「KING」と一致するもの

DMBQ - ele-king

 3年前、13年ぶりのアルバム『KEEENLY』を発表したDMBQ。コロナ禍によりライヴを休止していた彼らが、ふたたび爆音を打ち鳴らす。まずは9月26日@札幌、10月8日@名古屋、10月14日@広島の3公演。後二者では「DMBQと○○」という形式で、DMBQと交流のあるバンドとの2マンが予定されている(おとぎ話とLOSTAGE)。12月には渋谷、大阪での開催も視野に入れている模様。楽しみにしていよう。
(ちなみに10~11月にはイギリスやEUでの公演も控えているとのことで、海の向こうとこの国のコロナ状況の違いを痛感させられます。)

コロナ禍によりしばらくライブ活動を休止していたDMBQが、いよいよライブ活動を再開する。

復帰第一弾に選んだのは、地元札幌Bessie Hall。久しぶりの札幌でのライブで休止からの再スタートを切る決意だ。続いて名古屋、広島ではクラブクアトロとタッグを組んだ新企画「DMBQと○○」を開催。毎回DMBQと交流のある1アーティストを招聘した2マン形式でのライブを開催してゆくシリーズで、今回の名古屋ではおとぎ話と、広島ではLOSTAGEとの競演を果たす。12月には同シリーズで渋谷、大阪でも開催予定だ。いずれの公演も感染症対策に則り客席数を制限して開催される。チケットはチケットぴあ、ローソンチケット等で8月14日より発売予定。

また、10月~11月にかけてUK, EUへのツアー、フェス参加も予定。日々変わりつつあるコロナの状況やワクチン、出国・帰国の際の自主隔離への対応次第という所もあり詳細はまだ決まりきっていないとのことだが、海外活動の多いDMBQらしく、コロナ共生へとシフトを切りつつあるヨーロッパの状況をいち早く体感してくる予定とのこと。

公演情報:

DMBQ 札幌公演

9月26日(日) 札幌BESSIE HALL
開場16:00 開演16:30 チケット¥3500+1D
お問合せ:ベッシーホール 011-221-6076 Wess 011-611-1000

DMBQ Presents
「DMBQと おとぎ話」


10月8日(金) 名古屋クラブクアトロ
開場18:15 開演19:00 チケット¥4000+1D
お問合せ:名古屋クラブクアトロ 053-264-8211

DMBQ Presents
「DMBQと LOSTAGE」


10月14日(木) 広島クラブクアトロ
開場18:15 開演19:00 チケット¥4000+1D
お問合せ:広島クラブクアトロ 082-542-2280

owls (GREEN ASSASSIN DOLLAR & rkemishi) - ele-king

 GREEN ASSASSIN DOLLAR と言えば、舐達麻などのプロデュースで近年大きな注目を集めているビートメイカーだ。その GAD とMCの rkemishi (エミシ)から成るユニット、owls が昨年発表したセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスにてアナログでリリースされる。
 さらに、同作のアートワークを手がけたえすうとのコラボ企画として、限定ボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』も発売される。こちらは完全手づくりのすごい内容になっているようなので、チェックを。詳細は下記より。

owlsのセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスでアナログ化! さらにジャケットを描いたライター、"えすう" とのコラボによるスペシャルなボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』が完全限定20セットで発売! 8/6(金)18時より予約受付開始!

 舐達麻などの楽曲プロデュースでシーン内外・多方面から大きな注目を集めているGREEN ASSASSIN
DOLLARと東京ストリートで暗躍する要注意人物なMC、rkemishi(エミシ)による世間を騒がす噂のユニット、owls(オウルズ)。STICKY(SCARS)やDOGMA、T2K a.k.a. Mr. Tee、Gottz(KANDYTOWN)とそうそうたる面々が参加し、大きな話題となった2020年リリースのセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスで待望のアナログ・リリース!
 今回のアナログ盤には川崎のレジェンダリーなラッパーであるA-THUG(SCARS)、SEEDA作品などでも知られる人気シンガーのEMI MARIAを迎え、GREEN ASSASSIN DOLLARが新たにトラックも作り直し、アルバム・リリース後にデジタル・シングルとしてリリースされた話題曲 "blessin remix" もボーナストラックとして収録!
 さらにジャケットを描いたライター、"えすう" とのコラボレーション<owls x えすう>としてのボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』が完全限定20セットで発売! そのジャケットデザインをえすう自身がハンドペイント&シルクスクリーンプリントしたスペシャルなLP、ジャケットデザインをパックプリントして "えすう" がシルクスクリーンなどを加えたオリジナルTシャツ、"えすう" が手掛けたowlsのジン、レンチキュラー(3D)ポストカード、ステッカーをセットにしてボックスにコンパイル。さらにそのボックス自体も "えすう" のデザインでパッケージングしたオンリーワンな逸品で、こちらはP-VINE OFFICIAL SHOPでのみ20セット限定で予約を受け付けております。(※ボックスセットの予約・購入はお一人様2セットまでとなります)

*owls x えすう "24K Purple Mist - ESSU Edition" 予約ページ / ※8/6(金)18時より受付開始
https://anywherestore.p-vine.jp/products/owls-24klpdx

★ボックスセットに関する注意事項
※ひとつひとつが手作りになりますので色味やデザインなどが商品ごとに異なり、作品の性質上Tシャツやジャケット、ボックスなどにインクなどが付着している可能性もあります。あらかじめご了承ください。
※商品発送は8/25(水)を予定していますが、新型コロナウィルスやオリンピック・パラリンピック開催による状況などによっては発送が遅れる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
※受注数が販売予定数に到達した時点で受注は終了となります。
※オーダー後のキャンセル・変更は不可となります。
※配送の日付指定・時間指定は出来ません。
※TシャツのボディはGILDAN T2000 6oz ウルトラコットンヘビーウェイトになります。

[LP情報]
アーティスト:owls
タイトル:24K Purple Mist
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年8月25日(水)
仕様:LP
品番:PLP-7145
定価:3,520円(税抜3,200円)
Stream/Download/Purchase:
https://smarturl.it/owls_24KPurpleMist

[ボックスセット情報]
アーティスト:owls x えすう
タイトル:24K Purple Mist - ESSU Edition
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年8月25日(水)
仕様:シルクスクリーンジャケットLP+オリジナルTシャツ+ジン+レンチキュラーポストカード+ステッカー〈特殊ボックス仕様〉
定価:22,000円(税抜20,000円)

LP:トラックリスト ※ボックスセットのLPも同内容になります。
SIDE A
1. owl side theory
2. killah
3. greedy feat. Gottz
4. back yard
5. 4:20 feat. DOGMA
6. mood at shibuya
SIDE B
1. b2h
2. smoke sleep (co-prod. Aru-2)
3. blessin
4. fonk you
5. 4:20 remix feat. T2K a.k.a. Mr.Tee & STICKY
6. blessin remix feat. A-THUG & EMI MARIA (Bonus Track)

Phew - ele-king

 先日ニュー・アルバム『New Decade』のリリースがアナウンスされた Phew ですが、嬉しい続報です。10月22日に発売される日本盤CDと輸入盤LP、それぞれにTシャツ付きの限定盤が登場! ディスクユニオンのみで購入できます。どちらもS、M、L、XLの4サイズあり。数に限りがあるため、早めに予約しておきましょう。

Phew、ニュー・アルバム『ニュー・ディケイド』のTシャツ付限定盤をディスクユニオン限定で発売!

