「KING」と一致するもの

いま欧米のストリートで、ダンス・カルチャーで、エレクトロニック・ミュージックのシーンで、もっともクールなトレンドが「ジャズ」。ロンドンのレコード店に入れば大音量で「ジャズ」が鳴り、ラジオをつければジャズが流れる。DJカルチャーはジャズを堀り、インディ・リスナーはアヴァンギャルドを探求する。テクノにもダブステップにもヒップホップにもジャズが大量に注がれはじめている。

周知のように、ロバート・グラスパーのグラミー賞受賞をきっかけに、ソウル~R&B~ヒップホップのなかでジャズが再解釈されている。が、現在の「ジャズ」には、さらにもっと自由な風が吹いている!

プログレッシヴ・ロックのアフリカ・ヴァージョンとも呼べるジャズの新局面。シュギー・オーティスの流れを引く俗称「プログ&B」(プログレ+R&Bの略)。デトロイト新世代のカイル・ホールがうながすブロークン・ビーツ・リヴァイヴァル、サン・ラー生誕100周年で再燃するコズミック・ジャズ、デリック・ベイリー再評価のなか広がるアヴァンギャルドへの情熱、そして大友良英の上昇、シカゴ音響派の再評価、ワールド・ミュージックとしてのジャズ、吉田ヨウヘイgroupなど日本の新世代に見るジャズへの偏愛……

活況あるジャズの現状を分類しながら、新旧交えて「いま聴くべき」ディスク・カタログ100枚も収録。

表紙&カバーストーリーは、近々待望の新作リリースが噂されるフライング・ロータス!

interview with Hokuto Asami - ele-king

 浅見北斗はいい男である。情熱的で、反抗的で、ファニーで、色気があり、自分が「かっこいい!」と感じたバンドやミュージシャン、音楽にすさまじい熱量の高さで対峙する。この、Have A Nice Day!というオルタナ・ロック・バンドのリーダーにして、〈SCUM PARK〉という東京のアンダーグラウンド・パーティの首謀者が、このインタヴューで「インディペンデント」「コミュニティ」「ムーヴメント」といった、これまでの人生で何百回目にし、耳にし、口にしてきたかわからない手垢のついた、ときとして空虚さをはらむことばを迷いなく発語するとき、それらのことばが瑞々しい生気を与えられ、キラキラと輝き出すように思えた。

 筆者は、〈SCUM PARK〉と、音楽クルー〈音楽前夜社〉の主宰者であり、そのクルーのメイン・バンド、GORO GOLOのリーダーであるスガナミユウが〈新宿ロフト〉で主催する入場無料パーティ〈歌舞伎町Forever Free!!!〉でHave A Nice Day!のライヴを何度か目撃している。ステージ上で汗だくの、意外にも筋肉隆々の浅見は、パンキッシュなニューウェーブ・サウンドに乗せて、「フォーエバーヤング!」という歌詞を、ダンスフロアで巻き起こるモッシュピットの渦にガソリンを注ぐようにくり返し放り込んでいた。

 パーティ全体のクラウドの熱狂とそれぞれの出演者の個性的なライヴの風景とともに、とくに筆者の脳裏に焼きついたのは、浅見の、クレイジーでありながらもクールなステージ・パフォーマンスだった。混沌とした集団のなかで、このヴォーカリストは静かに異彩を放ち、その姿は美しくもあった。そうか、あの踊りはゴリラステップというのか……。ともあれ、直感的に、「この男に話を訊いてみたい」と思い立ち、あるライヴ後、機会があればインタヴューをさせてほしいと依頼したのだった。筆者が、浅見が『FRESH EVIL DEAD』というコンピレーションの監修をしていると知ったのは、その数週間後である。


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Fresh Evil Dead

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 ここで紹介する『FRESH EVIL DEAD』は、〈SCUM PARK〉、〈歌舞伎町Forever Free!!!〉、そしてそのふたつのパーティの起源となっている、ジューク/フットワークのパーティ〈SHIN-JUKE〉周辺のバンド、トラックメイカー、DJ、ラッパー、パフォーマーらの楽曲を集めたものだ。監修者は浅見とスガナミユウと、〈SHIN-JUKE〉の主催者という顔の他に〈オモチレコード〉のCEO/新宿ロフトの副店主という顔を持つ望月慎之輔である。

 『FRESH EVIL DEAD』には、現在の東京で、局地的に異様な熱気を帯びているアンダーグラウンド・パーティ・シーンの記録としての意味合いも付与されているものの、すべての収録曲が楽曲そのものとしてユニークでおもしろい。その詳細については、浅見がインタヴューのなかで、凄まじい情報量とともに酔狂に語ってくれている(この男は酒を飲まないのだが、それもまた興味深い)。このコンピは、浅見の情熱の結晶のようなものなのだろう。リンクをあれこれと貼りたい衝動にも駆られたが、濃密さが薄れると判断して、あえて最小限におさえた。この記事を読むみなさんは、独自にディグる方たちだと思う。

 前半はコンピの楽曲について、そして後半は、〈SCUM PARK〉を通じて浅見が考えるパーティやインディペンデント、コミュニティやムーヴメントとは何なのか? ということが浮き彫りになってくるようなグルーヴィーなトークとなった。スガナミユウも同席しておこなった、浅見北斗のロング・インタヴューをお送りしよう。

これまでの〈SCUM PARK〉フライヤー・デザインには、2010年以降のインターネット・アンダーグラウンドと、まさに“SCUM PARK”としか呼びようのない彼らのパーティのリアリティが象徴的に表れている。


われわれのシーンはべつに新しくはないし、新しい音楽をやっているわけでもないんです。だから、“新鮮な死霊のはらわた”というタイトルは“腐敗している新鮮な状態”という意味合いを込めてつけた。

やはり最初は『FRESH EVIL DEAD』の中身の話から訊いていきたいと思うんですけど、まず、このタイトルにしたのはなぜですか?

浅見北斗(以下、浅見):最初はタイトルにすげぇ悩んだんですけど、『死霊のはらわた』から取ったんですよ。われわれのシーンはべつに新しくはないし、新しい音楽をやっているわけでもないんです。いわゆる最先端なことをやっているとかではない。ジュークの人たちともやっているけれど、〈SCUM PARK〉そのものは新しくはなくて、だから、“新鮮な死霊のはらわた”というタイトルは“腐敗している新鮮な状態”という意味合いを込めてつけた。すげぇ矛盾してるんだけどね。それと、あの映画は、サム・ライミがインディペンデントで撮った映画というのもあった。さらには〈SCUM PARK〉に集まるクラウドやフロアを指してるタイトルでもあります。オール・ピーク・タイムな不死身のフロア。〈SCUM PARK〉は出演者だけじゃなくてそこに集まるクラウドが作る強烈な雰囲気がめちゃくちゃ重要なパーティーなんで。
 最初はいまの東京のベース・ミュージックとかオルタナのいちばん新しいものって感じでまとめようとしたんだけど、そんなことをわれわれがやって意味があるのかな? っていうのも若干あって、コンピがうまくいくかさえ不安だったんですよ。そういうことをやってる人たちは他にいるだろうし。最終的に〈SCUM PARK〉をそのまま音源化した格好になりましたね。〈SCUM PARK〉で人気のある曲を選んだりしました。

たとえば、NATURE DANGER GANG(以下NDG)の“BIG BOOTY BITCH”とかですか?

浅見:あの曲を俺たちは“デカケツ”って呼んでるんですけど(笑)。あとは、ハバナイ(Have A Nice Day!)の“フォーエバーヤング”。

“フォーエバーヤング”は〈SCUM PARK〉のアンサムでしょ!

浅見:アンサムでしょ! って(笑)。あとはチミドロの“わんにゃんパーク”とか、実際にそんなにライヴでやったりはしないけど、Gnyonpixの“Dive to The Bass (remix) feat. Y.I.M & Have a Nice Day!”とかね。昨年、〈オモチレコード〉でGnyonpixがCDを出すときに、俺とGnyonpixでボーナス・トラックをつけようってなって、ラップのところだけY.I.Mにやってもらった。リリースしたとき、わりかし評判がよかったし。

ということは、既発曲がかなりある?

浅見:既発曲がかなり多い。新しく曲をちょうだいって言ってもらったのは、Glocal PussysとHarley&Quinかな。あとはRAP BRAINS。RAP BRAINSは彼らの大量にある未発表曲のなかから選んだ感じだけど。だから、〈SCUM PARK〉とか〈SHIN-JUKE〉に遊び来ていて、音源もチェックしている人は知ってる曲が多いと思う。Bandcampやフリーで落とせるヤツもたくさんあるから。チミドロの“わんにゃんパーク”はフリーで落とせるし、いくつかそういう曲がある。要するにマスターピースを集めたんですよ(キリッとした表情で)。

おおおぉ。

浅見:みんなが知っている「あの曲ね」っていう曲のなかでも、「俺がこの曲がほしい」って曲を集めてる。だから、みんなの印象はそれぞれ違うかもしれないけど、このコンピのトラックリストが出たときに、よく遊びに来ている人は、「これはわれわれのアンセムだ」って言ってくれたし、俺もそういうつもりで作った。

スガナミさんはコンピの制作に関して、ディレクションをしました?

スガナミユウ(以下、スガナミ):基本、浅見さんに一任しましたね。相談や微調整はしたけど、決めるのは浅見さん。監修者が3人いるんで、マインドはひとりが持っていないと力強さが出ないと思った。

このコンピでジュークがひとつの要になってますよね。異なるジャンルを結びつける重要な媒体になっているというか。

浅見:NDGの“Legacy Horns (JINNIKUMAN JUKE EDIT)”とかね。この曲はシカゴのDJ Torchのアルバム(『Legacy Horn EP』)を〈Booty Tune〉が出すときに、D.J.APRILがNDGにリミックスを依頼したんですよ。完成したのを聴いたら、ラップまで乗っかっていたというね(笑)。リミックスって普通、歌までは乗っけないでしょ! それをヤツらは勝手にラップまで乗っけてきたんだけど、DJ Torchのアルバムに入って無事にリリースされた。

よく遊びに来ている人は、「これはわれわれのアンセムだ」って言ってくれたし、俺もそういうつもりで作った。(浅見)

監修者が3人いるんで、マインドはひとりが持っていないと力強さが出ないと思った。(スガナミ)

すごいいい話じゃないですか。Have A Nice Day!(以下ハバナイ)の“Kill Me Tonight Remix (Feat. EQ Why)”もジュークですね。

浅見:そう!! これについてはぜひここで語りたい!!

思いっきり語ってください!

浅見:EQはシカゴのヤツで、トラックスマンの弟子かRP・ブーの弟子でさ。

『Bangs & Works vol.2』にも彼の曲が3曲収録されてますよね。

浅見:そう。そのときはたしかT-Whyって名義だった。ヤツはトラックスマンの次世代として期待されていたんだけど、TEKLIFEクルーのなかでいろいろあったらしく。よくわからないけど、なにか問題を起こして、鼻つまみ者になったらしいの。まあそれはいいんだけど、要はシカゴのローカルの若手みたいなヤツで、俺もEQの存在は知ってた。で、俺は去年の4月か5月に“Kill Me Tonight”の原曲をSoundCloudにアップしたんですよ。そうしたら、すんげぇ評判が悪かった。メンバーから、「ぜんぜんこの曲よくない」って言われて。みんなはいつも、俺が曲を作ると、だいたい持ち上げてくれるんだけど、そのときは誰も持ち上げてくれなくて。

それはショックだ。

浅見:そうしたら、EQが「この曲いいね! データちょうだい!」って、SoundCloud上でコンタクトしてきて。日本人が誰も反応してくれないのに、シカゴのヤツが反応してくれて、「マジかよ!」って、すげぇうれしくなって。それで、「データをあげるから、リミックスしてくれ」って頼んだら、最初は「リミックスすると金がかかるけど、大丈夫か?」って感じだったんだけど、なんやかんやで作ってくれた。タダで。

そのやり取りは、お互いを直接知らない状態で、誰かを介してとかでもなくおこなわれたんですか?

浅見:そう! だから、シカゴのフットワークと東京が邂逅したんだって、すっげぇ感動した。EQがなにに反応したのかはわからないけど……、「Kill Me Tonight」ってフレーズに反応したのかな。

これはなかなかキザなフレーズですねぇ。

浅見:「今夜、俺を殺せ!」ってことなんだけどね。

わかります(笑)。

浅見:アルファベッツに“今夜殺せ”って曲がありますけどね。「今夜殺せ/鳥の餌になれ」ってね。まあ、そこから来たわけではないけどね。

で、GORO GOLO の“SUMMER HITS Boogie Mann Remix” には、ジュークの日本独自のポップな展開というか、多様性を感じますよね。

浅見:この曲をリミックスした Boogie Mannは〈SHINKARON〉っていう横浜のジュークのレーベルのトラックメイカーで、〈SHINKARON〉にはFRUITYってヤツもいて、みんな若くて、お洒落で、生意気(笑)。FRUITYに“フォーエバーヤング”のリミックスを作ってもらったんだけど、ほら、リミックスって原曲を超えてなくて、「原曲のほうがいいじゃん」っていうのが多々あるけど、そのリミックスはちがった。FRUITYはバランス感覚が良くて、優秀なんですよ。〈SHINKARON〉ってみんな優秀なのよ。キャッチーなところを残して、ポップ・ミュージックとして楽しめるラインで上手いことできる。ジュークのなかの若い世代で、そういうことが自然にできる人たちだね。

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パーティのあとに、「髪が緑色の変なヤツがいたな」とか「いつもと違うヤツがいたね」とか「なんなんだろうね」ってみんなで話したりしてて。「なんかいい顔してるな」って(笑)。(浅見)


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なるほど。コンピの冒頭を飾るFat Fox Fanclub(以下FFF)の “Laugh Song (Laugh Gorge Laugh Song by Takaakirah Ishii with Gorge Clooney)”は、ダンサンブルで、パンキッシュですよね。

浅見:この曲は俺のなかで90年代みたいなイメージなんですよ。〈グランド・ロイヤル〉みたいなイメージなの。ジョン・スペンサーとかビースティー(・ボーイズ)とかチボ・マットって感じ。

ああ、なるほど。

浅見:この曲は〈Terminal Explosion〉ってレーベルがゴルジェ・リミックスでやってくれたんですよ。ゴルジェとFFFをつなげようという異種格闘技的な感じで。〈Terminal Explosion〉は、京都のインダストリアルとかゴルジェのレーベルなんですけど、ジュークの人ともつながってて、この曲はBandcampでリリースされてるコンピに入ってる。FFFは〈SCUM PARK〉にとってすげぇ重要で、彼女たちとNDGがいたから、〈SCUM PARK〉はここまで持続できたというのはある。これだけかっこいいバンドなのに、これだけ知られていないバンドが東京に存在するんだぞって。俺は、そういうヤツらがちゃんと評価されるフィールドでライヴをさせたいというモチヴェージョンがあったから。ヴォーカルのペリカンにはファンキーな感じがあって、しかもヒップホップの雰囲気を漂わせるロックンロールを女の子4人でちゃんと成立させてる。彼女たちみたいなバンドはいないよ。

