「K A R Y Y N」と一致するもの

Fashion - ele-king

 ダンスフロアにあざやかな「レコードワッペン」!  日本発ダンスホールブランド『WATERFALL』が音楽シーンを愛する日本男児に今、発信する!

 SNS、YOU TUBE、Smart Phone、Internet Society…一体そこに何があると言うのだ? そんなものただの箱だ。自分の足で目で耳で体で感じなければ、存在意義なんてあるのだろうか? 人間は動物なのだから、踊りたいという欲求は誰もが持っている。ライヴハウスであれクラブであれ画面とは違う何かが必ず落ちている。それを拾いに行くかどうかが、あなたの人間としての真価が問われていると言っていいんだ。行かなきゃ何も始まらない。そして何も生まれない。箱入り男子まじダセェよ。箱に入らず、音楽の鳴ってる箱に行け。

 日本って格好いいんだよ。本当はね。昔から色んな国から影響受けて自分のものにしてきた。今じゃどうなんだろうな。松田優作ももういない。音楽もいつしかどうなんだろうな。どっかのアカデミック・ロック雑誌に媚び売ってるようじゃ先はないんじゃないか?そう考えるとロック単体はつまんなくなったな。ヒップホップやレゲエが格好いいっていう若者が増えたってのも納得がいく。ブラックミュージックへのリスペクトまで掘り返そうぜ若者よ。絶対、格好いいんだ。これは変わんないんだよ。テクノでもハウスでもブラックミュージックの感性を取り入れたものは永久的に聴かれてるわけ。いいものは永久さ。

 『WATERFALL』はどっから取ったかっていうとストーン・ローゼズのあの曲だよ。あぁあの最高に踊れる曲さ。歌詞もちゃんと読んだ方がいい。「滝みたいなんだ、彼女は」最高の詞だよ。イアン・ブラウンは最高にクールな詩人の一人だ。そしてこの4人の紡ぎ出すグルーヴは生半可なもんじゃない。この4人はまさに化学反応なんだ。箱に入っちゃダメなんだ。それを証明している4人だ。ロックなんて縛りはこの4人には通用しない。4人共通して好きなのは、ジョージ・クリントンにスライ・アンド・ファミリー・ストーン。あとは各々色んな音楽から吸収してアウトプットしてる。クールすぎるわけだ。

 踊らない人間に踊れる曲なんか書けるわけないだろ? なぁそうだろ。日本は格好いい国なんだけどここがまるでダメなんだ。口でいうグルーヴなんてのは簡単だけど、グルーヴってのは動物と自然のリズムなんだ。正に阿吽の呼吸ってやつさ。理論なんて存在しねぇ。グルーヴとテクニックを間違えてないかと思うことが多いんだよ。そういう人にはブラック・ミュージックとストーン・ローゼズを薦めるよ。そしてダンスホールで何回も踊ることだな。人間には踊ってて最高に気持ちいいタメとか、間合いってのがあるんだよ。ティロリロ言ってグルーヴですって勘弁しろよって感じ。音数は最小限なんだよブラザー。

 ダンスホールで楽しく踊ってる奴はやっぱりクールさ。ダンスホールが生んできた偉人も大したもんなんだよ。ジャン=ミシェル・バスキアもその一人なんだぜ。初めて知ったって人は映画でも見るんだな。映画もモノによってはクールだ。映画ってのもリズムがあるんだよ。『25時』っていう映画を観たことがないなら、早く観た方がいいぜ。鏡に向かって言葉を羅列するエドワード・ノートンは最高にクールだ。日本だって先に述べた松田優作は最高だ。役作りのために奥歯を4本も抜いたんだって逸話、世界もかなわないさ。

 そして日本から『WATERFALL』は発信している。まだまだ知らない人が多いんだよな。音楽好きな人には着てほしい。服バカ、音楽バカが作った服だよ。ストーン・ローゼズは言ったんだよ。「オーディエンスが主役」って。俺にも言わせてくれよ。「着ている人が主役」のブランドだ。これ着てダンスホールで輝いてほしいんだよ。とびきりの笑顔で。(WATERFALL代表 菅 雄介)

WATERFALL公式HP:https://waterfall.storeinfo.jp

※ele-kingの読者1名に、『WATERFALL』の「レコードワッペンニット帽 / ブラック」をプレゼント。欲しい方はinfo@ele-king.netまで、件名に「WATERFALLが大好きです」と記入して下さい。締め切りは10月13日正午12時まで。

Good Time - ele-king

 これ、なかなかおもしろい映画ですよ。前作『神様なんかくそくらえ』で東京国際映画祭グランプリと最優秀監督賞を受賞したジョシュ&ベニー・サフディ監督による新作、『グッド・タイム』。下層に生きる人間の生を独特の角度から捉えつつ、ハラハラドキドキも忘れない、素敵な映画に仕上がっております。OPNによる音楽も刺戟的で、挿入箇所がこれまたなんとも絶妙なのです。そんな『グッド・タイム』、日本での公開は11月3日ですが、それに先駆け、10月24日に渋谷ユーロライブにて先行試写会が催されます。本編上映後には、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏をお迎えしたトーク・イベントも開催される予定です。
 その『グッド・タイム』試写会に、10名様をご招待いたします。件名に「グッド・タイム試写応募」と入れ、本文にお名前とメール・アドレスをご記入の上、下記までメールをお送りください。当選された方にのみ、編集部よりご案内を差し上げます。

応募先:info@ele-king.net
応募〆切:10月15日(日)23:59

『トワイライト』『ディーン 君がいた瞬間(とき)』
ロバート・パティンソンの神演技を世界が絶賛!
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品
『グッド・タイム』
試写会プレゼントのご案内

【日程】 10月24日(火) 
18:30開場 19:00スタート予定 (上映時100分)

【場所】 ユーロライブ

住所:渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F ユーロスペース内
JR・地下鉄 渋谷駅から徒歩10分。駅よりかなり遠いため、余裕を持ってお越しください。
ご招待数:10名様 (提供:ファインフィルムズ)

●応募先・当せん案内:ele-king編集部(info@ele-king.net)
●当日は受付で、当せん案内メールもしくは、当せん案内メールをプリントアウトしたものを確認させて頂きます。
満席の際、及び開映後のご入場はいかなる理由でも、一切お断りいたします。予めご了承ください。
●本試写会はSNSアカウントをお持ちで、SNSからの感想、口コミ拡散をご協力頂ける方のみご応募下さい。
●当日は上映後にトークイベントがございます。
本作はR15+の作品の為、15歳未満の方の応募はご遠慮ください。

