「K A R Y Y N」と一致するもの

 去るパンデミックの折はユニークなアイディアを発揮、「寝ているだけでアーティストをサポートできるアルバム」を発表した world’s end girlfriend だが、以降の期間はすべてのライヴ活動を中止し、アルバム制作に没頭していたようだ。かくして完成したのが新作『Resistance & The Blessing』なのだが……なんと全35曲144分、LP4枚組/CD3枚組の大作となった。これをリリースするには、端的に、制作費が足りない──
 というわけで、デジタル・シングル “Ave Maria (short edit)” が配信されることになった。5ドル以上で購入可能、購入者の名前はアルバムに記載されるという。シングルを買って、world’s end girlfriendをサポートしよう。

world’s end girlfriendが新作アルバム制作費支援のための
デジタルシングル「Ave Maria (short edit)」をリリース。

https://virginbabylonrecords.bandcamp.com/track/ave-maria-short-edit

全35曲144分、LP4枚組/CD3枚組で年内リリースが予定されるworld’s end girlfriendの
ニューアルバム『Resistance & The Blessing』の莫大に膨れ上がった制作費をサポートするため
シングル「Ave Maria (short edit)」をリリース。
この楽曲の購入者はアルバム内にお名前がクレジットされます。

*Bandcampにて5ドル以上で購入できます。
*購入時の金額記入欄の下部にメッセージが追加できますのでそちらより記載を希望する「お名前」or「アカウント名」を記入ください。
*クレジット記載を希望しない方はメッセージ欄に「名無し」と記載ください。
*2023年5月末までの購入者がアルバムへのお名前記載の対象となります。

[world’s end girlfriendコメント]
コロナという半端な時間があったので全てのライブをやめて、
肉体と精神と時間と残高を擦り減らしながら思い存分アルバムを作って、
全35曲144分という今時こんな長い作品を誰が聴くんだよっという最高なアルバムが出来上がって、
リリースするならLP4枚組/CD3枚組、MVは現状2つを制作中。あともう1つMV制作するつもりっという状態で。
いつだって自腹で制作してる私ですが、流石に今回はやばいぞってことで、、
アルバム制作費サポートするためのシングル「Ave Maria (short edit)」をBandcampよりリリースします。この楽曲を購入した方はアルバム内にお名前をクレジットさせていただきます。
音楽と共にこの素敵な物質にあなたの名前を刻みましょう。
そして、この物語をあなたの物語にしてください。

Buffalo Daughter - ele-king

 昨年は力作『We Are Time』を発表、また『New Rock』と『I』のアナログ盤はそっこうで売り切れと、そうです、日本のオルタナティヴにおけるリジェンドと呼んでいいでしょう、結成30周年のバッファロー・ドーターが、なんと、新進気鋭のLAUSBUBを迎えてのライヴを開催する。これはもう行くしかない。

Buffalo Daughter presents Neu Rock with LAUSBUB

2023年6月25日 (日) 開場 17:00 / 開演 18:00
@表参道WALL&WALL

出演:
Buffalo Daughter
LAUSBUB

【チケット情報】
前売入場券:¥4,000 +1drink ¥700
<販売期間:4/6 18:00〜6/24 23:59>

当日入場券:¥4,500 +1drink ¥700
<販売期間:6/25 17:00〜>

チケット購入URL(ZAIKO):
https://wallwall.zaiko.io/item/355562

WALL&WALLオフィシャルイベントページURL:
http://wallwall.tokyo/schedule/20230625_buffalodaughter_lausbub/

■Buffalo Daughter プロフィール

シュガー吉永 (g, vo, tb-303) 大野由美子 (b, vo, electronics) 山本ムーグ(turntable,vo)

1993年結成以来、ジャンルレス・ボーダーレスに自由で柔軟な姿勢で同時代性溢れるサウンドを生み出し続けてきたオルタナティブ・ロック・バンド。ライヴにも定評がありワールドワイドで大きな評価を得ている。
2021年9月に、現在最新作となる8thアルバム 『We Are The Times』をワールドワイドでリリース。7年ぶりのアルバムは長い期間の色々な思いが惜しみなく曲の中に凝縮され、パンデミックにより大きな変化を迎えた世界の確かな指標を示す作品となった。
2022年は日本でのツアーに加え6月に行われたメルボルンでのRising Festivalに出演。
結成30周年を迎える2023年は、1998年にリリースした『New Rock』(Grand Royal)と、2001年発売の『I』(Emperor Norton Records)のアナログ盤を、それぞれボーナストラックを収録した2枚組で再発。2023年5~6月には3つのアルバムを提げパンデミック後初の北米ツアーを行う。
official site: https://buffalodaughter.com
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■LAUSBUB (ラウスバブ) プロフィール

2020年3月、北海道札幌市の同じ高校の軽音楽部に所属していた、岩井莉子と髙橋芽以によって結成されたニューウェーブ・テクノポップ・バンド。
2021年1月18日、Twitter投稿を機に爆発的に話題を集め、ドイツの無料音楽プラットフォーム”SoundCloud”で全世界ウィークリーチャート1位を記録。同時期に国内インディーズ音楽プラットフォーム”Eggs”でもウィークリー1位を記録。同年6月18日、初のDSP配信となる配信シングル『Telefon』をリリース。翌日6月19日 初の有観客イベント「OTO TO TABI in GREEN (札幌芸術の森)」出演。
2022年11月16日には初フィジカル作品となる1st EP「M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB」をリリース。

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COMPUMA - ele-king

 昨年、ソロ・アルバム『A VIEW』を発表し、さざ波のようにその評判が広がったことは記憶に新しい。COMPUMAの、アルバム・リリース後に渋谷WWWにおいておこなわれた初ライヴの模様がDVDとして発売される。内田直之がさらにダブミキシングを加え、映像作家・住吉清隆がその世界の映像化を研ぎ澄ませる。注目しましょう。
 なお、『A VIEW』のアナログ盤もリリースされるようで、こちらは限定300枚。詳しくはレーベル・ブログをチェック

アーティスト:COMPUMA
タイトル:A VIEW MOVIES(LIVE DUB)
リリース日:2023年4月28(金)
レーベル:SOMETHING ABOUT
品番:SOMETHING ABOUT 006
フォーマット:DVD+Download Code
値段:2000円(税抜)
流通:SOMETHING ABOUT / ブリッジ

