「KING」と一致するもの

 サウス・ロンドンを拠点とするギタリストであり、現在はビート・メイカー/プロデューサーとしても世界中で高い人気を誇る edbl。デビュー・シングルを発表した2019~2021年の作品をまとめた日本独自の編集盤『サウス・ロンドン・サウンズ』と、続く『ブロックウェル・ミックステープ』でここ日本でもブレイク。今年9月には、SANABAGUN. への加入も大きな話題を呼んだ注目のギタリスト、Kazuki Isogai との共作『The edbl × Kazuki Sessions』を。そして10月には、イギリスの新進シティ・ソウル・バンド、Yakul のヴォーカリストであるジェームズ・バークリーをフィーチャーした『edbl & Friend James Berkeley』をリリースと絶好調、勢いが止まらない。そこで今回、アルバム1枚を通しての初の共作者となった Kazuki Isogai と、彼とは同い歳で、お互いに注目する間柄だという Suchmos のギタリスト、TAIKING のふたりに、edbl の魅力について、そして現在の音楽シーンについて、ギタリストの視点から語ってもらった。

1曲目の “Worldwide” と、最後の “Left To Say”。ギターうめぇと思いながら聴いてました。
(TAIKING)

edbl がつくるビートの良さ、おもしろさはどういったところですか?

Kazuki Isogai:サウンドがすごくカラッとしているというか。昔のヒップホップはもう少し重みがあった。edbl のサウンドは、まさにサウス・ロンドンっぽい、カラッとしていて、いい意味でボトム(低音域)が少ない感じ。でも、もの足りなさはなくて、その乾いた軽さがが心地いい。

TAIKING:同じ感想ですね。Kazuki くんとやってる『The edbl × Kazuki Sessions』、すごくいいね。特に1曲目の “Worldwide” と、最後の “Left To Say”。ギターうめぇと思いながら聴いてました。このカラッとした感じは、どうやって出してるんだろう? 自分の作品でも狙ってやってみるんだけど、全然カラッとならないんだよね。

Kazuki Isogai:edbl と話してると、ヒップホップとかR&Bがすごく好きで、やっぱりヒップホップがベースになっているビートではあるんだけど。サンプルパック(注:ドラムスやベースなどの音素材集)を使っても、イコライザーのかけ方がウマいんだと思う。僕がつくったトラックを渡して、戻ってくるときには、全部 edbl のサウンドになってるから。

TAIKING:特にカラッとした音、「デッドなサウンド」はアメリカ発の作品にも感じるけど、同じようにつくれない。難しい。

Kazuki Isogai:でもリヴァーブ(残響音を加え空間的な広がり感を出すエフェクト)はかかってるんだよ。けっこうウェットなんだよね。だからやっぱりサンプルの使い方がウマいんだと思う。まあ生音のレコーディングの話をすると、海外は全然違う。スタジオの天井の高さとか。

edbl がもともとはギタリストであることは、ビート・メイクにどういう影響を与えていると思いますか?

Kazuki Isogai:僕も最近ビートつくるんですけど、「ギタリストが感じるビートの気持ちよさ」っていうものが、共通してあると思っていて。edbl も、頭の中で描いてるビートのイメージがあって、それをそのまま表現してるだけだと思うんです。やっぱり、彼がいるサウス・ロンドンのシーンからの影響が大きいんじゃないかな。

TAIKING:シーンからの影響、それがやっぱり大きいだろうね。

Kazuki Isogai:僕と TAIKING くんも、違うタイプのギタリストだけど、同じようなシーンにいるから、似たような感性になるし。edbl はサウス・ロンドンに住んでて、周りにはトム・ミッシュとかいるわけだから、自然とそのシーンのスタイルが身についてくる。だから僕らがマネしようと思っても、そこにいないから、その場の空気感を知らないから、なかなか難しい。ギタリストって、ロサンゼルスに行ったら、やっぱり少しLAっぽいスタイルになるもんね。

共演するきっかけになった “Nostalgia” って曲があるんですけど。edbl が弾くギターが、ちょっと思いつかないフレーズというか。どうやって弾いてるんだろうって。(Kazuki Isogai)

いま、名前が出たトム・ミッシュが、いまの時代のギター・ヒーローと思えるのですが。

TAIKING:彼はなんか絶妙ですよね。ビート・メイカーでもあるけど、曲がちゃんと「立って」いる。そこが日本人にも聞きやすいのかなと。普通にメロディが素晴らしくて、やっぱり edbl と少し似てる。メロウなんだけどカラッとしてる。ふたりに共通して思うのは、ドラムの、ビートのサウンドの良さなんだよね。

Kazuki Isogai:そうだよね。ビートが良かったり、ドラムの音がいいと、それだけで曲が成り立つ気がしてて。ドラムの音が良くないと、あちこち音を重ねたくなったりとか、ドラムではじまる曲にできないとかあるから。

先ほど出た、ギタリストならではのビート感の話ですけど、他の楽器奏者と話が合わないという場面もありますか?

TAIKING:好き嫌いの話だから、しょうがないという感じではあるけど。僕が気持ちいいのは、カッティングだったり、ペンタトニック(・スケール。ギターの基本となる音階)を弾いているときが多いんですけど、カッティングのときに、スネア・ドラムで締めて欲しいというのはある。

Kazuki Isogai:ポケット(気持ちいいリズムのタイミング)にハマるドラムはいいよね。僕は、めちゃくちゃリズムにストイックだった時期があって、PCで音の波形を見ながら、合わせてギターを弾くというのををやってた。1弦なのか、6弦まで当たった瞬間をジャストとするのか、そんなところまで考えながら。ソウライヴのギタリスト、エリック・クラズノーがライヴでユル~く弾いている曲がかっこよくて、それを波形で分析したりもしてね。そうやって研究してきていまは、リズムが「円」であるとしたら、自分も一緒になって回るんじゃなくて、引いたところからその円を見る感じでリズムを捉えてる。そうすると前ノリでも、後ノリでもいけるっていう。

TAIKING:その感じわかる。リズムに入り込んじゃったらダメで。客感的に捉えてないと、ウマく弾けないところがあるよね。

edbl のビート、リズムの捉え方もおふたりに近いから、彼の音楽を気持ちよく感じるんでしょうね。

Kazuki Isogai:それこそ SANABAGUN. のドラマー、一平に近いかな。彼もヒップホップ・ベースのドラマーなんで、edbl に似ている。やっぱりヒップホップをルーツに持っている人のビートが好きなのかなって。

TAIKING:最近はでも、(ロックの基本となる)8ビートを求められることも増えてきてね。

近年は16ビートの流行りが続いていますが、8ビートを弾く方がいま、難しくなっているということはありますか?

TAIKING:それは、いちギタリストとしての視点なのか、音楽シーンの一員としての視点なのかによって、話し方が変わるなと思ってるんです。ちなみに僕は最近、8ビート派になってきてて。16ビートからはちょっと離れようかなと。

Kazuki Isogai:8ビートってめちゃくちゃ難しいよね。ロックの人がやる8ビートと、僕のような違う畑の人がやる8ビートは全然違う。

TAIKING:それが最近、畑の違うギタリストが交わるようになってきてて、そこがまたおもしろいなって思ってる。

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メロウなんだけどカラッとしてる。(edblとトム・ミッシュの)ふたりに共通して思うのは、ドラムの、ビートのサウンドの良さなんだよね。(TAIKING)

edbl は、ギタリストとしてはどういったタイプですか? リヴァプールの音楽学校でギターを習ったそうですが。

Kazuki Isogai:edbl と共演するきっかけになった “Nostalgia” って曲があるんですけど。edbl が弾くギターが、ちょっと思いつかないフレーズというか。どうやって弾いてるんだろうって。

TAIKING:うんうん、このギター、どうなってんのって感じ。

Kazuki Isogai:日本の音楽学校で「これ、いいよ」と教えられるものと、海外で教えられるものは全然違う。ビートルズなんかをずっと、子どもの頃から聴くわけだから、それは違うよなって。edbl のビートには、UKロックのカラッとした感じもあって。サウンドの方向性といったところで、何かUKロックとも通ずるものはあるかな。

TAIKING:共通点を感じるところ、あるね。

ロックに代わってヒップホップが世界的には音楽シーンの中心となって久しいですが、ヒップホップ以前と以降でギターという楽器はどう変わったと思いますか?

Kazuki Isogai:僕は、15歳まで音楽は聴くけど、楽器はやっていなくて。RIP SLYME とか SOUL'd OUT といったラップが流行っていて聴いていた。でもギターが好きだな、レッド・ツェッペリン好きだなっていう思いもあって。自分のなかでヒップポップと、好きな音楽が結びつかなかったんですよね。

TAIKING:それ、すごくわかる!

Kazuki Isogai:でもその後、音楽の専門学校に行って、ジャズ・ブルースを学んだんですけど、ビッグ・バンドについて学ぶ際の教材として講師の人が聴かせてくれたのがソウライヴだった。ギターのエリック・クラズノーってロックっぽくて、入っていきやすくて。それで彼の、ずっとループに乗っているような感じのギターの存在、かっこよさを味わった。自分がやってたギターと、ヒップホップがちょっとそこで結びついた。

TAIKING:自分も、ギターという楽器と、どんどん新しく出てくるダンス・ミュージック、ヒップホップが結びつかなかったって話、めちゃくちゃわかる。僕はもうバンドやってたけど、高校の友だちとかはみんなDJをやりはじめて。ライヴ・ハウスじゃなくて、「クラブ行こうぜ」だった。同じ音楽なんだけど、ヒップホップには入り込めないなって、境目みたいなものがありましたね。それで僕の場合は、Kazuki くんみたいにリンクするところがないまま来ちゃってるんで。もちろんヒップホップも好きだから聴いてはいたけど。まあ自分のバンドが大きかったかな。

Kazuki Isogai:本当、Suchmos が出てきた瞬間に、日本の音楽シーンはすごく変わったからね。それまでもシーンはあって、僕もアンダーグラウンドでそういうシーンにいたからわかるけど、ただメジャーでやる人たちがいなかった。

Suchmos の曲を聴いていて、TAIKING さんはワンループの上で弾くのが得意だと思っていたので、お話聞いて意外でした。

TAIKING:得意ということはないですね。どっちかというと、コード進行変われ、早く変われ(笑)と思って弾いてますから。いまソロでやってるのはバッキバキにコード変えるし、めちゃくちゃ転調するし。

