「Ord」と一致するもの

interview with Cornelius - ele-king

 『Mellow Waves』は、決してトレンディなサウンドというわけではないし、シーンを調査して作ったというよりは独自のアプローチを持っていて、日本のポップスとしては珍しく、言うなればここ数年のジェイムス・ブレイクからザ・XX、フランク・オーシャンらをはじめとするメランコリーな潮流にリンクするアルバムだった。歌の主題はバラ色の生活でもなければ太陽でもなく、雨や夜と共鳴する内省的なものばかりで、しかし音のほうは新鮮だった。時代感覚に優れているし、たとえばエイフェックス・ツインや坂本龍一と同じステージに出ていっても違和感のない日本のロック・ミュージシャンは、小山田圭吾のほかに誰がいるのだろう。控え目に言ってもこれはすごいことだし、日本のことに若い音楽の多くが政治と同じように内向きになっている現状を考えれば、どんなに歳をとっても尖っていて、土着性に対してもドライでいられるコーネリアスは、いまでも希有な存在だと言える。
 この度リリースされる『Ripple Waves』は、『Mellow Waves』と同じ時期に発表されたアルバム未収録曲とリミックス・ヴァージョンをひとつにまとめた編集盤で、いわば企画盤。当然ながら小山田圭吾はこの場で、彼らしい悪戯っぽさと音楽との戯れとを見せ、楽しみの部分を膨らませている。つまりちょっとうれしくなるCDだ。言うまでもなくうれしくなることは、良いことだ。たとえちょっとでも。
 だいたい1枚のアルバムにおいて、ドレイクのカヴァーとフェルト(※80年代前半のチェリー・レッドを代表するバンドのひとつで、暗く切なく叙情的なギター・サウンドとヴォーカルを特徴とする)のリミックスを並列させるという大胆な発想は、面白い。細分化され、ともすれば趣味の差異化を競い合うだけになったシーンを見透かすようで、あるいはまた、“夢の奥で”のようなコーネリアスからのヴェイパーウェイヴへの回答と呼べるような曲もあるが、これもアルバムの一部としてハマっている。

 フェルトは別格(というか特別枠)として、リミキサーのラインアップからは彼なりの“いま”が見える。UKジャズを代表するレーベルのひとつ、〈22a〉で活躍するレジナルド・オマス・メイモードIV、NYのインディ・ロック・バンド、ビーチ・フォシルス、メルボルンのソウル/ファンク・バンド、ハイエイタス・カイヨーテ、先述したフェルトのローレンス、そして細野晴臣と坂本龍一という巨匠ふたり。なかでも坂本龍一によるアンビエント・ミックスは、『Mellow Waves』というプロジェクトの最後を飾るのに相応しく、これがまた……、まったく素晴らしい切なさと美しさを携えている。
 こうした企画盤の多くはコア・ファンを対象にしたものなのだろうけれど、『Ripple Waves』はそれだけで片付けてしまうにはもったいない、『Mellow Waves』とは別の輝きをもっているわけです。ひょっとして、三田格に言わせれば食品まつりがいないじゃないかとなるのだろうけれど、まあいいじゃないですか、それでもここにはコーネリアスと一緒にドレイクとヴェイパーウェイヴと坂本龍一とフェルトがいる。こんなイカれた企画盤はそうそうあるもんじゃない。E王(推薦盤)でしょう。

『Mellow Waves』はひとつ自分で全部世界観を作っているものなんですけど、これはそこから派生していったものなので、半分は自分であり、それぞれのアーティストの作品だから。というかほぼリミックスというよりも彼らの作品に近いような感じになっている。

『Mellow Waves』をリリースして、日本全国ツアーからはじまって、アメリカとヨーロッパに行って。ずっとライヴで忙しかったんじゃないですか?

小山田:うーん。まぁまぁですかね。今年はライヴをやっていましたね。

去年から。

小山田:まぁ去年から。

その前に『FANTASMA』のツアーをやっていますが、今回のライヴツアーとは全然違ったと思います。やっていてどうですか?

小山田:楽しかったですね。まだちょっとあるんだけど。

例えば、US、UK、あるいはソナー、ヨーロッパとか今回の新しいセットで行ってリアクションはどうでしたか?

小山田:うーん。良いんじゃないかな(笑)。いままでのなかでいちばん楽しいツアーですね。

どんな意味で楽しかったのですか?

小山田:いろいろかな。ちゃんとできるようになってきたというか。日本でやっている感じをそのまま持っていけている感じがします。行程的にもそこまで過酷じゃなく、お客さんもわりと皆喜んでくれて。

ロンドンにいる知り合いが、仲の良いレコード店から連絡があって、「今日コーネリアスが店に来た!」って言っていたそうです(笑)。

小山田:どこの? シスター・レイかな……。

どこかわからないけど2カ月くらい前かな。

小山田:ロンドンで結構レコード屋に行きましたね。

ちょうどそのときその人は、細野晴臣さんのライヴに坂本龍一さんと髙橋幸宏さん。小山田君たちが出たときのライヴを観ているんですよ。

小山田:YMOで出たとき。それはたまたまコーネリアスでヨーロッパに行っていて。細野さんがロンドンでやるというから、ロンドンに残って細野さんを観て帰ろうと思っていたら、じゃあやるよ! みたいな感じになって(笑)。

急遽でることになったんだ(笑)。

小山田:そうです(笑)。

UKはブリクストン?

小山田:ブリクストンのフィールド・デイというフェスです。

ヨーロッパはソナー?

小山田:うん。

(といいながら、電子タバコを吹かしている様子を見ながら)

小山田君、タバコを止められなくて苦労しているでしょ(笑)。

小山田:いや、いまこれがお気に入りで(笑)。

宇川(直宏)君がタバコを辞めたのを知ってる?

小山田:そうなんだ! そういえば吸っていなかったような気がする。でもウーロンハイをガボガボに飲んでいましたよ(笑)。

どこであったの? 

小山田:「AUDIO ARCHITECTURE展」という展覧会の関係でこの前ドミューンに出演したときに久しぶりに会いました。

ドミューンにでたんだ! すごいね。

小山田:いやぁすごいなぁ宇川君……。こっちでスイッチングしながら、こっちでツイートしながら、俺と喋って、ウーロンハイを飲むという(笑)。それでこっちで喋って参加したりしながら。4人分くらいのことをやっていたよ(笑)。全部がハイテンションで。

すごいよね(笑)。

小山田:聖徳太子みたいだった(笑)。

たしかに(笑)。このリミックスとか未発表曲とかは、『Mellow Waves』を録音したときに作った曲もあれば、それ以降に作った曲もあって、それをまとめたものだと思うんですけど、本当に良いアルバムだなと思いました。いちいち驚きがあったんだけど、ドレイクの“Passionfruit”のカヴァーに結構驚きました。こんなのいつのまにだしていたんだと思って。

小山田:これはSpotify Singlesという、Spotifyだけのシングルみたいなものがあって。

ニューヨークで録ったんでしょ?

小山田:そうです。Spotifyの会社のなかにスタジオがあって。

ドレイクの“Passionfruit”にしたのはなぜ? 好きだからなんだろうけど。

小山田:Spotify Singlesは、1曲オリジナルで1曲カヴァーみたいなことが決まっていて、最初全然違うのを言ったんですけど、そうしたら向こうのマネージャーやレーベルの人にそんな誰も知らないような曲をやっても意味ないとか言われて。それでえぇーと思ってこれを思いついて。逆に皆びっくりして良いかなと思いました。曲が好きだったんですけどね。

その場で決めたの?

小山田:その場ではなくて、行くちょっと前に決めてこれやりますよと一応言ってから。

小山田君がドレイクを聴いていることがすごく意外だった。

小山田:そんなにちゃんと聴いていないですけどね(笑)。でもこの曲は好きだった。

未発表曲が全部CD化されたのもすごくはまっているなと思いました。“夢の奥で”なんかもこうやって聴くと良い曲ですよね。

小山田:曲なのかなんかわからないけど……。

これはヴェイパーウェイヴを意識したわけではないでしょ?

小山田:うーん、ヴェイパーウェイヴに近いものはありますよね。これはうちのおじいちゃんがしゃべっているんですよ。ヴィデオもあって、MVもあるんですけど自分で作りました。子供の頃の自分がしゃべっている声がこれに入っているんですけど、実はその映像が残っていて、その映像を使って作りました。

これもすごく良かったな。アルバムの後半はリミックスが続くわけですが、このリミキサーの人選はもちろん小山田君が自分で選んだのですか? 

小山田:うん。そうです。

どうしてこの人選になったんですか?

小山田:最初はSpotifyとかそういうサブスクリプション用にリミックスを何曲か作りたいと言われて、何人か名前を出したんですよ。坂本さんと細野さんは『Mellow Waves』が出たときに『サウンド&レコーディング』のリミックスを付けるという企画でお願いしたやつです。ほかの人選に関しては、国とか世代とかジャンルとかがばらける感じで、自分が聴いてみたいと思う人という感じですかね。

フェルトのローレンス(笑)。これはいちばん笑いました(笑)。

小山田:これはねぇ、いちばんヤバイですね(笑)。

よくコンタクトが取れましたね。

小山田:コンタクトが取れるという話があって、ローレンスのマネージャーという人と連絡がつきました。高校性ぐらいからずっと大好きで、どういう人かというのも何となく知っていたし、相当な変わり者だという話も聞いていました。リミックスとかやったことが無いと思うのでどうゆうものがでてくるのかなぁっていう。

たくさんのニューウェイヴ・バンドというか、好きなものがたくさんいるなかでなぜフェルトだったの?

