「K A R Y Y N」と一致するもの

Can - ele-king

 先日、スロッビング・グリッスルの再発を発表したばかりの〈ミュート〉が、先週、突然CANのシングル・コレクション、シングル23曲を集めたコンピレーション『ザ・シングルス』を6月16日に発売するとアナウンスした。これまでもCANは、『カニバリズム』シリーズのような編集盤を出してきているが、シングルをすべて網羅するのは、今回が初めて。また、日本盤のみHQCD(高音質CD)仕様にて発売されるというから嬉しい。
 CANは、クラフトワークと並んでクラウトロックの最重要バンドであり、このバンドのアルバムは、少なくとも1977年まではすべてコレクションする価値がある。CANは子供ではなく大人(それも現代音楽を学んだ大人)がロックをやるとどうなるのかという点においてたぶん最高のバンドで、ゆえにつねに先走っていたバンドだった。初期のミニマルとジャズのミクスチャーは言うにおよばず、たとえばダモ鈴木が脱退してからの『スーン・オーヴァー・ババルマ』(1974)、『フロウ・モーション』(1976)、『シー・ソー』(1977)のようなアルバムにおけるワールド・ミュージック的要素の取り入れ方も、いまでもぜんぜん新鮮に聴こえる。“ピンチ”(1972)はいまだに最高のドラムンベース・ファンクであり、“マザー・スカイ”(1970)はオウガ・ユー・アスホールの偉大な父であり──。
 と同時にCANは、当時TVドラマにも使われた“スプーン”のヒットでも知られるバンドで、彼らが活動していた1970年代には10枚以上のシングルを出しており、しかも一連のシングルにはアルバム未収録の曲も少なくなく、とくに『フロウ・モーション』時代の「サイレント・ナイト」はいままで再発/再収録されることはなかった。今回の『ザ・シングルス』は、そうしたものすべてが収録されている。CANのファンにとっては嬉しい編集盤で、これから聴いてみたいという人にもオススメ。
 〈ミュート〉は最近YouTubeに「タートルズ・ハヴ・ショート・レッグス(亀には短い足がある)」をあげた。『タゴ・マゴ』時代の曲だが、CANらしいユーモアがあり、チャーミングな曲なので、息抜きにどうぞ。

カン (CAN)
ザ・シングルス (The Singles)

6月16日 (金)
2,300円(税抜)
HQCD(高音質CD)仕様


[Tracklist]
1. Soul Desert
2. She Brings The Rain
3. Spoon
4. Shikako Maru Ten
5. Turtles Have Short Legs
6. Halleluwah (Edit)
7. Vitamin C
8. I’m So Green
9. Mushroom
10. Moonshake
11. Future Days (Edit)
12. Dizzy Dizzy (Edit)
13. Splash (Edit)
14. Hunters And Collectors (Edit)
15. Vernal Equinox (Edit)
16. I Want More
17. ...And More
18. Silent Night
19. Cascade Waltz
20. Don’t Say No (Edit)
21. Return
22. Can Can
23. Hoolah Hoolah (Edit)

Black Mecha - ele-king

 ゼロ年代以降、もっとも細分化し、多様化した音楽ジャンルはメタルだろう。そのポテンシャルはまるで地下水に含まれるベンゼンのようにあっさりと基準値を上回り、予想外の方向へと影響を広げていった。ドゥーム・メタルとエレクトロニカを交錯させたKTLの登場によってテクノやインダストリアル・ミュージックもその射程内に収められ、『アメリカン・バビロン』によってルッスーリアはマッシヴ・アタックの、『アイ・シャル・ダイ・ヒア』によってザ・ボディはオウテカの位置に取って代わったとさえ言える。アンビエント・ミュージックとの親和性はそれ以前から高かったこともあり、最近ではエクトプラズム・ガールズからナディン・バーン(Nadine Byrne)がソロで完成させた『ア・ディッフェレント・ジェスチャー』もポップやアカデミックにはない新境地を編み出したことはたしか。同じくフェネスがウルヴァーというブラック・メタルのバンドに参加していることもよく知られている。

 エレクトロニカとメタルを融合させた際、KTLのそれがジェフ・ミルズのようなハード・スタイルを模索したものだとしたら、カナディアン・ブラック・メタルのウォルドからフォートレス・クルックドジョー(Fortress Crookedjaw)がソロではじめたブラック・メカは果たしてどのような文脈でジャンルの壁を乗り越えたといえばいいのか。ウォルド名義の『ポストソシアル』と同じく〈デス・オブ・レイヴ〉からとなったデビュー・アルバム『AA』(2015)はまだいい。メタルのテクスチャーが少しは残っている。しかし、セカンド・アルバムとなる『I.M. メンタライジング』は冒頭からパウウェルとレジデンツの共演ではないか。諧謔と凶暴性の同居。運命論が重くのしかかってくるようなメタルの美学は微塵もなく、強いて言えば笑い死にしたくなるような多幸感に覆い尽くされている。サイドAはそれで最後まで押し切られる。

 後半はエレクトロニック・ミュージックの表情がもう少し多様化され、スラッシュ化したエレクトロのような展開へ。エンディングはややストイックで、アシッド・ハウスのように少しずつコントロールを失っていく。そして、乱暴なミニマル・ミュージックは死んだように静まり返り、もっと聴きたいという願いは届かない。曲名には超自然を思わせるタイトルが多々つけられている。そういう意味では、あまりお近づきにはなりたくないタイプかもしれないけれど、いまのところ文句を言う気はない。音楽が素晴らしければそれでいい。ちなみにナジャよりもわずかにキャリアが長いウォルドは〈エディション・メゴ〉傘下でステフェン・オモーリーが主催する〈イデオロジック・オーガン〉からもリリースがあり、クレジットにはラシャド・ベッカーの名前も見受けられる。もしかすると後者からは少なからずの影響を受けているのかもしれない。わからないけれど。

 最初は『ダーク・ドゥルーズ』でも読んで、破壊の気分で聴こうかなと思っていたんだけれど、なんと言うか、すっかり愉快な気分になってしまった。いやいや。

The Necks - ele-king

季節の即興音楽、あるいは形式に還元されざる余剰の響き

演奏の展開はいつも同じで、まず手探りのようにはじまり、まんなかで盛り上がり、静かにおわる。この曲線がかならずついてまわる。これ以上の形式がないとしたらまったく空疎だとしかいいようがない。 ――ギャヴィン・ブライアーズ

 昨年の夏、とあるミュージシャンが率いるグループのライヴを観に行った話から始めよう。そこでは電子楽器とアコースティックな楽器が入り混じった7、8人ほどの演奏者たちによる、いくらか「決めごと」を設けられた即興アンサンブルが披露されていたのだが、演奏が開始したとき、もの凄く奇妙な体験をしたことをよく覚えている。まるでサイン波のような電子的な音を発する管楽器や声が、エレクトロニクスの響きと混ざり合い、どちらがどちらともつかないような、どの音がどの人間から発されているのかわからなくなるような、視覚的な風景と聴覚的な体験が撹乱されるような不可思議な音響空間が成立していたのである。「これはすごい! ここからどういうふうに展開していくのだろう」と思ってしばらくすると、しかしアンサンブルは、そのミュージシャンの音盤で経験したことのある「あの感じ」に近づきはじめていく。それぞれのプレイヤーが短いフレーズを繰り返すことで即興を織り成していくその演奏は、そこからは案の定「あの感じ」を追体験/再確認させるかのようにして、予想した通りの展開になっていった。探り探り始められたアンサンブルは盛り上がりをみせ、その後静かになっていき終了した。

 もちろん、音盤と同じ展開をみせるのは、なにも悪いことではない。むしろそのミュージシャンの変わらぬ個性を聴くことができた、と言うこともできる。しかしその日の演奏で素晴らしかったのはやはり、最初の段階でみられた「聴いたことのない」サウンドだったのだ。そしてこと即興演奏に関しては、互いの探り合いから始まり、それがノってくると盛り上がり、そこから終わりへ向けて静かに収束していく、という展開は、このミュージシャンに限らず広くみられるものである。

 こうした展開を前にして、即興音楽の形式の単調さに絶望し、作曲へと活動領域を移したのが、かつてデレク・ベイリーのもとでベーシストとして活躍していたギャヴィン・ブライアーズだった。たしかに言葉に還元してしまえば、多くの即興音楽はことほどさように単純極まりない形式をとっているようにみえる。じっさいに、こうしたある種の予定調和のような展開に安住する即興演奏家も少なからずいる。そのほうが展開を気にしなくていいぶん、より「自由」だとも言えるのかもしれない。だがしかし、同時に、言葉にしてしまえば単純だとしても、現実に鳴り響く音楽はより複雑で多様なありようをみせているものである。冒頭に書き記したライヴの体験でいえば、その展開と成り行きは「あの感じ」から逸脱するものではなかったのだとしても、少なくともその始まりの部分では、「探り探り」でありながら、この言葉には絡め取ることのできないようなサウンドに満ち溢れていた。そしてそうした言語化しえないような、還元された形式の外へと零れ落ちる響きを聴かせてくれるグループとして、たとえばここに、ザ・ネックスがいる。