Kazuki Isogai:TAIKING くんは、つねに TAIKING くんだからいいんだと思う。Suchmos で弾くときも変わらないから、そこがいいんだと思うし、ギタリストはそうあるべきとも思いますね。

ヒップホップ以降は、音色とテンポ、BPMがより重要になっていると思うんです。edbl の音楽はテンポ感も絶妙なのかなと思うのですが。

Kazuki Isogai:速い曲でもBPM100とかですね。僕もロー・ファイ系のビートをつくったりするんですけど、最近はちょっと流行りのテンポが速くなった。ラッパーとやるときは、彼らが得意なBPMを求められることが多くて、93とか。ただビートの気持ちよさって、遅くてもドラムがタイトだったらノレるし、速くてもドラムがルーズだと速く感じなかったり。曲全体のテンションといったものも大きく関わってるんじゃないかな。だからそのときの体調とか雰囲気とかで、つくるものが変わるというか。つくる側からすると、そう思うんですけど。

TAIKING:個人的には、ユルいテンポはちょっと飽きたところがある。それで速くしようと、自分の曲ではまずはBPMからいじってみるんだけど、いい感じのノリを出すのは難しい。8ビートで 、BPM130とか125でいい感じの曲をつくりたいと思ったりするんだけどね。ウーター・ヘメルやベニー・シングスとか、フワフワ系の8ビートを得意にしてるオランダの人たちがいるんだけど、彼らの音楽とかいいなと思ったり。あと、ああいう曲つくりたいなと思うんだけど全然できないのが、ドゥービー・ブラザーズの “What A Fool Believes”。歌メロがすごいなって。それで言うと、日本ではやっぱり藤井風くんがすごい。いまライヴで一緒にやってるんだけど。

Kazuki Isogai:彼はバーでピアノ弾いたりもしていたんでしょ?

TAIKING:家族がね、ジャズ喫茶を経営していて。ピアノと、サックスもバキバキで。それでステージでは、お客さんからのリクエストを、「いま、YouTube で調べてやります」とか言って、すぐに弾いて歌ったりとかね。風くんを見ていると、ギターと鍵盤の違いを感じますね。僕はギターを弾くとき、フレットや弦を目で見て、形で見るタイプで。でも鍵盤は「見て弾く」というのがないから、自由度も高いし、ギターのように「小指が届かないからあの音は出せない」みたいなことがない。だからハーモニーのセンスみたいなものは違うはずだなって。

“What A Fool Believes” も、マイケル・マクドナルドが鍵盤でつくるから生まれるメロディだと、よく言われますね。

TAIKING:そうだと思います。転調の仕方も含めて。そういった、転調のセンスとか、風くんもすごく似てる。

Kazuki Isogai:ギタリストって、音楽が好きでギターはじめたんじゃなくて、ギターがかっこいいから手にしたっていう人も多くて。音感もなければコードもわからない状態ではじめて。鍵盤の人は子どものころからやっている方もいて、音楽の捉え方がそもそも違うんだよね。

僕が意識しているのは、楽曲の顔にギターを持ってきたいっていうこと。僕の弾くリフが楽曲の顔になって欲しいなって、そこは意識してプレイしてる。(Kazuki Isogai)

先日、サブスクなどで「ギター・ソロがはじまると曲を代えられる」という話題が盛り上がっていました。ただ僕は、エリック・クラプトンやエディ・ヴァン・ヘイレンといった往年のギター・ヒーローの時代とは違う形で、近年はむしろギターのサウンドが求められていると感じていて。edbl の音楽が人気なのも、ギターの用い方がウマいことが要因のひとつだと思うのですが、そのあたり、どのように捉えていますか。

TAIKING:ギター・ソロ云々の話はあまり気にしてないですね。ギター・ソロだけじゃなくて、間奏が敬遠されているのかなって。

Kazuki Isogai:そうそう。単純に曲の聴き方が変わってきてるだけで。そのアーティストが好きというリスナーじゃないと、間奏に来たら次の曲にとばされるよねって。

TAIKING:ギターという言葉がトレンドに乗ったのはいいことだと思います。ありがたいですけどね。

Kazuki Isogai:まあ本当に、昔と比べて、ギターは楽曲の顔になるものではなくなっているよね。だから僕が意識しているのは、楽曲の顔にギターを持ってきたいっていうこと。僕の弾くリフが楽曲の顔になって欲しいなって、そこは意識してプレイしてる。

わかりやすいギター・ソロが主流じゃないだけで、ギターのトーン(音色など)の違いを楽しめるような人は昔より増えていそうですよね。ジョン・メイヤーがあれだけ人気があるっていうのは、リスナーのギターの聴き方も進化しているんじゃないかと思うんですけど。

TAIKING:ジョン・メイヤーについて言うと、独自の、自分のトーンをしっかり持っているっていうのと、結局ほとんどがペンタトニックで。世界3大ギタリストとかいろいろいうけど、みんなペンタトニックだなって。だから、ペンタトニック・スケールでしっかり「自分の歌」が歌えるかっていうこと。それで、しっかり自分のトーンと、自分のキャラクターをわかりやすく出せていることが大事なのかなと思います。

カッティング派は不利ですね。

TAIKING:だからコリー・ウォン(ヴルフペックのメンバーでもある、新時代のカッティング・ギター・ヒーロー)が3大ギタリストに入ってきたら嬉しいよね。その枠、あるんだって。

Kazuki Isogai:コリー・ウォンはやっぱり衝撃だったと思うよ。ナイル・ロジャーズに代表される、シャキッとしたカッティングの究極版みたいで。

TAIKING:キャラクターもいいよね。ちゃんとセルフ・プロデュースできていて、見せ方もウマい。

Kazuki Isogai:ジョン・メイヤーの話に戻ると、彼は自分で歌うから、ギターの配置とかも絶妙なんですよ。TAIKING くんにも感じるところなんだけど。曲をトータルで、歌の隙間とか考えてギターを鳴らしているから。

TAIKING:クラプトンとか、Char さんもそうかな。

Kazuki Isogai:そうだと思う。だから僕、最近は歌詞をちゃんと理解して、ギター弾くようにしてる。それによって自分の弾くものが、けっこう変わってくるからね。

edbl も実は歌うんですよね。なるほど、自ら歌うギタリストの特徴についても、よくわかりました。今日はおふたり、ありがとうございました。

Squarepusher - ele-king

 待望の、ということばはこういうときのためにとっておくべきだろう。
 渋谷のハチ公前で、大型スクリーンに映し出された “Terminal Slam” のMVを目撃したのが2020年1月30日の深夜0時。翌日、(現時点でも最新のオリジナル・)アルバム『Be Up A Hello』がリリースされた。すでに未知のウイルスについては報道されていたけれど、ダイヤモンド・プリンセス号の衝撃はまだで、このときはぜんぜん他人事だった。2か月後にはスクエアプッシャーの来日が控えている──その後の顚末はご存じのとおり。
 あれから2年と半年。ほんとうに、待望の公演だ。しかも今回はハドソン・モホークまで帯同するという。豪華以外のなにものでもない。

 会場に着くと、ちょうど真鍋大度がDJを終え、ハドソン・モホークのプレイがはじまるタイミングだった。スクエアプッシャーということで古くからのファンもそうとう来ていたはずだが、むしろ若者の姿のほうが目立つ印象を受ける。そりゃそうだ。ハドソン・モホークは2010年代のスター・プロデューサーのひとりである。彼をこそ目当てにしていた層もかなりいたのではないだろうか。

 グラスゴーから世界へと羽ばたいた青年はまず、トゥナイトの “Goooo” で O-EAST に火をつける。一気に盛りあがるオーディエンスたち。アルバムなどで聴かれるとおり、やはりアゲるのがうまい。前半はそのまま昂揚を維持して突っ走る。中盤ではムードを変え落ち着いた曲も披露。新作『Cry Sugar』の表題曲的な “3 Sheets To The Wind” などを経て終盤へと突入し、再度アゲの路線へと復帰。最後は90年代の香りかぐわしい “Bicstan” で〆。都合1時間弱、緩急のついたパフォーマンスを披露してくれた。

 しばらくは転換の時間。トム・ジェンキンソンがあれこれ機材をセッティングしている。BGMとして、彼のルーツを想像させるようなエレクトロ~ジャングル~ブレイクビーツがつぎつぎと流れていく。高まる期待。30分ほどが過ぎたころ、スクリーンに渋谷の街が映し出された。“Terminal Slam” のMVだ。

 蘇るあの日の記憶。広告の暴力性をみごとアートとして表現したこの動画をいまあらためて上映することは、2年半という時間の経過をリセットする効果を発揮してもいた。今回のライヴがもともとは『Be Up A Hello』リリース後の来日公演であったことを思い出す。と同時に、今日のVJが同MVを手がけた真鍋大度であることを意識する。
 ステージに登場するジェンキンソン。ベースを構えている。つぎつぎと彼らしい高速の曲が繰り出されていく。ハドソン・モホークとは対照的にずっと速いままで、ジャングルのビートもほぼずっと維持されていたように思う。
 すさまじかったのは、どうやっているのかわからないけれど、中盤の一部の時間帯を除き、ひたすらベースでほかのサウンドまで鳴らしていたことだ。電子音楽家であると同時にベースを知り尽くした凄腕の演奏家でもあるという、彼のアイデンティティを申し分なく見せつけるパフォーマンスである。

 もうひとつ、さすがだなと思ったのは、おそらく大半の曲が未発表か、もしくはその場で生成したものだったこと。昨年『Feed Me Weird Things』がリイシューされたのでもしや……と構えてもいたが、ショバリーダー・ワンのようなグレイテスト・ヒッツ・ショウではまったくなかった。聞き覚えのあるメロディやリズムの断片が何度か耳に入ってきたので、既存の曲もやっていたとは思うんだけれど、それとはわからないほどにアレンジが変えられている。スクエアプッシャーはあくまで前を向いている──ミニマルな四角形を基調とした真鍋大度による、これまたカッコいいヴィジュアルとのシンクロ率の高さ含め、とにかく楽しくて、途中からずっと踊りっぱなしだった。
 終盤、『Be Up A Hello』冒頭のメロディアスな “Oberlove” がプレイされ、やっぱり2年半前のハチ公前を思い出してちょっとセンチメンタルな気持ちになる。アンコールでは “Come On My Selector” を披露、ファン・サーヴィスも忘れていなかった。

