■CD(ALBUM+SINGLE) BORIS - NOISE Tearbridge |
■アナログ盤 BORIS - NOISE Daymare |
海外のアーティストとの交流の中で、お互いの国のアーティストやシーンに関する意見交換は必至であり、筆者の経験においてはその中でボリスの名が挙がらないことはまずない。名義の表記にはそのときどきの音楽性の差によって使い分けがあり、ロックの中心へと向かう大文字のBORIS、ロックの外側へ向かう小文字のboris、たとえばそうした二項の往復の中に、90年代から誰よりもワールドワイドに活動をおこなってきた彼らだからこそのジャパニーズ・ヘヴィ・ロックがある。2011年発表の『New Album』からはメジャー・リリースとなり、彼らは日本のロック史における新たなる地平線を提示した。
そして、このたび最新作『Noise』が発表される。ボリスにおけるインターナショナルとは、ボリスにおけるフィジカル・リリースとは、ボリスにおけるノイズとは、ロックとは? アルバム・タイトルとは裏腹に、近年でもっとも音楽的な作品となったともいえる『Noise』の深淵にダイヴする! ……ということでインタヴューに向かいましたが、なにぶん過去の思い入れも深いバンドなのでおそろしいほど緊張してしまい筆者はほとんどホワイトアウト状態でありました。(倉本)
■BORIS / ボリス
1992年に結成され、現在はAtsuo、Takeshi、Wataの3人体制で世界的な活動を続けるロック・バンド。これまでにおびただしいリリースがあるが、2000年代には『Amplifier Worship』『あくまのうた』『PINK』などの成功によって海外からも絶大な支持を集めるようになる。2011年に初のメジャー・リリースを行い、活動をさらに多元化させた。最新作は本年リリースの『NOISE』。
A:Atsuo
T:Takeshi
W:Wata
N:野田
当初はすごくブルータルでノイジーなアルバムになりそうな予感だった。それで、そのタイトルが降りてきて、終わってみたら逆にいちばん音楽的なアルバムになっていたんです。(Atsuo)
■はじめに、今作『NOISE』は、ロックの中心へ向かうもの=大文字BORISとしての作品、という認識で間違いないでしょうか?
A:う~ん……。なんか、完成したら今までの中で一番音楽的なアルバムができたなと思って。だから今回は大文字BORISでいいかなーと。
■毎回、最初に小文字borisか大文字BORISかというコンセプトを決めているわけではないのですか?
A:そうじゃないですね。
■完成していく段階で振り分けるんでしょうか?
A:まぁ、だいたいそうかな……。作っている段階では何も考えてないことが多いので、できあがったら「こっちだね」みたいに。
■アルバム・タイトルが『NOISE』とのことですが、ボリスは過去作も含めて象徴的なアルバム・タイトルが多いように見受けられます。先ほどおっしゃった、いままででいちばん音楽的であるアルバム『NOISE』に込められた意味は何でしょうか。
A:プリプロが全体的にでき上がった頃ですかね、タイトルとしてフッと「Noise」って言葉が降りてきて……。去年の春ぐらいですかね、「あぁ、もうこの感じでいこう」と。当初はすごくブルータルでノイジーなアルバムになりそうな予感だった。それで、そのタイトルが降りてきて、終わってみたら逆にいちばん音楽的なアルバムになっていたんです。
■前作『Heavy Rocks』ですが、なぜ再びかつてと同じタイトルを冠したのでしょうか? BORISにとっての「Heavy Rock」に対する再定義ともとらえられるのですが。
A:あの時は、『Attention Please』と『Heavy Rocks』を同時にリリースしたんですが、その兼ね合いの中で、Wataのヴォーカル曲だけの『Attention Please』に対して、その当時の「Heavy」感を詰め込むという感じで、アルバム相互のキャラが別れていった。それで『Heavy Rocks』と同じタイトルでもいいかな? ってなりました。
■ジャケットのデザインも同一で色ちがいということだったので、ボリスとしてのへヴィ・ロックの再定義があったのかなと思いまして。
A:そうですね。ただ、非常に感覚的なものですよ。言葉でこう定義するって感じでもなく、いまはこんな感じかなと。僕らのフィーリングとしての「Heavy Rock」が、あのときはあんな感じだった。
■ロックのヘヴィ性に対する感覚の変化であると。
A:そうですね。やっぱり僕らの意識の中だけではなく、周りの状況、認識も変わっているじゃないですか。それってすごく大きいことですよね。
買ってくださるお客さんが手に持って、開封して、聴くという、フォーマットそれぞれのシチュエーション、流れまで含めてデザインしています。リスナーが作品に触れている、見ている時間も音楽の重要な要素です。(Atsuo)
■なるほど。逆に僕にとってボリスの変わらない部分ということで、ひとつお訊ねさせてください。
ゼロ年代半ばからヴァイナルの需要がグンと伸びた理由のひとつに、プロダクトとしてのフェティッシュなマーケットの拡大があげられると考えています。時期的に捉えてもボリスのフィジカル・リリースの方法論はそれらのパイオニアとも言えると思います。また音質の点でもCDとヴァイナルのマスタリングを明確に差別化してきたと思います。ボリスのフィジカルへの異常ともいえるそのこだわりとは何なのでしょうか。
A:CDとLPでもフォーマットが結構違うじゃないですか。サイズであったり、収録面が分かれていたり。買ってくださるお客さんが手に持って、開封して、聴くという、フォーマットそれぞれのシチュエーション、流れまで含めてデザインしています。リスナーが作品に触れている、見ている時間も音楽の重要な要素です。
■出会いってことでしょうか?
