「K A R Y Y N」と一致するもの

Chicano Batman - ele-king

 チカーノという言葉をきいて、何を想像するだろう。ある人は、ギャング、ある人はローライダーやズートスーツ、ある人は、スパングリッシュを想像し、その音楽は、ウエストサイド・ヒップホップか、サンタナのようなラテンロック、またはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなラディカルなものを想像するかもしれない。そして、チカーノたちは、メキシコ系米国移民で、米国籍を持っているが、彼らの親たちは、何十年も米国に暮らし、その発展を支えながらも、突然、強制送還される場合がある、ということを知っている人もいるだろう。米国の人気テレビシリーズ、『アグリー・ベティ』の主人公ベティは、チカーナ(チカーノの女性形)であり、父親は不法移民である。
 そんな、「チカーノ」に、アメコミから生まれた、スーパー・ヒーロー、バットマンを掛け合わせた名前を持つ、最高なバンドがいる。それが、ロサンゼルスの、中南米系移民居住区で結成された、チカーノ・バットマンだ。メンバー4人が、エレガントなお揃いのスーツに蝶ネクタイでキメて、ビンテージのオルガンやギターを奏でる姿は、60年代後半からタイムスリップしてきたかのようだ。バンド・メンバーには、チカーノもいるが、コロンビアとメキシコのハーフ、エルサルバドルとメキシコのハーフ、コロンビアからの移民といった感じで、メンバー全員がチカーノというわけではない 。だが、彼らの、2010年に発表されたデビュー・アルバム『CHICANO BATMAN』のジャケットには、チカーノ活動家、セサル・チャベスが率いた、全国農場労働者協会のシンボルである鷲のマークに、バットマンの頭を掛け合わせたイラストが象徴的に記されている。

 彼らのデビュー・アルバム発表時、筆者は、彼らにインタヴューする機会を得て、 「どんな音楽から影響を受けたのか」という、ありきたりな質問をしたのだが、そこで、ベーシストのエドゥアルドから「古い洗面台の蛇口から落ちる水滴、日暮れのコオロギの歌、バス車内で泣き叫ぶ子どもの声、おばさんがメキシコ料理を作るときの包丁の響き…….そんな生活を取り巻く音のすべてが、僕らの音楽の源になっている」と応えられた時、それが彼らにとっての「チカーノ」=コミュニティであると知った。
 彼らの音には、サイケデリック、ロック、ガレージ、オールディーズ、ボサノヴァ、独裁政権下のブラジルで、60年代後半に起こった音楽ムーヴメントのトロピカリア、そして、メキシコの田舎のホームパーティで流れる演歌ランチェーラや、コロンビア発祥のクンビアが、懐かしくも新鮮に溶けあっている。だが、それは、けっして旧き良き時代の擬態を目指していないし、ラテンアメリカ系移民だけに支持されているわけでもない。だからこそ、いま米国のメディアや、音楽業界がこぞって、彼らの存在に注目している。最近では、サタデーナイト・ライヴや、ザ・シンプソンズの脚本を手がけた、有名司会者、コメディアンのコナン・オブライエンのトーク番組、『コナン』にもゲスト出演したばかりだ。

 2017年3月に発表された彼らのサード・アルバム『FREEDOM IS FREE 』は、伝説的ソウル・シンガーのシャロン・ジョーンズのバンド、ザ・ダップキングスのメンバーであった、レオン・マイケルズがプロデュースを手がけた。サイケデリックな南米色が濃厚だったセカンドである前作『CYCLES OF EXISTENTIAL RHYME』(2014)よりも、英語曲が多くなり、カーティス・メイフィールドばりのソウル、ファンクで、華麗に彩られている。そこに、チカーノ・バットマンならではといえる、ラテンの哀感あふれる旋律や軽快なリズムの絡み、ほっこりと艶やかなヴォーカルが健在し、フェラ・クティのような、うねるアフロビートを武器に、体制社会を鋭く批判する曲なども織り交ぜている。

 Freedom is Free(自由は我らのもの)というアルバム・タイトルにもなっている曲では、 自由には代償が引き換えとされがちな昨今 、そして、自由の名をもとに大地を蝕んでいる、新自由主義とグローバリゼーションが地球を包囲しつつあるなか、「騙されるな、おまえを信じて、おまえのままで生きろ」、という根源的な言葉を、私たちに投げかける。

 去る6月21日、チカーノ・バットマンの初メキシコ・ツアーの最終日、メキシコシティの国立劇場小ホールで、彼らのコンサートを見ることができた。2013年の来日時には、筆者はすでにメキシコシティに住んでいたので、コンサートを見逃して、悔しい思いをしたのだが、ようやく夢がかなったのだ。チカーノ・バットマンにとっても、メキシコでのコンサートは、夢の実現であった。離れ離れになって、けっして米国へと渡ることができない彼らの家族たちも、遠くからメキシコシティまでやってきて、コンサートを堪能したからだ。その空気は、会場の雰囲気を明らかにボーダレスにしていたし、温かく包み込まれるような気持ちにさせてくれた。
 しかし、彼らの尖った演奏には目を見張った。メインでヴォーカルを担うバルドは、ギター、オルガン、パーカッションを巧みに持ち替えて演奏し、ガブリエルのドラムや、エドゥアルドのベースは的確かつ、生き物のように変化し、カルロスのリードギターは、アドリヴに走りながらも、冷静にバンドサウンドの肝を握っていて、全体がシンクロするタイミングが絶妙だ。郷愁、メランコリア、感情を揺さぶられるけれど、後ろ向きではない、未来へ向かっている音の渦に、あの場にいた観客たちは、酔いしれた。トランプが、国境に壁を作ろうが、人びとの魂までは、コントロールできない。私たちの自由は、私たちのものなんだ。

 そうはいえども、コンサートは終わり、自由を得るために労働する日常が戻ってきた。いまは、あの美しいコンサートの残り香を確認するかのように、チカーノ・バットマンの音楽を聴くのが、至高の息抜きとなっている。 その時に頭の周りを浮遊する音は、心地よい夢を見させてくれる。そして、人生もまた、夢の果てしない連続だということに気がつくのだった。


Party 51 & Hidden Agenda The Movie - ele-king

 アジアが熱い……などと大雑把に括ってしまってはいけないのだろうけれど、近年東アジアのアンダーグラウンドで注目すべき動きが起こっていることは間違いない。
 来る7月8日、韓国と香港のインディ・シーンを描いたドキュメンタリー2本が上映される。作品は、以前ここでも紹介した『パーティー51』(韓国)と、香港で唯一のライヴハウス「Hidden Agenda」(HA)についての記録映画『Hidden Agenda The Movie』の計2作。後者のHAは営業許可を取らずに DIY で運営していたライヴハウスで、5月に起こったとある事件を受け、今月には閉店してしまうのだという。
 なお当日は、九龍ジョーと松本哉、そして『パーティー51』の日本配給も手掛ける Offshore の山本佳奈子によるトークショウも予定されている。アジアの音楽と社会について知るための貴重な機会を見逃すなかれ。

ソウルと香港の地下音楽シーンを描くドキュメンタリー
2本立て上映+トークショー開催のお知らせ

都内で活動する自主上映グループ After School Cinema Club は、7 月8 日(土)、阿佐ヶ谷 LoftA にて、香港とソウルのインディ・ミュージック・シーンを描いたドキュメンタリー映画2作を上映するイベントを開催します。

上映するのは、『パーティー51』(韓国)と『Hidden Agenda The Movie』(香港)の2 作。この2作に共通しているのは、アンダーグラウンドな音楽シーンにまつわるドキュメンタリーであるという点と、その背景に「高騰する家賃」という問題がある点です。そういった問題がインディペンデントに活動する音楽家や音楽関係者にどのような影響を与えているのか、それに対して彼らはどういった行動を起こしたのか……ということが、が映画の中では描かれています。

