「KING」と一致するもの

ele-king vol.7、できました! - ele-king

さて、紙ele-kingの季節です。
特集はもちろん、QNやtomadなど日本の才能、フライング・ロータスなど海外の巨才、小杉武久という伝説まで、インタヴューも濃縮クオリティ。
発売は9月28日(金)です!

●アニマル・コレクティヴ表紙&巻頭インタヴュー!!

●特集 ノイズ/ドローンのニューエイジ! 
――コンプリート・ガイド・トゥ・ノイズ/ドローン2001-2012

 インディ・ミュージックの世界において、いまふたたびノイズ/ドローンが熱い注目を浴びていることにはお気づきだろうか? あのジム・ジャームッシュまでもが、最近は自身でドローンを演奏しているのだ! とはいえ、「ノイズ」という概念は更新されつつある。そこではいろいろな音がつながり、変化し、日々あたらしい力が生み出されている。今回特集するのはそんな「これからの歴史に残る」ノイズ・ミュージック! ノット・ノット・ファンやエメラルズなど、現在を彩るインディ・ロックやアンビエント、またニューエイジ的なルーツを持った異才たちの、その背景にある音たちを探っていきます。2001年から2012年までの重要作品をきっちり網羅したディスク・ガイドも収録。コラムも加えて大充実の必携本に!! いつものele-king執筆陣も筆をふるっております!

*インタヴュー
ピート・スワンソン、小杉武久(タージ・マハル旅行団)、ジム・オルーク、シンリシュープリーム、アース、メデリン・マーキー他

*ディスクガイド60
クロニクル2001~2012! まだ書かれていない歴史をここに。選りすぐり60枚!
倉本諒、デンシノオト、橋元優歩、三田格、松村正人、湯浅学

*コラム
佐々木敦、美川俊治ほか

* USノイズ・マップ!by倉本諒

●TALK
フライング・ロータスが新作を語るロング・インタヴュー
シミラボ脱退後はじめて心境を語るQNインタヴュー
〈マルチネ・レコーズ〉主宰tomadの新展開インタヴュー「音楽とお金とレーベルの新しい関係」
森美術館での個展や伝記映画公開でこの秋注目! 日本を代表する画家、会田誠インタヴュー
数奇なるフォークシンガー、倉内太インタヴュー

●前号からの新連載も絶好調!!
山本精一「ナポレオン通信」、西村ツチカのマンガ「本日の鳩みくじ」がスタート!

●好評連載中!
粉川哲夫、戸川純、shing02、tomad、二木信、T・美川、こだま和文×水越真紀 各氏

●カルチャー・レヴュー
五所純子(映画)、プルサーマル・フジコ(演劇)、小原真史(写真)

●巻頭フォト
阿部健

●表紙撮影
塩田正幸

編集 野田努、松村正人、橋元優歩
撮影 小原泰広ほか

John Frusciante - ele-king

 ギタリストとしての彼と同等かそれ以上に、ジョン・フルシアンテは彼という存在自体に心酔するファンを多く引き寄せるようにみえる。カリスマ・ギタリストとはそういうものかもしれないが、彼の場合は生き方のロールモデルとしても強固に支持され、それも女性より男性を惹きつけてやまないといったところがある。

 何がそうさせるのか。その理由のひとつは一種のストイシズムだと言えるかもしれない。みずからの理想とする音のために、人気も名声もほしいままのスーパー・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズを脱退し、音楽以外のことにはほとんど金も時間も使わない。そこには非常に情熱的な思いもあふれている。

 それから、筋骨隆々としたバンドにあって、どこかはかなく、危うい精神性を感じさせる部分も魅力的だった。彼のヘロイン中毒は、自堕落のためではなく、過度のプレッシャーやデリケートな性質ゆえのものとしてファンには記憶されているだろう。2004年前後にたてつづけに7枚ものソロ・リリースを重ねたことも、彼の情熱に加え、そうした危うさをわずかに感じさせる。

 さらにはエモーションゆたかな演奏スタイルやソングライティング、そこにぎりぎり表れるナルシスティックな雰囲気が、彼をある種の人びとにとっての神に押し上げる。ストイシズムはあるときナルシシズムを生むし、逆もまたしかりだ。長髪のフルシアンテの姿にときおり磔刑の像が重なるのは筆者ばかりではあるまい。(このナルシシズムについては「女性が沢尻エリカに心酔するのと同じ?」と指摘した友人がいたが、そうかもしれない)

 であればこそ、フルシアンテの音楽を評するのはじつにむずかしい。それは音楽というよりも彼自身であるからだ。今作『PBXファニキュラー・インタグリオ・ゾーン』最大の争点は、彼が大胆にエレクトロニクスを導入し、プログラミングを行い、これに先立つEPにはRZAらMCを迎え、ドラムンベースまでがきこえてくる、本人いわく「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」を制作しようとしたことである。しかしわれわれはその「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」を微分していったところで、あまり実りのある批評を引き出せるとは思えない。もっと言えば、ここに鳴っている音には音楽史的な新しさや未知のヴィジョンが示されているわけではないし、その意味での重要性もさほど感じない。しかしほかならぬフルシアンテ史として、フルシアンテの作品として非常におもしろく、感動的なものであることもまた間違いない。作品をはかるものさしはひとつではない。彼の取り組みやその真剣さには、真似のできない、敬意を抱かずにはいられないものがある。前作『ザ・エンピリアン』の時期に、すでに彼はアシッド・ハウスやエレクトロニック・ミュージックにしか興味がないという旨の発言をしていたようだし、ブレイクコアの雄、あのヴェネチアン・スネアーズやクリス・マクドナルドとも新たなプロジェクトを立ち上げるなど、本作への伏線となるような一貫した流れが彼のなかでは組み上げられていたのだ。

 では彼がシンセやビート・コラージュに期待したものはなにか。おそらくそれは彼のなかのロックを対象化する作用である。EPにMCを起用したのも同様だ。自身に深くしみついた音楽性を外側から眺めることで、自身をも見つめ直したい。そして自分にまだ残されている未知の可能性を探りたい。そうした生真面目な理由からではないかと思う。「手と楽器の密接な関係性は、ミュージシャンが作り出す音楽の基礎となっているが、ポップ/ロックを演奏する上で、自分の頭が手によってコントロールされている傾向が強いことに気づいて、それを修正したいと強く願っていた」(https://www.ele-king.net/columns/002355/index-2.php)つまり手クセや、ロックというフォーム自体が強いてくる制限性をうち破りたいということだ。そして「マシンの知能と人間の知能が刺激し合って、その相互作用によって生まれる音楽に僕は強い関心を抱くようになった」身体がおぼえている慣習に、純粋な思念やアイディアがからめとられてしまうことを克服したいということだろう。そこに人工知能を噛ませることがはたして解決になるのかどうかはともかく、ここでも非常に彼らしい、まじめな問いが問われていると感じる。彼はおそらく、あの過大なエモーションをギターと歌とによって放出させることを抑えたいのである。

 さてアナログシンセをサウンドの核として楽曲構成すること自体が、当代随一ともいえるギタリストのフルシアンテにとってはエポック・メイキングな取り組みであるわけだが、そのもくろみがもっとも成功しているのは"イントロ/サバム"である。ふだんは雄弁すぎる彼のギターがシンセの影として動き、アブストラクトなビートによってその情緒を解体されている。冒頭のゴーストリーなコーラスもよいし、ピアノのサンプルもうまく配されている。"バイク"などは、ドラムンベースからジュークにまで突き抜けそうな奇怪な高速トラックでおもしろい。全体が非常にせわしなく落ちつかないビート感覚に支配されていることも本作の大きな特徴だ。"サム(Sam)"も同様の趣がある。

 しかし、気がつけばすぐに彼は歌ってしまう。声でも歌うし、弦でも歌う。そして今回導入した「マシンの知能」を自分で食ってしまう。終曲"サム(Sum)"は冒頭から朗々とヴォーカルが入る。彼が自身とマシンとをポジティヴに拮抗させているのは先に挙げた数曲のみだ。こうしたことは、ジョン・フルシアンテというアーティストの業をふかく抉りだしていてしみじみとさせる。この強烈なエモーションは、やはりどのような策によってもねじ曲げ、封じることはできないのだろう。彼は、まさにこのようであることにおいて、このようにしか生きられないことにおいて、いっそう愛され、尊ばれていく存在ではないだろうか。そしてそこにまったく嘘や手抜きがなく、厳しい自己鍛錬ばかりがあることを筆者も疑わない。

interview with Grizzly Bear - ele-king


Grizzly Bear
Shields

Warp Records/ビート

Amazon

 予兆はあったのかもしれない。前作『ヴェッカーティメスト』のオープニング・トラックの"サザン・ポイント"のドラム、あるいはダニエル・ロッセンのソロEPのギターの音に。だが......グリズリー・ベアとしては3年ぶりの『シールズ』は、バンドがまったく新しい領域へと足を踏み入れたことを何よりも音で宣言している。再生ボタンを押すと、8分の6拍子のなかで、リズムは複雑にビートを刻み、ざらついた質感のギターがアルペジオを鳴らし、シンセがうねり、それらすべてが吹き荒れたかと思えば、アコースティック・ギターが繊細に歌に寄り添う。呆気に取られていると、2曲目の"スピーク・イン・ラウンズ"でそれは確信に変わる。ドラムが疾走するアップテンポのフォーク・ロックを鮮やかに色づけるフルートの調べと、どこか甘美に響くコーラス。まったくもってスリリングな演奏、先の読めない展開、あらゆる楽器のエネルギッシュなぶつかり合い。その興奮と喜びを、「インディ・バンド」がこれほど高い次元で追及し達成していることに息を呑む。
 ヴァン・ダイク・パークスからビーチ・ボーイズ、ランディ・ニューマンらアメリカの作曲家たちの大いなる遺産を正しく受け継ぎつつ、自国のフォークへの深い理解を示し、現代音楽やジャズの素養もあり、ダーティ・プロジェクターズやスフィアン・スティーヴンスらコンテンポラリー・ポップの精鋭たちと共振する音楽集団。グリズリー・ベアと言えば、まるで隙のない優秀さに支えられ評価されてきたし、実際それはその通りなのだが、本作においては緻密なアレンジでその知性を研ぎ澄ましつつも、その前提を踏まえた上でこれまでは見せなかった荒々しさや情熱を惜しみなく楽曲に注いでいる。前作でときにティンパニのように響いていたドラムは、ここではより「ロック・バンド」的なそれとして叩かれ、エド・ドロストは声がかすれるほどエモーショナルに歌い上げることを恐れない。クレッシェンドとデクレッシェンド、ピアニシモからフォルテシモまで、自在に行き来する。いまだ眠っていた熊の野性が、ここでは遠慮なく呼び覚まされているようだ。

