「KING」と一致するもの

Gang Gang Dance - ele-king

 ギャング・ ギャング・ダンスといえば、ゼロ年代NYのアンダーグラウンド・シーンにおいてアニマル・コレクティヴと並んでひときわ異彩を放っていたバンドである。世界中のさまざまな音楽の要素を取り入れながら巧みに実験精神とポップネスとの融合を試みていた彼らだけれど、前作『Eye Contact』が2011年だから、あれからもう7年ものときが流れていたのだ。そんな長きにわたる沈黙を破り、来る6月22日、ついにGGDが新作『Kazuashita』をリリースする。先行公開された新曲“Lotus”を聴く限り、その折衷的なスタイルはいまなお健在の様子で……ところで「カズアシタ」って何?

GANG GANG DANCE

7年の沈黙を経て復活!!!
最新アルバム『KAZUASHITA』のリリースを発表&新曲公開!
秋には超待望の来日も!

アニマル・コレクティヴやLCDサウンドシステム、バトルズなど、その後ヘッドライナー級アクトへと成長する才能を生み出しまくった2000年代初頭のニューヨークにおいて、音楽とアートの境界線を破壊し、一際異彩を放った尖鋭的音楽集団ギャング・ギャング・ダンスが7年の沈黙を破り再始動! 待望の最新アルバム『Kazuashita』のリリースを発表し、新曲“Lotus”を解禁! さらに秋には2009年のフジロック以来となる超待望の来日公演も計画されている。詳細は後日発表予定。

Gang Gang Dance - Lotus (Official Audio)
https://youtu.be/ZIvCVYX__9c

リジー・ボウガツォス、ブライアン・デグロウ、ジョシュ・ダイアモンドを中心に2000年代前半に結成されたギャング・ギャング・ダンス。初期作品が当時ニューヨークで勢いのあった実験的音楽シーンの中で高く評価され、2008年8月8日にはボアダムズによる88 Boadrumで指揮を任され、その直後にリリースされた傑作『Saint Dymphna』で一躍カルト・バンドの域を超え、盟友アニマル・コレクティヴと共に、シーンの中心的存在となる。その後〈4AD〉との契約を経て『Eye Contact』をリリース。自身の作品をリリースした以外にも、若くしてこの世を去ったグラフィティ・アーティスト、ダッシュ・スノーやネイト・ローマン、ティンチー・ストライダー、ボアダムズなどとのコラボレートも知られる。

ポスト・ロックからエレクトロニカ、インダストリアル、シューゲイズ、サイケ、エクスペリメンタルなど、ありとあらゆるリズムとスタイルをひとつに纏め上げ、そこにリジー・ボウガツォスのシャーマニックなヴォーカルが加わることで、鮮かでトライバルな異世界へと誘う唯一無二の音楽で、多くに影響を与えてきた彼らが、7年もの沈黙を破って完成させたのが最新作『Kazuashita』。本作は、デグロウによってプロデュースされた作品で、ニューヨークのスタジオやアートスペースでレコーディング・セッションを何度か行ったのち、BOADRUMで出会ったドラマーのライアン・ソーヤー、アリエル・ピンクとのコラボでも知られ、本作ではプロダクションの一部とミキシングを担当したホルヘ・エルブレヒトと共に作品を完成させた。アルバムのジャケット・アートには、アメリカの若手アート・フォトグラファー、デヴィッド・ベンジャミン・シェリーの作品が起用されている。

ギャング・ギャング・ダンス7年ぶりの最新アルバム『Kazuashita』は6月22日(金)に世界同時リリース! 国内盤CDには、ボーナストラック“Siamese Locust”を追加収録し、解説と歌詞対訳が封入される。輸入盤LPの初回限定プレス盤はカラー・ヴァイナル(レッド)仕様となる。またiTunes Storeでアルバムを予約すると、公開された“Lotus”がいち早くダウンロードできる。

label: 4AD / Beat Records
artist: Gang Gang Dance
title: Kazuashita
release date: 2018.06.22 FRI ON SALE

[ご予約はこちら]
beatink.com: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9602
amazon: https://amzn.asia/6ppXWDA
iTunes Store: https://apple.co/2GOpQWb

[Tracklisting]
01. ( infirma terrae )
02. J-TREE
03. Lotus
04. ( birth canal )
05. Kazuashita
06. Young Boy (Marika in Amerika)
07. Snake Dub
08. Too Much, Too Soon
09. ( novae terrae )
10. Salve On The Sorrow
11. Siamese Locust (Bonus Track for Japan)

Loyle Carner - ele-king

 昨年デビュー・アルバム『Yesterday's Gone』を発表し、一気にUKを代表する若手MCとなったロイル・カーナー。自身でトラックメイキングもこなす彼が、クウェズやトム・ミシュといったいまをときめくプロデューサーたちの助力を得て紡ぎ出したあのメロウネスは、グライムともトラップとも異なるヒップホップのあり方を提示するオルタナティヴなものだった。その若き才能が来る5月、日本で初めての公演をおこなう(この初来日を記念して『Yesterday's Gone』の日本盤もリリース)。本国では数千人規模のキャパでもすぐにソールドアウトしてしまうそうなので、この機会は見逃せない。5月17日、渋谷WWWにてそのパフォーマンスを思う存分堪能しよう。

Hostess Club Presents
Loyle Carner

2018/5/17(木)渋谷WWW
Open 18:30 / Start 19:30
Ticket:¥4,500(税込 / 1 Drink別途)
https://ynos.tv/hostessclub/schedule/20180517.html
主催:イーノス / WWW
制作・招聘:イーノス

※未就学児(6歳未満)のご入場をお断りさせていただきます。
※カメラ・ビデオテープレコーダー・カメラ付携帯電話などによる出演アーティストの撮影、録音は禁止致します。
※会場内・外で発生した事故・盗難について主催者・会場・アーティストは一切責任を負いません。

BBC SOUND OF 2016に選出されたUK期待のラッパー、ロイル・カーナーのデビュー・アルバムが遂に日本盤化!

BBC Sound Of 2016ノミネート! さらに本作は2017 年のマーキュリー・プライズにノミネート、2018 年のBrit Awardで2部(British Break-through Act / British Male Solo Artist)、NMEアワードでは 最優秀ブリティッシュ・ソロ・アーティスト賞を受賞するなどUKではすでにブレイクしているMC、ロイル・カーナーが満を持して日本デビュー!

●キング・クルールとは同級生! アデルやエイミー・ワインハウス、ケイト・ナッシュが卒業した名門BRIT SCHOOLを卒業!
●俳優としてのキャリアを持ち、イヴ・サンローランの男性用香水の広告モデルも務めた。

artist: Loyle Carner (ロイル・カーナー)
title: Yesterday's Gone (イエスタデイズ・ゴーン)
label: Virgin EMI UK / Hostess
format: CD
cat no.: HSU-10186
pos : 4582214517896
発売日: 2018/4/4 (水)
価格: 2,400円+税
※日本盤はボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付(予定)

サウスロンドン出身、アデルやエイミー・ワインハウス、ケイト・ナッシュを輩出した名門BRIT SCHOOL を卒業し、キング・クルールとは同級生でもある。2014 年にデビューEP をリリース、2015 年にはジョーイ・バッドアスのUK ツアーのサポートに抜擢、更
にはグラストンベリー・フェスティバルにも出演を果たすなど早くから話題に。またヒュー•スティーブンスがホストを務めるBBC RADIO 1 の番組でカニエ・ウエストのカバーを披露するなど、メディアからも注目を浴び、BBC SOUND OF 2016 に選出。そして2017年にリリースされた本作にはKwes やTom Misch など若き才能がフィーチャリングで参加。UK初登場14位を記録し、 Independent 誌で2017年度の年間ベスト・アルバム第1位を獲得。The Sunday Time では9 位、NME では12 位と多くの媒体で年間ベスト上位を獲得した。更に2017年度のマーキュリー・プライズにノミネート、2018年のBrit Award で2 部(British Break-through Act / British Male Solo Artist)にノミネートされている。ミニマルなビートにゴスペルやジャズなどをサンプリングしたメロウな楽曲の数々はグライムのジャンルを飛び越え、UK では既にブレイクを果たしている。

Dego / 2000Black - ele-king

 言わずもがな、90年代から今日にいたるまでUKのドラムンベース~ブロークンビーツ・シーンを支えてきた4ヒーローのディーゴが来日ツアーを決行します。近年は自身の主宰する〈2000ブラック〉からのみならず、フォルティDLの〈ブルーベリー〉やフローティング・ポインツの〈エグロ〉からも作品を発表、昨年はセオ・パリッシュの〈サウンド・シグネイチャー〉からカイディ・テイタムとのコラボ『A So We Gwarn』をリリースするなど、その横断的かつ精力的な活動は最近の南ロンドン・ジャズの盛り上がりとも呼応していると言っていいでしょう。今回のツアーでは東京、京都、大阪の3都市を巡回。一部の公演ではマーク・ド・クライヴ=ロウや沖野好洋も出演します。ゴールデンウィークはこれで決まりですね。

◆DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018◆

ロンドンのクラブ/ソウル・ミュージック・シーンを牽引してきた巨匠、DEGOの来日ツアーが決定!
自身が主宰するレーベル、〈2000BLACK〉でブロークンビーツ/ニュージャズの潮流を生み、デトロイトのTHEO PARRISHと共に現代ブラック・ミュージックのグルーヴマスターとして君臨。
昨年はTHEO PARRISHのレーベル、〈Sound Signature〉から盟友KAIDI TATHAMとの共作アルバム『A SO WE GWARN』を発表しスマッシュヒットを記録する。
飽くなきビートの追求とスピリチュアルな音楽へのこだわり、音楽への深い愛情を反映した21世紀のハイブリッド・ソウル・ミュージックを生み出し続ける。

今回の日本ツアーでは、東京のハウス・ミュージックを代表してシーン賑わせている「Eureka!」@Contact、京都のclub Jazzシーンを引率してきているMETROで開催される「Do it JAZZ! 」、そして大阪公演はDEGOの盟友、沖野好洋と共にCIRCUS OSAKA & CATSでプレイする。

◆DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018ツアー日程
【東京】 05.04 (FRI) CONTACT https://www.contacttokyo.com/
【京都】 05.05 (SAT) CLUB METRO https://www.metro.ne.jp
【大阪】 05.11 (FRI) CIRCUS OSAKA https://circus-osaka.com/

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【東京公演】
Eureka!
■日時
2018年5月4日(金)
Open 22:00~
■会場
Contact

