「KING」と一致するもの

Skweee三昧 - ele-king

 こんばんわ、あなたのダンスフロアはいま平均年齢いくつでしょう? 日本で最初のスクウィーのパーティは17歳の高校2年生によって開かれました......。

E-JimaさんとShitaraba君

 日曜日の午後3時過ぎ、早稲田大学正門近くにある〈音楽喫茶茶箱〉では北欧で生まれたダンスビートが鳴り響いている。DJの後ろのスクリーンには、20年前のプレイステーションのゲームの映像が映し出されている。飯島直樹(E-Jima)さんが「彼がシタラバ君だよ」と教えてくれる。シタラバ君は......ゲームのコントローラーを操作していた。その姿は、DJというよりもゲームに熱中する高校生そのものである。

 スクウィーは、フィンランドとスウェーデンから広まったロービットでファンキーなエレクトロ・サウンドだ。スウェーデンのクールDJダスト(ダニエル・サヴィオ)がヴィンテージ・シンセの機能からこの「スクウィー」なる名前を引用したと言われている。よく喩えられるように、それは「〈リフレックス〉がサイケな鼠のカートゥーンのサウンドトラックとしてGファンクをやったような音」である。7インチ・シングルを中心としたこのスカンジナビアの新しいダンス・サウンドは、イギリスの〈プラネット・ミュー〉や〈ランプ〉といったレーベルを通じていまでは音楽ファンのあいだですっかり有名になった。

 シタラバ君は今年の3月から〈20禁〉というパーティをオーガナイズしている。「若い人の出るパーティはやりたかったのですが、クラブに行けない僕にはDJの友だちもいなくて......。でも、USTでDJとかやってたら自然に似た感じの若い知り合いができてきたので、じゃあもうパーティやるか! と」

 彼がDJをはじめたのは中学2年生のときだった。最初はテクノやハウスをミックスしながらUSTREAMで流していた。ヴューワーはいてもひとりだったというが、僕のようにUSTREAMを今年に入って初めて知った人間からするとその話は衝撃的でさえある。

 彼がスクウィーにハマったのは〈ジェット・セット〉の09年の総括のページで試聴してからだった。ダブステップ......、いや、この世代的に言うならダブステは、彼がクラブ・ミュージックに興味を抱いた ときにすでにそれはあったジャンルである。ダブステに関しては、〈ハイパーダブ〉を拠点にインターナショナルに活動するクオーター330(Quata 330)の影響が大きかった、とシタラバ君は言う。


ハードなDJプレイで盛り上げるmadmaid

 4時半をまわると、ステージには16歳のマッドメイド(madmaid)がハードなジャングルをプレイする。彼は激しい身振りで、フロアを煽っている。ハードなレイヴ・サウンド、そしてガバへ......。話題のネット・レーベル〈マルチネ〉からリリースしているマッドメイドは、日曜日の昼に代々木公園で開かれていたレイヴを契機にダンス・ミュージックを知ったらしい。エネルギッシュなDJを終えた彼は喉が渇いたのだろう、カウンターでコーラを注文した。

 5時を過ぎた頃には狭いフロアは良い感じで埋まっていた。20人以上が集まっている。下北のレコード屋〈ゼロ〉のオーナー、飯島さんがまずはヘヴィーなダブをスピンする。最新のダブ、スクウィー、ダブステを惜しみなくかけてくれる。ちなみにこの日出演したDJで、ヴァイナルをターンテーブルに載せていたのは飯島さんだけだった......。

Quarta 330のライヴがはじまると熱気はピークに

 クオーター330のライヴがはじまると、彼をぐるりと囲むように人が集まる。その2日前にフライング・ロータスと共演したばかりの330は、DJクラッシュも愛用している古いヴェスタックスのミキサーを使いながら、とてもリラックスした感じで、彼なりに咀嚼したユニークなスクウィーを披露する。このライヴによって、フロアの盛り上がりは最高潮に達した。


 「同級生は呼ばないの?」とシタラバ君に訊くと「呼んでない」と答えた。フロアにはカラブニク(Kalavnik)やゴンブト(Gonbuto)といった、あの三田格が惜しみない賛辞を送る三毛猫ホームレス周辺のDJやトラックメイカーが遊びに来ていた。このあたりはみんな、USTREAMやtwitterによって知り合ったそうである。実際、この世代にネットは欠かせないのだろう。その日集まった子たちのほとんどがノートパソコンを持ち、そして驚くべきことに......何人かはフロアで携帯を見ながら踊っている。もっともこれは彼らに限らない。最近のクラブのフロアでよく見られる風景である。しかしいったいどこで何と繋がろうとしているのだろうか......。あるいは、僕のようなタイプの人間がただ時代に遅れているだけなのだろうか......。ある人が「ジョーカーはもう古い」というネットでの書き込みを見たと言った。「古いたって、あんた、まだアルバムも出てないんだぜ......」、と率直に思う。そもそもその書き込みの「古い/新しい」とはいかなる基準なのだろう。彼は音楽に何を求めているのだろう......。この手の情報オタクは20年前のテクノの時代にもたくさんいたし、現代に顕著な傾向だとは思わない。

 それでも......、ネットを身近に使えるこの世代が、自分たちで生の現場を持ちはじめているというのは興味深い事実である。

 「自分の世代ってのもよくわからないんですよね」、とシタラバ君は言う。「まわりには年下の音楽家から20代や30代、レコード屋の店長、ましてや野田さんくらいの世代の方ともこうして繋がってるわけですし、いまはネットにたくさん情報があふれているので、情報だけでの体験ながらも僕が生まれる前に流れていた音楽やその時代背景もレコードやCD、mp3と一緒に認識していますし、そんな感じで僕にきっと世代のあいだの認識ってものが薄いんだと思います」

 「若いという実感はあるのですが......」、シタラバ君は続ける。「学校での自分とクラブでの自分はまったく別のものとして動いているので、そっちはそっちでこっちはこっちみたいなそんな感じで......」

 「彼らは素晴らしいですよ」、今回、このパーティを僕に最初に教えてくれた20代半ばのDJ、アボ・カズヒロ君はやや興奮しながら言う。「近い将来、僕も彼らと一緒に何かできればと思っているんです。そしていつか、高橋透さんをゲストに招いてみたいんです!」

 はははは、それはたしかに楽しいかもしれない。もしそんなことが実現するときが来たら、この国のダンス・カルチャーには新しい未来が待っていることだろう。

Skweee teenage riot!!!

 が、まあ、それはさておき、僕が昔、もうずいぶんと昔の話だが......、渡辺健吾や佐藤大、弘石雅和らと初めてテクノのパーティを開いたとき、ある業界人がフロアを見て「ガキばっかじゃん」と言った。ガキばっかで充分だと思った。実際の話、そのガキばっかなところがさらに広がって、テクノは日本で爆発したのである。それに......、自慢じゃないが、石野卓球の15歳のライヴを観ているし、田中フミヤの19歳のDJも聴いている。若くして逝ったカガミ君も18歳でデビューしている。ムードマンもケンセイも、あるいはジェフ・ミルズやデリック・メイも高校生のときにDJをはじめている。音楽的冒険は10代にはじまる。
 "彼ら"のダンスフロアもいつ爆発するかわかったものじゃない。

 なお、シタラバ君のDJミックスは、ブラジルのサイト「tranquera.org」で聴ける

 

Jim O'Rourke - ele-king

 ジム・オルークのプロデュースによるバート・バカラックのカヴァー・アルバムである。ヴォーカリストに細野晴臣、サーストン・ムーア、やくしまるえつこ、坂田明、中原昌也、青山陽一、カヒミカリイ、小坂忠、小池光子、ヨシミ、ダナ・タイラーといったユニークなメンツを揃えていることもあって、ずいぶんとを迎えて話題になった。ことの詳細に興味のある人は、高橋健太郎氏が解説をネットで150円で売っているから参照したらいいと思う。なぜ、ジム・オルークがバカラックをカヴァーしたのか。どんな経緯でこのミュージシャンたちを揃えたのか。楽曲ひとつひとつの背景......。

 もっともその解説を参照したところで、ジム・オルークの音楽は掴もうとしても指のあいだから砂のようにサラサラとこぼれ落ちていく。一見聴き心地の良い、口ずさみたくなってしまうようなポップ・ソング。しかしこのアルバムの音楽世界のなかでは、すべてが微妙に奇妙にずらされて、二重三重に露光されている。それがジム・オルークの仕掛ける「罠」である。その仕掛けを紐解いていくことで、私にはジム・オルークが音楽によって乗り越えようとしているものが聴こえてくるような気がしている。

 まず、外側から入ってみる。この美しいアルバムワークである。イラストは60年代後半のアングラ・カルチャー、サイケデリック・アートの世界を描いた、「幻の絵師PERO」こと伊坂芳太良(1928-1970)。ライナーノーツは入っておらず伊坂のデザインしたトランプ(・・・・のKing,Queen,Jack計12枚)各1枚ずつに各1曲の曲名と参加ミュージシャンの名が記されている。1枚1枚異なるキャラクターの男女が奇妙にエロティックに絡み合うデザインのそのカードは、トランプであるからして、一冊の冊子にはまとめられていない。床に落とせばバラバラと散らばってしまい、また意図的にシャッフル可能でもある。

 このトランプを想像してから、もういちど参加ミュージシャンを見て欲しい。先述したように、ヴォーカリストには細野晴臣、サーストン・ムーア、やくしまるえつこ、坂田明、中原昌也、青山陽一、カヒミカリイ、小坂忠、小池光子、ヨシミ、ダナ・タイラー、ジム・オルーク、ピアノにクリヤ・マコト、黒田京子、藤井郷子、ベースに須藤俊明、ドラムにグレン・コッチェ、スティールパンに町田良夫、トランペットに佐々木史郎、フルートに石橋英子、ヴァイオリンに成井幹子、勝井祐二である。

 こうしたさまざまな文脈を背負った固有名詞を、シャッフルしてバート・バカラックというポップ・ミュージックの代名詞の元に再構成されたのがジム・オルークのこのアルバムなのだ。

 一見脈絡がわからないこの人選。おそらくジム・オルークが、昔から音楽を通して、あるいは日本に来て新たに出会って来た人たちだろうけれども、その出会いの背景とは関係なく、目隠しして一聴すると、何人かの異母兄弟、姉妹のような組み合わせが浮かび上がって来る。やくしまるえつことカヒミカリイのウィスパー・ヴォイス、坂田明と中原昌也のふざけた掛け合い、英語が母国語のサーストン・ムーアとジム・オルークの歌、細野晴臣と小坂忠の低い懐かしい声。この二重露光。明らかに別の背景を持ったヴォーカリストの声の質、発声法、英語の発音の仕方が微妙に重なり合い、ずれて行く。こんな仕掛けがさまざまなところで多層的にされているんじゃないかと思われる。この仕掛けを聴き手が発見していくのが、このアルバムを聴く醍醐味である。

 大雑把にジム・オルークのこれまでの経歴を見てみると、10代でデレク・ベイリーのギターに憧れて手紙を出し、大学ではアカデミックな音楽教育を受け(そこではみなが十二音音楽の作曲などをやっているところリュック・フェラーリなどのテープ音楽に傾倒したという)、その後アンダーグラウンドの世界のノイズ・ミュージシャンたちと自主制作テープの交換、そしてガスター・デル・ソルやソニック・ユースに参加し、その後異国の地、日本にやってきた。

 文脈を壊し、シャッフルし、再構成していくこと――これがジム・オルークが「大きな物語」に対しても、ジム・オルーク自身の「小さな物語」に対しても繰り返し実践してきたことである。例えば――、ジョン・ケージや小杉武久やスティーヴ・ライヒといった現代音楽の文脈で語られる作曲家たちの作品をロックの文脈に持って来た『Sonic Youth/Goodbye 20th Century』(1999)や、武満徹の図形楽譜作品「ピアニストのためのコロナ」をピアノやオルガンやフェンダーローズで再解釈した『コロナー東京リアリゼーション』(2006)といった作品は、大きな物語の別の文脈からの再構築に挑んでいたし、個人の最近の活動を見ると、来日以降は坂田明との『およばれ』(2006)でバリバリのフリー・インプロヴゼーションの一発録音を出したかと思ったら、前作『Visitor』(2009)ではアルバム1枚全1曲40分のすべて独りでじっくりと演奏した多重録音録音、そしてその後にリリースしたのが今回のようなミュージシャンひとりひとりと向き合ってまとめあげていくプロデュース作品である。ジム・オルークはつねに罠を仕掛けては、乗り越えていくのである。

 だから、このアルバムのなかでも相変わらず「罠」は仕掛けられている。ポップですぐに口ずさみたくなってしまうバカラックのメロディーのはずが、私にはこのアルバムを聴けば聴くほど奇妙なズレを持って聴こえてくるのだ。そしてこれが言うまでもなく、表層的にはキャンディーのようにつるつるしておいしそうな、でも実際にはギスギスと多層的にズレを生んで、奇妙に絡み合った現在のこの我々の世界を映し出している。ジム・オルークの音楽に仕掛けられた「罠」しかり、現在の我々の行きている現実世界の「罠」を発見し(時には自ら仕掛け)、乗り越えていくのも聴き手の役割であると思う。

[Drum & Bass / Dubstep] by Tetsuji Tanaka - ele-king

1. Alaska / Mesozoic Era | Arctic Music -drum & bass/ambient jungle-

 実は筆者の友人でもあるUKのナショナル・クラブ・シンガー、カースティ・ホークショウ(Kirsty Hawkshaw)に「必ずあなたが参加しているこのニュー・アルバムを紹介するよ。」と約束したので、トップで紹介させて頂く......知り合い云々でなくとも、必ず紹介していただろうが......"純粋"に、ただ素晴らしいコンテンポラリー・アートコアと位置づけられる傑作なのだから当然である。
 00年代に入り、すっかり馴染みが薄れてきたアンビエント/エレクトロニカを基調としたドラムンベース。90年代後半から爆発的にフロア思考が全盛を極め、多数の若手プロデューサーがそこに辿り着くよう目指していったので、そのような風潮になったわけだ。そのなかにあって当時、抽象表現的アンビエント/アブストラクトな作品を頑なに貫くアーティストが若手ながら存在した。その先駆者であるLTJブケム率いる〈グッド・ルッキング〉からのリリースによって名を馳せたパラドックス(Paradox)、そしてその変名アラスカである。アラスカ名義では実に4年ぶりのアルバムとなる今作は、2000年~2006年~2010年と紡いだトリロジーの最終章としてコンプリートされる。その集大成というわけだ。
 凍てつく地域で創造される音が、まったくもってここに表現されている。その感覚に触れるべく、まずは聴いて欲しい作品がこの「メソゾニック・エラ」だ。現在では懐古的になってしまった"アンビエント・ジャングル"だが、この作品の大半と言うか......レーベル〈アークティック・ミュージック〉のカラーである全体像が"それ"というわけだ。
 