小山田:なんか……、好きなんですよね(笑)。興味があったんですよね。やってくれそうな感じもちょっとしたので。

フェルトを聴き直していたとかそういうことじゃなくて?

小山田:フェルトは常に聴いていますね。今年ちょうど再発したんですよね。それでまたちょっと気になって。

再発したこととかよくチェックしてるね。

小山田:チェックはしていますよ。ローレンスのことは気にしています常に(笑)。〈Heavenly〉というレーベルが作った『Lawrence of Belgravia』というローレンスの映画があるらしいんですよ。日本語訳は出ていないんだけど、ローレンスのドキュメンタリーみたいなやつで、それをすごく見てみたいなと思いますね。

ある種の伝説みたいな人になっているのかな?

小山田:そうじゃないのかなぁ。

孤高の人だもんね。

小山田:本当に孤高の人だし、フェルトの作品はフェルトというものとしてすごく完成されているし、相当いろんな人に影響を与えていると思うんだけど、評価がだいぶ低い。人としても音楽としても興味がある人ですよね。

『Mellow Waves』のテイストとフェルトというのは、たしかにあるなとは思ったんだよね。

小山田:ちょっとあるでしょ。

だから『FANTASMA』のときではないじゃん。

小山田:じゃないですね。なんか曇っていて悲しげみたいな感じはフェルトにすごくありますよね。

これは歌ったり演奏したりしたわけではないんだね。

小山田:声が入っているんですよね。コ〜ネ〜リア〜ス♪って入っていて、ぼくの名を呼ぶ声が入っている(笑)。自分は暴力温泉芸者とかを思い出したんだけどね。中原君のコラージュとかを思い出したんだけど。ああいうちょっとナンセンスなセンスみたいなものがあるなぁと思って。彼はミュージシャンではないというか、楽器を演奏したりということはあんまりしないから、どういうものになるのかなと思っていたけど、フェルトとかいまやっているゴーカート・モーツァルトとかともまた全然違う感じになっておもしろかった。

これはコーネリアスの昔からのファンからしてみたらいちばんうけるというか。

小山田:曲は置いといて。

この組み合わせはなるほどと思いましたよ。ぼくはビーチ・フォシルスを知らなかったんだけど、ニューヨークのインディ・バンド?

小山田:ブルックリンの若手インディ。

これは若い世代にひとつ託そうみたいな感じ?

小山田:うん(笑)。単純にビーチ・フォッシルズのアルバムが好きだったんです。いまどきの若いインディーのバンドをひとつ入れたいなと思って。いわゆるインディー・ロックっぽい感じでね。

レジナルド・オマスさんも意外だったね。ぼくもロンドンのこの辺の人たち、〈22a〉周辺の人たちの音がすごく好きで聴いています。

小山田:かっこいいですよね。この前ブリクストンのフィールド・デイというフェスでライヴがあって、近所だから行くと言ってきてくれて会いました。若い人でした。ヒップホップなんだけど、全然オラオラしている感じじゃない。プリンスとかスライとか、あとリズムが独特で好きなんですよ。

やっぱり聴いて?

小山田:うん。好きで聴いていて。

ハイエイタス・カイヨーテはメルボルンのバンドだよね? これも知らなかったな。

小山田:この人たちは結構話題になったよね。メジャーだし。

ヴィジュアルだけみると、ロータリー・コネクションみたいな感じだね(笑)。

小山田:たしかに(笑)。ロータリー・コネクションぽいね(笑)。音楽的にも近いかもね。ちょっとサイケデリックなソウル・ファンクみたいな感じで。めっちゃ演奏が上手くて、プレイやーとしても皆すごくて。ビートの解釈がすごく斬新。

これも聴いて好きだったからやろうという感じ?

小山田:うん。

最後は、巨匠ふたりのリミックスで見事に締められるわけですが、ぼくはこれで初めて聴いたんだよね。

小山田:本当にいろいろなメディアで発表していたから、ひとつにするとやっとちゃんと聴ける。

細野さんはベースを弾いているわけではない?

小山田:たぶん弾いてはいないと思うんだよね。

普通にリミックス?

小山田:うん。

坂本さんは『async』に入っていてもおかしくないくらいの曲になっていて。

小山田:うん。『async』の世界ですよね。

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アナログだけで出ているやつもあるし、Spotifyだけとか、YouTubeだけとか。それだけだとまとめて聴けないからこういう形にコンパイルしたものという感じで。

『Mellow Waves』は一枚の完成されたアルバムだから、ひとつの世界にまとまっていてすごく緊張感がある作品だけど、今回の『Ripple Waves』は基本的には『Mellow Waves』の兄弟アルバムみたいな感じなんだけど、逆に遊び心があって、良い意味で気楽に聴けるリラックスした作品かなという感じもしました。『Mellow Waves』とは対照的な明るいアルバムになっているでしょ? それがすごく良かったんですよ。小山田君自身は聴いてみてどうだった?

小山田:『Mellow Waves』はひとつ自分で全部世界観を作っているものなんですけど、これはそこから派生していったものなので、半分は自分であり、それぞれのアーティストの作品だから。というかほぼリミックスというよりも彼らの作品に近いような感じになっている。

特に後半はね。この新曲はこのために録ったの?

小山田:このためというか、このあとツアーがあるんですけど、ツアーで新曲を一曲やりたいなと思っていて、ツアーでやる曲として作りました。これで聴くとなんだかよく分からないと思うんだけど(笑)。

“Audio Check Music”って何の企画だっけ?

小山田:テクニクスのターンテーブルのための企画を発展させた曲で、オーディオをチェックするため用の曲。言うとおりにしていくとステレオの調整ができるという。

これを1曲目持ってくるところが良いよね。コーネリアスらしい遊び心からはじまるという。

小山田:これは1曲目しかないですよ(笑)。

たしかに(笑)。しかし、贅沢なオーディオ・チェックCDだよね。

小山田:音楽としても聴けるからね。

このなかで小山田君が良く聴く曲は? 好きな曲は? わりと客観的に聴けるでしょ?

小山田:そうですね。なんでしょうね。みんな好きですけどね。ビーチ・フォッシルズの曲は好きですね。みんな好きです。ハイエイタスも良いし。

そうだね。個性がすごいそれぞれでているよね。

小山田:自分の曲を聴いている気がしないですね(笑)。

ドレイクは?

小山田:ドレイクは、これはまぁ……。スタジオでせーので録音しなくちゃならなかったので、さらっとやった感じですね(笑)。

そうなんだ。でもコーネリアス・サウンドにちゃんとしているもんね。R&Bみたいなものも聴くの?

小山田:ちょいちょい。

全体的に最近気になった音とかある?

小山田:それ毎回聞かれるけど、毎回同じものを答えている。クルアンビンっていう人知っている? テキサスのバンドで、3人組でタイの音楽とかが好きとか言っていて、ほぼインストなんだけど。ドラムのやつが黒人でヒップホップのDJかなんかで、ギター・インストみたいな感じの。独特で。

ちょっとワールドっぽい、インドネシアとかタイとかそんな感じのやつ。あれ良いよね。

小山田:ビートの感じとかヒップホップが好きそうな感じで。頭の拍だけ抜いたり、すっごいセンスが良いなと思って。

あれが好きなんだ。

小山田:あれを良く聴いている。

ぼくも好きです。今年の頭くらいにでたやつね。

小山田:あとなんだろう、ちょいちょいあるけど。

これだけインターネットでいろいろなものが手に入るから、昔みたいにレコード屋とかになかなかいかなくなるじゃない。どういう所で新譜をチェックするの?

小山田:新譜はYouTubeとかSpotifyとかが多いですね。

YouTubeとかって?

小山田:YouTubeは動画を観る感じだけど。iTunesで買ったりもするし、CDもたまに買うし。

Spotifyとか新しいリスニング環境には慣れた?

小山田:うん。ガンガン使っています。

ガンガン使っている(笑)。あれに馴れる人と馴れない人がいるみたいだね。やっぱりCD、レコード時代を知っている世代だと。

小山田:いろいろあってめんどくさいけどね。Spotifyで聴いていて、買ってiTunesに取り込んで、Spotifyでは聴けないみたいな(笑)。アナログだけ持っているみたいなのとか。

Spotifyとかこんなに便利なもので、こんなにたくさん聴けるなんて。電車に乗っていてもこれさえあれば時間潰せるしって思うくらい聴いちゃうんだけど。でも家で聴くときはCDで聴きたいかなっていう。

小山田:え、盤で聴いている? CDをかけて聴いているんだ。それは結構珍しいんじゃない?

