「KING」と一致するもの

ARTHRALGIA presents KALMANEIT - ele-king

 これは激動の2020年を締めくくるのにふさわしいイベントかも。12/28(月)渋谷 CONTACT にて、「ARTHRALGIA presents KALMANEIT」と題されたパーティが開催される。GONNOと増村和彦によるデュオ、GONNO × MASUMURAYPY山本達久のコンビ、KOPY によるライヴのほかに、Romy Mats、Kotsu、Celter といった気鋭のDJたちが数多く出演。しっかり感染対策しつつ、豪華なラインナップを楽しもう。

オフィシャルHP:
https://www.contacttokyo.com/schedule/arthralgia-presents-kalmaneit/

Brandee Younger & Dezron Douglas - ele-king

 ハープ、来てる。近年メアリー・ラティモアアーニェ・オドワイアーなど、ハーピストたちが良質な音楽を生み出しているが、ジャズの分野におけるその筆頭はブランディ・ヤンガーだろう(昨秋コットンクラブで観た来日公演でもすばらしい演奏を披露してくれた)。
 マカヤ・マクレイヴン『Universal Beings』や、2020年の特筆すべきジャズ・アルバムの1枚、カッサ・オーヴァーオール『I Think I'm Good』にも参加している彼女だが、来年1月21日、ベーシストのデズロン・ダグラスとともに録音したライヴ盤がリリースされる。
 今年3月のロックダウン中に配信されたセッションのハイライトを集めた内容で、アリス・コルトレーン “Gospel Trane” やファラオ・サンダース “The Creator Has A Master Plan”、ジョン・コルトレーン “Wise One” などのカヴァーも収録。ハープで再演される名曲たちの美しき息吹に耳を傾けたい。

Dezron Douglas & Brandee Younger
Force Majeure

ラヴィ・コルトレーンからマカヤ・マクレイヴンまで支持されてきた実力派ベーシスト、デズロン・ダグラスとジャズ、ヒップホップ~R&Bのフィールドを中心に華やかな共演歴を誇る話題の女性ハープ奏者、ブランディ・ヤンガーによる伝説的なロックダウン・ライブストリーム・ブランチ・セッションアルバム。ボーナストラックを加え、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

Official HP : https://www.ringstokyo.com/dezrondouglasbrandeeyoungerfm

マカヤ・マクレイヴンの力作『Universal Beings』のNYセッションにも共に参加した旧知の仲であるベーシストのデズロン・ダグラスとハープ奏者のブランディ・ヤンガーが、2020年3月、リビングルームでライブストリームを開催した。彼らがリビングルームで奏でる美しく自然な音は、多くの友人や家族を励まし、勇気づけた。このアルバム『フォース・マジュール』に収録されているのは、二人による伝説的なロックダウン・ライブストリーム・ブランチ・セッションのハイライトを集めた作品で、日本盤はボーナストラックを加え、ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース。アリス&ジョン・コルトレーン、スタイリスティックス、ジャクソン5、ファラオ・サンダース、ケイト・ブッシュ、スティング、カーペンターズなどの名曲のカバーも含まれている。ニューヨーク、ハーレムの聖域の暖かさを醸し出している、精神的な癒しの音楽である。

ブランディ・ヤンガーのハープとデズロン・ダグラスのダブルベースとのデュオ演奏は、毎週金曜日の朝にリビングルームから配信された。コロナ禍での、このロックダウン・ライヴストリーム・ブランチ・セッションは、ソーシャルメディアで絶大な支持を得た。彼らは人々に親しみのある楽曲を選び、静かな高揚感と歓びを与える演奏をおこなってみせたからだ。このアルバムでその素晴らしいハイライトを楽しむことができる。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : Dezron Douglas & Brandee Younger (デズロン・ダグラス&ブランディ・ヤンガー)
タイトル : Force Majeure (フォース・マジュール)
発売日 : 2021/1/20
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings (RINC72)
フォーマット : MQA-CD (日本企画限定盤)

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

All music arranged by Brandee Younger & Dezron Douglas;
except "Inshallah" arranged by Dezron Douglas.
Dezron Douglas - double bass, bass guitar, voice
Brandee Younger - harp, voice
Recorded between March and June, 2020, at Dezron & Brandee's apartment in Harlem, New York.
Engineered by Brandee Younger.
Remote Recording Assistance by David Allen.
Edited & Sequenced by Scott McNiece.
Mixed & Mastered by Dave Vettraino.
Cover Art by Esther Sibiude.
Design & Layout by Craig Hansen.

Tracklist :
01. Coffee (intro)
02. Gospel Trane
03. Equinox
04. The Creator Has A Master Plan
05. Sing
06. You Make Me Feel Brand New
07. We'll Be Right Black
08. Never Can Say Goodbye
09. This Woman's Work
10. Nothing Stupid
11. Inshallah
12. Wise One
13. Force Majeure
14. Toilet Paper Romance
15. Flatten The Curve (outro)
16. Body and Soul (Japan Bonus Track)

好評の書評集第二弾!
「科学する心」があなたと世界を変えるかもしれない

本当に読者の役に立つ書評――良い本はしっかりと評価し、ダメな本はしっかりと批判する。そんな「まっとうな書評」が高く評価された山形浩生の書評集、第2弾は「サイエンス・テクノロジー」編。

「科学する心」の尊さ、テクノロジーの楽しさと未来に託す夢。そしてデマやあおりに惑わされない冷静な思考を解く、古びることのない、今の時代に必要な本の数々が紹介されています。その数およそ120冊!

目次

はじめに

第1章 サイエンス
 科学と文明と好奇心――『鏡の中の物理学』
 「わからなさ」を展示する博物館――The Museum of Lost Wonder
 星に願いを:天文台に人々が託した想い――No One will Ever have the Same knowledge again
 「別の宇宙」は本当に「ある」のか? 最先端物理理論の不思議――『隠れていた宇宙』
 若き非主流物理学者の理論と青春――『光速より速い光』
 物理学のたどりついた変な世界――『ワープする宇宙』
 「ありえたかもしれない世界」にぼくは存在するか? 確率的世界観をめぐるあれこれ――『確率的発想法』
 スモールワールド構造の不思議――『複雑な世界、単純な法則』
 分野としてはおもしろそうなのに:特異な人脈の著者が書いた変な本――『人脈づくりの科学』
 トンデモと真の科学のちがいとは――『トンデモ科学の見破りかた』
 真の科学理論検討プロセス!――『怪しい科学の見抜きかた』
 あらゆる勉強に通じるコツ――『ファインマン流物理がわかるコツ』
 あれこれたとえ話を読むより、自分で導出して相対性理論を理解しよう!――『相対性理論の式を導いてみよう、そして、人に話そう』

