僕が欲しかったのは君だった
さあ、僕らの最後の選択の時だ
僕たち、どうやって嘘をついたり後知恵で批判したりするだろうか?
HOT CHIP "Don't Deny Your Heart"(2012)
え~、またなの~? 親愛なる読者、どうかそう思わないで欲しい。来日ライヴはまるでパンクのコンサートのように、下手したらトリのブロック・パーティを食ってしまうほどの縦のりの大騒ぎだったホット・チップ。以下、バンドのフロントをつとめるふたり、アレクシス・テイラー(Alexis Taylor)とアル・ドイル(Al Doyle)といっしょに、実験的な取材を試みた......。
うん、髭のある女性は好きだな。とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。
Hot Chip In Our Heads Domino/ホステス |
野田:いいですか? 今回はひとつルールを決めたいと思います。「絶対に、本当のこと、真実を言ってはいけない」というルールです。
どうでしょう?
アレクシス:(即答)了解。いいよ。
アル:りょ、了解......難しいね(笑)!
野田:それでは「ホットチップくん」、よろしくお願いします。
■オッケー。えー、まず最初に、Welcome to Japan! ということで、日本の好きなところはどこでしょう?
アル:(即答)何にも好きじゃない。嫌い。
(一同爆笑)
アル:こんな感じで行きますよー、みんな(笑)!
アレクシス:この視点で、ちょっと考え方を変えてみよう。なんで僕が日本を好きか。食べ物がシンプルで、ここで食べれる料理はひとつだけ。
アル:そうだね......(笑)!
アレクシス:ハンバーガーしかないから。まあ、いいんだけど。あと、住んでる人が......もっと愛想があったらいいのになと思う。
アル:ふふふふ......(笑)!
アレクシス:献身的じゃないし、秩序もないし、何事にも雑だから。いや、これ難しいね。こんな嘘をついてると、僕が無礼に聞こえない?
(一同爆笑)
アレクシス:でも嘘をつき続けなきゃいけないんだよね。もっと上手く答えていこうか。
■好きな女の子のタイプは?
アル:アレクシス、これはマジでちょっと......(笑)!
アレクシス:これも嘘じゃないといけないんだよね? 了解。(しばし沈黙)......とっても無愛想で......脅迫的で......暴力的で......男っぽくて......毛だらけで......髭が生えてる女性かな。
アル:うん、髭のある女性は好きだな。うん、髭か......気にしないけどね。
アレクシス:ほんと、こんなこと考えたことなかったよ。ねえ、やっぱり、ほら、すごく無礼に聞こえるよね?
アル:無礼になるのは愉しいよ! 日本では無礼な感じでいこう。ははは(笑)。
アレクシス:女性全員を不快にしてしまいそうだね。
■心配しないで!「Don't Worry. There is nothing left to....」
アル:そうだね(笑)。
(註:アレクシスの別バンドであるアバウト・グループ≪About Group≫の曲"Don't Worry"の歌詞)
■得意な楽器はなんですか?
アレクシス:僕はギターの才能が輝いてるよ。
(一同笑)
アレクシス:ギターに関してはハッキリと言える。それに、たぶん僕は世界一のギタリストだよ。惑星一だ。あとは、吹奏楽器ならなんでも得意。なんでもこいって感じだよ。
アル:僕も吹奏楽器は得意だな。
■ほう。2010年のツアーでは"I Feel Better"のイントロでフリューゲル・ホルンをプレイしてましたね。
アル:そうそう。とても得意だよ......って、嘘つくのも大変だ!
アレクシス:これって僕らが嘘をついてることは読者に伝えてくれるの?
野田:もちろん、もちろん!
■もちろん、もちろん! オフコース!
アレクシス:了解。いいよ。......でも、それも嘘かもしれないじゃない?
■いやいやいや......なにもなにも......(笑)。
アル:ぷははははは! 了解(笑)。
■このインタヴューはスペシャル・ゴージャス・ボーナス・トラックです!
アレクシス:了解。
アル:ははは、了解。気にしないで(笑)。
■そう、そのロイヤル・トラックス(Royal Trux)みたいな感じです。
アレクシス&アル:ふふふふ......。
(註:『In Our Heads』のボーナス・トラック"Doctor"にはロイヤル・トラックスのニール・マイケル・ハガティ≪Neil Michael Hagerty≫がギターで参加しており、ロイヤル・トラックスのアルバム『Accelerator』のTシャツをインタヴュー時のアレクシスが着ていた)
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ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(「ギリシャ人」)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。
■自分の好きなところはどこですか?
