「K A R Y Y N」と一致するもの

message from AXIS - ele-king

 デトロイト・テクノにおける偉大なるミニマルの父、そして手のつけられないSF中毒者でもあるジェフ・ミルズから新しいプロジェクトに関する連絡を受けた。以下は、彼自身からのメッセージである。

文:ジェフ・ミルズ

 『Fantastic Voyage』(「ミクロの決死圏」)プロジェクトはパリのシテ・ラ・ミュージックというベニューからの依頼ではじめたものだ。そのベニューでいくつかの映画上映をスペシャルな形で行う企画があり、僕にも好きな映画の音楽を制作してほしいと言われ、すぐにこの映画を選んだ。1966年発表以来毎年のようにどこかで上映されていて、僕も長年お気に入りだったし、他のSF映画とは一線を画した内容でいちど観たらその感動はなかなか忘れない印象的なフィルムだ。
 『Fantastic Voyage』を新しいサウンドトラックとともに上映するにあたって、僕は観客を巻き込んで体験するような内容を考えた。映画のなかで、病気の科学者の体内に潜水艦が入っていくところで、観客も同様なフィーリングを感じるようなシナリオを考えた。観客が体感できるように、映画内で風が吹く場面では会場に設置した巨大扇風機を回し、床を振動させるべく第二のサウンドシステムを用意したり。スクリーンもふたつ用意し、体内に入る前は1枚目のスクリーン、2枚目のスクリーンのまわりにはデコレーションやライティングを施し体内の雰囲気をだし、その他にも観客が体内にいるような感じを体験できるよう工夫した。
 サウンドトラック制作には数か月を要し、実際に使用したよりもっと多くのサウンド、80~90曲を用意していた。制作初期の段階から、このサウンドトラック制作ではテクノロジーに頼るような音はつりあわないと考えていた。人間の体のなかに入っていくのはとてもオーガニックなことで、それがテクノロジーの進歩、コンピュータや機械より重要なことだと思った。音が複雑に絡み合い、多次元的な層を織りなすようなサウンドをつくりあげていく必要があると感じた。あえてシンクされていないシーケンスを組み合わせることで、血流や内臓の自然な感じを表現しようとした。映画のために制作したスケッチ(曲)をぜひリリースしたいと思って今回2枚組のCDにした。
 映画『Fantastic Voyage』のおもしろいところ、他の映画とは違うところは、信じられない体験が宇宙や海などではなく、人間の体内で起きるというところだ。だからどんな人でも興味を持つはずだし、身近なこととして感じられるはずだ。医学的な知識がなくても、わかりやすいように科学者たちの冒険とともに説明されており、若い人たちは一度は見るべき映画だし、すべての人が自分たちの体がスペシャルだということを再認識する機会を与えてくれると思う。




Chart by Underground Gallery 2011.10.06 - ele-king

Shop Chart


1

KRAMER...

KRAMER... #House Revenge #502 (HOUSE REVENGE) »COMMENT GET MUSIC
FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」幻のDERRICK MAY & ASHLEY BEEDLEリエディットが遂に復刻!DERRICK MAYが90年代中期に毎回必ずプレイしていた、FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」のリエディットが遂に復刻! DERRICK MAYのミックスCD「Mix Up」でも一部分がリエディットされ使用されていたので、聞いたことがある方も多いと思いますが、実はコレ、ASHLEY BEEDLEとDERRICK MAYが、RON HARDYのリエディット・ワークをお手本にして制作した、アンオフィシャルなリエディット作品なんです!電車が走り去るSEをバックに、抜群にファンキーなパーカッシブ・グルーヴで展開していく、とにかくアガるディスコ・ハウス!!ASHLEY BEEDLEによるA面、DERRICK MAYによるB面、どちらも本当にカッコイイ!!!オリジナル盤は欧州の中古市場では100竄ャを超える値段で取引されることもある正真正銘"幻"のトラックです

2

MO MOODY (MOODYMANN)

MO MOODY (MOODYMANN) Doin Ya Thang (White Label) »COMMENT GET MUSIC
MOODYMANNの新プロジェクトMO MOODY!超限定プレス! 既にyoutubeにPVが公開され、ファンの間で大きな話題を集めていた新曲「I Got Werk」、初期の[KDJ]の作品を思い出させるような、ライブフィーリング溢れるディスコ・チューン「Doin Ya Thang」など、全3曲を収録!ここ最近のMOODYMANNの作品の中でも群を抜いた一枚だと思います!

3

REEL BY REAL

REEL BY REAL Surkit Chamber - The Melding (A.R.T.Less) »COMMENT GET MUSIC
デトロイトの隠れた重要人物REEL BY REALが約20年振りに新作を発表! 90年代初めに、JUAN ATKINSが運営していた幻のレーベル[Interface Records]や、当時のデトロイト・テクノを積極的にUKへ紹介していた名門レーベル[10 Records]から作品を発表し、コアなデトロイト・ファンの間では伝説のアーティストとして語られたいたMARTIN BONDSによるプロジェクトREEL BY REALが、何と20年ぶりの新作をリリース!ジャケットのアートワークは、[Underground Resistance]や[Red Planet]、[Transmat]のデザインでもお馴染みのABDUL HAQQによるもの!デトロイト・ファン・マスト!

4

RONNY & RENZO

RONNY & RENZO Heartbreak Theme (Rekids) »COMMENT GET MUSIC
CARL CRAIGリミックス収録!ベルギーのカルトレーベル[King Kung Foo]で知られる RONNY & RENZOが、盟友 RADIO SLAVE主宰の[Rekids]から新作をリリース! QUIET VILLAGE名義でリミックスを提供していたこともあるRADIO SLAVEが、自身主宰の人気レーベル[Rekids]より、ベルギーのカルトレーベル[King Kung Foo]で御馴染み RONNY & RENZOによる最新作をリリース。低くドープにウネりを上げるスローモーなグルーブにシリアスなムード漂うアンビエンスなウワモノやディープな声ネタ、シンセリフなどを響かせ、10分を超える長尺世界の中ジワジワとハメに掛かる 超強烈トラックを披露。さらにカップリングには、ファンクネスなグルーブとスペーシーなシンセメロを響かせ、より壮大な世界を展開していく御大 CARL CRAIGによるリミックスを収録。当然、こちらも間違いありません!大・大・大推薦!

5

QUINTUS PROJECT

QUINTUS PROJECT Night Flight (Derwin) »COMMENT GET MUSIC
UGヘビー・プッシュ!87年に限定300枚でリリースされたQUINTUS PROJECTのアルバム「Moments」に収録の「Night Flight」をPSYCHEMAGIK、LEXXがリミックス!しかもカップリングには、オリジナルも収録されています! JAZZANOVAのALEX BARACKが主宰する新レーベル[Derwin Recordings]新作は、87年にドイツ[NGM]よりリリースされた激レアアルバム「Moments」より、可憐な鍵盤が印象的に響く、緩やかなチル・コズミック/フュージョン・シンセ・クラシック「Night Flight」が世界初の12インチ化!このオリジナルを再発させてくれただけでも本当に嬉しい1枚ではあるのですが、さらにカップリングには[Ambassadors Reception]からアルバムリリースが予定されている PSYCHEMAGIKによるリミックス、KAWABATAこと LEXXによる'Night Crusin'なレイトバック/バレアリック・リエディットを収録。

6

STRANGER SON

STRANGER SON Inside Many Summers (WHITE BOX) »COMMENT GET MUSIC
A MOUNTAIN OF ONE辺りのサイケデリック縲怎oレアリックなロッキン・ディスコは絶対に要チェックです!!限定250枚プレス。 元TVH3のGARETH SMITH率いるマンチェスターの大所帯ポストパンク・バンドSTRANGER SON OF WB改め、STRANGER SONによる待望のニューシングルが、ホーム・レーベル[Whitebox]から登場! A MOUNTAIN OF ONEのサウンドを彷彿とさせるようなサイケデリック縲怎_ブ縲廸.W縲怎Iルタナロック縲怎oレアリックな要素を、独自フィルターを通し昇華させた、オリジナリティー溢れるロック・サウンドを披露。収録3作、どれも本当に良いですので、コレはホントいオススメです!

7

DON PAPA & SUBMARINE

DON PAPA & SUBMARINE Kambo Super Sound (Sex Tags Amfibia) »COMMENT GET MUSIC
ノルウェーのカルト・レーベル[Sex Tags Mania]傘下[Sex Tags Amfibia]新作は、昨年リリースされ話題となった DON PAPA & SUBMARINEによるレゲエ/ダブスプリットシングル!! レーベル看板 DON PAPAがSUBMARINEと共に手掛けるレゲエ/ダブ・スプリット・シングル 第2弾。ジャマイカン・ダブ手法な深く打たれるダブ・グルーブにスモーキーなヴォーカルを響かす DON PAPA手掛ける Side-A「Come 2gether」、カップリングには同曲のダブヴァージョン「Moss Dub Massive」を収録。ジャンルレスにコレは本当にオススメしたいです!! 限定プレスでのリリースとなると思いますので、コレだけは是非お早めに縲

8

BRYAN FERRY

BRYAN FERRY Alphaville (Leo Zero Remix) (White) »COMMENT GET MUSIC
しばらく前から話題となっていた1枚が遂にヴァイナル・リリース!ROXY MUSICのフロントマン BRYAN FERRYのリミックスアルバムからのホワイト・ヴァイナル・カット!LEO ZERO、TIME & SPACE MACHINEのリミックスを収録!! 知らなかった人も多くいるとは思いますが、実はコレ、[Virgin]傘下[The Vinyl Factory]より、今年春先頃にほぼUKオンリーの取り扱い(日本にはほとんど入っていなかったと思います)で超限定リリースされていた「Alphaville Remixes」が、ホワイトながらも原盤と同じカップリング仕様で再登場!!!まず Side-Aでは、A MOUNTAIN OF ONEの中心人物 DJ LEO ZEROが、どこかトロピカルなムードを醸しだす、暖かくメランコリックな雰囲気が◎なミッドテンポなチル/バレアリックなディスコリミックスを披露し、Side-Bには、THE JOUBERT SINGERS「Stand On The World」の印象的なオルガンプレイをネタとして使ったと思われる TIME & SPACE MACHINEのリミックスを披露。どちらも本当に最高ですね縲怐B恐らく今作も限定プレスでのリリースになると思いますので、Nu-Disco縲怎nウス派の方は絶対にお見逃しのないよう、お早めのチェックをオススメします!当然、当店一押しの1枚です!

