「K A R Y Y N」と一致するもの

月刊ウォンブ! - ele-king

 ステージをリングに見立てる趣向は、間違いなく成功していると思った。フロアの中央付近にほとんどやぐらのように構えられたステージには、ボクシングのリングを模して柱が立ち、ロープが張られている。360°というわけにはいかなかったが、ステージの後ろの方にまわりこむこともできる。わたしにはそれが新たな祭りを呼び込むための装置であるように見えた。
 ともすれば発信側の一方通行にもなりかねないライヴ空間から、ショウとしてのダイナミズムを最大限に引き出したい......音響を台無しにしてまでこのコンセプトを優先したこと(いや、ほんとにそういう意図であるのかどうかわからないが)には、ひとまず意味があったと言えるだろう。演奏者はオーディエンスを食う、オーディエンスもヘタなものを聴かされたら承知しない。そしてジャンルを異にする演奏者同士もリングの上では残酷なまでにひとしく比べられるライヴァルだ。そんな3方向の本来的な緊張関係をコミカルに可視化することで、会場には独特の求心力が生まれていたように思う。ステージだけに集中するのではなく、リングをふくめた会場全体へ視野が広がっていくようなところがあって、そのぶんワクワク感が伝播しやすく、増幅されやすい。ビールを手にスポーツ観戦をするようなほどよいリラックス感もあった。第1回めということだが、どういう意図でこうしたかたちを目指したのか、主催側の前口上を聞き逃してしまったのが残念である。(付記:実際に前口上をされていたのは名司会の長州ちから氏。すみません!)


ミツメ

 さて、渋谷で駅からTSUTAYA以上の距離を歩くのが苦手なわたしは、WOMBまでの長い道すがらをエア同行者を作ってなぐさみとしたので、非実在の同行者・城戸さん(憧れの先輩設定)との会話にも都度ふれることをお許しいただきたい。

城戸「いったいなんて場所に立ってるんだ、WOMBとやらは。」
わたし「ふふふ...」

 こんな要領である。ホテル街の細い路地を急ぐ影が、数メートル間隔でちらほら続いていた。いずれライヴハウスもエキナカになる時代が来るかもしれないが、ライヴ空間へ接続するまでの「歩く」という導入部は、かったるいながらも確実に重要な役割を果たしていると感じる。

 さて、今回のイヴェントに集められた3つのアーティストのいずれもにヴァンパイア・ウィークエンドやアニマル・コレクティヴの面影を認めたので、そのことも先に書いておきたい。ユーフォリックなトロピカル・サイケとして、そのなまあたたかさをほどよく脱臼させるアフロ・ポップとして、彼らの面影はそれぞれの演奏のふとしたところに顔をのぞかせた。ある意味では、00年代の音楽をリアルに消化した世代が、その次に何をプレゼンテーションできるのかということを観察できる機会だったのかもしれない。

わたし「ですよね? 城戸さん。」
城戸「ああ。ミツメはすばらしいな。」

 ミツメはすばらしい。残念な音響のことは割り引くとして、完全に世界標準の10’sインディが鳴っていた。やりたいことは明確で、アニマル・コレクティヴやヴァンパイア・ウィークエンドなど00年代USにおけるもっとも大きな成果のひとつが、のちの世界に何をもたらしたのかということをまざまざと見せつけられる。

 余談だが、00年代のはじめには、もう海外の音楽シーンが、たとえばグランジやブリット・ポップ以上の規模で日本に影響を及ぼすことはない――それは音楽のみにとどまらない、社会構造や文化全般の問題も含むわけだが――のではないか、両者は文化として溶け合うことなく、翻訳されないまま個別に存在していくのではないか、などと思ったものだったけれど、そうでもないようだ。ブルックリンや西海岸のアヴァン・フォーク勢が残したもの、それがひるがえってチルウェイヴへと接続していったもの、あるいはカレッジ・チャートの明るく軽やかな知性、等々のディテールをしなやかな筋肉に変え、彼らは日本の土を蹴って走っている。じつにシャイな印象で、ふだんのライヴはわからないが、まるでスタジオでのリハをのぞき見しているような、客のいないところで演奏しているかのような、インティメットな空気感がある。
 それもよい。ミツメの音楽には誰かの耳を無理やり開かせようというところがない。北風と太陽で、太陽が自然に人の上着を脱がせるように、彼らの音はただ遠くの方で誘っているだけだ。3曲めくらいだったか、トム・トム・クラブのような小粋なファンク・ナンバーがはじまったときに、人々は控えめに、心地よさげに、身体を揺さぶりはじめた。上着を脱ぐ――われわれが完全にこのイヴェントへとスイッチした瞬間である。

城戸「さあ、われわれも乾杯だ。」
わたし「ハイ、城戸さん。」

 おいしく乾杯しました。城戸さんは彼らのトレーナーやカーディガンといった服装も気になったようだ。「イェール時代を思い出すな」と言って目を細めていたけれど、たしかに学生っぽい、生真面目さと自由さがないまぜになったようなたたずまいにも、まぶしいようなストーリー性を感じる。彼らはそれをファッションとしてではなく、ユニクロのように着ているのかもしれず、それもまた好ましい。


アルフレッド・ビーチ・サンダル

 アルフレッド・ビーチサンダルはさすがの一言。バンドでのセットの方がよいという話も聞いたが、ギター1本でしっかりフロアの心臓をつかんでいた。声も比類ないが、彼にとっての翼はその文学性だろう。むろん、名義からしてあまりにびりびりくるセンスを放っているわけで、はじめてその名を聞いたときは幻の歌人フラワーしげるの「俺は存在しないお前の弟だ」を思い出し、「お前」がアルフレッド・ビーチサンダルであってくれればいいと思った。「ついに夏がきた」「僕はビーチサンダルを見つけなければならない」(“ファイナリー・サマー・ハズ・カム”)と歌い出して典雅に完璧に挨拶をきめ、ボトルシップで行くような奇妙でサイケデリックな物語の小世界を開いていく。ちょっとしたインスタレーションのようなイヴェントも行うようだが、こうした場所でシンプルに魅力を伝えられるアーティストでもあるのだなと感服した。ギターのことはわからないが、実に神経に心地よい鳴りで、ルート音が電子音のように響いている。テクニックが言葉と世界観をひかえめに支えている。