第2章 科学と歴史
 人々の格差は、しょせんすべては初期条件のせいなのかしら――Guns, Germs and Steel『銃・病原菌・鉄』
 参考文献もちゃんと収録されるようになり、単行本よりずっとよくなった!――『銃・病原菌・鉄』
 『銃・病原菌・鉄』のネタ本のひとつ『疫病と世界史』を山形浩生は実に刺戟的な本だと思う――『疫病と世界史』
 マグル科学の魔術的起源と魔術界の衰退に関する一考察――『磁力と重力の発見』
 魔術と近代物理学との接点とは――『磁力と重力の発見』
 文化を創るのは下々のぼくたちだ――『十六世紀文化革命』
 社会すべてが生み出した近代科学の夜明け――『世界の見方の転換』
 コペルニクスが永遠に奪い去ったもの:地動説がもたらした人間の地位の変化を悼む――Uncentering the Earth: Copernicus And the Revolutions of the Heavenly Spheres
 「星界の報告」新訳。神をも畏れぬ邪説を唱えたトンデモ本。発禁にすべき――『望遠鏡で見た星空の大発見』
 イスラムの現状批判とともに、もっと広い科学と宗教や規範の関係を考えさせられる――『イスラームと科学』
 アメリカとはまったく別の技術の系譜――『ロシア宇宙開発史:気球からヴォストークまで』
 有機化学がイノベーションとハイテクの最前線だった時代――『アニリン―科学小説』

第3章 環境
 脱・恫喝型エコロジストのすすめ:これぞ真の「地球白書」なり――The Skeptical Environmentalist『環境危機をあおってはいけない』
 地球の人々にとってホントに重要な問題とは? 新たな社会的合意形成の試み――Global Crisis, Global Solutions
 温暖化対策は排出削減以外にもあるし、そのほうがずっと効果も高い!――Smart Solutions to Climate Change: Comparing Costs and Benefits
 環境対策は、完璧主義ではなくリスクを考えた現実性を!――『環境リスク学』
 マスコミのあおりにだまされず、科学的な環境対応を!――『環境ホルモン』
 温暖化議論に必要な透明性とは?――『地球温暖化スキャンダル』
 壮大な地球環境制御の可能性――『気候工学入門』
 真剣なエコロジストがたどりついた巨大科学への期待――『地球の論点:現実的な環境主義者のマニフェスト』
 いろいろ事例は豊富ながら、結局なんなのかというのが弱くて総花的――『自然と権力――環境の世界史』
 誇張してあおるだけの温暖化議論でよいのか?――『地球温暖化問題の探究』

第4章 震災復興・原発・エネルギー
 震災復興の歩みから日本産業の将来像を見通す――『東日本大震災と地域産業復興 II』『地域を豊かにする働き方』
 原発反対のために文明否定の必要はあるのか?――『福島の原発事故をめぐって』
 正しく怖がるための放射線リテラシー――『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』
 主張は非常にまっとうながら、哲学はどうなったの?――『放射能問題に立ち向かう哲学』
 頭でしか感じられない怖さの恐怖――『廃墟チェルノブイリ』

第5章 建築
 いろんな表現の向きと具体性のこと――『住宅巡礼』『日本のすまい―内と外』
 真に自然の中に位置づく建築のあり方などについて――『時間の中の建築』
 人間くさく有機的な廃墟の本――『廃墟探訪』
 失われゆく現代建築の見直し――『昭和モダン建築巡礼 西日本編』
 楽しい探訪記ながら明らかにしたかったものは何?――『今和次郎「日本の民家」再訪』
 家の持つ合理性を見抜いた名著――『日本の民家』
 「構想力」の具体的な中身を分析したおもしろい本――『群像としての丹下研究室』
 長すぎるため、どうでもいい些事のてんこ盛りに堕し、徒労感が多い一冊――Le Corbusier: A Life
 言説分析が明らかにしたのはむしろ分析者の勝手な思い込みだった――『未像の大国』
 記憶術が生み出した建築による世界記述と創造――『叡智の建築家』

第6章 都市計画
 街と地域の失われた総合性を求めて――『廃棄の文化誌』
 都市に生きる人たちと、都市を読む人――『恋する惑星』&『檻獄都市』のこと――『檻獄都市』
 土建政治家の構想力とは――『田中角栄と国土建設』
 都市開発とぼくたちの未来像など――『最新東京・首都圏未来地図―超拡大版』
 次世代に遺すインフラ再生問題――『朽ちるインフラ』
 数十年にわたって継続する都市開発を養うには――『ヒルサイドテラスウェストの世界』
 槇文彦も村上龍も、ハウステンボスの怪にはまだかなわない――『記憶の形象』
 電気街からメイド喫茶へ:おたく的空間のあり方とは――『趣都の誕生』
 古代中世の話で9割が終わる都市空間デザイン論というものの現代的意義は?――『都市空間のデザイン』
 日本のバブル永続を想定した古い本。すでに理論は完全に破綻、今更翻訳する意義はあったのか?――『グローバルシティ』
 うーん、いろいろやったのはわかるが、それで?――『モダン東京の歴史社会学』
 その金科玉条の「オーセンチック」って何ですの?――『都市はなぜ魂を失ったか』
 建築と都市が重なる奇妙な空間へ――『S,M,L,XL+: 現代都市をめぐるエッセイ』

第7章 医療・生命
 肥満二段階仮説、あるいはデブの免疫療法に関する一考察――『免疫の意味論』
 死体になったらどうなるの? 決定版:ぼくらの死体完全マニュアル本!――Death to Dust: What Happens to Dead Bodies?
 死体関連のネタ満載。この分野のおもしろさを何とか知らせて認知度をあげようとする著者の熱意が結実――『死体入門』
 医学生がジョークで撮った解剖記念写真集。医学と死体解剖のあり方を考えさせる、二度と作れないだろう傑作――Dissection: Photographs of a Rite of Passage in American Medicine 1880-1930
 現実のドリトル先生にして現代外科医学の開祖――The Knife Man: The Extraordinary Life And Times Of John Hunter, Father Of Modern Surgery
 おおお、エミリー・オスターきたーっっっっ!!――『お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント』

第8章 遺伝・進化
 歪んだ標的にされた、遺伝とは無関係な知能偏重社会批判の書――『ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造』
 人種とスポーツと差別について――Taboo: Why Black Athletes Dominate Sports and Why We Are Afraid to Talk About It
 遺伝子分析とITが交差する新分野の魅力書――『実践バイオインフォマティクス』
 きみは進化のために何ができるか? バカやブスの存在理由について――『喪失と獲得』
 ラスコー展とニコラス・ハンフリー
 進化論の楽しさと威力、そして宗教との共存――Evolution for Everyone: How Darwin's Theory Can Change the Way We Think About Our Lives
 生得能力と最適な社会制度について考えさせられる本――『心の仕組み』
 人間での遺伝の役割をドグマから救う勇気の書――『人間の本性を考える』
 初歩から最先端の成果までを実に平易に説明、日本の研究水準紹介としても有益。あとは値段さえ……――『自己変革するDNA』
 日本人は昔からあれこれ混血を進めてきました、という本――『ハイブリッド日本』
 日本人の起源を総合的に見直すと?――『日本人はどこから来たのか?』
 すばらしい。創発批判本!――『生命起源論の科学哲学』
 人間の遺伝子分布についての立派な百科事典。ネトウヨどもは本書についてのインチキなデマをやめるように――The History and Geography of Human Genes
 人類進化と分布のとても優秀な一般向け解説書。インチキに使わずきちんと読もう!――The Great Human Diasporas: The History Of Diversity And Evolution
 クローン生物の可能性と現実――『第二の創造:クローン羊ドリーと生命操作の時代』
 ネアンデルタール人の精神世界にまで踏み込む――『ネアンデルタール人の正体』
 すべての人工物の理論と進化について――『システムの科学』『進化と人間行動』