 連日、報道では第8波を警戒する声があがっている。「グリフォン」だとか「ケルベロス」だとかいった変異株も話題になっている。けれどもこの日この時間ばかりは長いトンネルを抜けたような、2年半の狂騒がまるでなかったかのような感覚を味わうこととなった。ハドソン・モホークとスクエアプッシャーという、世代も作風もまるで異なる両者のパフォーマンスをともに体験できたことも、エレクトロニック・ミュージックのファンとして嬉しかった。待望した甲斐のある、素敵な一夜だったと思う。

interview with Special Interest - ele-king

 パンクは何度も死んで何度も生き返っている、ということはパンクは死なないということか、スペシャル・インタレストはその最新版のひとつ。ニューオリンズのこのパンク集団は、なんらかの理由でギリギリのところを生きている疎外者たちのために、いま、パンクにレイヴを混ぜ合わせて未来に向かっている。

 文化的な文脈において彼らをマッピングするなら、以下のようになるだろう。1970年代後半の、アメリカ西海岸のパンク・ロックのそのもっとも初期形態のザ・スクリーマーズには2人のゲイが、彼らの影響下に生まれたデッド・ケネディーズには黒人が、そしてザ・ジャームスにはゲイと女がいたことが象徴的なように、そこは人種的にもジェンダー的にもマイノリティーの坩堝だった。ことにバンド内におけるこうしたミクスチャーは西海岸の初期パンクの特異な点で、未来的な特徴だった。クィア・パンクとブラック・パンクが共存するスペシャル・インタレストは、その良き継承者である。
 そう考えると、70年代の西海岸のパンクと併走するカタチで、NYにおいて人種的にもジェンダー的にもマイノリティーのユートピーとして成り立っていたアンダーグラウンド・クラブ・カルチャーがパンクと結託するのも時間の問題だったと言える。そもそもパンクのライヴの、そこにいる誰もが好き勝手に踊るというところもレイヴっぽかった。

 スペシャル・インタレストの3枚目のアルバム『Endure』は楽曲も多彩だが、曲のテーマもいろいろで、えん罪で刑務所に投獄された黒人革命家についての曲があるかと思えば「午前6時にクラブを出て行く女の子たちへのラヴ・ソング」もあって、また別の曲ではアメリカなんかくそ食らえと叫んでいる。猛烈な勢いをもって現代のパンク・バンドは逆境を生きている(Endureしている)人たちを励ましている。ジョン・サヴェージは、パンクとは、marginal(欄外/隅っこ/ギリギリ)を生きる勇敢な人たちのためにあると言った。素晴らしいことに、いまここに真性のパンクがある。注目して欲しい。


メンバー:アリ・ログアウト(Alli Logout)、マリア・エレーナ(Maria Elena)、ネイサン・カッシアーニ(Nathan Cassiani)、ルース・マシェッリ(Ruth Mascelli)

日本のみんなには、曲を聴いて、日本ではどんなことが起こっているのかを考えてみてほしい。自分たちの周りにいる人びとが何と戦っているのか、私たちはどのようにお互いを大切にすることができるかをね。

この度は、取材を受けてくれてありがとうございます。『The Passion Of』から聴いていますが、スペシャル・インタレストのバックボーン、コンセプトにとても興味があります

アリ:今日はアメリカでのショーの初日で、いまみんなでショーの前にカフェでコーヒーを飲んでるところなんだ。だから、みんなで一緒に質問に答えるね。

スペシャル・インタレストの原型は、マリアさんとアリさんがニューオリンズに移住し、最初は2人ではじめたそうですね。で、ルースさんとネイサンさんと出会った。何を目的として4人組のバンドとして始動したのかを教えてください。

アリ:そう。最初は私とマリアの2人で、ギターとドラムマシンとパワードリルからはじまった。テキサスではじまったんだけど、ニューオリンズのフェスに出るために2人で曲を作るようになったことがそもそもの出発点だね。で、テキサスからニューオリンズに引っ越したときに、マリアが2人のイタリア人の友だちを集めてくれたというわけ(笑)。ルースとネイサンは私たちよりもずっと前からニューオリンズに住んでいて、彼らとはニューオリンズに引っ越してきてから出会った。

ルース:ぼくは、以前マリアがいたバンドの大ファンで、彼女らのためにTシャツをデザインしたことがあって、マリアとはそれをきっかけに知り合った。

マリア:私はネイサンのバンドの大ファンだったから、彼らのショーをテキサスでブッキングしたりしていた。じつは私がルイスとネイサンに声をかけたのは、ザ・スクリーマーズ(**)みたいなバンドをやりたかったからなんだけど、でも結果的には、スクリーマーズみたいなバンドとはほど遠いバンドになってしまった(笑)。

なぜニューオーリンズに移住したのでしょう? 

アリ:さっき言ったマリアと一緒にフェスで演奏するためにニューオリンズに行ったんだけど、そこでたくさんのクールなクィアの人びとに出会ったんだよ。もうひとつの理由は、ニューオリンズのオーサ・アトーっていう人が作っていたジンの大ファンだったから。『Shotgun Seamstress』という黒人を取り上げたジンなんだけど、それを読んだとき、すごくエキサイティングな気持ちになって、この街だったら私らしくいられるなって思った。

バンド誕生の背後にはいろんな思いがあったと思いますが、そのなかのひとつに憤怒があったとしたら、それは何に対しての憤怒だったのでしょうか?

ルース:なにか特別な憤怒があったというより、もっといろいろな感情があった。

マリア:むしろ物事のあり方について意見を持たずに生活することのほうが、すごく難しいと思うんだよね。それはつまり、物事のあり方について語らないアートを作ることのほうが難しいということでもある。だから、アートを作っている限り、自分が思っていることが表現されるのは、ある意味避けられないことなんだよ。それが憤怒かもしれないし、ほかの何かかもしれない。

アリ:私自身は、計画的に音楽を作ることはあまりない。自分の周りではいろいろなことが起きていて、自分がそれに対していま何を思うかが自然に出てくる。サウンドや歌詞は、それが作られる時間や場所で変わってくるんだ。

マリア:面白いことに、私たちはインタヴューで、「なぜ歌詞が政治的なんですか?」って訊かれることはあっても、「どうして政治的じゃないんですか?」って訊かれることはないんだよね。歌は常に欲望によって書かれているものだっていう仮定は、どうして成立してるんだろう。そして、その欲望がセックスや愛についてのことだけに限られているっていうのも、考えてみたらおかしな話だよね。

そうですよね、音楽には、もっと多様なトピックはあるだろうと。ちなみにスペシャル・インタレスト結成前から、すでにみんな音楽活動をしていた?

ルース:ぼく以外は、みんなバンドをやっていたよね。

ネイサン:ぼくはニューオリンズで、Mystic InaneとPastyというふたうつのバンドで演奏していた。その活動を通じてアリとマリアとルースに出会った。

マリア:ネイサンのバンドって、めちゃくちゃかっこよかったんだよ。ネイサンが入ってたバンドは、お遊びじゃなくて本物のバンドだった(笑)。

アメリカにおいて、クィア・パンクやブラック・パンクのシーンというのは、いまどのようなカタチで発展しているのでしょうか? 

アリ:局所的に発展してると思う。

マリア:アメリカってすごく大きいから、他の国々に比べるとシーンが地区で分かれているんだよね。それって過去のアンダーグラウンドのアートの世界もそうだったと思う。

ルース:前よりも、そういったシーンにアクセスしやすくなってきているというのもあるんじゃないかな。インターネットもあるし。

アリ:マリアが言った通り、アメリカってすごく大きいから、シーンが州や街で分かれていると思う。でもここ10年で、アメリカのアンダーグラウンドのクィアの音楽シーンではすごく面白いことが起こっている。とくにニューヨークはそうだよ。ハウス・オブ・ラドーシャとか、ジュリアナ・ハクスタブルとか、いろんなクールなアーティストが出てきてるし。正直カリフォルニアはわからないけど。少なくとも、ここ10年では私が面白いと感じた音楽はカリフォルニアにはないように思う。でも、ニューオリンズにも本当に美しくて奇妙なアート・パンク・シーンが存在しているし、そのなかでスペシャル・インタレストが成長できたのもシーンの広がりがあったからこそなんだ。ここ数年のアメリカのアンダーグラウンド・シーンはかなりすごいよ。さまざまな地域でシフトして、どんどん広がっている。

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面白いことに、私たちはインタヴューで、「なぜ歌詞が政治的なんですか?」って訊かれることはあっても、「どうして政治的じゃないんですか?」って訊かれることはないんだよね。

音楽面でとくに参照にしたバンドや作品はありますか?

ルース:ぼくたちは、本当にたくさんの種類の音楽に影響を受けているんだ。それをぶつけたり、混ぜ合わせてサウンドを作っているから、たくさんいすぎて誰から答えたらいいのかわからない。何か面白いものを作っているよういう点で影響を受けているのは誰か挙げるとすれば、ポーラ・テンプルかな。彼女のプロダクションは参考にしてる。あとは、アジーリア・バンクスのファースト・アルバム。“Yung Rapunxel”のドラムサウンドなんかはすごくカッコイイと思うから。それ以外だと、外でたまたま聴いて、ずっと頭に残っているようなサウンドからインスピレーションをもらったりもするよ。

アリさんは、 アサタ・シャクール(**)の自伝を読んで曲を書くようになったとある取材で話しています。過激なテロリストであった彼女の何があなたの情熱に火を付けたのでしょうか?

アリ:歌詞を書いていた最初の頃に読んでいたのがその本だった。私が(精神を病んで)病院に入院していた時期だったんだけど、本のなかには彼女が病院(
女性矯正施設)で警察から苦しめられていたストーリーが書いてある。自分が同じ空間にいたから、その部分にとくに心を動かされたんだよね。彼女の人生のストーリーは、すごく大きなインスピレーションになった。

デビュー・アルバム『Spiraling』の冒頭の“Young, Gifted, Black, In Leather”は、Quietusのインタヴューにおいて、アリさんのなかの「ブラックネスとクィアネスが交差する唯一の瞬間」だと説明されています。パンクやグラムに多大な影響を受けたスペシャル・インタレストの音楽面にテクノやハウスのようなダンス・ミュージックを取り入れた理由も、そこに「ブラックネスとクィアネスが交差する瞬間」があるからということも大きいのでしょうか? 

