「K A R Y Y N」と一致するもの

interview with TADZIO - ele-king


TADZIO
TADZIO II

Pヴァイン

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 どこでもアウェー……。ホームがない。タッジオは、いつでも浮いている感じがする。居場所をなかなか見つけられないのだ。あいつやあの娘のように。
 タッジオは、容姿の整ったふたりの女性がやっているロック・バンドだが、色気を売りにしているわけではない。媚びている風には見えないし、わかりにくいこともない。ギターが鳴って、8ビートが打たれる。人はダンスするわけでもないし、リーダーと部長と互いを呼び合うふたりをじーっと見ている。演奏からは、「クソ」だの「ファック」だのと、汚い言葉がはっきり聴こる。
 インディ・ロックを深読みするアメリカ人にとって、きゃりーぱみゅぱみゅはミシマの内臓に重なり、下山からはアメリカ文化の支配への日本人のアンビヴァレンスを想起させるのなら、タッジオは……タッジオは……、いったい何なのか。いまのところ日本では機能しない何かだろう。そして、その機能のしなさこそが、このバンドの魅力だ。
 いくつかの曲は、日本のラジオではオンエアーするわけにはいかないだろうし、女性が口にして欲しくない言葉を言っているのかもしれない。サウンド的にもスタイル的にも、たとえアメリカ文化に支配されたとしても、たいていの場合は日本社会の歯車として機能できるものなのだが、彼女たちときたらそうはいかない。音と言葉はノイズとして存在している。

 2011年にデビュー・アルバム『TADZIO』をリリース、およそ3年ぶりのセカンド・アルバム『TADZIO II』が去る3月にリリースされた。前作よりも、格段にアップグレードされている。以下の取材から、彼女たちの“佇まい”を少しでも感じ取っていただけたら幸いである。

深刻なやつなんか絶対に好きじゃない(笑)!

じゃあ、よろしくお願いします。

部長&リーダー:お願いしまーす。

セカンド・アルバムまでずいぶん長くかかりましたね。

リーダー:3年かかりました。

部長:私がちょっと骨折してたというのもあるんですけど、それで1年以上は延びまして。

リーダー:そうだね。骨折して、その後喧嘩したからすごい延びました(笑)。

そうそう。巷では不仲説も聞きましたけど。

(一同笑)

リーダー:まあ、話し合いをしまして。とことん思いのたけを全部言い尽くして、じゃあスタジオやりますか、みたいな感じで。

ライヴはコンスタントにやってたんでしょ?

リーダー:喧嘩してからライヴもあんまりやってなかった(笑)。骨折治ってから、ライヴは結構やってたよね。

部長:うん。タイに行ったのも骨折の後ですし、ちょこちょこライヴは入っていたんですけど、去年の7月か6月にふたりでぶつかって、そこからはしばらく休んでいましたね。

リーダー:喧嘩をする前はスタジオにはずっとコンスタントに入って曲を作っていたんですけど、単純に曲が思うようにできなかったので長くかかったというのもあります。

部長:そうだね。(難航したのが)最後の1、2曲くらい?

リーダー:なんか、記憶が全然……昔を思い出せない(笑)。

喧嘩がそれだけ激しかったんだね(笑)。

(一同笑)

部長:記憶を消された(笑)。

ちなみに骨折はどこの骨を折ったんですか?

部長:左足のすねを2本折ったんですけど、骨折の直前までふたりですっごく詰めてて。めちゃくちゃ忙しくて、ふたりでスタジオにもがーっと入って。

リーダー:そうそう。これまでには出そうってね。

部長:わーわーって詰め込んでいたときに、ポキッといってしまって。

なるほど、調子が出てるときにね。TADZIOって曲を作るときにどこから作るんですか?

リーダー&部長:どこから?

言葉から作るのか、音から作るのかっていったら、絶対に音だよね。

部長:うん。

リーダー:音。

音から作るときはどこからつくるんですか?

