「K A R Y Y N」と一致するもの

interview with RITTO - ele-king

 沖縄に移り住んで2年になる。本島を南北に貫く主幹道路、国道58号線。観光地をつなぐ格好のドライヴルートは「わ」ナンバーで渋滞し、米軍占領時に整備された元軍道は、那覇軍港や普天間飛行場、嘉手納基地を結び、軍用車両と「Y」ナンバーが行き交う。沖縄県の面積の約10パーセントを占める米軍関連施設。道沿いに延々と続く米軍基地フェンス。柵に取り囲まれたかのような町並みや、その上空ぎりぎりを爆音で飛び去る軍用機に、いまだ慣れないでいる。
 たしかに沖縄は「リゾート」だ。カラッと晴れた日は本当に気持ちがいいし、その心地よさを楽しむ余裕だってある。でも、それだけじゃない。普天間基地移設問題が全国的に報じられるようになって以降は、どんなに沖縄に疎い人でも知るところだろう。
 かつての琉球王国はいま、日本という島国のなかの島でありながら、すぐ近くに米国があり、お隣中国からにらまれている。戦争と侵略......、多難の道を歩み続けてきた。過去を背負い続ける人の悲しみを、移住して初めて、肌で感じている。"すべての武器を楽器に"沖縄県の音楽家、喜名昌吉の歌詞だ。プリントされたステッカーが、県内のレコ屋や服屋に並べられていた。そして、地元の人はきっとこう言う。「沖縄に来て良かったね。最高でしょう?」と。ここには、決して絶望で終わらせない、底抜けのタフネスがあるように思えてならない。

 沖縄のラップ・シーンが盛り上がっている。牽引するのが、リット(RITTO)。石垣生まれ、那覇育ち、生粋の琉球人MCだ。2月に、ファースト・アルバムとなる『AKEBONO』を赤土レックよりリリース。発売からおよそ2週間で、初回プレス分が完売した。昨年のUMBで沖縄代表に選ばれ、3回戦で優勝者・R指定と対戦、惜しくも敗れたが、同大会のベスト・バトルとも称された。そんな経緯もあって、コアなヒップホップ・リスナーからは、すでに一目置かれていた。

ゆるさの中にあふれる闘志 具志堅用高 カンムリワシ 
適当なようで適当じゃない 目を見りゃわかる いかれたヴァイヴ
"ボツ空身"


RITTO
AKEBONO

AKAZUCHI REC.

Amazon iTunes

 バトルあがりのすきのない緊張感、研ぎ澄まされたリリシズムに、『イルマティック』の頃のナズを思わせると言った人がいた。矢継ぎ早に繰り出される言葉、強いパンチラインに、ウータン・クランのゴーストフェイス・キラーを思わせると言った人がいた。その一方で、レイドバックした中にある凄み、自由度の高いフロウと間に、MFドゥームを重ねる人もいた。あ、「南のボス・ザ・MC」と評する人もいたな。本人は恐縮していたけれど。ストイシズムを貫いてはいるが、安易にダークネスには陥らない。「極東」の「南」の情熱とソウルを注入する。「今日はほんとにいい天気っすね。気持ちいいな」チルした普段の姿は、とても穏やかだ。「ちゃす!」ライヴの合間にみせる別の顔は、ユーモラスで、お茶目でさえある。

 「お前の目、何でそんなにピュアなんだよ」MSCのMC漢が言ったそうだ。「俺らは毎日、東京で戦ってるのに......」。沖縄の人と音楽に魅せられ、ここを何度も尋ね、滞在するMCがいることを知っている。あるMCは「自分は沖縄に住むべきだ」とさえ言っていた。ビッグ・ジョーは今年、沖縄でのレギュラーイヴェントをスタートさせた。ここはいま、本当にアツい。まさに、沖縄で言うところの「ヤッケー」だ。まだ知らない人は是非、リアルな沖縄を体感してほしい。リットと、赤土レックの代表・トオルに話を訊いた。 

参加者:リット(赤土レック)、トオル(赤土レック)、DJカミカズ(クロックワイズ・レコーディングス)

リット:本土の人は、沖縄をリゾートだと思ってるから。
トオル:俺たちは真逆だもんね。
リット:そこに疑問を感じないかな? 沖縄の問題っていろいろあるじゃないですか。本土には、「沖縄は国からお金をいっぱいもらってるんだから」っていう考えもあると思うんですよ。

ラップをはじめた経緯は?

リット:「ヒップホップは、簡単にやったら殺される」って思ったんすよ。それはよく覚えてる。

なぜですか?

リット:わからん。インスピレーション受けましたね。これは危ない音楽だって。人も死ぬし。冷静に見てました。格好もすぐには入れなかったですね。歴史とか、色々勉強しました。それから、じょじょに入っていった感じですね。

きっかけは何だったんですか?

リット:高校時代に、カルチャーとして、自然と入ってくる感じでした。

高校はどちらだったんですか?

リット:宜野湾高校ですね。

トオル:俺らサッカーしてたんですよ。サッカーが強くて、誰でも入れるバカな学校でした(笑)。クラスの半分以上が他の高校を一次で落ちて、二次で受かって来たみたいな奴らで、不良が多かったですね(笑)。

 沖縄県宜野湾市は、沖縄本島の中南部に位置する地域。普天間飛行場やキャンプ瑞慶覧があり、基地の街でもある。

最初は、どんなヒップホップを聴いていたんですか?

リット:一番初めに聴いたのは、小学校の頃でしたね。アメリカに行く機会があって、そこで会った白人がクーリオを歌ってたんですよ。「何だろう?」ってずっと気になってて。日本に帰ってきて、じょじょに聴くようになりましたね。

何でアメリカに行ったんですか?

リット:家族旅行ですね。1ヶ月くらい行ってたんですけど。

そこからなんですね。

リット:MTVで、何気に聴いてはいましたね。

トオル:リットのお母さんがイケてるんですよ。

リット:「あんた、ラップしなさい!」みたいな。オカー(お母さん)が先に言いましたね。リットって本名なんですけど、ギタリストのリー・リトナーから来てるんですよ。おやじが元々ギター弾きで。クレイジーなんですけど(笑)、音楽のエンジニアやったり、現場に入ったりしてて。もう長いこと一緒には生活してないんですけど、影響は大きいですね。ロックは日頃から聴いてました。音楽はずっと生活の中にありましたね。

ご両親ともに石垣出身なんですか?

リット:そうですね。俺も石垣で生まれて、小学2年の頃に(沖縄本島に)移住して。

ご兄弟は?

リット:すげぇ姉ちゃんがいる。パンチがものすごい(笑)。姉ちゃんは流行りの音楽聴いてたよな。

トオル:リットのネエネエ(お姉さん)がリットに流行りの音楽を教えて、リットが同級生に教えて。

リット:モンパチ(MONGOL800)とか、インディーズが流行ってたな。

トオル:俺ら中学生の時、ちょうどピークで。

リット:中学までは、がっつりバンドだったな。ラップもちょくちょくやってましたよ。でも、「ああなりたい」みたいな人がいなかったですね。特に思い入れはなかった。

音源はどうやって手に入れてたんですか?

トオル:洋服屋ですね。DJが作ってるミックスCDとか。あとはクラブで。まだ高校生がクラブに入れる時代だったんで、高2くらいから行き始めて。

リット:毎週行ってたな。

那覇ですか?

トオル:沖縄市のコザが多かったっすね。もう今はそのクラブはないんですけど。

 沖縄県沖縄市に属し、通称「コザ」と呼ばれる地域。嘉手納基地に隣接している。かつては、米兵相手のサービスを提供する施設が立ち並ぶ歓楽街だった。今も当時の面影を色濃く残し、米兵が多く遊ぶエリアだ。

[[SplitPage]]

フリースタイルを一緒にやってて、「何が?」って聞いたら、「ニガー」って聞こえたみたいで。あいつら、めっちゃデカいけど、俺らも、全然引く気がないから(笑)。バカだったな? 「なにー(怒)」みたいな感じでやってましたね。で、その後、友だちになって。

米軍基地で働く外国人もたくさん出入りしてたんですか?

リット:そうそう。

トオル:那覇のクラブも多かったですね。ギャングの兄ちゃんたちがいて、怖かったです。恐る恐る行ったっすね。

リット:体がデカかったよな。服もダボダボだろ。

地元でヒップホップをやっている人はいたんですか?

リット:DJターシーさんとか、DJの影響を受けて育ったっすね。MCだったら、ページ・ワン。

かかる音楽はヒップホップ?

リット:ばっかりですね。外国人も多かったし。

トオル:四つ打ちとか、聴いたことなかったよな? 

リット:イヴェントでマイク取りに行ったりもしました。県外のアーティストが来たら、フリースタイルしかけて、怒られて(笑)。やんちゃしてました。

洗礼受けました?

リット:かなり受けました。当時、俺らが一番年下だったから。今の奴らは、みんな礼儀正しくやるんですけど、あの時の俺らはもう「絶対、負けん」みたいな。

MCバトル系の大会は?

リット:初めて見たのは、米軍基地の外国人と沖縄のMCのローカルなバトル。外国人のバトルを生で見れて、面白かったですね。

DJカミカズ:サイファーとかも?

リット:ガンガンやってましたね。外国人の若い奴らが、ストリートでやってましたね。米軍基地の外国人のMCクルーがバトルで「レペゼン沖縄」って言っちゃったんですよ。そしたら、相当ブーイングくらって。「何で、こいつが"沖縄"って言ったら、ディスられるんだろ」って思ったのを覚えてますね。

トオル:危なかったな。

リット:外国人が多い分、沖縄は流行りの音楽が入ってくるのが早かったって聞いたこともありますね。

音楽的な土壌には恵まれてたとも言えるんですかね?

リット:10代の頃は、本土(本州)に行ったことがないから分からないですけど、先輩の話を聞くと、そうだったみたいで。知らない曲は、知り合いの外国人に聞くと教えてくれるし。

外国人とのトラブルはなかったんですか?

リット:フリースタイルを一緒にやってて、「何が?」って聞いたら、「ニガー」って聞こえたみたいで。あいつら、めっちゃデカいけど、俺らも、全然引く気がないから(笑)。バカだったな? 「なにー(怒)」みたいな感じでやってましたね。で、その後、友だちになって。

外国人MCとのバトルは日本語なんですか?

リット:そうですね。

トオル:ベース(基地)の人たちは、またすぐどこかに行っちゃうから、わざわざ日本語を覚えようとしないじゃないですか? かといって、俺らも英語を覚えるわけでもない。

リット:だから、身振り手振りで。

去年のUMBはどうでした?

リット:ベスト8だったんですけど、ひとりだけ超リラックスしてましたね。アルバムのことばっかり考えてて、バトル・モードになってなかったんですよ。

トオル:2006年のUMBにリットが沖縄代表で出場した時、初めてリットを知った人がいると思うんですよ。その後ずっと作品を出さないでいたから、周りはみんなまだバトルMCだって思ってたと思うんです。でも、リットの中では、バトルはもうだいぶ前から一線ひいてるところがあって。ただ、去年は沖縄予選の会場が〈ラヴ・ボール〉(トオルが運営する那覇のクラブ)だったんで、「だったら、俺らがとりにいこう!」って。で、出場したら、優勝して、全国大会行ったんですけど。

リット:全然ダメでした。でも、勝負事は好きなんで。1回戦の相手は山口代表の奴で、アツいんですよ。ヴァイヴスがヤバいって聞いてたから、俺もヴァイヴスで返して。楽しかったですね。2回戦の相手は長野代表の奴で、ソウルフルな人だったんですけど、だったら俺も絶対負けんし。3回戦の相手が大阪代表のR指定で、優勝した奴なんですけど。大阪はフリースタイルが上手な人が多いし、上手いし、実力もあって、俺より優れてるのはわかってるけど、負けるわけにはいかないんで。前は、沖縄代表っていうとオプション的な存在っていう感じだったんですけど、本気モードでぶつかってきてくれて。

2006年のUMBは?

