「KING」と一致するもの

interview with Kenichi Hasegawa - ele-king


長谷川健一
423

Pヴァイン

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 2010年の『震える牙、震える水』はうたものあるいは弾き語り“群”、といういい方が正しいかはわからないが、在京都のシンガー・ソングライター、長谷川健一は、そろそろそうなりつつあった歌手たちのなかでも異彩を放っていた。静かで美しく透き通った歌の数々に、私はその3年前の〈map/comparenotes〉からの2枚同時リリースのミニアルバム「凍る炎」「星霜」を見過ごしていたのを悔やみつつ、まだこんな歌い手がいるのか、京都という街はまことに底知れぬものよ、と詠嘆調で独りごちたのである。そこから2年、長谷川健一のセカンド『423』は、初期集成的な位置づけの前作からさらに進んだ歌の地平にある。世界観とかいう知った顔の言葉ではない、奥行きのある情景があり、歌のなかに暮らすひとびとの目からそれを描く。目に映る光景は移動していくが、ロード・ムーヴィ的というのではなく、1曲目のタイトルにもなっている“あなたの街”が歌のなかに突如現れるような感じである。音楽は前作よりも、余白をつくり、石橋英子(ピアノ)、山本達久(ドラムス)、波多野敦子(ヴァイオリン)、石橋英子ともう死んだ人たちの面々が色を、しかし淡色の色を添える。プロデュースはジム・オルーク。今回、インタヴューして、長谷川健一の音楽遍歴を知って聴き返すと、前作から今回にかけて、多大な影響を受けたというジェフ・バックリィやフリージャズの要素は完全に声と音と言葉の響き合いに昇華されていることに気づく。そしてやがてそれらさえ歌になってふりそそぐのである。

基本というヘンですが、何かが足りないからひとりというのではなくて、ひとりでつねに100パーセントという感じを、ジェフ・バックリィに感じたので、ひとりでやることに抵抗はなかったです。

長谷川さんの前作『震える牙、震える水』を拝聴しまして、めずらしいタイプのシンガーだと思いました。こと日本においては、といういいかたをしていいかはわかりませんが、昨今のフォーク・ブームには長谷川さんはあまりそぐわない存在なんじゃないか、と思いました。

長谷川:だと思います(笑)。

歌の歌い方にしろ、歌に描かれている世界にしろ、そういうものがどこから来たのか気になりました。歌いはじめたのはいつくらいからだったんですか?

長谷川:大学出るころなので、15年くらい前ですかね。

1976年生まれですよね。

長谷川:そうです。もともと歌謡曲だったり、そういうものは聴いていたんですけど、フリージャズとか即興とか、わりとそういう音楽にのめりこんだ時期があって、それが二十歳すぎとかですかね。

フリージャズというと、ジャズの十月革命とか〈ESP〉とか、そういった感じですか?

長谷川:阿部薫がすごいなと思ったんです。そういうひとたちをたどっていって、現役のフリージャズのミュージシャンを観に行ったりしました。高木元輝さんとか、観に行ったちょっと後に亡くなったり、そういったこともありました。

フリージャズを聴いて弾き語りをはじめるのもめずらしいと思いますが、ちなみにハセケンさんはそのとき楽器をやられていたんですか?

長谷川:オヤジがずっとクラシック・ギターをやっていて、中学2年のころ、ガット・ギターをもらったんです。家にさだまさしの本があって、弾いてみたいんですよ。“秋桜(コスモス)”だったと思うんですが、あんまりおもしろくなかった。それでちょうど高1のころに尾崎豊が死んだんです。それまで知らなかったんですが、聴いてみたら、気に入って、『弾き語り全曲集』を買ってきたら、シンプルにつくっている曲が多かったんですが、なかには本人が歌ったものに、アレンジャーか何かがピアノで合わせたんじゃないかな、という曲もあるんですね。そういった曲のコードを全部ギターに置き換えているものもあるので意外と複雑だったりもする。和音をひと通りそこで覚えて、そうしているうちに曲をつくりたいなと思うようになったんですが、フリージャズも聴いていたので、好きな音楽とやりたい音楽をどう折衷するか、という課題がめばえました。いま思えば、折衷しなくてもいいんですけど(笑)。

たしかに(笑)。

長谷川:若かったのかもしれません(笑)。それまで僕は宅録していたんですね。ベースとかほかの楽器も全部自分で入れていたんですけど、バンドは組んでいませんでした。それで、テープをあげたひとに、ライヴやらないんですか、といわれて、じゃあやろうか、と。消極的に(笑)、はじめたんです。人前で歌ったことがないので、恥ずかしいし、技術もなかったので、ムチャクチャ練習しました。そのころから、ファルセットを使っていたんですね。ジェフ・バックリィはご存知ですか?

もちろんです。

長谷川:僕はジェフ・バックリィが大好きなんですね。他にはブラック・ミュージックとかが好きなので、男の裏声って好きだったんですけど、いざ弾き語りとか、うたものを聴いているひとの前で出て歌ったときに、なんだこれは、という反応があったんです。15年前ですから、平井堅とか森山直太朗とかがラジオで流れる時代でもなかった。そのときから声質は変わりましたが、スタイルはあまり変わっていないんですね。

好きな音楽の影響から自然とそうなった?

長谷川:家で音楽を聴きながら歌ったりしているうちに、わりと普通にそうなりました。自分でも曲をつくっているうちに自然にできたというか。そこはあまり意識してはいなかったです。高いところを歌うから高い声を出すんだ、という単純なものでした。

曲のイメージに身体を合わせていったんですね。

長谷川:身体を改造していくというか(笑)。

ジェフ・バックリィの『グレース』が出たのは90年代前半(1994年)ですよね。

長谷川:はっきり憶えていないんですけど、ジェフ・バックリィがデビューしたとき、テレビで“グレース”が少しだけ流れたんですね。7時54分とか、番組の合間の数分の音楽番組だったと思います。それを聴いて、不思議な音楽だな、と思ったんです。高校生のときは『ロッキング・オン』を読んでいて、そこに情報が載っていたので、CDを買って聴いてみたら、すごかった。彼はバンド・サウンドでもやっていますけど、彼の弾き語りがすごい表現力だと思ったんです。ひとりでこういった世界観がつくれるんだ、と。そういうのが最初にあったので、出発がひとりだったんです。

それが指針になった?

長谷川:基本というヘンですが、何かが足りないからひとりというのではなくて、ひとりでつねに100パーセントという感じを、ジェフ・バックリィに感じたので、ひとりでやることに抵抗はなかったです。

バンドを組む必然性は感じなかったということですね。

長谷川:バンドというよりも、まわりには即興をやっているひとが多かったんですよね。バンドを組んで、歌ものをやっているひととはあまりつきあいがなかったんですよ。

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京都にずっと住んでいるからできた歌だという気はします。空気というかテンポというかリズムというか......ほかの土地に住んだことがないのでわからないですけど、大阪に住んでいたらこの歌はではなかったような気がしますし、東京でもちがったと思います。


長谷川健一
凍る炎

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長谷川健一
星霜

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長谷川健一
震える牙、震える水

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2007年に〈map/comparenotes〉から「凍る炎」「星霜」を出されましたが、これは小田(晶房)さんから声がかかったんですか?

長谷川:その前に船戸(博史)さんとライヴすることが多くなったんです。

船戸さんと知り合われたのは?

長谷川:僕が好きで観に行っていたんです。最初に観たのは、船戸さんと羽野昌二さんとサビア・マティーン(SABIR MATEEN)という黒人のリード奏者のライヴを観に行ったんですね。

「ふちがみとふなと」ではなく。

長谷川:そうなんですよ(笑)。そっちのほうがポピュラーだと思いますが、最初の認識はむしろフリージャズの船戸さんでした。僕はろくでなし(JAZZ IN ろくでなし/京都のジャズ・バー)によく行っていて、そこで船戸さんと登敬三(サックス)との演奏を観たりしていたんですね。そのとき、聴いてみてください、といって自作のCD-R渡したんです。船戸さんのファンだったので、いっしょにできたらいいな、と思ったんですね。CD-Rを渡したら、じゃあ今度いっしょにやる、といってもらったので、そこからですね、船戸さんといっしょに演奏するようになったのは。船戸さん経由で小田さんに伝わったみたいですね。

憧れのミュージシャンといきなり演奏するのも大変じゃなかったですか?

長谷川:誰かといっしょに演奏したのが、船戸さんがはじめてだったんですよ。どうしたらいいかな、と思ったんですが、船戸さんは合わすところは合わせてくれるし、合わさないところは合わさないで、ただまあ(僕の歌は)コード・チェンジが細かいので、合わないと気持ち悪い部分も出てくるんですね。そこは失敗もありましたし、ちょっと練習をして解消した部分もありました。

フリージャズの素養が自由な合奏スタイルに役に立った、と。

長谷川:きっちりしたポップスをやりたいという思いもなかったですからね。それなら、船戸さんにお願いする必要もありませんから。

それから順調にライヴをやるようになっていくんですよね。

長谷川:2002年とか2003年ですかね。そのころ、ライヴは月1回はやっていたんですけど、じっさい仕事もしていたのでいろんな地方に自由に行ける感じではありませんでした。やっぱり前のアルバムが知名度というか、ほかの地方に行くきっかけにもなったとは思います。

前作『震える牙、震える水』はそれまで培ってきたものを見せる集成的なものだったのかと思ったんですが。

長谷川:そうですね。曲も小田さんのところから出したアルバムと重複していてもいいから集大成的にしましょう、という意図はありました。

その次となると、『423』では逆にいえばリセットをしたともいえるわけですよね。『423』をつくるにあたって、最初に考えたのはどういうことなでしょうか?

長谷川:このアルバムは去年の夏に録音して、その前の夏には、バンド・メンバーの(石橋)英子さんたちに渡そうと思って自分でデモを録っていたんですね。曲自体は前のアルバムを録音し終わったときからつくっていて、歌いこむ時間もありました。デモをつくって、その後にジム(・オルーク)さんとやろうかという話になったんで、環境を整えるのに時間がかかったんです。レコーディングをどうするか、どこでするのか、プロデュースをジムさんにほんとうにお願いするかどうか、そういうことを考えるのにすこし時間がかかりました。

『423』には『震える牙、震える水』からひきつづき、石橋英子さんや山本達久さんが参加していますが、彼らと知り合ったのはどういう経緯ですか?

長谷川:〈map〉のアルバムを出したときに、東京でライヴをして、そのときに来てくれたお客さんにディスク・ユニオンで働いている男の子がいるんですけど、彼が突然僕のライヴを企画してくれたんです。その内容というのが、英子さんと(山本)達久くんといっしょに僕の曲を演奏する、というものだったんです。僕はそれまでふたりに面識はなかったので、どうなるのかなと思っていたんですけど、なんとかなるだろう、と。当日東京に行ってリハをしてライヴするみたいな感じだったんです。彼らも合わせるというとなんですけど、なんとでもしてくれるひとたちじゃないですか(笑)。船戸さんもそうですけど。そのときにはアルバム(『震える~』)をつくる話があったので、じゃあいっしょにやってくれませんか、ということになったんですね。

その編成が長谷川さんのなかでしっくりくるものがあった?

長谷川:ピアノが入るというのが初めての経験だったし、ああやっぱりいいな、と思いました。

それは装飾的な音があるといい、ということですか? それとも和声的な意味で?

長谷川:そのときははっきりわからなかったんですけど、ずっとひとりでライヴしているので、完結しているんですよ、やっぱり。弾いている和音もそれで完結しているんです。そこにピアノで同じコードを弾かれても、僕は自分でも、開放弦を多く使ってわりと微妙なコードを弾いているので、合わない部分もあるんですね。英子さんは自分で歌も歌っているし作曲もする方なので、フレーズをその都度作曲しながら入れてくるような感覚でおもしろかったんです。奥行きが生まれるんですよね。

英子さんにしろ達久くんにしろ、歌を咀嚼し即興しますからね。

長谷川:はじめて演奏した曲でいろんなことができましたから。すごい早いなって(笑)。僕がはじめてやっている曲もすぐに合わせてきて、それがかたちになるのがすごいな、と思いました。これでちゃんとリハーサルしたら、もっとすごいものになるな、という手ごたえはありました。前のアルバムはその段階だとしたら、『423』ではアレンジャー、プロデュースするひとがいたほうがいいんじゃないかということで、ジムさんにお願いしたんですね。

ジムさんには事前にどういった話し合いをしたんですか?

長谷川:事前にはとくにはなかったです。レコーディング中にいわれたのは、演奏が呼吸をしていない、といわれたことが二度ほどあって、それはどういう意味なんだろう、と思ったことはありました。漠然とした表現じゃないですか? 自分なりにこういうことかな、と思って、もう一度やったらOKだったので、「ああ、合ってたんだ」と思ったことはありました。ジムさんとしては、個人のもっているリズムが訛っているところを自然と出すようなことなのかな、と自分なりに解釈したんですが。

録音はスムースに進みましたか?

長谷川:準備が1日と録音が3日でした。

収録曲はデモの段階のものがすべてなんですか?

長谷川:全部そうです。

ある程度の期間、ライヴで歌いこまれた曲というわけですね。

長谷川:そうですね。

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ゴスペルとか賛美歌が好きで、賛美歌なんかは日本語のものとかをライヴで歌ったりするんですけど、宗教とか祈りというものと切り離せない音楽というのはいまとちがう高みに連れて行ってくれるような気がするんです。


長谷川健一
423

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いろんなひとに訊かれたと思ったんですが、アルバムのタイトル“423”は由来はどういうところにあるんですか? 同名の楽曲も収録していますが。

長谷川:アルバム・タイトルは曲名からとろうと思っているんです。曲名は曲を書いてから決めるんですけど、なんとなく、ひとが生きることという漠然とそういう意味合いがある歌かなと思って、“人生”とかつけると重苦しい、というか演歌みたいなので(笑)、スフィンクスのナゾナゾってあるじゃないですか?

ああ、ハイハイする赤ん坊から成人になって、杖をつく老人になるというあれですね。

長谷川:その答えが「人間」じゃないですか。そうやって数字で表したら重苦しい意味から逃れられると思ったんですね。

長谷川さんの言語感覚は、私はすごくおもしろいと思うんですね。ハセケンさんの歌は世界というか何かの塊のようなものをもっていて、そのなかに登場人物が複数いて視点が切り替わる、その移動の仕方が自由だし多様だと思うんです。最初にもいいましたが、そこがほかのシンガー・ソングライターとは異質だと思うんです。それはどういったところで培われた、とご自分では思われますか?

長谷川:その質問は今日はじめてですね(笑)。

俗な質問ですが、好きな本や作家などいますか?