 オーストラリア連邦最大の都市であるシドニーを拠点に活動してきたザ・ネックスは、ピアノのクリス・エイブラムズ、ベースのロイド・スワントン、ドラムスのトニー・バックという3人のメンバーによって1987年に結成された。かつて90年代の初めごろ、トニー・バックは日本とも交流をもち、大友良英らとともにバンドを組んでいたので、そこから彼らの存在に辿り着いたという日本のリスナーも多いのかもしれないが、とりわけ昨年の暮れにザ・ネックスは活動30周年を前にして初めての来日を果たし、東京、大阪、滋賀の3箇所でツアーをおこなったので、そのことから彼らの存在を知るに至った人も多いのかもしれない。東京公演にはわたしも駆けつけ、1時間近くも続けられるトリオ・インプロヴィゼーションに圧倒された。しかしながら彼らの音楽は言葉にしてしまうともの凄く単純である。メンバーのそれぞれが短いフレーズをひたすら繰り返す。彼らはそのフレーズを即興でゆるやかに変化させていく。時折フレーズ同士が絡み合い、グルーヴする場面もみられるが、無関係に並走することもある。3人ともにフレーズの繰り返しをおこなっているため、通常の即興演奏におけるような丁々発止のインタープレイはみられず、まるで植物の生長のような、あるいは広々とした空に流れる雲のような、じっと耳を凝らしていないと変化していることにさえ気づかないような緩慢な移り変わりを聴かせてくれる。それは静かな演奏から幕を開け、中盤では盛り上がりをみせ、また静かになって終えられる。

 ブライアーズが非難した単純極まりない形式である。けれどもそれは、予定調和と言ってしまうとちょっと違う。盛り上がった後に静まりかえって終わるのだろうなという予想はつく。しかし彼らの音楽は、その始まりからは予想だにしないような成り行きをいつも聴かせてくれるのだ。それはたとえば、緩慢な四季の移ろいが、春の後には夏が来て、秋の後には冬が来るとわかっていながらも、昨年の夏と今年の夏が異なっていることにも似ている。反復することが同じ結果をもたらすのではなく、繰り返すことが異なる結果をもたらすようなものとしての音楽。

 そんな彼らの19枚めのアルバムがリリースされた。リリース元は、1994年以来ザ・ネックスの音源を発表し続けてきた彼らの自主レーベル〈フィッシュ・オブ・ミルク〉ではなく、エレクトロニカ/電子音響作品で知られる〈エディションズ・メゴ〉の傘下にあり、Sunn O)))のスティーヴン・オマリーが監修するレーベル〈イデオロジック・オルガン〉である。過去の大半のアルバムでは1時間近くの長尺の演奏が1曲だけ収録されているというパターンが多く、それは74分間もの長さを記録することが可能なCDというフォーマットが、音楽の流通手段として人口に膾炙し始めたのと同時期に、ザ・ネックスが活動を始めたことと無関係だとは思えないのだが、ならばなおさら本盤が、2枚組LPおよび音源配信のみで出されているということは興味深い。収録されているのは15分ほどの曲が2曲、20分ほどの曲が2曲の計4曲で、それらはちょうどLPの片面の長さに相当する演奏である。だがCDというフォーマットの栄枯盛衰を眺め続けてきた彼らにとって、これがLPでリリースする初めてのアルバムというわけではなく、過去に『Mindset』(2011)『Vertigo』(2015)と2枚のLPアルバムを出している。

 ついでにザ・ネックスのこれまでの活動を音盤から振り返ってみると、彼らは1989年にファースト・アルバム『Sex』を発表し、同じフレーズが1時間近くも延々と続けられるその衝撃的な音楽を世界に提示した。しかし翌年にリリースされたセカンド・アルバム『Next』(1990)では早くもコンセプトをやや変えて、6曲の短い演奏(とはいえ、うち1曲は30分近くある)を、複数のゲストを迎えながら収めたものとなっている。続く3枚め『Aquatic』(1994)はそれから4年後にリリースされ、30分弱の、タイトルと同名の楽曲が2曲収録されているのだが、片方はトリオで、片方はハーディ・ガーディ奏者をフィーチャリングしたカルテットによる演奏。4枚めのアルバム『Silent Night』(1996)では1時間1曲というスタイルに戻り、しかしそれが2枚組アルバムとなって2曲まとめて発表された。その後は映画音楽を手掛けそのサントラ『The Boys』(1998)を出したり、ライヴ・アルバム『Piano Bass Drums』(1998)をリリースしながらも、スタジオ・アルバムとしては1時間1曲というスタイルが踏襲されていく(『Hanging Gardens』(1999)『Aether』(2001))。もちろん、同じスタイルとは言っても内容はそれぞれに異なるモチーフが扱われているためまったく別ものの演奏となっている。そして2002年にリリースされた4枚組のライヴ・アルバム『Athenaeum, Homebush, Quay & Raab』は、オーストラリアにおけるグラミー賞とも言うべきARIAミュージック・アワードにノミネートされた。続けざまにライヴ・アルバム『Photosynthetic』(2003)を出した彼らは、同年にリリースした『Drive By』(2003)でARIAミュージック・アワードのベスト・ジャズ・アルバムに選出されることになる。12枚めとなるアルバム『Mosquito / See Through』(2004)は2枚組で、木片が飛び散るような物音と力強いベースのグルーヴなどは、同じく1時間1曲の2枚組だった『Silent Night』を思わせもする。そしてさらに『Chemist』(2006)では2度めのベスト・ジャズ・アルバムに輝いてしまうのだ。同作品はそれまでのスタイルとは異なり、20分前後の楽曲が3曲収録されている。スティーヴ・ライヒmeetsロック・ミュージックな3曲め“Abillera”は、ポストロックにも通じるサウンドを聴かせてくれる。また、このあたりからドラムスのトニー・バックが積極的にギターも使用し始める。4枚めのライヴ・アルバム『Townsville』(2007)を挟んでからは、2曲収録されたLP作品『Mindset』(2011)を除いて、1アルバムに長尺の1曲というスタイルで『Silverwater』(2009)、『Open』(2013)、『Vertigo』(2015)の3枚の作品をリリースしていく。

 ここまで振り返ってみて興味深いのは、ゼロ年代の終わりごろを境にして、彼らの音楽性がやや変化しているということである。それまでは「リフ」とも言うべきベースとドラムスの具体的/音楽的なフレーズの反復を基盤にして、その上で主にピアノが装飾的な彩りを加えていく、というアンサンブルの組み方がなされていたのだった。場合によってはベースとドラムスは徐々に変化するということもなく、『Sex』のように全く同じフレーズを1時間ひたすら続けるということもあった。しかし『Townsville』あたりからそうしたスタイルに変化の兆しが見え始める。ベースとドラムスはともに同じリズムを奏でるのではなく、それぞれが独立し各々のフレーズをゆるやかに変化させていく。そのフレーズも具体的/音楽的というよりは、反復されることで初めてリズムやパターンを見出せるような抽象的/音響的なものとなっていく。『Open』や『Vertigo』などに顕著だが、リズムを生み出す下部構造としてのベース&ドラムスに対して彩りを添えるウワモノとしてのピアノ、というのではなく、むしろ三者がそれぞれリズムもサウンドも担いながら三様に変化していき、それらが絡み合いときに衝突しあるいは共振するアンサンブルといったものになっていく。その時点でザ・ネックスは結成からすでに20年以上経っているわけだが、彼らの音楽がクラウト・ロックやミニマル・ミュージックとは全く異質な独自のインプロヴァイズド・ミュージックとなったのは、むしろここからのようにも思える。しかも彼らはあくまでピアノ・トリオという伝統的なジャズ・フォーマットを踏襲した上でそれをおこなっているのである。新たな音楽性へと突き進むためにメンバーが次々に楽器を持ち替えていくというわけではなく。

 そして本盤『Unfold』はまさにそうしたザ・ネックスに独自の音楽が収められた現時点での最高傑作である。叙情的なピアノの旋律から幕を開ける1曲め“Rise”は、さらにオルガンの揺らめく響きとベースのアルコ奏法による持続音が漂うなかで、雨音のようにパラパラと叩かれるシンバルが絡み合い、終始穏やかな音の風景を聴かせてくれる。2曲めの“Overhear”では、アルコ奏法の持続音が鳴り響く一方で、ドラムスは速度感のあるパルスを刻んでいき、そしてそれらのサウンドの波に乗るようにしてオルガンは旋律を奏で続けていく。より「波」の形容が相応しいのは3曲め“Blue Mountain”だ。ベースは太い低音を出しゆったりとしたリズムを形成し、ドラムスは強くなったり弱くなったりするスネアやシンバルのロール奏法を聴かせ、そこにオルガンの揺らめきが加わるサウンドは、まるで打ち寄せては引き返していく浜辺の波のようでもある。だが後半では、ドラムスのリズムが速度を増していき、それに呼応するようにベースとピアノも変化することで、演奏の緊張感が高まっていく。その高まりを打ち破るかのように4曲め“Timepiece”は強烈な打撃音から幕を開ける。不規則なパルスがポリリズミックに絡み合うその演奏は、しかしながらしばらく聴いていると、ある周期で反復されているために一定のグルーヴを生み出しているのがわかるようになる。そこにオルガンが入ったサウンドは、どこかエレクトリック期のマイルス・デイヴィス・グループを彷彿させる。あるいはその揺らぎモタつくシャッフル・ビートは祭囃子のようでもある。それはいくつもの自動機械が置かれた工場のなかで、それぞれの機械が自らの周期で反復することから生まれる、空間全体のアンサンブルを耳にしていると形容することもできる。

