「K A R Y Y N」と一致するもの

commmons10 - ele-king

 坂本龍一を中心に、アーティストたちのゆるやかな連携をめざし設立した〈commmons〉の10周年を記念する、初のレーベル主催イベント。音楽と知と笑いと食と運動──人間の生の根幹となるものを多方面から考えながら、なにより楽しむことを主眼としていることが、下記特設サイトをひとたず訪れていただければ腑に落ちること必定であります。場所は恵比寿ガーデン・プレイス一帯。先行イベントとして、教授セレクトがセレクトした映画をムジークエレクトロニクガイザインのスピーカーで聴きかつ観る「爆音映画祭」は4月2日にすでにスタートしており、この週末はトーク、公開オーディション、ワークショップ、落語&コミック・ソング、ヨガと太極拳とラジオ体操などがそこかしこでおこなわれる。聴いてよし観てよし、笑いあり涙は流れたとしてもおそらくよろこびのそれにかぎるだろう。
 ele-kings booksより、漢方と西洋医学の重なりあうところをていねいに論述した『からだとこころの環境』を刊行した伊達伯欣も畠山地平とのOpitopeで生演奏でのヨガをおこなうほか、坂本龍一はもちろん、高橋幸宏、細野晴臣、青葉市子と小山田圭吾とU-zhaan、空間現代、やくしまるえつこ、蓮沼執太――弊媒体読者も気になる出演者が書ききれないほど出演予定なので、週末はひとつ、万障お繰り合わせのうえ、心と体、身体の全部をフルに働かせていただきたい。

Susumu Yokota - ele-king

 ダンス・カルチャーとは朝まで踊ること。いちどダンスフロアに出たら水分補給以外はフロアに居続けること。現実には起こり得ないと思っていたことが目の前で起きていること。知り合いと会うと、いや、初めて会ったひとともハグしあって、「愛してるよ~」と真顔で言い合うこと。気持ち悪いよなぁ、でも当時はそれが普通だった。で、明け方、帰るときに(踊りすぎで)膝がガタガタになっていることに気がつくこと。ダンス・カルチャーとは朝日がやたら眩しいこと。あるいはトイレ付近で……(これ以上は書かないでおこう)。
 あの地下の階段を下りるときいつもドキドキした。今夜は何が起きるんだろう、明け方にはどうなっているんだろうと思ってドアを開けた。クラブはビールを片手に談笑する場ではなく、ただ無心に踊る場であり、クラバーはDJを見るのではなくお互い(もしくは宇宙)を見ていた。これが1992年から1994年の東京の週末に起きていたことだった。

「ダンス・カルチャーとは、ラジカルに対立するふたつのレイヴすべてに関する事柄が一体化されたものである。ひとつ、トランセンデントラル(超越的)で、ネオサイケデリックかつより高次な意識の論述──ヒューマニティ/ガイア/宇宙が結合する海。もうひとつ、エクスタシーとレイヴ・カルチャーがせき立てる10代の安っぽいスリルのラッシュ・カルチャー……」サイモン・レイノルズ『Generation Ecstasy』

 この狂騒の季節において欧州(とくにUKとドイツ)の主要都市では、多くの記録者(プロデューサー)が多くのドキュメント(作品)を残しているが、横田進は東京において数少ない記録者のひとりだ。この度サブライムから再発された『Acid Mt.Fuji』は彼の代表的な記録のうちの1枚。1994年の作品である。
 じつはこの前年のEBI(海老)名義のアルバム『Zen』(ベルリンのスペース・テディからリリース)やFrankfurt-Tokio-Connection名義の諸作(フランクフルトのハートハウスからリリース)の頃がダンス・ムーヴメントのピークだったので、『アシッド富士山』はその第一段階の最終章と言える。メロディ重視の曲作り、ささやかなアンビエント・タッチは熱から冷めようとする次の季節の予兆ともいまとなっては言えるが、まあやはり、『アシッド富士山』(というタイトル)であることは誤魔化しようがない。再発されたこのCDには、1994年6月の伝説のライヴが収録されているが、それは狂騒の季節の記憶の断片、それ以外の何ものでもない(そういう意味では貴重な音源)。
 ぼくは1995年の『Metronome Melody』を評価している。透き通った音色の綺麗なメロディ、それが横田作品の最大の魅力だったと思っているからで、実際の彼も物静かで耽美的な人だった。しかし本来ならダンスしなかったそういうひとたちもダンスなしではいられなかったのが1992年~1994年の東京のアンダーグラウンドだった。あれは何だったんだろう……何年も経って、いろいろな人がさまざまなことを考えている。ある海外の批評家が、あれは、社会のさまざまなプレッシャーから集団まるごと解放されてしまった状態であり、ゆえに当たり前だと思っていたことがじつはプレッシャー(抑圧)だったと気づいてしまったと、よってノンポリ集団が社会とリンクしていくのである云々と分析していたことがあったけれど、それはたぶん正解で、たぶん間違ってもいる。

 去る3月27日は横田進の一周忌ということで、生前につきあいのあった人たちが集まった。その会場となった渋谷のクラブ・ギャラクシーに向かう途中で、桜を見ながら、ああ、横田さんはこんなに桜が綺麗なときに亡くなられたのか、そういえば彼の最高傑作の1枚は『SAKURA』というタイトルだったな、と思った。

interview with Yeasayer (Ira Wolf Tuton) - ele-king


Yeasayer
Amen & Goodbye

Mute / Traffic

PsychedelicIndie Pop

Tower HMV Amazon

 イエーセイヤーは、とくに世界的なヒットとなった『オッド・ブラッド』以降はポップ・フィールドでサイケデリックを追求してきたバンドだ。それはMGMTやドードースがそうであるようにサイケデリックであり、また、ヴァンパイア・ウィークエンドがそうであるようにエキゾチズムを内包している。以下の発言ではアラン・ローマックスからジョン・コルトレーンにまで言及されているけれども、彼らは学究肌でもスピリチュアルに突き抜けるでもなく、トライバルな意匠をあくまでポップに扱いつづけてきた。その少しねじれた感覚は、このインタヴュー冒頭においていくつかの質問への回答が絶妙にかわされていることにもあきらかだろう。登場こそブルックリンのアンダーグラウンドだったものの、彼らはアニマル・コレクティヴやギャング・ギャング・ダンスとも、あるいは、初期のレーベルメイトであるポニーテールらのエクスペリメンタリズムとも別の道を行った。そして参照点は異なれども、もはやフレーミング・リップスやオーウェン・パレットなどにこそ比較すべきストレンジ・ポップの旗手となりつつあるのかもしれない。

