「KING」と一致するもの

HOLY (NO MORE DREAM) - ele-king

~HR/HM 狂熱のVISUAL SHOCK 10選~

Levon Vincent - ele-king

 アンダーグラウンド・ハウス/テクノのシーンを牽引するアーティストのひとり、レヴォン・ヴィンセント。彼が今年の1月に自身のレーベル〈ノヴェル・サウンド〉から発表したファースト・アルバム、『レヴォン・ヴィンセント』が日本限定でCD化される。同作は『ピットフォーク』や『RA』といったメディアでも高く評価された。
ダークなインダストリアル、ファンキーなベースライン、ときにはダブ・テクノまでを披露する彼の手腕は、ベルリンのマルセル・デットマンから、ブリストルのペヴァラリストに至るまで、ジャンルを越え数多くのDJたちを魅了してきた。
〈ノヴェル・サウンド〉からのリリースはデジタルでの販売はなく、毎回極小数しかプレスされず発売後すぐにソールド・アウトになってうケースが多い。今回初めてCD化されるアルバムも、レコード4枚5000円という価格にも関わらず追加プレスも含めて完売してしまったほどだ。
CDは11月4日発売予定。情報は以下の通り。

LEVON VINCENT
“Levon Vincent”

Release: 2015/11/04
Novel Sound / Pヴァイン
PCD—24424 解説付き

〈トラックリスト〉
01. The Beginning
02. Phantom Power
03. Junkies On Hermann Street
04. Launch Ramp To The Sky
05. For Mona, My Beloved Cat. Rest In Peace
06. Her Light Goes Through Everything
07. Black Arm W/Wolf
08.Confetti
09. Anti-Corporate Music
10. Small Whole-Numbered Ratios
11. Woman Is An Angel


Clap! Clap! - ele-king

 Clap! Clap!すなわち拍手!拍手!は、手拍子の人力ダンスではない。この洒落っけのあるアートワークが匂わすように、アフロ、ジューク、ベースなどなど、好き勝手にモダンなダンス・ビートを混合して、胸が高まるエキゾティックな体験を1枚のアルバムを通して実現させた。快適な砂漠旅行なんて、誰が想像できる?
 その華麗なるデビュー・アルバム『TAYI BEBBA』は2014年でもっとも重要なアルバムの1枚に数えられるわけだが、日本でもロングセラーになった。そのClap! Clap!がついに来日する。共演者は、妖しいサイケデリック・ハウスを展開するブラジリアンDJ Thomash。そして、ボアダムスのEYヨ。

root & branch / FRUE presents
“It's a Jungle in Here“

11.7 SAT @ 代官山 UNIT / SALOON
Live: Clap! Clap! (Black Acre - Italy)
DJs: EYヨ (BOREDOMS)
Thomash (Voodoohop - São Paulo)
and more to be announced!!
Open/ Start 23:30
¥3,500 (Advance)
Information: 03-5459-8630 (UNIT)
https://www.unit-tokyo.com/

Ticket Outlets: PIA (277-030), LAWSON (76761), e+ (eplus.jp), diskunion CLUB MUSIC SHOP (渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, TECHNIQUE, JET SET TOKYO, DISC SHOP ZERO, clubberia, RA Japan, UNIT
* 9/26 から上記プレイガイド、チケット取扱レコード店及びサイトにて一般発売。

Clap! Clap!
クラップ!クラップ!は、ディジ・ガレッシオやL/S/Dなど多数の名義で活躍するイタリア人プロデューサー/DJ、クリスティアーノ・クリッシが、アフリカ大陸の民族音楽への探究とサンプリングに主眼を置いてスタートさせたプロジェクト。様々な古いサンプリングソースを自在に融合し、そして極めてパーカッシヴに鳴らすことによって実に個性的なサウンドを確立している。彼は伝統的なアフリカのリズムをドラムマシーンやシンセといった現代の手法を通じて再生することにおいて類稀なる才能を持っており、その音楽体験におけるキーワードは「フューチャー・ルーツ/フューチャー・リズム」。クラップ!クラップ!の使命は、トライバルな熱気と躍動感に満ちていながらも、伝統的サウンドの優美さと本質を決して失わないダンス・ミュージックを提示することである。

EYヨ

コンテンポラリーアーティスト。80年中期より、主にパフォーマンスアートの流れからロックグループフォーマットのBOREDOMSをオーガナイズ。SONIC YOUTHのサポートツアーからスタートし、以後海外での活動が多く、初期のJUNK MUSICやAVANT JAZZよりの表現から、さらに包括的、根源的な表現へと変化。現在10人程のドラマーやギターによる編成になっている。ボアドラムのプロジェクトを2007/7/7にNYで77台のドラムセットによりスタート、以後毎年、'08年88台、'11年111台、'13年91台、複数のドラムセットにより、各国で行う。アート関係のコラボレーションやエキシビジョン、画集刊行も各国で多数おこなってきており、ジャケット制作もBECKをはじめ多数。DJは90年中期よりスタート。当時のNU HOUSEやETHNO BEAT, DISCO EDIT, JUNKなACID HOUSE, EXIOTICなGOA TECに影響を受けおり、それらを高速ハイブリッド濃縮したMIX-CDをDJ光光光の名儀でリリースしている。それを含め現在までに6枚のMIX-CDとLIFT BOYS名儀で2枚のCD、5枚のアナログをリリースしている。

Thomash(Voodoohop)

ブラジルはサンパウロにおいて毎回数千人を集めるアンダーグラウンドDiYパーティ『VOODOOHOP』。Thomashはその首謀者であり、DJ、トラックメイカー。異常に遅いスローテクノ、国籍不明の民族音楽、トロピカルサイケデリア、レインボーカラーのシンセサウンド、ラテンのリズム、ダブ、アシッドロックにディープハウス等を比類無いセンスでミックスし、ディープサイケデリックな呪術感を持ちつつ、全てを優しく包み込む太陽のようなオーガニックダンスグルーブ。現在はサンパウロを中心に活動しているが、出身はドイツのケルン。古くはCANなどの多くのクラウトロックを産み、近年はKompaktのお膝元として、60年代から常に革新的な音楽を生み出してきた街で生まれ育った。そのジャーマンブラジリアンのルーツ、ヨーロッパの前衛エレクトロニックダンスミュージックの感性と、ブラジルの南国快楽主義的な空気感が混じり合った、まだ生まれたばかりの不思議なダンスミュージック。2014年3月にカナダのMulti CultiからリリースされたファーストEPは、その名も『Camdomble』。ブラジルの黒人系民間信仰宗教の名前であり『神をまつるダンス』という意味を持つ。地球の裏側、ダンス大国ブラジルの意識を"一歩先"に進めた、Thomashの再来日!

<CLAP! CLAP! 大阪公演>
11.6 FRI @ 大阪 心斎橋 CIRCUS
Open/ Start 23:00-
¥2,500 (Advance)
INFORMATION: 06-6241-3822 (CIRCUS)
https://circus-osaka.com/
* Clap! Clap! 以外の出演者は東京公演とは異なります。


第1回:「借りパク」は鳴り止まないっ - ele-king

借りパク:

借りパクとは、人から借りた物をそのまま自分の物にすること。
借りパクとは「借りてぱくる」「借りた物をぱくる」の略である。「ぱくる」の意味のひとつに「盗む」がある。要するに借りパクとは人から借りた物を盗ってしまうことである。ただし、万引きや泥棒のように始めから盗ることを前提にしていることは少なく、借りたことを忘れ、結果的に私物になった(主にマンガなど安価な物の貸し借りに見られる)、当初は返すつもりであったが返せなくなった(主に金銭の貸し借りに見られる)といったものが多い。貸した側が忘れていることも多い。また、エリアによっては借りパチともいう。(引用元:インターネットサイト「日本語俗語辞書」)

 僕はよく引っ越しをする。ここ20年で数えたところ計9回。そして毎回荷造り荷解きのたびに、段ボールに詰まった本やCD、VHSやDVDなどを眺めながら、幾ばくか作業の手を止めて、その文化的な財が誘う記憶の旅へと出向いてしまうのだ。とりわけ長きに渡って残っているのはCDで(それは僕がミュージシャンであり、かつ1979年生まれという世代的理由も含めて)、思わずコンポに入れて流してみたり、忘れられた名曲を発見してはiTunesにせっせと入れたりして、ついに片付けはまるではかどらない状態になってしまうのだが。

 中でも、当時の記憶がとりわけ鮮やかに蘇ってくるのは、人から借りているCD。もっと正確に言うと、借りたまま半ば自分の物として存在してしまっている……すなわち「借りパク」したCDだ。これまで引っ越しや進学、転職などを機に、友人や先輩、かつての恋人から数多くのCDを借りパクし(その数およそ50枚。ごめんなさい)、また同時に同じくらいの品々を借りパクされてしまったり。程度の差こそあれ、このような経験は音楽ファンの多くがお持ちではないだろうか。

 そして思い出すだけでもあれやこれや。ハードロックから渋谷系、ニューウェイヴからテクノ、映画音楽や歌謡曲などなど、洋・邦楽、ジャンルもそれなりに多岐に渡り、ひとつひとつに「ああ、あの時そう言えばあいつに返しそびれたな……」と、その時代時代にお付き合いのあった大切な人の顔を思い出すのである。そんなほろ苦い思い出とともに耳元にじんわりと立ち籠めてくる素晴らしい名曲の数々。

