「K A R Y Y N」と一致するもの

METAMORPHOSE 2011 - ele-king

 9月3日はメタモルフォーゼですね! 今年でもう12回目なんですね......すごいなー。
 メタモルフォーゼ......いまさら説明するまでもないけど、日本最大規模のオールナイトの野外フェスです。レイヴ・カルチャーの申し子として、DJの赤間マユリさんが2000年からはじまっているメタモルフォーゼ(メタモの愛称で語られている)は、出演者のメンツが幅広く、とにかく気の利いている。親分率いるギャラクシー2ギャラクシー、ムーディーマン、デリック・メイというデトロイトのビッグ3をはじめ、オービタルと808ステイトというUKテクノの大御所、ゴールド・パンダや2562のような新世代、それからカール・バルトス(元クラフトワーク)、UKエイジアンのタルヴィン・シン、あるいはサイケデリック・ロック・バンドのザ・フレミング・リップス......日本勢もオリジナル・レイヴ世代のダブ・スクワッドやQHEY、ヤマタカ・アイ、DJバク、七尾旅人、にせんねんもんだいなどなど本当に幅広く良いメンツが揃っているんです。
 実は僕は昨年も遊びに行っているんですが......出発直前までさんざんビールを飲み、車が山道で迷っているときに車酔いして、最初のデリック・メイのDJやマニュエル・ゲッチングのライヴは良かったのですが、X-102のハードコアなライヴでノックアウトされ、ぶっ倒れているところを友人に見つかり......、それからフラフラになりながらマイク・バンクスに会いに行って、そしてまたアルバム・リーフのライヴでぶっ倒れていたという哀れな思いをしているのです。ホントに素晴らしいフェスだっただけに、そんな自分が情けなくて......今年はまずはとにかく会場に着くまではアルコールを飲まずに体力を温存しようと決めているのであります。
 会場となる伊豆・修善寺にある「自転車の国 サイクルスポーツセンター」が安心して楽しめる場所であることも魅力ですね。入ったことないけど温泉もあるし......あれってどうなんでしょう。今年こそ挑戦してみようかな。

METAMORPHOSE 2011

METAMORPHOSE 2011

公演日:9月3日(土)
会場:自転車の国 サイクルスポーツセンター (静岡県伊豆市)
https://www.csc.or.jp/

OPEN/START:16:30/18:00 (4日午前9時 終了予定)

前売り一般入場券 (7月1日一斉発売) ¥12500
駐車券¥2500 バイク¥1000 
テント券 (規定枚数に達した為終了)


出演者:
THE FLAMING LIPS、ORBITAL, GALAXY 2 GALAXY, CUT CHEMIST, GALACTIC, 808 STATE, EBO TAYLOR AMND AFROBEAT ACADEMY, TIM DELUXE, STIEVIE SALAS and BERNARD FOWLER present the I.M.F's feat. Juan Alderetti and Jara Slapbak, MINILOGUE, GOLD PANDA, 2562, DERRICK MAY, MOODYMANN, TALVIN SINGH, KARL BARTOS, REGA, EYE, DUB SQUAD, DEEP COVER, 七尾旅人、にせんねんもんだい、DJ BAKU, QHEY, MAYURI

イベント問い合わせ
メタモルフォーゼ事務局  03-3429-7240 (平日13:00-18:00)

チケット問い合わせ
ディスクガレージ 03-5436-9600(平日12:00-19:00)

www.metamo.info

Haiiro De Rossi - ele-king

 僕が最初にハイイロ・デ・ロッシに深い関心を抱いたのは、彼が台湾系日本人のラッパー、タクマ・ザ・グレイトと昨年の11月28日にYouTubeにアップした「WE'RE THE SAME ASIAN」を聴いたときだった。尖閣諸島の領土問題に端を発した渋谷の反中国のデモにレスポンスしたこの曲は、いわばヒップホップ・アゲインスト・レイシズムだ。ラップ・ミュージックによる人種差別や排外主義への的確なカウンター・パンチだった。インターネット上のニュース・サイトのコメント欄は炎上した。しかし、彼らは音楽によってリスクを冒してでも議論の場を作ることに覚悟があった。詳しくは本サイトの彼のインタヴュー記事を読んで欲しい。東日本大震災が起きた翌日に「PRAY FOR JAPAN」という曲をいち早くYouTubeにアップしたのもハイイロ・デ・ロッシだった。

 言葉に重きがあるという意味において、一般的に日本語ラップは言葉が強い音楽だ。純粋に音だけを聴こうとすれば、相対的に国内外の他のジャンルより退屈だという意見もよく聞く。言わんとすることはわかる。実際に少なくないラッパーが「他のジャンルに音楽として舐められている」という思いを抱いていることも知っている。
 では、純粋に音を聴くとは何か? いまこの問いを掘り下げることは避けるが、音楽は音だけではないというのはもうひとつの真実である。グッチ・メインやリル・ウェインのミックステープは逮捕や釈放のニュースとともに届くし、NYのジェイ・Zや京都のアナーキーの地元意識は彼らの音楽を磨いている。ナズがオバマに向けた曲やシーダが日本を憂う曲に私たちは感動し、タイラー・ザ・クリエイターやメロウハイプの猟奇性と乾いたサウンドの秘密を読み解こうとする。ECDに至っては......(以下、省略)。
 ミュージシャンの人間性、背景や人生、あるいは思想や政治性も音楽文化の重要なファクターである。そもそもいまの日本でこれほど積極的に"社会に開かれた"音楽ジャンルが他にあるだろうか。それが日本語ラップの魅力でもある。ハイイロ・デ・ロッシのような勇敢な表現者が登場する音楽文化がこの国にも存在することを僕は嬉しく思う。

 「右翼だろうが、ギャングスタだろうが、オレはラップだったらやりますよ」。筆者のインタヴューにハイイロ・デ・ロッシはラップだったら誰とでも勝負すると語り、自分は音楽主義者であると強調した。本作『forte』に収められたミドル・テンポのファンク・トラック"Ultimate Arts"で、彼はこんなことをラップしている。「HustlerやPimp以外がProps得る方法を教えてやる/それはRap出来るか出来ないか」
 ファースト・アルバム『TRUE BLUES』を2008年に発表したとき、彼は流麗なジャジー・ヒップホップの上で巧みにラップするラッパーだった。音の隙間を縫うようにドリブルするフロウには、計算された美しさと華麗なフットワークがあった。件の取材でも彼はエミネムやタリブ・クウェリのラップのリズム分析を饒舌に語った。
 ファーストのスタイルを洗練させた2010年のセカンド・アルバム『SAME SAME BUT DIFFERENT』は、国内のインディ・ヒップホップを取り扱う恵比寿のレコード店〈we nod〉の2010年上半期ベスト・リリース20枚に選ばれた。エクシーがトラックを制作した表題曲を聴くと、「WE'RE THE SAME ASIAN」の伏線になっていたことに気づかされる。慈悲に溢れたこの曲は彼のキャリアにおいてもっとも重要な1曲に入るだろう。

 サード・アルバム『forte』は現在25歳のハイイロ・デ・ロッシの人間的成長と音楽的展開が落とし込まれる形となった。タイトルは自身が運営するインディ・レーベルからきている。Pigeondust、EeMu、HIMUKI、Legro、YAKKLE、JUELS、%Cといったトラックメイカーが参加している。
 ドラッグを否定する"Good Bye Kidz HipHop"や"夕陽が落ちて行く前に"のなかで歌われるナイーヴな態度に僕は馴染めない部分もあるけれど、深く傷ついた経験は人を過剰に防衛的にもする。これらの鬼気迫る感覚は、彼がハードな経験を乗り越えてきたことを思わせる。
 「ACID MDMA コカイン/オプションが無きゃ語れないPain/そんなに急いで何処へいくHipHop?/つきまとう暴力イリーガル/はく付けるよりスキル付ける」"Good Bye Kidz HipHop"
 印象でしかないが、例えばダンス・ミュージック・シーンよりヒップホップ・シーンのほうがネガティヴな形でドラッグや暴力の問題が噴出する場合が多いと感じる。ここまで言わせる現実があるのもまた事実なのだ。

