「KING」と一致するもの

LIL' MOFO - ele-king

奇数月第2水曜日、新宿OPEN "PSYCHO RHYTHMIC" 主催。夜の匂いの染み込んだレコード
を、ざっくりしかし心を込めてプレイ。レゲエ・ヒップホップ・ダンスミュージック、
さまざまなパーティーにて放蕩する人たちの琴線に触れ、お酒も良く出ると評判に。
https://mofobusiness.blogspot.jp/
https://soundcloud.com/lil-mofo-business
https://www.mixcloud.com/LILMOFOBUSINESS/

2014/6/13 NOMAD(AIR) DAIKANYAMA
2014/6/14 GRASSROOTS HIGASHIKOENJI
2014/6/15 VINCENT RADIO SHIMOKITAZAWA
2014/6/19 GARAM KABUKICHO
2014/6/20 KATA(LIQUIDROOM) EBISU
2014/6/21 GOODLIFE LOUNGE KITASANDO
2014/6/28 TIMEOUT CAFE(LIQUIDROOM) EBISU
2014/6/29 TORANOKO SHOKUDO SHIBUYA

本日の「iPODで聴いてます」 2014.6.4


1
Meyhem Lauren & Buckwild - Silk Pyramids - Thrice Great Records

2
Andre Nickatina - Cupid Got Bullets 4 Me - Fillmoe Coleman Records

3
Delroy Edwards - Slowed Down Funk Vol. 1 - L.A. Club Resource

4
Delroy Edwards - 55 min Boiler Room mix - BOILER ROOM

5
Ben UFO - Never Went to Blue Note - BOILER ROOM

6
Asusu - FABRICLIVE x Hessle Audio Mix - fabric

7
Omar S - Romancing The Stone! - FXHE

8
KALBATA & MIXMONSTER - CONGO BEAT THE DRUM - FREESTYLE

9
HOLLIE COOK - TWICE - Mr Bongo

10
King Krule - 6 FEET BENEATH THE MOON - True Panther

The Bug - ele-king

 ケヴィン・マーティン──UKのエレクトロニック・ミュージック・シーンにおけるレフトフィールド、大いなるアウトサーダー。テクノ・アニマル(ゴストラッドにも多大な影響を与えている)、あるいはエクスペリメンタル・オーディオ・リサーチ(ソニック・ブームとケヴィン・シールズによる電子音楽/アンビエント/ドローン・プロジェクト)などでの活動をはじめ、最近では〈ハイパーダブ〉からのキング・ミダス・サウンドの作品がお馴染みだが、彼にとってもっとも知られたソロ・プロジェクトと言えば、ザ・バグだろう。

 エイフェックス・ツインの〈リフレックス〉から2003年に出した『Pressure』は、ダブ、レゲエ、ブレイクコアが渾然一体となった作品で、2004年に同レーベルからの12インチ、ウォーリアー・クイーンをフィーチャーした「Aktion Pak」は、いま聴いても最高の輝きをほこっている。また、UKグライムやダンスホールのMCたちをごっそりフィーチャーした、2008年のアルバム『London Zoo』は、その年のベスト・アルバムの1枚だった。
 ザ・バグの魅力を手短に言えば、パンク時代のドン・レッツやジョー・ストラマ-、そして90年代初頭のマッシヴ・アタックへと連綿と繋がっている、ジャマイカ音楽にインスパイアされたUKサウンドシステム文化の再解釈にあると言えるだろう。ダブがあり、ラップがあり、そしてメッセージはポリティカルだ。いまでは『London Zoo』は、やがて暗く荒れ狂うロンドンを予見した興味深い作品としても聴ける。

 さて、ケヴィン・マーティンのザ・バグ名義の新作『エンジェル&デビル(Angels & Devils)』が8月16日にリリースされる。
 客演には、デス・グリップスゴンジャスフィ、そして前々から話題になっていたグルーパー、そして、とんでもないアルバムを発表したばかりのインガ・コープランド、そして、例によって、ウォーリアー・クイーンやフロウダンなどといった路上で鍛えられた凄腕のMCたちがいる。
 アルバムには、言葉としても、サウンドとしても、さまざまな暗喩が仕掛けられているが、『エンジェル&デビル』が6年の歳月を経て発表するに相応しい力作であることは間違いない。 

 まずは、アルバムのリリースに先駆けて、デス・グリップスが初めて外部のアーティストとコラボレーションした“Fuck A Bitch”、そして〈ワープ・レコーズ〉の神秘主義者ゴンジャスフィが激しく陶酔する“Save Me”を聴いていただこう。


THE BUG
Angels & Devils

BEAT / NINJA TUNE

amazon >>> https://amzn.to/1s22puC
Tower Records >>> https://bit.ly/1peKGxW
HMV >>> https://bit.ly/1peKm2k


interview with Martyn - ele-king


Martyn
The Air Between Words

Ninja Tune/ビート

TechnoHouse

Amazon iTunes

 そもそも2009年にマーティンが脚光を浴びた理由は、ダブステップにインスパイアされたリリースにおいて、わりと直球にデトロイト・テクノからの影響が反映されていたからだった。当時としてはそれがシーンにとってはまだ珍しく、斬新だったわけだが、20年前のレコードが輝いているこの1~2年に関して言えば、時代が要請するひとつのスタイルにまでなっている。まあ、いっときのスタンダードである。
 オランダのアイントホーフェンという街には、90年代に〈Eevo Lute Muzique〉という素晴らしいレーベルがあった。オランダのテクノといえばガバとトランスといった時代に、このレーベルはデトロイトのエモーショナルな旋律とテクノ・ファンクを取り入れることで、大きくて、派手で、ドラッギーで、マッチョで、アグレッシヴなシーンとは別の、小さいがセクシーで親密な道を切り開いた。その同じ街で、90年代半ばのテクノとドラムンベースを聴いて育ったマーティンが、ダンス・ミュージックにおけるへヴィメタルとも形容されるEDMのアメリカで暮らしながら、デトロイティッシュ・サウンドを追求することは必然と言えば必然だ。
 2011年の前作『Ghost People』は〈ブレインフィーダー〉からのリリースだったが、今回の『The Air Between Words』は〈ニンジャ・チューン〉からとなった。方向性にとくに変化はない。彼がこれまでのやってきたことがさらに洗練されているだけである。強いて言うなら、今回はカール・クレイグ・スタイルというか、徹底的にメランコリックで、ジャズの響きを引用しながら、ときにはっとする美しさを打ち出している。フォー・テットが参加して、インガ・カープランドが歌っているのも本作のトピックで、この人選からもおわかりのようにテクノ色が強く、彼らが参加した2曲ともクオリティが高い。とくにフォー・テットとの共作は、ああ、このコード感、デトロイトやなー、である。

デトロイト・テクノが好きな理由は、そこにソウルを感じるからだ。ダンス・ミュージックでありながらメランコリックな感覚があるし、哀愁がある。一方、EDMは基本的にすべてがアグレッシヴなんだよ。

ものすごくお忙しいそうですが、毎週末DJがあるといった感じなのでしょうか?

マーティン:そうだね、毎週末DJはいまも忙しくやってるよ。

最近、TVドラマの『HOUSE OF CARDS』をずっと見てまして、あのドラマの舞台がワシントンじゃないですか。あなたは見てましたか?

マーティン:うん、僕も観てる。僕、あまりTV観ないんだけど、長いシリーズのドラマはたまにちょこちょこ観てて、例えば『True Blood』とかも。『HOUSE OF CARDS』は僕が住んでるワシントンが舞台だからなんだか身近に感じるし、それに少し政治的なエッセンスを感じるのも魅力のひとつかな。僕は政治についてアメリカで少し勉強したりしてたからちょっと興味があるのもあって楽しんでみているよ。

アメリカは大きな国ですし、ヨーロッパと比較してテクノやハウスが広く理解されているとは思えない印象を持っているのですが、実際のところあなたはどう感じていますか?

マーティン:アメリカとヨーロッパでは全然違うというのが僕の印象だね。例えばアメリカにはEDMと呼ばれているシーンがあるけど、EDMは、クラブ・ミュージックというよりは、もっとレイヴ風のものなんだよ。逆にクラブではハウスがメインなんだと思う。だから僕の場合はクラブでギグすることもとても多いんだけど、いまはアメリカでプレイ出来ることをとても楽しんでいるよ。

“Forgiveness Step”という言葉は、今回のアルバムのキーワードですが、何を意味しているのでしょう?

マーティン:“Forgiveness Step”のアイディアは、アルバムにも参加してくれてるコープランドと一緒に作業したものなんだけど、アルバムにもあるように、この曲は3パートに分かれている曲なんだよ。“Forgiveness Step 1”,“2”はアルバムで、“3”はEPに収録されているんだけど、基本的には同じアイディアの元に作った曲ではある。しかし、3曲ともがそれぞれ少し違う意味合いを持つ曲なんだ。
 だから、その言葉と言うよりも、アルバム自体を3段落に分けたかった、というのが大きい。そして、3段落ともつながっているということを明確にしたかった。それに「Forgiveness(許す)」ということを実際する場合には、3段階を踏まないと謝罪したことにならないだろう? そういう意味合いも含まれているんだ。

今回はあなたの重要なルーツであるデトロイト・テクノというコンセプトが、これまで以上に、さらに追求されていますよね?

マーティン:何にせよ、僕がオランダでクラブに行っていたときによくシカゴやデトロイト・テクノがかかってたからね。これも影響を受けたもののひとつかもしれないよね。僕にとっては自分のDNAのなかに組み込まれているような感じだから、もう自然に出てくるものなんだよ。だからとくに意識して追求したというより、自分の好きな音を追求したら自然にそうなったという感じなんだと思う。

デトロイト・テクノやディープ・ハウスと最近のEDMとはどこに違いがあると考えますか?

マーティン:デトロイト・テクノが好きな理由は、そこにソウルをとても感じるからだ。ダンス・ミュージックでありながら、メランコリックな感覚があるし、哀愁がある。一方、EDMは基本的にすべてがアグレッシヴなんだよ。だから、その違いは大きいと思う。もちろん、どんな音楽を聴こうと個人の自由だ。ただし、僕個人に関していえば、やはりエネルギーを魂を感じる音楽が好きだ。単純に楽しくて軽いノリの音楽よりもね。

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今回のアルバム制作をする前、自分の音がなんだか流されているような気がして、自分らしい音が何なのか模索していたんだよ。

ところで、アメリカに移住してから、実際にデトロイトには行かれたのでしょうか? 誰か仲良くなったDJ/プロデューサーはいますか?

マーティン:デトロイトには3回行ったことがあって、1回はフェスだったね。で、2回は自分のショーをやるために行ったんだけど、とても興味深い場所だよね。あんまりデトロイトの人との付き合いはないんだけど、カイル・ホールは知ってるよ。いろいろな人に会うことで刺激を受けるのはいいことだと思うしね。

ヨーロッパのベース・ミュージックと、アメリカで流行っているベース・ミュージックとの違いに戸惑いことはありますか?

マーティン:正直言ってベース・ミュージックがなんなのかよくわからないんだよ。もともとはダブステップからはじまって、ハウス・ミュージックにベースが乗ってるっていうことだろ?

アメリカで流行っているトラップは?

マーティン:ごめん、これについては全くわからないや(笑)。

5年前と比較して、ダンス・カルチャーの良くなったところと悪くなったところについて話してもらえますか?

マーティン:たくさんの音楽があるっていうのはいいことだとは思う。ただ、時代が変わって音楽が聴き手に届く速度は速くなっている。曲が完成してからリスナーに届くまで2~3日で世界中に広まる。そこはいいことだと思うよ。
 でも、たしかに悪い面もある。例えばクラブで演奏しているとオーディエンスは音楽を聴きに来ているというよりも、写真を取ることに必死で、それをFacebookとかinstagramにアップロードして、自分のステータスを周りに伝えることに重きを置いている人が目に付くようになったのは事実だ。演奏を聴いてない人が多いと思う。まあ、プレイしている僕たちも、もっと人の気を惹かせられるようにしなくちゃならないんだろうなとは思うんだけど。

今回のアルバムのひとつの特徴として、古い機材を使って、バック・トゥ・ベーシックな音を追求していることが挙げられますよね?

