「KING」と一致するもの

R.I.P. U-Roy - ele-king

 2月17日、ジャマイカのキングストンでEwart Beckford──音楽の世界ではU-ロイの名前で知られる偉人が亡くなった。没年78。
 U-ロイは、ジャマイカのDeeJay(DJ)カルチャーのオリジネイター──厳密にオリジナル=いちばん最初ではないが、もっとも最初にその人気と影響力をもったことからほぼオリジネイターと言われている。U-ロイとは、マイクを握って音楽に合わせて喋る(トースティングする/ラップする)ことの古典である。
 実際の話、ジャマイカのDeeJay(DJ)カルチャーは今日ぼくたちが親しんでいる音楽の始原と言える。そもそもDeeJay/ディージェイは、サウンドシステム(=強力なスピーカーとアンプを擁する、レコードに合わせたダンス・パーティ)において場を盛り上げるために喋りを入れる司会者めいた役のことで、マイクを手に取り曲間に曲を紹介したりキャッチフレーズを入れたりしたという。ちなみにレコードをかけながら最初に喋った人物=厳密な意味でのオリジネイターはカウント・マチューキである(もちろんキング・スティットも忘れてはならない)。ジャマイカでは座談風にラップすることはトースティングと呼ばれている。
 「ディージェイをやるようになったのは14歳のときだった」、2006年に来日した際、U-ロイはぼくの取材でこう話してくれた。「サウンドシステムにはもっと小さい頃から通っていた。おばあちゃんに行ってもいいか訊いてから行った。もちろんいつでも行かせてもらえるとは限らない。そんなときは寝たふりをして、みんなが寝静まってから家を出たものだ。当時のサウンドシステムは、夜の8時にはじまって朝の4時ぐらいに終わる感じで、とにかくたくさんの人がそこに集まっていたんだよ」
 マチューキを崇拝していたU-ロイだったが、ディージェイになった理由は歌うよりも喋るほうが簡単に思えたからだという。とはいえ、レコードに合わせて喋りを入れるということを客をさらに呼び込むためのひとつの芸にして、しかもそれ自体をあらたな作品/表現としてしまうことはそう誰にでもできることではないだろう。U-ロイはラップの先祖とも言われている。
 彼がマイクを握りはじめたのは60年代初頭だが、ディケイドの後半、つまりロックステディ時代に残したいま聴いてもまったく素晴らしい記録は──世界初のディージェイ・アルバムとして知られる『Version Galore』(1971)で聴ける。ここでは、ロックステディの名曲(ヒット曲)の数々のリディムに合わせてのU-ロイのトースティングがミックスされているわけだが、そのなかにはディージェイ音楽としては空前のヒットとなった“Wear You To The Ball”も含まれている。彼の最初の3枚のシングルは、もとの歌手が歌っているレコードよりも売れたのだ。それは衝撃であり事件である。
 つまりディージェイの台頭は、大衆音楽史における変革でもあった。先にも述べたように、音楽で歌わなくても喋りが面白ければ人は集まるということが証明されたこと、既発の録音物はそれで完結ではなく使い回しができるということが実証されたこと、そして、ディージェイの喋りをより効果的に演出するためには既発の録音物から歌を削除したインストゥルメンタルのほうが向いていること、しかもそのインストゥルメンタルの音の抜き差しによる空間の創出によってさらに喋りが際立つこと──サウンドシステムというブロック・パーティ/レイヴ・パーティの青写真のなかでラップという手法は胎動し、それとリンクしてダブという既存の曲を再構築するという、すなわち今日ぼくたちがリミックスと呼んでいる手法もほぼ同時に生まれたのだった。U-ロイはそうしたダンスホール文化のパイオニアのひとりであり、そして彼の初期のパートナーこそダブの王様キング・タビーその人だった。
 「キング・タビーのシステムでディージェイをはじめて人気が出てくると、ジャマイカ中から人が集まってきた」、ジャマイカのダンスホールを制覇することなる当時の様子をU-ロイはこのように語った。「数あるシステムのなかでもタビーのアンプとスピーカーはすごい技術力で作られていて、とにかく抜きんでいていた。当時はまだ彼のメインの仕事はウォーターハウス地区のゲットーで働く電気技師だった、修理なんかをやるようなね。彼のシステムはほかでは聴いたことのない大音量だったけれど、スピーカーを飛ばしたことはいちどもないんだ。エコー・マシンなど最新の機材も輸入したり、アンプもかなりハイパワーだった。タビーはみんなが寝静まったくらいの時間にヴォリュームを上げるんだけど、それぞれの家庭で電気をあまり使わなくなった時間帯を待って、町中の電気をそこに流れ込ませるためにね」
 U-ロイはその後、〈Virgin〉にライセンスされたソウル・シンジケートとの『Dread In A Babylon』をはじめ、デジタル時代になっても多くのオリジナル作品を残している。90年代はかねてから大ファンだったというマッド・プロフェッサーの〈Ariwa〉から数枚のアルバムを発表しているが、2018年にも同レーベルから『Talking Roots』を出している。また、ベスト盤『The Originator』をはじめとする数々のコンピレーション盤も残しているが、サウンドシステム文化からも離れず、シャバ・ランクスやランキン・ジョー、チャーリー・チャップリンといった次世代のディージェイたちの育成に力を注いでもいた。
 最後まで精力的に活動的していたU-ロイは、2019年にはアルバム『Gold: The Man Who Invented Rap(ゴールド:ラップを発明した男)』をレコーディングしたそうだ。そこには元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズ、キリング・ジョークのユース、シャギー、サンティゴールド、ジギー・マーリーらが参加している。夏になる頃にリリース予定だという。

 あらためて言おう。たとえばポップ・ミュージックのファンであれば誰もが知っている“Tide Is High”という曲がある。ザ・パラゴンズの曲で、ブロンディのカヴァーも有名だ。このレコードにU-ロイのトースティングがミックスされると、しかしそれはU-ロイの曲になってしまうのだ。すごいことだと思う。ぼくはこの偉人に取材したとき、限られた時間でついついキング・タビーのことばかり訊いてしまったのだが、U-ロイはこの失礼な日本人相手に始終穏やかに、事細かにタビーの話をしてくれた。持って来たレコードにサインをもらったのだけれど、このDJカルチャーの大大大先輩は、「peace(平和)、love(愛)」と書いてくれた。ゲットーのサウンドシステムで長年マイクを握ってきた先達からの重みのある言葉だと思う。
 最後に『ガーディアン』に掲載された追悼記事のなかの彼の言葉を引用しておきます。「私はただ人びとがユニティするよう呼びかけていただけだ。私は決して人を見下したりしなかった。暴力はじつに醜く、愛はじつに愛らしい。私は大学に行ったことなどないが、常識はある。自分が学んだことを最大限に活用している」
 
 なお、これからU-ロイを聴いてみたい人にぼくからのおすすめは、まずは何よりも『Version Galore』。これがディージェイというスタイルを最初に確立した作品である。古典中の古典だが、いま聴いても充分輝いている。ロックステディ時代(Treasure Isle時代)を網羅している編集盤『Super Boss』もおすすめ。ここではもうひとつの初期の大ヒット曲“Rule De Nation”も聴ける。ベスト盤では I Am The Originator』が曲数も多くおおすめ。キング・タビーとの絡みでは『U-Roy Meets King Tubbys』がある。

KODAMA AND THE DUB STATION BAND - ele-king

 「もうがまんできない」という声がいろんなところから聞こえてくる昨今、KODAMA AND THE DUB STATION BANDのライヴではお馴染みのJAGATARAのカヴァー、「もうがまんできない」のカヴァー12インチ・シングルが3月にリリースされる。3月まで「もうがまんできない」人のために、今週水曜日から先行配信もされています。
 そもそもこの曲は、宮藤官九郎の作・演出による大人計画の舞台、ウーマンリブvol. 14「もうがまんできない」のために、音楽担当の向井秀徳のご指名をきっかけに演奏し、録音したもの。新型コロナウイルス感染拡大を受け、残念ながら舞台は中止となってしまった(その後、宮藤官九郎監督のもと、WOWOWでのオリジナル番組化が実現し、無事、この曲も使用された)。まさに待望のリリースとなるこの曲を、12インチ・シングルに先んじていま、世に放つことの意味をかみしめながら楽しんでほしい。
 なお、12インチのほうの片面には、LP版『かすかな きぼう』には収録時間の関係で収録されなかった“STRAIGHT TO DUB (DUB VERSION)”も収録される。

