「K A R Y Y N」と一致するもの

 これは期待の膨らむコラボだ。アンビエントをはじめ幅広い活動を繰り広げるナカコー、今年〈ハイパーダブ〉から新作を送り出したプロデューサーの食品まつり、大ヴェテラン・ドラマーの沼澤尚(ナカコーとの関係も深い)によるライヴ・セッションが音盤化される。いろんな要素がクロスオーヴァーした音楽に仕上がっているようだが、はてさて、いったいどんなサウンドが鳴り響いているのか……発売は年明け後の1月12日。いまから楽しみです。

ナカコー×食品まつり×沼澤尚!
待望の初音源リリース決定!!

三者三様、独自の音楽観に定評あるクリエーターよる膨大なセッション音源をナカコーがトリートメント! 静寂の中の心地良さにどこか引っ掛かりを残したアンビエント的オルタナティブポップミュージック!

Koji Nakamura (electronics)、食品まつりa.k.a foodman(electronics)、沼澤尚(Dr)がスタジオに入り素材録音ために敢行した即興的なライブセッションをナカコーがトリートメント(Extraction、Edit、Mix)した全7曲のアルバム『Humanity』が2022年1月12日にリリースとなります。

アンビエント、エレクトロポップ、ダンスミュージック、ロックがクロスオーバーした一種のオルタナティブなポップミュージックはニューノーマルな日常にピッタリ寄り添う今日的な録音作品と言えます。

[リリース情報]
アーティスト:Koji Nakamura+食品まつりa.k.a foodman+沼澤尚
タイトル:Humanity
レーベル:felicity / P-VINE
品番:PCD-18891
フォーマット:CD / 配信
価格:¥3,300(税込)(税抜:¥3,000)
発売日:2022年1月12日(水)

[収録曲]
M1. no.1
M2. no.2
M3. no.3
M4. no.4
M5. no.5
M6. no.6
M7. no.7

[プロフィール]

【Koji Nakamura】
1995年地元青森にてバンド「スーパーカー」を結成し2005年解散。その後、ソロ活動をスタート。アーティスト活動他、コンポーザーとしてCMや劇伴、多くの楽曲提供を行う一方、バンド「LAMA」「MUGAMICHILL」としても活動中。また日本のアンビエントを牽引すべく、『HARDCORE AMBIENCE』をduennと共に主宰し、映像やライブを展開中。

【食品まつりa.k.a foodman】
名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、現在までNY、UK、日本他の様々なレーベルから作品がリリースされている。また、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine, Tiny MixTapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出されてた功績を持つ。

【沼澤 尚】
ドラマー。LAの音楽学校P.I.T.に留学。JOE PORCARO,、PALPH HUMPHREYらに師事し、卒業時に同校講師に迎えられる。2000年までLAに在住し、CHAKA KHAN、BOBBY WOMACK、AL.McKAY&L.A.ALL STARS、NED DOHENY、SHIELA E.などのツアーに参加し、13CATSとして活動。2000年に帰国して以降現在まで、数えきれないアーティストのレコーディングやライブに参加しながらシアターブルック,blues.the-butcher-590213で活動中。

Space Afrika - ele-king

 BLMに呼応したミックステープ『Hybtwibt?』を経ての、Josh Reidy & Joshua Inyang によるマンチェスターのデュオ、スペース・アフリカによる待望のフル・レングス・アルバム『Honest Labour』。今夏の夜空の下……から隔絶されたクーラーの聴いた薄暗い部屋で最も良く聴いたダウンテンポ~ダブ・アンビエントかもしれない。その名前のように、ある種のアフロフューチャリズム的な世界観はそこにはあるが、しかしそれはPファンクのようなぶっ飛んだ宇宙探訪ではなく、インナースペースへと突き進んでいくタイプのものだ。

 もともとは彼らといえばロッド・モーデルなどのいわゆるベーシック・チャンネル・フォロワー的なミニマル・ダブ・サウンドに呼応する一群のワン・オブ・ゼムといったところであった。現在はお聞きのようにビートは後退し、フィールド・レコーディングやカット・アップ~サウンド・コラージュ的なサウンドへと様変わりしている。やはりサウンドが大きく変化し、彼らの存在をより多くの人びとに知らしめたのは、2018年のダブ・ダウンテンポな『Somewhere Decent To Live』ではないだろうか。シンセの残響音が霧散しながら空気に渦を巻く、うっすらとしたベースラインを揺らし、おぼろげな世界を陰鬱に描いてく。またそのサウンドはここ数年、ある種のヴェイパーウェイヴ以降のミニマル・ダブの発展系として、新たな動きとなっている感もあるフエルコ・S周辺のアヴァンギャルドなアンビエント・テクノの一群とも共鳴する感覚もある。

 2020年には、コロナ禍を経て、一気に吹き上がったアンチ・レイシズムの動きに呼応し、NTSでのレジデンシー番組を、再編集し、BLM、その周辺の支援ドネーションを募った『hybtwibt?』をリリースした。この作品ではフィールド・レコーディングやヴォイス・サンプルなど、さまざまなコラージュによって、殺伐とした現実を断片的に投影することで浮かび上がらせていた。そのサウンドはコラージュ・アンビエントだが、アフリカ系の彼らにとって、それは当たり前のことではあるが、どこか静かに怒気をはらんでいる、そんなサウンドであった。またこうした作品の後、マンチェスター出身のヴィジュアル・アーティスト、詩人、映像作家である Tibyan Mahawah の作品に OST として提供したシングル「Untitled (To Describe You) [OST]」もリリースしている。陶酔的な『Somewhere Decent To Live』とこれらの作品の違いはやはりなんといってもカットアップ&コラージュ。現実を断片的に霧散させながらも意識に投影させていく、逃避だけではなく、ある種の現実へのアプローチを感じるものだ。

