「K A R Y Y N」と一致するもの

Marie Davidson & L'OEil Nu - ele-king

 「アプリケーションは拒否した?/私はあなたの機能の奴隷ではありません/あなたは気晴らしの大量兵器が欲しい/私はあなたにデモンストレーションする/あのー、ところで、これは金儲けするレコードではありませんから/今回、私は敗者の視点で調査します/言葉は気にしないでね/それが裏切り者のブレイクダウン」
 彼女の新プロジェクト、マリー・デイヴィッドソン&ルウィユ・ニュはこんな風に、敗者の弁からはじまる。裏切り者(レネゲイド)とは、彼女自身。なにからの? クラブ・カルチャーからの。
 「私のスピーチをもっと良くしようなんていう、あなたのアドヴァイスなどいらない/あなたの政治の話にも興味なし/あなたの意志は株式相場のように変動/あなたの仮面舞踏会はグロテスクだし、あなたのその格好ときたら計算しすぎ」

 “Renegade Breakdown”は敗者の曲にしてはファンキーなエレクトロ・ディスコで、歌詞には相変わらず男性社会へのアイロニーがあり、アグレッシヴだ。転んでもただでは起きない人になっているようにも感じられるが、この場合タイトルは「裏切り者の挫折」とでも訳すべきなのだろう。もっともマリーは2016年に『Adieux Au Dancefloor(ダンスフロアにさよなら)』なる題名のアルバムを出している。内的にはつねに葛藤があったのだろうけれど、彼女の出世作となった前作『Working Class Woman』のサウンドの骨格にあるのはテクノやハウスといったクラブ・ミュージックだったし、しかしそれ以前となるともっとぐちゃぐちゃな電子音響だったりもする。ちなみに彼女のデビュー・アルバムのタイトルは『Perte D'Identité(アイデンティティの喪失)』。

 「捨てることはなんも恥ずかしくない/最初から必要なかったから/すべてを取り戻してやる/商品になんかにしがみついてたまるか/もし香水があるのなら、その名は「ノーコラボ」/コラボレーションへの期待などありません/警察は必要なし/自警するから/私が作るすべてに背く/怒りが私のすべて」
 
 マリーの20代はたいへんだったと、彼女は『ガーディアン』の取材で打ち明けている。アルコール依存症、睡眠薬中毒、慢性的な拒食症。彼女はクラブ・カルチャーの浅はかな側面に関しては嫌悪しているが、しかしクラブと決裂した大きな理由はそこではない。それは彼女の悪化する健康状態に起因している。前作にあった“Workerholic Paranoid Bitch”とは自分のことで、あの曲のヒステリックな感覚は自虐でもあったのだろう。いずれにせよ、マリーがこれ以上音楽を続けるには、クラブ以外のほかのやり方を探すしかなかったと。
 そんなわけで、彼女はミュージシャンで夫のピエール・ゲリノーとプロデューサーでマルチ楽器奏者でもあるAsaël Robitailleといっしょにバンドを組むことにした。バンド名はフランス語で「肉眼=L’OEil Nu」。
 表題曲は途中で転調し、マリーはフランス語でシャンソン調に歌う。カナダのモントリオールの住民の大半がフランス系で公用語はフランス語。カナダのメディアではイアン・F・マーティンの記事もフランス語に訳されている。

 『Renegade Breakdown』はポップ・アルバムを目指して作られたアルバムで、マリアンヌ・フェイスフルやビリー・ホリデー、それから同郷の歌手ミレーヌ・ファルメールを参照しているという。なるほど、マリアンヌの『ブロークン・イングリッシュ』のように心身共にボロボロになったところからの回復はアルバムのテーマとしてたしかにあるのだろう。が、マリーが良いのは、拙訳で申し訳ないけれど、引用している歌詞を読んでいただければわかるようにパンチの効いたユーモアがあるところだ。幻滅や惨めさや自分の弱さを歌いながら傷口を見せびらかすのではなく、風刺やジョークをまじえてそれを観察し、怒りも忘れずに、そしてクラブの外側にある人生を綴ろうとする。
 
 いろんなスタイルをシャッフルした『Renegade Breakdown』はスタイリッシュで、ポップ・アルバムとして充分に楽しめるアルバムだ。前作の“Work it”のようなずば抜けたハウス・トラックがないのは残念だが、アコースティック・ギターをバックに歌う内省的な“Center Of The World”、キャッチーなエレクトロ・ポップな“C'est Parce Que J'm'en Fous”、ラウンジ・ジャズを展開する“Just In My Head”、そして美しいバラードの“My Love”やフレンチ・ポップな“La Ronde”などなど、一度で好きになれるような曲がアルバムの大半を占めている。
 彼女が活動をはじめた10年前はちょうど同郷のグライムスが脚光を浴びはじめた頃で、同じリハーサル・スタジオを使っていた自分たちはアンダーグラウンドのなかのさらに下の下だったとマリーは件の取材で回想している。つまり自分は何もないところから来たんだと、そんな風に腹を括れたことで、なんとか自分の居場所を見つけることに成功したと。クラブから外の世界へと出たときの、その広さのなかで。

 「私のたった一度限りの人生は反戦略的/それは喜劇と悲劇のあいだに横たわっている」



※CDとアナログ盤には歌詞が掲載されている。

DISTANCE 2020 - ele-king

 これは果敢な試みだ。静岡県沼津市の「泊まれる公園」こと INN THE PARK にて、11月6日(金)から8日(日)の3日間、野外フェス《DISTANCE》が初開催される。