アリ:あえて意識したわけではなかったけど、自分たちがいままで聴いてきた音楽、演奏してきた音楽がそういった音楽だった。だから、自分たちの音楽がよりダンサブルになるのは時間の問題だったんだと思う。私たちのサウンドは、ドラムマシンや使う楽器を変化させることで、どんどんスケールを広げているし。それに、あらゆるジャンルの音楽はブラック・ミュージックから派生し、発展している。そういうものに影響されているわけだから、クィア・ミュージックのなかにもその要素があると思う。
 でも、自分たちがブラックネスとクィアネスが交差する瞬間のようなサウンドを作るということを目標に真っ直ぐ進んでいるとは思えない。私にとっては、自分たちの音楽はまだまだ変化している途中の段階にいるように感じるし、まだぶらついているように感じるんだよね。これからもずっと今回のようなサウンドを作り続けていくのかはわからないな。

いまの質問と重なるかもしれませんが、『Endure』は、1曲目の“Cherry Blue Intention”、それに続く“(Herman's) House”から、じつにパワフルなダンス・サウンドが続きます。そして、3曲目にはパンキッシュな“Foul”。この流れはバンドの真骨頂に思いましたが、あなた方からみて、パンクとダンス・ミュージックの共通点は何なんでしょうか? 

ルース:音楽の歴史のなかで、レイヴやテクノやハウス・ミュージックもアンダーグラウンド・ミュージックだった。そして、人びとはそういった音楽を使って自分たちのシーンを作り上げてきた。パンクもダンス・ミュージックも、みんなで楽しみを共有する音楽であるというところが共通点だと思う。サウンドを聴くことももちろん楽しいけれど、ショーの現場で、複数の人たちが一緒にその音楽を経験するということが、どちらのジャンルの音楽にとってもいちばんの醍醐味なんじゃないかな。みんなで音楽を楽しみながら、その場でエナジーが生まれることは、共通点のひとつだと思うね。

先行で発表された“Midnight Legend”も、とても良い曲で、音楽的にはスペシャル・インタレストの新境地だと思いました。攻撃性だけに頼るのではなく、ハウシーで、ポップな回路を見せたと思いますが、ミッキー・ブランコをフィーチャーしてのこうした新しい試みは、スペシャル・インタレストにとってどのような意味があってのことなのでしょうか?

アリ:その曲は、すごく自然に生まれた。私は、あの作品はハウシーでポップというよりは、よりシネマティックなサウンドに仕上がったと思う。“Midnight Legend”を聴いて新境地だと思うのはまだまだ早いよ(笑)。私たちは、次のシングルを聴いてみんなを驚かせるのが楽しみでしょうがないんだよね(笑)。次に来るのは“Herman’s House”なんだけど、あれを聴いたら、スペシャル・インタレストはいったいどこに進もうとしているんだ!?ってさらに混乱すると思う(笑)。でも、どの変化も計算したわけじゃなくて、すべて自然に起こったことなんだよ。今回のアルバムは、そうやって出来上がったたくさんの種類のサウンドが詰まってる。そのひとつとして、このポップっぽい曲をまず人びとに聴かせるのは、みんながびっくりして面白くなるだろうなって思ったんだよね(笑)。新しいように感じるけど、いろいろな要素が混ざって音楽ができてるっていう点では、じつはすごく私たちらしいんだ。

ルース:それは本当に自然の流れで、ぼくたち自身、10曲も似たような曲を連続で聴きたくはない(笑)。だから、ヴァラエティ豊富なサウンドが出来上がっていったんだと思う。

Endureって、じつは未来に向かって突き進んでいることを意味していると思うんだよね。何かに向かう前向きな姿勢。

私たち日本人にはリリックがわからないのが歯がゆいのですが、今作の歌詞に込められたメッセージで、とくにこれだけは日本のリスナーに知ってほしいという言葉(ないしはテーマやコンセプトなど)があれば教えてください。

アリ:すごくディープな質問だね。答えるのが難しい。スペシャル・インタレストはアメリカ人であることについて、すごくユニークでありながらもリアルな視点を持っているバンドだと思うんだよね。アメリカのなかでクィアである自分たち、そして黒人である自分の視点を持っている。私たちが互いに求めることができるのは、耳を傾け、自分の状況を理解することだと思うんだ。私たちは、みんな苦労をたくさん経験しているけれど、その苦労の仕方は人それぞれ違うし、持っている能力だってみんな違うから。だから、お互いのストーリーを聞いて、みんながそれを聞き合って、世のなかどこでもいいことばかりじゃないんだということを理解し合える。
 日本のみんなには、曲を聴いて、日本ではどんなことが起こっているのかを考えてみてほしい。自分たちの周りにいる人びとが何と戦っているのか、私たちはどのようにお互いを大切にすることができるかをね。『Endure』は、いろいろな悲しみを理解し、それを表現しているアルバムだよ。日本のみんなには、アルバムを聴くことで日本のストリートで起こっていることを知ろうとし、それを理解し、それに共感してもらえたら嬉しいな。

アルバムは後半、“My Displeasure”〜“Impuls Control” 〜“Concerning Peace”と、非常にハードに展開します。この構成にはどんな意図があるのでしょうか?

マリア:このアルバムはパンデミックのあいだに書かれたから、その期間の経験や状態がそのまま形になっているんだ。深呼吸をするような瞬間や、深い喜びを感じる瞬間、じっと耐える瞬間。そういった経験が、アルバムのなかで展開しているんだよ。

なぜ「Endure=不快さや困難を耐える/持ちこたえる」という言葉をタイトルにしたのでしょうか?

アリ:endureという言葉には、文字通りすべてが含まれていると思う。私たちは自分の感情を感じなければならないし、それを乗り越えていかなければならないし、そこから成長していかなければならない。endureって、じつは未来に向かって突き進んでいることを意味していると思うんだよね。何かに向かう前向きな姿勢。

ネイサン:じつはぼくたちは、ボツにしたけど“Endure”というタイトルの曲も作っていたし、endureって言葉は“Herman’s House”(***)にも出てくる。

ルース:バンドが成長を続けるって意味にも感じられるし、ぼくはendureって言葉が好きなんだよね。この言葉からは耐えるという意味だけじゃなくて、進化の可能性を感じる。

とくに尊敬しているハウスやテクノのDJ/プロデューサーを教えてください。

アリ:私たち、これからジェフ・ミルズと同じフェスに出る予定なんだけど、それが楽しみでしょうがないんだ。それが本当に起ころうとしているなんて信じられない。

ルース:ジェフ・ミルズは最高。ジェフはもちろんだし、デトロイト・テクノって本当に刺激的だよね。DIY精神が感じられるし、自分の目の前で起こっていることに向き合って、未来を見ている感じ。

アリ:ドレクシアもそのひとり。あと、私たち全員が大ファンなのはポーラ・テンプル。それから、グリーン・ヴェルヴェット。まだまだたくさんいるけど、いすぎていまは答えられないな。

質問は以上です。どうも、ありがとうございました!

アリ:ありがとう。日本には本当に行ってみたいから、来年行けますように。

(*)ザ・スクリーマーズ(The Screamers)は、パンク前夜の1975年にLAに登場したプレ・パンク・バンド。ギターなしの、シンセサイザーとドラムによるテクノ・パンクの先駆者で、バンドの2人の主要メンバーはゲイだった。

(**)アサタ・シャクール(Assata Shakur)は、60年代のブラック・パワー・ムーヴメントにおいて、米国政府との武力闘争を辞さない黒人解放軍(BLA)の元メンバーで、銀行強盗や市街の銃撃戦によってFBIの最重要指名手配テロリストのリストに載った最初の女性であり、トゥパック ・シャクールの義理の叔母でもある。

(***)“Herman’s House”は、ルイジアナ州立刑務所に41年間独房で監禁されたアンゴラ スリーとして知られる、黒人革命家の一人、ハーマン・ウォレスへの頌歌。

宮松と山下 - ele-king

 香川照之主演というだけで観ようと思っていたら、「銀座のクラブでご乱行」という報道が出た。3人がかりでホステスに強制猥褻を働き、その映像をスマホで送信する。どこかの医大生みたいな振る舞いだったという。すぐにも銀座とはそういうところだという擁護論が出たかと思えば、銀座はそういうところではないという別な声も同業者から浮上する。僕は銀座育ちだけれど、子どもの頃の話なので、夜の銀座も最近の銀座もぜんぜん知らない。何が本当なのかまるでわからず、「僕がその場にいれば……(収められたのに)と思った」というオズワルド伊藤のコメントを聞いていると店側に客を遊ばせるスキルがなかった気もしてくるし、「ママの髪をめちゃくちゃにした」とまで聞くと、香川の嗜虐的な性格はもっと根深いところから出ている可能性もあると思えてくる。女性をモノとして扱うとなるとサイコパシーも疑わなければいけないし、そうした気質が役者としての成功をもたらしたという指摘も最近は増えている。いずれにしろ、この騒ぎのせいで昆虫採集に明け暮れる番組『昆虫すごいぜ!』まで見方が変わり、昆虫をつまむ時の手つきがエロチックな動作に思え、脳内イメージは手塚治虫の描くマンガのように官能性を帯びていく。『時計じかけのオレンジ』のアレックスや『カリギュラ』を演じたマルコム・マクダウェル、あるいは『アメリカン・サイコ』のベイトマンや『マシニスト』のトレバーを演じたクリスチャン・ベールと同じタイプに香川の分類も変わっていったというか。同じく残虐非道な役をやっても長門裕之や緒形拳にはなかった肉感があり、がっちりと体重がのしかかってくる迫力が香川照之にはある。とはいえ、西田敏行や勝新太郎ほど威圧感はなく、家庭内に収まりながら『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスを演じられるという意味では『クリーピー 偽りの隣人』(16)で演じた西野は最も適役で、隣に座られたホステスの恐怖まで想像できる気がしてきた。

