「K A R Y Y N」と一致するもの

Robert Wyatt,Ros Stephen,Gilad - ele-king

 ジャズを愛する反体制的な吟遊詩人による美しい1枚。かつて「私はジャズ・ミュージシャンではない」と語っていた人の、正々堂々たるジャズ・アルバムだ。前作『コミックオペラ』の世界の無惨な姿を描こうとするディストピアックなヴィジョンから一転して、バイオリン奏者のロス・スティーヴンとジャズ・サックス奏者のギルアド・アツモンの協力を得て作られたこのアルバムは、ジャズのスタンダード・ナンバー――デューク・エリントンの"イン・ア・センチメンタル・ムード"、 セロニアス・モンクの"ラウンド・ミッドナイト"、ナット・キング・コールやジョン・コルトレーンの演奏で知られる"ラッシュ・ライフ"など――を息を呑むほど緊張感のある演奏と歌で取り組んでいる。ポスト・パンク時代の大名曲として知られる"アット・ラスト・アイ・アム・フリー"、1997年に発表した『シュリープ』収録の"マリアン"の2曲をセルフ・カヴァーしている。
 インナースリーヴに歌詞のいち部が引用された3曲目の"ザ・ゴースト・ウィズイン"はアルバムにおいて重要な意味をほのめかしている。「私たちはいまここにいる/私たちは内なる幽霊/いつになったらあなたは気がつくのだろう/私たちはいるべき場所にいるのだと?」......嘆き悲しむサックスの音と表情を抑えたダブルベースが、われわれを残酷な現実へと引き連れていく。象徴的な言葉によるロス・スティーヴンのエレガントな歌が耳から入って心にまとわりつく。「私たちはかつてこの地に暮らしていた、永いあいだ/レモンの木の香りに囲まれて」......レモンの木というから温かい地方なのだろうか、故郷を奪われた人たちの思いなのだろうか......。
 続く4曲目の、クラリネットが素晴らしい"ホエア・アー・ゼイ・ナウ?(彼らはいまどこに?)"はモダン・ジャズのクリシェをゆっくりと崩しながらブレイクビーツへと変容させる。女性の声でラップが飛び出す。「パレスチナの国に美女が生まれた/どれほど可愛らしいかあなたに見えるか?/見てごらんなさい/なんて美しいのでしょう」
 見事なまでにパレスチナの人びとへの賛歌となっているこの曲で、ここぞとばかりにこの老音楽家は歴史に抑圧されたすべての人たちへの共感を隠そうとしない。そして相変わらず容赦なく、ストレートに西欧文明を批判する。「素敵な国/酷い政治/それについて語れば1日かかる/西側の占拠/民族浄化/私たちは忘れてはいけない/そして戻ってくるその日まで忘れてはいけない」

 アルバムにおいて、ロス・スティーヴンはかけがえのない活躍をしている。彼女のヴァイオリンと歌は、ワイアットの怒りの炎を温かいエモーションへと誘導する。"アット・ラスト・アイ・アム・フリー"、それからルイ・アームストロングの"ホワット・ア・ワンダフル・ワールド"をワイアットは崇高な声で歌い、そして強く訴えている。これはまったくもってヒューマニズムの音楽である。家に帰り、テレビの報道番組を見ると戦争を駆り立てるようなニオイが漂ってくる。『フォー・ザ・ゴースト・ウィズイン』は礼儀正しく官能的な傑作だ。それはわれわれに鋭く問いかけているようだ。

NDENDEKI - ele-king

野外でデカイシステムで爆音で聴きたいレコード TOP10


1
Muff & Tantrum-Suss,Year of the Pig-Dead Pig

2
Crystal Distortion-Wigger-Labrat Audiochemical

3
69db-How to get from here to now- Perce-Oreille

4
Subjex-Supersonic Mezze-In Vitro

5
Crystal Distortion-Labrat Audiochemicals 1998-Perce-Oreille

6
Seio-8bit Gaming Zone-Freeshuffle

7
Charles Tox & Krak In Dub-Sound Control-Galletas calientes

8
Subliminal Criminal-Funny in the head-nocturnalstate

9
MSD-Swinger-WAR

10
Les Boucles Etranges-T-Ozore Age

※こちらで全て購入できます >>> https://www.toolboxrecords.com/

■ライヴ・スケジュール
2010年12月10日(金)Reezent(Sunga&Ndendeki)
@新宿ANTIKNOCK https://www.nitro-x.net/

2011年2月11日@高円寺 STUDIO DOM
∞REEZENT/ME∞prezents 1st A
[LIVE]TEKNOIST / REEZENT
[DJ]DOPPELGENGER / BiYONBON /∞mugeME∞
[VJ]Digital Chakra
[DECO]COLUR GUNG vs アナスイ vs 先

https://corehead.main.jp/
https://corehead.blog66.fc2.com/blog-entry-65.html
https://universalmarginalradio.blogspot.com/2010/10/um-radio-006-aaaaaahmbient-ndendeki.html
https://www.discogs.com/MSD-2-Ndendeki-Vs-Mat-Weasel-Japanese-Teknival/release/1311857
https://www.discogs.com/Frazzbass-Hardcore-Inferno-Vol-1/release/1742730

Chart by JETSET 2010.11.15 - ele-king

Shop Chart


1

MOEBIUS & NEUMEIER

MOEBIUS & NEUMEIER ZERO SET 2 RECONSTRUCT PT.1 (RECONSTRUCT BY RICARDO VILLALOBOS) »COMMENT GET MUSIC
国内先行カットされたDJ NOBUに続き、Villalobosによる『Zero Set 2』リコンストラクトも待望のアナログ・カット。両面併せて33分超えのウルトラ・ディープ・トリップ。

2

V.A.