 グリズリー・ベアの音楽は、恐れずに前を向いているように聞こえる......アカデミズムとポップの範囲に囚われず、多彩な音楽を展開するその理想主義的な態度において。以下のインタヴューでエドは「リスナーひとりひとりの解釈に委ねたいから」と歌詞については沈黙を守っている。たしかにまずアンサンブルが雄弁な作品であり、そこでこそ言葉は鮮烈なイメージをはじめて発揮するように感じられる。が、ここではひとつだけ、情感豊かなサイケデリアが広がるラスト・トラック"サン・イン・ユア・アイズ"で美しく繰り返されるフレーズを挙げておきたい――「I'm never coming back.」

エネルギーに満ちたアルバムにするためにどうすればそれがより強調されたのはたしかだね。前のアルバムが洗練されたアルバムだったこともあって、今回は粗削りでも自分たちのいまのエネルギーを反映したアルバムにしたいと思っていたし。

新作『シールズ』、素晴らしいアルバムだと思います。より、バンドとしての結束が強固になった作品だと強く感じました。

エド・ドロスト:そうだね、一緒に曲を書いたりしたことでより絆は深くなった気がするね。それにアルバムを作るにあたっていろいろな試行錯誤があったしね。
 最初にテキサスでレコーディングを試みたんだけど、長いあいだみんな個々に活動していて、個人レベルで人間的にもミュージシャンとしてもそれぞれスキルアップして戻ってきたこともあって、まずお互いのバックグラウンドがどんなものなのかを改めて知る必要があったんだ。そしてお互いの成長ぶりがわかってからはどんどん作業がはかどって、曲も予想以上にたくさんできたんだ。

メンバーがそれぞれソロや別のプロジェクトをされていましたが、それらを経てグリズリー・ベアとして集まったときに、バンドのアイデンティティを再発見するようなことはありましたか? それはどのようなものだったのでしょう?

ED:バンド自体はつねに進化しているし、アルバムごとにつねにバンドとしての新しい発見を見つけることが出来ていると思ってる。もちろん今回も新しいアイデンティティを発見したと思うけど、それをカテゴライズすることはできないね。そこに行きつくまでに苦しんだりもがいたりしたけれど、新しいエネルギーと方向性を見出したかな。とっても長く曲がりくねった道のりだったし大変だったけれど、辿りついたときは全員が満足出来たし、最高傑作を生み出せたという自信にはつながったと思うよ。

今回はエドとダニエルが曲を持ちより、メンバー全員で作曲したとのことですが、そのプロセスを実際やってみて、これまでと大きく異なる体験でしたか?

ED:ダニエルが書いた曲を歌ったというより、一緒に共同で曲を作っていたんだ。作り方としてはダニエルがヴァースを作って僕がメロディやコーラスを乗せたり、その逆で僕がメロディを作ったものに彼がヴァースをつけたり、そんな感じでピンポン玉のように出来たものを打ち返しながら一緒に作品にしていったんだ。もちろんこれは初めて挑戦したやり方だよ。今までは歌ってるひとがそのメロディを作ってるって聞けばすぐわかるような感じだったけど、今回はこうしないとならないというルールみたいなものは何もなくて、とにかく自由にやってみたらこうなったんだ。

非常に緻密で洗練されたアレンジにもかかわらず、ライヴであなたたちを観るような野性味、パワーを非常に本作に感じました。少ないテイクで録音されたこととも関係しているのかと思いますが、そこにこだわったのはどうしてですか?

ED:長い充電期間を経て作ったこともあって、エネルギーに満ちたアルバムにするためにどうすればそれがより強調されたものになるかということを考えたのはたしかだね。前のアルバムがとても洗練されたアルバムだったこともあって、今回は無駄なことはせずもっと粗削りでも自分たちのいまのエネルギーを反映したアルバムにしたいと思っていたし。だからヴォーカルもコーラス・ワーク中心というよりもっとシンプルにありのままを録った部分もあるしね。だから前よりももっと生っぽい音にこだわってそのエネルギーを込めたものになっていると思うよ。

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たしかにクラシック的な構成は減らしたかな。もちろんいまだにピアノやストリングスを使ってはいるけど、よりシンプルにしようということを意識的に心がけた部分はあるかな。


Grizzly Bear
Shields

Warp Records/ビート

Amazon

前作までよりも、クラシック音楽的な構成が少し後退したように思います。とくに"イェット・アゲイン"や"ア・シンプル・アンサー"などは、よりシンプルにバンドの演奏が骨格になっているとわたしは感じるのですが、その辺りは意識的でしたか?

ED:たしかにクラシック的な構成は減らしたかな。もちろんいまだにピアノやストリングスを使ってはいるけど、よりシンプルにしようということを意識的に心がけた部分はあるかな。

現代音楽やジャズにも精通するあなたたちが、楽器は多くともあくまでバンド・スタイルであるのはどうしてですか? たとえばスフィアン・スティーヴンスのように、オーケストラを大々的に導入したいという欲望はないですか?

ED:たぶんオーケストラ的なアプローチは前のアルバムの時にやったと思うんだ。ただ今回はそれをやってしまうとちょっとやりすぎな感じと元々の良さを壊してしまうような気がして。
 過去にオーケストラと一緒にライヴをやったこともあって、それはそれで楽しかったし、新しい試みだったんだけど、そこで僕たちはバンドとして演奏するほうが好きなんだっていうことに気づいたんだ。とても楽しかったし、聞くには新鮮でいいと思う。でもバンドとして出すエネルギーには代えがたい感じがあったんだ。バンドで演奏すれば指揮者を気にして合わせる必要もないしね。
 なんとなくオーケストラが入ることでかしこまった感じになることで聴く人との距離を感じると思うんだ。音としてはとてもきれいだけど、オーディエンスと一体になるにはちょっと難しい面もあるなと感じたんだ。僕は個人的に音楽でリスナーと一体となって、歌詞は聴く人の解釈に委ねる、というのが理想なんだよね。

本作ではより歌がソウルフルに響いています。クレジットを見るとエドはヴォーカルとありますが、今回あなたは歌に専念したということですか? それはどうして?

ED:うーん......僕が曲をたくさん書いていることもあって、曲や歌詞もやはりヴォーカルに重きを置いている部分はあるとたしかに思う。歌詞も前よりもストーリーを上手く書けるようにもなってそれを表現する必要が出てきているからね。正直昔よりも歌詞を書くことにエネルギーを使ってると思う。曲のクオリティと同じくらいのレベルの歌詞を書いていると思うんだ。だからこそその歌詞の世界を表現するためにも、歌に重点を置いているのはたしかだよ。

グリズリー・ベアの楽曲には、ビーチ・ボーイズが引き合いに出される甘いコーラス・ワークがありながらも、つねに憂いや陰影、不穏さのようなものがあります。それはどうしてだと思いますか?

ED:とくに憂いと不穏さをコーラスに反映しているつもりはないよ。とくにこのアルバムは前のアルバムに比べて憂いはないと思うしね。

"スリーピング・ユト"が、「この曲が1曲目だ」となった決め手はなんだったのでしょう?

ED:この曲をオープニングに持ってきたのはアルバムの最初はアップテンポで始まり、終わりは真逆の雰囲気で終わるという風にしたいと思ったからなんだ。アルバムを聴いて最初にエネルギーを感じてもらうことを考えてこの曲を1曲目に持ってきたというわけさ。

ラスト・トラックの"サン・イン・ユア・フェイス"のダイナミックなアレンジには圧倒されます。

ED:この曲はある晩僕がピアノで書いた曲なんだけど、曲を作りながら自分が歌うんだろうと思ってた。自分でコーラス・パートも作って、それをダンに聴かせたんだ。そしたら彼はとても気に入って、他のパートを付け加えていいって、その後クリスが来てホーンとかを加えてくれた。最初僕はこの曲はもっとバラード的になると思っていたけど、とても長く旅に出ているような曲に仕上がった。最後に僕がコーラスを曲の中に散らばせて、出来たときは誰もがこの曲こそがアルバムの最後を締めくくるにふさわしい曲だと思ったよ。本当に素晴らしい曲になったと思う。

音楽的な前進を目指しているという点で、内省的なテーマを経ながらも、グリズリー・ベアの音楽は前を向いているように思えます。自分たちの作っている音楽は、オプティミスティックなものだと思いますか?

