「KING」と一致するもの

Coldcut - ele-king

 いったい何年ぶりだろう。ひい、ふう、みい……じゅ、10年ぶりじゃないか! ついにコールドカットが再始動する。まずはEPからだ。
 色々と思いはある。もしこのふたり組がいなければ、UKのクラブ・シーンは、いや、世界のクラブ・シーンはまったく別物になっていただろう。……が、とりあえず僕の感慨は脇に置いておいて、とにかくいまはみんなで、この伝説のデュオの帰還を祝おうではないか。リリースは11月25日。あと3週間だ!

〈NINJA TUNE〉主宰の大重鎮、コールドカットが再始動!
超待望の最新作『Only Heaven EP』のリリースを発表!
新曲「Donald’s Wig feat. Roses Gabor」を公開!


Photo : Hayley Louisa Brown

アンダーワールド、ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリムらとともにUKクラブ・シーンの黄金期を牽引したサンプリング・カルチャーのパイオニアであり、アンクル、DJシャドウ、カット・ケミスト、DJクラッシュらと並んで、ブレイク・ビーツ黎明期の最重要ユニットにも挙げられるレジェンドがついに再始動! ジョン・モアとマット・ブラックによる伝説的ユニット、コールドカットが、〈Ninja Tune〉発足以前に初音源をリリースした伝説的レーベル〈Ahead Of Our Time〉から、超待望の最新作「Only Heaven EP」のリリースを発表! 新曲“Donald’s Wig feat. Roses Gabor”を公開した。

Coldcut - Donalds' Wig feat. Roses Gabor

「Only Heaven EP」には、“Donald’s Wig”や、M.I.Aやビヨンセのプロデュースやメジャー・レイザーの初期メンバーとして知られるスウィッチとの共同プロデュースで、ヴォーカリストに盟友ルーツ・マヌーヴァ、ベースにサンダーキャットが参加した“Only Heaven”を含む5曲が収録される。

長い沈黙を破り、ついに復活したコールドカットの最新作「Only Heaven EP」は、11月25日(金)にデジタル配信と12”でリリースされる。iTunesでアルバムを予約すると、公開された“Donalds' Wig feat. Roses Gabor”がいちはやくダウンロードできる。

label: Ahead Of Our Time
artist: Coldcut
title: Only Heaven EP

release date: 2016.11.25 FRI ON SALE
cat no.: AHED12014(12"+DLコード)

beatkart (12") : https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002120
iTunes Store (Digital) : https://apple.co/2fkgmkO

[Tracklisting]
1. Only Heaven feat. Roots Manuva
2. Creative
3. Dreamboats feat. Roots Manuva and Roses Gabor
4. Donald’s Wig feat. Roses Gabor
5. Quality Control feat. Roots Manuva

Jeff Mills - ele-king

 はい、こんにちは。現在ele-kingはジェフ・ミルズにジャックされております。またまたニュースでございます。
 先日、アフターパーティの開催をお伝えしましたが、その本公演のお知らせです。来る11月18日(金)、国内屈指の室内楽ホールの1つである浜離宮朝日ホールにて、ジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作の日本プレミア上映会が開催されます。同公演は、AACTOKYOが手がけるプロジェクトの第1弾でもあります。構成と演出はジェフ・ミルズ本人が、映像共同演出は新進気鋭の映像集団Cosimic Labが担当します。
連日お伝えしているように、この秋はジェフ・ミルズのイベントが目白押しです。もうこの際みなさんも心を決めて、ジェフ・ミルズにジャックされちゃいましょう!

AACTOKYO 第1弾プロジェクト
JEFF MILLS CINE-MIX “THE TRIP”

!! ジェフ・ミルズのシネミックス最新作 ジャパン・プレミア公演 !!

2014年のプレ開催を経て、昨年は東京、神戸、川崎の3都市で開催したアート・フェスティヴァル「TodaysArt.JP」が、2016年、世界に名だたるコスモポリス「東京」を舞台に、世界と日本を紡ぐアートのプラットフォームとなるべく、世界で開催されている様々なアート・フェスティヴァルとも連携しなが『AACTOKYO (アークトーキョー: Advanced Art Conference Tokyo)』として進化しました。
そんな『AACTOKYO』が手がけるプロジェクト第1弾として、浜離宮朝日ホールでのジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作のジャパン・プレミア公演が決定です!

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ジェフ・ミルズがお届けする映像体験作品「THE TRIP」。
実験的でコンセプチュアルなテクノ・ミュージックの象徴的な存在として、またサイエンス・フィクション映画に魅了されたひとりとして、ジェフ・ミルズは「自身の作品をフィルムや映像のために制作しなければ」という衝動に駆られ、2000年より「シネミックス」というスタイルに着手しました。今回ご紹介するシネミックス作品は、日本人映像作家とのコラボレーションによる1時間半に及ぶサウンドとイメージのマスター・ミックス。
60以上のオールド・SF・ムーヴィー(1920~70年代)から抽出した映像+音像のライヴ・ミックスは、彼のエクスペリメンタルかつコンセプチュアルなDJ・ミックスと同じ原則に従い、私たちの美の鼓動、カオス、畏怖なる感情を呼び起こしてくれることでしょう。
「THE TRIP」は住みづらくなってしまった地球から、新しい世界を探すために地球より遠く離れた場所を開拓していくという、これから人間が経験するであろうテーマが描かれています。精神的かつ心理的な強烈な映像+音像体験が、あなたを未知の時空へお連れします。

Jlin - ele-king

 RP Boo率いるD'Dynamicsクルー所属のフットワーク第2世代プロデューサー、Jlin(ジェイリン)。僕が初めてその名を認識したのは、2011年に〈Planet Mu〉からリリースされたコンピレイション『Bangs & Works Vol.2』だったのだけれど(“Erotic Heat”のかっこよさといったら!)、その後の彼女の活躍はめざましく、あれよあれよという間にフットワークの新世代を担う中核アーティストへと成長していった。実際、昨年〈Planet Mu〉からリリースされたアルバム『Dark Energy』は、英『WIRE』誌の年間ベスト・アルバム第1位に選出されるなど、海外での彼女の評価の高さは尋常じゃない。

 このたび、そのJlin初の来日公演が開催されることとなった。大阪と東京の2ヶ所をまわる今回のツアーは、ジューク/フットワークのファンにとってのみならず、広くベース・ミュージックを愛する者たち全員にとってスルー厳禁の公演と言っていいだろう。詳細は下掲のリンクから!

フットワーク新章! 英『WIREマガジン』年間ベスト・アルバム第1位、Pitchfork Best New Musicなど2015年の年間チャートを総なめにし、シーン初の女性アーティストとして華々しいデビューを飾ったシンデレラJlinが満を持しての初来日!!

Jlin Japan Tour 2016


11.19 sat at CIRCUS Osaka | SOMETHINN Vo.18
w/ D.J.Fulltono, CRZKNY, Keita Kawakami, Hiroki Yamamura, Kakerun
OPEN / START 23:00
ADV ¥2,000+1D | DOOR ¥2,500+1D
https://circus-osaka.com/events/somethinn-vol-18-feat-jlin/


11.23 wed holiday at CIRCUS Tokyo | BONDAID #11
w/ Theater 1, D.J.Fulltono, CRZKNY
OPEN / START 18:00
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | UNDER 25 ¥2,000+1D
https://meltingbot.net/event/bondaid11-jlin-theater1

主催 : CIRCUS
制作 / PR : SOMETHINN / melting bot

Jeff Mills - ele-king

 ジェフ・ミルズはどこまで進み続けるつもりなのでしょう?

 すでに11月18日に表参道のVENTにて公演をおこなうことが決定しているジェフ・ミルズですが、ここにきて新たなイベントの情報がアナウンスされました。
 来年初頭にオーケストラのために書き下ろした新しいアルバム『Planets』をリリースするジェス・ミルズですが、なんと、その先行試聴会とトーク・イベントが11月15日(火)に開催されます。会場は日本科学未来館 ドームシアター ガイア。来るべき新作『Planets』とは一体どんなアルバムなのか? いちはやくその一端に触れるチャンスです!
 詳細は以下を。

Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)、来年リリースの新作アルバム『Planets』の特別先行リスニング & トークイベントを日本科学未来館で開催!!

