「KING」と一致するもの

R.I.P. Phil Asher - ele-king

 ロンドンの職人的なDJのひとり、フィル・アッシャーが去る1月21日に亡くなった。享年50歳という早すぎる死は心臓発作によるものだったが、近年はロンドンの喧騒から離れてパートナーと一緒に海辺の町のブライトンに移り住んでいて、そこで亡くなったそうだ。
 彼の死が発表されてからSNSにはカーク・ディジョージオ、ファビオ、アレクサンダー・ナット、マーク・ファリナ、ケリー・チャンドラーなどDJ仲間や音楽界から追悼のメッセージが寄せられた。アレクサンダー・ナットのツイートにあるフィルのポートレイトは、とあるレコード・ショップで腕組みしながらにこやかに笑っているものだ。イギリス人の父とスペイン人の母の間にロンドンで生まれたフィルは、もともと〈クアフ〉や〈ヴァイナル・ソルーション〉といったレコード・ショップの店員をしながらDJをやっていて、そこから一流プロデューサーの道を究めていった。そんな彼らしい写真だ(そもそも父親がレコード屋の店員だったから、親子2代に渡っての天職なのかもしれない)。彼がディーゴをはじめウェスト・ロンドンの面々と交流を深めていったのもレコード屋の店頭だし、その頃はカーク・ディジョージオやパトリック・フォージなどのDJ/プロデューサーもみなレコード屋で働いていた。私自身もかつてレコード屋で働いてDJをしていて、当時はフィルのレコードもよく扱っていたので、そんなところからフィルは他人とは思えなかったものだ(ちなみにその写真のレコ屋にはJディラからジェイムズ・ブラウン、タニア・マリアなどのレコードが飾ってあって、ダンス・ミュージック専門店だと思うのだが、なかなかいいチョイスである)。DJにとってレコード屋で働く利点は、より早くたくさんの音楽に接することができること。新譜メインの店なら最新の音を聴くことができるし、中古店なら世界中の珍しい音に出会うことができる。そうやってフィルは自分の耳を鍛えていったのだろう。

 フィルの名前が広く知られるようになったのは1990年代後半に勃興したウェスト・ロンドンのブロークンビーツ・ムーヴメントによってだが、それより少し前から彼はハウスDJ/プロデューサーとして自身の音楽性やプロダクションを確立していった。最初は自動車修理工をしていたが、音楽への情熱が捨てきれずにレコード・ショップ店員へ転職し、セカンド・サマー・オブ・ラブやレア・グルーヴ・ムーヴメントを通過した1980年代後半。ただ、その頃流行ったアシッド・ハウスやレイヴ方面に行くことはなく、周りに黒人の友だちが多かったこともあって、ハウスの源流であるガラージ・クラシックとか、ファンクにジャズ・ファンク、そうしたネタを使ったヒップホップにも傾倒していった。DJではハウスやテクノをプレイして、初期のシカゴ・ハウスやアンダーグラウンドなNYハウス、ニュージャージー・ハウス、それからちょうどロンドンでも広がってきたばかりのデトロイト・テクノが主なレパートリーだった。

 1990年代初頭にはコンピの編纂や音楽制作も開始して、いろいろ試行錯誤するなかでエンジニア/プロデューサーのルーク・マッカーシーと出会ってレストレス・ソウルというプロダクションを立ち上げる。このプロダクションはジャジーでソウルフル、そして四つ打ちにとらわれない幅広いリズム・アプローチを持つハイブリッドなディープ・ハウスを得意とし、当時で言えばUSのマスターズ・アット・ワークやブレイズ、ジョー・クラウゼルなどに対抗するものだった。
 それからアーロン・ロス、モダージ、マイク・パトゥーなどいろいろな仲間が加わる集団となっていったレストレス・ソウルだが、1990年代半ばのフィルはここを土台にベーシック・ソウル、エレクトリック・ソウル、バック・トゥ・アースなど様々な名義を使って作品をリリースするようになる。同時にいろいろなアーティストと組んでコラボをおこなうようになるが、その多くがウェスト・ロンドンを根城とする人たちで、またパトリック・フォージとやっていたパーティーの「インスピレーション・インフォメーション」がノッティング・ヒル・ゲイトのクラブだったりと、いつしかウェスト・ロンドンの中心人物となっていった。

 ブロークンビーツはこうした交流や情報交換の中から生まれたもので、フィルの土台にあるハウスやテクノ、ファンクやジャズ・ファンクなどとほかの人が持つ別の音楽的要素をブレンドし、そこから新たなビートを作り出すことからはじまっている。そのオリジネイターの一角がヒップホップやR&Bをバックボーンに持つIGカルチャーで、もう一角がフィルだったのである。
 1990年代後半から2000年代にかけ、ウェスト・ロンドンではもうひとつのプロデューサー集団のバグズ・イン・ジ・アティックがあり、ドラムンベースの世界からブロークンビーツ・シーンへ入ってきた4ヒーローのディーゴとマーク・マックはじめドムやGフォース、アシッド・ジャズ時代にヤング・ディサイプルズやガリアーノに関わってきたディーマス、レストレス・ソウルにも加わったモダージ、スイスから来たアレックス・アティアス、ニュージーランド出身のマーク・ド・クライヴ・ローなどが集まっていて、こうしたコアな輪のすぐ傍にもカーク・ディジョージオ、イアン・オブライエン、ジンプスター、トム・ミドルトン、マーク・プリチャードなど多士済々な面々が交友関係を広げていた。
 さらにウェスト・ロンドンにとどまらずに、フィラデルフィアのキング・ブリット、デトロイトのリクルース、ドイツのジャザノヴァ、フランスのDJジルベールといった具合に、世界中のアーティストがお互いに影響を受けたり、与えあっていた。2000年にはディーゴ、ディーマス、Gフォース、IGカルチャーと「Co-Op」というパーティーをソーホーのヴェルベット・ルームズではじめ(後にプラスティック・ピープルへと会場を変えている)、そこは一種のラボのような場となり、次々と新しいブロークンビーツを開拓していった。

 フィルは前述のベーシック・ソウル以外にも、フォーカス、フラッシュ、ウールフなどいろいろな名義を用いて作品リリースやリミックスをおこない、またレストレス・ソウル以外にもブラック&スパニッシュ、ミュージックラヴライフ、フュージュンなどさまざまなプロダクションに参加してきた。DJフレンドリーな12インチやリミックスがメインだったため、自身のアルバム・リリースはフォーカス名義での『スウィート・アンド・サワー』(2002年)のみだが、これにはバグズ・イン・ジ・アティックのカイディ・テイサン、マーク・ド・クライヴ・ロー、レストレス・ソウルのフェリックス・ホプキンス、マイク・パトゥー、ダ・ラータのクリス・フランク、ニュージーランド出身のネイサン・ヘインズなど、フィル周辺の仲間が一挙参加していて、ウェスト・ロンドンのファミリー・アルバムの一枚に位置付けられる。
 サウンドもディープ・ハウスの “マーヴィン・イズ・ワン” (自身の子供のために作った曲)や “ファインド・マイ・セルフ”、デトロイト・テクノ調の “ハル”、R&B系の “ハヴィング・ユア・ファン”、ダイメンツィオをカヴァーしたブラジリアン・フュージョンの “バンバ”、レゲエ~ダブを取り入れた “スペースシップ・ロケット” と幅広く、いろいろな音楽性を融合したブロークンビーツの在り方を示したものと言える。
 また、バー・サンバなどプロダクションに関わって成功を収めたグループやアーティストも少なくなく、そうした中でサックス&フルート奏者のネイサン・ヘインズによる『サウンド・トラヴェルズ』(2000年)は全面的にレストレス・ソウルが関わったアルバム。ネイサン・ヘインズがフロントに立つジャズ・アルバムだが、実質的にフィルとレストレス・ソウルによるコラボレーションで、ジャズとソウルとブロークンビーツが最良の形で融合した傑作である。同じくマイク・パトゥーも参加したリール・ピープルのアルバム『セカンド・ゲス』(2003年)にもフィルとヴァネッサ・フリーマンら周辺人脈が深く関わっていて、こちらもブロークンビーツとソウルやR&Bの架け橋となった金字塔である。

