『FREEDOM JAZZ FUNK“Everything I Dig Gonna Be Funky”』
Track List
01. LES DEMERLE / A Day In The Life
02. PLACEBO / Balek
03. LES DEMERLE / Moondial
04. PLACEBO / Humpty Dumpty
05. PAUL HUMPHREY / Do The Buzzard
06. LEMURIA / Hunk Of Heaven
07. BILLY WOOTEN / Chicango (Chicago Land)
08. WENDELL HARRISON / Farewell To The Welfare
09. MANFREDO FEST / Arigo
10. LES DEMERLE / Underground
11. PLACEBO / Bolkwush
12. JAZZBERRY PATCH / Jazzberry Patch
13. SOUNDS OF THE CITY EXPERIENCE / Getting Down
14. MANFREDO FEST / Jungle Kitten
15. IVAN BOOGALOO JOE JONES / Confusion
16. LES DEMERLE / Aquarius
17. HOT CHOCOLATE / What You Want To Do
18. THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN /Monkey Hips & Rice
19. BOBBY COLE / A Perfect Day
20. ROY PORTER SOUND MACHINE /Out On The Town Tonight
いまやヒップホップのみならず、ファンクやレアグルーヴ、そして、和モノDJとしても活動し、ファンですらBuddha Brandとしての活動を忘れてしまうほどに、DJとしての圧倒的な存在感を見せつけているD.Lが老舗レーベル〈Pヴァイン〉と組んで、今冬、ミックスCD『FREEDOM JAZZ FUNK』をリリースした。「Everything I Dig Gonna Be Funky」=俺のディグったものすべてがファンキーになるとの副題のついたこのCDは、〈Pヴァイン〉が誇る極上の音源をミックスしたというだけにとどまらない、D.Lにしか生み出せない太くファンキーなグルーヴに溢れた特別なものに仕上がった。ヒップホップやレアグルーヴ、フリーソウルのリスナーにはおなじみの名曲たちがD.Lの手により、そのイメージを一新しかねないほどのサウンドを手に入れている。4月、その第2弾となる『FREEDOM JAZZ FUNK “Mellow Storm”』がリリースされるのを目前に、まずは“Everything I Dig Gonna Be Funky”と刻まれたこの驚くべきミックスCDについてじっくり話をきいた。
■D.L / ディー・エル
Illmatic Buddha M.C's、Buddha Brandのキーマンとして90年代の日本のヒップホップ・シーンに旋風を巻き起こす。2005年の改名以前はDev Large名義でMC、プロデューサー、DJ、執筆業など多岐にわたる分野で活躍。レコードディガーとしても定評があり、ヒップホップはもちろん、Soul、Funk、Jazz、Rock、日本の歌謡曲まで貪欲にレコード探求を続ける。
フリーダム・ジャズ・ファンクっていう言葉が浮かんできて、じゃこれで作ろうって感じになってって。
柳樂:まずこれはどういうコンセプトで作られたのかっていうところから、はじめてもいいですか。
D.L:気づいたら、こうなっていました。コンセプトは無かったんです。無かったっていうか、いろいろ緻密に、どういうのにしようか、こういう楽曲があるよ、こんなのもあるよみたいなことを言ってるときに、フリーダム・ジャズ・ファンクっていう言葉が浮かんできて、じゃこれで作ろうって感じになってって。曲ありきで、曲からいろいろこうイマジネーションが膨らんでった感じなんです。
柳樂:たとえば、キーとなる曲はどういう曲ですか?
D.L:もともとビリー・ウッテン(Billy Wooten)の“イン・ザ・レイン”を入れたかったんですよ。“イン・ザ・レイン”をいちばん最後に入れようみたいな感じで。でも、もうそれ無くなっちゃったんで、次の作品に入れると思うんですけど、このアルバムで言うとやっぱプラシーボ(Placebo)とレス・デマール(Les Demerle)、そうだな、そのへんが、すごく絶対入れたいものだなって。やっぱり最初の4、5曲めくらいの間に入れて、試聴機にかかったときにそこで引っかかるようなものになったらいいなと思ってたんです。
柳樂:プラシーボが3曲で、レス・デマールが4曲入ってますもんね。
D.L:そうなんです。この2組をピックアップしたかったんです。あとアイヴァン・ブーガルー・ジョー・ジョーンズ(Ivan Boogaloo Joe Jones)のこの“コンフュージョン(Confusion)”とか、ジャズベリー・パッチ(Jazzberry Patch)とか、そのへんのジャズ色が強いと思ってるんで。
柳樂:このミックスCDを何回も繰り返し聴いたんですけど、とくにびっくりしたのがレムリア(Lemuria)で、ぜんぜんイメージが違いますね。
D.L:あーそうですね、たしかに。
柳樂:D.L.さんの昔のインタヴューで「メロディアスで軽くないやつがいい」とかって、そういう軽くなくてファンキーでちょっと重いものが好きだみたいな話をされているんですよ。でも、レムリアって軽くてメロウな印象があったんですけど、ここに入っているレムリアはまったく印象が違ってて。だから、「こんなんだったっけ?」と思って何回も聴いたんですけど。プラシーボとかもそうですね。今回この並びで、このミックスでぜんぜん曲の印象が変わったのかなと。どういうイメージで作ったんですか?
