「Ord」と一致するもの

Lil B - ele-king

 そもそも、アルバム・レヴューというこのコーナー自体が、古い想像力の産物なのではないか。と、インターネットでは3ヶ月"も"前から話題になっていたアルバムを、いまさら、レヴューしようとする筆者は、自らを棚に上げる。

 DJクワイエットストームのblogによると、グッチ・メインはこの4年間で150枚以上のアルバムを出しているという。もちろん、ほとんどはネット上に発表されたミックステープ(フリースタイル集)で、本人が関わっていないものも多いだろうが、それでも、その数はダントツだ。また、グッチ自身も、他人のビートをジャックしているし、知名度を上げ、評判を煽るために、自身の音源が無断で使用されることをなかば容認しているようなところがあるので、ここでは、通常のブート/オフィシャルの区分けは無意味だろう。さらに、なかには無料でダウンロードができる音源もあって、例えば、今年のベスト・リミックス・アルバムに挙げられる、〈マッド・ディッセント〉による『フリー・グッチ』や、前述したクワイエットストームによる『ライブラリー』シリーズがそうだ。

 昨年のベストセラー『フリー』(クリス・アンダーソン著)は、「ネット経済圏ではフリー(無料)は避けれない、むしろ、それを活用するべきだ」と提案して話題になった。同書で、フリーのビジネス・モデルは4つに分類されているが、ヒップホップのミックテープ市場は、この内、(3)「フリーミアム」と(4)「非貨幣市場」が組み合わさったものと言えるだろう。度重なる逮捕により、才能があるにもかかわらず、キャリアを分断されていたグッチは、ブロードバンドで巨大化したミックステープ市場を上手く活用し、勝ち上がった、典型的なパターンである。
 ただ、興味深いのは、「玉石混合のミックステープで興味を引き、高い製作費をかけた、ポップなオフィシャル・アルバムへと導く」というプロモーションに対して、耳の肥えたファンほど、「本当のグッチはミックステープのなかにいる」と主張することだ。フリースタイルが基本のミックステープは、当然、生々しく、ハードコアなラップが聴けるので、そう思うのも無理はないが、重要なのは、そこで言うミックステープとは、ある具体的な1本ではなく、むしろ、ミックステープというメディアそのものであり、ひいては、それらが連鎖的に生まれて行くネット環境そのものを指す点だ。
 つまり、4年間で150枚以上ものアルバム(単位の音源)を、なかば意図的にネット上に散乱させているグッチ・メインのようなアーティストの魅力を知りたければ、これまでのように、オフィシャル・アルバムを買ったり、ライヴに足を運んでいるだけでは駄目だ。彼の"本当の姿"は、ネット上に像を結ぶのだから。それにしても、そんな状況において、レヴューすべき"アルバム"とは何なのだろうか?
 そして、グッチ・メインよりも10歳近く若いリル・Bにとってネットは、さらに重要......というか、自然な場所になっているように思える。カリフォルニアはバークレー出身の本名=ブランドン・マッカートニーは、16歳で地元のスケーター仲間とラップ・グループ=ザ・パックを結成して6年、いまや彼の持ち曲は1000曲以上になるという。ザ・パックはハイフィの新世代として早くから評価を得ていたものの、リル・Bの名がバズ・ワードになったのは、彼がYoutubeに連日のようにアップする、膨大な、それこそ玉石混合のソロ・トラックを通してだった。