いま、NATURE DANGER GANGの名前も出ましたけど、浅見さんのNDGへの熱い思いも聞きたいですね。

浅見:NDGのSEKIくんは、最初〈SHIN-JUKE vol.2〉に遊びに来てたんですよ。ジュークが好きで、ただの客として。そのときは彼と話さなかったんだけど、パーティのあとに、「髪が緑色の変なヤツがいたな」とか「いつもと違うヤツがいたね」とか「なんなんだろうね」ってみんなで話したりしてて。「なんかいい顔してるな」って(笑)。
 で、SEKIくんがまた別の日のイヴェントに遊びに来てくれて、いろいろ話したの。SEKIくんはそのときすでに、SoundCloudにたくさん曲をアップしてたから、たしかモチ(望月慎之輔)さんが「今度、イヴェントやるからDJやってよ」って頼んだんだと思う。そうしたら、「いや、バンドやります!」って話になって、そこではじめてNDGが発生したんですよ。というか、SEKIくんが、〈SHIN-JUKE vol.2〉でどついたるねんのライヴを観てて、「どついたるねんみたいなバンドをやります」って言ってはじめたのが、NDGだった。

そこからはじまったけど、どついたるねんとはまったく違う方向性の異色のバンドになっていくわけですね。

浅見:とんでもないのができたなって。俺はNDGに関しては、すごい考えることが多い。NDGは音楽じゃなくて、アートなんですよ。あれは音楽とかじゃない。NDGの歌詞ってまったく意味がないんです。無意味なんです。この前、チミドロのリーダーのナオくんと話していたのが、「NDGの歌詞はすごい」と。俺たちが歌詞を作るときは、意味のないことを考えてんだけど、どうしても意味を持たせちゃう。でも、NDGはまったく意味を持たせない。そのいちばん極端な例が、LEF!!! CREW!!!とNDGがいっしょにやった、アタリ・ティーンエイジ・ライオットの“スピード”のカヴァーなんです! このカヴァーはアタリの曲を空耳でカヴァーしてるんだけど、ほら、アタリってめちゃめちゃ政治的メッセージを持ったグループじゃないですか、その歌を空耳で、音だけで、表面的にカヴァーして中身がまったくない。
 じゃあ、NDGの中身にはなにがあるのか? そこには人間がいるんですよ。NDGの各メンバーの生き様があるんです。悪口でもなんでもなくて、NDGのメンバーでセンスが良いヤツはひとりもいないんです。センスが悪いヤツばっかりなの。そいつらが、NATURE DANGER GANGに入ったことによって、NATURE DANGER GANG化するんですよ。自分と自分の美意識のすべてをつめこんだ自分の形をライヴでぶつけるわけですよ。だから、われわれは人間の塊を観てるんです。共感するとかではなくて、暴走族とかヤンキーを観てるようなものなんです。そういうことに近い。
 だからNDGっていうのは、バンドよりはアイドルに近くて、つまり、偶像化されているんです。NDGのことがすごい好きな、オルタナ・シーンのライヴ・ジャンキーって言われる人たちがいて、そのなかのひとりが、「アイドルは理解できないけど、アイドルが好きな人の心持ちは、自分がNDGを好きな心持ちと近いのかもしれない」って言ってた。要するに成長を見守るってところが似てる。NDGはそういうことを狙ったわけじゃないけど、結果的にそういう形になってる。あれだけまったく意味がないことの理由が、そこにあるのかなって俺は考えてる。

うんうん。

NDGのメンバーでセンスが良いヤツはひとりもいないんです。そいつらが、NATURE DANGER GANGに入ったことによって、NATURE DANGER GANG化するんですよ。だから、われわれは人間の塊を観てるんです。(浅見)

浅見:で、次は、§✝§(サス)とmirrorball infernoとHarley&Quinについて語りたいんだけど、彼らはガチンコで〈SCUM PARK〉のシーンのものではないんですよ。§✝§のメンバーがやってたde!nialってバンドを〈SCUM PARK〉に1回呼んだことがあるし、§✝§はGnyonpixのレコ発のときに呼んで、ライヴもすごい盛りあがったけど、そこまでメンバーと仲が良かったり、つながりがあるわけではないんです。
 ウィッチハウスはアメリカ本国では廃れて、廃墟と化したムーヴメントになってるけど、いま流行ってるか否かとか関係なく、自分たちがやりたいことをやりたいときにやる§?§のスタンスが好きですね。§✝§は4人組で、中心人物のswaptvくんがけっこう前からやってるグループで、いまはセーラーかんな子ちゃんがヴォーカルをやってて、彼女が加入して、ある種アイドルじゃないけど、インターネットを偶像化したところが§✝§のすごいところなんですよ。インターネットは概念じゃないですか。でも、そのインターネットをひとつのグループにしたのがすごい。

そう考えると、『FRESH EVIL DEAD』は、リアルな〈SCAM PARK〉のパーティそのものの範疇を超えたところにあるコンピと言えますよね。

浅見:そうですね。Harley&Quinは4人組なんだけど、メンバーのラスベガスさんこそアンダーレイテッドな人だと俺は思ってますね。“J.E.F.F.”は新録で、ビートが日本刀で、編曲がラスベさんですね。

Harley&Quinのトラックはむっちゃファンキーなテクノですよね。

浅見:うん。Harley&Quinとmirrorball infernoは新宿の〈BE-WAVE〉で〈TECHNOPARTY〉っていうパーティを不定期にやってるんですよ。ちなみにラスベさんとmirrorball infernoは、〈Maltine〉からも作品をリリースしてますね。で、NDGのやってる〈ハイテンションパーティー〉にmirrorball infernoが出てて、かっこよかったから〈SCUM PARK〉にも出てもらった。mirrorball infernoの曲はライヴのいちばん最後のほうにやる曲で、俺のなかではアゲアゲのディスコ・ダブのイメージだったんだけど、本人たちいわくトランスなんだって。とにかく、mirrorball infernoは音楽的に俺のツボ!

その一方で、このコンピはヒップホップ色やラップ・ミュージックの要素も強いでしょ。RAP BRAINSみたいな大所帯のヒップホップ・グループもいますし。

浅見:RAP BRAINSは、〈SCUM PARK〉のメンツのなかではかなり初期からいて、NDG、FFF、RAP BRAINSぐらいの順番なんですよ。RAP BRAINSに関しては、MCひとりひとりのラップというよりは、ベース・ミュージック、ダンス・ミュージックとしておもしろいと思ってて。

オールドスクール・ヒップホップやエレクトロのノリもあるでしょ。

浅見:そうですね。最初のころは、イヴェントにうまくはまらないと思ったこともあったんだけど、去年の8月に新宿の〈LOFT〉でやった〈SCUM PARK〉のときにステージじゃなくて、フロアでやったんですよ。低音もかなり鳴ってて、人がいっぱい入り乱れて、ラッパーと観客の境がなくなって、誰がラップしてるのかさえわからないぐらいだった。そのときに、モッシュみたいなフィジカルな部分が出てくるのがおもしろくて、われわれオルタナのステージとか、パンクスのモッシュピットに近いものがあるって思った。RAP BRAINSは来年2月ぐらいに〈オモチレコード〉からCDを出すから、それまでにいまのノリをもっと拡張してほしいね!

ラップ・ミュージックとして聴いたときに、大所帯な、クルー感のあるRAP BRAINSと対照的なのが、ALchinBondとSOCCERBOYですよね。

浅見:ALchinは日本のジューク・コミュニティの人は全員知ってて、いわゆるヒップホップ・シーンの人には知られてないだろうけど、ジューク・コミュニティでは圧倒的に支持されてるんですよ。たとえば、九州の小倉とか佐世保でジュークをやってる人たちがいて、彼らのパーティではALchinの曲が一晩で2、3回ぐらいかかるらしいんですよ。それぐらい局地的にめちゃくちゃ支持されている。はじめてライヴを観たのが、RAP BRAINSの〈Brainspotting〉ってパーティだったんだけど、そのときのALchinのライヴがあまりによくてさ。背が高くて、手足も長いから見た目も映えるの。単純にラップがかっこいいし、1MC2DJでライヴするんだけど、ジュークのビートが間断なくかかる上で、フリースタイルなのか、既存の曲なのかわからない感じで進んでいくの。

イル・ボスティーノを彷彿させる重量感を感じますよね。

浅見:そう! リリシストなんだよね!

ビートはトリッキーなジュークだけど、ラップのフロウもリリックもどっしりしてて、そのギャップが個性的で、おもしろい。ライヴ、観たくなりますね。

浅見:ハードボイルドな感じがいいんですよ。ALchinはもっと大きなステージで活躍してもらいたい存在なんだけど、どうしてもライヴにむらがあって、ひどいライヴもあるし、お酒を飲んじゃうとヤバい(笑)。
 で、SOCCERBOYくんとは少し話したことがある程度で俺はそんなに詳しくないんだけど、モチさんが〈SHIN-JUKE〉に呼んでて、そのときのライヴがかっこよかったんですよ。いわゆるヒップホップ、ラップというのではなくて、キング牧師の演説みたいなところがある。

俺はLKJのダブ・ポエトリーを思い出した。

浅見:うんうん。DJ MAYAKUとやってる“DANCE WITH WOLVES”が好きだったから、その曲を入れたかったんだけど、今回収録した“Message in a Battle (DJ MAYAKU Remix)”もすごくかっこいい。MCの個の力で聴かせられるのが、ALchinとSOCCERBOYだと思う。

MCといえば、Glocal PussysのMC RyNのパーティMCとダンスフロアの煽り芸はリアルにプロ級なわけだけど、DJのAscalypsoがトラックを作って、MC RyNが歌う“Burning Up”は彼女たちにとっての初のオリジナル音源で、彼女たちらしいセクシーでワイルドな歌モノのベース・ミュージックですよね。

浅見:Glocalは俺が言うことがないほどかっこいい! 

語ってください!

浅見:うん。チミドロが〈ゲットー酒場〉っていうイヴェントを池袋の〈ミュージック・オルグ〉でやってるんだけど、それをシモキタの〈SHELTER〉で〈ゲットー墓場〉ってタイトルにしてやったんですよ。〈SCUM PARK〉とジューク、ベース・ミュージックがいっしょにやるってコンセプトで。そのときにGlocalをはじめて観て、すげぇかっこよかったの。Glocalはイロモノ的なフォーマットに乗っけられかねないけど、俺はGlocalこそかっこいいグループだと思ってる。

女性2人組のラップ・デュオ、Y.I.Mについてはどうですか?

浅見:Y.I.Mは去年の8月にはじめて〈SCUM PARK〉に出たんだけど、俺はもともと、ああいうバランス感覚がいいヤツらがそんなに好きじゃないんですよ(笑)。

身内ディスか!

浅見:いや、最初、鎮座DOPENESSがサポートで来てて、「こいつら、なんかむかつくな。有名人出せばいいのかよ」って思ったんだけど、よく聴いたらかっこいいんだ! ふたりはバカそうに見せて、じつはすごい頭がよくて、賢いんだよね。Y.I.Mは賢い!

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──ということは、トラックスマンの来日は超重要なんだ?
超重要でしょ! あそこには七尾旅人もいたし、デラシネの風間コレヒコもいたし、あの日はやっぱり重要ですよ。(浅見)


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浅見さんから『FRESH EVIL DEAD』の内容について聞いてると、やっぱり興味がわいてくるのが、どうやって浅見さんたち周辺の風変わりで、エネルギッシュなパーティ・シーンができあがってきたのかってことなんですよね。当然、単純な音楽ジャンル云々の話じゃないわけでしょ。自分は、〈SHIN-JUKE〉と〈SCUM PARK〉と〈歌舞伎町Forever Free!!!〉にまったく異なるルートでたまたま遊びに行っていて、あるとき、そこにシーンらしきものがあるんだってことを知ったんですよ。そもそも監修者である浅見さんとスガナミさんと望月さんはどうやって出会って、いっしょに活動するようになったんですか?

浅見:最初に俺がモチさんからイヴェントに誘われたんですよ。モチさんがブッキングするんじゃなくて、他の人にブッキングを頼むっていう、そういうコンセプトのイヴェントがあった。そのとき、内田るんちゃんといっしょに企画したんです。

るんちゃんと!

浅見:そう。内田るんちゃんがやっているバンドとうちら(Have A Nice Day!)がいっしょにイヴェントをやったことがあって。るんちゃんとはめっちゃ仲良いんですよ。なんで、二木くんはるんちゃん知ってるの?

高円寺の〈素人の乱〉で知り合ってるんですよ。ハバナイの名前を最初に教えてくれたのもるんちゃんだったし。

浅見:ああ、そうなんだ! まじか! 〈SCUM PARK〉をやるぜんぜん前にそういうイヴェントがあって、そのときにはじめてモチさんと会ったんですよ。

ちなみに何年ぐらいか憶えてますか?

スガナミ:震災後でしょ。

浅見:そうそうそう。

スガナミ:望月さんが〈ロフト〉に入るのが震災後なんで。

浅見:2011年12月ですね。そのイヴェントのあとに、映画の『アメリカン・ハードコア』の話をして、「すごいいいですよね」って盛り上がって。モチさんは、ハバナイのドラムがやってたマリリンモンローズってバンドの面倒を見てたんですよ。CDを作ったり、流通したり、ライヴのブッキングをしたり、手伝ってたんですよ。そのとき、モチさんは〈オモチレコード〉をすでにやってて、存在を知ってはいたけど、会ったことはなかった。その後、けっこう仲良くなったから、ハバナイのCDを一般流通したいから、面倒を見てもらったのが2012年の夏くらいかな。6曲入りのEP(『BLACK EMMANUELLE EP』)を〈オモチレコーズ〉からリリースしたんですよ。

ブログにいろんなレコード屋に委託販売を断られたって書いてた作品?

浅見:あ、それは、そのEPのひとつ前の作品。でも、じつはいまだにけっこう断られる(笑)。わりかしどこも置いてくれないんだよね。だから、モチさんとは最初はイヴェントっていうよりも〈オモチレコード〉を通しての付き合いで、イヴェントやパーティをやるのはレコ発ぐらいで、いまみたいにイヴェントをしょっちゅうやるなんて考えられなかった。〈新宿LOFT〉の平日の深夜がいつでも空いているから、「月に1回ぐらいはイヴェントやりたいね」みたいな話はしてたけど、「集客がね。いやいや、無理っしょ」って感じでやらなかった。
 ただ、『BLACK EMMANUELLE EP』を出して、ちょっと経ったころに、モチさんが〈SHIN-JUKE〉をはじめてるんですよ。トラックスマンの初来日が2012年10月だから、〈SHIN-JUKE〉の一発めは2012年なんです。そのころに〈十代暴動社〉の長州(ちから)くんとかと仲良くなりはじめて。だから、リリースがきっかけなんですよ、いろいろ。で、ライヴも増えてきて、最初の〈SHIN-JUKE〉の少しあとに〈SCUM PARK〉がはじまってるんです。2012年11月ですね。だから、時間軸で言うと、『BLACK EMMANUELLE EP』のリリース、トラックスマン初来日、〈SHIN-JUKE〉、〈SCUM PARK〉って感じですね。

ということは、トラックスマンの来日は超重要なんだ。

浅見:超重要でしょ! あそこには七尾旅人もいたし、デラシネの風間コレヒコもいたし、あの日はやっぱり重要ですよ。で、1回めの〈SCUM PARK〉は〈下北沢SHELTER〉が平日に空いてたから、「じゃあやろうか」ぐらいの感じでやったの。どついたるねん、ハバナイ、アンダーボーイズがライヴで、転換のDJをD.J.APRILにお願いしようと。そこではじめてD.J.APRILとちゃんと話して、トラックスマンを観に行ったって話をしたんだよね。

ほおお。スガナミさんとはまだ出会ってないんですか?