●主演は『トワイライト』シリーズで一躍世界的に有名になり、『ディーン 君がいた瞬間(とき)』(アントン・コービン監督)、『コズモポリス』(デヴィッド・クローネンバーグ監督)など、著名監督の作品にも次々出演してきた人気俳優ロバート・パティンソン。本作ではニューヨークの最下層で生き、投獄された弟を助けようともがく孤独な男コニーを演じ、カンヌ映画祭で“パティンソンのキャリア史上最高の演技”と称賛された。監督は、『神様なんかくそくらえ』で2014年・第27回東京国際映画祭グランプリと最優秀監督賞をW受賞した兄弟監督ジョシュ&ベニー・サフディ。コニーの弟ニック役にはベニー・サフディが監督と兼任し、他『ヘイトフル・エイト』のジェニファー・ジェイソン・リーらが出演。音楽にも監督自ら力を注ぎ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)に音楽制作をオファー。伝説のロックスター、イギー・ポップも参加したサントラで「カンヌ・サウンドトラック賞」を見事受賞している。本作は11月3日(祝・金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。

【ストーリー】 ニューヨークの最下層で生きるコニーと弟ニック。2人は銀行強盗を行うが、弟だけ捕まり投獄されてしまう。コニーは言葉巧みに周りを巻き込み、夜のうちに金を払って弟を保釈できるよう奔走する。しかしニックは獄中で暴れ病院送りになっていた。それを聞いたコニーは、病院へ忍び込み警察が監視するなか弟を取り返そうとするが……。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイトフル・エイト』)、バーカッド・アブディ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュ&ベニー・サフディ(『神様なんかくそくらえ』)
2017/アメリカ/カラー/英語/100分
原題:GOOD TIME
配給:ファインフィルムズ
© 2017 Hercules Film Investments, SARL
公式HP:www.finefilms.co.jp/goodtime

Loyle Carner - ele-king

 イギリス・サウスロンドン出身のラッパー、ロイル・カーナーは10歳の頃からラップをしていたという。エイミー・ワインハウスやアデルなどを輩出したブリット・スクールの出身で、しかもそこではキング・クルールと同級生になるが、専攻していたのはなんと演劇。本格的に音楽一本でやりはじめたのは2014年頃だそうだ。そこからあっという間に、期待の新人をピックアップしたBBCのサウンド・オブ・2016に選ばれるのだから、驚嘆するしかない。
 また、カーナーはADHD(注意欠陥・多動性障害)とディスレクシア(難読症)であることを公言している。そうした境遇の難しさや世間の無理解を知るカーナーは、ADHDの子どもを対象にした料理教室も主催するなど、堅実な草の根活動をおこなっている。ちなみに料理の腕前は“Florence”のMVで見られるが、テキパキと作業する姿はかなり手慣れたものだ。

 そんなカーナーを知るキッカケは、ケイト・テンペストとコラボレーションした“Guts”だった。2014年に発表されたこの曲でカーナーは、ひとつひとつの言葉を丁寧かつ鋭く紡いでいた。ケイト・テンペストを追いかけるために聴いたのだが、これは嬉しい発見だ! と心が躍ったのをいまでも鮮明に覚えている。それ以降の筆者はカーナーを熱心に追いかけるようになり、シングル「Tierney Terrace」やEP「A Little Late」など、カーナーの作品が出れば必ず手に入れた。
 もちろん、2017年度のマーキュリー・プライズにノミネートされたファースト・アルバム、『Yesterday's Gone』も手元に置いている。インタヴューでスケプタルーツ・マヌーヴァをお気に入りに挙げるなど、ヒップホップやグライムからの影響を隠さないカーナーだが、本作でもこのふたつの要素は見られる。とはいえ、オープニングの“The Isle Of Arran”では、S.C.I. ユース・クワイアの“The Lord Will Make A Way”というゴスペル・ソングをサンプリングし、作品全体としてもファンク、ソウル、ジャズの要素が色濃く表れている。ベースがリズミカルなのも特徴で、横ノリのグルーヴに合わせて踊れる曲が多い。カーナーの両親はソウル、ジャズ、ファンクを愛聴していたそうだが、その両親の嗜好を受け継いだ多彩な音楽性が本作の特徴だ。ザ・ピューリストやクウェズなど多くのプロデューサーを迎えたことも、多彩な音楽性を生みだす一助になっている。

 歌詞は、本作以前と同様に身近な題材が多い。なかでも頻繁に登場するのは母親だ。“Sun Of Jean”では母親の語りがフィーチャーされ、30秒弱の小品“Swear”はカーナーと母親の会話をそのまま収録したものだ。一方で、“Florence”では架空の妹についてラップしたりと、遊び心も見られる。しかしとりわけ目を引くのは、成熟したカーナーの姿だ。「A Little Late」に収められた“The Money”で文字通りお金を稼がなきゃとラップし、どこか焦燥を滲ませていた姿がそこにはない。日常の風景を的確にとらえる鋭い観察眼と落ち着きが際立っている。ひとつひとつの言葉は風格を漂わせ、今年で22歳になる若者だと知らなければ、ベテラン・ラッパーの新作と言われてもなにひとつ疑わないはずだ。こうした成長は、自身の信仰心に言及した“The Isle Of Arran”という名曲の誕生にもつながっている。深く内省したこの曲には、本作以前のカーナーでは込めることが難しかったであろう説得力がある。

 本作においてカーナーは、家族への愛情をこれでもかと示している。本作でも頻繁に登場することからもわかるように、母親に対しては特に熱烈だ。このような姿は、親元から離れ自立するのが“男”の理想像だと考える者にとって、珍しいものに映るかもしれない。たとえば、社会学者の平山亮による『介護する息子たち』は、庇護される立場である男性性(息子性)の姿を鮮明に描くことで、“男”の自立性は周囲のお膳立てによってもたられるものであり、自立を良しとする“男”の理想像は幻想に過ぎないと喝破した。このように旧態依然とした価値観を解きほぐす視点が、本作にもある。“男は仕事、女は家庭”という性役割に基づく家族モデルがいまだ根強い現在において、カーナーが本作で示す視点はオルタナティヴになりえるのではないか。そういった意味で本作は、現代的な問題を孕んでいる。

近藤真弥

Next >> 小林拓音


[[SplitPage]]

