「K A R Y Y N」と一致するもの

Young Echo - ele-king

 これはブリストル・トリップホップの最新型ですよ。マッシヴ・アタックが、トリッキーが、ポーティスヘッドが、ブリストルのミームが新世代によってアップデートしている。ひとつのコレクティヴにいろいろな才能が集結しているという点では、ワイルド・バンチ/マッシヴ・アタックの現代版と言えばいいのかもしれないけれど、とにかくヤング・エコーときたら、複数のメンバーによる多様な個性が絡み合い、まったく素晴らしい混乱を創造する。アルバムには、ダブステップ、グライム、〈トライ・アングル〉系の薄気味悪さ、インダストリアル・ミニマルの陶酔からダーク・アンビエントにいたるまで、ここ数年のアンダーグラウンド・ミュージックの良いところを全部持っていっている。もちろんブリストルらしくダブもある。過去を受け継ぎながらリフォームし、躍進する。さまざまなフォームが混ざっているので、間口は広い。
 そして、ハイならずにハイになる、ステイ・ロウの美学も……。景気後退を受けながら、『NME』はキング・クルエルのレヴューに次のような言葉を書いている。「先細りする雇用と増える負債の、UKの緊縮財務下で育った幻滅した世代がいる。怒るのは簡単だし、悲しむのはさらに簡単だ」
 ただ闇雲に悲しみを表現されるだけでは満足できないというリスナーの心情をここに読み取るのなら、ヤング・エコーの『ネクサス』には怒りでも悲しみでもない何か別の感情がギシギシ音を立てていると言えるかもしれない。いや、しかし、やはりこれは怒りだろう。かつてジャーヴス・コッカーは、ブレア政権を「コカイン社会主義」なんて言葉で揶揄したものだが、この音楽はどう考えても、多幸的で、イケイケで、アッパーな文化に対する一種の抗いだと思える。敢えて叫んだり、怒鳴ったりしない、それがブリストル・トリップホップのマナーというものだろう。

 ヤング・エコーは、昨年〈トライ・アングル〉からアルバムを出したヴェッセル(Vessel)、ヴェッセルとともにキリング・サウンドとしても活動するジャブ(Jabu)、メンバーのなかでもっとも多作で〈ディープ・メディ〉からも作品を出しているカーン(Kahn)、ペヴの〈パンチ・ドランク〉から出しているズー(Zhou)、注目レーベル〈Peng Sound〉から出しているイシャン・サウンド(Ishan Sound)らがメンバーにいる。ヴェッセルはテクノよりで、ジャブはダブより、カーンはグライムよりだったり、同じポッセながら個々の作風は違っている。詳しく知りたい方は、下北沢ZEROの飯島店長に訊いて下さい。僕も2年前に店長に薦められてヴェッセルの1枚目を買ったのが最初だったけれど、この2年のあいだにこのコレクティヴはさまざまな掛け合わせを繰り返しながらとんでもない発展を遂げていたのだ。
 ロール・ディープ・クルーのフローダウンも参加しているカーンの2枚組12インチ「カーンEP」(DLコード入り)は、トリッキーの最高の瞬間を受け継いでいるように思える(https://soundcloud.com/blackbox-boxclever/kahn-snake-eyes-feat-jabu/s-na48b)。ジャブの7インチは、マッシヴ・アタックの美学がポスト・ダブステップにおいて展開されている。いったい、何がどうしてこうなったのか、次号の紙エレキングでは、小特集を組む予定。ブリストルのニュー・スクール、いま注目すべきシーンのひとつではないだろうか。

Emptyset - ele-king

 ひさびさにライヴで完全にブッ飛ばされた。

 スイスの歴史的情緒溢れる美しき町ロザーン、創業100年の由緒あるシネマ・アートスペース、ル・ボーグ(Le Bourg)にて感無量なライヴ・セットを終えたばかりで興奮冷めやらぬ僕とローブドア(Robedoor)のブリット(〈NNF〉主宰)とアレックス、サンド・サークルズ(Sand Circles)のマーティンは、同じ晩に近所で行われていた〈LUFFフェスティヴァル2013〉に、ともにUK出身のハクサン・クロークとこのエンプティセット目当てで向かった。それによって僕らがこの晩にやってのけたショウがちっぽけにすら感じた(が、しかしそれでも僕らはこの晩のショウに満足している)。
 入場して間もなく、ただごとでない事態がステージ上に出来したことに目と耳を疑った。見覚えのある連中が発狂した光と音を放っている。ん? あれ? エンドン(ENDON)じゃね?
彼らを初めて知ったであろうブリット等を含むその日のオーディエンスは、強烈なトラウマを覚えたであろう。
 楽屋でジェロ・ビアフラがエンドンを絶賛するのを横目に偶然の再会の挨拶を交わし、数時間後のフライトで帰国する彼等に名残は尽きなかったが、エンプティセットのステージを観にフロアへと舞い戻った。

 有りえない程の爆音でフロアを振動させていたエンプティセット(眼球が振動するほど)に僕は少量の尿を漏らしていたかもしれぬ。
〈サブテキスト(Subtext)〉からの前作『マテリアル』はスノードニアの原発廃炉、ロンドン中心部深層部の広大なコンクリート試験燃料庫、ケントの地下22マイルにある中世の坑道などイギリス国内のカルト・スポットに赴き、コンタクト・マイクで採集したフィードバッグを“素材”にした極上のドキュメンタリー・サウンドトラックだ。
 彼らの完成度の高い世界観に僕はしばしばカネイト(Khanate)が奏でていた“間”を想起させられる。しかしもちろんこれはドゥーム・メタルではない。フロアで彼等が放出する超暴力的な光と音のフィードバックは(言わずもがな彼等のショウはリアルタイムでおこなわれる)は確実にオーディエンスを狂気のヘッドバンギングとダンスへと誘う。
 万を持して〈ラスタノートン〉からリリースされた4枚めのスタジオ・アルバム(※)となる『リカー(Recur)』はそのタイトルが指し示すようにいままでの彼等の軌跡を包括する秀作だ。根源的衝動を掻き立てるノイズとフィードバックの応酬。

 ライヴも込みなら確実に今年度最大の衝撃。

 ※本レヴュー掲載当初は「サード・スタジオ・アルバム」とご紹介しておりましたが、4枚めの誤りでした。お詫び申し上げます。(2013年11月14日/編集部)

John Lennon McCullagh - ele-king

 アラン・マッギーの新レーベルのアーティスト。アラン・マッギーが普通に二番煎じを狙うなんてびっくりだが、じつは結構ベタな人なのかもしれない。この柔軟性がなければ、一時はイギリスのレコード・セールスの半分だか、1/3だかをしめたことがある男にはなれないのだろう。

 そういえばホリディに行った場所で「新しいビートルズを見つけた男が、新しいボブ・マーレーを見つけたとしてもおかしくないだろう」と豪語して契約したこともあったよな。なんて名前のアーティストだったか忘れてしまったけど。
 クリエイション発足当時から彼の夢にはアイドルもやりたいというのがあって、秋元康みたいに、どこかの可愛い女の子を見つけてきて、ちゃんと『NME』の表紙も押さえて、チャートの1位に送り込んだこともあった。本人いわく「なんかバカらしくなってやめた」ということで、たったシングル一枚でアイドル・マーケットへの宣戦布告は止めたが、当時僕はアイドルのマーケットはマフィアが牛耳っているようなものだから、いろいろと大変だったのかなと思ったりした。

 しかし、またとんでもないアーティストと契約したな。名前がすごい、大丈夫か、エルヴィス・コステロでさえ、エルヴィスという名前を付けた時点でアメリカでの成功は無理かなと思ったそうなのに。
 でも、ジョン・レノン・マカラーくん、順調そうです。僕はけっこう好きです。15歳でこれだけのことができるなんてすごいじゃないですか。ストライプスのサポートのライヴを見たら、このCDのときよりもすごくうまくなっていた。

 ボブ・ディランくらいすごいと言われていますが、ボブ・ディランのデビュー・アルバムはもっとすごかったです。もっとギターのテクもすごかったし。でも、年齢の違い10歳くらいあるんじゃないですか。ボブ・ディランは大学生のときにビート作家のヘンリー・スミスが編集した『Anthology of American Folk Music 』を友だちから借りパクして、大学を卒業したか、辞めて、カフェでランブリング・ジャック・エリオットにいろんなテクニックを教わって、やっとデビューしたわけですから、この15歳の少年は何なんですかね、YouTubeとかで勉強して、ここまでの才能を磨きあげたんでしょうか。

