「KING」と一致するもの

ジュピターズ・ムーン - ele-king

 これといってカーチェイス・シーンのファンでもないし、この映画の主題でもないけれど、後半で展開されたカーチェイスはとても印象的だった。『ミニミニ大作戦』でも『新しき世界』でもカーチェイスというのはたいてい無茶な運転が醍醐味というもので、迷惑の限りを尽くすことが制作者にとっては努力目標だったはずである。それがコーネル・ムンドルッツォ監督はカメラの位置を下げただけなのである。「だけ」ではないかもしれないけれど、カメラの位置を下げ、視点を道路に近づけただけで、カーチェイスというものがこんなに恐ろしいものになってしまうとは思わなかった。道路が近いので激突の恐怖が増し、視界が狭いことも恐怖なら、対向車がいきなり視界に入ってくることも相当な恐怖だった。そして、この「視点を下げる」ということは、人々が「空を見上げる」ことを忘れ、下界=現実ばかりに拘泥しているという主題とも関わりがある撮り方だったのである。なんという方法論だろうか!

 セルビアからハンガリーに流れ込むシリア難民たち。父とはぐれたアリアン(ゾンボル・ヤェーゲル)は国境警備隊のラズロ(ギェルギ・ツセルハルミ)に銃撃される。撃たれたアリアンはなぜか空中に舞い上がる。ここまでの描写がまずは息を飲む。ハンガリー国境を越えるということはシリア難民がヨーロッパに辿り着けたことにほかならない。それはバルカン・ルートと呼ばれるコースで、難民たちにとってはいわば最後の壁なのである(ハンガリー政府は2015年に緊急事態宣言を発してフェンスを設置、欧州委員会にも難民の受け入れを拒否している)。一方で捕まえた難民を隔離・収容したキャンプで働くシュテルン医師(メラーブ・ニニッゼ)はワイロを受け取り、難民たちをハンガリー国内に送り込んでいる。前夜の騒ぎを受けて、その日の難民キャンプは人で溢れかえっていた。そして、シュテルン医師の診察室にはアリアンが運び込まれてくる。アリアンはシュテルンの前でまたしても空中浮遊を始める。シュテルンは驚いてその様子をスマホで撮影する。シュテルンには大金が必要だった。その理由は映画の後半で次第に明らかにされる。ちょっとした経緯を経てシュテルンは、国境ではぐれた父を探しているというアリアンに空中浮遊で金を稼ぐことを提案、その金があれば父を探し出せると説得し、ふたりは次々と富裕層めぐりを始める。富裕層たちはアリアンの空中浮遊を見て驚愕する。

 この映画、難民尽くしであり、後半でも難民問題が思わぬ展開を呼び込むにもかかわらず、社会派という印象はまったく与えない。物語をドライヴさせていくポイントはシュテルン医師が神を信じていないということで、奇跡を行うものが目の前に現れても金儲けしか頭に浮かんでこない現代人がまずは焦点化されている。ほかにも様々な要素が編み込まれ、途中までどこに向かってもおかしくない話だと思わせるにもかかわらず、「人々が神を信じられた時代は良かった」という価値観を中心に据えたまま、メイン・ストーリーはシュテルン医師の行動をどのように追っていくかで決まっていく。撃たれたことで空中浮遊が可能になったアリアンはいわば救世主のようでありながら、その力はほとんど役に立っていない(同じくイエス・キリストが村にやってきたという設定の『哭声/コクソン』とはまったく逆のことが起きたとも言える)。予想外のクライマックスを経て、ラスト・シーンで彼は人々に「空を見上げ」させる。その時のカメラの位置も非常に低く、なかなか不思議なアングルからこの光景を体験させてくれる。このシーンを言葉に置き換えることはなかなかに難しい。『ジュピターズ・ムーン』とは生命体が存在するかもしれない星が木星の衛星にはあり、その星は「エウロパ」と名付けられていることに由来する。空を見上げた人たちが未来のヨーロッパになると監督は思いたかったのだろう。

 シリア難民を早い段階で受け入れると表明したカナダは人道的というよりも金持ちや才能のある人を選んで先に引き取ってしまい、自国の活性化に役立てたというのが本当のところらしい。それこそ企業誘致と似たような発想で移民を捉えたわけで、6人しか受け入れなかった日本とは反対に国際的にも感謝されたことを思うと実にスマートな政治判断だったというしかない。ナチスに見習ったらどうかねと麻生太郎はいうけれど、それをいうならトルドーに見習ったらどうなんだろうと(日本も少子化対策として孤児だけを引き受けるとか、考えようはあっただろうに)。難民の受け入れはあとになればなるほど残り物になってしまい、それこそ人道的でなければできない行為になってしまう。ハンガリーやポーランドが突きつけられたのはそこだった。地中海の無人島をひとつ買い取り、その島にシリア難民の町を建設した大金持ちもいたけれど、さすがに550万人ともなると人道で解決できる範囲は軽く超えている。地理的にいって最も数を受け入れざるを得なかったのはその半数を受け入れたトルコで、現実にはヨーロッパに辿り着けたシリア難民は昨年あたりからトルコに逆流する動きを見せつつある。原因は「ヨーロッパのヘイト意識」にめげてしまったからである。トルコのエルドアンも相当ヒドい指導者だと思うけれど、アサド政権やヨーロッパよりマシと判断されたのである。ヨーロッパよりマシと。