D.L:最初から最後までだーっと行っちゃうのもおもしろくないので、2ヵ所か3ヵ所、パッと変えるところを作ろうと思って入れたのがレムリアと、マンフレッド・フェスト(Manfred Fest)。そこがすごい変わるところだったんですよね。あと、なんて言うのかな。これはあくまでも〈Pヴァイン〉が持ってるグレートな音楽の中で作った74分20曲っていう感じなんで、たぶんいつも出してる自分のミックスCDのときは、もっと究極にどういう音を出したいかっていうところで引っ張ってくるので、そういった意味でちょっとは違うかもしれないですね。もしかするとレムリアはこの選曲には、自分の『ゲットー・ファンク(Ghetto Funk)』シリーズだったら入らなかったかもしれない。
あと個人的に思ったのがやっぱり1曲目のこれ(“ア・デイ・イン・ザ・ライフ(A Day In The Life)”を死ぬほど聴いてたんですけど、具体的にこの作業に入るまで、作曲者がジョン・レノンとポール・マッカートニーだなんてぜんぜん知らなくて、これはすごいびっくりしましたね。たぶんそう思ってる人も多いんじゃないかな。まだ原曲は聴いてないんだけど、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの。どういうものなのか。ただ、こっちのこればっかり聴いてるから、あの、たぶんわかんないだろうな、原曲聴いたとき。そんな気がしますね。
柳樂:ちなみに、このへんのレス・デマールとかプラシーボとかって、なんかサンプリングとかもされてるんですか?
D.L:自分は、してないです。
柳樂:ご自分でサンプリングネタとして使われる曲とかも入ってるんですか?
D.L:いや、あのね、いっつもそうなんですけど、なるべく使った後に入れるかなんかで、使おうと思ってるのは入れないときが多かったですね、いままで。〈ビクター〉で、前に2枚ほどやったのがあるけど、あれも使おうと思ってるのは入れなかったです。
柳樂:普段のDJで使う曲が多いですか?
D.L:ぜんぜん多いですね。都内でやるときはかけてます。最近は、地方に行くときは和モノの、頭のおかしいムード歌謡しかかけないで45分とか1時間半とかなんで。
柳樂:D.L.さんいま和モノですよね。このあいだディスクユニオンの和モノのセールで整理券1番だったらしいですね? 並んでるんだいまだにって思って。
D.L:でも、もっとすごい人たちがいますよ。DJじゃない、一般のおじさん。50いくつだって言ってたけど、ずーっと高校生のときに聴いてた昭和40何年の音楽を聴いてるって人。あそこ行きました? 新宿の昭和歌謡館(ディスクユニオン)。
これ、全部■■■■にしてるんですよ。
柳樂:行きましたよ。
D.L:異常ですよね。入った瞬間から。
柳樂:階段から異常ですよね。
D.L:うん、そうそう。
柳樂:いま和モノがいちばんやばいですもんね。
D.L:やばいですね。だからおれ和モノのコンピもやりたいんだよね。めちゃくちゃかっこいいのあるから。名盤解放同盟とか、〈Pヴァイン〉から出てたやつはCDも廃盤で高いんですよね。やりたいなぁ。
柳樂:ははは。僕もしばらくD.L=和モノっていうイメージがあったので、今回のジャズ・ファンクのミックスCDは逆に新鮮でしたね。
D.L:そうですね。こういうのも普通に聴くんですけどね。
柳樂:でもずっと和モノでまぁかなりプレイされて、けっこう長いじゃないですか。なんか和モノずっとかけてきて、逆にそれでこういうレアグルーヴの掛け方が変わったり、発見があったりみたいのってあります? ちょっと変わり種のジャズ・ファンクみたいなのも多いじゃないですか。プラシーボみたいなのも。
D.L:そうですね。
柳樂:そのへんって、カウント・バッファローズ感っていうか猪俣猛感っていうか、石川晶感っていうか。そういう普通のUSのジャズ・ファンクと違う感じのグルーヴみたいなものが、このミックスにはあるのかなっていうのを感じたんですよ。
D.L:たしかに、そうですね。プラシーボというよりも、マーク・ムーラン(Marc Moulin)とか変なのいっぱい入ってるじゃないですか。あっちから聴いてからプラシーボに行ったほうなんで、自分のDJではよくありがちなメインストリームのジャズ・ファンクとか70年代のUSモノじゃない感じは、モロしてましたね。そういった意味でカウント・バッファローズとかめちゃくちゃなことしてるから好きなんですけど、ある種似たものを感じていたと言えばそうですね。
柳樂:なんかその感じなのかわかんないですけど、ザラザラした感じっていうか、ちょっとアンダーグラウンド感って言ったら違うかもしれないですけど、すごい太くて尖った感じがあって。全体的に。
D.L:これ、そうとうやばいミックスしてるよね。もうほとんどヒップホップなんですよ。楽曲は全部ジャズだけど。あと、これ、全部■■■■にしてるんですよ。
柳樂:!?