アレクシス:うーん......。僕は背が高くて......。
■ふふふ......(笑)。
野田:うう(笑っていいのか気遣う)。
アレクシス:だから、見晴らしがいいところ。......僕の体型も好き。で......。
アル:僕は彼の体型きらいだけどね。ははははは!
野田:ははははは!(遂に笑う)
■ふふふ(笑)。
アレクシス:......視覚が優れてること。で......、聴覚が素晴らしくて......、強い意志の力があるところも好き。......あらゆる悪に抵抗できることも。......それで......決断力もあるところ。
■なるほど。あなたはアバウト・グループのリーダーですもんね。
アレクシス:いや、違うよ。
■本当ですか、えっと、では。
アレクシス:17名いるメンバーのうちの1人でしかないよ。
■17名?
アル:ふふふ(笑)。
■ふふふ(笑)。了解しました。好きなダブステップのアーティストはいますか?
アル:(即答)スクリレックス(Skrillex)!
野田:ははははははは(爆笑)!
■やっぱり(笑)!
アル:明らかでしょ!
アレクシス:僕は世に出ているダブステップに関するあらゆるものが好きで、ずっとずっと後世まで残ればいいなと思ってる。僕にとっては、もっともオリジナルでもっとも高尚な音楽のフォーマットかな。
■はははは......!
アル:ふふふ(笑)。
■レディオヘッドについてはどう思いますか?
(沈黙、5秒)
アレクシス:表現豊かで、......思慮があって、......とても音楽が美しい。とくに歌手の声がね。彼にしか触れられない心の琴線というのものに届くいてくるし......。
アル:ふふふ(笑)。
■ふふふ(笑)。
アレクシス:で、......彼ら全員がレディング(Reading)出身というのに感心します。
アル:レディングという町にとても貢献してるよね。
(註:レディオヘッドはオックスフォード(Oxford)出身。ちなみに、ホット・チップのうちジョー・ゴッダード(Joe Goddard)はオックスフォード大学出身)
■チャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットのようなポリティカルなミュージシャンとの共演についてはどのような感想をもっていますか?
アル:(即答)やったことない。
アレクシス:ないね。
(一同爆笑)
■おおおお、了解、了解しました(笑)! では、とくにポリティカルなロバート・ワイアットのような人と共演したいと思いますか?
アレクシス:うーん、政治には興味がない。2012年以前に作られたどんな音楽にも興味がない。どれにもね。
アル:古臭いよね。
アレクシス:古くて霧のかかった音楽だよ。
アル:彼らには「黙れ、ジジイ」と言いたい。「黙ってればいいから。音楽やらなくていいから」と思うな。
(註:元ディス・ヒート≪This Hear≫として名高いチャールズ・ヘイワードは、ホット・チップの『One Life Stand』と『In Our Heads』にも参加しており、アバウト・グループのメンバーでもある。元ソフト・マシーン≪Soft Machine≫のロバート・ワイアットはホット・チップのリミックスEP『Made In The Dark』にヴォーカルで参加しており、ベルトラン・ブルガラ≪Bertrand Burgalat≫との曲"This Summer Night"をホット・チップがリミックスしている)
■おふたりは、自分たちのことをプロフェッショナルだと思いますか?
アレクシス:んー......。
(しばしの沈黙)
アル:あー...、超難しい! 脳みそが燃えてる(笑)!
アレクシス:うーん、僕たちは......見た感じ、いまだにとってもアマチュアっぽく見えると思う、やることなにもかもにおいてね。僕たち自身が僕たちは音楽で生計を立てていると思っていたとしても、ね。たぶん、......僕たちをプロフェッショナルだと思っているのは、世界で僕たち自身だけだよ。
アル:ほう。ふふふ(笑)。
■なるほど。
野田:ふふふ......(笑)。
アル:ふふふ......(笑)。
アレクシス:ふふふ......!(堪えきれず声を抑えて笑う)
野田:自分たちの音楽でいちばん伝えたくないことはなんですか?
アル:僕たちの感情とか、それと、欲望とか、うーん...。
アレクシス:楽しすぎる音楽は好きじゃないな。表現豊かな音楽も。
アル:そうだね......、退屈で現実に則していない音楽が好きかな、それと、うーん......。(笑)
アレクシス:僕はいつどんなときも、ダニエル・スパイサー(Daniel Spicer)という人がどんな音楽を作るかについて考えるんだ。彼は『Wire』誌のとても素敵な記者で......。
アル:はははははは(笑)!