 Joshua のルーツとなるナイジェリアの家長にちなんで名付けられたという本作は、『Somewhere Decent To Live』の陶酔観と、こうした作品のコラージュ感がミックスされた作品だ。コラージュ・サウンドのスタイル的にはディーン・ブランドの諸作も思い起こさせる、全体的な感覚としてはトリッキーの『Maxinquaye』、ニアリー・ゴッド名義でもいいかもしれない。ダークでメランコリック、時にノスタルジーと不機嫌が同居する。ノイジーなダークコア・ジャングルのゴーストが断片となってノスタルジーを呼び起こす “Yyyyyy2222” にはじまり、トリッキーとマルチネの危ういランデヴーを想起させる “Indigo Grit”、不安定なノイズがザッピングしてくる “With Your Touch” では子供時代を不穏に呼び起こし、“Meet Me At Sachas” では雑踏の喧噪がループし、時が止まりながらもブレイクビーツが時を刻むが、「Oh! Shit!」という言葉とともにその雑踏は動きだす。こうしたコラージュ音の間を、雨音のようなノイズやゴシック調のシンセ音がかき消えては通り過ぎていく。幾重にも重ねられた現実の断片がまるで走馬灯のようにちりばめられている。また、いくつかの楽曲でラップやポエトリーが取り入れられたのも本作の特徴だろう。
 しかし、ダビーなダウンビートという全体の感覚は、やはりソファーで沈み込む怠惰な快楽を助長するものだ。そんななかインナースペースでトリップを続ける宇宙船から見た窓の外、忘却された過去を必死で呼び戻すようにさまざまなコラージュが迫ってくる。それはどこかメランコリックな忘却で過去を喪失させまいとする絶妙なるせめぎ合いのようでもある。覚めた目で現実を見ながら、怠惰にトリップする。そんな感覚が本作にはある。

 世界から物理的に隔絶された部屋、しかし意識はどこか覚めていて、殺伐とした社会の動きと孤独を認知しながら、同時にソファーに身を沈める怠惰な快楽へと沈殿する。外とつながりながらも隔絶された、そんなコロナ禍の静かに混乱した密室のサウンドトラックとしてこれほど相当しいものはなかったのだ。どうしても僕はニューエイジが描くユーフォリックなパラダイスには重くて飛べやしなかったのだろう。

Boris - ele-king

 世界的な人気をほこるヘヴィ・ロック・バンド、ボリスの新作(シングル)「Reincarnation Rose」が11月17日、〈キリキリヴィラ〉からリリースされる。なんと新曲には、アルバム『We Are The Times』が評判のBuffalo Daughterのシュガー吉永が参加。表題曲はギターがうねりまくりの圧倒的なボリス・サウンドで、カップリング曲のおよそ20分のドローン‏/アンビエントも注目に値する。初回限定盤で、16ページブックレット仕様。

Boris
Reincarnation Rose

11月17日発売
KKV-126
1. Reincarnation Rose 4:20
2. You Will Know 19:38

予約ページ
https://store.kilikilivilla.com/v2/product/detail/KKV-126

Low - ele-king

 ロックはもはや若い音楽形態ではない。幼少期、不機嫌な十代、反抗的な青年期に中年の危機などを経て、そのパワーの大部分が、サウンド、コード、習慣やダイナミクスなどの馴染み深いものからきている。ロック・ミュージックのエモーショナルなビートは、私たちの中に焼き付けられており、簡単かつ快適に反応してしまうのだ。ロック・ミュージックを聴くことは帰郷することに似ている。

 しかし、ロックのパワーの多くは、驚き、スリル、そして衝撃を与えるなどの能力からもきている。そのため、ロックで経験する親しみやすさは、常に陳腐になりやすいという脅威にさらされてもいる。つまり、ロック・ミュージックのどこかの一角は、常に自己破壊と再構築の過程にあり、自分を見失い、手探りしながら家路を辿り、馴染み深い形に行き着き、思わぬ方法や新鮮な角度から新しい意味を見出しているのだ。

 Lowの2018年のアルバム『Double Negative』では、色々なことがとりあげられていたと思うが、そのひとつが、ロック・ミュージックがそれ自身を見失い、壊されていくということだった。かつての、穏やかで死者を悼むかのような哀愁のメロディやハーモニーは、デジタル・ディストーションの猛吹雪の中で聴かれようともがき、ヴォーカルは遠く不明瞭で、焦点からずれたり、消えたりしながら、曲たちはひとつにまとまろうとしつつ、その形は絶えずカオスの中に溶け込んでいった。

 その歪んだパレットが『Hey What』の出発点となり、オープニング・トラックの“White Horses”が不快な紙やすりのような唸りで幕を開けるが、ディストーションはすぐに短い、鋭く突くパーカッシヴな音に転換し、くっきりとしたクリアなハーモニーで、「Still, white horses takes us home(それでも、白馬が私たちを家に連れ帰ってくれる)”」と宣言する。『Double Negative』ではまとまりにくかった曲たちが『Hey What』では確実にノイズとディストーションの統制がとれており、それらを大胆でパワフルなアレンジの武器として配備しているのだ。