 1時間に長尺の1曲だけが収録されたアルバムというのは、いかにも取っつき難そうに思えるかもしれず、その意味では本盤は、抽象化/音響化以降のザ・ネックスの音楽が、それぞれに特徴的な4つの楽曲として、LP片面というほどよい短さで収録された、彼らについて知るための導入口として打って付けのアルバムになっている。ちなみに余談だが、本盤に収録されている楽曲の長さを合計すると74分40秒弱になり、CD初期の収録可能時間74分42秒とほぼ一致する。それが偶然の産物なのか意図的に編集されたものなのかは定かではないものの、たとえLPというフォーマットでリリースされた「ほどよい短さ」の楽曲であったとしても、ザ・ネックスの音楽にCDのフォーマットが纏わりついているという事実は、基本的にはアコースティックなピアノ・トリオでありながら、多重録音やプログラミングにも取り組んできた彼らの、音響テクノロジーとの関わりを象徴的に示しているように思える。この30年はザ・ネックスの活動の軌跡であるとともにCDというフォーマットの栄枯盛衰の歴史でもあったのだった。生きた即興音楽を録音するとは如何なる行為なのか? それは避けられるべき演奏を殺す行為なのだろうか? 少なくともザ・ネックスにとってそれは、彼らの表現を成立させるための基盤になってきた条件のひとつであった。彼らの即興音楽はCDになることで死物と化するのではなく、むしろそのフォーマットによって生み出された身体感覚を備えることではじめて可能になるような特異性を内包している。それはLPでは短すぎ、音声ファイルでは際限がなさすぎるのである。そうした特異性の影が、「ほどよい短さ」であるLPの片面に収められた演奏にも、ひっそりと刻印されていると考えることはできないか。余談が過ぎたようだ。ともあれ、これまでとはレーベルを変えて出されたということも含めて、活動を始めてから30周年を迎えたザ・ネックスにとって、本盤のリリースが画期となる出来事であることはあらためて述べるまでもないだろう。

 最後に付言しておくと、ザ・ネックスの音楽にじっくりと耳を傾けてみるならば、ここまで述べてきたような様々な発見と出会いと驚きがあるものの、かといってバックグラウンド・ミュージックのように聞き流すことができないものであるというわけではない。その点では、集中的聴取に耐え得る強度を備えた音楽でありながら、同時にその場の空間に溶け込んでしまうこともできるような特徴もあるという、「環境音楽」(ブライアン・イーノ)としての側面を備えている。聴感的にもアンビエント・サウンドやポスト・クラシカルな傾向と共振するものがあるとも思う。とはいえ、やはり彼らの音楽はあくまでも「即興音楽」なのである。少なくともこの側面なくして彼らの音楽は成立することはないだろう。なぜなら事前に音を配置しては決して得られることのないようなサウンドの移り変わりこそが、ザ・ネックスの音楽に特有の独自性であると言うことができるから。そしてそれはやはり、変わりゆく移ろいそのものの美しさというものであり、あるいはわたしたちが気づかぬ間にそこで生成し変化していき、ふと振り返ると美しく佇んでもいるような、迷路のように複雑に入り組んだ「季節」に似ている。

5年目のJOLT in Japan ! - ele-king

 熱心な弊媒体読者はJOLTの見出しに一昨年の〈JOLT TOURING FESTIVAL 2015〉を思い出されたかもしれない。PHEWと灰野敬二+大友良英がトリを飾った豪華きわまりないあの2デイズは、現在進行形の音楽の切っ先の鋭さをうかがわせただけでなく、日豪両国のシーンの厚みというか深みというか、そのようなものを垣間見せた。オーストラリアのソニックアーツ組織「JOLT Arts INC.」の継続的な活動が成熟をみせた場面だったと記憶するが、2017年のいま、JOLTの試みはさらに加速している。
 日本では5年目に入ったJOLTはこのたび、女性アーティストに特化したプログラムを披露する。豪州からは、JOLTのディレクターでもあるジェイムス・ハリック、そのハリックが率いるボルト・アンサンブルからダブルベースのミランダ・ヒルとチェロのカーウェン・マーティンが本ツアー用の編成で来日。メルボルンのノイズ・トリオ、タイパン・タイガー・ガールズのギタリスト、リサ・マッキニーは単独でドローン以後のフィードバック・ノイズを聴かせるという。迎え撃つ日本勢は箏の八木美知依とヴォイスのヒグチケイコ。箏と身体に潜在する響きをあますところなくひきだす両者のパフォーマンスが、オーストラリア勢とどうかさなりあうか、ここでしかお目にかかれない瞬間を目撃できるのが、何度もいいますがJOLTのたのしさでありおもしろさです。前日には野毛アンダーグラウンドと共催で、横浜のツァルトでも関連イベントもあるようです。両日ともぜひ! (松村正人)

2017年4月14日(金)
JOLT Presents The Book of Daughters
六本木SuperDeluxe

開場:19時/開演:19時30分
料金:予約2300円/当日2800円(ドリンク別)
出演:
八木美知依(electric 21-string koto, 17-string bass koto, electronics, voice)
BOLT ENSEMBLE(Miranda Hill: bass, Caerwen Martin: cello)
Lisa MacKinney(guitar, feedback)
James Hullick(voice, electronics)+Keiko Higuichi(voice/electronics)
Akiko Nakayama(Alive Painting)
DJ Evil Penguin
https://www.super-deluxe.com/room/4285/

2017年4月13日(木)
Noge Underground and JOLT Presents The Book of Daughters
桜木町ZART(横浜市中区花咲町2丁目67-1)

開場:19時/開演:19時30分
料金(当日のみ):1000円
出演:
a qui avec Gabriel(accordion)
Lisa MacKinney(guitar, feedback)
BOLT ENSEMBLE(Miranda Hill: bass, Caerwen Martin: cello)+Cal Lyall(banjo)


八木美知依


Lisa MacKinney

Mount Kimbie × James Blake - ele-king

 もう3年も経ったんだ。そろそろ新作が出てもいい頃合いなんじゃないか――ちょうどそんなふうに考えていたところだった。そしたら本当にきちまった。
 つい先日 Spotify でスタジオ・プレイリストを公開したばかりのマウント・キンビーだが、そんなかれらが昨晩、突如新曲“We Go Home Together”を配信にてリリースした。しかもその新曲にはジェイムス・ブレイクがヴォーカルで参加している。ポスト・ダブステップの地平を押し広げた両雄の共演となれば、これは見逃せない。アルバムへの期待も高まるね。

3年振りの新曲に盟友ジェイムス・ブレイクが参加!
MOUNT KIMBIE - WE GO HOME TOGETHER FT JAMES BLAKE
緊急リリース!

「ポスト・ダブステップ」という言葉が広く認知され、ひとつの分岐点を迎えたエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、その主役となったジェイムス・ブレイクもかつてライヴ・メンバーとして在籍し、「彼らのことを追いかけながら自分の流儀を編み出していった」と公言するシーン最重要バンド、マウント・キンビーが、盟友ジェイムス・ブレイクをヴォーカルに迎えた3年振りの新曲“We Go Home Together”をリリース! 写真家/映像作家のフランク・ルボンが手がけたミュージック・ビデオとともに公開!

MOUNT KIMBIE - WE GO HOME TOGETHER FT JAMES BLAKE
https://www.youtube.com/watch?v=Q-7wzb7sRg8

またマウント・キンビーは、ロンドン拠点のネットラジオ局NTSにて、今週より4回にわたって番組のホストを務め、ジュリア・ホルター、ケイトリン・アウレリア・スミス、コナン・モカシン、サヴェージズ、アッシュ・クーシャ、ジェイムス・ブレイクらがゲストとして出演する。

label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: Mount Kimbie
title: We Go Home Together (feat. James Blake)

release date: 2017/04/04 ON SALE

iTunes Store: https://apple.co/2nMLxsQ
Apple Music: https://apple.co/2ortM56
Spotify: https://spoti.fi/2oOLTyt

Klein - ele-king

 チーノ・アモービやムーア・マザーといったアフリカ系の若手がアルカやD/P/Iに影響を受けているのは明らかだろう。それぞれにトラップや2ステップといったリズムを根底に忍ばせがら、その表面は混沌としたコラージュ感覚で覆い尽くされ、そうかと思うと無に近い空間性を自在に行き来する。ベタっとしたノイズに沈みがちなゼロ年代式のノイズ・ドローンがそこにはかけらも残響していない。同じインダストリアル・ミュージックを志向してもゴシックとアシッドの違いがあり、まあ、いってみればノイズでさえもファンキーに跳ね回る。それこそブラック・エレクトロニカとかなんとかいってみたくなるし、女性作家が多いのもひとつの特徴か。ボンサイやンキシ(Nkisi)を始めとする最近のダンス・アクトにもその余波は覆い被さっている。J・リン、OKザープ(Okzharp)、ニディア・ミナージュ……

 それらを併せ持つというのか、アフリカ系にフォーカスしたチーノ・アモービのレーベルから「ボンデージ007」というEPをリリースしていたクラインが、1年ほど前にハート型のメモリー・スティックでリリースしていたデビュー・アルバム『オンリー』がブリストルのレーベルによってアナログ化された(これをようやくリプレスで手に入れた)。セカンド・サマー・オブ・ラヴみたいなジャケット・デザインですよね、これがまた(つーか、もしかしてノイ!の影響?)。ソランジュがサイケデリックR&Bと呼ばれるなら、これはもうフリーク・アウトR&Bとでもいうしかないでしょう。ブリストルが反応するのは無理もない。

 『オンリー』というタイトルには文字通り、彼女の自信が漲っている。新しい音楽というのは、それまで存在していた世界に疎外感を覚えていた人にしかつくれないと僕は思っているけれど、これまでアフリカ系の女性というのはその最たる位置にいたわけで、『オンリー』というタイトルはそうした疎外感をそのまま言い表したものとも言える。実際、なんと描写していいのかわからない曲が多く、スクリューの掛けすぎでドローンとダンス・ミュージックにはぜんぜん壁がないし、クリシェ化したビートもないのに全体に見事なほど統一感を持っているところは驚異的としか言いようがない。チーフ・キーフの影響が感じられる“ギャズ・シティ(Gaz City)”やノイ!がジュークをやっているような“ファイン・ワイン(Fine Wine)”など、先達の影がまったくないわけではないので、無理にまとめればハイプ・ウイリアムスのブラック・ミュージック・ヴァージョンとかなんとか(?)。後半では、このところ懐古趣味にひた走っているアンビエント・ミュージックを強引に未来へと連れ去るようなドローン・ダブが展開され、この世のものとも思えない桃源郷から一気にブラック・ミュージックのメランコリーを凝縮したようなバッド・トリップに突き落とされたり(ここマジでヤバいです)、とにかく想像以上にメンタルがいじくりまわされる。どれだけハートが強いと言われるゆとりでも……まいっか。