 ブロークンビーツ全盛期に比べてリリース量は少なくなったが、近年も地道にDJ活動は続けていて、ここのところはマイティ・ザフと組んだディスコ/ブギー系の12インチを出していた。派手な活躍こそないが、堅実にビートを編み出す様はまさに匠の技そのもので、ダニー・クリヴィットのように本当に職人という言葉がふさわしいDJのひとりだった。フィルとは一緒にDJをさせてもらったこともあるし、インタヴューをしたりライナー・ノートやレヴューを書いたりといろいろ縁のあるアーティストだったが、何よりもレコード好きな仲間という印象が強い。レコードの話になると目を輝かせていたことをいまも思い出す。

以下は、初代『ele-king』27号(1999年)に掲載されたフィル・アッシャーのインタヴュー(文:野田努/通訳:アレックス)からの抜粋です。ベイシック・ソウルの “オーヴァー・ザ・ムーン” は90年代エレキング(とくに三田格)のアンセムでした。(編集部)

“ハイテック・ジャズ” はバイブルで、ディーゴは俺のヒーローだ

 お店やレーベルを転々としながら、ヴァージンで1年働き、その後は〈ゲリラ〉(註:90年代初頭のUKのプログレッシヴ・ハウスの拠点のひとつで、当時の〈カウボーイ〉と並んで、DJピエールのワイルドピッチ・スタイルへの回答でもあった)でも働いた。1991年にはパスカル・ボンゴ・マッシヴの「ペレ・コンコン」に参加したり、〈ゲリラ・レコード〉からはトゥ・シャイニイ・ヘッズ名義でシングルを出したり、〈ゲリラ〉のコンピレーション『ダブ・ハウス・ディスコ』(1992年)を編集したり、ロイ・デイヴィスを〈ゲリラ〉でライセンスしたりしていた。〈ゲリラ〉を辞めた後は〈トマト・レコーズ〉でプロデュースの仕事をしていたが、まったく評価されなかった。
 アッシャーの音楽にアンダーグラウンドで評価が与えられたのは、ルーク・マッカーシーとパートナーシップを組むようになってからだった。アッシャーとマッカーシーのコンビはレストレス・ソウル、エレクトリック・ソウル、ベイシック・ソウル、バー・サンバ、ブラックン・スパニッシュといったプロジェクトでシングルをリリースしていった。
「ソウル・トリロジーだな。ベイシック・ソウルはマッド・マイクの “ハイテック・ジャズ” にインスパイアされた。マッド・マイクの魅力については何時間だって喋れるよ。“ハイテック・ジャズ” は俺のバイブルだ。俺は昔、デレク・ジャーマン(かつてモータウンのハウス・バンドのベーシストだった、ジェイムス・ジェマーソンの息子)と一緒に仕事をしたことがあって、その仕事を通じてマッド・マイクやレニー(オクタヴ・ワン)と知り合った。クールなヤツらだし、音楽は素晴らしかった」

「ベイシック・ソウルの “オーヴァー・ザ・ムーン” を作ったときに俺は泣いた。ちょうど母親が死んだ直後だった。実はベイシック・ソウルのアルバムも途中まで出来ていた。でも、俺は自分のパートナー(マッカーシー)と最近別れたし、もう俺にはベイシック・ソウルは出来ない」

「俺たちはヒップホップのやり方でハウスを作っていた。そこにディーゴも興味を持ったんだ。4ヒーローの『2ペイジズ』を初めて聴いたとき、俺は一ヶ月のあいだ何も出来なかった。こんなに素晴らしいアルバムがあるのに俺が音楽を作る必要はないとすら思った。ディーゴはマジで尊敬している。俺のヒーローだ。もしディーゴがビルの屋上から飛び降りろと言うなら、俺はビルから飛び降りる」

「俺は正直なところまだ自分がアルバムを作れるほどの人間じゃないと思っているんだ。金のためにアルバムを出すのはイヤだし、どうせなら人生を語る1枚を作りたいからな。メッセージをちゃんと伝えたいしね。真夜中に吹雪のなかをドライヴしていて、前方から光が見えたのなら、その光がどんな光かどうして光っているのかなんてことは問題じゃない。光が周囲を照らしているそのこと自体が重要なんだ。わかるかな? 俺がもし光を見失ってしまったら、そのときは潔く音楽を辞めてバスの運転手でもやるよ」

Jamael Dean - ele-king

 カマシ・ワシントン『Heaven And Earth』にも参加経験のあるLAの新星ピアニスト、ジャメル・ディーン。〈Stones Throw〉から送り出された『Black Space Tapes』につづいて、今度はソロ・ピアノ・アルバムがリリースされることになった。
 趣向を凝らした前作とは対照的に今回はピアノ1本で勝負、サン・ラーのカヴァーで幕を開けるところもイキだ。カルロス・ニーニョなどからも信頼の厚いジャメル・ディーン、その美しきタッチに耳をすましたい。

JAMAEL DEAN
Ished Tree

Thundercat や Kamasi Washington が信頼を寄せる、ロサンゼルスの天才ピアニスト、プロデューサー Jamael Dean (ジャメル・ディーン)。Mary Lou Williams や Sun Ra のカヴァーも含めて、宇宙と対話するように奏でられた、待望のソロ・ピアノ・アルバムが完成!! ボーナス・トラックを加え、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

Official HP :
https://www.ringstokyo.com/jamaeldeanishedtree

星座と幾何学にインスパイアされた多面的な美しさを持つ楽曲が、リリカルなタッチで演奏されていく。LAジャズのレジェンドであるホレス・タプスコットに捧げてネイト・モーガンが書き、一度も録音されなかった名曲 “Tapscottian Waltz” も大切に取り上げている。そして、目を惹き付けるドローイングとテキストに包まれたパッケージも、深みのある佇まいを見せる。ジャメル・ディーンは、ピュアで特別なピアノ・ソロを作り上げた。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : JAMAEL DEAN (ジャメル・ディーン)
タイトル : Ished Tree (イシェド・ツリー)
発売日 : 2021/3/24
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings / The Village (RINC75)
フォーマット : MQACD (日本企画限定盤)

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Jamael Dean - Piano
AK Toney - Vocals on "Soul Of The Griot"
Sharada Shashidhar - Album Art
Mixed and Mastered by Wayne Peet

Tracklist :
01. When There Is No Sun
02. Introspection
03. Journey In The Night Boat
04. Anpu
05. Duat
06. Cancer
07. Black Sheep
08. Tapscottian Waltz
09. Soul Of The Griot ft. AK Toney
10. Ballad For Samuel
&
japan Bonus Track

Arca × Oliver Coates - ele-king

 昨年『KiCk i』を送り出したアルカが新曲を発表、なんと、おなじく昨年アルバム『Skins n Slime』をリリースしたオリヴァー・コーツとコラボしている。

 アルカのスペイン語のヴォーカルとオリヴァー流エフェクトを施されたチェロが、じつに厳かな空間を出来させている。ドラマ用に作られた曲とのことです。同曲を収録した4曲入りEPはこちらから。

ARCA
アルカ4曲入最新マキシ・シングル配信中!
表題曲はオリヴァー・コーツ参加!!

