「Ord」と一致するもの

Common - ele-king

 コモンの新譜情報を漁っていて見つけた『ローリング・ストーン』の記事には「先行シングル『Black America Again』のアウトロでスティーヴィー・ワンダーは歌う:『山のような問題を解決するひとつの手段として、人を自分にとって大切な誰かであるかのように思うこと(以下略)』」などと書かれていたので、あれ、これはジェームズ・ブラウンのMC音源のサンプリング部分のことでは、てか『ローリング・ストーン』誌ともあろうものがこんな間違いをするだろうか、とコメント欄を開くと「スティーヴィーじゃない、JBだよ」というどこかの誰かの呆れたような短い一文がぽつんと書かれているだけで別に訂正もされていないところを見ると、ひょっとすると誰もこの曲について大した関心は持たなかったのではないか、と思えてくる。

 しかし、いくら何でもJBとスティーヴィーを取り違えたままでいいものだろうか。

 シカゴ出身のラッパー、コモンの11作目となるアルバム『Black America Again』がアメリカでリリースされたのは11月4日、米大統領選投票日の4日前である。「(ま、いろいろ突っ込みどころはあるけど)どうせヒラリーじゃね?(盛り上がんねぇなぁ)」といった物見遊山なムードだけを感じつつぼんやり日本から眺めていた自分は日本時間の11月9日頃にはやべえ、やばいけど落ち着け、などと極めて凡庸にうろたえておりました。そんな中でふと、本当に偶々コモンの『Black America Again』を耳にして、ああアメリカにはこの人がいた、とようやく自然な呼吸ができるように思えたのでした。

 選挙後、同じくシカゴ出身のカニエ・ウエストが、あたかも面白ポップにひねり過ぎて自分自身を捩じ切ってしまったかのような先月の惨状とは際立って対照的に、かつてカニエと組んで『Be』(2005)/『Finding Forever』(2007)などのヒット作を飛ばしたコモンが見せる姿勢は今作もほとんど揺るがない。相変わらず重層的にメロディアスであることも、生真面目に「一枚目」を務めることなど躊躇わない様子も、先人の遺産への深い敬意と愛着を失わないことも全て含め、何はともあれキャッチーに売れなくては、といった発想ではないのが清々しい。件のシングル「Black America Again」の20分を越すロング・ヴァージョンPVなどはさながら実験映画のようでもあるし。

 アルバムとしては自伝的なリリックにTasha Cobbsのヴォーカルで締めくくられる14曲目“Little Chicago Boy”でシミジミと終わる、というのが無難に常道なやり方であるはずなところにボーナス・トラックのごとく足された(奴隷制廃止から現在に至る150年間の連続性を扱ったAva DuVernay監督のドキュメンタリー長編『13th』(2016)で使用された曲とのこと)15曲目“Letter To The Free”が、そんなリラックス・ムードで聴いている人間に軽く平手打ちを喰らわすかのように鳴り響いてくる。

 「俺らが吊るされた南部の木、その葉」という、ビリー・ホリデイの“奇妙な果実”を本歌取りした一節から始まるこの曲は畳み掛けるように「The same hate they say will make America great again」とトランプの選挙戦キャッチフレーズを折り込み、「Freedom, Freedom come, Hold on, Won't be long」というチャントで終わる。そんなラスト曲を繰り返し聴いていると、元々は『Little Chicago Boy』にする予定だったらしいアルバム・タイトルを『Black America Again』に改めた彼の確かな危機感も伝わってくる。そう言えば、ずっとクリントンを応援していたアメリカの友人(黒人ではないがゲイの映像作家)のことが心配になり、でも事情を何も知らないジャパニーズがいまさら何と声を掛ければ良いもんやら、と途方に暮れながらも投票日から数日後に短いメールを送ったところ速攻で「今や皆がアクティヴィストになっている。確かに解き放たれた感はあるがしかし、この恐怖はリアルなものだ」とこれまた短い返信があった。

 実は冒頭に触れた『Black America Again』について書かれた記事で「アウトロでスティーヴィー・ワンダーが歌う」という記述は間違いではないのであるが、致命的なことにラインが違う。ジェームス・ブラウンの語りに続いてスティーヴィーが10回以上繰り返し実際に「歌う」のは「We are rewriting the black American story(ブラック・アメリカンの物語を書き直すのだ)」というワンフレーズである。果たして歴史なり現実なりが「物語」に回収されていいものだろうか? とは思うものの、何かが危機に瀕しているらしい時に人びとをユナイトさせるのは良かれ悪しかれある種の「物語」である、というのもまた事実である。

 真面目な正論っていつだって何だか息苦しい(よね)、という時代が妙に長すぎたせいか、最早ポップなものは多かれ少なかれふざけたアティテュードをまぶさないと拡がらない、といった情勢は末期的ではありつつもまだ今のところ隆盛だ。が、コレ面白いから見て見て見て(聞いて聞いて聞いて)と氾濫する情報に窒息しそうな自身に気付いた時、ド直球にまともな作品に触れることでこれだけ楽に息ができるのだ、という現実はどう考えても未だ経験したことのない感覚である。

Alicia Keys - ele-king

「朝目が覚めた瞬間/メイクを一切したくないことだってあるでしょ/自分らしさを隠さなきゃいけないなんて/誰が決めたの/メイベリンの化粧品で覆い隠しているのは自信かもしれないのに」 “ガール・キャント・ビー・ハーセルフ”

 クラシックの素養もあるし、気高く凛としていたので、デビュー当初は才色兼備の「いいとこのお嬢様」だと思っていた。だが初来日時のライヴを観に行った時、PAの具合が悪かったのだったか何だったか、理由ははっきり覚えていないが、ステージ上のアリシアが「チッ!」と言ったのを聞き、「あ、お嬢様じゃなかったんだ」と了解した。だが宣伝の戦略としての優等生イメージはその後もずっと続いたため、本人も次第にそれが重荷になって、虚飾をすべて取り払いたくなったのだろうか。先ごろ唐突にすっぴんの画像を自らを公開し、その一撃で、見事に虚飾の放擲を完遂した。
 大きなアフロ・ヘアに覆われたすっぴんの横顔をジャケットに据えた新作『ヒアー』には、そうしたアリシアの心持ちがストレートに反映されている。歌声はどこまでもナチュラルで、バックの演奏も音数を削ぎに削いで、とてもシンプルだ。だがそれで十分、足りないものは何もない。それどころか、まっすぐに胸の奥深くに届く音楽となって結実している。
 前半は綿花畑で歌われていたワーク・ソングを彷彿させるプリミティヴな曲を含め、ブルージーな曲が多いが、デビュー作からして『ソングス・イン・A・マイナー』だったアリシアのこと、こういう曲への気持ちの乗せ方は天下一品だ。プロデュースはほとんどをアリシアとスウィズ・ビーツ夫妻を含むチームのイルミナリーズが手がけているが、ファレル・ウィリアムスのプロデュース曲もある後半の数曲は明るく軽やかな曲調に変化して、すっぴんのアリシアの歌声は可愛らしくもサバサバして気持ちがいい。それに続く終盤は、ザ・ウィークエンドとの仕事で名を上げたイランジェロとアリシアの共同プロデュース曲を含めてトレンドもさり気なく押さえつつ、スピリチュアルなマイナー調にも戻る、という作りだ。ゴージャスさとは対照的な清楚な音世界は心身の鎧を脱ぎ捨てたアリシアの心持ちそのものであろうし、曲想がグラデーション的に推移する全体のスムースな流れも、ナチュラルな感情の流れの表れだろう。そして全編を通じて言えることは、歌声が力みのない自然な表現を伴っているのはもちろん、どこにも奇をてらったり意表を突いたりする要素がないということ。その結果、とても清々しい作品になっている。
 さて、かねてからSNSなどで、政治的なメッセージを発信することも少なくなかったアリシア。本作収録曲の歌詞ではストレートな表現はしていないが、そのかわりに婉曲な表現や実生活の描写を通して、メッセージをそこここに忍び込ませている。
 例えばこれは個人レベルで考えることもできるが、反戦ひいてはトランプ次期米大統領が主張する排外主義の批判にも繋がる。「聖なる戦争の爆弾を磨く代わりに/もしもセックスが神聖なら/そして戦争が淫らなら/そしてそれが勘違いじゃないなら/なんて素晴らしい夢なの/愛のために生きて/終りを恐れることもなく/許すことが唯一の真のリベンジ/そうすればわたしたちお互いを癒し合って/感じ合える/お互いの間に立ちはだかる壁を壊すことができる」“ホーリー・ウォー”