世界的なテクノ・プロデューサー、DJであるJeff Mills(ジェフ・ミルズ)が、来年2017年初頭に、初めてオーケストラのために書き下ろした新作『Planets』をリリースします。

PlanetsTrailer1

この作品の発表に先駆け、2016年11月15日(火)、日本科学未来館 ドームシアター ガイアにて、特別先行リスニング& トークイベントを開催することが決定しました。

Jeff Millsは2005 年、フランス南部のポン・デュ・ガールにて行われたモンペリエ交響楽団との共演以来、各国のオーケストラと世界各地でコンサートを行い、これまで全公演がソールドアウト。今年、3月21日に東京渋谷・Bunkamura オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、『題名のない音楽会』(TV朝日)への出演が話題となったことも記憶に新しいところです。

Jeff Millsの新作『Planets』は、長年にわたるオーケストラとの共演を通して積み上げられた蓄積が注ぎ込まれた大作であり、これまで様々な作品を通して、私達の住む“宇宙”というテーマに向き合ってきたジェフ・ミルズの作品史上、最大の野心作。太陽系の各惑星へ旅をするチュートリアルなのです。

2017年の作品発表に先駆け、日本科学未来館の協力のもと、ドームシアター ガイアを会場に、5.1chサラウンドのサウンドシステムでいち早く新作『Planets』を体感していただく機会を設けることができました。また当日はJeff Millsが来場し、新作についてのトークも披露します。

チケット《https://jeffmillsplanets.peatix.com》は10月31日より発売開始。イベントは全3回、各回定員100名限定なのでご購入はお早めに。


【イベント開催概要】

[タイトル]
Jeff Mills新作アルバム『Planets』特別先行リスニング & トークイベント
開催日: 2016年11月15日(火)
会場:日本科学未来館 6Fドームシアター(東京都江東区青海2-3-6)
入場料:¥1,000(税込)
チケット購入:https://jeffmillsplanets.peatix.com

[スケジュール]
*定員:各回100名様
第1回 16:30-18:00
第2回 18:30-20:00
第3回 20:30-22:00

[プログラム]
・サイエンストーク「宇宙観・惑星観の変遷」
解説:ディミトリス・コドプロス(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
・楽曲「Planets」リスニング
・ジェフ・ミルズ トーク

[イベントに関するお問い合わせ]
U/M/A/A Inc.ユーマ株式会社
メール:info@umaa.net

■アーティスト・プロフィール

ジェフ・ミルズ(Jeff Mills)氏  テクノ・プロデューサー/DJ
1963年アメリカ、デトロイト生まれ。デトロイト・テクノと呼ばれる現代エレクトロニック・ミュージックの原点と言われるジャンルの先駆者。DJとして年間100回近いイベントを世界中で行なう傍ら、オーケストラとのコラボレーションを2005年より開始、それ以降世界中で行った全公演がソールドアウト。クラシック・ファンが新しい音楽を発見する絶好の機会となっている。オーケストラのために書き下ろした作品『Planets』を2017年初頭、発売予定。

■『Planets』について
ジェフ・ミルズ氏は2005 年、フランス南部のポン・デュ・ガールにて行われたモンペリエ交響楽団との共演以来、各国のオーケストラと世界各地でコンサートを行い、これまで全公演がソールドアウト。2016年3月21日に東京渋谷・Bunkamura オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、『題名のない音楽会』(TV朝日)への出演が話題となったことも記憶に新しいところです。

新作『Planets』は、長年にわたるオーケストラとの共演を通して積み上げられた蓄積が注ぎ込まれた大作であり、これまで様々な作品を通して私達の住む“宇宙”というテーマに向き合ってきたジェフ・ミルズ氏の作品史上、最大の野心作です。

■ドームシアター ガイア

日本初の全天周超高精細立体映像システム“Atmos”や、1000万個の恒星を投影するプラネタリウム投影機“MEGASTAR-II cosmos”、7.1chの立体音響を備えた、直径15メートルのドーム型シアターです。

interview with Warpaint (Theresa Wayman) - ele-king


Warpaint - Heads Up
Rough Trade/ホステス

Indie PopIndie Rock

Amazon Tower

 結成12年という安定期に入っているはずなのに、このバンドは決して一定のトーンに安住する気配を見せない。言い換えれば、作品ごと本能的に焦点を絞り込むことができる、常に柔軟なバンドということもできるだろう。2010年のファースト『ザ・フール』はアンドリュー・ウェザオールがミックスを担当、2年前のセカンド『ウォーペイント』はプロデューサーがフラッドでナイジェル・ゴドリッチもミックスを手がけていた。だが、届いたばかりのサード『ヘッズ・アップ』にはそうした“UKの著名人”は関わっていない。かと言って、彼らが拠点とするLA人脈……最初のEP「Exquisite Corpse」のミックスを手がけたジョン・フルシアンテやジョシュ・クリングホファーの姿もここには直截的にはない。では、今作で彼女たちがどこを向いているのか、と言えば、ダンス・ミュージック。それも90年代スタイル(形式だけではなく音質なども含めて)のカジュアルなブラック・ミュージック・オリエンテッドな“踊れる音楽”だ。
 それがたぶんにナイル・ロジャースが制作に関わったダフト・パンクの“Get Lucky”や、マイケル・ジャクソンの“Smooth Criminal”などをサンプリングしたケンドリック・ラマーの“King Kunta”あたりが中継点になっていることは明白で、そこから90年代――それはウォーペイントの4人がティーンエイジャーだった時代だが――へと舵を切った結果、頭で考えず、感覚でビートに抱かれることを望んだような作品につながったのではないかと想像できる。歌詞の簡略化……というよりシンプルなラヴ・ソングである“New Song”のようなリリックの曲を億面もなく提示してきていることからも、今の彼女たちが90年代スタイルのドレス・ダウンさせたダンス・ミュージックを体感的に求めていたことがわかるだろう。
 しかしながら、ウォーペイントの4人が過去積み重ねてきたキャリアにそっぽを向いているのかと言えば全くそうではない。結果、彼女たちはLAを起点に、様々なエリア、世代、フィールドへとさらに大きなストライドで足をかけることになった。それは、リベラルであることを意味するものであり、決して足下が浮ついていることを意味しているのではない。ヴォーカル/ギターのテレサ・ウェイマンが語る新作にまつわる思惑と手応えは、こちらが想像していた以上に邪気がなく、そして開放的だった。それが、何よりの証拠である。

多分、これまで自分たちにはすごく遠かったポップ・ソングをわざと選んだんだと思う。自分たちにとって心地よい領域ではないことをあえて選ぶ事で、領域を広められるから。

この1年ほどずっとメンバー個別の活動をしていたことから、次の作品では何か大きく変化が現れるだろうと想像していましたが、思っていた以上に躍動的な方向に舵を切った印象です。あなた自身もホット・チップのメンバーらと新ユニット=BOSSとしてシングル「I'm Down With That/Mr. Dan' I'm Dub With That」をリリースしたり、Baby Alpacaにジョインしたりと活動の幅が広がっています。このような個別のアクティヴィティが今回の新作にどのようなフィードバックをもたらしたと考えますか?

テレサ・ウェイマン(以下、TW):このアルバムの躍動感は、他のプロジェクトから直接的に影響されたものではなくて、前作のアルバムのツアーを終えて、みんなで次はもっとダンス・ミュージックっぽいアルバムを作ろうって決めてたからなの。自然とライヴでやりたい曲がダンス・ミュージックの要素が強い曲だった、と。その方がライヴで演奏する時に楽しいから。でももちろん他のプロジェクトの経験も刺激にはなったと思う。例えば、私がBOSSでリリースした曲は、プロデューサーのダン(Dan Carey)によるゲームみたいなものだったの。彼は、曲作りをする時に、条件を絞って曲作りをさせるんだけど、その狭められた条件の元に曲作りをするのは新しい経験だったし、すごく興味深かった。やれることもテーマもコンセプトも狭められることで、逆にその範囲でできることをより模索するっていう経験にもなった。それからウォーペイントのメンバーのジェン(ジェニー・リー・リンドバーグ)も、自分のソロ・アルバムに関してはあまり深く考えずにその時に感じた事を表現するようなアルバム作りをしていて、すごく衝動的だったみたい。そういう経験をそれぞれしたことで、また作品作りの新たなヒントにもなったし、いいレッスンになった気がする。あまり何かに固執しすぎないようにすることを教えてくれた気がするわ。

では、最初、あなた自身はこうした個別のアクティヴィティとは別に、このウォーペイントの新作について、どのような作品を目指したいと考えていましたか? 当初思い描いていた予想図を聞かせてください。

TW:コンセプトを持っていたとしたら、もう少しアップビートな作品にするってことくらいかな。今まではずっとBPMを90台に留めていたのよね。98BPMとか。だからそのテンポをもう少しあげて、ダンス・ミュージック要素が強いアルバムにしたかったの。多分、最初に決めてたコンセプトはそれくらいだったかな。決め事とかルールとか基本的に決めないのよね。私たちはいつもその時の衝動に身を任せるっていう方が合ってるから、ルールを決めたりはしないの。それは歌詞に関しても言えることで、テーマとか歌詞のコンセプトも決め込んだりはしない。例えば「このアルバムは失恋アルバムにしましょう!」、「これはラヴ・ソングが詰まったアルバムにしよう!」、「政治的なことを強く主張しよう!」みたいな決まりとかは作らない(笑)。でも今回は「ダンス・アルバム」にすることはキーワードではあったわね。

では、そうしたキーワードのもと、今作の楽曲がどのような環境で書かれたのかについて聞かせてください。今回のソングライティングはジャム・セッションではなく、個別の作業や、全員で合わせて一度持ち帰る……みたいなやりとりを経ての制作だったそうですね。なぜこうしたスタイルに替えてみたのですか?