■LP
アーティスト:COMPUMA
タイトル:A VIEW
リリース日:2023年4月28(金)
レーベル:SOMETHING ABOUT
品番:SOMETHING ABOUT 005 LP
フォーマット:LP2枚組+Download Code
値段:4500円(税抜)
流通:SOMETHING ABOUT

■レーベル詳細URL(近日公開予定)
https://compuma.blogspot.com

Oval - ele-king

 グリッチの開拓者、オヴァルが新作を発表する。ピアノの導入でリスナーを驚かせた『Ovidono』(2021)以来のアルバムだが、先行配信中の “Touha” を聴くかぎりどうやら今回もピアノがフィーチャーされているようだ。『Romantiq』と題されたそれは5月12日に世界同時発売。かつてグリッチで世界を震撼させたマーカス・ポップが目指す「ロマンティック」とはいかなるものになるのか? 期待しましょう。

OVAL(オヴァル)
『ROMANTIQ』(ロマンティック)

THRILL-JP 57 / HEADZ 258 (原盤番号:THRILL 590)
価格(CD):2,200円+税(定価:2,420円)
発売日(CD):2023年5月12日(金) ※ 全世界同時発売
フォーマット:CD / Digital
バーコード:4582561399527

01. Zauberwort(ツァオバーヴォルト)
02. Rytmy(リートミー)
03. Cresta(クレスタ)
04. Amethyst(アメティスト)
05. Wildwasser(ヴィルトヴァッサー)
06. Glockenton(グロッケントーン)
07. Elektrin(エレクトリン)
08. Okno(オクノ)
09. Touha(トウハ)
10. Lyriq(リューリク)
11. Romantic Sketch A(ロマンティック・スケッチ A)
12. Romantic Sketch B(ロマンティック・スケッチ B)

Total Time:46:20

Tracks 11, 12…日本盤CDのみのボーナス・トラック

All music written, arranged and produced by Markus Popp
Artwork by Robert Seidel

'90年代中盤、CDスキップを使用したエポック・メイキングな実験電子音響作品を世に送り出し(2022年発表されたPitchforkの『The 150 Best Albums of the 1990s』にて1995年作『94diskont.』が132位にランクイン)、エレクトロニック・ミュージックの新たな可能性を提示し続け、世界中にフォロワーを拡散させた独ベルリン在住の音楽家、オヴァル(OVAL)ことマーカス・ポップ(Markus Popp)。
2020年1月リリースの『SCIS』(THRILL-JP 51 / HEADZ 243)以来のワールドワイド・リリース(米シカゴの老舗インディー・レーベルThrill Jockey Recordsより)となるオヴァルの最新アルバム『ROMANTIQ』にて、マーカス・ポップがまたしてもエレクトロニック・ミュージックの可能性を刷新した。
「ASMR 2.0」とも呼ばれた、2021年12月に発表された女優Vlatka Alecとのアートプロジェクト作品(マーカス自身のレーベル、UOVOOOからのOVAL名義でのリリースとなった)『OVIDONO』(Soの豊田恵里子も参加)でのクリエイションも反映させ、『OVIDONO』のアルバム・カヴァーを担当したデジタル・アーティストRobert Seidel(ロバート・サイデル。ドイツのイエナ出身で、現在はベルリンを拠点に活動。『ROMANTIQ』のアートワークも担当)とのオーディオ・ヴィジュアルなコラボレーション(2021年9月に開館したDeutsches Romantik-Museumのグランド・オープニング用のコラボレーション)が契機となり、多様な建築物かのように立体的な音空間を創り出している。
かつてのフォークトロニカ、ポスト・クラシカルとは一線を画した、2010年の『O』以降、職人芸のように磨き上げた、生楽器(オーガニック)とエレクトロニクス(デジタル)の境界線を曖昧にした独特なブレンドが、新たな領域に達し、所謂音楽家的なコンポーザー、メロディーメイカーとしての才能が一気に開花したかのような、圧倒的にオリジナルでロマンティックな音楽を創り上げた。
‘膨大な情報量を、見事に昇華し、これまでの作品の中でも最高峰に美しく洗練された、ノスタルジックでありながらフューチャリスティックでもある、情緒豊かな大傑作アルバム。

アルバムからの先行シングルとなった9曲目「Touha」(トウハ)のHEADZヴァージョンのMusic Video(video by Robert Seidel)は現在、以下URLにて限定公開中。
https://www.youtube.com/watch?v=itRb-9EkhC8

◎ 全世界同時発売(2023年5月12日)
◎ 日本盤CDのみのボーナス・トラック2曲収録
◎ 日本盤CDのみマーカス・ポップ本人によるマスタリング音源を使用(デジタル配信は、ワールドワイド版のThrill Jockey盤と同様に、Rashad Beckerによるマスタリング音源を使用)
◎ 日本盤CDのみマーカス・ポップとロバート・サイデルのお気に入り画像をメインに使用した、Thrill Jockey盤とは異なるオリジナル・デザインのジャケット。

African Head Charge - ele-king

 エイドリアン・シャーウッド主宰の〈On-U〉を代表するグループのひとつ、81年にパーカッショニストのボンジョ・アイヤビンギ・ノアとシャーウッドによって開始されたダブ・プロジェクト、アフリカン・ヘッド・チャージ。なんと『Voodoo Of The Godsent』(2011)以来となる、12年ぶりのオリジナル・アルバムが発売されることになった。ボンジョの暮らすガーナの都市名が冠された新作『ボルガタンガへの旅』は7月7日発売。現在新曲 “Microdosing” が公開されている。やはりかっこいい……
 そしてなんとなんと、おなじく12年ぶりに来日公演も決定!! 詳細は後日とのことだが、首を長くして待っていようではないか。

African Head Charge
ヤーマン!!!!
パーカッションの魔術師、ボンジョ、

パーカッション奏者のボンジョ・アイヤビンギ・ノアとUKダブのパイオニアとして知られるプロデューサーのエイドリアン・シャーウッドを中心に結成された〈On-U Sound〉の伝説的プロジェクト、アフリカン・ヘッド・チャージが12年ぶりの新作『Trip To Bolgatanga』を7月7日に発売することを発表、同時に新曲「Microdosing」をMVと共に解禁した。また、12年ぶりの来日も決定しており、後日詳細が発表される予定となっている。