第9章 脳と心
 異分野を浸食する脳科学の魅力がつまった一冊――『脳のなかの幽霊、ふたたび』
 脳科学から倫理と道徳を考える――『脳のなかの倫理』
 心や意識の問題でも、もはや哲学はジリ貧らしいことについて――『MiND』
 Do Your Homework! 思いつきの仮説だけでは、脳も心もわからない――『脳とクオリア:なぜ脳に心が生まれるか』
 意識とは何か? 「人間である」とは?――Conversations on Consciousness: What the Best Minds Think About the Brain, Free Will, And What It Means to Be Human
 妄想全開:フロイトの過大評価をはっきりわからせてくれる見事な新訳――『新訳 夢判断』
 インチキだと知って読むと、読むにたえないシロモノではある――『失われた私』
 原資料をもとに、多重人格シビルのウソを徹底的に暴いた本。でも批判的ながら同情的でフェアな視点のため、非常に感動的で悲しい本になっている――Sybil Exposed: The Extraordinary Story Behind the Famous Multiple Personality Case
 え、プラナリアの実験もちがうの?!!――『オオカミ少女はいなかった』
 人を丸め込む手口解説します――悪用厳禁!――『影響力の武器』
 意識の話はむずかしいわ――『ソウルダスト』
 うーん、ヤル気の科学よりいいなあ――『WILLPOWER 意志力の科学』
 文明を築いた「読書脳」――『プルーストとイカ』

第10章 IT
 マイケル・レーマンの偉大……それと藤幡正樹――『FORBIDDEN FRUITS』
 さよなら「ワイアード」――「ワイアード 日本版」
 がんばれ!! 微かに軟らかい症候群――『マイクロソフト・シンドローム――コンピュータはこれでいいのか!?』
 コンピュータはあなたの知性を反映する!――『あなたはコンピュータを理解していますか?』
 プログラミングの傲慢なる美学と世界観――『ハッカーと画家――コンピュータ時代の創造者たち』
 気分(だけ)はジャック・バウアー!――『世界の機密基地―Google Earthで偵察!』
 意味を求める人間と、自走する情報のちょっと悲しい別れ――『インフォメーション―情報技術の人類史』
 バーチャル世界だけで人類は発展できるのだろうか――『ポスト・ヒューマンの誕生』
自分でできる深層学習――『Excelでわかるディープラーニング超入門』

第11章 ものづくり・Maker・テクノロジー
 技術的な感覚のおはなし――『root から/へのメッセージ』が教えてくれるもの
 夢のロボットたち:「ロボコンマガジン」は楽しいぞ――「ロボコンマガジン」
 狂気の自作プラネタリウムの教訓と可能性など。――『プラネタリウムを作りました。』 出来の悪い後輩たちの空き缶衛星物語と、草の根科学支援の方向性について――『上がれ! 空き缶衛星』
 本気で夢を実現しようとする驚異狂喜の積算プロジェクト――『前田建設ファンタジー営業部』
 施工見積から見えてくる空想と現実の接点――『前田建設ファンタジー営業部Part 3「機動戦士ガンダム」の巨大基地を作る!』
 トンネルの先の光明――『重大事故の舞台裏』
 ピタゴラ装置の教育効果――『ピタゴラ装置DVDブック1』
 世界に広がる、ミステリーサークルの輪!――The Field Guide: The art, History and Philosphy of Crop Circle Making
 自分で何でも作ってみよう! 農作物からITまで――『Made By Hand』
 よい子は真似しないように……いやしたほうがいいかな?――『ゼロからトースターを作ってみた』
 アンダーソンは嫌いだが、Makersビジネス重視の視点はおもしろく、実践も伴っていてえらい――『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』
 ものづくりとしての科学的お料理解説書――『Cooking for Geeks: 料理の科学』
 ジブリ『風立ちぬ』に感動したあなたに!――『名作・迷作エンジン図鑑』
 新ジャンルに取り組むアマチュアたちの挑戦とその障害をまとめた、わくわくする本――『バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!』
 量産からバイオまですべてに貫徹するものづくり思想とは――『ハードウェアハッカー』

あとがき

著者
山形浩生(やまがた・ひろお)
1964年、東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了。
大手シンクタンクに勤務の頃から、幅広い分野で執筆、翻訳を行う。
著書に『新教養主義宣言』『たかがバロウズ本。』ほか。訳書にクルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』、ピケティ『21世紀の資本』、スノーデン『スノーデン 独白:消せない記録』、ディック『ヴァリス』ほか。

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Burial, Four Tet, Thom Yorke - ele-king

 あの名作「Ego / Mirror」から9年、黄金の3人による新作「Her Revolution / His Rope」。先週木曜日、このニュースが流れてすぐ、一縷望みをかけてロンドンの高橋勇人に連絡しました。しかし、ときすでに遅し。高橋君は取り扱いのレコ店に行った後で、どのお店でも瞬殺完売だったそうです。つーか、限定300枚だからそれはそうだろう。discogsではすでに7000円以上付けられているし。まあ、しかしさすがトム・ヨーク(反グローバル経済/反新自由主義)ですな、ちゃんと国内市場を優先していると。でも、再プレスして海外のファンにも届けてください~。(個人的にはBurial + Four Tetによる“ Moth”って曲がいちばん好きなんですけ、聴いた人の話によると、今回の曲は2曲ともなかなかの名曲だそうで)


12月11日:追記情報
完売したと思われたこの12インチ、今月の中旬に日本のレコード店にも少量入荷される予定とのことです。さらに、2021年には2ndプレスが広域に流通予定だそうで(時期は未定ですが、おそらく冬の間には……)。なお、1stプレスと2ndプレスに仕様の違いはありませんので転売ヤーから買わないようにね。

それから、「Her Revolution」の歌詞がビートさんから公開されました。


our darling revolution
愛すべき僕たちの革命

she is always in us
彼女は常に僕たちと共にある

cracks appearing at the centre
いくつもの亀裂が中心に現れる

while we go spinning
僕たちが廻っている間に

walking offline
オフラインで歩いている間に

as rings up in the sky
空に浮かぶ輪のように

she demanding diamonds
ダイアモンドを求めている彼女

we are breaking her heart
僕たちは彼女の心を傷つけている

cracks appearing at the centre
いくつもの亀裂が中心に現れる

says all this revolution
このような数々の革命には

has such a cost
大きな犠牲が伴うと言われている

(how my wooden heart it feels nothing )
(木製の僕の心が、何も感じないなんて)

interview with Young Marble Giants - ele-king

 最小限の音数で、静かで、そしてその音楽は部屋の影からそっと現れたようだった。抑揚のない声のヴォーカル、隙間だらけのベースとギター、ときにリズムボックスとオルガン。曲がはじまると、気が付けば終わっている。終わった後にはまた沈黙。実際、1980年に登場したヤング・マーブル・ジャイアンツ(YMG)は成功したにも関わらず、わずか1年でシーンからそそくさと退席した。
 YMGはウェールズのカーディフという街にて、1979年に結成された。スチュアート・モックスハム(g)とフィリップ・モックスハム(b)という兄弟を軸とし、シンガーのアリソン・スタットンが加わり、バンドは始動した。「若い大理石の巨人」というバンド名は、彼らがたまたま古典彫刻の本から見つけたものだった。
 地元で活動しつつ、〈ラフトレード〉に送ったデモテープが気に入られて、1980年にまずはアルバム『Colossal Youth』、そしてシングル「Final Day」という2枚の傑作を発表する。CNDが大規模な反核集会を開いたその年のシングル「Final Day」では、オルガンのドローンをバックに、核戦争後の世界、世界の終末の、その終わりの最期の日が圧倒的に簡素で静かな演奏によって表現されている。また、アルバムのほうには、秀逸なアイデアとコンセプトを持ったバンドの魅力がしっかり記録されている。