部長:ふたりでとりあえず音を出してるんですよ。ギターもじゃーっと弾いてて、ドラムはばーってやってて、それでリーダーが良いと思ったフレーズとかがあったらそれを拾って、いまのもう1回やってみようってそこからドラムを合わせてみたりとかって感じですね。

なるほどね。イヴェントで部長とは何回か偶然会ったことがあるんだよね。そのたびに、僕は部長に酔っぱらいながら、「打ち込みやった方が良いよー! 打ち込み!」って言ってたんですけど、ものの見事に裏切られました(笑)。

(一同笑)

リーダー:打ち込みの道具とか持ってないし(笑)。

(一同笑)

リーダー:(ギターとドラムだけで)できちゃったから。ふたつだけで10曲分ね。

部長:打ち込みとかはTADZIOではないかなーって思いましたね。

やっぱりロック・サウンドがしっくりくる?

リーダー:へ? ロックですかね……?

僕からしたら、むちゃくちゃロックだと思います。

(一同笑)

少なくともジャズやテクノじゃないです(笑)!

部長:できたらそういう(ロックという)解釈をしてもらっているのかな、という感じで。ふたりでは「ロックを作ろう!」とか、そういう気負いもなく、ただ面白いものをギターとドラムだけで作りたいという感じで……

すさまじいロックンロールですよ。

部長:どうしてそういう風になったのかわかんないですね。ただ、リーダーが弾くギターの感じがそういう方へ向かっていて、前に作っているときとは違うなとは思っていたんですけど、そのまま流れる感じに作っていって結局ロックみたいになったのかも。

ライヴの場数をこなしていったことが今回のアルバムにフィードバックされていると感じましたがどうでしょう?

リーダー:そうですね、そう思います。あと、ギターもファーストのときと違うんですよ。

自分で1年前より上手いとは思いますか?

部長:そうは思わないです!

僕が最初に見たときは、ギターのチューニングも合っていない感じだったのが、わりとしっかりとしたサウンドになっているというか。

リーダー:それは多分、回数をやったからただ単に(笑)。

(一同笑)

リーダー:ちゃんとギターのコードを押さえているんだと思う。最初はコードを押さえていなかった。

ファーストのときはコードの概念もなかった?

リーダー:なかったと思います。聴こえてくる音を使ったみたいな感じかな。

なんというか、デレク・ベイリー的な境地に(笑)。上手くなっちゃいけないというのは自分たちのなかにありましたか?

リーダー:いや、上手くなりたい! まわりは「上手くならない方がいい」とか言うけど、普通は上手くなりたいでしょ。

部長:野田さんが聴いた感想は、ロックってことですか?

僕は、そんなロックンロールな人間じゃないから、あくまでも、サウンド的なことで。ロックだなーと。最近、ハウスばかり聴いてて、ギターとドラムを聴いたのが、すごく久しぶりだったんで。

リーダー:ああ、じゃあ良いね。

部長:言ってることはすごくわる。でも、別にそういう(ロックな)ことを目指して作ってなかったから。

一発録音じゃないんだよね?

リーダー:今回は違う。

部長:違うんです。

リーダー:別々。

部長:ギターも被していますよ、1曲だけ(笑)。

リーダー:だからすごくキレイで上手いというか。

部長:ミックスも前と変わってます。今回はこれがすごく大きいと思います。エンジニアの瀬川氏からアイディアを沢山もらって、ファーストとは違う感じにしようって。

たしかに、音に、リスナーを拒む感じはないですよね。ある意味聴きやすいとも言えるし。

リーダー:それを目指しましたから。よかった。

TADZIOをライヴハウスで見ると、いっつも、その場に溶け込めてない感じがあるんですよね。

部長:浮いている感じですか?

リーダー:浮いていると思う。

あと、お客さんもどういう反応をしていいかわからない感じじゃない?

リーダー:うんうん。

部長:それはどうなんですかね?

やってる側はどんな感じなんですか?

部長:ひかれるのはすごく嫌なんですよ。でも自分たちではどうすることもできないから、(お客さんが反応に困るのは)どうなのかなと思いますけど。

お客さんがノってきたことはありますか?

リーダー:場所によって。

部長:うん。場所によってはありますね。

踊ったりとか?

部長:うん。そういうことも場によってはあります。

TADZIOを聴いている人たち、自分たちのオーディエンス像ってありますか?

