「KING」と一致するもの

熊は、いない - ele-king

 試写状を裏返すと上映場所がイラン大使館と書かれていた。これは珍しい。イラン映画は機会があれば観るようにしていたし、イラン大使館に入れるのは面白そうだと、それだけで『君は行く先を知らない』の試写に行ってみた。麻布十番から少し歩いたところにある白い建物。アメリカ大使館と同じように坂を上っていき、しかし、銃を持った警備員が立ちはだかることはなかった。入り口で試写状を渡して階段を降りると壁一面にペルシャ絨毯が貼りめぐらされている。美しくて威厳がある。その奥に大きめのプレゼンテーション・ルームがあり、映写スペースを兼ねている。手前のロビーも広くてテーブルにイランのお茶やお菓子が並べてあり、DJパーティにちょうどいいスペースだと思ったり。トイレは和式で、洋式はひとつだけ。あとで聞いたら女性用も洋式はひとつだけだったという。上映が始まる前に大使や広報係の挨拶が続く。起立して国歌斉唱もあった(♪なんとかかんとかイ~ラ~ン~)。この作品はイランでは上映禁止になっている。だけど、大使たちはこの作品に出演している役者が好きなので、日本では上映したかったという。上映禁止の理由は申し上げられないけれど観ればわかるということだった。国家の方針よりも映画の役者が優先。いいマインドじゃないですか。本国に知られたら処分されたりするんだろうか。体制を批判するプロパガンダの罪で禁錮4年とか? そういえば大使館に来た女性たちは頭にヒジャブを巻けとは言われていない。皆さん、髪の毛丸出しで歩いている。本国では今月20日にヒジャブを巻いていない女性は10年以下の禁固刑に処するという法案が通っている。ヒジャブをバカにするだけで罰金と2年以内の渡航禁止。人間だけでなくマネキンや人形も髪の毛を出してはいけない。女性たちが服装自由ではない社会。これはさすがにどうかしている。自由主義にも多々問題はあるだろうけれど、衣服に関してはやはりイスラム社会はいただけない。ポニーテール禁止とか、肌を出していたDJソダの方が悪いと批判する声が少なからずあった日本もイスラム社会に近づいているようで、遠い国の話ではないのかもしれないけれど。

 砂漠のなかをまっすぐ延びている道路を車が飛ばしていく。長男が結婚するので家族4人で目的地に向かっている。ハンドルを握っているのが長男で、助手席に母親、後部座席には足にギプスをはめた父親と次男だけが1人ではしゃいでいる。後でわかったことだけれど、この時、車の中で流れていた音楽はホメイニによるイスラム革命の前に流行していた曲らしい。一家は誰かに追われているようで、前後を走っている車に警戒心を募らせている。結婚式とその緊迫感がどうにも結びつかない。次男が隠し持っていたケータイが親に見つかり、途中にあった岩場に隠すことになる。現在位置を知られるとマズいらしい。「上映禁止」という情報がすでに頭に入っているので、国家とか政府に知られてはいけない「結婚」があるのかしらと思うばかりで、とにかく序盤はナゾめいている。家族が目的地らしきところに着き、車を降りると彼らに接触してくる怪しげな人物が現れる。複雑な指示が家族にもたらされ、観客もドラクエよろしくあっちへ行ったりこっちへ行ったりする家族を追い続ける。そしてようやく花嫁がいるらしき村に辿り着く。(以下、ネタバレ)そこはつまり国境を超えた場所で、家族に接触して来たのは密航請負業者だったのである。家族愛を描いた映画はイラン映画の本流である。しかし、国境を越えるとなると上映は許可されない。そういうことだったようである。国境を超えた家族はややこしい結婚の儀式を執り行い、父と子の別れをしみじみと語り合う。日本人から見ると普通ではないけれど、ペルシャ民族にとっては普通のことをやっているだけなのだろう。普通であればあるほどイランの人たちにとって「国境」というものがどれだけ重みのあることなのかが伝わってくる。それは大使館の人たちが「申し上げられない」ほどであり、パナー・パナヒ監督が一家の旅路を『2001年宇宙の旅』とダブらせて描くぐらい大ごとなのだろう。長男を置いて帰途についた家族は自転車レースに出くわし、車と接触事故を起こした選手を車に乗せてあげる。この選手はしかし、不正を企んでいたのかどうだったのか、家族の車が自転車レースの先頭を抜き去ると、再び自転車を漕ぎ始める。この家族がいつの間にか密航業者と同じことをやっていたという比喩であり、密航業者もやりたくてやっているわけではないという意味なのだろうか。イラクの国内で出世するには不正をするしかなく、国外脱出した長男はそんな世界から逃れることができたという意味に取れてしまう。

 『君は行く先を知らない』の監督、パナー・パナヒの父親、ジャファル・パナヒも映画監督で、過去の作品は次々と上映禁止、選挙で改革派を支持したために一時拘束され、20年間の映画製作と海外への渡航禁止も言い渡されている。そのためにカンヌ映画祭の審査員に選ばれていたにもかかわらず出席できなかったという経歴を持っている。「女はサッカーの試合を見てはいけない」ので、男に変装してサッカー・スタジアムに紛れ込んだ女性たちを、それはもう楽しく楽しく描いた『オフサイド・ガールズ』の痛快なことといったらなかったけれど、映画製作を禁止されたジャファル・パナヒは諦めずに『これは映画ではない』や『人生タクシー』をこっそりと撮影し続け、フィルムを国外に送り届けることに成功してきた。後者はベルリン映画祭の最優秀作品賞である金熊賞を受賞している。そして、今年、『熊は、いない。』が完成した直後に再度拘束され、刑務所に送られて6年間は出てこられないという報が流れたばかり。日本では『君は行く先を知らない』の3週間後に『熊は、いない。』の上映が始まった。

 オープニングはテヘラン市内だろうか、パブで働いているザラのケータイが鳴り、バクティアールが近くまでやってくると、2人は再会を喜んでいるのかと思いきや、バクティアールが一緒に行けなくなったと言い、ザラに偽造パスポートを渡すと1人でフランスに逃げてくれと告げる。女が2人でなければ嫌だと抗議すると(以下、ネタバレ)「カット」の声がかかり、いまのは映画の撮影で、撮影が行われていたのはトルコだったということが判明する。指示を出していたのはパナヒ監督本人で、パナヒはリモートで現場とつながっている。次の指示を出そうとするとパソコンの画面が乱れ、現場の映像が映らなくなる。パナヒは通信の状態がいいところはないかと家の外に出る。そこはパナヒが身を潜めているイランの小さな村で、回線が回復しないため、パナヒは仕方なくカメラを持ち出して村の景色を撮影して時間を過ごす。連絡が取れなくなって心配になった助監督のレザがトルコからパナヒの元に駆けつけ、トルコまで連れて行こうとパナヒを国境まで車に乗せていくものの、パナヒはやはり危険だと思ったのか、村に戻ることにする(イランにはマルジャン・サトラビやバフマン・ゴバディなどすでに国外に出た映画監督がいるけれど、それをよしとせず、あくまでも国内にいてイランのために戦いという意志がパナヒにはあるように思われる)。もう少し観ているとパナヒが隠れていた村はイランそのものの比喩だということがわかってくる。どのエピソードを見ても封建的で、パナヒは息がつまる思いをしている。続けて起こる事件は、女性には自分の結婚相手を決める自由がなく、生まれてすぐに結婚相手と決められた男性とは違う男といるところをパナヒが偶然にもカメラで撮影していたため、騒ぎがどんどん大きくなっていくという展開になる。市民に自由がない。パナヒがこれまでに撮ってきた対象はそれに尽きるとさえいえるけれど、とりわけ女性の人権が認められていないことにパナヒは敏感である。パナヒは証拠写真を提出するよう村人たちに求められ、そんなものは撮っていないと突っぱねると、村人たちとの関係はどんどん悪くなる。村人たちはパナヒに写真を撮っていないと神に誓えるかと詰め寄り、宣誓室に来るように言い渡す。そして、ある村人から宣誓室に向かう道には「熊」がいるのでとても危険だと告げられる。一方でトルコの撮影現場からは約束と違うと怒り狂ったザラがパナヒに「私たちの人生を撮ると言いましたよね」と抗議のメッセージが届く。ザラとバクティアールが国外に出ようとしていたのは現実の出来事で、パナヒはそれをドキュメンタリー映画として残すという設定だったのである。2組のカップルの運命をパナヒが握るかたちとなり、物語はエンディングに向かって緊迫感を増していく。