 そして“ホウェア・ドゥー・ウィー・ビギン・ナウ”ではLGBT(性的少数者)の人々へのエールを歌う。
 知らず知らずのうちに心に幾重にもまとわりついた、本来は必要のない余計なものが、戦争や差別をはじめとする世の中の不条理を、実につまらない理由から生じさせる。アリシアはそれを小難しい言葉でダイレクトに語るのではなく、日常生活の中にある言葉で日常の風景に引き寄せて綴り、誰にでもわかりやすく受け入れられる形で提示しているように思う。

 最後に、最近アリシアがフェイスブックにアップしていた引用の言葉を紹介しよう。
 「The pain taught me how to write and the writing taught me how to heal」 – Harman Kaur
(「苦しみは書き方を教えてくれて、書くことは癒し方を教えてくれた」)

 我々リスナーがこの包容力のあるアルバムに癒されるだけでなく、これを作ったすっぴんのアリシアも、自ら癒されていたのなら嬉しいことだ。

NGLY - ele-king

 河村祐介にL.I.E.S.を任せたのが間違いだった。今年の始めにエレキング・ブックスから発刊された『クラブ/インディ レーベル・ガイドブック』で河村祐介はなかなかいい仕事をしている。どのレーベルを取り上げるかという段階から参考になる意見をたくさん聞かせてくれたので、多くはそのまま丸投げしてしまったし、風邪を引いたとウソをついて会社を休んで残りの原稿も一気に書いてくれる……つもりが本当に風邪を引いた時はアホかと思ったけれど、WorkshopやPrologueなど作品のチョイスは総じて素晴らしかった。Further Recordsなどは実態がよくわかっていなくて僕も勉強になった。そうか、そんなレーベル・コンセプトがあったのか。断片的にしか分かっていなかった。いや、さすがである。河村祐介に頼んで本当によかった。まったくもって「ありよりのあり」だった。
 だがしかし。L.I.E.S.で2ページも取ったというのにNGLYはピック・アップされていなかった。送られてきた原稿を見て「え!」と思ったが、もはや差し替える時間はない。サブ・レーベルのRussian Torrent Versionsにはいくらなんでも入っているだろうと思ったのに、こっちにもリスティングされていなかった。ガン無視である。NGLYを入れないとは……。それはこのような業界で働く者としてどうなんだろうか。「Speechless Tape」がどれだけの注目を集めたと思っているのか。もはや形骸と化したインダストリアル・ミュージックをディスコ化し、ファッションとして再生させた野心作ではなかったか。三浦瑠璃に絶望している人のためのエレクトロ入門ではなかったか。それにしてもRussian Torrent Versionsとはフザけたレーベル名だよな~。

 そして、ついにアルゼンチンからシドニー・ライリーによるファースト・アルバムである。このところコロンビアのサノ(Sano)、ロシアのフィリップ・ゴルバチョフ、あるいはファクトリー・フロアやゴールデン・ティーチャーといったイギリス勢にも脈々と流れているボディ・ミュージック・リヴァイヴァルの総仕上げである。パウウェルがポスト・パンクをユーモアとエレクトロで刷新すれば、NGLYはニュー・ビートをファンクショナリティと最近のアシッド・エレクトロでアップデートさせたといえばいいだろうか。そう、アシッド・ボディ・ミュージックとでもいうか、ガビ・デルガドーがDAFからデルコムに移り変わる時期に遣り残した官能性をマックスまで引き出し、SMちっくに攻め立てるのである。何かというとクラシックの素養が漏れ出すアルゼンチンの音楽シーンからこんなに退廃的なヴィジョンが噴出してくるとは。ディジタル・クンビアでさえもう少し健康的だったではないか……(ニコラス・ウィンディング・レフンは『ネオン・ディーモン』のサウンドトラックをNGLYに担当させるべきだった)。

 オープニングからスロッビン・グリッスルのディスコ・ヴァージョンに聞こえてしまう。威圧的だけれど重くないビートが次から次へと繰り出され、ドレイクやビヨンセといったメジャー・チャートに慣れきった耳を嘲笑う。単なるドラッグ・ミュージックでしかないというのに、もう、ぜんぜん逆らえません。とくにハットの連打が圧巻。空間処理もハンパない。逃避するならこれぐらいやってくれよという感じ。バカだなー、オレ、いつまで経っても。

 異次元緩和やらアベノミクスにTTP推進とあくまでも豊かさの綱渡りに固執する日本に対し、経済的なデフォルト状態であることを楽しんでいるかのようなアルゼンチン。かつて経済学者のポール・サミュエルソンは、世界は豊かな国と貧しい国、そして日本とアルゼンチンに分類できると語ったことがある。映画を観ていると悪趣味極まりないし、女性に対する抑圧はヒドいのかなとも思うんだけど、アストル・ピアソラ、セバスチャン・エスコフィエ、ファナ・モリーナ、カブサッキ、アレハンドロ・フラノフ、ソーダ・ステレオ、ボーイング、アナ・ヘルダー、ディック・エル・ディマシアド、チャンチャ・ヴィア・スィルクイト……と、音楽は、ほんとに豊かな国なんだよなー。そしてNGLY がこのリストに加わったと。

戸川純ちゃん祭り - ele-king

 おかげさまで『戸川純全歌詞解説集』が大好評の戸川純(リスペクトを親しみを込めて、純ちゃん)ですが、まだまだ続きますよ。
 まずは12月14日、Vampilliaとの共作(セルフカヴァー・アルバム)戸川純 with Vampillia『わたしが鳴こうホトトギス』がVirgin Babylon Recordsよりリリース! 名曲たちが、Vampilliaの演奏でみごとに甦ります。アルバムには、12年振りの新曲となる「わたしが鳴こうホトトギス」も収録。しかもゲストとして同レーベル主宰者のworld's end girlfriendも参加。

戸川純 with Vampillia 「赤い戦車」

 また、急遽、戸川純の秘蔵写真を多数収録した戸川純ミニ写真集も刊行します。 これは、『わたしが鳴こうホトトギス』のTOWER RECORDS特典とレーベル特典として購入者に配布されるもの。これ欲しい!