浅見:まだまだ! この1年後ぐらいにならないと登場しない!

俺はストレートですけど、惚れた男のためなら、みたいなところがあるんですよ。(スガナミ)

ははは。すいません、ちょっと話を飛ばしますけど、スガナミさんは〈SCUM PARK〉と〈SHIN-JUKE〉に触発されて、〈歌舞伎町Forever Free!!!〉をスタートさせたんですか?

スガナミ:いまの話を聞いていて思い出したのが、俺は毎月〈新宿LOFT〉で〈新宿ロフト飲み会〉ってイヴェントをやってるんですよ。新宿の〈LOFT〉はホールのほうの営業とバーのほうの営業で、ふたつ同時に公演を打つときがあるんです。進行も別々で。で、俺らが〈新宿ロフト飲み会〉をやってるときに、隣で〈SCUM PARK〉をやってたんですよ。

浅見:あったね! 2013年8月15日だ!

スガナミ:いや、憶えてないです……。

ははは。

スガナミ:それで、空いた時間に〈SCUM PARK〉を観に行ったんです。ハバナイの“ゾンビパーティー”って曲があるんですけど、そのときにその曲をやってて、お客さんがモッシュっていうよりは、ゴロゴロぶつかり合うみたいな感じだったんですよ(笑)。それがすげぇおもしろくて。あれはむちゃディスコティックな曲で……、いや、ディスコティックでもあるけど、ドドタッ、ドドタッみたいなパンキッシュなノリもあって、それが「ヤベェ! かっこいい」って思って。〈SCUM PARK〉の噂は聞いてはいたんですけど、こんなパーティがあるんだ! って感動して。その流れで、2013年末の〈SCUM PARK〉にGORO GOLOを呼んでもらったんですよ。

じゃあ、ふたりはここ最近、急接近なんですね。

浅見:そうだね、そうかもしれない。突然急接近しちゃって。

スガナミ:俺は自分がメインを張ることもやるんですけど、バディ役というか、バディ・タイプなところもあるんです。

裏方タイプでもあると。

浅見:スガナミくんのそこはすごい助かる。

スガナミ:モチさんもそういうタイプなんですよ。

浅見:そう。スガナミくんとモチさんはそのことに関してはめちゃくちゃ優秀だと思う。こいつらがいると、めっちゃ円滑に物事が進むわけ。ふたりみたいなつなぎ役がいないと、ほんとにただグダグダしちゃうし、下手したら他の人とケンカになっちゃうから。

スガナミ:俺はストレートですけど、惚れた男のためなら、みたいなところがあるんですよ。裏で自分のプロップスを上げてるって、いやらしいところもあるんですけどね。

スガナミさんは浅見さんのどこに男惚れしたんですか?

スガナミ:やっぱり浅見さんのブログなんですよ!

浅見:まじで! そうなんだ。

わかる。浅見さんの文章を読んでると、自分が忘れかけていた情熱が呼び覚まされる。

スガナミ:ざらざらしてて。

浅見:なんだ、俺、顔じゃないのか?!

スガナミ:30代になってから俺は完全にトゲがなくなっちゃったから、「この人はどこまでもこれで行くのかな!?」って超興味を持ったんです。

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そもそも俺のはじまりは25歳ぐらいだから、すげぇ遅いんだよね。だって、下手したら、みんなが大学卒業して、遊ぶのをやめてる年齢でしょ。(浅見)

ああ、それはすごいわかります。じつはそれは今日のインタヴューのテーマのひとつにもしたかったことで、〈SCUM PARK〉でハバナイのライヴやパーティのノリを体感して、最初俺はなにも知らなかったから、25歳ぐらいの人たちが中心のパーティかと思ったんですよ。浅見さんのその若さとエネルギーとパワーと反骨精神がどこから来てるのかってすごい知りたくなりましたよ。

スガナミ:そうですよね。

浅見:俺がイヴェントに行ったりしてたのは20代のはじめぐらいだから、そのころ遊んでたノリの感じを頭に持ったままずっといままできていて。だから、30代ぐらいの適齢のノリがよくわからないし、想定できない。

浅見さんは20代に〈RAW LIFE〉や〈less than TV〉のパーティやイヴェントに遊びに行ってたんですよね。それで、いま自分がオーガナイズできるパワーがついたってことですかね?

浅見:そう、そういうことですね。それが結局30代になっちゃったってことですね(笑)。だいぶ遅れちゃったってこと。そもそも俺のはじまりは25歳ぐらいだから、すげぇ遅いんだよね。だって、下手したら、みんなが大学卒業して、遊ぶのをやめてる年齢でしょ。

浅見さんの〈RAW LIFE〉のインパクトや思い出ってどういうものですか?

浅見:〈RAW LIFE〉と言えば、やっぱり君津の廃墟でやった〈RAW LIFE〉(2005年)ですよね。

スガナミ:あの日はすごかった。ロケーションもヤバかった。

浅見:あのとき、にせんねんもんだいをはじめて観たりして、こんなかっこいいバンドがいるんだって知ったし、BUTTHEAD SUNGLASSとかSTRUGGLE FOR PRIDEとかABRAHAM CROSSを観て、〈CHAOS PARK〉にも何度か行って。だから、〈CHAOS PARK〉と〈less than TV〉の〈HOLLYWOOD JUSTICE〉のインパクトがすげぇある。じつは〈SCUM PARK〉はそういうイメージなんですよね。

今年の7月4日のブログに、「スカムパークはモッシュピットを作ることが一つの目的ではあるんだけど、しかしそれはハードコアのモッシュピットのそれとは違って限りなくダンスに近い。それはバイオレンスや緊張感よりも快楽を優先するわれわれのアティチュードのせいだろう」って書いてるじゃないですか。〈SCUM PARK〉のパーティの個性を上手く書いているなと思って。

浅見:そうそう、ダンスに近いんですよ。でも、俺はハードコアのモッシュピットもすごい好きなんですよ。〈SCUM PARK〉は女性の出演者も多くて、Glocal Pussys、FFF、NDGだって半分近く女の人だし、RAP BRAINSもそうだし、GORO GOLOもはるかさんがいるし、ハバナイだってシンセのさわちゃんがいる。完全に男ばっかりのバンドってそんなにいなくて、そうなるといわゆるハードコアのモッシュピットって現実感がないというか、むしろそれを俺らがやるのは嘘じゃないかなって。

いわゆるパーティ・ピープルがワイワイしてるのもなんかちがうんじゃないかなって。純粋にロックにおけるモッシュピットをダンスとして機能させるというか。

 もうちょっとみんなダンスしたいというか、NDGしかりハバナイしかり、ダンス・ミュージックとして機能する音楽をやりたいんですね。ゲスバンドとか、でぶコーネリアスも出てるけど、彼らの音楽もダンス・ミュージックとして機能している。でも、すべての音楽はダンス・ミュージックとも言えますよね。ただ、われわれの〈SCUM PARK〉で、一般的なクラブ……って言い方がいいのかはわからないけれど、クラブみたいなノリも求められないと思うんですよ。ある種、オルタナのお客さんが多いから、オルタナのお客さんにそういうダンスって求められないと思うから。

つまり、ひとりで陶酔して踊りつづけるダンスとかですか。

浅見:うん。それとか、いわゆるパーティ・ピープルがワイワイしてるのもなんかちがうんじゃないかなって。そうなると、純粋にロックにおけるモッシュピットをダンスとして機能させるというか。

さっきのモッシュピットについて書いたのと同じブログのエントリーで、〈SCUM PARK〉は、『アメリカン・ハードコア』を観たことに端を発してるって書いてるじゃないですか。それで、2、3日前にはじめてあの映画を観て、自分も熱くなって、いろいろ考えさせられもしたんですけど、浅見さんはどういうところに触発されたんですか?

浅見:「ブラック・フラッグ、ヤベエな!」とか「バッド・ブレインズもヤバいな」って(笑)。まずはそこがありますよ。それから、大きなレコード・レーベルがついたりってことじゃなしにはじまった音楽が、ひとつのムーヴメントになっていく、その美しさ、おもしろさがあるでしょ。ギグが普通に家やガレージのなかであって、そこにモッシュピットがあって、エネルギーがあるじゃないですか。音楽を聴いて、単純にこの曲いいなあっていうのはほぼなくて。いま聴くとけっこうよい曲だなってのはあるけれど、はじめて観たときはどの曲も同じに聴こえると思ったから。やっぱりエネルギーですよね、人間の。それが渦巻いてる。

レーガン政権下のアメリカで不満を抱いていた若者たちが暴れはじめるって時代背景も興味深いけど、全米各地に急速な勢いでムーヴメントがアンダーグラウンドで波及していく、その広がり方というか、その過程や人間関係がすごいじゃない。

浅見:そうそう。あのネットワークが広がっていく感じね。しかも、あれだけでかかったムーヴメントが5、6年という短命で終わるじゃないですか。その、エネルギーだけでやって終わる刹那的な感じもわかるんです。流通のルートに乗っけることやプロモーションのための動きじゃなくて、ライヴをやって、遊びに来ている人たちが本当に楽しんで、ドワッとなることが目的で、それを形に残そうとかはあんまり考えてない。俺もそういうものがおもしろいんじゃねえかなって思うんですよね。

俺は、「たとえ3人しかいなくても、モッシュしろ!」ってクラウドに指示を出すから。「3人しかいないんだから、お前らが盛り上げなかったら誰が盛り上げんだ」ってやるよ。(浅見)

 でも、いまの日本のアンダーグラウンドで……、そう言っていいのかわからないんですけど……、いや、言っていいんだけど、シーンってものを考えている人間がわれわれの世代で何人いるのかと。単純に自分たちが有名になるためだけの行動パターンがあって、それこそバンドの紹介を書くときに、「誰々とライヴした」とか「誰々と曲を作った」とかさ、「お前の説明は誰々と共演したことしかねーじゃねーか!」って。そういうプロモーションのためだけの動きが非常に多いなって気がしていて、はたして「それがおもしろいの?」って。だから、〈SCUM PARK〉に関しては、その場のノリを求めてる。俺は、「たとえ3人しかいなくても、モッシュしろ!」ってクラウドに指示を出すから。「3人しかいないんだから、お前らが盛り上げなかったら誰が盛り上げんだ」ってやるよ。

いやあ、素晴らしい。

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音楽を流通させる側に男が多いから、女の人の音楽を流通させるときに、女性の音楽がフラットな視点で評価されてきてないんじゃないかなって思う。(浅見)

浅見:〈CHAOS PARK〉や〈less than TV〉、〈RAW LIFE〉にだって、そうやってシーンのことを考えている人はいたと思うんですよ。たまたまわれわれの世代にあまりいなかっただけで。とにかく、俺はそのときのエネルギーだけを求めて〈SCUM PARK〉をやってるんですよ。

〈SCUM PARK〉には女性の出演者が多いって話が出ましたけど、ふたりは数日前に、「シーンにおける女性の重要性とセクシャルマイノリティについて」ってテーマでユーストリームでトークをやってましたよね。浅見さんはこの点に関してどんな問題意識があるんですか?

浅見:トークはちょっとグダグダになっちゃったんだけどね。うーん、当たってるかはわからないけれど、音楽を流通させる側に男が多いから、女の人の音楽を流通させるときに、女性の音楽がフラットな視点で評価されてきてないんじゃないかなって思う。仮にFFFとかGlocal Pussysを流通させるときとかに、男性的なフォーマットでやると、どうしてもある種“女の子”みたいな感じになる。
 ちょっと上手く言えないけど……、なんだろう、そうじゃなくて、そもそも〈SCUM PARK〉って、俺とモチさんのむちゃくちゃ個人的な遊びなんですよ。こうやってコンピまで作っていただいて、ありがたい状況にはなりつつあるけど、主要なネットのニュース・サイトとかはこのコンピや〈SCUM PARK〉にまったく興味を示してないよ。だから、めちゃくちゃ個人的にやってるし、広げようって感覚もあんまりない。規模としては80人ぐらいがちょうどいいかなって思ってる。それ以上増えると、なんかねー、ちょっとねー、全体のユニティが薄れるねーって(笑)。

ははは。しかもかなり局地的ですしね。

浅見:そう。なんで俺らが下北沢の〈three〉とか〈SHELTER〉とか〈新宿LOFT〉でやるかって言うと、単純にそこが空くって情報が入ってくるから、「とりあえず、そこでよくないか」って感じなんです。価値基準がインディペンデントなんですよ。だから、わかりやすさとかいらないわけですよ。たとえば、“セクシーな女の子のグループ”とか、そういうわかりやすさをまったく必要としない。単純に俺らがかっこいいなって思ったグループを入れる。ただそれだけなんですよ。わかりやすい言葉で説明する必要なんてないんですよ。だからこそ、広がらないんだろうし、フラットなフォーマットを保てるんですよ。

価値基準がインディペンデントなんですよ。だから、わかりやすさとかいらないわけですよ。だからこそ、広がらないんだろうし、フラットなフォーマットを保てるんですよ。(浅見)

あと、浅見さんは、たとえば“むこう側のやつら”とか、そういう言い方で、特定の人というか、ある特定の考え方や価値観と自分たちのやってることにはっきりと線を引いてるところがあるじゃないですか。その、“むこう側のやつら”ってなんなのかなっていうのも興味があって。

浅見:ハバナイは、最初のころからノリを強要するみたいなところがあったし、50人ぐらいのお客さんのほとんどが静かに観てるなかで、前の5、6人がものすげぇ暴れてるみたいな状況があったんですよ。「こいつらのエネルギーはすげぇ!」って、やってる俺らが圧倒されるぐらいのお客さんがいたの。ただ、FFFが静かに観る客ばかりのライヴハウスでいきなり演奏したとして、音楽としてはかっこいいのに、正当に評価されないんじゃないかって疑問はあった。だから、いい感じのグループが正当に評価されるフォーマットを作ろうとは思ってた。

浅見さんがかっこいいと思うバンドが表現できる場を作りたかった?