城戸「音響はつくづく惜しいのだがな。」
わたし「それは仕方がないですね。」

 われわれは素敵に酔いながら、フリー・マーケットのスペースへと向かった。上のほうの数階はそれぞれ喫煙スペースやフリマを含む物販スペースなどになっていて、ぶらぶらと回遊していられる。

わたし「きゃっ、城戸さんだめです。パンツです。」
城戸「なっ......!?」

 パンツを売っていた。


シャムキャッツ

 シャムキャッツは本当に輝いている。そして華があった。きっと、アイドルにすっかりお鉢を奪われたテレビの音楽番組のなかでさえ輝けるだろう。いまロック・バンドというフォーム自体にかつてほどの存在感やエネルギーは感じづらい。しかしすくなくとも「彼らは」生き生きと、貪欲に生きていて、生きてやるぞという腹の底のエネルギーがバンド・サウンドにリアリティを与えているように思われる。そして同様のバンドが地下には存在し、夜な夜な少なからぬ人々を楽しませているということまでをしのばせる。
 もちろん、生き生きと生きることは当世風の賢さから導き出された彼らの批評性そのものでもある。無邪気な「生きよう!」ではない。「(おもしろくない世の中をあえておもしろく)生きよう!」なのである(https://www.ele-king.net/interviews/002701/)。そうした複雑な屈折と意志を含むかれらの全力の遊びに、われわれは乗るのか、乗らないのか。
 時折ダンゴのようにもつれるアンサンブルの強烈な愛嬌、ペイヴメントのヨレヨレ・ポップからストーンズへと突き抜けるような猥雑さと強さ、クラスでまぶしすぎる人たちの持つ圧倒的な輝き。彼らは人を乗せ人の心を持っていくことにあまりにも慣れている。ミツメは音楽自体の持つグルーヴで人を動かそうとしていたが、シャムキャッツはその無敵感あふれるバンド・ケミストリーによって人を動かすというところだろうか(もちろんベースとドラムの功績を称えないわけにはいかない。ファンキーな曲になると突如として彼らの顔と身体はキレを増す)。ラス前をスペーシーなインプロで盛り上げ、“なんだかやれそう”などのアンセムへとつなげていくステージングも実に堂に入っている。それに、『ゴースト・ワールド』についての長めのMCもよかった。たしかにイーニドやレベッカが日本人ならこの会場にいただろうし、シャムキャッツを10代の傲慢さで冷笑したかもしれない。しかしその10代の傲慢さは、シャムキャッツの音楽に巻き込まれずにはいられないものでもあるのだ。

わたし「城戸さんはどう思います......?」

 ライヴの余韻のなかで気がつけば、わたしはひとりである。いっしょに帰りたかったのに、いつもつれない城戸さんは今日も通常運転であった。

DOWN NORTH CAMP / REFUGEE MARKET in シモキタ - ele-king

 アーバンとジャンクのいけない好配合、多色迷彩のヴァリエーションで飾るDOWN NORTH CAMPがシモキタに2daysポップアップ出店したREFUGEE MARKET。
 当日の写真とDJのプレイリストのみで構成したイヴェント・レポートをどうぞ。まずは写真を見ながら下にあるプレイリストを楽しんで下さい。

photo by Keita Sakai , and ele-king

photo by DNC(SORA/DJ49/CENJU/KATEETO/K.K.K.K.K./YK_VENOM/CHANGYUU/YAHIKO/and... 順不同)

Refugee market DJ playlist

BUDAMUNK
Redman "Funkorama (Double Green Remix) featuring Erick Sermon"



CHANGYUU
Jackie Mittoo / Ghetto Organ



febb
Barbara Mason/ You did not stay last night



Gatcha
RLP - Kler



GONZ
Jay-Z /Girls, Girls, Girls



K.K.K.K.K.
Dennis Brown / Here I Come



KID FRESINO
Ruc Da Jackel & Challace / I'm good



PUNPEE
Snow world×Guess who's back(mush up)/Gapper×Scarface


MASS-HOLE
L.V./Gangsta's Boogie (Barr 9 Version)



WOLF24
John Holt / Lonely Girl



Yodel
2chainz / I'm different (mighty mi&slugworth trap mix)



49
DOWN NORTH CAMP / ooamp


total coordinate by SORA,CHANGYUU (DNC)
DOGEAR RECORDS https://www.dogearrecordsxxxxxxxx.com
booking downnorthcamp@gmail.com

二木信、日本半縦断トーク・ツアー! - ele-king

 さて、みなさんはもうお読みになられましたでしょうか? 2013年をファンキーに生きる手引書『しくじるなよ、ルーディ』を刊行した二木信があなたの街へお邪魔します! お迎えするゲストも豪華! 動く二木信を見て癒されちゃってください。

 00年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行したばかりのファンキー・ライター二木信のトークイベントが、渋谷、京都、大阪、新宿、福岡で連続開催!!!

 ヒップホップのみならずさまざまなアーティストとのコラボが印象的なラッパー環ROY、大阪ディープサウス秘史を圧倒的密度で描いた著書『通天閣 新・日本資本主義発達史』がサントリー学芸賞を受賞した社会学者・酒井隆史などなど、土地毎に異なる対談者を迎えてヒップホップに始まる音楽論は勿論、風土風俗について、アングラ文化についての筋書きの無いクロス・トークに是非とも注目いただきたい!!!