『パーティー51』は、都市開発が進み家賃が上昇するソウルで、大企業に立ち退きを迫られた食堂の夫婦と、ライブハウスも減少し将来に不安を募らせていた音楽家たちが協力し、ユニークかつユーモアあふれる方法で抵抗運動を展開する様子を記録したドキュメンタリーです。

『Hidden Agenda The Movie』は、社会問題になるほど家賃が高騰している香港で、何度も国から立ち退きを迫られながらも、完全 DIY でライブハウスを運営する「Hidden Agenda」(HA)の奮闘を記録したドキュメンタリーです。HA では今年5 月、招聘していた UK のバンド TTNG と、US のユニット Mylets のライブ中に警察が踏み込み、興行用のビザを取得していない「不法就労」が原因で、ミュージシャンとライブハウスの責任者などが一時逮捕されるという事件がおき、日本でもファンの間で大きく話題になりました。この事件の原因も、家賃が高すぎるためにグレーゾーンで営業せざるをえなくなり、その結果ビザを取得しにくくなる……という悪循環にあります。

「高騰する家賃問題」は、ソウルと香港のインディ音楽シーンに限った話ではありません。昨年末、米カリフォルニア州オークランド市のロフトで、パーティー中に発生した火災により多くの人が亡くなった事故の背景にあったのも、同じ問題でした。現場となったパーティーには、DIY で実験的な地下シーンを支えてきた LA の老舗レーベルが関わっていたということです。世界有数の高額家賃都市である東京に住むわたしたちにとっても、無縁な話ではないはずです。

上映後には、両作にも縁が深く、アジアのオルタナティヴ/インディペンデントなカルチャーの現在を知るキーパーソンたちをゲストに迎え、トークショーも開催します。

音楽を愛する人、商業ベースではない多様な表現を求める人、ガイドブックでは知ることができないソウルと香港のリアルな一面を知りたい人など、多くの方にご覧いただきたいと思います。

【開催概要】
「No Limit ソウル自治区」プレイベント
『パーティー51』×『HIDDEN AGENDA The Movie』上映+トークショー

日時:7 月8 日(土)
OPEN 10:30 / START 11:00

会場:阿佐ヶ谷ロフトA https://www.loft-prj.co.jp/lofta/

上映作品:
●『パーティー51』
ドキュメンタリー|2013 年|韓国|101 分|韓国語|日本語字幕|監督:チョン・ヨンテク
韓国ソウル、ホンデ(弘大)地区。とある食堂オーナーとインディ音楽家たちが、自分たちの場と都市を守るために起こしたユーモア溢れる行動の記録。

●『HIDDEN AGENDA The Movie』
ドキュメンタリー|2012 年|香港|68 分|広東語|日本語字幕|監督:Hidden Agenda
香港唯一のライブハウス、Hidden Agenda。完全DIY でライブハウスを運営する愛すべきキッズたちの汗と情熱が詰まったドキュメンタリー。

トークゲスト:
●九龍ジョー
編集者、ライター。ポップカルチャーを中心に原稿執筆。編集した単行本も多数。著書に『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』(DU ブックス)、『遊びつかれた朝に――10 年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(P ヴァイン/磯部涼との共著)などがある。
●松本哉
リサイクルショップ「素人の乱5号店」店主。「3 人デモ」「俺のチャリを返せデモ」「家賃をタダにしろデモ」「原発やめろデモ!!!!!」ほかとんでもないデモをおこなう。現在は高円寺でゲストハウス、飲み屋なども運営しつつ海外のオルタナティヴ・スペースとの交流を深め、「世界マヌケ革命」を目指す。著書に『貧乏人の逆襲~タダで生きる方法』『世界マヌケ反乱の手引書』(筑摩書房)など。
●山本佳奈子
アジアの音楽、カルチャー、アートを取材し発信するOffshore 主宰。 主に社会と交わる表現や、ノイズ音楽、即興音楽などに焦点をあて、執筆とイベント企画制作をおこなう。尼崎市出身、那覇市在住。
https://www.offshore-mcc.net

※ 本イベントは、「No Limit ソウル自治区」のプレイベントとしておこないます
「No Limit ソウル自治区」とは……?
昨年9 月、アジアのアンダーグラウンド文化圏の人々が東京に集結。上映、ライブ、トーク、くだらない講座、物販、飲み会など30 を超えるイベントを開催し、謎の自治区を出現させた巨大D.I.Y 祭り「NO LIMIT 東京自治区」。今年はソウルで開催することが決定している。

https://afterschoolcinemac8.wixsite.com/ascc

Colin Stetson - ele-king

 人間の吐く息がダイレクトに空気の振動となり、音となる――という、管楽器の身体性が、昨年のボン・イヴェールの傑作『22、ア・ミリオン』に必要であったことは象徴的なことに思える。同作はテーマの抽象性や内省にも関わらずそこに多くの人間がいることが重要であったが――ある種の音楽的コミュニティがそこでは築かれている――、サウンド面ではとりわけ管楽器が多彩な表情をつけることに一役買っていた。そこからは様々な人間の吐く息が聞こえる。そしてそれは、ときに歪められたり加工されたりすることによって、まったく個性的な「声」としてそこで共存している……。

 ボン・イヴェールやアーケイド・ファイア、アニマル・コレクティヴら北米インディ・バンドへの参加で知られるサックス奏者、コリン・ステットソンのソロ作『オール・ディス・アイ・ドゥ・フォー・グローリー』は、一言でいえばバリトン・サックスによるIDMということになるだろう。ステットソンはEX EYEというポスト・メタル、ジャズ・メタル(と、とりあえずはいまのところ呼ばれている。カテゴライズが難しい非常に実験的なメタルということ)・ユニットでも現在活動しているが、いまや北米のエクスペリメンタル・シーンをつなぐ重要人物のひとりである。これまでのソロ作や、同じくアーケイド・ファイアのライヴ・メンバーであったヴァイオリニストであるサラ・ニューフェルドとの共作『ネヴァー・ワー・ザ・ウェイ・シー・ワズ』ではそのミニマルな作風からスティーヴ・ライヒやマイケル・ナイマンと比較されることが多かったが、『オール・ディス~』では本人が明言しているとおり方法論的に雛型となっているのはエイフェックス・ツインであり、IDMである。つまり、複雑に変幻していくリズム感覚と緻密なエディットが大きな聴きどころとなっている。サックスの演奏を多重録音し、そこに少しばかりのリズム、声を加えていく作風はこれまでと同様だ。ただ、ヘンリク・グレツキの交響曲第3番を独自に解釈し、オーケストラと声楽を大きく導入した前作『ソロウ』がある種の過剰さに貫かれていたのとは対照的に、本作では音のレイヤーをぐっと減らし、少ない音を的確に配置していくことによってストイックに耳を興奮させる。
 単一の楽器によるループとその多重録音を骨格とするという点では、たとえばマーク・マクガイアの手法と近いと言えるかもしれないが、マクガイアのギターが醸すリリカルさやスピリチュアリティに比べると、サックスという楽器の特性ゆえかステットソンの吐き出す音はもっと粗暴で生々しく、フィジカルだ。“Like Wolves On The Fold”や“In The Clinches”ではキーをカチャカチャと素早く押さえる音がそのままリズムとなり、ミストーンのノイズや音の乱れもそのまま録音されている。何よりもバリトン・サックスの低音の迫力――ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのような重々しさを内包したまま、速弾きの躍動感でドライヴする離れ業がステットソンの魅力だ。本作のオフィシャル・ヴィデオではサックスを狂おしく吹き続けるステットソンの姿とサックスのアップばかりが映されるが、人間の身体からいまその瞬間に放たれる息が音に変換しているというダイナミズムがそこでは運動する。とりわけ、終曲“The Lure Of The Mine”において、13分にわたってウネウネと姿を変えていくサックスの旋律はほとんど官能的ですらある。ミニマルなのに自在に上下するメロディと、荒々しいグルーヴ、聴き手を陶酔と覚醒で翻弄するかのような不敵な構成――スリリング極まりない。

