Volcano Choir
Repave
Jagjaguwar / P-VINE
光を撮るために暗闇を撮る――墔郷通範(さいごうみちのり)による"バイゴーン"のPVは、その7割くらいを物も見分けられないほどの真っ暗な闇に割いているが、曲のあとには光の印象しか残さない。
思えばヴォルケーノ・クワイアーの前作『アンマップ』(もちろん多くの人が手にした傑作だ)冒頭の"アイランド、イズ"に付けられたPVも、同じように暗闇を映し、そのことによって光を描く作品だった。深夜から未明にかけて、ゆっくりと光量を増す川沿いの風景が早回しに映し出され、同曲の抑制されたテンションと、その昂まりや開放がじつに静かに映像化されている。これを観たとき感嘆の息をもらしたのは筆者ばかりではないはずだ。彼らの登場を鮮やかに印象づけた一曲である。
"アイランド・イズ"でも"バイゴーン"でも共通するのは、光を印象づけるものとして蛍光灯(専門的には何というのかわからない。ご覧のような電飾を用いて表現している)が用いられていることだ。これは墔郷自身の持ち味であるかもしれないが、ボン・イヴェールとコレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズとの混合体であるこのバンドを象徴するようにも思われる。前者のサッドコア的情感を持ったフォーキー・スタイルと、後者のエレクトロニクスや、ペレの血を引くポストロック・マナー。このふたつが自然光と人工照明の対照のなかに捉えられていないだろうか。木の幹がボン・イヴェールを、そこに結びつけられた蛍光灯がCOCOBを代理すると考えるのは、図式的に過ぎるだろうか。
ともあれ照明によってくっきりと存在を照らされる木と、木によって照らすものとしての役割を最大限に引き出された照明とは、互いを補いながら忘れがたくあたたかい光/闇を描き出している。
新作の充実ぶりが予感される、素晴らしい一曲が届けられたことを喜びたい。
ジャスティン・ヴァーノンakaボン・イヴェールを中心とする
ヴォルケーノ・クワイアーの新作『REPAVE』より、ファースト・PVが到着!
監督は日本が誇るヒゲの奇才、墔郷通範(さいごうみちのり)氏!
9月4日に新作『REPAVE』をリリースするジャスティン・ヴァーノンakaボン・イヴェールとコレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズなどのメンバーによるヴォルケーノ・クワイアー。そのファースト・トラックである"Byegone"のPVが到着しました。前作『UNMAP』収録の"Island,Is"につづき監督を務めたのは、ディアフーフ、アクロン/ファミリー、少年ナイフ、石橋英子、kowloonなどのPVを手掛け、初期mouse on the keysのVJメンバーでもあり、更に画家ロッカクアヤコとのコラボレーション活動も注目を集めたコントラリードの墔郷通範(さいごうみちのり)氏! そんな監督に対し、ヴォルケーノ・クワイアーから感謝のステートメントも届いております。ヒゲ監督の作品、ぜひお部屋を暗くしてじっくりとご覧下さい!
■ヴォルケーノ・クワイアーより墔郷通範監督へのステートメント
「ミッチ(墔郷通範)の映像は、わたしたちがしっくりとくる言葉を見つけられないまま、ずっと気になって探していた要素を掴んでいます。それらはなにか具体的な領域に足を踏み入れることをせずに、わたしたちの感情を掻き立てるものであり、シンボリックで、わくわくさせるものです。彼のひとつひとつの作品にはストーリーがあります。それらは私たちひとりひとりが、自らのフィルターを通してその意味を発見するような個人的なものです。そこにはリズムと流れるような感覚がたしかにあり、音楽や物語に沿っていながら、そのどちらとも相容れないものです。まるで、わたしたちの音楽を魔法の呪文にしたかのようです。こんなに素晴らしい作品を生み出すことのできる人をあなたは見つけられるでしょうか? きっとできないでしょう。わたしたちの作品をこのように理解してくれる人物を雇うことはほとんど不可能です。わたしたちはミッチと友だちになれて本当に嬉しい。彼は世界の反対側にいながら、異なるアイデアや視点で、わたしたちが表現したかったことを見事にとらえています。」
■ヴォルケーノ・クワイアー
もはや説明不要、現在のシーンを代表するシンガーソングライター、グラミー・アーティスト、ジャスティン・ヴァーノンakaボン・イヴェール。そんな彼がまだブレイクするずっと前――デ・ヤーモンド・エジソンに在籍していた頃、同郷ウィスコンシンのポストロック・バンドであるコレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズ(exペレ)に魅了され、お互いは接近。親密な友人関係のなかから「何かいっしょにやろう!」とはじまったのがヴォルケーノ・クワイアー。しかしそこには何のプランもなく、リリース予定もなく、ただ気が向いたときにセッションしたり、メールで音源をやりとりしたり。そんな感じでヴォルケーノ・クワイアーの活動はゆっくりゆっくりと進んで行く。
しかしその成果は2009年にアルバム『アンマップ』として世に出ることになる。さらに「一回こっきり、ライヴもやらない」というスタンスだったが、ペレ~コロニーズ勢が何度も日本に来ていることもあり、「どうせ終わりなら、お別れ記念として日本でだけやってみよう」と世界も羨む来日公演を。しかしそのジャパン・ツアーが彼等にバンドとしての魂を産んでしまった! ツアー中に「これほど楽しいバンドは無い! 続けない意味がわからない!」とあっさり続投宣言。秘密裏にセカンド・アルバムの制作に入っていったのだ。
そして2013年セカンド・アルバム『リペイヴ』を発表。そう、ヴォルケーノ・クワイアーはもうプロジェクトではない。完全に「バンド」となった。彼らには素晴らしい未来が続いているのだ。