 カースティとの繋がりもあって、以前、彼女から筆者にも紹介してもらったアラスカ/パラドックスことデブ(Dev Pandya)は、レーベルのディレクターも務めながら、〈Paradox Music〉〈Esoteric〉〈Arctic Music〉〈Outsider〉といった4つのレーベルを巧みに使いわけている。デブは、現代でも稀なドラムンベース・フィロソフィストである。
 さて、本作はちまたのドラムンベースで流行しているディープでミニマでいたってシンプルな作品とはまた一線を画したサウンド・スケープで、より音楽的で音響要素に富んだオリジナル・プロジェクトである。パラドックス名義の作品に顕著なアブストラクトなミニマル・フィロソフィック・アプローチとは、オポジットに位置している。凍てつくように、そして研ぎすまされた"北"の感性がメインラインとしてスケッチされ、盟友セバ<(Seba)との共作にも共通する北欧的アンビエント・コラージュが広がる。カースティとの共作「Sundog」のサブタイトルに(ー20 MIX)と加えられてるイメージ通りのサウンドである。
 ちなみにトラック/ジャケット・デザイン双方がこれほどアーティに連動している作品はドラムンベース界では希有で、エレクトロニカ/ポスト・ロックの感性にも近いとも言える。もしかしたら......これが......"ポスト・ジャングル/ドラムンベース"なのかもしれない。

2. Heist / Continental Drift | Metalheadz-drum & bass/darkcore-

 以前パーティ・リポートでお届けした今年2月の〈DBS〉で、ゴールディが自身のユニット、ラフィージ・クルー(Rufige Kru)の名曲"ビーチドリフタ"(Beachdrifta)をラストにスピンしたのだが......そのラフィージ・クルーのエンジニア/マニュピレーターがハイストである。ハイエナジーなジャンプアップ・サウンドをメイン・プロダクションとしながら、〈カリプソ・ミューザック〉(Calypso Muzak)、〈コーラボ・レコーディングス〉(Co-Lab Recordings)、〈ガンジャ・レコーズ〉などからリリース。さらにディープ・プロダクションでは、〈ホライゾンズ・ミュージック〉や〈インテグラル〉(Integral)などから数々のリリースによって活躍しているマルチ・プロデューサーだ。現在はゴールディの片腕としてメタルヘッズ全開のダーク・ベース・サウンドを受け継いでいる。
 先述した往年の名曲"ビーチドリフタ"の続編的な傾向が強い今作"コンチネンタル・ドリフト"は、ときを経てより繊細で滑らかなタッチで描かれたストリングス・アンサンブルである。叙情性を拡大し、幻想的に思い浮かべる浜辺をひた走る......そんな陶酔感覚を抱かせる。他にカップリングされている3曲も秀逸で、メタルへッズを地でいく代表的サウンド・ディレクション"ダークコア/ディープコア"が、現在のトレンドとともにオブラートに包みこまれ、混合したあと、生み出されているといったところだ。メタルヘッズはいまもなお衰え知らず"健在"である......。いや、"暗躍"と言ったほうが適切か......UKを代表するあのダーク・スター、ゴールディ主宰のレーベルなのだから。

3. Davip & Encode / Vamonos/High Technology |
Breed 12 Inches
-drum & bass/electric cyber-

 昨年、多様なアーティストのリリース・ラッシュを果たしたロシアからまたニューカマーが現れた。〈ホスピタル〉からの大ヒット・コンピレーション・アルバム『フューチャー・サウンド・オブ・ロシア』も記憶に新しい。エレクトロソウル・システム、サブウェイヴ、ボップ等々、寒い土地柄もあってか、北欧的感覚のディープ/エレクトロニカよりな作風を志すアーティストが多かった。が、今度はダンスフロア直系のエレクトリック・サウンドだ。彼ら、ダヴィップ&エンコードのようなサウンドがロシアでも台頭してきたのである。
 
 ブレイクスを主に扱うマッシュアップ・レーベル〈カット&ラン〉からのリリース(正確にはダヴィップのみのプロダクション)でも話題の彼らだが、今回は、ニューロ・ファンクをリードするクリス・レネゲード(Chris Renegade)主宰のレーベル〈リフテッド〉(Lifted)傘下となる〈ブリード・トゥエルブ・インチーズ〉からのリリースだ。このレーベルは、若手や新進気鋭のアーティストの受け皿的なレーベルと言ってよいだろう。現在のドラムンベース・シーンの動向から、まったく正反対の音楽性(サイバー/テック/エレクトロ・ステップ等々......)を貫いているこのレーベルに新たな期待を抱きたい。このようなサウンド、つまりロッキン・エレクトリック・サイバーは、先駆者ペンデュラムの成功が賛否両論を生んだにせよ、大いなる可能性があるサブジャンルであることに変わりはない。

 筆者がDJを務めた4月15日の〈DOMMUNE〉でこのような曲をプレイしたとき、率直に考えさせられたことがある。プレイ中の前半、つまりニュースクール・ドラムンベースをスピンしたのだが、正直、いまの進化したメインストリーム・ドラムンベースをどのように日本のクラブ・リスナーは捉えているのか、個人的にも非常に興味深かったのでトライしたのだが、賛否両論と言わざる終えない状況になった。その多くは懐古的ジャンルとして捉えられているのか、良くも悪くも、現在のドラムンベースの置かれてる状況が公の場ではっきり知ることができ、身をもって体験したことで勉強になり感謝したい。が、個人的見解で言えば、00年代に突入してからドラムンベースの取り巻く状況は、刻々と変化し、枝分かれしていった先、よりストイックでマニアックなものになっていった。そのことが日本のドラムンベース層が徐々に薄れていったひとつの原因ではないかと推測される。この時点で、各々のサブジャンルのコミュニティができあがり、他のジャンルの層と噛み合なくなったと言えるかもしれない。筆者はそのような日本でのドラムンベースの状況を「ドラムンベース失われた"00年代=ディケイド"」と呼んでいる。<DOMMUNE>での後半クラシック・ジャングルをプレイして反応が非常に良かったあたり、多くがそこで止まっているのだ。このことについては、また今後も触れていきたい。とにかく、シーンの活性化上、新しい世代にもどんどん聴いてほしいジャンルであり、我々がその素晴らしさを伝え続けなければならないと感じている。

4. Kyle Hall / Kaychunk/You Know What I Feel | Hyperdub -dubstep/detroit-


amazon iTunes

 コード9が仕掛けるレーベルのポリシーは実に素晴らしい。カテゴリーに拘らず、つねに新しい音を追求しているからだ。自身のダークかつダビーなガラージで、ブリアルのような幻想なアンビエント・ダブステップ、はたまた、ゾンビーのような奇怪なダビー・エレクトロ、ビーツ界の巨人フライング・ロータス等々、このレーベルのヴァリエーションの豊かさはハンパない。そしてここにデトロイトからの新たなサウンドを〈ハイパーダブ〉に加わる。カイル・ホールである。

 カイル・ホールは、2007年デトロイトのアンダーグラウンド〈FXHE〉レコーズからの「プラスティック・アンバッシュ」でデビューしている。当時若干17才というから恐れ入る。2008年には早くも、自身のレーベル〈ワイルド・オーツ〉を立ち上げ、立て続けにデトロイト・ディープ・ハウスの傑作を送り出している。新世代のプロデューサーらしく、徐々にヨーロピアン・ナイズされたビートニクスやファンキーにも着手し、2009年リミキサーとしてダークスターの"Aidy's Girl Is A Computer"をリミックスする。美しくも繊細なハウスにディープ・ファンキーを掛け合わせたようなメランコリックな秀作となり、それで今作「 Kaychun k/You Know What I Feel」で〈ハイパ ーダブ〉からのシングル・デビューを飾ったのである。エレクトロ色が踏んだんなハイパーダブ・カラーを生かしつつ、デトロイト的宇宙観を前衛的に捉えたファンキー志向ビーツである。デトロイト経由から届いた〈ハイパーダブ〉、次は何処から届けられるのか楽しみである。

5. DJ G / Avoid The Noid/Duality | Pushing Red -dubstep/atmospheric/dub-

 サンフランシスコのダブステッパー、DJ Gだが、聴くたびに筆者のツボを付かれるプロデューサーだと思う。ミステリアスで空間系アトモスフェリックに展開したかと思えば、スライトリーなダビー色やスモーキーなハウスの要素を加えたプロダクションを出したり、あるいはトライバル・テッキーでミニマル・ライクなシリアス・ステップであったりと、とにかくパーカッシヴで重厚なダブステップをリリースしている。今回はアメリカのテキサスを拠点としている〈プッシング・レッド〉からのリリースで、テック・インフルーエンスなアトモスフェリック・ダブステップとディープ・ダブのカップリングとなった。〈プッシング・レッド〉と言えば、レーベル1番にリリースされた、サンフランシスコのジャス・ワンも素晴らしい。彼はディープ・ガラージや2ステップ色が強く、UKサウス・ロンドン志向の新世代ニュー・ガラージを提唱するひとりと言える。ジャイルス・ピーターソン主宰〈ブラウンズウッド〉からのジャズ・シンガー、ホセ・ジェームスの「Warrior」をサブトラクト(SBTRKT)とともにリミックスしている。今後もサンフランシスコから発信されるこの個性的なサウンドをこう位置づけよう。ローファーが語っていたこと、これが「ポスト・ダブステップ」であると。

6. Scuba/Dissident / Tense[D BRIDGE RMX]/Social Of Silver Skeletons [HEADHUNTER RMX] | Hotshore -dubstep/drum&bass/drumstep-

 ドラムステップ<DRUMSTEP>と言う新たな潮流が生まれつつあるのは、ご存知だろうか? ローファーは"ポスト・ダブステップ"について語っていたが、そのことはダブステップに限らず、ドラムンベースやUKガラージなどのリアル・アンダーグラウンド・ミュージックにも当てはまる。そこで先述したドラムステップだ。ちょうど、ドラムンベースとダブステップの中間のBPM、ビート・プログラミングなのだが、いかんせん、現時点では存続するかいなか、疑い深いくらい中途半端感が否めない。そのサポートしている中心にいるのが、〈テクニーク〉などからリリースしているダブ・ファンデーションやD・ブリッジ、コンシーケンスなどだ。
 今回、スキューバの〈ホットフラッシュ〉とDJクレバーの〈オフショアー〉が融合した〈ホットショアー〉から、D・ブリッジがスキューバの名曲"Tense"をドラムステップ風にリミックスし、カップリングにディシデントをヘッドハンターがリミックスするという豪華内容になっている。ドラムステップが、今後どのような道程を歩むのか非常に興味深く見守っていこう。そしてまたすぐUKから新たなサブジャンルが世界中に送り込まれるだろう。

7. Calibre / Tenopause/Discreet Dub | Deep Medi Musik -dubstep-

 ジョン・ケージを敬愛するカリバー。奇抜なインダストリアル・センスをサウンドデザインするプロデューサーで、すでに多くののドラムンベースの名曲を送り出している。昨年はドミニク・マーティン名義でのインディ・ロックやシネマティック音響/現代音楽を融合したアルバムを披露し、シーンに衝撃を与えている。
 
 カリバーもまたダブステップに度々足を踏み入れている。これはマーラの〈ディープ・メディ・ミュージック〉から2作目となるシングルなである。そのきっかけは、2008年9月20日の〈DBS〉、カリバーとマーラの初共演ではないだろうか。あの来日がカリバーのダブステップ制作のはじまりになったのである。これはなんとも嬉しい話だが、音のほうもサウンド・フィロソフィストでもある彼の才能が、ダブステップと言うフィルターを通しても違和感なく発揮されているというところがすごい。というか、彼の感性はダブステップのほうがより適合していると思うくらいだ。
 この12インチにおいてカリバーは、ドラムンベースでは踏み入れられなかった未解の領土を切り開いたようである。現在多様化が加速するダブステップのなかで、〈ディープ・メディ・ミュージック〉が持っている変わらない本来のダブステップの姿(サブベース主体のきわめてパワフルでシンプルなダビー・サウンド)が、ここに来て再認識されてきているようだ。
 いろんなものを吸収してきたハイブリッドなダブステップに、いま、転機が訪れてきているのは間違いない。そうしたシーンの動きのなかで自身のレーベル・カラーや音楽性を貫いているDMZクルー(マーラ、コーキ、ローファー)は、やはり格が違うと言うべきだろう。

interview with DJ Nobu - ele-king

 ゼロ年代、地方のクラブ・シーンにエネルギーを注入したのは千葉の小さなパーティ〈フューチャー・テラー〉の首謀者、DJノブだった。アシッディなミニマルをかけようが、ソウルフルなハウスをミックスしようが、彼はつねに羽目を外すことを賞揚する。まさに「バカになれ」、そう言い続けているとも言える。そんな彼の評判はこの10年で広く知れ渡り、そして彼の「クレイジー」なプレイも相変わらず熱い支持を得ている。

 かれこれ2月以上前のことだ、DJノブがベルリンの〈ベルグハイン〉でまわすらしい、そのニュースはele-king内で素早く話題となり――といってもたったふたりのあいだでだが――よしそれじゃあ、DJノブが帰ってきたら話を訊こう、ということになった。律儀にも、千葉の男はその話を覚えていてくれた。我々はDOMMUNEの上のSUPER COREで会うことになった。

あのね、優しさとかいっさい出しちゃダメなんですよ。ホントにゴリゴリで、グルーヴでもっていって、何も起こらないなかで何を起こすのかっていう話なんですよ。

どうっすか、最近。

ノブ:最近、面白いっすよ(笑)。

面白い(笑)?