 村人との対比で見るパナヒ監督はとにかく都会的であり、近代人である。彼が映画製作を学んだのはテヘランで、とくに海外で映画製作を学んだわけではない。『人生タクシー』ではタクシーの運転手となったパナヒがハリウッド映画のDVDを顧客らしき人々に届けるシーンがあり、パナヒがイランの政治体制を相対化して観ることができたとすれば、それは外国文化に触れたからだと推察できる。とりわけ宗教に縛られ、女性を差別するイスラムの風土には疑問を持つに十分だったようで、そのような支配のメカニズムを彼はこの作品で「熊」に集約させている。パナヒが村人たちに来いと言われた宣誓室は「熊」の脅威を取り除かないと辿り着けないところにある。パナヒはどうやって宣誓室にたどり着けるのか。最初のクライマックスがここにある。パナヒはそして、ある人から「熊」はいないし、宣誓室では嘘をつけばいいとアドヴァイスを受ける。どうだろう、パナー・パナヒの『君は行く先を知らない』で家族の車が自転車を乗せたシーンを思い出さないだろうか。正直にやらなければ助かる道はある。実際、熊がいると脅していることが、いわば支配者の嘘なのだから、嘘には嘘が有効だということになる。しかも、現在のイランには「熊がいる」と言い張れるだけの力はなくなっていて、映画製作を禁じられたパナヒが次から次へと新作を完成させてきたこと自体、その表れと言える。村の長老らしき人物がパナヒに証拠写真を出すよう、最初に家を訪ねてきたシーンに興味深い場面がある。勢い込んで話し始めた長老の前をレザが「ちょっと失礼」と言って横切り、いきなり話の腰を折ってしまうのである。この時の長老の表情は威厳を台無しにされ、怒るよりも虚を突かれて戸惑いの表情を浮かべている。これがいまのイランだとパナヒは言っていると僕には思えた。これまでのことを考えるとパナヒはおそらく刑務所内でも映画を撮ってしまうかもしれない。この監督はそれぐらいのことはやってのけてしまうし、『熊は、いない。』でパナヒに助言をする人たちがちょこちょこ現れるように刑務所内でもすぐに味方をつくってしまうような気がする。

Lawrence English & Lea Bertucci - ele-king

 2023年、アンビエント・アーティストのローレンス・イングリッシュは、〈Kranky〉からロスシルとのコラボレーション・アルバム『Colours Of Air』と〈Room40〉からデイヴィッド・トゥープとのコラボレーション・アルバム『The Shell That Speaks The Sea』をリリースしている。
 そして、ローレンス・イングリッシュとリー・ベルトゥッチとの共作である、『Chthonic』は、イングリッシュにとっては2023年、3作目のアルバムにあたる。このアルバムはローレンス・イングリッシュが追及してきたフィールド・レコーディング作品の極地、いや完成形といえるほどに見事な出来栄えであったのだ。音に満ちた世界が音楽の断片と交錯し、より深く、より大きなサウンドスケープが生成れている。

 『Chthonic』ではイングリッシュがフィールド・レコーディングとエレクトロニクス、テープ操作を担い、ベルトゥッチがチェロやフルート、ヴァイオリン、ラップスティールまでも演奏し、壮大かつ緻密な音響空間を織り上げている。マスタリングはニューヨーク在住のアンビエント・アーティスト、ラファエル・アントン・イリサリが手がけていることも付け加えておきたい。リリースはシカゴの〈American Dreams〉からである。
 リリース元の〈American Dreams〉は、シカゴのチェロ奏者リア・コール(Lia Kohl)、フィラデルフィアの実験音楽家/作曲家のルーシー・リヨウ(Lucy Liyo)、イラン・テヘラン出身のアンビエント・アーティスト、シアヴァシュ・アミニ(Siavash Amini)などのエクスペリメンタル・ミュージックのみならず、「アメリカのレディオヘッド」と評される12RODS『We Stayed Alive』、ポスト・ブラック・メタルともいえるAnti-God Hand『Blight Year』までもリリースするなど、多様なラインナップが魅力的なレーベルとしてマニアには一目遅れている。アンビエント作品とブラック・メタルが並ぶラインナップはまさにこのレーベル独自のものだろう。

 話を本作『Chthonic』に戻そう。イングリッシュによる環境録音は自然現象そのもののように力強いが、環境音に溶けるように交錯されていくベルトゥッチによるチェロやフルート、ヴァイオリンなども実に見事だ。まるで音響の中に溶け込み、まるで霧のような音を生成しているのだ。見事なサウンドスケープである。よく聴き込んでみると、環境音と聴こえていた音が、エディットされたリズムを発していることに気がつきもする。繰り返し聴き込むたびに、そのダイナミックかつ緻密な音響空間に驚きを得ることになるはずだ。
 まずは、1曲目 “Amorphic Foothills” を聴いて頂きたい。環境音が生のまま音のように鳴っているかと思いきや、明らかに周期的なリズムも聴こえてくる。そこに弦楽器の折り重なり、環境音と一体化していく。自然と楽器音、無編集と人為的な編集が曖昧に交錯し、ひとつより大きな(深い)サウンドスケープを形成しているのである。私はこのアルバム冒頭のトラックを聴き、世界の音が交錯し、重なり合い、溶け合っていくさまに衝撃を受けた。もちろんこの種のサウンドの作品は他にも多くある。だが、『Chthonic』は環境音それじたいが音楽的に持続し変化していっている。そんな印象を持った。素材を選択と編集が絶妙だからではないかと思う。
 ローレンス・イングリッシュはアンビエント・アーティストでもあるので、自身のサウンドとコンポジションを持っている。環境録音に対しても同じような意識で編集・加工していると思われる。音が線的に変化しているのだ。シアヴァシュ・アミニの弦楽器もイングリッシュのアンビエント作家的なサウンドに共鳴しているように思えた。チェロやヴァイオリンが環境音と共に変化しているように聴こえるのだ。
 ふたりは2019年に出会い、その後、オーストラリアとニューヨークのあいだをリモートで制作をしたという。時期的にみても2020年のコロナ禍も挟んでいる。いわば世界的な危機の状況で、この超自然的な音響作品が制作されたことはやはり重要と思える。このアルバムに満ちている自然のうごめきのようなサウンドは、まるで地球の地殻変動や気候の変化などを体現するように聴こえてくる。

 アルバムには全5曲が収録されている。2曲目 “Dust Storm” ではより激しい、まさに豪雨のような音響空間を形成し、アルバム中もっとも長尺(12分25秒)の4曲目 “Fissure Exhales” ではアルバム全体の音響が統合されたようなスケールの大きいサウンドを展開する。そしてアルバム最終曲 “Strata” では、すべてが過ぎ去った後の不思議な空虚感を漂わせてアルバムは終わっていくのだ。
 どれも長尺だが、しかしその音の変化、質感、レイヤーを意識的に聴き込んでいくと、われわれリスナーの時間もまたローレンス・イングリッシュとシアヴァシュ・アミニの音の中に漂うようになり、やがて溶け合っていくような感覚を得ることになるだろう。音と音楽。環境音と楽器。時間と無時間。その交錯。実に高品質なエクスペリメンタル・ミュージック/フィールド・レコーディング作品/アンビエントである。音と音楽の境界線がここには鳴っている。

PJ Harvey - ele-king

PJハーヴェイのいくつもの声

 2001年、PJハーヴェイはロックの女神としての絶頂期を迎えていた。前年にリリースされた『Stories from the City, Stories from the Sea』は、これまででもっとも洗練された、理解を得やすいアルバムとなり、1998年の緊張感をはらんだ『Is This Desire?』でつきまとわれた暗い噂を一掃するような自信に満ちた一撃となった。その年の9月にマンチェスター・アポロでのハーヴェイのライヴを観たのは、彼女がマーキュリー賞を受賞してから数週間後のことで、私がこれまでに観た最高のロック・ギグのひとつとなった。ラジオ向きの、煌びやかな加工がされていない “This Is Love” や “Big Exit” のような曲は、より記念碑的に響き、まるで彼女がブルース・ロックの原始的な真髄にまで踏み込み、マッチョ的な要素や、陳腐なエリック・クラプトンのような、このジャンルにありがちなものすべてが刈り取られたかのようだった。

 だが、そのショウは、ほとんどウィスパーといえるほどの小声で始まった。ハーヴェイは単独でステージに上がり、ヤマハの QY20 でのハーモニウム風の伴奏に合わせ、子どものような、物悲しいメロディを歌った。私はその曲を判別できなかったが、サビのコーラスに差しかかると、客席でクスクス笑いが起こった。バブルガム・ポップのグループ、ミドル・オブ・ザ・ロードの1970年のヒット曲 “チピ・チピ天国” の有名なリフレイン「Where’s your mama gone? (あなたのママはどこへ行ったの?)」をとりあげたからだ。ポリー・ジーンにはユーモアのセンスが欠如しているなんて、誰にも言わせない。

 昨年リリースされたコンピレーション『B-Sides, Demos & Rarities』を聴くまで、このことはすっかり忘れていた。“Nina in Ecstasy 2” は、『Is This Desire?』のセッションで録音され、結果的には「The Wind」のB面としてリリースされたものだ。当時は珍品のように見做されていたに違いないが、この曲はハーヴェイの、その後のキャリアの方向性を示す初期におけるヒントだったのではないかと思い当たった。この曲で使われた、浮遊感のある、ほとんど肉体から切り離されたような儚い高音域の声は、2007年の『White Chalk』や、2011年の『Let England Shake』などのアルバムで再び使われた種類の声だ。さらに、今年の『I Inside the Old Year Dying』でも聴くことができる。この作品をハーヴェイのフォーク・アルバムと呼びたい衝動にかられるものの、それは、私がこれまでにまったく聴いたことのないフォーク・ミュージックなのだった。

