「KING」と一致するもの

Chihei Hatakeyama - ele-king

 00年代後半以降の日本のアンビエントを代表するアーティストのひとり、畠山地平が新作を発表する。題して『Hachirogata Lake』、秋田の八郎潟がテーマだ。リリース元の〈Field〉はオランダのレーベルで、水をめぐる人類の歴史を扱うシリーズを展開しており、以前は SUGAI KEN の『Tone River(利根川)』を出してもいる。今回畠山はどのようなアプローチを試みているのか──じっさいに八郎潟周辺でフィールド・レコーディングをおこなったそうで、楽しみです。

日本を代表するサウンドアーティストChihei Hatakeyama(畠山地平)が秋田の「八郎潟」を題材にしたニューアルバムをオランダのField Recordsよりリリース。

[商品情報]
発売日 : 2023年9月1日
アーティスト: Chihei Hatakeyama
タイトル : Hachirogata Lake(八郎潟)
フォーマット : LP / デジタル配信
品番 : FIELD33
レーベル : Field Records(オランダ)
https://fieldrec.bandcamp.com/

[トラックリスト](全9曲)
1. 池のほとり / By The Pond
2. 水に鳥 / Water And Birds
3. 湖畔 / Lakeside
4. 遠景 / Distant View
5. 桟橋 / Pier 02:30
6. 夕暮れ / Twilight 05:48
7. 川の魚 / Fish Flying In The River
8. 風と水 / Lake Swaying In The Wind
9. 夜の虫 / Insects Chirping At Night
https://chiheihatakeyama.bandcamp.com/album/hachir-gata-lake

[アルバム紹介]
オランダの電子音楽レーベルField Recordsによる、日本とオランダが共同で行った水管理の歴史を探求するシリーズより、SUGAI KENの『Tone River(利根川)』(2020)に続き、畠山地平が秋田県の八郎潟を題材にしたアルバム『Hachirogata Lake(八郎潟)』をリリースする。

かつては日本で2番目に大きな湖であった八郎潟は、第二次世界大戦後、オランダ人技師Pieter JansenとAdriaan Volkerの協力を得て、政府が大規模な干拓工事を行い、1977年の工事完了後、干拓地が八郎潟の面積の80%を占めるようになった。その結果、周辺地域から植物が繁殖し、鳥類をはじめとする野生生物の種類も増え、新たな生態系が確立された。

畠山は、このユニークな題材にアプローチするため、八郎潟周辺の排水路、大潟橋、草原保護区などでフィールドレコーディングを行った。サンプリングした素材の繊細さから、ドローンのような響きの合成音や物憂げなギターの壮大な広がりに至るまで、八郎潟周辺の環境を反映すると同時に、リスナーの心の目に様々な想像の情景を映し出すサウンドスケープを作り出している。

Kranky、Room40、White Paddy Mountainなどのレーベルから数々のソロ作品をリリースしてきた畠山の熟練したサウンドに水という題材が自然と溶け込んでいる。

協力 : 駐日オランダ王国大使館

[Chihei Hatakeyama プロフィール]
1978年生まれ、神奈川県出身、東京在住の電子音楽家。2006 年にKranky より1st ソロ・アルバム『Minima Moralia』を発表。以降、デジタル&アナログ機材を駆使したサウンドで構築するアンビエント・ドローン作品を世界中のレーベルからリリース。そのサウンドはリスナー個々人の記憶を呼び覚まし、それぞれの内的なストーリーを喚起させる。2013年より音楽レーベル『White Paddy Mountain』を主宰。2023 年には音楽を担当した映画『ライフ・イズ・クライミング!』が公開。近年は海外ツアーにも力を入れており、2022 年には全米15箇所に及ぶUS Tourを敢行した。また、マスタリングエンジニアとしても活躍中。

goat - ele-king

 ここ数日は台風のニュースにやきもきされている方も多いでしょう。このタイミングで、まさに2023年の台風の目となりそうな情報が入ってきました。
 紙エレ最新号にもインタヴューを掲載している大阪の日野浩志郎、日本が誇るこの至高の実験主義者を中心に結成されたリズム・アンサンブル、goatがサード・アルバム『Joy In Fear』をリリースします。前作『Rhythm & Sound』が2015年なので、なんと8年ぶりです。レーベルは、KAKUHAN の素晴らしいアルバムも出していた日野主宰の〈NAKID〉。アートワークは前回に引きつづき五木田智央が、デザインは真壁昂士が、録音は西川文章、マスタリングはラシャド・ベッカーが担当しています。全国ツアーに先がけまずはCDが発売、追ってLPも発売されるとのこと。
 あわせて、先日発表された初のツアーの詳細も告知されていますが……これがまたとんでもない面子が集結しています。絶対に見逃せない案件です。詳しくは下記をご覧ください。

大阪を拠点とする音楽家 日野浩志郎を中心に結成されたリズムアンサンブル「goat」が約8年ぶり、通算3枚目となるアルバム「Joy In Fear」の情報を発表した。日野が運営するレーベル「 NAKID」からのリリースとなり、アートワークは前回に続き五木田智央、録音は西川文章、マスタリングはRashad Beckerが担当した。
全国ツアーにて先行でCDが発売、LPも追って発売される。

【NKD09】goat - Joy in Fear artwork by Tomoo Gokita

goat - Joy In Fear
1. Hereafter
2. III I IIII III
3. Cold Heat
4. Warped
5. Modal Flower 6. Spray
7. GMF

Koshiro Hino - Guitar
Atsumi Tagami - Bass
Akihiko Ando - Saxophone
Takafumi Okada - Drums
Rai Tateishi - Percussion, Bamboo flute, Irish flute

NKD09
Composed by Koshiro Hino
Recorded, mixed by Bunsho Nishikawa *Recorded by Koshiro Hino (1st/7th track) Mastered by Rashad Becker
Recorded at ICECREAM MUSIC
Artwork by Tomoo Gokita
Designed by Takashi Makabe
Art direction by Yusuke Nakano
Published by Edition Golfen & Reiten / Freibank

結成10周年を記念とした初の国内ツアーを行うことは先日公開されたが、
goatが自ら主宰する 東京・京都公演の詳細がついに全貌が明らかになった。
東京公演は渋谷WWW X、京都公演は 会場であるロームシアター京都との共催で2日間に渡って開催される。

京都公演のDAY1(8/31)には東京都近代美術館での「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」にて行われたコラボレーションをきっかけとし、
現在までに継続して作品制作/ライブを行ってきた空間現代 ×吉増剛造、もはや説明不要なジム・オルーク 、石橋英子、
山本達久という三者によるカフカ鼾、 去年リリースされたデビューアルバムが海外を中心に絶賛された日野浩志郎と
チェリスト中川裕貴によるデュオKAKUHANが決定。

