「KING」と一致するもの

XINLI SUPREME - ele-king

 さすがの橋元も編集部でこの音が鳴った瞬間に「なんすかこれ?」と訊いてきた。「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやジーザス&メリー・チェインのようだ」と、イギリス人にとって最高の褒め言葉で迎えられた日本のバンド、現在大分を拠点とするシンリシュープリームが10年ぶりに新作を発表する。
 2002年、ロンドンの〈ファットキャット〉からリリースされた彼らのデビュー・アルバム『トゥモロー・ネヴァー・カムス』は、いま思えばシューゲイザー・リヴァイヴァル......などと言うと生ぬるく思う方もいるかもしれないけれど......の先駆けであると同時に今世紀のノイズ・ムーヴメントともリンクしていた(〈ファットキャット〉は当時、メルツバウも出している)。
 『トゥモロー・ネヴァー・カムス』は否定、否定、そしてまた否定の作品だった。ジーザス&メリー・チェインのように徹底的に、どこまでもネガティヴでありながら、同時に甘美で、恍惚としたサウンドで我々を魅了した。2002年の暮れには当時のアメリカ帝国主義を非難するかのように星条旗をデザインしたミニ・アルバムの『マーダー・ライセンス』もリリースしている。いずれにしても、シンリシュープリームとは、2002年当時、音楽が変わりゆく時代の波を感じていた人たちにとっては忘れがたいバンドなのだ。
 
 10年ぶりの新作は、ワールズ・エンド・ガールフレンドが主宰する〈Virgin Babylon Records〉から10月23日のリリースされる。タイトルは『4 Bombs』、レーベルの資料によれば「10年をかけ完成まで辿り着いたのはわずか4曲」で、彼らが2010年にオフィシャルサイトからmp3でフリー配信した"Seaside Voice Guitar"に関しては、この1曲のみに3年半の時間が費やされたという。彼らはこの10年、新たなノイズの創造に力を注ぎ続けていたのである。
 まずはこちらの映像を見よ!



XINLISUPREME - 4 Bombs

2012年10月13日 リリース
¥1100 VBR-009
8月24日よりVirgin Babylon Records通販サイトにて先行予約開始。

interview with Paul Randolph - ele-king


Paul Randolph And Zed Bias presents
Chips N Chittlins

Pヴァイン

Amazon

 ゼド・バイアスといえばUKガラージ/ベース・ミュージックを代表する名プロデューサーのひとりで、初期はイングランド中東部に位置する街、ノーザンプトンを拠点とするレーベル〈サイドワインダー〉から作品を出している(さらに初期はディープ・ハウスのレーベル〈ロウズ・オブ・モーション〉からも出している)。ザ・ストリーツのリミックスを手がけているほど母国では名が知れた人物で、ダブステップにも少なからず影響を与えているような先駆者でもある。ドラムンベースの人気レーベル〈ホスピタル〉、クアンティックで知られる〈トゥルー・ソーツ〉からもアルバムを出している。
 いっぽうのポール・ランドルフ、今回の取材の主役は、1999年、カール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラ名義の作品、スタイリスティックスのカヴァー・シングル「ピープル・メイク・ザ・ゴー・ラウンド」において、その美声をもって我々の前に登場した。そのシングルのリミキサーがムーディーマンやスラム・ヴィレッジだったので、ランドルフは、この10年、日本でも多くの人に愛されているデトロイト系のソウルの始動に絡んだひとりとなった。
 ランドルフはそれから、ムーディーマンの〈マホガニー・ミュージック〉から最初のアルバム『This Is... What It Is』(2005年)をリリースして、2007年にはシカゴの〈スティル・ミュージック〉からセカンド・アルバム『ロンリー・エデン』を発表、他方ではアンプ・フィドラーやジャザノヴァでの作品をはじめ、オクタヴ・ワン、アズ・ワンなど、数多くのアーティストの作品に歌、あるいはベース奏者として参加している。職人といえば職人だが、交流関係はアーティスティックである。

 『チップス・アンド・チットリンズ』は、そんな、いかにもUKらしいクラブ・ミュージック道(地方で暮らしながら絶対に自分の好きなことしかやらない、労働者階級的な反骨心)を突き進んでいるベテランと、いかにもデトロイトらしいスキルフルでセクシャルなソウルとのコラボレーション・アルバムである。ハウス(4/4キックドラム)、そしてガラージ/ベース・ミュージックのビート(裏打ちでバウシーなビート)、ランドルフのベースとプリンスのような歌声、ときおり注がれるアシッディな音色、つまり『チップス・アンド・チットリンズ』とはモダン・ノーザン・ソウルなのだ。
 周知のように、ノーザン・ソウルとは60年代のUSソウルをとことん輸入した、UKにおいてふだん汗かいて働いている連中のダンス・ムーヴメントである。チップス=英国人の(どちらかといえばいなたい連中の)日常的な食べ物、チットリンズ=アフリカ系アメリカ人のソウルフード。良いタイトル/プロジェ クト名だ。
 ジャザノヴァでのライヴのために来日したポール・ランドルフに話を聞いた。

デトロイトにダブステップのような音楽が入ってきたのってやっとこの2~3年ほど前で、「そういうものがあるらしい」というような認識しかなかったんですよ。もともとデトロイトはテクノとハウスを中心に発展してきたような町ですから。

ええと、最初の来日って、ムーディーマンのライヴのときでしたっけ?

ポール:いいや、最初の来日は1985年で、そのとき僕は初めてちゃんとしたバンドの一員として来ていて、大阪のボトムラインというところで1日3回くらいショーをやりました。オリジナルもありましたけどカヴァーもあって、もうキャメルからヴァン・ヘイレンくらいまで何でもやるバンドでしたね。

というか、それって高校くらいってことですよね。

ポール:うーん、ひょっとしたら高校くらいだったかな。それからはもう7~8回くらい来日しています。何年かっていうのは、やっぱり言えないな(笑)。

どうしてです?

ポール:年齢がバレるからね(笑)。

なははは。いいじゃないですか(笑)。だって、たぶん我々があなたの名前をいちばん最初に認識したのは、1999年の"ピープル・メイク・ザ・ワールド~"のカヴァーだったんですけれども、それ以前のあなたの歴史というのもそうとう長そうですよね。

ポール:カールに会う前は、URのマイク・バンクスともともと友だちでよく練習していました。彼のお母さんの家の地下で、ドラムマシンやシンセやらをいじっていましたね。あの頃はなにも思っていませんでしたけれども、いま考えてみればURの生まれるもとになったのかもしれない。そのことに僕は気づいていませんでした。80年代に初めて日本に来たときには、ほんとはいっしょに来る予定だったんです。マイクも同じバンドにいたので。でもマイクは自分のプロジェクトを優先してデトロイトに残って、日本には来なかったんだけど、結果的には彼のほうが日本にもよく来てるし、世界を何周もすることになりましたよね。

へえー。それはすっごく面白いつながりですよね。

ポール:マイクに出会う前もいろいろなバンドにいたんです。けど基本的にマイクがデトロイトのアンダーグラウンド・テクノ・シーンを紹介する入り口になってくれた人で、彼からカールも紹介してもらったし、ケヴィン・サンダーソンも紹介してもらったしという感じで......。話が錯綜しちゃうけど、二度目の来日がムーディーマンだったかもしれない。

ああー。

ポール:実は4回目なんですけどね(笑)。

はははは!

ポール:よく考えてみればアンプ・フィドラーと2回来ていて。自分のバンドに最初アンプ・フィドラーが在籍してて、そのあとアンプがソロ作品を出すときに、サポートとしてベースを弾いて、そのバンドで2回ほど日本に来ているんです。そのあと、初めてエレクトロニック・ミュージックのソロ・プロジェクトとして出した作品がムーディーマンのレーベルからのもので、これは友人がムーディーマンにつないでくれたんだけど、それをきっかけに彼と来日しています。

ええと、僕、マイク・バンクスとは1993年12月に東京で会って以来の......なんて言ったらアレですけど、デトロイトが大好きな日本人のひとりです。あなたの地元の音楽を本当に好きなんです。

ポール:ああ、本当に! へえーーー!

[[SplitPage]]

よく人に「きみは何がしたいの? あっちにもこっちにも行って」っていう風に言われることがあるんだけど、その考え方自体がおかしいと思う。彼ら自身がその質問を自分にしてるんじゃないかなと思います。僕にとってはその質問は意味がないし、何かひとつのところに落ち着く必要もない。


Paul Randolph And Zed Bias presents
Chips N Chittlins

Pヴァイン

Amazon

ムーディーマンの初来日のときって、ストリップ嬢をステージに上げてライヴをやったときですよね。そのときにじゃあベースを弾いてたのがあなただったんですか?

ポール:いや、じゃあその次のときかな。自分以外にふたりほどパフォーマンスの人がいて、ムーディーマンがいちばん最後に出てきました。

今回、ちょうどあなたもアルバムを出すわけですけど、先日、Jディラがムーディーマンのところから未発表曲集の「ディラロイト」を出して、『リヴァース・オブ・デトロイト』っていうタイトルのアルバムもリリースされました。デトロイトのソウル・ミュージックというか、デトロイトの音楽を、すごくこう、再定義しようという機運を感じるなかでのあなたのリリースもタイミング的に面白いことだなと思いました。

ポール:ははは、でも、とくにそういう風にしようとしてなったわけではないんだけど。相談してこのタイミングでやろうってなったわけではないです(笑)。

そういえば、あなたにはリミックス・アルバムもありましたよね。2010年かな......『エコーズ(・ロンリー・エデン)』っていうね、2枚組でしたね。

ポール:あれはなんで2枚組だったかというと、キャリアとして2枚目の作品だったんだけど、『ロンリー・エデン』のとき、ディストリビューターにすごく問題があったんです。それでとても不安だったから、曲を少し残しておいたんです。それに新しい曲をプラスして2枚組にしたのが『エコーズ』なんですよね。だから1枚目の余韻の残るようなタイトルにしたくて『エコーズ(・ロンリー・エデン)』となったんです。チャールズ・ウェブスターとか、ジェロームとか、いろいろな人に話を振っていってできたものでした。いまもソロのプロジェクトで、もうすこしで終わりそうなものがあります。いくつもプロジェクトを持っていますが、わりと最近はロックのバンドのを終わらせたところだし、南アフリカのミュージシャンの仕事もやったりしていますよ。

それは楽しみです。今回の『チップス・アンド・チットリンズ』はデトロイトを拠点とするあなたがゼド・バイアスみたいな、UKガラージ/ベース・ミュージックのベテランとコラボレーションしたということがひとつのトピックですよね。『ロンリー・エデン』のときのリミキサーとしておたがいに知り合っているから、その流れから発展したんでしょうけれども、あらためて、どのように今回のプロジェクトが生まれて発展していったのかということを教えてください。

ポール:リミックスが終わったあとに、マイ・スペースでコンタクトを取ったんです。聴いてはいたけど、ダブステップって音楽が流行ってるっていうからどんなものかなと思って、それなら実際にやってる人に訊くのがはやいと。そしたら向こうが「ワオ」ってなってね。「僕、アンプ・フィドラーとのギグを観てるよ」って。「ずっといっしょに仕事をしたかった」ってゼドはすごく興奮してくれてね。「こんな曲どうかな?」ってマテリアルを送ってきてくれたから、すぐやって戻した。お互いすごく仕事がはやくて、「いいじゃない」ってなってね。
 ジャザノヴァの最初のころかな、3年ほど前にロンドンでギグをやったときに、ちょっと時間があまったから電車でマンチェスターまで行って、彼の自宅兼スタジオで数日間過ごしたんです。そしたら1日に4曲もできあがっちゃって。最初はただ行って、「どんな人かな」っていう感触をつかんで、軽いミーティングをしようというようなつもりだったんだけど、「ふたりのうちどちらかがもういやだってなるまでとことんやりましょう」ということになっちゃって、その次の日に3曲ってふうに、どんどんたまってきた。
 そうやってやりとりをしてきたのが3年前なので、彼もいろいろと忙しくなっちゃって一時放置されていたプロジェクトだったんだけれども、ときどき思いついたように連絡がきて、初めのころ作ってた曲を「こんなふうに直したよ」って送ってくる。けど、これは、「なんで直すんだよ! さわらないで!」っていう話ですね(笑)。で、じゃあ、「これもう3年も経ってるんだから終わらせようぜ」ということになったんです。だから今度は僕の自費じゃなくて、デイヴ(ゼッド・バイアス)のほうがチケットを送ってよこしてくれて、マンチェスターへ渡って作業を進めたわけです。

なるほど、なるほど。デトロイトにはデトロイトの独自のシーンがありますけど、UKガラージ/ベース・シーンっていうのはあなたからみてどういうふうに映ってるんですか?

ポール:音楽的なことでいえば、僕がそれまでまるで聴いたことのないものって感覚だったですね。デトロイトにダブステップのような音楽が入ってきたのってやっとこの2~3年前で、「そういうものがあるらしい」というような認識しかなかったんですよ。もともとデトロイトはテクノとハウスを中心に発展してきたような町で、そのなかに覚えきれないほどのサブ・ジャンルが枝分かれしていたわけなんですけど。そのなかにベース・ミュージックのようなものはなかったですからね。
 ゼッドと仕事しているあいだ、デトロイトでゼッドの名前が話に出たりすると「ああ、知ってるよ」っていう人もいたけど、だいたいは名前は知ってるけど、よくわからないって感じだった。僕が「聴いたほうがいいよ」ってすすめると、曲によっては好きだったり嫌いだったり、拒絶してしまう人もいればおもしろがるひともいた。やっとそれが定着してきて、デトロイトにも若いDJでダブステップDJって言われる人たちがでてきて、ちゃんとシーンを成立させてるって状況が生まれたんだけど、こっちからしてみれば、「きみたち4年前は何してたんだよ?」って気持ちもあってね。マンチェスターに行ったこともなければイギリスにも行ったこともないのに、彼らはベンガやら何やらダブステップの有名な作品のコレクションをたくさん持ってて、そういうDJをやってしまう。僕自身はクラブへは行けてなくて、それはデイヴが僕をスタジオに缶詰めにして「アルバムを終わらせるから」って遊びに行かせてくれなかったからなんです(笑)。

ははは、それは面白い話ですね。今回はジャザノヴァで来日されてますけど、あなたはほんとにいろいろな活動をされていて、たとえばディスコグスなんかを見ていたら、クレジットの多さに驚かされるんですね。ふだんはデトロイトに住んでいらっしゃるんですかよね? 10歳のときでしたっけ? ブラジルのサンパウロからアメリカのデトロイトに引っ越してこられたというのは。

ポール:そうですね。10歳になりそうってころからかな。

そのころすでに、ご家族の影響で楽器が使えたっていう話を聞いたことがあるんですが、デトロイトの文化にはすぐにうちとけることができたんですか?