 熟練したアーティストが、自分の強みを離れたところで新たな挑戦をするのには、いつだって心惹かれる。彼女のレコード・レーベルにとってみれば、『Stories from the City, ~』の路線を継承し、クリッシー・ハインド2.0へと変化を遂げてほしかったことだろう。だが、彼女は2004年に、セルフ・プロデュースしたラフな感じを楽しむようなアルバム『Uh Huh Her』 を発表した。アートワークは、セルフィ(自撮り写真)と自分用のメモをコラージュしたもので、そのひとつには、「普通すぎる? PJHすぎる?」との文字があり、彼女の創作過程を垣間見ることができる。「曲で悩んだら、いちばん好きなものを捨てる」という一文は、ブライアン・イーノとペーター・シュミットの「オブリーク・ストラテジーズ」のカードからの引用ではないかとググってしまったほどだ。

 ハーヴェイにとって「いちばん好きなもの」とは、彼女自身の声、あるいは少なくとも彼女の初期のアルバムで定義づけられた生々しい、声高な叫びを意味するのではないか。それは、驚くべき楽器だ。1992年のデビュー作『Dry』のオープニング・トラック “Oh My Lover” を聴いてみてほしい。歌詞はかなり曖昧なトーンで書かれているのに、彼女の歌声には驚くべき自信とパワーが漲っている。このアルバムと、それに続く1993年のスティーヴ・アルビニによる録音の『Rid of Me』にとって効果的だったことのひとつは、荒涼としたパンク・ブルースのおかげで、ヴォーカルに多くのスペースが割り当てられたことだった。ハーヴェイの喉の方が、当時のグランジ系が好んで使用したディストーションの壁よりも、より強力だったのだ。1995年の豊穣なゴシック調の『To Bring You My Love』では、彼女は自分の声をさらに先へと押し出し、BBCスタジオでの “The Dancer” のパフォーマンスでは、ディアマンダ・ガラスとチャネリングしているかのように聴こえたし、そう見えた。実際に彼女は自身の声の形を変える実験も始めていた。最近のNPRとのインタヴューでは、プロデューサーのフラッドに、閉所恐怖症的な “Working for the Man” の録音の際、毛布をかぶされ、マイクを喉に貼りつけて歌わされたことを回想している。

 10枚のソロ・アルバムと、長年のコラボレイターであるジョン・パリッシュとのデュオ・アルバム2枚というハーヴェイのディスコグラフィを貫く共通項は、おそらく、頑なに繰り返しを拒んできたことだろう。多くのアーティストが同じことを主張しがちだが、ハーヴェイは暴力的なほどの意志の強さでこれを貫き、デイヴィッド・ボウイと匹敵するほど、自分をコンフォート・ゾーン外に意図的に追いやってきた。『White Chalk』では、ギターを、ほとんど弾くことのできないピアノに替え、元来の声域外で歌った(彼女は当時のKCRWラジオのインタヴューで「多分、自分が得意なことをやりたくなかっただけ」と語っている)。歌詞においても、それまでの自分には、手に負えないだろうと思うようなテーマに努力して取り組んでいる。『Let England Shake』は主にオートハープを使って作曲されたが、第一次世界大戦の歴史を考慮に入れて、自らをある種の戦争桂冠詩人に変身させた。2016年の『The Hope Six Demolition Project』 では、写真家のシェイマス・マーフィーと世界中を旅した経験から、現代政治と外交政策の意味を探ろうと試みた。

 『I Inside the Old Year Dying』は、もうひとつの、ドラマティックな変化を示している。この作品は、2022年に出版された、彼女の生まれ故郷のドーセット地方の方言で書かれた長編の詩集『Orlam』が進化したもので、歌詞カードには、曲を彩る難解な言い回しの意味の説明の脚注が付いている。「wilder-mist(窓にかかった蒸気)」、「hiessen(不吉な予感)」、「femboy(フェムボーイ=少女のような少年)」、「bedraggled angels(濡れた羊)」などだ。それらの言葉の馴染みのなさは、音楽にも反映され、音楽の元の素材から連想できるようなフォークの作風は意識的に避けられている。ハーヴェイはこのアルバムを、パリッシュとフラッドというもっとも信頼するふたりのコラボレイターに加え、フィールド・レコーディングをリアルタイムで操作した若手のプロデューサー、アダム・バートレット(別名セシルとして知られる)と共に制作した。フラッドは、より伝統的な楽器編成を古風なシンセサイザーで補い、「sonic disturbance(音波の攪乱)」としてもクレジットされている。これは、温かいが、尋常ではない響きのアルバムであり、ハーヴェイの成熟した作品を定義するようになった、どこにも分類することのできないクオリティを保っている。この音楽は、時間や場所を超えて存在するようなものではあるが、彼女にしか創り得なかったものなのである。

The many voices of PJ Harvey

written by James Hadfield

In 2001, PJ Harvey was at the peak of her rock goddess phase. “Stories from the City, Stories from the Sea,” released the previous year, had presented her slickest, most accessible album to date – a confident blast to dispel all the dark rumours that had accompanied 1998’s fraught “Is This Desire?”. The show I saw her play at the Manchester Apollo that September, just weeks after winning the Mercury Music Prize, was one of the best rock gigs I’ve ever seen. Without their radio-friendly production gloss, songs like “This Is Love” and “Big Exit” sounded even more monumental, as if she was tapping into some primal essence of blues rock, shorn of all the macho, Eric Clapton cliches you’d normally associate with the genre.

Yet the show had started almost at a whisper. Harvey took the stage alone and sang a plaintive, childlike melody, over a harmonium-style accompaniment played on a Yamaha QY20. I didn’t recognise the song, but when she reached the chorus, a chuckle rose from the audience: she’d lifted the “Where’s your mama gone?” refrain from “Chirpy Chirpy Cheep Cheep ,” a 1970 chart hit by bubblegum pop act Middle of the Road. Let nobody say that Polly Jean doesn’t have a sense of humour.

I’d forgotten about this until I heard the song again on the “B-Sides, Demos & Rarities” compilation, released last year. “Nina in Ecstasy 2” was recorded during the sessions for “Is This Desire?” and ended up getting released as a B-side to “The Wind.” It must have seemed like a curio at the time, but in retrospect it strikes me as an early hint of where Harvey would head later in her career. The voice she used on that song – floating, almost disembodied, delivered in a fragile higher register – is one that she would return to on albums such as 2007’s “White Chalk” and 2011’s “Let England Shake.” You can hear it again on this year’s “I Inside the Old Year Dying,” which I’m tempted to call PJ Harvey’s folk album, except that it doesn’t sound like any folk music I’ve heard before.

It’s always striking to hear an accomplished artist play against their strengths. Harvey’s record label probably would have loved her to continue on the trajectory of “Stories from the City…,” morphing into Chrissie Hynde 2.0. Instead, she delivered 2004’s rough, self-produced “Uh Huh Her,” an album that seemed to revel in its imperfections. The artwork, a collage of selfies and notes-to-self, offered glimpses into her creative process. “Too normal? Too PJH?” reads one of the notes. “If struggling with a song, drop out the thing you like the most,” reads another – a quote that I had to Google to check it wasn’t actually from Brian Eno and Peter Schmidt’s Oblique Strategies cards.

For Harvey, “the thing you like the most” can mean her own voice – or at least the raw, full-throated holler that defined her earlier albums. It’s a formidable instrument: just listen to “Oh My Lover,” the opening track on her 1992 debut, “Dry.” There’s a startling confidence and power in her delivery, even as the lyrics strike a more ambiguous tone. Part of what made that album and its 1993 follow-up, the Steve Albini-recorded “Rid of Me,” so effective was that their stark punk-blues left so much space for the vocals. Harvey’s larynx was more powerful than the walls of distortion favoured by her grunge contemporaries. On 1995’s lushly gothic “To Bring You My Love,” she pushed her voice even further: in a BBC studio performance of “The Dancer,” she sounds – and looks – like she’s channelling Diamanda Galas. But she had also begun to experiment with altering the shape of her voice. In a recent interview with NPR, she recalled that producer Flood recorded the claustrophobic “Working for the Man” by getting her to sing under a blanket with a microphone taped to her throat.

If there’s a common thread running through Harvey’s discography – 10 solo albums, as well as two released as a duo with longtime collaborator John Parish – it’s a stubborn refusal to repeat herself. Plenty of artists claim to do this, but Harvey has shown a bloody-mindedness to rival David Bowie, deliberately forcing herself out of her comfort zone. For “White Chalk,” she switched from guitar to piano – an instrument she could barely play – and sang outside her natural vocal range. (“I just didn’t want to do what I know I’m good at, I guess,” she told an interviewer on KCRW radio at the time.) Lyrically, too, she has made a deliberate effort to engage with themes that had seemed out of her grasp. “Let England Shake” – written mostly on autoharp – found her transformed into a kind of war laureate, reckoning with the history of World War I. 2016’s “The Hope Six Demolition Project” attempted to make sense of modern politics and foreign policy, based on her experiences travelling around the world with photographer Seamus Murphy.