 難民キャンプを訪れたムンドルッツォ監督が、その時の体験をSF映画として構想したものがこの作品で、しかし、実際には製作中に現実に追いつかれてしまい、もはやSF映画には見えなくなってしまったと監督本人は述懐している。「できるだけ現在を描くことを避けてきた」とも語るムンドルッツォ監督は『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』(犬好きは観ない方がいいかも)で日本でも一部の注目を集めたハンガリーの映画監督、その奇抜な発想はある意味、ハンガリー映画の王道とも言える。『ハックル』や『タクシデルミア ある剥製師の遺言』のパールフィ・ジョルジ、『リザとキツネと恋する死者たち』のウッイ・メーサーロシュ・カーロイ、『ニーチェの馬』のタル・ベーラや『サウルの息子』のネメシュ・ラースローなどハンガリー映画は南米のマジック・リアリズムに匹敵する奇妙な作品の宝庫である。『ジュピターズ・ムーン』はそうした系譜にあって、ハンガリー映画に新たな時代をもたらす傑作ではないかと思う。


坂本慎太郎 - ele-king

 それまで場内をゆっくり温めていた二見裕志のDJの音はなかばぶっきらぼうに止まり、そしてゆっくりと、控え目の音量で、ずいぶんゆっくりと独特のグルーヴィーなリズムで“超人大会”が演奏される。「写真で見たことが現実で起きた 悲しいくらい俺は無力だ」牧歌的で悲しげなフルートが吹かれ、坂本慎太郎の歌声が明瞭に響きわたる。「自分のしたことが招いている 悲しいくらい俺は 恥ずかしいくらい俺は さみしいくらい俺は 無力だ」
 続いて“スーパーカルト誕生”。「二千年前それは生まれた 二年後にこの世は滅びる」……ベースのAYAとドラムの菅沼雄太はスローテンポをキープしながら、坂本ワールドのグルーヴを創出する。フルートとサックスの西内徹が多少色づけしても余白はたっぷりあり、その余白に拡がる空間の内側で坂本慎太郎の歌が滑らかに反響する。当たり前のことだが、これはゆらゆら帝国にとって最後のライヴとなった2009年12月30日のリキッドルームでの演奏とは別モノである。

 坂本慎太郎は、このおよそ8年のあいだに3枚のソロ・アルバムを発表した。熱望されていたにも関わらず、彼はライヴ活動をしてこなかった。幼稚園児が中学生になるくらいの、それなりに長い時間だ。この日、ライヴ会場に到着して最初に思ったのは、若いオーディエンスが多いということだった。ゆらゆら帝国のライヴを観たことがない世代がたくさん来ていたのだろう。『幻とのつきあい方』や『ナマで踊ろう』、あるいは『できれば愛を』から入ったリスナーのほうが多そうだし、実際その3枚のアルバムの曲が演奏された。
 音量や音圧、音数でオーディエンスを圧制することはない。中盤の、カンの脱力的なリズムをも彷彿させるスカスカの“ずぼんとぼう”から“できれば愛を”、そして“幽霊の気分で”という流れは、しかし陶酔していたオーディエンスの身体をさらに動かし、ダンスさせ、フロアからの声をうながした。ぼくの’近くにいた若者は「坂本さ~~~ん!」と絶叫した。無理に盛り上げもしないことで盛り上がっていくという沈黙と興奮が入り混じったライヴ会場で、その声はよく通った。坂本作品は、サン・ラーの厭世主義めいた傾向を持ちつつも、無力といいながらエネルギーをうながし、ダメだと言いながら良しといっているようなある種の反語的世界と言える。そこにはほかとは違うことをやることの素晴らしさと、それでもなんとかこうして自分たちは音楽を愛しながら生きていることの強い肯定性も含まれていることだろう。

 とはいえ坂本作品には、スペシャルズの“ゴーストタウン”のような風刺も多分にある。昨年末のエルサレム問題から北朝鮮問題(&トランプ)にいたる我が国の政府の対応などなど、今日目に入る政治のニュースを少しでも見れば、彼の音楽がよりいっそう真実を突いているように思えてしまうのは、ぼくの悪い妄想癖だろうか。いまぼくは『超プロテスト・ミュージック・ガイド』というプロテスト・ミュージックのプレイリスト集の本を編集している。そのなかで自分が作成したプレイリストの1曲にゆらゆら帝国の“ソフトに死んでいる”を選んだ(しかしページ数の関係で掲載されず。近々webのほうで発表するつもりです)。
 “ソフトに死んでいる”は、日本のサッチャーに例えられる小泉政権時代の暗い予感を残酷に描いた曲としても解釈できる。同曲は12インチとしてもリリースされ、DJにもプレイされることになるが、シングルには故アラン・ヴェガの日本語カヴァー曲も収録されている。ただ生きるためだけに工場で働きながら経済的に追い詰められて発狂する男を描いたその曲、“フランキー・ティアドロップ”は能力のない人は自己責任として死ぬしかないという時代におけるリアルで強力なディストピック・ソングだ。それは2005年当時のぼくの耳に入ってきたもっともインパクトのある「NO」という声(音)だった。

 曲はたんたんと演奏されていった。やがて最後の曲、“動物らしく”が終わる。満員の会場からは大きな拍手。4人は楽屋に戻ることなくそのままステージ上に立っている。坂本は抑揚のない声で、じゃ、アンコールやりますと、“好きではないけど懐かしい”と“悲しみのない世界”の2曲を演奏した。「悲しみのない世界があればいいのに」……。そしてふたたび二見裕志のDJタイム。予定調和というものをとことん拒絶したライヴにおいて、彼のDJは悲しみのない世界=平和な時間を保証するものだった。
 もうひとつ保証されたのは、これで坂本慎太郎はライヴ活動を再開するだろうということだ。あくまでも個人的な予想ではあり、違っていたらすみませんというほかないのだが、これだけのライヴをやったのだから続きはありだろう。今回チケットを取れなかった人も、近々必ずライヴを観れるはず。ライヴは、完成度の高いアルバム作品とはまた別の魔力を持った新たなる坂本ワールドである。

