「K A R Y Y N」と一致するもの

  世界でもっとも有名な「現代音楽」作品のひとつであるジョン・ケージ『4分33秒』。1952年の初演以来、60年以上を経てもなお新鮮に響く(否、響かない)この作品は、多くの音楽家たちにインスピレーションを与えつづけています。

 なぜ4分33秒なのか、そこでは何が起こっているのか。そして、「音楽」とはなにか。

 批評家・佐々木敦が全5回、10時間以上にわたり様々な視点から「4分33秒」について語り尽くした伝説の連続講義「『4分33秒』を/から考える」が『「4分33秒」論』としてついに書籍化! 一冊まるごと「4分33秒」という前代未聞の内容です。

■佐々木敦著
「4分33秒」論──「音楽」とは何か

本体 2,500円+税
上製256ページ
2014年5月30日発売
ISBN 978-4-907276-05-8

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~目次公開!~

一日目 『4分33秒』とは何をするのか
イントロダクション/「『4分33秒』を/から考える」ということ/『4分33秒』の初演とその時代/無響室の体験/「音」と「音楽」/なぜ四分三三秒なのか/ホワイトペインティング説/『4分33秒』が企図するもの/「あんなの音楽じゃない」/人間は慣れる/「HEAR」と「LISTEN」/「音」から「音楽」へ/耳はフォーカスできる/「聞こえている」ことの豊かさ/現前性・一回性・不可逆性/『4分33秒』を聴く/『4分33秒』を録音するということ/時間の設定/『4分33秒ダブ』/ダニエル・シャルルとの対話/「音」の収奪/作曲なんかいらない?/『4分33秒』は常に流れている/『4分33秒』の後で作曲するということ

二日目 「無為という行為」と「時空間の設定」
否定形で語られる『4分33秒』/ネガティヴがポジティヴに変換する/「意図」の所在/『4分33秒』を「音楽」たらしめるもの/『4分33秒』の理想の有り様/二回目以降/四分三三秒の間に起きていること/意図の介在しない芸術/音楽が不要になる?/それは芸術の範疇なのか/「音楽」vs「音」の不可能性/時空間の設定・限定/「無為」を成立させる条件/アートと音楽/『4分33秒』のオムニバスを聴く/角田俊哉とサーストン・ムーアによる『4分33秒』/参加できなかった理由/リダクショニズム/「無」が語る

三日目 『4分33秒』をめぐる言説
音楽史における「サイレンス」/マイケル・ナイマン『実験音楽』/「偶然性」と「開かれた経験」、そして〈生〉の肯定/近藤譲『線の音楽』/「外聴覚的音楽」/「音楽だと思ったら音楽」なのか/「聴覚的音楽」に回収される/器としての世界/常にそこにある沈黙/庄野進『聴取の詩学』/『4分33秒』がまとう権威性/『4分33秒』と「レディメイド」/「枠」と「中身」/『4分33秒』の続編/若尾裕『奏でることの力』/フルクサスとの関わり/「オーヴァーピース」と「アンダーピース」/コンセプチュアル・アートと『4分33秒』/室内楽コンサートとヴァンデルヴァイザー楽派/『One11 with 103』/ケージとフランク・ザッパ/次回予告

四日目 『4分33秒』以降の音楽
『ヴァリエーションズⅦ』/「枠」と「出来事」/指示の零度と百%の狭間/出来事性を再認識させる/映像における「枠」と「出来事」/構造映画(ルビ:ストラクチュラル・フィルム)/カメラがパフォームする映画/ほとんど何もない/『4分33秒』への回答/ミニマル・ミュージックとの接点/特権化が神秘化へ向かう/ヴァンデルヴァイザー楽派/聴取ではなく体験、官能ではなく認識/『セグメンツ』/『セグメンツ』で起きていたこと/コンセプトの理解と聴取体験/コンセプトは理解されるためだけにあるわけじゃない/体験が重要なのか/『4分33秒』を/から「考える」こと/即興/聴取の解体

五日目 「聴取」から遠く離れて
三つの『4分33秒』/第二の『4分33秒』/第三の『4分33秒』/「聴取」だけが問題なのか/枠と出来事を再考する/枠とは何か/純粋なタイムマシン/自分の時間が外にある/純粋に時間が流れる/映画におけるフレーム/純粋小説?/『エウパリノス』/「体験」でいい/質疑応答/無駄なことが贅沢だという感覚/『4分33秒』と「人間が生きているということ」/美学に拠らないこと


interview with Kazuki Tomokawa - ele-king


友川カズキ
復讐バーボン

モデストラウンチ

FolkRock

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 お食事中の方にはもうしわけない。
 10年前に友川さんに取材したとき、インタヴューが終わり、川崎駅のホームを東京方面へ歩いていくと階段の影のデッドスペースで中年の男がかがんでウンコをしている。私は彼の背後から追い越すように歩いていたので、突き出した尻の穴から太めのソーセージのような糞が出てくる、まさにその瞬間に立ち会うことになった。ひとは日々排泄しても排泄する自身の姿を見ることはできない。私はとくにそういった性癖があるのではないので、ひとが大便をするのをまのあたりにしたのははじめてだった。尻は白くすべすべしていた。桃尻といってもそれは白桃なのである。
 私がウソを書いていると思われる方もおられよう。ところがこれは事実である。同行したS氏に糺していただいてもいい。事実は小説よりも奇なりという、その奇なりは物語などではなく現実の物事の不可解さなのだと、私はそのとき思ったというと大袈裟だが、友川カズキを思いだせばそのことに自然に頭がいくわけでも当然ない。ただこのたび、友川さんに会って話を訊くにあたり10年前のことを思い返すにつれ思いだした。思いだすと書かなければいけない気になった。その日の友川さんの飄々としたたたずまいとユーモアと訥々しながら不意に核心に急迫するただならぬ語り口に聞き入ったあの取材のそれはありうべき「細部」だったからといったら失礼だろうか。

 今回も、といっても、取材したのは2月21日なので3ヶ月も前だが、友川さんの語り口はむかしのままだった。歌と言葉と音とが三者三様の強さを示すのではなく重なり合うことで見せた、彼のキャリアのなかでもおそらくはじめての作品である『復讐バーボン』をものした友川カズキは代官山の駅の改札をくぐり、こちらにくる途中売店に立ち寄って、ロングコートに身をつつみハットをかぶってやってきた。頭髪に白いものが目立ったほかは時間の経過を感じさせない。取材はその日ライヴをすることになっていた〈晴れたら空に豆まいて〉の楽屋でおこなった。
 内容はご覧のとおりだが、取材後ライヴを観ながら私は友川カズキと同じ時代に生まれた私たちこそ、それを奇貨とすべきだとまた思った。

■友川カズキ
40年以上にわたって活動をつづける歌手、詩人。1975年にファースト・アルバム『やっと一枚目』にてデビュー。〈PSFレコード〉からの『花々の過失』が評判になったのちは同レーベルからのリリースが意欲的につづけられ、なかでも1994年発表のフリー・ジャズのミュージシャンとのコラボレーション『まぼろしと遊ぶ』は新境地として注目される。画家としても活躍するほか、映画出演や映画音楽の制作、海外公演などいまなお活動の幅を広げている。最新作は『復讐バーボン』(2014年)。


私は友川さんを取材させていただくのは10年ぶりです。前回は三池崇史監督の『IZO』に出られたときでした。それ以降、とくにさいきんは友川さんのことを若い世代も聴くようになった気がしますね。

友川:これはね、はっきりいってインターネット時代だからですよね。口コミというかね。むかしだってそんなに人気なかったし、ひとが入らなかったけど、ここんとこずっと満員ですからね。アピア(40/渋谷から目黒区碑文谷に移転した老舗ライヴハウス)なんか毎回満員札止めだからね。それはインターネットの時代だからですよ。あとはほら、ラジオでナインティナインが私の曲をずっとかけたりしてくれて、それがまたインターネットで口コミみたいになったんですね。私はね、インターネットはやらないんですけどね。ケータイもないから聞いた話ですけどね。いまの時代だから世界の独裁者も斃れる。ネットの時代だからですよ。

友川さんはデビューされてそろそろ40年近くですが、インターネット以後お客さんが変わってきたところはありませんか?

友川:私が若かった時分は同年代のひとたちが聴いてくれていたのが多いんですけど、彼らが社会的に地位があがったり家庭をもったりするともう動かないんだね。いつの時代も若いひとたちですよ、行動力と好奇心があるのは。家庭をもったひとは好奇心がないとは思わないけれども、優先順位がちがってくるんですね。ひとを育てているから自分で自分を育てるようなところにはいかないんだ。だってひとりで行動しているということは自分で自分を育てるということだから、優先順位がちがうんですよね。

他者、子どもをまず育てなければならない。

友川:という立場になっているから。大人になったのに私を聴きにくるひとはそうとう家庭不和かその一歩手間か、ほんとうに好奇心があるかですよ(笑)。

私は家庭がありますが友川さんを聴きたいと思いますし家でも聴きますよ。

友川:それはおかしい! 家庭で聴くような歌じゃないでしょ。ああそうか! こうなったらいけないという反面教師か! 私の歌を聴くと家庭はより結束がかたまるということか。隣の家が火事だと家族全員でバケツで水を運ぶあの感じでしょ。

『復讐バーボン』には「ダダの日」とか、この曲には元歌がありますが、こういった曲は子どもうけもよさそうですよね。

友川:子どもがいきなりダダを知るのは不幸ですよ。

ダダは子どもに近くはありませんか?