“I Inside the Old Year Dying” marks another dramatic shift. It evolved from “Orlam,” a book-length poem that Harvey published in 2022, written in the dialect of her native county, Dorset. The lyric sheet comes with footnotes explaining the meanings of the arcane terms that pepper the songs: “wilder-mist” (steam on a window), “hiessen” (a prediction of evil), “femboy” (a girly guy), “bedraggled angels” (wet sheep). The unfamiliarity of the language is mirrored by the music, which consciously avoids the folk idioms which the material would seem to encourage. Harvey created the album with Parish and Flood, two of her most trusted collaborators, along with the younger producer Adam Bartlett (otherwise known as Cecil), who supplied field recordings that were manipulated in real-time. Flood complemented the more traditional instrumentation with archaic synthesisers, and is also credited for “sonic disturbance.” It’s a warm but also uncanny-sounding album, with an unplaceable quality that has come to define Harvey’s mature work. It’s music that seems to exist out of time, out of place, but could only have been created by her.

なのるなもない × YAMAAN - ele-king

 00年代に降神として頭角をあらわし、ソロでも活動をつづけているラッパー、なのるなもない。その新作は、かねてよりコラボを重ねてきたトラックメイカーのYAMAANとの共作アルバムに。アルバム単位でがっつり組むのは今回が初めてだという。題して『水月』、10月10日リリース。YAMAANによるニューエイジ~アンビエント・タッチのトラックのうえで、なのるなもないによる独特のことばが流れていく……いや、このマッチング、相性ばっちりなのではないでしょうか。ダンサブルな曲もアリ。CDは特殊パッケージで、モノとしてのよさも堪能できそうだ。ぜひチェックしてみて。

https://linkco.re/1cnUB1Tg

ラッパー・スポークンワーズアーティストのなのるなもないと、プロデューサー・トラックメイカーのYAMAANが共作アルバム『水月』を10月10日(火)にリリース。

ラッパー・スポークンワーズアーティストのなのるなもないと、プロデューサー・トラックメイカーのYAMAANが共作アルバム『水月』を10月10日(火)にリリースする。
なのるなもないは2002年頃から志人とのユニット「降神」として活動。日本語のヒップホップの言語表現の枠を大きく拡張してきた。ソロでは「melhentrips」「アカシャの唇」などの作品を発表し、日常の中にある小宇宙を詩的な感覚ですくいあげて、ラップやスポークンワーズという形で表現してきた。
YAMAANは降神や多彩なアーティストが在籍するクルーTemple ATSのメンバーとして活動を開始。アンビエントやヒップホップ、ハウスなどを行き来しながら活動し、’20年に『幻想区域EP』 を発表。’21年にはアンビエントとメンフィスラップにインスパイアされたCHIYORIとの共作「Mystic High」を発表した。
なのるなもないとYAMAANは2005年の”melhentrips” 収録の“shermanship” をはじめとして多くの楽曲を生み出してきたが、今回が初の共作アルバムとなる。タイトルの「水月」から想起されるように、しなやかで静的なムードも漂うトラックの上で、なのるなもないの小宇宙が展開する作品となった。
瑞々しいニューエイジアンビエント的なサウンドと真夏の白昼夢のようなリリックでアルバムの幕をあける『空よりも青く』や、躍動的なビートの上で生命や時間についての考察、死生観をも感じさせる詩が力強く歌われる『Beacon』。ディープハウストラックに官能的なリリックとスクラッチが心地よく刻まれる『優しくして』、不条理で暴力的な社会に対するリリックをトラップサウンドの上で綴った『Criminal Spirituals』など、なのるなもないとYAMAANの様々な側面が表現された8 曲入りのアルバムとなっている。
アルバム中の2曲にはTemple ATSのメンバーでもあり、数々のDJバトルでも実績を残してきた DJ SHUNがスクラッチで参加。楽曲の世界観に呼応した音楽的でスキルフルなスクラッチを演奏 してくれている。
アルバムのオリジナルアートワークは尾道在住の画家、白水麻耶子。深い緑の森や水辺のような不思議な心地良さを持った絵画が「水月」の世界観を押し広げている。
そしてオリジナルアートワークをもとにデザイナーTakara Ohashiがディレクションを担当。今回モノとしてリリースする面白さを大切にしたいという意向を汲み、箱庭型に組み立てが出来るジャケットを監修してくれた。
本作は自主レーベル「studio melhentrips」からの記念すべき第一作。フィジカルはCD、デジタルはBandcamp、ストリーミングにて発表となる。


なのるなもない x YAMAAN
"水月"

1. 空よりも青く
2. Beacon
3. Bloom Rain
4. 優しくして feat.DJ SHUN
5. モールスコード
6. Criminal Spirituals
7. VIBLE feat.DJ SHUN
8. 物語をはじめよう

レーベル : studio melhentrips
発売日 : 2023年10月10日(火)
フォーマット : CD
品番 : SMT-001
販売価格: 2,200円(税込)

Metamorphose ’23 - ele-king

 メタモルフォーゼが帰ってくる。2000年にスタートしたこのエレクトロニック・ダンス・ミュージックを中心とする祭典が最後に催されたのは2012年。じつに11年ぶりの復活だ。しかも富士山の裾野で実施されるのは20年ぶりとのことで、眼前に富嶽広がるソーラーステージ、巨大ウェアハウス・パーティを再現するオールナイトのルナーステージともに充実のラインナップ。テクノからクラブ・ジャズ、ヒップホップ、ロックのレジェンドたちが大集合しているが、そんな大ヴェテランたちに混ざってGEZANや羊文学といった新進気鋭、若手アーティストが加わっている点は要注目だろう。テント・エリアもあり自分のペースで楽しめるフェス、開催はもう間もなく。


Metamorphose ’23
2023年10月14日(土)~15日(日)

OPEN 14日 10:00 / CLOSE 15日 21:00

https://www.metamo.info/

会場
御殿場市 遊RUNパーク玉穂

主催
Metamorphose 実行委員会

後援
御殿場市
御殿場市観光協会
J–WAVE
K-MIX

10/14 (土) SOLAR STAGE
Afrika Bambaataa / Dorian Concept / GEZAN
JAZZANOVA (DJ SET)/ paranoid void / 富岳太鼓

10/14(土) LUNAR STAGE [ALL NIGHT]
Carl Craig / CYK / Darren Emerson / DJ KRUSH
DJ YOU-KI / Joaquin“Joe” Claussell / MAYURI
ManoLeTough / Q’HEY / Timmy Regisford

10/15(日) SOLAR STAGE
DUENDE / Los Hermanos / Nai Palm / Ovall
SMTK / toconoma / 羊文学 / 家主

AMBIENT KYOTO 2023 - ele-king

 開幕までいよいよあと1週間となった《AMBIENT KYOTO 2023》。参加する各アーティストの展示作品内容が発表されている。
 坂本龍一+高谷史郎が展開するのは、『async』をベースにしたインスタレーション。コーネリアスバッファロー・ドーター山本精一はすべて新作だ。朝吹真理子はデビュー作の朗読を配信。
 さらに宿泊やギャラリー、京都メトロやMeditationsなどとのコラボレーションも告知されている。京都がアンビエントに染まる秋。詳しくは下記をご確認ください。

 なお10月20日には『別冊ele-king アンビエント・ジャパン』が刊行。《AMBIENT KYOTO 2023》の会場では先行発売されます。ぜひお手にとってみてください。

アンビエントをテーマにした視聴覚芸術の展覧会
AMBIENT KYOTO 2023

◉展覧会:
いよいよ開幕まであと1週間。
各アーティストの展示作品内容を発表。
◉ライヴ:テリー・ライリーのライブ、両日共にソールドアウト。
◉コラボレーション:第一弾を発表。

会期:2023年10月6日(金)~12月24日(日)

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AMBIENT KYOTOは、昨年2022年、第一回目として、アンビエントの創始者ブライアン・イーノの展覧会を開催し大成功を収めました。第二回目となる『AMBIENT KYOTO 2023』は、今年10月6日(金)より京都の特別な複数の会場を舞台に展覧会とライブ、そして朗読作品の公開が行われます。開幕を1週間に控え、展覧会の展示作品内容と、会期中に実施される本展とのコラボレーション企画の第一弾をお知らせします。

◉展覧会:各アーティストの展示作品内容のお知らせ。
京都新聞ビル地下1階の約1,000平米の広大なスペースには、坂本龍一 + 高谷史郎の作品が展示されます。また、昨年2022年、第一回目が開かれた京都中央信用金庫 旧厚生センターには、コーネリアス、バッファロー・ドータ―、山本精一による作品が展示されます。

■京都新聞ビル地下1階

坂本龍一 + 高谷史郎 | async ‒ immersion 2023

坂本龍一が2017年に発表したスタジオ・アルバム『async』をベースに制作された高谷史郎とのコラボレーション作品の最新版。
京都新聞ビル地下の広大な空間に合わせ展開するサイトスペシフィックなインスタレーション。

音響ディレクション:ZAK
映像プログラミング:古舘 健
サウンド・プログラミング:濱 哲史
音響:東 岳志、山本哲也、細井美裕
照明ディレクション/デザイン:髙田政義(RYU inc.)
美術造作:土井 亘(dot architects)
展示設営:尾﨑 聡

企画協力:Kab Inc./KAB America Inc./Dumb Type Office Ltd.