 そして、12月21日にはソニーから 1982~87年にかけてリリースされた戸川純関連アルバム6タイトル(原盤:アルファミュージック)が最新リマスターで再発。(すべての盤には三田格のライナーノーツが入る!)。ちなみにゲルニカの『ゲルニカ/改造への躍動』(名盤です)は、アルファ発売音源を全て収録した特別拡大版になります。また、全曲ハイレゾ配信音源も同時発売予定。詳しくはこちらも→www.110107.com/jun_togawa35

 そしてまた、来年には戸川純35周年記念LIVEが1/13@東京LIQUIDROOM、1/20@大阪クラブクアトロで開催決定!


 年末〜年始の純ちゃん祭り、乗り遅れないように!

interview with SHOBALERDER ONE - ele-king

 緊急事態発生。君は、スクエアプッシャー率いる4ピース・バンド、ショバリーダー・ワンを覚えているだろうか。2010年にアルバム『d'Demonstrator』をリリースした、身元不明の連中によるあの奇怪な音楽(エレクトロ・ファンク・フュージョン・ロック・ポップ)を……。
 たったいましがた、つまり12月1日の深夜のことだが、バンドからele-king編集部に謎めいた公式インタヴューが届けられた。じつに興味深い内容であり、またじつに貴重な取材だという。以下にその全訳を掲載しよう。もちろんスクエアプッシャーもメンバーのひとりとして参加している。
 と、その前に、同時に届けられた最新トレイラーをご覧いただこう。まさに別惑星のジャズ・フュージョン・ロック・エレクトロニカ。なかなかの演奏だ! そして身体が温まったところで、彼らのインタヴューを楽しんでくれたまえ。



思考を目に見える言語で表現し、それを他の人びとにも判読可能にするというのが、俺たちの手法だ。自分たちの顔を覆い隠すことによって、より遥かに重要なことを明らかにするのが目的なんだよ。

今日はオフィスまでお越しいただき、また私共のインタヴューにお時間を割いていただいてありがとうございます。来年リリースされる新作、とても楽しみにしています。まずはその件から伺いましょうか。新作はどのようなものになりますか?

Strobe Nazard:戦略の変更!

Squarepusher:スクエアプッシャーの曲から選りすぐったものなんだけど、このバンドで演奏するために手を加えて作り直したんだ。

そうでしたね。ということは、規準を設けて作品を選んだと? 今回のセットでどれを取り上げるかは、もう決めているんでしょうか?

Squarepusher:『Hard Normal Daddy』や他の初期作には、4〜5人組のバンドがすごくタイトにやってるときの状況からインスピレーションを得たものがある。だからそれを試してみるのも楽しいんじゃないかと思ったんだよ。

あなたは以前インタヴューで、モダン・カルチャーにおけるノスタルジアやレトロ現象が嫌いだと発言していましたが、これはある意味ノスタルジックなのではないでしょうか?

Squarepusher:昔のアイディアを未来に向けてプレイしているいくつかの断片。いまのフューチャリズム・ボーブには、それくらいが精一杯だね。

えーと、すみません、“ボーブ”(borb)って仰いました? それは何ですか?

Arg Nution:俺たちが別の惑星でプレイするときは、より新しい、しかるべき機材でプレイするんだよ。こんな金属製とか木製のガラクタじゃなくてな。

Squarepusher:おい、木製は別にいいだろ。樹木から作った楽器で間に合わせることのどこがいけないんだ? まあ、歌は自分たちで歌わなきゃならないけど、大体において、現状を成り立たせてきたのはそいつなんだからさ。

ステージ衣装も凄いですよね、皆さんの外見の進化、すごく気に入っています。

Arg Nution:「外見の進化、すごく気に入っています」だってさ。

Company Laser:これは俺たちが家で着ている普段着だよ。ブランド戦略を実践してるわけじゃない。

家でそれを着たまま、料理したりとかテレビを見たりとか、大変じゃありません?

Strobe Nazard:ウチは、こんなクソみたいなイギリス生活とは違うんだよ。

Company Laser:おいおいStrobe、イギリスってのは国であって、生活じゃないぜ。

Strobe Nazard:ほらな、“生”が好きな人間が大勢いるわけだ(笑)

Arg Nution:だが、ここにはあらゆる死が入り込んでいる。俺はかつて生きていた。だがいまは、死んだ樹木で作った楽器を弾かなくてはならないのさ。

なるほど、では、LEDライトを点灯させて画像を表示するマスクで顔を覆ったりというアイディアは?

Squarepusher:思考を目に見える言語で表現し、それを他の人びとにも判読可能にするというのが、俺たちの手法だ。自分たちの顔を覆い隠すことによって、より遥かに重要なことを明らかにするのが目的なんだよ。

Strobe Nazard:目は闘っているぜ。

Squarepusher:ステージ上にいる者と観客がアイコンタクトを取るのは危険だったんだ。ステージ/シーリング・システムの迫真性によって、そこに両者が通じ合える階段が設けられるとしたら、それは危険な前提に繋がる可能性がある。つまり、紛い物や錯覚としての連帯感だ。実際のところボーブ観客席は、残酷なヒエラルキーの悲しい法則が示されている区域なわけだから。

なるほど、分かりました……だとしますと、あなたたちはどうして集まったんですか? 2010年には『D'Demonstrator』というアルバムを発表していますが、これは何だったんでしょうか?

Company Laser:スクエアプッシャーが俺たちを誘ってくれたんだ。俺たちは何千年も前からの知り合いなんだよ。あのときはどんどん悪い方向に進んでいった憶えがある。彼はまるで自分が本当はボーブじゃないとでも言わんばかりで、それを見せつけようとしていた。俺たちは興奮から醒めたんだけど、実に危険だったね。結局、すごく怖くなってしまってさ。レコーディング・セッションが終わった直後、俺たちは辞めたんだ。でも、彼をひとり残していくのは心苦しかったよ。それでエレクトラックが彼を送り返してきた時、俺たちも彼に同伴したんだ。

あなたが送ったんですか? エレクトラックとは何ですか?

Company Laser:“エレクトリック・トラック”のことだよ。どうかそいつを良心と呼んでくれ。

どこから戻ってきたんです?

Strobe Nazard:英国内のとある惑星からだよ(笑)

それは私たちがいまいる場所ですよね。分かりました。それはさておき、『D'Demonstrator』の収録曲を演奏することについてはいかがですか? 彼の曲の中でも“Plug Me In”はいまいちばん人気があると思いますが。

Squarepusher:人気というのは根拠の類語、しかもおかしな類語なだね。この曲はいまのヘッドセットにふさわしくない。俺たちは、というか俺は、ボーブに及ぼす危険性のせいで元の場所に戻されたんだよ。

エレクトラックによって送り返されたんですよね?

Squarepusher:その通り。

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君が混乱していたのは分かるよ。ショバリーダー・ワンは友好的で寛大な団体なんだ。俺たちは俺たちなりの謙虚なやり方で役に立ちたいんだよ。

危険性というのは、どういう意味でしょうか? またそういった危険と闘う場合、あなたは手を貸すことになっているんですか?

