「KING」と一致するもの

弓J(S) - ele-king

夜明けの10曲 (2012.4.24)


1
Sei A - Frozen Flower(Youandewan Remix) - Turbo

2
Oak - Bedroom Community - Space Cadets

3
The 7th Plain - Shades Amaze(Album edit) - General Production

4
Hubble - Sand - Haknam

5
John Beltran - Soft Summer - Peacefrog

6
Dwig - You - Giegling

7
Gorje Hewek & Izhevski - Aureol - Pro-tez

8
James Ruskin - Lahaine(O/V/R Remix) - Tresor

9
Tar-Tar - All Alone - Dub Restaurant Communication

10
Roman Flugel - Sunny Side Up - Dial

Chart by Underground Gallery 2012.04.27 - ele-king

Shop Chart


1

Onomono

Onomono Onomono_ep_0506 (onomono.jp /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
過去2作品は、予約のみで完売してしまい、市場には殆ど出回らず、一部オークションでは既にプレミアさえ付き始めている、某有名トラックメイカーの変名テクノ・プロジェクト"onomono"待望の第三弾が遂にリリース!ALVA NOTOのような高周波が響くマイクロ・ミニマルを思わせるイントロから、一気に捻れたアシッド・シンセが走りだし、気がつけば"onomono"ワールドへ誘われているA面の「onomono_05」、ヘビーウェイトなイーブンキックに、金属的な響きを効かせたノイジーウワ音が巧みな変化を繰り返しながらドープに展開していくB面「onomono_06」の2トラックを収録。手も足も出ない完璧なミニマル・テクノ!今回も凄まじいです...。

2

MM/KM aka Mix Mup/Kassem Mosse

MM/KM aka Mix Mup/Kassem Mosse 6 Track Mini LP (The Trilogy Tapes/lp) / »COMMENT GET MUSIC
リリース前から、一部、耳の早いコアなファンの間で話題を集めていた注目ユニットのデビュー・ミニ・アルバムが、超少量入荷! UKのカセット・レーベル[The Trilogy Tapes]が贈るヴァイナル作品第三弾は、[Mikrodisko]などからリリース経歴を持つMIX MUPと、ベルリンの奇才KASSEM MOSSEによるユニットMM/KMのデビュー・ミニ・アルバム!ダブステップ /ベース・ミュージック、テクノ、ディープ・ハウスなど、全ての要素が混在する、実験的なアンダーグラウンドなディープ・トラック集!既に本国UKをはじめ、ヨーロッパでは入手困難な状況になっている、稀少な作品です。

3

Vinalog

Vinalog Lost Patterns (Relative /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
未だ、はっきりとした詳細がつかめない独[LiveJam Records]関連ですが、傘下レーベルの中でも一際個性を放っている、UGヘビープッシュのロウ・ハウス・レーベル[Relative]の新作は、レーベルの中心人物JOHN SWINGのプロジェクトVINALOGのNew12インチ! やっぱりVINALOGカッコイイです!別格ですね!ねっちょりとしつこいくらいにループされる、もっさりしたディスコ・グルーヴで、じわりじわりとハメ込んで行く、スモーキーなロウ・ハウスを展開したA1、ストレートなTR-909グルーヴにネジ曲がったベース・ラインとサイケデリックなウワ音でロックするA2、ジャズ・ピアノ・サンプルがループするB2など、かなり癖の強いハウス・作品が4トラック収録。今回も限定盤です。再入荷が難しいレーベルですので、気になる方はお早めに

4

Infiniti aka Juan Atkins

Infiniti aka Juan Atkins The Remixes - Part 1 (Tresor /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
TV VICTOR / THOMAS FEHLMANNリミックス! 90年代初頭から、常に最前線を走る、老舗中の老舗レーベル、ベルリンの 名門[Tresor]、記念すべき250番(凄い!)を記念した、スペシャル企画は、デトロイト・テクノのオリジネーター、JUAN ATKINSがINFINITI名義にてリリースした過去作品のりミックス! 第一弾となる今作は、98年に[Tresor]からリリースされたアルバム『Skynet』に収録されていた楽曲「Walking On Water」と「2Thought Process」の2曲を、クラウトロック・バンドNO ZEN ORCHESTRAとして活動してた事でも知られる、ジャーマン・テクノ / エレクトリック・ミュージック界の大ベテラン、UDO HEITFELD aka TV VICTORと、3MB名義でJUANとのコラボも行った事がある大御所THOMAS FEHLMANNがリミックス!

5

BMG & Derek Plaslaiko

BMG & Derek Plaslaiko Is Your Mother Home? (Interdimensional Transmissions /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
90年代から活動するデトロイトのカルト・エレクトロ・ユニットECTOMORPHが主催する、[Interdimensional Transmissions]の新作は、そのECTOMORPHのメンバーでもあるBMGと、デトロイトのローカルDJ DEREK PLASLAIKOとのコラボレーション。 ここ最近は、エレクトロから路線変更して、面白いリリースが増えてきていた[Interdimensional Transmissions]レーベルですが、今回も是非注目して頂きたい、オールド・スクーリーなテクノ・トラックを披露しています。ローランドの各種リズムマシーンのむき出しのビートを軸に、繊細な電子音が絡んだミニマル・テクノ集!ドイツのTOBIAS.辺りのアナログ・テクノが好きな方なら間違いありませんよ!

6

Tom Trago

Tom Trago Use Me Again (Rush Hour /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースのディスコ・キラーをCARL CRAIGが再構築!CARL CRAIG本人が以前からプレイしていた、あのヴァージョンが待望の12インチ・カット! ここ数年、[Rush Hour]がフックアップしているアムスの新世代アーティストTOM TRAGOが、2010年にリリースした12インチ「Voyage Direct - Live Takes」に収録され、CARL CRAIG本人も以前からプレイしていた、ブラックディスコ/ビートダウン・チューン「Use Me Again」が、そのCARL CRAIGの手により再構築されて12インチ化! リリース当時から現在まで、CARL CRAIGやRADIOSLAVEなどが、ことあるごとにプレイし続けているディスコ・ハウス「Use Me Again」、スリリングなストリングスとアップリフティングなディスコ・グルーヴが超アガるキラー・チューン。この曲をCARL CRAIGが、強烈なエフェクトを効かせ、空間をねじ曲げた、ドラッギーなディスコ・ハウスへリエディット!マジで最高ですよ!

7

Idjut Boys

Idjut Boys One For Kenny (Smalltown Supersound /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
LINDSTROM、MUNGOLIAN JETSET、TODD TERJEなど、重要アーティスト達がリリースしてきた、名門[Smalltown Supersound]の新作は、遂に満を持して大御所IDJUT BOYSが登場! 昨年日本で先行リリースされ話題となった、IDJUT BOYSキャリア初のオリジナル・アルバム「Cellar Door」より、昨年惜しくも他界してしまった、UKのKENNY HAWKESに捧げた楽曲「One For Kenny」が待望の12インチ化。ビートダウン風のブギー・ダブ・ディスコ・グルーブに、盟友 PETE Zによる、サイケ & ダヴィーなシンセ、BUGGE WESSELOFTによる可憐な鍵盤が絡みあう、めちゃくちゃカッコ良い、ミッド・ディスコ・チューン!アルバムの中でも一際人気の高い1曲だっただけに今回のアナログ・カットが嬉しいという方も多くいることでしょー。しかも 45回転、重量盤プレスで音も良し。DJのみならずとも、コレは要チェックです!全世界500枚限定!

8

Pepe Bradock

Pepe Bradock Imbroglios 1/4 (Atavisme /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
フランスを代表するアーティスト、ビートダウンを基調にしながらも、規格を超えたオリジナルなハウス・サウンドで大きな支持を得ているPEPE BRADOCK が、前作 「Path Of Most Resistance」以来、約3年ぶりとなる新作をリリース!今後、パート4までリリースが予定されている「Imbroglios」シリーズの第一弾。ビートダウン的なムードを持ちつつも、より実験的でアバンギャルドな雰囲気があって、奇才ならではのディープ・ハウス作品が4曲収録。ジャジーなサンプルを巧みに操った「Katoucha?」がイチオシですが、全曲濃いですよ!流石PEPE BRADOCK!