D.L:●●●●した上で■■■■■ってて。だからよく言われるんですよ。なんか太いですよね、あんな太かったっけなぁって。
柳樂:なるほどね、なんか音がすごいなと……
D.L:いままでありがちだった作り方のミックスCDではないんですよ。なんでそうなったかっていうと、MUROのやつ聴いたんですけど、すごい良かったんで、自分のはもっとアンダーグラウンドにできないかなっていうのがあって。
柳樂:そうですよね。だから僕がいちばん聴きたかったのは、レムリアとボビー・コール(Bobby Cole)が、そんな曲じゃなかったじゃんっていうことなんですよ。ボビー・コールはなんか、こういうミックスCDに入る感じの曲じゃないじゃないですよね、どちらかというとフリー・ソウル系で、もうちょっとライトな、爽やかな。
D.L:そうですね。
柳樂:だけどすげー粗いし音も太いし、これどうなってんだろうって思って。どういうミキサーをどういじったらこうなるんだろうなって思って。
D.L:じつはそういう強い▲▲▲▲▲になってるんですよ。だいたいいままで『ゲットー・ファンク』みたいなミックスCD って3日かかったのはほとんどないんですよ。これは全部合わすと5日くらいいってるかな。
いままで『ゲットー・ファンク』みたいなミックスCD って3日かかったのはほとんどないんですよ。これは全部合わすと5日くらいいってるかな。
柳樂:でもいままでそんなやり方したことないですよね。『ゲットー・ファンク』とか『テキサス・デス・ロック(Texas Death Rock)』とかでも。
D.L:そうですね。毎回こんなすごいのできればいいんですけどね。でも悲しいのは、誰も知らないんですよ。こんなすごいことをやってるって。もしかしたら音がちょっと怪しいなって思ってても、まさかここまで絵を描いてこうなんだなって思う人はいないんで。
柳樂:すごいなぁ……
D.L:このCDに入っても入らなくてもいいんですけど、■■■■を作ってもらうときに、その■■■■が変わる瞬間に、前のDJがいて後ろの前のレコードをひねりつぶすくらいズドンとくるつくりにしてくださいと言うんですよ。だからその、どの状態でもどこに行っても、誰の順番の後でも先でも、あ、絶対この曲かかっちゃうと前の人がかわいそうだなとか後の人かっこつかないだろうなっていう作りにしてくれってよく言います。だから全曲そういう感じになってるんです、本当に。
柳樂:たとえばそれはどういうところだったりします?
D.L:太いとこですね。いちばん太いところさらに太く。ちょっと困っちゃうのは、実際たとえばプラシーボの“ハンプティ・ダンプティ(Humpty Dumpty)”、これとか、なんて言うのかな。■■■■のほうがすごい太すぎるので、アルバムで▽▽▽▽▽▽▽の方をかける前に俺のをかけちゃうと▽▽▽▽▽▽▽のほうがつぶれちゃう感じになっちゃうんですよ、すごすぎて。すごいイコライジングしてもなかなか合わないものになってしまってて、最近出た■■■■に対して、やりすぎると困っちゃうななんて。かけれなくなっちゃって。それはもう、また▽▽▽▽▽▽▽のやつを■■■■作ろうかななんて思ってるんですけどね。
柳樂:ちなみにこれまではどうしてたんですか?
D.L:まぁ普通にできる範囲でちょろっとイコライザーとかいじるくらいで、他にできることは無かったと思いますね。
柳樂:じゃあ本当にそれですごい変わったんですね。
D.L:そうですね。あの、たとえば、うーんどうだろうな。クボタタケシってわかります? あいつとか、あの、DJのときにCDも多用するんで、たとえば坪井くん(illicit tsuboi)が作った曲とかもいつもヘビー・ローテションで入ってて、ああいう感じでそういうプレイをする人は、自分で加工したものを自分リミックスでかけるんでしょうけど、俺はそういうのやらなかったから。DJ Krushとか(DJ シャドウの)“オルガン・ドナー(Organ Donor)”の、すごい、もうなんだろうな、空爆にあってしまったようなすごいドラムのやつかけてて、こういうのいいな、なんて昔思ってたんですけど、まぁ、ああいうのを、こんどはいいなって思うんじゃなくて■■■■でかけちゃおうかなとか思ってるんですけど、なんかそういうことができたらいいな。
細かく叩くとすごい埃が出てくる危ないミックスCDです。
柳樂:じゃあ、でもご自分でDJするときのためにリミックスとかはされない?
