「KING」と一致するもの

Bear in heaven、Blouse、Doldrums @ Bowey ballroom may.8.2012

 最近のショーを見に行って感じるのがノスタルジック=懐かしさ。「音楽はもう最近見に行ってないんだ」と言っている30代後半の人でさえ、懐かしいバンドがプレイするとなれば、そこそこするチケットを買って、足を延ばして見に行く。
 1ヶ月ほど前に、『チックファクタ』というインディポップ・マガジンが20周年を迎え、当時活動していたバンドがこの日のためにリユニオンした。ブラック・タンバリン、アイラーズ・セット、スモール・ファクトリー、ジム・ルイーズ・グループ、ヴァーサス、スティーヴィー・ジャクソン(ベル・アンド・セバスチャン)、ソフティーズなど、好きな人にはたまらないラインナップである。パフォーマーも観客もほとんどが30~40歳代真っ只なか。仕事に疲れ、家庭にも疲れ(?)ている世代。でも、この瞬間はみんなとても活き活きする。笑顔がずーっと絶えない。
 そういえば、小沢健二も最近(3~4月)に復活コンサートを行った。かなりの競争率のチケット争奪戦を勝ち抜き、幸運にもチケットを手に入れた人は、さまざまな思いを胸に、それぞれの青春を取り戻していた。この話を知り合いにしたら、自分も最近クラフトワークが8日連続で毎日違うアルバムを演奏する(しかもミュージアムで)ライヴに、かなりの競争率のチケット争奪戦の末に行くことができたと、語っていた。入場者には3Dメガネが配られ、たくさんのファンと一緒にノスタルジッーをシェアしたと、キラキラした目で興奮しながら話してくれたのである。

 何だ! この、揃いも揃って昔を懐かしむ感は? いつも忙しいと言っている人でさえ、チケットの値段や日程も限定されているのに、時間を作ってこのために出かける。当時を経験している人たちだけの楽しみかと思えば、クラフトワークの彼は、オンタイムで経験していないが、このチケット取るのに最高級の力を注いだという。「懐かしさ」は人を動かすアドレナリンなのか?

 次から次へとバンドがクロスするニューヨークではいろんなショーが毎日やっていて、何を見に行くのかは自分にかかっている。私は自分の興味のあるライヴ、友だちが教えてくれて、自分も興味がありそうなライヴ、まったく調味はないが友だちが行くというのでついていくライヴ、いろいろあるが基本的に音楽が好きなので、どこに行ってもある程度楽しめるし、それぞれいろんな感想もある。最近のワッシュド・アウト、ヒア・ウィ・ゴー・マジックのショーの熱も冷めやらぬまま、今回はこの3組のショーに行った。ベア・イン・ヘヴン、ブラウス、ドルドラムス! まさにいまどきのメンツだ。


Bear in Heaven
Photo by Dan Catucci


Blouse


Doldrums
Photo by Amanda hatfield

 ベア・イン・ヘヴンは〈デッド・オーシャンズ〉という〈ジャグア・ジャグア〉傘下のレーベルと契約し、精力的ににツアーしている真っ最中。何だかんだと最近名前はよく耳にしていて、機会があれば見に行こうと思っていた。
 彼らを最初に見たのは5年ぐらい前のこと。プレフューズ73とツアーをしていた友だちから「友だちのバンドがガラパゴス(ノース6通りにあったアートギャラリー)でやるから見においで、ビア・イン・ヘヴンだよ」と言われた。ビア・イン・ヘブン? 天国にビール? ビール飲み放題? バンド名だとも知らず(しかも聞き間違ってる)、勝手に勘違いして行くと、ベア・イン・ヘヴン。天国にいるクマか? ビールじゃなかったのって。そのときはきちんとしたバンド体制で(たしか5人ぐらいメンバーがいた)、キーボードの印象が強いバンドだなと思っていた。

 さて、話を戻そう。オープニングのふたつのバンドは、この会場を上手にウォームアップした。どちらもうしろのプロジェクションを使い、うまい感じにこのノスタルジック感を演出していた。

 ドルドラムスはカナダ、トロント出身の3ピース。見た目はいかにもオール・セインツのモデルになりそうな、カーリーヘアのユニセックスな男の子。女の子のような、エンジェリックなヴォーカルはエキゾチックでトロピカル。かなりハイトーンなのに絶叫系。フロント2台のキーボードをくるくる変えながら横にあるドラムパッドを叩く。後ろにはフーディを深くかぶったドラマーがビートをキープし、バンドをまとめている。打楽器音が多いから音がトロピカルに聴こえたのか、いちばん面白かった。

 次に登場のブラウス(Blouse)は、ポートランド出身の80年代ノスタルジック・ポップ・バンド。ローキーな女の子のヴォーカルは、アイラーズ・セットとゾーイ・デシャネルを足して2で割ったような、コクトー・ツィンが現れた感じ。ダークでゴス、チルでセンチメンタル、そしてギターのディストーションがシューゲイザーしている。うしろに流される七色のプロジェクションが何ともアーティーで哀愁を誘う。これも一種チルウェイヴか?