9

V.A

V.A I'M Starting To Feel Okay Vol. 5 Pt. 1 (Endless Flight /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
東京[Mule Muziq]のサブレーべル [Endless Flight]から、毎年恒例となっているレーベル・コンピレーション・シリーズ「I'm Starting To Feel Okay」第5弾からの12インチ・カット! ここで特筆すべきは、文句なしにMOVE D!リバース・フレーズを巧みに交えた、ミニマル・ディスコ作品で、テンションやグルーヴ、展開や鳴り、全てが完璧!この作品だけの為に買っても損はありませんよ!保証します!その他にもアムステルダムのニュースターJUJU & JORDASHによる、マッド&ピプノなアシッド・テクノや、TERRE THAEMLITZ aka DJ SPRINKLESによる淡い色彩感覚とライトなグルーヴが素晴らしいフローティング・ハウスが収録されていて、全曲◎な内容!これはお見逃しなく!オススメです。

10

Madteo / Shake Shakir

Madteo / Shake Shakir Kassem Mosse / Marcellus Pittman Rmx (Meakusma /12inch) / »COMMENT GET MUSIC
ANTHONY "Shake" SHAKIR / KASSEM MOSSE / MARCELLUS PITTMANリミックス! 先日JOY ORBISONが新レーベルからリリースされたばかりの最新作「Bugler Gold Pt.1」が、UKを皮切りに欧州で大きな話題を集めている、N.Yはブルックリンの奇才MADTEOの楽曲を、デトロイトの大ベテランTHONY "Shake" SHAKIR、[Workshop]からのリリースでお馴染みのベルリナーKASSEM MOSSE、そして、THEO PARRISHやMOODYMANNと共に、3CHAIRSのメンバーとしてもお馴染みのMARCELLUS PITTMANがリミックス!

peechboy (CPY, SWC) - ele-king

最近のおきにいり


1
Boddika & Joy O - Mercy - Sunklowun

2
Yacht - I Walked Alone (Jacques Renault Remix) (Instrumental) - DFA

3
Holy Ghost! - It's Not Over (Dimitri From Paris EroDiscoMix) - DFA

4
嫁入りランド - 嫁っこの平日 - (レーベルなし)

5
Andres - New For U - La Vida

6
The Layabouts feat. Portia Monique - Do Better (The Layabouts Vocal Mix) - Reel People Music

7
Pete Herbert & Golden Fleece - Ivory Waves - Space Walker

8
F3 - Lonely Land - Modular

9
Nicholas - Love Message - Home Taping Is Killing Music

10
きゃりーぱみゅぱみゅ - ちょうどいいの(extended mix) - ワーナーミュージック・ジャパン

Grouper、青葉市子、ILLUHA、en、YusukeDate - ele-king

 午後5時半、曇の日の弱い光が臨済宗のお寺の本堂の障子越しからぼやっとはいってくる。畳の上の黒い影になった100人ほどの人たちは、本陣をぐるりと囲んでいる。竜が描かれている天井の隅にある弱い電灯が照らされているアメリカのポートランドからやって来た女性は、980円ほどで売られているようなカセットテレコが数台突っ込まれたアナログ・ミキサーのフェーダーを操作しながら、膝に抱えたギターを鳴らし、歌っている。時折彼女は、テレコのなかのカセットテープを入れ替える。そのときの「がちゃ」という音は、彼女の演奏する音楽よりも音量が大きいかもしれない。本陣の左右、ミキサーの前にふたつ、そして本堂のいちばん隅の左右にもスピーカーがある。その素晴らしく高性能なPAから流れるのは控えめだが耳と精神をを虜にする音......この風景の脈絡のなさは禅的とも言えるだろう。が、たしか我々は、その日の昼の1時からはじまったライヴにおいて、ある種の問答のなかにいた。我々はなぜ音楽を聴くのだろうか......そして、ここには禅的な答えがある。聴きたいから聴くのだ。聴いたら救われるとか、気持ちよくなるとか、自己肯定できるとか、自己啓発とか、頭良くなるとか、嬉しくなるとか、とにかくそうした期待があって聴くのではない。ただ聴きたいからただ聴く。そう、只管打坐である。

 禅宗は、欧米のオルタナティヴな文化においてつねに大きな影響のひとつとしてある。ヒッピー、フルクサス、ミニマル・ミュージック、あるいはレナード・コーエン......僕が好きな禅僧は一休宗純だ。戒律をやぶりまくり、生涯セックスし続けた風狂なる精神は、日本におけるアナキストの姿だと思っている。まあ、それはともかく、僕は会場である養源寺に到着するまでずいぶんと迷った。1時間もあれば着くだろうと高をくくって家を11時半に出たのだけれど、会場は商業音楽施設ではない。結局、こういときはiphoneなどのようなインチキな道具は役に立たず、八百屋の人やお店の人に尋ねるのがいちばん正確に場所に着ける。ふたり、3人と訊いて、ようやく僕は辿り着けた。
 谷中、そして団子坂を往復しながら、着いたのはYusukeDateのライヴの途中だった。1時を少し過ぎたばかりだと言うのに、本堂の1/3は人で埋まっていた。
 YusukeDateの弾き語りは、アンビエント・フォークと呼ぶに相応しいものだった。アンビエント・フォーク? 安易な言葉に思われるかもしれないが、歌は意味を捨て音となり、ギターは伴奏ではなく音となる。それは、ここ数年のフォークの新しい感性に思える。僕は畳に座りながら、少しずつその場のアトモスフィアにチューニングして、そして次のenのライヴのときにはほぼ完璧にチューニングできた。〈ルート・ストラタ〉を拠点にするふたりのアメリカ人によるこのプロジェクトは、ひとりが日本語が堪能で、日本語の軽い挨拶からはじまった。
 enのひとりは日本の琴の前に座り、もうひとりは経机の上のミキサーの前に座っている。いくつかのギターのエフェクター、そしてミキサーの上には数台のカセットテレコが見える。琴の音が響くなか、無調の音響が広がる。畳の上には子連れの姿も見え、子供はすやすやと眠っている。曲の後半では、カセットテレコを揺さぶり、音の揺れを創出する(なるほど、だ)。また、カセットテレコについたピッチコントロールを動かしながら、変化を与え、曲のクライマックスへと展開する。

 セットチェンジのあいだ、僕は本堂の下の階で飲み物を売っている金太郎姿の青年からビールを買って、次に備える。1杯300円のビールは良心的な価格......なんてものではない。この日のコンサートへの愛、音楽集会への愛を感じる。

 次に出てきたILLUHAは、今回の主宰者というかキューレター的な役目の、伊達伯欣とコーリー・フラーのふたりによるユニットで、すでにアルバムを出している。伊達は、古い、捨てられていたという足踏みオルガンの前に座って、フラーはギターを抱えながら、ミキサーの前に鎮座する。ミュージック・コクレートすなわち具体音──このときはドアがきしむ音だったが──が静寂のなかを流れると、ILLUHAのライヴはゆっくりをはじまる。オルガンの音が重なり、やがて、完璧なドローンへと展開する。
 enとも似ているが、具体音を活かしたパフォーマンスは彼らのそのときの面白さで、そしてメロウなギターの残響音そしてハウリングは、ドローンはラ・モンテ・ヤング的な瞑想状態を今日的な電子のさざ波、グラハム・ランブキンらの漂流のなかへとつないでいる。
 enのライヴにも感じたことだが、ひと昔前(IDMから発展した頃)のドローンは、猫背の男がノートパソコンを睨めているような、お決まりのパターンだった。が、この日はenもILLUHAもアナログ・ミキサーを使い、そして、パソコンもどこかで使っていたのかしれないが、ついついiPadを表に出してしまうような味気ないものとは違っていた。デジタルやソフトウェアに頼らず、そしてアイデアでもって演奏する姿は、これからのアンビエント/ドローンにおいてひとつの基準になるかもしれない。
 また、こうした「静けさ」を主張する音楽において、ほとんど満員と言えるほどの若いリスナーが集まったことは注目に値する。「ライヴ中に寝てしまったよ」とは通常のライヴにおけるけなし言葉だが、この日のライヴにおいては「眠たくなる」ことは賞賛の言葉だった。本堂という木の建造物における音の響き、畳の上での音楽体験という環境や条件も、この新しいアンビエントの魅力を浮彫にしていた。

 青葉市子は、その評判が納得できる演奏、そして佇まいだった。本堂の障子の外から子供の泣き声が聞こえると、彼女はその"音"を聞き逃さず、「あ、泣いている」と言う。その瞬間、我々は、そこでジョン・ケージのその場で聞こえる音も音楽であるというコンセプトを思い出す。彼女は、オーソドックスなフォーク・スタイルだが、しかし、彼女の素晴らしいフィンガー・ピッキングによる音色は、音としての豊かさを思わせる。曲が終わるごとに、まだ20歳そこそこの若い彼女は、「足を伸ばしたり、リラックスして聴いてくださいね」とか「空気入れ替えませんか」とか、気遣いを見せながら、「こういう手作りのコンサートでいいですね」と素朴な感想を言った。その通りだと僕も思った。

 リズ・ハリス(グルーパー)は、大前机の上の、でっかいアナログ・ミキサーの前にテレキャスターを持って胡床に座った。黒いパーカー、黒いジーンズ、そして足下にはペダル、エフェクター(ボーズのディレイ、オーヴァードライヴなど)がある。それまで出演してきた誰とも違って、何の挨拶もなく、何台かのテレコに何本かのカセットテープを入れ、それぞれ音を出す。リハーサルかと思いきや、音は終わらず、そのまま、いつの間にか、彼女の曇りガラスのような独特の音響が本堂のなかを包み込む。前触れもなく、それははじまっていた。
 マニュピレートされたテープ音楽が流れるなか、彼女はギターを弾いて、音をサンプリング・ループさせ、歌とも言えない歌を重ねる。ギターの残響音をループさせると、彼女はギターを置いて、そしてテープを入れ替え、ミキシングに集中する。いつからはじまり、そしていつ終わったのかわからないようにリズ・ハリスは音量をゆっくり下げる......。しばし沈黙。マイクに近づき、たったひと言「サンクス」(それがこの日、公に彼女が話した唯一の言葉だった)......大きな拍手。

