「KING」と一致するもの

MONK.T (Well-def Lab.) - ele-king

SWEET SOUL45 10選

Andrés - ele-king

 デトロイトを代表するデープ・ハウス・プレイヤーのアンドレスが来日する。東京公演は11月22日、今年20周年を迎えた青山蜂のアニヴァーサリー・イベントの3日目に出演し、翌日23日には名古屋のクラブ・マゴでプレイ。自身のレーベル〈ラ・ヴィーダ〉のリリースからも伝わるように、彼のセンスはいまだにずば抜けている。先日、待望のニュー・アルバムの発売も発表された。もうすぐデビュー20年を迎えるアンドレスがどんなセットを披露するのかチェックしたい。

Andrés aka DJ Dez ( Mahogani Music, LA VIDA/ from Detroit, California )
Andrés(アンドレス)は、Moodymann主宰のレーベル、KDJ Recordsから1997年デビュー。ムーディーマン率いるMahogani Musicに所属し、マホガニー・ミュージックからアルバム『Andrés』(2003年)、『Andrés Ⅱ 』(2009年)、『Andrés Ⅲ』(2011年) を発表している。DJ Dezという名前でも活動し、デトロイトのHip Hopチーム、Slum Villageのアルバム『Trinity』や『Dirty District』ではスクラッチを担当し、Slum VillageのツアーDJとしても活動歴あり。Underground Resistance傘下のレーベル、Hipnotechからも作品を発表しており、その才能は今だ未知数である。2014年、DJ Butterとの共作ラップ・アルバム、DJ Dez & DJ Butter‎ 『A Piece Of The Action』をリリース。2012年、 Andrés自身のレコードレーベル、LA VIDAを始動。レーベル第1弾リリース『New For U』は、Resident Advisor Top 50 tracks of 2012の第1位に選ばれた。パーカッショニストである父、Humberto ”Nengue” Hernandezからアフロキューバンリズムを継承し、Moodymann Live Bandツアーに参加したり、Erykah Baduの “Didn’t Cha Know”(produced by Jay Dilla)の録音では密かにパーカッションで参加している。デトロイトローカルの配給会社が運営するレーベル、Fitから作品を残すA Drummer From Detroitとは、彼である。アンドレス本人のInstagramでも公開していたが、現在new album『Andrés Ⅳ』を制作中との事であり、そのリリースを間近にひかえての緊急来日が決定した。

11.22(SUN)
Tokyo @青山蜂 Aoyama Hachi
- AOYAMA HACHI 20TH ANNIVERSARY - <DAY3>

Open 22:00
Door 2000yen with 1Drink

DJ
Andrés aka DJ Dez
THA ZORO
DJ SAGARAXX
Kacchi Nasty
DJ MAS a.k.a. SENJU-FRESH!
DJ TOKI
ADAPTOR
FLAG
FORCE OF NATURE
KOJIRO a.k.a. MELT
TATTI
G.O.N.
RYOTA O.P.P
TheMaSA
HOLY
ARITA

■SPACE DESIGN
VIDEOGRAM
■PHOTO
Nampei Akaki
■FOOD
虎子食堂

Supported by TOKYO MILD FOUNDATION

Info: 青山蜂 Aoyama Hachi https://aoyama-hachi.net
東京都渋谷区渋谷4丁目5−9 TEL 03-5766-4887

11.23(MON/勤労感謝の日)
Nagoya @Club Mago
- AUDI. -

Guest DJ: Andrés aka DJ Dez
DJ: Sonic Weapon & Jaguar P
Lighting: Kool Kat

Open 17:00
ADM 2500yen

Info: Club Mago https://club-mago.co.jp
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F TEL 052-243-1818


 風邪をひいたのかどうも喉が痛いです。そんなとき口ずさむのは破裂音が比較的少ない、フレッチポップあたりが喉に優しいのかもしれません(適当)。
 と言ったところで……、本日ご紹介するのはこちら!


注:手書きポップに書かれているイニシャル「W.A」とは僕のこと。このポップを書いた2012年当時は33歳だったが現在はもう少し歳をとっている。以後すべて同。

 このCDは、90年代以降のフレンチ・ポップを代表するミュージシャン、マチュー・ボガートの1998年のアルバム。端的にめちゃくちゃ小気味良くて超オサレサウンド。それだけでなくアンサンブルも重層感溢れる作り込みなのでかなり聴き込める内容です。最近では、齢を重ね小太りになったご本人が全裸でオルガン弾いているPVが、Youtubeで話題になったこともありましたね。

 まず、のっけから「おいおい、ジャケないじゃねぇか!」って感じなのですが、これは僕がなくしたのではなく、「CDだけ」を借りパクしてしまったパターンなのですよ。


ジャケはどんな感じだったかな……
Mathieu Boogaerts / J'En Ai Marre D'Être Deux / Island / 1998

 どういうことかと申しますと、たしか2000年代のはじめだったと思いますが、当時新婚ホヤホヤだった姉貴とその旦那(つまり僕の義兄)であるまっちゃんといっしょに車に乗っていたとき、運転しながら彼がこのアルバムをかけてくれたんですよね。まっちゃんは音楽好きで、学生時代にベースも演っていたらしく、ちょくちょく音楽の話もすることがあったんだけど、彼の口から出てくるミュージシャンはELLEGARDENとかマキシマムザホルモンとかまぁざっくりエモ系ロック(まずその2つをいっしょにすんなよって感じですよね……、でも音楽ジャンルの詳細は本コラムではひとまず置いておいて……)だったんですよ。そんな彼が突然、超クルーナー・ヴォイス(つぶやき系)バリバリのフレンチ・ポップをかけてきたもんだから、車中で思わずびっくりしちゃいまして。しかも、それが良かった。そして「ねぇ、これなに?」って訊いたら、彼も「ええっと、マシュー、いやいやマチュー……えー、ボガ、ヴォガ……」みたいになってしまって要領を得なかったので、自分であらためてネットで調べてみたのでした。まずは自分でマチューのCDを買う「参考までに」ですね、彼からこのCDを拝借。家にあるPCでCD-Rに焼いてその日中に返すつもりだったからジャケもケースも借りず、CDだけを裸で頂いた記憶があるんだけど、でもなぜ返さなかったのかが未だに思い出せず……。

 この「家族・親族ネタ」っていうのは、「いつでも会えるしね……」という謎の余裕感のもと、結局、お盆も、年末年始も、返すことはないのですよ。まだまだありますよ。親父からはあれを、姉貴からはあれを……。それはおいおい紹介していくとして、まずはまっちゃん、ごめんなさい。お仕事頑張ってますか? 改まって訊きますが、そもそもなんでこのCD、持ってたんですか?


Illust:うまの


パクラーのみなさまからのお便り

お名前:賭博食事録ヒマンジ
性別: 男性
年齢:23

借りパクした作品:
LIBRO / 雨降りの月曜(12インチ限定アナログ盤)(2007)

借りパクした背景、その作品にまつわる思い出など:

 高校生の頃の私は家が貧乏で小遣いも少なく、そこから部活動に必要な道具を買っていました。そして余ったお金を少しずつ必死に貯めて、中古とはいえ念願のターンテーブルを手に入れたところで貯金が尽きてしましました。田舎に住んでいたのでネットでしか物が買えず、送料等を考えると貧乏高校生にはとても買えるものではありませんでした。そこで、遠くに住んでいる音楽が好きな従兄に電話をしました。「何でもいいから、一枚でいいからレコードを貸して! 送って! ちょっとしたら返すから!」と。従兄は笑いながら承諾をしてくれて、数日後にこのレコードが送られてきました。うれしかったですよ。初めての生のレコード。興奮したのをいまでも覚えています。返さなきゃと思いながらも、もったいなくて返せずにいました。もう返すこともできません。従兄は事故にあって他界してしまいました。返してくれと一言も言わず、ずっと貸してくれていました。長くなってしまいましたし、本来の意向とはちがうものかもしれませんが、こんなことを思い出し投稿してしまいました。これが私がいまのところ人生で一度だけしてしまった借りパクです。

借りパク相手への一言メッセージ:
いまでも大事に持ってるよ。音楽が、日本語ラップが好きになったきっかけだよ。おかげで音楽に携わる仕事に就くことができています。ありがとう。

※文字表記等は一部編集部にて変更させていただいております


LIBRO / 雨降りの月曜


アサダからのエール

 賭博食事録ヒマンジさん、お手紙ありがとうございます!!
 じつはヒマンジさんはいちばん最初にお便りをくださった方なんです。あらためて御礼を申し上げつつ、僕なりにエールを送らせてください。

 まず返そうと思っても返す相手がもうこの世の中に存在しないという空虚さについては、正直僕はまだ経験したことがないので、軽はずみなことは言えないなと思っています。
 でも、この従兄さんの一枚のレコードがとにかくヒマンジさんの人生を確実に変えたこと、それ自体は僕はとっても素晴らしいことだと思います。

 そのレコードがLIBROの「再発盤」だったということがとても気になりました。
 LIBROの“雨降りの月曜”が収録されているアルバム『胎動』はたしか1998年リリースで、まさに僕にとっては10代後半のもっとも音楽に多感な時期に聴いたものでした。
 そしてこの頃聴いていた音楽というのは30才を越えてからなぜだか再び聴きたくなるもので、いまでもそういった音楽が僕のまわりにはたくさんあって心の中で「リサイクル」されています。
 従兄さんの世代はお手紙ではわかりませんが、ひょっとしたら1998年やそのあたりにこの“雨降りの月曜”をリアルタイムに聴かれていたのではないでしょうか?
 それを「懐かしい」と感じて2007年に再発された限定アナログ盤を再び聴き、その音楽をヒマンジさんのようなさらに若い世代に引き継ぐ責任(もちろん直感に近いものだと思いますが)のようなものを持ちながら、あなたにこのレコードを貸したのではないかと、勝手に妄想してしまうのです。

 そう、あくまで僕の妄想です。でももしそうだとしたら、まさに、いまヒマンジさんがJ-HIPHOPに目覚め、そして、音楽に携わる道へと導かれたことは、月並みな言い方なのは覚悟の上ですが、きっと従兄さんは空の上からそのことをとても喜んでいるのではないかと思うのです。なんだか勝手なことを申してごめんなさい。

 とにかく、僕も久しぶりに『胎動』をApple Music‎で堪能しながら、この返答を書いています。この曲、ほんといいですね。
 まとまりがありませんが、どうぞ、これからも音楽のお仕事頑張ってくださいね。


■借りパク音楽大募集!

