「K A R Y Y N」と一致するもの

The Body - ele-king

 8月突入ということで2014年上半期の書き損じを記させていただきたい夏真っ盛りな今日このごろ、みなさまはいかがお過ごしだろうか?

 私は〈スカル・カタログ/スペンディング・ラウド・ジャパンツアー〉に全生命力を浪費し尽くし、一度ゲル状になり、再び人間らしい形を取り戻しつつある。そのなかでもとくにグッタリさせられたのがサウンド・チェックへ向かう車内や本番直前に必ずおこなっていたDJスカル・カタログ、というか彼のiPhoneのプレイリストを爆音で聴かされる儀式で、基本的にはメタルとビートの素晴らしい選曲ではあるのだけれど、おでこにサーチ・アンド・デストロイとか書いてある北斗の拳のキャラクターのようなノリノリの男を乗せて、そんなものを垂れ流しながらボロボロのハイエースを転がしていればつねに職質への警戒を怠ることはできぬし、イヴェント中に唐突にはじまる、「アイツの後でDJやるぜ!」みたいな対応に追われ溶けかけたりしていた。とはいえ自身のモチヴェーションを高めることを主としたミックスなのでそのアゲ作用も半端ではなく、とくにわれわれの話題にあがっていたのがコレであった。

 活動歴15年、米国はロードアイランド州プロヴィデンスで結成され、現在はポートランド州オレゴンを拠点に活動するジ・ボディ(The Body)と、電子音楽・メタル・デュード最右翼、ハクサン・クローク(Haxan Cloak)による今年度もっともオサレだけども重い一枚。永久に存在しているんじゃないかと思うほど長きに渡ってストイック極まる独自のドゥーム/スラッジを追求してきたデュオ、ザ・ボディは、かつて〈アット・ア・ロス(At A Loss)〉などのクラスト~ドゥームの流れを汲む、遅くておっもい、ダーク・クラストな感性を持つレーベルに発掘され、2011年発表の『オール・ザ・ウォーター・オブ・ザ・アース・ターン(All The Water Of The Earth Turn)』では総勢24名の女性コーラス隊、アッセンブリー・オブ・ライトとのとんでもないコラボレーションでわれわれの度肝を抜いた。Youtubeでいま見ることのできるそれは、思わず笑ってしまうが。

 これだけのインパクトをもった存在を、ゼロ年代以降のエクストリーム・ミュージックに対してインディへの架け橋を提示してきた〈スリル・ジョッキー〉が放っておくわけがない。コーラスやオーケストレーション、時にポスト・プロダクションによる大胆なインダストリアル的エディットを用いて孤高のサウンドを構築してきた彼らは、〈スリル・ジョッキー〉からの前作『クライスツ、レディーマース(Christs, Redeemers)』で、より大きなフィールドを得たのだ。そこに目を光らせたのが現在進行形インディ界随一の天才プロデュース・レーベル〈リヴェンジ・インターナショナル(RVNG Intl.)〉のマット・ウェルス(Matt Werth)である。彼はハクサン・クロークことボビー・ケリック(Bobby Krlic)をロンドンからニューヨークへ呼び出し、一週間スタジオに閉じ込めてジ・ボディのレコーディングのリミックスをおこなわせた。

 リミックスという表現は的確ではない。それはハクサン・クロークの前作『エクスカヴェイション(Excavation)』で証明された彼の職人芸とも呼べる天才的なリ・エディット術を今回も我々に存分に堪能させてくれる。ローファイにフラット化されるザ・ボディの断末魔の叫び、スロッビング・グリッスルなベースライン、ブーストされた拷問ドラムのディケイと打ち込みビートの絡み合いは最高に心地よい。ギター・リフとわかる状態で並べた展開の一部だけはチョイダサいけども、そのあたりも自身のメタル・バックグラウンドをアピールしたいボビー・ケリックの思いととれば微笑ましいではないか。解体、再構築によって両アーティストの才能と経験が加算ではなく乗算された、近年まれにみる好例だ。

 ザ・ボディを結成間もなくからつねに側で見守ってきた〈リヴェンジ・インターナショナル〉の敏腕プロデュースなくしては生まれなかった、最新型スタイリッシュ地獄絵図。「我ここに死すべし」にこめられた肉体の終焉と意識の宇宙的拡張を巡る漆黒の大スペクタクルにオサレ・ゴス・キッズも油ギッシュなノイズ/メタル・デュードも全員首と拳を振り下ろせ!

 スカル・カタログが漏らしていたザ・ボディの乗り物恐怖症伝説──具体的にはある時ヨーロッパ・ツアーをブッキングされたが飛行機が怖すぎて船によって東海岸からヨーロッパへ渡ろうと試みたものの、出航後に恐怖で発狂。救命ボートで陸に引き返したというすさまじい逸話があるらしい。祈来日! ぜひともがんばって克服してほしい。


JOLTが東京(マチ)にやって来る! - ele-king

 〈JOLT〉はオーストラリアを拠点に活動するサウンド・アートの先駆的組織で正式名称を〈JOLT Arts Inc.〉といいまして、これまでも2012年の〈EXTREMITIES〉フェスティヴァルとのツアーでも話題を集めてきた、そのJOLTと日本を代表するサウンド・アーティストとのジョイントがこのたび実現します! 

 といってピンと来ない方のためにさらに説明をつづけますと、今回の来日公演には、JOLTからボルト・アンサンブルとアンプリファイド・エレファンツのふたつのグループが参加し、JOLTのディレクターでもありメルボルン大学の研究者でもあるジェイムス・ハリック率いるエレクトロ・アコースティック・アンサンブルである前者と、知的障害者へのアートライフ・プログラムとしてスタートした後者が合体し、“THE NIS”と題したマルチメディア作品を上演する予定です。インタラクティブ・スクリーン・プロジェクション、ロボット・メカニズム、映像などを盛り込んだ舞台がどうなるかは、なかなか説明が追っつきませんが「現代音楽のサウンドとパフォーマンス・アートとを完璧な形で融合し、アーティスト全員が必要不可欠なパートを担当し、ともすれば障害という観点から語られがちな状況に陥ることなく、聴衆を融合型作品の境地へと連れ出す」と評されたそのパフォーマンスは聴き手である私たちをふくめた音楽の新しいかたちとして予測するより前に体験すべきものであることはいうまでもでもありません。

 またオーストラリアのJOLTと日本のTest Toneの共催となる今回は、日本側からも秋田昌美×千住宗臣、鈴木昭男×齋藤徹、中村としまる×広瀬淳二×山本達久――といったふだん目にすることのない組み合わせも予定されておりますので、ありきたりなフェスやイベントやパーティにバテ気味の方々はぜひ! かならずやあなたの耳をひらく二夜になることうけあいです。

公演情報

■2014.8.7 (THU)
@渋谷WWW
https://www-shibuya.jp/schedule/1408/005212.html

open/start: 19:00/19:30
adv/door: ¥3,000/¥3,500
(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)

MERZBOW×千住宗臣×ROKAPENIS
THE NIS(feat. The BOLT Ensemble & The Amplified Elephants from Australia, w/ 波多野敦子、イガキアキコ、千葉広樹、ヒュー・ロイド、白石美徳& more)
パードン木村×BING aka カジワラトシオ×Cal Lyall+中山晃子(alive painting)

■2014.8.9 (SAT)
@西麻布 SUPERDELUXE
https://www.super-deluxe.com/room/3703/

open/start :18:30/19:00
adv/door: ¥2,800/¥3,300
(税込/ドリンク代別)

鈴木昭男+齋藤徹
中村としまる+広瀬淳二+山本達久
IF I COULD SING(feat. The BOLT Ensemble, from Australia)
永田砂知子+chiharu mk+中山晃子(alive painting)

企画・制作: Jolts Arts Inc. / Test Tone / SuperDeluxe / WWW
問い合わせ: joltarts2014@test-tone.com
INFO: joltarts.org | test-tone.com | sdlx.jp | www-shibuya.jp


Gr◯un土 (Chill Mountain / 御山EDIT) - ele-king

○S△K△生まれ古墳郡育ち。
今年10祭の誕生日を迎える大阪奥河内発のSoundCampParty (CHILL MOUNTAIN)主謀者。
全国各地大小様々なCLUB、BAR、CAFE、野外PARTY、はたまたTV塔展望台など DJをツールにレコードと供に年100回以上巡業するOSAKA UTORI世代DJ。
大阪十三に四年間存在した幻しのDJ喫茶ChillMountainHutteを運営&プロデュース。

楽曲制作も行い
“御山△EDIT a.k.aTHE△EDIT”名義でUK.MAGICWAND(UK)からの2枚の12inch.
ROTATING SOULS(US)からの1枚の12inch.
absolute timeとのスプリット12INCH(ChillMountainEp).
7枚のMIXCD.
FEELBACKRECからの計3枚のコンピCDにオリジナル楽曲を提供(ドイツのケーブルTVで使用放送される).
昨年ChillMountainRecより関西奇才19組大集合となるコンピCD(ChillMountainClassics)をプロデュースするなど活動、仕掛け、発想は多義にわたる。
只今チルアウト&アンビエント&ニューエイジに焦点をあてたNEW MIX(Koyabient)を発売中。
今年のCHILL MOUNTAINは9月20日~23日の4日間、河内長野荒滝キャンプ場にて開催。