 クラインはちなみにナイジェリアにルーツを持つらしく、現在の活動場所はロサンゼルスとロンドンと、ナイジェリアのラゴスだそう。ちょっと脱線するけれど、ナイジェリアの70年代とドイツの70年代というのは、どういうわけか音楽的なピークが重なる時が多く、いわゆる欧米で起きたサイケデリック・ムーヴメントに対して音楽家の反応する速度が同じだったのかなーと。クライン『オンリー』を聴いていると、そういうことも考えてしまう。


special talk : BES × senninshou - ele-king


BES - THE KISS OF LIFE
ILL LOUNGE

Hip Hop

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仙人掌 - VOICE
Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 BESと仙人掌というふたりのラッパーがいなければ、少なくとも2000年代中盤以降の東京の街から生まれるラップ・ミュージックはまた別の形になっていただろう。ふたりは恐縮して否定するかもしれないが、これは大袈裟な煽りではなく、厳然たる事実である。BESと仙人掌はそれぞれ独自のラップ・スタイルを発明して多くのフォロワーも生んだ。どういうことか?

 作品や彼らのキャリアや表現について個人的な論や説明を展開する誘惑にも駆られるが、ここでは多くを語るまい。ひとつだけ端的に言わせてもらえれば、余計な飾りつけなしの、1本のマイクとヴォイスとリズムのみでラップの表現を深化させたのがBESと仙人掌だった。ここにその両者の対談が実現した。ふたりを愛するヘッズはもちろん、彼らをまだよく知らない『ele-king』読者の音楽フリークにもぜひ読んでほしい。そして、仙人掌が2016年に発表した一般流通として初となるオリジナル・ソロ・アルバム『VOICE』、BESが3月に出したサード・アルバム『THE KISS OF LIFE』を聴いてみてほしい。『THE KISS OF LIFE』のプロデューサー、I-DeAにも同席してもらった。ふたりのラッパーの物語は、今年20周年をむかえた池袋のクラブ〈bed〉からはじまる。


ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。 (BES)

BES from Swanky Swipe feat. 仙人掌, SHAKU“Check Me Out Yo!! Listen!!”

ふたりの最初の出会いをおぼえてますか?

BES:〈bed〉ですね。仙人掌は昔からラップが上手くて、初めてライヴを観てすげぇ食らったのをおぼえてる。それで気づいたらウチに来て遊んだりするようになってた。メシア(the フライ)がまだDOWN NORTH CAMP(以下、DNC)にいたときで、CENJU(DNC)もTAMUくん(DNC)もいた。

仙人掌:最初に遊んだのはその4人だったかもしれないっすね。SORAくん(DNC)もちょっといたと思う。そのとき俺は〈bed〉でライヴしてて、気づいたらタカさん(BES)が「そうとう酔っぱらってらっしゃいますね」みたいな感じでいきなり肩組まれて、「お前、とにかくウチ来い」って。俺、まだ高校生だった。

BES:ははははは。17とか?

仙人掌:そうっすね。タカさんの自由ヶ丘の家にいそいそと遊びに行って、それからホント全部教えてもらいましたね。

BES:教えてもらいましたよ、俺も。ENYCEの読み方とかね。俺が「エニシー」って読んでたら、仙人掌に「いや、違います。エニーチェです」って言われてさ。

仙人掌:ははははは。〈bed〉で〈ELEVATION〉(2001年にスタート、2012年にファイナルを迎えた)っていう長く続いたパーティがあったんですけど、そのパーティの第4月曜日にSWANKY SWIPEと俺らが出てたんですよね。当時はまだSWANKYじゃなくて、SPICY SWIPEって名前でやってましたっけ?

BES:そうそうそう。

仙人掌:SWANKY SWIPEに名前が変わったころになると、〈bed〉の人たちはみんな「ヤバいラッパーはBESでしょ!」みたいな感じだった。DJのサイドMCでバリバリカマしているタカさんをフロアで観てましたね。

BES:〈ELEVATION〉がはじまる前に〈bed〉で〈URBAN CHAMPION〉(1999年スタート、現在まで続く)っていうパーティがあったんですよ。そこで“煽りMC”って言うんですか? それをやりまくって盛り上げまくってた。そこにPorsche(SWANKY SWIPEのDJ)もDJ MOTAI(〈URBAN CHAMPION〉のオーガナイザー)もいた。あとIKDくん(NOISE2 SOUND SYSTEM)もいたね。

仙人掌:Gatchaくん(〈bed〉でおこなわれているパーティ〈the River〉のオーガナイザー)もいましたね。〈bed〉がとにかくヤバいラップの見本市だった。そのなかでSWANKYは俺にとって特別だった。SWANKYが新曲をやると、当たり前にフロアのいちばん前に行っていた。突発的に出演者同士がライヴでヴァースに混ざったり、次のライヴでサイドMCやりあったり普通にありましたね。

BESさんの曲のなかでいま思いつく印象的な曲はありますか?

仙人掌:1曲にしぼるのはなかなか難しいですね。ただ、『Bunks Marmalade』(SWANKY SWIPEのファースト・アルバム。2006年)の前にもたくさん曲があって、“Check Me Out Yo!! Listen!!”でも当時の曲のフックを引用させてもらったりしてますね。ライヴもいちばん観ていたし、当時の印象が強いんですよね。タカさんもEISHINくん(SWANKY SWIPEのビートメイカー/ラッパー)もステージでふらふらで壮絶でしたね。

BES:ははははは。

2006年にSEEDA & DJ ISSOの『CONCRETE GREEN.1(改)』がリリースされて、あのコンピ・シリーズが本格的に動き始めますね。そういうなかで、BESと仙人掌というラッパーはそれまでの日本語ラップとは異なるラップのスタイルを打ち出していったと思うんです。自分たちのスタイルをどのような意識で作り上げていきましたか?

仙人掌:『CONCRETE GREEN』は俺らにとっては“第2段階”って感じなんです。その前があるんです。いちばん最初にタカさんの家でラップの話をしているときに、タカさんが強調していたのは「とにかくノれるラップ、フロウなんだよ」ってことです。「いかに“フロウを崩せるか”なんだ」って。それで、ブーキャン(ブート・キャンプ・クリック)とかいろんなダンスホール・レゲエとかを見て、聴いて、学んでいった感じですね。

BES:昔、レゲエの現場に行ったね。バスタ(・ライムス)もメソッドマンもレッドマンもフージーズもみんなレゲエを使うじゃないですか。俺もレゲエが大好きだったからヒップホップとレゲエのふたつを押さえときゃ間違いないと考えてた。だから、ラップをあえてレゲエ風にしようとかではなくて、ヒップホップとレゲエが俺のフロウのなかで自然といっしょになっていった。そういう俺の感覚と合致していたのが仙人掌だった。あと、SIMONだね。「こういうことするヤツいた! 見つけた!」って。

仙人掌:SIMONは俺と同い年で、18、19のころに出会ってるはずですね。SIMONも当時からずば抜けてヤバかった。

BES:USの流行にただ流されるんじゃなくて、自分の好きなことをやっていたよね。〈SON〉(〈SON OF NINJA〉という〈ニンジャ・チューン〉傘下のレーベル)っていうアンダーグラウンド・レーベルがあって、そういうレコードを〈ギネス・レコード〉とかで買ったりもしていたね。

仙人掌:〈ギネス・レコード〉で日本人のブレイクビーツを2枚買いしたりもしてましたよね。

BES:知らないレコードでも試聴して「かっけー! これ2枚買いだ!」って買ってDJにライヴで2枚使いしてもらってたね。

仙人掌:「このビートはヤバイ!」って反応したときのタカさんの体の動きはすぐわかった。SWANKY SWIPEはライヴで使ってるビートも他と違ってた。俺らの周りでネプチューンズやカニエ、ジャスト・ブレイズなんかにいちばん最初に反応してたのもタカさんだった。ユニークなビートに対しての嗅覚がありましたね。ブーキャンとかの裏ノリを維持しつつ新しいビートのフォーマットにハメていくフロウを作り出していったラッパーは、俺の知る限りでは間違いなくタカさんですね。EISHINくんの存在もデカかったですよね。

BES:超デカかった。EISHINは俺よりもアンテナを広げてるヤツで、のちにヒップホップ以外も大好きになっていって、ソウルを聴きながらチルしてゆっくりする時間を設けたりするようなヤツだった(笑)。ネプチューンズがプロデュースしたバスタの曲が流行ったときにEISHINとふたりでトライトンでビートを作ったりもしたね。

仙人掌:EISHINくん、J・ゾーンが超好きでしたよね。何かと言うと、「J・ゾーン、聴いたか?」って言っていた記憶がある。そういうセンスがすごく面白かった。

BES:グレイヴディガズのアルバムに入ってる、(体を捻らせながら)こんなんなっちゃうようなリズムのビートが超好きで、そういうのをDJでかけたりしてたよね。

仙人掌:俺、EISHINくんとタカさんとの会話でいまでもおぼえていることがあるんですよ。Shing02が『400』(2002年)を出したときに、EISHINくんが「Shing02のラップはキレてる。上手いよね」みたいなことを語っていたんですよ。そういう、変わったリズムへの嗅覚のあるEISHINくんのShing02の聴き方とかも新鮮だった。ラップやリズムの捉え方が圧倒的に独特だった。

BES:俺ら、韻の数とか数えてたしね。例えば「あいう」の母音の単語でヴァースをはじめたら、ヴァースの最後も「あいう」の母音の単語をもってくるとかね。そういう作業もしていたから当時はラップを作るのに超時間がかかった。

SEEDA feat. 仙人掌“山手通り”

SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。 (仙人掌)

ふたりが共作した曲はいくつもありますが、いちばん最初はどの曲でしたか?