A:はい。経験していく過程というか。それもイメージして。やっぱり音だけの世界観じゃなくて、聴いていただける人がいて、手に取ってもらうっていう経験があって、参加してもらうところまで含めて作品ですね。
■まだ僕の手元に届いていない、来る『NOISE』2xCDと2xLPのフィジカルへのこだわりがあれば教えて下さい。
A:国内盤は友だちのReginaっていうデザイン・チームのリョウ君にやってもらいました。ジャケットはもう公開されていますけど、彼なりの「Noise」をこちらに提示してくれています。
■印刷とか毎回異常にこだわっているじゃないですか。今回はどうなんですか?
A:国内盤に関してはそういったところ、ギミックではなくてもっとこう……見えない空気感とか、そういうところをつくり込んでいる感じかな。海外盤の方は僕がデザインを担当していて、そっちはまあ特色とか光沢感とかのギミック有り。Web上では絶対再現できないような。僕はそういうデザインしかできないんで(笑)。
■でもそこはやっぱりすごく大事じゃないですか。僕は音源を買う要素としてそこがなければはじまらないみたいな部分もあったりするので。
僕らは、いろんな曲の連なりがあって、アルバムの中でのそういう作品世界っていうものを追っていくようなアルバム・バンドなんですよ。(Atsuo)
BORIS - NOISE Tearbridge |
■アナログ盤 BORIS - NOISE Daymare |
■逆にダウンロード販売とかって抵抗はありますか?
A:あぁ~……
■どのあたりが苦手ですか?
A:あぁ~……。ちょっといまのは小さい文字にしといてもらえますか? フォントサイズ落としてもらっていいですか?
(一同笑)
■わかりました(笑)。ただ、ボリスはアンチ・ダウンロードなイメージありますよ。
N:しかし、ボリスは頻繁に海外に行かれているわけで、アメリカなんかは本当にダウンロードが普及しているじゃないですか?
A:ただそのぶんアナログも伸びていますからね。
■一般的にもそこは二極化していると思いますよ。たとえばボリスのリリースはプロダクト的にも価値があるので、音を単純に聴く行為を越えてみんな買うと思うんですよ。だからダウンロードのマーケットには単純に影響されない気がしますけど。
A:海外のレーベルからも、ボリスは他のバンドに比べてデジタル販売のパーセンテージがすごく低いって。フィジカルは売れるんだけど、もう少しデジタル伸ばしてくれないかって言われています。でもずっとこんな感じでやってきたので、とにかくわからないんですよ、ダウンロードって。実際自分が買ったことないし。さっきの話に戻りますけど、CDとかLPって自分が経験してきたように、手に取るところまでをイメージして作品づくりにフィードバックしていけるんですけど、ダウンロードは実際買ったことがないのでイメージしづらい。i-tunes、i-podももちろん使っていますけど、取り込む場合WAV、AIFFそのまま。とりあえずみんなmp3とかに圧縮するのは卒業した方がいいと思うなあ。ハードディスクも安くなっているし。
■でもいまはそれだけで成立しているレーベルとかアーティストもいますよね。フィジカルのリリースがいっさいないレーベルとかもあるじゃないですか。
T:逆に「なぜそれで成立させられるの? どうやったらデジタルの売上げを伸ばせるの?」 ってこっちからレーベルに質問したい(笑)。
A:僕らは、いろんな曲の連なりがあって、アルバムの中でのそういう作品世界っていうものを追っていくようなアルバム・バンドなんですよ。
■アルバム・バンド!?
A:シングルをポンポン切っていくようなバンドじゃなくて、曲の連なりである種の世界観、世界を探検して、その報告をするみたいな作品づくり。だからアルバムごとにカラーが変わってきたりもするんですけど。シングル1曲でも買えるようなダウンロードのシステムってまだぜんぜん馴染みがない。
T:それは正直な気持ちですね。
僕、本当にメルヴィンズのコレクターだったんですよ。プロモ盤からリミテッドのシングルまで、とにかくどんな手を使ってでも……みたいに。それは自分にとってすごくいい経験だったし、豊かな時間だった。それをもしボリスに対して感じてくれている人がいるとしたら、とてもうれしいことです。(Atsuo)
N:でも、ここ10年で日本のロックというか日本の音楽、それこそいろいろな、灰野敬二からボリスまですごくマーケットとして大きくなったんですよね。とくにアメリカなんかは、アメリカでメディアをやっている人間と話しても、10年前に比べて明らかに日本の音楽に対する好奇心であるとか興味みたいなものが増えているなという実感があるんですよ。やっぱりそういう日本の音楽、たとえば灰野敬二でもボアダムスでもボリスでも、そういうものを買っている人たちというのは、モノとして自分の部屋に置きたいという欲望がすごく強いリスナーだと思うんですけれど、そういう感覚って海外に行って感じられたことはあります? 日本のバンドということで逆に注目を浴びているというような。ボリスにとってそれが本意なのか不本意なのかはわからないですけど。
A:いろいろな誤解込みでボリスがこういった状況になっているとは思っています。単純に日本語がわからないわけじゃないですか、彼らは。僕ら日本語で歌っているし。だから逆にいろいろな情報を取りこぼさないようにフィジカル・フォーマットを買ってくれていたりとか、やっぱり情報を求めてくれているんじゃないかと思いますね。
N:たとえば僕らがかつて向こうのバンドに対してすごくミステリアスな気持ちを抱いていたように、いまアメリカに住んでいるような人なんかが、日本のバンドやボリスに対してミステリアスな気持ちを抱いているというような印象は感じますか? そのあたりはボリス的にはどうなんですか?