■2月2日(土)東京 タワーレコード渋谷店

1/18に発売された『しくじるなよ、ルーディ』の発売を記念して、タワーレコード渋谷店4Fにてインストアイベントを開催!
著者である二木信の対談相手はなんと環ROYに決定!これは見逃せない!

出演: 二木信、環ROY
日時: 2013年2月2日(土) 18:00~
会場: タワーレコード渋谷店4F
参加方法: 観覧フリー

《ご注意》
※ご予約のお客様には優先的にサイン&特典引換券を確保し、商品購入時に引換券を差し上げます。
※アーティストの都合により、内容等の変更・イベント中止となる場合がございますので予めご了承ください。

タワーレコード・イベントインフォ:https://tower.jp/store/event/2013/01/003046
環ROY HP:https://www.tamakiroy.com/
Pヴァイン HP : https://p-vine.jp/artists/shin-futatsugi


■2月10日(日)京都 100000t アローントコ

『しくじるなよ、ルーディ』 刊行記念 二木信トークショー!
「日本のラップのことば――その多様性とファンクネス」

 類い稀なるバイタリティで、日本のヒップホップの人と現場と背景を取材し続けてきた音楽ライター、二木信氏の初の単著『しくじるなよ、ルーディ』が刊行されました。それを記念して開催するこのトークショーでは、「日本のラップにおけるファンクネスとはなにか?」という問いからスタートし、芸能・民俗・大衆文化・都市空間といった論点も含め、現在の「ことば」の可能性について思考する切り口について、二木氏自身に自由に語っていただこうと思います。ヒップホップ・リスナーに限らず、「ことば」に何かを見出そうとしている方々のご来場を、心よりお待ちしております

トークゲスト:二木 信(Shin Futatsugi|音楽ライター)
聞き手:村上 潔(Kiyoshi Murakami|現代女性思想・運動史研究)
日時:2013年2月10日(日曜)19:00~21:00〔18:45開場〕
会場:100000t アローントコ(京都市中京区寺町御池上ル 上本能寺前町485 モーリスビル2F)
https://100000t.blog24.fc2.com/
参加方法:入場料:500円

*事前申込不要(入場者が定員に達した場合、ご入場をお断りする場合があります。
あらかじめご了承ください。)
*終了後、会場近くで、ゲストを交えた簡単な交流会を行なう予定です。

●村上 潔(Kiyoshi Murakami)
1976年、横浜市生まれ。2002年~2006年まで、『remix』誌ほかで音楽/映画ライターとして活動。現代女性思想・運動史研究。立命館大学大学院非常勤講師。著書に『主婦と労働のもつれ――その争点と運動』(洛北出版)など。


■2月11日(祝・月)大阪 スタンダードブックストア心斎橋店

『しくじるなよ、ルーディ』刊行記念トークイベント

 大阪ディープサウス秘史を圧倒的密度で描いた『通天閣 新・日本資本主義発達史』(青土社)で第34回サントリー学芸賞を受賞したヒップホップ第一世代の気鋭の社会学者・酒井隆史とのスペシャル・トークショー開催!! 街にうごめく人びとの逞しく、猥雑な生き様に魅了されてきた2人が、"People Make The World Go Round"をテーマに、街と人と音楽について縦横無尽に語りあう!!

日時:2013年2月11日(月)※祝日 開場11:15 開演12:00
出演:二木信、酒井隆史
開場:スタンダードブックストア心斎橋店 https://www.standardbookstore.com
参加方法:入場料1,000円(ワンドリンク付き)

※当日のご入場はチケット番号順です。
※チケット番号は予約順ではなく、ご入金順になります。
※チケット引換が遅くなりますと立ち見になる場合がございます。
※ご予約数によって当日券の発売を中止する場合がございます。

【予約方法】
お電話(06-6484-2239)
ご来店(スタンダードブックストア心斎橋BFレジカウンターへお越しください)
メール ご対応可能です、詳細はこちらまで
https://www.standardbookstore.com/archives/66094747.html


★2月23日(土)東京・新宿★

詳細、近日アップ!!


★2月24日(日)福岡★

詳細 近日アップ!!

 2012年にツイッターで話題になった音楽ジャンル(orタグ)はなんだろう? シーパンク#Seapunk/ヴェイパーウェイヴ#Vaporwave/ジューク#Juke/ウィッチハウス#Witchhouse/ニューエイジ#Newage/ゴルジェ#Gorgeとか。
 ゴルジェ? そんな音楽あったの? グーグルで「gorge」と検索してみる。「インド~ネパールの山岳地帯のクラブシーンで生まれた新ジャンルの音楽「Gorge」について。」というツイートのまとめページが出てくる。まとめられているツイートもほとんど一部の人たちだけが扇動しているだけ。アーティストのインタヴュー記事など、情報はすべて日本語だ。
 ならば発祥の地のアーティストはどういうひとたちがいるのかと思い、ためしに「india gorge music」で検索してみる。トップに出てくるのは―――ジョージ・ハリスン(George Harrison)のウィキペディアだ。

 そこで僕は、トラックスマンの熱にうなされながら、日本国内で行われた「Gorgeフェスティバル・イヴェント」であるらしい「Gorge I/O Tokyo 2012」(10月27日)へ潜入した。桜台で。桜台? 「インド~ネパール」の音楽のイヴェントが桜台なの? ラーメン二郎を食べてから向かったまるで工場や用水路の跡地のような会場(POOL)には、インド人もネパール人もいない。ただそこにあるのは、DJマッチポンプによるSE、インダストリアルなノイズやテクノやアンビエントのライヴ、そして「GORGE was Fake」というTシャツを着た愉快な日本人たち、そしてあたたかそうな山飯......。

 そんな、そんな日本解釈の「ゴルジェ」を標榜するアーティストたちが、なぜかシカゴ発祥の日本国内のジュークのアーティストたちと抗争を起こしており、その決着をイヴェントとして見世物にするようだ。

 ことの経緯はジョージ・ジュークムラややカムキ・マヒトなるアーティストたちのバンドキャンプを参照してほしい。

 イヴェント詳細は以下。もちろん僕も向かおうと思う。パブリック娘。の重要会議がちゃんと終わったらね!

