドを、朝は個性的な若手たちをフォローする。その他、出演者はサイケ、ガレージ、ハードコア、インディロック、ジューク等々さまざまな分野にわたる。鎮まりきらない夜を過ごした方はもちろん、早起きした方にも必ずや三文の得があるだろう。


GOODWEATHER presents AKKORD JAPAN TOUR - ele-king

 モイーズ監督が解任されても、シティが優勝戦線から脱落しても、いまマンチェスターは熱いのだ。いつまでもマッドチェスターとか言ってるんじゃないぜ。
 今週は、たいへんだ。なにせ、日曜日にはリヴァプールとチェルシーの決戦もあるし、週末にはアコードのDJもある。え? アコードが誰かって? やれやれ、それでは教えてあげよう。

 アコードは、マンチェスターを拠点に活動をするプロデューサーのインディゴとシンクロによるユニットだ。これまでに、4枚のシングルとEP、1枚のアルバムをリリースしている。それらの作品のなかでは複雑なビートが絡み合い、怪しげなヴォイス・サンプリングや強烈なベースが飛び交う。黄金比や数学をコンセプトに取り込んだり、サイマティクスという音の周波数が示す形状パターンをミュージック・ヴィデオに取り込んだりと、プロダクションの方法も独創的である(インディゴの身体には黄金比を取り入れたタトゥーが刻まれている)。先日のボイラー・ルームで披露したDJセットにもその独創性が表れている。



 ふたりはアコード名義以外でも多くの作品をリリースしている。最近では、インディゴはニュージーランドの実験的なドラムンベースのレーベルである〈SAMURAI MUSIC〉のサブ・レーベル〈SAMURAI RED SEAL〉から「Storm EP」を、シンクロはベルギーの〈R&S〉傘下の〈APPOLLO〉から「Lost Here EP」を発表したばかりだ。
 アンビエントからテクノやダブステップまで、常にひとつのスタイルに縛られることなく作品を発表してきたふたりだが、この2枚のEP では、動的なインディゴと静的なシンクロというふたつの個性が表現されている。

 マンチェスターが彼らのホームであることも忘れてはいけない。元インディ・キッズにはお馴染みの街だが、近年でも素晴らしい作品がたくさん生まれている。5月に来日するアンディ・ストットとデムダイク・ステア。ダブステップ界隈で活躍するコンパやエイカー。ロック・バンドではエジプシャン・ヒップホップもいる。彼らは故郷を離れることなく、現在もマンチェスターに住んでいる。

 著者は一度だけマンチェスターを訪れたことがあるが、全てがコンパクトにまとまっているという印象を受けた。シティ・センターをワンブロック歩けばレコード屋さんがあり、サウンド・システムが入ったクラブがあり、ミュージシャンにも出会える。音楽を楽しむ人にも、音楽を作る人にも最高の環境がマンチェスターにはある。だが、環境だけがアコードの幾何学的なサウンドや、アンディ・ストットの暗黒なビートを作り上げたのではない。何がシーンや彼らのサウンドを作り上げたのか。それは誰にもわらない謎だ。

 アコードを惹きつけた黄金比は自然のあらゆる場所に存在している。貝の渦巻きにも、葉っぱの並び方にも、もちろん音の波形の中にもそれはある。優れた音楽に何らかの規則性があるとするならば、それは黄金比によるものなのだろうか。彼らの音を聴けば、そのヒントくらいは掴めるかもしれない。そして、その絶好のチャンスが今回のアコードのジャパン・ツアーだ。シーンの最先端には何があるのか、そしてそれがどのように生まれたのか。そこに耳をすましてみたい。

 主催は名古屋を拠点に活動する GOODWEATHERであり、ローガン・サマやスウィンドルをゲストに迎えたパーティも記憶に新しい。東京公演では、GOODWEATHERにレギュラーで出演している日本を代表するベース・クルーのPatry2Style Sound。インディゴも所属する〈SAMURAI MUSIC〉からEPを出したばかりのBack To ChillのレジデントDJのENA。同じくBack To Chillのレジデントである100mado。独自のスタイルでテクノを追求する GONNO。 GOODWEATHERクルーからはNOUSLESSとSAVが登場する。25日は是非LOUNGE NEOへ。
(Y.T)

GOODWEATHER#35 AKKORD JAPAN TOUR “Golden Rule and Causality”
April 25, 26 and 28, 2014


Marshstepper - ele-king

 LAの日差しは危険である。真冬の日中だというのにTシャツ陽気でハンモックに揺られながらオレンジマン(猫)などをマッサージすれば、仕事や制作に関する悩みなどなんのその。いやぁ〜俺だいじょ〜ぶじゃ〜ん。

 オイ! 今月の家賃どうするよ! 俺もお前も金ないぞ!
 ルームメイトのアレックス・グレイの言葉に一気に日常に引き戻された。そう、これは例のごとく単なる吸い過ぎである。吸い過ぎて金もない。
 こんなときの貧乏音楽家の常套手段は機材売却である。僕は早速グレー・ホルガーに電話をかけ、買取を懇願した。グレーに連絡した理由は2つある。ひとつはグレーも僕もかなりキモいほどシンセヲタであること、もうひとつは彼のレーベルがかなりいい感じであることを確信していたからである。