Lemzly Dale - ele-king

 UKでは怒濤の勢いで成長を遂げているグライム。そのムーヴメントの一端を担うブリストルの〈Bandulu〉から、幅広い音楽性でシーンを支えるレムズリー・デイルが来日、東京と福岡を回るツアーを開催する。グライムを中心にUKの音楽にスポットライトを当てたイベント《Mo'fire》の一環として催される東京公演では、〈SVBKVLT〉からの新作も好評の Prettybwoy をはじめ、Double Clapperz や UNSQ、1-drink らが出演。Double Clapperz と UNSQ は福岡公演にもゲスト出演するとのこと。UKアンダーグラウンドの息吹に触れる格好の機会をお見逃しなく。

■東京
2/17 (土) 23:00 -
Mo'fire pres. Lemzly Dale
@CIRCUS TOKYO

ADV: 2,000yen
DOOR: 2,500yen

Lemzly Dale
Prettybwoy
1-drink
Double Clapperz
UNSQ
+ More

イギリスの若者に影響を与え続けているグライムを中心にUKミュージックに焦点をあてるクラブ・ナイト《Mo'fire》。
3回目となる今回は、イギリスはブリストルを拠点にグライム、ダブステップなど様々なムーヴメントを起こしてきた〈Bandulu Records〉より、Lemzly Dale を招いて開催される。
ハードなインストゥルメンタルから、R&B やヒップホップをサンプリングしたメロディックな音まで、作風の幅を見せながらも一貫した音作りでシーンの支持を得てきた。
また、〈Sector7〉や〈Pearly Whites〉といったグライム・レベールを運営するなど様々な角度から音楽シーンに貢献している Lemzly Dale 初の海外ツアー。
プロデューサー、レーベル・オーナーと様々な一面を持つ Lemzly Dale を迎えるゲストは、上海のレーベル〈SVBKVLT〉からのリリースも好評のUKガラージ・アーティスト Prettybwoy、ジャンルを自在に横断する DJ 1-drink ら。
UKグライムの進化と深化を体感する一晩。

CIRCUS Tokyo
3-26-16, Shibuya, Shibuya-ku, Tokyo 150-0002 Japan
+81-(0)3-6419-7520
info@circus-tokyo.jp

■福岡
2/16 (金) Start 21:00
BLOCK PARTY SP
~Lemzly Dale Fukuoka Tour~
@The Dark Room

Charge: 2,000yen

SP Guest DJ
Lemzly Dale (Pearly Whites / Sector 7 Sounds)
from Bristol UK

Guest DJ
Double Clapperz from Tokyo
UNSQ from Tokyo

DJ
IGB (GLOCAL COMBO)
CRANK (BLOCK PARTY)
Nishiura (DSA DUB)
Lo-P (AVALANCHE MUSIC)
svv (AVALANCHE MUSIC)
Gonorrhea (AVALANCHE MUSIC)

Guest MC
ONJUICY from Tokyo

MC
NINETY-U
BOOTY
脳発火
NAB

Live Paint
MSY

SNAP
KURA1985
Nanako


yahyel - ele-king

 あれ? 彼らってたしか、宇宙人じゃなかったっけ?
 2015年に結成、2016年にファースト・アルバム『Flesh and Blood』を発表、昨年はシングルのリリースやマウント・キンビー、アルト・ジェイらの来日公演のサポートなど、デビューから短期間でどどどんと鮮烈な印象を残し続けている新世代5人組バンド、ヤイエル。そんな彼らのセカンド・アルバムが3月7日にリリースされる。タイトルは『Human』。
 デビュー時は自分たちのことを「宇宙人」、すなわち外部の者、フォーリナーとして規定していた彼らだけれど(紙版『ele-king vol.19』掲載のインタヴュー参照)、ここへ来て「人間」というタイトルを掲げることになったのだから、きっと大きな変化があったに違いない。いったい彼らに何が起こったのか? 続報を待て。

ヤイエル、待望のセカンド・アルバム『Human』を3月7日(水)リリース!
初のリリース・ツアー開催も決定! プレイガイド最速先行予約は1月20日から!

2016年11月にリリースされ、コアな音楽愛好家達を超えて同世代のリスナーへと鮮烈なインパクトを与え、一気にそのプロップスを引き上げたデビュー・アルバム『Flesh and Blood』。2010年代以降のR&Bと電子音楽のリアリティ――すなわちジェイムス・ブレイクやフランク・オーシャン以降のオルタナティヴR&Bと、フライング・ロータスやアルカ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー以降のエレクトロニック・ミュージックに対するリアルな共鳴を、今この世界で生きる自分達自身が抱く違和感/思想をもってユニークな音楽表現へと昇華する存在として、たった一作で評価と信頼を勝ち得たのがyahyelだった。そんな彼らが自身のアイデンティティを突き詰め、よりクリアで強固なものとして具現化することに挑んだのが、今回リリースされるセカンド・アルバム『Human』だ。

以前の匿名性の強いアーティスト写真にも表れていた通り、結成~『Flesh and Blood』期の yahyel は、人種・国籍・性別といった、エスニシティをはじめ様々な個にまとわりつく付帯情報を削ぎ落とすこと=雑音を削除することによって、逆説的に、“出自による差異と先入観に縛られた社会”から純粋なる“個の存在”、“個の感情”を浮かび上がらせようという意識をもって音楽活動を行っていた。対して今回は、『Flesh and Blood』から『Human』へというアルバムタイトルの変化にも表れている通り、そんな彼らの本来の目的にして本質と言っていい“個が有する生々しい感情とメッセージの発露”をダイレクトに際立たせる方向へと舵を切っている。