仙人掌:盛岡のDJ R.I.Pさんとの曲ですね。

BES:あれ? 何だっけなぁ。俺、超ド忘れしてるぞ(笑)。

仙人掌:未発表曲だけど、俺も盛岡の人たちもみんな持ってますね。IKDくんの家で録りましたね。

BES:今度聴かせて。俺が当時の仙人掌でおぼえてるのはファボラスの曲のトラックに乗せてラップしてて超かっこよかったことだね。

仙人掌:ああ、ありましたね。それはたしか、〈ELEVATION〉の6周年か7周年のときに作ったエクスクルーシヴ音源ですね。あのときはエクスクルーシヴをかましまくってましたよね。やっとラップを録ることをおぼえたぐらいじゃないですか。

BES:そうそうそう。いまはRECの仕方もリリックの書き方も当時とは変わっちゃってるけど、あのときが基礎になっているね。『CONCRETE GREEN』ぐらいからちょっとスタイルや描写の仕方も変わって、スキル的にも上手くなっていった。

仙人掌:『CONCRETE GREEN』からタカさんもラッパーとして加速していったと思う。レコーディングの仕事も増えていきましたね。〈bed〉の人たちだけじゃなくて、メジャーでやっているようなアーティストからも「BESとSWANKYがヤベえぞ」という雰囲気が出てきた。そこで俺はちょっとさびしい気持ちになるというね(笑)。

BES:ははははは。俺も行く先々でDNCの宣伝をして歩いてたんだよね。「仙人掌っていうヤバいラッパーがいる」ってさ。

仙人掌:SEEDAくんを紹介してもらったのもタカさんの家でしたね。元々SEEDAくんはTAMUくんを昔から知っていて(SEEDA、TAMU、EGUOでMANEWVAというグループを組んでいた)、俺が会ったのはそのときが初めてだった。

BES:SEEDAと仙人掌はその後“山手通り”(SEEDAのメジャー・デビュー作『街風』収録。2007年)を作ったりしたよね。

仙人掌:そうですね。タカさんにはいろんな人を紹介してもらった。

BES:あのカナダ人に会ったことおぼえてる?

仙人掌:え? え? ああぁぁぁー、わかります! うわー!(笑)

BES:俺とSEEDAといっしょに会いに行ったでしょ。

仙人掌:あの双子のラッパーの! 彼に「ラップ持ってないか?」って訊いたら、「ラップ? いまやってやろうか?」って答えてきて、「違ぇ、違ぇ、そのラップじゃなくてサランラップだよ!」って(笑)。

BES:そんなこともあったね(笑)。

仙人掌:タカさんがマックスで危ないときにもいっしょにいたりもしましたしね。3、4日寝てないのも普通だったり、テーブルにアサヒのビールの空の缶がブーーーワーーーッと積んであって、灰皿もブーーワーーーッて山盛のタバコだったり。

BES:鼻地獄だったみたいっすよ。

仙人掌:ははははは。そういうダークな時期もありましたね。タカさんとラップしたり遊んでいるうちに謎の状況に巻き込まれていっしょにタクシーに乗って向かうと、「俺がいるべきじゃない場所にいるかもしれないぞ。ヤベえ……」ってこともありましたね(笑)。そういう意味でもホントにいろんな貴重な経験させてもらいましたよ。タカさんはそういう時期を経て、『REBUILD』(2008年)をリリースしていったんですよね。

BES:『REBUILD』を出したあともまた俺はいろいろ食らっちゃったけどね(笑)。

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俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。 (仙人掌)

SEEDA feat. BES, 仙人掌“FACT”

『CONCRETE GREEN』と言えばいわゆる「ハスリング・ラップ」をシーンに認知させて、定着させたコンピでもありましたね。一方で、BACHLOGICがプロデュースした、BES、仙人掌、SEEDAの共作曲“FACT”(『CONCRETE GREEN.3』収録。2006年)も重要な曲ですよね。

BES:そのころの俺はもうファックドアップでしたね。金があるときとないときが激し過ぎて山あり谷ありで大変だった。子どももできて育てなくちゃならなかったですしね。“FACT”を作ってるときはまさにそういう時期ですね。あの曲は現実を目の前にして困惑する自分も出ている。

仙人掌:あの曲をI-DeAさんの家で録ってるときにちょうど子どもが産まれそうな時期でしたね。「(録音中に)嫁が産気づいちゃったらすみません」みたいなことをSEEDAくんに話してたのをおぼえてます。

BES:“FACT”は思い浮かぶリリックをそのまま書くっていうテーマがあった。『REBUILD』に入ってる仙人掌との“Get On The Mic”は、俺が「そろそろコレじゃダメだ。マイクとラップで生きていこう」という気持ちで作った曲でもありましたね。

仙人掌:だから実際、ハスリング・ラップがどうこうでもないと思うんですよ。SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。リリックの言葉遣いに迷っていたり、そのころになるともう韻の数を数えてやっていたら……

BES:追っつかないよね。

仙人掌:そう、ぜんぜん追っつかないじゃないですか。そういうスピードが『CONCRETE GREEN』1枚1枚の、あのヴォリュームにもなってると思う。とにかくラップをビートに乗せて、ヤバい表現があって、それが作品なんだっていうラップとヒップホップの捉え方なんですよ。ホントにずーっとフリースタイルしてましたからね。それで作品も作っていく。そういう物事の捉え方とアウトプットとスピードが俺には衝撃的だった。

BES:しかも世に出す作品としてのクオリティが問われはじめるときだよね。

仙人掌:ホントにそうですね。俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。もちろんこれからも。

BES:もう最初に会ったときにすでに認めてるけどね。

“FACT”はI-DeAさんの自宅スタジオで録音したということですけど、当時のことをおぼえてますか?

I-DeA:俺が中目黒に住んでいたときの部屋に2時間おきとかにラッパーが来て録ってました。『CONCRETE GREEN』の1、2、3あたりのSCARS関連の録音は全部俺ですよ。アカペラをインストに乗せて、エディットして、別バージョンを作ったりしていた。でも、ぜんぜん金が入ってこなかった(笑)。「遊びましょうよ」って連絡があって『ウイニングイレブン』をやって、俺が負けたらタダでRECしてましたから(笑)。そうやってRECしていって気づいたら『CONCRETE GREEN』が出てた。『SEEDA'S 27 SEEDS』(2005年)なんかもまさにそうですね。

ラッパーたちの録音の仕方とか、曲で印象に残っていることってありますか?

I-DeA:DNCやSD JUNKSTA周りのラッパーと一気に知り合って、彼らが入れ代わり立ち代わり俺の自宅スタジオに来てひたすら録音していったから、その記憶しかないんですよね。あと、ビートがかかるとみんなでずーっとフリースタイルしている光景は鮮明におぼえてる。俺はラップしないから、「うぜぇなあ」とか思いながら見てましたけど(笑)。でも、いま10年ぐらい経ってあらためて思うのは、お世辞抜きに『CONCRETE GREEN』に入ってるラッパーたちのクオリティやスキルが高かったことですね。関係も近くて当時はそのことにあんまり気づいてなかったけど、レベルが高かったんだなって。

ちょっと前に田我流くんに『別冊カドカワ DIRECT』という雑誌の日本のラップ特集で取材させてもらったんですよ。仙人掌くんも同席してもらって。そこで田我流くんが、『CONCRETE GREEN』はひとつの「ムーヴメント」だったと言っていて、「いまの俺らがあるのは、『CONCRETE GREEN』の勢いがあったから。いままであのジェットコースターの勢いに乗ってやってきたと言っても過言じゃない」って強調してたのがすごく印象的でした。

BES:俺もそうっすね。それに乗っかった感じですよね。当時はずっとみんなと遊んでいたんですけど、生活が変わればサイクルも合わないし遊ぶ時間もなくなる。だから、いま会うのは〈bed〉ですよね。そういえば、当時、SCARS全員が俺らの下でワチャワチャ遊んでた高校生の卒業式のアフター・パーティみたいな会に呼ばれて行ったことがありましたね。親御さんもいて、「これでどうやっていつも通りライヴしろっていうの?」って雰囲気だった。案の定ライヴ後にシーンとなりますよね。親御さんが「いったい、これは何なの?」みたいな顔してたな(笑)。

一同:だははははっ。

辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。 (BES)

JUSWANNA feat. BES & 仙人掌“Entrance”

BESさんは、「勘繰り」や「バッド・トリップ」の複雑な精神状態をラップの表現に落とし込んで、それを他に類を見ないひとつのスタイルにまでしましたよね。

BES:それをやると絡まれるから誰もやらないんですよ(笑)。“かんぐり大作戦”を作って実際に3、4人に絡まれてますしね。

仙人掌:ヤバい(笑)。

BES:まあ、ハスってると勘繰りがたぶんすごいっす。みんなそうだと思います。

勘繰りって物事の裏の裏まで読んでしまうことだと思うんですけど、本人が意図しないものも含めて、そのことによってラップの中にダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングといくつもの意味が発生していってそれが独特のドープさになったのかなと思うんです。BESさんと同じ経験をしていなくても、聴く側はそのラップからいろんな想像力を喚起させられる余地を作るというか。

仙人掌:たしかに。それはまさにそうかもしれないですね。

しかも、スラングはあったりしますけど、特別に難しい言葉や単語をそこまで使わないですよね。

BES:そうですね。国語辞典を引いたりしていたのは初期だけですね。パトワ語の辞典も引いてましたね。でも、辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。

仙人掌:タカさんの表現はアメコミっぽい部分もあると思うんですよ。俺とメシアくんとタカさんで作った“Entrance”(JUSWANNA『BLACK BOX』収録。2009年)もそうですよね。現実をただありのままに描写しているんじゃなくて、自分たちが何かと格闘しているというある設定を頭のなかに描いてラップしたりしている。それで、あの曲の最後に「火のついたマイク飛ばす」って表現が出てくる。

ああ、なるほど。

仙人掌:やっぱり人と違う言語感覚がありますよね。例えば、金色(キンイロ)をあえて金色(コンジキ)って発音することで言葉のハネやリズムを良くするとか、そういう感覚を当たり前につかんでるんですよね。仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。俺が最初観たときからそういうセンスや感覚がずば抜けていたんです。

BES:ありがとうございます(笑)。仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。

仙人掌:ははは。それはホントに勘弁してくれって思いますけどね(笑)。

仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。 (仙人掌)

仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。 (BES)

仙人掌 feat. ISSUGI & YUKSTA-ILL“STATE OF MIND”

それぞれの最新作を聴いてお互いどんな感想を持ちましたか?