Phewのニュー・アルバム『ニュー・ディケイド』(New Decade)のTシャツ付限定盤がディスクユニオン限定で発売されることとなった。Tシャツのデザインは、ニュー・アルバムのアートワークを手掛けた鈴木聖、写真は塩田正幸によるもので、対象商品は日本盤CDと輸入盤LPとなり、オリジナル商品と同様10月22日に発売される。

Traffic / MUTEレーベルよりワールドワイド・リリースされるニュー・アルバム、現在は第一弾先行シングル「Into The Stream」が公開されている。日本盤CDには、20分以上にも及ぶドローン作品「In The Waiting Room」がボーナス・トラックとして収録される。

■ディスクユニオン 予約リンク
https://diskunion.net/jp/ct/news/article/0/98955

■第一弾先行シングル「Into The Stream」ミュージックビデオ
(青木理紗監督)
https://youtu.be/K060lQ7sEAU

■ニュー・アルバム詳細
https://trafficjpn.com/news/phew-2/

■プレスリリース抜粋
「感傷的なものは排除したかった」と語る、約30年ぶりにMuteから発売されるアルバム『ニュー・ディケイド』は、世界の、自己陶酔する偽物たちへの彼女からの断固たる反撃なのだ。「今の状況を考えると、私はラッキーだったのかもしれません。昨年は特に、生きているだけでもある意味、幸運という状況でしたから。ミュージシャンやアーティストとして、自分の気持ちを率直に語ることができるのは、このような状況下においてはある種の特権であり、それを濫用してはいけないと感じました」

「30年前には、“ニュー” という言葉は、進歩や物事がよくなることの同義語でした」と、80年代のバブル期の日本が熱狂した拡大主義を思い出して、Phewがいう。「今はもう、そんな事は信じていません」そして、このアルバムを通して、時間の認識についての、緩いコンセプトが流れているのだという。「80年代、そして90年代までは、物事が過去から現在、未来へという流れで進行していましたが、特に21世紀が始まって以来、その流れが変わってしまったと感じます。個人的には、現在から連なる未来というものが、見えなくなってしまいました」

*プレスリリース全文
https://trafficjpn.com/news/phew-pr/

■商品概要

アーティスト:Phew (Phew)
タイトル:ニュー・ディケイド:Tシャツ付限定盤(New Decade: Limited Edition with T-Shirts)
発売日:2021年10月22日(金)

Tracklist
1. Snow and Pollen
2. Days Nights
3. Into the Stream
4. Feedback Tuning
5. Flashforward
6. Doing Nothing
7. In The Waiting Room (日本盤CD:bonus track)

●仕様: 日本盤 CD+T-SHIRTS

定価:5,450円(税抜)
サイズ:S、M、L、XL

●仕様: 輸入盤 LP+T-SHIRTS

定価:6,264円(税抜)
サイズ:S、M、L、XL

*Tシャツ・サイズ、品盤など詳細
https://trafficjpn.com/releases/phew-new-decade-shirts/

[ディスクユニオン 予約リンク]
https://diskunion.net/jp/ct/news/article/0/98955

■プロフィール

伝説のアート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり、1979年解散後はソロとして活動を続け、1980年に坂本龍一とのコラボレーション・シングルをリリース、1981年には、コニー・プランク、CANのホルガー・シューカイとヤキ・リーベツァイトと制作した1stソロ・アルバム『Phew』を発売。1992年、MUTEレーベルより発売された3rdアルバム『Our Likeness』は、再びコニー・プランクのスタジオにて、CANのヤキ・リーベツァイト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレックサンダー・ハッケ、そしてDAFのクリスロ・ハースと制作された。2010年代に入り、声と電子音楽を組み合わせた作品を次々に発売し、エレクトロニック・アーティストとしても世界的評価を高めた。ピッチフォークは「日本のアンダーグラウンド・レジェンド」と評している。また、アナ・ダ・シルヴァ(レインコーツ)、山本精一(ex. ボアダムス)等とのコラボレーション作品も発売。2021年10月、最新ソロ・アルバム『ニュー・ディケイド』はTraffic/Muteより世界発売。

https://www.instagram.com/originalphew007/
https://twitter.com/originalphew
https://www.facebook.com/Phew-508541709202781
https://phewjapan.bandcamp.com/merch

Sam Gendel - ele-king

 LAを拠点に活動するサキソフォニスト、サム・ゲンデル。カルロス・ニーニョとの交流やヴァンパイア・ウィークエンド作品への参加などでも知られ、昨年は〈Nonesuch〉に移籍したことも話題となった。そんな彼がかつて組んでいたバンド、インガの音源がリイシューされる。幻のデビュー・アルバムに未発表曲を追加した、日本独自のCD盤とのこと。ローランド・カーク “Volunteered Slavery” のカヴァーも収録されているそうです。注目。

SAM GENDEL
inga 2016

“現代のアウトサイダー・ジャズ”(Pitchfork)と評され、米名門レーベル・ノンサッチからのリリースで更に注目を集める、新進気鋭のサックス奏者 Sam Gendel (サム・ゲンデル)が結成していた INGA 初のフィジカルリリースが日本企画で実現!!

サム・ゲンデルによるジャズ・グループ、インガ(Inga)の音源が遂にリイシュー! 封印された幻のデビュー・アルバム『en』とローランド・カークの “Volunteered Slavery” を収録したEP、そして未発表曲から、サム・ゲンデル自身が厳選した、日本限定のスペシャル盤がマスタリングされCDで発売! 今最もクリエイティブな音楽を奏でているといっても過言ではない作曲家サム・ゲンデル。アートワークも自身のデザインによるもの。

サム・ゲンデルが、ドラマーのケヴィン・ヨコタ、ギタリストのアダム・ラトナーと組んでいたのが、インガだ。封印されてしまった幻のファースト・アルバムとEPには、ラサーン・ローランド・カークのカヴァーをはじめ、実に魅力的な音楽が収められていた。プロデューサーとしてというより一リスナーとして、サムにリリースの提案をし、彼自らの選曲でその封印が解かれることとなった。この音楽を再び聴けることが何より嬉しいし、いまサムの音楽に惹かれている人にも必ずや響く音楽だと思う。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : Sam Gendel (サム・ゲンデル)
タイトル : inga 2016 (インガ2016)
発売日 : 2021/10/6
価格 : 2,727円+税
レーベル/品番 : rings (RINC80)
フォーマット : CD (日本企画限定盤)
BARCODE : 4988044068803

Official HP : https://www.ringstokyo.com/samgendelinga2016

Shintaro Sakamoto - ele-king

 昨年7インチとしてリリースされた坂本慎太郎 “ツバメの季節に” のMVが公開されている。スーパー8mmフィルムで撮影された映像が独特の雰囲気を醸し出しているが、監督はなんと、昨年『エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト』という野心的なアルバムを送り出した井手健介。マスク=仮面をかぶった坂本が都内をうろつく様は、コロナ時代へのリアクションのようだ。味わい深いヴィデオです。

 なお、同じく7インチとして昨年リリースされていた「好きっていう気持ち」のB面、“おぼろげナイトクラブ” のMVも2週間前に公開されたばかり。こちらも必見です。

坂本慎太郎、2曲連続MV公開! 第2弾は「ツバメの季節に」MV公開!

昨年7inch×2枚とデジタルでリリースし、先日海外のRSDで12inchとして再リリースしたEPより、第一弾の「おぼろげナイトクラブ」に続いて、「ツバメの季節に」のミュージック・ビデオが完成致しました。

監督・撮影・編集は自身もミュージシャンとして活動する井手健介。今回のMVもスーパー8mmフィルムで撮影されました。

第一弾MVは、マスクをした坂本が失われたナイトライフの幻影を眺めているような「おぼろげナイトクラブ」、
そして、今回の第二弾MVは、マスクをした坂本が昼間の東京をひたすら徘徊する「ツバメの季節に」。

どちらもコロナ禍で製作された楽曲のイメージを、井手監督が昼と夜の対比と8ミリフィルムの質感で見事に表現しました。

第2弾MV
- ツバメの季節に / 坂本慎太郎 (Official Music Video)-
https://youtu.be/zaSwGfCouMM

第1弾MV
- おぼろげナイトクラブ / 坂本慎太郎 (Official Music Video)-
https://youtu.be/83jO9Ocho2c


[リリース情報]

The Feeling Of Love / Shintaro Sakamoto

M-1: The Feeling Of Love (好きっていう気持ち)
M-2: Obscure Nightclub (おぼろげナイトクラブ)
M-3: By Swallow Season (ツバメの季節に)
M-4: Don't Tinker With History (歴史をいじらないで)

Written & Produced by Shintaro Sakamoto
Recorded, Mixed & Mastered by Soichiro Nakamura @ Peace Music, Tokyo Japan 2020