 ハイイロ・デ・ロッシのラップは鋭く切れるペーパーナイフのようだ。繊細さと大胆さがあり、言葉の端々からは彼の野心が漲っている。タクマ・ザ・グレイトやバン、万寿といった彼らのクルー、BLUE BAGGY HOO RE:GUNZの仲間を迎えた"S.K.I.L.L.Z" で、下手なラッパーを蹴落とすかのように自分たちのラップの上手さを誇示している。ネプチューンズとJ・ディラの間を行くようなLegroの渋いトラックも面白い。
 Graceという女性シンガーをフィーチャーしたラヴ・ソング"Honey"はスウィートなソウル・ミュージックのサンプリングとチョップから構築されている。JUELS というLAのトラックメイカーによる1曲だ。また、"Blue Bird Classic"ではミニー・リパートン"インサイド・マイ・ラヴ"をサンプリングしているが、彼らはこの定番ネタの淡いピンク色とブルーを溶け合わすことで独自の色を出している。

 アルバムは全体的にメランコリックなトーンが強い。これまでにあまり見せることのなかったソウル・ミュージックの感性やBボーイらしいセルフ・ボースティング、攻撃性も聴くこともできる。また、慈悲というのは現在のハイイロ・デ・ロッシの主題かもしれない。いずれにせよ、「WE'RE THE SAME ASIAN」で脚光を浴びたラッパーの注目の新作である。

Chart by JET SET 2011.08.29 - ele-king

Shop Chart


1

DAVID WOODS

DAVID WOODS ON THE GREEN ALONE EP »COMMENT GET MUSIC
Running Backからの集大成的アルバム『Through the Green』も好評、カットアップ・ディスコ表現領域の先端を開拓中のEditainmentが送る最新7番。相変わらず、凄いです!!

2

SEAHAWKS

SEAHAWKS ANOTHER SUMMER WITH SEAHAWKS »COMMENT GET MUSIC
Seahawksの勢いはまだまだ留まることを知りません。今度は完全に夏を意識した極上トロピカル・ナンバーを収録した7"EPと7曲を収録したCDから成る限定500セットのパッケージです!!

3

TAL M. KLEIN

TAL M. KLEIN DEEP DARK PLACE »COMMENT GET MUSIC
Aniligital Musicの新作44番は、レーベル・オーナーTal M. Kleinによるディープ・アシッド・ハウスお勧め盤。Wolf Musicからのリエディット傑作をはじめ、"Kolour LTD"レーベル・コンピ4番においても素晴しい楽曲を披露した注目の逸材がリミキサー参戦。

4

FEMI KUTI

FEMI KUTI POLITICS IN AFRICA »COMMENT GET MUSIC
以前にもQuentin Harrisリミックスで"Traitors of Africa"がヒットしたアフロ・ビート後継者Femi Kutiですが、今度は'10年度アルバム『Africa for Africa』収録曲のシェルター・リミックスが登場です!!

5

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS THE DEATH OF YOU AND ME »COMMENT GET MUSIC
10月リリース予定のアルバムに先駆けてのカット。自らの新レーベル、Sour Mashからの完全限定盤。B面はアルバム未収録ですので、絶対お見逃しなくー!!

6

MURO

MURO DIGGIN'HEAT REMASTER EDITION »COMMENT GET MUSIC
『Diggin'Ice』シリーズの復刻で、巷でにわかに期待されていた『Diggin'Heat』シリーズの復刻も遂に実現! 冬目がけて順次リリース予定とのこと。まずはこちらが一発目です!

7

UNDERGROUND RESISTANCE

UNDERGROUND RESISTANCE GALAXY 2 GALAXY »COMMENT GET MUSIC
9月3日のメタモルフォーゼ2011で再来日も決定!!デトロイトが誇る最強ユニット、Galaxy 2 Galxyによる傑作がリマスタリングで再発!!

8

GILLES PETERSON

GILLES PETERSON MASTERPIECE »COMMENT GET MUSIC
これまでFrancois K.等が担当して来た人気Mix CDシリーズ『Masterpiece』に、遂にジャイルスが登場。3つのテーマにそったジャンルレスな選曲を披露!!

9

PAUL WELLER

PAUL WELLER STARLITE »COMMENT GET MUSIC
80年代後半のStyle Council後期〜ソロ初期を思わせるシンセ・サウンドで込み上げソウル・フィールが大爆発するスーパー・ダンサブル・キラー!!

10

HONEY B'S

HONEY B'S WHAT LOVE CAN DO »COMMENT GET MUSIC
フィンランド最強のファンク/ソウル・レーベルTimmion、今回はモダン・ソウル〜ブギー・ディスコ・ファンも直撃のスピーディー&グルーヴィーな激レア最高曲を再発!!

Greg G (7even Recordings) - ele-king

1997年、フランス ナントにてラジオ番組運営やイベント・プロモーションをスタートさせると同時にジャングルDJとしてのキャリアをスタートさせたGreg G。フランスではUKアンダーグラウンド・ミュージックのパイオニアとしてドラムンベース、UKガラージ、ダブステップといった多種多様の音楽スタイルの発展に貢献してきた。2007年には盟友Synapticと共に今では伝説として語られるほどの高い人気を誇った "Basement Ltd." をパリにてスタートし、Malaを中心としたDMZクルー、Kode 9、Shackleton、DJ Pinch、Skreamらを初めてフランスに招く。翌年、自らが体験してきたフランスや日本のダブステップシーンを紹介していくことを目的にセルフレーベル [7even Recordings] を始動。F、Helixir、Likhan、Joaan、Enaらがタイトルに名を連ね、Ramadanman、Untold、Millieがリミックスを担当するなど、レーベルは発足間もなく、国際的な認知を獲得し、2009年1月に放送されたBBCラジオ1の "Mary Anne Hobbs' Experimental Show" にScubaが手掛ける [Hotflush Recordings] と共に [7even Recordings] がフィーチャーされ、その評価を確固たるものとした。Greg Gは新たなパートナーYusaku Shigeyasuと共に "Basement Ltd." を再始動。香港やバンコクにおいても精力的に活動を展開し、今もっともフレッシュなダブプレートとアンダーグラウンドミュージックを提供し続けている。


1
F - Full Throttle (forthcoming 7even Recordings)

2
JOAAN - Nocturnality (forthcoming 7even Recordings)

3
ENA - The Third Man (dub)

4
LIKHAN' - The Dawn (forthcoming 7even Recordings - free compilation project)

5
HELIXIR - Colly Dub (forthcoming 7even Recordings - free compilation project)

6
GOTH TRAD - Man In The Maze

7
MAKOTO - Different Rhythm (forthcoming 7even Recordings)

8
PANGAEA - Inna Daze (Hessle Audio)

9
JULIO BASHMORE - Battle For Middle You (PMR Records)

10
ZOMBY - A Devil Lay Here (4AD)

Chart by Underground Gallery 2011.08.27 - ele-king

Shop Chart


1

UNDERGROUND RESISTANCE

UNDERGROUND RESISTANCE Galaxy 2 Galaxy (UNDERGROUND RESISTANCE) »COMMENT GET MUSIC
テクノ / ダンスミュージックという枠を遥かに超え、もはやブラックミュージックの歴史を語る上でも外すことが出来ない重要クラシック作品として、世界中の音楽ファンに愛され続けているURの代表作「Galaxy 2 Galaxy」が、ラベルを新たにし、リマスタリングされ待望のリイシュー!1993年に12インチ2枚組としてリリースされていた作品の中から、重要作品4曲が抜粋され12インチ化! テクノだけに留まらず、世界中ハウス、ジャズファンをも虜にし続けているクラシック中のクラシック「Hi-Tech Jazz」、コズミックなシンセの響きと、エモーショナルなメロディーで銀河旅行を体感出来る「Return Of The Dragons」、RED PLANETのテクノクラシック「STARDANCE」同様のフランジング・シンセと、倍音の効いたシタールの旋律が響く、ネイティブ・アメリカンの血を引くMAD MIKEの母の影響の下、製作された「Astral Apache」、「Hi-Tech Jazz」路線を更に突き詰めたジャズ/フュージョン・トラックで、メロディックなフルート・ソロと大胆な展開で繰り広げられた、このレコードのハイライトともいえる名曲「Star Sailing」の4トラック!