長谷川:僕はあまり本は読まないですが、いっとき中上健次は読みました。即興をよく聴いていたときは、哲学とか......間章のライナーノーツとかわけわかんないじゃないですか(笑)。でも何が書いてあるのか知りたいと思ったので、アルトーとかセリーヌとか、あんまりわかんないんでけど(笑)、読んでみたことはありました。まわりに現代詩をやっているひともいて、そういう本に載せてもらったこともあるんですが、いいのかな、とは思っていました(笑)。僕にとっての歌詞は発声してなんぼのものなんです。詩でもあるんですが、完全に意味が通っている必要もないだろうと思っていて、どこかしら余白があって、聴いているひとが意味付けをして、聴くひとの数だけ歌があればいいと思っています。井上陽水さんなんかもそうだと思うんですが、なんのことかはわからないけど、でも強烈なイメージがはっきりある。

井上陽水さんの歌詞はそれでもイメージの像は結びやすいと思うんですね。ハセケンさんの歌詞はもうちょっと散文的だと思います。聴いてみると美しく清澄なものとして通り過ぎるひともいると思うんですね。

長谷川:そうですね。

その言葉を自分のなかで噛みしめていくとナゾが深まる、そういった歌だと思いました。

長谷川:ありがとうございます(笑)。でもそういった意図はあまりないです。でも、なんていうんでしょう、京都にずっと住んでいるんですが、京都にずっと住んでいるからできた歌だという気はします。空気というかテンポというかリズムというか......ほかの土地に住んだことがないのでわからないですけど、大阪に住んでいたらこの歌はではなかったような気がしますし、東京でもちがったと思います。ただ、京都に住んで自然に書いたらこうなった、というだけのものではあるので、どういうふうにしてやろうというのはないですね。

京都への愛着と反対に嫌いな部分はないですか?

長谷川:好きも嫌いもないんですよ(笑)。これからもずっと住むと思うんで。それでも観光客のひとたちが見ない部分は見ているんだろうし、京都市内にもいろいろややこしい地域もありますからね。排他的な部分もありますから。

東京に出てくる、といういいかたは好きではありませんが、そういった気持ちはないんですか?

長谷川:そうですね。

そうするとなにかが変わってしまう?

長谷川:そこまでかたくなに思っているものはないんですけど、このペースで歌を書いてきたので、この先もこういう感じでいくんだろうな、という漠然とした思いです。

土地ということで思いだしたんですが、私は奄美の出ですが、奄美のシマ唄は裏声を多用するんですね。そういったロックとかポップスとか以外の音楽からの影響はありますか?

長谷川:そこまでコアに音楽は聴いていなかったですが(笑)、ゴスペルとか賛美歌が好きで、賛美歌なんかは日本語のものとかをライヴで歌ったりするんですけど、宗教とか祈りというものと切り離せない音楽というのはいまとちがう高みに連れて行ってくれるような気がするんです。そうじゃないひとももちろんいると思うんですけど。そういう部分がやっていてもつくっていても、意識しているのかもしれませんね。

歌詞のなかにも「神」という言葉が出てきますが、それは宗教心なんでしょうか? それとも、ゴスペルや賛美歌からの影響の名残りでしょうか?

長谷川:僕が賛美歌に興味をもったのはあくまでも音楽の形態として、なんですね。でもそこになにかただの音楽じゃないものがくっついている気がして。「神様」という単語はちらほら出てきますが、キリスト教徒でもないですし、神がどうのこうの、という話できる人間でもないんですけど、なにか大きなものがあるんじゃないかな、という気持ちはあります。人間がわからない大きな存在があるかもしれない、それくらいの思いはあります。

歌を歌っているときは、そういうものの存在と向き合っているんでしょうか?

長谷川:歌っていて恍惚とする瞬間はありますが、分析していくと、昨日下北沢のleteというお店でライヴをしたんですが、そこではマイクを使わないんですね。ヴォーカルをどうするか、どうしたらよく聞こえるか、と考えたんです。そこで定期的に2年以上やっているんですが、最初はあまりやり方もわからないんです。ライヴハウスにはかならずマイクがありますし、それに頼ってきているんです、どうしても。でもナマでふとやると、どうしたもんかな、というところを考えたんですよ。で、やっぱりナマなので、出ているものしか聞こえないですし、単純にマイクがないということは音が小さいものだということで、声を張るんですけど、だからといってそれがいいわけでもないし、小さくたって聴かせ方はあると思うんですね。そこでライヴを続けているうちに、声の響かせ方、身体をどういう向きにしたら声が通るかとか、そういうことを考えるようになったんです。

マイクがあるとそういったことをあまり考えないですからね。

長谷川:そうなんですよ。モニターもありますし。出ている音というものも、部屋でやっているのと同じようにしか聞こえません。僕の地声は倍音成分がわりと出ていると思うんですよ。で、何回か感じたんですけど、頭蓋骨がものすごく響いている感覚がありとても恍惚となった瞬間があったんです(笑)。

それはオフ・マイクになったときの歌というのを一度考えないとたどりつかない境地かもしれませんね。

長谷川:そうですね。勉強になるというか。ためになりますね、ナマでやっているのは。ギターも声もナマだし、コンディションがすごく出ますし。

音楽の最先端の技術はごまかす方向にも転用できますからね。

長谷川:波形から変えられますからね(笑)。

さっきのジムさんの話もそうだと思うんですよ。音楽が「呼吸」する感覚。その点について、あらためてどうお考えになりますか?

長谷川:生きている呼吸ってひとそれぞれだと思うんですよ。自分のものは自分のもので、換えられないじゃないですか。ブラック・ミュージックをそのままやったって、それはつくったものだし、借りてきたスタイルだし。自分なりのテンポだったり訛りだったり呼吸でしかできないことはありますよね。借りてきたものだとおもしろくないし、自分を出さないと意味がない、と思うんです。そこは隠す、というか、直さなくていいんだな、ということはコーディングで感じました。

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呼吸ってひとそれぞれだと思うんですよ。自分のものは自分のもので、換えられないじゃないですか。ブラック・ミュージックをそのままやったって、それはつくったものだし、借りてきたスタイルだし。自分なりのテンポだったり訛りだったり呼吸でしかできないことはありますよね。


長谷川健一
423

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立ち入った質問になりますが、『423』に“子供の国”という曲があります。お子さんはいらっしゃいますか?

長谷川:(しばし沈黙し)はい。(子どもが)いるといないとでは視点がちがうと思うんです。自分と世界があるという関係から、さらにもうひとつちがう視点が生まれて、そこから見ると、この広い世界を僕を通じて見ているように感じるんですよ。それは自分の世界が広がることだと思うんですよね。そうすると言葉もやっぱり変わってきますし、震災以降、現実的な問題として、食べ物ひとつとってもどうしたらいいんだろうということがありますし、それをそのまま歌ってもしょうがないので、自分なりにそれまでやってきたスタイルでなにかできないかな、と思って、いちばん出ているのがそれだと思います。

まだできたばかりで恐縮ですが、今度こういうものをつくっていきたいというのはありますか?

長谷川:これ以降も曲は書いているんですけど、次は自分でもアレンジをやってみたいと思います。ジムさんにお願いして、アレンジしてこんなに曲が変わるんだ、奥行きやふくらみがあるんだということがすごく勉強になったので、自分でもやってみたいなと思います。歌は大きくは変わらないと思いますけどね。

それは楽しみですね。

長谷川:失敗するかもしれませんけど(笑)。

フリージャズとフォークを合体させて、三上寛+山下洋輔みたいになったりしませんかね(笑)?

長谷川:(笑)そのへん、浅川マキさんなんかすごく上手にやっていたと思いますけどね。フリージャズと歌謡曲というか歌唱というか。

浅川マキさんはそうなんですよね。浅川マキさんは情念深いイメージですがーー

長谷川:そこをみんな好きで聴いていると思うんですよ。

でもすごく洒脱なんですよね。本多俊之さんとかとやっていたときとか。

長谷川:船戸さんとやったときも、そういうのは頭にあったんですよ。歌とジャズでかっこいい音楽として。

わかります(笑)。ちなみに、いまは弾き語りをやっているミュージシャンは多いですが、ハセケンさんがそのなかで共感をもてるひとは誰かいますか?

長谷川:大阪にASAYAKE 01というひとがいて、このひとは弾き語りでブラック・ミュージック的な音楽をやるんですけど、オリジナリティがあって、すごいと思います。歌もすごい上手だしブレないし、ヒップホップみたいなものをギターで演奏して歌も歌うんですが、キワモノで終わっていなくて、うたものとしてものすごくいいんですよ。メロディもいいし。でも全然評価されていなくて、もったないと思いました。

ハセケンさんのギターのスタイルの影響はーー

長谷川:それもジェフ・バックリィが大きいですね。チューニングだったり、カポの位置とか。でも弾き方は我流なんですよ。わりと3、4弦が鳴らないような弾き方をすることが多いんです。歌と即興をやっていたときは、ギターの弦を5、6弦だけにして、演奏していたことが一時期あったんです。ギターの2弦とヴォーカルがあるので、いちおう三和音ができますよね。メジャーもマイナーもできる。それで聴くに堪える曲を書けているだろうか、と自分を試すつもりだったんですけど、あまりにストイックすぎておもしろくなくなってきて(笑)、結局また弦を6本張ったんですけど、その経験から必要な音、そうじゃない音がわかるようになったんです。ベースがこれだからこれを鳴らしてとか。ギターの弦が6本あるから、つねにそれを全部鳴らさないといけないわけでもない。弾き語りってムダな音が意外と多いと思うんです。ジャガジャガやっているだけといいますか。そこから必要な音だけ鳴らせばいいというので、なんとなく、1、2、5、6弦を弾くスタイルができたんです。むかしの古いブルースで同じ弾き方をしているものがありました。あとポール・マッカートニーと同じ弾き方だといわれたことがありました。

ティムよりジェフ・バックリィなんですね。

長谷川:僕はわりとそうですね。わかりやすさではジェフのほうが上だと思いますね。お父さんのほうは新しいサウンドをめざしたひとなんじゃないかな、と思います。息子は完全にギター一本で歌ってどうだ、というわかりやすさが魅力ですね。

ご自分のなかでは新しいサウンドより、自分の歌を追求していきたい?

長谷川:そうですね。いい曲を書きたい欲求のほうが高いです。

いい曲とはどういう曲ですか?

長谷川:ひとそれぞれだと思うんですが、自分がいちばん好きで美しいと思っている曲で、ライヴをやるので、何度歌っても飽きない歌ですね。

われわれはアルバムの取材だと、よくコンセプトといいますが、ハセケンさんの場合、それよりも1曲1曲を大切にしていきたいということですね?

長谷川:そうですね。自分がいいと思った曲をまとめて出したい、聴いてほしい、という感じです。

★本作発売を記念したリリースツアースケジュールも一挙発表!
チケット詳細や各出演者情報等、随時更新予定!是非チェック!

423 Release Tour
3.10(日) 京都 UrBANGUILD
3.23(土) 京都 タワーレコード京都店(インストアライブ)
3.24(日) 豊橋 grand space quark
3.30(土) 東京 タワーレコード新宿店(インストアライブ)
4.7(日) 名古屋 K.D ハポン
4.13(土) 広島 眠り猫
4.19(金) 富山  nowhere
4.20(土) 福井 gecko cafe
4.21(日) 松本 瓦レコード
5.2(木) 東京 青山CAY
5.11(土) 山形
5.12(日) 青森
and more...

 マン・マンというバンドをご存じだろうか? 日本ではあまり知名度はないかもしれないが、アメリカではけっこう有名だ。彼らはフィラデルフィア出身、中年男5人組のエクスペリメンタル・ロック・バンド、結成は2003年だ。
 ドラマーのパウ・パウは、インディ好きにはたまらない、ニード・ニュー・ボディアイシー・デモンズなどのバンド他、ボアドラム、チボマットの羽鳥美保氏とも共演している歴の長い凄腕のドラマーである。
 長年追いかけているパウ・パウを通じてマン・マンを知った。彼が参加するバンドなら間違いないと軽く見に行くと、メイン・プロジェクトかと勘違いするほどの人気の高さと、インディ・ロック・ファンだけでなく、一般の人もすんなり入ることのできる許容範囲の広さに驚く。
 ブルックリンを歩くとそこかしこの壁やお店のトイレなどにタグ付けされているし、大手スポンサーのフェスティヴァルやショーにも頻繁に出演している、お茶の間でも人気のあるバンドなのである。詳しい経歴はこちらを参照
 最近、ネコ・ケースも所属する〈アンタイ〉から作品を出している。

 マーク・デマルコ、シャウト・アウト・ラウド、スターズ、ジェイミー・リデル、マーニー・ステーン、ジョニー・マー(!)級のバンドがプレイする、ミュージック・ホール・オブ・ウィリアムスバーグという、東京で言えば、フィーヴァーぐらいの規模の会場はソールドアウト。マン・マンは、すでに10数回見ているが、いち度たりとも「今回はまあまあだったな」というときがない。
 1回1回全力疾走である。そういう意味ではオブ・モントリオールとかぶるところがあるが、マン・マンはもっと男臭い。オーディエンスは80%男だ。以前、〈ブルックリン・ボウル〉という会場にマン・マンを見に行き、別の日に同じ会場にヤング・フレッシュ・フェロウズ(80年代、シアトルで結成されたオルタナティブ・バンド)を見に行ったらお客さんが、かなりかぶっていた。マン・マンは数あるUSインディ・バンドのなかでも実力派なのだ。

 メンバー全員がさまざまな楽器(ピアノ、クラリネット、ムーグ、サックス、トランペット、フレンチホーン、ドラム、フレンチホーン・ジャズベース、バリトンギター、鉄琴、マリンバ、メロディカなど)を演奏し、曲により楽器を変えるフレキシブルさ。鍋やヤカン(やお客さんの頭)が打楽器として演奏されるときもある。

 キーボードとドラムが前、後ろにギター、ベース、キーボード(やその他)という形態。ヴォーカルのライアンはキーボードを弾いたり、スタンド・アップ・マイクでドラムの上に立って歌ったり、船長さんになったり、エイリアンのマスクを被ったり、エンターテイメントに決して手を抜かない。さらにドラムセットのアートペイント、ドラムやマイクにつけられたクリスマス・ライト、ステージの装飾、歌も演奏もとてもマン・マンらしく個性的で、ショーを見たあとは、運動会を見に行った後のような、心地良い疲労感がある。