KODAMA AND THE DUB STATION BAND
もうがまんできない / STRAIGHT TO DUB (DUB VERSION)

KURASHI/Pヴァイン
¥2,500+税
発売日:2021年3月24日

https://dubstation.tokyo

Various Artists - ele-king

 「地球上でもっとも活きのいいジャズは、ケープタウンやヨハネスブルグそして国中から集まった南アフリカに拠点を置くプレーヤーたちが発している」──これは『Wire』誌のリード文だが、パクってしまおう。『Indaba Is』を聴いていると、悲壮感に満ちた北半球の音楽が嘘のように感じられてくる。いや、南半球とてもちろんCovidはまん延し、ロックダウンもしている。昨年末は感染力の強い変異種が確認されたばかりだ。しかし、『Indaba Is』は最終的には、“希望に満ちた喜びのジャズと即興の暴動”になっている。『We Out Here』に次ぐジャイルス・ピーターソンの〈Brownswood〉が手掛けた素晴らしいコンピレーション・アルバムだ。紹介しよう。

 『Indaba Is』には南アフリカ産の現代ジャズが全8曲収録されているが、アルバムに参加したのは総勢52人。収録された8曲は、既発の曲ではない、すべてこのアルバムのために新録さている。ロックダウンの合間をぬって昨年6月の5日間で制作されたそうだ。南アフリカのジャズ・シーンで現在注目されているほとんどすべての若いプレーヤーは楽曲のいずれかでフィーチャーされている。
 南アフリカにはジャズの歴史があるが、アパルトヘイト時代には多くのジャズ・ミュージシャンは国外に亡命した。1990年に釈放されたネルソン・マンデラが1994年に大統領に就任するとアパルトヘイトは廃止され、タウンシップ・ジャズ、クウェラ、クワイトといった彼の地の音楽が国際的にも知られるようになった。近年のゴムやアマピアノなどは欧米や日本の新しモノ好きたちのちょっとしたトレンドにさえなっている。しかし、『Indaba Is』はそうしたいま旬の最新情報集ではない。「(国外には)南アフリカにいまルネッサンスが起きていると考えている人が大勢いる。しかしそうではない。それは私にとって、起こり続けているものだ。継続されてきたもの。ずっと続いていて、その勢いがいますべてが起きているかのように見えているだけ」、本作にも参加しているピアニストでシンガーのタンディ・ントゥリ(Thandi Ntuli)は『Wire』誌の記事のなかでこう話している。

 ヨハネスブルグのレーベル〈Afrosynth〉は昨年9月に地元のDJの選曲のもと、『New Horizons』と冠して『Indaba Is』とほぼ同様のコンセプトのコンピレーションを出している。だから『Indaba Is』だけが南アフリカの現代ジャズを伝えるものではない。ただ、本作はそのきっかけを作ったのがシャバカ&ジ・アンセスターズだったという点において必然の産物だった。ジ・アンセスターズがそもそも南アフリカのジャズ・ミュージシャンから成っているバンドだし、シャバカは以前から彼の地で演奏し、彼の地のジャズ・ミュージシャンたちと交流し、また彼らのほうでもUKで演奏する機会を得ていた。ジ・アンセスターズはもちろん本作に参加している。

 ザ・ブラザー・ムーブス・オンなる集団のリーダー、シヤボンガ・ムセンブ(Siyabonga Mthembu)はタンディ・ントゥリと並んで本作のキューレター役を担っている。ザ・ブラザー・ムーブス・オンは、音楽のみならずDIYによる演劇やパフォーマンス・アートも展開し、しばし(本人たちの意志とは関係なく)サン・ラーのアーケストラと比較されがちだそうだ。ロゴの入った服は着ないと言い切るムセンブは、『Wire』誌が言うには、オーソドックスなジャズ物語とはほど遠く、大学でジャーナリズムや政治を専攻していたそうだが、このコミュニティには純然たる音楽家以外にも、ドラマーであり学者でもあるトゥミ・モゴロシ(ジ・アンセスターズ)のような人も混じっている。『Indaba Is』はたいした考えもなくショーケース的に曲が並べられた編集盤ではない、深い思考があったうえでの音楽が記録されている。

 アルバムはボツワナ生まれのピアニスト、ボカニ・ダイアーによる意気揚々とした美しい曲、“Ke Nako”にはじまる。セツワナ語で「The Time Is Now」を意味するこの言葉は、反アパルトヘイト運動のスローガンだったというが、これが本作のオープナーを務める意味は大きい。なぜならひとつには、「ネオアパルトヘイト」と呼びうる情況がいまは存在するのだとタンディ・ントゥリは説明する。制度としてのアパルトヘイトはたしかに廃止された。しかし1994年に感じていた楽天主義は年を追うごとに衰退し、結局のところ国からのサーヴィスを受けられる白人居住区と非白人が暮らす貧困なエリアとの分断は依然としてあると。
 そしてもうひとつ、ゆえに、本作が2020年6月に録音されたことの意味も大きい。5月25日米ミネアポリスでジョージ・フロイド暴行事件が起き、それが発火点となってブラック・ライヴズ・マターなる歴史的な蜂起が世界のいたる都市で起きたまさにその真っ直中だったからだ。
 『We Out Here』において、反植民地主義の先駆的思想家フランツ・ファノンによる有名な著作『黒い皮膚・白い仮面』へのオマージュ──シャバカ・ハッチングスの“Black Skin, Black Masks”────がアルバムに確固たる意志を与えたように、『Indaba Is』にもファノンの影響下による1曲──ザ・レチッド(The Wretched)の“What is History”──がある。話は逸れるが、スラヴォイ・ジジェクが新刊『パンデミック2』のなかでBLMについてなかなか多くを言及しており、ファノンの話も出てくる。そこでジジェクは、(あれだけヨーロッパの植民地主義を糾弾した)ファノンが決して現代の白人社会に17世紀の奴隷商人の責任を要求したりはしなかったことに着目している。白人の心の内側に罪責感を植え付けることが彼の目的ではなかった。
 良いエピソードがある。『Wire』誌によれば〈Brownswood〉は、このアルバムの制作中(つまりBLM熱の最高潮のとき)、(白人である)自分たちは植民した側の人間であり、今回のこのようなコンピレーションは搾取になるではないかと、一時はリリースすべきではないと考えたそうだ。ムセンブに電話で、これが搾取にならないためにはどうしたらいいのかを訊いたという。結果、レーベルと彼らとの関係性は強化されることになった。契約内容は思いやりのある内容に改訂されて、作品はこうして世に出たわけである。

 『Indaba Is』には、南アフリカのジャズのハイブリッドな魅力が詰まっている。UKジャズにレゲエやソカが混じっているように、こちらには当地の多彩なリズムがあり、また、伝統的でスピリチュアルなハーモニー、南アフリカのメロディとモダンなソウルとの融合、インド音楽との対話まである。ぼくのお気に入りは先に挙げた“Ke Nako”、マーティン・ルーサー・キングの暗殺が語られる、まるでCANめいたファンクの“What is History”、牧歌的なアコースティック・ギターが美しいシブシル・ザバの“Umdali”、ジ・アンセスターズによるグルーヴィーなジャズの“Prelude to Writing Together”、タンディ・ントゥリによるネオ・ソウルめいたメロウな“Dikeledi”……ザ・ブラザー・ムーブス・オンによる瞑想的な“Umthandazo Wamagenge”もいいし、ま、どの曲もいいす。

 南アフリカのジャズ・シーンはいま、まったく楽天的ではない。Covidの真っ直中であり、それ以前から文化的なインフラを持たない同国のミュージシャンはますます窮地に追い込まれている。そこで彼らは現在デジタル・アーカイヴとそのネットワークを構築中だという。だが、昨年の6月にアフリカ大陸の最南の国にいる彼らの団結によって録音されたこの音楽──頭と身体と心のこもったジャズの変種──はいまこうして日本で聴ける/CDやレコードを買うことができる。

interview with KANDYTOWN (Neetz & KEIJU) - ele-king


KANDYTOWN
LOCAL SERVICE 2

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Hip Hop

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KANDYTOWN
LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION

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 東京・世田谷を拠点にするヒップホップ・コレクティヴ=KANDYTOWN。グループとしてはメジャーからこれまで2枚のアルバム(2016年『KANDYTOWN』、2019年『ADIVISORY』)をリリースし、さらにほとんどのメンバーがソロ作品をリリースする一方で、音楽のみならずファッションの分野でも様々なブランドとコラボレーションを行なうなど、実に多方面に活躍する彼ら。コロナ禍において、ほぼ全てのアーティストが活動を自粛せざるをえない状況であった2020年、彼らは『Stay Home Edition』と題したシリーズを自らの YouTube チャンネルにて開始して新曲を立て続けに発表し、多くのヒップホップ・ファン、音楽ファンへ勇気と活力を与えた。

 この『Stay Home Edition』で公開された3曲をブラッシュアップし、さらに3つの新曲を加えて2月14日にリリースされたEP「LOCAL SERVICE 2」。タイトルの通り、このEPは2年前の同日にリリースされた「LOCAL SERVICE」の続編であり、この2月14日という日付が KANDYTOWN のメンバーである YUSHI の命日ということを知っているファンも多いだろう。今回のインタヴューでは KANDYTOWN のメイン・プロデューサーである Neetz と昨年、アルバム『T.A.T.O.』にてメジャー・デビューを果たした KEIJU のふたりに参加してもらい、彼らにとって非常に大きな意味を持つ 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」がどのような過程で作られていったのかを訊いてみた。

注:これまで配信のみでリリースされていたEP「LOCAL SERVICE」と「LOCAL SERVICE 2」だが、今年4月に初めてCD化され、2枚組のCD『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』として〈ワーナー〉からリリースされる予定。

スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。(Neetz)

あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって〔……〕。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。(KEIJU)

前回インタヴューさせていただいたのがアルバム『ADVISORY』のリリースのタイミングで。その後、コロナで大変なことになってしまったわけですが、やはり KANDYTOWN の活動への影響は大きかったですか?

KEIJU:NIKE AIR MAX 2090 にインスパイアされた楽曲の “PROGRESS” (2020年3月リリース)を作っていたときが、世の中が「やばい、やばい」ってなっていた時期で。自分たちも世間の皆様と同じように困ることもあったんですけど、人数が多いグループなので集まりづらいっていうのがいちばん大きくて。どうしても目立つ集団でもあるので、人目を気にして、外では会えなくなりました。けど、一昨年から、自分たち用のスタジオや事務所を用意するっていう動きをしていたのもあって。ちょうど去年の4月くらいに事務所とスタジオを借りて。それで音楽を作ろうってはじまったのが、今回出た「LOCAL SERVICE 2」にも繋がる『Stay Home Edition』で。

『Stay Home Edition』はどういったアイディアから来たものでしょうか?

Neetz:スタジオができたタイミングで緊急事態宣言が出て。こういう時期だから音楽を出してステイホームしている人に聴いてもらえたり、少しでも勇気づけられたらっていう感じで。それでみんなで集まって曲を作ったのがまず初めですね。

『Stay Home Edition』では結果的に3曲発表しましたが、あの順番で作られたんですか?

Neetz:そうですね。最初が “One More Dance” で、次が “Faithful”、“Dripsoul” という順で。

KEIJU:1ヵ月半とかのうちに全部曲を出し切って、それをEPとして完成させちゃおうって話になっていたところを〈ワーナー〉とも話をして。ちゃんと段取りをして、しっかりやろうっていうふうになったので(『Stay Home Edition』を)一旦止めて。

Neetz:どうせならちゃんとオリジナル・トラックで作って、まとめてEPとしてリリースにしようっていう話になって。

KEIJU:だから、ほんとは8月とかには曲もほぼできている状態だったんですよ。でも、〈ワーナー〉の人にも会えなくて、話し合いができなかったりもして。それにそのタイミングで出してもライヴもできないし。

では、リリースまでのタイミングまでにけっこう温めていた感じなんですね?

Neetz:そうですね。3月から5月にかけてレコーディングを全部終えて、そこから既に出ている3曲のトラックを差し替える作業をやって。ミキシングも自分のなかで時間がかかっちゃって。それで全部が終わったのが9月くらい。それなら「LOCAL SERVICE 2」として2・14に出そうっていうことになって。

いまおっしゃった通り、『Stay Home Edition』と今回のEPでは全く違うトラックになっていますが、『Stay Home Edition』のほうは Neetz くんのトラックだったのですか?

Neetz:ではなかった。だから、どうせなら全部変えてやろうっていう意気込みで俺独自の感じで作ったので、その色が強くなったのかなと思います。

改めて “One More Dance” がどのように作られていったのかを教えてください。

Neetz:IO が最初にオリジナルのトラックを持ってきて、フックを最初に入れて。Gottz と柊平(上杉柊平=Holly Q)がそのとき、スタジオにいたので、IO のフックを聴いて柊平と Gottz がそのフックのコンセプトに当てはめてリリックを書いていった感じですね。

KEIJU:自分が聞いた話では、IO くんと柊平が中目黒に新しい事務所の家具を買いに行った帰りにスタジオに寄って。「このまま曲を作ろうか?」って流れで作ったら Gottz が来て、それで3人で作ってったそうです。

完全にノリで作ったわけですね。

KEIJU:今回の『Stay Home Edition』はいちばん昔のノリに近かったかなってちょっと思ってて。突発的に「会って遊ぼうよ」から、なにかを残そうじゃないけど、ノリで「曲やろう!」ってなってできた感じだった。自分は結構「コロナ大変なことになってるな」と思っていましたし、自分のソロ・アルバムのこともあって、その時期はあんまりみんなに会わないようにしていたんですよ。だから、自分は客観的にみんなの動きを見てたんですけど、さっき LINE が飛び交っていたと思ったら、その5、6時間後には曲ができていたりして。そういうのが、すごく昔の感じだなって思いましたね。

Neetz:そうだね。KEIJU はみんなの動きを客観的に見てた側だったのかもしれない。

そういうこともあって、今回は KEIJU くんの参加曲が1曲なわけですね?

KEIJU:そうですね、参加曲が少ないのはそれが理由っすね。兄に子供ができたりもして、みんなとは会わないほうがいいと思って。

Neetz:KEIJU は KEIJU のスタンスを貫いてましたね。

KEIJU:みんなが新しい事務所に溜まっていて、自分は「いいなぁ、楽しそうだな」って感じで見てて。でもさすがに(EPを)出すっていうから、「参加したいです!」って言って参加させてもらった感じです。

ちなみに最初の3曲には IO くんと Holly Q が3曲とも参加していて、それってなかなか珍しいですよね? 特に IO くんは前回の「LOCAL SERVICE」には1曲も入ってなかったと思いますし。

KEIJU:最初の “One More Dance” を作った流れで自然と、その感じで2、3曲目も動けたんじゃないですかね。コロナのこのタイミングで出そうっていうイメージまでもって。

Neetz:それがみんなにも伝わったのがデカかった。

ちなみに『Stay Home Edition』で “One More Dance” の説明の欄にヘレン・ケラーの言葉が引用されていましたけど、あれは誰が考えたんでしょうか?

Neetz:あれも IO くんのチョイスですね。

曲自体はノリで作られたのかもしれないけど、そういう部分も含めてすごくメッセージ性がある曲だなと思いました。

KEIJU:作る過程で「こういう人に向けて、こういう曲を書いてみよう」みたいな話は若干あったんだと思います。

Neetz:“One More Dance” に関しては統一性がしっかり取れていて。より統一性を出すために、リリックを書き直してもらったりもしました。

たしかに『Stay Home Edition』とEPでは、若干リリックが違いましたよね。

Neetz:曖昧になっている部分を、曖昧にしないで具体的にしようかなって感じで柊平に直してもらって。

KEIJU:Neetz から言ったんだ? 柊平ってけっこう、自分の作ったものに対してのクオリティが保たれているかすごい気にするじゃん。「これで良いのかな?」って訊いてくるもんね。

Neetz:そういう人には言ってあげたほうが良いかなって。

『Stay Home Edition』のコメントを見ると Holly Q 人気が高いというか。あの3曲で改めて彼の評価が上がっていますよね。

KEIJU:“One More Dance” のラップも初めて聴いたとき、1個違うレベルというか、柊平の新しい面が見えたなって。いままでは全部出し切るっていう感じだったけど、ちょっと手前で止めるみたいな歌い方であったり。そういう新しさをすごく感じて。

俳優としてもすごく活躍されていて、テレビドラマとかにも出ていますけど、ちなみにメンバーはどういうふうに見ているんですか?