アルバム『async』(2017年)

■京都中央信用金庫 旧厚生センター - 1/2

革新的な作品を生み出し続け、世界的な評価を得てきたアーティスト、コーネリアス、バッファロー・ドー
ター、山本精一によるアンビエントをテーマに表現した作品。出展作品は、すべて新作。

コーネリアス

ZAKによる立体音響と、groovisionsによる映像作品や高田政義による照明がシンクロして生み出される視聴覚体験。

「QUANTUM GHOSTS」
最新作『夢中夢 -Dream In Dream-』収録「火花」のカップリング曲。本館で最も大きな展示室で行われる、360度に配置された20台のスピーカーから鳴らされる立体音響と、高田政義による照明がシンクロする作品。
「TOO PURE」
最新作『夢中夢 -Dream In Dream-』収録曲。立体音響と、groovisions制作の映像作品が立体スクリーンに映し出される、7.1chの音と映像の作品。
「霧中夢 ‒ Dream in the Mist ‒」
最新作『夢中夢 -Dream In Dream-』収録曲。立体音響と、高田政義による照明、そして特殊演出による霧が相互作用する霧の中の夢。
「Loo」
本展のために書き下ろされた新曲。


最新作『夢中夢 -Dream In Dream-』(2023年)

■京都中央信用金庫 旧厚生センター - 2/2

バッファロー・ドーターと山本精一の作品は同部屋で展示される。
斜めに仕切られた展示空間において展開する、ZAKによって立体音響化された音と、それを増幅させる映像のインスタレーション。

バッファロー・ドーター

「ET (Densha) 」 、「Everything Valley」
2曲とも、最新作『We Are The Times』に収録。「ET(Densha)」は、映像はベルリン在住の映像/音響アーティスト 黒川良一による作品。「Everything Valley」は、映像クリエイター 住吉清隆による作品。


最新アルバム『We Are The Times』(2021年)

山本精一

「Silhouette」
本展のために書き下ろされたアンビエントの新曲。映像は、リキッド・ライティングの手法を用いたヴィジュアル・アーティスト 仙石彬人と、山本精一による共同制作作品。


最新作『Silhouette』(2023年)

朝吹真理子

デビュー作『流跡』を著者自身が全編朗読した作品を会期中ウェブにて配信する。

作品名:『流跡』~著者自身による全編朗読作品
朗読:朝吹真理子
録音:朝吹亮二
録音監督 & Mixing :ZAK
編集: 岩谷啓士郎 & 吉田祐樹

◉コラボレーション第一弾が決定。
アンビエントは、その音楽が流れる環境の一部となる音楽です。AMBIENT KYOTOは、京都の文化・人々と共に作り上げることを目指して、コラボレーション企画を実施していきます。今後も、食、香り、伝統工芸、音楽、アートなど多数の企画を発表していきますので、ご期待ください。

●Ace Hotel
AMBIENT KYOTO 2023の割引チケット付きの宿泊パッケージを用意しました。
こちらのプランで宿泊のお客様はAce Hotel Kyotoのお食事が全て10%OFFとなります。
客室ではレア・グルーブ・レコードがセレクトしたレコードを楽しむことができます。
またAce Hotel Kyotoでの宿泊がなくても、本展のチケットをご提示すればホテル内での飲食が10%OFFとなります。
https://jp.acehotel.com/kyoto/offers/ambient-kyoto/

●Art Collaboration Kyoto(ACK)
ACKのチケットを提示すると、受付にて当日料金から100円割引となります。
※チケット販売カウンターは会場:京都中央信用金庫 旧厚生センターのみで取り扱い。
※それぞれ、 一般料金のみに限ります。
※他の割引との併用はできません。
※いずれも1枚につき1名、各館とも1回限りの適用となります。
https://a-c-k.jp

●Elbereth
アレックス・ソマーズの個展が、京都のギャラリーElberethにて開催されることが決まりました。
京都のヴィーガンカフェ Stardustが手がけるギャラリー Elbereth。そこでAMBIENT KYOTO 2023のキーヴィジュアルを制作したアレックス・ソマーズの個展が、10月14日(土)から10月31日(火)まで開催されます。古い和紙に印刷された、彼のキーヴィジュアルを含めた全16作品が、アンティーク・フレームに額装され、展示・販売される。また彼の、映像作品も展示される。
展覧会概要 開催期間 10月14日(土)から10月31日(火)| 営業時間 12:00 ‒ 18:30

会場 Elbereth / エルベレス | 京都市北区紫竹牛若町1-2(問)info@stardustkyoto.com
stardustkyoto.com
https://www.instagram.com/elbereth_stardust
https://www.instagram.com/stardust_kana/

●京都CLUB METRO
日本で最も長い歴史を誇る老舗クラブ、京都CLUB METROと共に企画した、アンビエントやアートの関連イベントを会期中に実施します。第一弾として3つのイベントを発表しました。

① 10月29日(日)「COLLABORAION : Ambient Kyoto × ACK」。共に秋の京都を彩るアートの祭典同士がその会期中に連携したスペシャルイベント。
出演:田中知之 (FPM)、真鍋大度、Ken FURUDATE、武田 真彦
② 11月19日(日)京都の地で17年に渡り、様々な解釈でアンビエントミュージックの発信を続けているイベント&レーベル「night cruising」のコラボレーションイベント。
出演:冥丁、Kin Leonn、moshimoss、RAIJIN、Tatsuya Shimada
③ 12月14日(木)英有力音楽誌『The Wire』の表紙を飾るなど、世界的に高い評価を集めるPhewと大友良英によるスペシャルなセットが実現。
出演:Phew+大友良英
https://www.metro.ne.jp/

●Meditations
アンビエント、電子音楽、インド音楽など多ジャンルにわたり世界中の音楽を取り扱う京都のレコード店Meditationsと共に、完全オーガニックの草木染めトートバッグを製作しました。南インド産のコットン・キャンヴァスを使い、アーユルヴェーダの薬草と発酵を繰り返し何年も熟成された藍を使って染め上げたトートバッグ。会期中にオフィシャル・ショップにて数量限定で販売します。
ヴィデオ:草木染めトートバックが出来上がるまで
南インド、オーロヴィルのカラーズ・オブ・ネイチャー社での製造過程を撮影した映像。

◉開催概要
タイトル:AMBIENT KYOTO 2023(アンビエント・キョウト2023)

参加アーティスト:会場
[展覧会]
・坂本龍一 + 高谷史郎:京都新聞ビル地下1階
・コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一:京都中央信用金庫 旧厚生センター
[ライヴ]
・テリー・ライリー:東本願寺・能舞台
・コーネリアス:国立京都国際会館 Main Hall
[朗読] 朝吹真理子

会期:2023年10月6日(金)-12月24日(日)
   *休館日:11月12日(日)、12月10日(日)
開館時間:9:00 - 19:00 入場は閉館の30分前まで

チケット:
・チケット購入サイト: https://ambientkyoto.com/tickets

[展覧会]
一般 ¥3,800 / 専・大学生 ¥2,600 / 中高生 ¥2,000
・前売:200円引・小学生以下無料
※京都新聞地下1階のみ、一部無料枠を設ける予定

[ライブ]
◉テリー・ライリー
・会場:東本願寺・能舞台
・日程:2023年10月13日(金)、14日(土)
・開場 17:30 / 開演 18:30
・チケット:SOLD OUT

◉コーネリアス
・会場:京都国際会館Mail Hall
・日程:2023年11月3日(金・祝)
・開場 16:00 / 開演 17:00
・チケット:全席指定 S席 9,800円/ A席 8,800円
      未就学児入場不可

主催:AMBIENT KYOTO 2023 実行委員会(TOW / 京都新聞 / Traffic / 京都アンプリチュード)
企画制作:TOW / Traffic
協力:文化庁 / α-STATION FM KYOTO / 京都 CLUB METRO / 株式会社サンエムカラー / 小川珈琲株式会社 / 株式会社ハッピーマンデー / CCCアートラボ
後援:京都府 / 京都市 / 公益社団法人京都市観光協会 / FM COCOLO
音響機材協賛 : Genelec Japan / ゼンハイザージャパン / 株式会社静科 / 株式会社MSI JAPAN大阪 / アビッドテクノロジー / Synthax Japan / Abendrot International LLC / Sonos Japan
映像機材協賛:bricks & company / Magnux
技術協力:パナソニック株式会社
協賛:Square
広報協力 :HOW INC.
特別協力:京都中央信用金庫

展示ディレクター(旧厚生センター)/ 音響ディレクター:ZAK
空間ディレクションアドバイザー(旧厚生センター):高谷史郎
プロジェクト・マネージャー:關秀哉(RYU inc.)
舞台監督:尾崎聡
照明ディレクター / デザイナー:髙田政義(RYU inc.)
美術造作:土井亘(dot architects)
照明:上田剛(RYU inc.)
音響:東岳志 / 山本哲也 / 濱哲史 / 細井美裕
香り:和泉侃

キービジュアル:Alex Somers
アートディレクター:田中せり
デザイナー:宿谷一郎、岡本太玖斗

会場 アクセス

① 京都中央信用金庫 旧厚生センター (展覧会場)