 もうひとり、ボン・イヴェールに参加したプレイヤーのソロ作を紹介したい。ジャスティン・ヴァーノンと同郷のウィスコンシンはオークレアのトランペット奏者、トレヴァー・ハーゲンによるノイズ・アルバム『ワンダータウン』は日本のカセットテープ・レーベルである〈kolo〉からリリースされているが、これがトランペットという楽器の知らなかったポテンシャルを発見するような驚きに満ちている。プリペアド・トランペットによる乾いた高音は悲鳴のように轟き、それは切り刻まれのたうち回る。まるで音それ自体がひとつの生き物のようなのだ。けっして耳触りのいいものではないが、管楽器が呼吸器と繋がっていることを如実に感じさせるような熱がこもっている。そしてそれは、静謐なドローンへとやがて姿を変えていくが、緊迫感に満ちた音楽体験がここにはある。

 ステットソンにしてもハーゲンにしても、2000年代後半からのノイズ/ドローンと地続きのものではあるのだろう。昨年のボニー“プリンス”ビリーとビッチン・バハスのジョイント・ライヴを観たときにも感じたが、USインディ・シーンにおいてアメリカーナやフォーク・シーンとノイズやエクスペリメンタルがシームレスに繋がっていることは、そのサウンドの拡がりにおいて大きな強みとなっている。そこでは雑多な人間の実存を主張するかのように、多様な「声」が複雑にポリフォニックに折り重なっているのである。

Satomimagae - ele-king

 音色とは音符では表されない音楽の重要な属性で、クラシックからすればシンプル極まりない音楽であろうロックやフォークだが、歌っているのがその人でなければ成り立たない曲ばかりであって、いや、リズムやメロディが凡庸でも、声の魅力だけで成り立ってしまう曲はまったく珍しくない。
 サトミマガエは本当にクールな音色=声の持ち主だ。畠山地平の〈White Paddy Mountain〉からの2枚目になる『Kemri』を聴いてあらためてそう思った。なんといっても1曲目の“Bulse”が素晴らしい。絞り出される低い声は、荒削りだが魅力充分で、そしてブルース調の展開による音の隙間には、彼女のあらたな可能性を感じる。“Odori”や“Leak”や“Mebuki”のような曲では、アコースティック・ギターの霊妙な響きとともに、彼女の歌は前作同様にもうひとつの世界を創出する。このCDが再生されているあいだ、見慣れた日常の風景はすべて幻に転じるというわけだ。
 しかしなんだろうね……、エフェクト効果もあってか、生活音らしきフィールド録音のミックス効果もあってか、あるいはレーベルの方向性もあるのだろうか、例によって歌詞(言葉)はほとんど伝わってこない。が、彼女の魅惑的な歌声と曲が醸し出すその独特のムードは、したたかに残る……などと書くと、一時のチルウェイヴ系に見られたリヴァーブによる雰囲気だけの歌と誤解される向きもいるだろうが、サトミマガエからは時流のスタイリッシュさの対岸にいることの力強さ、心持ちの強さを感じる。
 とはいえフォークと呼ぶには、やはり前作同様、サウンドが先立つ。そして、曲名が日本語でありながら日本語表記ではなくアルファベット表記なのも彼女の作品の特徴だ。曲名の意味のポイントをはぐらかそうとしているかのように、さもなければ、インターネットによって個人の趣味や行動が管理/スキャン/モニタリングされている今日において、大切な何かをさっと隠すかのように。まあ、深読みというか、いや、深読みなのだが。
 『Kemri 』にはしかし、隠しきれない孤立が響いている。その繫がっていない感じがさらにぼくを惹きつける。10代の頃はビョークやファナ・モリーナを聴いて、近年はデルタブルースをよく聴いているという話だが、彼女はポテンシャルとしては、(前作のレヴューでも書いたようにグルーパーとか)新作を聴いて思ったのはエリザベス・フレイザーとかそっちじゃないかという気がする。
 そしてぼくが勝手に想像して目に浮かぶのは、小さな場所で、10人ぐらいの客を前に歌っている彼女だ。ネットを賢く利用することでのし上がるアメリカン・ドリーム、あるいはん万PVなどと騒いでいるこのご時世において、むしろそれぐらいの人数がどこからともなく名も無き場所に集まるというのは、じつは贅沢である。ストリーミングされることのない場所、コピーされることのない声──『Kemri』にはガツガツしない者が持ち得る力強さがある。そして、情報の速度に惑わされたくない人たちが集まる、密会じみた場所を探り当てるような作品でもある。アートワークもすごく良い!


special talk : Shota Shimizu × YOUNG JUJU - ele-king


清水翔太
FLY

MASTERSIX FOUNDATION

J-PopR&BSoul

初回生産限定盤 Amazon Tower HMV

通常盤 Amazon Tower HMV iTunes


YOUNG JUJU
juzzy 92'

Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 R&Bシンガー、清水翔太の最新アルバム『FLY』の“Drippin’”という曲でKANDYTOWNのラッパー、YOUNG JUJUとIOがヴァースをキックしている。2人のスムースなフロウが甘美なR&Bのラヴ・ソングのなかを駆け抜ける。JUJUはオートチューンを効果的に用い歌ってもいる。客演のきっかけがあった。JUJUがラッパーのB.D.をフィーチャリングした“LIVE NOW”という曲で、清水の“Overflow”をサンプリングしたビートでラップした。ビートを作ったのはJJJ、サンプリング・クリアランスを取得した上でJUJUのファースト・ソロ・アルバム『juzzy 92'』に収録された。

 前作『PROUD』、そして本作『FLY』を聴けば、清水がいま変化のときを迎えていることがわかるだろう。2月にele-kingにアップされたインタヴューでも、その変化についておおいに語ってくれた。その変化は清水個人のチャレンジであると同時に、現在のUSのR&Bやラップ・ミュージックをいかに“翻訳”して日本の大衆音楽として表現するのか、という(この国の大衆音楽における永遠のテーマとも言える)問いを考えるときに興味深くもある。そういう点でも僕は清水のいまの動向に注目している。

 “Drippin’”、あるいはJUJU がtofubeatsと共作した“LONELY NIGHTS”などを聴くと、JUJUもまた同じような問題意識をもって創作のあり方を模索していっているように思えた。そこで2人の対談の企画が浮上した。ラップもこなすR&Bシンガーの清水翔太と歌うことをより意識し始めているラッパーのYOUNG JUJUに語り合ってもらった。


清水翔太“Tokyo”

YOUNG JUJU“LIVE NOW” feat. B.D.

日本語と英語の混ぜ方という点で、KANDYTOWNの人たちの表現に影響を受けた部分もすごくあるんですよ。 (清水)

最近はラップしながら歌うみたいなのが調子良くて、そのスタイルがいま自分がやりたいことですね。 (JUJU)

YOUNG JUJUさんの『juzzy 92'』には、JJJがトラックを作り、B.D.をフィーチャリングした“LIVE NOW”という曲が収録されています。あの曲が清水翔太の曲をサンプリングしていることを知ったときどう思いました?

JUJU:「(リリースするのは)無理じゃん」って思いましたね。J君が送ってくれた曲が何曲かあったんですけど、僕はそのなかでもあのビートがいいなと思って。Illicit Tsuboiさんのところでよく録るんですけど、Tsuboiさんにも聴いてもらって、「こっちのビートがいいんじゃない?」って選んでもらったのが“LIVE NOW”だったんですよね。そうしたらあとからJ君に「サンプリングの問題でこれはできないかもしれない」と言われて。「じゃあなんで送ったんですか」って思ったんですけど(笑)。そのあとに(サンプル・ネタが)清水翔太さんの“Overflow”だって聞いて。初めて聴いたときは清水翔太さんの曲だと思わなかったので、びっくりしたというのが率直な感想ですね。

ご自身の曲がサンプリングされた“LIVE NOW”を初めて聴いたとき、まず率直にどういう感想を持ちましたか?