マーティン:今回のアルバム制作をする前、自分の音がなんだか(時代に)流されているような気がして、自分らしい音が何なのか模索していたんだよ。そんなときに昔の機材を使ってみたら驚くほどしっくりくることがわかって、それをアルバムに反映しようと思ったんだよ。

新作は、ダンス・ミュージックではありますけど、強制的に踊らせるような音楽ではありません。むしろ、前作以上にじっくり家でも聴ける作品になったと思います。あなたは、音楽によって、ただダンスするのではなく、もっといろんなことを感じて欲しいと考えているのでしょう? 

マーティン:音楽を制作している過程ではどういうシチュエーションで聴いてもらえるかとかは、あまり考えずに作っているんだよね。もしそれを聴いて踊ろうがベッドで静かに聴こうが、僕にとってはどっちでもかまわないんだ。良いメロディの良い曲が仕上がればそれでいいわけだからさ。

ジャズのフィーリングは意識して取り込んだものですか?

マーティン:うん、ちょっと意識したかな。僕の家族はみんなジャズが好きなんだけど、家にはつねにジャズのレコードがあったし、自然に触れある環境下にはあったと思うよ。

僕は、とくにアルバムの後半、6曲目の“Two Leads and”以降が、面白く感じましたけれど、あなた自身はこの作品のどんなところが好きですか?

マーティン:前半部分も良いよ(笑)。人によって前半が面白いと言う人もいれば、君のように後半が面白いと思う人もいる。みんなが好きなように解釈してくれていいと思う。僕はもちろん全部を通して好きだけどね(笑)。

UR風のコード展開の、フォーテットとの2曲目“Glassbeadgames”は今回の目玉のひとつですが、彼とはどうして知り合ったんですか?

マーティン:フェスやライヴで何度かしか会ったことがなかったんだけど、会ったら必ず音楽の話をしていた。その話の流れで、いつか一緒にやりたいねって話になった。で、お互いにアイディアを出し合ってオンラインで素材を受け渡ししながら彼と作業したんだ。僕たちふたりとも移動が多いし、スタジオに入る日を調整してやるよりオンラインで作業した方が効率的だからね。

インガ・コープランドを起用していますが、僕は個人的に彼女のユニークなスタンスが大好きです。あなたは彼女の音楽のどんなところが好きですか?

マーティン:彼女が書く、メロディアスで美しいメロディが好きだな。そこがいいなって思う。

歌詞ではどんなことを歌っているのでしょう?

マーティン:歌詞は正直あんまりわからないんだ。僕にとっては、まずは彼女の声が重要であって、とくに歌詞の意味を考えたりしたことはない。彼女も歌詞について、とくに意味については多くを語らないしね。自分の内から出てくるものを反映しているんだと思う。

あなたが最近お気に入りの音楽について話して下さい。ジャンル問わずです。家で、ひとりになったときに聴きたい音楽とか。

マーティン:90年代初頭のテクノをよく聴いているよ。その頃の〈ワープ〉の作品が大好きなんだ。オウテカ、アクトレス、LFOなんかもよく聴いてるね。他にはジャパン、YMOも大好きなんだ。だから、80年代の音楽も良く聴くね。

ところで、ワールドカップが間近ですが、母国のことは気になりますよね? ロビン・ファン・ペリシーやロッベン、スナイデルらのこととか。

マーティン:もちろんサッカーは大好きだよ! そして自分の母国オランダ・チームを応援する。前回はファイナルで負けたから、今回こそ優勝すると思うよ!

ONEOHTRIX POINT NEVER×C.E - ele-king

 OPNってファッションのイメージはないよなー。という偏見は見事に覆されました(笑)。今年の初来日ライヴでもソールドアウト、いまや時代の寵児か、とにかくエレクトロニック・ミュージック・シーンの人気者のとなったOPNが、スケートシング率いるファッション・ブランド、C.Eとのコラボレーション・アイテム(Tシャツ2型、スウェット1型)を発売するという。
 スケシンのデザインは、アルバム『R Plus Seven』のアートワークを元にしたもので、6月23日よりC.Eのオンラインストアにて発売。
 以前、スケシン・デザインのキャバレ・ヴォルーテルのTシャツがele-king storeでもあっという間に売り切れたので、ファンは逃さないようにね!


価格:
Tシャツ各6,800円(税抜)
クルーネックスウェット14,000円(税抜)

問い合わせ先:
Potlatch Limited(ポトラッチ)
www.cavempt.com


・ONEOHTRIX POINT NEVER https://www.pointnever.com
・SHOWstudio https://showstudio.com
・C.E https://www.cavempt.com

HOLY (NO MORE DREAM) - ele-king

孤高のヘヴィメタルパーティ“NO MORE DREAM”@青山蜂、次回は6.15(日)に開催。我々の生き様を目撃して下さい。

NO MORE DREAM
~THE WORLD’S HEAVIEST HEAVY METAL PARTY~

@青山蜂

2014.6.15(SUN)
17時~
入場料 ¥1000

GUEST DJ
増田勇一

DJS
HOLY
クボタタケシ
JAM DIABRO
山名昇
BLACK BELT JONES DC FROM METALCLUB
Dx
BLOODY PAUL
Dr.Doctor Wcchei
ロベルト吉野(お休み)

METAL DIRECTION&ARTWORK
ヴィッソン

TEQUILA GIRL
yucco

ハジけたてポップコーン屋
POOPTHEHOPE

HM-T&PINS
Rhododendron

MY HEAVY METAL CLASSICS 10


1
Metallica - Master Of Puppets - Mercury
ファミリーです。生活の中心。

2
Slayer - Angel Of Death - Def Jam
KING OF 残虐王 IN 宇宙。

3
Megadeth - In My Darkest Hour - Capitol
かなり助けられてます。デイブこそ英雄。THIS IS MY LIFE。

4
Judas Priest - The Heroion~ErectlicEye - Columbia
ヘヴィメタル国家。そして聖典。

5
Motley Crue - Home Sweet Home - Motley
現在休業中のあの漢に捧げます。

6
Pantera - Cowboys From Hell - Atlantic
ダレルこそ、完全無欠メタルギタリスト。ザックが受け継いでます。

7
Ozzy Osbone - No More Tears - Epic
究極すぎるベースライン&咽ぶザック。我々のパーティのテーマ曲。

8
Aerosmith - Living On The Edge - Geffen
疲労困憊の果てに開ける曲。長い付き合いです。

9
Iron Maiden - Aces High - Capitol
最重要オープニングナンバー。決死の離陸です。

10
Accept - Metal Heart - Epic
ヘヴィメタル軍歌。合唱せねば制裁。

interview with the insect kids - ele-king


Insect Kids
Blue Ghost

P-Vine

Indie RockPsychedelic

Tower HMV iTunes

 昆虫キッズはストレンジなバンドだ――そういう意味ではオルタナティヴだと言ってもいい。いったいこのバンドの音には、そしてフロント・マンである高橋翔の言葉にはどのような参照軸が設定されていて、あるいはどこへと向かっているのか、そのような凡庸な分析やストーリーは真っ向から排していくのが昆虫キッズの音楽である、と彼/彼女らの音楽を聞くたびにそう思わされる。未来から鳴っているのか、過去から鳴っているのかわからない。昆虫キッズの音楽は自ら歌っているように「時間軸が/変だ 変だ 変だ」。

 オルタナティヴ・ヒップホップ・グループとされているヤング・ファーザーズは、“オルタナティヴ”とはなにかにアゲインストする表現であって、自分たちはそのような態度で音楽をやってはいないから“オルタナティヴ”・ヒップホップではない、と語った。そういう意味では昆虫キッズはオルタナティヴ・ロックではないのかもしれない。なぜなら彼/彼女らのコアは、(少なくともこのインタヴューで知りえたかぎりでは)大いなる空白だから。

 パンクに憧れ、ロックの夢を見るグレイト・ホロウ=昆虫キッズ。最新作『BLUE GHOST』をリリースし、そのリリース・パーティを控えるこのバンドのフロント・マン、高橋翔との対話を(考えのズレや行き違いも含めて)ぜひお楽しみください。

■昆虫キッズ
2007年、東京都にて結成。のもとなつよ(Bass/Vo)、佐久間裕太(Drums/Cho)、高橋翔(Vo/Gt)、冷牟田敬(Gt/Key/Vo)の4名で活動。数枚の自主制作盤リリースののち、2009年にファースト・アルバム『my final fantasy』にてデビューする。翌2010年にセカンド・アルバム『text』を発表。ツアーや各種イヴェントへの出演が増え、2011年には2枚のシングル「裸足の兵隊」「ASTRA」、2012年にはサード・アルバム『こおったゆめをとかすように』、アルバム未収録曲を集めた「みなしごep」と快調にリリースをつづけ、2014年5月、これまでの活動の転機ともなる4枚め『BLUE GHOST』が発売された。


デジタルだけでの録音はあまり好きじゃなくて、これまでやっていなかったんだよね。でも、やってみないとわからないなと思って。

以前、高橋さんにお会いしたとき「『こおったゆめをとかすように』ですべて出しきった」というようなことをおっしゃっていました。

高橋:えっ、そんなこと言ってた?

はい(笑)。最初の3作は3部作ようなものだとも。

高橋:そう。後づけだけど、3作できたときにバンドとしてひとつのものとしてできあがったから、区切るタイミングかなと思ったんだよね。このまま『こおったゆめをとかすように』から地続きで4枚めを作るというより、いったんラインを引いてなにかを意識的に変えなきゃなと思った。

変えた部分というのは具体的にどういうところですか?

高橋:今回は佐藤優介くん(カメラ=万年筆)に録音とミックスを任せて、客観的な意見を訊いたりしたこと。それと、これまでの作品はテープの音だったんだよね。ファースト(『My Final Fantasy』)はカセットテープとハードディスクで、セカンド(『text』)とサードはオープンリールで録った。デジタルだけでの録音はあまり好きじゃなくて、これまでやっていなかったんだよね。でも、やってみないとわからないなと思って。やってみて、どういうメリット/デメリットがあるのかを把握したかった。演奏する側の人間は変わらないけれど、ちょっと「引っ越し」したいなと。1駅くらいだけど、ちょっとちがう町に行ってその町の環境がどうなのか見てみたい――そういうことを試みてみたいと思った。

優介くんがレコーディングとミックスをやったことによってどういう音になったと高橋さんは思いますか?

高橋:優介くんはファーストからずっと聴いてくれてたんだよね。もともと面識はあったけどそれほど深く話す関係でもなく、その距離感がすごく良かった。彼はひとつのジャンルに特化せずにオールマイティに聴いているから、いっしょにやるならそういう人がいいなと思った。ミックスの段階で「好きにやってみて」と優介くんに投げて、どうなるのかが聴きたかったんだよね。俺がまったく手をつけず、他人がやったときにどういうふうになるのかなというのが気になったから。結局、その後いろいろと発注しちゃったんだけど(笑)。

ちょうど作業中の優介くんに会ったときに「高橋さんと佐久間(裕太)さんの意見が対立していて困っている」という話をしていました。

高橋:佐久間くんは佐久間くんの聴きかたがあるからさ、またちがうし。俺には俺の聴きかたがあるから。たぶん対立しているわけじゃないけど、板挟みでちがう意見を言われるから困ったんじゃないのかなあ。もちろん他のメンバーの意見は聞くけど、だいたい自分で決めているかな。これまでは8割がた完成ミックスを自分のなかで決め込んで、かつちょっと余白を残しておいて、意見を聞いて残りの2割を埋めていくというやりかただったんだけど。

単純に意味不明にもしたくないし、かといって濃厚なメッセージがあるようにもしたくない。どっちにも寄りたくないんだよね。

今回、前作までのヒリヒリとした感じよりも、全体的に少しリラックスしたような感じや軽快さが曲調に出ているように思いました。そこは意識的に雰囲気を変えようとしましたか?

高橋:それはあまり意識していないかな。曲を作るときはそのときの気分が元手になっているから、ヒリヒリしているときはそういうものができるのだろうし。一回そういうものを作ってしまえば、また同じようなものを作りたいとは思わないんだよね。それとはちょっとちがうものを作りたい。そういう反動はあると思う。

なるほど。リード・トラックの“Alain Delon”はなぜ「アラン・ドロン」なんですか?