African Head Charge - Microdosing
https://youtu.be/DELmBbsI0jM

アフリカン・ヘッド・チャージが、12年ぶりのニューアルバムとともに〈On-U Sound〉に帰ってきた。タイトルは『Trip To Bolgatanga』で、結成メンバーであるボンジョ・アイヤビンギ・ノアがレコーディングを主導し、彼の盟友でともにグループを動かしてきたエイドリアン・シャーウッドが再び制作の指揮に携わった。

アルバムの間隔が大きく空いたことに関して、ボンジョは次のように述べる。「12年という時間が経つ間、私はガーナで家族と過ごしていたけど、創作は続けていた。まだまだ自分には世に問うべきことがたくさんあるってことは、きっとわかってもらえるだろう。人生の中で、この時期は仕事もしたかったけど、家族との時間も大切にしたかった。毎日を愉快に過ごしながら、創作にも精を出した。何といっても幸せなことがあれば、いっそう創作に前向きになれるものだし、最大の幸福は家族といることなんだから」

今回のアルバムのサウンドによって『My Life In A Hole In The Ground』や『Songs Of Praise』といったアフリカン・ヘッド・チャージの往年の名作が思い起こされるのは確かだが、だからといって彼らの音楽がすでに進化を止めていると思い込むのは誤りだ。名パーカッション奏者の彼は言葉を続ける。「ドラム演奏にしても、詠唱するようなチャントの歌唱にしても、できるまでには時間がかかる。私はひたすらガーナ全土に赴いてドラム奏者たちに会ってきた。ファンテ、アキム、ガー、ボルガタンガといったあらゆる部族が、それぞれに異なるドラムの文化を持っている。僕はできる限り多くを学び、組み合わせてひとつの形にしようと模索している。これは料理に似ている。すべての材料、例えばヤム(ヤマイモ)、バナナ、カボチャを混ぜ合わせると、そこに施す最終的な味付けが肝心だ。私は音楽をそういうふうに捉えている。さまざまな要素を集め、それを味わえば『いいね、これはいい味付けだ。いいね、これはいいサウンドだ』という言葉が出てくる。これこそがアフリカン・ヘッド・チャージの存在意義なんだ。ありとあらゆる組み合わせを追求して、それをエイドリアンのところに持って行けば、さらに新しいものを作るために彼が力を貸してくれる」

プロデューサーを務めるエイドリアン・シャーウッドも同じ意見だ。「アフリカン・ヘッド・チャージにふさわしい素材を選び抜き、それからオーバーダビングやミキシングを楽しみながら完璧なものに仕上げていくということをずっとやっている。これまで常にいい関係で仕事を続けてきたけれど、今回のアルバムで自分たちは史上最高の結果を出せたと思う」

グループが40年以上に渡って活動してきた中でも、今回のアルバムは、音楽の本質を共有する大家族のようなメンバーたちが現場に戻ってきた印象がある。マルチな楽器奏者のスキップ・マクドナルドと、彼とタックヘッドでともに活動するダグ・ウィンビッシュのふたりは、さまざまなトラックに参加してその力を発揮している。かつて90年代初めにアフリカン・ヘッド・チャージに関わっていたドラムのペリー・メリウスが、正統派の重厚なリズムを3つの楽曲に加えている。ここに新鮮な顔ぶれが数多く加わっていることも見逃せない。管楽器やリード楽器は、ポール・ブース、リチャード・ロズウェル、デイヴィッド・フルウッドが務める。キーボードにはラス・マンレンジとサミュエル・ベルグリッター。ギターはヴィンス・ブラック。さらにはシャドゥ・ロック・アドゥ、メンサ・アカ、アカヌオエ・アンジェラ、エマニュエル・オキネらによるパーカッション、イヴァン・“チェロマン”・ハシーによるストリングス、ゲットー・プリーストによる力強い歌声が加わる。そして特別ゲストとして、伝統楽器コロゴの名手キング・アイソバがボーカルで参加するとともに伝統的な2弦リュートの巧みな演奏を披露している。

過去のアルバムでは世界各地から集めたエッセンスを一緒くたに混ぜ合わせていたのに対し、ニューアルバムにおいてアフリカン・ヘッド・チャージはただひとつの場所を念頭に置いている。『A Trip To Bolgatanga』とは、ボンジョにとって現在の生活拠点であるガーナ北部を巡る音楽の旅だ。これは幻想的な旅路の記録であり、そこに現れる風景を象徴する、さまざまなハンドパーカッションや人々が唱和するチャントの歌声を補強するように、轟くベース音、変化を加えた管楽器、余分な音をカットするエフェクト、騒々しいワウペダルの効果、何かにとりつかれたようなブードゥー教のダンスミュージック、合成されたうねりのサウンド、コンガのリズム、何層にも入り乱れる電子楽器のエフェクト、ブルースの影響を感じさせる木管楽器、ファンキーなオルガンの音などが加わっている。〈On-U Sound〉の作品がすべてそうであるように、何度繰り返し聴いてもその度に細かいディテールに関する新たな発見がある。このサウンドは大がかりな音響システムで聴かなければ、その真価を理解することはできないだろうし、そうなった暁には、いかなる相手が競合しようとも太刀打ちできずに叩きのめされることだろう。

アフリカン・ヘッド・チャージの最新作は7月7日にデジタル、CD、LPで7月7日に発売!国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(蓄光ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(蓄光ヴァイナル、歌詞対訳・解説書付)で発売される。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、数量限定のTシャツセットでも発売される。

label: On-U Sound
artist: African Head Charge
title: A Trip To Bolgatanga
release: 2023.07.07

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13353

国内盤CD Tracklist
01. A Bad Attitude
02. Accra Electronica
03. Push Me Pull You
04. I Chant Too
05. Asalatua
06. Passing Clouds
07. I’m A Winner
08. A Trip To Bolgatanga
09. Never Regret A Day
10. Microdosing
11. Flim 18 (Bonus Track)


蓄光ヴァイナル

蓄光ヴァイナル(暗闇ではこのように光ります。)

Amyl and The Sniffers - ele-king

 これは待望の初来日と言っていいでしょう。オーストラリアはメルボルンのパンクな4人組、アミル・アンド・ザ・スニッファーズがついに日本にやってきます。
 スリーフォード・モッズの2021年作『Spare Ribs』にヴォーカルのエイミー・テイラーが参加したことで注目を集め、同年秋〈ラフトレード〉からのセカンド『Comfort to Me』で大いに飛躍、昨年はウィーザーやグリーン・デイといったメジャーのバンドのフロントアクトを務めるまでになった彼ら、そのエネルギッシュなパフォーマンスをここ日本で体験できる絶好のチャンスです。9月6日@渋谷 CLUB QUATTRO と9月7日@梅田 Shangri-La の2公演、まだ少し先ですが、すでに主催者先行販売は開始しています。早めに予約しておきましょう。

イタリアン・ホラーの帝王、その鮮血の美学の核心に迫る

『サスペリア』で知られるイタリアン・ホラー/サスペンス映画の巨匠、ダリオ・アルジェント監督による10年ぶりの新作『ダークグラス』の公開が決定!