9

DJ DEEP AND JOVONN

DJ DEEP AND JOVONN Back In The Dark (Clone) »COMMENT GET MUSIC
2000年にフランス[Distance]からリリースされた、DJ DEEP & JOVONNのディープハウス・クラシックが[Clone]より復刻![Blance]やCHEZ DAMIER辺りにも通じるミニマルなリフをバックに、セクシーにうねる黒いベース・グルーヴ、ワンコードながら絶妙のタイミングで刻まれるオルガン・リフを絡めながら、ジワジワとビルドアップする最高のディープ・ハウス・サウンド!ポエトリーも良い感じです!リリース当時は、それ程ヒットした訳ではありませんが、当時よりも今のムードに合っているように気さえする、ハウス・ファンなら絶対に聴いて頂きたい一枚です!傑作!

10

KASSEM MOSSE

KASSEM MOSSE Enoha Ep (Nonplus) »COMMENT GET MUSIC
[Workshop]や[Mikrodisko]からのリリースでお馴染み、ベルリンのカルトアーティストKASSEM MOSSE、 ダブステップ縲怎eクノ越境レーベル[Nonplus Records]からの新作!モノ・ミニマル縲怎Gレクトロまで、全曲◎!MAURIZIO「M5」を"酸"を加えたような、ドープ・モノ・アシッド・ミニマルのA1がとにかくカッコイイ!うねるようにビルドアップしていく展開も素晴らしい!その他にも、DREXCIYAを思われるようなダーク・エレクトロや、ベルリン産らしい、インダストリアル・テクノなど、全4曲、全て◎!ここ最近のKASSEM MOSSEの作品の中では、ずば抜けてカッコイイです!

Walls - ele-king

 ウォールズのセカンド・アルバム『コラクル(かご舟)』を聴いて笑ってしまった。欧米および日本で圧倒的な人気をほこるケルンのミニマル・テクノのレーベル〈コンパクト〉がリリースする新作は、チルウェイヴと〈コンパクト〉のものの見事な融合と言える。まあ......このレーベルはパンダ・ベアのソロ・シングルを出しているようなところもあるし、そもそも現在のインディ・シーンにおいても広範囲にわたって影響力のあるレーベルのひとつなので、いまさら特筆すべきことではないけれど、しかしこうした"音"を聴くと、いかに現在のシーンが互いに接続し合って、いわばリゾーム状に広がっている感じがよくわかる。チルウェイヴないしはシンセ・ポップ、ポスト・ダブステップ、あるいはドリーム・ポップでもヒプナゴジック・ポップでも呼び方は何でもいいのだけれど、インディ・シーンのこの絡み合うような広がりは、機会の均等化の表れとも言える。30万枚売れるアーティストは生まれづらくなったかわりに、30万人の作り手が音楽でなんとか生計を立てられるような、社会主義的な資本主義の実践と言えやしないだろうか。昔ながらのスター崇拝者には気の毒な話だろうが、シーンは独占的で支配的な世界から逃れていくように進展しているのである。

 ウォールズの『コラクル』は、IDM色が強かった前作『ウォールズ』とは打って変わって、ティーンガール・ファンタジーの『7am』のように、今日的な意味においての折衷的かつ社交的な音楽性を有している。ミニマル・テクノとアンビエント、チルウェイヴとクラウトロック、ドリーム・ポップとエレクトロニカといったものの交錯点で鳴っている音楽で、それが〈コンパクト〉レーベルらしくダンスのグルーヴを持ちながら展開される。ふたりのメンバーは昨年、カリブーの「スウィム」でリミックスを手掛けているが、本作もまたテクノにおけるポップの新しい可能性と言えるだろう。
 明るいメロディと直線的なビートによる幻覚症状があの手この手で繰り広げられる。ソウル・ミュージック的なテクスチャーはなく、そしてヴォーカルのレイヤーにもべたつくような叙情はない。人間主義を回避しながら、ひたすら優しく、気持ちの良いところへと向かうのは最近のインディ・シーンの傾向のひとつである。
 オープニング・トラックの"イン・アワ・ミドスト(僕らのまんなかで)"は、まさにカリブーやフォー・テットのようなインディ・ポップとしてのミニマル・テクノだ。曲をリードするヴォイス・サンプル、クラウトロック風に覚醒したドラミングとベース、デトロイティッシュなシンセサイザーのメロディが重なる。"ヒート・ヘイズ"や"ヴェイカント"といった曲では、シガー・ロスを彷彿させるような、いわばイーサリアル系(空気のような電子音)の展開をみせる。ふわふわのアンビエントとモータリック・サウンドによる"エクスタティック・トゥルース(忘我的真実)"~さざ波のようなアンビエント"ドランクン・ガリオン(酔っぱらった船)"へと続く終盤は楽しい音のサーフィンのシメとしては申し分ないでしょう。
 アナログ盤にはおまけにCDも付いている。

interview with Love Me Tender - ele-king

あんなに小さな声で歌ったのに
みんなにきこえちゃったみたい RCサクセション"君はLove Me Tenderを聴いたか?"


LOVE ME TENDER
トワイライト

Pヴァイン

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 東京にはボヘミアニズムがある。それはクラブ・カルチャーよりもさらに地下に降りていったところに広がっている。経済効率とはあまり縁のなさそうな、しかし心優しい音楽好きな不眠症の連中によるかなりゆるいコミュニティだ。ラヴ・ミー・テンダーというバンドはそういう場所で生まれている。

 メンバーはMaki 999(歌とドラム)、Arata(ギター)、Teppei(ベース)、Takagi Sota(鍵盤)、Ackky(サックス)の5人。Maki 999はHBという女性3人によるバンドで、昨年は『ブラック・ホール・イン・ラヴ』を発表している(マニ・ノイメイヤーの現代版)。長年DJとして活動しているAckkyも、昨年最初のソロ・アルバム『コンポジション』を発表している(コズミック・ディスコ)。高木壮太は、日本の早すぎたチルウェイヴ・バンドとも言えるシュガー・プラントの元メンバーとしても知られている。すでにキャリアのある人たちがラヴ・ミー・テンダーで試みているのは、清々しいまでのシティ・ポップスで、そして少々ユーモアの詰まった危険な言葉の歌なのだ。
 震災直後にリリースされ評判となった自主制作の『FRESH!』を経て、バンドが震災後に録音したミニ・アルバム『TWILIGHT』が最近〈Pヴァイン〉からリリースされた。それが夜の深い旅が好きでたまらない人にとってのポップスで、"STAR"や"TWILIGHT"のような新たに収録された曲では、空想的な童話的世界とヴェルヴェット・アンダーグラウンドの溝を埋めつつも、山下達郎にも接近するという離れ業にも取り組んでいる。バンドの代表曲である"シャーマン青春サイケ"が言うように、「あふれ出す光の海/終わらない夜明けの旅」へようこそ......という感じである。

 9月なかばの大雨の晩、ちょうど筆者が下北沢のお店で飲んでいる深夜の12時過ぎに、「明日の深夜か明後日なら取材できます」とレーベルの担当者からいきなり電話。翌日「明日の3時に渋谷で」と伝え、そして取材当日の3時20分になったとき、その場にいたのはAckky(ほぼ時間通り)、そしてTakagi Sota(10分遅れ)のふたりだけだった......。

自分たちのやっていることを言葉で表すとしたら何になるのかという話になって、「シャーマン・ロック」って。「サイケ」も絶対に入ってるし、じゃあ、「シャーマン・サイケ」、でも何かが足りない、「青春じゃん!」って。

まだ他のメンバーが来てませんが、はじめてましょうか。

Ackky:はははは、すいません。

そもそもラヴ・ミー・テンダーってどうしてはじまったんですか?

Sota:俺とアッキーは途中から入ったから結成の経緯はぜんぜん知らない。

それじゃあ、ダメですね(笑)。

Sota:だいたいドラッグ絡みじゃないですか。×××××が同じだったとか、そういうことでしょう。

(笑)オフレコはなしでやりますから。

Sota:でも何なんだろう。聞いた話では......。

Ackky:ミルクバーで3人でセッションしたら調子が良くて、それがのちのちカタチになっていったと聞いているよ。

その3人とは?

Ackky:マキ、テッペイ、アラタの3人です。

まさにいまこの場にいない3人ですね(笑)。

Sota:それがラヴ・ミー・テンダーになったという話は聞いている。

いつの話ですか?

Ackky:4年前とかじゃないのかな。

そんな前なんだ。

Sota:バンドの名付け親はミユキちゃんですよ。

ミユキちゃん?

Sota:MCチェルノブイリです。

ミユキちゃん?