高橋:サビのメロディーを作ったときに、それが「アラン・ドロン」っていうふうに聞こえただけ(笑)。

それほど意味はない?

高橋:ごめんね……申し訳ないけど……(笑)。空耳アワーのような感じで(笑)。でも、「アラン・ドロン」ってなにか意味があるような感じがするよね。

高橋さんの歌詞は韻をたくさん踏んでいたり、リズムを重視していることも多いと思います。歌詞はどのように書いていますか?

高橋:歌詞は曲を作るときに、同時進行で書く。歌のメロディができたら思いついたことをパッと羅列して、そうすると楽曲のキーワードになる言葉が出てきたりするんだよね。それをつなげて、自分で補足する。だから、そういう作りかたの時点でほとんど自己統制は破綻している。そうやって意味があるのかないのかわからないようなものを書くっていうのは意識しているかもしれない。単純に意味不明にもしたくないし、かといって濃厚なメッセージがあるようにもしたくない。どっちにも寄りたくないんだよね。その中間くらいが温度としていい。

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9割は嘘を言っていて1割は本当のことが入っているような、俺はそういうのが好きなんだよね。どこかに真実が紛れ込んでいるのがおもしろいと思う。

冒頭の“GOOD LUCK”や初期の“恋人たち”のような情景描写的なものと、言葉のリズムに寄ったものと、高橋さんの歌詞にはモードがふたつあるように感じます。そこにはどのようなちがいがありますか?

高橋:曲のタイプによってわけているんじゃないのかな。曲自体のニュアンスでまた変わるんだろうね。そこまで自分で分析できていないよ(笑)。歌詞は曲と同時に書きたいから、おおまかなプロットのようなものを立てて、そこから寝かして、少しずつ手直ししていってできあがる。

けっこう時間をかけるんですね。

高橋:すぐできる曲もあるし、できないものはずっとできないんだよね。歌入れの当日の朝に書いたものもあるし。できないときはできないっていうのは自分でわかっているから、その場合は待つしかなくて、待っていればそのうちどうにかなる。

歌詞を書くときはどういうことを考えて、どのような言葉を落とし込もうとしていますか?

高橋:考えすぎると自分の地の感じが出るから、それはあまりしたくなくて。意識している部分と無意識の部分とが織り交ざっているんだけど、結局書くのは自分だから自分のなかの言葉しか出てこない。でも自分の癖みたいなものに頼らないようにはしている。自分の「節」みたいなものはあまり作りたくないなと思って。

ずっと歌詞の抽象的な話になって恐縮なのですが、個々の歌詞に場所や舞台は具体的にありますか?

高橋:ある。“Metropolis”だったら、タイトルどおり近未来っぽい、SFっぽい感じとかを出したかったし。でも、そういう一曲がきっかけで、ひとつの世界観に傾倒しちゃうんだよね。“冥王星”も“Metropolis”に近いものが出たし。トータルで見ると、今回のアルバムはSFの影響を受けているなあって思った。そのときにSFを読んでいたわけじゃないんだけど、星新一とかアシモフが好きなんだよね。

そこに言いたいことを組み込んだりはしますか?

高橋:入っているんじゃないかなあ。9割は嘘を言っていて1割は本当のことが入っているような、俺はそういうのが好きなんだよね。どこかに真実が紛れ込んでいるのがおもしろいと思う。ぜんぶフィクションで書いているつもりはないよ。やっぱりどこかに本当のことが入っているとは思う。それがどこかって言っちゃうのは野暮だけど、でもどこかにはあると思う。飲み屋で友だちと芸能ゴシップについて話したりするのが好きなんだけど、そういうものを嘘だとも本当だとも思っていないんだよ。でも、ひとつのネタがいろんな人を介して伝言ゲームのように膨張していくのがおもしろい。「真実よりもよくできた嘘のほうがおもしろい」って。それはまさにそのとおりだと思う。……でも歌詞なんてさ、無意識だよ。意識して書けない。なんの意識もないところではたらいている部分があるって、インタヴューをやっていると気づくんだよね。本当は「なんもねえよ! 俺がやりたいことに意味なんてあるわけないじゃん!」って言いたい。でも、それを言ったら終わりだからさ。

でも、アルバム4枚ぶんの言葉を高橋さんが書いているわけですから、そこにはどのようなものがはたらいているのかを知りたいんですよ。

高橋:みんな孤独を愛してくれと思うんだけどね(笑)。孤独はかわいいもの、愛でるべきものだよ。歌詞っていうのはもう、そこで言葉として放っているものだから、結局それを説明するっていうのは非常に難しいんだよね。

それ自体、野暮な話ではありますからね。

高橋:それでも追求したいっていうのはわかるよ。でも、そうなると心理学みたいになっちゃうから。


血眼で探し当てた宝箱を開けたら子どもの頃の古い写真が一枚だけ入っていたようなバンド。

ところで、ファーストをリリースしたとき、高橋さんはおいくつでしたか?

高橋:2009年だから、23歳か24歳かな。

その当時をいま振り返ると、どんな感じですか?

高橋:これは訊かれたときによく答えていることなんだけど、正直に言って昆虫キッズは「続けよう」っていうスタンスではやっていなかった。バンドをはじめた当初はCDが出ればそれがゴールだったんだけど、せっかくだからライヴをやって、地方へも行って――そんなふうにやっていたら新しい曲ができて、曲が溜まったから次のアルバムを作る。昆虫キッズはそういう行動の延長線上でずっとやってるんだよね。血眼で探し当てた宝箱を開けたら子どもの頃の古い写真が一枚だけ入っていたようなバンド。

では、昆虫キッズのコアは空白なんですか?

高橋:うん。そうだと思うよ。バンドをやっている上でのコンセプトや信念が「ほしい」と思うぐらいにないもん。

なるほど。高橋さんが昆虫キッズでやりたいこと、やろうとしていることってなんですか?

高橋:いまの4人のメンバーで足並み揃えてできることならなんでもいい。4つのピースがないとできないことだからさ。そういうバンドとしてのバランスっていうのはすごく意識している。バンドって、ずっと続けているとそのコミュニティに所属している感じがしてひとつの家族みたいなものになってくる。不思議な関係性だよね。

では、4人のメンバーがイコール昆虫キッズということなんですね。

高橋:うん。だれか1人が辞めたらダメだなって思ってる。代わりがいない。

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いま、「ロック・バンド」ってどういうバンド? 自分たちはロック・バンドなのかなあっていう疑問がある。

高橋:ところで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは何枚めが好き?

僕は3枚めですね。

高橋:絶対3枚めでしょ! 俺もそう。でも俺はジョン・ケイルが好きなんだよなあ。(※)

なんでですか?

高橋:なんか中途半端だから(笑)。

アカデミックなほうへも、ロックのほうへも振りきれない感じがありますね。絶対に権威になれない感じが。

高橋:なれないね。そこにかわいげがある(笑)。

もしジョン・ケイルの音楽を一言で表わせって言われたら困るような音楽家ですよね。

高橋:そう。そういう人が好き。いまだにジョン・ケイルが何者なのかわからないよね。そんなにジョン・ケイルのことは知らないんだけど、なぜかシンパシーはある。

ジョン・ケイルを言語化できない感じは、昆虫キッズとも似ているかもしれませんね。

高橋:天野くんはこのアルバムはロックとパンクだったらどっちだと思う?

うーん……。

高橋:いま、「ロック・バンド」ってどういうバンド? 自分たちはロック・バンドなのかなあっていう疑問がある。つねに思うのは、(アルバムを指しながら)こういうものを聴いて10代の子が「こういうバンドをやりたいなあ」って思ってくれたら、それがひとつのゴールなんだよね。

それはロック的な夢ということですか?

高橋:ロックというよりバンドの、だね。

高橋さんがさっき訊かれた「ロック」と「パンク」という、その両者のちがいは高橋さんにとってはどういうものですか?

高橋:パンクは弱い人間から生まれた音楽だと思う。社会的にも経済的にも追い込まれて、あらゆる面で淘汰されてしまいそうな人というか。ロックはもっと計画的で、エンターテイメントというか、芸能文化のレール上にあるのかなあと思う。同じようなものとして考えていたけど、やっぱりちがうと思うんだよね。ラモーンズはパンクだなって思うのは、追い込まれたけどそこから脱出できる強さがあった人たちだから。世間がどうとか社会の情勢がどうとか関係なく、それでも前に出てこられる強さがある――俺の思うパンクっていうのはそういうこと。
それ(“変だ、変だ、変だ”)は自分自身にも言っているし、対外的にも言っている。「変じゃないこと」がなくなってきちゃったなあって。ノーマルにやることが逆に難しいような。  でも、いまはそういうものがあまりない。日本だと、より難しいと思う。嫌な言いかただけど、そういう時代じゃないというか。でもやっぱり、いつもそういう人たちが出てこないとダメじゃないかなあと思うんだよね。お笑いで言えば、たとえばダウンタウンみたいに泥のなかから這い出て栄光を掴んできたような人たち。いまはなにかを始めようという時点でそのフィールドがある程度整備されていて、なんでもやりやすい。みんな同じ整った環境でスタートできるから、そこにはそれほど差がない。そうなると、そこから突出することは難しい。そうなると、えげつないほどの力やとてつもない個を持ったやつがいても出てこられないと思うし、そいつの受けとめられかたもちがってくるんじゃないかなあ。
 たとえばどついたるねんが1970年代や80年代に出てきたとしたら、またちがっていたんだろうね。どついたるねんがじゃがたらと同じ時代にいたらどうだろう……。江戸アケミにぶっとばされるかな(笑)。いま、なんでもできちゃうっていうのは、また重荷なのかもしれないね。だから、音楽自体の持っている魅力というか、魔力みたいなものが霞んじゃう気がするんだけどね。

僕は昆虫キッズの音楽はどこかマージナルな場所から聴こえてくるように思います。そういう意味では「パンク」的です。

高橋:たぶん、自分はそういうものに憧れてはじまったけど、憧れは捨てなきゃ次にいけない。パンクの思想や方法とは別の角度からバンドをディレクションするのも自分の仕事だから。そこで訪れる変化のタイミングを受けとめて、アメーバのように細胞分裂を繰り返していて、得体の知れないものになると思う。

だから、そうやって4人でバンドをやっている?

高橋:そうだね……。そうだと思う。

“変だ、変だ、変だ”という曲のタイトルがまさに昆虫キッズだと僕は思うんですよね。

高橋:そうだね。それ(“変だ、変だ、変だ”)は自分自身にも言っているし、対外的にも言っている。「変じゃないこと」がなくなってきちゃったなあって。ノーマルにやることが逆に難しいような。普通にやることがいちばん大変かもしれないよね。


※誤解を招くおそれがありましたため「でも」を加えております(6/12訂正)

昆虫キッズ『BLUE GHOST』発売記念公演「Stay Ghost」

会場:東京・渋谷WWW
公演日:2014年6月11日(水)
開場 18:30 開演19:30
出演者:昆虫キッズ、高島連 with ハイハワ原田

チケット料金:前売¥2,800  当日¥3,300
(各税込、Drink代別途¥500 全スタンディング)

・プレイガイド予約
(1) チケットぴあ コード:230-962
(2) ローソンチケット コード:77728
(3) e+ https://eplus.jp/sys/main.jsp

・WWW店頭

・メール予約
the_insect_kids@yahoo.co.jpまで、お名前、ご来場人数(お1人様につき4名まで予約可能)、連絡先を明記の上メールをお送り下さい。
※公演前日6/10(火)まで受け付け致します。
※当日受付にて前売料金をお支払い頂きます。
※ご入場順はプレイガイド、WWW店頭チケットご購入者が優先となります。
※やむを得ずご来場できなくなった場合、お手数ではございますがその旨ご連絡をお願い致します。

チケット絶賛発売中

主催:P-VINE RECORDS
お問合せ:渋谷WWW 03-5458-7685

interview with MC Kan - ele-king

一生かけても言葉でこの街改造/野望はでかいぞ ――漢
拡声器空間~MIC SPACE(FROM MS CRU)
“新宿アンダーグラウンド・エリア”(2002年)