1
Late Night Tuff Guy - Edits - Razor N Tape (US)

2
Damiand Von Erckert - Giant Pandas And Other Nice Things In Life - AVA

3
Africaine 808 - Lagos, Newyork - Golf Channel

4
John Wizards - Muizenberg - Planet MU Records LTD

5
Clap! Clap! - Tambacounda EP - Black Acre

6
Men In Burka - Techno Allah - Robot Elephant Records

7
Butric - UP - Sei Es Drum

8
Passavanti - Afro Boogie Super Hombre (Full) - Sunlightsquare

9
Chill Mountain Classics - V.A - Chill Mountain Rec(JPN)

10
The△Edit - Magic Wand Vol.5 - Magic Wand

How To Dress Well - ele-king

ぼくに力はない
でもここに存在する限り
愛したい“ア・パワー”

 もしこの5、6年ほどでチルウェイヴやシンセ・ポップが本当に男たちのフェミニンな側面を引き出したとすれば、その功績は大きかったと言わざるを得ない。ちょっと見渡しただけで、クィアな男ばかりではないか! チルウェイヴでアメーバ状に広がった感性を引き継ぎ、かつ最近ではインディR&Bと呼ばれるものを切り拓いたのがハウ・トゥ・ドレス・ウェルだったということは、トム・クレルがそのファルセット・ヴォイスで喉仏=男性性をはじめから捨てていたことからもわかるだろう。彼はアルバムを重ねるごとによりオープンに自らのクィアネスを晒しているように見えて、その点では新作『“ホワット・イズ・ディス・ハート?”』に言うべきことは何もない。ロディ・マクドナルドとの共同プロデュースによってプロダクションはよりメジャーに、ポップになり、そしてジャケットにもあるようにより自分自身を露わにしている。彼自身……その弱さ、ナイーヴネス、感傷と痛みを。

 エリック・サティを思わせる神経症的なピアノの和音が導入となる“2イヤーズ・オン(シェイム・ドリーム)”はアコースティック・ギターによるバラッドで、彼の声はそのオープニング・ナンバーですでに丸裸だ。『ラヴ・リメインズ』の歪みや靄、あからさまなノイズはもうない。「痛みは決して消え去ることはない」……ふとゴッホの遺書のなかの有名な言葉を思い出す(「悲しみは永遠に消え去らない」)。そうしたカギカッコつきの「アーティスト」のある種ベタな繊細さを真っ向から引き受けていること自体に彼の勇気――開き直りと言ってもいい――を見る思いがする。あるいは、前作『トータル・ロス』収録の開放的でリズミックな“&イット・ワズ・ユー”のようなナンバーは、本作において愛を謳いあげるダンス・トラック“リピート・プレジャー”へと引き継がれている。メロディが何度もシンコペートするそのトラックには驚くほど開放的なグル―ヴがある。が、そこでも感情のハイライトとなるのは「喜びは何度も何度も繰り返す、壊れた心だとしても!」とおそろしく懸命なファルセットで叫ばれる瞬間だ。彼にとって重要なのは喜びが繰り返される=ダンス・トラックということ以上に、それが壊れた心から生まれているということなのだろう。歌唱力はない。声量もない。ただ声に込められたロウな感情、その狂おしさがある。
 前作のレヴューにマライア・キャリーの生霊を感じると書いたら本家が本当に大復活して驚いたが、もちろん彼女のようなゴージャスなプロダクションによる安定感はなく、メジャー感が増したとは言っても中心に立つ彼自身の危うさは変わらない。ライナーノーツに掲載された本人の発言を読むまで本作がジミー・イート・ワールドなどのエモの影響下にあることは嗅ぎ取れなかったが、しかしこの過剰なドラマティックさを思えば納得する話である。エモとはおそらく、エモーションをEMOと大文字に変換することによって、その青い迸りに枠組みを与えることだった。と、考えるとそれはハウ・トゥ・ドレス・ウェルが試みていることそのものでもある。クレルの曲がどんどんポップになっていくのは、彼自身が手に負えなかったであろう内側の激流を手なずけていくためであるだろう。ただいっぽうで、分厚いストリングスとともにリズムなしで歌い上げる“プア・シリル”などは彼の震える歌唱があまりにも苦しそうで、これが果たして音楽として成功しているのかわからなくなってくるが、もちろんそこでは完成度の高さなんかよりも切実なものが優先されている。

 本作に用意された3部作のヴィデオは若い男女の愛と死にまつわる苦悩を描いているのだが、そこにどうしてもトム・クレルが出演せねばならないことに彼の業があるのだろう。たとえどんな普遍的な物語や文脈が宿ろうとも、すべては彼自身、その壊れた心からやってきていることを彼は忘れてはいないし、もちろんわたしたちも知っている。ベスト・トラックを問われれば、僕は中盤のひたすらアンニュイでスウィートなシンセ・ポップ“ワーズ・アイ・ドント・リメンバー”だと答えるだろう。そこではトム・クレルの内側の混乱した愛が、「きみ」という他者に、そして聴き手たるわたしたちに遠慮なくぶつけられているからだ。「きみの人生からいなくなる方法も教えられない」……このポップでトレンディなはずのR&Bは、しかしおそろしく聴き手と親密な関係を結びながら鳴らされることを望んでいる。

Derrick May - ele-king

 ちょうど今頃、MAYDAY名義の1987年の作品が再発されて、地味に話題になっているデリック・メイのギグが、今週土曜日に代官山AIRであります。ダンス・ミュージック、ハウス・ミュージック、テクノ・ミュージックといったものに興味があって、デリック・メイのDJをまだ聴いたことがない人がいたら、週末はチャンスですよ。DJとしての技術、知識、アイデア、そしてアティチュードにおいて、いまだずば抜けていると思います。デリックの両脇を固めるDJたちも、ヒロシ・ワタナベ、ゴンノをはじめ、クラシック・セットを披露するDJワダなど最高のメンツ。

■7月26日(土)
Hi-TEK-SOUL

代官山AIR | July 26th, 2014

開催日時:
2014年7月26日(土)
OPEN / START 22:00

開催場所:
代官山AIR

出演:
Derrick May (Transmat from Detroit)
Hiroshi Watanabe a.k.a Kaito (Kompakt, Klik Records)
Gonnno (WC, Merkur, International Feel)
DJ WADA (Co-Fusion)
DJ YAMA (Sublime Records)
Ken Hidaka (Hangouter, Lone Star Production)
Milla
Naoki Shirakawa
C-Ken
Shade Sky
Gisu
mick

料金:
¥3500 Admission
¥3000 w/Flyer
¥2500 AIR members
¥2500 Under 23
¥2000 Before 11:30PM
¥1000 After 6PM


Morrissey - ele-king

 Swaggerという言葉がある。
 英和辞書には「威張って歩く」とか「ふんぞり返って歩く様」とか書かれている。が、わたしがSwaggerという言葉を聞いて連想するのは、リングに入場する時のボクサーの姿だ。肩をいからせ、ゆらりと相手を威嚇しながら歩くボクサー。
 Swaggerという言葉を思い出したモリッシーのアルバムが、これまでに2枚あった。
 『Vauxhall & I』と『You Are The Quarry』である。で、『World Peace Is None of Your Business』は3枚目にあたる。どこからでもかかって来やがれ。と、にやにや笑いながら崖っぷちに立っているようなSwaggerを感じるのだ。
 なぜだろう。誰もが不安になってライトウィングにレフトウィングに文字通り右往左往しているこの時代に、モリッシーは力強くなっている。

            ++++++++++

 『World Peace Is None of Your Business』という象徴的なタイトル(アベ政権下の日本でもそうだろうが、イラク戦争の合法性が再びクローズアップされ、ブレア元首相が連日メディアに叩かれている英国でだって壮大な嫌味に聞こえる)の本作は、音楽的には灰色の英国を歌うモリッシー・ワールドから完全に剥離している。強烈にカラフルなのである。
 スペインのフラメンコ・ギター、トルコ音楽のコブシ、ポルトガルのアコーディオンとピアノの絡み。などを随所に織り込み、ヨーロッパ大陸万歳!みたいなサウンドになっているので、ユーロヴィジョン・ソング・コンテストを見ているような感覚にさえ陥る(そらピッチフォークは嫌うだろう。ははは)。しかし、アンチEUの右翼政党UKIPが勢力を伸ばしている英国で、モリッシーがここまでヨーロピアンなサウンドを打ち出してくるとは面白い。
 が、これは単なる偶然だろう。というのも、このアルバムを作っていた時点で、モリッシーが2カ月前のEU議会選と地方選で起きたUKIPの大躍進を予想していたとは考えづらいし、過去にはモリッシー自身がUKIPのシンパであることを表明したこともあったのだ。
 けれども2014年7月にこのアルバムを聴くと、UKIPの大躍進や排外主義に対するアンチ・ステイトメントに聞こえてしまう。
 ラッキー・バスタード。
 とは言いたくないが、周期的にモリッシーにはこういう時期がくる。彼自身が言っていることは30年間まったく変わってないのに、英国の歴史のほうで彼を痛切に必要とする時期があるのだ。
 で、もちろんモリッシーはそのことをよく知っている。だからこそ本作にはSwaggerがあるのだ。

            ++++++++++

 世界平和なんて知ったこっちゃないだろう
 決まり事に腹を立てちゃいけない
 懸命に働いて、愛らしく税金を払え
 「何のため?」なんて訊いちゃいけない
 哀れで小さい愚民
 ばかな愚民
World Peace Is None of Your Business