清水:うれしいなと思いましたね。僕はポップスに寄りながら、自分のエゴや欲をアルバムの収録曲で出したりしてきたんです。それがまさに強く出ていたのが“Overflow”だったと思うんですよ。そういう曲を自分が好きな人たちがカッコいいと思ってサンプリングしてくれたのがうれしかったですね。しかも原曲とは違うカッコよさで表現してくれていた。

JUJU:ありがとうございます。

清水:こちらこそ本当にありがとうございます。

お会いするのも初めてなんですよね?

清水:そうなんですよね。

JUJU:めちゃくちゃ緊張してます……。実は僕が清水翔太さんを初めて知ったのは、中学生のときにテレビで観た朝のニュースだったんですよ。ニューヨークでライヴしてましたよね?

清水:ああ、やってましたね。

JUJU:それを観た母親が「こんな子いるんだね。スゴいね」と言っていて、それで知ったんですよね。だから今回、清水さんと共演していちばん喜んでいるのは母親ですね。

清水:ありがとうございます。うれしいですね。

“LIVE NOW”の経緯もあったと思うのですが、今回YOUNG JUJUとIOを“Drippin'”という曲に客演として招いたことにどんな思いがあったのでしょうか?

清水:元々僕は頑なに日本語を大事にして、なるべく英語を使わないスタイルでやってきたんです。ただ最近は英語を混ぜて歌ったりラップするようにもなってきている。そういう、日本語と英語の混ぜ方という点で、KANDYTOWNの人たちの表現に影響を受けた部分もすごくあるんですよ。そういうのもあって2人にお願いしました。

JUJU:すごくうれしかったですね。曲に関しては、ラッパーが勢い良くラップするようなビートがくるのかなとも思っていたんです。そうしたら、ああいうテンションの曲が送られてきたんで。

R&B寄りの楽曲で、テーマも恋愛ですよね。

JUJU:そういうテーマも送ってもらって。ただ、僕たちは女の子のことを直接的に書くみたいなことをあんまりやってこなかったんで、IOくんと「さあ、どうしようか?」って話はしましたね。最終的には、曲のムードや感情を壊さないけど、ナヨナヨした感じは嫌なのでああいう形で落ち着きましたね。

ははは。

JUJU:僕がメロディをつけてラップするのはKANDYTOWNの曲のフックとかでしかやってこなかったんですけど、最近はラップしながら歌うみたいなのが調子良くて、そのスタイルがいま自分がやりたいことですね。

清水さんがKANDYTOWNの日本語と英語の混ぜ方に触発された部分があるという話をされていましたが、JUJUさんは「Amebreak」のインタヴューで、「言葉からラップを作っていくのって本当に難しいし、特に日本語だとそうなんですよね。フロウに合う/合わない言葉が日本語だと分かれる。『日本語だと合わないな』ってときに英語をハメていくタイプかな」と語っていますよね。

JUJU:昔からフリースタイルが得意じゃなくて、みんながフリースタイルをやっているときにはやってなかったんですよね。意味わかんない言葉でフロウするってことをやっていたんですよ。「俺らのフロウだけ聴いとけ!」みたいな感じで意味わかんない言葉でフリースタイルしていたのが原点ですね。だから、特にIO君と曲を作るときは「俺ならこうハメる」みたいに意味わかんない言葉でフロウして、「そのメロディ、ハンパない!」ってなったときに日本語か英語でハマる言葉を探して作ることが多いですね。

清水:僕もいわばいっしょで、最初にトラックを作ってとりあえず適当な英語でバーッと歌うんですよ。それでメロディが決まってきてあとから歌詞をつける。英語で適当に歌っているときのフロウがいちばんカッコいいんですよ。何が何でも日本語をハメていかなきゃ、という思考でやればやるほどどんどん良くなくなっていくんです。だからまずは「日本語でやりたい」というこだわりよりも、自分からナチュラルに生まれてきたメロディやフロウが活きるように言葉をハメていくのがいちばんいいと思うんです。

とりあえず歌が上手くて詞も書きます、というR&Bシンガーじゃつまらないじゃないですか。だからいまは自分の歌の力を無駄遣いしてでも、クリエイティヴなことをやっていきたいんですよね。 (清水)

人に届くような歌詞を書こうというマインドに変わりつつあるんです。前よりもそういう風に考えて歌詞を書くようになってますね。 (JUJU)

清水:僕の場合、作品自体の質はもちろん、自分がいまやりたい音楽の方向にリスナーを導いていくというのが課題としてもありますね。やっぱりこれまでの活動があってそういう音楽を求めてくるファンも多いですから。『PROUD』でいろんな挑戦をしましたし、さらに少しずつ広げていきたいですよね。いまは特にヒップホップにはクリエイティヴな人が多いですし、僕もそうでありたいんです。とりあえず歌が上手くて詞も書きます、というR&Bシンガーじゃつまらないじゃないですか。だからいまは自分の歌の力を無駄遣いしてでも、クリエイティヴなことをやっていきたいんですよね。

新作の『FLY』で僕が大好きな曲のひとつは“いつもBlue”なんですけど、この曲はメロディやフロウ、歌詞の部分でも、ラップ・ミュージック、R&Bのディープな要素とポップスの要素を絶妙なバランスで作っている曲だと感じました。

清水:本当にそうだと思います。あと全体の流れも含めて、行き切っている曲も、あえて引いている曲も全部納得いってもらえるように、バランスはすごく考えて作りましたね。ただ、もっとメチャクチャにやってやりたいという瞬間はいっぱいありましたし、途中でぶっちゃけ本当にアルバムの方向性わからなくなったりもしましたけど、とりあえずやりたいことをやって音を作って歌うっていうのをひたすらやり続けて結果としてバランスが良くなったという感じでもあるんです。ツアーも決まっていたのに本当に間に合わなさそうでかなり追い詰められつつ……、でもなんとか間に合ったかな。

『juzzy 92'』は聴かれましたか?

清水:はい。ただただいいなあっていう(笑)。僕は基本的にKANDYTOWNのみなさんのスムースなところが好きなんです。必要以上がないというか、計算されていないようにも見えるし、計算されているようにも見える。どちらにせよスムースだなと。あの感じは狙って出せないし、すごくいまのセンスなんだなと思いますし、やっぱり超カッコいい。

JUJU:ありがとうございます。

清水:ところで、どういうときに(リリックを)書こうと思います?

JUJU:いろいろありますよね。ニュースを見てなにか思いつくこともあるし、くだらないことをやっている人を見て思うこともあるし。

清水:書こうと思ったらすぐ書きます?

JUJU:俺は無理っすね。自然とヴァイヴスが向いていかないと書けないです。「お前座れ!」って言われたら「無理!」ってなっちゃうタイプなので。清水さんはどうやって曲を書くんですか?

清水:僕もなるべく書けるときに書きますね。

JUJU:でも期日とかあったりしたら大変ですよね。

清水:それで頑張らないといけないときもあるけど、でもそういうときはだいたい良い曲はできないですよね。

JUJU:今回の僕らのラップは大丈夫でしたか?

清水:超良かったですよ!

“Drippin’”のラップのヴァースに関して、清水さんからディレクションはしましたか?

清水:自分が「こうしてくれ」と言われるのが嫌ですし、好きにやってもらえればカッコいいだろうという安心感があったので、僕からはそんなに細かく言わなかったですね。

JUJU:テーマも伝えられて、清水さんのリリックもフックもできていたので、イメージはしやすかったですね。僕らが押し出しすぎて邪魔にならないようにしようとは思いました。だから「やりに来たよ!」みたいな感じも出さないで、「あいつらいたね」くらいの雰囲気で添えられたらいいなと思って。自分のなかではそういうイメージがあったという感じでしたね。

ラップのヴァースのリリックを掲載しないのはJUJUさんが決めたんですか?