 ラインナップにはじつに贅沢な面々が並んでいて、DJ Nobu、dj masda、Mars89 らをはじめ、エレクトロニック・ミュージックの最前線で活躍する気鋭たちが一挙集結。寺田創一、食品まつり、YPY、鴨田潤らはライヴを披露、人気テクノ・イベント《KONVEKTION》を主催する Takaaki Itoh & DJ YAZI は初めてのB2Bに挑戦する。

 名前にもあらわれているように、出口の見えないこの時代だからこそのフェスになるようで、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、定員数を制限しての開催となる(沼津市役所とも相談済みとのこと)。マスク着用、ソーシャル・ディスタンスなど、ガイドラインに沿いつつ秋の野外で音楽を楽しもう。

[開催概要]

名称:DISTANCE 2020 ***Limited Open Air Music Festival***
日程:2020年11月6日(金)~8日(日)開場15:00~閉場21:00
会場:INN THE PARK(静岡県沼津市)

料金:前売3日通し券(400枚限定)18,000円 / 前売25歳以下限定3日通し券(100枚限定)10,000円
駐車:前売パーキング券(180枚)無料
宿泊:近日公開(会場内テントサイト及び宿泊棟のほか、近隣にも宿泊施設がございます)
チケット販売:https://www.residentadvisor.net/events/1426560

出演:Akiram En, DJ Nobu, dj masda, Eugene Kelly, guchon, Jun Kamoda [Live], Mari Sakurai, Mars89, Soichi Terada [Live], Takaaki Itoh & DJ YAZI, YPY [Live], 食品まつり a.k.a. foodman [Live] and more * Sound Design: OtOdashi sound system * Lighting: Nagisa * Decolation: 密林東京

※料金・宿泊・注意事項・新型コロナウイルス感染拡大防止対策について下記を必ずご確認ください。
https://note.com/distance___fest/n/n84d2eb115c8f
https://www.facebook.com/events/370934564086868
https://twitter.com/Distance___fest
https://www.instagram.com/distance_festival/

Sound Patrol 久々にやります - ele-king

Yosuke Tokunaga - ''''''' | .TOST

AmbientExperimental

E王

 ようやく涼しくなって過ごしやすくなってきたけれど、ここはむしろ氷点下の世界。なにもかもが凍りついている。2012年あたりから作品を発表しつづけている Yosuke Tokunaga は、いまだ謎に包まれているアーティストだ。どうやら東京にいるらしいこと、おもに自身のレーベル〈.TOST〉を足場にしていること、それくらいしかわからない。
 彼の存在を編集部に教えてくれたのはじつは、かのザ・バグである。ちょうど1年前にリリースされた『7 Patterns』についてケヴィンは、「ベリアルやDJクラッシュ、スコーンのように冷たい氷のカクテル。なんでみんなもっと彼のことを讃えないのかわからない!」と讃辞を送っている。
 最新作『'''''''』(なんて読めばいいんだ?)でもベリアル直系の凍てついたサウンドは健在で、日本からこのような表現が生まれてきたことがすばらしい。もうすぐ冬もやってくることだし、まさにこれから聴き込みたい音楽だ。

FLATPLAY - Slightedge | NATIVE ARCHIVES / BAYON PRODUCTION

Techno

 少しまえから90年代リヴァイヴァルはトレンドのひとつとして定着していたわけだけど、この極東の地もその機運としっかりリンクしていて、新たな才能が登場してきている。D.A.N. のサポート・メンバー、篠崎奏平のソロ・プロジェクトである FLATPLAY がもう、ストレートにデトロイティッシュなサウンドを響かせているのだ。
 D.A.N. のメンバーと同年代とのことなので、現在20代後半。リアルタイムではないその世代がデトロイト・テクノに影響を受け、みずからの音楽の糧としていることじたいが、いまの音楽シーンのある側面をよく物語っている。
 河村さんによるインタヴューによれば、若き時分にホアン・アトキンスを知ったことがそうとうデカかったようで、とくに『The Berlin Sessions』に大いに刺戟されたのだという。同記事ではデラーノ・スミスの名もあげており、いやこれはほんとうにデトロイト・サウンドにぞっこんなんだろう。
 かくして FLATPLAY は2018年、それこそ〈Transmat〉から出ていてもおかしくなさそうなトラックの詰め込まれたファーストEP「First Extended Play」をリリースすることになるのだが(D.A.N. の櫻木大悟と〈TREKKIE TRAX〉の andrew によるリミックスも収録)、つい先月、さらに洗練度を高めたシングル「Slightedge」が送り出されている。
 1曲目の表題曲からしてリスペクトのかたまりだ。キックとハットが確たるコンビネイションで土台を形成、ダビーなシンセが曲の色彩を決定し、どこかオリエンタルな、あるいは未知の「異国」を喚起させるヴォーカルがさりげなくオリジナリティを主張してもいる。2曲目 “Orpus” はよりダブ・テクノの要素を強めたスタイルでミニマリズムを探求しているが、こちらもメロディの部分に独特の悲哀が宿っている。3曲目の “Orpus (Altone rephrase)” はそのダブ・ヴァージョンで、ベーシック・チャンネル一派を想起させる仕上がり。
 一周、いや、もう二周まわったのかもしれない。このように20代後半の世代が、そしてDJのようにクラブを主戦場とするわけではないミュージシャンが、独自の要素を加えつつデトロイトやベーシック・チャンネルの遺産を継承していることは、素直に喜ぶべきことなのだろう。