ヨーロッパに伝わる魔女伝説をモチーフに、独自の色彩感覚にこだわった耽美的な描写で一世を風靡した『サスペリア』、そして工夫を凝らした残酷シーンと、意外すぎるトリックでミステリファンをも驚嘆させた『サスペリア PART2』。
イタリア映画界にとどまらずハリウッドにも進出、当時人気絶頂のジェニファー・コネリー主演『フェノミナ』や、華麗なる流血表現でカルト的人気を誇る『オペラ座 血の喝采』などの傑作を連発。
ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』や『デモンズ』シリーズなどプロデューサーとしても活躍。
『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督による18年の『サスペリア』リメイクの大ヒットも記憶に新しい。
いまなお、ジェームズ・ワン、クエンティン・タランティーノ、エドガー・ライトら名だたる監督たちが影響を口にする巨匠、ダリオ・アルジェント。
待望の新作『ダークグラス』の公開も決定し、改めて注目の集まるホラー/サスペンス映画の鬼才の全貌を紹介、さらにはアルジェントを生んだイタリアのサスペンス映画「ジャッロ」の入門特集も掲載!

執筆:伊東美和、宇波拓、片刃、上條葉月、児嶋都、児玉美月、後藤護、高橋ヨシキ、ナマニク、はるひさ、ヒロシニコフ、真魚八重子、森本在臣、山崎圭司

目次

クロスレビュー『ダークグラス』(真魚八重子、高橋ヨシキ)
ダリオ・アルジェント・バイオグラフィー(山崎圭司)
イラストコラム(児嶋都)
フィルモグラフィー
アルジェントがアルジェントであるために作られた監督デビュー作──『歓びの毒牙』(ナマニク)
宙吊りの連続──『わたしは目撃者』(上條葉月)
アルジェントが唯一挑んだ「ホモエロティシズム」映画──『4匹の蝿』(ナマニク)
無産階級から見た革命を描く──『ビッグ・ファイブ・デイ』(はるひさ)
恐怖のアルジェント・マシーン──自動人形・エレベーター・マネキンとの別世界通信『サスペリアPART2』(後藤護)
奇妙な世界をサヴァイヴし、その扉から出ていくとき──『サスペリア』(児玉美月)
デタラメのなかの美意識──『インフェルノ』(上條葉月)
暗闇の領域──『シャドー』(山崎圭司)
美少女と鮮血──『フェノミナ』(真魚八重子)
殺戮の創意──『オペラ座 血の喝采』(真魚八重子)
娘アーシアを本格的に女優として開眼させた、フェィッシュな首チョンパ映画──『トラウマ/鮮血の叫び』(ナマニク)
繰り返される大文字のアートへの接近──『スタンダール・シンドローム』(高橋ヨシキ)
新説──『オペラ座の怪人』(はるひさ)
アルジェントによるジャッロの「再発見」──『スリープレス』(高橋ヨシキ)
アルジェント流デスゲーム──『デス・サイト』(片刃)
ヒッチコックとの共通項とは──『ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?』(高橋ヨシキ)
汚くエグい中にも爽快感──『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(片刃)
ただ、黄色であるというだけ──『ジャーロ』(はるひさ)
カマキリの神話学 祈りと邪眼──『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(後藤護)
これでもかというポーの「美味しいところ乗せ」『マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴「黒猫」』(片刃)
力みすぎない中にもハードな描写『マスターズ・オブ・ホラー』(真魚八重子)
プロデューサーとしてのアルジェント(伊東美和)
ドキュメンタリー『ダリオ・アルジェント 鮮血の魔術師』(森本在臣)
インタヴュー 吉本ばなな
対談:「アルジェントはお好き?」(山崎圭司・ヒロシニコフ)
コラム
アルジェントと音楽(宇波拓)
最高のパートナーにして魔女の血族──ダリア・ニコロディ(森本在臣)
アーシア・アルジェント──銀幕とその裏側(片刃)
「ぶっ殺し」と「ぶっ壊し」──アルジェントに影響を受けた新世代の映像作家たち(ヒロシニコフ)
小特集 ジャッロ入門
概説「ジャッロ映画」とは(山崎圭司)
おすすめジャッロ30選(ヒロシニコフ+森本在臣)
コラム それはジャッロであり、ジャッロではない──ホラー映画の新たなる潮流「ネオ・ジャッロ」(ヒロシニコフ)

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
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TSUTAYA
未来屋書店/アシーネ

Chihei Hatakeyama - ele-king

 日本のアンビエント・マスターのひとり、畠山地平が5月に公開される映画『ライフ・イズ・クライミング』のサウンドトラックを手がけ、アルバムとしてリリースする。今回は、畠山のトレードマークである、あのダークで緊張感たっぷりのドローン作品とは違って、畠山地平の新境地と言える、深い情感を携えたアンビエント作になっている。メロディがあり、ギターがフィーチャーされ、言うなれば『パリ・テキサス』のアンビエント・ヴァージョン。これがじつに魅力的な作品になった。
 映画『ライフ・イズ・クライミング』は、視力を失ったクライマーがアメリカ合衆国ユタ州の大地に聳え立つ岩山を登るというドキュメンタリー。クライミングの選手権でタッグを組んだ相棒を “目” にしながら、その人生をかけた旅が素晴らしい映像のなかに記録されている。その壮大な景色とヒューマンな物語、そして畠山地平の音楽をぜひご堪能いただきたい。

畠山地平 / Chihei Hatakeyama
ライフ・イズ・クライミング・オリジナル・サウンドトラック / Life is Climbing Original Soundtrack

