「KING」と一致するもの

Peaking Lights - ele-king

 禁煙してからすでに8年以上経っているが、このアルバムを聴いているとたまらなく吸いたくなる。いかんいかん。そう思っていると本当に煙が夢に出てくるから困る。だからこういうことを安易には言いたくないのだけれど、それにしたってこれは......スモーカーズ・デライトなアルバムである(『ピッチフォーク』はこれをアヘン・フレンドリーな作品だと評しているが、そうなのだろうか......)。いずれにしてもこの音楽はサイケデリックであり、ダブである。音の幻覚作用に関する優れた調合士として名高い、サン・アローを追いかけている三田格が何故このアルバムをスルーしたのか理解しかねるほどだ。

 アメリカはウィスコンシン州マディソンの男女によるピーキング・ライツ(頂点に達する灯り)は、2年前に1枚のアルバムをCDRやカセットテープといったメディアをメインにリリースしている〈ナイト・ピープル〉から発表している。彼らのセカンド・アルバムにあたる『936』はあたかもLAヴァンパイアーズのアルバムに続くかのように、〈ノット・ノット・ファン〉の最近の傾向を象徴する作品となっている。つまり、ダビーでサイケデリックだが、ポップなのだ。
 ピーキング・ライツのポップさは、彼らのわりとはっきりしたメロディラインにある。ローファイで、あたかもオブラートで包まれた半透明な世界で反響するような歌でありながら、ここにはメロウネスもある。ヴォーカルを担当するインドラの声はレイジーではあるけれど、ドラッギーなロマンが漂っている。ホープ・サンドヴァルほどエロティックではないにせよ、僕には魅力的だ。もっともベースラインはレゲエ・マナーを押さえ、スピーカーの低音領域を絶えず震わせている。ドラムマシンは始終ゆったりとしたテンポをキープしている。ニュー・エイジ・ステッパーズとLAヴァンパイアーズの溝を埋める......とまではいっていないかもしれないけれど、かなりいいセンまでいっている。曲の随所に挿入されるメランコリックな鍵盤のフレーズも悪くない。ベスト・コーストのような新種のビーチ・ポップと言っても差し支えないだろう。チルウェイヴに取って代わるかもしれない、至福のポップだ。

 オール・ザ・サン・ザット・シャインズ......輝けるすべての太陽よ、彼女はそう繰り返しているが、アメリカの西海岸にはいま、どう考えてもサイケデリックな光に照らされた場所がある。絞り染めのワンピースを来た女が海の家でもくもくになりながらダブミキシングをしている......もしくは、いまそこに陽光が降り注ぐ海がある。目を開けているのがつらいほど、世界は眩しい。ビーチバッグのなかには『936』がある。木陰を見つけて寝そべって、まぶたをゆっくりと閉じて、もう何もしなくていい、何も......。


(↓......そして、橋元優歩さんも同じネタで書いてきたのであった)

橋元優歩
Apr 20, 2011

 ソファーにもたれてキスをしたりしながら、彼氏はギターでノイズを出しつづけ、彼女は歌い、ハンディなシンセでオルガンのリフを奏でつづける。〈ノット・ノット・ファン〉から、ダビーでミニマルなサイケデリック・エクスペリメンタル男女デュオ、ピーキング・ライツの新作がリリースされた。キスをしながら演奏するのはヒッピー、と思っていたが、ピーキング・ライツがヒッピーから受け継ぐものは、そのディープなサイケデリアのみ。退廃的なキャラクターを持った音とは裏腹に、夫婦でもある彼らは、服とレコードとカセットを置く雑貨屋を営み、そこでショウなども行い、〈ノット・ノット・ファン〉をはじめとする音楽コミュニティの活性化に尽力している。
 2000年代後半のサイケデリック・ルネッサンスのなかでは、フリー・フォーク的な文脈からの接続を感じさせつつ、ポカホーンテッドやサン・アローのようなドロドロとしてダブ・ライクなサイケデリック・ファンクの流れに連なり、そしてL.A.ヴァンパイアーズやオーなどウィッチ・ハウスの変則型のようにも捉えることができそうだ。レーベル内の繋がりも強いようで、彼らは音と活動の両面においてシーンを刺激する新しい勢力を生んでいる。
 カセット・テープの音源こそを純粋なものととらえ、ヴァイナルをこの上なく愛するというウルトラ・アナログ志向もピーキング・ライツの特徴だが、この感性もまた最近の若いアーティストに広く共有されているものだ。アナログ音源の神秘化についての議論は措くが、CDを嫌い、mp3のダウンロードに代表される新しい音楽受容の形態に違和感や居心地のわるさを感じる人たちが相当数いるということがよくわかる。彼・彼女らにとって、ニュー・メディアによるフリーティングな音楽受容は、存在論的な不安にすら繋がっているのかもしれない。ピーキング・ライツのふたりは、目に見え、手の届く音楽仲間達と、ショウという体験共有の場を大事にしながら活動をおこなっている。この点、チルウェイヴの主たるアーティストたちとは対照的であって、おもしろい。

 さて、本作はエメラルズを透して見たタンジェリン・ドリームのような、多分にクラウトロックの要素を含んだアンビエント・トラック"シンシー"で幕を開ける。スペーシーで神秘的、そしてどこかしら身体を縛る緊張感がある音だ。2曲目の、ダビーで躍動的なベースに縁どられたアングラ・ダンス・ナンバー"オール・ザ・サン・ザット・シャインズ"でその緊張がほどよく解かれる。インドラのレイジーな唄もよい。先日CD化されて話題にもなった70'Sスペース・サイケ・バンド、ギャラクシーの女性ヴォーカルを思わせる。唄というか、ぐるぐると飽きることなくリフレインされる詞が退廃的で危険な香りを漂わせ、本当に、これを聴いているだけでは彼らの活動のポジティヴィティが理解できないほどだ。世間を無視し、他人の音には関心も寄せず、延々と薄気味のわるい温室でじゃれあって暮らすアダムとイヴ。そんな画が浮かんでくる。"バーズ・オブ・パラダイス"などもまさにそうだ。"ヘイ・スパロウ"などシド・バレットを煮崩したジャム、とでも喩えたい、不健康でバッド・トリッピンなナンバー。個人的には"マシュマロ・イエロー"のようなかっちりとしたビートのあるものが好きだが、このアルバムを統べているのは、そうした甘い腐臭とでもいうべきデカダンスのほうだ。
 こうしたデカダンスには、逆に未来を伐り拓くような、あるいは未来を滅ぼすようなエネルギーがあるのだろうか。彼らのような音とチルウェイヴとをどうしても比較したくなるのだが、それはチルウェイヴという逃避のマナーに私自身が新しいものを感じているからである。逃避は、あくまで逃避であって、現実世界を睥睨するような態度ではない。ひとたび世界に舞い戻ると傷ついてしまう可能性が残されている。それに比して、デカダンスは世界に対していち段上位で構えている。そういう強い態度が彼らのクールな佇まいを作っているのかもしれない。
 ピーキング・ライツが鳴らしているのは、めそめそしたり、傷ついたりしない、現在聴けるなかでももっともハードな部類の音だと思う。逃げながらも絶えず世界を意識せざるをえない、夢を見ながらも常に醒めざるをえないチルウェイヴ的な感性に、私個人はより多く共感する。だが、このストロング・スタイルのサイケデリックがこれからの10年にどのような遺伝子を残すのかは楽しみだ。

また余震? ......かと思ったら北関東の宇都宮市の地下室から轟いているベースの音だった。世界中に飛び散ったダブステップをはじめとするベース・ミュージックのウィルスは、ここ関東では栃木県ですさまじい繁殖を見せている。DJエンドが、北関東のベース・シーンをレポートしてくれた!

 U字工事? ガッツ石松? 餃子? え、地図を見てもどこにあるのかわからない??? ......栃木のイメージといったらこんなもんだろうけど、いやいや、栃木は昔からベース・ミュージックがアツいのだ。というわけで栃木は宇都宮のベース・ミュージック・シーンと我々〈B-Lines Delight〉クルーについて書こうと思います。
 といっても栃木で何か起きてるかというと、別に特別なことが起きてるわけでもないし、だからといって何もしていないわけでもない。トラックを作ってパーティをやってDJをやって、騒いで、みんなで楽しんでいる、どこの都市でもよくあるフツーの光景。昔から似たようなこと、自分たちが楽しいと思ったことをごくフツーにやってるだけなんだけど、最近少しだけ様子が変わってきた。
 昨年の12月に北の片田舎からリアルなベース・ミュージックの現場を作り出すべく〈B-Lines Delight〉というパーティを立ち上げた。メンバーはDD Black、Sivarider、Ryoichi Ueno、RebelAoyama、Negatins、tat'scha、Medopink、MC J-Gol、そして私Dj END。音楽と中学生並みのバカ話なら永遠に話していられる仲間たちだ。
 我々〈B-Lines Delight〉クルーはメンバーのほとんどがトラックを制作している、それらトラックは限られたところではあるけれど非常に好評を呼んでいる。

 クルー最年長のDD Blackは、本人の猛烈アタックによりRINSE FMでのスクラッチャDVA、ファンク・ブッチャーのプログラムで、さらにはアイコニカがFWDや自身のライヴ・ストリームでトラックをスピンするなど、現地UKの最前線でかなりの好反応をもらった。さらにさらに、Martynの〈3024〉からもリリースしているシーンの若頭オルタード・ネイティヴス(aka.ダニー・ネイティヴ)主宰の〈Eye4Eyeレコーディングス〉からもリリースが決まってしまった(レーベルのコンピレーションに"Charge"が収録されている。現地UKで発売中、国内はディスク・ショップ・ゼロに入荷予定)。
 DD BlackはUKのアンダーグラウンド・オンライン・ラジオ 、MelodyOne"にレギュラー・プログラムを持っていて毎週日曜日プレイしている。現地のバイブスに並ぶ濃密な2時間は、UKベース・ミュージックの最前線を知りたければ是非聴いて欲しい。
https://soundcloud.com/ddblacksoundz
https://melodyone.com/
https://www.discshopzero.com/

 恐れ多くもあのドラム&ベース界の帝王グルーブライダーから名前を拝借したSivariderは、自身が師と仰ぐRSD(aka.ロブ・スミス)にこれまた猛烈アタックし、RSDのラジオ・プログラムで、さらには来日DJで、先日放送されたDOMMUNEのプレイでもトラックがスピンされている。ジャングル・ヴァイブ全開のトラックは、RSDのみならず〈Back To Chill〉、〈Soi〉クルーをはじめ国内のドラム&ベース、ダブステップDjを問わず熱烈にサポートされている。
https://soundcloud.com/sivarider_drz

 要はDD BlackとSivariderのふたりがUKベース・ミュージック最前線に気合で直結してしまった。国も距離も人種も関係なくヴァイブスが通じたのだ。

 ふたりに続くように自身のサグなバックボーンをトラックに落とし込むRyoichi Uenoはトライバルなダブステップ、男汁ほとばしるグライミー・チューンを作るNegatins、まだ作りはじめてから間もないフレッシュなTat'schaらがトラックを作って、さらにクルーを盛り上げている。トラックを作りプレイして評価し合う、さながらジャングルやダブステップの黎明期のようなアツさがこのクルー内には漂っている。
https://soundcloud.com/ryoichi-ueno
https://soundcloud.com/negatin
https://soundcloud.com/t2cha