リット:もうお祭りですね(笑)。「あんなヘコんでたのに、何で(沖縄予選で)優勝したば?」って。家のトラブルで借金があって、それを返さないといけないっていう使命があったんですよ。「俺、どうすればいいんだろう?」って、ラップもなよなよしてて。外をふらふら歩いてたときに「バトルあるよ」って言われて。髪の処理も何もしてなかったんで、頭ボーボーなんですよ(笑)。で、全国大会で初めて2、3千人の前でラップしたんですよ。東京に行ったのも、その時が初めてで。みんなでピクニック行くような気分でしたね。しかも、1回戦勝ってしまったんですよ。2回戦は記憶ないっすね。映像も見てない。恥ずかし過ぎて。「シーサー」とか言ってた(笑)。

フリースタイルする時と、作品作るときは、やっぱり違うんですよね?

リット:いまのフリースタイルはスポーツみたいですよね。だから、俺らのスタイルではなくなってきてる。ずっとバトルMCでいっちゃうと、ラッパーとしての作品が目立たなくなってしまうというか。高校生の頃、地元の同級生でガンガン面白いフリースタイルをやってる奴らがいて、俺も一緒にマイクジャックしてましたね。すごく楽しかったです。ステージに立てなくて、むしゃくしゃしてた頃、発散してました。そういう流れでフリースタイルを始めましたね。バトルとはまた違うんですけど。いまは、フリースタイルで曲作るみたいな。この間のカミカズさんとのセッションもそうですけど、フィーリング・フリースタイルっていうか。家でもそういう遊びをしてますね。

外国人を含むバトルやフリースタイルの経験が、ある種、日本人離れした独特のヴァイヴスにつながってるんですかね?

リット:初めて言われましたね。

DJカミカズ:内に向かうような「北」の感じとも違いますよね? 

内省的な感じ?

DJカミカズ:ジメッとしてないというか。

トオル:真逆ですよね(笑)。

カラっとしてるし、外に開いてる感じの部分もあるという。ライヴなんかもそうですよね。

DJカミカズ:オープンなだけかというと、そういうわけでもない。

リット:あ、それ最近思ってた。ストイックになった方がいいのかなって。アルバムを出して、自分を見つめ直さないとって。考えることは考えるんですけど、寝て、起きて、動くと、結局、いつもの調子なんですよね(笑)。

トオル:アルバム出した後に、「俺、ストイックにならんでもいい?」って。むしろ、ならんでって(笑)。

リット:普通に生活してます(笑)。もちろん、いろいろ考えてはいるんですけどね。

[[SplitPage]]

家のトラブルで借金があって、それを返さないといけないっていう使命があったんですよ。「俺、どうすればいいんだろう?」って、ラップもなよなよしてて。外をふらふら歩いてたときに「バトルあるよ」って言われて。髪の処理も何もしてなかったんで、頭ボーボーなんですよ(笑)。


RITTO
AKEBONO

AKAZUCHI REC.

Amazon iTunes

アルバムはどうやって作られたんですか?

リット:最初は、トラック集めでしたね。

トオル:俺らの環境にトラックメーカーがいなかったからな。ゼロに近い。

時間がかかった?

リット:かかったっすね。スティルイチミヤと仲が良くて、田我流に「アルバム出したい」って言ったら、ヤングGがすぐに作ってくれて。「疾走感のある曲にしよう」って"風音"ができて。それが『AKEBONO』のはじまりですね。

トオル:田我流との出会いがキーポイントになってますね。山梨にいながらこれだけ作品出してる。東京に染まってないし、むしろ、俺らより田舎モンだし。実際に行ってみても、相当田舎だった。それでもできるんだっていう自信になりましたね。

田我流と知り合ったのはいつですか?

リット:5年前くらい。ポポ・ジョニーっていう大好きなレゲエ・アーティストが「山梨のラッパーがいるよ」って紹介してくれて。沖縄に自分探しの旅に来てたみたいで。そのとき、俺はイケイケだったんで、「何だ?」ってフリースタイルしかけたら、田我流もガンガン詰めてきて、ケンカになりそうなくらいアツくなっちゃって。それから友だちになりましたね。
 でも、最近まで田(でん)ちゃんとは連絡とってなくて。で、〈ラヴ・ボール〉にたまたま田我流のCDがあって、聴いたら「こいつ面白いね。呼ぼうぜ」ってなって。ポポ・ジョニーに「田我流ってわかるか?」って聞いたら、「お前、友だちよ。田ちゃんだよ」「え! 田ちゃんって田我流なの?」って。すぐに電話して(笑)。
 「覚えてる?」「覚えてるよ。どうしたの?」「お前のCD聴いた。良かったよ。沖縄来るか?」って言ったら、飛んで来てくれて。〈ドンタコス〉っていう自分のイヴェントに出てもらった。それが一昨年の7月。それ以来、本土との架け橋になってくれてる。勇気もらいましたね。

トオル:地元のこと歌ったり、YouTubeで山梨の案内したり、山梨のNHKに出たり、地元密着のあったかいアーティストだなと思って。それで、俺らも「自分たちでやろう」みたいな。

アルバムのタイトルにもなってる那覇市曙は、リットさんの地元の地名ですよね。港があって、倉庫が立ち並ぶような。 

リット:工業地帯。元々、石垣島とか宮古島とか、離島の人たちが多く住んでる場所で。ヤクザ屋さんの事務所も結構あって。変な人が多かったですね。

トオル:怪しいよな(笑)。ゲットーだよな? 潮風で車がすぐダメになるし、家賃も安いし。

リット:昼と夜でまったく違いますからね。車も道知ってる人しか通らないっすよ。

『AKEBONO』には日の出のような意味合いもあるんですか?

リット:ちっとあるっす。でも、盤面の太陽は夕日なんですよ(笑)。好きなんですよ。(沖縄本島の)西側に住んでるから。

イエスノー言える 玉を込める 引き金ひいて 腰動かして イク瞬間 呼吸合わせて イったらなぜか涙流れて やーのソウル わーに吸い込まれ わーのソウル やーに吸い込まれ ......
"ボツ空身"

"ボツ空身"は血生臭く、ハードボイルドですよね。冒頭、「2011年、波乱の年、人生かけて挑んだ年、あらかじめ言い訳なし、われ貫く意地、ここにあり」というリリックがあります。何があったんですか?

トオル:激動だったよな。みんなが腹決めた年ですね。リットは仕事しながら、音楽と両立させてたんですけど、「もう辞めよう」って。音楽を仕事にしないとスピード上がらんし、やりたいこともできん。俺も、この頃から本気でクラブをやって、クラブをライフスタイルにしようって思いましたね。

リット:「ラッパーにならんといけん」って決断した年でした(笑)。

「空身」って「身ひとつ」みたいなことですか?

リット:そうっす。適当っすよ(笑)。

でも、あの曲からは並々ならぬ緊張感が伝わってきますよね。トラックを手がけるDJコージョーはどんな人なんですか?

リット:北海道の人ですね。いまは、沖縄の伊是名島に住んで、さとうきびを作る仕事をしてます。ああいうトラックを作る人とは思えない感じで、のほほんとしてる。

9曲目"ボツ空身"から12曲目"女 -HITO-"への流れは凄まじいですよね? 身震いしました。

リット:アルバムができる過程で、やってて楽って思えたスタイルが、9曲目からラストなんですよね。そのなかに、オリーヴさん(オリーヴ・オイル)との出会いがあったりして。

オリーヴ・オイルとは、どういう出会いだったんですか?

トオル:自分たちがやってるイヴェントにエル・ニーニョで来たときですね。ヒカルさん(DJヒカル)に紹介してもらったっす。2011年ですね。このイヴェントから、オリーヴさんがめっちゃ沖縄に来るようになって、遊ぶようになって、音も制作するようになって。

リット:実は、だいぶ前に、オリーヴさんが沖縄でライヴやってるのを見たことがあって、その時からハマってました。「あのちっちゃい人、何?」って。

トオル:感覚も"島んちゅ(島人)"だし。

 〈オイルワークス〉のオリーヴ・オイルは、沖縄でじつによく見かけるアーティストのひとりだ。それはもちろん、赤土クルーをはじめ、彼の音を愛する人たちがイヴェントに招待しているからなのだけど、オリーヴ・オイルもまた、この地を気に入っているように思えてならない。
 現在、福岡を拠点に活動を続けるオリーヴ・オイルは、奄美諸島・徳之島出身だ。ちなみに、現在、沖縄在住で、赤土クルーの「パイセン」ことDJヒカルと同郷だ。思えば琉球王国は、奄美群島までもを統治していた時代があった。歴史的には複雑な背景もあるようだけど、文化や思想など、近しいところがあるのも事実。これは勝手な想像だけど、南国の楽園の設計を夢見る彼が、沖縄に親しみを覚えると同時に、何かしらの可能性を見ているのかもしれない。

ライヴでもオリーヴ・オイルのトラックをよく使ってますよね? 

リット:イメージが一番湧きやすい。言葉がフワッと出てくるんですよ。

DJカミカズ:優しさなんじゃないですか?

リット:そうそう、人的な。あの人、不思議だよな。

"NINGEN State Of Mind"の曲作りはどうやって進めたんですか?

リット:スタジオで、オリーヴさんのトラックのストックを聴いて、曲を選んで。でも結局、一番手こずりましたね。言葉がどんどん出てくるんですけど、最終的にそれをまとめる必要ないかもしれんって思っちゃう。初めての感覚でしたね。「曲に溺れる」って思いました。何回も録り直しました。オリーヴさんはデカかったな。有名人だと思ってましたけど、すんなり入り込めた。自分にとってプラスになる表現が見つかった感じでしたね。

年を重ねて今のストーリー居心地いい 大事な力抜きスッピンでハプニング (中略) 気持ちは走りドンピシャ 浮かび弾けたソウルはドープ閃きの和 揺れるマイフロウ
"NINGEN State Of Mind"

[[SplitPage]]

田我流との出会いがキーポイントになってますね。山梨にいながらこれだけ作品出してる。東京に染まってないし、むしろ、俺らより田舎モンだし。実際に行ってみても、相当田舎だった。それでもできるんだっていう自信になりましたね。


RITTO
AKEBONO

AKAZUCHI REC.

Amazon iTunes

"女 -HITO-"は、どうやって作られたんですか?

リット:先にリリックがあって、オリーヴさんにプロデュースをお願いしたら、ああなって帰って来た。1回目聴いたときは「何じゃこりゃー」で、2回目で「あー」ってなった。「何この感じ? 初めて聴いた」って。

沖縄の人からすると特別な思い入れが?

リット:びっくりしました。

トオル:しかも、リットの曲を作るから、沖縄の音楽をディグったわけじゃないんですよ。奄美にいた頃から、聴いてたらしくて。

〈ラヴ・ボール〉のフロアで、オリーヴ・オイルがお酒を飲みながらずっと踊ってる姿が印象的ですよね。

トオル:愛されてますよね。毎回、延泊するし(笑)。

リット:オリーヴさんとは、いままた新しい作品を作ってます。何が起こるのかな?