 リル・Bは自身のスタイルを"ベイスト"と称しており、それは、音楽評論家の小林雅明によると、クラックを指すスラングだそうなのだが、その実態は、言ってみれば"マッシュアップ+フリースタイル"のようなものだ。彼は、恐らくネット上から出鱈目に引っ張って来た音源(エリオット・スミスから浜崎あゆみまで!)の上で、ストーンした状態でひたすら、ナンセンスなライミング――いや、ポエトリー・リーティングと言ったほうが良いだろうか――を煙とともに吐き出す。そのなかには良くできたポップ・ソングもあれば、聴くに耐えないジャンキーの戯言もあるのだけれど、適当に画像を巡回していると、いつの間にか甲高い濁声が耳にへばりつき、中毒になってしまったという人は多いだろう。サンプリングは、黒人音楽の再解釈と拡大という建設的な側面を持っていたが、リル・Bのやっていることは、ネット上にフラットに並んだ情報から適当なものを摘んでいるだけで、そこに大した意味を求めようにもない。それでも、そこに歌の原始の姿とでも言うべき魅力があるのは何故なのだろうか。
 iTunesの登場以降、ポップ・ミュージックのメイン・フォーマットは"アルバム"から"シングル"へ久しぶりに回帰したと言われる。しかし、正確には"シングル"ではなく、"ソング"である。そこでは、もはや、アーティストやレーベルの意思より、リスナーの欲望のほうが優先されるのだから。また、その現象はiTunesというよりも、情報がフラット化するネット環境に依拠するもので、旧来的な情報が切り崩された結果、ポップ・ミュージックの最小単位が姿を表したのだ。Youtubeの面白さもそこにあるだろうし、あるいは、ミックステープは、それらを"アルバム"という旧来的なフォーマットに押し込むために発明されたものと考えられるかもしれない。さらに、リル・Bの場合は、そんなポップ・ミュージック的な"ソング"からさえはみ出しつつあるとは言えないだろうか。彼の"ソング"は、子供の出任せであり、狂人の鼻歌であり、太古の歌なのだと。

 先述したように、89年生まれのリル・Bにとってはネットこそが自然であり、だからこそ、彼の歌はYoutubeにアップされたトラックをランダムに聴くという、極めてネット的なリスニング・スタイルと相性が良い。別の言い方をすれば、リル・Bにとってはネットこそがシーンであり、そのため、彼の表現からは旧来的なヒップホップ特有の地域性は失われ、ネットから登場したスターの先駆けであるアトランタのソウルジャ・ボーイとともに新たな勢力を築きつつあるのも納得がいく。さらに、そこでは、旧来的なヒップホップ特有のアイデンティティを元にした本質主義的なキャラクターは時代遅れとなり、キャッチーなアイデアを生むスピードから残像のように浮かび上がるキャラクターこそが重要視され、そのことは野田努氏がニッキー・ミナージュのレヴューで書いていた議論に繋がって行くのだが......話が長くなったので、またの機会にしよう。ひとつ思い出して欲しいのは、数年前、ソウルジャ・ボーイが登場して来たとき、ベテランのラッパーたちがどうしてあんなにも過剰に否定的な反応を示したかということだ。
 とは言え、不安なのは、リル・B自身がネットを足掛かりに、旧来的なマーケットでも名を挙げようとしている節があるというところだ。セカンド以降、苦戦しているソウルジャ・ボーイ同様、リル・Bもいわゆる"アルバム"というフォーマットとは相性が悪い。ここでも、便宜上、珍しくCDでもリリースされ、流通にも乗っている本作(リリース元は三田格氏も取り上げていたエクスペリメンタル・レーベルの〈ウィアード・フォレスト〉)を取り上げたが、これだけを聴いても、ローファイなアンビエントの上で、延々と呟き続けるばかりで、まったくもって意味不明だろう。逆に、先日発売されたザ・パックのセカンド・アルバム『ウルフパック・パーティ』では、気負い過ぎて、彼ら特有の緩い雰囲気が死んでしまっていた。そこで試みられていたビート・コンシャスなヴェクトルに関しては、メンバーでメイン・トラック・メーカー=ヤング・Lのミックステープ『L-E-N』の方が断然できが良い。リル・B自身は、来年、初のオフィシャル・アルバム『スラックス・キッス』のリリースが予定されているというが......。

 国や地域に縛られず、ネットという広大で平坦な空間にシーンを築くという試みは、おそらくブレイクコアによってはじまった。例えばチルウェイヴはそれを引き継ぎつつ、データと平行して、カセット・テープやヴァイナル(データの容器に過ぎないCDではなく)をリリースすることで、その可能性の一部をリアルな世界に帰し、さらに多面的なシーンをつくろうとしている。また、ダブステップやウォンキーにもその傾向は見られる。インディ・ラップの場合は、頭の上にアーバン・ミュージックという巨大なマーケットがあることで、なかなか独自の展開へと踏み出せなくなっているような気もするのだが、さて、今後、どうなるだろうか。