A:そうですね、それは実際に自分も経験してきたことで。僕、本当にメルヴィンズのコレクターだったんですよ。プロモ盤からリミテッドのシングルまで、とにかくどんな手を使ってでも……みたいに。ブートのビデオまで取り寄せたりしてね。とにかくどんな些細なことでも知りたかった。それは自分にとってすごくいい経験だったし、豊かな時間だった。それをもしボリスに対して感じてくれている人がいるとしたら、とてもうれしいことです。
■僕もそのあたりはお訊きしたかったのですが、たとえば日本のサイケデリックとかって、欧米ではある種のブランドのようなものになっていたりします。ボリスはかなり初期の段階からワールドワイドな活動をされていたわけで、失礼な意見になってしまうかもしれませんが、そういった海外からの日本のロックへの先入観といったもので捉えられてしまうことへの抵抗感はありましたか?
A:……んー、いや? (笑)
■すいませんでした……。
A:僕らは「サイケ・バンドです!」 みたいなノリでもないし。「メタル・バンドです!」とも言えないし。非常に宙ぶらりんな感じなんですけど、海外ではどちらのシーンにも受け入れてもらっている感覚がある。たとえば去年〈オースティン・サイケ・フェス〉に出させていただいたんですけど、あそこに出ると、「わ! 俺らすごくメタルっぽいな!」と思ったり、以前出演した〈朝霧JAM〉でも「やっぱり俺らメタルっぽいなー」とか。
T:黒い服着ているの俺らしかいない。
(一同笑)
僕らは「サイケ・バンドです!」 みたいなノリでもないし。「メタル・バンドです!」とも言えないし。非常に宙ぶらりんな感じなんですけど、海外ではどちらのシーンにも受け入れてもらっている感覚がある。(Atsuo)
A:逆に、このあいだロンドンでやった〈デザート・フェスト〉っていう、3日間ストーナー、ドゥームとかそういうヘヴィなのばっかり出るイヴェントだと、「あれ? 俺らサイケ・バンド?」みたいに、周りの状況によって自分たちに見えるボリスの姿がなんか微妙にズレたりする。話を戻すと、海外ではメタルの市場ってやっぱりすごいデカいじゃないですか。
■めちゃくちゃデカいですよね。
A:すごいですよね。同時にサイケデリックの市場ってのも、プレミアがついていてもちゃんとお金を出して現物を買うっていう、もはや骨董品収集レベルのガチな方々がたくさんいる、すごく手堅い市場なんですよね。だからそういったふたつのシーンからサポートしてもらっているのは本当にありがたいですね。
やっぱりある種、向こうのロックの歴史の流れにはまっちゃっている部分がある。でもツアーに出れば出るほど自分たちが「うわっ、超日本人だなー」みたいに思うこともやっぱりある。それを僕らなりに消化したというのが『New Album』だったんですけど。(Atsuo)
■メジャーからの初リリースとなった『New Album』からJ-POPやJ-ROCK、ビジュアル系やアニソン等の“J”を全面的にフィーチャーしたものとなりましたが、それはやはり前述の欧米におけるボリスの捉えられ方を破壊したいという欲求だったのでしょうか?