2

DEEP SPACE ORCHESTRA

DEEP SPACE ORCHESTRA Ghetto Science Institute Ep (Use Of Weapons) »COMMENT GET MUSIC
早くも AME、UNABOMBERS、OOFT!、RED RECK'EM、LUKE SOLOMON、JAZZANOVAらがプレイ中の話題作がコレ!アシッド・ハウスマナーなリズムに、オールドな音色を奏でるヴィンテージシンセ、子供によるヴォイスサンプル、パーカッションなどを交えた「Ghetto Science Institute」は、B1の LARRY HEARDライクな アーリー・シカゴ・ハウス・スタイル NEVILLE WATSONによる極上リミックスとの 2ヴァージョン。A2には どこか幻想的なムードを醸し出す鍵盤の音色が◎な「Vanishing Point」は、B2で イタリアのハウスプロデューサー MARCELL NAPOLETANOのリミックスとの 2ヴァージョン。どれも良いですよ〜。

3

YURI SHULGIN

YURI SHULGIN Flow Ep (Ethereal Sound) »COMMENT GET MUSIC
[Black Sunshine Recordings]からMISTANOMISTA名義でリリースされた2作品が高く評価された、タジキスタン生まれ、ロシア在住、ベース / ギター/ キーボード を自在に操るマルチ・ジャズ・プレイヤーYURI SHULGINが本名名義では初となる12イ ンチをリリース! 「Detroit Session」「Another Day」の2作品で、その実力を決定づけたマルチ・ジャ ズ・プレイヤーMISTANOMISTA aka YURI SHULGINの新作!今回もMISTANOMISTA名義の昨 品同様に、自身がプレイする生楽器をふんだんに取り入れた、本格派ジャズ・ハウス を披露したオススメの一枚!MOODYMANNの作品を思わせるようなライブフィールなイン トロから、流れるような美しいピアノでスタートし、中盤からフリーキーなトランペッ ト・ソロでスリリングな展開を魅せたA1「Cinematic Brooklyn」、ビートダウン・マ ナーなミッド・テンポ・グルーヴで、ソウルフルにキメたB1「What A Track」、シカ ゴ・ハウス的なアルペジオ・フレーズをバックに、フュージョン・ライクなシンセ・ ソロを流れるように浮かばせたオールド・スクーリーなB2「Flow」の3トラック、全 て◎!!やはりこの人、只者ではありません...。今回も完璧!オススメです

4

PSYCHEMAGIK

PSYCHEMAGIK Feelin Love (Psychemagik) »COMMENT GET MUSIC
DAVID CROSBYの 1stソロアルバム収録作「Orlenans」を使用した「Valley Of Paradise」が大ヒットを記録した、UKの注目新鋭デュオ PSYCHEMAGIKが、自身主宰レーベルから2作目となる新作をリリース。今回は、グラミー賞を獲得したことでも知られる PAULA COLEによる 96年リリースのアルバム「This Fire」に収録された「Feelin Love」と HAROLD MELVIN & THE BLUE NOTESによる76年リリースのスウィート・フィリー・ソウル「Wake Up Everybody」を極上バレアリック・リエディット!!どちらも美し過ぎる響きを持った鍵盤、ストリングスらのダヴィーな音色がとにかく気持ち良過ぎ。今回も限定プレスでのリリースとなっていますので、絶対にお見逃しのないよう、お早めのチェックをオススメします。大・大・大推薦!

5

LOVEBIRDS

LOVEBIRDS Honeybadger Ep (Teardrops) »COMMENT GET MUSIC
LOVEBIRDS新作、かなり良いです!ビートダウンマナーなA1、Steve Reich「Electric counterpoint」ネタのアコギ・ミニマルのA2、FIRST CHOICEネタのB1など、全て◎![Freerange]や[Winding Road]といった、モダン・ハウス・レーベルからの作品群でも人気を博すSEBASTIAN DORINGによるプロジェクトLOVEBIRDSの新作が、バレアリック・シーンでも知名度が高まったきた[Teardrops]からリリース!3曲入りのシングルなのですが、全ての曲が◎!ビートダウン・マナーなコード・シンセと、ブギー・ディスコ・ライクなサンプルを散りばめたA1、STEVE REICHの名作「Electric Counterpoint」をサンプリングした、ミニマルなアコースティック・ギターのアルペジオを軸に展開されるモダンハウスのA2、RON HARDYクラシックとしてもお馴染み、FIRST CHOICE「Let No Man Put Asunder」のグルーヴィーなディスコ・ベースを使用したB1など、捨て曲無し!

6

SKIRT

SKIRT Itmuts Remix (Horizontal Ground) »COMMENT GET MUSIC
T++ aka TORSTEN PROFROCKリミックス! [Horizontal Ground]の新作。詳細不明ながら、確実なリリースが続く、UKのミニマル/テクノ・レーベル[Horizontal Ground]の新作は前作に続きSKIRTが登場!GASやENOばりのアンビエンス・テクノ「In The Meadow Under The Stars」を、元[Chain Reaction]の実力派、ドイツのビートサイエンティストTORSTEN PROFROCK aka T++がリミックスしたA1をプッシュ! 音響的な響きを効かせながら転がるように配置されたウワ音が、ダブステップ/UK G的、ビートに絡む、繊細さとダイナミズムが共存した、流石のリミックス!文句なし!

7

SASCHA DIVE

SASCHA DIVE Jam Sessions #1 Remixes (Deep Vibes) »COMMENT GET MUSIC
大ヒットを記録した SASCHA DIVEの1stアルバム「Restless Night」からの12"リミックスカット。手掛けるのは NY[Sole Channel]を主宰する ALIX ALVAREZとフランスの人気レーベル[Real Tone]オーナーのFRANCK ROGER。 ファンキーにうねるベースラインにアップリフティングにシンセとSEを絡め、盛り上げるALIX ALVAREZによるA1、御大FRANCK ROGERによるコズミカルな空間性のあるデトロイ ティッシュなグルーヴが気持ちイイA2、オリジナルのグルーヴ感を再抽出し更に一捻じり加えたツール・トラックB1もかなり使えそう!

8

NICOLAS JAAR

NICOLAS JAAR Nicolas Jaar Edits Vol 1 (White) »COMMENT GET MUSIC
昨年突如シーンに現れ、早くもRICARD VILLAROBOSの後継者と囁かれる ブルックリン在住の新鋭 NICOLAS JARRが、NEW ORDER、NINA SIMONEの楽曲をハウス・リエディット!昨年リリースされた数枚のシングル、そして1stアルバム「Space Is Only Noise」が大絶賛され、英・ガーディアン紙で、RICARDO VILLALOBOS/APHEX TWINと比較されるなど、今後の活躍が期待される大型新人、ブルックリン在住の現役大学生 NICHOLAS JARR新作!今回はN.W古典としても御馴染み、NEW ORDER「Blue Monday」を、ダヴィーなエフェクトやよりエッジを効かせたトビ感で展開させたA1と、NINA SIMONEの名作「Feelin Good」をダブっぽい質感のあるディープハウスへ再構築したA2の2作を収録。限定プロモリリースとなってますので、是非お早めに!

9

THE MOLE

THE MOLE Extended Hug Ep (Fur Trade) »COMMENT GET MUSIC
カナダのミニマル・ディスコ・マスターTHE MOLE、久々の新作が、独[Fur Trade]からリリース!やっぱりMOLEはカッコイイです!いやらしくしつこい反復と、もったりしたロウ・ベースが織りなす、粘りのあるグルーヴは、THE MOLEの真骨頂!ファンキーでアップリフティングなトラックから、高度感の低いミニマル・ハウスまで、3トラック、全て◎![Playhouse]のLOSOULの"アノ"感じにも似た、中毒性のあるB2のトラックが、個人的にはイチオシです!