ED:とくに自分たちの音楽がどの方向を目指してるという明確なテーマは持っていないけど、このアルバムについて言えば、誰でもみんな孤独を感じたり誰かと一緒にいたいと思ったり、さまざまなことを日常のなかから感じていると思うんだけど、その日常で起こり得るひとの感情を表現したという感じかな。このアルバムにはオプティミスティックな部分がちりばめられているとは思う。とてもダークなトーンのものからオプティミスティックな部分まであると思うけど、たしかにいままでのアルバムの中では一番そう思える作品かもしれないね。全曲とは言えないけどね。

フォークなどルーツ音楽への理解がありながらも、主にアレンジの面において徹底的にモダンであろうとするところに、グリズリー・ベアの理想主義的な側面を非常に感じます。実際のところ、バンドはポップ・ミュージックの領域を拡大、あるいは更新したいという思いはあるのでしょうか?

ED:とくに意図的にポップ・ミュージックの領域に行こうとしてるわけではないと思う。僕たちはフォークやクラシック・ロック、ジャズ、R&B、インディ・ロック、なんでも好きだと思うし、こういったすべての要素をとりいれたいと思っているんだ。だからいろんなスタイルの演奏や音がアルバムにはちりばめられていると思う。このアルバムはとくにジャズの影響が出ていると思うけどね。

タイトルの『シールズ』にこめられた意味はどのようなものですか?

ED:今回はアルバムのタイトルを決めるのにかなり苦労した。『シールズ』というタイトルは何通りもの解釈ができると思う。ひととひととの関連性や親近性、他人とどこまで関与していきたいのかということに対する防御、壁という意味もあるし、「Shield」は「何かから守る」という動詞としても使える。このアルバムを作っていた時、冬の寒い要素が身の周りにたくさん感じられたから、そういった意味合いもある。そのような場所にいたから、孤立や防御という概念があったんだ。で、『シールズ』はどこかの時点で挙がって、既にどんなアートワークにしたいかっていうイメージはあったから、この言葉が出た時にどういうわけかしっくりきたんだ。当然メンバー4人の意見はそれぞれ違うだろう。でもそれでいいと思った。聞き手がそれぞれ好きな意味を見出してくれればいいんじゃないかってね。何よりも言葉の響きが気に入ったんだ。

interview with Wild Nothing (Jack Tatum) - ele-king


Wild Nothing
Nocturne

Captured Tracks/よしもとアール・アンド・シー

TOWER RECORDS

 デビュー・フル『ジェミニ』がしずかに、しかしつよい支持をもってシーンに迎え入れられたのは、ここ数年にわたるエイティーズ・ブームのもうひとつの側面を象徴していたと言えるかもしれない。シンセ/エレクトロ・ポップなどがふたたび参照され、さらなる先鋭化がほどこされている状況は多くのリスナーの知るところであるし、インディ・ダンス・シーンも同様である。あのマーク・マッガイアですらがライヴでディスコをかけてしまうほど80年代色は強烈に機能してきた。
 ワイルド・ナッシングやそのリリース元である〈キャプチャード・トラックス〉は、そうしたものと共鳴しながらも、よりポスト・パンクやギター・ポップ、シューゲイザーといったUK寄りの音に新しい息を吹き込んだ存在だ。より内向的な音楽性を特徴として、UKインディの美しい遺産を掘り当ててきた。いま、そうしたトレンド自体は徐々に次のフェイズへと移りゆこうとしているが、変わらぬものをいとおしむように――ポップスとしての普遍性を取り出して研磨するように――、ジャック・テイタムはセカンド・アルバム『ノクターン』を完成させた。ソングライターとしての才と、レコード・コレクターとしての愛情や探求心がこぼれそうにたたえられた作品である。眠れぬ夜を相手に紡ぎだされたというそれぞれの曲には、以下の回答に明瞭に示されるとおり、彼の繊細で真面目な性質までもが陰影ゆたかに彫り込まれている。

ぼく自身はあのプロダクションにすごく惹かれるんだよね。あと、あの時代の音楽には、すごく純粋な感触がある気がする。ある意味すっごくシリアスなんだけど、同時にシリアスでもないっていう。

好きなアーティストとしてザ・スミスなどの名が挙がっていますが、まわりの同世代もザ・スミスを聴いていたりするのですか?

ジャック:別に周りが聴いてたわけじゃないな。ぼくはつねに音楽を探して、レコードを買ってるような人間のひとりなんだよ。つねに音楽をリサーチして。いまでもそう。レコード屋に毎日通って、何時間もいて、あるバンドに繋がる別のバンドを発見していって。そういうのってオブセッションになったりもするしね。

〈キャプチャード・トラックス〉には、あなたの他にもミンクスやクラフト・スペルズなど、〈クリエイション〉や〈サラ〉、〈ファクトリー〉といった80年代UKのギター・ポップ、あるいはニュー・ロマンティクスと呼ばれたようなバンドの影響が感じられます。ミンクスもクラフト・スペルズもあなたも、みなアメリカのアーティストであるということがおもしろいのですが、あなたからは80年代のUKや音楽はどのように見えますか?

ジャック:ぼく自身はあのプロダクションにすごく惹かれるんだよね。あと、あの時代の音楽には、すごく純粋な感触がある気がする。ある意味すっごくシリアスなんだけど、同時にシリアスでもないっていう。ソングライターとして、キュアーにしてもスミスにしても、何故かぼくにとってはすごくコネクトできるんだ。ぼくの音楽を好きな人も、ああいう音楽を聴いてる人、聴いたことがある人が多いと思う。だって......いい音楽だから(笑)。

〈キャプチャード・トラックス〉が埋もれていたシューゲイザー・バンドの発掘を行っている点などからみると、あなたがたは自然に集まってきたというよりは、主宰者であるマイク・スナイパーによって招き入れられたという感じなのでしょうか?

ジャック:その通り。全部マイクのアイデアなんだよね。ぼくの場合、マイクがぼくをインターネットで見つけてきた。いくつか自分の曲をアップしてたんだけど、それを聴いたマイクが「もっと聴きたい」って連絡してきて。最初はもっと曖昧な関係で、ぼくは彼のことをあんまり知らなかったし、レーベルのこともよく知らなかったんだ。その頃はまだ〈キャプチャード・トラックス〉も7インチしか出してなかったし。でもニューヨークに行って、彼に会うことになって......今ではしょっちゅう会ってるし、レーベルの全員と仲がいいんだ。ある意味ファミリーなんだよね。音楽的なアイデンティティをシェアしてるし、みんな音楽のファンで、80年代UKの音楽に参照点があるのも同じだから。

MTVに象徴されるような、アメリカの80年代の音楽へのあこがれやシンパシーはありますか?

ジャック:そういうのってないかも。コンテンポラリーなポップ・ミュージックについていくのって、僕にとってはすごく疲れちゃうんだよね。ラジオも聴かないし、テレビもあんまり観ないし、ラジオから流行ってる曲が流れるたびにびっくりしちゃうんだ。それが何か全然わからないから(笑)。遅れてるんだよ。

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いまではしょっちゅう会ってるし、レーベルの全員と仲がいいんだ。ある意味ファミリーなんだよね。音楽的なアイデンティティをシェアしてるし、みんな音楽のファンで、80年代UKの音楽に参照点があるのも同じだから。


Wild Nothing
Nocturne

Captured Tracks/よしもとアール・アンド・シー

TOWER RECORDS

『ノクターン』は、大半がツアーのために滞在したジョージア州で書かれたということですね。滞在したのはどのような場所でしたか? また、こうした生活のなかで印象深かったことがらについて教えてください。

ジャック:ジョージアは関係してると思う。曲のほとんどは、ツアーじゃなくてジョージアに住んでたときに書いた曲だし、もともとジョージアに引っ越したいちばん大きな理由が......ある意味、当時僕のまわりで起きてたことから離れるためだったんだよ。あの頃、僕はつねにツアーをしてて、帰る家があるって感じられなかったんだよね。大学のためにヴァージニアに移ったあと、ずっとツアーが続いてて。で、休みに入ったときに、友だちが住んでるジョージアに引っ越したんだ。とにかく、いろんなことからいったん離れるのにいい場所だと思ったんだよね。ずっと旅をして、毎晩ライヴをやるのって、ほんとに疲れるから。「ジョージアだったら静かな生活が送れるだろう」って思えた。でも結局どうだったかっていうと、もちろん快適で、住み心地もよかったんだけど......やることがほとんどなくて(笑)。自分の時間を有効に使ってると思えなかったんだ。その頃もまだツアーはあったし、なんか落ち着かなかったんだよね。そのせいで眠れなくなって。でも、それがいい結果にもなった。ジョージアにいるときにいい曲が書けたし。他にやることがなくて、音楽のことばっかり考えるようになったせいでね(笑)。ずっと言ってることなんだけど、このレコードの大半は深夜に書かれたし、心が落ち着かない、うまく眠れない――みたいなフィーリングから生まれてきたんだ」
注)現在はブルックリンに居住