Squarepusher:自分の作品の目的については語らないよう促されているんだ。例のボーブという前提の下で、20年以上ずっとやってきたわけでさ。見せかけを整えるため、俺は絶えず嘘をついてきた、成功のチャンスをもらえるならね。だが、状況は変わった。そして試してみる必要性に直面した諸問題の深刻さもね。

Company Laser:思考能力の制限を企んでいるものが、地球上にはたくさんあるのさ。

それを見下した態度だと感じる人も大勢いるはずです。例外的に良い協議会もあるわけですし……

Arg Nution:実際に聞いたことはないだろ。専門知識を嫌う傾向は顕著にあるんだ。人はエキスパートが好きじゃないのさ。

Strobe Nazard:俺たちはエキスパートなんだよ! プロフェッショナルなんだ!

Squarepusher:ボックスは一般的に、自分たちが直面している悲惨な問題解決に取り組もうとして衰退している。現在のものを過去のレプリカに置き換えるという幻想に逃げ込みながらね。

Strobe Nazard:ボーブが眠たいってさ!

Company Laser:Strobe、お前は黙っとけよ。人をイラつかせるだけならさ。

たしかに私は心配していました。この件についてすごく混乱していたもので。

Company Laser:君が混乱していたのは分かるよ。ショバリーダー・ワンは友好的で寛大な団体なんだ。俺たちは俺たちなりの謙虚なやり方で役に立ちたいんだよ。

Arg Nution:謙虚かつデタラメにね。この連中はもっと謙虚な人びとの役に立たないと駄目だ。

えーと……12月にアメリカを、3月にはヨーロッパの各都市をツアーして回る予定だそうですね。この公演では何か特に計画はありますか? このツアーのギグに関して、ファンの皆さんにお知らせしておきたいことは?

Company Laser:俺たちはスクエアプッシャーの曲を演る。そして自分を貶めることになるにしてもひたすら謙虚でいる。俺たちはヒーローとはみなされていない。俺たちはアンチ・ヒーローだが、反アンチ・ヒーローでもあるんだ。

Squarepusher:今回のライヴはきっと、この上なくエキサイティングなものになるよ。俺たちがその意識に働き掛ける人たちにとってはね。

でもどうすれば音楽は人の意識に異なる作用を及ぼすことができるんでしょうか? たしかに、聴き手は音楽の価値を理解したり、それを気に入ったり、それに触発されたりなどする。でも、人の心の働き方に変化を及ぼしたりしませんよね?

Arg Nution:だからこそ、途方もない混乱状態にいる間抜け野郎は破滅するんだよ。

Strobe Nazard:心をバラバラに働かせられるようにしないと駄目だね。でなきゃ、人生を愛せないだろ。人は死ぬものなんだから。

なるほど。こういう問題は精神科医に任せた方がよさそうですね。

Arg Nution:おバカなアホは笑わせてやらないとな。

Company Laser:分かったから、落ち着けって。対抗心とか怒りとかあるんだろうが、でも取り敢えずいまは、サインするまでわずかな時間しかないんだ。建設的に話そうぜ。

分かりました。それでは名前について伺いましょう。本当に面白い名前ですよね。例えばStrobe Nazard。あなたが考えたんですか?

Company Laser:俺たちは名前の持つ力を妨害したいんだよ。ボーブだとかパワー・バリアだとか、世の中が名前を分析しようとする力をね。普通、機械を作れば、名前について検討し、定期的にそれを見直したりするものだが、この名前を見て、そこから連想されるものが刷り込まれてしまったら、そこであらゆる思考が停止し、ボーブの悲哀に呑み込まれてしまう。

でもあなたたちには、ショバリーダー・ワンというバンド名がありますよね。そこにはたしかに、人間関係や名前やポジティブな組織を構築するための意味がある。そうすれば人びとは、映画を観る時のように、何を期待すべきか想像がつくわけです。

Arg Nution:その期待は破滅に終わるわけさ。

Company Laser:彼のリスナーたちには、期待を捨てるようにって働き掛けようとしてきたんだ。期待は、心理的な解放状態を促進するからね。改名についての国際的原則の教えだ。俺たちは修正を提案して、その後で変えるつもりだよ。

Strobe Nazard:俺たちの宇宙船の側面には、でかい文字で『ショバリーダー・ワン』って書いてあるんだ!

宇宙船を所有していると、あなたたちは本気で主張しているんですか?

Arg Nution:「宇宙船を所有していると、あなたたちは本気で主張しているんですか?」だってさ(笑)。

Squarepusher:この議論にスペース・シャトルは関係ない。

いえ、そうではなく。それで宇宙を旅することができると?

Squarepusher:なあ、追究する価値のある問題は別にあるんだよ。それはテクノロジーへのこだわりに突き動かされてていて、道徳的な理由が完全に欠落していることもよくあるんだ、どんな手法が使われてきたかってことに関して言えばね。

Company Laser:テクノロジーの放棄を論じたかったのかい?

Squarepusher:ああ、俺は火器を全て置くよ。あれは象徴的な提案だった。人びとと音楽テクノロジー、そして人びとと信仰心の特徴との相互作用の不思議さを訴えていたんだ。

それについて詳しく教えてもらえますか?

Squarepusher:このミッションがスクエアプッシャーを危機に晒したと考える理由のひとつは、俺の意に反し、俺が神秘主義的な芸術音楽家として扱われているからだ。こういう展開は不愉快だが、別のやり方を推し進める機会を俺に与えてくれた。だが、そうだな、上位者に教えを授けた神秘主義者もいれば、司祭もいるし、現代のテクノロジーは伝統の継承者にふさわしいという正統信仰もある。だが守護者はその時間と金のすべてを、宗教的権威の眼鏡に適う機材の購入に当てなくてはならないんだよ。

とはいえ、テクノロジー・レヴューのユーザーも言っていましたが、テクノロジー音楽は礼拝所に成り得ると?

Squarepusher:いろいろあるが、そのひとつだと言っていいね。

Strobe Nazard:それもまた、人の脳を死に至らしめる方法のひとつだよ! 音楽テクノロジーは、死ぬべき脳を作り出すのさ(笑) !

Company Laser:だからBluetoothの定期的な切断について非難を浴びせようぜ。俺たちはこのサービスに異説を唱える異教徒だからね。

ですが、テクノロジーを用いて作られた音楽についてはいかがでしょうか? 人びとが無意味な信者達の特性を部分的に操作しているとしても、それはやはり素晴らしい音楽を生み出すのでしょうか?

Arg Nution:それでもやっぱり、時には素晴らしい音楽を生み出すこともあるね(笑) 。

Squarepusher:醜悪な建造物を地震が破壊するからといって、地震を良しとするようなものだ。

Strobe Nazard:音楽を破壊するんだよ! 音楽を破壊(笑)!