■料金
¥3,500 on the door
¥3,000 with flyer
¥2,500 GH S member
¥2,000 under 23
¥1,000 before 11PM

■出演
Studio
Dego (2000Black / Sound Signature)
Mark de Clive-Lowe (CHURCH / Mashibeats) -Live-
Yoshihiro Okino (Kyoto Jazz Massive / Especial Records)
Midori Aoyama
sio

Contact
Kamma & Masalo (Brighter Days)
Endo Nao (CMYK)
hiroshi kinoshita
Ozekix (shaman / Weld)
I-BEAR’ (The Guest House)

Foyer
haraguchic (FreedomSunset)
Souta Raw
Kirioka (CMYK)

Contact
B2F Shintaiso Bldg No.4 , 2-10-12 Dogenzaka, Shibuya-ku, Tokyo 150-0043 Japan
+81(0)3 6427 8107

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【京都公演】
Do it JAZZ! × DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018
■日時
2018年5月5日(土)
22:00 open/satrt
■会場
京都CLUB METRO

■料金
前売¥2,500 ドリンク代別途  当日¥3,000 ドリンク代別途

[前売]
チケットぴあ (Pコード:111-916) 、ローソンチケット (Lコード:55077)、e+ (https://bit.ly/2Dlsxrk)

※前売りメール予約:上記早割チケット期間以降は、前売予約として、ticket@metro.ne.jpで、前売料金にてのご予約を受け付けています。前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。

■出演
DEGO (2000BLACK/4hero,from UK)

LIVE :
T.A.M.M.I & NOAH

DJ:
Masaki Tamura (DoitJAZZ!)
Kazuhiro Inoue (DoitJAZZ!)
SOTA (Back Home / Rokujian)
Torei (SYN-C / SND)
and More!!

■お問合せ:京都 CLUB METRO
WEB:https://www.metro.ne.jp
TEL:075-752-4765

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【大阪公演】
DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018
■日時
2018年5月11日(金)
23:00 open/satrt
■会場
CIRCUS OSAKA & CATS

■料金
Door 2,500+1D Adv 2,000+1D

■出演
DEGO (2000Black | from UK)
YOSHIHIRO OKINO (Kyoto Jazz Massive)
QUETSA
NiSSiE
AKEMI HINO (SiiNE)

Dance Showcase:
NEW UK JAZZ DANCE TEAM
Irven Lewis・Michito “MITTO” Tanabe & Peri
(Elements Jazz Collective & Co )

■お問合せ:CIRCUS OSAKA
TEL : 06-6241-3822
https://www.circus-osaka.com/

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DEGO (2000BLACK, UK)
ロンドンに生まれたDEGOはサウンドシステムや海賊放送でのDJ活動を経て90年に〈Reinforced Records〉の設立に参加、4HEROの一員として実験的なハードコア・ブレイクビーツのリリースを開始。やがて4HEROはDEGOとMARC MACの双頭ユニットとなり、タイムストレッチング等、画期的な手法を編み出し、ドラム&ベースのパイオニアとなる。傑作『PARALLEL UNIVERSE』(94年)、『TWO PAGES』(98年)以降、4HEROはD&Bのフォーマットから脱却し、『CREATING PATTERNS』(01年)、『PLAY WITH THE CHANGES』(07年)で豊潤なクロスオーヴァー・サウンドを打ち出す。DEGOはTEK9名義でダウンテンポを追求する等、オープンマインドかつ実験的な制作活動は多岐に及び、98年に自己のレーベル、〈2000Black〉を始動、ブロークンビーツ/ニュージャズの潮流を生む。KAIDI TATHAMらBUGZ IN THE ATTIC周辺と密に交流し、DKD、SILHOUETTE BROWN、2000BLACK各名義による共作アルバムを制作。11年には1st.ソロ・アルバム『A WHA' HIM DEH PON?』を発表、ジャズ、ファンク、ソウルへの深い愛情を反映した傑作となる。その後も精力的な活動を続け、12年に『TATHAM, MENSAH, LORD & RANKS』を発表。14~15年、盟友KAIDIとの共作をFaltyDLの〈Blueberry〉、FLOATING POINTSの〈Eglo〉、THEO PARRISHの〈Sound Signature〉等から立て続けにリリース。15年にはDEGO名義の2ndアルバム『THE MORE THINGS STAY THE SAME』を〈2000Black〉から発表、21世紀のハイブリッド・ソウル・ミュージックとして喝采を浴びる。そして17年にはかねてから試行錯誤を重ねてきたライヴ活動をDEGO & THE 2000BLACK FAMILYとして本格化し、名門Jazz Cafeでの公演を成功させる。またDEGO & KAIDIのアルバム『A SO WE GWARN』を〈Sound Signature〉から発表、ルーツに深く根差しながらも未来のビートへの飽くなき探求を続け、UKブラック・ミュージックの新しいスタンダードとなる。
https://www.2000black.com/
https://www.facebook.com/2000blackrecords
https://twitter.com/2000black_dego
https://soundcloud.com/2000black

Kamasi Washington - ele-king

 待望の、という言葉がこれほどふさわしいニュースもそうないでしょう。〈ブレインフィーダー〉から放たれた『The Epic』で一躍ときの人となったカマシ・ワシントンが、3年ぶりとなるセカンド・アルバム『Heaven and Earth』を〈ヤング・タークス〉からリリースします。前作も3枚組の大作でしたが、今回も「Heaven」というパートと「Earth」というパートから成る荘厳な作品となっている模様。サンダーキャットロナルド・ブルーナー・ジュニアテラス・マーティンライアン・ポーターなど、仲間たちも勢ぞろい。いまかつてないほどの賑わいを見せているジャズ・シーンですが、そのなかでもこれは聴き逃すことのできない重要な1作となるでしょう。



KAMASI WASHINGTON

新世代ジャズ黄金期の象徴、カマシ・ワシントン
待望の最新アルバム『HEAVEN & EARTH』がリリース決定
新曲2曲のフル音源&短編映像解禁

サンダーキャット、テラス・マーティン、ロナルド・ブルーナー・ジュニア
キャメロン・グレイヴス、ブランドン・コールマン、マイルス・モーズリー
パトリース・クイン、トニー・オースティンら豪華ミュージシャンが参加

私の心が宿る世界は、私の心の中にある――この考えがアルバム『Heaven and Earth』を作るインスピレーションとなった。私たちが経験する現実は、我々の意識が作り上げたものに過ぎないが、そもそも我々の意識は、その経験をもとに現実を作り上げる。私たちは自らの宇宙の創造者であると同時に、自らの宇宙の創造物でもある。本作における『Earth』のパートは、私が“外向き”に見る世界を表現している。つまり私が存在している世界である。『Heaven』のパートは、私が“内向き”に見る世界、つまり私の中に存在している世界を表している。私が何者であるか、そしてどんな選択をしていくのか。その答えは、それら2つの世界の間にある。
- カマシ・ワシントン

新世代ジャズ黄金期の象徴として、特別な存在感を放ち続けるカマシ・ワシントンが、2015年のデビュー作『The Epic』に続く、待望のセカンド・アルバム『Heaven & Earth』を6月22日(金)にリリースすることを発表した。2時間半にも及ぶ本アルバムは『Earth』盤と『Heaven』盤の2枚組で構成されており、本日の発表に合わせて『Earth』盤収録の“Fists of Fury”、そして『Heaven』盤収録の“The Space Travelers Lullaby”の2曲が先行配信され、イギリス人アーティスト/監督のJenn Nkiruによる鮮やかな短編映像がそれぞれ公開されている。

Fists of Fur (from Earth)
https://y-t-r.co/spacetravelerlullaby

The Space Travelers Lullaby (from The Space Travelers Lullaby)
https://y-t-r.co/fistsoffury

『Earth』と『Heaven』の2部構成となっている本作を通じて、カマシは現実世界と宇宙とを衝突させ、その心理に迫る。世界の構造についての自身の考えをさらに探求した本作では、現状の世界的混沌に対する彼の考察と、彼が抱く未来へのヴィジョンが探求されている。

なお今回公開された“Fists of Fury”と“The Space Travelers Lullaby”の短編映像は、今後公開が予定されているという映像企画に着想を得て制作されている。

本作のレコーディングのため、カマシは自身のバンド、ザ・ネクスト・ステップと、新世代ジャズ勃興の出発点と言えるザ・ウェスト・コースト・ゲットダウンをロサンゼルスのヘンソン・スタジオに召集し、『Heaven & Earth』を構成する16曲をレコーディングした。作曲と編曲はカマシが行い、新たなオリジナル楽曲はもちろんのこと、ビーバップのレジェンド、フレディ・ハバードの“Hubtones”、さらに伝説の映画『ドラゴン怒りの鉄拳』のテーマ曲のカヴァーや、バンド・メンバーのライアン・ポーターによる曲も含まれる。

また本作には、サンダーキャット、テラス・マーティン、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、キャメロン・グレイヴス、ブランドン・コールマン、マイルス・モーズリー、パトリース・クイン、トニー・オースティンなど豪華な面々を含む多数のミュージシャンが参加している。

カマシ・ワシントン待望のセカンド・アルバム『Heaven & Earth』は、6月22日(金)世界同時リリース! いずれも特殊パッケージ仕様のCDフォーマットと4枚組LPフォーマット、デジタル配信でリリースされる。

なおカマシ・ワシントンは、2018年8月18日(土)にサマーソニックへの出演が決定している。

SUMMER SONIC 2018
https://www.summersonic.com/2018/

label: Young Turks / Beat Records
artist: Kamasi Washington
title: Heaven and Earth
release date: 2018.06.22 FRI ON SALE

商品情報はこちら
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9597

Tracklisting

Earth
1. Fists of Fury
2. Can You Hear Him
3. Hub -Tones
4. Connections
5. Tiffakonkae
6. The Invincible Youth
7. Testify
8. One of One

Heaven
1. The Space Travelers Lullaby
2. Vi Lua Vi Sol
3. Street Fighter Mas
4. Song For The Fallen
5. Journey
6. The Psalmnist
7. Show Us The Way
8. Will You Sing

Autechre - ele-king

 先日「NTS Radio」への連続出演がアナウンスされ、その第1回が放送されたばかりのオウテカですが(音源はこちらの特設サイトにてアーカイヴ中)、なんとなんと、急遽来日が決定しました。6月13日(水)、恵比寿LIQUIDROOMにて8年ぶりの日本公演です。〈Skam〉のファウンダー、アンディ・マドックスが一緒に来るのも嬉しいですね(彼はオウテカのふたりとともにゲスコムのメンバーでもありました)。いや、これはきっとすぐソールドアウトしてしまうでしょう。