参加アーティスト
コーネリアス
バッファロー・ドーター
山本精一

〒600-8219京都市下京区中居町七条通烏丸西入113
・電車:JR京都駅より徒歩5分
・バス:市バス烏丸七条バス停より徒歩1分

② 京都新聞ビル地下1階 (展覧会場)

参加アーティスト
坂本龍一 + 高谷史郎

〒604-8577京都市中京区烏丸通夷川上ル少将井町239
・電車:地下鉄烏丸線・丸太町駅下車 7番出口すぐ
・電車:地下鉄東西線・烏丸御池駅下車 1番出口より徒歩7分

③ 東本願寺・能舞台 (ライブ会場)

参加アーティスト
テリー・ライリー 立体音響ライブを実施

〒600-8505京都市下京区烏丸通七条上る
・電車:JR京都駅より徒歩7分
・電車:地下鉄烏丸線・五条駅より徒歩5分
・バス:市バス烏丸七条バス停より徒歩1分

④ 国立京都国際会館 Main Hall (ライブ会場)

参加アーティスト
コーネリアスのライブを実施

〒606-0001 京都市左京区岩倉大鷺町422番地
・電車:地下鉄烏丸線・国際会館駅より徒歩5分
・バス:市バス・京都バス・国際会館駅前より徒歩5分

◉お問い合わせ先
メディアお問合せ窓口
Traffic Inc. MAIL: web@trafficjpn.com TEL:03-6459-3359 FAX:03-5792-5723
お客様お問合せ先:ローダイヤル: 050-5542-8600(全日 9:00 ‒ 20:00)
AMBIENT KYOTO info@ambientkyoto.com

Tirzah - ele-king

 ティルザの格好良さは、そりゃあ、いろいろある。何気にトリップホップを更新し、R&Bにさりげなく前衛を持ち込んでみせるところとか。彼女が、派手なメイクや衣装やリリース前の政治発言なんかで自己アピールすることはない。なにせ昨年リリースしたリミックス・アルバム『Highgrade』のアートワークは洗濯物が入った洗濯機だった。これはセカンド・アルバム『Colourgrade』の裏ジャケットから来ているわけで、ぼくが所有しているアナログ盤のインナーには、さらに生活感がにじみ出ている台所(あるいは女性の居場所は台所という父権社会へのアイロニー)の写真がデザインされていると、つまりこれはもう、彼女にとっては人生が実験であり政治であり前衛であるべきものだという、フルクサス的なことなのだ、とぼくは勝手に思っている。ミカ・リーヴィ、そしてコビー・セイ、あるいはディーン・ブラントといった、女性とブラック・ブリティッシュが彼女の音楽仲間であることも、現代の新しい物語にリンクしていると言えるんじゃないだろうか。
 そうそう、ちゃんと紹介しなかったけれど、昨年のリミックス・アルバム『Highgrade』も良かった。リミキサーが超豪華で、アルカにロレイン・ジェイムス、天才肌のアクトレスラファウンダ、ウー・ルー、スピーカズ・コーナー・カルテット、期待のAnja Ngoziや新作が待ち遠しいスティル・ハウス・プランツ……とか(三田さんはアクトレスのリミックスがいちばんだね、と言ってたな)。で、それに続いて早くも3枚目のアルバムが配信のみとはいえ、こんなに早く聴けるとは望外の喜びである。そう、喜びではあるのだが、しかし『trip9love...?』は微笑みかけるような種類の音楽ではない。むしろ、人生が必ずしも自分の思うようにはうまくいかないということ、あるいは、自分がほんとうにいちばん欲しいものこそ手にすることができないというザ・スミス的なその空しさ、そして諦め切れなさに焦点が当たる。
 そこでは「時間」がひとつのキーワードだ。「時間は存在しない」というイタリアの物理学者の本が数年前に流行ったけれど、ティルザの「時間」は物理学では計れない感情的な時間だ。時間はないし、時間はある。しかしやはり時間はない。

費やした時間は必要のない時間だった
“Promises”

嘘だと思いながら、時間をかける
君を連れ戻すよりは近いだろう
君のガラクタ、時間のかけら
間違いを数え、領収書を保管する
“u all the time”

 にべくもなく魅力的というか、『trip9love...?』は冷たい月夜の美しさにも似ている。ここには、これまでのティルザ作品にはなかった、荒々しさもある。前作にもあった攻撃性と甘美さ、冷たさと愛とのコントラストはここにもある。ただ、今回はよりダークだし、ややもすればハードで、不協和音があって、しかし陶酔的だったりもする。ひずんだリズムの“F22”、そして続く“Promises”、さらに続く“u all the time”……まず最初の3曲がキラー過ぎる。サウンド面での協力者は今作もミカ・リーヴィだが、『trip9love...?』は過去2作よりもラフな音響で、ギター・ループがフィーチャーされ、トリップホップというよりはヒップホップ化したコクトー・ツインズというか、インディ・ロックの暗いムードの疾走感に近い。その寒々しいテクスチャーを後ろに歌われるソウルフルな“their love”のなんと美しいことか。

彼らの愛はただの夢
失うのは愛だけ
“their Love”

 ティルザとミカは、1年のあいだ互いの家を行き来しながらレコーディングをし、本作を完成させた。壊れたピアノとひずんだ機械音に溶け込むスウィートな歌声は“today”という曲となり、トラップめいたリズムとインダストリルの洪水に、ちょっとグルーパー風の彼女のメランコリーが立ち上がるのは“stars”という曲だ。ディストーション・ギターが唸りをあげるMBV風の“2 D I C U V”も悪くないが、静寂のなかティルザが自由に歌っている“6 Phrazes”のほうがおそらく光っている。しかし、最後の曲“nightmare”の歌詞におけるよるべない気持ちと、サウンドにおけるヴェルヴェッツ風の冷たさを聴いたら、テュルザがこのアルバムを生ぬるい感情におさめるつもりなどさらさらないことを思い知るのだ。

時は過ぎ去り/語られないことの多く/ とても近い
私は知らない /私がもっているすべてのこと
君はもっている/いま時間がある、抱きしめる時間
時間がない、語られないことの多く、近い、とても近い
君の愛をもっと見せてくれないか
“nightmare”

別冊ele-king アンビエント・ジャパン - ele-king

日本のアンビエント~環境音楽を大特集

featuring
細野晴臣/坂本龍一/吉村弘/横田進/畠山地平/冥丁/SUGAI KEN
interview
デイヴィッド・トゥープ/スペンサー・ドーラン/ZAK

日本のアンビエント名作選125
AMBIENT KYOTO 2023
Off-Tone/みんなのきもち

菊判220×148/192ページ

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AMBIENT KYOTO 2023開催
2023.10.6─12.24
ambientkyoto.com

目次

「環境音楽」からクラブ・カルチャーを経て多様化の時代へ──日本のアンビエント概説 (三田格)
【インタヴュー】デイヴィッド・トゥープ (野田努+坂本麻里子)

■細野晴臣と坂本龍一における「アンビエント」を温ねる
アンビエント・アーティストとしての細野晴臣と坂本龍一 (三田格)
細野晴臣、アンビエントの旅行者 (ポール・ロケ/五井健太郎 訳)
細野晴臣 ambient works (三田格)
坂本龍一 ambient works (三田格)
「非同期」から聴こえてくるもの──音楽・サウンド・ノイズ (高橋智子)

【インタヴュー】スペンサー・ドーラン (小林拓音/青木絵美 訳)
「kankyō ongaku」の発明 (ポール・ロケ/五井健太郎 訳)
アール・ヴィヴァンとその時代 (立花幸樹)

横田進とレイヴの時代 (野田努)/横田進 selected discography
アンビエントの精神を具現化する、野外フェスティヴァル〈Off -Tone〉 (野田努)
トランス集団「みんなのきもち」が試みるアンビエント・パーティ (yukinoise)
日本のヒップホップとアンビエント (二木信)

【インタヴュー】畠山地平 (三田格)/畠山地平 selected discography

特別寄稿 冥丁/SUGAI KEN
五・七・五を聴く──ケージの音楽と俳句 (高橋智子)
たゆたう、アンビエント/環境・ミュージック/音楽 (北條知子)
アンビエント・ジャパン選書 (野田努)

■日本のアンビエント・ディスクガイド78選
(三田格、野田努、小林拓音、デンシノオト、河村祐介)

■AMBIENT KYOTO 2023 ガイド
【インタヴュー】中村周市/ZAK

執筆者プロフィール

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
Yahoo!ショッピング
HMV
TOWER RECORDS
disk union
紀伊國屋書店
honto
e-hon
Honya Club