浅見:あと、そういうコミュニティですよね。そういうのがなぜ皆無なんだろう? って、そこに関してはずっと不満だった。〈SCUM PARK〉をやるにあたって、そのことはすごい考えてましたね。いまだにそのことは考えてる。あのクソだけは絶対に呼ばないっていうヤツらもいますもん。「ああいうクソを呼ぶとまじで寒くなるからな~」って。あはははははっ!
 だから、そう、シーンっていうより、コミュニティって言ったほうがいいと思う。シーンっていうとちょっと規模が広くなり過ぎちゃう感じがあるけど、コミュニティだから、もう少し規模の小さいものなんだよね。だから、俺らがやってるのはコミュニティ・ミュージックなんですよ。ジュークもシーンっていうより、俺はコミュニティに感じちゃんですよ。ジュークが大好きな人たちがいて、コミュニティが存在してる。そういう人がどこに行っても、いつもいる。「こいつがいるとこっちも気合いが入っちゃうな。こいつをなんとかして盛り上げてーな」って人がいるんですよ。「今日はこいつを脱がせたいな」ぐらいの気持ちになる、ふははははっ!

だから、モッシュピットって、そういうコミュニティの熱量やノリや性格がぶわっと表に出てくる、コミュニティの反映なのかなってことを考えたりしましたね。

浅見:そう。だから、〈SCUM PARK〉や〈SHIN-JUKE〉は、その場に行ったことがない人はなんのことやらわからないんですよ。

ぶっちゃけ俺も実際に行くまではいろんな偏見があったし。

浅見:はははははっ。それはコミュニティの音楽だから、そういうもんだと思うんですよ。「もう少しそういうのを広げないと」って言われたりしますね。

〈SCUM PARK〉のコミュニティを広げたほうがいいという意見があるということ?

浅見:そう。ちょっとみんな急ぎ過ぎてるんじゃないかとは思うけど、〈SCUM PARK〉の間口をもうちょっと広げたのが、〈歌舞伎町Forever Free!!!〉なんですよね。まあ、そこがモチさんやスガナミくんがつなぎ役としてめちゃくちゃ優秀なところなんですよ。でも俺は最初、スガナミくんから「〈歌舞伎町Forever Free!!!〉を無料でやる」って聞いて、「それって意味あるのかな?」って疑問に思った。「それだったら、あんまり乗り気じゃないわ。なんで無料にしなきゃいけないの?」ぐらいだった(笑)。でも、実際にスガナミくんがやってくれて、すごい上手く行ったし、モチさんやスガナミくんが言いたい、「無料だったら、ふらっと立ち寄りたい人も観に来れるよ」ってのがわかったんです。
 じつは、〈SCUM PARK〉はチケットの値段を高く設定してるんですよ。当日だと3000円ぐらいするから、超高いの。なぜかというと、俺はちょっと顔を出すとか、そういうヤツはいらないと思ってるし、「ふらっと立ち寄ってるんじゃねえ!」って気持ちがある。ひとつ、ふたつのバンドのライヴに顔出しに来ましたとか、ちょっと挨拶しに来ました、みたいなヤツが俺は大っ嫌いなんで! そういうヤツは来なくていい! って思ってる。最初から最後までいないと、ちょっと高いなって値段設定にしてて、ほんとに来たいヤツしか来れない感じにしてるんですよ。だから、ほんとにスガナミくんは偉いんです!

一同:アハハハハハッ。

この閉鎖的な男(浅見)を、この閉鎖性のまま冷凍保存して世のなかにぶち当てたい。俺はいまの濃さのまま2千人規模でパーティをやりたいって考えてますね。(スガナミ)

スガナミさんは、〈SCUM PARK〉と浅見北斗の、ある種の閉鎖性って言ってもいいと思うんですけど……

浅見:うん、閉鎖性だと思うな。

そこをどうとらえてますか?

スガナミ:2013年は、自分の〈音楽前夜社〉での活動があって、〈SCUM PARK〉があって、イヴェントを乱発してる谷ぐち(順。〈less thanTV〉主宰)さんの〈less thanTV〉があって、〈Booty Tune〉のD.J.APRILさんがいて、それぞれ活発に活動してたと思うんですね。で、そういうパーティをやってるいくつかのクルーで一回いっしょにやってみましょうって話を持ちかけたんです。「今回は俺がケツをもつんでやりましょう」と。〈SCUM PARK〉に出ている人たちがやってる音楽は、フィジカル度の高い音楽だし、酒は出るなってずっと思ってたんですよ。

俺は5月26日の〈歌舞伎町Forever Free!!!〉に行きましたけど、たしか2千円飲み放題でしたよね。

スガナミ:2千円4時間飲み放題みたいなプランもぶち込んだりして、ライヴハウスの構造自体を変えたいという欲求もあるんです。まあ、その話は今日はいいんですけど、逆に言うと、〈SCUM PARK〉を使わせてもらってるんですよ(笑)。

浅見:上手いこと使われちゃったな! って感じですね。悪い意味じゃなくてね。

スガナミ:自分はこの1年で浅見北斗をバズらせるっていう目標を立てて、このコンピレーションは、そのひとつの柱なんです。この閉鎖的な男を、この閉鎖性のまま冷凍保存して世のなかにぶち当てたい。俺はいまの濃さのまま2千人規模でパーティをやりたいって考えてますね。

そう、だから、これまで〈SCUM PARK〉は閉じてたけど、この強力なコミュニティが別の強力なコミュニティとぶつかって、サヴァイブして、新たなビッグバンを起こす。

なるほど。やはりここまで来たら、いま浅見さんに訊いておきたいのは、〈SCUM PARK〉のこの先をどう考えてるか、ということになりますね。

浅見:俺たちが飽きたら止めればいいし、続けたければ続ければいいと思ってますね。すでに目標はいろんなところで達成してはいるんですよ。自分たちのパーティを開いて、クラウドを集めて、自分たちの音楽でモッシュを起こす。そういう、非常にシンプルな目標はある程度達成した。だから、これから同じペースで続けていくことに意味があるかはわからないし、同じメンツで続けていても意味はないかなと思う。身内だけで固まっていてもしょうがないからね。
 いままでだったら、ハバナイを知らない人もたくさんいたから、自分が何者かを説明しなければならなかったけど、いまは〈SCUM PARK〉に遊びに来る人たちはみんな俺たちのことを知っているし、いまから新しいなにかをやるとしてもやりやすい状況にはなってると思うんですよ。最近は、〈less than TV〉や〈Booty Tune〉とも新しいつながりができたし、〈SCUM PARK〉とは違ったことをやりたいという気持ちもある。それこそ3日後に〈ぐるぐる回る2014〉で〈less than TV〉といっしょにやるんですよね。われわれのコミュニティが、われわれがヒーローとしてきたコミュニティとぶつかるわけです。なにが起こるかわからないけど、自分たちは絶対負けたくないし、新しいなにかを起こしたいと思ってますね。
 そう、だから、これまで〈SCUM PARK〉は閉じてたけど、この強力なコミュニティが別の強力なコミュニティとぶつかって、サヴァイブして、新たなビッグバンを起こす。それぞれのコミュニティ・ミュージックがそうやって衝突して、新しいムーヴメントが生まれていけばおもしろいと俺は考えてますね。

interview with Perfume Genius - ele-king

 わたしたちはあるドキュメントに立ち会っている。それは、自らを傷つけていた過度に内向的なゲイ青年が、何も持たず、内側に湧き上がる音楽だけを頼りに外界に立ち向かっていくという……。と、書けば一種典型的なストーリーのようだが、自らをパフューム・ジーニアスと名づけたマイク・ハッドレアスの足取りは非常にドラマティックなものだ。そしてそれは、現代に生きるゲイたちが置かれた状況と無関係であるとは、僕にはどうしても思えないのだ。

E王
Perfume Genius
Too Bright

Matador/ホステス

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 まるでボロボロの自分をそのまま差し出すかのようなローファイさ自体が衝撃的だった『ラーニング』、ミュージシャンとしてのハッドレアスの覚醒を印象づけた『プット・ユア・バック・イントゥ・イット』を経て、3作めとなる『トゥー・ブライト』においてパフューム・ジーニアスは華麗にドレスアップし、そしてサウンド面において大胆に変身を遂げている。ピアノの弾き語りを基調としたトーチ・ソングめいたバラッドという骨格は変わらないが、アリ・チャントとポーティスヘッドのエイドリアン・アトリーという玄人肌のプロデューサーを迎えバンド・サウンドやシンセを大部分で導入し、よりゴージャスで、よりダークで実験的で、より挑発的な態度を晒しているのだ。ドゥーム・メタルすら連想させる不穏な3拍子のナンバー“マイ・ボディ”や、アブストラクトなシンセ・ポップ“ロングピッグ(人肉)”など、これまでのパフューム・ジーニアスにはまったくなかったものだ。“アイム・ア・マザー”のようにおそろしくヘヴィなダーク・アンビエントもあり、感情の振れ幅においても手加減していない。

 以下のインタヴューは先日の〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉のライヴ後に行ったものであり、この時点でまだテクストとして歌詞は目にしていなかったが、いくつか耳に残ったフレーズについて尋ねることができた。その言葉の強さゆえである。歌詞において自己嫌悪や劣等感を隠そうとしないその痛ましいまでの姿はこれまでと変わらないが、しかしながら、その正直さゆえに彼は作品を重ねるごとに、歌をひとつ歌うたびにタフになっていったように思える。“クィーン”は自らを女王と……すなわち、この世界における異物だと宣言し、だからこそ誇り高く振る舞おうとするアルバムを象徴する一曲だ。

 ジョン・グラントでもルーファス・ウェインライトでもアントニー・ハガティでも……フランク・オーシャンでもいいが、いまゲイやトランスジェンダーのシンガーソングライターたちは異端者としての生をその表現において隠そうとしない。それは、社会が無視してきた「クィーン」たちからの逆襲のようだ。マイク・ハッドレアスはつねに自分へのセラピーとしてその歌を紡いできたと言うが、しかし同じように悩みを抱える誰かに自分の音楽が届くことも確信している。だからアルバムのラスト2曲……“トゥー・ブライト”から“オール・アロング”へと至るじつにパフューム・ジーニアスらしいスウィートでフラジャイル、そして美しいピアノ・バラッドは、その力強い眼差しに貫かれているように感じられる。

Perfume Genius/パフューム・ジーニアス
シアトル出身のシンガー・ソングライター。2010年にファースト・フル・アルバム『ラーニング』を、2012年にセカンド・フル・アルバム『プット・ユア・バック・イントゥ・イット』をリリースし、多くのメディアやアーティストから高い評価を受け、注目を集めた。3作めとなる今作にはプロデューサーの一人にポーティスヘッドのギタリスト、エイドリアン・アトリーが参加している。


敵対心とか、そういうものはないよ。ひとを傷つけたくはないしね(笑)。

(〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉の会場にて)今日はお疲れのところすいません。

マイク・ハッドレアス(以下MH):だいじょうぶだよ。

今回は新作について訊きたいんですけど、その前にいくつか違う話題をさせてください。2年前にお会いしたとき、YouTubeから削除された“フッド”のヴィデオの話をしましたよね。あのヴィデオに出演していたポルノ俳優のアルパッド・ミクロスが亡くなってしまって、ゲイ・コミュニティにも衝撃が走りましたし、僕もすごくショックでした。もしあなたがつらくなければ、彼の話を聞かせてくれませんか。

MH:彼とはあのPVの撮影のときに会っただけだから、思い出を語ること自体が申し訳ないなって感じるんだけど……でも、亡くなったことはほんとに悲しかったよ。

その前に発表された“テイク・ミー・ホーム”のヴィデオも印象的でした。あなたがアメフトか何かのユニフォームを着て、ハイヒールを履いて夜の街を闊歩するという。あれはどういうところから出てきたアイデアだったんでしょうか?

MH:あれは自分のクローゼットにあったものを選んできちゃったんだけど(笑)。ちょっとシリアスさもあって、でもジョークっぽさもあって、悪っぽさもあって、そのバランスを取るようにして。アメフトのジャージっていうのはヒップホップのヴィデオなんかでもよく使われてて……リアーナなんかも着てるし、おもしろいかなって思って。

ヒップホップのヴィデオっていうのは、ああいうマッチョさに逆らいたい気持ちもありました?

MH:敵対心とか、そういうものはないよ。ひとを傷つけたくはないしね(笑)。もっと感覚的な部分での表現なんだよ。

じゃあ、ちょっと話題を変えて。フランク・オーシャンのカミングアウトとアルバムについてはどう思いましたか? というのは、あの正直さやセンチメントっていうのに、僕は少しあなたのことを連想したんですよ。

MH:フランク・オーシャンのカミングアウトは、本当に勇敢だったと思う。クリエイティヴな仕事をしていると、そうやってオープンにすることでファン・ベースを狭めてしまう可能性もあるんだよね。ただ、ゲイだからと言ってゲイの音楽だけを聴くわけじゃないし(笑)、フランク・オーシャンもR&Bやヒップホップのフィメール・アーティストの音楽も聴くけど女性じゃないよね。だからそういう意味で、100パーセント共感できなくても音楽は聴いてもらえると思うんだ。(カムアウトすることで)ファンを狭めるって意見もあるけど、僕は必ずしもそうは思わないんだ。彼にはいま音楽しかないし、それを取ってしまったら何もなくなってしまうだろうから、カミングアウトすることはすごく怖かったと思うし、周りも勧めなかっただろうけど、自分を表現するってことはとても大切なことだから、それは正しかったと思う。

もっとこだわらず、自分の好きなようにやればいいと思ったときから自分らしい音楽が書けるようになってきて……

なるほど。では新作『トゥー・ブライト』について訊かせてください。アルバムを聴きましたが、すごく驚きました。録音も違うし、演奏もアレンジも違うし、アルバム全体のトーンも違います。アルバムを作る上で最初にテーマは何か設けていたんでしょうか?

MH:音楽をはじめてこの世界に入ったときっていうのは、もう何もわかってなかったんだけど、セカンド・アルバムからはより真剣にプロ意識を持って、チャンスを生かすようにしてきたんだ。あと、2枚めまではサウンドよりも歌詞に重点を置いてたんだ。で、そこについてはだんだん自信がついてきたんで、今回はサウンドのほうに重心を置きたかった。
 アルバムのトーンや内容が変わったことに関してなんだけど、曲作り自体はいままでと変わらなかったんだよ。曲を書いて作りはじめてから少しずつ変化が出てきたんだけど。3枚めだから周りからのプレッシャーも感じたし、家族や友だちを喜ばせたいって気持ちもあって、最初少し萎縮してしまってたんだ。だけどある時点でそれが弾けて。もっとこだわらず、自分の好きなようにやればいいと思ったときから自分らしい音楽が書けるようになってきて……で、前2作のセラピー的な感じで、より暗く、ワイルドで、怒りがこもった曲が仕上がっていったんだ。

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周りからはゲイ的な歌詞を入れるべきじゃないって意見もあったんだけど、それに反抗するために逆にもっと入れてみたんだ(笑)。もっと声を出して言うぞってね。

なるほど。今日のライヴでも、“マイ・ボディ”みたいな曲はすごくダークでみんなビックリしていましたね。ああいうすごく実験的な曲っていうのは、何か影響元があったんですか?