ノブ:テンポ良く遊べているというか、やりたいことができているというか。

ベルリンから戻ってきたのはいつ?

ノブ:4月28日ですね。

まわしたのは?

ノブ:24日。ベルリンを27日に出て28日に戻りましたね。実質三泊ですか。火山の影響で、最初に取っていたチケットがキャンセルになってしまって。4日前になってようやくチケットが取れた。

DJだけやってすぐ帰ってきたの?

ノブ:ちょっとは遊んだ。

ベルリンは?

ノブ:13年前に遊びで行って以来。もう全然違ってた(笑)。

浅沼優子さんの原稿読んでいると、ベルリンがいかにすごいかビシビシ伝わってくるんだけど(笑)。

ノブ:はははは、そうっすね。

で、〈ベルグハイン〉でのプレイはどうでしたか?

ノブ:まあ、自分なりに合格点かな。常連の人たちも褒めてくれたし。観光客もいるけど、ローカルな人たちに受けたのが良かった。やる前はちょっと心配だったから(笑)。

千葉とくらべてどうですか?

ノブ:はははは、それは全然違いますよ(笑)。そこは......日本であれやるの無理じゃないですか。やろうとおもってもできないから(笑)

行ったことないからわからないんだよね。

ノブ:あれは日本では100%不可能です。すべてにおいて。

アレックスは〈パノラマ・バー〉でライヴやったんだよね。「どうだった?」って訊いたら、目をまん丸くして「ホント、クレイジーだよ」って言ってた(笑)。もちろん褒め言葉なんだけど。

ノブ:クレイジーな世界だけど、ルールは守られているというか、お客さん同士でマナーは守られているというか。

ノブ君が〈ベルグハイン〉でまわすって決まったとき、エレキングの更新をやってくれている鎌倉君という子からすぐにメールが来てね、「すごい!」って。だから「よし、じゃあ、話を訊いてみるよ」って。

ノブ:だって電話くれるの早かったすよね。

〈フューチャー・テラー〉がついにインターナショナルな舞台に立つというね。素晴らしいですね。だってさ、ジェフ千葉がヘルタ・ベルリンとチャンピオンズ・リーグで試合をするような(笑)。

ノブ:はははは。たしかにそんな感じっすよね(笑)。

どのくらいまわしたの?

ノブ:3時間。最初は4時間って言われてたんだけどね。3日前に3時間にししょうってなった。

ふーん。その、アレックスいわく「クレイジー」なクラブ、ノブ君いわく「日本では絶対に実現不可能」なそのクラブって、ノブ君には肌にあったんじゃないかなと思うんだけど。

ノブ:合いますね。素晴らしいですね。いや、素晴らしいっていうか(笑)、まあ、あれは病みつきになっちゃいますよね。またすぐに行きたいと思ってますからね。

 

[[SplitPage]]

そもそも何で〈ベルグハイン〉に行くことになったの?

ノブ:デットマン。マルセル・デットマンが初来日したときに〈フューチャー・テラー〉でやってくれて、それで千葉をすごく気に入ってくれて、去年のベスト・パーティにも挙げてくれたんですよ。浅沼さんもマルセルと仲が良いし、「やろうよ」みたいなことを言ってくれて、で、すぐに決まっちゃいましたね。マルセルのアルバム『Dettmann』のリリース・パーティだったんですよ。

まあ、ノブ君の場合は、より「クレイジー」な場所に行けば行くほど相性が良くなるような気がするし。

ノブ:そうですね。日本も「クレイジー」な部分を無くさないように、ちょっとがんばりたいですけどね。


この方がデットマンさんです。

でも、世界的に有名な〈ベルグハイン〉のレジデントやってるデットマンが千葉をそこまで理解したっていうのはいい話だね。

ノブ:そうなんですよね。ホントに気に入ってくれたみたいで。

さすがだね!

ノブ:いやいや、まだ勉強中ですよ。

はははは。

ノブ:そういえば先週、〈フューチャー・テラー〉が東京に初進出だったんですよ。

ああ、〈リキッド・ロフト〉で、〈フューチャー・テラー〉名義でやったんだ。

ノブ:そうなんです。けっこうやりたいことやりましたね。

でも、東京でやると〈フューチャー・テラー〉でなくなるっていうことはないの?

ノブ:それないっすね。だってもう、千葉だけで考えていてもしょーがない......っすよ、やっぱ、他の街でも千葉と同じような状況のところがあるし、そこはもうこだわらずにやろうと。千葉でやるのは基本だけど、もうどこでやってもいい。千葉だけで完結している場合ではないっていうか。

〈フューチャー・テラー〉のヴァイブレーションが他の場所でも充分に通用するってことで自信もあるだろうし。

ノブ:そうですね。そこはありますね。

さすがだね。

ノブ:まあ、だから呼んでくれる人もいるんだろうし。

ところでベルリンでの何か面白いエピソードない(笑)?

ノブ:いや、だから普通にセックスしている(笑)。

書いていいんですか(笑)?

ノブ:言っておくけど、オレじゃないですよ(笑)。

そうか(笑)。

ノブ:13年前はやっぱベルリンのゲイ・カルチャーを知らなかったから。

ああ、そうか。

ノブ:〈ベルグハイン〉は完全にゲイ・カルチャーなんですよ。ゲイじゃないとあそこまでのことできないと思うし。

よく「現代の〈パラダイス・ガラージ〉」って言うものね。

ノブ:そうそう。ゲイの人たちの瞬間の瞬間の快楽の追求のすごさって......、もうあれは完成型だと思うんですよ。

ほー。

ノブ:なおかつ白人文化の究極のカタチだと思うんですよ。テクノをファンクション・ワンで世界でいちばんすごい音で出している。「ここまでやっちゃうんだ」みたいな。やっぱすごいっすよ。

女性もいるんでしょ?

ノブ:女性もいますよ。でもやっぱ6~7割は男。門番の人もそこはコントロールしている。キャピキャピした女の子はまず入れない。

なるほど。で、何か面白いエピソードはないですか? 喋ってくださいよ。

ノブ:面白いエピソード(笑)。うーん、なんだろうな? なんかあったかなー。〈ハードワックス〉のダブステップのパーティに行ったんですけど、大阪のキラサン(・ムーヴメント)のサウンドシステム使っていて、面白かったですよ。そこで今回初めて、やっと黒人に会いましたね。ベルリンは黒人をあんま見かけないっすよね。

あれだけ黒人音楽好きがいるのにねー。デトロイトのバズ・ゴーリーなんかも移住してたわけでしょ。そういうコミュニティ感はやっぱあった?

ノブ:それはある。感じましたね。〈ハードワックス〉周辺の人たちとしか遊んでいないですけど、その辺の兄ちゃんの家に遊びに行ったときに、「オレの曲聴いてくれ」って、クオリティの高い曲を作っていたりするし。やっぱそこはすごい。

ちなみに〈ベルグハイン〉はどんなので盛りあがるの?

ノブ:あのね、優しさとかいっさい出しちゃダメなんですよ。ホントにゴリゴリで、グルーヴでもっていって、何も起こらないなかで何を起こすのかっていう話なんですよ。テクニックがめちゃくちゃ重要だし......、かなりベルリンを意識してやりましたね。

ハード・ゲイ的なの?

ノブ:超ハード・ゲイ。ハード過ぎます。〈ベルグハイン〉の常連の日本人の男の子の友だちができたんですけど、〈ベルグハイン〉でたまにやっているセックス・パーティがあるらしいんですよ。そのときは50人ぐらいが数珠繋がりになって......(笑)。

それはすごいねー(笑)。

ノブ:何か塊が見えると思ったら、数珠繋がりだったと。〈ベルグハイン〉の下の階にセックス・クラブがあって、そこに連れてってくれると言われたんですけど、ちょっと行けなかったです、やっぱ(笑)。

ダンス・カルチャーの発明家たちのほとんどがゲイだったというのは......。

ノブ:いや、もう、そこは絶対にある。そこはすごく思った。ゲイ・カルチャーはホントにすごいっす。それがいちばんの衝撃かな。快楽の追求の仕方がすごい。

 

[[SplitPage]]

いや、あれはスキルのことを言っているのに、話がでかくなっちゃっただけで、オレは別にパソコン使ってても良いDJは良いと思っているし。オレもそのうちPCでDJやるかもしれないし。

話を変えましょうか? 最近はiLLとのコラボレーションをやったけど、他に何かあった?

ノブ:アルツのリミックスをやりましたね。自分の曲の12インチが神戸の〈グラス・ワックス〉というレーベルから出ます。〈グラス・ワックス〉っていうのは、K・アレクシーとか出しているレーベルなんですけど。すごく良い感じでできました。もうすぐ出ると思いますよ。あれは聴いて欲しい。誰もやってないことやったつもりだから。

おー。

ノブ:それが受けるかどうかは別として、挑戦したつもりです。

それは注目だね。

ノブ:あと......なんだろう。また余計なことを言うと面倒くさくなるけど、ベルリンはみんなレコードでしたね(笑)。

はははは、人から聞いたよ。例のPCの件だね。

ノブ:いや、あれはスキルのことを言っているのに、話がでかくなっちゃっただけで、オレは別にパソコン使ってても良いDJは良いと思っているし。オレもそのうちPCでDJやるかもしれないし。

だからデリック・メイと同じことを言ってるだけでしょ。

ノブ:そうそう。ただね、オレが言いたいのは、パソコンでピッチ合わせをやっても良いと思うんですよ。楽だし。サージョンがPC使ってDJしていたんですけど、それは素晴らしかったし、ヘンリック・シュワルツやDJソデヤマも良いし。ただオレは......いまはレコードやCDでないと自分が思う緊張感が作れないからそうやっているだけで。

でもベルリンって、いまどきヴァイナルなんだ?

ノブ:ホントにびっくりしましたね。〈ベルグハイン〉も〈パノラマ・バー〉も。

ブースにちゃんとターンテーブルがどんとある感じ。

ノブ:そうっすね。でも実際......ヴァイナルは音が本当にいいっすよ(笑)。

なんかね(笑)。

ノブ:あれは無くしちゃいけないと思うんですよ。

そうだね。

ノブ:もちろん新しいことも受け入れるし、だけど、古くて良いものを守るってことも大切だと思うんですよ。そこのバランスは絶対に大事でしょ。

CDJは使っているでしょ?

ノブ:使いますよ。でも、いまは7割がヴァイナル。自分なりにCDJを使いこなせるようになったらもっと使うかもしれないけど。

データで良い音源もあるからね。

ノブ:そうなんですよ。オレも1年前からビートポートでちょこちょこ買ってますけど、良いのはありますからね。でもマスタリングなどして工夫しないと音が良くない。

浅沼さんが最近やったダニエル・ベルのインタヴューで、彼が良いこと言ってたんだよね。90年代ですでにヴァイナルはカルトなものだったと。みんなCDに移行してたから、すでにヴァイナルは時代遅れだった。でも、それが逆に自分は特別な世界に関わっているという気持ちにさせたと。自分はこの文化の時代遅れのもので新しいものを生み出す側面が好きなんだと。

ノブ:そうっすね。ハーヴィーも最近のデジタル・カメラに喩えて良いこと言っていたよ。オートフォーカスのデジタル・カメラがいくら出回っても、プロは存在するって。そういうことをオレも言いたかったんですけど。でも、思い切り勘違いされて......。

やっぱ影響力が大きいから(笑)。

ノブ:オレ、頭悪いからうまく文章書けないし。

はははは。

ノブ:オレの戯言をそんなに気にする人がいるんだなって感じですよ(笑)。

 

[[SplitPage]]

で、オレの今後5年間の目標は、そこにいかにもっと多くの若者を呼び込むかってことなんです(笑)。20代前半が来ないわけじゃないけど、もっともっと来て欲しいっすね。

いま、DJは月にどのくらい?

ノブ:6~8本っすね。疲れが取れないっすよ(苦笑)。

じゃ、毎週末どっかでやってるんだ。

ノブ:そうっすね。

今週末はユニットじゃなかった?

ノブ:ノーマン・ノッジと一緒にやります。彼も〈ベルグハイン〉のレジデントのひとりっすね。で、翌日が熊本。

週に2回ぐらい。

ノブ:来週は3回。土曜日に1回で、日曜日2回。

どうっすか、日本をまわって。

ノブ:いや、いいんじゃないっすか。こないだも大阪、平日まわしたけど、100人以上来たし、求めている人は求めているから。ぜんぜん良いのかなって思いますね。

それはDJノブだからでしょ。

ノブ:それはわからないっすけど。

でも、間違いなく地方を元気づけたじゃない。

ノブ:あ、それはよく言われる。それこそ熊本なんかめちゃくちゃハードコアっすよ。九州はホントに、「クレイジー」なシーンがある。福岡にもノブ君っていて、そいつもすごいがんばってる。

へー、じゃあノブ君の現場は元気なんだね。人によっては最近の日本のクラブは元気がないって言うからさ。

ノブ:ただ、さっき言った「クレイジー」な部分は少なくなっているように感じてますね。だからそれを〈リキッド・ロフト〉でやれたのは良かった(笑)。かなりめちゃくちゃだったけど、超まとまってた。オレとローカルDJだけで400人以上入ったし。あれは大成功だった。〈フューチャー・テラー〉の3人と名古屋のローカルでがんばってるヤツと、それだけで人が集まったから。

たいしたものだね。

ノブ:そういう意味では「クレイジー」なものを求めている連中もいるんですよ。で、オレの今後5年間の目標は、そこにいかにもっと多くの若者を呼び込むかってことなんです(笑)。20代前半が来ないわけじゃないけど、もっともっと来て欲しいっすね。元気がない20代前半にこの遊びの面白を広めたいっすよ。

でもいるでしょ、そういうヤツはいつの時代でも。

ノブ:若くてやんちゃなヤツ、もちろん〈フューチャー・テラー〉にもいるんですけど。でも、絶対に減っているように思いますよ。

そういう時期なだけなんじゃないの。今後増えるかもよ。

ノブ:そういえば、こないだハーヴィーの〈オッパーラ〉に遊びに行って、オレ、やらかしちゃんですね(笑)。

派手に遊んでしまった(笑)?