 いまのイギリスはとってもおもしろそうです。ビートルズ前夜にスキッフルが流行ったみたいに、イギリスの若者はターンテーブルじゃなく、ギターを手にしている感じがします。一度聴いてみてください。声とギターが生む、グルーヴが、気持ちいいですよ。

Mark E - ele-king

 マーク・Eとか、モーター・シティ・ドラム・アンサンブルとか、スルーしてきたんだけど、五十嵐慎太郎が口うるさく推薦するものだから聴いています。UKの若い連中のお陰で、ディープ・ハウスが時代のムードに合ってきたというのもあるけれど、デトロイト系ビートダウン──せかさず、ゆったりとしたグルーヴ、エモーショナルでソウルフルなテイスト──の人気はハウス冬の時代においても衰えずにいたし、メロウなハーモニーとオードルスクールなフィーリングを持っているマーク・Eの今回の来日、ハウス時代のいま、実に良いタイミングじゃないでしょうか。
 2004年にジャネット・ジャクソンが「R&Bジャンキー」を出して、その3年後にUKはバーミンガムのマーク・Eは「R&Bドランキー」を出しているけれど、彼のR&B使いのうまさはつねに賞賛されています。既存の曲をダンス仕様に編集し直すことをハウスの世界はエディット(リエディット)と言いますが、五十嵐は彼をエディットの「職人」と呼んでいます。職人とは、わけもわからずサンプリングするのではなく、元ネタについてもよくわかっている人です。今月のオススメのディープ・ハウス、ディスクロージャーやザ・XXで踊って楽しかった人には大推薦。

以下、五十嵐から来たメールのコピペ。

 職人プロデューサー「Mark E」のJAPANツアーが久々に開催される。
JISCOレーベルではその類い稀なEDITワークで人気を獲得し、その後自身で立ち上げた「MERC」レーベルもコンスタントにリリースを重ね、地味で地道なスタンスとそんな性格を表してるかの様なそのサウンドが、本国イギリスはもちろん日本でも着実にコアなファンを獲得し、昨今のUKハウス再注目の波を牽引しているひとりと言っても過言ではないだろう。2011年の3.11の混乱のなか、いち早く来日してその親日ぶりも評判な彼なので今回のツアーを相当楽しみにしているようだ。
 名古屋では地元の信頼も厚い老舗のCLUB JB'sでの開催が決定した。
また代官山AIRのPARTYでは共演予定のDJ陣がDJ AGEISHI、DJ SHIBATA、GONNOと、これまた日本が誇る職人気質な最高なDJ陣。そしてラウンジでは新進気鋭の要注目若手DJ陣に交じって先日20周年を迎えたIDJUT BOYSのConradが参加すると言う豪華な顔ぶれで開催される!

Mark E (Merc, Spectral Sound/from UK)
 英国ウエスト・ミッドランズ州ウォルヴァーハンプトンにて生まれ、その後家具デザインを学ぶためにバーミンガムに移り住む。当時バーミンガムではちょうどクラブシーンが盛り上がっていた時期で、大学卒業後もそのままバーミンガムに住むことになる。Jisco Musicからリリースされた”Scared”をきっかけに、一躍Mark Eの名は広まり、ディスコ エディットやビートダウンという言葉に収まりきらないMark Eマジックは〈Endless Flight〉、〈Running Back〉、〈Golf Channel〉、〈Internasjonal〉、〈Sonar Kollektiv〉などからリリースされた。また、ここ数年で数多くのリミックスも続々と手がけており、remixerとしてのMark Eも勢いがとまらない。2009年には自主のレーベルMERCを始動し、アナログレコードとコンピレーションCD『Mark E Works 2005-2009』Vol.1と2をリリースしている。
 「本当の音楽は消耗品じゃないと思うんだよね。僕も音楽制作と向き合ってる時は、時間がたっても聴けるモノを常に意識してる。僕が古いディスコに惚れてるように、20年たってもみんなが楽しめるような音楽を創りたい。」 (Vendor Mag vol.5 Mark E Interviewより)
 2011年にファースト オリジナル アルバム『STONE BREAKER』を〈Spectral Sound〉より発表、プロデューサーMark Eの音世界が濃縮された作品となっている。
 〈Running Back〉から" THE BLACK COUNTRY ROOTS EP”を近々リリース予定であり、また現在セカンド・アルバムを制作中とのことである。

Merk Music:
https://mercmusic.net
https://twitter.com/mark_e_merc
https://www.facebook.com/pages/MERC/124366710936688


11.22(金) 名古屋 @ Club JB’S
Guest DJ: Mark E
DJ: Shou Ino (Buddy/indicate), Beepay (body to body/Mooving), Uchida (izumi), Hose (Mooving)

open 22:00
Advanced 2500yen
Door 3000yen

Info: Club JB’S https://www.club-jbs.jp
名古屋市中区栄4-3-15 丸美観光ビルB1F TEL 052-241-2234

NU-DISCOの旗手MARK Eが今年もAIRのフロアを魅了

 ビートダウン的感覚とソウル/ディスコ・エディット感覚を昇華させた独創的 なダンストラックでテクノ~ハウスシーンからも大きな注目を集め、リミキ サーとしての手腕も絶賛されるMARK Eが、約1年3カ月ぶりにAIR再登場を果た す。前回はNU-DISCOの旗手らしい変幻自在のプレイでフロアを見事に魅了して くれただけに、まさに待望の夜といえるだろう。国内からは、世界へ活躍の幅 を拡大中の次世代シーンの雄GONNOが昨年に続き連続参戦。そして今回は、東 京のダンスミュージック・ヒストリーを見つめ続けてきた大ベテランDJ AGEISHIも参加する。国境や世代の壁を超えて構築される、素晴らしい音空間 へ。

11.23(土/祝) 東京 @ AIR
COMMUNION
"Mark E JAPAN TOUR"

MAIN:
Mark E, DJ AGEISHI (AHB pro.), GONNO (WC/Merkur/International Feel), DJ SHIBATA (探心音/the oath)

B1F LOUNGE:
FUSHIMING & YO.AN (HOLE AND HOLLAND), COZU (COGEE & MAMAZU), HOBOBRAZIL, KILLY & 7e (Romanescos), Asyl Cahier, Conrad McDonnell(Idjut Boys)

Nomad: Vendor Crew

open 22:00
AIR Member 2500yen with 1Drink
With Flyer 3000yen with 1Drink
Door 3500yen with 1Drink

Info: AIR https://www.air-tokyo.com
東京都渋谷区猿楽町2-11 氷川ビルBF TEL 03-5784-3386

TOTAL TOUR INFO: AHB Production www.ahbproduction.com


 みんな大好きアンチバラス! 昨年、『セキュリティ』から5年ぶりとなる新譜『アンチバラス』をリリースしてその健在ぶりを印象づけ、いまなおアフロ・ビートを革新しつづけるバンドとしてリスペクトを受けるブルックリンの10年選手たちが、来月じつに8年ぶりとなる来日公演を行う。「懐かしいなー」は、新鮮な驚きに変わるかもしれない。彼らは12月の東京、金沢、福岡で、どのようなステージを見せてくれるのだろうか。

 初期作品の中心人物で、現世においてレトロ・フューチャーなダンス・グル―ヴの復興に寄与している所属レーベル、〈Daptone Records〉のオーナー、ガブリエル・ロスは彼らの存在をこのように定義する。
「リズムだけが素晴らしいアフロ・ビートを形成するのだ。これはリズム・セクションだけのことではない、ホーン、ヴォーカル、キーボード、全てが一体となりリズムを放出する。それだけでは物足りない、そこに聴き手、受け手が何かを期待し、揺り動かされ、予感し感じる。この全てのことがあってグル―ヴが作用するのだ」

“闘争するアフロビート・バンド”アンチバラス12月緊急来日!