Vocals, Electric, Lap Steel. Keyboard & vocoder: Shintaro Sakamoto
Bass & Chorus: AYA
Drums, Percussion & Chorus: Yuta Suganuma
Flute & Soprano Saxophone: Tetsu Nishiuchi

Digital Links (now available):
https://virginmusic.lnk.to/TheFeelingOfLove

* 国内では2020年に7inch×2枚、海外では12inch vinylで2021年7月17日にフィジカルリリース。デジタルでは4曲とも配信中。

●坂本慎太郎プロフィール 

1989年、ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。
2010年ゆらゆら帝国解散後、2011年に自身のレーベル、”zelone records”にてソロ活動をスタート。
今までに3枚のソロ・アルバム、1枚のシングル、9枚の7inch vinylを発表。
2017年、ドイツのケルンでライブ活動を再開し、国内だけに留まらず、2018年には4カ国でライヴ、そして2019年にはUSツアーを成功させる。 
今までにMayer Hawthorne、Devendra Banhartとのスプリットシングル、2019年には、ブラジルのバンド、O Ternoの新作に1曲参加。
2020年、最新シングル『好きっていう気持ち』『ツバメの季節に』を7inch / デジタルで2か月連続リリース。
2021年、Allen Ginsberg Estate (NY)より公式リリースされる、「Allen Ginsberg’s The Fall of America: A 50th Anniversary Musical Tribute」に参加。
様々なアーティストへの楽曲提供、アートワーク提供他、活動は多岐に渡る。 

official HP: www.zelonerecords.com

●井手健介プロフィール

音楽家。東京・吉祥寺バウスシアターの館員として爆音映画祭等の運営に関わる傍ら、2012年より「井手健介と母船」のライヴ活動を開始。様々なミュージシャンと演奏を共にする。
バウスシアター解体後、アルバムレコーディングを開始。2015年夏、1stアルバム『井手健介と母船』を発表する。2017年には12inch『おてもやん・イサーン』をリリース。
その他、映像作品の監督、楽曲提供、執筆など多岐に渡り活動を続ける中、2020年4月、石原洋サウンドプロデュース、中村宗一郎レコーディングエンジニアのタッグにより制作された、「Exne Kedy And The Poltergeists」という架空の人物をコンセプトとした2ndアルバム『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』をリリース。連作として12inch『エクスネ・ケディの並行世界』、ライヴアルバム『Strolling Planet ’74』を発表する。

official HP: https://www.idekensuke.com

Amyl and The Sniffers - ele-king

 これはかっこいいぞ。メルボルンのパンク・バンド、アミル・アンド・ザ・スニッファーズがセカンド・アルバム『Comfort to Me』を〈Rough Trade〉から9月10日にリリースする。
 スリーフォード・モッズの新作を聴いていたひとは、“Nudge It” でヴォーカルのエイミー・テイラーがフィーチャーされていたことを覚えているだろう。「資本 資本/私はただの動物」(“Capital”)、「知性があることを証明してよ」(“Don’t Fence Me In”)、「夜が訪れたら このナイフの出番/ちゃんと家に帰り着くために」(“Knifey”)と、ストレートなパンク・サウンドに載せて歌われるリリックはとても喚起力豊かでメッセージ性も高い。墓場で踊る “Security” に車で叫ぶ “Guided By Angles” と、MVもクールなのでぜひチェックを。

Amyl and The Sniffers
電光石火の稲妻パンクス凱旋!
最新作『Comfort to Me』9月10日発売!
早くも2ndシングル「Security」をビデオと共に公開!!!

ストレートでピュアなパンク・サウンドを継承し、フー・ファイターズ、ウィーザー、キング・ギザード・アンド・リザード・ウィザード、スリーフォード・モッズをも虜にしたオージー・パンクスの星、アミル・アンド・ザ・スニッファーズ。先日セカンド・アルバム『Comfort to Me』を9月10日にリリースする事を発表した。アルバムの発売と同時に公開された「Guided By Angles」は既に各所で絶賛される中、早くも2ndシングル「Security」をビデオと共に公開!中毒性のあるフックと、フロントウーマンのエイミーの気迫のこもったボーカルが印象的な1曲!

Security
https://www.youtube.com/watch?v=j5DZA2NLYis

Guided By Angles
https://www.youtube.com/watch?v=Z--D1flPLnk

2020年末にバンドはプロデューサーのダン・ラスコム(ドローンズ/コートニー・バーネット)とスタジオに入り、最新作『Comfort To Me』のレコーディングを行った。アルバムの歌詞は、ボーカルのエイミー・テイラーが影響を受けたラップのヒーローや無数のガレージバンドが由来となっており、ニック・ローネイ(ニック・ケイヴ、アイドルズ、ヤー・ヤー・ヤーズ)がミックスを手掛け、バーニー・グランドマン(マイケル・ジャクソン、プリンス、ドクター・ドレー)がマスタリングを手掛けた。

アミル・アンド・ザ・スニッファーズ待望の最新作『Comfort to Me』は9月10日に世界同時リリース。ボーナス・トラック「Crave」を追加収録し、歌詞対訳・解説が付属する国内盤CDに加え、輸入盤CD/LP、デジタルと各種フォーマットで発売される。輸入盤LPは通常盤のブラック・ヴァイナルと限定盤のローマー・レッド・ヴァイナルの2種類が発売される。

先日公開されたシングル「Guided By Angles」へのメディアからのコメント:

「Guided By Angles」は中毒性の高い傑作 ──THE FADER
大きなリフと雷鳴のようなドラムの上でエイミー・テイラーがカタルシスのある聖歌のようなヴォーカルを朗々と歌い上げる独特のポストパンク・エッジを持つトラック ──The Rolling Stone
ライオット・ガールの名曲を思い起こさせる盛り上がった曲だ ──Consequence of Sound
信じられないほどのスリルがある。リード・シンガーのエイミー・テイラーの無限のカリスマ性を表現した公式MVはさらに素晴らしい ──PAPER
ヴォーカルのテイラーは、宇宙の構造そのものを探究している。それは、この世とその先にあるものをつなぐエネルギーであり、私たちを仲間と一緒に団結させるものだ ──PASTE


Amyl and The Sniffers
アミル・アンド・ザ・スニッファーズは、エイミー・テイラー(vo)、ガス・ローマー(b)、ブライス・ウィルソン(ds)、デクラン・マーチンス(g)の4人組バンド。2016年にオーストラリアのメルボルンでバンドを結成した。オーストラリア、ロンドン、北米でも複数のライブがソールドアウトさせ、英国の有名音楽誌Q Magazineが主催するQAwardsの新人賞にもノミネートされた。2019年5月に〈Rough Trade Records〉からデビュー・アルバムを『Amyl and The Sniffers』リリースし全世界から注目を浴びた

label: BEAT RECORDS / ROUGH TRADE
artist: Amyl and The Sniffers
title: Comfort to Me
release date: 2021/09/10 FRI ON SALE


国内盤CD
国内盤特典:ボーナス・トラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入
RT0250CDJP 2,200円+税
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11967

・日本盤CD(解説・歌詞対訳付/ボーナストラック追加収録)
RT0250CDJP / 4580211855225 / 2200円+税
https://tower.jp/item/5223953

・輸入盤CD
RT0250CD / 191402025026 / OPEN
https://tower.jp/item/5223950


・輸入盤LP
RT0250LP / 191402025019 / OPEN
https://tower.jp/item/5223951


・限定輸入盤LP(ローマレッド・ヴァイナル仕様 / Indie Exclusive)
RT0250LPE/ 191402025002 / OPEN
https://tower.jp/item/5223952

Mykki Blanco - ele-king

 現在はLAに暮らすラッパー、2010年代前半にいわゆるクィア・ラップの道を切り拓いた先駆者、ミッキー・ブランコが久しぶりに作品をドロップしている。『Broken Hearts & Beauty Sleep』と題されたミニ・アルバムで、レーベルは〈Transgressive〉、エグゼキューティヴ・プロデューサーとしてフォルティDLが関わっているようだ(シングル曲 “Free Ride” はフォルティとハドソン・モホークがコ・プロデュース)。アルバムとしては2016年の『Mykki』以来のリリースとなる。
 だいぶポップに振り切れた印象で、ゲストもブラッド・オレンジなど豪華な面々が招かれている。70年代のクワイエット・ストーム(スムースなソウル。スモーキー・ロビンソンのアルバム名に由来)やクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングからインスパイアされたそうだ。ミッキー・ブランコの新たな挑戦に注目を。