 グレーの主たるプロジェクトは、ハイヴ・マインド(Hive Mind)とピュア・グラウンド(Pure Ground)である。前者はもう10年以上も継続するパワエレ/ノイズ/ドローンで、後者は数年前から開始されたミニマル・ウェーヴである。これらのサウンド嗜好を具現化する彼のレーベル、〈コンドリティック・サウンド(Chondritic Sound)〉はここ数年の西海岸ゴス・リヴァイヴァルにおける火付け役だと言っても過言ではない。

 いい歳こいてゴス回帰とかマジ恥ずかしくねぇのかよ! ダセェ!

 ルームメイトのマシュー・サリヴァンの憎まれ口もごもっとも。さすが同じく10年以上前にここでグレーとともにノイジシャンとして活動をはじめ、ニュー・ウェーヴ・オブ・LAハーシュノイズを作り上げた盟友の言葉には愛がある。うむ、たしかにピュア・グラウンドはピュンピュン、トテトテ、アーエーイーウーエーオーアーオーなモロな音に超低体温のヴォーカルが乗る、ただでさえショボいミニマル・ウェーヴをよりショボくローファイにしたその手のファンにはたまらないサウンドなのかもしれない。個人的にはもちろんハイヴ・マインドが好きなんだけども、来月からヨーロッパ・ツアーに遠征するピュア・グラウンドとこの記念すべき再発ヴァイナルにエールを送ろうではないか。

 後日、〈エセティック・ハウス(Ascetic House)〉が主催するフェスティヴァルが近所で開催され、グレーのハイヴ・マインドとマーシュステッパー(Marshstepper)を観に行った。エセティック・ハウス及びマーシュステッパーはアリゾナ発エコエコ・アザラク系レーベル、およびそれを主宰するメンバーを含むバンドである。
※ディストラクション・ユニット(Destruction Unit)のメンバー等と重複
 〈コンドリティック・サウンド〉と同じく彼等もまたこのムーヴメントの立役者だ。コンテンポラリーなコンセプトによるヴィジュアル、パフォーマンス・アートが彼らの魅力だ。フェスティヴァル会場である元韓国人教会のハコに踏み入れると中はやり過ぎな量のスモークが炊かれつづけ、ブルーのライティングに地下はストロボのみのやり過ぎなライティングの中、ゴス・キッズたちがドラッグにまみれる姿に僕は爆笑し、ゴス・リヴァイヴァル・ムーヴメントを認めざるを得なかった。

 マーシュステッパーのライヴも室内でガンガン火を炊いてるし、ブルーシートの上にローションをブチ撒いて半裸仮面のパフォーマーがヌルヌルでのたうち、そこにヴォーカルもガンガン暴れては転んで流血するすべてがやり過ぎで素晴らしいものであった。この音源もエセティック・ハウスが「今年の1月は毎日リリースするぜ!」的な無謀極まるやり過ぎ企画(素晴らしい!)の一環でリリースされたものであり、ニュー・ウェーヴ/ミニマル・ウェーヴにドゥーム・メタル、エクスペリメンタル/ドローンと彼らの嗜好を一皿においしく盛りつけたものに仕上がっている。〈コンドリティック〉からのリリースは視聴できるので興味を持った明らかにクレイジーな人のために貼っておこう。

(マーシュステッパーに関して本当は先月発売予定であった〈ダウンワーズ(Downwards)〉からの12インチをレヴューしたかったのであるが一向に発売する気配がないのでとりあえずこれで許してほしい)

 さて、話は冒頭に戻り、電話連絡後まもなく自宅まで駆けつけてくれたグレーに僕は勿論機材を売りつけ、(後日の件のフェスティバルにてハイヴ・マインドで使用し、熱いパフォーマンスを披露してくれていたからいいじゃないか)ついでにアレックス・グレイも自分の機材を売りつけ、何とか現金収入を得た僕とアレックスはさっそく出掛け、メキシカン・フードをたらふく平らげた後、ネタを買いに行った。あれ? 家賃は? まだ一週間あるからだいじょ〜ぶでしょ〜(以後ループ)。

Arca - ele-king

 5月16日(金曜日)、実験好きで知られる恵比寿リキッドルームで、アーカの来日がブッキングされていることはみなさんご存じでしょう。
 はい、カニエ・ウェストの『イーザス』に4曲も提供している人です。アトモス。フォー・ピースの前座も務めています。ベネズエラ出身ですが、メキシコのレーベルからも出したり、〈Hippos In Tanks〉(ローレル・ヘイローやハイプ・ウィリアムスのリリースで知られる)からはミックステープ『&&&&&』もリリースして、マサやんも大絶賛という……。