D.L:ぜんぜんしなかったですね。あ、でも、■■■■作って以降は、いろいろ出てないのをやってるんだけど。KrushさんがMUROとやってる、“チェイン・ギャング(Chain Gang)”って曲、■■■■にしたから、よくかけてますね。
柳樂:そっか、ずっとプレイは基本■■■■ですもんね。
D.L:そうですね。あとそうだな、もっと本当はね、ちゃんとグルーヴよりのものをやりたいって考えたときもあったんだけどね、なんて言うのかな。MUROがやったフリー・ソウルのやつにけっこうもう好きなのが入っちゃってて、何曲か、2曲くらい、被ってるのあるかもしれないけど、あまりに向こうと合うともう意味ないから、そういうのはあえてやめようって入れなかったんですけど。あれはもうすごいいい選曲で、むちゃくちゃ、さすがだよな……
柳樂:MUROさんを意識してたんですね(笑)。
D.L:普通に考えると、あのキング(・オブ・ディギン)が3枚出した後に俺がやると人気ないなで終わっちゃうのかも知れないけど。けっこう、もうすごいガチガチかっこいい曲入ってるから、MUROがやると。だからハチマキしましたね、心で。それで、こういうものができたって感じですね。買える人はこの時期タワーで買えるから、逃さないでくれと言いたいんですね。こういうのなかなか作らないと思うから。
柳樂:そうですよね。
D.L:細かく叩くとすごい埃が出てくる危ないミックスCDです。あ、それちょっとかっこいいね。
柳樂:ははは。ザラッとしててちょっとスモーキーな感じで。
D.L:はい、そういう感じもありつつ。買ったリスナーの方は自分で叩いて埃を出してくださいと。
あのね、すごい好きなのはね、また〈グルーヴ・マーチャント〉ですけど、なんかいちばん最初に浮かぶのはいつもそれなんですけど、
D.L: そういえば、ぜんぜん話が違うんですけど、びっくりするくらいすごい女の子がいるんですよ、ヤマハのエレクトーン・コンクールに出た女の子が、ビリー・ウッテン(Billy Wooten)の曲を弾いたんですよ。ビリー・ウッテンがその子のすごいプレイをYoutubeで見て驚いたっていう。俺はこの子をプロデュースしたいなって思ったんですよね、連絡とって。ジャズの曲だけどヒップホップ的アレンジで何か足してって何かやりたいなと。
柳樂:これ、すごいっすね。
D.L:こんな女の子が。しかもこの曲だもんね。音なりだすと、凍っちゃうくらいすごい。
柳樂:上原ひろみだってヤマハのコンクールがはじまりですもんね。
D.L:この人と、なんかできないかな。
柳樂:それ最高じゃないですか。
D.L:連絡つかないかな。このYoutubeに上げてるのがたぶんお母さんなんですよね。アカウント名がそんな感じで。それでメール送ってみたんですけど、返事こないですね。見てないっぽいなと。
柳樂:ヴィジュアル的にもおもしろかったですもんね。エレクトーンだから、めっちゃ足踏んでるし。そもそもコンクールの雰囲気が、何も期待させない感じがいいですよね(笑)。
D.L:そう、逆にね、なんだよすごいじゃんって気になっちゃうもんね。まったく期待させないあの感じ。
柳樂:のど自慢大会で突然フリースタイルはじめるみたいな感じですもんね。突然何か起きちゃったみたいな感じで。これは、ここで呼びかけましょう!
ちなみになんか、ジャズで好きな曲を3つ挙げるとどんな感じですか?
D.L:あのね、すごい好きなのはね、また〈グルーヴ・マーチャント〉ですけど、なんかいちばん最初に浮かぶのはいつもそれなんですけど、あの、オドネル・リーヴィ(O'donel Levy)『ブリーディング・オブ・マインド(Breeding Of Mind)』に入ってる“ウィーヴ・オンリー・ジャスト・ビガン(We've Only Just Begun)”。ピート・ロックが使ってたけど、あれすごい好きですね。うーん、なんだろう、あ、ボビー・ハッチャーソン(Bobby Hutcherson) “レイン・エヴリィ・サーズデイ(Rain Every Thursday)”。ドーナツ盤が、めちゃくちゃ太いんですよ。70年代に出てるのにありえないくらい太くて、で昔からかけてたんですけど、これすごい好きですね。あとなんだろう。あれはもしかしたらジャズ・ファンク、ジャズじゃないかもしれないけど、“ザ・ダーケスト・オブ・ライト(The Darkest Of Light)”、“ラファイエット・アフロ・ロック・バンド(Lafayette Afro Rock Band)”の。すごい好きですね。
柳樂:やっぱヒップホップなセレクトですね。最近のジャズで好きなバンドいたりしますか?
D.L:そういえば、レコードで買ってそれいまだにかけてるんだけど、日本のジャズバンドで、ベースがすごい太くて、なんだっけな、あのグループ。大阪のグループで……4年くらい前に買ったんですよ。ヴィレッジヴァンガードの、イチオシみたいな感じでしたね。アナログは限定でネットで売ってて、普通のとこでは売ってなくてそこで買ったんだけど、それすごいかっこいいんですよね。
柳樂:Indigo Jam Unit(インディゴ・ジャム・ユニット)?
D.L:そう。かっこいいんですよ。ベースが効いててすごいかっこいい音してて。一回観に行きたいなって思ってるんだけどね。
柳樂:Indigo Jam Unitって、年齢的には普通にBUDDHA BRANDとか聴いてたりしそうですよね。
D.L:そうなんですかね。
柳樂:たぶん。僕もそうですけど、世代的に先にヒップホップがあってからジャズじゃないですか。たとえば、アメリカのジャズ・ミュージシャンでもいまはピート・ロックが好きとか、もうそういうやつらばっかりで。
D.L:あ、そうなんだ。
柳樂:ロバート・グラスパーとかだと、「いまのジャズ・ミュージシャンにどういう音楽聴けばいいかレコメンドしてくれ」って言うと、「J・ディラ全部と、スラム・ヴィレッジ!」とかそんな感じ。みんなヒップホップを子どもの頃に聴いてて、で大人になってから学校行ってジャズ勉強して、でそのあとジャズやりながらヒップホップっぽい音楽もやってるみたいなやつがすごい多くて。たぶん日本だったら、リスナーとしてMUROさんとかD.LさんとかのそういうミックスCDも聴いてて、いまはジャズもやって、みたいなそういう人、絶対多いですよ。黒田卓也さんって世界的なトランペッターがいるんですけど、彼はDJスピナがすごい好きで、とりあえずアメリカ行ったときに、ニューヨークで、スピナのイベントがあったから行ったとか言ってましたよ。
D.L:そうなんだ。みんな影響うけてるんですね、ヒップホップに。
柳樂:だからジャズ・ミュージシャンとかで人間発電所聴いてましたとか、自分でアルバム作って最後にD.Lリミックス入れたりとかそういうやつ絶対いますよ。
D.L: 機会があればやりたいなぁ。
柳樂:しかし、Indigo Jam Unitとかも普通にチェックしてるのが、すごいっす。
ロックは10年以上ずっと、いつかこの俺がデスロックって呼んでるジャンルをフリー・ソウルみたいにしてやるって思ってたんですよ。
D.L:ヴィレッジヴァンガードに行って、あれ、なんだこのベースって言って、ちょっと待ってってずーと聴いてて、あ、もうやばい買ってくって言って。最初、しょうがないからCD買ったんですよ。それで、読んだら郵便でレコード買えるって言うんで、なんだそっちも買うハメになるじゃないかよって言ってる間に買って、CDはもうあんまり聴いてないんですけど、レコードばっかり聴いて。両方買っちゃいました。
柳樂:どん欲だなぁ。和モノとファンク以外だとどういうの買います? いまだにいろんなジャンル買う感じですか?