ノブ:そうなんすよー(笑)。

ノブ君は自分で踊るの好きだもんな。

ノブ:自分で踊らないDJは、DJがつまらないっすからね。遊んでないDJはダメっすね。オレはだって、フロアで踊る人のためにDJやってるから。やっぱね......。

はははは。

ノブ:はははは。

まあ、〈フューチャー・テラー〉が屈託が無さ過ぎるんだよ(笑)。

ノブ:はははは。でもまあ、やっぱベルリンでその原点を見たというか。

快楽への欲望の?

ノブ:浅沼さんと〈ベルグハイン〉で午後の3時まで踊ってましたからね。(注)

ひぇー、3時まで! それはオレには無理だ。

ノブ:はははは。

(注)浅沼優子さんいわく「3時まで踊ったけど、私は途中2時間くらい居眠りしましたよ(笑)。いちばん踊ってたのノブ君ですよ!」

 

DJ NOBU @ Berghain - ele-king


浅沼さんから送られてきたベルリンののどかな風景。

 「ノブ君を〈ベルグハイン〉にブッキングするまで帰って来ないから!」、ベルリンに引越す直前、ノブ君にそう言った。別にノブ君に頼まれたわけでも何でもなかったが、私は勝手にそれをひとつの目標としていた。〈ベルグハイン〉に初めて行ったときにから、「ここでDJノブが聴きたい」と思っていたし、私が知っている日本のDJでは、ノブ君以上にここにハマる人は他にいないと思った。

 私がベルリンに引越した最大の理由は〈ベルグハイン〉である、と言っても過言ではない。そんなことを言うとどんだけ頭のおかしい女かと思われるだろうが、それほど衝撃的なクラブだった。そのクラブに毎週通いたいからというわけではなく、こんなクラブが存在し得る街、こんなクラブを作り上げることができる人たちがいる街は魅力的な場所に違いないと思ったのだ。

 ひと言でいうと「完璧」なクラブ。理想のクラブかと問われれば、私の理想とは少し違う。音楽的な好みなども加味すると、個人的な理想はもっと別のところにあるように思う。ただ、実在しているクラブとしては「完璧」であり、完成された、ひとつの究極であることは間違いがない。

 客がフロアでセックスしているとか、「ダークルーム」ではもっとすごいことが繰り広げられているとか、そういうスキャンダラスな側面は正直、私にとってはどうでもいい。クラブの「怪しげ」な雰囲気を演出している要素でしかない。ただしそれは、このクラブ内独自の圧倒的な解放感、「各々が好きなように、好きなやり方で楽しめばいい」というアナーキーさの表れであり、それがこの場所の特別なところだ。

 自由奔放な雰囲気と、プロフェッショナリズムに徹した超ストイックな設備とスタッフと音楽。それがここまで高い次元で共存している場所は世界中見渡しても絶対に他にない。あり得ないと思う。

 ベルリンのクラブは、いまだにレジデントDJを大事にしているところが多い。それぞれのクラブには何人か「ハコ番」のDJがいて、彼らがそのクラブの雰囲気を代弁し、守っている。〈ベルグハイン〉はとくにそこにこだわっているクラブだ。マルセル・デットマン、ベン・クロックが現在もっとも高い人気を誇るツートップと言えるが、他にもレン・ファキ、アンドレ・ガルッツィ、DJピート、マルセル・フェングラー、ノーマン・ノッジ、シェッド、フィーデル、ボリス、アンディ・バウメカーといった面々のいずれかが、土曜日(日曜日)は必ずプレイし、パーティの運命を決める。

 〈ベルグハイン〉は基本的に、土曜~日曜にかけてはつねにハード・テクノが流れている(金曜日にはたまに少し趣向の違うパーティが開かれる。ダブステップのSub:stanceなど)。そこから大きくブレることはない。毎週豪華なゲストDJ/アーティストがブッキングされているが、ここで力を発揮する人と、クラブの個性の強さに負けてしまう人がいる。初めて行ったときにプレイしていたルーク・スレーターなどは、レジデント並みに場に馴染み、客をコントロールしていた。クリス・リービングも他では(私は)聴く気はしないが、ここでは輝く。逆にフランソワ・Kは彼のスタイルの持ち味が映えなかったし、デリック・メイも(私はプレイを聴いていないが)まったく合わなかったと自分で言っていた。というか、まったく彼の好みではなかったようだ。

 ......以上の話は全部ノブ君には事前に伝えていた。思っていたよりもずっと早く実現してしまったノブ君の〈ベルグハイン〉出演。私と、ノブ君を呼ぼうと言ってくれたマルセル・デットマンだけが、「ノブ君なら間違いない」と確信していたが、当然ベルグハイン関係者を含むベルリンの人は誰もDJ NOBUなんて名前すら聞いたこともなければ、彼がどんなスタイルのプレイをするのか、どの程度スキルがあるのか、どれだけ経験を積んでいるのか、全く知らなかった。それでもマルセルの「呼ぼう!」の一言でブッキングは決定。「マルセルが太鼓判を押すなら心配ない」、「リリースがあるかどうか、有名かどうかは全く関係がない。プレイがいいかどうか、ただそれだけ」と、当たり前のようにブッキング担当者は言った。

 この話もノブ君に伝えた。そう、プレイがすべて、本番がすべてだと。最高の舞台であると同時に、絶対に失敗できないチャンス。私は意識的にプレッシャーをかけまくった(笑)。本人には迷惑な話だが、私はノブ君がプレッシャーに強く、窮地に追い込まれたときに馬鹿力を発揮すると信じていたから! 〈ベルグハイン〉は、いちどのチャンスを掴まなければ、二度と呼ばれないと。ノブ君が日本人で初めてあそこでDJするんだから、日本のヤバさをベルリンの連中に見せつけてやってくれと。

 逆に「ハウスはかけないほうがいいか」、「こういう曲はかけてもいいか」等々、ノブ君からの相談にも乗った。なんせノブ君は〈ベルグハイン〉を見たこともなければ、フロアで踊ったこともない。ただ去年千葉の〈フューチャー・テラー〉で聴いたマルセルのプレイと、〈Ostgut-Ton〉や〈MDR〉のレコードの音から、来る日の夜をイメージしていたのだ。だから私はできる限り言葉であの独特のノリと雰囲気を説明した。(説明し切れないけども。)

[[SplitPage]]

マルセルも「グレート!」を連発。ブース目の前に陣取ってるうるさ方の常連さんらもみんな笑顔。「後ろのほうまですごい盛り上がってるよ!」とノブ君に伝 えると、ガッツポーズ! 完全に「オン」になった! 

 アイスランドの火山灰騒動でノブ君のフライトがキャンセルになり、いちどは今回は諦めて何ヶ月後かに仕切り直した方がいいんじゃないかという話も出たほど、直前は大混乱となった。でも結局、ノブ君が少し自腹を切ってでも、航空券を買い直して今回のパーティに出たいというので、慌ててパーティ前日である金曜日に到着する便を手配することになった。本来はローディーも兼ねたふたりの友人と一緒に来るはずだったが、彼らのフライトもキャンセルになったのでノブ君ひとりで来ることになり、重量制限があるので3時間のプレイぎりぎりのレコードしか持って来れなくなってしまった。だから直前、ものすごく慎重に選曲をしてきたようだ。行ったこともないクラブで、他はシェッド、マルセル・デットマン、ベン・クロックというレジデントのみのパーティ。ノブ君は普段から、どんなパーティでもすごくその場所やお客さんのノリ、自分の出番や役割を考えて綿密に選曲をしていることを私は知っている。だから今回などは、本当にいろいろ考えと想像と妄想をめぐらせたに違いない。

 正直、私も不安がなかったわけではない。ノブ君の実力は誰よりも評価しているけど、「あそこ」でそれが発揮できるのかどうか、そしてそれがベルリンの客に伝わるのかどうか。日本全国いろんなパーティを経験したノブ君でも、ベルリンの客を相手にやった経験はない。日本でやっていることをそのままやっても、客が違うので伝わらないかもしれない。でも、逆にベルリンのノリを意識しすぎてノブ君の個性や持ち味が出せなかったら意味がない。そのバランスをどう取ればいいのか、私もわからなかった。ノブ君には、「あとは現場でお客さんの反応を見て判断して」としか言えなかった。

 パーティ当日の夜のノブ君は、いままで見たことがないほど緊張していた。呼ばれた出演者との夕食会も両脇にマルセルとベン、向かいに〈Ostgut-Ton〉のレーベル・マネージャーであり当日〈パノラマ・バー〉のほうでプレイすることになっていたニック・ホップナー、その隣にはレジデントDJでありブッキング・マネージャーであるアンディ・バウメカー、シェッドを含む〈ハードワックス〉のスタッフ、そんな彼らと個人的に仲がいいライアン・エリオット、〈Ostgut〉のブッキング・スタッフ、とイカツイ面子がずらりと揃っていて、私ですら緊張した(笑)。ノブ君の出演時間である3時よりもだいぶ早めに、1時頃には会場に入った。夕方じっくりサウンドチェックもしたが、やはり営業時間の雰囲気、音の鳴りはその場に行ってみないとわからない。

 トップバッターだったシェッドがプレイしていたが、フロアはがらがらだった。普段から客足は遅い方だが、それにしても人が少なかった。火山灰騒動で多くの格安航空便がキャンセルになり、観光客が少なかったからだと思われる。これほど人が少ないのは予想外。シェッドも淡々とウォームアップをしている感じ。ノブ君は緊張顔でソワソワ。ところが交代30分前くらいになって、シェッドがピッチもボリュームも上げ出して、いっきに客も踊りはじめた。そして急激にテンションを上げ切ったところでノブ君に交代。それでもガチガチに顔がこわばっているノブ君(あんな顔見たことない!)に、「いつものノブ君らしくやれば、絶対大丈夫だから!」と最後に言った。心なしか、お客さんもこの無名の日本人DJがどうくるのか、好奇心をもってこちらを見ているようだった。いつの間にかマルセルやその友だちの常連さんたちがブースの前に集合していた。

 ノブ君のプレイがはじまった。最初の30分は、恐る恐るという感じが伝わって来た。でも〈ベルグハイン〉の客にはなじみ深い〈Ostgut-Ton〉のレコードをノブ君のセンスでプレイし、お客さんも少し安心したようだった。明らかにフロアに人が増え、みんなが踊っていた。最初の30分が問題なく過ぎたので、ブースから出てフロアを偵察しに行った。バッチリ。後ろのほうのお立ち台上のマッチョのゲイたちもがっつり踊っている! この人たちを踊らせたら、〈ベルグハイン〉のフロアは制したも同然。ブース内のマルセルも踊りまくっている! 「みんな踊ってるよ!!」とノブ君に言いにいくと、少し緊張が解けたような笑顔になった。開始1時間で、このクラブの要領とお客さんのノリは掴んだようだった。さすが。

 〈ベルグハイン〉のノリは掴んだようだったけど、まだノブ君らしさは発揮されていなかった。まだ硬かった。いつもの伸び伸びとした感じがない。せっかく日本から来てるのに、「他の〈ベルグハイン〉のDJたち」と同じことをやっても仕方がない。〈ベルグハイン〉の世界観を理解しながら、そのなかでどれだけ自分らしく遊べるかどうか。そう考えるとやはりDJにとって難しいハコだと思う。しかし4時を過ぎた頃から、フロアは満員、がっつりと客がついてきている手応え。マルセルも「グレート!」を連発。ブース目の前に陣取ってるうるさ方の常連さんらもみんな笑顔。「後ろのほうまですごい盛り上がってるよ!」とノブ君に伝えると、ガッツポーズ! 完全に「オン」になった! そこで1回、「やったね」の硬い握手をしたのを覚えている。そこからは、いつものノブ君。とくに最後の1時間は本当に楽しそうにプレイしていたし、それがフロアにも伝わって最高潮の盛り上がりを見せた。一緒に夕食を食べた面々も、納得の表情。この夜の主賓であるマルセルがめちゃくちゃ楽しそうに踊っていたことが、何よりの証拠だった。

 後半はあっという間に過ぎて、気づけばもう6時。マルセルと交代の時間だ。交代前に、この日にリリースされた『Dettmann』アルバムの3枚組LPをマルセルが持って来てノブ君に渡した。そしてノブ君最後の1曲が終わるといちど音を止めて、お客さんに紹介するようにノブ君に拍手を送った。あっという間に、私のひとつの「夢」だった"DJ NOBU @ Berghain"は終わっていた。ぶっちゃけ、終わる頃には相当酔っぱらっていた(笑)。だから、その後のことはあまり覚えていない。後は遊んだだけ。ノブ君もめいっぱい遊んでいた。何人かが私のところに、「NOBUがすごく楽しそうにフロアで踊ってるよ!」と言いに来たほどだ。プレイを終えて初めて、ノブ君は〈ベルグハイン〉の客の感覚をフロアで味わっていた。最強のレジデント、マルセル・デットマンとベン・クロックのプレイを彼らのホームグラウンドで体験していた。

 さすがに昼くらいで帰るだろうと思っていたのだが、結局午後3時過ぎ、〈ベルグハイン〉の音が止まるまでいてしまった。上階の〈パノラマ・バー〉は、まだまだそこから夜中まで続くのだが、〈ベルグハイン〉を味わい尽くしたところでこの日は満足。ほとんど〈パノラマ・バー〉をチェックしにも行かなかったが、どうやら〈ベルグハイン〉のほうに客が集中していたようだ。昼くらいまでいた私の友人は、「NOBUのときがお客さんの入りも盛り上がりもピークだった」と言っていた。私はそれ以降の記憶があやふやなのでどうだったか判断できないが、ノブ君が「〈ベルグハイン〉のためのDJ NOBUセット」を絶妙なバランスでプレイし、それが読み通りの反応を得たことはたしかだと思う。ノブ君のセットの終盤、私は酔っぱらいながら「this is one of the happiest moments of my life!」といろんな人に言いまくっていたことも記憶している。本当に鼻が高かったから!

 ありがとう、ノブ君。
 そして、またやりましょう!