友川:ない。

あの破れた感じとか。

友川:それはそうかもしれないけど、子どもは破れちゃダメだよ。

歌詞はどのようにつくられるんですか?

友川:説明はうまくできないですよ。ただ今回の“順三郎畏怖”については石原吉郎(1915~1977年、戦後詩の代表的詩人)の歌をつくろうとして、たしかにむずかしくて、私にはわからない詩がほとんどなんだけど、なんか感じていてね。1年か2年ずっとやっていてね。石原吉郎をなんとかかたちにしたいとステージでもよくしゃべったもんです。
 私はもうずっと本は買わなくて図書館なんですよ。年だしいずれ死ぬし、本が部屋にあってもしょうがないから。図書館で借りて本を読むんです。たまたま石原吉郎の仕切りを見ていたら西脇順三郎の本が何冊かあったんですよ。西脇順三郎も読んでいたけどやっぱりわからなくて、でも彼の絵が好きなんですよ。絵が載っている本もちらちらあったから借りてみようと思ってね。そうしたら塚本邦雄が西脇順三郎のことを書いた文章があって、そこに「間断なく祝福せよ」という一行があった。それがあんまりよかったから曲にしたんですよ。

図書館には言葉を探すために通う感じですか?

友川:そんなことない。いちばん借りるのは動物図鑑とか、『世界のホタル』とかそういうのですよ。10冊くらい借りられるんですよ。でっかい美術書とか。無料だから。あんないいことないね。図書館は最高ですね。

『復讐バーボン』をつくろうとしたなりゆきから教えてください。

友川:それは〈MODEST LAUNCH〉小池さんのおかげですよ。小池さんが新しいのをやりましょう。ということで、私はもうつくらなくてもいいかなと思っていたの。年だし、いままでつくったのでいいかなと思っていた節もあるの。前はかたちをつくると元気が出て、次に行けたんですけど、もう大丈夫じゃないかなと思っていたから。

レコードというかパッケージはもう充分だと?

友川:かたちっていうのはよくないと思ったこともあったからね。だいいち時間もないしね。競輪も忙しいし。それがいざやったら元気が出ちゃってね。いいのつくってくれたの。それでまた(次に)行ける感じがしたんですよね。

かたちはもういい、というのはライヴだけでやっていこうということですか?

友川:ライヴもね、もうだいたいでいいなと思っていたの。ただほら、彼らに迷惑をかけているから。歌詞集(友川カズキ歌詞集 1974-2010 ユメは日々元気に死んでゆく/ミリオン出版)を出してくれた佐々木さんがいて、映画(ヴィンセント・ムーン監督『花々の過失』)のDVDも出て、そこそこ売らないとただ世話になっただけじゃ悪いなと、それだけ。私は義理人情にはあつくはないけど、中くらいはあるのよ。あつくはないよ、そういうことは信じないし。絆とか、ああいうのは信じない。「おもてなし」と「絆」は死語ですよ。寺の坊主が暮れにあそこで字を書いたら、その字は全部死語ですよ。いらないですよ。こけおどしだもの。あんなふうに言葉に集約される時代や人生なんかどこにも誰にもないですよ。

清水寺のやつですね。

友川:そうそう。墨を垂らしながね。あれは墨のムダだ。それをまたマスコミが伝えるでしょ。あんなバカなことあります? その字に向かって生きているひとなんかいないし、その字でなにかあったとかなかったとか、そんなひといません。字なんかそんなに重くない。

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それは詩が甘いんじゃないね。人間が甘いんですよ。簡単な話。詩を語ってはダメなんです。ひとを語れば詩になるんです。そのひとに詩があるかないかは、そのひとと語ればいい。詩を真ん中に置いて語ると詩に墜ちる。

しかし友川さんは言葉を生業にしているところもありますよね。

友川:ない(と断言する)。言葉を遊んでいるだけ。蹴飛ばして口笛のように吹いているだけ。生業ではいっさい、ない。寺山修司の名言がありますよ。「詩人という職業はない」詩を書けば誰でも詩人なんですよ。

さっこんの詩については甘いものも多い気がしますが。

友川:それは詩が甘いんじゃないね。人間が甘いんですよ。簡単な話。詩を語ってはダメなんです。ひとを語れば詩になるんです。そのひとに詩があるかないかは、そのひとと語ればいい。詩を真ん中に置いて語ると地に墜ちる。

わかりやすい詩を求めている人も多くいますよね。それを詩と呼んでいいのか、ポエムと呼ぶべきかはわかりませんが。

友川:私も平明な詩がいいとは思っているんですよ。詩も絵もそうだけど、むずかしくするほうが簡単なの。

そうでしょうね。

友川:平明に誰でもわかる言葉で伝えるほうがむずかしい。けっこう気をつかうんですよ。

詩というものは現代詩に象徴されるように難解になっていった歴史というか経緯はありますよね。

友川:現代詩なんて何年も読んだことない。このまえどこかで『現代詩手帖』をわたされましたよ。若いひとでそこに詩を書いている方がいらした。何十年も前に私はずっと投稿していたんですけど一度も載ったことはない。デビューしてからは何度か載りましたけどね。

そうなんですね。

友川カズキ:諏訪優(1929~1992年、詩人。バロウズやケルアックなどビートニクの翻訳者であるともに紹介者であり、レナード・コーエンの歌詞集の翻訳なども手がけた)さんという方と親しくしていたから、諏訪さんが私の詩を2、3回載せてくれたけどね。それだってコネですよね。

諏訪優さんだって友川さんの詩がよいと思うから推薦してくれたんだと思いますよ。

友川:そうそう、私、諏訪さんに助けられたことがあるんですよ。ライヴハウスでケンカになって路上で血だらけで倒れていたところ、たまたま通りがかった諏訪さんが助けてくれたの。私はそのときアレン・ギンズバーグはもう読んでいたけど、そのひとが諏訪さんだとは知らなかった。諏訪さんは学生といっしょで、助けられてどこかに店に入って名刺をもらったら諏訪さんだとわかったのよ。それから何度か連絡をとりあってね。最後は東北の旅をふたりでやりましたよ。彼の詩の朗読と私の歌でコンサート・ツアーをね。彼が死んだときは、私も歌いましたから。福島さんの寺でやったの。

福島泰樹さんですか?

友川:そうそう。

そういう奇縁があるんですね。出会いといいますか。

友川:諏訪さんの場合はあまりにも奇異な出会いだけどね。だからひとですよ、私の場合は。

ひととの出会いでなにか変わるものがありますか?

友川:誰とでもというわけではもちろんないですよ。私は飲んでひとと出会って変わってきた感じがありますね。だってどこも出かけないから。とくにいまは。むかしだって、ただゴールデン街を飲み歩いていただけだから。ああいうところで出会っていった感じがしますね。たとえば中上健次さんあたりにもゴールデン街を連れて歩かれたのよ。嵐山光三郎さんとかね。そういう人間と出会ったからでしょう。

レコードをつくるのもひとつの縁かもしれませんね。

友川:そうそう。ステージとはまったく別の次元のものだからね。

そういうふうにレコードはいいかと思いながらも、『復讐バーボン』が思いのほかよかったから先に進めると思ったんですね。

友川:松村さんも書かれていたけど、はじめて練習したのよ。私、最初小池さんのこと怒ったの。みんなプロなのになんで練習なんかしなきゃいけないのって。それがやったらクセになっちゃってね。ぜんぜんちがうの。私じゃないですよ、まわりがちがうんです。いつもの即興でお願いします、というあれがどれだけ失礼かがわかったの。

長いことかかりましたね。

友川:40年かかったね。いくら技術があってもテンションがあっても、会ってすぐは知らない曲はできないよね。


『復讐バーボン』レコーディング風景
Kazuki Tomokawa "Vengeance Bourbon" Recording Footage

2013.10.11 at APIA 40
歌:友川カズキ“兄のレコード”
共演:石塚俊明(drums)、永畑雅人(piano)、金井太郎(guitar)、
ギャスパー・クラウス(cello)、坂本弘道(cello)、松井亜由美(viol­in)、吉田悠樹(nico)
撮影:川上紀子


トシ(石塚俊明)さんにしろ永畑雅人さんにしろ、彼らの即興はまたすごいと思いますけどね。

友川:彼らはいつでも私に合わせてくれるの。それに私はオンブにダッコだったわけです。バンドにははじめて会うようなひとだっているわけで、曲を知らないこともあるじゃないですか。それを即興で、というのはムリなところもあるし、だいいちつまらない。上っ面をなぞるだけで終わっちゃうから。

そうですか。

友川:曲がわかったうえでそこからのアレンジや即興で壊すと本人が考えるのはいいんだけどなんにも知らないで参加させられた日にはちょっとつらいと思うな。小池さんにはほんとうに勉強させられました。叱った私がバカでした。

私も長らく友川さんの音楽は聴かせていただいていますが、練習することでこれだけ変わるものなんだなとは思いました。

友川:変わる余地は私にはいっぱいあるんです。うぬぼれで生きてきたから。ひとと折り合おうという気はまったくないから。トシとか雅人さんはむかしから会っていて、気心が知れているから合わせてくれていたわけよね。ギターをまちがえたところも、わかっていて流してくれたりしていたんですよ。ところがはじめて会うひとに甘えるのはキツい。それにそれは音楽にも出るんです。

練習というのは友川さんがコード進行を書いてメンバーにわたしたんですか?