リーダー:やっぱり、おじさんたちが多いかな。

部長:うん、結局(笑)。

でも、僕が何度か見たときのおじさんは僕しかいなかったですけどね。

リーダー:でも、(聴いてくれている人に)10代はいない。

20代は?

リーダー:20代もあんまりいない気がする。

部長:うん。わかんないですね。いま誰が聴いているかわからないですね。

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でも、ホントできない。友だちとか。ホント悲しい。


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TADZIOって、つねに自分たちのホームがなくて、つねにアウェイでやっている感じじゃないですか?

部長:それはありますね。ホームがない(笑)。

凄いことですよね(笑)。

部長:なんでですかね(笑)。このバンドが出るときはこのバンドも出るみたいなことがあるじゃないですか? TADZIOと同じ時期に出てきたバンドにも何個かそういうグループみたいなものがあって、そのなかのどこにもTADZIOは入っていなくて……(笑)

恐れられてるんじゃないの(笑)?

部長:まあ別にいいけど。

リーダー:入りたくもないけど。なんか、ホームがいらない。

かっこいいね!

リーダー:ってことにしとく(笑)。

あまりにも毒づきすぎて、浮いているんじゃ?

部長:全然、毒づいてないですよ?

ずいぶん毒づいてるじゃない(笑)。

部長:まあ、歌詞はアレですけど、楽屋では大人しいもんですよ(笑)。

楽屋で暴れてたらね、部屋とか破壊して(笑)。

部長:やっぱ歌ですかね。みんな歌詞を「こわー」って思ってるんですかね。

リーダー:でも、ホントできない。友だちとか。

部長:(笑)

なんか悲しいですね(笑)。

リーダー:ホント悲しい。

部長:バンド仲間とかもね……

女性とかでもいない?

部長:そのくらいの人たちがいないんですよね。逆に、ちょっと上のバンドの人たちはTADZIOのことを気に入ってくれたり、こっちもすごく好きですね。

仲が良いバンドって誰がいます?

部長:仲が良いバンド(笑)。

リーダー:仲の良いバンドはいないよね。個人的に友だちとかはいるけど、バンド同士ってなると……

部長:でも、The Popsとかさ。

リーダー:あー。

部長:まあ、ちょろっと(笑)。

リーダー:久土'n'茶谷とか……

部長:The Popsていうバンドの茶谷さんがドラマーのバンドですけど。

リーダー:でもおじさんですね。40オーヴァー。

それはおじさんですね(笑)。

(一同笑)

部長:2マッチ(・クルー)もすごく好きですし。

それもおじさんだね(笑)。

部長:そう考えるとみんなおじさんだな(笑)。若い人、いるかな。同年代とかでいないよね?

リーダー:仲が良いのはいないよね。

部長:みんなおじさんですね(笑)。

いいじゃないですか、孤高の存在で。さすがですね。

リーダー:あんまよくない(笑)。

レコ発のときに誰と一緒にやるかってなったときには苦労するよね(笑)。

リーダー:苦労する。いっつも苦労する(笑)。

やっぱ、毒づいてばかりいるから。

リーダー:そんなに毒づいてはいないと思うんですが(笑)。

「おまえのねぇちゃんビッチ」とか。

リーダー:ちゃんと意味があってのことだから、毒づいているわけではないんですよ。

「みんなえげつない」とか。

部長:でも、そんなに……

「あとは死ぬだけ」とも言ってるよ(笑)。

リーダー:でも、本当にあった話とかもだし。

どういうの?

リーダー:頭の悪い男とか。頭の悪い人がいて……

嫌な思いをしたとか?

リーダー:そうです。

“Old Bitch”という曲はがあるじゃないですか。これは気の毒だと思いました。

部長:気の毒? 主人公が?

そうそう。だって、高齢化社会だし。

部長:えー! どこでそう思ったんですか?

「ジジババ、ファックユー」とかさ、最近、自分も歳をとってきたので、だんだんとおじいさんとおばあさんの方に感情移入することが多くなってしまって。

部長:でもディスっておいて、自分も歳をとってっちゃうっていう。

リーダー:これは自分たちに対する曲だから。

あー、そうなんですね。

リーダー:でも、ジジイとババアにも聴かせたい。

歌詞はリーダーが全部書いてるんでしょ?