遂に日本で全面対決へ!? 「2/2 Juke VS Gorge」 - GORGE.IN.CLIPS:
https://gorge-in.tumblr.com/post/41506798782/2-2-juke-vs-gorge


果たしてこの全面抗争が和解の方向に向かうのか、さらなる確執へと発展していくのか。その結論が出るのが2/2である。

さらにサウンド対決に加えて、この抗争をおさめるべく出演者によるトークセッションも予定されているという。

全世界が注目するこのイヴェントに、審判として来場できるのは日本在住の方の僥倖であるはずだ。

そして場外乱闘として、広島のCRZKNYが提唱されたとされていた、GogeとJukeの鬼っ子的ジャンル、"Gorjuke"について、その起源めぐる争いが勃発している模様だ。

詳細は各トラックのリリースノートを呼んで欲しい。

広島で行われる[GHETTOMANNERS vol.3] とともに、2/2は日本のゲットーシーンにおいて何かが変わる音を聴く決定的な日になることは約束されている。その日を安穏として過ごすか、その現場に向かうかは、あなたの判断に任せられている。

『JUKEvsGORGE』
https://www.super-deluxe.com/room/3338/

六本木SUPER DELUXE
開場 18:00 / 開演 18:00
料金 予約 2000円 / 当日 2500円 (ドリンク別)

■Juke Side
D.J.Kuroki Kouichi [DJ]
FRUITY[DJ]
Guchon [Live]
Boogie Mann [Live]

■Gorge Side
HiBiKi MaMeShiBa[DJ]
hanali [Live]
kampingcar [Live]
K2 (uccelli + Gorge Clooney) [Live]

■Talk Session
「The mystery of juke&gorge」
Kuroki Kouichi × hanali × uccelli × fruity × ?



You'll Never Get To Heaven - ele-king

 Head of Chezzetcook......という言葉をそのままコピペして画像検索する。〈ディヴォース〉すなわち「離婚/別離」を意味する言葉を名前としたレーベルは、カナダと言ってもずっと東、出島のように北米大陸から大西洋に突き出ているノヴァ・スコアシア州の海外沿いの小さな村、シェゼットコックにある。ダーシーは海でサーフィンするかたわら1993年からレーベルを運営しているらしい。昨年はマイ・キャット・イズ・アン・エイリアンのようなイタリアの電子音楽デュオのアルバムや、母国カナダのディーオンのカセットも出している。基本的にはエクスペリメンタルな方向性を好んでいる。昨年末にリリースしたユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴンのデビュー・アルバムは、このレーベルにとってポップにアプローチした数少ない1枚となったわけだが、これが日本でかなりの数売れた。と、ダーシーからメールが来た。

 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴン=バート・バカラックの作曲したなかでもよく知られる1曲だ。60年代の、ディオンヌ・ワーウィックが歌っているヴァージョンが有名だが、ジム・オルークのカヴァー・アルバムにも当然収録されている。
 ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・へヴン(YNGTH)は、シェゼットコックとは反対側の、モントリオールを越えて、トロントも越えて、そしてデトロイト方向に向かって進んでいくとある、ロンドンという町を拠点とする男女ふたり組だ。バカラックの曲名を引用していることから、レトロないまどきのドリーム・ポップを予想されることと思うが、それはたぶん正解で、たぶん間違っている。この、繭のなかのようなくぐもった音響とチリノイズとの協奏曲は、ザ・ケアテイカーを彷彿させる......ところもあり、同時にコクトー・ツインズめいたゴシックなニュアンスも含んでいる。
 近代社会の完成に抗うようにネオゴシックも際だったという論を読んだことがあるが、ローファイやリヴァーブというよりも、この"籠もった感覚"が昨今のDIY電子音楽の多くに共通しているもののひとつだ。そしてこの感覚は、3月上旬に発売予定の粉川哲夫と三田格の共著『無縁のメディア』で解明されていることかもしれない。

 先日、ある雑誌社から「渋谷」についてのエッセイを依頼された。僕は、90年代後半を渋谷と代官山のちょうど中間にあった集合住宅で暮らしていたので、渋谷、代官山、恵比寿あたりは散歩コースだったのだけれど、しかし、そこは、現在の渋谷、代官山、恵比寿あたりとはまるで別の町だった。景観も、住人も、家賃も、空気も、そして町というトポスの意味においても。僕が渋谷を歩かなくなったのではなく、僕が歩く渋谷がなくなったのだということをあらためて感じながら、YNGTHのぬるいダウンテンポを聴き続けた。この作品が日本で売れたのは、必然だったと言えよう。歩く町を失った人たちが彷徨う場所は......たとえ天国に行けなくても。

 それにしてもカナダの音楽シーンは、この10年素晴らしい。GY!BEやアーケイド・ファイヤー、グライムスばかりではない。ゲイリー・ウォーグルーパーUSガールズ、ブラック・ダイスのエリック・コープランドもカナダのアンダーグラウンド・シーンと深く関わっている。詳しくは『Weird Canada』をチェック。

Dean Blunt etc. - ele-king

 CDって買うもの......で、す、よ、ね? アナログ盤やカセット、ライヴやのチケットやクラブの入場料は買うものです。そしてCDは......こういう状況を見ると、いま世界は──とくにアメリカの話ですが──二分されていることを認めざる得ないようです。CDは買うものだと思っている人と思っていない人とに。これはDLの合法性、非合法性の議論ではありません。音楽の価値ならびに音楽産業、ときにgoogle検索への問題提起として電子空間を蝕んでいるのです! これは音楽ではありません。これは悪戯であり、ジョークであり、実験であり、町を追い出された子供たちの遊び場なのです!
 ディーン・ブラントは、ハイプ・ウィリアムス名義での活動を経て、昨年はソロ作品『ザ・ナルシスト2』を無料でばらまき、半年後にアナログ盤を売りました。〈Hippos In Tanks〉から、彼の新しいソロ・アルバムのリリースが、先日アナウンスされた。タイトルは『救世主(The Redeemer)』つまり「キリスト」。アルバムの1曲目"Papi"がすでにSoudcloudに上げられています。