DAY2(9/1)には主催のgoat他、ミニマルダンスミュージック~クラウトロック~サイケデリックロックが混在した新作EP「家の外」で
独自の存在感をさらに強くした進化し続ける国内屈指のバンド OGRE YOU ASSHOLE、そして大名盤「幸福のすみか」の発売から25年、
BOREDOMSや想い出波止場などの山本精一と、アート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり電子音楽ソロ等でも
世界的に賞賛を浴びるPhewによる伝説的なデュオが再び実現した。

東京公演(8/27)では先日ruralでのライブセットも大きな反響を呼んだPhewがソロで出演、加えて唯一無二のスタイルで
00年代のMCバトルシーンから台頭したラッパー鎮座DOPENESSの出演が決定。

因みに国内ツアーではニューアルバムに加え、真壁昂士デザインによるgoatの新Tシャツが販売される。

不屈のペーター・ブロッツマン - ele-king

 何年もの間、ペーター・ブロッツマンの来日は、四季の巡りのように規則的で、晩秋の台風が通り過ぎていくかのように感じられたものだった。彼には、どこか自然で率直なところがあり、それは嵐のように吹き荒れる叫びが、やがては柔和でブルージーな愛撫へと代わるような彼が創りだすサウンドのみならず、その存在自体についていえることだった。セイウチのような口髭、シガーをたしなむその印象的な風貌は人目を引き、無意味なことを許さない生真面目なオーラを纏っていた。ブロッツマンは、侮辱などは一切甘受しなかった。

 6月22日に82歳で死去したドイツのサクソフォン及び木管楽器奏者は、そのキャリアの多くの時間を、無関心とあからさまに辛辣な批評との闘いに費やした。若い頃には、ヨーロッパのジャズ界の伝統的なハーモニーと形式の概念を攻撃して憤慨させ、同時代のアメリカのアルバート・アイラ―やファラオ・サンダーズたちよりも先の未知の世界へと自らの音楽を押し進めた。ドン・チェリーが命名した「マシン・ガン」というニックネームは、1968年に発表したブロッツマンの2枚目のアルバムのタイトルとなり、フリー・ジャズの発展を象徴する記念碑的な作品となった。

 最初は自身の〈BRÖ〉レーベルから300枚限定で発売されたこのアルバムは、ヴェトナム戦争やヨーロッパを揺さぶった大規模な抗議活動など、当時の爆発的な雰囲気の世相を反映していた。アルバムではベルギーのピアニスト、フレッド・ヴァン・ホーフ、オランダのドラマー、ハン・ベニンクやイギリスのサクソフォン奏者エヴァン・パーカーを含む、世界のミュージシャンたちがキャスティングされていたが、『マシン・ガン』は明確にドイツという国の、ナチスについての恥とトラウマという過去を標的にしていたようだ。

 「おそらく、それが、このような音楽のドイツとそのほかのヨーロッパの演奏の響きに違いをもたらしているのかもしれない」とブロッツマンは、亡くなる数週間前の6月初旬にディー・ツァイト紙のインタヴューで語っている。「ドイツの方が常に叫びに近くて、より残忍で攻撃的だ」

 その叫びは、今後何十年にもわたり響き続けるだろう。その一方、彼のフリー・ジャズの同僚たちは、若くして死んだか、年齢とともに円くなっていったのに対し、ブロッツマンは以前と変わらぬ白熱した強度での演奏を続けた。それが彼の健康に相当な負担となり、最後の数十年には、生涯にわたって強く吹き続けたことで、呼吸器に問題を抱えるようになった。2012年のザ・ワイヤー誌のインタヴューでは「4人のテナー・サックス奏者のように響かせたかった……。『マシン・ガン』で目指したことを、いまだに追いかけている」と語っていた。

 そのサウンドは、直感的な反応を引き起こすようなものだった。2010年10月に、ロンドンのOtoカフェで彼のグループ、フル・ブラストを聴きに、彼についての予備知識のない友人を連れていった際、演奏開始の瞬間に彼女が物理的に後ずさりをした光景を思いだす。

 しかし、ブロッツマンの喧嘩っ早い大男という風評は、彼の物語のほんの一部に過ぎない。独学で音楽を始め、最初はディキシーランドやスウィングを演奏し、コールマン・ホーキンスやシドニー・ベシェなどのサクソフォンのパイオニアたちへの敬愛を抱き続けた。それらの影響は、『マシン・ガン』でも聴くことができる。ジャン=バティスト・イリノイ・ジャケーのホンキーなテナーや、初期のルイ・アームストロングの熱いジャズなどもそうだ。その凶暴性とともに、ブロッツマンは抒情的でもあり、スウィングもしていたのだった。

 このことは、背景をそぎ落とした場面での方が敏感に察することができるだろう。有名な例としては、1997年にドイツの黒い森にてベニンクと野外で録音した『Schwarzwaldfahrt』があるが、これは彼の生涯のディスコグラフィの中でももっとも探究的で遊び心のあるアルバムのひとつだ。ブロッツマンのキャリアの後期にペダル・スティール・ギタリストのヘザー・リーと結成した意外性のあるデュオも、多くの美しい瞬間を生み出した。彼の訃報に接し、私が最初に手を伸ばしたのは、このデュオにふさわしいタイトルをもつ2016年のアルバム『Ears Are Filled With Wonder(耳は驚きで満たされる)』 で、彼のもっともロマンティックなところが記録されている。

 ブロッツマンは、文脈を変えながら、自身の銃(マシン・ガン)に忠実でいるという特技を持ち合わせていた。そのキャリアを通して、1970年代のヴァン・ホーフとベニンクとのトリオから2000年代のシカゴ・テンテットなど、多数のグループを率いたが、目標を達成したと感じるとすぐにそこから手を引いてしまうのが常だった。2011年にオーストリアのヴェルスでのアンリミテッド・フェスティヴァルのキュレーションを担当した際には、当時の彼の活動の範囲の広さが瞬時にわかるような展開だった。彼はシカゴ・テンテット、ヘアリー・ボーンズとフル・ブラストとともに登場するだけでなく、日本のピアニストの佐藤允彦からモロッコのグナワの巨匠、マーレム・モフタール・ガニアまで、ヴァラエティに富んだミュージシャンたちとのグループで演奏した。(このフェスのハイライトは、5枚組のコンピレーション『Long Story Short』 に収録されており、最初から最後まで聴覚が活性化されるような体験ができるだろう)。

 ブロッツマンの日本のアーティストたちとのもっとも実りの多い関係が、彼自身と匹敵するぐらい強力なパーソナリティを持つ人たちとのものであったのは、至極当然である。私が思い浮かべるのは、灰野敬二近藤等則、羽野昌二そして坂田明だ。彼はまた、若い世代のマッツ・グスタフソンやパール・ニルセン=ラヴなど、彼のことを先駆者としてお手本としたミュージシャンたちをスパーリング・パートナーに見出した。セッティングがどうであれ、中途半端は許されなかった。

 「ステージに立つというのは、友好的な仕事ではない」と2018年のレッド・ブル・ミュージック・アカデミー・レクチャーで、ブロッツマンは語った。「ステージ上は、たとえ親友と一緒だとしても、闘いの場なのだ。戦って、緊張感を保ち、挑戦し、新しい状況が必要で、それに反応しなくてはならない。それが、音楽を生きたものにするのだと思う」

The indomitable Peter Brötzmannwritten by James Hadfield

For years, Peter Brötzmann’s visits to Japan felt as regular as the seasons, like a late-autumn typhoon rolling through. There was something elemental and earthy about him. It wasn’t just the sound he made – a tempestuous roar that could give way to tender, bluesy caresses – but also his presence. He cut an imposing figure, with his walrus moustache and penchant for cigars, his no-nonsense aura. Brötzmann didn’t take any shit.