浅沼優子

DJ Nobu Current Chart

  • Juju & Jordash / Deep Blue Meanies / Dekmantel
  • Mirko Loko / Tahktok (Villalobos Hilery's Chant Remix - Edit) / Cadenza
  • Claro Intelecto / Back In The Day / Modern Love
  • Marcel Dettmann / Dettmann / Ostgut Ton
  • Mike Parker / GPH14 / Geophone
  • Dasha Rush / Sonic State / Sonic Groove
  • James Kumo / Kumomusic Vol.1 / Delsin
  • Crue-L Ground ohcestra / Endbeginning(NOBU'S DUB) / Crue-L
  • Peter Van Hoesen / Entropic Minus Six / Time To Express
  • ??? / Desperation / Do Not Resist Beat!

Shop Chart


1

SHOES

SHOES Shoes Your Illusion Vol 1 & 2 SHOES / US / »COMMENT GET MUSIC
再入荷!MOODYMANN"SHADES OF JAE"を始め、JB、AL GREEN、MILES DAVIS、BILL WITHERSなど名だたるクラシックをRE-EDITしてきたSHOESが初のCDリリース!GARAGE系ならずとも、一度はフロアで聞き覚えのあるクラシックを料理してきた、CHICAGOのRE-EDITレーベル。12"で再発する予定はないので、2枚組でのCD化は嬉しい限り!

2

MAXXI AND ZEUS

MAXXI AND ZEUS Struggle/Cell INTERNATIONAL FEEL / BEL / »COMMENT GET MUSIC
絶好調!INTERNATIONAL FEELです!RADIO SLAVEも参加するQUIET VILLAGEの新プロジェクト"MAXXI AND ZEUS"による12"!60年代の野外でのフェスを思わせる、あまりにサイケ、あまりにドラッギーなブルースを鳴らすA面。コラージュ的な要素で圧倒的な世界観を作りこんだ極上のチルアウト・ナンバーのB面。PSY高すぎる一枚!

3

TODD TERJE

TODD TERJE Remaster Of The Universe PERMANENT VACATION / GER / »COMMENT GET MUSIC
切った張ったのRE-EDIT業界において今最も旬な男、TODD TERJEによる初のRE-EDIT集をリリース!初CD化音源のみ収録のDISC 2と、DJ MIXされたDISC 1の2枚組。SIMON BAKER、JOSE GONZALEZ、FELIX LABAND、DOLLE JOLLEなどヒットした音源が多数、CHAZ JANKELやM"POP MUZIK"などのクラシックも多く八方敵なし!

4

MASOMENOS

MASOMENOS Orange Balloon WELCOME TO MASOMENOS / GER / »COMMENT GET MUSIC
リリースラッシュの止まらないフランスを代表するアーティスト、MASOMENOSによる風船シリーズ「オレンジ」。GROOVE感重視のトラックに、様々な趣向をこらした個性的な4 TRACKS。コメントでは伝えづらいのですが、じっくりと聴けば、彼らのセンスが分かります。個人的にもオススメ!

5

REBOOT

REBOOT Rambon EP CADENZA / GER / »COMMENT GET MUSIC
間もなくリリースされる1STアルバムからの先行12"カット!LUCIANO REMIX!!!CADENZAのレーベルカラーを写し込んだような、美しい中域と細身のパーカッションは、レーベル50番を飾るに相応しい内容。LUCIANO REMIXは、肩の力が抜けた低音重視のドープなTECH MINIMAL。

6

TECHNASIA

TECHNASIA Espercance TECHNORIENT / HK / »COMMENT GET MUSIC
「POPSODA」以来4年ぶりとなるNEW ALBUM「CENTRAL」からの先行12"カット!とてもポジティヴでシンセの音色の「気持ちよさ」を表現した、まさに"TECHNASIA SOUND"と言えるテクノ・トラック!MINIMALや、DEEP HOUSEが主流となった現在のテクノシーンにおいて、CHARLESの作るストレートなテクノ・サウンドは一際魅力的に映るでしょう!

7

KUNIYUKI

KUNIYUKI Remixed Vol.2 MULE MUSIQ / JPN / »COMMENT GET MUSIC
RE-STOCK品入荷!北の至宝、KUNIYUKIの音源をCOBBLESTON JAZZとA MOUNTAIN OF ONEがREMIXしたオススメの一枚!COBBLESTONEらしい、エネルギッシュなベースラインと原曲のエレガントさを損なわないレベルでダンサブルにしたA面。アウトドアでナイトライフな、極上のチルアウトを約束するB面。A.M.O.O REMIXはNOBUさんもMIX CDに収録してました。

8

MARTINEZ

MARTINEZ Paradigm Shift MOON HARBOUR / GER / »COMMENT GET MUSIC
近年どこからのリリースでも、外れを引くことがなかったMARTINEZのサード。引き締まったリズム・トラックとアトモスフェリックなウワモノが絶妙にブレンドされた"Soralis"はじめ、ミニマルハウスがさらに洗練され、ディープハウスの最新形とも言えるサウンドへと昇華された傑作アルバム!

9

SLAM

SLAM Maffaking DRUMCODE / SWE / »COMMENT GET MUSIC
自身のレーベル・PARAGRAPHからのリリースに顕著に表れているダークでエクスペリメンタルなミニマル路線を突き詰めた一作。ブーストする低音、脳を揺さぶるドラッギーなシンセリフがたまらない極悪なトラック! B面はグルーヴを重視したバウンシーなミニマルで、こちらもフロアで威力を発揮するキラー・チューン!

10

JOAQUIN JOE CLAUSSELL

JOAQUIN JOE CLAUSSELL Sacred Rhythm Music and Cosmic Arts Promotional Sampler / »COMMENT GET MUSIC
7月リリースのレーベルコンピからの先行アナログカット。先日のBody&SOUL終盤でもプレイされた軽快なインストA1、イーノ的なピアノ・アンビエントB1、得意のドラムをバッチリ重ねドープなダブ処理が素晴らしいB2と異なったテイストの楽曲を3曲収録。限定500枚カラーヴァイナルでリリース。(Y)

interview with Distance & Loefah - ele-king


ディスタンスのDJでフロアは大盛り上がり

 今年で13年目を迎えている〈DBS(ドラムンベース・セッション)〉の「Dubstep Warz」にて、ロンドンからディスタンスとローファーが来日した。ディスタンスとローファー......贅沢なメンツである。ふたりのダブステッパーは、早い時期から忘れがたい作品を残している。それぞれタイプは違うが、キーパーソンであることは間違いない。夜の12時、僕は代官山ユニットの楽屋でふたりを待った。

 楽屋のドアが開いて、ふたりが入ってきた。まずは最初にディスタンスの話を訊こう。僕の家には彼の2枚のアルバムがある。〈プラネット・ミュー〉から出ている『マイ・デーモンズ』(2007年)と『リパーカッションズ』(2008年)は、ともに深夜の都会の風景写真をアートワークにしている。実際にディスタンスの音楽は深夜の都会の片隅に我々をテレポートする。ブリアルのように......。

 ローファーには待機してもらい、僕は神波京平さんとタナカ・テツジ君とグレッグ・サンダース――すなわちディスタンスを名乗る男を囲んだ。

ダブステップが変わってしまったからだよ。やたらノイジーになって、「ウワワワワ!」というサブベースのうるさい音がたくさん出てきてしまった。それで僕は、そう、ダブステップに飽きてしまったんだよ。

どんな経緯でダブステップのシーンに入ったのか教えてください。あなたはスキューバの〈ホットフラシュ〉から2004年に出したシングルでデビューしていますよね?

ディスタンス:いや、あれは2003年だよ。

ホント?

ディスタンス:間違いない。〈ホットフラシュ〉の002番だよね。

で、そもそもはどういうはじまりだったんですか?

ディスタンス:UKのアンダーグラウンドにはドラムンベースとUKガラージとふたつあるんだけど、僕はガラージが大好きだった。ガラージがダークになってダブステップに発展する。〈テンパ〉から出たハッチャの『ダブステップ・オールスターズ・ヴォリューム・ワン』(2003年)、あのあたりからダブステップが広く認知されはじめていったよね。僕はガラージの延長でダブステップを聴きはじめて、そのダークなエレメンツに触発されたんだ。

スキューバの〈ホットフラシュ〉レーベルから出したのはどんな経緯から?

ディスタンス:〈フォワード〉(注:ダブステップの伝説的なパーティ)で彼と会って、知り合ったんだよね。

へー。

ディスタンス:ポール・ローズ(スキューバの本名)がまだスペクタという名前でやっていた頃だったね。彼はベルリンに移住したから、もう頻繁には会っていないけどね。いま彼は〈ベルグハイン〉で「サブスタンス」というパーティをやっているよ。

あー、知ってる。最近、「サブスタンス」のミックスCDを出しましたよね。

ディスタンス:僕も呼ばれてそこでまわしたよ。

〈フォワード〉はいつから行きはじめたんですか?

ディスタンス:2000年代の最初だね。ガラージをやっている友だちに教えられて〈フォワード〉に行った。衝撃だったさ。それで毎週通うようになった。

どのくらいの人たちが踊っているの?

ディスタンス:20人ぐらいだったよ。

20人!

ディスタンス:ハイプじゃないんだ。音楽に共鳴した人たちが集まって、すごい熱気だった。DJブースをみんなが囲んで、かかっているダブプレートをじーっと見るんだ。で、「スクリームって書いてあるけど、誰だよ?」って。そんな感じだった。ピンチはブリストルから車でやって来るんだ。ハッチャ、ヤングスタ、ベンガ......みんなそこにいたんだ。

では、その場にいた20人がみんなDJやプロデューサーになるんだね。

ディスタンス:そうだね(笑)。僕はいつも、彼らのファンだった。で、いつしか自分でも作ってみようと、はじめるんだ。


[[SplitPage]]

いまでもダブプレートを使っている?

ディスタンス:使っているけど、正直言うと、最近は減っている。技術的な問題なんだ。ダブプレートはハウリやすいし、床が揺れると針飛びしやすい。こればかりは仕方ない。CDRを使う機会が増えている。それから機内への持ち込みも最近ではかなり制限されているんだ。それもCDRが増えている理由のひとつだね。本当はダブプレートを使いたいんだけどね。

最初のアルバムに『マイ・デーモンズ』というタイトルを付けたのは?

ディスタンス:それは最初に作りはじめたトラックのうちのひとつだったんだけど、僕はもともとメタルを聴いていて。

メタルからその言葉が来たの?

ディスタンス:ノー、ノー、ノー。うーん、説明がちょっと難しいな。

『マイ・デーモンズ』と『リパーカッションズ』のアートワークがすごく好きなんですよね。あの都会の夜の淋しい風景が、あなたの音楽にとても合っていると思って。

ディスタンス:そうだね。僕もそう思う。あれは、〈プラネット・ミュー〉のマイケル・パラディナスが探してきてくれたんだ。2000枚の写真のなかからふたりで探したんだよ。ニューヨークの写真家の写真なんだよ。

えー? あれはサウス・ロンドンじゃないの?

ディスタンス:違う(笑)。たぶん、ニューヨークじゃないかな。

ずーっと、クロイドンかサウス・ロンドンのどこかだと思っていました!

ディスタンス:ハハハハ。でも、あのヴィジュアルが僕の音楽に完璧に合っているのは間違いないよね。

マイケル・パラディナスの音楽は昔から知っていたんですか?

ディスタンス:知らなかった。後から知ったよ。僕はガラージを聴くまでずっとロックを聴いていたら。

どうして彼と知り合ったの?

ディスタンス:ヴェックスドのジェイミー(・ティーズデイル)から紹介されたんだ。曲を作りはじめた頃、完成するといつもジェイミーに送っていたんだ。ジェイミーはそれをそのままマイケルに渡してくれていたんだよ。

2007年から自分のレーベル〈チェストプレート(Chestplate)〉をやってますよね? あれはどういう理由ではじまったんですか?

ディスタンス:うん、あれは自分の音楽の玄関口みたいなつもりではじめたんだけど、最近は新しいアーティストの紹介もしたいと思っている。

いま8枚?

ディスタンス:そうだね。

すべてディスタンスでしょ?

ディスタンス:いやいや、スクリームとベンガのスプリットも出しているよ。

出したいと思っている新しいアーティストは誰ですか?

ディスタンス:まだ言えないけど、10番目は2枚組で新しいアーティストを収録するつもりなんだ。

あなたのサード・アルバムは?

ディスタンス:年内に完成させるつもりです。

〈プラネット・ミュー〉から?

ディスタンス:たぶんね。


[[SplitPage]]

 ここでローファーと替わってもらった。短髪で長身の彼は、ロンドンのルードボーイなセンスをどこかに感じさせる。

 さて、あらためて言おう。ピーター・リヴィグストン――ローファーの名で知られる彼はダブステップにおいて最重要人物のひとり。スクリーム、ベンガ、マーラ、コーキ、それらと並ぶキーパーソンである。


ローファー、ポスト・ダブステップを指標する男だ

 言うまでもないことだが、ローファーがマーラとコーキの3人ではじめた〈DMZ〉は、リリースされているほとんどの音源がいまやクラシックである。彼が2004年にデジタル・ミスティックズ(マーラ+コーキ)&ローファーとして発表したEP「ダブセッション」は初期ダブステップの名盤の1枚で、2005年のローファーのソロ・シングル「ルート/ザ・ゴート・ステアー」はその時代のもっともドープな1枚として記憶されている。

 また、ピンチの"パニッシャー"のリミックス、サーチ&デストロイの"キャンディフロッス"のリミックスも評判となった。ちなみにスクリームの「ローファー・リミックス」なる12インチは、レーベル面のアートワークがレジデンツである!(だからデザイン買いした)

 もっともローファーの場合、そのキャリアに対して作品数は決して多いとは言えない。が、逆に出しているものはほとんど"間違いない。そういう意味で彼は、玄人好みのひとりと言えるだろう。

どうしてマーラやコーキと知り合って、〈DMZ〉として活動するようになったんでしょう?

ローファー:ヤツらは僕が10代の頃、ほとんど同じエリアに住んでいたんだ。僕らはノース・クロイドンで育ったんだよ。コーキは隣の街にいた。15歳のときハードコア・ジャングルにハマって、サージェント・ポークスとマーラはMCをやりはじめるんだ。

高校が同じだったとか?

ローファー:マーラとコーキとポークスは同じ高校だったけど、僕は違った。

パーティで知り合ったの?

ローファー:いやいやいや、そういうのじゃない。ホント、同じエリアだったから、街をぶらぶらしていたら知り合った感じ。

いいですねー(笑)。レゲエのサウンドシステムの影響はあるの?

