「KING」と一致するもの

Takehisa Kosugi - ele-king

 個と集団の即興、イヴェントとコンセプト、電子音楽からサウンド・インスタレーション――小杉武久の歩みをたどりなおすと1960年代以降の実験的な音楽の歴史がみえてくる。かたわらにいるのはケージやテュードアやマース・カニングハム、ナム・ジュン・パイクとフルクサスのながれがある一方でジム・オルークやボアダムスのヤマタカEYEら、ピチピチした音楽ファンにもおなじみの名前が登場するのも小杉武久の作品がくりかえし問題にされてきたゆえんである。その可能性はときを経るごとに古典的な風合いを帯びるどころかいよいよ存在感を増しつつある、ひとつには作品の射程の広さと深さにおいて、さらにそれが継起的につねに現在にありつづけることによって。たとえば《マノ・ダルマ,エレクトロニック》(1967 / 2015年)は数個の発信器とトランスミッターと受信機にあたるラジオを、間隔をあけて天井から紐で吊し扇風機の風をあてると場内の空気の状態で受信状態が変わるさまを聴くサウンド・インスタレーションであり、これはのちに《キャッチ・ウェーブ》へ発展していくことになるだろう。あるいはソーラーパネルを電源に電子音を発生させる多数のオブジェクを机の上に乗せ、ちかづく観客がオブジェの光を遮断すると音がかわる《ライト・ミュージックⅡ》(2015年)しかり、本展のサウンド・インスタレーションは視聴覚上の体感はむろんのこと観客の鑑賞が作品にかかわることで、観る(見る)こととつくることが共存するひらかれた作品でもある。小杉武久は音をながれるにまかせ、西欧的な形式はもとより、そこにこびりついたしつこい制度も洗いながそうとした。タージ・マハル旅行団はその結晶のひとつだがヒエラルキーがないからすばらしいのではない。音は囁いたり呟いたり飛び跳ねたかと思えば、寝転んでいる、即興という名称からして自由な、ところがじつはそうでもないこともすくなくない方法を小杉武久は60年代末から70年代にかけてすでに解放していた。その時代的な背景を述べるのは本稿の主旨ではないが本展に足を運べば、1938年に生まれたたぐいまれな音楽家の足跡を一望できるチャンスがある。

タージ・マハル旅行団 (1971 年)

 展覧会は5部構成。まずは「グループ・音楽から反音楽へ(1957~1965年)」(第1章)からはじまり、ついで「フルクサスからインターメディアへ(1965~1969年)」(第2章)さらに「タージ・マハル旅行団(1969~1976年)」(第3章)、「マース・カニングハム舞踊団(1976年~)」(第4章)と、時間軸に沿って記録写真、チラシやポスター、プログラムなどのアーカイブ資料で小杉の履歴を俯瞰する構成をとっている。上述の《マノ・ダルマ~》などは第5章「サウンド・インスタレーション(1963年~)」での展示だが、これだけ網羅的な記録が集まる機会はまたとないだろうし、会期中はトークや映像など(フルクサス的な意味じゃないほうの)イヴェントももりだくさんなので、関西圏はむろんのこと、それ以外のみなさんも、音楽のピクニック気分で足を運ばれるのをはげしくおすすめします。(松村正人)

小杉武久 音楽のピクニック

会場:兵庫県芦屋市立美術博物館
会期:2017年12月9日(土)~2018年2月12日(月・祝)
開館時間:午前10時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし1/8・2/12は開館、1/9は休館)、年末年始(12/28-1/4)
観覧料:一般800(640)円、大高生500(400)円、中学生以下無料(括弧内は20名以上の団体料金)
フリーパス:一般:1,200円/大高生:800円
※ご本人様に限り、会期中何度でも展覧会をご覧いただけるお得なパスポートです
高齢者(65歳以上)及び身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳所有の方ならびにその介護の方は各当日料金の半額
※同時開催「昔のくらし」展の観覧料も含む
※観覧無料の日:2017年12月24日(日)、2018年1月8日(月・祝)

■関連イベント
1. トークショー
高橋悠治(作曲家・ピアニスト) 聞き手:川崎弘二(電子音楽研究)
日時=2017年12月23日(土・祝) 14:00~ *約1時間を予定
会場=講義室
定員=80名
参加費=無料(ただし要観覧券)
*要事前申込(締切12月7日(木))

2. 対談
小杉武久(音楽家) × 藤本由紀夫(アーティスト)
日時=2018年1月13日(土) 14:00~ *約1時間を予定
会場=講義室
定員=80名
参加費=無料(ただし要観覧券)
*要事前申込(締切12月25日(月))

3. 上映会
日時=2018年
1月27日(土) プログラム1「小杉武久 演奏記録」
1月28日(日) プログラム2「現代美術とのかかわり」
2月10日(土) プログラム3「PR映画・記録映画・科学映画」
2月11日(日) プログラム4「マース・カニングハム舞踊団」
いずれも13:30より(開場13:00~)
会場=講義室
定員=80名
参加費=無料(ただし要観覧券)
*申込み不要、直接会場へお越しください。
*上映予定作品は芦屋市立美術博物館の公式HPよりご確認ください

4. ギャラリー・トーク
日時=2017年12月16日(土)、2018年2月3日(土)
いずれも14:00~ *約1時間を予定
会場=展示室
参加費=無料(ただし要観覧券)
*申込み不要、直接会場へお越しください。

〈1、2の申込方法〉
往復はがきに参加希望者全員の氏名(2名までお申込可)、代表者の住所・電話番号と希望のイベント名を明記のうえ、芦屋市立美術博物館までお送りください。
【申し込み注意事項】
※お申込みは1つのイベントにつき1通、申込多数の場合は抽選。
※申込締切日の2~3日後に結果や参加方法をお知らせいたします。お知らせが届かない場合は、お手数ですがご連絡ください。




グループ・音楽 「即興音楽と音響オブジェのコンサート」 チラシ (1961 年)

 昨日大阪でのイベントの開催をお知らせしたばかりですが、田亀源五郎ニュース、第2弾です。『ゲイ・カルチャーの未来へ』刊行記念イベント、東京でも開催いたします! 12月19日(火)、なんとDOMMUNEに田亀先生ご本人が登場! 『ゲイ・カルチャーの未来へ』担当編集の木津毅に加え、『弟の夫』担当編集の南部恵里香さんも出演、『弟の夫』の制作秘話が聞けちゃうかも? ele-king編集長の野田努も喋ります。木津セレクトによる音楽もいっぱいかかる予定ですので、きっとフランキー・ナックルズとボン・イヴェールが交錯する素敵な一夜を体験することができるでしょう。当日はぜひ会場まで足をお運びください!