The German saxophonist and woodwind player, who died on June 22 at the age of 82, spent much of his career battling against indifference and outright vitriol. As a young man, he scandalised the European jazz establishment with his assaults on traditional notions of harmony and form, pushing even further into the unknown than US contemporaries like Albert Ayler or Pharaoh Sanders. Don Cherry gave him the nickname “machine gun,” which would provide the title for Brötzmann’s 1968 sophomore album, a landmark in the development of free jazz.

Initially released in an edition of just 300 copies on his own BRÖ label, it was an album that captured the explosive atmosphere of the times: the Vietnam War, the mass protests convulsing Europe. Although it featured an international cast of musicians – including Belgian pianist Fred Van Hove, Dutch drummer Han Bennink and British saxophonist Evan Parker – “Machine Gun” also seemed to be taking aim at a specifically German target: the shame and trauma of the country’s Nazi past.

“That’s maybe why the German way of playing this kind of music always sounds a bit different than the music from other parts of Europe,” Brötzmann told Die Zeit, in an interview conducted in early June, just weeks before his death. “It’s always more a kind of scream. More brutal, more aggressive.”

That scream would continue to resound through the decades to come. Whereas many of his free-jazz peers either died young or mellowed with age, Brötzmann kept playing with the same incandescent force. This came at considerable cost to his health: during his final decades, he suffered from respiratory problems that he attributed to a lifetime of overblowing. As he told The Wire in a 2012 interview, “I wanted to sound like four tenor saxophonists... That’s what I was attempting with ‘Machine Gun’ and that’s what I’m still chasing.”

It was a sound that provoked visceral responses. I remember taking an unsuspecting friend to see Brötzmann perform with his group Full Blast at London’s Cafe Oto in 2010, and watching her physically recoil as he started playing.

However, Brötzmann’s reputation as a bruiser was only ever part of the story. A self-taught musician, he had started out playing Dixieland and swing, and he retained a deep love for earlier saxophone pioneers like Coleman Hawkins and Sidney Bechet. These influences are audible even on “Machine Gun”: you can hear the honking tenor of Jean-Baptiste Illinois Jacquet, the hot jazz of early Louis Armstrong. For all his ferocity, Brötzmann was lyrical and swinging too.

This was perhaps easier to appreciate in more stripped-back settings. A notable example is 1977’s “Schwarzwaldfahrt,” recorded al fresco with Bennink in Germany’s Black Forest, and one of the most inquisitive and playful albums in his entire discography. Brötzmann’s late-career duo with pedal steel guitarist Heather Leigh – an unlikely combination – also gave rise to many moments of beauty. When I heard about his passing, the first album I reached for was the duo’s aptly titled 2016 album “Ears Are Filled With Wonder,” which captures him at his most romantic.

Brötzmann had a talent for sticking to his (machine) guns while changing the context. He led many groups during his career, from his 1970s trio with Van Hove and Bennink to his Chicago Tentet during the 2000s, but would typically pull the plug on each of them as soon as he felt they had fulfilled their purpose. When he curated the 2011 edition of the Unlimited festival in Wels, Austria, it provided a snapshot of the extent of his activities at the time. He appeared with the Chicago Tentet, Hairy Bones and Full Blast, but also in a variety of other groupings, with musicians ranging from Japanese pianist Masahiko Satoh to Morocccan gnawa master Maâlem Mokhtar Gania. (Highlights of the festival are compiled on the 5-disc “Long Story Short” compilation, an invigorating listen from start to finish.)

It makes sense that some of Brötzmann’s most fruitful relationships with Japanese artists were with personalities as forceful as his own – I’m thinking of Keiji Haino, Toshinori Kondo, Shoji Hano, Akira Sakata. He also found sparring partners among a younger generation of musicians, such as Mats Gustafsson and Paal Nilssen-Love, who owed much to his trailblazing example. Whatever the setting, there was no excuse for half measures.

“Being on stage is not a friendly business,” he said during a Red Bull Music Academy lecture in 2018. “Being on stage is a fight, even if you stay there with the best friend. But you have to fight... You need tension, you need challenges, you need a new situation, you have to react. And that makes the music alive, I think.”

『ファルコン・レイク』 - ele-king

(編集部註)本記事は結末(ラスト)に言及しています。

 ジャレット コベック著『くたばれインターネット』はダグラス・クープランドの疎外感をミシェル・ウェルベックが踏みにじりながらビアスの『悪魔の辞典』をあちこちに差しはさんだような小説で、ネット社会をボロクソにこき下ろしている割に登場人物が何を着ているのかいっさい描写がないという意味で同じギークの世界観をさまよう不合理な衝動の産物であった。何をどうすることもできないけれど、インターネットがある限り世の中の雰囲気はけして良くならないということだけはわかるというか、この世界をネット社会にしてくれと頼んだわけではないのにネット社会になってしまった不幸を噛みしめたい時には最適のロードマップではないかと。シャルロット・ル・ボンの初監督作『ファルコン・レイク』はバスティアンの家族がフランスからカナダの避暑地に移動してくるところから始まり、一足先に来ていたクロエが彼女の母親から「スマホ禁止!」と言われると、そこからはインターネットが存在しない世界になっていく。バスティアンもクロエも70年代のティーンエイジャーのように夏休みを過ごし、とても充実した日々を過ごす。最初はまだ不満げだったクロエがバスティアンに「スマホは?」と訊くと、「14歳になったら」と答え、16歳のクロエもそこからはスマホを知らないバスティアンと同じ目線で遊ぶようになる。彼らは湖で遊び、親の目を盗んでワインを飲み、バスティアンが悪酔いして吐くと、クロエはゲロまみれのバスティアンをシャワーで洗ってあげる。至近距離でクロエと接したバスティアンはクロエを異性として意識するようになり、クロエに向ける視線が微妙に変わっていく過程がとても繊細に描かれている。バスティアンとクロエは性の知識を互いに小出しにするようになり、性と自意識が結びつくことで一人前の人格が形成されていく様子も滑らかに伝わってくる。クロエがおっぱいを見せてくれそうな場面でシダ・シャハビの音楽がシガー・ロスみたいになるのはなんか納得だった。性の主体になることが人の成長においてどれだけ大きな意味を持つことか。このことをスマホを手にする前にバスティアンは経験する。