ローファー:ダブに関してはプロダクションのスタイルにおいて影響を受けている。でも、僕が影響を受けたのは、レゲエというよりもジャングルとヒップホップなんだよ。もしくはアシッド・ハウス。

アシッド・ハウス?

ローファー:ああ、〈トラックス〉や〈DJインターナショナル〉のシカゴ・ハウスとかさ、ミスター・フィンガーズ、マーシャル・ジェファーソン......。1987年とかさ、あの時代の音だよ。1988年のイングランドはすごかったんだぜ。

ていうか、そのときあなたは何歳だったんですか?

ローファー:9歳かな。

9歳でアシッド・ハウスかー、それは早熟ですね(笑)。

ローファー:さすがにパーティには行ってないよ。海賊ラジオ放送で聴いていたんだよ。

だって小3ですよ。

ローファー:はははは。


 ここで楽屋に突然、ドン・レッツが乱入する......。ドクター・マーティンの50周年イヴェントで来日していたという。嵐のようにやって来て嵐のように去っていったドン・レッツ......。


ローファー:ルーズ・エンズって知ってる?

ルーズ・エンズ! えー、知ってるけど、その名前、ものすごく久しぶりに聴きました。(注:80年代にソウル、ジャズ、ファンクを演奏して、レアグルーヴからアシッド・ジャズへと繋げたグループ)

ローファー:だから、サウス・ロンドンって海賊ラジオがすごかったんだよ。ソウル、レアグルーヴ、アシッド・ハウス......、で、その代表格がルーズ・エンズだったんだ。

へー、ブリストルにおけるワイルド・バンチみたいなものだったんですね。

ローファー:イングランドはやっぱ、海賊ラジオの影響がホントに大きいんだよ。


[[SplitPage]]

絶対に忘れたくないことなんだ。1981年にサウス・ロンドンのブリクストンで反政府の暴動が起きた。高い失業、低賃金、貧困、粗末な住宅に対するフラストレーションが爆発したのさ。そのときに警察がとった作戦の名前が「スワンプ81」というんだよ。

しかし......アシッド・ハウスを聴いていたキッズがどうやってダブステップに入ったんですか?

ローファー:1998~1999年くらいまではジャングルやドラムンベースにハマっていたんだけど、でもちょっと飽きてしまって、ちょうどその頃は自分たちでも何か作ろうって感じで思っていた。マーラはまだガラージのMCで、ハッチャはガラージのDJだった。で、僕はマーラやハッチャといっしょにいつも車でドライヴしながらクラブに出掛けていたんだよね。で、その道中で、僕は自分の曲をかけていたんだ。それから僕たちはハッチャがまわしていた〈フォワード〉に行くようになった。

ハッチャとはどうして知り合ったの?

ローファー:マーラを通じてだよ。ハッチャはビッグ・アップルという地元のレコ屋で働いていたんだよね。知り合ってから僕もビッグ・アップルに通っていたよ。

じゃあ、ホントに同じ時期に複数の人間がいっしょになったんですね。

ローファー:そうだね。

マーラたちと〈DMZ〉をはじめたときは最初からシリアスだった? それとも遊び的なところもあったんですか?

ローファー:最初から、ものすごくシリアスだった。ただしそれがカネになるとはまったく考えていなかったけどね。

〈DMZ〉はしばらく休止していますよね?

ローファー:〈DMZ〉とは、まさにマーラ、コーキ、そして僕のことなんだ。だから......マーラと他の人との繋がりで〈ディープ・メディ〉(マーラのレーベル)がはじまって、僕と他の人との繋がりで〈スワンプ81〉(ローファーのレーベル)がはじまった。

ローファーの名前で〈スワンプ81〉から出さないのは何故ですか?

ローファー:ローファーは〈DMZ〉だからさ。

〈DMZ〉は終わったわけじゃないんですね。

ローファー:決して(笑)。焦ってリリースするようなことはしたくないんだ。僕たちの素晴らしい音が完成したら出す、でも、決して焦らない。

あなた自身、自分の作品をここ2~3年出してないのは何故ですか?

ローファー:その理由のひとつは、ダブステップが変わってしまったからだ。やたらノイジーになって、「ウワワワワ!」というサブベースのうるさい音がたくさん出てきてしまった。それで僕は、そう、ダブステップに飽きてしまったんだよ。

それがあなたの言う"ポスト・ダブステップ"なんですね。

ローファー:そうなんだ。〈スワンプ81〉はポスト・ダブステップのレーベルなんだよ。

他にはどんなレーベルがある?

ローファー:〈Night Slugs〉、〈Hemlock〉、〈Hessle〉なんかがポスト・ダブステップをやっているね。

あー、〈Hemlock〉はアントールド、〈Hessle〉はラマダンマンのレーベルですよね。ああ、なるほどー。

ローファー:レイヴ・ミュージックではなくクラブ・ミュージックだよね。初期のダブステップがレイヴに変質したものではないんだ。いわば初期の20人の世界だよ。よりグルーヴィーで、ドラムマシンで作られていて、あと128 BPMぐらいのテンポ......よりソウルフルなダンス・ミュージック、それは〈スワンプ81〉のコンセプトでもあるんだよ。

 ここで、神波さんが「〈スワンプ81〉という名前にはブルクストンの暴動が関係しているんだよ」と教えてくれる。

へー、そうなんですか。

ローファー:ああ、絶対に忘れたくないことなんだ。1981年にサウス・ロンドンのブリクストンで反政府の暴動が起きた。高い失業、低賃金、貧困、粗末な住宅に対するフラストレーションが爆発したのさ。そのときに警察がとった作戦の名前が「スワンプ81」というんだよ。
(注:私服警察をブリクストンに送り込み、暴動の関係者などを片っ端から逮捕した)

まったく現代に通じる話ですね。

ローファー:まあ、そういうことだね(笑)。実際、僕の住んでいるエリアでは、その暴動の話はずうっと、いまでも世代を超えて語り継がれているんだよ。

 実はローファーに話を訊いているあいだにディスタンスのプレイ時間がきてしまい、ブリクストンの話を聞いたときにはもうディスタンスのDJがはじまって30分ぐらい経っていた。

 すぐにフロアに戻った。ディスタンスは......彼の作品世界のように、都会のダーク・アンビエントを繰り広げていた。良い感じで埋まったフロアからはときおり叫び声が聞こえた。そしてポスト・ダブステップを指標するローファーは......DJの1曲目にダブ・ポエトリーの伝説、LKJの"Di Great Insohreckshan"(『Making History』収録)をかけた。

 そしてローファーは、取材で話していたように、アントールド以降のポスト・ダブステップをミックスした。それはアシッド・ハウス、テクノ、ジャングル、ガラージ、ダブステップ、それらUKアンダーグラウンド・ミュージックの絶妙なブレンドで、そしてその新しい音はものの見事にフロアをロックしたのだった。

 ちなみに7月の〈DRUM & BASS x DUBSTEP WARZ〉――メアリー・アン・ホブス(17日)、そしてスクリーム&ベンガ(31日)決定! 


[House] #2 by Kazuhiro Abo - ele-king

1. Stacy Pullen / Alive | Black Flag

 永らく音信普通だった旧友とばったり再会したような......。面陳されたレコードのなかにこのシングルを発見したときには、そういう少し浮き足立った気分になってしまった。ステーシー・プレンの本作は、前作「ジ・エレクトリック・インスティトゥート・サンプラー(The Electric Institute Sampler)」から数えること5年、そして自身のレーベル〈ブラック・フラッグ〉からの作品としては実に8年ぶりとなるリリースである。その名も「アライヴ」ときたものだ。〈ブラック・フラッグ〉を復活させてのこのタイトル、否が応にも期待が高まる。

 ステイシー・プレンはカール・クレイグと並んでデトロイト・テクノの第二世代を代表するアーティストだ。彼のサウンドは、デリックメイ譲りのエモーショナルなコードワークとパーカッシヴなリズム隊が持ち味である。しかし、ロマンティシズムのなかに隠しきれない猛々しさを孕んでいるデリック・メイのサウンドに対し、ステイシーは、そう......、デューク・エリントンのそれにも通じる漆黒の気品のようなものを纏っている。扇情的でありながらも、どこか一歩引いたようなクールさとスマートさが彼にはある。

 今作は、そんな彼の一連の作品群の中でももっとも"熱い"部類に入る1作だ。彼の楽曲は浮遊感のあるシンセパッドを中心として構成されることが多い。しかし、今回楽曲の中心に据えられているのはソリッドで骨太なベースラインだ。2拍ループで突き進むベースラインにヒプノティックなシンセサイザーが絡み合うなか、「I'm back...」という彼の変調された声が響く。そこには彼独特のクールさはあまり感じられない。というか、ちょっと驚くほどストレートだ。サイドBに収録されたその名も"ハイテック・ソウル・ミックス"はアフロ・パーカッションがフィーチャーされたラフな作りになっており、さらにオールドスクールなデトロイトサウンドへの先祖がえりが進んでいるようにも思える。

 折りしも今年はデトロイト・テクノが誕生して25年目の年だ。3月にはフロリダで行われたWMCに於いて『D25』と題された記念パーティも催された。そんな節目の年にステーシープレンは〈ブラック・フラッグ〉を通して何を見せてくれるのか? これは注目せずにはいられない。

2. Aera / Infinite Space EP | Aleph Music

 E王
 前回紹介したアームやディクソンやヘンリック・シュワルツたち。いわゆる「ニュー・ハウス・ムーヴメントを牽引する〈インナーヴィジョンズ〉一派」の活躍を筆頭に、ゼロ年代から続くジャーマン・テック・ハウスの勢いはいまなおとどまることを知らない。そしてまた今月もドイツから非常にユニークなサウンドのEPが到着した。

 アエラは、ゴールドウィル(Goldwill)のメンバーとして〈ワズ・ノット・ワズ〉や〈リーベ・ディティール(Liebe Detail)〉といった人気レーベルから意欲的に作品をリリースしているラルフ・シュミッツ(Ralf Schmidt)のソロ・ユニットである。ゴールドウィルではパーカッシヴなヴォイス・サンプル使いが印象的だったが、今作ではそういったファンキーな持ち味は影を潜め、より内省的な方向性を打ち出している。

 サイドAに収録されている"フラワー・オン・ファイアー"は、ゆっくりと寄せては返す波のようなシークエンスと煌びやかなハープの音が織り成す音響世界がこの上なく美しいトラックだ。ヒプノスティックにこだまするシンセと、覚醒を促すかのようにときおり挿入されるノイズの配置も絶妙である。電気的でエッジーなサウンドと、フォーキーなチル感が共存している。そしてなにより、さじ加減ひとつ間違えると途端に土臭くなってしまうダブ処理を、トゥマッチになる一歩手前で優雅な側に留めているそのバランス感覚が素晴らしい。

 続くサイドB収録の"エレヴェーター・ピッチ"は、水滴を連想させる電子音のアルペジオが印象的なミニマル・トラックだ。メインで鳴っているアルペジオ・フレーズは3連のリズムを基調としている。そしてそこにときおりピッチを倍速にしたり、反復周期をずらした音をミックスすることで、ポリリズミックなグルーヴが生まれる。そのサウンドがさらにディレイで飛ばされ、音のレイヤーはさらに複雑に重なり合う。そうすることによって、少ないの音色ながらも万華鏡のなかのビーズのように絶えず姿を変えて聴く者を惹きこんでいく。

 アエラ、すなわちラテン語で「時代」を意味するそのユニット名に相応しく、今作はジャーマン・テック・ハウスのみならずビートダウンやニュー・ディスコ/コズミックといった、言わばモダンハウスの潮流そのものを飲み込もうかとしているかのようだ。個人的に2010年の上半期ベスト候補です!

3. Ian Simmonds / The Burgenland Reworked EP | Musik Krause

 梅雨時が近づいてくると暗いレコードを聴きたくなる。落ち着いた音楽、というよりも"暗い"音楽だ。自分の話でなんなのだが、どうも僕は人よりちょっとばかり季節ごとのテンションのアップダウンが激しいようで......。しかも、これまた恥ずかしながら結構ステレオタイプな方向に。大体毎年春先に浮かれていろいろとやらかしてしまい、梅雨が近づいてくる頃にはどっぷりと反省の海に肩まで浸かることになるのだ。そんなときにしっくり来るのは、やっぱり底抜けに明るいラテン・ハウスではないと思う。

 そんな前フリで紹介するのは、昨年なんと9年ぶりにオリジナル・フル・アルバム『ザ・バーゲンランド・ダブス』をリリースしたイアン・シモンズの作品だ。彼は90年代にはアシッド・ジャズ・シーンでカルトな支持を集め、トリップホップにも多大な影響を与えたバンド、サンダルズの一員としても知られている。そんな彼がアルバムをリリースするのに選んだのは、ジャズ・ルーツの良質なミニマル/クリックハウスをリリースしているドイツの〈ミュージック・クラウス〉だ。そして本作は、このレーベルの看板アーティストであるクラウス・デュオ(Krause Duo)を筆頭とした気鋭のアーティストたちによるリミックスEPである。

 まず1曲目に収録されているのはリミックスではなく、イアン・シモンズ自身の未発表曲"ルーサー・ストリート・ブルース"だ。沈鬱なノイズと深いエコーがかけられたトランペットが印象的なこのジャズ・ナンバーは、さながらコールタールの沼のなかで聴くトリオ・ジャズとでも言ったところだろうか。ひたすらにダウナーである。続いて収録されている"スピーク"のイーブントゥエル(Even Tuell)によるリミックスも、これまた暗い。ショート・ディレイによって金属的な響きに加工された電子音と、ピッチを低く落としたヴォイス・サンプルのリフレインは、シカゴハウスのなかでも突出してバッド・テイストだったバムバムの作品にも通じるバッド・トリップ感を醸し出している。

 この時期、こういったダウナーなレコードに手が伸びるっていうのは、たぶん、少数派ではないと思うんだよなぁ。収録されている4曲どれをとっても、浮ついた気分など一瞬でかき消してくれる素晴らしい薬効を持っている。ちょっと浮かれすぎた? と思ったときには、一度お試しあれ。

4. Bubble Club / Vioket Morning Moon | Bubble Club

  浮かれすぎたときに聴きたい1枚を紹介したのだから、今度は落ち込みすぎたときに聴きたい1枚を紹介するのが筋と言うもの。そこで紹介するのがバブル・クラブという聴きなれない名前のこのアーティストだ。実はこのバブル・クラブというのは、ロンドン在住のDJ/プロデューサーであるダン・キーリング(Dan Keeling)とエンジニアのロビン・トゥエルブトゥリー(Robin Twelftree)によるバレアリック・プロジェクトだ。ダン・キーリングといえば、カーク・ディジョージオとのユニット、クリティカル・フェーズの片割れと言うとピンと来る人もいるのではないだろうか?