KEIJU:俺は率直にすごいと思うし、みんなそう思っていると思う。ポッと出ではないですし、19歳とかそのくらいからバイトをしながらモデルをやったり、事務所を変えたりっていう過程を見ているので。ただ、柊平が出ていると客観的に観れなくて、内容が入ってこなくなっちゃう(笑)。だから、あんまりがっつりは観ないんですけど、普通にできないことだなと思います。

Neetz:すごいなと思いますね。

その中で今回みたいにちゃんと曲にも参加しているのが凄いですね。

KEIJU:前回の『ADVISORY』のときも、柊平の撮影が忙しくて1ヵ月間いられなくなるってなって。けど、柊平が「入れないのは嫌だから」って言って、誰もまだリリックを書き出していない頃にひとりで書いて、3、4曲とか録って撮影に行ったんですよ。意欲が本当に凄くて。柊平のあのヴァイブスにみんなも感化されて、負けていられないから、自分もやろうってなったのは感じましたね。

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いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。(Neetz)

「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。(KEIJU)


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EPの後半3曲は完全な新曲となるわけですけど、まず “Sunday Drive” は Ryohu くんがトラックを担当で。以前のインタヴューのときに KANDYTOWN の曲は基本 Neetz くんが作って、さらに Neetz くんが出していない部分を Ryohu くんが埋めるみたいなことは仰ってましたが、今回も同様に?

Neetz:そういう感じで作っていました。このEPの中の俺にはないような曲(“Sunday Drive”)を入れてきてくれたので、すごくバランスが良くなって。結果、Ryohu のビートがスパイスになっていますね。

“Sunday Drive” はおふたりともラップで参加していますが、トラックを聴いてどういう感じでリリックを書いたのでしょうか?

KEIJU:最初はもっとブーンバップというか、ベースが効いてるヒップホップなビートだったけど、最終的には最新っぽさも足されたものが返ってきて。ビートを聴かせてもらったときに、「これだったらいますぐリリックを書こうかな」って。そのとき、一緒にいたっけ?

Neetz:一緒にいたな。

KEIJU:リリックを一緒に書いて、「どうしようか?」ってなって。

Neetz:それで、KEIJU が伝説の2小節を入れて。

KEIJU:伝説の2小節からはじまったけど、タイトルが “Sunday Drive” になって「アレ?」ってなった(笑)。「俺の伝説の2小節は?」って。それでその2小節はやめて、新たにフックを書いて。

Neetz:まとまっていないようでまとまってる。いつもの俺らですね。

(笑)

KEIJU:俺はとにかく、あの頃は人に全然会っていなかったので。みんなに会って「うわぁ楽しい!」ってなって、その思いが全部出ているような恥ずかしい感じのリリックになっちゃって。サビも書いてって言われていたから、メロディーとかも考えながら、「ああじゃない、こうじゃない」を繰り返していて。高揚している自分と地に足付けるバランスの中で、あのリリックとフロウが出てきて。浮かれちゃう自分に釘を刺すようなリリックをあそこで書いて、自分を引き留めたじゃないけど、いまだけを見て何か言ってもいいことないときもあるし。でも、サビはすぐできたよね?

Neetz:そうだね。

KEIJU:4小節自分で書いたものを Dony(Joint)と Neetz、MASATO に歌ってもらって。

Neetz:結果、みんな自分に向かって書くようなリリックになって。

KEIJU:渋い曲になったよね。

ビートへのラップの乗せ方もすごく気持ち良いです。

Neetz:そうですね。EPのなかでいちばんリズミカルな感じになっていて。4曲目でそれが出てくることによって、すごく映えるようになってる。

あと曲の最後のほうに「届けるぜローカルなサービス」ってラインがありますが、この時点でタイトルを「LOCAL SERVICE 2」にするっていうのはあったんですか?

Neetz:まだですね。MASATO がたまたまそのワードを入れて。EPのタイトルは完全に後付けです。

次の “Coming Home” ですけど、これは Gottz&MUD のコンビを指名したんですか?

Neetz:本当は Gottz&MUD のアルバム用に作ったビートで、それに入る感じだったんだけど。コンセプト的にも今回のEPに入れたほうが良いかなってなって。MUD にワンヴァース目をやってもらって、Gottz も書いてくれたけども。(今回のEPに) KEIJU のヴァースが少なすぎるってなって、KEIJU も入れようと思ったけど……。

KEIJU:まあ、そういうことがあったんですけど、良い曲だなって。

あのふたり用に作った曲っていうのは伝わってくるようなトラックですよね。

KEIJU:それに、なんかあのふたりのセットを(ファンが)求めている流れもありますから。そういうこともあって自分は身を引こうと思って。

最後の曲の “Sky” ですが、リリックもトラックも KANDYTOWN そのものを表している感じがしますね。

Neetz:いつでも俺らは変わらないぜっていうのを示した曲になったと思います。KANDYTOWN のソウルフルで渋い感じの良さとか、昔ながらの感じを受け継いでいる、今回のEPの中でも唯一の曲だと思います。

この曲で言っていることがまさにいまの KANDYTOWN のスタンスにも感じますね。

Neetz:そうですね。変わらずあり続けるのもそうだし、この仲間とやっていくことがすごく大事だと思うし。そういうスタンスでこれからもやっていけたらなって思いますね。

ちなみに、客観的に見てどの曲が好きですか?

Neetz:トラック的に上手くできたのは3曲目(“Dripsoul”)。

KEIJU:俺はやっぱ、最初に聴いたときの “One More Dance” のインパクトが強くて。IO くんがああいうメロディーをつけるときのモードがあるじゃない?

Neetz:たしかに、たしかに。

KEIJU:そのメロディーが聴こえたからすごく印象に残っている。

覚悟みたいなものですかね?

KEIJU:そう、覚悟があるなって感じて。あと、好きな曲というと、自分が入っている曲(“Sunday Drive”)は制作現場にいて、みんなの雰囲気とかも含めてすごく良かったと思うし。それに対して自分はスムースで昔っぽさもある感じにできたので、“Sunday Drive” は良いなと思う。サビの掛け合いとかもしばらくはやっていなかったので、「一緒にリリックを書くのも良いよね」って話をしながらやったのも憶えているし、結構楽しかったよね。

Neetz:久々に楽しかった。

久々にみんなが会うというのは、やなり何か違うものがありますか?

KEIJU:それはもう、だいぶ違いましたね。あのときってみんな寂しくてとかじゃないけど、「うわぁ、浮足立つなぁ」って。言わなくてもいいことを言っちゃいそうだなみたいな。しかもそれをリリックに書いちゃいそうなくらい、普段は言わないことを言おうとしちゃう。それが嫌だなって部分もあったんですけど。

Neetz:若干どんよりしたというか。そういう雰囲気だった気もするけど。違う?

KEIJU:それもあったかもね。この先どうなるか分からないし。俺とか本当にコロナを気にしていたので、みんなに「手洗った?」ってすぐ訊くような勢いだったんで。

それだけ人数いれば、人によって考え方も全然違いますしね。

KEIJU:あの活動(『Stay Home Editon』)がはじまったときに、「はじまったそばから、すげぇやってるな?!」とか思いながら。俺は羨ましくもあり、みんなに会いてぇなっていうのもあったし。置いてけぼり感もすごくあった。いま思うとそんなに(以前と)変わりないと思うんだけど、久しぶりに会ったときは違ったね。

KANDYTOWN の次の作品に向けてもすでに始動していると思いますが、現時点でどのような感じになりそうでしょうか?

Neetz:とりあえず、ビート作りははじまっていて。このEPの音作りは俺独自で進めたので、次の作品に関してはもっとみんなの意見を取り入れたものを作れたらいいなと思ってます。あと、「KANDYTOWN に合うサウンドとは?」っていうのをめちゃくちゃ考えていて。「それって何だろう?」って考えてたときに、昔のソウルフルな感じであったり、1枚目(『KANDYTOWN』)の感じの音なのかなって思ったりもするし。まだ答えは分かってないんですけど。

KEIJU:さっきふたりで車の中で話をしていて。もっと幅を広げたり、Neetz の言うように昔のソウルフルなスタイルで続けていくのも良いよねって。やれる範囲で幅を広げていこうって話をしてはいて。ビートのチョイスもいままでやっていなかったこともやってみようって。

Neetz:結果的にそれが KANDYTOWN のサウンドになるので。

KEIJU:そう。自分たちのこれまでの活動の中でも、それまでやらなかったビートをチョイスしてやってきて、それでちょっとずつ進化している。昔、YouTube にもアップした “IT'z REVL” って曲とか、当時は自分たちの中ではすごく新しいチョイスで、新しい感覚だと思ってやってたし。少しずつ、そういう変化を上手く出せていけたらいいなって思う。あと、「こうなりたい」とか「絶対こうあるべき」っていうのが自分たちにはなくて。とにかく自分たちが良いと思ったものとか、それに対する理由とかを、もっと深いところで話し合うことができたらなって思います。そうやって、深い部分で切磋琢磨していけたら、新しいものが生まれるなって思っているので。

メンバー間のコミュニケーションの部分などで何か以前と変化はあったりしますか?