この連載では、ぜひ皆さまの「借りパク音楽」をご紹介いただき、ともにその記憶を旅し、音を偲び、前を向いて反省していきたいと思っております。
 ぜひ下記フォームよりあなたの一枚をお寄せください。限りはございますが、連載内にてご紹介し、ささやかながらコメントとともにその供養をさせていただきます。

interview with Floating Points - ele-king


Floating Points
Elaenia
[ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]

Luaka Bop/ビート

JazzAmbientElectronic

Amazon

 レコード文化がリヴァイヴァルしているとか、あれはもう終わったとか、ここ数年のあいだ正反対のふたつの意見があるんだけど、フローティング・ポインツを好きな人は知っているように、彼=サム・シェパードの〈Eglo〉なるレーベルは、ほぼアナログ盤にこだわって、自らのレコード愛を強く打ち出している。なにせ彼ときたら、12インチにせよ10インチにせよ、そのスリーヴには、エレガントで、風合いのある贅沢な質感の紙を使っている。実際、いまじゃ12インチは贅沢品だしね。
 昔は12インチなんていったら、ほとんどの盤にジャケはなく、レーベル面でさえも1色印刷が普通だった。12インチなんてものは、カジュアルで、ハズれてもいいやぐらいの気楽さがあった。が、いまでは12インチ1枚買うのにも気合いが必要だ。ええい、これを買ったるわい! うりゃぁぁぁ、とかいってレジに出しているのである。
 フローティング・ポインツの傑作「Shadows」(2011年)を買ったときもそうだった。ええい、買ったるわい! うりゃぁ、これぐらいの気合いがなければ、いまどき12インチ2枚組なんて買えたものではない。家に帰ってからもそうだ。うりゃぁぁぁ、気合いを入れながらビニールを開ける。レコード盤を取り出し、ターンテーブルの上に載せる。針を下ろし、ミキサーの音量をそうっと上げる。さあ、キミは宇宙の旅行者だ。

 ようやく出るのか……そうか、良かった良かった。現在29歳の、見るからに大学院生風のサミュエル・シェパード、デビューから6年目にして最初のアルバム『Elaenia』は、待望のアルバムだ。ベース好きもハウス好きもクラブ・ジャズ好きも、みんながこれを待っていたのである。この5年、レコード店で新譜を買っていた人のほとんどが彼の作品を知っている。ダブステップ全盛期のUKから登場した彼の作品は、同世代の誰よりも、圧倒的に洗練されているからだ。
 ディープ・ハウスとジャズ、アンビエントやクラウトロックまでもが折衷される彼の音楽は、彼のレーベル・スリーヴ同様にエレガントで、若々しく、そしてロマンティックだ。さあ、キミも気合いを入れてレコード店に……いや、この度は、彼の作品が初めて、そう、初めてCDで聴けるのだ。まあいい。家に帰って袋を破り、再生ボタンを押すんだ。いまもっとも陶酔的で、コズミックで、ファンタスティックな冒険が広がる。あるいは、こんな説明はどうだろう? フローティング・ポインツとは、フライング・ロータスより繊細で、カール・クレイグよりもジャジー、ジェイミーXXよりも音楽の幅が広い。



 以下にお見せするのは、去る9月に彼らが来日した際の取材記録である。彼がいかに新しくて古い男なのかよくわかるだろう。取材日は、安保法案が可決された日の翌日だった。

僕には政治的な部分がありますし、世界の痛みも感じます。いま起こっていることに怒りを覚えることだってあります。それが自分の音楽に直接関係しているとは断言できませんが、何かしらの形で影響はあるでしょう。反民主的なものと日々戦うひとびとの姿は、僕の心を揺さぶります。

昨日の日本はけっこう大変な1日だったんですけど、ご存知ですか?

フローティング・ポインツ(Floating Points、以下FP):はい。テレビでデモの様子を見たことがあります。

どこのテレビですか?

FP:イングランドのニュース番組です。

今回のあなたのアルバムからは、70年年代初頭のハービー・ハンコックであるとか、チック・コリア、あるいはスピリチュアル・ジャズみたいな要素を感じ取りました。

FP:ははは(笑)。そうですか。

あの頃のジャズは、彼らが生きていた当時の社会やポスト公民権運動みたいな政治的なものと、どこかで繋がっているものですけれども、あなた自身の音楽は社会とどのように関連づけられると思いますか?

FP:えーっと……。

最初から大きい質問でごめんね(笑)。

FP:いままでで一番難しい質問ですね。「イエス」と答えることもできるでしょう。ぼくには政治的な部分がありますし、世界の痛みも感じます。いま起こっていることに怒りを覚えることだってあります。それが自分の音楽に直接関係しているとは断言できませんが、何かしらの形で影響はあるでしょう。反民主的なものと日々戦うひとびとの姿は、ぼくの心を揺さぶります。
 今回の日本の出来事だって同様です。こういったことは必ず自分の音楽へ感覚的に還元されると思います。ですが、それが感情のサウンドトラックであっても、特定の政治的なものに対する音楽であるとは言えません。このアルバムにはアメリカの銃社会に着想を得たものがあります。幼い少女が自分の父親を誤って撃ってしまったという事件がありましたが、それはぼくにとってかなりショッキングでした。そのときに感じた悲しみを曲にしたんです。
 このように社会の出来事はぼくの音楽に影響をもたらします。ニュースは毎日必ず見ますし、国内外の出来事に関心があります。でも音楽的に、その出来事からというよりは、もっと「大きなスケール」で影響を受けています。

良き回答をありがとうございます。

FP:こちらこそ素晴らしい質問をありがとうございました(笑)。

ぼくは、初期の「ヴァキュームEP」(2009年)からすごく好きで、あなたの〈イグロ・レコーズ〉のリリースをコレクションしているくらいなんです。だからいつアルバムを作るんだろうとずっと思っていたんですが、すっごく時間がかかりましたね。アルバムってことで、気合いが入りすぎていたのでしょうか?

FP:大学の博士課程に在籍していたことがひとつの理由ですね。自分の頭が科学に集中した時期で、音楽のリリースは趣味のようなものになっていました。なのでアルバムの“大きな物語”に意識を傾けるのが難しかったんです。博士課程に進んでからの4年間でも、音楽はわずかですが作っていました。それで去年の4月に修了して、それから3、4ヶ月でアルバムを完成させたので、制作期間が長かったわけではないんです。同時にふたつのことができない不器用な人間なんです(笑)。

趣味とおっしゃいましたが、あなたにとって音楽が趣味でなくなったのはいつですか?

FP:博士課程に進む前から音楽を作っていて、自分の〈エグロ〉からリリースしていました。音楽活動は単純にすごく楽しいですからね。Ph.D.の研究が進んでいくうちに、レーベルも自分の音楽もどんどん成長していきました。音楽がちゃんと軌道にのりそうだったので、3、4回は博士課程を断念しようかとも考えました。ただ研究の終わりが見えてきていたので、投げ出さずに頑張ることにしたんです。その間は、音楽とPh.D.が戦いを繰り広げていましたね。
 それで博士課程が終わったときには、〈エグロ〉は立派なレーベルになっていたので、心境は前の続きをやるという感じではありませんでした。なので、Ph.D.を取得した次の日からスムーズにぼくはフルタイムのミュージシャンになれたのかもしれません。

あなたの神経科学の研究とあなたの音楽は完全に別のものと考えてもいいですよね?

FP:全然違います。科学と音楽がどう繋がっているのかよく訊かれるんですが、実はそれは自分にとっても謎です(笑)。

ははは(笑)。でも、フローティング・ポインツというネーミングは、サイエンスからきているかと思ってました。

FP:とってもつまらない回答になってしまうのですが、自分が音楽を作るときに使っていたソフトから採りました。そのうちの設定に「フローティング・ポインツ」と表示されていたんです(笑)。

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ひとつだけ明確な物語が表現されている曲があって、それがタイトル曲の“エレニア”です。冬になると南アメリカの中央へ向かって飛ぶ渡り鳥についての話で、その鳥の名前がエレニア。そういう夢を見ましてね……。夢って、あの寝ているときに見るやつですよ(笑)。


Floating Points
Elaenia
[ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]

Luaka Bop/ビート

JazzAmbientElectronic

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あなたの初期のレコードは〈プラネットμ〉と〈R2レコーズ〉から出ていますが、それは2009年で、当時はUKでダブステップがすごく強かった時期だったと思います。あなたの作品は日本ではハウスのDJがかけていて、時代はあなたにダブステップを作らせたかったんだろうけど、あなたはディープ・ハウスやテクノをすごく作りたかった、という印象を受けました。

FP:当時はロンドンに住んでいたんですが、プラスティック・ピープルで開催されていた〈FWD〉はダブステップの世界的なホームのような存在でした。ですが、ぼくは〈FWD〉に行った次の日には、同じ場所へセオ・パリッシュのプレイを聴きに行きました。当時から違ったジャンルを聴くことがぼくは大好きでしたね。聴くだけではなく、様々なスタイルの曲も作っていました。ときにクラシカルなもの、ハウス、ダブステップといった具合です。周りのプロデューサーがリリースしそうな音楽を作っていたことはたしかですね。でも、ダブステップを作ることを期待されていたときも、他のジャンルであっても作りたい曲を作っていました。

あなたの〈エグロ〉のスリーヴ・アートは、デザインもそうですが紙の質までこだわっていて、すごく丁寧に作っています。それはいまのレーベルには珍しいというか。昔のレコード全盛期に対するあなたの特別な感情を感じるんですけど、その辺はいかかですか?

FP:お世辞でも嬉しいです(笑)。おっしゃる通り、かなり気を遣っています。ぼくはコレクターとしてたくさんレコードを買い集めてきました(1万枚のコレクションらしい)。〈ブルー・ノート〉の日本盤も買ったりしました。オリジナルの日本盤は、アメリカでプレスされたものよりも質が良いんですよ。紙も厚いですし、帯付きで中にはビニールのスリーヴやライナーが入っていて、細部へ注意が行き届いています。
 短い時間でレコードを量産しなければいけないシングルの市場では、そういった点が無視されがちですよね。でも、ちょっと時間をかければ紙もいろいろ試せて、同じ予算で質のいいレコードを作ることができるんです。ぼくはロンドンで、芸術を先攻している友だちといっしょに住んでいたので、アートワークに関する意見を出し合っていましたね。〈エグロ〉のアートワークは全部がその友だちによるものです。デザインだけではなく、なかには紙のサンプルを持っているひともいましたよ。

じゃあ主にはレコードを買うんですか?