 UKのラップ・ミュージック、と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのはグライムだろう。2000年代前半にストリートから生まれたその音楽は、紆余曲折を経て現在、UKポピュラー・ミュージックの大きな一角を占めている。昨年スケプタがマーキュリー・プライズを受賞したのは象徴的な出来事だったし、今年リリースされたストームジーのファースト・アルバムが全英チャートで1位を獲得したことは、昨今のグライムの怒濤のような勢いを物語っている。
 サウス・ロンドンに生まれ、クロイドン南部で育ったUKのラッパー、ロイル・カーナー。彼が小学生の頃に子どもたちのあいだで人気だったのは、まさにそのグライムだったそうだ。イースト・ロンドンで生まれたその音楽は、カーナーらキッズたちにとってアクセスしやすいものだったようで、彼は幼い頃からグライムに触れて育ち、それによって人生を変えられたとまで言っている。だが急いで付け加えておかねばならないのは、カーナーのこのファースト・アルバムはいわゆるグライムではまったくないということだ。
 カーナーはグライムとともに90年代~00年代初頭の音楽もよく聴いて育ったのだという。なかでもコモンやモス・デフがお気に入りだったそうで、本作に直接的な影響を与えているのはそういったかつてのUSヒップホップである。じっさい、ギターのリフが耳に残る12曲め“No CD”では、ジェイ・Zやオール・ダーティ・バスタードといったレジェンドの名が巧みに韻を踏まれながら登場している。
 要するに、グライムを同時代的に受容して育った若者が、そのスタイルを直接取り入れるのではなく、自分よりも上の世代の音楽である90年代USヒップホップからの影響を独自に昇華することで作り上げたアルバムが、この『Yesterday's Gone』なのである、とひとまずは言うことができるだろう。

 カーナーはエイミー・ワインハウスやアデルを輩出したことで知られるブリット・スクールの出身で、当時キング・クルールとは同級生だったそうだけれど、在学中は音楽ではなく演劇を学んでいたという。その頃の彼にとってヒップホップはまだ余興のようなものだった。しかし彼は在学中の2012年に、ダブリンでおこなわれたMFドゥームのギグでサポートを務める機会に恵まれる。その体験が彼にとって大きな転機となったようで、カーナーはブリット・スクール卒業後、演劇の学校であるドラマ・センター・ロンドンに入学するものの、2014年に継父が亡くなったのを契機にドロップアウトし、音楽に専念することを決める。
 そうしてカーナーは2014年の9月にEP「A Little Late」を自主リリース。そこに収められた“Cantona”は、亡くなった継父に敬意を表した曲で、タイトルはその継父が好きだったというフットボーラー、エリック・カントナの名から採られている。この曲はMVも制作され、その後もたびたびBBCで取り上げられるなど、カーナー初期の代表曲と呼んでいいだろう。続いて彼は12月に、自身がリリックを書く上で大きな影響を受けたというスポークン・ワード・アーティスト、ケイト・テンペストとの共同名義で7インチ「Guts」を発表。翌2015年にはジョーイ・バッドアスのUKツアーでサポートを務め、グラストンベリーにも出演。同年8月にはアフリカ・エクスプレスの作品も出している〈Transgressive〉から7インチ「Tierney Terrace」をリリースしている。
 2016年には同じくサウス・ロンドン出身のトラックメイカー、トム・ミシュのLPや10インチに客演し、穏やかながらも芯のあるラップを披露しているが、とくに「Reverie」に収録された“Crazy Dream”は、そのジャジーな心地良さもあってか多くのリスナーから好評をもって迎えられたようで、カーナーの名もより多くの層へと広まり、同年10月にはナズのロンドン公演でサポートを務めるまでに至っている。

 このように順調にステップアップを重ねてきたカーナーが満を持してリリースしたファースト・アルバムが、本作『Yesterday's Gone』である。ゴスペル・クラシックのサンプリングで幕を開ける1曲め“The Isle Of Arran”や、前述のトム・ミシュをフィーチャーした4曲め“Damselfly”を筆頭に、本作には90年代を想起させるジャジーでレイドバックしたトラックが並んでいる。ここにあるのはハードでサグなヒップホップとはまたべつの、メロウでぬくもりに溢れたヒップホップだ。本作にはカーナー自身が制作したトラックも多く含まれており、彼がMCとしてだけではなくトラックメイカーとしての才能も併せ持っていることがうかがえるが、ここで触れないわけにはいかないのがクウェズの存在だろう。
 このアルバムでクウェズは、ソング・ライターおよびプロデューサーとして“Florence”、“Mrs C”、“Sun Of Jean”の3曲に関与している。これらはいずれも叙情的かつ哀愁漂う鍵盤が耳に残るトラックで、他の曲たちとは趣を異にしているが、これらカーナーとクウェズのコラボこそがこのアルバムの肝と言っていい。というのも、この3曲からは、カーナーに間接的な影響を与えたグライムとも直接的な影響を与えたUSヒップホップとも異なる、独特の風味が滲み出ているからだ。

 カーナーと同じくサウス・ロンドンを拠点に活動しているクウェズは、いまやUKを代表するバンドへと成長を遂げたジ・エックス・エックスの第1作『xx』(2009年)のデモ制作に関わったことで注目を浴びたアーティストである。その後ミカチューとのコラボやさまざまなリミックス・ワークを通して頭角を現し、2011年にはDRCミュージックに参加。翌年にはスピーチ・デベルのアルバムをプロデュースするなど、着々とその名を轟かせていった。同2012年にはEP「Meantime」を、翌2013年にはアルバム『ilp』をリリースし、ジェイムス・ブレイク以降のソウル/ポップを担うアーティストのひとりとしてその地位を確立。その後本人名義による作品の発表は停滞しているものの、プロデュース業やリミックス・ワークは相変わらず精力的におこなっている。昨秋リリースされたソランジュのアルバムにプロデューサーとして関わったことも記憶に新しい。彼とともにそのソランジュの作品に参加したサンファは、2008~09年頃にクウェズにフックアップしてもらったことによって自らの方向性に自信を持つことができたと語っているが、このようにクウェズは、本人自身が優れたアーティストであるとともに、新しい才能を発掘したりフックアップしたりする手腕にも長けているのである。そんな彼が次に手を組む相手はいったい誰なのか――その答えがロイル・カーナーのこのアルバムなのだ。

 UKで独自の発展を遂げたグライムを空気を吸うように幼い頃から享受してきたタレントが、本場USのヒップホップを憧憬をもって追いかけながら、ジェイムス・ブレイク以降のソウル/ポップ感覚と邂逅することで生み出したアルバム――それがロイル・カーナーのこのアルバムなのである。

小林拓音

Ryohu - ele-king

 つい先日MASATO & MinnesotahによるミックスCDがリリースされたばかりだというのに、KANDYTOWNの勢いは留まるところを知らないようだ。世田谷より飛び立ったこのヒップホップ・クルーから、今度はRyohu(呂布)が待望のソロEPをリリースする。タイトルは「Blur」で、発売日は10月11日(水)。それに先駆け、本日、同作収録の“All in One”のミュージック・ヴィデオが公開された。このMVはRyohuにとって初となるMVで、監督は映像作家の中村壮志が務めている。また、今回のEP発売を記念したリリース・パーティの開催も決定している。日時は12月8日(金)で、場所は渋谷WWW。MCだけでなくDJやトラック・メイキングまでこなすこの才能の新たな飛翔を見逃すな!