 バスティアンから見えるハイティーン=性の主体が加速度をつけて錯綜する様子も巧みに織り込まれていく。とくに避暑地の10代が集まって騒ぐDJパーティのシーンは秀逸で、ミクスチャー・ロックで踊り狂うお兄さん、お姉さんがバスティアンの目には野獣のごとく見え、60年代のヒッピー・パーティを描いた『ダーリング』(65)や『セコンド』(66)の異様さを思い出させるに充分な迫力があった。中から見るのと外から見るのでは大違いというか、まさかダンス・パーティというものをこんなにも暴力的に見せてしまうとは。少し下の世代にはレイヴ・カルチャーもこんな風に見えていたのだろうか。野獣のようなハイティーンはそして、日常的に恋人を取っ替え引っ替えしているような印象操作が続き、人格形成に不安を覚えたバスティアンはクロエを置いてその場から1人で脱出する。帰りの路上で彼は子鹿の死体を目にする。このカットがあまりに長い。セックス・ピストルズ『ザ・グレイト・ロックン・ロール・スウィンドル』の裏ジャケットと同じ構図で死んでいる子鹿のカットはさすがに長すぎると思ったけれど、最後まで観終わった時にその意味はようやくわかる。そして、これと同じ意味を伝えるシーンが何度も繰り返されていたことも最後になって気がつく仕掛けになっている。(以下、ネタバレ)似たようなトリックはフランソワ・オゾン『スイミング・プール』(03)でも使われていて、ということは『ファルコン・レイク』も『シックス・センス』(99)を起点とするニューエイジの余波のなかにあり、肉体を超越する志向を持っているということになるけれど、困難と成長が結びつかず、弁証法的なロマンに解消されないという意味で近代はすでに過去形なのだということが印象づけられる。

 バスティアンが取り返しのつかない嘘をついたことで物語の終盤は急速に焦燥感を帯び始める。マンガだとページをめくる手が止まらなくなる部分である。バスティアンがハイティーンの振る舞いに脅かされたことで主体性を失いかけ、これを挽回するために嘘をついたことは明白で、嘘をつくことは大人になるための近道であり、思春期にはよくある振る舞いでもある。しかし、バスティアンの嘘は一通のメール(というネット社会の産物)によって暴露され、彼はクロエの信用を失ってしまう。1回の失敗ですべてを失うというのは極めてネット的で、それによって導かれるバスティアンの死はりゅうちぇるやコーネリアスの追い詰められ方を想起させる。登場人物たちはインターネットを使わないとしても彼らを取り巻く世界はもはやネット的なのである。失敗を乗り越えて次に進むという成長の図式は初めからなく、一度失敗をしたらずっとその場で足踏みをしていなければならない。弁証法どころか話し合いも成立しないのがネット社会であり、コミュニケーションが成立しているようで、自分に向けられた言葉でもすべてが他人同士の会話でしかなく、「みんなって誰?」を繰り返すしかない。それこそ主体性がどこにあるのかわからないニューエイジそのままで、バスティアンが泣いて謝ってクロエが一発ぶん殴ってぐちゃぐちゃになれば70年代の青春映画のようになったのかもしれないけれど、そのような感受性がネットに取り巻かれていることで導線を失い、誰の意志なのかわからないままに人が死んでいく。エンディングではバスティアンが死んでも誰も泣いていない。呆然としているだけ。死んだ当のバスティアンも同じくで、自分の姿が誰にも見えていないことを悟り、諦めたような表情にしかならない。その瞬間にこの作品は最初から時間軸が歪んでいたことが判明する。クロエはオープニングから何度も死体のマネをしていたこと。死の記憶が予感として何度も先取りされていたこと。バスティアン自身が幽霊のコスプレをしていたこと。またイメージは時間軸を移動できても、スマホを手にする前に死んだバスティアンには言葉を現在に伝えるすべがない。死んだ人の言葉が届かなくなるのは当たり前だけれど、この作品では過去も未来も同時にふさがれてしまうのがネット社会だという印象にすり替えられる。ネット世代の橋元優歩が編集部にいた頃、「歴史なんて必要ですか?」と言っていたことを思い出す。

 フランスの有名な討論場組でご機嫌なお天気お姉さんを務めていたル・ボンが役者になることは約束された道だったのかもしれないけれど、まさか映画監督になるとは思いもしなかった。しかも、初監督とは思えない出来である。上映が終わると、背後から呼びかけられ、振り返ると木津くんだったので、どちらからともなくフランスは女性の映画監督が増えたよねという話になった。レベッカ・ズロトヴスキ、ミア・ハンセン=ラヴ、レア・フェネール、ヴァレリー・ドンゼッリ、メラニー・ローラン、レア・ミシウス、ソフィー・ルトゥルヌール……と実力派が並び、なかではセリーヌ・シアマが頭ひとつ抜けている(音楽はほぼ全作、TTCのパラ・ワン)。2000年代にはオゾン、オディアール、ノエ、ゴンドリー、ケシシュと男ばっかりだったのに、こんなにも変わってしまうとはさすがに驚く。そしてこの列にル・ボンも加わったと。見終わってからなぜか岩館真理子『アリスにお願い』が読み返したくなり、家に帰ってすぐに読んでみると、ストーリーや設定は似ても似つかないのに「嘘」をついたことと「人の命」がつながっているというテーマが両作には共通していた。

KODAMA AND THE DUB STATION BAND - ele-king

 待ってました御大、ハート・オブ・ダブ、ダブ・リジェンド・イン・国立、ミスター・サイレント・プレイヤー、ダブとトランペットとビールの芸術家、ペシミズムとロマンティシズムの複雑なかたまり、珠玉のメンバーが集う最高のレゲエ・バンドのひとつ、ザ・ダブ・ステーション・バンドをバックにトランペットを吹いて歌も歌う……
 KODAMA AND THE DUB STATION BANDのカヴァー・アルバムが出るとは、2023年の望外の僥倖なり。しかもライヴまで観られるのだからもう思い残すことはない。『COVER曲集 ♪ともしび♪』は10月4日発売。ライヴは9月27日と9月29日@立川A.A.カンパニー。さらに10月25日には、この春Kazufumi Kodama & Undefinedとしてすばらしいサイレント・ダブを響かせたWWWにも帰ってくる。かならず空けておきましょう。

元ミュート・ビートのこだま和文率いるKODAMA AND THE DUB STATION BAND。
そのライヴの定番となっているカヴァー曲の数々をスタジオ録音した待望のアルバム、10/4リリース!リリース記念ライヴも決定!