 『オッド・ブラッド』よりも抽象性とダンス要素を上げた『フラグメント・ワールド』から4年、今作『エイメン&グッドバイ』はアートワークにデイヴィッド・アルトメイド(ニューヨークで活動するカナダ人彫刻家)を加えていることにまず目が行くが、ジャケットにあふれている乱雑で多様な意匠のせめぎあいは、彼らの音楽の在り処としてとてもしっくりとくる。そしてこの一見無秩序な要素の中から、彼らにとっての中心はここだといわんばかりに歌と旋律が立ち上がってくるのは感動的だ。“アイ・アム・ケミストリー”にはスージー・ローチェ(ロバート・フリップのプロデュースでデビューした三姉妹コーラス・グループ)がフィーチャーされているが、子どもの声かと錯覚するそれは、アルバム全体から奇妙な歌の力を引き出しているように感じられる。こうしてみると、イエーセイヤーが歌や旋律の引力に魅せられてきたバンドであったことにあらためて気づかされる。
 それではこのタイトルも奇怪なポップ・アルバムについて、ベースのアイラ・ウルフ・トゥートンに訊ねてみよう。

■Yeasayer / イエーセイヤー
NYブルックリンのインディ・ロック・バンド。クリス・キーティング(Chris Keating Vo/Kb)、アナンド・ワイルダー(Anand Wilder G/Vo/Kb)、アイラ・ウルフ・トゥートン(Ira Wolf Tuton B/Vo)、2007年に『オール・アワー・シンバルズ(All Hour Cymbals)』でアルバム・デビュー。ベックのツアー・サポート等を行い、2010年には〈ミュート〉移籍第一弾のセカンド・アルバム『オッド・ブラッド』をリリースし、同年フジ・ロック・フェスティヴァルにて来日。2013年にサード・アルバム『フレグラント・ワールド』をリリース。同年、初の単独来日公演を行う。

シェイプノート唱法、シェイカー・スピリチュアル、ミサ・ルバというコンゴの合唱団、それにバルカンの合唱音楽など数例を取っても、すべての伝統的ヴォーカル音楽が僕らを惹きつけたんだ。

エキゾチズムはあなたがたが初期から持っている特徴だと思います。これはイエーセイヤーのひとつのテーマととらえてもよいのでしょうか?

アイラ・ウルフ・トゥートン(以下アイラ):僕らはいつもたくさんの異なったかたちや過去やいまの様式を組み合わせるようにしているし、そうしたいと思ってるんだ。その中でお互いを活かしあって、しなやかでまがい物でなく、コンテンポラリーなサウンドになるように努めてるよ。

そうしたものは、専門的な民族音楽へのアプローチを通してではなく、あくまでポップ・ミュージックとして表現されていると感じます。純粋な民族音楽の表現にはあまり興味がありませんか? また、とくに興味を寄せている地域の音楽はありますか?

アイラ:アラン・ローマックス(Alan Lomax)の作品に関してはバンド結成前にメンバー全員がそれぞれいっぱい聴いたね。シェイプノート唱法、シェイカー・スピリチュアル、ミサ・ルバというコンゴの合唱団、それにバルカンの合唱音楽など数例を取っても、すべての伝統的ヴォーカル音楽が僕らを惹きつけたんだ。
 それから、僕らは映画音楽にも多大な影響を受けてきている。その(音楽的)解釈や録音物を通して、通常だったらそんなにたやすく出会うことのない伝統なんかに、一足飛びに触れることができるんだ。早坂文雄は好きで印象に残っている。彼はまだ幼い頃の僕に世界の扉をひとつ開けてくれたんだ。

地理的にもそうですが、時代的にも大胆な混淆を好まれているように見えす。“チャイルド・プロディジー”などはわかりやすい例かもしれませんが、とくに脈絡なく突然バロック音楽が参照されたりもしますね。このようにいろいろなものが混ざるのはなぜなのでしょう?

アイラ:思うにそれは音楽に対する一つのアプローチ手段だよ。僕にとっては、美しさ、それに音楽制作にチャレンジすることも無限の可能性の中に存在している。そのかけら(可能性)さえも完璧に掴むことはできないけど、むしろ自分のあらゆる理解力を養ったり拡げるため、また、時には別の伝統で自分の最高の声をより理解するために、すべてのことは可能だと知るほうがいいだろう。

僕の好きな音楽は、いま生きているこの世界を見るためのレンズとして機能するような音楽なんだ。僕らは懐古主義になろうとしたことは一度もないよ。

こうした音楽性には、実際に世界の現在の状況や未来についてのヴィジョンが重なっていたりしますか?

アイラ:僕の好きな音楽は、いま生きているこの世界を見るためのレンズとして機能するような音楽なんだ。僕らは懐古主義になろうとしたことは一度もないよ。

前作『フラグメント・ワールド』などは、そのタイトルがまさにあなたがたの音楽を示唆するようにも思われます。ダークでモノトーンな印象ながら、とてもリズム・オリエンテッドなダンス・アルバムでしたよね。今回は、対照的に楽曲性の高いものになっていると思いますが、これは意識された差なのでしょうか?