 アーカは、ヒップホップの突然変異です。デジタル世界の奇怪な生命体のようです。感情に訴えるものがあります。喩えるなら、15年ほど前に不気味に登場したクラウデッドをコンピュータの廃棄場で蘇らせたようですが、よりシュールで、美しく、そして得体の知れない妖気を発しています。
 いずれににしても注目の公演です。

Arca(DJ set)

2014.5.16 friday
LIQUIDROOM
open/start 21:00 - midnight
adv.(4.19 on sale!!)
⇒3,000yen→LIQUIDROOM店頭&メール予約
⇒3,300yen→PIA[P-code 230-898]、LAWSON[L-code 77636]、e+、DISK UNION(取渋谷クラブミュージックショップ/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ/吉祥寺店)、TECHNIQUE、and more

*20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)

info LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net


▼Arca
ArcaことAlejandro Ghersiはベネズエラ生まれ、現在はロンドンを拠点とするミュージシャン/プロデューサーである。2012年にリリースされた『Stretch 1』と『Stretch 2』(共にUNO NYC)と昨年リリースされた『&&&&& 』(セルフ・リリース)は非常に高く評価され、そのプロダクション・ワークはグーグルで検索可能な多くのアーティスト達から絶賛された。現在、テレパシーで相通じるという幼馴染みでもある映像アーティストJesse Kandaと『&&&&』を映像化した『Trauma』の制作に取り組んでいる。このマルチメディア作品は2014年に世界中で公開される予定である。

https://arca1000000.com/
https://soundcloud.com/arca-2/uenqifjr3yua


Electronic Music in Mexico - ele-king

■メキシコ・エレクトロニックミュージックの現在

 メキシコの首都、メキシコシティに住んで7年が経った。
 よく人に、「なぜ、メキシコに住んでいるのか」と聞かれるが、いつまでたってもその理由をはっきりと答えられない。

 メキシコは好きだが、ここへやってきたのはスペイン語を本格的に勉強したかったからだ。かねてからラテンアメリカ文化のライターである以上、通訳の力を借りることなく、自分の言葉で興味のある対象にインタヴューしたいと思っていた。そこで、メキシコシティにある国立大学内のスペイン語学校が、ラテンアメリカのなかでも優れていると知り、留学することにした。その当時すでに34歳。遅い大学デビューである。1年ほどで帰国するつもりでいたが、貯金も底を尽きてしまい、帰れなくなった。
 私の実家は静岡県浜松市にあるが、家族たちから、追い打ちをかけるようにこう言われた。「この辺りに住んでいた出稼ぎのブラジル人やペルー人たちが国へ帰るほど日本は不景気だ。あんたが帰国後あてにしてた製造業での通訳の仕事も今はないみたいよ。いっそ、メキシコに居た方がいいんじゃない?」。
 そうか、覚悟を決めるしかない。幸いなことに、メキシコ在住の日本人ライターというので珍しがられ、ぼちぼち仕事も入るようになったので、なんとか食いつなげるかもと思い直した。
 石油や鉱山などの資源に恵まれ、日本の国土の約5倍の大きさのメキシコには、金は腐るほどあって景気がいいように見える。
 メキシコシティの目抜き通りは先進国並みのオフィスビルが建ち並ぶが、ちょっと通りを離れたらバラックの建物が並ぶ光景を見る。ヒップスターが高級自転車で町を徘徊する横では、ストリートチルドレンたちがシンナーを吸っている。
 権力者たちは権力を糧に横暴をふるうが、そこに取り入れられなかった者たちは忘れられた世界に生きるしかない。スペインの映画監督ルイス・ブニュエルがメキシコ在住時の60年以上前にメキシコシティで撮影し、子どもたちの厳しい運命を記した映画「忘れられた人びと」と何ら変わらぬ風景がそこにある。