 トリはベア・イン・ヘヴン。3人編成で、うしろにはピンクとブルーの蛍光レーザーライト&スモークマシンが何の遠慮もなく、がんがん施される。ジョンは主に歌とシンセ、そしてダンスと盛り上げ役だ。アダムはクールにギター、ドラマーのジョーはマイアミ・ヴァイス・スタイルのフィルをマシンガンのように叩き続ける。
 ちなみに、ドラマーのジョーは私の近所のバーのバーテンでもある。目つきが鋭いブレードランナーのような体力の持ち主で、ドリンクを作るのも早い。
 
 ベア・イン・ヘヴンの印象は、ノスタルジックでドラマチック。蛍光ライトにワッシュド・アウトを思い出し、究極に歌にのめり込んでいく姿は80年代の映画の世界......あるいは"ダンシング・クイーン"、『サタディ・ナイト・フィーヴァー』の世界(?)。見ている方がはらはらして体力を使い果たして、最後に抜け殻のようになってしまった。まわりを見ると楽しんでいる人と消耗している人両方いる。
 このバンドが、ブルックリンでどの位置にいるのかを説明するのは難しい。『ローリング・ストーン』にレビヴューが載っていたり、NPRにもフィーチャーされているので、少なくてもアンダーグラウンドではない。かといってデス・キャブ・フォー・キューティ、シンズなどのメジャーに近いインディというわけでもない。オーディエンスの層もミックスで、音楽マニアというよりは大衆音楽、ある程度の懐かしさを期待する、まったく新しい何かを求めているというよりは自分が安全で快適な音楽に浸りたい、オーヴァーグラウンドとアンダーグラウンドのすれすれの観客。今日の観客と次どこのショーですれ違うかは、興味のある所でもある。少なくとも、『ショーペーパー』は読んでいないかな......。

https://www.brooklynvegan.com/archives/2012/05/bear_in_heaven_12.html

YO.AN (HOLE AND HOLLAND / YOKOYOKO) - ele-king

たしかに 10


1
NIAMA MAKALOU ET AFRICAN SOUL BAND - KOGNOKOURA Daphni's Part 2 Edit - Sofrito Super Singles

2
YAKAZA ENSEMBLE - YAKAZA ENSEMBLE meets SYUNOVEN EP(J.A.K.A.M. RMX) - CROSSPOINT

3
RUMPLESTILTSKIN - RUMPLESTILTSKIN(YO.AN EDIT) - Unreleased

4
FUSHIMING - ALL SET TO GO(Fresh remix) - Hole and Holland Recordings

5
C90 - Everyday Edit - Soundbox Dynamic

6
Lee Van Dowski - 1977 - REKIDS

7
Lindstrom - Quiet Place To Live (Extended Disco Version) - Smalltown Supersound

8
Andreas Reihse - Romantic Comedy - M=Minimal

9
ATOM TM - WEIBES RAUSCHEN - RASTER-NOTON

10
CAPABLANCA & T. KEELER - No Hay Ritmo - Gomma

Deep-in-Side (2012.5.13)


1
Hakim Murphy - Errr - Plan B

2
Iori - Moon - Phonica White

3
Hunee - Minnoch - Rush Hour Recordings

4
Nicholas - Looking - X-Masters

5
Intruder(A Mark Production)featuring Jei - Amame(Redio SlaveMix) - Defected

6
BLM (aka Ben Micklewright) - All Out of Place - Tsuba Records

7
Seuil - Sub Boogie Drama EP - Karat

8
John Jastszebski - Children of Children - Phonogramme

9
Creative Swing Alliance - Get Down - City Fly Records

10
Frank Roger - Take You Up - Circus Company

interview with Simian Mobile Disco - ele-king


Simian Mobile Disco
Unpatterns

Wichita Records/ホステス

Amazon iTunes

 ロックが不況である......というのは、いかにも白々しいクリシェであるが、しかしそういったお手軽な悲観を使いたいときも、正直、なくはない......。三田/野田世代の『ele-king』読者であれば、あるいは言うかもしれない。「そんなもの90年代後期からずっと死にっぱなしじゃないか......」
 いやだとしても、ゼロ年代のなかごろ、いわゆるインディ・ロックに活気が感じられた季節がたしかにあったのだ。少なくない人が、それをダンス・ミュージックとの交配の季節として振り返る。LCDサウンドシステム、ラプチャー、あるいはシミアン・モバイル・ディスコ(以下SMD)。その後、ニュー・エレクトロの新勢力がむしろロックの巨大さを取り入れていった。SMDは、その分水嶺とも言える存在だった。

 そして、ポスト・ダブステップの拡張、あるいはジュークの登場がシーンに新たな風を吹かせているなか、SMDのフルレンス・アルバムが届いた。シリアスなテンション、冷え冷えとしたシンセ・アンビエンス、そしてミニマルな展開がビート・プロダクションを通底している。アンチ・クライマックスの美学......ここに愛想笑いの類はない。サービスのようなアップリフトもない。早い話、誤解の余地を排したストイックなテクノ・ミュージックが硬質な音色を叩き付けている。『Attack Decay Sustain Release』(2007)のアッパーさや『Temporary Pleasure』(2009)の弾けるような乱雑さの記憶からすれば、季節の変わり目を実感せずにはいられない、というのもたしかだ。

 彼らはいま、どこにいるのだろう? 当時の活況、それは音楽的な交配ではなく、単にダンスとロックにおけるリスナーの重なりがあっただけではないか、その錯覚を自覚できていないだけではないか、という声もある。不躾ながらも、そういった所感を含めてSMDのふたり、プロデューサーとしてはここ数年トップ・クラスの売れっ子ぶりのジェイムズ・フォード、そしてジェイムス・ショーに話を訊いた。
 結果から言えば......彼らのポップ・ミュージック、そしてシーン(という概念がまだ有効ならば、ということだが)に対する認識は、実に中立的である(途中、ややトンチンカンな質問にも真摯に答えてくれた)。彼らは変化を受け入れているし、何も背負っていない。そのニュートラルな姿勢は、ある種達観めいてもいる。そう、私はS.L.A.C.K.によるあの象徴的なリフレインを思い出す。ただミュージックのみ、ただミュージックのみ......。

シーンは確実に変わったと思う。「ダンス/ロックの融合」みたいなのってまずあんまり上手くいかないし、結局そこの地域で根付いているロックの要素が混じったダンス・ミュージック、っていうものになってしまっている。

あなたたちの出身でもあるSimianは、歌とメロディを大切にしたインディ・ポップのバンドだったと思うのですが、ダンス・ミュージックへの傾倒というのは、何がきっかけとなったのでしょう?