ゆらゆら揺れる 情熱とフロウ ゆらゆら揺れる 景色とフロウ きらきら 音 お前とフロウ 抱き寄せた唇 お前のフロウ (中略) 吐き出すフロウ お前の色  
"女 -HITO-"

リットさん、女性好きですよね?

リット:好きですね(笑)。沖縄の女性も好きです。力強くて。黒髪も好きですね。

ラストの曲、印象的ですよね。これまでの世界の先にたどり着いた感があります。

トオル:このアルバムの罠だよね。1曲目から聴いていって、最後にあんな世界を見せられて、「こいつ、どうなってくんだろう?」って思ってほしいという思いを込めて、曲順を考えました。

リット:型にはまることなく、自由にやってますね。その分、「生きてきたのかな」って思います。日頃、見たり、考えたりしてることがオリーヴさんとの曲に写せたのかな。でも、「ふと」ですよね、ほんとに。流れっていうか。"G.O.D"は、トラックを作ってるアーロンさんがぶっ飛んでる人で。面識なかったんですけど、「ラップやってるんでしょう? ビート聴きに来ない?」って言うから「何だ?」って思いながら(笑)。人とのつながりでそのまま作っちゃったんですよね。

フィーチャーされているサイファーは誰ですか?

リット:俺の女です。ポエトリーやってるんですよ。

トオル:リットの3倍くらいぶっとんでるから(笑)。突然、〈ラヴ・ボール〉に来たんっすよ。いきなりマイク持ち出してしゃべりはじめて。「何してんの? あの人」って。この時期、いろいろな人に出会って、いろいろな音楽に出合って、そういうことが多かったですね。アルバム制作を通して、いい意味で、ヒップホップってこんなんだったなっていうのを確認できましたね。いる人でやって、ある物で作るっていう。

アルバム前半の多くのトラックを手がけるネクストはどういう方なんですか?

リット:沖縄の先輩ですね。沖縄には、トラックメーカーの歴史があまりないというか。若い連中は、何かあったらネクストみたいな。ネクストのところに行って、「ちゃす! 何かありますか?」(笑)。そんな感じですね。アルバム前半の作品は、けっこう早い段階でできてましたね。

そうなのかなって思いました。

トオル:聴いててわかるっすよね。(アルバム後半にいくにしたがって)オリジナリティが増してく。

"女 -HITO-"はボーナストラック的な意味合いがあるから別として、"ボツ空身"のリリックだけ歌詞カードに載せていないのは、意味があるんですか?

リット:30分くらいでできたんですよ。わりとすぐできちゃったんで、「別に」と思ってたんですよ。だけど、歌っていけばいくほど味があるなって。後から聴いたら、けっこう、自分の心理を歌ってるのかなと思って、好きになりましたね。アルバムに入る予定もなかったんです。

そうなんですか? 

リット:何気に書いたものだから。ちょうど、彼女と出会ったくらいの頃かな。あいつと出会って、いろいろ変わりましたね。面白いもんな(笑)。

いつの時代も困難 王朝からゲットー、今はリゾート 噛めば噛むほど味が消えるの...... 隠し味政府のスパイス オーマイゴッド オジーオバーの姿受け継ぐ気持ち崩さんさ オトーオカーの姿でかい気持ちをありがとな 
"ミライニナイ"

"ミライニナイ"は、「ニライカナイ」に由来するんですか?

リット:初めて気付いてくれた(笑)。

ほんとに?

トオル:逆に、うちなーんちゅ(沖縄県出身の人)は気付かないんだよな。

 "ミライニナイ"は「ニライカナイ」をもじったタイトルだ。「ニライカナイ」とは、沖縄県などに伝わる他界の概念で、いわゆる理想郷のこと。このままいけば「理想郷は未来にない」とうたっている。

リット:本土の人は、沖縄をリゾートだと思ってるから。

トオル:俺たちは真逆だもんね。

リット:そこに疑問を感じないかな? 沖縄の問題っていろいろあるじゃないですか。本土には、「沖縄は国からお金をいっぱいもらってるんだから」っていう考えもあると思うんですよ。それも分かった上で、もう1回確認ですね。沖縄のラッパーは、1曲は必ず沖縄について書くんですよ。何となくそういう流れがあって。沖縄の問題は、俺らにとって生まれつきみたいなもんですからね。

生まれる前からずっと続いてますよね。とくに沖縄は、先祖崇拝だし、代々伝わる思いや考えなど、本土の人間とは違うものがあると思います。

リット:島の文化とか歴史とかありますよね。これからが大事になってくると思うんですよ。基地問題もあるけど、10年後の沖縄はリトル・トーキョーになってるかもしれんし、もっと危ない状況になってるかもしれない。観光地化もさらに進んで、外国人がもっと増えてるかもしれないし。

トオル:いまもうすでにチャイニーズが増えてる。

リット:だから、ナイスなタイミングじゃないですか? この土地はこれからどうなるのかなって。

[[SplitPage]]

実際、国のばらまきの金でみんな暮らしてきてるから、もし、基地がなくなったら食えん人もいっぱいいるし。掘り起こせば、戦争に負けて、アメリカがここに基地を作った時点で、アメリカに依存しようっていうのは、戦後からはじまってることで。いまさらどうしようと思っても、矛盾だらけで、もう回らないわけじゃないですか? 

普天間基地問題について、鳩山が首相としては初めて県外移転を取り上げた時、どう思いました?

トオル:絶対無理だと思ってましたよ。

リット:反対してもどうせダメだって。

トオル:反対派と賛成派が意見を交わせればいいですけど、賛成派は現れないから、結局、時間稼がれてるだけ。それに、「反対」って言ってない人は全員「賛成」だっていう無条件の票みたいなものがあって、それはおかしいだろって思うんです。原発問題もそうだと思うんですよ。「デモに何万人集まりました。すごいね」。でも、「東京都に何十万人もいる中の、デモに何万人って言われても別にたいしたことない」っていう感じじゃないですか? 基地問題も同じで。実際、国のばらまきの金でみんな暮らしてきてるから、もし、基地がなくなったら食えん人もいっぱいいるし。掘り起こせば、戦争に負けて、アメリカがここに基地を作った時点で、アメリカに依存しようっていうのは、戦後からはじまってることで。いまさらどうしようと思っても、矛盾だらけで、もう回らないわけじゃないですか? 

リット:最近思うのが、人種問題になってるってこと。基地のなかにいるアメリカ人が悪いわけじゃないし、中国人は「(尖閣諸島は)俺たちの土地だぞ」ってこっちをにらんでる。この島で人種がぶつかり合うようになったら、それこそ本当に良くないなって思って。だから、開き直るわけじゃないけど、沖縄には本当の平和があるからこそ、基地があるし、中国にもにらまれる。それを受け入れてあげようっていう、ピースな島なんだって考えることもありますね。薩摩に侵略された時も、武器を取り上げられて何もないなかで、空手だけで戦ったっていう歴史もある。この土地がそういう場所なのかな。平和について考えさせられる島っていうか。
 広島や長崎もあるのに、沖縄だけが「俺ら、かわいそうだろ?」っていうのも違うと思うし。だから、沖縄だけどうこうっていうのはもうやめようぜって思いますね。でも、この土地に生まれて良かったと思ってます。俺は誇りに思ってます。本土から来た人も沖縄に興味を持ってくれてるし、その分、胸張っていられるところもある。「俺らの島ってめっちゃいいよ」って言うんです。

世代によって、考え方は違いますか?

リット:かなり違いますね。本土でいじめられてた人たちもいるんで。

トオル:不動産屋で家借りられないとか。本土の人からすると、沖縄がまだ外国みたいな頃で、沖縄の人には家貸さないっていう時代があった。沖縄の出入りにはパスポートが必要だったし。本土に対する思いは、いまの若い人たちはだいぶくだけてきてると思うんですけど、俺らの親世代は、相当警戒してるっすね。

リット:何で「ナイチャー(本州の人)、ナイチャー」って言うのかも、俺たちにはわからないし。

トオル:いろいろあったんだろうなって。

リット:侵略されたり、裏切られたり。去年のオスプレイ(強行配備)のときに痛感しましたね。この歳になって、初めて実感でわかりました。(これまでデモが少なかった)那覇でもガンガンやって、あれだけ沖縄の人が頑張ったのに、「あー、本当に来ちゃうんだ」って。

 インタヴューは赤土レックのスタジオでおこなわれた。なかに入ると、壁に貼られた地元新聞の記事が目に入った。オスプレイ強行配備のニュースが、一面で大きく報じられていた。
 昨年10月、普天間飛行場に計12機のオスプレイが到着した。前月に、約10万3千人が参加した「オスプレイの配備に反対する県民大会」が行われるなど、地元の反発が強まる中でのできごとだった。

トオル:若者たちがネットを通じてデモの情報を知って、いままでよりたくさん集まるようになったと思うんですよ。それでも、全然無理だった。「もう決まってるから」っていう感じだったじゃないですか?

リット:2日間くらい立ち直れなかったですよ。オジー(おじいさん)たちが言ってたのは、こういうことだったのかって。小学生の頃に(米兵による少女)レイプ事件が起きて、いけないことが起きてることはわかったけど「どういうことなんだろう?」って思ってた。だから、オスプレイが目の当たりにした瞬間でしたね。

トオル:今後の沖縄について考えましたね。いまも、本当にそればっかり考えてる。現に、ずっと(オスプレイが)飛んでるじゃないですか?

リット:飛行禁止区域も飛んでますから。

トオル:県内には、オスプレイをプッシュしてる奴らもいるし、ファンクラブもある。逆に安全なんだよって。でも、どこの統計だよって思いますね。

おふたりとも本土での生活の経験がありますよね。沖縄に関するニュースの報道のされ方に温度差を感じませんでした?

トオル:向こうのテレビで(ニュースが)やってないことに驚きました。

沖縄の新聞やテレビでは、毎日、基地問題がピックアップされてますもんね。

リット:去年の12月に、オスプレイのサウンド・パレードに参加したんですよ。

トオル:10台くらい装甲車が走って。ヒカルさんも一緒で。

リット:俺らの目線で参加できて、意味があったと思いましたね。いままでと違う見方もできたし、考えることもできた。「デモ」ってやったら、響きが悪かったんじゃない?