 Lowはこれまでにも、2002年の『Trust』の控えめなゴシック・グランジから〈サブ・ポップ〉からのデビュー盤となった激しく意気揚々としたロックの『The Great Destroyer』への移行のように、似たようなサイクルを繰り返してきた。これらのアルバムでは、ほとんどギター・ロックという馴染み深いパレットの枠組みのなかで操作されてきたが、2021年のLowは、楽器のサウンドの原形をとどめないほど、歪ませながらも、馴染みのロック風の結末のためにこれを利用している。SIDE Aは7分に及ぶ “Hey” で締めくくられるが、ここでは、脈打つ海底のノイズの壁が、反復する単一のヴォーカル・フックを包み込み、金目当ての制作者の手にかかれば、アメリカのティーンエイジャーのドラマのモンタージュのサウンドトラックとしても使えるようなものになっていたかもしれない。
 SIDE Bは“Days Like These”のヴォーカルのハーモニーとシンプルなオルガンではじまり、いまでは馴染みとなったノイズが打ち付けると、腹のなかで雷が鳴り響き、拳を振りあげる勢いで着地する。ほとんど安っぽくきこえてしまうが、それはやむを得ない。ロックの動きだからだ──観客は、イントロが始まると、銃を構えたロックンロール・バンドのギタリストがリフを繰り出すためにステージ上をうろつくのを待っている。Lowはその期待に応え、ロックのショーマンとして、正確にタイミングを計っているのだ。“More”ではそれがさらに顕著となり、いまではデュオとなった彼らの、ねじれた機材を通じてスコールのように合成される歪んだリフで聴衆に襲いかかる。

 『Double Negative』は、よくトランプ時代に渦巻くカオスとアメリカの国境を遥かに超えて広がる、すべてが崩壊していく無力感を表現しているといわれた。そのような破壊的な力に直面しても美しい何かを守り抜こうと苦闘する彼らの遠方の声には慰めがあり、『Hey What』はある意味、次のステップのように感じられる。ある種の解放感やカオス、敗れたというよりも利用されたこと、そして再びコントロールする能力を取り戻すという感覚だ。それをポジティヴととらえるのは、あまりにも単純すぎる──暗闇、悲しさ、絶望、不確かさに喪失感が歌詞に深く通底しており、音楽のもっとも鋭利な部分をもすり切れさせている──だが、少なくとも、馴染み深いロックのパワーが、未知で混乱した、刺激的な方向から新たに形作られていることがわかり、少し希望が持てるような気分になる。

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Rock is no longer a young musical form. It has been through its childhood, stroppy teenage years, rebellious youth and midlife crisis, and a major part of its power comes from familiarity — of its sounds, chords, conventions and dynamics. The emotional beats of rock music are baked into us and we respond easily, comfortably to its manipulations. Listening to rock music is like coming home.

But a lot of rock’s power also comes from its ability to startle, thrill and electrify — experiences that rock’s ever-present familiarity always threatens to undermine in the form of cliché. This means that some corner of rock music is always in the process of destroying itself and reconstructing, losing itself and feeling its way back home, reaching those familiar shapes in unexpected ways or from fresh angles, giving them new meanings.

Low’s 2018 album Double Negative was probably about many things, but one thing it was about was rock music losing itself, being broken down. Melodies and harmonies that would have been gentle and mournful in the past here struggled to be heard amid blizzards of digital distortion, vocals distant and indistinct, fading in and out of focus as the songs struggled to hold themselves together, their forms constantly dissolving in the chaos.

That distorted palette is the jumping off point for Hey What, with opening track White Horses kicking the album off with a harsh sonic sandpaper growl, but the distortion quickly resolves itself into short, sharp, percussive stabs, the vocals kicking in in crisp, clear harmonies declaring “Still, white horses take us home”. Where the songs on Double Negative fought to hold themselves together, Hey What has a much more assured rein on the noise and distortion, deploying them as weapons in the service of bold, powerful arrangements.

Low have been through similar cycles before, with the transition from the subdued gothic grunge of 2002’s Trust to the explosive rock swagger of their Sub Pop debut The Great Destroyer. Where those albums operated mostly within the familiar palette of guitar rock, the Low of 2021 have twisted the sounds of their instruments out of all recognition, but they are still using it to recognisable and familiar rock ends. Side A closes on the seven-minute Hey, which wraps its pulsing wall of submarine noise around a single, repeated vocal hook that in more mercenary production hands could have soundtracked a sentimental montage sequence in an American teen drama. The second side then kicks off with the vocal harmonies and simple organ of Days Like These, and when the now-familiar noise storm finally hits, it lands with a thunder rumble in the gut and a fist-in-the-air rush. It feels almost cheesy, but that’s because it is: it’s a rock move — the audience knows it’s coming, like watching the gunslinger guitarist of a rock’n’roll band prowling the stage as an intro builds, waiting for him to drop the riff. Low play with these expectations, timing the moment of release with rock showmen’s precision. They’re even more explicit on More, assaulting the listener with gnarled riffs delivered through the synthetic squall of the now-duo’s twisted machinery.

Double Negative was often described as articulating the spiralling chaos of the Trump era and the broad sense extending far beyond America’s borders of feeling powerless as everything falls apart. There was comfort in those distant voices struggling to hold together something beautiful in the face of destructive forces, and Hey What feels in a way like a next step: a sense of release and of the chaos, if not defeated, rather harnessed, a sense of control regained. To describe it as positive would be an oversimplification — darkness, sadness, desperation, uncertainty and loss run deep through the lyrics and still fray even the music’s most confident edges — but it feels at least a little hopeful, finding the familiar power of rock shapes anew from a strange, disorientating and stimulating direction.