ele-king TV presents 『ゲイ・カルチャーの未来へ』刊行記念番組
田亀源五郎、トーク・ショウ

出演:
田亀源五郎、木津毅、南部恵里香(『漫画アクション』編集)、野田努、小林拓音

日時・場所:
12月19日(火)@DOMMUNE
19:00~21:00

https://www.dommune.com/

SILENT POETS - ele-king

 サイレント・ポエッツとは、UKダブやアシッド・ジャズ、初期マッシヴ・アタックへのリアクションとして1992年に登場した下田法晴のプロジェクト。現在で言えば、ボノボやシネマティック・オーケストラにも繫がる折衷的ダウンテンポで、2017年のアルバムも良かったウィーンのトスカらのの欧州トリップホップとも通じている。が、その名の通り無口なこのプロジェクトは、クールなヴィジュアルやリミキサーのセレクト、そして硬派かつスタイリッシュな作風によって独自の世界を切り開き、90年代の日本クラブ・シーンにおいてひときわ輝いていたひとつ……なのである。それが12年ぶりにアルバムを出す。
 参加メンバーが「らしい」。5lackこだま和文ホーリー・クック、櫻木大悟(D.A.N.)などなど。素晴らしいです。
 発売は2月7日でタイトルは『dawn』。うーーーん、これは楽しみ!!
 ※ホーリー・クックをフィーチャーした先行7インチはすでに発売されているようです。
 

SILENT POETS
dawn

ANOTHER TRIP
発売日: 2018年2月7日(水)

収録曲:
東京 feat. 5lack [Extended DUB]
Eternal Life feat. NIPPS
Simple feat. 櫻木大悟 (D.A.N.)
Shine feat. Hollie Cook
Asylums for the feeling feat. Leila Adu
Division of the world feat. Addis Pablo
Non Stoppa feat. Miss Red
Rain feat. こだま和文
Distant Memory etc. (全12曲程度収録予定) 


SILENT POETS プロフィール

東京在住のDJ/プロデューサーである下田法晴のソロユニット。1992年のデビュー以来、長きに渡る活動を通じて、メランコリックでエモーショナルなDUBサウンドを育んできた。これまでにフランスのYellow Productions、ドイツの99 Records、USのAtlanticといったレーベルからアルバムがリリースされ、イビサ・チルアウトの歴史的名作『Cafe del Mar』をはじめ、世界各国の40作品を超えるコンピレーション・アルバムに楽曲が収録された。2013年に自身のレーベル、ANOTHER TRIPを設立。再構築DUBアルバム『Another Trip from the SUN』を発表し、エンジニアの渡辺省二郎とSILENT POETS LIVE DUB SETとしてリキッドルームなどでライヴを行った。ラッパーの5lackをフィーチャーしたNTTドコモ「Style’20」CMソング「東京」が2016 56th ACC CM FESTIVAL(現ACC TOKYO CREATIVE AWARDS) クラフト賞サウンドデザインを受賞。2017年、FUJI ROCK FESTIVAL出演を果たし、7インチシングル「SHINE feat. Hollie Cook」のリリースを皮切りに、デビュー25周年プロジェクトを始動。2018年、12年ぶりとなるオリジナルアルバムのリリースを予定している。

 おかげさまで好評をいただいております、田亀源五郎(著)『ゲイ・カルチャーの未来へ』ですが、その出版を記念したトーク・ショウが大阪にて開催されます。出演は田亀先生ご本人と、『ゲイ・カルチャーの未来へ』の編集を担当したele-kingでもお馴染みの木津毅! 日時は12月10(日)で、会場は難波のロフトプラスワンWESTです。当日は田亀先生によるサイン会も予定されており、嬉しいことに『ゲイ・カルチャーの未来へ』以外の田亀作品の持ち込みも可とのこと。詳細は下記またはこちらより。ぜひ足をお運びください!

BS0xtra with V.I.V.E.K - ele-king

 急な話ですが、今週の12月13日(水曜日)、ロンドンからダブステップのプロデューサー、V.I.V.E.Kが来日。これは、ブリストルを中心としたサウンド&カルチャーをここ東京に浸透させるべく始動した〈BS0〉の番外編〈BS0xtra〉(CHART参照)のゲストとしての来日になる。
  V.I.V.E.Kは、レーベル〈SYSTEM〉を主宰、サウンドシステム・カルチャーの視点からUKダブ/ダブステップをプレイする、現シーンの重要人物のひとり。いまアツい注目を集めている彼が、CONTACTのシステムをどう震わせるか、迎え撃つレギュラー陣が作り上げる空気とともにお楽しみください。

BS0xtra with V.I.V.E.K
at Contact Tokyo (Shibuya)
Wednesday 13th December 2017
9pm - 4am
¥1,500(w/1drink)

Facebook event page:
https://www.facebook.com/events/1991206010905951/

Guest:
V.I.V.E.K (SYSTEM, UK)
DJs:
DADDY VEDA (Antidote Concilium)
KILLA
Mars89 (Noods Radio Bristol / Radar Radio London)
NullDaSensei (TwinFox / NightVision)
OSAM GREEN GIANT (Soi Productions)


■V.I.V.E.Kプロフィール

 ダブステップ・サウンドにおいて、140bpmで制作された豊かな音楽の遺産に敬意を表しながらジャンルを推進していると賞されるアーティストは数えるほどしかいない。V.I.V.E.Kという別名で知られるヴィヴェク・シャルダは、そんなアーティストの中のひとりである。彼は、ダブステップのテイストメイカーや影響力のある人々の小さなグループの中で揺るぎない存在と言える。
 その音からも分かるように、V.I.V.E.Kは自身のインド人としてのルーツと、ドラム&ベースやダブをプロデュースしていた00年前後の初期の経験を基にした、豊かで多様なバックグラウンドを持つ。07年に〈On The Edge〉からダブステップの作品でデビューして以降、ダブステップのジャンルの中で最も尊敬されるレーベル〈DEEP MEDi〉〈Tectonic〉そして最も最近では〈SYSTEM MUSIC〉を通じ、アンセムを連発してきた。それらのリリースは、自身が受けてきた音楽的影響を組み合わせて、鋭い中域、軽快なスネア、重いローエンドの轟きを特徴とするサウンドを形成する能力を、レーベルがどこであれ示している。本当に美しい、メロディックな存在感は言うまでもなく。
 彼の音楽に加え、ロンドンに拠点を置くこのプロデューサーは、尊敬されるイヴェント・プロモーターとして、ダブとダブステップへの愛をカスタム・ビルドのサウンドシステムで融合させる。ピュアなサウンドと、とてつもない重低音を両立させる明確な努力を積み重ねてきた。英国内外で100%ダブステップのラインナップが消え、“ダブステップ”という用語が商業的な雑音と結びついている昨今において、〈SYSTEM〉はオリジナルのダブステップ・サウンドのファンのためのイヴェントへとステップアップした。 現在、〈SYSTEM〉と〈SYSTEM MUSIC〉はベースミュージック界で最も即座に認識されるブランドとなった。デビュー・リリース以来、V.I.V.E.Kが140bpmの音楽にどれだけの影響を与えたのか、これはその例のほんの2つにすぎない。彼は正にインスピレーショナルな看板役であり、他のプロデューサーがキャリア全体でするようなことを、たった7年で成し遂げている。

https://www.wearesystem.co.uk
https://www.facebook.com/viveksystem

Phuture - ele-king

 12/15(金曜日)、場所は渋谷VISION、シカゴ・ハウスの伝説、フューチャーがライヴをやります。もちろんあのフューチャー。「アシッド・トラックス」のフューチャーです。まあ、控え目に言っても必見ですな。