D.L:買います。でもね、昔は「曲作ろう」と思って買ってたんで、このエレピのこの音が好きとかこのドラムが好きとかそういう感じで買ってたんで、そういう使わないレコードがどんどん増えてって、これはドラムのハコ、これはベースのハコ、これはシンセのハコって、ぜんぜん曲なんて作りやしないから、もうそういう買い方やめよっかなって。作ろうと思えばすごいの作れるんだけど、出すタイミングが時代が変わってきちゃって、90年代頭とか、いま買っとけば、あとで曲出してリクープできるとか思ってたけど、もう絶対できないんで。だから、うーんダメだなぁってなってきちゃって。
柳樂:それ、やばいネタだけ貯まってるっていうことですか?
D.L:うーんそうなんだよね。ぜんぜん使わなくなっちゃってるからね。いちばんそれで使わなくなっちゃっててやばくてやろうとしてるのが、ロックですね。もうロックは10年以上ずっと、いつかこの俺がデスロックって呼んでるジャンルをフリー・ソウルみたいにしてやるって思ってたんですよ。キーボードがよく聴こえるとか、ブレイクが多めとか、ファンキーに聴こえるとか、そういうのデスロックって呼んじゃってます。
柳樂:そっか、ロックのミックスCD出してますもんね。
D.L:あ、そういえば、俺、メタルのDJもやるんですよ。
柳樂:マジっすか。それは、どういう……?
D.L:それはね、年に2回か3回やってる……。
柳樂:どこでやるんですか。
D.L:〈Organ Bar〉です。
柳樂:へー。
D.L:クボタタケシもいっしょに回してますね、メタルを。あと近藤くんっていうデザイナーの。BB、えーとブラックベルトジョーンズDCっていうんですけど。BBJDCかな。あと、ファンクのDJの黒田さん。黒田さんは、ドーナツ盤でメタルを集めてるんですよ。だからドーナツ盤でメタルをかけるの。
メタルはメタルのマナーに則ってメタルの人になりきって当時の熱さを思い出すみたいなのじゃないと意味ないんで。
柳樂:メタルは何が好きなんですか。
D.L:俺が担当するのは、ジャパニーズ・メタルの時間って感じで、Loudness(ラウドネス)とか44 Magnum(44マグナム)とかEarthshaker(アースシェイカー)とか、いろんなそういう、恥ずかしいものをかけるのが大好きなんですよ。
柳樂:それを、ヒップホップっぽい感じで繋ぐんですか?
D.L:いやクボタはね、すごいヒップホップっぽくかけるんですよ。ビッグビート2枚がけとか。そういうのつまんないから俺は違うんですけどね。メタルはメタルのマナーに則ってメタルの人になりきって当時の熱さを思い出すみたいなのじゃないと意味ないんで。
柳樂:メタル・マナーのDJってどういうスタイルなんですか。
D.L:いや、高校くらいのときは、藤沢のギター・クリニック・スクールに44 Magnumの人が来てて、そのギターを観に行ったりしてた頃の視線でかけますね。その頃の視点でディープ・パープルをかけるとか、オジー・オズボーンをかけるとか、そういう感じですね。
柳樂:やっぱギターを大事にする感じで。
D.L:そうですね。
柳樂:そこやっぱ太いとかじゃないんですね。
D.L:違いますね。うるさいって感じですね。ギターをうるさく。
柳樂:ラウドな感じで。
D.L:そうですね、そうなんですよ。ほんとみんなそこですね。黒田さんもそうなんだけど、高校くらい……ヘビメタ・ブームだったときに、聴いてたメタルを俺たちがかけるみたいな感じで。30年振りにみたいな。
柳樂:メタルはメタル・マナーでかけるって発言やばいですね。かっこいい。
D.L:ダメなんだよ、メタルなのにヒップホップ的にかけちゃうのって。トリックとかやっちゃうんだよ、メタルで。ガーチキチキ、ガーチキチキとか。ぜんぜんダメで。そういうのはやっちゃダメなの。すごい上手くても、ヒップホップを通った人がやるメタルと違うんで。ヒップホップが無かった頃から最初にメタル聴いてた人たちは。
“ウォーク・ディス・ウェイ”とか。なんだろね、偽物っぽく聴こえてた。どっちかっていうと“ロック・ボックス”のほうがもっとロックだった。
柳樂:やっぱもとは当時普通に流行ってたメタルとかがお好きで?