元ミュート・ビートのこだま和文(Tp/Vo)を中心に、HAKASE-SUN(Key/リトル・テンポ、OKI DUB AINU BAND等)、森俊也(Dr/ドリームレッツ、Matt Sounds等)、コウチ(B/やっほー!バンド、Reggaelation IndependAnce等)、AKIHIRO(G/ドリームレッツ、川上つよしと彼のムードメイカーズ、Matt Sounds等)という日本のレゲエ界を代表する面々が集い、そこに、在籍するバンド、ASOUNDでも注目を集めるARIWA(Tb/Vo)が加わったKODAMA AND THE DUB STATION BAND。

2019年にリリースした初のオリジナル・フル・アルバム『かすかな きぼう』がきわめて高い評価を受けた彼らが、ライヴでたびたび披露してきた、ファンの間ではもはやおなじみとなっているカヴァー曲の数々をスタジオ録音。
ついにリリースするカヴァー・アルバム。

反戦歌として有名な「花はどこへ行った」、「Fly Me To The Moon」「Moon River」といったスタンダード、こだまが作詞したチエコ・ビューティ・ヴァージョンでARIWAが歌う「End Of The World」、
こだまとARIWAの二人で歌う「You’ve Got A Friend」から、「Is This Love」「Africa」といったレゲエ・クラシックス、2021年にリリースし、話題となった「もうがまんできない」につづいてのカヴァーとなる、
盟友JAGATARAの「タンゴ」、ミュート・ビートの「EVERYDAY」、さらには「ゲゲゲの鬼太郎」の衝撃のダブ・ヴァージョン、こだまとARIWAの二人で歌うルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」まで、
ヴァラエティに富んだ選曲は、すべてこだま和文によるもの。

唯一無二のメランコリックな響きを湛えたこだまのトランペットを軸に、よりいっそう豊潤となった精鋭メンバーによるバンド・アンサンブルをもって、取り上げた楽曲に新たな息吹を吹き込んでいる。
「もうがまんできない」で第二期ダブステとしてははじめて正式に作品となったこだまの歌声も味わい深く、清々しく凛としたARIWAのヴォーカルも心地好い。
オリジナルとはまったく違う魅力を放つ楽曲の数々を存分に楽しんでほしい。

10月25日(水)に渋谷WWWにて、9月27日(水)と29日(金)に立川A.A.カンパニーにてリリース記念ライヴの開催も決定している。

《リリース情報》
アーティスト:KODAMA AND THE DUB STATION BAND
タイトル:COVER曲集 ♪ともしび♪
レーベル:KURASHI/P-VINE
商品番号:KURASHI-007
フォーマット:CD
価格:定価:¥3,300(税抜¥3,000)
発売日:2023年10月4日(水)

収録曲(オリジナル・アーティスト)
01. 花はどこへ行った(ピート・シーガー)
02. Is This Love(ボブ・マーリー)
03. Fly Me To The Moon(スタンダード)
04. Moon River(オードリー・ヘプバーン)
05. End Of The World(スキーター・デイヴィス)
06. EVERYDAY(ミュート・ビート)
07. Africa(リコ・ロドリゲス)
08. You've Got A Friend(キャロル・キング)
09. ゲゲゲの鬼太郎 (DUB)
10. タンゴ(JAGATARA)
11. What A Wonderful World(ルイ・アームストロング)
12. What A Wonderful World (Trombone Version)(ルイ・アームストロング)

《ライヴ情報》
KODAMA AND THE DUB STATION BAND
LIVE ♪September♪ 飛石2DAYS
公演日:9月27日(水)、9月29日(金)
会場:立川A.A.カンパニー
出演:KODAMA AND THE DUB STATION BAND
時間:開場19時 開演20時
料金:6,500円+1D
予約(8月10日20時より):
立川A.A.カンパニーホームページ
https://www.livehouse-tachikawa-aacompany.com/
『KODAMA AND THE DUB STATION BAND』予約専用コンタクトホームよりお一人様ずつお申込みください。
返信メールが届いた時点でご予約完了となります(返信は2、3日以内に連絡いたします。1週間が過ぎても返信がない場合は、お手数ですが菅原[09054193255]までご連絡ください。)
※両日とも10月4日発売のcover album♪ともしび♪の先行販売を予定しております。

公演日:2023年10月25日(水)
会場:渋谷 WWW
※詳細は後日発表

http://dubstation.tokyo

Haruna Yusa - ele-king

 先月、1年ぶりの新曲 “夏の雫” を発表したヴォーカリスト/鍵盤奏者の遊佐春菜。昨日新たな楽曲 “夜明けの夢” の配信が開始されている。

https://big-up.style/nk1y6kHfEA

 また、上記2曲を収める新作EPのリリースもアナウンスされている。オリジナル・ヴァージョンに加え、Eccy による “夏の雫” リミックス、Sugiurumn が遊佐をフィーチャした楽曲などを収録。島崎森哉主宰〈造園計画〉からの作品で注目を集めつつある新世代エレクトロニック・ミュージシャン、大山田大山脈による “夜明けの夢” のリミックスも気になるところです。カセット作品とのことなので、なくなってしまうまえにチェックしておこう。

遊佐春菜1年ぶりの新作をリリース! 
遊佐春菜をフィーチャーしたSugiurumn初の日本語シングル収録

10月13日発売
遊佐春菜 / 夏の雫 ep
KKV-156CA
カセット+DLコード
2,200円税込
2,000円税抜
「Cassette Store Day x Cassette Week 2023」参加作品

収録曲
Side A : 夏の雫、夜明けの夢、All About Z (Sugiurumn feat 遊佐春菜)
Side B : 夏の雫(Eccy Remix)、夜明けの夢(大山田大山脈Remix)、All About Z(YODA TARO Remix)

2022年、ソロとして2作目となるHave a Nice Day!のカバー・アルバム『Another Story Of Dystopia Romance』が大きな話題となった遊佐春菜。自身のバンドである壊れかけのテープレコーダーズをはじめHave a Nice Day!など多くのアーティストのサポート活動をしながら1年ぶりの新曲をリリース。
今回はレーベルメイトであるStrip Jointの名曲「Liquid」を日本語詞にして再構成、彼女のマジカルな声が夏の一瞬を切り取っている。

また日本のクラブ・シーンをリードしてきたハウスDJ Sugiurumn初の日本語シングルで遊佐春菜がシンガーとして抜擢、その楽曲「All About Z」とリミックス「All About Z(YODA TARO Remix)」も収録。
「All About Z」は劇作家、演出家である川村毅作、演出の同名舞台のテーマ曲を再構築した話題曲!
カップリングの「夜明けの夢」ではアンダーグラウンド・シーンで静かに話題となっている大山田大山脈によるリミックスを収録。