MH:さっき言ったようにまわりの意見を気にせず自分の作りたいものを作ろう、って切り替えたときに何を大切にすべきかを考えたんだ。たとえばPJハーヴェイ。彼女は秘密にしておきたいことを表現しながらも、とても力強く自信を持って表現しているから、そういう感覚を見習って曲を書きたいと思ったんだ。だから彼女には影響を受けたね。自分の見た目で恥ずかしいと思っているところを、自信を持ってパワフルに歌うっていうことが自分にとってのセラピーになっているんだよ。

前のアルバムのときでもそういった、自分に正直であることっていう話をしましたね。そうした感覚がさらに押し進められているのかなと思います。ただ、歌詞がまだ届いていなくて見られてないので、そこについてもいまから訊いていきたいと思うんですけど。全体を通しての歌詞のテーマはありますか?

MH:そうだね、前作からは自分の生活環境はよくなって、自分で家賃も払ってるし自立してる。ドラッグやアルコールもやめたし。だけどいまでもいつも何かを心配してるし、落ち込むし、自意識過剰になったりするし、急に悲しくなったりする。状況がよくなっても気持ちは昔と変わらない、自分は周りよりも劣っていると思ってしまうときがあるんだ。だけど、それに対して闘っている、周りにも尊重されて、自分自身でも尊重できるように意識できるようにはなってきたから……それが全体のテーマなんだ。音楽的なテーマでもあり、僕自身の人生のテーマでもあるんだよ。

 僕が気取って歩くのは
 ファミリー向けじゃないんだって 
(“クィーン”)

では曲単位でいくつか訊きたいと思います。2曲めの“クィーン”は新しいアルバムの新しいサウンドを印象づけるバンド・サウンドのナンバーですね。「No family is safe」という歌詞が聞こえてきますが、これはひょっとしたら“フッド”のヴィデオがリジェクトされた件と関係あると思ったんですが、どうでしょうか。
(※ヴィデオが削除されたとき、その理由は「not family safe」であると説明された)

MH:直接関係したわけじゃないけど、いろいろなことがインスピレーションになってるんだよね。
アメリカでは家族の価値を守ること、イコール、同性結婚に反対する運動っていうところがあるんだけど、僕にはまったく理解できない。ストレートの夫婦でも離婚率はじゅうぶんに高いし……その恐怖心がどこから来ているか、どうしてゲイのひとたちをそんなに怖がるのか、理解できないんだよ。僕がそんなに害を与えることもないし、サンドイッチを食べたりして普通に暮らしてるだけなのに。周りのひとをみんなゲイにできるんだったらすぐにやっちゃうけど(笑)、そんなことできるわけないんだよ。そういう考え方に対する怒りが、その言葉に反映されているんだ。
 周りからはゲイ的な歌詞を入れるべきじゃないって意見もあったんだけど、それに反抗するために逆にもっと入れてみたんだ(笑)。もっと声を出して言うぞってね。

クール!

MH:(笑)

僕はいままで、いかにまわりに大切にされるか、まわりに尊重されるかってことを考えてきたんだけど、でも大人になるにつれてそんなことは必要ないってことに気づいたんだ。その意識を自分に向ければよかったのに。

ヴィデオがリジェクトされたとき僕もすごく怒りを感じたので、あなたのそういう姿勢は本当にカッコいいですね。“クィーン”っていうタイトルにはクィアネスに対する誇りが込められているんでしょうか?

MH:いろんな意味はあるんだけど、ちょっと自意識過剰になってるときに自分のなかにロイヤル・ファミリーが登場するんだ(笑)。周りから自分を守るために高貴に振る舞うっていう意味もあるし、ゲイを指す意味での「クィーン」でもあるし、すごくパワフルな女性を指しているときもあるし、いろんな意味が混ざってるタイトルなんだ。
 ……なんでいま、ロイヤル・ファミリーみたいに振る舞うって言っちゃたんだろう(笑)!

(笑)いやいや、意味するところはわかりますよ。

やってみるよ
このままでいるよ
首をくくられ 腸をとられ
高いところに横たえられていても
(“トゥー・ブライト”)

E王
Perfume Genius
Too Bright

Matador/ホステス

Indie Rock

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では、アルバム・タイトルの『トゥー・ブライト』はどうでしょう。「トゥー」が入ることで「ブライト」の印象が変わってくるんですが、このタイトル・トラックはどういうことを歌ったもので、なぜこのタイトルになったのでしょうか。

MH:ひとっていうのは物事に対して希望も見えるしダークな部分も見えるんだけど、ダークな部分もほうがより複雑なんだ。だけど、希望を見るほうがより努力が必要で、僕自身正しくないほうを選んでしまう。好きじゃないのにね。それがこの曲のテーマなんだ。

僕がとくに好きな曲が最後の“オール・アロング”という曲なんですけど、そこで「きみは僕の時間を無駄にした」と繰り返されるのが印象的です。複雑なリレーションシップを歌っているのかなと想像していたのですが、これはどういうところから出てきた曲なんでしょうか。

MH:僕はいままで、いかにまわりに大切にされるか、まわりに尊重されるかってことを考えてきたんだけど、でも大人になるにつれてそんなことは必要ないってことに気づいたんだ。その意識を自分に向ければよかったのに、っていう意味で、それだけ時間の無駄だったって歌詞なんだ。愛情を自分に向ければよかったって、聴き手にも言っているし、自分自身にも言ってるんだ。

なるほど。前回のインタヴューでもまさに、「悩んでもいいんだ」って話してくれたので、あなたにとってすごく一貫したテーマなんですね。そこに心を動かされました。

MH:そうだね、ありがとう。

OGRE YOU ASSHOLE vs森は生きている - ele-king

 今年のベスト・ソングのひとつは、オウガ・ユー・アスホールの「見えないルール」でしょう。間違いない。ポップ・ソングとしてもよくできているので、最近は、会話に何かと「目ないルール」が使われています。「ばかやろう、いいか、ここには見ないルールってもんがあるんだよ!」と悪用されることもあるのです。つーか、10月2日って、もう間近じゃないすか。

 待望の新作(初回はカセットテープ付き)『ペーパークラフト』のリリースを10月なかばに控えたオウガ・ユー・アスホール、年内に待望のセカンド・アルバムのリリースを控えている森は生きている。10月2日木曜日、恵比寿リキッドルーム、夜7時から、このふたつの素晴らしいバンドのライヴがあります。来て下さいよ~。
 ライヴを見ている方は、このふたつのバンドのぶっ飛び方をよくご存じでしょう。森は生きているはピースなトリップ、最近のオウガは、ややディープなサイケデリックかもしれませんが、ふたバンドともにリズムがしっかりしていて、実はけっこう踊れます。ひとつひとつのライヴにこだわりのあるバンドですから、当日になってどうなるのかわかりませんが、最高に気持ち良い体験は約束できるでしょう

 編集部は、滅多にありえないこの組み合わせのライヴを記録すべく、当日Tシャツを販売します。気鋭のデザイナー、鈴木聖デザインの、アブストラクトで、けっこう格好いいデザインになったと思います。当日会場で現物を見てください! (値段は未定ですが、高くはしないつもりです)
 それでは10月2日、会場でお会いしましょう。


■OPEN / START 18:00 / 19:00
■ADV ¥3,500(税込・ドリンクチャージ別)
■LINE UP:OGRE YOU ASSHOLE/森は生きている
■DJ:ALTZ
■TICKET チケットぴあ [232-675] ローソンチケット [79610] e+ LIQUIDROOM 7/13 ON SALE
■INFO  LIQUIDROOM 03(5464)0800
https://www.liquidroom.net/schedule/20141002/19248/

Syro 2014 西島大介 - ele-king


西島大介
1974年東京都生まれ、広島県在住。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』、『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。初の作品集『くらやみ村のこどもたち』を刊行。ワタリウム美術館地下オンサンデーズで「くらやみ村のこどもたち」展開催中。

 10月はエレキング月間! いや、正確にはフライング・ロータスを表紙に据えた『別冊ele-king プログレッシヴ・ジャズ 進化するソウル──フライング・ロータスとジャズの現在地』が発売となる9月30日がその皮切りとなります。10月15日には『ele-king』の新刊(エイフェックス・ツイン号!)が登場。そう、10月は“別冊”と“最新号”が揃う特別な月なのです。そして久々のele-king TVも企画進行中。毎度のことながらどちらの内容もウェブでは読めないのですが、お見せできないのがほんとにもったいなくてたまらない……という記事が目白押し。ぜひご購読くださいね!

 では本日は「別冊ele-king」のお知らせから!

■別冊ele-king プログレッシヴ・ジャズ
進化するソウル──フライング・ロータスとジャズの現在地


別冊ele-king
『プログレッシヴ・ジャズ』

Tower HMV Amazon

監修:松村正人
価格:本体 1,700円+税
仕様:152ページ、菊判
ISBN:978-4-907276-20-1
発売日:2014年9月30日

ele-king 別冊第一弾!
ジャズはどこまでジャズか?
ソウル~R&B、ヒップホップ、インディ・ロック、音響、即興、世界と日本、あるいは90年代とゼロ年代に2010年代……いま考えるべきジャズの命題を網羅し、ジャズを逆照射する、一冊まるごとの「ジャズ」号が登場。

●新譜を控えたフライング・ロータスの最新ロング・インタヴュー
●ディスクガイド、ブックガイド100
●FLYING LOTUS、SANABAGUN、Thundercat、Robert Glasper、菊地成孔、SUN RA、スガダイロー、Elizabeth Shepherd、Daniel Crawford、市野元彦×藤原大輔×田中徳崇、大島輝之×大谷能生、中尾勘二×牧野琢磨

 いま欧米のストリートで、ダンス・カルチャーで、エレクトロニック・ミュージックのシーンで、もっともクールなトレンドが「ジャズ」。ロンドンのレコード店に入れば大音量で「ジャズ」が鳴り、ラジオをつければジャズが流れる。DJカルチャーはジャズを堀り、インディ・リスナーはアヴァンギャルドを探求する。テクノにもダブステップにもヒップホップにもジャズが大量に注がれはじめている。
 周知のように、ロバート・グラスパーのグラミー賞受賞をきっかけに、ソウル~R&B~ヒップホップのなかでジャズが再解釈されている。が、現在の「ジャズ」には、さらにもっと自由な風が吹いている!

 プログレッシヴ・ロックのアフリカ・ヴァージョンとも呼べるジャズの新局面。シュギー・オーティスの流れを引く俗称「プログ&B」(プログレ+R&Bの略)。デトロイト新世代のカイル・ホールがうながすブロークン・ビーツ・リヴァイヴァル、サン・ラー生誕100周年で再燃するコズミック・ジャズ、デレク・ベイリー再評価のなか広がるアヴァンギャルドへの情熱、そして大友良英の上昇、シカゴ音響派の再評価、ワールド・ミュージックとしてのジャズ、吉田ヨウヘイgroupやサナバガンなど日本の新世代に見るジャズへの偏愛……。
 活況あるジャズの現状を分類しながら、新旧交えて「いま聴くべき」ディスク・カタログ100枚も収録。
 表紙&カバーストーリーは、近々待望の新作リリースが噂されるフライング・ロータス!


interview with SBTRKT - ele-king


SBTRKT
Wonder Where We Land

Young Turks / ホステス

ElectroUK GarageDubstep

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 サブトラクトのライヴが好きだ。ラップ・トップの前に立ってシーケンサーをいじっているだけで「ライヴ」が成立してしまう今日この頃だが、サブトラクトはちがう。モジュラー・シンセを操り、キーボードを弾き、ドラムでグルーヴをする。しかもライヴが中盤にさしかかる頃には、自分自身から自分を「引き算(サブトラクト)」するためのマスクがズレてしまうほどの熱量だ。デジタル機材の助けももちろんあるのだが、やはり人間、体を動かしまくって汗をかいてなんぼのものである。

 2011年のファースト・アルバム『サブトラクト』をリリースしたあと、仮面の主はシンガーのサンファとともに世界を飛び回っていた(日本ではときにサブちゃんと呼ばれた)。ガラージやUKファンキー的な曲だけではなく、ナイーヴに響く“ホールド・オン”や“ネヴァー・ネヴァー”までもがフロアからダンスと歌声を生み出す原動力になるとは、おそらくサブトラクト自身も想像していなかっただろう。本名のアーロン・ジェイムズ名義では綺麗めなアシッド・ジャズを作っていたわけだが、巧妙な引き算と足し算によってそんなキャリアを微塵も感じさせないアーティスト像をサブトラクトは導き出した。

 ミュージシャンからの信望も厚くなり、リル・シルヴァにリミックスをされたり、レディオヘッドをリミックスしたりと人気プロデューサーになった彼だが、それももう2年前のこと。それだけに新作を待ちわびていたファンにとって『ワンダー・ウェアー・ウィ・ランド』のリリースはうれしい知らせだった。ノンビートにベースが放たれる冒頭、ライヴ修行で培われた生ドラムのリズム、ラップがフロウし、歌とピアノのシンプルな曲が差し込まれる──富みに富んだヴァリエーションをともなって、アルバムは展開していく。なにせ、サブトラクトの指揮下でウォーペイントとエイサップ・ファーグがコラボするサプライズまであるのだ。プレイヤーとしても、プロデューサーとしてもサブトラクトは輝かしい「足し算」に成功してしまったようだ(最新のライヴ映像を見たらステージには4人いました)。
 前作から3年経つので、本誌への登場も久しぶり。先日はフジロックで来日し、これからUK、ヨーロッパ、アメリカを巡る予定の忙しいサブちゃん(リスペクトを込めて)に「どこに着地する」のかを訊いてみた。

SBTRKT
UKを拠点に活躍するプロデューサー。
アルバム・デビュー前から、レディオヘッド、ベースメント・ジャックス、M.I.A、アンダーワールド、ゴリラズにリミックスを提供。2011年のデビュー・アルバム『サブトラクト』のヒット後は活躍もワールドワイドに広がり、〈フジロック〉への出演など、数度にわたる来日によって国内においても人気と注目を集めている。


自分の音楽はどこかに属す感じじゃない。それが正にサブトラクトでいることだよ。

2011年に『SBTRKT』をリリースしてから、あなたはツアーにとても力を入れていましたね。日本にも今年のフジロックを含めて4回も来日しています。ツアーを通して音楽的な変化はありましたか?

サブトラクト(SBTRKT 以下、S):変化はあったと思う。いろんな国に行くことで、音楽的な境界線も広がったことはやっぱり否めないね。家にいてずっとPCに向かって作業したり、インターネットでいろいろ調べるっていう環境から、実際に自分の目で違う世界を見るっていう環境は大きな変化だった。それから、いろんな土地でライヴをやって、その場所ごとに曲の尺やアレンジを変えてみたりして、みんなのリアクションを見るのもすごく勉強になった。

2011年にわたしはイギリスであなたのライヴを見ています。フレンドリー・ファイアーズといっしょにヨーロッパを巡っていたのが印象的でした。彼らの活動にはシンパシーを感じますか?