 人口2000万人以上の大都会に居るにも関わらず、私の暮らしはモダンやアーバンライフからはほど遠い。いつでも偽札を掴まされるのではないか、所持品を盗まれるんじゃないかと注意をはらい、屋台だけではなく、高級レストランまで食中毒を起こす危険があるので、疑心暗鬼だ。緊急病棟に運ばれたときに、ベッドが不足していて、椅子に座ったまま2日間入院したこともある。独裁政権下でもないのに、デモに参加しただけで、刑務所に入れられる仲間がゴロゴロいる。
 この原稿を書いている今も、激しく雷が鳴り響き、また停電が起こるんじゃないかとひやひやしながら、パソコンのキーボードを打っている。ちなみに、私の住むダウンタウンの築60年の停電がよく起こるボロアパートは、ビル・ゲイツに次ぎ、世界で最も資産を持つ通信会社テルメックスの会長、カルロス・スリムの財団が大家である。メキシコシティでは、スリムのような投資家がゲットーの土地を買い漁り、ジェントリフィケーションが進んでいる。だから私が必死で稼いだ金は、家賃、携帯やネット使用料(テルメックスは国内の電話、ネットの市場をほぼ独占している)となって、スリム一家の資産の糧となっていく。
 フランスの詩人でシュルレアリスタのアンドレ・ブルトンが 、1938年に大学のシュルレアリスム講義のためにメキシコへ招待されたが、「なぜ私がメキシコに呼ばれたのかわからない。すでにメキシコは世界で最もシュールな国だ」と言ったのもうなずける話だ。
 だけど、たまらなく美味しいタコスに出会ったときや、市場のおばちゃんとたわいない世間話をして笑いがとれたときなどには、ああ、私もようやくメキシコに馴染めたんだな、という充足感で心が晴れるのだった。
 メキシコのシュールさも含め、たいていのことでは驚かなくなっている私ではあるが、未だに馴染めないのが、ここに立ちこめる暴力の匂いだ。
 メキシコの前大統領フェリーペ・カルデロンが2006年に施行した、麻薬組織撤廃政策において、ここ数年間のメキシコの治安状況は悪化し、現在までに抗争によって6万人以上の死者が出ている。気にしないようにしていても、ニュースではどこで死体が見つかったという話ばかりで、ふとした瞬間に不穏な気持ちになるのは否めない。
 残念ながら、世界中から麻薬組織の国とイメージされるようになってしまったメキシコだが、とくに米国との国境地帯での抗争が激化し、そのひとつの都市、ヌエボ・レオン州モンテレーは、クラブ内などでも銃撃戦で死者が出るほどだ。モンテレーは1990年代後半から、オルタナティヴ・ロックのバンドが続々生まれる音楽文化が豊かな土地だったが、いまでは夜には誰も出歩かないような状況が続いている。現地の企業や学校では、もし手榴弾が飛んできたらどう対応するのか、という講習が行われるほど危険な時もあった。

ティファナのグループ、ロス・マクアーノスが国境地帯の暴力に抵抗するために音楽をはじめた、と語る姿とモンテレーのフェスティヴァルの様子

 そんななか、モンテレーの若者たちが、暴力によって鬱屈した戒厳令状態を打開するために、2009年よりはじめたのが、エレクトロニックとオルタナティヴをメインにしたフェスティヴァルNRMAL (ノルマル)だ。モンテレー、ティファナ、そしてチワワ州シウダーフアレスなど、麻薬抗争の激戦区である国境周辺都市のアーティストたちをメインに集結し、少しずつ、海外アーティストも招くようになっていった。
ラテンアメリカのなかでも重要なフェスティヴァルになりつつある。

■フェスティヴァルNRMALメキシコシティのレポート

 フェスティヴァルNRMALは、今年2014年は、3月5〜9日までモンテレーで開催され、3月1日はメキシコシティでも初開催された。私はメキシコシティの方に参加したのだが、その会場は、なんとメキシコ国軍のスポーツ施設。入り口に銃を持った兵士たちが立っているのが異様だったが、中に入れば、サッカー・コートやロデオ場など4箇所に野外ステージが設置され、都会とは思えないようなのどかな雰囲気だ。
 サイケデリック・エレクトリックの伝説、シルバー・アップルズ(現在はシメオンのソロプロジェクト)や、デヴ・ハインズのエレポップなR&Bプロジェクト、ブラッド・オレンジなど、国内外の計31組が出演した。その過半数がメキシコを含めるスペイン語圏のアーティストたちだ。
 プログラムは、インディー系バンドとエレクトロニック・ミュージックのアーティストが交互に出演する構成で、ローカルの才能に発表の機会を与えるという意図からも、メキシコに蔓延するコマーシャリズムに乗ったフェスティヴァルとは全く異なる。
 今回もっとも素晴らしかったのは、チリの変態エレクトロ・レーベル〈COMEME(コメメ)〉を主宰する、マティアス・アグアヨと、アンデスの先住民音楽をコンセプトにした、ドラムとDJのデュオ、モストロとが組んだユニットといえよう。モストロが奏でる野性味あふれる音と、アグアヨの奇妙なエレクトロニック・ビートとラップが融和した祝祭的な音に、観客たちは覚醒したように踊り狂っていた。
 また、覆面黒装束で、ゴシックなデジタル・クンビアを演奏するコロンビアのトリオ、La mini TK del miedo(ラ・ミニ・テーカー・デル・ミエド)は、雄叫びをあげ続けて、観客を煙に巻いている感じが面白かった。
 いままで、さまざまなメキシコのフェスティヴァルに参加してきたが、誰もが知るアーティストばかりが出演するものよりも、意外性や発見があるほうがどれだけ刺激的か。
 今回のNRMALのメキシコシティでは、それなりに知名度があるアーティストが選出されていたが、本拠地モンテレーのほうがローカルのりで、はるかに盛り上がると聞くだけに、来年はぜひモンテレーまで足を運びたい。