アイラ:僕らは毎回アルバムでは異なったアプローチをしている。個々人が変わるのと同じように、友人関係もそう、愛や家族、影響を受けるものや環境もそう、挙げていくとそのリストはずっと続くよ。どの作品であれ意図的に過去にやってきたものと同じようなものをリピートして作るのは不誠実だと感じるんだ、だってその間僕らの周りはめまぐるしく変わってるんだから。

お答えいただけるみなさんそれぞれにお訊ねします。あなた方が考える意味でもっともエキゾチックだと思う作品(音楽でも映画でも小説でもなんでも)と、もっともドリーミーだと思う作品を教えてください。

アイラ:僕がもっともインスピレーションを受けたのは個人で、彼らは完全に自身のアート、創造そして愛に身を投じていて、それは普通では到底できないことのようだ。『ジャイアント・ステップス(Giant Steps)』から『至上の愛(A Love Supreme)』『クル・セ・ママ(Kulu Se Mama)』までのジョン・コルトレーン。ボウイ(David Bowie)はいまでも忘れられない。グスタフ・スティックリー(Gustav Stickley)、ドビュッシー(Debussy)、ジョージ・ナカシマ(George Nakashima)、ショパン(Chopin)、ミース・ファン・デル・ローエ(Mies Van Der Rohe)、ジョン・ミューア(John Muir)……と、挙げていくと止まらなくなるよ。
 僕が夢見るのは自分の住むキャストヒルにある湖のことだね、毎日それぞれ少しづつ違う表情を見せるし。自然界のほうがより自分にとっては夢のようなものになってきているよ。

『オール・アワー・シンバルズ』をミックスした場所はいまやジェイクルー(J Crew)というブランドのデパートになってるね。そう、ブルックリンは変わってしまった。

『オール・アワー・シンバルズ(All Hour Cymbals)』の頃から聴いています。当初は「ブルックリン」というキーワードとともにあなたがたの音楽を知りましたが、あなた方自身は当時「ブルックリン」で起きていたことをどのようにとらえていましたか?

アイラ:『オール・アワー・シンバルズ』をミックスした場所はいまやジェイクルー(J Crew)というブランドのデパートになってるね。そう、ブルックリンは変わってしまった。まだ巨大な都市だけど。カルチャーやアート・スポットはもっと遠くの郊外に移ったみたいだよ。でも悲しいのは僕らが当時知っててよく通ったいくつかのクラブやアパート、リハ用の場所や溜まり場がブランドやインスタントな建造物にとって代わったことだね。もっと頭にくるのは、金のある企業の取り繕ったようなサマで、すぐに乗り替わってブランド企業の取り巻きになったこと。しかし、僕らはこの年の過剰開発を止める第一世代にはならないだろう。理由として、世代に限らずニューヨークの過去を懐かしむ心が強いのは、都市の変化のスピードがいつの時代も急速だから。そこはコンスタントに建造物を建て、破壊する都市なんだ。

あの頃と比べて、時代が要請している音にどのような変化があったと思いますか?

アイラ:思うに音楽の消費のされ方が変わってしまったね。インターネット上のコンテンツ増加を通して、いまや誰でも自らの手でブランディングをできるようになったから。僕らは手っ取り早く、より自分と同質で安全なものに近づき、恐ろしいものにも近づいている。前者はすぐに消え去るようなつまらないカルチャーであり、後者は、仲間や会社、政府の監視を認識したり受け入れたりすることによって生じる個人の権利への不安だね。

今作のアートワークにデイヴィッド・アルトメイド(David Altmejd)さんを起用したのはどのような経緯ででしょう? また、人体やとくにその頭部の表現に特異な方法を持っているアルトメイドさんですが、彼の作品とイエーセイヤーとの音楽の関連をどのあたりに見られますか?

アイラ:デイヴィッドが僕らといっしょにやりがってくれてたんだ。彼のようなヴィジョンを持ったアーティストが僕らの作品を解釈し、また違った視点から彼の作品として表現してくれるなんて、光栄だったよ。

“アイ・アム・ケミストリー(I AM CHEMISTRY)”のMVもじつにインパクトがありました。子どもたちのコーラスが挿入されているのは、テーマやコンセプト上での必要があったからでしょうか?

アイラ:あのヴィデオはマイク・アンダーソンの作品で、ニュー・メディア・リミテッド(New Media Ltd)が手がけたものなんだ。いつもながら、才能ある人たちと仕事をするのは僕らの世界観を広げてくれてすごく興奮するね。あのコーラスは実際ザ・ローチェス(The Roches)のスージー・ローチェの声を目立つようにフィーチャーしてるんだ。レコーディングの過程で女性のパートを意識して作った部分で、実際、女性の声が必要だと感じたんだ。スージーと彼女のバンド(彼女の二人の姉妹とともに)から僕らは多大な影響を受けてきたから、彼女といっしょにやるのはとても光栄だったよ。

ミュートが僕らにアドバイスしてくれたのはプロデューサーといっしょに仕事すること。

アルバムを重ねてこられる中で、よりポップに感じられるもの、より複雑な音楽性をもったもの、それぞれに特徴があったと思います。〈ミュート〉への移籍はアルバム制作の上でどのような影響があったでしょう?

アイラ:ミュートが僕らにアドバイスしてくれたのはプロデューサーといっしょに仕事すること。それはいままで僕等がやってこなかったことで、やろうとも思ってなかった。しかし数度の失敗を経て、僕らが出会ったのがジョーイ・ワロンカー(Joey Waronker)、彼は自然と僕らの作業プロセスに馴染んでくれて、思うに気分的にも盛り上げてくれた。彼は4番めのメンバーになってくれて、いままで見れていなかった音楽的なポイントのいくつかを埋めてくれたね。

“ハーフ・アスリープ(Half Asleep)”などのようにテクスチャーを優先したサイケ・ナンバーと“デッド・シー(Dead Sea)”などビートが優先される曲では制作の過程はまったく異なるものでしょうか?