 また、〈B-Lines Delight〉クルーのDJプレイもアツいのだ。各々のベース・ミュージックを追求するプレイはここでまとめて聴ける。https://www.mixcloud.com/BLinesDelight/

 このクルーの面子との付き合いはおそらく10年以上になるかな? 我ながらよくもくたばらず10年以上も一緒にパーティやDJをやってきたなーと思うけど、それもこれも栃木には音楽を理解してくれるお客さんやクラブなど、他とは少し違う恵まれた環境があった、そしてそれを支えるレコード・ショップがかつてあった。自分も働いていたベースメント・ミュージック・レコーズだ。

 レゲエとP・ファンクが好きないわゆるオーディオ・アクティヴ信者のオーナーが1999年にオープンしたベースメント・ミュージック・レコーズはさまざまなジャンルのDJはモチロン、アーティスト、クラブ・オーナーなどの音楽好きから、ジャンキー、オカマ、プータロー、ヒマ人、葉族までとにかくいろんな人が集まった。そのなかにいまつるんでるクルーもそこに集って、そしてさまざまな下地を作った。
 〈B-Lines Delight〉の基盤にもなった前身のパーティ、〈On〉(エキスペリメンタルなブレイクビーツ)、〈Rock Baby Soundsystem〉(ウルトラへヴィーなドラム&ベース/ジャングル)もここから発信した。とにかくベースメント・ミュージック・レコーズ抜きでは我々のベース・ミュージックは語れない。栃木のシーンに本当に影響を与えたレコード・ショップだった。残念ながら2007年にクローズしてしまったが、ここで撒いたベース・ミュージックの種は現在も着実に育っている。

 〈B-Lines Delight〉のメンバーは、みんなキャリアが長い。90年代初頭のテクノ、ハウス、レイヴ・サウンドからはじまってジャングル、ドラム&ベースを経てブロークンビーツ、2ステップ、グライムそしていまのダブステップやUKファンキー、UKハウスなどのベース・ミュージックに繋がっている。レゲエやブリストル・サウンド、ヒップホップ、ハードコア・パンクを通過してきたヤツもいる。芯の意味でベース・ミュージックというものを理解できる土壌がこのキャリアの長さと雑多な感覚でもってでき上がっている。それがDD BlackやSivariderのような世界共通のヴァイブスの流れにもなっている。
 若干大げさに書いてきたけれども、当のDJたちは気張らずに超自然体でこれらをやっていて、というのも昔からエッジの立ったことをやってきたにもかかわらず注目されない、というか外にアピールするのが苦手な栃木のDJたちはなかばそれを諦め、(たぶん)音に愛情と情熱を注いできた。ゆえに純正培養されピュアな土壌が作られてきたとも言える。いまある状況はとても喜ばしいことだけど、そこまで特別なこととは思っていない。逆に自分たちに注目してくれるような同じヴァイブスのヤツらが世界中にいるんだなということのほうが嬉しかったりする。

 ダブステップ、UKファンキー、UKハウス、グライム、ジャングル、ドラム&ベースなどなど......このラウドな音楽に夢中になって早十数年。我々が何故ベース・ミュジックかと言う答えは、スミス&マイティの『Bass Is Maternal』にある。このアルバムを是非聴いて欲しい。この音楽が我々の思いをある程度語ってくれるだろう。こんな片田舎でこれだけのDJたちが集まり、小さいながらもこれだけの活動をしている、客観的に見ても夢のあることだし、それに楽しい。ジャンルも時間も人種も国境も、太くてアツくて温かい"母なるベース"はこのアルバムのようにすべてを繋げてくれる。そう、ベース・ミュージックはこんな田舎者でも夢を与えてくれるのだ。
 ......と、書いてる途中で東日本大震災が発生した。私が住んでいる場所は栃木県の県北地区。震度6弱の揺れが襲った。職場から大急ぎで帰ってきたら、揺れの恐怖からか子供たちが外で号泣していた。家のなかはメチャクチャだ。次々と襲ってくる大きい余震、ラジオから流れてくる悲惨な東北地方の状況、あのカオスな風景は一生忘れられないだろう。
 東北地方から比べれば被害は少ないけれど、それでも近くの地区で家の全壊、半壊があったり未だ断水している地区があったり、福島から避難してきている方がいたり、東北地方の惨状を聞いていると忘れてしまうけど、あぁそういえばここも被災地なんだなとふと思い出したりする。放射能の数値も一時は有り得ない値を出していたときもあった。いま考えたら3.11までただひたすら平和な生活を送っていたんだなと思う。3.11以降、そこに日常的にあった風景や漂っていた雰囲気すら変わってしまい、それ以前に持っていた価値観も自分のなかで完全にリセットされた。原発問題に関しては、そこからちょうど100キロ圏にあるわが街も非常に考えさせられる。

 〈B-Lines Delight〉がゴールデンウィークの5月2日に開催される。栃木のベース・ミュージックの未来も最前線のヴァイブスもすべ体感できる。DD Black収録のコンピレーションが発売されたまたとないタイミングだ。それまでにはみんなのトラックやDJ Mixも大量にアップされるだろう。
 この文を読んで興味を持ってくれたら、5月2日はぜひ〈SOUND A BASE NEST〉に来て下さい。放射能が直ちに人体に影響は及ぼさないとしても、オレらが放つベース・ミュージックは脳や下腹部、膝を直撃し2日間ぐらい影響が出るかもしれない(笑)。ご注意を!

2011/05/02(mon)
B-Lines Delight -Golden"Bass"Week Special Bash!!-
@SOUND A BASE NEST https://club-nest.com/
Info:https://b-linesdelight.blogspot.com/
B-Lines Delight Mixes:https://www.mixcloud.com/BLinesDelight/


■Top 20 Bass Music in 宇都宮
1.DD Black - Charge - Eye4Eye Recordings
2.Sivarider - Strret Tuff - Dub
3.Sivarider - Stand Up - Dub
4.Ryoichi Ueno - Demo2 - Dub
5.DD Black - Grimness - Dub
6.Negatins - Sst Hive- Dub
7.Jo - R Type(T.Williams Refix) - Free MP3
8.Rsd - Go In A Good Day - Zettai Mu
9.Kalbata & Mixmonster feat. Little John - Sugar Plum Plum (RSD Rmx) -
 Scotch Bonnet
10.I.D.&Skinnz - The Most High/No Love - Ear Wax
11.Digital Mystikz - Education - Dmz
12.Fresh - Future Jungle Ep - Ram
13.Lurka - Return - Box Clever
14.Ruckspin feat.J Sparrow - Shikra - Pushing Red UK
15.Falty Dl - You Stand Uncertain - Planet Mu
16.Shackleton - Deadman - Honest Jons
17.Shackleton - Fireworks / Undeadman - Honest Jons
18.Lone - Echo Locations EP - R&S
19.Ove-naxx - Oveke Dub EP - Accelmuzhik
20.V.A. - Tradi-Mods vs Rockers: Alternative Takes On Congotronics -
  Crammed Discs

Dj END(Dutty Dub Rockz/B-Lines Delight)
栃木のベース・ミュージックを動かし続けて10数年。現在はDutty Dub Rockzに所属し、B-Lines Delightというパーティを主宰している。ダブステップ~ジャングルをメインにレゲエ、ダブ、ブレイクビーツ、ハウス等々あらゆるサウンドのベースの魂を抽出し数珠繋ぎMIX、それがDutty Dub Rockz。"Bass Is Maternal"、そんな感じで栃木でいろいろやってます。

interview with Lizzy Bougatsos (Gang Gang Dance) - ele-king


Gang Gang Dance
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 ブラック・ダイスとアニマル・コレクティヴが第一波とするなら、そのあと続いたのがイクセプター、そしてギャング・ギャング・ダンスだった。ゼロ年代のディケイドにおいてニューヨークのアンダーグラウンド・シーンの実験精神とそれに付随するポップが健在であることを世界に訴えた彼らの活動も、すでに10年が過ぎている。アニマル・コレクティヴはチャート・ヒットまで飛ばすようになったし、ずんどこずんどこドラム叩きながらノイズを鳴らしていたギャング・ ギャング・ダンス(GGD)はシャーデーとヒップホップとボアダムスをシェイクするような、彼らのポップを展開した。GGDとは、いわばインディ・ロックにおけるエキゾチカである。
 新作『アイ・コンタクト』は、GGDが国際的な活動をはじめる契機となった前作『セイント・ディンフナ』(2008年)に続くアルバムで、バンドは彼らの異国情緒漂う音をさらに洗練させている。11分にもおよぶ冒頭の曲"グラス・ジャー"の滑り台をゆっくり滑っていくようなトリップが、僕はもっとも気に入っているのだけれど、ホット・チップのアレクシス・テイラーが参加した"ロマンス・レイヤー"のハイブリッディなシンセ・ポップも捨てがたい。全10曲 (日本盤にはボーナス・トラックが加わる)のうち3曲はなかばインタールード的なものなので少なめの曲数だが、逆に言えば1曲1曲が際だっている。"アダルト・ゴス"はキュアがインド・レストランで演奏しているみたいだし、"チャイニーズ・ハイ"はエチオピアに引っ越したティンバランドのようだし......この10年でポップ・ミュージックに投げ込まれた無邪気なワールド(とくにエチオピアン・ミュージック)感覚がブレンドされ、ずいぶん楽しめる内容になっている。
 さて、それではこのへんでニューヨークの沢井陽子さんにバトンタッチします。


上段左:Brian DeGraw  上段中:Lizzi Bougatsos  上段右:Jesse Lee
下段左:Taka  下段右:Josh Diamond

 4月4日の月曜日、ギャング・ギャング・ダンスのリズ・ブガツォスとチャイナ・タウンで待ち合わせた。その日の朝に急遽決まったインタヴューだったが、彼女は快くをOKしてくれた。
 現れた彼女は、遅れたことをすまなさそうに謝ったあと、慣れた手つきで、ドリンクとフードをオーダーする。彼女はこの近くに住んでいて、このカフェにはよく来るらしい。店員とも仲良かった。最近バンドのメンバーが彼女のアパートメントに引っ越して来たというが、つい先ほど、この前でばったり会ったらしい。「この場所は私のシークレットなの。彼に知られないかしら」といたずらっぽく彼女は微笑む。吸い込まれそうな彼女の目を見ながらインタヴューははじまった。


私たちはサウンド的にバンドとは思っていなかったし、まずそんなこと気にもしなかったし、パンク精神で、ただオーストラリアの奇妙なレコードみたいに面白いサウンドを追求してただけ。練習をまったくしなかったし、ショーに私が現れないときもあった(笑)。

震災のことはもちろん知っていますよね? 地震のあと津波があって、多くの街が消えました。次に原発で事故があり、環境が汚染されました。

リズ:ええ、テレビでみたわ。ちょうど、アップデイトを聞きたいと思ってたの。私は日本が大好きだし心から心配に思っている。日本には友だちがいて、彼女は電気が十分に使えないと言っていた。でも南部の友だちは何も知らなかったわ。地震より、原子力の放射性物質の漏洩のほうが心配よね。以前に、コロラドやカリフォルニアでも、そうした漏洩があったけど、そのときの影響は、携帯電話ぐらいの影響だったから。日本に行って何かしたいと思ったけど、私がそこに行っても帰って来れないと思った。私たちは曲をドネートして、つい最近日本へ捧げる曲"Bond"を作ったの。日本でこの曲が演奏できると良いんだけどね。

前作の『セイント・ディンフナ』が2008年のリリースだったからけっこう時間が空きましたね。

リズ:リリースのあとはツアーをたくさんしたわ。たぶん2年ぐらいね。コチェラ、USフェスティヴァル、ツアー、ヨーロッパ・フェスティヴァル、ツアー、、かなりたくさんして、そのあとすぐに砂漠に行ったのよ。カリフォルニアのジョジュア・ツリーってところの近くにある29パームスという砂漠の町にね。そこにスタジオを作って、エンジニアといっしょにずっとレコーディングしていた。新しいアルバムはほとんどをそこで録ったのよ。

なぜ砂漠だったんですか?