あとはアナログ盤。

小山田:アナログ盤ね。アナログ盤はたまに聴く。CDを盤で聴くことは無い。CDはリッピングしてパソコンで聴く。

えぇーそうなんだ。

小山田:まぁいろいろだね(笑)。

でも最近ついに若いDJで、CDで音楽を聴いたことがないという世代に会いましたよ。だから逆にUSBかアナログ盤。

小山田:アナログはまだ使うんだ。

逆にアナログは若い子たちが好きだから、むしろアナログを買う人たちって結構若い子たち。カマシ・ワシントンの8000円のアナログ盤を一生懸命買っているやつとかいるからね。

小山田:うちの息子もそうだ。レコードは俺より全然買う。

DJやるときはアナログ盤にまた戻ってきているんだよね。

小山田:うちの息子はたまにDJをやっているけどアナログだね。

そうでしょ。10代〜20代前半の人で最近は多いよね。逆にCDJの使い方が分からないというのが面白い。音楽の聴き方の選択肢がホントに増えたよね。

小山田:このアルバムがまさにそういう感じなんだよね。アナログだけで出ているやつもあるし、Spotifyだけとか、YouTubeだけとか。それだけだとまとめて聴けないからこういう形にコンパイルしたものという感じで。

じゃあこういう作業って、ひとつにまとめる意味でも重要だよね。

小山田:うん。これからそういうのにきっとなるよね。というか、もういまなっているのか。

そういう意味では、プラット・フォーム的なメディアとしてCDは全然役目があるでしょう。

小山田:CDというかアルバムという概念が、アイコン的なものがジャケットとしてあって、まとめられないとちゃんと聴けないというのはまだあるよね。

ドレイクのカヴァーとか、ぼくは知らなかったもんなぁ。ところで、今回のジャケットも『Mellow Waves』と同じ路線だね。

小山田:版画の中林(忠良)さんという僕の叔父さん。

『Mellow Waves』のジャケットは何とも言えない、何もない感じがあるのに対して、『Ripple Waves』のジャケットは人が複数いるじゃない。だからそれも今回のアルバムを象徴しているのかなって。

小山田:そんなイメージです。

コーネリアスはリミックスを自分もやったり、あるいはリミックスされたりということが多いわけだけど、小山田君のなかではリミックスをしてもらうという作業が好きだよね。

小山田:単純に自分が興味ある人に頼んでいるので、どんなのになるのかというのは楽しいですよね。

それは人選も含めて?

小山田:うん。

このあとこれだけツアーがあって、しばらくはコーネリアスとしての活動というのはライヴを中心にやっていく感じですか?

小山田:そうですね。ツアーが終わったら、日本でのツアーはやらないと思うんですけど。このあとアジアがあって、来年またアメリカとかヨーロッパとかちょっと行こうかなと思っていますけどね。

今年の『Mellow Waves』のツアーはこれが最後だ。

小山田:うん。1年くらいやってきたんで。

このセットでは最後だね。

小山田:去年やっていたセットでまだできていなかった曲とかもだいぶ増えるので、もうちょっと完成版みたいな感じになる。前はライヴハウスだったんだけど、今回はホールなので、中高年の人にやさしい(笑)。そういうところでしかできない演出とかもあると思う。

去年のリキッドルームでのライヴとはまた全然違うコーネリアスが。

小山田:やっぱりライトとか映像とかライヴハウスだと天井が低いから、あんまりわからないと思うんだよね。

じゃあ『Point』のころ並みのすごいライヴをやるの? あのときのライヴって映像とかシンクロして。

小山田:全然こっちのほうがちゃんとしていると思う。

え! あれよりもさらに進化している(笑)。ライヴを楽しみにして、『Ripple Waves』を聴くようにということですね。ありがとうございました。

小山田:ありがとうございました。

 

※『Ripple Waves』と同時に、『Mellow Waves』のアナログ盤もリリースされます。ダブルジャケットで、こちらはまたアートワークが見応えもある。

UK Afrobeats & UK Rap - ele-king

 イギリス独特のサウンド文化はこの20年以上でジャングル、ドラムンベース、ガラージ、グライムと進化・深化してきた。こうしたジャンルは常にジャマイカやアメリカの音楽の影響を受け、「ラップ」が挑戦的な音楽に受けて立ち音楽性を拡張してきたといえるだろう。そして、UKのサウンド・カルチャーの新たな1ページに「UKアフロビーツ」や「UKラップ」と呼ばれるラップ・ミュージックがある。UKアフロビーツはユーチューブ等ストリーミング・サービスで広く聴かれ、ポップ・ミュージックとして認知されている。このシーンのアンダーグラウンドな盛り上がりを知りたければ、2017年に〈MOVES Recordings〉からリリースされた『MOVES : The Sound of UK Afrobeats』(Spotify)は最適な1枚だ。

 UKラップは「トラップ」や「ドリル」といったUSのトレンドのラップ・ミュージックの影響を強くうけ、若者に人気のジャンルだ。UKアフロビーツは、BPM 90~110前後のリズム、アフリカの音楽やダンスホール・レゲエを取り入れたビート・パターンを基調としている。今のUKラップ・ミュージックが音楽的に面白いのは、ラップ・ミュージックのプロデューサーがUKサウンド、USヒップホップ、レゲエ、アフリカ音楽と多様な音楽をマッシュアップし、新たなUKサウンドを作り上げていることだ。

 ラッパーに比べるとスポットライトが当たることは少ないが、プロデューサーからお気に入りのサウンドを探すのもなかなか面白い。


■ JAE5 (w/ J Hus, NSG...)

 東ロンドンのプロデューサー、ジェーファイヴ(JAE5)は、2015年に出所したばかりのラッパー J・ハス(J Hus)にビートを提供し、J・ハスのアルバム『Common Sense』(Spotify)をフル・プロデュースしたことで一気に知られるようになった。

J Hus - Did You See

 マリンバやギターなど、生楽器の音の重ね方や差し引きは素晴らしく、J・ハスのギャングスタ・ラップをポップに彩っている。ジェーファイヴは昔からダブステップにのめり込んでいたという。音はどちらかといえばヒップホップやダンスホール寄りだが、彼のビートの精緻な組み方は彼が“昔ハマっていた”というダブステップにもどこか通じている部分がある。

Jae5 - Against The Clock
https://www.youtube.com/watch?v=uNdQYMmeBpg
※ジェーファイヴが10分でビートを作り上げる、英メディアFACTの番組。


■ Nyge (w/ Section Boyz, AJ Tracey, Lancey Foux...)

 セクション・ボーイズのヒット曲“Lock Arff”のプロデュースで一躍知られるようになったナイジ(Nyge)は、エージェー・トレーシー(AJ Tracey)やランシー・フォックス(Lancey Foux)といった気鋭のラッパーのプロデュースで名を馳せてきた。

Section Boyz - Lock Arff

AJ Tracey - Butterflies (ft. Not3s)

 浮遊感のあるパッドとシャープなドラムはナイジのプロダクションの持ち味になっていて、彼がプロデュースした Renz “Flexing”は2017年に〈XL Recordings〉からリリースされた『NEW GEN』(Spotify)にも収録されている。

Nyge : Studio Sessions Ep 1


■ God Colony (w/ Flohio, Kojey Radical...)

 Wikipediaによれば、ゴッド・コロニー(God Colony)はロンドンを拠点に活動する2人組のデュオとのことだが、あまり情報がない。それでも彼らのことが気になるのは、彼らのプロダクションは1曲に色々なアイディアが詰まっていて面白いからだ。UK Funky や Gqom のサウンドを昇華したクラブ・トラックをロンドンのMC・フロヒオ(Flohio)に提供したかと思えば、コージェイ・ラディカル(Kojey Radical)にはエクスペリメンタルなR&Bを提供するなど、作風の幅も広い。

GOD COLONY "SE16" feat. FLOHIO

God Colony - Howling feat Kojey Radical & Ebi Pamere


Kelly Moran - ele-king

 いやあ、これはサプライズでしたね。これまで5枚の作品を発表しているマルチインストゥルメンタリストのケリー・モーランは、OPNが新作『Age Of』のリリースにともなって開催しているショウ「M.Y.R.I.A.D.」のバンドに、キイボーディストとして抜擢されたことで注目を集めましたが(ニューヨーク公演ロンドン公演にも参加、そしてもちろん本日の東京公演にも出演します)、去る9月6日に突如〈Warp〉との契約を公表、11月2日に同レーベルよりフルレングスをリリースします。先行公開された“Helix (Edit)”を聴くと、OPNとはまた異なるスタイルで感情を煽ってくる感じで(『Drukqs』+ドローン?)、アルバムへの期待が高まります。今後要注目のアーティストですよ。


KELLY MORAN

いよいよ今日に迫った Oneohtrix Point Never の来日公演 M.Y.R.I.A.D. でもバンド・メンバーとして参加する大注目のケリー・モーランが〈WARP〉からはデビュー・アルバムとなる『Ultraviolet』のリリースをアナウンス! アルバムより“Helix (Edit)”を先行解禁!

作曲家、プロデューサー、キーボーディスト、そしてマルチプレイヤーでもあるケリー・モーラン。いよいよ今日に迫った Oneohtrix Point Never の来日公演でもバンド・メンバーとして参加をしている彼女が、〈WARP〉からは初めてとなるアルバム『Ultraviolet』を11/2にリリース! 先行解禁曲として“Helix (Edit)”が公開!