Sota:そう、いまナカシマミユキというユニットをやってます。

ハハハハ。

Sota:危なすぎて人前には出せません。

ハハハハ。

Ackky:ミユキ・シーベルトっていう別名義もあるんですよ。

すごいね。

Ackky:ラッパー、ミユキ・シーベルト。

そのミユキちゃんが何故ラヴ・ミー・テンダーって名前を付けたんですか?

Sota:さあ、わからない。ドラッグっぽいセンスだと思いますよ。

どこもドラッグっぽくないじゃないですか(笑)!

Sota:意味がわからないじゃないですか。検索しづらいし......まあ、思いつきで付けたんだろうね。

Ackky:こないだギャラクティックというジャム・バンドと伊豆で会ったときに、バンド名を言ったら大爆笑してましたよ。

それは何処に笑いのツボがあるの(笑)?

Ackky:いや、俺にもわかんないすけど......。

Sota:プレスリーの話はいっかいも出たことないすけどね。

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俺たちは複雑な楽曲で微妙なものを......高価な楽器とちゃんとしたスタジオで伝えたいというブルジョア的な価値観が根底にあります。


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ふたりが参加したのはいつから?

Sota:俺はセッションによく参加してましたね。はじまった1年目ぐらいのとき、ギターとかキーボードで参加してましたよ。バンドはもう人前でジャム・セッションをやってましたね。

どんなスタイルの音楽だったんですか?

Sota:コード進行がありましたね。ジャム・バンドってコード展開がないでしょ。だいたいワンコードで演奏していく。それがラヴ・ミー・テンダーにはコード進行があるんですよ。というか、コード進行マニアなんですよ。

へー。そんなに難しいんだ。

Ackky:難しいと思いますよ。

Sota:俺たちは複雑な楽曲で微妙なものを......高価な楽器とちゃんとしたスタジオで伝えたいというブルジョア的な価値観が根底にあります。

ああ、そうした贅沢さは出ているよね。それは最初からあったコンセプトなんですか?

Sota:アラタのキャラクターなんじゃないかな。お坊ちゃんだし。

ラヴ・ミー・テンダーに関してよく言われるのが「シティ・ポップスとドラッグ・カルチャーとの出会い」とかさ、「シンナーを吸ったシュガーベイブ」とかさ、とにかく音楽的にはシティ・ポップスなんだよね。

Sota:いやー、それはコンセプトでもなんでもないですけどね。ただのコード進行マニアなんですよね。ティン・パン・アレーとか、細野晴臣さんとか、やっぱコード進行マニアでしょ。

Ackky:意識はしてないけど、全員やっぱそこは共通して好きですね。

アッキーはいつから入ったの?

Ackky:1年半前、いや2年くらい前かなー。マキちゃんからミクシィで「やんない?」って言われて。昔、サックスを吹いていたんですよ。その映像がYouTubeに上がっていて。

Sota:「アッキーがサックス吹けるらしい。こんどスタジオに呼んでみよう」って。

俺もアッキーがサックスを吹いているっていうのは驚いた(笑)。

Ackky:17年ぶりですよ(笑)。

アッキーは加入する前から、バンドの存在は知っていたんですか?

Ackky:もちろん。好きだったし。

どこが気に入ったの?

Ackky:楽曲も歌詞も。

ポップスを目指すところが良いとか?

Ackky:DJ的に聴いても耳障りがいいんですよ。

アッキーが知ったときにはもうオリジナルの楽曲はあったんでしょ?

Ackky:"シャーマン青春サイケ"もあったし、"TWILIGHT"もありましたね。"ヤブレターラブレター"もやってましたね。『FRESH!』に入っている曲はほとんどあった。

Sota:つねに、作ってはボツにして作ってはボツにして、ライヴで何回もやっても飽きない曲が残っていくんですよ。

Ackky:持ち曲が多いんです。

Sota:30曲くらいはある。

なのに何でミニ・アルバムが続いてんですか?

Sota:『FRESH!』の曲はそれぞれ録音した時期が違うんですよ。で、最近出た『TWILIGHT』は震災以降。

Ackky:1週間後だったね。

Sota:『FRESH!』のほうは2年ぐらい前のトラックが入っているからね。

とにかく、聴いていて感心するのは、洗練と言うことを目指していることなんですよね。はじまった頃は混沌としていたんだろうけど。

Sota:いまでも混沌としてますよ。

でもちゃんとポップスになっているじゃないですか。

Sota:それはね、人力テクノとか、人力トランスと言われるようなものへのアンチテーゼがありますね。

Ackky:いわゆるジャム系にありがちな感じが嫌いなんですよ。

なんで?

Sota:ダサいからですよ。

Ackky:ダサいよね。

好きそうじゃない(笑)。

Ackky:だいっ嫌い!

ハハハハ。

Ackky:好きなバンドもいますけどね。

なるほど。作曲は誰がやっているの?

Sota:誰かがアイデアを持ってきて、それをみんなで膨らませる。

Ackky:スタジオで1~2時間かけてカタチにしていく。

代表曲のひとつだと思うんですけど、"シャーマン青春サイケ"はいつできたんですか?

Ackky:これは初期の曲だよね。

Sota:俺、最初なんて歌っているのかわからなくて、「湘南新宿ライン」って聞こえてたんですよ。

Ackky:うちらがよくいるバーカウンターでできたんだよ。

Sota:そうなの?

Ackky:マキちゃんがそう言ってたよ。

Sota:そうなんだ。

Ackky:マキちゃんが来ればわかるよね。

しかしそのマキちゃんがなかなか来ないですね......(汗)。

Sota:お化粧してるから。

ハハハハ。ソウタくんは誘われて入って......。

Sota:いや、押し掛けて行ったんです。いちども誘われたことはない。いまでも正式メンバーって気がしない。

Ackky:俺は誘われたんだけどね(笑)。

ハハハハ。で、ソウタくんから見て、彼女の歌詞っていうのは......。

(ここでMAKI 999登場)

Sota:あ、来た。

Ackky:やっとで来たね。

Sota:結局ラヴ・ミー・テンダーって、マキちゃん親衛隊なんです。騎士なんですよ。つまり俺たちは使い捨てなんです。

いや、実はもう、かなり話が進んでて(笑)。

Maki:あ、もう。

Sota:可愛いし、女の子だし、命の価値が高いんですよ。

Ackky:ハハハハ、命の価値!

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結局ラヴ・ミー・テンダーって、マキちゃん親衛隊なんです。騎士なんですよ。つまり俺たちは使い捨てなんです。


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"シャーマン青春サイケ"がどうやって生まれたのか? っていう話で、そしたらバーカウンターのなかで作られたって。

Maki:みんながよく集まるバーで、私とアラタくんとテッペイの3人でやっていた頃に、ドラムセットを広げて、リハーサルをやっていたんですよ。

おー、あそこでリハやってたんだ。

Maki:そう。で、自分たちのやっていることを言葉で表すとしたら何になるのかという話になって、「シャーマン・ロック」って誰かが言って。で、「サイケ」も絶対に入ってるし、じゃあ、「シャーマン・サイケ」、でも何かが足りない、「青春じゃん!」って。

ハハハハ。

Maki:それで"シャーマン青春サイケ"。

なんで「シャーマン」? 霊と交信しているの?

Sota:それは「ジャーマン」のパロディ。

Maki:言葉遊び。だって「ジャーマン(ドイツ人)」じゃないし。

でもジャーマン・ロックっていう感じの音でもないでしょう。

Maki:感じないですよね。

HBには感じるけど。じゃあ、オリジネイターが来たので、もういっかい最初から質問するんですけど、「どうしてはじまったのか?」という質問に、ソウタくんは押し掛けていったと、で、アッキーは誘われていったと。

Maki:スカウトしたから。

とにかく、ふたりともどうやってラヴ・ミー・テンダーがはじまったのかよくわかってていないんです。

Maki:2007年7月7日に、セッションがあったんですよね。そこにアラタくんとテッペイと3人で集まって、ミルクバーっていうバーで。で、後日、「これ、バンドにしちゃわない?」っていう話になって。ぜんぶバーなんです。話が進んでいく場所がぜんぶバー。

渋谷のバー。

Maki:三茶にむちゃ狭いバーがあって。

Sota:日本一狭いバーです。狭すぎて、ナンシー関が入れないようなバー。世田谷通りの奥のほうにいる芸大生が集まっていたようなバーでね、みんなジャーマン・ロックとか好きでね。初めて行ったときにはマグマとかかかっていたな。

もとはジャーマン・ロック好きの集まりだったんだ。

Sota:あとはライフ・フォーサーだね。

Ackky:〈ライフ・フォース〉のお客さんが集まっていた。

アッキーがなんで〈ライフ・フォース〉のDJになったのかいつか訊きたいけどね。

Ackky:いやもう、「やれ」って言われて。

まあ、それはそれで長い話になるのでいまは止めておくとして。

Maki:バンドの名前もそのときに決まったのかな。

Ackky:ミユキちゃんね。

いや、だからミユキちゃんって誰ですか(笑)。DJチェルノブイリだっけ。

Maki:そう、チェルノブイリ。そう言われているんだけど、しかしなんでラヴ・ミー・テンダーになったのかは......わからない(笑)。覚えていない(笑)。

誰も覚えていない(笑)。

Maki:そのときのいちばん良い名前になった。

で、どこが気に入ったんですか?

Maki:響きと、そしてまあ、「優しく愛して」という意味も含めて。これで行こうと。「ラヴ」も入っているし。

いつからそれを名乗っているんですか?

Maki:だから2007年の7月。

え、じゃあ、さっき言った......。

Maki:バンドが始動して2日後ぐらいです。

最初はジャム・セッションだったんでしょ?