TW:最初は個々に始めた感じだったの。当初、2015年を通して、作品をこまめにリリースすることにしようって話をしていたこともあって。1、2曲ずつ作って、その度にレコーディングして、そういう自由な流れに身を任せようって思ってて。結局そうはならなかったんだけど、そのつもりで制作を始めて、お互い自分の自宅のスタジオで制作を始めて、気付いたら2015年の終わりにはアルバムになるような曲数はできあがってた。だから最終的にはそれを仕上げるためにスタジオにみんなで入った。この経験を通して、今まで自分たちが持っていたもので出し切れてなかったものが強調された気がしたの。例えば、私とステラ(・モズガワ)が一緒に曲作りをする時、割とビートとかサンプルの要素が強いエレクトロニックな曲を作る事が多いの。でも全員でセッションで作る時はその要素はあまり出ないのよね。だからもともとお互いが持っていた要素だったとしても、制作の手法によってその要素が前に出なかったりするから、今回こうやって個々に制作を進めたことで、今まで目立たなかった個々の要素がいろんな形で前に出てきた気がする。みんながそれぞれ自分をより出せた気がするわ。

その結果、機能性の高いダンス・ミュージック的側面を持ったものになったわけですね。では、こうしたスタイルへと向かった理由を教えてください。具体的な参考になったもの、出会い、インスピレーションなどいくつかのキーワード、リファレンスを教えてもらえれば。

TW:正直に言うと、自分たちの影響を伝えるのって実はすごく難しくて。なぜかというと、本当にいろんなことから影響を受け、いろんな影響を表現している気がするから。まして、4人もいるとなるとなおさら。それぞれが個々のアングルから物事を表現していると、あるひとつのアングルから影響を受けたっていうことがない分、影響の幅がすごく広くて。だから例えば、ケンドリック・ラマーやジャネット・ジャクソンっていう名前を出すと、直接的にそういう影響が現れていないかもしれないから、すごく極端に聞こえる気もする。例えば自分の影響を具体的に説明するとしたら、アジーリア・バンクスの“212”という曲にインスパイアされて、私も“So Good”でそのインスピレーションを試してみたりしたの。もちろんすごく違う曲だけど、“212”の曲の構成がすごく珍しくて、その構成と、あのダンス感に聴いた時にすごく動かされるだけに、そういうアプローチを試してみたかった。すごくポップでとっかかりやすいけど、オーソドックスではない曲を作ってみたかったってわけ。あと、“New Song”はダフト・パンクの“Get Lucky”に影響を受けたの。実は、私たちのマネージャーはミュージシャンでもあるんだけど、彼からの提案もあった。すごく分かりやすいポップ・ソングを研究して、なんでその曲がポップなのか、どこが突き刺さるのかを理解して、それを自分たちも取り入れてみようって。多分、これまで自分たちにはすごく遠かったポップ・ソングをわざと選んだんだと思う。自分たちにとって心地よい領域ではないことをあえて選ぶ事で、領域を広められるから。実際にステラはアルバム製作中によくジャネット・ジャクソンを聴いていたんだけど、その時にすごく感じたのが、90年代のああいうポップ・ソングは、プロダクションがガヤガヤしていなくて、今聴いてもすごく美しいってこと。だから改めてそういう音楽を聴いて、それに気づけたことは、すごく啓発的でもあった。

確かに、ダンス・ミュージック・オリエンテッドな側面から見ても、あるいはオルタナティヴ・ロックなサウンド・プロダクションから見ても、全体的に90年代をひとつのキーワードにしている印象です。なぜ今、ウォーペイントが90年代なのでしょうか?

TW:私たちが影響されたものの多くがその時代のものなのは事実。人生の中でいちばん影響を受けた音楽はやっぱり90年代だと思う。その時私たちは10代、音楽をたくさん聴く中で、音楽が本当に大好きだって気づいた時代でもあるの。だから、いつもその時代の音楽には共感できるし、それは私だけじゃなくて、メンバー全員がそうだと思う。だから自分たちが90年代を狙って作った作品ではないけど、人が聴いた時にそう感じるのは、自分たち自身がその時代を生きて、自分たちの中に染みついているからだと思う。みんなアウトキャスト、ポーティスヘッド、ビョーク、トリッキー、マッシヴ・アタック、ザ・キュアーが大好き。ザ・キュアーに関しては80年代も入っているかもしれないけど……自分たちの青春時代なだけに、やっぱり刻み込まれている感じはするわね。

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私たちは自分たちが感じることをやっているだけなの。いつもコンセプトを持たないバンドだから。

現在、確かに広く90年代の音作りが見直され、若い世代からフレッシュな形で上書きされています。そうした中で、過去2作で見せてくれた美意識を手放さず、どのようにして《ウォーペイント流90年代へのアプローチ》を実践したのか、特にバンドとしてこだわったのはどういうポイントだったのかを教えてください。

TW:すごく説明するのが難しいんだけど、私たちは自分たちが感じることをやっているだけなの。いつもコンセプトを持たないバンドだから。さっきも少し説明したみたいに、今回はもう少しダンス・ミュージックよりの作品にしようっていう軽いコンセプトはあったものの、いつもあまりガチッとしたコンセプトはない。前作も確か「空間を大切にしよう」っていう程度だった気がする。何か決まりがあるとしても本当にそれ程度で、あとは身を任せる感じ。だから曲ごとに感じてもらえる美学は、その時に生まれたもので、目指したものではなくて。だから聴き手側の解釈もそれぞれの解釈で良いと思ってて。自分たちが「こういう風に受け取ってほしい! こういう風に感じてほしい」っていうものは実はなくて。だから90年代のアルバムを作ろうとしている訳ではなく、現代風のアルバムを作ってる訳でもなく、そういう狙いはないのよね。自分の夢はただ一つ、自分が大好きだと思える音楽を人にも大好きだと言ってもらえること。本当にそれだけなの。

例えば、フランク・オーシャンやビヨンセ、ブラッド・オレンジや、去年リリースされたケンドリック・ラマーなど多くのアーティストが90年代の要素を取り込みながらも、ジャズ、R&B、ヒップホップ、ファンクなどを新たに上書きしています。ウォーペイントのこの新作にもそれに連なるかのようなグルーヴが感じられますが、そうした黒人音楽的側面を強く打ち出す方向性に対し、あなた自身はどのような意見を持っていますか?

TW:すごく説明するのは難しいけど、リズムやドラム&ベースやポリリズムやディープ・グルーヴ……音楽っていうことにおいてみんなが興味を持つ部分の多くが何世紀にもわたってブラック・ミュージックから影響されているものも多いと思う。それがどの時代ももっともっと大きくなってきているんだと思う。より多くの人が音楽を聴いて、音楽を作っているから。そこに惹かれちゃうのは、すごく自然の衝動だと思うし、多くの人たちがその衝動を表現したくなるんだと思うわ。

ドクター・ドレの名前からとられたような“Dre”という曲もありますね。

TW:残念ながらドクター・ドレからはとっていないの(笑)。あの曲で難関だったのは、Bメロからのパートかな。なかなかアレンジがうまくいかなくて。最終的には納得できるところに行き着くことはできたんだけど。でも時間がなくて。だからこの曲はミックスも急いでやらなきゃいけなかったのも難点だった。でもそういう困難もありながら、この曲はすごく制作においてもエキサイティングな曲だった。あ、あと思い出したのが、この曲はいろんな要素を織り交ぜたから、混雑している感じもあった。それを整理するためにも、その混雑したパートをひとつひとつ整頓していったなぁ。それでどの要素が重要かが明確になったから良いプロセスだったけど。

昔に起きた素晴らしいことと現在を繋げる。繋げるというよりも混ぜる感じかな。新しいアイデアだって歴史があってこそ生まれるものだったりするし。

とはいえ、全体的に広く多くのリスナーにさらにわかりやすく届けることを目的としたようなキャッチーさ、いい意味でのアイコン性、シンボライズされた音の在り方を、あくまでポップ・ミュージックの観点から意識しているように感じました。多くのツアーをこなし、フェスなどに出演してきた経験から、あなた自身も感じてきたことだろうと思いますが、今やりたいことを追究しつつもそうした“わかりやすさ”が求められていることに応えていく上でのジレンマ、もしくはこれまでのファンの期待にも応じ、でもこれからさらに裾野を広げていくこととの間でのストラグルなどはありましたか?