 この日のライヴは、この賑やかな東京においては、本当に小さなものなのだろう。ハイプとは1万光年離れたささやかな音楽会だ。が、このささやかさには、滅多お目にかかれない豊かな静穏があった。そして、いま、音楽シーンにもっとも求めらていることが凝縮されていたように思えた。300円のビール、美味しい!
 この日は、2000円で、お客さんをふくめ誰でも参加自由な打ち上げもあった。青葉市子さんは、自ら率先して、料理を運んでいた(若いのにしっかりした方だ)。こうした音楽集会のあり方は、最初期のクラブ/レイヴ・カルチャーを思わせる。
 なお、グルーパーは、日本横断中。名古屋~京都~金沢、そして都内では4/30に原宿の〈VACANT〉でもある。その日は、CuusheやSapphire Slowsも出演。たぶん、まだ間に合うよ。
 最後に、蛇足ながら、ライヴが終了後、リズ・ハリスに30分ほど取材することができました。結果は、次号の紙ele-kingで。

ele-king presents Mark McGuire Japan Tour 2012 !! - ele-king

 「すべてを聴き逃さないようにヘッドフォンで聴いてください」とは『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』に記されていた言葉だが、ライヴにおいてすべてを聴き逃さないために、マーク・マッガイアはどのような演奏をやってみせてくれるだろうか。ele-king読者諸氏にはおなじみ、クリーヴランドの電子音響トリオ、エメラルズのギタリストであるマーク・マグワイヤが来日する。
 先日もインナー・チューブ名義によるサーフ調のクラウトロック、『インナー・チューブ』も記憶に新しい......(てか、BIG LOVEとMEDITATIONにしか入荷してなかったんじゃない?)が、ソロ名義では昨年は「入門編」と銘打たれた『ア・ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・マーク・マッガイア』や何枚リリースしようがみずみずしい香気あふれる『ゲット・ロスト』がシーンにあたえたインパクトも大きく、日本での注目度もきわめて高くなった。インディ・シーンにおいてはリスナーからもプレイヤーからもその動向が緊張感をもって意識される存在である。
 寝ても覚めてもギターを抱え、カセットに7"にCD-Rとメディアを選ばず大量の音源をリリースしつづけるこの熱情的なアーティストの演奏をぜひとも体験したい。
 東京公演はミックスCD『サムシング・イン・ジ・エア』が話題を呼びまくっているコンピューマのDJも楽しめる。

東京公演
2012年5月9日(水) 代官山UNIT 03-5459-8630
OPEN : 18:30
START : 19:30
CHARGE : ADV 3,500yen (ドリンク代別)
GUEST : Shinji Masuko (DMBQ / Boredoms) and more
※お客様に心地よい空間でライヴを楽しんでいただくよう
チケットは400枚限定とさせていただきます
チケットぴあ 0570-02-9999 [P] 165-735
ローソン[L] 72923
e+

STORE
[渋谷] diskunion 渋谷中古センター
[新宿] diskunion 新宿本館6F
[池袋] diskunion 池袋店
[吉祥寺] diskunion 吉祥寺店
[御茶ノ水] diskunion 御茶ノ水店


大阪公演
2012年5月10日(木) 東心斎橋CONPASS 06-6243-1666
OPEN 18:00
START 19:00
CHARGE:ADV. 3,500yen (ドリンク別)
OPENING ACT:Vampillia
ローソン[L] 72923
e+
More Info: CONPASS https://conpass.jp/

主催: ele-king 企画 / 制作 : root & branch, 代官山UNIT
協力: Inpartmaint inc., P-Vine Records

Chart by JET SET 2012.04.24 - ele-king

Shop Chart


1

Ogre You Asshole

Ogre You Asshole Dope (Vap / Jet Set) »COMMENT GET MUSIC
2011年にリリースされたアルバム『Homely』には未収録となる、セルフ・カヴァーやリミックス、話題のライヴ・テイクを収録。

2

Tam Tam

Tam Tam Dry Ride (Mao / Jet Set) »COMMENT GET MUSIC
あらかじめ決められた恋人たちへ等が在籍したレーベル、maoが全力で送り出す4人組ヤング・ダブ・バンド。フィッシュマンズ、Little Tempoの活動で知られるHakase-Sunがプロデュースを手掛けた、ファースト・12インチが登場です!!

3

The Eskargot Miles

The Eskargot Miles Evening News / A Night Piece (Wood Luck / Jet Set) »COMMENT GET MUSIC
活動10周年を迎えたオーセンティック・スカ・バンド、The Eskargot Miles。前作『Tour Of Jamaica』超え確実(!?)の強力Ep!新境地ともいえるb面収録のレイドバック・チューン、"A Night Piece"も完璧です!

4

Tom Trago

Tom Trago Use Me Again (Rush Hour Voyage Direct) »COMMENT GET MUSIC
Awanto 3とのユニットAlfabetも絶好調のダッチ・ハウス気鋭Tom Tragoが2010年にリリースした、"Voyage Direct"シリーズ屈指の名作「Use Me Again」のニュー・ミックス2種をカップリング。

5

Eric D. & Justin V.

Eric D. & Justin V. Live In Los Angeles (Ene) »COMMENT GET MUSIC
Eric Duncanが主宰する大人気エディット・レーベル、KeepIt Cheapの第四弾としてリリースされた12インチ「So Good Feeling / Versions」のリリース・パーティーからの一コマをCDカット!自身のキラー・トラックや未発表エディッツなどを次々に繰りだし、絶妙なミキシング/エフェクトに飛ばされること必至の77分を越えるミックスを収録。現場のグッド・ヴァイヴスまでもがダイレクトに伝わってくるかのような珠玉の1枚です。

6

DJ Harvey

DJ Harvey Xland Records Presents Xmix 01 (Xland) »COMMENT GET MUSIC
大好評のLocussolusプロジェクトを経てのリリースとなる本作は、間違いなく今後のダンス・ミュージック史において語り継がれるであろう傑作ミックスを収録。

7

Calm Presents K.F.

Calm Presents K.F. From Dusk Till Dawn (Music Conception) »COMMENT GET MUSIC
Calmがダンス・ミュージックへアプローチしたプロジェクト、Calm Presents K.F.が7年ぶりとなるアルバムをリリース。

8

Battles

Battles Dross Glop 4 (Warp) »COMMENT GET MUSIC
Hyperdub主宰Kode 9リミックス搭載の第2弾も即完売、ご存じポスト・ポスト・ロック大人気ユニットBattles『Gloss Drop』の超限定リミキシーズの第4弾が登場です!!

9

DJ Food

DJ Food Illectrik Hoax (Ninja Tune) »COMMENT GET MUSIC
アンセム"Papua New Guinea"でお馴染みの重鎮デュオFuture Sound Of Londonの変名プロジェクトThe Amorphous Androgynousによるリミックスとコラボ・ワークスです!!

10

Teddiedrum

Teddiedrum Miami / Odd Lovers (Smoking Crab) »COMMENT GET MUSIC
Das Pop + Phoenixなベルジャン・デュオ、Teddiedrumの限定10インチ!!キラキラとまぶしいシンセと甘酸っぱいメロディが乱反射する超キラー「Odd Lovers」を絶対お見逃しなく。

Battles - ele-king

つまり識は「テクノ」にへと 文:三田 格

Battles
Dloss Glop

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 「踊れるサムラ・ママス・マンナ」。それがバトルズの正体だろう。SMMは70年代にスウェーデンで結成されたプログレッシヴ・ロックの4人組で、例によって解散→再結成を経てゼロ年代からはドラムスにルインズの吉田達也が参加している。悲しいかなバトルズは超絶技巧だけでなく、ユーモアのセンスまでSMMを模倣していて、オリジナルといえる部分はレイヴ・カルチャーからのフィードバックと音質ぐらいしか見当たらない。疑う方はとりあえずユーチューブをどうぞ→
https://www.youtube.com/watch?v=yqSmqh-LdIkhttps://www.youtube.com/watch?v=ZYf7qO9_MV8https://www.youtube.com/watch?v=jkWL1lOi1Hg、etc...