S:おかしなことに、いっしょにツアーに出るまでは彼らのことをじつはあまりよく知らなかったんだ。彼らの音楽を聴いて、ライヴを観て、本当に衝撃だったよ。ライヴに関していうと、すごく自分にとってもインスピレーションを受ける体験だった。とくに彼らは、ライヴ・ミュージックとエレクトロニックが混ざったサウンドだから、ああいう素晴らしいライヴができることにすごく動かされた。自分自身もいつもライヴに関して野心はあったしいろいろ追求していたけど、彼らのライヴを観て自分ももっと実験したくなったよ。いちばん勉強になったのは、ステージに出てただ楽器を鳴らしてるだけじゃダメなんだってこと。ステージに出たらオーディエンスに何かを与えることが大切だってことを教わったね。

あなたの曲は多くのDJたちからサポートされています。ここ日本では、あなたがリトル・ドラゴンのユキミ・ナガノとコラボレーションした“ワイルドファイヤー”がトラップなどのベース・ミュージックのパーティでかかることもあります。自身の曲はどんなジャンルのDJにサポートされていると思いますか?

S:これは、答えるのが難しいね(笑)。僕の曲をかけてくれる人は、これといったジャンルがない人たちな気がするよ。アルバムの中にいろんな曲があるから、幅広く受け入れられている気がする。たとえば、“ワイルドファイヤー”なんかはクラブDJとかヒップホップやダブステップが好きなDJにピックアップされそうだし、“ホールド・オン”はもうちょっとちがうジャンルのDJが、スローモーション・ディスコが流行っているヨーロッパのクラブとかでかかってるイメージ。
 この観点で観ると、今作はさらに幅が広まった気がする。“ワイルドファイヤー”が好きだった層にはど真ん中な作品でもない気がしているんだ。好きな人は好きだろうけど、新しい領域に行ったって感じているよ。ただ、アルバムの中には“ワイルドファイヤー”が好きな層に刺さる曲もある。アルバムの曲ごとに好みのリスナーがいるように、DJに関しても幅広く好みが分かれると思うんだよね。自分の音楽はどこかに属す感じじゃない。それが正にサブトラクトでいることだよ。

2011年の来日時にあなたは〈DOMMUNE〉でDJを披露し、ラップトップでエイブルトンを使ったスタイルは反響を呼びました。自分のDJについてどう思いますか?

S:2012年のツアーが終わった頃はけっこうDJをしてたよ。自分の新しい音源を試してみたりする場にもなるしね。でも生演奏のライヴをやりはじめてから、すごく自分が満たされることに気づいたんだよ。DJをしていた頃は、エイブルトンとかの機材でどこまで追求できるかっていう精神ではやっていたけどやっぱり限界がある。もちろん生演奏のライヴも限界はあるんだけど、領域はDJの可能性よりも10倍ある気がするんだ。観ている人たちのリアクションって自分次第だと思うんだよね。自分が何もやらなければオーディエンスもリアクションしないだろうし、自分が与えれば与えるほど観ている側もそれに返してくれると思うんだよね。もちろんDJでもそれをオーディエンスに与えられると思うんだけど、ライヴだともっといろいろできるから、いまの自分の情熱は確実にライヴにある。そういえば、DJをやっていた頃は、エイブルトンでもう新たなことができなくなってきたら最後の方はトラクターに変えていろいろ冒険してたなぁ。

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僕は曲を書くときはヒットソングを生み出すっていうより、その瞬間を音で生み出しているって思っている。


SBTRKT
Wonder Where We Land

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今回のアルバム『ワンダー・ウェアー・ウィ・ランド』を最初に聴いたときに、前作よりも生楽器の音が多く使われている印象を受けました。これらはご自身で演奏しているのですか?

S:今回のアルバムはたしかにあまりプログラミングの音っていうのはない作品になっているね。ドラムも生だし、いろんなサウンド・エフェクトもスタジオにある楽器から録った音が多い。その瞬間に誕生した、よりオーガニックな楽曲を作りたかったんだよね。べつにもともとめちゃくちゃアナログな作品を作ろうって決め込んでいたわけではない。プログラミングのサウンドがあったからこそ、いまの自分があるからね。でもやっぱりシンセとかで音を出す方が、コンピューターで音をプログラミングするよりもロマンを感じたんだ。だから以前の作品よりもサウンドとかテクスチャーがちがっている。

前作にくらべてR&B色が強くなったのはなぜですか?

S:とくに意識はしてなかったなぁ。ただ、一つ意識的にやったのは、ハウスっぽい要素にならないようにはしたかなぁ。前作と比べたらテンポ感も変わったから、そこもそう感じる一つの要素かもしれないね。

“ヴォイセズ・イン・マイ・ヘッド”はウォーペイントの演奏に合わせてエイサップ・ファーグがラップをするというユニークな構成でした。まるで自分自身のバンドを結成したようですね。今回、コラボレーションにもとても力を入れていますがなぜでしょうか?

S:そうだね。ここがいちばん難しい部分でもあるんだ。自分に合うコラボレーターを見つけるのは、そもそもそんなにも簡単なことではないからね。自分のヴィジョンを満たしてくれる人ってそんなにもすぐに見つかるものではないから。もちろん素晴らしいアーティストは溢れているし、光栄なことにいっしょにやりたいって言って来てくれる人もたくさんいるんだけど、自分のコンセプトに完全にマッチする人を見つけるとなると本当に難しい。“ワイルドファイヤー”が人気になった途端、有名無名に関わらず、50くらいのアーティストにコラボレーションを持ちかけられたんだよね。でも僕のスタンスとしては、オファーのあったヴォーカリストに合った曲を書くっていうスタンスではない。ローリーなんてアルバムができる数ヶ月前にようやく出会った逸材だし、タイミングもすごく重要だなぁって思う。自分を追い込んでプレッシャーを与えてしまうと、ぜんぜんいいものにならないしね。
 だから、メジャー・レーベルのように期限が設けられて、決められた法則でヒットソングを書いて歌詞の方向性も決められて……っていうやり方は絶対に自分にはできない。僕は曲を書くときはヒットソングを生み出すっていうより、その瞬間を音で生み出しているって思っている。前作も今作も含め、自分のコラボレーションにはすごく満足が行っているし、いいコラボレーションができているって思っているよ。

今作にもサンファが参加しライヴもいっしょにやっています。“イフ・イット・ハップンズ”はピアノと彼の歌のみの構成で、サンファの歌唱力に対する信頼感が感じられます。現在の彼をどう評価しますか?

S:サンファは音楽をいっしょに作っててすごく楽しい相手だよ! じつは今回、彼は演奏をまったくしなかったんだよね。ピアノも全部僕なんだ。でも彼とは本当に息が合っているから、僕が何か音を出せば彼がそれに歌を合わせるという作業が普通にできるんだよね。その逆もあったりするよ。彼にメロディ・アイディアが浮かんだら、僕もそのキーにあった演奏を考えてみたり。そういう自由度のある作業がいっしょにできる関係ってすごく貴重だと思ってるよ。何かのフォーマットや手法に沿ってやるわけではなく、セッションから音楽が作り上げられることに幸せを感じるんだ。

“デイ1”や“デイ5”といった曲名やデザインに使われている世界地図から、テーマに「移動」や「旅」を感じました。そういったコンセプトが今作にはあるのでしょうか?

S:そうだね。少しあったかな。今回、僕にとって大切だったのが、自由に音楽が作れるフォーマットを作ることだった。ツアーとかでいろんな場所に回って世界を見る「旅」という意味ではなくて、いろんな国に自分がコラボレーションしたいアーティストがいたり、レコーディングしてみたいスタジオがあったり……、そういう意味での「旅」なんだ。それと、アルバムを作りはじめた島の影響は大きかったと思う。いつも生活している土地とはちがう不思議な環境に行くことで、なんか「場所」っていう感覚に特別な気持ちが芽生えた感じがした。

ジャケットの動物があなたのマスクを被っている理由はなんですか?

S:そもそもSBTRKTのマスクの意味は、自分(人物)と音楽(音)をかけ離して考えたかったからなんだ。音楽っていうのを自分の日常生活と離して見てほしかった。でも今作は前作と比べたらもう少し日常的になってる気もするかなぁ。今回の動物は、メキシコの神秘的な動物の木造を見て、それに影響を受けて動物を使いたくなったんだ。その神秘にすごく魅了されたんだよね。そのメキシコの動物の木造たちは謎がいっぱいで、とても神秘的な感じで、そこに自分とのシナジーを感じたんだよね。そのアイコンに自分のアイデンティティを残したかったから、マスクを被せた。

ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・コーエンが参加した“ニュー・ドロップ. ニューヨーク”は彼らしいユーモアがタイトルや歌にも表れた曲ですね。彼にはどういうリクエストをしたのでしょうか?

S:いっしょにスタジオに入ったのは一日だけだったんだけど、その中でいっしょにセッションを行った。そのときにエズラが昔ラップを書いてみたことがあるっていう話をしてくれて、その時にニューヨークがテーマになった歌詞のアイディアが思いついたみたいで、そのアイディアをシェアしてくれたんだ。それを元に僕も音楽のアイディアを出して、彼もメロディのアイディアを出して、すごく自然なプロセスを進めていたらああいう曲になったんだよね。

今後、マスクを外すことはありますか?

S:外す必要性はないかな。だけどアートワークとかも含めて、アーティストとしての演出って音楽で変わるものだよね。そのときどきの音楽によってそういう部分も変化していくものだとも思っているよ。

interview with Diamond Version - ele-king


Diamond Version
CI

Mute/p*dis

Minimal TechnoExperimental

p*dis online shop

 今年で設立15周年を迎えたドイツの電子音響レーベル〈ラスター・ノートン〉。美しくもエッジの効いたミニマリズムを基調に、抜群のアイデアと最先端のテクノロジーを融合させた活動は、いまも変わらず現代エクスペリメンタル・ミュージックのひとつの指針であり、それを指向するもの皆の憧れの的である。そんな〈ラスター・ノートン〉を主宰する旧東ドイツ出身のふたり、ミュージシャン/ヴィジュアル・アーティストのカールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)と、ミュージシャン/デザイナーのオラフ・ベンダー(バイトーン)によるユニットがダイアモンド・ヴァージョンである。

 さて、2012年に活動を開始したこのダイアモンド・ヴァージョンだが、何やら動機がものものしい。というか、たのもしい。何でも「ブランド・スローガンや派手な広告、そして滑稽なPRなどのマーケティング合戦の時代に対する反撃」を目的としているというから、元来の〈ラスター・ノートン〉の色からするとじつにお行儀が悪く、また、要所に差しこまれる大味なシンセのメロディや音色など、これまでのふたりの活動には見られなかった下世話さも加味されていて大いに信頼できる(リリースが自身の〈ラスター・ノートン〉からではなく、老舗〈ミュート〉からというのも納得だ!)。これを「ポップ化」と解釈するとじつに収まりが良いのだが、彼らの「ポップ」は一筋縄ではいかない。ミクロレベルにまで細分化された非楽音によるグリッチ&リズムから、織り重なるレイヤーが無限のパターンを作り出す「ずれ美」によるモアレ&ドローンを経て、2000年代後半あたりからメッセージ性を強く含む、重く軋んだインダストリアルなビートが顕著になってきたカールステンたち。そんな彼らが変換する「ポップ」は、じつに論理的で構造的で、さらにすこぶる批評的で……知らず知らずのうちにマーケティング合戦に侵されて、もはや機械化してしまっているわたしたちの認識・判断・行動の装いに鋭いメスを入れ、誇大妄想にさらされたハリボテのような世界の内実をあらわにしてくれる。

 また、彼らのリリース形態も戦略的で、活動開始当初から「EP5枚を発表した後にアルバムをリリースする」と宣言していたが、その言葉どおり、今年いよいよアルバム『CI』をリリースした。モデルでポエトリー・シンガーでもあるレスリー・ウィナー、ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナント、〈ラスター・ノートン〉初の女性アーティストとしても話題のベルリン在住の日本人トラックメイカー、Kyokaらのヴォーカル(ラップ?)をフィーチャリングするほか、ライヴでは何度も共演済みのオプトロン奏者・伊藤篤宏も参加という、理路整然としながらもとても肉体的で、実験的というよりもどこか開放的でにぎやかな内容になっている。
 そして、昨年の〈TAICO CLUB'13〉と〈EMAF TOKYO 2013〉出演に伴うジャパン・ツアーに続いて、早くも3度目の来日が決定しているダイアモンド・ヴァージョン。しかも、今回はエンプティセット、Kyoka、まもなく〈ラスター・ノートン〉よりEPをリリースするUENO MASAAKIらも帯同するレーベル・ツアーというから、期待は高まるばかりだ。
 広告文句が垂れ流す──わたしたちのより良い生活を約束する──企業スローガンなんてまったくもって絵空事にしか聞こえないが、ダイアモンド・ヴァージョンが視覚と聴覚を越えて繰り出すハードでダンサブルなテクノロジー攻撃は(一見、無機質で非感情的に見えるが)、間違いなく、わたしたちがより豊かにより人間らしく生き抜くためのひらめきを与えてくれる。

パンク・ロックやインダストリアルの影響はずっとありましたよ。そもそも、私たちは消費社会非難を表現したいんではなく、グローバル化された経済界と私たちの関係性をより強く反映させたいんです。

ダイアモンド・ヴァージョン(以下、DV)のなかで、カールステンさんとオラフさんの明確な役割分担などはあるのですか?

DV:それぞれの具体的な役割分担はありません。すべてのトラックとヴィジュアルを共同作業で行うようにしています。もちろん、それぞれ特定のことにはっきりとしたフォーカスを向けていますが、トラックやヴィジュアルなど、メインの仕事は常にふたりで作業していますよ。

2012年の結成当初から「EPを5枚リリースした後にアルバムを発表する」と宣言されていましたね。ひとつひとつ段階を踏むことにより、私たちリスナーはDVが最終形に向かって「自己生成」していくプロセスを楽しめるように感じました。このようなリリース形態にした意図を教えてください。

DV:そうです。5枚のEPのレコーディングは過程であり、私たちはリスナーにそれを共有してほしいと思いました。すべてのレコーディングが終わるまでにほぼ1年かかり、5枚めのEPがどんなサウンドになるのか、あまりはっきりしていませんでした。私たちはプロジェクトがどのように成長し、どのような方向に発展するのかを見てみたかったんです。これは、DVをオープンな状態にしておくために非常に重要なことでした。

5枚のEPとアルバム『CI』を通して、すべての曲にフックがあり、さまざまな側面をもちながらも統一感のある内容になっていますね。ふたりの間でコンセプト作り、曲作りはどのように行われるのですか?

DV:私たちにとってDVは、違った形の音楽を実験する場所なんです。自分たちのソロ作品とあまり近くない、別のスタイルに関わってみたかったんです。これに挑戦するために作品のモードを多様化させたり変化させたりしてみました。また、ファイル・シェアリング、同時進行レコーディングからライヴ・セッションまで、これまでのコラボレーションとは異なる方法も試してみました。最初にたくさんのスケッチを作り集めて、どのアイデアやトラックが好きか、どれを精巧に作り上げていくか、などはいつも後で決めています。また、アイデアのひとつにヴォーカルとのコラボレーションを除外しないというのがあったんで、私たちは歌詞の内容になるようなトピックや可能性のあるアイデアについて話し合いました。それが、私たちに広告の世界やメディア・カルチャーのすべての形に関心を持たせたんです。私たちは避けようとしても毎日スローガンにさらされています。だから、企業スローガンはレコーディングのアイデアのキーエレメントになりました。

あなたたちが鳴らす音の核をじっくり聴くと、キックの位置からスネアのタイミングひとつにしてもはっきりとした意思があり、意味をもたせているのを感じます。その姿勢、社会に対する強烈な批評性には電子音楽がもつ冷たさというよりも、パンク/ハードコアがもつパワーとエネルギーを感じます。あなたたちのルーツにパンク/ハードコアはあったりするのですか?