 ここに掲載するMC漢のインタヴュー記事は、昨年9月25日にDOMMUNEで放送された番組「鎖GROUP presents MC漢SPECIAL!!」における「MC漢、激白インタヴュー!」を構成/編集したものである。

 漢はその日、自身のヒップホップ・フィロソフィー(ヒップホップ哲学)を生々しい体験談を交え、ユーモラスに語った。きわどいブラック・ジョークやギャグを巧みに駆使しながら。その卓越した話術に多くの視聴者が舌を巻き、彼のラッパーとしての神髄を見たにちがいない。


MC漢 & DJ琥珀
Murdaration

鎖GROUP

Tower HMV Amazon iTunes

 『ヒップ――アメリカにおけるかっこよさの系譜学』(篠儀直子+松井領明訳)の著者であるジョン・リーランド風に言えば、漢が2000年代に切り拓いた地平はひとまずこのように説明できるだろう。つまり、「漢は善悪の古臭い対立をなくし、救世主と悪漢というお決まりの枠から日本のラップを解放した。そのかわりに彼がラップのなかで描く人びとは自分自身と衝突することになった――性的、道徳的、および職業的に」と。そして、このインタヴューで漢が語ったヒップホップ哲学は、「では、その後、どう生きるのか?」という、一筋縄ではいかない、普遍的な問題提起をはらんでいる。

 漢は2012年の夏にヒップホップ・レーベル〈鎖グループ〉を立ち上げ、実質上のセカンド・アルバム『MURDARATION』を発表している。それから2年、ついに〈鎖グループ〉が本格始動する。6月4日には、前述した番組の続編がDOMMUNEで放送される。僕はいま、漢と〈鎖グループ〉の挑戦と彼らのヒップホップ・ドリームについてより多くの人びとと議論したいと考えているが、なによりもまずは、漢の痛快なトークを思う存分堪能してほしい。

いまは、また再びスタート地点に立っただけですね。

今日の主役のMC漢さんが到着しました。どうぞよろしくお願いします。

漢:よろしくお願いします。

DOMMUNEへの到着、番組開始のぎりぎりでしたね。

漢:どうも、みなさんにご迷惑をおかけして、たいへん吸いました。

(会場爆笑)

ハハハハハ。漢さんはこれまでもDOMMUNEに何度か出演されていますよね。

漢:これまでというか、近年、宇川さんとDOMMUNEにはすごいお世話になっていますね。(出演は)今回で確実に3回めですね。

ただ、こういう形でインターネットの生放送番組で単独インタヴューを受けるのははじめてですよね。かなり貴重な機会だと思います。

漢:なんだろうね? これまでこういう機会がなかったんですよね。はじめて宇川さんとここで会ったときから、良い意味でいろいろ近くなれるのかなっていう感触ですかね、それがありました。はじめて会ったときに、まだ俺の達していないレヴェルの人だなっていうのはわかりましたから。

漢さんが主宰を務めるヒップホップ・レーベル〈鎖グループ〉を立ち上げたのは去年でしたか? それとも一昨年でしたか?

漢:一昨年ですね。立ち上げたというか、登記したのは。だから、いまは、また再びスタート地点に立っただけですね。

これから本格始動していこうと。

漢:うん。〈鎖グループ〉を立ち上げるまでは、制作は〈ライブラ〉に任せていたけど、〈鎖グループ〉っていうのは、〈ライブラ〉のなかの〈鎖グループ〉ではなくて、完璧に独立した会社なんですね。

〈ライブラ〉を辞めて、〈鎖グループ〉を立ち上げて新たなスタートを切ったと。

漢:そうですね。ただ、進み方にはまだちょっと不満がありますね。その不満を解消して、確実にいい感じで広げていけるパワーが集まってきてはいますけどね、いま。元気玉みたいな感じなんでね。今日はその第一歩になるようなインタヴューにしたいなと。

そうですね。

漢:うん、最初は少し時系列的にいこうか。もともとMSCっていうのは、俺とGO、PRIMAL、O2、TABOO1ってヤツらとDJ陣がいたりしてはじまったわけですよ。SATELLITE(少佐、DOGMA、SAWから成るMSCの別動隊)と呼ばれるヤツらも当時からいて、それが原形だった。で、〈ライブラ〉っていうのは、俺やTABOO1が住んでいる、明治通りをはさんで反対側の神楽坂や牛込あたりの人たちで、二十歳以降に知り合ったっていうかね。お互い名前も知っていて、〈ライブラ〉の社長も俺のことは、まあ、噂で聞いていたんですね。カッコよく言うと、ストリート的な感じのビジネスで知り合って、そこから、いろいろつながって、MSCと〈ライブラ〉が合体したんですね。

それが、2003年ころですね。

漢:うん。いちばん最初にリリースしたEPの『帝都崩壊』(2001年)は〈Pヴァイン〉から出していましたからね。で、2003年のEP『宿(ジュク)ノ斜塔』から〈ライブラ〉の制作で、ファースト・アルバムの『MATADOR』もそう。だからいきなり鬼のようなスピードで加速して行った。MSCにはDJしかいなくて、トラックメーカーがいなかったから、I-DeAのスタジオでデモテープを録らせてもらって、そのときにはじめて「トラックを作るにはMPCが必要らしいぞ」って知ったぐらいだからね(笑)。作り方もよくわからない状態で作っていたんですよ。『MATADOR』のマスタリング作業には、メンバーのなかで俺だけ参加していたんだけど、マスタリングが終わったときに、当時MSCを担当してくれていた元〈Pヴァイン〉のA&Rの佐藤(将)さんに俺が言った一言は、「これ、ほんとに出しますか?」だったからね。

それはどうしてですか?

漢:自分たちがイメージしていたヒップホップではなかったから。

それはサウンドが?

漢:全部が! 自分でもよくわからなくなって、当時持っていた自信が揺らいだというかね。「あれ、大丈夫か?」みたいな感じになった。だけど、『MATADOR』はじょじょに効いてくるんですよ。「この音楽はヤベエくせぇな」と。最後は、「この音楽はオリジナルだ」って解釈したね。ただ、当時の自分の理想のイメージに近かったのは『宿(ジュク)ノ斜塔』で、あっちのほうが良いマインドで作れていると思う。


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社会や政府のせいにするところから、だんだん近寄って問い詰めて行って、やっぱり原因はストリートにあるのかと考えるようになっていくわけですよ。

『MATADOR』から10年経って、あの作品をどう解釈、評価していますか?

漢:当時の俺らはいい年こいて、バカみたいにアメリカン・ヒップホップを自由に解釈して、日本人文化なりに変形させるところは変形させてやっていたんだよね。それと、我々のスタート地点には、仲間のせいとか身の回りのヤツのせいにはしたくないというのがあったんですよ。「まずは社会や政府のせいにしようぜ」って。それが『MATADOR』という形で表れた。社会や政府のせいにするところから、だんだん近寄って問い詰めて行って、やっぱり原因はストリートにあるのかと考えるようになっていくわけですよ。

それはかなり興味深い話ですね。

漢:だって、いろんな経験をしてさんざん食らったりした連中が、「つまんねぇな、こいつら」とか「つまんねぇな、ここ」とかっていう不満からはじめているのがヒップホップでもあるでしょ。俺らは、そういう感じでヒップホップをやっていたから、いきなり仲間のせいにはしたくないよね。だから、おのずと社会や政府のせいだって話になるよ。当時の俺とPRIMALは、そういう話ばっかりしていたよね。だから、俺らは逆ヴァージョンなんだよね。他の日本のヒップホップのみんなはだいたいストリートから国とか政府に行くんだろうけど、俺らはいきなり社会や国や政府のせいにして、そこから身の回りというか、ストリートというか、人というか、そんな感じじゃないですか。

2000年初頭にMSCが北新宿に構えていたアジトではテレビを見るのが禁止だったそうですね。そう考えると、MSCはパブリック・イメージからするとちょっと意外なのが、ストイックで、規律のある集団だったわけですよね。

漢:ある時期からはゲームも禁止だったね。ま、ゲーム禁止令は俺が出したんですけどね。それはさ、いい年こいてんのにヒップホップやってるんだから、危なくなるでしょ、ある程度。俺らはそこに関しては、バカみたいに本気でやっていたと思うね、ピュアに。だから、俺は、趣味じゃなくて、まあ趣味だとしてもいいけど、本気でやろうぜって考えていたね。言い方は悪いけど、MSCのリーダーが俺だとして、俺をピュアに信じているメンバーがいるときは、ちょっと無茶なレヴェルに達しても、俺が言葉で「大丈夫だからさ、行けるよ」みたいな感じの説明をして成功するんですよ。みんなが100%信じ切ってくれれば。でも、ひとりでも疑いを持ちはじめたり、本気を出さないヤツが出てくると、失敗し出す元になるんだよね。当時の俺らは100%ピュアな感じで、一丸となって固まっていましたよ、気持ち悪いぐらい。そういう時代ですよ。

ある種、カルト的な雰囲気がありましたよね。

漢:当時は、なんで俺らみたいな若者が生まれちゃったんだって話をよくしていたよ。俺らの親の世代の時代や戦争の時代とか、どんな金持ちがいたとしても、日本は貧しいのが基本だったわけじゃないですか。そういう時代を経験した世代が、やっぱり自分の子どもたちには自分みたいな貧しい思いをさせたくねぇっていう甘やかしが蔓延ったのかなとかさ。だから、いまの俺らみたいのがいるんだろ、みたいな裏づけを勝手に考えたりしていたよね。でも、その時点で俺らは誰かのせいにしちゃってたんだよね、すでに。


で、意外とちびちび指を切り出すんですよ。「切れる? そのやり方で」なんて言いながら、「うわっっつっ」って(笑)。まあ、そういう感じで研ぎ澄まされていたから、あんまり失敗したことないですよ。

世の中に自分たちがいる理由を考えていた、と。

漢:そうそう。俺らのなかでは、実際にあったことを題材にリリックを書いたり、パンチラインを出したり、歌うんだけど、つい出てしまった言葉は、後付けでもやっちまえばリアルだぞって。そういうルールがあったんですよ。

恐いですね、それ。

漢:そりゃ、恐いですよ。

言葉が背後から迫ってくる、みたいな。

漢:「だったら血判を押そうぜ」って、またPRIMALが言い出すんですよ。こっちは、「血判ってなんだろう?」って感じですよ。紙と刀で。あ、刀は違うけど、まあ持ってくるんですよ、本気で指を切るものを。危なくないですか?

危ないですね、ハハハ。恐いですね。

漢:で、意外とちびちび指を切り出すんですよ。「切れる? そのやり方で」なんて言いながら、「うわっっつっ」って(笑)。まあ、そういう感じで研ぎ澄まされていたから、あんまり失敗したことないですよ。

言葉を先に吐いて、その言葉をあとから実践して、自分を言葉に追いつかせていくっていうリアルのとらえ方は、逆転の発想ですよね。

漢:まあ、プロのMCになりたきゃ、リリックでも言っているんだけど、「まず根拠のない自信が必要」で、「プロの世界で生き残りたければ今度は言葉の裏付け取る必要」(“次どこかで”)があると。そういう感じですよね。俺がだいたいイケてるなって思っていたり、ある程度の線を超えていると思うラッパーの人たちや業界の人らは、ヒップホップやレゲエ関係なく、それぞれがその部分で勝負していたり、ルールを守っていたりしている人が多いかな。感覚で言うとね。

なるほど。

漢:これは俺の持論で、リリックでも言っているけど、やっぱり「縦でもない横でもない斜め社会」(“次どこかで”)が必要なんですよ。縦社会でも横社会でもない、“斜め社会”を作って自分らで物事を決めていくというね。ただ、日本社会は年功序列で、リスペクト文化じゃないですか。たとえば敬語という文化は、みんなが幸せに生きるためのルールでしょ。なにかやるときでもとりあえず敬語を使っておけば、無駄な争いはいちおう避けられると。あと、当たり前に法律がある。裏社会も表社会も体育会系も警察でも政府でもヤクザでも、そのルールはぜんぶいっしょですよ。小学校の学級会みたいのは、その練習というか、けっきょく形式は似ている。だから、会長や社長やリーダークラスのあいだでは、下のヤツらがわからない話ができていて、で、そういう人たちの下に組合やサークルみたいのがいくつもあって上手く回っていたのがこれまでの日本社会で、そういうルールで生きてきたのが、まあ俺が思う我々日本人なんですよ。ただ、いまの時代、日本もアメリカナイズされて、そういうルールもいろいろな崩れ方をしているわけでしょ。君みたいにアメリカナイズされて、こうね。

ハハハ。そういう既存のルールが崩れかけている時代にどう生きるか、と。

漢:そういうなかで、これまでのルールややり方を簡単に止められないというのも社会だし、こういう時代に考え方が変わったり、変えるのも人間だし、変えないで貫くのもカッコいいけど、まあ、だから答えはひとつじゃなくて、“のぼり方”はいろいろあんだから、試そうぜと。俺は〈ライブラ〉のなかで、そういう違う“のぼり方”をどんどん説明していたんだけど、それを信じてくんねぇのかと。それだったら、自分は命綱なしに、他のルートで先にのぼってやっからな、と。勝手にのぼって、手助けしてやんのもいいよって感覚で独立しているんですよね。

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まあ、プロのMCになりたきゃ、リリックでも言っているんだけど、「まず根拠のない自信が必要」で、「プロの世界で生き残りたければ今度は言葉の裏付け取る必要」(“次どこかで”)があると。

MC漢の定義からすると、たとえば、DOMMUNEの場は“斜め社会”ですか?