ファースト・アルバムはガレージ・バンドでひとりでつくりあげたということですが、今作はプロデューサーとしてニコラス・ヴェルネスが加わっていますね。はじめにあなたからどのような作品にしたいというお話をされましたか? また彼とのレコーディングの模様について教えてください。

ジャック:このレコードについて話した人たちのなかにニコラスがいたんだよね。いっしょにやる相手としては、他にも何人かプロデューサーと話したんだけど。そう、まだ引っ越す前にニューヨークでいろいろ人とミーティングをしたときに、彼とも話をしたんだ。そのときはちょっとだけだったんだけど、ニコラスの人柄やプロセス全体への彼のアプローチが気に入ったんだよ。もともと会おうと思った最初の理由は、彼がブラッドフォード・コックス――ディアハンターやアトラス・サウンドでやってた仕事が好きだったからなんだ。で、会ってみたら美意識的にも音楽的にもしっくりきて。実際、最初に会ってからレコーディングに入るまでにはかなり期間が開いてたんだよ。知り合った頃、僕はまだ曲を作りながら、セカンド・アルバムで何をやりたいのか模索してたから。で、ニューヨークに引っ越してから、またニコラスと話すようになって、彼とレコードを作ろうって決めた。

前作のラフでもこもことこもったようなプロダクションも好きでしたが、今作はすっきりとクリアに整えられたように感じました。"ディス・チェイン・ウォント・ブレイク"や"パラダイス"などのように、ベース・ラインやビートもシャープになったと思います。あなたのなかでもっとも前作とちがうと感じている部分はどのようなところですか?

ジャック:今回とりかかったときに考えてたのは、前よりもクリーンで、ああいうサウンドに頼らないものにしよう、ってことだった。最初はリヴァーブとかのエフェクトをもっと削ぎ落としたサウンドを試したんだよ。

リヴァーブやディレイはいまでもあなたのなかで新鮮なエフェクトだと感じられますか?

ジャック:いまでも重要なエフェクトだと思うよ。必ずしも不可欠じゃないけど、やっぱりつねに好きなサウンドではあるから。

ジャケットも美しく、中古レコード屋でみつけた80年代の隠れ名盤のような趣があります。こうしたヴィジュアル・イメージもあなたのアイディアによるものですか?

ジャック:もともとはひとつのカヴァーにするつもりだったんだよ。でも候補が挙がってきたときに、全部マーブル紙的なアートワークで、それからひとつ選ぶことになって......。たぶん、最初に「全部やろう」って提案したのは〈キャプチャード・トラックス〉だったと思う。パルプの『ディファレント・クラス』みたいなアイデアだね。あのアルバムのスリーヴって、表が切り抜きになってて、6枚のちがうインサートが入ってるだろ? だから僕らも6枚のインサートを作って、好きなように変えられるようにしようってことになった。いったんそのアイデアが出てくると、全員が興奮したんだよね。いまじゃもうないようなアイデアだから。僕自身レコード・コレクターだから、フィジカル・コピー、ヴァイナルとしておもしろいし、人がそれを買う理由になるのにも惹かれた。ネットからダウンロードしたりするだけじゃなくて、物としての価値があるってところにね。

日本盤のボーナス・トラックである" フィール・ユー・ナウ"などには、よりエレクトロニックな方法が試されているように感じますが、これからの音楽的な展開として思い描いているようなことはありますか?

ジャック:しばらくそういうことは考えないんじゃないかな(笑)。あれはちょっと出てきたアイデアっていうだけだと思うし。まだ次のアルバムのための新曲も書きはじめてないし。"フィール・ユー・ナウ"は確かに他の曲とちょっとちがうけど、実際、いつでも同時進行でいろんな種類の曲があるんだよ。『ノクターン』でも、他の曲と合わないから入れなかった曲がたくさんある。アルバムの一貫性が欲しかったからね。まあ、次のアルバムを作りはじめるときには僕のテイストががらっと変わるかもしれないし......まだわかんないよ。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのカタログが再発されましたね。あなたはどの作品が好きですか?

ジャック:どれも大好きだよ! 僕がいちばん好きな曲は実際、EP『グライダー』に入ってるんだ。"オフ・ユア・フェイス"っていう曲。すっごくきれいな曲なんだけど、あのギター・サウンドもあって。どれも好きだけど、初期の『エクスタシー・アンド・ワイン』はすごく好きだな。

ひとりで音楽づくりをはじめる前に、バンドを組んだりしてはいないのですか?

ジャック:大学に入るまで、他の人とプレイすることはなかったんだ。バンドもやったんだけど、本気でやってたわけじゃなくて。

いまあなたがとくに関心を寄せている音楽について教えてください。

ジャック:んー、なにかな。実際、前より60年代の音楽に興味がわいてきてるところなんだ。バーズとか、ホリーズとか。クラウトロックも聴きはじめてる。あと、ビージーズの初期のレコードをかなり聴いてるんだよね(笑)。フェイクなロック・バンドだった頃。見つけたときには、そのこと知らなかったんだけど......だから、すっごくエキサイトして。なんていうアルバムだっけ? たぶん、『ビー・ジーズ・ファースト』っていうタイトルだったと思う(笑)。

Chart JET SET 2012.09.10 - ele-king

Shop Chart


1

Kindness - Gee Up Remix (Female Energy)
「Erol Alkan Extended Rework」ヴァイナル化。Kindness代表曲の一つ「Gee Up」を、Erol Alkanがリエディットしたキラー・トラック!

2

Efeel - Dawn Over A Quiet Harbour (International Feel)
ウルグアイ発のバレアリック・トップ・レーベル"International Feel"が手掛けるリエディット・ライン「Efeel」の最新作が待望の入荷。グリーン・クリアヴァイナル/ワンサイデッド・プレス。

3

Neneh Cherry & The Thing - Dream Baby Dream / Cashback (Smalltown Supersound)
ジャズ・トランぺッター、Don Cherryの実娘としてもお馴染みNeneh Cherryによるアルバム"The Cherry Thing"からのリミックスカット!

4

Lorn - Weigh Me Down (Ninja Tune)
Ninja Tuneへの電撃移籍後初となるアルバム『Ask The Dust』が賞賛を浴びる中、Lorn自らがボーカルを担当した"Weigh Me Down"の豪華リミックス・シングルをリリース!

5

Clark - Fantasm Planes (Warp)
電子音と生楽器を完璧に融合させた名作『Iradelphic』でシーンに衝撃を与えたWarpの美メロ・エレクトロニカ人気者Clark。エレガントなポップ加減を更に増しつつボトムも強靭な6トラックスを完成しました。

6

V.a. - Epic Disco Vol.2 (Rollerboys)
Prins Thomas Remixを収録したアーバン・シンセ・ディスコ傑作「The Thracian Plain Ep」のヒットも記憶に新しいUltracity主宰"Rollerboys Recordings"の最新話題作をストックしました!!

7

Big Brooklyn Red - Taking It Too Far (Soul Brother)
CommonやMassive Attackを筆頭に数多くサンプリングされているあのクラシックを引用した演奏をバックに歌い上げる絶品アーバン・メロウ・グルーヴ登場!!

8

Chilly Gonzales - Solo Piano ll (Gentle Threat)
ごぞんじミュージック・ジーニアス、Gonzalesの最大のヒット作『Solo Piano』。8年の時を経て第2作目が完成しました。よりメロディアスで普遍的な表情を湛えた珠玉のインスト集!!

9

Mala - Mala In Cuba (Brownswood)
先行カット『Cuba Electronic』もメガヒット中、Deep Medi Musik主宰としてもお馴染みDigital Mystikzの1/2ことMalaによるキューバン・ダブ(ステップ)・アルバムが遂に登場です!!

10

Midland & Pariah - Untitled (Works The Long Nights)
テックベース最前線を行く名門Aus Musicの代表格Midlandと、絶好調のベルジャン老舗R&sに見出されたPariahによる超強力コラボ限定盤が登場。鳴りからして完璧な2トラックスを搭載です!

LOW END THEORY JAPAN [Fall 2012 Edition] - ele-king

 ちょうどフライング・ロータスの新作『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』(素晴らしいアルバム!)がリリースされる頃、今年3度目のローエンド・セオリーが代官山ユニットで開催される。イヴェントの看板DJのひとり、ザ・ガスランプ・キラーをはじめジョンウェイン(注目株のひとり、ストーンズ・スロー所属)、そして豪華絢爛なDJたち。DJ Ductと鎮座ドープネスとMABANUAが一緒に並んでいるっていうのもいいです。人気企画BeatInvitationalも同時開催する。

 とにかく、以下のメンツを見て欲しい。ビート好きは集合!