SMD:Simianをはじめるずっと前からダンス・ミュージックは大好きだった。歌とメロディを大事にしながら同時にダンス・ミュージックにも傾倒するっていうのは当然可能だよ。

なるほど。ちょっと古い話をさせてください。『Attack Decay Sustain Release』(2007)におけるあなたたちの初期のスタイルは、ロック・ミュージックとエレクトロニック・ミュージックのクロスオーヴァーである、という言い方が当時、少なくなかったと思うのですが、こうした見方には賛同できますか?

SMD:まったくもって不賛成だよ! 僕らが作ってきたのはいつだってダンス/エレクトロニック・ミュージックなんだ。『Attack Decay Sustain Release』にはギターも生のドラムも入ってないし、ロックの要素は全然なかった。あれって、ちょうどあの頃はダンス・ミュージックがいろんなロック/インディ・バンドとそのファン達に人気が出てきた時期だったからそのシーンと関わりがあっただけで、それ自体が僕らのスタイルだったってわけじゃないよ。

わかりました。ところで現在、ポップ・ミュージックは細分化していると、私たちの国ではよく言われています。つまり、異なるジャンルや異なる価値観はお互いに関わらないよう、細かく分断されている、と。こうした見方を、あなたたちは共有しますか?

SMD:イギリスではむしろ逆だと思うよ。いまは違うジャンル同士の交流が盛んだし、とくにダンス・ミュージックの間ではそれが顕著だね。

なるほど。ゲスト・ヴォーカルのパレードとなった2009年の『Temporary Pleasure』もそうでしたね。そこから一転して、2010年の『Delicacies』で、あなたたちはミニマルなテクノ・ミュージックへとスタイルの比重を大幅にずらしたようにも思えました。ヴォーカル・パートがなくなり、曲の長さも8分ほどに長くなりました。当時、何があなたたちを変化させたのでしょう?

SMD:『Delicacies』は、DJのための音楽を作るっていうことに特化したプロジェクトだった。僕ら自身もDJするときにテクノをよくかけるから、自分たち自身のための音楽でもあった。だから新しい方向性っていうのじゃなくて、サイド・プロジェクトっていう方が近いね。どのバンドも自分たちのスタイルを変えて進化させていかなきゃいけないと思う。同じようなアルバムを2回作るなんてことはしちゃいけないんだ。

私もそう思います。さて、では本題です。新作の『Unpatterns』を聴かせてもらいました。『Delicacies』よりもさらにストイックなエレクトロニック・ミュージックで、ミニマルなビートが心地よいですね。ヴォーカル・パートは、歌というよりは声の素材、という小さい扱いになっている。また、ビートは以前よりもソフトなタッチになっているように思えます。これらの変化は意識的なものですか?

SMD:うん、かなりいい表現だね。確かに僕らはこのアルバムを控えめで抑えたものにしたかったし、ヴォーカルはカットアップやループしてミックスすることで楽器のように使っている。さっきも言ったように、『Delicacies』とはまた違ったアルバムを作りたかったんだ。前のアルバムからの要素はいち部残しつつも、同じような思い切りクラブっぽいレコードにはしたくなかった。

どの曲も、たんにアップリフトというだけでなく、沈鬱なフィーリングを時間をかけてときほぐしていく、といった趣があるように思います。自分たちは変化したと思いますか?

SMD:典型的なダンス・ミュージックの美学って、ゆっくりと盛り上げていつまでもクライマックスに達しないままずっと続いて行ったり、緊張感を引き延ばしすぎだったりする。そういう盛り上げて、落としての繰り返しの手法はもう過去数年でやりつくされているんだ。だから僕らはそこから抜け出して、なにかもっと新しいことがやりたかった。

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シーンの細分化? イギリスではむしろ逆だと思うよ。いまは違うジャンル同士の交流が盛んだし、とくにダンス・ミュージックの間ではそれが顕著だね。


Simian Mobile Disco
Unpatterns

Wichita Records/ホステス

Amazon iTunes

"Unpatterns"というアルバム・タイトルは、どういった意味なんでしょう? 字面通り、"模倣ではない"という意味なんでしょうか。本作のコンセプトに関係が?

SMD:そういう意味ではないな......ループやパターンがじょじょに崩壊したり、変化したり、お互いに干渉しあったりすることで、新しくてもっと複雑なパターンや進行が生まれることを指しているんだ。アルバムの楽曲の多くはその考え方に基づいて作られている。シンセのシーケンサーやドラムのパターンがテンポの間でずれたり合ったりするところとか、細かいディテールにそれが表れていると思うよ。アルバムのアートワークにもその考え方が反映されているんだ。モアレ縞(干渉縞)っていう、単純な図形が干渉しあうことで複雑な図形が生まれる効果を利用している。

なるほど。ユニークなタイトルが並んでいるのですが、言葉を使わない曲に、どうやってタイトルを付けているのですか? "The Dream of the Fisherman's Wife"は、葛飾北斎? 日本の文化には影響を受けていますか?

SMD:その通り! 訊いてくれたのは君が初めてだよ、よく気付いてくれたね! 僕らは北斎が大好きだし、あの絵はすごく奇妙で異世界的な作品だよね。その雰囲気が、あの曲に使われている変な水中の音とよく合っていると思ったんだ。
 インストゥルメンタルの曲に名前を付けるのは大抵難しいね。僕らは大体いくつか興味のあるコンセプトを持っていて、それにいちばん合う曲を見つけてタイトルをつけるようにしているよ。
 日本の文化にはすごく魅力を感じているし、日本に行ってプレイするのも大好きだよ。直接的な影響っていう意味で言えば、僕らの音楽に対する日本からの一番の影響はシンセサイザーのパイオニアであるトミタ(筆者注:富田勲)だね、彼の大ファンなんだ。

あなたたちの音楽で変わらない点があるとすれば、やはり、それがダンス・ミュージックである、ということだと思います。なにが、あなたたちをいまでもダンスへと向かわせるのでしょう? 踊ることはやはり大事?