BES:仙人掌は選ぶトラックがやっぱりオシャレだなっていうのはありますよね。

仙人掌:タカさんの選ぶビートは俺にはつねに驚きがありますね。『THE KISS OF LIFE』もかなりヴァリエーションがあるっすよね。

BES:そうだね。作り始めたときは振れ幅があってまとまりのないアルバムにしようと思って。最終的には起承転結のついたアルバムとしてまとまっているけれど、まずはそこまで意識しないで曲作りをしようと思った。次に作る曲のことを考えながらいま作ってる曲をやらないようにした。まず、目の前にある曲に対して思ったことを書いて、完成したら次の曲を録る。そうやって作ったね。(I-DeAを見ながら)先生もそれを手伝ってくれましたね。昔からレコーディングのときに的確なアドバイスをいただいているんで。

仙人掌:B.T.REOくんのビートの曲(“ピキペキガリガリ”)、おもしろいっすよね。ディストーションがかかったようなミックスにしてますね。あれは自分のアイディアですか?

BES:あれは先生のアイディアでしたね。

I-DeA:あれはBESくんのアイディアじゃなかったでしたっけ? BESくんがそういう感じにしたいって言ってたと思う。

BES:もう忙し過ぎておぼえてないっすね(笑)。

一同:ははははは。

MVもアップされている“Check Me Out Yo!! Listen!!”のRECはどうでしたか?

仙人掌:ビートが決まるのもRECも早かったですよね。ふたりでMalikのビートを聴いて「これだ!」って決めて、スタジオ行く前に駅前のマックで1時間ぐらいでリリックも書いた。即行作らないと緊張するんですよ。これまでタカさんと曲を作るとき俺のほうが待たせたこととか多いから。俺も無意識に力が入っちゃうんですよ。でも、俺、タカさんとやるときはラップ、キレてると思うっすね。

BES:たしかにキレキレですね。この曲のアナログも出しますよ。

仙人掌:だから、タカさんとやるときは「このフロウで食らわしてやろう」みたいな気持ちっすね。

SHAKUもかっこいいですよね。

BES:かっこいいっすよね。JOMOさん(〈bed〉のマネージャー/ヒューマンビートボクサー/DJ)に「最近〈bed〉でいい若いラッパーいます?」って訊いたときに名前が挙がったのがSHAKUだったんですよ。自主でCDも出しててかっこいいんですよ。今日、持って来れば良かったな。

仙人掌:このアルバムもそうだし、『REBUILD』も『Bunks Marmalade』も何がヤバいって、ほとんどのメンツが〈bed〉で完結してるんですよ。そうやってフッドを上げることはヒップホップのなかでいちばんかっこいい行為だと思うんですよね。それは何にも代えがたい行為でもあるし、そういうタカさんを尊敬してますね、俺は。

BES:ラッパーとしてのノウハウをおぼえていろんな勉強をして、お世話になってきた場所が〈bed〉だからね。すべてのきっかけとなったのが、俺はあそこだから。俺のホームなんですよ。だから、リリパは〈bed〉でやるって決めてる。今日もこれから〈MONSTER BOX〉でライヴがあるしね。

仙人掌:今日あらためて、普通に、冷静に、タカさんとこうやって話せるの、自分的にヤバかったです。ありがとうございました。

仙人掌“Be Sure”

Stormzy - ele-king

 ロンドンのバッド・ボーイ、Stormzy のギャングスタ・ラップは強さと弱さを曝け出す。

 ロンドンの地下鉄のいたるところに、真っ黒の最後の晩餐のポスターを見る。〈#MERKY〉 という Stormzy 自身のレーベルから、『Gang Signs & Prayer』(以下、『#GSAP』)がリリースされ、巨大なジャケット・ポスターがロンドンの地下鉄のプラットフォームに貼られていた。しかし、そんな「メジャーな」アルバムのタイトルが「ギャング・サインと祈り」というのもかなり意味深である。
 Stormzy はリリースはミックステープ作品を除けば、5枚のシングルのみで、初のスタジオ・アルバムである。公園でラップしたビデオ“Shut Up”、Stormzy のお母さんまで登場する“Where You Know Me From”など凝ったミュージック・ビデオで人気を獲得してきた。そして発表された『#GSAP』は、彼の人生そのものを描こうとする野心に溢れている。

 アルバムの序盤、“First Things First”はこのアルバム全体のイントロにもなっている。

 一言あるカラード(意:有色の)のブラザー
 だが、スマッシュするぜ
 俺が銃をぶっ放そうとするときに逃げるんじゃねぇぞ、
 俺たちが祈りを捧げる前には、ギャング・サインがあったんだ

 A coloured brother with a bone to pick
 But I still get to gunning, don't be running when I bang mine
 Before we said our prayers, there was gang signs (Gang signs)

 ギャングが用いるハンドサインである「ギャング・サイン」と祈りがどのような関係を結んでいるか物語る。
 ギャングスタで暴力的な一面を見せる一方で、彼は自分の弱さも曝け出す。

 お前が彼女と喧嘩している間に、俺は鬱と戦ってたんだ

 You was fighting with your girl when I was fighting my depression, wait

 彼はこのラインで、単にマッチョなゲームや時間を無駄にすることに没頭するMCではないと宣言する。彼自身を曝け出すこと、そしてそれを克服したことをラップすることで、彼の本当の強さを獲得する。続く“Cold”、Ghetts(ゲッツ)をフィーチャーした“Bad Boys”、そしてグライムのヒットメイカー Sir Spyro のプロデュース・シングル曲“Big For Your Boots”は一貫して「俺の方が優れている」というテーマを、コミカルかつストレートにラップしている。MCの聞き取りやすさは、エンターテイナーとしての成長を示している。チキン・ショップでラップする姿は、リアルで面白くもある。

 6曲目のインタールード以降は、彼のストーリーがより前面に出る。Kehlani(ケラーニ)との“Cigarettes & Cush”では、Lily Allen のバック・コーラスとともに「俺が遅れて電話を取れなくてごめんね」と優しく謝り、“21 Gun Salute”では友の死にマリファナとともに祈りを捧げる。“100 Bags”ではお母さんへの愛と感謝を伝える。

 「ママは10万ポンドを見たことがなかったかもしれないけど、今の俺なら100個のバッグを買ってあげるよ」

 'Cause mummy ain't never seen a hundred bags Now I'm like 'Mum, buy a hundred bags'

 14曲目で伝説的なギャングなグライムMC Crazy Titch のシャウト(終身刑に服役中で、なんと7年ぶりに声を届けてくれた)から、Stormzy のヒット曲“Shut Up”になだれ込む。アルバムの最後に作られたという、“Lay Me Bare”では、

 銃を取り主張する、痛みを撃ち、恐怖を殺す
 死ぬ前には祈りの言葉を捧げる。

 Grab this gun and aim it there
 Shoot my pain and slay my fear Before I die, I say my prayer

 アルバムのタイトル「ギャング・サインと祈り」は、“First Things First”とのコントラストでさらに意味深いものとなる。ギャング・ライフとの決別、亡くなった古き仲間への祈り、鬱の克服、Stormzy は『#GSAP』でその全てをグライムというアートフォームで表現している。

Throbbing Gristle - ele-king

 ダニエル・ミラーは自分の趣味に忠実な人間で、〈ミュート〉はこのたび、バンドの協力のもとスロッビング・グリッスルの全カタログをリイシューすると発表した。
 フルクサスのパフォーマンス・アートないしはメール・アートの影響下、1969年から1970年代のロンドンのアンダーグラウンドにおける伝説となったアート集団、COUMを前身にもつスロッビング・グリッスルは、セックス・ピストルズがデビューした1976年、彼らとは別の場所で、翌日タブロイド紙を激怒させることになる、過激なポルノと、そして血と小便と嘔吐にまみれたショーを試みていた。そして同年、インダストリアル・レコーズを立ち上げて作品を発表していく彼らだが、それらは後のエレクトロニック・ミュージックにおいて大きな影響を残すことになる……という話は電子音楽が好きな人にはよく知られている。
 今回再発されるのは、代表作として知られる以下の4枚+ベスト盤1枚+近年の成果2枚。
 『The Second Annual Report』(’77年)
 『D.O.A. The Third And Final Report』(’78年)
 『20 Jazz Funk Greats』(’79年)
 『Heathen Earth』(’80年)
 『Greatest Hits』(’80年)
 『Part Two The Endless Not』(2007年)
 『Thirty-Second Annual Report』(2008年)
 まずはApple MusicとSpotifyでも配信され、ボックス・セットや各アルバムのリイシューが予定されている。