 アメリカで人気のあるバンドは、大抵がライヴの良いバンドだと思う。こちらのオーディエンスはライヴが悪かったら即座に反応する(悪ければすぐに帰ったり、演奏は無視してしゃべりだす)、ライヴが良いバンドは演奏力はもちろん、エンターテイメント性、ユーモアのセンス、そしてコマーシャル的でなく、心から「良い!」と思えるのが共通点である。
 言葉で説明しても、ヴィデオで少し見ても、そのバンドを実際見たことにはならない。百聞は一見にしかず。日本で人気があるインディ・バンド、たとえばダーティー・プロジェクターズ、アニマル・コレクティヴ、ディアフーフ、この並びにマン・マンも入ることは間違いないのだが、やっぱり中年男5人ではダメなのだろうか......。

monotronの表情(かお) - ele-king


KORG コルグ 手の平サイズ アナログ・シンセサイザー monotron

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KORG コルグ ディレイ搭載 手の平サイズ シンセサイザー monotron DELAY

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KORG コルグ 2オシレーター搭載 手の平サイズ シンセサイザー monotron

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エクストルーパーズ ザ・バウンデッド サウンドトラック

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 2010年にコルグ社より発売された手のひらサイズのアナログ・シンセサイザー「monotron」、そして翌年に発売されたその兄弟機「monotron DUO」と「monotron DELAY」。大きさも価格も手軽ながら本格的な機能を備えている点が人気を呼び、ネット上でもユーザーによる多数の動画レヴューを観ることができる。

 だが、その実作への応用をリアルに理解できる動画・紹介記事はこれをおいて他にはないだろう。コルグ公式ウェブサイトにおいて現在公開されている「KORG x CAPCOM」コラボ記事だ。

 ここでは株式会社カプコンでゲーム・ミュージックの制作を担当する北川保昌氏と青木征洋氏のインタヴューを読むことができるのだが、そのなかで「monotron」の使用について具体的に触れてられていておもしろい。

 使用されている作品は、「マンガデモ」など斬新な演出でも話題を呼ぶゲーム『エクストルーパーズ』。両氏がROCK-MENとして手がけた同作だが、「monotron」の使用がゲームの展開自体にいかに表情をつけているのかがよくわかる。「pitchblack+」や「KAOSS PAD QUAD」への言及もあり、ゲーム・ファンのみならず、機材ファンや実作者にも興味深い内容ではないだろうか。

 カプコンの公式サイトでは、ゲーム内の該当シーンと音、そして実際にどのような操作がなされているのかを動画でも確認することができる。「自分にもやれるんじゃ......!?」という興奮とともに、あなたも通販サイトでポチッとやってしまうかもしれない。

■SOUNDBYTES : KORG X CAPCOMインタビュー|KORG INC.
https://www.korg.co.jp/SoundMakeup/SoundBytes/capcom/


とくに下記サイトで観られる動画では「monotron」をリアルに感じることができるだろう。

■KORG × CAPCOM ‹ CAP'STONE|カプコンサウンドチーム 公式WEB
https://www.capcom.co.jp/sound/topics/korg-x-capcom/


株式会社コルグ
https://www.korg.co.jp

アナログ・リボンシンセサイザー「monotron」
https://www.korg.co.jp/Product/Dance/monotron/

エクストルーパーズ公式サイト
https://www.capcom.co.jp/ext/

エクストルーパーズ ザ・バウンデッド サウンドトラック
https://www.capcom.co.jp/sound/discography/cpca-10280/

BO NINGEN × COMANECHI - ele-king


BO NINGEN
Line The Wall(DVD付) [CD+DVD]

ソニー

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コマネチ
You Owe Me Nothing But Love

Knew Noise Recordings

Amazon iTunes

 グローバルな現代において、海外に音楽を届けること自体は簡単なことのかもしれない。ただ、実際に足を運び、さらに海外を拠点に活動をするとなると、そう簡単にはいかない。
 だからこそ、ボー・ニンゲンとコマネチがイギリスを拠点に活動し、『NME』からも評価され、ザ・ホラーズやザ・ドラムスなどからも認められているという事実に、僕たちはもっと注目すべきだろう。ボー・ニンゲンに関しては、新作『ライン・ザ・ウォール』の国内リリースが2月27日に決定しているので、今後、日本でもより幅広く注目されることになりそうだ。

 ロンドンを拠点に活動をしているアキコは、近年、ザ・ビッグ・ピンクを辞め、コマネチの活動に専念。2月14日には、セカンド・アルバム、『ユー・オゥ・ミー・ナッシング・バット・ラヴ』をリリースしている。グランジからの影響を強く感じさせ、ボディソニック・ビートとヘヴィなギターがいろんな角度から飛んでくる。ノイジーで、ハードで、パンキッシュだが、多くのリスナーがアプローチしやすい音楽でもある。
 スタイリッシュだが型にまったくはまらないクールさという点では、ボー・ニンゲンと似ているのかもしれない。

 去る2月、同時期に新作もリリースし、共通点も多いボー・ニンゲンとコマネチが日本でツアーした。これは、バンドでヴォーカルを務めるボー・ニンゲンのタイゲン、そしてコマネチのアキコとの対談。言いたい放題過ぎるふたりの対談、どうぞ、お楽しみください。

やっぱね、人生、リスク背負った方がええよ。理由つけて親があかんとかお金ないとかそんなんばっかり。たしかに現実問題で無理なんかも知らんけど、ほんまにそれくらい真剣に考えてんやったら、飛び出せっ!!!

イギリスを拠点に活動をする日本人、そしてリリースもほぼ同じタイミングということで共通点の多いおふた方ですが、せっかくの機会なので、今日はおふたりが普段あまり話せないことや、訊けないことを対談という形式でやれたらと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。早速なのですが、イギリスの嫌いな点を思いつくだけ挙げてください。

タイゲン:うわ、それたぶん100個くらい出てくる! だってコマネチのイギリス人のふたりが言ってたもんね(笑)。

アキコ:そう、だってドラムのチャーリーなんか日本に住める言うてたよ。

(笑)

タイゲン:とりあえず皆パッて言うのは、間違いなくご飯。

アキコ:ご飯! 例えば、今回帰って気づくんは、24時以降とか、お腹空いたらイギリスやとケバブかチップスしかないのよ。 お惣菜とかおにぎり一個食べたいなとかそういうのがないもん。

タイゲン:あとイギリスってライヴ後の打ち上げにご飯を食べにいくっていう文化がなくて、飲むだけみたいな。

アキコ:わかる!

タイゲン:そのくせにあんまり飲まないし。

アキコ:そうそう。 あれ疲れるよなぁ、結構。

タイゲン:あと単純にイギリス・ツアーしててもご飯の替えがない。どこ行っても同じっていうか。

アキコ:そう。 名古屋やったら、うなぎとか、手羽先とか、あるでしょ? 大阪やったら、たこ焼き、お好み焼きとかさ、そういうのないもん!

タイゲン:まったくないね。コマネチのイギリス人のふたりも、日本に着いてサービス・エリアの時点で感動してたからね(笑)。

アキコ:なんか、「なんでこんな美味しいの!」って、いままで朝ご飯っていったらベーコン・エッグしか知らんかったとか言うてたわ。

(笑)

タイゲン:食文化っていうのがまずあって、バンドで言うと僕はあれですね、イギリスって怠く演奏するのがかっこいいみたいなの多くない?

アキコ:たしかに。

タイゲン:日本のバンドはイギリスに比べるとまじめじゃん?

アキコ:それはある!

タイゲン:まじめすぎるのは良くないにしろ、テクニック、モチベーション、アティチュードにしろ、心持ちというか、音楽に対する向かい方というかさ、なんか惰性的な気がする......。

イギリスで活動をするということは、必然的に同業者はイギリス人が多いわけですよね。実際、日本人とイギリス人の相性みたいなものはどうなんですか?

タイゲン:意外と合う......かな? どっちもシャイだよね。

アキコ:うん。 シャイ。

長く滞在するうえで、人間関係などはあまり苦にならないのですか?

アキコ:いやでも、なんていうか......。

タイゲン:雑だよね。

アキコ:めっちゃ雑!!

タイゲン:時間ルーズだし、適当......。

では逆に、イギリスの良い点はなんでしょうか?

アキコ:え、ちょっと待って、あたしらまだ2個しか言うてないやん。

(笑)

アキコ:あとはね、汚い。

タイゲン:汚いねー(笑)。

アキコ:道も汚いし、バスも汚いし、食べたゴミとかポイ捨てするし、こっち帰って来たら、ゴミなんか絶対捨てたくないって思うもん!

タイゲン:紳士の国と言われていますが、紳士の割合は相当低い! あと教育が行き届いてないですね。

アキコ:マナーとか礼儀みたいな。

タイゲン:格差もある。親が金持ちでプライヴェート・スクールというか、それと公立とのね。

アキコ:食べ物も凄いよ。

タイゲン:また食べ物になっちゃうけど(笑)。

しかし、おふたりはそんなイギリスに拠点を置いて実際に生活しているわけであって(笑)、良いところももちろんありますよね?

タイゲン:うん(笑)。とりあえず音楽活動に関しては、凄いやりやすい。

アキコ:やりやすい! やりやすい!

具体的にどういったところがですか?

タイゲン:例えば、日本だとノルマというものがあって、えっと、ちなみにアキコちゃんは日本で活動してた?

アキコ:してない。 ちなみにノルマってどういう意味?

タイゲン:「ペイ・トュー・プレイ」。

アキコ:うそー!!! 自分らでお金払って演奏させて貰うの?!

タイゲン:というか、チケットが売れないと自分たちで払うの。

アキコ:えーーーーーー!!!!!  あ、でもイギリスにもそういうセコいプロモーターおるよね。

タイゲン:セックス・ピストルズがDJするからとか言って釣ってくる奴とかいるけど、でもだいたいはないじゃん? ちょっとはお金貰えるかもしれないし、赤にはならない気がする。

アキコ:たしかになー。

タイゲン:あと人がよく混ざってライヴに来るよね。ホラーズがぽつっと来たりさ、ファッションの人とか、アートの人とかが普通にお客さんとして観に来てくれて、それがコラボに繋がったりするし。

アキコ:日本やったら、上下関係みたいなのあるでしょ? そんなん関係ないもん、イギリス。日本だとあれがあるじゃん、えーっと、ほら、あれ、なんやったっけ?

タイゲン:ごますり?

アキコ:そうそう。

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うちらがやってるようなアンダーグラウンドとメインストリームがちゃんと繋がってるよね、階段が架かってるというか。バンドのノルマとかもないから、最初は1回のライヴ20ポンドみたいなところからはじまって、だんだん50~100くらいに上がってって、っで、メジャーになっていくっていうかさ。

堅苦しくないという意味では、イギリスは良いと。

タイゲン:そうそう! 砕けてるっていうか、友だちみたいな感じでお客さんがライヴ後に話しかけてくれるし、そういうアーティストとお客さんの関係みたいなものは凄くいいなって思って。日本だと、物販で本人が手売りしてたけど、申し訳なくなって、家帰った後にアマゾンでCDポチった(購入)とかツイッターで書いてあったりして(笑)。

アキコ:あー! それ私も言われた。前回コマネチで日本ツアーした時に、なんか7インチのシングル買って、サインして貰いたいから会場に持ってきたのに恥ずかしくて頼まれへんかったって!

でもそれ凄いわかりますけどね(笑)。

タイゲン:あとイギリスの良い点でいうと、日本だとどうしてもアーティストとプロモーター、会社の人でも、イコールに成りづらいというか、上から見てくるか、下から見てくるかどっちかになっちゃうかなっていう感じがする。イギリスは結構そういった意味では対等っていうかさ。

アキコ:イギリスやとお客さんとアーティストが一緒みたいな感じやけど、こっちやったらファンの人が崇めてるような感じがあるもんね。

タイゲン:そこらへんに関しては凄く自然体だよね。あと音楽的にも、うちらがやってるようなアンダーグラウンドとメインストリームがちゃんと繋がってるよね、階段が架かってるというか。さっきも言ったけど、バンドのノルマとかもないから、最初は1回のライヴ20ポンドみたいなところからはじまって、だんだん50~100くらいに上がってって、っで、メジャーになっていくっていうかさ。

アキコ:そうそう! 繋がってる、繋がってる。

タイゲン:日本だとメジャーになるときに、凄いステップ・アップがあって、ノルマが無くなるまでがまず大変っていうか、めちゃくちゃジャンプしなくちゃダメで、しかもそこからギャラが出るまでがあって、ギャラがあってから食えるようになるまでがまたあって、凄い階段が一段一段デカいんだけど、イギリスだと逆に一段一段、じょじょに上がっていく感じというか。

アキコ:うん、わかる。

タイゲン:だからイギリスに関しては、まず音楽活動がやりやすいっていうのがあるかなーって僕は思うけどね。


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先ほど、コラボまでの流れもイギリスだと自然だと仰っていましたが、例えば、ボー・ニンゲンの"Nichijyou"という曲ではサヴェイジズのヴォーカル、ジェニー・ベスがフューチャリングで参加しています。あのコラボはどういった成り立ちで生まれたものなのでしょうか?

タイゲン:もともと凄い前に、彼女が以前やってたプロジェクトで対バンしてて、うちのレーヴェルとも仲良かったからたまに話してて、っでゲスト・ヴォーカル探してる時に、彼女は? って言われて、いいかもねって。普通に友だちのノリで聞いてみて、じゃあやるよって。本当そんな感じ。

アキコ:そういうのよくあるよ。お金払うからリミックスしてくださいとかさ、そういう風に頼んでやるんじゃなくて、「レッツ!」 ていうかさ、一緒にやろう! みたいなね。

タイゲン:うんうん!

以前、たいげん君がエレキングのインタヴューで、海外(イギリス)を拠点に活動をする理由に対して、「日本にいないからこその日本人らしさや日本の良さをちゃんと見ることが出来るから」って言ってたのが凄く印象に残っているのですが、アキコさんにとっての海外を拠点に活動する理由ってなんですか?

アキコ:単純に世界に飛び出したいと思ったからかな。日本で活動してたら日本語で歌わなきゃとかやっぱり思うし、でもイギリスやったら、まあロックの発祥地やし、自由に音楽やりやすそうなイメージはあったし、さっきの話じゃないけど、もっと広がりやすいかなって、おっきく世界に。日本で活動するんもええんやけど、あたしはそれが嫌やった。

タイゲン君も、まず高校を卒業した時点で、日本という選択肢はなかったと言ってましたよね。

タイゲン:うん。

アキコ:あたしもそうやった。日本出たときに、帰らへんって思ってたから。そういう気持で行ったからね。例えば日本で売れて、おっきくなっても、あたしにとってそれは成功じゃないから、他の国の人、このバンド知ってんの? ってなるでしょ。

なるほど。では次に、逆に日本の良い点はなんだと思いますか? これも思いつくだけ挙げてください。

タイゲン:飯はもういろいろ話尽くしたから(笑)、音楽的にいったら、お客さん凄い観てくれるよね?

アキコ:うーん......、でもノリ悪くない?