友川:歌詞を渡してコード進行をわたしました。佐村河内と同じで譜面は書けないからね。

佐村河内は余計なひとことだと思いますが。

友川:佐村河内は興味があるね。まぁ、MCのネタとしてですけどね。そういう仕込みには怠りないんですよ、私(笑)。文春も毎週のように買っちゃった。

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枷のなかでの飛び跳ね飛び散らかりじゃないと自由じゃない。自由というと手足を伸ばしてだらだらしている状態だと思うひともいるけど、あれじゃあないんですよね。

そうですか。でもそうやってコード譜を書いてバンド・メンバーにわたすというのは、それまではやっていなかったということですか?

友川:それはやっていましたよ。

今回はレコーディングの前にリハーサルをやったということですね。

友川:そう。ふだんドラムのひとやピアノひととも音楽の話はしないから。ライヴの前にラーメン屋に入っていても音楽の話なんて出ませんよ。私が知らないのもあるんだけど、それが今回スタジオで音楽の話をしたりしてね。

具体的にはどういうことを話したのか憶えていますか?

友川:ギターのひとがイントロはこういう感じでいいですか、とかそういうことを活かしたり、いろいろでしたね。そしたらちゃんと技があるんだよなあ。それがおもしろかったですね。

バンドには長くいっしょにやられてきたメンバーも多いですが、それまで友川さんはメンバーのどこに信を置いてお願いしてきたんですか?

友川:お願いするということでもないよね。

それも縁のようなものですか?

友川:そうだね。トシはね、あのテンションだね。私、頭脳警察のファンだったんですよ。前座も何回かやらせてもらってね。トシのコンガがよくてね。バンドをやるならいっしょにやりたいな、と思っていたのがもう何十年にもなっているだけですよ。

テンションというのは?

友川:狂気ね。表現というのは悪魔と天使、大胆さと繊細さがないとダメだと思うんですよ。トシには見事にそれがある。その量が大きいのよ。悪魔も大きければ天使も大きい。それがすばらしいバランスなのよ。すごく凶暴だしすごく繊細。どっちかひとつだったら誰にでもあるのよ。こいつは悪魔は大きいけど天使は小さいなとか、天使はすごいけど悪魔はないなとかね。その量が(どちらも)すごいの。キンタマも大きいけどね。2倍だよ。

なんの2倍なんですか(笑)?

友川:ポイント2倍(笑)。いや、あれは大きい。

キンタマの話はさておき。

友川:いやね、松村さん。話というのは枝葉末節のほうがおもしろいのよ。

おっしゃるとおりです。細部というのはなににおいても大切だと思います。

友川:ディテールね。

なぜ英語でいいかえたんですか。

友川:どこかに英語をいれとかないとね(笑)。

天使と悪魔の配分の話ですが、友川さんとしては一方だけはものたりないということですね。

友川:つまらないんですよ。

友川さんの表現もそういうものだと思います。

友川:私は自分のことはわからないけどひとのことは見えますからね。こうやって話していても見えるでしょ。ただ自分のことって意外とね、見えないからわからない。誰でもそうでしょう。

自分のことは見えないということは自分なりの確たる方法論もおもちではない?

友川:方法論ということではないけれども、さっきからの話を集約すると、またひとの言葉になるんだけど、寺山修司が「枷のない自由は自由じゃない」といっているんですよ。枷のなかでの飛び跳ね飛び散らかりじゃないと自由じゃない。自由というと手足を伸ばしてだらだらしている状態だと思うひともいるけど、あれじゃあないんですよね。

枷というのは、歌をつくるときの枷というのはどういうものだと思いますか?

友川:3分半で歌詞は3番までとかね。20分30分する歌もあるかもしれないけど、生理的に3分から5分が限界だと私は思いますよ。

それが友川さんにとっての決めごとになるんですか?

友川:そういったことは……考えたことないなあ。むしろ自然にやっちゃっている感じがある。ただこの言葉はマズいなというのはあるんです。“一人ぼっちは絵描きになる”という歌があるんですが、これはもとは“一人ぼっちは画家になる”というタイトルだったの。ところが「画家」だと「バカ」に聞こえるのよ。これはマズいと思って“一人ぼっちは絵描きになる”に変えたの。だから歌詞の語呂がちょっとおかしいんだよね。気をつけるのはそういうことだね。書いた詩で読んでもらうなら「画家」でいいんだけど私の場合耳から入る詩だからね。あとはむずかしくてわからない言葉でもいいやというのはいっぱいある。わからなければわからないでぜんぜんいい。さっきの平明な言葉と矛盾するかもしれないけど、わからなくてもいいんです。総合的に感じるか感じないかであって、あの言葉はわからないからこの歌はダメだということにはならない。

書く言葉と歌う言葉は――

友川:完全にわけている。私はいまは書きませんけど、むかしは書いていましたから書く詩はなんでもいいわけ。歌はまずひとに聴いてもらう前提があり、歌うという前提があり、人前に出るという前提がある。書いた詩は人前に出なくても読もうが読まれまいが関係ないという気持ちで書くし、読むひとの顔もみえない。歌は見えるんです。聴いているひとの顔が。コンサート会場ではなくともね。

書く詩はなんでもいいわけ。歌はまずひとに聴いてもらう前提があり、歌うという前提があり、人前に出るという前提がある。書いた詩は人前に出なくても読もうが読まれまいが関係ないという気持ちで書くし、読むひとの顔もみえない。歌は見えるんです。聴いているひとの顔が。


友川カズキ
復讐バーボン

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歌詞をつくるのは時間がかかりますか?

友川:私はなんでも早いですよ。粘ったりしないの。すぐできないのはできないの。絵もそう。できるときはすぐですよ。

でも絵を描くのは地道なコツコツした作業のような気もしますが。

友川:それは絵描きによるし、どういう絵かにもよるね。私は努力とか嫌いだし、地道なんて一刀両断に切って捨てたい言葉だね。

地道に歌いつづけていらっしゃるじゃないですか?

友川:それはちがうな。歌だって2年くらい止めていた時期があるんだから。もういいやと思っていたんだから。飽きっぽいしそういうのはないの。そうしたら渋谷時代の〈アピア〉にあるファンから電話がきて、「友川さんにまた出てほしい」と。毎日のように電話がくるんだっていうのよ。それでまたやることになったんですよ。(お客さんが)10人以下になったらもう止めるとも決めていたんですけどね。それがいつも12、13人だったりするのよ(笑)。これがむずかしいところですよ。

それこそ神の差配なんじゃないですか?

友川:いやいや、神なんかいるもんか。

それでも、すくなくとも10人以上はお客さんはいたわけですよね。

友川:そうだね。これだけ長く歌っているといろんなひとがいるね。

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変わる余地は私にはいっぱいあるんです。

私も〈アピア〉でも何度も聴きました。

友川:滝澤明子さんといういまイギリスに住んでいるカメラマンの方は日本に帰ってくるたびにコンサートにずっときてくれてたんだって。そのときは顔も名前も存じませんでしたが、私がロンドンでライヴをしたときに、彼女がきてくれて、知り合いになった。そういうこともありましたよ。

海外でも友川さんの歌が評価が高いですが、言葉が通じない場所で聴かれていることをどう思われますか。

友川:私だってローリング・ストーンズを聴いたりするわけだしね。しかしどういった感覚なんだろうね。

スタッフの佐々木氏:ロンドンでは〈cafe OTO〉というところでライヴしたんですが、滝澤さんによれば、あんなに話し声がしない〈cafe OTO〉ははじめてだということでした。イギリスではお客さんは演奏中もしゃべっていることが多いらしいんですが、友川さんのライヴはシーンとしていたとおっしゃっていました。

友川:ロンドンでは私は(曲間に)ほとんどしゃべらなかったんですよ。英語しゃべれないから。次々と歌だけ歌ったんです。

それをみんな真剣に聴いていたんですね。

友川:そうそう。

感想は訊かれましたか。

友川:訊くもなにも、話せないから、ただ飲んでいただけ。

私も18、19歳でヨーロッパに行ったとき、友川さんの『初期傑作選』のCDを、当時はCDウォークマンでしたからそれにいれて旅していたんですけど――

友川:つらい旅だ。

いろいろ思うところがあったんでしょうね(笑)。フランスに寄ったとき、知り合った同世代の男性に聴かせたらほしいというもんであげた憶えがあります。私もフランス語はできませんでしたから、いいと思った理由はよくわからなかったですが、言葉の壁を越えて伝わるものが友川さんの歌にはあるのかもしれませんね。

友川:フランスからロンドンに私の歌を聴きにきたレオナルドという男がいたんだけど、彼は私のレコードを全部もっていたからね。ヘンな男だったよ。なんの仕事やってるって訊いたら、無職ですって。アンコールも彼がたちあがってアンコールかけたもので全員仕方なく手を叩きはじめたんだけどね。

そういう熱狂的なファンがいるんですね。

友川:あちこちに、そういった危ない感じのひとがいるのよ(笑)。フランスには多いですよ。

言葉の響きの問題ですか?