XTAL - Aburelu | 813

Electronica

 90年代から活躍するDJ/トラックメイカーの XTAL (旧名義 CRYSTAL)が4年ぶりに発表した2枚目のソロ・アルバム。
 (((さらうんど)))JIN TANA & EMERALDS のメンバーでもあり、K404 とのユニット TRAKS BOYS として2016年まで川崎の工場の屋上でレイヴを開催していた彼は、本作でダンスとはべつの試みにチャレンジ。ときおりギターがシューゲイズ的なノイズを鳴らしたりもするが、基本的には美しさを追求したエレクトロニカ・サウンドが展開されている。

Various Artists - REITEN presents ENSō 2020 | REITEN

ExperimentalAmbientTechno

 ベルリンを拠点に活動するサウンド・アーティストの Kosei Fukuda も要チェック。レーベル〈REITEN〉を主宰し、すでに10枚以上の12インチを送り出している彼は、この4月に宇都宮で電子音楽のフェス《REITEN presents ENSō 2020》の開催を予定していたものの、COVID-19 の影響により延期に。このまま立ち止まっているわけにもいかないからだろう、7月24日に同名のコンピがリリースされている。
 レニック・ベルイヴ・ド・メイなど、フェス出演予定だった各国のアンダーグラウンドの精鋭たちが参加しており、エクスペリメンタルなテクノ~アンビエントの最前線を堪能することができる内容だが、なかでも先日紹介した YPY をはじめ、Fukuda 本人の手による本作全体のコンセプトを体現する2曲、ヴェテランの ENA、あるいは Katsunori Sawa や Yuji Kondo など、日本人アーティストたちが気を吐いている印象があり、各人の今後の動向が気になってくるコンピだ。