TW:私たちは揃ってあまりその部分を考えないようにはしてるの。繰り返しになっちゃうけど、あまりそういうことを考えないで、自分たちが感じたままを表現することを大切にしているから。でも自分自身としては、ポップ・ミュージックが響いてくるその即効性もすごく大好きだし、曲中のフックとかもすごく大事だと思ってる。あと、忘れられないようなリズムやダンスのビートだったりもとても大切だとは思う。そういう要素が詰まったキャッチーな曲は、自分にとっても魅力的な曲だったりはする。だから自分たちもお互いスキルを磨いて、徐々にそれができるようになってきているとは思う。自分たちらしさも崩さない形で。自分たちももちろん変わっていかなければいけないし、それは止められないものだから。中にはそれを理解してくれないファンもいるとは思うけど、解ってくれる多くのファンもいるとは思う。私は話したファンの多くは、自分たちが大好きだったポップ・ミュージックが好きっていう人も多くて。それでいて、自分たちの音楽も好きでいてくれて、あまり目立たないような音楽も好きだったり。だからすごくオープンマインドで共用範囲が広いファンもたくさんいると思っている。そういうわけで、私は個人的には新たな音楽性でファンは失わないだろうとは思ってるわ(笑)。

歌詞の面でも“New Song”に見られるようなストレートなアプローチによるラヴ・ソングが多い印象で、その裏には直感的にイイと思えるものを堂々とイイと言ってしまうような決断力が強く感じられます。

TW:そうね、“New Song”はとてもシンプルだと思う……あ、そうそう、このアルバムのことでもうひとつだけ話していたキーワードがあったわ。もう少しヴィヴィッド(鮮明)でクリアなアルバムにしようって話してたのを今思い出した。もう少しいろいろと鮮明になるようにしようって。それは歌詞においてもそう言えると思う。だから前作と比べたら、ぼんやりとした感じは減っているかなぁとは思う。でもこれはどちらかというと、すごく狙ったというよりも、自然な改革だった気がする。もっとリスナーと繋がりたいと思ったし、自分たちの気持ちを鮮明にすることに慣れたかったっていう気持ちもあったかなぁ。

確かに一見、ストレートで物怖じのない情熱的な言葉をまとったラヴ・ソングが多いですが、あえてそれを他の事象にも置き換えていけるようなわかりやすい言葉を多くちりばめ、言葉にも強さを与えている印象も受けました。歌詞の面で、何か大きなテーマ、テーゼを用意していたとしたらそれはどういうものでしたか?

TW:テーマやテーゼは全くなかった。みんなで話し合ったこともないし、本当にその時にでてきたことを歌にしたって感じかな。個人的には最近ラヴ・ソングを書くモードではあって、自分のソロ・アルバムはほぼ全部“愛”についてのアルバムなの。その要素をこのアルバムに1、2曲持ち込んだかなとは思う。ただ、自分たちではあまり変わっている意識はなくて。むしろ、他に何か変わったところがあったら逆に教えてほしいくらい(笑)。結局、とりあげることって自分たちの人間関係であったり、他人の人間関係であったり、自分たちの成長であったり、人生で正しいと思う道に進もうとしたり……いつもトピックは一緒なのよね。とはいえ、ちょっとだけ政治的な思想は歌詞に現れているかもしれない。確かに置き換えた時に何かを感じてもらえるような歌詞は多いのかも。世界で起きている問題の核みたいなトピックだったりね。

ところで、あなたがたは今の米西海岸を支えている代表バンドですが、先輩格のジョン・フルシアンテ、ジョシュ・クリングホファーといった方々との世代の架け橋にもなっていますし、海を超えて英国のアーティストとの交流も積極的に作っています。地域性、その場所の歴史を大切にしつつも、その垣根を崩して広げていくことの醍醐味をどの程度意識していますか?

TW:自分でもそんな立ち位置にいることをとても光栄に思ってる。私たちは年齢的にも少し上だから、違う世代とも若い世代よりもナチュラルに繋がっていらえることもすごくラッキーだと思う。やっぱり先輩格の世代の人たちが生きた時代で起きた楽しいこととか、聞くだけで私たちには刺激や目標にもなるから。まさにこれって人生において大切なことだと思ってて。昔に起きた素晴らしいことと現在を繋げる。繋げるというよりも混ぜる感じかな。新しいアイデアだって歴史があってこそ生まれるものだったりするし。だから私たちも新しい何かを作りだす上で、過去を反省していく楽しさを大事にしているわ。いろんな時代や世界から得たアイデアをしっかり携えて制作するのが一番楽しい。だからイギリスで今何が起きているのかを知ることもすごく楽しい。それは日本もそうだし、オーストラリア、ウェストコースト……どのエリアに対しても同じよ。

Warpaint来日情報

日時/会場

東京  2/28 (火) LIQUIDROOM
open 18:30 / start 19:30 ¥6,300(前売 / 1ドリンク別)
#03-3444-6751 (SMASH)

大阪  3/1 (水) UMEDA CLUB QUATTRO
open 18:30 / start 19:30 ¥6,300(前売 / 1ドリンク別)
#06-6535-5569 (SMASH WEST)

チケット発売

主催者先行: 11/8(火)12:00 – 11/13(日)23:59
【URL】https://eplus.jp/warpaint17/ (PC・携帯・スマホ) *抽選制

一般発売: 11/19(土)
東京: e+ (先着先行: 11/15-17)・ぴあ (P: 315-091)・ローソン (L: 73278)
大阪: e+ (QUATTRO web: 11/14-16, 先着先行: 11/15-17)・ぴあ (P: 314-959)・ローソン (L: 54783)・会場

協力: Hostess Entertainment
お問い合わせ: SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com, smash-mobile.com

Asuna & Opitope - ele-king

 レーベル〈White Paddy〉を主宰し、去る7月にはソロ作品『Grace』をリリースした畠山地平と最近は漢方医として多忙を極めている伊達トモヨシ先生によるオピトープが、Asunaと一緒に最新アルバム 『The Crepuscular Grove』を〈White Paddy〉から発表します。はっきり言って、今回もクオリティが高い作品になっておりますが、これから冬を迎えるこの季節に聴いていると、とても良い気持ちになれます。自然界のいろいろな音を辿りながら、目の前に草原が広がります。彼らはリリースに併せてツアーをします。伊達先生を見かけたら、やさしく肩を叩いてあげましょう。ツアーには、イルハのメンバー、コーリー・フラーも参加します。

●Asuna & Opitope 『The Crepuscular Grove』リリース記念ツアー
with Corey fuller

 2010年のStudents Of Decayからのリリースに続く、6年振りのAsuna & Opitope のセカンドアルバムを11月にリリースするAsuna & Opitope がツアー開催します! 今回はツアーゲストにillhaのコリー・フラーを迎え、各所で様々なユニットでライブを披露します。

●11.17 (Thr) 京都 @ 「外」
Open 19:00 / Start 19:30   
2,000yen

LIVE
Asuna & Opitope
Chihei Hatekeyama & Corey Fuller
ASUNA × Takahiro Yamamoto

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●11.18 (fri) 名古屋 @ spazio-rita
Open 19:00 / Start 19:30   
2,500yen

LIVE
Asuna & Opitope
ILLUHA(Tomoyoshi Date, Corey Fuller)
Chihei Hatekeyama & Asuna

DJ
i-nio

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●11.19 (sat) 伊勢 @ 風見荘
open19:00 / start 19:30
投げ銭
LIVE
Opitope
Asuna × Corey Fuller

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●11.20 (Sun) 東京 @ gift_lab

open18:00 / start 18:30
2,500yen

LIVE
Asuna & Opitope
Kuukoka (Tomoyoshi Date, Corey Fuller,Chihei Hatekeyama)
Carl Stone

 


Asuna & Opitope
The Crepuscular Grove

White Paddy
Amazon


ASUNA

「語源から省みる事物の概念とその再考察」をテーマに作品を制作。これまでにドイツの"transmediale"、ベルギーの"Happy New Ears"、スロベニアの"International Festival of Computer Arts"などメディア・アートの国際的フェスティヴァルにも多数参加するなど国内外問わず展示/パフォーマンスを行う。代表作として「Organ」の語源からその原義を省みた「機関・器官」としてのオルガンを扱ったインスタレーション作品『Each Organ』などがある。並行した音の現象を扱うパフォーマンスにおいても『100 KEYBOARDS』『100 TOYS』などのライブで、これまでにヨーロッパを中心に北米・アジアも含め海外17ヶ国以上での公演/ツアーを行い、ベルギー、イタリア、イギリス、アメリカ、日本など多数のレーベルよりレコードやCD作品も発表している。

伊達伯欣:医師・音楽家

1977年サンパウロ生まれ成田育ち。Opitope(spekk)、ILLUHA(12k)、Melodia(homenormal)として音楽活動を続ける。救急医療と免疫学、東洋医学を学び、2014年につゆくさ医院を開院。これまでに国内外から15枚のフルアルバム、映画音楽などを作成。『からだとこころの環境』を出版。科学と自然、デジタルとアナログ、西洋医学と東洋医学の現在について考察している。