トオル:俺の親は、こんなの嫌がるんですよね。どうせ無理だって。戦争に負けた俺らの親より上の世代は、死ぬつもりで戦ったのに、国が負けたって言っただけで、いきなり「負け」になったわけじゃないですか? 死んでもないのに。だからたぶん、(基地問題など国の政策に)反対し続けて、でも、勝てなくて。俺らの親は、そういう姿をずっと見てきたから、諦めてる世代なんですよね。今年の正月、親父に初めて「世界平和ってあるのかな?」って聞いたら、「お前が戦争して勝つしかないよ」って言われたんですよ。たぶん、その考えは間違ってるって思ってるんですけど、でも、それしかない。何してもかなわんから、本当にかなえたいんだったら、戦争して勝て。たとえ、殺し合いの戦争じゃなくても。

DJカミカズ:いまの話、そのまま"G.O.D"を聴いてるような感じがした。

[[SplitPage]]

コージョーっていうラッパーからニューヨークの事情を聞いたら、基地のなかにいる奴らの多くはゲットー出身者で、若くて、まだ何もわからないときに、「金欲しいでしょう? だったら、軍に入りなよ」って言われて。奴らも国にハメられてるんだよって。

生まれたときから、代々引き継いでいる思いの深さや厚みのようなものがあって、それは他の土地の同世代の人間には、なかなかない感覚というか。

トオル:良くも悪くも、特別ですよね。

リット:いまはもう「戦争ってこうだったんだよ」っていうより、命の尊さが受け継がれてるように思うっすね。

いまの若い世代は、カルチャー的には米軍基地で働く外国人から影響を受けたりもしてますよね。友人もいるし。でも、基地問題は、政治絡みの問題だから、一概にいいとか悪いとか言えない、複雑な立場なのかなと思いますよね。

リット:最近も読谷で、米兵が中学生を暴行して逃げた事件があったけど、だからって「外国人は(みんな)ダメ」って言うのは、決して良くないこと。コージョーっていうラッパーからニューヨークの事情を聞いたら、基地のなかにいる奴らの多くはゲットー出身者で、若くて、まだ何もわからないときに、「金欲しいでしょう? だったら、軍に入りなよ」って言われて。奴らも国にハメられてるんだよって。

トオル:軍事に目を向けさせるために、貧困差を付ける。仕方ないよな。米兵が悪いわけじゃないし。

リット:ここ数年、見方が変わってきたよな? 昔の沖縄に黒人はいたのかと思って、タクシーの運転手に聞いたら、「いたよ」って。「黒人ってどうだったの?」「仲間だろ。あいつらは何もしないよ」って。俺らはブラック・ミュージックが大好きだから、黒人に親しみを感じるけど、当時からそういう目線で見てる人もいたんだと思って。

普天間基地移設問題については、移設先の辺野古の環境的な問題も指摘されてますよね?

リット:ジュゴンとか、珊瑚礁とか?

沖縄の人から見て、そういう視点からの問題はどう考えてますか?

リット:本土の人の方が熱心ですよね。旅行で沖縄に来て、見て、くらって、そのままずっと居続けるとか。科学者とか医者の人も多くて、沖縄の人はそういう人たちに助けられてますよ。いろいろな知識を分け与えてもらって。

トオル:最近よく昔の沖縄に関する本を読むんだけど、あの時代の本って内地(本州)の人が書いてるものばっかりな気がするんですよ。その世代の沖縄の人は、そういうことを表現したがらないんだと思うんですよ。

オリーヴ・オイル、イル・ボスティーノ、ビッグ・ジョーの"MISSION POSSIBLE"はどう思いましたか?

リット:聴いてなかったんですよ。

そうなんですか? 先日、〈ラヴ・ボール〉でおこなわれたビッグ・ジョー主催のイヴェント〈ユナイオン〉で一緒にやってましたよね?

リット:(笑)ジョージさんがライヴでやるってなったから、パンチラインだけでも覚えようと思って(笑)。でも、できないから、横でとんでるふり(笑)。あまりにも失礼だ。歌えんかったらヤッケーだし。でーじ(めっちゃ)緊張したんっすよ。フワフワしながらやってました。ジョージさんに「サビわかる?」って聞かれて、「はいはい。携帯でリリック見てます!」って(笑)。俺の友だちは聴いてましたよ。

沖縄では、賛否両論あったとも聞きました。

リット:それはあるだろうなと思ってやったんじゃないですかね。

ライヴでビッグ・ジョーは「沖縄のどのくらいの人がこの曲知ってるかな?」って言ってから、はじめましたよね?

リット:沖縄を訪れて、状況を見て、ヤバいことになってるって感じたことを書いてくれたと思うんですよ。他の奴がやってたら「バカヤロー」ってなると思うんですけど(笑)、嫌な気持ちにはならなかったですね。ビートもかっこいいしな?

〈ユナイオン〉は、レギュラーイヴェントになるんですか?

トオル:最低でも、年に1回はやりたいって言ってましたね。

ライヴ後に友人から聞いた話ですが、北海道だと、ビッグ・ジョーにフリースタイル挑んでくる人はもうあまりいないらしいのですが、沖縄はまったく違ったと。フロアで地元の若い子たちとやってましたよね。

トオル:(笑)楽しそうだったな。ずっとやってたよな? 

リット:フリースタイル・セッションみたいな。

北海道のフィーメールMCオナツも、沖縄のラップ・シーンがヤバすぎて帰れないでいるっていう話を友人から聞きました。

トオル:そうそう。

リット:あいつは〈ラヴ・ボール〉で、ほぼ毎週、くたばるまで飲んでます。

トオル:もう仲間っすね。

先日、リットさんが共演したオムスビはどうでした?

トオル:相当くらってたな。俺らがゲストを呼ぶ時はいつも、「絶対負けん」っていう気持ちで呼んでます。

リット:電話が来たっすね。「あ、『AKEBONO』聴きました」「何でかしこまってる?」って(笑)。

同じMCから見て、沖縄のラップ・シーンはヤッケーんだと思います。

リット:周りの反応にビックリしてます。欲が出て来ましたよね。次はどんなことやろう、みたいな。

"血と骨 生身の歴史が飾りない時空生み出した 吸い込む悲劇上の空 俺たちの気 囲む強さ"("NINGEN State Of Mind"より)

 沖縄の土は赤い。赤土だ。青い空の下、青い海を望み、地に足をつけ、踏みしめるのは、たくさんの悲しみが詰まった赤い土だ。服につくと、繊維の奥まで染み込み、酸化して、洗濯してもおちない。赤土クルーが放つヴァイヴスもまた、聴く者の魂に深く入り込み、じわじわと化学反応を起こして、心をつかんでくる。
 沖縄の地元MCが集う〈ラヴ・ボール〉。若いラッパーが次から次へと登場する。ハーコーな連中もわんさかいる。そして、ほとんどの人が叫ぶ。「ピース」と。彼らの体から沸き起こるこの言葉が、自然と胸に響く。熱く、厚い思いが、今夜も、「愛と平和がけんかする」この島のあちこちに、あたたかな輪を作っている。

輪になる笑い声をひとつに
癖になる笑い声に幸と価値
"風音"

 ひと息入れて、酒を浴び、うたい、踊る。何があっても「踊るときは笑顔だね」。ここの人たちは、楽しむ才能に長けている。

 まずは、リットの『AKEBONO』を聴いてほしい。願わくば、沖縄まで来て、〈ラヴ・ボール〉でライヴを体験してほしい。それがかなわないなら、せめて、近くの人はツアーに足を運んでほしい。

3/31 @ 沖縄県沖縄市 OTO-LAB https://otolabkoza.ti-da.net/
4/6 @ 沖縄県那覇市 Cyber-Box
4/7 @ 沖縄県沖縄市 喫茶カラーズ
4/12 @ 沖縄県那覇市 LOVEBALL https://loveball.ti-da.net/
4/13 @ 渋谷 LOUNGE NEO https://loungeneo.iflyer.jp/venue/
4/20 @ 町田 The Play House https://www.theplayhouse.jp/
4/26 @ 京都 BLACK BOXXX https://www.kyoto-blackboxxx.com/
4/27 @ 大阪 CONPASS https://conpass.jp/
5/3 @ 町田 flava https://www.machida-shi.com/S112523.html
5/5 @ 渋谷 NO STYLE https://dp43053767.lolipop.jp/
5/10 @ 池袋 bed https://www.ikebukurobed.com/
5/11 @ 吉祥寺 warp https://warp.rinky.info/

Deep Magic - ele-king

 まさか同一人物だとは思わなかった。サン・アローのライヴでサポート・メンバーを務めるアレックス・グレイはディープ・マジックの名義でアンビエント・ミュージックに取り組み、ちょっと前まではそう大したことをやっているわけではなかった。それが『崇拝の祭壇』と題されたカセット・テープでは飛躍的に内容がアップし、第2段階に入ったのは明らかだった。同じころ、気になりはじめていた才能にはマシュー・セイジとパープル/イメージがいた。ブラジルのジムやポルトガルのポイズン・ニガーにも心は飛びかけていたけれど、そんなときに紙エレキングの打ち合わせがあり、松村編集長や倉本諒とインダストリアル・ミュージックについてウダウダと話し合う機会があった。その結果は特集のディスク・ガイドにまとまったと思いたいところだけれど、そのときに倉本くんが乳首をポロッと出すように「ディープ・マジックとパープル/イメージは同じ人ですよ」と唇を動かしたのである。え......。パープル/イメージって、だって、超ノイズじゃん、しかもかなり筋金入りの......。僕の脳内ウィキリークスはすぐにはその事実を脳内フォルダーに貼り付けられなかった。

 実際、そうか、どっちもアレックス・グレイなのかと納得したのは、それから、もう一度倉本くんと会って、ディープ・マジックのカセットを何本か売ってもらい、アレックス・グレイが最近はオピウムにはまって、さあ、大変、という創作事情を聞いてからのことである。ああ、なるほどね、それなら納得だねと、そっちの方で納得できてしまう僕も僕だけれど、マシュウデイヴィッドのようにアンビエントかと思えばノイズ・ドローンも......という人が近隣のシーンにもいるわけだし、それほど抵抗する意味もなかったことはたしかである。しかし、それぐらいパープル/イメージは従来のパターンからはかけ離れたノイズ・ドローンをやっていて、従来のアンビエント・ドローンと方法論的には同じやり方を踏襲していたディープ・マジックとは距離があるように思えたのである。

 ディープ・マジックはなぜかカセットでリリースする音源のほうがいい。倉本くんによると、本人はつくったはいいけれど、それを売るのが面倒くさいらしく、『崇拝の祭壇』はフード・ピラミッドなどを擁する〈ムーン・グリフ〉からリリースされたことで少しは世界的な流通にも乗ったとか、そういうことになるらしい。フィールド・レコーディングをベースにシンセサイザーなどで加工していくという手法はそのまま維持しつつ、ここでは新たにキラキラと美しく繰り返されるミニマリズムやロング・ドローンが効果的に配置され、それらを組み合わせる構成力に飛躍的な発展が認められる。オピウムが彼に見せてくれる世界。その桃源郷のようなヴィジョンと光の洪水はアレックス・グレイがヤソス(裏アンビエントP60)の末裔であり、ウエスト・コーストが約束の地であったことを思い出させてやまない。『アンビエント・ミュージック 1969―2009』などという本をつくってしまったせいで、毎年、その年のベスト・アンビエントを考えないと落ち着かないんだけどw、いまのところ最短距離に位置しているのがこれではないかと。昨年はもちろん、メデリン・マーキーちゃま

 オープニングからハーシュ・ノイズの洪水かと思いきや、ノイズなのにあまりに気持ちよく、マイナー・イメージに支配されたノイズ=憎しみといった80年代の図式がゼロにも等しくなってしまった。パープル/イメージ名義のデビュー作はマシュウデイヴィッド『アウトマインド』を目先の目標にしながら、ノイズ・ドローンを過剰に盛り込んだことで、それを乗り越えてしまったアルバムに思える(Rのみのリリースはピック・アップしないようにしてきたのですが、年間ベストにも等しい内容ではそうもいかないかなと)。粒子の細かい音のぶつかり合いはトリップ・ミュージックにおける最低限のお約束事だとしても、ありとあらゆる隙間にその破片が詰め込まれ、ほとんど窒息状態になって、それこそ夢にまで見たマイク・パラディナス版『メタル・マシーン・ミュージック』ではないかと。あるいは、曲によってはそれ以上かもしれない。こういうときにはやはり天才という言葉を使いたくなってくる(サウンドクラウドにはどちらかというとつまらない曲を選んでアップしているのはなぜだろう?→https://soundcloud.com/djpurpleimage)。

 〈プー・バ〉傘下からはヒート・ウェイヴ名義でヒップホップにも多少の色気を見せているだけあって、サンプリング・センスも自由自在。あらゆる技法を吸い尽くしたようなM6を聴くと、シンリシュープリームと曲を交換し合ってリミックス・バトルを繰り広げるしかないと思ったり、とにかく、どの曲も聴きなれない人が聴いたらぐじゃぐじゃですよとしかいえないようなものばかり。それでいて、初期のジーザス&メリー・チェインに匹敵する音のセンスを見せるんだから......(オーヴァードーズで死なないことを願うばかり?)。

https://chanceimag.es/headtearcd.html――FOR JUNKIES ONLY!FOR JUNKIES ONLY!