リズ:友だちがいて、そこにステイしたの。スタジオを作って1ヶ月半ぐらいいて、ショーをしたりもしたわ。エンジニアがいて、曲を作って、レコーディングして、創作作業が同時にできるのが、とてもうれしかった。

メンバーがよく替わっていると思うのですが、いまのメンバーを紹介して下さい。

リズ:基本的には4人よ。ベース・プレイヤーはいま3人いて、みんな別の場所に住んでいるの。ひとりはスリーピー・ドッグ・ショウ。彼はハイ・ライフというバンドでプレイしていて、元ホワイト・マジックでもプレイしていた。もうひとりは、ティム、彼はアリエル・ピンク・アンド・グラフィティでベースを弾いていて、もうひとりは、インターポールでベースをプレイしている。

いまはどんな風に過ごしているんですか?

リズ:いまはリリース前で忙しい。今日もこのあと8時からインタヴューが入っている。今月末には私の別のバンド"IUD"で台湾に行くの。アルバムがリリースされる5月3日は、ニューヨークでギャング・ギャング・ダンスのショーがあるのよ。

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彼のリリースする作品は、アンダーグラウンドで、コアなファンがたくさんいたの。たとえばソニック・ユースのサーストン、彼は〈Fusetron〉のカタログを間違いなく全部持っているわ(笑)。


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昔の話を訊きたいのですが、どういう経緯でクリス・フリーマンの〈Fusetron〉から2004年にデビュー・アルバムを発表することになったんですか?

リズ:たぶん、その当時私は彼とデートしていたの(笑)。いや、まだデートしてなかったかな(笑)? 彼はサウンドエンジニアで、ブラック・ダイスの音響を担当したり、レーベルも持っていた。彼とは私の別のバンド、エンジェル・ブラッドを通して出会ったんだけどね。
 私たちはその当時、サウンド的にバンドとは思っていなかったし、まずそんなこと気にもしなかったし、パンク精神で、ただオーストラリアの奇妙なレコードみたいに面白いサウンドを追求してただけ。彼も同じだったし、このアルバムのサウンドはとてもいいのよ。彼のリリースする作品は、アンダーグラウンドで、コアなファンがたくさんいたの。たとえばソニック・ユースのサーストン、彼は〈Fusetron〉のカタログを間違いなく全部持っているわ(笑)。

同じ年にはやはり〈Fusetron〉からイクセプターも作品を発表していますが、同じステージに立つことが多かったのでしょうか?

リズ:彼らは、同じぐらいのときにいたので、よくいっしょにプレイしていたわ。

初期の頃はインプロヴィゼーションですよね? バンドのコンセプトはどんな感じだったのでしょうか?

リズ:いまイクセプターの名前をあげたのは面白いわね。その当時は、同じようなバンドとしてとらえられたのかしら。私たちはバンドでありたいとは全然思っていなかったし、ジョシュ(ドラマー)は、コーヒーショップで働いていて、そこで仲良くなった人たちとジャムをしていた。そのカフェは、とても有名なジャズ・ミュージシャンやフリークがよく集まっていて、その人たちとよくいっしょにショーをしていた。たとえばウォーホル・ポエットのテイラー・メッド、彼はアンディ・ウォーホルとよくハング・アウトしていたの。昨日、アンディ・ウォーホルの建築物を〈ファクトリー〉があった近くの場所に埋めるセレモニーがあったんだけど、そこで彼にあったばかりよ。いまでも彼とよくハング・アウトするのよ。

『Revival Of The Shittest』をいま聴くと、すごく混沌としたサウンドなのですが、しかし勢いはすごい。どんな気持ちで当時は演奏していたのですか?

リズ:私たちは練習をまったくしなかったし、ショーに私が現れないときもあった(笑)。代わりに私の友だちのリタがマイクを握ってたりとかね。彼女とは、私といっしょにエンジェル・ブラッドを組むことになるんだけど。仕事で遅くなって、私がそのあと現れてオーディエンスにいたりとかね。

どんな会場で、何人ぐらいのオーディエンスを前にライヴをやっていたのですか?

リズ:いろんな場所でライヴをした......、いまはもうないんだけど、ローワー・イーストサイドのトニックからブルックリンの奥地とか、ライヴができるところならどこでも。当時はアニマル・コレクティヴとブラック・ダイスとプラクティス・スペースをシェアしていたんだけど、彼らとは曲を聴きあったり、そこでもライヴをいっしょによくやったわね。

どのような経緯で歌うようになったのですか? 

リズ:ドラムをたたく代わりに歌いはじめたのよ。これが個人的にどのように歌をバンドで歌いはじめたかね。その前は、スポークン・ワードをしていた。DJみたいな感じで、パンクやハードコア・バンドのオープニングをしていたのよ。

あなたの歌は非西欧的な旋律があってエキゾチックで知られていますが、あなたがヴォーカリストとして参考にした人がいたら教えてください。

リズ:R&Bシンガーが大好きなのよね。それかムラツ・アスタケのようなエチオピアン・ミュージックも大好きよ。シンガーでとくに好きなのはアリーア、テキーサ(ウータン・クランのバック・ヴォーカル)、メアリー・マーガレット・オハラ、シニード・オコナー、ニナ・シモン、そしてシャーデー......女性シンガーにはソウルがあると思うのよね。

セカンド・アルバム『ゴッズ・マネー』からあなたは歌に向かっていったと思いますが、あのアルバムはバンドにとってどのような意味がある作品でしたか? 

リズ:『ゴッズ・マネー』から〈ソーシャル・レジストリー〉に移籍したのよ。プラックティス・スペースがグリーンポイントにあって、すべてそこでレコーディングしたのをよく覚えている。当時の私たちはヒップホップやアフリカン・ミュージックをよく聴いていたんだけど、『ゴッズ・マネー』は、より一般的なオーディエンスに伝わるように、ポップ・ソング的構造を持っていて、いわゆる曲になっていった最初のアルバムだと思う。

『セント・ディンフナ』は? あのアルバムはバンドにさらに大きな成果だったのではないでしょうか? 

リズ:音楽をよりたくさんのオーディエンスに伝えられたとは思うわ。アメリカではレーベルは〈ソーシャル・レジストリー〉だけど、ヨーロッパでは〈ワープ・レコード〉、日本では〈Pヴァイン〉からリリースされた。このアルバムは、より取っつきやすいんでしょうね。そういう意味では『セント・ディンフナ』はポップ・ソングのエイリアン・ヴァージョンね。いろんな別のスタジオでレコーディングしたけど、途中でお金がなくなって、またツアーをしなくてはならなくなって、それの繰り返しだった。アルバムを作るのに時間がかかったのよ。マネッジからすべて自分たちでやっていたし、まるでシャロン・オズボーン(オジー・オズボーンのマネージャー)になったようだったわ(笑)。そういえば、いまの私たちにはスピリチャル・アドヴァイザーがいるのよ。

あのように話題となった作品の次作というのは、ある意味では取りかかるのに難しくないですか?

リズ:このアルバムから新しいドラマーに変わったし、とにかく自由になって新しいことをしたかったの。だから砂漠に行ったのかもね。その頃から面白いオファーがきはじめていたし、例えば、ボアダムスから皆既日食のツアーオファーね。ボートに乗って日本からロシアにいったの。とても良い経験だったわ。

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『セント・ディンフナ』はポップ・ソングのエイリアン・ヴァージョンね。いろんな別のスタジオでレコーディングしたけど、途中でお金がなくなって、またツアーをしなくてはならなくなって、それの繰り返しだった。アルバムを作るのに時間がかかったのよ。


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そういえば、ボアダムスの88人ドラマーでもあなた方はプレイしていましたよね。ボアダムスはロサンジェルスで、あなた方はニューヨークで同時開催。私も見に行きました。

リズ:88人ドラマーのときは、強烈でモンスターのようだったわね。1ヶ月ぐらいかかって曲を作ったの。たくさんの試行錯誤があって、それをすべて終えて、本番で歌っているときは、まるで宇宙船に乗っている気分だったわ。

GGDの音楽には非西欧的な要素がブレンドされていますが、たとえばこの間、どこか旅行されましたか?

リズ:最近はアフリカに行くオファーがあったのだけど、バンドのメンバーの都合で行けなくなったの。私自身、中国に行ったことはあるわ。今月末に、私の別のバンドIUDで台湾に行くの。ダニー・ペレズを知ってる? アニマル・コレクティブのヴィデオなど録っているのだけど、彼と一緒に行くのよ。

たとえば2曲目の"∞"は何を意味しているのでしょう?

リズ:インフィニティ。これはシンボルで、フォーエヴァー、ネヴァーエンド、境界のない......などを表すの。ロマンティックなシンボルで、境界なく、誰でも音楽を聴くことができて、音楽は永遠に続くの。もっと良い例を挙げたいわ......。(iPhoneで"∞"をサーチする)

アルバムには"∞"で記される曲名が3つありますね。

リズ:私たちはいろんな意味で、走り続けるの、キープ・ゴーイン。私たちを表すシンボルだと思ったの。

話が前後してしまいましたが、実際に、どのようにして新作『アイ・コンタクト』は生まれたのでしょう?

リズ:砂漠で、たぶん2009年。曲を書きはじめ、演奏しはじめ......
(iPhoneでのサーチが完了する)
 その前に"∞"インフィニティーについてもういっかい説明していい? これはアイディア。制限のないスペース、音楽には境界がないの、終わりがなくて、果てしなくて、誰とでも境界なく共有できるもの。とても美しい言葉で、ラテンからきているの。上手く伝わると良いんだけど。新しいTシャツにはこのデザインのものがあるのよ。
 レコーディングは、最初に29パームスで、次にウッドストックのドリームランドというスタジオ、そしてアップステートでヴォーカル録りをして、ファイナル・ミックスはブルックリンでやった。

アルバムの1曲目"グラス・ジャー"が素晴らしいですね。とても美しく、静かに引きこまれるような曲です。気がつくと曲がはじまっているような......。本当に魅力的な曲です。最初に声からはじまっていますが、「I can hear everything..」と言ってますよね。とても暗示的な言葉ですが、これを今回のアルバム全体にとってどんな意味を持つ言葉なのでしょう?