KEIJU:最近はコミュニケーションを高めていて。自分らは最近野球をやっているんですけど。(インタヴューに同行していた)DJの Minnesotah はバスケをやっていて。KANDYTOWN の中でもバスケと野球とサッカーってチームが分かれているんですけど、そういう感じで集まれる時間を増やしていこうよって話をしていて。それが音楽に直結するわけではないですけど、日々の言葉のキャッチボール的なことができればなと思ってて。そうすることで、これからの KANDYTOWN の作品が、もっと密なものになればいいなって思いますね。

KANDYTOWN
2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より
“One More Dance” の MUSIC VIDEO 公開

国内屈指のヒップホップクルー KANDYTOWN が本日2月14日配信の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」より、
先行配信トラック “One More Dance” の MUSIC VIDEO を公開。この映像は前作 “PROGRESS” に引き続き盟友:山田健人が手掛ける。楽曲に参加している IO、Gottz、Holly Q、Neetz に加えクルーから Ryohu、Minnesotah、KEIJU、Dony Joint、Weelow がカメオ出演。

2月14日より配信となった 2nd EP は2020年の4月・5月の Stay Home 期間中に公開された楽曲3曲を再度レコーディングしリアレンジしたものに新曲3曲を収録。楽曲のレコーディングやプロデュースをメンバーの Neetz が担当。海外作家との共作やアレンジャー起用して作られたトラックなど意欲作が並ぶ。

そして、4月21日には、配信リリースされていた2019年2月14日発売の 1st EP「LOCAL SERVICE」と2021年2月14日発売の 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」の両作品を2000枚限定で初CD化し1枚にコンパイル。
DISC 1 の「LOCAL SERVICE」は過去に限定でレコードのリリースはあったがCD化は初となる。

“One More Dance” MUSIC VIDEO
https://youtu.be/iY340Z3BTdA

2nd EP「LOCAL SERVICE 2」& 限定生産2CD EP『LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION』
https://kandytown.lnk.to/localsevice2

[MJSIC VIDEO CREDIT]
KANDYTOWN LIFE PRESENTS
FROM""LOCAL SERVICE 2""
『One More Dance』

Director : Kento Yamada
Director of Photography : Tomoyuki Kawakami
Camera Assistant : Kohei Shimazu
Steadicam Operator : Takuma Iwata

Lighting Director : Takuma Saeki
Light Assistant : Hajime Ogura

Production Design : Chihiro Matsumoto

Animal Production : SHONAN-ANIMAL

Editor & Title Design : Monaco

Colorlist : Masahiro Ishiyama

Producer : Taro Mikami, Keisuke Homan
Production Manager : Miki SaKurai、Rei Sakai、Shosuke Mori
Production Support: Wataru Watanabe, Yohei Fujii

Production: CEKAI / OVERA

STARRING
IO
Gottz
Holly Q

Ryohu
Minnesotah
KEIJU
Dony Joint
Neetz
Weelow
Kaz

[KANDYTOWN 2nd EP「LOCAL SERVICE 2」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE 2」
release date:2021.02.14
price:¥1,400 (without tax)

track list
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Sterling Sound 
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

[限定生産2CD EP「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」作品情報]
title:「LOCAL SERVICE COMPLETE EDITION」
release date:2021.04.21
price:¥2,500 (without tax)

track list (DISC1)

「LOCAL SERVICE」
1. Prove (Lyric: Gottz, KEIJU, MUD Music: Neetz)
2. Till I Die (Lyric: Ryohu, MASATO, BSC Music: Neetz)
3. Explore (Lyric: Gottz, MUD, Holly Q Music: Neetz)
4. Regency (Lyric: MASATO, Ryohu, KIKUMARU Music: Neetz)
5. Fluxus (Lyric: Neetz, DIAN, Dony Joint Music: Neetz)
6. Kapital (Lyric: BSC, KIKUMARU, Dony Joint, DIAN, Ryohu Music: Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi at RDS Toritsudai
Masterd by Rick Essig at REM Sound
Sound Produce: Neetz
Additional Arrange: KEM
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

track list (DISC2)
「LOCAL SERVICE 2」
1. Faithful (Lyric:IO, Ryohu, Neetz, Holly Q, DIAN Music : Neetz)
2. One More Dance (Lyric:IO, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
3. Dripsoul (Lyric :IO, Ryohu, Gottz, Holly Q Music : Neetz)
4. Sunday Drive (Lyric : Dony Joint, KEIJU, Neetz, MASATO Music : Ryohu)
5. Coming Home (Lyric : MUD, Gottz Music : Neetz)
6. Sky (Lyric: BSC, Ryohu, MUD, DIAN Music : Neetz)

Produced by KANDYTOWN LIFE
Recorded & Mixed by Neetz at Studio 991
Masterd by Joe LaPorta at Stearing Sound
Sound Produce: Neetz (M-1,2,3,5,6), Ryohu (M-4)
Additional Arrange: Yaffle (M-2)
Art Direction: IO, Takuya Kamioka

Floating Points × Pharoah Sanders - ele-king

 驚くなかれ。いや、むしろ大いに驚きたまえ。フローティング・ポインツファラオ・サンダースによる共作が3月26日にリリースされる。
 かたや2010年代エレクトロニック・ミュージックのキイパーソンのひとり、かたやスピリチュアル・ジャズの生ける伝説──レーベルがデヴィッド・バーン主宰の〈Luaka Bop〉というのもさらなる驚きで、演奏にはイギリスを代表するオーケストラ、ロンドン交響楽団も参加。いったいどんな音楽が生み出されているのやら……。2020年前半の目玉となりそうな大型コラボ、心して待とう。

驚愕としか言いようがない最高の顔合わせ!! エレクトロニック・ミュージック・シーンのトップに君臨する FLOATING POINTS とスピリチュアル・ジャズ界の生ける伝説 PHAROAH SANDERS が相見えた注目のアルバム『Promises』が3/26(金)にリリース決定!

自ら立ち上げた〈Eglo Records〉、〈Pluto〉や〈Ninja Tune〉、〈Planet Mu〉といった名門レーベルからのリリースでもその名を轟かせるプロデューサーのフローティング・ポインツことサム・シェパード。前作『Crush』が英誌ピッチフォークで Best New Music を獲得、さらに神経科学の博士号までをも持つエレクトロニック・ミュージック・シーンにおける天才アーティストが、なんとジョン・コルトレーンの後継者にしてスピリチュアル・ジャズ界を代表するサックス奏者ファラオ・サンダースと共に作り上げた噂のニュー・アルバムが、トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが主宰する〈Luaka Bop〉から遂に登場! ロンドン交響楽団による美しい演奏に、フローティング・ポインツによる繊細な電子音、そしてファラオ・サンダースによる深いサックスの音色が交錯する、全9曲、46分にも及ぶ壮大な組曲が展開された圧巻の内容! さらにアートワークは米タイム誌による「世界で最も影響力のある100人」にも2020年に選出されたエチオピア出身の現代アーティスト、ジュリー・メレツが手掛けた全てにおいてこだわり抜かれた芸術的極上盤!

Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra – Promises (Album Teaser)
https://youtu.be/iqFwIxkhT4s

【アルバム詳細】
FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA
『Promises』

フローティング・ポインツ、ファラオ・サンダース&ザ・ロンドン・シンフォニー・オーケストラ
『プロミセス』

発売日:3月26日(金)
価格:¥2,400+税
品番:PCD-94026

【Track List】
1. Movement 1
2. Movement 2
3. Movement 3
4. Movement 4
5. Movement 5
6. Movement 6
7. Movement 7
8. Movement 8
9. Movement 9

IR::Indigenous Resistance Sankara Future Dub Resurgence - ele-king

 自分はつくづくアナキストじゃないなよなと思うのは自転車に乗っているときである。サイクリストにとって日本の道路は極めてアナーキーだ。いや、もう、左を走っていれば対向からがしがし来るし、歩道を電動自転車がひゅーっと走っていく。こうしたことは、しかも子供を乗せながら日常化しているし、警察だって複数で歩道を走っている。アナキストになれない自分は、秩序を守らない自転車と遭遇する度に苛ついてしまうのだ。休日の、車両一方通行の商店街とかとんでもないことになっている。ま、かくいうぼくも臨機応変にズルはしますがね。ただ、踏切で待っているあいだ、自信満々に右側で待機するのは止めて欲しいよなぁ。
 
 “アナキスト・アフリカ”とは、最新のダブ・ポエトリーであり、ダブとアフロ・エレクトロニカの結合であり、アフリカ史には反王族/反中央集権的な人びとも存在したことを説き、アフリカを再定義しようとするウガンダのアンダーグラウンドから届いたメッセージだ。サンカラ・フューチャー・ダブ・リソージェンスなる当地のミュージシャンによる録音で、『Anarchist Africa』は昨年10月、そして最新作の『Rising Up For The Dub World Within』はこの2月にリリースされたばかり。
 アフリカ大陸の中央にどかっとAマークの入ったヴィジュアルの『Anarchist Africa』は、Bandcampの説明を読むと、昼間は整備士や溶接工が仕事で使っている防音などないガレージにて、午前4時から録音したという。マイクはなく、ドラムループとヴォーカルの録音には携帯電話が使用されている(だが、音の空間は素晴らしく、決してローファイではない)。そして、冷たいウガンダの夜の空気の音や日常生活の気配もそこには含まれているという。うん、たしかにそんなヴァイブレーションを感じる。

 じつを言うとこの“アナキスト・アフリカ”は、remix編集長時代に同じ釜のメシを食った春日正信なる男から教えてもらったばかりで、ぼくもすべて把握しているわけではないのだが、とりあえず、いまわかっていることを記しておこう。
 アーティスト名の最初に記されている〈IR〉とは「indigenous resistance(先住民レジスタンス)」のことで、エレキングの別冊『ブラック・パワーに捧ぐ』に掲載したURのマイク・バンクスとコーネリアス・ハリスの取材のなかで、今日のポジティヴな動きのひとつとしてふたりが話している。事実として、URとIRとの繋がりはいまにはじまった話ではなく、その関係は10年以上前に遡ることができる。とはいえ、IRの音楽のキーワードはテクノではなく“ダブ”で、IRはそれを「アフリカと先住民の連合創造への美的および音楽的感性、哲学的志向、活動家の参加を指す包括的で拡大された言葉」として解釈し、用いている。
 〈Dub Reality〉なるレーベルはジャマイカ生まれでカナダに住んでいたPatrick Andradeなる人物が主宰している。彼は90年代から音楽活動をしているようだが、IRとしての活動は00年代後半からはじまっている。2010年に『Dubversive』というアルバムを出しており、ここにはマイク・バンクスほか、なんとエイドリアン・シャーウッド、Fun-Da-Mental、エイジアン・ダブ・ファウンデーションらも参加している。音楽的にみてIRのユニークなところはアフロ・パーカッションとダブとテクノを混合させている点にあるが、それは彼らのネットワークにも表れていると言えよう。

 今回取り上げている2枚のアルバムは、IRクルーのなかのウガンダのサンカラ・フューチャー・ダブ・リソージェンス(SFDR)による作品になる。ぼくはSFDRが何者で、何人から成るプロジェクトなのかまったく知らない。ぼくには彼らの素性に関する情報らしい情報がない。だが、こんなにも狂った情報時代だ、これはこれで有り難い話かもしれない。それよりも音とメッセージを受け取ってくれと、そういうことなのだろう。ちなみに2枚のアルバムの冒頭は、同じ曲“アナキスト・アフリカ”である(そう、2回聴けと!)。
 手がかりはある。ぼくにはまず、デトロイトのURが30年前からやってきたことが、いまこうしてアフリカと繫がっていることが嬉しい驚きだった。しかもダブという音楽/スタイル/発想が、こんな形で更新されたことにも興味をそそられる。先住民レジスタンスは、ADFやON-Uともリンクしているぐらいだ、マイノリティの反乱ということがそのすべてではないだろう。BLMと同じように、この世界の根底にあるものを覆そうとしているのかもしれない。まあ、とにかく、ノイズやドローンでさえグルーヴィーにうねる、テクノ譲りのフリーケンシー、そして凄まじい低音を有したベーシック・チャンネルのアフロ・ヴァージョンのごとき彼らの音をまずは聴いてみてください。いまウガンダのアンダーグラウンドでは何かがはじまっている。

Carpainter - ele-king

 精力的にリリースをつづけるレーベル〈TREKKIE TRAX〉から新情報。カーペインターが新作EP「Yamanote Disko Klub」を2月12日にリリースしている。最高に気持ちの上がる表題曲を筆頭に、とにかくダンサブルなトラックがずらり。ラッパーのなかむらみなみをフィーチャーした “YATAI” では、なんと、彼女が幼少のころから慣れ親しんできたという和太鼓をプレイしている。なかなか外で踊れないこのご時勢、このEPを鳴らしながら部屋をクラブにしてしまおう。

Carpainter が90年代の東京発ファンキーテクノを昇華したニューEP「Yamanote Disko Klub」をリリース!

日本を代表するダンスミュージックレーベル〈TREKKIE TRAX〉を主宰し、数々のレーベルからリリースを行う Carpainter が自身にこれまで多大なる影響を与えてきた90年代〜00年代のファンキーテクノに懐古し、更に現代風にアップデートを重ねたEP「Carpainter - Yamanote Disko Klub」が2021年2月12日にリリースされる。

ハードハウスやジャパニーズテクノなどを基にした東京の喧騒感を思わせる表題曲 “Yamanote Disko Klub” を筆頭に、パーカッションが特徴的なハードテクノ、トライバルテクノ計6曲を収録。
祭り囃子が持つグルーヴをテクノに昇華したダンストラック “YATAI” では〈TREKKIE TRAX〉とも関係の深いラッパー「なかむらみなみ」が幼少期から慣れ親しんで居た和太鼓を実際に演奏し、Carpainter がそれらのサウンドを録音・編集し制作した一曲となっている。

また本作のリリースパーティーをデイタイムで2月27日に渋谷Dimensionで開催されるので、気になる方は是非足を運んで頂きたい。

リリース情報

アーティスト名:Carpainter (カーペインター)
作品タイトル:Yamanote Disko Klub (ヤマノテ ディスコ クラブ)
発売日:2021年2月12日(金)
フォーマット:デジタル販売 / ストリーミング
レーベル:TREKKIE TRAX

曲目:
1. Yamanote Disko Klub
2. Route 246
3. Coyote Time
4. YATAI
5. Do Not Clatter
6. Golazoooo

https://smarturl.it/Carpainter-YDC

 UKのレーベル、〈BBE〉がプロデューサー/DJを主役にして立ち上げたアルバム・シリーズ「The Beat Generation」。Madlib による『WLIB AM: King Of The Wigflip』まで通算11作がリリースされたこの人気シリーズの第一弾を飾ったのが、2001年に Jay Dee aka J Dilla 名義で発表された『Welcome 2 Detroit』であり、数々のヒップホップ・クラシックを残してきた故 J Dilla にとって初のソロ・アルバムとなった作品だ。そんな歴史的アルバムである『Welcome 2 Detroit』の20周年を祝ってリリースされたのが、本作『Welcome 2 Detroit - The 20th Anniversary Edition』である。

 90年代半ばから2000年前後にかけて Jay Dee 時代の彼は実に様々なプロジェクトに参加していた。Pharcyde や De La Soul など様々なアーティストのプロデュースを手がけ、その後、Q-Tip、Ali Shaheed と結成したプロダクション・チーム「The Ummah」や、The Roots の Questlove を中心としたヒップホップ/ソウル・コレクティヴ「Soulquarians」の一員としても活動。さらに自らのグループである Slum Village としてもアルバムをリリースしている。そんな多忙な状況の中、〈BBE〉の指名を受けて制作したのがこの『Welcome 2 Detroit』だ。タイトルが示している通り、彼の地元であるデトロイトのヒップホップ・シーンおよびデトロイト・サウンドのショウケースであり、J Dilla 自身のルーツを辿る作品でもある。