A:そうですね。やっぱりある種、向こうのロックの歴史の流れにはまっちゃっている部分がある。でもツアーに出れば出るほど自分たちが「うわっ、超日本人だなー」みたいに思うこともやっぱりある。行き来しているからこそ見えてくる日本のカルチャーの面白さもある。それを僕らなりに消化したというのが『New Album』だったんですけど。根底には、いかにバンドっていう概念を捨てていくかっていうようなアーティストとしてのヘヴィさがあった上で、エクストリームに「ポップです」というところに向かっていった。ノイジーなまでにね。たとえばこの〈エイベックス〉が築き上げてきたような、アーティスト主導ではなくて企画先行で生まれる音楽であったり、デザインとしての音楽、そういうところにピントを合わせた作品でしたね。
N:ちなみに海外へ行って向こうのジャーナリストによく訊かれる質問とかってありますか? 日本ではあまり訊かれないような。
A:次は誰とコラボレーションしたいですか? って絶対訊かれますね。それは何か変なんですかね?ボリスのスタンスは(これまでのコラボレーション相手にサンO)))、メルツバウ、灰野敬二、ザ・カルトのイアン・アストベリー等)。
■いや、僕はそこはいろんな意味で気になりますよ。僕の認識ではボリスは大きなバンドなんですけど、それでもたとえば細かいスプリットのリリースが絶えないじゃないですか。ボリスの規模のバンドになるとそういった形でのリリースはやらないバンドも多いですし、また、失礼かもしれませんがコラボレーションの相手もけっして有名なアーティストでない場合が多かったりとか。そのあたりにこだわりを僕は感じています。このあいだのJマスシスのレーベルからのヒープとのスプリット7インチしかり。
A:バンドの規模が大きくなっていくとコントロールしづらくなることもやっぱり多くて……もう、本当にめんどうくさいですよね、昨今のリリースに関する実務量は。
(一同笑)
A:CD作って、ヴァイナル、僕らの尺だと絶対2枚組になる。そしてデジタル。海外リリースでは、デジタル・ダウンロード用のジャケットをつくるのも当たり前なので、ジャケットだけでも3種類作らなきゃならないし、マスターも3種類。とにかくどんどんめんどうくさくなっている。
(一同笑)
N:それぞれのニーズがありますからね。
A:そういった中で、すべて自分たちでハンドリングできたり、フッと出せる、作ってすぐ出せるというようなものが、やっぱりどうしても欲しいんですよね。そのスピード感というか。曲作って、レコーディングして、出して、もうお客さんの手元にある、みたいな。もちろんダウンロードとかネットで共有するのではなく、形あるものでね。実際ヒープとの7インチも僕らまだ持ってないですから。
(一同笑)
■あの7インチはボリスからアプローチしたものなんですか?
A:あれはJからのオファーです。アメリカ・ツアーの際に僕らのサウンド・エンジニアとしてついてくれているノエルっていうお爺ちゃんがいて──ジミヘンを3回も観たことある人。
■すごいですね。
A:当時クリームも13thフロアエレベーターズも、バブルパピーも観たことあるって、ロックのバイブルみたいなお爺ちゃんなんですけど、彼はダイナソーJr.のPAもやっていて、先に「ヒープってバンドがノエルのことを歌った曲を作ったから、ボリスもなんかノエルのことで曲書いてみてよ」って言われて、それで。
■ジョー・ヴォルクはどこで?
A:ジョー・ヴォルクはポーティスヘッドの〈ATP〉に出ていた。彼のライヴがすごく良くて。
T:僕らと同じステージの出演だったんですけど、サウンド・チェックでの彼の音と歌がとにかくすごくて、なにこの人みたいな。僕らそのときは彼のことを知らなくて。
A:彼のアルバム、じつはジェフ・バーローがプロデュースやっていたりするんですけど。そのライヴのときに声をかけて話したりして、それからですね。本当のところ、顔が見える関係性の中でリリースとか作品づくりとかをやっていけたら楽しいですね。
昔から聴いてきてくれているようなお客さんは、相当耳が肥えている方々なので、表層がどんなものであろうと「ボリスはやっぱりボリスだよね」って言ってくれる。(Atsuo)
N:でもあれですよね。成田さんというプロデューサーをつけて〈エイベックス〉から出したということは、それまでのボリスのイメージを更新するといった意味合いがあったとおっしゃっていましたが、以前お話したときに、ボリスはどうしても海外のほうが比重が大きくなって、たとえば10年前に比べて海外で知名度が高い日本のバンドが増えてきたと思いますし、ele-kingで以前、アシッド・マザーズ・テンプルのインタヴューを掲載したらすごくアクセスがあってビックリして。平均して月に3000以上、アメリカからのアクセスがあるんですよね。日本の情報に飢えているアメリカ人がおそらく読んでいると思うんですけれども、そういった意味ではボリスはいまの状況の先陣を切っていったひとつだと思うんです。
以前お話したときには、海外の音楽シーンの中ではガッツリ機能しきれているのに、日本だと自分たちがいまひとつ機能しきれていないんじゃないかというようなこともおっしゃっていましたね。それもあって前回から〈エイベックス〉からリリースされていたりするわけですが、実際出してみて、前作の反応はどうだったんですか? たとえば倉本くんのようなドゥーム・メタル・ファンには複雑なものがあったと思うんですよ、正直な話。いろいろなリアクションがあったと思うんですが、そのあたりはいかがでしょう?
A:なんて言えばいいのかな。前回の『New Album』に関しては、「わかりやすすぎてわかりにくい」。担当も言っていましたけど、「わかりやすすぎて売りにくい」と。
(一同笑)
■だから、ある意味で『New Album』はボリス史上もっとも尖ったアルバムだったと思いますよ。
A:そうですね、シニカルな感じじゃないですか。べつに、すげぇ売れよう! と思ってあれを作ったわけでもないし。
(一同笑)
A:どうしても作品が批評的になってしまう。〈エイベックス〉から出すことでバカ売れするような期待も最初からなかったですし。まぁ、あれはあれで、メジャーからリリースするという部分もコンセプトの中に入れた、僕らなりの切り込み方だったんで。
N:それまでのファンからのリアクションはどうだったんですか?