Chihei Hatakeyama

Chihei Hatakeyamaとして2006年にKrankyより、ファーストアルバムをリリース。以後Room40, Home Normal, Own Records, Under The Spire, hibernate, Students Of Decayなど世界中のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する美しいアンビエント・ドローン作品が特徴。ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ、韓国など世界中でツアーを敢行し、To Rococo Rot, Tim Heckerなどと共演。NHKのEテレ「schola 坂本龍一音楽の学校シーズン3」にて、アルバム『River』収録の”Light Drizzle”が紹介され、坂本龍一、岩井俊二らからその場を空気を一変させる音楽と評される。映画音楽では、松村浩行監督作品『TOCHKA』の環境音を使用したCD作品「The Secret distance of TOCHKA」を発表。第86回アカデミー賞<長編ドキュメンタリー部門>にノミネートされた篠原有司男を描いたザカリー・ハインザーリング監督作品『キューティー&ボクサー』(2013年)でも楽曲が使用された。またNHKアニメワールド:プチプチ・アニメ『エんエんニコリ』の音楽を担当している。ソロ以外では伊達伯欣とエレクトロ・アコースティックデュオOpitopeとして、SPEKKから2枚のアルバムをリリース。佐立努とのユニットLuis Nanookでは電子音と伝統的なフォークサウンドが混ざり合う音楽世界で2枚のアルバムをリリース。ASUNA、Hakobune等ともコラヴォレーションアルバムを発表。マスタリング・録音エンジニアとしても、自身の作品のみならず、100作品以上を世に送り出している。2013年にはレーベルWhite Paddy Mountainを設立しShelling, Family Basik, neohachi, Federico Durand, suisen, Satomimagaeなどをリリースしている。
https://www.chihei.org/

corey fuller

1976年アメリカ生まれ。現在日本在住。 サウンドアーティスト、ミュージシャン、オーガナイザー、映画家として活動中。
ギター、ピアノ、ローズピアノ、グロッケンシュピール、アコーディオン、ピアニカ、パーカッション、ハンマーダルシマー、フィールドレコーディングを含めた様々な生楽器/生音を素材にmax/mspと言ったデジタル環境やアナログ機材で細かく加工した、繊細な音楽を提供している。
近年は伊達伯欣(ダテ トモヨシ)とのIllhaとして12kより2枚のアルバムをリリース。また、坂本龍一やTaylor Deupree とのコラボレーションアルバムも発売している。2016年には待望のセカンドソロアルバムをリリースする予定である。


Asuna

Opitope

illha

Chihei Hatakeyama

Swans - ele-king

 80年代初頭に結成され、ソニック・ユースとともにUSオルタナティヴ・シーンを牽引してきたエクスペリメンタル・ロックの雄、スワンズ。6月にリリースされた14枚目のアルバム『The Glowing Man』も好評なかれらが、12月に来日公演を果たすこととなった。東京公演は12月7日(水)@SHIBUYA TSUTAYA O-EAST、大阪公演は12月8日(木)@UMEDA CLUB QUATTRO。今回もヴォリューム・リミットなし、2時間超えのパフォーマンスを披露してくれるとのこと。また今回のツアーは、現メンバーでおこなわれる最後のツアーとなっている。これは見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

オルタナティヴ・ロック・シーンに燦然と輝く暗黒の巨星スワンズ、現メンバーでのラスト・アルバム『The Glowing Man』を引っ提げて、現メンバーでのラスト・ツアー決定!

1982年、Michael Gira(ギター/ヴォーカル)を中心に結成、80年代初頭の混沌としたニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを象徴するバンドとして、SONIC YOUTHとともにオルタナティヴ・シーンに君臨した。ジャンク・ロックと称された初期作品『Filth』、『Cop』、Jarboe参加後の聖と俗・静謐と混沌の入り交じった中期作品『Greed』、『Holy Money』、『Children of God』、ビル・ラズウェル・プロデュースによるメジャー作品『The Burning World』で見せた限りなくダークな歌へのアプローチ、自身のレーベル〈Young God Records〉設立後の後期作品『White Light from the Mouth of Infinity』、『Love of Life』でのサイケデリックかつドローンなサウンドなど、幾多の変遷を経て唯一無二の世界観とサウンドを獲得していく。2010年、「SWANS ARE NOT DEAD」の宣言とともに復活。現メンバーはMichael Gira、Norman Westberg、Christoph Hahn、Phil Puleo、Thor Harris、Chris Pravdicaの6人。復活アルバム『My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky』を皮切りに『The Sheer』、『To Be Kind』、そして現メンバーでのラスト・アルバム『The Glowing Man』を本年6月に発表。アルバム発売ごとにおこなわれた精力的なツアーは、現在もっとも体験するべき価値のある最高のライヴ・パフォーマンスと数多くのメディアやアーティストから大絶賛されている。今回決定した現メンバーでのラスト・ツアーでもヴォリュームのリミット無し2時間超えの強靭なパフォーマンスを披露してくれることでしょう。現SWANSの有終の美を五感を総動員して自ら確認して下さい!

東京公演
12/7 (wed) SHIBUYA TSUTAYA O-EAST

Open 18:30 Start 19:30 ¥6,000(前売り/1ドリンク別)
Information: 03-3444-6751 (SMASH)

大阪公演
12/8(thu) UMEDA CLUB QUATTRO

Open 18:30 Start 19:30 ¥6,000(前売り/1ドリンク別)
Information: 06-6535-5569(SMASH WEST)

以下、プレイガイドにてチケット発売中!
東京: ぴあ(P: )・ローソン(L: )・e+(pre: )
大阪: ぴあ(P: )・ローソン(L: )・e+(QUATTRO web、pre: )・会場

共催:root & branch 協力:TRAFFIC
総合お問合わせ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com, smash-mobile.com

Hudson Mohawke - ele-king

 昨年最新アルバム『Lantern』をリリースしたハドソン・モホークだが、今年に入ってからもカニエ・ウエストやボーイズ・ノイズのアルバムに参加したり、アノーニのアルバムをOPNとともにプロデュースしたりと、その創作意欲は一向に衰える様子を見せない。

 ハドモーの生み出すあまりに過剰なあのサウンドは、一体どこからやってきたのか? 様々な可能性が考えられるけれど、彼のルーツのひとつがヒップホップにあるのは間違いない。とりわけDJシャドウは、彼にとって偉大なヒーローのひとりだったようである。
 去る10月23日、DJシャドウのクラシック“Midnight In A Perfect World”のハドソン・モホークによるリミックス・ヴァージョンが公開された。同リミックスを収録した『Endtroducing.....』の20周年記念盤は、本日10月28日にリリースされている。

 では、ハドモーの生み出すあまりに過剰なあのサウンドは、次にどこへ向かおうとしているのか? 様々な可能性が考えられるけれど、どうやらゲームのサウンドトラックというのがその答えのようである。
 去る10月26日、ユービーアイソフトによるオープンワールド型アクションゲーム『Watch Dogs 2』のサウンドトラックのリリースがアナウンスされた。音楽を手掛けたのはハドソン・モホーク。同作は11月11日にデジタル配信にてリリースされる予定となっている。

 たしかに以前からその気配はあったけれども、なるほど、公開されたトレーラー映像を視聴するかぎり、ハドモーのサウンドはゲームとの親和性が高いようである。リリースまでの2週間、期待に胸を膨らませながら待っていようではないか。

大人気ゲーム『ウォッチドッグス 2』の
オリジナル・サウンドトラックのリリースを発表!