リズ:面白いんだけど、私たちには日本人のスピリチュアル・アドヴァイザーがいて、彼を"Baby Love"と呼んでいるんだけど、彼が「I can hear everything..」 の部分を歌っているの。彼が、何かの形で加わりたかったことを知っているし、彼はとても良いヴァイブをくれるの。いっしょにツアーをしたりもした。アップステイトにハウスを借りたとき、彼もいっしょに来て、この曲ができたのよ。

"グラス・ジャー"の途中では「don't worry」という声が繰り返されますね。

リズ:これはね、プロテクション・ソングとしてはじまったの。この歌は砂漠で書いて、誰かが死ぬと違う形で帰ってくる。それってある意味インフィニティね。それがグラス・ジャーのなかに見える。グラスジャーは知っているわよね? そう、透明のジャーね。その魂は、グラス・ジャーのなかに帰ってくるのよ。
 これは私たちの前のメンバー、ネイサン・マドクスのことを歌っているのかもしれない。彼は雷に打たれて2002年に死んでしまったのだけど、ツアーに出ているときでも、いつも彼が守ってくれていると感じるの。ちょっとヘヴィーな話ね。これをリリースすると決めたのは、私たちじゃないんだけど、いえ、最終的にはそうなんだけど、結果的に11分ぐらいになったのよ。

"アダルト・ゴス"のメロディは、東南アジアの音楽からのインスピレーションですか? 

リズ:これは砂漠で書いたんだけど。何となくシャーデーっぽいわね。シャーデーは好きでよく聴いている。

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シャーデーは家にいつもあるし、あとはアリーアね。彼女はR・ケリーのガールフレンドで、2001年に飛行機事故で死んだのだけど、私はほとんどCDを買って、i Podで聴いているんだけど、アリーアに関してはヴァイナルも買ったわ。


Gang Gang Dance
Eye Contact

Pヴァイン E王

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ダブステップは好きですか?

リズ:昔はよくきいていたけど、いまは聴いていないわ。いまは新しい音楽には興味がないの。同じ音楽をずっと聴いているの。

ホット・チップの音楽とGGDの音楽には、それほど共通点があるようには思えないのですが、どんなところで彼とは気が合うのでしょうか?

リズ:アレクシスはとても良い友だち、彼はとってもおかしな音楽を聴くのよ。私たちはお互いドン・チェリーが好きと言う共通点があるわ。思えば、そこから私たちの関係がはじまったのかもね。あと、私たちはジェイデラを聴いていて、彼はデトロイトのプロデューサーなんだけど、たくさんの曲をカットアップしたり、エリカ・バドウなど、たくさんのアーティストと仕事している、有名なプロデューサーなんだけど、アレクシスにこの曲をジェイディラっぽくミックスしてもらえないか、と持ちかけたの。彼とは、同じようなヴァイブを持っているし、それで、アレクシスに「歌ってみる?」と訊いたのよ。彼って、マーヴィン・ゲイのような声をしていると思わない?

ロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉を拠点とするLAヴァンパイアーズは好きですか? 共通する感覚があると思うんですけど。

リズ:知らないわ。

サン・アロウ(Sun Araw)は? 

リズ:それがサン・ラーのことならイエスね。ホント、いまはそんなに新しいバンドを聴いていないのよ。さっきも言ったけどエチオピアン・ミュージックとか、古いヒップホップとか、ずっと同じものを聴いている。私はいつも曲を書いているし、それが好きなのね。シャーデーは家にいつもあるし、あとはアリーアね。彼女はR・ケリーのガールフレンドで、2001年に飛行機事故で死んだのだけど、私はほとんどCDを買って、iPodで聴いているんだけど、アリーアに関してはヴァイナルも買ったわ。だって、私はレコード・プレイヤーを持っていて、プレイヤーを動かすときだと思ったのよ。

『アイ・コンタクト』というアルバムのタイトルの意味を教えて下さい。

リズ:私たちはオーディエンスとより直接的な関係を気づきたかったのよ。たとえば、誰かの目を見ながらね。また、私たちのバンド内で、何か正しいことがわかったときの、コミュニケーションでもあるの。

曲の最後に「forever ever」という声が聴こえるのですが、それはこのアルバムのクローズとしてどんな意味を持っているのでしょう?

リズ:音楽は永遠に生き続けるってことよ。

それにしても、今回は、なぜポップスをやりたかったのでしょう?

リズ:これは、どのように私たちの音を発展させるかによるわ。私たちは、自分たちの音楽がどのようになるか計画したこともない。ポップ・ミュージックも聴くけど、私たちの音楽は自分たちが、どのように世界を知覚しているかの反映というだけなのよね。

ブルックリンに行ったら、どこのレストランがオススメか教えてください。

リズ:私はチャイナタウンに7年間住んでいるのよ!

OKI - ele-king

●OKI DUB AINU BAND Presents
『Himalayan Dub~Mixed by OKI vs 内田直之~』
CD発売記念ツアー・ファイナル
4月15日(金) 会場:渋谷 CLUB QUATTRO 開場:19:00 / 開演:20:00
ゲスト: LITTLE TEMPO
チケット:前売¥3,800 (ドリンク別)当日¥4,300 (ドリンク別)
お問い合わせ: 
SMASH: TEL:03-3444-6751 https://smash-jpn.com 

●OKI x 一十三十一 x U-zhaan
アイヌのトンコリ、インドのタブラ、という伝統楽器が生むグルーヴ+、女性ヴォーカル。
新たなるユニットの始動!?初Live緊急決定!!
5月21日(土) 会場:西麻布「新世界」 開場:17:00 / 開演:18:00
前売り予約3000円(ドリンク別)/当日券3500円(ドリンク別)※限定100人※
〔前売チケット予約・お問い合わせ先〕西麻布「新世界 」 
tel: 03-5772-6767 (15:00~19:00) https://shinsekai9.jp/

DUB Chart


1
Israel tafari (same song dub)

2
Bunny Lee - Rasta Dub '76

3
Jammy , Crucial Bunny - Fatman Dub Contest

4
Revorutionaries - Jonkanoo Dub

5
Scientist - Scientific Dub

6
Augustus Pablo - King Tubby Meets Rockers in Firehouse

7
Sly & Robby - Gamblers Choice

8
Augustus Pablo - Original Rockers

9
Lee Perry - Super Ape

10
Joe Gibbs - African Dub All-Mighty

Contribution - ele-king

 2011年3月11日、東北関東大震災によって僕たちを取り巻く状況は一変した。多くの人命が失われたのはもちろん、生き残った人たちにも、以前の生活を取り戻すこと、物資や燃料の確保、家族の捜索、放射能との不本意な共存...、あるいは、的確な情報を選びとることも大事だし、生き延びた後ろめたさや、何かしたいが何もできない自分にいかに折り合いをつけるか......といった課題が残されている。
 僕の住む街は岩手県の沿岸に位置しているのだが、線路や家屋や船舶は津波によって破壊されたものの、人的被害はゼロだったことは奇跡と言っていいだろう。月並みだが生きていることに感謝したし、相撲の八百長やカンニングで騒いでいた頃がいかに平和だったか思い知った。被災した人たちには本当にかける言葉がない。ただ、無事と健康を祈らせていただくばかりである。戦後最悪の災害となったわけだが、ここで得られた経験は永遠に重宝されていくだろう。そうでなければ死んだ人たちが浮かばれない。

 地震の日の朝、僕はドアーズの『ストレンジ・デイズ』を聴きながら仕事に行った。14時46分、地震と同時に職場の電気は止まり、自家発電に切り替わった。「漁港が浸水した」などといった情報が飛び交い、あたりは混乱した。僕は恐怖したというよりも、あまりの事態の性急さに呆然としてしまった。災害用の毛布の運び出しを手伝っているときも、心ここにあらずといった感覚だった。2001年の9.11のときのような、一瞬で海の向こうのすさまじい情報量を受け取ったスピード感はそこにはなかった。地震直後は、何もかもが遮断されてしまったからだ。
 帰り道、僕の住む町は不気味に様相を変えていた。すべての家からは灯りが消え、普段使っている道路は津波を警戒して封鎖されていた。活動的な雰囲気が消え失せ、僕の見た世界は静まり返って淡々としていた。カーステレオから流れるジム・モリソンの歌が妙に暗示的だった。

不思議な日々が俺たちを捕らえた
不思議な日々が俺たちを追い詰めた
俺たちのちょっとした歓びを壊そうとしている"ストレンジ・デイズ"

 他者、あるいは人間という存在に言及した歌詞だが、そのときの僕にはなんだか預言めいた響きに感じられた。作り話ではない。実話である。
 僕の主な被災体験は、停電生活である。震災当日の夜から、発電機や薪ストーブ、同じく薪で沸かす風呂といった設備が使える祖父の家に身を寄せた。海岸付近に住む人びとは家を津波で破壊され避難生活を強いられたが、それを考えるとこのような恵まれた環境に自分がいたことをまずは感謝せねばなるまい。食べ物もあった。しかし発電機に使う軽油は限られていたし、毎晩余震に起こされ、錯綜する情報を一方的につきつけられるのは、(僕の住む地域は電気の復旧がかなり遅れたこともあって)なかなか堪えた。だが家族といる時間が増えたし、祖父母や叔父と普段はしないような話をした。そのことが単純に良かったとは言わないが、久しぶりに人の営みというものを感じた気がした。
 音楽を聴けるのも通勤の車内だけになってしまった(ちなみに祖父の家と僕の家はかなり近く、CDだけ取りに行くという芸当ができた......なんたる幸運)。そのあたりに僕が聴いていたのは意外にもビギーだった。『ライフ・アフター・デス』。知っての通り、本作のリリースを目前に控えた1997年3月、ビギーは凶弾に倒れてしまう。彼は死をテーマにした曲が多いことで有名だが、ここでは「死後の人生」というよりも「いちど死んで生まれ変わった」と解釈したい。震災で生き残った僕たちも、ある意味ではいちど死んで、またもらった命だろう。感謝し、そしてこれから自分が出来ることを考えなければならない。
 震災後のこの国を包んだ沈痛な自粛ムード。政府や電力会社の事後の対応の不手際、あるいは物資の買い占めに走る人たちへの、ネット掲示板での正義感なのか憂さ晴らしなのか計りかねる苛立ちに満ちた非難。そんな鬱屈とした空気のなか、欲望をむき出しにしたビギーのラップは勇ましく、力強く響いた。僕はビギーに鼓舞されたし確実に元気をもらったといえる。

