「KING」と一致するもの

〈キツネ〉2013! - ele-king

 さて、〈キツネ〉は過去か? 2002年の設立以来、エレクトロ・シーンとインディ・ロック・シーンとを軽やかなフットワークで往復し、ファッションとともにそれらを牽引してきた同レーベル。コンピレーション・シリーズ『キツネ・メゾン』を欠かさずチェックしていた方も多いことだろう。クラクソンズやブロック・パーティ、フェニックスにホット・チップ......しかし時代の移り変わりはどんなシーンにもやってくる。10年をこえて存続するレーベルがつねに新しくあるというのは大変なことだ。だが、その判断は『イズ・トロピカル』の新譜を聴いてみてからにしよう。
 ゲイリー・バーバー、サイモン・ミルナー、ドミニク・アパからなるこのロンドン3人組は、2009年に鮮やかなデビュー・シングルとともに現れ("When O' When"〈ヒット・クラブ〉)、2011年のフル・アルバムでもみずみずしいロマンチシズムをシンセ・ポップに溶け込ませていた。そしてセカンドとなる今作ではソング・ライティングに磨きをかけ、ポップスとしての爽やかな解をストレートに導き出している。愛らしく質の高いポップ・ミュージックとして洗練されることで、彼らのキャリアと〈キツネ〉のイメージを成長させていくような好盤だ。プロデューサーはフォールズやデペッシュ・モードを手がけてきた才人=ルーク・スミス。

■商品情報
アーティスト名:Is Tropical
タイトル:I'm Leaving
仕様:帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤]
品番:TRCP119
価格:2,100円(税込)
発売日:2013.5.15
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70年代初期のサイケとブリット・ポップをテーマにロマンティックなエレポップ、疾走するロックンロール、さらに甘いメロディーを織り交ぜた新機軸サウンド!! 〈Kitsune〉発のスリー・ピース・バンド、イズ・トロピカル待望の2ndアルバム!!

・フォールズやデペッシュ・モードを手がけてきた才人=ルーク・スミスがプロデュース。
・ 先行シングル『Yellow Teeth』にはEllie Fletcherがヴォーカル参加。

クラクソンズ好きも必聴!! カラフルでポップな楽曲を散りばめた彼らの最高傑作!!

デビュー前から雑誌『Dazed & Confusion』の表紙を飾り、破格の新人として『NME』でも大絶賛された〈Kitsune〉発ロンドン出身の覆面スリー・ピース・バンド、イズ・トロピカル。日本でも〈BRITISH ANTHEMS〉に代わる新進気鋭のニューカマーを紹介するイベント〈RADARS〉(レイダース)や〈Kitsune〉レーベル10周年記念イヴェント〈KITSUNE CLUB NIGHT〉で来日するなど根強いファンを持つ彼らが、トレード・マークでもある覆面を脱ぎ捨て、約2年振りとなる最新作を発表! 2ndアルバムとなる今作はフォールズ、デペッシュ・モードまでをも手掛けるルーク・スミスをプロデューサーに迎え、70年代初期のサイケとブリット・ポップをテーマに制作。トゥー・ドア・シネマ・クラブ同様、確かなソングライティングに加え、若き日のデーモン・アルバーンを彷彿させる歌声とスーパー・ファーリー・アニマルズ、ステレオラブ、ティーンエイジ・ファンクラブ、〈Creation Records〉好きにはたまらない甘酸っぱいギター・ポップやロマンティックで切ないエレクトロ・ポップとエッジの効いたダンサブルなトラックまでをも織り交ぜた新機軸サウンドを展開。JKデザインを彷彿させるカラフルな楽曲を散りばめた彼らの最高傑作と言えるアルバムです!

interview with Vampire Weekend - ele-king


Vampire Weekend
Modern Vampires of the City

XL / ホステス

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 1曲ごとにわあっと歓声があがる。「アレだ!」という高揚がある。今年2月、〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉でのショウを眺めていて、『ヴァンパイア・ウィークエンド(吸血鬼大集合!)』はよく聴かれた作品なのだなあと、しみじみと感じた。「ヨウガクの共通体験」なんていうものがますます希薄になる昨今、彼らのようなちょっとややこしい音楽が多くのリスナーにしっくりと受け止められている様子には、やっぱり胸が熱くなる。

 ヴァンパイア・ウィークエンドは本当に素晴らしい。ちゃんとマジでドキドキ、ワクワクがある。ヒリヒリもある。アルバム一枚のなかに、走り、歌い、高揚し、泣き、切なくなって、飛び跳ね、愛し、虚無的になって、笑って、というようなことがひと揃い収まっている。この種のことは嘘っぽかったり安っぽかったりするとすぐに見破られてしまうから、エズラという人はよっぽど並み外れて広いエモーションの幅を持っているに違いない。並み外れて感じ、そして並み外れてそれをうまく音楽に変える。彼らのアフロ・ビートは輸入物ではない。いまそこで、彼らがありありと感じている生きた感情そのものだ。

 くだらないティーンの日常などはのぞきたくないという人も安心してほしい。ポロを着て、ちょっといい大学に通う、ソフトにやんちゃな若者たち......ミドル・クラスの余裕と、その日常への軽やかな批評を漂わせながら、アフロ・ポップに新鮮な血液を送り込んだ彼らは、同じ理由のために揶揄もされたとはいえ、それを跳ね返しておつりが戻るほどクレバーなインディ・ロック・バンドである。デヴィッド・バーンの系譜に数えることもできるだろうが、アフリカン・ミュージック原理主義に陥ることなく、あくまで彼らのリアリティを発火させているところが素晴らしいのだ。だからヴァンパイア・ウィークエンドは、2008年のデビュー作からこのサード・アルバムまでのあいだに、「地元のヒーロー」からワールド・クラスのポップ・アーティストへとステージを上げた。彼らのドキドキ、ワクワク、ヒリヒリには、とくに私小説的な湿り気もドラマも説教もないけれども、はっきりと同じ時代の空気を吸っている人間の心の躍動が感じられる。そして、世代を超えてさまざまな人々にリーチできる音楽的な強度がある。

 2008年。彼らは明るく、天使のように自由で、歴史性に足を絡めとられなどしないように見えた。そして彼らのうしろには、そうした空気を自然に吸うことのできる世代がジャンルを問わず登場してきている気配を感じた。表現ということに対して、何か無限のメタ認識と自己弁明を強いられるような90年代後半~2000年代初頭の息苦しさから突如解放され、あけすけに武装解除をはじめた才能たちを、筆者はとてもまばゆい思いで見つめていたのを覚えている。音は違えど、たとえばチルウェイヴのアルカイックな微笑みがぽつぽつと見えはじめてきたのもこの時期だ。だからこのバンドには万感の思いがあったのだが、ごく短い時間でのインタヴューで、なかなかうまく奥へと踏み込めなかったのは少々心残りだった。