漢:まあ、ここは意外と斜め社会系ですね。

意外と斜め社会系(笑)。

漢:あやふやでも許される、ある意味、心が広い系ですよ。

心が広い系!?(笑)

漢:ただ、やっぱり俺が日本のラッパーを好きなのは、そうだな、日本にはアメリカとは違うヒップホップのおもしろさがあるからなんですよ。アメリカ人からしたら、日本人のラッパーが「おいっす」(握手のジェスチャーをする)とか、こうやったりする(会釈のジェスチャーをする)だけでも、「おっ、なんだよ」みたいな目で見てきたりする。「あ、お辞儀した」みたいな驚きなのか、「かっけーじゃん」って感じなのかはわからないけど、まあ、そういう挨拶が日本人とアメリカ人の間で自然にできる世代もいるしね。それはそれでよくて、俺は「仲間入れろ、コノヤロー」って感じだね。

ほお。

漢:たとえば、こう、ZEEBRAというラッパーやDABOってラッパー、RYUZOってラッパー、いろんなラッパーがしゃべったりしているのを見ていても、日本人だったら、そこからいろんなものが読み取れるでしょ。そのしゃべり方や、どこに敬語でどこには敬語じゃないとか、そういうことから。その背景を分析できて、ちゃんと説明できるヤツがいたら、だいぶおもしろいよね。俺は彼らのことをもうとっくにリスペクトしていて、みんなどんどん仲良くなっていいんじゃないですか。

かつてはDABO氏とのビーフもありましたし、いろんなビーフを経て、いまそういう考え方に至ったということなのかなと。長い間〈ライブラ〉とともに活動してきて、一昨年に〈鎖グループ〉を立ち上げる経緯についても教えてもらえますか。

漢:ヒップホップのクルーでメシを食う、日本のなかで音楽でメシを食うっていうのは、だいぶ難しいんですよ。日本では、「おまえ、ヒップホップのラッパーでメシ食うだぁ? ふざけんな!」っていうのが普通の、一般的な感覚じゃないですか。けっきょく、武器になるのはソロなんですよ。やっぱりみんながソロを出せるようになっていかなきゃいけない。最初に話したとおり、MSCと〈ライブラ〉が合体したのは、隣町の先輩、要は日本ルールの先輩で、協力できると思える先輩がはじめてできたんですよ。俺もべつにそういう関係は嫌いじゃないですから。そういった仲ですし、契約書もなくて、最初は純粋な気持ちで楽しくスタートしたんですよ。べつに会社の役員とかになったわけではないんですけど、重役として会議にも参加して、自分の意見もけっこう通っていたんですね。

2005年からスタートするフリースタイル・バトルの大会の〈UMB〉の発案者も漢さんだったんですか。

漢:〈UMB〉はもともと、その前にあった〈お黙りラップ道場〉っていうイヴェントが原形なんですよ。当時〈ライブラ〉にいたA&RのMUSSOっていう中学の同級生のヤツが、イヴェントで自分の力を試すためにやってみるって話からはじまっている。「ラップ・バトルやろうぜ!」って。俺もラップ・バトルで優勝していたし、俺もアイディアを出して、気持ちとしても〈B-BOY PARK〉には出たくないってヤツらが集まるかなって考えていたね。

2002年の〈B-BOY PARK〉のMCバトルでMC漢が優勝したことが、日本のフリースタイル・カルチャーの大きな転換点ではありますよね。その流れで〈UMB〉が立ち上がるわけですよね。

漢:そうそう。そのあたりで、日本でもルールのあるバトルが本格的にはじまった。で、〈UMB〉のDVD作ったり、ソロ・アルバム『導 ~みちしるべ~』(2005年)やMSCの『新宿STREET LIFE』(2006年)が出たりして、俺ひとりだったら、最初の1、2年は、まあお金はもらっていましたね、それなりに。

そうですか。

漢:でも、俺らの仲間がどれだけのギャランティをもらっているのかという話はしていなかったんですよ。ただひとつ言えるのは、ストリート・ハスリングみたいな感じでやっていようが、ラップの金でやっていようが、組織やグループだったら、ある程度のところまでみんなが潤わないと、誰かが犠牲になることになる。そのあたりで、俺の理想と違うなあっていうところも出てきたわけですね。不安な部分もあるなと。余裕がないなら、まあまあ、俺が犠牲になってもいいよ、じゃあ、そこは、という気持ちもあったけど、身近な人間に抱きたくもない感情が増えてきたり、そういう人間社会現象が起きてきちゃうわけですよ。ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁みたいな感じの狭いところでループするようになっていきましてね。

ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁?

漢:ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁みたいなところですから、そこにいる人たちは外部の人間ではない。でも、その短い距離で人が離れていく。そうなっちゃうと、俺のなかではヒップホップじゃない。俺の一言にたとえ騙されてでも、それが100%だったら成功するルールじゃなくなってきた。主婦的行動の井戸端会議で極端な憶測も飛び交うようになってしまって、ブルい過ぎてしまうぞ、エヴリデイ、みたいな現象が起きてきたわけです。

どういうことですか?

漢:まあ、やっぱり人間が増えると、社会になりやすいですよ、日本ってね。身内でえげつねえ、みたいな現象が起きてくるようになるんですよ。「なんで、この短い距離でそのことを確認すんだよ」ってなってくる。そういうところから、僕がいまインターネット・サーフィンに乗せているインタヴューの旅がはじまっているんです。

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組織やグループだったら、ある程度のところまでみんなが潤わないと、誰かが犠牲になることになる。そのあたりで、俺の理想と違うなあっていうところも出てきたわけですね。不安な部分もあるなと。

つまり、そういう背景があって、〈鎖グループ〉を立ち上げようと動きはじめると。

漢:そう。ヒップホップだけで食っていくためにはいろんなところを改善したり、ルールを作らないといけないなと考えるようになったんですよ。独立して、自分のやり方や力を試して、なるべく日本の音楽でアーティストにお金が入るシステムって作れないかと考えた。そのためには、プレイヤーがやるレーベルじゃなきゃ意味がねぇなって考えたわけです。だから、早く〈鎖グループ〉を立ち上げて、軌道に乗せたかったんですけど、俺が独立するとなると、今度は不安がる人たちが増えちゃったんですよ、なぜか。

うーん。

漢:俺は、友だちとか先輩と言うのであれば、自分から問いかけてこないかぎりは信じないスタイルなんですよ。でもそうなると、今度は、「ナメられている」と勘違いしちゃう人も出てくるんですよ。いい歳をして使う言葉じゃないと思うんですけどね、「ナメられている」というのは。

MSCの結束力も揺らいだ?

漢:結束力の前に、そこが崩れることはまずないんです。MSのヘッズのオリジナル・メンバーに関しては、俺が身内社会でなにを言われていようが、風評があろうが、「いや、あいつは最初からそうだから大丈夫でしょ」という感覚なんです。お互いたしかめることもしない。我々は小さいながらも、いろんな形のヤマを乗り越えてきたメンバーだから、そこは大丈夫なんですよ。だけど、それ以上の人間の人数が関わっているので、その影響もある。たとえば、警察だったり、黒い世界の人たちだったり、井戸端会議の勝手な憶測で、そういう名前が浮上して、ぜんぶが俺のせいになるのであれば、俺は離れた方がいいじゃないですか。そういう話になったんですよ、〈ライブラ〉で。だから、まあ俺にも氷河期っていうのがあるんですよ。

氷河期なんてあったんですか!?

漢:ありますよ、ビックリすることに。簡単に言ったら、〈鎖グループ〉を立ち上げて、まずCDを一枚出して、出せなかった曲も出した。で、そのときに俺が予想していた一年から一年半よりももっと早く、半年という期間で〈鎖グループ〉の当時のメンバーとかアーティストたちはいちど散った感じですよね。散ったとしても戻ってくるんだろうなっていうのはわかっていますけど、いまの〈鎖グループ〉は、MASTERとDJ 琥珀と自分の3人がメンバーなんです。俺の氷河期のころのちょっと聞いたことがないおもしろい話をひとつしようか。いまはカタカタ(キーボードをタイプするしぐさ)の時代でしょ。

それ、インターネットのことですか?

漢:はい。駐車場を〈鎖グループ〉の会社名義で借りようとしたら、審査に落ちましたよ。駐車場の審査に落ちるなんて話は、俺はいっさい聞いたことがありませんよ、知り合いの不動産屋に聞いても。銀行系もギリでしたね。

えぇぇ。

漢:はい、ギリでした。そういう氷河期のときに、なるべく俺に暖房をあててくれたのがMASTERだったり、DJ琥珀がすげぇ優しくケツを叩いてくれたり、このふたりがいたから、〈鎖グループ〉は氷河期を越えることができましたよ。その当時、D.Oの曲がグッサリ刺さっちゃって。

どの曲ですか?

漢:「みんな俺に大丈夫か? って訊くが/みんなは逆に大丈夫か?」(“I'm Back”のD.Oのラップの真似をしながら)ってリリックに、「うわーっ」ってなっちゃって。

(会場大爆笑)

アハハハハハッ。

漢:まさに俺に「大丈夫か?」って訊いてくる「おめぇが大丈夫か?」って話だったんですよ、当時は。それを俺に言わせんなよって。だから、俺もひとりずつメンバーを呼んで、「俺は〈鎖グループ〉をやるから」と宣言したんですよ。


いち早く、若いうちにがっつりメイクできるのが、ヒップホップのひとつのドリームじゃないですか。そっから失敗しようが、成功しようが、そういう夢があるのがヒップホップだから。

こういう言い方も陳腐かもしれませんが、一世一代の勝負だったと。

漢:お笑いの世界とかをバカにしているわけじゃないけど、日本ルールで「30になってから売れる」とか「男は30から」とか、そういうのはヒップホップじゃないと俺は思っている。いち早く、若いうちにがっつりメイクできるのが、ヒップホップのひとつのドリームじゃないですか。そっから失敗しようが、成功しようが、そういう夢があるのがヒップホップだから。音楽を作って出して、もらえるもんはもらう、それで、見る夢は見る。そうじゃないと、モチヴェーションがなくなっちゃうでしょ。だから、〈鎖グループ〉を立ち上げたんです。俺もこれまで吐いたツバは多少、三口、四口飲んだことはラップやっているからあるかもしれないけど、たとえば、夏だからって、吐いたツバをキンキンに冷やしたジョッキでガブ飲みするようなことはしませんよ。

アハハハハ。

漢:そんな吐き気がするようなことはしないし、したくない。ただ、さすがに氷河期のころは、そこまであからさまにガブ飲みするような現象が起きるのかもしれないってところまで行った。だけど、もう氷河期を越えることができました。

最後に、今後のMC漢と〈鎖グループ〉の野望について訊かせてください。

漢:お互いがちょっとでも理にかなっていたり、おもしろい曲ができたり、意外とこういう人らがつながって、こういう曲になるんだとか、いまの日本で物足んなかったヒップホップやスタイルを提示していきたいと思っているね。さっきも言ったけど、「縦でもない横でもない斜め社会」で、タテノリ、ヨコノリよりも、35歳でいまだにワルノリで、ブリブリになれればいいなって感じですよ。俺の場合はやっぱりヒップホップだから、正式契約書にサインして、その場で楽曲を発表する契約公開を次はやりたいと考えていますね。宇川さん次第ですけど、できればドミューンで第2回めの放送もやらせてもらいたいなと。〈鎖グループ〉で俺がやろうとしているヒップホップ・ドリームは実現できると思っているんで。そうしたら、もっと威張りクサリますよ。

■2014年6月4日(水)

19:00~21:00 「BLACK SWAN presents THE SHO a.k.a. 佐藤将~ある日本語ラップ狂の唄~」

出演:DARTHREIDER(BLACK SWAN)、TONY BOY、黒鳥 司会:二木信

21:00~24:00 「9SARI OFFICE presents 鎖グループ&BLACK SWAN公開記者会見&SPECIAL LIVE!!!」

出演:MC漢(鎖グループ)、DARTHREIDER(BLACK SWAN)、MASTER(鎖グループ)、鎖グループ&BLACK SWAN契約アーティスト8、9組 司会:二木信

DJ:琥珀(鎖グループ)、KOPERO(BROTHER'S MACHINEGUN FUNK) & MORE!!!