『EMMA HOUSE』
今回のゲストはDJ EMMAのアイデンティティに深く刻まれる“ACID”のオリジネーター“Phuture”が満を持して登場する。
1985年にDJ PierreとHerb J、Earl “DJ Spank Spank” Smithによってスタートしたシカゴ・ハウス・グループPhuture。アシッド・ハウスのイノベーターとして広く知られ世界でムーヴメントを起こした彼らのサウンドは必聴である。
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30年に渡り、東京のクラブシーンの第一線で輝き続けるDJ EMMA。
日本全国で数々のパーティを成功させ、永きに渡り日本のダンスミュージックシーンに多大な影響を与えてきた。DJ EMMAの代表するパーティ”EMMA HOUSE”は常にDJ EMMAが音楽と真摯に向き合う、まさに真のDJが作り出す唯一無二の世界。今回も国内外から豪華アーティストが集結する。今回のゲストはDJ EMMAのアイデンティティに深く刻まれる“ACID”のオリジネーター“Phuture”が満を持して登場する。1985年にDJ PierreとHerb J、Earl “DJ Spank Spank” SmithによってスタートしたシカゴハウスグループPhuture。アシッドハウスのイノベーターとして広く知られ世界でムーブメントを起こした彼らのサウンドは必聴である。

~LINE UP~

◉GAIA

RESIDENT:
DJ EMMA
LIVE:
Phuture
DJ:
PUNKADELIX (MAYUDEPTH)

◉DEEP

DJ:
DJ TASAKA
DJ Shufflemaster
Mustache X
LIL’ MOF

◉WHITE

KEN HAMAZAKI

◉D-Lounge

DJ:
MAGARA
YOPPI
LONO3 (NIGHTTRAIN)
yumi-cco
Daisuke G.

OPEN 22:00
¥3,500 DOOR
¥3,000 With Flyer
¥2,800 ADV


○e+
https://iflyer.tv/ja/event/295939/

○clubberia
https://clubberia.com/ja/events/274344-EMMA-HOUSE/

○RA
https://jp.residentadvisor.net/events/1035954

◉公式website
https://www.vision-tokyo.com/event/emma-house-5

いまだ眩い最高の夜 - ele-king

 現在のele-king読者の中で、1985年のニュー・オーダー初来日、もしくは87年の二度目の来日ギグを体験したというひとがどれくらいいるだろうか。もはや、その演奏や歌のあまりの下手さが伝説のように語り継がれている初来日の厚生年金会館2日目のステージは、『Pumped Full of Drugs』というビデオ作品としてリリースされているので、そのひりひりした緊張感溢れる演奏を追体験することは誰にでも簡単にできる。でも、実際にその場にいて伝説を目撃したひとはほとんどいないんじゃなかろうか。僕自身、年齢的にも住んでいた場所的にも行けたはずなのに、両方の公演とも行かなかった。大学受験を控えていたからとか何か理由があったはずだが、よく覚えているのは当時リリースされたばかりのアルバム『ロウ・ライフ』から、“パーフェクト・キッス”を使ったコンサートのCMがやたらにFM東京(初来日公演を開局15周年イベントの一環として主催し、生中継もした)で流されていたことだけだ。

 そんな時代から気の遠くなるほどの時間が流れた2016年5月、実に29年ぶりという日本でのニュー・オーダー単独ライヴが実現、どれだけオッサンオバサンだらけになるんだろうと思っていたが、伸ばせば手の届くような小さめな会場でのNOのお宝ライヴを求めてきたスタジオ・コーストの客席は、2000年代のフェスで彼らを知ってファンになったというような若いお客さんも多く、ちょっと意外だった。


New Order
NOMC15

Mute/トラフィック

Indie RockElectroPost Punk

Amazon Tower HMV

 その東京でのライヴから遡ること約半年、2015年11月17日にロンドンの名門ブリクストン・アカデミーで収録されたのが、こちらのライヴ盤『NOMC15』だ。タイミング的には、9月末に出た10年ぶりの新作アルバム『ミュージック・コンプリート』のツアーがパリを皮切りにスタートし、ブリュッセル、ストックホルム、ベルリンと欧州の主要な都市をまわった後の英国凱旋(この後国内をツアーで巡った)。演奏や歌もしっかりしているし、お客さんもかなり盛りあがって、本人たちが楽しくやっているのも感じられる。ちなみにこのアルバムは当初、LiveHereNowというレーベルからリリースされていた。

 LiveHereNowはミュートの子会社としてスタートしたライヴ収録&オンデマンド販売の会社で、当初はライヴ会場でアンコールが終わると数分後には当日の音を収録したCD-Rが買えるというシステムをウリにしていたが、最近ではもう少ししっかり作り込んだライヴ盤をCDとレコード+デジタル・データで後日(サイトからの直販で)リリースする形にシフトしているようだ。もしかすると、制作者側でまったく吟味したり後から修正したりというステップを踏まず、ミスなども含めてそのままファンの手にライヴ音源が渡ってしまう(≒ネットに出まわってしまう)という点があまりアーティストに好ましく思われなかったのかもしれない。ただ、熱心なファンにとっては、ライヴの現場で偶然起きるハプニングこそが貴重なもので、それがプロの手で録音/録画されて簡単に手に入るなんて夢のような話だ。今でこそ笑い話にしか聞こえないかもしれないが、素人が客席から録音したようなモノからコンサートのミキシング・コンソールからこっそりライン録音された音源が流出したものまで、貴重なブート盤を探し求めて西新宿の怪しいレコ屋を何店もさまようなんて時代があったのだ。先の『Pumped Full of Drugs』などは、東洋の僻地でのレアなステージを本国で見せるための公式ブートみたいなものだ。かつて石野卓球がこの日の演奏を「歌の出だしでいきなりキーを間違えて、すぐに音程下げて歌い出した」って説明してくれたことがあるんだけれど、確かに“コンフュージョン”や“ブルー・マンデー”がそんな感じでびっくりするし、DMXのドラムマシンが暴走気味でときどきリズムがずれてるし、さらに言うと、“ブルー・マンデー”では照明が意図せず眩しすぎたのか、バーナード・サムナーが「照明消せよ、このオ●ンコ野郎!」とマイクを通してスタッフに文句を言うところまで収録されている。セットリストにはある“パーフェクト・キッス”がカットされてるからおかしいなと思って前日のFM生放送の録音を探して聞いたら、キーがどうこうのレヴェルじゃなく声がよれよれでまったく歌えてないし、演奏の前に「OK、マザー・ファッカーズ」とか言っちゃってる(生放送中……)。当時は、本当にめちゃくちゃだったんだよね。この頃のライヴを年代順に見ていくと、ステージをこなすたびに毎度ミスを犯しながらも腕を上げ、数年後にはこの辺の曲もちゃんと歌えるようになってるという(笑)。