V.A. TIMELESS: SUITE FOR MA DUKES »COMMENT GET MUSIC
Mochilla主催の奇跡のコンサート『Timeless』シリーズ第3弾はJ Dilla!Slum Village"Fall In Love"、De La Soul"Stakes Is High"、Dwele"Angel"、ソロ作も含む全15曲!

3

MOEBIUS & NEUMEIER

MOEBIUS & NEUMEIER ZERO SET 2 RECONSTRUCT PT.2 (RECONSTRUCT BY PRINS THOMAS) »COMMENT GET MUSIC
国内先行カットされたDJ NOBUに続き、Prins Thomasによる『Zero Set 2』リコンストラクトも待望のアナログ・カット。今年の春に発表された1st.ソロ・アルバムの延長線上にある傑作ミックス!!

4

HOUNDS OF HATE

HOUNDS OF HATE HEAD ANTHEM »COMMENT GET MUSIC
Salem + Gold PandaなUKサイキック・インディ・シンセ最前線!!Hype Williamsの友達というだけでもヤバすぎるロンドンの3人組、Hounds of Hate。ダブステップ以降のエレクトロニカにサイキックなオカルト趣味を山盛りにした、凄まじく最高のサウンド!!

5

DASO

DASO WHY TRY »COMMENT GET MUSIC
名門My Best Friendからのデビュー作"Daybreak"でシーンに旋風を巻き起こしたキラメキ込み上げテックハウサーDaso。伝説の1st.越えとなる大傑作を完成です!!

6

在日ファンクとサイプレス上野

在日ファンクとサイプレス上野 BAY DREAM ~FROM課外授業~ »COMMENT GET MUSIC
ハマケン率いる在日ファンクの3ヶ月連続コラボ・シングル。第2弾はサイプレス上野がライドン!!なんと"Bay Dream"のカヴァー!!サ上とロ吉の横浜クラシックが在日ファンク流に蘇ります!さらにカップリングも"担当者不在"カヴァー。当然サ上もマイクを握っております!

7

A.MOCHI

A.MOCHI PRIMORDIAL SOUP III »COMMENT GET MUSIC
WIRE10への参戦やヨーロッパでのツアー等、2010年は大きく躍進した一年となった日本人クリエイターA.Mochiによる3連続リリース・シングルの最終章。ヨーロッパのクラウドをうならせたファットな出音と空間演出に長けたサウンド・メイキングが今作でも炸裂しています!!

8

JAY KING & MACK ONE / D'LUX BEATS

JAY KING & MACK ONE / D'LUX BEATS 48 HOURS / KOTB / LAZY »COMMENT GET MUSIC
あの『Secondhand Sureshot』の元ネタ企画(!?)からの初リリースがコチラ!!20ポンド以内の予算でロンドンのレコ屋を巡ってネタ盤を掘り、各々が1日の期限で組み上げたビートで競い合う企画『King Of The Beats』の産物が7"化!

9

TOM TRAGO

TOM TRAGO VOYAGE DIRECT (FS GREEN REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
ダーティ・ビーツとニュービーツを操る超新星FS Green現る!!注目のテックハウサーTom Tragoによる1st.アルバムからのリミックス・カットとして届けられた本作。実質的には天才新星FS Greenによる特大傑作1st.12"なのです!!

10

SLUGABED / GHOST MUTT

SLUGABED / GHOST MUTT DONKEY STOMP »COMMENT GET MUSIC
天才Slugabedと直系新星Ghost Muttによるカラフル・スプリット!!要注目新興レーベルDonky Pitchからの第1弾。スクウィー勢との交流も深める天才Slugabedと、オランダのLowridersからデビューを飾ったGhost Muttによる極上盤です!!

oOoOO - ele-king

 チルウェイヴやグローファイ、シットゲイズなど、欧米を中心としたインディ・スノッブなローファイ・ミュージックは、ここ1年での狂騒を経て、いまではすっかり様式化したと言える。録音環境がローファイで、さらにシンセサイザーやエレクトリック・ギターなどの上モノの楽器の音色/エフェクトに頼る部分が多いため、それっぽい音を鳴らせば、それなりにそれっぽく聴こえる。ウォッシュト・アウトの夢見心地なブリージング・サウンドに思わずまどろみながらも、その後の多くの二番煎じを聴いて、ウンザリしてしまった方も多いのではなかろうか。とはいえ、現在USで話題となっているブロガー・ロックのまた新たなトレンドであるウィッチ・ハウスの旗手として期待される、サンフランシスコ出身のoOoOO(オー)の最初の音源を聴くと、このシーンにまた新たな可能性を感じる。