 5月発売......だそうですが、お聞きのように、これまでのディーン・ブラント&インガ・コープランドの曖昧な、ぼやけた、つまりスモーキーなシンセ・ポップではありません。ミュージカル仕立ての......一時期のザ・レジデンツのようなコンセプトを彷彿させます。ザ・レジデンツ......ビル・ドラモンドが人を評価するときの判断基準になったバンドです。
 もうひとつ、ディーン・ブラント&インガ・コープランドの"ストーカー"シリーズの"5"がユーチューブにupされました。全く意味不明なシリーズとして知られる今回の新作は、そう、ウェイン・ルーニーのポスターとモーターサイクルの服装をしたブラントがただそこにいます。「未来のスラムのイパネマ」は、君の意味づけを待っているのでしょう。DLなう。





 紙『ele-king』のvol.8で、tomadoが持ち上げているseapunkのコンピレーションにも収録され、〈ボーイズノイズ〉からの12インチ「Liquid」を三田格がタワレコ渋谷でかけていた、ニューヨークのオネエ系ラッパー、Le1fの新しいミックステープがupされています。昨年の『ダーク・ヨーク』に次ぐ2作目で、本人はこれを「ツリー・ハウス」なるジャンル名で呼んでいます。どんな意味なのかは知りません。
 このあたりのNYのゲイ・ラップ・シーン、新たなるダンス・ミュージックがロンドンの〈ナイト・スラッグ〉系のNguzunguzuあたりと絡んでいるとことろは興味深く、そして、初期のシカゴ・ハウスのように......というよりも、懐かしのヴォーギングの世界です、セクシーです。新作『Fly Zone』にはスパンク・ロックも参加(他にもいろいろ)。木津毅の感想を待ちましょう。

Darkstar - ele-king

Sitting in an English garden,
Waiting for the sun.

(英国庭園に腰をおろして/太陽がくるのを待っている)

The Beatles "I Am The Warlus" (1967) 筆者日本語訳

 いまから2年前にロンドンでライヴを観て以来、おすすめの音楽を訊かれるたびにダークスターというひとたちががいいと答えてきた。しかし不安でもあった。ダークスター――ちょ、ちょっと、名前がダサくないかな......? 前作『ノース』ではクラブ・ミュージックからも離れつつあったし、あのあまりにも陰鬱な音楽が果たして来日公演にまで至るのだろうかと、勝手に気に病んでいた。片思いはつらいだけ――僕はまったく期待していなかった。
 しかし、すばらしいことに、ダークスターは見事に裏切ってくれた。良く悪くも、おそらくすべてのファンを。今作のレーベルは〈ドミノ〉や〈4AD〉でもない。〈ウォープ〉のスタッフはいっそ椅子から転げ落ちたくなったのではないか。
 男3人による完璧ではないものの美麗なコーラスのハーモニー。全編に鳴るオルゴールやハープシコードらしき撥弦楽器、グロッケンの音色。アンビエンスを含んだ優しいシンセサイザー。目を閉じずとも、トラディショナルな英国式の庭園や邸宅が、メランコリックで、幻想的で、まるで手にはふれられない、しかし現(うつつ)のごとき夢の光景として立ち現れてくる。これは、もはやポスト・ダブステップでさえない。〈ハイパーダブ〉なんて、とんでもない。『ニュース・フロム・ノーウェア』は、シンフォニックな響きを讃えたポップ・ソング集である。

 ユニット名や自主レーベルの名にしても、彼らにはSF趣味があったはずだが(註1)、フィクション作家としてまったく別の舞台を描いてみせたかったのだろうか、鮮やかに咲きみだれる花が変色して写るアートワークが示唆するように、今作は牧歌的で――しかし奇妙な世界へとリスナーを誘う。オフホワイトの視界から夢は滑らかにはじまる。アンビエントでドリーミーなドローンに包まれながら、「僕を目覚めさせてくれ、光のなかへ」と歌いだすジェイムス・バッタリーの甘い声。せわしない振り子の音が奥に聞こえるなか、光にみちびかれていく。そして、まったく別の世界――どこでもないところ――「ノーウェア」の時(とき)の針が、オルゴールを回すようにゆっくりと確実に動きだす。「タイムアウェイ」のシングル・リリース時はどこか浮ついた印象をもっていたが、あらためてアルバムの文脈のなかで聴けば、オープニングとして立派に機能している楽曲だ。小さくこだまするひとつひとつの音が優しく発光している。
 
 また、今作を聴いていると、意外なことにジョン・レノンの顔がちらつく。例えば、メランコリックで幽玄な「タイムアウェイ」につづいて唐突におどけた音色からはじまる3曲目の"アルモニカ"。どこか調子を外したようなギターの和音、フランジャーめいたエフェクトでくぐもったようなニヒルなヴォーカルや、シンセの逆回転風の加工など、(アルバムにおいて同じく3曲目でもある)ザ・ビートルズの「アイム・オンリー・スリーピング」をはじめとする1966~67年のジョン・レノン的な発想が散りばめられながらも、オマージュとしての記号の配置などに留まってしまうことなく、ダークスターの幻想性を有機的に表現している。
 明るいドローンのなかトム・ヨークめいた自己陶酔的なヴォーカル・チャント"-"(無題?)を挟んだあとの、5曲目の"ア・デイズ・ペイ・フォー・ア・デイズ・ワーク"のコーラス部分はジョン・レノンの"(ジャスト・ライク)・スターティング・オーバー"のそれとよく似ている。ピアノの質感もまるでジョンのデモテープのようだ。生活感をにおわせるタイトルも、アルバムをフィクションに閉じ込めきらないよう、ほどよく卑近な肌ざわりを与えている。たとえば経済的に貧しいなかでもクリスマスの夜を小さく祝うような、寄り添う温もりがある。