10

MOD.CIVIL

MOD.CIVIL Funktionen (Part 2) (Ortloff) »COMMENT GET MUSIC
フロートする電子音が有機的なグルーヴを奏でるディープ・テック・ハウス! テクノ〜ハウスを横断するディープなスタイルで今注目を集めるドイツ発のアングラ・ユニットMOD.CIVIL新作!! 地元ライプチヒ[Ortloff]からの「Funktionen」シリーズ第二弾となる今作ですが、彼ら独特のアプローチが今回も炸裂しています!!クリアーな音像で太く腰を掴むグルーヴにデトロイティッシュなシンセワークを絡め展開していくA1「C-Funktion」、フリーキーかつメランコリックにうねるビートにアブストラクトなボイス・サンプルを重ね上昇していくロウなテンションが素晴らしいA2「D-Funktion」、夜の森を彷徨っているかのようなナイティーなシンセ・ワークと虫の声ライクな電子音の粒子がうねりながら展開していくエレクトリック・ディープ・ナンバーB2「F-Funktion」と極めて音楽性に富んだディープ・トラック計4曲!

Bushmind - ele-king

 いま日本にルードな音楽はあるのだろうか。何事にも屈したくはない町のちんぴらが楽しめるルードな音楽はどこにあるのだろう......。
 10代の頃、いっしょに遊んでいて楽しいのはちんぴらだった。彼らからは、ここにはとても書けないような楽しいことをずいぶんと教えてもらった。ザ・スペシャルズは町のちんぴらに共感するあまり、彼らの将来を案じた曲(まあ、カヴァー曲だが)、"ア・メッセージ・トゥ・ユー・ルーディ"でこう呼びかけている。「やんちゃばかりしないで、おまえは自分の将来を心配して生き方を変えたほうがいいぞ」
 が、しかし、いつの時代でもやんちゃな人間はいる。ちんぴらは、その嗅覚で彼らを受け入れてくれそうな場所をかぎ分けて、出入りする。僕は今年になって、近所のバーでひとりの若いちんぴらと知り合った。音楽が好きで、話せば気のよさそうに見えるところもあるが、目つきはかなり悪い。たまに近くの公園で会うと、軽い挨拶程度の会話をする。もしこんど会ったらこのアルバムを教えてあげよう。ブッシュマインドのセカンド・アルバム『グッド・デイズ・カミン』である。

 2007年の『ブライト・イン・タウン』は、いったい誰の作品なのかわからなくなるような、支離滅裂なまでにたくさんの人間が参加し、脈絡が不明なほど雑多な音楽性が並べられていたものだが、4年ぶりのセカンド・アルバムとなる『グッド・デイズ・カミン』は、これこそがブッシュマインドにとって本当のファーストなんじゃないかと思えるほど、アルバムらしいアルバムになっている。結束を固めたフットボール・チームのように参加者すべてがこのアルバムのいち部となっているように思える。
 『グッド・デイズ・カミン』はしかし、ルード(粗暴)な音ではない。禁欲的でもない。アルバムのタイトルとスリーヴ・アートが暗示するように、意外とも言えるほど滑らかで夢心地なチルアウト・ビートで統一されている。基本的にはヒップホップ・アルバムだが、はったりやお涙頂戴の湿っぽさ、ナルシズムや説教はない。それが彼らの流儀だと言わんばかりに、言葉でとくに何かを強く主張したいという感じではなく、どこまでも乾いたフィーリングがある。淡々としているようだがビートのアイデアは豊富で、ときにメロウで、陶酔を失わない。ウィズ・カリファとも似た......目つきの悪い町のちんぴらに笑顔をもたらしてくれそうなユーモアとグッド・フィーリングを持っている。
 Rockasenをフィーチャーした"Toilet MTG"は、さわやかなトラックのうえで少々ドジなストーンを実にコミカルに描いている。DUOがラップする"アスファルト"はユニークなビートを持った曲で、レゲエからの影響を感じる"no.03"、サックスのサンプリングをフィーチャーした"Blliliant"、まったくドリーミーな"10th & Wlof"、弦楽器のループがメロウに展開する"Archaeological Digging"のようなインストゥルメンタル曲も魅力的だ。なかには"G Dat E"のような4/4キックドラムを活かしたソウルフルなテクノ・トラックもある。少年Aによるラガマフィン調のラップをフィーチャーした"We Like A Sensi"は爆笑もので、CIAZOOがラップする"No Sleep Daydream"はブッシュマインドが目指すところのテクノとヒップホップとのサイケデリックな融合の試みが最大限に引き伸ばされている。

 僕のなかでこういう音楽は、ザ・クラッシュの"ルーディー・キャント・フェイル"をはじめ、ザ・スペシャルズやデキシード・ミッドナイト・ランナーズ、ポーグス、そしてザ・ストリーツのデビュー・アルバムに続くような、いわば不良のロマンティシズムの系譜として位置づけている。もしすべての人間がきっちりと規則を守っている社会があるとしたら、すべての学生や会社員が人から言われた通りにだけ動いたら、それは本当に心地よい場所と言えるのだろうか。そうした疑問が浮かぶとき、彼らは頼もしく思える。とはいえ僕は、くだんの若者にこんど会ったときにはダンディ・リヴィングストンが60年代に残したメッセージを最後に付け足すつもりではある。

World's End Girlfriend - ele-king

 このアルバムがリリースされた2000年は、エレクトロニカ/IDMと呼ばれる電子音楽が最初にもっとも幅を利かせていた時代だった。その年にリリースされたレディオヘッドの『キッドA』がまさにそのスタイルを取り入れたアルバムとして騒がれ、それまでもっともコアなテクノ・リスナーが何のサポートもなしに熱心に支持していたオウテカはいきなりポップのメインストリームへと接近した。エレクトロニカ/IDMのひとつの発信源となったのはフランクフルトの〈ミル・プラトー〉というレーベルで、いまではアルヴァ・ノトを見出したレーベルと言ったほうが通じるのだろうか、まあとにかく踊れないエレクトロニック・ミュージックを出しまくっていた。
 現代の大衆文化においてエレクトロニック・ミュージックの発展、とくに大衆化をうながしたのはダンス・ミュージックだった。踊っている連中にしてみれば、エレクトロニカ/IDMと呼ばれる電子音楽は、頭でっかちなスノッブ極まりない音楽に見えることもあったが、しかしそれは、時代の流れに即して言えば、現場で踊っているヤツこそ偉いという体育会系的な専制主義の罠にはまることなく、むしろ踊らないことの自由によって新たな第一歩を踏むことができた試みの系譜とも言える。エイフェックス・ツインやビョークといった連中は、へたすれば遊びも知らない大学院生御用達の音楽に聴こえかねないそれをポップのメインストリームで通用させ、コーネリアスはロック・サウンドにおいてもそれが応用できることを発見し、実践した。ワールズ・エンド・ガールフレンド(WEG)はこうした時代のなかで日本から登場した最初の大物だった。本作『エンディング・ストーリー』は2000年10月にリリースされた彼のデビュー・アルバムだが、長いあいだ廃盤だったそうで、今月の上旬にWEGが主宰する〈ヴァージン・バビロン〉レーベルから晴れて再発された。
 「なんか、ついに出てきちゃったという感じでしょうか」と、2000年11月に刊行された『ele-king』の最終号のレヴューのなかで三田格は書いている。「キッチュかつスピーディー、もしくはメランコリックかと思えばスラップスティックと、きわめてスキゾフレニックな音の配置や日本人離れしたメリハリの効かせ方(中略)。なんか、ついに出てきちゃったという感じでしょうか」
 ......と、こういう風に彼の文章を引用すると「自分の言葉で書けよ」と怒られるので、みなさんも気をつけたほうがいい。WEGはこのアルバムにおける自分の影響を、エイフェックス・ツイン、コーネリアス、フィッシュマンズの3つにあったとその当時に明かしているが、ポストモダンとしての『エンディング・ストーリー』にはもっと多くのテクスチャーがブレンドされている。小学生の頃はベートーヴェンが好きだったという彼のクラシック趣味はハーモニーやメロディに活かされ、アンビエント・ミュージックの温もりもダンスフロアの生き生きとした躍動感もある。ゴージャスなラウンジ・ミュージックめいた洒落気も、ドタバタ喜劇めいた演出も、こと細かでリズミカルなエディットも、どれもがいま聴いても心地よく、鼓膜を飽きさせることはない。コーネリアスが音世界を無邪気に楽しむように、『エンディング・ストーリー』にも無心に音に遊ぶことの面白さがたっぷりとある。
 しかし、『エンディング・ストーリー』、ひいてはWEGの音楽を特徴づけるのは、そうしたドライで緻密な展開の背後からときに噴出するエモーションにある。手品師がさんざん芸で沸かせておいた挙げ句に、ある瞬間にだけ人格が変わって、まるでハードコア・バンドが客席にツバを飛ばすような勢いで自らの感情を露わにする。まあ、しかしそれもほんのわずかな時間で、たいていの場合WEGは気品を失うことなく、優しく語りかけるような音楽を続ける。とくに『エンディング・ストーリー』は、その題名とは裏腹に、多くの場面でファンタジーを演じている。そして、そのなかには彼の豊かな感情表現が注がれている。それは、ワールズ・エンド・ガールフレンドや『エンディング・ストーリー』といった言葉に希望的観測への抵抗があるように、シンプルなレイヤーで解けるようなものではない。『エンディング・ストーリー』は確実に酔わせてくれるが、悪酔いするかもしれないアルバムでもある。