FP:どんなフォーマットでも買いはしますが、ほとんどはレコードです。実は、いま家にCDプレイヤーがないんですよね(笑)。

あなたの世代だと相当な変わり者なんじゃないんですか?

FP:もちろん。ぼくの次の世代だと、完全にMP3ですよね。6、7歳若かったらぼくもレコードを買っていなかったかもしれませんね。

あなただって十分若いですよ(笑)。

FP:いつからレコードを買ってるっけな……、たしか12歳のときからですね。

それはどういう影響からなんですか?

FP:単純に安かったからです。ぼくはマンチェスター生まれなんですけど、当時はどの家庭でも親はCDを買っていました。ちょうどCDが出はじめたときで、値段がとても高かったんですよね。そのときぼくはクラシックにはまっていたんですが、例えばショスタコヴィッチの作品を新品でCDで買うとなると、60ポンドはしたんですが、中古レコード屋に行けば昔のヴァージョンが60ペンスで買えたんです。自分が必要とする音楽を聴くために、レコードを買うのが一番手っ取り早い方法でしたね。

ショスタコヴィッチみたいな作曲家の名前が出てくるとこがあなたらしいですね。

FP:彼はひとつの例えですが、ぼくにとって大きな影響源のひとりですね。ぼくはピアノを習っていて、クラシックのトレーニングを受けていました。メシアンやショスタコヴィッチ、ストラヴィンスキー、武満徹がお気に入りです。いまでも彼らの音楽をよく聴いていますよ。それと同時に、ビル・エヴァンズ、ハービー・ハンコック、チック・コリア、ジョージ・デュークも好きです。彼らにはたくさんの共通点を感じるんです。それらをひとつの世界として見ていて、境目はありません。同じ世界にジャズとクラシックとエレクトリック・ミュージックが存在しているんです。
テクノやミュージック・コンクレートは全然詳しくなかったんですが、エイフェックス・ツインなどを初めて聴いたときは、以前から自分が聴いてきた音の文脈で十分に理解することができたんです。ハウスやディスコだって同様です。でも最初にテクノから聴きはじめていたら、クラシックを理解できなかったかもしれませんね。

アーサー・ラッセルみたいですね。あのひとも現代音楽とディスコ、みたいな感じでしたから。でもあなたはジャズがあるからまた違うのかな。

FP:アーサー・ラッセルはぼくのヒーローです。彼とクラシックの間にも境界線はないと思います。

コンピュータ1台でアルバムを作った方がよかったかなと思います。アナログ機材をたくさん使ったぶん、故障が多くて大変だったんです(笑)。とってもイライラしました。せっかくストリングスを録音したのに、ミキサーが壊れていてたりとか……。これがコンピュータ上の作業だったら何の問題もないのになぁ、と(笑)。

今回のアルバムっていうのは、すごく大きな曲が7曲あって、時間がかかったのもわかるんですけど、教えていただきたいのが、あなたが先ほど言いかけていた大きな物語というものですね。それから、このアルバムがどのような録音をされたのかということ。生の音とかを使いつつも、完全にあなたのなかでコントロールされて作られていると思いました。

FP:必ずしもプロットがある物語ではなく、抽象的なものですが、自分にとっては一貫性が感じられる作品が完成したと思っています。そのなかで、ひとつだけ明確な物語が表現されている曲があって、それがタイトル曲の“エレニア”です。冬になると南アメリカの中央へ向かって飛ぶ渡り鳥についての話で、その鳥の名前がエレニア。そういう夢を見ましてね……。夢って、あの寝ているときに見るやつですよ(笑)。
 イメージのなかで渡り鳥の群れが南へ向かって飛んでいるんですが、1羽だけはぐれてしまって冬の森へと落ちてしまう。そこで何が起きるかというと、森が鳥を助けようとようとその体を包み込みはじめるんです。風が吹いて、木々の枝が動いて……。意味わかんないですよね? まぁ、夢ですから(笑)。結局鳥は助からないんですが、森が命を吸収し、その生を森全体が引き継ぐんです。我ながら、なかなかポエティックですね(笑)。
 曲は電子音を背景にはじまって、ピアノによるメロディは鳥たちの歌声を表しています。曲が半分くらいまで進むんで森の場面になると、こんどはピアノがバックになって電子音がメロディを刻みはじめます。つまりここでは曲のパートそれぞれが、物語の要素を語っているんです。 

それをアルバムのタイトルにしたのはなぜなんですか?

FP:この曲の持つ明確な物語が、アルバムの中核を成すように思えたからです。それに語感もとてもいい(笑)。

録音は、どうやっておこなったのでしょうか? 

FP:ロンドンにある自作のスタジオで行いました。博士課程がはじまるときに作ったもので、大きさはこの部屋(8畳ぐらい?)の5倍ほどありますね。ロンドンのほぼ中心にあってロケーションも抜群で、その場所を見つけられて本当にラッキーだったと思います。作業は木材を切るところからはじめました。音楽を聴いたり作ったりするのと同じで、スタジオを作るのも趣味のひとつになっていました(笑)。頑張ったのでけっこうちゃんとしたスタジオになりましたよ。
 『エレニア』を録音したのはそのスタジオです。日本製のテープ・レコーダーのオタリMX-80を使っていますよ。すっごく大きいやつです(笑)。それとコンピュータ、シンセサイザー、マイク、大きいミキシング・デスクがあります。曲を作るときはまずスコアを書いて、それをプレイヤーに渡して演奏してもらいました。

何人くらいのミュージシャンが参加したんですか?

FP:少しずつセッションを進めていったんですが、もっとも多いときで5人はスタジオにいましたね。10人くらい詰めようと思えばスタジオに入ります(笑)。ドラムとベース、ピアノとストリングスをいっしょに録音して、そこに電子音を加えていきました。メインのモジュラー・シンセサイザーはブクラ(Buchla)を使っています。パッチを組むのが複雑で大変でした。このシンセはノイズを作るのに役立つんですが、今回のアルバムではレコーディングの中心に据えて、ストリングスの音をブクラに通してエフェクトを掛けたりしています。それから、テープ・レコーダーは後から修正があまりできないので、正確に演奏し、目的の音を作るように心がけていましたね。

今回のアルバムの制作を通して、あなたが得た番大きなものは何ですか?

FP:そうですね……。あんまり奇をてらわずに、ここはマジメに答えた方がいいですよね(笑)?

別にジョークでも大丈夫ですよ(笑)。

FP:わかりました(笑)。振り返ってみると、コンピュータ1台でアルバムを作った方がよかったかなと思います。アナログ機材をたくさん使ったぶん、故障が多くて大変だったんです(笑)。とってもイライラしました。せっかくストリングスを録音したのに、ミキサーが壊れていてたりとか……。これがコンピュータ上の作業だったら何の問題もないのになぁ、と(笑)。
 ぼくが前に出した「シャドウズ」(2011年)のことを、みんなはEPと呼ぶんです。たしかに5曲しか入っていませんが、曲はけっこう長くて全部で40分くらいあるので、ぼくは「シャドウズ」をアルバムだと思っています。その経験から「アルバムって何だ?」と思うようになりました。ぼくにとって「シャドウズ」には一貫性があるので、楽曲群をひとつの音楽作品として捉えることができます。でも周りは「5曲しか入っていないから、やっぱりEPだよ」としか言わない。でも今作は「シャドウズ」より2分長いだけなんです。違いはそれしかないのに、『エレニア』はアルバムと呼ばれているわけです(笑)。

それはいいことを聞きました。「シャドウズ」は、音楽的な繋がりという意味で今作と似ていると思っていたんですよ。あなたのは、もっとフロア向けのシングルもありますし。

FP:どうして「シャドウズ」の話をしたのかといえば、当時はスタジオを持っていなかったので、あの作品はエレクトロニクスで作られているんです。1日だけスタジオを使える日があったので、ちょっとだけストリングスが入っていますけどね。だけどいまはスタジオが完成して、毎日ストリングスの録音ができる(笑)。これからはもっと演奏を取り入れていきたいです。

ちなみに「シャドウズ」のCDは出ていないですよね?

FP:出ていないですね。日本で海賊盤は出回っているかもしれない(笑)。CD化の話もしているんですけどね。

出さなくていいです(笑)。でも、『エレニア』はCDで聴きます。

FP:はははは。『エレニア』はバンドで作った作品なので、そのメンバーでヨーロッパとアメリカをツアーをする予定です。11人の大所帯ですよ。ドラム、ベース、ギター、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ、トロンボーン、サクソフォン、クラリネット、フルート。このメンバーでクロアチアでライヴを行いました。まだボイラー・ルームにアーカイヴが保存されていると思いますよ。ツアーで日本に来れたらいいですね!

Arca - ele-king

禍々しい美
木津毅

 faggot、すなわちカマ野郎――という言葉が消えていく。性の多様性が正しいこととなっている現在において、不適切な単語はより無難で口当たりの良いものによって覆い隠されていく。まるで「カマ野郎」への侮蔑も消え失せてしまったかのように……。だが、まだそのワードに出くわすところもある。インターネットと、そしてアルカの新作である。
 アルバムの最後から3曲めに収められた、アルカにおけるアンビエンスがより追求されたそのトラック、すなわち“ファゴット”がなぜそのタイトルとなったのかまず自分は引っかかった。抽象的かつインダストリアルな感触の残るビートと複雑に折り重なっていくように鳴らされるほのかに東洋的なメロディとピアノの単音。アルカの入り組んだ美への探究は明らかにここで繊細な進化を見せている。このトラックを“ファゴット”と名づけずにはいられないところに彼のアーティストとしての姿勢が見て取れるが、これに呼応するのはアルバム・タイトルでもある“ミュータント”だろう。そこで金属音は地を這いずり回っている。それはミュータントなる生命体がもがき苦しんでいる姿が音像化されたようであり、そしてそれはもちろん、前作のタイトル『ゼン』から連なる、無性の生命体――アレハンドロ・ゲルシが変身した姿である。