具体的には、それを実現するため、本作に関しては「ヴォーカリストである池貝峻の感情表現に寄り添うように突き詰める」、「池貝という人間の感情と生き方をどれだけ際立たせることができるのか? に重きを置く」ことを明確に制作の軸としたという。さらにはその過程で5人――池貝峻、篠田ミル、杉本亘、大井一彌、山田健人の互いの感覚の擦り合わせと音に対する思想/イメージの落とし込みをストイックに行っていった。世界のミュージック・シーンの文脈やトレンドと照らし合わせた相対的な解ではなく、5人の中における絶対的な解をひたすらに探す作業。結果、「自分達の予測を超えた、ある種、自分達自身の制御も超えた地点へと到達するアルバムとなった」と彼らが話す通り、歌はもちろん、音色にしてもリズムにしても前作以上にエグみも深みもある、美しく豊かな感情表現が息づく作品となった。格段に重層的に作り込まれ、織り込まれたひとつひとつの音のテクスチャー、アブストラクトなビートも多分に含んだリズムトラックの深化といったもの自体から、彼ら5 人にしか生み出し得ない確かなオリジナリティを感じることができる。

本作『Human』には、昨年ミュージック・ビデオと共に発表したシングル「Iron」と「Rude」、韓国の気鋭のラッパー・Kim Ximya(キム・シムヤ)をフィーチャリング・ゲストに迎えた「Polytheism」など全10曲を収録し、3月7日(水)リリース。また初回限定盤CDは、ボーナス・ディスク付の2枚組となり、アナログ盤にはDLカードが封入される。iTunesでアルバムを予約すると「Iron」と「Rude」の2曲がいちはやくダウンロードできる。

Iron (MV)
https://youtu.be/VrwXQ-JvLis

Rude (MV)
https://youtu.be/R4H7k2apm-Q

今回の最新アルバム『Human』の発表に先駆け、先々週には1年3ヶ月ぶりとなる2度目のワンマンライヴ(東京公演)を発表。想定を大幅に上回るアクセスによって、主催者先行チケットの販売が中止となったことも話題を集める中、初となるレコ発ツアーの開催も決定! さっそく1月20日から最速先行が開始!


yahyel
- Human Tour -

3/29 (THU) 東京~3/31 (SAT) 京都~4/5 (Thu) 札幌~4/6 (FRI) 名古屋~4/7 (SAT) 大阪~4/8 (SUN) 高知

2016年11月にデビュー・アルバム『Flesh and Blood』をリリースし、翌12月に渋谷WWWにて行われたワンマンは、アルバム発売日を前に完売。その後も、FUJI ROCK、VIVA LA ROCK、TAICOCLUBなどの音楽フェスへの出演も果たした他、ウォーペイント (Warpaint)、マウント・キンビー(Mount Kimbie)、アルト・ジェイ(alt-J)ら海外アーティストの来日ツアーでサポート・アクトにも抜擢されるなど、活況を迎えるシーンの中で、独特の輝きを放ち続けた yahyel(ヤイエル)が、1年3ヶ月の時を経て、2度目のワンマンライヴそしてレコ発ツアーが決定!
宇宙人を名乗る yahyel があえて「Human」と冠した今回のレコ発ツアー、果たして観る者にどんな体験を与えてくれるのか?
映像作家としても活躍する山田健人によるミュージック・ビデオと共に発表したシングル「Iron」と「Rude」を経て、なお成長スピードを加速させる彼ら。特異な楽曲とアレンジ、高い演奏力そして独創的な映像が一体となった圧巻のライヴは、更なる進化を続けている。ネクスト・レベルへ達した yahyel の最新パフォーマンスは必見! チケットの確保はお早めに!

3/29 (THU) 東京 LIQUIDROOM
OPEN 19:00 / START 19:30前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: BEATINK 03-5768-1277 www.beatink.com
★イープラス・プレイガイド最速先行受付(抽選):1/20(土)12:00~1/25(木)23:59

3/31 (SAT) 京都 METRO
OPEN 18:00 / START 18:30 前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: 京都 METRO 075-752-4765 https://www.metro.ne.jp
★イープラス・プレイガイド最速先行受付(抽選):1/20(土)12:00~1/25(木)23:59

4/5 (Thu) 札幌 DUCE
OPEN 19:00 / START 19:30 前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: WESS 011-614-9999 https://www.wess.jp
★イープラス・プレイガイド最速先行受付(抽選):1/20(土)12:00~1/25(木)23:59

4/6 (FRI) 名古屋 RAD HALL
OPEN 19:00 / START 19:30 前売¥3,500(税込/1ドリンク別途)
INFO: JAILHOUSE 052-936-6041 www.jailhouse.jp
★イープラス・プレイガイド最速先行受付(抽選):1/20(土)12:00~1/25(木)23:59

4/7 (SAT) 大阪 (詳細後日発表)
★TBC

4/8 (SUN) 高知 CARAVAN SARY
OPEN 18:30 / START 19:00前売¥3,000(税込/1ドリンク別途)
INFO: 088-873-1533 www.caravansary.jp/sary/topsary.htm
★2/5(月)~CARAVAN SARY店頭、ぴあ、LAWSON、DUKE TICKET

label: Beat Records
artist: yahyel
title: Human

release date: 2018.03.07 wed ON SALE
初回限定盤2CD BRC-567LTD ¥2,800+税
国内盤CD BRC-567 ¥2,300+税
国内盤LP+DL BRLP567 ¥3,000+税

【ご予約はこちら】
beatink: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9264
amazon
BRC567LTD: https://amzn.asia/hypOdKG
BRC567: https://amzn.asia/1P9YGdB

[TRACKLISTING]
DISC 1
01. Hypnosis
02. Nomi
03. Rude
04. Battles
05. Polytheism (feat. Kim Ximya)
06. Acedia (Interlude)
07. Body
08. Iron
09. Pale
10. Lover

DISC 2 (BRC-567LTD)
*Bonus Disc

Media Culture in Asia: A Transnational Platform - ele-king

 魅力的なカルチャー・イヴェント情報が編集部に届きました。
 “Media Culture in Asia: A Transnational Platform”、略して「MeCA(ミーカ)」が2月9日から18日までの10日間開催されます。近年急速な発展を続けているというアジアのメディアカルチャーを、展覧会やオールナイト・ライヴ、ワークショップなどを通して発信する試みのようです。
2月9日にはWWW、WWW Xにて<Maltine Records>のトマドがディレクターを務めるオールナイト・イヴェントも開催されるようで、日本からはトーフビーツ、ヤング・ジュブナイル・ユース、パークゴルフらのほか、KimoKal、Meuko! Meuko! などアジア諸国のアーティストも出演する。またモートン・サボトニックが作り上げた電子音楽史に残る60年代の名作『Silver Apples of the Moon』を、アルバム・リリース50周年記念ヴァージョンとして、リレヴァン、アレック・エンパイアらと再構築するパフォーマンスも見逃せない。
 展覧会では坂本龍一+高谷史郎をはじめとした様々な地域からのアーティストが、日本初公開作品を含むメディアアートの展示が行われる。
 アジア・ハイカルチャーの最先端をお見逃しなく!