ポール:デトロイトに移ったころというのは、子どもだったし、シーンというものを認識できていなかったというか、そんなものなかったのかもしれないですね。僕の世界は学校で、学校のなかのバンドでジャズをやったり、ロックをやったりしていました。でもそのときの学校の先生が、ほかの子どもよりも僕のほうが音楽的に先に進んでしまっているから、この子は退屈なんだろうなと気づいてしまっているようでした。実際にそのとおりだったし、どうやってこの子にもう少し楽しんで音楽をやってもらえるだろうかと先生が困っていたのを覚えています。シンプルなものとか誰にでもわかる音楽には興味がなかったし、もう少し深いことをやりたいとそのとき思っていました。

[[SplitPage]]

なんで僕がほかの人の音楽を聴くかといえば、僕のうしろからやってくる、新しい人たちの動きがこわいから聴いているんじゃなくて、ほかの人たちがどういう解釈をして音楽を聴いているのか、どういうアイディアを持っているのか気になるから、なんです。


Paul Randolph And Zed Bias presents
Chips N Chittlins

Pヴァイン

Amazon

デトロイトっていうのは音楽の町でもあるわけで、それこそ才能のあるミュージシャンやプロデューサーがたくさんいるんじゃないかと思うんですが、あなたにとって音楽哲学を形成する上で大きな影響を及ぼしたものについて教えてほしいです。

ポール:たぶん家族の影響が強いですね。祖父はシンガーでしたし、父はクラシック・ギターと、僕が生まれる前まではトロンボーンもやっていて、おばあちゃんは衣装を作る人だった。曾じいさんはレコーディング・スタジオを持っていて、ヴァイナルをカットする機械があったっていうことでね。基本的にはクリエイティヴなことをやる人たちに囲まれて育ったから、大人になるにつれてレコード屋に行くようになって、レコードを漁って雑誌を漁って、ちょっと気になったものがあったらとことん調べるという感じでした。
 そのころはなんでも共有できる友だちがまわりにいたかというとそうでもなくて、レッド・ツェッペリンが好きな人もいれば嫌いな人もいて、ファンクが好きな人もいればそうでない人もいるなかで、僕はぜんぶが好きだったんです。そこがまわりの人とは違うところでした。家族のなかで同じようにいろんな音楽を聴いて、どれもへだてなく好きだったのはおばあちゃんでした。彼女が亡くなったときに持ち物を整理しに行ったら、びっくりするくらいのレコードのコレクションがでてきてね! 種類も豊富で 、ローリング・ストーンズのオリジナルの初盤がすごくきれいな状態で混じってたり。もっとこれにはやく気づけばよかったと思ったんですよね。ほかの人もいるからあんまり持っていけなかったんだけど、それをいろいろ聴いたという影響はあるかもしれない。聴くほうから演奏するほうになっていったのは自然な流れですね。

へー、ローリング・ストーンズのオリジナルの初盤ですか-、それはいい話ですね。ちなみに『ロンリー・エデン』の「エデン」とは何を指していますか? 

ポール:いや、とくになにかアイディアはないです(笑)。みな人はなにかをするために生まれてきているんだと思いますが、「なにかをやるように」という神や宇宙の意思、そこから与えられる役割に、私は純粋に応えているだけだとしか言いようがないです。ほんとに私にとってはごくナチュラルなことで、好きだからやるし、気持ちいいし心地いい。それを拒否することもできないですし、しかもそれにまかせて努力せず、がんばらず、コントロールしようとすることなしに、自然にそれをやらせておこうとすれば自然に出てくるものなのです。
 これはもしかしたら特別なことかもしれない。みんなが僕のやっていることを評価してくれるから。ときどき人生の節目なんかで、これでいいんだろうか、自分のやっていることはまちがってい ないだろうかと思うこともあるんだけど、思い返していくとまちがってなかったんだなと、何のために生まれてきたのかということを知り、ちゃんとやるべきことをやっているんだなと感じるんです。僕はよく言うんですが、ミュージシャンやプロデューサーというのは、なにかメッセージを伝える人だと思う。僕たちは自由......完全なフリーダムというメッセージをデリバーできていると思いますよ。

あなたはヴァン・ヘイレンもレッド・ツェッペリンもPファンクも好きだったわけですが、あなたにとって音楽のなかでいちばん重要な要素というのはどんなものになるんでしょう?

ポール:なんでもいいっていうんじゃないんですよね。わかってくれていると思うけど。じゃあ何かといえば、フィーリングとしか言いようがない。たとえばこの花が好きだというときにそれは色かかたちかにおいか、花瓶なのか、その花の置かれている状態すべてによって決まることです。音楽は主観的なものでもあるんだけど、僕にとってはフィーリングで、そのときそのときに感じるものを大切にしています。そのことが僕の人生をゆたかにしてくれたと思いますよ。
 よく人に「きみは何がしたいの? あっちにもこっちにも行って」っていう風に言われることがあるんだけど、その考え方自体がおかしいと思います。彼ら自身がその質問を自分にしてるんじゃないかなと思います。僕にとってはその質問は意味がないし、何かひとつのところに落ち着く必要もない。音楽をこれだけ聴いていると、ひとつのジャンルに対して円が描けていきますよね。べつのジャンルのところにも円があって、その円が交わってくるところがある。そこがやっぱり面白いものだと思います。そのつながっているところを見れば、なぜこの音楽がこうで、何の影響をどこから受けたのかってことがわかるじゃないですか。それは面白いことだと思いませんか? 
 そこを見ていれば、ブルースがなぜジャズに影響したのか、なぜジャズがリズム&ブルースに行ったりとか、それがファンクに影響して、さらにヒップホップに影響していったのか、いろいろなことがわかるし、好奇心もあるしね。たしかに幅広い興味があって、なんでも好きとはいかないけど、なんでも聴くよ。ときどきまわりの人から「そんな音が好きなの?」ってふうに驚かれることがあるんだけど、それがディアフーフとかですね。

ディアフーフ! まあ、とくにあなたほどの腕利きのミュージシャンの多くは他人の作品をそあなたほど幅広く聴かないものですよね。DJなんかにしてもある限られたジャンルしかかけなかったりする人が多い。あなたは本当にオープンマインドなんですね。

ポール:ほかの人たちがどう思っているかは別として、僕についてお話しします。なんで僕がほかの人の音楽を聴くかといえば、僕のうしろからやってくる、新しい人たちの動きがこわいから聴いているんじゃなくて、ほかの人たちがどういう解釈をして音楽を聴いているのか、どういうアイディアを持っているのか気になるから、なんです。自分がまったく持っていなかったり、これまで経験してこなかった文化――音楽も文化ですよね、ただ音だけ聴いていてもわからないんですが――人のアイディアを知ることによって、自分が生きることができなかったほかの文化に触れることができるかもしれない。だからほかの音楽に惹かれるんです。
 コラボレーションの素晴らしいところはゼッドもぜんぜん違う文化のなかで育った人だけど、まったく違うふたつの世界、僕の世界と彼の世界からそれぞれやってきて、おたがいの窓をのぞき込みながら、「面白いじゃん」というふうに引き合いながら違う音を組み上げていく作業はものすごく面白いと思ったよ。
 自分の枠だけとか、あるひとつのジャンルだけを聴いていくのって、危険なことだですね。まわりの人だったり、過去の人々がどんなことをやってきたのかっていうことを聴かなきゃいけないし、最近のとくにダンス・ミュージックが陥りがちなのは、あまりにも音楽が入手しやすくなって、そこらじゅうにいろんな音楽があるからこそ、周囲の人との競争だけを気にして、そのせまいなかで終わっちゃうことが多い。表面だけの理解でおわることも多い。ほんとはもっといろんな人と、自分とは違ったユニークな考え方を持った人の音楽を聴けば、その人にはなれなくても、その人が培ってきたものをすこしいただいたり分け合ったりできるますね。ゼッドとの作業のなかでも、僕が前から知りたくて教えてもらったこともあるし、逆に僕が彼に教えてあげるということもありました。そういう意味でもいろんな人の音楽は気になりますね。

良い話ですね。しかし、もう時間がきてしまいました。今日はどうもありがとうございました!

情報デスクVIRTUAL - ele-king

 僕はチルウェイヴに関しては、いちど、紙ele-kingのvol.4誌上で、スクリューという技法を断念した時点で終わったと、松村の耳元に囁いたことがある。DJスクリューのアイデアが、彼が死んで、そして数年が過ぎ去ってから、暇さえあればPCに向かう煮え切らない青年たちに伝播したとき、ドロドロのポスト・モダンなポップは生まれた。スクリューは、その遅さに特徴を持っているが、ありものの録音物を加工するという点においては、ノイ!のセカンド・アルバム、あるいは初期のザ・レジデンツの系譜にあるとも言えなくはない。チルウェイヴのブームが去った後も、スクリューは拡大し、いまここに受け継がれている。さて、最先端のタームを紹介しましょう。今回はヴェイパーウェイヴ(vaporwave)です!

 チル、クラウド、ヴェイパー......、これらポップのニュー・ブリードは、ダウンローダーによるきわどい創造行為によって活気づいている。
 いろいろ出ている。メディアファイヤード、コンピュータ・ドリームス、そして今年〈ビアー・オン・ザ・ラグ(毛布の上のビール)〉からリリースされたマッキントッシュ・プラスによるカセットテープ作品『フローラルの専門店』......、まずはメディアファイヤードの曲を聴いてみよう。ケイト・ブッシュの往年のヒット曲のサンプリング、ペプシコーラのコマーシャル映像のルーピング......クラウド・ストレージとして利用されるメディアファイヤはダウンロード時代の象徴で、合法/非合法を往復するデジタル時代のカオスでもある。液晶画面の向こう側に広がる空間から拾ってきた音をサンプリングし、他の音と混ぜ合わせ、ピッチ操作する(チョップド&スクリューする)、こうしたあやしげな領域の新たな闖入者が〈ビアー・オン・ザ・ラグ〉レーベルというわけだ。視聴はこちらで→https://beerontherug.bandcamp.com/

 彼らがいったい何者なのか僕は知らない。レーベルのサイトで送料込みの10.5ドルだった。注文したら1週間ほどでCDRが届いた。『フローラルの専門店』は売り切れだと言われた。
 「情報デスクVIRTUAL」という日本語混じりの名前は、どう考えても日本人の使っている日本語ではない。『札幌コンテンポラリー』という意味不明な題名、そして単語帳をコラージュしているかのような曲名("札幌地下鉄・・・「ENTERING FLIGHT MUSEUM」"、"iMYSTIQUE エジプト航空「EDU」"、"PRISM CORP不可能な生き物"、"NEO Sunsetters エネルギー危機iCONGO"、"Healing 海岸で昼寝My Last Tears"、"「Wkpx Ceephax '81」 新しい年 "Spring Blooms""などなど)、これらデタラメな言葉の並びが指し示すのは、情報に満ちあふれ、フラットだが混沌とした領域、文字通りの「情報デスクVIRTUAL」な世界、液晶画面の向こう側だ。
 〈ビアー・オン・ザ・ラグ〉がやっているのは、ハイプ・ウィリアムスがUKミュージックの文脈でやっていることのUS版と言える(そして、ジョン・オズワルドがアヴァンギャルドでやったことのチルウェイヴ版である)。催眠的で、同じ手法――サンプリング(カットアップ)、加工、そしてまた加工――を使いながらも、こちらのほうはいなたく、無邪気で、少々AORめいている。そして、繰り返すが、音楽の効力としては催眠的で、デジタルにサイケデリックなのだ。

 PCは、現代的な道具であると同時に道具以上の幻想をふくらませる。それがゆえに良識的な大人からは害毒のひとつとも見られている。とくに近年は、インターネット、SNSの中毒性、つながりの強迫観念、依存性の精神的なリスクを指摘する声も少なくない。
 他方では、PCには精神的にまったく醒めながら、それを玩具として遊んでいる連中もいる。チル、クラウド、ヴェイパー......は後者にいる。マス・プロダクト、マス・セールをポップだと信じ込んでいる人には彼らの音楽は反ポップだが、俗物(ゴミ)を無邪気な遊びにしてしまうことをポップとするならこれは今日的なポップである。フリー・ウィードやメディアファイヤードなどといったネーミングにもデジタル環境のきわどさとの戯れ、一種の茶目っ気を感じる。笑いがあって、若い世代の遊び心を感じる。ジェームス・ブレイクが「CMYK」を発表したとき、「(大ネタを加工しまくって使うため)これはヒップホップの最新型」などと評価されたが、最新型はまだ続いている。
 かれこれ1年以上も、へらへらしていたら怒られてしまいそうな空気のなかで暮らしている。オリンピックを楽しもうとしても「がんばれ日本」という言葉が反復する。まあ、どこの国も似たようなものと言えばそうだが、今回はいろんなお題目と重なっているところが実にいやらしく政治的で、統制的だ。こんなご時世、こんな国の言語をカットアップして、こんなことを真剣にやっているなんて、バッカだな~。でもね、だから最高。

HeavysickZERO - ele-king

 東京のアンダーグラウンド・ミュージック・シーンの重要拠点〈中野heavysick ZERO〉が10周年を迎える。ということで、8月24日(金)、25日(土)に盛大にアニヴァーサリー・パーティが開かれてしまう! まずは、おめでとうございます!!! 僕が、この、山の手の外れの小さな箱から学んだことと言えば......当たり前のことだが、新しい音楽が生まれる背景には、果敢な挑戦や実験を好む向こう見ずなミュージシャンやバンド、DJやラッパーを応援するクラブやライヴ・ハウスがあり、また、それらを支える献身的なスタッフや情熱的なミュージック・フリーク、そして、最高にファンキーな野次馬たちがいるということだ。音に対しては厳しくても、朝まで酩酊したり、酒癖の悪い、だらしない人間にも優しかったりする、そういう連中が集まるクラブで、刺激的な音楽文化が創造され、根づくということだったりする。
 注目すべきことに、10周年記念のコンピまで発売される。しかも全曲、このコンピのための録り下ろしだ。ザ・ヘビーマナーズにはじまり、ルミとキラー・ボングの強烈な初コラボ曲、シンガー、チヨリとスティルイチミヤのヤング・Gがタッグを組んだ曲、MJPのDJケン、アサやザ・ブルー・ハーブのO.N.Oやダブステップ・シーンで今注目のDJドッペルゲンガーのトラックも収録されている。
 アニヴァーサリー・パーティの出演者に関しては、以下のインフォを見て欲しい。知らない名前があったとしても、あなたがいちばん最初の発見者になるかもしれない。それが、この箱で遊ぶ最大の魅力。とにかく〈中野heavysick ZERO〉らしく、ダンス・ミュージック、ヒップホップ、ダブ、アヴァンギャルド、ダブステップ、ノイズが渾然一体となったファンキーな二日間になるでしょう。僕も遊びに行きます。乾杯しましょう。(二木信)