RAINBOW DISCO CLUB 2017 - ele-king

 GWの5月3日~5日にかけて伊豆の稲取で開催されるRAINBOW DISCO CLUB 2017の魅力について、渡辺健吾と野田努が語り合いました。詳しいラインナップと入場料、アクセスなどはホームページを見ていただくとして、ここでは何故2人がこの野外フェスを推すのかを読んでいただけたら幸いです。

野田:昨年初めてRAINBOW DISCO CLUB(RDC)に行ったんだけど、行って良かった。いろいろな意味で。
健吾:僕は晴海でやってた時代は何度か行っていて、ビル群や海がすぐそこに見えるロケーションでさっと行けるし、割りと好きだったんだよね。夕暮れの雰囲気とか、海風が気持ちいいとか、いい点もたくさんあった。だけど、やはり伊豆で開催になってまるで違うパーティというくらいよくなったと感じたなぁ
野田:昨年のが伊豆になってから1回目なの?
健吾:いや、2回目だよね
野田:健吾は2年連続だったんだ?
健吾:いや、僕も去年が初なんですよ。伊豆の初回がすごくよかったという話をあちこちでたくさん聞いていて、これは行くしかないだろうと
野田:なんだよぉ~、すっかり行き慣れたベテラン面してるからさー、「ヨロシクお願いします」なんって言っちゃったじゃない。
健吾:いやいや、そうだっけ?
野田:もうすっかり、場慣れしてたじゃん。水道場で食器とか洗っててさ。なにがプチアウトドアだよ。俺なんか、民宿だぜ。
健吾:春先から秋までは、キャンプ含めて子供連れで楽しめる野外のパーティによく行くようになっていて、毎年数ヶ所の野外パーティやフェスに行っているからね。そういう中であそこは楽しいぞ、雰囲気いいぞ、とか、そういう嗅覚は結構磨かれてるんじゃないかと。
野田:俺なんか、多摩川に釣りに行くぐらいだからなー。それはともかく、RDCは素晴らしいよね!
健吾:素晴らしいですね! 噂以上だった。
野田:じゃあ、お互い、どこが良いと思ったのか、理由をいくつか挙げていこう。まずはロケーションだね。これ、重要。
健吾:そうですね。あんな場所よく見つけたなと思うけど、ただの山の中でもないし、かといって日常の空間でもないから、不思議な魅力がある。
野田:公共の交通手段を使って、2時間ぐらいで行けて、山と海がある。ホントによく見つけてくれたって感じ。
健吾:そういう会場だと、他にいくつも違うイベントが開催されて、スペシャル感が薄れるケースもあるけど、あそこはRDCだけだからな
野田:日本の初夏の青々しい風景、そして伊豆の小さな港町……子供がいようがいなかろうが、行きやすいし、場所だけでも気持ちが上がるね。
健吾:突飛な場所でやりすぎて、1年でできなくなっちゃうっていうケースもたくさん見てきてるから、3年続けてやって年々よくなっているという継続ができたらすごくいいなと思うしね。前に千葉のビーチであったパーティに行って、感動するくらいロケーションよかったんだけど、ビーチだから夜中になったらみんな勝手に入ってきちゃって、大変だったらしい(笑)。
野田:野外パーティの難しさってやつか。ぼくが泊まった民宿では、民宿だから共同風呂なんだけど、風呂に入ってくる人がみんなRDCのバンド捲いてんだよ。で、「同じっすね」とか言うと、「去年も来たんですよー」なんてね。今年もリピーター多いんだろうなぁ。
健吾:あれは口コミで広がるタイプの良さだから、そう思う。
野田:そもそも健吾は野外フェスに何を求めているの? なんで、いまも行き続けているの?
健吾:一言では言い表せないけど、遠慮会釈なくいい音、でかい音で踊りたいっていうのがいちばんかな。クラブという日常の延長にある場所では、なかなかそういうことができなくなってしまった。
野田:野外フェスなら家族で行けるのは、たしかにオレら世代にとっては魅力だよね(笑)。でも、オレが野外に目覚めたのはまだ自分がギリギリ20代のときの1993年、最初はグラストンベリーだったんだよね。
健吾:いきなりグラストンベリーか。インパクトがすごそう。僕はあまりロック・フェスで楽しかった記憶がないんだけど、グラストンはどこが良かったの?
野田:どこがって……とにかくカルチャー・ショックだよ。なんていうか、ヘッドライナーがスピリチュアライズドだろうがオーブだろうがヴェルヴェッツの再結成だろうが、そんなことは最終的にはどうでもいいわけ。自分たちがその場にいて、その場にいることを楽しんでる。多様な人間がそこはいたし、年齢層もヒッピーからインディ・ロック、レイヴ世代までと幅広い。そして、その場にいる人たちもそのフェスの重要な要素なんだよ。あの感じ……クラブやライヴとは違った、過激なまでの「ゆるさ」とでも言おうか、あれがオレのなかの理想としてあるんだ。つまり、出演者のタイムテーブルに合わせて客も移動するみたいな、あの感じはまったくないよ(笑)。とことんレイドバックしてるのよ。
健吾:なるほどね。RDCでいいと思ったポイント、僕が嬉しいのは「ゆるさ」なんですよね。もちろん、歴史あるイギリスのグラストンベリーとは違うタイプのものだろうけども、運営サイドと客が信頼しあっていて、ゆるく運営されているっていうのは日本においては貴重だからね。
野田:あのゆるさは素晴らしい。しかもさ、良い音楽が良いオーディエンスを集めるってことを実践してるジャン。
健吾:うん、そう思う。日本だとクラブ系のDJやアーティストがたくさんでるフェスですら、「出演者のタイムテーブルにあわせて客が大移動」みたいなことが起きるから。そうすると、どうしても有名で、たくさんファンを呼べるような人中心のブッキングになってしまったりして。ポスターにずらずら名前が並んでいるのを見るとすげえって思っても、実際にその場に行くと、楽しめないっていうことも多いんだよね。RDCの場合は、たぶん敢えてその逆いってるという。
野田:ヨーロッパのフェスっぽいんだよね。極端に言えば、ライヴを見ずにただテントで生活して帰ってく人も珍しくないっていう感じ。そういう場を作るってホントに難しいと思うんだよ。さっき健吾が言ったように、雰囲気って、オーディエンスや出演者なんかとの信頼関係で築かれるものだからね。その信頼関係をうながすかっていうと、音楽愛じゃない? RDCはそこがしっかりしているよね。
健吾:そこまで裏話やなんかを知ってるわけではないけど、ステージや楽屋の写真を見たり、発言を読んだりしていると、出演者にもRDCという場やコンセプトが愛されているんだと感じるね。
野田:ハンモックとかさ、ああいうのが並んでいるのもいいよね。キッズ広場まであるし。適度に逃げ場もあるし、適度に散歩もできるし。
健吾:キッズ・スペースはだいたいどこの野外パーティでも設けてるけど、ちゃんと遊び場として機能してると感じたのは数少ないね。RDCのキッズ広場はあってすごく助かった。
野田:絵本もいっぱいあるしさ。
健吾:そういえば去年、結構早い時間帯だったけど、瀧見さんがプリンスかけたの覚えてる? まだ昼くらいでそんなに客もいなかったし、皆のんびりした雰囲気で座ったり寝そべって見ていたら、セットの最後の方でいきなりプリンスかけたんだよね。たしか、「Sometimes It Snows In April」だったかな。
野田:それってプリンスでオレがいちばん好きな曲!
健吾:去年は4月の終わりだったし、気がきいてるよね
野田:さすがベテラン。今年も出るんでしょ。彼みたいなのがいるのは心強い。
健吾:僕はハンモックのあたりでそれ聴いてて、少し立ち上がって、高いところからフロアの様子を見ていたら、皆「プリンスだ!」とか騒ぐ感じでもなくて、ゆっくりそこここで立ち上がって、レクイエムみたいにゆらゆら踊る人が増えるのがわかったんだよね。なんかすごく心にしみた。
もちろん瀧見さんの、あそこであのタイミングでプリンスのしかもあの曲っていうのがすごいと思ったけど、客もそれに応えてる感じだったなぁ
野田:あんな良い天気のなかで、あんな切ない曲を……。そういう、その場の物語が生まれるんだよね。クラブでもそうなんだけど、良い野外フェスにはとくにそのときでしか経験できない物語が生まれる。これから2日後にはどうなっているんだろ? っていうワクワクした感じがあって、わずか3日のあいだにいろんなことが起きるんだよな。
健吾:ほんとそう。で、ワガママかもしれないけど、子持ちだと、ピークタイムが深夜~明け方に設定されてるフェスでは、いちばんいいところを絶対に経験できないんだよね。夜通し踊った皆が休みにテントに戻りだす朝はやくにようやく活動し始める。RDCの場合は、夜は平等にみんな寝るというタイムテーブルだから、みんなと同じようにいい経験ができるチャンスがあるのよ。
野田:なるほど。で、テント生活はどうよ?
健吾:もちろん、楽しいよ。半分それが目的だからね。
野田:夜はまだ寒いだろ?
健吾:装備によると思うけど、うちは冬用のシュラフ持っていくからそうでもないね。もちろん、民宿とかホテルでもいいと思うし、お風呂は入れたほうが体も休まるんだけど、テントの場合、子連れだったら一度寝かせてからまたちょっと踊りに行くとかもできるしね。テントサイトからフロアまでそんなに距離がないのもいいね。野田さんもテント張ったらいいのに(笑)。
野田:オレは今年も民宿ですが、稲取の金目鯛はぜひ味わって欲しいですね。港の近くに市場があってさ、そこにもRDCに来た人たち大勢いたぜ。
健吾:実は、今年は前日の夜から行こうかなと思ってて、その日は民宿に泊まる予定なの。だから、金目鯛も食べられるかな(笑)。そうそう、テントと言えば、去年は風がすごく強かったんだよ
野田:いいじゃない。風が強いくらいがちょうどいい。
健吾:いやいや、どこの人気フェスもそうだけど、テントサイトはそんなに広くないし普通よりくっついてちょっと無理にテント張ってるから、きちんと張れてないのね。ペグダウンしてないとか。それで、去年の2日目は奥さんが踊って僕子供の世話っていう担当になってたので、夕飯食べて子供連れてテントに帰ったら、強風でテントが崩壊しそうになっててさ。子供と2人で協力して、1時間以上かけてなんとか風でテントが吹っ飛ばないように張り直して、事なきを得たけどちょっと泣きそうだったよ。深夜に周囲でバンバン物が飛んだりテント崩壊したりしてたから、みなさん自然をなめないようにしましょう、という話はしておいたほうがいいかな。
野田:野外っていうのはリスクもあるから。しかし渡辺家は前泊とは、すげー気合いを感じるな。
健吾:なはは。民宿も楽しそうだなぁと思ってね。気合入ってます。
野田:出演者も相変わらずイイよね! 日本人の出演者だけでも充分なメンツですよ。
健吾:そうだね。個人的には、ここ5年位ずっと気になっていたヘッスル・オーディオの3人が揃って来るのが本当に嬉しい。でも、それ以外のメンツもRDCらしさもあり、とても楽しみだわ。
野田:ベンUFOは、ベース世代を代表するもっとも人気/評価の高いDJだしね。しかし今回は、いろんな世代が混じっている感じが出たね。
健吾:日本だとああいうダブステップ以降のものが混沌としてるパーティあまりないし、今の彼らがどういうプレイするか興味ある。
野田:欧米は、数年前からベース世代とハウス世代が混じり合ったじゃない。日本ではまだその溝があるけど、これからはどんどん溝が埋まっていくと思う。だから今年のRDCは、チャレンジしているよ。
健吾:NOBUくんと一緒にB2Bでやる、フレッドPは、どんな感じか知ってる? NOBUくんは、去年のブラック・マドンナとのスペシャル・セットがすごくよかったから、今年も期待してるんだけど。
野田:フレッドPは作品しか知らないけど、ずっと評価高い人だよね。とくにブラック・ジャズ・コンソーティアム名義の作品はディープ・ハウスが好きな人にはたまらないものがある。
健吾:だよね。僕も彼の曲いくつか聴いたくらいだけど、DJも良いといいな。普段やらない人と一緒にやってしかもいいプレイが聴けるって、フェスの醍醐味だから
野田:しかしフレッドPとNOBUくんのB2Bというのは、まあ音楽を追究して好きでなきゃ、まず思い付かないよ。RDCは、いまでもちゃんとレコード店に行ってる感じが出ているもんな。
健吾:ふふふ。野田さんの注目アーティストは?
野田:さっきも言ったように、主催側のセンスを信用しているんで「おまかせ」って感じなんだけど、敢えて他に名前を挙げるとしたら、寺田創一さんとKUNIYOKIとsauce81のライヴ、野外が似合う井上薫、あとはフローティング・ポインツかね。野外であれを聴くのは楽しみ。
健吾:寺田さんとKUNIYUKIさんとSauce81のセッションってすごそうだよね
野田:今年はディープ・ハウス色が強いね。
健吾:とは言っても、その場にならないとどんな音が出てくるのかわからないのがRDCの楽しさでもあると思う。去年も、ウェザオールが急遽キャンセルになって、マット・エドワーズ (aka レディオ・スレイヴ)が代役で出たでしょう。以前、RDCにマットが出たときはかなりディスコ寄りのセットだったから、去年もパーティのテイストにあわせてそういう感じになるかと思ったら、完全にレディオ・スレイヴ・モードで、ゴリゴリのテクノだったしね。
野田:いずれにしても、良いメンツだよ。話をぶった切るようだけど、弘石君たちがどさくさに紛れて、マッサージ屋を出していたよね。あのお店のエリアに古本屋さんも出店していたの憶えている? ああいうのもナンかイイよね?
健吾:弘石くんの会社がやってるマッサージ屋は、結構老舗だよ。晴海でやってた時代からRDCに出店てしてたんじゃないかな。とはいえ、たしかにRDCでは他ではあまり見ないような出店があるんだよね。他のフェスで食事しようとして、だいたいいつも同じような、フェスに行くたびに目にする店ばかりで食傷気味になるところ、RDCは地元の店が多いよね。
野田:弘石マッサージテントの隣で、地元の魚屋さんが焼き魚と定食売っていたのが良かったな。野外フェスで魚って、なかなかないでしょ(笑)。
健吾:そうだね。少し店のおばちゃんと話したけど、もろに地元の人って感じだった。
野田:さあ、これで、まだ行っていない人も、だいぶイメージが湧いてきたんじゃないのかな。良いダンス・ミュージックも聴けて、伊豆の魚も味わえるなんて……。あとはテント組は自然を舐めるなと。
健吾:3日だからガツガツしないで気候や音楽や景色の移り変わりも楽しめるといいよね。あと5分〜10分ほど歩いたところにあるレッドブル・ミュージック・アカデミーのキュレーションする体育館の会場も、雰囲気違っておもしろいよね。今年はNORIさんや、サファイア・スロウズ、アキコ・キヤマなんかもでる。去年はあまりにメイン会場が良すぎて、ほとんどレッドブル側に行けなかったから今年はあっちでも踊りたい。
野田:最近UKでは、レイヴ・カルチャーが見直されているっていう話だよ。あの暗い時代における、ひとつの抵抗のカタチとして再評価されているんだって。
健吾:そうなのかぁ。まぁわかる気がするなぁ。
野田:オレらもまだまだ伝えていかないとね! なーんて。
健吾:そうですねぇ
野田:じゃあ、オレは伊豆踊り子号の指定席でビールを飲みながら駆けつけるわ! 現地で会おうぜ!
健吾:ははは、飲み過ぎないように(笑)。今年もひとりで来るの?
野田:昨年も家族で来てるって! 今年も子供連れて行くつもりでーす。ダンス・ミュージックを愛するみなさん、当日お会いしましょう!
健吾:あれ、そうなんだ。ひとりで楽しそうにフラフラしてる姿しか見なかったから、てっきりひとりで羽を伸ばしているのかと!
野田:いや……
健吾:ふふふ。まぁ今年も去年以上に盛り上がるでしょう。今から楽しみ!
野田:です!