最新アルバム『KiCki』がグラミー賞にノミネートされているアルカが4曲入の最新マキシ・シングル「Madre」をリリースした。タイトル曲はトム・ヨークが自身のツアーのオープニング・アクトに指名し、ジョニー・グリーンウッドやアクトレス、ローレル・ヘイローとも共演するオリヴァー・コーツとのコラボレーションとなっており、アロン・サンチェスが手がけた同作のヴィジュアライザーも公開中。

Arca – Madre feat. Oliver Coates
https://youtu.be/JAS5k0xme8E

本作はHBOの人気ドラマ「EUPHORIA」のためにアルカが書き下ろしたオリジナル・スコアの一部を再構築した作品。数年前にアルカ自らがチェロを弾きながら歌った収録曲「Madreviolo」のレコーディングの際にアウトテイクとなった未加工のヴォーカルにオリヴァー・コーツがチェロを追加して完成させられた。

この「Madre」は私が思い描くことはできても、形にすることができないアレンジを必要としていた。そして、オリヴァーと音源をシェアして楽曲がその全貌を露にして戻ってきた時にはまさに強いケミストリーを感じることができた。 - アルカ

アルカが送ってくれたアカペラに伴奏を書いて送り返したら、彼女がすごく気に入ってくれた。そこから9日間缶詰でこの素晴らしい歌声に合うような繊細な演奏を何度もレコーディングした。まるで大聖堂の奥にあるゴースト・オーケストラのようなハーモニーとリズムが現れたこのヴァージョンに辿り着くまでね。 - オリヴァー・コーツ

シンガー、DJ、パフォーマー、実験音楽家、ビョークやカニエ・ウェスト、FKAツイッグスを筆頭とするプロデュース業、そしてノンバイナリーのラテン系トランスジェンダー・アーティストとしてまさに唯一無二の活動を続けるアルカ。絶賛発売中のKiCkシリーズ第1弾となる『KiCki』にはビョークやソフィー、ロザリア、シャイガールら豪華ゲストが参加し、衝撃的な美しさに満ちたエクスペリメンタル・ポップを展開。また同作は第63回グラミー賞のベスト・ダンス/エレクトロニック・アルバム部門にノミネートされている。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: ARCA
title: Madre (Maxi-Single)
release date: NOW ON SALE

https://arca.ffm.to/madre

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: ARCA
title: KiCk i
release date: 2020.07.17 Fri On Sale

国内盤CD
国内盤特典:オリジナルステッカー封入/解説書・歌詞対訳封入
XL997CDJP ¥2,200+tax
LE1488CDJP ¥2,200+税

BEATINK.COM:
https://beatink.com/products/detail.php?product_id=11126

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B088V97ZMJ
Tower Records: https://tower.jp/item/5056406/
HMV:https://www.hmv.co.jp/product/detail/10933205

DJ Hell - ele-king

 ドイツのヴェテラン、DJヘルが3年ぶりにニュー・アルバムをリリース……するのだが、これがとても興味深いことになっている。
 ジミ・ヘンドリックスにはじまり、ロン・ハーディ、クラフトワーク、エレクトリファイン・モジョ、ギル・スコット=ヘロンと、ハウスやテクノへと至るブラック・ミュージックの歴史を追うような曲名が並んでいるのだ。「過去、現在」のあとに「未来なし」と続くタイトルもなにやら思惑がありそうで気になってくる。これは、2020年という激動の一年を受けて思いついたコンセプトだろうか?
 日本盤は1月20日に〈カレンティート〉から発売されています。

ドイツのテクノを代表する巨匠のオールドスクール回帰な円熟の新作

ヨーロッパを代表するエレクトロニック・プロデューサー、DJヘルによる古き良きハウスやテクノへのオマージュを捧げたニュー・アルバム。
シカゴ、ニューヨーク、デトロイトからクラフトワークまで、さまざまなトピックを編み込んだ、ダンス・ミュージックの教科書のような快心の一枚。
ヘルが新たに立ち上げた新レーベル〈The DJ Hell Experience〉からのリリース。

アーティスト:DJ HELL
アルバム・タイトル:House Music Box (Past, Present, No Future)
商品番号:RTMCD-1468
税抜定価:2,200円
レーベル:The DJ Hell Experience
発売日:2021年1月20日
直輸入盤・帯/日本語解説付国内仕様

収録曲(デジタル版とは曲順が異なります)
1 Jimi Hendrix
2 Hausmusik
3 G.P.S
4 Freakshow
5 Electrifying Mojo
6 Out Of Control
7 The Revolution Will Be Televised
8 Tonstrom

◆ドイツのベテランDJ/プロデューサー、DJヘルの、『Zukunftsmusik』(2017年)以来となる新作アルバム(通算第六作)が完成。

◆前作のエレクトロ路線から一転、今回は、シカゴやニューヨークのハウス・ミュージック、デトロイト・テクノ、それらのルーツであるクラフトワークの電子音楽など、古き良き時代のさまざまなトピックをそこかしこに編み込んだ、ダンス・ミュージックの教科書のような仕上がりに。

◆硬くて冷たい無機質なビートとベース・ラインと鮮やかなコントラストを描く煽りのきいたキラーなシンセ・リフ。フロアの炎上を加速させるEBMマナーの先行シングルの “Out Of Control” は、スパイク・ジョーンズ監督の映画『マルコヴィッチの穴』からインスピレーションを得たというサイボーグなビデオも最高!

◆ジミ・ヘンドリックス生前最後のインタビューを引用した “Jimi Hendrix”、ロン・ハーディーへのオマージュを込めた “Freakshow”、オールドスクールなシカゴ・ハウス&アシッドをヘルの流儀で再構築したタイトルもそのものズバリな “House Music”、クラフトワークの自動車モチーフを取り入れた “G.P.S”、デトロイト・テクノの誕生に大きな影響を及ぼした伝説のラジオDJの名を忍ばせた “Electrifying Mojo”、ギル・スコット・ヘロンを見事にハウス化した “The Revolution Will Be Televised” などなど、いずれのトラックも、懐かしさを含みつつも、現在進行形のダンス&エレクトロニック音楽としてのパワーや機能性も、抜群。

◆ヘルが新たに立ち上げた新レーベル〈The DJ Hell Experience〉からのリリース。

https://www.djhell.de/

Smerz - ele-king

 2018年の鮮烈な「Have Fun」を覚えているだろうか。「楽しんで」と言いながらひずんだビートでダークな世界を構築、そこに気だるげなヴォーカルを乗っけてみせるノルウェイのふたり組、スメーツがついにファースト・アルバムをリリースする。
 タイトルは『Believer(信者)』とこれまた意味深だが、ホラー・ポップとでも形容すればいいのか、あの不穏なのに人を惹きつけてやまない独特なサウンドは健在のようで、ただいま表題曲が先行公開中。なんでもヒップホップやR&Bに北欧の民族音楽やオペラが混じったアルバムに仕上がっているそうで……なお、日本盤には「Have Fun」全曲が追加収録されるとのこと。楽しみです。

Smerz
醒めた寓話は、ノルウェーの森でトランスする…
ビョークのポップと狂気を引き継ぐ大器スメーツ
待望のデビュー・アルバム完成。

2017年にデビューを果たし、翌年にリリースしたEP作品「Have Fun」で世界を震撼させたカタリーナ・ストルテンベルグとアンリエット・モッツフェルトによるノルウェーのデュオ、スメーツが待望のデビュー・アルバム『Believer』を〈XL Recordings〉より2021年2月26日にリリース。同作よりタイトル曲のMVが公開された。