2012.9.28(金)
at UNIT
www.unit-tokyo.com
OPEN / START : 23:00
CHARGE : ADV.3,500yen / DOOR 4,000yen
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。
(要写真付き身分証)

Live&DJ:
The Gaslamp Killer
Nocando
Jonwayne

Beat Invitational:
grooveman Spot
三浦康嗣(□□□)
鎮座ドープネス
daisuke tanabe
mabanua (laptop set)
DJ Duct
sauce 81
みみみ
Notuv
Submerse

The Gaslamp Killer
Jonwayne

DJ:
DJ Kensei
grooveman Spot
Hair Stylistics
DJ Sagaraxx
RLP
Submerse

VJ:
DBKN
浮舌大輔


The Gaslamp Killer ザ・ガスランプ・キラー
カリフォルニア州サンディエゴ出身。レイヴに通いつつ、インヴィジブル・スクラッチ・ピクルズやビート・ジャンキーズなどのスクラッチDJの影響も受け、17歳の時にサンディエゴの有名なダウンタウン、ガスランプ・クォーター(ガスランプの街灯が連なる通りがある)でDJをはじめる。2006年にロサンゼルスに移り住むと、すぐにはじまったばかりのパーティ「LOW END THEORY」に関わり、レジデントDJの座を掴む。LAの最新のビーツ系から、アンディ・ヴォーテルの〈FindersKeepers〉音源やジミ・ヘンドリックスまでプレイできるDJスタイルは、すでに世界的な人気を得ている。2012年9月、10年におよぶDJキャリアの集大成である待望のファースト・フル・アルバム『Breakthrough』をリリース。

Nocando ノーキャンドゥ 
LAアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの中核Project Blowedから頭角を表し、「LOW END THEORY」のレジデントMCを務め、多方面から注目を集めているラッパー。自由自在にウィットに富んだ天才的なライムを吐き出し、07年には全米最大級 のヒップホップ・イヴェントであるスクリブル・ジャムのMCバトルでチャンプに輝いた。フライング・ロータスやバスドライヴァー、デイデラスらをはじめとしたそうそうたるメンツが参加したアルバム『Jimmy The Rock』もリリース。今年10月にはセカンド・アルバムのリリースを控えている。

Jonwayne ジョンウェイン
14歳からエイフェックス・ツインやスクェアプッシャー、ヒップホップ、ゲーム音楽に触発され音作りを始め、高校時代には演劇やスポークン・ ワードをやり、ヒップホップの虜になってからラップとビート作りに没頭。LOW END THEORYに足繁く通い、ダディ・ケヴにその才能を認められて、Alpha Pupからインスト・ アルバム『Bowser』『The Death Of Andrew』をリリース。またStonesThrowからも初期の作品をまとめた限定盤『Oodles of Doodles』をリリース。20歳そこそこで独自のビート・スタイルを確立した彼は、ラッパーとしても既に引っ張りだこで、ポーティスヘッドのジェフ・ バーロウによるQuakersのアルバムなどに参加している。

- Beat Invitational出演者

GROOVEMAN SPOT
世界が注目する新鋭ビートメイカー/プロデューサー。MC U-Zipplain とのユニット Enbull のDJ & トラックメイカーであり、JazzySportの最重要選手。これまでに4枚のソロアルバムをリリースし国内外のDJ達にも高く評価されており海外での DJingもここ数年増え続けている。待望の4thアルバム「PARADOX」を完成させ、10/17にリリースする。

三浦康嗣(□□□)
□□□(クチロロ)主宰。スカイツリー合唱団主宰。作詞、作曲、編曲、プロデュース、演奏、歌唱、プログラミング、エディット、音響エンジニ アリング、舞台演出......等々をひとりでこなし、多角的に創作に関わる総合作家。

鎮座ドープネス
1981年生まれ。東京・調布生まれ国立育ち。KOCHITOLA HAGURETICEMCEE`S&GROUND RIDDIM所属ヒップホップ、ブルース、レゲエなど様々な音楽がミックスされたカメレオンのような音楽性と、フロウや韻における際立った独創性、ブルー ジーかつフリーキーな唄心をあわせ持つ異才MC/ヴォーカリスト。圧倒的なスキルと表現力によるフリースタイル・パフォーマンスが、16万回を超えるYou tube clipなどを通じて話題を呼び、熱烈なコアファンを増殖させているみたいです。あれもshimasuこれもshimasu。

DAISUKE TANABE
様々な音を独自の視点で解釈/分解/再構築し作り上げられるその世界観は国内外の音楽ファンやクリエーター達に熱く支持されている。リミック ス/コラボレーション、 自身の音源リリースやSonar Sound Tokyo, Sonar Barcelona,Tauron Nowa Muzyka (Poland)等国内外でのライブ活動の他、ファッションショウやパフォーマンスアートへの楽曲提供等、積極的に活動の場を広げ、今後も更なる活躍が期待される。

MABANUA (laptop set)
ドラマー/ビートメーカー/シンガーという他に類を見ないスタイルが話題の日本人クリエイター。すべての楽器を自ら演奏し、それらの音をドラ マーならではのフィジカルなビートセンスでサンプリングし再構築、Hip-Hopのフィルターを通しながらもジャンルに捉われない音創りが世 界中から絶賛される。バンドOvallとしても活動、Budamunkと共にGREEN BUTTER、U-zhaanと共にU-zhaan×mabanua、さらにGAGLE×Ovall名義でアルバムを制作するなど積極的なコラボワークも 展開。

DJ DUCT
一台のターンテーブルとフットペダル、サンプラー、エフェクターに攻撃的なスクラッチを駆使し展開する、そのまったくユニークなライヴ・スタイルでトーキョー・アンダーグラウンドを席巻する孤高の無頼派。閃きと経験によって矢継ぎ早に再構築される音像群、そして、それらを自在に操る圧倒的な構成力で魅せる 「ワン・ターンテーブリスト」こと、DJ DUCTの世界をご堪能あれ。

SAUCE 81
Red Bull Music Academy 2008に招待され、Metamorphose や Sonar Sound Tokyoなどの国内フェスにも出演。世界中にリスナーを持つポッドキャスト、cosmopolyphonic radio を主催し、同番組から派生したコンピ"COSMOPOLYPHONIC" を監修。日・米・英・独のコンピに楽曲提供し、TOKiMONSTA、Julien Dyne、LOGIC SYSTEM などのリミックスも行ってきた。ファンクネスに基づく、グルーヴのモダニズムに挑戦し続けている。

みみみ
とっても横好き下手えもんは、うんこ3個分の推進力では、あんな夢もこんな夢も、とってもかなえられないものだ。

NOTUV
1989生まれ。2004年からサンプリングを主体とした製作を開始し、Low EndTheoryなどLAを中心としたミュージック・シーンに影響を受けて経年変化。現在はジャンルに拘らず時代や文化毎の空気感を咀嚼し、自分に合った表現方法 で昇華している。昨年3月には日本のオンライン・レーベル「分解系records」よりアルバム「oO0o8o」をフリーで配布。

SUBMERSE
イギリス、チェシャー出身のSubmerseは超個人的な影響を独自のセンスで消化し2step、ビートミュージック、アンビエント、ヒップホップそしてドラムンベースを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/プロデューサーとして知られている。過去にはR&Sの姉妹レーベル、 Apollo RecordsやMed Schoolから作品がリリースされており7月にはProject Mooncircleから"Tears EP"をリリースしたばかりである。

+THE GASLAMP KILLERとJONWAYNEも参加!

 「LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY 蓮沼執太フィル/ジム・オルークとレッドゼツリン」のことはご存知だろうか?

 その名のとおりLIQUIDROOMの8周年記念イヴェントの一環で、すでに公演は9月10日(月)に迫っている。しかし見逃すにはあまりにもったいない企画であるため、ご存じなかった方はぜひともチェックされることをおすすめする! また来場者特典として音源の配布が決定した模様。LIQUIDROOM2Fにリニューアルオープンした「KATA」というギャラリーでは蓮沼執太参加の展覧会も行われる。幸いチケットもまだ残っているようだ。

●ジム・オルークとレッドゼツリン

 「石橋英子ともう死んだ人たち」として石橋英子『イミテーション・オブ・ライフ』制作に集い、ジム・オルークのプロデュース下に「プログレ・エピック」を志向したという5人(ジム・オルーク、山本達久、須藤俊明、波多野敦子、石橋英子)が、「レッドゼツリン」として活動中! 今回は新曲も披露されるとのことで、要注目だ。とはいえ毎度メンバーすら何を演奏するのかわからないのだというから、緊張感とゆるさの入り混じるジムならではのステージングを終演まで未知のものとして楽しみたい。

●蓮沼執太フィル

 蓮沼執太、石塚周太、イトケン、大谷能生、葛西敏彦、小林うてな、木下美紗都、権藤知彦、斉藤亮輔、Jimanica、千葉広樹、手島絵里子、K-TA、三浦千明というそれぞれに活動歴やファンを有するアーティストたちが集ったこの楽団は、音楽と呼ぶにとどまらず、ひろくアートの文脈でとらえられるべき活動を行い、国内外から注目を集める存在だ。ジャンルや年齢を問わないやさしい音を、高い演奏技術で支える点にもインパクトがある。今回のトピックは環ROYを加えた点だろう。新しい演奏が展開されることに期待が集まる。

そして本誌(紙ele-king)編集長、松村正人より応援コメントをお届け!