『HeavysickZERO 10th ANNIVERSARY』
~ SPECIAL 2DAYS ~

[特設WEB]
https://www.heavysick.co.jp/zero/2012_10th.html

8月24日(金)

- ACT -
THE HEAVYMANNERS
DJ KIYO(ROYALTY PRODUCTION)
CHIYORI with LOSTRAINS
INNER SCIENCE
DJ KEN(MIC JACK PRODUCTION/ILL DANCE MUSIC)
DOPPELGENGER
噛ます犬[asa / DJ HIDE / ICHIRO_ / DJ noa]
惹蝶
MIZUBATA(一○∞)

8月25日(土)

- ACT -
O.N.O - MACHINE LIVE -
K-BOMB
DJ DUCT(THINKREC.)
CONOMARK
OPSB
TAICHI(Stim/Nice Brew)
Yousuke Nakano(DUBBING HOUSE)
DJ SATOSHI(izmical/NNNF)
jitsumitsu(P.V.C.)
HAGIWARA(FAT BROS)
Militant B

@heavysick ZERO
[OPEN&START]23:00
[DOOR]3000YEN(1D)
[W.F]2500YEN(1D)

≪information≫
heavysick ZERO
〒164-0001
東京都中野区中野5-41-8 B1F/B2F
TEL: 03-5380-1413
WEB: https://www.heavysick.co.jp/zero/
※JR中央線/総武線「中野駅」北口下車、早稲田通り沿いの"モスバーガー"を過ぎた先。
"からあげ塾"の地下です。



Various Artists
『heavysick ZERO 10th ANNIVERSARY』
heavysick ZERO / ULTRA-VYBE, INC.
2,000円(税込)
2012年09月05日発売!!

『~ローカリズムとリアリティー此処にあり~』

 独自の文化が渦巻く中央線"中野"にて、一般的な流行廃りには左右されず、型にはまら ないスタイルで自由な音楽パーティーを実験的かつ挑戦的にバラ撒き続けるheavysick ZERO。そんな現場第一主義で2012年に10周年を迎えるheavysick ZEROが、過去と未来を繋ぐ重要アーティストを中心にオリジナル楽曲をコンパイル!!! 全曲・本作が初だし音源のみという豪華内容に加え、Heavysick ZEROだからこそ成し得たジャンルの枠組みを取っ払った数々の楽曲、
自慢のサウンドシステムにて最高の音を体感出来るようなサウンドに仕上がっている。

01. THE HEAVYMANNERS / HEAVYSICK MANNER
02. SKIT 1
03. RUMI x KILLER-BONG / suck'n'chill
04. SKIT 2
05. asa feat. nuffty / NAKA - 噛ます犬REMIX -
06. O.N.O / eng
07. SKIT 3
08. 惹蝶 feat. 宮本 忠義 / Interesting City Nakano
09. MIZUBATA +小宮守+ペヤング+ILLSUGI / HAI-SAI-GARA
10. Like A Rolling Stone [DJ KEN & 響大] / Slowdown Sundown
11 .SKIT 4
12. DJ DUCT / Run the Game !
13. SKIT 5
14. DJ SATOSHI / sexual appetite
15. Yousuke Nakano / NO GENERATION
16. SKIT 6
17. OPSB / PUSH
18. DJ Doppelgenger feat. saara / Grounding
19. CHIYORI x Young-G / 憂晴れ
20. SKIT 7
21. OUTRO
22. SKIT 8

SKIT:森田貴宏

BASSの時代 - ele-king

 日本のベース・ミュージックについて改めて考えてみると、「ベース・ミュージック」という言葉を日本人が使いだしたのは東では〈Drum & Bass Sessions〉、西では1945 a.k.a KURANAKAが率いる〈ZETTAI-MU〉に代表される方々が支えてきた「ドラムンベース」や「ラガ・ジャングル」の登場以降だと推測される。
 しかし、近年では「ベース・ミュージック」という言葉の意味にかなり広がりを持つように進化し続けていると思う。もともとは海外でマイアミ・ベースやゲットー・ベースなどのヒップホップやエレクトロからの流れが「ベース・ミュージック」と言われだしたのがはじまりだろうし、「DUB STEP」という言葉にある「DUB」についてはもっと昔から存在する手法だ。
 そんな「ベース・ミュージック」の言葉が持つ深いポテンシャルに注目し、日本におけるベース・ミュージックの現在進行形を体験できる貴重な機会があったので、少々時間は経ってしまったが、レポートしようと思う。

 〈Outlook Festival〉とは、ヨーロッパはクロアチアにて数日間に渡って開催され、世界中のアーティストやDJ、そしてサウンドシステムが集結する世界最大級のベース・ミュージックの祭典だ。その錚々たるラインナップには、リー"スクラッチ"ペリーやマックス・ロメオやジャー・シャカといった、生きるレゲエ・レジェンドたちからスクリームやデジタル・ミスティックズなど、最先端ダブステップ・アーティストが一斉に名を連ねる。

 ある日、Part2Style Soundの出演するクロアチアの〈Outlook Festival〉に同行したeast audio sound system(イーストオーディオ・サウンドシステム)のtocciの体験談として「BASS MUSICは体で体感する音楽である。しかるべきサウンドシステムで鳴らせば、その重低音は肌から伝わり、体のなかを振動させ、ついには喉が震えて咳き込むほどの音楽だ」という見解を、過去にサイトにアップしていたのを読んで、自分の目を疑ったのと同時に「体感してみたい」という思いが芽生えた。その個人的な思いは「Outlook Festival Producer Competition」という、勝者はクロアチアへのチケットを手にすることができるコンペに自作曲を応募する形でぶつけてみた。仲間や応援してくれたみんなのおかげもあって、数多く存在するファイナリストまでは残れたものの、結果としては敗北に終わり、悔しい思いをしたのも記憶に新しい。
 そんな〈Outlook Festival〉の日本版がPart2Style とイーストオーディオ・サウンドシステムによって、今年も開催されると知ったのは春のはじまりのころで、それを知ってからは毎日のように「Outlookを体験したい」と心のなかで連呼したが、どうしても行きたい思いとは裏腹に、諸事情により今回のフェスへの参加を諦めていた。
 その矢先、小説家であり、ライターであり、大阪の夜の飲み先輩であるモブ・ノリオさんから一本の電話がかかってきた。
 以前、モブさんにとあるパーティで会ったときに酒を飲みながら〈Outlook Festival Japan Launch Party〉がいかなるものかと熱く説明したことがあり、そのときに何度も「それにはお前は行かなあかんやろ」と言われたが、「行きたいですねぇ......」と返すのが僕の精一杯の返答だった。それを察しての電話口だった。「〈Outlook〉行くの?」と聞かれ、「めちゃくちゃ行きたいですけど、もう諦めました」と返すと「行かんとあかんときっていうのは、どうしても行かんとあかん。お前、ああいうことを自分で書いといて、いかへんつもりなん? それはあかんぞ......あのな、エレキングで取材の仕事をセッティングしたから、行って来てレポートを書いてみぃへんか? 文化を体験するって行為は絶やしたらあかんで」
 涙がでるほどの奇跡が起きた。僕のなかで行かない理由はなくなった。

 5月26日、TABLOIDの隣にある、日の出駅に着いたときに、まず驚いた。改札を通るときに重低音の唸りが聴こえてきたからだ。駅から会場までの近さも手伝って、初めて行く会場への方向と道のりを重低音が案内してくれた。会場の建物がどれなのかは、低音の振動でコンクリートが「ピシッ」と軋む音でわかった。ついに ここに来ることができた、と胸が高まった瞬間だ。

 会場に入り、さっそくメインフロアであるホワイト・アリーナへ向かうと、先ほどの駅で聴いた重低音の唸りがSPLIFE RECORDINGSがかけるラガ・ダブステップだったことがわかる。そびえ立つモンスター・スピーカーたちの城から発せられるその音は、「爆音」なんてものではなく、まるで生き物のようにスピーカーから"BASS"が生まれ、フロア中を駆けめぐった後、壁を登り、遥か高い天井で蠢く、「獣帝音」と言えば伝わるであろうか。そう、これがイーストオーディオ・サウンドシステムとTASTEE DISCOが繰り出す、メインフロアの音だ。驚いたのは、出番が終わったあとにSPLIFE RECORDINGSのKOZOから聞いたところによると、これでまだ50%ぐらいの音量だというのだ。驚きとともに、100%の音量を出したときに自分は正気でいられるのだろうか? 建物は大丈夫なのだろうか? などと、少しの不安と緊張感を抱くとともに、武者震いをするかのように心を踊らせた。

 大阪から到着したばかりで腹がすいていたので、メインフロアの後方にあるFOODブースへと向かった。
 DUUSRAAのカレーを注文し、待っているあいだにおもしろい出来事があった。テーブルの上に置いてあった誰かのカクテルのカップが、重低音の振動で勝手に動き出し、なかに入ってあるカクテルが噴水のようにしぶきを上げ、こぼれだしたのだ。それぐらい、建物自体が振動していたということだ。

 知人の皆と、久しぶり感がまったくない(1ヶ月前に会ったばかり)挨拶やジョーク等を交わし、会場全体をウロウロとまわるうちに最初の狼煙が上がった。Part2Style最重要ユニット、ラバダブマーケットの登場だ。Erection FLOORと名付けられたフロアで鳴り響く、姫路は最高音響サウンド・システムの音も、サブ・フロアという陳腐な言葉では片づけられない、まさしく最高の音だった。その音は暖かく、どれだけの音量で鳴っていたとしても耳が疲れない、例えて言うならマホガニーサウンドだ。しかし、鳴っている音量はかなりのもので、ここのフロアが階段を登った2階にあったのも手伝ってか 振動が床を伝い、足から体全体が震え、まるで自分がスピーカーになったような錯覚すら覚えた。そんな最高音響でのラバダブマーケットのライヴは、フロアの反応も最高だった。Dread Squadの"Sleng Teng International Riddim"にジャーゲ・ジョージとMaLが歌う"Digital dancing mood"~e-muraのJUNGLEビート本領発揮の"Bubblin'"~突き抜ける"MAN A LEADER"の流れは、正にリーダーが告げるこのフェスの本格的開始合図だった。そしてその勢いは櫻井饗のエフェクターを駆使した多彩なビートボックス・ライヴへと継がれていった。

 ホワイト・アリーナへ戻ると会場にも人が溢れ返っていて、LEF!!!CREW!!!が、フロアにいるオーディエンスをハイテンションでガンガンにロックしていた。休憩しようと外へ向かう途中にグラス・ルームではDJ DONが、まだ生まれて間もないベース・ミュージック、ムーンバートンのリズムで"Bam Bam"をプレイしていた。僕もよくかけるリミックスだ。ついつい休憩のつもりがまたひと踊りすることに。Jon kwestのアーメンブレイクを切り刻んだムーンバートン(これまた僕もよくかける)など、ニクイ選曲にTRIDENTがパトワのMCで煽る。108BPMという、遅いような早いような不思議なテンポに錯覚してしまい、ついつい踊らされてしまうのがムーンバートンの魅力だろう。

 外の喫煙ブースでマールボロのタバコをもらい一服してからなかへ戻ると、さっきのグラス・ルームでは函館MDS CREWのボス、SHORT-ARROWがSUKEKIYOのMCとともにジャングルをプレイしていた。同じく函館から来ていたKO$は今回、カメラマンとしてもかなりいい写真を撮っていたので、是非チェックしてほしい。ここでも先ほどラバダブマーケットのライヴでも聴いたDread Squadの"Sleng Teng international"が聴けたし、時を同じくしてホワイト・アリーナではTASTEE DISCOがスレンテンをかけていた。

 この〈Outlook Festival Japan Launch Party〉の興味深いポイントとして、「ベース・ミュージックに特化したフェスティヴァル」ということでは日本ではかなり早いアクションだということだ。以前からPart2Styleは"FUTURE RAGGA"というコンセプトのもと、コンピュータライズドなレゲエをやっていたし、ジャングルやドラムンベースはもちろんのこと、最近ではダブステップやクンビアも自分たち流に消化して発信していたし、ムーンバートンを僕が知ったきっかけはMaL氏とNisi-p氏がふたりで作ったミックスだった。それらやその他もろもろを総じて、ベース・ミュージックと日本内で呼ばれ、波及しだしたのは ごく最近のことであり、まだまだ発展途上といえる段階だろう。スレンテンのベースラインは、この新しい試みのなかでも 互いに芯の部分を確かめ合うように呼応する不思議な信号や、電波のようにも聴こえた。

 時間が深まっていくなか、eastee(eastaoudio+TASTEE)が本領を発揮しだしたと感じたのはBROKEN HAZEのプレイだった。重低音が何回も何回も、ボディブローをいれてくるように体に刺さりまくる。激しいビートとベースで、まるでボクシングの試合でボコボコにされ、痛いどころか逆に気持ちよくなってしまう感覚だ。パンチドランカー状態になってしまった体を休めに、バー・スペースへ行きDUUSRAA Loungeの音が流れる中、友人と談笑したりした。

 上の階では、ZEN-LA-ROCKPUNPEE、そしてファンキーなダンサーたちによってオーディエンスが熱狂の渦と化していた。音の振動によってトラックの音が飛ぶトラブルもなんのその。
「皆さん、低音感じてますか? Macも感じすぎちゃって、ついつい音が飛んじゃいました。低音はついに800メガヘルツに到達! Everybody say BASS!!」とトラブルすらエンターテイメントへと変換させる話術は、お見事の一言では片づけられないほど素晴らしく、ごまかしや隠すことの一切ない、正に全裸ライヴだと実感した。ZEN-LA-ROCKは独自にこのフェスティヴァルをレポートしているので併せて見てほしい。