ラッパー、詩人、トレイルブレイザーのミッキー・ブランコが5年振りとなるオフィシャル作品をリリース。

フォルティDLのプロデュースによる9曲入りのミニ・アルバム『ブロークン・ハーツ・アンド・ビューティ・スリープ』、トランスグレッシヴより発売。

●ゲスト:ブラッド・オレンジ、ビッグ・フリーディア、カリ・フォー、ジャミーラ・ウッズ、ジェイ・キュー、ブルーノ・リベイロ他

2021.10.6 ON SALE

■アーティスト:MYKKI BLANCO(ミッキー・ブランコ)
■タイトル:BROKEN HEARTS AND BEAUTY SLEEP(ブロークン・ハーツ・アンド・ビューティ・スリープ)
■品番:TRANS522CDJ[CD/国内流通仕様]
■定価:¥2,400+税
■発売元:ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ
■収録曲目:
1. Trust A Little Bit (God Colony Version)
2. Free Ride
3. Summer Fling (feat. Kari Faux)
4. It's Not My Choice (feat. Blood Orange)
5. Fuck Your Choices
6. Love Me (feat. Jamila Woods and Jay Cue)
7. Want From Me (feat. Bruno Ribeiro)
8. Patriarchy Ain't The End of Me
9. That's Folks (feat. Big Freedia)

Mykki Blanco - "Free Ride" (Official Video)
https://youtu.be/Nbcjzaa75PI

Mykki Blanco - "Summer Fling" feat. Kari Faux (Official Visualizer)
https://youtu.be/MTY2nNQTZ7Y

Mykki Blanco - "It's Not My Choice feat. Blood Orange" (Official Music Video)
https://youtu.be/ul6j69EFjhU

Mykki Blanco - "Love Me" (Official Audio)
https://youtu.be/ZR_OweYhT-U

●ラッパー、詩人、トレイルブレイザーであるMykki Blancoは、デビュー・アルバム『Mykki』以来、5年振りとなるオフィシャル作品をリリースする。この9曲入りのミニ・アルバム『Broken Hearts and Beauty Sleep』は、Transgressive Recordsとの契約の一環としてのリリースとなり、FaltyDLがプロデュースを担当。スペシャル・ゲストとしてBlood Orange(Dev Hynes)、Big Freedia、Kari Faux、Jamila Woods、Jay Cue、Bruno Ribeiro等がフィーチャーされている。アルバムには、微妙なニュアンスを持ったジャンルをまたぐ楽曲が収録され、経験と成熟を持つ人間の反射的な知恵が示唆されている。ここでは、アーティストとっての新たな時代の到来を導き入れながら、人生と愛を念頭に置くだけではなく、これまで以上に大きな個人的なギャンブルが打たれている。

●Mykki Blancoはアメリカのラッパー、詩人、パフォーマー、活動家だ。2012年にEP「Mykki Blanco & the Mutant Angels」でデビュー。「Betty Rubble: The Initiation」(2013年)、「Spring/Summer 2014」(2014年)と2枚のEPを経て、2016年9月にデビュー・アルバム『Mykki』をリリース。クィア・ラップ・シーンのパイオニアとして知られ、Kanye WestやTeyana Taylor等とコラボレート。MadonnaのMVへ出演し、Björkとツアーを行なったりもしている。

More info: https://bignothing.net/mykkiblanco.html

映画:フィッシュマンズ - ele-king

ジェイムズ・ハッドフィールド(江口理恵・訳)

 『映画:フィッシュマンズ』の終盤で、こだま和文は故・佐藤伸治が残した、この映画を一刀両断する批評のような気のきいたしゃれを思い出す。「お腹いっぱいって嫌だね」
 フィッシュマンズの進化は、より少ないことから多くを成し遂げる方法を探る、着実な蒸留のプロセスにあったといえる。佐藤が歌詞を極限のむき出しの状態にまで削ぎ落す一方、グループの音楽は、メンバーが縮小されるほど、可能性の広がりを見せた。監督の手嶋悠貴はそれに倣うことなく、小野島大の巨大な便覧のような『フィッシュマンズ全書』に近い、膨大な全能のデータを書き出すような映画を生み出した。3時間近くにおよぶこの作品は、ハードコアなファンが待ち望んだ、DVD『男達の別れ98.12.28@赤坂BLITZ』や『記憶の増大』を補完するような、徹底したオーラル・ヒストリー(口述歴史)である。それほど熱心ではないファンには、長い苦行のように感じるかもしれないが、そもそも彼らが3時間のドキュメンタリーをわざわざ観るとも思えない。
 映画の大部分が年代順の形をとっており、大学時代から1999年の佐藤の早すぎる死まで、バンドの歴史を丁寧に追い、最後に佐藤のいないフィッシュマンズの控えめな継続活動を描くコーダで終わる。手嶋は大量のVHSテープのアーカイヴを使用して、メルボルン(デビュー・アルバム『Chappie, Don’t Cry』のレコーディングを行った)での観客の少ないライヴから、1998年12月28日のライブの最終曲まで、バンドの軌跡の様々な場面での親密な姿を垣間見せている。
 しかし、この映画の真骨頂は、生き残ったメンバーやプロデューサーのZAKを含む重要人物たち、マネージャーの植田亜希子、音楽ライターの川崎大介、(さらに、UA、ハナレグミ、YO-KINGなど、定番の有名人の知人たちも登場)などのインタヴューの数々だ。映画の最初では茂木欣一が佐藤との出会いの場である大学のキャンパスの音楽室を再訪し、最後のほうでは日比谷野外音楽堂も訪れる。続く柏原譲が奥多摩の川辺の通路で話すシーンは、『LONG SEASON』 のジャケット写真が撮影された場所で、2019年の台風19号ハギビスで崩壊してしまったところでもあり、非常に痛切に心に迫ってくる。このシーンは、映画の、微かにへこんだような空気感を捉えている。手嶋は祝祭に乗り出すつもりだったのかもしれないが、ときにレクイエム(鎮魂歌)のようにも感じられる。

 『映画:フィッシュマンズ』はバンド内の力学を上手に捉えており、ときに記録を正そうと意識的に努力しているようにもうかがえる。ギタリストの小嶋謙介とキーボーディストのHAKASE-SUNが辞めることになった経緯やフィッシュマンズがポリドールとの契約によって──もっとも永続的な音楽を残した結果があるにもかかわらず──事実上、破滅してしまったことなどについて、深く、ときにどうでもよいディテールに延々と入り込む。佐藤が投影していた、自由奔放な性格というペルソナを考えると、フィッシュマンズのキャリアの初期に、最初の大ヒットを出すためにやるべきことの詳細なリストを記した手書きの日記を見るのは興味深い。ポリドールが彼らを次のスピッツにしたがっていたと、いま驚くのは容易だが、フィッシュマンズ自身がそのわずか数年前に、同じようなメインストリームの観客を獲得しようと試みていたのだ。
 佐藤のダークサイドについても示唆されてはいるのだが、彼を悲運の人物に見せようとはしていない。しかし、手嶋は、ミュージシャン佐藤の最後の1年が肉体的かつ精神的にも脆い状態になっていたことについて、真剣に議論する機会を逃してしまったのかもしれない。植田が、『男達の別れ』ツアーの頃には、佐藤がいかに疲労困憊し、酸素吸入をしなければならなかったことを明かしており、彼を助けるためにもう少し何かができたのではないかと思わずにはいられないのだ。

 本作で明らかになったことの多くは、熱心なファンにとっても新鮮なものだろう。手嶋は、フィッシュマンズを故人のフロントマンと同一視してしまう一般的な傾向を正してくれたことでも評価できる。エンドクレジットで流れる再結成されたフィッシュマンズの演奏に合わせて流れる佐藤の声のように、佐藤自身は映画のなかの、どこにでもいて、どこにもいない。『Orange』のロンドンでのレコーディング中、カフェテラスでのんびりとギターを弾いているような、もっともくつろいだ瞬間にも、その何気ない物腰とは対照的に強烈な存在感を放っている。(映画に出てくるインタヴュイーのなかでもっとも辛辣なHAKASEは、実際の佐藤は、ナイーヴなファンが想像したがるような、天真爛漫な楽天家のイメージとはかけ離れていたと語っている)