タイゲン:まぁ、そういう場所もあるけど(笑)、いやでも場所次第だと思うよ。さっきの姿勢の話じゃないけど、日本の場合は全体的に、音楽をやることに対してのストイックさみたいなものは、イギリスにはなかなか無い点だと思う。ノルマ制度があるからこその敷居の高さみたいなものは実際ある気がするし、下手だったらライヴ・ハウスで演奏出来ないんじゃないか? みたいな、いい意味での争いがあるよね。

"海外に出ていない"と仮定するとしたら、現在どのように日本で活動しますか? そもそも、日本で活動しますか?

タイゲン:うーん......、してるとは願いたい(笑)。

アキコ:ねぇねぇ、あたし、たいげん君に質問したいねんけど?

あ、どうぞ!(笑)

アキコ:イギリス行ったときに、日本人のメンバー探してた?

タイゲン:ううん。

アキコ:じゃあ、なんで日本人だけのメンバーになったの?

タイゲン:僕、最初バンドを5個くらいやってたんだけど、ちなみに担当は全部ベースで、イギリス人やらフランス人やら、いろんな国の人と活動してた中で、ギターのこうへい君にまず出会って、外人とジャムってるうちに、ギターのゆうきに出会って、もんちゃんに出会って、っで気づいたらこの形になってたっていう(笑)。でも別に日本人を募集してたわけじゃないよ。イギリス人と一緒にやってたバンドとかも、引き続き活動はしてたんだけど、解散したり、国に帰ったり、そうこうしてるうちにボー・ニンゲンが忙しくなってった感じかな。

逆に、アキコさんはどうだったんですか?

アキコ:あたしは海外に出て、向こうの音楽やりたいってなったから、日本人と組む気はなかったね。って、なんかレイシストっぽいかな?(笑)。

タイゲン:いやいや(笑)、日本出てきたわけだから、それは普通じゃん?

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日本出たときに、帰らへんって思ってたから。そういう気持で行ったからね。例えば日本で売れて、おっきくなっても、あたしにとってそれは成功じゃないから、他の国の人、このバンド知ってんの? ってなるでしょ。


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ちなみに、タイゲン君とアキコさんとの出会いはどのような感じだったんですか?

タイゲン:スタジオだ!!

アキコ:違う! 前から知っとったんやで。

タイゲン:うそ!

アキコ:スクリーミング・ティー・パーティが〈ストールン・レコーディングス〉で頑張ってたときに、コマネチで対バンしたのよ。っで仲良くなって、スクリーミング・ティー・パーティのマイスペース見たら、ボー・ニンゲンがトップ・フレンドに入っとって(笑)。

マイスペース懐かしいですね(笑)。

タイゲン:マイスペースっていい時代だったよね(笑)

アキコ:いい時代やった(笑)。そんでクリックしたら、もう一発で気に入って。

タイゲン:ああ、ありがとう(笑)。

アキコ:そんとき流れたのが、"人生一度きり"で、そんでこのバンドむっちゃええ! ってなって、まわりの友だちとかにも言っとった。あたしがビッグ・ピンクやってたときとかも、サポートはボー・ニンゲンがいいってお願いしてたもん。 実現せえへんかったけど。

タイゲン:でも最初に会ったのはスタジオだよね?

アキコ:うん、スタジオ(笑)。別のバンドやっとったときにスタジオで会って、あたし写真撮るの好きやから、写真撮らせて貰って

タイゲン:いきなり第一声にして、「あれやろ? "人生一度きり"やろ?」 って言われたの覚えてる(笑)。

アキコ:「歌詞もめっちゃいいし、わかるわ~!!!」言うて(笑)。

タイゲン:ははははははは!

(笑)

タイゲン:なんか、スタジオとかでもさ、日本だと同じスタジオで練習してるバンドとあんまり仲良くなったりしない気がするんだけど、だってスタジオの紹介でチャーリーもコマネチに入ったんでしょ?

アキコ:うん。なんかそういう場所での対抗意識はないよね!

タイゲン:うんうん! 友だちの紹介とか、スタジオで知り合ったとかさ、そういう人間関係がいい意味で軽いノリっていうか。

アキコ:軽いノリ。だから「バンドやんねん!」とかそういうことを深刻に考えるんじゃなくてね。あっ、そうそう、話が逸れるけど、この間ね、とある人があたしに、LAに住んでる日本人の友だちがバンドはじめたいって言ってんねんけど、どうしたらいいんかアキコちゃん、アドヴァイスしてあげてくれませんか? って、え? アドヴァイスするようなことちゃうやん! って、バンドやりたかったら普通に友だちとか、音楽好きな子らとかと話したりして、この子らこんな音が好きやねんなって、それでじゃあバンドやってみーへんってなるやん。

(笑)。

タイゲン:ギターのこうへい君と出会ったとき、まだギター歴2年とかだったし、こうへい君に出会えたのがイギリスだったっていうのは大きかったのかなってたまに思う。お互い。

おふたりは、ヤックのマリコさんともお知り合いなんですよね? 現地のシーンにも、日本人のコミュニティみたいなものがあるんでしょうか?

タイゲン:とくにはないかな。イギリス人、日本人関係なく、音楽とか人柄とかで共鳴しあってるだけだと思うし、たまたまそこが日本人だったっていうだけで、日本人だから連むっていうわけではないかな。

アキコ:まぁ、家が近いからっていうのもあるよね(笑)。でもそういうのはまったくないよ。気が合うから。

タイゲン:日本のシーンの良い点は、いわゆる、何々系って言われるくらい、イギリスと比べたら、実際めっちゃたくさんかっこいいシーンで溢れてる印象だけど、逆に閉鎖的な気もする。コマネチもボー・ニンゲンも、あとヤックとかもさ、音は違うけど、ちゃんと交流があるし、対バンもするじゃん。

アキコ:なんか、自分らのやってるジャンルじゃなくても、みんな他の音楽も気に入って観に行ったりするし、イギリスは観に行きやすいよね。安いし、いろんなところでライヴがあるし、皆、オープン!

コマネチで言えば、ザ・ドラムスとのツアーが記憶に新しいのですが、彼らとのツアーもまさにそういう感じで動き出したんですか?

アキコ:そうなんですよ。昔はあたしも閉鎖的で、聴く耳を持たないときもあってんねんけど、先入観というかね、でもビッグ・ピンクやってたときに、『NME』ツアーで仲良くなって、そんときも音が全然ちゃうし、最初ドラムスのことはそんなに良いとか思ってなかったんけど、聴くたんびに好きになって、ポップやなぁ~思て、コマネチでやるときも、ほんまに、ブッキング・エージェンシーなく、今度こっち来んねんてね! サポートしていい? って連絡したらすぐオーケー出て、ベス・ディットーのゴシップもそうやし。彼らは昔からツアーを頑張ってて、そんときからあたしよくライヴ観に行ったりしてて、コマネチでも小さい会場のときからサポートもしてたんけど、いまでも、イギリス帰って来たらコマネチでサポートしてって、どんなにおっきくなっても向こうから連絡来る。見捨てへん、うちらのこと。

タイゲン:地に足ついてるバンド多いよね。ホラーズも本当にそうだし、めっちゃ良い奴らだよね!

アキコ:なんかあたしいまレストランでバイトしてんねんけど、そこに毎日来るんですよ、ホラーズ(笑)。

ははははははははは

タイゲン:売れっ子のロック・スター感ゼロだよね! なんか初めてうちらのライヴ観に来てくれたときも、すげー良かったってベースのリースが言ってきてくれたんだけど、オレもバンドやってるんだって、最初から偉そうな感じじゃなくて、僕がどんなバンドやってんの? って聞いてから、ちゃんと、ホラーズって凄く丁寧に答えてくれて。

アキコ:電話番号も向こうからくれるし、それで今度お好み焼き作るから食べにおいでって言うたら、ほんまに来てん(笑)。

タイゲン:はははははははは

アキコ:うちに(笑)。

タイゲン:共鳴しあって、単純に何かやろうってときに、少なからずの壁みたいなものが無いからこその、やりやすさみたいなものはやっぱりあるかな。それはイギリスの良い点、だね。

イギリスとその他ヨーロッパの違いはどのように感じていますか?

タイゲン:国によって反応は違うけど

アキコ:違う! でも他のヨーロッパより、イギリスのほうが音楽を発信してるよね。

タイゲン:やっぱり、他のヨーロッパのバンドもイギリスに来たがってるし、逆にイギリスは来られ成れてるから、まぁホスピタリティーは最悪なんだけど(笑)、でもさっきも言ったけど、チャンスが多い環境があるからね、イギリスには。イギリスの音楽業界、僕は健康だと思うんだよね。

アキコ:うん。

現在のアメリカのシーンについてはどう思いますか?

タイゲン:最近ジュークっていうのが流行ってるでしょ、知ってる?

アキコ:知らん。

タイゲン:僕も知らなくて、それでツイッター見て、あれはアメリカだよね。

アキコ:ジュークって日本のあの......

タイゲン:違います! 違います! うちのドライヴァーと同じジョークを言わないでくれ(笑)!

(笑)

タイゲン:あとイー・ディー・エムとか。イギリスだとあんまり聞かないけどね。なんかでも影響的な部分で言ったら、アメリカが強くなってきてるのかなってちょっと感じるけどね。日本はとくに。

以前、イギリスのティースやザ・ビッチズなどのバンドは、イギリス・シーンの不満を吐露し、ティースに関しては実際にアメリカに拠点を移しました。現状としては、個人的に、僕もアメリカの方がシーンが活発な印象を受けているのですが、それに関してはどう思いますか?

タイゲン:残念だね、でもアメリカはまだ行ったことがないからなぁ~。なんとも言えないんだけど、コマネチは行ったことある?

アキコ:コマネチの前のバンドで行った!

タイゲン:どうだった?

アキコ:うーん......、シーンとかはよくわからんけど、活動をするうえでは大変やよ、辛い! なんかやりにくかったなぁ、アメリカはデカイから、移動が12時間やったり。

タイゲン:なるほどね。

では、海外のバンドとしっかりコンタクトを取りながらも、日本でのツアーもしっかりこなし、非常に上手いヴァランスで活動をされているおふた方ですが、これから海外に活動を展開しようと思っている日本のバンドやアーティストにメッセージを送るとしたら、どんな言葉を送りますか?

タイゲン:とりあえず、出て、やるしかない(笑)。

アキコ:それしかないやろ(笑)。やっぱね、人生、リスク背負った方がええよ。理由つけて親があかんとかお金ないとかそんなんばっかり。たしかに現実問題で無理なんかも知らんけど、ほんまにそれくらい真剣に考えてんやったら、飛び出せっ!!! 

ふたたび浮かび上がる巨影 - ele-king

 明日はいよいよアンディ・ストット東京公演を目撃することができるわけだが、マンチェスターのアンダーグラウンド・ヒーロー、デムダイク・ステアの再来日もまた外すわけにはいかない。〈ファンダーズ・キーパーズ〉の一員でもあるショーン・キャンティ、ドーター・オブ・ザ・インダストリアル・レヴォリューションとしても知られるペンドル・コーヴンの片割れMLZによる同ユニット。行き過ぎた音の発掘屋と絶対零度なドローンの使い手が、われわれに見せてくれる風景とは......。
 紙ele-kingも絶賛準備中の次号は「新工業主義(ニュー・インダストリアル)」特集。ちょうど1年前にも本誌ではきっちりと記事を組んでいるが、ひきつづき彼らの活躍やその意義を次号の特集内にてもキャプチャーしていきたい。シーンに横たわる黒々とした巨影、デムダイク・ステアふたたびの公演を見逃すな!

2013.03.19 TUE
root&branch/UNIT presents DEMDIKE STARE

<UNIT>
DEMDIKE STARE (MODERN LOVE, UK) LIVE A/V
DJ NOBU (BITTA/FUTURE TERROR)
MLZ (MODERN LOVE, UK)
STEVEN PORTER (10LABEL/SEMANTICA RECORDS/ WEEVIL NEIGHBOURHOOD) LIVE

<SALOON>
COMPUMA
Shhhhh

OPEN/START : 23:00
CHARGE : ADV 3,000yen / DOOR 3,500yen(TIL 24:00 3,000yen)
※未成年者の入場不可・要顔写真付きID

TICKET : 【一般発売】3/3(SUN) on sale
Lawson Ticket / e+ / CLUBBERIA ONLINE SHOP / TECHNIQUE

INFO : 代官山UNIT 03-5459-8630

Andy Stott、DeepChird等と並びUK、Modern Loveレーベル所属の代表アーティストとしてマニアから絶大なる指示を得るDemdike Stare。2011年末からリリースを開始した1000枚限定のアナログ4部作をコンパイルしたダブル・アルバム『Elemental』も話題のダーク・エクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックの最先鋒の再来日が決定。
当日はDemdike Stareのライブに加え、Demdike Stare、Pendle Covenのメンバーでありソロでも数多くの作品をリリースしているMLZがDJとしてもプレイ。日本からはFuture Terror、Bittaを主宰し現在最もその動向が注目されるDJ NOBUのDJとSuvrecaの主宰するSemantica Recordsのカタログにも名を連ねるSteven Porterが貴重なLive Setで参加。更に階下のSaloonではワールド・ミュージックから現代音楽までを網羅するCompumaとShhhhhが特異な空間を演出する。





〈シュラインドットジェイピー〉の肖像 - ele-king

 97年に設立され、ひとつの哲学のもとに独自のIDMを模索しつづけてきた国内レーベル、〈シュラインドットジェイピー〉。2011年よりほぼ毎月のペースでリリースされてきた21タイトルをele-kingの視点でご紹介しよう。主宰である糸魚健一のブレない音響観やアート・ワーク、繚乱と展開される各アーティストのサウンド・デザインを楽しみたい。国産のエレクトロニカやIDMの水準をしっかりと感じ取ることができるだろう。

 倉本諒、デンシノオト、橋元優歩、野田努、松村正人、三田格によるレヴュー21タイトル掲載ページは、以下からご覧いただけます。
https://www.ele-king.net/special/shrine.php