MeCA
Media Culture in Asia: A Transnational Platform

開催期間:2018年2月9日(金)~18日(日)
会場:表参道ヒルズ スペースオー、ラフォーレミュージアム原宿、Red Bull Studios Tokyo、WWW、WWW X 他

スケジュール:
メインイベント
1 展覧会(Art Exhibition):2月9日(金)~18日(日)
2 音楽プログラム(Music Program):2月9日(金)
3 教育普及プログラム(Education Program):
  2月10日(土)、12日(月・振休)、17日(土)、18日(日)
4 関連プログラム(トークイベント、ギャラリーツアー):会期中
同時開催イベント
1 公募型キャンププログラム(Camp Program):2月10日(土)~17日(土)
2 国際シンポジウム(International Symposium):2月11日(日・祝)

<展覧会>
会期:2月9日(金)~18日(日) 開場時間:11:00~20:00(最終日は17:00まで)
会場:表参道ヒルズ スペース オー、ラフォーレミュージアム原宿
出展アーティスト:坂本龍一+高谷史郎(日本)、平川紀道(日本)、Guillaume Marmin and Philippe
Gordiani(フランス)、Couch(日本)、Bani Haykal(シンガポール)ほか(約10組を予定)

入場料(MeCAチケット):ワンデイチケット 1000円/オールデイパス 1800円 / 中学生以下無料
※トークイベント、ギャラリートーク、ワークショップにも参加可。

<音楽プログラム>
日時:2月9日(金)21:00~29:00(開場20:00)
会場:WWW、WWW X(渋谷)
出演者:tofubeats(日本)、Meishi Smile(アメリカ)、similarobjects(BuwanBuwan Collective トーフビーツメイシスマイルシミラーオブジェクツ
/フィリピン)、KIMOKAL(インドネシア)、Morton Subotnick(アメリカ)、Lillevan(ドイツ)、キモカルモートンスボトニックリレヴァン
Alec Empire(ドイツ)、Jacques(フランス)、ほか(全13組を予定)

チケット:前売り 3500円/当日 4000円
※MeCAチケットをお持ちの方は当日受付にて1ドリンク無料。

詳細は以下のリンクにて。
https://meca.excite.co.jp/projects/ticket/

 おかげさまで大好評の『バンドやめようぜ!』。そのリリース・パーティが決定しました。2月5日下北沢THREE、入場料は無料! 
 なので、ぜひ、ぜひ、イアン・マーティン推薦のインディ・バンドの演奏とDJをお楽しみください!
 

■Call And Response Indie Disco presents:
『バンドやめようぜ!』リリース・パーティ

PLACE: 下北沢THREE
DATE: 2/5(月)
TIME: 19:30 open/start
CHARGE: FREE
LIVE:
・The Fadeaways
・(m)otocompo
・JEBIOTTO
DJs:
・Fumie (Bang The Noise)
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嘘八百 - ele-king

 邦画をバカにしていた頃、とくにエンターテインメントだと、観終わってから「ハリウッド・リメイクあり」か「なし」を判定して遊ぶということをやっていた。「日本人にしかわからないからいい」という場合もあるのでややこしいけれど、まあ、たいていは面白くて外国の人にも通じる普遍性があれば「あり」というような判断だった。その習慣にならっていえば『嘘八百』は「リメイクあり」。ハリウッドというよりイタリアかフランスには楽しんでくれる人がいそうだなと。最近のフランス映画でいえばクザビエ・ボーヴォワ監督『チャップリンからの贈りもの』ともよく似ていて「駆け引き」で見せるところも通じている。『チャップリンからの~』はチャップリンの遺体が墓から盗まれ、遺族に身代金が要求されたという史実を元にしたコメディ。企画を持ちかけられたチャップリンの遺族は思い出したくもない過去をほじくり返され、最後は……ノリノリで出演までしているという制作話がまたよかった。これにストーリーもテーマも被るものがあり、「チャップリン」の位置にくるのは『嘘八百』では「千利休」ということになる。『百円の恋』の監督と脚本家が再タッグを組んだということだけで興味を持った僕は何も知らずに見始めたので、まさかコメディで、しかも「利休の茶碗」をめぐるスウィンドル・ムーヴィーだとは思ってもみなかった。外国の人に伝わらないとしたら、この「利休の茶碗」というモチーフになるのでしょうか(「風流」というのはクール・ジャパンなんだろうかどうだろうか?)。

 骨董品を扱う小池則夫(中井貴一)が娘を連れて民家を訪ねてまわり、蔵などから掘り出し物を探すところから話は始まる。企画の発端は堺市に焦点を当てることだったそうで、最初から堺市の町並みを強調していたのかもしれないけれど、僕は行ったことがないので、映像にそのような醍醐味があるのかないのかもわからなかった。貧富の差に関わらず全編を通して堺市の町並みには閉塞感だけが感じられた(道を歩いていても誰かに会う気がしないという)。小池が最初に尋ねた家には野田佐輔がいて、気安く蔵の中を見せてくれる(野田役を演じる佐々木蔵之介はちなみに『夫婦フーフー日記』で「”I’M FISH”」のTシャツを2回も着ていた人気の京男)。そして、骨董品屋に売りつけられたという茶碗を見せられた小池はそれは偽物ですねといって安く買い取り、その茶碗を売った骨董品屋に詐欺の証拠品として突きつけてみるも店主には軽くいなされてしまう。あぶく銭をせしめられず腐っている小池に今度は野田の方から電話が入り、小池はある書状を手掛かりに「利休の形見」を発見する。しかし、案の定(以下、ネタばれ)それは偽物で、しかも野田はその家の住人でもなければ蔵の持ち主でもないことが判明。野田の足取りを追って小池が発見したのは居酒屋を拠点とする贋作グループの存在であった(そのひとりとして『0.5ミリ』でも抜群の演技を見せた坂田利夫が登場~)。