友川:関係ないでしょ(笑)。

『復讐バーボン』にも訳詞がついていますし、海外でも聴かれるといいですね。

友川:そうね。

友川カズキ“馬の耳に万車券”
Kazuki Tomokawa "A Lucky Betting Slip to Deaf Ears"

2014年1月29日 in 大阪『復讐バーボン』レコ発ライヴ
友川カズキ、永畑雅人、石塚俊明、ギャスパー・クラウス


言葉にしろ曲にしろ、演奏しても『復讐バーボン』はこれまでの友川さんの作品のなかでも頭ひとつ抜けていると思いました。

友川:それはうれしいね。いつまでも『初期傑作集』じゃね。

初期は初期ですばらしいと思いますよ。前に原稿でも書きましたが、変わっていくもののなかに一貫しているところがあるのも友川さんだと思うんですね。

友川:松村さんはそう書いていたけど、私もそう思う。一昨日の私ではダメなのよ、明後日の私がつねにここに坐っているような感じでないと。なにかないと。

そうありつづけるひとも多くはないと思いますけどね。

友川:いや表現者にはいっぱいいますよ。

そういう表現者がいっぱいいれば日本はもっと住みやすいと思いますけどね。

友川:偉いこといったな、あんた(笑)。ちょっと政界にでもいってきてよ。(ライヴハウスの店員に)じゃあ、ビールとあとカレー3つ。


(後編につづく)


BACK DROP BOMBというBANDでguitarを弾いたり、
歌舞伎町のドープオアシスSPOT BE-WAVEで色々とやっております。
DJ nameはDJ TASAKAと同様の発音でお願いします。
BAND活動20周年を記念してTRIBUTE ALBUMを作りました。
20周年特設サイト(https://bdb20th.com/)

DJ&LIVEスケジュール
6/3 DJ BAKU PRESENTS "MIXXCHA"VOLUME ONE"@中目黒solfa(DJ)
6/7 歌舞伎町be-wave 8Anniversary party@be-wave(DJ)
6/9BACK DROP BOMB特別番組@DOMMUNE(Talk)
6/14 Broccasion Live@六本木ex-theater(Live)
6/15rega「2014tour discuss」@仙台MACANA(Live)
6/22HOLYDAYS@LOUNGE NEO(DJ)
6/27Broccasion Live@大阪BIGCAT(Live)
まだ他にも決まっているlive等有ります。こちらでチェックプリーズ(https://backdropbomb.jp/

最近DJで良くかける曲10


1
PAPER,PAPER... (MxAxD) - BRON-K feat.NORIKIYO

2
Animal Chuki - Capicúa

3
Mastered - A-Trak feat.Lupe Fiasco

4
Rathero - Semilla

5
Buraka Som Sistema - Zouk Flute

6
Dillon Francis - I.D.G.A.F.O.S. (Neki Stranac Cumbia Digital Rework)

7
Liliana (Dengue Dengue Dengue! Refix) - Los Demonis del Mantaro

8
FISSA - UFO!&Hoodie

9
Snake (Neki Stranac Moombahton Mix) - Blasterjaxx

10
Lagartijeando aka Mati Zundel - Doña Maria - El Pescador (Lagartijeando Remix)

Seahawks - ele-king

 ポスト・チルアウト〜シンセウェイヴの隆盛もずいぶんと落ち着いて、いったん引き波モードに入りつつあるように感じられる今日このごろ。あっちへふらり、こっちへふらり。そんな移ろいやすいシーンのど真ん中にいながらも、太陽よりも高く、海よりも深く、どこまでも孤高に。そして、変わらないバレアリック・オーシャン・トリップで、現実のタガをゆるめ、見たことのない色遣いで、日常をビカビカとテカる極彩色に染め上げるロンドンのベテラン・デュオ、シーホークスの新作が漂着した。

 変わらない、といってもそれは彼らが捕らえて引き延ばした永遠の電子パラディーソ感覚のことであって、そこにたどり着くまでの冒険心はまたもや新しい表情を見せ、今作でも一段上の鮮度を約束してくれる。
 相変わらず深い靄に包まれたノスタルジックなシンセが跳ね回り、水しぶきを上げ、照りつける太陽の光を反射しながらコズミックにクルージング。これまでにもバンド編成で柔らかくも力強い演奏を聴かせてくれたが、今回のフル・バンドは特別だ。ベースとギターにホット・チップ〜LCDサウンドシステムのアル・ドイル。ドラムとギターにホット・チップの初期メンバーであり、現在グローヴスノー名義で活動しているロブ・スモウトン。そして、キーボードにホラーズのトム・ファースらを迎えたサウンドは、前作『アクアディスコ』で披露した「溶けろ! リアリティ〜!!」と言わんばかりの誇大妄想エキゾチカよりも心もち(生音が多いせいもあり)現実味を帯びたアーバニズムを聴かせてくれる。そして、特筆すべきは曲だけでなくアルバム全体のムードを先導するアルのベースである。スペーシーなうわものから独立した、もっこり野太くフュージョンチックなベース。タメを効かせ、スムースに波打つ余裕がじつにいやらしい、この、リズムとねっとり絡みあう魅惑のベースラインだけでも聴きごたえ十分ではないか。

 さらに、もうひとつのトピック。これまでジ・オーブばりのヴォイス・サンプルこそ多用していたものの、情緒あるサウンドのみで胸焦がすドラマを演出してきたシーホークスだが、なんと今作には明確な言葉がある。さまざまなゲストを迎えた歌がある。そしてこれが、シーホークスの世界がもつより具体的なイメージを露わにしてくれるのかと思いきや、またしても靄の向こうではぐらかし、僕たちを未開の海に放り出す。美しい……この手に届きそうで届かないもどかしさがたまらなく美しい。海辺のフィールド音と弾けるハウシーなビート、マリア・ミネルヴァの「rainbow sun...electricity...」というささやきからはじまる1曲め“レインボウ・サン” なんて、その言葉選びと発声だけで眩しくて視界くらくら。つづく、ティム・バージェス(シャーラタンズ)の渋みを帯びながらもふわふわ漂う歌声が心地よい夢想歌“ルック・アット・ザ・サン”は、ヨット・ロックなんてスノッブ気取り(?)ではなく、まるで10ccかロキシー・ミュージックの『アヴァロン』ばりのスメルズ・ライク・アダルト・オリエンテッド・スピリットがもわ〜んと匂い立ち、ホーン、トランペットの挿入からサックスのソロが立ち現れる瞬間なんて止まらないロマンチックに浮揚しながら哀愁にむせ返らぬばかりだ。さらに、ピーキング・ライツの奥方インドラ・ドゥニスをヴォーカルに迎えたエコーたっぷりのサイケデリック・オーシャン・ダブ、“ドリフティング”。これまでのシーホークス節を踏襲したインスト曲にしてタイトル曲“パラダイス・フリークス”など、しなやかな突起もたくさんだ。そして、極めつけは、80年代に2枚のシングルだけを残して音楽界から姿を消した——知る人ぞ知るエレクトロ・サイケデリック・ポッパー——ニック・ナイスリーをフィーチャリングした“エレクトリック・ウォーターフォールズ”である。まるでアニマル・コレクティヴが2005年のEP『プロスペクト・ハンマー』において、60年代に活動していた伝説のフォーク・シンガー、ヴァシュティ・バニヤンをゲストに迎え、再び彼女の存在に光を当てたように(じつはヴァシュティが引退後にはじめてレコーディングしたのはピアノ・マジックの2002年作『ライターズ・ウィズアウト・ホームズ』でだったりするのだが、この際それは置いておこう)、シーホークスはニック・ナイスリーを現代に蘇生させてともに手を取り、光輝くトロトロの電子の滝へとダイヴするのだ。

 シーンの波が引いてすべてが泡になろうが、通りすがりの享楽者が安易な叙情をまき散らし、そこをゴミで埋めつくそうが、シーホークスには関係ない。匿名性の高いシーンのなかで、彼らの一歩は誰もが見惚れる美しいフォームで、しなやかに、そして着実に新しい足跡を残す。水木しげる、田名網敬一らとのコラボレーションも納得できるヴィジュアル・アーティストのピート・ファウラーと、〈Lo Recordings〉を主宰し、80年代後半からクラブ・シーンの最深部でキャリアを築いてきたジョン・タイ。そんなふたりの創造主は、意識こそこちらを遠く離れ、ジ・アザー・サイドで、すすすい~と泳ぎ回っているものの、身体は現実世界にしっかりと足をつけ、いたって沈着に遊泳の舵を握る。
 そう、彼らはくそったれの現実から逃避するのではなく、それを解きほぐしてこちらがわりにたぐり寄せる。こっちの水も甘〜いぞ、と。そんな香りに誘われて、白んだ夜を彷徨う明け方4時ごろのレイヴァーたちは、シーホークスに連れられ、迷うことなく、優しく深いあいまいな海へと還るのだ。

 もうすぐ夏がやって来る。

Arca (DJ set) - ele-king

 「DJ set」というクレジットに不安をおぼえたひともいたかもしれないが、しかし、アルカのそれはまるでライヴだ。プレイ・スタイルは言葉どおり、まさにトータル・フリーダム。彼の進化系ないしは変異体。さながら魔術のようなCDJさばきからはトータル・フリーダムの影響力をまざまざと感じる(じっさい友だちだとのこと)。〈フェイド・2・マインド〉的なヒップホップ/R&Bのミックス感覚でもって音響的悪戯を極めたステージ。出世作のタイトル『&&&&&』はハッタリじゃない。ヴォーグに、ハウスに、アンビエントに、リック・ロスに、R&Bヴォーカルに、スムース・ジャズっぽいトランペットに、…メタル? たしかにミックスは(Tくんがジョージ・マイケルとデフトーンズの曲だったと証言するとおり)カオスそのものだが、一貫してダンス・ビートは崩されない。サウンドの根底には、エレクトロニカやグリッチ、そしてヒップホップがあるようだ(彼がもともとヌーロ/Nuuro名義でエレクトロニカ/エレクトロポップを作っていたこと、『&&&&&』にスヌープ・ドッグが鮮やかに挿入されていたのを思い出してほしい)。