フォーマット:CD
レーベル:Gearbox Records
発売日:2023年5月10日(水)
解説付き

■映画『ライフ・イズ・クライミング』の公開情報
5/12(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

詳しくは→https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=lifeisclimbing

予告編
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『ライフ・イズ・クライミング』
小林 幸一郎 鈴木 直也 西山 清文 エリック・ヴァイエンマイヤー
主題歌:「Amazing」MONKEY MAJIK
音楽:Chihei Hatakeyama
撮影:中原 想吉 清野 正孝
エグゼクティブプロデューサー:スージュン
プロデューサー:森 多鶴
監督:中原 想吉
助成:文化庁文化芸術振興費補助(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
文部科学省選定 一般非劇映画(少年、青年、成人、家庭向き)
配給:シンカ 2023年/日本/日本語・英語/89分/カラー/1.90:1/5.1ch ©Life Is Climbing 製作委員会
製作:インタナシヨナル映画株式会社 NPO法人モンキーマジック 株式会社サンドストーン 株式会社シンカ
製作パートナー:株式会社ゴールドウイン ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社 株式会社ランドウェル 株式会社リプライ

Cantaro Ihara - ele-king

 いよいよ新作フルレングスの登場だ。70年代以降のソウルやAORなどからの影響をベースにしつつ、現代的な感覚で新たなサウンドを探求するシンガー・ソングライター、イハラカンタロウ。昨年からウェルドン・アーヴィン日本語カヴァーや “つむぐように (Twiny)” といったシングルで注目を集めてきた彼が、ついにセカンド・アルバムを送り出す。メロウかつ上品、どこまでもグルーヴィーなサウンドと練られた日本語詞の融合に期待しよう。

70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリング、そして国内外のDJからフックアップされるグルーヴィーなサウンドで注目を集めるイハラカンタロウ待望の最新アルバムがリリース決定!

ジャンルやカテゴリにとらわれない膨大な音楽知識や造形の深さでFM番組やWEBメディアでの海外アーティスト解説やイベント、DJ BARでのミュージックセレクターなどミュージシャンのみならず多方面で活躍するイハラカンタロウが、前作『C』から2年を越える歳月を費やした渾身のフルアルバムをついに完成!

世界的なDJ、プロデューサーとしても知られるジャイルス・ピーターソンのBBCプレイリストにも入るなど海外、国内ラジオ局でのヘヴィ・プレイから即完&争奪戦となったWeldon Irvineによるレア・グルーヴ〜フリー・ソウルクラシック「I Love You」(M7)日本語カバーや、サウスロンドンのプロデューサーedblによるremixも話題となったスタイリッシュ・メロウ・ソウル「つむぐように (Twiny)」(M2)といった先行シングルに加えて、新進気鋭のトランペッター “佐瀬悠輔” が艶やかなホーンを聴かせるオーセンティックなソウルナンバー「Baby So in Love」(M3)、現在進行形のルーツ・ミュージックを体現する“いーはとーゔ”の菊地芳将(Bass)、簗島瞬(Keyboards)らが臨場感溢れるパフォーマンスを披露した極上のグルーヴィー・チューン「アーケードには今朝の秋」(M4)、そして自身のユニット “Bialystocks” でも華々しい活躍を続ける菊池剛(Keyboard)が琴線に触れるメロディーを奏でる「夜の流れ」(M6)など同世代の才能あるミュージシャン達が参加した新たな楽曲も多数収録!

イハラカンタロウ『Portray』ティザー
https://youtu.be/RyE9RtDsohk


[リリース情報]
アーティスト:イハラカンタロウ
タイトル:Portray
フォーマット:CD / LP / Digital
発売日:CD / Digital 2023年4月28日 LP:2023年7月19日
品番:CD PCD-25363 / LP PLP7625
定価:CD ¥2,750(税抜¥2,500)/ LP ¥3,850(税抜¥3,500)
レーベル:P-VINE

[Track List]
01. Overture
02. つむぐように (Twiny)
03. Baby So in Love
04. アーケードには今朝の秋
05. Cue #1
06. 夜の流れ
07. I Love You
08. ありあまる色調
09. You Are Right
10. Cue #2
11. Sway Me

[Musician]
Pf./Key.:菊池剛(Bialystocks)/簗島瞬(いーはとーゔ)
E.Guitar:Tuppin(Nelko)/三輪卓也(アポンタイム)
E.Bass:toyo/菊地芳将(いーはとーゔ)
Drums:小島光季(Auks)/中西和音(ボタニカルな暮らし。/大聖堂)
Tp./F.Hr.:佐瀬悠輔

[特典情報]
タワーレコード限定特典:未発表弾き語り音源収録CD-R

[Pre-order / Streaming / Download]
https://p-vine.lnk.to/1NYBzJ

[イハラカンタロウ]
1992年7月9日生まれ。70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリングにグルーヴィーなサウンドで作詞作曲からアレンジ、歌唱、演奏、ミックス、マスタリングまで 手がけるミュージシャン。都内でのライヴ活動を中心にキャリアを積み2020年4月に1stアルバム『C』(配信限定)を発表、“琴線に触れる” メロディ、洗練されたアレンジやコードワークといったソングライティング能力の高さで徐々に注目を集めると、同年12月にはアルバムからの7インチシングル「gypsy/rhapsody」、そして2022年2月には「I Love You/You Are Right」(7インチ/配信)をリリース、さらには12月にサウスロンドンで注目を集めるプロデューサーedblによるリミックスを収録した「つむぐように (Twiny)」(7インチ/配信)をリリースし、数多くのラジオ局でパワープレイとして公開され各方面から高い評価を受ける。またライヴや作品リリースだけでなく、ラジオ番組や音楽メディアで他アーティストの作品や楽曲制作にまつわる解説をしたり、ミュージックセレクターとしてDJ BARへの出演やTPOに合わせたプレイリストの楽曲セレクターなどへのオファーも多く、深い音楽への造詣をもってマルチな活動を行なっている。2023年2月には「I Love You (DJ Mitsu The Beats Remix)」(7インチ/配信)をリリース、春には待望の2ndアルバムのリリースを予定している。

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interview with Martin Terefe (London Brew) - ele-king

あのレコードを再発明したようなもの、派生的なもの、マイルスに繋がり過ぎるものは絶対に作りたくないと思っていた。それもあって、トランペットは入れないことにしたんだ。