 ポスト・パンクが許可した「非完全さ」ゆえの独創性を指摘したのはサイモン・レイノルズだが、個性豊かなバンドが数多く出現した当時においても、YMGはあまりにも、ホントあまりにも独創的だった。たとえばそれは70年代末のクラフトワークをギターとベースでカヴァーしたかのようなタイトな演奏だったり、お茶の間に流れてきそうなメロディを擁しながらどこまでも孤独な響きだったり、賛美歌のパロディのようだったり、鼻歌のようだったり、だった。そういったトラックにアリソンの涼しげで、そして甘美な声が挿入される。
 レイノルズが『アナザー・グリーン・ワールド』のポスト・パンク・ヴァージョンと評した『Colossal Youth』は、その年もっともヒットしたインディ作品だったし、人気も評価も、ファンからのバンドへの期待も高かった。彼らはれっきとした成功したバンドだったのだ。それからYMGは、アルバムとは別方向の、TV音楽にインスパイアされた実験的なインストルメンタル集「Testcard EP」をリリースすると、しかし成功など知らなかったかのように、その数か月後にバンドは消滅するのである。

 このたび『Colossal Youth』の40周年を記念して〈ドミノ〉からスペシャル・エディションがリリースされた。貴重なEPやコンピレーションからの楽曲も収録し、ライヴ映像収録のDVDまである。まあ、これでYMGの音源は完璧に揃っていると言えよう。では、40周年を記念してのインタヴューをどうぞ。

私にとっては間違いなくイーノの作品における雰囲気っていうものが大きかったし、それはYMGの曲の雰囲気にも影響していると思うわ。ソングライティング全般もそうだけどね。
──アリソン・スタットン

コロナがまだたいへんなことになっていますが、いまどんな風に過ごされていますか?

スチュアート・モクサム(以下S):実は僕の場合は普段とそれほど変わらない。なにせ自営業で、ひとり暮らしで、仕事までの移動も許容範囲内の距離で、自宅から15kmくらいのレコーディング・スタジオにも行けている。そっちはどう、アル?

アリソン・スタットン(以下A):こっちはかなり影響があって、私はカイロプラクターだから仕事ができない時期があったわ。いまは営業を再開してるけど、密な接触だからまだ多くの人は躊躇していて、やっぱり客足はまばら。マスクや手袋といった対策はしているけどね。夫と一緒に住んでるから話し相手はいるけど、まあ冬眠状態といったところ。

S:僕のパートナーが徒歩10分ほどのところに住んでいて、彼女は95歳の父親の介護をしているんだ。そのふたりと同じバブルにいるから、まったくひとりというわけではない。それから経済的な話でいうと奇妙なことに好調なんだ。Tiny Global Productionsや他のレーベルのマスタリングの仕事をやっているからね。

YMGがプログレやクラウトロック、あるいは70年フォーク・ロックからの影響を受けていた話は知られていますが、そのなかで、もっとも重要な影響となったアーティストを3人挙げてください。ぼくの予想では、クラフトワークは間違いなく入ると思いますが。

A:イーノ。

S:クラフトワーク。それから、当たり前だけどビートルズ。どう?

A:そうね。当たり前すぎて忘れるところだった。ビートルズってもうDNAに組み込まれてるから。

S:そうだね。3組と訊いてくれてよかったよ。

ちなみに、イーノから受けた影響でもっとも大きなことはなんだったのでしょう? 音楽の考え方?

A:ひとつには、彼が自分の曲中で生み出した雰囲気というか。時にすごく広々とした空気感というか。私にとっては間違いなくイーノの作品における雰囲気っていうものが大きかったし、それはYMGの曲の雰囲気にも影響していると思うわ。ソングライティング全般もそうだけどね。

S:同感。それについてちゃんと考えたことがなかったな。訊いてくれてありがとう。まず、ブライアン・イーノのような人物は彼の前にはいなかったということ。それに彼はものすごくたくさんのアイデアを持っていて、彼の音楽は何百万人という人を刺激したと思う。“Baby’s On Fire”にしてもどの曲にしても、ストーリーではなくてほとんどファンタジーのような歌詞で、物語ではない形での言葉がある。カットアップという手法を用いたボウイもそうだけど、個人的にはイーノの方が優れていると思ったね。

A:すごく抽象的でね。スチュアートの曲にも、たとえば“Choci Loni”だったり、そういう部分はあったと思う。

S:たしかに。それからイーノはアート的だったと思う。ロックンロールでもないし、どの音楽ジャンルでもなく……最初はかなりポップだったけどね。とにかく全体的なあの雰囲気にすごく魅力を感じたね。ポップ・ミュージックは単に牛乳配達員が口ずさむためのものだというような言われ方をすることがあるけど、れっきとした現代のアートなんだよ。そしてイーノは間違いなくそのアート的な側面の頂点に位置づけられると思う。そしてさらにトーキング・ヘッズのようなバンドがいる。僕が聴いてきたのは50年代、60年代、70年代の音楽でありポップ・ミュージックで、なかにはヒドい代物もあったけど、素晴らしいものも多かった。キンクスにしてもほかの何にしても。ただ当時のポップ・ミュージックにはまだアートが入り込んでいなかった。まあブライアン・ウィルソンが最初かもしれないな。

パンクやロックンロールが好きになれなかった理由はなんだったのでしょう?

A:私は別に嫌いだったわけじゃなくて、ロックンロールも聴いてたし、パンクやロックのギグにも行っていた。クラッシュもセックス・ピストルズもね。エネルギーに溢れてて本当にエキサイティングだった。ただ家のターンテーブルに乗せて聴きたくなるような音楽ではなかったというだけ。いわば栄養たっぷりのものを食べたいのと同じで、イーノやトーキング・ヘッズといった音楽のなかにはものすごくたくさん入っているし、ジョニ・ミッチェルでもニール・ヤングでも、中身がたっぷり詰まってるのよ。たとえばロックンロールを聴きながらすごく難解な本を読んでも気が散らないけど、イーノのような音楽は意識が引き裂かれてしまう。まあでも、たんにいちばん好きな音楽ではなかったというだけで、実際はどのジャンルも好きなのよ。ただ、燃え盛るビルから逃げ出すときにどのアルバムを持って行くかとなったら、パンクとロックンロールは置いていくわね(笑)。

S:フハハハ。こういったインタヴューではあらためてアリソンのことが知れて面白い。僕はロックンロールも大好きだよ。僕がチャック・ベリーの悪口を言ったとされて、それが僕の発言として引用されたことがあったけど、実際はチャック・ベリーも大好きだ。最高じゃないか。ただ70年代なば頃にはロックンロールはオーソドックスになっていて、ある意味飽きていたんだよね。多くの工業都市と同じようにカーディフでもヘヴィ・ロックやブルースが人気で、それ自体は何ら問題ではないし、僕もそういったものもすごく好きなんだよ。ただ自分はもうちょっとイーノ的な、興味深いことがやりたかった。プリファブ・スプラウトのパディ・マクアルーンが言ったように、人生は車と女の子だけじゃないんだ。もちろん女の子について書いてもいいけど、同じような書き方をする必要はない。たとえばトーキング・ヘッズも面と向かってズバッと言うというよりはもうちょい鈍角的にくるというか。よりクリエイティヴな表現でね。
 これは僕の先入観だけど、パンク・ロックはちょっと速くなっただけのロックンロールだと思ってたんだよね。本当に偏見もいいとこだけどさ(笑)。当時〈Domino〉に短いコメントを書けって言われたんだ。でもパンク・ロックがなかったら我々はどこへも行き着かなかっただろうし、存在しなかっただろうね。