FESTIVAL NRMALのオフィシャルビデオ

  • メインステージの前でくつろぐ参加者たち。芝生でリラックス © Elisa Lemus
  • 楽器販売のブース © Miho Nagaya
  • 雑貨とレモネードを販売するブース © Miho Nagaya
  • ブランコもあった © Miho Nagaya"
  • フードトラックが並び、充実した各国料理が食べられる © Miho Nagaya"
  • VANSが提供するスケート用ランページも © Miho Nagaya
  • ティファナ出身のフォークシンガー、Late Nite Howl © Miho Nagaya
  • 雑誌VICEの音楽プログラム、NOISEYが提供するステージ © Miho Nagaya
  • メヒカリ出身の新鋭テクノアーティストTrillones © Elisa Lemus
  • 会場はペットフレンドリー © Miho Nagaya
  • NRMALのスタッフたちは黒尽くめでクール © Miho Nagaya
  • マティアス・アグアヨとモストロのステージが始まる頃には満員に © Elisa Lemus
  • マティアス・アグアヨ © Miho Nagaya
  • コロンビアのLa mini TK del miedo © Elisa Lemus

 近年のNRMAL周辺の国境地帯のアーティストたちの動きは、はからずとも10年以上前の2000年初頭に国境地帯ティファナの若いアーティストたちが立ち上がった〈ノルテック(NORTE=北、TEC=テクノロジー)〉のムーヴメントと重なるところがある。
 1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)によってメキシコで生産されたものは関税なしでアメリカに輸出でき、低賃金で労働力を得られるため、日系を含む多国籍企業が進出し、ティファナを含む国境近くの都市に工場地帯=マキラドーラを建立した。
 ティファナは、もともと、砂漠のなかに建てられた新興都市で、地方から移住してきた人たちの寄せ集め的に見られていた。首都のように伝統や歴史もなく、アメリカとメキシコの合間で、どちらにも属せないのがティファナの人びとだった。
 アイデンティティの不在をバネに、面白い文化を築きたいという若者たちのパワーによってはじまったのが、アート、音楽、文化をメインにしたムーヴメント、ノルテックだった。グラミーで幾度もノミネートされるなど、現在メジャーで活躍するメキシコのテクノ・コレクティヴの〈ノルテック〉は、その当時にこのムーヴメントの音楽部門として生まれた。
 そんなムーヴメントの中心で動いていたメンバーたちが2002年に設立したのが、ティファナのインディペンディエント・レーベル、〈STATIC DISCOS(スタティック・ディスコス。以下スタティック)〉だ。
 音楽ジャーナリストのEJIVAL(エヒバル)を代表に、〈KOMPAKT〉などの海外レーベルからもアルバムがリリースされる、バハ・カリフォルニア州メヒカリ出身のアーティスト、FAXと、ティファナ出身で、ノルテックの元メンバーのMURCOF(ムルコフ)が、レーベル・タイトルのマスタリングを手がける。FAXはデザイナーとして、アートワークも担当している。

〈Static関連写真〉

 FAXの『Resonancia』とMURCOFの『Martes』の2タイトルを皮切りに、現在までに64タイトルをリリースし、レーベルアーティストたちが、スペインのSonarやカナダのMUTEKといった国際フェスティヴァルにたびたび招聘されるまでに成長した。
 なかでも5月に来日公演が行われるMURCOFは、ジャズトランぺッターのエリック・トラファズとタブラ奏者タルヴィン・シンと組んで世界ツアーをし、テクノの曲を弾くクラシックピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ・シュリメやヨーロッパ現代音楽界のアーティストたちともコラボレーションするなど、幅広く活躍し、最も成功しているアーティストといえよう。

MURCOFがフランスのヴィジュアル・アーティストAntiVJとコラボレーションし、ブラジルで演奏したときの映像。

 いまもなお、メキシコおよび、ラテンアメリカのシーンを牽引するレーベル、〈スタティック〉代表のエヒバルに、現在のメキシコのエレクトロニック・ミュージックについて、メールインタヴューした。彼は、前述のフェスティヴァルNRMALやMUTEKメキシコ版の制作に携わっている。

 「〈スタティック〉をはじめた頃は、国内で僕らのやってるエレクトロニック・ミュージックを誰も理解していなかったが、両フェスティヴァルが開催されるようになって、ようやく一般に認知された。両フェスティヴァルの立ち上げから関わっていることを誇りに思うよ。メキシコのフェスティヴァルのほとんどは大企業スポンサーのコマーシャリズム優先だが、NRMALもMUTEKも、個性を重視したフェスティヴァルがメキシコでやれる可能性を広げた。今年のメキシコシティでのNRMALの開催も成功したと思う。新しい才能に注目し、知る人ぞ知るカルト的アーティストも加えたフェスティヴァルは、リスナーを育てる良い機会だし、来年はさらに成長していくだろう。メキシコの問題は、ショービジネス界を独占するイベント企業が、すべて横取りし、ほかのフェスティヴァルの成長を阻むこと。さらにメキシコは海外アーティストへの支援は惜しみなく、法外なギャラを支払うが、国内アーティストに対するリスペクトがほとんどない。 だからこそ、NRMALやMUTEKみたいなフェスティヴァルに関わるほうが面白い。僕たちは新しく先鋭的な音楽を求めているわけで、儲け話が第一じゃないからね」