グソクムズ - ele-king

 いま少しずつ注目を集めているバンドがいる。吉祥寺を拠点に活動する彼らの名はグソクムズ。たなかえいぞを(Vo, Gt)、加藤祐樹(Gt)、堀部祐介(Ba)、中島雄士(Dr)からなる4ピースのバンドだ。はっぴいえんどや高田渡、シュガーベイブなどの音楽から影響を受けているという。
 結成は2014年。これまでに『グソクムズ的』(2016)、『グソクムズ風』(2018)、「グソクムズ系」(2019)などのミニ・アルバムやEPを発表、昨年は「夢が覚めたなら」「夏の知らせ」「冬のささやき」と立て続けにシングルを送り出し、この夏に配信で発表した「すべからく通り雨」がラジオなどで話題を呼んだ。
 そしてこのたび、その爽やかな曲「すべからく通り雨」が限定7インチ・シングルとして11月10日(水)にリリースされる。店舗限定とのことで、取り扱い店は下記をチェック。

"ネオ風街"と称される東京・吉祥寺の新星"グソクムズ”が、心の中をブリーズが通り抜けるような爽快感が心地良い激キラー曲「すべからく通り雨」を超限定7インチシングルにてリリース! ミュージックビデオも公開!

"ネオ風街"と称される東京・吉祥寺の4人組バンド"グソクムズ”。POPEYEの音楽特集への掲載やTBSラジオで冠番組を担当するなど、幅広い層からの注目を集める中、心の中をブリーズが通り抜けるような爽快感が心地良い激キラー曲「すべからく通り雨」の超限定7インチシングルを11/10(水)にリリースします。

印象的なジャケットはカネコアヤノ『よすが』のアーティスト写真/ジャケット写真で注目を集める小財美香子が担当。また本作のリリースに伴い松永良平(リズム&ペンシル)からのコメントが到着。

併せてNOT WONKやHomecomingsの作品等で知られる佐藤祐紀が監督を務めるミュージックビデオを公開します。

・グソクムズ - すべからく通り雨 (Official Music Video)
https://youtu.be/TE-rqPUvyuM

通り雨の街で

 傘がない、と50年くらい前に誰かが歌っていたけれど、今は雨がちょっとでも降ってきたらみんな傘をひらく。それも大きなビニール傘。いつ頃からだろう、自分だけはぜったい濡れたくないという気持ちが強くなりすぎて、傘だけどんどんデカくなる。相合傘道行き、と歌っていた人もいたっけ、やっぱり半世紀くらい前。あの愛すべきロマンチックな憂鬱はとっくに消え失せたのかも。
 すべからく、通り雨。グソクムズは2021年にそう歌う。いまどきの雨だから、きっとその雨は大雨だ。1時間に100ミリ超え。記録的短時間大雨情報。だから駆け出す。雨は手のひらにいっぱい。つつがなく通り過ぎ、さした夕日が憎たらしいね、と彼らは歌を続ける。
 ずぶ濡れの耳にも、雨に追われて息も切れるほど走ったあとでも、確かに届く街角の音を、グソクムズがやっている。雨宿りしている目の前を、情けない叫び声を上げながらこの曲が全力で駆け抜けていくのが見えた。音楽が、絵に描いたような街の景色じゃなく、彼らが生きてる現代の武蔵野の街そのままを一緒に連れてくるのを感じた。
 彼らのバンド・サウンドを、古さや新しさで測るつもりはない。通り雨に打たれたことがある者なら、髪から滴るしずくや水溜りの反射に映る汚れた街が美しく見える瞬間をご褒美に感じたことがあるだろう。その感覚は、今も昔も変わらないはず。そして、グソクムズの音楽は、直感的にその本質をつかんでいると思う。

──松永良平(リズム&ペンシル)

またパワープレイにも続々と決定しています。
2021年、快進撃を続けるグソクムズをお見逃しなく。

[パワープレイ情報]
グソクムズ「すべからく通り雨」
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・NACK5 11月度前期パワープレイ
https://www.nack5.co.jp/power-play
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・AIR-G'エフエム北海道「11月度POWER PLAY」
https://www.air-g.co.jp/powerplay/
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・α-STATION「11月HELLO!KYOTO POWER MUSIC」
https://fm-kyoto.jp/info_cat/power-play/
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・エフエム滋賀 「キャッチ!」11月マンスリーレコメンドソング
https://www.e-radio.co.jp/
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・J-WAVE (81.3FM)「SONAR TRAX」
期間:2021/8/1~8/15
https://www.j-wave.co.jp/special/sonartrax/
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・TBSラジオ「今週の推薦曲」
期間:7/26~8/1
https://www.tbsradio.jp/radion/
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[商品情報]
アーティスト:グソクムズ
タイトル:すべからく通り雨
レーベル:P-VINE
品番:P7-6290
フォーマット:7インチシングル
価格:¥990(税込)(税抜:¥900)
発売日:2021年11月10日(水)

■トラックリスト
A. すべからく通り雨
B. 泡沫の音

■取扱店舗
タワーレコード:渋谷店 / 新宿店 / 吉祥寺店 / 梅田大阪マルビル店 / オンライン
HMV:HMV record shop 渋谷 / HMV&BOOKS online
ディスクユニオン
FLAKE RECORDS
JET SET