DJ Yogurt / DJ ヨーグルト (Upset Recordings) - ele-king

2010年秋以後にゲットしたレコードの中から10枚。


1
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 - 機嫌なおしておくれよREMIX - Upset Recordings-Sneeker Blues Record-Jet Set

2
シグナレス - y.s.s.p.(DJ Yogurt&Koyas Remix) - Felicity

3
ジェブスキ - Still - P.A.D.

4
Bob Holroyd - African Drug(Four Tet Remix) - Phonica

5
Daddy Mckane - Say The Word(Big Daddy's Rebel Dub) - Not Safe For Work

6
Serena Maneesh - Ayisha Abyss(Lindstrom Remix) - 4AD

7
Maxime Dangles - Astroneff - Skryptom

8
Passarani & Sacco - Flora(Original) - Desolat

9
Seahawks VS Bad Drawn Boy - You Lied(Lies And Manipulation) - UNKNOWN

10
Pastor T.L.Barrett And The Youth For Christ Choir Sings! - Like A Ship...(Without A Sail) - Light In The Attic Records

DJ WADA (Sublime) - ele-king

2010/12/14現在のチャート


1
Moodymanc - Seedz - Tsuba

2
Scuba - Tracers (Deadbeat Remix) - Hotflush recordings

3
Steevio - Ty (Deep Mix) - Mind Tours Records

4
Alexi Delano - Un Do Me - Leena Music

5
BCR Boys - The Myth - Perc Trax

6
Grischa Lichtenberger - Calipso - Raster-Noton

7
Martyn - Left Hander - 3024

8
Scuba - Lights Out - Holtflush Records

9
James T Cotton - Take Care of The Incompleted and The Sick - Ghostly International

10
Margaret Dygas - See You around - Non Standard Prodaction

Nearest 10


1
VX (Virgil Enzinger & Xavier Morel) - Fiction Remixes Part 2 - Nachtstrom Schallplatten

2
Lucy - Beautiful People - Mote Evolver

3
SAWLIN & MOERBECK - #3 - Vault Series

4
TRAVERSABLE WORMHOLE - The Remixes PT.05 - CLR

5
CLAUDIO PRC - Clear Depth EP - PROLOGUE

6
Jichael Mackson - Just In Time - Musique Risquee

7
GUMMIHZ & NIKOLA GALA - Sapfo - Claap

8
Grand High Priest - Jimmy Go Boom - We-Ze

9
Bakey Ustl - EP1 - Unthank

10
V.A. - 10 Years Anniversary Pt#1 - Neroli

MASANORI MORITA (STUDIO APARTMENT) - ele-king

2010 BEST TRACK LIST


1
DJ T - Dis (Kink Remix) - Get Physical

2
DJ Gregory & Gregor Salto featuring Dama Pancha & DJ Mankila - Vem Rebola (Main Acid Mix) - Faya Combo

3
Florian Kruse, Nils Nuernberg - The Extra Breath Of Life - GalaktiKa Records

4
Harry Choo Choo Romero - Phuture (Original Mix) - Ovum Recordings

5
Riva Starr, Starr Traxx - More (KINK Remix) - Snatch! Records

6
Luca M - Grumpli (Original Mix) - Starlight Unlimited

7
Martin Dawson - Double Six (Ramon Tapia Remix) - King Klong

8
Franky Rizardo - Afrika (Original Mix) - Rizardo Records

9
Fritz Zander - For Your Love (Original Mix) - Suol

10
Tong & Spoon - Muchness (KiNK Mix) - Size Records

DJ FUKUBA (Smoker, Gallery, Junk) - ele-king

ティーンエイジなボクのハートに深い爪痕を残した愛しの10曲 "ディスコ編"