リーダー:ふたりです。全部スタジオで。

歌詞書くの楽しいでしょ?

リーダー&部長:楽しい!

好きな女性アーティストっていますか?

リーダー:スリッツは好きです。

どんなところが好きなんですか?

リーダー:全部。女子バンドだったら一番好きかな。ビキニキルも好き。

部長は?

部長:スリッツは好きですけど、スパッと出てこないな……、最近は友人がやっているのを聴きに行ったりとか、そういうのは多いんですけど。

リーダー:SOKO。最近ではその人が好き。全然TADZIOと違う。ひとりでやってる。

歌ってる人?

リーダー:歌ってる、レズ。見た目もかわいい。

TADZIOは、自分たちの内面を出している感じ?

リーダー:なんか、思い出とかをね。

部長:うん、思い出とか! タイの思い出とか。あと何だろう……。別にそんなにキツいメッセージ性はないと思っているんですけど。

言葉がたくさんあっても言葉が入ってこない音楽があるんだけど、TADZIOの場合は、嫌なくらい言葉が入ってくるんだよね。憎たらしいほど言葉が入ってくるんで。

リーダー&部長:(笑)

だからみんな自分のこと言われているみたいになって、しょぼーんとしちゃうんじゃないのかな(笑)。

部長:それはやだー。最悪ですね。ネガティヴ・ライフやだ……。

ポジティブな曲もやればよかったね(笑)。

リーダー:「えげつない」とか結構明るいと思うんだけど。

えー(笑)! だって、「えげつない」って何度も言ってるんだよ?

リーダー:「えげつない」が悪い言葉だと思ってなかった。

これは、前向きさを表していたんだ?(笑)

部長:(笑)

リーダー:だから曲調が明るい。

でも、やっぱTADZIOは、もっとダーティーな言葉、「Bull Shit」とか「Bitch」とかさ、そういう、いわゆる強い言葉が耳に残るという、妙な才能があるよね。絶対にラジオでかからないでしょ。

リーダー&部長:しょぼーん(笑)。

でもそれだけ、何か力があるんですよ。

リーダー:でも、ポップだから良いかなって。ポップに悪口。

大げさに言えば、日本社会が求めていない女性を地でいっている感じがあるじゃないですか。たとえば日本のアイドルや女性シンガーに「おまえ」とか「ファッキンクソムシ」とか、そんな言葉を言える自由なんてないでしょう。

部長:なるほど。

だから、立派なもんですよ、TADZIOは。

(一同笑)

ここまで日本社会に逆らっているんだから。

リーダー:そうかな。

部長:全然そんなことは……。思い出とか多いですけどね。ふざけた歌詞だし。

リーダー:ちゃんと意味があって。

過去の嫌な思い出とかをさ、ここまでなんか……。

リーダー:面白いからね。

部長:語感の響きで作っている部分もあるんです。だからビッチってネガティヴなワードかもしれないんだけど、普通に言えば、リズム感が良いというか。

リーダー:ビッチってだけ聴くと(語感が)かわいいしね。

部長:そうだね。えげつないとかもそうだし。でも、「えげつない」も、意味は多少後から付けましたけど、言葉がキッカケとしてあって、そこからリズム的な感じで作っているし、そんなにネガティヴじゃないと思う。

(一同笑)

リーダー:基本的にネガティヴじゃない。

部長:そうそう。でも、そう取られちゃうのかな。

いやいや、ネガティヴとは言ってないですけど、反抗的だっていうね。

リーダー:でも、真実だから。

部長:(笑)

「ファッキンクソムシ」とかさ、歌っていると気持ちいい?

リーダー:うん、まあ、ライヴは気持ちいいよ。

絶対にNHKではかからないもんね。

リーダー:ピーだまた。

部長:ははは。

リーダー:でも、なんか言いやすいしね。

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「えげつない」も、意味は多少後から付けましたけど、言葉がキッカケとしてあって、そこからリズム的な感じで作っているし、そんなにネガティヴじゃないと思う。


TADZIO
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話ちょっと逸れますけど、タイはライヴで行ったんですか?