 その作品においてセクシャリティが抜き差しならない問題となっている点、あるいは進んで異形の者であろうとする点において、アルカは現代のエレクトロニカにおけるアントニー・ハガティである。『ゼン』においてはおもにアートワークからその連想をしたのだが、『ミュータント』においてはむしろ音からそのことを思う……よく歌っているアルバムだからだ。もちろん、相変わらず圧倒的な情報量がおもにビートにおいて分裂的に次々と姿を変えていくのだが、ゲルシが奏でるメロディはトラックによって色を使い分ける彼自身の声のようであり、それらは本作でよりダイレクトに体感できる。4曲め、“シナー”でガシガシした打撃音の上からピアノの音が降り注いだかと思えば、“スネイクス”や“フロント・ロード”のようにはっきりとしたメロディ・ラインが牽引するトラックもある。そしてそれらはとてもエモーショナルだ。内省的だった『ゼン』と対比すれば、ファッション・ショウのために書き下ろされたためある意味で企画ものだった『シープ』を挟み、より外交的でそのポップ・センスが磨かれたアルバムだと言えるだろう。ほぼノン・ビートの“エルス”の静謐さなどに顕著だが、クラシックへの素養をさらに前に出し、その優美さも高めている。チェンバロやハープを思わせる音色。“グラティテュード”から“エン”へと至る、荒々しく吹き荒れるエディットのなかで陶酔的なメロディが宙を回り続けるときの息を呑むテンションこそが、アルバムのピークを描いていく。それはミュータントのエクスタシーだ。
 アルカ本人が出演する本作の一連のヴィデオによく表れているが、身体ごとさらけ出し、自身の深い、そしてたぶんに抑圧されていた官能をゲルシはここで解放し飛翔させようとする。OPNやD/P/I/よりもストレートに感情のひとだろうと思うし、その異物感において、オート・ヌ・ヴの『エイジ・オブ・トランスパレンシー』の狂おしさと並べられるものであるとさえ思う瞬間もある。前提として自らを忌避されるような存在――「ファゴット」と呼ばれるような――と規定し、ときに過度にグロテスクなものとして現れつつ、しかしそこから立ちのぼる禍々しい美でアルカはわたしたちを引きずりこんでしまう。

木津毅


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赤いやつの進撃
橋元優歩

「アルカのノイズって、世間に爪を立ててるんだと思うんだよね」と言うのは隣でPCを叩いている編集長だ。

 まったく、筆者にもそうとしか聴こえない。
 作風が変化したというほどではないが、このアルバムはどこか威嚇的で、外に向かって刃物を振りまわすようなかたくなさがある。神経に障る音が次々と落ち着きなく現れ、ビートからは快楽性が剥がれ落ち、メロディはなかなか形を成さない。しかし閉じない展開の中で発信者の心拍数は上がりつづける。OPNの余裕、コ・ラのふてぶてしさともまったくちがう──それはちょうど、手負いの生き物が「爪を立てている」姿を彷彿させる。

 そしてたいてい、そんなふうにしてつけられた傷は世間の側にではなく自分に残るのだ。本作『ミュータント』は、24、5にもなろうという人間にしてはあまりにピュアな、闘争意識と傷を全身に貼りつけたアルバムである。そしてそれは、正体不明のプロデューサーとして『&&&&&』の奇怪な生物(https://www.ele-king.net/review/album/003367/)の向こうにハイ・コンテクスチュアルな音を揺曳させていた頃のアルカに比して、むしろ痛ましいほどにみずみずしい。

 アルカことアレハンドロ・ゲルシは、ベネズエラ生まれのプロデューサー。政情不安と神秘の残るかの国で多感な時期を過ごし、高校時代にニューロの名で楽曲制作をはじめ注目を浴びるが、その後アルカを育んだのはニューヨークのアンダーグラウンドだ。音楽、映像、ファッション、多様な文化や性が混淆したトレンドの一大発信地として知られるパーティ〈GHE20G0TH1K〉などを通じ、ミッキー・ブランコやケレラといった、その後の一時代を築いていくことになるヒップなシンガーたちと出会ったばかりか、カニエ・ウェストの6作め『イーザス』への参加を請われることになった。その後のビョークとのコラボレーションや、オルタナティヴR&Bのアイコン、FKAツイッグス『LP1』(2014)などへの参加といった活躍は詳述するまでもない。

 しかし年端もいかないまま、アンダーグラウンドから突如世界的なステージに上げられたゲルシは、ただ時のプロデューサーとして以上の混乱や葛藤を抱え込むことになったようだ。メディアからの取材もほぼ受け付けないから、その思いの在り処は、ただ音と、そして彼に伴走するジェシー・カンダによる造形からしか量ることはできない。

 関節の崩れた真っ赤な塊は、腐敗した実の表面のように膨張あるいは萎縮して、しかし関節こそが身体の謂となるベルメールの人形にせまるほど、われわれにそれの存在を思い出させる。デビュー・アルバム『ゼン』における「ゼン」とは、sheでもheでもある自身の分身だったが、それがただオルタ―・エゴの類、つまり人格や精神としてだけではなく、分「身」としてジャケットに写る体を与えられたことは興味深い。性的なアイデンティティをめぐる若き苦悩があったということを知っていても知らなくても、ゲルシにとって身体こそが重要な表現の命題であるのだろうということを多くの人が感じただろう。そして、今作リリース前に、能面のような頭部を持つ赤い塊と、露出させた肌にハーネスで武装を施した本人のヴィジュアルが公開されたときに、そのテーマはよりはっきりとした。
 しかし、ゲルシはそれを「ミュータント」と呼ぶのか──突然変異体であると? もし自身をそう認識し、リプリゼントするのだとすれば、『ミュータント』はすさまじい自己肯定と、それと同程度の自己否定を含んだ、やはりなかなかにへヴィで痛ましいアルバムだと言わざるをえない。

 ヒップホップに軸足を置きながらも、クラシカルなピアノの素養もあるゲルシだが、それがジェイムス・フェラーロやゲームスなどとともに〈ヒッポス・イン・タンクス〉周辺のアブストラクトな音像を伴って表われていたこれまでのEPや『ゼン』を聴くと、彼の境遇やアートワークをふくめ、彼がなぜカニエやビョークといったハイ・カルチャー志向のセンスに好まれるのかということが察せられる。しかし、たとえばノイズといっても、アルカはインダストリアルに興味があるとか、クリックやグリッチといった方法を検証したいといった研究肌のノイジシャンではない。当人にもさほどノイズという意識はないだろう。とても感覚的で、若いエネルギーがそのひとつひとつの音に過剰に情報をつけくわえ、ノイジーさを生みだしている。

 2、3分ほどの短いトラック群には、“シナー”のようにビートとテーマが溶けてしまったようなインダストリアルな断章もあれば、“セバー”のチェンバロのように旋律が押し出されたものもあり、全体としては楽曲というよりはこのミュータントの挙動に付随するSEのようだ。もしくはサウンドトラック。その進路には天然の光はなく、金属の花々が咲き、赤い生命体は自らの収まるべき場所を求めて破裂や収縮を繰り返す……そんな妄想をゆるすほど、たとえば“サイレン・インタールード”から“エクステント”への流れなどには、とくに映像喚起的なものがある。物語と情感と映像を収める装置、楽曲というよりはそうしたメモリのようにトラックが並び、ひとつひとつに罪や痛みの名がラべリングされている。
 かつてネット・カルチャーにおけるラディカリズムを、ポスト・インターネット的な感性で描き出す若き才能として認識したアルカだったが、それだけではむしろ時代に消費されてしまっただろう。アルカがなにか素通りできず、シーンの空気をざわつかせるのは、そうした時代性を持つという以上に、これだけ正面から、存在証明という古めかしく大上段なテーマ性を抱えてのたうっているからで、われわれは結局、それに向かいあう人間への興味を捨てきることはない。
 傷がつけられるのは身体を得てこそだ。爛れ、膿んだ赤い塊から新たな生命の萌芽を見ることができるのか、見れなかったとしても、このときゼンが生き、ミュータントが動いていたことを、未来覚えている。

橋元優歩

interview with Takashi Hattori - ele-king


服部峻 - Moon
noble

ElectronicJazzSynthExperimentalProg.

Tower HMV Amazon

 2013年の暮れにひっそりと、だがレーベルオーナーの強い熱意とともにリリースされたミニ・アルバム『UNBORN』を耳にして、作曲家・服部峻の並々ならぬ才能に末恐ろしさを感じさせられた聴き手は少なくなかったことにちがいない。ミニマリスティックに反復するバス・クラリネットの響きから始まるそれは、ジャジーなドラムスが演奏に加わると、少しずつ何かがゆがみ、ねじれ、気づけばどことも知れぬ夢幻の世界に聴き手を誘っていく。眼前にありありと演奏する姿が浮かぶほど緻密に構築された「生音」のあたたかさが、しかしけっして現実世界にはありえないような仕方で、奇妙な空間を導出していく。眼にしたはずの演奏者は、具に観察してみるならば、いまやヒエロニムス・ボスの絵画のように不可解だ。今回のインタヴューで服部峻はなんどか「快楽成分」なる言葉を発していたが、正しく彼の音楽から聴こえてくる狂乱は「快楽の園」だった――だがすぐさまそうした連想を断ち切るようにしてひややかなグリッチ・ノイズが通り過ぎてゆく瞬間に、聴き手はこれが現代の楽園であることにいまいちど刮目させられることになる。それは録音芸術のひとつの幸福なありかたとでも言えばいいだろうか。

 ふだん生活する世界においてさえ、過剰に有意味化された「無音」とまるで意味が剥落した「騒音」とに取り囲まれながら、音盤を前にしたわたしたちは果たしてなにを聴いているといえるのだろうか? 少なくとも服部峻の音楽において「聴こえない音楽」を云々することは徒労だ。それに聴覚的類似から「現代音楽」や「民族音楽」や「ジャズ」や「ノイズ」やその他のあらゆる既成のジャンルを並べ立てて彼の音楽を語っても仕様がない。それはそうした言葉を闊達自在にすり抜けていく。そしてこの意味で彼の音楽は優れてポップ・ミュージックなのである。だがそれは同時にわたしたちを「軽やかな聴衆」にしておくことにとどまるものではない。楽園として立ち現れた服部峻の音楽が、アップル・ミュージックを渉猟する現代の聴き手に対して投げかける「聴こえない問い」を、快楽のただなかで手掴みにする機会をも与えてくれるからである。

 そして前作の発表からちょうど2年が経ったいま、服部峻の新たなアルバム『MOON』がリリースされる。初のフル・アルバムであり、来年公開予定の映画『TECHNOLOGY』のサウンドトラックでもある。音だけ先に届けられた。それはアルバムがたんなる映画の付属品ではないことを意味する。だがたしかに映画がなければ生まれ得ない作品でもあった。その理由は下記インタヴューをご参照いただければと思う。今回のインタヴューでは、これまでほとんど謎に包まれていた作曲家・服部峻の経歴から音楽観までを語っていただいた。もちろんアルバムのことも。『UNBORN』の制作過程の話であったり、『MOON』の誕生秘話といったものが、彼の音楽に新たな視点をもたらすことになるだろう。