[プロフィール]
グソクムズ:
東京・吉祥寺を中心に活動し、"ネオ風街"と称される4人組バンド。はっぴいえんどを始め、高田渡やシュガーベイブなどから色濃く影響を受けている。
『POPEYE』2019年11月号の音楽特集にて紹介され、2020年8月にはTBSラジオにて冠番組『グソクムズのベリハピラジオ』が放送された。
2014年にたなかえいぞを(Vo/Gt)と加藤祐樹(Gt)のフォークユニットとして結成。2016年に堀部祐介(Ba)が、2018年に中島雄士(Dr)が加入し、現在の体制となる。
2020年に入ると精力的に配信シングルのリリースを続け、2021年7月に「すべからく通り雨」を配信リリースすると、J-WAVE「SONAR TRAX」やTBSラジオ「今週の推薦曲」に選出され話題を呼ぶ。その「すべからく通り雨」を11月10日に7inchにて発売することが決定した。
HP:https://www.gusokumuzu.com/
Twitter:https://twitter.com/gusokumuzu
Instagram:https://www.instagram.com/gusokumuzu/

 かねてより評判の韓国はソウル出身のアーティスト、イ・ランのニュー・アルバム『オオカミが現れた』がCDとしてリリースされる。透明感のあるアコースティックな響きと彼女の叙情感のある歌の魅力が洗練されたアレンジによって際だっている力作で、音楽にはドゥーワップや童謡めいたメロディ、バラード、フォーク・ロックなどなど、いろんなものが混ざっている。すでに配信では発表されていたが、この度は〈スウィート・ドリームス・プレス〉が細部にまでこだわったアートワークと40PブックレットをもってCDリリースする。文筆家としても『悲しくてかっこいい人』(リトルモア刊)が人気のイ・ランだけに、しっかりとした対訳があるのは嬉しい限り。注目しましょう。発売は11月15日です。


イ・ラン(이랑))
オオカミが現れた(늑대가 나타났다)

スウィート・ドリームス・プレス
ライナーノーツ:中村佑子
歌詞対訳:清水博之(雨乃日珈琲店)
40pブックレット付き
※11月15日発売


イ・ラン(이랑):韓国ソウル生まれのマルチ・アーティスト。2012年にファースト・アルバム 『ヨンヨンスン』を、2016年に第14回韓国大衆音楽賞最優秀フォーク楽曲賞を受賞したセカン ド・アルバム『神様ごっこ』をリリースして大きな注目を浴びる。その他、柴田聡子との共作盤 『ランナウェイ』、ライブ・アルバム『クロミョン~Lang Lee Live in Tokyo 2018~』などを発 表。さらに、エッセイ集『悲しくてかっこいい人』(2018)や『話し足りなかった日』(2021)、コ ミック『私が30代になった』(2019)、短編小説集『アヒル命名会議』(2020)を本邦でも上梓しその真摯で嘘のない言葉やフレンドリーな姿勢=思考が共感を呼んでいる。

FNCY - ele-king

 いまやヒップホップに限らず、フィーチャリングやコラボレーションという手法はクリエイティヴィティの幅やファン層を広げるための常套手段となっているが、そうやって共演からはじまったアーティスト同士の関係がその後、グループ、あるいはユニットへと発展していくケースも少なくない。ZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESS からなるユニット、FNCY(ファンシー)も元々はソロ・アーティストして活動していた彼らが、お互いの作品で共演したことをきっかけに結成されたわけだが、3人のスタイルやバックグラウンドは全く異なる。強い個性を放つ3人が結びついたことによる高い総合力とそれぞれの絶妙なバランス感は、通常のヒップホップ・グループが容易には到達することはできない域にいる。

 2019年にリリースされた FNCY の1st 『FNCY』から約2年ぶりのリリースとなる 2nd アルバム『FNCY BY FNCY』。昨年リリースされた「TOKYO LUV EP」の楽曲も本作には収録されているが、ヒップホップを下地にしながらブギー/ファンク、ニュージャック・スウィングといった前作の流れを踏襲しつつ、さらに音楽的な広がりを描いている。例えば “THE NIGHT IS YOUNG” でのダンスホール・レゲエ、“COSMO” でのベース・ミュージック、“REP ME” でのヒップハウスといった音楽的要素は個々のメンバーの過去の流れとも見事にマッチしているし、そこに3人の声が乗ることでその魅力は倍増している。本作にプロデューサーとしてトラックを提供しているのはメンバーの中では G.RINA だけであるが(他には grooveman Spot、BTB特効、オランダの Jengi がプロデューサーとして参加)、実は3人ともがDJとしても活躍しており、これだけ幅広いスタイルを打ち出しながらも、FNCYとして見事にひとつにまとまっているのは、DJとしての彼らの柔軟かつ優れたセンスに寄る部分も大きいだろう。

 リリックに関しては、やはりこの時期に作られたということもあり、“FU-TSU-U(NEW NORMAL)” のようにコロナ禍だからこそのメッセージを強く感じる箇所は多い。しかし、そこは決して悲観的にならずに、前を向いてパーティを続けていくという彼らの強い意志が感じられ、コロナが落ち着いてきたいまの状況にも実にしっくりと響いてくる。そして、ヴォーカリストという観点でいうと、本作の肝(きも)は鎮座DOPENESS の歌と G.RINA のラップだ。もちろん前作でも披露されていた要素であるが、ラッパーである鎮座DOPENESS はより自由にメロディを奏で、シンガーである G.RINA は自身が元来ラッパーではないことをプラスに置き換えながら彼女ならではのフロウを聞かせる。ラップと歌の融合なんていまどき珍しいことではないが、個人的な好みで言わせてもらえば FNCY はそのトップレベルにあると思う。
 ちなみに本作収録の “COSMO” にゆるふわギャング、“あなたになりたい” に YOU THE ROCK★をそれぞれフィーチャした「COSMOになりたいRemix EP」も素晴らしい内容なので、こちらも合わせてぜひ!