『ウルフ・オブ・ストリート』はディカプリオ演じるジョーダン・ベルフォートとジョナ・ヒル演じるダニー・アゾフが投資会社を始めるところから話は滑りだす。同じくジョナ・ヒルとマイルズ・テラーが手を組んだ『ウォー・ドッグス』もふたりが兵器の輸入会社を興すところから話は大きくなっていく。統計を取ったわけではないけれど、邦画には『トラック野郎』や『まほろ駅前多田便利軒』のように似た者同士がタッグを組むということはあっても、ひとりが独特な才能を持ち、もうひとりがマネージメント能力でこれと結びつくという関係が軸になる作品がすぐには頭に浮かんでこない。ひとりで孤独な戦いに挑むか3人以上の集団で何かを成し遂げるという話はいくらでもあるのに、そもそも「ふたり」という単位が少ないというか、映画的な主人公はひとりであっても、その動きが「ふたり」を起点としているという発想になかなか出会うことがない。『昭和残俠伝』はパートタイム的だし、『下妻物語』も戦う場所は別々。うまく言えないけれど、師弟コンビのように上下のある関係ではなく、ある種の才能とそれを管理する才能があくまでも対等に位置しながら世界に対していくという設定が不勉強のゆえかどうしても思いつかない。強いて言えば夫婦で結婚詐欺を繰り返す『夢売るふたり』がそうかなと。『嘘八百』も詐欺を仕掛けるのはグループといえばグループなんだけれど、集団性がそのダイナミズムを生み出したり、大きな波が個人を飲み込んでいくようなものにはなっていかない。「小池と野田が手を組んでから」はあくまでも個人と個人が力を引き出し合っていく。

 日本の雇用は流動性が低いとされる。非正規雇用の増大には流動性を高めるという目的もあったと記憶しているけれど、それは小池と野田が手を組むように、ケース・バイ・ケースで個人と個人が能力を引き出しあう機会を増やし、特定の関係や組み合わせを固定しない社会を生み出したかったということではなかったかと記憶している。しかし、実際に非正規雇用が増えると、そのマイナス面ばかりが目立ったということは、非正規は労働の組み合わせを変える要因ではなく、タテ社会そのものはまったく変更が加えられていないので、単にその下部組織にしかならなかったという結論が出ているのではないかと。日本の労働はやはり家父長制的で、部下の能力を正確に評価するよりも忠実な奴隷と化した者に権力を譲渡するというパターンが大半なのだろう。こうした組織のあり方に馴染めなかった人たちが結果的に非正規として締め出されただけだとすると、個人の能力が生かされる場面などはこれからもとうてい望めないだろうし、日本企業が活性化せず、異次元緩和で延命しているだけという現状はやはり危機感を抱かざるを得ない(いまから思えば日テレもよく『ハケンの品格』などというドラマをつくっていたなーというか)。『嘘八百』で組む「ふたり」がすでに中年だというのはとても象徴的で、従来の組織で生かされなかった「ふたり」の才能が出会い、詐欺とはいえ経済を動かすということは、まるでかつて非正規が夢見せられた働き方を異次元で成立させているかのようなファンタジーにも見えてくる。「非正規よりも正社員に」という流れの中にこの作品を置いてみると、なんというか、これが最後の「抵抗」にさえ思えてくる。

 また、小池と野田が能力を発揮する場面が上等な部類に入るものだとしても、やはり詐欺行為にカウントされるということはある種の示唆に富んでいる。就職氷河期と呼ばれ、いわゆる正規職につけなかった世代の始まりと共に増大したのがオレオレ詐欺で、そもそもそれは政策の失敗から導かれた犯罪ではなかったかと思ったりもするからである。相関関係を証明した人はいないかもしれないけれど、正規雇用の門が閉ざされればそのようなスピン・オフが起きることは経済の専門家さんたちに予想されてもよかったのではないかと。
『嘘八百』にはまた、並行してラヴ・ストーリーも描かれている。その収め方というか、メイン・ストーリーとの絡め方も意表をついていて楽しかった。惜しむらくは「嘘八百」の「八百」は江戸八百八町に由来しているので、堺市なりのタイトルをひねり出して欲しかったということくらい。

Mining - ele-king

 ジム・オルーク × 石橋英子 × 日高理樹という強力かつ斬新な組み合わせによるライヴ・プロジェクト、「Mining」の続編が東京・山梨でも開催される。ジムはギターにシンセサイザー、石橋英子はフルートとエレクトロニクス、日高理樹はギター。ライヴは3部に別れており、1部は日高理樹ソロ、2部はジム・オルークと石橋英子によるライヴ、そして3部では3人による即興演奏が予定されている。君も目撃者になれ!