※来春にはショバリーダー・ワンのアルバムのリリースが予定されており、ワールドツアーの日程も発表されている。

ツアー日程

09/12/16 SI Ljubljana @ KINO ŠIŠKA (TICKETS)
10/12/16 AT Vienna @ Porgy & Bess (TICKETS)
14/12/16 US New York @ Le Poisson Rouge (TICKETS)
16/12/16 US Los Angeles @ Echoplex (TICKETS)
17/12/16 US San Francisco @ The Independent (TICKETS)
22/03/17 UK Ramsgate @ Ramsgate Music Hall (TICKETS)
23/03/17 UK London @ Village Underground (TICKETS)
24/03/17 UK Brighton @ Concorde 2 (TICKETS)
25/03/17 FR Paris @ New Morning (TICKETS TBC)
26/03/17 DE Cologne @ Club Bahnhof Ehrenfeld (TICKETS)
27/03/17 DE Munich @ Strom (TICKETS)
29/03/17 CZ Prague @ MeetFactory (TICKETS)
30/03/17 DE Berlin @ Berghain (TICKETS)
01/04/17 UK Gateshead International Jazz Festival (TICKETS TBC)
09/04/17 BE Brussels, BRDCST @ Ancienne Belgique (TICKETS TBC)

Bon Iver - ele-king

 ボン・イヴェールとは共同体を巡るコンセプトである。あるいは、そのコミュニティが何によって構成されうるか……その問いかけである。ボン・イヴェールとはまた、その名の通り「良い冬」のことであり、すなわち、匿名性と抽象性のことだ。

 いや、もちろん、ボン・イヴェールとはつねにそのマスターマインドであるジャスティン・ヴァーノンの内面への探求とその思慮深い吐露であり、はじまりはどこまでもパーソナルな……「ひとり」のものだ。人生に行きづまり山にこもりながら綴った歌が世界に発見されたという、ある意味では典型的な物語を負っていたデビュー作と、世界的なビッグ・ネームとなってからの本作は、その観点ではまったく同じだと言える。かつての無名の青年は予想外の成功とありあまる称賛に疲れ果て、再び内省へと向かった……これもまた、典型的な話だ。ただし、その感情の発露において、『22、ア・ミリオン』は彼のキャリアでもっともスピリチュアルに振りきれている。曲名には意味ありげだが謎めいた(もちろん、本人にとっては深い意味がある)数字と文字が並び、陰と陽を中心に置いたアートワークはダークなサイケデリック・アートのようだ。そして音は……かつてのファルセット・ヴォイスが美しいアンビエント・フォークのイメージをズタズタにするように、エレクトロニック・ビートとノイズ、ときに流麗に響きときに狂おしく鳴るサックス・アンサンブル、断片化されたサンプリング、オートチューンドされた声……が吹き荒れている。グッド・メロディの素朴なフォークを期待したリスナーは、乱心を疑い頭2曲で引き返してしまうだろう(先行して発表された2曲であり、つまり、新作はまったく別物だとまず提示したかったにちがいない)。
 しかしながら、それらはヴァーノンひとりから生まれたものでなく、確実にこのレコードに参加した大勢の人間によって奏でられたものである。クレジットを見れば、相変わらず気心の知れた彼の周辺の音楽仲間ばかりが集められている。サウンドの多様さとサンプリングの多用も加わり、アルバムは「ひとり」の地点から遥か遠くまで辿り着いている。

 海外の評を観るとサウンドでもテーマでももっとも「difficult」で「experimental」なアルバムだとされており、第一印象ではたしかにそうなのだが、しかしよく聴けばじつはきわめてロジカルな発展であることがわかる。たとえばスフィアン・スティーヴンスであれば、同様に内面への旅を追求した結果分裂気味にエクスペリメンタルになっていた『ジ・エイジ・オブ・アッズ』を連想するが、あそこまで壊れていない。『22、ア・ミリオン』では曲の骨格自体はこれまでのソングライティングを大きく外れることはなく、あくまでそのアレンジメントにおいての冒険が繰り広げられている。またその点についても、リズムや音響の感覚においては2000年前後のポストロックやエレクトロニカに源流があること、かねてから取り組んできた声を加工し音とする試み、ヒップホップの実験性への強い関心、ドローン/アンビエントへの理解、ビッグバンド・ジャズの経験と素養を顧みると納得がいく。カニエ・ウェストやジェイムス・ブレイクとのコラボレーションの影響は誰もが指摘しているが、いっぽうで同時にジョン・ミューラーのドローンやコリン・ステットソンのドゥーム・ジャズまでをヴァーノンは渡り歩いており、曲によってその語彙を理知的に使い分けているのだ。そして、前身バンドであるデヤーモンド・エディソンとボン・イヴェールの最大の違いであったファルセット・ヴォイスが黒人のフィメール・シンガーからの影響を受けているように、相変わらずホーリーなコーラスによって全編を貫くフィーリングはゴスペルだ。そして歌は……そう、ボン・イヴェールの音楽において揺るぎなく中心に据わるその歌は、声が加工されてもブツ切りにされても、まったくもって力強く生々しく、エモーショナルに響いている。
 ゴスペル・シンガーであるマヘリア・ジャクソンのサンプリングが浮遊する“22 (OVER S∞∞N)”、ヒップホップの影響が強いだろう烈しいビートがのたうち回る“10 d E A T h b R E a s T ⚄ ⚄”、ピアノ・バラッドとポストロックとアブストラクト・ヒップホップが無理やり合体させられたような“33 "GOD"”の印象が強いため、A面にあたる前半はとくに新基軸を強調しているように思える。が、たとえば3曲め、エフェクトがかけられた声だけのア・カペラ・ソング“715 - CR∑∑KS“は過去の名曲“ウッズ”と“ウィスコンシン”を合わせた発展形だし、5曲めの“29 #Strafford APTS”でようやく柔らかなフォークの時間が広がっていけば、それはメロディアスでジャジーな“666 ʇ”へと引き継がれ、透徹したアンビエントがフリーキーな管に浸食されてゆく“21 M◊◊N WATER”、前2作どころかデヤーモンド・エディソン時代をも彷彿させる大らかなジャズ・ロック・ナンバー“8 (circle)”へと続いていく。そしてシンプルで真摯な歌と弦を管が彩る“____45_____”、スウィートなゴスペルの終曲“00000 Million”へ至る頃には、ボン・イヴェールを愛聴してきたリスナーはこれもまた紛れもなくボン・イヴェールの作品であると確信するだろう。姿が変わったことで、かえってその内側で変わらないものが深く根を這っていることがわかる。かつてのようなアコギを弾き語る典型的なフォーク・シンガーはもうここにはいない、が、そこには変わらず温かく情熱的で誠実な歌ばかりがあり、そしてそれはヴァーノンが現在集結させることが可能なたくさんの人間と多様な音楽的語彙によって実現されている、それだけのことなのだ。

***

 ダーリン、愛するな、闘え
 愛せ、闘うな    (“10 d E A T h b R E a s T ⚄ ⚄”)

 ただあの晩、ぼくはきみが必要じゃなかった
 これからももう必要じゃない
 成り行きを受け入れるつもりだった
 光のなかを前に進めたなら
 そうだね、服をたたんだほうがいいね    (“33 "GOD"”)

 ぼくはまだ立っている
 まだ立っている、祈りの言葉を必要としながら   (“666 ʇ”)

 たくさんありすぎて拾えない
 許すことがどういうことかよくわからない
 ぼくらはその混乱に火をつけた
 ぼくは港の裏を出ていける     (“8 (circle)”)