 『&&&&&』からは想像するのがむずかしいほど、リスニングの姿勢で来たら面食らってしまうほど、アルカことアレックスのDJはハードなダンスを志向する。フロアを沸かしにかかる。が、沸きあがる直前でつぎつぎと曲を変えていく。エフェクトの使い方もすさまじく、ピッチもBPMも彼の思うがままに操作され、サウンドはぐにょんぐにょんに引き伸ばされ、ゆがみ、ぶっ飛んで、沈んでいく。DJというより、『&&&&&』のダンス・ヴァージョンをその場で作っていたような感覚だ。かつてのヌーロ名義のクリアなイメージとはほど遠く、ダーティでノーティ。ダークでエレガンス。エクスペリメンタルでありエクスペリエンス。脳は揺れ、身体が音楽をキャッチする。いったい何が彼を変えたのだろうか? 1時間半、彼の集中力と陶酔は最後まで崩れなかった。
 また、アルカとともに怪奇的な映像プロジェクト『トラウマ』を制作しているジェシー・カンダもロンドンから会場にかけつけており(VJはしていなかったようだ)、流暢な日本語でファンと話していた。
 『&&&&&』のヴァイナル化を経て、今年はアルカのアルバム・リリースが期待されている。これはかなり期待していい。再来日公演があれば、絶対に見逃さないでほしい。

 この夜は他の出演者も印象的だった。ゴルジェを牽引しつつ最新EPで「終了」を宣言したハナリ(hanali)も忘れられない。タムを激しく乱打しながら思いっきりダンスのモードで挑んでいて(本人いわく途中からはノープランだったらしい)、これまででいちばんの熱いライヴだった。マッドエッグ(Madegg)も、途中ナイト・スラッグス的グライムの趣味をのぞかせつつ、文句なしのカッコよさ。物販で買ったEP「4」も、疲れた身体にしみるクールな作品だ。

 もしかすると今年いちばんの夜だったのかもしれない。このイヴェントに立ち会えて幸福だった。また、〈モダン・ラヴ〉のショーケースでも感じたのだが、オーディエンスに若くクールな女性が多かったことも印象的だった。リカックスを筆頭に。

 今月24日の深夜にはJ・クッシュとトータル・フリーダムのDJが体験できた。(https://www.tokyoprom.com/2014/05/prom-nite-4.html)。#最高の夏がきた。

 音楽やそれを取り巻く風俗を現場の皮膚感覚から言葉にし、時代を動かすアンダーグラウンド・カルチャーをつぶさに眺めてきた人気ライター2人が、これからの音楽の10年を考える連続対談集『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』。

 著者の磯部涼さん&九龍ジョーさんによる、スペシャル・ゲストを交えてのトーク・セッションが開催されます! お迎えするのは、伝説的な"リトル・マガジン"『SUB』とその誕生の背景を追う瀟洒なノン・フィクション『Get back,SUB! あるリトル・マガジンの魂』などの著作や、数々の音楽本の編集・執筆で知られる北沢夏音さん。そして、高い詩情と文学性によって歌謡とロックの歴史の先端を繊細に掘削するシンガーソングライター、前野健太さん。本書の大きなテーマのひとつでもある「音楽のなる場所」──2010年代に音楽はどのような場所で鳴っているのか、それは政治や社会とどのように関係しているのか──をキーワードに、狭い意味での"音楽シーン"を超えて、わたしたちの生きる場所と、そこに結びつくさまざまな音について思いをめぐらせます。

 アンプラグドな前野さんの演奏も間近く聴ける!? 

 ファンのかたにも、初めてお名前を知るかたにも、素敵な時間をお届けいたします(トーク内容は変更する場合もございます)。

○日時:平成26年6月4日(水) 19:00~ (開場18:30)
○場所:紀伊國屋書店新宿本店 8階イベントスペース 
○定員:50名
○参加費:1,000円
○参加方法:2014年5月20日(火)午前10:00時より7階レジカウンターにてご予約を承ります。
ご予約電話番号:03-3354-0757
新宿本店7階芸術・洋書売場(10:00~21:00)

※当店に繋がる他の電話番号におかけになられてもご予約は承れませんのでご注意下さい。
※イベントに関するお問い合わせも、上記の電話番号までお願いいたします。

※参加料1,000円はイベント当日、会場受付にてお支払いいただきます。
※イベント終了後『遊びつかれた朝に』をお持ちのお客様対象にサイン会を行います。


出演者プロフィール

北沢夏音(ライター・編集者)
1962年生まれ。主にサブ・カルチュアに関する企画・編集・執筆を行う。著書:『Get back,SUB! あるリトル・マガジンの魂』(本の雑誌社)/監修:『80年代 アメリカ映画100』(芸術新聞社)/共著:『冬の本』(夏葉社)、『音盤時代の音楽の本の本』(カンゼン)、『山口冨士夫 天国のひまつぶし』(河出書房新社)/対談構成:山口隆 『叱り叱られ』(幻冬舎)/書籍編集:寺尾紗穂『愛し、日々』(天然文庫)、森泉岳土『夜のほどろ』(同)/CDボックス・ブックレット編集執筆:『人間万葉歌 阿久悠作詞集』三部作(ビクターエンタテインメント)、やけのはら『SUNNY NEW BOX』(felicity/SSNW)など。

前野健太(ミュージシャン)
1979年埼玉県入間市出身。シンガーソングライター。2007年に自ら立ち上げたレーベル"romance records"より『ロマンスカー』をリリースしデビュー。2009年にセカンドアルバム『さみしいだけ』を"DIW"よりリリース。
2009年元日に東京・吉祥寺の街中で74 分1 シーン1 カットでゲリラ撮影された、ライブドキュメント映画『ライブテープ』(松江哲明監督)に主演として出演。第22 回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」で作品賞を受賞し全国の劇場で公開された。
2010年9月"Victor Entertainment"より発売された『新・人間万葉歌~阿久悠作詞』へ参加。2011年2月"romance records"より3 枚目のオリジナルアルバムとなる『ファックミー』をリリース。同年、松江哲明監督の新作映画『トーキョードリフター』に再び主演として出演。全国劇場で公開される。また主題歌をリレコーディングしたコンセプトアルバム『トーキョードリフター』を"felicity"よりリリース。
2011年末には第14 回みうらじゅん賞を受賞。2012年auの新CM「あたらしい自由」篇に出演。2013年1月、ジム・オルーク氏をプロデューサーに迎え制作された4 枚目のアルバム『オレらは肉の歩く朝』を発売。同年7月「FUJI ROCK FESTIVAL'13」へ出演。
公式HP: https://maenokenta.com/
公式twitter: @maeken_info

磯部涼(音楽ライター)
78年生まれ。主にマイナー音楽、及びそれらと社会との関わりについてのテキストを執筆し、04年に単行本『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(太田出版)を、11年に続編『音楽が終わって、人生が始まる』(アスペクト)を刊行。その他、編著に風営法とクラブの問題を扱った『踊ってはいけない国、日本』『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(共に河出書房新社)がある。

九龍ジョー(編集者・ライター)
76年生まれ。ポップ・カルチャーを中心に原稿執筆。『KAMINOGE』、『QuickJapan』、『CDジャーナル』、『音楽と人』、『シアターガイド』、などで連載中。『キネマ旬報』にて星取り評担当。編集近刊に、坂口恭平『幻年時代』(幻冬舎)、岡田利規『遡行変形していくための演劇論』(河出書房新社)、『MY BEST FRIENDS どついたるねん写真集』(SPACESHOWERBOOKS)などがある。

 音楽やそれを取り巻く風俗を現場の皮膚感覚から言葉にし、時代を動かすアンダーグラウンド・カルチャーをつぶさに眺めてきた人気ライター2人が、これからの音楽の10年を考える連続対談集『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』。

 本書の重要なテーマのひとつである「音楽のなる場所」──2010年代に音楽はどのような場所で鳴っているのか、それは政治や社会とどのように関係しているのか──をより発展的に考えるべく、著者磯部涼&九龍ジョーが、スペシャル・ゲストを迎えてトーク&ライヴを開催! お迎えするのは、それぞれに新しい「パーティ」のかたちを模索するキー・パーソンたち。 「新宿ロフト飲み会」等で知られ、日本のポップスにダンスと歌謡のダイナミズムを復権させる音楽集団、〈音楽前夜社〉のスガナミユウさん、「SHIN-JUKE」や「SCUM PARK」で、ジュークやフットワークを切っ先に音楽的にも空間的にも新しい場所をひらく〈オモチレコード〉の望月慎之輔さん、その〈オモチレコード〉になくてはならないバンドHave a Nice Day!の浅見北斗さん、そして、「24時間365日開放」されたスペースで、アーティストを中心にシェアハウスとは異なる共同生活のあり方を実践する〈渋家〉の齋藤桂太さん、としくにさん。

 さらにはライヴ・パートとして、いまもっともパフォーマンスや音盤化が切望される嫁入りランドさん、"ダンスミュージックを使ってブースからプレイするハードコア・バンド”LEF!!!CREW!!!のDJ MAYAKUさんと『Internet Dungeon EP』や『Sekai no Minasan Kon-nichiwa』で注目の集まるSOCCERBOYさん、パーティ・シーンの台風の目NATURE DANGER GANGさんのパフォーマンスも!