 ジョージ・ハリスンの"マイ・スウィート・ロード"におけるマントラ的アプローチに触発されたという7曲目の"アンプリファイド・イース(「増幅された安楽」)"は、発表時からよく言われているように、ポリリズムのコーラスがアニマル・コレクティヴとかなり似通っているものの、土埃がたちのぼるトライバルな躍動感というよりも、ヨーロピアンで壮麗な教会めいた響きがある。
 続く楽曲にも反復のコーラスが用いられており、そのままアルバムのラストまで瞑想的なアンビエンスが通底している。つつましくも勇ましいチェロの祝祭的な音。草原のなかの小川のようにせせらぎつづける電子音。アルバムは流麗な展開で締めくくられる。

 「ダブステップは終わった」。2009年の時点ですでにダークスターはそう語っていた。「自分たちはクラブに馴染まない」とも。
 そんな彼らに今作で見切りをつけたダブステップ期のファンは少なくないだろう。それだけでなく、『ノース』における暗いポスト・ダブステップのアプローチを好んだ層をも突き放してしまいかねないほど、ダークスターは音楽作家として歌(song)への挑戦を選んだ。ダークスターの"ニード・ユー"を会場SEにしていたトム・ヨークがポスト・ダブステップの沼へずぶずぶとハマりこんでいくのとは面白いほど対照的な道を、トムのファンが進んでいく。誰かひとりの趣味ではなく、3人全員が足踏みをそろえて、これまでの功績から離れ、別の景色へ向かっていけるなんて。すばらしい。英国フォークがほんのり薫るトラッドでシンフォニックなシンセ・ポップの次に、彼らの音楽の行く先はどこだろう。庭園を抜け、英国の森の奥へさらなる歩みを踏みだすのか、はたまた海を越え、ブルックリンか、南アメリカ、あるいはアフリカ、インドだろうか、あるいはどこでもないところ......。
 「思いもよらなかった内容に、最初聴いたときは間違えて別のCDをセットしてしまったのかと思ったほどだ。いやいや、間違っていない、これだ、ダークスターだ。」(野田努)とは、喜ばしいことに、前作についてだけの言葉ではなくなった。これから先も、何度でもそう言わせてほしい。ダークスターの3人には、どこまでも、どこでもないところへ旅をつづけて、返送先不明の便りを届けてくれることを願う。

Yamagata Tweakster x Wedance Japan Tour 2013 - ele-king

 クライマックスは彼がドアを開け、階段を勢いよく駆け上がり、車が往来する大久保通りに飛び出たときだった。ライヴの最中にステージを飛び降り、客席で踊る音楽家はたくさんいる。が、歌い踊りながら会場を後に、公道に躍り出る音楽家はこの日初めて見た。彼の後を追いかけるようにオーディエンスもだだだだと通りに出た。道のど真ん中で彼はみんなと騒いでいる。走っていた車は止まらぜるえない。何が起きたんだい? フルクサス流のハプニング? 前衛舞踏? アナーキーなフリー・レイヴ? それともこれっていわゆる占拠? 
 ほんの数分の出来事だった。それでもこれは、新宿のコリアンタウン、大久保通りのレイヴであり、占拠だった。こんなことを言うと君は過激な運動家を想像するかもしれない。だが、ちょっと待って。たぶん君のイメージとは違っていると思うよ。
 彼はステージでラーメンを料理しながら、イタロ・ディスコで激しく踊り(僕にはDAFを思わせたが、本人はイタロ・ディスコとハウスのつもりだと話している)、そして服を脱ぎながら歌う、韓国のソウルのホンデからやって来たヤマガタ・ツイックスターなる音楽家。彼の隣には、サングラスをかけたセクシーな美女がロボティックなダンスを続けている。ヤマガタが路上に出たときもひとりはレオタード姿のまま、同じように外に出た。
 What fuck was going on? この晩、いったい何が起きたっていうんだい? 僕の頭はいまもモーレツな躁状態を維持したまま、混乱している。いまの僕を路上で見たら不審人物として署に連れて行かれるかもしれない。電車に乗ったらやばい人だと思われ、満員電車のなかでさえ、さーっとまわりから人が遠のくだろう。そんな状態であるからして、うまく説明できる自信がないけれど、この晩に起きた小さくて大きな出来事を知ってもらいたいと思ってキーボードを打ち続けている。僕がぶっ倒れるか、キーボードが壊れるか、身体をはった勝負だ。