Smerz - Believer
https://www.youtube.com/watch?v=bHp3dnAQAFc

スメーツらしい不穏にシンコペートするビートと白昼夢のように美しいストリングス、そして完成までに2年を要したリリックを彼女たちらしい醒めたヴォーカルでなぞった「Believer」のMVは、ベンジャミン・バーロンが監督を務め、ブロール・オーガストが衣装を担当。2020年に発表されたアルバム・トレーラー、先行シングル「I don’t talk about that much/Hva hvis」に続いて、北欧の民族舞踏ハリングダンス、ノルウェーの田舎の緑豊かな風景をピーター・グリーナウェイの演出のような絵画的なスタイルで表現する一方で、ラース・フォン・トリアーの映画『ドッグヴィル』のミニマルな演出を引用するなどアルバムの一連のヴィジュアルとしてノルウェー文化と芸術の歴史におけるノスタルジーとロマン、そして狂気を築き上げた。

近年、盛り上がりを見せるノルウェー地下のクラブ・シーンとも共振しながら、トランスやヒップホップ、R&Bと自身のバックグラウンドである北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、ミュージカル、クラシックのハイブリッドとして産み落とされた衝撃のデビュー・アルバム『Believer』は2021年2月26日に世界同時リリース。日本盤CDには解説及び歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックとして人気作「Have Fun」収録の全8曲が初CD化音源として追加収録。輸入盤CD/LPとともに本日より各店にて随時予約がスタートする。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: Smerz
title: Believer
release date: 2021/02/26 FRI ON SALE

国内盤CD
国内盤特典:ボーナス・トラックとしてEP「Have Fun」全8曲収録
解説書・歌詞対訳封入
XL1156CDJP ¥2,200+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11668

interview with Bicep - ele-king


Bicep
Isles

Ninja Tune / ビート

HouseTechno

Amazon Tower HMV iTunes

 前作から約3年半程のインターバルをおいて「上腕二頭筋の2人組」が2枚目のフル・アルバムを発表した。またも〈Ninja Tune〉からのリリースである。〈Ninja Tune〉とバイセップの相性はとても良さそうで、特定のジャンルに囚われないスタイルや、どこかギークっぽい部分も見せながら洗練されたサウンドやデザインが光る部分など共通項はとても多い。彼らの代名詞とも言えるブログ「FeelMyBicep」もペースが早まることもなければ遅くなることもなく、黒い無機質なバックグラウンドのブログページに毎月淡々と自分たちが気に入ったアーティストのミックスや音源を紹介していくスタイルは2008年にスタートさせた当初から何も変わっていない。イギリス国内で1万人規模の公演チケットを即完売させるまでの人気に上り詰めても地に足をつけた活動があるからこそ、彼らのアイデンティティーはブレることなくより先へ先へと進化していくのだろう。
 そんな彼らが2枚目のアルバムにつけたタイトルは『Isles』。出身地である島国の北アイルランドはベルファストから飛び出して、世界を飛び回り続けた2人が自身のキャリアやアイデンティティーを振り返って作ったとされる今作にはどんなメッセージが込められているのだろうか? アルバムの制作秘話だけでなく、近年の活動やコロナ禍で変化したライフスタイルやマインドなどに迫ってみた。(Midori Aoyama)

必ずしもクラブで盛り上がるものに縛られる必要はないという考え方だったんだよ。曲には長生きしてもらいたいから、まずは曲としてのしっかりとした土台を作って、それを発展させていこうと。(アンディ)

前アルバムから約3年での新しいリリースです。アルバムのプロモーションやリリース・ツアーなど多忙ななか、どのようなキッカケやモチベーションで今作に挑んだのでしょうか?

マット・マクブライアー(以下マット):2019年の1月にツアーが終わって2週間休んで、そのあとすぐにスタジオに入ったんだ。そのあと4ヶ月くらいはツアーの予定がなかったから、毎日スタジオに通って、特に曲を書こうということもなく、4ヶ月ひたすら楽しんでジャムっていろいろアイデアを試したり、毎日違うことをやって、デモの分量もすごいことになって。ただし20秒くらいの短いアイデア程度のものばかりだったけどね。

具体的にアルバムの制作にかかった期間はどれくらいですか?

マット:そんな感じで4ヶ月くらいいろいろ試して、2019年の夏あたりにアルバム制作に向けてアイデアがまとまりはじめて、とはいえそのあとも結局8、9ヶ月ほどかけて、完成したのは2020年の2月くらい。だから1年と1、2ヶ月だね。

いままでのプロダクションで見せたいわゆるストレートなハウスやディスコというよりも、UKガラージやブロークンビーツ、レイヴ・サウンドがさらに色濃く表現されているように感じました。アルバム全体のサウンドやコンセプトで特に気をつけた部分はありますか?

アンディ・ファーガソン(以下アンディ):たしかに制作過程の早いうちに、あまり四つ打ちやハウスは入れないようにするっていうのを決めたんだ。というのもそういうのをやりたければライヴでいつでもできるから。だからアルバムにはもっといろんなビート・パターンやサウンド・デザインに時間をかけて作って、必ずしもクラブで盛り上がるものに縛られる必要はないという考え方だったんだよ。それでかなり自分たちを解放できた部分はあったと思うし、自由にやれたと思う。アルバムのコンセプトとしては、アルバムとして家で聴くヴァージョンがありつつ、ライヴで曲を発展させていこうっていう。というのも前作も2年ツアーしてるうちに最終的にはかなり違うものになってて、それがすごく面白かったからさ。曲には長生きしてもらいたいから、まずは自由に曲としてのしっかりとした土台を作って、それを発展させていこうということだね。

冒頭の “Atlas” ではイスラエルの歌手オフラ・ハザがサンプリングされています。この曲で彼女を使おうと思ったのはなぜでしょう?

マット:彼女はイタロ・ディスコのレコードを作ったことがあって、それを聴いたのがきっかけ。ちなみに bicepmusic.com って僕らのサイトに特設サイトを作って、今回使ったサンプルをどこで見つけたかとか全部書いてあるよ。かなり詳しく書いてあって便利だからぜひチェックしてみて。

(訳注:以下ウェブサイトより抜粋→彼女のアルバム『Shaday』に収録された “Love Song” というアカペラ曲を聴いて、カタルシスを生むそのエネルギーに圧倒され、その声をサンプラーに取り込み、それが “Atlas” の出発点となった)

いろんな音楽をディグるのは本当に面白い。でもそこに自分たちの印を刻みたいとも思ってるんだ。あまりその影響を濃くしすぎないようにはしてる。ひとつのルーツだけではなくいろんなものがせめぎ合ってる感じを出そうと。(アンディ)

シングル曲 “Apricots” には Gebede-Gebede “Ulendo Wasabwera Video 1” と The Bulgarian state radio & television choir “Svatba (The Wedding)” がサンプリングで用いられていますね。両者の声がうまい具合に同居して独特のグルーヴを生んでいますが、かたやアフリカの音楽、かたやベルギーの合唱です。対照的な素材ですが、これらの民族音楽をこの曲で同時に使おうと思ったのはなぜでしょう? また、それらの音源にはどのように出会ったのですか?

マット:“Apricots” は元々インストゥルメンタル曲で、ストリングスとコードだけだったんだ。多くの場合僕らはピアノで曲を作りはじめて、実際の音楽を先に考えて、あとからそれを速くしたり遅くしたりといった提示方法を考えるんだよ。というわけでコード進行がまずあって、そこからいろいろアイデアを試したんだけど、どれもうまくいかなくて、たしかブルガリアのサンプルが先だったと思うけど……まあここ10年くらい、ダンス・ミュージックを作るようになってからというもの、スポンジみたいにいろんなものを吸収してきて、レコード・ショップに行くたびに、クラブでかけたいレコードだけじゃなくてサンプルに使えそうとか、つねに獲物を追いかけてる感じなんだよ。しかもロンドンに住んでるから世界中のあらゆるカルチャーに触れることができるし、あらゆる音楽を聴くことができる。店で耳にした曲が気になったら Shazam して、つねに探しててさ。というわけで僕らのパソコンに入ってるライブラリーは膨大なものになってて、曲を作ってて煮詰まったりするとライブラリーをチェックして、これはいいかもと思ったらサンプラーに取り込んでピッチをいじって。ただ問題は、それをやっても95%は失敗すること(笑)。“Apricots” はおそらくサンプルを組み合わせてうまくいった最良の例じゃないかな。ふたつ掛け合わせてうまくいくことなんてほとんどないからさ。世界の全然違う場所の、全然違うヴォーカル・スタイルがうまい具合に対照をなしているんだよ。

似たような合体の試みをしていたアーティストに、アフロ・ケルト・サウンドシステムがいます。彼らの音楽は聴いたことがありますか?