 手始めに一枚、紹介しよう。


(注:手書きポップに書かれているイニシャル「W.A」とは僕のこと。このポップを書いた2012年当時は33歳だったか現在はもう少し歳をとっている。以後すべて同。)

 あれは確か大学一回生の時。僕は家庭教師のアルバイトをしていて、大阪南部に住む高校3年生の女子生徒Sの家まで毎週原チャリで通っていたのだ。Sは長身のスラリとした女の子でちょっと人見知り。っていうか、今思えば歳も2つしか(僕は浪人して大学入ったから)離れてなかったのだから、こっちもなんだか妙に緊張して教えていたなぁ。当時、爆発ツイストパーマをかけていた僕の髪を見ながら、毎回半笑いでお出迎えしてくれたお母さんの存在もあわせてよく覚えている。

 そんなSともちょっとずつコミュニケーションが取れてきて、英語と現代文の授業の合間に入る休憩時間に、お母さんが出してくれたカルピスとパンケーキを食べながら、最近聴いている音楽の話をしたっけ。そこで、彼女の机の上に置かれていたのがこのUAの記念すべきファーストアルバム『11』だ。どうやらこのCDを学園祭でかけながらダンスをしたとのこと。UAのファッションにも関心があったそうで、当時の雑誌のインタヴュー記事なども熱心に見せてくれた。もちろんUAの名前は知っていたがちゃんと聴いたことがなかった僕は、彼女に薦められるがままに「じゃあ、すぐに返すからね」と言って借りて帰ったのだ。

 その後、受験勉強は佳境に差し掛かりほとんど無駄話することなく試験当日へ。無事、第一志望の大学に合格してくれたのでよかったものの、そのまま契約も終わって会うことがなくなってしまって……。彼女も僕に感謝の気持ちがあったのか、わざわざ「返して」って言い出しにくかったのかもしれない(まぁ、完全に僕が悪んだけどね)。あるいは、単純に貸していたことを忘れていたのかかも(そんな都合のいいことはありえないか)。後日、シングルカットの「リズム」を聴きながら、“今、返せないのは そう永遠のリズム〜♫”、だなんてどうしょうもない替え歌を歌って、そのCDの供養に代えたのであった。

みなさんの“借りパク”音楽大募集!

 さてさて。僕は、常日頃から音楽は人々のプライヴェートな記憶をパッケージングするメディアとして大変優れているものだと感じてきた。J-POPひとつをとっても、たとえば、
「ああ、スピッツの“スパイダー”を聴くと、高校の時に付き合っていた彼女のこと思い出すわー」
とか、
「モーニング娘。の“ラブマシーン”を聴くと、日本の未来を考えて受験勉強してたあの頃を思い出すわー……」
とかとか。

 中でも、「その人の所有物を預かってしまっている」状態であり、現物がまさに目の前にある(場合によっては歌詞カードに生々しい手紙が入ってたり)「借りパク音楽」は、その時代ごとの「人との関係性」を一層明確に思い出させるものとして、より具体的にその人との記憶を強く想起させるメディアになっているのではないかと、僕は思ったわけだ。そしてなおかつ「返せなかった」ということはそれなりの理由があるわけで(例えば元恋愛関係だから気まずい/相手が引っ越ししてしまい消息不明/兄弟だからいつでも返せると思ってそのまま/他界した/喧嘩別れした友人だから、などなど)、その悔恨の感情が、一層その記憶の想起へと加担し、「いまあの人は元気にしているのだろうか……!?」と想いを馳せることとなるのだ。

 読者の皆さんから「っていうか、ごちゃごちゃ言ってないで早く返してやれよ!」とお叱りの言葉が聞こえてこなくもないのだが……。しかし、僕は閃いてしまった。どうせいまさら返せないのだ。だったらその「借りパク音楽」を有効活用しようと。すなわち、「借りパク音楽」ゆえに到達できる記憶の旅へとさまざまな人たちを誘い、もちろん反省の気持ちも綯い交ぜにしながら、新しい音楽の楽しみ方へと昇華させてやろうじゃないかと。

 そんなわけでこの連載では、僕が借りパクしてきたCDと、知人友人をたどって取材してきたさまざまな音楽ファンが借りパクしてきたCDとを一挙に紹介してゆく。音楽性や音楽史や音楽理論とはまったくもって関係のない、個々人の極私的な記憶をベースにした、少しヘンテコで楽しい音楽の楽しみ方を提供しつつ、読者の皆さんもおそらく一枚はお持ちであろう(CDラックを綿密に確認してみてほしい!)「借りパク音楽」への関心を引き出し、追憶の旅へと誘おうではないか。

■借りパク音楽大募集!

この連載では、ぜひ皆さまの「借りパク音楽」をご紹介いただき、ともにその記憶を旅し、音を偲び、前を向いて反省していきたいと思っております。
 ぜひ下記フォームよりあなたの一枚をお寄せください。限りはございますが、連載内にてご紹介し、ささやかながらコメントとともにその供養をさせていただきます。

「ポストロック」なる用語はいつ生まれ、その要件はどのようなものだったのか──
バトルスの新譜から遡る、ポストロック21年めの新定義。

「ポストロック」なる音楽用語は、1994 年、UKの音楽誌「Mojo」でジャーナリスト、サイモン・レーノルズの筆によりはじめてお目見えし、同氏の『The Wire』での記事でその概念は拡張され世に広まったとされるが、諸説紛々、現在にいたるまでさまざまに文脈を変化させてきた。
仮に、その代表格と目されるトータスの音楽になぞらえ、「複数の音楽的要素」を「テクノロジーにより折衷」し、「既存にロックの価値観への対抗軸を提示」した音楽と定義するなら、その背後にはサンプリング・カルチャーの擡頭とそれによる音楽の細分化、さらには録音技術の発展といった、90年代的の磁場もかいまみえるにちがいない。

90 年代リヴァイヴァルの波に同調して、いままたホットな「ポストロック」。
そこに隠れている“ポストロックの三要件""の可能性。
その現在性と歴史を、2000 年代、ポスト・ポストロックとしてのオルタナティヴ・ミュージックを提示したバトルズの新作から考える!
そしてポストロックとともに90 年代音楽のもうひとつの大きな潮流だった「音響派」も取り上げ、両者の接着面から現在を炙り出しみる、“別エレ""新刊。

テーマは定義と歴史だ。

Contents
インタヴュー バトルス 4年ぶり3作目『La Di Da Di』の表も裏も網羅するトリプルインタヴュー
    デイヴ・コノプカ/イアン・ウィリアムズ/ジョン・スタニアー 松村正人
考察1 ハードコア、金科玉条 松村正人
考察2 『La Di Da Di』で極まったアンダーグラウンドの理性の時代 三田格
基調インタヴュー 佐々木敦に金子厚武が訊く ポストロック新3要件!? 松村正人
君はサーフィンをしたことがあるかい? ポストロックの自由と快楽 野田努
再録1 ポスト・ロッキン・オン 三田格
再録2 ブリストルのポストロック 飯島直樹
考察3 レッド・クレイオラ的 You Can Connect to Anything 湯浅学
考察4 サウンドテクノロジーと身体 ありがたや、PT 山口元輝
考察5 ポスト・ヘドバン・ミュージック The Changing Same 倉本諒
PostRock Early Works ポストロックの初期衝動 アーティスト・ファイル
    ペレ/ディラン・グループ/マイス・パレード/ジ・アルバム・リーフ 木津毅/加藤直宏/橋元優歩
源流探訪1 ジム・オルーク、スティーヴ・アルビニを語る 松村正人
My Favorite Post’n’Sound わたしの三枚 井手健介/須藤俊明
インタヴュー サンガツ ポストロックと、サンガツの18年間 松村正人/小原康広
インタヴュー スパングル・コール・リリ・ライン(藤枝憲) ばるぼら
ディスクガイド うたものポストロックの5枚 ばるぼら
インタヴュー にせんねんもんだい 松村正人/菊池良助
ディスクガイド ポストロック・ファンに聴かせたいクラウトロックの15枚 小柳カヲル
論考 写真家=サム・プレコップを考える 杉原環樹
ディスクガイド ミレニアムの10枚 松村正人
ディスクガイド ポスト・ポストの20枚 木津毅/倉本諒/橋元優歩
源流探訪2 岸野雄一の90年代講義 松村正人
インタヴュー タイヨンダイ・ブラクストン 松村正人/タイコウクニヨシ
論考 「音響」の分子分母論 大谷能生
考察6 音響前夜もしくは後夜 松村正人
鼎談 goat×空間現代ふたたび 日野浩志郎+野口順哉+山田英晶 松村正人
論考 90年代の池田亮司から音響派へ畠中実
論考 テクノロジー(とそのエラー)と電子音楽 刀根康尚とオヴァルのスキップ 川崎弘二
論考 音響派の再発見 虹釜太郎
My Favorite Post’n’Sound 私の三枚 蓮沼執太
ディスクガイド 音響とIDM、はざまの15枚 デンシノオト

interview with ERA - ele-king

 僕は2013年に『街のものがたり』というインタヴュー集をまとめた。僕はこの本でステレオタイプではないラッパー像を提示したかった。ラッパーといえば、不良で、社会から隔絶されて、虐げられて……。ではなくて、自分の身近にいる普通の青年が歌うラップを紹介したかったのだ。不良のラップも大好きだけど、市井の青年たちの感性から生まれた言葉は、僕にとって説得力がある。なぜなら僕自身が何者でもない、街の景色の一部のような人間だからだ。