 音楽とともに、音楽を超えて、「パーティ」が我々に見せてくれる未来像を探る!

2014/05/27 (火)
19:00~21:00 磯部涼+九龍ジョー
『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』刊行記念
「パーティの現在、日本の未来」

出演:磯部涼、九龍ジョー
TALK GUEST:スガナミユウ(音楽前夜社)、望月慎之輔(オモチレコード)、浅見北斗(Have a Nice Day!)、齋藤桂太(渋家)、としくに(渋家)、寺沢美遊(写真家)
LIVE GUEST:NATURE DANGER GANG、SOCCERBOY+DJ MAYAKU

21:00~24:00 BROADJ Pionner
「Jeminic Records presents Off The Hook on DOMMUNE!!/BROADJ♯1294」
LIVE:Jimanica、RIOW ARAI  TALK: Jimanica、林永子、カワムラユキ

www.dommune.com


■6/4(水)は紀伊國屋書店新宿本店でもトーク&ライヴ!
ご予約受付中!

磯部涼+九龍ジョー+スペシャル・ゲスト北沢夏音&前野健太!
『遊びつかれた朝に──10年代インディ・ミュージックをめぐる対話』刊行記念トーク・セッション

詳細:
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/
Shinjuku-Main-Store/20140520100013.html

○日時:平成26年6月4日(水) 19:00~ (開場18:30)
○場所:紀伊國屋書店新宿本店 8階イベントスペース 
○定員:50名
○参加費:1,000円
○参加方法:2014年5月20日(火)
午前10:00時より7階レジカウンターにてご予約を承ります。
ご予約電話番号:03-3354-0757
新宿本店7階芸術・洋書売場(10:00~21:00)


DJ歴 1994-2014 祝20周年!まだまだイキマス!!
Facebook : https://www.facebook.com/fumicro

>>DJ Schedule
2014/05/24-25 "Re:birth 2014" @千葉 富津岬
2014/05/31-06/01 "amitAyus" 12th anniversary @福岡 八女 グリーンパル日向神峡
2014/06/21(SAT) "GOKURAKU" @福岡 親富孝 graf
2014/06/28(SAT) "BlackOut周年祭" @福岡 今泉 BlackOut
2014/07/04(FRI) "ウルトラミィグルグル" @沖縄 宮古島 ウルトラミャーク
2014/07/12(SAT) "にわか ゴメンそ~れ" @沖縄 那覇 Mile Stone
2014/07/19-20 "Mind Of Vision open air 2014" @新潟 妙高杉ノ原スキー場

オンシーズン到来! 広大な大自然の中、爆音で鳴らしたい10曲(順不同) (2014/05/22)


1
Equitant - Body Vehement(Canzian Phase 01 Remix) - Black Leather Records

2
TIS - WHAAAATZZZZ(Original Mix) - Verform Records

3
Raphael Dincsoy - It's Fucking Rude(Remute RMX) - Remute

4
Ross Alexander - Broken Translation(Original Mix) - Forte Techno

5
Seri - Lunar(Original Mix) - Elektrax Recordings

6
Alex Jockey - Afrodescendente(Joseph Dalik Remix) - Tekx Records

7
Spirit Catcher - Voodoo Knight(Catz 'n Dogz Dub Mix) - Pets Recordings

8
Lutzenkirchen - Hurt Me(Original Mix) - Doppelgaenger

9
Pascal F.E.O.S. - Overflow(Timo Maas Remix) - Mixmag Records

10
Sunaj Assassins - Creepy Lover(Original Mix) - Cynosure Recordings

interview with Jon Hopkins - ele-king

 アリス・シーボルド原作、ピーター・ジャクソン監督の映画作品『ラブリーボーン』は、14歳で殺された少女が天国から事件の顛末と家族の行く末を見守るといったもので、その天国で流れていたのが、ブライアン・イーノ、レオ・エイブラハム、そしてジョン・ホプキンスの共作によるスピリチュアルなアンビエントだった。何か禍々しいことが起きたとして、それはもう「済んでしまった」世界。そんな風景に、ブライアン・イーノの正統な後継者のひとりだと言っていいだろう……ジョン・ホプキンスの音響はよく映える。


Jon Hopkins
Immunity

Tower HMV Amazon iTunes

 南ロンドン出身で10代からのキャリアを誇るジョン・ホプキンス。名前が表に出てくるまではやや時間がかかったが、すでにそのサウンド構築において堂々たる風格を携えている。イーノとのいくつかの共作を経て、海外で昨年発表されたソロ・アルバム『イミュニティ』が高く評価されたのは、その研ぎ澄まされた工学的なサウンド・デザインによるものだろうが、それはどこか俗世間を超越するような聖性を帯びているように聴こえる。『ラブリーボーン』以外にも映画音楽を手がけているホプキンスだが、彼の音楽は世界が滅びてしまったあとの世界、そこで溢れる光とともに響くかのようなイメージ喚起力を持っている。
 アルバムはインダストリアルな風合いすらある攻撃的なビートを持ったテクノが並ぶ前半と、どこまでも静謐なアンビエントが聴ける後半にはっきりと分かれているが、その構成も含めて非常に緻密に完成されたものとなっている。間違っても「トラック集」といった雑多なものではなく、厳格な美意識によって統制されていることがわかる。イミュニティ……免疫、抗体、ひとを危害から庇護するもの。その音だけが聞こえる世界、だ。


■ジョン・ホプキンス(Jon Hopkins)

1999年に『Opalescent』でデビューし、コールドプレイ『美しき生命』への参加やブライアン・イーノとのコラボレーション、映画のサントラなど幅広く活動をつづけるロンドンのプロデューサー。通算4枚めとなるオリジナル・アルバム『イミュニティ』には、マーキュリー・プライズ2011にもノミネートされたスコティッシュ・シンガーソングライター、キング・クレオソートもゲスト・ヴォーカルとして加わり、名立たる音楽メディアが年間ベスト・アルバムとして挙げている。



新作『イミュニティ』は『インサイズ』から5年ぶりのソロ・アルバムとなりますが、その間、サウンドトラックやプロデュース、コラボレートなどさまざまなプロジェクトに関わっていましたよね。とくに映画音楽などは、あなたの音楽スタイルに非常に合っているように思えて、そういった方向に力を注ぐのかなとも思ったのですが、そうではなくてジョン・ホプキンス名義でソロ・アルバムを出そうと思ったモチヴェーション、入り口はどのようなものだったのでしょうか?

ジョン・ホプキンス(以下、JH):4年だよ。いや待った、そうだいまは5年経つね。ふたつのアルバムの間隔は4年のはずだよ。いずれにしろ、自分ではすごく長く感じるけどね(笑)。
 サウンドトラックを作るのは楽しいよ。ある意味ではアルバムを作るよりもラクだしね。自分のアルバムを作るときは新しいサウンドを生み出すために時間をかけて試行錯誤できるのに対して、映画音楽を作るときっていうのは、1ヶ月のあいだに24曲とかを書かなきゃいけないから、集中してかなりのスピードで仕事をこなさなきゃならないんだ。あまりいろいろ試している時間はなくて、20時間くらいずっと続けて作業をしたりするのはとても興味深い心理状態だよ。映画のサウンドトラックもこれからももっとやりたいと思っている。いままでやった3つの映画はどれもかなりタイトなもので、1ヶ月から1ヶ月半くらいのあいだに仕上げなきゃいけなかったから、ソロの活動が落ち着いたらもっと大きな映画の仕事もやって、オーケストラを使ったサウンドトラックとかもやってみたいね。いままでは自分ひとりでやるものばかりだったから、さらに手を広げて他の人たちといっしょにやってみるっていうのはいいアイデアだと思うんだ。
 ソロ・アルバムを作ろうと思ったっていうか、もともとアルバムを作ることはいつも最優先事項だったんだ。正直なところ、このアルバムの前はいまほどソロが上手くいっていなかったから……(笑)。もし2001年に最初のソロ・アルバムがヒットしていたら、こんなにいろいろなプロジェクトには関わらなかったんじゃないかと思うよ。だから、そうならなくてよかったと思っているんだ。おかげでいまはいろいろな選択肢ができたしね。最初にプロデュースやサウンドトラックの仕事をやりはじめたのは、それが必要だったからっていう部分が大きいよ。それが結果的にいい経験になったし楽しかったけれど。でもどれも、自分自身の作品を作る自由さや高揚感とか、自分自身の考えを思索する感覚とは比べ物にならないよ。それに、複数のプロジェクトを同時進行で進めるのは、何人もちがう自分がいるようで疲れる部分もあるんだ。

本作のリリースに際して、あなたはライヴを念頭に置いたと説明していました。たしかにこれまでもあなたの楽曲にはビートはありましたが、本作の、とくにアルバム前半においてのビートのパワフルさには驚かされます。何かきっかけはあったのでしょうか?