Chart by UNION 2011.08.24 - ele-king

Shop Chart


1

ANDRES

ANDRES Andres III MAHOGANI / US »COMMENT GET MUSIC
1stアルバムからの路線を行く哀愁漂うハウスチューン"Be Free Baby"は全編ジャズピアノ。そしてフリップサイドに刻まれた4トラックスはANDRESらしいタメの効いたビーツ。ハウスとヒップホップのヴァイヴのブレンド感は本作でも健在、煙で満たした涼しい部屋で延々と鳴らしていたい1枚。

2

RROSE VS BOB OSTERTAG

RROSE VS BOB OSTERTAG Motormouth Variations(+10") SANDWELL DISTRICT / UK »COMMENT GET MUSIC
SANDWELL DISTRICTレーベルから早くもNEW LPが登場!! 先頃12"をリリースしたばかりのRROSEと、RECRECやTZADIKなど前衛レーベルに数々の作品を残す実験音楽家・BOB OSTERTAGのコラボレーション作!深海を漂うようなディープな音響がすさまじいエクスペリメンタル・ミニマル! この10"付き限定盤は、既に世界的に数が少なくなっていますので、本当にお早めに!

3

MASANORI SUZUKI(鈴木雅尭)

MASANORI SUZUKI(鈴木雅尭) Premium Cuts #00 Classic Blend (Remaster Ver.) PREMIUM CUTS / JPN »COMMENT GET MUSIC
生音系MIXCDの代表格PREMIUM CUTSシリーズの原点となる初期ナンバーを集大成したまさにベスト・オブ・ベストな伝説の2枚組『#00』が、全面的にリマスタリングを施して限定再登場!めくるめくオルガンバー・クラシックスのすべてがここにある!! 中古市場でも枯渇状態が続きウォントの声が絶えなかった傑作、是非チェックを!

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LITTLE DRAGON / WILDBIRDS & PIACEDRUMS

LITTLE DRAGON / WILDBIRDS & PIACEDRUMS Thunder Love/Fight For Me(Mario & Vidis Redo/Manuel Tur Remix,Dixon Edit) PHILOMENA / GER »COMMENT GET MUSIC
DIXONとAMEが運営するレーベルINNERVISIONS傘下、ごく限られたショップでしか入手できないシークレットレーベルPHILOMENAの第5弾!プレス数極少!ドイツ地下より密かにリリースされ、これまでにDIXON、AME、HENRIK SCHWARTZ、PRINS THOMASそしてMARCEL DETTMANNが携わってきたエディットレーベルPHILOMENA。本作ではサイドともスウェーデン産の楽曲をエディット!

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DORIAN

DORIAN Studio Vacation (T-Shirts セット) FELICITY / JPN »COMMENT GET MUSIC
各方面で話題となった1stに続く待望のセカンドアルバム!様々なスタイルに80'sのマテリアルを散りばめ、独特のセンスで纏め上げた心地よくも踊れる一枚。こちらはディスクユニオン限定のTシャツ付きセットです。

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CRO-MAGNON

CRO-MAGNON Joints EP 2 JAZZY SPORT / JPN »COMMENT GET MUSIC
ヴォーカリスト/MC12組とのコラボレーションで生まれたCRO-MAGNON初のヴォーカルCDアルバム『Joints』からの限定アナログEPが2タイトル同時リリース!!本作では七尾旅人、鎮座DOPENESS、GAGLEをフィーチャー!それぞれのインストももちろんカップリングしています!

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MARCEL FENGLER

MARCEL FENGLER Berghain 05 OSTGUT TON / GER »COMMENT GET MUSIC
ベルリン最強レーベル・OSTGUT-TONのMIXシリーズ「BERGHAIN」の最新作は、MARCEL FENGLER!! LABYRINTHやFUTURE TERRORでの来日で圧倒的存在感を放つDJを披露した猛者が遂に! 恒例のEXCLUSIVEトラックも盛り込んだモダンテクノ決定盤!

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永田一直

永田一直 Honcho Sound Vol.14 HONCHO SOUND / JPN »COMMENT GET MUSIC
ExT Recordingsを主催、これまでアンダーグラウンドでのみ手に入れられた数々のMIX-CDも話題の永田一直による「レ"ガ"エとダブ」ミックス最新作がHONCHO SOUNDよりリリース!昼夜問わずこの季節に鳴らしっぱなしOKなハマリ具合の全16曲!

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FRAN-KEY

FRAN-KEY Summer134 VMP SOUNDS / JPN »COMMENT GET MUSIC
前作も大ヒットだったFRAN-KEYによる夏をテーマにしたミックスCD。夏になると必ず聴いてしまうクラシックスも、涼しげなビートもバッチリ詰込んでのスムースな展開。かつてのMIXテープ時代のような独特な空気感も漂う傑作!そしてこのプライスも嬉しいところ。

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ANYTHING & SARCASTIC PRESENT....RUB N' TUG

ANYTHING & SARCASTIC PRESENT....RUB N' TUG La From New York ANYTHING & SARCASTIC / US »COMMENT GET MUSIC
!!DJ HARVEYとのMAP OF AFRICA等で活動を続けるTHOMAS BULLOCKとERIC DUNCANによるRUB N' TUGがプレイした、2/5にLAで開催されたPARTYを記念したメモリアル・アイテム!!aNYthing とSARCASTICがタッグを組み制作したT-SHIRTS & CDがリリース。8時間にわたるPARTYの同録を濃縮したCD。期待を裏切らない内容の作品!