Maki:そう、ジャム・セッションして、代々木公園なんかでも広げてやったりとか。あとはバーでやっていた。最初は歌も入ってなくて、ホント、ただひとすら3人でセッションする感じで、それが飽きてきて、歌を歌おうって。マイクを3本立ててみたんですけど、最初は誰も歌わなかったんですけど。いちばん最初にできた曲が"マリフレ"なんですよね。歌と言うよりも、ああいう言葉のループですね。

その頃はシティ・ポップスじゃなかったんだ。

Maki:そんなではなかったですね。

何がどうしていまのようなシティ・ポップスになったんですかね。

Maki:なんでしょうね。歌モノを意識しはじめて、ソウタくんが入ってきたときに、なんかどんどんゴージャスになっていったんですよね。

Sota:ケレンミなく、青春賛歌を高らかに歌い上げようっていうところです。まさに『けいおん!』ですね。「バンドやろう」、「ここに楽器がある」って。「早くこれを使ってなんかやろう」って。

それがなんでアシュ・ラ・テンペルやスペースメン3にはならずにシュガーベイブになったんでしょうね。

Sota:血ですね。

Maki:都会派の生き様がでてしまったんですよね。

じゃあ、それはごく自然に自分たちのなかから出てきたと。

Sota:そうなんじゃないですか。メジャー7thの響きなんじゃないですか。

Ackky:ディジリドゥ持って、フレアパンツ履いてるバンドに誘われても絶対にやらないですからね。

HBとはかなり距離を感じますけどね。

Maki:HBとは違いますね。同じことやっても仕方ないし。

音楽的なリーダーみたいな人はいるんですか?

Sota:アラタがそうかな。モチーフ持ってくるのがいちばん多いですね。スタジオ自体がワークショップみたいで、こういうコード進行があるとか、こういうリズムがあるとか、研究しているんです。

ポップスを目指していることに関しては、やっぱ研究の成果?

Sota:目指してないです。自然にやっているだけで。

Maki:メンバーみんなポップスが好きなんですよ。

でもホント、自然にやったらアモン・デュールとかマグマとかになりそうなのにね。

Ackky:ハハハハ、たしかに。

Sota:セカンド・アルバムでは逆回転の音から入って、ずっとディレイのウェット音だけで構成されているようなものになっているかもしれないですね。

しつこいけど、そういうことをやってそうな感じなのに、なんでポップスなんでしょうね。

Sota:俺たちにはポップスができる。演奏できる。そういう自負があるんです。

Ackky:マキちゃんが歌ったのが大きいよね。

マキちゃんはそれ以前は歌っていたんですか?

Maki:歌っていないですね。ずっとドラムです。

歌詞もマキちゃんが書いてますよね。

Maki:だいたいそうです。アラタくんが書くこともありますけど。"DIET"なんかはアラタくんです。それを人に言ったら驚かれてしまって。「えー、あの曲、アラタくんの歌詞なの? 気持ち悪ぃー」って。

Ackky:女の子の気持ちになって書いたってね(笑)。

Maki:なので、もうこれからは、私が書いていることにしようと思っています。

普通に歌詞を読むと、ドラッグ・カルチャーからの影響を感じるんですが、実際はどうなんですか?

Sota:いやー、酷いものですよ。

ハハハハ。

Sota:ドラッグ・ソングばっかですよね。

Maki:ねぇ。

ハハハハ。"マリフレ"とか"花と盆"とか、自分の耳を疑うぐらいにびっくりした(笑)。

Sota:みんなその週にあったトピックを歌詞にしたり。珍事件とかね。どうしてもそうなるんですよね。

欧米にはポップスのなかにドラッグ・ソングがけっこうありますよね。ビートルズなんかもすごく多いでしょ。"アイム・オンリー・スリーピング"とか"シー・セッド・シー・セッド"とか"トゥモロー・ネヴァー・ノウズ"とか。

Sota:まあ、ラヴ・ミー・テンダーはドラッグ・ソングをやっていると受け取ってもらわなくてもいいんですけどね。いくらでも解釈はあるので。

Maki:いろんな意味がね。

ストーン・ローゼズの"ディス・イズ・ザ・ワン"とか、ハッピー・マンデーズの"ルーズ・フィット"とか、ああいうのって、ある意味すごくメタファーとして楽しんでいるっていうか、ドラッグやるやらないとか、その是非じゃなくて、ある種のユーモアとしてのドラッグ・ソングの面白さってありますよね。

Maki:それはある。歌詞の反応を見るのが面白いっていうは。

Sota:俺の見極め方は、この人は知ってるか知らないかだからね。

ハハハハ。日本のポップスではそういうのがほとんどないよね。RCサクセションの"うわの空"とか、"つ・き・あ・い・た・い"とか。

Sota:「LとSはDまでいった」(不思議)とか歌ってるしね。

そうそう。日本ではそれがホントに極端にない。ポップ・カルチャーの重要ないち部なのに、音楽リスナーのなかにさえ偏見が多いというか、すごく抑圧されているよね。最近のインディ・ヒップホップはけっこう表現しているけど、やっぱ日本の不自由さを象徴しているように思うよね。

Ackky:ただ、俺らは力コブシをこめて「リーガライズド・イット」という感じではないんだよね。

でも、歌のネタとしては面白さを感じているんでしょ。

Sota:日常がそうですからね。

はははは。

Maki:たしかにそうなんです。"円山町ラプソディ"もreloveというバーが円山町にオープンしたときの話を歌詞にしているんですね。とくに作り込んでいる感じでもないんですよね。

ドラッグのような危ういモチーフを持ってくるとき、どうしても日本では暗いアングラ臭がついてしまって、シメっぽくなるか、過剰な幻想を抱きがちだったと思うんですけど、ラヴ・ミー・テンダーはそれをもっとドライに、ユーモラスに表現してるし、音も洗練されている。そこがいままでにはないかなって思ったんですよね。

Sota:やっぱもう、そこは行くところまで行って彼岸に着いたらメジャー7thが鳴っていたということでしょう。

(笑)負の感情がないよね。

Sota:ないですね。『マゴット・ブレイン』的なものもぜんぜんないです。

『マゴット・ブレイン』は乾いているじゃないですか。

Sota:俺はもっと、(デトロイトではなく)カリフォルニアです。ドロドロしていないんです。

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まあ、ラヴ・ミー・テンダーはドラッグ・ソングをやっていると受け取ってもらわなくてもいいんですけどね。いくらでも解釈はあるので。


LOVE ME TENDER
トワイライト

Pヴァイン

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はははは。そういう意味ではラヴ・ミー・テンダーのドラッグ・ソングはちゃんと相対化されているんですよね。ところで今回リリースされた『TWILIGHT』にも、自主でリリースした『FRESH!』にも"シャーマン青春サイケ"と"円山町ラプソディ"が入っているんですけど、まずその、「円山町」という地名に関しては、やっぱ思い入れがあるんですか?

Sota:マキちゃんが円山町で生まれたような人間なんです。

Ackky:住んでいるのも円山町だしね。

Maki:愛着がありますね。

Sota:バンドでライヴで田舎行って、車で走りながら、「アー、良いなぁ、この辺り、安いんだろうなー、住みたいね」とか言ってると、マキちゃんだけひとりでガタガタ震えているんです。「朝までやってるバーがない」って。

ハハハハ。それすごいね。

Maki:「絶対に住めない」「帰る!」ってね。

いいですねーそれ(笑)。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを地でいってる感じが。

Sota:マキちゃんは都会の頽廃を地でいってるから。

Maki:好きなんです。

僕も好きです。しかし、アルバムが楽しみですね。ホント、期待されてるんですから......。

Sota:もう制作に入ってますよ。しかし、いまどき誰がレコードを買うんですか。

いや、ラヴ・ミー・テンダーとか普通に売ってますよ。ジェトセットとかで。ちゃんとキャプション付きで。シュガーベイブや相対性理論を持ち出して説明されてますよ(笑)。ちなみに今回リリースされた『TWILIGHT』にはテーマやコンセプトはあるんですか?

Sota:『TWILIGHT』って、パーティのタイトルなんです。

Maki:2年前に1回しかやってないんですけど、人生のベストにはいるようなパーティでしたね。そのときにテッペイが失恋するんですけど、それが曲のモチーフです。"円山町ラプソディ"も円山町のバーのパーティ名です。

都内の小さなバー・シーンから出てきたというか。

Maki:そう、バー・シーンです(笑)。

なんでバーが好きなんですか?

Sota:日光が嫌いなんですよ。

アッキーとか日光、好きでしょ!

Ackky:俺、好き。俺はアウトドアなんでね。

Sota:俺も好きなんだよな。

で、なんでバーなんですか?

Maki:別にお酒が好きなわけじゃないですしね。

音楽バー?

Sota:誰が店員かお客かわからないバー。

僕はこの取材で、ソウタくんが逮捕されるんじゃないかと心配なんですけどね(笑)。

一同:(笑)。

ソウタくんは、ツィッターのシーンでは有名人だという話をうかがっていますが。

Sota:いやもう、行き詰まりました。

Ackky:ハハハハ。

Sota:思ったようにいかないです。何にも伝わらない。

つねに議論を提供しているんでしょ?

Sota:言いたいことはなんでも言う主義なんで。

マキちゃんから見て、このバンドのメンバーはどんな集まりなんですか?

Maki:酒場で出会った人たちですよね。

シュガー・プラントを見ていたとか?

Maki:でもホント、友だちって感じですよ。自然に集まっていたという感じです。

僕、HBが好きなんですけど、あのバンドはもうはじまっていたんですか?

Maki:HBは、2004年にははじまってましたね。

それ以前は?