 電気が復旧し、自宅に戻った。灯りを点け、PCを起動させながら思った。今回の原発の事故に関しては、僕たちが普段利便性だけを享受し、見て見ぬふりをしてきた部分がいっきに噴出したということだろう。原発周辺の住民は住む場所を追われ、野菜や魚の汚染によって多くの一次産業に従事する人びとが職を失った。このことを何らかの契機にしなければならない。やはり自販機の削減や営業・勤務時間の短縮といった節電方面の方策がとられていくのだろうが......。
 僕個人の原発に関する意見はというと、即時全廃は不可能にしても、じょじょに他のエネルギーに切り替え、順次廃棄していくべきだと思う。比較的近くに女川原発や六ヶ所村の再処理施設があるだけに他人事とは思えない。まったくの門外漢なのだが、割と大きな余震がこれだけ頻発するのは、太平洋プレートと北米プレートのズレがいまも進行しているということだろうから、文字通り地に足の付いていない環境で、これからも原発に頼るのはあまりに危険だし、福島原発の事故を教訓にしなければならない。原発による豊富な電力という恩恵。一度知った便利さを手放すのは難しいが、「Aを優先させればBが犠牲になる」という摂理からは生きている限り逃れられない。
 同時に考えなければならないのは、原発や再処理施設で働く人たちのことである。昨年10月のたばこの値上げの報道の時も思ったのだが、弊害ばかりが取りざたされて、その産業に従事する人びとにはまったくスポットが当たらないのである。原子力関連施設従事者の一般企業等へ優先的な斡旋。被曝とはどういうものかの詳細な説明。そうした透明性の上での新たなエネルギーの模索。遺物の撤去、新たなインフラの整備により雇用も創出できるかもしれない。困難を極めるだろうが、その過程での節電や省エネなら僕は喜んで協力するだろう。やはり太陽光発電の研究・開発にそれなりの予算を割くのが現実的な気がするのだが...。
 と、こんなことを考える余裕があるほど、現在では僕は普段の生活を取り戻している。岩手の沿岸部に住んでいながら、である。そして、そのことに負い目を感じるのである。津波で破壊された家屋の撤去作業を手伝ったり、被災地に物資を送ったりすることを(もちろん何か役に立ちたくてしたことだが)心のなかで免罪符にしていた自分が情けない。本当に無力感しかない。そのくせ僕はここ数日でレコードやCDを買ったし、映画も見たし本も読んだ。そんな人間だ。醜悪なことを書いている自覚はあるが、これはこれでリアルなのだとご理解いただきたい。この原稿も、自分の気持ちの整理のために書いているという理由も何%かはあるかもしれない。

 気を取り直して、僕の好きな曲で、こんな時にぴったりな曲がある。アルバート・アイラーの"ミュージック・イズ・ヒーリング・フォース・オブ・ユニヴァース"だ。そのままずばり、「音楽は世界を癒す力」である。タイトルのわりに、人を奮起させるような曲調だ。ジャズをはじめとする黒人音楽は、ルーツであるアフリカへの回帰が底の部分のテーマとしてある。安直かもしれないが、僕には震災で故郷を失った人びとと重ねあわせることができる。西欧列強に植民地化された故郷への帰還、ひいては母体回帰を目指す音楽と、震災とその二次災害により住む場所を追われた人びとがいつか元いた場所に帰りたいという願望とを。津波や放射能で居場所を失った人びと。報道を見ると、「それでもこの場所で頑張る」と話している人が結構多いことに気づく。こういう言い方が許されるのであれば、その姿は美しい。
 そんなわけで、音楽は無力だとはよく言われるが、落ち込んだ気分が音楽でパッと晴れるのはよくあることで、前述のような比較を持ち出すまでもなくアイラーのこの曲には普遍性が宿っている。これも希望を感じた1曲だ。

 さて、1日も早い復興のために(この文句を何度聞いたかな)、僕たちには何ができるだろうか。いろいろ考えたのだが、比較的余裕をもって暮らしている僕らがすべきことは、「なるべく震災前のように普段どおりに振舞う」ことだろう。節電・節約は大切かもしれないが、我々が冷静に行動することで、被災地に届く情報も整理され、物資も本当に必要とせれているものが選別されることだろう。経済の循環によって、抑圧された感情や自粛ムードもじょじょに解きほぐされていくと信じたい。
 いまだに多くの企業がコマーシャルを自粛し、TVからは妙に厳かな雰囲気で被災地にエールが贈られている。それ自体は善意によってなされているのだろうが、被災者にとって有益かどうかは正直首を傾げるところである。応援するにしてももっと具体的な、例えば「住む場所を失った人はうちの会社・施設に来て下さい! 衣食住を用意して待ってます!」というような呼びかけがあってもよさそうなものだが。ともあれ、何もできない自分を責めるのはそろそろ終りにしてもいいはずである。
 最後に、ドアーズの同じく『ストレンジ・デイズ』のアルバムに収録されている曲のこんな歌詞を引用して筆を置こうと思う。音楽が、僅かながらでも失われたものを取り戻す手立てにならんことを......。

とても優しい音が聞こえてくる
地面に耳を傾けると
僕たちは世界の再生を願っている、願っている、いま
いまだって? そういまだ "音楽が終わったら"

桂川洋平桂川洋平/Yohei Katsuragawa
1985年、岩手県生まれ。大学時代を仙台で過ごし、卒業後は地元で働きながら好きな音楽や小説を探求している。

Anti-Nuclear Demonstration in Japan - ele-king

 日本の反原発デモもいよいよ活発化してきている。4月3日には京都でもデモがあって、デモのあとには紀平直樹が鴨川デルタのフリー・パーティでDJプレイ、最後の曲はキヨシローの"Love Me Tender"だったとの報告が編集部にも寄せられている。
 去る4月10日は、都内では芝公園から出発する「浜岡原発すぐ止めて! 4・10東京集会&デモ」と高円寺の素人の乱による「被災地支援義援金集め&原発いい加減にしろ! 超巨大反原発ロックフェスデモ」のふたつがあったが、僕が参加したのは前者のほう。コースは経済省前~東電~中電、シュプレヒコールは「浜岡」をはじめ、「もんじゅ」、「女川」、「六ヶ所村」、そして「未来」と「子供」をキーワードに繰り返されたが、さすがに東電前は盛りあがる。個人的にも東電のずさんな管理体制やちんたらした記者会見にもっとも腹が立っているのだけれど、路上からは「人殺しー!!」「社長出てこい!!」「水返せー!」「汚すナー」などといった声が容赦なく飛び交った。身近な話で言えば、外国人DJをメインにブックしているクラブやロック・バンドの呼び屋あるいはヴェニューも、来日キャンセルの理由はほぼ100%福島原発なのだから、かなりの実害を被っていると言えるのだ。
 実際に何人かの音楽関係者とも会った。DJもいたし、レコード会社の重役の方もいたし、筆者と同じ静岡出身の五十嵐や静岡おでんのアッコちゃんにも会った。子連れも多かったし、おそらく高円寺とは違った意味で若い人も多かった。初めてデモに参加した若い人も多かったようで、それだけ切実な問題意識が広がっているのだろう。そりゃあ、そうですよね、反原発という前に、僕はまずはとにかく福島どうにかしろよという気持ちが強い。そして浜岡だ、これはホントに恐い。温厚な静岡人といえども黙っているわけにはいかない。愛する故郷、愛するフットボール・クラブのためにも。

 僕の世代は、1980年代後半にも反原発運動を経験している。あのときはRCサクセションやブルー・ハーツのようなポップ・シーンの頂点にいるバンドまでもがいっしょになった。が、それでも原発は増設された。当時はチェルノブイリが契機となったが、今回の福島の切迫感はあのときとは比べものにならないくらいある。
 ......さて、家に帰ってからテレビを付けると選挙の結果が発表されている。いっきに暗澹たる気持ちになる......。しかしことはまだはじまったばかり。キヨシローもそう歌っていた、すべてはいま、はじまったばかりさ~。(それにしても、相変わらず外国のメディアの姿ばかりが目に付いた。なぜ日本のマスメディアはこうした市民運動をもっとレポートしないのだろう......)
 なお、4月16日には大阪の御堂筋でデモ、また、17日には浜岡原子力発電所のある御前崎市の市役所前でもあるようですよ!


 追記:高円寺のデモに行った水越真紀さんから以下のようなコメントをいただきました。

 交差点が見える。まっすぐ進むあたしたちの前をデモ隊が横切っていく。一周して来たデモ隊がもうその交差点に戻ってきているのだ。集合場所の小さな公園を出るまでに30分以上かかり、全体像は誰にも把握できていないだろうと思えるほどの反原発のデモ隊で高円寺の街が満たされていた。
「こんなことになって...」と、8年前の反戦デモで一緒に歩いた友達が苦い顔でつぶやいて、でもお互いに思わず笑ってしまう。こんなデモ、ほんと久しぶりだよ。こんな惨事が実際に起きて、それでもこんなに人が集まるとは行ってみるまで誰も思ってなかっただろう。
こんなデモ。言いにくいけれど、ほんと「幸せなデモ」だった。動員団体もいない、警官もほとんどいない(間に合ってない)、街に溢れた1万人以上の個人的な意思があり、指揮する人もいない長い長い行列で叫んで踊って鳴らして歌って、その意思の花火があちこちであがる。「なんにもできない」は「なにかしたい」につながってると改めて思ったのでした。

Chart by JET SET 2011.04.11 - ele-king

Shop Chart


1

TODD TERJE

TODD TERJE RAGYSH »COMMENT GET MUSIC
ブートも含めてのリエディット/リミックス関連のリリースばっかりで、やきもきさせられていたノルウェイジャン・ディスコ貴公子Todd Terjeによる、待望のオリジナル楽曲シングル。マストに決まっております。

2

DJ YOGURT

DJ YOGURT IN 松山・音溶 »COMMENT GET MUSIC
DJ Yogurt & Koyas名義でのプロダクションが毎回大ヒット、週末は全国各地のクラブを渡り歩くDJ Yogurtの2010年11月27日の松山でのプレイを収めた1枚!

3

MOUNTAINEER

MOUNTAINEER GOLDEN CHALK / ALWAYS COMING HOME (IDJUT BOYS & TUFF CITY KIDS REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Idjut Boysによるサイケデリック・フォーク・バレアリカ収録!!ドイツのボッサ/ラテン・フォーク・トリオMountaineerが当レーベルからリリースを予定しているニュー・アルバム"The Real McQueen"から、Idjut Boys & Tuff City Kidsによる先行リミックス・カットが登場。

4

DAEDELUS

DAEDELUS TAILOR MADE (REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
US西海岸が生んだドリーミー・ブレイクビーツ天才Dedelus待望の新作"Bespoke"からの強力過ぎるリミックス・カット。ごぞんじ大人気2組によるリミックスを搭載です!!

5

YO&KO

YO&KO EDIT & MIX »COMMENT GET MUSIC
某ユニットの変名との噂のYO&KOが自身のエディット作品のみを繋いだミックスCDをリリース!クラシック音源を中心にリエディット&ミックス!すでにアナログでリリースされ大ヒットの楽曲から未発表音源、全16曲を収録。

6

DENNIS COFFEY

DENNIS COFFEY S.T. »COMMENT GET MUSIC
先行カットされたMayer Hawthorne、Kings Go Forceとの共演作や自身の名曲の再演を含む、シーン騒然の1枚。2011年最大級の超強力作です!!

7

C.O.M.B.I.

C.O.M.B.I. DON'T STOP DANCE / SWAMP GOOBIE CRISCO »COMMENT GET MUSIC
オフシュート"Keep It Cheap"では初のゲスト、Foolish Felixも迎えて新展開を見せたEric Duncanのリエディット・レーベル"C.O.M.B.i."も早くも第8弾。今回もやはりグレイト!!