JH:いや、それはちょっとわからないな……。あまり作るトラックについて深く考察はしないんだ。作るときは直感に従っているからさ。年をとるにつれて、先にいろいろ考えたり計画しないほうがいいものができるってわかってきたからね。ここでこういう考えを表現しよう、とか考えはじめると、なんだか堅いものになってしまうから、たまたまそのときに浮かんできたビートがそのまま音楽に現れるっていうのが自然でいい方法だよ。それに、この一つ前のアルバム(『インサイズ』)のツアーをしていたときに、ヒプノティックでテクノ寄りの音楽に傾倒するようになったから、それも反映されていると思う。

この一つ前のアルバム(『インサイズ』)のツアーをしていたときに、ヒプノティックでテクノ寄りの音楽に傾倒するようになったから、それも反映されていると思う。

アルバムは前半と後半ではっきりとムードが分かれています。とくに、強いビートが続く“コライダー”から、“アバンドン・ウィンドウ”の最初のピアノの1音で見える景色をガラっと変えてしまう展開には引き込まれます。このような構成にしたのはなぜですか?

JH:ふたつのもののコントラストがリスナーに与える影響っていうものにすごく興味を惹かれるんだ。最初に、ほとんどやり過ぎなくらいにひとつのものを続けて、その後でそこから別なものへと解放するっていう風なものさ。“コライダー”なんてとくに、10分近くひとつのベース音が繰り返されるんだけど、あれはあえて長過ぎるくらいにしたんだ。そのあとに“アバンドン・ウィンドウ”のリズムのない、シンプルさによる解放感が来ることで、まさにまったくちがう場所に送られてしまったような感覚を生み出したかった。それに、どちらのトラックもある種の物悲しげな雰囲気があるけど、その物悲しさがそれぞれ真逆の方向性から来ていて、一方は終末感のある、エネルギーに溢れたもの、もう一方はアンビエントでメランコリックな、もの思わしげな悲しさになっている。ここがアルバムの重要な分水嶺になっているんだ。それに、こんな10分も続くテクノ・トラックのあとに5分のピアノ曲が入ってくるアルバムを他に知らないから、まだあまり誰も冒険してみたことのない領域なんじゃないかとも思ったんだ。

シングル2枚、“オープン・アイ・シグナル”、“ブリーズ・ディス・エア”がアルバム前半の強力なフックとなっています。これらではミニマル・テクノや2ステップ、あるいはダブステップに近いビートなどが聴けますが、あなたが最近肩入れしているクラブ・ミュージックのシーンはありますか? また、それがこのアルバムに影響したところはありますか?

JH:正直とくにないよ、そもそもクラブ自体、自分がプレイするとき以外に行くことはないからね。もちろんそういうときにクラブ・ミュージックには触れるし、そこでところどころ吸収するものはあるけど、僕はDJでもないし家でそういう音楽を聴くこともないんだ。もちろんプレイするためにクラブに通いつづける時期もあるけど、自分から積極的にクラブに行って遊んだりするタイプじゃないよ。

通訳:では、家では普段どんな音楽を聴くんですか?

JH:家で聴くのは、もっと歌っぽいものや昔のもの……昔のブライアン・イーノのアンビエントでリラックスできるような音楽とか、自分の作曲のモードから解放させてくれるようなものだね。残念なことだけど、ミュージシャンになってからは音楽の使い方が変わってしまうというか、音楽が新しいものを見つけるためのものじゃなくて、僕の場合は作曲から離れて、仕事モードから解放されるためのものになってしまった。バンドの音楽なんかも聴くよ。もちろん好きだからだけど、自分の音楽とちがうからっていう理由もある。

通訳:クラブに自ら行かない、というのも仕事モードから離れたいから?

JH:いや、必ずしもそういうわけじゃなくて、僕もいま34歳になって……べつに年齢がクラブに行かない理由になるわけじゃないけど、一晩中クラブに入り浸ったりする時期は過去10年間ほどで充分すぎるほどに経験したからさ。まあそれになんだかやっぱり、仕事場に来ているのに仕事してない、みたいな気分になるしね(笑)。歳を取るにつれて、もっとちがったものに興味が出てきたと思う。とはいえライヴをする上で、人々がどんなものを聴きたがっていて、どうすれば自分のセットを楽しみやすいものにするかを考えるためにもクラブに行くことは必要だし、そもそも僕はいまでも毎週クラブにいるよ(笑)。

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何年も使いつづけてきて、このピアノでの弾き方が僕の作曲方法自体を形づくってきたから、アルバムに入れるのはごく自然な感覚だね。

なかでも強烈に耳を引くのはピアノの音とそのメロディです。あなたが一貫してピアノの音色を重要なところで使うのはどうしてでしょうか?

JH:たぶん僕自身が子どものころからピアノといっしょに成長したからだね。今回のアルバムで使っているピアノは、まさに僕が8歳のころから持っているものなんだ。18歳で実家を離れてからどこに引っ越すときもいっしょに持ってきて、7年前にやっと自分のスタジオを持ったとき、そこにマイクといっしょに設置したんだ。スタジオで自分のデスクからくるっと振り返るとそこにそのピアノがあって、頭の中にメロディーが浮かぶと、すぐにそこで形にできるんだ。ピアノの音に関してはこれまで映画のサウンドトラックでもかなり使ったし、これからはもっと減らす方向でいこうと思っているけど。でもやっぱりピアノは僕の楽器なんだよ。

通訳:ちなみにその8歳から持っているのはどんなピアノですか?

JH:ヤマハのアップライト・ピアノだよ。とくに高いものだったり、特別なピアノってわけじゃないけど、子どものときにピアノを売っている店でいくつも試してみて、そのすごくソフトなタッチが気に入ったんだ。何年も使いつづけてきて、このピアノでの弾き方が僕の作曲方法自体を形づくってきたから、アルバムに入れるのはごく自然な感覚だね。

“イミュニティ”は、あなたのトラックの特徴がよく出た、ムーディで、光溢れるような感動的なクローザーとなっています。この曲のタイトルが意味するところは?

JH:かなりシンプルな意味あいだよ。“イミュニティ”っていうのは作曲をしていると感じるものなんだ。曲を作るときは自分のなかの世界に入り込んでいて、何も自分には触れられないような感じ――とくにうまくいっているときは世界のすべてのこともうまくいっていて、何も自分に害を及ぼすものはないように感じられる。素晴らしい感覚で、それは音楽を聴いているときにも感じられる、保護されていて、力づけられるような感じさ。

それをアルバム・タイトルにしたのは?

JH:なんだろう、ただたんにしっくりきたからさ。アルバム全体のコンセプトにもなっているし、最後のトラックがアルバム・タイトルになるっていうのはいろんな意味で理にかなっていると感じるんだ。それにアルバムの前半の曲がかなりアグレッシヴでダークな雰囲気なのに対して、あの曲はかなりはっきりと対極にあるピースフルなものだからイメージにも合っているしね。

通訳:トラックのタイトルを先につけてからそれをアルバムのタイトルにしたのでしょうか? それとも逆?

JH:どっちだったっけ……(笑)。いや、間違いなくあのトラックができるよりも前にアルバムのタイトルは『イミュニティ』だって決めていたから、アルバム・タイトルが先だね。誇りに思えるしっかりしたアルバムのタイトルを決めるっていうのは、作曲をする上でも最終的な目標や方向性が見えるようになるから、重要なことだよ。

ヴィデオでもコラボレートしていたピュリティ・リングとは、そもそもどうやって繋がったんですか?

JH:2011年、まだ彼らがレーベルと契約もしていなかったときに、彼らのマネジメントが僕のマネージャーに、このバンドをプロデュースするというか、アルバムの制作に協力することに興味はないかって打診してきたんだ。その当時かなり忙しかったから、他のことをやる余裕はほとんどなかったんだけど、1曲だけ聴いてみたらすごくよかったから、何かしなきゃって思った。でもどうしても時間がなかったから、アルバムのうち1曲だけミックスをすることになったのさ。そのときのミックスをどんな風にやったかを彼らに説明して、彼ら自身がアルバムの残りをミックスするときに、それを参考にしたらしい。そのあとやっと時間ができたときに彼らのシングルのリミックスをして、そのお返しにミーガンが僕のトラックにヴォーカルとして参加してくれた。だから、全体的に自然な流れだったよ。

『イミュニティ』はヨーロッパのエレクトロニック・ミュージックの感性を引き継ぎつつ、アンビエントなムードなどは現在の北米のシーンともシンクロするところがあるかと思ったのですが、実際のところ、あなたは現在のシーンの状況を意識するほうですか?