昨年最新オリジナル・アルバム『Lantern』をリリースしてからも多忙を極めているハドソン・モホークことロス・バーチャード。『Lantern』のアルバム・ツアー中に、今年マーキュリー賞にノミネートされたアノーニのアルバム『Hopelessness』にプロデューサーとして参加し、ライブ・メンバーとしてもフェスティバルにも出演。その後、ゲームメーカーの大手Ubisoftの人気オープンワールドシリーズ最新作『ウォッチドッグス 2』のオリジナル・サウンドトラック制作に着手。サンフランシスコを背景に、主人公のハッカー、マーカス・ホロウェイが史上最も偉大なハッカーの1人となることを目指すストーリーとなっている本ゲームが、海外で11月(国内は12月)に発売されるのに合わせ、ハドソン・モホークが手がけたサウンドトラック『Ded Sec - Watch Dogs 2 (OST)』が11月11日(金)にリリースされることが発表された。

いろんなタイプの音楽を作ってきたから、特定のジャンルに落とし込むことを期待されるプロジェクトの制作作業はストレスになるんだ。サウンドトラック制作は、とてもエキサイティングで新鮮な探求作業だった。今回のように、ゲームのテーマ自体、俺自身ずっと好きなものなら特にね。2016年は、アノーニのアルバムとこのプロジェクトが、ジャンルの枠にとらわれることなく、新しいオーディエンスにリーチできる機会を与えてくれた。Ubisoftがゲーム全体の制作段階から僕に声をかけてくれたのも、それが理由だと思う。カルト的でサイファイなサウンドトラックをベースに、自分のスタイルを融合させたかった。すごく学ぶことが多かったし、大変な部分もあったけど、自分のクリエイティビティを表現する上ではすごく満足感のある経験だった。
- Ross Birchard (Hudson Mohawke)

ハドソン・モホークの初期作品に通ずるエレクトロニック・ミュージックとヒップホップの融合が見られる一方、冨田勲やジョン・カーペンター、ヴァンゲリスといった音楽家に対するロス・バーチャードの愛情を垣間見ることができる本作『Ded Sec - Watch Dogs 2 (OST)』は、11月11日(金)にデジタル配信でリリースされる。


label: Warp Records
artist: Hudson Mohawke
title: Ded Sec - Watch Dogs 2 (Original Game Soundtrack)
cat no.: WARPCDD281
iTunes Store: https://apple.co/2eSJ0su

Jeff Mills - ele-king

 ジェフ・ミルズは前へ進み続ける。

 去る9月11日、東京フィルハーモニー交響楽団とともに『題名のない音楽会』に出演し、大きな話題を集めたジェフ・ミルズだが、このたび彼の新たな公演が、表参道のイベント・スペースVENTにて開催されることが決定した。11月18日(金)23時、オープン。
 今回の公演は、AACTOKYOが手がけるジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作の、日本プレミア上映会のアフターパーティーとして開催される。
 詳細は以下を。

【テクノの革命家Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)、表参道VENTに降臨!】

 未来、宇宙のメッセージを込めたテクノ・ミュージックを表現し続け20年強、今年の東京フィルハーモニー交響楽団との共演コンサートや『題名のない音楽界』への出演も衝撃的だったJeff Millsが、別次元の良質なサウンドを提案する、期待のニュースポットVENTで体感できるまたとないチャンス到来!

 ハードミニマルテクノというジャンルを確立し、デトロイトから全世界のダンス・ミュージックを革新してきたJeff Mills。テクノのDJやプロデューサーとしての活動は、自身の作品のリリース、クラシック音楽の楽団とのコンサート、宇宙飛行士、毛利衛とのコラボ作品など多岐にわたる。初期Wizard名義のDJ時代にはEMINEMやKID ROCKなど他ジャンルのミュージシャンにまで影響を与えてきたという生きる伝説の存在と言ってもいいだろう。

 今回は『AACTOKYO』が手がけるプロジェクト第1弾として、Jeff Millsのシネミックス(映像体験作品)最新作の日本プレミア上映会のアフターパーティーとして行われる。衰えることなく進化を続ける、他の追随を許さない圧巻のDJプレイをVENTの誇るサウンドシステムで体感できる奇跡のパーティー!

《Dekmantel Festival 2016 でのJeff Millsのプレイの映像》

《イベント概要》
" AACTOKYO presents JEFF MILLS “THE TRIP” After Party "

DATE : 11/18 (FRI)
OPEN : 23:00
DOOR : ¥4,000 / FB discount : ¥3,500

=ROOM1=
JEFF MILLS
HARUKA (FUTURE TERROR)
DSITB (RESOPAL SCHALLWARE / SNOWS ON CONIFER)

=ROOM2=
YONENAGA (R406 / SELECT KASHIWA)
NAOKI SHIRAKAWA
SHINING STAR (UTOPIA)
MASA KAAOS (PYROANIA / PHONOPHOBiA)

※VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。

※Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case.
Thank you for your cooperation.

Facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/1331989146852699/

《INFO》
VENT
URL: https://vent-tokyo.net/
Facebook: https://www.facebook.com/vent.omotesando/
Twiter: https://twitter.com/vent_tokyo/
Instagram: https://www.instagram.com/vent.tokyo/

Jeff Mills

1963年デトロイト市生まれ。
Jeff Millsがテクノ・プロデューサー/DJとして世界で最も優れた人材であることはすでに説明の必要もない。
高校卒業後、ザ・ウィザードという名称でラジオDJとなりヒップホップとディスコとニューウェイヴを中心にミックスするスタイルは当時のデトロイトの若者に大きな影響を与える。1989年にはマイク・バンクスとともにアンダーグラウンド・レジスタンス(UR)を結成。1992年にURを脱退し、NYの有名 なクラブ「ライムライト」のレジデントDJとしてしばらく活動。その後シカゴへと拠点を移すと、彼自身のレーベル〈アクシス〉を立ち上げる。1996年には、〈パーパス・メイカー〉、1999年には第3のレーベル〈トゥモロー〉を設立。現在もこの3レーベルを中心に精力的に創作活動を行っている。
Jeff Millsのアーティストとしての活動は音楽にとどまらない。2000年、フリッツ・ラングの傑作映画『メトロポリス』に新しいサウンドトラックをつけパリ、ポンピドゥーセンターで初公開して以来、シネマやビジュアルなど近代アートとのコラボレーションを積極的に行ってきている。 2004年には自ら制作したDVD『Exhibitionist』を発表。このDVDはHMV渋谷店で洋楽DVDチャート1位を獲得するなどテクノ、ダンス・ミュージックの枠を超えたヒットとなった。これらの幅広い活動が認められ2007年、フランス政府が日本の文化勲章にあたるChavalier des Arts et des Lettresを授与。
2004年渋谷Wombのレジデンシーから始まったSFシリーズ「Sleeper Wakes」は2016年リリースの『Free Fall Galaxy』で9作目を迎える。
2012年、主宰〈AXIS RECORDS〉の20周年記念として300ページにおよぶブック『SEQUENCE』を出版。2013年には日本独自企画として宇宙飛行士、現日本未来館館長毛利衛氏とのコラボレーション・アルバム『Where Light Ends』をリリース。同時に未来館の新しい館内音楽も手がけた。『Where Light Ends』はオーケストラ化され、2016年3月には文化村オーチャードホールにて東京フィルとの公演を実現させている。
2014年、Jeff Mills初の出演、プロデュース映像作品「Man From Tomorrow」が音楽学者でもあるジャクリーヌ・コーの監督のもとに完成。パリ、ルーブル美術館でのプレミアを皮切りにニューヨーク、ロンドンの美術館などでの上映を積極的に行なう。
第1弾から11年の年月を経て2015年に発表された『Exhibitionist 2』DVDには、DJテクニックのみならずスタジオ・レコーディングの様子やRoland TR909をライヴで即興使用する様子などが収められおり、同じく「即興性」をテーマにゲストミュージシャンを招待して東京と神戸で2015年9月に行われたライヴは「Kobe Session」として12インチでリリースされた。
2016年、初めてオーケストレーションを念頭におき作曲したアルバム『Planets』がポルト交響楽団とのコラボレーションによりリリースされる。

interview with FaltyDL - ele-king


FaltyDL
Heaven Is For Quitters

Blueberry Recordings/ビート

IDMFuture JazzAmbientPost DubstepElectronic

Amazon Tower

 かつてマイク・パラディナスの蒔いた種が開花し、いま、美しく咲き誇っている。マシーンドラムしかり、フローティング・ポインツしかり……ダブステップの功績は、それ自体の音楽的魅力はもちろんのこと、その後に多種多様な音楽のあり方を生み出したという点にも存する。フォルティDLもまたその流れに属するアーティストのひとりだ。