「Helix (Edit)」
https://www.youtube.com/watch?v=JHLJMlTzTMQ

ニューヨークで行われたダンス・パフォーマンスとのコラボレーションと、長年ジョン・ケージのコラボレーターを務めたマーガレット・レン・タンに向けた作曲を行ったことがきっかけで、注目を集めたケリー・モーラン。それはちょうど〈Telegraph Harp〉からの前作、『Bloodroot』が2017年にリリースされて注目を集め始めた時だった。

『Bloodroot』は革新的なピアノ使いとケリー・モーラン専用に作られたエレクトロニック・アコースティックな楽器、そして彼女がインスピレーションを感じた多様な音楽のスタイルが詰め込まれた作品だ。

その多様な音楽のスタイルの影響はローリング・ストーン誌のエクスペリメンタル、ニューヨーク・タイムス誌のクラシック、そしてニューヨーク・オブザーバー誌のメタル、と様々なジャンルのアルバム・オブ・ザ・イヤーのリストに選出されたことからも明らかだろう。そして彼女は2018年に Oneohtrix Point Never の M.Y.R.I.A.D. ツアーでのアンサンブルに参加し、世界の名門ベニューでのプレイを経験してきた。

今回、〈WARP〉からのデビュー・アルバムとなる『Ultraviolet』においても、彼女の豊富なインスピレーションの探求は続いている。

彼女は次のように感じたことを覚えていると語った。
「私は森の中でうずくまっていた。風邪や動物の音を聞いていて、全てが響きあって私を取り囲んでいた」。
「私は自分自身にこう問いかけてた。“どうやったらこんな風に感じる音楽を作れるんだろう。自然で、強いつながりを感じて、寄り添ってくるような音楽を”」。

『Ultraviolet』はジャズやドリームポップ、クラシックな構成、ブラックメタル、暗闇と光、様々な要素が一体となった神秘的なアルバムとなっている。「自分のアーティストとしての表現のプロセスを再検証することで、自分を自由にする事ができた」とモーランは語る。

ケリー・モーランの〈Warp〉からリリースされる『Ultraviolet』はCD、LP、デジタルの各フォーマットで11月2日に世界同時リリース。
iTunes Storeでアルバムを予約すると、“Helix (Edit)”が予約限定楽曲としてダウンロードできる。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Kelly Moran
title: Ultraviolet

release date: 2018.11.02 FRI ON SALE

iTunes: https://apple.co/2x4zmwy
Apple Music: https://apple.co/2CFgZUM
Spotify: https://spoti.fi/2x40LPd


ララージ来日直前企画 - ele-king

 どうも最近、現代文明からの離脱の機運が昂まりつつあるように見える。ふだんからよく書店に足を運ぶ方は、年々「縄文」コーナーが充実していっていることにお気づきだろう(たとえば『縄文ZINE』は書評でとりあげようかと思ったくらい、ユーモラスでおもしろい)。日本だけではない。今年の夏は、まさにいま流行の「アントロポセン」というタームを体現するかのように、世界じゅうで酷暑が猛威をふるったけれど、その影響でイギリスでは新石器時代の遺跡の残像が地上に浮かび上がってきてもいる。産業革命以降のハイテクノロジーの時代へと回帰してくる、文明以前的なものの兆し。エイフェックス新作のアートワークに暗示されたコーンウォール由来のぐるぐるモティーフはたぶんもっと近代的なものなんだろうけど、にしても、このとち狂った現代社会からの逃走の回路が次々と発現しているのは興味深い。それは、ロハス的なものだったりマインドフルネス的なものとはまた異なる逃走のあり方である。

 1943年にフィラデルフィアに生まれたララージことエドワード・ラリー・ゴードンは、幼い頃にいくつかの楽器を学び、ワシントンではハワード大学へ通う。その後ニューヨークで役者として活動していたが、70年代に東洋の神秘主義と出会い、改めて音楽の道を目指すことになる。彼の代名詞となるツィターを手に入れたのもその頃で、自ら改造を施しつつNYのストリートでパフォーマンスを重ねていく。1978年には本名名義で『Celestial Vibration』を発表(2010年に〈Soul Jazz〉傘下の〈Universal Sound〉からリイシュー)。そうしてワシントン・スクエア公園で演奏している際に、訪米していたブライアン・イーノと出会い大きな転機を迎えることになるわけだけれど、ゴードンのツィターの奏法は、ちょうど「オブスキュア」から「アンビエント」へとコンセプトを発展させていたイーノにとっても新しい試みに映ったに違いない。ララージ名義の最初のアルバム『Day Of Radiance』は、「アンビエント」シリーズの第3作として1980年に〈Editions EG〉からリリースされることとなった。
 タイトルどおりきらきらと瞬くそのツィターの音の連なりは、たしかにアンビエントの領域を拡張したと言えるだろうが、他方でそれはエキゾティックな趣を携えてもおり、采配次第では同年のジョン・ハッセル『Fourth World』とも接続しうるポテンシャルを秘めていたのではないだろうか。しかしララージはむしろ80年代のニューエイジ・ブームのなかでその評価を高めていくことになる。1984年には100枚限定のカセットテープ『Vision Songs』を発表し、自身の歌まで披露(今年初頭に〈Numero Group〉からリイシュー)。実質的なセカンド・アルバムとなる『Essence / Universe』は1987年に〈Audion〉からリリースされ(こちらは2013年に〈All Saints〉からリイシュー)、ニューエイジ要素が全面化した長尺ドローンが展開されている。

 90年代に入ると、おもにイーノとかかわりの深い〈All Saints〉をとおして、マイケル・ブルックをプロデューサーに迎えたアンビエント作『Flow Goes The Universe』(1992年)や、オーディオ・アクティヴとコラボしたダブ作『The Way Out Is The Way In』(1995年、日本盤はのちに〈ビート〉から)などをリリースする一方、ビル・ネルソン、ロジャー・イーノ、ケイト・ジョンらとともにチャンネル・ライト・ヴェッセルを結成、80年代的な音響を維持しつつポップな要素を取り入れた『Automatic』(1994年)と『Excellent Spirits』(1996年)の2枚のアルバムを残している。そこまではある意味で時代との接点を保っていたとも言えるが、1997年の『Cascade』ではそれを完全に振り切り、リラクセイションの極みへと到達(副題は「Healing Music」。ちなみに、その2年後には日本で坂本龍一の「energy flow」がヒーリング・ミュージックとして大ヒットしているけれど、それは単なる偶然なのか、はたまた世紀末の一現象なのか)。その後00年代にも作品を発表してはいるものの、グライムやダブステップの時代にあって、次第にその影は薄くなっていったのではないだろうか。
 ところが10年代に入ってその風向きが変わる。上述の作品を含め、さまざまなレーベルからララージのリイシューが相次ぎ、新作も発表、コラボレイションも活性化していく。注目すべきはそのコラボ相手とレーベルだろう。2011年には〈RVNG〉からブルーズ・コントロールとの実験的な共作『FRKWYS Vol. 8』がリリースされているが、2015年から16年にかけてはマシューデイヴィッドの〈Leaving〉から、80年代に録音されていた音源を発掘した『Unicorns In Paradise』『Om Namah Shivaya』が発売。2017年の新作『Sun Gong』『Bring On The Sun』や、今年出たそれらのリミックス集『Sun Transformations』ではカルロス・ニーニョやラス・Gなど、明確にLAビート・シーンとのコネクションが堅固になっていく。さらに昨年はブラジルの大御所サンバ歌手、エルザ・ソアーレスをリミックスと、老いてますます現役感が増していっている。

 そのような再起の動きのなかでもとりわけ重要なのは、2016年のサン・アロウとの共作『Professional Sunflow』だろう。当時のニューエイジ・ブームの後押しがありつつも、それとは一線を画した実験的サウンドを響かせる同作は、ララージが他方でマインドフルネス的な文脈と親和的でありながらも、そこには回収されえない実験主義を標榜していることをも示してくれたのだった。

 80年代のニューエイジ・ブームが新自由主義の猛威に対応していたのだとするならば、この10年代にふたたびそれが勃興しているのは、資本主義が当時以上に加速していることのあらわれである、と結論づけることも一応は可能なんだろうけど、でも90年代や00年代だって世の中は相当ひどかったわけで、そんなふうにすっきりと整理できるものではない。しかし、そういった世相の反映はありつつも、〈RVNG〉と接触したりLAビートの文脈で再評価されたりしている彼の姿や、あるいはサン・アロウとの刺戟的なコラボ作を聴いていると、少なくともそれが資本主義のヴァリエイションのひとつでしかないロハス的なものとはかけ離れていることがわかるし、彼の奏でるニューエイジには逃避という一言だけでは片付けられない種々の可能性が孕まれているような気もしてくる。そんなニューエイジの微妙な揺らぎを体現するララージは、きたる来日公演においていったいどんなパフォーマンスを披露してくれるのか。それを目撃するのが楽しみでしかたない。


Laraaji Japan Tour 2018

澄み渡る空、開かれる静域。巨匠 Brian Eno に見出され、近年のニューエイジ/アンビエントの再興により生ける伝説となったNYCのパーカッション奏者/電子音楽家 Laraaji (ララージ)待望の単独初来日ツアー。

9.13 thu WWW X Tokyo
9.15 sat WWW Tokyo
9.16 sun Nanko Sunset Hall Osaka
9.17 mon Metro Kyoto

テン年代初頭よりエレクトロニック・ミュージックの新潮流の一つとして拡張を続けるニューエイジ/アンビエントの権化とも言える、ミュージシャン、パーカッション奏者、“笑い瞑想”の施術者でもある Laraaji (ララージ)の東京は単独公演、全席座りで2回のロング・セットを披露、大阪、京都を巡る待望の単独初来日ツアーが決定。そのキャリアは70年代のストリート・パフォーマンスから始まり、Brian Eno に発見されアンビエント・シリーズへ参加以降、Harold Budd、Bill Laswell、John Cale、細野晴臣、Audio Active などとコラボレーションを果たし、近年のニューエイジの再興から発掘音源含む再発で再び注目を集め、後世に影響を与えたオリジネーターとして新世代の音楽家 Blues Control、Sun Araw、Seahawks とのコラボレーション作品、遂には新譜もリリース、各国でのツアーやフェスティバルに出演し、ワールドワイドに活動の幅を広げている。風のようにそよぎ、水のように流れる瑞々しいアルペジオや朗らかなドローン、土のようにほっこりとしたソウルフルなボーカルや温かなアナログ・シンセ、ドラム・マシーン、テープ・サンプリング、瞑想的なアンビエントから時にボーカルも織り交ぜたパーカッシヴなシンセ・ポップ、ヨガのワークショップまでも展開。風、水、空、土といった自然への回帰と神秘さえも感じさせる圧倒的な心地良さと静的空間、情報渦巻く現代のデジタル社会に“癒し”として呼び起こされる懐かしくも新しいサウンドとヴィジョン、ニューエイジの真髄が遂に本邦初公開を迎える。