 モリッシーが「人類は仲良くすることはできない」、「基本的に人間は互いが大嫌いだ」といった発言をする時、英国人は笑う。みんなそう思っているからだ。思っちゃいるが、だけど何もそこまで言わなくても。といったおかしみを感じるので笑ってしまうのだ。モリッシーのユーモアの本質はそこにある。
 正義だ平和だイデオロギーだと大騒ぎして喧嘩している貴様ら人間自体が、そもそも何よりくだらない。といった身も蓋もないオチが彼は得意だ。
 が、第二次世界大戦でもイラク戦争でもいい。戦争をはじめたのは、独裁者でも政府でも首相でもなかったのだ。その気になって「やったれ!」、「いてこましたれ!」と竹槍を突き上げはじめた一般ピープル(モリッシー風に言うなら、ばかな愚民)だった。そして、もし仮にまた戦争があるとすれば同じ経緯で起こるだろう。

 モリッシーが政治を歌う時は凄まじい。それは、例えばU2のように人差し指を振りながら「これはいけません。ノー、ノー、ノー」とシャロウな説教をするのではなく、人間の根源的な醜さや絶望的なアホさといった深層まで抉ってしまうからだ。

            ++++++++++

 「歌詞という点でいえば、モリッシーと同格に並べられるのはボブ・ディランだけ」
 と言ったのがラッセル・ブランドだったかノエル・ギャラガーだったか、はたまたブライトンの地べた民だったかは思い出せない。ずっとこういう英国人のモリッシー礼賛には反抗してきたのだが、「僕たちはみんな負けるー」と50代半ばの男が反復する“Mountjoy”を聴いていると妙な気分になってきた。

 Swaggerは内側の怖れを隠すため
 このルールによって僕たちは息をつく
 そしてこの地球上には
 去ることが悲しいなんて思う人間はいない
Mountjoy

 この人はディランのように60になっても70になってもポピュラー・ミュージック界の老獪詩人として疾走を続けるのかもしれない。
 米国にボブ・ディランがいるように、英国にもスティーヴン・パトリック・モリッシーがいた。とわたしにも思えるようになってきてしまった。
 (後者は間違ってもノーベル賞候補にはならないだろうが)

interview with Plastikman - ele-king


Plastikman
EX

Mute/トラフィック

MinimalTechno

Amazon iTunes

 プラスティックマンが11年ぶりに新作を出すのは、何かそうさせる機運が、彼を後押しする気配がこの時代に潜んでいるからだろう。それは本人の知るところではないかもしれない。が、カイル・ホールが俄然大きく見えることとも、ピンチがテクノを手がけることとも、V/Vmが『レイヴの死』などという、20年前も聴いた言葉を繰り返し新作の題名に使うこととも無関係ではないのだろう。
 僕はプラスティックマンが1993年当時、いかに革新的で、いかに衝撃的で、しかも、それがいかにバカ受けたしたのかを伝えなければならない。が、ラマダンマンを聴いている世代に“スパスティック”を聴かせても、普通に良い曲/使えるトラックぐらいにしか思わないようだ……(そうなのか? 高橋君?)。
 たしかに最初、ミニマル・テクノで重要だったのは、ジェフ・ミルズ、ベーシック・チャンネル、プラスティックマンの3人だったが、我々はこの20年ものあいだ、「繰り返し」の音楽がひとつのスタイルとして確立され、四方八方へと拡散していくさまを見てきているし、多くのミニマリストによるこのジャンルの多様性を見てきている。「繰り返し」はトランスさせるし、トランスしたがっている人はつねに少なくないことも知っている。
 1993年から1998年までのプラスティックマンはすごかった。新作の『EX』が11年ぶりのリリースになってしまうのも無理はない。彼はすでに多くのことをやってきているのだ。

2004年から2008年はミニマル・テクノの当たり年で、ハイプ・トレンドになった年だ。僕はハイプ・トレンドになる前からミニマル・テクノをやっていた。ハイプ・トレンドのあいだもずっとミニマル・テクノをやっていた。ハイプ・トレンドが去った後も、変わらずにミニマル・テクノをやっている。

ベルリンにお住まいですか? 

リッチー・ホウティン:いま現在の僕はイビザにいてね、イビザに居つつ、ベルリンで過ごしたり、世界中を旅したり……、こうなるとどこに住んでいるとは特定しにくい状況なんだ。
 ベルリンはずいぶん変わってきたけれど、それは街が大きく変貌していってるだけで、そこに住む人たちは何も変わっていない。いまでも刺激的だし、インスパイアされる。それは10年前と何も変わっていない。むしろ良くなっているとも言える。人が増えたからそれだけ面白い人も増えた。クラブも増えたしね。アンダーグラウンド系、スクワッド、バー、いろいろあって面白い。ベルリンはいまでも、世界でもっとも面白い都市のひとつだと思うよ。

プラスティックマンは、あなたにとってメインのプロジェクトです。1993年、初めて“Spastik”が出たときには相当な衝撃がありました。『Consumed』も当時としては挑戦的な作品でした。あらためてプラスティックマンというプロジェクトのコンセプトについて話してください。

RH:プラスティックマンのコンセプトはイコール、リッチー・ホーティンのコンセプトだと思う。新しいアイディアを積極的に実現していく。だけどそれは、いまの時代にはどんどん難しいものになってきている。音楽を作って25年、エレクトロニック・ミュージック・シーンでずっとやってきて、この長い年月のあいだにほとんどのことはやり尽くされた感がある。何か新しいもの、自分らしい個性を見つけて爆発させるって簡単なことではなくなった。
 プラスティックマンのプロジェクトを10年ぶりに復活させた理由のひとつはそこにある。ここ数年実感していたんだけれど、いま、シーンにある既存の音楽、たくさんの音楽が溢れてるなかで、プラスティックマンの音楽性とは、他の何とも同じではないと思った。だからみんなにもっと聴いて欲しい。衝撃的だと言われたファースト・アルバムから連続性のある発展を遂げてきたものだから、それを5枚〜6枚と聴いて欲しい。と同時に、僕自身のサウンドは他の人たちがやってることと比較しても個性的で遜色ないものだと自負してるし。

〈M_nus〉からシングルは出していましたが、アルバムというと、2003年の『Closer』以来の11年ぶりとなります。今回の作品を発表するに当たっての、いちばんのモチベーションは何だったのでしょう?

RH:モチベーションはたくさんあった。ここ数年のあいだ、新しくて良い音楽がたくさん世に出てきていると思う。そのなかでプラスティックマンのサウンドというのは、テクスチャーがユニークだと思うし空気感が独特だと思う。それをさらに発展させて新しいものを作っていきたいと思った。

2007年、あなたは〈M_nus〉から“Spastik”のリミックスをリリースしました。また、2010年には過去の楽曲を集めた『Kompilation』、CD9枚組のボックスセットしても『プラスティックマン ‎– Arkives 1993 - 2010』もリリースしています。プラスティックマン名義での大がかりなライヴ・ショウも試みています。あなた自身がプラスティックマンの本格的な再活動に着手するにいたった経緯を教えてください。

RH:それはライヴ・ショウをやるのと同じ理由、プロセスだと思うんだ。2008年、2009年、2010年と、僕にとっては音楽活動20周年ということでいろんな企画があった。新しいリスナーがたくさん流入してる実感があるんだよね。新しいリッチー・ホーティンのファンがたくさん増えてると思う。新しいファンはリッチー・ホーティンの歴史をあまり知らない人も多いし、僕がいままでやってきたプロジェクトを全部知っているわけではない。それらのストーリー、歴史、僕の音楽にまつわるさまざまな情報を知らせるためには、プラスティックマンのアーカイヴは有用だった。僕がいままでやってきた事を理解してもらうのにとても役立つと思ったんだ。
 2010年、2011年のライヴでプラスティックマンのアーカイヴをプレイしたのもそれが理由だった。それに僕にとっても、ずいぶん昔に具現化したアイディアを再訪するのはとても楽しい行為だった。エレクトロニック・ミュージック・シーンて変化の速度はとても速い。基本的に過去を振り返るのは好きじゃないし、いままでやったことを忘れてしまうときさえある。だけどそういう、自分でも忘れていたことをあらためて見てみると、それがいい刺激になったりもする。過去の再訪、そして過去からの継続。つまりアーカイヴ・プロジェクトは再始動の序章だよ。それをきっかけとしてニュー・アルバム『EX』に繋がっていったんだ。

近年では、UKのポスト・ダブステップのラマダンマンのように、90年代のプラスティックマンの再解釈が見受けられましたが、ご存じでしたか?

RH:いや、意識したことはない。ただ、プラスティックマンはさまざまなところに影響を与えてるとは思う。長年かけてやってきてるから。君もさっき言ってたように、初期の作品はとくに影響力が強かったと思う。でも僕自身は、音楽を作っていくことを楽しんでるだけだ。誰かに影響を与えたいとか与えようなんて思ってない。いつも考えてるのはプラスティックマンイコール、リッチー・ホーティンのサウンドになるようにってことだけ。

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たしかに『Sheet One』にはユーモアがあって『Consumed』には暗さがあった。そして、今回のアルバム『EX』は表現力があると思う。演奏がより際立っていて、僕が10年ぶりにスタジオでプラスティックマンのサウンドを爆発させようと思った、その航海なんだ。


Plastikman
EX

Mute/トラフィック

MinimalTechno

Amazon iTunes

『EX』は、昨年11月の、NYのグッゲンハイムでのライヴになりますが、これは作品としてリリースすることを前提でやったのですか?