■Pick Up

intext - fount
SRCD025

言語=フォント=シニフィアンの「美」が、形式=デザインの「美」へと遡行し、そこからサウンド=音響・音楽が生まれること。京都在住の外山央・尾崎祐介・見増勇介らによるこのエレクトロニクス・サウンド・アート・プロジェクトのミッションは、テクスト・フォント・デザイン・サウンドのマッピングを拡張していくことで、電子音響作品における「形式の美」を刷新する試みのように思えた。電子音の清冽な持続、陶器のような質感のクリッキーなリズム、記憶を解凍のようなサウンド・コラージュ。それらが精密に重なりあい、一切の濁りのない清流のようなサウンド・レイヤーを生成していく。そのサウンドのなんという美しさ! (デンシノオト)

plan+e - sound-thinking
SRCD038

レーベルを主催するサイセクス(PsysEx)とアームチェアー・リフレクションによるアティック・プランに萩野真也が加わって名義が短縮され、さらにE(Ekram)こと古舘健をフィーチャーした即興ユニットの1作目。前半はムーヴ・Dのディープ・スペース・ネットワークを思わせつつ、音数を減らしていないラスター・ノートンというか、ドイツ産にはない情感が随所から滲み出してくる。あるいはマッシヴ・アタックをグリッチ化したような泥臭さをそこはかとなく漂わせ、無機質な音だけで構成されているとは思えない豊穣なニュアンスへと導かれるとも(闇のなかを手探りで進んでいるのに、どこか安心感があるというか)。後半は発想の源がさっぱりわからない“cycloid”や、雅楽(?)にジャズを持ち込んだ“bon sens”など意外な展開が目白押し(後者は今西玲子を琴でフィーチャーし、法然院で録音)。全9曲、似たようなパターンはまったくなく、アンビエント係 数の高い“thinking reed”や“cosmology”にしてもなかなか一筋縄ではいかないややこしさに満ちている。つーか、またしてもピッチフォークあたりに「日本人はなんでオウテカばっかり聴いて、自分の国の......」とか嫌味を書かれそうな予感も? (三田格)

Toru Yamanaka - sextant
SRCD027

睦月、如月は例年僕の生体バイオリズムが最も降下を記録するシーズンである。それは自身のなかと外の世界に最も顕著なズレが生じることを意味する。芸術表現における主たるモチヴェーションのひとつはこのズレを補正することだ。この『セクスタント』には彼の内省的事柄を音像とその配置によって丁寧に具現化していく根源的行為が各トラック毎に完遂されていて、それが聴者の心象から新たなるスケッチを描き出す。セクスタント(航海計器)はいかなる聴者の内なる大海原にても正確な航路を導き出してくれるに違いない。〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉なる独自のブランディングを施されたリリースをハイペース継続している現代型のレーベルが畑は違えど存在しているということは、いい加減正月ボケから目を醒ますべきだと僕に告げているのかもしれない。(倉本諒)

ieva - il etait une fois
SRCD036

最初にヘッドフォンで聴いて、数分後、このアルバムにすっかり魅せられた。イエバによる『Il Etait Une Fois(昔々)』は、聴覚による想像的景色の万華鏡だ。まどろみを誘い、夢と記憶の茂みをかき分け、日々の生活では忘れている感情の蓋を開ける。アンビエント・ミュージックはこの10年で、より身近な音楽となった。ただ、そう、ただ耳を傾けさせすれば、景色は広がる。そして、フィールド・レコーディングとミュージック・コンクレートも、アンビエントにおいてより効果的な手法として普及している。クリスチャン・フェネスやクリス・ワトソン、グレアム・ラムキン、あるいはドルフィン・イントゥ・ザ・フューチャー......本作もこうした時代の新しい静寂に連なっている。女性ヴォーカルの入った最高に美しい曲が2曲あるが、それらは歌ではなく、あくまで音。フィールド・レコーディング(具体音)の断片たちが奏でる抽象的で想像的な音楽のいち部としてある。まったく、なんて陶酔的な1枚だろう。(野田努)

polar M - the night comes down
SRCD022

エレクトロニカにおけるアンビエント以降の音楽/音響はいかにして成立するのか。京都出身のpolar Mことmuranaka masumが奏でる音のタペストリー/層は、この「難題」に対して柔らかな返答を送っているように思えた。電子音響のクリスタルな響き。ヴォーカル・トラックが醸し出す透明な感情。ロード・ムーヴィのサントラのようなギターの旋律。ガムランでクリッキーなビート。これらの音が緻密にエディットを施され音楽作品として成立するとき、「音楽/音響」の対立は綺麗に無化されていくのだ。まるで氷の密やかに重なり合うような結晶のようなデジタル・サウンド。ずっとずっと浸っていたい。(デンシノオト)

Psysex - x
SRCD030

〈shrine.jp(シュラインドットジェイピー)〉主宰のPsySex(サイセクス)こと糸魚健一をはじめて知ったのは、まだ雑誌に勤めていたとき、〈涼音堂茶舗〉の星さんにファースト『Polyrhythm_system exclusive message』をご紹介いただいたときなので、もう10年になるが、PsySexはこの間、一貫してユニット名の由来でもある“ポリリズム - システム”、つまり揺らぎやズレを内包した機構の構築をつきつめてきた。それはIDMの金科玉条というよりシステム自体の自律性であり、そのベクトルに沿いながらPsySexは〈daisyworld〉や〈12k〉〈port〉〈imagined〉などのレーベルとリンクし、アルヴァ・ノトやAtom TMと親交を深めたが、軸は揺らがなかった。まったくブレない。アルバムごとの表情はもちろんちがうし、テクノロジーの変遷を無視するわけにはいかないが、PsySexのビートとノートとサウンドの化合物は、白地図上の国盗りゲームのようだったIDMのトレンドとはハナから距離をとっていた。『x(テン)』はその10年目の経過報告であり、時空間上に音を置いていくやり方に円熟の旨味さえ感じさせる。ストイシズムのなかに滲むものがある。アブストラクトなのにギスギスしていないのは〈shrine.jp〉の諸作にも通じるものであり、PsySexという機構はそれらとの連関のうちに語られるべき何ものかに拡張しつづけている。(松村正人)

plan+e - ele-king

 レーベルを主催するサイセクス(PsysEx)とアームチェアー・リフレクションによるアティック・プランに萩野真也が加わって名義が短縮され、さらにE(Ekram)こと古舘健をフィーチャーした即興ユニットの1作目。前半はムーヴ・Dのディープ・スペース・ネットワークを思わせつつ、音数を減らしていないラスター・ノートンというか、ドイツ産にはない情感が随所から滲み出してくる。あるいはマッシヴ・アタックをグリッチ化したような泥臭さをそこはかとなく漂わせ、無機質な音だけで構成されているとは思えない豊穣なニュアンスへと導かれるとも(闇のなかを手探りで進んでいるのに、どこか安心感があるというか)。後半は発想の源がさっぱりわからない"cycloid"や、雅楽(?)にジャズを持ち込んだ"bon sens"など意外な展開が目白押し(後者は今西玲子を琴でフィーチャーし、法然院で録音)。全9曲、似たようなパターンはまったくなく、アンビエント係 数の高い"thinking reed"や"cosmology"にしてもなかなか一筋縄ではいかないややこしさに満ちている。つーか、またしてもピッチフォークあたりに「日本人はなんでオウテカばっかり聴いて、自分の国の......」とか嫌味を書かれそうな予感も? 

97年に設立され、ひとつの哲学のもとに独自のIDMを模索しつづける国内レーベル、〈シュラインドットジェイピー〉の特集記事はこちらから!

https://www.ele-king.net/special/shrine.php

第7回:忘却の手ざわり - ele-king

 先日、ニューヨークの恩田晃さんから新作の案内をもらった。といっても、恩田さんは音(楽)を探しながら、つくりながら世界中をめぐっているので家を空けることも多いが、そのときはニューヨークにいたようだった。メールといっしょに、ごていねいに試聴音源もいただいたのだが、メールを送られたのが昨年の暮れだから、2ヶ月以上も経ってからのご紹介になってしまい、もうしわけない。文面には「数週間前に Important Records から久々のソロ・アルバムをリリースしました」とあったから、作品自体はさらにその前に出ていたことになる。


Aki Onda / South Of The Border

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 恩田晃(ここからは本題に入るので敬称を略します)の新作は『South Of The Border』と題し、副題に「Cassette Memories Vol.3」とある。これは恩田晃のライフワークともいえるポータブル・プレイヤーによるフィールド・レコーディング音源を元にした連作の3作目であり、最初のアルバムはDJオリーヴとカジワラ・トシオが2000年代なかばまで運営していた〈Phonomena Audio Arts & Multiples〉から、2003年に『Ancient & Modern』と題して、そして同年には、早くも、日本の即興音楽、それも既存の即興の流れにおさまりきらない即興音楽を数多く発表してきた〈Improvised Music From Japan〉から第2弾『Bon Voyage!』を出している。『Ancient & Modern』のジャケットに「(詳しくは憶えていないが)私はたぶん、5~6年前からポータブル・カセット・プレイヤーを音の日記のように、あるいはインスピレーションの源として使いはじめた」とあるから、はじめたのは90年代末ということになる。彼が使うのは基本的に民生品のカセット・プレイヤー、俗に「テレコ」と呼ばれるもので、ちょうど今年の1月をもって、ソニーもその生産から完全に撤退したというから、電器屋でもあまりみかけなくなったシロモノである。恩田晃はそれを携え、訪れたあらゆる場所の情景を音に切り取る。日記代わりだが、多くの場合、ふきこんだカセットに日時や場所の情報は記さない(と彼は以前私にそういった)。無造作に段ボールに投げ込んだカセットを、いざ何かする段になって、あたりをつけて取り出す。意図的に(?)場所と時間から切り離れた吹きこまれた音はそのとき、恩田晃の記憶の所有となることで記憶と素材の中間にとどまり、そこに何かしらの操作を加えることは具体と抽象との両方に接する領域をつくることになるが、これは誰もやっていないことではない。フィールド・レコーディングはもちろん、ミュージック・コンクレートといったクラシカル(赤字に傍点)な分野にいくつもの先例と名作がある。がしかし、既存の手法を援用していても、そことの関係にわずかに差異をつくれば方法論は確実に斬新になる。いや、方法論以前に位相が違うといってもいいのだ。フィールド・レコーディングは空間の、環境の記録である。ミュージック・コンクレートは具体音をもちいた音楽であり、個別の抽象としての音が問題になる。副題に掲げた通り、恩田晃はそこに「メモリー」を対置する。私はこのメモリーは多義的で、主体の記憶であるとともに、その反対概念として場所性としてのトポスであり、外部メモリーとしての、ほとんど擬人化されたモノとしてのテレコの記憶としての記録である、と思う。だから恩田の「Cassette Memories」はソロだけれども重奏的であり、かつ、複雑さはあえて目指していないかにみえるけれども、きわめて重層的である。というのは恣意的な解釈ではない。ロウファイであつかいづらいいくつかのカセット・レコーダーだけが頼りの手法上の制約。その逆説だけであれば2000年代の即興~実験音楽の問題の圏域であり、あえて(赤字に傍点)カセットを使うインディ・ミュージックのトレンドとも似ているが、恩田の音楽は多様な問題をはらむとしても、つねにある種の質感を忘れない。

 ここで急に余談になるが、さっき読んでいた都築響一の『ヒップホップの詩人たち ROADSIDE POETS』(新潮社)のTwiGyの章で、都築氏は1992年、日本のヒップホップ界隈のスチャダラパーやEAST END×YURIの「DA. YO. NE」の大ヒット前夜の話と前置きして以下のように書いていたので紹介したい。
「ここで個人的な体験を言わせてもらうと、その当時、雑誌の取材でアメリカに頻繁に通っていた僕(都築氏のこと/引用者注)は、一歩間違えば漫才に行きかねない、そんな風潮にどうしてもなじむことができず、日本語ラップを積極的に聴こうとはまったくしていない。そんななかでほとんど1枚だけ、聴いた瞬間にその音の重さとクールさにビクッとしたアルバムがあった。竹村延和(スクラッチ)、恩田晃(プログラミング)、そしてMCにボアダムスの山塚EYEを擁した京都のバンド「Audio Sports」である」
 都築氏が続けて書いている通り、オーディオ・スポーツの1992年のファースト『Era Of Glittering Gas』はいま聴くことのできるTwiGyの最初の音源である。恩田さん(ここではなぜか敬称付き)は苦笑するかもしれないが、メンバーの異様な豪華さ以前に、国内の流れと無縁に、音楽(トラック)の成熟度を深めつつあったヒップホップをこの時点で早くも相対化している。私もいまだに棚から引っ張り出して聴くこともあります(これこそほんとうの余談である)。それはともかく、同書にはTwiGyによる「これはバンドをやっていた恩田君から、ラッパーを入れたいって電話があって。それでEYEちゃんに『TwiGy君はリリックどうやって書くの?』って聞かれて、『いや、自分で考えて書きますけど』って言ったら、『僕はバロウズとかから引用すんねん』って言われて。えー、そういうことっていいの?と思ったのを覚えています(笑)」という興味深い発言もあるが、ここを深追いするとどんどん長くなりそうなので別項に譲って、私は何がいいたいのかというと、スタイルを確立する途上の「日本(語)のラップ/ヒップホップ」における「ハードコアかそうでないか」を、オーディオ・スポーツはもう一段階相対化する狙いをもっていた。担っていたのは恩田晃だった。彼らがおもしろかったのは、それなのに実験的になりすぎないことだった。TwiGyのいうEYEのやり方がそうであるように、あるいは、ボアダムスが代表する90年代の日本(と、あえていうが)がそうであったように、フォーマットをデフォルメする外部因子よりも、オーディオ・スポーツはあくまでジャジーでアブストラクトなヒップホップにこだわりつづけた。というより、恩田はそこから「重さとクールさ」ハウトゥや記譜法ではいかんともしがたい質感を導き出すことに力を傾けていた。いや、むしろ情感こそ形式に依存しているから恩田はそうしていたのだし、ジャジー・ヒップホップがやがてラヴァーズ・ロックと同じような雰囲気ものの音楽に先細っていった90年代後半を期に、バンドが解体したのはやむを得なかった。
 そのころにはオーディオ・スポーツは恩田晃だけになっていたからグループである必要もなかった。最初のソロ、98年の『Beautiful Contradiction』(All Access)では、たとえばブリクサ・バーゲルトとの共作“In Windungen”などにはヒップホップの影響ははっきり残っているが、即興を内在させ作曲を解体するベクトルのなかで、サンプリングの手法そのもののもヒップホップのそれというよりも記憶装置に、あまたある楽器のひとつに、最終的にはケージ的な意味でいう「サイレンス」を含むものに遡行していく。しかしこれは後退ではない。