■服部峻 / Takashi Hattori
大阪在住の音楽家。映像作品も手がける。映画美学校音楽美学講座の第一期生。当時まだ15歳だったにもかかわらず特別に入学を許可される。2013年12月、6曲入りの初作品集『UNBORN』を〈円盤レコード〉より発表。2015年11月、自身初のフル・アルバム『MOON』を〈noble〉よりリリース。

中学を卒業すると同時に大阪から上京して一人暮らしをはじめたんですが、渋谷のタワレコが好きで、よく5階のニューエイジのコーナーに行っていたら、ちょうど菊地成孔さんの『デギュスタシオン・ア・ジャズ』が発売されていて。

さっそくですが、服部さんがこれまでどのように音楽と関わってきたのかを、とりわけ最初のアルバム『UNBORN』より前のことを教えていただけませんか。

服部:最初に音楽に触れたのはピアノ教室に通っていたときですね。母が音楽療法士だったこともあって小さい頃から習わされていたんです。そこに通いながら、小学校の高学年になる頃には家で作曲をしたりしていて。もっと高度なこともやりたいと思って、中学3年生のときには音楽学校に通って、MIDIの打ち込みを教わってアレンジの手法を勉強したりしていました。中学を卒業すると同時に大阪から上京して一人暮らしをはじめたんですが、渋谷のタワレコが好きで、よく5階のニューエイジのコーナーに行っていたら、ちょうど菊地成孔さんの『デギュスタシオン・ア・ジャズ』が発売されていて。それまで菊地さんのことは知らなかったのですが、調べてみると東京大学でジャズの講義をしているとあって、面白そうだから通ってみることにしました。

のちに『東京大学のアルバート・アイラー』として書籍化された講義ですね。

服部:そうです。15歳だったんですが、高校をサボってモグりにいってました(笑)。そしたら9月に映画美学校というのが開講して、そこで菊地さんが音楽理論の講師を務める、と聞いたので、これは行くしかない! と思ってそこに通うことにしました。だから菊地成孔さんからは強い影響を受けていると思います。そのころはライヴとか、音楽活動らしい活動はしてなかったのですが、楽曲を制作してデモテープを送ったりということはしていて。そしたら音楽ディレクターの加茂啓太郎さんに声をかけていただいて、あるレーベルのデビュー予備軍としてスタジオを使わせてもらえるようになったんです。エレクトロニカのアーティストとして。でも当時ぼくは高校生で一人暮らしをしていて、生活していくのが精一杯で、体力がなかったというか、あまり曲が作れなかった。10代の終わりになってからやっと根性が出てきたというか、楽曲制作をこなしていくことができるようになったというか。だからそのときはあまり期待に応えることができなかったし、積極的に音楽活動をしていたというわけでもなかったですね。

服部さんはそれまでどのような音楽を聴いていたんですか?

服部:子どもの頃はクラシック音楽をよく聴いていて、エリック・サティが好きだったので真似して曲を作ったりしていました。でもやっぱり上京してからいろいろな音楽を聴きだすようになって、そっちの影響のほうが大きいと思います。映画美学校の岸野雄一さんとか、その界隈の方たちにいろいろ教えてもらったりして。それと、同じ時期に菊地さんの東大講義をサポートしてる団体主催のインプロ・ワークショップがあったんですね。それをジャズのアドリブのワークショップだと思い込んで応募してみたら、ジョン・ゾーンのコブラをやることになって、想像していたものとぜんぜんちがった(笑)。でも遊び感覚で参加することができてとても楽しかったです。横川理彦さんとかイトケンさんとか、外山明さんなんかが講師を務めていて。その時に横川さんから「ディアンジェロを聴いてみたらいいと思う」って言われて……。

ジャズのアドリブのワークショップだと思い込んで応募してみたら、ジョン・ゾーンのコブラをやることになって。(中略)その時に横川理彦さんから「ディアンジェロを聴いてみたらいいと思う」って言われて……。

インプロのワークショップでディアンジェロを勧められたんですか(笑)?

服部:そうなんです(笑)。でもそのときに初めてディアンジェロを聴いて、ものすごく感銘を受けて、いまでもブラック・ミュージックは大好きです。

コブラには何の楽器で参加されたんですか?

服部:カシオトーンを持っていたのでそれで参加しました。僕そんなに持っている楽器の数は多くなくて。すでにプロツールスを持っていたので、それを使ってエレクトロニカだとか、電子音楽ですね、そういうのを作っていたので。当時から完全にラップトップ派です。そこからまた欲深いんですけど、映像なんかも作りはじめたりして、映像と音楽を合わせてYoutubeにアップしたりしました。

現代音楽や、実験音楽と言われるようなものは好んで聴いたりしていましたか?

服部:高校生の頃はよく聴いていたんですけど、じつはそういう路線に傾倒したりはせず、いまはポップスばかり聴いているんですよ。電子音で終始「ピーーーーー」って鳴ってるだけみたいな、ああいうのはあんまり聴かない。池田亮司さんなんかは音圧の快楽みたいなところで攻めてくるから「サイコー!」だと思うんですけど、もっと堅苦しい、アート寄りのコンセプチュアルな音楽は、なんだか血が騒がないというか、音楽としての快楽成分が少ないっていうのかな。調性がないじゃないですか。いまはフランク・オーシャンとかクリス・ブラウンとかにハマってます。

現代音楽でもたとえば、ミニマル・ミュージックとかは快楽的なものもあると思うのですが、どうですか?

服部:はい、フィリップ・グラスとか大好きです。でも好きなアーティストは誰かって訊かれたら、やっぱり宇多田ヒカルとかになってしまう(笑)。でもポップスって盛り込む要素に比重がかかっているじゃないですか。何をテーマにするか。そういうのは楽曲制作をするときにすごく参考になります。

やっぱりぼくは音楽としての構造がギリギリあるものの方が好きなんです。完全にフリーっていうのはあまり……。「むちゃくちゃ」って快楽成分を感じないというか。

上京していきなりコブラに参加されたようですが、即興音楽に興味が向かうことはなかったんですか?

服部:そうですね……やっぱりぼくは音楽としての構造がギリギリあるものの方が好きなんです。構造がなくなるギリギリの領域で、かろうじて保たれている音楽というか、本当はあるんだけど瞬間的になくなったりもする、というような。完全にフリーっていうのはあまり……。「むちゃくちゃ」って快楽成分を感じないというか。やっぱり人間は、人類共通の感覚というのか、うれしいときには笑顔になるし、悲しいときには泣く。ものを食べたときの「おいしい」という感覚とか「いい匂い」みたいな価値観って、言語とか肌の色とか関係なく、そこは世界共通。音楽を聴く上での「気持ちよさ」にも、きっと人類に共通する感覚があると思うんですね。DNAに刷り込まれてるというか。
 だから、たとえば現代音楽の世界でいくら「新しいことをやっている」と言われても、人間が本来「気持ちいい」と感じる共通的な価値観からあまりにも乖離したものだった場合、ぼくはあまり魅力を感じない。退屈な音楽だなと感じると思う。やっぱりどこかにそういう「聴いていて気持ちいい」要素は絶対あってほしいと思うし、自分が作る音楽には入れたいと思う。「テクノロジーとしての目新しさ」に固着するんじゃなくて、新しい快感、今までにない旨み成分のようなものを音楽で模索したいなと思っています。一言でいうと、血が騒ぐ音楽ですよね。たとえば黒人音楽にはブルーノートとかフェイクとか、十二音階の鍵盤の、外側にある領域、ピッチがぐにゃりと可塑する瞬間があるじゃないですか。ピアノの外にある音、そういうものにこそ魅力があると思っていて。リズムとかも、ディアンジェロは完全にズレているわけじゃないですか。でもきっちりと刻んでしまうとグルーヴは生まれてこない。どこかズレていたりヨレていたり、はみ出ていたりするところに快楽成分が潜んでいるんだと思うんです。だからそういうものを独自に研究して自分なりのアプローチで、いままでにない「聴いていて気持ちいい・新しい発見のある」音楽を作っていきたいと思っています。

“Humanity”という楽曲を制作している途中にちょうど震災と福島の原発事故が起きたんですね。あれで自分のなかから複雑な調性音楽が湧き上がってきたというか

そうした音楽がひとつの作品として結実したものが前作『UNBORN』でもあるわけですね。あのアルバムはどういった経緯で制作していったんですか?

服部:曲作りはずっと続けていて、高円寺にある円盤というレコードショップの店長、田口さんからCDを出さないか、というお話をいただいたんです。それで既存の3曲と、お話をいただいてから新たに作った3曲の、合計6曲でアルバムを完成させたのですが、そのころから音楽活動にもやっと本腰を入れ始めたというか。それまでは自分の作風があまり固まっていなかったんですが、なんとかしてアルバムをまとめなきゃ、とにかく作品として仕上げなきゃ! と『UNBORN』を制作していくなかで、徐々に自分の作風も固まっていったと思います。

アルバムを制作することが音楽活動に向かうきっかけになったんですね。

服部:はい。でもたんにアルバムが完成したから作風が固まったというわけでもないんです。『UNBORN』に収録されている“Humanity”という楽曲を制作している途中にちょうど震災と福島の原発事故が起きたんですね。あれで自分のなかから複雑な調性音楽が湧き上がってきたというか。震災の衝撃のようなものを受けて、自然と自分の作風が変わっていった。それまではのほほんと曲を作っていたんですけど、そういった安全な場所から世界が転がり落ちていくような感覚を体験して、インスピレーションのようなものを得たといいますか。精神的なダメージは大きかったんですけど、原発事故のニュースなんかを見ていると、どんどんアイデアが出てきた。そこから、放射能についてとか、電力のこととかいろいろと調べていくうちに、変な話なのですが、アーティストとして表現欲をものすごく掻き立てられて。だからそれ以降の作品は作風が変わりました。“Humanity”を完成させるのに拘らず、丁度、長い曲というのもあっていろいろと実験してみたんです。

アルバム制作と重なるようにして起きた震災と原発事故が服部さんのなかで音楽活動の境目になっているということですね。

服部:そうですね。それ以前は私生活ものんびりだったので(笑)、このままじゃいけないと思って。やらないと、って。なのでじつは『UNBORN』っていうタイトルにも、そういう意味を込めたんです。日本がこれからどうなるかはわからない、でもここを境に新しい人たちがどんどん出てくるだろうっていう意味を。いまは時代の変わり目なんだけど、未来は予測不能な状態にあるじゃないですか。でもまだ誕生していないけど、絶対に何かが生まれ出てくるはずだという確信だけはあったんです。「渦中の音楽」。それをタイトルに込めました。

『UNBORN』に収録されている楽曲のなかで震災前に作っていたのはどれなんですか?