Era - Life is Movie
HOW LOW

Hip Hop

Tower HMV Amazon

 その『街のものがたり』にも登場してもらったERAが、今年7月に約3年ぶりのアルバム『LIFE IS MOVIE』をリリースした。これまでのERAのイメージといえば、都市を「しゃらり」と疾走する、軽やかでスタイリッシュな姿だった。しかし本作の彼は泥臭い。「決まった仕事もdropして / lifeをうまく積み上げられない / 何度も見たはずなのに / そっから先が上手くやれない」と彼は歌う。このラインはERAの暮らしの中から自然と出てきた言葉だという。僕はこのラインに2015年の「街のものがたり」を感じた。

 なぜ『LIFE IS MOVIE』という作品を世に送り出したのか、それを訊きに僕は久しぶりに彼に会いに行った。

■ERA / エラ
2011年にアルバム『3Words My World』でデビュー。ラディカルなトラックとリリカルな歌詞が話題となり、さまざまなシーンで絶賛された。2012年からは自身のレーベル〈How Low〉を主宰。同年セカンド・アルバム『JEWELS』をリリースし、さまざまな客演参加等を経て、2015年、3枚めとなる『LIFE IS MOVIE』を発表した。

今までとは違うことを

今回のアルバムは自宅で制作されたんですか?

ERA:そうです。

2012年に発表された前作『JEWELS』から約3年ですね。

ERA:同じ年の12月にIDEALというユニットの作品を出したんで、本当はその後にソロでアルバムを出したかったんです。あのときは、自分のレーベル〈HOWLOW〉を立ち上げたり、tofubeatsさんに“夢の中まで”という曲でフィーチャリンしてもらったり、すごくいい流れがあって。だからそこに合わせてアルバムを完成させたかったんですけどね。

制作が滞った理由は?

ERA:トラックが思うように集まらなくて。あとやる気はあったんですけど、僕自身のマインドが本格的に制作する感じじゃなかったんだと思います。

どういうことでしょう?

ERA:自分のレーベルからアルバムを出すのがけっこう大変だったんです。やることが多くて。アルバムをレコーディングしながら、リリースの仕方を考えなきゃいけなかったりとか。最終的にWDsoundsに宣伝を手伝ってもらったんですが、それが決まったときは正直かなり気が楽になりました。アルバムの制作もようやく本腰を入れられるようになったというか。やっぱりひとりではあれもこれもできないです。そもそもジャケットからして、夏に出すアルバムぽくないですよね。

あはは。でも今作はリリース時期こそ夏ですが、“サマーアルバム”という感じではないですよね。

ERA:そうですね。

『JEWELS』はとてもダークなアルバムでしたが、今回は一転して明るい作品ですね。希望に満ちてるというか。

ERA:『JEWELS』ってそんなに暗いアルバムだったかなあ? 僕としてはそんなイメージはないんだけど、すごくいろんな人から言われるんでそうなんだろうな(笑)。

ERAさんは「リリックにはいろんな意味が込められてる」とインタヴューとかで発言をされていたので、“Planet Life”の「もし拳銃があれば」とか、そういうインパクトの強いラインを聴くとリスナーはどうしても勘ぐってしまうんですよ(笑)。

ERA:『JEWELS』はすごくストイックに制作した作品なんです。そのせいで、あの頃の自分はいろんなことに対してナーバスになっていました。“Planet Life”の「もし拳銃があれば」というフレーズは、そういう中から生まれた言葉で本当に深い意味はないんですよ。

今回の制作はあまりナーバスにならなかったんですね。

ERA:はい。あと、このアルバムではちがうことをやりたかったんですよ。『3Words My World』と『JEWELS』に関しては、自分の言葉が一辺倒だと思うところがあって。表現の幅みたいなものを見せたかったんです。「ひとつの事柄を歌っていても言葉にはいろんな意味を持たせる」っていうのも今回はあまりありません。

「LIFEの中の4小節 / 実際それで全部だから」と歌っていますしね。

ERA:はい。『LIFE IS MOVIE』は『3Words My World』『JEWELS』の延長線上にあるけど微妙にちがうことを歌ってます。この微妙にちがうというのがすごく重要なんです。たくさんある引き出しの中から、いままでとはちがう部分を見せてる感じですね。


ソウル感のあるリリック

なるほど。たしかに、いままでの作品では“I’m Talkin’”の「back againしたってことは少しは変われたってことさ」みたいなフレーズは出てきませんよね。

ERA:「自分のリアルな生活感を歌いたい」という思いがアルバムを作りはじめの頃からぼんやりとあって。“I’m Talking”とかは、まさに僕のリアルな部分が出てる曲。ソウル感っていうか。

“ソウル感”とは?

ERA:経済的困窮の中から生まれるハングリーさみたいなものです。USヒップホップのリリックにはよくあるけど、日本でこの“ソウル感”を出せる人はあまりいないと思う。今回のアルバムは、それを見せることでオリジナリティが出せたかなと、うっすら感じています。とはいえ、自分もアメリカの人たちほど困窮しているわけじゃないけど(笑)。

その意味では“I’m Talkin’”には生々しいほどのソウル感が出ています。

ERA:自分はパートタイム的な仕事をやってるんですけど、まあ続かなくて。辞めて次の仕事を探しては、その職場の上司とぶつかったり。そんなことの繰り返しで、本当にうまくいかないなあって感じでしたね。

あの歌詞はすごく2015年の日本を感じさせるものだと思います。すごく貧しいわけではないけど、未来を感じさせてくれない感じというか。そんな状況で「lifeをうまく積み上げられない」と焦ったりしませんか?

ERA:焦りよりかは、「自分はなんでうまくいかないんだろう」って思いのほうが強かったですね。

失意、みたいな。

ERA:そうですね。

先ほど「ちがうことをやりたかった」と話していましたが、今回のようなリリックを書くことにしたのはなぜですか? ちがう表現はほかにたくさんありますよね?

ERA:今回みたいなことを歌うと思うことが、自分をより良くすることなのかなって。

どういうことでしょうか?

ERA:作品を作りながら自分が自分に救われてたようなところがあって。アルバム作りっていうのは、歌詞を声に出して歌うことで少しずつ進んでいくわけですが、その過程を経るごとに自分が少し復活するような感覚があったんですよ。

もしかして“I'm talkin'”の「病んだ俺にはmedicineが必要」というのは、そうやって作品を作ることだったんですか?

ERA:そうです。


自分が聴いて気分が上がるような作品

先日テレビで映画監督の細田守さんのドキュメンタリーをやっていて、そこで彼は「映画を作るとか観るとかっていうことは、“世界に希望を持ってますよ”ってことを表明するような行為でさ、(現実は)そうでないにも関わらずね。そのときの自分は幸せじゃないかもしんないけども“人生は幸せなものかもしんない”ってことを大声で言ってるようなもんなんだよ。それは幸せじゃない人だからこそ、それを作ったり言ったりする権利があるってことだよ」と話されていたんです。

ERA:自分がこのアルバムを作っていたとき、暗い音楽は聴いてませんでしたね。入り込みすぎちゃって聴けないというか。むしろ明るい音楽を聴いて力づけられてましたね。そういう感覚が当時の自分にフィットしてたんです。そこは意識してたかもしれません。あんまり暗い感じというよりは、自分が聴いて気分が上がるような、そういう作品にしたいという気持ちがありました。

『LIFE IS MOVIE』というタイトルはどのように決まったんですか?

ERA:アルバム制作の半ばから終わりにかけてくらいなんで、けっこう遅いです。今回の作品で、いちばん最初にできた曲が“Left, Right”なんですけど、その段階ではアルバムの全貌はまだぜんぜん見えてなくて。具体的に何かのきっかけで決まったというよりは、制作の中で徐々に固まっていったような感覚かな。

タイトル・トラックの“Life Is Movie”ができあがったのも後半ですか?

ERA:はい。“Daylight”とかも最後のほうです。アルバムのタイトルが決まってからは、そこに寄せて歌詞を書いたり、曲順を決めたりしました。

1曲めのタイトルがいきなり“Endroll Creator”なのですごく驚きました。映画なのに、最初からエンドロールの話かよって(笑)。

ERA:たしかにそうですね(笑)。じつはこれ、もらったトラックに付けられてた仮タイトルをそのまま使いました。響きもカッコイイし。けっこうそういうの多いんですよね。

トラックの仮タイトルにインスパイアされてリリックを書きはじめるラッパーの人、多いみたいですね。

ERA:うん。この曲はまさにそのパターンです。

今回は客演にDown North Campの面々が参加していますね。

ERA:フィーチャリングのラッパーについては、Down North Campとかそういうところはとくに意識してなくて、自分がカッコいいと思う人たちに声をかけました。

今回はERAさんが所属するグループ・D.U.O.のOIさんが参加していませんね。

ERA:そうですね。スキットとかで参加してもらおうと思ったんですけど、うまくハマる曲がなかったんですよね。いっしょにやりたかったんですけど。


映画の最後

曲順はどのように決めましたか?