DOMMUNE前回放送で話題が爆裂したMC漢率いる鎖グループ。社内別LABEL 〈BLACK SWAN〉の代表にDARTHREIDERを向かえ、新体制でついに始動! 前半は、〈BLACK SWAN〉前代表、故佐藤将氏の功績を辿る、佐藤将追悼特集「THE SHO a.k.a. 佐藤将~ある日本語ラップ狂の唄~」。後半は、公開記者会見を放送しレーベル構想を一気に語りまくります。メディアを呼び込み、それぞれが報道する新しい情報発信の形を提示します。所属アーティストとの公開契約、アーティストライヴ、質疑応答など内容は盛りだくさん。さらに、MC漢による爆弾発言のコーナーも……? 何が起こるのか……。間違いなく想定外な2時間! 今年、もっとも見逃し厳禁なHIPHOP放送!

www.dommune.com


V.A.
カーネーション・トリビュート・アルバム なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?

Tower HMV Amazon iTunes

 カーネーションのライヴをはじめて観てからというもの、僕はこの2カ月すっかりこのヴェテラン・バンドに恋してしまっている。僕は不覚にもカーネーションの名前しか知らなかった。が、いまは、i-podにはアルバムが5、6枚ほど常備されている。それらはすべてライヴ後に手に入れたものだ。勢い余ってというのも変だが、少し前に発売された2枚の7インチも買った。1枚は曽我部恵一とうどん兄弟がそれぞれ“Edo River”をカヴァーしたもの。もう1枚には、ミツメによる“YOUNG WISE MEN”、スカートによる“月の足跡が枯れた麦に沈み”のカヴァーが収められている。カーネーションが多彩なミュージシャンたちから愛され、現在のインディ・ミュージック・シーンに流れこむいくつもの水脈をつくってきたという事実が、僕にとってまず重要な発見だった。そして、より重要だったのは、カーネーションの音楽とともに春を過ごせたことで、悩ましい日常の幸福度指数が思いがけずリアルに急上昇したことと、ひさびさに魂を揺さぶるロックンロールを体感できたことだった。

 3月15日、昨年リリースされたカーネーション・トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』発売記念ライヴに足を運んだ。友人からの何気ない誘いがきっかけだった。その日、下北沢の〈GARDEN〉に集まったオーディエンスの年齢層は30代後半から40代が中心で、長年カーネーションの音楽を聴きつづけてきたファンが多かったように思う。20代らしき男女も見かけたが、「ライヴを観てやろう」という長年のファンが熟成させてきた静かな気迫がじわーっと会場に漂っていた。間違っても、「イエー!」というノリではなかった。日曜の夕方という、平日労働者の高揚と憂鬱が交錯する時間帯からはじまるライヴ・イヴェントだったが、バー・カウンター前でいい気分になっている酔狂な集団もいない。「これは手強い音楽ファンだ」というのがフロアを見渡したときの第一印象で、この独特の緊張感がカーネーションというバンドが歩んできた30年の道のりを物語っているようにも感じられた。

森は生きている、大森靖子、スカート、うどん兄弟、ブラウンノーズ、Babi、カメラ=万年筆、曽我部恵一、カーネーションという順番で、5時間を超える長丁場だった。が、オーディエンスの集中力は本当に高かった。僕もビールを2、3杯しか飲まなかった。このラインナップを前にして、飲んでいる場合ではないと自分に言い聞かせた。トップバッターにするのはもったいないほどディープなサイケデリアをすべて新曲で展開した森は生きている、“愛のさざなみ”で直枝政広のギターとからだと激情的なからみをみせた大森靖子、90年代初頭のヒップホップ・ソウルを彷彿させる“Edo River”のカヴァーを披露したアイドル・グループ、うどん兄弟、“グレイト・ノスタルジア”(僕がいまもっとも愛聴している曲のひとつ)をカヴァーしたカメラ=万年筆(歌手のマイカ・ルブテのあやうさのある不安定なヴォーカルがじつに魅惑的だった)……。詳述したいが、しかし、先に進む。

会場の空気があきらかに変わったのは曽我部恵一がギター一本で登場して歌いはじめた瞬間だった。それは、人気の高さによるものだけではなかった。曽我部恵一は、前口上抜きで大瀧詠一“それはぼくぢゃないよ”を祈るように歌いあげ、間髪入れずに“Edo River”を艶やかに披露した。歌の届く距離というものがまったくちがった。物理的にも、精神的にも。髪を振りみだしギターをがむしゃらに弾きまくり、あのセクシーな声をクールに低く響かせ、背景に黄金色の夕暮れがふわーっと広がっていくようなフォーキーな表情を浮かべる。そういったいくつもの側面を正味20分程度で、過剰さを感じさせずやりきる。会場の雰囲気がさらにぐっと引き締まったのは間違いなかった。

 そして、サポート・メンバーを加えた4人編成のカーネーションの登場だ。初っ端、大田譲の太く、力強いベースがからだを揺さぶったとき、4、5年前に沖縄のロック・バーで体感したライヴの記憶がよみがえった。長年コザ市(現沖縄市)で米兵相手にロックを演奏してきたそのベーシストはいまでも嘉手納基地近くのロック・バーで酔客相手にベースを弾いていた。身長160cmほどと小柄ながらも筋肉隆々とした体格と、物腰の柔らかさの中に潜む殺気が、彼の歴史を物語っていた。そのベーシストはバーに雇われているミュージシャンで、バンドはベース、ドラム、ギターのトリオだった。彼らの猛々しい演奏は、ロックンロールが理屈抜きのダンス・ミュージックであることを僕に教えてくれた。トリオの中央に立つ老ベーシストは、表情をほとんど変えずに力強くしなやかなベースを弾いた。彼らが刻むベースとドラムのシンコペーションと音量の具合は、酔客たちの肌の表面をやさしく愛撫しながら、からだの奥底のダンス衝動を揺さぶるものだった。その1年ほど前にリキッドルームで観たゆらゆら帝国のライヴと、音楽性は異なれども、ロックンロールの快楽という一点で同種のものだった。

カーネーションの、その日の最初の1、2曲(“YOUNG WISE MEN”→“学校で何おそわってんの”)の演奏に感じたのもまさにそれだった。ベースがバスドラの音の表面を撫でながら、有機的にからみあい、ブーンと腹に余韻をのこす音を発して演奏はずんずん前進していく。直枝政広と大田譲は派手な柄シャツを着こなしているが、期待を裏切らない似合い方をしている。ふたりとも長髪だ。ダンディである。「これぞロックンロールですね」。ライヴに誘ってくれた友人に興奮をおさえて耳打ちすると、彼の大きな目も輝いていた。当然だろう。だが、個人的なクライマックスはそのあとに待っていた。元メンバーのギタリスト、鳥羽修を加えての“Superman”だ。パワフルに跳ね上がるビート、軽快なキーボード、直枝政広の粗野と繊細のはざまを揺れ動くヴォーカル。そしてサビに入ると、なんとも切ないメロディと直枝政広の甘いファルセットが曲のドラマを最高潮に持っていく。最高のポップ・ソングとは、3~5分の短い時間、胸を締めつける恋心の幻想を見せる音楽のことだと断言したくなる、ロックンロールだった。こういうロマンチックな曲を書いて、演奏できるからこそ、カーネーションは愛されているのだろう。最後は、その日の出演者のほぼ全員がステージにあがり、“夜の煙突”の大合唱で締めくくられた。

年齢を重ねるたびに、その経験を活かして“枯れ”の技芸に磨きをかけていくというのは、フォークでもロックでもミュージシャンのひとつの“生き残り方”ではあるが、カーネーションの直枝政広と大田譲は年齢とともにますます瑞々しさを増していっているようにみえた。6月には、廃盤となり入手困難だった『LIVING/LOVING』『SUPER ZOO!』という2枚のアルバムが再発されるという。もちろん僕は聴いたことがない。新譜を待つような気持ちで、いまからときめく準備はできている。

ねぇ ねころがって話そうよ 
ねぇ ねころがって話そうよ 
ねぇ ねころがって夢みよう 
ねぇ ねころがって空飛んでこうよ 
小さな指をはなさずについておいでよ 
街がほら星くずのように 
ハイウェイが星くずのように輝くよ
“Superman”


追記

僕は、カーネーション結成30周年記念トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』の発起人であるスカートの澤部渡とカメラ=万年筆の佐藤優介のいくつかのインタヴューや、カーネーション好きの友人の意見を参考にしながら、アルバムを手に入れてみた。「全員に対して『SPY FOR THE BAND』で様子を見ろとは言いたくないじゃないですか」と、『ミュージック・マガジン』(2014年1月号)で澤部が語っているので、ベスト盤『SPY FOR THE BAND』だけで様子を見るのは止めた。澤部が選んだ『Prakeet & Ghost』を聴いて、なるほど、澤部の発言の意味がわかった気がする。ポップと実験。ポップにおける実験。実験的なポップ。そのような多層的なカーネーションを知るためには、ベスト盤ではまったく事足りない。いわばコロムビア時代のシングル集である『SPY FOR THE BAND』に詰まっているきらめくポップ・サウンドはとても素敵だ。だが、たとえば『Girl Friend Army』と『天国と地獄』を聴き比べてこそ、カーネーションというバンドを深く堪能できるし、カーネーションがコアな音楽ファンから支持されつづけている理由を理解することができる。“ハリケーン”(『天国と地獄』収録)における、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名曲“イン・タイム”のドラム・ブレイクのサンプリングのセンスはいま聴いても斬新で、発表が92年であることを考えれば、ヒップホップ的観点からも無視できない重要な一曲。

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カーネーション、現在入手困難なトリオ時代の名盤『LIVING/LOVING』、
『SUPER ZOO!』のアルバムが2枚組デラックス・エディションで再発決定!