 さらに、トータル8時間におよぶ件の「NTS Radio」のセッション(残り3回は12日、19日、26日に放送予定)がパッケイジ化されることも判明。タイトルは『NTS Sessions 1-4』で、CD盤は8枚組(!)、アナログ盤は12枚組(!!)のボックスセットとなります(いずれも24-BIT WAVのダウンロード・コード付き。WAVのみのヴァージョンもあり)。予約はオウテカのストア「AE_STORE」から。

オウテカ来日公演緊急決定

先日ロンドンのラジオ局「NTS Radio」に4月中に4度に渡って出演することを発表し、突如始動したオウテカが、今度は来日決定! 6月13日(水)に恵比寿LIQUIDROOMにて一夜限りの、そして2010年以来、8年振りのヘッドライン公演となる。サポート・アクトとして、〈Skam Records〉主宰のアンディー・マドックスが帯同する。主催者先行は本日18時より、BEATINK.COMにてスタート。

Autechre Live
Japan 2018
With DJ Andy Maddocks (Skam Records)

公演日:2018年6月13日(WED)
会場:恵比寿LIQUIDROOM

OPEN 19:00 / START 19:30
前売 ¥6,000(税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可

チケット先行発売:
★4/10(火)18:00~ 主催者先行:BEATINK.COMにて
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9590
★4/13(金)正午12:00~4/19(木)18:00 イープラス最速先着先行受付 [https://eplus.jp/autechre/]
★4/23(月)正午12:00~4/25(水)18:00 イープラス先着先行受付 [https://eplus.jp/autechre/]

一般発売:4月28日(土)~
イープラス [https://eplus.jp/autechre/]
ローソンチケット (Lコード: 73287) 0570-084-003 [https://l-tike.com/]
BEATINK [www.beatink.com]

企画・制作:BEATINK 03-5768-1277 [www.beatink.com]


オウテカ|Autechre
20年を超えるキャリアにおいて、常にエレクトロニック・ミュージック・シーンのカリスマであり続けるショーン・ブースとロブ・ブラウンによる孤高のユニット、オウテカ。『Incunabula』 『Amber』で90年代初期のアーティフィシャル・インテリジェンス(IDM)を牽引し、名盤『Confield』の革新性はレディオヘッドの歴史的傑作『Kid A』の誕生にも大きく影響を与え、近年でも『Oversteps』『Exai』といった重要作を次々と生み出し、エレクトロニック・ミュージックの歴史を更新し続ける真のイノヴェーター。

The Caretaker - ele-king

 秀逸なアンビエント作品で知られるザ・ケアテイカーの新作『Everywhere at the End of Time - Stage 4』が4月5日、自身のレーベル〈History Always Favours the Winners〉からリリースされた。今作は2016年に始動した6連作の4作目で、2018年にシリーズは完結するとのこと。「ele-king vol.21」における2017年の年間ベストでは、去年発表されたシリーズ前半3作をまとめたコンピレーション『Everywhere at the End of Time Stages 1-3』が選定された。


 この機会にこの作家の経歴をざっと振り返ってみたい。ザ・ケアテイカーとはジェイムズ・リーランド・カービーによる記憶と時間をテーマにしたプロジェクトだ。カービーは多くの名義を持つ作家だ。V/Vm名義ではハードコア・テクノやグリッチ・ノイズの作品を90年代から発表。ザ・ストレンジャー名義では2013年に〈Modern Love〉から傑作『Watching Dead Empires in Decay』をリリースしたことも記憶に新しい。また本人名義でもアンビエント(時にポストクラシックとも呼ばれる)作品を多数発表しており、これらの作品の多くはは自身のレーベル〈History Always Favours the Winners〉からリリースされている。
 カービーはイングランドのマンチェスターから車で20分ほど離れた街ストックポート出身で、現在はポーランドのクラクフに在住。彼の作品のアートワークの多くは、同じくストックポート出身でベルリン在住の画家、イヴァン・シールが手がけている。地元が近いアンディ・ストットやデムダイク・ステアとも交流があり、最近では2006年に録音され2017年にリリースされたV/Vm『Brabant Schrobbelèr』のミックスをデムダイク・ステアのマイルズ・ウィテカーが担当している。
 その作品はアンビエントやノイズのリスナーだけではなく、ダンスミュージックのファンも魅了してきた。海外ではフライング・ロータスをはじめとするミュージシャンたちも彼のファンであることを公言している。

ツイッターでザ・ケアテイカーに言及するフライング・ロータス


 日本における紹介者としては、評論家の阿木譲が積極的にカービーの作品をとりあげており、本人と直接連絡も取り合っているようだ。三田格はV/Vm時代からその活動に注目しており『裏アンビエント・ミュージック 1960-2010』(INFASパブリケーションズ、2010年)でカービーに言及し、ザ・ケアテイカー名義の『Patience (After Sebald)』(2012年)の評がウェブ版「ele-king」には掲載された。(筆者は「ele-king Vol.20」(2017年)のダンス・ミュージック特集で、カービーの『The Death of Rave』(2014年)における「レイヴの死」の表象について思想サイドから考察を行っている。)
 ザ・ケアテイカー名義では1999年に第一作『Selected Memories From The Haunted Ballroom』を発表。「ザ・ケアテイカー(The Caretaker)」とはスティーヴン・キング原作(1977年)でスタンリー・キューブリックが1980年に映画化した『シャイニング』から着想を得ている。この第一作目のタイトルにある「The Haunted Ballroom(取り憑かれた社交パーティ舞踏室)」とは、ジャック・ニコルソン演じる主人公が誰もいないはずのボールルームで、パーティを楽しむ大勢の幽霊(あるいは記憶)たちに遭遇するあの場面を指しており、「ザ・ケアテイカー(管理人)」とはそのシーンで主人公が出会うかつてホテルの管理人(彼も幽霊、あるいは記憶)を務めていた登場人物からとられている。


The Caretaker - Selected Memories from the Haunted Ballroom

 そのサウンドの特徴は、端的に説明すれば、レコードのクラック・ノイズのカーテンの向こうから聴こえてくる過剰なエフェクトが加えられた78回転レコードのサンプリング・ループである。また、このプロジェクトのコンセプトには、ザ・ケアテイカーという存在は認知症を患っているため、過去を正しく思い出すことができない、という設定がある(ちなみにカービー本人は認知症を患ってはいない)。『Everywhere at the End of Time』のシリーズ前半である1−3作は「Awareness」(「Consciousness」と同じく「意識」も指すが同時に「気づき」も含意する)がテーマで、4作目以降は「Post Awareness」、つまり「気づき」が及ばない領域におけるより混沌としたサウンドスケープが展開されていくそうだ(この連作では同様のサンプリング・マテリアルが違ったアレンジで各所に何度も現れてくる。それを認知症の設定と関連づけて「ele-king vol.21」の年間ベスト評で筆者は考察した)。なお、今シリーズを最後に、ザ・ケアテイカーとしてのプロジェクトは終了することをカービーは既に発表している。
 『Everywhere at the End of Time』をテーマにした2017年12月のライヴでは、ザ・ケアテイカーとそのライヴのヴィジュアルを手がけるウィアードコア(Weirdcore。エイフェックス・ツインとのコラボレーションでも知られる)がステージに現れた。ステージ上にはソファーが二つ、コーヒー・テーブルが一つ、マイクスタンドが一つ、コート掛けが一つ、ウィスキーが一瓶。そのどれもがヴィンテージ調である。爆音で音楽が流れ、ステージ上空の大きなプロジェクターに映る映像と大量のスモークがそれを彩る。その一方でふたりは機材を操作する行為は一切行わない。ただソファーに腰掛け、ウィスキーと会話を楽しんだ後、黙って回想に耽り、ザ・ケアテイカーはたまに立ち上がると曲に合わせて歌うふりをするだけ……、という強烈な「パフォーマンス」が披露された。ちなみに過去のライヴで、カービーはバニー・マニロウやブライアン・アダムスをアンコールで熱唱し(ジョークなのだろうが、これがなかなか良い)、V/Vm名義では豚の仮面を被りステージ上を豪快に動き回っていた。
 先日の『Stage 4』のリリースと同時に、2017年に発表された『Take Care, It's A Desert Out There...』も再発された。もともと同作は、ポーランドの音楽フェスティバルであるアンサウンドがロンドンのバービカン・センターでその年の12月に開催したイベントにザ・ケアテイカーがライヴ・アクトとして出演した時に無料配布されたもので(先ほど紹介したライヴはこの時のものだ)、マンチェスターに拠点を置くディストリビューター/ウェブ上の販売店であるブームカットから後ほど発売された。
 同作は今年の2月に日本語訳版が刊行された『資本主義リアリズム』(堀之内出版、2018年)の著者である批評家故マーク・フィッシャーに捧げられている。フィッシャーとカービーの親交は10年以上に及び、ザ・ケアテイカー名義で発表された『Theoretically Pure Anterograde Amnesia』(2005年、CD は2006年。なんと6枚組である)のライナーノーツを担当したのはフィッシャーだ。このライナーノーツの結びの言葉である「気をつけろ、外は砂漠なのだから……」から件の2017年作のタイトルはとられている。その文章と、英誌『Wire』2009年6月号に掲載されたフィッシャーによるカービーへのインタヴューは、彼の著作『Ghosts of My Life: Writings On Depression, Hauntology And Lost Futures』(Zero Books、2014年)に収録。本書において、フィッシャーはカービーをブリアルと並べて考察し、もはや未来が輝いていない現代を描いた作家として大きく評価した。
 フィッシャーは2017年1月に自らその命を絶つ。享年、48歳。晩年はうつ病を患っていた。彼の死に対して、コード9やサイモン・レイノルズをはじめとする多くのミュージシャンや批評家たちが哀悼の意を表してきたが、カービーはこの作品を発表するまで沈黙を通してきた。『Take Care, It's A Desert Out There...』の売り上げはイギリスのメンタル・ヘルス支援団体Mindへ送られるという。本作のCDには、並んで街を歩くフィッシャーとカービーの後ろ姿の写真がプリントされている。
 同様のジャンルで活動する他のミュージシャンたちに比べると、日本におけるザ・ケアテイカーをはじめとするカービーの作品の認知度はあまり高くはないかもしれない。しかしイギリスをはじめとする欧米の電子音楽のリスナーからの支持は大きく、その背景にはその独自なサウンドだけではなく、フィッシャーの文章による力や、その活動の方法なども影響しているのかもしれない。カービーはインディペンデントでの活動に重点を置くプロデューサーだ。基本的に毎回少数しか作られないLP(すぐにソールドアウトになる)とデータでのみ作品はリリースされる(新作のLP盤を手に入れてみたいという方は、彼のフェイスブック・ページで事前に発売日が発表されるのでチェックしてみてください。現時点ではアップル・ミュージックやスポティファイに彼の主要作品はなく、過去作の大半は〈History Always Favours the Winners〉のバンドキャンプのページで入手が可能だ。『Theoretically Pure Anterograde Amnesia』を購入すると、フィッシャーによるライナーノーツのPDFファイルも付いてくる。 
 「残念ながら、未来はもはやかつてのようなものではない」。カービーは2009年の自身名義のアルバム・タイトルでそう述べている。カービーはこの現代をどう見ているのか。ザ・ケアテイカーはなぜ記憶について語るのか。マーク・フィッシャーはどのようにこれらの作品を聴いていたのか……。そんなことを考えながら、認知症を患った記憶の管理人と、それを操るジェイムズ・リーランド・カービーの恐ろしく奇妙で美しいサウンドに耳を傾けてみてはいかがだろうか。