服部:後半の“World’s End Champloo”と“Lost Gray”の2曲が完全に震災前で、“Humanity”が震災を跨いでいて、前半の3曲が震災後の新曲なんです。ちなみにタネ明かしすると、『UNBORN』っていうアルバムは楽曲の制作順序と逆に曲順を並べていて、それは宇多田ヒカルのベストアルバムの真似ですね(笑)。まぁそれはいいんですけど、やっぱり震災前に作った曲を聴き返してみると、かわいらしいというか、作風がちょっとちがうなと思う。今回のアルバム『MOON』は当然「震災以降」の作風で統一されてますが、『UNBORN』は「以前」と「以降」が境目を跨いで同居した作品なんです。

Takashi Hattori “Humanity”

“World’s End Champloo”はもともと映画に使われた楽曲だったと聞きました。

服部:そうなんです。ぼくの友だちで映画監督の遠藤麻衣子さんという人がいて、彼女が沖縄を舞台にした『KUICHISAN』っていう映画を撮ったんですね。高江って場所を知ってますか? 沖縄の東村にあるジャングルみたいなところで、いまヘリパッド問題っていう政治的な問題も抱えてて。パワースポット的なスポットでもあって、時空が歪んでる場所。その高江に住んでる音楽家の石原岳さんの三男の子が主演を務めていて。高江自体は映画の中心的な舞台ではないんですが、シーンとして映っています。この映画のエンドロールに使われている楽曲で、沖縄が舞台なので“World’s End Champloo”という曲名にしました。インディ映画なので、日本で大々的に上映とかはしてなくて、非流通の作品なのですが。それが遠藤監督の第1作。去年、次の2作めを撮るから同じように音楽をやってくれと頼まれたんですよ。『UNBORN』を発表したら、やっぱり反響があって、ちょうど新しいアルバムを出さないかという話もいただいていたんですね。だから最初はサントラとしてアルバムを出そう! と思って、遠藤監督の誘いも引き受けました。

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西洋のテクノロジーと東洋のテクノロジーの衝突がインドを舞台に起こっている、というような内容なんですが、「これはインドに行かないとわからない」って言われて、それにはぼくも納得したんです。すぐビザを申請して、飛びました。

遠藤麻衣子さんとはどこで知り合ったんですか?

服部:バンドで知り合ったんです。自分がリーダーだったわけではなくて、シンセノイズで参加していたバンドがあって。高円寺の〈円盤〉では10代のときにちょいちょいライヴしてました。でもバンド自体はぼくも遠藤もそんなにやる気がなくて。だからそこで知り合ったけどバンドはすぐ辞めて、二人でよく遊んだりしてたんです。で、そんな彼女の頼みだから、2作目の映画音楽の話も引き受けたんですけど、最初はなかなかうまく曲が作れなかった。
 インドを舞台にした『TECHNOLOGY』という映画なんですけど、実験的な内容で、プロトタイプの映像を見て、反応に困ってしまったというか。ストーリーがあるわけでもないし、セリフもあまりなく、結末も「ヌヌ~ン……」みたいな映画で。だからどういう音楽をつけたらいいのかアイデアが浮かんでこなかった。それで遠藤にあれこれ問いただして、最終的に喧嘩みたいになっちゃったんです。自分としては、本当は協力したいけど、内容が内容なだけにやりたくないって。彼女がどんな曲を求めているのかスケッチされたノートも送ってもらったりしたんですけど、そこには「全てを超越した音楽」とか「神が眠る音楽」とか抽象的なことしか書いてなくて、その文章がまた映画の内容とも乖離してる。それでスカイプでまたミーティングして、最終的には口論になり、終いには「ほんとバカ」みたいな悪口の言い合いになってしまった(笑)。そのときに「そんなにできないんならお前、インドに行ってこい!」って言われて、その時はインドなんて本当に行けるとも思っていなかったので、「行ってやらぁ!」って言っちゃったんですね。それがトントンと話が進んで、9月に本当に1週間だけインドに行けることになったんです。遠藤は、今回の映画で「西洋と東洋の文明衝突」みたいなものをテーマにしていて、西洋文明が最近うまく機能しなくなっていて、それを東洋の文明が飲み込みかけている、その西洋のテクノロジーと東洋のテクノロジーの衝突がインドを舞台に起こっている、というような内容なんですが、「これはインドに行かないとわからない」って言われて、それにはぼくも納得したんです。すぐビザを申請して、飛びました。
 ぼくは海外には、いままでニューヨークとかオーストラリアとかコペンハーゲンには行ったことがあったのですが、アジアには行ったことがなかったんです。だから初めてのアジアで、インドの下調べもせずに、ツアーでもなく。とにかく現地で見るもの見てこなきゃ、という状況。何が何でもインスピレーションを得ないといけない。それで、一週間しかないし、ぼくは英語も話せないのでやっぱり本当に大変でしたね。最終的にニューデリーとアーグラとワーラーナシの、北インドの3都市を回ったんですけど、やっぱり刺激的で、これはオリジナル・アルバムとしても作れるかも、という今回のサントラ兼オリジナルアルバムという複合コンセプトも浮かんできて。それに原点の映画音楽の製作も、インドを巡って見聞きしたものを、そこから出てきた激しいアイデアをとにかく形にすれば遠藤監督の映画にも合うんじゃないかとも思って。

ニューデリーとアーグラとワーラーナシの、北インドの3都市を回ったんですけど、やっぱり刺激的で、これはオリジナル・アルバムとしても作れるかも、という今回のサントラ兼オリジナルアルバムという複合コンセプトも浮かんできて。

それで帰ってきてすぐ楽曲制作に着手しようとしたらぶっ倒れてしまった。約3ヶ月間、耳も聞こえなくなってしまったんですね。帰国直後は、鼓膜が詰まってしまったのと、副鼻腔炎っていうのを発症してしまったのと、あと肺もやられて喉もやられて。熱も出てお腹もこわして。皮膚まで膿んできたんですよ。全身ダウン状態でした。だから曲を作り始めたのは2015年になってからなんです。トップバッターでデリーをイメージした“Old & New”っていう曲がすぐにできたんですね。これは映画のためというよりも自分がインドで体験したことをもとに作ったんです。でもそれを監督に送ったらとても気に入ってもらえて。そこから他の曲もどんどん作っていきました。映画のほうも第2稿第3稿と映像が送られてきて、それを見ているとだんだん言いたいこともわかってきた。で、“Old & New”で使ったフレーズを別の曲にも使ったりして、他の曲に広げていくと、こんどは広がりすぎて映画の中で使いきれないほどアイデアがどんどんできてきて。映画のオーダーにはないけど気に入った音の素材ができたとき、それを発展させて一曲に仕上げて送ったり。『MOON』は最初はサントラとして引き受けて、予定では6曲くらいの感覚だったのですが、インドから帰ってきてどんどん構想が膨らんで、これはフル・アルバムにできると確信して、最終的には12曲になった。実際の映画に使われているのは曲のほんの一部分だったりが多いので、『MOON』は純粋なサントラとは言えないし、でもオリジナル・アルバムとまではいかないし、だからとても特殊な作品に仕上がったと思います。音楽的にもヴァラエティ豊かでエキセントリックなものになりました。

『MOON』はアルバムの冒頭からサックスがフィーチャーされているのがとても印象的なのですが、それには何か意味があるんですか?

服部:『TECHNOLOGY』に出てくる男の子がサックスを吹くんですよ。なので映画を観ていただけたらアルバムの楽しみ方も広がってくると思います。たとえば他にも、5曲めの“Rickshaw”っていう曲は、映画でも使われているんですが、アルバムに収録されている音源とはちがっていたり。だから映画で使われている音源と『MOON』というアルバムのなかに収録された楽曲との差異も楽しんでもらえたら、と思います。

インドの楽器を多用しているのも映画との関連からなんですか?

服部:そうですね。やっぱりオーダーがあるので、それは参考に作っています。あと高校生のころにタブラ・マシーンを渋谷の楽器屋さんで買って、それを録音して使ったり。ほとんど使っていなかったんでやっと日の目を見ることができました(笑)。

ふだんインド音楽を聴いたりはしていたんですか?

服部:はい、もともとワールド・ミュージックが好きだったのでけっこう聴いてはいました。もしも映画にストーリーがあって、ドラマがあったりしたら、曲もそれに寄り添ってインド音楽のようにしようと挑戦したかもしれないですけど、そこまでオーダーもなかったですし、実験色の強い映画なので、音楽も好き放題にできました。遠藤監督もその方向を求めていたと思います。

仲直りはできたんですか?

服部:喧嘩はいまだに根をひいていますね……。

(笑)

服部:映画が完成したら「よかったね」ってなるかもしれないですけど。

じゃあ来年になるんですかね。

服部:そうですね。当初の予定では今年中の完成を目指していたんですけど、映画の製作はやっぱり資金面が大変みたいで、来年完成、公開予定です。

ぜんぶ打ち込みで作ってます。打ち込みというのもアレだし、本当は「魔法です」って言いたいところなんですけど。既存のループを貼りつけているわけじゃなくて、フレーズは細かいところまでひとつひとつ作曲してピアノロールに打って作ってます。

『UNBORN』と比べて、『MOON』では制作手法を変えたりはしましたか?

服部:インドに行って自分のなかで浮かんできたものなんですけど、今回は主旋律をあまり使わないようにしました。『UNBORN』はほぼ全曲に主旋律があるんですよ。でも『MOON』では“Pink”っていう曲以外はほぼ主旋律がないんです。これは映画の中で結婚のテーマみたいな感じで使われる曲なんですけど。今回はループ・フレーズを多用してますね。

サンプリングした音源を貼り付けたりしているんですか?

服部:いや、「Logic」を使ってぜんぶ打ち込みで作ってます。打ち込みというのもアレだし、本当は「魔法です」って言いたいところなんですけど。既存のループを貼りつけているわけじゃなくて、フレーズは細かいところまでひとつひとつ作曲してピアノロールに打って作ってます。なので音程を微妙に上げたりとかできるんですよ。アーティキュレーションを変えたりとか。

それは何かの生演奏を参照してそういうニュアンスを付け加えていくんですか?