P-VINE OFFICIAL SHOP
SPECIAL DELIVERY

全国実店舗の在庫状況
紀伊國屋書店
三省堂書店
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
旭屋書店
有隣堂
くまざわ書店
TSUTAYA
大垣書店
未来屋書店/アシーネ

interview with Adrian Sherwood - ele-king

 UKダブ界の巨匠・エイドリアン・シャーウッドのインタヴュー依頼が舞い込んできたとき、かつてないほどの幸運と緊張を感じた。普段は、とくにここ数年はというとポスト・レイヴの風に飲まれ様々なリズムのダンス・ミュージックに取り憑かれており、ようやくダブに興味を持ちはじめたのもつい最近のことである。そんな自分に聞き手が務まるのだろうかと葛藤したが、自身が愛するジャングルやドラムンベース、UKガラージにダブステップ、グライムといったUK発のベース・ミュージックのルーツであるサウンドシステム・カルチャーの存在はたしかに偉大なものであり、それらに宿る意識が20年代のエレクトロニック・シーンにおいてノスタルジックかつフューチャリティックに新たなかたちで脈々と受け継がれてもいるのもまごうことなき事実である。常に多くの領域に広くインスピレーションを与えてきたこの奥深きダブ観に、自身と同じく無意識のうちに恩恵を受け好奇心の扉が開きつつある若者も少なからずいるのではないのだろうか。こうしてダブへの関心が芽生えたいま、UKにおけるダブを再定義した張本人に話を聞けるという絶好の機会を逃すわけにはいかないと思い立ち、勇気を出して素人質問を多くぶつけ改めてダブの魅力を教えてもらった。エンジニア・プロデューサーとして圧巻のスキルでキャリアと数々の功績を積み上げてきたエイドリアン・シャーウッドが今回の取材を通じて語った「Each One Teach One」互いに教え合うことの精神を、ぜひこの現代のダブ・ガイド的インタヴューから感じ取ってみてほしい。

ダブは音楽ジャンルとして定義されがちだけど、本来のダブとはテクニックなんだ。

昨今、ダブに新たな興味を持ちはじめている人が増えてきています。とくに若い世代がクラブ・ミュージックの発展を機に関心を示すようになり、現在27歳の自分もそのうちのひとりです。今回はそんな人びとに向け、これからダブをより楽しむために初歩的なところからいろいろお聞きしたいのですがまずダブとはどんな音楽なのか、ご自身のレーベル〈On-U Sound〉について改めて説明してもらえますか?

エイドリアン:よくダブは音楽ジャンルとして定義されがちだけど、本来のダブとはテクニックなんだ。元々ジャマイカのヴァージョン、インストの曲を一度バラバラにしてそこからエフェクトを加えたり、ひとつのリズムをどんどん広げたりと色々なアイデアを織り込むってのがダブの起源になる。On-Uというのも言葉遊びから生まれたネーミングで、あなたにとってすごく大事な音(on you sound)という意味が込められてるんだ。また、Newという発音になるように新しいという意味も含んでいるこのレーベルでは、ジャマイカ、日本、アフリカなど多種多様な国、レゲエ、ニューウェイヴといった様々なバックグラウンドを交えながら、新しい音を作ろうと思ってやってきた。

ダブに初めて出会ったときの衝撃を覚えていますか?

エイドリアン:最初に愛を注いだのはジャマイカの音楽だったな。もちろんジェイムズ・ブラウンやT. Rexとかも好きだったし、若い頃はいろんな音楽を聴いてたよ。音楽を聴きながらよく友達とお茶を飲んだりチルしてて、そういった状態で聴くダブ・レコードはメディテーション的に完璧だったんだ。たしか最初に聴いたアルバムはオーガスタス・パブロの『Ital Dub』、『King Tubbys Meets Rockers Uptown』……キース・ハドソンの『Brand』は本当に素晴らしかった。良質なダブからはそこにない音が聴こえてくるんだよ。だから自分がプロデュースする作品でもそういったマインドの広がりに夢を見させてくれるような、イマジネーションが掻き立てられるようなサウンドにしたいと意識しているよ。

ダブに出会いエンジニア、プロデューサーとしてサウンドを構築するなかで発見したダブならではの面白さはどんなものですか?記憶に残っている印象的なエピソードや思い出がありましたら、あわせて教えてください。

エイドリアン:19歳の頃にプリンス・ファーライと一緒にショーをやってからエンジニアとして多くのことを学んだ。最初のショーでは外部のエンジニアを雇っていたんだけど、ハイハットやベースの上げ方を指示してたら「君がやりなよ!」って言われてね。彼にここがエフェクト、ディレイだよと卓を見せてもらいながら教わって自分でバランスを調整するようになったら、その後のショーで多くの人から最高の音だったと褒められたんだ。そこで自分がエンジニアに向いてることに気づいて、その後はスタジオに入ったりライヴ・サウンドを手がけたりしてプロデューサーへとなっていった。プリンス・ファーライのおかげで音楽をはじめられたから彼には本当に感謝しているよ。スタジオに入りたての時はデニス・ボーヴェルの友人が手伝ってくれたり、僕も腕のいいエンジニアの手伝いをしたりと時間をかけて自分自身でミックスするようにもなって。最近はだいぶデジタル化したんだけど、まだアナログ機材の方が好きだね。

たしかに、現在はDAWなどを使用しデジタルの環境でダブを作るプロデューサーも数多くいるかと思います。使用する機材や製作環境には時代ごとに変遷があると思いますが、今でもアナログな環境にこだわる理由はなんですか?

エイドリアン:デジタルはデジタルでいいところもあるけど、あらかじめ計算されすぎていてすべてがコントロールされてるような音に聴こえてしまう。アナログの機材だとEQスイーピングとか音を曲げたりだとか表現の幅を広げやすいし、いまだ!って感じた瞬間にフィードバックできる。その場の気持ちに任せてやる、僕ってそういう人間なんだ。

なるほど。では、もし現代のデジタルネイティヴな世代がこれからダブの制作に挑戦するとしたらどんなアドヴァイスを与えますか?

エイドリアン:いまはデジタルがかなり進歩して新しいものがいっぱいあるから、たくさんの選べる音があるなかで自分がいちばん好きなディレイとリヴァーブを2〜3種類ほど見つけて、そこにダブのテクニックを2〜3個加えながら極めていった方がいい。アナログでやるなら高くても安くてもいいから自分の好きな機材を見つけること。たとえばマッド・プロフェッサーがすべての曲に加えている400msだと完璧にタイムを合わせたい僕みたいな人にはそれだとズレてるように聴こえてしまう、もちろんそれが好きって人もいるけど僕が好きなディレイのスピードは3/16なんだ。だからアナログでもデジタルでも、まずは自分の好きな音を極めてアイデアを組み込んでいくことが大事。

自分自身でも音を極め、目指すサウンドを実現できるようになるまでは大変でしたか?

エイドリアン:基本的に学ぶことが好きだから若い頃もただただ楽しかったよ。アナログミックスのレコーディングが終わって、すべて完成したものが自分のところに回ってきた段階は特に楽しくて、出来上がったものを崩してリヴァーブやディレイを追加しながら自分を表現する瞬間が大好きだね。でも大変なところと言えば、最近のライブでは昔と違ってどこもデジタル環境だからライブにアナログのミキサーを持ち込まなきゃいけないところかな。今回の来日公演のためにもいろいろ特別な機材を持ってきたよ。

デジタルはデジタルでいいところもあるけど、あらかじめ計算されすぎていてすべてがコントロールされてるような音に聴こえてしまう。アナログの機材だとEQスイーピングとか音を曲げたりだとか表現の幅を広げやすいし、いまだ!って感じた瞬間にフィードバックできる。その場の気持ちに任せてやる、僕ってそういう人間なんだ。

自身の作品をデザイナー・ダブと呼ぶことに関して「最初からダブ・ミックスとして作られた音楽である。ジャマイカのダブは、元々ある曲のヴァージョンとして始まったから、生まれた形が違う」とのことですが、あらかじめダブmixを見越して元の素材を作っているのでしょうか。

エイドリアン:そうだね。毎回じゃないけどホレス・アンディならダブ・ヴァージョンを見越して作ったし、アフリカン・ヘッド・チャージなら最初からダブを基本にインストを作ってる。どれもダブのテクニックを加えることを前提に制作してるからダブ・アルバムを作るというよりもダブ・レコードを作る感覚で、僕がダブ・ミュージックって言い方が好きじゃないのも楽曲をダブ・トリートメントするって表現の方が合ってるからだと思う。

ダブ・ミュージックという表現があまり好きではないとのことですが、自身のレーベル〈On-U〉の設立をはじめにあなたが再定義したUKにおけるダブは、後のダブステップのようにサウンドシステム・カルチャー由来のクラブミュージックにも多大な影響を与えているかと思います。Pinchとのコラボレーションを始はじめ自身の作品や〈On-U Sound〉からのリリースでもそうしたクラブ・ミュージックを取り入れ続けているかと思いますが、あなたのレガシーの影響下にあるUKクラブ・ミュージックの発展をどのように見ていますか?