A:そうね。

S:パンク・ロックが人びとのアティテュードを根本的に変えたんだ。そして我々が始動する頃にインディペンデント・レーベルができてきたわけだよ。

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静かさというのも哲学の一部で、他の人たちがやっていることは何だろうかと考えて、その反対のことをやればいいだけだった。みんながうるさいから自分たちは静かにしよう、みんなはディストーションかけてるからディストーションはなし、という具合に。
──スチュアート・モックスハム

個人的な話をさせていただくと、自分が16歳の高校生だったときに〈Rough Trade〉のアメリカ盤のコンピレーションを買ったんですね。ザ・ポップ・グループ、スクリティック・ポリッティにザ・スリッツ、キャブスにロバート・ワイヤットと、錚々たるメンツの素晴らしいラインナップのコンピですが、そのなかでもっとも曲の時間が短かったのが、YMGの“Final Day”でした。1分40秒でしたっけ? しかも静かな曲で、あっという間に終わるのに、あの曲には忘れられないインパクトがありました。極度に音数のない演奏もアリソンさんの抑揚のない歌い方もすごくて、歌詞に関してはずいぶんあとで知ったのですが、世界が終わる直前を歌っています。いったいどうしたらあんな曲が生まれるのでしょう?

S:あの曲はまさに当時のバンドの哲学を示しているいい例で、我々は、物事の核心部分だけを提示すればいいと考えていたんだ。物事の本質というか。邪魔なものを入れず装飾を施さず、なぜならいいアイデアがあればそういったものは不要で、だから必然的に短くもなる。
 静かさというのも哲学の一部で、というのも僕は、やっぱり地方都市在住というのは不利だと感じていたんだよ。音楽業界はイングランドに集中していたし、そこで成功した地元の知り合いなんてひとりもいなかった。だから注目されるためには人と極端に違うことをしなければならないと思っていたんだ。そしてそれはごく簡単なことだったんだよ。他の人たちがやっていることは何だろうかと考えて、その反対のことをやればいいだけだった。みんながうるさいから自分たちは静かにしよう、みんなはディストーションかけてるからディストーションはなし、という具合に。そうやって余分なものを削いでいって完全に必要最低限な要素だけにしたというわけさ。みんなが叫んでいるときに囁けば、まあ気になってくるだろうと(笑)。YMGの場合、みんなからこっちに来てくれたんだよ。そこが素晴らしかった。そう思わないアル?

A:本当にそうで、YMGの音楽は深いところで多くの人に響いて、音楽を通してたくさんの素敵な出会いがあった。音楽から受けた感動は一生残るものなのよ。

今のお話から、ウェールズ出身であることも、あの作品に影響していたように思いますが、いかがでしょうか?

S:お先にどうぞ、アル。

A:サウンドに関しては、当時私たちが知っていたウェールズのどのバンドとも違ってたわね。スチュアートが言ったように、地元では本当にもうロックンロール、R&Bといったものが主流だった。周辺は炭鉱地帯で、町もそれと関連した工業都市だったけれど、ヤング・マーブル・ジャイアンツが結成する頃にはそういったものが終わりを迎えようとしていたのよ。炭鉱が閉鎖されたり、でもその時点では地域の再生計画が立てられるのはまだ当分先のことで、だから町はかなりさびれていた。機会は減って、失業や貧困が蔓延っていた。ただ……これはスチュアートはたぶん違う意見だろうけど、そこには独特の魅力があったと思う。当時は、世界の他の炭鉱地帯やイングランド北部なんかでも同じ問題は起きていたけど、ある意味それが私たちを駆り立てたんじゃないかとも思うのよ。若いというのもあったと思うんだけど、それほど疲れ切ってるわけでもなく、シニカルでもなくて、何か違うことができるんじゃないかっていう希望を持っていた。
 とにかく、そうね、たしかにサウンドにもそういった荒涼感が若干あった気がするし、何らかの形でウェールズの文化が紛れ込んでいたと思うわ。何というか、ウェールズの魅力みたいなものがあるというか。スチュアートの方がもっとわかりやすく答えられるかもね。

S:僕も同意見だよ。僕は自分のウェールズ人であることについて葛藤があるというか、ウェールズを離れて長いことイングランドに住んでいるんだけど、でもウェールズは故郷であり、カーディフは大好きな場所で、心はウェールズ人なんだ。モリッシーの曲じゃないけど、僕はウェールズの心を持ち、イングランドの血が流れてるんだ(笑)。それからウェールズは“LAnd of Song”として知られていて、基本的にはケルト的なものなんだけど、そういった文化や気質もあるんだよね。

もし戦争になったら自分たちは机の下に隠れるとか窓に新聞を貼るくらいしかできないけど、金持ちと権力者はどこかにコンクリートの避難壕があって核汚染から身を守るんだろうっていう。それだけのことをたった1行で言うなんて素晴らしいわよね。
──アリソン・スタットン

歌詞で、もっとも好きなのはどれですか? それはどんな内容の歌詞なのでしょうか。

S:これまでいつも“N.I.T.A.”がもっとも好きな曲だと言ってきて、というのもこの曲には僕の子供時代への憧憬が込められているからなんだけど、でもさっきの話に出た“Final Day”かもしれないな。この歌詞は核戦争の恐怖について実際に何かを語っているからね。

A:私も同じ、“Final Day”。スチュアートの歌詞は本当に好きでリスペクトしてる曲がたくさんあるけど、“Final Day”は……私たちは核戦争の脅威のなかで大人になって、それは当時ホットな話題だったの。だからそういった「もし本当に戦争になったら……」といったことを熟考して、想像したシナリオを言葉にするというのはすごく難しいことだったはず。私はこれまでの人生で、たとえば事故だったり、誰かと死別したり、あまりの衝撃で物事がスローモーションに感じられるような体験をしたことが何度かあるけど、何と言うか、あの曲にはそういった感じがあって。変性意識状態に入るような、シナプスの働きがゆっくりになって、それによってものすごくシンプルなことがはっきりと見えてきて、たとえば赤ちゃんが泣いているだとか、そういう単純なことに気づいて、美しい単純さが生まれる。スチュアートはあの歌詞で、それを見事にやったんだと思うわ。

S:いまの話を聞いてて子どもの頃に家族に起こったひどい出来事を思い出したよ。そのときにものすごく動揺してたしかにスローモーションになったんだ。あの歌詞を書いていたときも無意識のうちにそうなっていたのかもしれないね。普段はほとんどあのアルバムを聴かないからこうやってインタヴューで訊かれてあらためて考えるわけだけど、あの歌詞にはかなり皮肉も込められていたと思うよ。出だしの“When the rich die last(金持ちが最後に死ぬとき)”には怒りと皮肉が込められているよね。何だろう、エッジがあるというか。

A:実際私たちはそう思ってたのよ。もし戦争になったら自分たちは机の下に隠れるとか窓に新聞を貼るくらいしかできないけど、金持ちと権力者はどこかにコンクリートの避難壕があって核汚染から身を守るんだろうっていう。それだけのことをたった一行で言うなんて素晴らしいわよね。

S:ありがとう。

YMGは成功したにもかかわらずあっけなく解散してしまいました。アメリカ・ツアー中に3人の気持ちがバラバラになってしまったという話を読んだことがありますが、じつはあの頃、あなたのなかにはセカンド・アルバムのヴィジョンが描かれていたんじゃないでしょうか?