 サイドAに収録されたオリジナルミックスは、BPM115くらいのゆったりとしたエレクトリック・ブギーだ。たっぷりと脈打つようなベースとアコースティックギターのアルペジオは、思わず「これがバレアリックだ!」と言いたくなるほどの夢心地。あげくはリバーブとディレイで飛ばされた口笛まで入ってきて、もう言うことなし! である。サイドBに収録されたエリック・ダンカンの変名プロジェクト、ドクター・ダンクスのリミックスは、極力原曲を保ちながらも上物をさらに厚くして、より深めの空間処理を施してあり、こちらも極上のチルアウトチューンに仕上がっている。

 実のところ僕は、わけあってこういうバレアリックな音にはちょっとした思い入れがある。それは遡ること10年、まだ僕が10代も半ばで地元に居た頃に端を発している。僕の地元は青森県は八戸市という本州の北端にあるちょっとした港町だ。お察しの通り、バレアリックとは程遠い。基本的に寒い。そこには田舎ながら一軒だけ、ダンス・ミュージックを専門に扱うレコード屋があった。昨年1月に閉店したその店は、名前を「リミックス・レコーズ」という。

 その店には「親方」と呼ばれる、サーフィンと夕日を愛する店員が働いていた。当時テクノ小僧だった僕は、必然的に毎日親方の世話になっていた。〈アクシス〉や〈トレゾア〉のバックカタログを血眼になって集めているような当時の僕に、「そんなんばっかじゃ色気が出ねーぞ」と親方が薦めてくるのは大体決まってバレアリック・チューンだった。「スエニョ・ラティーノ」あたりを入り口にして、当時のイビサ系プログレッシブからホセ・パディーヤの一連の仕事まで。「いま全部ピンとこなくても年取ればわかるさ」といつも親方は言っていた。たしかに当時はピンと来たものはそのなかの半分くらいだったかもしれないが、思えばおかげで随分音楽性を広げてもらった。感謝してもしきれない思いだ。

 話が大幅に逸れてしまった。要は、こういう黄昏が似合うような曲を聴くと暑い国への憧憬とともに毎日レコード屋の片隅で過ごした、ボンクラながらも楽しかった日々を思い出して少し元気になり、そして少しノスタルジックな気分になるのだ。

5. Choklate / The Tea | Reel People Music

 ジュラシック5のチャリ・ツナ(Chali 2na)やビタミンD(Vitamin D)とのコラボレートにより、ヒップホップやR&Bリスナーのあいだで話題となったシンガー・ソングライター、チョコレート。シアトルを中心に活動する彼女がウェスト・ロンドンのクラブ・ジャズ・ユニット、リール・ピープルと手を組み、彼らのレーベル〈リール・ピープル・ミュージック〉からシングルをリリースした。表題の"ザ・ティー"は、彼女が昨年発表したアルバム『トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン(To Whom It May Concern)』のなかの1曲だ。このアルバムは前述のビタミンDや、メアリー・J・ブライジも手がけるジェイク・ワン(Jake One)の手によるR&Bを昇華した生音のダウンビートが中心となっている。そのなかでもひときわディスコ・フィーリングに溢れ異彩を放っていたこの曲を、リール・ピープル人脈のアーティストたちがリプロダクトした本作は、――そう、言うなれば"ニュー・ソウル以降のブラック・ミュージックとしてのハウス"を好む人びとのハートを打ち抜くことうけあいだ。

 A1に収録されたリール・ピープルによるエディットは、原曲のサウンドをほぼそのまま用いて4分間の原曲を6分にエクステンドしたものだ。オリジナルを尊重した作りになってはいるが、控えめながらも要所要所にダブやエフェクトを加えてチョコレートのシルキーでありながら力強いヴォーカルと、そしてある意味ヴォーカル以上に歌っているファンキーなベースラインの魅力をより引き立てている。A2に収録のラヤバウツ(Layabouts)によるリミックスはパーカッションとサウダージ感溢れるガット・ギターのカッティングが、この曲のエモーショナルな面をよりいっそう盛り上げている。B1のマヌーによるリミックスは、硬めのアコースティック・ピアノとオルガンのコンビネーションという90'sハウスの記号が随所に散りばめられたオールドスクールな作りになっており、ハウス界の大々ベテラン、トニー・ハンフリーズが絶賛したというのもうなずける出来だ。エレクトリックでトリッピーなサウンドが隆盛な最近のハウス事情だが、ときにはこういうオーガニックなヴォーカル物でホッと一息つきつつ体を揺らすというのもまた、乙なものだ。

interview with Juan Atkins - ele-king

 オウテカの来日ライヴ公演が決定したとき、彼らが指名したDJのひとりがデトロイト・テクノのオリジネイター、ホアン・アトキンスだった。これは......なかなかいい話だ。つねにマニアの注目に晒されながら、ときにリスナーを困惑させることさえ厭わないUKの電子音楽における高名な実験主義者たちのオリジナル・エレクトロへの偏愛は良く知られた話である。だから、当然といえば当然の指名なのだろうけれど......。しかし、デトロイトのファンキーなテクノの生臭さはベッドルームのIDM主義者の潔癖性的な志向性とは、まあ、言ってしまえば180度違う......こともないだろう。昔から彼らはレイヴ・カルチャーを擁護し、その庶民性を見下す連中を批判してきたし、何よりも彼らがオリジナル・エレクトロへの愛情を失ったことはたぶんいちどもないのだ。とにかくオウテカは今回、決してトレンディーとは思えないデトロイトのエレクトロ・マスターの宇宙のファンクネスを引っ張ってきたのである。そんなわけで、6月4日の〈DIFFER有明〉のパーティを控えたホアン・アトキンスに話を訊いてみた。

■いまデトロイトですか?

ホアン:そうだね。

■最近はどんな風に過ごされていますか?

ホアン:最近は〈Movement 2010〉に向けての準備で毎日忙しいな。〈Movement 2010〉は知ってるかい? デトロイト・エレクトロ・ミュージック・フェスで今年は5月29日~31にかけて開催されるんだよ。去年は......たしか83,000人くらい集まったって聞いたな。今年はモデル500名義でライヴで参加するんだけど、パーティを閉めなくちゃいけないからね。準備がけっこう大変で、最近はそれに向けてずっと準備を進めているという感じさ。日本のショウだって? まずは〈Movement 2010〉をキッチリやらなきゃいけないが、準備はもちろんしているよ。オレが日本を好きなことは知ってるだろ。

■体調のほうはいかがですか? DJは頻繁にやっていますか? 曲作りのほうは?

ホアン:ぼちぼちだね。曲作りに関して言えば、オレは取りかかるまでに時間がかかってしまうんだよ。シングルがもうすぐリリースされるけど、いまもまた新しいシングルに取りかかっている。正確に言えば、もうしばらくずっとそれに取りかかっているんだけどね。

■今回はオウテカ自らの指名で東京でのDJを依頼されたようですが、オウテカとは直接知り合いなんですよね? デトロイトにも来ていますし......。

ホアン:直接の知り合いではないよ。たしか過去にいちど会ったことがあるはずだけど。

■彼らはエレクトロ――といっても最近のファッション界で流行っているエレクトロではないですよ、マントロニクスやジョンズン・クルー、あるいはあなたのサイボトロンのようなオリジナル・エレクトロが大好きだから、それもあって依頼したんじゃないかと思うんですけど......。

ホアン:オウテカがマントロニクス、ジョンズン・クルーやサイボトロンが好きだっていうのは嬉しいね。オレを健全なラインナップのなかでやらせてくれて、彼らには感謝しているよ。

■実際、彼らとはエレクトロに関して話し合ったことがあるんじゃないですか?

ホアン:もしかしたら話したかもしれないけど、なにせオレが彼らに会ったことがあるのはおそらく過去の1回だけだっていうこともあって何を話したかはあまり覚えてないんだよ。

■オウテカに関して、あなたの評価を聞かせてください。

ホアン:正直、オレは彼らの音楽についてよく知らないんだ。彼らの音楽をあまり聴いたことがないんだよ。でも彼らがエレクトロを好きだと知って、オウテカに興味を持ったよ。次のときまでに必ず彼らのカタログをチェックしておく。アルバムも最近出たんだろ。日本に行くまでに必ずそれも聴いておくよ。

■2005年に『20 Years Metroplex: 1985 - 2005』をベルリンの〈トレゾア〉から発表しましたが、あれはまさにこの20年のあなたの歴史でした。あのコンピレーションに関するあなたのコメントをください。

ホアン:あれはオレが過去に作ったトラックのなかでもとくに人気があるものを集めたものさ。あれを出そうと思ったのはみんながオレに、「なんであの作品の収録トラックはどれもCDでリリースされてないんだ?」、「どうなってんだよ」ってしつこかったからだな。オレ自身としては、あの作品はオレのトラックがより広いところに行くためのプラットフォームになればいいと思って取りかかった。そう思って作った作品だよ、あれは。2枚のCDにあのトラックを入れ込むのには少し苦労したけど、それに挑戦しているときの気分は悪くはなかったね。

■どんな反響がありましたか?

ホアン:良いフィードバックを得ることができたと思っているよ。世界中で受け入れられたかどうかはわからないけど、オレのまわりからのあの作品に対しての反応はかなり良いものだったよ。

■あなたのレーベル〈メトロプレックス〉そのものはもう動くことはないのでしょうか?

ホアン:いや、動きだしたいと思っている。でもその前にギアをかけてアクセルを踏む準備に入らないとね。新しいトラックに取りかかりたいと思ってるよ。ショウももっとやりたいね。

■この10年の、つまりゼロ年代のエレクトロニック・ミュージックのシーンをあなたはどう見ていますか? 停滞していると思いますか? それともゆっくりでも前進していると思いますか?

ホアン:うーん、停滞してはいないと思うけどね。ゆっくりどころかオレはすごい勢いで進化していると思うよ。まわりではいろいろ起こっているみたいだし。

■具体的には誰がいますか?

ホアン:いまの前進の仕方からするとたくさんいるはずだけど、オレには今誰かの名前を挙げることはできないかな。

■例えば......フライング・ロータスのような新しい世代の音をあなたはどう見てますか?

ホアン:フライング・ロータスの名前は聞いたことがあるんだけど、彼の音楽はまだ知らないんだ。ごめんよ。正直に言うよ。オレには娘がいるんだけど、彼女が最近音楽を作っている。まだ作品の制作段階だがそれが発表された日には事件になる。彼女のスタイルはどこにもないもので、素晴らしい。彼女のアーティスト名はMilan Ariel。アトキンスをつけるかどうかは彼女もまだ決めてないようだけどね。

■あなたのなかに新作を発表する予定はありますか? もしあるなら具体的に教えてください。

ホアン:モデル500名義のシングルがリリースされる。〈Movement 2010〉で披露するつもりだよ。そのシングルは〈R&S〉から4週間から6週間後にはリリースされるはずだよ。
●今回の日本でのセットについて教えてもらえませんか? なにか特別なことをプランされているようでしたらそれについても教えてもらえればと思います。

ホアン:Very Groovy。Very Very Sexy Groovyなエレクトリック・ダンス・ミュージック・セットを披露しようと思っている。オレはいつだって一夜限りのスペシャルな夜を作り上げるために本気でショウに取り組む。今回は日本だっていうこともあって、オレ自身も正直楽しみにしているし、オレのショウはいつだって特別なんだ。どこでやっても全力で取り組むだけさ。ただ日本やオーディエンスのヴァイヴスがオレに伝わって、意識せずとも自分が特別に納得できてしまうようなプレイを繰り出してしまうことにもなりかねないと思っているよ(笑)。それに今回は特別にアンリリースド音源をいくつか持って行くつもりなんだ。過去にデモとしてしか存在しなかったトラックをね。他のアーティストのもオレの自身のも。もうすぐリリースされるシングルも、もしかするとプレイするかもしれないな。

■それでは最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

ホアン:愛してるぜ。オレたちはVery Sexy Funkyナイトをともにするんだ。準備をしておいてくれよ。オレは日本のファンを愛しているんだ。Don't miss it!