ツアー詳細:https://www-shibuya.jp/feature/009311.php

■9/13木 東京 追加公演 at WWW X
Title: Balearic Park - Laraaji - *FLOOR LIVE
OPEN / START 19:00
ADV ¥3,300+1D / DOOR ¥3,800+1D / U23 ¥2,800+1D
Ticket Outlet: e+ / Lawson [L:71297] / PIA [P:127-579] / RA / WWW *8/22(水)一般発売
LIVE: Laraaji / 7FO [EM Records / RVNG Intl.] / UNIT aa (YoshidaDaikiti & KyuRi) / Chihei Hatakeyama [White Paddy Mountain]
DJ: Chee Shimizu [Organic Music / 17853 Records]
more info: https://www-shibuya.jp/schedule/009420.php

■9/15土 東京 単独公演 at Shibuya WWW
Title: Laraaji - Tokyo Premiere Shows -
1st set OPEN 16:00 / START 16:30
2nd set OPEN 19:00 / START 19:30
ADV ¥5,500+1D *各セット150席限定・全席座り / Limited to 150 seats for each set
Ticket Outlet: e+ / Lawson [L:73365] / PIA [P:125-858] / RA / WWW *8/1 (水) 一般発売
LIVE: Laraaji *solo long set
more info: https://www-shibuya.jp/schedule/009310.php

■9/16日 大阪 at Nanko Sunset Hall
Title: brane
OPEN 17:30 / START 18:00
ADV ¥4,800 / DOOR ¥5,500
Ticket Info: TBA
LIVE: Laraaji + more
Visual Installation: COSMIC LAB
info: https://www.newtone-records.com

■9/17月・祝 京都 at Metro
Title: Laraaji Japan Tour in Kyoto supported by 外/Meditations
OPEN 18:30 / START 19:30
ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000
Ticket Info: 公演日・お名前・枚数を(ticket@metro.ne.jp)までお送りください。
LIVE: Laraaji + more
more info: https://www.metro.ne.jp

https://laraaji.blogspot.com

Vainio & Vigroux - ele-king

 アーカイヴ音源からラスト・レコーディング、さらにはコラボレーション音源まで2017年4月13日に亡くなったミカ・ヴァイニオのリリースが相次いでいる。彼のアーティストとしての存在感は消えることなく増しているように思える。むろん、音源を聴いた結果、彼の不在も「痛感」してしまうわけだが……。

 まず1月に、カールステン・ニコライ主宰の〈ノートン〉からミカ・ヴァイニオ+池田亮司+アルヴァ・ノト『Live 2002』がリリースされた。2002年という電子音響/エレクトロニカ、最良の時代におけるレジェンドたちのライヴ音源を収録したアーカイヴ・アルバムである。
 続いてこの夏、モーグ社所有のスペース「モーグ・サウンド・ラボ UK」におけるモーグのアナログ・モジュラーシンセサイザー・セッションを収録するレーベル〈モーグ・レコーディング・ライブラリー〉のリリース作品として、ミカ・ヴァイニオのソロ・ラスト・レコーディング作品という『Lydspor One & Two』が発表された。アナログ・モジュラーシンセサイザー「システム55」を用いて制作されたというこのアルバムにはミカ・ヴァイニオらしいノイズと律動感覚が横溢しており、「電子音楽作曲家・ミカ・ヴァイニオ」の高いスキルを実感できる作品といえよう。ちなみに〈モーグ・レコーディング・ライブラリー〉は、パンソニックのアルバムをリリースしてきた〈ブラスト・ファースト・プチ〉のポール・スミスによって運営されており、クリス・ワトソンやシャルルマーニュ・パレスタインなどもラインナップされている。

 『Lydspor One & Two』とほぼ同時期にドイツ・ベルリンの〈コスモ・リズマティック〉からミカ・ヴァイニオ&フランク・ヴィグルーの『Ignis』もリリースされた。コラボレーション作品であっても全編に横溢するミカ・ヴァイニオ的な音響から、その電子音生成力を実感できる作品だ。
 むろんフランク・ヴィグルーも注目すべきフランスの即興演奏家・電子音楽家である。彼は00年代初頭からフランスの実験音楽レーベル〈D'Autres Cordes〉からアルバムなどをリリースし続けており、ミカ・ヴァイニオとは、2015年に〈コスモ・リズマティック〉から「鹿ジャケ」の『Peau Froide, Léger Soleil』を発表している。このフランク・ヴィグルー特有のエレクトロ・アコースティックなノイズと、ミカ・ヴァイニオ的なメタリックなノイズは思いのほか相性が良い。ソロ作以上にパンソニックを彷彿させるマシン・ドローン/ハード・ミニマル・ビートを基調とするインダストリアル・サウンドを全面的に展開していたのだ。マスタリングは、エイフェックス・ツインなどを手掛けるマット・コルトンが担当しており、サウンドのクオリティをさらに高いものとしている。

 新作『Ignis』もまたシネマティックなインダストリアル・ミュージックであった。ヴィグルーの『Rapport Sur Le Désordre』(2016)や『Barricades』(2017)に漂っている壮大なムードに近いのだが、そこにミカ・ヴァイニオの攻撃的なノイズ/ビートが交錯することで、聴き手を覚醒させるような暴風ノイズと爆音ビートが生まれている。ちなみにディストピアSFを思わせる印象的なアートワークは映像作家 Kurt D'Haeseleer の作品である。彼はヴィグルーのヴィデオも制作している。
 レーベルは本作を「込み合った複雑なレコードであり、大音質で鍛えられた音響彫刻のコレクション」、「スタジオ・セッションとライヴ・パフォーマンスを通じて表現された長年の創造的なプロセスの産物」とアナウンスしている。
 じじつ、ミニマルな電子音のループという意外な始まりを告げる“Brume”、透明な電子ドローンが麗しい“Ne te retourne pas”、電子ノイズと爆裂ビートが交錯するインダストリアル・ノイズの“Luxure”、ノイズから静寂へと変化を遂げる“Un peu après le soleil”、“Luceat lux”、“Feux”など、どのトラックも複雑で、強烈で、かつ精密な、まさに「音響彫刻」とでもいうべき出来栄えだ。
 ドローン作品の『Lydspor One & Two』やシネマティック・インダストリアルな『Ignis』というふたつのアルバムを連続して聴くと、アルヴィン・ルシエやポーリン・オリヴェロスなどの電子音楽家の系譜に連なるミカ・ヴァイニオという側面が改めて浮かび上がってくる。
 もともとIDMやエレクトロニカには現代音楽・電子音楽からの影響がみられるものだが、ミカの場合、アカデミックな領域からの研究などがおこなわれてもおかしくないほどに電子音楽作曲家としての個性と力量を感じさせる。ノイズ、ビート、持続、切断、反復、非連続。電子音のコンポジション……。今後、電子音楽作曲家としてのミカ・ヴァイニオという切り口での考察はさらに深まっていくのではないかと思いたい。

 いずれにせよミカ・ヴァイニオという異才が遺したサウンドは、これからも聴き継がれ、さまざまな側面で分析されていくだろう。そもそもミカ自身もまたインダスリアル・ミュージックの(異端的)継承者であった。90年代から00年代を電子ノイズと共に駆け抜けたエクスペリメンタル・ミュージックのレジェンドは、その肉体を消失してもなお現在進行形の影響と刺激を生み出し続けている。

”DBS 22ND x BUTTERZ 8TH” Birthday Bash!!! - ele-king

 最近都内で盛り上がっているパーティってなんだろうって訊くと、グライムやジャングルっていうんですよ。若い世代がそっちいってるんですって。若い連中は気が付いたら吸収するのが早いからね。とくにSWINDLEの人気はすごいっていうんですけど、まさに良いタイミングで来日することになりました。今年で22周年目を迎えるDBSは、UKのストリートの生のヴァイブがそのまま詰め込まれたかのようなレーベル、〈BUTTERZ〉との合同パーティです。
 SWINDLEをはじめ、レーベル主宰者のELIJAH & SKILLIAM、ベース・ミュージックの女王と呼ばれるFLAVA D、UKガラージのベテランののDJ QやグライムのトップDJとして活躍するROYAL-T……という豪華メンツに加えて、日本からもいま勢いに乗っている連中から成熟したベテランまでが集結。ダブル・クラッパーズもDBS初登場? いずれにせよ、これは熱い夜になること必至。

UNIT
SWINDLE
FLAVA D
DJ Q
ROYAL-T
ELIJAH & SKILLIAM
TQD

Host MC: ONJUICY
Vj: SO IN THE HOUSE

SALOON
ANDREW
DJ DON
DJ MIYU
DOUBLE CLAPPERZ
HALU
HARA (HYPERJUICE)
NATURAL VYBZ ft. MANISH-T
PART2STYLE SOUND
PRETTYBWOY
SHINTARO
TETSUJI TANAKA

Live Paint: THE SPILT INK

【会場】:東京: 代官山 UNIT & SALOON
【日時】:11/10 (土)open/start: 23:30
【料金】:前売: 3,000yen 当日: 3,500yen

【チケット】
▼PIA (0570-02-9999/P-code:128-077)
 https://t.pia.jp
▼ LAWSON (L-code:72435)
 https://l-tike.com
▼e+
 https://eplus.jp/sys/main.jsp
 ※(UNIT携帯サイトから購入できます)
▼RA
 https://jp.residentadvisor.net/events/1154526
▼iFLYER
 https://admin.iflyer.tv/apex/eticket/?id=306445
▼clubberia
 https://clubberia.com/ja/events/280981-DBS22ND-x-BUTTERZ8TH-Birthday-Bash/

▼下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)
▼渋谷/TECHNIQUE(5458-4143)
…………………………………………………………………………………………………
info.
▼UNIT
info. 03.5459.8630
UNIT >>> www.unit-tokyo.com
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO

※再入場不可/No re-entry
※20歳未満入場不可。要写真付身分証/Must be 20 or over with Photo ID to enter.