 ......といったことを割り引いても、昨年の『グロス・ドロップ』はとても楽しいアルバムだった。バーズやP-ファンクにレイヴ・カルチャーを掛け合わせたらプライマル・スクリームで弾けまくったように、SMMにレイヴ・カルチャーを掛け合わせてみたら、思ったよりも高いポテンシャルが引き出された。そういうことではないだろうか。おそらくはまだロックにもそうした金鉱は眠っているはずである。テクノやハウスだって、どう考えてもそれ自体では頭打ちである。何かを吸収する必要には迫られている。アシッド・ハウス前夜にもどれだけのレア・グルーヴが掘り返されたことか。そう、アレッサンドロ・アレッサンドローニやブルーノ・メンニーなんて、もはや誰も覚えちゃいねえ(つーか、チン↑ポムなんてザ・KLFのことも知らなかったし......)。ためしに誰かブルース・スプリングスティーンにレイヴ・カルチャーを掛け合わせてみたらどうだろう......なんて。

 本題はそのリミックス・アルバム。人選がまずはあまりにも渋い。しかも、様々なジャンルから12人が寄ってたかってリミックスしまくっているにもかかわらず、おそろしいほど全体に統一感がある。シャバズ・パレス(元ディゲブル・プラネッツ)の次にコード9だし、Qのクラスターからギャング・ギャング・ダンスなどという展開もある。しかも、そこから続くのがハドスン・モーホークとは。全員がバトルズに屈したのでなければ、セルフ・プロデュースの能力が異常に高いとしか思えない。

 オープニングからいきなりブラジルのガイ・ボラットーが情緒過多のミニマル・テクノ。マカロニ・ウエスターンに聴こえてしまうギターがその原因だろう。ミニマルの文脈を引き継いだシューゲイザー・テクノのザ・フィールドは、一転してヒプノティックなテック-ハウス仕上げ。続いてドラマ性に揺り戻すようにしてヒップホップを2連発。このところ壊疽=ギャングルネとしての活動が目立っていたアルケミスツはソロで90年代末に流行ったダンス・ノイズ・テラー風かと思えば、昨年、一気にダブ・ホップのホープに躍り出たシャバズ・パラスは彼の作風に染め上げただけで最もいい仕事をしたといえる。ダブステップからUKガラージに乗り換えつつあるコード9はそれをまたコミカルに軌道修正し、2年前に"エル・マー"のヒットを飛ばしたサイレント・サーヴァントやラスター・ノートンからカンディング・レイはそれぞれのスタイルでダブ・テクノに変換と、いささかテクノの比重が高すぎる気も。これは自分たちにできないことをオファーしているのか、それとも自分たちが次にやりたいことを先行させているのか。いずれにしろ、その結果はユーモアの低下とリズムの単調さを招き、チルアウト傾向ないしはリスニング志向を強めることになった(クラスターの起用はまさにその象徴?)。

 後半で最大の聴きどころは、珍しく同業のパット・マホーニーを起用した"マイ・マシーン"で、シンプルなリズム・ボックスに絡むゲイリー・ニューマンのヴォーカルは最盛期の気持ち悪さを思わさせるインパクト。ジャーマン・トランスにありがちなリズム・パターンなのに、ロック・ミュージックとして聴かせてしまう手腕はかなりのもので、思わず、ほかにはどんなリミックスを手掛けているのだろうと調べてみたら、まったくデータが見つからなかった(これが初仕事?)。エンディングはヤマタカ・アイで、トライバルとモンドの乱れ打ちはこの人ならでは。ダイナミズムよりもリスニング性を優先したことで最後に置くしかなかったのかもしれないけれど、それはちょっと消極的な判断で、僕ならギャング・ギャング・ダンスとハドスン・モーホークのあいだに置いただろう(バトルズの意識が「テクノ」に向かっている証拠ではないか)。

文:三田 格

»Next 松村正人

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そして『グロス・ドロップ』の完全なる分解 文:松村正人

Battles
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 アンダーグラウンドのスーパーバンドから『ミラード』で転身したバトルズはタイヨンダイ・ブラクストンは抜けたが、『グロス・ドロップ』で前作をさらに発展させ、そこでは初期のハードコアを構築し直した鋭利な、しかし同時に鈍器のようだったマス・ロックの風情は退き、かわりにポップな人なつこい音が顔を出した。強面だった数年間からは考えられない柔和な表情をしていたが、いまのパブリック・イメージはむしろこっちである。それまでのいくらかすすけたモノトーンはツヤめいた内蔵の色に塗りこめられた。ジャケットがそれを暗示する。有機的であり抽象的であり生理的でもある。私は以前にレヴューを書いてから聴いていなかった『グロス・ドロップ』を、『ドロス・グロップ』を書くために、しばらくぶりに苦労してひっぱりだして聴いたが、おもしろかった。たしかここに書いたレヴューは最初おもしろくないと思ったと書いたと思ったが、聴き直したらやはりおもしろくないことはなかった。私は『ドロス・グロップ』を先に聴いて、原曲をたしかめるために聴いたからかちがいがおもしろさを後押ししたが、オリジナルとリミックスの幸福な相乗効果がうまれたのは、前者が音で語ることに腐心したアルバムであったことに多くを負っている。そこには内面は投影されていない。語るのはあくまで音楽であり、バトルズの連中ではない。それに任せる。タイヨンダイというアイコニックな人材を欠いた逆境がある種のスプリングボードとなり、バンドを、音楽の生成を何よりも彼ら自身がたのしんでいる(たのしまざるを得ない)、陽性の作品性へ追いこんだのだと穿つこともできなくはないが、この結果はいってみれば、往時のダンスカルチャーの匿名性を思わせるものであり、その意味で、リミックスという行為との親和性はいうまでもなかった。
 
 アルバムは先行した4枚の12インチを若い順に並べた。テクノ~ヒップホップ~(ポスト)ダブステップ~ミニマル~ワールド~ディスコパンクなど、ゼロ年代以降のダンスミュージックを巡礼する構成で、総花的なつくりでもあるが、散漫な印象を与えないのは、カテゴリーの遍歴そのものが音楽を前のめりにさせるからだろう。サンパウロのギ・ボラットとストックホルムのザ・フィールド、〈コンパクト〉勢のループは『ミラード』までのバトルズの交響的な――つまり縦軸の――ループを横倒しにしたように、渦を巻き滞留するようでありながら、前方へジワジワと音楽を煽り、ヒップホップ/ブレイクビーツ~2ステップ/UKファンキーのブロックへバトンタッチすることでアルバムのタイムラインは最初の山と谷(もちろん逆でもいい)を経過する。山はすくなくともあとふたつはあるようである。3つかな?と思うひともいるであろう。それはどっちでもいいが、この高低差は現行のダンスカルチャーの地形図であり、すくなくともリミキサーたちは所属するジャンルに奉仕する職人的な仕事に徹することで、楽曲を解体するだけでなく、原曲とリミックスとの間の、あるいはトラックごとの偏差が彼らの特質をあぶりだしもする。なんであれ解釈が生じる場合、ズレがうまれる。その隙間を広げるか埋めるかが、音を仲立ちにした対話では焦眉の問題になるが、原曲はどうあがいても完全な姿で回帰しない。このあたりまえのところにうまみがある。
 私は先に職人的な仕事と書いたが、解釈はいずれも大胆である。とくにクラスター、ブライアン・デグロウ(ギャング・ギャング・ダンス)、ハドソン・モホークのブロックは原作を再定義したというか、たとえばデグロウのリミックスは原曲のリフの音色が喚起するリズムのつっかかりをビートに置き直し『グロス・ドロップ』でいちばんポップでカラフルだった"Ice Cream"をデジタル・クンビア的な疑似アーシーな場所にひきつけることで、スラップスティックかつフェイク・トロピカリアとでも呼ぶべき原作のムードを二重に畳みこんでいく。ハドソン・モホークの着眼点もたぶん同じで、クラスターの作家性とはちがう――しかしそれはこのアルバムのアクセントでもある――が、デグロウ=モホークの視点はバトルズのそれとも同期し、元ネタの笑いをトレースし、さらに展開する、難儀な作業を的確にやっている。もっともそのユーモアはモテンィ・パイソンがミンストレル・ショーを実演するような、ねじれた、くすぶった笑いではなく、現代的な抑制が利いたものなのだが、であるからこそ、LCDサウンドシステムのドラマー、パット・マホーニーのディスコ・パンク調の"My Machine"という最後の山だか谷だかのあとのヤマンタカ・アイの、原作にひきつづきシンガリをつとめた"Sundome"で『グロス・ドロップ』は完全に分解したように思える。そして私は聴き終えたあと、ヘア・スタイリスティックスが聴きたくなった。

文:松村正人

KABUTO (LAIR/FACTOR) - ele-king

LAIR CHART


1
Amir Alexander - Violence - Vanguard Sound

2
Gemini - Revolution EP - NRK

3
BAAZ - Carbon Hair - Slices Of Life

4
Omar-S / Patrik Sjeren - 998 - FXHE

5
Da Sampla - M3 Sessions - M3

6
Pierre LX - Hypothesis (Big Strick Remix) - Initial Cuts

7
Ryan Elliott - Kicking Up - Spectral

8
FRANCO CINELLI - LATIN MORPH - Ilian Tape

9
Two armadillos - Golden age thinking Part 1 - Two armadillos

10
Ricardo Miranda - Round Plastic Archives - Bosconi

interview with Eli Walks - ele-king


eli walks
parallel

MOTION±

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 ここ1~2年は、なんだろうか......、日本の若い世代からエレクトロニック・ミュージックの作品が出てきている......いや、ずっと出てきているのに僕が気がついていなかっただけなのだろうけれど、とにかく顕在化しているのはたしか。15年ぶりだ。作っている人はいまこの波に乗ろう。フラグメントの初めてのインスト・アルバムとほぼ同時期にリリースされたイーライ・ウォークスのデビュー・アルバム『パラレル』もこの機運を印象づけている。
 アメリカ人の父親と日本人の母親のあいだに育ったイーライ・ウォークスは......、なかなか気持ちの良さそうな青年で、そのドリーミーな佇まいは彼の音楽にも繋がっているようだ。イーライ・ウォークスは、『アンビエント・ワークス』時代のエイフェックス・ツイン、『ジオガディ』の頃のボーズ・オブ・カナダ......そしてゼロ年代の〈ブレインフィーダー〉の申し子だ。ビートの太さと遊び心あるチョップからは「フライング・ロータス以降」を感じさせ、ロマンティックなハーモニーや美しい音色、そして風景がゆっくり変化していくような展開からはボーズ・オブ・カナダを彷彿させる。とはいえ、当然のことながら、彼の音楽は、ラスティなんかとも似た、モダンな質感を持っている。音色的にも、そして伸びと伸びとしているところとか。