■海外のファンのリアクションとかも気になりますね。
A:とりあえず、昔から聴いてきてくれているようなお客さんは、相当耳が肥えている方々なので、表層がどんなものであろうと「ボリスはやっぱりボリスだよね」って言ってくれる。『New Album』からついてくれたお客さんもいたりとかして、よけい混沌とした状況にはなっていますよ。
(一同笑)
■それはボリスが混沌とした状況を求めているというふうに捉えてよいのでしょうか?
A:はい。基本的に「いいものはいいじゃん」というスタンスでいたいので。それぞれの主観でね。
N:スタイルとかではないということですね。
■おっしゃっていただいたように、長年誰よりもワールドワイドに活動してきたボリスにしか見えない世界があるわけですが。日本と外の往来の中でボリスが再構築されつづけてゆく感覚と、その共有の繰り返しによって、つねに世界も更新されていくということでしょうか。
A:そうですね。もちろんアルバムだけの評価ではなくて、ツアーであったり、ライヴであったりがバンドとしての説得力であると基本的には思っています。
『New Album』まではバンドっていう概念をとにかくブッ壊すみたいなことをやってきた。徹底的にやったので、今回はちょっと肩の力を抜いて普通のバンドっぽく3人で……そういえば3人でインタヴュー受けるのは何年ぶりだろう。(Atsuo)
■成田忍氏との制作がエクストリームな形で表れた『New Album』から継続するような形で、前作『praparat』での共同作業、そして今作『NOISE』へと至ったわけですが、『New Album』と比較すると、今作『NOISE』は成田氏のエッセンスがボリス本来のサウンドに自然に落とし込まれている気がします。はじめに成田氏に仕事を依頼するに至ってから今作まで、共同制作を積み重ねていく中でお互いのヴィジョンの変化はありますか?
A:そうですね、『New Album』の時点では成田さんはそこまで僕らのことを理解していたわけでもないし、でもだからこそ良かったというか。
■その状況だからできたことって意味でしょうか?
A:そうですね、あの作品はね。成田さんはリリース後もほとんどのライヴを観に来ていただいていて。ボリスのツイン・ギターというかベースレスになる編成に着目してくれていたり。成田さんなりのボリス観みたいなものを更新していただいて。その間にジョー・ヴォルクの12インチとアソビ・セクスとのスプリット、デッド・エンドのトリビュート等も一緒に制作させていただいて、次々に新しい関係の仕方が見えてきました。で、『New Album』のときは〈Peace Music〉のエンジニアの中村さんがぜんぜん噛んでいなかった。その当時からバンドと成田さんと中村さんの三角形でやれたらいいんじゃないかなーと思っていたんですよね。『New Album』まではバンドっていう概念をとにかくブッ壊すみたいなことをやってきた。徹底的にやったので、今回はちょっと肩の力を抜いて普通のバンドっぽく3人で……そういえば3人でインタヴュー受けるのは何年ぶりだろう。
(一同笑)
A:まだ一言もしゃべってない人がいるけど(笑)。
W:こういった現場に馴れていないので……。
バンドの中での三角形と、バンドとプロデュース、エンジニアの三角形がバランスよく進行しましたね。(Atsuo)
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A:それで今回『NOISE』ではバンドに立ち返って演奏に集中して。表層的なテクスチャーとか肌触りみたいなポスト・プロダクション部分を成田さんに。サウンド・エンジニアの中村さんが音楽としての骨格の強さを構築してくれました。バンドの中での三角形と、バンドとプロデュース、エンジニアの三角形がバランスよく進行しましたね。
■ボリスは過去作品をかえりみても、外に仕事を振らずにすべて自分たちで完結していた時期もあると思うのですが、現在そこを外に振ってゆくということは、そこに新たな可能性を見い出しているということでしょうか?
A:そうですね。いや、できるんですけどもうボロボロになるんですよ。
■どういうことですか?
A:全作業を受け持つと……。曲とバンドの関係性が猛獣ショウみたいな、猛獣使いみたいな……。
(一同笑)
A:……猛獣っていうよりはキメラだよね?