アレクシス:彼は自分のバンドをもっていて、<Linkedin>というサイトに彼と記者として仕事をする機会を人びとに宣伝しているんだ。僕は、彼は世界でもっとも知的な人だと思うし......
■ぷっははははは(笑)。
アレクシス:狭量なんてことはまったくないし、自分勝手に人を非難しないし、出身で人を判断することをしないし、音楽を聴くことに本当に集中していて、とても公平で、僕はいつも......発言するときには彼のことを考えてるんだ。
アル:なにかを決断するときも考えてるよ。音楽だけでなくて、生き方そのものについて、彼に教わっているね。
アレクシス:彼の口髭は全然好きじゃないんだけどね。
(註:ダニエル・スパイサーによるアバウト・グループの1stアルバムのレヴュー。
「ドラムがすべて(all about the drums)」で、他は取るに足らないといった旨である)
(註:また、アレクシスは『Wire』誌に直接メールを送ったようで、「ダニエル・スパイサーに、嫌いな人をレヴューでイラつかせるのをやめるようアドヴァイスしてくれないか。彼はなによりもまず最初に、僕のかけている眼鏡の種類にイチャモンをつけた。ジョン・コクソン≪同じアバウト・グループのJohn Coxon≫が同じフレームの眼鏡を『Wire』でかけていても攻撃しないのにね。どんなに度を超して幼稚な雑誌なんだろうと思った」という言葉が『Wire』誌に掲載されている。
<https://www.exacteditions.com/read/the-wire/october-2011-9409/6/3/>
■雑誌やウェブで、ホット・チップは「nerd」(ナード)や「wonk」(ウォンク)という語で「オタク」と形容されがちですが。
アル:うん。
■その上で、"Night And Day"のようセクシュアルなことを歌うことについてはどう思っていますか。
アル:ははははは!
■ちょっとセクシュアルですよね。
アレクシス:どう思っているか......。セックスについて書くことは本当に居心地が悪いし、いつだって避けようとしてるよ。それに......。
アル:それに、「オタク」という形容についても、僕たちはそういう期待に応えてきて......、そのイメージでキャリアを積んできたんだ。「オタク」のイメージも僕らから発信し出して、それから記者もそう書き出して......、それで......僕らが考えてたのは、パラダイムというか......。
アレクシス:実際のところ、僕たちがたくさんの記者を雇ったんだ。デビューするにあたって、言葉を広めて。
アル:イメージを作るためにね。
アレクシス:ただ、ひとつ問題があって、記者たちは僕たちの最初の指令を読み違ってしまった。「Greek」(グリーク。ギリシャ人)という語から「r」を忘れてしまったんだよ。僕らはギリシャ人なんだけどもね。記者たちは僕らが「Geek」(ギーク。オタク/奇人/ダサい男)という言葉を発信したがってると思ってしまったんだ。それがマイナスにも働いてしまって、遂には僕らが5人の「Geek」によるバンドだと嘘をつかなくてはならなくなって......、つまりさ、今日、実際、大変な時期を過ごしてるんだよ。
アル:うん、そのとおり。次のアルバムはギリシャの経済状況について書くよ。書くべきだよね。
野田:はははは......笑えないんだけど!
■「Me and Ulysses」?
アル:そう、そういうこと(笑)!
アレクシス:ふふふふ......(笑)。
(註:ホット・チップがまだアレクシスとジョーのデュオだったデビュー・アルバム『Coming On Strong』では、ふたりのクレジットは「Ulysses and Sophocles」という古代ギリシャ人名の表記になっており、収録曲"Keep Fallin'"ではそのことを強調して歌っていた。)
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まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......
■ご存知のとおり。昨年に僕がロンドンに行っておふたりに会う前には、日本では地震がありました。
アル:はい。
■地震と津波によって原子力発電所がとても危険な状態になって、現在でも日本に住んでいて安全なのかどうかが実際にはわかりません。イギリスは最初に原発事故を経験している国ですよね。そこで、おふたりの原子力についての見解を教えてください。
アル:これで本当の意見を言えないのは大変なことになるよ!