 けれど、ややストレートなロック・アルバムになった印象のこの3枚め『モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ザ・シティ』にも、やっぱり説得されてしまう。エズラが声を裏返すとき、途方もない力でわれわれのなかにメロディを押し込んでくるとき、ロスタムのシンセがまさに彼らでしかありえないフィーリングを鳴らすとき、筆者は2008年という初心に返る。ノスタルジーではない。何度でもやり直して前に進むための新しい原点、「モダン・ヴァンパイアズ」たちの「モダン」なマナーである。

僕らは、トライバルなサウンドというものは意識して避けていた。ただ、抽象的なリズムを採り入れるということは好きだったよ。(エズラ)

新しいアルバムは、(このインタヴュー収録時点の2月では)まだ4曲しか聴けていないのですが、ひとつの変化としてリズムを挙げることができるのではないかと思います。アフロ・ポップのエッセンスは残りながらも、かなりストレートな8ビートが聴けますね。こうしたストレートめなロックのアイディアはどのようなところから生まれてきたのでしょう?

ロスタム:よりストレートなリズムを打ち出すというのは目標ではあったかな。でもそれと同時にユニークなものも作りたかった。シンプルだけどいろんな要素を取り込んでおもしろくしていきたかったんだ。"ドント・ライ"って曲に関してはほんとにロックっぽいものを考えていたんだよね。でもキック・ドラムで16ノーツ、これを繰り返すことでロックだけどアン・ロックなものにできたと思うよ。ちょっとヒップホップ調の、ドラム・マシンで出すような音を目指してみたんだ。今回のアルバム全体が目指したのは、オーガニックな音、だけれどもユニークなもの、ってところかな。

そもそもダーティ・プロジェクターズとかアニマル・コレクティヴとか、ギャング・ギャング・ダンスとか、あなたがたのファースト・アルバムが出た2008年当時はニューヨークの多くのバンドが、ファッションやリズムにおいてもトライバリズムというものを志向していました。そうしたムードをどのように見ていましたか?

エズラ:僕らは、トライバルなサウンドというものは意識して避けていた。ただ、抽象的なリズムを採り入れるということは好きだったよ。なぜ、こうしたバンドたちが同時に同じような音を出しはじめたのかということはわからないけれど、いま自分たちにとって新鮮に感じられるものは、当時の彼らが感じていたものとは違うだろうね。

ヴァンパイア・ウィークエンドのアフロ・ポップって、たとえばカリンバをフィーチャーするとか、現地でフィールド・レコーディングをしたりとか、民俗衣装を着けたりってことをしなかったところが素晴らしくもあると思うんですね。ラルフ・ローレンを着て、世界の中心たるニューヨークで、軽やかにアフロのリズムをはじき出した......そこにわれわれはしびれたわけです。こういうスタイルの選択は何か意識的なものがあったのではないかと思うのですが、どうですか?

エズラ:うん。プランはつねに立ててるんだ。けれどそれが意識的である場合もあれば無意識である場合もある。ミュージシャンとして、アーティストとして、自分が惹かれるものに対して素直にそれを取り入れていくべきだと思っているよ。ステージの上でいろんな格好をするっていうのは、それに惹かれているってことだから、そういう人たちはそれでいいんじゃないかな。

なるほど、ファッションって点で気になるものもあるんですか?

ロスタム:ジュンヤワタナベが好きだよ。僕らが作る曲と、彼の服には何か共通したものを感じるな。アフリカン・ビートだったり60年代ポップスだったり、クラシックだったり、僕らは既存の音楽に共感して取り入れているんだ。ジュンヤワタナベの服も、そうした過去のもの、伝統的なものに共感して作られているという感じがするな。

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キック・ドラムで16ノーツ、これを繰り返すことでロックだけどアン・ロックなものにできたと思うよ。今回のアルバム全体が目指したのは、オーガニックな音、だけれどもユニークなもの、ってところかな。(ロスタム)


Vampire Weekend
Modern Vampires of the City

XL / ホステス

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かつてデビュー作がリリースされた頃の『ガーディアン』なんかを読みますと、みなさんのことは「ローカル・ヒーロー」というふうに呼んでいるんですけど、一昨日のライヴ(ホステス・クラブ・ウィークエンダー)を拝見して思ったのは、大きいバンドになったんだなということなんです。ヒット・ナンバーを中心にステージ構成をしていくような、メジャーなバンドになったんだなと。この数年で、自分たちが引き受けるべき役割への意識に変化はありましたか?

エズラ:最初はかなり高いゴールを設定していたんだ。キャッチーでありながらも深さがあって、より複雑な構成で、というような曲をね。いま自分たちの音楽が世界やシーンのなかのどのあたりに当てはまるのかということを答えるのは難しいけど、自分たちが作った曲が人々に届いて、人々とたしかにつながっているということは感じているよ。自分たちの存在をあらためて確認できている、という感じかな。

ヴァンパイア・ウィークエンドのサウンド・イメージにおいて、ロスタムさんのキーボードの音色が生んでいるユーフォリックなムードはとっても大きな役割を果たしていると思います。たとえば"Aパンク"とか、"オックスフォード・コマ"とか。あの音はもともとあなたのなかにあったものなのですか? それともバンドをやる上で試行錯誤して生まれてきたものなんでしょうか?

ロスタム:大学でクラシックを学んでいたんだけれど、自分の奏でるハーモニーが曲全体に与えるパワーっていうものに魅力を感じていて。弾き語りでもなんでも、そうしたパワーにはつねに意識を置いているよ。

ここのところ80年代風のシンセ・ポップなんかがすごく流行しましたけど、そういう一種通俗的な、ギラギラとした音ではなくて、もっとあたたかくてクリーンで、どことなく新しい感じがする音だと思うんですね。もうちょっと音作りについて教えてもらえませんか?

ロスタム:空間をあけることを意識してるよ。スペース。最小限のもので曲を作るということを意識しているんだ。ただ、そのぶんどの楽器をどのように演奏するかということが重要になってくる。同じメロディ、同じ部分をいろんなパターンで作ってみて、みんなに聴いてもらうんだ。実験することが好きだし、自分がやっていなかったことに挑戦するのも好きだから、"Aパンク"だって、ああいう音はあの時点ではじめてだったんだよ。スペースの話に戻ると、キーボードが抜けてギターが入ってくるときに低音にスペースが生まれるんだ。そこにベースとドラムが入る。そんなふうに作っているんだよね。メロディがどうやってできるかというと、まずは即興、それを聴き直してどんどん形を整えていく、その繰り返しだよ。そのときも考えながらバランスをとっているんだ。

何か別のインタヴューを読んでいて、エズラさんが次の作品は「darker & more organic」になるというようなことを話されていたと思うんですが、「darker」ってどのようなことを指しているんでしょう?