沖縄にいたころは父親が米軍基地で働いていて、基地の外で日本人が「出てけ」って運動してたりするのを目の当たりにしてた。母親は日本人だから、僕はほんとにどうしたらいいんだろうって考えざるをえなくて......。

『パラレル』に関していろんな説明がありますよね、IDMとかエレクトロニカとか......三田格は「フライング・ロータス以降」と解釈してましたけれど、ご自身としてはどのように思われてますか?

EW:たしかに自分としてはいろんなところからインスピレーションを受けていると思っているよ。たとえばむかしはメタルをやってたり、ギターを弾いてたりしたしね。けれど直接的な影響といえばやっぱりIDMは自分のルーツだと言えるかな。もちろんフライング・ロータスが出た〈ロウ・エンド・セオリー〉もよく通ったし。

フライング・ロータスとエイフェックス・ツインというふたつの選択があって強いてひとつを選ぶとしたら、エイフェックス・ツイン?

EW:イエス! その通りだね。

まずは、あなた自身が音楽制作に向かうことになった経緯をおききしたいんですが。

EW:いい質問だよね! 昔はロック・ミュージックをプロデュースしてたんだけど、そこでは少しエレクトロニックな音のエフェクトが欲しいってなったときに、制作の過程の最後で僕とは違う人間を入れてやらなきゃいけなかったりしたんだ。けれどその違う人の味が自分の音に乗っかって、自分の音を変えていってしまうことがすごくいやだった。曲はすべて自分でコントロールしたい。だからすぐにコンピュータを買って、自分で音楽をつくりはじめたね。たまたまそのとき僕のまわりではエレクトロニック・ミュージックを聴いている人が多かったから、CDをもらったり借りたりできたし。

それは何年くらいの話ですか?

EW:18歳くらいかな。

聴いたところによると、あなたは幼少期からご両親のお仕事の関係で住居を転々とされていたということですが、そうしたあなたの生い立ちとエレクロニック・ミュージックに惹かれたということとはなにか関係があると思いますか?

EW:転々としてるからこそ、いろんなところでいろんな音楽を吸収できたりもしたね。僕自身小さいころから音楽が大好きだったっていうこともあるんだけど、その環境のおかげで音楽に対してすごくオープンになったかな。いろんなものを経験して音楽への愛は大きくなったんだけど、直接的にエレクトロニック・ミュージックの影響を受けたのは東京に来たときのことだったと思う。16歳くらいのときかな。

へえ? 東京ではどんなふうにそういう音楽と出会ったの?

EW:16歳くらいのころからほんとよくクラブで遊んでて、そこでエレクトロニック・ミュージックを聴いたりしてた。アメリカから姉が帰ってきたときに、ボーズ・オブ・カナダとオウテカのCDをくれてすごく影響を受けたり、もうひとりの姉はそのころトリップ・ホップにハマってたりして、たまたま東京にいたときにすごくエレクトロニック・ミュージックを聴く環境が整ってたんだよ。

それはなんだろう、東京という街にそういう音があったってことなんでしょうかね。それともそういう音楽そのものがあなたに強い影響を与えたということなんでしょうか。

EW:そうだな......やっぱりクラブってものの影響が大きかったかもしれない。最初に行ったときは自分がそういう音楽を受け入れてたかどうかわからない。クラブは最初は楽しさがわからなかったけど、通ってまわりを観察してるうちに、「みんなこんなに楽しんでるんだな」って、エレクトロニック・ミュージックの影響の大きさを感じたかな。あと、マッシヴ・アタックも大きいよ。彼らはロックとエレクトロニックとを混ぜた。当時は彼ら以外の人たちもそういうことをやりはじめた時期だったけど、マッシヴ・アタックに出会ったことで、それまでわからなかったものの扉を開くことができたんだ。

ちょうど『メザニーン』のころですね。

EW:イエス。『メザニーン』!......イエス!

そうか、イーライ・ウォークスの音楽を聴いたときに、僕はボーズ・オブ・カナダが好きっていうのはよくわかるんですよね。だけどクラブってちょっと意外で、ダンスというよりはアトモスフィアやムード、アンビエントみたいなものを伝えたいのかなって思っていたので。

EW:当時クラブで流れてたのはプロディジーだったりケミカル・ブラザーズだったりしたけど、そこから入ってどんどん音のエフェクトとかテクスチャーとかに興味を持ちはじめたんだ。たぶん最初にボーズ・オブ・カナダを聴いたときには自分でもまだ難しかったんだと思うけど、だんだんとハマっていって、細かいところや具体的な部分が見えてきたんだ。

話は戻るんですけど、日本に来る前はどんなところをめぐってきたのか、ざっくりと教えてほしいんですが。

EW:カリフォルニアに生まれて、6~7歳くらいは沖縄。で、ノース・カロライナ、沖縄、東京、カリフォルニア、東京......

(笑)じゃ、日本とアメリカの各都市をいったりきたりしてたんですね。

EW:ははは、そうなんだ。だから日本語も英語もあまりうまくない(笑)。

(笑)自分のアイデンティティって考えたことはありますか?

EW:そうだな、むかしから転々としてたから、仲良くなったグループともすぐお別れしなきゃならない。そんななかで自分を見つめ直したりしながら、アイデンティティについて考えることは多々あったね。

ご両親を恨んだりはしませんでしたか(笑)?

EW:ははっ、すごくサポーティヴな両親だったから恨むってことはなかったけど、中学のときにせっかく仲良くなった友だちと別れることになったときは、さすがに言葉で責めたりはしたね。ノース・カロライナのときだった。けど、心では恨んだりしたことないな。

なるほど。それだけ行ったり来ているしてると、どっちにいるかわからなくなったりしませんか(笑)。アメリカにいるのに日本にいるときのようにふるまって失敗するとか。東京と沖縄でもすごく差があるのに、まして日本とアメリカなんて文化土壌がぜんぜんちがうわけじゃないですか。

EW:たしかにね。しょっちゅうそう思うよ。アメリカでは、ごく親切でしてるだけのつもりなのに「この人ほんとに静かだな」って思われてたりね。たとえば日本ではみんな電車でも静かに乗ってお互いを尊重しあってるけど、アメリカでは突然知らない人が話しかけてきたりする。ほんとにちがってて混乱することがあるよ。

カート・ヴォネガット(Jr.)は知ってる?

EW:いや、聞いたことはあるけど......

スローターハウス5』って小説を思い出しました。主人公が訳もわからずにタイム・ワープしていくんですけど、宇宙人に囚われたかと思えば、いきなり第二次世界大戦下のドレスデンでナチスの攻撃を受けてるっていう話でね(笑)。

EW:ワオ! はははは。

自分にいちばんしっくりくる街っていうのはあったりするんですか?

EW:うん、やっぱりそれが理由で東京に戻ってきたっていうこともあって、東京がいちばんだなっていまは思ってる。ただ、ほんとそのときそのときの自分の年齢にもよるかな。沖縄にいたころはまだほかの世界があるってことを知らなかったから、沖縄がいちばんだって思ってたこともあった。けどいまいろんな場所を経験したあとで、東京がいちばんしっくりくるって感じるよ。

ロスには3年でしたっけ?

EW:5年かな。

ロサンジェルスって、ここ10年、いろんな話をきいていると、文化的にすごく盛り上がっているといいますよね。〈ロウ・エンド・セオリー〉しかり、インディ・ロック・シーンみたいなものも含めてなんですが、あなたのその5年間にロサンジェルスから受けた影響について教えてください。

EW:すごくいろいろな影響を受けているよ。ロサンジェルスに行く前は、エレクトロニック・ミュージックといってもすごく実験的なものしかやっていなくって、もう、人には理解してもらわなくったっていいっていうような音作りしかしていなかった。けど〈ロウ・エンド・セオリー〉に行って、エレクトロニック・ミュージックでみんなこんなにもパーティしてるんだってことを知って衝撃的だったんだ。僕の行ってた音楽学校では、自分と同じような境遇の人がいっぱいいて......つまりいろんな国から生徒が集まって実験的な音楽を追究している子たちも多かったなかで、〈ロウ・エンド・セオリー〉の影響はとくに大きかったね。 

それは、なんでしょう、東京にいたころはよりエクスペリメンタルなことをやっていたと。それでロスに行って、もうちょっと自分の幅が広がったというようなことでしょうか。

EW:東京にいた頃はボーラみたいなよりレフトフィールドなものにハマったんだけど、そうだね、もっと、なんていうか......。

ボーラみたいなエクスペリメンタルなものにそもそもあなたがハマっていった理由というのはどういうものなんでしょう?