8

SHOES

SHOES EARLY YEARS VOL.1 EP »COMMENT GET MUSIC
既にレア化しているAl Green"Love & Happiness"リエディットの収録に加えて、今回初お目見えとなる"Dub & Happiness"なるVer.も追加収録!

9

SEUN ANIKULAPO KUTI & EGYPT 80

SEUN ANIKULAPO KUTI & EGYPT 80 FROM AFRICA WITH FURY : RISE »COMMENT GET MUSIC
Fela Kutiの息子Seun Kutiの新作は、なんとBraian Enoプロデュース!!神の子Seun Kutiのニューアルバムが到着。今回も父が率いた一流グループEgypt 80を引き連れて、Fela Kuti直系アフロ・ファンクを大展開!!

10

COPYRIGHT CRIMINALS

COPYRIGHT CRIMINALS THE FUNKY DRUMMER EDITION »COMMENT GET MUSIC
サンプリングの歴史を紐解く超重要ボックス・セットが登場!Clyde Stubblefield(元祖ファンキー・ドラマー!)による必殺ブレイク集の他に、DVD2枚+DLコード+トレーディング・カード45枚+ポスター+ステッカー付です!

SILKIE JAPAN TOUR 2011 - ele-king

 本来ならゴールディーが来日するはずだったけれど、福島原発の問題によって来日が中止になってしまった。が、しかし......嬉しいことにシルキーは予定通りの来日が決定!
 シルキーの音楽を特徴づけるのはソウルフルであること、ジャジーであること。2009年にリリースされた『シティ・リミッツ・ヴォリューム・ワン』はブラック・ソウルを愛するリスナーにとってはマストな作品!! 若さゆえの暴走が眩しいダブステップのシーンにおいて、そういう意味でシルキーは実に目立った存在なのだ。はっきり言って、何をかけるか楽しみ。すっげー楽しみにしていたロスカの来日もおじゃんになってしまったし(ホントに東電には頭くるよ)、こりゃみんなでシルキーのソウルに触れるしかないな。

SILKIE JAPAN TOUR 2011
4/15(金)大阪AVENUE A : TEL:06-4963-3748 
4/16(土)東京UNIT : TEL:03-5459-8630

ONE LOVE!

ダブステップ・シーンからソウルサイドを拓く才人、シルキーが待望の初上陸!
リアル・アンダーグラウンドのサウンズ&ヴァイブスを体感!
待望の2ndアルバムがいよいよこの夏リリースが決定!

DRUM & BASS SESSIONS 15th.Anniversary Countdown!! [1996-2011]
"DRUM & BASS x DUBSTEP WARZ 2011 "

2011. 04. 16 (SAT) @ UNIT
feat.SILKIE
黴€黴€黴€黴€黴€黴€黴€ 黴€
with : YAMA a.k.a. SAHIB, TETSUJI TANAKA, DX, DJ TAKAKI, DJ 100mado, MAMMOTH DUB(epo,うつぶせ)
vj/laser : SO IN THE HOUSE

open/start 23:30
door ¥2500

info. 03.5459.8630 UNIT
https://www.unit-tokyo.com

Ticket outlets: 
当日券2500円のみとなります。

※3/19 ZINC+PLASTICIANの前売りチケット、4/16の前売りチケットをお持ちの方へは差額の返金を当日会場にてさせて頂きます。
※ご希望の方には払い戻しも致します。
ぴあ、ローソン、e+で購入された方は4/16まで購入店舗で払い戻しが可能です。
プレイガイド以外の店舗でご購入された方はUNITにて4/16まで受け付けます黴€(チケット販売店舗では行っておりません)黴€。
受付時間:平日13:00~19:00
※詳細はUNIT (03-5459-8630)までお問い合わせ下さい。


★SILKIE (Deep Medi Musik, Anti Social Entertainment, UK)
ダブステップのソウルサイドを代表するプロデューサーとして"ダブステップのLTJブケム"とも称されるSilkieは、ウエストロンドン出身の24才。2001年、15才でシーケンスソフトを使って音作りを始め、ブレイクビート・ガラージ(ブレイクステップ)、ヒップホップ、R&B等、多様なビーツを探求する。またDJとしてReact FMでR&B(スロウジャム)をプレイする。

最初のダブステップは友人のHarry Craze、Heny Gと手掛け、02年の最初期ForwardでYoungstaにプレイされる。また兄がMCで参加していたグライム・クルー Unorthadoxのプロデューサーを務め、Nolay、Wiley、Jammerらにトラックを提供する。03年にDaz-I-Kue (Bugz In The Attic)の協力でシングル"Order" (P Records)を初リリース。その後Heny G、Questらとダブステップレーベル、Anti Social Entertainmentを立ち上げ、"Sign Of Da Future"(05年)、"Dub Breaks"(06年)を発表。

07年にDMZのMalaと出会い、08年に彼のレーベル、Deep Medi Musikから"Hooby/I Sed"、"Skys The Limit/Poltigiest"を発表、またSoul JazzやSkream主宰のDisfigured Dubzからもリリースがあり、Silkieの才能は一気に開花する。
そして09年、Deep Mediから1st.アルバム『CITY LIMITS VOLUME 1』が発表されるとソウル、ジャズ、デトロイトテクノ等の要素も内包した壮大な音空間で絶賛を浴び、ダブステップの金字塔となる。
その後も彼のコンセプト"City Limit"は"Vol. 1.2"、"Vol, 1.4"とシングルで継続され、いよいよこの夏、待望の2nd.アルバムがリリース決定した。注目の初来日!
https://www.myspace.com/SILKIE86
https://twitter.com/silkierose
https://www.facebook.com/silkie86
https://deepmedi.com/

interview with Salyu + Keigo Oyamada - ele-king


salyu × salyu
s(o)un(d)beams

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 変化を望む人が好むのは、変化を肯定する音楽である。停滞を否定し、動き続けることを良しとする音楽だ。salyu × salyu(サリュー・バイ・サリュー)によるアルバム『s(o)un(d)beams』は、そういう意味では変わっていくことを望んでいる、すなわちレフトフィールドなポップだ。小山田圭吾がプロデュースしたこの作品は、まずなによりも耳を楽しませてくれる。Salyuは彼女自身がいち台の有能なシンセサイザー(合成装置)であるかのように、彼女のさまざまな歌と声を絞り出し、それらを惜しみなくコーネリアスの実験台(スタジオ)のミキサーに送り込んでいる。コーネリアスの得意とするギミック(遊び心)はいたるところに効いているが、まあ、個々の楽曲がよくできている。
 彼女の(チョップされたような)複数の声がそれぞれの音程をキープして、ピアノとともにハーモニーを作っていく"ただのともだち"は、このアルバムの面白味を集約しているような曲である。"muse'ic"のような小山田圭吾の歌メロ作りの巧さが出ているような曲においても、彼女は声はただ歌うのではなく、空間をデザインする一要素のように機能している。声を機械に流し込み操作するという点ではブルックリンの才女、ジュリアンナ・バーウィックの新譜を思い出すが、緻密さ、ポップの度合いにおいては他に類を見ない......いや、コーネリアス以外に類を見ないユニークな音楽になっている。作曲はすべて小山田圭吾、作詞は七尾旅人、坂本慎太郎、いとうせいこう、国府達矢といった人たちの名前がクレジットされている。言葉と音楽が他人によるものであっても、歌と声だけでその作品の圧倒的な主役を演じられることをSalyuは主張している。まあ、これだけの個性派に囲まれながら、彼女は見事に声という音を発信しているわけです。

クロッシング・ハーモニーという、ハーモニーの構築という考え方に出会うんです。楽器で鳴らされる不協和音というものを声がやったときにまったく違ったものになる、そういう考えに出会ったときに、これならいっしょにできるんじゃないかと思ったんです。――Salyu

お世辞抜きで、良いアルバムですね。ある意味ではパーフェクトなポップ・アルバムだと思いました。

Salyu:嬉しいですね。

このアルバムの話は、最初はSalyuさんが持ちかけたんでしょ?

Salyu:はい。そうです。私からです。

ポップ・アルバムと言っても実験的なポップ・アルバムですよね。まずはとにかく実験をしたかったのか、あるいはコーネリアスといっしょにやりかったという気持ちが強かったのか、どっちなんでしょう?

Salyu:後者ですね。

後者。

Salyu:はい。もちろん実験的なことはやりかったんですけど、それをコーネリアスといっしょにやりたいという感じですね。

コーネリアスが大きかったんですね。

Salyu:優先順位で言えばそうですね。実験的なことをやりたいということもあったんですけど、小山田さんと音楽を作りたいという気持ちはずっとあった。

ずっとあったんですか。

Salyu:あったんです。でも、小山田さんも自分の音楽活動されているわけで、何か具体的にやりたいことがないとお願いもしにくいというか(笑)。

はははは。

Salyu:まあ、しにくいっていうこともないけど、具体的にこちらが「こういうことやりたい」っていう話があったうえでいっしょに取り組めればなぁというのがずっとあったんですね。そうしたら、クロッシング・ハーモニーという、ハーモニーの構築という考え方に出会うんです。

それは?

Salyu:楽器で鳴らされる不協和音というものを声がやったときにまったく違ったものになる、そういう考えに出会ったときに、これならいっしょにできるんじゃないかと思ったんです。

なるほど。ハーモニーね。

Salyu:これはもう、小山田さんと組んでやりたいと。

それまで面識はあったんですか?

小山田:ちょいちょい。

Salyu:ちょいちょいですね(笑)。小山田さんは私のことほとんど知らなかったんですけど(笑)。

小山田:いえいえ。うちのドラムのあらき(ゆうこ)さんとか、ベースの清水(ひろたか)くんとか、彼女のバンドにいたりして。

なるほど。

小山田:彼女のバンドでギター弾いている名越(由貴夫)さんとかも知ってるし。

名越くん、あー、俺も知ってますよ。ぜひ、宜しくお伝え下さい(笑)。

Salyu:わかりました(笑)。

小山田:だからバンドはみんな知り合いだったんですよね。で、ライヴ見に来てね。

Salyu:私が勝手に見に行ったんです。

小山田:あそっか。いっかい見に来てくれたんだ。

いつのライヴ?