アンディ:知らなかったけど、ケルトとアフリカ音楽ってそれ最高だな! 聴いてみる!

“Atlas” のサンプルも “Apricots” のサンプルも、いわゆる西洋のポップ・ミュージックではないものです。“Rever” や “Sundial” などのヴォーカルもエキゾチックさを感じさせます。そこは意識的にそういう素材選びをしたのでしょうか? たまたまですか?

アンディ:さっきマットも言ってたけど、ロンドンに住んでるからあらゆる音楽を吸収するんだよね。そうやっていろいろ聴いたものが自分が作る音楽にも反映されるんだと思うし、ただあくまで自分たち独自のハイブリッドにしたいというのはある。ふたりともノースイースト・ロンドンに住んでて、文化的にとんでもなく多様な街だし、通り過ぎる車からも通りがかった店からも世界中の音楽が聴こえてきて、フェスティヴァルがあってカーニヴァルがあって、そういう環境でいろんなカルチャーのいろんな音楽をディグるのは本当に面白い。でもそこに自分たちの印を刻みたいとも思ってるんだ。あまりその影響を濃くしすぎないようにはしてるんだ。それは自分たちの曲を作ってるときもそうで、あまりにトランスっぽすぎるなとかディスコっぽすぎると感じたら、ちょっと違う方向に持ってったりして、ひとつのルーツだけではなくいろんなものがせめぎ合ってる感じを出そうとしてる。たとえばヴォーカルがインドだったら他の要素はインド感ゼロにして対比させるとかね。他の文化の音楽を複製しようとしてるわけじゃないからさ。

UKガラージ風の “Saku” には Clara La San が参加しています。彼女は〈Hyperdub〉の DVA の作品やイヴ・トゥモア作品への参加で知られるシンガーですが、この曲で彼女を起用しようと思ったのはなぜ?

アンディ:たしか Spotify で彼女を見つけたんだよ。自分たちが探してた声の特徴がいくつかあって、それで彼女の声を聴いたときに、何と言うか、間違いなく僕とマットが「これぞ90年代のR&Bだ!」って共感できるようなものだった。それで連絡取りたいとなって。僕らのように音楽を作ってて歌えないとなると(笑)、つねに頭のなかで歌を想像してるんだけど、彼女の声は瞬間的に僕の頭のなかの空白を埋めてくれたんだよ。

マット:それにコントラストが大事だから、彼女の声って僕らの音楽とすぐに結びつくようなものではなくて、それが面白いと思ったんだよね。昔のR&Bというか、甘くていい感じで、“Saku” のあの岩のごとく堅牢なドラムと彼女の声が、まさに僕らが求めるコントラストだったんだ。

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ライヴ中にちょっとミスっても次の日誰も覚えてないけど、ストリーミングだとビデオカメラで録画されてて最悪(笑)。運転免許の試験みたい。ライヴってそもそもの趣旨がライヴであって、記録じゃないんだよね。(マット)


Bicep
Isles

Ninja Tune / ビート

HouseTechno

Amazon Tower HMV iTunes

今作も〈Ninja Tune〉からのリリースになりますが、レーベルから特別なオーダーはありましたか?

アンディ:いや、レーベルからは全然なくて、むしろ自分たちの目指すところがあって、ファースト・アルバムの成功があったから、その前作の感じを引き続き楽しんでもらいたいっていう思いと、新しいものを提示したいという思いの狭間でどうしようかという。でも〈Ninja〉はこっちから送るものに対してはものすごくオープンだった。

おふたりもレーベルを運営されていますが、自分たちのではない別のレーベルからリリースすることのメリット、デメリットはなんでしょうか?

マット:僕らのレーベルはいわば愛で成り立ってるもので、商業面はまったく考えてないんだ。かなりアンダーグラウンドな音楽を中心に扱ってて、ラジオでかかるような音楽を狙ってるわけではなく、DJ向けのアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックだからさ。自分たちが出会った無名のアーティストを育てるのも素晴らしいことだしね。一方〈Ninja〉が組織としてやってることはまさに驚異的で、彼らがやってるような仕事を自分たちがやるなんて絶対に不可能だよ。

アンディ:だね。つねに新しいアイデアを提案してくれたり、僕らのアイデアを具現化してくれたりするんだよ。多くの場合、〈Ninja〉が音楽以外の、たとえばアルバム・カヴァーのデザインだったり諸々の負担を軽くしてくれて、自分たちは音楽に集中できるんだ。

Instagram を通してスタジオの風景やカスタムした機材を鳴らしたりしてますね。フローディング・ポインツリッチー・ホウティンがDJミキサーをプロデュースしたように、いつか自分たちオリジナルのミキサーやシンセサイザーを作ってみたいと思ったことはありますか?

アンディ:お気に入りの機材って結構1、2ヶ月で変わったりして、それが面白いというか、音楽を作る上で新たな機材から刺激を受ける部分はあるんだよ。僕らは古い機材も好きだしモジュラーシンセのような現代的なものも両方好きなんだけど、基本的にはモジュラーシンセがオリジナル機材のようなものだよね。自分で組み合わせて新しく追加できるから。それに音楽を作る際にシンセをそのままで使うことはほとんどなくて、たとえばギターペダルを3つかませたりしてつねに独自の音を作ろうとしてるんだ。

マット:そうだね、モジュラーがあればいいかもな。あと今作で結構やろうとしてたのが、たとえば実際の80年代のシンセサイザーを使ってそれをモジュラーにフィードしてある種のハイブリッドな音を生み出すとか。“Atlas” なんかはそういう40年もののテクノロジーと最新テクノロジーから生まれた交配種なんだ。

9月におこなわれた『BICEP LIVE GLOBAL STREAM』も素晴らしい反響があったようですね。過去のインタヴューで「クラウドが大きいほど緊張する」と言っていたのを拝見しました。観客が目に見えないライヴ・ストリーミングは緊張しましたか?

アンディ&マット:さらにひどかったかも(笑)。

アンディ:観客の数はストリーミングの方が多いかもしれないのに、その場にはマットと僕以外誰もいないっていう。普段はステージ上で雑談したりしてるんだけど……

マット:大体ステージ前は軽く飲んだりしてるけど、ストリーミングはめちゃくちゃ明るいところでシラフでさ。あと普段ならライヴ中にちょっとミスっても次の日誰も覚えてないけど、ストリーミングだとビデオカメラで録画されてて最悪(笑)。ライヴってそもそもの趣旨がライヴであって記録じゃないんだよね。

アンディ:大きいクラウドを前にしたときの緊張とは全然種類が違う。

マット:なんか運転免許の試験みたいな感じ。

2月に予定している2回目のライヴストリームではロンドンのサーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery)を舞台にすることが決まっていますね。ふたりにとってこの場所への特別な想いはありますか?