ERA:かなり考えましたね。最初はぜんぜんちがう曲順で“Life Is Movie”が最後の曲だったりもしたんです。じつはこのアルバムには、ゆるいストーリーが設定されてて。あの曲のサビで歌っている「クラッシュする交差点~」というのは、ストーリーのラスト・シーンなんです。主人公が車に轢かれて死んじゃう。

なんで主人公は死んでしまったんですか?

ERA:事故っす(笑)。

いや、そういうことじゃなくて(笑)。

ERA:映画の最後ってそういう感じじゃないですか。

突然起こった理不尽な悲劇、みたいな。でもそれのほうが逆にリアリテイがあるかも。

ERA:まあストーリーはザックリとした感じなんですけどね(笑)。

ちなみに“Life Is Movie”の最後のライン「Peaceすぎたら~」はどういう意味なんですか?

ERA:これはストーリーとは別個で自分自身のことですね。2014年の夏に“Soda Flavor”という、今回のアルバムにも入れた曲を配信でリリースしたんですが、この頃はパーティ感を出そうとしてたんですよ。でもそこにこだわりすぎると、曲が弱くなっちゃうというか、自分に嘘をつきすぎてる感じがしたんですよ。

自分のキャラに合わないことを無理してやっても仕方がない、と。

ERA:そういうことです。

ラストの“Daylight”はすごく明るい曲ですね。

ERA:ストーリーとしては“Life Is Movie”がラストなんですが、アルバムとしては“Daylight”で終わるのがすごく美しい感じがしたので、この並びにしました。たまにエンドロールの後に5分くらいおまけが付いている映画があるじゃないですか? この曲はそんな感じですね。

では、仮にERAさんが映画が撮るとしたら、どんな作品がいいですか?

ERA:高校生くらいのやつが学校に通いながらラップするような青春ものがいいですね。そういうのは昔からやってみたいと思ってます。たぶんやれないと思うけど(笑)。

なるほど。それを聞くとやはりERAさんの中には一貫した美意識があるように感じられます。『3Words My World』や『JEWELS』で表現された街の描写は映画のワン・シーンみたいでした。ラリー・クラークの“Kids”みたいな。

ERA:ああー、そんな感じかもしれない。

では最後に好きな映画は?

ERA:いろいろありますけど、普通に『2001年宇宙の旅』とかですかね。あと自分がラップはじめるモチベーションが高まったという意味では『ハッスル&フロウ』は外せないです。あの映画、主人公たちのやる気がハンパないんですよ(笑)。あのハングリーさはすごく上がりましたね。

NORIKIYO - ele-king

 アーティストにはそれぞれ個性がある。これまで日本人のラップに興味を持ったことがない人に、筆者が日本人のラップの取材をしている話をすると、「いま一番かっこいいラッパーは誰か」みたいなことをよく訊かれる。つまり、誰から聴けばいいかと。
 答えは、その度に違う。ファースト・インパクトで好みとのズレを感じてしまうと、それ以上聴かなくなってしまうかもしれない。それは小さくても(その場ではたった1人の話でも)大きい損失だと考えているので、けっこう真剣に考える。入口でおもしろいと感じてもらえれば、もっといろいろ聴いてみたいと思うのが人間というものだろう。
 ここ何年は、よくNORIKIYOの名を口にしている。ではNORIKIYOのどのアルバムを聴けばいいのかと訊かれたら、筆者は迷わず「ネクストワン」、つまり筆者もまだ聴いていない(筆者の知っている段階ではNORIKIYO本人すら聴いてない)次のアルバムだ答えるだろう。これはほとんど確信であり、またこれこそが筆者が人に「NORIKIYOを聴いてほしい」と勧めるゆえんでもある。NORIKIYOは常に次の作品こそが最高傑作だと予感させてくれる。
 とはいえ、現実には次の作品を聴くことはできない。では、いまNORIKIYOのどの作品を推薦すべきかと言えば、リリースされたばかりの『実験的断片集』ということになる。タイトルからわかる通り、本作はあくまでNORIKIYOの“断片”であり、彼名義のソロ・アルバムではない。コンセプト・アルバムといったほうが近いだろう。それでもNORIKIYOの「らしさ」が十分に詰まったこの新作を“断片”としてリリースすることに、やはりというかむしろというか、アーティストNORIKIYOの「らしさ」を感じてしまう。

 NORIKIYOの音楽の魅力を裏で支えるのは、何よりその切実さでありアーティストとしての誠実さだ。これは充実した彼の活動の裏にも(実は)切実さが潜んでいるのだという意味ではないし、もちろん誠実だから素晴らしいわけでもない。一生懸命作ったから評価されるべきなんてことを信じているアーティストがいたら、そんなに興ざめな話はないだろう。そうではなく、たとえ傑作と評価される作品を生み出しても現状に安住できない、難儀ともいえる切実さこそがNORIKIYOの音楽を高みに向かわせる原動力とでも言えばいいか。もっとも本物のアーティストとは往々にしてそういうものだろうし、難儀だから制作を楽しんでないということでは、もちろんないわけだが。
 野蛮なストリートのスラングや皮肉や毒の効いた巧みな言い回しは、言うまでもなくNORIKIYOの音楽の魅力だ。だが、NORIKIYOにとってそれはデフォルトで、それを上手くやるのも、もっと上手くなるのも「ラッパーだったら当たり前」の範疇なのである。そこから「より高みを目指したい」という志向を抑えられない姿勢こそが、むしろ彼の本質である。これは「彼は内面ではこう考えている」といったメンタリティーに限った話ではなく、他のラッパーがあまり扱ってこなかったようなトピックの多彩さなどにも立ち現れてくる。

 「ほらThinkaboutit どこに向かってるのみんなThinkaboutit/何に蓋してるの いま胸/そこに?(ハテナ) とめどねぇ/それの答え探すよ俺もね」

 “夕暮れと珈琲”でNORIKIYOはこうラップする。インタヴュー中、彼と小難しい話をしたことはないのだが、例えば我々が生きていく上で、当たり前に突きつけられる現実的な矛盾というものがある。矛盾をいちいち問うことは、「現実に準拠してない」と言われたり「青臭い」と言われたりするわけだが、それでも「政治屋がなんと宣おうが爆弾は人を殺すものでしかないだろ?」という問いはまっとうなはずだ。表現者はガザを忘れるべきでないというのは暴論だろうか? なにも大仰な話でなくてもいい。例えば、PCやスマホの画面から離れられない現実は正しいのか? 
 NORIKIYO(https://www.ele-king.net/review/joint/002418/)のリリックはミクロからマクロまで素朴な問いをあらためて突きつけてくるものだ。そしてそれらの問いは、“私たち”のものでもある。ラップは基本的に一人称の音楽だが、NORIKIYOはすでにその外に出ている。掘り下げると止めどがないので、ひと言にとどめるが、NORIKIYOの「俺」はもはや一人称に収まっていない。だからこそ彼の言葉は日本人のラップ・ファンには新鮮で、同時にジャンルを問わず幅広い音楽ファンの耳に響くのだろう。蛇足だが、それはNORIKIYOの戦略ではない。あえていえば、難儀な切実さが、やがて彼をそこに運んだのだ。

 以前、NORIKIYOをインタヴューしたとき、彼は忌野清志郎や甲本ヒロトの名を挙げ、彼らに「ロックの」や「パンクの」という枕詞は必要ない。自分もそうなりたいと話していた。今度の『実験的断片集』のジャケットは、いうまでもなく“ジョン・レノンセンス”(『イマジン』)であり、4thアルバム『花水木』には“ジョン・レノンに会いたい”や“Dear 20 Century Boy〜花水木〜”という楽曲が収録されている。清志郎はたくさんのラヴソングを歌い、ときに大麻についても歌ったが、社会からも目を背けなかった。レノンはいうに及ばず。NORIKIYOの根底にはある種のロックやフォークがあり、直接的にか間接的にか、それが彼のラップに自然な形で影響を与えているようにも思える。

         *********

 もともと『実験的断片集』は、神奈川中のラッパー/プロデューサーを一堂に会したド派手なアルバムを目論んでいたとのことだが、とある事情でそれが頓挫し、自主レーベルの〈諭吉レコーズ〉から出すことになった。予算的な限界もあり、「神奈川の2割いってないくらい」とはNORIKIYO自身の談だが、これは作品を卑下しているわけではない。むしろ、このラフなやり方で(さしたる打ち合わせをせずに、フックを入れて、各々バースを書いてとサクッとしたレコーディング)でも、ここまでできるという自信を含んだ言葉で、実際、フッド神奈川の充実をプレゼンする内容だ。
 「普段から遊んでない人と曲を作るのは苦手だが、今回はあまり遊んでいない人と作った」(NORIKIYO)
 これが「実験的」の意味。とはいえ、サイプレス上野、SALU、T.O.P、ダイナリー・デルタ・フォースの面々、WATTa.k.a.ヨッテルブッテルと参加アーティストの顔ぶれは実験的というにはいかにも楽しげな人選である。あるいは実験的だから楽しめるのか。
 本作の収録楽曲は、ほとんどが前作『如雨露』(前半の話に戻るとこれが現時点のNORIKIYO名義の最新アルバムで、半分以上がラブソングで占められている「異色」の内容だ。未聴の方は今作と合わせて是非聴いて頂きたい)製作時にはあった曲だという。ちなみに、今回新たにレックしたという「あの女–良はタチンボ〜待ちぼうけPart.2〜」は、山仁の2006年のアルバム『愛(LOVE)』収録「女–良」へのオマージュ的な楽曲だとか。ここで山仁というラッパーについての説明は省くが、こういった形でも神奈川のアーティストへのレップが生きている。これもまたNORIKIYOのらしさである。
 いまもっとも精力的に活動しているラッパー、NORIKIYOによる『実験的断片集』。このアルバムタイトルの意味を考えながら、おそらく傑作になるであろうネクストワンを待ちたい。

interview with New Order - ele-king

なぜニュー・オーダーなのかと言われたらわからないけど、みんな精神的な繫がりを感じているようだ。ぼくたちの音楽は凄くエモーショナルだから、人生で何か困難に直面したとき、ぼくたちの音楽に気持ちの慰めを見出すことができるのかもしれない。あと、人を惹き付ける物語がこのバンドにはある。