EW:さっきも言ったボーズ・オブ・カナダはすごく素晴らしい、自分を変えるきっかけになったような音楽なんだ。ふつうの人でもきっと聴けるサウンドなんだけど、自分では彼らの音をより深く聴いていくうちに、もっといろんなテクスチャーやビートを掘り下げて知りたいと思うようになって、それがボーラとかにつながっていったのかもしれない。どんどん好奇心が生まれてエレグラにいったりとかしたんだよ。

それが〈ロウ・エンド・セオリー〉に行ったことによって、オープン・マインドになったってことなんでしょうか?

EW:そうだね、〈ロウ・エンド・セオリー〉に行ったことは自分をひらくものだったかもしれない。あとは学校の生徒たちの存在が大きいよ。まわりの友だちがディーバの音楽をサンプリングしてチョップ・アップしてたりとか、すごくいろんなことをやっていたから、そういうものに大きく刺激を受けたと思う。

なるほど。

EW:そのときにいた環境のパッケージ、というかね。

以前フライング・ロータスにインタヴューしたときには、彼はロサンゼルスの学校時代、クラスメイトたちからはすごく変わり者として思われていたと言っていました。まわりはだいたいメイン・ストリームのヒップ・ホップを聴いているのに、自分だけはDJクラッシュとかデトロイト・テクノとかを聴いていて、そんなやつはクラスにひとりしかいなかったって言ってましたけどね(笑)。

EW:ふつうはそうなんだろうね(笑)。でも僕の行ってた学校はほんとうにエクスペリメンタルなことをみんなが追求してる集団で、いろんなことがやれたんだよ。クレイジーだったね(笑)。

〈ロウ・エンド・セオリー〉って、なんだか日本ではストイックで、渋いアブストラクトな印象が広まっているんですが、カセット出しているような、アンダーグラウンドなロック・シーンとも繋がっているんですよね。実験的だけど、ちょっと享楽性のあるような(笑)。

EW:うんうん。当時思ってたのは、ほんとにクリエイティヴな場所だなってことで、あれと同じようなムーヴメントはないなって思えるようなイヴェントだったね。

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クラブは最初は楽しさがわからなかったけど、通ってまわりを観察してるうちに、みんなこんなに楽しんでるんだなって、エレクトロニック・ミュージックの影響の大きさを感じたかな。


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どんな経緯で今回のアルバムは生まれたの?

EW:ええと......。そうだね、いろいろな要素があると思う。まず自分が聴いていいなと思ったものを、自分の手で再現していきたいと思ったこと。あと学校ではシンセを手作りしたりしてたんだけど、自作のシンセで遊んだりしてるうちに、これをきちんと音にしたいなとも感じた。それからむかしギターで書いた古い曲をエレクトロニック・ヴァージョンにしてみたいって気持ちもあった。そういうものが全部重なりあって、この作品になったと思うよ。

なるほど。あなたのなかでエレクトロニック・ミュージックの魅力とは何なんでしょう?

EW:エレクトロニック・ミュージックって、すごいいろんな色を持ったものだと思うんだ。バンドにはギターがあってベースがあってドラムがあって、そのそれぞれにエフェクトをかけたりすればいろんな音は出せると思うんだけど、エレクトロニック・ミュージックにはもっと無限の可能性があって、まるで3Dみたいに、すごく狂った体験ができると感じるんだ。

僕は今日、ええと、笑わないでほしいんだけど、ブルース・スプリングスティーンをずっと聴いてて(笑)。それで思ったんですが、アメリカのポップ・カルチャーの多くが、ヒップホップにしてもロックにしても、アメリカ社会を反映したものが作品になってると思うんですね。そういう社会との関係性ということを考えたときに、エレクトロニック・ミュージックとはどのようなものだと思いますか。

EW:いまってすごくいろいろなものが変化していて、インターネットが生まれたことで国やジャンルの境界線がなくなってきてたりするよね。そんななかでアメリカでもエレクトロニック・ミュージックのポジションが変わってきていると思う。カニエ・ウェストとかダフト・パンクとかがいろいろやったりして、エレクトロニック・ミュージックはほんとにメイン・ストリームになったなって思うよ。

それはほんとにそう思います。20年間聴いてきたんですが、90年代は、エレクトロニック・ミュージックはヨーロッパ中心のものだったし、アメリカからはあまり聴こえてこなかったですよね。それがこの10年でほんとにアメリカで広がったんだなって思います。

EW:たとえばニューヨーク出身のアーティストでも、まるでUK出身みたいなエレクトロ・サウンドのバンドがいたりするし、そのへんの境界はほんとになくなってきてると感じるよ。

それってなんなんでしょう、アメリカの古い価値観が崩れていくというようなことでもあるんでしょうか?

EW:うーん、そうだなあ......

ははは。もう、昔はね、シンセサイザーの音が入ってるってだけで、アメリカでは「オカマっぽい」って言われたりしたんですよ。

EW:ああ、うんうん。そこはすごくオープンになってきてるんじゃないかな。で、その古い価値観っていうのもすごく残ってはいると思うんだけど、アメリカってすごくメイン・ストリームに左右されるところで、メイン・ストリームがやったことがすごく強調されるんだ。カニエ・ウェストとかがやることは、メイン・ストリームに広がったりするから、たしかに(マイノリティの問題等についての)受け取り方はオープンになってきていると思うよ。ケイティ・ペリーが「I Kissed A Girl」って歌うと、アメリカ中の女の子たちに、あ、それはアリなんだって伝わっていく。メイン・ストリームを通せばそういうオープンな価値観も広がるんだ。

なるほどね。それでいま3年めでしたっけ? 東京に移ってきたわけなんですが、ぶっちゃけ、放射能とか怖くないですか?

EW:はっはっは。あんまり。

(笑)。

EW:そりゃ、現場に行けば怖いだろうなって思うよ。東京でもデリケートな人たちは「水もあぶない」って言ったりしてるけど、飲んじゃってるし。

では、アルバムのタイトルを『パラレル』にした理由はなんなんでしょうか?

EW:アルバム制作にいたるまでに、予期せぬできごとがすごくたくさんあって、いろんな人との出会いとか、このレーベルとの出会いとか、いろんな偶然もたくさんあったんだ。そしてとても立ち止まって考えていられないほど、すべてのことがシンクしてた。僕は頭の中でひとつの線を思い描いていて、ちょっと数学的なんだけど、そうやって線を描きながらものごとを考えたときに、すべてがシンクしていくことがよくわかった。だからこのアルバムは、なにか線で表現したいなって思ったんだ。それで「パラレル」って言葉を思いついたんだけど、平行って、すごくそういうイメージでしょ。

へえ、なるほど。

EW:状況が変わればアルバムの見え方も変わるとは思うんだけど、自分の人生の中にはパラレルなものが多いなって感じるんだ。日本とアメリカのふたつのものの間をいったりきたりしてるのも、パラレルのイメージだしね。

日本にいるととくになんですけど、アメリカと日本をめぐっていろいろと政治的な複雑な関係を耳にすると思います。そういうことは気になったりしますか?

EW:じつは沖縄にいたころは父親が米軍基地で働いていて、基地の外で日本人が「出てけ」って運動してたりするのを目の当たりにしてた。母親は日本人だから、僕はほんとにどうしたらいいんだろうって考えざるをえなくて......。そういう、日本とアメリカとの関係性について考えざるをえない場面っていうのは僕の人生のなかに何度もあったよ。いまはあんまり考えないようにしてるんだけどね。

それは重たい話ですね......ご自身の作品のコンセプトというか、リスナーをどうしたいとか、そういうものはありますか?

EW:とくにコンセプトといえるほどのものはないんだけど、たとえばタワレコとかに行ったときに、はじめて試聴するときのインパクト、それは与えたいなって思ってたんだ。だからこれまで書きためてた曲で好きだったものを選んで、自分でパーフェクトだって思えるまで死にものぐるいで作ったよ。あと、そうだな、最初はコンセプトと呼べるものはなかったものの、いま『パラレル』ってタイトルをつけたあとで目をつむって曲を聴いていると、ふしぎと線だったり形だったりが10曲の中でつながっていくよ。

ではこの音楽のなかで展開される叙情性みたいなものは、あなたのなかのどういうところからくるものだと思いますか?

EW:やっぱりいろんなところに引っ越しているから、友だちとの別れとか、恋愛だったりとか。あとは両親が音楽好きなんだけど、父親がすごく音楽をエモーショナルに聴く人で、レディオヘッドとか聴いててもいきなり巻き戻して「ここの部分聴いてみろ」とか言うんだ。

はははは!