 以前は香川照之のことはまったく好きではなかった。西川美和監督『ゆれる』(06)の兄役がそれまでとは180度異なる役回りで、もしかしたら思ったよりいい役者じゃないかと思えたのも束の間、以後は何をやっても『ゆれる』のコピーで、『アンフェア』(06)でも『カイジ』(09)でもまったく同じ顔つきで出てくる。それは役を与える側にも問題があるんだろうけれど、引き受けなければいいとも思うし、『トウキョウソナタ』(08)も1回目は素直に観られず、『映画 ひみつのアッコちゃん』(12)で鏡の精として出てきた時はさすがにブチギレてしまった。顔の筋肉から力を抜いた表情というのか、あれがもういやでいやでたまらなかった。赤塚不二夫の原作ではもっとハンサムな設定だったと記憶していたし、香川がやる必要はないだろーと思って、頭の中でCGを駆使し、ほかの顔に描き変えながら観ていたほどだった。そのようにネガティヴな感情を伴わなくなったのはやはり『半沢直樹』がきっかけで、似たような役回りでも過剰な演出によって戯画化することによって、不思議なことに面白く見えてきたのである。それはもしかするとあの表情に笑いの要素が加味されたということであり、なるほど『昆虫すごいぜ!』やフマキラーのCMがそれに拍車をかけることとなった。そうなると「もっと観たい」に切り替わってしまうところが大衆心理の浅はかなところ。そこに「香川照之主演」のクレジットである。つまり、これはと思う絶妙のタイミングで『宮松と山下』という作品の情報が舞い込んできたのである。というわけで全世界の性被害に遭われた女性たちやセクハラで人生を台無しにされた女性の皆さん、あるいは伊藤詩織さんにも申し訳ないですと思いながら『宮松と山下』を観てしまいました。ちなみに僕も高校生の頃に痴漢の被害に逢ったことがあります。なので、女性たちが感じる屈辱は少しはわかるつもりだし、あまりの驚きに瞬間的に声は出せないという意見には100%同意です。

 ここからは作品だけに集中。そして、その価値があることを伝えたい。オープニングは瓦屋根のアップ。あまりにも強調するので、なぜかアン・リー監督『グリーン・デスティニー』を思い出す。カメラが遠景を映すと時代劇のセットで映画の撮影がおこなわれていることがわかってくる。香川演じる宮松は映画のエキストラで斬られ役を演じ、ひと続きの殺陣で殺されては着替え、主人公が行く場所に移動してはまた殺される。何度も殺される。上手いも下手もない。淡々とした作業のように殺される。映画の前半はまるで騙し絵のようで、「地」と「図」の関係がまったく見えてこない。壁のない美術館で絵だけしか存在しない状態を思い浮かべることが難しいように、しかし、この映画では「図」だけを見せることに成功している。舞台でも可能かもしれないけれど、映画ならではのイリュージョンが延々と続く。騙されたことがわかると思わず笑ってしまうほど、それはもうお見事。「地」とは、この場合、現実を意味していて、騙し絵から転出し、ストーリーが新たな局面に入ると映画のテイストはまったく違うものになっていく。作品全体の構成という意味では『カメラを止めるな!』(17)に近いものがあり、しかし、物事を別な側面から捉え返す視点の移動があるわけではない。宮松はいわば後半で歴史と出会い、エキストラでいた方がどれだけよかったかを思い知らされる。日本がこれまで戦争の加害者でいたことを忘却し、主体性を持たないことで平和に過ごしてきたように。香川の表情はこれまでに観たどの演技とも異なっていて、無表情をつくっていたときとは比べものにならないほど「無」を感じさせる。『ゆれる』でつくっていた無表情にはまだ外部との関係を拒もうとする意志が感じられ、それが何度もコピーされることで僕にはうるさく感じられたのだけれど、『宮松と山下』で見せる無表情に外部はなく、何も語りかけてこない恐ろしさと完成された孤独が漂っている。近いといえば『ひかりごけ』(92)の三國連太郎だろうか。エキストラの出番が終わり、谷(尾美としのり)に話しかけられるシーンで、人が自分に話しかけてくること自体に驚いた様子を見せるシーンはとくに秀逸で、「他者」を描くとはこういうことかなと思う。

 ストーリーを書くとそれ自体がネタバレになってしまうので、抽象的に書いていくしかないのだけれど、この映画で扱われるテーマは家族である。日本の映画がもうひとつ面白くないと思う理由のひとつにメジャーであれマイナーであれ家族映画ばかりつくるということがあって、『宮松と山下』もそのテンプレートからは脱していない。またか……と思うのだけれど、統一教会と自民党が個人を家族の檻に閉じ込めて外に出すまいとしてきた歴史が明るみに出てきた現在、どのような形であっても日本人が個人でいることは許さないという構図が『宮松と山下』にも投影されているように観えてしまい、後半を覆い尽くす閉塞感はその分厚さを動かしがたいものとして印象づける。僕がとくに面白かったのは、メタ視点ではあるけれど、宮松が映画の撮影では楽しそうに自撮りをするなど自然な家族を演じているのに、現実の世界では他人行儀になりがちで、家族だからといって一緒に住むことが必ずしも当然のことのようには描かれていなかったという対比と、兄と再会した妹(中越典子)が思わず兄を抱きしめるシーンは冒頭の瓦屋根のように最初はアップにせず、ロイ・アンダーソンばりに遠景で見せたこと。エモーショナルに訴えるという感覚を明らかに削いでいて、家族が再会しても大した感動はなく、これはもはや意地悪だったとしか思えない。家族は個人の集まりではなく、常に命令を待っている予備隊のようなもの(そもそも日本では教育政策や税制度がそれを促すようにできている)として描かれ、主体性は宙ぶらりんのロープウェイに喩えられる。そう、『宮松と山下』は個人主義の孤独か家族主義の束縛のどちらかを選べと観客に圧力をかけてくる。少し意味は違うけれど、安倍晋三銃撃事件を起こした山上容疑者の伯父が、こうなると山上の母は洗脳が解けてしまう方が可哀想でしょうというコメントをしていて、なるほどと納得してしまったのだけれど、そのような優しさがこの作品にはない。実に厳しい。エキストラというのは、日本国民全体の比喩のようであり、そうした国民の1人1人が政治的主体になるということはどのような精神状態を引き起こすかということをシミュレーションしているかのような気さえしてきた。それこそ日本が軍事的主体になるという思想を後押ししていたのが『シン・ゴジラ』(16)なら、それは同時に加害者であった責任も思い出せというのが『宮松と山下』ではないかと。『シン・ゴジラ』の能天気ぶりが『宮松と山下』の前では際立ってくる。ちなみに香川照之はどことなくゴジラに似ている。そりゃあ銀座も壊すわな。

Black Moon & Smif-N-Wessun - ele-king

 90年代アンダーグラウンド・ヒップホップのクラシック2作がピクチャー・ヴァイナルとなって蘇る。
 どちらもブート・キャンプ・クリック関連で、ひとつはブルックリンのブラック・ムーンによる93年のファースト・アルバム『Enta Da Stage』。もうひとつは、スミフン・ウェッスンによる95年のファースト『Dah Shinin’』。いずれも90年代のハードコア・ムーヴメントを代表するアルバムだ。
 さらに、それぞれのアルバム収録曲を組み合わせた7インチ3枚を同梱したボックスセットもリリース。詳しくは下記より。

’90s東海岸を代表するHIPHOP CLASSICSな2作品、ブラック・ムーン『Enta Da Stage』とスミフン・ウェッスンの『Dah Shinin’』が2枚組ピクチャーヴァイナル仕様でリリースとなり、各3枚の7EPも同時リリース! またその全てをコンパイルした各ボックス・セットの販売も決定!

 NY・ブルックリン出身のブラック・ムーンが1993年にリリースしたファースト・アルバムにして問答無用のクラシック『Enta Da Stage』。その『Enta Da Stage』にもフィーチャーされて注目を集めたユニット、スミフン・ウェッスンが1995年にリリースしたファースト・アルバムにして90年代の決定的名盤『Dah Shinin’』。アーリー’90sのNYハードコア・ムーヴメントから生まれたこの歴史的なアルバム2作がオフィシャルの2枚組ピクチャー・ヴァイナル仕様で世界初のアナログ化! また両タイトルから名曲を組み合わせた7インチもピクチャー・ヴァイナル仕様でそれぞれ3枚カット! この全てピクチャー・ヴァイナル仕様でリリースされたアナログをBOXにまとめて販売します。VGAの独占かつ超限定での販売になりますのでお早めにどうぞ。

[2枚組ピクチャー・ヴァイナル 商品情報]
品番:PLP-7785/6
アーティスト:BLACK MOON
タイトル:Enta Da Stage
¥6,000 (With Tax ¥6,600)
発売日:2022/10/26

品番:PLP-7787/8  
アーティスト:SMIF-N-WESSUN
タイトル:Dah Shinin'
¥6,000 (With Tax ¥6,600)
発売日:2022/11/23

*BLACK MOON / SMIF-N-WESSUN - 2LP / 7EP 予約ページ
https://anywherestore.p-vine.jp/collections/black-moon-smif-n-wessun

[VGA BOX商品情報]

品番:VGA-5009
アーティスト:BLACK MOON
タイトル:ENTA DA STAGE - PICTURE DISC BOX

・Enta Da Stage 2LP
・Who Got Da Props? / How Many MC's... 7inch
・I Got Cha Opin (Remix) / Black Smif-N-Wessun 7inch
・Buck Em Down (Da Beatminerz Remix) / Enta Da Stage 7inch

価格:¥15,000(With Tax ¥16,500)

品番:VGA-5010
アーティスト:SMIF-N-WESSUN
タイトル:DAH SHININ’ - PICTURE DISC BOX

・Dah Shinin' 2LP・Bucktown / Let's Git It On 7inch
・Wrekonize (Remix) / Sound Bwoy Bureill 7inch
・Wontime / Wrektime 7inch

¥15,000(With Tax ¥16,500)