小山田:『センシャス』の頃だよね。

Salyu:渋谷AXでやったときですね。あのとき初めて見て......。

あの完璧なライヴをね。

Salyu:完璧なライヴを、はい。

小山田:完璧じゃないけどね。

あれが完璧じゃないなら、何が完璧なのか(笑)。

Salyu:開場から開演まで、時間も完璧でしたね(笑)。

終演から客引きまで(笑)。

Salyu:そのとき私、パスをもらって。しかもロビーまでしか行けないパスを。そしたらドラムのゆうこさんが「会いたいでしょ。そのパスでは楽屋に入れないからおいでー」って言ってくれて(笑)。それで「うわー」って楽屋に入れてもらったんですよね。そのときに初めてお会いしたんです。話したと言っても2~30秒ですよ(笑)。どわーってゲストが並んでいるなかで(笑)。

小山田:だいたいライヴのときの楽屋はたくさん人がいるからね。

Salyu:まあ、そのときが初めてで。

[[SplitPage]]

その合唱隊が、レヴェルが高い合唱隊だったんですよ。複雑なドビュッシーとかの器楽曲を声で再現しているんだよね。それがね、もうむちゃくちゃすごいんですよ。とにかく今回やっているのは彼女の原点に近いんですよ。シンガーやってるのはそのずっと後だから。――小山田圭吾


salyu × salyu
s(o)un(d)beams

トイズファクトリー E王

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僕も、たいへん失礼な話なんですけど、Salyuさんの音楽ってそれまで聴いたことがなかったんですね。

Salyu:いいんですよ(笑)。

す、すいません(汗)。逆に言えば、僕みたいなリスナーは今回の作品で知ることができたんですけどね。それで以前の作品も聴いてみたんです。そしたらぜんぜん違うことをやっていて驚いたんです。今回の音楽は、いままでやってきたことをさらに発展させるとか、いままでやってきた音楽に新たな方向性を与えるとか、多様性を持たせるとか、そんなものじゃないでしょう。だからすごくドラスティックな挑戦に思ったというか、大変身とういか、「よくここまでやられたなぁ」と思ったし、「いままで何でやらなかったんだろう?」とも思ったんですよね。

Salyu:ことの発端がハーモニーということへの興味だったんで、それを21世紀のポップスとしてどう落とし込むかということがあって、それで小山田さんの力を借りたかった。それで、なぜいままでこれをやらなかったのかとういと、小さい頃から合唱をやっていたんですね。それでハーモニーということが小さい頃から身近にあったんです。ずっとやっていたし、愛しているし......、だから、挑戦ではあるんですけど、私にとっては原点回帰に近いんですよね。ガラっと新しいことをやったというよりも、もともと持っていたモノなんです。

ああ、なるほどね。

Salyu:だから、Salyuとしてやっていることは、ポップスを歌う、ということを考えてやっているシンガーなんだけど、今回のsalyu×salyuというプロジェクトは、より幅広く引き出しをもっていて、小さい頃からやってきたこともそこに入っているという感じですね。幅広くやっているというか。

小山田:駆使している。

Salyu:そう、すごく駆使しているんです(笑)。

小山田:ライヴを見てもらえればよくわかると思いますよ。子供の頃にやっていた合唱隊の女の子、去年、結婚式で再会して、それでスカウトしてきて、いま4人組のコーラスグループ作って、このアルバムをぜんぶ再現するんだけど。

ああ、こんど(4/15)DOMMUNEで放映しますよね。それ、楽しみです。しかし、合唱隊というのが新鮮でいいですね!

小山田:その話にすごくピンと来たんで。

Salyu:合唱隊というと人を集めなければならないんですが、たまたま10代のときにいっしょにやっていた同級生に会えて、それで彼女たちといっしょにやればいいんだって。

小山田:しかもその合唱隊が、レヴェルが高い合唱隊だったんですよ。複雑なドビュッシーとかの器楽曲を声で再現しているんだよね。それがね、もうむちゃくちゃすごいんですよ。

Salyu:ハハハハ。

小山田:とにかく今回やっているのは彼女の原点に近いんですよ。シンガーやってるのはそのずっと後だから。

そうかー、その合唱隊という話を聴いてすべてがクリアになった気がしますよ、僕は。コーネリアスのポスト・パンク的な感性と合唱隊は合うだろうし、小山田くんがそういうのが好きなのもわかるし。あと、これは計らずとも、なんですけど、21世紀のポップで歌とエレクトロニクスというテーマはたしかにあって、ジェームス・ブレイクって知ってる?

小山田:ああ、チラリと。

ダブステップ系の人で、輸入盤だけで日本でも3000枚以上売ってるんですけど、彼の音楽を特徴づけているのがまさに歌を電子的に操作するってところなんですよね。サンプリングしたネタを思い切り変調させるだけじゃなく、それで和音を作るんですよね。salyu×salyuの目指していることと決して遠くはないですよね。

Salyu:へー。

コーネリアスの音楽の特徴にエレクトロニクスというのがあるじゃないですか。それはまた合唱以外の部分だと思うんですけど。

小山田:エレクトロニクスがいいとか、アコースティックがいいとか、あんまないですよね。

Salyu:なんでもアプローチしてみたいタイプなんですけど、今回とくにエレクトロニック・ミュージックをやりたいなということでもなかったね。

小山田:あくまで声が基本なんですよね。それがあれば、バックトラックはなにがあっても良いって感じだったんだよね。

Salyuさんがコーネリアスでとくに好きなアルバムってなんですか?

Salyu:『ポイント』、それから『センシャス』。人生のなかですごい大きな出会い。

どういう意味において大きかったんですか?

Salyu:えーとね、ちょっとロマンティックな言い方になるけど、私、1980年生まれなんですね。20歳になると世紀が変わると言われて育ってきたし、だから新しい世紀をすごく楽しみにしていたんですね。いろんなことが変わると子供の頃から思っているわけですよ。まあ、90年代後半からあまり変わらないんじゃないかなと思っていたんだけど、やっぱり期待があったんですね。でも、21世紀になってもあまり変わらないなというのがあって、「あまり変わらないな」と、「新しい世紀らしいこともあんまないな」と、そんななかで『ポイント』を聴いて、それが「変わった」と感じることができた最初の出来事だったんですよね。

なるほど! 未来を感じることができたと。

Salyu:新世紀という実感をもらった作品。

とくにどんなところにそれを感じたんですか?

Salyu:空間の広さ、空間のあり方の新しさというか。いろいろとあるんだけど、そういうことなんじゃないかな。

なるほど。

Salyu:ポップだってこととかさ。

ポップな曲はたくさんあるけど、コーネリアスのポップさは他と違うからね。

Salyu:そう。

ふーん。そういうことで、今回はもう、プロデュースは丸投げ、「任せましたー」って感じだったの?

Salyu:そうですね。

小山田:そこまで気持ちよく投げてもらえたから、気持ちよくやらせてもらいましたよ。

あと、コーネリアス的には、このところやってこなかった歌作りというか、ソングライティングというのもやっているよね。

小山田:そうですね。でも、それはもう、彼女に触発されてやった。自分ひとりではできないことだから。

もともと歌メロ作るのが上手い人だから。コーネリアスではそれをあんま出さなくなっちゃったから。

Salyu:そうそう、だから、すっごい楽しみだったんですよね。どういうメロディをもらえるんだろうって。

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私、1980年生まれなんですね。20歳になると世紀が変わると言われて育ってきたし、新しい世紀を楽しみにしていたんですね。でも、21世紀になってもあまり変わらないなというのがあって、そんななかで『ポイント』を聴いて、「変わった」と感じることができた最初の出来事だったんですよね。――Salyu


salyu × salyu
s(o)un(d)beams

トイズファクトリー E王

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歌詞に関しては複数の方が書いていますけど、それも小山田くんが決めたの?

小山田:いや、それは彼女と相談して。

ちなみに坂本慎太郎の"続きを"の歌詞は、震災のコメントとして彼がele-kingに寄せてくれたんですけど、ものっすごい反響があったんですよ。

小山田:ああ、DOMMUNEに出てたよね。それは僕らもびっくりしていたんだよね。

それが計らずとも最後の曲になっているんだね。

小山田:そうなんですよね。実は震災のあとにこの曲をあらためて聴いたんですよ。本当は、震災の後に別の曲を発表する予定だったんですけど、それを急遽、この曲にしようって、Salyuたちと演奏したやつをYouTubeにアップしたんだよね。そのときも歌詞に対する反応がすごかった。で、その曲をやる前に、坂本くんに連絡して「やるけどいい?」って言ったら、「実はそう思っていた」って。「歌詞をele-kingに上げるけどいい?」って。彼ももちろんこういう状況を想定して書いたわけじゃないんだけど、でも、その言葉が何かいまの気持ちを代弁してしまった。そういうことって、偶然にしろ、あるときにはあるからね。

salyu×salyuのこのアルバムを最初に聴いたときには、良い意味でエンターテイメントだと思っていたんだけどね。それがね......。

小山田:......うん。

Salyuさんは自分でも歌詞を書いてますよね。

Salyu:どっちかと言うと、あんま好きじゃない。

作詞はダメ?

Salyu:苦手なんですよ。

なんで(笑)?

Salyu:なんでかって言うと、もうすでにある曲を演奏するのが音楽だと思って育ってきているんです。

あー、そうか。

Salyu:合唱も、山のように譜面があって、人の作った曲を自分がどう演奏するのかってことが音楽だと思って育ってきている。だから、人からいただく(曲の)ほうがフィットしますね。

小山田:坂本くんに歌詞を書いてもらいたいといったのもSalyuだから。

そうなの。俺は疑いもなく、これはいかにも小山田くんかと思っていた。

小山田:僕ももちろん、思ってはいたんだけど、ゆらゆら解散したばっかりだったから、ちょっと言いづらくて。

Salyu:ハハハハ。

小山田:でもSalyuが言ったから、ちょっと言ってみようかなと(笑)。

Salyu:ねー。あれは感動的でしたよね。

いろんなタイプの曲をやっていると思うんですけど、かなり実験的な曲もやってますね。声がループしているヤツ。

小山田:"歌いましょう"かな。

そう、あれ。

小山田:あれは僕が適当に作った曲。Salyuが忙しいときに、彼女の仮歌を僕がチョップしたり編集したりして、それで作った。

あれは......ひと言で言ってしまうと、アニマル・コレクティヴというか。

小山田:そう、気持ち悪いですよね。

Salyu:ハハハハ。

あの曲だけブルックリンなんだよね(笑)。ジュリアナ・バーウィックという女性アーティストの作風とすごく近い。

Salyu:ライヴでは、ループ・マシーンを使って、いよいよというか......(笑)。

小山田:いや、あれ面白かったよ。

まあ、ホントにいろんなタイプの曲をやっているよね。

小山田:うん、可能性をいろいろ試している。そういうところはファースト・アルバムっぽいでしょ。

ということは、次作も考えている?

小山田:まだぜんぜんわかんない。お互いの活動もあるんで。ただ、このプロジェクトに関しては面白かったんで、またチャンスがあればやりたいですけどね。

小山田くんがここまで全面的にやっているのって、いままでないでしょ?

小山田:自分のアルバム以外ではないですね。まあ、自分のアルバムも4年ぐらい前なんで(笑)。

このあとライヴが控えてますけど、小山田くんは参加する?

小山田:参加できるときがあれば参加します。ライヴはすごく面白いですよ。

生でやるの?

小山田:9割生だよね。同期させる曲もちょっとあるけど、ほぼ生ですね。すごく面白い。

アルバム・タイトルの『s(o)un(d)beams』にはどんな意味があるんですか?

Salyu:音を視る、というか、光を聴くという感覚、そういうニュアンスを込めたタイトルですね。

小山田:歌詞ではっきりとアルバムでやりたかったことを言ってる曲なんで、それをアルバムのタイトルにもしようってね。

ちなみに、ふたりの共通する趣味っていうのはあるんですか?

小山田:なんだろうね。あ、トレーシー・ソーンは好きだよね?

Salyu:トレーシー・ソーンは好き(笑)。あとは......アントニー!

小山田:アントニーはいいよね。

やっぱ、歌唱力がある人が好きなんですね。

Salyu:好きですね。ああいう人たちの歌は身体に来ますね。


※なお、salyu × salyu のツアー情報はここ(https://www.salyu.jp/salyuxsalyu)をチェック!