エズラ:今回のアルバムは全体的に同じだけの緊張感を保つようにしたんだ。メジャー・キーの曲が多いにもかかわらず、なんとなく霧が漂うように暗い感じ。それはハーモニーでもメロディでも歌詞でもいっしょなんだけど、僕がダークだと思っているのはそういう緊張感のことだよ。オーガニックということに関しては、部屋のなかでドラムを鳴らすことだね。ウッディな感じ。すべての曲、すべての楽器に、ウッディさを持たせたかった。呼吸をしているような感じというのかな。

なるほど。"フィンガー・バック"なんかは、あなたがたのルーツにファンクもあるんだなってことがストレートに出ている曲かと思いますが、こういうようなアイディアや傾向には、プロデューサーのアリエルさんが関係してたりもするのでしょうか?

ロスタム:メロディや歌詞をエズラが考えて、それに対して僕がドラムを加えていったんだ。50'sロック、ファンク、アフリカン、そのあたりは意識したけど、アリエルとの作業をはじめたときにはリズムはできあがっていたんだ。そこからどのようなドラムのサウンドを曲に反映させていくか。その時点でアリエルの意見は反映させたんだけどね。リズムは僕らのなかにあったものだよ。

本日スタート、東京公演は10日! - ele-king

 ついに全貌を現したぞ、マーク・マグワイヤ2.0!! エメラルズ脱退後初となる新譜リリース&来日という嬉しい情報は、いったいこの敷島の大和の電脳空間をくまなく駆け巡っているのであろうか? 「マーク・マグワイヤ・ジャパン・ツアー2013」は本日5/8(水)、名古屋からスタート。東京公演は10日(金)となる。
 「前回観たしねー」「GWでおこづかい使っちゃったしねー」と躊躇している方にお教えしたいのは、来月発売の新譜の内容だ。東洋趣味のニューエイジ・スタイルからはじまる冒頭1曲だけで、彼におとずれているポジティヴな変化を感じ取ることができるだろう。これまでのソロとはあきらかに違う。よりクリアに、よりドリーミーに、リズム志向に、手も引き出しも広がった印象だ。ピアノまで鳴っている。そして時折、「ああ、マグワイアだ! 久しぶり!」とも言いたいようなマグワイア節が顔をのぞかせる。ストイシズムを遠く置き去りにしたギター・アンビエンスの桃源郷。この感じをライヴでやってくれるだろうか? そうだとすればこれまでの来日を観てきた方にも絶対に損はない。

さて、5.10(金)のUNIT公演は読者の皆様から3名様をご招待! 本記事掲載後にele-kingアカウントよりツイートされる該当記事をRTしてくださった方を対象として、抽選させていただきます!

■チケット・プレゼント応募方法
ele-kingのtwitterアカウントをフォロー後、当該ツイート(【マーク・マグワイヤ来日情報】ではじまります)をRTしてください。
締切は5/9。
当選者の方には5/9(木)24:00までにアカウントへDMを差し上げますのでご注意ください。当日はゲストとしてお入りいただくかたちとなります。

■作品情報
発売日:2013年6月13日
品番:YAIP-6027
アーティスト:Mark McGuire (マーク・マグワイヤ)
タイトル:Along The Way(アロング・ザ・ウェイ)
定価:¥2,300 (税込)
バーコード:4532813530277
フォーマット:国内盤CD
レーベル:Yacca / Inpartmaint Inc.
ジャンル: Electronic / Indie-Rock
商品情報:https://www.inpartmaint.com/#/post-4428
*日本先行発売

次世代エレクトロニック・ミュージック・シーンをリードする若きアメリカ人ギターヒーロー、Mark McGuire(マーク・マグワイヤ)のニューアルバムが日本先行リリース決定! 個人の精神的発展をベースにした「旅」の物語を繰り広げる壮大なスピリチャル・ドリーム・ポップ!!

USアンダーグランドのアナログ・シンセ・リヴァイヴァルの代表各バンド・エメラルズのギタリストとしての活動と平行し、カセットテープ等も含む数多くのソロ作品を発表してきたアメリカ人ミュージシャン、マーク・マグワイヤ。2012年末にエメラルズを脱退し(その直後、スティーブ・ハウシルトもバンドを脱退し、エメラルズは解散。)、現在はソロとして活動を続けている彼が、各方面から高い評価を受け、ソロとしての人気を確立した前作「Get Lost」(2011年 / Editions Mego)から2年ぶりとなる新作「Along The Way」を完成させた。

本アルバムの制作は、エメラルズのラストアルバムとなった「Just Feel Anything」制作後の、2012年8月から2013年2月の間に行われた。このアルバムは、複数のコンポジションから成る4つパートによって構成され、個人の精神的・心理的な発展をベースにした壮大な「旅」の物語として展開されていく。この旅の物語にはマーク本人の成長の過程で起こった様々な経験からの心理描写が反映されている。

本アルバムでは、これまでのソロ作品で主に用いられてきたギターとエレクトロニクスに加え、ピアノ、シンセ、ドラムマシーン、パーカッション、サントゥール、マンドリン等の数多くの楽器が導入されており、さらにマーク本人の歌声やトーキングボックスを使用したボーカルもより前面に押し出された内容となっている。アシュラ~マニュアル・ゲッチング等のクラウトロックとミニマリズムを融合させたギター・アンビエントと前途の様々な楽器やボーカルによる多彩なサウンドアプローチには、これまで以上にソング・オリエンテッドな要素が含まれており、アンビエントやテン年代クラウトロックと称されたサウンドから大きなスケールアップを遂げている。煌めくギターワーク、情熱的なリードギター、センチメンタルにやさしく響くボーカルや生楽器、ニューエイジ感溢れるドリーミーでコズミックなエレクトロニクスのアレンジメントが渾然一体となった、非常にエモーショナルで豊かな音楽性を包含するエレクトロニック・ポップ・サウンドは、マグワイヤの新たなチャプターの始まりを象徴する重要な1枚となるだろう。


■公演情報
Mark McGuire Japan Tour 2013
special guest: Ken Seeno (ex. Ponytail)

5.8(水)名古屋 TOKUZO
5.9(木)大阪 CONPASS
5.10(金)東京 UNIT
5.11(土)新潟 正福寺
5.16(木)広島 ヲルガン座 (*Ken Seenoは出演致しません)
5.17(金)香川 ノイズ喫茶iL (*Ken Seenoは出演致しません)
5.18 (土) 京都 THE STAR FESTIVAL 2013 (*Ken Seenoは出演致しません)