アイラ:僕らがトライしているのは、曲それぞれに異なった、その曲に正直なアプローチなんだ。だいたいにおいて、もし2つの曲で同じアプローチやお題があるとしたら、そのうちの1つは削ることになるだろう。君が言った2曲の制作上の違いは、僕ら3人から生まれるまさに(それぞれの曲で)異なったパーツの組合せから作り上げられた、ひとつの結果だね。

今回のアルバム・タイトルでもある「エイメン・アンド・グッドバイ(Amen & Goodbye)」ですが、これは誰か(何か)に向かって投げかけられた言葉なのでしょうか? 表題曲がニューエイジ風の短いトラックだったことで、謎かけのようにも感じられます。あなたたちが何かに決別したということですか?

アイラ:だいたいにおいて、僕らが決別したのは時間と諍い事、そしてこのアルバムを作るためにかかった手順だね。そうたくさんのことと決別したよ。

僕がいま注目してるのは、いくつかのLA関連のもので、ケンドリック・ラマー関連やサンダーキャット周りのミュージシャンたちかな。

“ユーマ(Uma)”などは壊れた懐メロといった雰囲気を感じました。あなたがたの音楽には時折古風なポップ・ソングの片鱗も現れますが、これはとくにあなたがたのうちの誰の資質によるものなのでしょう?

アイラ:アナンドが“ユーマ”に、より70’sロックのアレンジのテイストを持ち込んだんだ。グループ的にもそっちのほうがおもしろそうだったし、もともとのララバイにするよりも、もっとコラージュした感じでジュークボックス的、それに子どもっぽい感じのアプローチのほうがね。僕ら的には初めてドラムスもパーカッションも使わなかった曲で、そういうふうに極端に振れることが重要だったんだ。

ライヴ・パフォーマンスにも定評のあるみなさんですが、今回のアルバム・コンセプトはどのようにライヴに反映されているでしょうか?

アイラ:ちょうどいまそれに取り掛かっているところさ。僕らにはライティングなどショウを組み立ててくれるアーティストの友人がいて、アルバムをライヴ用に組み替えているところなんだ。このプロセスは実際すごく楽しくて、早くその完成形を見せたくて仕方がないよ。

現在の音楽シーンのトレンドを意識することはありますか? どんなものをトレンドだと感じていますか?

アイラ:僕がいま注目してるのは、いくつかのLA関連のもので、ケンドリック・ラマー関連やサンダーキャット周りのミュージシャンたちかな。いま現在起きているミュージシャンたちのフレッシュな動きを見るのはいいと思う。だけど僕がよく聴いてるのはオスカー・ピーターソンで、そんなにトレンドを追ってはいないよ。

結成から10年になります。これからの活動として意識的に話しあっている目標などはありますか?

アイラ:未来に生きるほど危険なことはないよ、いまだけを生きるようにしてるよ。

NOT WONK - ele-king

 平均年齢20歳の札幌のロック・バンド、NOT WONKも“格好いい男のたち現る”現象において重要なバンドです。ワイキキ/DYGLと双璧を成しているのかもしれません。彼らが英語で歌うのは、ここ5年のJロックと括られる日本語バンド名/日本語ロック・バンドへの違和感があるのではないでしょうか? と邪推してみます。そうすると彼らの音楽が、ロックンロールとはもっと格好いいものなんだよと暗に主張しているように見えるのです。
 NOT WONKは、ワイキキ/DYGLよりもエモーショナルです。安孫子ちゃんのレーベル、〈KiliKiliVilla〉からの昨年のデビュー・アルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』は、当初の予想を覆し、たくさん売れました。そして、4月20日、新曲“This Ordinary”“Don’t Get Me Wrong”が先行配信販売します。アルバム『Laughing Nerds And A Wallflower』の配信スタートします。

 また、7日15時よりKiliKiliVillaのオフィシャル・サイトにて“This Ordinary”のMV公開になります。これなんですけど。https://www.youtube.com/watch?v=Y65dfJQYkoc
 そして、ニュー・7インチ・シングル「DisOrdinary」が500枚限定でリリースされことになりました。
 キミが若者であるなら、チェックしましょう。

NOT WONK
「This Ordinary」

KiliKiliVilla

Side A : This Ordinary
       Don’t Get Me Wrong
Side B : DisOrdinary
定価:1,400円+消費税
KKV-026VL
5月25日発売

Fatima Al Qadiri - ele-king

 ただのグライム。ファティマ・アル・カディリならそう言うだろう。そこに枕詞を付け足す必要はない。「元々あった呼び名で十分だったのに」と、フューチャー・ブラウンの一員として彼女は昨年のインタヴューで答えている。アンビエント・タッチのグライムは昔からあったのであり、わざわざそれをリ・ブランディングする必要などない、と。
 とはいえ彼女の前作『エイジアティシュ』が注目を集めたのは、単にその「想像上の中国」というコンセプトが、グライムの上モノにときおり現れるアジア趣味(シノグライム)の受け皿となって、西洋文化に潜む東洋への欲求をうまい具合に満足させたから、というだけではない。低く唸るベースとヴォーカル・ドローンとの共存によって特徴づけられた『エイジアティシュ』は、ベース・ミュージックであると同時にアンビエント・ミュージックとしても成り立っていた。オリエンタルな意匠の下にグライムとアンビエントとを同居させてみせたこと、やはりそこにこそファティマ・アル・カディリの面白さがあったと言うべきだろう。