マット:というか一般論としてロンドンには無数にアート・ギャラリーがあって、つねに展示が入れ替わってて目新しいものが見れるから、ふたりとも休みのときにギャラリーを巡るのが好きなんだよ。だからギャラリーが閉まってるこの時期にそこを使うっていうのは自分たちにとっては理にかなった選択だった。というか、空っぽのギャラリーを使える機会なんておそらく二度と訪れないだろうからね。特にサーチ・ギャラリーなんてさ。パンデミックによっていろいろ最悪なことが起こってるけど、サーチ・ギャラリーを使えることは唯一僕らにとって良かったことだな。

アンディ:空っぽのギャラリーを歩き回って録音してみると、いまの世の中の不気味で奇妙な感じが反映されてすごく興味深いんだよね。だからある意味でいまライヴストリームをやるには完璧な場所だと思う。

僕らの地元の北アイルランドもすごく美しいところで、ほとんどが田舎で丘や山や海だし緑が多いからその影響も受けてると思う。それは自分の一部であり、そういう風景のなかで育ったからさ。(マット)

コロナ禍で突如いままでと違った生活様式をしいられることになりましたが、2020年の1年を振り返って生活面で何か変わったことはありましたか?

マット:まずふたりとも以前よりも健康になったと思う。たくさん寝てるし。ツアー中は必然的に空港で食事したり、ほとんど寝れなかったりして、アドレナリンが出てる状態で生きてて。去年はそれがなくなって、ゆっくり食事したり、睡眠のサイクルもいい感じになって、規則正しい生活になってさ。それは非常にポジティヴな変化だね。

アンディ:あと一歩引いて自分たちが音楽でやりたいことや楽しいと思うことについてじっくり考えられた。もちろんツアーが恋しいっていうのはあるけど、もし元どおりになったら(元どおりになって欲しいけど)、そのときはそれを当たり前だと思わずに感謝の気持ちが芽生えるだろうと思う。それにツアーがあるときは見落としていた、他の大事なことにも目を向ける必要があるっていうことも改めて考えたしね。

Instagram で拝見しましたが、夏にアイルランドの自然の写真も掲載していましたね。自然や地元の風景、スタジオやクラブとかけ離れた空間が自分たちの音楽に与える影響はありますか?

マット:それは間違いなくある。

アンディ:うん。曲を書いているときはいろんな風景を想像するんだよ。クラブでかかってるところはあんまり浮かばないかもね。これはアイスランドで雪が降ってるなかを歩いてる感じとか、アイスランドに行ったことはないんだけど想像したり(笑)。

マット:機材持ってノルウェーやスウェーデンの北の方まで行って氷河を眺めながらEP作りたい、っていうのはずっと言ってるね。

アンディ:リアルじゃない、記憶と想像が生み出す氷河でもいいのかもしれない。

マット:まあ逃避だよね。でも僕らの地元の北アイルランドもすごく美しいところで、ほとんどが田舎で丘や山や海だし緑が多いからその影響も受けてると思う。それは自分の一部であり、そういう風景のなかで育ったからさ。ベルファスト出身だけど、実はベルファストも緑が多いんだよ。

アンディ:普段は気づかないけどね。でも世界を旅してみるとアイルランドの緑の多さに改めて気づくよ。

制作のスピードもさることながら、並行してブログの更新やレーベルのリリースも引き続き精力的ですね。「Feel My Bicep」としての2021年の予定を教えてください。

マット:今年はレーベルにも力を入れて行こうと思ってる。いくつかリリースが控えてるんだ。それ以外は基本的にスタジオに入っていろいろ実験しながらやってみようと思ってる。あとダンスフロア向けのものを書くつもり。最近あまりそっちにフォーカスしてなかったからね。

この3つの上腕二頭筋のロゴがここまで大きな存在になると、ふたりで音楽をはじめたときは想像していたでしょうか? 

アンディ:それちょうど今日話してたんだよ。あのロゴはマットが10年前に20分で描いたものなんだ(笑)。

マット:あとでもっといいロゴを考えるつもりだったんだけどね。すごいシンプルだし、シチリアとかマン島とかいろんな旗に似てて、3つの上腕二頭筋ってアイデアは別にオリジナルじゃないんだよ。でもまあロゴだからシンプルな方がいいんだよね。

アンディ:あと、完璧じゃないから不思議なバランスが生まれてるところもいい。

マット:手描きだから左右対称じゃないんだよ。若い頃って無邪気であんまり深く考えてないからさ。でも丸だからデザイン的に使いづらいこともあって、Tシャツにはいいんだけど、バランスをとるのが難しいんだ。

最後に、日本でも多くのファンがアルバムのリリースを楽しみにしています。オーディエンスに向けてメッセージをお願いします。

マット:日本の人たちに聴いてもらうのがめちゃくちゃ楽しみだし、このアルバムを楽しんでくれることを願ってる。それからまた日本に行ける日を待ち望んでる。日本は僕らが大好きな国のひとつで、行くたびに最高の時間を過ごしているんだ。あと、みんな安全に過ごしてほしい。

Telex - ele-king

 もやもやしていらいらしてすっきりしないこの時代、免疫力が下がりそう。それじゃまずいと、遊び心たっぷりの音楽を紹介しましょう。クラフトワークにドナ・サマーそしてYMOと、テクノ・ポップ時代の幕開けの時にベルギーのブリュッセルで結成されたトリオ、テレックスは、ガーディアンいわく「隠された財宝」だ。シングル「モスコウ・ディスコウ」は日本でもヒットしているのでご存じの方も少なくない。ちなみに彼らのデビュー・アルバムの邦題ってなんだったか憶えていますか? 『テクノ革命』です(笑)。しかし、これはあながちはったりでもなかったりする。
 テレックスは、バンド結成前にすでにキャリアのあったミュージシャンの集合体だった。中心人物であるマルク・ムーランは、レアグルーヴ・ファンにはお馴染みのジャズ・バンド、Placeboのメンバーだった人。ダン・ラックスマンは70年代初頭からモーグを操るベルギーのシンセサイザー音楽の草分け的存在。もうひとりのミシェル・ムアースはポップス畑の作曲家。テレックスはすでに音楽を知っていた大人たちによって結成されたバンドだった。ゆえに、その作品はプロフェッショナルに作られている。
 テレックスの音楽をガーディアンはマイケル・ジャクソンの“ビリー・ジーン”、ないしはニュー・オーダー、あるいはダフト・パンクにも繫がる回路を持っていると分析しているが、ふざけているように見せながらも、テレックスの音楽性はしっかりしているのだ。もちろんテレックスの最大の魅力は脱力感とユーモア。例えばロックンロールをテクノでやっているところなんかは、〈Mute〉の創始者ダニエル・ミラーのプロジェクト、シリコン・ティーンズの先をいっている。

 この度、昨年はカン再評価を促したミュート/トラフィックが再発シリーズ第一弾『ディス・イズ・テレックス』の発売を発表した。彼らの全キャリアから選曲されたベスト盤的内容で、ここには未発表だったビートルズのカヴァーも収録される。さあ、テクノ革命の再スタート、注目のリリースは4月30日です。

テレックス (Telex)
ディス・イズ・テレックス (this is telex)

Mute/トラフィック
発売日:2021年4月30日(金)
定価:2,400円(税抜)
新ミックス+リマスター作品


Tracklist
1. The Beat Goes On/Off *
2. Moskow Diskow
3. Twist à Saint-Tropez
4. Euro-vision
5. Dance To The Music
6. Drama Drama
7. Exercise Is Good For You
8. L’amour toujours
9. Radio Radio
10. Rendez-vous dans l’espace
11. Beautiful Li(f)e
12. The Number One Song In Heaven
13. La Bamba
14. Dear Prudence *
15. Moskow Diskow (English Version)**
16. Eurovision (English Version) **
*未発表曲
**日本盤ボーナス・トラック