BLACK MOON / SMIF-N-WESSUN -VGA BOXセット予約ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/vga-5009-10/

interview with Bibio - ele-king

 はじめにビビオの10枚目のアルバムが『BIB10』であることを知ったときはその飾り気のなさに少し笑ってしまったが、しかしこれは、堂々としたセルフ・タイトルということでもある。10枚目にしてたどり着いた、ビビオ以外のなにものでもないもの。20年足らずの間にコツコツと10枚もアルバムを作りながら音楽性を拡張してきたこと、ビビオの揺るがない個性を確立したこと、その両方に対する誇りが伝わるタイトルだ。
 一聴して『BIB10』は、ヴァイオリンの演奏を学んだことによってトラッドでフォーキーな路線だった前作『Ribbons』~EP「Sleeping on the Wing」から踵を返すように、70~80年代のブラック・ミュージック──ヴィンテージ的なファンク、ソウル、ディスコからの影響が色濃いアルバムに思える。以下のインタヴューのスティーヴン・ウィルキンソン自身の言葉に頼ると、夜のアルバムだ。ジャケットの妖艶なサテンのギターが示しているように、シンセやエレキによるエレクトロニックでセクシーなサウンドとともに、ファルセット・ヴォイスで歌いまくっている。歌うこと自体を遠慮していたようだった初期を思うとずいぶんな変化だし、家でのリラックスした時間に寄り添うことに長けたビビオの音楽のこれまでの傾向を考えると、ファンキーでグリッターなディスコ・チューン “S.O.L.” でのダンスフロアへの祝福、その思い切りのよさには驚き気持ちよくなってしまう。それに、これまででもっともプリンスへの敬愛がストレートに炸裂したアルバムでもある。煌びやかで、官能的なのだ。
 ただ、『Ribbons』にソウルの要素が入っていたように、『BIB10』にもヴァイオリンの演奏を生かしたトラッドなムードもあれば(“Rain and Shine”)、アルバム後半、ビビオが得意とするアコギの弾き語りを骨格としたメロウなフォーク・ソングもある(“Phonograph”)。このアルバムで言えば、(歌詞というよりサウンドが)夜になってダンスフロアに向かうところからはじまって次第に朝が訪れるようなストーリーになっているが、様々な音楽が無理なく有機的に混ざり合っているのはこれまでのアルバムと同様だ。

 ビビオは10枚目のアルバムを自ら祝いたいと話しているが、長くビビオの音楽を聴き、その変遷を追ってきたリスナーからしても祝福ムードのある作品だ。わたしたちは彼が地道にプロデューサー、プレイヤー、ソングライター、そしてシンガーとしての幅を広げてきたのを知っているし、何よりも、どんなスタイルでもどこかノスタルジックな温かさを醸すその音楽に親しみを覚えてきた。初期に強く影響を受けていたボーズ・オブ・カナダのノスタルジーがそこはかとなく不気味さを滲ませているのに対し、ビビオのそれは素朴で優しい。
 せっかくの機会なので、『BIB10』の話だけでなく、本人にこれまでのキャリアを少し振り返ってもらった。ここでは新しいビビオと懐かしいビビオが溶け合っているから。

『Fi』と『Hand Cranked』に関しては、機材があまりないという「制限」がもとになって生まれたテクニックがたくさんあったし、それがあのローファイの美学を生んだんだよね。

音楽メディア〈ele-king〉です。あなたの音楽を長く聴いてきた読者が多いので、今回は10作目となる新作『BIB10』を起点としつつ、はじめにこれまでのディスコグラフィについても聞かせてください。あなたは2015年に『Fi』(オリジナル・リリース2005年)を、2021年に『Hand Cranked』(オリジナル・リリース2006年)をリイシューしていますが、こうした初期の作品を振り返ることは、近年の活動に影響を与えることはありましたか。

スティーヴン・ウィルキンソン(以下SW):どのようにかを言葉で説明するのは難しいけど、影響を受けることはときどきある。そのアルバムを作ったときの考え方や姿勢に影響を受けるんだ。今回のアルバムはそこまで影響は受けていないけど、『Ribbons』(2019年)は『Fi』のアイディアやテクニックみたいなものを受け継いでいると思う。『Fi』で使ったギアを、実際に使ったりもしたからね。

では、『BIB10』のインスピレーションは逆に何だと思いますか? 何から影響を受けているのでしょうか?

SW:それは、僕にとってはすごく面白い質問なんだ。なぜなら、何を「インスピレーション」と呼ぶのか、そしてそれが作っている作品にどう機能するのかというのを、僕自身、まだ学んでいる途中だから。アイディアっていうのは降りてくるし、それが何かははっきりしているんだけど、そのアイディアがなぜ出てきたのか、それを実らせた種が何だったのかは、本当に小さくてわからなかったりする。でもたとえば、『Fi』と『Hand Cranked』に関しては、機材があまりないという「制限」がもとになって生まれたテクニックがたくさんあったし、それがあのローファイの美学を生んだんだよね。そして、そこで学んだことは、いまでも生かされている。ギターのレイヤーを作ることはそのひとつ。いま、そのローファイの美学は前よりも洗練されているけど、いまだにあのときに戻ろうとするときもあるんだ。

〈Warp〉からの初リリースとなった『Ambivalence Avenue』(2009年)はあなたのキャリアにおいても重要な作品であり、『BIB10』においても『Ambivalence Avenue』でのエレクトロニックとアコースティックが両立していたのを意識していたとのことですが、いまから振り返って、あのアルバムのどんな点が秀でていると感じますか?

SW:あのアルバムを振り返ると、自分が思い切ったことをやったときを思い出す。とくにプロダクション。ローファイでフォークっぽいサウンドから、あのサウンドになったのは、僕にとっては大きな一歩だったんだ。そして、あのジャンルの幅広さも褒めていい部分だと思う。あのときはたくさんのことを一度にやっていて、結果、僕はそれをすべてあのアルバム一枚に落としこんだんだ。そして、それをみんなが気に入ってくれたから、自分のスタイルを変えてもいいんだという自信がついたものあのアルバムだったね。ローファイやフォークだけじゃなく、いろんなサウンドにチャレンジしていいんだという自信をもらえた。あと、20代のときに作ったアルバムだから、若い精神みたいなものも感じられるんだ。

2019年の〈Warp〉の企画『WXAXRXP Session』のときにもとは『Ambivalence Avenue』に収録していた “Lovers’ Carvings” のセルフ・カヴァーをシングル・カットしていますが、あの曲をピックアップしたのはどうしてでしょうか?

SW:あのカヴァーは、〈Warp〉の30周年記念のためのものだったんだけど、僕が〈Warp〉と契約したのは〈Warp〉の20周年のときで、“Lovers’ Carvings” はそのボックスセットに収録されている曲なんだ。僕にとってあの曲は、僕と〈Warp〉のキャリアの印みたいな作品なんだよ。

ヴァイナルって大事だと思うんだ。レコードだと、ストリーミングやCDみたいに簡単にトラックを早送りしたり、スキップしたりすることができないから。

『BIB10』はあなたの様々な音楽的要素が混ざった作品かと思いますが、単純にオリヴィエ・セント・ルイスが参加しているというのもありますし、ソウル・ミュージックの要素でわたしは第一印象では『A Mineral Love』(2016年)との共通点を強く感じました。あなた自身は、『A Mineral Love』のときに得た経験で大きなものは何でしたか?

SW:パッと思いつかないけど、あの作品も、それまでに自分がトライしたことがなかったものに挑戦したアルバムだった。僕にとっては、それが上手くいけば成功を意味するし、そして自信をもらえるんだ。『A Mineral Love』は、確実に新しいスタイルにチャレンジしたアルバムだった。オリヴィエとコラボしたのも、得た経験で大きなもののひとつ。あれがすごく上手くいったから、彼とはコラボをし続けたし、今回のアルバムに至っているからね。僕は、同じひとたちと共演するのが好きなんだ。そうすると数はあまり増やせないけど、そのアーティストと信頼関係を築いていくのはすごく良いことだと思う。その関係か築けているからこそ、オリヴィエとは本当に心地よくいっしょに曲を書くことができるんだ。

『BIB10』はフォーキーな要素が強かった『Ribbons』、あるいはEP「Sleeping on the Wing」からの反動もあったとのことですが、“Rain and Shine” のあなた自身のヴァイオリンなど、その時期の経験が生きている部分もあるように思います。『Ribbons』~『Sleeping on the Wing』のフォーキーな作品で得た経験で大きかったのは、やはりヴァイオリンやマンドリンをご自身で演奏されたことだったのでしょうか?

SW:そうだね。ヴァイオリンは独学で勉強したんだけど、すごく難しかった。でも、どうしてもアルバムで使いたくて頑張ったんだ。それが僕の新しいチャレンジになり、没頭することができた。新しい楽器を自分のサウンドに持ちこむというのは、プロデューサーとしての僕も興奮させられることなんだ。ヴァイオリンをはじめたきっかけは、『Ribbons』のふたつのトラックで友人がヴァイオリンを弾いてくれて、それを見て、僕も学びたいと思ったから。それで、2曲目以降は僕がヴァイオリンのパートを引き継ぐことにした。そして、そこから派生したのがマンドリンだったんだ。

独学でいくつもの楽器を弾けるようになるのはすごいですね。

SW:僕は、アルバムを出すたびに新しいチャレンジに挑むのが好きなんだよ。簡単なことをやるだけじゃつまらないからね。まったく新しいものにしたいのではなく、僕の場合、すでにあるものをさらに築きながら、新しいものを取り入れるというミックスだと思う。新しいことを学ぶことが好きだし、ビビオの意味を広げていきたいとも思うし、何かを発見し続けることがモチベーションになるんだ。

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80年代はデジタルが普及しはじめたときで、みんながよりエレクトロニックなサウンドを作ろうとしていた。未来的というか、機械的というか。でもそれなのに、そこには人間味と、素晴らしいミュージシャンシップがこめられている。

あなたのこれまでの作品は、様々な音楽的要素がミックスされていつつ、それぞれ個性を持っていると思います。ストリーミング・サーヴィスが一般化した現在、シャッフルやプレイリストでのリスニングが増えていると言われますが、そんななかでも「アルバム」という単位が表現しうるものは何だと思いますか?