 正直なところ、私は『映画:フィッシュマンズ』が彼らの音楽の手法や完璧なダブ・ホップ・コンボがいかにして世田谷三部作のような崇高な高みに到達したのかについて、もう少し洞察を与えてくれるのではないかと期待していた。映画に収められているライヴの記録映像は、ほとんどがかなりお粗末なクオリティで、カムコーダーで撮影されたギグのヴィデオやスーパー8の映像、写真などのモンタージュの音楽の断片には度々アルバムからの音源が当てられている。ようやく曲の完全なパフォーマンスを見ることができるのは、映画の最後の1時間になってからで、1998年12月に赤坂ブリッツで行われたコンサートのローファイなヴィデオが登場する。この映像は露出度が高すぎてハレーションを起こしている状態で、彼らのキャリアのなかでもっとも多く記録されているライヴの映像にしてはあまり貢献していない。それよりも佐藤の自虐的なMCのクリップの方が、はっきり言って輝いている。

 映画のクラウドファンディングのキャンペーンで手嶋は、日本の自主製作による音楽ドキュメンタリーは、音源や記録映像のライセンスを取得するための莫大な費用にぶち壊されることが多いと説明した。同情を禁じ得ないが、そのような制約があるからこそ編集により有効な厳格さが求められ、本作でもインタヴューと音楽そのものの満足できるバランスが保たれるべきだった。もしも『映画:フィッシュマンズ』の意図が鑑賞者にオリジナル・アルバムへの回帰を促すことだとしたら、文句なしの成功といえるだろう。しかし、単独の映画としては過ぎたるは及ばざるがごとしであるがゆえに物足りなさも残る。

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水越真紀

 フィッシュマンズのバイオグラフィーであり、佐藤伸治のそれでもあるこの映画は、基本的には若い頃から順に話が進む。けれども人間の記憶はもちろんそんなふうには収まっていない。残されているものは偏在しているし、改変されているところもある。因果関係が逆になっていることだってあるかもしれない。それを「物語」と呼ぶ人もいるが、そのような、不正確とも言える「記憶」そのものがその人であることの証でもある。そして実はどの「記憶」も、例えば佐藤伸治が亡くなってからの22年がその人に及ぼした変化とともに考えれば、ちっとも不正確なんかではないことも明らかだ。映画には、「今思い出しながら、考えながら話をしている人」がいて、純粋に過去に撮られた映像がある。それだけですでにふたつの「時間」があるわけで、さらにそれが前後行き来したり重なったりしながらいくつもの「時間」が行き交う。それがフィッシュマンズの音楽にとても合っていて楽しい。
 そういえば、佐藤伸治はフィッシュマンズを結成する前に「時間」という名前のバンドを組んでいた。25年前に雑誌の『ele-king』でインタヴューしたときに、そのバンド名の意味を訊ねると「いやー、ライヴのとき、「時間です」ってステージに出ていって、最後に「時間でしたー」って終わるのが面白いかと思って」なんて言っていた。例によってちょっとニヤニヤした感じで……。本当はもっと深い意味があったのか、それともただ冗談を言いたくて思いついた名前だったのかはわからなかった。あの頃、音楽ライターにとって、佐藤伸治のインタヴューというのは恐ろしい仕事だった。少なくとも私は怖かった。事務所のスタッフには「こないだは取材中に消えました」なんておどかされるほどで、とにかく話が短い。こちらから見ればシャイなのか、いたずらっけなのか、わざとなのか性格なのかわからないけれど、なんだかニヤニヤしながらこちらを見透かしたように笑ってるようでもあり、それこそ何も聞けないまま「時間でしたー」ってことになるのがオチだった。
 この映画はそんな佐藤伸治の「時間」の映画だと、2度目に観たときになんとなくわかった気になった。「時間」というバンド名は冗談を言うためではなく、佐藤伸治が生涯、抱えていたテーマだったのではないかと。この映画を観ていてわかったような気がしている。

 『映画:フィッシュマンズ』を観ていて感じるのは、「時間」というものは直線的に流れるものではないということだ。まさに、『LONG SEASON』完成後のインタヴューかなにかで、佐藤伸治がそんな話をしているシーンがある。〈普通に生きてる時間の流れじゃない時間がこの曲の随所にある。「今日が来て明日が来て」という日常で過ぎる時間だけじゃない、頭のなかにある時間もある〉というような短いシーンだ。フィッシュマンズの歌といえば、なんでもない日常の刹那の輝きやその景色を描いたものだとよく言われていた。冷戦が終わった後のあの頃は、いわゆる大きな物語が廃れ、文学でも音楽でもミニマリズムが主流になっていく時期で、佐藤伸治の作る歌詞はその時代の気分のなかでも、きわめて優れた表現だったように思う。けれども佐藤伸治のなかでは少し違っていたのだ。違うと言うより、単に刹那だの日常ということではなく、もっと悠久で、もっと広角で見た「時間」なるものを見つめていたのだと、私は22年後のこの映画に教えてもらった。
 アリストテレスが言ったように、「時間」とは変化のことだ。変化のないところに「時間」は流れない。逆に言えば、変化がある限り、「時間」は逆方向にだって流れることもある。「歴史にイフはない」とは厳密には間違ったことかもしれないのだ。とにかく「時間」はもっと複雑に存在しているし、とくに人の頭の中にある「時間」の多様さや繊細さはどれほどの想像力をつかえば感じることができるか、あるいは写しとることができるのか、ぞくぞくするようなテーマではないか。そのようなものを、佐藤伸治は『空中キャンプ』の次に作った35分に及ぶ大作「LONG SEASON」で、今度は言葉から音に比重を移して表現しようとしていたのだろうか。この曲では幻想的に重層的に、多層な流れで景色が移り、時間が移るように、この映画でもそのようなことが起きていくことに気づく。『映画:フィッシュマンズ』で時間が入り乱れるように構成されているのは、まさに佐藤伸治の世界観そのものなのではないだろうか。とくに後半、『宇宙 日本 世田谷』から“ゆらめきIN THE AIR”に至る混乱の時期、現在に語るメンバーたちの表情、ライヴや歪んだ映像のMV、ライヴで演奏されるデビュー曲、あの寒い寒い雨の日の音楽葬……フィッシュマンズに流れていた当たり前の日常が少しずつ軋み始める時期だ。20年以上経ったからと言って、この頃のことを、落ち着いて話せる当事者たちがいるだろうか。答えは否だ。誰にも「整理」などできていない。当時のフィッシュマンズにおとずれた危機はあまりにも大きくて、とくに茂木欣一の告白には胸がつまる。その、「いま現在」の感情や思いと当時の映像のつぎはぎが、前半のバイオグラフィー的な編集とは打って変わったカオスになる。それは図らずも、“LONG SEASON”のライヴで体験したような、景色がぐるぐると歪んでいくような混乱を思わせる。もちろん体験としては天と地のように違っているはずだが、無造作に、ファンノートのように継ぎ接いでいるようでいて、前半から中盤、そして語り手たちの当時とこの22年と現在の異なる混乱や思いを伝える後半への流れは緻密に計算されているのかもしれない。