 結論=ヤマガタ、まったく素晴らしい。ウィダンス、まったく格好いい。
 ウィダンスから書こう。イルリメの後にステージにはふたりの男女。長髪のメガネをかけた細身の男性はギターを抱えて、おかっぱの女性は革ジャンを着て、マイクの前に立っている。「準備はいい?」と、言ってはじまった彼らの演奏は、グルーヴィーなダンス・ビートをバックにギターがぐわんぐわんと絡みつき、女性はメリハリあるヴォーカリゼーションで会場をがっつりロック、ふたりとも激しく身体をゆさぶって、ゆさぶって、ゆさぶっている。はあ、はあ、はあ......。曲が終わると息が切れている。
 WeDance=私たちは踊る。そのバンド名のように、ふたりは踊る。韓国でビーチ・ハウスの前座を務めたという話もうなずける演奏だった。ドリーミーで、心身ともに揺さぶるダンス・ロックだ。見た感じ、ふたりとも若い。実際はどうか知らないが、気持ちの良い、好感の持てる人柄に思えた。これがいま注目の、韓国の若いDIY主義者の音楽家が集まるホンデと呼ばれる町からの、もっともフレッシュな一撃なのだ。何を歌っているかわからない。それでも彼らのエモーションはばっちり伝わる。格好いい。
 そんなわけで、久しぶりに会った友人に泡盛をおごった。面白い人たちが会場には集まっていた。無鉄砲な連中から音好きな連中、変わったモノ好き、日韓のアンダーグラウンド集会。ヤマガタ・ツイックスターは、そのトリを務めるのに相応しい男だ。市の再開発によって撤去を命じられたうどん屋をめぐる闘争から政治運動に発展したという、ホンデ・インディ・シーンの重要人物であるこの紳士は、黒い笑いと辛辣な社会批判を歌詞に託しながら歌い、踊る。踊るといっても、こちらはウィダンスと違って、いかがわしい動きを見せる。ニルヴァーナで音楽に目覚め、ペット・ショップ・ボーイズとフィッシュマンズを愛するヤマガタは、じょじょにその本性である笑いと知性と反抗心を見せ、巧妙なパフォーマンスで我々をまんまと虜にすると、背中から羽が生えたようにふわふわと踊らせた。
 想像して欲しい。ライヴハウスで汗かいて踊っている人びとが、そのまま路上にトランスポートされたところを。信じられないだろう。ステージにはラーメンだ......その信じられないことが起きた。鶴見済がニマっと笑っている。僕もニマっと合図した。
 翌日の昼過ぎ、品川のルノアールで、飛行機の搭乗手続きまでの1時間ほどの時間をもらって話を聞いた。最後の残り5分で写真撮影。すると......またしても彼は、駅前の4車線の大通りに飛び出した。そして、路上にばたんと寝そべる。忙しい町に寛容さなどない。多くの車からは怒りのクラクション、それでも彼は白昼堂々と......いっしょに路上に放り出されてシャッターを押し続けている小原泰広が終わってから「恐かったです」とひと言。彼は残されたわずかな時間も無駄にすることなく、路上を占拠したのだった。
 Kポップなどクソ食らえ。ヤマガタ......君こそ真のスターだ。
 (日本盤、2枚とも歌詞対訳あります。限定盤ですよ!)

Yamagata Tweakster - 山形童子 utakata records

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Wedance - Japan Tour unfixed# 130127 130129 utakata records

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 昨年のマイ・ベストにハウ・トゥ・ドレス・ウェルを挙げた人も多いことだろう。ともにウィッチハウスのイメージを踏むようにつめたくゴーストリーな音像を特徴としながら、セカンド・アルバムにおいてホーリー・アザーと大きく道がわかれたのは印象的だった。ハウ・トゥ・ドレス・ウェルもトロ・イ・モワも、3月にリリースを待つインクなども、こぞって新作はメジャー感あるプロダクションを持ったR&Bへと変貌を遂げている。オート・ヌ・ヴの新譜も同様の傾向を宿しながら来月登場する。チルウェイヴの漂着先としても、この流れは2013年においてますます一般化し、大きくなるだろう。アンダーグラウンドのこのたしかなうねりを、われわれはこの来日公演で感じることができるはずだ。

今、最も注目すべき若き才能トム・クレルによるプロジェクト、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの来日公演が決定!!

2010年にリリースされたデビュー・アルバム「ラブ・リメインズ」がピッチフォークで8.7点を獲得、スピンなどでも海外媒体で大絶賛され一躍音楽シーンの第一線へと躍り出たトム・クレルによるプロジェクト、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル。
アークティック・モンキーズやフランツ・フェルディナンドなどを擁する英の名門レーベル、ドミノ・レコード傘下の〈Weird World〉と契約し、15カ月間かけブルックリン、シカゴ、ナッシュビル、ロンドンといった様々な場所でジ・エックス・エックスのプロデューサーとして知られるロディ・マクドナルドと共に制作したセカンド・アルバム『トータル・ロス』を昨年リリース。
よりスケール感が増し、美しくせつなく深淵な世界を構築し、アーティストとしての個性をより一層強めた作品は様々な海外媒体で年間ベスト・アルバムにチャート・インするなど大きな話題となりました。
そんな彼の2011年12月以来となる2度目の来日公演が決定しました!!
Tokyo Indie x Dotlinecircleによるコラボレーションによる行われる本公演。
今、最も注目すべき若き才能による貴重な来日公演は見逃せません!!

■公演詳細
Tokyo Indie x Dotlinecircle presents How To Dress Well Japan Tour 2013
3/13(水)渋谷 O-Nest
Open:18:30 Start:19:30
前売りチケット:4500円(当日:5000円)
1月26日より前売りチケット発売開始!!
※チケットぴあ(Pコード 192-257)、ローソン (Lコード 78413)、イープラス 、渋谷オーネスト店頭にてお求めいただけます。
問い合わせ:渋谷O-Nest:03-3462-4420

■リリース情報
アーティスト:How To Dress Well (ハウ・トゥ・ドレス・ウェル)
タイトル:Total Loss (トータル・ロス)
品番:WEIRD014CDJ (流通品番:HSE-10128)
発売日:絶賛発売中
価格:2,100円(税込)
※初回仕様限定盤はボーナストラック・ダウンロードカード封入(フォーマット:mp3)、歌詞対訳、ライナーノーツ 付


How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

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【TRACKLIST】
1. When I Was In Trouble
2. Cold Nites
3. Say My Name Or Say Whatever
4. Running Back
5. & It Was U
6. World I Need You, Won't Be Without You (Proem)
7. Struggle
8. How Many?
9. Talking To You
10. Set It Right
11. Ocean Floor For Everything

【初回仕様限定盤ボーナストラック・ダウンロード(フォーマット:mp3)】
1. Set It Right (Acapella)
2. Again (Janet Jackson cover)
3. Blue Crystal Fire (Robbie Basho cover)