R.I.P. 加部正義 - ele-king

 1966年6月にゴールデン・カップスの一員としてデビューし2020年9月26日に世を去ったルイズルイス加部こと加部正義氏のゆうに半世紀を超える音楽歴には当然ながら幾度かの転轍点があるが、それが描く軌道をふりかえれば、この国のロックがたどった道のりそのものだった、そのことを私たちはもっともっと知らなければならない。
 先の述べたとおり、加部正義はGSの一翼を担うゴールデン・カップスのベーシストとしてキャリアをスタートした。若い読者に超訳まじりにご説明さしあげると、GSとはグループ・サウンズの頭文字をつづめた、1960年代なかごろのベンチャーズやビートルズら舶来サウンドのあいつぐ上陸に感化された若者たちを中心にまきおこった流行の総称で、かまえこそロックだったが中身は歌謡曲というか、芸能事務所主導だったことは、のちにタイガースとテンプターズからPYGに転じたジュリーやショーケンやサリーへのロック・ファンからのすげない態度にもうかがえる。とはいえこの構図は定説あつかいだったふしがあり、かくいう私も、高校のころ、これから日本のロックを一所懸命聴くぞ!と誓ったそばからGSは歌謡曲だからやめとこうと思ったくちだった。その頑迷な思いこみがとけたのは黒沢進さんらの浩瀚な研究や、80年代なかば以降、レコードからCDへの媒体のきりかえにともない、過去の名作が廉価で入手できる体制がととのったことにもよる。
 耳をならすと、なかには歌謡曲ロックの枠組みからハミだすフリーキーな響きもそこかしこに聴きとれる。世界史との時間軸を確認すると、当時は68年を中心とした政治の季節で、米国西海岸にはグレイトフル・デッドやジェファーソン・エアプレインやクイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスらシスコ・サウンドが存在感を増した時期ともかさなる。すなわちサイケデリックの誕生である。海の向こうの動きにもっとも直截に反応したのは鈴木ヒロミツや星勝らのモップスでその名も『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』(1968年)なるデビュー・アルバムを世に問うたことは、海外の最新動向を伝達する回路でもあったGS期の邦楽の位置づけも裏書きする。スパイダースのように音楽的なオリジナリティを積極的に打ち出す例もあったが、ポップ音楽では日本はまだまだ後進国であり、海外の最新動向の紹介も本邦楽団の重要な役割のひとつだった。上述のモップスのアルバムでも鈴木ヒロミツと星勝によるバンドのテーマソング風の “アイ・アム・ジャスト・ア・モップス” をのぞく全曲がカヴァーか職業作家の手になる提供曲(1曲目の “朝まで待てない” はのちに一世を風靡する作詞家阿久悠のデビュー作)である。
 このような分業制は内田裕也大瀧詠一らをまきこんだ日本語ロック論争の下地でもあるが、話が広がりすぎるのでいまは措く。留意したいのは、いまだ支配的だった和魂洋才の和と洋の線引きである。加部のいたゴールデン・カップスもそのことでは例外ではなかった。1948年横浜は本牧に生まれた加部正義は中学でギターを手に、高校のころには米軍キャンプで演奏をはじめていたという。のちのパワー・ハウスの竹村英司らとのミッドナイト・エクスプレスをへて平尾時宗(デイヴ平尾)とグループ・アンド・アイにベースで加入したのは66年、これが翌年に活動拠点の店の名前をとってゴールデン・カップスに改称する。デビュー・シングルは「いとしのジザベル」で、なかにし礼と鈴木邦彦への外注だが、静から動への弾けるような展開は彼らのキャラクターをうまくいいあてている。なかでも楽曲内を駆け抜けるランニングベースのうねりながら加速するグルーヴは加部の持ち味のひとつで、リードベースの呼び声も高いそのプレイスタイルは爾来、アンサンブルの牽引車の役目を担っていく。本領発揮の場はなんといってもスタジオよりライヴであり、私はその観点からカップスの最高傑作は69年の『スーパー・ライヴ・セッション』だと断言したくなる。
 とはいえ全9曲中オリジナルは掉尾をかざる “ゼンのブルース” のみ。のこりはブルース、R&B、お気に入りのナンバーか、前年に出たアル・クーパーとマイク・ブルームフィールドの『スーパー・セッション』の援用からなる。名うてのミュージシャンを糾合しその化学反応に期待するスーパーセッション方式の本邦へのもっともはやい導入例だが、方法論以上に注目すべきは彼らの演奏の質である。ガレージの鋭利な切っ先が反射させるステージライトがかもしだす酩酊感とでもいえばいいだろうか、デイヴ平尾、エディ藩、マモヌ・マヌーにミッキー吉野らコンボが発するテンションはきわめて高い。ルイズルイス加部のベースは音楽空間の下部を滑り、曲をかさねるごとに内圧を高め、パワー・ハウスの陳信輝と柳譲治が加わる “ゼンのブルース” はどんづまりにひしめく魑魅魍魎の図を想起させる。このような現場が昭和40年代の横浜の地に存在していたことは当時の日本でロックの受容が急速にすすみつつあったことをものがたる。むろん決定権をにぎるのはいまだ大人だが、バンドの仕組みやロックへの理解度は格段に高まっていた。これが60年代末から70年代初頭にかけてのスーパーセッション方式の重用につながっていく。そのことはあの『ジャップロック サンプラー』(和書は白夜書房より2008年刊行)でジュリアン・コープも誤解と曲解まじりに指摘する点でもある。コープは陳信輝、水谷公夫、柳田ヒロ、クニ河内らの名前のなかで前述の『スーパー・ライヴ・セッション』については「ブームの尻馬に乗ろうとした」(165ページ)とすげないが、前後関係をみるとカップスのが先である。というのはさておき、器楽演奏に焦点をあてたこの方式は70年代前半のニューロックにきわめて親和的であり、この潮流からは多くの演奏家が輩出している。大音量の長尺の演奏を旨とするスタイルゆえ、そのほとんどはギタリストだが、加部正義はそのなかで例外的なベーシストとして70年代以降のロック史で異彩を放ちつつづけるのである。
 陳信輝とのフード・ブレイン、スピード・グルー&シンキ、ジョニー・ルイス&チャー──、加部正義が名を連ねるバンドがことごとく無頼派集団風なのは演奏の場を共同作業より勝負の場ととらえるからか。男性原理を尊ぶ60年代末の時代の影もおちている。それにより幅をきかせるハードな不良のロックの向こうを張るように、スピード・グルー&シンキはジュリアン・コープが「アンフェタミンの入手にまつわるブルース・ベースの葬送曲」と形容する “Mr. Walking Drugstore Man” にはじまるわずか1年あまりの活動で日本という社会と時代をつきぬけようとする。71年の『イヴ 前夜』と翌年の『スピード、グルー&シンキ』の2枚がこの日中、日仏、米比混血児トリオがのこした音源のすべてであり、作風には同時代人であるジミの影もちらつくが、フード・ブレインで未消化に終わった実験性をフリークアウトぶりでとりかえすかのごとき濃度と(加)速度はやはり圧巻である。
 その後復活したデイヴ平尾とゴールデン・カップスや、山口冨士夫とビショップとのリゾートに参加し活動の場を広げつつも、めまぐるしく変わる状況に疑問をおぼえた加部正義は自省の期間をもうけようと旅にも出たが、帰国をまちかまえていたかのように、78年にはチャーに乞われてジョニー吉長とのジョニー・ルイス&チャーの一員として前線に舞い戻ることになる。のちにピンク・クラウドと名をあらためるトリオの本邦ロック史における功績はいくつもあるが、私のような後発組には大人のロックなるものがもしあるとして、説教くささ抜きにかっこよくあるべきにはどうすればいいかおしえてくれたのも彼らだった。ロックなどというものは、バンドマンなどというものは楽器をかまえた姿がさまになってなんぼであり、テクニックなどいうだけヤボである──といいたげな余裕と色気と自由な精神。その中心で加部正義はハードなロックを中心に、ファンク、フュージョン、ラテンやAORにいたるまで、さまざまなモチーフに芯の詰まったグルーヴでしなやかに応じている。その融通無碍な音楽性は80年代を席巻し来たるべき90年代以降の多様性と横断性をさきがけてもいたが、そのような状況から出来した並列化と細分化はロックという坩堝を旧式の調理道具とみなす風潮も用意した。むろんこれは概況にすぎず、加部正義は21世紀以降も、いくらか間遠にはなったとはいえ、TENSAW の鈴木享明、富岡義広らとのぞくぞくかぞくなどで活動を継続していた。鈴木、富岡は加部の94年のソロ『eyeless sight』でもリズム隊をつとめた間柄でもある。それ以前にも加部にはチャーがプロデュースした83年のはじめてのソロ『ムーン・ライカ・ムーン』とマシュー・ザルスキーJr.と加部みずからプロデューサー役を買って出た『コンパウンド』(1985年)の2作のソロもある。ことに後者は旧知の清志郎との合作で “非常ベルなビル” と題した、ふてぶてしさと脱力を誘う諧謔ぶりが同居するハードなロックンロールもおさめている。このロック的な、あまりにロック的な佇まいは2020年9月26日以降も、加部正義の音楽から陽炎のようにたちのぼってくる。