RH:そういうわけでもなかった。前回のショウのオファーがあったとき、当初は既発の作品でやって欲しいという前提だった。しかし、それではつまらないと僕は思った。だから新曲を書こうと思ってね。それで1回のショウに足りる分くらいの曲を書こうと思って書きはじめた。それがいい感じにフロウしてきたら、ライティング・プロセスもレコーディングも楽しくてね。終わってみたら、これはすごく良いと確信したんだよ。だからリリースすると決断するのは至極当たり前の流れだった。

何故、ライヴ録音という手段を選んだのでしょう?

RH:もともとプラスティックマンのレコーディングというのは、プラスティックマンのライヴ・レコーディングと同じプロセスだからね。ライヴで人前でライヴ・レコーディングをするにしても、スタジオでレコーディングするにしても、結局僕ひとりでレコーディングするわけだから。マシンはずっと動かしっ放しだった。ちょっとアレンジしたり、コンピュータを動かしたり……。グッゲンハイムでのライヴは、普段のレコーディング・プロセスとほとんど同じだったよ。

90年代、テクノはヨーロッパでは受け入れられていましたが、アメリカは最初ヨーロッパほどこの音楽に積極的ではありませんでした。今回のアルバムがNYでのライヴということ、フランク・ロイド・ライトの建築物であるというは、あなたにとってどんな意味があったのですか?

RH:これはとても重要なポイントだった。エレクトロニック・ミュージックの現在は、北米ではこれまでにないほどとても支持されている。ただ、いまでも、やはりアートのひとつとしては捉えられていない。それが音楽史の一部として考えると面白いところでもあるんだけど。
 君の言うように、初期のエレクトロニック・ミュージックは北米ではあまり受け入れられていなかった。最近のエレクトロニック・ミュージックは、ほぼEDMと受け取られている。グッゲンハイムをプラスティックマンで再訪するというのは北米のマーケットに、エレクトロニック・ミュージックはレイヴ・ミュージックだけではない、EDMやダブ・ステップだけでもない、アーティストがいてDJがいて、世界中にあるものだと、世のなかに溢れているんだというね。
 エレクトロニック・ミュージックはさまざまな場所に溢れてる。ホールで、車のなかで、レイヴで、パーティで……。それだけではない美術館とか、そういった施設のなかでも流れてるものだからね。

スタジオでは、どの程度の手を加えたのでしょうか?

RH:ポスト・プロダクションは多少やったね。イマイチ気に入らなかった曲は1曲削除したし、全体のフロウをよくするために曲をちょっと短めに編集したりとか、そういった調整はした。ただ、ライヴ体験となるべく同じ状態でリリースしたかったから、そこは念頭において作業をした。だからちょっとしたミスやヴォリュームの問題なんかは、敢えていじらなかった。それは人間らしい息づかいを感じる部分というか、単なる機械に囲まれてるんではないという部分だから。

今年のソナーでも大がかりなライヴをやられていますし、いまやプロジェクトには、照明やヴィジュアルなどの、何人かのアーティストが関わっています。プラスティックマンというプロジェクトは、いわばチームとして再編され、総合的なアート、大きなプロジェクトに発展しているのですか?

RH:音楽的にはプラスティックマンはイコール、リッチー・ホーティンであり、僕自身なんだけど、ライヴではチームで動いている。とても親密な関係性を構築しているよ。僕の友だちのアリー・デメロール、日本人のイタル・ヤスダ、僕たちは一緒にヴィジュアルを作っている。チームワークでのクリエイティヴ・プロセスだよ。
 それは他のアーティストがやっているやり方とは違う。他のアーティストはそこに人間関係があるわけではない、よく知らないアーティストにヴィジュアル作品だけ依頼して作ってもらう。そういうやり方ではいいものは生まれないと思う。だけど僕たちはチームだ。僕たちがやってるのはひとつの家のなかで、お互いにアイディアを共有して音楽とヴィジュアルが融合したときにパワーを持つような、そういうものを作っている。ライヴで観たときにそれが体感できる何かである、ひとつの体験になるようなそういう作品を作っている。

あなたはデジタル・テクノロジーを積極的に取り入れていることでも知られていますが、とくに今回試みた新しい技術があったら教えてください。

RH:今回はプラスティックマンとしては、初めて、100%デジタルで作ったアルバムだ。303などのデジタル・プラグ・インを使ってるんだけど、そうすることでもっと自由度が増したと思う。全体の空気感がいままでよりも良い。メロディもよりメロディックなものが作れるようになったし、サウンドもより深みのあるものが生まれた。以前よりも広がりが生まれたと思う。音と音の空間もより広がった。

Sheet One』(1993年)にはユーモアがありました。『Consumed』(1998年)には暗さが反映されていました。そして、『EX』は、ライヴ演奏であり、曲名をすべて“EX”ではじまる単語に統一していますね。この意図するところは?

RH:たしかに『Sheet One』にはユーモアがあって『Consumed』には暗さがあった。そして、今回のアルバム『EX』は表現力があると思う。演奏がより際立っていて、僕が10年ぶりにスタジオでプラスティックマンのサウンドを爆発させようと思った、その航海なんだ。初期の頃のサウンドを思い出しながら、新しい領域へと踏み込んだ、その実験が最初から最後まで詰まっている。最初の曲は『Sheet One』に入っていてもおかしくないような関連性を感じる。その一方で、最後の曲は新しい領域、メロディックな領域に足を踏み入れている。それが僕の冒険であり、『EX』が辿った道筋だ。

あなたが今回のプロジェクトをやる上で、大いに参考になったことがあったら教えてください。

RH:このアルバムの重要な要素となってるのは、グッゲンハイムという建築物の傑作だね。それとインスピレーションになったのは僕のベルリンの家の暗いリビング・ルームだ。ベルリンの暗い夜に、ひとりで、部屋に座って曲を作ろうと思ったことだ。

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エレクトロニック・ミュージックの成功と熱狂的に支持された理由のひとつは、ここ10年くらいで考えると、デジタル・ディストリビューションとデジタルDJテクノロジーが先行した部分にもあると思う。デジタル・ディストリビューションはエレクトロニック・ミュージックを活性化するひとつのアドヴァンテージだと思っている。

あなたがいままで経験した他のアーティストのライヴのなかで、とくに印象に残っているものがあったら教えてください。

RH:最近は、あまり他のアーティストとコラボレーションしていない。あまり興味がないんだ。プラスティックマンとしてのライヴで良かったのは、1995年のグラストンベリーかな。プラスティックマンの新しいサウンドにみんなが熱狂し、大きなインスピレーションを与えた。それとソナーやグッゲンハイムも素晴らしかった。2〜3年前のモントリオールのミューテック・フェスティヴァルでのショウも印象に残っている。僕の誕生日で、地元カナダだったから、友だちがたくさん集まってくれた。

ここ数年、アシッド・ハウスやテクノの需要が上昇していると思いますが、あなたは時代性とか、シーンの変化ということにどこまで意識的なのでしょう?

RH:全然意識していない。音楽シーンはすごいスピードで変化し続けている。だから僕は、DJとして音楽をプレイし続ける限りは自分が好きなように冒険していければいいと思っている。自分でこれが良いと思うものをやればいいと思っている。それがたまたまトレンドとして盛り上がったらそれはいいかもしれない。だけどわざわざトレンドに乗る必要はない。

ミニマル・テクノのスタイルの音楽がポピュラーなものとなり、かれこれ20年以上も人びとに求められている理由は何だと考えますか?

RH:ミニマル・テクノはトレンドからどんどん遠ざかっていると思う。ただ、ミニマル・テクノ、ミニマル・ハウス、ミニマル・ミュージックは、ほどほどのバランスを保って人びとの注目をある程度集められるくらいの情報量があって、それで熱心に聴いてる人たちがある程度いるということだと思う。だけど、熱心に聴いてる人はそんなに多くはいないと思うよ。みんなが熱心に聴く、そのときにトレンドが起こる。みんなが熱心に聴いて口コミが広がり、話題に上って……そうしてトレンドの隆盛が繰り返されていく。しかし、音楽というのは、そこに愛があって作られる。音楽とは、そうあるべきだと思うんだ。そういう音楽が僕は好きだし、そういう音楽を僕は追っている。

ミニマルは、この10年で東欧にも広がっています。興味深いレーベルやアーティストがたくさん出てきていますよね。

RH:たしかに2004年から2008年はミニマル・テクノの当たり年というか、ハイプ・トレンドになった年だと思う。もうそういうトレンドがやってこないとは言わないけれど、それ以降の年はトレンドとは逆の方向にいったと思う。だけど僕はハイプ・トレンドになる前からミニマル・テクノをやっていた。ハイプ・トレンドのあいだもずっとミニマル・テクノをやっていたんだ。ハイプ・トレンドが去った後も、変わらずにミニマル・テクノをやっている(笑)。それでいいと思う。それが僕だから。自分の個性を見つめながら少、しずつその個性を発展させていけばそれでいいんだよ。
 東欧のシーンは、他の欧州のシーンと同じように変わり続けている。発展し続けてると思うけど、ロシア、ウクライナはとくにエレクトロニック・ミュージックが浸透していってる気がする。だけどピンポイントでは語れないな……もっと広い目で見ると、こっちでは浸透していきつつ、こっちでは廃れているみたいな、ひとつのスタイルがこっちで人気になっていると思うと、あっちではそのスタイルが廃れていくみたいな……。波と同じで、行ったり来たりだ。満ち潮もあれば引き潮もある。太陽と同じで、昇ったり沈んだりしている。だから結局、自分の道を進むしかない。自分の道を進んでいくなかで同じ道を、同じ場所を共有する人に出会う。それでいいと思う。

〈M_nus〉では積極的に新人(もしくはあまり知名度のない)アーティストを紹介されていますが、彼らはどのような基準で選ばれているのですか?