A:それはなかったと思う。

S:実際に何が起こったかと言うと、まったく何の考えもなしに、口を開いて、バンドは終わりだと言ってしまったんだよ。終わりっていう直接的な言葉ではなく、実際どう言ったのかは覚えてないけど、そんなこと言うつもりはなかったのに口をついて出た。でもいま考えてみると、それは避けられなかったんだと思う。マネージャーがいなかったことが残念だね。もしマネージャーがいて、「君たちは本当によくがんばった。たくさん働いた。3ヶ月ほど休んで山登りでも釣りでもして、それから次を考えよう」なんて言われてたら違ってたかもしれない。でもあの頃はとにかくみんなものすごいストレスを抱えていたんだ。

A:本当にね。

S:しかも僕らはあまりコミュニケーションを取らないタイプだったしね。僕にとってあのプロジェクトは、大袈裟ではなく生きるか死ぬかくらいのものでとにかく必死だったから、控えめに言っても思いやりに欠けていたと思う。とくにアリソンに対してはそうで、そのことは本当に申し訳なく思っているよ。でも若い頃はとにかく未熟だったりするもので。そもそもはじめたときはうまくいくと思ってなかったし、失敗するものとばかり思っていたんだ。カーディフ、あるいは南ウェールズから成功したやつなんて誰もいなかったから。トム・ジョーンズとシャーリー・バッシー以外はね。ただ、失敗するだろうと思いつつも、でも生きるか死ぬかくらいに思い詰めているという、真逆の気持ちが自分のなかにあって、まるでかみそりの刃の上に立っているような気分だったんだ。

解散したことを後悔しませんでしたか?

S:もちろん後悔したよ。創造的なユニットとして、素晴らしいものが作れたかもしれないと思うからね。理論上は今でも可能かもしれないけど、まあないだろうな。その後もそれぞれが自分なりにクリエイティヴな活動をしてきたし、それにあの作品を作ってそれが特別なものとなった、それでいいじゃないかっていう考え方にも多くの真実が含まれていると思うんだよ。

ちょっと大きな質問で申し訳ないのですが、解散後、アリソンさんはWeekendで歌ったりしてましたが、お二人はその後の40年という年月をどのようにお過ごしだったのでしょうか? 

S:僕は歳をとって太った(笑)。

A:私はYMGのあとかなり頭が混乱していたから自分を見つめる必要があって、それが何年かかかって、いちどロンドンに引っ越してWeekendを結成してアルバムを1枚とEP2枚、ライヴ・アルバムを作ったんだけど、まだ頭のなかで整理がつかなかったからウェールズに戻ってWeekendを終わらせて。それでもう今後音楽をやることはないだろうと思ったのよ。音楽や、ライヴや、当時多くのミュージシャンが送っていたような快楽主義的なライフスタイル、そういったものが自分には合わないんだと思ったからね。それでケアワーカーとして働いたり、太極拳を教えたりしていた。そしたら思いがけずレコーディングの誘いがきて、音楽はもうやらないと決めてたのに、やりたいという誘惑を無視することはできなかった。そしてイアンと2枚作って、スパイクとも一緒に作り続けたという。ただそれは私の人生においてヤング・マーブル・ジャイアンツやWeekendほど大きな比重を占めるものではなくて、サイド・プロジェクト的なもので、カイロプラクターというのがたぶん私の主な役割ね。いまのところ音楽面の計画は何もないし、数年前に今後何かやることは絶対ないと言ったけど、絶対ないなんて絶対言うべきじゃないということは学んだわ。

S:僕はさっき言った通りだけど、途中で美しい女性に熱烈に恋をして結婚して18年間ともに過ごして3人の子どもを授かって離婚したんだけど、子どもの頃からすごく結婚したかったからそれは本当に重要なことだったよ。音楽に関してはYMGのあと何年も精神的に参っていてものすごく落ち込んでいた。高所恐怖症にもなって、どうすすることもできず、非常に静かに暮らしていたね。外出もせず仕事もせず、でも音楽だけは作っていた。音楽を作ってレコーディングすることだけは止めなかったんだ。ここ数年でその頃の音源がThe Gist名義でリリースされているんだけどね。
僕にとっては最初にギターを手に取ったときというのが人生を決定づける瞬間で、アリソンがカイロプラクターになったということは、彼女という人間について多くのことを物語っていて、アリソンは本当に思いやりがある人なんだよ。そして僕にとってはソングライティング、そして詩を書くことなんだ。だから最終的にはそれぞれ生き延びて成功したと言えるんじゃないかな。

ファンとしては今回のようなコンプリートなものが出るのは嬉しい限りですが、みなさんのなかで、音楽への情熱という点ではいま盛り上がっている感じなのでしょうか? 何度か再結成ライヴをやられていますが、久しぶりにみんなと会ったときはどんな感じで、ライヴ自体はどんなでしたか? もうこれ以上の再結成はまったく可能性がないですか?

S:さっきアリソンが言ったように、絶対ないとは言わないよ。

Billy Nomates - ele-king

NOはもっとも大きな抵抗
あなたを無にすることにNO
NOは歩くこと、お喋りではない
ノー、それはいいことに思えない
YES、私たちが共闘すれば強い
しかし、NOはパワー
どんなときも、どんな場所でも
ビリー・ノーメイツ“No”

 ノー、ダメですよ、ダメ。洗練された我らが日本においては、権力や富の世界に向かって二本指を立てることなんてことはもう流行らないでしょう。だが、セックス・ピストルズを生んだ国では、2020年はビリー・ノーメイツ(友だちのいないビリー)という名の、ずば抜けた才能と熱いパッションをもったシンガーがデビューしている。夜中にいそいそとスーパーストロングの500mlを買っているような、いつだって財布が薄くて軽い人たちへの励ましの歌、スリーフォード・モッズに続く労働者階級からのみごとな逆襲である。
 レスター出身のビリー(本名Tor Maries)は、売れないバンドで歌いながら一時期はうつ病を患ったというが、スリーフォード・モッズに勇気づけられてふたたび音楽をやる決意をする。ぼくが彼女の存在を知ったのも、年明け早々に新しいアルバム『スペア・リブ』をリリースするスリーフォード・モッズの先行シングル曲、“Mork N Mindy”がきっかけだった。
 で、意外というかさすがというか、彼女の才能をいち早く見抜いたのは、ブリストルのジェフ・バロウ(ポーティスヘッド)だった。彼女のデビュー・アルバムはバロウ・プロデュースによる彼のレーベルからのリリースとなる。アルバムがリリースされたのは去る8月、だからこれは4ヶ月遅れのレヴューです。