Nas - ele-king

 90年代にデビューした年齢的にも現在40代後半以降のラッパーのなかで、いまもなおヒップホップ・シーンおよび広くアメリカ社会に対しても大きな影響力を持つアーティストとして真っ先に名前の挙がるのは、おそらく Jay-Z と Nas のふたりであろう。アーティストとしての活動だけでなく、ビジネスマンとしても(それぞれ規模の違いはあれど)大きな成功を収めているふたりであるが、自らのレーベルである〈Mass Appeal〉を通じてアンダーグラウンドなシーンのサポートなども積極的に行なっている Nas は、リリース作品に関しても年々よりストイックな方向性を貫いているように感じる。
 Kanye West をトータル・プロデューサーとして迎え、ソロ・アルバムとしては6年ぶりのリリースとなった前作『Nasir』に続く今回のアルバム『King's Disease』では、Jay-Z、Kanye West、BeyoncéASAP Rocky、Drake、Kendrick Lamar、Jay Park など錚々たるアーティストたちの楽曲を手がけてきた Hit-Boy が全曲のプロデュースを担当。様々なヴァリエーションのサウンド・スタイルでありながらも、そこには一本の真っ直ぐな芯が貫かれており、ワンパッケージのアルバムとして非常に完成度の高い作品に仕上がっている。
 先行シングル曲でもある “Ultra Black” は間違いなく本作を象徴する一曲であるが、タイトルが示す通り、BLMムーヴメントとも連動して、Nas の黒人としての高いプライドがこの曲には込められている。様々なヒットチューンを生んできた Hit-Boy であるが、この曲のサウンドはサンプリングを多用し、おそらく楽器も足しながら全体のトーンをコントロールして抑制を効かせることで、Nas のラップのなかにあるエモーショナルな部分を見事に引き出す。Lil Durk と共に黒人女性の持つ強さについてラップする “Til the War Is Won” や、さらに直接的に切り込んだ “The Definition” など、“Ultra Black” と同様にBLMと深くリンクした曲を盛り込む一方で、Big Sean をフィーチャした “Replace Me” や Anderson .Paak との“All Bad” では恋愛(および失恋)をテーマにしていたりと、このリリックのトピックの振れ幅も実に Nas らしい。そして、サンプリングと打ち込みのビートのバランス感が絶妙な Hit-Boy のトラックとの相性も実に見事だ。その反動というわけでもないだろうが、ボーナストラック的なラストチューンの “Spicy” では Fivio Foreign と ASAP Ferg というヤンチャな若手勢を引き連れながら、強烈なトラップ・ビートの上でダーティなストリート臭を思いっきり吐き出すのもまた痛快である。
 本作の最大のサプライズが、90年代に Nas が一時的に組んでいたスーパーグループ、The Firm のメンバーである AZ、Foxy Brown、Cormega が参加した “Full Circle” という曲だ。The Firm、あるいは Nas “Life's A Bitch” をリアルタイムに聞いていた人であれば、AZ が登場する瞬間、頭が20年以上前に持っていかれる感覚になるだろうし、Foxy Brown の相変わらずのラップの格好良さに身震いするだろう。さらにこの曲の最後にシークレットゲストとして The Firm のプロデューサーでもあった Dr. Dre がスピットする演出も実に見事としか言いようがない。
 ベテランならではの貫禄を見せながら、通算13枚目というアルバムでこれだけ強い満足感を与えてくれる Nas。まだまだ枯れることのない彼のクリエイティヴィティが今後も末長く続くことを期待したい。

Last Life - ele-king

 1985年から遅くとも88年までにデトロイト・テクノは確立されている。そこからジェフ・ミルズがハード・ミニマルを分岐させたのが1992年で、ひとつのジャンルから新たな飛躍が起きるまでに5~6年はかかったことになる。その変化は徐々にというよりも一気に起きたように感じられたので、デトロイト・テクノとハード・ミニマルを連続体として捉えられなかった人もいたことだろう。ビートがハードになると、それだけで根本的なことまで変わったと感じてしまうのは仕方がない。それはジェフ・ミルズが意図的に上げようとしたハードルだったわけだし。何が言いたいのかというと、イタリアのラスト・ライフことマウロ・ピッチャウ(Mauro Picciau)のファースト・アルバム『Recon(偵察)』がまさに「ジェフ・ミルズの登場」を思い出させる作品で、ジェフ・ミルズが初めてリキッドルームのDJブースに立った日を蘇らせてくれたのである。ただし、ここで用いるタームは「ハード・ミニマル」ではなく「ハーフタイム」。ハーフタイムというのは一般的には8ビートだったら8で刻むのではなく、オフビートを駆使して4しか叩かずに8ビートを表すリズムのことだけれど、ここ最近、ジャンル名として使われているハーフタイムはドラムンベースを16ではなく8で刻むスタイルを指し、ロンドンのエイミット(Amit)が00年代前半に完成させたスタイルのこと。エイミット自身はハーフタイムを主軸とせず、ドラムンベースに雪崩れ込む前半の展開としてハーフタイムを用いるだけで、そのポテンシャルを最大限に引き出したのは2010年代に入ってDブリッジを待ってから。カリバー “Steptoe”(10)やダブ・フィジックス “Marka”(11)も話題を呼び、ストゥラテジィをMCに起用した後者のヒットによってラガマフィンのサンプリングやフォックスのような現役のダンスホールMCを起用することが増え、ハーフタイムとダンスホールはヒップホップとラップのようにワンセットとして動くようになっていく(そうではない動きももちろんあった)。イキノックスやデムダイク・ステアがダンスホールとテクノを結びつけてリヴァイヴァルさせた際にもハーフタイムは不可分のものとしてあり、エイミット自身もそうした余波に煽られたか、最後までハーフタイムで押し通したシングルは”Acid Trip”(14)が最初だったはず。おそらく、どの流れであれ、ハーフタイムを包括的に扱っていたのはDブリッジと彼の主宰する〈イクジット・レコーズ〉で、僕が最初に飛びついたハーフタイムもDブリッジとスケプタによる“Move Way”(13)だった。そして、彼らが8人編成のモジュール・エイトを名乗ってアルバムをリリースしたのが2015年だから、ラスト・ライフがハーフタイムを一気にハードに展開させるまでにはやはり「5~6年はかかったことになる」。しかも『Recon(偵察)』にはジェフ・ミルズの用いるクリシェがふんだんに重ね合わされ、ジェフ・ミルズがハーフタイムをやればこうなるでしょうと言わんばかりな面も。オープニングのタイトルが“The Minimal”だし。