butaji - ele-king

急げ 急げ
社会が変わる 世界が変わる
(“中央線”)

大人しく黙っていても
事態は好転しないでしょう
(“acception”)

 きっかけはシングル “中央線” だったと思う。butaji という魅力的な声を持ったシンガーソングライターが、より明確に自分と社会との関わりを歌いはじめたのは。いや、それを言うなら、前作『告白』では一橋大学のアウティング事件がきっかけとなって生まれた “秘匿” があったわけだし、自身の作品に正直であるためにバイセクシュアルであることをカミングアウトした(社会に対して自分が少数派であることを表明した)彼は、もともと自分の内面だけでなく社会へのまなざしを表現にこめたいタイプだったのだろう。その態度が “中央線” 以降より能動的になり、アルバム『RIGHT TIME』においてはっきりと核になっている。そもそもセクシュアル・マイノリティであることを表明し、そのことを表現の重要な一部にしているミュージシャンが少ない日本において、ゲイである僕がやや過剰に肩入れしている部分はあるのかもしれないが、彼の属性にかかわらず外の世界と積極的に関わろうとするそのあり方は本作の魅力にちがいない。
 七尾旅人ベックからの影響を語るいっぽうで、槇原敬之──マイノリティである自己をポップスに忍ばせてきたシンガソングライター──への敬愛をたびたび露にしてきた butaji はまた、おもにプロダクション面において海外のオルタナティヴR&Bの動きを横目で見つつ、J-POP にも通じる歌謡性を隠してこなかったひとでもある。はっきりとキャッチーなメロディがその歌の中心にあり、色気のある歌唱で聴き手を引きこむシンガーだ。だからこそこれまでの作品でも歌を軸にして多岐にわたるアレンジを見せてきただが、本作ではいっそうあっけらかんとサウンドを多様にしている。弾き語りのフォーク・ソングをベースにした “中央線” のような曲と、R&Bを意識したエレクトロニック・ポップの “acception” のような曲が変わらず butaji の音楽の二大ベースだと思うが、たとえばストレートなロック・チューン “友人へ” にはこんな引き出しもあったのかと驚かされる。また、その演奏とアレンジにおいて、多くのゲストという名の「他者」が参加していることもポイントだ。
 気鋭のシンガーソングライター壱タカシ(彼もゲイであることをカミングアウトしている)が清潔な響きのピアノを弾く “calling” からはじまり、『RIGHT TIME』には多くの人間が登場する。それはここ数年で butaji が人脈を広げたということ以上に、自分の感情や内面を他者に預け、共有せんとする態度のように僕には思える。たとえば tofubeats がリミックスを担当しシングル・ヴァージョンよりアッパーにビルドアップされた “free me” は、フロアで誰かといっしょに踊りたくなるダンス・トラックとしてアルバムに収録されている。「I wanted to be free」と吐露されるこの曲は自己のアイデンティティへの問いを含みつつ、その言葉がディスコ・ビートとともに高らかに解放されるとき、一種のクィア・アンセムとして聴くこともできる……偶然フロアで出会ったひとたちが、視線を交わしつつ踊るための曲だ。あるいはコーラスの洒脱なアレンジが心地いい STUTS との共作 “YOU NEVER KNOW” や “I’m here” などは再興するシティ・ポップの変奏と言えるかもしれないが、butaji のポップスはいま、都市に限らない「社会」に生きる人びとを包摂しようとしているのではないか。個人の内省がメロウなものとして現れてきたこれまでの作品よりも、『RIGHT TIME』はたしかに外界に向けて開放的に鳴らされている。それは多くのミュージシャンたちが生き生きとそれぞれの音を出しているからだ。
 その意味で、折坂悠太との共作曲 “トーチ” の butaji ヴァージョンが本作のハイライトだろう(同曲は折坂悠太『心理』に彼のヴァージョンが収録されている)。石橋英子が共同プロデュースでジム・オルークがミックスを担当しているこの雄大なフォーク・ソングの、アコースティックの鳴りはきめ細かくてまろやかだ。温かくもある。曲の後半でバンド・アンサンブルが高みまで登りつめるとき、そこにはたしかに複数の人間のエネルギーの交感がある。「私だけだ/この街で こんな思いをしてる奴は」と歌われるこの曲は都市の孤独の風景を描きつつも、少なくとも音の上で、感情は「私だけ」のものではない。

 たとえば社会との接点をなるべく隠すように君と僕の歌に終始し、その抽象性から「普遍的」と言われる J-POP がそのじつ異性愛を前提としていることはよくある。「普遍」から無意識に落とされる者たちもいるのだ。
 butaji が高音から低音までを大胆に行き来しながら歌う愛の歌は、「わたし」「あなた」「僕」「君」「お前」と人称を広げて多様な関係性を示唆する。それは自身のマイノリティとしての経験を含みながら多様な人びとが暮らす場所としての社会を映そうとしているからで、『RIGHT TIME』では何度か時代の混乱に言及しつつも、最終的には雑多な他者のなかで生きる喜びがそれを凌駕する。butaji はいま、強いメロディと多彩なアレンジメントで日本のポップスの可能性を広げようとしている。「急げ 急げ/僕らも変わる/僕らも変わっていく」と彼が懸命に歌えば、この窮屈な社会を変えるのは他でもないわたしたちだという気持ちになれる。