Jessy Lanza - ele-king

 家から一歩でも外に出ると、ふらふらと倒れそうになる。熱線そのものである日差しがあまりにも暑く、熱く、痛い。
 2023年、日本の7月は、観測史上最高の暑さになったという。昨日、東京のある巨大ターミナル駅に仕事で行ったとき、エスカレーター付近でスーツ姿の初老の男性が気を失って倒れており、警察官などがその人を囲っていた。「気候変動の被害者だ……」と思ってしまった。
 とはいえ、「酷暑」という言葉以上にふさわしい表現が見当たらない今夏においても、この夏の暑さを音楽とともに楽しもうじゃないか、と誘ってくるレコードがある。享楽的なダンス・トラックも、涼やかで内向きなチルアウトも収められているジェシー・ランザの4作め、3年ぶりのニュー・アルバム『Love Hallucination』だ。特に今回は、あまりにもオプティミスティックな椰子の木のカヴァー・アートが物語るとおりの楽しいレコードである。ジェシーが移り住んだLAは、東京よりは過ごしやすいのだろうか。

 クラブにはあまり行かない、クラブ・カルチャーがルーツというわけではない、メロディのあるダンス・ミュージックが好き、とはこのアルバムについて本誌のインタヴューで語っていたこと。個人的にすごく共感してしまったのだけれど、それはともかくとして、彼女のそういう個性は、『Love Hallucination』の雑食性と、あくまでもレフトフィールドには振り切れないポジティヴなポップ・ヴァイブに表れている。
 ジェシーの雑食性については、いまに始まったことではないものの、1曲めの “Don’t Leave Me Now” がハウスで、次の “Midnight Ontario” がUKガラージ/2ステップ調で……という取り留めのなさに明らかだ。『Love Hallucination』と同時期に制作していたという『DJ-Kicks: Jessy Lanza』(2021年)にしたって、自作のフットワークである “Guess What” から、ちょっとスピリチュアルなムードでスタートする。ジェシーのパレットは常にカラフルかつ賑やかで、彼女はそこからお気に入りのビートやテクスチャーを選び取り、それを煌びやかなダンス・ポップに仕立て上げてみせるのだ。野田努編集長は以前、これについて「ポストモダン的感性」と評していたが(https://www.ele-king.net/interviews/007776/)、つまりはなんでもありなのである。
 とはいえ、その手つきは、『Pull My Hair Back』(2013年)や『Oh No』(2015年)など、かなりローファイでベッドルーム的だった初期の作品に比べると、ずいぶん洗練されている。前作の『All the Time』(2020年)と比較してみても、特にアルバムの心躍る前半部はもっとダンス・オリエンティドで、なおかつ朗らかでわかりやすいメロディ志向になった。たとえば、同時期にリリースされたジョージアの『Euphoric』やカーリー・レイ・ジェプセンの『The Loveliest Time』といった優れたダンス・ポップ・アルバムと並べて聴いてみても、『Love Hallucination』の華やかな力強さが感じられるだろう。

 アルバムからのファースト・シングルだった “Don’t Leave Me Now” は、楽天的なムードに貫かれた、アッパーなハウスだ。プロダクションはシンプルではなく、練りこまれている。速いテンポで打ちこまれるキック、聴き手を急き立てるようなパーカッションとドラム・マシーンのビートにのせて、ジェシーは狂おしいR&Bヴォーカルを披露し、ファルセットで天上へと突き抜けていく。
 続く “Midnight Ontario” は、世界を席巻中の NewJeans から、密かに盛り上がっているNYCガラージまで、UKガラージ/2ステップがちょっとしたリヴァイヴァルを起こしていることとの共振を感じさせる。この曲をジェシーとともに手がけているのはジャック・グリーンで、〈LuckyMe〉を拠点に〈Night Slugs〉や〈UNO〉からも作品を発表した経験がありつつ、R&Bヴォーカルの扱いにも長けている彼の手腕が発揮されていると言えるだろう。ピアソン・サウンド=デイヴィッド・ケネディが要所要所に参加していることもあって、『Love Hallucination』は、米国と英国の地下を繋げて歌ったダンス・ポップ・レコードだと言うこともできそうだ。
 LPからのラスト・シングルになった、テンスネイクことマルコ・ニメルスキーとの “Limbo” は、初期ヒップホップを思わせるエレクトロ・ファンク。と、ここまでジェシーは、あっちに行ったりこっちに行ったりと、忙しない。

 一方、ジャム・シティを思わせるUKベース的な “Big Pink Rose” やデトロイト・テクノっぽいムードを纏った “Drive” などが構成する中盤からは、踊りやすさやメロディを志向するというよりは実験に寄っていき、耳への刺激は驚きが心地よさを上回る。ここではヴォーカルも、トラックを織りなす素材の一部のような扱われかたである。細野晴臣風のエキゾティシズムが横溢した浮遊感たっぷりの “I Hate Myself”(ジェシーはYMOのファンでもある)は、リリックとの落差もあって、なかなかユニークだ。
 ダニー・ブラウンやオボンジェイアーなどとのコラボレーションでも知られるポール・ホワイトと初めて制作した “Marathon” は、「クリスタル」と形容したい80年代的な雰囲気が濃厚である。サックス・ソロやシンセサイザーの音色は、手前の “Gossamer” と次のクローザー “Double Time” と結びついて、多分にニューエイジ風で瞑想的。このあたりからはLAの風土や文化が薫ってくる気がするし、それはジェシーの初期のレコードや彼女が好むR&Bとの接続が立ち上がってくる面でもある。

 『Love Hallucination』の印象を決定づけ、新鮮なイメージを聴き手に植えつけるのは、見事なシングルを立て続けに叩きつける冒頭の鮮烈な3曲である。「このアルバムで『信頼』と『脆弱さ』というテーマを描いてみた」とジェシーが語っていることを踏まえると、ポップで踊れる挑戦的な前半部は彼女から他者(新たに手を組んだプロデューサーたち)への「信頼」を、次第に実験的かつ内省的になっていく中盤以降は彼女自身の「脆弱さ」を表しているのではないだろうか。
 このアルバムは、エアコンが効いた部屋で聴いてもいいし、手元のデヴァイスにダウンロードして外で聴いてもいい。ただ、「外で」とはいっても、人命が危機にさらされそうな8月の日本の日中よりは、シングルの “Don’t Leave Me Now” のカヴァー・アートのような、涼しくなってきた夕方に水分を補給しつつ、適度に涼みながら、という条件つきではあるものの……。

黄金期NYヒップホップの神髄 - ele-king

 『The Science』。このアルバム名が初めて世に出たのは1992年のこと。同年に出た『Breaking Atoms』以後初となるメイン・ソース待望の新曲 “Fakin' The Funk”、その12インチ・シングルのジャケットに貼られたステッカーに、「Look for the MAIN SOURCE album "THE SCIENCE"」の文字が踊っていたのだ。メイン・イングリーディエント “Magic Shoes” のコーラスを用いた華やかな冒頭から一気に惹き込まれる “Fakin' The Funk” の素晴らしさもあって、『The Science』への期待はこのとき、最高潮に膨れ上がっていたのだが、しかし……。