 楽しいライヴを満喫した後は、D.J. FULLTONOを見にグラス・ルームへと移動する。個人的にエレクトロやシカゴ・ハウス、ゲットーベース等を2枚使いでジャグリングをガンガンやっていた頃を知っているだけに、いま、日本のJUKE/JIT第一人者として〈Outlook Festival Japan〉に出演していることが不思議であり、同じ大阪人として嬉しくもあった。彼がプレイしている時間のフロアは、このフェスのなかでもっとも独特な空気を放っていただろう。矢継ぎ早に、時にはトリッキーに繰り広げられるJUKEトラック、"FootWurk"という超高速ステップ、難しいことは言わず自然体な言葉でフロアを煽るMC、仲間たちお揃いのBOOTY TUNE(FULLTONO主宰レーベル)のTシャツ、ブースに群がるクラウド、汗だくになりながらも、次々とフットワークを踊り、DJブース前のフットワークサークルを絶やそうとしないダンサーたち、出演者、観客、スタッフ、なんて枠組みは取り払われたかのように、そこにいる皆で夢中になってフロアを創った時間だった。その素晴らしさは、FULLTONOが最後の曲をかけてすぐさまフロアに飛び出し、さっきまでDJをしていた男がいきなり高速フットワークを踊りだした時に確認できた。僕にはその姿が輝いて見えた。

 メインフロアに戻ると、Part2Style Soundがいままで録りためたキラーなダブ・プレートを惜しげもなくバンバン投下しフロアをロックし続けていた。そのスペシャル・チューンの連発にフロアのヴォルテージが高まりすぎて、次の日に出演予定のチャーリー・Pが我慢できずにマイクを取ったほどの盛り上がりだ。そしてその興奮のバトンとマイクは、DADDY FREDDY(ダディ・フレディ)へと渡された。高速で言葉をたたみかけるダディ・フレディのライヴは圧巻であった。何回も執拗にライターに火を灯せ! とオーディエンスに求め、フロアは上がりに上がった。早口世界チャンピオンは上げに上げた後、だだをこねるように「もう行っちゃうぞ?」とフロアに問う。フロアは声に応え、ダディ・フレディを放そうとはしない。チャンピオンはノリノリでネクスト・チューンをうたい終えた後、またフロアに問う。「おれはもういくぞ!?」と。もちろん皆は声に応える。するとチャンピオンはノリノリで「ワンモアチューン!」と、まだまだ歌い足りなさそうだが、やはりチャンピオン。どのアクトよりも怒涛の勢いを見せつけた、素晴らしいステージだった。

 チャンピオンの勢いに圧倒された後に続いて、特別な時間がやってきた。
 DJ、セレクタのセンスと腕が問われる真剣勝負、サウンド・クラッシュ。今回、かなり楽しみにしていたイベントだ。NISI-Pの司会によってルール説明が行われ、場内は緊張感に溢れた。今回のルールとして、はじめにくじ引きで第1ラウンド出場者である3組の順番を決め、1ラウンド目はダブ・プレートではない曲で3曲ずつかけ、次ラウンドの順番が決まる。第2ラウンドが「Dub Fi Dub」(ダブプレートを1曲ずつかける)の流れだ。第2ラウンドで決勝進出の2組が決まり、ファイナルラウンドで一対一の対決となる。
 第1ラウンドの一番手はHABANERO POSSE(ハバネロ・ポッセ)だ。普段からイーストオーディオ・サウンドシステムの音を研究しているだけあって、音の鳴りはピカイチだった。ガンヘッドのDJにFYS a.k.a. BINGOのMCの勢いもハンパなく、スピーカーとオーディエンスを存分に震わせた。続いて、JUNGLE ROCKがプレイするジャングルはレゲエのサウンドマンの登場を物語る。サウンドクラッシュはレゲエから発生した文化だ、と言わんばかりにフロアに問いただす。最後に登場したDEXPISTOLSは、なんとレゲエ・ネタで応戦し、エレクトロの先駆者が異文化であるクラッシュへの参戦表明を見せつけたことで、このサウンドクラッシュがいままでのどのサウンドクラッシュとも違う、斬新なものであるかがわかっただろう。今回のサウンドクラッシュの見どころとして、ヒップホップやエレクトロの文化やレゲエの文化などが、カードの組み合わせによって異種格闘技戦となっていることも、おもしろい試みだ。
 肩慣らしともいえる第1ラウンドを終え、いよいよ本番、ガチンコ対決となる第2ラウンドへと続く。トップバッターはDEXPISTOLSだ。第1ラウンドのときとは、やはり気合いの入り方が違い、ダブプレートには自身たちの曲にも参加している、ZeebraJON-Eがエレクトロのビート上で声をあげ、DEXPISTOLSがDEXPISTOLSであることをオーディエンスに見せつけた。
 続くはHABANERO POSSE。ムーンバートン・ビートにのるラップの声の持ち主に耳を疑った。なんと、Zeebraのダブ・プレートである。まずは「ベース好きなヤツは手を叩け!」と、"公開処刑"、そしてビートがエレクトロへと急激にピッチが上がり、DEXPISTOLS自身がZeebraをフィーチャーした"FIRE"のダブへと展開し、DEXPISTOLSへ向けたレクイエムを送る。逆回転のスピンの音が少し短くて、思ったことがあった。「あれはもしかして、レコードかもしれない......。」その盤はアセテート盤と呼ばれる、アナログレコードをわざわざカットして鳴らされたものであるのも、block.fmで放送された後日談にて確認できた。HABANERO POSSEは、ぬかりのない綿密な作戦と、業が成せる完璧な仕事を僕らに見せつけたのだ。
 ラストのジャングル・ロックは、アーメンブレイクと呼ばれるジャングル・ビートに、猛りまくったMCで問う。「さっきも、V.I.Pクルーがかかってたけど、V.I.Pクルーって言ったらこの人だろ!?」と、BOY-KENがうたう様々なクラッシュ・チューンでレゲエの底力を見せつけた。
 ファイナルラウンドに駒を進めたのは、HABANERO POSSEとJUNGLE ROCKの2組だ。本気の真剣勝負の結果である。誰もそこに異論を唱える者はいなかったと思うし、オーディエンスの反応にも間違いなく現れていた。戦うセンスと実力だけがものをいう、音と音のぶつかり合い。それがサウンドクラッシュという音楽の対話だ。
 ファイナルラウンド、先行はJUNGLE ROCKだ。「おれがこのダブとるのに、いくら使ったと思ってんだよ!」と意気込みを叫び、ダブを投下した。鎮座ドープネスリップ・スライムからはPESとRYO-Zという、豪華なメンツにフロアは沸きに沸いた。そして後攻にHABANERO POSSE。なんとその場のゲストMCにSEX山口を迎え、マイクでフロアに物申す。「おれらの敵はJUNGLE ROCKでも、DEXPISTOLSでもない。本当の敵は、風営法だ!」なんと、YOU THE ROCKがラップする"Hoo! Ei! Ho!"のダブだった。



 優勝は満場一致で、HABANERO POSSEが受賞した。展開の読み、選曲、音像、すべてにおいて郡を抜く存在だった。本当に、普段から音の鳴りを研究した努力の賜物だったと思うし、あの時間にあのダブ・プレートを聴いた時の、ドラマのような展開に感動した。近年、風営法を利用した警察が、文化を発信している場所となるクラブを摘発していることへの、強烈なアンチテーゼを意味するメッセージでもあった。クラバーたちの真の戦いとなる風営法を、サウンドクラッシュという戦のなかで伝え、勝利という名の栄光を掴んだ、真のチャンピオン誕生の瞬間だった。

 この頃には酔いもできあがってしまって、BUNBUN the MCのライヴではPart2Styleのメンバー、DJ 1TA-RAWがカット(バックDJ)をやっているにも関わらず、大阪のオジキの大舞台を応援したい気持ちで僕もDJブースにノリこんでカットをやるが、酔った手がCDJの盤面に当たってしまい、ズレなくてもいいリズムがズレてしまって、「WHEEL UP!Selecta!」とすぐにお声がかかり、ネクストチューンへ。大変、お邪魔いたしました。。もちろん、ライヴはいつにも増して、大盛況であった。酔いも深まる中、タカラダミチノブのジャーゲジョージをフィーチャーしたDJにシビれ、朝を迎えた。

[[SplitPage]]

 2日目はひどい2日酔いのなか、昨日が夢のような1日だったため、目が覚めてもまどろみ状態がなかなか覚めなかった。そんな状態で、酒を飲む気分になれなかったので、この日はレッド・ブルだけを飲んで過ごした。
 会場に到着して、ブランチに虎子食堂のごはんを食べようと、真っ先にフードブースへ足が進む。フェジョアーダという黒豆ごはんを注文し、知人と一緒に「初めて食べる味ですねー」なんて話しながら、美味しくいただく。ふと、ブースの方へ向くと、Soi Productions(ソイ・プロダクションズ)がスタートダッシュのドラムンベースをブンブン鳴らしていた。会場の音も、昨日よりも開始直後からよく鳴っている印象だった。考えたら昼の2時だ。鳴らせる時間には鳴らさないと、サウンドシステムがもったいない。目もスッキリ覚めるほどのベースを浴びて、2日目がはじまったことを改めて確認した。

 バー・スペースではDJ DONがクンビアを気持ちよくかけている。今日はどうやって過ごそうかな? とタイムテーブルを見ながら周りを見渡す。ここは〈DUB STORE RECORDS〉や〈DISC SHOP ZERO〉がレコードを販売しているフロアでもある。ふと見ると、E-JIMA氏がレコードをクリーニングするサービスなんてのもあって、もしレコードをもってきてたら、超重低音でプレイする前にキレイにしたくなるだろうな、と思ったりした。

 入り口付近のグラス・ルームではKAN TAKAHIKOがダブステップのベースの鳴りをしっかりとたしかめるように、自作曲も交えながらプレイしていたり、2階へ行くと、DJ YOGURTがスモーキーで渋いラガ・ジャングルをかけていて、最高音響で聴くアーメン・ブレイクは体にスッと馴染みやすく刺さってくることを確認したり、NOOLIO氏との久々の再会がグローカル・アリーナで太陽を浴びながら聴くグローカルなハウスだったり、ホワイト・アリーナに戻っては、G.RINAの生で聴く初めてのDJにテンションが上がってしまい、BUNBUN氏とふたりしてかっこええわ~なんて言いながら楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 グラス・ルームでワイワイと楽しそうにやってたNEO TOKYO BASSの姿は、誤解を招くのも承知で書くと、やんちゃな子どもたちが はしゃいでいるようにも見えて、その楽しそうな姿に、ついついこっちまで指がガンショットの形になってしまった。クボタタケシのクンビア・ムーンバートンを交えたセットも素晴らしかった。この時にかかっていたKAN TAKAHIKOの"TOUR OF JAMAICA"のエディットはこのパーティ中に最も聴いたチューンのひとつだ。

 Tribal Connection(トライバル・コネクション)の1曲目は、ジャングル・ロックの昨日の決勝戦のチューンだった。昨日のバトルの雰囲気とはうってかわって、パーティ・チューンに聴こえたのもセレクター、DJとしてかける意味がかわって聴こえたりもして、趣が深かった。悔しそうに、そして楽しそうに。深いジャングルの時間だった。続くJxJxはグラス・ルームをファンキーに彩るムーンバートンで、大都会の夕暮れの時間を鮮やかに彩った。

 そうこうしている内にはじまったPart2Style Soundが、確実にメインフロアを唸らす。興奮もピークに近づいてきたところで、やってきたのはCharlie P(チャーリー・P)だ。まだ若いらしいが、堂々としたステージはベテランのようで、スムーシーに唄うその声は、ときに激しく、ときにまとわりつくように耳から脳へとスルリと入ってくる。続いて登場したSolo Banton(ソロ・バントン)は先日、大阪で見た時よりもキレがあり、"Kung Fu Master"や"MUSIC ADDICT"など、堂々としたステージングでオーディエンスをグイグイ引き寄せる。そして時には、ソロとチャーリーが交互に歌ったり、お互いの声質が異なることによるスペシャルなブレンド・ライヴを展開した。かなりマイクを回しあっただろう。時間が終盤に近づくにつれ、グルグルと回るマイクをもっと回せと口火をきったのはRUMIだ。"Breath for SPEAKER"の「揺らせ! スピーカー!」のフレーズで、正にスピーカーとフロアを存分に揺らした。すかさずソロがたたみかけるようにうたう、すると今度はなんと、CHUCK MORIS(チャック・モリス)が出てきては「まんまんなかなか、まんまんなかなか、ド真ん中!」と、すごい勢いで登場し、「たまりにたまった うさばらし! Outlookでおお騒ぎ!」と、けしかけては、「ハイ! 次! ソロー!」とソロ・バントンにマイクを煽る。ソロがすかさず歌い返すも、Pull UP! ちょっと待ったと、いきなり現れた二人のMCに たまったもんじゃないソロはなんと、ダディ・フレディの名を呼んだ。「ジーザス、クライスト!」とダディフレディが一言、そこからのトースティングは即座にフロアを頂点へとのし上げた!!! ダディ・フレディは会場に集まった皆と、Part2Styleに感謝を述べ、よし、マイクリレーしよう!と閃き、なんとスペシャルなことか、ダディ・フレディとソロ・バントンとチャーリー・P、3人の怒涛のマイクリレーがはじまった。これにはフロアもガンショットの嵐!! 最高のスペシャルプレゼントステージだった。Nisi-pが「もう一度、3人に大きな拍手を!!」と叫ぶと、会場は拍手大喝采に見舞われた。



 SKYFISHがクンタ・キンテのフレーズを流したのはその直後だ。ラスコの"Jahova"にチャック・モリスが歌う、"BASS LINE ADDICT"。続くRUMIのアンサーソング"BAD BWOY ADDICT"と、さすが、UK勢にも引けをとらないふたりのコンビネーションがフロアをぶちかました。今回のフェスで誰が一番のアクトだったかなんてことは、到底決められないけども、個人的にBASSを浴びる、いや、BASSをくらったのはNEO TOKYO BASSのときだ。腹にかなり直撃で受けてしまい、なんというかお腹のなかで内臓が揺れているのだ。いや、いま思い返せばそれが本当だったかはわからない。しかし、記憶していることは、体のなかが、なかごと、ようするに全身震えていたのだ。音が凶器にも感じた瞬間だった。ずっとフロアで聴いていたから低音には慣れているはずなのに、NEO TOKYO BASSがエグる、BASSの塊に完全にKOされてしまった。
 メインフロアを出た後、グラス・ルームでは、KEN2D-SPECIALが"EL CONDOR PASA"を演奏していた。どうやらラスト・チューンだったらしく、もっと見たかったが、そこで久しぶりの友だちと会い、話をしながらINSIDEMAN aka Qのかけるディープなトラックに癒された。少し外で休憩した後はクタクタだったのもあり、グローカル・エリアの帽子屋チロリンにて少し談笑したりした。すぐ隣にあるグローカル・エリアで見た1TA-RAWから大石始への流れはトロピカル・ベース~ムーンバートン~クンビア~民謡と、自然に流れるダイナミクスへと昇華され、僕が見たグローカル・エリアでは一番のパーティ・ショットだった。そして最後に見たのは、OBRIGARRD(オブリガード)だ。ハウスのビートから徐々にブレイクビーツ、クンビアへとビートダウンしてく"Largebeats"~"Ground Cumbia"の流れは素晴らしく、個人的にエンディング・テーマを聴いているような、寂しく、狂おしい瞬間だった。