 レッドゼツリンはもちろん、レッド・ツェッペリンの英語読みを文字ったものだが、日本人はゼッペリンとはあまりいわないから、一瞬わからない。それが絶倫のゼツリンたるゆえんだろうか。そしてまた「レッド」が「Led」ではなく「Red」だとすると、すなわちこれは「赤い絶倫」、往年の大映ドラマを彷彿させもする。
 ちなみに、私の古い知り合いにゼンリンの社員がいて、彼はピーター・ハミルの来日公演をすべて観てまわるプログレ野郎だった。ハミルはプログレではないかもしれないが。だからどうしたといわれると困るが。

 蓮沼執太は小から大まで複数の編成を使い分け、そのいずれにもカラフルなおおらかなやわらかな色彩と意匠を施すひとだ。私はしばらく前、娘の見る「おかあさんといっしょ」の「ショキ ショキ チョン」で目をさましていたことがあった。最初は渋谷毅さんの曲かと思ったが、蓮沼さんだった。実験でありながらポップ。というかポップが兼ねる実験性をたゆまず実践するひとなのだから、豪華メンバーで挑む今回のライヴでは全体から細部まで見逃すわけにはいかない。

 いや、この二組をじっくり堪能するまたとない機会なのだから、すべて見逃すわけにはいかない。
(松村正人)

LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY
蓮沼執太フィル/ジム・オルークとレッドゼツリン

2012.09.10 @恵比寿 LIQUIDROOM

OPEN / START
18:30 / 19:30
ADV / DOOR
¥3,000(税込・ドリンクチャージ別) / -
TICKET
チケットぴあ [177-007] ローソンチケット [76120] e+ LIQUIDROOM DISK UNION(新宿本館/渋谷中古センター/下北沢店/吉祥寺店/お茶の水駅前店/立川店/中野店/池袋店/町田店/横浜関内店/横浜西口店),8/1 ON SALE

INFO : LIQUIDROOM 03(5464)0800


蓮沼執太参加のエキシヴィジョン

展覧会名:「 I I I 」(さん)
@KATA(LIQUIDROOM 2F)
2012.09.07(金)~28(金)
12:00-22:00
*土曜日/日曜日/祝日:13:00-22:00
最終日9月28日(金曜日)18:00までとなります。

参加アーティスト: 大原大次郎(グラフィックデザイナー)/Noritake(イラストレーター)/蓮沼執太(音楽家)
入場料金:無料
主催・制作・運営:KATA
協賛:株式会社グラフィック

2年半ぶりのオリジナル・アルバム『イン・フォーカス?』のリリースに先立ち、先行シングル『デコレイト』が発表された。躍動的なリズムに高い音楽性を優しくほぐしこんだ“デコレイト”は、“ラム・ヒー”にも比較されるキャリア屈指のポップ・ソングだが、ほかの2曲も見逃せない内容になっている。

 2曲めに収録されているバグルスの名曲“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター(ラジオ・スターの悲劇)”カヴァーは、トレヴァー・ホーンのファンであるという彼がすでに幾度もライヴで披露し、UKのラジオでも演奏されたお馴染みのトラックである。CD収録についてファンからの要望がとくに高かったということだが、アルバムには未収録となる。

 “ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ(恋に落ちた時)”は、映画『零号作戦』などに使用され、ナット・キング・コールによる録音で知られるヴィクター・ヤングのスタンダード・ナンバー。この曲のカヴァーである3曲めも、トクマルシューゴ自身の音楽的嗜好が随所にひらめく愛聴ナンバーである。

 ソノシートも同時にリリースされ、こちらは2曲のみ(“デコレイト”“ヴィデオ・キルド・ザ・レディオ・スター”)の収録となるが、いまではプレスできる工場が希少となったポストカード一体型のめずらしい形式。ダウンロード・クーポンがついているため、音とはべつに「かたち」として愛でたい。撮影当日は高熱をおして水に入ったというドラマもこめられたジャケット写真を、より大きく手にすることができる。

 さらに特設サイトでは“デコレイト”のミュージック・ヴィデオが公開されている。これもターンテーブルのイメージにゾートロープ(回転のぞき絵)の手法が重ねられ、どこか懐かしい感触に仕上げられている。手がけたのはアジア・デジタル・アート大賞2011への入賞も果たしたという注目の制作チーム、ONIONSKIN。楽曲、リリース・フォーマット、ヴィジュアルがリニアに「アナログ」の存在論を浮かび上がらせていて、これもトクマルシューゴのメッセージであるかのように思われ、興味深い。

[CD]
トクマルシューゴ 「デコレイト」
SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
3. When I Fall In Love

[ソノシート]
トクマルシューゴ 「デコレイト」 / SHUGO TOKUMARU 「Decorate」
発売日:2012.9.5 Amazon <TRACK LIST>
1. Decorate
2. Video Killed The Radio Star
※収録分数の関係で、CD盤より1曲少ない計2曲の収録となります。
ソノシート特性上、CDや通常のレコードに比較してノイズ・音飛び等が多く聞かれる場合がありますので、予めご了承下さい。
※収録曲のフリー・ダウンロード・コード付き
※再生にはレコード・プレイヤーが必要となります。


【関連商品情報】
new album “In Focus?”
2012.11.7 ON SALE Amazon 商品詳細:https://p-vine.jp/news/3607

<限定盤>
PCD-18688/9 ¥2,900 (tax incl.)
★スペシャル・スリーブケース仕様
★トクマルシューゴ自身の演奏による、著作権フリーの99種/99トラックの楽器フレーズを収録したボーナスCD付き2CD仕様

<通常盤>
PCD-18690 ¥2,500(tax incl.)
★ジュエル・ケース1CD仕様

01. Circle
02. Katachi
03. Gamma
04. Decorate
05. Call
06. Mubyo
07. Poker
08. Ord Gate
09. Pah-Paka
10. Shirase
11. Tightrope
12. Helictite (LeSeMoDe)
13. Micro Guitar Music
14. Down Down
15. Balloon

The XX - ele-king

憂鬱という悦楽 文:木津 毅

E王 The XX - Coexist
Young Turks/ホステス

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 デビュー作『XX』の最良の部分、それは"VCR(ヴィデオ・カセット・レコーダー)"のヴィデオに凝縮して封じ込められている。廃墟のような隠れ家で戯れる若い恋人たち、モノクロから不意にカラーへと色づく淡い映像。「VCRでヴィデオを見ながら ふたりで大きな愛を語る/たぶん わたしたちはスーパースターで/最高の存在だってあなたは言う」。そこには優れた少女漫画のようなリリカルさと瑞々しさがあり、僕はふと大島弓子の短編を思い出す......そうたとえば、少年少女が最小の革命へと真っ直ぐに向かっていく『ローズティーセレモニー』を。ザ・XXは、その音とそこにこめられたフィーリングがどれほどメランコリックであろうとも??いやだからこそ、拭いきれない若さとロマンティシズムを抱えていて、その純度の高さにわたしたちは溜息をつく。彼らが優れていたのは、何度となく繰り返し表現されてきた10代の憂鬱をダブステップ以降のポップスとして鳴らした直感的な鋭さであると思う。音数の少なさによって生じる隙間は、聴き手を思春期の揺らぐ感情に放り込むスペースである。そうしてザ・XXは、ポップスの......ラヴ・ソングの、もっともプライヴェートな愉しみ方を刺激する。

 『共存』と題されたセカンド・アルバムでは、さらに音数を減らした"エンジェルス"を見事な導入としながら、基本的には前作の方法論を進めている。ミニマルなビートと、その隙間ですれ違う非常にインティメットなツイン・ヴォーカル。はじめに聴いたときは全体的なトーンが一定すぎるようにも思えたが、よく聞けばジェイミーが打つビートが細かく曲によって分けられており、そのディテールに耳を澄ましたいアルバムだということが繰り返し聴いていると理解できる。たとえば中盤の"トライ"から"サンセット"へと続くフォー・テットの近作のようなダンス・トラックは基本的にキックが4/4を刻みながらも、時折訪れるブレイクで入ってくる裏拍のヴァリエーションが多彩だ。そういったところによく表れているが、ザ・XXの音は非常に耳と身体の快楽を意識して作られている。クラブ・ミュージックの要素が強くなったためにその印象が強くなったこともあるが、基本的な構造としては変わらない。それはつまり、ここでオリヴァーとロミーが囁く陰影の深い愛の詩、その歌が快楽的なものであるということをジェイミーが誰よりも理解しているということで、3人のその緊密な関係性のあり方がバンドの不可侵な佇まいを生み出している。

「隠れよう/共に隠れよう/世界が静かに立ち去るのを許可して/ふたりぼっちになろう"スウェプト・アウェイ"」、「隠れる必要などない/ここにはあなたしかいないのだから"リユニオン"」??まったく逆のことを言っているようでありながら、その実同じことが繰り返し歌われている......社会の喧騒、もしくは「世界」と呼ばれるものに背を向けて、人目のつかない場所で愛を交わすこと。誰も知らない愛を。"VCR"のヴィデオの若いふたりがフラッシュバックする。しかしながら、本作ではアルバム・タイトルにしてもそうだが、"トライ(挑む)"、"リユニオン(再結合)"、"アワ・ソング(わたしたちの歌)"という曲タイトルに、恋愛を歌いながらもどこかそこに留まらない強い結束を感じさせるものがある。そこでは、デビュー作以上に自分たちの音楽とリスナーとの関係性のあり方が非常に意識されているように思える。さらに密室的な聴き方を強く要請する音であり、そこでこそ歌の感情がさらけ出される。「鼓動が変わってしまった/こんなこととてつもなく久しぶりで"ミッシング"」、「展開しよう/秘密のままにはしておかない/どこまでもどこまでも続く感情"アンフォルド"」......ビートが鳴り止んだときに不意に歌い上げられるそれらの言葉が、今度は聴く側の最も内側に侵食しようとする。