★SWINDLE
グライム/ダブステップ・シーンの若きマエストロ、SWINDLEは幼少からピアノ等を習得、レゲエ、ジャズ、ソウルから影響を受ける。16才でスタジオワークに着手し、インストのMIX CDを制作。07年にグライムMCをフィーチャーした『THE 140 MIXTAPE』がラジオDJから支持され、注目を集める。09年には自己のSwindle Productionsからインストアルバム『CURRICULUM VITAE』を発表。その後はPlanet Mu、Butterz等からUKG、グライム、ダブステップ、エレクトロニカ等を自在に行き交う個性的なトラックを連発、12年にはMALAのDeep Mediから"Do The Jazz"、"Forest Funk"を連発、ジャジー、ディープ&ファンキーなサウンドで評価を決定づける。13年のDeep Mediからのアルバム『LONG LIVE THE JAZZ』は話題を独占し、初来日も果たす。またフュージョン界の巨匠、LONNIE LISTON SMITHとの共演、自身のライヴパフォーマンスも大反響を呼ぶ。14年、GILLES PETERSONのレーベル、Brownswoodから発表されたシングル"Walter's Call"ではジャズ/ファンク/ダブベースの真骨頂を発揮。15年には過去2年間にツアーした世界各地に触発されたアルバム『PEACE,LOVE & MUSIC』をButterzから発表、新世代のブラック・ミュージックを提示する。そして17年にはブラジリアン、Pファンク~本家のドープなグライムまで、ボーダーレスなサウンドとデザインが描く一大絵巻『TRILOGY IN FUNK』をリリース。そして18年も新作のリリースが予定されている。"Mr.Music"と呼ぶべきSWINDLEの快進撃は止まらない!
https://www.youtube.com/watch?v=D1JxUYNw7fI

★FLAVA D
UKガラージ、グライムを始めとする現在のUKベースミュージックシーンの最重要プロデューサー/女王DJ FLAVA D。幼少からカシオキーボードで遊び、14才からレコード店で働き、16才から独学でプロデュースを開始。当時在住の英国南部ボーンマスでは地元の海賊放送Fire FMやUKガラージの大御所、DJ EZの『PURE GARAGE』を愛聴、NASやPETE ROCKにも傾倒した。09年以降、彼女の作ったリディムはWILEYを始め、多くのグライムMCに使用され、数々のコンピに名を残す。12年には重鎮DJ、SUR SPYROのPitch Controllerから自己名義初の"Strawberry EP"を発表、13年からは自身のBandcampから精力的なリリースを開始。やがてDJ EZがプレイした彼女の"Hold On"を聴いたELIJAがアプローチし、Butterzと契約。"Hold On/Home"のリリースを皮切りにROYAL-Tとのコラボ"On My Mind"、またROYAL-T、DJ Qとのトリオユニット、TQDによる"Day & Night"等のリリースで評価を高め、UKハウス、ガラージ、グライム、ベースライン等を自在に行き交うプロダクションと独創的なDJプレイで一気にブレイク。16年のMIX CD『FABRICLIVE88』を経て17年5月にTQDのデビューアルバム『UKG』をリリース、そして18年にはTQDでBBC Radio 1のレジデントDJに抜擢れた他、ロンドンの人気クラブ”XOYO”で13週に渡りレジデンシーを務める等、UKベースクイーンとして世界に君臨している。16年から3年連続の来日!

★DJ Q
2000年代前半にシェフィールドのクラブ"Nicheから胎動した"BASSLINE"は英国北部を中心にしたアンダーグラウンドな"ゲットー・ダンスミュージック"から現在、ベースミュージックの最前線として世界各地に広まっている。そんなベースライン界の中心的存在がDJ Qである。85年北部のハダースフィールドに生まれた彼は12歳でUKガラージシーンに参入、15歳で地元パーティーでプレイを始める。着実にスキルアップし、04年にはBBCラジオ 1Xtraに抜擢され、"UKG Mix Show"を開始、また第1作"Love Like This"を発表し、台頭するベースラインにフォーカスする。その後も数々のインディーレーベルからコンスタントにリリースを重ね、07年に自己のQ Recordingsから発表したMC BONESと共作曲"You Wot"は名門Ministry Of Soundのサブレーベルから再発され、08年にUK TOP50に入る大ヒットとなる。12年に8年間務めた1Xtraを勇退、制作は加速し、初のMIX CD『ENTERS THE UNKNOWN』、ダブプレート集大成『THE ARCHIVE』で飽くなき創造力を示し、2ステップ回帰の"Brandy & Coke"、ルーツレゲエの新解釈となる"Dibby Dibby Sound"がヒット。100作以上のプロデュースワークと平行してDJ活動も多忙を極め、17年の"All Night, All Week"と題するUKの9都市を巡るツアーはトータル50時間を超すロングセットとなる。そして18年1月、同ツアーのショーケースアルバム『ALL NIGHT』を発表、高揚するソウルフルなグルーヴで圧倒的なDJ Qの世界を創っている。そして満を持して『FABRICLIVE99』に登場、今ノリに乗る中、待望の初来日を果たす!

★ROYAL-T
次世代のグライム/UKガラージDJ、プロデューサーとして彗星のごとく現れ、トップに君臨するROYAL-T。90年サウサンプトンに生まれた彼はカレッジ時代、グライムにハマり、ELIJAH & SKILLIAMが主宰する"grime forum"の常連となる。ZINCの"138 Trek"、2ステップのOXIDE & NEUTRINO、そしてJME、SKEPTA、WILEYらグライムアクトの影響下、ビートメイクを続け、08年のデビュー作"The Royalistic EP"を経て09年の"1 Up"がELIJAHの助言でP MONEYのヴォーカルが乗リ10年に大ヒット、11年にはButterzから"Orangeade EP"をリリース、シーンに頭角を現す。またRinse FMで2時間のレギュラーを務め、12年にP MONEY、TERROR DANJAH、ROSKAらをフィーチャーした1st.アルバム『RINSE PRESENTS ROYAL-T』をRinse Recordingsから発表。その後も"I Know You Want Me"、FLAVA Dとのコラボレーション"On My Mind"、P MONEYをフィーチャーした"Shotta" 等々、UKガラージ、グライムのビッグチューンを連発、15年にはFLAVA D、DJ Qとのドリームチーム、TQDもスタートし、シングル"Day & Night"、"Only One / Ghosts"のリリースを経て17年3月、アルバム『ukg』を発表、まさにUKガラージの金字塔を打ち建てる。OUTLOOK FESTIVAL 2014 JAPAN LAUNCH PARTYでP MONEYと初来日、今年5月のVISIONでの公演に続く3度目の来日。

TQD(Royal-T, DJ Q, FlavaD) :
https://www.youtube.com/watch?v=bgawMsc4m6E

★ELIJAH & SKILLIAM
UK発祥グライムの新時代を牽引するレーベル/アーティストコレクティヴ、Butterzを主宰するELIJAH & SKILLIAM。東ロンドン出身の二人は05年、ハートフォードシャーの大学で出会いグライムで意気投合、学内のラジオやブログを始め、08年にグライムシーンの情報交換の場となる"grimeforum.com"を立ち上げる。また同年グライムDJとしてRinse FMでレギュラー番組を始め、知名度を確立。10年には自分達のレーベル、Butterzを設立しTERROR DANJAHの"Bipolar"でリリースを開始。11年Rinse RecordingsからELIJAH & SKILLIAM名義のMIX CD『RINSE:17』を発表、グライムの新時代を提示する。その後ButterzはROYAL-T、SWINDLE、CHAMPION等と契約、インストゥルメンタルグライムを全面に打ち出し、シーンに新風を吹き込む。その後ロンドンのトップヴェニュー"Fabric"のレギュラーを務め、14年には初来日、そしてトップDJの証となるMIX CD『FABRICLIVE 75』がリリースされる。その後も同時代にフォーカスしたMIX CD『GRIME2015』、『GRIME2016』、『GRIME2017』をButterzから発表、フィーチャリングのトップMC'Sは勿論、シーンの内外から絶大な支持とリスペクトを受けている。
https://www.youtube.com/watch?v=DyQpq128wO0


【大阪公演】
11.09(fri)
Swindle×Flava D
open 23:00
adv:\2500+1drink door:\3000+1drink
at
Circus-Osaka
https://circus-osaka.com/event/swindlexflava-d/

info.
Circus-Osaka
https://circus-osaka.com/

食品まつりa.k.a foodman - ele-king

 毎週金曜、テレビ朝日の『dele』を楽しみにしていたのに早くも来週で終わってしまう(第2話でいきなりコムアイが死にましたね)。「いじめ」を扱った第6話は(以下、ネタバレ)ブルー・ホエールやモモといった自殺サイトの問題もストーリーの背景に織り込んであって、かなり見応えがあった。菅田将暉演じる真柴祐太郎が『そこのみにて光り輝く』の大城拓児を彷彿とさせるのも良かった。
『dele』はしかし、放送時間が一定せず、時によってはフジテレビ系『脱力タイムズ』と被ってしまうのが難であった(録画すればいいんだけどね)。『脱力タイムズ』はいま、日本で一番面白いTVのお笑いコンテンツではなかろうか。報道番組と称してコメンテイターがあれこれと解説を垂れ流すものの、どれも内容はズレていて、テーマに沿って番組が進んだことはない。あるいは、コンプライアンスを重視してTVのお約束ごとに片端から注釈を入れ、自然な進行をズタズタにしてしまう要するによくある演出方法を逆手にとって、制度化してしまったTV番組を解体しつつ別次元で成立させているのである。さらには番組内で行われる告知を番組全体の構造に反映させ、告知そのものをエンターテインメント化してしまうという荒技もやってのけていた(少し古いけれどサンドウィッチマンをトランスジェンダーと想定して無茶振りしまくった『君の名は』の回は芸術的な完成度であった)。なんというか、視聴率三冠王と言われる日本テレビが人間性を露わにすることで視聴者に強くアピールしているのに対し、ことごとく不自然であろうとするのが『脱力タイムズ』であり、ここには現在のTV文化が何をやっているのかを問う「メタ視線」が随所にあふれている。