■テレックス(Telex)
1978年、ベルギーのブリュッセルで結成したシンセポップ・トリオ。メンバー:ダン・ラックスマン、ミシェル・ムアース、マルク・ムーラン(2008年逝去)。シンセポップのパイオニア。1978年、シングル「モスコウ・ディスコウ」を、翌年1979年にはデビュー・アルバム『テクノ革命』を発売。1980年、シングル「ユーロヴィジョン」収録の2ndアルバム『ニューロヴィジョン』を発売。1981年、スパークスが参加した3rdアルバム『Sex』を発売。その後も新たなテクノロジーの発展の中、自らの本質を失うことなく、むしろ革新的な作品を次々と発表していった。2006年、カムバック作『How Do You Dance?』を発売。2008年、マルク・ムーラン逝去。2021年4月、MUTEより再発シリーズ第一弾『ディス・イズ・テレックス』発売。

1st アルバム: Looking For St. Tropez (『テクノ革命』)(1979年)
2nd アルバム: Neurovision(1980年)
3rd アルバム『Sex』(1981年)
4th アルバム: Wonderful World(1984年)
5th アルバム: Looney Tunes(1986年)
6th アルバム: How Do You Dance?(2006年)

レコードは死なず - ele-king

アナログ盤はメディアではない、人生そのものである!

若き日パンクに心酔した僕は
いまでは妻子あり貯金無し、四〇代半ばのフリーランサー、
はたして自分の人生、これで良かったのか!?
僕の常軌を逸した究極のレコード探しがはじまった

嘘のような本当にあった話、
“『ハイフィデリティ』の実話版” と評されたベストセラー!!

序文:ジェフ・トゥイーデイ(ウィルコ)
装画:よしもとよしとも

四十五才の子持ち男の “僕” は、大手の雑誌で著名人とのインタビューなどもこなしているが、収入はまるっきり不安定。
毎月綱渡りしながら妻と交代で愛息の面倒をみる日々だ。
何を失くし、どうやってここまできたのかもすでによくわからなくなっている。
ところが取材相手のクエストラヴから、今まで買ったレコード盤は全部大事に持っていると聞かされて、いてもたってもたまらなくなった。
そんなもの、自分はとっくに売り払ってしまっていたからだ。
そしてカーラジオから流れ出した、その日二度目の「リヴィング・オン・ア・プレイヤー」が心のどこかに火をつけた。取り戻さなくちゃ。
何を? 何のために?
それすらも定かではないままに、僕のいわば “アナログ盤クエスト” が幕を開けた──。

●出てくるアーティストの一例
ハスカー・デュ、リプレイスメンツ、キッス、ニューヨーク・ドールズ、シュガーヒル・ギャング、ピクシーズ、ローリング・ストーンズ、ボン・ジョヴィ、ザ・キュアー、ジョイ・ディヴィジョン、ビリー・ジョエル、イギー・ポップ、ザ・スミス、デッド・ケネディーズ、ニルヴァーナ、ソニック・ユース、アニマル・コレクティヴにディアハンターまで、膨大なロック系

●著者について
エリック・スピッツネイゲル(Eric Spitznagel)
シカゴ在住。『エスクワイア』『ローリング・ストーン』『ニューヨーク・タイムス』『ビルボード』などに寄稿する売れっ子ライター。著書はすでに6冊あり、そのうちの1冊はドイツでも翻訳されているが、2016年に出版された本書がもっとも有名。

目次

本書の巻頭に置かれたこの文章が、そこまでまるっきりイカれている訳でもない、その説明とでもいったほうがよさそうな序文的何か(ジェフ・トゥイーデイ)

はじめに

One
Two
Three
Four
Five
Six
Seven
Eight
Nine
Ten
Eleven
Twelve

謝辞

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Outro Tempo II - ele-king

 テクノ、アンビエントなど80年代の埋もれたブラジル音楽に光を当てた〈Music From Memory〉の良コンピ『Outro Tempo: Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992』が出たのは2017年。2年後の2019年には続編『1984-1996』もリリースされているが、そのヴァイナルがヒットしたようで、このたびCD化されることになった。めでたい。
 今回もまた、電子音やパーカッションなどを駆使したじつに多種多様な音楽が収録されているのだが、前作が熱帯雨林の奥地だとしたら、第二弾のほうは都市(サンパウロ)だ。MPBが吸引力を失った時代に、インディペンデントで新たな時代を切り拓こうとした音楽家たちの試行錯誤の記録──たとえば、ジョン・ゴメスの解説によれば、ベベウ・ジルベルト『Tanto Tempo』のプロデュースで知られるスバが参加したエヂソン・ナターリの “Nina Maika” は、ボスニア民謡を取り入れることで新たな価値観を呈示した、象徴的な曲なのだという。そういった歴史や文化的背景を知ることができるライナーノーツの翻訳が読めることも、本盤の長所だろう。
 ヴァイナルには未収録の2曲も追加されているので、アナログ盤をお持ちの方も要チェックです。

ミュージック・フロム・メモリーのヒット企画『Outro Tempo』の続編

ベッドルーム、ダンスフロアやアンビエントなどをまたいだ10年代以降の新たな流れ、そのリイシュー側における先駆者であったミュージック・フロム・メモリーの大ヒット企画『Outro Tempo』の第2弾が待望のCD化。
電子音楽、ジャズ、ニューウェイヴにブラジルのローカル・モード。今回もまたいい具合に多くの要素が入り混じった稀有なミクスチャ・サウンドのオンパレード。脱帽です。

V.A.
Outro Tempo II
- Electronic And Contemporary Music From Brazil 1984-1996

Music From Memory
RTMCD-1454
2,500円
CD2枚組
12月10日発売
輸入盤国内仕様(帯・英文解説対訳付)

CD1
01 MAY EAST – MARAKA
02 DEQUINHA E ZABA – PREPOSIÇÕES
03 OHARASKA – A FÁBULA
04 FAUSTO FAWCETT – SHOPPING DE VOODOOS
05 R. H. JACKSON – O GATO DE SCHRÖDINGER
06 EDSON NATALE – NINA MAIKA
07 AKIRA S – TOKEI
08 LOW KEY HACKERS – EMOTIONLESS
09 BRUHAHÁ BABÉLICO – BRUHAHÁ II *** bonus track
10 CHANCE – SAMBA DO MORRO
11 JORGE DEGAS & MARCELO SALAZAR – ILHA GRANDE

CD2
01 PRISCILLA ERMEL – AMERICUA
02 VOLUNTÁRIOS DA PÁTRIA – MARCHA
03 ANGEL’S BREATH – VELVET
04 FAUSTO FAWCETT – IMPÉRIO DOS SENTIDOS
05 INDIVIDUAL INDUSTRY – EYES *** bonus track
06 CHANCE – INTRO-AMAZÔNIA
07 TETÊ ESPÍNDOLA – QUERO-QUERO
08 NELSON ANGELO – HARMONÍA DE ÁGUA
09 JORGE MELLO – A NATUREZA REZA
10 JÚLIO PIMENTEL – GERSAL
11 TIÃO NETO – CARROUSEL

 ドカッカ ドンツド ツカンド カンカン! こんなのよく思いつきましたな。まさかのTR-808をモチーフにした児童書『エイト・オー・エイト -声と手拍子で遊ぶリズム絵本-』が1月26日に発売される。

 突如ブラックホールに吸い込まれてしまったエイトくんが、そこから脱出すべく、なかよしになったポンピちゃんといっしょに、いろんなリズム遊びを実践していく、というお話。
 さいしょはシンプルな4/4からはじまるものの、ソン・クラーベにシンコペーションにポリリズムにと、これがけっこうガチなのだ。子どもだけじゃない、大人もつい手を叩きたくなってしまう、練りこまれた1冊に仕上がっている。ドカッカ ドンツド ツカンド カンカン!