 メイン・ソースは1989年に結成された。カナダはトロント出身で、子どものときに家族皆でニューヨークはクイーンズに移住してきたK・カット、サー・スクラッチのマッケンジー兄弟。ニューヨークはハーレム生まれでクイーンズに育ったラージ・プロフェッサー。偶然か必然か、K・カットとラージはクイーンズのハイスクールで出会い、意気投合。K・カットの弟も交えてグループを組んだ。
 マッケンジー家は音楽一家だった。ジャマイカ系の祖父はミュージシャンで、彼のレゲエ・レコードのコレクションが、後にメイン・ソースの曲づくりに活かされた。血縁者にはなんと、80年代にカリビアン・テイストのダンス・ミュージックで一斉を風靡したエディ・グラント、そして、90 - 00年代にビート・メイカーとして名を馳せたラシャド・スミスがいる。
 なので、音楽ビジネスもよく知るマッケンジー兄弟の母親、サンドラがマネジメントを担った。彼女はすぐに、クイーンズの名物レコーディング・スタジオ、1212へメンバー3人を連れていくのだが、そこでポール・Cに出会えたことが、メイン・ソースの成功を決定づけた。

 ポール・Cは、E-mu社のSP-1200=サンプラーを用いたヒップホップのビート制作法を確立し発展させたパイオニアのひとり、偉人中の偉人だ。レコード・コレクションもすごかった彼はレアなネタ使いでも、この時代のヒップホップ・ビートを急速に進化させた。1987 - 1989年に彼がプロデュース、プログラミング、ミックスなどを担った、マイキー・D&ザ・LA・ポッセ、スーパー・ラヴァー・シー&カサノヴァ・ラド、ブラック・ロック&ロン、ケヴ・E・ケヴ&AK-B、スティーゾらの諸作は全て名作、聴きものだらけ。詳細なクレジットなしでも、聴けばポール・C仕事だとわかるウルトラマグネティック・MCズ『Critical Beatdown』、エリック・B.&ラキム『Let The Rhythm Hit 'Em』といった名盤中の数曲も語り草だ。そして、オーガナイズド・コンフュージョンもポール・C門下生なのだが、彼の最後の弟子となったのがメイン・ソースの3人だった(ちなみに、ラージ・プロフェッサーからもSP-1200の扱いを学んだピート・ロックは、マーリー・マールとポール・C、パイオニアふたりの技を受け継ぐサラブレッドだ)。

 メイン・ソースのデビュー・シングル「Think c/w Atom」は、サンドラが息子たちのために設立したアクチュアル・レコーズから1989年中にリリースされた。おそらくは、メンバーがベーシックとなるネタのレコードを持ち込み、それをポール・Cがプログラミング、ミックスなどした2曲は、ポール・C印のサウンド、ノリと、最初から光るものがあったメンバーのネタ選びの相性の良さが感じられる、いきなりの名作だった。
 ポール・Cはしかし、1989年7月17日、何者かに殺害され24歳で急逝してしまう。それでも、「ポール・Cの教えの通りにつくろうと思った」というK・カット、そして、後には「Paul Sea Productions」なるクレジットを入れるほど師匠を愛したラージにより、ポール・Cの教えは忠実に受け継がれる。そうして出来上がったのが1991年の、メイン・ソースの1st『Breaking Atoms』だった。

 『Breaking Atoms』は、この時代のニューヨーク・ヒップホップを代表する傑作のひとつ、という評価が世界中で定まっている名盤だ。こちらも師匠の技を受け継いだエンジニア、アントン・パクシャンスカイの働きもあり、ポール・C印のビート・メイクが見事に継承され、他にはない特別な音像が聴く者を魅了する。マッケンジー兄弟の見せ場となるスクラッチ・ワークに、本作でレコード・デビューを果たしたナズやアキネリとのマイク・リレーも含めて、ラージの無骨なラップを活かす様もウマい。そして何より、ネタ選びのウマさ、おもしろさだ。曲の印象を決定づける、これぞ!というネタを用いたワン・ループづくりがとにかく抜群だった。
 DJというよりもターンテーブリストで、ソロ・ワークの少ないサー・スクラッチはいざ知らず。少なくないK・カットのソロ・ワークを聴けば、『Breaking Atoms』がラージひとりではつくり得なかった、グループの集合知が生んだ傑作であることがすぐにわかる。

 マエストロ・フレッシュ・ウェスのアルバム『The Black Tie Affair』、クッキー・クルー “Secrets (Of Success) (Live At The Bar-B-Que Mix)”、クイーン・ラティファ “That's The Way We Flow”、フー・シュニッケンズ “La Schmoove (Remix)”、MC・ライト “What's My Name Yo” などなど、91 - 93年のK・カット・ワークスは必聴だ。『Breaking Atoms』が広くウケた理由であるカラフルな、人懐っこいサンプリング・ワークはK・カットに負うところ大なのでは? ラージのストレートなつくりのソロ・ワークと聴き比べていくと、自ずとそのような結論にいたる。

 いまは、多くの才能が集い1曲を仕上げる「コライト」が海外ではあたりまえになった。楽器を演奏するわけではない、打ち込みでつくる音楽はいわばアイディア(そしてエンジニアリング)勝負だ。ひとりでつくるより、複数でアイディアを出し合いつくる方がより良いものが生まれる確率は高い。チームのアイディアの結晶である『Breaking Atoms』はだから特別な1枚になり得たわけで、ラージの脱退により “オリジナル” メイン・ソースが終わってしまったのは本当に悲しかった。
 マネージャーのサンドラが息子ふたりを優遇、ギャラの取り分を巡りモメた挙句のラージ脱退だったようだが……。以前はLA・ポッセと組んでいたマイキー・Dを迎えて制作された新生メイン・ソースの『Fuck What You Think』も、ラージのソロ・アルバム数枚も、『Breaking Atoms』の続きを聴かせてくれるものではなかった。だからこそ今回、オクラ入りとなっていた『The Science』がおよそ30年の時を経てリリースされたのが、とにかく嬉しい。