アフロビート・サウンドを継承するブルックリンのバンド、アンチバラスの8年ぶりとなる来日公演「Organic Groove ~Our True Calling~ feat. Antibalas」が12月に決定し、12月15日に開催される東京公演に三宅洋平率いる(仮)ALBATRUSがゲスト出演することが発表された。

近年ではアフロビートの始祖フェラ・クティの伝記的ミュージカル「FELA!」のスコアを担当するなど音楽的にも更なる進化を遂げてきたアンチバラス。サウンドの継承のみならず、政治的な闘争という精神性も受け継いだ数少ないバンドとしてグローバル社会の矛盾に異を唱え、戦争に費やされる膨大な汚れた金を、よりポジティヴなエネルギーに浄化する、そんなメッセージ唱え続けてきた。一方の三宅も今年参議院選挙に出馬、選挙活動を祭りに見立てた「選挙フェス」を通し住民主権型の社会へのシフトを訴えてきた。

国は違えど日米の闘争するミュージシャン2組の「共闘」が実現の場は、実に3年ぶりとなるイヴェント〈Organic Groove〉の招聘によるもの。00年代初頭から刺激的かつ創造性に溢れたミュージシャンたちを紹介してきたイヴェント3度めの復活の場として、日米を代表するメッセージ性の強い両アーティスト。東京公演(12/15 @Daikanyama UNIT)のチケット販売は11月2日よりスタートする。

■2013.12.15 sun
Organic Groove ~Our True Calling~ feat. Antibalas
@Daikanyama UNIT / Saloon / UNICE ※3会場同時開催

https://www.organicgroove.net/

LIVE :
Antibalas
(仮)ALBATRUS
and more bands and DJs to be anounced!!!
OPEN / START : 17:00
TICKET :
adv: 6,500yen(1drink fee charged @door / All Standing)


electraglide 2013 - ele-king

 11月29日金曜日、幕張メッセ国際展示場にて開催される「エレクトラグライド2013」、当日のタイムテーブルが発表された。はい、ご覧の通りである。


 空間を2フロアに仕切った前年と違って、今年は巨大空間にふたつのステージを設置、交互にパフォーマンスをする。つまり、「カブリなしで全てのショウを観ることが可能。次から次へとノンストップで繋がって行くパフォーマンスが、濃密なヴァイブを生み出し、フロアをそしてひと夜のパーティを最高の一体感に包み込む」と、主催するビートインクは鼻息荒いメールを昨晩、関係者にいっせいに送った。
 そして、「さらにタイムテーブルに注目せよ! まさに息つく暇もない疾風怒濤のランニング・オーダー!」だと豪語。メールのなかでは、下記のような当日のシミュレーションまでする。ビートインクもそれほど気合いが入っているのだ。
 私などはのんびり派なので、グラストンベリーでもブライトンのフェスティヴァルでも、メタモルフォーゼでも、非合法レイヴでも、いっつも、適当に遊んで適当に飲んで、座って誰かと話しているほうなので、みなさんも「~を見なきゃいけない」なんてプレッシャーを自分にかけずに、楽しみましょう。酒飲みは配分を間違わないこと。(レイヴでもフェスでも、音楽なんてなにひとつ覚えていないけど、久しぶりに話した友人との会話だけはよく覚えているなんてザラ。そう、主役は君たちなのだ!)
 セオ・パリッシュのときまでに生存者がどれほどいるのか、注目したい。

NOSAJ THING × 真鍋大度 × 堀井哲史 × 比嘉了
フライング・ロータスやケンドリック・ラマーも認めるL.A.ビートの逸材ノサッジ・シングと、パフュームの演出をはじめ世界的認知度を飛躍的に上げ続ける真鍋大度率いるライゾマティクスの面々が世界初公開となるオーディオ・ヴィジュアル・セットで登場。electraglide 2013のイノヴェイティヴな幕開けを告げる。

FACTORY FLOOR
アシッド、パンク、ディスコ、インダストリアルを3ピースで配置しながら、破壊力抜群のライヴ・パフォーマンスに中毒者続出!! ポストパンク、クラウトロックのDNAを現代のミニマリズムでモダナイズした緊張感溢れるグルーヴが暴力的な興奮へと昇華していく様は必見(失禁)!!

MACHINEDRUM
IDM~エレクトロニカ、ヒップホップ、ポスト・ダブステップ、ジュークとビート・ミュージックの潮流を掴みながら、そのドープネスをポップに錬金してきた奇才が最新作にして傑作『VaporCity』リリース後の初舞台をエレグラで披露!ディープでヴェイパーな街のサウンドトラックが幕張メッセを覆い尽くす!!

SHERWOOD & PINCH
全てのベース・ミュージック・フリークが狂喜した最強のドリーム・タッグが再びここ日本を襲撃!! ダブ・サウンドのルーツと未来が邂逅した“今”を鳴らす、陶酔と覚醒のレベル・ミュージックが来場者の足腰、そして魂を直撃!! 衝撃のヘヴィウェイト・ダブに応答せよ!!

JAMES BLAKE
先日マーキュリー賞を受賞し、名実ともにUKを代表するアーティストとなったジェイムス・ブレイクが2013年のワールド・ツアーのファイナル公演としてelectraglide初登場!視覚も魅了する大がかりな舞台演出の機材を持ち込みフル・セット(日本初上陸!)で行われるショウ! さらにヴァージョンアップした唯一無二のJBワールドは、再び伝説の一夜を更新するだろう。

2manydjs LIVE
EDM前夜からロックとダンスの垣根をブチ壊し、キラー・チューンとキラー・チューンを掛け合わせた“マッシュ・アップ”の洪水でフロアを掌握するパーティ奉行がなんと10年ぶりにエレグラに降臨!かかっている曲のアートワークがリアルタイムでシンクロしていく最強のパーティ・エンターテインメントを投下!


!!! (chk chk chk)
即完! 大合唱!! 汗まみれの肉弾戦!!! となったプレミア来日公演も記憶に新しい、最狂のモンスター・グルーヴ・バンドが帰還! ロック・フリーク、パンクス、テクノ・ヘッズをまとめて飲込む狂乱のグルーヴで幕張メッセのフロアがダンサーの洪水で溢れかえること必至!!!

MODESELEKTOR [DJ SET + 909] with Pfadfinderei
貪欲なまでに雑食なサウンドで世界中のダンスフロアを狂喜乱舞させてきたデュオが遂にエレグラ初参戦! 今回は新機材とTR-909を組み込んだDJセットに盟友であるマルチ・メディア・アーティストPfadfindereiがVJとして帯同した圧巻のオーディオ・ヴィジュアル・セットを本邦初公開!!

THEO PARRISH
デトロイトのブラックネスを体現し続けるこの男がまさかのelectraglide 2013出演!百花繚乱のパフォーマンスを抜けた後に、ソウル、ジャズ、ファンク、ディスコ、テクノ、ハウス……すべてのミュージック・ラバーを祝福する至高のDJプレイが今年のエレグラを大団円へと誘う!!

まだ間に合う!前売TICKET!
前売 ¥8,800 / 当日 ¥9,800
※18歳未満の入場は不可、入場の際写真 付きIDの提示をお願い致します。
※お買い求めいただいたチケットは返品できません。

詳細はこちらから>>> www.electraglide.info

Beatkart ( https://shop.beatink.com ) 限定、チケット購入特典決定!
Beatkartでチケットをご購入いただいたお客様に先着でバッジ型オーディオ・プレイヤーelectraglide 2013限定PLAYBUTTONをプレゼント!

electraglide2013 限定PLAYBUTTON
SHERWOOD & PINCH「MUSIC KILLER (EXTENDED VERSION)」
(限定数:500個 / 収録:CDEP未収録Version / 収録分数:4分14秒)
※無くなり次第終了となります。

PLAYBUTTONとは >>>
https://www.memory-tech.co.jp/new/product/package/playbutton.html


国内最大級のエレクトロニック~ダンス・ミュージック・フェス『エレクトラグライド』開催!
electraglide2013

FEATURING:
JAMES BLAKE
2manydjs LIVE
!!!
MODESELEKTOR [DJ SET+909] with Pfadfinderei
THEO PARRISH
SHERWOOD & PINCH
FACTORY FLOOR
MACHINEDRUM
NOSAJ THING x 真鍋大度 x 堀井哲史 x 比嘉了

2013/11/29 (FRI)
幕張メッセ国際展示場
OPEN/START 20:00

TICKET:
前売 ¥8,800/ 当日 ¥9,800
※18歳未満の入場は不可、入場の際写真 付きIDの提示をお願い致します。
※お買い求めいただいたチケットは返品できません。