 ダブステップは無論のこと、ハウスやテクノやIDM、アンビエントからジャズまで、フォルティDLが自身の音楽に取り入れるスタイルは多岐にわたっている。そのように様々なジャンルをつまみ食いする彼の音楽全体に共通しているのは、音作りの丁寧さあるいは繊細さだろう。そしてそれはおそらく、彼の「ひとり」性に由来している。
 彼は、音楽を作るときはひとりだと言う。2年ぶりとなる彼の最新作には3組のゲストが参加しているけれど、かれらはみなフォルティDLの作り出す音響空間を華やかに彩るようなことはしない。かれらはみな、自らをあくまで素材のひとつとしてフォルティDLに提供する。フォルティDLはその素材を、彼自身の部屋でひとりで丁寧に組み上げていく。
 そういった彼の「ひとり」性は、このアルバムの随所から聴き取ることができる。“River Phoenix”でときおり訪れる、全ての音がほんの一瞬だけ収束する不思議な「間」。“Drugs”でロージー・ロウのヴォーカルと対比的に刻まれるブレイクビーツ。“Shock Therapy”における「A.I.」シリーズへのノスタルジア。“Whisper Diving”後半のシンセのみじん切り。どこか初期のOPNを想起させる“Osaka Phantom”の幻想的なメロディ。そのような「ひとり」性は、彼とガールフレンドのイニシャルが冠された“D & C”からも感じ取ることができる。たしかに、パートナーがいようがいまいが、人はみな、ひとりだ。
 それにこのアルバムは、「クラブ・ミュージックって何?」という素朴な問いを発するもものでもある。たとえば、ミュージックことマイク・パラディナスが参加したダンサブルな“Frigid Air”は、本作のキラー・チューンと言って差し支えないと思うのだけれど、必ずしも踊ることに特化した機能的なトラックというわけではない。たしかに、曲調自体は明るい。でも、下方を踊り這うブレイクビーツと、2種類の音が交互に入れ替わる上モノ、そしてそのあいだにうっすらと滑り込むヴォーカル・エフェクトは、良い意味でちぐはぐな空気を紡ぎ出している。これはおそらく、フォルティDLなりのダンスの狂熱との距離のとり方なのだろう。
 クラブへ行っても、メイン・フロアに繰り出して踊り狂ったり、顔なじみと「よう!」などと肩を叩き合ったりすることはせず、箱の隅っこで小刻みに身体を揺らす程度で済ませ、家に帰ってひとりでまた別の音楽を聴く――フォルティDLのこのアルバムからは、そういうリスナーの存在を感じ取ることができる。間違いなく、それもクラブ・ミュージックのあり方のひとつだ。

 以下のインタヴューで彼は、音楽はエスケイピズムであると発言している。おそらくそのエスケイピズムには、音楽それ自体からの逃避も含まれているのだろう。逆説的ではあるが、だからこそ音楽は同時にセラピーでもあることができるのだと思う。

音楽って、逃避できるのが良いところだと思わない? でも同時に、セラピーでもあると思う。

あなたの音楽はハウス、ダブステップ、IDM、アンビエント、ジャズなど、幅広い領域を横断しています。もし自分の音楽にひとつだけタグを付けなければならないとしたら、何という言葉を使いますか?

ドリュー・ラストマン(以下、DL):どうだろう……「エレクトロニック・ソウルフル・ミュージック」だな。俺はそれがいいと思う。

あなたは、自分の音楽がクラブで聴かれるのと、ベッドルームで聴かれるのとでは、どちらが嬉しいですか?

DL:両方とも嬉しいね。でも、俺は自分ひとりで音楽を作るし、ひとりで音楽を聴くのも好きだ。音楽自体と一対一のパーソナルな関係で繋がることが多いから、そっちの方がしっくりくるというか、近く感じるというのはあるかな。

あなたの音楽は、主にクラブ・ミュージックのリスナーによって受け入れられてきたと思います。そのことについてはどうお考えですか? 

DL:確かにそうだよね。プレスリリースでも少しそのことに触れたけど、自分自身も音楽を色々な状況で楽しみたいし、俺の音楽にはそれが反映されていると思う。リスナーに色々な種類の人たちがいるのは良い事だと思うよ。

本作ではいくつか「歌」をフィーチャーしたトラックがあります。あなたにとって歌やヴォーカルとは何でしょう? 他の楽器やエレクトロニクスと同じものでしょうか?

DL:まず、歌は素晴らしい楽器のひとつだと思う。そして、歌があることで、より多くの人びとがその音楽と繋がることができるんじゃないかな。ヴォーカルがあった方が、繋がりを感じやすいと思うしね。だから逆に、ヴォーカルのないエレクトロニック・ミュージックなのに幅広いオーディエンスの心をつかむ音楽は本当に素晴らしいと思う。エイフェックス・ツインとかさ。ヴォーカルはないのに、本当に多くのオーディエンスが彼の音楽をエンジョイしているだろ? そういう音楽って好きなんだよね。

“Drugs”のロージー・ロウは、どのような経緯でこのアルバムに参加することになったのでしょうか?

DL:デルス(DELS)がプロデュースした曲をリミックスしたことがあったんだけど、その曲がロージー・ロウをフィーチャーしていたんだ。3年前の話で、その時、俺は彼女の声をすごく気に入って、デルスの声を全く使わずに、彼女の声だけを使った(笑)。彼女の声を繰り返し使って、7~8分のリミックスを作ったんだ。それがきっかけで彼女の声を知って、その後彼女といくつか曲を作ろうとしたんだけど、なかなかお互いがしっくりくるものができなくて……で、“Drugs”のインストを彼女に送った時に彼女がそれをかなり気に入って、その日の夜までに何パターンかのヴォーカルを乗せて返してきてくれたんだ。その全てが違っていたし、クールだったよ。

“Infinite Sustain”のハンナ・コーエンは?

DL:彼女のマネージメント・チームを通して知り合ったんだ。最初はそのマネージメントの他の女性アーティストとコラボを企画していたんだけど、そのアーティストが忙しかったりで実現できそうになくて、彼らがハンナを勧めてきた。そこでハンナの作品をチェックしてみたら、すごく良かったんだ。彼女の声はロージーと違っていてすごくソフトなんだ。そこがまた面白いと思った。様々なスタイルをアルバムに持たせることができるからね。

通訳:あなたの音楽には、女性ヴォーカルの方が合うんでしょうか?

DL:男性よりも女性ヴォーカルとコラボすることの方が多いのは確かだね。でも、どちらのヴォーカルにもオープンだよ。前回男性ヴォーカリストとコラボしてから随分経つけど、男性ヴォーカルをフィーチャーするのも好きだし。あ、待って、それウソだ(笑)。この前ホセ・ジェイムズとコラボしたばかりだからね。アルバムの前にミックステープをリリースしたんだけど、すっかり忘れてたよ(笑)。SoundCloudでチェックしてみて。

“River Phoenix”のダブステップのリズムには懐かしさを感じます。あなたは、ダブステップが多様化していった時期に登場してきましたが、ダブステップについてはどのような思いを抱いていますか?

DL:実は、もうダブステップのシーンは追っていないんだ。まだ存在していることはわかっているし、多くのプロデューサーが色々な方向に進んで様々なBPMに挑戦しているのも知っているけど、ダブステップが盛り上がっていた理由のひとつは、皆がひとつになって繋がっていたことだと思うんだ。皆がファミリーみたいな感覚だった。それがひとつのビッグなシーンを作り出していたわけで、だからこそ盛り上がっていたんだと思う。でもいまはそれがいくつかのグループに別れてしまって、ひとつにまとまったシーンではなくなっていると思うんだ。いまは小さなシーンがいくつか存在しているような感じだと思う。いまだにソリッドなダブステップを作っているミュージシャンももちろんいるけど、俺自身はもうダブステップにはあまり繋がっていないね。

通訳:いまのあなたの音楽とダブステップの繋がりとは?

DL:もちろん、多くのダブステップのプロデューサーたちには影響を受けてきた。2009年頃、俺が音楽をリリースし始めた頃はね。特にそこから2~3年はたくさんのダブステップを聴いていた。だから脳の中にはインプットされているし、自分の音楽作りを助けてくれている部分もある。でも、エレクトロニカやブロークンビーツっぽい音楽の方が自分にとっては近いんだ。

“Bridge Spot”のサックスは808ステイトの“Pacific State”を彷彿させます。また、“Shock Therapy”には、初期のプラッドなど「A.I.」シリーズの頃の〈Warp〉作品を思わせるテイストがあります。80年代末~90年代初頭のテクノに特別な思い入れはありますか?

DL:あの時代は、テクノ界で様々なことが繰り広げられていたし、常に革新的なことが起こっていた。同時に、国どうしが影響し合いはじめた時代でもあったと思うね。アメリカやドイツ、日本やUKが自分たちのヴァージョンのテクノを作っていて、それをお互いに広め合っていた。インターネットが普及する前の話だし、それってすごくクールだよな。俺、808ステイトが大好きなんだ。だから、その意見はすごく嬉しいよ。

あなたの最初の2枚のアルバムは〈Planet Mu〉からリリースされました。それによってあなたの存在を知ったリスナーも多いと思います。マイク・パラディナスは本作にも参加していますが、彼とはどのようにして出会ったのでしょうか? また、彼から受けた影響はどのようなものですか?

DL:彼と最初に話したのは、インスタント・メッセンジャー。インスタント・メッセンジャー、覚えてる(笑)? 2008年くらいかな。もしかしたらその前に彼にMyspaceでメッセージしたことがあったかもしれない。2002年くらいから彼の音楽を聴いていて、彼の音楽が好きだったから、彼にデモを送るようになったんだ。かなりたくさん送ったな。最初はCDに焼いたりして送ってた。その後ネットでデータが送れるようになって、インスタント・メッセンジャーで彼にデモを送るようになったんだ。そうしているうちに彼が気に入ってくれたものがあったみたいで、彼が「よし、リリースしよう」と言ってきた(笑)。クールだったね。彼はプロデューサーとしてユーモアのセンスがあるし、彼のメロディの作り方にも影響を受けていると思う。あといちばん大きいのは、レーベル運営のしかた。それに影響を受けて、俺自身もいま自分のレーベルを持っているしね。彼がレーベルを運営している姿を見ているのはすごく勉強になった。彼は自分が良いと思ったものは何でもリリースする。その時の流行は関係ないんだ。逆に、彼は流行ってない作品を人気にすることもできる。彼はテイスト・メーカーなんだよ。

その後の2枚のアルバムは〈Ninja Tune〉からリリースされました。それは、あなたにとってどのような経験になりましたか? コールドカットや他のレーベルメイトから学んだことはありましたか?