SMD:はは、僕ら自身はもう前ほど踊らなくなったよ! 僕らをダンス・ミュージックに向かわせるのは共有される体験、あのクラブで感じる、長々と進化を続けるダンス・ミュージックの音、そこにいて何時間も音楽を聴き続けることで得られるサイケデリックな空間といったものだね。

最近、一般に、ネットに依存しているような若いリスナーはクラブやライヴでもハメを外さなくなったと話す人もいます。あなたたちの目にはどう映りますか?

SMD:答えるのが難しいな......実際、いまでもまだダンスするために出かけたり、羽目を外す人たちもたくさんいるしね。ネット依存の傾向のある人たちが他に比べてそういうことをしないかどうかはよくわからないよ。

少し乱暴な質問をさせてください。あなたたちのダンス・ミュージックは、現状の生活に満足している人たちと、そうでない人たちのどちらに捧げられるものだと思いますか?

SMD:そんな風に人びとを分けてしまうっていうのは僕らのやり方じゃないよ。権力を持つ人たちが悪用しがちな、「あっちとこっち」や「敵と味方」と分けてしまう考え方を助長してしまうと思う。

なるほど。ちなみに、ここ日本では、政府の世論調査で、「6割以上の若者が現状の生活に満足を感じている」という結果が出て、話題になっています。あなたの国の若者は現状の生活に満足を感じていると思いますか? ロンドンなどからは、大規模な暴動のニュースなども伝わってきましたが。

SMD:なんとも言えないな......どの地域に住むどんな層の若者に聞いたのかにもよるし。ある人たちは満足しているし、そうでない人もいる、そもそも60%って多いと思うかい? 本当ならもっとたくさんの人がそれぞれの人生に満足しているべきじゃないかな。

たしかに、そうですね。ところで、あなたたちと同じく、ロック・ミュージックとエレクトロニック・ミュージックのミックスを実践したと言われる同時期のミュージシャンに、LCDサウンドシステムがいたと思うのですが、すでに活動にピリオドを打っています。2000年代の終わりごろ、なにかシーンの価値観が変わってしまったような雰囲気を感じましたか?

SMD:うん、シーンは確実に変わったと思うよ。「ダンス/ロックの融合」みたいなのってまずあんまり上手くいかないし、結局その代わりにそこの地域で根付いているロックの要素が混じったダンス・ミュージック、っていうものになってしまっている(アメリカでのダブステップの流れみたいに)けど、LCDサウンドシステムはダンス・ミュージックの要素を持ったロック・ミュージックを作っていたよね。

シーンの変化があったとすれば、その原因はどのようなことだと想像しますか?

SMD:自然な進化じゃないかな。シーンっていうのは、絶えず新しいミュージシャンが登場して新しい解釈を与えることでどんどん変わっていくものだと思うよ。

なるほど。その後、新たな潮流として、ロンドンから発信されたダブステップが大きな盛り上がりを見せました。あのシーンに対する共感はありますか? 支持できるアーティストなどはいる?

SMD:そのシーン自体にそれほど共感っていうのはないかな......ただJoy Orbison、Blawan、Martyn、Boddikkaみたいな「ポスト・ダブステップ」って呼ばれるシーンの音楽はよく聴いているし、DJするときにもよくかけているよ。

「ポスト・ダブステップ」という言葉を聞かない日はないくらいですよね。いっぽう、あなたたちが裏方を担ったアークティック・モンキーズやクラクソンズ以降、UKのインディ・ロック・バンドは、盛り上がりに欠けているようにも見えます。こうした見方には賛同できますか?

SMD:エキサイティングなバンドはいつでもいるよ、ただ見つけるのが難しくなっているだけさ。

では、いま注目のインディ・バンドなどを教えてください。あるいは、いま、プロデュースで仕事をしてみたい若いバンドはいる?

SMD:最近JasがPlant Plantsっていうバンドをプロデュースしているけど、いいバンドだよ。(筆者注:https://soundcloud.com/plantplants/sets/plant-plants-ep/)

わかりました。ところで本誌『ele-king』は、1994年にはじまったのですが、最初はテクノの専門誌でした。あなたたちを入り口として、テクノ・ミュージックの世界に足を踏み入れる若いリスナーも少なくないと思いますが、彼らに聴いてほしいテクノ作品はありますか? クラシックから最近のものまで、なにかあれば。

SMD:古いものを振り返ってみるといいと思うよ。初期のPlastikmanとか、Joey Beltram、Jeff Millsとか。

もちろん、「SIMIAN MOBILE DISCOも!」ですよね。では最後に、今後の展望を教えてください。何か夏の予定は決まってる?

SMD:夏の間中はDJをたくさんやって、いま取りかかっている新しいライヴセットも今年中に準備を終わらせたいと思ってるよ。あとは新しい曲にも少しずつ取り掛かっている、将来のシングルや、『Delicacies』シリーズのリリース向けてね。

Mark McGuire - ele-king

 ステージに登場すると、マイクを持って「クリーヴランドから来たマーク・マッガイアと言います」とまずは自己紹介、プロモーターやレーベルへの謝礼、それからオーディエンスに向かって「楽しんでいってください」と言い終えると、よっこらしょとギターを肩にかけて、そしてショーがはじまった。なんだか礼儀正しい人だった。