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 2013年に結成30周年を迎えたカーネーション。トリビュート盤発売や精力的なライヴ活動で現在でも新しいリスナーを獲得しつづけている彼ら。現在のライヴ定番曲が多数収録されているCUTTING EDGE/avex所属時代(2002~2004)の作品はすべて廃盤=入手困難であったが、満を持してフル・アルバム『LIVING/LOVING』、『SUPER ZOO!』2タイトルの再発が決定。どちらもボーナス・ディスク付きのCD2枚組。ボーナス・ディスクにはアルバム未収録のシングルカップリング曲や限定盤収録の楽曲群を網羅。CCCD(コピーコントロールCD)での発売のみだった20周年記念シングル「スペードのエース」や同時発売のアナログ盤収録曲も晴れて通常音源/盤で収録される。
 また、デモ音源などファン垂涎の未発表音源も多数収録。

■『LIVING/LOVING Deluxe Edition』

発売日:2014年6月18日(水)
カーネーション6月ツアーにて先行発売
(オリジナル・リリース2003年8月27日)
品番:PCD-18767/8 価格:¥3,000+税
最新リマスタリング
解説:岡村詩野

トラックリスト:

【LIVING/LOVING Disc 1 】
01. やるせなく果てしなく
02. 春の風が吹き荒れているよ
03. LOVERS & SISTERS
04. あらくれ
05. 永遠と一秒のためのDIARY
06. COCKA-DOODLE-DO
07. ハイウェイ・バス
08. 愚か者、走る
09. BLACK COFFEE CRAZY
10. USED CAR
11. OOH! BABY

【LIVING/LOVING Disc 2:ボーナス・ディスク】
01. 愚か者、走る (Rainy Day Demo)
02. ハイウェイ・バス (Home Demo)
03. LEMON CREME (Live Version)
04. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #1
05. ぼうふら漂流族 (Rainy Day Demo)
06. ダイナマイト・ボイン (Live Version)
07. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #2 "VENTURE CHRISTMAS TIME"
08. 放課後の屋上で
09. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #3 "VENTURE MASSAGE 4 U"
10. 春の風が吹き荒れているよ (Home Demo)
11. あらくれ (Home Demo)
12. 永遠と一秒のためのDIARY (Home Demo)
13. COCKA-DOODLE-DOo (Home Demo)
14. USED CAR (Home Demo)
15. NO TITLE (未発表曲 Home Demo)
M1-9:限定生産シングルシリーズ『VENTURE BUSINESS Vol.1~Vol.3』収録曲
M10-15:未発表デモ

■『SUPER ZOO!  Deluxe Edition』

発売日:2014年6月18日(水)
カーネーション6月ツアーにて先行発売
(オリジナル・リリース2004年11月25日)
品番:PCD-18769/70 価格:¥3,000+税
発売元:P-VINE RECORDS
最新リマスタリング
解説:安田謙一

トラックリスト:

【SUPER ZOO! Disc 1】
01. SUPER ZOO!
02. レインメイカー
03. スペードのエース
04. 気楽にやろうぜ
05. El Soldado (フリーダム!フリーダム!フリーダム!)
06. あの日どこかで
07. カウボーイ・ロマンス
08. Miss Cradle
09. 十字路
10. ANGEL
11. 魚藍坂横断
12. RUNNIN' WILD

【SUPER ZOO! Disc 2:ボーナス・ディスク】
01. 夜の煙突 (20th Anniversary Party Version)
02. シケイロスのように (Recording Live At The Doors)
03. ANGEL (Home Demo)
04. ROSE GARDEN
05. MY LITTLE WORLD (Live Version)
06. BLACK COFFEE CRAZY (Live Version)
07. LOW PRESSURE
08. おそろいのお気にいり
09. OOH! BABY (Acoustic Solo version)
10. LOVERS & SISTERS (Acoustic Steel version)
11. SUPER ZOO! (Home Demo)
12. 十字路 (Home Demo)
13. 魚藍坂横断 (Vocal Demo)
14. LOW PRESSURE (Vocal Demo)
M1-3:20周年記念シングル『ANGEL』収録曲
M4-7:20周年記念シングル『スペードのエース』収録曲
M8-10:アナログ盤『LOVERS' FAVOURITES』収録曲
M11-14:未発表デモ

■2タイトル同時購入応募特典あり!(商品に応募券封入)

CARNATION official website
https://www.carnation-web.com/
https://twitter.com/carnation_web
https://www.facebook.com/carnationweb

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カーネーション、大阪&東京ツアーに旧メンバー、矢部浩志参加決定!
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 カーネーション、6月の大阪&東京ツアーまであと半月!
大阪&東京公演に旧メンバーの矢部浩志((MUSEMENT、Controversial Spark)の参加が決定!

 2009年に矢部がカーネーションを脱退して以来、直枝、大田、矢部の3人が同じステージに立つのは5年ぶり。本ツアーではカーネーションのエイベックス時代のアルバム『LIVING/LOVING Deluxe Edition』『SUPER ZOO! Deluxe Edition』の先行発売も行われる。

31年目のカーネーション
「タンジェリンとハイウェイ '14」
ツアーサポート:張替智広(Dr)、佐藤優介(Key:カメラ=万年筆)
Special Guest:矢部浩志(MUSEMENT、Controversial Spark、ex.カーネーション)

■大阪公演
2014年6月1日(日)
大阪 Shangri-La

開場:17:00 開演:18:00

オールスタンディング
前売:5,000円 当日:5,500円(ドリンク別)
学割:2,500円
※学割チケットはプレイガイド発売はありません。

学割予約フォームは以下(大阪公演専用)
https://tangerineandhighway0601gakuwari.peatix.com/

チケット一般発売 5月10日(土)
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード:231-868
ローソンチケット 0570-084-005 Lコード:54262
イープラス https://eplus.jp
モバイルサイトGREENS!チケット https://www.greens-corp.co.jp/

(問)GREENS 06-6882-1224

■東京公演
2014年6月8日(日)
東京 キネマ倶楽部

開場:17:00 開演:18:00

オールスタンディング
前売:5,000円 当日:5,500円(ドリンク別)
学割:2,500円
※学割チケットはプレイガイド発売はありません。
カーネーション公式HPからの受付のみとなります。
学割受付フォームは以下(東京公演専用)
https://tangerineandhighway0608gakuwari.peatix.com/

チケット一般発売 5月10日(土)
■Peatix https://tangerineandhighway0608.peatix.com
■ローソンチケット 0570-084-003 Lコード:70008 https://l-tike.com/
■イープラス https://eplus.jp (5/16より取り扱い開始)

(問)東京キネマ倶楽部 03-3874-7988



Eddi Reader
Vagabond

Reveal / ソニー・ミュージック

Tower HMV Amazon

 まずは日本国内盤(Blu-spec CD2)に添付されている赤尾美香さんのライナー、そこに紹介されているエディ・リーダー自身によって紡がれた言葉の数々を読み合わせてみてほしい。楽曲だけでもじゅうぶん素晴らしい。しかし、故郷グラスゴーでの新生活、夫であるジョン・ダグラス(トラッシュキャン・シナトラズ)の病、子どもたちの進路、等々といった圧倒的な「生活」の苦労や慌ただしさによって4年もの年月が押し流されながら、それをすべて「新しい経験」として自然体で受け入れ、楽しむかのような彼女のスタイル、息づかい、そうしたものに触れずしてこのアルバムを聴くことは、大きな損でもある。

 ジョンの体調への配慮から、録音は自宅の居間にミキサー卓、キッチンにドラムをセットしてはじめられたというような制作エピソードも、いっそう本作を味わい深いものにしてくれる。相変わらずかわいらしくみずみずしい声。しかし少女ではない。「経験の浅い頃の私が“こと”のおかしさ、おもしろさに気づく余裕がなかったようなことも、今ではいい思い出。」いまだからこそ楽しく素晴らしいと思われることがたくさんあるという彼女の、そうした豊かさ、感性の張りを聴きとりたい。

 なお、日本盤の同ライナーには対訳のほか、エディ・リーダー本人による楽曲解説が5ページにもわたって書き込まれている。CDにはボーナス・トラックとしてレアなライヴ・トラックをふくむ合計3曲が追加収録。

 そして来日ツアーも決定。今回はかつてフェアーグラウンド・アトラクションでの来日の際に、こけら落とし公演を行った名古屋〈クラブクアトロ〉の25周年アニバーサリーを含む東名阪のツアーとなる。

 来日を記念して、フェアーグラウンド・アトラクション唯一のオリジナル・アルバム『ファースト・キッス』やエディのソロ・デビュー・アルバム『エディ・リーダー』などの4タイトルも紙ジャケット仕様の完全生産限定盤としてリリースされた。こちらもあわせてチェックしてみたい。
(詳細 https://www.sonymusic.co.jp/artist/EddiReader/info/438207

■エディ・リーダー ジャパン・ツアー

大阪公演
6月28日(土)
Umeda CLUB QUATTRO 
18:00開演 
前売り¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)スマッシュウェスト06-6535-5569

名古屋公演
6月29日(日)
Nagoya CLUB QUATTRO
“Nagoya Club Quattro 25th Anniversary”
18:00開演
前売り¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)クラブクアトロ 052-264-8211

東京公演
7月1日(火)
Shibuya CLUB QUATTRO
19:30開演
前売り ¥7,000(税込/ドリンク別)
(問)スマッシュ 03-3444-6751

チケット発売中
https://smash-jpn.com/live/?id=2109

interview with Fennesz - ele-king


Fennesz
Becs

P-Vine

ElectronicaNoiseAmbient

Tower HMV iTunes

 途轍もない傑作である。「電子音響のロマン派」とでも形容したい『ブラック・シー』(2008)から6年の月日を経て、クリスチャン・フェネスが放つ待望の新作ソロ・アルバム『ベーチュ』には、90年代後半以降の電子音響/グリッチ・ミュージックの歴史をアップデートしてみせたような圧倒的な音のきらめきが満ちている。

 前作『ブラック・シー』は名門〈タッチ〉からのリリースであったが、本作は『エンドレス・サマー』(2001)以来の〈メゴ〉(現・〈エディションズ・メゴ〉〉からの発表だ。その全体を包みこむようなエモーショナルな曲想は明らかに「アフター・エンドレス・サマー」といった趣。私は先に6年ぶりと書いたが、『エンドレス・サマー』から13年ぶりとでもいうべきかも知れない。そう、「永遠の夏」はまだ終わっていなかったのだ。デジタルなレイヤーの層に圧縮された記憶が、ギターの響きとデジタルなノイズの交錯によって解凍されていく。

 だが、急いで付け加えておかなければならないが、この作品は断じて「続編」ではない。音響的精度や密度は驚くほどにアップデートされているからだ。さらに強靭になった電子ノイズの奔流が渦巻き、フェネスのギターはより生々しく、感情的に耳に迫ってくる。
 さらに注目すべきゲスト・ミュージシャンだ。マーティン・ブランドルマイヤー、ヴェルナー・ダーフェルデッカー、トニー・バック、セドリック・スティーヴンスの演奏・音色がアルバムの色彩を、さらに特別にしている。フェネスのギターとともにデジタル・プロセッシングと拮抗するような演奏が楔のように打ち込まれているのだ(しかもマスタリングは、話題のラシャド・ベッカー!)。

 本作において、2000年代中盤以降、いささか停滞してきたグリッチ・ミュージックが、いままたアップデートされている。音。構造。音響。空間性。音楽。誰の「記憶」も刺激する誰も聴いたことのない音響空間。

 今回、この『ベーチュ』を生み出したフェネスから貴重な言葉をいただくことができた。彼の簡潔な言葉にはアーティストの思考と決意と自信が圧縮されている。ぜひ『ベーチュ』を聴きながら、フェネスの言葉を何度もたどっていただきたい。『ベーチュ』をより深く知る=聴くためのキーワードがここには埋め込まれている。

■Fennesz(フェネス)
1995年にオーストリアの電子音響レーベル、〈ミゴ〉から12インチ「インストゥルメント」でデビュー。ギターをコンピューターで加工し、再/脱構築した綿密なスタジオ・ワークで注目を集める。1997年のデビュー・アルバム『ホテル・パラレル(Hotel Paral.lel)』(ミゴ)以降も順調にリリースを重ね、2001年のサード・アルバム『エンドレス・サマー』(MEGO)は、ジム・オルークの〈モイカイ〉からのシングル「プレイズ」(99年)をさらに発展させたサウンドで各方面から絶賛された。コンピューターで加工したアコースティック・ギターの音色と、温もりのあるグリッチ・ノイズを絶妙のバランスで編集/ブレンドして叙情感溢れるサウンドスケープを完成させている。ほかにデヴィッド・シルヴィアンとの仕事のほか、ジム・オルーク、ピタことピーター・レーバーグとのトリオ、フェノバーグや、キース・ロウのエレクトロアコースティック・プロジェクト、MIMEOへの参加などのコラボレーションなども評価されている。今年2014年、新作『ベーチュ』を〈エディションズ・メゴ〉からリリースした。


レーベルを変えたわけじゃないんだ。僕たちはみな友人だし、僕が『ベーチュ』を〈エディションズ・メゴ〉からリリースすることは、〈タッチ〉にとって問題じゃなかった。

新作アルバム『ベーチュ』のリリース、おめでとうございます。その圧倒的なクオリティに心から感激しました。

CF:ありがとう。

前作『ブラック・シー』より6年ぶりのアルバムですが、フェネスさんはその間も、EP『セブン・スターズ』(2011)やサウンド・トラック『アウン』(2012)をはじめ、坂本龍一さんやYMO、デイヴィッド・シルヴィアンさん、フェノバーグとしての活動などなど、さまざまなアーティストとコラボレーションを活発に行ってきました。それらの多彩な活動やリリースが、本作の制作に与えた影響などはありますか?