MONJU - ele-king

 紙版エレキング夏号で ISSUGI は力強く語っている。「今年、EPは絶対に出ます。それは書いてもらって大丈夫です(笑)」と。7月末にリリースされた DJ SHOE とのミックス作品には、MONJU としての新曲 “In The City” が収録されていた。これは本当に来るかもしれない──そう期待していたファンの皆さま、お待たせしました。
 心願成就。ISSUGI、仙人掌、Mr.PUGからなるトリオ=MONJU の新作EP「Proof Of Magnetic Field」が12月2日に〈Dogear〉よりリリースされる。まとまった MONJU の作品としては、2008年の「Black de.ep」以来、約13年半ぶりの新作だ。
 また、〈Dogear〉は今年で設立15周年を迎える。それを祝し、11月23日に渋谷 clubasia にてアニヴァーサリー・イヴェントが開催。MONJU によるロングセットのライヴが予定されており、「Proof Of Magnetic Field」収録曲も披露されるようだ。
 MONJU の新作EPにイヴェント、これはどちらも見逃せない。

[11月23日追記]
 いよいよ来週リリースとなる MONJU の新作EP「Proof Of Magnetic Field」から、“Ear to street” のMVが公開された。監督は仙人掌や BES & ISSUGI などの作品を手掛ける映像クリエイターの KENTARO FUJIWARA。コロナによって都市に浮上した音=スケートボードの走行音が入っているところにもシビれます。なお、本日開催の〈DOGEAR〉主催イヴェントでは新作EPのCDが先行発売されるとのこと。すでに前売券は完売、当日券の発売予定もないようだが、行ける方はぜひチェックを。

[12月3日追記]
 ついにリリースされた「Proof Of Magnetic Field」、同作の完全限定生産のカセットも予約がはじまっている。P-VINE SHOPのみでの販売、ひとり2本までとのことなので、ご予約はお早めに。

* MONJU『Proof Of Magnetic Field』CASSETTE ご予約ページ
https://anywherestore.p-vine.jp/products/pctder-001

MONJUが約13年半ぶりの新作EP『Proof Of Magnetic Field』をリリース。
11/23にはDOGEAR RECORDS主催イベントを開催、ロングセットのライブを披露。

東京を中心に活動するISSUGI、仙人掌、Mr.PUGのユニット、MONJUが最新EP『Proof Of Magnetic Field』を12月2日(木)に〈DOGEAR RECORDS〉からリリースする。MONJUがグループとしての新作を発表するのは2008年に発表したセカンドEP『Black de.ep』以来、約13年半ぶりのことだ。

グループやソロでのライブはもちろんのこと、作品リリースや客演参加、ボーダーレスなコラボレーションなどを通じて、シーンに存在感を示してきたMONJUのメンバーたち。途切れることなく活動を続け、世に放ってきた名作は数知れず。

MONJUとしては2019年11月にデジタル・シングル "INCREDIBLE" をサプライズ・リリース。同時に『Black de.ep』を約11年ぶりにリマスターしたEP『Black De.Ep RE:MASTERED』を発表した。今年2月にはKOJOEと手を組んだ “WARnin' Pt.2” をリリース、7月にはISSUGI & DJ SHOEのミックスアルバム『Both Banks』に新曲 “In The City” が収録された。

ユニットとしての活動を加速させてきたMONJUの最新作は客演ナシ、16FLIPのプロデュースによる8曲が揃う。16FLIPがアップデートを重ねてきた新たな音像のなかで、鋭く、鮮烈に言葉を焼き付ける28分のEPが完成した。CD/デジタルに合わせ、ピクチャー・ヴァイナル仕様/完全限定プレスのアナログ盤と完全限定生産のカセットテープ(P-VINE SHOPのみでの販売)も発売予定だ。

またMONJUが支柱となる〈DOGEAR RECORDS〉設立15周年を記念したイベントが11月23日(火・祝)に渋谷clubasiaで開催。MONJUがロングセットでライブし、『Proof Of Magnetic Field』収録曲も披露する予定とのこと。ほか、近年リリースを続けているYAHIKO&AIWABEATZがライブを披露、BudaMunk、DJ SHOE、ChangyuuらがDJとして登場する。

ISSUGI、仙人掌、Mr.PUGはもちろんのこと、BES & ISSUGIやKID FRESINO、BudaMunk、ILLNANDES & ENDRUN、Aru-2、CRAMらの作品をコンスタントに発表してきたレーベルの音楽をぜひ体感してほしい。

[商品情報]
アーティスト:MONJU
タイトル:Proof Of Magnetic Field
レーベル:P-VINE, Inc. / Dogear Records
発売日:
CD / 2021年12月2日(木)
LP / 2022年3月2日(水)
仕様:
CD / LP(ピクチャー・ヴァイナル仕様/完全限定生産) / デジタル
品番:
CD / PCD-20441
LP / PLP-7772
定価:
CD / 2.200円(税抜2.000円)
LP / 3.740円(税抜3.400円)

[TRACKLIST]
1. Report back
2. In the night
3. ANNA(step in black pt.5)
4. Ear to street
5. beats
6. 13 DEALS
7. And to the…
8. Incredible

all Produced by 16FLIP

[イベント情報]
DOGEAR RECORDS presents..
MONJU"Proof Of Magnetic Field" RELEASE LIVE LIMITED 200
80minutes Of Kill