詳細 ⇒ https://www.inpartmaint.com/markmcgure2013/

 

interview with Youth Lagoon - ele-king


Youth Lagoon - Wondrous Bughouse
Fat Possum / ホステス

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 なるほど、彼はベッドルームで録音などしたことがないのだそうだ。てっきりテレコで部屋録りした素材を大事に作り直しているのだとばかり思っていたが、それはベッドルーム・ポップと呼ばれるものへのひとつの偏見だったかもしれない。「音がアイデアのはじまり」と語るユース・ラグーンことトレヴァー・パワーズは、制作環境ではなく、めぐらせた音によって彼自身のパーソナルなスペースを築いている。けっして陰険な音楽でも人嫌いなタイプでもないが、〈ウッジスト〉や〈キャプチャード・トラックス〉にも連なるようなリヴァーブ感は、心地よい遮蔽感覚を与えてくれるだろう。いい具合の隙間にすっぽりと入り込んで、外に陽のあたたかさを感じながら、膝を抱えて眠り込んでしまうような感覚。そこにはうっすらと狂気のにじんだドリーミー・ヴァイブが満たされている。ジャケットの絵が薬物中毒患者の手になるものだというのは、本作のサウンド・スケープをぴたりと象徴するものだ。
 2011年、ドリーム・ポップに活気づくインディ・シーンの追い風も受けながら、彼のデビュー作『ザ・イヤー・オブ・ハイバーネイション』は高評価をもって迎えられた。その時点では、流行や数多の才能のなかにやや埋もれがちな印象もあったが、ときをおいて、いま、彼本来のシンガー・ソングライター的な佇まいがようやくくっきり見えてきたように感じられる。遠景にパンダ・ベアをかすませて、イディオット・グルーやザ・ウォー・オン・ドラッグスやMGMTの間を縫いながら、まるでポスト・チルウェイヴ世代のダニエル・ジョンストンといったような楽曲が並ぶ。プロデューサーは、アニマル・コレクティヴやディアハンターでもお馴染みのベン・アレンだ。ドリーミー・サイケはお手のもの。もちろん時代性やモードに比較するよりも、彼個人の本当にパーソナルな表現だととらえるほうが、本作は輝くだろう。そのような遠近法がとれるようになった、よいタイミングでの快作である。ダニエル・ジョンストンもジャド・フェアも知らないというのは驚きだったけれども......。


自分の心が妙なはたらき方をするっていう事実を受け止めるのに少し時間がかかったんだ。その間に、不安だらけで心配性みたいな、間違った僕の人物像ができてしまったけど、実際の僕はそうじゃないよ。

あなたが活動をはじめた2010年前後から、音楽シーンも少しずつ変化しました。アニマル・コレクティヴが2000年代半ばに示したような新しいサイケデリック・ミュージックも、あなたのような才能を産みながらいろいろな方向へと拡散しています。いまあなたがこのアルバムを “スルー・マインド・アンド・バック”というメディテーショナルなノイズ・アンビエントからはじめたのはなぜでしょう?

パワーズ:アルバムへのイントロダクションになるものが欲しくて、あの曲がそれにぴったりだったんだ。あの曲自体が完成したのはアルバムに入っている曲のなかでも最後の方だったんだけど、出来上がったとき「この曲は冒頭に入れたら上手くいくんじゃないか」って思ったのさ。

“スルー・マインド・アンド・バック”の「バック」とは何ですか?

パワーズ:これはある意味で転換点みたいなトラックなんだ。僕がこの曲を書いていたとき、まるでどこか別の、何もかもつじつまの合っている世界へと連れて行かれたような感じがした。そして書き終わった途端に、また元の世界に「戻って」来たような感じがしたんだよ。

今作はプロダクションも整理されて、しかしあなたの音楽のシンセの丸みや太さ、ノイズ感やえぐみといったものはきちんと残されていますね。プロデューサーのベン・アレンとは相性も合うのではないかと思いますが、録音はいかがでしたか?

パワーズ:ありがとう。このアルバムの録音のプロセスはかなり綿密なものだったよ。ベンと僕は2ヶ月近くもの間、毎日レコーディングし続けた。インターンやエンジニアから成るベンのチームもみなすばらしい人たちだったよ。とても健全な感じのするプロセスだったね。僕が目指していたようなものを引き出しやすい雰囲気だった。

あなたの方からプロダクションについて要望したことはありますか?

パワーズ:レコーディングのためにアトランタに行く前から、ベンとはしばらく電話で話をしていたんだ。彼とは最終的なゴールについてしっかり話し合って意見を一致させておきたかったからさ。そしてそれってどんどん変わっていくものなんだ、ある曲やアルバムについて特定のヴィジョンを持っていたとしても、実際の制作が始まると、そこからまったく違ったものへと変化してしまったりする。それぞれの曲が意志を持って動きはじめるんだよ。今回のプロダクションでは、それぞれの曲が発したがっている音をそのまま出せるようなものにしたかったから、ベンと僕との間には良い意味での緊張感があった。彼の見方が僕の見方と違っていることはあっても、目指しているゴールは同じだったのさ。

ファースト・アルバムは大きく注目され、高い評価をもって迎えられました。このことがその後の音楽制作上の足枷になっているようなことはありませんか?

パワーズ:唯一気にかかるのは、前のアルバムと同じものを期待している人たちがいるってことだね。僕自身が音楽でエキサイティングだと思うことは、予測の出来なさなんだ。同じことを2度はやらないよ。だからそういうのを期待している人たちには、何もあげられるものがないね。

ファースト・アルバムには「不安の克服」というモチーフがあったという記事を読みました。今作にはより穏やかであたたかいムード(“ミュート” などは力強くすらあります)があると思うのですが、「不安の克服」はその後今作にいたるまでの間に形を変えたと思いますか?

パワーズ:とくに不安の克服っていうテーマを意識していたわけじゃないよ。自分の心が妙なはたらき方をするっていう事実を受け止めるのに少し時間がかかったんだ。その間に、不安だらけで心配性みたいな、間違った僕の人物像ができてしまったけど、実際の僕はそうじゃないよ。

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基本的には、無理をしたところのない音楽に共感するね。何か「これをしなきゃいけない」っていう特定の方針みたいなものを持っているバンドだったり、無理をした感じのする音楽が多いけどさ。正直で純粋なものって、聴けばすぐにわかるんだ。


Youth Lagoon - Wondrous Bughouse
Fat Possum / Hostess

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ジャケットのアートワークはあなたの絵ですか? 生命の輪廻の模様が暖色で描かれていますね。これは今作のテーマのひとつでもあるのでしょうか?