■バイオグラフィー
"ハウ・トゥ・ドレス・ウェル"は、NYブルックリンからベルリンに活動を移したばかりのトム・クレルによ るソロ・プロジェクト。R&B、サイケデリック、ドローン・ミュージックを昇華させたドリーミーなサウンドでファンを増殖させている期待の新人。 10年リリースのデビュー作『ラヴ・リメインズ』が早耳系音楽メディアで高評価を獲得。11年12月にはアクティブ・チャイルド共に来日公演を敢行し、好評を博した。

Godspeed You! Black Emperor - ele-king

それは、我々が生き、共有し、抵抗し、拒絶し、解体し、良い方向へ変えていこうとしていることばかりの、虚無的までに悲しい物語を証明し、伝え、変容させる音楽だ。
(レーベルのホームページ/日本盤の訳文より抜粋)

我々の町の美と苦痛、悪臭をふくむ風、警官の異常発生、我々の夢、偶然見つける港の不快な臭い、凝視する野次馬。
(アルバムのバック・カヴァーより)

 2003年、『Yanqui U.X.O.』を出した翌年、モントリオールのGY!BEは2010年の年末までのおよそ8年のあいだ活動を休止している。2010年、ATPのために再結成すると、2011年は東京でもライヴを披露した。GY!BEは思想を持ったバンドで、その行動は絶望に基づいている。世界を楽しく見せようと努めれば努めるほど、虚無はふくらむ。そういうシステムのなかに生きていることを暴こうとしたのがGY!BEの『F♯ A♯ ∞』(1997)だったが、楽しい世界はこの10年でより巧妙な姿へと再編されている。
 先日、快速東京のライヴに行ったとき、三田格から問題提起として観れば面白いからと激しく説明され、『バットマン ダークナイト ライジング』を観たが、たしかに、アイロニカルな意味で面白かった。
 (以下、ネタバレあり)格差社会の貧困と絶望を生きたある人物は、上流階級であり資産家であるバットマンの関わる企業が投資したクリーン・エネルギー原子炉を核爆弾とし、市民に呼びかけ、貧困層の反乱を試みるが、それをバットマンが阻止するといった、GY!BEが間違いなく憤慨する内容で、たしかに反面教師として世界の見方を考えさせられる話だった。裕福な人たちが裕福のままでいなければ秩序は保たれないという、今日の社会の特徴を捉えていて、それがNYをモデルにしたゴッサムシティ(しかもウォール街)を舞台にしているところにもリアリティがあるのだけれど、GY!BEは、バットマンと戦う側にいるバンドなのだ。『タイニー・ミックス・テープス』は、スラヴォイ・ジジェクの"pure negativity"というタームを使ってGY!BEの音楽を説明しているが、僕のような哲学の素人にも、アメリカの音楽ライターにそう書かせる力がGY!BEにあることはわかる。
 メンバーは初期からほとんど替わっていないそうだが、音楽的には、若干の変化がある。『アレルヤー! ドント・ベンド! アセンド!』の1曲目は、いままでないほどクラウトロックめいていて、ノイ!からラ・デュッセルドルフへと展開する頃をロング・セットで再現しているようだ。途中、変拍子が入ってくるところはプログレ風で、GY!BE特有のフォルティッシモがたたみかけられる。
 ハードコア・ノイズとヴァイオリンの音色が錯綜しながら、悲しみのどん底にいる人たちを鼓舞するようにシンフォニーが展開される。その重厚さは彼らのコミュニティ感覚を表しているようだ。いまの自分の好みの音というわけではないのだけれど、執拗なクレッシェンドの果てに立ち現れる崇高さに気持ちの震えを覚える。
 「怯えながら興奮して、悦びのノイズを演奏しているんだ」と、GY!BEは昨年『ガーディアン』の取材に答えている。彼らはこの世界を「数百万人が飢えているあいだ、果物が(分け与えられることなく)腐っていく」という言葉に喩えている。「そのミルクが毒だとわかっていながら飲み続ける。(略)政治は政治家のためにある。彼らは自分の死臭を隠すために、香水とコロンをつけて、カラフルなネクタイを着用する。私たちはその悪臭からできる限り離れて生きていたいと思っている」
 計4曲収録されているうちの、3曲目の"ウィ・ドリフト・ライク・ウォリード・ファイヤー(我々は、悩める烈火のごとく漂流する)"も、GY!BEらしく、「悦びのノイズ」がゆっくりと時間をかけて、そして上昇していく曲だ。彼らは、いたずらに高揚しているわけではない。注意深く世界を見渡している。見開きジャケットを開くと、車に轢かれた鳥の無残な死骸の写真がある。この10年、町はすっかり姿を変え、小綺麗になった。おそらく元には戻れないだろう。僕もいまはこんな風にぬけぬけとオンライン・マガジンで原稿を書いているけれど、デジタル空間に邪悪な力が流れ込み、橋元優歩の履歴から何までもが筒抜けになってしまう世界が来ないとは限らない。デリック・メイが予言するように、我々の子供の世代が机の上のPCを粉々に踏みつぶすようなときが......。
 こんな世界のなかで、GY!BEはどんなつもりでいるのだろう。彼らは自分たちが何をやるべきかよくわかっている。

 そういったシンプルな信条と目標を提唱することは、控えめに言っても、10年を経たいま、よりいっそう維持し、成立することが難しくなっている。あらゆるコンテンツと非コンテンツ──あらゆる"満足"──で溢れかえる現代の文化的な時間において、あからさまな露出を回避するという考えや、メディアの力を緩めようとしたり、アイデンティティ・マネジメントをすること自体が奇妙で、陳腐なのかもしれない。(中略)
 反戦略が戦略としてタグ付けされるリスクを伴うこと、ノン・マーケティングがその反対に枠組みされる昨今だとよくわかっていながら、彼らが健全であるために根底をなすものと考えている理念を、単なる別の形の戦略と捉えかねないが、深く維持していたいのだ。
(レーベルのホームページ/日本盤の訳文より抜粋)

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