T:なんか見たことがない想像上の生き物みたいな。
A:お互いがこう鞭でバシッ! ガブッ! って噛まれたり、いつも戦っている感じがあった。その暴れているイメージをどうにか焼き付けるのにかなりの労力、集中力を使う。それは自分たちで暴れさせているんですけどね(笑)。曲とつくり手がお互い暴走し合ってボロボロになってゆく。けっこう疲れるんですよね。
■なるほど(全然わかっていません)。ただ、先ほどのお話にあったみたいに、作っている段階では大文字BORISなのか小文字borisなのか、はたまたBorisなのかということは考えていないとおっしゃっていましたが、それでも小文字borisは大文字BORISやBorisに比べるとジャム色は強いように感じていました。しかし、要はすべて同じようにジャムから生まれて、それに対しての外の方々の作業の中で聴こえ方が変わってゆくということなんですかね。
A:ここ何年かはTakeshiがデモをつくって、それをバンド・アレンジしていくっていう手法も取り入れていますけど、基本はジャムですね。今回のリード曲、“Quicksilver”も、ジャムって「あ、できた」みたいな感じでした。ジャムだから、基本的に繰り返しとかサビみたいな構造的な作曲をしていない──日本の音楽の方法論的な部分でいうサビってところがなかったり、リフレインがホント少ないんですよ。どんどんどんどん展開していっちゃう。
■個人的な好奇心でお訊きして申し訳ないのですが、生活の中のどれぐらいの時間を制作に割いていますか? ボリスは3人での活動歴がとても長いと思うのですが、普段どのくらい3人で制作に臨んでいるのか、いち音楽家の僕としては単純に気になります。
A:平日は仕事しよう! というふうに決めていますよ。
■平日はガッツリですか?
A:うん。昼から。やることがなかったら「ちょっと録ろうか?」みたいな感じ。
T:リハーサルスタジオに入って、レコーダー回して。
A:一応、皆さまのおかげでこうして生活させていただけているので、ちゃんと仕事として捉えています。
■スッゴイっすねー……(溜息)。
A:このやり方がいいのか悪いのかはわからないですけどね。ツアー中に刺激を受けることが多いので、帰ってきたら直ぐ「スタジオ入ろうか?」ってなりますね。
自然の現象と音楽が生まれる現象って同じことじゃないですか。音楽って空気が振動している現象であるし、水が降っていることとか、火が燃えていることとか。そういう自然の現象に匹敵する情報量がないと、人の目とか耳って楽しめないんじゃないかな? (Atsuo)
■話が飛んでしまいますが、名作『flood』以降、現在まで僕にとってボリスは水のイメージがまとわりついています。それはリリックであったり、タイトルであったりさまざまな形ではあるのですが。しかし同時にボリスはデザート・ロックにはじまるようなカラッカラのドライヴ・チューンが根底にあるとも捉えられますし、そういった意味では相反するふたつの要素が混在しているようにも思います。そのあたりは意識的なのかなと。
A:いや……、僕が「雨男」ってくらいですよ。
(一同笑)
A:そういった自然の現象と音楽が生まれる現象って同じことじゃないですか。音楽って空気が振動している現象であるし、水が降っていることとか、火が燃えていることとか。そういう自然の現象に匹敵する情報量がないと、人の目とか耳って楽しめないんじゃないかな? なんかグリッドに沿ってやる音楽とか、均一なループとか、規則的なことは僕らにはできないし(笑)。
グダグダなズレとか、オーガニックな感じでしか演奏ができない。そういった意味では今回『NOISE』はかなりそっちの方に寄っていったかな……。
T:構築するってことより、自分の内面から自然にグワァーって流れ出てきてしまうような、そういう意味でのオーガニック感。
A:単純に一点でアタックを「ダン!」って合わせるアレンジにしても「ダワァン」とハミ出ちゃうみたいに合わない。合わないときの情報量っていうか、そういう表情が出ちゃうことが僕ららしさなのかなって、ここは「良さ」として再認識しています。
■僕はそのあたりをすごく深読みしていて、ボリスはメルヴィンズの同名曲に由来するように、アメリカの乾いた音楽の影響で生まれていながらも、たとえば日本の文化や民族性において、湿度──という表現を僕はしばしば用いますが──そういった部分を意識的に落とし込んでいるというふうに捉えるのは考え過ぎでしょうか?
A:影響受けてやっても同じにはならないですよね。体の大きさも違うし、楽器の鳴りも違うし。
■電圧とかも違うッスよね。
T:湿った空気を震わせているのか、乾いた空気を震わせているのか、とかもね。
A:あんな大きな体の人たちと、こんな細い華奢な女の人(Wata)が同じ条件でギターを弾いてもやっぱりぜんぜん違う音になる。そういったことを思う機会もたくさんあったけど、逆に日本人らしいグラデーションというか、階調の多さみたいなものも売りになると思っています。
日本ってマジックミラーで囲われていて、内側からは外が見えるけど外側からは内が見えない。(Atsuo)
ジャムの曲が形になって行く過程で、言葉を加えたりギターのフレーズを入れたりしていくとき、常にそれらの「日常性」は考えます。(Takeshi)
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■ボリスの楽曲や詩からは昭和歌謡を強く感じることがあります。実際に花太陽雨のカヴァーをやっていたりもしますし。僕が海外でボリスが好きな子に出会ったりすると、PYGのことを訊かれたりして。海外のファンはボリスの和製音楽のバッググラウンドにすごい興味を持っていると思うんですよ。
A:欧米のロック史に匹敵するくらい日本のロック史には濃いものがありますよね。でもぜんぜん外側には伝わってない。向こうの人もどうやって掘り下げていいかわからない。ジュリアン・コープが書いた『ジャップ・ロック・サンプラー』にしても主観的でまだホントに入り口みたいなものですよね。パッと見でも日本には本当に変なカルチャーがいっぱいある。音楽の歴史だけでも、たどっていったら「すごいものがあるんじゃないか?」って、みんな興味持っているんじゃないかな?