 〈スタティック〉は今年で12年を迎えたが、インディペンディエントのレーベルをここまで続けるのは簡単ではない。

 「音楽への愛があったからやってこれた。僕たちの目的は、国外でも通用するようなメキシコの才能を見つけ、紹介していくこと。正直、失敗も多いけど、それが僕たちを止める理由にはならない。何も失うものはないし、その失敗を糧に、学んだことのほうが大きい。〈スタティック〉では、2012年からCDの製造をほぼ停止し、ネットでのダウンロードによってリリースしているが、タイトルによってはCDも製造する。昨年は、アナログをリリースし、いくつかのカタログアイテムをカセットテープにする計画もある。最近では本の出版も行っているんだ。近い将来、コーヒーとビールの製造もはじめたい。というのも、いまや、多くの人びとがCDやレコードなど実体のあるものを買おうとしていないから。そのいっぽうで、ダウンロードもそれほど盛況じゃないし、この現実を受け止めなきゃいけない」

 エヒバルは、ちょっと後ろ向きな発言をしつつも、最新の〈スタティック〉のタイトルはとても充実していると嬉しそうに語る。

 「FAXはEP『MOTION』をリリースしたばかりだ。メキシコでもっとも洗練されたエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーといえる。アルゼンチンのMicrosfera(ミクロスフェラ)はハウス感覚のポップで美しい歌を交えたアルバム『Sunny Day』を生んだ。ハリスコ州グアダラハラ出身のMacario(マカリオ)のニュー・アルバム『To Pure』にも注目だ。そして、バハ・カリフォルニア州、エンセナーダ出身のChilds(チャイルズ)のセカンドアルバムのリリースを間もなく控えている。ものすごい傑作だよ。あとは、リリース予定のメキシコシティのCamille Mandoki(カミーユ・マンドキ)は、美しい声を持ち、実験的なアンビエントで素晴らしい。ティファナの作家、ハビエル・フェルナンデスとカルラ・ビラプドゥーアの音楽寄りな書籍も出版予定だ。スタティック以外では、ティファナ出身のフォークシンガー、Late Nite Howl(レイト・ナイト・オウル)がとても有望だし、メキシコシティのWhite Visitation(ホワイト・ビジテーション)もアンビエント・テクノの若手として、海外でも評価されている。メキシコシティ出身で現在ニューヨーク在住のÑaka Ñaka(ニャカ・ニャカ)も面白い。これらの新しい才能たちは、もう〈スタティック〉のようなレーベルの力を必要としないで、彼ら自身で成長していっている」

〈Static Discosの最新作のアルバムジャケット〉

 実は約10年前の2004年にティファナを訪れ、エヒバルと、その妻のノエミにインタヴューをしたことがある(後にremix誌2005年5月号の「メキシコのエレクトロニカ」の記事となって掲載された)。当時エヒバルは、ティファナのマキラドーラ内の工場で働きながらレーベルを運営していた。私はその際にノエミが言った、「ティファナは歴史も文化もないし、あまりに田舎でうんざりすることだらけよ。でも、そんな状況で育ったからこそ私たちには豊かな創造力がある」という言葉に感銘を受けたのだった。MURCOFが2006年にスペインへ移住した当時は、エヒバルとノエミも移住を考えていたが、現在もティファナを拠点にしている。

 「以前とだいぶ変わり、メキシコもずいぶん状況が良くなってきた。そして、ティファナを愛していることや、ここから何かを起こすことの方が重要だと気づかされたんだ。ヨーロッパへ行って基盤を作るのは日に日に難しくなっているし、競争も激しい。僕たちはMURCOFがヨーロッパの不況にも負けずに活動し続けていることを嬉しく思う。ただ、いろいろな意味でティファナは10年前と変わらない問題を抱え続けている。
 この土地の音楽ムーヴメントは大波のようにやってきて、優れた人びととともにメキシコシティや海外へ去って行き、ティファナには残らない。だからまたゼロから取り組まなければならない。それでもティファナは、本当に創造性を刺激する場所だ。いつでも何か面白いことを計画している人びとがいて、いまは音楽だけでなく、食文化や、社会組織(アクティヴィズム)の面において新しいことが起こり始めている。ノルテックのような国境ムーヴメントは今後起こりうる可能性はあるが、音楽だけが独り立ちできる状況ではなく、他の新しいムーヴメントと、音楽をどう絡めるかにかかっているだろう」

 以前から音楽ジャーナリストとしても活躍する彼だが、それだけでやっていくのは厳しいという。
 「生活のために、政治家や社会活動の対外向けテキストを執筆したり、ソーシャル・メディア対策の仕事をしている。工場で働いていた頃は、経済的に安定していたけれど、僕の魂は悲しみにくれていた。いまはその日暮らしだけど、以前よりはずっと幸せだ。とにかく、支援すべき面白いプロジェクトを探し続け、〈スタティック〉でリリースしていきたい。音楽と文学と魂が震えるような感覚を探し続けることに、僕は決して疲れることはないだろう」

 私は思わず、彼の言葉を自分の立場に置き換えていた。
 私がなぜメキシコにいるかの答えはいまだに見つからないし、見つからなくてもいいような気がする。でも、この言葉をきくために、いままでがあったような気がしてならない。
 思い込みだろうか? まあ、思い込みでもいいじゃないか。