待望のソロ作「Blur」を10/11にリリースするRyohu(呂布)。
自身初となるMusic Video “All in One”が公開、
さらにはEP発売を記念したリリース・パーティを
12/8(金)に渋谷WWWで行うことが決定。

ラッパー/DJでありながら、近年ではSuchmosやペトロールズへの客演参加を行い、活動の幅を広げているオールラウンド・プレイヤーなアーティスト、Ryohu(呂布)。
いよいよ10月11日にリリースが迫る、初の全国流通盤EP「Blur」より、リード・トラックとなる“All in One”のミュージック・ヴィデオが公開となった。

Ryohu - All in One (Music Video)
https://youtu.be/qnIs6B1Viik

監督は、映像作家として、インスタレーション作品やファッション・フィルムを多く手がけている、中村壮志が担当。
Ryohuと共に赴いた欧州で撮影を敢行、夕暮れ時のマジックアワーに撮影を行ったワンカットのみのスタイリッシュな映像作品に仕上がっている。

また、「Blur」の発売に際して、12/8(金)に渋谷WWWにてRyohu “Blur” Release Partyを行うことが決定した。前売チケットは本日よりe+先行販売がスタート、前売購入者には特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape『No Pay No Play』をプレゼント。出演者は後日発表となる。

そして、店頭購入者への先着特典の詳細も発表となった。
リード曲“All in One”のリミックスとして盟友KANDYTOWNよりIOの客演がアナウンスされている。

■店舗共通特典(初回分のみ)
ステッカー2種(2枚1組)

■TOWER RECORDS オリジナル特典
Ryohu "All in One (Remix) feat. IO" 収録DLコード付きポストカード

【作品情報】

アーティスト:Ryohu(呂布)
タイトル:Blur(ブラー)
品番:LFIW-03
価格:¥2,000+税
POS:4943566231807

[トラックリスト]
1. The More, The Better
2. All in One
3. Shapeless
4. Desserts
5. Feelings (White Bird)
6. Shake
7. Say My Name

iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/id1279593525?app=itunes
Apple Music
https://itunes.apple.com/jp/album/id1279593525?app=music
TOWER RECORDS
https://tower.jp/item/4591081/Blur

【イベント情報】
Ryohu “Blur” Release Party
12/8 (Fri.) @Shibuya WWW
OPEN 18:30 / START 19:30
ADV ¥3,000 (+1D) / DOOR ¥3,600 (+1D)
※前売購入者特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape『No Pay No Play』をプレゼント

出演者:
Ryohu (Band Set)
and more

10/5(木)~ e+にて先行販売開始
https://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002240412P0050001P006001P0030001

10/14(土)~ プレイガイド一般発売
ローソンチケット / チケットぴあ / WWW店頭

【プロフィール】
KANDYTOWN、Aun beatz、ズットズレテルズ。
いつでも、どこでも、だれとでものスタイルは崩さず“今”重要な場所に現れては音と人、出来事をつなぐラッパー。DJやトラック制作も手掛け、その楽曲にも定評がある。
2016年に初となるソロEPを完全自主制作にてリリース、同年にはKANDYTOWNとして1st ALを〈Warner Music Japan〉からリリース。
SXSW2017ではオースティンでプレイするstarRoと東京のステージをリアルタイムに繋ぐCYBER TELEPORTATION TOKYOショーケースに出演。

HP: https://www.ryohu.com/
Twitter: @ryohu_tokyo
instagram: @ryohu_tokyo

Levon Vincent - ele-king

 NYのテクノ・プロデューサー/DJのレヴォン・ヴィンセントが自身のセカンド・アルバム『For Paris』を期間限定でフリーDL公開すると発表した。ヴィンセントは、2015年に起きたパリのテロ事件の直後、facebookにおいて(ニューヨーカーの彼にしたら)ポケットナイフ持って自衛するのが当たり前のような好戦的なコメントを寄せたことで炎上した。新作は、その発言に対する彼の深い謝罪が込められている。以下、ヴィンセントのコメントとリンク先。

「友人の皆さんへ、セカンドアルバム“For Paris”をリリースすることを発表します。

 まず、お詫びをすることの準備に時間がかかりすぎたことに謝りたい。私は100%の完成ではないと何かをしたくなかったのです。皆さんは想像できると思いますが、2015年に私が投稿した最低のコメントの後、何ができるだろうかとたくさんのことを考え、反省しました。本当にたくさんのことを考えました。

 ことを慎重に進めたことを皆さんにお伝えしたいです。あの時は完全には理解していませんでした。皆が私のことをふざけたヤツとかテクノ野郎が馬鹿げた曲名を付けたと思われていました。音楽業界は政治的な決まり事がたくさんあるんだと学びました。そのことがきっかけで人間性の新しい方向を探ろうと思いました。何年も世界中を旅して、地元ニューヨークと世界には大きな違いがあることも気付きました。その経験を通して、謝罪の意味を込めて何か世界の人のためになるようなものを作ろうとインスパイアされました。

 私の音楽と、そこにあるメッセージが新しい平和活動の推進力になればいいと願っています。平和について私が学んだことと、混乱する世の中についてもっともインパクトのある言葉とともに音楽に込めたことについて話をしたいと思っています。

 私はたくさんの本を読み続けました。多くを読んでもっと大きな世界観を持つべきだと決意しました。老子の本、マーティン・ルーサー・キングJrの自伝、旧約聖書の詩篇、出エジプト記、マルコムX、パティ・スミス、ガンジーの平和的抵抗、NLPの抑制術、軍事評論家John Robbによって書かれた本、アメリカの平和運動と市民権の時代の興亡、ナチスの心理戦術、禁酒法時代のアメリカについて、戦争の本質、平和について。また瞑想を通して何が起きているのか、革新的なスピリチュアリズムを学んできました。