JUJU:僕らがたしかにそういうことを言って、周りの人がJUJUやIOは歌詞を公開しないスタンスだと思ったんだと思います、歌詞が載っていないのはいま初めて知りました(笑)。でも、もう最近は歌詞を載せても大丈夫ですね。人に届くような歌詞を書こうというマインドに変わりつつあるんです。前よりもそういう風に考えて歌詞を書くようになってますね。

『juzzy 92'』の制作時からも創作に関して変化があるってことですね。

JUJU:ただ、あのアルバムは本当に廃盤にして欲しいぐらいなんです。あの作品に関しては一言も話したくないくらい嫌で、アルバムが出てから一回も聴いていないし、だからライヴとかできないぐらいリリックもわからない。

そうなんですか。どうしてそんなに嫌なんですか? すごく良いアルバムだと思いますよ。

JUJU:あのときは本当にイケイケドンドンみたいになっていたし、いまみたいに真剣に音楽をやるようになるとは思っていなくて、だからちゃんとしておけばよかった、って後悔しかないですね。申し訳ないですけど。

清水:やっぱり作品を出していくなかで、自分の未来との距離感のバランスがなんとなくわかってくると思うんですよ。出せば出すほど、これはたぶんあとから後悔するなって作品とかなんとなくわかってくるんですよね。だから僕も最初は「ここはこうしておけばよかった」とかすごく多かったんですけど、だいぶ減りましたね。でもそれくらいのほうが次はもっといいものを作ろうと思うからいいですけどね。

JUJU:はい。なんというか、ラップだけで気持ちいい音楽を作れる人もいるんですけど、日本語ラップは言っている内容も含めて気持よくないものも多いじゃないですか。自分が恥ずかしいと感じることと、人が恥ずかしいと感じることは違うと思うけど。恥ずかしくなるラップは無理ですね。清水さんの曲は、ラップにも歌にも気持ち良いメロディがあっていいですよね。

清水:ただ、僕もただメロディアスなラップは嫌なんですよね。 僕はラップやヒップホップがやりたいということではなく、言いたいことを伝える方法として歌うことがいちばん適しているなら歌うし、ラップの方が伝わるならばラップするんですよね。表現しようとすることが先にある。歌は基本的にすごく制限があるんですよね。例えばAメロ、Bメロ、サビができちゃったら、2番も文字数を合わせなければならない。そこが面白さでもありますけどね。いまはラップでたくさん言いたいことを言えるというのがちょっとうれしいというか、気持ち良くなっちゃっているところがあるのかもしれないですね。

清水さんが今回のアルバムでいちばん納得している曲を挙げるとしたらどれですか?

清水:個人的にいちばん納得しているのは“夢がさめないように”ですね。ただ、ある意味ではいちばん適当な曲なんですよね。音数も少なくて、シンセとベースとドラムとピアノとか、4つくらいしかない。歌もスタジオに入らずに、家で録ったものなんですよ。そんなことをやったのは初めてなんです。家のマイクでとりあえずやってみて、良いのが録れたからもうこれでいいって感じでしたね。

“夢がさめないように”の余韻を残しながら次の曲“Interlude -夢の続き-”へ流れていきますね。このソウルフルな2曲はたしかに印象的でした。

清水:いままでインタルード的なものを作ったことがなかったんですけど、この曲も家で録ったもののまんまで、トラック・ダウンもしていないんですよ。僕のミックスをそのまま使ってますね。そういう意味ではいちばんナチュラルに僕を感じられるのがその2曲の流れなんです。だからそこが好きだし、聴いてもらいたいですよね。

なるほど。今後、“Drippin’”をステージで共演して披露するなんて予定はあったりしますか?

清水:どうですか(笑)?

JUJU:ぜひやりたいですね。

清水:本当ですか? 2人が2番でバッと出てきてもらうのもカッコいいけど、わりとすぐ終わっちゃいますし、やるとしたらどういう構成でやるんだろうなあというのも考えたりしましたけど(笑)、ぜひやりたいですね。

JUJU:はい。僕はいま、音楽を聴いて「これヤベえ!」ってなっていた時期のフレッシュな感覚に戻りつつあって、歌詞を書いたりビートを聴いたりするのが楽しくて、特に決まったプランはないんですけど、制作にも集中したいって感じですね。

清水:ぜひ呼んでいただけることがあればいつでも呼んでください。

JUJU:ありがとうございます。ぜひお願いします。

●清水翔太info
全国ツアー「LIVE TOUR 2017〝FLY〟」を開催中。
8月12日13日日本武道館、8月20日ツアーファイナル大阪城ホール公演を開催予定。
上記アリーナ公演のチケット一般発売が7/10(土)10:00より各プレイガイドよりスタート。
詳細はホームページをチェック。

Lunice - ele-king

 覚えているだろうか。2012年、強烈な1枚のEP「TNGHT」が〈Warp〉と〈LuckyMe〉から共同リリースされたことを。そのEPを送り出したトゥナイト(TNGHT)はハドソン・モホークとルニスからなるユニットだったわけだが、その片割れであるルニスがついにファースト・ソロ・アルバムをリリースする。現在、最新シングル曲“Distrust feat. Denzel Curry & C9”の音源と、“Mazerati”のMVが公開されている。アルバムの発売は9月8日。心して待つべし。


L U N I C E
ハドソン・モホークとのユニット、トゥナイトでも知られるルニスが、
待望のデビュー・アルバム『CCCLX』を9月8日にリリース!
また最新シングル「Distrust feat. Denzel Curry & C9」と「Mazerati」を公開!

ハドソン・モホークとのユニット、トゥナイトでも知られるモントリオール発ラッパー兼プロデューサーのルニスが、ソフィー、キング・メズ、リーフ、そしてデンゼル・カリーらをフィーチャーした待望のデビュー・アルバム『CCCLX』を9月8日にリリースする。また最新シングル「Distrust feat. Denzel Curry & C9」と「Mazerati」のMVが公開された。「Distrust」においては、デンゼル・カリーと彼の所属するC9クルーからJKザ・リーパーとネルをフィーチャーし、華麗なMCリレーを披露している。

Distrust feat. Denzel Curry & C9
https://smarturl.it/LM040s2spt

Mazerati
https://youtu.be/a_eL5cKv5TY

label: LUCKYME / BEAT RECORDS
artist: Lunice
title: CCCLX
release date: 2017/09/08 FRI ON SALE

国内仕様盤CD
BRLM40

iTunes: https://itunes.apple.com/jp/album/ccclx/id1250483988
Apple Music: https://itun.es/jp/u8nIkb

Shackleton with Anika - ele-king

 は、はやい……年明けにヴェンジェンス・テンフォルドと組んだ強烈なアルバム『Sferic Ghost Transmits』を発表したばかりのシャクルトンが、7月10日に新作『Behind The Glass』をリリースする。今度はアニカとの共作で、どうやらまた新境地を開拓しているらしい。アニカは、ポーティスヘッドのジェフ・バーロウによるプロデュースのもと〈Stones Throw〉からデビューを果たしたベルリンのミュージシャンである。詳細は下記よりチェック。