パワーズ:僕も絵を描くのがうまかったらよかったんだけど、あのジャケットの絵はマルシア・ブレーズル(Marcia Blaessle)っていう女の人が描いたものだよ。まだアルバムのレコーディングをはじめる前に、たまたまドイツで出版された『ラウシュ・イム・ビルト(Rausch Im Bild)』っていう、70年代の薬物中毒患者についての研究と、彼らの作ったアートについての本を見つけたんだ。そしてその作品のうちのひとつに無性に心が惹かれて、僕のマネージャーにお願いしてその絵の著作権について調べるのを手伝ってもらった。その本のもともとの出版社はすでに無くなっていて、他の出版社に権利が渡っていたから、それを見つけるのに何ヶ月もかかったよ。マルシアももう既に亡くなっているみたいで、彼女についての情報もほとんど見あたらなかったしね。最終的にやっとあの絵の現在の権利者である出版社が見つかって、僕がレコーディングをはじめる頃には絵を使用する許可も全部クリアできた。

曲作りにおいては、歌メロからできることが多いですか? あなたが言葉の上で影響を受けていると感じる作品などがあれば教えてください。

パワーズ:いつも音を作るところからはじめるよ。大抵は強くエフェクトをかけたギターやキーボードの音とかで、そういうふうに実験しながらサウンド面でのインスピレーションを受けていくことが多いんだ。最初に歌詞が出てくることはないよ。僕の場合、歌詞を付けるには、まず先に音楽的な骨組みがなきゃダメなんだ。

ピアノや鍵盤楽器が発想や作曲の中心になるのでしょうか?

パワーズ:そのときどきで違うけど、だいたいギターかピアノだね。まずひとつのアイデアからはじめて、そこから組み立てていくんだ。

あなたは、たとえばダニエル・ジョンストンやジャド・フェアのような我が道をゆく吟遊詩人と、ギャラクシー500や〈エレファント6〉周辺で活躍するようなインディ・バンドのどちらによりシンパシーを覚えますか?

パワーズ:ここに挙げられているアーティストどれもあんまり聴いたことがないよ。基本的には、無理をしたところのない音楽に共感するね。何か「これをしなきゃいけない」っていう特定の方針みたいなものを持っているバンドだったり、無理をした感じのする音楽が多いけどさ。正直で純粋なものって、聴けばすぐにわかるんだ。それがアヴァン・ギャルドなものであれ、ストレートでわかりやすいものであれね。そういうものに惹かれるんだ。

イクイップメントについて教えてください。やはりアナログ機材にこだわっているのでしょうか?

パワーズ:僕はアナログもデジタルも両方使うけど、やっぱり好きなのはアナログだね。温かみを感じるからさ。

ライヴと録音作業ではどちらが好きですか? 宅録に限界を感じることはありますか? 

パワーズ:どちらもそれぞれ独特のものだし、まったく違った体験だよ。でもどちらかを選ぶなら、レコーディングの方が好きと言えると思う。僕にとっては、アイデアがはじまるところだからね。宅録についていえば、僕は自分のベッドルームとかでレコーディングはしないし、したこともないよ。デモのほとんどはカセットテープで録音したけど、それはカセットだと屋外でもアイデアをすぐにレコーディングできるからで、そういうアイデアは大抵外にいるときにできるんだ。『ザ・イヤー・オブ・ハイバネーション』は僕の家の近くのスタジオでレコーディングしたんだよ。

Tim Hecker - ele-king

 まさに待望の初来日だ。ティム・ヘッカー......日本でもいまだ信者の多い『ピッチフォーク』をはじめ、イギリスの『ワイアー』まで、みんな大絶賛の、ここ10年のエレクトロニック・ミュージックにおいては超重要人物ですよ。
 以下、今回の来日に関して、三田格が寄せた文章です。

 ミル・プラトーからリリースされた『レイディオ・アモーレ』(2003年)がはじまりだった。
 テクノ/エレクトロニカはこの時、初めてゼロ年代のアンダーグラウンドを席巻したドローンと接点を持つことになった。
 ひたすら気持ちよければよかったアンビエントはとくにそのセールス・ポイントを失い、耳を覆いたくなるような瞬間を経験しながらもアンビエント・ドローンとして新たなタームを歩みはじめる。ティム・ヘッカー自身もアンビエントやノイズを呑み込んだドローンの多様性にこだわり、その裾野を1作ごとに広げていく。
 〈クランキー〉からリリースされた『ハーモニー・イン・アルトラヴァイオレット』(2006年)はそのひとつの集大成であり、アイスランドの教会で取り組んだオルガン・ドローンの 『レイヴデス、1972』(2011年)は新たな方向性を示すものとなった。
 昨年はOPNと組んだ『インストゥルメンタル・ツーリスト』も話題になった。日本でつくられるアンビエントはいまだに90年代マナーのものがほとんどである。それらがすべて古く聴こえてしまうのは間違いなくティモシー・ヘッカーのせいである。(三田格)

WWW presents Tim Hecker Japan Tour 2013

<東京公演>
日  程:2013年6月7日(金)
会  場:渋谷WWW
時  間:OPEN 19:00 / START 20:30
料  金:前売¥4,000 (ドリンク代別 / オールスタンディング)
問合わせ:WWW 03-5458-7685 

<京都公演>
日  程:2013年6月8日(土)
会  場:京都METRO
時  間:OPEN 17:00 / START 17:30
料  金:前売¥2,800 (ドリンク代別 / オールスタンディング)
問合わせ:METRO 075-752-2787 / WWW 03-5458-7685 

<チケット情報>※2公演共通
先行予約:3月29日(金)19:00 ~ 4月7日(日)23:59
受付URL https://eplus.jp/timhecker
一般発売:4月13日(土)
チケットぴあ[P:197-955]、 ローソンチケット[L:75645]、e+ (https://eplus.jp/timhecker)、
WWW・シネマライズ店頭(東京公演のみ)にて発売。
     
主催:渋谷WWW
協力:京都METRO / p*dis / melting bot

東京イベント詳細URL→ https://www-shibuya.jp/schedule/1306/003742.html
京都公演URL → https://www.metro.ne.jp/


interview with Karl Hyde - ele-king


Karl Hyde - Edgeland
Universal / ビート

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 強風のために電車が止まり、〈ソナー・フェス〉はそこそこの入りだった。おかげでトリにもかかわらず、カール・ハイドも悠々と観ることができた。初めて新宿リキッド・ルームでアンダーワールドを観たときは、客が40人もいなかった。「ボーン・スリッピー」がヒットしてからはどこもかしこもギュー詰めで、もう、こんな風にカール・ハイドを観ることはないと思っていた。いつもはまるで落ち着きのないカール・ハイドが静かな曲ばかり演奏しているうちに、だんだん無駄な動きをしなくなっていったことがとくに印象的だった。

 とはいえ、インタビューの席に現れたカール・ハイドは、やはりとてつもなく落ち着きがなかった。ひとつの質問に答え終わると、すぐに口笛を吹き出し、初のソロ・アルバムとなる『エッジランド』を聴いて、どことなく『スキッパー』というアルバムを思い出したと僕が言うと、すぐにメモ帳にタイトルを書き付けていた。あるいは、イーノが表紙のエレキングを見せると、写メを撮ってその場でイーノ本人に送信しはじめた......え、どうして僕はイーノの表紙を見せたのか? それはカール・ハイドがソロ・デビュー・アルバムをつくろうと思ったきっかけがイーノとの出会いにはじまるからです。では、まあ、順を追って。

イーノとはすでにアルバム1枚分はレコーディングもしてるんだ。でも、僕はいつも誰かに従ってしまうので、このアルバムでは責任を持ちたいと思って、自分がプロジェクトを引っ張れる体制にしたかったんだよ。

(『エッジランド』の特徴をひと言でとらえ、)いまは落ち着いた表現に興味があるんですか?