部長:ライヴで行きました。

タイのどこに?

部長:バンコクで三カ所でライヴをしてきました。

ウケたでしょ? タイで。

部長:うん、良かった。ウケましたね。

リーダー:盛り上がっているって言うよりは、みんな写真を撮ってった。

(笑)

リーダー:公園とかでも撮ってきて、やたら近くで(笑)。女の子でバンドをやっている人たちがタイにいないらしくて。

部長:なんか珍しがられて。

あー。

リーダー:お金とか、こう出されたり……。

それ、そうとう勘違いされてるんじゃない(笑)?

(一同笑)

リーダー:でも楽しかった。

部長:環境が最悪だったのもすごく面白くて。音もひどかったし。

リーダー:ねっ、ヒドかったね。

部長:でも、タイの他のバンドの人たちはそれが当たり前でやってるからね。すごいなー、と思って、面白かったです。

僕はさっきからジェンダーの話というか、日本では、TADZIOみたいな女性バンドがいないって言ったんですけど、女性としてのやりづらさみたいなものって感じたことはありますか?

部長:ないです。

リーダー:パンツが見えるくらい(笑)。

それってチラリズムで挑発してるんじゃないんですか?

リーダー:いや、短パンをはいていたら、そっちのほうが見えるということを教えてもらって(笑)。

短パンの方が見えるって何が?

リーダー:パンツが。スカートより短パンの方が足を上げたときにパンツが見えるってことです。

あははは(笑)

リーダー:それくらいかな。

部長:とくにないですね。

なにかこう、このサウンドには、おふたりのフラストレーションが注がれているんじゃないんですか?

部長:うーん、そんなつもりもないです。それって、はけ口的な感じってことですか?

リーダー:ライヴをやればすっきりするけどね。作りながらそういうのはないかな。

パンクってことは意識していない?

部長:意識して……

リーダー:ないですよ(笑)。

部長:「なにやってるの?」って言われて、「何やってるんだろ」っていつも思う。

リーダー:バンドを(やってる)。そういうのを考えた方がいいのかしら。

日常生活で何を聴いているんですか?

部長:普通にCDを買ったり……

リーダー:さっき言ったSOKOとか、最近……バースデー・パーティのギターの人のソロかな。

ローランド・ハワード......

リーダー:そう! ローランド! 1曲がよかった。見た目も素敵だし。中性的というか。

部長:私は、うーん、何だろう。直ぐにパッと出てこない。ミックス CD ばっかり聴いていた気がする。

リーダー:私はあとハードコア・バンド。

部長:私は全然わらないです(笑)。

リーダー:ハードコアのライヴも行くし。カッコいい。みんな、もう熱過ぎる。

じゃあ、自分も一緒になって?

リーダー:いや、身の安全を確保して。

(一同笑)

リーダー:本当に危ない。それこそ、骨折とかしちゃうよね。

リーダーはハードな音楽が好きなんですね。

リーダー:好きかな。スリップ・ノットとか。でも良いイヤホンが無いんですよ。

普通に聴けばいいじゃないですか。

リーダー:移動中に聴くことが多いから。コンビニで買ったイヤホンは低音が一切抜けてて。

部長:スカスカ……ラジオみたいな音がするもんね。

部長が聴いているの?

部長:最近買ってよく聴いてるのはKING OF OPUS。他にはメルト・バナナや灰野(敬二)さんのミックスCDを聴いてました。あとDAFがもうすぐ来日するからまた聴いてる。

ポップ・ミュージックは聴かない?

リーダー:ジーザス・アンド・メリーチェインは好き、大好き。

音楽以外で好きなことって何があります?

部長:うーん、なんだろう。

リーダー:映画!

部長:『白いリボン』を一昨日見ましたね。ミヒャエル・ハネケ。面白いというか、いつも後味が悪い感じですよね(笑)。まあ、普通でしたね。

リーダー:最近、何を見たかな。

部長:『マスター』も見たかな。まあ、普通。『ブギー・ナイツ』の方が面白かった。

リーダー:私は、ラース・フォン・トリアーを見返してました。

深刻な作品が好きなんじゃないですか?