SW:いまは違う聴き方をしていても、僕らはやっぱりアルバム世代で、いまになってもアルバムというフォーマットを好むひとはいると思うんだよ。それがストリーミングであれ、レコードであれ、CDであれ、アルバムという単位で作品を楽しみたいひともいるはず。僕自身も、スポティファイは使ってないし、プレイリストも作らないしね。アルバムがいまだに重要だという人たちは、必ずいるんじゃないかな。ある意味、アルバムを楽しむには、リスナーはすべてを捧げなければならない。そしてアルバムだからこそ、のめりこみたいと思う旅をみんなに提供できると思う。そして、だからこそ、ヴァイナルって大事だと思うんだ。レコードだと、ストリーミングやCDみたいに簡単にトラックを早送りしたり、スキップしたりすることができないから。針を乗せて、そのままにしておくのがヴァイナルの聴き方だからね。僕がアルバムをヴァイナルで聴くのが好きな理由のひとつはそれなんだ。

では、『BIB10』についても詳しく聞かせてください。先ほども言ったように様々な音楽的要素が有機的に入った作品ですが、前作『Ribbons』との対比で言うなら、エレキ・ギターの活躍が大きいアルバムではあるとは思います。ここ2、3年でエレキ・ギターをよく演奏していたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

SW:エレキ・ギターは、11歳のときから弾いてる。子どもの頃は、メタル・ロックにハマってたからさ(笑)。最近よりエレキ・ギターを弾くようになった理由は、『Ribbons』がもっとアコースティックが多かったから、その反動なんじゃないかな。何か違うことがやりたくなったんだと思う。エレキって、サウンドのバラエティがすごく豊富だよね。ひとつの楽器で、いろいろなサウンドを奏でることができる。そこが好きなんだ。

あなたのようにマルチ・プレイヤーだと、楽器の選択が多く表現の幅が広がると同時に、選ぶのが難しい場面もあると想像します。実際のところ、楽曲のイメージが先にあって使う楽器を吟味していくのか、作曲するときに楽器が先に選ばれていて曲ができていくのと、どちらが近いですか?

SW:ほとんどの場合、まずはギターを使って曲ができあがる。家やスタジオでギターを手にとって、曲を作るんだ。で、そこで面白いと思うものが出てきたら、それを弾いているビデオをスマホで録る。だから、僕の携帯には短い動画の音楽のアイディアがたくさん溜まってるんだ。なぜ録音ではなくビデオを録るのかというのは、自分が何をどうやってプレイしたかが観られるから。で、そうやって曲ができあがったあと、ピアノとかシンセとか、ギターのほかにどんな楽器を使ったら面白いかなと考えはじめる。どの楽器を選ぶかの基準は、その曲の世界観によるね。ソウルなのか、エレクトロなのか、フォークなのか、その曲が持つムードによって、どの楽器を求めるかが変わってくるんだ。

また、本作ではアナログ・シンセや808などクラシックなドラムマシンを使っているとのことですが、そうした古くからある機材を意図的に使った理由は何でしょう?

SW:僕のスタジオには、新しいシンセと古いシンセの両方がある。アナログって、ソフトウェアには真似できない、すごく豊かなクオリティを生み出すことができると思うんだ。そして、古くからある機材はどれも、その機材にしか出せないアイコニックなサウンドを持っていると思う。あと、それを使いながらも何かモダンなことをするっていうのが好きなのも理由のひとつだね。

あなたはこれまで、ご自身の音楽にあるノスタルジックな要素について話されてきたと思います。『BIB10』には70年代ファンクや80年代の音楽のムードがありますが、そこにも何かあなたにとってノスタルジックな感覚があるのでしょうか?

SW:そうだと思う。僕は、その時代の音楽のプロダクションにすごく魅力を感じるんだ。とくに80年代はデジタルが普及しはじめたときで、みんながよりエレクトロニックなサウンドを作ろうとしていた。未来的というか、機械的というか。でもそれなのに、そこには人間味と、素晴らしいミュージシャンシップがこめられている。エレクトロニックでありながも、グルーヴやハーモニーといった要素がきちんと入っているところが素晴らしいと思うんだよね。僕は、そのコンビネーションが好きなんだ。

今回は曲によってドラムマシンだったり、イアン・ヘンドリーの生ドラムだったりしますが、「この曲に生楽器が必要だ」との判断は直感的なものなのでしょうか?

SW:そうだね。曲ができあがってから、その曲が求めているムードによって決めるんだ。たとえば “S.O.L.” だったら、あの曲ではほかのすべてが生楽器で演奏されているから、そのライヴのエナジーを保たなければと思ったんだよね。やっぱり機械より、サウンドに人間味をもたせてくれるから。あと、“Off Goes The Light” や “Potion” みたいな曲は、生楽器とシーケンスのミックスだからどちらも入れたかった。そんな感じで、曲のサウンドによって決めるんだ。

レッスンやトレーニングを受けたことはない。演奏もだし、プロダクションもそう。興味があったから、自らそれを追求してみた結果なんだ。

『BIB10』はシンガーとしてのあなたの魅力を堪能できる作品でもあります。初期には「自分が歌うことに確信がなかった」と話していたと思いますが、歌うことに自信が持てるようになったのはどの時期だったのでしょうか?

SW:自信が持てるようになるまでには時間がかかったし、いまでもまだ十分には自信は持てていない。僕はシャイな性格だから、歌うことに関しては、自信が少しもてるようになるまでかなり時間がかったんだ。でもやっぱり、いちばん大きな自信を与えてくれたのは、『Ambivalence Avenue』かな。あのアルバムへの反応が、ヴォーカリストとしてこれまでよりも大きな自信をもたせてくれたと思う。でもステージで、人前で歌う自信はいまだにないけどね(笑)。

たとえば “S.O.L.” などはダンスフロアを想起させるディスコ・ナンバーですが、あなたの音楽はどちらかと言うとホーム・リスニングに適したもののほうが多かったように思います。ダンサブルな曲と座ってじっくり聴ける曲が共存しているのも『BIB10』の魅力ですが、あなた自身は、リスナーが曲を聴くシチュエーションを想定することはありますか?

SW:たまにある。たいていは、トラックが仕上がりに近い時点でそれを考えることが多い。ひとがどんな場所でそのトラックを聴くのか、その可能性がある場所をできるだけ多く思い浮かべるんだ。車とか、地下鉄とか、今回のアルバムだったらクラブとか。それを考えると、この曲がもうすぐ外の世界にリリースされるんだ、と興奮するんだよね。作っている真っ最中は、外の世界のことを全く考えない。その作業にのめりこんでしまう。でもリスナーがどこで聴くかを考えているということは、心に余裕ができて、ゴールが見えてきた証拠なんだよ。

「明りが消える」という “Off Goes the Light” からはじまり、アルバム前半のダンス・チューンが続く展開はストーリーとしても惹きつけられます。あなたにとって、「夜」はどんな魅力を持っていますか?

SW:なぜか僕は、すべてのアルバムを夜か昼かで分けられるんだよね。たとえば『Ribbons』は昼のアルバムだと思うし、今回のアルバムは夜だと思う。でも、それがなぜかはわからない。もしかしたら、ダンスっぽい要素がクラブを連想させるのかも。どちらかというと、エレクトロニック・ミュージックが夜で、フォークが昼って印象かな。

フォーキーで穏やかな “Phonograph” も余韻の残る美しい曲ですが、クロージングの “Fools” はプリンス風のセクシーなソウル・チューンです。この曲をエンディングに置いたのはなぜですか?

SW:理由はないよ(笑)。ただ、それがしっくりきたんだ。あのトラックは、アルバムのために作った最後の曲で、できあがった瞬間、フィナーレみたいな感情がわきあがってきた。これでアルバムが完成したんだ! って気持ちになったんだ。スローなトラックだったし、エンディングにピッタリだと思ったんだよね。曲順は、あまり考えすぎず、直感で決めることが多いんだ。

『BIB10』では10枚目の作品を祝福する気持ちもあったとのことですね。実際、10枚もアルバムをリリースするのは並大抵のことではないと思います。あなた自身が、これまでのミュージシャンとしての活動でとくに誇りに感じているのはどのようなところですか?

SW:これまでのことを独学で学んだことかな。それがメインだと思う。もちろん、ほかのひとに教えてもらったこともあるけど、そのためのレッスンやトレーニングを受けたことはない。演奏もだし、プロダクションもそう。興味があったから、自らそれを追求してみた結果なんだ。機材を買って、どうやって使えばいいのかを探る。僕はそれが好きなことなんだよね。

ありがとうございました!

SW:ありがとう。またね。

J Jazz Masterclass Series - ele-king

 海外でニッチな人気となっている和ジャズ、そのなかでもとくにレア盤にフォーカスし、復刻を精力的に続けている〈BBE Music〉があらたに2作品をリリースする。
 まずは今田勝トリオ+1の『Planets』。1977年に元々同名インディ・レーベルから発表された本作は、当時の日本のジャズ界における代表的ピアニストのひとり。彼の磨きがかかった演奏と洗練された楽曲が披露する作品だ。
 もう1枚は、河野康弘トリオ+ 1による『Song of Island。河野氏が設立した自主レーベル、A.S. Cap から発表されたプライベート・ プレスの激レア盤。ピアニスト、河野康弘トリオが出 した3枚目のアルバムで、佐渡の ジャズ・ライヴ・ハウス、Againで1985 年8月にライヴ録音されたアルバム。
 どちらも世界初のCD化になる。


今田勝トリオ+1
Planets

BBE Music
フォーマット: 1 x LP vinyl, CD、配信
発売日: 2022年10月26日
https://bbemusic.bandcamp.com/album/planets


河野康弘トリオ+ 1
Song of Island

BBE Music
フォーマット: CD, 2 x 12” vinyl、配信
発売日: 2022年11月16日
https://bbemusic.bandcamp.com/album/ song-of-island

Burial - ele-king

 今年頭、ひさびさの長尺作品となる「Antidawn」をリリースし話題をさらったベリアル。本日10月21日、また新たな音楽が発表されている。「Streetlands」と題された3曲入りのEPで、レーベルはおなじみの〈ハイパーダブ〉。ビートはほとんどなく、どうやら「Antidawn」の続編的な位置づけの作品のようだ。年明け1月27日にはヴァイナルも予定されているとのこと。

artist: Burial
title: Streetlands
label: Hyperdub
release: 21st October, 2022

tracklist
1. Hospital Chapel
2. Streetlands
3. Exokind

https://hyperdub.net/products/burial-streetlands

John Cale - ele-king

 ジョン・ケイルのニュー・アルバム『MERCY』が、来年1月23日に〈Double Six / Domino〉からリリースされる。
 まずは客演に注目しておきたい。アニマル・コレクティヴに加え、まさかのアクトレスローレル・ヘイローといった10年代エレクトロニック・ミュージックの重要人物、近年のUKインディ・シーンで大きな影響力を持つファット・ホワイト・ファミリーなどが参加。歌手のワイズ・ブラッドをフィーチャーした先行公開曲 “STORY OF BLOOD” では驚くべきことにトラップ風のビートが鳴っている。
 現在80歳、新しい音楽に関心を持ちつづけるレジェンドによる、これは期待大のアルバムだ。

JOHN CALE
1月20日に最新アルバム『MERCY』をリリース!
新曲 “STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood” を公開!