 セカンド・アルバムとなる本作でも基本的にその路線は踏襲されている。悪く言えばサウンドの上で大きな変化はないということだが、明確に前作にはなかった要素もある。それはメッセージ性だ。彼女は同じインタヴューの中で「フューチャー・ブラウンの政治的関心をひとつ挙げるとしたら?」という問いに対し、「警察の残忍性について」と答えている。本作のテーマは、ジョシュ・クラインの彫刻が大きく掲げられたアートワークからも窺えるように、近年合衆国で多発している警察による過剰な暴力の行使である。
 いくつかタイトルを並べてみよう。「血色の月」、「外出禁止令」、「集中砲火」、「地下牢」、「崩壊」、「権力」。これらの語が差しあたって映し出しているのは、いまアメリカで実際に繰り広げられている壮絶な暴力行為だ。そういう意味でこのアルバムは、アティテュードの面で最近のビヨンセと共振しているとも言える。
 だがさらに言ってしまえば、本作が告発しようとしているディストピアは必ずしもアメリカ国内に限定されるものではない。アル・カディリの出身地がクウェートであることを思い出そう。「軍隊の警察化」や「警察の軍隊化」が主張されるようになって久しいが、その転換期にあたる湾岸危機当時、彼女はまさにイラク軍による占領下で幼年時代を送っていたのである。このアルバムには彼女のそのような過去も色濃く反映されているように思われる。つまり本作は、「ブラック・ライヴズ・マター」からパリ同時多発テロやシリアの騒乱までをも射程に含んだ、怒りと絶望の音楽なのである。

 ハードな現実を直視するという意味で、本作はたしかに正統なグライムだ。彼女の言葉で言えば、ただのグライムである。それなのにこのアルバムでは、グライムの大きな要素の一つであるラップという手法が用いられていない。ニュース番組や引退した巡査部長の発言などがサンプリングされてはいるものの、それらはあくまで装飾の域に留まっている。つまり、本作には明確なメッセージ性があるのにもかかわらず、それが直接的に主張されることはないのである。フューチャー・ブラウンのように、やろうと思えばMCをゲストに迎えることだってできたはずだ。だが彼女はそうしなかった。それには彼女の音楽のもう一つの重要な側面であるアンビエントが関わっている。
 アンビエント・ミュージックには、通常は聴く必要のないものとして意識からシャットアウトされている音を強制的に顕在化させるという機能がある。ベッドルームでアンビエントを流しながらうとうとしたことのある者ならば一度は体験したことがあるであろう。風が窓を叩く音、車が外を走る音、換気扇が回る音、衣服が擦れる音、自分が呼吸する音、そういう普段は意識から排除されている様々な「ノイズ」が際立って耳に入ってくる瞬間を。
 アル・カディリはこのアルバムで、そのようなアンビエントの効果を音以外の事象にまで拡張させようとしているのだ。仕事に忙殺されている人びとに、エンターテインメントに熱中している人びとに、恋愛のことで頭がいっぱいになっている人びとに、かれらの意識からシャットアウトされている現実──いま合衆国で、世界中で起こっている悲惨な出来事──へと一瞬でも注意を向けさせること。
 要するにこのアルバムは、あなたのオフィスやあなたのベッドルームと、実際に暴力行為が発生している海の向こうの現場や戦場そのものとを、直接的な手段を用いずに接続しようとする試みなのである。だから彼女の言葉に逆らって言おう。これはただのグライムではない、と。

New Order - ele-king

 ニュー・オーダー、5月25日の、29年ぶりの単独公演即日完売につき、追加公演が決定しました!
 追加公演は週末金曜日(5月27日)、場所は新木場スタジオコーストです。フェス以外で彼らのライヴを見れるのは、滅多にありません。ファンの方はここを逃さないように!
 また、25日、27日の両公演では、石野卓球がDJをやることも決定しました。待望の12インチ盤もついにリリースされました。アートワークは鮮やかな紫です。

Tutti Frutti ‒ Takkyu Ishino Remix

Fika(フィーカ) - ele-king

「スウェーデン人にとってFika(フィーカ)は生活の一部よ」

フィーカって、ご存知ですか?
それはスウェーデン流の“お茶の時間”を指す言葉です。
お隣の家で、友人とカフェで、会社でさえも、
顔を合わせれば「Ska vi fika?(スカ・ヴィ・フィーカ/お茶にしましょう)」と誘いあう──
スウェーデン人はお茶が大好きなのです。
そして、それは休み上手、楽しみ上手な彼らの文化をよく象徴しています。
フィーカで大事なのは、くつろぐこととおいしいお菓子。
多くの家庭には、フィーカのためのさまざまな手作りお菓子が常備されています。
そうした定番お菓子のレシピと、さまざまなコラム、そしてたくさんの素敵なイラストとともに、
フィーカの12か月をたどります!

■Contents

はじめに * 合い言葉は「Ska vi fika?」 2

スウェーデン人のFika 4

Fika i mars * Våfflor
3月 ヴォッフロル(ワッフル) 15
Våffeldagen * ワッフルの日 / Påsk * 復活祭 / Kafferep * かしこまったお茶会 / Alla korvars dag * すべてのソーセージの日

Fika i april * Kärleksmums
4月 シャーレクスムムス(チョコレートのスポンジケーキ) 27
Jättegott!* おいしいときの合い言葉「mums=う~ん(おいしい)♡」 / Gott till kaffet * おかしな名前のお菓子 / Valborgsmässoafton * ヴァルプルギスの夜 / Surdeg * 天然酵母の日

Fika i maj * Morotskaka
5月 モーローツカーカ(ニンジンケーキ) 39
Morotens dag * ニンジンの日 / Prinsesstårta * お祝いのケーキ / Kaffe * Fika=コーヒー / Primör * スウェーデンの野菜事情