ハイド:たまたまそうなったというだけだよ。アンダーワールドでも同じようなことはやっていたし、いつもとは違う人たちと組んでみて、音楽に導かれるままやっていたら、こうなったというだけ。僕はプロセスを楽しみたいんだ。だから、コンセプトを決めて、その通りにやるというようなことはしない。

大きく言えばロック・ミュージックをやっているわけだし、クラブ・ミュージックへの反動もあった?

ハイド:僕はクラブ・ミュージックを愛しているよ。でも、そればかりやっていたら飽きて嫌いになってしまうかもしれないから、バランスを取りたいとは思ったよね。

(顔も態度も阿部周平に似てるなーと思いながら)歌い方も全体にすごく優しくなっているし、それは80年代にやっていた感じを思い出したということでしょうか?

ハイド:それは違うんだ。僕はブライアン・イーノに声をかけられて、〈ピュア・シーニアス!〉というイベントのシリーズで歌うことになったんだ。

そうみたいですね。

※「ピュア・シーニアス!」は09年にイーノのキュレイションによって行われた即興パフォ-マンスで、シドニーのオペラ・ハウスを舞台に6時間に渡って繰り広げられた(翌10年には1時間半のヴァージョンがブライトン・フェスティヴァルでも再演されている)。カール・ハイドのほかにはザ・ネックス(『裏アンビエント・ミュージック』P.117)、ジョン・ホプキンス、リオ・エイブラハムが参加。

ハイド:オペラ・ハウスで座席に腰をかけている観客とコミュニケイトするのはとても難しかった。クラブとはぜんぜん違って、いってみれば1対1のような関係だったんだ。どうすれば自分の歌が届くのか。メロディ自体はどんな状況でもすぐに浮かんでくる。いつも家ではドローンやインド音楽を聴くことが多くて、それに合わせて適当に歌っていたから、それは簡単なことだった。フェアポート・コンヴェンションの"フラワーズ・オブ・ザ・フォレスト"(5thアルバム『フル・ハウス』のクロージング)だっけ? あんな感じが好きなんだ。それこそイーノが一音でもピアノを鳴らしてくれれば、どんな風にも歌えた。でも、それだけでは観客には届かない。そうやって歌い方をあれこれと変えているうちに出来上がったものが、いまの歌い方なんだ。同じように日曜日の〈ソナー〉でもMCでオーディエンスに話しかけることは、自分なりのチャレンジだったんだよ。45年もステージに立っていて、まだ新しいことにチャレンジできるなんて、とても嬉しいことだよ。

ああ。ステージの最後で「ペイシェンス(忍耐)」という言葉を使っていたのが気になりました。あれは、ダンス・ミュージックをやるわけでもないし、オーディエンスに「プレジャー」を与えていないということなんですか?

ハイド:いや、違うよ。まだ発売もされていないアルバムの曲を忍耐強く聴いてくれたことに感謝したかったんだ。それどころかアンコールまで求めてくれて。アンダーワールドのアルバムが出てからも大分経つし、そうやって間隔が空いてしまうことにも同じような気持ちを持っているよ。

そうですね。あのときのオーディエンスはまだ聴いてなかったんですね。僕自身はアンダーワールドとはかなりかけ離れた印象を持っていたんですけど、"ダーティ・エピック"を曲目に織り交ぜていたことで、なるほど一貫してるんだなと思えました。

ハイド:そう、そう。

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「エッジランド」......都市も田舎も雑誌では特集されるけど、そのどっちからも外れてしまう場所のこと。ほとんどが廃墟になっていて、忘れさられた場所なんだけど、たくましく生きている人もいる。


Karl Hyde - Edgeland
Universal / ビート

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そういえば、どうして〈ピュア・シーニアス!〉の流れでそのままイーノにプロデュースを頼まなかったんですか?

ハイド:彼は忙しすぎるんだよね。実のところ、イーノとはすでにアルバム1枚分はレコーディングもしてるんだ。でも、僕はいつも誰かに従ってしまうので、このアルバムでは責任を持ちたいと思って、自分がプロジェクトを引っ張れる体制にしたかったんだよ。だから、〈ピュア・シーニアス!〉で知り合ったリオ・エイブラハムに共同プロデュースを頼むことにしたんだ。イーノに頼むと全部、引っ張られちゃうからさ(笑)。

そうですよね(笑)。インタビューしてても、どうも主導権はあっちにあるんですよね(と、エレキングを見せたら、冒頭で書いたようなことになり、ついでにフルーアーの12インチを取り出して、ニュー・ロマンティクス時代のカール・ハイドを見せると......)

ハイド:この曲("ランナウェイ")はこの間、iTUNESで買ったばかりだよ。はっはっはー(といって、ジャケットを持ってマネージャーのところに走っていく)。

(あまりに受けたので、もう1枚、見せる)

ハイド:これは撮影が大変だったんだよ。(ひとりずつメンバーの写真を指差しながら、ああだこうだ言いはじめ)ジョン(・ワーウィッカー)はいま、僕らのスタッフをやっているよ。アルフィー(・トーマス)は、これはグラム時代のイーノをそのままマネしてる。こいつはヒドいやつだね(と、最後に自分の写真を指差す)。

(ひと通り笑い転げてから)音楽はどちかというとカントリー・サイドを連想させるんだけど、『エッジランド』というのは都市を意味しているんですよね。

ハイド:田舎と都市の中間にある地帯だね。都市の端っこの方という意味で使っている。都市も田舎も雑誌では特集されるけど、そのどっちからも外れてしまう場所のこと。ほとんどが廃墟になっていて、忘れさられた場所なんだけど、たくましく生きている人もいる。昔からそういうところに惹かれてたんだ。子どもの頃、そういった場所や錆びた鉄などをアートの題材にしようとしたら、父親から「そういうものはアートの題材じゃない」と言われてしまったんだ。でもね、やっぱり興味があったんだね。

ジャケットの写真に使われている立体交差は実在の場所ですか?