 僕の〈Outlook Festival 2012 Japan〉Launch Partyは、こうして幕を閉じた。
 いまになって思い返してみても、なんて素晴らしく、楽しい体験だったのだ。体験したすべての人たちが、それぞれの形で、記憶に残る2日間になったと思う。そして日本のベース・ミュージックにとっても、キーポイントとなるような歴史的な2日間だったのではないか。
 出演していた あるアーティストに「今回出演できて、本当に良かった。もし、出演できていなかったら、自分がいままでベース・ミュージックを頑張ってきたことはなんだったんだろう? と、思っていたかもしれない」という話を聞いた。もちろん、自分も「出たいか?」と問われたら、即答で「出たい」と答えるだろう。それほどまでに、魅力溢れるパーティだ。個人的に思う〈Outlook Festival 2012 Japan Launch Party〉が残した大きな功績は、アーティストやDJたちが「次も出演したい」と、または「次は必ず出演したい」と、いわば、「目標」を主宰たちが知らず知らずのうちに創ったことだろう。その目標を叶えるためにも、来年、再来年と、また日本で〈Outlook Festival〉が開催されることを、切実に願っている。

 Part2Styleとイーストオーディオ・サウンドシステム、会えた方々、関係者の方々、そして体験する機会を与えてくれた「ele-king」の松村正人さんとモブさんに最大級の感謝をここに記します。

追記
 そしてこの夏、Part2Style Soundが2011年に引き続き、本場はクロアチアで開催される〈Outlook Festival 2012〉に出演する。本場のベース・ミュージック フェスティヴァアルに2年連続で出演し、何万人といった海外のオーディエンスを熱狂させることを思うと、同じ日本人としてとても誇らしい気分にさせてくれる。
 きっと彼らはまた素晴らしい音楽体験を得た後、その景色を少しでも日本へと、形を変えて伝えようとしてくれるだろう。
 進化し続ける「ベース・ミュージック」。未来のベース・ミュージックはどんな音が鳴っているのだろうか。
 僕はその進化し続ける音楽を体感して追っていきたい。

vol.1 NHK大河ドラマ『平清盛』 - ele-king

■はじめに 『平清盛』でゆく修行の旅

 わたしは普段、ドラマをあまり観ない。というのも、3次元(実写)の人間を認識する能力が根っから低いので、キャスト(≒登場人物)を見わけるのが不得意だからだ。似た系統の顔の俳優・女優を間違えるなどしょっちゅうだし、中年の刑事が崖っぷちで犯人を追いつめていたら、まあ船越英一郎氏だろうと断定してしまう。「たくさんドラマを見て、キャストの芸歴、演技力もわかったうえで語っていますよ」という説得力に欠けるのは、申し訳ない。歴史ものが好きなので、唯一、NHK大河ドラマだけはこの10年ほど、それなりに観てきたのだが、キャストをちゃんと把握できていたかはあやしい。
 さて、今年の大河ドラマはご存じ『平清盛』。清盛の義父役の中井貴一氏を、わりと長いあいだ舘ひろし氏だと思い込んでいたなどの個人的トラブルはあったものの、主役の松山ケンイチ氏がわたしにとってかなり見わけやすい顔なので、なかなかいいすべり出しだった。さらに、第14話あたりからは山本耕史氏演じる美しき藤原頼長が、史実を地で行く男色無双ぶりを見せてくれたことに狂喜した。興奮のあまり、崇徳上皇も顔負けの床ローリング(横転)をしそうになったが、家族に叱られるのでこらえた。

 しかしこのドラマ、巷ではしばしば「わかりにくい」といわれる。なるほど、わたしもときどき、「おいィ?」と思うことがある。これは決して「そうきたか!」「なるほど!」という瞬間ではなく、「えっなにこれ」という偽らざる「違和感」である。しかし違和感もたび重なると、逆に気になって目が離せなくなるもので、ついがんばって観てしまうわけだが、そうするとこれはいわゆるB級というやつとも、どうやらちょっと違う。よくよくみていくと、筋が通っているのだ。そしていつしか、「違和感がある(ように見える)物語を、むしろおもしろいものとして読み解く文法」が自分のなかに形成されていたのだった。どこか宗教とか洗脳じみた出だしで申し訳ないが、事実だから仕方ない。こうして他人に説明しだすぐらいだから、わたしもようやく「清盛文法」初級ていどの腕前だろうか。
 こうした境地に至るまでには、あるていど根気強く視聴することが必要なので、『平清盛』はあまり初心者向けのドラマではないかもしれない。しかしドラマに限らず、未知のコンテンツを、違和感や雑音として切り捨てるのではなく、意味のある音色として楽しめるようなリテラシーを得るまでには、おおむねどんなジャンルでも、そういう修行が必要なのだろう。その点、『ele-king』を読むような方々は、ディープな洋楽を好んで摂取する日常との噂だから、難解なものほど萌える、燃えるといった剛の者ぞろいであろう。そんな人々にこそ、『平清盛』をお薦めしてみたいのである。いまなら、まだまだ先が長いので、どんなびっくりどっきり映像が飛び出すか、毎週わくわくしながら待てる、というお得感もある。
 ちなみに、ニコニコ動画の生放送番組「オタク女子文化研究所」(2012月6月号)で『平清盛』を扱ったさい、わたしは、頼まれてもいないのに、第25話までのあらすじの紙芝居を自作した。この場を借りて、紙芝居をアップさせていただくくことになったので、『平清盛』をまったく未見という方は、参考にしてほしい。あわせて生放送番組のほうも、本郷和人氏(『平清盛』時代考証、東京大学史料編纂所教授)もご出演、という超豪華版なので、いまからでもタイムシフト視聴していただけると幸いである。

紙芝居は後日アップ予定です! お楽しみに!!
紙芝居をアップしました!

ニコニコ生放送
オタク女子文化研究所「いまから『平清盛』」
~「オタ女」的大河ドラマの愉しみ方~


■清盛文法その壱 反復・変奏されるキーワード

 ではいよいよ本題だが、『平清盛』の違和感の正体とは何か? それらの違和を腑に落ちさせ、むしろ味わい深くさせる「清盛文法」とはどういった技か? かなり凝ったドラマなので、これに対する回答はいくつも考えつくのだが、本稿ではふたつだけ挙げることにしよう。
 ひとつには、同じ台詞(キーワード)が、別の人物により、別の場面で繰り返し用いられることだ。このキーワードも1個だけではないからややこしいのだが、その中でも、「我が子」という言葉に注目して説明しよう。ドラマの中では、父親が息子に呼びかけるとき、ここぞという時に限って固有名詞でなく、「我が子よ」という感じになるわけだが、これがまあ、なかなかの違和感である。わたしも最初は、深く考えず流し見していたものだから、「普通に名前で呼べよ」と思ったものだ。
 しかし実は「我が子」という同じ言葉を、いろんな登場人物が使うことがミソ。そのつど普通に名前で呼んでいたら、人物Aが人物Bに呼びかける場面、という印象になって、「父が自分の息子に呼びかけている場面」であるという共通点が伝わりにくい。だから、ここぞという場面では「我が子」という、違和感のある言葉をあえて使う。そうすれば「父・息子のテーマ」が視聴者の心に引っかかって浮かび上がってくる。そういう仕掛けになっている。このように、「我が子」がキーになっていることが読み解けると、息子から父への言葉である「父上」もまた、特別な言葉として際立ってくる。視聴者の方が、ほかにも違和感のある台詞を見つけたら、脚本にケチをつける前に、まずはこういう仕掛けになっているのではないかと疑ったほうがいい。
 このドラマ内の設定では、平清盛は平氏一門の子ではなく、白河法皇の子ということになっており、この因縁を原動力として物語が始まる。主人公に限らず、「父・息子関係」はこのドラマにとって根幹的な主題であり、白河法皇と平清盛、平忠盛と平清盛、鳥羽法皇と崇徳上皇、源為義と源義朝、藤原忠実と藤原頼長、平清盛と息子たち......といった様々な父・息子関係に変奏されていく。いうなれば、「父・息子」という基調的フレーズを、さまざまな二者がそれぞれの音色で奏でていくという、長編の楽曲のようなつくりになっているのだ。

 ところで、このドラマが「わかりにくい」といわれる原因のひとつは、あきらかに登場人物が多いせいだと思う。これは歴史ものの宿命とも言えるが、世間的に知名度が低めの時代であるうえ、上皇や法皇が何人いるんだよ! とか、名前に「盛」のついたやつ多すぎだろ!(いわゆる「盛盛」問題)といった要素も加味され、わかりにくさが倍増している。正直にいえば、わたしもいまだに苦労させられている。登場人物が多い・名前が似ている、という2要素に加え、さらにわたしの場合は、キャストを見分けにくいという三重苦であるから、自慢ではないが、並み以上の苦労を強いられていると思う。
 しかし、このうじゃうじゃ出てくる登場人物、「父・息子関係」という軸で見ただけで、かなり整理され、ドラマの見通しが良くなる。「父・息子関係」とひと口に言うが、似たような関係が繰り返されるのではなく、このドラマの中ではいくつかの音色に描き分けられているのだ。
 最初に奏でられるのは、父が冷酷無比なモンスターとして君臨し、無力な息子はその因縁からいかに逃走するか、はたまた絡めとられて自らもモンスターと化すかという、ホラー的な二者関係だ(白河法皇と平清盛、白河法皇と崇徳上皇、鳥羽上皇と崇徳上皇)。『平清盛』には内容面にも数々の斬新なポイントがあるが、理想化されがちな父・息子関係を、このような恐ろしい関係として描いてしまうところが、まず新しい。続いては、衝突を繰り返しつつも、最終的に父の志を息子が継承するという、エディプス的ロマンチシズムあふれる二者関係(平忠盛と平清盛、源為義と源義朝)。さらに、父がごく穏当に息子へと権力の継承を図るが、紆余曲折の末、息子が先に倒れるという、悲劇的な二者関係(藤原忠実と藤原頼長、崇徳上皇と重仁親王)。さながら「父・息子関係カタログ」とでも呼びたいような、いくつもの関係が丹念に描かれ、それぞれのクライマックスで、「我が子」(または「父上」)が飛び出す。その言葉が、相手に届く場合もあれば、届かない場合もあるというのが、また心憎い。

 そうなのだ。父・息子関係にまつわる「我が子」という言葉に着目していくと、このドラマでは、その言葉が相手に「届く」よりも「届かない」場面のほうが多いことに気づかされる。父と息子のあいだで、言葉など、届けようとすればいつでも届くものだという素朴な信頼関係が、ここでは断たれている。たとえば、藤原忠実と藤原頼長である。未見の方は絶対にオンデマンドなどで見てほしいのだが、第22話で、頼長の父への呼びかけが、直接は届かず、鸚鵡の口真似を介して伝えられる、というくだりは切なさ炸裂だ。また頼長の死後に発せられる、父の「我が子よー!」という絶叫も、息子にはもう届かない。
 『平清盛』の根っこにあるテーマは、主題歌にも見られるとおり、「人生は賽の目(博打)のようなものである」ということであろう。博打だから努力しても無駄だ、あるいは、博打だからこそ楽しく遊ぼう、どちらともとれる両義的なテーマだ。そして父・息子の関係性は、まさしく人生最大の博打のひとつであろう。第6話の、息子をめぐって博打が行われる場面もまさに象徴的だった。生まれるも博打、育てるも博打、相手に言葉が届くか届かないかも博打。ここで「我が子」(および「父上」)というキーワードが、もうひとつのキーワード「博打」とリンクする。「博打」はさらに、「面白う」というキーワードにつながっていく。受験書ならばこのあたりは赤マーカーで目立たせてほしいところだ。
 数々のキーワードの連関によって織りなされる、多様な人間関係。たびたび違和感があったり、断片的な描写に見えたりする場面も、こうして見てくると、実は筋が通っている。それがわかれば、「えっなにこれ」という当惑が、「そうきたか!」という快感の瞬間に変わるまで、あと一歩だ。

(「そうきたか!」の快感へのカギは、「清盛空間」の発生にある......らしいぞ! 疾風怒濤の後編へつづく!!)

金田淳子謹製!
紙芝居『平清盛』(第25話まで)※紙芝居の番号と放送回は一致していません

これで大学に受かった! 彼女ができた! という喜びの声もたくさん寄せられておりますので、最後までお楽しみください。
さて、ご存知、松山ケンイチさん演じる平清盛という人物は、武士として力をつけてきていた一門、平氏の子として生を受けました。ところが......