New Order
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 新作はダンス・アルバムであり、エレクトロニック・サウンドに戻っているという前評判を耳に入れて、いざシングル曲“レストレス”を聴いたら、どこがダンスでエレクトロニックなんだよと思ったコアファンもいるかもしれない。しかしご安心を。“レストレス”はアルバムの1曲目だが、2曲目以降にはそれが待っている。“ブルー・マンデー”から『リパブリック』までのニュー・オーダーを特徴付けるエレクトロニック・サウンドは引き継がれ、ある意味アップデートされている。
 ちなみに、“レストレス”のシングル盤のリミキサーはアンドリュー・ウェザオール。ファンはここで名曲“リグレット”を思い出すだろう。あの切ないメロディとエレクトロニックのマンチェスター的折衷……これ、これ、そう、これだよ、俺たちのニュー・オーダーが帰ってきたのだ。

 ジョイ・ディヴィジョンの最初の2枚、いや3枚、まあ……3枚の重要なシングル盤を加えると6枚……は、いま聴いても、リスナーが「重荷を背負った若者」ではなくなっても、あらためて歴史を切り拓いた音楽だったと思う。本当に、よくもまあこんな作品をあのセックス・ピストルズとあのザ・クラッシュの後に作れたものだ。社会や政治というよりは内面という曲の主題(彼らが社会や政治に無関心だったわけではないが、作品にはパンクにはなかった深い内省があった)、そしてその革新的音響(マーティン・ハネットの天才的録音)、ピーター・サヴィルの革命的アートワーク(ジャケの紙質までこだわっていた)、それらすべてをひっくるめて永遠のクラシックだ。『アンノウン・プレジャーズ』のアートワークがインディ・ロック・Tシャツにおける最高の地位になっていることに異論もない。

 で、ニュー・オーダーとは、その永遠のクラシックを作った後の、当時のロックのセオリーで言えば中心人物を失った後の、10番のいないサッカーチーム、4番バッターとエースのいない野球チーム……みたいなものだったが、それでも世界レベルで最高の結果を残すチームになりえた。作る曲すなわち作品でもって常識をひっくり返し、そして、そのとき、おいてけぼりにされた若者の内面はダンスへと向かったのである(しかも作品によっては、あの頃のぼくたちからもっとも遠かった太陽と海へと、そう、向かってしまったのである)。
 そんなことをつらつらと思えば、バーナード・サムナーの自伝『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そしてぼく』に記されているように、たしかにぼくたちの人生はニュー・オーダーとともにあったのだろう。初めて『ムーヴメント』に針を下ろしたときのこと、“ブルー・マンデー”に心底震えた夜、耳にたこができるほどあらゆる場所で聴かされた“ビザール・ラヴ・トライアングル”や“パーフェクト・キッス”、あるいは“ワールド・イン・モーション”や“ラウンド・アンド・ラウンド”のリミックスEP、そして異性(同性)と別れ出会う度に聴かなければならない“リグレット”……、その他いろいろ、ぼくたちはニュー・オーダーの切ない歌とエレクトロニックな楽曲の向こうにそれぞれの時代を思い出す。

 ほがらかなメロディの“ラヴ・ヴィジランティス”は、NYエレクトロを思い切り吸収した『ロウ・ライフ』のオープニング曲で、クラブ・サウンドを我がモノとしながらアルバムはしかし古風にはじまるというひねくれ方は、なるほど、いかにも英国風と言えるだろう。新作『ミュージック・コンプリート』にもそれは引き継がれている。
 ちなみに『ミュージック・コンプリート』のバッキング・コラースには、インディ・ロック・ファンにはお馴染みのデニス・ジョンソン(プライマルの“ドント・ファイト・イット〜”の人です)が参加しているが、ラ・ルーも歌っている。たしかに新作には、イタロ・ディスコ(コズミック)めいた箇所がいくつかある。バーナード・サムナーのドナー・サマー趣味がここにきて噴出したのかもしれない。ほかに話題としては、ケミカル・ブラザースのトム・ローランズが3曲参加していること、イアン・カーティスのヒーローだったイギー・ポップが1曲参加していることも挙げられる。

 ニュー・オーダーは、いくつかの困難を乗り越えてここまで来ている。彼らの人生から滲み出るものが、ニュー・オーダーの背後にはある。それは泥臭さである。電子機材が普及してからの華麗なるモダンデイ・ポップ・ミュージックの先駆けだが、その音楽には普遍的なエモーションがあり、だからこんなにも多くの人から、世界中の人たちから、そして新たにまた、内面が敏感な世代から愛され続けているのだろう。
 『ミュージック・コンプリート』は、ピーター・フック脱退後の、新生ニュー・オーダーの最初のアルバムだ。しかも〈ミュート〉からのリリース。例によってバンド名もタイトルも記さないピーター・サヴィルのアートワークにも、思わずニヤっとしてしまう。
 ニュー・オーダーが最初に輝いた10年はサッチャー政権時代であり、それを思えば『アンノウン・プレジャーズ』のTシャツは巷でさらに増殖するかもしれない。まあニュー・オーダーに限らずだが、昨年のモリッシー、先日アルバムを出したPiLなど、あの時代のUKのミュージシャンたち、いい歳した連中は、いまもなおエネルギッシュで、しかも新たな輝きを見せはじめている。さまざまな話題性を含めて、今回は注目の新作なのである。

ダンス・ミュージックをやっているけど、いまどんなサウンドが流行っている、といったことは一切考えずに作った。自分たち独自のことをやった。ダンス・ミュージックが一時期から細分化され過ぎて、作っていて拘束着を着せられているように感じた。「このジャンルはこのサウンドでこのビートじゃなきゃ駄目」といった縛りが多すぎるって。

実はあなたの自伝をライセンスして、ニュー・オーダーの新作のリリースに合わせて刊行する予定でいます。そもそも自叙伝を書かれた理由は何だったのでしょうか? 

バーナード・サムナー(BS):自伝のなかでは、まさにそこのところも語っている。ぼくの音楽はぼくがこれまで生きてきた人生がもとになっている。子供時代、そして青春時代の経験や記憶だ。それはジョイ・ディヴィジョンにおけるぼくの音楽的貢献にも間違いなく繫がっている。ぼくが子供時代、そして十代を過ごした環境の雰囲気が表れている。自分に「音楽を作りたい」と思わせてくれた、自分の原点だ。
 それとは別に、新しい音楽との出会いについても触れている。ぼくが15歳、16歳のときに影響を受けた音楽について語っている。あとマンチェスターについても語っている。マンチェスターで生まれ育つのがどういう感じか、という。正確にはサルフォードという街でぼくは育ったんだ。サルフォードというのはマンチェスターに隣接した街で、マンチェスターから西に向かって進むといつの間にかサルフォードに入っている。マンチェスター首都圏のなかでもとくに工場が密集した工場地帯だ。そういう街でぼくは育った。それが後に自分の音楽にどう影響したかということを自伝のなかで語っている。

わかりました。さて、『ミュージック・コンプリート』は、大雑把に言って、ニュー・オーダーとはこういうバンドなんだという、自己確認するアルバムであり、原点回帰的なところもあるアルバムだと感じました。つまり、ニュー・オーダーらしいニュー・オーダーのアルバム、最初に聴いた瞬間に、「あ、ニュー・オーダー」と思うしかないアルバムというか。いかがでしょうか?

BS:ありがとう。

あなた個人にとって「ニュー・オーダーらしさ」とは何だと思いますか?

BS:……。何だろう。ファンの人たちに訊いたほうが上手く答えられるんじゃないかな。ライヴの後、ファンの人たちと会場の外やホテルで会ってサインとかする際によく言われるのは、「貴方の音楽と出会って人生が変わりました」、または「貴方の音楽は自分の人生を彩るサントラです」だ。彼らの心に深く刺さっているのがわかる。なぜニュー・オーダーなのかと言われたらわからないけど、みんな精神的な繫がりを感じているようだ。ぼくたちの音楽は凄くエモーショナルだから、人生で何か困難に直面したとき、ぼくたちの音楽に気持ちの慰めを見出すことができるのかもしれない。それがひとつある。
 あと、人を惹き付ける物語がこのバンドにはある。イアン・カーティスのこともそうだし、イギリスにおけるインディ・レーベルの台頭に大きく関わっていたことも大きい。〈ファクトリー・レコード〉の物語をひとつとっても面白い。すでに2本の映画が作られたくらいだ。〈ファクトリー・レコード〉のトニー・ウィルソンの生き様を描いた『24アワー・パーティ・ピープル』とイアン・カーティスの生き様を描いた『コントロール』だ。こうやって2本の映画ができるほどの興味深い歴史があるということも人びとがニュー・オーダーに惹かれ、共感し、そこに慰めを見出す所以なんじゃないかな。

ピーター・フックが脱退したとき、バンドは事実上解散したと思いますし、あなた自身にも再結成するプランはなかったと思います。しかも、バンドにとってベースラインはトレードマークでした。それがどうして、このように新しいアルバムを完成させ、発表するまでになったのでしょうか?