L'Orchestre Kanaga De Mopti - ele-king

 酒を何杯もおかわりして、べろべろになるまで飲んで、そろそろ終電だしお会計をしてもらおうかと言った瞬間に「オレ2000円しかないから」と言えるのが二木信である。これもストリートワイズというのだろうか......。先日、友人の結婚パーティの流れから、小野島大さんをはじめ、野間易通くん、松村正人くん、二木くんという不思議なメンツで新大久保の韓国料理屋で飲むことになった。そのときハウス・ミュージックを聴く前に何を聴いていたのかという話題になり、で、ワールド・ミュージックということになった。野間くんは、80年代なかばの大阪でどれほどワールド・ミュージックが大きな影響となっていたかをこと細かに説明した。そして、21世紀はふたたびワールド・ミュージックが面白いよね、という話になった。
 前にも書いたり言ったりしていることだが、震災前は紙ele-kingでワールド・ミュージックの特集をやりたいと思っていたほどだった。まったく得意な分野ではないが、専門家の力を借りながら、この10年のあいだに起きている第二次ワールド・ミュージック・ブームの様子をいちど整理しつつ紹介したいと思っていた。ポップのメインストリームではM.I.A.、ディプロ、ネプチューンズらがアフリカやカリブ、ラテンなどから多彩なビートを取り入れて、ヴァンパイア・ウィークエンドやギャング・ギャング・ダンスはインディ・キッズの耳をワールド・ミュージックのほうに近づけた。
 クラブ・シーンではUKファンキーのような電子音楽におけるアフロビートがトレンドとなって、南アフリカで生まれたシャンガーン・エレクトロや南アフリカ人によるハウス・ミュージックがヨーロッパのリスナーを魅了した。グレン・アンダーグラウンドのようなシカゴ・ハウスの大御所もアフリカを主題にした。日本ではクンビアが流行し、UKの〈オネスト・ジョンズ〉や〈スタジオ!K7〉傘下の〈ストラット〉はアフリカ音楽を出し続け、サン・シティ・ガールのアラン・ビショップが運営するシアトルの〈サブライム・フリーケンシーズ〉は東南アジアや中東の歌謡曲やロック/フォーク、西アフリカの音楽を片っ端からリリースしている。
 そんななかでも目立っていたのはアフリカだった。先述したように南アフリカの音楽(過去のリイシューものからモダンなエレクトロニック・ミュージックまで)、エチオピアン・ジャズ、西アフリカのサハラ砂漠周辺の音楽――ガレージ・ロックから伝統的な音楽までと、もはや"アフリカ"のひと言で括るには無理がありそうなほど多様な"アフリカ"がレコード店を賑わせていた。あるときロンドンの友人にこうした"アフリカ"ブームについて訊いたら、単純な話、距離が縮まったからだと答えていた。この10年間で欧米とアフリカ大陸との交通網が急速に発達し、価格的にもずいぶんと行きやすくなった。ワールドカップが南アフリカで開催されたことはその象徴のひとつだろう。欧米においては、こうした身近さのなかで音楽に関する研究も進んでいるようだ。(昨日のDOMMUNEのホワイト・ハウスもアフリカの話題になりましたね......)

 マリは近年、砂漠で生きるトゥアレグ人のグループ、ティナリウェンの国際的な成功などによって音楽ファンからもっとも注目を集めている西アフリカ諸国のひとつだが、このアルバムは1970年代にマリで録音された音源集の再発盤で、レーベルはアムステルダムの〈キンドレッド・スピリッツ〉、ジャケも当時リリースされたオリジナル盤と同じだ。この再発盤がリリースされたのは今年の春先だったか......いつかレヴューを書こうと思ってそのままになっていたレコードの1枚で、野間くんがあまりにもワールド・ミュージックの話をけしかけるので、ようやく書こうと思い立った。
 さて、マリをはじめ、ブルキナファソ、ギニア、そしてセネガルといった西アフリカ諸国には、70年代には州がオーガナイズしていた地域のビッグ・バンドが多数存在していたという。研究者のレポートによればその10年間は西アフリカのビッグ・バンドの黄金時代だったそうで、その中心にはマリ政府が設立した〈Mali Kunkan〉レーベルがあったという。本作『Kanaga De Mopti』はレーベルが1977年に商業リリースしたアルバムで、研究者によれば黄金時代に残された作品のなかでも出色のできとして知られているらしい。あるレヴューには「いままで日の目を見なかったことが悲劇だ」とあったが、本当にその通りかもしれない。マスターピースという言葉が相応しいアルバムだと思う。
 レコードには1960年代から西アフリカ諸国でビッグ・バンドがどのように発展していったのかが詳しく記されている。また、収録された6つの楽曲についての解説もある。結婚式のための音楽、仮面を着用して踊るドゴン人の儀式のための音楽など、ビッグ・バンドのジャズ、ファンク、マリの南東にあるナイジェリアの英雄、フェラ・クティのようなコール&レスポンスのスタイル、そして伝統音楽とのブレンドによる多彩な音楽が楽しめる。この時代のアフリカらしいスタッカートの効いたブラス・セクション、反復するヒプノティックなリズムは本当に迫力満点だ。とくに何曲かは特別な輝きを持っている。光沢あるギターに導かれてはじまるミドル・テンポの"Gambari"は、クラクラするようなリズムと壮大なメロディを鳴らすブラス・セクション、そして素晴らしい歌によって構成されている。最後の曲"Sory Bamba"もリズムやメロディと同時に"歌"も際だっている曲だ。
 マリの〈Mali Kunkan〉レーベルは、当時の西アフリカの音源の宝庫らしい。30年以上ホコリをかぶっていた暗い倉庫のなかから西アフリカのビッグ・バンドの黄金時代の記憶がまだまだ出てきそうである。

FREEDOMMUNE ZERO - ele-king

FREEDOMMUNE/アフター・ザ・レイン文:野田 努

 DOMMUNEらしいといえば実にDOMMUNEらしいスリリングな経過とまさかの幕引きとなった。悔しかったし、悲しかった。こんな事態にでもならなければ見えなかったであろう愛も見えた。そんな濃密な1日だった。
 8月19日の昼の12時45分、川崎駅に到着したとき、予想以上の暴風雨に、レインコートと折りたたみ式の傘を持ってきた筆者でさえも、カメラマンの小原泰広といっしょに少し大きめの頑丈な傘を買いに駅構内を走った。会場に着いたときには、横殴りの暴風雨に傘は役に立たず、少し歩いただけでもズボンはけっこう濡れた。ひどい雨と風だったし、Tシャツ1枚では寒かった。それでもいっしょに来場した三田格も松村正人も、やや遅れてきた田中宗一郎も、やがては雨も弱まり、〈FREEDOMMUNE ZERO〉がはじまることを疑っていなかった。が、しかし海沿いに長くのびた東扇島公園の天候は容赦なかった。

 それでも最初のうちは、3時からトークをはじめるという話だった。徹夜明けの宇川直宏がレンコート姿で到着した。ひと通りカメラやPAのチェックをしてトークの準備に入ろうとしたが、配信のための回線が繋がらない。ハブもランケーブルも朝からの豪雨による浸水によってダメージを受け、取り替えなければならなかった。回線が復旧して、実際にトークがスタートしたのは4時をまわっていた。その背後では、宇川がPCに向かって天気情報をかたっぱしからチェックしながら、スタッフたちと状況確認を続けていた。途中、回線は何度も落ちた。
 雨が弱まった時間帯もあった。そのたびに脳天気なトーク・ブースは喜びを露わにしたが、宇川は冷静だった。18時に大雨の予報が出た。その大雨が通過したらはじめよう。彼はそう言った。

 DOMMUNEの現場に来ている人はよく知っているように、ふだんの宇川は好物のブラッディメアリーを片手にカメラをまわし、スウィッチングをする。が、この日の彼はとてもそんな感じではなかった。会場内の雨が弱まっているときでも、海辺の様子を見に出向いた。戻ってきて、そして、海岸はまだ荒れているんだよと、無念の表情で言った。
 宇川直宏が中止を決めたのは、その晩の川崎市の大雨洪水警報が解除されなかったからだ。津波警報も出ていた。最終的には、23時に集中豪雨が川崎市を襲う可能性があるとの気象庁が発表した予報をみて、決断したようだった。東日本大震災復興支援イヴェントとして企画したフェスティヴァルだというのに、大雨洪水警報が出ている場所に1万人以上の観客を招くことはできないと、宇川は繰り返した。自分に言い聞かせるように。
 実際に夕方までの現地の天候は酷いもので、落雷の可能性もあった。あの状態が深夜オーディエンスで埋まった会場を襲ったとしたら......と考えると、とんでもない。たしかにその後雨は止んだけれど、それは結果論。中止することのさまざまなデメリット、その損害を回避するためにも警報を無視して自分たちのやりたいことを貫くか、あるいはオーディエンスや出演者の安全面を優先するのかという二択のなかで、迷わず後者を選んだことはDOMMMUEらしい決断だったし、英断だったと思う。自らが下した中止という決断に、もっとも悔しい思いをしているのは他ならぬ宇川直宏本人だろうし......。あとからイヴェント会社の人に訊いたら雨天における事故の確率は100倍にもなるという話だった。
 それにしても......トークの途中で、「いま中止ってツイットしたんだよね」と彼がぽつりと言った瞬間は、筆者はその意味を理解するのに時間がかかってしまった。あまりにも唐突に聞こえたからだが、それだけ宇川直宏は、ことの深刻さを出演者やまわりの人に悟られないようにふるまっていた。そして中止が決定すると、その直後にはオフィシャルHPから公式な公演中止の発表があった。