服部:うーん、というよりは頭の中でできることを何でもやってしまいたいと思っていて。とにかく細かいところまで作り込みたいので。ちがうアーティキュレーションを何回も書き出して、それで上手くいくのを採用したりしているんです。シンセとかでもランダマイズさせて10回ほど書き出して、同じフレーズでも10通りの波形ができるので、ポイントポイントでいちばんいい瞬間っていうのを切り抜いて、フェードで繋げてひとつの音にするのがぼく得意なんです。ずっとエレクトロニカを作っていたからそういう波形編集が十八番なんですね。ぐにょぐにょって変化する音が得意というか。ひとつにつながっているんだけど、ぐにゃぐにゃ変わってくみたいな。なので音色的には楽器なんですけど、生音を目指しているというわけではなくて、どっちかというとむしろパソコンを使った制作でしかできないような表現をやりたいと思っています。だから実際のアーティキュレーションを忠実に再現させたいかというとそういうわけでもない。実際の楽器にはあり得ないオクターブの飛び方とか、息継ぎのない木管系のグリッサンドとか、ユニークなほうが聴いてて面白いし、自分も作ってて面白いと思える。バンドでの活動だったりすると、ミュージシャン同士のセッションで次にどうなるかわからない、何が起こるかわからない要素を楽しみながら作り上げていけるじゃないですか。ひとりでの制作の場合、とくにインストって精神世界そのものみたいな感じで、とにかく浮かんでくるものをできるだけ形にしようと思っています。

実際のアーティキュレーションを忠実に再現させたいかというとそういうわけでもない。実際の楽器にはあり得ないオクターブの飛び方とか、息継ぎのない木管系のグリッサンドとか、ユニークなほうが聴いてて面白いし、自分も作ってて面白いと思える。

服部さんの音楽を生演奏で実現させたいと思うことはないんですか?

服部:ありますあります。むしろ理想はぜんぶ生演奏というか、実演したいですよね、曲のとおりに。ただ実際にやるとなると難しすぎて弾けないんですよね。早すぎて。だから困っていますが、いつかオーケストラを使って本当にやれたらなと思っています。

生演奏を参照していないだけに、実現困難なアーティキュレーションを施したりしていますよね。

服部:そうなんですよ。自由に作っているので。あとスケールも頻繁に変えてしまうので、実際にやるとなると、たとえばピアノだと1小節ごとに4回チューニングを変えなきゃならなかったり。だからまずはそれを演奏できるピアノを開発しないと駄目ですね(笑)。

電子楽器だったらできそうですけどね。

服部:そうそう、電子楽器だったらできるんですけど、とにかく実演したいです。

生音と電子音というと、たとえば最近は初音ミクに代表されるボーカロイドを使って、デスクトップ上で「声」を生成することもできるようになっています。服部さんはご自身の楽曲制作にボーカロイドを取り入れようと思ったことはありませんか?

服部:現状としてはあまり好きな音ではないですね、でもやっていることはじつは自分といちばん近いと思っていて。曲作りのやり方が。ノートを振って指令を出すわけじゃないですか。こういう歌い方でここを曲げてとか。でもボーカロイドを使った優れた作品はどんどん出てくると思う。いまはまだ音がガビガビというか、いかにも「機械」な感じで、その感じがむしろ好まれている節もあると思うんだけど。今後技術的にも確実に進歩していくだろうし、たとえば忠実にマライア・キャリーみたいな声質で、しかも張りあげ声からホイッスルヴォイスから、デスヴォイスやウィスパーヴォイスだったりが、ぜんぶ再現できるようになっていくと思うんです。それで椎名林檎みたいな歌詞を歌わさせられる。そうなったらぼくもボーカロイドに手を出すと思います(笑)。そういうことができるようになると、そうとう面白くなってくると思う。あれも究極のひとりミュージックじゃないですか。ぼくもひとりで作る音楽というのを突き詰めていきたいので、ボーカロイドを使った作品にはつねに注目はしています。

クリス・ブラウンとか宇多田ヒカルとかが大好きなんです。だからそういう音楽もやりたいんですよね。でもそれと並行して自分の表現も続けていきたいですね。ひとりでやる音楽だと、じつはもう次にどんなアルバムを作ろうか考えているんです。でも完成させるのに10年くらいかかりそう。

お話をうかがっていて、服部さんにとっての「電子音」は、「生音」に対立する別のものというよりも、「生音」の概念を拡張していくものとして捉えられているように感じます。

服部:やっぱり生の魅力っていうのはあるわけじゃないですか。たとえばデジタルと言われるものはつねにアナログの技術に押されてきたっていう側面がある。そういうアナログの魔力とか、生音の魅力にはどうやったって勝てない時代がずっと続いていたと思うんです。でも最近になってよくやく、デジタルでしかできない表現もどんどん増えてきて、ぼくはそれを追求していきたいし、それが面白いんです。いまだにアナログ至上主義者みたいな人たちはいて、そういう人たちはCDでさえ許せなかったりしますよね。レコードじゃないとダメっていう。でもデジタルの世界でも、ハイレゾ音源までいくと、そうでないと注ぎ込むことのできない情報量と、伝達の早さの魅力がある。アナログとデジタルはそれぞれ良さがあって、どちらかに甲乙つけるのはもはやナンセンスだと思います。
 音楽的にもデジタルでの作曲は、リアルでは再現できない領域の演奏が試せる。曲の小節間でチューニングを変えたりとか、フレーズごとにインストゥルメントを変えてフェードで繋げたりとか。生の楽器って、楽器そのものがもつ制限のなかで人間がどうやって演奏するのかという問題がある。でも機械のなかではそういった制限はないから、より自由な作曲ができる。そこは大きな魅力だと思います。ぼくはべつにアナログや生音のアンチなのではなくて、生音でもデジタル・ミュージックでも、どちらの世界も分け隔たりなく聞ける、リスペクトできる、純粋に楽しむことのできるような音楽シーン作りに貢献したいです。

ご自身の楽曲を生演奏で実現することのほかに、今後やりたいことはなにかありますか?

服部:さっきも言ったのですが、ぼくクリス・ブラウンとか宇多田ヒカルとかが大好きなんです。だからそういう音楽もやりたいんですよね。〈エイベックス〉とかそっち系で楽曲を提供する仕事をしたい。でもそれと並行して自分の表現も続けていきたいですね。ひとりでやる音楽だと、じつはもう次にどんなアルバムを作ろうか考えているんです。というかずっと前から考えていて、タイトルも曲順も決まっていて。でもそれは超大作というか、完成させるのに10年くらいかかりそう。本当はそれをデビュー作にしたかったんですけどね。でもそれがなかなか難しいので、『UNBORN』のなかにその伏線を張った曲を3つ入れたんです。とはいえ、とてつもなく時間がかかりそうなので、それを完成されられるかどうか、いまはまだなんとも言えません(笑)。

その構想しているアルバムは、実際に曲作りをはじめたりしているんですか?

服部:まだ着手はしていないんです。ライフワークじゃないですけど、ゆっくり作っていきたいと思っていて。そう考えるとやっぱり10年くらいかかるんじゃないかなぁ。でも、最近曲を作るスピードがどんどん早くなっているんですよ。『MOON』の最後に“Forgive Me”っていう曲があって、あれは映画のエンドロールに使われているんですが、15日間で完成させて、自分としては相当早かったんです。むかしは、たとえば“Humanity”なんかは1年くらいかけて作っていたので。だからこのまま曲作りのスピードが上がっていけば、10年も待たずにでき上がるかもしれないですよね。まぁ、いまはまだなんとも言えません(笑)。

素通りできないインストア・ライヴ - ele-king

 まだまだ魅せる、まだまだ聴かせる。フラットな世界、“匂い”を失ったトーキョーをスクリーンにして、トレンディ&アーバンなホログラムを踊らせる(かのように見える!)シンセ・ポップ・ユニット、Hocoriが、タワーレコード渋谷を舞台に観せてくれるものは何か──。
 インストア・ライヴの報が寄せられたが、それにともなってたくさん楽しい情報が連なっているようだ。ライヴ会場限定で販売されていた音源もタワーレコード渋谷店限定で購入可能となる模様。来週土曜はお店の前を素通りできないぞ!

 桃野陽介(モノブライト)と関根卓史(golf / SLEEPERS FILM)によるユニット Hocori[ホコリ]が、タワーレコード渋谷店1Fにて11月21日(土)にインストアライブを行うことが決定した。
 これはタワーレコード渋谷店のリニューアル3周年を記念して、「誰かのヒーローになれる服」をコンセプトに展開しているアパレルブランド”ユキヒーロープロレス”を率いる、新進気鋭のデザイナー・手嶋幸弘[テシマユキヒロ]氏とコラボレーションしたイベントにちなんでの出演となる。この日は、その他にもFREEDOMS所属の人気レスラー・葛西純[カサイジュン]選手らによる特別マッチ、そして2Fタワーカフェ横にユキヒーロープロレス常設ブースがオープンし、関連グッズや手嶋氏の感性でセレクトされたCDや書籍などが並ぶ予定だ。リニューアル”3”周年にかけてHocoriのインストアライブを含め、これら3つのイベントの参加者にはハズレなしの抽選会も今回のスペシャルDAYのみ、実施されるのでお楽しみに。

 さらにこれを受けて、ラフォーレ原宿と阪急うめだ百貨店のユキヒーロープロレスポップアップショップ及び、ライブ会場でしか販売されてこなかった、Hocori×ユキヒーロープロレスのコラボ盤「Tag」がタワーレコード渋谷店限定で11月*日(*)より販売されることも決定した。この作品は1st mini album『Hocori』のリリースに先駆けて発表されていた全3曲入りCDで、関根卓史がこの盤のために手がけたオリジナルミックスを収録。そして収録楽曲の歌詞や世界観からインスピレーションを受けた手嶋幸弘氏がジャケットデザインを手掛けた。店内には彼らのシンボルとなっている、世界で一つのHocoriオリジナルネオンサインも展開されているので、この機会にぜひタワーレコード渋谷店へ足を運んでみてはどうだろうか。

■「タワーレコード渋谷 3rd ANNIVERSARY NO ENTRANCE MUSIC , NO PRO-WRESTLING !!」
11月21日(土)13:00~15:00内 タワーレコード渋谷店1F
※観覧無料