 ウィッチ・ハウスには、チルウェイヴと共通する部分が多い。穏やかでメロウなシンセ、ウィスパリング・ヴォイス、甘酸っぱいフィードバック・ノイズ、アニマル・コレクティヴゆずりの深いリヴァーブ......、さらそこにダブステップやブロークン・ヒップホップ、モダンR&Bなどの最新鋭のビート・ミュージックを取り入れているエキセントリックな音楽である。その名(魔女のハウス)の通りおどろおどろしく、ダークで、奇妙なゴシック・ホラーの世界観をダウンテンポで描いているのが何より特徴だ。EPの1曲目"ムンバイ"での故障したサンプラーから連続再生されたかのようなウォンキーじみたビートは、そのウィッチ然りとしたメランコリックな音色と聖女系の声の組み合わせからは、まるで古いモノクロ映像を走るノイズのように、不気味なものを感じさせる。

 ウィッチ・ハウスからは、レフトフィールド・ダブステップのビートを取り入れたトム・ヨークの『イレイザー』からの影響を強く感じ取る。元を辿れば、彼がその当時好んで聴いていた(そして件の『イレイザー』にも大きな影響を与えた)ヴァリアス・プロダクションが撒いた種とも言えるが、その影響がUSインディ・シーンの意外なところに拡大している。ローファイなムードが続く現在のシーンにおいて、インディ・バンド/アーティストたちがビートに関心を持ちはじめたという点も興味深い。
 チルウェイヴやグローファイがインディ・ディスコから派生したものなので、作り手もビートに関心がなかったわけではなかったが、そのローファイなプロダクションゆえに、DJの現場では貧弱に響いてしまうのが致命的だった。しかし、このoOoOOや、ウィッチ・ハウスのもうひとつの代表格であるバラム・アカブ(このoOoOOのEPは彼らのレーベルからのリリース)、そして僕がチルウェイヴ/グローファイ・シーンのなかでのベスト・アクトだと思っているトロ・イ・モアなどは、そのユニークなビートを用いて、聴き手にステップを踏ませることに意識的に取り組んでいる。

 ところで、「ウィッチ・ハウス/チルウェイヴ・ネーム・ジェネレイター」というサイトがある。ウィッチ・ハウスやチルウェイヴっぽいバンド/アーティスト名を自動で作り出してくれる、何とも皮肉なサイトだ。冒頭にも書いたように、様式化しつつあるのはたしかだ。しかし、実はまだ誰もフル・アルバムのリリースが果たされていない、生まれたばかりのシーンなのだ。期待していいのではないだろうか。

[Electronic & Chillwave] - ele-king

Games / That We Can Play | Hippos In Tanks


iTunes

E王 OPN(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、というのが正確な読み方ということです、すいません!)によるチルウェイヴ・プロジェクト、ゲームスが早くも2枚目のシングルをリリースする。4曲+ふたつのリミックス・ヴァージョン入り。
 1曲目の"ストリベリー・スカイズ"はメランコリックで甘ったるいドリーム・ポップ・ディスコで、なんの喜びもなく酒を飲みながら、しかし恍惚としているという、実に倒錯した享楽性をはらんでいる......ベースと歌はずいぶんと80年代風だが、録音のくぐもった感覚と別世界へまっしぐらなずぶずぶのアンビエンスはいまのモードを伝えている。続く"ミディ・ドリフト"は楽天的なフィーリングを伝えるクラフトワーキッシュな曲で、"プラネット・パーティ"はダークスターの『ノース』とも連帯するであろう悲しみのシンセ・ポップ......。
 そして、シングルのなかでもっともキャッチーなのがこの曲、"シャドウズ・イン・ブルーム(Shadows In Bloom)"。映像はM.I.Aの"ボーイズ"やエイフェックス・ツインも手掛けるウィアードコア(weirdcore)。どうぞご堪能ください。

Chart by JAPONICA 2010.11.12 - ele-king

Shop Chart


1

MOEBIUS & NEUMEIER RECONTRUCT BY DJ NOBU

MOEBIUS & NEUMEIER RECONTRUCT BY DJ NOBU ZERO SET II - RECONSTRUCT MULE MUSIQ / JPN / 2010/11/6 »COMMENT GET MUSIC
ジャーマン・テクノ古典「ZERO SET」の制作メンバーの一人である故CONNY PLANKへの追悼の意を込め2007年に発表した続編アルバム「ZERO SET 2」収録曲をRICARDO VILLALOBOS / PRINS THOMAS / DJ NOBUが解体/再構築し、リコンパイルしたCDアルバム「ZERO SET 2 RECONSTRUCTED」からの待望のヴァイナル・カットが国内限定でリリース!こちらはDJ NOBUリミックスのみ収録したもので、DJ NOBUらしさが前面に出たドープでへヴィ・ウェイトな深い奥行きを感じさせるディープ・テクノ2トラックス収録です!

2

SOFT VS DJ DUCT

SOFT VS DJ DUCT LOOP SEGUNDO / FEEL MORE NNNF / JPN / 2010/10/20 »COMMENT GET MUSIC
★JAPONICA限定!★「BACKYARD EDIT」シリーズが国内、そして海外からも好評のDJ DUCTがSOFTのライブ定番ナンバーにして人気曲"LOOP SEGUNDO"、そしてアルバム収録の壮大なスピリチュアル・ナンバー"FEEL MORE. KNOW"をブレイクビーツ感覚でDJユースにリエディットした限定7inch!共に所々でニクイ演出が利いた曲の構成もばっちりで DJフレンドリーなバリバリ現場仕様の使えるナイス・エディットです!マスタリングはもちろんKND!