前売TICKET販売詳細:
チケットぴあ 0570-02-9999 [ https://t.pia.jp/ ] (Pコード:209-961)
ローソンチケット 0570-084-003 [ https://l-tike.com ] (Lコード:72626)
イープラス [ https://eplus.jp ]
tixee(スマートフォン用eチ ケット)[ https://tixee.tv/event/detail/eventId/1829 ]
Confetti [ https://confetti-web.com ]
ビートインク [ https://shop.beatink.com ]

店頭販売(ABC順)
BEAMS RECORDS [ https://www.beams.co.jp/shops/detail/beams-records ]
ディスクユニオン [ https://diskunion.net ] (渋谷Club Music Shop / 新宿Club Music Shop / 下北沢Club Music Shop / お茶の水駅前店 / 池袋店 / 吉祥寺店 / 町田店 / 横浜西口店 / 津田沼店 / 千葉店 / 柏店 / 北浦和店 / 立川店 / 高田馬場店 / 中野店 / web shop)
GANBAN [ https://ganban.net ]
HMV [ https://www.hmv.co.jp ](ルミネ池袋店 / ららぽーと横浜店 / ららぽーと柏の葉店 / イオンモール船橋店)
JET SET TOKYO [ https://www.jetsetrecords.net ]
more records(大宮) [ https://more-records.shop-pro.jp ]
大麻堂東京店 [ https://www.taimado.com/blogtokyo ]
TECHNIQUE[ https://www.technique.co.jp ]
TOWER RECORDS [ https://www.tower.jp ](新宿店 / 秋葉原店 / 池袋店 / 吉祥寺店 / 川崎店 / 町田店 / 柏店 / 津田沼店)
TSUTAYA TOKYO ROPPONGI / TSUTAYA三軒茶屋 / SHIBUYA TSUTAYA / 代官山蔦屋書店 / TSUTAYA横浜みなとみらい店 [ https://www.tsutaya.co.jp ]

他一部CDショップにて

INFO:
BEATINK 03-5768-1277 beatink.com
SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com smash-mobile.com
HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 doobie-web.com

企画制作:BEATINK / SMASH / DOOBIE
後援:SHIBUYA TELEVISION
協賛:CA4LA / PLAYBUTTON

www.electraglide.info


ジェイムス・ブレイク、アンダーワールド、フライング・ロータスらの楽曲を収録したスペシャル・コンピレーションがiTunes Japan限定で発売決定!

electraglide 2013の開催を記念して、出演者のジェイムス・ブレイク、チック・チック・チック、シャーウッド&ピンチ、マシーンドラム、ノサッジ・シングの楽曲はもちろん、2000年の初開催以降に出演したアンダーワールド、オービタル、フライング・ロータス、スクエアプッシャー、LFO、DJケンタロウなど、これまでにエレグラのラインナップを彩ってきたアーティストの代表曲が収録されたコンピレーション『electraglide 2000-2013』がiTunes Japan限定でリリースされる。

15曲が収録された本コンピレーションは、11/20 (水)にリリースされ、12/10(火)までは期間限定価格1200円で配信される。いよいよタイムテーブルや会場のレイアウトまで発表され、開催まで17日と迫ったelectraglide 2013の予習はもちろん、エレグラの歴史を振り返ることができるコンピレーションとなっている。

V.A
『electraglide 2000-2013』

Beat Records
11月20日発売
価格:¥1,200 (期間限定価格)

■ iTunes ■
https://itunes.apple.com/jp/album/electraglide-2000-2013/id739026681

●トラックリスト
01. !!!(chk chk chk) - Slyd (Patrick Ford Extended Mix)
02. Orbital - Wonky
03. Tim Deluxe - It Just Won t Do (feat. Sam Obernik)
04. Hudson Mohawke - Joy Fantastic (feat. Olivier Daysoul)
05. Nosaj Thing - Eclipse/Blue
06. Clark - The Pining pt2
07. Machinedrum - Eyesdontlie
08. James Blake - CMYK
09. Sherwood & Pinch - Music Killer
10. Flying Lotus - See Thru To U (feat. Erykah Badu)
11. DJ KENTARO - Kikkake (feat. DJ KRUSH)
12. Squarepusher - Energy Wizard
13. Amon Tobin - Journeyman
14. Underworld - Two Months Off
15. LFO - Freak

『 Songdrop 』予習に便利な出演アーティスト音源まとめ特設サイト登場!

イギリスの音楽キューレーションサービス「Songdrop」がelectraglide 2013特設サイトをオープン。Songdropは、YouTube、bandcamp、Soundcloud、Vevo等、様々なソースからの音楽をプレイリスト化して聴けるサービス。
出演アーティストのオリジナル音源だけでなく、アーティストによるDJセット、リミックス、ライブ音源も聞くことができ、electraglide 2013の予習に大変便利。
https://songdrop.com/electraglide/line-up-2013

■マシーンドラム大阪公演!
featuring:
MACHINEDRUM, and more

数々のプロジェクトやプロデュースでいまや引く手あまたの奇才マシーンドラム。傑作と呼び声も高いニューアルバム『ヴェイパー・シティー』を何とニンジャチューンからリリースし、ヘッドライン公演で大阪を襲来!

11/30 (SAT) CIRCUS
OPEN/START 21:00前売 3,000 YEN / 当日 3,500 YEN ※入場時にドリンク代別途500円必要
INFO: 06-6241-3822

今週末11/15(金)に行なわれるNeuture01@ageHa にエレグラブースが出店!
現地にて前売りチケット発売!
https://www.neutralnation.net/


Ryoji Ikeda - ele-king

「レコード盤、楽曲の思考、楽譜、音波、これらは互いに、言語と世界の間に成立する内的な写像関係にある」(ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』野矢茂樹・訳)

 耳を貫くような高音のパルス音が鳴りはじめる。強烈な電子音響が炸裂する。タイプライターのような細やかなリズム。モールス信号の微かな音の断続と持続。音響が震動し分裂する。加速し、炸裂し、震動する。音は意味を剥ぎ取られ、データの素粒子へと還元していく。光のレントゲンのなかで極限まで剥ぎ取られた電子音が身体に注入される。0と1。そんなデータに還元された極限の音響が鼓膜や脳を揺らす。その圧倒的な音響の快楽。あらゆる意味を超越して、ただただ快楽的な電子音饗の群れが、耳を、鼓膜を、脳にアディクトする。刺激・律動・数・美。第二次世界大戦末期、国防軍最高司令官の最後の戦況レポートを記したタイプライターの文書が焼け焦げていたように、言葉など、もうすでに消失してしまった。

 そう、池田亮司の新作アルバムのことである。

 池田亮司の新作CDが〈ラスター・ノートン〉からリリースされた。前作のCDアルバム『テストパターン』の発表が2008年だから、約5年後ぶりの新作アルバムということになる。この作品は、〈ラスター・ノートン〉からリリースされた『データプレックス』(2005)と『テストパターン』に続くシリーズ完結編というが、聴いた印象はそれらとは全く「違う」。『データプレックス』と『テストパターン』のスタティックな反復とは違う、2011年のcyclo.『id』の音響を受け継ぐような、ノイジーでありながらもクリスタルな響きとロック的とも形容したい刺激と律動が横溢している。まさに2013年の池田亮司作品である。

 特に注目したいのはアルバムの中盤に突入してからだ。音響は次第に具体性を確保し、ミニマル/ストイックな音響から次第にノイジーに変貌する(特に12曲目と14曲目がすごい)。そしてそれは15曲目において決定的になる。1曲目の音響を変奏するように、モールス信号が流れ始める。あの初期の池田作品にも横溢していたあの信号音だ。そこにランダムなリズムが重なり、さらに高音のパルスへと変貌する。16曲目では、そのサウンドが低音に融解したような印象である。信号はより抽象的になる。