Maki:違うバンドをやってました。METRO999っていう、サンプラーとドラムのユニットだったり、その前は淺野忠信くんとLMっていう、LちゃんMちゃんっていう、双子の女の子がヴォーカルのバンドをやったり。

Ackky:ナチュラル・カラミティとかもやってるんでしょ?

Maki:レコーディングにちょっと参加した。

へー、すごい輝かしいキャリアじゃないですか。ソウタくんはシュガー・プラントみたいなバンドにいながら、日本のアンダーグラウンドなシーンをずっと見てきていると思うんですけど、ラヴ・ミー・テンダーはどういう風に位置づけられますか?

Sota:ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを砂浜に連れ出したようなバンドじゃないですか。

たしかに(笑)。......しかし、結局、他のメンバーの人は来なかったですね。

Ackky:来るとしたらアラタくんなんですけどね。

アルバムの発売日は決まってますか?

Maki:春ぐらいにはってテッペイが言ってたよね。

けっこう先なんですね。

Sota:俺は昔から録音してからリリースまでがなんでこんなに時間がかかるのかわからない。モータウンなんか、月曜日に会議して、火曜日に録音して、水曜日にミックスして、金曜日には出荷していたわけでしょ。あのスピード感が欲しいですね。

ジャマイカもすごいよね。

Sota:店の奥で録音したものを店先で売るみたいなのがいいですね。

じゃあ、そろそろ撮影しましょうか?

Ackky:結局、アラタくん、来なかったね。

Maki:アラタくん、携帯持ってないんですよ。

いまどき携帯持ってないってすごいね。思想でもあるのかね。

Sota:アーミッシュと言いますかね。そういえば、最近、渋谷の街自体が移動していると思いませんか? どんどん神泉とか、そっちのほうに移動しているというか。

ああ、たしかにセンター街や宇田川町あたりに個人商店を出すのって、もう難しいもんね。この10年で、そうした渋谷の文化もどんどん辺境へと移ってるよね。

Sota:バーの数で言えば三茶がすごいですよ。最強ですね。いま、バー・シーンは三茶ですね。

Maki:三茶はいますごいね。

Sota:音楽関係とかアート関係とか、来ない。鬱病のシステム・エンジニアとか、気が狂ったAV監督とか、そういう人たちがぶいぶい言わせている町で、オラオラの感じもあって最高です。

Ackky:不良が多いんですよ。

Sota:バビってますよ。

なるほど。じゃあ、今日はどうもありがとうございました。

Sota:えー、もう終わりなんですか。

アッキーは昨年、ソロ・アルバム出しているけど、ソウタくんは出す予定はないんですか?

Sota:自分の死後、いくらでも出せるようにプリンス並みに録りダメしています。

まあ、とにかく、ラヴ・ミー・テンダーの今後が楽しみです。今日はどうもありがとうございました。

しくじるなよ、ルーディ - ele-king

 9月11日の「新宿・原発やめろデモ!!!!!」で逮捕・拘留されてしまったわけだが、こういうことを言うと応援してくれた方や心配してくれた方に怒られてしまうかもしれないが、なかなか面白く、ファンキーな体験だった。まあ、そもそも何も悪いことをしていないから気が楽だった。2泊3日だったから良かったというのもあるが、留置所のなかの人間模様はさすが新宿署という感じでヴァラエティに富んでいたし、警察の内部の様子も取材できてしまった。拘留延長がついていたら気持ちも違ったのだろうけど、2泊3日で出られたしね。松本哉には、「早過ぎる! これから盛り上がる予定だったのに。いまから自首して来て」と言われた。あんたね~。
 僕の容疑は東京都公安条例違反というものだった。多くの人が、「何、それ?」という感じだろう。要は、「デモ参加者を扇動して、デモの隊列を歩道まで広げ、公共の秩序を乱した」ということらしい。扇動なんてしてないし、はっきり言っていちゃもん逮捕です。

 僕は雑居房に入ったのだけれど、当然いろんな理由で捕まっている連中がいる。シャブ、業務上横領、私服の女性刑事をキャッチして捕まった若いホスト、ビルへの不法侵入、酔っぱらっての暴行などなど。彼らの名誉のために言っておくが、彼らは間違っても手の付けられない極悪人ではない。どこにでもいる気の良い男たちで、僕が反原発のデモで逮捕された話をすると、そのうちの何人かは反原発デモを支持してくれたし、なかには東北の被災地にボランティアに行っていた若者もいた。金髪のホストの彼は、4月10日に高円寺で行われた第1回目の「原発やめろデモ!!!!!」を目撃していたらしい。「『モテたい』とかいう関係ないプラカードもありましたよね。あのデモうざかったっすよ」「ははは。だいぶ派手にやったからな~。今度、参加してみてくださいよ」なんて会話もした。

 刑事からは1回取り調べを受けただけだったので暇だった。暇な時間は留置所の貸本(『海峡を渡るヴァイオリン』が面白かった)を読んだり、同房の住人と雑談していた。だいたいがこれからの身の振り方か、くだらない下ネタか、弁護士の情報交換か、警察や検事に対する文句だった。「オレの弁護士はやり手ですよ」という話になれば、「その弁護士の名刺をくれ」という話になる。弁護士もピンからキリまでいるから、この話題に関してはみんな目の色を変えて、真剣に語り合っていた。実際、僕は面会に来てくれた弁護士の方と少し言い合いになってしまったし、こればっかりは相性というものがある。同じように、留置所係の警察にも嫌なヤツもいれば、良いヤツもいる。とはいえ、捜査をする刑事や検事は基本的に嫌なヤツが多い。というか、彼らは人の人生を役所仕事的に扱う立場にいるから手に負えない。本当はちゃんと人間を見て、拘留するか、しないか、起訴するか、しないかを判断しなければいけないのだけど、制度がそのようにできていないという問題がある。ハンコをポ~ンと押して仕事をした気になっているから困ったものだ。複雑な話なので、これ以上書かないが、とにかく、同房の住人たちが文句を言っていたのは、「なんでこんなに長く拘留するんだよ!」ということだ。ほんとその通り!

 留置所での最大の楽しみと言えば、もちろん朝昼晩の食事だ。朝食のおかずがハンペンのときは愚痴をこぼし、ウィンナーやから揚げが入っていれば、みんなで大喜びしていた。昼は食パンで、夜は白身魚のフライが入っているような、コンビニの幕の内弁当をショボくしたような弁当だった。昼食の時間に、徳永英明の甘ったるい、ムーディーなバラードを流すのはマジで勘弁して欲しかった。もちろんたいした食事ではないけれど、新宿署はそれなりに良い方だと聞いた。取り調べのときにカツ丼なんて出ません! しかも、6時に起床して6時半に朝食を食って、昼は11時半、夕食が16時半なんていう修道院みたいな生活なので、だいたいみんな便秘になってしまう。運動の時間はあるけど、狭い部屋に集められて、煙草を吸って、髭を剃って、ツメを切るだけだから、運動でもなんでもない。映画に出てくるような運動場なんてもちろんない。

 3日という短い拘留期間のなかで、僕にいちばん印象を残してくれたのは、ある警察官だった。検事の取調べを受けるために東京地方検察庁に行く際、僕に手錠をかけ、縄を腰につないで同行した、デモでもプレイしたSKYFISH似の留置所係だった。現在、30代前半の彼はファッションが好きで28歳まで池袋の服屋で働いていたという。20代後半になって、好きだけでは続けていないと、次々に仲間が転職していく。彼は人の役に立ちたいと警察官を志す。この不況のご時世、公務員という安定した職につきたい気持ちはわからなくもない。妙に腰の低い彼は僕に「音楽や本はどんなのが好きですか?」「服は高円寺で買うんですか?」などとあれこれ訊いてきた。ネットか何かで僕が逮捕された理由や事情を知っているようだった。彼は自分の好きな音楽について熱く語り、「くるりが好きなんですよ!」と力を込めて言った。『snoozer』の読者だったのかもしれない。そこまではいいが、他愛もない世間話をひと通りしているあいだに気を許してしまったのか、彼は検事の取り調べを待っているときに僕の横であろうことか豪快に居眠りをかまして、手錠さえかけ忘れそうになって、同僚にこっぴどく叱られて落ち込んでしまったのだ。「逃亡しないと思って......」。そりゃしねぇーけどさ! すぐ出るし。良いヤツだったけど、あんなに間の抜けた警官に会ったのは初めてだった。

 と、そんな感じの近くて遠い3日間の愉快な小旅行だった。まあ、でも、もちろん捕まらないに越したことはない。次はもっと上手くやるつもりだ。しくじるなよ、ルーディ!!