1.明かされた真実
じつは清盛は、ときの最高権力者・白河法皇の落とし胤であったのです。少年期にそれを知った清盛は、実の父・白河法皇、育ての父・平忠盛とのあいだで心が千々に乱れるのでした。


2.名状しがたき王家
清盛の実の父であり、ときの権力者でもある白河法皇とはどのような人物だったのでしょうか。白河法皇は、院政という新しい政治のしくみを開始して権力を掌握し、人びとから「もののけ」とおそれられる存在でした。あと、伊東家としてもおそれられておりました。白河法皇の孫にあたる鳥羽上皇には璋子(たまこ/檀れい)という女御がおり、ふたりのあいだに生まれたとされているのが崇徳上皇でございます。しかし、鳥羽上皇の子でなく白河法皇と檀れいとの間の子でありました。つまり世にいうNTRでございます。そう、奇しくも鳥羽、崇徳、清盛は白河法皇というひとりのおそろしき男の血を引いているというさだめを背負っていたのでございます。


3.強敵(とも)との出会い
複雑すぎる家庭環境に耐えかね、盗んだバイクで走り出さんとする清盛でしたが、そんな清盛を叱咤し励ましたのはこのイケメン、玉木宏さん。平氏とならぶ一門、源氏の若武者・源義朝でありました。義朝との勝負を経てふたりはたがいに「強敵」と書いて「とも」、ズッ強敵(ずっとも)として認めあうのでした。


4.そのころの親父ーズ
そのころ清盛の父・忠盛、義朝の父・為義、それぞれに平氏と源氏の棟梁であるこのふたりもまた、たがいによきライバルとして認めあっておりました。父親たちもズッ強敵(ずっとも)だったのでございます。


5.女の戦い(一方的)
さて宮中では、もののけこと白河法皇が亡くなり、鳥羽法皇の世となっておりました。ときに1129年、年号の覚え方は「いい肉三上鳥羽院政」でございます。鳥羽法皇は、金麦で待っている妖しき美女(待賢門院)璋子のことを、NTRと知り憎みつつも愛さずにはおられず、名目上の息子である崇徳上皇を疎み、おめーの席ねーから、と遠ざけておりました。そんな鳥羽法皇に入内した得子(なりこ)は、璋子に激しいライバル心を燃やし、鳥羽法皇の寝所を夜な夜な訪れ、交尾をせまるのでございました。


6.悪左府登場
さて宮中でうごめいていたのは王家だけではございません。貴族、とりわけ藤原氏の力は一時期ほどではないものの、まだまだ強大なものでした。トップ・オブ・貴族、藤原氏のさらにトップとして華麗に花ひらいたのが藤原頼長さまでございます。ときに、その厳格さでのちに「風紀委員キャラ」「悪左府」とも呼ばれ、おそれられる頼長さまは、さっそく清盛のフリーダムな生き様に目をつけ、追い落とそうと謀ります。しかしエスパータイプ貴族・信西によって阻まれるのでございました。


7.矢鳥羽事件
折から祇園闘乱事件にはじまる一連の騒乱、のちの世に矢鳥羽事件と呼ばれるスペクタクルが世を揺るがします。王家そのものの象徴ともいえる神輿(しんよ)に、清盛が矢を放ち、清盛はその罪により警察に拘留され、沙汰を待っておりました。頼長さまは厳しき処罰を求めましたが、ときの権力者・鳥羽法皇は、みずから清盛のもとを訪れ、清盛のエア弓矢をその身に受けることにより、白河法皇というもののけの血が洗い流されたと、その幻想がぶち殺された(そげぶ)と、激しく感じ入り、落涙するのでした。


8.平家BOY
無罪放免となった清盛に対し、わたしたちのアイドル藤原頼長さまは、はげしい敵意を抱くのでございました。折から清盛の弟・家盛は、母を想うあまり血のつながらぬ兄・清盛に反感を抱いておりました。その不満と、いい身体に目をつけた藤原頼長さまは、「こ↑こ↓」と屋敷に家盛を招き入れ、そなたもアイスティーを飲むがよい、まこと世にきらめくべきはそなたじゃ、そうおもいしらせてやろう、と口説き落としたのでした。


9.しんでしまうとはなさけない
家盛勃起、もとい、家盛決起により、平家一門は分裂の危機を迎えます。しかしながらなぜかここで藤原頼長さまは、おちゃめにも、思ってることを口に出してしまい、利用されただけだと知った家盛は病に倒れ、はかなくなったのでした。


10.雨降って地固まる
弟・家盛の病死、父・忠盛の死に揺れる清盛。さらに前の妻を愛するがあまり今の妻に心なき言葉を投げかけてしまった清。悩みぬいた清盛は、宮中の歌会にてお題を無視し、家族の大切さを堂々と歌いあげるのでした。


11.ローリング崇徳
清盛がスッキリしていたころ、影の薄い時の天皇・近衛帝が病に伏せ、次の天皇は決まっておりませんでした。いよいよ鳥羽法皇を押しのけ、崇徳上皇のターンがはじまるのではないかと大いに揺れる王家、世にいうローリング崇徳でございました。ここにいたり鳥羽法皇は、崇徳上皇へのこれまでの冷たき仕打ちを深く反省し、謝罪をいたしますが、つらいいじめを受けてきた崇徳上皇の心の氷は溶けることがなかったのでございます。そのころ、崇徳上皇の弟にあたる雅仁親王は俺関係ねーしとばかりに遊興に明け暮れ、人気アイドル歌手・松田聖子から今様を習っていたのでございました。


12.番狂わせ
仁平3年、帝位とは無縁と思われていた雅仁親王・29才無職が新天皇に即位いたしました。後白河天皇の誕生でございます。その裏には政界のフィクサー・信西のおそろしきたくらみがございました。俺のターンがまたしても飛ばされた崇徳上皇のお嘆きは尋常でなく、そのお姿には清盛も、テラカワイソスと大いに同情するのでございました。折からわたくしたちの頼長さまは実の兄によって謀りごとにかけられ、失脚の憂き目にありました。崇徳上皇と藤原頼長さま、美しすぎるふたりが手を結んだのはこのときでありました。


13.いい頃(1156)だから保元の乱
1156年、ここに内戦が勃発いたします。王家、源氏、平氏のそれぞれが真っ二つに別れて切り結んだのでございます。頼長さまは王家の戦いにふさわしくないと『孫子』を引用して夜討ち案を退けましたが、信西は『孫子』の同じ文章を引用し、夜討ちを進言するのでございました。こうして後白河方の夜討ちにはじまったこの戦は、なんか狭い路地で馬を降りての一騎討ちなど、謎の展開も見せつつ、後白河方の勝利に終わったのでした。


14.悲しいけど、これ・・・
戦に破れた崇徳上皇はついに出家を決意、なにひとつ思いどおりにならぬ人生を嘆くのでございました。わたしたちの頼長さまは首に矢を受けてしまい、父のもとを頼りますが、藤原一門を守ろうとする父はこれを拒絶。頼長さまは悲しみのあまり舌を噛んで亡くなられたのでございます。崇徳上皇方についていた平忠正・源為義は、それぞれ一族のためと、いい笑顔で「斬れ」と命じ、あっぱれな最期でございました。


15.クーデター前後←今ここ
保元の乱でひとたびはおさまったかに見えたこの国でございますが、源義朝は、昇進を重ねる平氏に対し、源氏は冷遇されているのではないかと不満を募らせるのでございました。折から後白河天皇から御あさましきほどのご寵愛を受ける藤原信頼は、政治を司る信西を疎ましく思い、信西の首を取れと義朝にせまるのでした。信西もまた「遣唐使を数年のうちに出せる」などという死亡フラグを立てていたのでございます。

ズッ強敵(ずっとも)であった源義朝と平清盛の戦いの行方は!?
後白河天皇はライアーゲームを勝ち残るのか!?
そして義朝の子・源頼朝は何を思うのか・・・
次回いよいよ平治の乱!
清盛の冒険、双六あそびはまだ始まったばかり!!

紙芝居の続きをアップしました!

 8月2日(木曜日)、〈ハウス・オブ・ヴァンズ〉にて、ワッシュド・アウト、チェアリフト、レモネード......というツボをついたラインアップがあった(https://www.brooklynvegan.com/archives/2012/08/washed_out_play_2.html)。
これに行こうかなと思っていた矢先に、〈カメオ・ギャラリー〉で、ジーノ・アンド・オークランダーがプレイすると聞いた。『エレキング』に載ってるローレル・ヘイローも出演するという。これは興味深いと「女性と電子音楽」がテーマのエレキング・ブック『vol.6』を持参した。その『vol.6』をジーノ・アンド・オークランダーのリズに渡すと、興味深そうに自分たちのインタヴューを読み(見て)、共演の日本人アーティストのナオ・キタフチに「なんて書いてあるの?」と質問攻めにする。 
 会場の〈カメオ・ギャラリー〉は、ラヴィンカップ・カフェの奥にあり、カフェと  会場を行ったり来たりできる。近くに、ラ・サラ(音楽会場)/カンティナ・ロイヤル(レストラン)もあるが、ショーを見にきた人も、食事しに来たお客さんもミックスで出演バンドたちがブースでハング・アウトしているのが見れる。

 ローレル・ヘイローは、ショーを通して「男前」な印象だった。長い髪を振り乱し、スニーカーに半パン 、Tシャツというラフな格好で、目の前にある機材をすらすら操る。ネオン色のライトが照らされ、ところどころでスニーカーのラインが蛍光ピンクに光り、妖艶な雰囲気をも醸し出していた。観客がステージ上の彼女ひとりをじーっと凝視している図は少しおかしな感じがしたが、みんな真剣に見入っていた。   
 それに比べてジーノ・アンド・オークランダーは、見せるライヴだった。インタヴューで「毎回ライヴは違う」とリズが言っていた通り、前回見たときと印象は違った。前回は、初めて見たので、すべてにおいて新しい感じだった。今回は基本の流れと、次に来る物が何となく想像できた。目新しさより、瞬間瞬間に音を作り上げていく、ふたりのやり取りが興味深かった。明確な合図はないのだが、ピンポイントで互いの音を受け止め、横に上に広げていくのは、長年築き上げたチームワークなのだろう。突然登場するリズのフランス語のヴォーカルも音に沿っていて、音楽というより見るアートピースであった。

Laurel Halo/Xeno & Oaklander@ Cameo 8/2/2012
photos by Daniel Catucci

 次の日金曜日は、「セレブレート・ブルックリン」という毎年夏にプロスペクト・パークで開かれるイヴェントにワイルド・フラッグ、ミッション・オブ・バーマ、テッド・レオを見に行った。会場には簡易シートがあり、その後ろや横の芝生にもシートを引いて、のびのびしている人たちがいる。
 今回のショーはフリー(任意で$3の寄付)で、野外だというのに、サウンドも悪くなく、電飾も凝り、プロフェッショナルなカメラが数箇所で動き、後ろからでも、スクリーンで見ることができた。オーディエンスの層がウィリアムスバーグと違って、マナーのある大人で、オールエイジだからか、子供も多かったし、隣に座ったお姉さんもとても爽やかに席を譲ってくれた。

 ミッション・オブ・バーマは、経歴が長いだけあり(80年代から活動している)、演奏がタイトで安心して見れた。オーディエンスも年配なのだろう、みんな椅子に大人しく座って見ていた。ワイルド・フラッグがはじまると、どこからともなく人が現れ、椅子のあいだを立っている人が占領した。係員が「スペースを開けて!」と注意していたが、すでにロックしはじめたオーディエンスは言うことを聞くはずがない。私の隣では、子供も踊っていた。

セレブレート・ブルックリン
Wild Flag at Prospect Park - photos by Amanda Hatfield@BrooklynVegan

 ワイルド・フラッグを見るのは3回目。出てきた瞬間から大きな声援で、彼女たちの人気が伺える。キャリーは黒のトップにタイト・パンツ。メアリーは赤のボーダートップに黒のタイトスカート、レベッカは白黒ボーダーシャツに黒スカート、ジャネットはフロントに光ものがついた黒のドレスと、すでにキャラ分けもできている。
 全員女の子で、ステージに華があるし、みんな歌える。コーラスにも熟練を感じる。日本でまだ人気が出ないのは、このど迫力のライヴを見ていないからだと思う。演奏している彼女たちからは目が離せないし、スーパー・バンドと呼ぶに相応しいオーラを放っていた。

Wild Flag @ Propect Park Band Shell 8/3/2012
photos by Amanda Hatfield@BrooklynVegan

 こういった野外ライヴは、プロスペクトパーク以外にも、ウィリアムスバーグパーク、マカレンパーク、サウスシーポート、ピア84などで毎日のようにやっている(今週のセレブレート・ブルックリンは、元ダムダム・ガールズ、ヴィヴィアン・ガールズなどのフランキー・ローズとリトル・ドラゴン)。ニューヨークでライヴを見たいなら夏はオススメの季節だ。フラッと遊びに行くといろんなミュージシャンにも出会えるし、現実逃避もできる。

 行け行け行け行け! の続報である。
 先日のニュース欄でとりあげたアニマル・コレクティヴの新曲"トゥデイズ・スーパーナチュラル"にダニー・ペレズの映像がついた模様。行け行け......にあおられて画面を疾走するのはインドネシアのバロンや日本の獅子舞などを思わせる獅子型スーパーナチュラルだ。小型のカートにあしらわれた獅子の頭が、長い布をひきずって砂地を爆走していく。色彩もあざやか、豪快なドライヴ感、やはり新作のメッセージは超エネルギッシュなものでありそうだ。
 ダニー・ペレズはアニコレの盟友とも呼べるヴィジュアル・アーティスト。ブラック・ダイスのローディーだったこともある彼は、グッゲンハイム美術館でのインスタレーションほか、サンダンス映画祭で上映されたヴィジュアル作品でもアニマル・コレクティヴとコラボレートしており、彼らの視覚的なイメージのいち側面をささえてきた重要人物である。パンダ・ベアとの作品のほか、さまざまなイヴェントでも活躍し、プリンス・ラマなどアニマル・コレクティヴ周辺人脈とはもちろん、最近のスケジュールではナイト・ジュエルやティーンガール・ファンタジーなどのDJセットにも登場しているようだ。
 ちなみにアニマル・コレクティヴのインタヴューは来月発売の紙ele-king vol.7に掲載されるぞっ。


商品情報:
アニマル・コレクティヴ / センティピード・ヘルツ

US(ドミノ)盤 2012.9.4 

日本(ホステス)盤 2012.8.29

Bob Marley - ele-king

 今週末から東京周辺をボブが駆けめぐる(地方の方は8月30日のdommueをチェック)。9月1日から公開されるボブ・マーリーのドキュメンタリー映画、実に2時間を超える大作『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』を記念してのボブ月間のはじまりである。ちなみに監督は、パレスチナ武装組織によるミュンヘン・オリンピック時の「黒い九月」事件を扱った映画『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』を撮ったグラスゴー出身のケヴィン・マクドナルド。ある意味では打って付けと言えよう。
 1981年5月、ガンのためにこの世を去ったボブ・マーリーは、アフリカ大陸をふくめると世界でもっとも聴かれている音楽家だと言われている。彼の反植民地主義を反映した力強いメッセージ・ソングから美しいラヴァーズ・ロックまで、日本全国には数多くのボブからの影響がいまも存在しているので、これを機にみんなで歌いましょう。おのおのの意味を込めて、せーの、「ウィ・ドン・ニィィィィ・ノー・モー・トラボー」