 その中でジョン・レノンがビートルズの知名度についてコメントして騒動を起こしたことを知りました。彼は自分らを神と比べたのです。彼自身と友人が公にトラブルに巻き込まれてしまった話に惹きつけられました。私自身をジョン・レノンと比較しているのではありません。よく考えずに、言葉を慎重に知的に選ばなかったことが似ていると思ったのです。大きなプラットフォームへ急速に入り込んでいくミュージシャンは盲目的な部分から離れていってしまい、もしこのことを深く知らなければ生活や地位が脅かされていくのです。そしてこの言葉を読みました。“私達が言えることは平和と機会を与えることだ” “全ての人類が想像してみよう・・・”
その時私は泣きました。このことこそが、平和を受け入れること、怒ること無く愛することのコンセプトであり、パニックや恐れのない世界への解答なんだと突然ひらめいたのです。平和こそが答えなのです。なんでもっとうまくやってこれなかったのでしょうか?ジョンとヨーコは彼らの平和のメッセージを広告の形を取ってプロモートしたことを嘲笑われました。彼らはニューヨークのダコタビルに住んでいる時に、この発表のせいでトラブルに巻き込まれてしまいました。最終的にはジョンは殺されてしまうのです。

 考え始めました。平和を広めるコンセプトについて一つの発展的な考えに辿りつきました。テクノというサブカルチャーから自分がこのムーヴメントに何かできるのではないかと思ったのです。もしくはなんでもいいから自分のやり方で世界に平和を加えることができるのではないかと考えました。人は創造と破壊の両方を行えます。私は創造することを選びました。

 平和を広めるにはまだ十分じゃないと気付きました。人の持つ3つの暗黒面という社会病質や病理学についてもっと学ばなくてはいけないと思いました。これは私にとってとても重要な事でした。なぜなら今までの人生で失っていたものや出会わなかった物事を私に気付かせてくれたのです。何千年にも渡って人々が傷つけあってきた行動パターンをなくすにはどうしたらいいのでしょうか?コモディティとしての力、交換や欲しがることなどはよくないことで、力のための競争ではなく、心や精神の中にコモディティとしての知恵を取り入れることに重きを置くにはどうしたらいいのでしょうか?これらのことを考えて、音楽を作りました。若かった頃に人生について楽観的に考えていた頃のアイデアも引っ張り出してきました。
平和を皆で享受するべきだと思います。このことがスタイリッシュでクールなことにしたいのです。私は頑張ってやってみるので、願わくばあなたにもやってもらいたいと思います。文章を書くのは得意ではないですが、無意識に共鳴してもらえたらと思います。私は変わった方法で学びましたが決して軽んじることはありません。このことが音楽を通してあなたに反映されることを願います。このアルバムは来週リリースされます。Ericの作品はその翌週です。彼は常に平和的で愛に満ち溢れています。これは一種のキャンペーンで私なりの最大限の努力です。

 パリへの、そしてヨーロッパを始め世界の人々への敬意を示して11月までは何もリリースしません。12月には4枚のレコードでこのアルバムをリリースします。中身は少し異なっていて、自作のアートワークが付いています。愚かで洗練さの欠けた私のコメントを通して個人的に学んだことについて謝罪と行動を取り続けていきます。

 この音楽を気に入って、何かを掴んでもらえたらうれしいです。これはPRではありません。これは本心です。この経験を通して学んだことに感謝しています。私の心と精神をこのアルバムに込めました。皆さんにこのアルバムを共有することを楽しみにしています。そして全てに対して申し訳なかったと謝罪します。

 愛をこめて、世界の平和を祈っています。」Levon Vincent

CASSETTE STORE DAY JAPAN 2017 - ele-king

 ヴェイパーウェイヴ以降、カセットどころかVHSというのもここ最近ではあるんだよね、これがまた。と同時に、デッキを持ってないのにエイフェックス・ツインのテープを買う人もいるわけで、どうせDLして聴くのなら無理してモノに拘らなくても……と思いますよ。それでもカセットが増えていくのは、個人単位のインディ・レーベルにとって、1台のコピー機さえ手に入れれば、(デザインはPCでできちゃうので)これほど出しやすいフォーマットはそうそうないからだろうか、あるいはフェティシズムの問題からなのだろうか……。
 ASSETTE STORE DAYが10月14日(土)と迫っております。2013年に英国ではじまったこのイベント、いまや欧米で毎年開催され、日本では昨年から開催となった。
  今年のカセットストアデイは、ディスクユニオンをはじめ、全国のカセット好きなレコード店でいろんなカセットテープが販売されます。(詳しくはサイトを見て下さい)イアン・マーティンの〈Call And Response〉、五十嵐の〈Mastered Hissnoise〉も、数々の力作を引っさげて参加しているようです……なんでも今年は初音ミクがアンバサダー就任したそうで、ミクのカセットプレイヤーまで売られるそうですよ。
 個人的には清水靖晃の『案山子』が欲しいです。

https://cassettestoreday.jp/


こちらは〈Mastered Hissnoise〉のカセットテープ。CD HATAとInner Scienceの1本は、アンビエント/ドローン好きには外せないっすね。岡山のKEITA SANOもあるじゃん!


五十嵐とは真逆に位置する初音ミクですね。活躍してますな-。

Bullsxxt - ele-king

 来ました! 先日レコーディングの模様をお伝えしたBullsxxt、10月18日に待望のファースト・アルバムのリリースを控えるこの若手ヒップホップ・バンドが、ついに新曲を公開しました。しかもなんと仙人掌とのコラボです! 本日よりiTunes/Apple Musicで先行配信が始まっています。これはアルバムへの期待が高まりますね。あと2週間、楽しみに待っていましょう。

https://itunes.apple.com/jp/album/bullsxxt/id1288815341

10/18に1st AlbumをリリースするBullsxxt、
本日より“In Blue feat. 仙人掌”をiTunes/Apple Musicで先行配信開始!

10/18に1st Album『BULLSXXT』を発売するBullsxxt。今作の中から、仙人掌とコラボした“In Blue feat. 仙人掌”が、本日よりiTunes/Apple Musicで先行配信を開始。同時にアルバム・プレオーダーも可能。UCDと仙人掌から紡ぎ出される言葉、リズム、バンドによる抜群のメロディを一足早く感じてほしい。

https://itunes.apple.com/jp/album/bullsxxt/id1288815341

【リリース情報】
2017.10.18 Release
PCD-25240 Bullsxxt『BULLSXXT』
¥2,500+税

[TRACK LIST]
1. ES
2. In Blue feat. 仙人掌
3. Sick Nation
4. Fxxin’
5. Poetical Rights
6. Swing
7. Classix
8. Cet aprés-midi
9. 傷と出来事
10. Reality
11. Stakes