RH:僕にとって面白くてインスパイアされるアーティストで、この先成長するだろうアーティストを少しでも手助けできたらと思っている。探してるのは、自分の個性を大事にしている人たち。デリック・メイみたいなサウンドとかリッチー・ホーティンみたいなサウンドを目指すんではなくて、自分のサウンドを大事にしている人たち。
 だけど、そういう音を探すのは難しいんだ、誰だって最初は誰かの模倣からはじまるから。だけど、そこから試行錯誤して、自分のアイデンティティを見つける。そこからだね、僕の出番は。そういう人たちと接するとすごく刺激を受けるよ。

〈M_nus〉の最近のシングル作品に関して、ヴァイナルでのリリースがなくなっていますが、それはアナログをカットする魅力/必要性を感じなく なったからでしょうか?

RH:そういうわけではない。より多くの人に届くには、どうすればいいかと考えるとデジタルになる。デジタルの方がディストリビューションがしやすいし、デジタルならどこでもダウンロードできる。
 エレクトロニック・ミュージックの成功と熱狂的に支持された理由のひとつは、ここ10年くらいで考えると、デジタル・ディストリビューションとデジタルDJテクノロジーが先行した部分にもあると思う。アナログみたいにNYのレコード屋に行かないと買えないってものではなく、iTunesでも買える。デジタル・ディストリビューションはエレクトロニック・ミュージックを活性化するひとつのアドヴァンテージだと思っている。ヴァイナルはいまでも支持してるし、いまでもヴァイナルでプレイするのが好きなDJはたくさんいるから、今後もなるべくリリースしていくつもりだよ。だけどそれ「だけ」ってわけにはいかない。CDだけとか、デジタルだけとか、ヴァイナルだけとか。すべてを駆使して少しでも多くの人に届くように、そして少しでも多くの人に楽しんでもらえるようにというのが本来の目標なんだから。

日本でもライヴの予定はありますか?

RH:実は10月にRedbull Music Academyで来日予定なんだ。京都や東京でもライヴができたらいいなと思ってる。

現在あなたとDEADMAU5とのコラボレーションが噂されており、意外な組み合わせだと思う人が多いと思います。それは偶然意気投合したの か、それともあなたのなかで以前からアイデアとしてあったものなのでしょうか?

RH:ジョーは同郷のカナダ人だから、もともと交流もあったし、去年のSXSWでも一緒にDJした。楽しかったから、また一緒に何かやりたいねって話をしている。ふたりの違うタイプのカナダ人が一緒に何かやったら楽しいだろう。彼も忙しいし、僕も忙しいから実現できるのかどうかよくわからないけど。でも、意外な組み合わせに見える人脈を見せるプロジェクトは良いと思う。積極的にやっていきたい。

そういう意味ではEDMには肯定的なんですね。

RH:EDMは良いと思うよ。ここ数年、人びとがEDMに注目することで、エレクトロニック・ミュージックに興味を持つ人が増えているんだから。作り手として、僕たちはいつも新しいものをシーンに持ち込んで、新しい人たちに門戸を開いて、僕たちのシーンに、僕たちのスタイルに呼び込んでいる。EDMのアーティストは新しいエレクトロニック・ミュージック・ファンを呼び込んでいる。そして彼らがドアを開けたら、僕は彼らとは別のドアを開く。そういうことなんだろう。

ele-king presents VINYL FOREVER series vol.III - ele-king

 いつの間にか夏かよー。ラジオ体操の季節、ダンス・ミュージックの季節である。そして、夏が終わっても10月2日には恵比寿リキッドルーム10周年企画のエレナイトがあることは忘れないように。ALTZの追加出演も決まったし……
 10月2日、オウガ・ユー・アスホールと対決する森は生きているですが、エレキングの12インチ・シリーズ「VINYL FOREVER」の第三弾が、森は生きているの“ロンド”、DJ GONNOによるリミックスです。
 “ロンド”は、ライヴでもクライマックスで演奏される1曲で、森は生きているのもっとも美しい曲のひとつですが、クリックなしの演奏で録音しているそうで、つまり、リミックスの難易度としては高い曲でもあります。あの印象的な反復するアルペジオやドラミングをGONNOがどのように再構築するのか、大いに注目するところだと思います。
 ぜひ、その結果を聴いてください。ウルトラ・バレアリック・ハウスになっていると思います。また、“ロンド”のメンバー自らによるオルタネイト・ミックスも収録されています。発売日は10月8日と、だいぶ先の話ですが、覚えておいてくださいね。 

森は生きている/ロンド EP feat. Gonno

品番:EKLP-003
12インチアナログ 45rpm
¥1,500+税

Release: 10.8
初回完全限定生産

<トラック・リスト>
side A ロンド(Alternate Mix)
side B ロンド remix by Gonno

interview with Jim-E Stack - ele-king


Jim-E Stack
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 ディスクロージャーのハウス・ミュージックへのアプローチは、ダブステップ以降におけるソウルの復権運動として、いま振り返っても重要なものだったのは間違いないが、いつまでもディスクロージャーを連呼するのも野暮な話で、というのも、ハウス・ミュージックはいまも若い感性によって更新され続けているからだ。サンフランシスコ出身の若者、ジムイー・スタックはまさにそんなひとり。引き出しの多さとクオリティの高さゆえに、新人ながら、すでに欧米の主要メディアからは讃辞をもって紹介されている。NguzunguzuやA$AP Rockyのリミックスによって彼の名前を憶えている人も少なくないだろう。

 デビュー・アルバム『テル・ミー・アイ・ビロング』はベース・ミュージック/グライム以降のセンスをもって、ハウス・ミュージックを刷新する。ボルチモアからジャズまでと、幅広く吸収する雑食性の強いダンス・ミュージックで、いや、ハウス・ミュージックとはいまも前進しているのだと思い知らされる。ベース系独特のリズム感が残る“ラン”や“アウト・オブ・マインド”、“リアシュアリング”のジャジーな和音とスムースなヴォーカル、“ウィズアウト”のアフロ・テイストの入ったシンセ・ポップなどなど、すべての曲がエレガントでありながら若々しい。

 以下のインタヴューでも、ダブステップ、ジャズ、ヒップホップ、アンビエント、R&Bなどさまざまなジャンル、さらには〈フェイド・トゥ・マインド〉、〈ウィディドイット〉コレクティヴ、フォー・テット、ジェイミーXX、オマー・Sなどの固有名詞が出てくる。そのいずれとも少しずつ重なりながら、少しずつズレている絶妙なはみ出し方がジムイー・スタックの面白いところなのだろう。「テル・ミー・アイ・ビロング」、俺の居場所を教えてくれ。しかしユニークな才能がそうした狭間から現れることを、わたしたちは何度も経験しているはずだ。

彼らは俺のアルバムにたくさんソウルが詰まっていることに気づいてくれていた。本心で言ったのかわからないけど、俺にとってはソウルが詰まってるっていうのは大切な意見だった。他にもスペシャルな意見はあったけど、俺にとってソウルこそ一番の意見だったんだ。

はじめてのインタヴューとなるので、基本的なことからいくつか訊かせてください。バイオを拝見しますと、なかなか複雑な経歴をお持ちですよね。いまのあなたの音楽を聴くと少し意外にも思えます。最初にやっていたというジャズ・バンドはどのようなスタイルの音楽だったんでしょうか?

ジムイー・スタック:いろんなバンドにいたから、ひとつのスタイルじゃなかったんだよね。メインだったのは学校のビッグ・バンド。だから主にやっていたのは、ビバップ。ソニー・ロリンズなんかをプレイしてたね。あとは……いまちょっと思い出せない。高校のときはスウィングっぽいのもやってたし、パット・メセニーとかもやってたな。彼は本当にクールなギタリストだと思う。あとは、ジャズ・コンボも数人でやってたよ。でもビッグなスウィングがやっぱりメイン。マイルス・デイヴィスもやってたな。

あなた自身はどのような楽器を演奏するんでしょうか?

ジムイー:ドラムとパーカッションだけ。俺がずっとプレイしてるのはそれだけ。ピアノも興味あったんだけど、すぐに諦めてしまって(笑)。

10代の頃からクラブ・ミュージックに触れてはいたんですか?

ジム:いまやっと触れ出したとこ。子どものころは、やっぱり自分の周りの人間が聴いてる音楽を聴く。だから高校の時に聴いていたクラブ・ミュージックは、アメリカで当時流行ってたものだったね。ボルチモア・クラブ( ボルチモア・ビート)もたくさんあったな。あとはグライムとかダブステップ。当時流行った基本的なアメリカのクラブ・ミュージックだね。

通訳:あまりクラブ・ミュージックには関心はなかった?

ジムイー:全然だね。前はあまりエレクトロニック・ミュージックに関心がなかったから。でも15歳くらいに初めてダフト・パンクを聴いて、それがエレクトロニック・ミュージックにハマるスターティング・ポイントだったんだ。若いときはジャスティスとかマスタークラフトとかあの辺りを聴いてたね。そこからティーンが聴くレコードよりも深いものを探して聴くようになったんだ。

ヒップホップはどうでしょう? とくに好きだったタイプのヒップホップというとどんなものだったのですか?