2月5日 (月)
@東京 渋谷7th FLOOR

OPEN:19:00
START:20:00
料金:前売¥4.000 / 当日¥4.500 (+1drink order)
出演:ジム・オルーク × 石橋英子 × 日高理樹
チケット取り扱い:e+ / 渋谷7th FLOOR店頭 (03-3462-4466)
メール予約:info@stereo-records.com
チケット発売:1月5日 11:00~ (7thFLOOR店頭 16:00~)

2月7日 (水)
@山梨 桜座
OPEN:18:30
START:19:30
料金:前売¥4.000 / 当日¥4.500 (+1drink order)
出演:ジム・オルーク × 石橋英子 × 日高理樹
チケット取り扱い:桜座店頭 (055-233-2031)
メール予約:info@stereo-records.com
:kofu@sakuraza.jp
チケット発売:1月5日 11:00~



●ジム・オルーク
1969年シカゴ生まれ。Derek Baileyの音楽と出会い、13才のジム少年はロンドンにBaileyを訪ねる。ギターの即興演奏に開眼し実験的要素の強い作品を発表、John Faheyの作品をプロデュースする一方でGastr Del SolやLoose Furなど地元シカゴのバンドやプロジェクトに参加。一方で、小杉武久と共に Merce Cunningham舞踏団の音楽を担当、Tony Conrad、Arnold Dreyblatt、Christian Wolffなどの作曲家との仕事で現代音楽とポストロックの橋渡しをする。1998年超現代的アメリカーナの系譜から『Bad Timing』、1999年、フォークやミニマル音楽などをミックスしたソロ・アルバム『Eureka』を発表、大きく注目される。1999年から2005年にかけてSonicYouthのメンバー、音楽監督として活動し、広範な支持を得る。2004年には、Wilcoの『A Ghost Is Born』のプロデューサーとしてグラミー賞を受賞、現代アメリカ音楽シーンを代表するクリエーターとして高く評価され、ヨーロッパでも数々のアーティストをプロデュースする。また、日本文化への造詣が深く、近年は東京に活動拠点を置く。日本でのプロデュース・ワークとしては、くるり、カヒミ・カリィ、石橋英子など多数。坂田明、大友良英、山本精一、ボアダムスなどとの共同作業や、武満徹作品『コロナ東京リアリゼーション』(2006)など現代音楽に至る多彩な作品をリリースしている。映像作家とのコラボレーションも多くWerner Herzog、Olivier Assayas、青山真治、若松考二などの監督作品のサウンドトラックを担当。


●石橋英子
茂原市出身の音楽家。いくつかのバンドで活動後、映画音楽の制作をきっかけとして数年前よりソロとしての作品を作り始める。その後、6枚のソロアルバムをリリース。各アルバムが音楽雑誌の年間ベストに選ばれるなど高い評価を受ける。ピアノをメインとしながらドラム、フルート、ヴィブラフォン等も演奏するマルチ・プレイヤー。シンガー・ソングライターであり、セッション・プレイヤー、プロデューサーと、石橋英子の肩書きでジャンルやフィールドを越え、漂いながら活動中。最近では七尾旅人、前野健太、星野源、OGRE YOU ASSHOLEなどの作品やライブに参加。映画音楽も手掛けている。またソロライブと共に、バンド「石橋英子withもう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子)」としても活発にライブを行う。4thアルバム「imitation of life」、そして2014年リリースの最新作「car and freezer」は米・名門インディレーベル「Drag City」から全世界発売。ら2016年春にMerzbowとのDUO作品を電子音楽レーベルEditions Megoからリリースした。

石橋英子HP
https://www.eikoishibashi.net/


●日高理樹 / Riki Eric Hidaka
91年生まれ。ギター奏者。
日高理樹 / Riki Eric Hidaka HP
https://rikihidaka.tumblr.com/


TOTAL INFO

STEREO RECORDS
https://label.stereo-records.com/

Chris Carter - ele-king

 時代の流れとはあるもので、昨年末のTG再発の盛り上がりも、しかるべきタイミングのリリースだったからだと思う。TG再発は今年も続くが(なにせ彼らの最高傑作『D.o.A.』も人気盤の『Heathen Earth』もまだリイシューされていない)、その前にクリス・カーターのソロ・アルバムのリリースの情報が入ってきた。3月30日に発売される、『ケミストリー・レッスンズ Vol.1』と題されたその17年ぶりのソロ作は、ノイズ/インダストリアルの祖とされることから逃れるように、彼が時折見せていたポップな側面も見えつつ、しかしそのいっぽうで彼一流の不快な音響もある。作品では60年代の電子音楽も参照され、ピーター・”スリージー“・クリストファーソンと一緒に作ったという人工音声も使われている。なにはともあれ、このアルバムは期待しても良いだろう。65歳になったクリス・カーターの新たな挑戦である。


クリス・カーター(Chris Carter)
ケミストリー・レッスンズ Vol.1 (Chemistry Lessons Volume One)
3月30日 (金) 発売予定

『オール・アイズ・オン・ミー』 - ele-king

 僕が1年間に観る映画のうち試写会で観る本数は一割ないぐらい。サム・ライミ『死霊のはらわた』を観たのが最初で(ちなみにその時はひとりで観た)、緊張とまでは言えない独特の堅い雰囲気がだんだんと好きになり、映画館や家で映画を観ている時より集中力は高くなっている気がする。何年か前に映画の試写もネットで予約するという方式が広まるかに見えた。しかし、このやり方はすでに廃止。ネット予約はすっぽかされる率が高かったのだろう。そのため、それ以前から続けられているやり方にいまは戻っている。先着順である。僕はどうしても観たい作品の時には30分前に行って、それでも『IT(イット)』などはギリギリでセーフだった。2パックの伝記映画も絶対に競争率が高いと思い、僕はやはり30分前に試写室に辿り着いた。ところが僕を含めて5人ぐらいしか待っている人はいない。えー、そんなに注目されていないのかと僕は驚いた。が、そうではなかった。試写が始まる直前に普段は試写室で見かけないB・ボーイの格好をした人たちが次から次へと試写室になだれ込んで来たのである。試写が始まってから入って来た人もいた(普通、それはない)。それだけではない。上映している最中にポツポツとトイレに立つ人がいるのである。試写に行ったことがある人には考えられない光景だと思うけれど、ファッションも含め、試写室というよりもそこはまるでクラブであった。こんなことは初めてで、さすが2パックと思うしかなかった。