BS:まず……、彼不在でライヴを幾つもやるところからはじめた。その前にはっきりさせておきたいんだけど、彼はバンドを自ら辞めたのであって、決してぼくたちがクビにしたわけじゃない、ということ。

(笑)。

BS:そのことで彼にはずっと文句を言われっぱなしだからね。

そもそも彼はなぜ脱退をしたのでしょうか?

BS:もうやってられない、と思ったのだろう。おそらくぼくと彼が性格的にそりが合わなかったことが要因だった。彼はかなり対抗心を燃やしてくる性格で、でもぼくはそうじゃない。むしろ、そういうのが苦手だった。だって、同じチームなんだから、同じ目標に向かってみんなで力を合わせて頑張るのが当たり前だと思っていた。でも、同じチーム内で自分に対して対抗心を燃やしてくる人がいたら、それはチームにとっても良くないと思ったし、ぼくとしてもすごく嫌だった。
 それと、彼がぼくにやって欲しいと思っていたことをぼくがやらなかった、というのもあったと思う。彼は常時ツアーに出たいと思っていた。でもぼくはまだ幼い子供もいて、家族と離れるのが嫌だった。バンドに対して決してめちゃくちゃなことを要求しているは思わない。でも彼はそれが気に入らなかった。ぼくと彼は全く違うタイプの人間だったということに尽きると思う。考え方も懸け離れていた。それが限界に達していたのだろう。彼もぼくにうんざりしていたし、ぼくも彼にうんざりしていた。
 彼は、ぼくだけじゃなく、みんなを自分の思い通りにしたかったんだと思う。いまは自分のバンド、フリーベースでそれができるようになった。他のメンバーはおそらく彼の言う通りに動いてくれるのだろう。でもニュー・オーダーでそれをやろうと思っても無理だ。

そこからどうやって、彼抜きでニュー・オーダーを続け、このように新しいアルバムを完成させ、発表するまでになったのでしょうか?

BS:彼不在でライヴをやりはじめた頃は、正直多少の不安もあった。しかも彼はプレスに対して「俺抜きでは絶対に上手くいかない」と言い張ったんだ。「自分がいないニュー・オーダーはフレディ・マーキュリーのいないクイーンのようだ」ってね(笑)。「やったところで大失敗するだけだ」って。
 つまり、「俺は去るけど、せいぜいみんなで失敗すればいい」というのが彼の態度だった。「俺抜きで続けるなんて不可能だ」ってね。だから最初は多少の不安もあった。人びとがどう反応するかわからなかったから。でも、いざライヴをやってみると観客の反応は素晴らしく、世界各国で最高のライヴをいくつもおこなうことができた。新作の制作に取りかかるためにスタジオに入った頃には、すでに3年半ライヴをやってきていたから、彼がいないことに慣れていた。だから全く問題にはならなかったよ。

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曲作りでいちばん難しいのはいいメロディを書くことだ。ビートを作るのはさほど難しいことではない。いまではネット上でビートを買うことだってできるわけだからね。


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ジョイ・ディヴィジョンのときはポストパンク、ニュー・オーダーのときはディスコやエレクトロ、『テクニーク』のときはアシッド・ハウスとセカンド・サマー・オブ・ラヴなど、あなたはわりとムーヴメントとともにアルバムを作ってきたと思うのですが、『ゲット・レディ』以降は、音楽文化自体が、ムーヴメントなき時代に突入したました。そういう時代の変化と、ニュー・オーダーのやり方がズレはじめたと感じたことはありますか?

BS:ダンス・ミュージックに関しては多少あったね。ダンス・ミュージックが細かく区分化され過ぎてると感じた。ディープ・ハウスにファンキー・ハウスにアシッド・ハウス……という具合にジャンルが細分化され過ぎてしまって、ダンス・ミュージックの曲を書こうと思っても、まずどのジャンルに当てはまるかを考えなきゃいけないような気にさせられた。音楽はそうあるべきじゃないのに。
 今度の新作でもダンス・ミュージックをやっているけど、いまどんなサウンドが流行っている、といったことは一切考えずに作った。自分たち独自のことをやった。ダンス・ミュージックが一時期から細分化され過ぎて、作っていて拘束着を着せられているように感じた。「このジャンルはこのサウンドでこのビートじゃなきゃ駄目」といった縛りが多すぎるって。
 あともうひとつ感じたのは、ぼくたちは“ブルー・マンデー”でダンス・ミュージックにおけるパイオニア的存在だと見られていたのもあって、常に人がこれまで聴いたことのない音を出すことを期待されていた。でもそれって不可能なことなんだ。「新しい車輪を毎回発明しろ」と言っているようなものだ。それもあってダンス・ミュージックから少し距離を置こうと思ったんだ。ギターを核とした作品を作った。『ゲット・レディ』にしても『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』にしてもダンスの要素が薄れ、ギターが前面に出たアルバムになった。ギターで曲を作るときというのは、サウンドをそんなに気にせず歌をそのまま書けばいい。ギターの音は所詮ギターの音であって、ベースにしてもドラムにしても同じだ。サウンドのことをあれこれこだわる部分は少なく、単刀直入な作業だ。当時はそれが凄く新鮮だった。
 ジョニー・マーとやったElectronicの3作目、つまり最後のアルバムがギター中心のアルバムだった。その後の『ゲット・レディ』もギターが前面に出たアルバムだった。その後の『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』は少しエレクトロニックの要素もあったけど、ギターが主だった。その後ぼくはサイド・プロジェクトのバッド・ルーテナントで『ネヴァー・クライ・アナザー・ティア』というアルバムを出して、それもギター・アルバムだった。
 という流れがあって、もう十分ギター・アルバムはやったと思って、エレクトロニックなサウンドに戻るのにちょうどいま機は熟したと感じた。やりたくて飢えていたんだよ。ぼくだけじゃなく、スティーヴン(・モリソン)やジリアン(・ギルバート)もそう感じていたんだと思う。たとえるなら、ある食材を長い間全く口にしていなかったと想像してみて欲しい。チョコレートとか。で、ある時思い立ってまた口にしてみたら、美味しくてしょうがないと思うよね。それと同じで、今回またシンセサイザーを多用したことは、まるでおとぎの国にいるようだった。テクノロジーの進化がまた、制作をさらに面白いものいしてくれた。前はやりたいことがあってもそれを上手く音にすることができないこともあった。ジョイ・ディヴィジョンや初期のニュー・オーダーでは、持っていたシンセでかなり苦労をした。やりたいことがあっても、当時のシンセには限界があった。シンセそのものよりも、シーケンサーやコンピュータのテクノロジーがいまほど進んでいなかったから。それがいまはできるようになった。いまは音楽をまるで粘土遊びのように扱うことができる。曲やサウンドを粘土や石膏のように自在に形作ることができるようになった。それがすごく面白いと感じる。

アルバムのなかのジョルジオ・モロダー的なミニマルなビートに関しては、スティーヴン・モリスがファクトリー・フロアのような若いバンドに触発されたところがあるようですが、あなた自身がUKの若いクラブ・ミュージックに触発されることはありますか?

BS:う〜ん……ないかな。

なるほど。では、シングルのリミキサーで、たとえばですが、ジェイミーXXのような、クラブ系の若いタレントを起用することは考えませんでしたか?

BS:彼に限らず可能性はいくらでもあると思っている。リミキサー選びはこれからの作業になるから、いまからじっくり時間をかけて才能ある人を選びたいと思っている。ただ、いまの時代、可能性や選択肢が多すぎるというのも、それはそれで困ったものなんだよね。ニュー・オーダーの初期の頃はリミックスをお願いする人にしてもひとり、ふたりくらいしか選択肢はなかった。でも、いまは何百と優れたリミキサーがいる。いまの段階ではまだ話せないけど、いろいろ進めているものもあるよ。

マンチェスターの新しいシーンには関心がありますか? 

BS:さっきも若いクラブ・ミュージックに触発されることは「ない」って話をしたけど、ぼくの場合、音楽のインスピレーションは自分の内側からくるもので、外から受けるものではないんだ。最初に自伝の話をしたときにも話したけど、ぼくという人間の生い立ちから来るものなんだよ。

ニュー・オーダーの曲にはダンスもありますが、メロディアスな曲調もバンドを象徴していると思います。“レストレス”なんかは、ぼくには“リグレット”を彷彿させわけですが、あの当時“リグレット”は、サマー・オブ・ラヴが終わった感じをとてもよく表していました。そのセンで考えると“レストレス”にも時代が描かれているのでしょうか?