■「Tag」
品番:CNBN-01
価格:¥1,080(税込)
収録楽曲:
1. Lonely Hearts Club(Tag mix)
2. Tenkeiteki Na Smoothie(Tag mix)
3. God Vibration Instrumental
※タワーレコード渋谷店限定販売

■収録曲「Lonely Hearts Club」Music Video


TOKYO BLACK STAR - ele-king

 アレックス・フロム・トーキョーが新設したレーベル〈World Famous〉(世界で有名)からの第一弾……Tokyo Black Starの新作EP「Edo Express EP」がリリースされてから早10日が経っている。
 ええと、アリックスクン……ではなくアレックスは、90年代後半の東京のアンダーグラウンド・シーン、それも当時“ディープ・ハウス”と呼ばれたシーンで活躍した在日フランス人DJで、ここ10年以上は、ずうっとニューヨークを拠点にワールド・フェイマスな活躍をしてらっしゃる(欧米/アジアの主要都市をはじめ、先日もはコロンビアでDJしたそうで、毎年必ずイスラエルでもまわしている)。「明日なき世界で暮らしているかのような熱狂」のなかで、DJをし続けているのだという。
 で、熊野功雄(エンジニアとして有名)とのプロジェクト、Tokyo Black Starの4曲入りの新作「Edo Express(江戸急行) EP」がレーベルの第一弾として先頃リリースされたってわけ。
 そのなかの曲、“Mitokomon”を聴いてみよう。

 なぜか江戸時代の政治家の名前が曲名になっているのだが、曲はとてもユニークな(アップセッターズがハウスをやったような)ラテン・ディープ・ラガ・ハウスで、主旋律はまるで昔の西部劇のようだ。
 彼らが好きなエレクトロ・ファンクな曲もあれば、“Meltdown”などという、電力自由化を控えた我々にとって、ある意味実に重たい主題を投げかけるような曲もある。いずれにせよ、密度の高い4曲です。ぜひレコード店で手にとって欲しい。

2015年。オレたちは最高だと感じる瞬間を何度作り出せただろうか。
強度の高いイカした楽曲とフィジカルで雑なパフォーマンスでもってまあまあ健闘してきたと思う。上半期のリリースだってエメラルドもヘブンディスチャージもマジで最高だっただろ?
だけどオレの厄介な性格も手伝ってチームとしての孤立と混迷はいよいよ深まるばかりだよマイメン。

(中略)

今年に入って何度も自覚したこと、それはわれわれHave a Nice Day!は流通していくことに対して不適合なコンテンツだってことだ。
「とにかくパーティーを続ける」には他とは少し違ったリリースやイベントの形式が必要になったわけさ。

「Have a Nice Day! その華麗なるリリースとモッシュピットを生む方法」https://goo.gl/lpuEsT より抜粋

 “現場”をクリティカルに創出しながら、それを音楽の生成、作品の制作へとスリリングに変換させてきたHave a Nice Day!──2010年代パーティ・シーンの牽引役。

 彼らが掲げた次なる課題は、「とにかくパーティーを続ける」ための、常とはちがったアプローチ。クラウドファンディングでのアルバム・リリースと、その収益によるフリー・イヴェント(リリース・パーティ)の開催だ。

「当然この金はオレらの音源の制作費にあてることはない」と謳うように、アルバムのための集金がそのままパーティをクリエイトし、その門をあらゆる意味でフリーに開かせることにつながる。こうした仕掛けづくりそのものは、ひとつのリレーショナル・アートのようにさえ感じられるだろう。そんなまどろっこしい言い方を、彼らは嫌うだろうけれども。

 そして、編集部があんな本やこんな本の制作に追われているうちに、必要な金額は集まってしまったようだ。すごい。そういうわけで晴れてフリー・イヴェント(この「フリー」は「タダ」と訳すにはあまりにポジティヴなニュアンス持っている)の開催と相成った模様、ぜひ出かけてみよう!

■企画全貌の詳細
https://camp-fire.jp/projects/view/3382

■イヴェント詳細
Have a Nice Day!「Dystopia Romance」リリースパーティー

Have a Nice Day!の3rdアルバム「Dystopia Romance」リリースパーティーが、2015年11月18日(水)恵比寿リキッドルームで開催されることが決定した。入場料はなんと無料!

フリーパーティーを実現したのは、【Have a Nice Day! その華麗なるリリースとモッシュピットを生む方法】プロジェクト。目標金額100万円を達成し、支援者は全員ドリンク代もなく、完全フリーでの参加になる。また、今回の「Dystopia Romance」の音源は、本プロジェクトでのみ購入可能な期間限定リリースだ。

出演はHave a Nice Day! 、NATURE DANGER GANG。ゲストにLimited Express (has gone?)、おやすみホログラム、Y.I.M、といった豪華出演陣が揃う。
プロジェクトの募集終了は、11月7日(土)23:59まで。ぜひお早めにゲットして欲しい。

【Have a Nice Day!「Dystopia Romance」リリースパーティー】
開催日:2015年11月18日(水)
時間:OPEN 19:30 / START 20:00
会場:恵比寿LIQUDROOM
住所:東京都渋谷区東3-16-6
料金:無料(+1Drink ¥500)
出演:Have a Nice Day! / NATURE DANGER GANG
ゲスト:Limited Express (has gone?) / おやすみホログラム / Y.I.M
DJ:D.J.APRIL


彼女にはその価値がある - ele-king

 インガ・コープランドという名前だけですでに十分な知名度と期待があるだろうが、2012年、ハイプ・ウィリアムスとしての来日の模様はこちらから。強烈なクリティシズムを匂わせながらもついに核心をつかませない、ローファイ電子音楽怪ユニット、ハイプ・ウィリアムスの片割れがふたたび来日、ソロでは日本発となるライヴを披露する。ジャンルの別なく2010年のインディ・ミュージック史に鮮やかなインパクトを刻んだ才能、その現在のモードを目撃せよ──「私にはその価値があるから」。

■INGA COPELAND JAPAN TOUR 2015
“私にはその価値があるから”

11.20 fri at Socore Factory 大阪
風工房’98 / NEW MANUKE / birdFriend / naminohana records / INTEL presents LOW TRANCE
~ Inga Copeland (ex Hype Williams) Tour In Osaka& Madegg ‘N E W’ Release Party ~

OPEN / START : 22:00
ADV : ¥2,500 w/1D | DOOR : ¥3,000 w/1D
more info : https://intelplaysprts.tumblr.com

11.22 sun before Holiday 東京
BONDAID#7 FIESTA! Inga Copeland & Lorezo Senni

START : 23:30 at WWW Tokyo
ADV ¥3,000 | DOOR ¥3,500 | UNDER 23 ¥2,500
more info : https://meltingbot.net/event/bondaid7-fiesta-inga-copeland-lorenzo-senni

11.23 mon at 木揚場教会 / Kiageba Kyokai 新潟
experimental room #20

OPEN 17:30 / START 18:00
ADV ¥3,000 | DOOR ¥3,500円 | NON NIIGATA / 県外 2,500円
UNDER 18 FREE / 18才以下無料
more info : https://www.experimentalrooms.com/

Tour Info : https://meltingbot.net/event/inga-copeland-japan-tour-2015/

■BONDAID#7 FIESTA!

2015.11.22 sun before Holiday
START : 23:30 at WWW Tokyo
ADV ¥3,000 | DOOR ¥3,500 | UNDER 23* ¥2,500

液状化するダンス、レイヴ、アートの融点。ダブの霧に身を潜めるミステリアスなロンドンの才女 Inga Copeland と“点描トランス”と称されるミラノの革新派 Lorenzo Senni を迎えた新感覚の屋内レイヴが開催!

Co La (Software)、Andrew Pekler (Entr’acte)、D/P/I (Leaving)、TCF (Ekster)、M.E.S.H. (PAN)といった世界各地の先鋭的な電子音楽作家を招聘してきた〈melting bot〉プロデュースの越境地下電子イベント〔BONDAID〕が第7回目のラッキー・セブンを迎えて送る祝祭“FIESTA!”を今年で5周年記念を迎える渋谷WWWにて開催。ゲスト・アクトはHype Willimas (Hyperdub)での来日パフォーマンスが大絶賛だったロンドンの女流電子作家Inga Copelandの日本初のソロ・ライブとミラノのサウンド・アートティストLorenzo Senniの〔Sonar〕でも評判となった“点描トランス”と称されるレイザーを使った、こちらも日本初となるインスタレーション“Oracle (神託)”。本公演は今年の6月に東京のLIQUIDROOMと大阪のCONPASSで行われたベルリンの実験/電子レーベル〈PAN〉をフィーチャーしたイベント〔PAN JAPAN SHOWCASE〕に続く、現在のイメージ化するジャンルと抽象化するダンス・ミュージックの坩堝を体現したコンテンポラリーな屋内レイヴ・ナイト。

LIVE :
Inga Copeland [ex Hype Williams / from London]
Lorenzo Senni “Oracle Set” [Editions MEGO / Bookman Editions / Presto!? / from Milan]
Kyoka [raster-noton]
Metome
Renick Bell [Quantum Natives / the3rd2nd]
Koppi Mizrahi [Qween Beat / House of Mizrahi]
& yumeka [OSFC] “Vogue Showcase”

VJ : Ukishita [20TN! / Nice Air Production]

DJ :
Toby Feltwell [C.E]
Sapphire Slows [Not Not Fun / Big Love]
Yusuke Tatewaki [meditations]
HiBiKi MaMeShiBa [Gorge In]
Hibi Bliss [BBC AZN Network]
Pootee
SlyAngle [melting bot]

#LEFTFIELD #ELECTRONIC #RAVE
#TRANCE #DANCEHALL #VOGUE
#TECHNO #GLITCH #GORGE #NEWAGE
#CONTEMPORARY #DANCE #ART

ADV TICKET OUTLET : 10.15 ON SALE

e+ / WWW / RA / Clubberia
disk union (Club / Dance Online, Shibuya Club, Shinjuku Club / Honkan, Shimokitazawa Club, Kichijoji)

*23歳以下のお客様は当日料金より1000円割引になります。ご入場の際に生年月日が記載された身分証明書をご提示下さい。
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの身分証明書をご持参下さい。

主催 : BONDAID
制作 / PR : melting bot
協力 : Inpartmaint / p*dis
会場 : WWW

more info : https://meltingbot.net/event/bondaid7-fiesta-inga-copeland-lorenzo-senni


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