J-Dilla exclusive pictures by Paul Hampartsoumian

 Slum Village ではプロデューサー兼MCとして活動していた J Dilla だが、本作では自身のラップに加えて仲間であるデトロイトのラッパーを多数フィーチャー。J Dilla の脱退と同タイミングで Slum Village のメンバーとなる Elzhi など、世間的にはまだまだ知名度の低かった彼らの存在をヒップホップ・シーンに知らしめた。バウンシーなトラックに乗った Frank-N-Dank によるデトロイト賛歌 “Pause” や、シンプルなビートの質感が最高に気持ち良い “It's Like That” での Hodge Podge (Big Tone)と Lacks (のちの Ta'Raah)によるマイクリレーなど、J Dilla とデトロイトMCたちとの相性の良さは本当に素晴らしく、様々なタイプのトラックとラップの掛け算を堪能できる。タイトル通り Phat Kat の紹介曲である “Feat. Phat Kat” の印象的なサンプル・フレーズは、のちに Q-Tip が “Renaissance Rap” で再利用したり、本作にも参加している Karriem Riggins が自らの曲 “J Dilla the Greatest” で引用するなど、このアルバムの裏クラシック的な一曲と言えよう。

 本作には非ラップ曲やインスト曲もいくつか含まれており、それらが前述した「J Dilla 自身のルーツを辿る」曲だ。中でも至極の一曲と言えるのが、Donald Byrd の同名曲をカヴァーした “Think Twice” だろう。幼い頃からジャズを聞いて育ったという J Dilla だが、ここでは Mizell ブラザーズがプロデュースしたダンサブルなジャズ・チューンの原曲をジャズ+R&Bのテイストでアレンジし、ヴォーカルも自ら担当している。驚くのは、この曲がほぼ生楽器による演奏でレコーディングされているということだ。キーボードとトランペットを担当した Dwele と共に、この曲で J Dilla はドラム、ベース、ピアノ、パーカッションなどを演奏している。サンプリングの達人というイメージの強い J Dilla が、一方で楽器も使って曲作りをしていたことはいまでは広く知られているが、おそらく本作でもサンプリングに生楽器を重ねる手法が多数用いられている。そういった手法でトラックを作っていたヒップホップ・プロデューサーは、このアルバムがリリースされた2001年の時点では非常に稀だったはずで、そういう意味で本作は非常に前衛的な作品であった。『The 20th Anniversary Edition』収録の “Think Twice (DJ Muro’s KG Mix)” は、そんな J Dilla に対するリスペクト溢れるリミックスで、聞き手の心に深く染み込んでくる素晴らしい仕上がりだ。

 “Brazilian Groove (EWF)”も同様に生楽器を主体に作られているが、タイトルが示す通り Earth, Wind & Fire からインスパイアされ、名曲 “Brazilian Rhyme” のコーラスが引用されている。これは、J Dilla のルーツのひとつに70年代のソウル/R&Bがあることの証だ。そして、生楽器の使用と言う意味ではジャズボッサ曲 “Rico Suave Bossa Nova” も “Think Twice” と並ぶ最重要曲のひとつ。この曲は一部、既存の曲からフレーズの引用はあるものの、ほぼ J Dilla のオリジナル曲と言って差し支えないだろう。Pharcyde “Runnnin'” を筆頭に、早くからブラジル音楽をサンプリング・ネタとして取り入れてきたことでも知られる J Dilla であるが、自らの演奏でこれほど完成度の高い曲を作り上げることには恐れ入る。さらに、今回の『The 20th Anniversary Edition』には、ブラジル音楽の本家 Azymuth によるこの曲のカヴァーが収録されており、ブラジル音楽とヒップホップを強く結びつける非常に意義深い一曲だ。ちなみにこのカヴァー・ヴァージョンには、ドキュメンタリー映画『Brasilintime』を手がけたフォトグラファーの B+ と Eric Coleman がプロデューサーとしてクレジットされており、彼らがカヴァーを企画したと思われる。

 もうひとつ、最後に取り上げたいのが、Kraftwerk “Trans Europe Express” の J Dilla 流カヴァーとも言える “B.B.E. (Big Booty Express)” で、様々なシンセサイザーの電子音が飛び交う曲調は本作の中でも非常に異色である。ここで表現されているのはデトロイト・テクノからの影響だ。タイトルはストリップ・クラブの常連であった J Dilla らしいノリで付けられているが、遅めのBPMで、デトロイト・テクノにヒップホップのフレイヴァを加えたハイブリッドな仕上がりは実に中毒性が高い。非常に特殊な一曲ではあるものの、これもまたこの時代の J Dilla だからこそ作り上げることのできた一曲だろう。

 J Dilla は本作がリリースされた5年後に亡くなっている。その後も『Donuts』をはじめ様々な作品がリリースされているが、本作のように様々な要素が入り混じった作品はひとつも作られていない。もし、いまも彼が生きていて『Welcome 2 Detroit』の第二弾を作ったらどんな作品になっていただろうか? そんなことを想像しながら、この『The 20th Anniversary Edition』をさらに聴き込んでみたい。

文:大前至

アーティスト名: J DILLA
タイトル: WELCOME 2 DETROIT - THE 20TH ANNIVERSARY EDITION [7INCH × 12枚組 BOXSET]

バスタ・ライムスが名付けたという J・ディラ名義でリリースされた本作、彼の出身地デトロイトをリプリゼントすべくゲスト・ラッパー陣は全て地元のアーティストで固めており、フランクンダンクからエルジー、ファット・キャットが参加し、J・ディラがデトロイトで聴いて育ったクラフトワーク、アフリカン、ジャズ・ファンク/ボサノヴァ、そしてもちろんブーム・バップに至るあらゆる音楽をディラ流に仕上げたクラシックがズラリ……! 全てデジタル・リマスタリングを施し、さらにこのアルバムのセッション中にJ・ディラのプライベート・テープに残された未発表音源やアウト・テイクを追加収録、そして日本が誇るキング・オブ・ディギン、Muro による “Think Twice” のリミックス、クラシック “Rico Suave Bossa Nova” のアジムスによるカヴァーなどを収めた全46曲の脅威のヴォリュームで送るボックスセット! アンプ・フィドラーやマ・デュークスなど参加アーティストのインタビューなどを収録したブックレット(英語)も付属。

label: BBE
genre: HIPHOP
format: 7INCH × 12枚組 BOXSET
cat no.: BBEBG001SLP
barcode: 0195497389094
発売日: 2021.2.5
税抜卸価格: (オープン価格)

Tracklist:

Disc 01
A1. Y’all Ain’t Ready
A2. Think Twice (faded)
B1. Y’all Ain’t Ready (Instrumental)
B2. Think Twice (Instrumental ? faded)

Disc 02
C1. The Clapper feat. Blu
C2. Shake It Down
D1. The Clapper (Instrumental)
D2. Shake It Down (Instrumental)

Disc 03
E1. Come Get It feat. Elzhi (edit)
F1. Come Get It (Instrumental ? edit)

Disc 04
G1. Pause feat Frank ‘n’ Dank
G2. B.B.E. ? Big Booty Express
H1. Pause (Instrumental)
H2. B.B.E. ? Big Booty Express (Instrumental)

Disc 05
I1. Beej-N-Dem Pt.2 feat. Beej
J1. Beej-N-Dem Pt.2 (Instrumental)

Disc 06
K1. Brazilian Groove
K2. It’s Like That (Edit) feat. Hodge Podge, Lacks
L1. Brazilian Groove EWF (Instrumental)
L2. It’s Like That (Instrumental)

Disc 07
M1. Give It Up
N1. Give It Up (Instrumental)

Disc 08
O1. Rico Suave Bossa Nova
P1. Azymuth ? Rico Suave Bossa Nova (Vinyl Edit) ? Azymuth

Disc 09
Q1. Feat. Phat Kat
R1. Feat. Phat Kat (Instrumental)

Disc 10
S1. African Rhythms
S2. One
T1. African Rhythms (Instrumental)
T2. One (Instrumental)

Disc 11
U1. It’s Like That (Alternate Version)
U2. Beej-N-Dem (og) feat. Beej

Disc 12
V1. African Rhythms (No Drums)
V2. Brazilian Groove EWF (No Drums, No Vocal)
V3. Give It Up (Acapella)
W1. Think Twice (DJ Muro’s KG Mix)
X1. Think Twice (DJ Muro’s KG Mix Instrumental)

Chihei Hatakeyama - ele-king

 日本のアンビエント界を牽引するひとり、畠山地平が4月7日に新作『Late Spring』をリリースする。レーベルはUKの〈Gearbox〉で、これまでビンカー・ゴールディング&モーゼス・ボイドサラシー・コルワルドゥワイト・トリブルチミニョなど、ジャズ寄りの作品を多く手がけてきたところだ。同レーベルが初めて送り出す日本人アーティストが畠山というのはじつに興味深い。ふだんは仕事の早い畠山が今回はだいぶ時間をかけたそうで、その面でも注目すべき1枚といえよう。来たれ、春。

●日本のアンビエント/ドローン・ミュージック・シーンを牽引する畠山地平、英〈Gearbox Records〉からの第一弾作品をリリース!