ハイド:そう、ロンドンからエセックスに帰るときはいつもここを通っていくんだ。高架下が、やっぱり昔から好きだったので、こういった写真だけを集めて写真集も出そうかと考えているんだ......。

(ここで時間だと合図される)

ハイド:もう1問いいよ。

じゃー、(アンダーワールドが音楽監督を務めた)ロンドン・オリンピックにモリッシーは批判的でしたけど、彼の意見はどう思いました?

ハイド:自由に自分の意見が言えることは素晴らしいことだと思うよ。いいんじゃないかなー。

 さすがに本人には言わなかったけれど、『エッジランド』にはどうしてもザ・スミスに聴こえてしょうがない曲がある。その曲を〈ソナー〉で演奏しはじめたとき、僕は隣にいた橋元優歩に「ザ・スミスに聴こえるよね」といってふたりで声を押し殺して笑っていた。橋元さんがそれにもうひと言、付け加えた。「声も似てますよね」。

TADZIO presents センキュー☆vol.2 - ele-king

 GW、天気も良いそうだが、とくに行くところがないぜ。
 3日には、下北のスリーでECDを見てから、深夜になったら町田のRITTOとOMSBでも行こうと思っているくらい。どうせ4日は夕方まで爆死するつもりだしな。
 5日は......レコード売ってレコードを買いにでも行こうかな。
 そして、6日はまたしても下北スリーに行って、タッツィオとキラーボングでも見てくるよ。リーダーとこないだばったり会っちまったしな......考えてみれば、行動範囲は狭いが、忙しいGWになりそうだぜ。センキュー!!

■TADZIO presents センキュー☆vol.2!
骨折でしばらく休養していた部長(ds)が復帰し、ついに開催! 

 今回の出演アーティストは......。まずは、TADZIO企画にもはやなくてはならないTADZIOフェイバリッッットな爆裂ハード・フォーク・バンド、久土'N'茶谷! 
 先日、1.7mもある、"開くと戻らない"特殊ジャケットも話題のNEWアルバム『BONANZAS』をブチかました、最凶リズムを繰り出す、ドCOOL、ド漆黒な異系ハードコア・バンドbonanzas (from大阪)! 
 さらに、BLACK SMOKER RECORDS主宰、最も黒い男=KILLER-BONGが、KILLER-BONG所属のLEFTYのVJも務めるROKAPENISとともに参戦! 
 DJは、レコード・レーベルPANTY主宰、トラック・メイカーとしても活動する37A! という、なんとも濃厚な面々。現在、ニュー・アルバムを制作中のTADZIOも、新曲を織り交ぜ、爆音でブチかまします! 
 センキュー!!

5.6 (mon) 下北沢 THREE
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV 2,000 yen / DOOR 2,500 yen (+ drink fee)
LIVE: TADZIO / 久土'N'茶谷 / bonanzas (大阪) / KILLER-BONG + VJ ROKAPENIS
DJ: 37A (PANTY)
INFO: THREE 03-5486-8804 www.toos.co.jp/3


下津光史 - ele-king

 着いたのは8時過ぎ。案の定、下津光史は、缶ビールを持って、良い感じに酔っぱらっていた。彼をライヴのトリにしてはいけない。この恐るべき23歳は、踊ってばかりの国のライヴの最中でも、終盤になればビールを欲する。他人とは思えないし、そして、そんなことで彼を賞賛したいわけでもない。
 しかし、この、長身の金髪のど不良は、たとえ瓶ビールをラッパ飲みしながらステージに現れても、リズム感を失わず、ギターと歌でグルーヴを作り、目の覚めるような歌を歌うことができる。

 ありきたりの、芸のない表現だが、彼の音楽からは、忌野清志郎、山口冨士夫、ジェフ・バックリィが見えるだろう(本人は憂歌団を主張するが)。日本にジェイク・バグがいるのか? と問われれば、下津がいると僕は答える。ソロであろうとバンドであろうと、そのくらい、この不良のライヴ演奏からは、彼がいまのところ残している録音物以上のエネルギーを感じる。飲み屋で酔っぱらって、自由に振る舞いすぎて、怖いお兄さんに一発二発ぶん殴られても翌日にはケロリと歌っているようなタイプの男だ。インターネット・ロマン主義にありがちな去勢された感じがない......というか、彼にはインターネットがそもそもない(笑)。ゆえに、本当は、こんな若いどチンピラの歌など笑ってやりたいのだが、......いや、でも目指す理想は、笑ってばかり国だ。真夜中を笑い飛ばせ。

 下津は、今日の日本のU23(ヒップホップのLOWPASS、オーバーエイジ枠として哲丸、大阪のSEIHOなどなどが入る)のなかでも、もっともニヒリズムを抱えているように見受けられる。目をまんまるにして、腹の底から怒っているように見えるが、しかしこの青年の音楽は、決して絶望のド壺にハマることがない。『コブラの悩み』やタイマーズの頃の清志郎を彷彿させる......"踊ってはいけない"や"セシウム・ブルース"は、ありがちな、ひとりよがりの政治的主張を越えて、多少のおかしみをもって抵抗している。あるいは、「人生はただの罰ゲーム」と彼が歌うとき、しかし彼の声と歌が、人生は罰ゲームなんかではないと言っているように聴こえる。
 
 僕がどうして下津光史のライヴにいるのか説明しよう。昨年のある晩のこと。電車で哲丸と一緒に帰る途中に、「同世代でもっとも好きなバンドはなに?」と訊いたところ、間髪入れず、「踊ってばかりの国」と言われたので、さっそく僕は、当時下津が住んでいた、都内某所の取り壊し寸前のクソ古いビルの地下のスタジオに彼を訪ねたのだ。それがきっかけだった。真冬だというのに、寝具などどこにも見あたらない、衛生とはかけ離れた、汚く、冷たいスタジオのなかで、寝起きの彼を二度襲撃した。「寒くないの?」と訊いたら、「裏技があるんですよ。寒くなったら、ギターアンプの電源を入れるんですよ」と真顔で答えたのが下津だった。
  
 踊ってばかりの国は7月に再活動するそうで、アルバムは年内にはリリースされるらしい......。未来は明るいかもよ。


Christopher Owens - ele-king

 開演前のSEで、アトラス・サウンドとビーチ・ハウスの曲が会場で流れた。クリストファー・オウエンスが選曲をしたのだろう。僕はそれを聴き、ガールズの"ラスト・フォー・ライフ"で歌われている、「 I wish I had a beach house」という一節を思い出しながら、そういえばあの歌を聴いてから約4年が経過したんだなぁ~と物思いに耽っていた。

 クリストファー・オウエンスはその4年のあいだに、2枚のアルバムをガールズからリリースしたのち、去年、自らバンドの活動に終止符を打った。

 新しい道を歩みはじめるべく、彼が選んだ選択はソロ活動で、デヴュー・アルバム『リサンドレ』の発売は、これまでの暮らしや、自分が窮屈だと感じてしまうバンドでの日々との決別であった。
 今作の、これから先に待っているものが、これまで以上に輝かしく、愛に溢れる自由で希望の道なんだと言わんばかりのソングライティングは、新しい決意に溢れ、4年という歳月のなかで彼が培った、音楽への底知れない深い慈しみと、彼自身の成長とが落とし込まれた作品でもあった。