ジムイー:ヒップホップは……場合によるんだよね。ハマったりハマらなかったり。若いときはみんなが聴くようなヒップホップを聴いてた。ランDMCとかそういうヒップホップ。そこからギャングスタ・ラップとかDJプレミアとかを聴くようになっていったかな。Jディラとかエリカ・バドゥも聴いてたし、あとはベイエリアのラップ/ヒップホップもたくさん聴いてたね。キーク・ダ・スニークとか。でも、そういうのは楽しいパーティ・ミュージックで、自分が音楽的に直接影響を受けたわけじゃない。10代のやつらがパーティでかける音楽、ローカル・ラッパーってだけだよ。

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俺のフラストレーションは、クラブのために音楽を作ってる感があったことだった。DJがプレイしやすいようなイントロとか、ダンスフロアのための音楽。でも、俺はジャズ・バンドの経験もあるし、パンク・バンドでもプレイしてたし、アフリカン・ミュージックやエイフェックス・ツインなんかも聴いてた。

〈フェイド・トゥ・マインド〉のキングダムに強いインスピレーションを受けたそうですが、彼の音楽のどんなところが新鮮だったのでしょうか?

ジムイー:彼のDJプレイを最初に見に行ったとき、俺はまだエレクトロニック・ミュージックのリスナーとしてかなりの新人だったんだ。ディプロとかスウィッチ、シンデンとかを聴いてた。でもキングダムは……彼はそういうミュージシャンたちとは少し変わってたんだ。そこがインスピレーションだった。
 彼からめちゃくちゃインスピレーションを受けたかと聞かれると、それは正直わからない。でもとにかく、彼のDJセットを見たときにすごくびっくりしたんだ。新しい世界が開けた気がした。UKガレージ、グライム、ヤング・マニー、90年代のハウスとかのミックスだったんだけど、俺にとってはそれがクールだった。エレクトロニック・ミュージックのシーンでは、いったいいくつのジャンルが入り交じってるんだろうっていう驚きがあった。ハウスだけじゃなくて、R&Bやヒップホップ、グライムにもなりうるんだなっていうことがわかった。もちろんハウスでもあるし、とにかくすべてのミクスチャーがエレクトロニック・ミュージックなんだな、と。彼自身が俺に多大な影響を与えたかといえばそうじゃない。でも、彼のDJセットを見た経験っていうのが俺の最初のダンス・ミュージックの経験で、目を見開いたってこと。エレクトロニック・ミュージックってクールなんだ! と実感した(笑)。

ングズングズのリミックスであなたは話題になりましたが、彼らのような〈フェイド・トゥ・マインド〉周辺のアーティストやシーンにはいまもシンパシーを抱いていますか?

ジムイー:どうだろう。親密ってわけじゃないんだよね。たまに会うって感じ。ングズングズとか、トータル・フリーダムとか、キングダムとか……その3人がメインかな。でもシンパシーとかはわからない。評価しているのは、彼らの音楽の「ほかとズレてる」ところ。彼らとか〈ナイト・スラッグス〉とか。〈フェイド・トゥ・マインド〉がはじまる前からだけど、自分がはじめてハマったそういう「ズレた」音楽を演奏するアーティストたちが好きなんだ。音楽的にシンパシーを抱いてるかとか、何か共通するものがあるかとかはあまり重要じゃない。彼らはもっとクラブ寄りで、俺のはクラブから離れてるしね。でも彼らのやっていることは評価してるし、最初は本当に衝撃的だった。すごくハマったし。ングズングズはとくに。彼の最初のEPとかね。

〈ウィディドイット〉コレクティヴ(LA拠点のプロデューサー集団)とは親交があるそうですが、シュローモやライアン・ヘムズワースといったトラック・メイカーとあなた自身の共通点はあると思いますか?

ジムイー:シュローモには、自分のアルバムを書きはじめたときにすごくインスパイアされた。
 ニューヨークに引っ越してきたばかりのときは、アルバム用の音楽のプランやネタは何もなかった。すごく大変だったんだ。いろいろやってみないといけなかったから。でも、彼はすでにファースト・アルバムをリリースしていて、一歩先を行っていた。だから彼は、自分よりも経験のあるプロデューサーだった。彼は俺の哲学を変えた存在。「最初の音源を作るときはファンがいるわけでもないし、シーンにも属していないし、DJのことも気にしなくていいし、何も期待がかかっていない。だから自由なんだ。自分のしたいことをやれ」と言ってくれたのが彼。自分自身に正直な音楽を作れと言ってくれた。だから俺はそれを実行した。いまではそれは俺の哲学になってる。彼は、音楽制作に関する俺の考え方を変えてくれた人物なんだ。ライアンは特徴的なヴァイブを持ってるよね。でも音楽的に何か通じるものがあるかどうかはわからない。でも、聴く音楽は同じものが多いと思う。友だちでもあるし、彼のことは好きだよ。

拠点を西海岸からニューヨークに移した大きな理由は何だったんでしょう?

ジムイー:西海岸とニューヨークの間にニューオリンズがあるんだけど、サンフランシスコで高校を卒業してからすぐ、大学進学のためにニューオリンズに引っ越したんだ。そこで音楽プログラムを専攻してた。でも、技術とかプロダクション、エンジニアよりも演奏がしたくなって。ニューオリンズを自分のホームだと思えたことがなかったんだよね。あとは、音楽を勉強するっていうのがイヤだったんだ。自分で好きなようにいろいろやるほうがよかった。そっちのほうが自由だし。クラスを受講するのはあまり刺激的ではなくて。で、結局学校が嫌いになっちゃって(苦笑)、ニューヨークに運良く友だちや家族がいたし、そのあと何していいかもわからなかったから引っ越したんだ。

通訳:学校を退学したんですか?

ジムイー:退学っていうか転校だね。4年間のプログラムのうちの2年をニューオリンズで勉強して、ニューヨークのハンターカレッジに転校したんだ。いまは学校にパートタイムで行きながら活動してるよ。いまだにいろいろ模索中(笑)。

リリース元の〈イノヴェイティヴ・レジャー〉はライをヒットさせたりと最近話題が多いレーベルですが、あなたがサインした最大の理由は?

ジムイー:アルバムを書いたあと何人かに聴いてもらって、ひとからひとに渡って、そのなかで何人か興味を持ってくれたんだ。でも、〈イノヴェイティヴ・レジャー〉はいつも俺と組むことに興味を持ってくれていた。彼らと話したとき、彼らは俺のアルバムにたくさんソウルが詰まっていることに気づいてくれていたんだ。彼らが本心で言ったのかわからないけど、俺にとってはソウルが詰まってるっていうのは大切な意見だった。他にもたくさんスペシャルな意見はあったけど、俺にとってソウルっていう部分は個人的に一番の意見だった。だから、俺を理解してくれてるなと思ったんだよね。
 レーベルのアーティストはあまり知らなかったけど……ノサッジ・シングくらいしか。それよりも、彼らが俺の音楽を評価してくれたってことにぐっときて、そこからレーベルを知るようになったんだ。しかも彼らはアーティストを大切にするレーベル。ビジネスの仕方もうまいけど、アーティストを気にかけて、アーティストがハッピーかどうかを考えてくれるんだ。それは俺にとってすごく大切なこと。あと、彼らは結構年配なのにかなりの幅広い音楽ファンで、俺が興味を持ってるような音楽もすべて知ってるんだ。彼らはジャズも聴くし、DJプレミアやアフリカン・ミュージックも聴く。だから共通点もあるんだ。エレクトロニック・ミュージックだけを聴くとかだったら難しかったかもしれないけど。俺は、自分の音楽をエレクトロニック・ミュージックにしたいんじゃなくて音楽にしたいから。より広がりのある音楽を作ろうとしてるんだ。

では、アルバム『テル・ミー・アイ・ビロング』について訊かせてください。デビュー作離れした、じつに完成度の高いアルバムであると同時に、とてもフレッシュな作品だと感じました。非常にさまざまな要素があなたの音楽では共存しているように思います。いわゆるベース・ミュージックやテクノ、ハウス、アンビエント、ヒップホップにジャズ。はじめからこのような多くのジャンルをまたぐ作品をイメージしていたのでしょうか?

ジムイー::答えはイエスでもありノーでもある。アルバムには10曲くらいしか入ってないけど、25~30曲くらい書いた。で、そこからより良いものを選んで削ぎ取っていった。最初にシュローモに会ったときに、好きなものを作れって話をしてくれたって言ったよね? 当時、俺はレコード契約もなかったし、導いてくれるひともいなかった。それが逆によかった。自由だったから、ただ自然と頭に浮かんでくるものを曲にして、ダーっと30曲書いた。ヒップホップだったり、ボルチモア・クラブっぽいものだったり、ハウスだったり。いろいろと違うものをとにかく作ってみたんだ。自分がしっくりくるものを。
 でも、もちろんアルバムにするときはそこから意識して曲を選ぶ必要があった。そのときに意識したのは……アルバムをリリースする前の俺のフラストレーションは、クラブのために音楽を作ってる感があったことだった。個人的にはあまり自由を感じることが出来てなかったんだ。特定のものを作らないといけなかったからね。DJがプレイしやすいようなイントロとか、ダンスフロアのための音楽。でも、俺はジャズ・バンドの経験もあるし、パンク・バンドでもプレイしてたし、アフリカン・ミュージックやエイフェックス・ツインなんかも聴いてたから、ひとつの種類の音楽を作るっていうことに対してあまり良い気分がしなかった。だから、アルバムでは自分のもっと広い音楽テイストと愛を表現したくて、そういう音楽をまとめたんだ。

しかしなかでも、ハウス・ミュージックの要素が前に出ているように思います。あなたにとっての良いハウスとはどういったものでしょう? 