DL:〈Ninja Tune〉は、とにかくビッグ・チームだった。約20人の人たちが自分のレコードのために動くんだからね。だから、皆が全てを把握できるようオーガナイズをするのはすごく大変だったけど、彼らは本当にそれがうまくできるんだ。売り方もうまいし、本当に成功したレコード・レーベルだと思う。大物アーティストからアンダーグラウンド・エレクトロニックまで、様々な作品をリリースしているしね。コールドカットとは会えばいまだに一緒に出かけるよ。彼らは本当にクールだね。他のアーティストもそうだけど、何かを学んだというよりは、音楽に変化をもたらしたアーティストたちの周りにいるというのはすごく「刺戟的」だったね。

先ほどお話に出ましたが、本作をご自身が主宰する〈Blueberry Records〉からリリースすることになった経緯を教えてください。また、レーベルが変わったことは、本作の制作にも影響を及ぼしましたか?

DL:レーベル名は、俺の祖母が持っているブルーベリー畑から取ったんだ。なぜ今回自分のレーベルからリリースすることになったかというと、〈Ninja Tune〉とも次回作の話はしていたんだけれど、自分の理想の時期よりも長く待たないといけなくて、俺自身はもう準備ができていたから、それを友人たちに話していたら、皆に、「自分のレーベルがあるんだから、自分がいま出したいなら自分のレーベルから出せよ」と背中を押されたんだ。〈Ninja Tune〉もそれに対して「良い」と言ってくれたし、お互いにとって平和な決断だった。全てのプロセスが実験的だったけどね。トラックリストも全部自分で決めないといけなかったし、自分で最初から最後まで全てを手掛けた初めてのアルバムだった。あまりインタヴューで話してないけど、もっとこのことについて話すべきだな。だって、全て自分でコントロールしながら作ったことで、この作品はいままでの中でいちばんフォルティDLらしい作品に仕上がっているから。ある意味、それはクールだと思う。それが良い事なのか良くない事なのかはわからないけど(笑)、いちばんフォルティDLらしいっていうのは事実だね。皆がそれを気に入ってくれるといいけど(笑)。

“Shock Therapy”という曲のタイトルが気になりました。音楽には、つらい現実を忘れさせてくれるものもあれば、ハードな現実と向き合う手助けをしてくれるものもあります。あなたの音楽は、そのどちらだと思いますか?

DL:音楽って、逃避できるのが良いところだと思わない? でも同時に、セラピーでもあると思う。俺は瞑想するために音楽を聴く時もあるしね。それが音楽だと思う。

幻想的な“Osaka Phantom”には、どこかゲームのサウンドトラックのような雰囲気があります。何か実際に大阪で体験したことがインスピレイションになっているのでしょうか? また、このアルバムのアートワークにはタイトルの日本語訳が記されています。何か日本について思うところがあったのでしょうか?

DL:日本はもともと大好きなんだけど、大阪ってなんか東京より大きく感じるんだよね。高層ビルがないぶん広く感じるし、あのガヤガヤした雰囲気のヴァイブがそう思わせる。あの曲は、自分が大阪にいる時に聴きたい音楽を想像しながら作ったんだ。すごくにぎやかな街に流れるアンビエント・ミュージックみたいな。ちょっとファントムとかお化けっぽい感じ。日本って本当に好きなんだ。自分の国と全然違うし、日本人って音楽に感謝の念を持っているし、リスペクトしているよね。アーティストとして、やっぱりそれは感じたいしさ(笑)。ちなみにタイトルの日本語訳は、日本盤だけじゃなくて全てのアルバムに表示されているんだ。

最後のトラックのタイトルになっている“D & C”とは何の略でしょうか?

DL:あれは俺とガールフレンドの名前のイニシャルだよ。

アルバムの前半はヴォーカルの入ったトラックやダンサブルなトラックが続き、後半になると静かなトラックやじっくり聴き入りたくなるようなトラックが並んでいます。アルバムを作る上で、何かコンセプトのようなものはあったのでしょうか?

DL:コンセプトというか、自分が考えていた目的は、純粋なフォルティDLを見せることだった。あとは自分のレーベルから出すということもあって、それを意識したし、自分のレーベルが築き上がるまでを表現したかった。でも、あまりコンセプトはない。それはリスナーに委ねたいから、普段からコンセプトはあまり考えないんだ。

本作の制作中によく聴いていた音楽があれば、教えてください。また、それらの音楽は本作にどのような影響を与えましたか?

DL:レーベルからリリースされるアーティストの作品はよく聴いていたね。でも、特別これといったものはなかったな。あ、待って! ビーチ・ボーイズをたくさん聴いてたな(笑)。アルバムの音楽からはあまり聴き取れないと思うけど、ソングライティングなんかは、もしかすると影響を受けているのかもしれない。あの、良い意味でイージーなソングライティングにね。

あなたと同じ時期に〈Planet Mu〉から12インチをリリースし、その後あなたと同じように様々な音楽の要素を取り入ながら評価を確立していったアーティストにフローティング・ポインツがいます。彼の音楽は聴きますか?

DL:彼の音楽は聴くよ。彼の昔のクラブ・ミュージックの方がよく聴いていたかもしれない。けど、彼の新作は本当に美しいよね。いまはライヴ・バンドと一緒に全然違う事をやっているし、すごく良いと思う。俺には、ロック・ジャム・バンドを思い起こさせるんだ。彼は俺にとって、弟みたいな存在なんだよ。

あなたは2年前にワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの“Replica”をリミックスしています。OPNの音楽についてはどう思いますか?

DL:彼の音楽は本当に素晴らしいと思う。俺は『Replica』のアルバムが大好きで、もちろんリミックスした“Replica”は俺の大のお気に入りなんだ。あのアルバムはすごく遊び心があるし、あのロウファイなサウンドが好きなんだ。彼の前の作品の方がよく聴いていたな。いまはもっとアカデミックで、超クリーンでクレイジーなエレクトロニックのテリトリーにいると思うけど、それはそれでスクエアプッシャーっぽくてカッコいい。リスペクトしてるよ。すごく才能があるミュージシャンだと思うね。

最近のアーティストで共感できるアーティストがいたら教えてください。

DL:共感できるアーティストは……最近はエリシア・クランプトンをよく聴いてるかな。去年彼女のアルバムを〈Blueberry Records〉からリリースして以来、彼女の音楽にハマっているんだ。いま話し合ってるんだけど、たぶん今後コラボすると思う。

『Heaven is for Quitters(天国はふぬけのためにある)』というアルバム・タイトルは最高に素晴らしいと思います。ドラッグによるトリップを想起させるタイトルですが、どのような経緯でこのタイトルに決まったのでしょうか? また、これは反語でしょうか、それともストレートに読むべきでしょうか?

DL:最初は、『Heaven』っていうタイトルにしようと思ってたんだ。自分のアルバムを自分で作って、自分のレーベルから出すわけで、それってすごく良い位置にいると思ったから、「天国」にしようと思った。でも、俺って何に対しても100%ポジティヴってことはなくてね(笑)。ちょっとネガティヴなものを混ぜたくなるんだ。なんでそうなのかは自分でもわからないんだけど(笑)。ニューヨーカーだからなのかもしれない(笑)。それで「is for Quitters」をつけたんだよ。「ふぬけ」っていうのは、人気になるために活動している人たち。それって、俺にとっては全然何かに挑戦してるとは思えないんだよな。ちょっとダサいと思うな。彼らにとっての「天国」を目指すってことは、ギヴアップに感じるんだ。

あなたご自身は、ふぬけ(quitter)ですか? もしそうだとしたら、天国(heaven)へ行ってみたいと思いますか?

DL:良い質問だな(笑)。俺はふぬけではないと思うけど、何かを始めてもなかなか終わらせられないっていうのはある。もっと何かを止めたり、失敗することに勇気を持てるようになってもいいと思うね。人生短いんだから、どんなことでもやっていいと思う。天国に行きたいかはわからないな。俺、天国の存在自体あまり信じてないから。でも、もし常にハッピーを感じられる場所があるんだったら、もちろん行きたいけどね(笑)。

通訳:ありがとうございました!

DL:こちらこそ、ありがとう。

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