 そんなアルバムを引っ提げての来日公演。アメリカまでガールズを観に行っちゃう僕からしてみれば、楽しみでないはずがない! それに、作品を盛り上げていたフルートやピアノ、さらにはサックスなどの楽器を取り入れたスケールをどこまでライヴに反映させることが出来るのか、とても興味深かった。

 ステージに登場したクリストファー・オウエンスを含む7人のサポート・メンバーは、アルバム同様『リサンドレ』のテーマ・ソングであるAマイナーのインストゥルメンタルから、曲順通りに次々とライヴを進行させた。"ニュー・ヨーク・シティー"や、"ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン"などのアップテンポなロック・チューンで会場は盛り上がりはじめたが、その後はしっとりと聴かせるナンバーが続き、アンコールで5曲のカヴァー・ソングを披露してライヴは終了。......あっという間だった。

 ライヴは50分あまりの、わりと「あっさりしたもの」だったが、キャット・スティーヴンス、ドノヴァン、サイモン&ガーファンクル、エヴァリーブラザーズ、ボブ・ディランなどの、往年のアーティストの名曲を披露したアンコールはとても盛り上がった。そして、アルバム録音メンバーと同じサックス奏者の演奏は常に素晴らしかった。
 良いライヴだっただけに、次回は是非、会場から汗が出るほどぎっしり埋まって欲しいし、僕と同世代の人にもっと来て欲しい。
 ちなみに、当日会場に来られた坂本慎太郎さんは、ママギタァと日本の古いミュージシャンのCDをいくつか渡したそうです。
 また、後日談として、坂本慎太郎さんの歌詞を萩原麻理さんに英訳してもらったクリストファー・オウエンスは、"まともがわからない"の歌詞をえらく気に入ったそうだ。ハハハハ。良い話。

 クリストファー・オウエンスは優しさを語れる、数少ないアーティストなのかもしれない。ライヴを見ながら、そんな大きなことを思ってしまった。

「ぼく自身はあのプロダクションにすごく惹かれるんだよね。あと、あの時代の音楽には、すごく純粋な感触がある気がする。ある意味すっごくシリアスなんだけど、同時にシリアスでもないっていう。」ジャック・テイタム(本誌インタヴューより


Wild Nothing -
Empty Estate

Captured Tracks / よしもとアール・アンド・シー

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エイティーズのUKインディ・ロックへの思慕をあふれさせた美しい2枚のアルバムにつづき、ワイルド・ナッシングことジャック・テイタムからささやかな音の贈り物が届けられた。ミニ・アルバム『エンプティ・エステイト』は5月15日リリース。終わらない夢のつづきを、この10曲とともにたどってみよう。"ア・ダンシング・シェル"ではディスコ色が加味され、エール・フランスからメモリー・テープス、パッション・ピットまで想起させる涼しげなダンス・ビートが感じられるが、それでも依然として彼の夜はプール・サイドやクラブにはない。前作ののちにブルックリンに移り住んではいるが、それはいまだ、どこかジョージアあたりの田舎の家屋の、静かな窓のなかにある。

Wild Nothing "A Dancing Shell"


3月15日に行われた初来日公演もソールド・アウト!

米ヴァージニア州出身のドリーム・ポップ/シューゲイズ・バンド、ワイルド・ナッシングのミニ・アルバム『エンプティ・エステイト』のリリースが決定!!

3月15日に行われた初来日公演もソールド・アウト。ここ日本でも大きな注目を浴びる米ヴァージニア州出身のドリーム・ポップ/シューゲイズ・バンド、ワイルド・ナッシング。昨年の8月(日本は9月)にリリースされ、iTunesの「2012年ベスト・オルタナティヴ・アルバム」も獲得した傑作セカンド・アルバム『ノクターン』に続き、全10曲入り(日本盤ボーナス・トラック含む)ミニ・アルバム『エンプティ・エステイト』のリリースが決定。日本盤のみミシェル・ウィリアムズ(『マリリン 7日間の恋』『ブルーバレンタイン』『ブロークバック・マウンテン』)をフィーチャリングした「パラダイス」の別ヴァージョン他、ボーナス・トラックを3曲追加収録。

■ワイルド・ナッシング『エンプティ・エステイト』
Wild Nothing / Empty Estate
2013.05.15 ON SALE!
¥1,400 (税込) / ¥1,333 (税抜)
歌詞/対訳付
★日本盤ボーナス・トラック3曲収録★

[収録曲目]
01. The Body In Rainfall / ザ・ボディ・イン・レインフォール
02. Ocean Repeating (Big-eyed Girl) / オーシャン・リピーティング(ビッグ・アイド・ガール)
03. On Guyot / オン・ギヨー
04. Ride / ライド
05. Data World / データ・ワールド
06. A Dancing Shell / ア・ダンシング・シェル
07. Hachiko / ハチ公
08. Paradise (Radio Edit) / パラダイス(レディオ・エディット)*
09. Paradise (featuring Michelle Williams) / パラダイス(フィーチャリング・ミシェル・ウィリアムズ)*
10. Paradise (Setec Astronomy Remix) / パラダイス(セテック・アストロノミー・リミックス)*
* 日本盤ボーナス・トラック
All songs written and produced by Jack Tatum (ASCAP)

[バイオグラフィー]
ワイルド・ナッシングはアメリカのポップ・バンドだ。ただ、バンドと言ってもジャック・テイタムしか在籍していないワンマン・バンドである。2010年、21歳のテイタムはヴァージニアのブラックスバーグの大学の最終学年に籍をおいていた。そしてこの年の春にリリースされたのが、ワイルド・ナッシングのデビュー・アルバム『ジェミニ』である。このアルバムは2010年の夏のカルト・ポップ・レコードとなった。80年代のインディ・ポップをルーツに持つこの作品は、インターネットを通して瞬く間に人気を獲得することになり、評論家からも極めて高い評価を獲得した。2011年、テイタムはセカンド・アルバム『ノクターン』の制作を開始。「僕の理想世界の中でポップ・ミュージックは何だったのか、またどうあるべきなのか、といった感覚を表現したアルバムだ」と彼自身が語るこのニュー・アルバムは、まさにテイタムのポップ・ミュージックに対してのヴィジョンが詰め込まれた傑作となった。アルバムは、iTunesの「2012年ベスト・オルタナティヴ・アルバム」も獲得し、2013年3月に行われた初来日公演もソールド・アウトとなった。

※日本オフィシャル・サイト: www.bignothing.net/wildnothing.html


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