 ライヴは、ダンス・ミュージックだった。ドラムがないのに......将来音楽からドラムはなくなるだろうと空想したのはアーサー・ラッセルだった。ディスコ・ダンス・ミュージックに情熱を燃やしながら、同時にドラムのない音楽こそが刺激的に思える時代がいつか来ると、彼は予言している。
 音楽によって、ビートは人の内部からスポンティニアスに生まれる、マーク・マッガイアがやったのはそれだった。人びとのざわめきからはじまり、マッガイアはループを重ねてうねりを創出する。いくつもの反復がシンコペーションしているので、リズムが生まる。そうしてでき上がった音の波のうねりの上をマッガイアは滑るようにギターを弾いている。
 ギターを肩からぶらせげて、彼自身も身体をリズミックに動かしながら演奏する。けっこう、ノリノリだ。アンビエント......というイメージからは遠く、良い意味で期待を裏切るようなマッガイアのリズミックな演奏に、オーディエンスの身体はじょじょに反応していく。時折歪ませ、激しさを見せながら、しっかりと起伏のある曲を展開する。曲の途中でベース・ギターに持ち替えて、ベースのループも加え、ふたたびギターを重ねるという芸まで披露した。瞬間的だが、彼はロバート・フリップやデイヴ・ギルモアといった領域にも接近したが、幸いなことにそれがミニマリズムから脱線することはなかった。
 気がつけば、彼は適度に埋まったユニットのフロア全体を桃源郷へと連れていっている。どこまでも連れて行く。気がつくと、もう1時間も経っている。
 そして、まだ20代半ばをまわったばかりの青年は、桃源郷からこの現実への着地までも、しっかりと、焦ることなく、ゆっくりとやった。これがマッガイアのライヴかと、我にかえったオーディエンスは、あらためて驚嘆を感じながら拍手した。アンコールがあった。1時間半ほどの演奏は終わった。終わって帰ろうかと思ったら、松村正人が入ってきた。

 マーク・マッガイアの前に演奏した青葉市子も素晴らしかった。彼女の静かな演奏においては、カウンターバーのあたりのお喋りがライヴ中に延々とステージ前方にまで聞こえていたので、いっしょに来た友人は少々不満を感じているようだったが、そこはまあ、ジョン・ケイジではないが、そうした周囲の雑音もまた音楽(ライヴ)のいち部ということで受け入れよう。日本のライヴでは、なかば信仰めいた感じで、客個人→ステージという図式が絶対化しているけれど、本来なら客同士の相互関係も同様にあってしかるべきだし(サッカーの試合ではある)、公共の場における猥雑さは全否定すべきではない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのライヴ盤など、客のお喋りがその音楽のいち部になっている。
 その晩は、彼女は、ジョン・フェイヒィを彷彿させるテクニックもさることながら、ほとんど喋りなしで、長めの曲を4曲演奏した。それら楽曲は後方のお喋りがステージまで聞こえるほど静かだが、しかし気迫のこもった演奏だった。いちばん可哀想なのは、その目に前に素晴らしい音楽があるというのに、その晩の青葉市子の演奏を聴き逃している喋っていた連中だった。

 先日のグルーパーのライヴは、可能な限り音量を下げることで(空調のノイズよりも低い音量で)、その場の耳すべてを惹きつけた。マーク・マッガイアはスティーヴ・ライヒとインディ・ロックの溝を埋めるかのようなダイナミックな演奏をした。USアンダーグラウンドの新世代では確実に変化が起きている。その正体がこの日本で明かされた数週間だった。多くの若いリスナー、そして未来に関心のある多くのリスナーが集まった。我々は、いま、確実に、音楽の新しい場面に立ち会っている。

 というか、マーク・マッガイアの追加公演決まりました! 今週日曜日(5/20)、場所は新宿SOUPです!!!!! 行けなかった人はこれを見逃さないように! (DJもやるようですよ)
https://ochiaisoup.tumblr.com/#22780951997


 ※ちなみに、まったくの蛇足ながら、メタモルフォーゼのG2Gのライヴもさすがだった。あれはむしろ、ドラムがないことが考えられない音楽だった。

Chart by JET SET 2012.05.14 - ele-king

Shop Chart


1

Hungry Ghost

Hungry Ghost (I Am A Series Of) Strange Loops (International Feel) »COMMENT GET MUSIC
Daniele Baldelli、加えてデトロイト3 ChairsクルーMarcellus Pittmanによるリミックスを収録した前作「Illuminations」もカルト・ヒットとなった、Gatto Fritto & Howard Jacobsの才人コンビHungry Ghostが"International Feel"に再戦。

2

Stupid Human

Stupid Human Toni Rock / Clean Up Your Act (Stupid Human) »COMMENT GET MUSIC
過去4作いずれもカルト・ヒットを記録しているUk発のミステリアス・ユニット、Stupid Human手掛けるリエディット・シリーズ第5弾。引き続きDjユーズに再構築された強力作をカップリング!!

3

Bjork

Bjork Biophelia Remix Series 3 - El Guybcho & Hudson Mohawke Remix (One Little Indian) »COMMENT GET MUSIC
強力過ぎる人選でお届けする『Biophilia』リミックス・カット12"第3弾は、説明不要の人気者2組、El GuybchoとHudson Mohawkeによるリミックスを搭載した大本命盤です!!

4

Georgia Anne Muldrow & Madlib

Georgia Anne Muldrow & Madlib Seeds (Someothaship Connect) »COMMENT GET MUSIC
世界が注目するLaミュージック・シーンから、あらゆるシーンから強い眼差しをあびるGeorgia Anne Muldrowともはや説明不要のMadlibによるソウル・プロジェクト。待望すぎるアルバムが完成!

5

Mmoths

Mmoths S.t. (Sqe Music) »COMMENT GET MUSIC
既に話題沸騰中のアイルランド出身チルウェイヴ~ウィッチハウス新星、Mmoths。Keep Shelly In Athensとの超名曲「Heart」も収録したデビュー・シングル!!