 ラスト・ライフのことはアルバムを聴くまで知らなかったので、初期のシングルを聴いてみた。デビュー作らしき「85-15 EP」は2015年のリリース。この段階ではまだハードではなく、IDMに近い印象もあり、2017年には「Nether Regions(股間とか冥土の意) EP」が続く。ここでようやく『Recon』へとつながるアグレッシヴな方向性が見え始め、同じ年に〈サムライ・ミュージック〉に移って早々と「Nootka EP」をリリース。そこから彼は独自の道を模索するために配信のみで4枚のセルフ・リリースを重ね、そのまま一直線に『Recon』へ向かったというより彼はここでやってみたいことを様々に試し、好きなだけ実験を重ねたという印象が強い。ジュークやダーク・アンビエントなど、どれもが彼の作風に染まっているのはさすがだし、それらをアルバムにまとめる力がないとは思えないほど独自のカラーは漲っている。しかし、彼に新たな集中力をもたらしたのはパンデミックだったようである。多くのプロデューサーにとって作曲と編集の能力はまったくの別の才能で、同じ課題がラスト・ライフの前にも立ち塞がっていた。タイミングよくパンデミックによってスタジオに閉じ込められたことが、そして、それを解決してくれたのではないかと。どんな方向にも行けた気がするラスト・ライフが『Recon』ではしっかりとストロング・スタイルに照準を合わせている。ラスト・ライフにもドラムン・ベースを16で刻むことには未練があるようで、中盤の3曲がやや退屈に感じられるのはそのせいだろう。しかし、それ以外は基本的にドラムが前景化せず、時には途切れてしまうこともあり、ブリープ音のループや獰猛なベース・ラインが必要以上に強迫的なムードを煽っているあたりはどうしてもジェフ・ミルズを想起させる。それに16できちんと区切っていくリズムはいまとなってはかなり単調に感じられ、トラップを早回しで聞いているような感覚はまさに同時代性のもの。ラスト・ライフがドラムン・ベースをここまで変化させた鍵はジュークにあるのではないかと思うけれど、それ以上のことはよくわからない。ハーフタイムを独自に発展させた動きはほかにもあるので、ハーフタイムが呼び込むリズムの自由さをどのように生かすかはそれぞれの才能に委ねられている時期ということか。

Sylvester - ele-king

 音楽で世界を変えようとすることは必ずしも革命を叫ぶことではない。1977年に「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」と「アイ・フィール・ラヴ」があったように、1978年には(PiLがあり、ディーヴォがあり、トーキング・ヘッズの2ndもあり……)、そしてシルヴェスターの『Step II』があった。男が女装して街を歩けばまだ逮捕された70年代のサンフランシスコで、画期的な音楽性を伴ってポップ・ミュージックにおけるクイアー・セクシャリティの最初期の発露として未来を切り拓いた歴史的なアルバムだ。オリジナルのリリースから42年を経て、このたび『Step II』はデジタル・リマスタリングによって再発された(ずっと廃盤のままだった)。
 『Step II』は、シカゴの野球場でディスコのレコードを片っ端から燃やすというロック至上主義たちによる儀式の1年前に発売されたディスコ・レコードだ。アルバムにはふたつの重要な曲が収録されている。“You Make Me Feel”と“Dance”、どちらもセクシーで熱狂的なダンス・ミュージックで、どちらも当時ヒットしている。
 シルヴェスターの強烈なファルセットが130bpmほどの当時としては速いテンポのビート(そしてシーケンス)と絡み合う“You Make Me Feel”は、ドナ・サマーに対するアメリカ西海岸ファンクからの回答のように聴こえる。実際にこの曲は、“アイ・フィール・ラヴ”同様にその後のハイエナジー(Hi-NRG)への起点になった。
 近年ルイ・ヴェガにリミックスされたディスコ・クラシックとして有名な“Dance”では、その後ザ・ウェザーガールズを結成してビッグになるマーサ・ウォッシュとアイゾラ・ローズによるパワフルなコーラスが聴ける。その構造は──当時はとくにクイアーにとって決して安全な場所ではなかったであろう教会で歌われる──ゴスペルとの接点を強調するハウスのテンプレートのひとつになっている。『Step II』にマーサとアイゾラがいることは、『スクリーマデリカ』にデニス・ジョンソンがいることが大きかったように、おおらかな生命力が表現されているという意味において、じつに大きな効果を生んでいる。
 このレコードにはもうひとり重要人物がいる。エレクトロニクス(シンセサイザーおよびシーケンサー)を担当しているパトリック・カウリーだ。彼こそ、ゴスペル/ソウルとディスコ・ダンスフロアを繋ぐ危険な導火線だった。シルヴェスターの甘くセクシーな歌声と黎明期のエレクトロニック・ダンス・サウンドとの結合が、性の革命とアイディンティティのあらたな表明のためのエネルギーとなったことは想像に難くない。
 シルヴェスターは『Step II』以降、自らのクイアー・アイデンティティをさらに堂々と、あからさまに研磨する。「私を見ろ」と言わんばかりだ。で、カウリーのほうはと言えば、1981年の『Megatron Man 』および『Menergy』といったアルバムによってエレクトロニック・ディスコ・サウンドをさらに更新させている。そしてシルヴェスターもカウリーも、ともにHIVの合併症に屈し、ともに80年代に他界している。
 もちろんシルヴェスターとカウリーの精神は語り継がれている。『Step II』はドナ・サマー&ジョルジオ・モロダーと同じように音楽の未来の扉を開けたアルバムだった。と同時に、LGBTコミュニティから生まれた先駆的な音楽だったのだから。