 もちろん、素人臭さや決して巧いとは言えない演奏も魅力と考えられてきたバンドにしたって、35年もやってきたら丸くなるし、技術だって向上する。それをニュー・オーダーらしくないと言うファンもいるだろう。たしかに、長年バンドに軋轢やひりひりした緊張感をもたらしていたピーター・フックはもういないし、11年にジリアン・ギルバートが復帰して以降の、新メンバー2人を加えた5人体制にもすっかり馴染んでしまった。もはや今のNOは、初期とまったく同じバンドだとは言えないかもしれない。でも、稚拙さや技術のなさをひらめきや天才的なソングライティングの力だけでねじ伏せてきたニューウェイヴの申し子みたいな存在が、二度の解散状態を経ていまだ現役で、さらに老成へ向かっている姿を拝めるのは、すごいことだと思うのだ。

 近年ワーナーからライヴ・ビデオはいくつかリリースしてきたNOだが、純粋に音のみのライヴ盤は所属レーベル発の正式なものがなかった。『ミュージック・コンプリート』はもちろん、『ムーヴメント』と『テクニーク』以外の全アルバムとヒット・シングルから満遍なくチョイスし、ジョイ・ディヴィションのカヴァーも2曲やるというベスト盤的な選曲、そしてその日にやった曲すべてをカットせず2枚組CDとして収録したのも、フッキーなしでもここまでやれたというバンド史上何度目かのピークのドキュメントとして秀逸だ。当初はあんなに苦しみながら歌っていた80年代のヒット・シングル曲を、ただきちんと歌いこなすだけじゃなく、レコードとは違う節回しで、ちょっとアドリブを交えたりしながら楽しげに歌っているのにも驚かされる。さらに、“トゥッティ・フルッティ”と“ピーポー・オン・ザ・ハイライン”ではブリクストン・アカデミーのすぐ近所に住んでいるというラ・ルー(エリー・ジャクソン)をゲストで迎え、アルバム同様のデュエット曲として聞かせてくれる。

 CDではバンドの演奏に音声を混ぜるのは意図的に一部の曲(“テンプテーション”や“ブルー・マンデー”)に絞られているが、会場のファンが大合唱しているのが少し垣間見える。英語の歌詞を全部覚えているわけもない日本のオーディエンスでは、そういうことはなかなか起きえない。ところが、海外のコンサートに行って、特にヒット曲をたくさん持ってるベテランだと、会場にいるほとんどのひとが歌っているんじゃないかという瞬間がある。今年6月、日本に来てくれる望みがほとんどないデペッシュ・モードを聞くために、わざわざベルリンまで出向いた。そこで目にしたのは、7.5万人収容可という巨大スタジアムを埋め尽くしたファンが、地響きのように“エブリシング・カウンツ”を大合唱するという信じがたい光景だった。ブンデスリーガのライバル・チームによる因縁の一戦とか、ワールドカップの決勝戦なら白熱したサポーターが声を重ねて応援する声がスタジアムに響き渡るのもわかるけど、デペッシュ・モードだからね! もちろん、ベルリンのオリンピック・スタジアムと、ロンドンのブリクストン・アカデミーじゃあ規模が全然違うけど、“アトモスフィア”や“ラヴ・ウィル・ティアー・アス・アパート”で大合唱が起きて、スクリーンにはあの「Forever Joy Division」と書かれたイアン・カーティスの画像が投影されていたと想像すると、やっぱりちょっと泣けてきてしまう。

 この王道的な、こなれてダラッとした中年バンドになったニュー・オーダーも愛おしい。でも挑戦的で尖った彼らもまだ諦めたくなくて、そういう意味では今年の7月にマンチェスター・インターナショナル・フェスティヴァルの一環として行われたスペシャル・ライヴの様子もぜひきちんと商品化して欲しいところだ。このライヴは“ブルー・マンデー”もその他の定番ヒット曲もほとんどやらず、映像も使わず、かわりに王立ノーザン音楽大学の学生12人から成るシンセサイザー・アンサンブルをバックに従え、ソリッドでエレクトロニックな演奏を披露した。しかも会場が、かつてトニー・ウィルソンが働いていたグラナダTVのスタジオだった場所だというから、BBCで放送された一部だけ(YouTubeで見られる)じゃなくて、全編を通して見て/聴いてみたい。

interview with Cassie Ojay (Golden Teacher) - ele-king


Golden Teacher
No Luscious Life

Golden Teacher / ビート

DiscoFunkDubAfroPost-Punk

Amazon Tower HMV iTunes

 昨年出たパウウェルのアルバムは、やはりひとつの画期だったのだろう。今年に入ってからというもの、チック・チック・チックマウント・キンビーキング・クルールやLCDサウンドシステムなど、80年代のポストパンク・サウンドを導入した作品のリリースがあとを絶たない。アラン・ヴェガの遺作もこの流れに位置づけることができるし、エンジニアにスティーヴ・アルビニを迎えたベン・フロストもまたこの趨向に従っていると言える。そんなポストパンク・イヤーを締めくくるかのように、オプティモに見出されたグラスゴーの6人組バンド、ゴールデン・ティーチャーがファースト・フル・アルバムを完成させた。
 シングルで展開していた実験的な側面はやや控えめに、よりダンサブルな方位を志向した『No Luscious Life』は、ESGやダイナソー・L、コンクやマキシマム・ジョイといった先輩たちのイメージを振り撒きつつも、クラブ・カルチャーを経由した今日的なプロダクションとアフリカ音楽の独自の解釈をもって、単なる回顧主義に留まらないポテンシャルの片鱗を覗かせている。
 今年はアンビエント~ニューエイジの領野でも80年代を参照する動きが目立ったが、それはおそらくいまの情況が、かつてのレーガン=サッチャー=中曽根の時代と似通っている、ということなのだろう。ゴールデン・ティーチャーのこのアルバムもそのような時代のムードに敏感だ。「甘い生活なんかない」と謳うアルバム・タイトルは昨今の世相を反映しているかのようだし、じっさい“Sauchiehall Withdrawal”では最低賃金で働かざるをえない人びとのことが歌われている。

   

いつだって一生懸命働いてる でもなんで?
いつだって一生懸命働いてる でもなんで?