 ジャズの歴史上、もっとも革新的な創造と破壊がおこなわれたアルバムとして記憶されるのが、マイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』である。ジャズのエレクトリック化が進みはじめた1970年、ロックやファンクなど異種の音楽を巻き込み、それまでのモダン・ジャズやフリー・ジャズの流れからも逸脱した音楽実験がおこなわれたアルバムである。フュージョンやクロスオーヴァーといった1970年代のジャズの潮流とも異なり、あくまで自由で混沌とした集団的即興演奏がおこなわれたこのアルバムは、以後のミュージシャンにも多大な影響を及ぼし、マイルス・デイヴィスの名作の一枚というのみならず、ジャズを変えた歴史的な一枚という評価を残している。

 そして2020年の初め、『ビッチェズ・ブリュー』が生まれてから50周年を記念し、トリビュート的なプロジェクトがロンドンではじまった。『ロンドン・ブリュー』というこのプロジェクトは、当初はロンドンで記念ライヴをおこなう予定だったが、コロナ・パンデミックによるロックダウンで中止を余儀なくされる。しかし、発案者であるプロデューサーのマーティン・テレフはライヴから形態を変え、ミュージシャンたちによるセッションを録音し、それを編集した形でのリリースへとこぎ着けた。セッションに参加したミュージシャンはシャバカ・ハッチングスヌバイア・ガルシア、テオン・クロスなど、主にサウス・ロンドン周辺のジャズ・シーンで注目を集める面々から、ザ・シネマティック・オーケストラなどで演奏してきたニック・ラム、そしてトム・スキナー、トム・ハーバート、デイヴ・オクムという、ロンドンのジャズ~フリー・インプロヴィゼイション~オルタナ・ロック・シーンを繋ぐ面々(3人はかつてジェイド・フォックスで活動し、現在はオクム=ハーバート=スキナー名義で共演するほか、オクムとハーバートはジ・インヴィジブルでも活動する)。


London Brew
Concord Jazz / ユニバーサル

UK JazzFree JazzDub

Amazon Tower HMV disk union

 こうした面々が集まった『ロンドン・ブリュー』は、単に『ビッチェズ・ブリュー』を再現したりするのではなく、あくまでマイルスたちミュージシャンがおこなった音楽的な実験精神をもとに、自身のアイデアで新しく自由な音楽をクリエイトしていくというもの。そして、パンデミックという閉塞した状況の中、逆にそれがミュージシャンたちの結束や自由な精神を強め、大きなパワーを生み出すことになった。マーティン・テレフェはスウェーデン出身で、幼少期はヴェネズエラで育った音楽プロデューサー。コールドプレイのガイ・ベリーマン、アーハのマグネ・フルホルメル、ミューのヨーナス・ビエーレヨハンとアパラチックというユニットを結成したことで知られるが、一転して『ロンドン・ブリュー』ではシャバカやヌバイアなど多彩なミュージシャンから、DJのベンジーBやエンジニアのディル・ハリスなどスタッフを束ね、それぞれの自由で創造的な表現をまとめ、最終的に一枚のアルバムという形で世に送り出した。そんなマーティン・テレフェに、『ロンドン・ブリュー』のはじまりから話を伺った。

やりたかったのは、マイルスがミュージシャンたちに与えた自由と信頼、そしてレコードの精神を自分たちの音で表現することだった。『ビッチェズ・ブリュー』を再現するというよりも、あの作品におけるマイルスのスピリットを祝福する、という意味合いが強かったんだ。

マーティンさんは『ロンドン・ブリュー』のプロデュースをされているのですが、このプロジェクトはマイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』からインスパイアされたものと伺います。どのようにして企画が生まれ、スタートしていったのですか?

マーティン・テレフェ(Martin Terefe、以下MT):『ビッチェズ・ブリュー』の50周年を記念して、ライヴをやろうというアイデアがはじまりだった。もちろん、それを話していたのはパンデミックの前のこと。友人のブルース・ラムコフがこのプロジェクトについて連絡をくれて、マイルス・デイヴィスの息子と甥と一緒にマイルスを祝い、敬意を表するためのアイデアを考えている、と教えてくれたんだ。で、彼らがロンドンにあるエレクトリック・ブリクストンというヴェニューで演奏していたロンドンのミュージシャンたちのパフォーマンスに感動したらしく、彼らにこのプロジェクトのためにバービカン・センターで開かれるイベントで演奏してくれないかと依頼することになった。でも、そこでパンデミックがはじまってしまい、ライヴ・イベントは実現できなくなってしまって。そこで皆と話を続けて、何か代わりにできることがないかアイデアを出してみることにしたんだ。そして、最終的にポール・エプワースのチャーチ・スタジオに3日間だけこもって、その豪華なミュージシャンたちと一緒に音楽を作ることにしたんだよ。


今回取材に応じてくれたプロデューサーのマーティン・テレフェ

個人的にマイルス・デイヴィスと『ビッチェズ・ブリュー』に対してどのような思いがありますか?

MT:私はつねに様々な種類の音楽に夢中だった。南米で育ったから、アメリカの音楽、アメリカのソウル・ミュージック、R&B、ラテン・ミュージックなんかをたくさん聴いて育ってきたんだ。でも、母国であるスウェーデンに戻ってからは、ロック・ギターをたくさん弾くようになった。そして最終的には、マイク・スターンやジョン・スコフィールドのようなギタリストたちにインスパイアされるようになったんだけれど、それらの作品すべてがマイルスと繋がりがあったんだ。私が最初にマイルスの音楽に出会ったのは、彼の初期のアコースティックな作品だった。でも、『ビッチェズ・ブリュー』のアルバムを手にしたとき、「このレコードはロック・レコードだ」と思ったんだよね。それが僕にとっての『ビッチェズ・ブリュー』の経験だったんだ。いい意味で危険を冒したレコードというか、すごく異質に感じた。そして火と怒りに満ちていて、同時に自由も感じられた。すごく自由な音楽だなという印象があったんだ。だから僕にとって『ビッチェズ・ブリュー』は、自由の炎を意味するレコードだと思う。

それを2023年のロンドンでどう表現しようと考えたのでしょう?