 前述の通り、この時期から恩田はカセット・レコーダーを積極的に使いはじめた。『Beautiful Contradiction』での恩田の担当楽器は「サンプラー/プログラミング/カセット・レコーダー」とクレジットされている。それが2001年の『Precious Moments』(Softlmusic)では「テープ(カセット・レコーダー)」が先頭にきた。重箱の隅をつつくような話でもうしわけないが、私はこの間に恩田に確信がめばえたと思う(ちょうどこの時期にニューヨークに移住したのもそのことと無縁ではない)。2年後の『Don't Say Anything』(EWE)から間を置かず、翌年には『Ancient & Modern』、つまり私たちがいま語っている〈Cassette Memories〉の第1弾を発表している。この2作にはつながりがある。表題曲のほかは“Cosmos”“Mellow”“Dance”“Naked”“Ballad”といった曲名からして『Don't Say Anything』は言葉による意味づけを拒む抽象への意思をもっているが、それ以上に、聴き直してみると、恩田のソロ曲はすでにあきらかに〈Cassette Memories〉なのである。つまり恩田晃は本作で、スティーヴン・バーンスタインやデヴィッド・フュジンスキーなどの客演を迎え、ミュージシャンを組織するプロデューサーであるだけでなく、(音楽上の)コスモポリタンであるとともにテレコをもったノマドであることも選択肢に加えている。
 いや、この場合は、ノマドではなくベドウィンといったほうがしっくりくる。恩田晃は『South Of The Border』で砂漠に赴いているから。サボテンが点在するメキシコの砂だらけの大地に。死の世界としてのそこに。
「すべてのフィールド・レコーディングはメキシコで録音されています。わたしは幼少の頃から彼の国と何かしら縁がありました。物心ついてから始めて見た写真や8ミリの映像は父がメキシコ・オリンピックに運動選手として出場した際に撮られたものでした。おそらく4歳か5歳ぐらいでしたが、日本とはまったく違う別の世界がこの世には存在するのだと意識した記憶があります」
 恩田晃はそうメールに書き添えている。『South Of The Border』とはいうまでもなくアメリカの国境の南であるメキシコである。シナトラ、ジーン・オートリーなど、古くから無数に歌われてきた曲名でもあり、ここではない場所、異境の暗喩である「南」である。
 恩田晃が最初にメキシコを訪れたのは2005年だった。彼はそこで、昔観た『エル・トポ』、70年代を代表するカルト・ムーヴィの古典であり、アレハンドロ・ホドロフスキーのあの映画でメキシコに抱いたイメージを追認した。『エル・トポ』をご覧になっていない方は、DVDも出ているはずなので、お手にとっていただきたいが、この前の紙『ele-king』の年末座談会で、シャックルトンのアルバムを指して、野田努が「めちゃくちゃバッドだよ。『エル・トポ』だから」というような映画ではある。
 ちなみに、昨年末に出たホドロフスキーの『リアリティのダンス』(青木健史訳/文遊社)によれば、ロシア系ユダヤ人移民の三代目としてチリに生まれたホドロフスキーの幼年期は穏やかなものではなかった。挫折したマルクス主義者の父はことのほか息子に厳しく、母親にもらったゴム底の短靴をあげてやった靴磨きの少年が海辺の岩場から滑り落ちて死んだ。隣の家には象皮病の母の元で全身カサブタに覆われた息子が苦しんでいて、アルコールと熱湯で二ヶ月かけてカサブタをはがしてあげた等々、そこではマルケスなんかよりずっと人間臭いマジック・リアリズムがくりひろげられる。それらがホドロフスキーのシュールレアリスムの導線となり、南米のユダヤ人の原風景からめばえた詩は演劇へ、さらに行為芸術へ姿をかえ、ヨーロッパを経由しメキシコの砂漠で映像に実を結ぶことになる。そして恩田晃は現代と古代、生と死、聖と俗、富と貧しさ、知性と迷信が共存、というより、噴出する『エル・トポ』の乱調の美に「自由」を見いだしたという。
 私たちは『South Of The Border』への入り口となる“A Day Of Pilgrimage”で鳴り物を打ち鳴らす巡礼者たちの群に鉢合わせる。マーチングバンドみたいに陽気だが、酔っぱらっているかのようにリズムは粘っている。テレコの音質のせいか、雑音まじりの音は霞がかったように遠い。音質にこだわったハイスペックのフィールド・レコーディングのように恩田晃は音を再現していはいない。だから私たちはその場に居合わせたような気持ちにならないし彼の道ゆきを追体験できず、夢のなかのように、もうひとつの現実が抽象化された目と耳の前でくりひろげられるのにつきあわざるを得ない、と思う間もなく、群衆はちりぢりなり、曲が“Dust”になったころには、人気はまるでなく、砂嵐のような音が周期的に明滅するところに別の音源を音が重なってくる。“Dust”のテーマが音響なら、穀物を挽くような音の規則性が基調の“Bruise And Bite”の主題はリズムである。といえる側面はあるにはあるが、『South Of The Border』の曲はこのような言葉の貧しさにつきあうような主題をもっているわけではない。一曲のなかでも焦点はどんどんかわる。“A Day Of Pilgrimage” の巡礼者のスネア・ドラムの音が、“Bruise And Bite”の臼を挽く音が “The Sun Clings To The Earth And There Is No Darkness”に回帰し、“Bruise And Bite”にあらわれた『エル・トポ』で主人公のガンマンに扮したホドロフスキーが吹く笛の音を思わせる、単純な、しかし忘れがたい呪術的なメロディをアルバム最後の“I Tell A Story Of Bodies That Change”でもくりかえす。マテリアルはむしろ、ごく限られていて、恩田晃はそれを拡張し再編することで、いくつかの場面を描きながら、音にギリギリ意味を与え、生まれるそばからそれを脱臼させていく。その方法論はミュージック・コンクレートのそれであり、ダンスミュージックの系譜へ現代音楽の接続点でもある(『テクノ・ディフィニティヴ』前半をご参照ください)、というか、恩田晃はヒップホップへ外から接近し、その原理へ探る課程で、音素にまで細分化していったサンプリング・ミュージックの傾向に逆行しながら、コラージュないしはモンタージュの大らかさ、いいかえれば、大雑把さに可能性を見いだしたのではないか。もちろんそれは万能ではない。万能ではないが自由ではある。カセットに吹きこんだ音はたしかに自分が録ったものだが、あらためて聴き直してみたり、一部をとりだしてみたりすると印象がまるっきり違う。『South Of The Border』は、いや、〈Cassette Memories〉はそのときの発見を元になっている。読者諸兄よ、思いだしていただきたい。恩田晃は2005年にはじめてメキシコを訪れた。このアルバムの音源がすべてそのときのものかどうか私は知らないが、いつのものであっても、それが記憶の領域にあれば発見の対象となる。つまるところ、忘却がなければ発見はない。忘却とは記憶の深さであり、記憶の不在の発見であるから、日付や場所を特定してしまっては発見する自由をかえって殺ぐ。恩田晃はかつて「カセットは日記代わりだった」といったが日記そのものではない。ようはアリバイではない。それよりも、何気なくきった日付の打たれていない旅先のスナップに近くはないか(恩田晃はもともと写真家でもある)。たいしたものは写っていないが空気をとらえている。私は写真が好きだから、写真集なぞもよく目にするのですが、写真は撮影者の技量とか手法とかによらず、写す場所の空気がつねに写っている。海外の写真と国内の写真はまちがえようがない。これは海外に行ったとき、風景以前に空気がちがいに驚くのと同じだ。過去の写真が記憶をくすぐるのは写っている対象のせいばかりではない。重要なのは記録ではなく風化であり、欠落した部分を休符のようにあつかいながら、忘却と現在の耳とが語らい、音楽ができていく。にもかかわらず/だかこそ、それが官能的な質感をもつのが恩田晃の音楽家としての資質である。

 ここからは付記になります。ついでといってはなんだが、恩田晃の近況もお知らせしたい。彼は去年の9月、鈴木昭男、吉増剛造と大友良英のデュオを招聘し北米をツアーしてまわったという。そのときのルポが『現代詩手帖』の2013年1月号に載っているので興味のある方は手にとってみてください(ele-kingの読者にはシブすぎるかもしれぬが)。鈴木昭男は「アナラポス」というリヴァービー(というかリヴァーブそのもの)な創作楽器をはじめ、「日向ぼっこの空間」(1988年)などのサイトスペシフィックな作品でも知られる丹後の湖のほとりに住むサウンド・アーティスト。詩人・吉増剛増が詩と朗読とともに、それらと内奥で結びついた多重露光写真や映像をもちいたパフォーマンスを行うのはよく知られている、かもしれないし、大友良英については多言を要しまい。この三者を結びつけることで、恩田晃が何を見せ聴かせ感じさせたかったのか、ここまでおつきあいいただいた読者にはおわかりのことと思う。

interview with Hotel Mexico - ele-king

 昨年の紙エレキングにおける(筆者は参加していない)ヤング・チームの座談会において、「ヨウガク耳」と題された項目を興味深く読んだ。奇しくも、老害チームの座談会でも紙面には字数の都合でならなかったが、洋楽を聴く若者が減ってきているという話題が出ていたからだ。「若者の洋楽離れ」をおじさんリスナーが危惧するなか、海外の音楽を聴いている20代のリアリティが余すことなく詰められたインディ・ポップが一定の成果をあげているのだとすれば、それはシーンで起こっていることこそが状況を軽やかに刷新していることを示唆しているのではないかと思う。


Hotel Mexico
Her Decorated Post Love

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 だから、ホテル・メキシコがはじめ鳴らしていた無邪気にインディ然としたシンセ・ポップを、僕は戦略的なものではないかと感じていた。ゼロ年代終盤からのディスコ・リヴァイヴァル~チルウェイヴ、あるいはローファイという流れに見事に同調して現れたバンドは、ポップの現在地点がネットを介してシェアされるいまを意識的に射抜いているのだろう、と。だが、実際に会ってみた彼らは、あくまで自分たちの現在を音に反映することでこの音を鳴らしているのだという。この、フェミニンで、スウィートで、夢想的な音を。
 ホテル・メキシコのセカンド・フルとなる『Her Decorated Post Love』は、チルウェイヴ以降拡散していくインディ・ポップのひとつの見事な回答例を出している。ギター・サウンドをより前に出し、80年代ギター・ポップやいまっぽいAOR感をまぶしながら、甘ったるい恍惚はより純度を増しているように聞こえる。メンバー間でのキーワードは「ロマンティック」だったそうだが、訊けばそれもイノセントな感覚だったそうである。自覚と無自覚の狭間でファンタジーを浮かび上がらせるホテル・メキシコは、ポップ・ミュージックのいまを愛することのリアリティを、ごくナチュラルに体現し、謳歌している。

当時の〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉なんかをすごくよく聴いてて、なんかああいうのができればと思って。(石神)

では自己紹介ということで、お名前と生まれ年と、あと去年のベスト・アルバムを教えてください。

菊池:菊池史です。84年生まれです。去年のベスト・アルバムは、たぶんブラックブラックのLPがすごく好きだったので、それかなと思います。

石神:石神龍遊です。84年6月生まれです。ベスト・アルバムは......なにがあったっけ?(笑) あ、トップスのLPがすごく良かったですね。

伊藤:伊東海です。生まれ年は83年。ベスト・アルバムは......えっと、ないですね(笑)。

(笑)メンバー同士でそういう話はあまりされないですか?

伊藤:いまこれを聴いてるとかって話はするんですけど。とくに僕は遅れて聴くことが多いので、いつ出たって話はあまりしないですね。

なるほど。去年のベスト・アルバムを訊いたのは、ホテル・メキシコってリアルタイムのリスナー感覚が音に反映されるバンドなのかなって思うので。ちなみに僕が84年生まれなので、リスナーとして通ってきたところも近いと思うんですね。基本的なことから訊こうと思うんですが、結成が2009年ですか?

石神:2009年ですね。

そのときからメンバーの音楽的なテイストって共通していたんですか?

石神:いや、もうまったくバラバラですね。もともと同じサークルで、バンド活動みたいなことをしているような子たちもいて。メインになってバンドを起こしたのは菊池とかで、「こういう音楽をやりたいな」ってなったときにメンバーを自然に集めていった感じですね。比較的仲のいい子たちで集まって。

当初音楽的な方向性っていうのはあったんですか?

石神:方向性を決めてやってたわけじゃなくて、当時の〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉なんかをすごくよく聴いてて、なんかああいうのができればと思って。いっしょのものをやりたいわけじゃなかったんですけど。

2008年、2009年ってディスコ・リヴァイヴァルがあったりとか、シンセ・ポップが賑わったりって頃でしたね。その同時代の音をやりたいっていう?

石神:そうなんですよ。そこにかなり引っ張られて。

なるほど。その後デビューされたとき、すごく「チルウェイヴ」って単語で説明されましたよね。「日本からのチルウェイヴへの返答」というような。そこに抵抗はなかったですか?

伊藤:抵抗っていうか、「違うよね」っていう話はしていましたね。そこら辺の音は聴いてましたし、反映はされてるとは思うんですけど。自分たちがそれっていうのは、なんか違うよねって言っていました。

その違いがあるとしたら、ポイントはどこにあると思いましたか?

石神:チルウェイヴの定義っていうのがよくわかんなかったですよね(笑)。

菊池:でもたぶん、”イッツ・トゥインクル”を聴いてくれたひとが、チルウェイヴっていうのに当てはめてくれたんだと思うんですけど。ファースト・アルバム全体で言ったら、チルウェイヴ感っていうのはないのかなって。

実際、ウォッシュト・アウトなんかはどうでしたか? メンバーでは人気はありました?

石神:めちゃめちゃ聴いてましたね。

じゃあパンダ・ベアは?

菊池:パンダ・ベアはそんなに聴いてなかったかもしれない。

じゃあ、メンバーの間で当時いちばん盛り上がっていたのは〈イタリアンズ・ドゥ・イット・ベター〉あたりのディスコ?

石神:そのあたりの、暗い感じで踊れるものを聴いてましたね。

なるほど。バックグラウンドはみなさんではバラバラなんですか?

伊藤:そこがほんとにバラバラですね。

菊池:僕は日本の音楽から入って、YMOなんかから買い始めた感じだったんで。洋楽を聴きはじめたのは高校の後半とか、大学入って周りがみんな聴いてたから、影響されて聴き始めたんです。

高校あたりのインディ・ロックですか?

菊池:ほんとストロークスとか。

ですよね。

石神:僕は中学校のときはメタルばっかり聴いてて(笑)。地元のCD屋さんではメタリカとかニルヴァーナとかしか置いてなくて、その後に「これじゃいかんな」とポスト・パンクとかニューウェーヴとかを聴き出して、で、ネオアコとか浅く広く通ってきた感じです。

伊藤:僕はそれこそ、高校だったらJロック育ちですよね。その後ガレージ・リヴァイヴァルを通って、スーパー・ファーリー・アニマルズに会ってからは、自分はポップなものが好きなんだなと気づいて。それからはジャンルを問わずに自分がポップだと思うものを聴いていました。

そのバックグラウンドがバラバラななかで、ホテル・メキシコっていうバンドにはこの音がハマったなって感覚はありましたか?

石神:なんだろうな。当初曲作りそのものはみんなでやるって感じではなくて。個人が作ってきたのを聴いて「いいね」みたいな。音的なものでハマったっていうのは、それこそローファイ的な音色だったりとか。

ヒントになったアーティストっています?