N:レコード・コレクターからすると(日本は)最後の秘境と言われていますからね。いまはインターネット社会でこれだけ情報がアーカイヴ化されているでしょ? でも日本の音楽の歴史だけは世界に知られていない。
A:日本ってマジックミラーで囲われていて、内側からは外が見えるけど外側からは内が見えない。ずっとそういう状況で日本人が中で好き勝手に空騒ぎしている。でもそういったカルチャーがネットの時代になって断片的にどんどん漏れ出している。外側からしたら興味が沸くでしょう。クオリティ高いですからね、日本文化は。僕らはそういう意味では(外から)正当に評価されていないと思う。彼らだって日本の音楽からの影響も強く受けているわけですから。
N:外は感覚的な部分でそれを感じているから好きなんだと思いますよ。
■僕も彼らはイメージだけですけどそれを感じているのだと思いますね。
N:それにサウンドの上でも癖みたいなものが向こうの人は聴くとわかるみたいですよ。ひとつ言われているのが、アメリカの植民地主義じゃないですが、日本は戦後にアメリカの文化をおもいっきり与えられた。コカコーラを飲んでアメリカ的な文化をどんどん取り入れようというふうになった。そしてギターから何から実際に取り入れている。けれども日本は植民地化されることへの反発心があって、それが音楽の中に表出している。向こうの人はそういう分析の仕方をしているんです。
A:力道山的な。
N:そうそうそう。
(一同笑)
N:それが大雑把になると三島由紀夫からきゃりーぱみゅぱみゅまでいっしょになってしまうのですけど。それぐらいおもしろがってはいるんですよ。
A:過去の歴史の構造によって、日本人の表現活動が全部シニカルに見えちゃうことってありますよね。
N:でもむしろシニカルに見えているというよりはやっぱりミステリーに見えているんじゃないですか。僕らがアモンデュールを見るような感じで向こうは見ている気がしますけどね。
A:僕らの場合は表層的なロック・フォーマットがアメリカン・オルタナティヴみたいなものだったんで、アメリカのシーンにはハマりやすかったのかなとは思いますね。
N:あとは時代的なものもあったんでしょうね。そういうものが求められているというか。
A:そういう雰囲気はありましたよ。ボアダムスがあって、ギターウルフがあって、メルトバナナがあって、次の日本人は誰? 他に誰か日本人のアーティストはいないの? みたいな空気を当時は感じましたね。
N:僕はそれっておもしろい状況だと思うんですよ。ジュリアン・コープがたとえでたらめだとしても、あれだけ書いたってことは大したもんなんですよ。本当に資料がないので。
ロックってもっと危険で馬鹿馬鹿しく、下劣なものなんです。だからこそ人々の日常に寄り添える部分があると思うんですよね。(Atsuo)
■話は変わるのですが、僕がボリスにのめり込むきっかけとなったのはゼロ年代後半のパワー・アンビエントとかヘヴィ・ドローンがキテた時期だったんですけど、当時たとえばサン O)))とボリスのコラボレーション『Altar』が暗示するように、スティーヴン・オマリーや、他にはアイシスのアーロン・ターナー等、インターナショナルなネットワークで世界観を共有していたと思うんです。また、当時、さまざまな背景でヴィジョンを交錯させていた仲間は現在ではそれぞれいい具合に異なるフィールドで活動しているように見えます。彼らのような長年のミュージシャンシップからの現在のボリスへのリアクションというのは気になりますか?
A:「それぞれの役割」があるな、とは思います。君がそっち行くなら僕こっち、みたいな。お話に出たアーロンやスティーヴンは昔からの友人で、3人ともアースの『2』を当時から、まわりの誰も評価していないのに絶賛していました。他にはジム・ジャームッシュの『デッド・マン』のサントラも僕らは注目していたりした。それぞれ別の場所にいても同じフィールを共有していた記憶はあります。それぞれのバンドが活動していく中でそれぞれの立ち位置みたいなものが生まれていって。サン O)))はああいった現代音楽というかコンテンポラリー・アート寄りな方向にいって。僕らは……ロックというか──
■ボリスはアート志向な表現に抵抗感を感じていると何かのインタヴューで読んだことがあるのですが。
A:抵抗感というのは彼らに対しての抵抗感ではなくて、自分たちが「アーティスト」と呼ばれることに対する抵抗感、高尚なものとして捉えられることへの抵抗感ですね。
■ただ、ボリスは過去作品を聴く上でも、現代音楽の方向性にいって何ら不思議ではないというか、むしろすごいものができ上がるだろうって確信もあったりします。そこでボリスがロックにこだわるのはなぜだろうとも思います。
A:やっぱりロックってもっと危険で馬鹿馬鹿しく、下劣なものなんです。だからこそ人々の日常に寄り添える部分があると思うんですよね。そういうロックの日常性みたいなものに魅力を感じますね。人々の生活とか社会システム、すなわち日常の中で人々の手元まで届くというところに可能性を感じます。日常が変わらないと何も変わっていかないと思う。人々の日常に寄り添える音楽でありたいとは思いますね。
T:ジャムの曲が形になって行く過程で、言葉を加えたりギターのフレーズを入れたりしていくとき、常にそれらの「日常性」は考えます。言葉にしても高尚な言い回しではなくて、普段使うような響きの言葉をできるだけ選ぶようにしている。ギター・フレーズも僕やWataが弾いたりするわけですからどうしても手癖になってしまう部分があるんですけど、意識的にキャッチーにしてみたり、明るい気持ちで弾いたり……。誰でも弾けるとか、誰でも口ずさめるとか、そういった日常性、距離感がグッと近くなるようには意識していますね。
■ボリスの打ち込みが聴いてみたいんですけど今後期待できますでしょうか?