interview with Laurel Halo - ele-king


Laurel Halo
Dust

Hyperdub / ビート

PopExperimentalJazzDubCollage

Amazon Tower HMV iTunes

 一度やったことはもうやらない。そういうアーティストだと思い込んでいた。だから、初めてローレル・ヘイローの新作『Dust』を聴いたときは驚いた。まさか、ふたたびヴォーカル・アルバムを送り出してくるなんて、と。
 彼女は昨年、このアルバムを制作する傍らスティル・ビー・ヒアというプロジェクトに参加している。それは初音ミクにインスパイアされたアート・プロジェクトで、松任谷万璃が始動させたものだ。そのサウンド部門を担っているのがローレル・ヘイローなのだけれど、彼女がふたたびヴォーカル・アルバムを作ろうと思った背景のひとつに、その初音ミクの存在があったんじゃないだろうか。ボーカロイドの歌/声と人間の歌/声、その両者のあいだに横たわっている差異に触発されたからこそ、彼女は再度自身の作品に声を導入することを検討したのではないか。
 とはいえ本作は、同じように歌/声の可能性を探究したファースト・アルバム『Quarantine』とはまったく異なる作品に仕上がっている。前作『In Situ』でジャズやダブの要素を導入した彼女だが、それらの要素が本作ではより大胆に展開されている。ジャズの因子はほぼ全編にわたって散りばめられており、ダブのほうは“Arschkriecher”や“Syzygy”、“Do U Ever Happen”といったトラックに忍び込まされている。
 そんな今回のアルバムのなかで一際異彩を放っているのが“Moontalk”だ。この曲はアフリカの音楽からインスパイアされているように聴こえるのだけれど、その土着的な雰囲気とは裏腹にヴォーカル・パートは日本語で歌われており、ここにもボーカロイドの影をみとめることができる(が、個人的にはまったく日本語に聴こえなかったため、以下のインタヴューで「これは何語ですか?」と素朴な疑問を投げかけてしまった僕は「バカ」呼ばわりされている)。
 また、本作の多くの曲でパーカッションが有機的に機能している点も見逃せない。打楽器を担当しているのはNYの作曲家/パーカッショニストのイーライ・ケスラーだが、このアルバムにおける彼の貢献は相当なものだ。そんなふうに外部からゲストが招かれていることも本作の大きな特徴で、その数は総勢9名に及ぶ。なかでもとりわけ重要なのが、ブラック・エクスペリメンタリズムの急先鋒=クラインと、ワールド・ハイブリッド・サウンドの最尖端=ラファウンダの参加である。急いで付言しておくと、彼女たちはあくまでヴォーカリストとして招聘されているにすぎない。が、このアルバムの実験性と雑食性が彼女たちふたりのサウンドから大いに刺戟を受けたものであることはほぼ間違いないだろう。ローレル・ヘイローは本作で、ブラック・エクスペリメンタリズムとワールド・ハイブリッド・サウンドと、その双方を独自に消化・吸収している。
 ヴォーカルにパーカッション。ジャズにダブ。クラインにラファウンダ。さまざまなゲストならぬダスト(dust)=粒子たちがこのアルバムの周囲を飛び回っている。それらをつぶさに観測する研究者がローレル・ヘイローなのだとすれば、その入念な研究の成果がこの『Dust』だろう。ポップ・ミュージックとは実験音楽のことであり、実験音楽とはポップ・ミュージックのことである――まるでそう宣言しているかのような清々しい作品だ。ローレル・ヘイローはいま、前人未踏の領域へと足を踏み入れている。
 一度やったことはもうやらない。そういうアーティストだと思い込んでいたけれど、どうやらその思い込みは正しかったようだ。

私は濃密なコードやメロディが大好きなんだけど、最近の音楽はあまりにも色味がなくてベーシックなものが多い気がする。アーティストたちの多くは平均的なリスナーを当然のものだと考えてるけど、彼らは思ってるよりももっと奇抜な音楽や、風変わりなもの、濃いものだってわかるものよ。

前作『In Situ』は〈Honest Jon's〉からのリリースでしたが、今回は『Quarantine』『Chance Of Rain』と同じ〈Hyperdub〉からのリリースです。ふたたび〈Hyperdub〉から作品を発表することになった経緯を教えてください。

ローレル・ヘイロー(Laurel Halo、以下LH):レーベルが体現してるものや、そこのスタッフが好きってこと以外にたいした理由はないね。

前作『In Situ』は実験的でありながらダンサブルで、特に最後の“Focus I”はコードの部分で極上のジャズのムードを醸し出しつつも、リズムの表現もじつに豊かで、またダブ・テクノ的な音響も盛り込まれていました。今回の新作『Dust』に収められている“Nicht Ohne Risiko”や“Who Won?”はジャズ/フリー・ジャズと、IDM/エレクトロニカとの融合とも言えますが、ご自身では本作におけるジャズの要素についてどうお考えですか?

LH:ここしばらくはジャズ・サウンドを音楽に取り入れてる。たくさんのジャズ・ミュージシャンやジャズの精神、フリーダムな心や自由な表現などからインスピレイションをもらってるのね。数え上げれば長くなるけど、私のジャズの知識なんて、ある人と比べれば深くても、別のある人と比べれば浅い。つきつめれば、私が発表したどの作品にも本物のジャズはない。それは加工途中のものだったり、変化の過程にあるものだったりして、スルーコンポーズド(通作)じゃないし、完全にモーダルの様式の中で作ったわけでもないし、フリー・インプロヴィゼイションでもない。アルバムの曲を書いてたとき、即興演奏やフリープレイはたくさんやったけど、こういう言い方が意味を成すなら、それが形になったってことだね。私は濃密なコードやメロディが大好きなんだけど、最近の音楽はあまりにも色味がなくてベーシックなものが多い気がする。アーティストたちの多くは平均的なリスナーを当然のものだと考えてるけど、彼らは思ってるよりももっと奇抜な音楽や、風変わりなもの、濃いものだってわかるものよ。世の中の人たちはシンプルな音楽を深遠なものとして与えられてるでしょ。私のアルバムも聴きにくくはないから、かなりシンプルだとは思うけど、アコースティックな楽器を使ってサイケデリックなサウンドを組み込みたいと思ってた。それにミュージシャンとしての私の仕事にインスピレイションを与えてくれた偉大なミュージシャンたちを賞賛したかった。東京にはジャズとかソウルとか、クラシックとか、メタルとか特定のジャンルの音楽に浸って、サウンドに深く入り込めるバーやカフェがあるのがすばらしいね。

本作『Dust』ではほとんどの曲にヴォーカルが入っています。ご自身の声/歌を使う試みは『Quarantine』(2012年)でもおこなわれていましたが、本作におけるヴォーカルの役割は『Quarantine』とは異なっているように聴こえます。近作ではヴォーカルから離れていたと思うのですが、本作で再び大きく歌を導入したのはなぜですか?

LH:シンプルに言うと、言葉とか歌詞を使いたかったから。だから歌うのは当たりまえのことだった。

リリックはおもにどういった内容になっているのでしょう? アルバム全体をとおしてひとつのテーマのようなものがあるのでしょうか?

LH:歌詞にはいろいろなものが混ざりあっている。歴史的なものや、個人的なこと、非個人的なこと、フィクション、ニュースに基づくこと、私の人生に関わっている人たちのことや、無意味なことから作り出した意味のあることとか。ポジティヴな気持ちを伝えたり、凝り固まったパターンとか流行の外側を見られるように間違った文法や造語を使ってる。

冒頭の“Sun To Solar”と“Jelly”の2曲からは、シンセ・ポップやインディR&Bのムードが感じられますが、それは意図されたものでしょうか?

LH:シンセ・ポップはあるね。それにファンクも、ソウル・ミュージックも、細野晴臣や佐藤博も。「インディR&B」は絶対ないって!!

その、“Sun To Solar”と“Jelly”にはクラインが参加しています。彼女を起用しようと思った理由を教えてください。

LH:彼女の音楽が好きだし、音楽とは何かとか、音楽は何になりうるか、ということについてお互い似たようなヴィジョンを持ってるから。

いまクラインやチーノ・アモービらの音楽が「ブラック・エクスペリメンタリズム」と呼ばれて話題になっていますが、その盛り上がりについてはどうお考えですか?

LH:クラインやチーノの音楽が認められつつあるのは嬉しいね。権力構造を打倒したり解体したりすることを目指す音楽に感動してる。

“Jelly”と“Syzygy”にはラファウンダが参加しています。彼女はベース・ミュージックとワールド・ミュージックを横断するような興味深い音楽を作っていますが、今回彼女を起用しようと思った理由を教えてください。

LH:彼女の声と創造へのアプローチのしかたが好きなの。

“Moontalk”はアフリカン・ポップと呼ぶべきトラックですが、途中でハウスのハットが挿入されたり、最後は壮大なストリングスで終わったり、ポップでありながらも謎めいた展開を見せます。今回のアルバムのなかでもとりわけ異色な曲だと思うのですが、これはローレル・ヘイローの新機軸なのでしょうか? 以前からアフリカ音楽には興味があったのですか?