CF:そうとは言えないな。ソロの作品とコラボレーション作は分けて考えるようにしているんだ。でも、ミュージシャンとしてどのコラボレーションからも影響を受けているよ。

『ヴェニス』(2004)、『ブラック・シー』、『セブン・スターズ』は〈タッチ〉からのリリースでしたが、今回のリリースは〈エディションズ・メゴ〉からですね。

CF:レーベルを変えたわけじゃないんだ。僕たちはみな友人だし、僕が『ベーチュ』を〈エディションズ・メゴ〉からリリースすることは、〈タッチ〉にとって問題じゃなかった。2002年に〈メゴ〉が経済的な問題に直面したとき、おそらく3枚めのアルバムを作ることはできないだろうなと思っていたんだ。そのうちに、ピーター・レーバーグがすばらしい方法でレーベルを建て直して、3枚めのアルバムを作る機会が巡ってきたんだ。

今回〈エディションズ・メゴ〉からのリリースということもあり、『エンドレス・サマー』の間に何か繋がりのようなものを考えていますか? そして『ブラック・シー』と本作の違いなどは?

CF:思うに、僕のレコードはそれぞれちょっとずつ違う。『エンドレス・サマー』を作ったとき、僕のスタジオはとてもシンプルだった。ラップトップと数本のギター、いくつかのペダルと小さいミキサーがあるだけだったんだ。いまのスタジオはずっと広いところで、プロダクションもより複雑なものになった。サウンド・デザインとミックスの手法に関しては、おそらく『ブラック・シー』がもっとも複雑な作品だね。一方、『ベーチュ』ではよりダイレクトなアプローチを取ったんだ。

アルバム名『ベーチュ』は、ハンガリー語で(フェネスさんの故郷でもある)「ウィーン」を意味する言葉ということですが、なぜハンガリー語を用いたのでしょうか?

CF:『ヴィエナ(Vienna)』はすでにウルトラヴォックスに取られていたからね。

サウンド・デザインとミックスの手法に関しては、おそらく『ブラック・シー』がもっとも複雑な作品だね。一方、『ベーチュ』ではよりダイレクトなアプローチを取ったんだ。

マーティン・ブランドルマイヤーさんとヴェルナー・ダーフェルデッカーさんが参加されています。1曲め“スタティック・キングス”の冒頭で、突如として鳴り響いた彼らの音に驚愕しました。また、ドラムとしてザ・ネックスのトニー・バックさんも参加されていますね。

CF:うめくようなサウンドは、オシレーターが内蔵されたカスタムメイドのディストーション・ボックスを使ったものだよ。3人とも前に共演したことがあって、長い即興のセットをいっしょにやったから、お互いのことがとてもよくわかっていた。彼らにベーシック・トラックを渡して、そこに音を重ねてもらったんだ。すばらしい結果になってとてもうれしいよ。

同じくゲストに、セドリック・スティーヴンスさんがモジュラー・シンセで参加しておられますね。“Sav”で共作もされています。

CF:セドリックはブリュッセルのいい友人で、このアルバムには彼にどうしても参加してほしかったんだ。彼自身、すばらしいレコードを作っているけれど、より多くのオーディエンスに聴かれるべきだと思っている。彼は僕のスタジオに自分のモジュラー・シンセサイザーをすべて持ってきて、2日間、ジャム・セッションしたんだ。

今回、特徴的な方法でベースとドラムスを取り入れたことによりご自身のサウンドは変化したと思いますか?

CF:このアルバムには少しロックンロールな感じを入れたかったんだ。

フェネスさんにとってビートとは?

CF:アブストラクトなビートを持った曲が好きなんだ。その曲が呼吸しているときがね。

“ザ・ライアー”の冒頭のシンセ(?)によるリフはまるでブラック・メタルのように聴こえました。ブラック・メタルなどをお聴きになりますか?

CF:ブラック・メタルはあまり聴く方じゃないね。でも、スティーヴン・オマリー、KTL、ウルヴェルといった人たちは好きで聴くよ。

近年のドローン・ブームを、どう捉えていますか?

CF:どうだろう? おそらく、すぐに変化がやってくるんじゃないかな。『ベーチュ』はドローンだとは思わないよ。『ブラック・シー』はそうだったかもしれない。

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僕はアナログのサミングのファンなんだ。ミックスはすべて、APIミキサーとコンプレッサーを通してやっているんだ。それが深みと明瞭さを生むんだよ。

前作に比べて、強靭で、かつ解像度の高いノイズが暴れまくり、耳を刺激し、聴きながら恍惚となってしまいました。今回のアルバムにおいて、何か特別な意思を持ってノイズ・サウンドに取り組みましたか?

CF:何年もかけて機材のより効率的な使い方を学んだんだ。それから、スタジオも以前よりもっとハイエンドになった。僕はアナログのサミングのファンなんだ。ミックスはすべて、APIミキサーとコンプレッサーを通してやっているんだ。それが深みと明瞭さを生むんだよ。

この作品に限らずフェネスさんの作品は「記憶」を刺激されてしまいます。フェネスさんにとって「記憶」とはどのようなものでしょうか?

CF:記憶といっしょに制作することは僕にとってとても重要なことだ。僕の音楽を聴いて、みんなそれぞれ自分の記憶を見つけ出してほしい。僕はずっとクリス・マルケルという映画監督の大ファンで、彼の作品から多くのことを学んできたと思う。

まるで電子のウォール・オブ・サウンドのように、一度では聴ききれないほどの音が高密度に重ねられおり驚きました。

CF:何重にもサウンドを重ねていくと、ときどきメタ・メロディのようなものが生まれてくるんだ。倍音のことだね。それが好きなんだ。それについては探求すべきことがまだたくさんあるよ。

ノイズの要素と同じくらい、今回のアルバムではフェネスさんのギターがとても生々しく感じられました。

CF:ギターはいつも僕にとっていちばんの楽器なんだ。今回はそれを比較的加工しないままにしたんだ。そのとき、そうすべきだと感じたんだ。

フェネスさんは、以前、好きなギタリストにジョージ・ハリスンとニール・ヤングを挙げておられましたが、彼らのプレイのどんなところには惹かれますか?

CF:彼らはふたりとも音色がすばらしい。ジョージ・ハリソンはポップで「数学的な」スタイルで、一方のニール・ヤングは完璧なエモーション。アコースティック・ギターを弾く彼の右手はすばらしいと思う。

“スタティック・キングス””““ザ・ライアー”“パラス・アテネ”という曲名について教えてください。

CF:“スタティック・キングス”は大切な友人のマーク・リンカスへのオマージュなんだ。悲しいことに、彼は2010年に自ら命を絶ってしまった。僕たちはノース・カロライナにある彼のスタジオでよく仕事をしたんだけど、そのスタジオの名前が“スタティック・キング・スタジオ”だったんだ。
 “ザ・ライアー(嘘つき)”。それは僕のことだよ。“パラス・アテネ”は19世紀につくられたユーゲント・シュティールのドアの上部分に書かれていて、その先にはここウィーンの僕のスタジオがあるんだ。

“パラス・アテネ”はまるでバロック音楽が電子音響化したようなサウンドでした。フェネスさんは西洋の古楽(バロック音楽/ルネサンス期の音楽)は聴かれますか?

CF:ああもちろん。バッハ、ヘンデル、モンテベルディ、ヴィヴァルディ、ダウランド。

ほかによく聴いていた音楽などはありますか?

CF:制作中には何も聴かなかったね。さもなければ、聴きなれた音楽、ジャズやブラジル音楽、アフリカ音楽を聴くよ。ザ・ネックスが大好きなんだ。〈タッチ〉と〈エディションズ・メゴ〉からリリースされているものはすべて聴いているよ。

今回の『ベーチュ』には『エンドレス・サマー』以来、ポップ・ミュージックの遺伝子を感じました。フェネスさんにとってポップ・ミュージックとは?

CF:ポップ・ミュージックはいまでも大好きだよ。いかにもな、クリーンなポップ・アルバムを作りたいとは思わないけれど、そのエッセンスには興味があるよ。

“Sav”はアルバム中でも穏やかなサウンドでしたが、冒頭から鳴っているカラカラとした乾いた音にも惹かれました。あの音は何の音なのでしょうか? また、“Sav”とはどのような意味なのでしょうか?

CF:「Sav」はハンガリー語で“アシッド”という意味なんだ。あの音は、セドリックが彼のモジュラー・シンセを通してラップトップで演奏したインプロヴィゼーションだよ。

即興と作曲の違いとは、どのようなものでしょうか?

CF:僕の作品の多くは即興演奏の産物だ。作曲は、そのなかから使えそうな破片や部分を見つけたところからはじまるんだ。

フェネスさんの作品は、つねに音質がいいので何度聴いても飽きません。今回の『ベーチュ』でもさらに高解像度になっており非常に驚きました。フェネスさんにとって「音のよさ」とは、どのようなものですか?

CF:自分にとってその重要さは日に日に増しているよ。最近のデジタル機器は、高解像度のサンプルやビット・レートのおかげで以前よりも格段にすばらしいものになっているね。

僕のホームタウンであり、浮き沈みはあるけれど普段は豊かな生活を送ることができる。生活水準は高く、文化生活も最高だね。

「ウィーン」という土地に対する思いが強くアルバムに出ているように思います。フェネスさんにとってウィーンという街は、どのような思いのある土地でしょうか?

CF:僕のホームタウンであり、浮き沈みはあるけれど普段は豊かな生活を送ることができる。生活水準は高く、文化生活も最高だね。

マーティン・ブランドルマイヤーさんのラディアン、トラピスト、もちろんフェネスさんなど日本の音楽ファンにはウィーンの音楽シーンが気になっている人も多いのですが、現在のウィーンのエクスペリメンタルな音楽シーンはどのような感じですか?

CF:正直なところよくわからないんだよ。クラブにはほとんど行かないんだ。「シーン」のなかで知っているのはブルクハルト・シュタングル、マーティン・ジーベルト、マーティン・ブランドルマイヤー、そしてもちろん、ピーター・レーバーグ。

リリースが〈タッチ〉から〈エディションズ・メゴ〉になったことで、アート・ディレクションがジョン・ウォーゼンクロフトさんからティナ・フランクさんになりました。彼女と久しぶりにアートワークを制作するにあたって、何かコンセプトのようなものはありましたか?

CF:いや、彼女の好きなようにやってもらった。信頼しているから。

日本盤にはボーナストラック“アラウンド・ザ・ワールド”が収録されていますが、この曲の成立過程などについて教えてください。

CF:当初はデイヴィッド・シルヴィアンに歌ってもらう予定だったんだ。でも、彼が声を悪くしてしまって、結果的にスロウなギター・トラックになったんだ。

フェネスさんはライヴなどで世界中を訪れていると思いますが、印象に残った国などはありますか?

CF:これはお世辞でもなんでもなく、日本に滞在するのは大好きだよ。食べ物や人、文化がね。イタリアもすごく好きだね。最近ではロンドンもかなり楽しんだよ。

今後のご予定を教えてください。

CF:まずは休みを取る予定だよ。来週、ギリシャに行くんだ。夏にヨーロッパでいくつかショウがある。それから秋にヨーロッパと日本(11月22日、東京の〈UNIT〉)を回る予定なんだ。冬にまた新しい作品に取り掛かるかもしれない。今回はあまり間を開けないつもりなんだ……。

『ベーチュ』は本当に素晴らしく、その圧倒的なクオリティと音楽性の高さに、心から感激しました。この作品はフェネスさんの音楽人生において、どのような位置づけになりますか?

CF:ありがとう。ただ自分のいちばん新しいレコードという位置づけだね。いまは次の作品に取り掛かるのを楽しみにしているんだ。

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