D.L:そうですね。トップ40系から入ってメタル行って。アメリカ行って最初に、アメリカン・トップ40とかヘビメタが流行ってましたね。LAメタルとか。それが93年、4年くらいで、その時にもうランDMCの“サッカー・M.C.’s(Sucker M.C.'s)”とか出ちゃったから、並行して聴くようになって、それ以降、そっちばっか聴くようになって。だからメタルのほうが先でしたね、じつは。
柳樂:そういう話を聞くと、“ウォーク・ディス・ウェイ(Walk This Way)”でエアロスミスとランDMCが共演した時代のことも納得できますよね。
D.L:そうですね。あの頃はぜんぜんよく聴こえなかったんですけど、“ウォーク・ディス・ウェイ”とか。なんだろね、偽物っぽく聴こえてた。どっちかっていうと“ロック・ボックス”のほうがもっとロックだった。エディ・マルティネス(Eddie Martinez)のギターのソロが入ってて。あれはロックだと思ったけど。ビースティ・ボーイズがきて、なんかアリだなって思いましたね。レッド・ツェッペリン使ってたり。あと“ファイト・フォー・ユア・ライト(Fight For Your Right)”。どっちかっていうとロックの曲に聴こえちゃった、ラップの曲よりも。あれがすごい開いた感じですよね。
柳樂:やっぱビースティってけっこう衝撃的だったんですね。
D.L:もうニューヨークにいて、白人と思えないくらいレッド・アラート(DJ Red Alert)もみんなかけてましたね。あれはたぶん、ラッシュの力でしょうけど。ランDMCとマンツーマンでライブをやらせたり、ラジオとかも回ってたみたいだから、すごい、“ホールド・イット・ナウ、ヒット・イット(Hold It Now, Hit It)”っていう曲があるでしょ。「ホールドナウホールドナウ」っていう。あれがもう、ランDMCの“ヒット・イット・ラン(Hit It Run)”と“ホールド・イット・ナウ”が、五分五分のタイミングで必ずローテションで組まれてて、すごい流行ってましたね。『レイジング・ヘル(Raising Hell)』もすごい売れてたけど、だんだんビースティの『ライセンスト・トゥ・イル(Licensed To Ill)』のほうがすごい人気になっちゃって。でも、俺たちはそのへんの曲にはあんま反応しなくて、俺たちが反応してたのは、“スロウ・アンド・ロウ(Slow And Low)”でしたね。たぶん80くらいしかないピッチの。ウォーーーっていう、「let it go, let yourself go」っていうあのやつですね。あれをラジオだとWBSより、Kiss FMよりもっとちっちゃいWNEWっていう小さいラジオ局があって、そこのGhetto DJみたいなやつがいて、ナイス&スムース(Nice & Smooth)のアルバムをプロデュースしたオウサム2(Awesome 2)なんですけど、そいつらがかけてるすごい人気ないラジオ番組があって、夜中2時からやってて、そこでそれがかかってて、それを毎週みんなチェックしてたんですよ。ビースティはそっちだなって感じでやってて。
柳樂:小さい番組はやっぱりそういうディープな曲を。
D.L:そうなんですよ。あともう1つ、DNA&ハンクラヴっていうDJの番組があって。そっちはね、ウルトラ・マグネティックMC’s(Ultramagnetic MC's)のいちばん最初のシングルをリリースしてる会社をやってたんですよ、DNAインターナショナルって。そこでは、「あのpeter piper picked papersって言ってる曲聴いたか、あんなのワックだぜ」ってランDMCの“ピーター・パイパー(Peter Piper)”をディスってる曲があって、それをかけてて。自分たちもそのほうがかっこいいなって思ってて、でも世の中はもう間違いなくランDMCを推してるんですよ。確実にランDMCが8:2くらいで優勢なんだけど、その2くらいのもわもわってしてる人たちはそっちのラジオを聴いて、絶対いいこっちのほうがいいって言ってた、そんな感じでしたね。
〈プロファイル〉が実際とてつもない、〈デフジャム〉なんかよりビッグなレーベルだったって知らないと思うんですよね。
柳樂:その頃いちばん好きなヒップホップって何でした?