BS:おかしなもので、本来エレクトロニックなアルバムを作るつもりだったのに、アルバムの1曲目にアコースティック調な曲を持ってきたんだよね。まあ、それもニュー・オーダーらしいよ。矛盾だらけのバンドだ。「こうする」と言っておきながら、違うことをしてしまう(笑)。今回もエレクトロニック・アルバムだって言うのにアコースティックな曲で幕を開ける。なんでかって聞かれたら、これがシングルだからだろう。これまでもシングル曲を1曲目にしてきたことが多い。そして、君が言うように非常にメロディアスな曲でもある。
 曲作りでいちばん難しいのはいいメロディを書くことだ。ビートを作るのはさほど難しいことではない。いまではネット上でビートを買うことだってできるわけだからね。あるいは勝手にビートを作ってくれるプラグインだってある。当然、独自のサウンドのビートを作ろうと思ったら、もっと難しくなるわけだけどね。“ブルー・マンデー”のような独特のビートを作ろうと思ったら。それでもいちばん難しいのはいいメロディを書くことだと思う。曲を書く上でいちばん苦労する部分だ。で、今回いちばん意識した部分でもある。全員が今回いいメロディに重点を置いて曲作りをした。どの曲にもいいメロディが不可欠だと思った。
 “レストレス”は、我々がいかに慢性的な消費社会になってしまったかってことを反映している。大量消費ついて考えていたんだ。本当の意味では何も我々を満たしてくれないって。何かを買っても、数日間は満たされた気持ちになるかもしれない。でも、すぐにまたもとに戻ってしまう。だったら何が自分を幸せにしてくれるのかって疑問に思った。お金では買えないもので自分を幸せにしてくれるものは何かって。この曲は消費者主義に対するぼくなりの所見を述べている。消費者主義を批判しているわけではない。誰もが消費者はわけで、ぼく自身も一消費者だ。つい先日もApple Watchを購入したばかりだ。立派な消費者さ。でもふと考えたんだ。個人のみならず、社会全体をより幸せに、より満たしてくれるものは何か?って。
 現代社会において、日々の生活のなかで満たされる気持ちがどんどん欠けてしまっているんじゃないかって思うんだ。それは我々が消費することに取り付かれていることに起因しているのではないかって。例えば大量消費とは無縁の熱帯の島で暮らしている人たちに比べたとき、彼らのほうがずっと満たされた生活を送っている。例えば日本の何処かの島ないしは沿岸の漁村に住む人たちは非常に素朴な生活を送っている。消費者主義とは無縁の彼らのほうが幸せなんじゃないかなって思うんだ。(この曲は)批判しているわけではないし、所見というよりも、むしろ疑問に近い。「何が我々を幸せにしてくれるのか」「何が我々の生活をより幸せにしてくれるのか」「いかにして我々は嘗てあったものを失ってしまったのか」という。大きな疑問だね。

そうした資本主義の行き過ぎてしまっているような社会状況に関連した歌詞は今回のアルバムの大きなデーマのひとつと言えるのでしょうか?

BS:アルバムを通してひとつの大きなテーマがあるわけではない。歌詞に関して言うと、ぼく自身のことを歌っていると思われることが多いんだけど、必ずしもそうではないんだ。架空の人物や架空の人物たちについて書いた、自伝的でない曲を書くことだってある。人間関係についての歌にしても、ぼくの実体験というよりも、作り話であることだってある。
 今作の曲にしても歌詞の内容は多岐にわたっている。自分の歌詞を解説するのは好きじゃないんだ。自分の歌詞を聴いた人が、その人なりの解釈を加えることで、聴き手側も関与する、曲を介した双方向の対話になったほうが、ただ聴き手が受動的に曲を聴くだけよりもいい。それに、ぼくの歌詞は抽象的なことが多い。そもそも音楽はもっとも抽象的な芸術的表現だ。絵画における抽象画が登場する以前から、音楽は常に抽象表現だった。人びとはいくつかの和音を組み合わせたり、旋律を書く、あるいは太鼓のリズムを作ることで音楽を表現した。言葉などを使って具体的な何かを示しているわけではない。完全な抽象芸術だ。
 実はアルバムのタイトルを『アブストラクト(抽象的)』にしようかとも考えたんだ。なかなかいいタイトルだといまでも思う。でも実際、曲に歌詞をつける段階で、書き手としては抽象的であることを諦めなければいけなくなる。言葉で曲に意味をつけなければいけない。さらにはそれを聴き手が解釈をする、ということを念頭に書かなければいけなくなる。最初の頃はそこにかなり抵抗があった。ニュー・オーダーの初期の頃。自分のことを語るのが苦手だった。自分が何を考えているのか人に知られるのが嫌だった。自分だけの大切な逃げ場所だったから。でも、バンドのシンガーになったことで、自分の殻から出ることを強いられた。だから最初の頃は非常に曖昧な歌詞を書いた。ぼんやりとした表現をすることで真意をわざと隠した。いまでも自分の歌詞はそういう要素を引きずっていると思う。いまは、表現はより明瞭になったかもしれないけど、想像上の物語だったり、架空の人のについて書くようになった。ちょっとした短編小説のようにね。

バンドとしてもアルバムを完成させるのにとにかく集中して力一杯取り組んだ。作業に費やした時間も長かった。クリスマスでも週に50時間働いた。仕上げの1ヶ月は週に70時間働いた。それくらい大変な作業だったけど、そこまで頑張ったからこそ出来たアルバムには凄く満足しているよ。

シンガーという話が出ましたが、『ミュージック・コンプリート』を聴いてもうひとつ思ったことがあります。あなたは以前よりも歌がうまくなっているんじゃないかということなんですが、ご自身ではどう思いますか?

BS:ミュージシャンとしてもシンガーとしても常に成長していると思う。音楽をやってれば、必ず何か新しいことを学ぶ。だからいつだって成長し続けている。だからこれだけ長くミュージシャンを続けられているんだと思う。学校に通っていたときと違ってね。
 学校は大嫌いだったよ。学校で教そわる科目も嫌いだったし、先生も嫌いだった。つまらないと思ったし、だから勉強する気になれなかった。学校で教えてることがたわいもないものにしか思えなかったから、知識として得ることができなかった。それに比べて音楽は興味をそそられた。音楽のことを学ぶ過程にも興味が尽きなかった。ぼくをはじめ、バンドの全員が独学で音楽を身につけた。他のミュージシャンを聞いて学んだり、彼らのことを読んで学んだり、実際に自分たちでプレイすることで学んできた。人から教わるのではなく。全て独学で覚えた。その辺りがクラシックのミュージシャンたちとは違う。
 決して彼らが間違っていて自分のほうが正しいと言ってるわけじゃない。そうやって独学で習得する部分がぼくとしては気に入っている、というだけ。いまでも学ぶことはたくさんある。そしてぼくはヴォーカリストだ。昔と比べて、ヴォーカリストであることに慣れて自信が持ててきたといのはある。ニュー・オーダーの初期の頃はヴォーカリストであることが苦痛だった。そもそもヴォーカリストになんてなりたくなかったわけで。イアンが亡くなったからそうするしかなかった。でもいまは、自分がシンガーという事実を受け止めて、やるべきことをやると割り切っている。……それでも難しいけどね。
 いつも、曲が先にでき上がるんだ。今作では3つのグループに別れて曲作りをした。スティーヴンとジリアンは彼らのスタジオで曲作りをして、トムとフィルはスティーヴンとジリアンと共同で作業することもあれば、トムの家で自分たちで作業することもあった。ぼくもスティーヴンとジリアンのスタジオまで行って彼らと作業することもあったけど、かなりの時間をいまいる自宅のこの部屋で過ごした。すごく狭い部屋をスタジオとして使っているんだ。邪魔されることなく作業に集中できる。一つのスタジオに全員が集まって作業する代わりに、そうやって今回は曲作りを進めた。そこでできた曲やアイディアをみんなで持ち寄るんだ。ぼくが発案したアイディアを誰かが発展させることもあったし、他の人のアイディアをぼくがさらに発展させることもあった。正直、凄く集中力を要した張り詰めた制作プロセスだった。「凄く楽しんで作ることができた」とは決して言えない。というのも、ニュー・オーダーにとって重要なアルバムになるとわかっていたから。バンド内で起きた変化を経て、バンドの歴史においても節目となる作品だった。それだけに、バンドとしてもアルバムを完成させるのにとにかく集中して力一杯取り組んだ。作業に費やした時間も長かった。クリスマスでも週に50時間働いた。仕上げの1ヶ月は週に70時間働いた。それくらい大変な作業だったけど、そこまで頑張ったからこそ出来たアルバムには凄く満足しているよ。バンド全員が満足している。

トム・ローランズは3曲で参加していますが、彼が関わることになった経緯について教えて下さい。あなたは彼のどんなところに期待をしたのですか?