エイドリアン:僕の音楽に影響を受けたと言われるのは最高の褒め言葉だしとても嬉しいことではあるんだけど、自分自身は影響を与えるつもりで音楽をやってるわけじゃないんだ。それこそPinchのような影響下にあるサウンドのことを言われても、結局僕はテクニックと魂を込めて自分のやりたいことをやってるだけだから、何かを与えたという気持ちはないんだよね。僕がすごいことをやってきたという意識はまったくないし、いまでも音楽に対しては自分自身が興奮できる新しい音を作ることだけに集中してる。

現代のクラブ・ミュージックを経由し、自身のようにいま新たにダブに興味を持ちはじめてきてる人びとがいます。彼らがこのインタヴューを通じダブをより楽しみ、理解を深めるには作品、楽曲をあなたならではのチョイスでいくつか教えていただきたいです。

エイドリアン:リー・ペリーの『Blackboard Jungle Dub』はとても良い作品で、自分が関わった作品なら彼とダブ・シンジケートの『Time Boom X De Devil Dead』、最近のドラスティックな作品だとホレス・アンディの『Midnight Scorchers』リー・ペリーの『Heavy Rain』。それから、ダブではないけどマーク・スチュワートの『Learning to cope with Cowardice』は40年前の作品でダブ・テクニックが加わっててすごくイケてる、彼が今年亡くなったことを思うと本当に悲しいよ。まだまだ他にもたくさんあるけど、アフリカン・ヘッド・チャージの新作もだし、いま挙げた作品は全部僕からしたらダブ・アルバムなんだ。「Each One Teach One」というジャマイカンの言葉があるように、こうしてひとりひとり誰かに教えあうことが影響を与えるということなんだろうね。

ありがとうございます。あなたからの教えを手掛かりに、これから新たにダブへの理解を深めていく人々が増えていくのではないかと思いました。最後の質問になるのですが、あなたが往年のキャリアの中で見出したダブのサイケデリクスとはどういったものですか?

エイドリアン:ダブの良いところは歌があるのにリリックまみれじゃないところで、BGMとしても成立するからひとりで瞑想するときにも合うし、音をめちゃめちゃ上げてみてもいい感じになるんだ。ミュージシャンだったらその上から自分で楽器を弾いてみたりテクニックを加えてみることもできるから、メディテーションだけでなく頭のなかにあるクリエイティブなマインドを育てるにもいいんじゃないかな。サイケデリクスの影響下から生まれてるものと言えば、クリエイション・レベルの『Starship Africa』もトリッピーで最高だからさっきのダブ・アルバムリストに入れておいてほしいな。今度リリースされる『Hostile Environment』も次なるモードな感じで素晴らしいアルバムになってるよ。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 喜びたまえ。現代を代表する電子音楽家、大いなる期待を集める最新アルバム『Again』のリリースを今週金曜に控えるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。4度目の来日公演の決定である。しかも、ソウル、ベルリン、マンチェスター、ロンドン、パリ、ニューヨークとつづくワールド・ツアーのスタートにあたる公演とのことで、つまりOPNの最新パフォーマンスを世界最速で堪能できるってこと。
 ちなみに前回の来日は5年前、『Age Of』(2018)リリース後で、バンドやダンサーを引きつれてのライヴだった。はたして今度はどんなパフォーマンスを披露してくれるのか──まずは9月29日発売の『Again』を聴いて、妄想を膨らませておきたい。
 日程は来年2月28日@六本木 EX THEATRE と2月29日@梅田 CLUB QUATTRO の2公演。時期はまだ少し先だけれど完売必至と思われるので、ご予約はお早めに。

 なお、今週木曜9月28日には新宿の映画館で新作のプレミア試聴会&トーク・イヴェントが開催されます(https://twitter.com/beatink_jp/status/1703980222692106661)。そちらもぜひ。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
ニューアルバム『Again』をひっさげ待望の来日ツアー決定!
圧巻の最新ライブセットがここ日本で世界初披露!
アルバムはいよいよ今週発売!

TOKYO 2024/2/28 (WED) EX THEATRE
OSAKA 2024/2/29 (THU) 梅田 CLUB QUATTRO

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が音響アート/ミュージック・コンクレートのひとつの到達点とも言うべき、衝撃のニューアルバム『Again』をいよいよ9月29日に発売!音楽ファンやミュージシャンはもちろん、多種多様のアーティストやクリエイターからも大きな注目が集まる中、待望の来日公演が決定!ここ日本で最新ライブセットが世界初披露されることが明らかとなった。

テンションにテンションを重ねた得も言われぬ解放感とイマジネーションを拡張する圧倒的な世界観、息をのむ美しさ。名作『R plus Seven』を壮大なスケールにアップデートしたような大傑作だ。バラバラに散らばった断片たちが、時間を逆流し緻密且つ巨大な美しいアートピースを完成させるさま、カオスからコスモスへ、聴く者たちをカタルシスへ導く逆流アートの到達点がここに誕生した。

電子音楽、ヴェイパーウェイブ、ノイズ、アンビエント、コラージュ、カットアップ、ミュージック・コンクレート、、、当初はマニアックな実験音楽やサブカルチャーのカリスマだったワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)ことダニエル・ロパティンは、自身の作品のみならず、音楽プロデューサーとしてアノーニやザ・ウィークエンドを手がけ、映画『Good Time』(2017)ではカンヌ映画祭最優秀サウンドトラック賞を受賞するなど活躍の場をひろげて来た。2021年にはザ・ウィークエンドによるスーパーボウル・ハーフタイムショーの音楽監督を務め、シャネル 2021/22年 メティエダールコレクションショーでも音楽とパフォーマンスを担当。世界チャート1位を獲得したザ・ウィークエンドの『Dawn FM』では、エグゼクティブ・プロデューサーを務め、アルバム収録曲の大半で演奏も行っている。

今週ついにその全貌が明らかとなる最新作『Again』をひっさげたOPNの最新のライブセットが、ここ日本を皮切りに、ソウル、ベルリン、マンチェスター、ロンドン、パリ、ニューヨークという世界の主要都市をツアーすることが発表された。妥協なき美意識にもとづくその高い芸術性で、今や音楽カルチャーのあらゆる分野で引く手あまたの、現代を代表する音楽家、作曲家、プロデューサーとなったOPNことダニエル・ロパティンが魅せる圧巻のライブ・パフォーマンス!これは絶対に見逃せない!

公演詳細 >>> https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13709

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ONEOHTRIX POINT NEVER
JAPAN TOUR
出演:ONEOHTRIX POINT NEVER(サポートアクト:TBC)

[東京]
公演日:2024年2月28日(水)
会場:EX THEATRE
OPEN:18:00 START : 19:00
チケット料金:前売 1階スタンディング¥8,000(税込) 2階指定席¥8,000(税込)
*1ドリンク別途 
特記: 別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

[大阪]
公演日:2024年2月29日(木)
会場:梅田CLUB QUATTRO
OPEN:18:00 START : 19:00
チケット料金:前売¥8,000(税込) オールスタンディング / 1ドリンク別途 
特記: 別途1ドリンク代 ※未就学児童入場不可

企画・制作 BEATINK www.beatink.com
INFO BEATINK www.beatink.com / E-mail: info@beatink.com

【TICKET INFO】
★ビートインク主催者WEB先行:9/29(金)10:00~
[TOKYO] https://beatink.zaiko.io/e/opn2024tokyo
[OSAKA] https://beatink.zaiko.io/e/opn2024osaka

[東京]
イープラス最速先行受付:10/3(火)12:00~10/9(月)23:59 [https://eplus.jp/opn-2024/]
一般発売:10/21(土)~ イープラス、LAWSON、BEATINK

[大阪]
イープラス最速先行受付:10/3(火)12:00~10/9(月)23:59 [ https://eplus.jp/opn-2024/]
一般発売:10/21(土)~ イープラス、LAWSON、チケットぴあ、BEATINK

Oneohtrix Point Never - A Barely Lit Path
YouTube >>> https://youtu.be/_kyFqe36BqM
配信リンク >>> https://opn.ffm.to/ablp

9月29日にリリースされる待望の最新作『Again』。Pitchforkが選ぶ「この秋最も期待できる47アルバム」で大きく取り上げられ、CRACK MAGAZINE最新号の表紙を飾るなど、アルバムへの期待は加速的に高まっている。本作についてダニエルは、現在の視点を通して、当時の自分の音楽的アイデンティティを捉えた瞑想であり「観念的自伝」だと説明する。現在公開中の新曲「A Barely Lit Path」は、ロバート・エイムズの指揮と編曲、ノマド・アンサンブルの演奏によるオーケストラをバックに、アルバムのクライマックスを飾る。合わせて公開されたミュージックビデオは、ダニエルがビデオ・アーティストのフリーカ・テットと書いた原案をもとに、フリーカ・テットが監督したもので、擬人化された2人の衝突実験用ダミーの悲惨な物語が描かれている。

OPN待望の最新アルバム『Again』は、9月29日 (金) にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で世界同時リリース!国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、解説書と歌詞対訳が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(ブルー・ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(ブルー・ヴァイナル/歌詞対訳・解説書付)の3形態となる。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、Tシャツ付きセットの発売も決定。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never (ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)
title: Again (アゲイン)
release: 2023.9.29 (FRI)

商品ページ:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13613

Tracklist:
01. Elseware
02. Again
03. World Outside
04. Krumville
05. Locrian Midwest
06. Plastic Antique
07. Gray Subviolet
08. The Body Trail
09. Nightmare Paint
10. Memories Of Music
11. On An Axis
12. Ubiquity Road
13. A Barely Lit Path
+ Bonus Track

国内盤CD+Tシャツ

限定盤LP+Tシャツ

通常盤LP

限定盤LP

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