■8/19(日)
『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』公開記念PARTY
Bob Marley songs Day @海の家OASIS
"ボブを歌ってジャマイカに行こう!"
応募締切8/9。メールまたはオアシスカウンターで。
ボブ・マーリー・ソングス・デーは1994年、OASISではじまり、5月のONELOVE JAMAICAFESTIVALの主要企画としても親しまれ、引き継がれている人気イベント。予選通過した一般応募者が、オアシスバンドをバックにボブ・マーリーを歌い、優勝者にはジャマイカ行きのチケットが授与されます。
場所:海の家OASIS 神奈川県三浦郡葉山町森戸海岸
TEL :049-876-3812(期間中のみ)
時間:14:00〜18:00
料金:Music Charge ¥1.000
guiest:南條倖司 & CHAN MIKA
OASIS https://www.oasis-jahnodebeach.jp/

■8/30(木)
@「DOMMUNE」
著名人らが語るボブ・マーリーとLIVE
場所:DOMMUNE(渋谷区東4-6-5 サンライズビルB1F)
時間:19:00〜
進行:Ackky、DJ Hakka-K
GUEST:工藤Big"H"晴康、ランキンタクシー、ICHI-LOW(Caribbean Dandy)and more...
DOMMUNE https://www.dommune.com/

■8/31(金)
「BOB MARLEY/ ROOTS OF LEGEND release party」
"レゲエ"という一つの音楽ジャンルを世界に広めた伝説のカリスマ、ボブ・マーリー。彼の波乱に満ちた人生、その"素顔"を描いた映画『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』(ジャマイカ独立50周年記念作品 ボブ・マーリー財団初のオフィシャル・ドキュメンタリー)のリリース・パーティ。レゲエに限らず様々なジャンルからボブ・マーリーの生き様、メッセージに感銘を受けたアーティストが集い彼に因んだパフォーマンスを披露する。ONE LOVE !
場所:eleven(港区西麻布1-10-11 セソーラス西麻布B1/B2)
時間:22:00 open
料金:¥3,000
   ¥2,500 with flyer
   ¥1,000 early bird(〜23:30)
LIVE:Hiroshi Fujiwara +INO Hidefumi
   工藤Big"H"晴康
   NESTA BAND
   渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET/THE ZOOT16/猪苗代湖ズ) and more...
DJ:PART2STYLE SOUND(1TA-RAW/Ja-ge/TAKASHI-MEN)
  SLENGTENGS( 後藤トシユキ/長谷川ケンジ ) and more...
eleven https://go-to-eleven.com/

■9/1(土)
角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、吉祥寺バウスシアター他にて3週限定ロードショー開始!!!!

■9/8(土)
「BOB MARLEY SONG NIGHT」ーボブ・マーリーの歌をみんなで歌おう!ー
15周年を迎えた老舗レゲエ・クラブ"OPEN"のDJたちが、心を込めて選曲します。ボブはもちろん、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラー、リタ・マーリー、ジュディ・モワット......。他のアーティストによるカヴァー、すべて、かけます、かかります。リクエストもOKですよ。
場所:OPEN(新宿区新宿2-5-15-B1 TEL:03−3226−8855)
時間:21:00〜5:00
料金:¥1,000/1drink
出演:工藤Big"H"晴康、絵里奈、レゲリーマン、YU-KO and more!
   只今、出演者募集中です。カラオケ、ギターでの弾き語り、アカペラ、なんでもOK!
   当日の夜11時までに集合してください。
DJ:Mr.NAKAMURA、TAROU、KATSU、Luv Kiyoshi、工藤Big"H"晴康

■9/15(土)
REGGAEでいいじゃないか!〜THANK YOU BOB MARLY〜
場所:warp(武蔵野市吉祥寺本町1-30-10)
   bar Cheeky & warp
時間:warp open 24:00
   bar Cheeky open 21:00
料金:warp ¥2,000/door
   bar Cheeky door free
LIVE:SPECIAL BAND
selector:工藤 Big"H"晴康、山名 昇、AXEMAN、大石 始、RAS KOUSKE、SHlNIS、Massa Tora I &Ras Issy、8×8、Take Hi-Fi and more...
FOOD:world kitchen BAOBAB
warp https://warp.rinky.info/

■9/21(金)
NEW PORT Presents Luv&Dub Paradise at bar bonobo
"DISCO DEVIL & STREET PLAYER"
場所:bar bonobo(渋谷区神宮前2-23-4)
時間:open/start 22:00
料金:door \1,000
Special Guest:工藤Big"H"晴康 and more...
DJ's:DJ AGEISHI(AHB.pro)
   DJ NORI(Smoker/Gallary)
   DJ SHO(HOUSE NATION since1985)
Lounge:DJ Hakka-K(Luv&Dub Paradise)
JAHTOME(Ambient Dub Set)and more...
GJ:魔人
bar bonobo https://bonobo.jp/
Luv&Dub Paradise https://www.luvdub.jp/
NEW PORT https://newport1999.com/


『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』
9/1(土)より、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、吉祥寺バウスシアター他にて3週限定ロードショー!

監督:ケヴィン・マクドナルド 『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』『ラストキング・オブ・スコットランド』
出演:ボブ・マーリー、リタ・マーリー、ジギー・マーリー、セデラ・マーリー
バニー・ウェイラー、ピーター・トッシュ、リー・ペリー、ジミー・クリフ、クリス・ブラックウェル
エグゼクティブ・プロデューサー:ジギー・マーリー、クリス・ブラックウェル
2012年/アメリカ、イギリス/144分/1998×1080 1:1.85(FLAT)/5.1ch
原題:MARLEY/字幕翻訳:石田泰子/字幕監修:藤川毅
後援:ジャマイカ大使館、ジャマイカ政府観光局
公式HP:https://www.bobmarley-movie.jp
公式facebook:https://www.facebook.com/bobmarley.rootsoflegend
公式twitter:https://twitter.com/Bmarleymovie


配給:角川映画
宣伝:ミラクルヴォイス
〒150-0033 渋谷区猿楽町26-13 グレイス代官山A棟301
TEL:03-6416-3681 FAX:03-6416-3699 E-MAIL:info@miraclevoice.co.jp

interview with The Orb - ele-king


The Orb Featuring Lee Scrach Perry present
The Orbserver In The Star House

COOKING VINYL/ビート

Amazon

 「if you're thirsty, drink some water(喉が乾いたら水を飲みな)」...... 何をそんなに当たり前のことを。いや、しかしこれは金言、75年以上の人生から来るアドヴァイス(人生訓)なのだ。そろそろ酒の量を減らそう。
 アンビエント・ハウスの巨匠、ブラック・アーク伝説の偉人との共同作業は、これまでのジ・オーブのカタログのなかでもとりわけ気を引く1枚となる。なにせアレックス・パターソンとトーマス・フェルマン、そしてリー・ペリー、この3人のコラボレーションなのだ。我々はいま、新しい惑星(star house)からの新しい電波をキャッチするところなのである。
 おかしくて、神聖で、心地よい電波だ。ジ・オーブ(アレックス・パターソン、トーマス・フェルマン)というレゲエ好きで知られるエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーは、ペリーの酔狂なラップを迎え、彼らのダブワイズを展開している。それは瞑想的というよりも、ダンサブルで、ちょっとファンキーだ。"ポリスとコソ泥"というレゲエ・クラシックのカヴァーも披露しているが、これがまた良い。そして、"リトル・フラッフィ・クラウド"のリフを使った"ゴールデン・クラウド"はなお良い。
 
 コンゴスとサン・アロウとのコラボ作は、暑いこの季節、最初に聴いたとき以上に、あのだらしなさが愛おしくなってきている。ジャマイカのウサイン・ボルト選手とは真逆の、速くない音楽である。チルアウト......、そう、いまやこれは音楽のなしうる大きな役割のひとつとなった。ゆえにダブワイズは新たな空想的なタペストリーを広げているのだろう。
 『ジ・オブザーヴァー・イン・ザ・スター・ハウス』もそうだ。肩の力が抜けて、世界に必要な笑いを取り戻し、そしてちょっと楽になる。

ずっと逆立ちをしてるんだよ。75歳の老人が、逆立ちだぜ? 若かったり、身体すごく鍛えてたり、健康食品ばかり食べてたりとかだったら普通だけど、75歳のジャマイカンが逆立ちだなんて、本当に感動的だよ! 心から感動したね!

いままであなたはいろいろなミュージシャンと共同作業をしてきましたが、あなたにとって今回のアルバムはどのような意味があるものなのか話してもらえますか?

アレックス:これまでの作業と今回の違いは、歌詞の内容だね。ある賢い男が、もっと落ち着いて、もっと水を飲んで、酒は飲むなと世界に語ってるんだ。今回はヴォーカルの内容に繋がりがあるから、それをぶつ切りにして繋げるようなエディットができなかった。いままで俺たちは作品全体に同じヴォーカリストを使ったアルバムを作ったことがないんだ。アルバム全体にここまでヴォーカルが入ったことも、ひとりのヴォーカリストとのコラボだけで一枚のアルバムを作ったこともない。それが今回のアルバムだよ。

あなたはデビュー時からレゲエに関する知識が豊富なことで有名なプロデューサーでしたよね。音楽的にもダブからの影響を取り入れ、〈ワウ! ミスター・モド〉からもビム・シャーマンを出してました。"ブルー・ルーム"ではマッド・プロフェッサーをリミキサーに起用し、「ハイル・セラシエとマーカス・ガーヴェイの会話」を作ったり、レゲエはあなたのずっと身近な音楽でした。そういうあなたが、リー・ペリーの音楽(1)、アート(2)、人間性(3)、メッセージ性(4)についてどう考えているのか教えてください。

アレックス:とにかく、彼はパイオニア。彼がダブ・ミュージックのアイディアのパイオニアだった頃に、俺は彼の音楽にハマったんだ。70年代半ばだな。ある意味、ダブはそれよりもっと前から存在してたわけだけど、彼はダブの世界の中心のひとりだと思う。彼には、独特の効果があるからね。ヴォーカルがより多くて、ディレイやリヴァーブも多い。リー・スクラッチ・ペリーは、そのサウンドの草分け的存在さ。彼の音楽を好きにならないわけがないよな。

アートは?

アレックス:超エクスペリメンタルだと思う。彼の作品には、たくさんの二重の意味が含まれているんだ。

人間性はどうでしょう?

アレックス:彼は本当に優しくて、ジェントルマンなんだ。彼の頭のなかにはつねに課題がある。だからこそ、我々が引きつけられるあの魅惑的な作品を作ることができているんだ。彼の頭のなかはいつも純粋。いつも新しいことに心をオープンにしている。それが、彼が常に素晴らしい作品を作ることができる理由なんだ。

最後にメッセージ性についてお願いします。

アレックス:宗教的だと思う。彼のメッセージは、彼の魂から来てるからね。彼の魂、心、頭から。彼の信じるものが反映されているんだ。

リー・ペリーの作品でもっとも好きなアルバムを3枚挙げてください。

アレックス:スーパー・エイプ』と、ザ・コンゴスの『ハート・オブ・ザ・コンゴス』、あとは......『Lee Perry The Upsetter Meets Scientist - At The Blackheart Studio』その3つだよ。

好きな理由を聞いてもいいですか?

アレックス:まず『スーパー・エイプ』を選んだのは、俺はカヴァーーが好きだから。あのアルバムのおかげで、ダブの魅力を知ったしね。ザ・コンゴスのは、彼の作品のなかでもベスト・チューンのひとつだと思う。リズミカルで楽しくて、クールなんだ。で、最後の『Lee Perry The Upsetter Meets Scientist - At The Blackheart Studio』は、理由を言う必要はないよな? 誰が聴いても絶対に気に入る作品だろ?

[[SplitPage]]

"リトル・フラッフィ・クラウズ"と"似ている"雰囲気を持たせたかったからさ。"同じ"じゃなくてね。だから、まったく同じサンプルじゃなくて、同じ音楽の違う部分を使うことにした。


The Orb Featuring Lee Scrach Perry present
The Orbserver In The Star House

COOKING VINYL/ビート

Amazon

我々がリー・ペリーから学ぶことがあるとしたら何だと思いますか? 

アレックス:この質問は、リー・ペリーにするべきだよ。俺じゃなくてね。でも、俺自身が学んだのは、彼を見てると、年の取り方を学ぶんだ。つねに何かを持続して、つねに変化していく。留まってはいけないんだ。
 彼が言ってたよ。レコードをリリースするだけじゃダメ。レコード自体は動かない。だから自分でレコードを流していかなければいけない。CDを流さなければならないんだ。人生も同じ。ひとつのことに足を取られてはいけない。音楽への愛も同じさ。もし人がいまでもセックス・ピストルズを聴いてるなら、俺からすれば、もっとしっかり生きろって言いたいね。セックス・ピストルよりも、もっと多くの音楽がこの世には溢れてるんだから。もちろんセックス・ピストルズは好きだし、素晴らしいバンドってこともわかってる。でも、彼らはただ1枚アルバムを出しただけなんだ。
 これは例えばの話であって、決して彼らを批判してるわけじゃない。でもとにかく、動けってこと。つねに進まないと。川の流れのようにね。川も流れが止まれば、汚れていくだけだろ? 音楽も同じさ。音楽も流れを意識しないといけなんだ。変化させていかなきゃ、ただ退屈しておわってしまう。彼を見てると、本当にそう思うよ。彼は75や76歳になっても、つねに新しいことを試し続けて、新しいアイディアを求め続けてる。本当に感銘を受けるよ。音楽面に関しては、ちょっと違うかもしれないけど、ヴォーカルと音楽のバランスを学んだね。ここまでヴォーカルを取り入れた作品は初めてだったから。

2004年のメキシコのフェスティヴァルで出会ったのが今回のコラボレーションのきっかけだったそうですが、具体的にはどのように進んだのですか?

アレックス:これもよく聞かれる質問なんだけど、どこからがストーリーのはじまりかは正確にはわからないんだよな。彼に初めて会ったのは、2001年だったし。フィンランドの音楽フェスティヴァルで会った。そのあと2003年にもロンドンで会ってるし、そのあともどこかで会ったし。その次が2004年のメキシコかな。
 それがきっかけになった理由は、クルーの規模も断然大きくて、本当に楽しかったから。1週間くらいそこにいたから、これまで以上のもっとお互いを知ることができた。で、2年半くらい前にマネージャーと話してて、リー・スクラッチ・ペリーみたいな誰かと一緒に何かやるべきだってことになった。だから彼に連絡をとってみて、一緒に音楽を作ってくれるか訊いてみようってことになったんだ。そしたらオーケーが出たってわけさ。1曲くらい一緒に作れればと思ってたのが、結果的にアルバムを作るまでに発展したんだ。最高だよ。

ということは、先に提案したのはあなたのほうということですよね?