 若さは去る。そしてイノセンスは必ず失われる----ことを描いていたのは、萩尾望都の『トーマの心臓』だったかクリント・イーストウッドの『ミスティック・リバー』だったか......。『コエグジスト』でもまた、宿命として愛が去っていくことが主題となっている。だが、彼らはそのロマンティシズムを手放そうとしない。その潔癖さ、清冽さは明るい光の下ではなくて、薄暗い部屋の片隅でひっそりと、しかし隠さずに手渡される。ザ・XXを聴くことの快楽とは、自分のなかにもまだ存在していた純粋な何かを再発見する悦びにとてもよく似ている。そして"わたしたちの歌"では、こんな風に歌われる。「わたしのすべて あなたにあげよう/暗黒の日々に 誰も手を差し伸べなくても/わたしをあげよう/そうすれば わたしたちになれる」

文:木津 毅

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素晴らしき第二章 文:竹内正太郎

E王 The XX - Coexist
Young Turks/ホステス

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 ポップ・ミュージックのアーカイヴにおいて、スペース・ロックの起源がどこであるかを知らずとも、最新の形がそれであることはわかる。あるいは......これがベストなのかもしれない。『The XX』(2009)は、端的に言ってそういう飛躍を許し得る作品だった。それは特段、ドリーミーでも、トリッピーでも、サイケデリックでもなかった。楽器を演奏しない筆者でも容易に判断できるくらい、別に高度な技術性があったわけでもない(少なくとも、そうは聴こえなかったという意味でもいい)。密やかなマシン・ビートに、つま弾く程度のエレクトリック・ギター、そこに薄く重なるムーディなアンビエンス。もし、そこに「何があったのか」という位相での議論になれば、むしろ「何もなかった」と答えるのが相応しかったとも言える。果てしなく広がる無音の空間に、真夜中の空中遊泳へと出かけるための、一睡の浮遊感。ただそれだけがあった。それが2009年の新たなルールだった。

 普段、それほどインディ・ロックを聴かない人からすれば、「インディなんて遠くから見れば全部一緒じゃん!」くらいのことを言いたくなるかもしれないが、無批評的な言い方をすれば、The XXに関しては格が違ったとしか言いようがない。それはインディ・ロックのフェティシズム(相互浸食する類似の音楽を比較し、小数点第一位までレイティングするような細部へのこだわり)などでは絶対になかった。コクトー・ツインズでさえ華美なセルアウト・ポップに思えた、あるいはヤング・マーブル・ジャイアンツでさえ古臭いロックに思えた、あの静謐なポップ・ミュージックは、そのアンチ・ポップ的態度とビート感覚において、ダブステップ以降のUKインディを定義したと言える(目立ったフォロワーは現れなかったと記憶しているが、そのことが逆説的に彼らの大きさを浮き彫りにした)。ロミーの恍惚とした吐息のようなヴォーカル・スタイル(そしてオリヴァーのアンチ・エモーショナルなそれ)を媒介に、あるいは、アンビエント・R&Bと同期するようなジェイミーのサウンド・プロダクションを足掛かりに、ドレイクらネオ・アンビエント・ポップの感性とも共振し、実際にその音は交わった。そしてThe XXの艶やかな無音性はいま、さらなる洗練を見せている。

昨日の夜 世界はふたりの真下にあった
"Fiction"

隠れよう
あなたと共に隠れよう
世界が過ぎ去るのをただ見送って
あなたとふたりぼっちになろう
"Swept Away"

 待望のセカンド・フルレンス、『コエグジスト』。前作から白黒が反転しただけのアートワークに、うっすらと油膜のようなものが光の干渉を描いている。これが、本作の概要をほぼ完全に代弁する視覚イメージである。確かに変わっているが、何も変わっていないようでもある、そんな作品だ。その点からすれば、『The XX』を初めて聴いたときほどのショックはないかもしれない。

 だが、振り返って前作を聴き直したときに、"VCR"や"Island"といった代えがたいインディ・ポップの輝きでさえも、ポップスのセオリーに従った形式的な音楽だったと言えてしまうほどの距離を、『コエグジスト』とのあいだに確認することはできるだろう。驚くべきことに、メロディの煌びやかさはさらに取り払われ、メンバーの脱退という意味以上に、音の装飾的な余剰部はほとんど撤去されている。起伏という点では、前作を上回って抑制されている。広い空間によぎるビターな後味だけが、甘い余韻を醸し、メロディは断片としてのみ、ある。そして、それゆえに、ファースト・リスニングでは1曲たりとも、具体的には記憶できないだろう。彼らはアンチ・ポップの方向性を明確に打ち出している(一瞬だけ、本作にチャーミングな時間が訪れる、"Reunion"に聴こえるスティール・パンの音色は、ジェイミーのシングル"Far Nearer"(2011)からの残響だろうか)。

 しかし、その早熟な音作りとは相反して、詩作という点ではやや紋切型のナイーヴな感性を見せるのがThe XXというバンドでもある(『The XX』のトラック・リストを改めて眺めてみて欲しい)。それは本作においても継続しており、「世界」という巨大な概念を、個人が対峙できるサイズ(ゼロ年代に「セカイ」と呼ばれたもの)にまで圧縮し、対象化しながら、そこに含まれつつも世界を拒絶し、また世界の方からも拒絶さるという、デフォルメして言うのならばそのような世界観を通底させている。そして気の毒なことに、The XXが描く「あなたとわたし」が生きる世界では、常に「あなた」の不在が先行する。「あなた」の存在で無限の承認を得ようというほどの図太さは、彼らにはなく、その圧縮された空間内において、「わたし(僕)」の個人的充足は永遠に先延ばしされている。そして彼らは、その不満足性にこそ、ラブ・ソングの美しさを見出しているようだ。

 ヤング・マーブル・ジャイアンツを必要としない世代のための、アンチ・ポップ・ポップ。一方の世界では、これをこの年のベストな作品だとするのだろうし、また一方の世界では、これをインディ・ロックのフェティシズムと呼ぶのだろう。それを議論するときに聴くべきベスト・トラックは......誰がなんと言おうが、ラストの"Our Song"だ。感傷的なミニマル・バラードをキックとベースが細かくアタックする、この慎ましいクライマックスにおいて、「あなたとわたし」、そして複数形の主語を用いていったい何が歌われ、何が願われているのか。それはあなた自身の手と目と耳で確認してみて欲しい。単に私がセンチメンタル過剰なのだろうか、ベタなことを言えば、『海辺のカフカ』(村上春樹、2002)のクライマックスを彷彿するものが、そこにある。遠のいていく光を、破滅への予感を抱えながらも追いかける(追いかけずにはいられない)、アンビエント・トリップの素晴らしき第二章だ。


文:竹内正太郎

interview with The XX - ele-king

都市には秩序も空間も
そして場所もない
真実も信頼もない
インガ・コープランド“BMW”

 なぜか日本の若い世代では昔ながらのシティ・ポップスが流行っているけれど、英国で流行っているシティ(都市)の音楽は、死刑台のように、ばっさりと冷たい。その象徴が僕にはディーン・ブラント&インガ・コープランド(ハイプ・ウィリアムス)だと思える。ブリアルを見いだし、自らもコード9+ザ・スペースエイプ名義の作品によって、都市になんざぁこれっぽっちの陶酔もないことを訴えていた人物が契約しただけのことはある。僕も彼らの感覚に多いに共感しているわけだが、ダブステップを好きになった理由もそこだった。

 ザ・XXは、ここ数年のロンドンの音楽が感じ取っている冷酷な都市感覚をより甘美なメロドラマに見立て、そしてスタイリッシュにブラッシュアップしている。デビュー時に何かと比較されたエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンが自分のほうからザ・XXの曲“ナイト・タイム”をカヴァーしたほど、その洒落たセンスは認められている。特別何か強い主張があるわけではないが、ザ・XXには格別なムードがあるのだ。メランコリーをとらえるのが抜群にうまい。
 3人それぞれの個性がこのバンドを構成しているのはたしかだろう。が、ことジェイミー・スミス(ジェーミー・XX)という音作り担当の存在は大きい。リチャード・ラッセル(XLレコーディングスの社長)がギル・スコット・ヘロンの遺作のリミキサーに大抜擢したことはある。だいたいレディオヘッドとリアーナから仕事を依頼されるという文武両道ぶりはすごい。

E王
The XX
Coexist

Young Turks/ホステス

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 そういえばマッシヴ・アタックのセカンド・アルバム『プロテクション』の1曲目はトレイシー・ソーンが歌っていたなと、『コエグジスト』をホステスで試聴する前に思い出していた。満足度で言えば、ジェイミー・スミスのトラックに関してはほぼ満足している。思ったよりもダブステップ色は薄く、代わりにハウス(ディスコ)が注がれているが、R&Bやバラードなど、前作以上に幅をもたせているばかりか、品質はいっきに向上している。そして、どう考えてもジェイミーのクラブ・ミュージック愛が前作以上に滲み出ている。

 ザ・XXは深夜の音楽であるから必然的な展開だったと言えるが、あらためてそうなった。いわばトドラ・T(いや、ここはホット・チップと言うべきなのかな、斎藤君)の裏側、音数は少なく、密室的で、薄暗いその内省的なスペースは心地よく広がっている。あとは静かにして、音に集中するだけだ。


DJをして世界を回って肌で感じたのは、結局みんな行き着くところはハウスでありテクノであり、っていうところで。イギリスもいま、そういう風になってきてる。

いきなりですが、あなたがたがいまUKでベストだと思うレーベル/DJ/プロデューサーを教えてください。

オリヴァー・シム(以下、オリヴァー):僕たちがすごく恵まれてるなと思うのは、自分たちが所属するレーベル(Young Turks)は僕たちが好きな音楽をかなりのパーセンテージで出しているレーベルなんだよね。それにアーティストとしてすごく自由をくれていて、いい関係を築けているからこれ以上のレーベルはないと心から思っているよ。それから、ジェイミーがこの1年でやってきたソロ活動をいちファンとしてすごく楽しんできた。自分は関わっていないけど本当に素晴らしいと思うし、彼のことを心から誇りに思うよ。

今回のアルバムは、より今日のUKのクラブ・カルチャーを反映していますよね?