MT:私たちはあのレコードを再発明したようなもの、派生的なもの、マイルスに繋がり過ぎるものは絶対に作りたくないと思っていた。それもあって、トランペットは入れないことにしたんだ。しかもトランペットを入れると、トランペット奏者にとってもかなりプレッシャーになるからね。僕たちがやりたかったのは、マイルスがミュージシャンたちに与えた自由と信頼、そしてレコードの精神を自分たちの音で表現することだった。『ビッチェズ・ブリュー』を再現するというよりも、あの作品におけるマイルスのスピリットを祝福する、という意味合いが強かったんだ。だから、このアルバムはいろいろな意味で『ビッチェズ・ブリュー』とは全然違うと思う。このアルバムはパンデミックの時期に制作されたから、皆一緒に演奏できない、他の人に会えないというフラストレーションが溜まっていた直後に小さなスタジオで皆で集まり、さらに自由に演奏し、表現することを楽しむことができた。スタジオには本当に生き生きとした激しい瞬間も、静かで瞑想的な瞬間もあったね。そして、メランコリーなフィーリングが生まれたりもした。サウンドは『ビッチェズ・ブリュー』と違えども、自由を皆で共有しているのはあの作品と繋がる部分なんじゃないかと思う。スタジオに入る前、あらかじめ書かれた音楽はまったく存在しなかった。計画さえなかったし、3日間の完全な即興演奏であの曲の数々が生まれたんだ。当時のマイルスたちがそうであったように、私たちも同じ方法でまったく新しいものを作ったんだよ。

参加ミュージシャンはヌバイア・ガルシア、シャバカ・ハッチングス、テオン・クロスなど、主にサウス・ロンドン周辺のジャズ・シーンで注目を集める面々から、ザ・シネマティック・オーケストラなどで演奏してきたニック・ラム、それからトム・スキナー、トム・ハーバート、デイヴ・オクムというかつてジェイド・フォックスというユニットで活動してきた人たちが中心となっています。人選はどのようにおこなったのですか? トム・スキナー、トム・ハーバート、デイヴ・オクムの3人が中心となっているように思うのですが。

MT:前にも言ったようにそのメンバーは、最初にやる予定だったライヴ・イベントに参加してもらうはずだったミュージシャンたち。ブルースとマイルスの息子のエリン、そしてマイルスの甥でドラマーのヴィンスが見て感動したミュージシャンたちだね。で、パンデミックに入り一緒にプレイできなくなった人、会えない人たちも出てきたから、レコーディングに参加できるミュージシャンを後からまた選ばなければならなかった。決まりに沿って準備するのは大変だったんだ。スタジオに入れる人数は最大15人に絞らなければいけない、とかね。それで、僕と音楽ディレクターのデイヴ・オクムで誰がいいかを話し合い、いろいろな人に声をかけて、今回のアンサンブルを実現したんだ。特に誰が中心っていうのはないよ。12人のアンサンブルで、全員が全曲で演奏しているからね。参加ミュージシャン全員がメイン・ミュージシャン。もしかすると、ヌバイア・ガルシアとシャバカ・ハッチングスのふたりはソロイストとしてとくに目立っているかもしれないけれど、このレコードに参加しているミュージシャン全員がこのプロジェクトに同じくらい不可欠な存在なんだ。

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ヌバイア・ガルシア


シャバカ・ハッチングス

スタジオに入る前、あらかじめ書かれた音楽はまったく存在しなかった。計画さえなかったし、3日間の完全な即興演奏であの曲の数々が生まれたんだ。当時のマイルスたちがそうであったように、私たちも同じ方法でまったく新しいものを作ったんだよ。

ミュージシャンたちは参加するにあたって、どのようなプロジェクトにしていきたい、どのように演奏していきたいなど、述べていたことはありますか?

MT:多くのミュージシャンが、「なぜこんなことをするんだろう? この神話的で画期的なアルバムからどんなインスピレーションを得て、それをどう使う意図なんだろう?」と疑問に思っていた。それは私自身も最初に思ったことだったしね。だから、彼らにはそれを説明する必要があったんだ。でも同時に、ルールは設けず、明確な指示はしなかった。初日はロックダウンで何を経験したか、それを表現した音をひとつだけ演奏してもらうところからはじめ、そこから広げていったんだ。

楽曲自体はマイルス・デイヴィスをカヴァーするのではなく、『ビッチェズ・ブリュー』からのインスピレーションをもとに新たに作曲しているのですが、具体的には何かのテーマを設けて作曲していったのでしょうか? 例えばヌバイア・ガルシアによると、“マイルス・チェイシズ・ニュー・ヴードゥー・イン・ザ・チャーチ” という楽曲は、マイルスがジミ・ヘンドリックスに捧げたとされる “マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン” を再解釈したもので、ふたりの音楽の革命家をイメージしてエフェクトを施したと聞きますが。

MT:今回のセッションには歌がなかったから、テーマに関してはちょっと複雑なんだ。丸三日間すべて即興演奏というセッションだったからね。曲はそれらの録音素材を使って後から構成していったんだ。長いセッションを聴いて、その中から何か面白い部分を見つけ、その7分や15分の気に入った部分をミックスしながらトラックを作っていった。そしてその後、タイトルを考えたんだ。で、タイトルを考えているとき、あの曲のヌバイアのサックスは、確かにジミ・ヘンドリックスに似たリアルなフィーリングがあると感じた。だからそのタイトルにしたんだよ。ヌバイアにあの曲のインスピレーションは何だったのかと聞いたのはそのあと。そしたらヌバイアが、“マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン” とジミ・ヘンドリックスだって答えたんだ。他のトラックもテーマを設けたわけじゃなかった。1日のセッションで3時間録音したから3日間で合計9時間、とにかく自然に生まれるものをレコーディングしたんだ。ループも何もなく、ただ演奏するのみ。必要なのは、スタートとストップだけだった。最初の曲はなんと元の音源は24分もあったんだよ。自然にでき上がっていったから、レコーディングした曲の長さは様々だったんだ。

現代の音楽は多くの制約が設けられていると思うんだ。TikTokなんかもそうだし、曲が短くあることが強要されている感じがある。そして短い作品だと、ジャンルも限られてきてしまうと思うんだ。でも、このアルバムにはその制約が全くない。

主に作曲や編曲を担当したメンバー、リーダーとなって演奏を引っ張ったメンバーはいますか?