ジョン・ケイルが、2023年1月20日にオリジナル曲を収録したものとしては実に10年ぶりとなる最新アルバム『MERCY』を〈Double Six / Domino〉からリリースすることを発表し、新曲 “STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood” をミュージックビデオと共に公開した。

John Cale - STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood (Official Video)
https://youtu.be/qgwOid8vdwE

60年近くにわたって、いや、少なくとも彼がニューヨークに移り住み、ルー・リードと共にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを結成した若きウェールズ人であった頃から、ケイルは感動すら覚えるほど革新的かつ異端な作品群をコンスタントに発表してきている。そこには例えば『Paris 1919』の妖艶なチェンバー・フォーク、『Fear』のアート性の高いロック、挑発的かつ実験的で深みのある歌曲集『Music for a New Society』(30年後に自身による変奏曲集『M:FANS』を発表)といった音楽史における重要作が含まれている。待望の新作となる『MERCY』で、またもやケイルは、自分の音楽がどのように作られ、どのように聞こえ、そしてどのように機能するかさえも再構築している。12曲からなるこの『MERCY』は、闇夜に生まれた電子音を通して、傷つきやすいラブソングと未来への希望に満ちた考察へと向かっている。

本作『MERCY』において、ケイルは、アニマル・コレクティヴ、シルヴァン・エッソ、ローレル・ヘイロー、テイ・シ、アクトレスという音楽界で最も好奇心旺盛な若手アーティストたちを起用している。いずれも、ケイルの完成された世界観の中に入り込み、そこで彼が自らの世界をデコレーションし直すのを手伝う、才能溢れるミュージシャンたちだ。ケイルは今年3月に80歳を迎え、特にこの10年間は、多くの同業者がこの世を去るのを見守ってきた。それでも『MERCY』は、彼らこれまで積み重ねてきた長いキャリアの延長上で誕生した作品と言える。ケイルは常に、疎外感、傷、喜びといった古い考えを探求する新しい方法を探してきた。『MERCY』は、その満たされない心が見つけた新たな作品だ。

『MERCY』を構成する楽曲は、ケイルがディストピアの瀬戸際でよろめく社会を見ながら、何年もかけて書きためてきたものだ。トランプとブレグジット、コロナと気候変動、公民権、右翼の過激派、もしくは南極、北極付近で溶けている海氷の主権と法的地位についての考察であれ、アメリカ人の無謀な武装化であれ、ケイルはその日の悪いニュースを自分の言葉にする。今回のアルバム発表に先立ってリリースされた “NIGHT CRAWLING” で、(今もなお) 豊かに生きている人生からの教訓も前面に押し出されている。もし、私たちが常に過去を悔やんでいるとしたら、永久に失望を味わうことになるのではなかろうか? そして “STORY OF BLOOD” でワイズ・ブラッドと共に歌ったように、結局のところ、我々は、我々が知ることのない神に頼るのではなく、お互いを救うことができるのではないだろうか?

“STORY OF BLOOD” では、ピアノの前奏が重厚なビートと眩い太陽のようなシンセサイザーに変わった後、ケイルとワイズ・ブラッドの歌声が、現代の喧騒の中でパートナーを探そうとする2つのファントムのように滑らかに交差する。「スウィング・ユア・ソウル」と二人は願いを込めて歌う。最後のパートで、ケイルはこの存在が自分だけのものでないことを思い出す。「私は朝には私の友人たちを、彼らを迎えに戻る。彼らを光の中に連れて行くんだ」。エミー賞受賞監督ジェスロ・ウォーターズによるミュージックビデオには、ケイルとワイズ・ブラッドが登場し、不穏と静寂が混在する。その深い色調と宗教的な雰囲気は、この曲のダークでスピリチュアルなムードを強調している。

ワイズ・ブラッドの新作を聴いていて、ナタリーの清純なボーカルを思い出したんだ。「Swing your soul」というパートと、他のいくつかの部分で彼女と一緒にハーモニーで歌うことができれば、きっと美しいものになるだろうと思った。しかし、彼女から得たものは、それ以上のものだったよ。彼女の声の多様性を理解してからは、まるで最初から彼女を想定して曲を書いていたかのように感じた。彼女の音域の広さと、音律に対する大胆なアプローチは、予想外の驚きだった。彼女がニコとそっくりに思う瞬間すらあるんだ。 ──ジョン・ケイル

待望の最新作『MERCY』は、2023年1月20日にCD、LP、デジタルでリリース! 国内流通仕様盤CDには解説が封入される。

label: Double Six
artist: John Cale
title: MERCY
release: 2023.01.20

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13095

CD Tracklist
01. MERCY feat. Laurel Halo
02. MARILYN MONROE'S LEGS (beauty elsewhere) feat. Actress
03. NOISE OF YOU
04. STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood
05. TIME STANDS STILL feat. Sylvan Esso
06. MOONSTRUCK (Nico's Song)
07. EVERLASTING DAYS feat. Animal Collective
08. NIGHT CRAWLING
09. NOT THE END OF THE WORLD
10. THE LEGAL STATUS OF ICE feat. Fat White Family
11. I KNOW YOU'RE HAPPY feat. Tei Shi
12. OUT YOUR WINDOW

CD

ブラック・ヴァイナル

ホワイト・ヴァイナル

クリア・ヴァイナル

Crack Cloud Japan Tour 2022 - ele-king

 耳の早いインディ・ロック・ファンにはかねてから注目されてきたカナダのポスト・パンク・バンド、Crack Cloud。『nero』編集長の井上由紀子氏も大推薦していたこのインディ界の注目株が早くも来日する。
 東京公演にはNo Busesのフロントマン「Cwondo」と、DJとして村田タケル 《SCHOOL IN LONDON》
 大阪公演は「石田小榛(Vo)と角矢胡桃(Dr)で構成される2ピース・バンド「HYPER GAL」と、DAWA 《FLAKE RECORDS》がサポートアクトとして出演。

Crack Cloud Japan Tour 2022

【公演概要】
2022年11月24日(木)
東京 代官山UNIT
出演者:Crack Cloud
Support Act : Cwondo、DJ: 村田タケル 《SCHOOL IN LONDON》
開場 18:30 / 開演 19:00
【チケット情報】 前売入場券:¥6,500 + 1Drink Charge
問合わせ: UNIT 03-5459-8630 (平日12:00〜19:00)

TONE FLAKES Vol.149
2022年11月25日(金)
大阪 梅田Shangri-La
出演者: Crack Cloud + Support Act :HYPER GAL 、DJ: DAWA 《FLAKE RECORDS》
開場 18:30 / 開演 19:00
【チケット情報】前売入場券:¥6,000 + 1Drink Charge
[TICKET]11月6日 10:00
ぴあ
e+
ローソン
FLAKE RECORDS(店頭)
問合わせ:Shangri-La 06-6343-8601(平日12:00〜19:00)

ツアー先行販売はコチラから:https://linktr.ee/tamatamastudio

【公演注意事項】
※予定枚数に到達した場合、当日券の販売は行いません。
※本公演はオールスタンディングの公演となります。

東京;
※3才以上の方はチケットが必要となります。なお16歳未満の方につきましては保護者の同伴が必要となります。
※未就学児のお子様をお連れのお客様は入場時に未就学児であることの各証明書が必要となります。

大阪;
※小学生以上はチケットが必要となります。
※保護者1名同伴につき、未就学児童1名まで入場可能。

-新型コロナウイルス対策-
※会場内では常時マスクをご着用下さい。
※こまめに手指の消毒を行って下さい。
※体温が37.5℃以上のお客様は入場をご遠慮ください。
※大声や歓声を禁止させていただきます。
※ご入場は整理番号順となります。


【Crack Cloud】
2015年に結成されたマルチメディア集団Crack Cloudは、異なる角度から、異なる過去の経験を持つ、同じ志を持つ人間で構成されている。
カナダのアルバータ州出身のCrack Cloudは、社会に対する視点と理解を映し出すポストパンクの知恵を持っています。 2018 年にバンクーバーに移り、メンバーのほとんどはその時に出会いました。 2016 年に最初のセルフ タイトルの EP をリリースし、翌年には 2017 年にAnchoring Pointと呼ばれる別のEP をリリースしました。 [12]これらのリリースに続いて、グループは国際的にツアーを行い、End of the road、、およびをロスキルデなどいくつかのヨーロッパの音楽祭に出演し、2020年7月17日に Meat Machine Records からデビュー・スタジオ・アルバム、Pain Olympicsをリリースした後、 2019年 5月から 2020年10月までの間に、 The Next Fix、Ouster Stew、Tunnel Vision、Favor Your Fortuneの4つのシングルをリリースしました。
https://www.crackcloud.ca/

【Cwondo】

No BusesのGt.&Vo.としても活動中の近藤大彗によるソロ・プロジェクト=Cwondo 2020年より本格的に活動開始。
1stアルバム『Hernia』、2ndアルバム『Sayounara』に続き、短いスパンでリリースし、3rd アルバム『Coloriyo』を2022年7月6日(水)にリリース
https://tugboat.lnk.to/Cwondo3rdAL

【HYPERGAL】

石田小榛(Vo)と角矢胡桃(Dr)で構成される2ピースバンドHYPER GAL
石田小榛は美術家として、角矢胡桃はノイジシャンとしての活動も行っている。
2021年には2ndアルバム『pure』をリリース
アヴァンギャルドかつミニマルなトラックのループと無機質なボーカルで構成されるサウンドはキラキラと既存の壁を破っていく。
『pure』ではジャケットを新進気鋭の美術家ナカノマサト・ミュージシャンのuamiが手掛け、MVは撮影 渡辺絵梨奈・編集 石田小榛の自主制作で行われるなど、アートワークも注目を集めている
https://hypergal.base.shop/

*海外プレスからの賞賛

"Crack Cloudのライブは素晴らしい。彼らの演奏を観た後、浮遊しているような気分になる"。- ジョン・ドーラン (Quietus、Noisey、BBC)

"...Crack Cloudをバンドとして説明することは、彼らを過小評価することになるだろう" Q Magazine- Qマガジン

「カナダの7人組、Crack Cloudは目を見張るようなスペクタクルを作り出す。- ガーディアン(イギリス)

◎「please yourself」MV
https://www.youtube.com/watch?v=BteWnj3vr1o&t=4s

◎アルバム表題曲「tough baby」のMV
https://www.youtube.com/watch?v=iuiApNB8Ug0

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