[Electronic, House, Dubstep] #5 - ele-king

1.Pearson Sound - NSWL007 | Night Slugs

 ラマダンマンは、今後メインの名義をピアソン・サウンドにするそうで、たしかにM.I.A.のリミックスの名義も、ファブリックのミックスCDの名義も、〈ナイト・スラッグス〉からのリリースとなったこのシングル「NSWL007」の名義もピアソン・サウンドとなっている。
 それで「NSWL007」は、レーベルが〈ナイト・スラッグス〉だけあってその作風を大雑把に言えばUKガラージがブレンドでされたUKファンキー、とにかくフレッシュで、若々しく、痛快だ。アフロでヘヴィーなキック・ドラムが腰に響くA面は、ロッド・リーによるゲットー・ブレイクな"Let Me See What U Workin With"をネタにしたリフィックス(remixではなくrefix)で、フリップ・サイドは驚くなかれ......ルイ・ヴェガが1993年にプロデュースしたハードドライヴによる"Deep Inside"のリフィックスだという。およそ20年前に〈ストリクトリー・リズム〉から発表された音源がいまこうしてダブステップ経由で(著しく変形しているとはいえ)ファンキーに蘇っている。

2.Jacques Greene / Optimum - Night Slugs Allstars Sampler | Night Slugs


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 それにしてもピアソン・サウンドまでもが〈ナイト・スラッグス〉、訳せば〈夜のナメクジ〉から作品を出したという事実は興味深い。いまもっとも勢いのあるプロデューサーとレーベルとの出会いだから。早い話、このレーベルはそれがUKガラージであれテクノであれダブステップであれ、モダンなセンスを有したダンス・ミュージックでありさえすればいいのだろう。
 ジャッケス・グリーンとオプティウムによるスプリット・シングル「Night Slugs Allstars Sampler」は昨年末のコンピレーション・アルバムからのヴァイナル・カットで、ジャッケス・グリーンのほうはシカゴ・ハウス寄りに、オプティウムのほうはトランシーなテクノ寄りに向かっている。リリースは4ヶ月ぐらい前のものだが、ジャッケス・グリーンはこのデビュー作に端を発したかのように、今年に入ってグラスゴーの〈ラッキーミー〉から早速2枚のヴァイナルを切っている。レコード店で見かける度に買うかどうか迷ってまだ買っていない......が、こんど行ってあったら買おうかなー、リミキサーがジョイ・オービソンの〈ドルドラムス〉からデビューしたブライデンだというのが気になっているし......。

3.Eccy - Flavor of Vice | Slye


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 エクシーが自分の音楽の方向性をダブステップ以降のダンスに定めてからの最初のオリジナル作品がようやく、フィジカルとしてリリースされた。「Flaver of Vice」は7曲入りのCDシングルで、うち2曲はリミックス(〈プラネット・ミュー〉から作品を出しているロンドンのスビーナ、そしてフランスのサム・ティバ & マイド、どちらも注目株)が収録されている。最初に耳に残るのは〈ナイト・スラッグス〉的な雑食性の高いトラックで、"Flaver of Vice"は4/4のキック・ドラムにファンキー風のパーカッションとエレクトロ・タッチのシンセのフレーズが挿入される。
 "Old Snake Rapier"はおそらく本作でもっとも魅力的なトラックだ。シンプルなシンセの反復にチョップされた声が絡んでいく派手な展開だが、ベースとドラムのコンビネーションがスムーズで、彼が目指すところのダンスの熱狂がもっとも聞こえる。
 いっぽう作品の構成としては最初の2曲とは対をなすように、3曲目の"Solve The Fullmoon Sex"はダークなダブステップで、続く"Plastic Soul"もディープな展開を見せている。5曲目の"Dog Tooth"はドリアン・コンセプトの美しさとラスティの激しさあいだで鳴っているようなダウンテンポで、彼が何とか新しい第一歩に踏み出そうとしていることがよくわかる。
 日本のヒップホップにおけるトラックメイカーのほとんどは、せいぜいマッドリブやジェイディラ、MFドゥームで止まっている。それはもう、10年前の話だ。さあ、先に進もうぜと、かつてはシンゴ02とタッグを組んでいたこともあるこのビートメイカーの新しい作品は呼びかけているようだ。

4.Joy O - Wade In / Jels | Hotflush Recordings


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 ジョイ・オービソンあらためジョイ・O名義による最初のシングルはスキューバの〈ホットフラッシュ〉からのリリースとなった。スキューバの音楽はいまや立派に"テクノ"だけれど、オービソンはいまだダブステップのにおいを残している。
 A面の"Wade In"はアシッディなベースラインとトランシーなリフを兼ね備えた4/4ビートだが、ブリアル直系の亡霊のような声とダークなアンビエントの掛け合いがなんとも効果的で、テクノとダブステップとのあいだの領域のより深い場面へとリスナーを誘惑する。"Jels"も彼らしいマッシヴな4/4ビートで、こちらはミニマル・テクノが忘れてしまったダンスの熱さを実にスマートに展開している。彼らしい、気の効いたダンス・トラックである。

5.Joy Orbison - BB / Ladywell | Doldrums

 ジョイ・オービソンは、昨年末も彼自身のレーベル〈ドルドラムス〉からもシングルを出しているが、僕個人はこちらのほうが好みである。
 "BB"にはリズム・イズ・リズムのパーカッシヴなグルーヴがあり、シカゴ・ハウスのベースラインがある。"Ladywell"はロン・トレントを思わせる気品のあるメロウなディープ・ハウスで......というか、この人は絶対にハウスで踊っているだろ! 再プレスをしないことで知られるレーベルなので、まず無いとは思うが、奇跡的に見つけたときは迷わないこと。

6.Koreless - 4D / MTI | Pictures Music


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E王 グラスゴーで暮らす19歳の、この名義によるデビュー・シングルで、フォー・テットにも似た美しい音色を持った素晴らしい1枚。
 "4D"は流行の声ネタを使いながら、2ステップとディープ・ミニマルをシェイクして深夜のエレクトロニカを調合している。"MTI"は、ダブステップ世代によるディープ・ハウスで、ジェームス・ブレイクよりも彼の資質がロマンティックであることをほのめかしている。
 いずれにしてもダブステップの新しい静けさがここにある。素晴らしい新人の登場だ、ジャイルス・ピーターソンおじさんが騒ぐ前に聴け!

7.James Blake - The Wilhelm Scream | Atlas Recordings


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 B面には未発表曲が2曲。"What Was It You Said About Luck"は、言ってしまえばアルバム収録曲の同じ感覚の歌モノだが、アンビエント調の"Half Heat Full (Old Circular)"はなかなかすごい迫力。マッシヴ・アタックというよりも、コクトー・ツインズに近い。

8.Burial + Four Tet + Thom Yorke - Ego / Mirror | Text Records

 ブリアル、フォー・テット、そしてトム・ヨークによるコラボ・シングルで、ヴァイナルに関しては、おそらく日本全国のそれぞれのお店に到着してわずか数時間で売り切れている(万が一、見つけたら迷わず買え!)。トム・ヨークはヴォーカリストとしての参加だと思われるので、ブリアルがフォー・テットとの共同で彼の〈テキスト〉から作品を発表するのは2009年の「Moth / Wolf Cub」以来のことで、あのシングルを聴いている人なら犠牲を払ってでも手にしたい作品だったろうし、そしてこのシングルはそうした期待にある程度は応えている。そう、ある程度は......。というのも、トム・ヨークの歌が、まあ悪くはないのだけれど、必ずしも必要とも思えないからである。だいたいこのシングルを心待ちにしていたのは、レディオヘッドのファンではないだろう(UKの音楽シーンにとってはでかいだろうね。なにせトム・ヨークがロンドンのアンダーグラウンドにおける最良のパートに自らアプローチしているのだから)。
 A面の"Ego"では曲の後半にピアノのソロ演奏が入るのだけれど、そのエレガントな響きが素晴らしい効果を上げている。"Mirror"ではアトモスフェリックなアンビエントが艶めかしい闇のミニマリズムと見事に噛み合っている。ブリアルのファンの側から言えば、彼がミニマルにアプローチしているのがこのプロジェクトで、さすがに"Moth"ほどの衝撃はないにせよ、この艶めかしい陶酔はやはり代え難い。僕個人にはっきりと言えるのは、もしこの2曲がレディオヘッドの新作に収録されていたら、そのなかでもっとも好きな2曲になったであろう......ということである。

9.Burial - Street Halo | Hyperdub


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E王 いよいよ、6月にサード・アルバムのリリースが予定されているブリアルの新曲。ヴァイナルには、ミキサーのメーターがいきなりレッドゾーンに突入するすさまじい音圧が彫られている。"Street Halo"は、メランコリックなブリアル印だが、彼のなかでもとくにグルーヴィーな曲なひとつ。ジョイ・オービソンやピアソン・サウンド、アントールドたちと歩調を合わせるかのように、ゼロ年代の音楽を方向付けたダブステッパーはクラブのダンスフロアへと向かっているようだ。フリップ・サイドの"NYC"はメロウなダウンテンポで、"Stolen Dog"歪んだダブ。真打ち登場というか、どちらもエロティックなディストピア・サウンドで、アルバムへの期待が高まる。(←サード・アルバムが控えているというのは『Fact Mag』のエイプリルフールだったそうです!! 見事に騙されました!!)

10.Panda Bear - Surfers Hymn | Kompakt


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 3枚目のアルバムのリリースを控えたリスボン在住のアニマル・コレクティヴのメンバーは、すでに3枚の7インチ・シングルを〈ファットキャット〉〈ドミノ〉〈ポウ・トラックス〉の3レーベルから出していて、僕は〈ファットキャット〉からのシングルがいっとう好きだが、「Surfers Hymn」は〈コンパクト〉からリリースされて、このシングルのみがリミックス・ヴァージョン入りで、しかもそのリミキサーがアクトレスと言われれば買うでしょ。
 まあ、結論を言えば可もなく不可もなく......かな。アクトレスらしいスケベったらしい変わったミニマルで、と同時にこれがまた思いも寄らなかったダンス・トランスなんだけれど、だったら12インチでリリースすべきだった。

11.Dorian Concept - Her Tears Taste Like Pears | Ninja Tune


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 当時ほとんど無名のドリアン・コンセプトは2009年にオランダの〈キンドレッド・スピリッツ〉からデビュー・アルバム『When Planets Explode』を出したときから、彼はただその才能によってファンを唸らせていたものだが......、いまやフライング・ロータスのパートナーとして、あるいは彼のコズミック・サウンドのもっとも有力なネクストとして注目を集めている。
 このオーストリア人は、幼少期からクラシックを学び、ジャズに遊びながら、その反骨精神によって実験的なヒップホップに手を染めてきた人だという話だが、いまや彼のスキルとその方向性は時代の最先端に躍り出たというわけだ。〈ソナー・サウンド・トーキョー〉でも、サブステージとはいえ、ドリアン・コンセプトのDJのときは入れきれないほどの満員だった。今年〈ニンジャ・チューン〉からリリース予定の彼のセカンド・アルバムはけっこうな騒ぎになること必至......だろう。

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