Fika i juni * Nationaldagsbakelse & Smörgåstårta
6月 ナショナルダーグスバーケルセ(建国記念日のミニケーキ)& スモルゴストータ(サンドイッチケーキ) 51
Sveriges Nationaldag * ナショナルデー / Utspring * Fikaで旅立ちのお祝い / Midsommardagen * スウェーデン最大のイベント・夏至祭 / Sju sorters kakor * 一家に1冊あるFika菓子の教本 / Färskpotatisens dag * 新ジャガの日

Fika i juli * Chokladbollar
7月 ショクラードボッラル(チョコレートボール) 67
Sommarlov & Sommarsemester * 夏の暑い日は火を使わないチョコレート菓子作り / Fläderblomssaft * 夏のFikaはサフト / Praktiskt & Enkelt * 合理的で簡単に作れるレシピ / Kryddor & örter *スパイスとハーブ

Fika i augusti * Rabarberpaj
8月 ラバルベルパイ(ルバーブのクランチパイ) 79
Rabarbersäsong *季節限定のフレッシュ菓子・ルバーブのパイ / Sylt * ジャム作りは夏の終わりのシーズンワーク / Kräftskiva * ザリガニの解禁日 / Köttbullens dag * ミートボールの日

Fika i september * Sockerkaka & Äppelkaka
9月 ソッケルカーカ(スポンジケーキ)& エッペルカーカ(リンゴのスポンジケーキ) 91
Äppelsäsong * スウェーデン人はリンゴが大好き / Glass * アイスの消費量は世界トップクラス / Teets historia * 意外に古い紅茶の歴史 / Paket * スーパーは北欧デザインの宝庫

Fika i oktober * Kanelbullar
10月 カネールブッラル(シナモンロール) 103

Kanelbullens dag * シナモンロールの日 / Mejeriprodukter * おいしくて種類も充実、スーパーの乳製品売り場 / Svampar & Allemansrätten * 森や山はスウェーデン人みんなの宝 / Höst & Vinter * もっともFikaが重要になる時期

Fika i november * Kladdkaka
11月 クラッドカーカ(ぐちゃぐちゃチョコレートケーキ) 115
Kladdkakans dag * クラッドカーカの日 / Chokladens dag * 10月から11月にかけてチョコレート三昧のFika / Ärtsoppa * 木曜日に豆のスープを食べる習慣 / Martinsdagen * 聖マッティン祭

Fika i december * Lussekatter & Mjuk pepparkaka 127
12月 ルッセカッテル(サフラン入りパン)& ミューク・ペッパルカーカ(ソフトジンジャーケーキ)
St. Lucia * サフラン入りのパンを食べる聖ルシア祭 / Pepparkakans dag * ジンジャークッキーで「お菓子の家」作り / Advent * アドベントからはじまるクリスマス月間 / Julafton * もっとも盛り上がるクリスマスイブ / Nobelbanketten * ノーベル賞の授賞式、晩餐会のメニューは注目の的

Fika i januari * Hallongrottor
1月 ハッロングロットル(ラズベリージャムのクッキー) 143
Gott nytt år!* Fika定番の伝統クッキー / Tjugondedag jul * 世界で一番長いクリスマス / Nötter & Frön * お菓子作りに欠かせないナッツ類 / Rörstrand&Gustavsberg / クオリティーの高さで知られるスウェーデンデザイン

Fika i februari * Semla
2月 セムラ 155
Fettisdagen * 春を告げるシーズン菓子、セムラ / Geléhallonens dag * ラズベリーグミの日 / Kvällsfika * 夜のFikaは、ホットチョコレートでほっと一息 / Vinter▷▷▷Våren * 暖かい春へと向かう日々


■著者プロフィール

塚本佳子(つかもと・よしこ)
編集者・ライター。さまざまなジャンルの書籍や雑誌の制作に携わる。週末のみ「北欧雑貨の店 Fika」の店主。暮らしを豊かにするための方法を日々模索中。著書に『小さくてかわいい家づくり』(新潮社)、『好きなことだけ』(Pヴァイン)など。

ホームページ
https://zakka-fika.com/



見瀬 Klingstedt 理恵子(みせ・くりんぐすてっと・りえこ)
フリーランスイラストレーターとして活躍。1995年から現在まで通算12年間を家族とともにスウェーデンの首都ストックホルムで暮らす。帰国後は友人井上佳子と料理ユニット「SPISEN(スピーセン)」を組み、スウェーデン大使館のイベント等で料理を提供するかたわら、コラムニストとしても活動。著書に『シンプルを楽しむ 北欧の幸せのつくり方』(エディシォンドゥパリ)など。

ホームページ
https://www.riekomise.com

flickr
Rieko Mise Klingstedt on Flickr

光りの墓 - ele-king

「後はもれ姫がどうなったのか気になるんだな、でもどういう姫だったのかはもう判りません、もまえらもれのかわりに思い出してください、もれの気持が判れば思い出せますよ。」 笙野頼子『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』2007

 数年前、タイの映画監督と話をしていた時に彼女は「でも私の映画はタイでは上映できない。学生服を着たキャラクターがセックスするシーンが検閲に引っかかる」と言っていましたが、『ブンミおじさんの森』で2010年にカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲ったタイの映画監督、アピチャッポン・ウィーラセタクンの新作『光りの墓』も検閲でカットされかねない要素を含むため、始めからタイ国内での上映は無いものとして作られたようだ。

 タイ東北部にある、昔は学校だった建物が今は病院になっている。そこには原因不明の昏睡状態で眠り続ける兵士たちが収容されており、主人公のジェンおばさんが(母校でもある)病院にやってくるところから話は始まる。何だかよく判らないままに入院中のある青年の介護を始めたジェンの、ほぼ周囲のみにおける光景が波紋のように行ったり来たりする映画、とでも言えばいいのだろうか。病院が建っている土地は元は王家の墓だった、という設定が検閲をクリアしないと判断したそうだが、ただそうした「歴史の大きな流れ」から何かを説明しようとする映画ではない。