 食品まつりの音楽には、これと同じ「メタ視線」が多分に含まれている。かつて中原昌也が「スロッビン・グリッスルはカッコいいと思ったけれど、それをそのまま日本という風土でやるのは恥ずかしい」と認識していたことと同じ、要するに自意識の有無である。食品まつりがシカゴのジュークに影響を受け、その列に素直に加わってしまうのではなく、「日本でシカゴのジュークを聴くこと」がどのような効果を日本人にもたらすか、それを分かった上で彼はジュークをつくっているといえる。シカゴのストリートでは切迫感やフィジカルな要素がまさっていたのかもしれないけれど、日本ではそれよりも笑いのセンスが強かったともいえるし、ジュークが持っていたもっと別な可能性を引き出してきたとも言える。あるいは、『ARU OTOKO NO DENSETSU』まで来てしまうと、ジュークからも離れて「可能性」はどんどんひとり歩きを始め、類い稀なオリジナリティへと辿り着いたことも確かだろう(2012年のデビュー・カセットから前作『Ez Minzoku』まではエレキング20号で作品ごとに解説しているのでそちらを参照ください)。前後してリリースされたジュークの創始者、RP・ブーの新作『I’ll Tell You What!』にも「Cloudy Back Yard」という奇妙な曲が収録されている。これもかなりジュークからは逸脱を図ったものに聞こえるけれど、しかし、食品まつりがジュークの余白から掴み出してきたポテンシャルに比べると、やはり想定内かなという気もするし、むしろ食品まつりからのフィードバックがこれを作らせたのかなと?

 食品まつりはまたジュークだけを出発点にしていたわけではなく、ゼロ年代にアメリカのアンダーグラウンドで様々に試みられていた実験音楽がその背景にあることは、彼の作品がブラッド・ローズの〈Digitalis Recordings〉やマシュー・セイジの〈Patient Sounds Intl.〉からリリースされてきたことがそのままを語っている。『ARU OTOKO NO DENSETSU』がリリースされたのもゼロ年代末から西海岸サウンドの刷新に努めてきたサン・アローからのレーベルで、かつてなく空間性に富んだ内容もサン・アローがここ数年、展開してきた余白の多いサウンドとも共振性が高く、ユーモラスな作風の受け皿としては実に納得がいく。この浮遊感と脱力感。ポコポコとしたアンビエンスは日本独自のテクスチャーとも思えてくるし、もしかして意外な角度からコーネリアスを脅かす存在になっていくのかもしれない。
 ちなみにアートブックがつくらしいんですけど、筆者はそれがどんなものかわかっておりません。

Oliver Coates - ele-king

 そうじゃない。そういうことじゃないんだ――。
 きっとあなたも経験したことがあるだろう。いわゆる正統なクラシカルの教育を受けたアーティストがエレクトロニクスを導入してテクノやIDMを試みたときの、あのどうしようもない違和感。たいてい電子音やノイズは装飾の域に留まっているし、それを肴にストリングスやピアノが酒宴を張るだけの結果に終わってしまうこともしばしば。あるいは逆に、身体性を意識するあまりビートが妙に強調されすぎていたり。違和感というよりも「残念」とか「無念」といったほうが的確かもしれない。

 ジョニー・グリーンウッドとの共同作業によりぐんぐんと知名度を上げているロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ、その一員たるオリヴァー・コーツもまた、そのようなクラシカルの文法をしっかり身につけたチェロ奏者だ。いや、「しっかり」なんてもんじゃない。かつて王立音楽アカデミー史上最高の成績を収めたというのだから、相当なエリートである。その気負いもあったのかもしれない。彼のファースト・アルバム『Towards The Blessed Islands』(2013年)は、クラシカル~現代音楽のなかで「しっかり」前衛を追求する作品だった。
 ただ、彼がそのアルバムでスクエアプッシャーをカヴァーしていたことは心に留めておくべきだろう。原曲は『Ultravisitor』所収の小品“Tommib Help Buss”で、複雑なリズムや音響が展開されるものではないが、その選曲は、オリヴァー・コーツのなかにクラシカルとは異なるプログラムが走っていることを教えてくれていた。
 そこから遡ること5年、彼はバービカンでおこなわれたミラ・カリックスのパフォーマンスにチェロで参加しており、その成果は『The Elephant In The Room: 3 Commissions』(2008年)として音源化されている。そのとき縁が結ばれたのか、翌年ふたりは〈Warp〉が設立20周年を記念して編んだコンピレイション・シリーズ『Warp20』でボーズ・オブ・カナダの楽曲をカヴァーしてもいる。これらの事実に、彼がオウテカのファンであるという情報を付け加えれば、いかにオリヴァー・コーツがIDM~エレクトロニカを愛好する音楽家であるかがわかるはずだ。

 そんな背景を持つ彼もまたきっと、あの「そうじゃない」という感覚を味わったことがあるに違いない。だからだろう、その後オリヴァー・コーツは、映画のスコアなどを除けば、基本的にIDM~エレクトロニカの側に軸足を置くことになる。弦の音響効果から巧みにダンス・グルーヴを抽出した2014年のシングル「Another Fantasy」はその最高の成果のひとつだし、積極的にエレクトロニクスを導入したセカンド・アルバム『Upstepping』(2016年)もその延長にあるといっていい。そうした正統なクラシカルからの離脱運動は、〈RVNG〉へと籍を移して発表されたこの新作『Shelley's On Zenn-La』において、よりいっそう推し進められている。

 彼の長年の相棒であるチェロはほとんどの曲においてエフェクトが施され、はっきりそれとわかるかたちでは鳴らされていない。本作を覆っているのはむしろ、リチャード・D・ジェイムスの影だ。“Charlev”や“Perfect Apple With Silver Mark”などは音の響かせ方やドラムの部分でいやでもエイフェックスを想起させるし、“Faraday Monument”や“Cello Renoise”なんかは完全にドリルンベースの再解釈である(前者はどちらかというとトム・ジェンキンソン寄りかも)。とはいえ、それがたんなるモノマネに陥っているわけではないところが本作の魅力で、そのような往年の〈Warp〉を彷彿させる音響空間に、「違和感」なく女性ヴォーカルや加工されたチェロを重ね合わせていく手腕は見事というほかない。“A Church”の紡ぎ出すグルーヴの心地良さといったら!

 オリヴァー・コーツは近年、ミカチューことミカ・レヴィと何度もコラボを重ねているが、直近でもっとも注目すべきなのはアクトレスとの共演およびローレル・ヘイロー新作への参加だろう。クラシカル畑出身でありながらその文法に依拠しない彼の態度が、尖鋭的な電子音楽の俊才たちを惹きつけてやまないのだ。
 この『Shelley's On Zenn-La』にはあの「そうじゃない」がない。本作はなによりもまずエレクトロニカとして優れた作品であり、だからこそモダン・クラシカルとしても高い完成度を有することができているのだと、そう思う。けっして、逆ではない。


Yves Tumor - ele-king

 ティームスではチルウェイヴに挑戦し、ザ・ムーヴメント・トラストとしては〈NON〉からEPを、イヴ・トゥモア名義では〈PAN〉からアルバムを、他にもシルクブレスやベケレ・ベルハヌなどなど、多くのユニットやソロ・プロジェクトでリリースを重ねてきたショーン・ボウイ。昨秋〈Warp〉と契約し大きな話題を集めた彼が、去る9月5日、唐突にニュー・アルバム『Safe In The Hands Of Love』を発表しました。現在デジタル限定での販売となっているこの新作ですが、なんと10月12日に国内盤CDが発売されます。ボーナス・トラックに加え、歌詞対訳も付属するとのこと。アートワークも強烈ですが、リリックも気になるアーティストですので、これは嬉しいお知らせです。

YVES TUMOR
時代を切り拓く謎の先駆者となるのか?
〈WARP〉移籍で話題を呼んだイヴ・トゥモアが
突如フル・アルバムをリリース!
ボーナス・トラックを追加収録した国内盤の発売も決定!