野田:俺もそう思う。
アレクシス:ある性質があって......。
アル:了解、大丈夫だよ。
アレクシス:僕が思うにはね、まずインターネットの性質として、絶対に間違いがないということ。インターネットに表示されるあらゆることはすべて真実であるということ。つまり、今日、僕たちに与えられている答えというのは......、エラーが起こる余地はなくて、現に僕たちもこうやってインタヴューで完全に真実を答えていることからも、それがわかるでしょう。
野田:ははははは。
アレクシス:インターネットは情報を発信していくのに最適な場所だから、なんのリスクもない。つまり言えることとしては......、僕たちは、原子力についての見解もインターネットの皆さんに任せます。
野田:そうきたか、なるほどねえ。
アル:ふふふふ......(苦笑)。
アレクシス:政治家っぽいでしょ。
アル&野田:だははははは。
野田:でも、ここはルールを解除して続けましょう。
■オッケー。嘘ではなくて本当のことを。
アレクシス:でも僕たちがそのルールに則っているかってどうやってわかるの?
野田:逆襲されたね。
アレクシス:真実かどうか推測しなくちゃならないよ。
■了解しました。
アル:日本ではすべての原発は止めたのだっけ?
■残念なことに再稼動されようとしています(註:取材は6月22日)。
アル:ジェームス・ラヴロック(James Lovelock)という科学者(環境学者)がいて、彼は『ガイア理論(Gaia Theory)』を提唱して、書物を発表してるんだ。そこには、事故が起きた際の怖さや危険性があるのは承知しつつも、必要とされている電気を供給するには、他に代替エネルギーがない限りは基本的に原子力を利用しなければならないとある。イギリスだけでなくヨーロッパでも原子力利用に反対するムーヴメントはあるんだけど、まだ誰も十分な代替案を伴ってはいないんだよね。
もちろん、原子力利用だけが答えじゃないよ。エネルギー使用を抑えるということもできると思う。この問題はもっと議論を深めないとならないことだよね。たとえば、チェルノブイリにしても、人間には大変な悪影響を及ぼしたけども、事故現場の周りでは自然の生態系は問題なく生きていた。そこでジェームス・ラヴロックが面白い提案をしていて、放射性廃棄物をアマゾンの奥地に移せばいいと言ってたんだ。そこに住む生物は構わないだろうし、ジャングルにも全体的に影響はない。人間はそこには絶対行かないしね。これもひとつの意見だよね......とはいえど、こういった話はミュージシャンが発言していいとは思わないけど......。
(註:ジェームス・ラヴロックは、コーンウォール在住のイギリスの環境学者で、地球をひとつの生命体という視点からエコロジーを論じた1979年の『地球生命圏 ガイアの科学』は日本でも話題となった。彼の理論に対しては批判もあり、温暖化に関する諸説には本人も過ちを認めている)
■ふむ。
野田:原発に関して言えば、日本には地震があるうえに、民間マターでダメだったのに行政も良いほうに機能してないし、電気料は根上がるし......深刻な状況にあるんです。でも、いまのような意見は日本ではなかなか言えないことのひとつだよね。
アル:たしかに僕がこういうことを言うのは簡単なことであって、日本では困難だと思うんだ。事故の記憶はまだ鮮明だから。ひとまず事故の記憶から距離を置けるようになってから判断をしていくべきかもしれない。何が起きているのかを明らかにしなければいけないし、政治家が結論を下すのも、事故からいくらか年数を経る必要があると思うんだ。
■ふむ。
野田:政府もこの数年でどんどん酷い事態になっているし......。
アレクシス:大きい規模の話のなかで意味があるかわからないけども......、あ、これは嘘じゃないよ、僕たちは津波の被災者のためのチャリティーに参加しているんだ。
■ふむ。
アレクシス:映像作家のグレゴリー・ルード(Gregory Rood)が明確な態度をもっているバンドを集めたミュージック・ヴィデオのシリーズがあって、そのうち一組がホット・チップなんだ。僕たちの曲"Look At Where We Are"のヴィデオを日本のアニメ監督に作ってもらって、ヴァースの部分でマヘル・シャラル・ハシュ・バズ(Maher Shalal Hash Baz)という日本のバンドをフューチャリングしたものを、今年の後半に出せればいいなと思ってる。レコーディングは済んでいるのだけれども、詳細がどうなっているかは分からない。この活動が、基金であったり、被災者にとって何らかの意味のあるものとして機能してほしいなと思っています。
■なるほど。Thank you!