 メンバーそれぞれで出自が異なるという彼らは、そもそもどのようにして出会い、ともに音楽を作り始めることになったのか。そして彼らはいまどのようなことを考えているのか。ヴォーカルのキャシー・オジェイが答えてくれた。

テーマは最低賃金で働くことについて。以前はストリートの組合があったから良かったんだけど、いまは存在していないから、労働条件が悪化しているの。ときに罠にはめられているような気がするのよね。

ゴールデン・ティーチャーはどのように結成されたのですか? アルティメット・スラッシュとシルク・カットというふたつのグループが母体になっていると聞いたのですが。

キャシー・オジェイ(Cassie Ojay、以下CO):私たちのほとんどがグリーン・ドア・スタジオ(若いミュージシャンたちのための育成コースを運営している拠点)で出会ったの。当時、オリヴァーとローリーはアルティメット・スラッシュ(Ultimet Thrush)にいて、サムとリッチはラヴァーズ・ライツ(Lovers Rights)っていうバンドにいた。チャーリーはブルー・サバス・ブラック・フィジー(Blue Sabbath Black Fiji)っていう素晴らしいバンドにいたんだけど、彼はその時点でツアーの経験も豊富で、曲もたくさん書きためていたの。一方私は、そのときまだ高校を卒業したばかりだった。まだ17歳で、歌うことが大好きだったから、そんな重要な時期に彼らと出会えたのはすごく良かったわ。いろんなことを学んで、たくさんのことを吸収している時期だった。みんな出会ってから、互いに成長し合ってきた。そして、自然にバンドを組むことになったの。それまではただ自由に一緒に音作りをしているだけだったんだけどね。チャーリーに初めて会ったときは、ほとんど話さなかった。暗い部屋に入って、自分たちが聴いたことのない、他のメンバーが作ったトラックの上から、ふたりでヴォーカルを乗せたの。それが結果的に3枚めのシングル「Party People」としてリリースされることになったのよ。

「ゴールデン・ティーチャー」というバンド名の由来を教えてください。

CO:由来はマジックマッシュルーム(笑)。でも、グリーン・ドア・スタジオを運営している人たちがみんなオズの魔法使いみたいだったから、ゴールデン・ティーチャーたちという意味も込めているのよ。私たちは先生たちからすごく影響を受けているし、レコーディングする機材を使わせてもらったりもした。そのふたつから来ているの。

バンド・メンバー全員に共通しているものは何でしょう?

CO:私たちって、みんな本当にキャラが違うのよね。それがこのバンドの利点になっていると思う。みんなが異なる音楽のテイストと世界観を持っていて、それがうまく機能している。自分たちで互いを刺戟し合っているのよ。たとえばチャーリーはファンクが大好きなんだけど、彼がファンクのトラックを作ろうとしても、他のメンバーの影響が入るから、ふつうのファンク・トラックには仕上がらない(笑)。共通点があるとすれば、それは音楽への情熱ね。その音楽が違っても、注ぎ込む愛情は同じなの。それが混ざり合っておもしろいものが生まれているんだと思う。

あなたたちの音楽からはESGやアーサー・ラッセルの影響が感じられます。バンド・メンバーはじっさいにはどのような音楽から影響を受けてきたのですか?

CO:さっきの答えとも繋がるけど、みんな影響を受けてきたものが違うの。私個人は、子どもの頃はゴスペルに影響を受けていた。あとはポール・ロブソンがお気に入りだった。そういった音楽がきっかけになって、自分も歌いたいと思うようになったの。あと、母親が〈Studio One〉のレコードをたくさん持っていたから、それも聴いていた。一方で、チャーリーはマイケル・ジャクソンとかプリンスとか、そういう音楽が好きなの。だから、ニューヨークからデトロイトまで、影響は本当に幅広いのよね。

通訳:ESGやアーサー・ラッセルの影響に関してはどう思いますか?

CO:ESGはよく言われる。でも、彼らのパンクの精神は私たちと共通していると思うけど、音楽的にあまり影響を受けているとは自分では思わない。一緒にツアーをしたからライヴも何度か見たけど、やっぱり共通しているのはパンク・スピリットだと思う。

じっさいに彼らとツアーをして接してみた感想は?

CO:すごく良い経験だった! ヒーローにはじっさいには会わない方がいいとか言われてるけど、会えて本当に良かったわ。一緒にツアーができて、すごく光栄だった。

通訳:彼らから何か学びましたか?

CO:学んだとは思うけれど、彼らってすごくプライヴェートを大切にする人たちで、私たちは逆にやかましいのよね(笑)。でも、バックステージの雰囲気はすごく良かった。互いのパフォーマンスも見られたし、私たちも彼らもそれを楽しむことができて本当にナイスだった。

かつてESGやダイナソー・Lといったバンドが成し遂げた最大の功績は何だと思いますか?

CO:いい質問ね。ESGは女性だけのバンドだったし、かつメッセージ性の強い音楽を作っていた。それは革新的だったと思う。あと、それなのに複雑すぎずシンプルだったのがすごく良かったと思う。そのふたつのバンドが、当時はふつうではなかったことをその時代にやっていたと思うの。彼らはその時代の柵を乗り越えた。そこが最大の功績だと思う。

あなたたちの最初の3枚の12インチは〈Optimo Music〉からリリースされています。オプティモのふたりとはどのように出会ったのでしょう?

CO:オプティモはかなり長い間グラスゴーで活躍しているんだけど、彼らが毎週日曜日にクラブ・ナイトをやっていたとき、メンバーの何人かがそれに通っていたの。私は若すぎて行けなかったんだけどね(笑)。10歳くらいだったから(笑)。それでエミリーが彼らを知っていて、私たちのEPを彼らに送ったの。それを彼らが気に入って、リリースが決まったのよ。私もそのクラブ・ナイト行きたかったな~(笑)。最初のEPを出したときも、高校を卒業したばかりでまだ17歳だった(笑)。だから、最初は若すぎることがコンプレックスだったのよね。でも、いまはもう24歳だから大丈夫(笑)!

2015年にはデニス・ボーヴェルとの共作12インチも出していますね。そのときのコラボはどういう経緯で実現したのですか?

CO:彼が誰か他のミュージシャンとグリーン・ドアでレコーディングしていて、それを知ったオプティモのキースが、私たちと彼を繋げてくれたの。それで、ゴールデン・ティーチャーの曲のヴァージョンをレコーディングすることになった。実際に彼とは会わなかったんだけど、彼がスタジオに入って、すでにでき上がったヴァージョンをアレンジしてくれたの。会ったことはないけど、すごくいい人って聞いてるわ。

スリッツやマキシマム・ジョイといったバンドからも影響を受けたのでしょうか?

CO:マキシマム・ジョイは受けていると思う。でもスリッツは……受けているとすれば、彼女たちのエナジーかな。うまく説明できないけど、彼女たちの型破りなところ。彼女たちがカヴァーしたマーヴィン・ゲイの“I Heard It Through The Grapevine”を聴いたとき、あのパッションとヴォーカルから感じられる怒りに驚かされたわ。あの本物な感じがすごく良かった。心を動かされた。マーヴィン・ゲイのソウルフルなヴォーカルにまったく引けを取らなかった。私たちのサウンドはもっと落ち着いているかもしれないけど、感情やパッションをそのまま出しているところはゴールデン・ティーチャーも同じね。

あなたたちにとって「ダブ」とは何ですか? 技法や技術でしょうか、それとも音楽のスタイルやジャンルのことでしょうか、あるいはもっと他の何かでしょうか?