6

Modeselektor With Thom Yorke

Modeselektor With Thom Yorke This (Monkeytown) »COMMENT GET MUSIC
ジャーマン・エレクトロ/ベース最強デュオModeselektorとThom Yorkeによる電撃コラボ7"第2弾。'11年の傑作『Monkeytown』収録の人気トラックのラジオ・エディットA1も収録です~!!

7

Damu The Fudgemunk

Damu The Fudgemunk Bright Side Remix (Redefinition) »COMMENT GET MUSIC
2010年リリースながらもキャリア屈指のクラシックとして認知され、Dj Kiyo氏のミックスにも収録された"Bright Side Remix"が10"仕様で登場! 収録lpも今や入手困難の為これは嬉しすぎます!

8

Mouse On Mars / Prefuse 73

Mouse On Mars / Prefuse 73 Miami / Death By Barber (Monkeytown) »COMMENT GET MUSIC
6年振りの新作アルバム『Parastrophics』が当店ヒット中のMouse On Marsと、6月リリース予定レーベル・コンピにも参加予定のPrefuse 73による超強力スプリット7"が到着です!!

9

Harmonious Thelonious

Harmonious Thelonious Ting Tong Tp (Asafa) »COMMENT GET MUSIC
前作『Drums Of Steel』は即完売、アメリカの前衛ミニマリストとアフリカン・リズムからの影響を公言するレフトフィールド・ミニマリストによる待望の第2弾12"が登場です!!

10

Gizelle Smith

Gizelle Smith Jonny (Mocambo) »COMMENT GET MUSIC
Gizelle SmithがMocamboから最高の新曲をリリース。大ヒット曲"Working Woman"を超える大感動の哀愁込み上げグルーヴィー・ソウルです!!

Shop Chart


1

J.M.F.G.

J.M.F.G. #2 J.M.F.G. / FRA / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC

2

Los Miticos Del Ritmo

Los Miticos Del Ritmo Los Miticos Del Ritmo Soundway / UK / 2012/5/11 »COMMENT GET MUSIC
QUANTIC指揮の元、現地凄腕ミュージシャンからなる"QUANTICと神話の打楽器隊"、待望のフル・アルバム!伝統的な演奏形態を踏襲し つつも豊潤な音楽観と洗練のアレンジでアップデートした2012年型ハイブリッド・クンビア極上盤◎

3

Vedomir

Vedomir Vedomir Dekmantel / NL / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
圧倒的リリース量とそのクオリティから一躍ハウス・シーンの最前線へ躍り出たウクライナの天才VAKULAによる別名義プロジェクト VEDOMIR、ヴォリューミーな2LPフルアルバム!

4

Unknown

Unknown Black Boxx EP Ferrispark / US / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
首領SCOTT FERGUSONを中心にKDJ/THEOの流れからポスト・ビートダウン的アプローチの作品まで多彩なラインナップでリリース展開されるデトロイトの良質<FERRISPARK>から、00年代初頭の初期レーベル作品を彷彿とさせる黒光スモーキー・ディープハウスが詰まったノーインフォ/謎の4 トラックスEPが到着。

5

Kelenkye Band

Kelenkye Band Jungle Funk Cultures Of Soul / US / 2012/5/9 »COMMENT GET MUSIC
推薦盤!快挙!ド級のアフリカン・レアグルーヴ古典"JUNGLE MUSIC"で有名なKELENKYE BANDの未発表音源(!!)が発掘&音盤化!内容はやはり最高スギル2枚組7"。

6

Koko Edits

Koko Edits Stay With Me / Burning Up Basic Fingers / GER / 2012/5/8 »COMMENT GET MUSIC
好調リリースの続く<G.A.M.M.>傘下のディスコ・エディット専科<BASIC FINGERS>第8弾!賞味期限無し定番的に使えるため、是非とも持っておきたい一枚!

7

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc One Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第1弾。

8

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc Two Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第2弾。

9

Joaquin Joe Claussell

Joaquin Joe Claussell Unofficial Edits And Overdubs Disc Three Of Four Sacred Rhythm Music / US / 2012/5/3 »COMMENT GET MUSIC
LTD.400pcs!!一連の「UNOFFICIAL EDITS AND OVERDUBS」シリーズも遂に最終章!先日の2CDアルバムから12"用にさらにリエディットし全4部作にてアナログ・リリース!こちら第3弾。

10

Insideman a.k.a. Q-Bo

Insideman a.k.a. Q-Bo Back In The Dayz (G-Luv Classics Vol.1) Blacksmoker / JPN / 2012/5/10 »COMMENT GET MUSIC
東高円寺の音楽酒場GRASSROOTSの主Qさんニュー・ミックスはまさかのGラップ縛り!from <BLACKSMOKER>★特典で<BLACK SMOKER>からのリリースを予定している、狂気に満ちた妖しいG-LUV謎の一族総本山、D.M.F. (DA MASK FAMILY PRODUCTIONS)のスペシャルSAMPLER CD付き!★