3

PROJECT TEMPO

PROJECT TEMPO PROJECT TEMPO VOL.1 PROJECT TEMPO / UK / 2010/11/9 »COMMENT GET MUSIC
フランス/パリを拠点に活動する2人組のDJデュオ=PROJECT TEMPOによる初のヴァイナル・リリース作品!A面はCARLY SIMONによるレゲエ・エッセンスを加えたバレアリック・クラシック"WHY"のリエディットでインスト・パートを主体に強烈なダブ・ワイズを効かせつ つ再構築した"WHY NOT"を、そしてB面にはサンプリング・ソースとしてもお馴染みのダンス・クラシックTOM TOM CLUB"GENIUS OF LOVE"をインスト・ダブ的にリエディットした"TOM TOM DUB"を収録!

4

THE POPES feat. SHANE MACGOWAN

THE POPES feat. SHANE MACGOWAN BASTARDS (IDJUT BOYS & MUDD REMIXES) CLAREMONT 56 / UK / 2010/11/5 »COMMENT GET MUSIC
1980年代後半、パンク精神の熱気とアイリッシュ音楽の大衆感覚を融合して、イギリスはもちろん世界的な人気を誇ったUKバンドTHE POGUES(ザ・ポーグス)のフロントマン、シェーン・マガウアンが1993年に自身のバックバンドとして結成したTHE POPES(ザ・ポープス)。現在はいちバンドとして活躍しているTHE POPESが、昨年リリースしたニューアルバム『Outlaw Heaven』で、12年ぶりにシェーン・マガウアンと共演を果たした1曲「Bastards」のリミックス・シングル。

5

DANIEL SOLAR

DANIEL SOLAR 13TH HOUR EP SLEAZY BEATS / UK / 2010/11/9 »COMMENT GET MUSIC
ポスト・ビートダウン系レーベル筆頭<SLEAZY BEATS>第5弾!この手の音が好きな方なら文句なしでレーベル買いできてしまう良質ミニマル・ビートダウン作品のリリースで人気の<SLEAZY BEATS>、今回もバッチリな人選、内容で高品質な一枚に仕上がっております!A面には昨今すっかり定着した分厚いミニマル・ビートダウン・ハ ウス・トラック"MID FIDELITY FUNK"を、B面にはフィルター使いが光る同じくループ・ミニマルなディスコ・ハウス"TWINKLE LOVE"に"LA FLEUR"を収録!

6

WILL SESSIONS

WILL SESSIONS KINDRED THE FEW / US / 2010/11/5 »COMMENT GET MUSIC
SLUM VILLAGE、BLACK MILK、MAYER HAWTHRONE、GUILTY SIMPSONなどといったヒップホップ~ソウル・アーティストらとも積極的に共演/レコーディングを行ってきたというクロスオーヴァーな活動展開をする デトロイトの注目ジャズ/ファンク・バンド=WILL SESSIONSによる偉大なジャズマンら先駆者達へのトリビュートの意を込め制作したコンセプト・アルバム!

7

RICARDO VILLALOBOS

RICARDO VILLALOBOS PECULIAR / 3 ZUGE SEI ES DRUM / GER / 2010/11/3 »COMMENT GET MUSIC
デジタル配信一切無し!RICARDO VILLALOBOS主宰<SEI ES DRUM>待望の最新作です!MARVIN GAYE"AIN'T THAT PECULIAR"のアカペラを淡く被せどことなく妖艶な趣で展開し絶妙な音使いも光る"PECULIAR"、ノイズ(?)テイストの音を無数に散りばめ た奇抜なプログラミング・センスが発揮された鬼ディープ・ミニマル"3 ZUGE"、共にズッブズブにハメられること間違いなしの危険すぎる一枚!!

8

TEEBS

TEEBS ARDOUR BRAINFEEDER / UK / 2010/11/5 »COMMENT GET MUSIC
期待の大注目次世代ビートメイカー=TEEBSフル・アルバム!ご存知FLYING LOTUS主宰<BRAINFEEDER>からのリリースです!優雅なストリングスによるメランコリックでドリーミーなウワ音を漂わせつつ心地良いグルー ヴを育むビート・プログラミングにより凛とした空気感で全体を包むアンビエント~エレクトロニカを軽く超越したハイブリッド・トラック全18曲! 他とは一味も二味も違ったこの温故知新なセンスには脱帽です。

9

DAVID LEE JR.

DAVID LEE JR. EVOLUTION UNIVERSAL SOUND / UK / 2010/11/1 »COMMENT GET MUSIC
80年代ROY AYERS関連作品のリイシューに続き、今回はニューオーリンズ出身のドラマー/パーカッショニスト、そしてキーボード奏者でもあるマルチ・ミュージシャ ン=DAVID LEE JR.が1974年にNYのマイナー・レーベルからリリースした幻のスピリチュアル・ジャズ大名盤をリイシュー!鬼黒ブレイク炸裂のスピリチュアル・ジャ ズ~ジャズ・ファンク大名盤です!

10

V.A.

V.A. GROOVE MERCHANT 12" EDITS LUV N' HAIGHT/UBIQUITY / US / 2010/10/30 »COMMENT GET MUSIC
先日リリースされたDEE EDWARDSのエディット12inchに続きまたしても<UBIQUITY>傘下の復刻専科<LUV N' HAIGHT>がレアグルーヴ・エディットEPをリリース!BING JI LINGとCHRISのニュー・ユニット=COPPA、そしてDJ ENKIによるエディット3トラックに加えそれぞれのオリジナル・ヴァージョンも収録の限定プレス盤!