アレックス:ああ。彼からオファーはこなかったね(笑)!

リー・ペリーと一緒に仕事をしてみて、あらためて感銘を受けたことがあれば教えてください。

アレックス:なんどもあったさ! 例えば、彼、ずっと逆立ちをしてるんだよ。75歳の老人が、逆立ちだぜ? 若かったり、身体すごく鍛えてたり、健康食品ばかり食べてたりとかだったら普通だけど、75歳のジャマイカンが逆立ちだなんて、本当に感動的だよ! 心から感動したね! ワーオ! って感じ。彼の身体のなかには、すべての平和が漂ってるんだ。彼が愛するすべてのものとコンタクトをとってる。動物でも、鳥でも。そういう姿をみてるのは、ただただ素晴らしかったよ。

一緒にスタジオに入ってやったんですか? 

アレックス:そうだよ。彼と一緒にスタジオに入って、彼がヴォーカルを担当した。彼ヴォーカルを録ったあと、で、俺たちが音楽だけをリミックスしたんだ。リミックスをしたときは、彼と一緒じゃなかったけどね。彼はスイスの家にいたけど、俺たちが作業してたスタジオはベルリンだったから。

すべては新しく録音したトラックなんでしょうか?

アレックス:すべての曲がリー・スクラッチ・ペリーをフィーチャーしていて、新しいトラックだよ。なにせ彼と会ってからできた曲のほうが多いんだからね。最初はアルバムさえ作る予定じゃなかったんだから。数曲だけ録ろうと思ってたんだけど、彼がスタジオに入ってヴォーカルをやると、彼のおかげで少しヴァーカッションのアイディアを思いついたりもした。スタジオの外で歌いながら木の破片を叩いたりね。

"ポリスとコソ泥"のカヴァーも新しいんですよね?

アレックス:そうさ。あれはカヴァーだけど、まったく新しい作品。とくにベースラインは全然違う。ヘヴィーなベースラインが鳴り響いてるんだ。

実質、どのくらいの時間がかかったんでしょうか?

アレックス:全部を合わせると8ヶ月くらいだったと思う。

それは計画通りの時間だったんですか?

アレックス:どうだろうね......最終的に、7ヶ月の間で、8、9回くらい、家(ロンドン)からベルリンに作業に行って、家に帰って、またベルリンに戻ってっていうのを繰り返した。7ヶ月は、自分たちのなかでは早いと思ってたよ。実際早かったかはわからないけど、とにかく早いなと自分たち自身は感じた。この前アルバムを書くことを決めたと思ったら、もうリリースされるわけだから、やっぱりあっと言う間だったな。しかも、たった2、3日で13曲も新しい曲を書いたわけだからね。
 1週間の予定だったリー・ペリーとのレコーディングで、火曜~土曜の5日でヴォーカルを録る予定だったんだけど、火曜、水曜で全部録り終わってしまった。だから急遽、木曜と金曜で新しい曲を書いて、それを土曜にレコーディングした。リー・ペリーと一緒だったのはその5日間だけで、あとは自分たちでミックスしたよ。

"ゴールデン・クラウド"で、あらためて"リトル・フラッフィ・クラウド"のリフ(スティーヴ・ライヒの曲のサンプル)を使ったのはどんな経緯だったんですか?

アレックス:たしかにまた使いはしたけど、ちゃんと聴けばわかると思うけど、あれは同じリフじゃないよ。同じサウンドであっても、同じスティーヴ・ライヒから書かれていても、ちょっと違うんだ。
 "カウンターポイント"(もとネタになっているスティーヴ・ライヒの曲)について知りたければ、ウィキペディアにいってくれ。また彼のサンプルを使ったのは、"リトル・フラッフィ・クラウズ"と"似ている"雰囲気を持たせたかったからさ。"同じ"じゃなくてね。だから、まったく同じサンプルじゃなくて、同じ音楽の違う部分を使うことにした。
 じゃないと、ただのカヴァー・ヴァージョンになってしまうだろ? 俺たちはカヴァーを作りたかったんじゃなくて、似たような名前と似たような雰囲気を持った、もうひとつの新しい曲を作りたかったわけだから。今回は彼の名前もちゃんとクレジットで公表してるし、彼に許可を得て使用してる。まったく問題ないよ。

"ゴールデン・クラウド"とは何かのメタファーですか?

アレックス:メタファーなんかではないさ。"ゴールデン・クラウド"は"ゴールデン・クラウド"。"リトル・フラッフィ・クラウズ"とは全然関係ないし......まず、アルバム全ての曲のタイトルは、その曲の内容がそれについてだからそのタイトルがつれてる。すべての曲がそうさ。"マン・イン・ザ・ムーン"は、その名の通り月にいる男の話だし、自分が書いた曲にタイトルをつけるときに、その歌詞の内容に関係したタイトルにするのはすごくシンプルで当たり前なことだと思わないか? 歌詞の内容に関しては、リー・スクラッチ・ペリーに聞いて欲しいね。

近年の作品のなかでは、サンプリングやブレイクビートを多用していませんか?

アレックス:これは答えられないね。使ってると言えば何を使ってるかって話になるわけだろ? そういうのは、自分たちが気づけばそれでいい話なんだ。だったらあ、「俺たちはサンプルなんて使わない」って言ったほうがマシなのかもね。いまの世のなか、アプリケーションがこれでもかってほどあるんだし、いろいろなサウンドが溢れてる。もう、サンプリングなんてする必要がないんだよ。「俺たちは、もうサンプリングする必要はない」、単純に、それが答えさ。
 いろいろな音楽から"影響"を受けることはあるかもしれない。でも、それをサンプリングする必要性はもうないわけだ。世界なかのたくさんのバンドが、どっちにしろ他のバンドのコピーをやってる。パイオニアのバンドでない限りはね。だから、パイオニアが作ったアルバムは、他より面白くなる。俺たちがどんなサウンドを作ってるかっていうのが重要なんだ。誰の作品を使ってるかなんて、意味のない質問だよ。
 このアルバムは、3人のパイオニアによって作られてるんだからね。アルバムをすでに聴いてくれたたくさんの人たちや、過去にリー・スクラッチ・ペリーを一緒に作業したことがある人たちでさえも、これは過去10年のなかのベスト・レコードだと言ってくれたよ。俺たちの作品をサンプルの固まりとしてじゃなく、俺たちの作品として聴いて欲しいね。

何度か繰り返して聴いて、とても楽天的な印象を持ったのですが、あなた自身はこのアルバムをどう思いますか?

アレックス:夏っぽく暑くて、温かい、デリシャスなアルバムかな。確実にウィンター・レコードではないね(笑)。ビーチで聴くべきアルバムだよ。熱気のあるバーとかでもいいかもね。すべての曲がフィットすると思うよ。誰も持ってないようなレコードを作ったつもりだから、俺たちオーブの昔の曲を聴いたことない人がたまたまこのアルバムのことを知って、気に入ってくれたら最高に嬉しいね。

[[SplitPage]]

リーは端っこに座って、7インチのテレビでアフリカ映画を見てたんだ。で、俺が、「リー、その映画の意味わかってるのかい?」(言語がわからないから)って聞いたら、「全然! 何言ってるのか見当もつかないよ! でも最高に素晴らしい!」って言うんだよ(笑)。


The Orb Featuring Lee Scrach Perry present
The Orbserver In The Star House

COOKING VINYL/ビート

Amazon

今回のアルバム作業を通して、あなたがいちばん嬉しかったことは何ですか?

アレックス:全部だよ。ある部分だけをピックアップして、差を付けることはできない。実質、このアルバムは1週間で作られてるからね。だからまあ、敢えて言うなら、このリー・スクラッチ・ペリーと一緒だった1週間かな。あの1週間は、パーフェクトな瞬間が何回もあったから。今回の作業は、巨大な喜びのジグソーパズルって感じだったよ。

"ポリスとコソ泥"をカヴァーはどうして生まれたのですか?

アレックス:リーと作品を作ることが決まっていたときに、ロンドンの暴動が起きたんだ。俺の家のすぐそばでね。それで、一緒にレコーディングするときにあの曲をやらないかとリーに頼んだ。そしたら彼からOKが出て、カヴァーを作ることになった。暴動の1ヶ月後にレコーディングしたんだよ。

それは面白い話ですね(笑)。今回、ベルリンのトーマス・フェルマン、トビアス・フレウンドのふたりはどんな役目をしていたのでしょうか?

アレックス:俺はジャム、トーマスはチーズ、トビアスはピーナッツバターとでも言っておこうか(笑)。肉はナシだな。俺がヴェジタリアンだから。リーもヴェジタリアンだし。で、ときにはサラダもあるっていう役割分担。
 リー・スクラッチ・ペリーはヴォーカルを担当してる。彼の声がトーマスと俺が作ったレコードから聴こえてくる。トビアスもヴォーカルを担当した。ヴォーカルを担当したというか、ヴォーカルを整えたといったほうがいいかな。彼はヴォーカルを汚れていない、純粋なままのサウンドに聴こえるようにしてくれた。あと、もうひとりトーマス(トム)がいるんだけど、Tom Thiel(トム・ティール)が俺たちのエンジニアだった。で、俺たちのトーマス(フェルマン)は音楽を作ったってところかな。

レコーディング中で何か面白いエピソードがあったら教えてください。

アレックス:ある日みんなでディナーを食べてるとき、そこがドイツのけっこう良い雰囲気のレストランで、ナイフとフォークがテーブルにセットしてあって、ジャズが流れてる感じだったんだけど、リーは端っこに座って、7インチのテレビでアフリカ映画を見てたんだ。で、俺が、「リー、その映画の意味わかってるのかい?」(言語がわからないから)って聞いたら、「全然! 何言ってるのか見当もつかないよ! でも最高に素晴らしい!」って言うんだよ(笑)。で、次の日はハリウッド映画を見てた(笑)。おかしいだろ(笑)?

リー・ペリーの歌っている歌詞で、とくに面白く感じたのはどれでしょう?

アレックス:「酒をいまより控えて、もっとたくさん水を飲め」、このメッセージかな。

ところで、オーブの新作は準備されているのですか?

アレックス:まだ完成はしてないんだけど、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラハウスのために曲を書いている。オペラを演出してて、オペラハウスで披露されるんだよ。ちなみに、リー・スクラッチ・ペリーはこれとは全然関係ないからね(笑)。彼のことだから、やろうと思えばオペラもできちゃうのかもしれないけど(笑)。

はははは、他に何かプロジェクトはありますか?

アレックス:あるよ。実は3つくらい抱えてるんだ。4つとも言えるかもしれないけど、まずは3つだな。ひとつはスクリーン。こないだ〈マリシャス・ダメージ〉からアルバムが出たんだ。それから、HFB(High Frequency Bandwidth)。このプロジェクトでは、京都のピクセルジャンクっていうテレビゲーム会社のために音楽を作ってる。2年前は、このゲームのサウンドトラック・ミュージックで英国アカデミー賞にノミネートされたんだよ。あれはクールだった。自分たちのレーベル、〈プロジェクター・ルーム・レコーズ〉から、ニュー・アルバムの『サイドトラックス』がiTunesでリリースされたばかり。
 あとは、ルートマスターズ。俺と女性アーティスト(ニナ・ウォルシュ)とカントリー・コンボを組んで、カントリー・ミュージックをやってる。こっちはまだアルバムは出てないんだけど、EPが出ている。俺たちは超オールド・スクールだから、ヴァイナルのみだけどね。
 それに、ティー(Tee)っていうプロジェクトもあるんだ。ミスター・ガウディと俺で、ダブっぽいサウンドを作ってる。ピュアなアンビエント・ミュージックで、ピュアなノー・ビートサウンド。あとは......毎週火曜日にはラジオ番組をやってる。8時~10時まで。そんな感じかな。

音楽以外で、いまのあなたが興味あることはなんでしょうか?

アレックス:ほとんどは音楽だけど、あるにはあるよ。サッカー。

いまでもプレイするんですか?

アレックス:いや、もうしないね。昔は学校とか会社でやってたけど。でもどちらかと言えば、バスケのほうがもっとプレイしてたな。若いときはバスケのほうが好きだったんだ。もっとスポーティーだったから。プレイするには最高のスポーツだよ。サッカーは、美しくて素敵なスポーツだと思う。頭を使うんだ。

いま日本では反原発が盛り上がっていますが、あなたの原発に関する考えを教えてください。

アレックス:こっちでは全然情報がないんだよな。食べ物に放射能が含まれてないといいけど......日本に行ったら、もっと状況がわかるだろうね。この野菜は食べない方がいいとか、大丈夫とか。毎回食事するごとにもやしを食べるといいってきいたけど? あと海藻。日本って、どちらもよく食べるんだよな? 元々体にいいし、放射能対策にもなるなんて素晴らしいよね。日本ではサイドディッシュによく出てくるって聞いたから、君たちは知らずに自分たちの身体を守ってるのかも。「My body is my temple」って言葉があるけど、まさにそうだね(笑)。素晴らしい哲学だよ。
 話がずれたけど......とにかく、俺はあまりよくわかってないから、言えるのは、もやしと海藻を食べろってことだね(笑)。原発は、やはり考えないとはいけないと思う。だって、また数年以内に大きな地震が起こるって言われてるんだろ? 太陽フレアも起こるって言われてるよな。それは日本だけじゃなくて俺たちの問題でもある。科学者がそういう情報をちゃんと流して、それを想定した行動をとっていくべきだと思うね。原発に反対することも間違ってないかもしれないけど、原発を無害にする方法も考えるべきかもね。

【LEE 'SCRATCH' PERRY】
生きる伝説=リー'スクラッチ'ペリーの来日公演決定!

2012/10/5 (FRI) 渋谷 O-EAST
OPEN/START 18:00
前売 ¥6,000 (1drink 別途 ¥500)

出演:
LEE 'SCRATCH' PERRY
あらかじめ決められた恋人たちへ
PREPARATION SET
and more!!!

INFO: BEATINK 03-5768-1277 https://www.beatink.com/

【THE ORB JAPAN TOUR 2012】
10.19 FRI @ 大阪 CONPASS
INFORMATION: 06-6243-1666 (CONPASS) https://conpass.jp
10.20 SAT @ 東京 ELEVEN
INFORMATION: 03-5775-6206 (ELEVEN) https://go-to-eleven.com

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443