RAINBOW DISCO CLUB 2017

日程:
2017年5月3日(水・祝日)9時開場/12時開演 ~
2017年5月5日(金・祝日)19時終演(2泊3日)予定

会場:
東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ
(〒413-0411 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3348)

出演:
FLOATING POINTS / RDC EXCLUSIVE: DJ NOBU B2B FRED P
HESSLE AUDIO (BEN UFO / PANGAEA / PEARSON SOUND)
20 YEARS OF RUSH HOUR: SPECIAL GUEST: SADAR BAHAR
RUSH HOUR ALLSTARS (ANTAL / HUNEE / SAN PROPER)
LIVE SESSION: SOICHI TERADA × KUNIYUKI × SAUCE81
LIVE: FATIMA YAMAHA / DJ DUSTIN From GIEGLING
KENJI TAKIMI / KAORU INOUE / KIKIORIX / SISI

GERD JANSON / PALMS TRAX
SKEME RICHARDS B2B DJ NORI / KEITA SANO
AKIKO KIYAMA / 77 KARAT GOLD × KASHIF
SAPPHIRE SLOWS / WONK / MISO

料金:
一般発売チケット(3日通し券)(16,000円)

場内キャンプ券(3,000円)
*炭を使用するBBQは禁止。コンロ、バーナーのみ可能。
*アルコール類、瓶、缶の持ち込みは固くお断り致します。

駐車券(2,000円)
*駐車場出入庫は1回1000円別途必要。

当日券(18,000円)
*前売券が規定枚数に達しましたら当日券の販売はございません。
*20歳未満の入場は保護者同伴の場合のみご入場いただけます。
*中学生以下はチケット不要。

チケット購入:
https://www.rainbowdiscoclub.com/#ticket

店頭販売
テクニーク 03-5458-4143
JETSET 03-5452-2262
ライトハウス 03-3461-7315
GAN-BAN/岩盤 03-5391-8311

ディスクユニオン取り扱い店舗

ディスクユニオンclub music online
渋谷クラブミュージックショップ 03-3476-2627
新宿クラブミュージックショップ 03-5919-2422
下北沢クラブミュージックショップ 03-5738-2971
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高田馬場店 03-6205-5454
大宮店 048-783-5466
大阪店 06-6949-9219
中野店 03-5318-583

RAINBOW DISCO CLUBとは?
東京を拠点に2010年にスタートした音楽とアートを結ぶフェスティバル「RAINBOW DISCO CLUB」は、良質なダンス・ミュージックを届ける日本の都市型イベントとして、世界的な音楽情報サイト「Resident Advisor」の「世界TOP 10フェスティバル」に毎年選出され、国内外から注目を浴びていました。

その「RAINBOW DISCO CLUB」が、2015年からは伊豆半島 稲取高原の「東伊豆クロスカントリーコース」で大自然に囲まれた野外フェスティバルへと大きく姿を変え、ダンスミュージックの本質を捉えた豪華ラインアップはもちろん、ハンモックカフェ、焼きたてパン、東伊豆の地元食材など充実のフードコート&バー、キッズエリアも備えており、のどかな環境の下、子供から大人までが一緒に楽しめる野外フェスティバルとして心機一転、生まれ変わりました。

https://www.rainbowdiscoclub.com


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