プロテインシェイク飲んで鏡を見るのは、NO
恐れのない夜のジョギングには、YES
デジタル世界の物語には、NO
無意味な比較には、NO
私にはあなたの言葉がある

 しかしなんだろう、デビュー曲“No”のMVにおいて踊っている彼女を見ると、ぼくはそれこそザ・スリッツやザ・レインコーツといったポスト・パンクの偉人たちを思い出さずにいられない。男の目線なんかをまったく気にしていないその服装、その髪型、その立ち振る舞いがまずそうだし、ダンスのレッスンなどクソくらえと言わんばかりの動きがまた最高なのだ。
 “No”に続くシングル曲、“FNP”=Forgotten Normal People(忘れられた普通の人びと)は、鋭いシンセベースとエレクトロ・ビートの反復をバックに彼女がラップする。この曲もキラーだ。

私は床に寝る
狭い部屋で
やりたくない仕事のために
私はフォークでスプーンじゃない
すべては失敗にて終了
生活はあまりにも高価だし
あー、私を守るものなどない
そう、血が欲しい?
私はポジティヴだよ
 
かつてそのために走ってもみた
いつからやってみたけどダメ
1マイル離れても連中は私をかぎつける
だから私は不名誉ながら辞職
で、いま私にあるものと言ったら
私は何も所有していないという事実に
なにごとも私を所有できないということ

 もうひとつのシングル曲“Hippy Elite”では、題名通り環境のために活動する裕福なリベラルを面白く皮肉っているようだが、彼女の歌詞の主題もまた、スリーフォード・モッズとリンクしている。格差社会における持たざる者たちから生まれた詩であり、風刺であり、そして怒り。ひるむことのない情熱。

 ビリーの音楽もスリーフォード・モッズ・スタイル(あの冷酷なループ&ベース)を発展させたものだが、ジェフ・バロウがその卓抜したプロデュース能力をもって、そのフォーマットを鮮やかなポップ作品へと改変している。彼は本当に良い仕事をしたと思う。サウンドをざっくりと喩えるなら、スリーフォード・モッズ・ミーツ・ブロンディーとでも言えるのかもしれないけれど、全収録曲にはバロウらしく機知に富んだ実験(グリッチ、ミニマリズム、そしてベース&エレクトロ等々)があり、耳も心も楽しませてくれるわけだ。ええと、ジェイソン・ウィリアムソンも1曲参加しております!
 UKではコロナ禍においてスリーフォード・モッズのベスト盤がチャートの上位になったが、まあ、いまの日本ではこうしたパンクな音楽は売れないということでとくに話題にもならなかった。だが、政治のトップがことごとく不信を増幅させているご時世、この手の音楽を必要としている人たちは必ずいるはずである。そもそもビリーの音楽は、消費生活を気ままに謳歌することなど到底できない、まったく味気ない日常を送っている人たちが日々をオモシロ可笑しく過ごすための知恵でもあるのだ。いやー、良かった。2020年という悪夢のような1年にもひと筋の光があった。

Jun Morita - ele-king

 電子音楽家の森田潤が元旦からなんと24時間耐久無料ライヴを敢行、その模様がストリーミングされる。森田は日本のポスト・パンクを代表するひとり、EP-4の佐藤薫のレーベル〈φonon(フォノン)〉の所属アーティストで、今月の18日には同レーベルからセカンド・ソロ・アルバム『Sonus Non Capax Infiniti』をリリースする。

 で、そのライヴとは、令和3年正月元旦の正午12時から翌2日の正午12時まで、24時間ノンストップのソロ・パフォーマンス《MORITA SYNTHESIS 24HRS──みなしごたちへのお年玉──》。プロデュースは演出家の芥正彦。演奏するヴェニューは、約半世紀前、あの阿部薫と芥正彦が名盤『彗星パルティータ』を制作した現場、劇団ホモフィクタスのスタジオ105。
 当日の視聴は無料です。モジュラーシンセによる独自の音世界を繰り広げる彼の、この並々ならぬ試みを見逃さないように。

アクセス:https://youtu.be/LP-szzgq28c
芥正彦:www.akutamasahiko.com
φonon:www.skatingpears.com
視聴:https://audiomack.com/sp4non

New Order - ele-king

 いまから20年後の未来では、音楽ファンはこう振り返るでしょう。「ああ、2020年の最悪な年にはニュー・オーダーが“ビー・ア・レベル(Be a Rebel)”を発表したっけ……」。ニュー・オーダーの5年ぶりの新曲、まあ、ずいぶん話題になりました。多くのリスナーのなかにNOには少なからず熱い思いがあるからでしょう。で、その熱い曲のミュージック・ヴィデオが公開されました。これもまた、シュールかつ暗示的な、なかなかの力作です。また、限定アナログ12インチが12月4日(金)に発売されます。こちらには、バーニーとステファンによりリミックス・ヴァージョンが収録されます。

[YouTube] https://youtu.be/JOoyPT6RoF4
[LISTEN & BUY] https://smarturl.it/nobar

■以下はレーベルからの資料より

 ミュージック・ヴィデオはスペインのNYSUが制作し、バンドは次のように述べている。

“マドリードのNYSUには、「レストレス」(最新アルバム『ミュージック・コンプリート』収録)のミュージック・ヴィデオを以前作ってもらったんだけど、彼らの映像に対するイマジネーションには僕らバンドも心底感銘を受けていたんだ。今回「Be a Rebel」で再び彼らとタッグを組んだんだけど、インスピレーションあふれる独特の美的感覚で独創的なヴィデオを作ってくれました”


 コロナ禍の影響により発売が延びていたアナログ12インチは、12月4日(金)に発売が決定した。この12インチには、オリジナルの他、バーナード・サムナー、スティーヴン・モリスのリミックスなど全4曲が収録されている。またバーナード・サムナーのリミックス「Be a Rebel (Bernard’ s Renegade Mix)」は、adidas Spezialとのコラボレーションで使用された曲のオリジナル・ヴァージョン。

[adidas Spezial CF/ YouTube]
https://bit.ly/3mvGsTg

 「タフな時代だからこそ、この曲をみんなに届けたかったんだ。ライヴはしばらくできないけれども、音楽は今なお私たちみんなで分かち合えるもの。楽しんでもらえると嬉しい……また会える日まで」──バーナード・サムナー

 本来この曲は、今年秋に予定されていた彼らのツアーに先駆けて発売される予定だったが、そのツアーは2021年に延期され、それでも困難な時にこの曲を発売することの意義をバンドが感じて発売に至った。また、今年3月に予定されていたジャパン・ツアーは、コロナ禍の影響により2022年1月に実施される。(https://www.creativeman.co.jp/event/neworder2020/)

「反逆者になろう 破壊者じゃなくて」と歌われるこの高揚感あふれる曲は、このタフな時代においてわれわれ自身を祝い、いま持っているものに感謝しようというメッセージが込められている。その歌詞の対訳は以下の通り。

■「ビー・ア・レベル」(Be a Rebel)歌詞対訳
https://trafficjpn.com/news/nobar/

■ジャパン・ツアー日程
大阪 2022年 1月24日(月) ZEPP OSAKA BAYSIDE
東京 2022年 1月26日(水) ZEPP HANEDA
東京 2022年 1月28日(金) ZEPP HANEDA
制作・招聘:クリエイティブマン 協力:Traffic
https://www.creativeman.co.jp/event/neworder2020/

■商品概要(アナログ12インチ)
NOBAR Insta Square 3.jpg
アーティスト: New Order
タイトル: Be a Rebel
発売日:2020年12月4日(金)