ジムイー:良いハウスには、すごく自由なヴァイブがある。ただただ聴いていて気持ちいいだけ。頭だけじゃなくて身体を動かしたくなるような良いヴァイブがある。脈がうずくような。だから、俺にとっての良いハウスは、ハードだけど落ち着いたヴァイブやグルーヴがあるもの。音楽のなかで迷いこんでしまうような。そういうのは大好きだね。歩いているときにステップを踏んでしまいそうな、フィーリングやヴァイブがビートの周りに漂ってる。アップリフティングなハウスか、ディープなハウスかは関係ない。その周りにどんなヴァイブが漂っているかが重要なんだ。

通訳:好きなハウス・ミュージックのアーティストはいますか?

ジムイー:誰だろうな……何聴いてるかちょっとチェックさせて……いま俺がハマってるのはヘッド・ハイ。知ってるかな? 彼の作品には昔のハウスのグルーヴがたくさん入ってる。ガレージっぽいグルーヴとか、トッド・テリーなどと似たグルーヴを持ってて、それを2014年の感覚とミックスしてるんだ。彼は最近のお気に入りだね。ヘッド・ハイの作品には本当にハードなグルーヴがある。俺、そういうのが好きなんだ。
 昔ので言えばロビンS。彼女がパーフェクトなハウス・アンセムへの愛を見せてくれたといっても過言じゃない。すごく感情的で、フィーリングが溢れてる。90年代のハウスって世界中の音楽のなかでも好きなものが多いんだよね。バウンスやヴァイブがあって、さっきも言ったみたいに迷い込めるような。あとはラズロ・ダンスホール。彼らも似たことをやってるから。

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EDMはクソだ。できるだけ簡単に曲を作っている。何にも挑戦してないティーンのなかで作り上げられている新しいロック・スターみたいな存在がEDMのアーティストなんじゃない(笑)?

あなたの音楽のなかのハウス・ミュージックの要素は、どちらかと言うとイギリスやヨーロッパのアーティストとの接点があるようにもわたしには感じられます。たとえばフォー・テットやジェイミーXXなどヨーロッパのプロデューサーがハウス回帰していますが、彼らにシンパシーは感じますか?


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ジムイー:フォー・テットは不動のお気に入り。俺のサウンドに、ちょっとヨーロッパっぽさがあるのかもしれないね。クソみたいなハウスは全部アメリカで作られてるから(笑)。そういう音楽は作りたくないからね。やかましいゴミみたいな音楽。俺はそういうのが嫌いでたまらないんだ。ヨーロピアンに聴こえるっていうのはたぶんヴァイブだと思う。EDMとかはクソ。そういう意味ではフォー・テットにはシンパシーは感じるよ。
 ジェイミーXXも好きだよ。最近の作品はそこまでだけど。いくつかの作品はリスペクトしてるし、良い作品を作ってると思う。でも俺にとって大切なのは……俺はアメリカン・アーティストになりたいんだ。フォー・テットとかジェイミーみたいなヨーロピアンになろうとしてるわけじゃない。彼らがやってることは好きだけど、アメリカン・サウンドを作りたいとは思っている。アメリカの音楽を良い方向に前進させたいんだよね。クソEDMから抜け出させないと。

この作品はリスニングとしても楽しめる作品であり、同時にダンス・ミュージックとしてのパワフルです。あなたにとって、ダンス・ミュージックであることは重要ですか?

ジムイー:全然。偶然そうなったんだ。音楽を作りはじめた最初のころは、クラブ用の曲をたくさん作ってた。クラブ・ミュージックを聴いてもいたしね。だからアルバムにそういう音楽も含まれてはいるけど、そういうアルバムにしようとしたわけじゃない。今回は、ダンスフロアを意識せずに自由に音楽を作りたかった。アルバムを作ってるときは、ただ自分が作りたい音楽を作ってたんだ。何か特別なものを作りたかったわけじゃないし、ダンス・ミュージックみたいにしたいとか、したくないとかはなかった。プロセスは本当に自然だった。それがたまたまダンサブルになっただけ。ダンス・ミュージックとクラブ・ミュージックのいくつかは、自分が世界で一番好きな音楽のひとつでもある。良い作品はね。カリズマとかオマー・Sとか。だから、それが自然と反映されたんだろうね。

通訳:さっきEDMが嫌いとおっしゃってましたが、EDMに関してはどういう意見を持っていますか?

ジム:新しいサブ・ポップ・ジャンルみたいな……できるだけ簡単に曲を作ってるって感じ。リスナーのためだろうけど、何にも挑戦してないし、やりがいがない。キッズたちからデカいリアクションが来るには来るだろうけど……俺はそういうことは絶対にしないから。キッズたちも、そのうちそういう簡単な音楽以上なものを求めるようになるんじゃないかな。もっとやりがいがあったり、ソウルを感じられる音楽。ティーンのなかで作り上げられている新しいロック・スターみたいな存在がEDMのアーティストなんじゃない(笑)?

アルバムの制作にあたって、はじめからコンセプトやテーマはあったのでしょうか?

ジム:いや、なかったね。俺はただ、自然に出てくるものを作品にしただけだから。自分のために作ったし、そのときがたまたま自分のなかの変な時期だったっていうか……どこにも属してなくて、ちょっと迷ってた時期だった。だから、それが自然と表現のなかに出て来たんじゃないかな。でも意識はしていない。アルバムに収録されている曲は、すべてナチュラルなフィーリングで出来てるから。もしかしたら、それが知らないうちにテーマになったのかも。個人的に自分がいた立ち位置というか、自分自身のそのときの姿というか。

そういう意味で、『テル・ミー・アイ・ビロング』というアルバム・タイトル、オープニングの“サムホェア”という曲名が象徴的ですね。

ジム:アルバムを作っていた時期は、なんか外にいた感じがしてて。変な感じ。どこにも属していなかったんだ。周りの友だちはすでにサンフランシスコを出てたから自分もサンフランシスコを出て、で、ニューオリンズに行ってみてもあまりしっくりこなくて、ニューヨークもクレイジーな場所だから完全にホームだとは感じられない。それが曲に表れたんだと思う。俺が何を感じてたかが反映されたんだろうね。
 いま思うと、曲名にもそれが表れてる。高校のとき使ってたサンプルも使われてたりするし、それをニューオリンズでもまた違うヴァージョンに作り変えたり、ニューヨークでも作り直したりってしてたから。属していないとか、落ち着いてない感はたしかに含まれているのかも。

“イズ・イット・ミー”はミニマルで研ぎ澄まされたダンス・トラックですが、これもタイトルが印象的です。クラブ・ミュージックの曲名としては珍しい気がするというか。どうしてこのような、アイデンティティを問うような曲名にしたのでしょうか?

ジムイー:自分でもあまりわからないんだ。ときには2年間とか決まった期間の自分が表れている曲もあるし、昔の自分が表れている曲もあるし……答えはわからない。作ってるときによるんだよね。作ってるときは、自分の感じてることとか自分自身の姿がメインになって表れてくるから。

アルバムには様々なスタイルのトラックがありますが、なかでも“ウィズアウト”はちょっとアフロっぽいムードもあってとくに印象の異なる曲ですね。これはどういったインスピレーションから生まれたトラックなのでしょうか?

ジムイー:自分が作ったビートからはじまった曲。それをだんだん曲にしていった。作っていくうちにインストっぽく感じられなくなって、ヴォーカルを前面に持ってくることに決めた。アンドレア・マーティンが歌ってるんだけど、彼女は素晴らしいR&Bライターなんだ。彼女はエン・ヴォーグとかSWV、トニー・ブラクストンなんかに曲を書いてる。自分より年上で40歳くらいなんだけど、俺の作るような音楽も理解している素晴らしいライターなんだ。R&Bはつねに聴いてるし、彼女は本物の実力あるR&Bライター。だから彼女とコラボできて本当によかったよ。メロディの上から彼女が歌って自分に送ってきたものを、アレンジし直していまのヴァージョンの曲にしたんだ。

アートワークの覆面はあなた自身を表現しているのでしょうか? あるいは違う人物?