DJ Taye - ele-king

 DJテイがビートを作り、同時にラップをはじめたのは11歳のとき、つまり小学時代のことだった。16歳になると彼は地元のクルー、故DJラシャド、DJスピン、トラックスマン、DJアールらのTeklifeに最年少メンバーとして加入する。

 シカゴのジューク/フットワークが発見されてから、そろそろ10年が経とうとしている。昨年はジェイリンの素晴らしい『ブラック・オリガミ』があって、今年はまずはDJテイの『スティル・トリッピン』というわけだ。DJテイの名は、OPNが3曲も参加したDJアールの『オープン・ユア・アイズ』でもクレジットされているが、わりと早いうちから〈ハイパーダブ〉がEPを出しているので、Teklife期待の若手がいよいよ同レーベルからの初アルバムを発表ということでシーンでは盛り上がっている。

 DJテイは、18歳のときに最初のアルバムを自主で出しているのだが、そのタイトルは『オーヴァードーズ・オン・テックライフ』という、若気の至りに尽きるタイトルを冠している。そして今回は、『スティル・トリッピン』、「まだぶっ飛んでるぜ」というわけだ。
 とはいえ、『スティル・トリッピン』は23歳の若さにまかせてぴょんぴょん跳びはねるというよりは、音楽的にじっくり聴かせる側面を持ち合わせているアルバムだ。ヒップホップ色も強く、ことトラップからの影響も見せてはいる。もちろん、ここ10年で発展したシカゴの革新的なダンスのビートはある。
 しかしたとえばカナダの女性シンガー、オディール・ミルティルをフィーチャーした“Same Sound”における優雅なソウル・テイスト、テンポを落とした“9090”や“Anotha4”におけるドリーミーな叙情、ニュージャージーの女性DJ、UNiiQU3を招いての活気溢れる“Gimme Some Mo”、女性シンガーのファビ・レイナをフィーチャーしたチルアウト・トラックの“I Don't Know”……。
 アルバムには多様性があり、DJペイパルやDJメニーたちに混じって、シカゴのダンスバトルには女性陣もいるんだよと言わんばかりに女性たちも参加し(サンプリングではなく実演として)、早熟なDJテイの音楽的な才能はいろんな意味で光っている。なかでも“Trippin”は最高の出来の曲のひとつ。

 うーん、日本語の「フットワーク」という文字がデザインされたジャンバーも格好いいです。そしてフットワークらしいすばしっこい動きを見せる“Need It”や“I'm Trippin”──。
 「トリップ」という言葉には、もちろん「旅をする」という意味も含まれているわけだが、じっさいにこうしてロンドンの〈ハイパーダブ〉から新作がリリースされているのであり、シカゴのフットワークはいまも世界を旅行中なのだ。シカゴがこの「旅」を止めたことはない。ハウス・ミュージックが生まれたときからずっと、シカゴはいまもなお、アンダーグラウンド・ダンス・ミュージックの王国である。

interview with Unknown Mortal Orchestra - ele-king


Unknown Mortal Orchestra
Sex & Food

Jagjaguwar / ホステス

Indie RockPsychedelic

Amazon Tower HMV iTunes

  60年代に産声を上げたサイケデリック・ロックは、ある時期までのロック史観においては、その時代にのみ瞬間的な爆発をみた徒花的存在として扱われてきたきらいもあった。しかし、商業ベースに乗らない自主制作盤の世界では、サイケデリック暗黒時代と言われる70年代にも少なくないアーティストが蠢いていたことが近年振り返られつつ有るし、オルタナティヴ・ロックの興隆以降、ペイズリー・アンダーグラウンド・ムーヴメントなど80年代におけるリバイバルを始めとして、折に触れてサイケデリックという奴は歴史に顔を出し続けてきた。そしてそれに伴っていつからか、一個の音楽スタイルという括りを越えて、特有のテクスチャーやムードを持ったもの/ことに対して使う形容詞としても定着し、時には安易に使われ過ぎる言葉ともなっていった。
 アンノウン・モータル・オーケストラこそは、そういった捉えがたい霧のようになってしまった「サイケデリック」というものを、今一度リスナーの耳元に引き据えてみせる。しかも、この「サイケデリック」は、往時に描かれたムードとはかなり質感を異にする。それは、これまでサイケデリックを表象してきた攻撃的酩酊感とでもいうべきものと、一般的にはそれと相反すると思われてきた所謂「メロウネス」との巧みかつ大胆な融合によるものだと言えるだろう。90年代後期から米国中心に再び勃興してきたローファイでガレージーなインディ・バンド/アーティスト群や、チルウェイヴやシューゲイザー・リバイバルとの共振も感じさせた初期作品を経て、彼らは徐々に仄暖かでメロウな海へと漕ぎ出してきたのだった。それは一見、かねてよりギャラクシー500やヨ・ラ・テンゴといったアクトが住処としていた海であるようにも見えるが、アンノウン・モータル・オーケストラの眼前に広がるそれは、各種のブラック・ミュージックやビート・ミュージックからの影響も垣間見える、コンテンポラリーなメロウネスと躍動に満ちたものだ。その沖合では既にアリエル・ピンクが帆船を浮かべていたかもしれないが、彼らはそれを横目に見ながら密航者のように鮮やかな手つきで彼らだけの海域を見つけ、そこで巧みに遊んでいる。

 ……そして時に言われるように、サイケデリックへ沈潜し時にノスタルジーの蠱惑にも誘われながらそこに遊ぶことにより、ライブリーな生活圏や政治的世界と隔絶するという現象は、どうやら確かに起こることなのかもしれない。もしかするとここに聴かれる世界は、現在の政治空間からのスキゾ的逃避ととらえられても仕方のないことかもしれないが、しかしながらそもそも逃避とは、その表現者自身に社会に対する鋭敏な問題意識が蟠っているからこそとも言える。この逃避の欲求というのは、かねてよりこの世界に生きる我々皆が少なからず背負い込んでいる問題でもあろうし、その重荷を肩に感じながら、音楽そのものに耽溺するとき、ひょっとしたらメロウネスこそが鬱屈を和らげるオピウムのような役割を担いつつあるのかもしれない。
 サイケデリックは今新たなフェーズを迎えつつある。「官能と飽食」という、いかにも示唆深いタイトルを与えられた今作は、その象徴として捉えられる傑作であるとともに、メランコリーに揺られるからこそメロウネスがひとりでに立ち昇るという仮設を提供してくれていることで、サイケデリック・ロックに限らない昨今の音楽シーンを読み解く優れたテクストにもなるだろう。

 今作での音楽性の深化や、メロウな音楽への関心、シーンを取り巻く状況、ドラッグ・カルチャーについてなど、バンドのリーダーであるルーバン・ニーソンに話を訊いた。

音楽を作る時も、すごく馴染みのある気持ちになることもあれば、暗闇を歩いている気持ちになったりもする。様々な気持ちになるんだけど、時にはその暗闇を歩いている時こそがいい時だったりするんだよね。

今作『セックス&フード』、とても素晴らしい内容で非常にワクワクしながら聴かせていただきました。第一印象として、これまでに増してメロウな感覚が強まったと感じます。バンドにとって、70年代のソウルなどのファンキーでメロウな音楽はどんな存在でしょうか? また、それらはインスピレーション源として大きなものでしょうか?

ルーバン・ニールソン(以下RN):ありがとう! そう言ってもらえて嬉しいよ。そうだね、70年代の音楽にはすごく影響を受けたって言えると思う。ソウルやファンクは、小さい頃に聴いていたような音楽だった。家の中で流れていたものだから自然と聴いて育った音楽なんだ。今でもその頃の音楽は聴いたりするよ。

一方、リード・トラック“アメリカン・ギルト”などのように、鮮烈なギターリフが先導するガレージーな楽曲も収録されています。ガレージロック的なものとメロウなものというのは、一般的には一見背反する要素のように捉えられているかと思うのですが、アルバム全体ではその融合を目指しているようにも感じました。制作にあたってそういった意識はありましたか?

RN:曲作りをアコースティック・ギターで作り始めるから、最初はメロウな感じでいつも始まるんだ。だけど書いていくうちにもっとロックになってきたり、他に試してみたいことが出てきたりして、プロダクションを重ねていくうちにそういう感じに変化して行ったんだ。

ミックスなどの音響面でも、これまで皆さんに対して言われてきたようなローファイな感覚から、曲によってはかなりハイファイな音作りに変化したような気がするのですが、これはなぜなのでしょうか?