 毎年3月中旬になるとメディア関係のニューヨーカーは、暖かいテキサス州オースティンへと向かう。音楽見本市として知られるSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)は毎年ハイプになっていき、本来の意味(未開発インディ・バンドのショーケース)は、すっかり忘れ去られている。ハイテクや映画の見本市でもあるが(マイスペース、ツイッター、フォースクエアなどの電子ツールはここから注目を浴びた)、単にパーティを求めている人たちが集まる場でもある。
 今年は、スピンナショナル・パブリック・ラジオなどが、ショーケースのライヴ・ストリーミングをしたり、『ピッチフォーク』や『BKヴィーガン』などのメディアが、時間刻みで自分が推したいショーをウェブにアップデートする。フェイスブック、ツイッターなどにもあげてくれるので、媒体の好みに偏るが、まるで行ったような感覚に陥る。インターネットは便利だが人びとを動かなくする。

 ラジオ局NPRのショーケースでは、ニック・ケイヴ&バッド・シーズ、ヤーヤーヤーズ、イギー・アンド・ザ・ストゥージーズ、ジャスティン・ティンバーレイク、プリンスなどの大物、クラウド・ナッシング、ヴァンパイア・ウイークエンド、ブレイズ、キャサリン・ハンナ、フレーミングリップスなどのインディ・フレンドリーまで、たくさんのバンドが集まった。目的がはっきりしているならSXSWは価値がある。ただ、バンドが1日3回ショーをすることも珍しくなく、DIIVもいうようにセットアップ5分、プレイ15分、サウンドシステムと、質は求められない。人気のあるショーは、長いラインに並ぶか、入れないことも多いし、フリードリンク、フリーフード、たくさんのバンドや新しいテックの誘惑で、週明け、パーティ疲れでげっそりした人たちがNYに戻ってきている。
 その週の土曜に、ブルックリンのカフェで食事していたら、その日の朝にSXSWから帰ってきたばかりマシュー・ディアのメンバーにばったり出会った。SXSWの感想を聞くと「すごく疲れた」とひと言。

 SXSW期間でも、NYではたんさんのショーが開催されている。そのときに見たひとつのバンドのヌード・ビーチを紹介。アザー・ミュージック(other music.com)から音源をリリースし、革ジャンにタイトパンツ、アフロヘア、ストロークスっぽくもあるが、サウンドはトム・ペティ、リプレイスメンツ風のハートランド・クラシック・ロック。スタイルは、ギターウルフ的であるが、あそこまで攻撃的ではない。何回かショーを見たが、1:人に媚びない。2:難しい事をしない。3:共演バンドが毎回違うジャンル......が彼らの特徴で、誰もがスンナリ入っていける許容範囲がある。見ていてスカッと気持ちが良い。いろんなミックス・ジャンルの音楽がはびこるなか、懐かしのストレート・クラシック・ロックが、戻って来ているのは何かの兆しなのか。
 今週はSXSW上がりの話題のバンドがNYを通過する。Savages、Sky Ferriera、Chvrches、Disclosure、Fear of Men......1週間遅れのSXSWがはじまる。


ヌード・ビーチ

Nick Cave & The Bad Seeds - ele-king

 「今回、大きく変わったのは、ギターがいなくなったことだ。だから、最初にギターが存在しないヴァージョンをつくってみて、そこからはじめたアルバムだった」とニック・ケイヴが米メディアに語っている映像をYoutubeで見たが、旧バッド・シーズは、正反対のギタリストをふたり擁していた。
 ひとりは、ノイバウテンのブリクサ。ぎゃああああん、とか、どごおーん、とか、別にそこでそんな変なギターの音はいらないんじゃないか。という箇所でさえ我が道を行っていた往年のノイズ界の貴公子は、ときに耽美的ダンディズムに酔い過ぎるニックをおちょくっているかのようであった。だから、彼が辞めたときには一抹の不安を感じた。
 が、ブリクサ脱退後のバッド・シーズは、全然いけていた。もうひとりのギタリスト、ミック・ハーヴェイは器用貧乏と呼ばれることもあったが、しかし、ニックのような人と組むと、その器用さが全体をホールドする。ケイヴが自作の詩に音楽をつけるにあたり、静寂のバラードから怒涛のロック・ソングまで、多様なムードの曲のあいだを自由自在に飛び移ることができたのは、彼の脇に盟友ミック・ハーヴェイがいたからだ。特に前作の『Dig!!! Lazarus Dig!!!』では、50男のガレージ・ブルーズ。みたいな渋くてワルいギター・サウンドを聞かせてくれ、ひょっとすると、年々タイトになるこのバンドは、「激烈にクールな中年ロック」という新ジャンルをつくるのではないか。と気分が高揚した矢先の脱退だった。

 「ロックなニック・ケイヴが好きだった人は、今度のアルバムはダメだろうね」
 あるおっさんがパブで言ったので、私はぶーたれた。
 「っていうか、あれだったら、詩の朗読と変わらないじゃん」
 実際、同じ街に住んでおられるニックは、地元のわりと小規模なハコでポエトリー・リーディングをなさることがある。英語でのポエトリー・リーディングというのは、平坦な日本語でのそれと違い、抑揚が強くて、リズムや旋律のようなものさえある。だから、今回のミニマルなアルバムはそれに限りなく近い。とは言え、わたしは文豪ニック・ケイヴは好きだ。「And The Ass Saw The Angel(神の御使い)」も、「The Death Of Bunny Munro(バニー・マンローの死)」も何度も読んだし、とくに、アル中の母親と動物虐待者の父親を持つ少年の話である前者は、アンダークラス支援団体の託児所で働いていた時期に再読し、若い頃に日本語訳で読んだときには笑えるとしか思っていなかった箇所で、何度も心を蹴破られたりした。
 彼の小説では、もっとも美しいバラードともっとも野蛮なロックが自由自在にリミックスされている。ニック・ケイヴという人は、言葉の分野なら自分ひとりでそれができるのだが、音楽となると、ミック・ハーヴェイが必要だったのかもしれない。花田清輝的に言えば、対極するものを対極させたまま一致させる、というのはアクロバティックな荒業だからである。
 「音楽としては、わたしはニックではなく、旧バッド・シーズが好きだったのかもね」
 新譜はいまいち。という私を、それは君が化石のようなロック女だからだ。という論旨でやっつけようとしていた50代の相手は言った。
 「......いや、実は、俺もそんな感じはたしかにあるんだけど」
 (彼は、わたしのブログに登場したことのある、いつもニック・ケイヴのTシャツを着ていた成人向け算数教室の講師だ。保守党政権になって失職し、現在はこざっぱりした姿で大学に勤務している)

 とはいえ、わたしだって"Push the Sky Away"や"Water's Edge"は好きだ。が、"Higgs Boson Blues"ではミックのギターを幻聴してしまうし、"Wide Lovely Eyes"は、"Let Love In"のような曲になれたのではないかと妄想してしまう。
 別バンドのグラインダーマンをやっていた頃、新相棒のウォレン・エリスに「お前がギターを弾け」と言われて自分で弾いたというケイヴは、「いま、ひとりだけギタリストを連れて来れるとしたら誰とやりたいですか」と訊かれて、バッド・シーズ脱退直後のミック・ハーヴェイの名を挙げたことがある。

     ***********

 ニック・ケイヴは、今回のアルバムの舞台はブライトンだと語っている。
 彼は、天井が高く、窓などに優美な曲線的デザインが目立つ高級住宅(公営住宅は、天井が低く、すべてが直線で四角い)が立ち並ぶ海浜地域に住んでおられる。で、そこにある自宅の大きな窓から見える庭と海と空がアルバムのベースだという(自宅の窓辺に立つ彼と、妻の写真がジャケットである)。
 だとしたら、やはりわたしのような丘の上の貧民街在住者には理解できない世界だ。
 うちの小さな窓から見えるブライトンは、冬なのに芝が伸びきってジャングル状態のイングリッシュ・ガーデンや、路上に転がっている狐の死体や、舗道でカツアゲしている十代のフディーズたちの世界だ。
 「ブライトンの良いところは、もっとも貧しい者やもっともリッチな者、ゲイ、老人、学生、アナキスト、といった多種多様な人間がナイスなバランスで共存していることだ」とニック・ケイヴは地元誌に語ったことがある。
 だが、残念なことに、そのブライトンは、わたしにはこのアルバムからは見えて来ない。

HOUSE OF LIQUID presents WARM UP - ele-king

 足を素速く動かしましょう。冗談を理解しましょう。フットワーク/ジューク、ハウスとベース・ミュージックを楽しく聴きましょう。恵比寿のリキッドルーム2Fに行きましょう。入場料は1000円。大ベテランのムードマンも出ます。明日のために、大量の汗をかいてください。財布を落とさないように。

featuring
D.J.APRIL(Booty Tune)
Kent Alexander(PAN PACIFIC PLAYA/Paisley Parks)
1-DRINK
MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)

2013.3.30 saturday night
at KATA[LIQUIDROOM 2F]

open/start 23:00
door only 1,000yen

*20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参下さい。(You must be 20 and over with photo ID.)

info
KATA https://www.kata-gallery.net
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

▼D.J.APRIL(Booty Tune)
Hardfloorでシカゴに目覚め、のらりくらりとシカゴ・ハウスを追いかけております。横浜で「Ruler's Back」というJukeをメインにしたっぽいイベントをオーガナイズ(現在休止中)させていただいたり、Jukeレーベル「Booty Tune」の広報などもしております。
https://www.bootytune.com

▼Kent Alexander(PAN PACIFIC PLAYA/Paisley Parks)
高校生の頃からパーティ地獄巡りを重ね、日本とアメリカ各地でDJ。昨年は自身が所属するjukeユニットPaisley Parks楽曲のみのdjセット等をjukeの本場シカゴのラジオで披露するなどの活躍を見せている。横浜Pan Pacific Playa所属。
https://www.panpacificplaya.jp/blog/

▼1-DRINK
BASSと非BASSの境界を彷徨いながら現在にいたる。ときどき街の片隅をにぎわせている。
https://soundcloud.com/1-drink