ジムイー:あれは俺(笑)。ニューヨークに引っ越してきたときに、パーティに行って気絶するくらいめちゃくちゃ酔ってたんだけど(笑)、その会場にフォトグラファーがいて、あの写真を撮ってくれた。で、アルバム用の写真をどうしようか考えていたとき、これがいいんじゃないかなと思って。わざわざ撮影したものじゃないし、素の自分の写真だったから、何かアルバムの音楽に共通するものがあるような気がして。気に入ってくれるといいけど(笑)。

いま、ミュージシャンとしてもっともトライしたいことを教えてください。

ジムイー:ミュージシャンって、ひとりで作業をする時間が必要だと思うんだ。たとえばジャズのセッションだって、みんないっしょに演奏する前にかなりの時間を個人練習に費やしてる。今回のアルバム作りを終えて、自分ひとりでかなりの時間作業するっていう経験を積めたと思うんだ。これからももちろんそうしていくし、曲も作り続けていくけど、その経験を経たことで、今後ほかのミュージシャンとコラボしていきたいなとも思ってる。俺はもともとバンドで演奏してきたから、そういう音楽もやっぱりやってみたいんだよね。それがいまトライしたいことだな。

 70年代生まれの私たちにとって、女子小学生の遊びといえば、リカちゃん人形をはじめとする着せ替え人形が定番でした。しかし現代の女児たちは、着せ替え遊びにあまり関心がなさそうです。長女が4~5歳の頃に夫からリカちゃん人形を買い与えられたとき、高いドレスをねだられないようにあわてて古着をリメイクしてリアルクローズな人形服をこしらえ、今後のリクエストに応えるべく裁縫材料を購入したものです。しかし彼女がリカちゃんで遊んだのはほんの一時期。落書きされた哀れなリカちゃんは、ビニールケースの中に無造作に突っ込まれたままです。

「もう着せ替え人形では遊ばないの?」
「友だち誰も遊んでないしー。みんな『アイカツ!』とかゲームとかのほうが好きだしー」

 たしかに娯楽が山ほどある現代において、服を着せたり脱がせたりするだけの遊びは退屈にちがいありません。というか、自分自身もなんでそんな退屈な作業をしていたのか、よくわからなくなってきました。狭い家で地味なお下がりを着るしかなかった当時の庶民女児の一人として、リカちゃんになにがしかの夢を託していたのでしょうか。一方、リカちゃんのドレスとさして変わらない値段でひらひらワンピースを買ってもらえるファストファッション時代の現代女児は、わざわざ着せ替え人形で夢を見る必要はなさそうです。事実、リカちゃん人形の売上は、ピーク時に比べて半分以下に下がっていると聞きました(ITmediaニュース)。

 そんな我が家に、なぜかやってきたのが、「起業家バービー」と「大統領バービー」。


左が「起業家バービー」、右が「大統領バービー」

私が「仕事つらい……」と愚痴っていたら、夫が「起業すれば?」と誕生日プレゼントとして注文してくれたのです。

  「起業家バービー(Entrepreneur Barbie)」は、今年6月にマテル社から発売された、バービーがいろいろな職業に挑戦する「Barbie I Can Be…」シリーズの最新作。髪色と肌の色が異なる4種類のラインナップで、アクセサリー小物はスマホにタブレット端末、ブリーフケースと、「おうちサロン」レベルではなさそうな本格的なキャリアウーマン風です。

 「Barbie I Can Be…」シリーズではこのほか、コンピュータ・エンジニア、歯科医、獣医、パイロット、ライフガード、レーサー、サッカー選手、スキー選手、女子アナ、北極レスキュー隊などに扮したバービーが発売されています。「大統領バービー」(U.S.A. President Barbie)もその一つ。ガチャピンにひけをとらないチャレンジぶりですが、同シリーズに限らずバービーの職業人としての歴史は意外にも長く、1960年代の時点で宇宙飛行士、会社役員、地理教師に、1970年代にはダウンヒル・スキーヤー、外科医にもなっています。フェミニズムがカルト思想扱いされている日本に住んでいる身からすると、うらやましいほどのポリティカルコレクトネス。

 そんなバービーですが、本国ではときに厳しいバッシングにさらされてきたのも事実。いわく、バービーで遊んでいた少女ほど、自分の身体イメージに自信が持てず、小学生の頃からダイエットに励む傾向にある。人種偏見を助長する。ジェンダーに対する固定的なイメージを植え付ける。「ご心配なくお母さんお父さん。バービーで遊んでもあなたの娘さんは拒食症になったり人種差別をしたり生涯年収が減ったりはしませんよ」──そんな保護者へのメッセージが、起業家バービーには込められていそうです。起業家バービーの発売に合わせて、公式サイトで実在の女性起業家10名をフィーチャーするBarbie Celebrates Women Entrepreneurs特設ページを設けているのも、フェミニズムを標準装備している保護者へのアピールの一つなのでしょう。またバービーオフィシャルのTumblr「THE BARBIE PROJECT」でも、少女手作りのバービーハウスやお手製メキシコ民族風衣装などのクリエイティヴな遊びの数々が紹介され、娘の知的発達を阻害したくない親心をくすぐってくれます。

 ところが、今年3月にオレゴン州立大学の研究者らが発表した調査は、こうした試みに水を差すようなものでした。バービーで遊ぶ女の子は、男の子よりも将来の職業の選択肢を少なくとらえており、それは従来のバービーで遊ぶ子もお医者さんバービーで遊ぶ子も変わらなかったそうです。職業の選択肢の数が男の子と変わらなかった女の子は、『トイ・ストーリー』のミセス・ポテトヘッドで遊んでいたグループだけ。


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ジェンダーフリーを推進する
じゃがいも「ミセス・ポテトヘッド」

 女子がセクシーであるべしという価値観を内面化してしまうと、必然的に職業の選択肢が減ってしまうということなのでしょうか。ごつくなったり忙しすぎて髭が生えそうな仕事は避けたいでしょうし……。それでも、建前ではあってもコンピュータ・エンジニアが女の子の職業として提示される環境は、率直に言ってうらやましいなと感じています。私は子どもの頃プログラミングや数学が大好きでしたが、女の自分がそれらを活かした道に進めるなんて夢にも思いませんでした。ロールモデルの代わりに与えられたのは、「女がそんなことに興味を持っても何にもならないのに」という、やはり性別ゆえに大学進学を諦めざるをえなかった母親の複雑そうな顔だけ。大人になってみて、女向けとされる仕事は若さや容姿が必須でキャリアを積みづらい職も少なくないことを実感しました。このことが男女間の格差を生んでいる一因であるようにも思われます。ロールモデル、超重要。

 ともあれ、バービーを一目見た長女は、執拗にねだりはじめました。

「リカちゃんでぜんぜん遊んでないじゃない。バービーならいいの?」
「バービーは背が高くてかっこいいからいいの。化粧が濃いのはちょっとイヤだけど。リカちゃんは……かわいい系かな」
「ピンクはもう嫌いになったって言ってなかったっけ。この人たち、どピンクですけど」
「(パステル)ピンクは子どもっぽいもん。でもこのピンクはかっこいいと思う」

 そういえばバービーたちのチェリーピンク×黒の取り合わせ、長女の最近のファッションに似ています。黒ジャージ下にチェリーピンクのトップスという、私からすると不思議なコーディネートは、「強そう」という理由でお気に入りらしい。

 彼女は2体のバービーを両手に持ち、着せ替えはせず(そもそも着替えは付いていないのですが)それぞれの声をアテレコしてごっこ遊びをはじめました。完全に起業家と大統領になりきっています。すごい、ロールモデルになっている。私は子どもの頃、リカちゃんをロールモデルとしてとらえたことはありませんでした。正直、どんな人なのかすらよくわかっていなかったのです。しかしリカちゃんだって時代に合わせた展開をしているはず。調べてみると……


リカちゃん
おしゃべりスマートハウス
ゆったりさん

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 リカちゃんハウスがスマートハウスになっていました。そっち方面に進化していたのか。小物類も、洗濯乾燥機、ルンバ風のロボット掃除機、電動自動車と、最新家電事情を反映しています。しかしこれ、女児は喜ぶのでしょうか。電動自転車で双子の送り迎えもラクラク! 太陽光発電なら電気代もオトクだし、洗濯乾燥機とルンバがあれば夫が非協力的でもどうにかなるワ~って、それ家事育児と仕事を一人で担うお母さんの願望なのでは? よくよくスマートハウスの商品写真を見てみると、台所でお菓子作りをしているお母さん&リカちゃんに、ダイニング・テーブルで新聞を読んでいるお父さんと、家は最新型でもジェンダー観は昭和のままです。写真まんがでは、リカちゃんのドジっ子ぶりも昭和風。あらたにおともだちに加わったキャラの将来の夢は、「ヘアスタイリスト」「トップモデル」「アイドル」「トリマー」「へアメイクアップアーティスト」と、ファッション系で占められています。夢に何を選ぼうが自由とはいえ、偏りすぎというか、リアル女児の夢ももう少しばらけているように思います。これでは起業家リカちゃんや大統領リカちゃんはもちろん、SEリカちゃんも地方議員リカちゃんも生まれそうにありません。家電をきわめてカツマーリカちゃんになれば、意識高いバービー勢に対抗できるかもしれませんが……。

 とはいえ、かの小保方さんがなぜあの論文とあのノートであの地位まで上り詰めたのか、と考えたときに、6歳児ですら嫌がるパステルピンクを積極的に取り入れ、昭和のドジっ子のような実験ノートの取り方をし、理詰めではなくうるうるの瞳で訴えるといった「リカちゃん好きの女児のまま大人になった感」が、大きく介在しているであろうことを思わずにはいられないのです。エライおじさんたちの判断力を奪うほどのピュアな女児力(プリンセス細胞!)。科学の世界だから問題になっただけで、文化系業界や実業界ならあのまま成功し続けただろう、とも感じます。日本の女の子が好きな道で成功するには、リカちゃんをロールモデルにするのが結果正解なのかも。そんなことをぐるぐる考えていたら、ごっこ遊び継続中の娘からこんな声が。

「私ね、29歳で大統領って言ったけど……あれはウソなの」
「実は私も、社長じゃないの」

 虚言癖バービーになっていました。まあそうですよね。身の回りに女性社長も、女性大統領もいないもの。『OECDジェンダー白書――今こそ男女格差解消に向けた取り組みを!』によれば、日本は子育てをしながら働く女性の、男性との給与格差が先進国で最大(男性の39%)なのだそうです。残業ができないために出産前までの職種に戻ることが難しく、パートタイム派遣に就いている私も、格差を構成する母たちの一人。そんな日本の母たちの姿を見ている女児が、人形だけでアメリカンドリームを抱けるはずもなく。やっぱり自分が起業するしかない……のかも。

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