Robot Koch - ele-king

 はて、フライング・ロータスの前ってどうなってたんだっけ? ああいうのはたしかグリッチ・ホップとかいわれてたよな。詳しい人によればその起源は1984年のジョン・フェクナー・シティ・スクォッドに遡れるとか、デヴィッド・バーン『ザ・ヴィジブル・マン』(97)にも兆候は現れていたということになるんだけど、まー、そういうのはワサビ漬けにして食べてしまうとして、スタートはやはりグリッチというエレクトロニカ的な方法論だっただけにアトムTM『XXX』かフンクシュトルンク『アペタイト・フォー・ディスクトラクション』といったドイツ文化圏にあり、ほぼ同時にプリフューズ73も出てくるという流れだったはずでした。前2者が2000年ちょうどのリリースで、プリフューズ73『ヴォーカル・スタディーズ~』が2001年、02年にはマシーン・ドラム『アーバン・バイオロジー』と続いて、03年には一気に廃れるんでした、たしか(初期の空気感はチョコレート・インダストリーズからリリースされた『ラピッド・トランジット』に真空パックされてるんだな)。

 04年から05年にかけてはこれがスイスやベルギーといったヨーロッパからのリアクションが増え、TTCやスタックス・オブ・スタミナ(現レイディオクリットほか)を中心とするジュネーヴ・コネクションを筆頭にノスレップ、ベータ・エーコ、ホーペン、果てはロシアからキャストも参入。06年にはファット・ジョンのようなヒップホップの主流にもその影響が認められるようになって、日本からもジェマプー(と読むのか?)、コンフリクト、エディットなどが頭角を現し、07年にはイギリスから『イクーデ』、アメリカは『シリコン・グラフィティ』、日本でも『ビート・アーキテクチャー』といったコンピレイションが勢力の維持をアピールしたカタチに(翌年にリリースされたラス・GのミックスCDやブルー・ジェムズ『ビート・マシーン』も同じような役割を果たしたといえる)。モードセレクターやクローズ・フォーなど他のジャンルに拡散し出したのもこの頃で、そして、何よりも〈オール・シティ〉からフドゥスン・モーホーク(と読むのが正しいそうです)とマイク・スロットのヘラルド・オブ・チェンジがさまざまな意味合いにおいてネクスト・レヴェルを用意したといっても過言では......(この辺りは『REMIX』で何度も力説したような気がするので省略)。

 ところが08年は全体的に見るとシーンはふたたび不調になり、どれもこれも小粒で存在感に乏しく、フランスやスペインから細々と変り種が出るにとどまっていた。そう、梅雨どきにフライング・ロータスがリリースされるまでは。
 ここからは、もうみなさん、ご存知、情報のインフレ状態ですね。どのレヴューを見ても「フライング・ロータスに通じる......」とか「どこかフライング・ロータス風の......」という言い回しの洪水が押し寄せ(個人的には中原昌也と共に盛り上がってしまったクップ・ケイヴ『ガービッジ・ペイル・ビーツ』がすでに懐かしい......)、人によってはドクター・ロキットを聴いてもフライング・ロータスに聞こえてくるし、ヒドい人になると......いや、やめておきましょう。簡単に人の評論家生命を奪ってはいけない。盗んでいいのはコンビニの売り上げだけだった。
 また、コッチーやモーホークなどダブステップとの融合やアブストラクト感覚を強めるなど、他のジャンルとの並存もごく自然におこなわれるようになり、逆にいえば、グリッチ・ホップだけを追求している人は地味な存在になっていったともいえる。ローンであれ、ルーキッドであれ、それだけをやっている人はどこか陰が薄く、「フライング・ロータスに通じる......」とさえも書いてもらえない。もしくは聴いてさえもらえない。

 ザ・テープとしても知られるロベルト・コッチはブロークン・ビートやドラムンベースが主体の3人組、ジャクージのメンバーでもあり、『ソングス・フォー・トゥリーズ・アンド・サイボーグス』は2作目のソロ・ワークにあたる。ザ・テープvs. RQMのパターンを踏襲し、MCにセレブラル・ヴォルテックスをフィーチャーしたシリーズ=ロボット・コッチは当初はオールド・スクール風のリズムに電子音を足すという図式を採用していたが、すぐにもインストゥルメンタル主体のプロジェクトへと移行し、曲によってさまざまなゲストを迎え入れ(ここではボックスカッター、1000ネームズほか多数)、全体としてはグリッチ・ホップの正統を保つ出来栄えを見せている。ここで展開されているのは、もしもフライング・ロータスが現れなかった場合の可能性といったようなもので、もちろん、そこからのフィードバックがまったくないものをつくることは事情上困難だとは思うものの、それでも、フライング・ロータスによって閉ざされてしまった可能性を探るものだといえる。そして、その結果はけして悪いものではない。全体にフゥドスン・モーホークの斑っけを丁寧に地均ししたような仕上がりで、グリッチ・ホップを生み出したヨーロッパがひとつの成果を上げたものだといえるのではないだろうか。