CO:個人的には、ノスタルジックな気分にさせてくれるもの。自分が聴いて育ってきた音楽だから、本当に素晴らしいダブを聴いたときは、最高の気分になれる。レコーディングのテクニックとして、ダブ、ディレイなんかを使いはするけど、自分たちの音楽がダブっぽいとは自分では思わないの。だからバンドにとってダブはテクニック。私たちのスタイルではないわね。

その後〈Optimo Music〉からは離れ、2015年には12インチ「Sauchiehall Enthrall」と、最初の3枚をまとめたコンピレーション『First Three EPs』をご自身たちでリリースしています。そして今回のアルバムもセルフ・リリースです。そうすることにしたのはなぜですか?

CO:それが可能だからよ。最近はみんなDIYだし、自分たちがやりたいことに対してアクティヴ。だから、自分たちでできることは自分たちでやりたい。その方が自分たちでコントロールもできるし、自分たちにとってはそれが自然なことなのよね。

何かにインスパイアされることは誰もが許されていることだけど、何が盗みになるかはきわどいところ。それをクリアにするためには、アフリカに対するじゅうぶんな理解が必要だと思う。

新作1曲目の“Sauchiehall Withdrawal”は賃労働についての曲だそうですが、賃労働についてはどうお考えですか? 音楽制作と似ている点はありますか?

CO:そのタイトルは、グラスゴーのメイン・ストリートの名前なのよ。そのストリートへのオマージュなの。どちらかといえば、テーマは最低賃金で働くことについて。以前はストリートの組合があったから良かったんだけど、いまは存在していないから、労働条件が悪化しているの。ときに罠にはめられているような気がするのよね。音楽制作と繋がる部分はあると思う。だって、ここ数年の音楽業界ってボロボロでしょ(笑)? もう音楽でお金を稼ぐことって、できなくなってると思う。ニューヨーク、パリ、いろいろなところで演奏できているけど、それが終わればグラスゴーに帰ってレストラン・バーでバイトしてる。バンドにいるだけじゃもうお金は作れない。クリエイティヴになる空間と状況を得るにはお金も必要なのに、すごく残念なことよね。でも、それが現実なの。自分たちもそれを経験しているから、歌詞にそれが出てくるのよ(笑)。

2曲目“Diop”はセネガルの歌手アビー・ンガナ・ディオップ(Aby Ngana Diop)へのオマージュとのことですが、セネガルの音楽もゴールデン・ティーチャーに影響を与えているのでしょうか?

CO:セネガルだけじゃなく、西アフリカ全体の音楽に影響を受けているわ。

通訳:どのようにしてそういった音楽に触れるきっかけができたのでしょう?

CO:それはバンドのメンバーによって違うと思う。私の場合は、先祖が西アフリカ人だから、周りにあってつねに聴いて楽しんできた音楽なの。私は特にナイジェリアの音楽に影響を受けているわね。ハイライフ。たとえばフェラ・クティとか。オリヴァーとローリーはガーナによく行くから、ガーナの伝統的なドラムのリズムなんかに影響を受けている。みんなそれぞれ、アフリカの音楽とはパーソナルな繋がり方をしているの。

かつてトーキング・ヘッズが『Remain In Light』を出したとき、「欧米や先進国による第三世界の搾取だ」というような批判がありました。そういう見解についてはどうお考えですか?

CO:アフリカ音楽の要素の質問が出たとき、ちょうどこのことを話そうと思っていたところよ。じっさい、多くの白人ミュージシャンたちがアフリカ全体の音楽を取り入れていると思う。でも、彼らはそれでお金を稼いでいるけど、アフリカ現地のミュージシャンたちはじゅうぶんな稼ぎを得られていない。だから、文化の横領だといえば、それは否定できない。すごく難しい問題よね。何かにインスパイアされることは誰もが許されていることだけど、何が盗みになるかはきわどいところ。それをクリアにするためには、アフリカに対するじゅうぶんな理解が必要だと思う。トーキング・ヘッズの問題もすごく難しい問題だけど、多くの欧米のミュージシャンたちが第三世界のものを使って利益を得るという現象が続いているのは事実だと思う。この問題って、すごく複雑よね。エルヴィスもそうだと思う。ブラック・ミュージックを盗んで、お金を儲けたミュージシャンのひとりだと思うわ。でも、それによって黒人は何の利益も得られなかった。それは、いまも起こり続けているんじゃないかな。グラスゴーって、すごく白人が多いの。でもその中でも私たちって、メンバーそれぞれがいろいろな場所のミックスで、多種多様なバンドなのよね。そんな私たちの音楽がグラスゴーから世界に届いて、受け入れてもらえているのは嬉しいわ。

3曲目“Spiritron”では「We go interstellar, we never look back」と歌われていて、またシンセの一部はコズミックで、ギャラクシー・2・ギャラクシーのフュージョンを連想しました。これはどういうテーマで作られた曲なのでしょう?

CO:それはチャーリーに聞かないとわからない(笑)。私たちは互いのクリエイティヴさを尊敬して、その領域は邪魔しないようにしているから、私にはわからないの(笑)。みんなが自由に受け取ってくれたら、それがいちばんよ。

日本からはなかなか見えづらいのですが、いまグラスゴーのクラブ・カルチャーやアンダーグラウンドな音楽シーンはどのようになっているのでしょう? 注目しているアクトや動向があれば教えてください。

CO:グラスゴーの音楽シーンはすごくいいわよ。毎日ギグがあるし、チケットも高くない。街自体がクリエイティヴな街だし、音楽をやりやすい環境だと思う。周りの友だちにもアーティストやミュージシャンが多いから、互いを刺戟し合えるし、活動がやりやすいのよね。トータル・レザレット(Total Leatherette)っていうバンドがすごくいい。グラスゴーから出たこれまでのバンドの中で、いちばんエキサイティングなバンドだと思う。聴いたら衝撃を受けると思うわ。

ゴールデン・ティーチャーは2013年にフランツ・フェルディナンドのリミックスを手掛けていますが、今後リミックスしてみたいアーティストはいますか? あるいは逆に、自分たちの曲のリミックスを依頼したいアーティストがいれば教えてください。

CO:してもされても、ルーツ・マヌーヴァとコラボしたら、すっごいクールな作品が生まれると思う(笑)。

昨年のパウウェルのアルバム『Sport』から最近出たマウント・キンビーの『Love What Survives』まで、いま「ポストパンク」がひとつのトレンドになっているように思うのですが、2010年代後半にこういった80年代の音楽からインスパイアされた音楽をやる意義は何だと思いますか?