1
Leif Garrett - I Was Made For Dancin' - Atlantic

2
Claudja Barry - Boogie Woogie Dancin'Shoes - Chrysalis

3
Skatt Bros. - Walk The Night - Casablanca

4
Gazebo - Lunatic - Quality

5
Philip Bailey&Phil Collins - Eazy Lover - CBS Sony

6
Magazine 60 - Don Quichotte - Baja

7
Evelyn Thomas - High Energy - TSR

8
Expose - Point of No Return - Arista

9
Lime - Unexpected Lovers - TSR

10
Mary Jane Girls - In My House - Motown

大石始 (EL PARRANDERO) - ele-king

2010年によくかけた10曲


1
Systema Solar - Mi Colombia - Chusma

2
Bomba Estereo - Fuego - Nacional

3
風祭堅太 - Alasca - Rudiments

4
La Troba Kung-Fu - Maria Hernandez - Chesapik

5
Ai, Ai, Ai - Bar La Rumba - Propaganda Pel Fet

6
Gertrudis Vs. Toy Selectah - Mundo Uaka (Toy Selecath Remix) - Lovemonk

7
Sergent Garcia - Yo Soy Salsamuffin - White

8
Sunlightsquare Latin Combo - I Believe In Miracle - Sunlightsquare

9
Los Rakas - Abrazame (Uproot Andy Mix) - White

10
やけのはら - I REMEMBER SUMMER DAYS - felicity

手前ミソで恐縮ですが、久しぶりに自分の単行本が出たので報告させてください。『もしもパンクがなかったら』という我ながら青いタイトルの本は、雑誌『EYESCERAM』に2005年から連載中のコラム「SHOUT TO THE POP」をまとめたものです。自己解説すると、ざっくり言って、ゼロ年代後半の大きなムーヴメントのない時代のレポートのようになっているかと思います。正直言いまして、過去の自分の原稿を読むほど過酷な作業はないので、実はまだしっかり直視できていないのですが、「ムーヴメントがない時代」をテーマに宇川直宏のマイクロオフィスで三田格とトークショーをはじめた話なんかも書かれていて感慨深いものです。以下、目次を載せて、自己宣伝を終わらせいただきます。ちなみに、年明けの1月は復活!『ele-king』が1月17日に刊行予定、また、『ゼロ年代の音楽――ビッチフォーク編』という怒濤の刊行が続きます。自分で言うのも何ですが、どちらもかなり面白い本ですよ。(野田)