 ちなみに『Step II』は、ほかの曲もすべて良い。たとえばヒップホップのネタにもなっているご機嫌なほどファンキーな“Was It Something I Said”、切なくメロウなソウル“Just You And Me Forever(あなたと私こそ永遠に)”、あるいは“Grateful”などはRCサクセションの“ファンからの贈り物”みたいやんけ……と思ってしまうのはそもそもシルヴェスターは、RCのその曲にも参加したタワー・オブ・パワー(先日ベーシストだったフランシス・プレスティアが亡くなられた)と同期の70年代西海岸ファンク・シーンのひとりだったりする。要するに、『Step II』の基盤には西海岸のファンクがあり、それがストーンウォールの反乱と結びついてしまったと。それがいまや歴史になった革命的レコードの背景なのだった。
 (※オリジナルのリリース元であったFantasyレーベルからもアナログ盤の再発があった模様です)

Polygon Window - ele-king

 こいつはめでたい。1993年頭、エイフェックス・ツインがポリゴン・ウィンドウ名義で放った『Surfing On Sine Wave』、AIシリーズ初のアーティスト・アルバムであり、のちの『SAW2』への導線となった “Quino - Phec” を含むこの名作が、12月4日にリイシューされる。
 リチャード・D・ジェイムス本人が監修しているそうで、かつて一度2000年にリイシューされたとき(日本盤は未発売)にボーナストラックとして追加された “Portreath Harbour” と “Redruth School” の2曲はもちろんのこと、シングル盤「Quoth」に収められていた “Iketa”、“Quoth (Wooden Thump Mix)”、“Bike Pump Meets Bucket” の3曲も加えた計14曲、ポリゴン・ウィンドウ名義のトラックを網羅した「完全版」となっている。今回初めて聴くという方も、もう何度も聴いてきたというヴェテラン・リスナーも要チェックです。

POLYGON WINDOW
エイフェックス・ツインが初めて〈WARP〉からリリースした名盤中の名盤
ポリゴン・ウィンドウ名義でリリースされた全楽曲を収録!
その後のエレクトロニック・ミュージックの方向性を大きく変えた伝説のアルバム『Surfing On Sine Wave』が完全版としてリイシュー決定!
オウテカとワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの新作リリースも控え〈WARP RECORDS〉キャンペーンの開催も決定!

エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムス。若くして「テクノモーツァルト」の称号を得たエレクトロニック・ミュージック界の最高峰であり、誰もが認める〈WARP RECORDS〉の看板アーティストである彼が、初めて〈WARP〉からリリースしたアルバムは、エイフェックス・ツインではなく、ポリゴン・ウィンドウ名義で発表された『Surfing On Sine Waves』だった。当時22歳だったリチャード・D・ジェイムスによって世に送り出され、その後のエレクトロニック・ミュージックの方向性を大きく変えた伝説のアルバムが、オリジナル盤の9曲はもちろん、リチャードがポリゴン・ウィンドウ名義でリリースした全14曲を収録した完全版としてリイシュー決定!

商品詳細はコチラ
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11467

〈WARP〉が1992年にリリースした革新的コンピレーション『Artificial Intelligence』の1曲目に収録されたリチャード・D・ジェイムスによる楽曲こそ “Polygon Window” だった(ただし同作における名義は The Dice Man)。その年の冬にエイフェックス・ツインの『Selected Ambient Works 85-92』がレコード店に並ぶ。それに続くように、年明けの1993年1月に本作『Surfing On Sine Waves』がポリゴン・ウィンドウ名義でリリースされている。アートワークにも、〈WARP〉が本作を『Artificial Intelligence』シリーズの第二弾として位置付けていることが明記されており、〈WARP〉がポスト・レイヴの新たなムーヴメントとして掲げた「エレクトロニック・リスニング・ミュージック」というコンセプトを最初に体現したアーティスト作品の一つであり、その魅力のすべてが詰まっていると言っても過言ではない名盤中の名盤。

『Artificial Intelligence』と同じく、本作においてもオープナーを務める “Polygon Window” には、まさに「エレクトロニック・リスニング・ミュージック」の醍醐味と特徴が集約されている。「学生時代に工事現場でバイトしたときの騒音がインスピレーションだ」とリチャードが語るのは、シングルカットされた “Quoth”。そして『Selected Ambient Works 85-92』の発展型、もしくは『Selected Ambient Works Volume II』への布石とも言える名曲 “Quino – Phec”など、若き日のリチャード・D・ジェイムスがその才能を見せつけたタイムレスな名曲たち。そして本作には、リチャード本人監修のもと、シングル盤「Quoth」からアルバムには未収録だった2曲(“Bike Pump Meets Bucket” と “Iketa”)と “Quoth (Wooden Thump Mix)”、2001年にホワイトレーベル盤でリリースされた当時未発表だった2曲 “Portreath Harbour” と “Redruth Schoo” がすべて収録されている。

リチャード・D・ジェイムスが初めて〈WARP〉からリリースした名盤『Surfing On Sine Waves』は、ボーナストラックと解説書付きで12月4日リリース! 盟友デザイナーズ・リパブリックがアートワークを手掛けた本作が紙ジャケット仕様でCDリリースされるのは、今回が初めてとなる。

なお、今回の『Surfing On Sine Waves [完全版]』発売決定のニュースに合わせて、オウテカ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーという超強力アーティストの新作が続く〈WARP RECORDS〉のキャンペーンの開催も決定! 対象商品3枚以上購入して応募すると、オリジナル卓上カレンダーが必ずもらえる!