▼MOODMAN(HOUSE OF LIQUID / GODFATHER / SLOWMOTION)
日本でもっとも柔軟な選曲能力を持っているベテランDJ。近々、新しいミックスCDをエイヴェックスからリリース。
https://www.myspace.com/moodmanjp

interview with Vondelpark - ele-king

 音をチェックしていなかったとしても、あの犬ジャケは覚えている、という人は多いのではないだろうか。デビューEP(『サウナEP』2010年)ではビーチ・リゾート風の海が、つづく『NYCスタッフ・アンド・NYCバッグスEP』では飼い犬らしい犬の表情がジャケットにあしらわれている。それぞれトイカメラ風の叙情性をたたえながらもプライヴェート・ショットのような何気なさが演出され、ウォッシュト・アウトやあるいはエール・フランスなどがそうであったように、柔らかくてどこかインナーな光源を感じさせる。つまり2010年当時のインディ・ミュージックにおけるひとつのリアリティがありありと刻まれたアート・ワークだ。たとえばチルウェイヴやバレアリックという呼称とともに、たとえばベッドルーム・ポップという概念とともに、われわれはローファイでリヴァービーな音像や、ロング・トーンのヴォーカルや、気だるげなサマー・ブリーズ、逃避的なムード、それでいて清潔感のある曲調などを容易に思い浮かべることができるだろう......そうしたヴィジュアリティである。

 フォンデル・パークは鋭くまばゆくこのフィーリングをすくいとっていた。だがビートにおいては、より強くダンス・ミュージックとしてのシャープさを持っていたかもしれない。なにしろ〈R&S〉が送り出した新人というインパクトもあったのだ。しかしダンス・ミュージックだと呼ぶには、あまりにインディ・ロックのヴァイブをあふれさせた存在でもある。本人たちは「エレクトロ・ギター」と奇妙な呼び方をしているが、彼らのルーツがギター・ロックであることは音からも瞭然だ。こうしたあたりが、彼らの個性でもあり、またクラブ系のリスナーとインディ・ロック系のリスナーの双方を心地よく揺さぶった要素でもある。両者の混交が著しかったこの時期のシーンを象徴してもいるだろう。

E王
Vondelpark
Seabed

Amazon iTunes

 フル・アルバムとして初となる今作では、よりクリアで整理されたプロダクションが目指されるとともに、ポスト・チルウェイヴのひとつの着地点とも言えるR&B傾向が強まった。ジェイムス・ブレイクの成功もひとつの布石になっているかもしれない。スムーズで洒脱なソウル色が深まる一方で、そもそものサイケデリア(このあたりはレーベル・メイトのエジプシャン・ヒップホップとも共通する)や内向的で繊細なドリーム感といった持ち味も失われておらず、さらにシー・アンド・ケイク的なリリカルなポスト・ロックまで加わっている。時間とともに、方法も掘り下げられたようだ。

今作のキーワードは「アンダー・ウォーター」。陽気に浮かれ騒ぐヴァカンスではなく、水底から眺めるヴァカンス......どこか隔絶感があって、どこか不随意で、しかしどこか安心するようなうす碧い空間を思わせる。デビューから3年をへて彼らが着地しようとしている地平は、どのような場所なのだろうか?

エフェクトを付け足すのをやめるタイミングをどこかで見極めて、ピュアでミニマルな手法でいきたかった。(ルイス)

2010年の『サウナEP』から時間を経て、今作はサウンド的にとてもソフィスティケートされたという印象があります。しかし、あのEPのカジュアルなプロダクションも、チルウェイヴなどに象徴的だった当時のムードをとてもよく表していて魅力的です。いまからみて、あの当時のフォンデルパークの音はどのように感じられますか?

マット:曲を作るときに感じていた感情とかがベースになっているから、僕たちが年を重ねるごとに音楽も進化してきていると思うよ。前回から2年も経っているから、あの頃のプライヴェートの状況や心境にも変化はあったし、音楽を聴いていると当時の心境を表していると思う。

アレックス:あの頃からミュージシャンとして腕も上がったし、ここ数年間でもっとクリーンな音を出せるようになったと思う。次の作品ではファーストEPのような制作手法に、家でレコーディングしたり「生」のサウンドにこだわったプロダクションで、ルーツに戻ろうかと話し合っているところだよ。

『サウナEP』や『NYCスタッフ・アンド・NYCバッグスEP』など、その頃の音がアルバムとしてまとめられていないのはなぜなんでしょう?

マット:どうしてかなぁ? でも"カリフォルニア"の新ヴァージョンをこのアルバムに入れたのもそんなことを考えていたからかもしれない。EPを作った頃はいつかアルバムにしようなんて思っていなかったし、レコーディングした当時のフィーリングはそのままの形でもいいと思うんだ。これからもまたEPを出すと思うよ。

今作はセルフ・プロデュースなのですか? また、今作の録音について重視したことを教えてください。

ルイス:他の人にプロダクションを手伝ってもらったところもあったけど、最初から最後まで立ち会って関わっていたよ。家にある機材じゃできないミックスをしたりコンプレッサーを使ったり、生収録した音楽にテープや機材でエフェクトをかけたりする作業はスタジオでやった。でも、プラグインをあれこれ使いたくなかったからあんな感じのアナログ・サウンドができたんだ。エフェクトを付け足すのをやめるタイミングをどこかで見極めて、ピュアでミニマルな手法でいきたかった。
 今回のアルバムではヴォーカルやドラム収録のためにスタジオにいる時間がいままででいちばん長かったね。スタジオ作業っていうのもおもしろかったけど、自分の部屋、自分の空間にいた方がもっとうまく表現できる気がするんだ。自分の猫とかテレビとかハーブ・ティー(最近はカフェインを控えるようにしていて、ペパーミント・ティーにハマっている)とか、自分が好きなものに囲まれている方が落ち着くし、インスピレーションもスタジオにいるときより浮かびやすい。スタジオはレコーディングをしなきゃいけないから行く場所だけど、自分の部屋でやると、音楽が生活の一部と感じられるから、そっちの方が好きだ。

スタジオ作業っていうのもおもしろかったけど、自分の部屋、自分の空間にいた方がもっとうまく表現できる気がするんだ。自分の猫とかテレビとかハーブ・ティーとか、自分が好きなものに囲まれている方が落ち着くし。(ルイス)

クリアなプロダクションを得たことで、今作はドラミングがものすごく生きているように思います。〈R&S〉というテクノの名門が、あなたがたやエジプシャン・ヒップホップのようなバンド・アンサンブルを重要視するのはなぜだと思いますか?

アレックス:たぶん、ちょうどその頃、いままで中心的だった音楽とは違う、新しいスタイルの音楽を探していたんだと思うよ。僕たちは当時はバンドっていうより、3人集まったプロダクションとして音楽を作っていた感じだったんだ。テクノよりチルアウト要素が強い音楽も扱ってみたいと思っていたんだろうね。

実際に、2ステップや90年代のUKガラージ、R&Bのマナー、またポスト・ダブステップやポスト・チルウェイヴ的なムードをバンド編成でやってしまうところはフォンデルパークのとてもユニークなところでもあると思います。あなたがた自身ではこのフォーマットで活動することについてどのような思いがありますか?

アレックス:ドラムマシンでビートを数時間流しっぱなしにして3人でジャミングしながら音楽をつくり上げるのはすごく気持ちのいいことだよ。それぞれの音楽を各自の趣味で作ることもあるけど、3人で集まるときの音楽スタイルとはぜんぜん違うんだよな。3人で集まらないとフォンデルパークのような音楽、チルアウトでエレクトロ・ギターっぽい音楽は作れないんだ。

[[SplitPage]]

5年ぐらい前に『ザ・ワールド・オブ・アーサー・ラッセル』を聴いてハマったんだ。自伝も読んだし、フィリップ・グラスや〈ザ・キッチン〉にも興味を持った。南ロンドンの仲間たちと同じようなコミュニティを作りたいと思って。(ルイス)

E王
Vondelpark
Seabed

Amazon iTunes

HAPPAはどのように知ったのですか? リミックスを依頼した経緯を教えてください。

ルイス:彼がフォー・テットの曲をリミックスしたのを聴いてコイツすごいなって思ったのが最初かな。インダストリアルな感じがいいなと思ったんだ。まだあんな若さなのにすごいよな。彼なら"ドラキュラ"をいい感じにハードにリミックスしくれそうだと思ってアプローチしたんだ。もともとダークな要素が強いトラックだけど、さらにダークなエッジを効かせてくれた。

"カリフォルニア・アナログ・ドリーム"はヴァージョンを変えて収録されていますが、これもやはり非常にサウンドに磨きがかかっています。逆に、元のヴァージョンから失われたものがあると思いますか?

マット:失われたもの、と考えたことはないよ。昔レコーディングした音楽は当時のフィーリングのまま残してもいいと思うけど、あの頃といまでは僕達の状況や心境がまったく違う。その変化を表すためにアレンジしてみたくなったんだ。僕はどっちも好きだな。感じはまったく違うけど、どっちもいいと思うな。

犬や海のフォトグラフにくらべて、今作のジャケットは抽象度が上がったように思います。それはテーマとするものやフィーリングの変化と関係がありますか?


アレックス:知り合いのふたりのデザイナーにやってもらったんだ。写真にイラストを混ぜ込んだら水中に漂うカモメのような感じになって、ちょっとマンガっぽいでしょ? タイトルも『シーベッド』だし、ここでもやっぱり「アンダーウォーター」がキーワードだよね。

アーサー・ラッセルを聴きはじめたのはいつごろですか? ここ数年ちょっとした再評価の機運があったと思いますが、彼についてはどう思いますか?

ルイス:5年ぐらい前に『ザ・ワールド・オブ・アーサー・ラッセル』を聴いてハマったんだ。彼の自伝も読んだし、フィリップ・グラスや〈ザ・キッチン〉も70年代のニューヨークの様子をもっと知るうちに興味を持ったんだ。南ロンドンの仲間たちと同じようなコミュニティを作りたいと思って、ミュージシャンやヴィジュアル・アーティストとつながるためにイヴェントを企画しだしたんだ。友人同士で〈スライム・ミュージック〉のウィル・アーチャーやバリオン(Bullion)とか、ヴィジュアル・アーティストのハンナ・ペリーとか、いっしょにレコード回したりパーティできる仲間たちとつながって、コラボや作品制作につながるようなコミュニティをはじめたのも、アーサー・ラッセルに感化されたからなんだ。

今回のアルバムは「水中を横泳ぎするような音楽(Underwater sideways music)」って自分たちは呼んでいる(笑)。(アレックス)

2009年当時、ウォッシュト・アウトやトロ・イ・モワ、あるいはよりギターや生音でのアプローチがあるビーチ・ハウスなどをどのように聴いていましたか?

アレックス:ああ、あの頃は彼らの大ファンだったよ。影響もたしかにあったと思う。トロ・イ・モワの新作もすごく好きだよ。LAの太陽とビーチを連想させる音楽に惹かれるんだろうね。こっちはあまり太陽に恵まれないから(笑)。

あなたがたの音楽は美しくポジティヴな逃避先をわれわれに与えてくれますが、実際にベッドルーム・ミュージックやドリーム・ポップというふうに呼ばれることはどう感じますか?

アレックス:たしかにそうだと思うよ。今回のアルバムは「水中を横泳ぎするような音楽(Underwater sideways music)」って自分たちは呼んでいる(笑)。ジャケット・デザインにも表現されているけど、水中をゆっくり漂うような、そんなフィーリングのチルアウトでエレクトロ・ギターっぽい音楽だと思う。

あなたがたはどこに生まれて育ったのですか? 地元に活発な音楽シーンはありましたか? また、あなたがたの音楽活動はそうしたシーンと深く関係するものでしたか?