■Part 1
パンク・バンドが通俗的なディスコをカヴァーするとき――!!!『ラウデン・アップ・ナウ』は素晴らしい 14/「これは私が生きていくために必要なモノなの」と女性MCのシェイスティーは言う――グライムという新しいムーヴメント 18/ダフト・パンクのように、人生の無意味さをはしゃいでみせる屈折した陽気さはないけれど――LCDサウンドシステムの快進撃 22/「ワン、トゥ、スリー、ヘイメン!」、そしてリキッドルームには・インスピレーション・が鳴り響いた――来日したマッド・マイクとUR 26/ 私には、あんたをぶっぱなす爆弾がある――M.I.A.登場! 30/ スペイン語によるヒップホップで、イケイケで、猥褻で、とにかく最高に好色なダンス・ミュージックである――拡大するレゲトン・ブーム 34/それは「フェスティヴァルというよりは社会的集会に近い」と『ワイアー』は形容している――フリー・フォークなる新しいアンダーグラウンド 38/「それらは残酷な人生を送っている人たちによる日常生活の年代記なのよ」と彼女は語った――バイリ・ファンクの時代 42/音楽が時代への反抗心を内包するものであり、少数派の意見を反映するものであること――コールドカット『サウンド・ミラーズ』の挑戦 46/見事なほどに、これといった取り柄を持たないダメな人間たちを描いている――賛否両論のザ・ストリーツ『ザ・ハーディスト・ウェイ・トゥ・メイク・アン・イージー・リヴィング』 50/フロイト心理学を持ち出しながら健康のためのグループ・セックスを試行錯誤したヤッピーに比べたら――ディプロとボルチモア・ブレイク、あるいはDJシャドウの新作 54/「夜に似合う感じなのはたしかだよな。雨だな。雨がたくさん含まれてて、夜で、悲しくて......」――ブリアルとダブステップ 58/それが毎週末さまざまな場所で繰り返されるとなると、週末その街の繁華街から若者が消えてしまう――ニュー・レイヴなるトレンド 62/夏だ、「それは究極のバカ騒ぎよ」、MCのマリナは語っている――リオのホンヂ・ドー・ホレに注目 66/僕は夜が来るのを待つ。夏の終わりを待つ。外が暗くなるのを待つ――ダブステップのネクスト・ステップ 70/上品な子供たちの陰気なポップが聴こえる──ニュー・エキセントリックなるムーヴメントについて 74/すべての人びとは踊らなければならない──ヘラクレス&ラヴ・アフェアが訴えている 78/一九七〇年代にザ・ストゥージズのレコードを探すことは困難だった。しかしいまは違う──レトロ・ポップの時代 82/ユース・カルチャーはいまとにかく踊りたがっている、それもかなり強烈に──更新されつつあるUKの音楽シーン 86/ソニック・ユースには・スメルズ・ライク・ティーン・スピリット・がない──ニューヨークのアヴァン・ロック最前線 90/彼はいま、なんとしてでも人生を誉めてみたかったのだろう──ザ・ストリーツの最後から二番目の新作について 94/彼のなかの・彼女・が歌うとき――アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズを聴け 98/もしもパンクがなかったら......――ザ・キング・ブルースは素晴らしい! 102/それは大胆で口汚く、淫らでバカなスリム・シェイディを演じた彼にしては弱々しい言葉に思える――エミネムのカムバック作『リラプス』 106/UKクラブ・カルチャーの系譜において現在もっとも最良な結実であり......――ダブステップが迎える新局面 110/騒々しくて、目まぐるしくて、しかもスタイリッシュで、エンニオ・モリコーネとジャマイカの脈絡のない混合物で――ダンスホールのミュータントたち 114/大量生産されるロボットDJに抵抗するように......――デリック・メイの十三年のぶりのミックスCD 118/「無垢」、これはここ数年のUSインディにおけるキーワードである――ビーチ・ハウスというエレガントで憂鬱なポップ 122/この新ジャンルは、南アフリカで開催されるワールド・カップへの熱狂とも相まっているのだろうか?――UKファンキーなるダンスのモードを紹介しよう 126/二〇一〇年のティーンエイジ・ライオット――拡大するダブステップ 130/幸福は・余暇・にしか見出せないという切ない悲しみが、陶酔的なディスコビートによって表されているようじゃないか――チルウェイヴなる新しいムーヴメント 134

■Part 2
「だけどさ、嘘でもいいからメール欲しいよな? 嘘でもいいからメールをくれよ」――こだま和文『In The Studio』 140/この国で最高のロックンロール――RCサクセション『ラプソディー・ネイキッド』 144/公園通りには「チケット、売ってください」などと書かれたプラカードを持った若いファンが何人もいた――フィッシュマンズの七年ぶりのライヴ  148/街で遊ぶ――ストラグル・フォー・プライド『YOU BARK WE BITE』 152/彼らは一日を楽しく生きるために、くだらない冗談を言い合い、熱く語り、笑い、そして大声で歌う――泉谷しげるとギターウルフ 156/こんなご時世、信じるに値するのは愛の悦楽のみ――曽我部恵一『ラヴ・シティ』を聴きながら 160/世のなかはもう変わらないと諦めてしまっては、人は家畜みたいになってしまう――一九八〇年からのロックンロール・ショー 164/彼はバースデー・パーティの・ソニーズ・バーニング・を「坊やは燃えている」と歌った――石野卓球とWIRE 170/かつてジョー・ストラマーは新聞やニュース番組を見ながら歌詞を書いたと言うけれど......――鎮座ドープネスなるラッパーの『100%RAP』 174/俺は自分の足でクラブに行き、自分でフレンズを選び、自分で曲を作る、シーンのルールには興味もない、ただミュージックのみ――S.L.A.C.K.というラッパーについて 178/リリー・アレン、彼女もそう、もろにロンドン訛りだって言うね――あるぱちかぶと、そして彼の『◎≠(マルカイキ)』 182/この夏が終わったとしても......――やけのはらの『THIS NIGHT IS STILL YOUNG』 186