[プロフィール]
UCD (MC)、tommy (Gt)、Naruki Numazawa (Key, Syn, Vo)、Ecus Nuis a.k.a. Pam (Ba, Syn)、Shotaro Sugasawa (Dr, Per)。2012年結成. 東京を拠点に活動するヒップホップ・バンド。ジャズ、ソウル、ファンク、ルーツ・ロック、エレクトロニカなどさまざまな音楽から影響を受け、コンシャスネス~ポップネスを孕んだヒップホップ・サウンドを追求しつづけている。2016年1月に、自主制作での1st EP「FIRST SHIT」を発表。『MUSIC MAGAZINE』誌などで取り上げられる。2016年5月には、恵比寿BATICAにてBudamunk、ISUUGI、やけのはら等が出演したイベント『CATTLE CLUB』を主催。その後、メンバーの脱退や加入を経て、現在の5人編成で活動中。2017年10月に1st Album『BULLSXXT』を発表予定。

[ライブ情報]
s_r_e_c

公演日:2017年10月5日(木)
会場:渋谷7th FLOOR
出演: Bullsxxt / 吉田ヨウヘイgroup
開場 / 開演:19:00 / 20:00
前売価格:¥2,500+1D
予約先:m19m.mmts@gmail.com
(件名に公演名、本文にお名前、予約人数をご記入ください。)

DJ HARVEY - ele-king

 DJ界の生きる伝説と言えば、DJハーヴィーである。とにかく、20年以上も、世界中のハードコアなパーティ・ピーポーを魅了し続けるバレアリックの真の王様を体験しよう。ひょっとしたら君の人生で忘れがたいほどもっともすさまじい夜になるかもしれない……また、つい先日、彼にとっての初のコンピレーション・アルバム『The Sound of Mercury Rising Complied with Love by DJ Harvey』もリリースされたばかり。こちらも外せない!

DJ HARVEY 2017 TOUR OF JAPAN

DJ HARVEY (Locussolus, Wildest Dreams / LA)

https://www.facebook.com/HarveyDJay/
https://www.instagram.com/harveysgeneralstore/


11/17(金)@江ノ島OPPA-LA(https://oppala.exblog.jp
11/18(土)@東京CONTACT(https://www.contacttokyo.com


DJ Harvey
The Sound Of Mercury Rising Complied With Love By DJ Harvey

Pikes Records / Music 4 Your Legs
国内盤特典:DJ HARVEYによる直筆サインをデザインしたステッカー付き


DJ HARVEY (Locussolus, Wildest Dreams / LA)

https://www.facebook.com/HarveyDJay/
https://www.instagram.com/harveysgeneralstore/

ハウス、ディスコ、バレアリック・シーンのカルトリーダー、リエディットの帝王。そして、DJとしてもっとも神の領域に近い男と称されるリヴィング・レジェンド、DJ HARVEY(DJハーヴィー)。

イギリス・ケンブリッジ出身。1980年代半ばのロンドンでDJキャリアをスタート。DIYクルー「Tonka Sound System」に属し、セカンド・サマー・オブ・ラヴの狂騒の真っ只中にウェアハウス・パーティーやレイヴでその名を馳せ、1991年に自身のパーティー「Moist」を始める。Harveyのコネクションにより「Moist」には、ニューヨークの伝説のクラブParadise Garageのレジデントで今もDJの神として崇められている故Larry Levanをはじめ、アメリカやヨーロッパのDJたちが数多く出演。後のニューハウスと呼ばれるシーンの起源となった。またHarveyは、当時イギリス初の巨大クラブとなるMinistry of Soundのコンセプトおよびサウンドシステムの設計を担っていたLarryをサポートするほか、同クラブのレジデントも務め、名実共にトップDJの階段を昇りつめる。プロデューサーとしても、1993年にGerry Roonyと共にレーベル<Black Cock>を立ち上げ、近年再評価著しいディスコ・リエディットの源流となる傑作を多数リリース。1996年に自身初のミックスCD『Late Night Sessions』を<Sound of Ministry>よりリリース。2001年には、Sarcasticのプロモ・ミックス『Sarcastic Study Masters Volume 2』を発表。2000年代以降のコズミックやバレアリック・シーンに決定的影響を及ぼしたこのマスターピースは、世界最大の中古音楽市場「Discogs」で、ミックスCDとして史上最高額となる500ドルの値が付けられている。

2002年にアメリカ・ロサンゼルス(ヴェニスビーチ)に移住。国境を越えてハードコアなパーティー・ロッカーが集うウェアハウス・パーティー「Harvey Sarcastic Disco」やホノルルのThirtyninehotelでレジデントDJとして活躍。ロングセットでのDJスタイルや、レフトフィールドなディスコ、バレアリック復権への大きな流れを作った。LAアンダーグラウンドの聖地として「Harvey Sarcastic Disco」はカルト的な人気を誇り、あまりの混雑ぶりに、かのBeyoncéでさえ入場を拒否されてしまったというエピソードがあるほどだ。また、サーファー、スケーター、バイカーでもあるHarveyは、「Dogtown & Z-Boys」のオリジナル・メンバーとして知られる伝説のスケーター、Tony Alvaをフィーチャーしたエキシビション・ツアーに同行して、ミックスCD『Mad Dog Chronicles Soundtrack』を提供。ストリート・カルチャーとロックが同居する自身のバックグラウンドを垣間見せた。2007年には、同郷で盟友のThomas Bullock (Rub N Tug)とのユニット「Map of Africa」名義のアルバムを<Whatever We Want>からリリース。サイケデリック〜ダビーなバレアリック・ロックサウンドを展開した。

2010年にようやくビザの問題が解決して、アメリカ国外への渡航が可能になると、世界中からオファーが殺到。その最初のツアー国は日本であった。奇跡の再来日が実現した2010年GWのジャパンツアーでは、全国12都市を回り1万人以上を動員。狂熱に満ちたHarvey旋風が日本中に吹き荒れた。また、母国イギリスはロンドンのOval Spaceで開催された10年ぶりの凱旋パーティー「Red Bull Music Academy presents DJ Harvey」は、チケット発売後わずか1分でソールド・アウトを記録。そのほか、ベルリンのBerghain / Panorama Bar、ロンドンのFabric、Ministry of Sound、イビサのSpace、Pacha、DC-10、パリのRex、Concrete、フランクフルトのRobert Johnson、アムステルダムの​Trouw、モスクワの​ARMA17、テルアビブのBlock、バリのPotato Head、ニューヨークのOutput、シカゴのSmartbarなど、世界各国の主要クラブはもちろん、Coachella、Panorama、ADE、Sonar、Mutek、Movement、Dekmantelなどのフェスにも登場。Festival No.6ではGrace Jonesとダブル・ヘッドライナーも務めた。Rolling Stone誌でHarveyは、「DJ界のキース・リチャーズ」と評され、「世界に君臨するDJ」トップ10にランクイン。昨夏は、日本を代表する野外音楽フェス「フジロック」20周年記念の大トリも飾った。