〈メキシコの注目アーティストたち〉

■Los Macuanos(ロス・マクアノス)https://soundcloud.com/losmacuanos

ロサンゼルスにあるメキシコのビールメーカー、インディオが運営する文化センターで公演した際のインタヴューとライヴ映像。

2013年にNACIONAL RECORDS(チリのMC、アナ・ティジュやマヌ・チャオもリリースするロサンゼルスのハイブリッドレーベル)から「El Origen」で全世界デビューを果たしたティファナとサンディエゴ出身の3人組。オールドスクールなテクノとメキシコの大衆歌謡やトロピカル音楽をミックスし、〈メキシコ版クラフトワーク〉や〈国境のYMO〉とも呼ばれる。同アルバム収録曲「Las memorias de faro」が、2014年FIFA ワールドカップ、ブラジル大会の公式サウンドトラックに収録 され、南北アメリカ大陸で注目を集める。

■MOCK THE ZUMA(モクテスマ) https://soundcloud.com/mockdazuma


MOC THE ZUMA © Miho Nagaya 

メキシコでも最も注目される才能ある若者のひとりで、ダブステップ、アブストラクト・ヒップホップに影響を受けたその音は、いびつで強烈なインパクトを持つ。国境の町、チワワ州シウダーフアレス出身で、同都市は1990年代から現在まで女性たちが誘拐され、1000人以上が行方不明または殺害されているが、誰が犯人なのか未だに解決されていない。そして麻薬組織の抗争の激戦区であり、メキシコで最も危険な場所である。ロサンゼルスの新聞、LA TIME〈World Now〉で、2011年当時19歳だったモクテスマが、「僕の音楽はビザールな現実から影響を受けている」とインタヴューに答え、世に衝撃を与えた。

■Trillones(トリジョネス)https://soundcloud.com/trillones


Trillones © Static Discos

〈スタティック〉からEP『From The Trees To The Satelites』でデビューした、メヒカリ出身のアーティスト。スペインで最も読まれている新聞El Paisの記事「ラテンアメリカで注目すべきエレクトロニック・ミュージックの5名」の一人として選ばれたニューカマー。同郷のFAXとは親交が厚く、FAXとともにメキシコ北部の先住民音楽と、アンビエント、ロックを融合したユニットのRancho Shampoo (ランチョ・シャンプー)に参加する。

■MURCOF 2014年来日ツアー情報
5月3日、4日 東京 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014 会場 東京フォーラム (詳細https://www.lfj.jp/lfj_2014/performance/artist/detail/art_79.html
5月9日 新潟 Red Race Riot "Sensación de bienestar de días de entusiasmo" 会場 Solero (詳細 https://www.redraceriot.com/index2.html

interview with John Frusciante - ele-king

 「囲い込むこと」「容れ物」といった意味をもつ単語である「enclosure」をタイトルに冠したアルバムをリリースしたのは、かつてレッド・ホット・チリ・ペッパーズにおいて泥臭いカッティング・リフやブルージーなギター・ソロで聴衆を沸かせ、惜しまれつつも2009年に脱退すると、エレクトロニクスを駆使したまったく新たな音楽の探究へと乗り出していったギタリスト、ジョン・フルシアンテである。
 本盤はそうした彼の5年にわたる仕事を総括するものであり、抒情的でときに陰鬱な歌声とサンプリングされた種々雑多なドラム・パターンがポリリズミックに絡み合う、実験的でありながらもソング・ライターとしての資質をいかんなく発揮した、まさに集大成と呼ぶにふさわしい作品だ。いつものようにバルーチャ・ハシム氏によって行われた公式インタヴューにおいて、彼は次のように述べている。

 伝統的なソングライティングを非伝統的な方法でプロデュースするということがコンセプトだよ。ポップ・ソングを書いたけどプロデュースの方法によって、まったくポップ・ミュージックのコンテクストから外しているんだ。ここ30年間のエレクトロニック・ミュージックのプロダクション方法を使っているけどソングライティングは60年代や70年代のスタイルを継承している。伝統的な音楽の思考をモダンなエレクトロニック・ミュージックの思考と融合させたんだ。

00年代の音楽シーンをいわゆる「ミクスチャー」と呼ばれた強烈なファンク・ロック・スタイルで風靡し、いまなお支持の衰えないモンスター・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリストとして活躍したジョン・フルシアンテ。欠員を埋める形で中途から加入した彼は、しかし、バンドに叙情的でエモーショナルな「歌」の力を呼び込み、名ギタリストであるとともに名ソングライターとしての力量を遺憾なく発揮した。後のソロ活動においては多様なミュージシャンたちと関わりながら精力的にアルバム・リリースを重ねている。その求道的なまでの音楽探求の姿に心酔する方も多いのではないだろうか。