DV:はい、パンク・ロックやインダストリアルの影響はずっとありましたよ。私たちのソロ作品ではこのルーツを常に消している一面もありますが、DVはこの古いルーツに再び関わる正しい時期だと判断しました。そもそも、私たちは消費社会非難を表現したいんではなく、グローバル化された経済界と私たちの関係性をより強く反映させたいんです。あなたがどのくらいの割合でこのシステムの一部として構成されているのか、という答えを見つけようとしているんです。ここにパンクとの繋がりは見えますが、私たちはこのシステムのなかで、私たちみんなが演じる二重の役割を非常に意識しています。

アルバム『CI』では、レスリー・ウィナー、ニール・テナント、Kyokaら一筋縄ではいかないヴォーカルをフィーチャリングし、革新的な音を使用しつつも大衆に訴えるポピュラリティを獲得していることに驚きました。最初からヴォーカルを入れようと決めていたのですか?

DV:はい、それもアイデアのひとつでしたよ。私たちはアーティスティックな方向をとり、過去には戻りたくありませんでした。レコーディングだけではなく、ライヴ・パフォーマンスもできるようなコラボレーションを試みようと、はっきりと考えていました。そこで、私たちの音楽スタイルからできるだけ遠い人たちで、可能性のあるコラボレーターの名前をリストアップしていきました。私たちは単に衝突のようなものを引き起こしたのですが、この衝突は私たちの音楽制作の古いパターンすべてを無くすためにとても重要だったんです。

なかでも、とくにレスリー・ウィナーの参加には驚かされました。レスリー・ウィナーといえばブランドの広告塔ともいえる元スーパーモデルであり、80年代にはDVが攻撃の対象とする「ブランド・スローガンや広告の嵐、滑稽なPRなどのマーケティング合戦」の最前線にいた女性だと思うのですが……。彼女に参加してもらった経緯は?

DV:これは有名なシンガーとのコラボレーションというアイデアだけではなく、私たちがファッション世界のアイコンを探していたからなんです。コラボレーターをモデルやファッション業界から探していたところ、友人がレスリーを推薦してくれました。彼女の過去の背景だけでなく、音楽とファッションにおける役割としても完璧な選択でしたし、もちろん、レスリーのユニークな声と私たちのサウンドの相性がとても良かったんです。

レスリー・ウィナー、ニール・テナント、Kyokaら3人のヴォーカリストにどんなことを求めましたか。また彼女たちがDVにもたらしたものは?

DV:DVでは私たちの過去のプロジェクトを壊し、コントラストや緊張を生み出すために、すべてのコラボレーションに対して可能なレベルでオープンでいるというメインのアイデアがあります。だから伊東篤宏、レスリー、ニール、Kyokaたちとのコラボレーションは非常にうれしいことでした。私たちは〈ラスター・ノートン〉のアルヴァ・ノトとバイトーンのアルバムを生み出したかったんではなくて、いつもの道から離れて新しい空間に自分たちを置いてみたかったんです。これはとても挑戦的なアイデアでした。時々、アーティストは新しいものに挑戦するために困難な道を選ぶんです。

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DVのコンセプトは「アンチ・ラスター・ノートン」だったので、〈ミュート〉は正しい場所かもしれないと感じました。また、私たちには常にアーティストとレーベルオーナーの2つの役割があるんで、この役割を無くし、ただレーベルのアーティストになりたいと思ったんです。

2009年にふたりにインタヴューさせていただいたとき、カールステンさんが「ポップ・ミュージックを変換させたものが将来的な音楽像になるのでは」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。まさにDVがそれを体現しているように思います。今もその意見は変わらないですか?

DV:はい。私たちはポップとの関わりを除外したくないと思っていました。実際にこのアイデアの変形をペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントとのコラボレーションという選択で提案してみました。

DVの作品は自身のレーベル〈ラスター・ノートン〉ではなく、エレクトリック・ミュージックの老舗〈ミュート〉からのリリースとなっていますね。その経緯を教えてください。

DV:レコーディングをはじめたとき、ダニエル・ミラーに〈ミュート〉からアルバムをリリースしないかとオファーされました。DVのコンセプトは「アンチ・ラスター・ノートン」だったので、〈ミュート〉は正しい場所かもしれないと感じました。また、私たちには常にアーティストとレーベルオーナーのふたつの役割があるんで、この役割を無くし、ただレーベルのアーティストになりたいと思ったんです。

若かりし頃に〈ミュート〉に対する思い入れはありましたか?

DV:もちろん! ファド・ガジェッド、 デペッシュ・モード、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン、ライバッハ、スロッビング・グリッスル、ニック・ケイヴなどにはじまり、すべての〈ミュート〉の音楽を聴いています。80年代の中頃は〈ミュート〉をぴったりと追いかけていましたよ。

あなたたちは旧東ドイツ出身ですが、政府による検閲が厳しかった東ドイツ時代に、西側諸国の音楽を自由に耳にすることはできたのですか?

DV:この時期はとても制限されていましたが、私たちは簡単には手に入らない色々な種類の音楽に興味がありました。アンダーグラウンド・ミュージックを聴くことは、私たちにとってとても重要だったんです。ポップ・ミュージックに興味は無く、いつもとても変な音楽を探していました。それを手に入れるためにテープを作ったりレコード交換をしていましたよ。

東ドイツ出身のアーティストで、あなたたちに影響を与えた人がいれば教えてください。

DV:ロックやポップ・ミュージックのジャンルではあまり面白いと思うものはありませんでした。私たちは当時のフリー・ジャズやハプニングなどの芸術運動により大きな興味を持っていて、そのシーンをアーティスティックだと感じていました。大きな影響力のあるバンドは東ドイツにはあまりいなかったんで、私たちは外国の音楽により興味を持っていました。

DVの宣戦布告ともいえる、さまざまな企業の経営理念が次々と無機質に通り過ぎる“Mission Statement”の映像も衝撃的でしたが、女性モデルが登場するコスメティックCMのような“Live Young”、土着的な映像がリズミカルにカットアップされる“Make Believe”など、これまでのあなたたちのイメージを覆す、生身の人間が登場する映像もさらに刺激的でした。DVにおけるヴィジュアル/イメージの取り扱い方について教えてください。

DV:ここではファッション、企業、美、生活様式など、私たちが常にさらされている固定観念──広告のなかの幸福で美しい世界──の上に、トラックの内容を構築するアイデアを見ることができます。あの"Mission Statement"のスローガンがとても過激に聞こえるのは、たんに企業の誇大妄想の結果です。私たちではなく、企業自身がこれらの恐ろしい概念の世界を作り出しているんです。

〈ラスター・ノートン〉の設立当初は、アーティストがレーベルのコンセプトに合わせている印象が強かったのですが、最近ではアーティストの個性が前に出て、逆にレーベルカラーを更新しているように感じます。〈ラスター・ノートン〉設立から15年経ったいまの心境を教えてください。

DV:何年か前から、それぞれのアーティストの個人的なアイデンティティをより打ち出すようにしています。その結果のひとつとして、現在レーベルはよりアーティスティックな多様性を持つようになりました。これはとても意識的なステップでしたね。

〈ラスター・ノートン〉は、グリッチ&リズム〜モアレ&ドローンを経て、2008年のアルヴァ・ノト『Unitxt』、バイトーン『Death of a Typographer』あたりから強いメッセージ性が表面に出てきて、ハードでインダストリアルな方向に向かっているような気がしています。最近、電子音楽界に蔓延しているポスト・インダストリアル的なムードについてどう思いますか?

DV:私たちにとってスタイルはあまり重要ではないんで、次にどうなるのかという質問には答えたくありません。私たちはアーティストにホームを与え、現時点での彼らのそれぞれの方法を信じなければいけません。ジャンルの定義ではなく、個々のクオリティがより重要なんです。私たちはふたつの言葉で言い表せる音楽レーベルにはなりたくないですし、過去、現在、そして、未来のエレクトロニック・ミュージックを反映したいと思っています。

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あの"Mission Statement"のスローガンがとても過激に聞こえるのは、たんに企業の誇大妄想の結果です。私たちではなく、企業自身がこれらの恐ろしい概念の世界を作り出しているんです。

今回〈ラスター・ノートン〉ツアーで大阪、京都、東京を回られますが、ずばり今回のツアーの見どころを教えてください。

DV:日本のフェイヴァリットなクラブのひとつでもあるメトロや、ひさびさにプレイするUNITで、エンプティセット、Kyoka、Ueno Masaakiらと一緒に大きな〈ラスター・ノートン〉ナイトを作り出します。今回はエンプティセットの初来日となるので、これはみんなにとって本当にプレミアですよ!

カールステンさんは、坂本龍一、池田亮司らとのコラボレーションのほか、2002年にワタリウム美術館で開催された『カールステン・ニコライ展』、『横浜トリエンナーレ2011』でのインスタレーション、現在開催中の『札幌国際芸術祭2014』にも映像作品を展示されるなど、日本にもずいぶんと馴染みがあるかと思います。新たに日本で体験したいこと、挑戦したいことなどありますか?

DV:日本はいつも私にインスピレーションを与えてくれる重要な場所です。また、私たちの作品を受け入れてくれてることにとても感謝しています。これがたくさんの自分の作品を日本で最初に見せている理由です。現在は、芸術と音楽の作品両方を結合させたパフォーマティブ・インスタレーションのような、もっと没入型のインスタレーションに集中したいと思っています。

DVの今後の展望をお聞かせください。

DV:DVは可能な限りオープンなプロジェクトとして続けていく予定です。変わったコラボレーション、メディア・フォーマット、パフォーマンスができるさまざまな場所を探したり、通常のツアーバンドのようにならないために、大きなフェスティバルから小さなクラブまで、すぐに対応できる異なるセットアップを発展させていきますよ。

【RASTER-NOTON JAPAN TOUR 2014】

電子音楽レーベルの最高峰、ドイツのRASTER-NOTONが3年振りとなるジャパンツアーを大阪、京都、東京の3都市で開催!

今年6月に待望の1stアルバムをリリースしたRASTER-NOTONのツートップAlva NotoとByetoneのユニット<Diamond Version>をはじめ、初来日となるブリストルの実験インダストリアル・デュオ『Emptyset』、レーベル紅一点のスウィート・カオス・クリエーター『Kyoka』、そして9月にRASTER-NOTONよりEPをリリースする期待の才能『Ueno Masaaki』ら4組がツアーに帯同。また、京都と東京ではAlva NotoとByetoneによる『DJ Alpha & Beta』のDJセットも行われます。絶対にお見逃し無く!!

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【大阪公演】

Date:2014年10月2日 (木)
Venue : 大阪 CONPASS
(大阪市中央区東心斎橋1-12-20 心斎橋ダイワビルB1F)
Time:OPEN 18:30 / START 19:00
Ticket:前売 3000円 / 当日 3500円

LIVE:Diamond Version / Emptyset / Kyoka / Ueno Masaaki

Information: CONPASS (06-6243-1666)

Ticket Info:
ローソンチケット (TEL 0570-084-005): [ Lコード 54122]
チケットぴあ(TEL 0570-02-9999):[ Pコード243-732]
e+

【京都公演】

Date:2014年10月3日 (金)
Venue : 京都 METRO
(京都市左京区川端丸太町下ル下堤町82 恵美須ビルBF)
Time:OPEN / START 22:00
Ticket:前売 3000円 / 当日 3500円

Live : Diamond Version / Emptyset / Kyoka / Ueno Masaaki / Psysex

DJ : DJ Alpha & Beta (Alva Noto + Byetone) / Tsukasa / Tatsuya Shimada (night cruising)

Information: METRO (TEL 072-752-4765)

Ticket Information:
ローソンチケット(TEL 0570-084-005):[Lコード 58334]
チケットぴあ: (TEL 0570-02-9999) [ Pコード242-177]
e+

【東京公演】- UNIT 10th anniversary –

Date:2014年10月4日 (土)
Venue : 東京 UNIT
(東京都渋谷区恵比寿西2-34-17 ザ・ハウスビル)
Time:OPEN / START 24:00
Ticket:前売 3500円 / 当日 4000円

Live : Diamond Version / Emptyset / Kyoka / Ueno Masaaki

DJ : DJ Alpha & Beta (Alva Noto + Byetone)

Information : UNIT(TEL 03-5459-8630)

Ticket Information:
e+
ローソンチケット (TEL 0570-084-005): [Lコード 73883]
diskunion 渋谷/新宿/下北沢 Club Music Shop, diskunion 吉祥寺,
DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO, TECHNIQUE, UNIT

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【Diamond Version】

90年代後半よりポスト・テクノ〜音響シーンをリードするドイツの電子音楽レーベルRaster-Notonの主宰者であるAlva Notoことカールステン・ニコライとByetoneことオラフ・ベンダーが結成したユニット、Diamond Version。これまでにイギリスの老舗レーベルMUTEより2012年〜2013年にかけて5枚の12インチ(『EP1』〜『EP5』)をリリースし、バルセロナのソナー、日本のTaicoclub、EMAFなどのフェスティバルや、デペッシュ・モードのツアーサポート公演に出演。ユニークなコンセプトと独自のポップセンスを盛り込んだアグレッシブなインダストリアル・エレクトロサウンドと刺激的なヴィジュアルがシンクロする圧倒的なライブパフォーマンスは世界中から賞賛と注目を集めている。そして2014年6月、ニール・テナント(Pet Shop Boys)、レスリー・ウィナー、Kyoka、伊東篤宏らをゲストに迎えた待望の1stアルバム『CI』をリリース。

https://www.diamondversion.info

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【Emptyset】

2005年にジェイムス・ギンズバーグとポール・ポーガスが結成したプロダクション・プロジェクト。音の物理的性質、電磁気学、建築、画像生成を駆使し、パフォーマンス、インスタレーション、映像といった幅広い分野で活動を行う。構造主義/物質主義的なアートおよびノイズ〜音楽間の領域を考察するアナログメディアの遺産的な性質を特徴とした作品を制作。これまでに、raster-notonから12インチ『Collapsed』(2012年)とフルアルバム『Recur』(2013年)を、またSubtext Recordingsから『Medium』(2012年)をリリース。ロンドンのTate BritainやThe Architecture Foundationでのインスタレーション制作を行い、CTM、Kunsthalle Zurich、Sonic Acts XIV等のフェスティバルに出演。

emptyset.org.uk

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【Kyoka】

坂本龍一のStop Rokkasho企画やchain musicへの参加、Nobuko HoriとのユニットGroopies、Minutemen/The Stoogesのマイク・ワットとのプロジェクトを行う、ベルリン〜東京を拠点に活躍するスウィート・カオス・クリエイターKyoka。これまでにベルリンのonpa)))))レーベルからの3枚のミニアルバムを発表後、Alva NotoとByetone率いるドイツのRaster-Notonからレーベル史上初の女性アーティストとして2012年に12インチ『iSH』、2014年には待望のフルアルバム『IS (Is Superpowered)』をリリースする。そのポップとエクスペリメンタルを大胆不敵に融合させた、しなやかなミニマル・グルーブは様々なメディアで高く評価され、Sonar Tokyo 2012、FREEDOMMUNE 0<ZERO>ONE THOUSAND 2013へも出演を果たす。

www.ufunfunfufu.com

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【Ueno Masaaki】

桐朋学園大学音楽学部作曲科、同研究科修了。作曲、ピアノ、指揮を学ぶ。第76回日本音楽コンクール作曲部門入選。在学中から、コシノジュンコ/伊藤五郎ファッションショーへ選曲/音源提供で参加、NHK大河ドラマ「功名が辻」のサウンドトラック及び劇中曲の指揮、宮本亜門演出「テイクフライト」に副指揮として参加するなど活動を始める。近年では、現代音楽作品やP±H名義でエレクトロニックミュージックを用いたインスタレーション作品を製作/出品し、2013年からは Ueno Masaaki / ΩPROJEKT名義で電子音響作品の発表を開始。2014年9月、ドイツのraster-notonより1st EP 『VORTICES』をリリースする。

https://oooprojekt.com/

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Photo: Szary / Modeselektor
Editing: Julija Goyd