制作面では、シングル、リミックス、リエディット作品のほかに、オリジナル・アルバムを3枚リリース。1枚目は、先述の「Map of Africa」名義のアルバムで、2枚目は、ディスコ、ロック、テクノ、そしてハウスなどをブレンドしたフロア・ライクなソロ・プロジェクト「Locussolus」名義のアルバムを、2011年に<International Feel>から発表。3枚目は、4人組サイケデリック・バンド「Wildest Dreams」名義のアルバムを、2014年に<Smalltown Supersound>よりリリース。ミックスCDはこれまでに、歴史的名盤『Sarcastic Study Masters Volume 2』をはじめ、オフィシャル、アンオフィシャルを合わせて6作発表している。そして今年9月29日に、自身初のオフィシャル・コンピレーションCD『The Sound of Mercury Rising Complied with Love by DJ Harvey』を、<Pikes Records> / <Music 4 Your Legs>(国内盤)よりリリース。この作品は、バレアリック・サウンドが生まれたスペイン・イビサ島の伝説的ホテルPikes Ibizaで、Harveyが2015年より毎夏レジデントを務めているパーティー「Mercury Rising」をパッケージ化したコンピレーション・アルバム。Harveyは、毎週月曜の「Mercury Rising」で、サンセットからサンライズまで10時間以上に及ぶロングセットをプレイしてきたが、そこでのグルーヴやバレアリック・フィーリングと共に、3シーズンに渡りフィーチャーしたトラック12曲(1976〜2016年の40年間にリリースされたディスコやダンスミュージック)をセレクト、コンパイルしている。

エンドレス・ポエトリー - ele-king

 初めてルキノ・ヴィスコンティ『家族の肖像』(74)を観たときは「なんてスゴい映画なんだ」とトリハダ大感動だったにもかかわらず、2~30年してもう一度観たら、ぜんぜん意味がわからなかったことがある。とくに後半の政治談義はさっぱりで、なんで、学生時代の自分にはこれが面白かったのか、それもまたナゾであった。二度観ることで印象が変わってしまう映画はざらにあるし、間隔が空いていればそれはなおさら。ちゃんと楽しめるようになっていたり、前よりも深く没入できた時はいいけれど、たいていは前に観た時よりもヒドいと感じてしまい、好きな映画がどんどん減っていくのはけっこう笑える。こんなものに長く囚われていたのかと。意味もなく大切にしていたゴミをついに捨てた気分。
 アレハンドロ・ホドロフスキー『エル・トポ』(69)にも同じようなところがあり、最初に観た時はそれこそ圧倒された。そして、その記憶だけが増幅されていった。難解な映画の代表作のように言われる作品だし、それ以上、自分の言葉にできなかったというのはやはりダメなのだろう。これもやはり30年ぐらいしてからもう一度観たことで何かが頭の上からどいた気分になった。もう一度観ることがないとは思わないけれど、とりあえずいったんは捨て去ることができた。もう一度観るにはやはり新たなキーワードが必要である。『アモーレス・ペロス』や『散歩する惑星』が「虚無」をアップデートした時代に『エル・トポ』というのはどれだけ応えてくれる作品なのか、それを説いてくれる言葉が。『クスクス粒の秘密』や『パラダイス:愛』が束になってかかってくる現代に。

 とはいえ『エル・トポ』を観直そうと思ったのは、4年前、『リアリティのダンス』(13)にまたしても異様な感動を覚えたからだった。同作はホドロフスキーが23年ぶりに映画界に舞い戻った凱旋作で、強権的で異常なほど抑圧的だった父親(スターリン主義者)の半生を受け入れるためにどうしてもつくらざるを得なかったとしか思えない自伝作であり、世界というものがどんなところかわかり始めてきた少年の視点と実際の時代背景が絶妙に入り混じった自己セラピー映画だった(悪くいえば捏造記憶の映像化)。『リアリティのダンス』を観れば氷解することだけれど、『エル・トポ』は父親のやったことはすべて徒労でしかなく、あげくに焼身自殺させてしまうというストレートな父殺しの映画だった。それと同じようなことを今度はコミカルにやり直したのが『リアリティのダンス』で、人というものは幼少期に感じた恐怖を笑いにすることでしか乗り越えられないという学説を裏付けているようなところがある。そういうことを80歳過ぎてもやったと。しかもそれが無類に面白かった。さらには父親の人生をテロリストとして再生することでそれなりの意義も認めているところは大きな変化である。もともと『エル・トポ』でも父に捨てられた息子は再会した父に向かって「殺す」と告げたにもかかわらず実際には殺せず、自分の手で父殺しはできないという留保は付けられていた。このちょっとしたためらいを彼の人生という別なスケールの中に移し変えてみると、ホドロフスキーが創作へと向かうエネルギーはすべて父親がくれたようなものだと無意識に理解していたということにはならないだろうか。『エル・トポ』で父を殺せなかった自分という図式は『リアリティのダンス』ではイバニェス大統領を暗殺できなかった父親という関係でもう一度リピートされる。権力が強大であればあるほどカウンターの力も増すという図式を彼は温存したかったのだろう。そう、『戸川純全歌詞解説集 疾風怒濤ときどき晴れ』を読んでいただいた方には伝わったかもしれないけれど、戸川純は同じように幼少期に父親から受けた暴力を“好き好き大好き”という曲にして、早々と笑いに転化していた。ホドロフスキーよりもぜんぜん早熟である。しかも“シアー・ラバーズ”という曲では父との距離感を次のステップまで進めている。ホドロフスキーが生きている間にその境地まで辿り着くとは思えない。そんなことはないのかな。どうだろう。そう思っていたら『リアリティのダンス』の続編にあたる『エンドレス・ポエトリー』が公開されることに。青年期の始まりである。