ジェイミー・スミス(以下、ジェイミー):自分たちのレーベルはいまでもインディではあるけれど、しっかりメインストリームのものも扱いつつしっかり限定されたいいものをすごくいいバランスでやってるっていう意味ですごくいいレーベルだと思う。DJやプロデューサーに関しては、みんなすごく注目されてまたすぐ消えて、っていう。ダンス・ミュージックっていうものはそういうことを繰り返して、進化と発展を遂げてきたんだと思うんだよね。だからいますごく気に入ってるっていうのはないけれど、フォー・テットに関してはすごく安定して活動を続けているし、何か作品を出す度に進歩的な音楽を作っているなと思うよ。

ロミーは現在のクラブ・カルチャーにどのような見解を持っていますか? あなたは歌っている立場ですけれども、今回はサウンド・プロダクション的にはクラブ・カルチャーの側面が強く出ていますよね。

ロミー・マドリー・クロフト(以下、ロミー):わたしは基本的に、ジェイミーやオリヴァーが「こういうのが面白いよ」って教えてくれるものを通してクラブ・ミュージックを聴いているの。イギリスだけじゃなくいろいろなものを聴いていて、ハウスやディスコもすごく好きだし、R&Bもすごく好きだったりする。自分からUKのクラブ・シーンに特別注目するっていうことはあまりないかな。

3人にとってUKのクラブ・カルチャーは誇れる文化だっていう意識はあるんでしょうか?

ジェイミー:うん。イギリスに根づいたものがいまのイギリスで盛り上がってるっていうことはあまりないけど、いろいろ出てきたものが世界的に大きなものになっているとは思うんだ。DJをして世界を回って肌で感じたのは、結局みんな行き着くところはハウスでありテクノであり、っていうところで。イギリスもいま、そういう風になってきてる。UKのサウンドだけじゃなくて、そこから出てもう少し広い意味での音楽で評価されるようになったっていうのは、逆にいいことなんじゃないかな。

なるほど。

ジェイミー:まあ、これは僕個人の見解なのかもしれないし、あらゆる音楽を聴いて考えてきた結果――まあ、考えすぎなところはあるんだけど――、結局「何がひとを踊らせるんだ?」と考えたときに、根本的な要素を追求したら、さっき言ったようにハウスやテクノなんだなって思ったんだ。

さっきからサウンド面についてばかり質問してしまっているんだけど、バンド自身では今回のセカンド・アルバムでもっとも重要なポイントっていうのはそれぞれどこだと思っていますか?

オリヴァー:事前にこういう作品にしようって打ち合わせをしたわけでもないし、ただひたすら曲単位で、みんなでまた一緒に曲を作る喜び、それを世のなかに発信する喜びを感じながら作っていたんだ。そのなかで、こういう作品を作ろうって目標を決めたわけでもない。僕としては、自分の抱えている気持ちや感情をしっかり出してそこに込めるておいうことだったんだけど。それ以外は、前もって決めたものではないんだよね。

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どんどんすごく悲しい歌になりそうなものは、正反対の対照的なものと組み合わせることで、また新しいムードを作り上げるっていう意味でだね。そのアイデアは気に入ってるんだ。

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前回のインタヴューで、「マッシヴ・アタックのアルバムで何がいちばん好きですか」って聞いたら、「自分たちはiTunes世代だから曲単位でしか曲を聞いてなくて、アルバムって言われてもアルバム名が浮かばないんだ」っていうようなことを言ってたんですけれども。その後時間が経ちましたけど、アルバムというものへの捉え方はどのように変わったでしょうか?

ロミー:ええ、変わったと思う。今回のアルバムを作って、やっぱり曲順とか全体の流れを――とくにDJなんかを聴いた影響もあると思うけど、すごく考えるようになった。どの曲とどの曲を繋げたら合うかってことをとても意識するようになったわ。1枚のアルバムを通して聴くっていうこともすごく意識するようになったわね。たしかにそれはわたしたちは子どもの頃音楽を聴いてきた環境とは違ってて。iPodでシャッフルで音楽を聴くってことをずっとやってきたんだけど、今回アルバムを作って通して聴くってことをすごく考えるようになった。アナログでも出すんだけど、とくにアナログとなると曲を飛ばしたりできないから、曲順もすごく気を遣ったの。いまの時代に、リスナーにアルバムとして聴いてくれっていうのは大きい要求かもしれないけれど、少しでも多くのひとがそういう風に楽しんでくれたらいいと思うわ。

アルバムとして意識しはじめたときに、他のアーティストでアルバム作品としていいなと思ったものはありますか?

ロミー:ポーティスヘッドね。最初から最後まで本当に素晴らしい作品で、1曲1曲も大好きなんだけど、全体を通して聴いても素晴らしいと思うわ。

ポーティスヘッドはサウンド面だけでなく、コンセプト的にも素晴らしいアーティストだと思うんですけれども、今回のあなたたちのアルバムにもコンセプトがあると聞きました。それが「失われし愛」という言葉を聞いたんですけれども、そのテーマについて説明していただけますか?

ロミー:コンセプトを持って作ったってわけではないんだけど、結果的にすべてラヴ・ソングになったの。それもラヴ・ソングにするって決めてたわけじゃないんだけど、純粋に書いてて楽しかったのがそれだったのね。

必ずしもハッピーではないラヴ・ソングばかりを書くのはなぜですか?

ロミー:もともと悲しい曲が好きだっていうのはあるわね。自分が幸せなときも悲しい曲を聴いて、それに浸るっていうのが。結局悲しい想いのほうが、歌で表現したときに説得力があると思う。幸せなものっていうのは得てして陳腐なものになりかねないし。ただ今回のアルバムでは、ただ悲しい曲ばかりじゃなくて、なるべく感情の幅を持たせようという気持ちはあったから、2、3曲ただ悲しいだけじゃないラヴ・ソングも書いたつもりなんだけどね。

なるほど。ジェイミーが作る音にふたりが言葉を合わせているわけではないんですよね?

ジェイミー:3人の個性の融合だね。自分のサウンドを押しつけるのではなくて、ロミーとオリヴァーが書いてきたことに合うもの、その世界観を引き出すものを意識してるんだ。それらを衝突させるよりも、ふたりが作ったものを生かすっていうことを僕は意識してる。

ちなみにダンス・ミュージックってことで言うと、レイヴ・カルチャーではブローステップみたいなものが大きくなってますけど。当然あなたたちはブローステップみたいなシーンとは距離を置いてるわけですよね。

ジェイミー:ブローステップ? (力なく)ああ……。

はははは。

ジェイミー:ダブステップがアメリカに行ってブローステップになってしまったっていうのは、ある意味悲しいよね。好きじゃないんだけど。ただ、去年1年はレイヴとかパーティとかには行ってないし、今回のアルバムの要素としてもクラブ・ミュージックやダンス・ミュージックが大きい位置を占めているわけではなくて、いろんな要素がたくさんあるから。これがダンス・アルバムだと捉えられては困るかな。

とはいえ、6曲目の“サンセット”は典型的なハウス・トラックで、4つ打ちというのはファーストにはなかったわけで。全体的にファーストよりはクラブ寄りに感じましたが。

ジェイミー:それはどんどんすごく悲しい歌になりそうなものは、正反対の対照的なものと組み合わせることで、また新しいムードを作り上げるっていう意味でだね。そのアイデアは気に入ってるんだ。踊ることもできるし、クラブじゃない環境で聴きこむこともできるっていうことをこの曲では目指したんだ。

ギル・スコット・ヘロンのリミックスをはじめ、昨年ジェイミーが〈ナンバーズ〉レーベルから出したシングルも良かったし、ファルティDLのリミックスも良かったし、UKベース・ミュージックの最新型として印象的に思ったんですよね。だから、あなたが次どんなトラックを作るのかっていうところに注目していて。4つ打ちをやったっていうのが、正直自分のなかでは驚きだったので。

ジェイミー:まずはダンス・ミュージックを聴いていたっていうのと、曲に合った一番いいものを作ろうっていう思いでプロデュースした結果なんだけど。XXの曲をプロデュースしたときっていうのは、プロデュースっていうのはひとつの要素でしかなくて、それがすべてではないんだ。自分の作品と比べるとね。4つ打ちっていうのはシンプルな8ビートのなかでいろいろなことができるっていう意味で実はすごく面白いんだよ。

なるほどね。じゃあ最後の質問にしますね。2回目の来日ですけど、それぞれ楽しみにしていることを教えてください。

オリヴァー:3回目だね。フジロックで来たから。

あ、そうか。

オリヴァー:やっぱりライヴだよね。新曲のリアクションがすごく楽しみなんだ。あとは、今回はけっこうたっぷり滞在期間があるから、東京の街中を味わうのをすごく楽しみにしてるんだ。

ジェイミー:買い物だね。

ロミー:田舎のほうを見てみたいわ。歴史的なものを感じたい。その時間があるかだけど。

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