 そして本アルバムでもっとも驚愕すべき17曲目に突入する。クラッシュするような電子音が何度か繰り返され、まるで戦闘機の爆撃音のような音響が驚異的にグリッチ=打撃されていく。途轍もないサウンドだ。冷凍されたノイズの拡張のような、クールにして限界を超越するような音響。デジタル化した地響きが現実に解凍されていく感覚。18曲目ではまた、低い音響のモールス信号。19曲目ではその低い音が維持したまま、何がクラッシュするような音に、細かな一定のリズムが刻まれる。そしてその低い響きが次第に蠢き方を強め、突如、ミュートされる。その音響運動のなか、小さな音でリズムは刻まれ、透明な音もまた微かにリズムを刻むだろう。そしてラスト20曲目。サウンドは地を這うような音響の蠢きへと突如、変貌する。まるで人間の終わりのような音響。もしくはテクノロジーのエラーから不意に表出した現実のような音響。私には、本作を近作2作の完結編というよりも、むしろ『1000フラグメンツ』(1995)、『+/-』(1997)、『0℃』(1998)までの変化の過程へと拡張的に円環し、そしてさらに大きな外部へと接続していくような印象を持った。では何に円環し接続したのか。それは20世紀の世界を覆った膨大な通信と情報の層に、ではないか。

 音楽そのものをゼロ地点への響きへと導いた弦楽作品『op.』(2003)以降、00年代の池田亮司は、20世紀の世界を覆う膨大な情報網、つまり通信から情報へ、そしてデータへと圧縮/拡張していく世界を、インスタレーション、ライブ、CDと多角的に作品化してきた。それは圧倒的な体験の生成であり、同時に、ある種のメディア論のような論理的で論文のようであり、世界のすべてをスキャンし、指令を下す戦争の音響=イメージのようでもあった。

 モールス信号、電話、放送などの通信から、インターネットのデータ回線への情報へ。20世紀と21世紀の世界を覆った膨大な通信と情報。その拡張し続ける回線のなかに行き交うのは、人の言葉である。それらは通信の回線のさなかにおいて行き先すらわからない単なるデータの群れであり、言葉の残骸ですらあるだろう。だが、もともとは人間が発した「声」なのだ。ある人間に向けて発せられた「言葉」である(先日京都で公開された最新作『スーパーポジション』において池田亮司は、ふたりの人間を舞台に登場させたという。ふたりは楽器を演奏することなく、モールス信号のようなものを打つ。このふたりは何かメッセージを送っているのか。それとも全く別の何かに向けて通信しているのか)。その無数の「声」にはその送り主である「人」がいるはずだが、しかし、私たちにはその「人」の存在を知ることはできない。人間はその情報の加速度的な層の拡張の中で、まるで波打ち際の砂のように、その存在を消し去っていく。数値化された膨大な情報/データの向こうに、確かに、ひとりの(つまり無数の)人間たちがいた。人間の消滅。人間の終わり。

 人間の終わり? 量子力学の概念を援用した数学的な音響の向こうで、確かに、確実にそんな響きの痕跡や残響が微かに鳴っている。聴こえてくる。このアルバムはまるで、戦闘機の通信士に送ってくる「本部」からの「サイン」のようだ。言葉はモールス信号のように変換され、タイプの音がリズムに拡張され、それら全体がひとつの信号=音響となる。そこにおいて言葉、つまり意味は徹底的に剥ぎ取られ、記号と音素が交錯するレントゲンのごとき電子音響が鳴り響くだろう。いわば人間の終わりからの言葉。情報へと変換された言葉たち。それは世界を覆う情報システムとそのデータの群れ。池田亮司はそんな通信/情報のデータの速度を、徹底的に数学的/物質的音響作品として一気に圧縮/解凍させていくのだ。

 2013年の池田亮司は、その20年もの創作活動で得た方法論を全て駆使し、圧縮し、解凍し、炸裂させ、まるで電子音楽における無言のレクイエムのごとき作品を作り出した。本アルバムラスト20曲目の音響は、まさに人間の終焉、その音響であり、予言である。その意味で池田亮司の作品は「神」の音楽に限りなく近い。こんな途轍もない作品を生み出した池田亮司はいったいどんな地平へと行き着くだろうか。凡人の思考など遥かに超える地平がそこにあるに違いない。

 いま、ここに池田亮司の創作と思索の結晶がCDとしてある。その名は『スーパーコーデックス』。超越的アーカイブ。このCDは情報と記憶と音響のモノリスだ。いうまでもない。「世界」は、ここにある。

 小さな子どもたちが親から離れ、ちょっとした冒険に出る。生まれて初めて親から離れ、ひとりで大仕事を終えて誇らしげな顔で戻ってきた我が子を、親は号泣して抱きしめる……幼児持ちにとっては世界でいちばんスリリングなロードムービーといっても過言ではないテレビ番組『はじめてのおつかい』(日本テレビ)。いつもは子どもの人権に配慮した作りになっているのですが、今年の1月14日に放送されたあるおつかいは、なかなかにハードなものでした。

 お使いに出されるのは、まだ足取りもおぼつかない3歳の女の子。家から遠く離れた2軒(うち1軒は混雑した量販店)のお使いという過酷なミッションに当然応えられるわけもなく、道に迷って泣いて帰ってくる。つれなく追い返そうとする母親。娘に対するものとは打って変わったねこなで声で5歳の息子を呼び、「○○く~ん、途中まで送ってあげてくれる?」。まだお使いをしたことがないという5歳の兄は、威張って妹を送り出す。妹のお使いの内容のうちひとつは、兄のおやつを買ってくるというもの。まわりの大人たちの助けで兄のおやつをどうにか買い、量販店にたどり着いた3歳の女の子は、大人たちでごったがえす店内で突き飛ばされ、尻餅をつき、疲れ果ててその場で眠ってしまう。けなげにも3時間かけておつかいを終えた女の子を、お母さんはそっけなくねぎらうだけ。あれ、感動の抱擁は? 号泣は?

 「虐待じゃないか!」ええ、みなさんそう思いますよね。私もあやうくクレーマーと化すところでした。しかし最後に大人になった彼女が歌手デビューしたという映像が映り、そのおつかいが21年前に撮影されたものであることがわかると、「ああ、そういえば昔の女の子の扱いってこうだったワ」と、妙に納得してしまう自分がいたのでした。

 女の子を男の子と同様に大事に育てる。この風潮は当たり前のように見えて、少なくとも庶民の世界ではさほど長い歴史のあるものではありません。現代女児文化は、女児の扱いの変化を措いては語れないでしょう。1970年代の女児育児書のベストセラーをいま読み返してみると、「女の本分は家事育児であるから、子供ができたら仕事はやめるべき」「女の子が知識をひけらかしたらかわいげがなくなるので厳しく注意せよ」「夫に文句を言われても言い返さずに「本当に気がつかなくてごめんなさい」と謝る妻に育てなくてはならないので、女の子が高慢な態度をとったらことあるごとに指摘するべきである」「女の子は清潔と貞節を教えよ。白以外の下着は女性には不適切である」などという内容でのけぞってしまいます。いまこんな育て方をしたら(特に娘の退職や下着の色を勝手に決めたりしたら)、「毒親」呼ばわりは必至です。とはいえ、女性のロールモデルが従順な妻/母のみで、婚家に従わなければ路頭に迷うしかなかった時代、現代育児の主流であるところの「自主性の尊重」や「褒め育て」なんてもってのほかだったのかもしれません。

 女児の扱いの変遷は、女児のネーミングからも見て取られます。明治安田生命保険の生まれ年別女性名ランキングを見てみましょう。幼くして子どもが亡くなることの多かった大正時代には「千代」「千代子」「久子」などの長寿を祈る名前が、昭和初期には「幸子」「節子」「信子」「孝子」「貞子」などの貞節を重んじる名前が、高度成長期には「由美子」「久美子」「明美」「真由美」などの美しさを意識した名前がトップ10に入るなど、そのときどきの世相に合わせた意味をもつ名前が流行するのですが、1980年代中盤からちょっとした異変が。「麻衣」「彩」という、文字上の意味だけでは親の願いをくみ取ることが難しい名前が上位に登場するようになったのです。「麻衣」という名前に、「麻の衣類のように吸湿性が高いが保湿性には乏しい女の子になってほしい!」といった願いが込められているようには思えません。期待されているのはきっと、「麻」という漢字がイメージするさわやかさと、「まい」という語感のかわいさ。2000年以降はイメージ重視の傾向に拍車がかかり、「さくら」「葵」「陽菜」「萌」「優花」などの植物名を盛り込んだ名前が全盛になります。21世紀に入っていきなり植物大好き人間が増えたとも考えづらいので、植物のかわいらしく優しいイメージを我が子に投影してのことでしょう。女児名に使われる人気漢字ベスト25を見ると、「愛、菜、花、心、美、奈、結、莉、優、音、咲、希、乃、彩、陽、子、桜、香、羽、衣、那、紗、里、梨、葵、華」となっており、やはり植物、布系強し。末尾に付けるとかわいい語感になる「那」「奈」「菜」「乃」も人気です。また、皆さんご存じのとおり「難読名前」「キラキラネーム」と呼ばれる個性的すぎる漢字遣い・読み方の名前も増えてきました。語感や字面のイメージが優先されるようになったのは、少女マンガに親しんだ世代が親になったせいもあると思います。例えば大島弓子の1970~80年代の作品のヒロイン名を書き出してみると、なずな、衣良、いちご、黄菜(きいな)、鞠、果林、杏子(あんず)と、現代の名付けセンスを先取りしたものが多いのです。少女マンガのヒロインの要件は、どのようにふるまっても愛されうるかわいさと、主人公を張るに足る個性的でワン・アンド・オンリーの存在であること。私たち現代の親も、娘に同じ事を期待しています。もはや女児は量産型の家事要員でも、嫁に出すまで貞節を守らせる交換財でもありません。自ら芽を出し世界に一つだけの花を咲かせるまで親が水をせっせと運んでやる、愛護されるべきかわいらしい存在なのです。