追記:10月に発売される月刊『サイゾー』に掲載される森達也さんとの対談では、9月11日のデモにおける逮捕の経緯や警察の過剰警備の実態について話しています。

The Rapture - ele-king

 そのシングル、"ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァース"を初めて聴いたのはいつだったか......はっきり思い出せないが、僕の場合、たしか2003年に入ってからだったと思う。まだYouTubeもなかったので、ネット上ではなく、たぶん何かのイヴェントで聴いて、そして彼らのデビュー・アルバム『エコーズ』が出る頃にはそれを聴く度にバカみたいに奇声を上げる10代になっていた。ニューヨークに〈DFA〉という理想主義そのもののようなレーベルが生まれたこと、そしてそこを中心にディスコ・パンクという、ネーミングそのままの、しかしその相容れなかったはずのふたつの音楽を交配させた新しいダンス・ミュージックが発生したこと――後に知ったそれらの情報は、その興奮に拍車をかけた。当然僕だけではなかった。それから数年はインディ・ロック系のイヴェントでは"ジェラス・ラヴァース"は必ずといっていいほどスピンされ、その1曲はロック・キッズをギターをあくまで持たせたままでダンスフロアに向かわせるのに十分だった。実際、僕と同い年で「ディスコ・パンクが契機で洋楽を本当に聴くようになった」という友人がいて、彼はいま楽しそうにダブステップを追いかけている。
 "ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァース"はいま聴くとたしかに「かつてのディスコ・パンクの音」だが、それでも生々しい興奮の記憶が残っている。〈DFA〉らしいパーカッションのイキのいい響きと、パンキッシュに荒々しいギター・サウンドとどこかぎこちないグルーヴ。それはパンク・キッズががむしゃらに鳴らし叫んだダンス・サウンドであり、LCDサウンドシステムが音楽マニアの中年の哀愁をその音にブレンドしていたのに対して言えば、ザ・ラプチャーは自分たちの未熟さや勢いを偽ることなく詰め込んでいた。

 セカンド・アルバム『ピーセズ・オブ・ピープル・ウィ・ラヴ』から5年の沈黙の末、ザ・ラプチャーが〈DFA〉に帰ってくる――しかも、LCDが活動を休止したこの2011年に――というニュースは、かつて"ジェラス・ラヴァース"で踊ったキッズのすべてが興奮したに違いない。リード・シングルとなった"ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ?"はすぐにネット上で聴けたが、その膨らんだ期待に大いに応えるものだった。バンド・サウンドではあるがパンクの要素はかなり後退し、シカゴ・ハウス調のピアノのリフと4つ打ちのバスドラムで幕を開ける、よりオーセンティックなディスコ・ナンバー。何と言っても4分辺りで加わり吹き荒れるサックスのソロと、それと対抗するように「君の愛はどれぐらい深い?」と狂おしく歌い上げるルーク・ジェナーのヴォーカルだ。そのエモーショナルな熱は、はっきりとザ・ラプチャーの帰還を告げていた。
 と言っても、本作『イン・ザ・グレイス・オブ・ユア・ラヴ』はかつてのディスコ・パンクではない。この新作のサウンドを特徴付けているのはシンセの煌びやかな音色であり、サックスのふくよかな響きと多重コーラスが醸すソウルフルさ、である。アッパーなシンセ・ディスコ・ポップ"セイル・アウェイ"で幕を開ける本作だが、まるで東欧の舞踏音楽とベース・ミュージックが合体したかのような"カム・バック・トゥ・ミー"、ぎくしゃくしたファンク・トラック"ネヴァー・ダイ・アゲイン"、"キャン・ユー・ファインド・ア・ウェイ?"など、曲ごとのスタイルは多彩だ。〈DFA〉と言ってもプロデュースはジェームズ・マーフィ&ティム・ゴールズワージーではなく、カシアスのフィリップ・ズダールということもあり、全体的に派手なプロダクションが目立つ。パンキッシュなギターの音色であったり高音のパーカッションであったりする、かつてのラプチャー的な記号であったサウンドはかなり抑えられている。

 このアルバムが8年前のように、新たな時代を呼び覚ますようなことはたぶんもうないだろう。それでも本質的なザ・ラプチャーの魅力が何も変わっていないと思えるのは、ルークの不安定に音程が揺れるヴォーカルが歌うメロウなメロディのせいだろうか。そしてそれは、本作でもっとも開放されている。前作で幼児言葉を使っていたように、あるいは本作の"カム・バック・トゥ・ミー"で「僕らはみな、子供ではないの?」と繰り返すように、ザ・ラプチャーの歌にあるぎこちなさや不安定さ、頼りなさはどこか子どもの叫びを思わせる。"ジェラス・ラヴァース"において彼らがダンス・ミュージックに持ち込んだのは、そしてロック・キッズの心を動かしたのは、思春期の危うさを孕んだものではなかったか。もっともメランコリックなメロディを持つタイトル・トラックでは「きみの愛に見守られ」と繰り返しながら、「どうか僕を否定しないで」ととても心細そうに吐き出している。
 本作における最大の驚きは、"チルドレン"と題されたナンバーで訪れる。振り切れたようにポップでアンセミックなシンセ・ディスコで......眩い光が降り注ぐような多幸感に満ち溢れている。「待ってくれ/たった一人の息子/きみの姿が見える/空の上から」という歌い出しは、ルークが4年前に母親を自殺で亡くしていることも関係しているのかもしれない。「子どもたちが呼吸する/子どもたちが離れゆく/僕には見える/きみと僕の姿が」......そこに、温かいコーラスが舞い降りてくる。「子どもたち」を無条件に肯定するかのように。子どもたちの踊る姿が見えてくる。
 アルバムは感情的なアップダウンを経ながら、やはり山場となっている"ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ?"のあと、ピアノのループがとてもスウィートだが、歌はどこか頼りなげなソウル・ナンバー"イット・テイクス・タイム・トゥ・ビー・ア・マン"で幕を閉じる。欲しいものはきっと手に入れられはず、カモン、ベイビー、やってごらん......そして"ハレルヤ"のコーラスとサックスが響き渡る。不安や心細さはいつもある。だがたしかにザ・ラプチャーはディスコのグルーヴで踊っていて、頼りない子どもであることをそのまま肯定するかのように、ソウルフルな歌を懸命に歌っている。

Alva Noto & Blixa Bargeld - ele-king

 およそ1週間前にマシュー・ハーバートの"ワン・ピッグ"ライヴを観ている。その同じ会場で、もっとも先鋭的なドイツの電子音楽家(アルヴァ・ノト=カールステン・ニコライ、坂本龍一との共演者としても知られる)と......ポスト・パンクの時代にチェインソーを金属に斬りつけるノイズを音源として、くず鉄を打楽器としたバンド、つまり、いわゆる既存の楽器のすべてを放棄したバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの中心人物にしてヴォーカリスト、ブリクサ・バーゲルトとのプロジェクト、ANBBのライヴである。破壊に憑かれ、ダダイズムに深く共振し、そして実験音楽に人生のすべてを捧げていると自ら語るアーティストの久しぶりの来日だ。オーディエンスの数は......意外なほど少なかったが、しかしそのライヴは耳と心にこってりと焼き付くものだった。

 フロント・アクトのNHKyxは、大阪とベルリンを往復する国際派の電子音楽家で、〈スカム〉〈ラスター・ノートン〉、あるいはセンセーショナル(元ジャングル・ブラザースのぶっ飛んだラッパー)との共作を〈ワードサウンド〉から......とにかくいろんなレーベルからたくさんの作品を出しているプロデューサーである。インダストリアルなビートを操作しながら、ノイズをかき鳴らし、IDMとハードコアなダンス・ミュージックの溝を埋めるような、インパクトのあるステージを披露した。続いて登場した伊藤篤宏のウルトラ・ファンクターは、蛍光灯のノイズを音源としながら、NHKyxの冷たいグルーヴをバトンタッチするかのように、彼の白い熱を展開した。昔、あるオーガニック系の人物から、家では絶対に蛍光灯は使わないと言われたことがある。ウルトラ・ファンクターはそうしたハイソなエコ人間へのアンチテーゼでもあろう。
 そうした強力なフロントアクトを経て、ステージに登場したふたりのベルリナーは、それまでの騒音とは真逆で、曲のなかには多くの静寂があった。ライヴは......ノイバウテンのリスナーにとってはお馴染みのバーゲルトのヴォーカリゼーション、あの水蒸気のような声(口笛のような音)ではじまった。

 黒いスーツでめかし込んで、もみあげを尖らせ、髪の毛をしっかりと整えてマイクの前に立っているバーゲルトは、ある意味古風な"ヨーロッパ主義"を強く感じさせるものだった。それはいまとなってはレトロ趣味のひとつとも言えるし、1920年代のベルリンのナイトクラブと2011年のIDMとの交流会という点では新鮮にも思える。
 ライティングは、すべてバウハウス的なデザインだ。直角で、そして色彩は2色に制限される。黒と赤、黒と緑、青と黒、そうした組み合わせで構成される。それは、かつてグラム・ロック/パンク・ロック/ポスト・パンクが、アメリカ的な経済繁栄への強烈な反撃として持ち上げたドイツ的な美学(非人間性や灰色の頽廃美、終末や衰退への陶酔、人工美、表現主義などなど)を表しているように思えた。
 "ワンス・アゲイン"~"ワン"~"ミミクリー"~"エレクトリシティ・イズ"......アルバム『ミミクリー』ではオウテカ(もしくはメルツバウ)を彷彿させるような情け無用の冷酷なエレクトロニック・ミュージックに思えたような曲も、ニコライの間(沈黙)を効果的に用いたIDM、そしてバーゲルトの呼吸まで聴こえそうなライヴではむしろエロティックに聴こえる。ジャック・ブレル(まあ、彼はドイツ人ではないが)のラップトップ・ヴァージョン――そんな言葉が脳裏をよぎる。「昆虫としてのあなた(You as an insect)/あなた自身を擬態する(Mimic yourself)」......バーゲルトは"ミミクリー"における最初の英詩をゆっくりと喋ってからはじめる。アルバムのスリーヴアートには、目を奪うような、女が昆虫のように町を這っている写真が使われているが、これは1967年の映画『欲望』にも出演しているドイツ人のスーパー・モデル、ヴェルシューカの写真である。
 アンコールの"フォール"(アルバムの1曲目)にいたってはさすがというほかない。周波数を手品師のように操作するニコライは、最初鼓膜の近くでさざ波を起こし、それをいつの間にか気が狂いそうなほどのノイズとして突き刺す(アルバムでは耳をつんざくノイズに思えたそれは、より展開のある楽曲となっていた)。そして静寂とピアノ、バーゲルトの歌......。最後の"ホール・イン・ザ・グラウンド"は、僕にはファーストの頃のスーサイド風、まあ、要するにロカビリー+ノイズに聴こえた(オリジナルではそうは感じなかった)。
 先週同じ会場で観たハーバートの、英国人らしい社会風刺のライヴ・パフォーマンスとはまったく別の興奮を覚えた。それは実験音楽に人生を捧げたと自負する人間による、現代における新古典主義とも喩えられるような、しばらくのあいだ家に帰りたくなるほど感動的で美しい時間帯だった。

なお、raster-notonジャパンツアーは今週も続きます!