 著者は、押井守『うる星やつら』の主題歌 “ラムのラブソング” の作曲者として知られるキイボーディストの小林泉美。そして絵を担当したのはなんと、アブカディム・ハック! 昨年『The Book of Drexciya Vol.1』を刊行したばかりのハックだが、本書でもその才は遺憾なく発揮されていて、眺めているだけでもとっても楽しいです。

 なお、この本をつくったのは初代ele-kingの編集者だった大森琢磨。彼の斬新な発想力にも拍手を。

『エイト・オー・エイト - 声と手拍子で遊ぶリズムの絵本 -』
伝説のリズムマシン、TR-808をモチーフにした
リズム遊びと物語の児童書 発売のお知らせ

monogon(モノゴン)は、ローランド株式会社の協力のもと、
世界で愛されるリズムマシンTR-808をモチーフに、掲題の書籍を制作。
2021年1月26日(火)に正式発売します。

子どもたちに、リズムの素朴な楽しさと奥深さを伝える内容であると同時に、
その実、まったく新しいカテゴリの書籍となっています。

書誌情報
書名:エイト・オー・エイト -声と手拍子で遊ぶリズム絵本-
定価:本体3,800円+税
判型:A4判
頁数:28ページ
仕様:リング製本
付録:紙製仕掛け付録「TR-808」付き
ISBN:978-4-9911538-0-8 C8773
対象年齢:小学1年生〜

2021年1月26日(火)
発売予定

■取り扱い
全国書店(トランスビュー取引代行)、
Amazon、楽天ブックス、monogonwebサイト直販

本書の「8つ」のポイント
①ありそうでなかった“リズム脳育”児童書!?
②モチーフは、リズムマシンの金字塔、RolandのTR-808
③「ラムのラブソング」の作曲者として知られる天才、小林“ミミ”泉美が執筆!
④子どものリズム感を養い、リズムの構造理解を促すリズム遊びを収録
⑤デトロイト・テクノのレジェンド、A.QadimHaqq描き下ろしによるイラスト
⑥オリジナルのリズム・パターンを作って遊べる紙製ふろく「TR-808」が付属
⑦リズムと多元宇宙をテーマにした奇想天外な物語
⑧帯文は、電気グルーヴの石野卓球氏!

◆“リズム脳育”児童書!?

右脳的な知覚、左脳的な概念理解、そして声や手拍子を用いた身体表現。
これらをシンクロすることではじめて成立する本書のリズム遊びは、あたまと体を使う一種の知的な体操です。
もちろん、予備知識は一切必要ありません。

これまで多くの音楽児童書は、リズムと銘打つものも含めて、実は歌とメロディが内容の中心でした。
対する本書の主役は、まさにリズムそのもの。
音楽が鳴りはじめれば、誰が教えた訳でもないのに、
手足でリズムをとり、居間のテレビ正面のステージで一心不乱にダンス。
そんなすべての子どもたちのための、ありそうでなかった児童書です。

子どもがひとりで、あるいは家族や友だちと、声と手拍子のリズム遊びをすることで、リズム感を養えるだけでなく、拍や小節、テンポ、グルーヴ、パートの概念といったリズムの基本構造も学ぶことができます。

◆モチーフは日本が世界に誇るリズムマシン、TR-808

言わずと知れた世界のスーパースタンダードTR-808は、発売から40年以上が経過した今でも、そのサウンドを耳にしない日がないほどです。
'80年代前半にヒップホップ、ハウス、テクノの創始者たちが使いはじめ、新しい音楽誕生のきっかけをもたらしたことから、ダンスミュージックを象徴するアイコンとしても、世界中で愛されています。
本書では、そんなTR-808のこの上なくシンプルなインターフェースをお手本に、カラフルなボタンからなる“808マナー”で、全てのリズムをわかりやすく表しました。

◆「ラムのラブソング」の小林“ミミ”泉美が執筆!

著者は『うる星やつら』『さすがの猿飛』『ストップ!! ひばりくん!』の主題歌で日本に「アニソン革命」を起こし、昨今のシティ・ポップの世界的流行により、あらためて注目を集める、小林“ミミ”泉美。
'70〜'80年代は、自身のバンド・ソロ活動のほか、高中正義、松任谷由実、井上陽水などのライブで腕を鳴らし、'85年に渡英。
ファンク、ラテン、アフロなどのスタイルを得意とする凄腕鍵盤奏者として、ヨーロッパを中心に現在も、ライブ活動を展開中。
そんな小林が、自身の練習法などをもとにリズム遊びを考案、執筆しました。

◆デトロイトのレジェンド、Haqqによる描き下ろしイラスト

ファンキーな表紙をはじめとする本書の全イラストは、なんとデトロイト・テクノの生き証人ともいうべき伝説的ビジュアリスト、A.QadimHaqqの手によるもの。
彼がこれまでに手掛けた数々の名盤のアートワークにも通じる独創的な世界感が、
子どもたちの感性を否が応にも揺さぶります。

◆史上初! 紙製「TR-808」付録つき

16本のバーを上下に動かしてオリジナルのリズムパターンを組むことができる仕掛け付録、その名も「TR-808」が付属します。


著者プロフィール

小林“ミミ”泉美 / 文

アニメ『うる星やつら』『さすがの猿飛』『ストップ!! ひばりくん!』など、数々のテーマ曲の作編曲と、ヴォーカルで知られる鍵盤奏者・作曲家。
1976年にASOCAを結成。1977年にメジャーデビュー後、“小林泉美&Flying Mimi Band”名義でアルバムを2枚、ソロ名義で4枚発表。
セッション・ミュージシャンとして、パラシュートや高中正義のバンドに参加するかたわら、松任谷由実や井上陽水のバックバンドでも活動した。1981年にアニメ『うる星やつら』の主題歌「ラムのラブソング」を作曲して名を広め、その後『うる星やつら』の関連曲を中心に、アニメや映画、ドラマなどの楽曲を手掛ける。
1985年に渡英後は、R&Bユニット、Moves In Motionを結成したほか、Depeche ModeやSwing Out Sisterの音源にも参加。ベルリン・ダブ・テクノのパイオニアMoritz von Oswaldとのバンド活動、Derrick Mayの作品への参加など、クラブ・ミュージックにも接点を持つ。2017年以降は、アフロ・ファンクバンド、The Scorpiosのキーボーディストとして活躍中。
シティ・ポップの世界的な流行によっても、新たな注目を集めている。

アブカディム・ハック

ミシガン州デトロイト生まれ、デトロイト育ちのビジュアル・アーティスト/アフロ・フューチャリスト。デトロイト・テクノの最重要レーベルのひとつ、Transmatでの活動を皮切りに、1989年からテクノ音楽コミュニティに貢献する。
1998年には、Underground Resistanceに加入。
これまでに、数えきれないほど多くのデトロイト・テクノの名盤のアートワークを手掛けてきた彼の活動の歴史は、すなわちデトロイト・テクノの歴史といっても過言ではないほど。彼が手掛けた代表的なアートワークは、Juan Atkins、Metroplex、Derrick May、Transmat、Underground Resistance、Kevin Saunderson、Carl Craig、Drexciyaなど、錚々たるアーティスト、レーベルの作品で目にすることができる。
なお、幼少期に観た日本のアニメ、『Battle of the Planets』(『科学忍者隊ガッチャマン』のアメリカ版)、『Robotech』(『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』『機甲創世記モスピーダ』を再編集した海外版)は、彼の想像力の源泉のひとつになっている。
2020年には、ドイツの名門テクノ・レーベルTresorより、グラフィック・ノベル『The Book of DrexciyaVol.1』を刊行した。

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