●ファースト・シングル「Sound of Air」のアニメーション・ビデオも公開中!

国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表し、日本を代表するアンビエント/ドローン・ミュージック・シーンを牽引する存在となったChihei Hatakeyamaこと畠山地平。 Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインするなど、これまでも海外での人気が高かった彼が、4月7日(水)にイギリスの〈Gearbox Records〉からの第一弾作品となるアルバム『Late Spring』を日本先行発売する。

〈Gearbox Records〉初の日本人アーティストとなったChihei Hatakeyamaの新作は、一連の豊かで傑出した出会いを通して、共有された旅の経験を穏やかに展開していく。大聖堂のオルガンを思わせる1曲目 “Breaking Dawn” の鳴り響く水中の反響から、アルバムを締めくくる “Twilight Sea” の巧妙なドリフトに至るまで、レコードは緻密で美しいメロディが詰まった傑作に仕上がっている。広がっていくシンセサイザーのサウンド、そして光り輝くスローモーションのギターに引き寄せられ、それが時折現れる音響要素と結びつく。その様は、まるで人工血液のように機械の脈を流れるコンピューター・コードを想起させる。

1949年の映画でタイトルを共有している日本の映画監督小津安二郎の作品に示されている通り、 風景の循環運動の美しさと日常生活の下に横たわる季節の変化に触発されて、『Late Spring』は古い映画の印象を投影している。円運動のコンセプトは、畠山がデイヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス The Return』を観ていた時に思いついたという。

通常は仕事が早い方だというが、今回の作品は自身のキャリアの中で最も時間のかかった作品の 一枚だったとか。2018年に始まった制作作業は、作品が完成した2020年まで続いた。彼は、ギターとシンセの再生と録音に新しいアンプとマイクのセットアップを使用して、自身の演奏へのア プローチを再検討した。メロディとトーンを単純化するために、彼はトラックごとに1種類の楽器 のみを使用し、1つはシンセのみ、もう1つはエレキ・ギターのみを使用したという。

早速本日配信開始となったファースト・シングル「Sound of Air」のアニメーション・ビデオが公開された。

「Sound of Air」のアニメーション・ビデオはこちら

畠山いわく、“Sound of Air” は、ストラトキャスターの音色を活かした楽曲で、フェンダーのギター・アンプを使って収録。4月に録音した曲で、ギター演奏のインプロヴィゼーションでループを作り、編集したもの。Mel9という特殊なギター・エフェクトを使ってメインのギターの背後にあるストリングスのような音色を作った。爽やかな春の空気をイメージしているという。

世界に先駆けて日本先行発売されるアルバム 『レイト・スプリング』に期待が高まる。

[リリース情報]
アーティスト名: Chihei Hatakeyama (畠山地平)
タイトル名: Late Spring (レイト・スプリング)
発売日: 2021年4月7日(金)
レーベル: Gearbox Records
品番: GB1565CDOBI (CD) / GB1565OBI (LP)

※特別仕様盤特典:日本先行発売、ライナーノーツ付き

[トラックリスト]
01. Breaking Dawn
02. Rain Funeral
03. Butterfly's Dream
04. Sound of Air
05. Sound of Air II
06. Spica
07. Thunder Ringing in the Distance
08. Memory in the Screen
09. Butterfly's Dream II
10. Long Shadows
11. Twilight Sea

アルバム『Late Spring』予約受付中!
https://orcd.co/latespring

シングル「Sound of Air」配信中!
https://orcd.co/soundofair


【バイオグラフィー】

Chihei Hatakeyamaとして2006年に前衛音楽専門レーベルとして定評のあるアメリカの〈Kranky〉より、ファースト・アルバムをリリース。以後、オーストラリア〈Room40〉、ルクセンブルク〈Own Records〉、イギリス〈Under The Spire〉、〈hibernate〉、日本〈Home Normal〉など、国内外のレーベルから現在にいたるまで多数の作品を発表し、ライヴ・ツアーも行なっている。デジタルとアナログの機材を駆使したサウンドが構築する、美しいアンビエント・ドローン作品を特徴としており、主に海外での人気が高く、Spotifyの2017年「海外で最も再生された国内アーティスト」ではトップ10にランクインした。独自の楽曲制作の他、映画などにも楽曲を提供している。ソロ以外では伊達伯欣とのエレクトロ・アコースティック・デュオOpitope、ヴォーカリスト佐立努とのユニットLuis Nanookでとしてアルバムをリリースしている。加えて、世界的に支持される日本の電子音楽家ASUNAやアンビエント・アーティストHakobune等ともコラボレーション・アルバムを発表している。2021年4月、イギリス〈Gearbox Records〉からの第一弾リリースとなるアルバム『Late Spring』を発売。

shotahirama - ele-king

 2019年末にリリースされた『Rough House』で突如ヒップホップに目覚めたグリッチ・プロデューサーの平間翔太。同作は配信限定だったけれど、ひさびさにCDアルバムの登場だ。前回が『Maybe Baby』なので、ほぼ4年ぶりということになる。レーベルは京都の〈SHRINE.JP〉。トラックリストを眺めると、程よい尺の曲が10曲並んでいる。『Rough House』に続き、今回もアルバムらしいアルバムに仕上がっているようだ(そして、プレヴュー音源を聴く限り、今回もヒップホップ作品の模様)。現在、収録曲 “FIRE IN WHICH YOU BURN” のかっこいいMVが公開中です。これを見ながら発売を待ちましょう。


ノイズ・グリッチプロデューサーからビートメイカーへと生まれ変わったshotahiramaが4年ぶりのCDアルバム!

2010年代に自身が主宰するレーベル〈SIGNAL DADA〉より『Nice Doll To Talk』、『Post Punk』など先鋭的な作品を立て続けに発表してきたshotahiramaが、2017年の『Maybe Baby』以来となるCD作品をリリース! 本作『GET A LOAD OF ME』は彼が近年試みている(ターンテーブルを楽器として用いる発想に端を発した)サンプリング・ビート集の最新版といった仕上がりだ。加えて本作では新たな試みとして、全てのトラックがElektron社のドラムシンセ/シーケンサーであるMACHINEDRUMによる一発録音のライブレコーディングによって制作されている。このタイトな制作手法により『GET A LOAD OF ME』には彼の作品が常に携えていたラフで身軽な佇まいが、新たな魅力として顕在化している。

アーティスト:shotahirama
タイトル:GET A LOAD OF ME
発売日:2021年3月19日
品番:SRSW-491
フォーマット:CD
レーベル:SHRINE.JP

トラックリスト:
01. THE WHOLE NINE YARDS (3:03)
02. GET A LOAD OF ME (4:03)
03. FIRE IN WHICH YOU BURN (4:14)
04. SKINZ (3:45)
05. FEEL THE HIGH (3:38)
06. TEARS (5:37)
07. KIDS (4:26)
08. KEEP IT IN THE STREET (3:16)
09. FRIGHT NIGHTS (5:06)
10. TIME TO SHINE (4:12)

https://studiowarp.jp/shrine/srsw-491-shotahirama%E3%80%8Eget-a-load-of-me%E3%80%8F/

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Tower Records
HMV


プロフィール

ニューヨーク出身の音楽家、shotahirama(平間翔太)。中原昌也、evalaといった音楽家がコメントを寄せる。畠中実(ICC主任学芸員)による記事「デジタルのダダイスト、パンク以後の電子音楽」をはじめ、VICEマガジンや音楽ライターの三田格などによって多くのメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell等のジャパンツアーに出演。代表作にCDアルバム『post punk』や4枚組CDボックス『Surf』などがある。

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