 増補版が発売されたばかりの『佐藤伸治詩集ロングシーズン』のたまたま手に触れたページを開くと、たいがいの割合で、佐藤伸治は「時間」を意識して曲を作っていたんだなと気づく。「パラダイス パラダイス 時の流れに押しつぶされて」「明日はどうでもよかった 今は笑ってた」「風が吹けば未来が笑う」「20年前に見てたような何もない世界が見えた」「楽しかった時が終わって 気づいてみたら寂しい人だった」「終わらない夜にReady Go」「そんな眼差しが時を止めてくれる」……。ほんとに無造作に開いたページで待っている佐藤くんの「時間」。そういうなかでも私が昔からいちばん印象深かったのは“Go Go Round This World!”の「いったいいくつの時を過ごしてきたの 60年70年80年前の感じ 本当に確かだったのはいったいなんでしょうねえ」というところ。こうやって見える景色、この「感じ」に、大雑把な言い方だが、ものすごくたくさんの人が共感している。これは「伝わる」感覚なのだ。これが「伝わる」という人間同士の不思議にふるえてしまう。
 22年前、佐藤伸治がいなくなったとき、この映画に出てくる身近な人たちばかりでなく、フィッシュマンズとの時間が止まることになったファンは少なくないと思う。例えば私はこの間、何度かライヴを見たり、出版物に関わったりもしてきたにもかからず、私の「フィッシュマンズ時間」は失われたままだったかもしれないといま思っている。2019年のライヴで少しの変化が実はあったが、それでもこの映画を観たことで、私の「フィッシュマンズ時間」はようやく動きはじめた。それには、この時期というものもあったように思う。コロナ自粛で、もっと大きな時間がすっかり止まってしまう感覚を覚えていたということと関係があるのではないかと。きっとそうだ。この映画がコロナ自粛の最中に完成したことは偶然ではないように思われる。去年、何度も感じていたことは「あれからまだ1年も経っていないのか」ということだった。中年になって以降、こんな感覚は初めてのことだった。歳をとって思うのは「あれは昨日のことのようだ」である。とにかく時間は加速度つけて過ぎてゆくようになる。しかしコロナ自粛ですべてが止まってしばらく経つと「あれはもっとずっと前のことのようだ」と変わった。つまり「時間」が止まりつつあったのだ。
 佐藤伸治はこんな「時間」のことを考えていたんだろうなと思う。これはひとつの発見だ。ファンじゃなければ楽しめない映画かと言われれば、半分くらいはそうかもしれない。でも、才能豊かで音楽が好きで好きでたまらない男の子が音楽を抱きしめて、抱きしめられ過ぎてゆく架空のドラマとして観ることはできると、私には言える。私なら観られる。その物語もまた、映画を貫く「時間」のひとつだ。

 ところで私はとても幸いなことに、この映画を二度観ることができた。ぜひもう一度は観るつもりだけれど、一度目はZAKのマスタリングの前の段階の版で、二度目は後のものだった。耳に自信があるわけではないが、音の違いが映画そのものを変えていることに驚いた。圧倒的なのだ。ZAKなし版でも「ずっと前」が聴こえた時に、バンドの音が変わった!ことは十分に伝わってきていたが、ZAKの手が入った後のバージョンではそういうのとは違う作用が起きていた。どういうことかといえば、音が良すぎて、古い映像の前半部分ではどこか違和感のようなものがあるのだ。違和感というとネガティヴに聞こえるかもしれないが、それが物語の枠としてとても面白い効果を持っている。フィクショナルな雰囲気というか、わざと気づかないくらい、音と映像のフォーカスがずらされているような、あるいは音に反応するフィルターがかかっているような。それが後半になって、そう“ずっと前”から後の世界では、その音と映像がピッタリと合焦してくるように聴こえる。前述した後半に起き始めるカオスとその合焦した世界に息を呑む。できれば音の良い環境で観られることを勧めます。

Jun Togawa - ele-king

 1981年に歌謡テクノユニット“ゲルニカ”に参加して本格的な音楽活動を開始した戸川純。そこから今年で40周年となるのを記念し、アルファ/YENレーベル時代にリリースしたソロデビューアルバム『玉姫様』(1984年)と、ライヴアルバム『裏玉姫』(1984年)が、カラーヴァイナル仕様のLP盤で再発売されることが決定した。『裏玉姫』は当初カセットテープだけで発売されたもので、今回が初のLP化。濃厚な個性と多彩な活動で80年代を牽引し、現在も後進の女性ロックアーティストに多大な影響を与え続けている彼女の足跡を振り返る重要な機会となりそうだ。

〈シンガーソングアクトレス 40周年記念 『玉姫様』『裏玉姫』VINYL REISSUE〉
2021.9.29 IN STORE
完全生産限定盤
各定価:¥4,070(税抜価格¥3,700)
発売元:ソニー・ミュージックダイレクト


戸川 純/玉姫様
30cm 33 1/3rpm Vinyl: MHJL-198
Original release: 1984/1/25
●完全生産限定盤
●2021年ニューカッティング
●クリアレッドヴァイナル(透明赤)仕様
●封入特典:特製ステッカー
ゲルニカ活動休止を受け、自己プロデュースで1984年リリースしたソロデビューアルバム。女性の生理をテーマにしたタイトル曲や、バロック曲(パッヘルベルのカノン)に自作詞を付けた「蛹化(むし)の女」を含み、唯一無二の世界観が存分に表現された本作は、彼女を一躍80年代サブカル女王の地位に押し上げた。現在も日本の女性ロック史に刻まれる名盤としての存在感を放っている。
Side 1
1. 怒濤の恋愛
2. 諦念プシガンガ
3. 昆虫軍
4. 憂悶の戯画
5. 隣りの印度人
Side B
1. 玉姫様
2. 森の人々
3. 踊れない
4. 蛹化の女


戸川 純とヤプーズ/裏玉姫
30cm 33 1/3rpm Vinyl: MHJL-199
Original release: 1984/4/25
●完全生産限定盤
●2021年ニューカッティング
●クリアピンクヴァイナル(透明ピンク)仕様
●封入特典:特製ステッカー
前作『玉姫様』と同年に、当初カセットテープだけで発売された初のライヴアルバムを、今回初めてアナログLP化。1984年2月19日、東京・ラフォーレミュージアム原宿で収録。バックのヤプーズ(泉水敏郎/中原信雄/比賀江隆男/立川芳雄/里美智子)と共に全編パンクでハイテンションな演奏を展開。現在でも戸川純のライヴの大詰めで歌われる「パンク蛹化の女」収録。
Side A
1. OVERTURE
2. 玉姫様
3. ベビーラヴ
4. 踊れない
5. 涙のメカニズム
Side B
1. 電車でGO
2. ロマンス娘
3. 隣りの印度人
4. 昆虫軍
5. パンク蛹化の女

戸川 純 ソニーミュージック特設サイト
https://www.110107.com/jun_togawa40th/


同じく初ヴァイナル化されるヤプーズ作品。

8月18日(水)発売
ダイヤルYを廻せ!
品番:PLP-7171
価格:¥3,850 (税込)(税抜:¥3,500)
★初回生産限定
ダダダイズム
品番:PLP-7172
価格:¥3,850 (税込)(税抜:¥3,500)
★初回生産限定

 戸川純のユーチューブ「戸川純の人生相談」もはや18回目を迎えています! 戸川純が欽ちゃんファミリーに?


https://www.youtube.com/watch?v=7kahgnKElao

 まずは1曲目 “Narrow Road” を聴いてみてほしい。ニコラス・ジャーによる憂いを含んだヴォーカルがエディットされ、デイヴ・ハリントンによる蠱惑的なギターが空間を引き裂いている。グリッチと、いくつかの細やかな具体音。アンビエントの要素もある。シングル曲 “The Limit” やサイケデリックな “I'm The Echo” で聴かれるジャーの高い声のある部分はどこかボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンを想起させ、“The Question Is To See It All” ではハリントンがロック・ギターの種々のパターンを披露、“Inside Is Out There” では感傷的なピアノが曲全体の強烈なサイケデリアを中和している。あるいは、アルバムの随所で顔をのぞかせる、中期カンの即興性。本作にはじつにさまざまな音楽のアイディアが凝縮されている。
 ダークサイドは、ふたりがソロではできないことをぶつけあい、美しく結晶化させるプロジェクトだ。ジャーの側から眺めればこれは、『Space Is Only Noise』をバンド・サウンドと衝突させた作品であり、ハリントンの側から眺めればこれは、即興のダイナミズムを編集によって制御し、電子音響の氷室へと封じこめた作品である。このアルバムではカンのように、セッションとエディット双方のすばらしいマジックが発動している。
 だれかひとり圧倒的なスターがいて、そいつが180度世界を塗り変える──物語としてはわかりやすいが、現実はそうではない。ポップ・ミュージックは組み合わせであり、幾多の先人たちの試みを後進が継承し、新たな創意工夫をもって前進させていく。ダークサイドは、そんなポップ・ミュージックの本質そのものを表現しているようだ。