ベルリンの最先端を行く実験的レーベル〈PAN〉からの前作『Serpent Music』が、アルカやブライアン・イーノらと並んで、米Pitchforkの【The 20 Best Experimental Albums of 2016】に選出されるなど、最高級の評価を獲得し、注目を集めたイヴ・トゥモア。昨年には〈Warp〉との電撃契約が発表され、同年12月には、坂本龍一のリミックス・アルバム『ASYNC - REMODELS』に、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、アルヴァ・ノト、コーネリアス、ヨハン・ヨハンソンらと共にリキミサーとして名を連ねた。そして今年7月、移籍後第一弾シングル「Noid」をリリースすると、さっそくPitchforkで【Best New Music】を獲得。その後立て続いて「Licking An Orchid」をリリースし、今週にはBeat 1の看板DJ、ゼーン・ロウの番組で「Lifetime」が解禁(こちらもPitchfork【Best New Music】を獲得)。そして9月6日、それらを収録したフル・アルバム『Safe In The Hands Of Love』がデジタル配信限定でリリースされた。合わせて、ボーナス・トラックが追加収録された国内盤CDも10月12日にリリースされることが決定。

Noid
https://youtu.be/Edthfw5Pbxk

Licking An Orchid (ft. James K)
https://youtu.be/M9teCJVTr_s

Ryuichi Sakamoto - ZURE (Yves Tumor Obsession Edit)
https://youtu.be/umgio5eXg7Y

Pitchforkは、マーヴィン・ゲイやザ・キュアーも引き合いに出し、ディスコ、ソウル、そこにゴシックでダークな音楽性までを包括した“今最も冒険的なアーティストのうちの一人”とその才能を絶賛。鬼の顔のようなアルバム・ジャケット、奇抜な外見とは裏腹にイノセントな表情を浮かべたアーティスト写真、知ろうとすればするほど謎が深まるイヴ・トゥモア。昨年行われた貴重なインタビューの中でも「多くの人は私の存在が何なのか困惑してると思う。けどそれでいい」と自ら語っている。

イヴ・トゥモアによる最新アルバム『Safe In The Hands Of Love』は、10月12日に国内盤CD、輸入盤CD、輸入盤2LPが世界同時発売される。国内盤CDにはボーナス・トラックが追加収録され、歌詞対訳と解説書も封入される。デジタルは9月6日より先行配信中。

label: WARP RECORDS
artist: Yves Tumor
title: Safe In The Hands Of Love
release date: 2018.10.12 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-584 ¥2,400
国内盤特典:ボーナス・トラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子

[ご予約はこちら]
beatink.com: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9846
iTunes Store: https://apple.co/2NPfa9a
Apple Music: https://apple.co/2wK3v4b
Spotify: https://spoti.fi/2NSteOW

[TRACKLISTING]
01. Faith In Nothing Except In Salvation
02. Economy of Freedom
03. Honesty
04. Noid
05. Licking an Orchid ft James K
06. Lifetime
07. Hope in Suffering (Escaping Oblivion & Overcoming Powerlessness) ft. Oxhy, Puce Mary
08. Recognizing the Enemy
09. All The Love We Have Now
10. Let The Lioness In You Flow Freely
11. Applaud (Bonus Track for Japan)

ハテナ・フランセ - ele-king

 慣れない猛暑にすっかりバテているパリジャンの野次馬心に火を付けた、ゴシップをお伝えしたく。

 8月1日オルリー空港で、フレンチ・ラップ界のトップに君臨するBooba(ブッバ)とその元舎弟ラッパーKaaris(カリス)が、取り巻きと共に乱闘を繰り広げて逮捕された。その様子は当然スマホで押さえられ、SNSで実況中継され、ファンを大変興奮させた。このニュースは、ネタの少ない夏ということもあり、ゴシップ誌だけでなく、大手新聞各社も総じて取り上げた。フランスを代表する新聞のル・モンド(Le Monde)紙をして「フレンチ・ラップ界で最も待ち望まれた乱闘」とブチ上げるほど。だが、このタイトルは実は大袈裟ではないのだ。

 ことの経緯に入る前に、まず両ラッパーの紹介を。
 多くのラッパーと同じくBoobaも貧困層から這い上がった。パリ郊外シテ(低所得者層向け団地)出身の典型的なバッドボーイだ。ラッパーとしてデビューした後も、ガチであることを知らしめる事件をたびたび起こしている。タクシー強盗で実刑を食らった前科を持ち、銃撃事件で逮捕されたこともある(この時は証拠不十分で不起訴)。そして実母と実弟が誘拐される事件まで起きている。まさにギャングスタを地で行く、フランスを代表するサグ・ラッパーだ。自らを「Duc de Boulogne(デュック・ドゥ・ブローニュ=ブローニュの公爵)と名乗るところも、エゴ肥大系ラッパーとして100点満点のアティテュードだろう。

 一方で、Boobaはビジネスマンとしても成功している。今となってはフランスのラッパーの定番といえる自らのストリート・ブランドの設立。それをまだフランスではあまり盛んでなかった2004年に、セカンド・ソロ・アルバムをリリースしたばかりで早くも成し遂げた。2014年には新しいアーティストの発掘とそのプロモーションの場として、ウェブサイトOKLM(オカエレム)をスタートしたり、同じ趣旨でケーブルTV局も2016年に立ち上げた。

 2017年にリリースした9枚目となる最新アルバム「Trône」では、「ゲーム・オブ・スローンズ」を思わせるジャケ写でドヤ顔を披露。Jul、PNLら新参アーティストやOrelsanなど、2017年はヒップホップの大ヒット・アルバムが多くリリースされた。その中にあってBoobaは、リリース2週間で10万枚のセールスを上げ、アルバム・タイトル通り王座に座り続けていることをアピールした。またアルバム・リリース後は、フランス中の大規模ロック・フェスのヘッドライナーを務めている。このようにヒップホップ・リスナーはもちろんのこと、フランスのオーディエンスにとってBoobaという存在はいまだ大きなものなのだ。

 対するKaarisはコートジボワール出身。父親の死後、母親は7人の子供を連れてフランスに移住。パリ市内の女中部屋(19世紀に建てられた豪華なアパルトマンの屋根裏には、トイレ、シャワー共有、10㎡くらいなどの悪条件の使用人用の部屋がある)を経て、パリ郊外サン・ドニのシテに落ち着く。90年代終わりにシーンに登場したKaarisは、Boobaと違いすぐにブレイクした訳ではない。2012年にBoobaの楽曲”Kalash” にフィーチャーされたことをきっかけに注目される。

 その後もお互いの楽曲に客演し合い、Kaaris はすっかりブローニュの公爵の近衛兵となった。2013年にリリースしたソロ・アルバム”Or noir”が8万枚のヒット。下品でマッチョ、フレンチ・ラップのトラップ代表格として、子供たちの間でも大変な人気を博し、良識ある親たちを辟易させた。

 そんな2人がなぜ乱闘騒動を起こすことになったのか。端的にいうとBoobaとRohffというラッパーとのビーフにKaaris が加勢しなかったから。90年代終わりには競演もしていたBoobaとRohffだが、Rohffがメインストリーム方向に舵を切ったころから対立し始め、2010年代にはフレンチ・ラップ界きってのビーフとなる。2014年にはRohffと取り巻きがBoobaのストリート・ブランドの路面店を襲撃して、店員暴行事件まで起こしている。そのようなガチ対立の中、KaarisはBooba陣営であることをハッキリ表明させなかったとしてブローニュの公爵はご立腹、かつての舎弟とのビーフが勃発した。お互いにSNS上を主な舞台にやり合っていたのだが、ついにこの8月3日にフィジカルな衝突が発生。彼らはイビザのクラブに同日にブッキングされていた。どうやらBoobaがブッキングされたのを知って目と鼻の先のクラブがわざとKaarisをブッキングしたらしく、バッドボーイを看板に掲げるビーフ関係のラッパー2人が、オルリー空港で鉢合わせした。誰かが意図的に工作したとしか思えないこの”偶然の”出会い。真相はどうにしろ、挑発的な状況であったことは確かだ。そしてコワモテが信条の二人が、この偶然を黙ってやり過ごしたらそのイメージに齟齬が生じる。やらない、という選択肢はなかったのではないだろうか。

 監視カメラの映像によると、その”待望の”衝突を先制したのはBoobaらしい。免税店などをぶっ壊し、居合わせた乗客に大変な迷惑をかけたが、乱闘自体で重傷者が出ることはなかった。空港セキュリティと警察により制圧され、Booba側が本人入れて8人、Kaaris側が本人含む6人が逮捕された。8月3日の予審の様子は各新聞が取り上げた。左寄りインテリ紙ラ・リベラシオン(La Libération)ですら「Kaarisのチケットいくらか知ってっか? ここならターダーよ、兄弟!」と、ファンが大量に押しかけた様子などを詳細にレポート。ファン・ミーティングなみの興奮の中、9月4日まで裁判が延期されることが決定。彼らの夏の公演やフェス出演は全てキャンセルとなった。特にBoobaはフェスではヘッドライナー級なので、多大な損害が生じた。すぐにSNS上で「B2O(Boobaの略称)K2A(Kaarisの略称)を解放せよ! ベナラ(大統領側近でデモ参加者に違法に暴行を働いた)は捕まらないのにラッパーは拘留か!」と抗議が起きた。一旦却下された釈放が認められ、両者とも8月23日に3万ユーロの保釈金を支払い一旦釈放となった。9月4日の裁判では、重ければ10万ユーロの罰金と10年の実刑の可能性もある。特にBoobaは、パリ郊外再開発近代都市、ラ・デファンスで4万人を収容する「La Defence Arena」の大規模な公演を10月13日に控える身。裁判の結果次第では、さらに大きな経済的ダメージとなることもあり得る。その裁判の結果をフランス中が好奇心満々で待ち受けている。

 古くはマクドナルド、そしてスターバックスを経てアマゾンなどアメリカ・モデルに懐疑的なフランス。だがヒップホップに関しては、ケンドリック・ラマーからデザイナーまでアメリカのアーティストも熱狂的に支持され、ギャングスタ・スタイルも1ジャンルとして定着している。なぜならフランス人にとってヒップホップはアメリカから輸入されたという意識が少ないからだ。80年代にはフランスにヒップホップが輸入され、ゲットーの音楽としてリアルに根付き、フレンチ・ラップが勃興する。憂さ晴らし、もしくは貧困から抜け出す為の手段としてサッカーとラップは貧困層を中心としたフランスの若者たちにとって「自分たちの言語」になったのだ。だからこそフランス社会の底辺から成り上がったBoobaやKaarisの一挙手一投足は、彼らがかつて属した底辺にいる若者たちにとって他人事ではないのだ。

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