D.L:ヒップホップで、なにかな。〈プロファイル(Profile)〉がすごい流行ってたんですよ。プロファイルっていうレーベル。だから〈プロファイル〉系のものはすごい好きでしたね。ぜんぜん流行ってなかったけど俺が好きだったのはドクター・ジキル&ミスター・ハイド(Dr.Jeckyll & Mr.Hyde)の“ファースト・ライフ(First Life)”って曲とか、あとディスコ・フォー(Disco Four)。ディスコ・フォーはね、何のため、why、was I born、nah mean、ガキの頃からのクエスション、なんだっけなあの曲。それで使ってる曲なんだけど、“ザ・キング・オブ・ヒップホップ(The King Of Hip Hop)”って曲。〈プロファイル〉ばっかり聴いてましたね。
柳樂:D.Lさんに〈プロファイル〉のイメージってあんまないですね。
D.L:あの、なんて言うのかな。いま日本にいる人、あの頃18くらいだった人はいま40いくつだろうけど、そのときニューヨークに住んでなかったんで、たぶん、〈プロファイル〉が実際とてつもない、〈デフジャム〉なんかよりビッグなレーベルだったって知らないと思うんですよね。すごい、毎週ラジオからかかる新曲のやばいのって〈プロファイル〉だったんで。渋谷の、いまもうなくなっちゃったけど、駅降りるとフリーマーケットみたいになってたんですよ、昔。そこでニューヨークのラジオを誰かがたぶん送って、それを日本でダビングして売ってたんですよ。今日はWBS、来週はKissのとか、日付違いで、けっこう何十本もあって、わけのわかんない人がやってたんですよ。そういうので聴いてたら多少はわかるけど、そういうので聴いてなかったらほとんど入らないから、〈プロファイル〉がすごい流行ってたのはたぶん知らないと思うんですよね。〈スリーピング・バッグ(Sleeping Bag)〉とかもすごい流行ってたし、ジャンパー作るくらい流行ってたし、なんて言うのかな、その時期そのタイミングで、ピークだったように見えるレーベルっていっぱいあるんですよね。〈ワイルド・ピッチ(Wild Pitch)〉もそうだし。
柳樂:へー。
D.L:これあの、ぜんぜんこの話と違うんだけど、ウルトラマグネティックMC’sの〈ワイルド・ピッチ〉の“トゥー・ブラザーズ・ウィズ・チェックス(Two Brothers With Checks)”のときに、日本におれ、ウルトラ呼ぼうと思って仲良くなってて、そのビデオの中に出てるんですよ。野球やるシーンで、〈ワイルド・ピッチ〉の社長と奥さんと息子と。で、1人足りなかったんでおれが入って、ホームベースのところで、一塁はこの人、二塁はこの人、三塁はこの人、ホームベースはこの人みたいな感じで、そこで野球っぽいことをやってるシーンがあるんだけど、そういうのちょっと出てる。
まぁ、いま何を言おうとしたかって言うと、〈ワイルド・ピッチ〉もいまもう無いし、本当にあったのってくらい誰も覚えてない、何でもないレーベルなんですけど、当時は、あの、宣伝にTシャツを作って配ってたり、宣伝用のレコードジャケットのサイズの段ボールを道路脇の柱にホッチキスで止めたりして、ビギーの宣伝だぜみたいにやったり、ストリート・プロモーションみたいなことやってたんですよ。で、俺たちみたいなのは、それを剥がして持って帰っちゃうみたいな(笑)。日本ではレーベルもあんまそういうことやんないなって帰ってから思ったけど、あっちではしょっちゅうやってましたね。
ステッカーがあとすごいいっぱいあって、もう、もちろんそれはもう〈ワイルド・ピッチ〉も〈プロファイル〉も〈デフジャム〉もどこでもそうなんだけど、なんで12インチの宣伝ごときにこんな2パターンも3パターンもステッカー作っちゃうのかなって、わけんねーなってくらいいろんなステッカーを貼って、流行ってない頃から貼っちゃって、あたかもすごい流行ってるって勘違いさせながらラジオですごいプッシュするんで、それがすごい蔓延してく……みたいなやり方とか。(O.C.の)“タイムズ・アップ(Time's Up)”のときのステッカーもそうだけど──こういうなんか、手のやつなんですけど、それなんか流行る前からいろんなとこに貼ってあって、何なんだろうこれ「タイムズ・アップ」、時間だぜみたいなタイトルで何なんだろ何なんだろと思ってたらぐあーっと来て。そういうのやってましたね。すごいお金かけて、それがプロモーションになるのかわかんないけどやっちゃってましたね。
12インチの宣伝ごときにこんな2パターンも3パターンもステッカー作っちゃうのかなって、わけんねーなってくらいいろんなステッカーを貼って、
あと、渋谷のシスコの、当時プロモでがんがん売れるからどんどんプロモの12インチをとってくれとってくれってきてて、シスコのレコード送る担当やってたんだけど、当時のマンハッタンとかブルックリンとかクイーンズに、その街の、まぁなんて言うのかな、プロモ盤を一挙に握ってるような、怪しいガキとかが一杯いて、そいつらから2ドル50とかでプロ盤買えるんですけど、「4枚しか売っちゃダメだって言われてるから4枚しか売れないよ」って言ってるやつに「倍の5ドル出すから倍の10枚くれ」って言うとそいつらも金がないから「お前に売るけど内緒だぞ」みたいな感じで10枚くらい売ってくれるんですよ。でそれをシスコで日本に送って、クボタが日本で受け取ってニューヨークは俺がやるみたいな感じでずっとやってた時期があったんだけど、そういう感じで、お金を持ってるから日本人に売っちゃうっていうのはあんまりよくないけど、実際イギリス人と日本人しかがっつり買わなかったから、日本に流れた当時のプロモ盤っていうのはそういうふうにやってたんですよね。でそういうふうにプロモ盤をいっぱい持ってる彼らは、レコードも持ってるけど、そいつの家とかに行くとそれといっしょにステッカーを束でいっぱい持ってたんですよね、いろんなタイプの。それももらって日本に送っちゃってたんですけど、なんかね、プロモのやり方とか、昔はそんな感じだったんですよね。
柳樂:すげーなんかストリートの、地道なっていうか。
ある日、レコードを買いに行ってそのあと歩いてたらクール・キース(Kool Keith)がいて、電柱に登ってて、ウルトラ・マグネティックって書いてあるステッカーを貼ってて……一生懸命。
D.L:うん、本当そうだったね。もうストリートの地道のどうのこうのって話でいちばん狂ってるのが、ニューヨークで、ジャマイカ・アヴェニューっていうところがあって、クイーンズの。まぁジャマイカ人がけっこういてジャマイカの風俗とかもあったからそこはジャマイカ・アヴェニューって感じで呼んでたんだけど、そこである日、レコードを買いに行ってそのあと歩いてたらクール・キース(Kool Keith)がいて、電柱に登ってて、ウルトラ・マグネティックって書いてあるステッカーを貼ってて……一生懸命。何やってんだって言ったら、お前ジャパニーズだなって下りてきて、ぜんぜん面識ないのに「お前と俺はこうやってステッカー貼ってるときに会うから、女紹介してくれ」みたいな、すごすぎて(笑)。最初にクール・キースと話したのはそれだったんだよね。で、実際あの、“トゥー・ブラザーズ・ウィズ・チェックス”のビデオのときに、当時の、まだ誰も知らなかったウエダカオリと、●●の彼女だった人ふたりを連れてったんで、よく見るとライヴのシーンで日本人の女が二人いる。よく見るとカオリちゃんと、チッチっていう……。
柳樂:カオリちゃん?