 この映画の日本版予告編が全編クールな音楽に貫かれているのに対し、本編にはいわゆる「音楽」がほとんど付けられておらず、かなり異なる印象のサウンドスケープで覆われている――隣の工事現場で人が歩いている音、鳥の、または虫の声、回る水車の音から兵士たちが立てる寝息までも――が、全ての好ましい音として組み上げられた光景の中に彼に特有の、音に対する(言うなればDJ的、な)卓越した才能と感覚が響き渡っている。

 アピチャッポンはいわゆる「わかりやすいゲイ映画」を撮るゲイの作家ではない。が、別に本人が秘密にしているわけでもないのに日本では妙に(これまたいかにも日本的な感じで)その部分が触れられないでいるせいで、観客が受け取り損なってしまう要素が案外あるかもしれない。例えば話の途中で、地元の信仰を集める隣国ラオスのお姫様(姉妹)を祀ったお堂が出てくる。ジェンがそこへお参りをした後に「お姫様本人」も「王女です。もう死んでるけど」などと言いながら大変ラフな感じでお出ましになったりするのですが、その祭壇などは何だかもう女装の神棚みたいなのである。

 生きているとも死んでいるとも言いがたい、文字通り「眠っている」さまざまな人や土地の、或いは自分自身の記憶にも触りながら、足の悪いジェンは終始、あくまでゆっくりと画面の中をうごいてゆく。それはまるで、達観した人が眼の前にある風景をただ眺めているかのようだ。だが軍事政権下のタイで撮られた、「眠ったままの兵士(兵士としては機能していない人間)」が見ている夢と現実とをあっさり繋いでしまうこの作品を、ある意味で検閲よりもさらに厄介な「自主規制」によって表現が萎縮しつつある日本で観るとき、「現実を恐れずに先へと進め」というシグナルを受け取らずにはいられない。

RAINBOW DISCO CLUB 2016 - ele-king

 いきなり昔話から始めてもいいですか? 90年代の中頃だったかな、ロンドンのKings Cross駅の近くのダンジョンみたいなハコでやってる渋いパーティがあったんですよ。日曜なのにやけに豪華なDJが出てた。その日は、メインがアンドリュー・ウェザオールで、セイバーズ・オブ・パラダイスとかでガンガン活躍してた時代だったから、もう喜んで行ったわけ。前の晩も朝まで遊んでてヘロヘロだった気がするけど、ウェザオールがやるなら行かなきゃって。
 その日はたしかワールドカップの予選でイングランドの大会出場がかかってる大事な試合があって、ロンドン中がそのことで沸き立ってた。クラブに早めに着いたら、驚いたことに客が全員フロアに座って、テレビでサッカー観てるんですよ。当時の日本だとサッカーなんてマイナーなスポーツだったしワールドカップで国中大騒ぎなんて理解できなかったんだけど、ウェザオール自身も試合中はDJなんてやってらんねぇって感じだったのかね(笑)。試合が終わったら、おもむろにDJが始まって、試合の熱狂を引きずるようにウェザオールもすごくいいプレイを聴かせてくれて、最初は「なんでクラブに来たのにサッカーの中継観させられるんだよ」ってちょっと頭来たけど、やっぱりウェザオールすげえぜ! って踊り狂ったのを覚えてる。ハッピー・マンデーズやプライマル・スクリームのプロデュースで台頭した頃から何度も彼のDJは聴いてるけど、このときのプレイがすごく印象に残ってるのは、非日常的な雰囲気だったからかなと思ってる。いいDJはやっぱり、ロケーションとかクラウドの持ってるポテンシャルを最高に引き出すワザを持ってると思うんだよね。選曲とか技術だけじゃなくて、場の雰囲気を掴んでそれをぐぐっと持ち上げるというか。

 そんなウェザオールが、伊豆に移って2年目のRAINBOW DISCO CLUBにヘッドライナーとして登場するのは、ほんと楽しみだ。自身のオーガナイズするフランスの古城でのフェスには敵わないかもしれないけど、4年ぶりの日本で、しかも広々とした東伊豆クロスカントリーコースでの、音楽フリークたちを前にしてのプレイは絶対彼だってあがるはず。さらに、ナイトメアーズ・オン・ワックス、ムーヴD、ジャイルス・ピーターソン、瀧見憲司、井上薫といったエクレティックで頼もしい大ベテランたちがメイン・ステージを盛り上げる。今年の夏、ヨーロッパのフェスで引っ張りだこな日本人アーティスト2人がスペシャルな組み合わせで登場するのも楽しみだ。ハウス・レジェンド寺田創一は、昨年彼をフックアップしてスポットライトを当てたアムステルダムのラッシュ・アワー・チームの一員として登場。また、DJ NOBUは、シカゴの伝説的クラブのレジデントDJザ・ブラック・マドンナとの超レアなB2Bセットで登場する。それとそれと、レッドブルのステージにDJファンクとエジプシャン・ラヴァーとサファイア・スロウズっていうひと癖ある個性的な連中がまとめて出るのも嬉しい。たぶん、最近フェス行きはじめたとかアゲアゲでビキビキなのだけがエレクトロニックなダンス・ミュージックだと思ってる層には「誰?」って感じのDJ/アーティストたちかもしれないけど、とにかく騒げればOKみたいなノリじゃない大人な(元)パーティ・ピープルにはグッと来るはずだ。
 ただ、どこにでもある夕方から翌日昼までみたいなフェスだと、いくらラインナップが魅力的でも、全然メインのアクトを見れない! って悩む人も多いと思う。うちもそうなんだけど、子供がいるファミリー層がまさにそれ。なんせ夜は子供と一緒に寝ないとだから、深夜が一番盛り上がるタイムテーブルだと、高い入場料払っても一番美味しいところは寝てるかテントで遠くから残響音が聞こえるくらいで楽しめないっていう。その点、RDCがすごくいいのは、夜は音が止まるかわりに、3日間たっぷり楽しめるってところ。豊かな自然の中でキャンプしながらゆったり贅沢に音楽とプチ・アウトドアな週末が楽しめる。
 晴海でやってた頃から、RAINBOW DISCO CLUBはクラブ界隈のトレンドとか流行りの音とかでパーティを作ってないなというのが伝わってきた。だから、音に関しては信頼してるんだけど、いくら海辺と言っても都心で寝転がっても下がコンクリだったりするとどうしてもしっくりこない部分があった。それが、伊豆になったでしょ。実は僕は、去年すごくたくさんの友人知人から誘われていたにも関わらず行けなくて、後でとっても楽しげな写真を見たり話を聞かされたりして悔しい思いをした。つまり、この会場は今年が初体験。フェスやレイヴの楽しみの結構でかい部分は、知らないところに行って初めての環境で踊るってことでしょう。わがままだけど、何年もずーっと同じ場所で同じように開催してるイヴェントに段々興味が薄れていくのはそういう理由。だから、去年パスした僕と同じように、今これを読んで今年初めて「行ってみようかな」なんて思った人はすげーラッキーなんじゃないかな。2年目で運営面もさらに改善してきてるだろうし、ファンクション・ワン使ってかなりよかったというサウンドももっとよく鳴るだろう。それでこのラインナップだからね。あとは天気さえよければ、それこそパラダイスじゃない? (渡辺健吾/Ken=go→)