アル:いいよ!(日本語で)「どういたしまして」。
■どうしよう、何か聞きたいことあったのにな......忘れちゃったな......。
アル:ふふふふ(笑)。
■これも嘘でなくて結構です。アレクシスはギターが上手いと答えてくれました。アレクシスはライヴのステージ上でギターを弾く時に"Hold On"でエフェクトを深くかけて弦をかきむしりノイズのような音を出したり、動きの小さいフレーズのみを弾いたりしていますね。ギターに対してコンプレックスがあるのかなと以前から感じていました。新曲の"Flutes"では「I put a prucked string today(今日は、弦楽器をひとつ乗せよう)/Beside a note you taught me play(きみが教えてくれた音色に合わせて)/A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)/Never again...Never again...(二度とない......二度とない......)」という歌詞がありますが、これはどういう意味なのでしょうか。実際のギターに関する体験なのですか?
アレクシス:これはギターに関して歌っているわけではないんだ。"Flutes"で僕が考えていたのは、僕の大好きなザ・ビーチ・ボーイズの音楽への認識についてで、あ、これも嘘じゃないよ。
アル:あはははは(笑)!
アレクシス:『ペット・サウンズ』は、音楽に何個も新しいタンブラーを導入して新しいテクスチャーを導入したアルバムだと思うんだ。ブライアン・ウィルソンは、普通だったらポップ・ソングでは同時に鳴らさないような楽器を重ねて、それぞれに同じラインを演奏させて、レイヤーを作ったからね。そこで僕がさっきの歌詞で考えていたのは、reed instrument(簧楽器)の隣でバンジョーみたいな「prucked string」(撥弦楽器)を鳴らすことで......。僕の音楽部屋にはペダルの付いたハーモニウムを持っていて、それが「A wooden box breathes away(木の箱が大きく息づいている)」の意味なんだ。だから僕が歌っていたのは、ブライアン・ウィルソンが僕の隣で演奏を聴いていて、アレンジを教えてくれている画なんだ。「wooden box」(ハーモニウム)を「prucked string」(撥弦楽器)の隣で鳴らすんだ、みたいにね。
■なるほど。
アレクシス:でも、なんで「Never again...Never again...(二度とない......二度とない...)」と歌ったのかはまったく憶えていないな。この曲の歌詞はジョーが新しい音楽を送ってくれることにとても関係してて......、だからたぶん、こんなに音楽的にエキサイティングな瞬間は二度とないかもしれないということを言っていたんだと思う。提供者であるジョーからこの曲を受けとって、唯一無二なクリエイションの時間に興奮しすぎてたんだね。
■ふふふふ。
アレクシス:そして、ギターに関して......ギターを弾くのは本当にとても好きだよ。いいサウンドは作れると思うんだけど、演奏に自信がない楽器は他にもあるんだ。アルはとてもいいギタリストだし、ロブ(Rob Smoughton。ホット・チップに初期から関わっており、現在もライヴやレコーディングに参加している。ソロ・プロジェクトはGrovesnor)もいいよね。ただ、オーウェン(Owen Clarke)も僕と同じで、あらかじめ決められた演奏はできるけど、ナチュラルにギターを弾くということができないんだ。でも、アルはスティール・パンとかフリューゲル・ホルンもここ数年で練習をはじめだしてステージでも演奏しているし、自信があって得意な楽器だけでなく、熟知してなくて自信がないような楽器にも挑戦していくことがいいと思っているよ。
アル:そうだね。
■なるほど。ありがとうございます。
アル:ありがとう。
■もう終わりの時間ですね。では、最後にひとつ嘘をついてくれますか?
アル&アレクシス:いいよ!
(アレクシス、声を抑えて笑う)
■いままでの人生で、嘘をついたことはありますか?
アル:ハハ、ハハハハハハハー......!
(沈黙、10秒)
(野田、耐え切れず声を抑えて笑う)
アレクシス:僕は嘘ばかりついて生きてきた。真実を話したのは、6月22日の12:20(註:インタヴュー開始時間)からだけで、それまでの32年間は嘘まみれの人生だった。
アル:ははは......そうだね(笑)。
野田:ふふふふふ(満足そうに笑う)!
アレクシス:付け加えておくと、僕はジャーナリストに真実を語ったことはないよ。
野田:うまい。Thank you very much for nice answers!
■ありがとうございました!
アレクシス&アル:ありがとう!
■Please take a rest(どうぞゆっくり休んでください)。
アレクシス:ははは!