■Part 3
「奴らを殺せ/おかまは死ななければならない/奴らの頭を撃ち抜け/おまえらも連中には死んで欲しいだろ」――ダンスホールとゲイ差別 192/ポップ・カルチャーのなかで同性愛に対する憎悪がここまで顕在化したことは、六〇年代以降なかったのではないだろうか――ますます加熱するゲイ憎悪 196/パーティで人を集めるには、昔から特別な音楽が必要なのだ――一枚一万円のディープ・ファンク 200/ブラジルの生んだフットボールの王様は、現役時代に五百曲以上の曲を書いている――ペレ『ジンガ』 204/アンダーグラウンドとは必ずしもアンダーグラウンドに閉じていくことではない。アンダーグラウンドとは可能性の追求である――ムーヴメント不在の時代 208/「これは新たなるサマー・オブ・ラヴか?」、サラはその真偽を確認するために侵入する――ニュー・レイヴ・ジェネレーション 212/その場にいた二百人は明日が月曜日であることを考えもせずに、雄叫びをあげ、激しく踊った――デリック・メイが静岡にやって来た! 216/遅刻したかのように私たちは駆け込む、秘密のレイヴ、内緒にしておいて、よろしくね――一九九二年のレイヴ・カルチャー 220/ぶっ飛んだままトイレに入って、山状に盛り上がった大便の海に財布を落とし、そしてどうしたと思う?――グラストンベリー・フェスティヴァルの思い出 224/悲しい日なのに、そのとんでもない状況にみんなから微笑みがこぼれた――渋谷のシスコ閉店 228/それは「ロックンロール選挙」であり「ヒップホップ選挙」でもあった──バラク・オバマとポップ・カルチャー 232/エイミー・ワインハウスのファースト・アルバムの内ジャケットの写真を見てごらんよ──エスカレートする大麻報道について思うこと 236/それもまた、スマイリーをめぐる冒険のアイロニカルな通過点だった――再刊されたコミック『ウォッチメン』を読みながら 240/ガソリンの涙がキミの目に浮かぶ、早くセックスしよう、死んでしまう前に――J・G・バラードが音楽に与えた影響 244

■Part 4
『ワシントン・ポスト』はジョニーについてこう結論づけている。「彼は反抗の世界における反抗者だったのだ」――パンクが右翼になるとき 250/ダグラス・クープランドは「買った経験は数に入らない」と八〇年代の高度消費文化を自虐的に批評したけれど――パンク三〇周年 254/狂人ではなく、人はそれを何故・並はずれた感受性・と言えなかったのだろう――シド・バレットに捧ぐ 256/いま僕たちが暴動を起こすとしたら、いったい誰に向けて石を投げればいい?――映画『ロンドン・コーリング』を見ながら 260/音楽は現世的な愉楽、幸福、微笑みの化けの皮をひっぺがす力を持っている――ロバート・ワイアット『コミックオペラ』、ゆらゆら帝国『空洞です』、七尾旅人『911FANTASIA』 264/セックス・ピストルズにもザ・クラッシュにも言うことができなかったメッセージを彼女は言った――初来日したザ・スリッツ 268/彼は描く、僕たちはどうしてロックンロールを手放せなくなってしまったのかを──ジュリアン・コープの『ジャップロックサンプラー』の翻訳を読んで 272/激しく燃え尽きるように、狂気を友としながら十代を生き急いだその人生に――シド・ヴィシャス三〇回忌 276/あのとき彼女たちを触発したのがクール・ハークやファブ・ファイヴ・フレディ、要するにヒップホップだった――ザ・スリッツの新作があまりにも良いので 280/いま、北京に行ってもパンクの店を見つけることができる。マルコムとヴィヴィアンなしではありえなかったことだ――マルコム・マクラレン、R.I.P. 284/彼女たちはショービジネスの世界で女性がありのままの普通でいることが、どれだけ異様に見えるかを証明した――ザ・レインコーツの初来日 288