LH:そういうふうに聴こえたなんておもしろいね。だって私は1980年代の日本のシンセ・ポップやブギーからより影響を受けたように感じてるから。アフリカ音楽が好きかっていう質問はちょっと曖昧で漠然としてると思う。でも、アフリカの音楽もアフリカ系のアーティストが作った音楽もどっちも好きだよ。具体的には、ハウスとかテクノ、エレクトロ、ベース、UKファンキー、ゴム、フットワーク、ディスコ、レゲエ、ダブ、ダンスホール、ファンク、ソウル、ジャズ、ブルース、クラシカル、ミニマル、ラップ、ヒップホップ、ポップ・ミュージックとかね。

ちなみに、この曲のヴォーカル部分は何語なのでしょうか?

LH:バカ ジャ ナイ ノ…😉

アーティストが「進歩的な政見」をオンライン上のアイデンティティやブランドの一部として使うのはすごく皮肉なことだと思う。

“Arschkriecher”にはベーシック・チャンネル的なダブを思わせる部分があります。また、“Syzygy”や“Do U Ever Happen”はジャズの雰囲気をまといつつも、リズム&サウンドのようなエレクトロニックなレゲエ/ダブの要素が含まれています。あなたは『In Situ』でもダブ・テクノの要素を取り入れていましたが、かれらの音楽から受けた影響は大きいのでしょうか? かれらはテクノのミニマリズムとダブのミニマリズムを融合したイノヴェイターですが、あなたはその融合をいったん否定して解体しながらより高次のレヴェルでそれらを接続し直しているように思えます。あなたの試みはある種のアウフヘーベンなのでしょうか?

LH:アウフヘーベンってドイツ語にはいろいろ意味があるから、あなたがどういう意味で言ってるのかわかんないけど、リズム&サウンドやマーク・エルネスタス、レゲエ/ダブは私にインスピレイションを与え続けてきた。プロダクション・ヴァリューの点でも、サウンドにたっぷりとある土臭さという点でも、うわべがなめらかじゃないという点でも。ベースはメロディや土台だね。音楽やサウンドに呼吸をさせて、ゆがみや欠陥の余地を残して流していくんだ。

アルバムを最初に聴いたときは、細やかな音響やエフェクトの部分に耳が行ってしまったのですが、ベースもしっかりと鳴っていますよね。あなたの音楽にとってベースとはどのような意味を持つものでしょう?

LH:上の回答を読んで!

冒頭の2曲と5曲目の“Moontalk”はダンサブルなトラックですが、それ以外はすべてアブストラクトでエクスペリメンタルなトラックです。アルバムをこのような構成にした理由をお聞かせください。

LH:アルバムをこういうサウンドにするつもりはホントになかったの。このアルバムはいろんなスタイルやフロウを示唆してると思う。シンセ・ポップなアルバムを作る気はなかったな。まあ、そういうスタイルの曲がいくつか含まれてるけどね。

あなたの背景にはおそらくフリー・ジャズやデトロイト・テクノ、シンセ・ポップなどいろいろな音楽が横たわっているのだと思いますが、アルバムやEPを出すごとにその吸収のしかたや取り入れ方が変わっていっているように思います。それで私たちリスナーは戸惑い、あなたがいったい何者なのかということについて考えざるをえないのですが、ご自身としてはこれまでの歩みには一貫したものがあるとお考えでしょうか?

LH:それを決めるのはあなた次第ね!

昨年はUKで国民投票がありUSでは大統領選挙がありました。あなたは国民投票のときTwitterで残留に投票するよう呼びかけ、大統領選挙のときは「So American masculinity is that toxic」とツイートしていましたが、「善意」あるミュージシャンたち、良心的なアーティストたちが残留を訴えたりトランプを非難したり、そういう主張をすればするほど逆に、下層の人びと、貧しい人びとは反感を増していった、という話を聞いたことがあります。そのような時代に音楽にできることは何だと思いますか?

LH:私たちミュージシャンが意見を表に出すのは、もちろん大切なことだと思ってる。いろいろな統治機関のリーダーたちがとる方針には深い関心があるし、ネオリベラルな資本主義が多くの人たちを失望させたのは明らかでしょ。私のオーディエンスは少ないけど、自分ができる場所で自分の意見を言うつもり。あまりにも多くの面で音楽が商品化されてるから難しいけどね。それにアーティストが「進歩的な政見」をオンライン上のアイデンティティやブランドの一部として使うのはすごく皮肉なことだと思う。私は政治に関心があるし、下院議員に積極的にコンタクトをとるし、アメリカ自由人権協会(ACLU)やいろんなファンドに寄付をするし、私が関心のある問題を気にしていない友人や家族には意識を高めるように促している。でも、自分の人生をTwitterでつぶやくことには費やしてないし、自分の音楽には価値があると人に納得させるために自分の政見を利用するつもりもない。それに、こうしたミュージシャンたちのファンはすでに同じような政治的考えを持ってるでしょ。こんなふうにして音楽は腐敗の道具にもなりうるし、同時にただの目的にもなる。リスナーやファンがそれを見通して、正当な理由のために戦い続けるなら、それは私たち次第ってことね。私のオーディエンスは限られてるけど、つねに目を光らせて意識的でいることや意見を言うことは大切だ。アメリカの刑務所制度や性差別、環境問題といったことについてね。いまの時代、絶望せずに希望を失わないことは大切だと思う。

London Grammar - ele-king

 前回のレヴューで取り上げたムーンチャイルドは、女性シンガー1名、男性ミュージシャン2名という組み合わせだった。昔からこの編成のトリオは多く、UKでもワーキング・ウィーク、ヤング・ディサイプルズ、ポーティスヘッドなど、その時代時代でエポック・メイキングな活躍をしたアーティストにはこのパターンが多い。ハンナ・リード(ヴォーカル)、ダン・ロスマン(ギター)、ドット・メジャー(ドラムス)によるロンドン・グラマーも同じ3人組だ。グループ名どおりハンナとダンはロンドン生まれで、グラマー・スクールへ通っていたが、その後ノッティンガム大学に進学して、そこでドットと出会ってグループを結成したのが2010年。卒業後は2011年にロンドンへ出てきて、2012年末にYouTubeへアップした“ヘイ・ナウ”で一躍注目を集める。そして、“ウェスティング・マイ・ヤング・イヤーズ”、“ストロング”といったシングル曲が軒並みヒットする中、ディスクロージャーの楽曲“セトゥル”への参加を経て、2013年にファースト・アルバム『イフ・ユー・ウェイト』を発表。〈ミニストリー・オブ・サウンド〉傘下に自身の版権レーベルとして〈メタル&ダスト〉を立ち上げ、そこからリリースされた『イフ・ユー・ウェイト』は、『ガーディアン』、『NME』、『ピッチフォーク』など音楽誌やメディアでも高い評価を集め、UKアルバム・チャートでも初登場で第2位を獲得した。最終的に2014年度のトップ5のセールスを記録したこのアルバムは、UKのイヴォール・ノヴェロ・アワードなどの音楽賞を受賞している。

 女性シンガーを含む男女3人組の場合、その女性シンガーの歌声がグループの看板となることが多いのだが、ロンドン・グラマーの場合も同様にハンナの歌が売りで、彼女はアデルなどに続く逸材と目されている。英国のメディアが彼女のことを、フローレンス・ウェルチ(フローレンス・アンド・ザ・マシーン)、アニー・レノックス(ユーリズミックス)、ジュリー・クルーズなどと比較しているが、その憂いを帯びた美しくも力強い歌声は、R&Bシンガーやロック、またはポップ・シンガー的というより、どちらかと言えば英国のトラッドやフォークの系譜を受け継ぐ雰囲気を持っており、そうした意味でとても英国らしいシンガーである。そのハンナの歌を、ダンの哀愁に満ちたギター・サウンドがサポートするというのがロンドン・グラマーの音楽の核で、ドットのドラムはミドル~ダウンテンポ系のどっしりとしたビートを刻む。さらに重厚なピアノやストリングス、ブラス・サウンドが彩っており、アコースティックでフォーキーな質感の中にエレクトロニックな要素も忍ばせ、宇宙的とでも言うような広がりを感じさせるその音は、ゼロ7あたりを彷彿とさせるかもしれない。曲によってはダブステップやオルタナティヴR&B的なものもあるが、本質的には歴代の英国ロックの伝統に連なるダークでメランコリックな世界観を持つグループと言えるだろう。