 女の子の個性や自主性が尊重され、かわいがられるようになったこと自体は、良い傾向であるには違いありません。娘がピンクのグッズを好むなら買ってあげたい。自分みたいに紺や茶色のお下がりを着て怒鳴られてばかりいた抑圧的な娘時代は送らせたくない。お気に入りの服を着た娘を思う存分かわいいと褒めてあげたい。そう思うお母さんは、決して少なくないでしょう。


デコ盛りネイル……。(左『ぷっちぐみ』2013年1月号、右『キラ★プリ』vol.7)

 しかし娘にねだられて購入したピンクずくめの女児雑誌をめくっているうちに、ふと思うのです。幼児向けの雑誌ですら、ファッション、コスメ、アイドルなどの情報がちりばめられている。こんな小さなうちから「女は見た目が重要」という価値観を内面化して大丈夫なんだろうか。かわいいかわいいと育ててきて、もちろんそこには性的な含みはないけれど、世間的には「かわいい」というのは容姿を含めた性的な価値の高さを意味しているわけで、つまり性的役割の重さに絶望する娘時代を過ごしたはずの私も、知らず知らずのうちに我が娘に別の重たい性的役割を押しつけていることになってやしないだろうか。キラデコ好きという趣味は尊重してあげたいけど、親としては別の価値観も提示する必要があるのでは……。

 またも私は考え込み、キラデコ好きな娘のために夜ふかししてLEDが光る折り紙作りに励んでしまうのです。


そういうことじゃないって、わかってはいるんですけど。


ギークマム 21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア
(オライリー・ジャパン)
著者:Natania Barron、Kathy Ceceri、Corrina Lawson、Jenny Wiliams
翻訳:星野 靖子、堀越 英美
定価:2310円(本体2200円+税)
A5 240頁
ISBN 978-4-87311-636-5
発売日:2013/10 Amazon

interview with Richard H. Kirk (Cabaret Voltaire) - ele-king

 1970年代末、スロッビン・グリッスルとともにノイズ・インダストリアルの代表とされていたのがキャバレー・ヴォルテールだった。僕は、しかし、SPKと出会うまでノイズ・ミュージックに価値を見出せることはなかった。キャバレー・ヴォルテールも初期はどこがいいのかさっぱりわからなかった。『レッド・メッカ』(81)や「スリー・マントラス」(80)が面白くないとはとても言い出せない空気のなか、そのようなものがやたらと持ち上げられていた1981年がしぼみはじめ、やがてブリティッシュ・ファンク・ブームがやってくる。それを逸早く察知したかのように〈ヴァージン〉がディーヴォやDAFをフィーチャーした『メソッド・オブ・ダンス』というコンピレイション・シリーズをリリースしはじめ、「踊るニューウェイヴ」の時代がやってくる。ノイズ・グループだと思われていたキャバレー・ヴォルテールが『2×45』(82)をリリースしたのは、そのようなタイミングだった。それはニュー・ロマンティクス(それはそれでよかったけど)とはまったく違う雰囲気で、ノイズ・インダストリアルに分類されていたミュージシャ……いや、ノイジシャンたちが『ファンキー・オルタナティヴ』というコンピレイション・シリーズをリリースしはじめる5年も前のことだった。『2×45』に続いて80年代中期に〈ヴァージン〉からリリースされた『ザ・クラックダウン』(83)、『マイクロフォニーズ』(84)、『カヴァナント、スウォード・アンド・ジ・アーム・オブ・ザ・ロード』(85)の再発を機にリチャード・H・カークに話を訊いた。

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シェフィールドはおどろおどろしく淀んだ感じでたくさんのビルがあった。世界大戦のダメージも残ってた。しかし、都市部を抜けて10分もすると美しい田園風景がひろがっている。そして、君はそこでたくさんのマジック・マッシュルームを見つけられると思う。

ちょうど40年前(73年)にシェフィールドで結成したそうですが、最初からキャバレー・ヴォルテールを名乗ってたんですか? また、3人はどうやって知り合ったんですか?

リチャード・H・カーク(以下、RHK):1973年あたりに活動を始めたんだけど、キャバレー・ヴォルテールを名乗ったのは75年からなんだ。というのはそのとき初ライヴがあって、そのために呼び名が何かしら必要だったからね。
 もっと熱心なヤツもいたんだけど、まわりの友だちの何人かがクリスを学校の頃から知ってたから、僕らは当時の夏、一緒にインターレイルでヨーロッパに行ったりしたんだ。クリスはいくつかベーシックな録音機材を、僕が4トラックのテープレコーダーを持ってて、それからエレキ用のピックアップ付きクラリネットも手に入れた。僕らは実験的にクリスの家のロフトで音楽を作りはじめた。それから何人かがやってきたりしたんだけど、数年前からちょっと知ってた(ステフェン・)マリンダーに一緒にやらないかと誘ったんだよね。そのときが、キャバレー・ヴォルテールとして後に知られる、きちんとしたユニットが出来た瞬間だった。

ダダ運動に興味を持ったきっかけを教えて下さい。ステフェン・マリンダーによればウィリアム・S・バロウズとブライオン・ガイシンの影響でカット・アップやテープ・ループをはじめたそうですが、ということは『レッド・メッカ』(81)までの作品にはブライアン・ジョーンズの『ジャジューカ』(71)が多少なりとも陰を落としていたのかなと思えてしまいます。

RHK:ダダ運動に魅かれたのはそのコンセプトがアートと戦争にあったから。そこではそれまでにあったアートをいったん解体し、何か新しいものに置き換えようとしていて、僕らはサウンドや音楽に対してそれと同じことをやろうとした。
 ステフェンがバロウズやガイシンに関して言ってるのもすべて正しいというわけではない。キャバレー・ヴォルテールは、彼らのことを知る前にすでにカットアップやテープ・ループを取り入れている。もちろんこのようなことを誰かがすでにやってたというのを聞いて鼓舞されたところがあった。多くの部分を学ばせてもらったから、彼らのことを知れたのは実に嬉しかった。
 キャバレー・ヴォルテールのなかで最初にバロウズの本を買ったのは、僕だ。シェフィールドにある本屋で『裸のランチ』を注文したのさ。それはもう驚愕だったよ、まったくパワフルな本だった。それに当時、僕は画像や文章を使ってカット・アップやコラージュをやってて、それが最終的にいくつか初期キャバレー・ヴォルテールのジャケットになったりもした。ダダイズムの創始者トリスタン・ツァラも紙袋に書いてある文字をランダムにピックアップして、それを詩にしたりしてたし、それは1915年あたりかな? たぶんガイシンがカット・アップをやりはじめる50年くらい前だ。
 『ジャジューカ』のことは知ってたし、ちらっと聞いたこともあるけど、アルバムをちゃんと手にしたのは1982年になってからなんだ。つまり『レッド・メッカ』のあと。しかし東洋の音楽にはつねに興味を持ってたね、トランスチックなエフェクトの感じが好きだったから。

時期的に見てグラム・ロックにもパンク・ロックにも影響されなかった音楽性のままラフ・トレードからデビューしたということになります。実際にそうなんでしょうか? 70年代に、同時代的に気になっていたミュージシャンがいたら教えて下さい。「ウエイト・アンド・シャッフル」などはザ・ポップ・グループを思わせます。