― Tracklist ―
A1. Be a Rebel
A2. Be a Rebel (Bernard’ s Renegade Mix)
B1. Be a Rebel (Stephen’ s T34 Mix)
B2. Be a Rebel (Bernard’ s Renegade Instrumental Mix)

[BUY] https://smarturl.it/nobar

■最新オリジナル・アルバム『ミュージック・コンプリート』(2015年)まとめ
https://bit.ly/1FHlnZJ

■ニュー・オーダー バイオグラフィ
https://trafficjpn.com/artists/new-order/

Kruder & Dorfmeister - ele-king

 クルーダー&ドルマイスターとはジョイントの高級ブランド名ではない、オーストリアはウィーンのふたり組、90年代の音楽におけるとっておきのカードだ。彼らがシーンに登場したのは1993年、マッシヴ・アタックの『ブルー・ラインズ』(ないしはニンジャ・チューンやモ・ワックス)へのリアクションだった。サイモン&ガーファンクルによる名作『ブックエンド』のジャケットのパロディ(だからふたりの名字を名乗ったのだが、実際リチャード・ドルマイスターがアート・ガーファンクルに似ているので、パっと見た目は『ブックエンド』と間違えそうになる)を意匠にしたそのデビューEPのタイトルは、モーツァルトからシューベルトと歴史あるクラシック音楽の街に似つかわしいとは思えない「G-Stoned」。そう、ガンジャ・ストーンド。Gは、彼らが住んでいた通り名の頭文字でもあるのだが、しかしもっとも重要なのは、どこまでもメランコリックな『ブルー・ラインズ』に対して、「G-Stoned」はとにかく至福の一服だったということである。

 欧州において音楽教育がとくにしっかりしている言われているウィーンのふたりは、トリップホップと呼ばれるスタイルではさまざま音楽を混ぜ合わせることができるというその可能性を早くから理解していた。「G-Stoned」のわずか4曲には、従来のトリップホップの主要要素であるヒップホップ、ファンク、ソウル、ダブやハウスに加えて、映画音楽やラウンジ音楽、そしてジャズやブラジル音楽の美味しいところも加えてある。のちに本人たちは「1日中吸っているのに飽きたから音楽を作った」などとうそぶいているが、本当のことを言えば彼らは友人のレコード・コレクションをサンプリングしまくり、そして綿密な構成を練って職人的なミキシングを施して(クルーダーはすでにスタジオで働いていた)作品を完成させたのだった。それは、同じようにサンプルデリックな傑作であるDJシャドウの『エンドロデューシング』の暗さやDJクラッシュの「Kemuri」のストイシズムともまったく対照的なサウンドの、自称“オリジナル・ベッドルーム・ロッカーズ”による完璧なデビューEPだった。未聴の方は、ぜひ“Hign Noon”から聴いて欲しい。

 が、しかしK&Dは、その後ミックスCDを出してはいるが、コンビでのオリジナル作品発表はすぐに途絶えてしまい、90年代半ばからはそれぞれがそれぞれのプロジェクトで作品を制作する。リチャード・ドルマイスターは、ルパート・フバーとのToscaを始動させると、「Favourite Chocolate」や「Chocolate Elvis」、あるいは『Opera』や『Suzuki』といったヒット作を出しつつ、ここ数年はそれほど話題にならなかったとはいえ現在にいたるまでコンスタントに活動を続けている。いっぽうのピーター・クルーダーは、90年代にピース・オーケストラという名義で素晴らしいアルバムを2枚リリースしている。
 ちなみに90年代のジャケット・デザインにおいて個人的にベストだと思っているのが、ピース・オーケストラのファースト・アルバムだ。世界で唯一、(肌色のジャケットに)絆創膏の貼られたレコード/CDであるそれは、ラディカルなユートピア思想がなかば感傷的に表現されているとしか思えないという、ぼくにとっては哲学的と言えるアートワークだった。こればかりはアナログ盤の見開きジャケットでたしかめないと、その衝撃はわからないんだけれど。

 いずれにしても、ダンス・ミュージックを愛するリスナーにとってK&Dは立派なリジェンドなのだが、なんと……、そう、「なんと!」、1993年のデビュー以来27年目にしてのファースト・アルバムが先日リリースされたのである。で、そのタイトルは『1995』、日本人の感覚で言えば意味深くも思えるが、これはチルアウト黄金時代の年を指しているそうで、アルバムに収められた14曲は当時彼らが録音したDATからの発掘をもとに手を加えられたものらしい。まあ、再結成して新たに録音した代物ではないようだ。とはいえ、27年目のファースト・アルバムであることに違いはない。

 ロバート・ジョンソンのレコード(おそらく78回転の10インチ盤)をサンプリングした“Johnson”からはじまる『1995』は、K&Dの魅力を、もうこれ上ないくらいに絞り出している。肩の力の抜けたレイジーなグルーヴの魅力──K&Dはいつだって安モノのせこい品をまわしたりしたりはしなかったが、ここでも極上のストーナービートと気の利いたサンプリング(ラロ・シフリンからアントニオ・カルロス・ジョビンなど)がエレガントなミキシングによって展開されている。たとえば“Swallowed The Moon”や“Dope”などは、これこそチルアウトって曲だし、“King Size”にいたっては……たしかにぶっといものを口にくわえてるときのメロウなウィーン流のダブかもしれない。
 意外なところでは、13分にもおよぶ“One Break”がある。寒い冬の夜明け前のようにダークな曲で、リズムはいつものヒップホップ・ビートからドラムンベースへと展開する。クローサーのアンビエント・トラック“Love Talk”も彼らの試行錯誤の記録だろう。いろいろとやっていたんだなと。懐かしくもあり、グローバル・コミュニケーションの『76:14』がそうであるように、いま聴くと新鮮でもある。ただひとつ言えるのは、『1995』は思いも寄らぬ贈り物だということ。いまはもう寒い冬だけれど、1995年のように、意味もなくただただ愛を感じながら寝そべってみるのもいいかも、と思ったりもする。ピース・オーケストラの見開きジャケットが描いたあの凄まじい、あの時代ならではの光景は、現代では到底あり得ないのだろうけれど。


Underground Resistance - ele-king

 ついに動き出した。
 アンダーグラウンド・レジスタンスが新たに12曲入りのCD『Assembly Unite Resist Change』をリリースする。“Message To The Majors” や “Riot”、『Revolution For Change』所収の “Code Of Honor” や X-101 の “Sonic Destroyer” といった初期のハードな曲、あるいは「Electronic Warfare」や「同 2.0」からのタフめな曲がセレクトされている点、あるいは「集結、連帯、抵抗、変革」なる直球のタイトル、赤と黒のアートワークなどから勝手に想像するに、これは2020年という状況に対するURからの応答であり、のろしのようなものではなかろうか。

 ちなみに、URのマッド・マイク&コーネリアス・ハリスの最新インタヴューが『別冊ele-king ブラック・パワーに捧ぐ』に掲載中ですので、未読の方はぜひチェックを。

Underground Resistance
Assembly Unite Resist Change

UR / Submerge
UR2018/D
27th Nov, 2020

01. Kill My Radio Station
02. Kut (Heavy Analog Deployment)
03. Message To The Majors
04. Riot
05. The Force
06. Sonic Destroyer
07. I AM UR
08. Silicon Saigon
09. Code Of Honor
10. Electronic Warfare
11. The Safety Is Off
12. Hold My Own

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