 同じようにグリッチ・ホップの正統といえる血流のなかで、さらに新たな可能性を模索し続けている存在にスラッガベッドとリコーダーがいる。前者の人気はダンスフロアではすでにそれなりのものがあるとして、スペインの7インチ・レーベル、〈ロー・ファイ・ファンク〉から「チェリー・コーク」をリリースした段階で早くも人気を決定づけたリコーダーことルーク・オーウェンは(マイク・スロット以外は)ほぼ無名の新人だけで構成された『アストロ:ダイナミズム』をコンパイルし、ダブステップだけでなく、スクウィーやウォンキー、あるいはチップチューンといった新たな傾向のなかで生き延びるグリッチ・ホップの可能性をマックスまで引き出している。しかも、自身の曲である"キャンディ・フロッシン"がとにかく素晴らしく、スラッガベッド"クランク・クランク"も彼のこれまでのベストではないだろうか? いわゆるデトロイト・テイストの強さもひとつの特徴であり、テープスやココ・ブライスのようにレゲエとの融合が試みられている辺りも興味深い(ちなみにマイヨーからほぼ同時にリリースされた『トロピカル・ヒート・ヴォリウム1』もほとんど同じメンツで構成されている)。

Chart by UNION 2010.11.10 - ele-king

Shop Chart


1

RICARDO VILLALOBOS

RICARDO VILLALOBOS Au Harem D'archimede PERLON / JPN / »COMMENT GET MUSIC
ミニマル・シーンに留まらずクラブミュージック全般において、もはや別格といえる存在へと昇り詰めたカリスマ・RICARDO VILLALOBOS。そのVILLALOBOSが、歴史的ファースト・アルバム「ALCACHOFA」に続いて世に送り出した問題作がこの作品「THE AU HAREM D' ARCHIMEDE」。モダン・ミニマルの基本とも言えるマスターピース、待望の再発である。

2

MAGDA

MAGDA From The Fallen Page MINUS / JPN / »COMMENT GET MUSIC
RICHIE HAWTINと並びレーベルの顔といえる存在へと登り詰めた"MINUSのファースト・レディー"ことMAGDAが、「SHE'S A DANCING MACHINE」・「FABRIC 49」という2枚の傑作MIX CDを経て、遂に辿り着いたオリジナル・アルバム!

3

RECLOOSE

RECLOOSE Early Works MUSIC 4 YOUR LEGS/RUSHHOUR / »COMMENT GET MUSIC
カール・クレイグに見出され、インナー・ゾーン・オーケストラにも参加。ジャザノヴァのリミキサーを努め、ジャイルス・ピーターソンにもヘヴィーローテーションされた才能の持ち主リクルースの素晴らしさをあらためて知る1枚。強烈なアブストラクト感覚溢れるデトロイトハウス「MYM230 (R.I.P.)」は今なお輝きを失っていない。

4

RICK WADE

RICK WADE Requiem For A Machine Soul HARMONIE PARK / US / »COMMENT GET MUSIC
本作は現在ベルリン~オーストラリア~そして日本で行われているツアープロモーション用に製作された限定100枚のレア化必至のミニアルバム。そしてジャケ、中ジャケ、ラベルデザインを手がけているのはURはもちろんPlanet E、Transmatといったデトロイトのレーベル、そして初期R&SやMaurizio諸作品のアートワークを手がけてきたAbdul Haqqによる書き下ろし。Rick Wadeの奏でるディープな音と共に楽しめるプレミアムアイテム。

5

MOEBIUS & MEUMEIER

MOEBIUS & MEUMEIER Zero Set 2 Reconstruct (Reconstruct By DJ Nobu) MULE MUSIQ / JPN / »COMMENT GET MUSIC
話題騒然「ZERO SET 2 RECONSTRUCT」からのシングルカット! こちらのDJ NOBUリミックス収録盤のみ日本先行発売!アンビエンス漂う小宇宙と強烈な鳴り物ブレイクの2リミックスを収録!

6

A.MOCHI

A.MOCHI Primordial Soup II FIGURE / GER / »COMMENT GET MUSIC
アルバムリリースが待ち遠しいばかりの(リリースはあのLEN FAKI主宰FIGUREです!!)大注目日本人アーティストA.MOCHI、その最新アルバムからのシングル・カット第二弾が到着!!!スパスティックさながらの怒涛のリズム転がしにいやおうがなしでもアがってしまうA-1を筆頭に、彼らしい迫力の重低音を唸らせたソリッドなサウンド、圧巻のロング・ブレイク、深く、そしてタフな強力フロア・ユースを本作も3曲収録。アートワーク含めて◎の一枚!!

7

JAZ

JAZ A Mix By Jaz CLAREMONT56 / UK / »COMMENT GET MUSIC
これまでにリリースされたJAZのエディットを含むクラシック・レアディスコ名曲が満載のこのCDオリジナルの新たなJAZエディット全50曲をJAZがミックス。MUDDによるアートワークデザインに包まれて、限定200枚プレスで、UKと日本のみでの発売です。

8

JENIFA MAYANJA

JENIFA MAYANJA Exclusive BU-MAKO / US / »COMMENT GET MUSIC
ディスクユニオン限定MIX CD-R!!!! USディープ・ハウスシーンの注目レーベル『BU-MAKO』からJENIFA MAYANJAのミックス!!JUS-EDの妻でもあり、BU-MAKOレーベルのオーナーでもあるJENIFA MAYANJA。こちらは彼女が、ディスクユニオンの為に録り下ろしたオリジナルMIX。自身の音源のようなアトモスフィックな空気感と女性らしい思い切りの良いミックスセンスによって、じわりじわりと浸透するBU-MAKO SOUND。限定50枚プレス!!!!