Eskmo - ele-king

2010年の僕のトップ10アルバム


1
Actress - Splazsh
ここにあるローファイ・プロダクションが大好きだ。

2
Big Boi / Sir Lucious Left Foot- The Son of Chico Dusty
まったく非のつけどころのないアルバム。歌詞、メロディ、完璧だ。

3
Beach House - Teen Dream
大気のようで、ドリミーな音楽。僕を故郷に導く。

4
Fourtet - The Is Love In You
優美なメロディの船に乗ろう。

5
Flying Lotus - Cosmogramma
本当にぶっ飛んだ。彼の才能の高さを証明した作品。

6
Jonsi - Go
僕は2010年にジョニスのライヴを2回観た。どちらも驚くべきほどダイナミックで、開かれていた。

7
Ninja Tune XX Box Set
自分がこのレーベルから出せたことを誇りに思う。2010年、もっとも大きなことのひとつだった。

8
St Vincent - Actor
気まぐれで、魅力的で、ユニーク。彼女はものすごい情熱家だ。

9
Wildbirds and Peacedrums - Rivers
とても大きくてヘヴィーな作品。もうすぐ人びとは注目するはずだ。

10
Yeasayer - Odd Blood
いくつかの曲がものすごく僕に訴える。ものすごく好きだ。

Chart by UNION 2010.12.22 - ele-king

Shop Chart


1

THEO PARRISH

THEO PARRISH Sketches SOUND SIGNATURE / US »COMMENT GET MUSIC
一部のレコードショップのみで極少数(噂によれば150セットにみ)で販売されたハンドペイント・ジャケットの限定アナログ盤セットからCD化されたTheo Parrishのニューアルバムは、ジャズを独自の解釈で磨き上げたハウスが11トラック。「Summaer Time Is Here」ラインの「Hope In Tomorrow」、かつての初期衝動を思い出させてくれる「Thumpasaurus」や「Black Mist」といったトラックが並ぶ。これまでの作品にも参加しているDumminie Deporres、New Sector Movements としても活動してきたIG Culture、さらには名門Blue NoteにおいてBobbi HumphreyやDonald ByrdをプロデュースしてきたLarry Mizellもフィーチャーしている点にも注目。

2

DJ NOBU

DJ NOBU On MUSIC MINE / JPN »COMMENT GET MUSIC
Future Terror主宰、今日本のアンダーグラウンドで最も勢いのある話題のDJ、DJ NOBUの100%現場を詰め込んだ最新DJミックスが登場。脳の「ある部分」へ染み渡るような快楽性を持った音に、張り詰めた緊張感を持たせた独特な雰囲気は、もはや比較できるMIX-CDは殆ど存在しない。突き詰めて到達した「究極の音世界」、DJ Nobu自身がいま最も伝えたいであろう「世界観」を体感すべし。

3

RYOSUKE & KABUTO

RYOSUKE & KABUTO Paste Of Time Vol.2 JPN / CD »COMMENT GET MUSIC
千葉FUTURE TERRORを立ち上げ時からのレジデントを経て、現在様々なパーティで活躍する2人のDJのヴァイヴを抽出した『Paste Of Time』第2弾リリース!前作に引き続き「現場の音」をペースト(貼り付ける)した本作もフロア・ダイレクトな仕上がり。KABUTOは時間と重力を操るように、捻じ曲がるサイケデリックなハメを演出、一晩の流れを40分に詰込み再現したかのようなRYOSUKEのミックスはハウスとテクノを巧みに混在させた好内容。爆音で聴けばこれまでにない音世界の体験が待っている!