ルイス:僕たちはロンドン南部育ちで、12歳頃からいっしょに音楽を作ってきた。学校もいっしょだったし、長い付き合いなんだよ。家のガレージをスタジオに仕立ててジャムするのが10代のエネルギー発散方法だったんだ。周りの同級生はスケボーの方にハマっていたけどね。3,4年前にロンドンに移ってからミュージシャンやアーティスト達とのつながりがいっきに増えて、いまはすごくいいコミュニティに入っているよ。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの新譜がリリースされて、UKでもかなりの話題になっていますが、あなたがたの世代にとって、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやこの新作はどのように受けとめられているのでしょう? またシューゲイザーの持つサイケデリアやメンタリティは、あなたがたの音楽とも共鳴するところがあるように思いますが、どうでしょう?


アレックス:ああ、MVBももっと若いころ聴いていたし、ああいう音楽は大好きだ。来週MVBのショーに行くのが楽しみだよ。MBVの最近出たアルバムもすごく気に入っているしね。前はマイ・ブラッディ・バレンタイン、ジーザス・アンド・メリー・チェインやジョイ・ディヴィジョンのようなギター・ミュージックをよく聴いていたけど、最近はR&Bとかもよく聴いている。あの頃はR&Bとかは自分たちと接点が感じられない音楽だったかもしれないけど、いまではMVBなんかより自分たちがやっていることとの接点が感じられるようになったんだ。

Drexciya - ele-king

 最後の嵐がこの地上から去って10年。奴隷船から落とされた母親たちの子孫、ドレクシア。この不気味な音楽はいまもなお、海底で鳴り響き、地上への抗戦を続けている。
 オランダの〈Clone Classic Cuts〉からリリースされた、ドレクシアのベスト盤「ジャーニー・オブ・ザ・ディープ・シー・ドウェラー(深海居住人の旅)」シリーズ3部作が、去る1月に完結した。
 第1弾『Journey Of The Deep Sea Dweller I』がリリースされたのが2011年、翌2012年に第2弾、そして2013年で第3弾。当初は、選ばれた曲が年代別に並び3枚に分けられるのかと勝手に思っていた。しかし、この3部作では、また新しいドレクシアのファンタジーを見せた。

 第1弾『Journey Of The Deep Sea Dweller I』は、とにかく不吉だった。それはあまりにも、暗く、怒気に満ちた音の集合体だった。我々が抱いている「ドレクシア」のイメージに近い選曲となっている。不朽の名曲"Wave jumper"や"Aquarazorda"(1995「Aquatic Invasion」収録)、"Beyond theAbyss"(1993「DREXCIYA2:Babble Metropolis」収録)では乾ききった稲光に打たれた。歌モノ"Take your mind"(1994年「DREXCIYA4:The Unknown Aquazone-Doble Aquapak」)も選曲されているが、ポップとは真逆な音がそこにある。
 
 第2弾『Journey Of The Deep Sea Dweller II 』には、デトロイト・サブマージの実店舗でしか購入できなかった、(オークションで数万円で取引されている)「SomeWhere in Detroi」から"Hi-tide"が収録されている。ほかに、低音を地の底から感じるような"Anti Vapour Waves"(1993「DREXCIYA3: Molecular Enhancement」)、ファンキーなトライバル"AquaJujidsu"(1994「DREXCIYA4:The Unknown Aquazone-Doble Aquapak」)、そして、コンピレーション・アルバム『True People:The Detroit Techno Album』でしか聴けなかった"DaveyJones Locker"も収録されている。

 第3弾『Journey Of The Deep Sea Dweller III』は、1992~1997年の〈UR〉〈Submerge〉〈Shock wave Records〉からリリースしたものを中心に選曲されている。「DREXCIYA3: Molecular Enhancement」収録の、傑作"Intensified Magnetron"、殺伐としたベースの上に海面を漂うような女性ヴォーカルが入った"Flying Fish"、"The Countdown Has Begun"(「Aquatic Invasion」収録)は、気味の悪いボコーダーの声が不安を助長させる。"Vanpire Island"はいまにも暗闇のなかからベラ・ルゴシが不敵な笑みを浮かべて現れそうだ。未発表曲の"Unknown Journey IV"は駆け抜けるリズムにファンファーレのようなメロディが絡む。あたかも、希望に満ちた世界の幕開けのように。

 ジェームス・スティンソンは、亡くなる前のインタヴューで、「たとえ自分が死んだとしても、俺が作ったたくさんの音楽は残るのさ。未発表曲もあるんだ!」と言っている。その通り、3部作のすべてに未発表曲が入っている。こうやって、リスペクトがある人たちの手によって新しいドレクシアを聴けることは、本当に素晴らしいことだ。
 ドレクシアのテーマは海──水はもっともこの地球上でパワフルな物質だとドレクシアは語っている。さまざまな特性があり、どんな形にもなり、どんな質感にもなる。生物の源、人類を作り出すスープ──。

 〈WARP〉からのエレクトロイド、〈Rephlex〉からのトランスリュージョン、そして〈WARP〉からのジ・アザー・ピープル・プレイス......などなど彼には他にもいろいろな名義での作品がある。デトロイトから届けられたこの音に身体ごと浸ると、暗闇を手探りで歩いるような、その先に未来があるような、そんな気持ちにさせられる。彼らの音がクラフトワークやサイボトロンによって形成されている──ということも強く感じられる。

 昨年、ジェラルド・ドナルドはDJスティングレーと一緒にNRSB-11という名義でリリースをしている。1枚リリースしただけで、その後の動きは見えないが、この作品によって、また今後のデトロイト・エレクトロへの期待が高まってしまった。日本では(かなり)アンダーグラウンドな人気だけれど、ヨーロッパでは当時から広く評価されている。エイフェックスツインがドレクシアをリスペクトしているのは有名な話だが、最近で言えば、スリープアーカイブやマーティン、Fine 〈Kontra-Music〉もフェイヴァリットとしてドレクシアをあげている。アンディ・ストットの音の破片はドレクシアやセオパリッシュをも彷彿とさせ、ミニマルやダブステップなどの現在進行形の音にもドレクシアの成分がちりばめられている。

 リアルタイムで、この音を聞くことができなかった世代には、これが感情のある音で紡がれた最高のメッセージだと思って、この機会に是非聞いてもらいたい。ドレクシアの音はDJユース向きじゃないとよく耳にするが、たしかにこれがかかった途端、フロアには黒い幕が落とされて、すべての幸せな空気を闇に変えてしまう。しかし、これがもっともリアルで、ハードなデトロイト・テクノなのだ。

 オリジナル作品の強烈な個性がいまもなお語り継がれ、それぞれの思いが入り交じるような重圧のなかで、丁寧にリマスタリングをし、リリースしてくれたクローンにも心から感謝したい。

Fla$hBackS - ele-king

REFUGEE MARKETの空気感 文:巻紗葉 a.k.a. KEY

Fla$hBackS
FL$8KS

FL$Nation & Cracks Brothers.Co,Ltd

Amazon iTunes

 わたしがFebb a.k.a. Young Masonの存在を知ったのは、確か2年前に池袋bedで行われたREFUGEE MARKETだった。中は相変わらずの盛況ぶりで人ごみが苦手なわたしは友人とともに、入口の前でおしゃべりをしていた。そのとき、Febbというまだ非常に若いがラップもトラックも作る少年がいるということを教えてもらった。じつはそのときにKID FRESINOの話も聞いていたが、友人は彼を本名の名字で読んでいたため、つい最近までその人物がKID FRESINOであるということを知らなかった。

 日本においては縮小の一途を辿るヒップホップ業界だが、まだ20歳にも満たない少年たちがトラックメイキングやラップをしているという事実が単純に面白かったので、彼らの存在はずっと頭の片隅に残っていた。そして昨年が終わろうとしている頃、FebbがjjjとKID FRESINOとともにFla$hBackSというグループを結成し、『FL$8KS』というアルバムをリリースするということで早速音源を入手した。一聴してなるほど、わたしが彼らの存在をどこでもないREFUGEE MARKETで知ったのはある種の必然であったんだな、と気付いた。ソウルフルなネタ使いをベースにゆったりとした横揺れの"Fla$hBackS"や、ブラックスプロイテーションを想起させるファンキーな"2014"など、そこから感じさせられるのは前述のREFUGEE MARKETの空気感だった。もっと言えば、ISSUGI、Mr.PUG、仙人掌、16FlipからなるMONJUなのだ。もちろん彼らがMONJUの猿真似であるということではなく、Fla$hBackSはDOWN NORTH CAMPのクルーがREFUGEE MARKETという現場を通じて行ってきた良質なヒップホップの根を絶やさない活動から産まれたひとつの成果であるということだ。

 アメリカン・ハードロックを思わせるギター・ソロをユニークな感覚で切り取り、アッパーなブラック・ミュージックに組み替えてしまった"Cowboy"(タイトルも人を舐めているような不敵さがあっていい)などから感じさせるセンスは、彼らがただフレッシュであるだけで注目されているわけではないことの証明だろう。

 ただひとつだけ苦言を述べるのであれば、それはパンチラインの少なさかもしれない。このアルバムを象徴するような力強いワンパンチがあれば、この作品の価値はさらに上がったことだろう。しかしそれも彼らの年齢を考えれば、まだまだ心配するようなことでもない気もするが。本作とISSUGIの大傑作アルバム『EARR』と聴き比べるのも面白いかもしれない。


文:巻紗葉 a.k.a. KEY

»Next 中里 友

[[SplitPage]]

ラップの根源的な快楽へ 文:中里 友

Fla$hBackS
FL$8KS

FL$Nation & Cracks Brothers.Co,Ltd

Amazon iTunes

 ミックステープ『1999』がブレイク・ポイントとなったJoey Bada$$をはじめ、彼が率いるPRO ERAのクルー、Schoolboy QやKendrick Lamarも所属するBlack Hippy、〈Brainfeeder〉と契約を果たし、ミクステ『Indigoism』も好評のThe Underachiever、それにFlatbush Zombies、レイダー・クラン......ジャンル内で多様化が進むなか、いま列記した連中の作る曲は質感としては粗野で生々しく、つんのめった初期衝動的な高揚感がある。それが「90年代的」と評されるのも納得いく話だと思う。こうした90年代をリヴァイヴァルせんとする機運を多くの人が感じているとは思うが、トレンドというよりむしろ、90年代に幼年を過ごした少年たちがロールモデルに選んだのが、若かりし頃のNasであり、2Pacであるかのような、そういった印象を受ける。サウンドをとってみれば、ここ日本でも同様の現象は起きている。

 2月にリリースされたライムスターの最新作『ダーティー・サイエンス』は、DJ JIN曰くジェレマイア・ジェミーのサウンドに影響を受けたという。そこから、80年後期~90年代前半のハードなローファイ・サウンドのトラックに対比して、よりアップデートした「いま」のラップを乗せるというアルバムのコンセプトが生まれたのだが、イリシット・ツボイの貢献により、よりカオティックで荒々しい印象を持たせることに成功している。去年からOMSBやsoakubeatsの作品など、示し合せたようにラフで攻撃的なラップものが続くなか、ようやくのフィジカル・リリースを果たしたFla$hBackSは少し趣きが違っていた。腰を落ち着けたリズムをとりながら、ひたすらクールで散文的にカットアップされたリリック、それに煌びやかなトラック......瑞々しい若さによって彼らは別の道筋で90年代を再解釈、アップデートしてみせた。コンセプチュアルで計算された作品のなか、息せき切ったような早いBPMで、言葉にエモーションを込めるライムスターとは、まるで対照的だった。