石神:さっき出たウォッシュト・アウトとか。音的なもので言うと。

するとウォッシュト・アウトのEPですよね? 『ライフ・オブ・レジャー』。ウォッシュト・アウトのデビュー・アルバムと、ホテル・メキシコのデビュー・アルバムがほぼ同時に出てるのは面白いですね。じゃあ、ここ数年でメンバー間で共通項としてあったものってどのあたりになりますか?

石神:それはアーティストですか?

アーティストでもシーンでも、あるいはフィーリングみたいなものでもいいんですが。

石神:フィーリングは、ロマンティック。たとえば、僕が今回アルバム作るときに聴いていたのはプリファブ・スプラウトで。新譜だったらキング・クルーとか、ああいうギター・サウンドというか、ロマンティックなイメージがあるものを意識して作りましたね。それはたぶんみんなも共有してたし、作る前に話し合ったりもしましたね。

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いまのシーンがどんなだっていうのは見てますけど、でも今回に関しては「いま」っていう意識ではそんなに作ってない。むしろ「何がいまなのかわからん」って話をしてたぐらいで(笑)。(伊東)

今回はギターが前より出てるなと思ったんですけど、そこに何かポイントはあったんですか?

菊池:単純に曲の作り方が変わったっていうか、前はシンセで作ってたのが多くて、今回ギターを中心に作るのが多くなって、そういうのが集まってきた感じですね。

ちょっと80年代のギター・サウンド的なニュアンスが目立つかなと思ったんですが。

石神:それはあると思いますね。

80s感で言えば、いまだったら、たとえばワイルド・ナッシングスとかどうですか?

石神:好きですね。

いまこの音になるのは「わかるぜ」って感じですか?

石神:ああー。共感できるところもあるけど、彼らは狙ってやってるから。自分たちが取り立てて80sをやるバンドっていう風に思ったりはしないですね。

ホテル・メキシコって同時代の音楽とすごくナチュラルにシンクロしていますよね。それは狙ってやっているんじゃなくて、自分たちのモードとしてやっているとそうなったって感じですか?

伊藤:いまのシーンがどんなだっていうのは見てますけど、でも今回に関しては「いま」っていう意識ではそんなに作ってない。

石神:ほとんど意識してない。

伊藤:むしろ「何がいまなのかわからん」って話をしてたぐらいで(笑)。

石神:たとえば80年代にやってたひとたちって、いまやっているひとたちに比べてハンデがあると思っていて。いまやっているひとたちっていうのは昔の音楽を参照してやれるけど、当時のひとたちは過去を知らずに作っていて。僕らもその感覚に通じているところがあるのかなと。そういう意味では素直に、あまり狙わずに作りましたね。

じゃあ、さっきおっしゃったプリファブ・スプラウト以外に何か参照点があったわけでもない?

石神:うーん。今回はこれを参考にして作ろう、みたいなものはあんまりなかったかなって感じですね。

なるほど。ちなみに前作では?

石神:うーん、前回もなかったかも。最初の入り口は「こういうものがやりたい」っていうのがあったんですけど、最終的に出来上がるときにはまったく違うことを考えながらやっているっていう。

じゃあ、ほんとにシーン的なものは気にしてないんですね。今回、AOR感もあって、それもいまっぽいなと思いましたけどね。

石神:最初、AOR感が欲しいって話をちょっとしたりはしましたけどね。それがたぶんちょっと入ってるんでしょうね。

日本の同世代で、共感するバンドやシーンはありますか?

石神:東京の〈コズ・ミー・ペイン〉というレーベルですね。

ああ、なるほど。それはどういったポイントで?

石神:まあ単純に好きなものがいっしょだったりとか、あと〈コズ・ミー・ペイン〉は海外に対する意識みたいなものが強いですね。そういうところも話していて楽しいし。

日本のインディ・シーンも盛り上がってる印象もあるんですけど、そのシーンの一部にいるっていう意識はありますか?

一同:ないです。

石神:僕はまったくないですね。

伊藤:(日本のインディは)まだ括れるほどはっきりしたものじゃないんじゃないかな、と思いますけどね。

なるほど。同時代のものとリンクしているって感じもあまりない?

伊藤:ないですね。いまは〈コズ・ミー・ペイン〉と仲良くやっていけてるし、お互い好きだし、それでいいやと思ってますけど。最初はいっしょにやるバンドがいなくて困ってたぐらいだし、リンクしている感覚はないですね。

ふむ。じゃあ、アルバムの話に戻ろうと思うんですけど。コード進行とか、音色がフェティッシュな感じがするんですよね。やっぱりすごく、甘いじゃないですか。1曲目の“スーサイド・オブ・ポップス”の最初のコードが聴こえてきたときに「これだ」って思うわけですけど、あれを1曲目にしたのはどうしてなんですか?


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石神:理由はね......ないです(笑)。

あ、そうなんですか?(笑)

石神:僕らアルバムの流れを意識してアルバムを作ってなくって。とくに曲順とか流れは考えていなくて。「これ一発目じゃないな」っていう消去法でいって、あれが残ったっていう感じが強いですね。

あの曲の最初のビートがLCDサウンドシステムの“ルージング・マイ・エッジ”のイントロと似てるじゃないですか。で、そこにあのチルウェイヴ以降を思わせる甘いコードが入ってくるっていうのが、リスナー遍歴を表しているのかな、って勝手に思ったんですけど(笑)。

石神:(笑)そういう風に聴くんだ。そういう想像するのが楽しいんだと思いますけどね(笑)。

そういうのも、自然に出ているんですね。

石神:そうですね。狙ってはなかったですね。

メンバーのバックグラウンドがバラバラななかでも、出るフィーリングっていうのは甘いポップスになるわけじゃないですか。バンドとしてそういう音をやるんだっていうメンバー間でこだわりっていうものがあるんですか?

一同:うーん......。

少なくとも、マッチョな感じはない音じゃないですか。シンセ・ポップ・リヴァイヴァルが出てきたときに、マッチョな音に対する違和感を表現しているって言われたりもしたんですけど。その感じにリンクするというか。根っこにはメタルもあるひとたちなのに(笑)、ホテル・メキシコっていうバンドでやるときに非マッチョな音になるのはどうしてでしょう?

石神:うーん、どうなんだろう。考えたことないな。

じゃあ、ホテル・メキシコっていうバンドは、ストーリーや場景っていう具体的なものよりも、曖昧なフィーリングを鳴らしているんでしょうか?

伊藤:フィーリングなんじゃないですかね。

石神:でもたとえば、こっちがストーリーを作ったとしても、聴いたひとがどういう解釈をしてくれても全然よくって。想像力を刺激できるような音だったり展開だったりっていうのには気を遣っているつもりですね。

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それぞれのロマンティックを持って来いみたいな感じになって。僕の意見では、先ほど言ったみたいに逃避的なものがすごくロマンティックだったりもするし。攻めてるだけが音楽じゃないって思うし。そこに埋もれたものの受け皿みたいなものがあってもいいなって思うし。(石神)

たとえば、多くのJポップにあるような、共感をベースにした歌詞や物語からは遠いところにあるんでしょうか?

石神:でも個人的には、遠くはないとは思うんですよ。そういうものがないと面白くないと思うし。Jポップとの違いで言うと、あれはオリジナリティがないっていうか。

では、歌詞やフィーリングは自分たちに起こっていることですか? それともフィクションが多いですか?

石神:完全にフィクションですね。

それはどうしてなんでしょうか?

伊藤:「普段起こっていることを歌うのはやめとこう」って思わないくらい、そういう実際起こっていることを歌にしようっていう意識はないですね。最初からそれは考えにないです。曲のフィーリングは普段の考えからぱっと出てくるのかもしれないですけど、具体的なことを歌おうっていう考えはないですね。

では、ホテル・メキシコの音楽がドリーミーだって言われることに抵抗はありますか?

石神:まったくないですね。ドリーミーな音楽だと思ってくれたらいいですね。

「逃避的だ」って言われるのは?

石神:それはそれで、逃避したいひとが聴いてくれれば(笑)。

(一同笑)

みなさん自身はどうですか? 逃避的な音楽をやっているっていう意識はありますか?

菊池:そういう部分もあるんじゃないですか?

石神:客観的に見たらそうかもしれないですけど、主観的にはそういう感覚は全然ないんですけど。世間から見たらそうなのかなーって(笑)。

では、少しいやらしい訊き方ですけど、震災以降、音楽に限らずシリアスな表現が増えましたよね。具体的な状況を織り込んで、それに対するステートメントを表明するものが。そんななかで、ホテル・メキシコがやっている音楽はただ逃避的なだけじゃないかっていう批判があったとしたら、それに対する反論はありますか?

伊藤:反論というか(笑)、それに対する反論をする必要があるのかって感じですね。

菊池:そういうひともいますよ、と。

伊藤:そもそも、そのひとがどうして逃避的なものをそこまで否定するのかがまずわからないです。

たとえば、チルウェイヴなんかもすごく議論の対象になって。現実に対する抵抗としての逃避ではなくて、何となくの逃避ではないかっていう意見もあったぐらいで。それだったら、どちらに近いんでしょう?

石神:それは何となくの逃避でしょうね。とくに意識してやってるわけでもないし。それを意識しだすとフィーリングじゃなくなるので。

伊藤:何かをあえて意識してやるっていうのはないですね。

アルバムを作っているときのゴールっていうのは何かあったんですか?

石神:うーん......期日。日程。スケジュール(笑)。

(一同笑)

石神:限られた時間のなかで、どこまでやれるかってことですね。自分たちの目標は立てたわけではなくて、むしろ間に合うかなっていう感じで。

その期日が限られているなかで、いちばん重視したポイントっていうのは?

伊藤:作品全体としてのバランスですね。

菊池:今回はアルバム全体として聴けるものを作りたいっていうのがあったんで。全体的なまとまりを目指しましたね。

石神:トータルして言うと、抽象的だけどやっぱりロマンティックさですね。細かいんだけど、コーラスひとつのエフェクトにしても、1時間かけたりとか、ずーっとやってたりとかして。そのどれが正解っていうのはないんですけど、ギターの音なんかにしても、自分が納得するまでやるっていうのはありましたね。

ロマンティックさにこだわったのはどうしてなんですか?

石神:うーん、気分ですね(笑)。

(笑)でも、そこにメンバーが同調しないとまとまらないじゃないですか。バンドでロマンティックな気分になっていたのは何か理由は思い当たりますか?

伊藤:うーん、でも最初にその話をしたときに異論も出ませんでしたね。僕らも「あ、じゃあそれで行こう」と。すんなりと。

菊池:たしかに、誰も何も言わなかったね(笑)。

じゃあそのロマンティックっていうもののイメージのモデルはあったんですか?

石神:そこについては話し合わなかったですね。

気分として共有しているものだと?

石神:それぞれのロマンティックを持って来いみたいな感じになって。僕の意見では、先ほど言ったみたいに逃避的なものがすごくロマンティックだったりもするし。攻めてるだけが音楽じゃないって思うし。そこに埋もれたものの受け皿みたいなものがあってもいいなって思うし。それぞれが持っているものなんですよね、ロマンティックに対してのイメージっていうのは。そういう意味では、英語のロマンティックに当てはまらないものなのかもしれないですね。

なるほど。ただ、それぞれのロマンティック持ち寄るって言ったときに、メンバー間でそれがバラけることはなかったですか?

石神:うーん、でも意識的なものではなく、かなり漠然としたものなので。そこで乱れるっていうことはなかったですね。

じゃあ、アルバムを作っていくなかで、「この方向性で間違ってないな」って感じた瞬間はあったんですか?

石神:最初に出来た曲が6曲目の“ア・パーム・ハウス・イン・ザ・スカイ”っていうインストなんですけど。それは8月ぐらいから作りはじめていて。むしろ、この曲からロマンティックっていうテーマをインスパイアされた感じも少しあって。そのときにみんな、何となく感じるものがあったっていうか。

それで方向性が出来たんですか?

石神:1曲1曲のモチヴェーションが違うんですけど、共有という意味では、きっかけとしてはこの曲だったかなと。

菊池:軸になった感じはしますね。

その軸が、言葉がない曲だっていうのが面白いですね。

石神:そうなんですよ。

歌詞に、曲ごとのテーマは設けるんですか?

石神:いやそれも、かなり感覚と、デモを作る段階で英語っぽく歌ってるやつを英語に直して、リズム感を重視して。

英語である理由は何なんですか?

石神:それもよく訊かれるんですけど、とくにないですね。

日本語になると意味の部分が大きくなってしまって、フィーリングの部分が削がれるからっていうところもありますか?

石神:それもありますかね。

伊藤:うーん、でも僕が英語詞を作るんですけど。曲のイメージを作ったひとにもらうんですよ。で、さっき龍遊が言ったみたいに、語感であったりイントネーションだったり言葉のリズムだったり、っていうのを考えて仮歌を入れてるんで、それをいちばん大事にして言葉を入れていくんですけど。そのイメージをもらうときに、日本語詞でもらうこともあるので、べつに日本語詞になったからってフィーリングが削がれることはない。

石神:英語のほうがカッコいいからってだけですね。

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作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。(菊池)


Hotel Mexico
Her Decorated Post Love

BounDEE by SSNW

Amazon iTunes

なるほど。1曲目が“スーサイド・オブ・ポップス”っていう、けっこう意味深なタイトルなんですけど。これはどこから出てきたんですか?

伊藤:これはたぶん、「スーサイド」って言葉を入れたかっただけじゃないかな。

石神:僕らの曲って作り終わったあとにタイトルを決めることが多いんですけど、この曲はすごく暗いなと思って、自分で(笑)。で、僕アイドルがすごく嫌いなんですけど、そういう、表面的にもポップが死んでるみたいなイメージもあったし。アルバム全体のイメージとして、女の子が持つ世界観みたいなものを出したくて。すごくミーハーなものに対しての、アンチまで行かないけど、ちょっと......。そういうのを最後まで結論出さずに、「ま、これでいっか」みたいな(笑)。

(一同笑)

石神:すいません(笑)。

いやいや(笑)。アルバム・タイトルに「ハー(Her)」ってついてるのはその女の子感を出したかったっていうのがあるんですか? 前作(『ヒズ・ジュエルド・レター・ボックス』)との対比っていうのももちろんあると思うんですけど。

伊藤:フェイスブックのホテル・メキシコのページを最初作ったときに、ジャンルに「世界中の女の子を幸せにするような音楽」って書いていたんですよ。ジャンルって縛れないから、そういうふうに書いたんです。女の子が楽しんでいるような感じ、何かしら女の子に行き着くようなイメージっていうのはもともと持っていますね。

その女の子に向けてっていうところにこだわる理由は?