RN:僕はレコーディングする時に用いる手法があるんだけど、ヴィンテージのテープレコーダーやカセットテープを使って作業しつつ、コンピューター処理も行う。昔ながらのアナログな手法とモダンな手法が混ざっているんだよね。ディストーションとかはわざと残したりしているよ。でもアルバムを重ねるごとに、自分の技術も上がってきて、よりいい機材を使ったりしているんだ。アルバムごとに少しずつ手法やスキルも上がってきてるからサウンドも変わってきたんだと思う。

近年脚光を浴びている、いわゆる「ヨットロック」のリバイバルについては、どんな認識をもっていますか? ここ日本でも自国の「ヨットロック」である70~80年代の音楽が「シティ・ポップ」として海外からも注目されるなど、今までダサイとされていたものの問い直しが起こっています。

RN:僕が幼い時は、父親がジャズ・ミュージシャンっていうこともあって、家ではジャズ・ミュージックが主に流れていて、ヴォーカル・ミュージックを聴くことが少なかった。でも唯一父親も好きで聴いていた「ポップ」と呼べる音楽は、スティーリー・ダンだった。だからスティーリー・ダンは自分にとってすごく心の中に残ってる音楽なんだよね。今またなんでヨットロックが注目されているかというと、多分今の時代に生まれる音楽とすごく違うからだと思う。あの頃はプロダクションレベルとかミュージシャンシップとか、今よりもすごく高いものが多かったと思う。だからそういう音楽に触れるとすごく珍しい気持ちになる。それに、昔聴いていた音楽はノスタルジーに浸れるっていうのも大きい気がする。ノルタルジーってやっぱり人の心や記憶の中でとても強いものだと思うから。

メキシコシティやアイスランドのレイキャビク、韓国のソウルやベトナムのハノイなど世界各地でもレコーディングを行ったとのことですが、創作にあたって、どんな刺戟がありましたか? また、そういった地域のポップスや民族音楽からの影響はあったのでしょうか?

RN:ローカルの音楽を聴いたりもしてみたんだけど、あまり影響されないようにはしてたんだよね。でもベトナムでは、レコーディングしてたスタジオでいつも顔を会わせるバンドがいて、いつも会うから彼らと仲良くなったんだ。一緒に音を鳴らしたりしているうちに、いろんな音楽ができて行った。結果的にすごくたくさんの楽曲が増えたから、また別の形でそれは出そうと思ってる。音的にはエレクトロニック・ジャズとかクラウトロックみたいな感じなんだけど、それを年内か来年出す予定だよ。あとは、ローカルなライブとかも何度か行ったよ。でも自分的には影響されて、まるでそこの土地の音楽を盗むような真似をしたくなかった。

昨年米国の再発レーベル、〈ライト・イン・ジ・アティック(Light in the Attic)〉より日本のフォーク・ロックを集めたコンピレーション・アルバム『木ですら涙を流すのです』が発売されました。そういったフォーク・ロックに限らず、サイケデリック・ロックなど、ここ日本の音楽に興味はおありですか? また特定の好きなミュージシャンがいれば教えてください。

RN:当然YMOは大好きだよ! あと僕たちが一回日本で共演したTempalayっていうバンドがいるんだけど、彼らはすごく好きだよ! でも残念ながら日本のサイケロックはあまり詳しくないんだ。誰かオススメいる? いたらぜひ知りたいよ!

高度資本化した社会、またポストインターネットといわれる現代の時代状況において、様々な情報や音楽ジャンルが並立し、時にガラパゴス化した様相を呈するようになってきたと感じます。その中で、一部で「死んだ」とすら言われるロックを今演奏し続けることの意義はどんなものだと思いますか?

RN:ロックが死んだって言われたり、どんな状況になっても僕自身は気にしないかな。僕自身、レッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズ、僕の中ではロックンロールと思っているデヴィット・ボウイとかを聴いて育って、今でも僕にとって大切な音楽だから、そういうロックな部分が自分の音楽の一部となってしまうことは変えられないと思う。だからロックが死んでようが生きてようが僕には関係ないな(笑)。あと、僕たちのバンドは僕たちの世界というかコミュニティがあるというか、あまり流行に左右されたりするようなポジションには身を置いていないと思う。

人はずっとモーツァルトもベートーヴェンもジミ・ヘンドリックスも聴き続ける。そういうものって政治を超えている気がして、それに比べると政治的なものってちっぽけに感じてしまったりするんだよね。

これまで、ポピュラー・ミュージックは「新しい」ということを至上の価値として歩んできたと思います。しかし、昨今ではそういった感覚すらも相対化されて、特にインディ・シーンでは各々が各々の表現を自身の尺度で自由に行うようになっているようにも思います。そんな中で今一度、「新しい」とは一体どんなことだと思いますか?

RN:すごくいい質問だね。難しいけど、僕にとって新しい音楽とは、まだその音楽が評価されたり、意見を言われたりしていない時だと思う。例えば、音楽を聴いた時に、まだその音楽がいいかどうか分からなくて、でも何か強い思いみたいなものは抱く時とかあると思うんだけど、そういう時が新しいって思っている瞬間なのかもしれない。自分の音楽を作る時も、すごく馴染みのある気持ちになることもあれば、暗闇を歩いている気持ちになったりもする。様々な気持ちになるんだけど、時にはその暗闇を歩いている時こそがいい時だったりするんだよね。それがいいのかどうか自分でも分からず、でも何かすごく強い思いがこみ上げてくる時こそが新しいものを誕生させられる時なのかもしれない。

ルーバンさんはバンド活動を続けてく中で娘さんを授かったと聞きます。彼女の存在が創作に与えた刺戟はどんなものでしたか? また、家庭人と、ロック・バンドのメンバーとしての活動を並立して続けていくことに、時になにか葛藤があったりするのでしょうか?

RN:僕自身音楽一家で育ったんだ。父親もミュージシャンだったし、父親の父親もミュージシャンだった。だから幼い頃から音楽は普通の仕事として見て育ったんだ。人によっては音楽なんて趣味の延長にしか見えないものかもしれないけど、僕はちゃんとした職業として捉えていたよ。僕は父親のツアーに同行したり、サウンドチェックを見たり、常に仕事の現場を見ていたから、音楽が仕事なのは僕にとってはすごく自然なもの。だから自分に娘ができても同じなんだよね。父親であり音楽家でもある姿は自分が見てきたものだから、すごく自然なものだよ。

様々な文化の分野でポリティカル・コレクトネスが更に敷衍されつつあるように感じる昨今、自身の創作にあたって、そういったものを(肯定的か否定的かいずれにせよ)意識したりすることはありますか? または、そういったことへの問題意識が歌詞表現へ反映されていたりしますか?

RN:政治はすごく大事なことだと思うけど、あまりそれに支配されないようにしているよ。政治よりも音楽の方が大きいものだと思っているから。音楽は歴史を変えることはできないかもしれないけど、帝国が建てられては滅び、イデオロギーも立てられては壊され、それでも人はずっとモーツァルトもベートーヴェンもジミ・ヘンドリックスも聴き続ける。そういうものって政治を超えている気がして、それに比べると政治的なものってちっぽけに感じてしまったりするんだよね。だから僕はあんまり政治的なことに左右されたりしないようにしているよ。

ポートランドのシーンの面白さがここ数年で日本でも認知されているのですが、みなさんが注目する新たなポートランドのアクトはいますか? また、そういったミュージシャンとは交流もあるのでしょうか?

RN:仲良いバンドはたくさんいるよ! 特に自分たちのピアグループ(仲間)とはすごく仲が良くて、すごくいいアーティストがたくさんいるよ。例えば、Portugal the man(ポルトガル・ザ・マン)、The Dandy Warhols(ザ・ダンディー・ウォーホールズ)、Star Fucker(スター・ファッカー)、Wampire(ワンパイアー)とか、ポートランドでは人気があって、僕たちとも仲がいいバンドだよ。新しいバンドでは、Reptaliens(レプタリアンズ)と仲がいいよ。あと僕のバンドのベーシストがいたBlouse(ブラウス)っていうバンドもすごく良いよ。

今年からカリフォルニア州で大麻の販売が解禁されたことが日本でも報じられ、一部で話題となりました。日本ではいまだマリファナも麻薬の一種と捉えられ、大きなタブーとして扱われています。米国における現在のドラッグ・カルチャーは、インディ・ロックの文化圏にとってどのような役割を演じていると思いますか?

RN:やっぱりシーンにドラッグは当然存在はしていると思う。でも僕は、いい大人になってきたし、ドラッグのことを考えたり関わったりする時間はすごく減った。個人的には、ドラッグが僕の愛する人たちを破滅させたりするのを見てきたんだ。でも、時にはすごく創造性を掻き立てるものにもなるものなのだと思う。でもやっぱりパワフルなものは、危険も伴うんだよね。だから僕はあまりドラッグはやるべきではないと思ってるよ。

ニュージーランドご出身ということでお訊きします。80年代前半、米国で「ペイズリー・アンダーグラウンド」と呼ばれるサイケデリック・ロック復興的なシーンがありましたが、The CleanThe Batsなど、同時期のニュージーランドにも「ダニーデン・サウンド」と呼ばれるようなザ・バーズなどの60年代ロックからの影響を感じさせるギター・ロックのシーンがあったとききます(日本ではあまり知られていません)。そういったシーンが何かあなた達の活動にも影響を与えていると思いますか?

RN:まずペイズリー・アンダーグラウンドといえば、ザ・バングルズの“マニック・マンデー”を思い出す。ペイズリー・アンダーグラウンドの最大のヒットなんじゃないかな。あとは、プリンスのアルバムに“ペイズリーパーク”っていう曲があるんだけど、きっとプリンスもペイズリー・アンダーグラウンドのフェーズがあったんだと思う。
ニュージーランドのダニーデン・サウンドは、たくさんのバンドが〈フライング・ナン・レコーズ(Flying Nun)〉からリリースされた時代だった。僕が初めて組んだバンドが兄とのもの〔質問者註:ザ・ミント・チックスのこと。2003年デビュー〕だったんだけど、実は〈フライング・ナン・レコーズ〉からリリースしているんだよ。このレーベルからリリースすることが多くの少年の夢だった。〈フライング・ナン・レコーズ〉やダニーデン・サウンドのアーティストは、すごく強いDIY精神をもっていて、レコーディングやアートワーク含め、大きな会社のバックアップがない状況で全て自分たちでやってしまうアーティストばかりだった。僕はそれにとても憧れていたから、自分に必要なスキルを身につけるという点ですごく影響を受けたよ。バンドをやる上で何が必要なのかを学べたし、それができてすごく良かったと思っている。

これまで聴いてきた中で、ベスト・サイケ・アルバム(一般的にサイケとされていなくても自分がサイケと思うものでもOK)3枚を教えていただけますか?