interview with Kyte - ele-king


Kyte
Love to be Lost

Hostess

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 日本が世界に先んじて見つけだした才能として知る方も多いだろう。シガー・ロスやビョーク、レディオヘッドなどと比較されながら、情感豊かでスケール感のあるポスト・ロックを追求してきたバンドである。なんといっても美しいテナー・ヴォイスと轟音ギターの、ときに過剰ですらあるエモーションが彼らの個性だ。そしてまたアイスランドのミュージシャンたちを引き合いに出されるように、どこかつめたく清新なたたずまいを持つところもカイトらしさである。燃える雪というような形容矛盾をふところふかく抱え込んだような、熱くつめたい感情表現。じっくりとテンションを高めてゆき、そのピークでエモーションを解放するドラマチックな曲展開は、サントラとしても好まれ、アメリカの人気ドラマ『ソプラノズ』や、国内映画『余命一か月の花嫁』での楽曲使用も記憶に新しいところである。
 さて、"サンライト"や"プラネット"といった名曲を生んだデビュー作『カイト』、日本先行でリリースされたセカンド・アルバム『サイエンス・フォー・リヴィング』、そのUK盤制作時に内容をリニューアルした(どんどん生まれてきたという新曲に再レコーディングしたテイクを加えている)裏セカンドともいうべき『デッド・ウェイヴス』ときて、昨年リリースされたのがリミックス集であることを考えると、カイトはその第一章を終えたかにもみえる。シーンの先端とはいかないが、ポスト・ロックやシューゲイザーのまじわる地点で自分たちの表現をみつめ、親密なファンを育ててきた彼らに、いま新しく登場する『ハーフ・アローン』の制作やその音世界の原風景について訊ねてみた。
 さっきコンビニで買ったというグミをおずおずとすすめてくれたおだやかな雰囲気の3人には、彼らの音楽のとおり正直な人柄がにじんでいる、と思った。

いろいろなところへ行ってみて不思議な気持ちだね。世界をまわってみて、よっぽど自分の故郷よりもいい場所とかいい環境、おもしろい場所がいっぱいあったよ。あきらかにね。

『サイエンス・フォー・リヴィング』と『デッド・ウェイヴス』とは、制作上の経緯から考えても双子のような作品で、ふたつあわせて完全なセカンド・アルバムということになるかと思います。今回の3作目とも4作目とも呼べる『ハーフ・アローン』までに、たくさんの曲が生まれましたね。リミックス集もリリースして、ひと区切りついたところでの今作ということになるのではないかと思いますが、どうでしょう? どのような気持ちで取り組んだ作品だったのでしょうか?

ニック・ムーン(ヴォーカル): そうだね、いまはすごくわくわくしてるよ。この作品ができたことにはすごくよろこんでる。ちょっと期間があいたぶん、すごくフレッシュな気持ちでのぞむことができたんだ。あいてる期間にいろいろ考えることもできた。ああいうことをやりたいとか。すごくよかったなと思ってるよ。

実際に大きく変わったなと感じている部分はありますか?

トム・ロウ(ギター/キーボード):精神的な部分ですごく変わったところがあると思う。あとは長い期間をかけて制作しただけに、生まれ変わったっていうような気持ちもあるかな。これまでは長い時間をかけて制作したことがなかったから、そのへんも精神的な変化と関係してるのかもしれない。

なるほど。ちょっと乱暴な質問なんですが、カイトの音楽って明るいものだと思いますか? それとも暗いものだと思いますか? いいかえれば、他者に訴えるような音楽か、自分のなかにもぐりこんでいくような音楽か、どのように感じているでしょう?

ニック:いい質問だね(笑)。

トム:音楽的にはすごくハッピーだなと思うし、自分もハッピーな気持ちだと思う......

ニック:そうだね。

トム:だけどすごく不思議なのが、それにのせるニックのリリックはかなしいものが多いんだよね。そういうところが、僕たちの音楽のメランコリックな部分を生んでいるのかなとは思うよ。

ああ、たしかにそうですね。明るさのなかにつめたいかなしみみたいなものがありますよね。どうしてそのような対照が生まれるのでしょう?

ニック:おれは(自分の詞が暗いとは)思わないよ。

ははっ!

トム:明るさと暗さのなかで深みを増すというか、ニックの詞がいろんなレイヤーをつけてくれるという気がしていて、なんか、聴く人の受けとり方を変えてくれるようなものになるって思う。自分の作った曲に対して、ニックがどんな詞をつけるのかっていう関係性もおもしろいし、そういうところでいろんな階層が生まれてるかな。

レイヤーがつくというのはほんとにそのとおりですね。同時に最初の作品からこの新譜まで一貫して、すごく壮大でドラマチックなエモーションがありますが、これにはなにかヴィジュアル的なイメージがあったりするのですか?

トム:壮大さっていうのは僕たちもすごく意識していて、壮大なものにしたいなと思って音楽を作ってるよ。でもシンプルに自分の好きな音が見つかれば、それをループして重ねたりもする。でも、最終的には大きなものにしたいと感じているよ。

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日本に来ていつもいちばんびっくりするのは、みんなとても真剣に演奏を聴いてくれることなんだ。イギリスだと2~3人が真剣に聴いてて、あとの2~30人はうしろで飲んでるって感じだね。


Kyte
Love to be Lost

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あまり比較するのもよくないとは思うのですが、カイトはシガー・ロスやビョークと比べられることがありますね。われわれ日本人が彼らのようなアイスランドのアーティストのなかに幻想するものが、カイトにはあると思うんです。あなたがたの故郷のレスタシャーにはアイスランドと通じるような雰囲気があるのですか?

トム:どっちかっていうと、レスタシャーが僕らの音楽に影響しているというよりは、そこから遠く離れたいっていう気持ちが表れてるかな。故郷はすごく好きなんだけど、現実逃避的な気持ちでそこから出たい、なにか違うものを求めたいっていう感じがあるよ。

どこかに行きたい、逃げたいというような気持ちは、こうしたツアーなんかで物理的に世界を移動することで解消されたりするものですか? ぴったりくるような場所はみつけられます?

トム:いろいろなところへ行ってみて不思議な気持ちだね。世界をまわってみて、よっぽど自分の故郷よりもいい場所とかいい環境、おもしろい場所がいっぱいあったよ。あきらかにね。でも帰ってみるとやっぱり故郷のよさだったり、そこに家族がいたり友だちがいたりして、大切な場所だっていう思いが強くなるよ。ほんとに不思議な気持ちだね。

現実逃避的な気持ちでいることと、音楽が壮大になっていくこととはなにか関連がありますか?