news_Moe and ghosts × 空間現代『RAP PHENOMENON』、いよいよリリース、そしてレコ発のお知らせ

 彼女は、そうだね、たとえば最近の、ゆるふわ系女子がラップしましたっていうのとはわけが違うんだよ。ホンモノのラッパーだ! と、信頼のおける某ライター氏が言っておりました。たしかに……Moe and ghosts 、その速くて独特のアクセントのフローに、ジャズドミュニスターズなどで聴いてびっくりされた方も多いでしょう。
 早くから期待が高まっていたMoe and ghostsと空間現代との共作『RAP PHENOMENON』は、いよいよ来週の水曜日(6日)に発売されます。
 また、4月6日にDOMMUNEにてオンライン・リリース・パーティ、5月30日には渋谷WWWにてZAZEN BOYSとのツーマン・レコ発も決定しました。これ、間違いなく注目作です。



Moe and ghosts × 空間現代
RAP PHENOMENON
NKNOWNMIX 42 / HEADZ 212
2016年4月6日発売

Amazon

■TRACK LIST:

01. DAREKA
02. 不通
03. 幽霊EXPO
04. TUUKA
05. 新々世紀レディ
06. 可笑しい
07. 少し違う
08. TASYATASYA
09. 同期
10. DOUKI
11. 数字
12. ITAI

Moe and ghosts: Moe, Eugene Caim
kukangendai: Junya Noguchi, Keisuke Koyano, Hideaki Yamada

All lyrics by Moe and Junya Noguchi
Except Track 6 (Mariko Yamauchi "It's boring here, Pick me up.")
All music produced by kukangendai
Except Track 1, 4, 8, 10, 12 produced and mixed by Eugene Caim, contain samples of kukangendai

Recorded by Noguchi Taoru at Ochiai soup
Rap Recorded and Mixed by Eugene Caim at DADAMORE STUDIO
Mixed and Mastered by Tatsuki Masuko at FLOAT

Photographs: Osamu Kanemura
Design: Shiyu Yanagiya (nist)

 2012年に発売され異形のフィメール・ラップ・アルバムとして話題となった1st『幽霊たち』から、約4年振りの作品リリースとなる"Moe and ghosts"と、昨年はオヴァルやマーク・フェル、ZS、OMSBら国やジャンルを越えたリミキサーが参加したリミックス・アルバム『空間現代REMIXES』をリリースし、日本最大級の国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー」に出演するなど各方面で注目を集める"空間現代"のコラボ・アルバムが発売決定。
 2015年に開催されたHEADZの20周年イベントにて初披露されたこのコラボレーションは、巷の安易な共作ではなく、互いが互いの音楽を研究しつくし、互いの音楽が寄り添いつつ並列し昇華される、前代未聞のコラボレーション、前代未聞のラップ・アルバムに仕上がった。
 山内マリコの小説「ここは退屈迎えに来て」のテキスト使用した楽曲や、未だ謎に包まれるMoe and ghostsのトラックメイカー、ユージーン・カイムが空間現代をリコンストラクトしたトラックも収録。
 ジャケット写真は金村修。ジャケットデザインはブックデザイナーの柳谷志有。バンド録音は、にせんねんもんだい等の録音を手がける野口太郎。ラップ録音はユージーン・カイム。ミックス・マスタリングは砂原良徳やiLL等を手がける益子樹が担当。
 2016年4月6日にDOMMUNEにてオンライン・リリース・パーティ、5月30日には渋谷WWWにて、ZAZEN BOYSとのツーマン・レコ発が決定している。

■アルバムのティザー映像

■LIVE

2016年4月6日(水)
@DOMMUNE 21:00-24:00
【"RAP PHENOMENON" ONLINE RELEASE PARTY】
LIVE:Moe and ghosts × 空間現代
DJ:GuruConnect(from skillkills)

2016年5月30日(月)
@渋谷WWW
【"RAP PHENOMENON" release live】

LIVE:
Moe and ghosts × 空間現代
ZAZEN BOYS

open18:30/start19:30

前売:3000円(+1D)
※ぴあ[Pコード:295-316]、ローソン[Lコード:75789]、e+[https://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002187031P0030001]にて4/9~販売開始

https://www-shibuya.jp/schedule/1605/006575.html

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