<オウテカ東京公演 2010>


Autechre

Claude Young

出演 : Autechre, Juan Atkins, Claude Young and more.
日程 : 2010.6.4(Fri) OPEN / START 22:00
会場 : ディファ有明
料金 : 前売り ¥5,500 / 当日¥6,500
*20歳未満の方はご入場出来ません/
 入場時に写真付身分証の提示をお願いします。
 YOU MUST BE 20 AND OVER / PHOTO ID REQUIRED


企画・制作 : BEATINK / BEAT RECORDS
MORE INFO >>
https://www.beatink.com/events/autechre2010/

interview with Jeff Mills - ele-king

小野島 大小野島 大 / Dai Onojima
音楽評論家。隔月(奇数月)にジャンルレスなパーティ「bug III」を渋谷Lazy Worker's Barで開催。次回は5/21(金)。
詳細はhttps://onojima.txt-nifty.com/まで。
twitterはhttps://twitter.com/dai_onojima

 ジェフ・ミルズの新作『The Occurence』は、「宇宙」をテーマにしたここ最近の一連のコンセプト・ワークの集大成とも言うべき力作だ。前作『Sleeper Wakes』のストーリーから宇宙遊泳中に起こった出来事をモチーフとして展開する。また彼にとって6年ぶりのミックスCDでもある。手塚治虫『火の鳥』のカットをスリーヴに引用し、日本初の「ヴァイナル・ディスク」を使用するなど、このプロジェクトへの並々ならぬ力の入れようがよくわかる。そして音楽の内容もまた、いかにもジェフ・ミルズらしい、ジェフ・ミルズにしかできない、深遠にして唯一無二の硬質なテクノ美学が繰り広げられる。まさに宇宙空間を彷徨っているような謎めいた音像、どこまでも幻想的かつ覚醒したイメージ。そこには難解で思索的な世界観があるが、決して聴き手を排除するようなものではなく、むしろその音の波のなかでゆったりと遊ばせてくれるような懐の深さがある。まさに音による別世界旅行である。本作に先駆け、去る1月1日に東京・渋谷〈WOMB〉で開かれた「宇宙からの帰還」を祝うパーティでは、全曲新曲のみで6時間のセットを構成するという意欲的な試みもおこなっている。


Jeff Mills /
The Occurrence

Third Ear

Amazon

 だが、高度にコンセプチュアルで壮大な世界観をみっちりと組み上げることでますます孤高の念を強めつつある、このテクノの哲学者は、一方でダンス・フロアの最前線からは少し距離を置いているようにも見える。『Sleeper Wakes』でも本作でも、いわゆるフロア・コンシャスに展開するフィジカルなダンス・トラックはほとんどなく、リズミックな曲も、全体のスペース・シンフォニー的な超然とした流れの中での起伏がつけられるぐらい。クラブの現場ではハードでファンキーな楽曲も多くプレイされクラウドを熱狂させる場面もあるのに、リリースものにおいては、そうした側面を見せなくなってしまった。かって誰よりもハードでファンキーでフィジカルな、恐ろしいほど研ぎ澄まされたダンス・トラックを連発して世界中のフロアを熱狂させたこの男は、いま、なにを考えているのか。

テクノ自体、フューチャリスティックな面をもっていて、そこに向かって自由に想像力を働かせることができる音楽だということです。ですが現実的にはダンスフロアに止まってしまっている。

■新作を拝聴しました。このようなコンセプトのアルバムをいま作られた理由はなんだったんでしょうか?

ジェフ:今作は『Sleeper Wakes』からの抜粋で、『Sleeper Wakes』の物語のなかでももっとも重要だと思われる出来事(The Occurrence)をフィーチュアして焦点をあて、それをさらに広げたものを、アルバムという形で表現したいと思ったのです。今回のミックス・アルバムを作った目的のひとつは、『Sleeper Wakes』の曲(「Space Walk」)をいかに物語を語るように伝えるか、ということでした。スポークン・ワードのような効果を出すために、そういった曲を足してみるなどいろいろ工夫してみました。こうした試みは初めてだったので、とてもチャレンジングで、やり甲斐がありましたね。今後も、『Sleeper Wakes』のなかから別のパートをフィーチュアして新たなアルバムを作る可能性もあると思います。

■あなたは3年の間宇宙を旅して、2010年1月1日0時0分1秒に東京・渋谷〈WOMB〉のパーティに帰還した、という設定でコンセプトを進めてきたわけですが、その「帰還」の瞬間は、あなたにとってどんな体験でしたか?

ジェフ:3年という長いあいだ日本に戻っていなかったわけですからね。しかもその前まではかなり頻繁に日本を訪れていましたから。なのでちょっと緊張していました。でも、その瞬間に向けてかなり綿密な準備を重ねてきましたし、細かいディテールまで全部決め込んでいきましたから、そういう意味では自信を持ってチャレンジできました。セッティングなども自分にとっては新しいやり方を使ってのイヴェントでしたから、新しい体験をすることができました。でもその新しいチャレンジに対して日本のクラウドがどんな反応をするかは、予想もつきませんでした。

■実際にプレイしていかがでしたか? クラウドの反応も含めて。

ジェフ:ちょっといままでとは違っていましたね。3~4年(日本では)プレイしていなかったから、以前のクラウドとは多少違っていることは予想できましたが、今回はかけた曲がすべて新曲でしたから、お客さんにとっても初めて聴く曲ばかりだったわけです。なのでクラウドの共感を得るまで少し時間がかかったんですが、0時から6時までひと晩中ひとりでプレイしたので、じっくりと時間をかけて、最終的にはクラウドだけではなくクラブのスタッフなど、イベントに関わった人たちすべてとともに、なにかひとつの結論のようなものを見いだせたんじゃないかと思います。

■その「結論」とは?

ジェフ:4年以上かけて、〈WOMB〉のレジデンシーからこの『Sleeper Wakes』のプロジェクトまでの一連のコンセプトのシリーズにひとつ終止符を打つことができたこと。レジデンシーだったりアルバムだったり、いろんな側面からこのプロジェクトを完結させることができました。そしてお客さんの側も、新しいサウンドを受け入れる許容量が十分にあるという手応えを得ることができました。『Sleeper Wakes』のコンセプトにしても、これを日本のみならず世界中で進めることができるという確実な自信を得ることができました。実際、ヨーロッパなどいくつかの国で、同じようなコンセプトでいくつかパフォーマンスをやっています。そうした繋がり、自信めいたものを得て、このコンセプトを続けることができるという「結論」を得られて、少し安心しているところです。

■『Sleeper Wakes』のプロジェクトをやることで、あなたが得たものとは何だったんでしょうか?

ジェフ:いちばん大きいのは、つねに新しいサウンドを作り出していくということに、自分自身なにも抵抗を感じずにできるようになったし、お客さんもそれを受け入れてくれる、というたしかな自信を得たことでしょうね。とくに日本に関しては、あえて4年間のブランクを作って、自分はつねに新しいサウンドを作り、新しいものを探し求めているというメッセージを送り続け、実際に4年後にまったく新しいものを提供することができました。結果として今回のプロジェクトは成功したということで、これからは、レコードを出してツアーをやって......という手続きを経ずともオンタイムで新しいものをお客さんに伝えることが、当たり前のこととしてできるようになったということが、今回のいちばんの成果です。

■それまであなたの活動において、「新しいものをやる」ということの困難さを感じていたことがあったわけですか?

ジェフ:以前からセットのなかにいくつか新曲を組み込む実験はやっていたんですが、過去の経験では、まったくふだんと違うセットをやるときには、オーガナイザーから「そういうことは事前にお客さんに知らせて欲しい」と言われるんです。でもそんなのは馬鹿げている。お客さんはその日どんな体験をするかはわからないけれども、それを楽しみに来る、という環境を作りたかった。そのひと晩のためにテーラーメイドされた曲をプレイする、すべてはその日のための曲をかける。それがスペシャルなイヴェントではなくて、いつもそうであるような、そんな環境を作りたかったのです。

■パーティでのDJプレイというのは、ある種の芸能/エンタテイメントという側面もあると思います。お決まりの定番曲をかけてお客さんに喜んでもらう、というような。そうした部分に嫌気が差していたということもあるんでしょうか

ジェフ:そういうお決まりのダンス・イヴェントを否定するつもりはまったくありません。これだけテクノロジーの発達した現在、いろんなオプションがあってもいいのではないか、ということです。私はDJや音楽を作ることに関して、長いことプロフェッショナルとしてやってきました。なのでその両方を提供するというスタンスをとっていきたい。ほかのDJがどういうやり方をするにせよ、自分としてはその時その時のイヴェントのために曲を作り提供するというやり方を自分のスタイルとして作り上げていきたいのです。今回のプロジェクトが成功したことで、そうしたスタイルが日本のみならず受け入れられつつあると実感しています。

 

[[SplitPage]]

テクノは今後ハードでフィジカルに訴えるものというよりも、もっとメンタルに働きかけるものが大きくなっていく。サイケデリックで、メンタルにトリッピーなものが主流になっていくような気がします。

■以前あなたは、もうミックス・アルバムは出さないと宣言し、実際に長いこと出していなかったわけですが、今回なぜあえてミックスCDという形で出したのでしょうか。

ジェフ:今回に関して言えば、ミックスは結果としてそうなったというだけです。いままでのものはクラウドを踊らせるためにスムーズに曲を繋げる、いわばディスコ・ミックスだったんですが、今回に関してはミックスというよりはトランスレーションですね。サイエンス・フィクションのシナリオを語っていくに過程で、結果的に曲がミックスされたということです。それというのも、物語のバックドロップとしてこの音楽が流れているというシナリオだから、必然的に曲と曲が繋がっていくんです。だから、今までのいわゆるDJミックスがディスコ・ミックスだとしたら、これは「ストーリー・ミックス」とでも言えるようなものと言えるでしょう。

■なるほど。さきほどあなたは、言葉を紡ぐようにストーリーを語った、とおっしゃいましたが、そういう物語的な表現にこだわる理由とは?

JeffMills
Jeff Mills /
The Occurrence

Third Ear

Amazon

ジェフ:ひとつに、プロダクション的な面。音楽をストーリー・テリングのように使うことで、より良いプロダクションの結果が得られ、自分のプロダクション能力も上げることができる。そうしたことを常に意識し努力することで、音楽で何かを語ることが可能になっていくと思います。もうひとつは、もともとテクノ自体、フューチャリスティックな面をもっていて、そこに向かって自由に想像力を働かせることができる音楽だということです。ですが現実的にはダンスフロアに止まってしまっている。なので私は人びとの気持ちを刺激してイマジネーションを喚起して、自分たちの現実からはなかなか届かない別世界に引き込むような、そういうテクノ本来の世界を表現していきたいと思ったのです。現代社会ではあらゆることが目まぐるしく起きていて、なかなか現実の能力だけではすべてを理解しきれない。そのために想像力が必要なんですが、テクノはその一助になるということを再認識させたいのでです。

■サイエンス・フィクションという言葉が出ましたが、あなたは宇宙に限らず、「タイムマシーン」や「メトロポリス」など、SF的なモチーフにこだわってきました。あなたにとってサイエンス・フィクションとはどういう魅力があるんでしょう?

ジェフ:テクノとサイエンス・フィクションは切っても切り離せない存在じゃないかと思います。SFのBGMとしていちばんマッチするのがテクノじゃないでしょうか。というのも、テクノの、構成があってないようなオブスキュアな感じというのが、SFのなかで表現される、現実ではないような想像を超えたストーリーとうまく合致するんです。もちろん私だけではなく、ホアン・アトキンスとかケニー・ラーキンといった多くのテクノのプロデューサーがそうしたことを意識して曲を作っています。テクノの素晴らしさを一般にアピールするには、SFと関連づけるのがいちばんわかりやすいのではないでしょうか。

■今作のアート・ワークに手塚治虫の「火の鳥」を使ってますね。

ジェフ:テクノとサイエンス・フィクションというふたつのアート・フォームを結びつけるためのステップとして、今回手塚さんの絵を使わせてもらえることになったのはラッキーでした。もともとのコンセプトは同じようなもので、彼はヴィジュアルで表現しているし、私の場合は音楽で表現している。根本にあるものは同じだと思うし共感しています。

■さきほど「ダンスフロアに止まらないテクノ本来の魅力」ということをおっしゃいましたが、あなたはここ最近ダンス・フロア向けのシングルをほとんど出していません。それはダンス・トラックスだけではないテクノを追求していきたいという意欲のあらわれなんでしょうか

ジェフ:アナログ12インチのシングルは出していますが、ダンス・ミュージックという観点であまり考えてないことはたしかです。リリースするものに関しては、リスナーが何かを感じ取って、それが頭の片隅に残って、またなにか新しいものを聴きたいと思ってくれればいい。あとは、この音がどういう風に作られたのか、この先どういう風に発展していくのか、まったく予想ができないようなものを作っています。

■ふむ。あなたのクラブでのプレイではかなりハードでファンキーな面も出ているのに、リリースされるものでは、今回のCDも含めそうした面はほとんど出てきません。これは現場でのプレイと録音物を分けて考えているということですか。

ジェフ:たしかに意図的に分けて考えています。ダンスフロアで人びとが踊りたがっているいるのに、それなりの曲をかけないわけにはいかないでしょう。ハードな曲やファンキーな曲をかけて、その場のクラウドが肉体的になにかを分かち合って一体感を生むことを、ことダンスフロアにおいてDJはひとつの目的にしていますからね。そこで初めて自分のプレイを自分の表現したいものへと発展させていくことができるようになる。でもアルバムに関してはお客さんが目の前にいるわけではないので、もう少しフリーな気持ちで自由に表現できるし、アルバムを聴いてくれるリスナーは踊るというより、聴くという環境で接してくれていると思うので、音にさまざまなヴァリエーションを加えることができると考えます。

■なるほど。しかし個人的な要望なんですが、もう少しハードでファンキーな曲もアルバムで聴きたいと思います。

ジェフ:(笑)なるほど。これは個人的に感じているんですが、テクノが今後どうなっていくか考えると、日本だけじゃなく世界的に、ハードでフィジカルに訴えるものというよりも、もっとメンタルに働きかけるようなものが大きくなっていくんじゃないでしょうか。サイケデリックで、メンタルにトリッピーなものが主流になっていくような気がします。なので、これからハードとかソフトとか、そういうジャンル分けはなくなってくると思います。クラブの現場ではDJとして、その夜の流れを作っていくなかで、どこかのタイミングでクラウドをプッシュする必要があってハードな曲もかけますが、アルバムでもストーリーテリングのために、ダンスフロアほどハードでなくても、そういった強弱やメリハリはつけているつもりです。

■最後の質問です。メタモルフォーゼでX-102として来日されるということでいまから楽しみなんですが、どんな内容になりそうでしょうか。また今後X-102としてレコードを作る予定がありますか?

ジェフ:それは言えません(笑)。もともとX-102は「土星の輪(ring of saturn)」をテーマにしているプロジェクトなので、そういうテーマのライヴになると思います。それ以外は、残念ながらシークレットだ(笑)。

 スカイプ越しに聴いたジェフの声は、こちらの挑発的な質問にもあくまでも冷静であり知的であり、静かな自信に溢れていた。たんなるダンスフロアの道具としてのテクノを拒絶し、あくまでもアート・フォームとしてのテクノを厳しく追求しながら、電子音楽の可能性と未来を提示しようとする。彼によってテクノはただの快楽装置ではなく、何事かを語りメッセージを投げかけるだけの幅と深みを得るに至った。そしてその作業はさらに深度を増しながら、いまだ終わる気配がない。

 8月のメタモルフォーゼに先駆け、5月30日には、2012年5月21日(月)午前7時34分、東京にて観測される金環日食にむけてのカウントダウン・イヴェント〈SOLAR FREQUENCY〉にも出演が決定している。いまこそその姿を確認せよ。

 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443