 このようなコンセプトがもっとも活かされた楽曲は“ラン”だろう。歌をリズムの基盤とすることによって、さまざまなドラム・パターンの組み合わせを試みることができるようになる。ジャンルは違うがジャズの帝王マイルス・デイヴィスが『ネフェルティティ』において実践してみせたような、メロディー/ハーモニーとリズムの役割を逆転させることによって、闊達なドラミングを楽曲の原動力にするという発想。もちろん、ジョンの場合はさらに歌がある。4つ刻みで発展していく歌にたいして3、5、7あるいはその2倍の数で分割しようとする無謀な取り組みは、しかしたしかに成功している。

 あの曲ではどのバンドもやったことがないようなドラムを取り入れている。歌はスローな4/4だけど小節ごとにドラムの拍子が変わっていく。でもぴったり4/4の歌と合う。小節の中でドラムのスピードが変わっていくように聴こえるよ。ギターとヴォーカルを先にレコーディングしたけど、そこにはまるようにさまざまな拍子のドラムを切り刻んでおいた。あの曲を作るのは楽しかったよ。ブラック・サバスっぽい曲を作って、スローな曲であればいろいろな拍子のドラムをはめ込めると思ったんだ。

 ジョンはグルーヴについてはどのように考えているのだろうか?

 グルーヴというのはつまり音符と音符の間の「間」のことなんだ。ドラム・プログラミングをやるようになってから、すべての音楽は「間」の作り方に基づいていることがわかった。60年代と70年代のブラック・サバスは「間」の作り方が得意だった。彼らは巨大な空間を音で作り出したし、彼らほど広々としたグルーヴを演奏しているバンドはいなかった。

 グルーヴが「間」であり、そこから生み出されるのが「巨大な空間」であるという。ジョンは『エンクロージャー』について、「おもに空間を埋めることに焦点を当てて」おり、「スペースに音を埋め尽くす作業」に専念したのだとも語っている。こうしたキーワードに照らし合わせてみると、ジャケットが禅における円相図のようにも見えてくるだろう。

 赤い枠に囲まれたジョンは語る。

 音楽というのはひとりの人間よりも大きな存在であり人間の知識よりも遥かに賢い存在なんだ。(……)音楽を作る行為は俺よりも大きな存在の中に入り込んで包み込まれるような感覚なんだ。(……)だから、自分の周りに円を描いたのは音楽を作ったり演奏しているときの自分が感じる「包み込まれる」感覚を意味している。

 「enclosure」とはつまり、音楽に関わること、しかし思いのままに音を取り扱うのではなく、遥かに偉大な「音楽」のなかであるがままに包みこまれるということだったのである。しかしジョンと禅の関わりを云々することを遮るように、彼はこうも述べる。

 音楽そのものがメッセージなんだ(……)音楽そのものがコミュニケーションの手段なんだ。音楽は情報であり何かを伝える方法だ。音楽というのは受け取って与えるものだ。

 音楽はメッセージである。同時に、コミュニケーションの手段でもある。わたしたちは彼の音楽を聴くときに、音楽に乗せて運ばれてきたなにものかを受け取ると同時に、音楽そのものを受け取る。だから、ジョンが語ることのすべては、じつは彼の音楽に耳を傾けることで受け取ることもできるのである。

ジョン・フルシアンテ、集大成

ジョン・フルシアンテのニュー・アルバム『Enclosure』。
2012年の『PBX Funicular Intaglio Zone』にはじまる、エレクトロニクスを大きくフィーチャーした近作数タイトルの集大成、一連の作品の最終作となる節目のアルバムだ。
日本盤には限定ボーナスも多数収録されている(日本盤ボーナス・トラック2曲/Blu-spec CD 2/ジョン・フルシアンテ超ロングインタビュー/歌詞対訳)。

 『Enclosure』は、過去5年間における音楽での目標をすべて達成した作品なんだ。 このアルバムはブラック・ナイツの『Medieval Chamber』と同時期にレコーディングされ、サウンドが違うかもしれないけど、同じクリエイティヴ・プロセスによって生み出された。 一つの作品から学んだことが、もう一つの作品にフィードバックした。
 『Enclosure』は『PBX』からはじまった僕の音楽による最後のメッセージだ。
ジョン

Enclosure, upon its completion, was the record which represented the achievement of all the musical goals I had been aiming at for the previous 5 years. It was recorded simultaneously with Black Knights' Medieval Chamber, and as different as the two albums appear to be, they represent one investigative creative thought process. What I learned from one fed directly into the other. Enclosure is presently my last word on the musical statement which began with PBX.
John

■John Frusciante / Enclosure
日本盤特典:9曲+日本盤ボーナストラック2曲=全11曲収録/Blu-spec CD 2/
ジョン・フルシアンテ超ロングインタビュー/歌詞対訳付
税込価格:2,300円
発売日:2014.04.08
レーベル:RUSH x AWDR/LR
収録曲:
1.Shining Desert
2.Sleep
3.Run
4.Stage
5.Fanfare
6.Cinch
7.Zone
8.Crowded
9.Excuses
10.日本盤ボーナストラック
11.日本盤ボーナストラック

Tower HMV Tower

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