EW:(笑)そんなところにすごく影響されてるかも。

あ、お父さんがレディオヘッド好きなんだ(笑)。レディオヘッドが好きなお父さんてすごいね!

EW:ははっ、父さんはすごいクールだよ!

ははは、じゃ小学校のころに『キッドA』聴かされたりしてるんだね。あの、わりと最近は都内でライヴされたりしてますよね。先日もフラグメントといっしょにやったりとか、あるいはちょっと前にコウヘイ・マツナガくん(NHK)とやったりとか、日本のトラック・メイカーと関係することがあると思うんですが、いっしょにやってみて面白いなって思った人はいますか?

EW:最近同じイヴェントに出てたジェラス・ガイっていう女の子のビート・メイカーがいるんだけど、その子のパフォーマンスがすごくよかった。

へえ、日本人なんですか?

EW:そう、〈ソナー〉にも出るっていう子なんだけど。あとはタナベ・ダイスケさんとかパフォーマンスが素晴らしいって思うし、あとはオオルタイチさんとか。みんなそれぞれ違った要素があって、共演させてもらう人たちからはいろんなことを学んでるよ。NHKはすごい観たかったんだけど、前回は時間が重なっていて、すごく残念だよ。

彼は見た目からして、危険な男ですよ。

EW:はははは!

このイーライ・ウォークスの作品が出たのと同じ時期に、僕はそういう若い日本のトラック・メイカーの作品を耳にすることがすごく多かったんです。ひょっとしたら、まあ、すごい偶然なのかもしれないけど......あなたと同じようなタイミングで、新しい世代が出てきたのかもしれないっていう印象を受けたんです。ご自身ではそういう感覚はありますか?

EW:最近はみんながコンピュータを持っている時代で、「エイブルトン」を使いこなしていたり、「ガレージバンド」でも音楽を作れてしまうから、ここ最近はすごくそういう音作りのブームっていうのが起きてると思うんだ。だからこの数年はほんとに楽しみにしてるよ。

なるほど、ありがとうございました。僕は10曲めの"ミスト"って曲がいちばん好きでした。

EW:(日本語で)ああ、ありがとうございます!

いちばん人気がある曲って何なんですかね。1曲めもすごくいいですけどね。

EW:あ、みんなけっこう"ムーヴィン"はいいって言ってくれるかも。なぜかiTunesだと"フリーフォール"。

ああ、そう。それはおもしろいね!

EW:そうなんだ......

ははは、ありがとうございました!

interview with Sharon Van Etten - ele-king


Sharon Van Etten
Tramp

Jagjaguwar/ホステス

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 昨年の個人的なベスト・シングルの1枚がザ・ナショナルの「シンク・ユー・キャン・ウェイト」だったのだが、そこにコーラスで参加していたのがシャロン・ヴァン・エッテンだった。「やってみるよ、でもいまよりマシにはなれないだろう」と繰り返されるコーラスを、中年男個人のぼやきではなく人びとに共有されるものとして表現するために、彼女のあらかじめ憂いを含んだ声が必要だったことはよくわかる。ザ・ナショナルをはじめボン・イヴェールやメガファウンらとギターを抱えて共演するシャロン・ヴァン・エッテンは、現代アメリカの新しいフォーク・ミュージックのネットワークにおけるミューズのような存在になりつつある。
 そのザ・ナショナルのサウンドの要、双子のデスナー兄弟のアーロンがプロデュースしたシャロン・ヴァン・エッテンの新作は、ベイルート、ジュリアナ・バーウィック、ダヴマン、ワイ・オーク、そしてロブ・ムースといったゲスト・ミュージシャンが集まり、その界隈の人脈の充実を示すものとなっているが、それはあくまで、以下のインタヴューで彼女自身が答えているように「私の友だちとアーロンの友だちが混ざり合った結果」である。
 そして何より、そんな自分のことを「放浪者」と冗談めかして呼ぶシャロン自身の声が中心にある作品で、これまでの作品よりも歌のエモーションの幅が演奏のスケールと共に広がっている。ギターの音色が多彩になっているのはアーロンの手腕だろう。その抑制が効いたフォーク・ロックに乗せて、シャロンはときに唇を噛み締めるように、ときに諦めたように、あるいは慈愛をもって、女と男の感情のすれ違いや重なりを歌う。彼女の歌にはどこか恋愛の嘆きの段階を終えてしまったような柔らかい時間があって、そこでは恋の憂鬱が緩やかに受容されていく。それは、彼女の声が悲しみを纏いながらも、愛を求めることをやめないからだろう。

「私の手を取って 震えないでいられるようにして/きみは大丈夫だよって言って」 "ウィ・アー・ファイン"  
 僕はシャロンの演奏を奈良の小さなカフェで観たことがある。「鹿が可愛かった」というシャロンは、ジーンズのよく似合うボーイッシュな佇まいのキュートな女の子だった。が、足を組んでアコースティック・ギターを鳴らし、ひとたび歌いはじめると、空間はひとりの女性が持つ複雑な感情の揺らぎでゆっくりと満たされていった。そんなシャロン・ヴァン・エッテンの声が、これからさらに広い場所に響こうとしている。

ザ・ナショナルのファンだったのよ。彼らに最初に連絡を取ったときは、すごく緊張した。でも、カヴァーしてくれるぐらいなら、きっと私の音楽も気に入ってくれているんだろうと思って、勇気を出して連絡したのよ(笑)。

『トランプ』はインナースリーヴにアーロン・デスナーとあなたのふたりの写真があるように、あなたとアーロンのふたりが中心となって作った作品です。あなたが前作『エピック』のあとで彼と知り合って、プロデュースを依頼する決め手となったのはどういったポイントだったのでしょうか?

シャロン:アーロンと個人的に知り合うようになったきっかけは、友だちとツアーをしていてモントリオールにいたときのことなの。ある朝起こされてヴィデオを見せられたんだけど、それはアーロンたちがオハイオのミュージック・フェスで、私の曲、"ラヴ・モア"をカヴァーしているものだった。彼らが毎年やっているフェスだった。そのフェスのテーマは「コラボレーション」で、みんながほかのみんなのセットに参加してプレイしていたんだけど、そのなかで私の曲をカヴァーしてくれてたのよ。それで友だちが、彼らにコンタクトしてみるように勧めてくれて、そのとき作っていたセカンド・アルバムでプレイしてくれないかってお願いしてみたんだけど、アーロンたちもそのときちょうどレコーディング中で忙しくて、私のアルバムには参加してもらうことができなかった。
 でも、アーロンと私はその後も連絡を取り続けて、アーロンが「デモを録りたいときは、いつでも力になるよ」って言ってくれたから、できるときにちょっとずついっしょにデモを作るようになったの。そんななかでいろんな自分たちの考えを話し合ったり、好きな音楽について語り合ったりしながら仲良くなって、ある日デモが20曲ぐらいになったとき、アーロンが、「デモはもう十分なんじゃない? レコードを作ろうよ」って言ったのよ(笑)。だから1年ぐらいメール交換したり、会って話したり、デモを作ったりしながら、自然にレコードを作ろうって流れになっていったの。

彼らがあなたの曲をカヴァーしたって聞く前から、彼らの音楽は知っていましたか? どう思っていましたか?

シャロン:うん、前からザ・ナショナルの音楽は知っていたし、実際彼らのファンだったのよ。だから、彼らに最初に連絡を取ったときは、すごく緊張した。でも、カヴァーしてくれるぐらいなら、きっと私の音楽も気に入ってくれているんだろうと思って、勇気を出して連絡したのよ(笑)。

あなたの目から見て、アーロンのプロデュースはどういったものでしたか? 具体的に特に印象的だったことはありますか?

シャロン:彼との作業は、すごく快適なものだったわ。最初はちょっと緊張していたけどね。でも、何か新しい仕事をはじめるときって、そういう感じじゃない? 慣れて、どうやったらいちばん良いかってわかるまでに、ちょっと時間がかかる。でも、1回慣れたらすごく落ち着いて、快適に作業ができたわ。彼とは、なんていうか、いっしょにグルーヴをうまく捕まえられるって感じがした。彼の作業の仕方は、私がこれまでやってきたものとは、まったく違ったけどね。私はこれまで、余計なものはまったく入れないで、一直線にレコーディングをするようなやり方をしてきた。でも、彼はできるだけいろんな可能性を最初に全部取り込んで、そこからいらないものを排除していく。私のやり方とは真逆だった。でも面白かったわ。ジェンガって知ってる? まるでジェンガみたいだと思った。何本ピースを取ったら、全体が崩れちゃうかっていうような。積み上げて、そこから崩れるぎりぎりまでピースを外していくっていうか(笑)。

このアルバムにはたくさんのミュージシャンによるたくさんの楽器の演奏がありますし、非常にアレンジのスケールが増しています。

シャロン:作っているなかで、今回はたくさん友だちに参加してもらおうと思ってはいたのよ。でも、誰がいつレコーディングに来られるかはわからなかった。しっかりとしたスケジュールを組んで、他のミュージシャンの予定を押さえてとか、そういうやり方をしたわけじゃないから。ここで1週間、またこの時期に2週間、誰かこのタイミングで来られる? みたいなやり方だったの。参加してくれたメンバーは、私の友だちとアーロンの友だちが交ざり合った結果だけど、すごく計算してこういう形になったわけではなかったわ。

これまでの作品と、制作のプロセスでもっとも違う部分はどういったところでしたか?