【R-N EXPRESS】(東京公演)
■日時:2011年10月9日(日)23:00開場 /開演
■会場:渋谷WOMB
■出演:Alva Noto / Byetone / Vladislav Delay / Luomo / Aoki Takamasa /Anne-James Chaton / AGF / NIBO / Atsuhiro Ito
■raster-notonジャパンツアー特設HP:<https://www.raster-noton.net/japantour>

また、東京馬喰町にある現代美術ギャラリー、Motus Fort(モータス・フォート)では、11月5日までブリクサ・バーゲルトの展覧会をしています。
https://www.motusfort.com/exhibition.html

vol.13 : エレファント6がやって来た! - ele-king

 エレファント6なる集団に特別の感情を抱いている人は、30代もなかばの世代だろうか......。エレファント6とは、80年代後半、アップルズ・イン・ステレオのロバート・シュナイダー、ニュートラル・ミルク・ホテルのジェフ・マンガム、オリヴィア・トレマ・コントロールのウィル・カレン・ハートとビル・ドスという4人のルイジアナ州のラストンの学生時代の同級生が4トラックのカセットレコーダーでレコーディングしたことからはじまっている。
 彼らはテープを交換しあい、アルバムのアート・ワークやライナノーツを作り、レコーディングのコラボレーションとバンドを結成した。1991年にロバートはデンバーに、残りの3人はアセンスに引っ越し、そこからエレファント6という名前とロゴが発生し、彼らが関連する作品には、エレファント6のロゴがつくようになった。これは、エルフ・パワー、ビューラー、ジャービルズ、ミュージック・テープス、オブ・モントリオールなど、さまざまな仲間のバンドに広がった。ロバートはアップルズ・イン・ステレオとして、日本のトラットリア・レーベルからアルバムをリリースしている。
 エレファント6という名前は、90年代末にピークを迎えている。よく知られているように、「エレファント6ミニ・ツアー」として、2000年にはオブ・モントリオール、エルフ・パワー、カルヴィン・ドント・ジャンプが日本に初来日した。オリヴィア・トレマ・コントロールはカヒミ・カリィなど日本のアーティストとコラボレートしたり、ソニーからリリースされたヴェルヴェット・アンダー・グラウンドのカヴァー・アルバムにも参加している。

 ジェフ・マンガムは、ニュートラル・ミルク・ホテルとして、いまでは伝説のアルバムになっている『In The Aeroplane Over The Sea』を1998年に発表している。ちなみにこの作品は、アマゾンでは100枚のグレート・ロック・アルバム、『Q』マガジンで25年のあいだでのトップ30アルバム、『ヴィレッジ・ヴォイス』では1998年のベスト・アルバムに選ばれている。
 その後活動を停止していたが、2011年のATPのキュレーターとしてついにカムバックしたのである。伝説となっている彼を一目見ようと、チケットは早々にソールド・アウトとなった。インディロック・ショー・リスティング・サイトの「オー・マイ・ロックネス」では、今週(9/29現在)は一面にジェフの話題で満載である。

 ウィル・カレン・ハートとビル・ドスは、エレファント6の中心人物だ。オリヴィア・トレマー・コントロールのオリジナル・メンバーでもある。彼らは1999年に『Black Foliage』をリリースした後、サーキュラトリー・サウンド・システムと名義を変えて活動している。また、エレファント6の「ホリディ・サプライズ・ツアー」へとライヴ参加もあった。が、今回のオリヴィア・トレマー・コントロールとしては約10年ぶりのショーである。
 共演のミュージック・テープスは、ジュリアン・コスターのプロジェクトで、彼もエレファント6にはなくてはならない存在である。ニュートラル・ミルク・ホテルのメンバーで、ニューヨークではチョコレートUSAとしてビル・ドスと一緒にプレイしていた。
 ジュリアン・コスターのミュージック・テープスは、基本的には彼と7フィートの大きさの巨大メトロノームによるプロジェクトである。
 90年代後半、著者はアセンスに住んでいた。彼がちょうどこの巨大メトロノームを作っていた頃だった。そして、ミュージック・テープスとしてのプロジェクトを話していたとき、彼は「オービタル・ヒューマン・サーカス」という名前の巨大な遊園地ツアーをしたいと、目をキラキラさせながら語っていたのを覚えている。メトロノームの裏側には、さまざまな機材が入念に作り込まれていて、自動的に演奏する仕組みになっている。見た目もプレイもびっくりな楽器である。ここ何年か、ミュージック・テープスはララバイ・ツアーとして、人の家にララバイ(子守唄)を届けるというユニヴァーサルなツアーをしていたが、ミュージック・テープスとしてのショーはオリヴィア・トレマー・コントロール同様、かなりの久しぶりなのである。

 このオリヴィア・トレマー・コントロールとミュージック・テープスのショーが9月21日、マンハッタンの ル・ポワソン・ルージュであった。観客は意外にも若い人が多かった。隣にいた子に話しかけると、「オリヴィア・トレマー・コントロールは音楽を聴いたことがあって、ずっと見たいと思っていた」と、新しい世代は顔を赤らめながら言う。「今回、彼らが見れるなんてドキドキしている。もちろん、ジェフ・マンガムがキュレートするATPのチケットも買ったよ。本物のジェフが見れるなんて、夢みたいだ」

 筆者が会場に到着するとすでにミュージック・テープスがはじまっていて、ジュリアンはミュージック・ソウ(のこぎり)をプレイし、その隣ではオルゴールのような仕掛けのオルガンが自動プレイしていた。彼の父はルーマニアのジプシーで、今日はその父が会場に来ていると、ステージ上の彼は嬉しそうに話している。バンジョー、ミュージック・ソウなど曲のたびに楽器(彼の手作りである)を代え、やがて7フィートのメトロノームが登場し、トランペット、トロンボーン、キーボードなどのサポートメンバーが加わる。目で見て楽しい、耳で聴いて驚く、素晴らしいミュージック・テープスのショーだった。


ミュージック・テープス

 続いてオリヴィア・トレマー・コントロールが登場する。筆者が個人的に知っているドラマーのエリック・ハリスの代わりに、元オブ・モントリオール、エルフ・パワーのデリック、そして〈クラウド・レコーディング〉主宰のジョン・フェルナンデスがベース、ピーター・アーシックがキーボード、ウィル・カレン・ハートとビル・ドスがボーカル&ギター、ミュージック・テープスのジュリアン、ジャービルスのスコットもメンバーとして参加した。もうひとり、初めて見るメンバーがギターで参加していた。あとで聞くと、AJという男の子で、アップルズ・イン・ステレオから紹介されて、すでに何年か一緒にプレイしているらしい。
 ウィルの横には、タンバリンや摩訶不思議な打楽器やパペットと並び、マイク・スタンドの前にレコード・プレイヤーが置いてある。その上にはレコードではなく、緑色のリンゴが回っていた。昔と比べて年を取ったのは否めないが、演奏がはじまるとあの懐かしい、90年代後半の豊かな香りが放射される。新曲の"The Game You Play Is In Your Head, Parts 1, 2, & 3"や定番のの"Jumping Fences"、 さらにフリーフォームの"Green Typewriters"(No.1からNo.10まである)......、イントロがはじまると歓声が上がったり、歌詞の最初から最後までを一緒に歌う声が場内に響いたりと、1時間のショーはとても充実したものだった。古いファンは懐かしい曲にいちいち喜んだり、新しい観客にはまったく新しいバンドとして、さまざまな思いをうながしている。彼らは変わっていなく、やっていることも90年代とほとんど変わらない。新曲もあったがオリヴィア・トレマーらしい、胸がくらりと動かされるような美しさを持つ曲だった。
 アンコールを3曲ほど披露したあと、終わったステージ上からセット・リストを奪いあうファンの姿を横に、まだレコード・プレイヤーの上でくるくる回り続けるリンゴがあった。楽屋に行くと、ジェフ・マンガムがいて(デンジャー・マウスもいた)、今回のショーのことを嬉しそうに話してくれた。「来週ニュー・ジャージーでアコースティック・ライヴをするんだ」と、自分がキュレートするATPのことも話してくれた。昔アセンスで一緒に住んでいた頃と何も変わっていない。

 オリヴィア・トレマ・コントロールはこのあとATPに出演すると、10月中旬に地元アセンスのアセンス・ポップ・フェスに参加する。10年は何かの周期なのだろうか、彼らのリヴァイヴァルはもはや回顧展以上の意味を持っているようだ。デジタル化された2011年の音楽業界においてニュートラル・ミルク・ホテルのジェフがフェスティヴァルをキュレートすると、瞬く間にソールドアウトになる世のなかなのである。これは何を意味するのだろうか、なぜいまの世のなかが彼らに惹き付けられるのだろうか......、10年のあいだで忘れそうになっていたものをあらためて見直す良い機会になるかもしれない。


オリヴィア・トレマ・コントロール

 ジェフがキュレートするオール・トゥモローズ・パーティズ〈I'll Be Your Mirror〉は今週末9月30日に、ニュージャージのアシュバリー・パーク、10月3日はパラマウント・シアター、UKでは12月2日~4日に(w/フリート・フォクシーズ、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、サーストン・ムーア、ザ・フォール、ボアダムス、パンダ・ベアなどが出演)開かれる。