4

MORITZ VON OSWALD TRIO

MORITZ VON OSWALD TRIO Restructure 2 HONEST JONS / UK »COMMENT GET MUSIC
TIKIMANのギター、CARL CRAIG/MORITZ VON OSWALD「RECOMPOSED BY」でも客演していたMARC MUELLBAUERのダブルベース、VLADISLAV DELAYによるメタルパーカッションが緊張感溢れる音響空間を作り上げた12分間に及びフリーキーなミニマルダブ! さらにB面ではMALA (DIGITAL MYSTIKZ)がコズミック・ダブステップとでも呼びたいリコンストラクトを披露!

5

DONATO DOZZY

DONATO DOZZY K FURTHER / US »COMMENT GET MUSIC
LEROSA、AYBEE、CONRAD SCHNITZLERなど激コアでこだわりのあるリリースをする前衛レーベルFURTHERからイタリアアングラシーンの先駆者DONATO DOZZYが2枚組みで作品リリース!!この手のレーベルにありがちなドローン中心な作風ではなく、そこから派生した深みのあるミニマリズムが堪能できるDJユースな仕上がり!!

6

V.A.(BABY FORD,MARGARET DYGAS,FUMIYA TANAKA...)

V.A.(BABY FORD,MARGARET DYGAS,FUMIYA TANAKA...) Superlongevity 5 PERLON / JPN »COMMENT GET MUSIC
ZIPとMARKUS NIKOLAIによって1997年に設立され、その妥協を許さないクオリティーの高さとアンチコマーシャルな姿勢でミニマル・シーンに多大な影響を及ぼし続けるレーベル・PERLON。そのPERLONがレーベルメイトを結集させてお届けする恒例コンピレーション・シリーズ"SUPERLONGEVITY"の第5弾が遂にリリース! 毎回他を圧倒する豪華メンツがトラックを寄せる同シリーズですが、今回も若手からベテランまで燦然と輝く才能をコンパイルした驚異的内容!!

7

MOODYMANN / ムーディーマン

MOODYMANN / ムーディーマン Forevernevermore (国内仕様盤) PEACEFROG / JPN »COMMENT GET MUSIC
聴く者に迫り来る"黒いグルーヴ"を見事に創出した至高のブラック・ミュージック! 通算3枚目の本アルバムは1995~2000年に12インチでリリースされた音源を中心にコンパイル。Norma Jean Bellによる麗しいサックスとヴォーカルや、Fiddler Brothers(Amp Fiddler&Bubz Fiddler)によるベースやローズの音色、そしてKenny Dixon Jr.によるエフェクトが随所に散りばめられ、独特なサウンド・フォルムを形成している。

8

THEO PARRISH

THEO PARRISH Just1lovebug DOPE JAMS / US »COMMENT GET MUSIC
Lil Louis & The Worldの90年作"Nyce & Slo"をベースにAmerie"One Thing"のヴォーカルをミックスしたドープなマッシュアップ!ファットなベースラインとチージーなアシッドシンセが炸裂するシカゴハウスクラシックとAmerieの魅力的な歌声がTheo Parrishの手によってありえない見事なコラボレートを生んだ。瞬く間にレアな作品と化した1枚なだけに買い逃しの無いように!

9

REBOOT

REBOOT Into Oblivion EP OSLO / GER »COMMENT GET MUSIC
アルバム「SHUNYATA」でネクスト・レベルへ突き抜けたREBOOTが大人気レーベル・OSLOに初登場! 有機的に絡みつくウワモノとエフェクティブなヴォイス・サンプル、パーカッシブなビートが一体となったカラフルなディープ・ミニマル! フロアに彩りを添えるREBOOTならではの1枚!

10

HARDFLOOR

HARDFLOOR Two Guys Three Boxes HARDFLOOR / JPN »COMMENT GET MUSIC
人のルーツであるシカゴ・ハウス・シーンの重鎮DJ PIERREをリミキサーに起用し新旧アシッド対決が実現、大きな話題を集めた先行シングル"Silver Submarine"を筆頭に黄金期を彷彿とさせるファンキー&ストレートな303サウンドを全11トラック収録!!近年再度盛り上がりを見せるオールドスクール・アシッド・ハウスの時流に圧倒的な存在感と格好良さをもって王者の風格を見せつける超強力作品です!!
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