 その後、DOMMUNEらしいインプロヴィゼーションがはじまった。三田格、そして途中から司会を無茶ぶりされた磯部涼の奮闘もあって、トーク・ブースにおけるショーは夜まで続いた。快楽亭ブラック、安部譲二、石丸元章、五所純子、大友良英、吉田豪、杉作J太郎、常盤響、山口優、山辺圭司、秘密博士、松村正人らが出入りして喋ったそれは、いつもながらのDOMMUNEの光景のようにも見えたが、この緊急事態においては妙々たるハプニングもあった。わりと早めの時間、自ら登場を買って出て、あのいかんともしがたく消沈したテント小屋を10メートルぐらいジャンプさせた神聖かまってちゃんのの子、そしてそこに即興で躍り出た坂口恭平のパフォーマンスには、大笑いしながら三田格とともに涙の領域にまで連れていかれてしまったのである(結局、かまってちゃんのメンバーは4人とも出演した)。
 他にも、小山田圭吾とSalyuは、Salyu×Salyuのアコースティック・ライヴをやりたいと申し出てステージに上がって極上のコーラスを披露した。中止と知りながら駆けつけた七尾旅人とPhewも歌うつもりでずっと待機していた。誰もがもっとも望まなかった行方のなかで、その場には奇妙なほど本当に温かい空気が流れていたのは事実だ。
 もちろん、この日を楽しみにしていた人たち、とくに会場や川崎駅まで来ていながら入場でなかった人たちにはさまざまな感情があったと思う。まさか......と愕然としたことだろう。あの素晴らしいロケーションのなかで、前代未聞のブッキングによるフェスティヴァルを体験できたらどんなに素晴らしかったことか......。しかし、これは野外フェスティヴァルというもののリアリティだ。いかなる野外フェスティヴァル、野外レイヴもこうした天候のリスクを負っている。主催する側もオーディエンスの側もだ(こんな話、慰めにもならないだろうけれど、まだ日本にこうしたフェス文化がなかった90年代初頭、筆者はUKのコーンウォールであるはずだったフェスに行って、結局なにごともおこなわれなかったという経験もあるし、悪天候の野外レイヴで事故が起きたという話は世界中にごろごろしている)。それでも人は野外フェスティヴァルや野外レイヴを求めるのは、それでしか味わえない高揚感があるからだ。
 もっとも残念な結果に終わってしまった〈FREEDOMMUNE ZERO〉ではあるが、この現実はリアルタイムで配信されている。ことのはじまりから顛末までが配信という技術によって放映されたことで、そのときどきの出来事、その場のテンション、そしてエモーションは人びとに共有されている。それは過去悪天候によって中止を強いられたどのフェスティヴァルとも違っている点のひとつだ。

 中止決定からさまざまなハプニングがあったとはいえ、イヴェントが中止になったというのに人がまだそこに大勢い残っていることは日本では認められない。とりあえずその場を解散しなければならなかった。緊急事態における事後対応としてトークを配信し、そこに人はいたのだけれど、日本では許可なく公共の場所に大勢の人間がいてはいけないことになっている。警察に包囲されて中止になったというガセが飛び交っていると聞いたようですが......、東扇島公園の入口にずらーっと並んでいたのは暇そうなタクシーの一群でしたよ。
 楽屋には中止だというのにたくさんの出演者が残っていた。豪雨で昼からのリハーサルができずにそのまま最後までいた ホワイ・シープ?とチン↑ポム、L?K?O?、RY0SUKE、ハルカ、CMT、Shhhh、トビー、DJノブ、アルツ、ムーチー、瀧見憲司、渋谷慶一郎、テイ・トウワ、KIMONOSのふたり、イギリスからやって来たホワイト・ハウス......(他にもいたかもしれない)、そしてジェフ・ミルズや小室哲哉、ムードマンや高橋透、赤塚りえ子、手塚るみ子、湯山玲子、JOJO広重、ヤマタカ・アイ、OOIOO、iLLのように中止になったことを知ったうえで敢えてやって来た人も少なくなかった。トーク・ブースが撤収されてからも、七尾旅人とPhewは楽屋でこっそりと演奏をはじめたけれど、いまはもうその場を解散しなければらなければならないという主催側の説得によって終わった。同じように、このままでは終われないと言わんばかりに会場に駆けつけた小室哲哉は、今回の趣旨に賛同して考えたセットリストだから朝日が登るまでに演奏して聞いてもらうことが重要だと言って、宇川直宏とスタッフを誘い、自らのスタジオからライヴ配信するべく、夜の闇に消えていった......。(また、その後、急きょ〈サルーン〉を使ってのパーティもあった)

 〈FREEDOMMUNE ZERO〉が悲劇だったのかコメディだったのか、筆者はとてもじゃないが客観的には見れない。使われなかった海辺のスピーカー、いくつもステージ、当日売るはずだった大量のTシャツの箱を見ると本当にやりきれない気持ちになった。涙を呑むとはこういうことなのだろう。いまは、こうしたリスクを承知のうえでフェスティヴァルを準備して、そのために最大限の労力をはらってきた人たちの決断を尊重したい。本当に本当に本当にお疲れさま。本当に歴史的な日になってしまった。会場内で売る予定だったあのジャームスのオマージュTシャツ、格好良すぎるじゃないか、オレにも1枚売ってくれ。(以上、敬称略)

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FREEDOMMUNE/雨上がりの夜空に文:三田 格

 雨の予報に気がついて、何かのついでに宇川直宏にEメールを送ると「太陽を動かすからダイジョーブ!」というパワフルな返信。それが開催予定の4〜5日前だった。動かすものが少し違うような気もしたけれど、「そうか、ダイジョーブか」と思ってネコの顔を洗ってみたり。
 当日は、ビーチ・ステージのトップを飾るはずだったチン↑ポム×ホワイ・シープ?のリハが1時半からの予定だったので、早い時間に出演する野田くんたちと登戸で正午に待ち合わせ。南武線で川崎駅に近づくに連れて雨脚がどんどん強くなってくる。タクシーを降りて会場の中央に着いた頃には傘が折れるかと思うほど風も強くなってきた。先に着いていたチン↑ポム×ホワイ・シープ?は早くもリハを諦めていて、ビーチ・ステージまで行ってみと、なるほどステージの上まで波しぶきが跳んでくる。仮に誰かが演奏に挑んだとしてもオーディエンスが海に引き込まれたのではシャレにならない。これは無理かもしれない...。雨が止んだとしても風が収まらなければ、この事態は収拾されないだろうし(前日にベルギーのハッセルトで開催されていた音楽フェスティヴァル「プッケルポップ2011」が嵐に襲われ、雨が降ったのはたったの10分間だったにもかかわらず2人から3人の死者を出し、70名以上が負傷するという事故が起きていた。テントが倒れ、スクリーンが落ち、ステージに木が倒れてきたらしい)。

 風であちこちのテントが飛ばされ、行き場を失った物品がトーク・ドームの中に積み上げられていた。そこに「3時からオン・タイムでトークの配信を始めます」という掛け声がかかり、会場の整備が始まる。運営本部は強気で、少し遅れが出ても、きっと雨は止むだろうという判断なのだろう。実際には雨は強く降ったり弱くなったりで、どうなるのかまったくわからない。天気予報を見ると、午前中には付いていなかった警報が川崎市にも付いてしまった。思ったより悪い展開に向かっているのだろうか。そこへようやく宇川直宏が到着。車を降りるなり、タナソーのポンチョを見て「オシャレだねー」と軽口を飛ばし、いままで徹夜で予約メールの送信をやっていたと話しはじめる。「徹夜だけど、ユンケル70本と、リポビタンD120本と、チョコラBB87本と、リゲイン658本と、モカ860本飲んできたから今日は大丈夫。絶対眠くならない」。みんなを不安にさせない、いつもの宇川直宏がそこにはいた。