9

TIMO MAAS

TIMO MAAS Balance 017 BALANCE / JPN / »COMMENT GET MUSIC
数多くのミックスシリーズが氾濫する現在において、「FABRIC」や「DJ KICKS」などと並び不動の人気を誇る名物シリーズ「BALANCE」、今作ではなんと世界的人気を誇るDJ/プロデューサーTIMO MAASを起用! かのPAUL OAKENFOLD に見出され、90年代~00年代にかけてトランス/プログレッシブハウスシーンを席巻した天才が、現在主流であるテックハウス~ミニマルハウスを中心に、このコンピのみのエクスクルーシブ・トラックもふんだんに盛り込み創り上げた圧巻の2枚組!

10

DJ JURI

DJ JURI Remixes 1 & 2 フラワーレコーズ / JPN / »COMMENT GET MUSIC
DJ JURIの作品を日本国内の気鋭のプロデューサーたちがリミックスをした作品集でリリースツアー会場だけでしか手に入れることが出来なかった限定盤。どうしてもツアーに足を運べなかった皆様からの多数のお問合せにお答えする形で限定数入荷。まとめ買いセットをご購入の方のみに、ディスクユニオン限定DJ JURIの最新ミックスCDをプレゼント!

#8:白く黒い魂に捧げる...... - ele-king

 昔から洋楽ばっか聴いて日本の音楽を聴かなすぎる、と言われる。サッカーはJリーグばっか観ているクセに......。
 そうした指摘はある意味では当たっているが、はずれてもいる。たとえ割合が低いとはいえ、日本の音楽を聴いていないわけではないし、あまりそれを繰り返されると強制されているようで気分が良いものでもない。そもそも洋楽とは邦楽の対義語で、西洋音楽の略であるから、すでにこの二分法自体がウチとソトを区分けする日本の因習にちなんでいることになる。こうした日本的因習に齟齬を感じていたがゆえに海外文化に魅力を覚えたわけだから、洋楽というタームそれ自体を洋楽ファンと言われている人たちは捨てなければならない。僕自身も、洋楽リスナーと言われれても面倒くさいからそのまま受け流してきたけれど、ザ・クラッシュとRCサクセションを同時に聴いてきた自分のなかでは洋楽/邦楽を区分けしてきたわけではないので、正直言うと清々しない。だから「最近洋楽でいいのある?」と訊かれたら、「あなたのような人が聴いて面白がれる音楽は知らない」と答えている。

 日本的因習はやっかいだ。そっくり否定できるものでもないし、もちろん肯定できるものでもない。たとえばデトロイトのマイク・バンクスを見ていると、いかにポッセを保つことが彼らの社会では大変かを思い知る。個人主義の社会では集団行動は魅力的だろうが、維持が困難なのだ。わが国では逆だ。ヒップホップのポッセ文化もこの国に落とし込まれれば日本的集団主義に変換される。集団内においては番付が発生するかもしれないし、いわば部活のりになるかもしれない。部活というのは、それがとくに運動部の場合は、簡単に休んではいけないというプレッシャーがある。それは個人より集団、情より義理が優先されるこの国の文化と絡み合っている。近松門左衛門の浄瑠璃の時代から現在にいたるまで、この国では集団や仲間意識を捨てて色恋に走ることそれ自体が、反社会的なのだ。

 ザ・クラッシュの有名な"ホワイト・ライオット"の有名なフレーズに「俺たち白人は学校に行ってバカになるけど、黒人は警官に石を投げることができる」というのがある。ジョー・ストラマーはその歌のなかで、反英国的なメンタリティに飢え、憧れている。こうした異文化への激しい衝動を描いたもっとも古典的なアーカイヴに、ノーマン・メイラーによる1957年の「ホワイト・ニグロ」がある。オレら白人と違ってビバップの黒人は崇高な野蛮人である。連中は堂々と大麻を吸って、破壊的なジャズを演奏するいかした連中だ。彼らこそ世界を変えうる反順応主義者である......という話である(いや、本当はもっとややこしい話で、とても堅苦しい日本語で訳されている)。
 そのエッセイで「モデルにしたニグロは白人の想像力の産物だ」とジャック・ケルアックから批判されたものの、"白い黒人"という言葉で表現されるコンセプトこそ、われわれが洋楽と呼んでいるものと重なる。白い黒人――ヨーロッパとアフリカの北米大陸における衝突とその混合による成果、そのハイブリッドな結実――ブルース、ジャズ、ロックンロール、ヒップホップ、ハウス等々である。イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国から日本にいたるまで、今日の音楽文化におけるもっとも重要な種子はアメリカ合衆国の"白い黒人"という雑食文化から発生している。