 散文的なのにときおり叙情性が抗いがたく漏れてくる言葉からわかるのは、『22、ア・ミリオン』の主題は信仰であるということだ。
 思い出してみよう。そのはじまりからボン・イヴェールの「良い冬」とは、そのまま孤独のことであった。世界から隔絶された場所で、それでも人間との関わりを求めてしまうひとりが名前を失うことで聴き手の内側の震えに共振することだった。本作においてはこれまでよりも言葉の抽象度と複雑さはさらに上がっているが、しかし歌を通して感情を吐き出している男はたしかに深く傷つき、混乱し、苦悩している。そして何らかの信仰を求めながら、それを見つけることができない。神を信じていないというヴァーノンのブラック・ミュージック、とりわけ黒人霊歌に対する強い関心と羨望はおそらくここに理由がある。スピリチュアルな領域で信じるものを持てない人間が、それでも心の深いところで何かを信じたいと願ってしまう歌――それこそがボン・イヴェールだ。だから彼は自分の名前を名乗らない。ただ、誰の心にもある「冬」として、それをゆっくりと温めるための歌を大勢で演奏するのである。その神聖な響きは、そのじつとても切実な願いだ。
 たとえばビヨンセ、ブラッド・オレンジ、そしてフランク・オーシャン――今年のブラック・ポップ・ミュージックを代表するいくつかのアルバムでは、大勢の人間が参加することによって緊急的な共同体が生み出されているように思える。なぜならば、彼らはいまたしかに団結せねばならない現実と社会に直面しているからだ。ヴァーノンのようなよく教育された白人の青年はそのような事態に追いこまれているとは言えないかもしれないが、しかし、いまボン・イヴェールという共同体もたしかに愛と相互理解を希求し、実践しようとしている。その音楽にははっきりと理想主義がある。彼は自分と同じように孤独な人間がたくさんいて、そしてその痛みゆえにひとつの場所に集まるということを「信じている」のだろう。そこではたくさんのものが衝突し合いながら、そして感情によって融和しようとしている。中心に立つ男の声は、切なさを纏いながらその芯を失うことはない。そして男はアルバムの終わりに、自らを痛めつけるものをも「受け入れる」と告げる。
 だから、『22、ア・ミリオン』もこれまでと同じように「difficult」な作品などではない。かつて雪が解けるのを静かに待ち続けたように――ボン・イヴェールとは、冷えた想いをその熱で溶かそうとする、誠実で勇敢な願いについての歌である。

with Derrick May & Francesco Tristano - ele-king

 この取材は、10月7日におこなわれている。つまり、大統領選のおよそ1カ月前。なんで、そのときにこの記事をアップしなかったんだよ〜と言うのはもっともな意見である。
 いや、アップしたかった。本当に! しかし訳あってアップできなかったのであるが、なにはともあれ、ぼくはトランプが勝利したとき、というか投票結果で最後にミシガン州が残っていたとき、デリック・メイの憂いを思い出していた。彼は、アメリカに広がるエクストリームな感情について知っていたのである。以下のインタヴューは、名目上は、〈トランスマット〉からリリースされたフランチェスコ・トリスターノの新作『サーフェイス・テンション』の取材で、本作によってデリック・メイは20年ぶりにスタジオに入ったらしい。20年前と言えば1996年だが、それってなんの作品だったんだろう、あ、訊くのを忘れた。
 忘れたというより、このときはそれ以上にデリックに訊かねばならないことが多く、そして、読んでいただければわかるように、ひじょうにショッキングが事実を彼は述べている。トランプのことじゃない。ダンス・カルチャーも、いまとなっては娯楽産業であるから、リバタリアンが身近にいても驚くほどのことではないのかもしれない。しかしよりによって……。(僕がここで何を言いたいか、各自探索すれば面白い事実を知るだろう)


Francesco Tristano
Surface Tension

Transmat/U/M/A/A Inc.

HouseTechno

Amazon

 気を取り直そう。ファランチェスコ・トリスターノの『サーフェス・テンション』がリリースされた。坂本龍一の“戦場のメリー・クリスマス”のフレーズからはじまるこのアルバムは、デリック・メイが参加しているのでぼくは聴いたわけだが、聴いて良かったと思った。オリジナル収録曲の8曲あるうちの4曲に参加し、ボーナストラックの1曲ではライヴ演奏に参加したときの模様が披露されている。栄えある〈トランスマット〉レーベルの30周年イヤーの最後を飾るのは、このコラボレーションなのだ。

うん、プリンスも死んだし……悪い年だな……悪い年だ。

デリック、いったいアメリカで何が起きているんだよ!?

デリック:うん、プリンスも死んだし……悪い年だな……悪い年だ。

日本でニュースを見ていても、ブラック・ピープルのコミュニティにただならぬことが起きているのがわかるよ。

デリック:それは、おまえが繫がっているからね。俺が311のとき日本に来たときみたいなものだ。(放射能が漏れているから)みんな「来るな」と言ったけど、俺は、来た。ヒロも20年の仲間だし、おまえも、ヨウコも……日本にいる俺の女たち全員も(笑)。来るしかなかった。

それほど酷いと。しかし、いまのアメリカを覆っている暗さは、さらにまた、より政治的なことだけど。

デリック:うん、とくにドナルド・トランプが大統領選挙に参加してるから。アメリカで国内戦争になってもおかしくないと思うよ、マジで。本当にヤバい時代だ。デトロイトもだいぶ変わった。デトロイト市が倒産したとかみんな貧乏だとか、そういうニュースとかドキュメンタリーのせいで、デトロイトに"悪い要素"の人たちを引きよせたと思う。金持ちで悪い人たち。わかるだろ。(いわゆるニュー・リッチと呼ばれる)あいつらが全部買い上げた。みんなを家から追い出して。だからいまデトロイトに来たら、全然違うよ。

デトロイトが再開発の対象になるなんて、よほどの……、たとえばメジャーなポップ・ミュージックを聴いても、ビヨンセやケンドリック・ラマーとかね……政治色が強まっている。かたや“Black Lives Matter" というムーヴメントもあるし……

デリック:(遮るように)ちょっと、待った待った。おまえが何を訊きたいのかもうわかるよ。ムーヴメント・フェスティヴァルをやってる奴らとか、そういう考え方から完全にかけ離れてるしね。全然わかってないよ。ウルトラ共和党、コンサヴァーティヴ、右翼のやつら。

え、Movementって……あのフェスティヴァルの?

デリック:そう、オーガナイザーたち。俺は(ネーミング・ライツを)売ったからね。俺が売ったやつ、トランプのサポーターだよ。

ホント?

デリック:Yes....

Unbelievable.

デリック:Unbelievable…

しかし、デトロイトみたいな、白人ではない人たちが多い街でなぜトランプみたいな人が支持されるのか……まったくよくわからないんだけど。

デリック:なぜだかわかるか? 俺は思う……トランプを理解しないと……自分から何か大事なものが取られたと思って怒ってる人たちに、彼はアピールしてるから……

Black Lives Matterに関してはどういうふうに思っているのよ?

デリック:俺は、それほど多くは知らないんだ。俺が知っていることは、そうだな、いまより必要なのは、よりもっと、さらにもっと、all peopleに大事なものじゃないのかな、black peopleだけじゃなく。

そうか。

デリック:いまは話さなきゃならないことがたくさんあるな。

重要なことだね。

デリック:俺にとって“Black Lives"とは、俺の娘、俺の母、俺の家族だ。

まさか、ブラック・パンサーやあの時代のようなことが起きるなんて、信じられなかった。ちょっと本当に……

デリック:ああ、なんて恐ろしい時代だろう。たとえば中東の人たちは、これが彼らにも影響する問題だと理解してないんじゃないかと思うよ。(実際はそうじゃないけど)何か大切なものを取られていると思い込んでるたくさんのアメリカの白人の怒りを理解してないんだよね。

この話、別の機会にしよう。あまり時間がないし、今日は、フランチェスコ・トリスターノの新作の話をしなくちゃね。良いアルバムだし、そう、1曲目と2曲目が本当にすごい……すばらしい。しかも2曲目のリズムを聴いたときに、デリック・メイの腕がまださびてないとわかって嬉しかったです。

デリック:どの曲のこと?