今回のショーレポート
https://www.brooklynvegan.com/archives/2011/09/the_olivia_trem.html

エレファント6集団について
https://www.elephant6.com/about.html

バンドへのリンク
apples in stereo:
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Apples_in_Stereo
neutral milk hotel:
https://en.wikipedia.org/wiki/Neutral_Milk_Hotel
olivia tremor control:
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Olivia_Tremor_Control
https://www.oliviatremorcontrol.com/
the music tapes:
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Music_Tapes

第五回:緑の家に聴かせる音楽〈一〉 - ele-king

 横浜方面に向かうのは今年二度目で、この前は葉山の神奈川県近代美術館でのモホイ=ナジ展に電車とバスを乗り継いでいった。私はそこで秋田昌美の文章で知ったナジの「アンタイ・レコード」の現物を見る腹づもりだった。秋田昌美はモホイ=ナジについてこう書いている。
「だが、ナギ(モホイ=ナジ、この本ではモホリ・ナギと表記している/筆者注)は聴覚芸術家ではなく視覚芸術家であった。彼がレコード盤上に刻まれた「溝」という「音が視覚化された」レコードの物質面に注視したのも、おそらく彼が音楽ではなかったからであろう。さらに、彼はレコードを「創造的音楽」のために変形を加え得る様々な方法を列挙するに当たり、レコードを写真にとること、そして、「いかにそれらのレコードが演奏可能な本物のように見えても、まずはこうしたことから始めるのが好ましい」と述べる。さらに、「機械的・金属的な音」あるいは「鉱物的な音」についての実験を試みるよう提案している」(秋田昌美『ノイズ・ウォー』青弓社)
 直後に秋田自身「ナギの作ったレコードが一体どのような「音」を出したのかは分からない」と断っているように、この作品は構想段階で終わったのか、今回の展示にそれを思わせるものはなかった。ところがその構想コンセプトが示唆するものは少なくなかった。とくにノイズや、ヒップホップをはじめとしたDJカルチャーで、ノン・ミュージシャンがどのようにレコード・メディアを誤用してきたか、秋田はその歴史のはじまりにモホイ=ナジを置こうとする。もちろんこれは、レコード/ヴァイナルの物質性に親和的な、ほとんど90年代的なものの考え方であり、音楽が物質性を捨て去りつつある2010年代においてノスタルジックに見えなくもないが、容れ物であるメディアのフレームそのものを音楽のいち要素として捉えれば、この問題は音楽を再生するたびにリピートする問題であるはずだが、高度化~複雑化~巨大化しつつ偏在することで不可視になったメディア環境下ではこの問題意識は低い階層へもぐらざるを得ない。音楽ジャンルであるノイズをのぞき、聴取におけるノイズはデジタルデータの保存形式のちがいと見なされるのがこの時代のややこしさである。「貧しさ」をあえて選びとるより、知らぬうちに「劣化」している複製芸術時代が、利便性といっしょに寝そべっている現状を、私は否定するつもりはないけど、ムシするわけにもいくまい、とたまにわれにかえることがある。
 秋田昌美はモホイ=ナジについて述べた中で、レコードの出現が音楽の時間概念を変質させたとも指摘している。複製品の枠組みが音楽を一定の時間/空間に従属させるだけでなく、ポータビリティが音楽の聴き方の選択肢を広げる、と同時に、ハードさえあればリスナーの自由意識でいつでもどこでも再生可能だが、逆にいえば、ある種の「ルーズさも作り出す」。 レコードというヴィークルに乗った音楽は未来へ運ばれる。溝に刻まれた過去は未来に再生される。そして再生される過去は--環境やレコード盤のコンディションに左右されるので--過去と完全に一致しないがゆえに、「このことは『ノイズ』にとって利用できることとなる」と秋田昌美は書いたが、これはアーカイヴさえ携行可能なネットワーク時代、すべての記録された音楽に張りつく薄皮みたいなものになった。もとから音楽は時間とか空間とかと無縁であるはずはない。しかし現在の時空間はネット空間とも混ざり合っているものだから、一筋縄ではいかないのもまたたしかである。
 いま思えば、2008年の第3回目の横浜トリエンナーレのテーマだった「タイムクレヴァス」について、「哲学や科学を射程にいれた、きわめてベーシックなテーマ」と、私はある雑誌に書いたとき、アートにとって時間はいまだ古典的な命題だった。古典的だから論じがいのあることでもあった。挑む山の頂が見えていた感じだったのかもしれない。私はトニー・コンラッドや小杉武久、ヘルマン・ニッチェやポール・マッカーシーの作品の間を歩き、田中泯や勅使河原三郎のパフォーマンスを見ながら、作品と身体に流れる時間を感じた。それはミニマル(ミニマル・アートではない)というよりも、ゼロ年代後期の音楽のキーワードであるドローンに似た持続性を思わせる、身体に訴える時間操作だった。

 あれから3年がすぎて、4回目のヨコハマトリエンナーレ2011がはじまったと聞いて、私は紙版『エレキング』第3号(そろそろ書店に並ぶので、みなさんよろしくお願いします)をホウホウの体で入稿した9月17日、横浜に向かった。冒頭にも書いたが今年二度目である。遅い午後まで最後の原稿を待っていたので、今日は展示を見てまわれない。もう一回、いやあと二回くらいで全部を見たいとも思うだが、この日の目的は会場のひとつ、ヨコハマ創造都市センター(YCC)内に設置したピーター・コフィンの《無題(グリーンハウス)》で行うジム・オルークの演奏を聴くことである。YCC屋内にあるこの作品は、切妻屋根の温室の全面を透明の皮膜が覆っていて、種々の観葉植物の鉢植えが温室の内側をとりまくようにしつらえてあり、いち部は屋根のてっぺんまで伸びている。温室の奥には小口径のドラムセットが一台あって、私が到着したときにはすでに、ジムが演奏するのだろうか、入り口をふさぐようにモジュラー・シンセが置いてあった。コフィンのこのインスタレーションは、植物はよい音楽を感知し、反応するという説をモチーフにした作品で、真偽不明な--そもそも「よい音楽」の定義がここでは明確でない上に植物にとっての「よい」か人間にとってのそれか判然としない--疑似科学の理論上の瑕疵を、議論と想像のための余白に転化したものだろう。迷信や神話や伝承といった、筋書きがありながらいくつもの解釈を許す体系を逆手にとったこの作品は私たちの内心への問いかけでもあるが、音楽はあくまでここでは"ミュージック・フォー・プランツ"、「植物のための音楽」となり、人間は植物のおすそわけにあずかることになる。コフィンのコンセプトに忠実になればなるほど、演奏する主体は人間相手のあたりまえの、いつも通りのやり方を検証することになり、ある種の宙吊り、真空状態が主体の内面にうまれるのを期待できる。音楽は変わるかもしれないし変わらないかもしれない。だがそれも人間の基準でしかないと、コフィンは言外にいっているかにみえる。
 今回の会期中「植物のための音楽」のライヴ・パフォーマンスは都合6回予定しており 、すでにEYE、OOIOO、大友良英が演奏を行った。4回目となるジム・オルークのライヴは定刻通りにはじまった。シンセサイザー・ドローンを基調にした演奏はギターやラップトップともちがうウォームな質感だった。さらにジムは鉢植えの葉裏につけたコンタクト・マイクで採取した音を変調したノイズを、ミラーを彷彿させるドローンに加えることで、「植物のための音楽」を「植物による音楽」に読み換え循環させ、バイオニック(Bionic)というより、バイオトープ(Biotope)ノイズとでもいいたくなる音場をつくりだした。私は温室のまわりを散歩するように音を聴いた。「植物のための」という前提があるため、会場に席はない。YCCの高い天井に反響したドローンが位置を変えると、鮮明になったりくぐもったりする。音と一体化した《無題(グリーンハウス)》 は音楽のエンジンを借りて、時間と空間の中で動き出したようだった。音楽は耳新しいものではなかった、というより古典的に端正だったがしかし、時間や空間よりずっとアート/音楽が従属している人間というものを対象にしない音楽は演奏者だけでなく聴く方もゆさぶった。(次回へつづく)

(ライヴ情報)
2011年10月1日(土)17時30分~
ミュージック・フォー・プランツ
出演:蓮沼執太
会場:ヨコハマ創造都市センター(YCC)
※ヨコハマトリエンナーレ2011の詳細、会場へのアクセスは以下よりご確認ください
https://www.yokohamatriennale.jp/


ピーター・コフィン
《無題(グリーンハウス)》2010-2011
Installation/performance view for Yokohama Triennale 2011
Courtesy the Artist
Photo by KATO Ken
Photo Courtesy of Organizing Committee of Yokohama Triennale

Chart by JET SET 2011.10.03 - ele-king

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VAKULA SHEVC002 »COMMENT GET MUSIC
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AUNTIE FLO / DJ SDUNKERO OH MY DAYS / CHOOSING LOVE »COMMENT GET MUSIC
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ONRA EDITS (CHANGE OF HEART / KEEP ON LOVING ME) »COMMENT GET MUSIC
ダンス・クラシックスとして名高いChangeの名曲をリエディットしたA-1は、原曲の良さを十二分に生かしながら、これぞOnraといわんばかりのエレクトロ・ブギーに仕立て上げた一品。Whispersが83年にリリースした大ヒット曲"Keep On Loving Me"をリエディットしたB-1も同路線の仕上がりで、両面ともフロアを彩る必殺のダブルサイダー!
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