 なんらかの形で既に聴くことが出来た曲も多い。が、各曲が当時の流行りだったインタールードで繋がれ、きちんとしたアルバムの形にまとめられた『The Science』は聴きごたえがもう全く違う。ヒップホップが日進月歩で進化していた時代らしく、例えるならア・トライブ・コールド・クエストが1stから2nd『The Low End Theory』で見せたような、持ち味はキープしつつもタイトでハードな作風への成長に胸躍る。そしてとにかく音像がやはりスペシャル。『Breaking Atoms』と『The Science』でしか聴けない、ヒップホップ史上でも最良のひとつと言えるサウンドは永遠の宝だ。低音を効かせて、とにかくデカい音で聴けば、この時代のニューヨーク・ヒップホップの神髄を感じられるだろう。

audiot909 - ele-king

 日本でひたすらアマピアノを追求する人物として名高い、DJ/プロデューサーのaudiot909。彼が新しいシングルをリリースする。その新曲“4U ”には、SIMI LABの元リーダーのQNのラップがフィーチャー。昨年は“RAT-TAT-TAT”あっこゴリラをフィーチャーしたaudiot909がまたもやってくれました。
 この夏の都会の香気を漂わせながら、QNのメロウなラップが交錯するこの曲をぜひチェックしてください。

audiot909
4U (feat. QN)

https://linkco.re/7CUzuCg9
Japanese Amapiano Recordings​


​audiot909
元々ハウスのDJだったが2020年から南アフリカのダンスミュージックAmapiano制作に着手。 2022年にリリースされたラッパーのあっこゴリラをフィーチャーしたシングル「RAT-TAT-TAT」はSpotifyの公式プレイリスト+81 Connectなど数多く取り上げられ、世界に広がるAmapianoを取り上げたドキュメンタリー映像にピックアップされるなど自主リリースながら異例のヒットを飛ばす。 並行してSound & Recording Magazine誌での連載や対談、現地のプロデューサーへのインタビュー、ラジオ出演など様々なメディアにてAmapianoの魅力を発信し続けている。​

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QN
神奈川県相模原市出身。 ​
SIMI LABのリーダーとしてシーンに頭角を表す。 ビートメイカー兼ラッパーとして、ヒップホップ・レーベル〈summit〉から出した3枚目のアルバム『New Country』はジャパニーズ・ヒップホップの名作として語り継がれている。 現在は菊地成孔とのユニットQ/N/Kてしてフジロック・フェスティバルの出演やアルバムのリリースを行う。 また、ヒップホップ・コレクティヴMUSASHI VILLAGEの主要メンバーとして参加し、アブストラクトから王道のヒップホップまで幅広くシーンにアプローチをかけている。

Gilles Peterson - ele-king

 ジャズとクラブといえばこの人、イギリスを代表するDJ、ジャイルス・ピーターソン。その選曲の素晴らしさもさることながら、自身のレーベル〈Brownswood〉においてはUKジャズからアフリカ、グローバルまでと幅広く質の高い作品のリリースを続けている、多くのミュージック・ラヴァーたちから信頼のリジェンドが4年ぶりに来日する。東京はO-EAST/AZUMAYAにてオールナイトで開催。これは行くしかない。日本でジャズとクラブを盛り上げてきた功労者にして盟友の松浦俊夫、ファッション界を中心に活躍するDAISUKE G.、Fraser Cookeといった日英の音楽愛好家が参加する。なお、本イベントにはファッション・ブランド、sacaiのサポートが決定している。

2023年9月9日土曜日
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Contact presents Gilles Peterson
-Still Searching for The Perfect Beat-

supported by sacai
at Spotify O-EAST / AZUMAYA

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Lineup:
GILLES PETERSON (Brownswood Recordings / BBC / Worldwide FM I UK)
TOSHIO MATSUURA
DAISUKE G.
FRASER COOKE

Lighting:
MACHIDA

Laser & Visual Effect:
REALROCKDESIGN

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Open 11PM
¥5000 Door
¥4000 Advance
¥3000 Early Bird Ticket (Limited to 100)
¥2000 Under 23
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Gilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン)
1980年代よりクラブ・シーンのキーパーソンとしてジャズを中心にしながらも、ジャンルという音楽の境界線を砕き、多くのアーティストと点で結ばれながら世界中のDJとアーティストに大きな影響を与え続け、またリスナーに愛されてきたイギリスを代表するDJ。ラジオ・プレゼンター、クラブDJ、アーティストのプロデュース、フェスティバル主催・キュレーションなど、40年近く第一線で音楽トレンドを発信し続けるテイスト・メイカー。英国営放送局BBC Radio 6 Musicにて週末の看板番組を担当。また2016年、自らオンライン・ラジオ・プラットフォーム「Worldwide FM」を立ち上げた。ロンドンで開催されるWorldwide Awards、フランスのセットで開催されるWorldwide Festivalのホストを務め、2019年にはイギリスで新しいフェスティバルWe Out Hereを立ち上げた。またレーベル・オーナーとして新世代のアーティストを紹介する為に「Brownswood Recordings」を主宰し、次々と新しい才能を発掘し、世に送り出している。自身の作品としては2021年にインコグニートのブルーイとのプロジェクトSTR4TAをスタート。これまでに2枚のアルバムをリリース。また最近は初の著書「Lockdown FM - Broadcasting In A Pandemic」を上梓した。
http://www.gillespetersonworldwide.com


松浦 俊夫 TOSHIO MATSUURA
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。5作のフル・アルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。2002年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。またイベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、星付き飲食店など、高感度なライフスタイル・スポットの音楽監修を手掛ける。2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、Blue Note Recordsからアルバム『HEX』をワールドワイド・リリース。2018年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイド・リリース。「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00) 好評オンエア中。
http://www.toshiomatsuura.com


Daisuke G.
1975年生まれ、2007年。源馬大輔事務所を設立。クリエイティヴ・ディレクター/DJ。ファッション、音楽を取り巻く様々なものをプロデュース。店舗内装、イベントと空間プロデュースなども手掛ける。現在のクライアントにはsacai、香港Joyce、Lane Crawford Consultantなども手がける。人気DJとしても大活躍中。
https://www.mixcloud.com/daisuke-gemma/


Fraser Cooke.
(Nike | Mild Bunch)

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【開催日時】
2023年9月9日(土) 23時~5時

【会場】
Spotify O-East
東京都渋谷区道玄坂2丁目14-8
https://shibuya-o.com/east/

【料金】
当日 ¥5000
前売り ¥4000 *8/11(金)13時よりzaiko / e+にて取り扱い
早割り ¥3000 *8/4(金)12時よりzaiko / e+にて100枚限定取り扱い
23歳以下 ¥2000 *要写真付き身分証明書

【前売取扱】
zaiko: https://contacttokyo.zaiko.io/e/Gilles-Peterson-20230909
イープラス:https://eplus.jp/sf/detail/3931120001-P0030001

*20歳未満の方はご入場できません
*写真付き身分証明書をお持ちください

ジャイルス・ピーターソン・ツアー・インフォ

GILLES PETERSON JAPAPN TOUR 2023
-STILL SEARCHING FOR THE PERFECT BEAT-

9月9日(土) 横浜 Local Green Festival
9月9日(土) 東京 Spotify O-EAST / AZUMAYA
Contact presents GILLES PETERSON
-STILL SEARCHING FOR THE PERFECT BEAT-
supported by sacai
9月15日(金) 京都 CLUB METRO
9月16日(土) 大阪 CIRCUS Osaka
9月17日(日) 福岡 THEATER 010

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