CO:わからないけれど、当時の音楽を新しいレコーディングの仕方や技術でやることでおもしろいものが生まれるんじゃないかしら。あと、2017年の音楽ってシンセばかりでオートチューンだらけでしょ? でも、アナログさや本物の音を求めると、いまでも80年代や昔の音楽にインスパイアされたものができ上がるんじゃないかしら。

他のバンドやDJにはない、ゴールデン・ティーチャーの最大の強みは何だと思いますか?

CO:やっぱり、私たちひとりひとりのパーソナリティがぜんぜん違うところね。もちろんみんな仲良しだけど、互いに妥協することがない。みんなが強い性格だから、全員の意見がすべて反映される。だからこそさまざまなジャンルが混ざった曲ができ上がるの。方向性もころころ変わる。ひとつのことにとらわれず、たくさんのものが詰まった大きな塊を作れるのが私たちの強みだと思うわ。

通訳:ありがとうございました!

CO:ありがとう! いつか、東京に行けるのを楽しみにしているわ!

interview with TOKiMONSTA - ele-king


TOKiMONSTA
Lune Rouge

Young Art / PLANCHA

Hip HopElectronic

Amazon Tower HMV iTunes

 トキモンスタが帰ってきた。2年前に重大な脳の障害を患った彼女は、二度にわたる手術の影響により音楽はもちろんのこと、動くことも話すこともできない状況にあったのだという。リハビリを終えた彼女はすぐにこのアルバムの制作に取り掛かったそうで、そのような闘病体験が霊感を与えたのか、新作『Lune Rouge』はこれまでの彼女のサウンドとは異なる優美さを湛えている。LAのビート・シーンから登場し、〈Brainfeeder〉からのリリースで一気に重要なプロデューサーの地位へとのぼり詰めた彼女だが、このニュー・アルバムは、フライング・ロータスの影響下にあったかつてのビートとも、EDMに寄ったセカンド・アルバムとも異なるポップネスを獲得している。ビートはより躍動的に、メロディはより叙情的に、ヴォーカルはよりソウルフルになった。そしてそこに、あるときはひっそりと、またあるときは大胆に、韓国や中国のトラディショナルな要素が落とし込まれている。この『Lune Rouge』における新たな試みは、めでたく復帰を遂げたトキモンスタの今後の道程を照らす、輝かしい燈火となることだろう。そんな彼女のこれまでの歩みを振り返りながら、4年ぶりとなる新作についてメールで伺った。

私の目標は、これらの伝統的なサウンドを、フェティシズムやアジア文化のエキゾチックな感覚ではない方法でシェアすること。この問題にどうやってアプローチするかはとても気をつけているわ。

あなたは幼少よりピアノなどを習い、クラシック音楽を学んでいたそうですが、そこからヒップホップに興味を抱くようになったのはなぜなのでしょう?

トキモンスタ(以下、T):じつはもともとピアノは弾いていなくて、両親の影響でクラシック音楽を学んでいたの。つまりクラシックが私の音楽の最初の入り口。それから私が他の音楽に触れることができる年齢になったとき、次に好きになったのがヒップホップだったわ。

ヒップホップやエレクトロニック・ミュージックを制作する際に、クラシックの素養はどのような助けになっていますか? あるいは逆に、その素養が足枷になることもあるのでしょうか? たとえば、プレイヤーとしてのスキルが作曲の可能性を狭めてしまうことはあると思いますか?

T:私は自分の音楽にクラシックのポジティヴと感じる側面のみを取り入れ、好きではないところは取り入れない。たとえば、私はクラシック作品の物語性は好きだけど、ルールや制約は好きではないの。

あなたは2010年にファースト・アルバム『Midnight Menu』を発表し、翌2011年に〈Brainfeeder〉からEP「Creature Dreams」をリリースして脚光を浴びました。あなたの出自はLAのビート・シーンにあると思うのですが、いまでもLAのシーンに属しているという意識はお持ちでしょうか?

T:私はいつもビート・シーンの一部であると思ってる。私たちはみんなLAでスタートして、いつもルーツはそのサウンドにあると感じているけど、私たちはそこから旅立ち、皆それぞれ異なる個性を持つミュージシャンへと進化しているわ。

カマシ・ワシントンやルイス・コール、ミゲル・アトウッド・ファーガソンらに代表されるようなLAのジャズ・シーンとは交流がありますか? また、彼らのようなプレイヤーと楽曲制作をしてみたいと思いますか?

T:私は現代のLAのジャズ・シーンが大好きで、すべてのアーティストを深く尊敬しいるわ。

同じ年にあなたはディプロやスクリレックスとツアーを回っていますね。そして翌2013年にはEDMのレーベルからセカンド・アルバムとなる『Half Shadow』をリリースしています。ファースト・アルバムとは異なる作風へシフトしましたが、そのときはどのような心境の変化があったのでしょう? EDMに関心があったのですか?

T:ディプロやスクリレックスとツアーを回ったけど、私の音楽は何も変わってないわ。「EDM」は作っていないし、いまだにアグレッシヴなダンス・ミュージックを作ったことはない。でも一方で、私はそれをひとつの芸術形態として尊重し、とても楽しいものだと思っているわ。私は〈Ultra〉から作品を出したけど、〈Ultra〉は私が作る音楽を制作してほしがっていたわけではないし、レーベルのアーティストがすでに作ってきた多くのものと同じものを作りたくはないと思っていたの。『Half Shadow』はもしかしたら〈Brainfeeder〉や他のレーベルでリリースされていたかもしれないけど、私はただ、より大きなレーベルでビート・シーンのサウンドが受け入れられるかどうかを見たいと思ったのよ。

昨年デュラン・デュランをリミックスしていましたよね。それはどういう経緯で?

T:デュラン・デュランのリミックスは、彼らから依頼が来たの。まさか彼らが私の音楽に興味があるとは思ってなかったので、依頼が来たときはとても驚いたわ。私は彼らとツアーもしたの。ツアーはシック・フィーチャリング・ナイル・ロジャースも一緒だった。私のようなエレクトロニック・アーティストにとって非常にユニークで、信じられない体験だったわ。

今回のニュー・アルバムはファーストともセカンドとも異なる作品に仕上がっています。本作の制作を始めた直後、難病を患ったとお聞きしていますが、病中の体験は本作に影響を与えましたか?

T:私はもやもや病という脳の病を患い、それを手術しなければならなかった。手術の副作用により、話すことも、言語を理解することも、身体をうまく動かすこともできず、さらには音楽を理解することもできなくなってしまった。もう一度音楽を理解できるようになるかどうかわからなかったときはとても恐ろしかったけど、最終的にはすべてが回復し、正常に戻った。精神的な能力を取り戻すとすぐに、私はこのアルバムの制作に取りかかったわ。

『Lune Rouge』ではヴォーカルがフィーチャーされたトラックがアルバムの半数以上を占めていますが、自身の楽曲に歌やラップといった言葉を乗せることにはどのような意味がありますか? ご自身で作詞されている曲はあるのでしょうか?