RHK:僕はデヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックのファンでもあったし、いくつかのパンク、ポストパンクも、そのなかにはザ・ポップ・グループも含まれてるけど、たしかに気に入って聴いていたね。だけど「ウエイト・アンド・シャッフル」が彼らみたいに聴こえるんだったら、たぶんそれは彼らもマイルス・デイヴィスやダブ、フリー・ジャズといった僕らと同じ音楽に影響されたからだろう。僕らは通常のアーティストの真似はしない。影響ということで言うと、いつも過去や未来のものに目を向けてる。

なぜ、スタジオに「ウエスタン・ワークス」と名付けたんですか? また、シェフィールドのいい点と悪い点をひとつずつ上げて下さい。

RHK:スタジオのあったビルが古い工業用ビルで、そこが「ウエスタン・ワークス」という名前だった。それをそのままスタジオの名前にした。シェフィールドに関して言えば、当時が、ちょっとおどろおどろしく淀んだ感じでたくさんのビルがあったし、まだ第二次世界大戦のダメージも残ってた。しかし、都市部を抜けて10分もすると美しい田園風景がひろがっている。そして、君はそこでたくさんのマジック・マッシュルームを見つけられると思う。

ははは。『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』(80)の裏ジャケットに機動隊の写真が2点も使われているのはなぜですか?

RHK:僕が。『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』のアートワークを作った。当時(それにいまも)僕らが生きている世のなかにある権威主義的な感じがうまく出てる、この種の写真を使うのがふさわしいと思った。

『レッド・メッカ』はさまざまな意味で転機となった作品だと思いますが、タイトルはイランで起きたホメイニ革命と関係があるんですか? 『スリー・マントラ』から『2x45』にかけてアラビア風の旋律が頻出するのは誰かの影響ですか?

RHK:先ほども言った通り、僕は東洋の音楽、また東洋社会と西洋社会の違いにはつねに気を払っていて、だから“ウエスタン・マントラ”や“イースタン・マントラ”(*この2曲で『スリー・マントラ』は構成されている)のような曲に行き着いたわけさ。このふたつのカルチャーがじきにぶつかるだろうという予想が実際に現実になったのが1979年だった。ホメイニ革命が、のちに911/2001年のニューヨークのツインタワー爆破まで続くイスラム原理主義のスタート地点だった。それからアメリカで右派キリスト教原理主義者の存在がより浮き彫りになった。実際、このふたつのカルチャーは極めて似通ったもので、アメリカ政府が当時のソビエトと戦うために、アフガニスタンでビン・ラディンのムジャヒディーン/アルカイーダの訓練、資金援助、武装化を行ったんだから、当然といえばそうなんだけど。

『2x45』は明らかにダンス・レコードを意図した最初の試みですが、何がきっかけであそこまで振り切れたんでしょう。当時は本当にショックで、立体ジャケットが破けるまで何度も何度も聴いてしまいました。

RHK:『2x45』はよりダンサブルなレコード作りへシフトした最初の作品だった。大きな方向転換でもなく、単に進化していっただけだね。君がいま僕らの初期の作品を聴いてくれたらきっとダンス出来ると思うし、それらでもたいていループを使ってるからね。

〈ファクトリー〉からリリースされた「ヤッシャー」(83)はオリジナルのほうがぜんぜんよくて、ジョン・ロビーのリミックスはあまりいいとは思いませんでしたが、「ドント・アーギュー」(87)でまた顔合わせしているということは、ニューヨーク・スタイルからもそれなりに得るものがあったからですか? ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」がやはり同じ年にアーサー・ベイカーの方法論を取り入れていたわけですけど。

RHK:僕らはニューヨークのエレクトロには大きな影響を受けている。ジョン・ロビーは、アーサー・ベイカーとともに、その中心人物だった。彼が“ヤッシャー”をリミックスさせてくれないかと尋ねてきたとき、それはすごいアイデアだと思ったものだよ。たしかに君の言うように、オリジナルよりよかったというわけじゃないけど(リミックスっていうのは往々にしてそうなんだけど)、しかし、まったくの別もので、僕らが現状から一歩前に踏み出せたということ、おかげであらためて自分たちのミックスや音楽の聞かせ方と向き合うことが出来たわけだから。

『ザ・クラックダウン(=弾圧)』に「The」が付いているということは、何か特定の事件があったということですか? また、ダンス・レコードであるにもかかわらず、このような不穏なタイトルをつけたのはぜですか? まるでレイヴ・カルチャーを先取りしたようにさえ思えてしまいますが。

RHK:この当時の政治をとりまく情勢は抑圧的なものだった。イギリスのサッチャー、アメリカのレーガン、右翼勢力が僕たちを弾圧していたようなものだった。

『ザ・クラックダウン』以降、観念的な音楽性がすべて消え去って、官能的なダンス・ミュージックに純化されていくということは、クリス・ワトソンがひとりで観念的な部分を担っていたように見えますが、そのような理解でいいでしょうか。あなたとマリンダーはフィジカルな音楽がやりたかったと?

RHK:その見解は正しくはない。キャバレー・ヴォルテールには“担当”はないし、僕たちは何かにおいてリーダーというものを置かなかった。バンド自体は僕とクリスではじめて、あとからマリンダーが加わったものだけど……。この3人のグループはともにダンス・ミュージックをエンジョイしていた。けれど、当時は真剣にそれに打ち込んでたわけではなかったね。クリスが1981年に去ってからは、僕たちは自分らの音楽をもっとダンスフロア仕様にしようと決めた。彼と一緒にやっていた頃のようなモノをまた繰り返すことはしたくなかった。あらたに考えながら一歩前に進み出した瞬間だった。

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僕は本当に、イラク戦争や大切な古代遺跡の破壊には反対していた。目的もなしに、それも誤った情報のもとに行われたんだよね。結局大量破壊兵器なんて見つからなかったし、イラクはいまや以前よりもっと危険なところになってしまった。

『コード』(87)で初めて外部からプロデューサーを入れたのはなぜですか? あまり必要だったとは思えないのですが。『マイクロフォニーズ』(84)から『コード』まではファンクとインダストリアルのどちらに比重を置くかで延々と葛藤が続いていたようにも思えたので、その結論をエイドリアン・シャーウッドに委ねたとか、そういうことでしょうか。

RHK:『コード』に関しては、実はエイドリアンが参加する前にほとんどの形は出来上がってたいた。EMI/パーロフォンとの契約後、自分らのスタジオを24ch仕様にアップグレードし、そして、プロデューサーの起用も決めた。ポップスのフィールドではない人間を起用したかった。
 エイドリアンは一緒にやるにはとてもよいプロデューサーだった。ダブやレゲエにも相当詳しかったから、参加すると面白くなるかなと思ったんだ。彼はシェフィールドに来てくれて、僕らと一緒に作業をしたあと、ロンドンのスタジオでミックスした。すごくいいサウンドのアルバムに仕上がっているよ。僕らのアルバムではいちばん売れたんじゃないかな。ちなみに僕らがEMIと契約した当時、EMIは世界で10番目に大きな武器製造会社でもあった。冷戦が解けて黙示録を迎えたら、我々は兵器類を安く買えるかもなどと言い合ったものだよ。

シェフィールドから出てきたフラ(Hula)やチャック(Chakk)はキャバレー・ヴォルテールが育てた後輩ということになるんでしょうか。レコード制作ではマーク・ブライドンやマーク・ギャンブルがイギリスではハウス・ムーヴメントを先導したように見えるので、どういう関係だったのか気になります。

RHK:キャバレー・ヴォルテールは本当にたくさんのフォロワーを生んだよね、シェフィールドのなかだけじゃなく。チャックは僕らのスタジオで「アウト・オブ・ザ・フレッシュ」を録音し、それを僕らのレーベル、〈ダブルヴィジョン〉からりリースした。この作品がチャックをMCAのレーベル契約へと導いたんだ。それにフォン・スタジオ(Fon Studios)も誕生し、そこからいくつかの初期UKハウスが生まれた場所として知られることになった。その後、マーク・ブライドンやロブ・ゴードン(Fon Force)と『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』(90)で何曲かトラックを一緒にやったし、ロブ・ゴードンともゼノン名義で一緒にレコードを作った。

サンプリング・ミュージックは現代のダダイズムだと思いますか? それともまったく別物?