ニック:うん。

(笑)

トム:そうだね。あると思うよ。ただ説明するのが難しいな......。曲を書くごとに気持ちも変わってくるし。

そうなんですねー......。では、ピアノとかグロッケンは今作で重要な役割をはたしていますけど、曲づくりはピアノからはじまるんですか?

トム:いや、だいたいギターで作りはじめるんだ。コードをギターで作って、それをプログラムしてコンピューターに取り込んで、作りこんでくっていうことが多いよ。けど今回はニックがピアノをたくさん弾いてくれて。

"セプテンバー・フィフス"っていう曲がありますね。それは何があった日なんでしょう? とても印象的なピアノのアルペジオと、ストリングスの悲壮なテーマで、時間をかけてゆっくりゆっくり緊張を高めていく曲ですよね? だからこの日っていうのはよっぽどのことがあった日なのかなって思ったんです。あるいは忘れられないインパクトが刻まれたとか。

トム:9月5日にその曲を書いたんだよ。

(一同笑)

ははっ。ええー残念。

トム:はははっ。

歌詞もないし、他の曲と色合いも違うので、このアルバムのなかだとやっぱり注目せざるを得ない曲かなって思ったんですよ。

トム:その曲ができあがってみて、ほんとに曲というよりも、楽譜っていうか......。気持ち的にもほんとにほかの曲と違うものだったから、逆に、タイトルをつけるよりもその日の日付でとどめておいたほうがいいかなって感じで、日付をタイトルにしたんだよね。

たとえばこの曲はすごく特徴的なものではありましたが、基本的には、音のテクスチャー、ソング・ライティング、実際のパフォーマンスのなかでは、なにがいちばん大事なものだと感じていますか?

トム:ええと......コードのシークエンスで、自分が感じるもの、感情が大切だね。それはほかの人でもそうだと思っているし、重要なことだと思う。

なるほど。では故郷のレスタシャーについて教えてください。どんなところで、どんな音楽シーンを持っているのでしょう?

ニック:じつは地元では数回しかライヴをやったことがなくて、東京のほうが多いくらいだよ。地元の音楽シーンにはまったく属してないね。すごくちっちゃな町なので、ミュージシャン同士のつながりがほんとに強くて、残念ながらそのつながりのなかに僕らは入りこめていないんだ。地元でみんなが聴いているのはロックだったりハード・ロックだったり、あんまりそこから大きなアーティストって生まれてなくて、カサビアンくらいかな。

カサビアンが同郷なんですね。

ニック:そうそう。でも彼らも地元のシーンのつながりのなかにはいなくて、突然出てきてメジャー・レーベルに属したって感じなんだよね。

へえー。そういうみなさんは初めて音楽をもっと広いところにむけて発信しようとしたとき、どこで演奏したわけですか? ロンドンとかに出ていくんですか?

ニック:デビュー当時はよくロンドンに出ていってたね。近い町でノッティンガムとかバーミンガムとか、そういうところにいったり、ブリストルとかブライトンとかマンチェスターとか、地元ではないところでいろいろ活動してたよ。他のバンドとかも、ツアーをするときには、うちの地元にはとまらないで、近所の街に行くんだよね。

日本は、カイトという存在を見つけるのが早かったなと思うんですけど、日本のリスナーと自分たちの音楽性との間になにか相性のようなものは感じますか?

トム:そうだよね。

スコット・ヒスロップ(ドラム):それはどこよりも感じるよね。

ニック:日本に来ていつもいちばんびっくりするのは、みんなとても真剣に演奏を聴いてくれることなんだ。イギリスだと2~3人が真剣に聴いてて、あとの2~30人はうしろで飲んでるって感じだね。

ひどいですね(笑)。なにか日本と合うところがあるとすれば、それは風土とかってことなんでしょうか?

スコット:ちょっとしたポップ感のあるコーラスだったり、なにかを描写するような音楽が日本のリスナーに受けてるんじゃないかなって思うよ。

カイトの過大なエモーションというのは、ヘッドフォンで聴くのとライヴで大きな音を共有するのとでは、よりライヴのほうで伝わるものなのかなと思うのですが、今後もそのような音作りは変わりませんか? なにか次の展開についてヴィジョンがあれば教えてください。

スコット:じつはいままでの作品は作ることに没頭してしまって、あとでどうやってライヴをやるのかということをまったく考えてなかったんだよね。けど今作はライヴを意識して、ライヴをどうやってやっていくかということをすごく考えた作品なんだ。今後もそうやってどうやってライヴをいかしていくかっていう音作りをしていこうと思ってるよ。

DJ DYE (THA BLUE HERB / Oplusd.) - ele-king

春アルバム


1
Aphex Twin - Drukqs - Rhino/Wea

2
Moog - The Electric Eclectics of Dick Hyman - ABC Records

3
Heatsic - Intersex - Pan

4
Donato Dozzy - K - Further Records

5
Marumari - The Wolves Hollow - Carpark

6
Stewart Walker - Stabiles - Force Inc.

7
Billy Cobham - Crosswinds - Atlantic Recording

8
Moodymann - Forevernevermore - Peacefrog Records

9
Apparat - The Devil's Walk - Mute

10
Maino - Day After Tommorow - Atlantic Recording

P-RUFF (radloop) - ele-king

Smoky Beats 7" 10選 (2012.5.8)


1
Benjamin Herman - Haze - Benjamin Herman

2
Anthony Valadez - B-side for philly - Record Breakin

3
Black Monk - Northern Lights - Poo Bah Records

4
Mike Slott - Knock Knock - All City

5
Baptman - GROO - Melting Pot Music

6
C&C Edits - Bonbar - Point

7
Bushmind - Wakers Chant - Lazy Woman

8
Kissey Asplund - Move Me - Record Breakin

9
OBAH - Four Women - Bstrd Boots

10
Electric Conversation - Melodie - Futuristica Music
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