 デイヴ・ハリントンについて補足しておこう。マルチ・インストゥルメンタリストの彼はNYのインディ・ロック・バンド、アームズの元メンバーとしても知られているが、もともとはジャズに入れこみ、ビル・フリゼールやジョン・ゾーンから影響を受け、ニッティング・ファクトリーでプレイするなど、当地の即興シーンで活躍していたギタリストだ。
 ダークサイドでの成功のあとも即興演奏家として活動をつづける一方、2018年にはバロウズ作品に登場する「ドリーム・マシーン」なる装置を具現化するコンサートを企画、ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカ、イギー・ポップ、ジェネシス・P=オリッジオリヴァー・コーツ、ジーナ・パーキンス、グレッグ・フォックス、〈PAN〉のビル・クーリガスら、そうそうたる顔ぶれに召集をかけてもいる。
 ダークサイドが最初に注目を集めたのは2011年の「Darkside EP」。その後2013年に彼らはダフトサイド名義でダフト・パンクのアルバム『Random Access Memories』をまるごとリミックス、オリジナルとは似ても似つかぬ特異なサウンドへとつくり変えている。同年にはファースト・アルバム『Psychic』もリリースされ、サイド・プロジェクトの域を超える高評価を獲得するに至った。ツアーも精力的にこなし、2014年におこなわれたライヴは2020年に音盤化されている。それから8年のときを経て届けられたのが、今回の新作『Spiral』だ。
 録音は2018年だという。なぜこのタイミングで? 『Spiral』の魅力はサウンドだけではない。たとえば “Lawmaker” のリリック。「彼は必要な治療法を知っている/人びとは喜び笑う/これまでどれほど大変だったか/でもそれも楽になる、と人びとは口にする」「彼は白衣を着ていた/だがその手には議員の指輪」。この背筋が凍る歌詞からは、2020年以降のパンデミック下における政治的なあれこれを連想せずにはいられない。きわめてタイムリーだ。
 注目の新作について、ジャーとハリントン、双方がメールで質問に答えてくれた。

俺たちは音楽制作を、内側から外側へとおこなっている。そして俺は個人的には、音楽がつくられているときには、なるべく、いま現在のその瞬間をたいせつにしたいと思っている。(ハリントン)

まずはダークサイドの基本的なことからお聞かせください。スタートは2011年のようですが、このプロジェクトはどういう経緯で、どういう意図のもとはじまったものなのでしょう?

デイヴ・ハリントン(Dave Harrington、以下DH):2010年に、ニコがアルバム『Space is Only Noise』のツアー・バンドを結成するというときに、ウィル・エプスタイン(ニコラス・ジャーのライヴ・バンドのメンバー)からニコを紹介されたんだ。俺はそのバンドの一員となり、一緒に練習をしたり、即興演奏をしたりして、2011年の初めからツアーを開始した。 その年の夏、ニコと俺はツアーのオフの日に、ホテルの部屋で一緒にジャムをはじめて、それが結果として俺たちのファーストEPになった。それ以来、俺たちは一緒に演奏をして、音楽をつくり、実験的なことや即興的なことをやっていたというわけさ。

ニコラス・ジャー(Nicolás Jaar、以下NJ):デイヴが答えてくれたね :)

ニコラスさんによれば、ダークサイドは「ジャム・バンド」で「休みの日にやること」とのことですが、つまりこのプロジェクトにはある種の気軽さがあるということでしょうか?

NJ:そう、ダークサイドはデイヴと一緒に音楽をつくるという美しい体験がもとになっているんだ。そのプロセスは、穏やかで、長い視点を持っている。彼と一緒にいるとき、自分は2021年に向けて音楽をつくっているという感覚がないんだ。俺たちは、どんな場所にでも、いつの時代にも存在していられるという感覚がある。

デイヴさんはダークサイドを「ぼくらが一緒に音楽をつくるときにあらわれる、部屋のなかの三番めの存在」と説明していますが、三番めの存在ということは、たんに1+1ではなく、ふたりで為しえること以上のなにかがこのプロジェクトにはある、ということでしょうか?

DH:俺たちが一緒にこのプロジェクトをやるときは、普段とはちがうことをしていて、アプローチも普段と異なったり、アイディアも普段とはべつのものを使うようにしている。ダークサイドらしいと感じられるアイディアを追求する余白をつくるようにしているんだ。もちろん、そういうアイディアは俺たち個人の嗜好や探求心から来ている部分もあると思うけれど、俺たちがダークサイドとして音楽をつくるときは、基本的ななにかを共有しているという実感があるんだ。

俺たちは鏡をのぞいて正直にならなければいけなかった。ごまかしなどいっさいせずに。でも俺たちは未来を見据えることもできなかった。すべては、現在という瞬間に感じる直感を原動力にするのが狙いだった。(ジャー)

「ダークサイド」という名前にしたのはなぜですか? おふたりそれぞれの活動では出せないダークな部分を出そうということ?

NJ:最初は冗談でつけたんだけど、それが定着したんだ。ありえないほど壮大な名前だよね、いろいろな意味で大きすぎる! でも、こういうのって一度選んでしまうと変えるのが難しいから、俺たちはダークサイドのままなんだよ!

レーベルが〈マタドール〉になったのはどういう経緯で?

NJ:〈マタドール〉から連絡が来て、〈マタドール〉からリリースするのが合っていると思ったから。ちょうどそのときに俺とデイヴは、『PsychicPsychic』の収録曲となったダークサイドの音楽をつくっていたからね。

〈マタドール〉のカタログでいちばん好きなアルバムを教えてください。

DH:ワオ。〈Matador〉の歴史は長いから、好きな作品はほんとうにたくさんあるよ。選ぶのが難しいけど、〈Matador〉の新譜でいちばん好きなのは、すばらしいエムドゥ・モクターの『Afrique Victime』だね。 あのレコードは最高だよ。

NJ:キャット・パワーのアルバムは、俺の青年時代にすごく大事なものだった!

今年はダフト・パンクが解散しました。彼らについてコメントをください。

NJ:最高なバンド。

ニコラスさんはここ数年のあいだ、アゲンスト・アール・ロジックとしての作品やFKAツイッグスのプロデュース、自身のソロ作など活動が多岐に渡っていますが、そのなかで大きな転機となる仕事はありましたか?

NJ:とくにこれという瞬間があるわけじゃない。でも、『SIRENS』のツアーが終わったときに、人生のちょっとした転機が訪れた。俺はニューヨークを離れてヨーロッパに移り、酒やタバコ、その他もろもろをやめた。2017年以降、すべてのことが俺にとっては違うように感じられたけれど、それは外から見てもわからないかもしれないね :)

デイヴさんは、デイヴ・ハリントン・グループやライツ・フルアレセント(Lights Fluorescent)としての作品がある一方、Chris Forsyth たちとのセッション盤もリリースされていますが、ご自身のなかではそれぞれどういう位置づけなのでしょう?

DH:俺は即興演奏が大好きでね。即興演奏のような音楽の練習の仕方をしていると、刺戟的で驚くようなコラボレイションにつながっていく。自分にその気さえあればね。俺はそういうコラボレイションにすごく興味を持っている。俺が興味を持っている音楽にはさまざまなモードやギアがたくさんあるんだ。そういったさまざまな音楽──たとえそれらが根本的に異なる音楽であるとしても──を追求することを自分にとっての練習の一部として認めれば認めるほど、さまざまな状況のなかで挑戦することができ、さまざまな音楽のシナリオに貢献できるということがわかった。 多様性はインスピレイションにつながるということ。

デイヴさんは、チボ・マットの羽鳥美保ともカセットを出していたようですね。どういう経緯で彼女とセッションすることに? また、たったの35本限定だったようですが、いつかわれわれ一般のリスナーが聴くチャンスは訪れるのでしょうか?