RHK:サンプリング・ミュージックは、とくにヒップホップはカットアップ・テクニックのほうに繋がってると思うよ。ダダイズムというよりはむしろね。

『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』で決定的に変わったのはベース・サウンドでしたが、それがハウス・ミュージックから学んだいちばん大きな影響ということになりますか? 曲によってはかなりファンキーで、テン・シティまで参加しているし、キャブスだと思えなかった人も多かったと思います。『ボディ・アンド・ソウル』(91)や『カラーズ』(91)では同じハウスでもストイックな曲調に戻っているので、あれはやはり一時の気の迷いということなのか。

RHK:『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』は、僕にとってキャバレー・ヴォルテールのアルバムのなかではお気に入りにはならなかったね。ホントに多くが外部からの影響でキャブスのサウンドが薄まってしまった。しかしながらマーシャル・ジェファーソンや当時のシカゴのハウス・ミュージックのパイオニアたちと一緒に出来たのは素晴らしい経験だった。アルバムと一緒に出した5曲入りのいい感じのアナログEPもあったよね。それらはウエスタン・ワークスでミックスされたから、キャバレー・ヴォルテールらしさが出てると思う(*アナログ初回のみに入っていた『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティEP』のこと)。

ちなみにレイヴ・カルチャーのことはどのように受け止めていたのでしょう。

RHK:レイヴ・カルチャーはその初期は面白かったけど、すぐに商業的になってしまったよね。

また、『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』(90)までキャブスがフォン・スタジオを使わなかったことや、〈ワープ〉から別名義でのリリースはあってもキャブス名義のアルバムをリリースしていないことも不思議に思います。『プラスティシティ』(92)や『インターナショナル・ランゲージ』(93)は〈ワープ〉のカラーにもピッタリ合っていたと思うのですが。

RHK:実はちょっとだけ『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』のときにフォン・スタジオを使ってるんだよね。「ザ・カラーEP」は当初〈ワープ〉からリリースの予定だったんだけど、結局自分らのレーベルからリリースすることになって、『プラスティシティ』や『インターナショナル・ランゲージ』も同様だった。これらのアルバムは当時からホントすごいアルバムだったし、その時代にたくさん出てた〈ワープ〉の作品とも相性が良かったと思うよ。

DJパロットとのスウィート・エクスソシストはどのようないきさつではじめたのですか?

RHK:パロットのことは、80年代半ばのシェフィールドのクラブシーンで知ったんだ。ウエスタン・ワークスに彼を誘って、僕がやっていた初期ハウス・ミュージックのトラックをいくつか手伝ってもらってたんだよね。そのちょっと後、彼がファンキー・ワームをはじめて、そのプロジェクトを終えてから、僕に「テストーン」を一緒に作らないかと誘ってきたんだ。その前、1986年に僕がキャバレー・ヴォルテールのライヴで彼にDJをやってくれるように頼んでたりもしたし。

「ヤッシャー」(83)や「ジャスト・ファッシネイション」を20年後にリミックスしているのは、やはり愛着がある曲だったからですか? リミックスがジ・オール・シーイング・アイ(=DJパロット)というのはわかりますけど、オルター・イーゴにリミックスさせるというアイディアはどこから? ジョン・ロビー同様、オルター・イーゴもあまりいいリミックスには思えませんでしたが……

RHK:オルター・イーゴのリミックスは〈ノヴァミュート〉からの提案だったんだ。僕はいいと思うけどね、(オリジナルとは)全く違うものだし。

同じく自分でリミックスを手掛けていた「Man From Basra Rmx」というのはイラク戦争と何か関係があるんですか? 

RHK:それはその通り。それにこの曲はプリンス・アラーとタッパ・ズッキー(*ともにルーツ・レゲエのアーティスト)による「Man From Bosrah」にも掛けてたんだ。僕は本当に、イラク戦争や大切な古代遺跡の破壊には反対していた。目的もなしに、それも誤った情報のもとに行われたんだよね。結局大量破壊兵器なんて見つからなかったし、イラクはいまや以前よりもっと危険なところになってしまった。

キャブスのスリーヴのデザイナーは、ネヴィル・ブロディ、ポール・ホワイト、デザイナー・リパブリックと一流どころが揃っていますけど、個人的にいちばん好きなデザイン・ワークはどれですか?

RHK:とくに好きなものはないね。しかし『#8385』(*今回、再発された3枚のアルバムを収録したボックス・セット)の新しいデザインはなかなかいいんじゃないかな。

いま、現在、ライヴァルだと思うミュージシャンは誰ですか?

RHK:ライヴァルはいないよ。

キャブスの活動停止後、30以上の名義を使って活動されていますが、その理由について教えて下さい。

RHK:過去にとらわれることなくオリジナルな音楽を作って行くためにやったことさ。

最後に、キャブスの再活動についてお話いただけますか?

RHK:キャバレー・ヴォルテールは“再活動”はできない。何故なら、いままでいちども活動をやめたわけではないからだ。つまり、メンバーが去って行っただけさ。クリス・ワトソンが1981年に脱退し、ステフェン・マリンダーが1993に脱退した。いまでは僕がただひとりのメンバーで、もっと多くのライヴやレコーディングもこれからやっていくと思うけど、懐かしい曲はやらないつもり。すべては新しいものになると思う。
 是非日本でもまたライヴしたいね。1982年の東京、大阪、京都でのキャバレー・ヴォルテールのライヴはすごくいい想い出でいっぱいで、それにライヴ音源を収録したんだ。結局そのライヴ・アルバムのミックスでその後3週間も東京にいることになったけど(笑)。

*日本でのライヴを収録した『ハ!』はマスター紛失のため、91年にミュートから再発されたものは、いわゆるアナログ起こしだったりする。ちなみにツバキハウスでライヴを終えたキャブスはその後、六本木のクライマックスに現れ、ナンパしまくりだったと(その時、DJをやっていた)メジャー・フォースの工藤さんが教えてくれた。そりゃあ、いい想い出でいっぱ……(後略)

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COGEE (BLACK SHEEP / SMASH YOUR FACE) - ele-king

BLACK SHEEP主宰。SMASH YOUR FACEのギタリスト。
https://blacksheepxxx.com/

【DJスケジュール】
11/9(fri)@吉祥寺CHEEKY
11/23(sat)@代官山AIR「MARK.E JAPAN TOUR」
11/30(sat)@半蔵門ANAGURA「BLACK SHEEP vol58」
12/7(sat)@新潟ARK
12/22(sun)@名古屋decibel&KALAKUTA DISCO
「BLACK SHEEP 名古屋出張編」

【LIVEスケジュール】
11/17(sat)@下北沢THREE「LESS THAN TV presents METEO WINTER」
11/30(sat)@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR「三茶HxC vol.111」

お金では買えない価値のある音源10選


1
切腹ピストルズ - 流出音源その一
https://seppukupistols.soregashi.com/01_lostvirgin.html

2
切腹ピストルズ - 流出音源その二
https://seppukupistols.soregashi.com/02_lostvirgin.html

3
RISE FROM THE DEAD feat UG KAWANAMI
https://soundcloud.com/ug-kawanami/rise-from-the-dead-feat-ug

4
RISE FROM THE DEAD feat UG KAWANAMI - Black Funk Ill Kill(Original Version)
https://soundcloud.com/ug-kawanami/r

5
TELEPATHY(EYE&UG KAWANAMI) - Secret(Inst.)
https://soundcloud.com/ug-kawanami/telepathy-secret-inst

6
CMT - EYESCREAM MIX
https://soundcloud.com/sbmrecordings/eyescream-mix-mixed-by-cmt

7
DJ HIKARU - Beats in Space MIX
https://www.beatsinspace.net/playlists/439

8
MOODMAN - DJ Mix Show“MOODMANOW ”0912 from VINCENT RADIO
https://soundcloud.com/vincent_archives/moodmanow_0912

9
DETOXX - DOMINGO from himcast
https://www.himcast.com/2013/06/15-domingo-detoxx-blacksheep-629.html

10
LIL'MO FO / SEP 5TH 2013 AT GARAM BAR TIME
https://soundcloud.com/lil-mofo-business-4/sep-5th-2013-lil-mofo-at-garam
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