MT:作曲はやはり全員が同じくらい関わっていると言えると思う。完全な曲というものを皆で作ったわけではないけど、即興ででき上がった音楽だから、全員が制作に参加したと言えるんじゃないかな。制作をリードしていたのは、僕とデイヴ・オクムのふたりだったと思う。プロデューサーと音楽ディレクターという役割を担っていたし、バンドでも演奏もしていたし。セッション中に指示を出したりはしていたから。


デイヴ・オクム

例えばどんな指示を?

MT:こんなふうにはじまる曲を演奏してみよう、とか。あとはキーを決めてみたりもしたんだ。


London Brew
Concord Jazz / ユニバーサル

UK JazzFree JazzDub

Amazon Tower HMV disk union

多数のメンバーが参加するビッグ・バンド的な編成で、フリー・ジャズからアヴァンギャルド、ジャズ・ロックやプログレッシヴ・ロックなどが融合した演奏を繰り広げるというのは、歴史を遡れば今から50年以上も前のロンドンで活動したマイク・ウェストブルックのコンサート・バンドや、キース・ティペットキング・クリムゾン、ソフト・マシーン、ニュークリアスなどが参加したセンティピードを思い起こさせるところがあります。こうした先人たちを意識したところはありますか?

MT:意識はしていなかったけど、私はソフト・マシーンやプログレッシヴ・ロック、ジャズ・ロックに実際夢中だった時期があるから、その影響が自然と出てきたのかもしれない。ソフト・マシーンは何年もかけて進化してきたバンドだし、ハイブリッドな音楽として存在しているし。彼らの音楽はジャズでもなくロックでもない。自由で実験的で抽象的なものが許された音楽だから、彼らの音楽が連想されるのは良いことだと思う。

楽曲は生演奏だけではなく、プログラミングやエフェクトなども交え、最終的にはミキシングやポスト・プロダクションを経て完成されています。DJのベンジーB、エンジニアのディル・ハリスも参加しており、マーティンさん自身もギターのほかにプログラミングやミキシングを担当しているようですが、『ロンドン・ブリュー』において演奏以外のプロダクションはどのような働きを担っているのですか? 『ビッチズ・ブリュー』もテオ・マセロのプロダクションが重要な役割を果たしていたように、『ロンドン・ブリュー』におけるあなたの役割も大きいのではと思うのですが。

MT:プログラミングは交えてないけれど、電子的なエフェクトはたくさん使っている。今回はDJであるベンジーBがいてくれたから、あらかじめ録音しておいたギターの断片を、セッションの中で皆にヘッドフォンで聴かせたりもした。私はミックスと編集を担当したけど、私がそれを担当したのは、やはりパンデミックという特殊な状況で、人とコラボレーションするのが容易ではなかったから。それに時間もたくさんあったから、スタジオに行って何時間も何時間も音楽を聴いて、その中から面白いものを選ぶことができたんだ。編集やミックスをはじめたときは、このアルバムがどんな作品になるのか確信が持てなかった。でも、エグゼクティヴ・プロデューサーのブルース・ラムコフは、さっき話したようにマイルスの家族と繋がりがあったから、彼がこのプロジェクト全体をまとめる手助けをしてくれたんだ。ブルースに電話で私のアイデアについて話したとき、彼はとても協力的だった。彼には本当に助けられたよ。


ベンジーB

マイルスがいかに周りのミュージシャンを信頼していたか、そして彼らに多くのスペース、自由に演奏する余白を残していたかを学んだ。彼はとても聴き上手だったんだよ。

このアルバム自体もそうですし、パンデミックがあったからこそ生まれたというような作品も多いみたいですね。

MT:そうだね。もちろん、パンデミック期間中は多くの悲しみと悲劇も起こった。でも同時に、多くの人びとにとって多くの時間と空間が与えられた時期でもあると思うんだ。だからこそ、ある種の再編成と自由が生まれたんだと思う。長い間ほかのミュージシャンたちと一緒に演奏できていない状態で皆が集まったから、突然15人が集まって演奏がはじまったときのエネルギーは本当にすごかった。ほかの人間を身近に感じることができて、そこからすごく大きなパワーが生まれたんだ。

シャバカ・ハッチングスはこのプロジェクトについて、「音楽を作ることが好きなミュージシャンたちが、社会的な力として、また社会的な構成要素として、音楽を作っている。彼らは団結と動きを表現するものを作っている。それが生きているということなんだ。統一があり、運動があり、振動がある」ということを述べています。たんなる音楽活動ではなく、社会活動も見据えての発言かと思いますが、実際に『ロンドン・ブリュー』には社会活動としての意識はあるのでしょうか?

MT:シャバカは今回のセッションが、大きな鍋の中で音楽を皆でかき混ぜながら、キャンプ・ファイヤーの周りに座っているようなとても共同的な感覚だった、と言っていた。実際に皆円形になって演奏していたし、全員がお互いに向き合って顔を合わせながらセッションしたんだ。そこからは確かに団結感のようなものが生まれていたと思う。

『ロンドン・ブリュー』の成り立ちにも関わってくるかと思いますが、コロナによるパンデミックは音楽界にも多大な影響を与え、それまでの演奏形態や音楽制作も変化してきているところがあると思います。そうしたことがあって、先ほどのシャバカの社会活動としての音楽という発言もあるのかなと思いますが、改めて『ロンドン・ブリュー』の持つ意義についてお聞かせください。

MT:現代の音楽は多くの制約が設けられていると思うんだ。TikTokなんかもそうだし、曲が短くあることが強要されている感じがある。そして短い作品だと、ジャンルも限られてきてしまうと思うんだ。でも、このアルバムにはその制約が全くない。ジャズとかロックとか、そういうことを意識せずに自分たちを自由に表現できるのはすごく幸運だったと思う。そしてそれこそが、他のミュージシャンたちと一緒にマイルスのプロセスを研究したことによって得た教訓だったんだ。彼がいかに周りのミュージシャンを信頼していたか、そして彼らに多くのスペース、自由に演奏する余白を残していたかを学んだ。彼はとても聴き上手だったんだよ。だから2023年のいま、このレコードはそれを皆に思い出させる存在になると思う。音楽はこれほどまでに大きくなることができ、それ自体がひとつの宇宙であることに気づかせてくれる作品。リスナーの皆には、そこから得られるとても力強く大きな経験にぜひ触れてほしいね。

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