 暴雨風で破損して、なかなか回線がつながらず、結局、4時から「エレキングTV」がはじまる。非常事態なので、午前3時の予定だった僕にも最初から出ろと声がかかり、しばらくグラストンベリーの話など。Uストの画面には写っていなかったけれど、すぐ横に宇川直宏はいて、ノートブックを操作しながら「天候状況を確認しながら6時には中止かどうかの決断をするから、それまで繋いで!」という指示。ということは中止になる可能性も考えつつ、どうとでも取れるように話をしなければいけない。ロス・アプソンの山辺さんやほとんど初対面の秘密博士も加わって......何を話したのかすでに記憶がない。6時を過ぎたのに決定は出ず、気がつくと壇上は男ばっかりなので、チン↑ポムのエリイちゃんを呼び込んだり、礒部くんもそれに続いてくれたので、司会は彼に任せて、ようやく壇上から降りる。そこまでのどこかで中止の決定が出ていたはずなのに、それもまた記憶にない。あまりにもめまぐるしく気象情報と事態が変わり続け、宇川くんからは「トークだけは配信する」といわれて、自分が何をどうしたらいいのか完全にわからなくなっていたとしか思えない。
 気がつくと、責任感の強い坂口恭平がチン↑ポムの後に続き、さらには神聖かまってちゃんのの子が壇上に飛び出した。誰が出てくれと頼んだわけでもないのに、これはあまりに面白い組み合わせだった。の子と坂口でバトルMCに突入し、の子が一方的に勝ちを宣言すると、負けたんだから1万円出せという。坂口恭平がすんなりと1万円を出したので、「内閣総理大臣が簡単に負けを認めていいのか」と僕も調子にのって叫んでいた。「すぐに戻ってくるから」と訳のわからない捨てゼリフを残してステージから去ったの子を追いかけていくと、野田くんが小山田圭吾と話をしていて、サリュー×サリューも何かやりたいと言っているという。「こうなったら覚悟を決めて、最後まで司会をやるしかない」と野田くんが言うので、「わかった」といって、ほかに出演者がいないか探しに行くことにする。その辺りから、また順番がどうだったのかよく覚えていないんだけど、かまってちゃんのほかのメンバーが壇上にいるところになぜか僕もいて、サリュー×サリューへと繋いだところはなんとか覚えている。エンジニアはZAK。さっきから、かなり贅沢なプログラムが進行していることは間違いない。その次は快楽亭ブラックの落語だったか。これも九龍ジョーに仕?切ってもらい、「だから、生でやっても平気だっていっただろ」とか、キメのオチで観客が笑い転げているのを背中で受け止めつつ、その間にまた出演者を探していると大友良英がいたので、福島フェスティヴァルの話を聞いて帰朝報告を話してもらうことに。その頃までには宇川くんがプログラムを立て直していたので、続いて「SONOTAの鞭」をテイ・トウワと、続いて吉田豪と杉作J太郎の「JGO」。杉作J太郎は恵比寿マスカッツが出ない代わりに自分がパンツを脱いでTシャツだけで出演するという危ないシチュエイションづくり。司会を五所純子にタッチして、次は安部譲二や康芳夫らによる「超前衛鼎談」。
 バックステージに行ってみると、ヤマツカ・アイやムードマン、Phewに瀧見憲司と、DJやライヴ・ステージに立つ予定だった人たちがどうしたものかとブラブラしたり、それぞれに話し込んでいる。ホワイトハウスやJOJO広重、そして、ジェフ・ミルズも場の成り行きを見守りつつ、手塚るみ子や赤塚りえ子らと旧交を温めていた。出演者ではなくても「中止」と聞いて駆けつけてきた人もけっこう多く、実は、この時までに海から一番遠いDJブースの配信だけでも、全くお客さんを入れない状態で、ストリーミングさせられないかと宇川くんたちは必死で努力していたらしい。しかし、一度、休止を決めてしまったステージは容易なことでは再起動できず、ここで二度目の休止を聞いたような気分だった。雨が強すぎて電源や回線に問題が生じたことも大きいらしく、こうなると、トーク・ドームの盛り上がりとは裏腹に運営本部は沈滞ムードの最下層に潜り込んでいく。声のかけようもないとはこのことで、宇川くんがジェナちゃんの携帯を鳴らしてというので、かけてみると、宇川くんのポケットから着信音が鳴り出し、「なんだ、自分が借りたままだった」といった瞬間だけが笑いの出た時だった。ほどなくして帰るに帰れないといった雰囲気の人たちが、やがて、大きな声で合唱を始めた。そう、ハッピーバースデイの歌が次第に大きくなっていく。その日は七尾旅人の誕生日だったのである。歌が終わると、七尾旅人は目の前にいたチン↑ポムに向かって「もしかしてチン↑ポム? 好きなんですよー」と晴れやかな声を出す。「誕生日の第一声が"チン↑ポム"はないだろー」と誰かに言われながら。
 そういえばトーク・ドームの進行に気をとられていて、チン↑ポムが何をやっていたのか僕は?まったく気づいていなかった。どこに行っていたのかと聞くと、彼らは初ステージとなるはずだった今日のイベントの代わりに真っ暗な海岸に行って、福島から来たカップルと「気合100連発」をやっていたらしい。僕も前日までに2度、彼らと一緒に渋谷のスタジオに入り、音楽的には素人同然だった彼らがホワイ・シープ?の指導でリズムにのって「気合100連発」を再現できるようになった過程はすべて見ているだけに、彼らがステージに立てなかったことは残念でならなかった。ひとりがつまづくと雪崩を打って調子がおかしくなったり、そうかと思うと、信じられないほど上手くできたりの繰り返しだったので、本番ではどうなるかとドキドキだったのである。一番初々しいときにパフォーマンスできなかったことはやはり勿体なかったなーと。

 最後に宇川直宏から挨拶があった。いつもと同じようで、やはりどこかトーンが違っていた。彼のことだから、長々と話しを続けていたことはもちろんだけど、「必ずリヴェンジします!」と何度も繰り返したことは強く印象に残った。そして、彼はこれから小室哲哉のスタジオに行き、いつものドミューンのチャンネルからライヴを配信するという。それを聞いてチン↑ポムは東京に戻って呑み会をそのまま配信しようということになった。題して「ノミューン」。今日はあちこちでみんなが配信番組をやっているに違いない。七尾旅人もさっきステージの外から「タビューン」を配信していた。
 あっという間に東京に戻り、弘石くんのオフィスで小室哲哉の配信を観ていたら、最後に宇川直宏が顔を出し、頭を下げた。小さくなってはいけない人が身を小さくしようとしているような難しさがそこにはあった。悪いのは宇川直宏ではないだろう。瞬間的に僕はそう思ったけれど、でも、彼はどうみても頭を下げていた。ちょっと悲しかった。
 ドミューンの放送が終わり、そこからノミューンの放送がはじまった。ラジオのハガキ・コーナーをマネたエリイちゃんのアドリブは素晴らしく、そのままチン↑ポム×ホワイ・シープ?にマコちゃんや僕も加わって「気合100連発(ダンス・リミックス)」へと突入する。最終的にはのべで1000人近くが観てくれたものの、酒が入りすぎていたせいか、あまりといえばあまりなグダグダ・ヴァージョンになってしまう。配信を終えてからパフォーマンスの内容をめぐって卯城くんとエリイちゃんがケンカをし始めた。激しいのか陰?険なのかよくわからない言い争いが場の雰囲気をどんどん悪くする。相手に期待をしていなければ人はケンカなどしない。僕はエリイちゃんと卯城くんのケンカを止めもせず、なんとなく耳をそば立てながら、この6人組はまだまだ伸びる気でいるんだなと感じていた。そこに、弘石くんが再び「酒を買ってきたよ〜」と飛び込んできた。誰の感情もそれ以上、持続せず、気がつくと、全員で「乾杯〜」と叫んでいた。それからは、それまではあまりしたことがないような話をみんなでしていたように思う。何人かとは心の距離がとても近くなった気がする。とても小さなことかもしれないけれど、フリードミューンが何かをもたらしてくれたことは間違いない。雨上がりの夜空はいつのまにか朝の光に取って代わられていた。


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