interview with Kaoru Inoue - ele-king

問い:人はいかにして、このハードな人生を生きながら、そのなかにゆるさを保てるか?
答え:井上薫の新作を聴くことによって。


Kaoru Inoue
Em Paz

Groovement Organic Series

AmbientNew AgeDeep House

Light House Jet Set

 かすかに夏の匂いがする。時間はあっという間に過ぎる。贅沢な時間に人は気が付かなかったり、すぐに忘れたり。ものごとがうまくいくこともあれば、うまくいかないこともある。DJとはある意味たいへんな職業だ。週末のもっともアッパーで過激な時間帯の司祭を20年以上も務めるということは、まずは自分をコントロールできなければ難しいだろうし、生きていれば誰もが平等に老いていくわけだから、若い頃と同じ体力は保てなくなる。それは誤魔化しようのない、うんざりするほどのリアリズムだ。そういう現実を受け止めながら活動を続けているDJ/プロデューサーのひとりに井上薫がいる。
 井上薫、Chari Chari名義の作品で広く知られる彼は、つい先日、リスボンのレーベルから『Em Paz』という、アナログ盤2枚および配信の新作をリリースした。力の抜けた柔らかいアルバムで、ぼくはこの音楽を聴いていると幸せな気持ちになれる。巡りあうことができてラッキーな音楽なのだ。
 幸せな気持ちにさせたいと思う音楽はこの世にはたくさんあるだろう。前向きだったり、楽観的だったり、いい人だったり。そういう音楽の多くには作者のわざとらしさが出てしまいがちだ。『Em Paz』にはそういうあざとさやつかえるものがない。水の音、タブラ、チェロ、ギター、エレクトロニクスはゆっくりとさざ波を立てる。応援しているフットボールのチームが負けた翌週の月曜日でさえも、なんかいいことあるかもという気持ちにさせることができるのが『Em Paz』だ(これは言い過ぎか……)。

 とまれ。もともとはレコード店に勤務しながらワールド・ミュージック系の音楽ライターとしても活動していた彼が、DJ/プロデューサーとして精力的に動きはじめたのは90年代なかばからだった。ワールド・ミュージック的なセンスとアンビエント・タッチのダウテンポで脚光を浴びた井上薫は、1999年のChari Chari 名義のアルバム『Spring To Summer』によって日本のクラブ・ミュージックの表舞台に登場した。
 ここ10年はフロアとリンクしたダンス・ミュージックのスタイルにこだわって制作を続けていたが、新作では初期の彼が持っていた優しいロマンティシズムが行きわたり、音楽的にもアンビエント・ポップめいた新境地を見せている。

 井上薫とは、何故か偶然会ったり飲んだりする機会があったのだが、ちゃんと取材するのは12年ぶりのこと。以下、ぶっきらぼうながらも彼の正直な心境をぜひ読んで欲しい。

日常で何をやっていたかというと、ずっと本を読んでいましたね(笑)。週末ギグをやって過激に過ごして、週の前半はサウナでデトックスして(笑)。それから平日は、ただ、やたら本を読んでいましたね。

前回インタヴューさせてもらったのが、アルバム『The Dancer』のときだから、およそ12年前なんですよね。すごいよね。生まれた子供が小学生卒業するぐらいの時間だよ。

井上:そうですね、2005年ですね。古いですね。

下田(法晴)君も12年ぶりだったんだけど。

井上:下田君は満を持してって感じでですね、ぼくも下田君には会ってないんですけど。……松浦(俊夫)君とはたまに仕事で会いますけどね。

前作の『A Missing Myth Of The Future』が2013年だから今回の『Em Paz』はおよそ5年ぶりになるのかな?

井上:そうですね。

『Em Paz』は、ある意味ではすごく、Chari Chariらしいゆるさのあるサウンドで……

井上:レイドバックしていく部分と……。

アンビエント・テイストであり、ハイブリッドであり。

井上:そうですね

『A Missing Myth Of The Future』までは、思いっきりダンス・カルチャーに直結したサウンドだったんだけど。しばらくは……10年以上ものあいだ、ずっとダンス・ミュージックであることにこだわっていたよね?

井上:それは、ドメスティックなダンス・カルチャーが生まれ、そこの現場のリアリズムに揉まれ。揉まれっていうのも変ですけど……。いろいろDJなんかをやらせてもらって、そこで自分がDJとして出している音やその場の雰囲気であったりとの地続きじゃないと伝わらないなみたいなものもあるし……。

過去、どのくらいのペースでDJはやっていたんですか?

井上:DJはほぼ毎週末みたいな。

何年ぐらいの間?

井上:もうずっとですね。40代後半に向かうとやっぱいろいろ受け止めなければいけない状況とかあって。

それは体力的な部分?

井上:体力も中に入ってますね。やっぱり。だから、それに対応できるような体力作りといったらいいのか……。そういうものも、視野にいれていろいろやっていたんですけど。

その職業として10年以上もDJを続けるっていうのは、体力以外にはやっぱり、マンネリズムみたいな感じはあったんですか?

井上:マンネリズムはありますね。あとなんだろうな……。本当にこれ言うとちょっとネガティヴな話になってしまう…。

書けないことは言わないでくださいね(笑)。

井上:〈AIR〉っていうクラブあったじゃないですか。ぼくは結局、あれがなくなるまで、13年間、2カ月に1回あそこでやっていたんですよ。

それは長いですね。

井上:オープン当初からやっていたもんで。オープンは2001年とか2002年ですね。それであの規模のクラブを運営するためのリアリティを近くで見たり、議論したり、いろいろやりながらみていたもんで。経営する側の目線とアーティスト、DJで関わる目線とか……やっぱそれはあるんですよね。下の世代にとっても経なきゃいけない登竜門というか。売り上げがよければ、みんなよかったねって。その数字が当たり前のようについて回って。それにに対してみんながどう努力するのかということとか。
 ぼくの目線からだと、リリースも含めてDJとしていかにアーティスティックに活動しているか、みたいなものの折衷点がわからなくなるときがあったりとか。そういうなかで切磋琢磨やってきて非常に良い経験だったなといまでは思っているんですけど、キツイときもあったりして。

やはり、ある程度の集客が求められる場所では、自分の本意ではない曲もかかなければいけないときもありましたか?

井上:そういうのもありますね。

選曲によってオーディンエンスが変わるモノなんですか?

井上:選曲によって変わるというよりも、具体的に、どういうハウスやテクノがかかっているのかを問われることはけっこうありましたね。それで集客が変わっていくのかっていうまではわからないですけど。ガチアーティスティックにやればいいのかっていうわけでもないし。ある種、難しさや葛藤みたいなものを抱えながら……。

職業としてのDJのジレンマですよね。

井上:スタッフから、「最近井上薫はBPMが速すぎる」と会議で話題になったと言われたことがありましたね(笑)。

井上薫のDJが速いっていのは、ちょっとぼくなんかには想像しにくいんですけど(笑)。

井上:それは、店側からの要求でもなく、お客さんからの要求でもなく、自然にそうなっていってた、ひとつのマックスみたいなものが振り返るとありましたね。何を言いたいのかわからなくなっちゃいましたけど(笑)。

現場で毎週DJを続けていくってやっぱりAIがやるわけじゃないから、同じことを繰り返せばいいってものじゃないし?

井上:定期的にやっているとそれなりの難しさはありますね。クオリティーコントロールをしっかり考えていかないと続かないし。ただ総じて言うと良い経験をさせてもらったなというか。良い意味での緊張感もあったし、悪い意味でのストレスもあったんですけど。いまはもう、そういうのから解放されて。

〈AIR〉の閉店がひとつのタイミングなの?

井上:かなり大きかったですね。DJの活動拠点、あの規模のクラブがなくなると、「今後どうやっていけばいいのか?」みたいなものが当然あって。

レジデンシーがあるかないかってね。

井上:そうですね。それもいい意味で職業と捉えて、真面目にやってきたつもりだったんですけど(笑)。

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時代はピースじゃないですし、年齢的には、いま50歳なんですけど、40代後半からの数年間っていうのは本当に楽しくやってはいたんですが、未来が見えないというか、孤独死まっしぐらみたいな。笑っちゃうんですけど。そんな感じもあって、そこに対する反動的な希望の言葉ですね。

いまのクラブ・カルチャーには何が必要だと思いますか?

井上:ざっくりいうと、下から若い子がはいってきてなんぼですよね。世代交代と新陳代謝がないと……。

しかし井上君の立場としては難しいですよね。若い世代は、自分にとってのライヴァルなわけだからさ。

井上:そうですね。悩まされた部分もあります。非常に良い感じで穏やかに、DJギグみたいなものが減っていくんですよ。いろんな要因が考えられて。とにかく、(DJを)できるところが無くなっていく。

だから、チルアウトな作風になったっていうのもあるんでしょうけど、まあ、そういう人生の浮き沈みがあるなかで、それでも、今回のように前向きな作品が生まれたのは何故なんですか?

井上:まあ、あまり書かないで欲しいんですけど、結婚したのが大きいですね。メンタル的に非常に落ち着いたというか。
 それと同時に、とにかく楽曲を作ることが気持ちの上でかなりウェイトを占めていく。シンプルな話ですけど、毎週末DJギグがあってその渦中ですったもんだやっているときは、どこかポイントでリリースをまとめてしているじゃないですか。でも、例えば、ヒロシワタナベみたいな人は、DJやりながらもとにかく作って、コンスタントにリリースしている。そういう、自分には日常的な制作時間がなかなか確保できていなかったんです。40代に入って中盤くらいまで、日常で何をやっていたかというと、ずっと本を読んでいましたね(笑)。週末ギグをやって過激に過ごして、週の前半はサウナでデトックスして(笑)。それから平日は、ただ、やたら本を読んでいましたね。

どういう本を読むんですか?

井上:いろいろですね。小説も読みましたし。「創作とは何か」に立ち戻りたいというか。読んだら内容を忘れてしまうので震災以降に読書したものは全部記録してあります。小説はあんまりリアリズムに即していないやつですね。立脚しているんだけど、ものすごいSF的であったりとか。南米の小説とか、飛んでるやつですね。2年前に出したChari Chariのシングル「Fading Away」のB面の曲は“Luna De Lobos”っていうんですけど、これはスペイン人のフリオ・リャマサーレスという作家の『狼たちの月』という本があって、そこから影響を受けました。スペイン内戦の話で、哀しいだけの話なんですけど。でも詩的で美しいんですよね。
 あとは文化人類学とかいろいろですね。震災以降は現代のポスト資本主義社会の行方というか。日本も、反体制のデモが盛んになってきたし。人文系の学者が何をいっているのかなというところが気になって。そういうのは良く読んでましたね。宮台真司なんかも面白かったです。要するに、国家の政治状況に期待してもしょうがないからという前提で考えると、単純に隣近所のコミュニティみたいなもの、いわゆる仲間、みたいな話に行きついていく。

リアルな話ですよね。DJの立場からすると風営法問題は?