『リアリティのダンス』と同じくシュールレアリズムというものの方法論を再認識させられる作品である。しかし、父親との確執を前面に押し出した前作と違い、貧しい暮らしを背景に芸術を求める青年像という筋書きはややありきたりに感じられた。まったく様式性の異なる演出にしてしまえばよかったのかも知れないけれど、やはりイメージを喚起する力はさすがなので観ている間は圧倒されっぱなし。モノクロとカラーを組み合わせて異なる時間軸を共存させ、ギターケースには肉を、巨大なアトリエにカーニバルを詰め込んだり。それらが洪水のように流れていくものの、彼にとっての父親と違い、目の前を流れていく風景はトラウマには発展していかない。どちらかというとホドロフスキーにも普通の時期があったんだなという感慨の方が僕には強く残ってしまった。チリからパリに移り、シュールレアリズムから神秘主義へ転じ、最初にハプニングを始めたアート・パフォーマーとも言われ、メキシコでは前衛演劇、さらにはLSD、映画、コミック、マジックショーと知れば知るほどこんな人間が本当に存在するのかと思うような才能がともすると『ゲゲゲの女房』や『苦役列車』と同じ地点に立っていたことがわかるような映画なのである。これは微妙である。いっそのこと自分とは完全にかけ離れたような存在でいて欲しかったような気もしてしまうし、共通点がないとそもそもこの人に興味を抱かなかったかも知れないし。ただし、経歴からもわかるようにホドロフスキーの作品は徹底的に身体性から発しているものなので、一見、整合性のないストーリーでも、なるほどダンスを踊るかのように意識も持って行かれてしまい、体を動かすことが嫌いではない人たちは興味の有無とは別に作品には同調しやすいのではないかと。それこそ身体性のまったく欠如したデヴィッド・リンチの映画が苦手だという人にはアピールしやすいとも(ホドロフスキーもリンチも同じように好きだという人はちょっと信用できない)。全身を真っ赤なタイツで包んだ人々の行進と同じように黒と白でドクロ模様が描かれたタイツを着た人たちの行進が混じり合い、めくるめく血と骨のイリュージョンに包み込まれたかと思うと赤と黒と白がナチスの旗に変換される刹那など政治的に支配されていくプロセスを的確にコントロールされたようで、恐怖感は倍増だった。あのシーンにはほんとに逆らえなかった。

『エンドレス・ポエトリー』では父親との確執を前面に押し出さなかったと先に書いた。しかし、エンディングはパリに向かおうとしたホドロフスキーが港で父親とケンカになるシーンである。両者ともに罵りまくる。これもホドロフスキーにしては普通すぎる。『リアリティのダンス』では暴力でしかなかったものがコミュニケイションに変化している。実際に父と息子はこの時が今生の別れとなったらしく、もしかするとリアルに再現したのかも知れないけれど、『リアリティのダンス』をつくったからこのような屈託のない描き方もできるようになったのだろう。セラピー後の表現というのは概して面白くないものである。それは仕方がない。それに第3部としてパリ編もこの後につくられるらしく、つなぎとしてはどうしても必要なシーンだったのだろう。「父親」後の世界が始めるためには。

 僕は『スター・ウォーズ』を一本も観たことがない。同シリーズはホドロフスキーがハリウッドに持ち込んだアイディアの残骸だったと明かされる『ホドロフスキーのDUNE』を観た時、僕はそのことをちょっと誇りに思った。


The National - ele-king

 ザ・ナショナルの4年ぶり7枚目のアルバム『Sleep Well Beast』を手にした瞬間、暗い……と思った。とにかく2017年によく聴いたアルバムは、何故かこのようにどれもこれもジャケットが暗い。発売直後のレコード屋の店頭ではこのザ・ナショナルの7枚目のアルバムの横に、同時期に発売された白々しいほど真っ青な空を写した明るいジャケットのLCD サウンドシステムの復活作『American Dream』が並べられ、対比的なフロムアメリカの音楽の表情の違いにひとり笑ってしまいそうになったが、どちらも実は絶望しているという点では同じことなのかもしれない。

 『Sleep Well Beast』というアルバムは、この世ではないどこか別の場所で鳴らしているような“Nobody Else Will Be There”の重いピアノの音色からゆっくりとはじまる。予想通り、闇のように暗い。しかし2曲目の「Day I Die」。「僕が死ぬ日、僕が死ぬ日、僕らはどこにいるんだろう?」と先の見えないいまの世のなかに問いかけるかのように繰り返される痛々しい言葉。それとは裏腹に、高まる鼓動のように早く鳴り続けるリズムの力強さと、重なり合う美しいギターのフレーズ、突き抜けるメロディの高揚感が混ざり合い、死を意識しているというのに恐ろしいまでに生命力に溢れたパフォーマンスを叩きつけられる。キャリアを積み重ねてきたバンドの底力を感じるような曲の凄さに、ここでまず身震いする。
 その後も、感情的なギターフレーズにやられる4曲目の“The System Only Dreams In Total Darkness”や、荒々しい6曲目の“Turtleneck”、機械と人力の両方のリズムを使って登りつめていく8曲目“I 'll Still Destroy You"から、先行配信されていた9曲目の“Guilty Party”に続き、それを繋ぐように挟まれたピアノの穏やかな曲で抑揚を効かせて、終わりへとどんどん向かっていく。メロディアスなコード進行と、寡黙なリズムと、静かに爆発する美学。作品を覆う全体のトーンは一貫していて、まあ素晴らしいこと。

 2015年に発表されたヴォーカルのマット・バーニンガーがメノメナのブレント・ノップフと組んだサイド・プロジェクトEL VYのユルくておかしなアルバム『Return To The Moon』を気に入ってよく聴いていたので、『Sleep Well Beast』のマットの歌声を久々に耳にして、曲調によってこんなに印象が変わるものかと驚いてしまった。ザ・ナショナルに戻った瞬間、本領発揮と言わんばかりに影を作りだす力は一体どこに隠していたのだろう。地を這うような低い歌声はさらに深みを増している。それぞれがギターやキーボード、サウンド・プロデュースなどを担当するデスナー兄弟は、バンドの活動から離れたところでクラシックや映画音楽に関わっていると聞いているし、年齢とともにじょじょに実験的な音楽に変貌を遂げてもおかしくはないのに、それなのにザ・ナショナルときたら、エレクトロニックな音をところどころに使いながらも淡々とエネルギーを燃やすように、奇をてらわずに、真っ当なロックをいまだ奏でるなんて、敵わない。弱音や皮肉や諦めを乗せた歌詞を優しく包み込むエモーショナルな音を前にすると、枯れて朽ち果てていく肉体にも感情はあり、ちゃんと生暖かい血が流れていることに気付く。これは何回か聴いて1ヶ月後には忘れ去られてしまうようなアルバムとは明らかに違うということ。そして聴き終えた後に、誰かに伝えたくなるような使命感をもたらすもの。暫くザ・ナショナルから離れていた人や、いままで出会う機会がなかった人のところにもちゃんと届けばいいと祈っている。

 『Sleep Well Beast』は暗い。けれどもう一度ジャケットを見てほしい。弱いながらも光はあり、そこには誰かがいる。真夜中に窓の外を眺めて、遠くの方に知らない家の窓の灯りを確認できたら、今日のところは黙って毛布にくるまり、穏やかに眠りにつこう。

 よくお眠り、獣よ、君もね。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727