11/23 (Tue) at CLUB asia
open: 17:00
Advance Ticket: ¥3500+1D / Door: ¥4500+1D

RELEASE LIVE: MONJU
LIVE: YAHIKO & AIWABEATZ
DJ: Budamunk, DJ Shoe & Changyuu

【チケット販売に関して】
10/28 18時よりzaikoにてデジタルチケットの販売を開始しております。
https://cultureofasia.zaiko.io/buy/1rwL:icU:5efd3

通常のチケット販売に関しては11/1(月)より下記の3店舗にて販売致します。
[JAZZY SPORT]
〒153-0053 東京都目黒区五本木3丁目17−7
[TRASMUNDO]
〒156-0044 東京都世田谷区赤堤4丁目46−6 香松ビル
[TREES SHOP]
https://7tree.shop/

【感染症対策】
新型コロナウイルス感染症対策として、マスクの着用の義務化、及び入場の際に検温をさせて頂きます。
ご理解とご協力のほど、お願い申し上げます。

D.A.N. - ele-king

 早々と振り返ってみると今年は一段と歌詞のない音楽を聴いている。なぜかはまだ整理できていないけれど、そういう気分だった。世の中に物申すエネルギーを音楽ないし歌詞に込めることは大いに結構だと思うし、ときにそんなロック・スターかのような態度も好きではあるのだが、他方では、年々そういう音楽が少しずつ窮屈だな、と思うようにもなってきている。そんなことを言ったら、もはや「音楽に向いてない」とでも指摘されそうだが、そうなのだから仕方ない。しかしかといって、僕は四六時中アンビエントやニューエイジだけを聴いている変わり者ではないし、言葉を持たないハウスやテクノなどの音楽は大好きだが、それでもずっと聴いていればさすがに疲れてしまうのだ。ああ、困った。

 しかし、そんな気分において、D.A.N.のサード・アルバム『No Moon』を自宅のスピーカーから流したとき、これは僕の心を満たしてくれる数少ない作品だと、半ば確信めいた気持ちにさせられてしまった。「ジャパニーズ・ミニマル・メロウ」を標榜しているこの3人組は、日本語で歌うことに明確にこだわるが、そこに僕を強迫的な気持ちにさせる強い言葉はないように見えるし、あくまで歌詞は全体のサウンドスケープを織りなすひとつとして、その他さまざまな具体音と一緒くたの波となって、僕の耳に届く。ちなみに「ジャパニーズ・ミニマル」は、オウガ・ユー・アスホールが自らを表すフレーズとして先立って使った表現であり、そこにD.A.N.は、「メロウ」を付することで自らのオリジナリティを表現したそうだが、確かにメロウという感覚に彼らの唯一無二性があるように思える。「俺の言葉を聴け」と映画の主人公然とした態度は取らない。それはドライやクールと取れるかもしれないが、しかし他方で、彼らの音楽から熱気あふれる高揚感やエネルギーは確実に感じる。ただひんやりと冷たいだけではない、あくまで彼らはメロウに──片意地張らずにキメているということなのだろう。

 アルバムの注目すべき点として、“The Encounters” では tamanaramen(玉名ラーメン)と MIRRROR の Takumi を招聘し、ラップを入れている点がまず挙げられる。客演のみならず、メンバーの櫻木大吾もときにラップめいた手法を取り入れており、D.A.N.を特徴づけるささやくかのようなファルセットと混在させつつ、より充実したヴォーカル・ワークを聴かせてくれる。かねてより、メンバーはグライムなどのUKラップへの関心を公言していたが、ラップの導入は『No Moon』の新機軸と言えよう。ちなみに個人的なベスト・トラックは “Aechmea” で、アルバム中で最も長い曲であり、ピッチ・ベンドされたヴォーカル・サンプルにはじまるこの曲の後半からの展開は、もはやサイケでありプログレである。これもラップの導入とはまた別の点で、彼らの新機軸を打ち出しているように思える。もうひとつ注目すべきは、前作の『Sonatine』では鳴りを潜めていた小林うてなによるスティール・パン、そしていまにも何か召喚されてしまいそうな彼女の宗教的なコーラスが再び聴けることで、それは “Floating In Space” で大きくフィーチャーされている。スティール・パンは言わずもがな素晴らしい響きで、ところどころに聴こえる空間系のエフェクトを存分に使ったギターのサウンドと合わせると、まるでジェイミー・XXないしはジ・XXの作品を聴いているかのようなメランコリックな要素も感じさせる。しかし同時に、彼女のシャーマニックなコーラスは、ベリアル以降の「Sad Boy」的メランコリックを有した有象無象のフォロワーに収まることを拒むかのようで、あくまでD.A.N.というバンドが常に新しい音を貪欲に突き詰めていることが伺える。

 『No Moon』は古きを訪ねつつ、新しきを知ることをやってのけており、それは、この作品がD.A.N.のキャリアにおいて最も密度の濃いアルバムであることを示している。現に曲数も12曲で時間は56分にも及ぶ長大な作品に仕上がっており、ファースト『D.A.N.』、続く『Sonatine』も1曲ごとには長いが、ここまでアルバム単位としての重厚さを感じさせるのは初ではないだろうか。曲ごとに良いのは相変わらずで、作品としてのつながりやまとまりという俯瞰的な視点で聴いても、明らかに『No Moon』は最高の地点にいる。これは確実に名盤になるサード・アルバムであり、つまりオアシスにおける『Morning Glory』からの『Be Here Now』ではなく、レディオヘッドにおける『The Bends』からの『OK Computer』のような、バンドとしての大きな飛躍を感じさせるような作品だ。

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