井上:そこはいろいろありすぎて……(笑)。法に関しての話と少しずれるけど、パーティ・カルチャーが日本では根付いてないですよね。パーティというモノがちゃんと生活のなかの一部として認識されてないというか。しかしこないだの蜂じゃないけど、やっぱニュースを見ていると気になります。

井上君はDJっていうよりはプロデューサーなのかと思ってましたけど。

井上:そういうイメージがいまだにあると思うんですけど、完全にスタート地点はDJなんですよ。20代前半くらいまでバンドでギターを弾いていて。自分で作った曲をアレンジして他のメンバーに指示するとウザがられる。その頃にAcid Jazz系の日本のDJカルチャー黎明期のような現場に出会ってバンド止めて、サンプラーとシンセサイザーで音楽が作れるという革命的な事実に出会って。〈WAVE〉で働いていたころは、〈MIX〉で、ワールド系のDJとかを時々やっていました。あとは、ソウルIIソウルが自分にとっては大きかったんで、ブレイクビーツなんかを小箱でかけていました。そこでの経験のフィードバックみたいなものを4メガくらいのサンプリングマシンで一生懸命作ってました。それがまとまったのが〈File Records 〉から出ている初期作品ですね。

初期のファンキーなブレイクビーツとは違うけど、最新作にはやっぱ90年代のChari Chariっぽいピースな感じがあるんですよね。

井上:2006年に『Slow Motion』というタイトルで8曲入りくらいのアルバムをリリースしたんですね。で、それがなぜできたかというと……、日本でヨガが一般的になりはじめたときがあって、『ブルータス』という雑誌でヨガの特集をやりたいという話になったんです。人づてで僕に連絡がきて。井上薫さんはいかにもヨガをやっていそうだから、付録で付けるインストラクションDVDの音をつけて欲しいという仕事の依頼がきて(笑)。その時点で3回しかヨガをやったことがないけど、依頼を受けて。

3回もやったことあるだけすごいよ(笑)。

井上:下高井戸の寺とかでやっていて(笑)。それで面白いですねということで受けて。そのとき曲を作ったんですけど……それらの曲をベースにしたのが『Slow Motion』。ビートはタブラだけみたいな感じだったり。その頃の音源をミックスし直して今回も使ってるんですよ。リスボンの〈Groovement〉というレーベルから、最初はダンスものをやろうという話だったんですけど、〈Organic Series〉というサブレーベルもやっているから、こっちでLPをやらないかっていう話が一昨年の後半にきまして……。それでつくったのが『Em Paz』という。

レーベルのほうから話があったんですね。リスボンの〈Groovement〉とはどうやって知りあったんですか?

井上:DJ KENTやChidaが何年か前くらいにリスボンでDJをやって。その流れがまずあって、向こうにはぼくの作品を知っている人がまあまあいたという。

彼らがリスボンとのラインをつくったんだ?

井上:そうですね。Chidaはティアーゴっていう、リスボンの〈ラックスフラジャイル〉というクラブでDJやっている人を日本に4~5回招いているんですよね。ぼくも初めてきたとき会ったことがあるんですけど。あと、ヨーロッパのイタリア人とか、ポルトガル人とかに、過去のぼくの音を知っているひとがいて。フェイスブックのメッセンジャーでメールをもらったりすることがあったんですけど。イタリア人が多かったですね。

最近、よくヨーロッパ行っている人たちからは、リスボンは第二のベルリンっていう話を聞くよね。

井上:今後そうなるのかな?

ベルリンはじょじょに家賃が上がっているでしょう? リスボンは家賃が安いし、ボヘミアンな若者が集まりはじめているって。

井上:移民に寛容なんでしょうね。

ヨーロッパってそういうところあるよね。流れていくっていうかさ。

井上:政治的に移民を排斥する動きがありますよね。極右政党が政権をにぎりそうな動きがけっこうあるじゃないですか。フランスもそうです。新しいタイプの右翼だとは思うんですけど。そういう排斥傾向もけっこうあって。

そんななかでリスボンとのコネクションができ上がって。

井上:井上薫、Chari Chari、知っているよみたいな話があって、それでメッセージをもらうようになって。いずれ一緒に仕事がしたいと。で、具体的にプランを振ってきたのが一昨年の年末ですね。それだったら過去の、『Slow Motion』の頃の曲を入れたりリメイクもいいんだったらわりと早くいけるかもということで。

そのオファーや作品の方向性が井上くん個人のいろんな状況と重なったんだ。〈AIR〉の話もそうだし、DJに対するマンネリズムみたいなのもそうだし。長年やってきたことがいったん区切りがついたっていうか、張り詰めていた糸が切れたっていうか。

井上:ありましたね.。それと、2016年にはChari Chari名義でさっき言ったEP出したんですけど。一緒に作っている奴がもともとは東京に住んでいたのですけど、長野に住んでいて。ハードコアのバンドでギターを弾いていたりで、自分が10代のときに体験したパンクからポストパンクみたいな音を知っていたりとか共通項が多くて。それもあって、クリエイションの目線がまたドバーっと広がりましたよね。

共作者?

井上:そうです。そつは長野に住んでいて、ぼくの家で1カ月に1回くらい合宿をして、ずっと家でやっていました。実は2014年に縁あってageHaのテントサイトでChari Chariとしてバンド編成でライヴをやる機会があって、その時の主力メンバー、DJの後輩繋がりですけど、ほぼ同時期に『狼たちの月』を読んでトラウマになったやつですね(笑)。そいつと合宿レコーディングをさんざんやって、でも、全然できなくなって、揉めたりとかもして。お前と全然できないな、進められないなというときに、この話(『Em Paz』)がきて。

じゃあ、当初の予定では、Chari Chariのシングルをもっと膨らませることが先だったんだ。

井上:そうです。2017年はアルバム出すまでやりましょうみたいな。今後やりますけどね。

それが途絶えてしまったわけね。あの「Fading Away」のシングルはすごく良かったし、今回への伏線とも捉えられるところもあったし。とにかく、それで今回の『Em Paz』が先に出たんだね。これなんて読むんですか?

井上:『エン・パス』だと思います。In Peaceのポルトガル語ですよ。うちの14年生きた飼い猫が、死んだときに捧げる……。これもちょっとやめて欲しいですけど(笑)。

では、なんて説明したらいいんでしょう(笑)?

井上:そうですよね(笑)。時代はピースじゃないですし、年齢的には、いま50歳なんですけど、40代後半からの数年間っていうのは本当に楽しくやってはいたんですが、未来が見えないというか、孤独死まっしぐらみたいな。笑っちゃうんですけど。そんな感じもあって、そこに対する反動的な希望の言葉ですね。

そういう不安もあったんだ。

井上:やりきって死んだなら野垂れ死んでもいいかとよぎるくらい内面が荒廃しつつも、生きていけはしているという。ただ、面白い現実もあるし。

それはやっぱDJという職業が、非日常的でアッパーな、危険な仕事だということもあるのかね? 反動として絶対下がるだろうし。

井上:そうですね。自分をオーガナイズしていくための、週の前半は温泉にいってサウナに行くとかはわりと儀式みたいにして、またその1週間生きていくみたいな。その循環とか、自分をオーガナイズする手法みたいなものは体験的にあったんですけど。それで合宿レコーディングして頑張ったんですけど、うまくいかず。なかなかうまく回らないんだなって。自分がそれをリードできなかった部分もあったので。(Chari Chariのメンバーに対して)いまはお前とはできないみたいな感じになったりして。


Kaoru Inoue
Em Paz

Groovement Organic Series

AmbientNew AgeDeep House

Light House Jet Set

じゃあこのリスボンのレーベルからの話はタイミングが良かったんだね?

井上:非常によかったと思います。過去の曲も入っているんですけど。去年の2月下旬くらいに納品しました。

去年の2月ということはもう1年くらい前にできてたんだ。

井上:そうです。

でもリリースされたのは最近でしょ?

井上:そうですね。向こうのリリースプランとかがあって。プロモーションがどれくらいできているかわからないですけど、プロモーション期間という話もあって。

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80年代の音楽がおもしろいなっていうのがいまありますけど、それはなぜなら掘り起こしてる人がいるから目に見えてくるもので。そういう過去は参照するんですけど、あのときは良かったなみたいなのは思わなくなりましたね。いま、その瞬間どんだけ自分があげられるかしか主眼がいかなくなっている。

話前後してしまうけど、DJを25年やるってタフだよね。

井上:そうですね。本当に好きだなと。全部やめたいって思ったこともありますけど。振幅が激しいというところが……。

そこがやっぱり辛い? 楽しいことはたくさんあると思うんだよ。DJは女の子にもモテるしさ(笑)。

井上:そういうわかりやすいところはどんどんなくなりますよね。まあいいんですけど(笑)。わかりやすい楽しさ抜きでフレッシュに構えられるところがありますね。言ってみれば、どれだけ未知数の人間にフィジカル性を叩きつけられるのかということとか、立って聴いているやつにどれだけサイケデリック体験みたいな影響を与えられるかみたいなものもあるし。あとは、振幅が激しいということ。ドーンってあがっているときはアドレナリンの世界です。そういう作業と音楽の流れとでどんどん上がっていって……、最後に疲れる。ただしそれは非常に得難いですね。誇りをもってやれることだなって自覚しながらやっていました。じゃないと続かないですよね。

それは体力的な部分?

井上:『Em Paz』もそうですけど、ダンス・カルチャーというところから離脱したいというわけではまったくないです。三田格さんの『Ambient Music 1969 - 2009』がすごいきっかけになって、そこからハウス、テクノのラインじゃない音楽をまた改めて良く買うようになりました。それでレコードを買うことにまたハマっていて。いまは〈ミュージック・フロム・メモリー〉みたいなニューエイジとかからピック・アップしているものが面白いですね。当時評価されなかったここが評価に値するって引っ張ってきて。面白くないものは当然あるんですけど。すごいなという人はいますね。

ニューエイジっていって、レコード屋さんもタグをつけなきゃいけないからね。なんでもかんでもニューエイジって言ってしまうけど。ニューエイジって思想が入ってくるし、宗教観とかね。だからデリケートな言葉なんだけども(笑)。ぼくはビートレスの音楽のことを海外のように、ウェイトレスって言ってくれた方がいいかな。でも、ニューエイジがここまで売れる背景もわかるよ。やっぱり心の渇きみたいなものでしょ? 