DH:ミホはほんとうにすばらしいミュージシャンだよ! 最後に会ったのはもう2年近く前だから、また彼女と一緒に演奏したい。彼女に電話して、あのカセットのことを聞いてみようかな。いつかちゃんとリリースできたら嬉しいからね。ミホと俺は、ニューヨークの即興/ジャズ界のミュージシャンのネットワークを通じて知り合った。俺の記憶が正しければ、ふたりとも大規模なアンサンブルの即興コンサートに招待されたんだけど、そのときに意気投合して、その大人数のバンドのなかでも、ふたりのあいだにおもしろい瞬間があった。その後、彼女は俺のバンドであるメリー・プランクスターズと一緒に何度かライヴに参加してくれた。俺と彼女は即興演奏にたいするアプローチがとても似ているから、その後も一緒に音楽をつくろうと思ったのは自然な流れだったね。

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俺にとってこの2枚のレコードは、ある瞬間の記録であり、イメージであると同時に、それらはつねに未完成であり、人びとがこの2枚を聴き、俺たちがこの2枚に収録されている曲を演奏し、探求していくなかで、この音楽は生き続け、変化していく。(ハリントン)

前作『Psychic』は高い評価を得ました。今回、それがプレッシャーになることはありましたか?

DH:俺が(ニコラスと)ふたたび一緒に音楽をつくりはじめ、『Spiral』の制作に取り組んだのは、ニコと一緒に音楽をつくりたいと思ったからだった。またふたりで音楽をやりはじめたら楽しくて、刺戟的で、作曲のプロセスは自然に勢いを増していった。俺たちは音楽制作を、内側から外側へとおこなっている。そして俺は個人的には、音楽がつくられているときには、なるべく、いま現在のその瞬間をたいせつにしたいと思っている。いろいろと外部要因について考えすぎても気が散漫してしまうから、その音楽でその瞬間に起こっていることに集中するほうが気分的にも良い感じがする。だからつねにそういう姿勢でいたいと思っているんだ。

NJ:俺たちはプレッシャーを感じていたとは思うけど、なにかをつくりたいなら、そういうプレッシャーのことはまったく気にしないほうがいいってことをわかっていたんだ。

制作はどういうプロセスで進められるのでしょう? 今回はふたりでニュージャージーはフレミントンのスタジオにこもったそうですが、役割分担のようなものはあるのでしょうか?

DH:今回はじつは、ニュージャージー州に家を借りてそこに滞在していて、そこに小さな、持ち運び可能なレコーディング機材を設置していたんだ。家で料理したり、裏庭に座って話をしたりしながら仕事をするのは素敵だった。俺たちの役割としては、歌うのはいつもニコで、ギターを弾くのはいつも俺だけど、それ以外はふたりともその瞬間の感じによってなんでもやるよ。

NJ:制作プロセスはすごく楽しかった。デイヴと一緒に音楽をつくっていく過程がすごく楽しいんだよ。デイヴと一緒にいると、音楽制作は独自の世界なんだと感じる。アルバムのアートワークに写っているオーブみたいな。その世界のなかでは、独自の方法ですべてが屈折されたり、維持されたりする。デイヴと一緒に音楽をつくっていると、俺はすぐべつの世界に迷いこむ。それは喜びであり、俺自身の仕事からの休暇でもあるんだ。

録音時期は2018年とのことですが、今作をつくるにあたりインスパイアされたものはありますか? 音楽でも、音楽以外のもの/出来事でも。

DH:インスピレイションは、ふたりが「一緒にジャムをしたい」「また一緒に音楽をつくりたい」という想いからはじまり、そこからすべてが流れていった。

“The Limit” は前作収録曲 “Golden Arrow” にたいする自分たち自身からの応答のようにも聞こえます。そのような意識はありましたか?

NJ:それはなかったね :) でも、そういうふうに捉えてくれてすごく嬉しい :)) !

今回の新作『Spiral』と前作『Psychic』との最大のちがいはどこにあると思いますか?

DH:俺はこの2枚のレコードのなかに存在していて、そのときの感情がどんなものであるかを知っている。レコーディング過程の記憶やイメージもあるし、俺たちがそのとき、どんな世界にいて、どんな生活をしていたのかということを覚えているから、これについて話すのは難しい。俺にはちがいや対照というものは見えないし、類似点も見られない。俺にとってこの2枚のレコードは、ある瞬間の記録であり、イメージであると同時に、それらはつねに未完成であり、人びとがこの2枚を聴き、俺たちがこの2枚に収録されている曲を演奏し、探求していくなかで、この音楽は生き続け、変化していくものだと考えている。

NJ:『Psychic』のときの俺たちはもっと野心的な心境にあった。『Spiral』においては、俺たちの原動力は野心からくるべきじゃないと考えていた。俺たちは鏡をのぞいて正直にならなければいけなかった。ごまかしなどいっさいせずに。でも俺たちは未来を見据えることもできなかった。すべては、現在という瞬間に感じる直感を原動力にするのが狙いだった。

“Lawmaker” のリリックは、奇しくも2020年以降のパンデミック下における政治を連想させます。録音時は、どのような状況をイメージしてリリックを書いていたのですか?

NJ:たしかにこの曲の歌詞は、いまとなっては奇妙な響きがあるよね。でも俺たちはアルバムのすべてを2018年に作曲したんだ。俺たちが語ろうとしていたのは、ある種の人間(男性)についての物語で、俺たちはそういう人間から成長して卒業したいと思っている。つまり、周囲の人たちにたいして規則や条件を課すような人間のこと。人びとを癒すのではなく、締めつけるような法律の社会に生きている人間。その法律は、共感や思いやり、あるいは愛と呼ばれるものを生み出すのではなく、分離や孤立を主な目的としている。

俺たちが抜け出そうとしている軸は、野心、キャリア、お金、仕事かもしれない。それ以前には、宗教や君主制が、多くの物事が動く軸になっていたようだ。俺たちの世界にとって次なる軸とはなんだと思う?(ジャー)

アルバム・タイトルの『Spiral』にはどのような意味がこめられているのでしょう?

NJ:『Spiral』という名前は、俺たちの新曲に使われている言葉なんだ。これがその歌詞だよ──「もしそれが螺旋を巻いたら、方向に関係なく、きみの顔をそこに見た(And If It Went Into A Spiral, Regardless Of Direction, There I Saw Your Face)」。これは最愛のひとの顔について歌っている。地面の位置が不明瞭でも、そのひとの顔は正しいほうを向いている、ということ。螺旋は、俺たちの時代の状況をあらわしていて、それは自分のなかへと入っていく動き(そこにはナルシシズムの意味合いももちろんある)。だけど、もっとポジティヴな意味合いとして、物事を複数の視点から見るという可能性でもあり、螺旋は軸のまわりに沿った複数の視点を提供してくれる。その軸はまだ定義されていない。俺たちが抜け出そうとしている軸は、野心、キャリア、お金、仕事かもしれない。それ以前には、宗教や君主制が、多くの物事が動く軸になっていたようだ。俺たちの世界にとって次なる軸とはなんだと思う?

報道によれば、ニューヨーク州ではワクチン接種率が70%に達したため、ほぼすべての制限が解除されたそうですね。日本は政府がほぼなにも有効なことをしないため、まだまだパンデミックの真っ最中です。にもかかわらず一ヶ月後にはオリンピックが強行開催される予定になっています。『Spiral』のリリース日は、ちょうど開会式の日にあたります。そんな状況でこのアルバムを聴くリスナーにメッセージをお願いします。

DH:世の中には、俺たちの音楽を聴くという選択をしてくれるひとたちがいることを知って、いつも謙虚な気持ちになる。俺たちがつくった音楽が、どんな小さな形であれ、だれかの人生の一部になれるということは、とても光栄なことだと思う。このような形で俺たちと時間を共有してくれるすべてのひとたちに感謝しています。

NJ:日本の現状(2021年7月8日現在)を見ると、日本ではまだひどい緊急事態の状況なんだね。オリンピックは、他の多くの団体と同様に、「通常通りの営業」を継続することを第一に考える、金目的の団体だ。俺たちが生きているこの時代では奇妙なことが起こっていて、世界の一部では通常の生活に戻りつつある一方で、他の地域では危機が残酷な形で進行している。これはとても重要なことで、俺たちはオリンピックを見ながら、このことについて考えなくてはいけないと思う。俺たちは、豊かで、主に「西洋」の国々の視点からでは、この世界をほんとうに見たり理解することはできないのだと。

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