T:このアルバムでヴォーカルが配された曲は、それが適切だと思ったの。私はヴォーカルを別のひとつの楽器としてとらえることが好きだから。私はアルバムの2曲めの“Rouge”を自分で作詞して歌っているわ。

本作は1曲め“Lune”から2曲め“Rouge”までの流れや、ピアノが耳に残る4曲め“I Wish I Could”など、メロディアスな印象を抱きました。そういったメロディの部分と、ヒップホップのビートとを共存させるうえでもっとも注意を払っていることはなんですか?

T:私はつねに自分の音楽に感情だけでなく躍動感が欲しいと思っている。メロディは感情を作り、打楽器とドラムは躍動感を作る。両者の間には良いバランスがあるから、私はいつもそれを見つけようと努力しているわ。

先行公開された8曲めの“Don't Call Me”では、マレーシアのYuna Zaraiをフィーチャーしています。彼女とはどういう経緯で一緒にやることになったのでしょう?

T:Yunaとはマネージャーを通じて会ったのだけど、私たちはもともと互いの作品の大ファンだったのね。彼女は素晴らしいアーティストであると同時に素晴らしい人物でもある。この曲は本当に理解のある人によって生み出されたから特別なの。

あなたは過去に何度かアンダーソン・パクと共作していますが、近年の彼の活躍についてどう思っていますか?

T:私はアンダーソンがスターになっていくのを見るたびにハッピーな気持ちになってエキサイトしてる。彼は弟のような存在だし、私はただ彼がもっともっと輝く様子を見ていたい。

ご自身のルーツのひとつである韓国では、近年ヒップホップやR&Bを中心に、インディ・ロックやダンス・ミュージックなど幅広いジャンルで質の高い音楽が生まれていますが、現在の韓国の音楽で注目しているものはありますか?

T:私はいつも、変化している韓国の音楽にいつも興味を持っているわ。いまのところは、ビートや電子音楽を作る現地のプロデューサーについて学んでいるところね。

6曲め“Bibimbap(ビビンバ)”で使われているのは伽倻琴(カヤグム、Gayageum、가야금)でしょうか?

T:うん、そうよ!

最終曲“Estrange”でも伝統的な弦楽器が用いられていますが、これはなんという楽器でしょう? また、このアルバムには他にも韓国の音楽の要素が含まれていますか?

T:“Estrange”で使っている楽器は中国の弦楽器なの。アルバム全体にほのかに韓国の要素を通底させているわ。特に目立つのは“Bibimbap”だけどね。

積極的にそういった音を取り入れるのは、ご自身のルーツを打ち出したいという思いが強いからなのでしょうか?

T:私は多くの文化の中から伝統音楽に触れるのが好きなの。自分が韓国人である以上、当然韓国のカルチャーから生まれた音楽にもっとも親しみがあるわ。多くの人びとはモダンな音楽や、もしくはたぶん「オールディーズ」のような音楽に焦点を当てがちだけど、何世紀にもわたって存在してきた伝統音楽にはとても豊富な音楽があるの。

そういった要素を打ち出すことで、アジアの文化を世界に広めることができるという側面もありますが、逆に偏見やオリエンタリズムを増大させてしまう可能性もありますよね。そのバランスについてはどうお考えでしょう?

T:私の目標は、これらの伝統的なサウンドを、フェティシズムやアジア文化のエキゾチックな感覚ではない方法でシェアすること。この問題にどうやってアプローチするかはとても気をつけているわ。

いま〈88rising〉が、インドネシアのリッチ・チガや中国のハイヤー・ブラザーズなど、アジアのヒップホップを精力的にプッシュしていますが、そういった動きについてどう見ていますか?

T:彼らがやっていることは大好きよ。私たちがステレオタイプなアジア人のギミックや誇張として見なされない限り、あらゆる音楽分野で世界的に評価されることは素晴らしいわ。

あなたはTwitterでときおりトランプやホワイトハウスについて発言しています。いまの合衆国の状況についてはどのようにお考えですか?

T:私は現政権に不満を持ち、彼らの選択、コメント、決定に失望している。でも、つねに希望を持っているし、未来を楽しみにしているわ。

あなたの音楽について、いまでも「女性」という枠で括って捉えようとする人もいるのではないかと察します。そのことにストレスを感じることはありますか?

T:たしかにそれは少し過剰な表現のように感じるわ。でもそれは二面性を持った問題ね。女性プロデューサーの稀少さを強調するために、人びとは、私のような「女性プロデューサー」によってこのトピック全体が転換されていることを理解する必要があると思うわ。それはいつか、これ以上議論する価値がないほど一般的になるでしょう。

文化的なものには、すでに根付いてしまった社会的な因襲や慣習を変える力が具わっていると思うのですが、あなたが曲を作るときに、そういったことを意識することはありますか? 音楽や言葉や映像、アートやファッションなど、文化が持つ力についてどのようにお考えですか?

T:アーティストとしての私にとって、創造する理由とは、私が創造する必要性を満たすことなの。動機を持ったり、(ポジティヴでもネガティヴでも)政治的な課題のために音楽を作ったことはないわ。 私の目には、芸術ははっきりしていて、とても純粋なマナーの中で存在することができるように見える。でも芸術はその周りに文化を創造し、文化は人類の他の側面(政治や社会的活動など)と相互作用する。そこで私たちは、アート(音楽、ヴィジュアル、書かれたもの、ファッション、すべてのもの)がどのように文化になり、社会に変化をもたらすのかを見ている。私は自分の創造性を伝えるために音楽を作っているけど、その音楽は独自の生命を持って、インパクトを生み出し、変化を促す能力を持っているわ。それはとてもパワフルだと思う。

「誰が買うんだよ! ま、あたしは好きだけどね」
――一青窈(歌手)

「早く買わないと“発禁”だぞ!」
――安齋肇(ソラミミスト)

「『我々が歌にするまでもない、お悩みですな』男はそう言って、再生釦を指で押した。」
――安田謙一(ロック漫筆)

日本歌謡界から失われて久しい「もののあはれ」の精神をなおも堅持し、ますますラジカルに時代を遡行しつづける孤高のファンク・バンドO.L.H.が、満を持して初の書籍をリリース。地上波から排除されたすべての「身の下」の悩みを、O.L.H.のふたり(sinner-yang & aCKy)が“完全かつ最終的に”解決する。

今はなき知の巨人・吉本隆明をして「うますぎる」と唸らせた特異な言語感覚、反“恥”性主義の現代に燦然と輝くゲスな知性が、リテラシーいかんを問わず、等しく人民の良心を逆撫でする!

■表紙カヴァーはキング・テリーこと湯村輝彦、数多の挿絵は根本敬でお届けします。

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