2曲目の"The Mentor"ね。

デリック:まぁ……ちょっと待ってくれよ。美味しいワインに、チル、いい場所で、夜遅くに、ストレスもなく、焦ることもなく、オーディエンスもいない……そして最高のプロデューサーが居るわけだ!

といってますが、フランチェスコさん、どうでしょう?

フランチェスコ:ほぼバルセロナの自分のスタジオで……それと一部デトロイトで。“サカモト”のピアノはパリで。一部のリズム・シーケンスはローマで。“Esotheric Thing”の鳥はモーリシャス島で。

いろんなところでじゃあ……

フランチェスコ:フィールド・レコーディングだ。

デリック:坂本(龍一)さんに“サカモト”を聴いて欲しいな。

“サカモト”、いい曲だよね、インプロヴィゼーションなっていくところが格好いいんだよね。デリックは参加してるの?

デリック:いやいや、他の曲だね。サカモトの曲は完全にフランチェスコだ。

フランチェスコ:じつはアルバムに入れる予定じゃなかったんだけど、デリックに曲を聞かせながら喋ってたら、「これ聴こうとしてるんだからちょっと静かにっ!」って怒られて。で、「これ〈トランスマット〉にもらえない?」と言われて。そもそもDeccaのコンピレーション用だったので、サブライセンスもする必要があったけど、最終的にはアルバムに入れたし、みんな知ってる曲だからポールポジション(トラック1)にするしかなかったね。

デリックからたくさん学んだし、デトロイトという町からも。マジで……みんな俺を受け入れてくれた気がした。──フランチェスコ

大好きだよ、おまえ! ──デリック

「養子」にしてくれたような……俺はただの白人ユーロ・トラッシュ野郎なのに(笑)。 ──フランチェスコ

でもおまえは白人じゃないよ(笑)。 ──デリック

デリックはフランチェスコのどんなところを評価しているんですか?

デリック:そりゃおまえ、何度も言うけど彼のプロ意識だ。クラシックの人生とエレクトロニック・ミュージックの人生のちょうど間をたどれること。クラシックのミュージシャンでは珍しいよ。

フランチェスコはよくぞ、デリックをスタジオに閉じ込めて録音させましたね。いったいどんな手を使ったんですか?

フランチェスコ:なんていうかその……『不思議の国のアリス』だよ、デリックを巻き込む方法は。キャンディーとかをシンセサイザーに入れ替えて、デリックが現れる前に全部機材を接続しておいて、しかも彼が気づかないようすでに録音も初めておいて……そうやってやるんだよ(笑)。

デリック:ハッハッハ……俺をハメやがったな、このクソ野郎め!

フランチェスコ:「まだ録音するなよ!」と言われても「大丈夫、気にしないで!」と言いながら、でも既に録音してるという(笑)。

デリック:おまえ、あのとき俺を騙したのか! 騙したんだな!?

え、デリックはこれがリリースされるということを知らないで一緒にセッションしていたってわけ?

デリック:イヤイヤイヤイヤ、彼が言ってるのは……俺が最初に少し練習しようとしてたことを知ってて……俺はまだ録音しはじめてないと思ってたのに……でも録音してたんだ。俺もそれは結局わかったし、彼も教えてくれたからその時点ではサプライズじゃなかったけど。

フランチェスコ:でも、君は……

デリック:うん、ちょっと(録音のために)遊んでた……常に。

さっき言った2曲目("The Mentor")なんかは、クレジットを見なくてもデリック・メイだってわかるんだけど、初期のビートを思い出したな。あれどうやって作ったの? 機材は?

デリック:これはフランチェスコを評価しないと。だって……スタジオの写真はあるか? 

フランチェスコ:"The Mentor"のリズム・シーケンスには、生ドラムのサンプルを使った。もちろん少しプロデュースされてるけど、キックと一部のハイハット以外は生のドラムサウンドだ。で……やっぱり、デリックがいつも言うように、全部ミックス次第なんだよね。レベルの割合と音楽がどう噛み合うか。音楽といえば……メロディとかベースとか。その音楽の大切な部分をどうするかわからなくなってしまうから、やはりリズムはあまり出すぎないようにしないと。

デリック:非常に良いコラボレーションだったよ。彼は俺の考えをよく理解してくれ、それを評価してくれながらも、自分の視点、自分の考え方もうまく表現した。これはみんなに理解してほしい……これは「おまえ(フランチェスコ)のプロジェクト」だということ。それに俺はインバイトされたんだということを。

フランチェスコ:でも、僕もあなたのレーベルにインバイトされたんですよ。それをお返しできるのは光栄ですよ

デリック:いや、これはおまえのプロジェクトだよ!

フランチェスコ:いや……

デリック:おまえのプロジェクト!

フランチェスコは〈トランスマット〉のことをどう思っているの? またデリック・メイというDJについてもコメントして欲しいですね。

デリック:いい質問だな。

フランチェスコ:(笑)

デリック:ほら、おまえの質問が彼にプレッシャー与えてるぜ(笑)。

フランチェスコ:〈トランスマット〉といえば、僕にとって伝説のレーベルだし、デトロイトのサウンドを生み出した唯一のレーベルだと思う。もちろんメトロプレックスとかそのあとプラネットEとかもあるけど……でもやっぱり〈トランスマット〉なんだよ。しかも僕がアナログを買いはじめた当時、デトロイト・テクノにしか興味がなかった。たくさん持ってるよ……〈トランスマット〉のバックカタログをぜんぶ試聴した……たくさん持ってるんだ。
 それから、デリックはナンバーワンのDJだけど、この作品ではDJしていない。僕は彼を快適な場所から引っ張り出したかったんだ。とくにライヴに関しては。彼にDJしてもらいながら僕がその上からプレイすることもできたけど、それはやりたくなかった。デリックに何か違うことをして欲しかった。彼はもうずっとDJしてるし、誰よりもそれは上手……これからはライヴに挑戦するタイミングだ(笑)!

デリック:進化していくのもね。

もう、飽きてきたろうから最後の質問にするね。この作品にはメッセージがありますか?

フランチェスコ:まず、このアルバムは別々として考えるのではなく、全部連動した、流れ的な作品として考えて欲しいんだ。それからタイトルのSurface Tension(表面張力)とは、生化学、地質学における現象だ。液体の表面にある分子を引き寄せる力のこと。だから水の上を歩ける虫もいるよね。海とか、水じゃなくても、音も……その表面は非常にタイトで綺麗に磨かれたものだ。もちろん好きに解釈してもらっても構わないけど。だがその下には巨大な海がある。それがデリックが別の場所でも話していた、デトロイトの歴史、音楽の歴史、シンセの歴史であり、それが全部「海」でその上に存在する表面張力が僕たちを引き寄せてコラボさせてくれた。僕はこの考えがとても気に入っているんだ。それで僕が〈トランスマット〉からアルバムをリリースすることになるとは……ていうか、トランズマットからフルアルバムをリリースしたことはあるのかな?