 回想シーンに続いて滑り出しはブラック・パンサーの裁判が終わった場面から。押し寄せるマスコミに「弁護士をつけずに勝った」とアフェニ・シャクール(ダナイ・グリラ)は誇り高く言い放つ。彼女のお腹には胎児の2パックがすでに宿されている。ニューヨークからボルティモアに移って青年時代の2パック(ディミートリアス・シップ・ジュニア)がシェイクスピア劇の稽古をしているシーンやデートでの会話など感受性が育まれていく過程が手短に描かれる。そして経済的な理由でカリフォルニアに移動し、ワークショップの先生からショック・Gに会うことを勧められ、すぐにもディジタル・アンダーグラウンドに加入。いきなり全国ツアーを経験し、『ジュース』で映画デビューと、着実にキャリアが築かれていく一方、あれだけ毅然としていた母親は麻薬中毒になっている(ここから「ディア・ママ」に行ったと思うとなかなかに感慨深かった)。プロデューサーのL・T・ハットンは実際に2パックが残した言葉をデータベース化し、台本はそこから起こしていったそうで、取捨選択は働いているんだろうけれど、文学肌でギャングスタ、女好きでフェミニストといった2パックの多面性はもれなく網羅されている(あるいは、僕がすでにそういう目でしか2パックを見られなくなっているというバイアスをかけて見ているだけかもしれない)。逆にいうと2パックがどうしてあれだけ広く受け入れられたのかということは自明としている作品で、どの要素を前景化させるかによって、2パックのどこが世界と強く結びついたのかを解き明かそうとする意欲には欠けていたともいえる。レコード会社とのやりとりでネガティヴな作品を外そうとする経営陣に対し、そこを伝えなくてどうすると反論するあたりは(史実としてその要素があるのなら)反復強化する価値はあったと思ったり。

 最初の山場はデス・ロウとの契約シーン。ドクター・ドレの業界における現在の位置を確認しているようだった映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』では最悪の存在として描かれていたシュグ・ナイトも、ここでは多面的な人物として登場してくる。ヒドい面は想像通りかそれ以上だったとして、僕が意外だったのは『オール・アイズ・オン・ミー』という(映画のタイトルにもなっている)アルバム・タイトルを決める際、2パックが「みんなに監視されているようだ」と呻いた言葉を受けて「それだ!」と言って、タイトルを決めたのがシュグ・ナイトだったこと。クリエイティヴには参加しているというイメージすらなかったので、このシーンを観て少し人物像に揺らぎが起きた。日本でもミュージシャンとトラブルになる事務所やレコード会社のスタッフは多く、ミュージシャンの言い分しか世間には流通しないことが常だけれど、単に金の亡者としか思えない人がめったやたらといるわけではなく、スポットが当たらないのはもったいないと思うマネージャーや経営者はごまんといる。デス・ロウというレーベルはやはりラップに一時代を築いたわけだし、シュグ・ナイトにまったく存在価値がなかったわけではなく、本人は『ストレイト・アウタ・コンプトン』の撮影を邪魔しようとして殺人罪で逮捕されてしまったこともあり、彼の元で育った面もあるL・T・ハットンが2パックに寄せてシュグ・ナイトのこともそれなりに描きたかったのではないかということが、いくつかのシーンからは伝わってくる。だいたい、シュグ・ナイトを演じるドミニク・サンタナが妙に愛嬌を感じさせる役者で、それだけでも意図があるとしか思えない。考えすぎだろうか。ちなみに2パックが「みんなに監視されている」と感じていた理由はもう少し説明があってもよかった。

 東西抗争が重視されているとはいえない描き方もこの映画の特徴だろう(ビギーが撃ち殺されるシーンもない)。一昨年、DJプレミアにインタビューした際も、そんなものはなかった、マスコミが作ったものだと、東西抗争という考え方から彼は離れたがっているように見えたし、考えてみればあんなことがあったことをいつまでも誇りのように思っている業界などあるはずもない。それはこの作品も同じ考えなのか、そのことと呼応するように2パックを撃ったのではないかと思えてくる人物を何人か登場させ、銃撃が行われた瞬間、あいつだったんじゃないか、それともあいつかと、頭が勝手に犯人探しを始めてしまう。フィクションならば、その答えも明かされるんだろうけれど、エンド・クレジットにはいまだに犯人はわからないという文字が並び、わかっているのに意外とこの瞬間は切なかった。ギャングスタ・ラップの象徴的存在としてマスコミから集中砲火を浴びた経過も一通り描かれていたので、彼が撃たれた時にはそれみたことかという報道だったんだろうか、それとも、多くがそうした反応だったとしても、現在までにそのニュアンスは変わったんだろうかと、そういったことが一気に押し寄せてきた瞬間でもあった。2パックが25歳で没したことはクインシー・ジョーンズが悲劇として様々な言葉を残しているものの、娘のキダーダ・ジョーンズ(アニー・イロンゼ)が初めて父親に交際を許されたのが2パックだったということも僕はこの映画で初めて知った。ちなみに彼の名前であるインカ帝国最後の皇帝トゥパク・アマルも26歳でスペイン軍によって殺されている。

 共産主義者でマキャヴェリにかぶれ、シャイで喧嘩っ早く、優しくて自己顕示欲が強いなど、若き2パックが矛盾の塊であることに不思議はないものの、生きていれば人権派として伸びたんじゃないかという余韻が残った映画ではあった。この日の試写会がいつもと同じだったのは、映画が終わっても誰も何も喋らず、無言で帰っていったところだろうか。皆さん、静かな気持ちになっちゃったんでしょうか。

*ヒップホップについて一通りの知識がないと、この映画は難解かも。2パックについてものすごく詳しいという人が観る場合はわからないけれど、僕みたいに中途半端に知ってるぐらいが一番楽しめるのではないかと。


(予告映像)

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