井上:そんな気もしますね。これは大型のレコード屋で働いていたから分かるんですけど、まずニューエイジってヒッピー文化由来のカウンターカルチャー的なところが当初ありましたよね。それで音楽のカテゴリーに関して言うと、そのニューエイジ・カルチャー由来のアングラな音からどんどん派生して、しまいにはインストで区分けが曖昧だというものがすべてニューエイジのカテゴリー、棚に収められるようになったという。たぶん70年代後半くらいからそうなったと思います。
 だからたしかにデリケートな言葉だと思うしカルトみたいなものに対する揶揄という側面もあったと思うんですけど、いまやそういう文脈がなくなって棚問題もほとんどなくなって、三周くらい経て言葉だけが残ってどこかクールなもの、という印象づけが生まれて、逆に面白いと感じてます。


Kaoru Inoue
Em Paz

Groovement Organic Series

AmbientNew AgeDeep House

Light House Jet Set

なるほどねー。タームの意味も時間のなかで変わっていくのはわかる。まあ、そういう意味で今回の井上君のアルバムはすごいタイムリーだったなって思うんだよね。1曲目から5曲目までは本当にパーフェクトだと思ったね。

井上:そこからは?

チェロの音とか入るじゃない?

井上:それがあんまり良くなかった?

すごくいいよ(笑)。最初のでだしとかすごい良くて。これなんで水の音からはじめたの?

井上:1曲目がさっき言った2006年のものに入っているやつで。その辺はあんまり意味性はないですね。

エコロジー的なことなのかなって思ったんだけど。環境破壊問題的な。

井上:エコロジーは究極的な思想だとは思うんですけど。

あれはたまたまだったんだ。

井上:振り返るとリズムですよね。水が、不規則ですけど、ループに聴こえるポイントがあるんじゃないかなって。というのはありました。

これは何人で作ったの? ひとり?

井上:これは当時レコーディングしたのがチェロしかり、タブラしかり、残っていて一部の曲で再利用していますね。

『Slow Motion』のプロジェクトのときに?

井上:そうですね。タブラ、ギター、バイオリン、それぐらいかな。ぼくもエレキ・ギターは弾いていますね。それが使われています。

音源としては昔の音源を再構築したんだ。

井上:全曲ではないですが、再構築も含まれています。音響的な部分は、いまの自分が好きで買って聴いているような音と並べて聴いてみたりとか。ミックスは全部自分でやったんですけど。ミックスひとつとっても、微妙な潮流があるので。リメイクして、ミックスをし直すだけで、何かすごくアップデートされたり。自分で再発しているみたいな気持ちはあります。あとマスタリングを~scapeのPOLEことStefan Betkeが手がけていて、最終的にさらにアップデートされた感じです。

ぼくはここ5年はUKのとかよく聴いてるんですよ。

井上:どういうものですか?

ダブステップ以降ですかね。ディストピックなものというか。井上君は同じ時代を生きていても、表現の仕方がそういう風にはならないよね。かつては同じように、ポップ・グループを聴いていたわけじゃない?

井上:なかなかディストピックにはならなかったですね(笑)。でも、今後なるかもしれないですね。ただそれに、埋没したくないというか。難しいですね。自然にそうなっている部分もあるんで。何かを課してやっているわけでもなく。ひとことで言うと暗い音楽好きですね。PiLとか。突き抜けていて、思想性の裏付けの裏に暗さといったらいいか……。大好きでしたけど。でも、いまそれをことさらやろうという感じではなかったですね。

ところでさ、DJのブッキングがはいらないとやっぱ不安?

井上:それはありますね。でもそれは自分がすでにさんざんやってきているじゃないですか。当たり前なんですけど、自分がすごいブックされていたときの年齢の人間がいま活躍しているって当たり前ですよね。機動力の違いっていうのと、あと、コミュニティも変わっているし。自分たちがやっていた頃のお客さんも、みんな来なくなっていますよね。

そりゃそうだろうね。みんな良い歳してさすがにこう……(笑)。

井上:ですよね。家庭もできてっていうのが大きいですよね。ぼくも遊びには行かなくなってしまっていて。それもどうかなと思っていたんですけど。それすら度外視して、いまはとにかく作りたいですね。

最後に、井上君の90年代ってどういう時代だったと思う?

井上:90年代はクラブ・ミュージックの成熟進化ですね。

成熟進化の始動だよね。

井上:ただはじまりであっても拡散しているものが、目に見えて成熟しているものを目の当たりにしているような時期だった。たとえば、日本の社会的な背景がどういうものだったか考えると、95年以降っていう話になるじゃないですか。そういうものを完全に度外視されてしまうような吸引力が、クラブを軸にした音楽にすごくあったんではないかと。自分自身の経験に即して言うとあったような気がしますね。あと、渋谷が世界一レコードの在庫量があって売れていた時代ですよね。90年代後半って。音楽産業もピークだったし。

ただ、このDJカルチャーにしては、むしろ勝手にやっていたから大きくなったっていた気がするけど。自分も当事者のひとりとして思うね。誰もこんなものが職業になるなんて思っていなかったわけじゃない? 有名人になりたくてやったわけじゃないし、新しくて、面白いからやっていたわけであって。

井上:あんまり総括っていうのができないんですよね。でも傾向みたいなものはありますよね。野田さんはどう思います?

オルタナティヴな共同空間っていうものは、具現化できたんじゃないかなって。音楽をエンジンにして。それは、政治思想をもたない政治的な運動だったと思うのね。ただし、思想を持たないがゆにえ脆弱さもあったけどね。

井上:まさに、レイブカルチャーそのものというか。

誰かひとり仕掛け人がいてっていう世界ではないからね。いろんな
人たちが、いろんなことを、ただ好きだからやった。すごく無垢だったと思うよ。

井上:レイブ・カルチャーの良さみたいなものはたしかにそうだったなと思うんですけど。ぼくは東京都内の小箱カルチャーみたいなところにいたから。

いや、だからこそ小箱カルチャーがいいんじゃない?

井上:そうですね。独自のコミュニティで完全にそうですね。

ぼくだってそうだよ。小箱カルチャーから来ている。30人いれば今日入っているなみたいな(笑)。

井上:そうですね(笑)。客引きじゃないですけど、クラブの前で、「一杯おごるから行かない?」とか女の子に声かけて(笑)。そんなことやっていましたよ。笑っちゃうんですけど。

(笑)逆にいまの方がいいと思うところって何?

井上:それは矢沢とか、ロックンローラーじゃないですけど、いまが最高みたいなのがしみついちゃっているんで(笑)。80年代の音楽がおもしろいなっていうのがいまありますけど、それはなぜなら掘り起こしてる人がいるから目に見えてくるもので。そういう過去は参照するんですけど、あのときは良かったなみたいなのは思わなくなりましたね。いま、その瞬間どんだけ自分があげられるかしか主眼がいかなくなっている。全然食っていけねぇなとか本当具体的にいろいろあるんですけど。ブッキングされないなとか(笑)。

はははは、しかしはからずとも『Em Paz』には初期のシーンの無垢さが出ていますよ。今日はどうもありがとうございました。

KOJOE × ISSUGI - ele-king

 ずっと動き続ける――ラッパーでありシンガーでありトラックメイカーでもあるKOJOEが、昨年リリースしたアルバム『here』から、とくに人気の高かったISSUGIとのコラボ曲“PenDrop”のMVを公開しました。それまでのふたりのイメージを覆し大胆にアニメイションを導入したその映像は、哀愁を誘うトラックとも見事にマッチ、独特の味わいを堪能することができます。また、4月13日に開催されるリリース・パーティの追加情報も解禁され、同時にKOJOEのオフィシャル・サイトもオープンしています。合わせてチェック!

KOJOEの最新作『here』よりISSUGIとのコラボ曲“PenDrop”のMVが公開!
また4/13に開催するリリース・パーティの前売特典も決定し、同時にオフィシャル・サイトもロンチ!

 AKANE、Awichをフィーチャーした先行シングル“BoSS RuN DeM”が大きな話題となり、それに加えて5lack、ISSUGI、BES、OMSBら地域/世代/クルーの枠を越えた多彩なゲストが参加した待望の最新作『here』が各所で話題となっているラッパー、KOJOE! 同作から特に人気の高かったISSUGIとのコラボによる“PenDrop”のミュージック・ビデオが新たに公開! これまでの両者のイメージと異なるアニメーションをフィーチャーした作品に仕上がっている。
 その『here』に参加しているゲスト・アーティストがほぼ全員出演するリリース・パーティがいよいよ4/13(金)に渋谷WWW Xにて開催! 同公演ではMUDとFEBB(R.I.P....)をフィーチャーした“Salud”のillmoreによるリミックス音源収録のCD-Rが前売券購入者特典として配布されることが決定! また、その公演に向けてKOJOEのオフィシャル・ウェブサイトもロンチしている。

KOJOE “PenDrop” feat. ISSUGI (Official Video)
https://youtu.be/vO8C_aiGHrc

Kojoe Official Website :
https://kojoemusic.com


Kojoe " here " Release Tour in Tokyo - Supported by COCALERO -
日程: 2018 年4月13日 (金)
会場 WWW X

[Live]
Kojoe

[Featuring Artists] (A to Z)
5lack
AKANE
Awich
BES
BUPPON
Campanella
DAIA
Daichi Yamamoto
DUSTY HUSKY
ISSUGI
MILES WORD
MUD
OMSB
PETZ
RITTO
SOCKS
YUKSTA-ILL

[DJ / Beat Set]
BudaBrose ( BudaMunk x Fitz Ambrose )
illmore
Olive Oil

OPEN / START:24:15 / 24:15
※本公演では20歳未満の方のご入場は一切お断りさせて頂きます。
年齢確認の為、ご入場の際に全ての方にIDチェックを実施しております。写真付き身分証明証をお持ち下さい。

料金:前売り ¥3,000 / 当日 ¥3,500 (ドリンク代別)
U25チケット ¥2,500 (ドリンク代別) ※枚数限定
※〈U25チケット〉は、25歳以下の方を対象とした割引チケットとなります。ご購入の方は、入場時に顔写真入りの身分証明書をご提示ください。ご提示がない場合は、正規チケット料金の差額をお支払いただきますので、予めご了承ください。

※前売り特典:Kojoe - Salud Feat. MUD & FEBB ( illmore Remix ) 収録CD-R

チケット発売中
e+ / チケットぴあ[P:111-011] / ローソンチケット[L:73906] / WWW店頭

公演詳細ページ:https://www-shibuya.jp/schedule/008824.php


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