BS:ケミカル・ブラザーズとは、ぼくが個人的に参加した「Out Of Control」がこれまでもあったし、トムもニュー・オーダーと“Here To Stay”で共演している。これまでも何度か一緒に仕事をしたことがあったし、ケミカル・ブラザーズのふたりと考えも似ていると思っている。自然と噛み合う。だから今回もトムに何曲かプロデュースを依頼したいと思った。あまり保守的な人には依頼したくないというのもあった。勢いのあるトラックに関してはとくに。もちろんトム自身も好きなものがはっきりしているから、アルバム全部をお願いするつもりはなかった。結果的に2曲を手がけてもらうことになった。ケミカル・ブラザーズの音楽は非常に革新的で進歩的で、畳み掛けてくる迫力がある。だから今回彼が手がけた曲に関してはそういう彼ならではのテイストが反映してもらいたいと思ったんだ。

注目のD.A.N.“夏の終わりの”新曲配信 - ele-king

 あまりにみずみずしく、また、あまりに堂々たるインディ・ロック──「ジャパニーズミニマルメロウ」を掲げる若き3ピース・ユニット、D.A.N.のデビューEP『EP』がすばらしい。リリース・パーティを10月に控え、さらなる活躍に期待が高まる中、新曲1曲が配信限定で発表されるとの報が寄せられた。
 「夏の終わり」に合わせた曲だということだが、長雨が野分の風とともに暑気を振り払ったかと思えば、ふたたび夏の名残りが戻ってきそうな予感のこの頃、9月の終わりをもってようやく、わたしたちはこの曲とともに夏を惜しめるかもしれない。

フジロックのルーキーステージにも出演、いまだセールスが伸び続けている全員まだ21歳の3人組D.A.N.ですが、夏の終わりに合わせ新曲を1曲、配信限定で9月30日にリリースします。
デビューepとはまた一味違う、D.A.N.の新たなセンスが伺えるとてもポップな楽曲です。
都会の夜に合うアーバンな世界を持ち、かつバレアリックなチル効果もあり、涼しくなったまさに今この季節に聴いてほしい最高に気持ちのいい1曲です!
今作は最近ライブでもサポートしてくれている、トロピカルなマルチミュージシャン"小林うてな"嬢がシンセとスティールパンで参加しています。
また、REC&MIXエンジニアは前作に続き、葛西敏彦さんが手掛けています!間違いありません!
そして、この新曲のリリースに伴い、デビューep『ep』と併せた形でリリースパーティーを開催します。
10/19、場所は渋谷WWW、ゲストアクトに、U-zhaan × mabanua、submerseという強力なメンツが揃いました。

■リリース情報

D.A.N.
digital single『POOL』

発売日:2015.09.30(wed)
価格:¥250
発売元:SSWB / BAYON PRODUCTION

itunes
https://itunes.apple.com/jp/album/ep/id1004255038

D.A.N.
桜木大悟 (Gt,Vo,Syn)
市川仁也 (Ba)
川上輝 (Dr)

Guest Player
Utena Kobayashi (Syn,Steelpan)

Engineer
Toshihiko Kasai

○Message
誰にでも大切な記憶の「プール」がある。
その記憶の貯水池が「溢れる」瞬間を見つめた、新曲「POOL」。
夏の終わりの虚無感とともに訪れる記憶の走馬灯。
瑞々しい記憶や切ない記憶、すべての記憶が絡み合い溢れ出して、頭の中を心地よく漂っていく。

誰にでもある大切な記憶の「プール」。
当たり前のように 側にあるひと時、
宝物のような 幸せなひと時、
胸を擦り剥いて 眠れないひと時、
目を見れない 恥ずかしいひと時
その一枚、一枚の記憶の断片が折り重なる広大な貯水池。

いつの間にか化粧された記憶ばかりが溢れていき、胸がいっぱいになる。
ありのままの自分を探し求めてその「プール」を泳ぎ続ける。
きっと愉快でしあわせな桃色の記憶だってあるはずだから。
私たちはそんな記憶の「プール」を泳ぐ生きものだ。

D.A.N.

■イヴェント情報

D.A.N. release party "POOL"

2015.10.19 (mon)
at 渋谷WWW

ACT
D.A.N.
U-zhaan × mabanua
submerse

開場19:00 / 開演19:30
前売¥2,800 / 当日¥3,300(ドリンク代別)

問い合せ:WWW 03-5458-7685

チケット
一般発売:9/12(土)
チケットぴあ【P:276-621】/ ローソンチケット【L:76011】 / e+ / WWW・シネマライズ店頭

○D.A.N.
2014年8月に、桜木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練されたサウンドを吸収しようと邁進し、
いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。
2014年9月に自主制作の音源である、CDと手製のZINEを組み合わせた『D.A.N. ZINE』を100枚限定で発売し既に完売。
6月11日に開催の渋谷WWW企画『NEWWW』でVJ映像も取り入れたアート性の高いパフォーマンスで称賛を浴びる。
そして、トクマルシューゴ、蓮沼執太、森は生きているなどのエンジニアを務める葛西敏彦を迎え制作された、
デビューe.p『EP』を7月8日にリリース。7月にはFUJI ROCK FESTIVAL '15《Rookie A Go Go》に出演。

○U-zhaan × mabanua (ユザーン・バイ・マバヌア)
タブラ奏者 U-zhaanとドラマーmabanuaによるプロジェクト。
レイ・ハラカミ氏の「ユザーンがmabanuaくんとやるのをちょっと観てみたいなー、おれ」という軽い勧めにより結成。
音源リリースは未だないにも関わらず、UNIQLO CMへの楽曲提供や、FUJI ROCK、KAIKOO、りんご音楽祭など全国のフェスにも多数出演。

U-zhaan
ザキール・フセイン、オニンド・チャタルジーの両氏にタブラを師事。yanokami、UA、HIFANA、七尾旅人、SUPER CAR、
大橋トリオ、小室哲哉など多くのアーティストの作品にタブラ奏者として参加している。
憧れのミュージシャンはレイ・ハラカミ。1stアルバム『Tabla Rock Mountain』が発売中。
https://u-zhaan.com/

○mabanua
ドラマー、ビートメーカー、シンガー。Chara、くるり、大橋トリオ、DJ BAKU、COMA-CHI、TWIGY、Eshe、Chet Fakerなどの作品のプロデューサー、
ドラマー、リミキサーとしても活動。またGoogle、キユーピー、UNITED ARROWSなど数々のCM音楽の制作や、
フジテレビ系アニメ「坂道のアポロン」「スペース☆ダンディ」への楽曲提供など、あらゆるシーンで奮闘中。
https://mabanua.com/

○submerse
イギリス出身のsubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで 消化し、 ビートミュージック、ヒップホップ、
エレクトロニカを縦横無尽 に横断するユニークなスタイルを持つ DJ/ビートメーカーとして知られている。
SonarSound Tokyo2013、Boiler Room、Low End Theoryなど国内外の人気パーティーに数多く出演。
また、Pitchfork、FACT Magazine、XLR8R、BBC といった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。
昨年ファーストアルバ ム『Slow Waves』を、今春最新EP 『Stay Home』を flau/Project Mooncircleよりリリース、ロングセラーを続けている。
https://soundcloud.com/flaurecords/sets/submerse-stay-home
https://soundcloud.com/submerse/slow-waves


無為こそ過激 - ele-king

俺のラップはファッションではない、パッション
怒り 絶望 喜び 希望 色んなそん時がつまってんだ まだ科学じゃ解明できない
一瞬の爆発を秘めている 目にできないから絵にもできない その時その場所じゃなきゃ分からねぇ……──ギンギラギン

 いちばん最後に見たTAMUくんのラップは方南通り裏のスナックでカラオケマイク持ちだしたとき、ではなくて、他のメンバーも来てタクシーで池袋〈BED〉に向かいMONJUが出演する前にマイクを持ち出してフリースタイルをキメだしたやつだったかな、あの時はバッチリキマってたなぁ。いやちがうな、二木くんが高円寺でDJしてるってのを聞いてちょうど卓球BARで飲んでたんで遊びに行ったらマイクを持ち出してフリースタイルはじめた時だな、その時はあんまりキマってなかったなぁ……

 飲んだときの会話で引っ掛かってるのが「自分が描いてきた作品を個展として見せてみたい、その後はぜ~んぶ売ってしまいたい」って言ってたことだったけど、そのパッションという言霊は今週末に結実するんだな。

 あんとき聴いとけばよかったなぁ、見とけばよかったなぁ、ってことになる前に。
 さよならだけが人生だ……

■TAMU 個展 「anmaorenikamauna」xREFUGEE MARKET
2015 9/12(sat)~9/13(sun)
Open15:00~Close22:00
@Time Out cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
Adv 1000円/1D

〈DJ's〉
PUNPEE
16flip
YODEL
WATTER
CHANGYUU
COTTONDOPE
K.K.K.K.K.
qroix
slowcurv
babysitter
illcommunication

and more

<VJ>
VIDEOBOUILLON www.videobouillon.com


THE BELIEVABLE MEDIA IS AROUND US

DownNorthCamp 1st ALBUM REC初日、皆が新しいリリックをキックする。
あいつだったらどんなラップを乗せるのだろう。

「言いたいこと好きなだけ言えるよ。
まだまだまだまだ…」
TAMUのリリックが頭をよぎる。

描き溜められた作品達に込められた残りの「言いたいこと」を今放出することで、
CPF×DNCのプロジェクトに全員参加した形になればと思い、個展を開催します。

由来となったanmaorenikamauna@docomo.ne.jpは、現在使われておりません!

問い合わせ先:
Dogear Records
Time Out Cafe & Diner 03-5774-0440
LIQUIDROOM 03-5464-0800

https://www.timeoutcafe.jp/news/150912000887.html


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