菊池:単純に、PVとか観ててかわいい女の子が出てるといいよね、っていうのはありますよね(笑)。

(笑)でも、重要なところじゃないですか。誰に聴かせるかっていうのは。

石神:女の子ってやっぱ、未知数だと思うんですよね。メンバー全員男だし、女の子の気持ちなんかわからないじゃないですか。でも、女の子目線で作ったらなんか面白いっていう(笑)。その未知数の部分を、僕らはたぶん間違えてると思うんですよ、全部。

イメージとしての女の子っていう?

石神:第三者から見たらそうなんだけど、でもやっぱやってるときは、もちろん女の子になったつもりで。

(一同笑)

石神:女の子の気持ちを最大限に汲み取ろうと(笑)。同じレンズから、こう。

でもそれ、すごく大事なところですね。フィーリングとしては、自分の男じゃない部分を出しているってことですよね。

石神:でも結果としては、男の目線になってしまうというか。

前作で“ガール”って曲があるじゃないですか。で、今回“ボーイ”っていう曲がある。少年少女っていうことに対しての、思い入れはあるんですか?

石神:思い入れはないですね。

菊池:思い入れは(笑)。

いやいや、たとえば思春期的なものであるとか。

石神:ああ。少年少女が持つような、キラキラしたものっていうか、衝動みたいなものの感じ。それはいいなって。

菊池:惹かれるものはあるね。

なるほど。じゃあ、アルバム全体が醸すフィーリングっていうのは? ロマンティックでもいろいろあるわけですが。

石神:そこについてもとくに話し合ってないんですけど、個人的には、ミーハーな女の子が見ている世界みたいなイメージで僕はこのアルバムを聴きますね。

伊藤:僕がこのアルバムに対して抱いているロマンティック感は、出来上がってから感じてるものなんですけど、退廃的なものっていうか。

石神:はははは(笑)。

伊藤:なんて言うんですか、ロマンティックなんですけど、純愛の絶頂期とかは過ぎてますよね、たぶん。

石神:たしかに。それはある。

伊藤:酸いも甘いも経てからの、ロマンティックのような気がしてます。

石神:はじめて知った(笑)。酸いも甘いも経た上でのピュアさ(笑)。

なるほど。それぞれの勝手な女性像が出た結果みたいな(笑)

(一同笑)

では、バンドとしては、不特定多数に向けて音楽を作っているという意識ですか? それとも、ある特定のリスナー層を想定している?

伊藤:でも逆に言えば、不特定多数のひとがどうして聴かないんだろうぐらいの気持ちでやってますけどね。好きでやってますし。でもやっぱり、こういう音楽を聴くひとたちの耳に届かないと意味がないなとは思ってますね。

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何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。(石神)

自分たちのリスナーってある程度見えていますか?

石神:いや、正直まったく見えてないです。

たとえばライヴに来ている客層とか。

石神:ライヴの客層はかなり不特定のほうに入ると思いますね。たぶんやけど。

もらったリアクションで面白いものはありますか?

石神:たとえば、ミスチルが好きっていうギャルが、ホテル・メキシコが好きとか(笑)。

ほう!

菊池:そんなのいた?(笑)

石神:いるいる。よくいるよ。

菊池:あとライヴ終わったときに、50歳ぐらいのおっさんから「苦労してんな」って言われました(笑)。

(一同笑)

菊池:「そんな音出ーへんぞ、ふつう」みたいな(笑)。

じゃあ、自分たちみたいに洋楽を聴いている層に向けているっていう意識もない?

石神:まあもちろん、海外にも向けていきたいっていうのはありますけど――。

菊池:まず自分たちが作りたいものっていうものが先にありますね。

石神:とくに誰に聴いてほしいっていうのは考えてないですね。

では、リスナーにどういうときに聴いてほしいアルバムですか? もちろん自由っていうのが前提だとして。

石神:高速で車がパンクしたときに聴いてほしいですね。

それはなぜ?(笑)

石神:なんかこう、イメージとして広い景色を見ながら聴いてほしいかなと。狭いところで壁向いたまま聴くんじゃなくて。

菊池:それはなんかわかる。

石神:開放的な感じで聴いたら、すごく気持ちいいんじゃないかなと思って。でも何でもそうか。

伊藤:ははははは! けっこう共感してたのに(笑)。

菊池:僕もでもけっこう広い景色っていうのはあって。作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。

伊藤:僕は空いてる電車のなかで聴いてほしい。僕は電車に乗ってるときに音楽を聴くのが好きなので。空いてるほうがいいんじゃないかなと。

そのココロは?

伊藤:単純にイメージしたときに混んでる画が出てこなかったですね。けっこうガラガラぐらいの電車のほうが思い浮かびましたね。

石神:このアルバムを、みんなで聴いてるイメージってなくないですか?

伊藤:それはあるね。一人称だね。

石神:やんなあ。

パーソナルなイメージ?

石神:できれば、かわいい女の子が聴いている感じ。

かわいい女の子が恋をしているとき?

伊藤:いや、恋してるときは――(笑)。

石神:恋しているときは、聴いちゃダメ(笑)。恋が終わったあとですね。

それはなぜ終わった恋なんですか?

伊藤:いや、してるときじゃないと思うんですよね。終わったときか、してないときなんじゃないかなあ。

たとえばロックンロールは基本的には恋のはじまりの歌ですよね。それとは違うものだと?

石神:そうですね。どっちかと言うと、僕ははじまる前ですね。デートする前の家で化粧してるときとか(笑)。そういうときでいい。会ったら聴くなと(笑)。

でも家で化粧してるときだったらすごくワクワク感があるじゃないですか。

石神:まあそうですね。でも――。

伊藤:だから家で戦略を立ててるときじゃなくて?

石神:いやだからね、僕の想像している女の子はね、ギャルとかじゃないよね。娼婦かな。

じゃあ化粧は武装としての化粧なんですか?

石神:いや、武装っていうかね、本人もたぶんわかってない。

(一同笑)

することになってるから(笑)。

石神:することになってるから、やってるだけであって。そういう戦略なんかも考えない、女の子に聴いてほしいなと。

それは面白いですね(笑)。恋愛の最中でないフィーリングをロマンティックと呼ぶのは。複雑な回路が出来てるなと思って。

伊藤:ロマンティックって言っても、恋愛に対して盛り上がってるっていうのではなく。恋にがっつこうとか、盛り上がってるっていうものではないですね。だから僕のイメージだと酸いも甘いも経てしまっているひとのイメージなので、どちらにしても、最中じゃない感じはしますね。

なるほど。じゃあ恋愛の最中のひとが聴くと言うよりは――。

石神:いや、最中でも大丈夫(笑)。でも、このCDを買うひとはたぶん恋愛できない。

(一同笑)

菊池:失礼やな(笑)!

石神:たしかに何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。そういう、どこにでもあるものだと思うので。心の美しさみたいなものは。

ファンタジーみたいなもの?

伊藤:それはあると思います。

石神:そういう方向に持っていければいいかなと(笑)。

(笑)なるほど、わかりました。では最後に、バンドとしての野望があれば聞かせてください。

伊藤:そうですね、7インチは去年の春に海外レーベルから出せたんですけど、LPはまだ出せてないので、次は海外からLPを出せるように頑張っていきたいです。

■ライヴ情報

*2013年3月8日(金)

「HOTEL MEXICO "shows in California"」
会場:Insight Los Angels store (LA)
LIVE:HOTEL MEXICO
and premiering new surfing documentary video KILL THE MATADOR
https://killthematador.com/
info : https://www.facebook.com/insightlosangelesstore

*2013年3月9日(土)

「HOTEL MEXICO "shows in California"」
会場:Detroit Bar (Costa Mesa)
LIVE:HOTEL MEXICO / BRONCHO / THE BLANK TAPES
adv : $7
ticket : https://ticketf.ly/Wktl4P

*2013年3月15日(金)

「SECOND ROYAL」
会場:京都METRO
開場:21:00
前売:1,800円 / 当日:2,000円(1ドリンク付)
LIVE:HOTEL MEXICO ※Special Long Set
Guest:OZ Crew (zico / O.T.A. / Yusuke Sadaoka / RIE / nobuyo)
DJ:HALFBY / Handsomeboy Technique / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介
お問い合わせ:METRO(075-752-4765)

*2013年3月23日(土)

「CUZ ME PAIN × HOTEL MEXICO」
会場:下北沢 THREE
開場:24:00
当日:2,000円(1ドリンク付)
LIVE:THE BEAUTY / HOTEL MEXICO / JESSE RUINS
DJ:YYOKKE(WHITE WEAR/JESSE RUINS) / NOBUYUKI SAKUMA(JESSE RUINS) / TSKKA(MASCULiN) / ODA(THE BEAUTY) / APU(NALIZA MOO) / COZZY(OHIO PRISONER) / ANARUSHIN and more
お問い合わせ:THREE(03-5486-8804 ※16時以降)

SónarSound Tokyo 2013、出演情報第3弾が発表 - ele-king

 エイドリアン・シャーウッドとピンチという大御所から、ロンドン・オリンピック開会式においてもあらためて大きな存在感を見せつけたカール・ハイド、そしてアクトレスやニコラスジャー、ダークスターといった俊英までをきっちり押さえるソナー・サウンド・トーキョー2013。第3弾となる今回の出演者発表ではLFOやジョン・タラボットに加え、日本勢においてもトーフビーツやサファイア・スロウズらが名前を連ね、じつにかゆいところに手の届いたラインナップを見せつけてくれている。今後も映像上映や展示、トークショーなど続報が段階的に発表されるとのことだ。目が離せない!

SónarSound Tokyo 2013 :: 4/6 & 4/7 ::
at ageHa | Studio Coast

ミュージック+アート+テクノロジーの祭典、
SónarSound Tokyo 2013 第3弾出演者発表!

LFO、Shiro Takatani、John Talabot、Toe... 一挙16組の追加アーティストを発表!
そしてRed Bull Music Academyがキュレーションする"SonarDôme"の出演者も明らかに!
そして大阪公演『A Taste of Sonar』開催決定!

一昨年、昨年と二年連続で入場制限までかかるほどの大人気を博した" SonarDôme "今年もRed Bull Music Academyがキュレーションを務めることが決定!

今回もRed Bull Music Academyの卒業後も確実に実力と可能性を拡げながら、精力的に世界中で活躍しているアーティストたちをラインアップ。

日本からは、アキコ・キヤマ、ダイスケ・タナベ、ヒロアキ・オオバ、sauce81、ヨシ・ホリカワが出演。さらに、現在ベルリンを拠点に活動し、サイケでムーディでベースへヴィーなビートミュージックで知られ、昨年<Ninja Tune>との契約が話題となったテクノ・プロデューサー、イルム・スフィア、ロンドンで活動するエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー/DJ、OM Unit、UKよりエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーxxxy、そしてアカデミーが縁で生まれたダイスケ・タナベとのユニット、キッドスケより、UKのキッドカネヴィルが来日。世界で4,000通を超える応募者の中から狭き門をくぐりアカデミーへと選ばれた才能が、SonarDômeで炸裂します。Red Bull Music Academyが誇る、最先端の音楽を堪能してください。また、追加ラインナップ等も近日発表しますので、ご期待ください。

*Red Bull Music Academyより特典として、SonarDômeに出演するキッドスケのエクスクルーシブ・トラック「Mighty」が以下URLよりフリーダウンロード!
【2月22日(金) 日本時間 19時より】
https://www.redbullmusicacademy.com/magazine/kidsuke-mighty-premiere


今後も驚くべきハイクオリティなラインナップを続々発表予定。
また映像上映や、メディア・アート作品の展示、トーク・セッションなどなど、今後の発表にも注目!

SónarSound Tokyo 2012 の初日はソールドアウトし、残念ながら会場に行けなかった方もおりますので、お早めにチケットをお買い求め下さい!

■日時
4/6 sat
Open/Start 21:00
LFO NEW
Sherwood & Pinch
Boys Noize DJ Set
Actress
John Talabot NEW
Submerse NEW
Sapphire Slows NEW
and much more...
4/7 sun
Open/Start 14:00
Karl Hyde
Nicolas Jaar
Darkstar
Shiro Takatani:CHROMA NEW
Toe NEW
Green Butter NEW
Tofubeats NEW
and much more...
Red Bull Music Academy presents SonarDôme NEW
Akiko Kiyama, Hiroaki OBA, ILLUM SPHERE, Kidsuke, Om Unit, sauce81, xxxy, Yosi Horikawa and more...

Produced by: Advanced Music / Beatink


■チケット詳細

[前売チケット]
1Day チケット: ¥7,750
2Day チケット: ¥14,500

[当日チケット]
1 Day チケット: ¥8,500

*2DAY チケットは、BEATINKオフィシャルショップとe+、チケットぴあのみでの販売。
*4月6日(土)の1DAYチケット及び2DAYチケットは、20歳以上の方のみ購入可

■前売チケット取扱い
BEATINK On-line Shop “beatkart” (shop.beatink.com)
チケットぴあ(P:189-692) t.pia.jp, ローソンチケット(L:74641) l-tike.com, e+ (eplus.jp),
イベントアテンド (atnd.org) *Eチケット

■注意事項
4月6日(土)は、20歳未満入場不可となり、入場時に年齢確認のためのIDチェックを行います。運転免許証・パスポート・顔写真付き住基カード・外国人登録証のいずれか(全てコピー不可)を ご持参ください。
You Must Be Over 20 Years Old With Photo ID To Enter for 6 Apr (sat) show!

■MoreInformation
BEATINK www.beatink.com 03-5768-1277
www.sonarsound.jp www.sonar.es


■大阪公演決定!!!
バルセロナ発、今や世界的に高い評価を集める最先端のフェスが遂に大阪に上陸!そして2日間のイベントとして開催が決定!日本初となる今回のA Taste of Sónarは、SónarSound Tokyo 2013の出演アーティストの中から特に強力なラインナップを選出し、二つの異なる会場で行われる。
1日目はニコラス・ジャー、シャーウッド&ピンチ、アクトレスはじめ、過去ソナーに出演経験のある日本人アーティスト達が出演。
2日目は、ソロ・アルバムをリリースすることで話題のアンダーワールドのカール・ハイドがバンドと共に出演する他、ダークスター、日本からはアルツが出演。

A Taste of Sónar in Osaka
Day1 4/5 Fri

Universe
open/start 18:00 ticket: tbc
Nicolas Jaar
Sherwood & Pinch
Actress
and more...
Day2 4/8 Mon
Umeda Club Quattro
open/start 18:00 ticket: ¥5,800 Adv.
Karl Hyde
Darkstar
ALTZ

A Taste of Sónar
ソナーのサテライト・イベントとして、これまでロンドンなどでも開催されてきたA Taste of Sónar(テイスト・オブ・ソナー)。本家ソナーのDNAを受け継ぐイベントは、今回の大阪開催が日本初となる。



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