D.L:DJ Kaoriです。日本人の女よんでくれって言われたから。そうそう。
柳樂:マジで。クール・キースが電柱登ってたってのもやばいですね。
D.L:登ってたし、他の、普通のプロモーションをやる子どもたちがステッカーを貼るかのように自分もやってたみたいな感じで。すごいですよ。そんなもんだったんですよね。やつらもきっと契約金とかもぽーんと入るんだろうけどすぐ使っちゃってぜんぜんお金なくなるから自分でそういうことやってるって感じで。
柳樂:へーすげー。そっちにいないと本当そんなのわかんないですもんね。
D.L:そうですね。
柳樂:すごいアンダーグラウンドだったんですね。
D.L:そうですね。そのビデオのときに、結局そのカットすごすぎて写んなかったんだけど、クール・キースがシマウマ柄の超ハイレグみたいになってる怪しいパンツはいて、背中にピンク色の空気ボンベみたいのしょってて、裸で変な帽子かぶって、すごい感じで出てきてライヴとかやったんだけど、あんまりかっこよくなかったんだよ、正直。で、そこカットされてたね。もう、ウルトラのメンバーもみんな凍っちゃってて。1人だけ、やっぱ狂ってるんだよね。
柳樂:狂ってますね
D.L:もうね、クール・キースはベルヴューっていう精神病院に入院してた時期があったり、頭おかしい時期があったんですよ。でも、日本に来たときも頭すげー悪くて。BUDDHA BRANDでクール・キースのオープニングみたいなライヴやったときが1回あって。ロックバンドの54-71のバックの演奏になぜかクール・キースが入るみたいなアルバムが出てて。そのときに、ポルノ映画ほしいから、ポルノ買いに行こうって言われて、それは付き合わなかったんだけど、子どもがミニカーを欲しいって言ってるから連れてってくれっていうんで中野のまんだらけに行ったんです。その時に、3000円くらいの、べつにそんな高くないミニカーをずーーっと30分くらい眺めててずーーっとなんか言ってて「これを買ってってやらないと、俺のポルノのお土産はけっこうあるから子どもに何も買ってかないと怒るから、買ってってやりたいけど俺はもっとポルノを買いたいからこれを買う自信はないなぁ」とかずっと言ってんだよ独り言。で、また買わずに他のとこぐるって回ってまたそこ戻ってまたこうやってこれを買わないとどーのこーのって、結局買わないで帰ったんだけど(笑)。やっぱ変態なんだよね。自分のポルノのお土産はけっこう買ってったのに、子ども用のお土産は結局買わなかったんだよ。
柳樂:狂ってますね
D.L:もっとすごいのがね、楽屋で俺と話してるときに、白人のアメリカ人の女がここにクール・キースいるからってのを聞きつけて楽屋に来て。俺はクール・キースと真剣な話してたんだけど、女が横に来てハーイって言いはじめたら、こっちで話してるのに、もう顔はほとんど女のほうばっか向いてて、だんだん話がつじつまが合わなくなってきて、もういつの間にか横に女が座ってきちゃって、もういいやインタヴューみたいな感じになっちゃって、いやインタヴューじゃないや、このビジネスのトークはまた今度にしよう、明日でもいいから。こっちが忙しくなったから、こっちでちょっと話するからみたいな感じになっちゃって。めちゃくちゃでしょ、これやっぱ変わってないな、昔のあーゆー感じで、色気違いだなって感じで……
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気づけば予定の時刻を超過していた。ミックスCDの話から、メタルDJ、そしてネットで見つけた新たな才能、アメリカでのヒップホップのプロモーションや親交のあったクール・キースの話まで、振れ幅の広い、ディープな話の連続だった。ちなみにここに掲載できた話題は半分にも満たない。いま、D.Lがとてつもなく危険なDJになっていることを我々の手ではここまでしかお伝えすることはできない。もし、そのさらなる答えが知りたければ、D.LのDJの現場に足を運んでほしい。そこにはファンク/レアグルーヴを自分の流儀でプレイするDJの究極の姿を見ることができるはずだ。