対象商品には、ポリゴン・ウィンドウ『Surfing On Sine Waves [完全版]』の他、エイフェックス・ツインと同じく、『Artificial Intelligence』に楽曲が収録され、記念すべきデビュー・アルバム『Incunabula』自体も『Artificial Intelligence』シリーズの一環として位置付けられているオウテカの最新作『SIGN』(10月16日発売)、今やメインストリームにもその名を轟かせるプロデューサーでありながら、イーノ、エイフェックス・ツインらとも感覚を共有し、〈WARP RECORDS〉のアート性や実験性を継承しているワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの最新作『Magic Oneohtrix Point Never』(10月30日)の3作を中心に、現在好評発売中のスクエアプッシャー『Be Up A Hello』と『Lamental EP』、イヴ・トゥモア『Heaven To A Tortured Mind』、ロレンツォ・センニ『Scacco Matto』、ダークスター『Civic Jams』の国内盤が加わる。また各新作タイトルの国内盤CDの初回生産分には、それぞれデザインの異なる〈WARP〉ステッカーが封入される。

WARP RECORDS CAMPAIGN 2020

開催期間:2020年10月16日(金曜)~2021年2月末日

特典ステッカー

ステッカー対象商品
10月16日発売:Autechre - SIGN *国内盤
10月30日発売:Oneohtrix Point Never - Magic Oneohtrix Point Never *国内盤
12月4日発売:Polygon Window - Surfing On Sine Waves [完全版] *国内盤
??月??日発売:????? - ?????

特典卓上カレンダー

卓上カレンダー対象商品
発売中:Squarepusher - Be Up A Hello *国内盤
発売中:Squarepusher - Lamental EP *国内盤
発売中:Yves Tumor - Heaven To A Tortured Mind *国内盤
発売中:Lorenzo Senni - Scacco Matto *国内盤
発売中:Darkstar - Civic Jams *国内盤
10月16日発売:Autechre - SIGN *全形態(デジタルは対象外)
10月30日発売:Oneohtrix Point Never - Magic Oneohtrix Point Never *全形態(デジタルは対象外)
12月4日発売:Polygon Window - Surfing On Sine Waves [完全版] *国内盤
??月??日発売:????? - ?????

応募〆切
2021年2月消印有効

キャンペーン応募券

応募方法
対象商品に貼付された応募券を集めて、必要事項をご記入の上、官製ハガキにて応募〆切日までにご応募ください。

キャンペーン詳細はこちら↓
https://www.beatink.com/user_data/warp2020.php

Charles Webster × Burial - ele-king

 90年代後半、UKディープ・ハウス・シーンのキイパースンとして活躍したチャールズ・ウェブスターが、2001年の『Born On The 24th Of July』以来じつに19年ぶりとなる新作『Decision Time』を送り出す。
 アルバムには(マッシヴ・アタック『Blue Lines』への参加で知られる)シャラ・ネルソンを筆頭に、これまでチャールズが関わってきたヴォーカリストたちが多くフィーチャーされている。フォーマットはヴァイナル/CD/配信の3種で、11月20日に発売。それに先がけ10月9日にはシングル「The Spell」もリリースされる。
 注目すべきは、アルバム収録曲 “The Second Spell” のプロダクションにベリアルが参加している点だろう。シングル「The Spell」でも彼はリミックスを手がけており、これはかなり珍しい。なんでも今回のコラボは、かつてベリアルがチャールズのプレゼンス名義による『All Systems Gone』(1999年)を自身の重要な影響源としたことがきっかけになったそうだ。
 驚くべきコラボ、これは大いに期待できそう!

single
Charles Webster
The Spell (feat Ingrid Chavez)

format: 12” vinyl / digital
release: 2020/10/9

A1. The Spell (Burial Mix)
B1. The Spell (Charles Webster Dub)
B2. The Spell (Charles Webster Vocal Mix)

album
Charles Webster
Decision Time

format: double vinyl / CD / digital
release: 2020/11/20

01. Burning (feat Sio)
02. This Is Real (feat Shara Nelson)
03. We Belong Together (feat Thandi Draai)
04. Love Lives (feat Sio)
05. I Wonder Why (feat Sipho Hotstix Mabuse)
06. Music (feat Thandi Draai)
07. Wait And See (feat Terra Deva)
08. Secrets Held (feat Emilie Chick)
09. The Spell (feat Ingrid Chavez)
10. The Second Spell (feat Ingrid Chavez)

Carl Craig & Moritz von Oswald - ele-king

 偉大なるテクノ・マエストロ、かつて一緒にカラヤンをリコンポーズドしたふたり、カール・クレイグとモーリッツ・フォン・オズワルドが新たなコラボ・プロジェクトをスタートさせている。
 新曲 “Attenuator” はここ2年のあいだにデトロイトとベルリンでおこなわれたセッションから生まれたもので、カールとモーリッツそれぞれのヴァージョンがある。それらを収めたシングルが10月23日に発売、フォーマットは配信と12インチ・ヴァイナルが予定されている。
 現在ショート・ヴァージョンが〈プラネットE〉のサウンドクラウドで公開中。予約はこちらから。


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