A:音源としてはあり得る……いや、どうだろう?
■日本盤『Smile』(海外盤とはミックスが異なっていた)の冒頭は若干ダンス・ミュージックっぽかったですよね。
A:石原さん(石原洋『Smile』のサウンドプロデューサー)のリミックスでああなっていますね。あの頃はリズムマシンもよく使っていた。テンポが揺れるようなものを使っていたんですよ。もうオモチャ。微妙に早くなったり遅くなったり。やっぱりそういうもの、エラーが起こるようなものに魅力を感じる。打ち込みは打ち込みでそういう音楽の良さももちろんわかっているんですけど、このメンバーでライヴでやるとなると、僕らがべつにやらなくてもいいことかな、と思ってしまいますね。録音作品としては全然アリだと思うんですけどね。
■少し機材の話が出たところでお訊きしたいのですが、ボリスのテープエコーはスペースエコーなんですか?
A:はい。
■201ですか? (※Roland Space Echoの型番)
A:アンチ201です。
(一同笑)
A:リヴァーブはいらない。
■ボリスのギター・サウンドにテープエコーは最高の相性だと思います。
A:150がないとツアーに出ない、この人(Wata)。そこで重要なのが、リヴァーブ・ユニットが入っていない150なら、軽くて運びやすい。
■僕は機材が好きなのでそういった部分のこだわりも気になりますね。昔からボリスはオレンジのイメージが強かったりするのもありますし。テープエコーは壊れますよね。
W:壊れますよ。何回も。
A:いままで10台くらいは買っているよね。
W:何個か壊して、それぞれの部品を集めて修理したり。
N:音デカいですよね。
A:最近はわりと抑えめなんですよ。歌にピントを合わせたいので。でも今年の頭から昔の曲を演奏するセット、それこそ『Amplifer Worship』の曲を入れたり。当時以上にグッと音量を上げるパートもやっているんですが、会場の電源が落ちたりしちゃって。
(一同笑)
アンチ201です。リヴァーブはいらない。(一同笑) (Atsuo)
■ボリスは演奏環境へのこだわりは強いと思いますが、アメリカはどこもかなりローファイじゃないですか、そのあたりはどう対処しているんですか?
A:基本的にステージの上で音のバランスは作ってあるので、あとは外音がデカく出せるか出せないかだけなんです。会場のスペックがよければよりいいですけど。結局先も話したエンジニアのノエルはもう耳が遠くなっているので、自分に聴こえるようにグーッと上げてしまうんですね。だから大丈夫です。
(一同笑)
■これからNOISEワールド・ツアーがはじまるわけですが、どのようなアーティストとステージを共有するのでしょうか?
A:アトラス・モス、セレモニー、ナッシング、マリッジズ、サブローザ、マスタード・ガス & ロージズにマスター・ミュージシャンズ・オブ・ブッカケとかですね。サポートには昔からの友達もいるし、楽しみですね。今回はツアーに出るのが楽しみになるアルバムになった。今まではこんな感覚なかったですね。
■また今後の海外ツアーを経ることで今回の『NOISE』までのボリスの感覚がさらにアップデートされていくわけですね。
A:6月の国内のライヴはアルバムの全曲披露をやるんですが、そこから海外ツアー用にまたセットを変えて向かうつもりです。アメリカ・ツアー後、日本でも9月に東名阪で行ないます。日本に戻ってきた頃には『NOISE』の曲も成長したものが聴かせられるんじゃないかな。
■ボリスはパフォーマンスをおこなう上で日本と海外の環境の違いを実感していると思いますが、今後国内のライヴ環境の変化に対するヴィジョン等はあったりしますか?
A:だいぶ変わってきている気がします。去年から国内でもライヴをたくさんするようになって、やれば変わってくるものだな、と実感しています。お客さんもチケットの買い方とかを覚えたりしたんじゃないかな?
■え?
A:いや、日本のライヴでもどんどん外人のお客さんが増えているんですよ。
T:以前、浅草のホテルから新代田フィーバーに電話がかかってきて、「そちらに行くにはどうやって向かえばいいんですか?」って問い合わせが入ったことがあって、どうやら宿泊中の外人さんが観に来たいってことだったんですけど。
(一同笑)
■それもすごい話ですね。
A:浅草観光協会に話を通した方がいいのかもしれないね(笑)。
T:主要ライヴハウスへの経路とチケットの買い方だけでも。