スローイング・スノーの時間を贈ります - ele-king

 スローイング・スノーことロス・トーンズ。90年代のブリストル・サウンドを今日的に蘇生させ、マッシヴ・アタックとジェイムス・ブレイクをつなぐUKの超大型ルーキーとして多くのメディアから注目されてきたその男が、来週末ついに秋冷の東京に降り立つ。
 ele-kingでは3名の方を会場にご招待。以下の応募方法に沿ってご連絡をいただき、ぜひその姿と音を目のあたりにしてほしい。

■応募方法
下記要領でメールにてご応募ください
ご当選の方にのみご連絡を差し上げました(9月25日16:00現在)。
たくさんのご応募ありがとうございました。

締切を9月24日(水)とさせていただきます

件名:Throwing Snowライヴ招待係
本文:お名前、電話番号(緊急ご連絡用)をお書きください
※メッセージ等はご不要です
アドレス:info●ele-king.net 宛て(●を@に変えてお送りください)


■UNIT / root & branch presents
- Special Showcase in Tokyo -
THROWING SNOW (Houndstooth)

Pitchfork, Guardian, Dazed, Fact, Resident Advisor, XLR8Rなど大手メディアが早くからその動きを追いかけ、マッシヴ・アタック~ビヨーク~ジェイムス・ブレイクといったイギリス音楽の系譜に続く超大型ルーキー、全世界が注目する逸材スローイング・スノーの初来日公演決定! これぞ新世代のトリップホップ!

Live: THROWING SNOW (Houndstooth)
Guest Live: agraph, mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote), submerse (Project: Mooncircle)
DJ: Ametsub

2014.09.26 (FRI) @ 代官山 UNIT
Open/ Start 24:00 ¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door)

Information: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
Supported by P-VINE RECORDS
You must be 20 and over with photo ID.

Ticket Outlets: ぴあ(P: 242-392), ローソン (L: 72714), e+ (eplus.jp), Clubberia (www.clubberia.com/ja/store/), diskunion Club Music Shop (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO and UNIT
*ローソン/e+(8.30 発売)、ぴあ(9.3 発売)

■THROWING SNOW (Houndstooth)
ロンドンを拠点にスローイング・スノーの名前で活動するロス・トーンズ。彼はダブステップ、UKガラージ、ハウスからフォーク、パンク、ハードコア、メタル、そしてレゲエなど様々な音楽を聞いて影響を受けてきた。彼の音楽には心地の良い温かさと、光沢感のある冷たさが共存している。2010年にHo Tepレーベルからデヴュー・シングルをリリースし、その後はゴールド・パンダなどのリミックスを手がけてきた。ジャイルス・ピーターソンやベンジBの強力なサポートもあり、多くのラジオ番組にも出演してきた。 2011年にはDominoやNinja Tuneのような大手レーベルからリミックスの依頼が来るようになった。リリースもSuperやSneaker Social Club、Local Actionなどから続けてきた。2012年には大手音楽サイトのXLR8Rにポッドキャスト用のDJミックスを提供。2013年にはニューヨークで開催されたRed Bull Music Academyへの参加も好評だった。インターネット上でDJのプレイを生中継する人気サイトBoiler Roomにも何度も出演を果たし、ボノボ、アトモス・フォー・ピース、ジョン・ホプキンスなどの前座を務めてきた。またレーベル・オーナーとしても他のアーティストのリリースに協力している。Left Blank(レフト・ブランク)とA Future Without(ア・フューチャー・ウィズアウト)の共同オーナーでもあり、Vessel, Wife, Visionist, Lorca, Memotone, Young Echoなどが駆け出しの頃のリリースを手掛けていた。ヴォーカリストAugustus Ghostとの別プロジェクト、Snow Ghostsもここからリリースもしている。2014年には待望のアルバム『モザイク』に先駆けて『Pathfinder EP』を先にリリース。イギリスの現代のミュージシャンの中で最もユニークなアーティストとの一人としてデヴュー・アルバム『モザイク』は数多くの大手メディアから大絶賛された。
www.facebook.com/throwingsnow www.throwingsnow.co.uk

■agraph
牛尾憲輔のソロ・ユニット。2003年からテクニカル・エンジニア、プロダクション・アシスタントとして電気グルーヴ、石野卓球をはじめ、様々なアーティストの制作、ライブをサポート。ソロ・アーティストとして、2007年に石野卓球のレーベル "PLATIK" よりリリースしたコンビレーション・アルバム『GATHERING TRAXX VOL.1』に参加。2008年12月にソロユニット "agraph" としてデビュー・アルバム『a day, phases』をリリース。石野卓球をして「デビュー作にしてマスターピース」と言わしめたほどクオリティの高いチルアウト・ミュージックとして各方面に評価を得る。2010年11月3日、前作で高く評価された静謐な響きそのままに、より深く緻密に進化したセカンド・アルバム『equal』をリリース。同年のUNDERWORLDの来日公演(10/7 Zepp Tokyo)でオープニング・アクトに抜擢され、翌2011年には国内最大の屋内テクノ・フェスティバル「WIRE11」、2013年には「SonarSound Tokyo 2013」にライブ・アクトとして出演を果たした。一方、2011年以降は "agraph" と並行して、ナカコー(iLL / ex. supercar)、フルカワミキ(ex. supercar)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers / toddle)との新バンド、LAMAのメンバーとしても活動。2014年4月よりスタートしたTVアニメ「ピンポン」では、劇伴を担当。その他、REMIX、アレンジワークをはじめ、CM音楽も多数手掛けるなど多岐にわたる活動を行っている。
www.agraph.jp

■Ametsub
東京を拠点に活動。昨年は山口の野田神社で、霧のインスタレーションを交えながら坂本龍一と即興セッション。TAICOCLUBの渋谷路上イベントにてパフォーマンス。Tim HeckerやBvdubといったアーティストの来日ツアーをサポート。夏にはFLUSSI(イタリア)、STROM(デンマーク)、MIND CAMP(オランダ)といった大型フェスへ招聘される。アルバム『The Nothings of The North』が世界中の幅広いリスナーから大きな評価を獲得し、坂本龍一「2009年のベストディスク」にも選出されるなど、現在のシーンに揺るぎない地位を決定付ける。スペインのL.E.V. Festivalに招かれ、Apparat, Johann Johannson, Jon Hopkinsらと共演し大きな話題を呼ぶ。最新作『All is Silence』は、新宿タワーレコードでSigur Rosやマイブラなどと並び、洋楽チャート5位に入り込むなど、大きなセールスを記録。FujiRock Festival '12への出演も果たし、ウクライナやベトナム、 バルセロナのMiRA FestivalへActressやLoneと共に出演。今年はTychoの新作をリミックス、Plaidと共にスペイン発、Lapsusのコンピに参加。秋にはArovaneやLoscilらの日本ツアーをサポート予定。北極圏など、極地への探究に尽きることのない愛情を注ぐバックパッカーでもある。

■mergrim (moph records, PROGRESSIVE FOrM, liquidnote)
兵庫県出身の音楽家、光森貴久によるソロ・プロジェクト。電子音楽レーベルmoph records主宰。これまでにアルバムをソロ/ユニット/ライブ・リミックス盤などで4枚リリース。downy、川本真琴、miaou、smoug等のリミックスの他、YMOのカバー集「YMOREWAKE」、またXperia™アプリ "Movie Creator" やGRAN TURISMO 6に楽曲提供。また、Sound & Recording MagazineにてCubase記事を短期連載やムック本への執筆なども行う。ライブも都内を中心に精力的に活動。SonarSound Tokyo, DOMMUNE, EMAF TOKYOなどにも出演。打楽器奏者Kazuya Matsumotoとのパフォーマンスは電子音楽の域を越えていると評判。海外ツアーも2011上海、北京、2012ベルリン、ロッテルダム、ミュンヘンなどを敢行。最新作はPROGRESSIVE FOrM x mophより ”Hyper Fleeting Vision” をリリース。7月にはそのリリース・パーティを13人の演奏家を迎え行い、成功を収めた。そこで出会った仲間とともに ”THE MERGRIM GROUP” を結成。更なる躍進へ望む。
www.mergrim.net www.mophrec.net

■submerse (Project: Mooncircle)
イギリス出身のsubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し、ビートミュージック、ヒップホップ、エレクトロニカを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/ビートメーカーとして知られている。これまでにベルリンの老舗レーベルProject: Mooncircleなどから作品をリリースしSonarSound Tokyo 2013、Boiler Room、Low End Theoryなどに出演。また、英Tru Thoughtsや仏Cascade Recordsなどのヒップホップ・レーベルのリミックス・ワークも手がける。2014年には待望のデビュー・アルバム "Slow Waves" がProject: Mooncircleとflauよりリリースされる。また、Pitchfork, FACT Magazine, XLR8R, BBCといった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。
twitter.com/submerse soundcloud.com/submerse facebook.com/submerse submerse.bandcamp.com YouTube.com/djsubmerse

https://www.unit-tokyo.com/schedule/2014/09/26/140926_throwing_snow.php

もっとも艶やかなアンダーグラウンド - ele-king

 グラフィックと音によって独自のカルチャーを作ってきた〈ナイト・スラッグス〉。UKファンキーとグライムをミックスしたサウンドと、ネット世代のデジタルな感覚によって表現された「ストリート」デザインは、UKを中心としながらも世界的な、そしてジャンル横断的なシンパシーを集めています。本誌でも、これまで〈ナイト・スラッグス〉周辺のアーティストのインタヴューや、その特異なグラフィックを取り上げてきました。

 そして2014年9月22日、とうとうレーベル首領のボク・ボクがL-Vis 1990とガール・ユニットを引き連れ日本にやってきます! 同レーベルのアーティストでは、先日東京で行なわれたヘリックスのプレイが記憶に新しいですが、今回も〈ナイト・スラッグス〉のイメージを更新する一夜になることでしょう!

■Red Bull Music Academy presents Night Slugs Label Showcase

日時:9月22日(月)
OPEN/START 23:00
会場:UNIT(代官山)
出演:
〈Night Slugs〉
Bok Bok, L-Vis 1990, Girl Unit
〈Support〉
A TAUT LINE (GREEEN LINEZ / DISKOTOPIA)
1-DRINK
ENDLESS (NEO TOKYO BASS)
FRUITY (SHINKARON/FLIGHT MUZIK)
PENPEN 922 (KOKO MIYAGI + KONIDA)
TOMAD (MALTINE RECORDS)
LICAXXX
BACON(VJ)


料金:前売 2,500円 (税込) / 当日 3,500円 (税込)

チケット情報(8月8日から発売中)
LAWSON[L-code 70667]/e+/DISK UNION[渋谷クラブミュージックショップ/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ]/TECHNIQUE/BEAMS RECORDS/JET SET TOKYO/UNIT
* 20歳未満の入場不可。要写真付身分証

〈Red Bull Music Academy〉
https://www.redbullmusicacademy.jp/jp/events/red-bull-music-academy-presents-night-slugs-label-showcase/

〈代官山UNIT〉
https://www.unit-tokyo.com/

■出演アーティスト紹介

Bok Bok(ボク・ボク)
ロンドンを拠点に活動するDJ/プロデューサー、またレーベル、Night Slugs(ナイト・スラッグス)のディレクターとしても知られるBok BokことAlex Sushon(アレックス・スション)。2009年にL-Vis 1990と共にリリースした"Night Slugs EP"にてデビュー。2011年5月には自身のレーベル、Night Slugsから"Southside" EPを発表し、収録曲"Silo Pass"がクラブヒットした。2013年にはLAの姉妹レーベルFade To Mind(フェイド・トゥ・マインド)より鮮烈なデビューを果たしたシンガー、Kelela(ケレラ)のミックステープ"Cut 4 Me"に楽曲を提供。2014年には三年ぶりのソロ作品"Your Charismatic Self"EPを発表し、Kelelaの歌声をフィーチャーしたシングル"Melba's Call"では、スタイリッシュなPVとともに、官能的かつ機械的なその独特の世界観が貫かれている。


L-Vis 1990 (エルヴィス1990)
Brighton出身のDJ/プロデューサー、L-Vis 1990ことJames Connolly (ジェームス・コノリー)。2008 年に"L-Vis 1990 EP"にてデビューし、同年Bok Bokと共にクラブイベント"Night Slugs"をスタートする。翌年にはMad Decent(マッド・ディセント)やSound Pellegrino(サウンド・ペレグリーノ)などの大御所レーベルからも作品をリリースする。2011年に発表したアルバム”Neon Dreams”ではシンセポップを、2013年にDance System名義で発表した"Dance System EP"ではクラシックなシカゴハウスのサウンドを鳴らすなど、レーベルの多岐にわたる音楽性を体現しているアーティストである。


Girl Unit(ガール・ユニット)
ロンドンを中心に活動するDJ/プロデューサー、Girl UnitことPhilip Gamble(フィリップ・ギャンブレ)。 2010年に"I.R.L" EPにてNight Slugs(ナイト・スラッグス)よりデビューし、同年同レーベルより発表したシングル"Wut"がクラブヒット。クラシックな808や909のリズムにラップやグライム、R&Bのトラックをミックスする彼の独創的なスタイルはUSクラブサウンドのポップネスとUKサウンドの伝統を兼ね備えている。2012年にはアナログ機材を使用して作られた6曲入りEP"Club Rez"を発表。2013年に、Hysterics(ヒステリックス)名義で発表した"Club Constructions Vol.5"ではインダストリアルで冷たいダンスビートを披露している。現在自身初のLP作品を製作中である。

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