ヒップ -アメリカにおけるかっこよさの系譜学
ジョン・リーランド (著)
篠儀 直子 (翻訳)
松井 領明 (翻訳) P‐Vine BOOKs

Amazon

 翻訳されたジョン・リーランドによる『ヒップ――アメリカにおけるかっこよさの系譜学』(篠儀直子+松井領明・訳)は、その邦題の通り、われわれを惹きつけてやまないアメリカ文化における"かっこよさ"に関する優れた分析である。それは"白い黒人"の物語だ。
 さて......、まずはこの物語のルールからだ。奴隷貿易は中南米でもおこなわれている。が、"白い黒人"文化はアメリカ合衆国で生まれた(その理由は本書で説明されている)。それは白対黒という二分法で説明できるような単純なものではない。われわれは物事を単純化したがるときに誤って「これは黒いグルーヴだ」などと表現しているが、それはエルヴィス・プレスリーはたんなるの文化の盗人と見なす発想で、本質主義者的な思想である。ムーディーマンのリズムが黒いのであるなら、白人との出会いを果たす前のアフリカのリズムと同質でなければならない。ドレクシアは西欧の植民地主義を呪ったが西欧そのものであるクラフトワークを手本にしていた。このように、"白い黒人"文化は複雑性に基づいている。そして繰り返すが、その複雑性の上に成立した音楽が、今日もわれわれを惹きつけているものの源である。
 もうひとつのルールを説明しよう。日本やイギリスのように伝統のある国が抱く愛国心とアメリカのそれとの違いだ。パティ・スミスやブルース・スプリングスティーンのような人たちがなぜ星条旗をまとうかと言えば、アメリカという(歴史を持たない)国は自分たちのアイデンティティを再発見していくという回路を持っているからである。アメリカとはこうあるべきだという考えを主体的に身にしているがゆえに、彼らのような反抗者と星条旗は結びつくのだ。
 ジョン・リーランドは、19世紀にはじまった、のちに"ヒップ"と形容されることになるアメリカ文化の"かっこよさ"の100年を実にスリリングに描いていく。『ハックルベリー・フィンの冒険』で、家出した少年が川を下りながらさまざまな文化経験を果たしていくように、ブルースからはじまり、ソローやメルヴィルといった文化的アウトサイダーの先駆者を通過しながらニュー・オーリンズのジャズへと進む。ロスト・ジェネレーションを経て、ハードボイルドをめくりながらビートへと突き進む。モハメッド・アリやマイルス・デイヴィスを追跡しながら、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの"ヘロイン"を吟味する。ライオット・ガールにリスペクトを示して、それから本書は最終的に21世紀の現代へと辿り着く。
 本書に描かれているすべてが面白いが、もっとも印象深いのは著者が認識するところの"ヒップ"の終焉の話である。リーランドによれば、その原因のひとつは市場経済に"ヒップ"が飲まれたことにあると説明する。つまり、酔って誤って妻を射殺したヘロイン中毒の文学者たるウィリアム・バロウズがいまもしファッション広告になっても誰も驚かないということだ。ドラッグディーラーだった50セントがこの華やかな消費社会で素早くマーケティングされるとき、"ヒップ"は弱まるのである。
 もうひとつ、世界がミクシィ化したこともその理由に挙げている。"ヒップ"すなわち"白い黒人"文化、アメリカ的なかっこよさの根源にあるのは反抗心だが、ミクシィ的文化が普及したとき、追放される者やメインストリームの文化の不適応者はいなくなり、そしてデスチャのリスナーとニルヴァーナのリスナーの違いなど(せいぜい趣味の違い程度のものでしか)なくなる。まあ、これも納得のいく話だ。原書が2004年に出版されているので、イラク戦争の真っ直なかということになるが、願わくばオバマ当選後の現在についての論考も読みたかった。"白い黒人"文化はさらに新しい局面を迎えているからだ。が、しかしそれは、状況を見定める時間がもう少し必要なのかもしれない。

 "白い黒人"文化がイギリスに渡ったときに、どうなったかと言えばモッドになった。外見は伝統的なイギリス人のスタイルで、しかし中身はホワイト・ニグロというトリックである。これがビートルズからオアシスまで続くイギリス文化の"かっこよさ"を特徴づけている。日本はむしろ外見的なところでは勤勉なまでに"白い黒人"文化を模倣しているが、中身については保守的だ。ハイブリッドではあるが、因習に飲まれがちである。どこかで融合を恐れているのかもしれな いし、あるいは、ミク シィでも赤ちょうちんでも、新しい出会いを追加することよりも毎度同じ顔ぶれであることの居心地の良さに浸っていたいのかもしれない。日本人である自分にはその感覚が理解できるけれど、結局は ムラ社会文化なのだと思うとやるせない。アメリカの"ヒップ"が弱体化するずっと前から、流動性が低く移動が難しいこの社会では、動くこと(move on)より留まりながら生きていくことの知恵を身につけ、いや、身につけすぎたのだ......。そんな表層的な文化論を考えながら、人気テクノDJであるメタルと同居しながら世話をやいている桑田晋吾と近所の本屋で立ち読みをしていたら、わが国では数少ないアウトサイダーのひとりを再確認した。『文藝』に掲載され ている中原昌也の小説を読んで、人目をはばからず爆笑してしまった。

You Kobayashi (SWC) - ele-king

YOUKOBA's CHOICE October.2010


1
Marc Houle - The Next - Minus

2
Andrei Fiber - I Want To Have 5 Noses - Indeks Music

3
Mar-T - Propaganda(Marc Marzenit Remix - Wow! Recordings

4
Fantastic Explosion - 血と掟(Blood And Rules) - ExT Recordings

5
Elad Emek - Dansvloer Bloedbad - Magic Powder Music

6
Egbert - Open - Cocoon Recordings

7
Bob Holroyd - African Drug(Four Tet Remix - Phonica Recordings

8
Traks Boys - Yellowbirds(TBD Remix) - Internasjonal

9
Mugwump - Losing Game - Kompakt

10
Mount Kimbie - Field - Hotflush Recordings
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727