シャロン:私自身にとって大変だったのは、他の人に、私が求めている音は具体的にこういう音なんだって、言葉にして伝える方法を学ぶことだった。音を言葉で説明することが、あまり上手じゃなかったのよ(笑)。実際、アーロンが私の通訳になって、他の人に私が求めている音を説明してくれたりもしたわ(笑)。私にはどうやって伝えたらいいのかが、わからなかった。それは私にとって、新しい挑戦だったと思う。誰かが参加してくれた場合、その人が曲に自由にアイディアを持ち込んでくれることは素晴らしいと思うけど、時には私自身がどういう方向性で作品を作り上げようとしているのかってことを、伝えなきゃいけない必要もあった。今回作業したことで、そういうコミュニケーションの仕方が前よりは上手になったって思うわ(笑)。

本作のたくさんのゲスト・ミュージシャンのなかではジュリアナ・バーウィックの参加が意外だったのですが、彼女とはどういった経緯で知り合ったのですか?

シャロン:彼女は大好きよ。もともと、彼女の音楽がすごく好きだったの。ファンだった。去年いっしょにツアーもしたんだけど、いっしょにいてすごく楽しいし、面白くて思いやりがあって、とても美しい音楽も作る、最高の人よ! それで、アルバムに参加してくれないか頼んだら、もちろん!って。すごく嬉しかった。

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もっとも聴いたのは、パティ・スミスやジョン・ケイル、イギー・ポップとか。そういったニュー・ヨークのバンドとか......。そういう影響って、無意識のなかにはすごく大きく影響しているものだと思う。


Sharon Van Etten
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Jagjaguwar/ホステス

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"ウィ・アー・ファイン"、"マジック・コーズ"ではベイルートのザック・コンドンとデュエットしていますが、曲のヴォーカルを男女のパートにわけるアイディアはどこから出てきたんでしょうか? また、デュエット曲にザックの歌声を選んだ理由は?

シャロン:ザックとは前にいっしょにプレイしたことがあって、いろんなものの考え方や感じ方で意気投合してたの。社会的な期待にどうやって応えるかとか、それにともなうストレスや不安、みたいなものについて話し合ったりして。もともと、"ウィ・アー・ファイン"を作りはじめたころは、私がひとりでハーモニーを入れて歌っただけで、他のヴォーカルは入れてなかったの。でも何かが足りない気がした。他の楽器を入れてみたり、いろんなことを試してみたりしたんだけど、何か違うって気がしていたのよ。そんなある日、ふと気づいたの。この曲はもともと、ふたりの人が会話しているっていう内容の曲。だから、もうひとり別のヴォーカルに入ってもらって、本当の会話をするように歌えばいいんだって。それで彼のことが真っ先に頭に浮かんで、頼んだら快く歌ってくれることになったのよ。

"ケヴィンズ"、"レナード"と男性の固有名詞がタイトルに入った曲が続きますが、それぞれの曲で歌われている男性のイメージというのは別のものですか?

シャロン:ああ、あの曲ね(笑)。曲を書いていたころは、いろんなところを放浪してたんだけど、一時期、ケヴィンズ・ハウスっていうところに滞在して、デモを作っていた時期があったのよ。それで、当時作っていたデモに、ケヴィンズ1、ケヴィンズ2、ケヴィンズ3って仮タイトルをつけてたの。アルバムに入った"ケヴィンズ"は、デモの"ケヴィンズ1"で、"レナード"は"ケヴィンズ2"だった。でも、1枚のアルバムに、"ケヴィンズ"ってつく曲が2曲あるのは嫌だな、って思って。そのころちょうど、レナード・コーエンの曲をたくさん聴いていて、彼のサウンドにインスパイアされたような部分があったから、"レナード"ってタイトルにすることにしたの。"ケヴィンズ2"より、いいでしょう?(笑)

あなたの書く歌詞では、恋愛関係におけるコミュニケーションの齟齬がよく描かれていて、これはデビュー作から一貫したモチーフであるように感じます。そういった複雑に絡んでしまった関係や感情を多く歌うのは、ご自身ではどうしてだと思いますか?

シャロン:難しい質問ね......。私は自分が経験した難しい人間関係について書くことが多いわ。強くなろうとしたり、よりよくなろうと努力したり。他人の過ちを許すことで、自分自身の過ちも受け止められるようになったり......。でも結局、自分でできるだけのことをしたら、後はなるがままに任せるっていうか......。いまはすごく精神的にも落ち着いているし、良い関係のなかにいるの。いろんなことがうまくいってる。だから、いまはあまり行きづまった苦しい曲は、書かないかもしれない(笑)。

歌詞のモチーフは、個人的なものとフィクションの部分のどちらの割合が多いですか?

シャロン:基本的には個人的な経験、っていえるかな。自分だけのことじゃなく、たとえば友だちがいま経験していることっていうのもあるかもしれないけど、基本的にはいつも、「私」と「あなた」の曲を書くことが多い。それはまったくゼロから生まれてくるものじゃなく、誰とも同じレヴェルで自分が経験しているかのように感じて、語りかけるような言葉を書こうとしているってこと。

作詞の部分で影響を受けたアーティストはいますか? ミュージシャン以外でもかまいません。

シャロン:そういう意味でもっとも聴いたのは、パティ・スミスやジョン・ケイル、イギー・ポップとか。そういったニュー・ヨークのバンドとか......。そういう影響って、レコードを聴いたときにはっきりと聴こえてくるものではないかもしれないけど、無意識のなかにはすごく大きく影響しているものだと思う。

『トランプ』というタイトルは、レコーディングのあいだあちこちを渡り歩いたあなた自身のことを指しているそうですが、同時に本作の歌のテーマと繋がっている部分もありますか? 私には、ここで描かれている様々な関係や、そこで生まれる感情を「放浪」しているような意味にも取れたのですが。

シャロン:曲の多くは、そのとき自分が経験していた関係のなかで、自分自身が感じていた感情を分析したものだと思う。そのなかで、どうやって生きていくかを模索して、私は変わっていった。ある意味、その時期に自分が付き合っていた人を振り返るようなことにもなっていたけどね。ちょっとジョークでもあるわけだけど。男の人が女をTrampって呼ぶときって、決していい意味ではないでしょう?(浮気女、いろんな男と寝る女みたいな意味がある) だから、そういうのもバカらいしんじゃない? って、ジョークにしちゃう意味でも使ってるのよ。

日本から見ても、あなたの周りのネットワークというのは非常に充実しているように感じます。ボン・イヴェール、ザ・ナショナル、メガファウン、ベイルート、スフィアン・スティーヴンス......とどこまでも広がっていきますし、お互いの尊敬と愛情で成り立っている、ある意味で家族的な、親密なコミュニティができているように思うのです。あなた自身は、そこに属しているという想いはありますか?

シャロン:そうねぇ......。でも、友だちのミュージシャンたちって、みんなツアーに出てるから、全然家にいないのよ(笑)。顔を見合わせていっしょにいられる時間って、ほとんどない。でも、仲間意識みたいなものは確実に存在していると思う。誰もがみんな同じ経験をしていて、みんなそれがどんな経験かっていうのをそれぞれの場所で経験している。大変な経験だけど。ずっとツアーに出てるわけだから、どこでもホームだと思えないとね。そしてファミリーが世界中に散らばっているんだって思うことにしている。そう考えたら、すごく素敵なことなんじゃないかなって感じられるの(笑)。

私は奈良のカフェであなたの演奏を聴いたのですが、まるで時間の流れが遅くなるような濃密な体験で、素晴らしかったです。また次のライヴを観るのを楽しみにしていますが、このアルバムを携えてだと、バンド形式になるのでしょうか?

シャロン:そうね。バンドでツアーをしていくわ。いまは4ピースでプレイしてる。それでレコードのほとんどをプレイできていると思う。音を削った部分もあるけど、すごくベーシックなスタイルって、90年代のロックみたいで気に入ってるわ。いまはライヴもすごく楽しいし、いろんなことができて面白い。メンバーのふたりはいろんな楽器が弾けるから、いろんな音の幅が出ているしね。私は歌とギターに専念してるけど、みんながいろんな要素を足してくれていて、いまのライヴは、かなりロックっぽくなってるわ(笑)。

これまでも非常に充実した活動をされてきたと思うのですが、 ミュージシャンとしてチャレンジしてみたいことはありますか?

シャロン:やってみたいことは、たくさんあるわ。いま、何曲かピアノで作ってる曲があるの。それから何曲かエレクトロニックの曲も作ってる。

全然違うじゃないですか(笑)。

シャロン:そうなの。何が次に来るかはわからない(笑)。他の人とコラボレートする方法も学んだし、ヘザーといっしょに曲を書いたりもしてるし、試したいことは本当にたくさんあるわ。

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