JH:うーん、シーンのトレンドを意識してしまうと、いたるところで使われているようなサウンドとかテクニックにどうしても影響されてしまうし、僕はDJじゃないからとくに新しいものをチェックしたりもしないんだ。だから騒がれているミュージシャンの名前とかもあまり覚えていないよ。そのときに目新しくて「いまっぽい」ものを作っても長くは残らないから、もし自分の作る音楽にそのときのシーンと共通するところがあるとすれば、それは純粋に偶然の問題であるべきだよ。だから僕の作ったものにいまの世界の流行と似通ったところがあるなら、それはただの幸運だね。もちろん流行と合ったものを作ることでより多くの人が取り上げてくれて、有名になることはラッキーでいいことだけど、意識的にそうしようと思ってするものじゃないな。

曲名も暗示的ですし、何よりもあなたの楽曲はムードが非常にイメージを喚起しやすいですよね。楽曲を作りながら、あるいはアルバムとしてまとめながら、浮かんでいた具体的なイメージはどのようなものなのでしょうか。

JH:うーん、とくに具体的なイメージがあったというよりは、自分自身の心理状態とかを反映してるという方が近いかな。曲名を決めるのには、ブライアン・イーノとも共作したことのある詩人のリック・ホランドの力を借りたんだ。僕はそういうのがあまり得意じゃないから、僕らはときどき会ってまず僕が彼にそれぞれのトラックについてひたすら説明して、彼がそれをノートにとったりトラックを聴き込んだりして、名前を思い浮かべたりする、という方法でいくつかのタイトルは生まれたんだ。自分だけでできない部分は、コラボレーションをしながらやるのがいちばんいいよ。


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今回は完成したのがマスタリングの日の午前4時で、その前の細かい調整をし終わった瞬間の素晴らしい感覚を覚えているよ。

ビートが激しくとも、あなたのトラックからは非常に洗練されたエレガンスを感じます。トラックの複雑さにも関わらず、最終的に美しくまとめる手腕には驚かされるばかりなのですが、どのようなことをもっとも意識しているのでしょうか? 今回のアルバムは長い時間をかけたそうですが、完成だと確信するのはどういった瞬間でしょうか?

JH:ありがとう。意識するのは、自分がついやりがちなことをできるかぎり避けるっていうことかな。僕にとっては、気をつけていないとアルバムがリラックスできるような、聴きやすくて甘すぎる音になってしまいがちなんだ。僕の最初のアルバムを作ったときは、まだ19歳だったからっていうのは言い訳だけど、平面的でコントラストのないものだった。だから、最初にアイデアが出てきたとき、そこから崩してもっと曖昧さのあるものにするために、精錬させる工程を経る必要がある。どこで完成させるかっていうのも重要なことで、数年かけて学んだことだよ。
 今回は完成したのがマスタリングの日の午前4時で、その前の細かい調整をし終わった瞬間の素晴らしい感覚を覚えているよ。その後はもうぐったりしていたけど(笑)、もうこれ以上いいものにするため何もすることはない、って確信できたんだ。もっとできることがあるとしても、8月かけてあらゆる要素をチェックして、少なくともその時点の僕が作れる最高のものができたのさ。

通訳:そういった感覚は他のアルバムのときにも感じましたか?

JH:そうだね、とくにセカンドのときは本当に長い時間がかかって、自分のできるあらゆることを試したし、まだ若くてあまり聴いてくれるひともいなかったから余計に感じたよ。誰が聴いていようといまいと、自分自身の持っているものすべてを注いで、誇りに思えるものを作らないといけないから、そういう感覚はどのアルバムにもあったね。

トラックそれぞれが物語性を持っているという点で、映画音楽的にも聞こえます。もし、あなたが『イミュニティ』を何でも好きな映画の映画音楽にしていいと言われたら、どの映画にしますか? 具体的になければ、架空の映画でもかまいません。

JH:そうだなあ、すでに存在する映画にはとくに合うものはないよ……あまりプロットのはっきりしていないものがいいな。『Monsters(モンスターズ/地球外生命体)』の仕事が楽しかった理由はそこなんだ、中心となるストーリーはあるけど、あまり何が起きるでもなく、綺麗な風景の中を歩いているシーンとかがたくさんあって、ああいう映画の作り方が好きだね。アクション映画の対極で、心理的だったり内面的な映画がいいな。

あなたの、現時点でのブライアン・イーノのモスト・フェイヴァリット・アルバムを教えてください。

JH:そのときどきで変わるけど、とくに好きなのは『サースデイ・アフタヌーン』だな。1時間のアルバムで、すごくシンプルなのに同時にすごく複雑で、ヘッドホンで聴いてみると60もの違った要素が聴き取れるけど、ひとつの大きなテクスチャーのようにも聴こえるんだ。それにたしかダニエル・ラノワも参加していて、彼は僕の大好きなサウンド・メーカーのひとりなんだ。それとハロルド・バッドと共作した『ザ・パール』や『ザ・プラトー・オブ・ミラー』もよく聴いているよ。

このアルバムを経た〈タイコクラブ〉でのライヴはスケールの大きいものになるだろうと楽しみにしています。今回のツアーでは、どんなライヴ・セットになるのでしょうか。

JH:去年にツアーがはじまってからセットはかなり変化してきたんだ。今回のアルバムの曲をもっと分解して再構築したり、もちろん『インサイズ』からの曲もやる予定だよ。これだけの曲数があると――べつにいままでがトラックの長さをそんなに気にしていたってわけじゃないけど――プレイする曲にも困らないし、逆にやろうと思えばトラックを引き延ばして、より陶酔感のあるセットにもできるしね。VJだけはツアーの他のショウで使っている自分のVJセットができないから、みんな心の中で映像を作ってくれるといいな。


Talker - ele-king

 インダストリアル・リヴァイヴァルにおける再評価が高まるリージス(Regis)ことカール・オコナーであるが、しかしリージスも彼の〈ダウンワーズ(Downwards)〉も90年代から徹頭徹尾ブレない美意識を探求してきたわけで、単なるリヴァイヴァルに回収されない強靭な核を有していると思うのだ。

 とは言え、昨今のシーンの動向、具体的にはUSのニューウェイヴやミニマルウェイヴ流れのインダストリアルなアプローチにも柔軟に反応しているのが現在のカールの確固たる地位を維持してもいるわけで。〈ダウンワーズ〉は現在、活動拠点をNYに移し、スローペースながらも時代を反映した確実に良質なリリースを継続、昨年はレーベル20周年のコンピレーションをドロップ、また〈ダウンワーズ・アメリカ〉なるサブ・レーベルをサイレント・サーヴァント(Silent Servant)の協力の下に設立、カールの美意識の一旦であるノワールな世界観を共有するLAのポストパンク・ユニット、ディーヴァ・ダマス(Dva Damas)のリリースなんかも手掛けていたりする。

 んで先月〈ダウンワーズ〉からリリースされたシカゴのデュオ、トーカー(Talker)の12インチをいま聴いているわけなんだけども、じつはあんまりピンときていない。前振りで〈ダウンワーズ〉は最近の流行とはちがうんだぜ! みたいなことを抜かしといて申し訳ないんだけども。けっこう前の紙『ele-king』のインダストリアル対談で、インダストリアルは鉄槌感とファッショ感でしょ! みたいなことを言ってしまってじつは最近ものすごく後悔していて、これだけインダストリアルってタームが完全に飽和化し、コンポジション云々よりもテクスチャーや雰囲気を重視したレコードが氾濫している現状を目の当たりにしているとさすがにゲンナリしてくるわけですよ。いや、何が言いたいかっていうと、けっしてこのレコードが悪いわけではなくて(むしろ完成度は高いです)、2014年現在、ビートやコンポジションをないがしろにしてインダストリアルな質感や雰囲気のトラックをつくってもべつにもう尖ってないよってことなんです。

 先日ペインジャークの五味さんとそのあたりのシーンについていろいろとお話する機会があり、ウィリアム・ベネット(元ホワイトハウス)のカット・ハンズ(Cut Hands)なんかは、いい歳こいてぜんぜんいまの若手のノイズ→テクノなんかより尖りまくっているという意見には激しく同意したのが記憶に新しいわけで。個人的にもニューウェイヴ、ミニマル・ウェイヴ流れの雰囲気インダストリアル・テクノよりも、トライバルに、パーカッシヴに、プリミティヴに土臭い方向性を持った、暴力的な電子音楽のほうがいまは魅力的だ。と思っていた矢先に前述の雰囲気系インダストリアルのパイオニア、ドミニク・フェルノウの〈ホスピタル・プロダクション〉からこのイタリアのパーカッション・デュオ、ニノス・ドゥ・ブラジル(Ninos Du Brasil)がドロップ。ここでまた話の流れがふたたび崩壊してしまうわけですが、このアフロ・テクノ・パンク・サンバ祭りには有無を言わせずにブチあげられてしまう。夏には〈DFA〉からのリリースも控えている。

 やっぱりレーベルを偏見的に捉えてしまうのはよくない、と思わざるをえない昨今の2枚。猛烈にあのインダストリアル対談をアップデートしたい。


 ニノス・ドュ・ブラジルのYoutubeクリップを見ていて気づいた。この微妙にイケてない感じどっかで見たことがあるな。と思ってちゃんと調べてみたらやはりニコ・ヴァッセラーリ(Nico Vascellari)であった。ニコはもともとミラノのパンク畑のミュージシャンで、ミラノのスクワット・パンク・シーンをコンテンポラリー・アートに繋げたパイオニアである。サン(SUNN O))))のスティーヴン・オマリーとジョン・ウィーゼ等とおこなったカッコー(Cuckoo)や巨大なブロンズのモノリスをガンガン打ちまくり、ブリアル・ヘックス(Burial Hex)がフィードバッグをコントロールしたアイ・ヒア・ア・シャドウ(I hear a shadow)など、国内外のアーティストとのパフォーマンス・アートでのコラボレーションをおこなっている。

 本人名義でのハーシュ・ノイズは過去にドミニクのプリュリエントとのスプリットもリリースしていたはずだ。てなわけでなぜ〈ホスピタル〉なのかも納得がいきました。

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