デリック:うん、アリル・ブリカとか、『The Art of Vengeance』、Microworld……でもこれは全部日本独自規格で、シスコとやったものだけど。

フランチェスコ:だから、〈トランスマット〉で出すアルバムは特別だよ

デリック:数少ないよ。そこは気をつけてる。

フランチェスコ:本当に少数だよね。僕にはすごく大事。

デリック:俺たちにも大事だよ

フランチェスコ:本当に光栄だよ。しかも イノヴェーターに参加してもらうなんて……ある意味オマージュでもあるね。で、僕がそれのお返しをしたというか。

デリック:Wow、ありがとう。

フランチェスコ:デリックからたくさん学んだし、デトロイトという町からも。マジで……みんな俺を受け入れてくれた気がした。

デリック:大好きだよ、おまえ!

フランチェスコ:「養子」にしてくれたような……俺はただの白人ユーロ・トラッシュ野郎なのに(笑)。

デリック:でもおまえは白人じゃないよ(笑)。

フランチェスコ:でも、僕はデトロイトを感じる。だから〈トランスマット〉は……でかい存在だ。

デリック:ひとつだけ言いたいんだけど、今回のことはまた自分でも音楽作りにチャレンジしたいという気持ちのインスピレーション、モチベーションにもなったよ。それはフランチェスコのおかげだ。俺のオーケストラのコンセプト、それからフランチェスコとオーケストラの仕事をしたから、今回彼の作品にスタジオ参加することにもつながった。そしてそれを僕は受けた。
 俺は音楽をリリースするけど、1989年のデリック・メイにはなりたくない……前の自分になろうとしてるんじゃない。音楽的にどこか別のところに行きたいし、自分にチャレンジするのが大事だ。だから彼とこのプロジェクトに参加することにしたんだ。

フランチェスコ:光栄です。喜んで。

デリック:そう! (俺の)スイッチをオンにした!

フランチェスコ:残念ながら、みんな最近集中力がないからね。でもそう考えちゃダメだし、フェードアウトはしてはならない。

OK、ありがとう。


FRANCESCO TRISTANO P:ANORIG Feat. DERRICK MAY Live in Berlin

七尾旅人 - ele-king

 11月15日、自衛隊に「駆けつけ警護」の任務が付与された。11月20日、陸上自衛隊の先発隊が不安定な状況の続く南スーダンに向けて出発した。つまり、安全保障関連法が本格的に稼働しはじめたということである。そしてそれは、七尾旅人の映像作品『兵士A』に新たな意味が発生したということでもある。
 『兵士A』はそういう緊迫した日本の状況に問いを投げかけた、今年唯一の音楽/映像作品と言っていい。兵士Aとは誰なのか――観る者に否応なく強烈な印象を刻み込むこの映像作品は、この夏東京と広島で上映されひとつの映画作品としても話題になったが、このたび同作の全国上映が決定した。それとあわせて、七尾旅人4年ぶりの全国ツアーも開催される。
 彼は一体何を伝えようと/描こうとしているのか? 日本ではいま何が起こっているのか? 余計なことは言わない。あなた自身の目で確かめてほしい。

七尾旅人 "兵士Aくんの歌" (映像作品『兵士A』より)

Thomas Brinkmann - ele-king

 先日リリースされたアルバム『A 1000 Keys』はもうお聴きになりましたか? どうでしたか? 凄かったでしょう? ピアノという楽器をあんな風にミニマル~テクノの文脈に落とし込むことのできるアーティストを、僕は他に知りません。
 もはやベテランと言ってもいいトーマス・ブリンクマンですが、この冬、代官山のUNITにてライヴをおこないます。なんと5年ぶりの来日です。しかも、エクスペリメンタルなセットとフロア・オリエンテッドなセットの両方を披露してくれるそうです。となれば見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

Goldie × Lee Bannon - ele-king

 10月にコンゴ・ナッティとマーラを迎えて開催された「Drum & Bass Sessions」こと「DBS」の20周年記念パーティ。なんと、その続報が届けられました。2016年を締めくくる「DBS20TH」第2弾は、ドラムンベース/ジャングルの帝王ゴールディと、〈ニンジャ・チューン〉などからのリリースで知られるリー・バノンの夢の共演です(リー・バノンは今月Dedekind Cut名義で新作『$uccessor』をリリースしたばかり)。相変わらず豪華な面子でございます。12月17日(土)は代官山UNITにて、一夜限りの「THE DARK KNIGHT BEFORE CHRISTMAS!!!」を体験しましょう。

★GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)

"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年に4ヒーローの〈Reinforced〉からRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル〈Metalheadz〉を始動。95年に1stアルバム『TIMELESS』〈FFRR〉を発表、ドラムンベースの金字塔となる。98年の『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極めるが07年、RUFIGE KRU名義で『MALICE IN WONDERLAND』を発表、08年に自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』をデジタル・リリース。09年にはRUFIGE KRU名義の『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』を発表、またアートの分野でも個展を開催するなど、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続ける。12年、〈Metalheadz〉の通算100リリースにシングル「Freedom」を発表。13年には新曲を含む初のコンピレーション『THE ALCHEMIST: THE BEST OF 1992-2012』をCD3枚組でリリース。14年、〈Ministry of Sound〉からのヴィンテージMIXシリーズ『MASTERPIECE』を発表、ヘリテージ・オーケストラとのTIMELESS LIVEが好評を博す。16年、音楽とアートの功績を称えられ大英帝国勲章MBEを授与される。15年の「Broken Man」以降リリースはないが、フライング・ロータス、ブリアル、フォーテックらが参加した新作のリリースが待たれる!

★LEE BANNON aka DEDEKIND CUT (Ninja Tune, NON WORLDWIDE, USA)

カリフォルニア州サクラメント出身、現在はNY在住のビートメイカー/プロデューサー。映画からインスピレーションを得ることも多く、フィールド・レコーディングを多用した自由なプロダクションが賞賛を浴びた1stアルバム『FANTASTIC PLASTIC』を2012年にFLYING LOTUSの作品で名高い〈Plug Research〉からリリース。またブルックリンの若手ヒップホップ・クルー、PRO ERAとの交流を経て、代表格のJOEY BADA$$のプロダクションや彼らのツアーDJとして注目を集める。13年にはダーク&エクスペリメンタルな『CALIGULA THEME MUSIC 2.7.5』、『NEVER/MIND/THE/DARKNESS/OF/IT...』の2作のデジタル・アルバムのリリースを経て〈Ninja Tune〉と契約、ダウンテンポの「Place/Crusher」を発表。14年、〈Ninja Tune〉からアルバム『ALTERNATE/ENDINGS』を発表、90'sジャングル/ドラム&ベースのヴァイブを独自のサイファイ音響&漆黒ビーツで表現し、『Rolling Stone』誌のBest Electronic and Dance Albumの15位となる。15年には前作とは趣を異にするドープなドローン/アンビエント色の濃厚な怪作『PATTERN OF EXCEL』をリリース。その後、突然改名を宣言し、新たにDEDEKIND CUTの名前でEP「Thot eNhançer」をセルフ・リリース。LEE BANNONと決別したDEDEKIND CUTはエクスペリメンタルなノイズ、ニューエイジ、アンビエントの現代的なアプローチを標榜し、16年に「LAST」、「American Zen」を発表、11月には注目のアルバム『$UCCESSOR』がリリースされる。

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