 『イフ・ユー・ウェイト』から4年ぶりとなる新作『トゥルース・イズ・ア・ビューティフル・シング』も、基本は前作の路線を引き継ぐ作品集となっている。プロデューサーには、共にアデルを手掛けたポール・エプワースとグレッグ・カースティンのほか、ジョン・ホプキンスらが迎えられている。先行シングル“ルーティング・フォー・ユー”、続くシングル第2弾“ビッグ・ピクチャー”と、アルバム冒頭は美しいバラード系ナンバーにスポットが当てられている。第3弾シングルの表題曲も含め、これら静的で繊細なイメージの楽曲でのハンナの澄んだ歌声は本当に素晴らしい。一方、“ディファレント・ブリーズ”や“ノン・ビリーヴァー”といった比較的ビート感の強いナンバーにおいても、まずは彼女の歌の魅力をいかに引き出すかが、前作同様にアルバムの重点である。“ワイルド・アイド”や“ヘル・トゥ・ザ・ライアーズ”は、ややダブステップ的な味わいを持つ作品となっており、サブモーション・オーケストラあたりに通じるだろうか。ロンドン・グラマーの持ち味には、アコースティックな要素とエレクトリックな要素の調和もあり、それが発揮された好例だろう。また、サブモーション・オーケストラとの共通点では、教会音楽からの影響も挙げられる。まさに「チャーチ・ミックス」と題された“メイ・ザ・ベスト”、BBCのメイダ・ヴァレ・スタジオでのライヴ録音となる“ビター・スウィート・シンフォニー”に、それが見て取れる。そして、第4弾シングルの“オー・ウーマン・オー・マン”は、ゴスペル・ロック的な世界観とフォーキーなテイストが見事に結実した、アルバムのハイライト的なナンバー。反戦ソングの“リーヴ・ザ・ウォー・ウィズ・ミー”と共に、ロンドン・グラマーの強さが表われた曲だろう。強さと美しさが入り混じった“ホワット・ア・デイ”に見られるように、ロンドン・グラマーの魅力がさらにスケール・アップされたアルバムだ。

LONDON ELEKTRICITY & MAKOTO - ele-king

 あなたがジャジーでソウルフルなドラム&ベースをうんと浴びたいと思っているなら、このイベントがおあつらえ向きでしょう。
 今年で創立21周年を迎えるUKのドラム&ベース・レーベル〈ホスピタル・レコード〉。そのボスであるトニー・コールマンのソロ・プロジェクトとして知られるロンドン・エレクトロシティが、7月21日に代官山ユニットで開催される「HOSPITAL NIGHT」に出演する。
 昨年20周年を迎えた「Drum & Bass Sessions(DBS)」が開催する今回のパーティでは、ロンドン・エレクトロシティがレーベル21周年を祝す「21 years of Hospital set」を披露するそう。
 さらに日本勢からは今年〈ホスピタル・レコード〉と契約し、9月にアルバムをリリース予定のマコトが出演する。競演はダニー・ウィーラーや、テツジ・タナカ、MC CARDZ、などなど。

UNIT 13th ANNIVERSARY
DBS presents "HOSPITAL NIGHT"

日時:2017.07.21 (FRI) open/start 23:30
会場:代官山UNIT
出演:
LONDON ELEKTRICITY (Hospital Records, UK)
MAKOTO (Hospital Records, Human Elements, JAPAN)
DANNY WHEELER (W10 Records, UK)
TETSUJI TANAKA (Localize!!, JAPAN)
host: MC CARDZ (Localize!!, JAPAN)

Vj/Laser: SO IN THE HOUSE
Painting: The Spilt Ink.

料金:adv.3,000yen door 3,500yen

UNIT >>> 03-5459-8630
www.unit-tokyo.com
Ticket 発売中
PIA (0570-02-9999/P-code: 333-696)
LAWSON (L-code: 74079)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia: https://www.clubberia.com/ja/events/268846-HOSPITAL-NIGHT/
RA: https://jp.residentadvisor.net/event.aspx?974718


(出演者情報)


★LONDON ELEKTRICITY (Hospital Records, UK)
"Fast Soul Music"を標榜するドラム&ベースのトップ・レーベル、Hospitalを率いるLONDON ELEKTRICITYことTONY COLMAN。音楽一家に生まれ、7才からピアノ、作曲を開始した。大学でスタジオのテクニックを学んだ後、'86年にアシッド・ジャズの先鋭グループIZITで活動、3枚のアルバムを残す。'96年に盟友CHRIS GOSSと共にHospitalを発足し、LONDON ELEKTRICITYは生楽器を導入したD&Bを先駆ける。'98年の1st.アルバム『PULL THE PLUG』はジャズ/ファンクのエッセンスが際立つ豊かな音楽性を示し、'03年には2nd.アルバム『BILLION DOLLAR GRAVY』を発表、同アルバムの楽曲をフルバンドで再現する初のライヴを成功させる。’05年の3rd.アルバム『POWER BALLADS』はライヴ感を最大限に発揮し多方面から絶賛を浴びる。’08年には4th.アルバム『SYNCOPATED CITY』で斬新な都市交響楽を奏でる。そしてロングセラーを記録した’11年の名盤『YIKES !』を経て’15年に通算6作目のスタジオ・アルバム『Are We There Yet?』をリリース、多彩なヴォーカル陣をフィーチャーし、ピアノ、ストリングスといった生音を最大限に活かしたソウルフルな楽曲の数々で最高級のクオリティを見せつける。'16年にはTHE LONDON ELEKTRICITY BIG BANDを編成し、ビッグ・ブラスバンド・スタイルでのライヴを敢行する。
https://www.hospitalrecords.com/
https://www.londonelektricity.com/
https://www.facebook.com/londonelektricity
https://twitter.com/londonelek


★MAKOTO (Hospital Records, Human Elements, HE:Digital, JAPAN)
DRUM & BASSのミュージカル・サイドを代表するレーベル、LTJ BUKEMのGood Looking Recordsの専属アーティストとして98年にデビュー以来、ソウル、ジャズ感覚溢れる感動的な楽曲を次々に生み出し、アルバム『HUMAN ELEMENTS』(03年)、『BELIEVE IN MY SOUL』(07年)、そしてDJ MARKYのInnerground, FABIOのCreative Source, DJ ZINCのBingo等から数々の楽曲を発表。DJとしては『PROGRESSION SESSIONS 9 – LIVE IN JAPAN 2003』, 『DJ MARKY & FRIENDS PRESENTS MAKOTO』の各MIX CDを発表し、世界30カ国、100都市以上を周り、数千、数万のクラウドを歓喜させ、その実⼒を余すところなく証明し続けてきた、日本を代表するインターナショナルなトップDJ/プロデューサーである。その後、自らのレーベル、Human Elementsに活動の基盤を移し、11年にアルバム『SOULED OUT』を発表、フルバンドでのライヴを収録した『LIVE @ MOTION BLUE YOKOHAMA』を経て13年に"Souled Out"3部作の完結となる『SOULED OUT REMIXED』をリリース。15年にはUKの熟練プロデューサー、A SIDESとのコラボレーション・アルバム『AQUARIAN DREAMS』をEastern Elementsよりリリース。17年、DRUM & BASSのNo.1レーベル、Hospitalと契約を交わし、コンピレーション"We Are 21"に"Speed Of Life"を提供、同レーベルのパーティー"Hospitality"を初め、UK/ヨーロッパ・ツアーで大成功を収める。そして今年9月、待望のニューアルバム『SALVATION』が遂にリリースされる!
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