 そういえば、「90年代生まれによる90年代再解釈の......」と野田努が評する通り、いつかクラブで会ったとき、Febbは、1994年生まれの彼は90年代の音楽に対する憧憬をはっきりと語ってくれた。TETRAD THE GANG OF FOURのメンバーであるSPERBと共にCrack Brothersなる不定ユニットでも活動する彼は、16歳でGOLD FINGER'S KITCHENのMPC BATTLEの本戦でベスト4へすすむトラック・センスを持つ。しかし、個人的にはなんといっても、彼のラップを素晴らしいと思う。Crack Brothersの音源の他、Black SwanコンピやBCDMGでの客演でも彼のラップが聴けるので、興味がある方は是非チェックしてほしい。どっしりと胴を据えながら、B.D.やNIPPSのように、ゴロ合わせのようにはめていくラップ。それはときに連想ゲームのようにイマジネーティヴな単語の連なりであったり、ときには刺激的なパンチラインとしてするりと耳に入ってくる。そうした(勿論痛快でカッコいい)ラップが、ともすれば「ドープ」だとか「玄人好み」という言葉に回収されてしまいそうになってしまうところを、より開かれた音楽としてメロウに、そして時にロマンチックでフレッシュなものにしているのは、Fla$hBackSの音楽性の形成に大きく寄与したjjjのトラックのおかげだろう。声ネタを多用したソウルフルで華やかな上モノ、緩急入れた力強いビートはインスト物として聴いても十分に楽しめるほど。彼の作品集『ggg』はもちろん、個性派ラッパーとしていま注目のあべともなりに提供している楽曲"ヨルナンデス"は、彼の独特のタイム感や野性的な一面をうまく引き出した素晴らしいトラック・ワークだ。そしてFla$hBackS第3の男、KID FRESINOもトラック・メイキングとDJの他に、ラップをはじめたということで(アルバムが早くも4月3日に〈Down North Camp〉からリリース予定)、Fla$hBackS本隊にどんな作用が起きるか、いまから楽しみでしかたない。

 そして、もうひとつ。Fla$hBackSを聴いてヤラれてしまったポイントがある。それは歌詞の合間、もしくはイントロ・アウトロに挿入される相づちや掛け声、シャウトアウトなど、おそらくは彼らのリリック・ノートにも記されていない言葉のカッコよさだ。人によっては拍を取ったり、ラップを入れる前のチューニング感覚に近い。
 もっと言うとそれは、単なる「ノリ」で発せられることが大きいのだけれど、なんといっても、その「ノリ」がとても重要だ。何故なら、自然と発せられたそうした言葉こそが、何より彼らの特別なセンスを表すものでもある。相方がラップしている
 裏で、好きにスピットする言葉が曲に躍動感を吹き込み、新たな情報を加える。決して雑な印象はなく、むしろそれが聴いていて、とても気持ち良いのだ。Febbが時折入れる「A-ha」はとてもチャーミングだし、jjjの名前ひとつとっても、音が楽しい。何を言っているかはさして重要ではなく、彼らが発せざるを得なかった言葉が持つ響きが、ジャストなスパイスとして効いている。

 Down North CampやBlack Smokerの関連諸作等々、歌詞カードを掲載しないアーティストたちに共通しているのは、言葉の持つ意味性に囚われすぎず、音として純粋に楽しんでほしいという気持ちの表れであることは明らかだ。だがそれ以上に、彼らが純粋培養し、大切にしてきた仲間内の独特のノリを感じとってほしいがためなのかもしれない。総じてゆるいBPMであることも、個々の自由なノリを重視すればこそだと思えば、合点がいく。もしかしたら、彼らは90年代なものに回帰しているのではなくて、ラップをすることの、ヒップホップをやることの、根源的な快楽へと立ち返っているのかもしれない。付け加えていうなら、それは遊び心溢れる実験性への道でもあるはずだ。いま、何度かの最盛期を迎えているこの音楽が、また新たなステージに向かっているように感じられてならない。


文:中里 友

D.J.Fulltono (Booty Tune) - ele-king

D.J.Fulltono (Booty Tune)
https://bootytune.com

NEXT PARTY: 4/5 "UNDERMINE" at club METRO (京都)

2013 MARCH JUKE & GHETTOTECH TOP10


1
Traxman / Zone / Fresh Moon Records
https://freshmoon.bandcamp.com/album/freshmoon-presents-808k-v-1
 トラックスマンと聞いて「Footwork On Air」みたいなの期待した人、ごめんなさい。でもすぐに快感に変わるのでそのままお付き合いください。音を分析するまでもなく、ノイズ、キック、スネア。その3つの音しか鳴ってない。リズムにほんのり施されたリバーブがアシッドハウス全盛期のTRAXレコーズを髣髴とさせる。間違いなくキラーチューン。早くプレイしたい!

2
DJ Taye / Just Coolin' / DJ Taye
https://djtaye.bandcamp.com/album/just-coolin
 シカゴの若手ホープDJ Tayeのフルアルバム。16ビートと3連符の交差の中で起こる体感スピードのコントロールが絶妙。僕のお気に入りは12曲目「Roll Up」。ロール・アップって言葉だけで色々表現してます。ボイスサンプリングがクドいなんてもう誰にも言わせない。CDもリリースされたとのことなので日本のショップにも並ぶことを期待。レーベル名は「DJ Taye」。弱冠18歳の若者が1人で全部こなす。1人1レーベル時代の到来です。

3
Hayato6go / Promised Land EP / Booty Tune
https://bootytune.bandcamp.com/album/promised-land-ep
 自分のレーベルでスミマセン。でも素晴らしいんですこのEP。静岡の隼人6号が手掛ける、ジュークとジャングルの融合。筋金入りのジャングリストの彼だからできるハイブリッドな世界観を、今後拡大しえるヨーロッパのジュークシーンにぶち込みたいと思っています。

4
K. Locke / 数十曲 / Promo
 シカゴから凄いプロモが送られて来た。GETO DJ'Zというクルーに所属する若手K. Lockeは、先輩のTraxmanから学んだ打ち込みスキルとDJ Spinnのようなスムースなネタ使い感を兼ね揃えたトラックメイカー。今後注目を浴びること間違いなし。間もなくお披露目できると思いますので、名前だけでも覚えといてください。

5
Boogie Mann / Yokohama Midnight Footworkin' EP / Shinkaron
https://shinkaron.bandcamp.com/album/yokohama-midnight-footworkin-ep
 横浜のBoogie Mannことタカミチ・ヒロイは、神奈川の若いジュークトラックメイカーが集うShinkaronというレーベルに所属。昨年末にファーストEPをリリース。中でも「Take Me Back」で見せるスネアとネタの畳み掛けるビートが最高。ファーストにしてこのクオリティー。マジかよ。期待を込めてランクイン。

6
DJ Avery76 / In Side The Tribe EP / Booty Tune
https://bootytune.bandcamp.com/album/inside-the-tribe-ep
 シカゴのTRIBEというクルーは、ユーチューブを通じていち早くフットワークダンスを日本のファンに教えてくれました。その熱意&ボスのラシャド・ハリスの猛烈な押しに負けて、クルーのトラックメイカー筆頭であるAvery76のEPを我々のBooty Tuneからリリースしました。彼のトラック全般に漂うミッドなテーストは、ジューク=速くて忙しい音楽、という先入観がある人にこそ聴いて欲しい音です。

7
Typhonic / Call Of The Booty EP / Booty Call
https://www.junodownload.com/products/
typhonic-call-of-the-booty/2144982-02/

 シカゴ・ジュークだけじゃなくもちろんデトロイト・ジット(ゲットーテック)もチェックしてますよ。オーストラリアを代表するゲットーテックトラックメイカーTyphonicがフランスのBooty Callからリリース。オススメは4曲目「Early」。彼のお得意デトロイトテーストなシンセリフで疾走するゲットーテック。本場デトロイトではリリースが止まっちゃってるけど、ゲットーテックは死なない。

8
CRZKNY / Lost/Sadnes / Dubliminal Bounce
https://dubliminalbounce.com/?p=464
 先日、ファーストアルバムとリリースパーティー「Shin-Juke」にて鮮烈なデビューを飾ったクレイジーケニー。そのアルバムの16曲目に収録されたこの曲。凶悪なベースサウンドから湧き出た甘いネタ使いがめちゃくちゃ好きなんだよねー。ヤンキーに優しくされてキュンとする女の子ってこういう気持ちなのかなあ。あー書いてたらむかついてきた。

9
Jalen / Digital Juke EP / Juke Underground
https://jukeunderground.bandcamp.com/album/digital-juke-ep
 シカゴのトラックメイカーは若い。彼は17歳。とにかく元気なジューク満載。でもネタ使いがやたらおっさんっぽいんだよね。たまらなくツボ。4曲目「Hero」で爆笑しました。でタイトルが「デジタルジューク」テキトー。でもこれこそがシカゴ。彼のトラックは最近、高確率でプレイしてます。なんせ分かりやすい。

10
PUNPEE / Bad habit Beat by Satanicpornocultshop / 160OR80
https://160or80.bandcamp.com/
 ラップ無しのサタポのオリジナルトラック「Battle Creek Brawl」が先にリリースされてて、その曲が大好きでずっと聴いてましたが、アルバム「160OR80」ではその曲にPUNPEEのラップがモダンなネタに隠れた、ストップ&ゴーを繰り返すフットワークビートを確実に捕らえることで、未知なるグルーヴを放っています。PUNPEE氏に圧巻です。

Chart - JET SET 2013.03.18 - ele-king

Shop Chart


1

Rhye - Woman (Republic)
話題沸騰の西海岸シンセR&bデュオによるデビュー・アルバム!

2

My Bloody Valentine - M B V (My Bloody Valentine)
アイルランドが誇る孤高のシューゲイザー・バンド。『Loveless』以来となる3枚目のフル・アルバム!

3

Albinos - Ritual House Vol.1 (Antinote)
Albinosなるミステリアス・プロデューサー手掛けるローファイ・トライバル・トラックス全4楽曲を収録した注目作!

4

Badbadnotgood - Flashing Lights (Innovative Leisure)
Tyler, The Creatorとの共演でも注目されるトロントのオルタナティヴ・ジャズ・トリオ。昨年フリーdl公開されていたセカンド・アルバムからの2曲収録した重量盤12インチ!!

5

Xx - Pearson Sound / John Talabot & Pional Remixes (Young Turks)
John Talabot & Pional Blinded、Pearson Soundによるリミックスをカップリングした限定盤!!

6

Rocketnumbernine And Four Tet - Roseland (Text)
主宰Four Tetに見出されたレフトフィールド・ミニマル・デュオRocketnumbernineと主宰によるジャズっ気たっぷりの濃厚コラボ2トラックスが限定リリース!

7

Prins Thomas - Italia Uno Ep (Hell Yeah!)
人気シリーズ"Balearic Gabba"でお馴染みのイタリア"Hell Yeah!"にPrins Thomasが参戦!

8

Lions - This Generation (Stones Throw)
Breakestra、Orgon、Connie Price & The Kay Stonesなどのメンバーが集った7人組ルーツ・レゲエ~ダブ~ファンク・ジャム・バンドLions。Stones Throwから豪華Boxセットが登場です!

9

William Adamson - Under An East Coast Moon - Discomix Versions (Brownswood)
Cd/Dlでリリース済みのアルバム『Under An East Coast Moon』収録曲のヴァージョン違い4曲と未収録1曲を収めた12インチ。オリジナル全曲のDlコード付き!!

10

Boe & Zak - Rudy Ep (Editainment)
数々の良作を送り出す名門として抜群の知名度を誇る"Editainment"から登場となる新たなる刺客、Boe & Zakなるユニットによるフロア・キラー作品!
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727