リーダー:深刻なやつなんか絶対に好きじゃない(笑)!

部長:(笑)

■みんなで行こう、TADZIOのレコ発ライヴ!
──『TADZIO II』RELEASE PARTY

5.2 (fri) 渋谷 TSUTAYA O-nest
OPEN 19:00 / START 20:00
ADV ¥2,500 / DOOR ¥2,800 (+ DRINK)
LIVE: TADZIO / HAIR STYLISTICS / KIRIHITO / オシリペンペンズ
DJ: COMPUMA / 37A (PANTY)
VJ: IROHA

チケット:O-nest / ローソン[L: 78450](4/24~) / e+

https://shibuya-o.com

interview with ROTH BART BARON - ele-king


ROTH BART BARON - The Ice Age
Felicity

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 よく伸びるファルセット、管と弦の美しいアンサンブル、おだやかなエレクトロ・アコースティック。そして澄んでつめたい空気のにおいや、どこか異国的な風景をたずさえたフォーキー・ポップから、このユニットのとらえがたいサイズが見えてくる。2008年に結成された東京のデュオ、ROTH BART BARON。2人組だが音はバンドの想像力をもって広がる。そしてそれがなぜかとてもUS的なエッセンスをもっていることに、おそらくは誰もが不思議な驚きを覚えるだろう。ボン・イヴェール、フリート・フォクシーズ、あるいはアイアン・アンド・ワイン……USインディ、それも豊かにアメリカーナを鳴らすバンドたちの音が、けっして猿真似ではなく、しかし強烈な共通点をもってたちあがってくる。

 目黒に生まれ育ったという彼らが、なぜこんな音楽性を持っているのか、そして今作キー・モチーフでもある氷河期とはなんなのか。日本固有の土着性からも、「ガラパゴス」的な発想やおもしろみからももっとも遠い、大柄でおおらかなスタイルの楽曲の謎を解くべく、まだ寒さののこる春先の渋谷にてROTH BART BARONに向かい合った。本当に東京ネイティヴだというのに、そして、いたって普通のたたずまいのふたりなのに、渋谷の高架下やビル群や駐車場のネオンなどにはどうも馴染まない気がする。ライヴ活動を活発化させたのもわりと最近で、当然ながらライヴ・シーンから浮上してきたわけでもなく、そうした人脈図にも組み込まれていない。〈フェリシティ〉が謳うように、そこには本当に「二人ぼっち」の存在感がある。
もしかすると、彼らは彼らふたり自身の──ROTH BART BARONの──ふるさとや原風景を求める旅の途上にあるのかもしれない。USと書いたが、それはもちろん本来のUSとは異なるものだし、そもそも彼らはUSらしさをねらっているわけではない。強いていえば、どこでもないものがたまたまUS的なものと結びつくかたちで表れているというだけだ。歴史からも土地からも切り離されたところで、まるで言葉やイメージをひとつずつ覚えていくかのように紡ぎ出されていく楽曲=ROTH BART BARONの物語。インタヴューの後、「氷河期」というのはそのゼロ地点でもあるかのように、いよいよ白く輝くように感じられた。想像や空想はまだまだ膨らむ。

ROTH BART BARON
中原鉄也(drums/piano) Tetsuya Nakahara
三船雅也(vocal/guitar) Masaya Mifune

2008年結成、東京出身の2人組ロックバンド。2010年に自主制作によるファーストEP「ROTH BART BARON」、2012年にはセカンド EP「化け物山と合唱団」をリリース。日本の音楽シーンだけに留まらず、SoundCloudをはじめとする音楽系SNSサイトから多くの賞賛コメントを受けるなど、海外での評価も高い。2014年1月には初となるNYツアーを成功させる。

もしかしたら僕たちは、氷河期がやってきてももう絶えることができないのかもしれない……そこに克服とかパワーを見るか、絶望を見るか。(三船)

今作は『ロットバルトバロンの氷河期』ということで。曲の中にも、窓の外に氷河期が来ているという描写がありますね。これは予言のようなものなのか、それとも、そうなってくれればいいのにというような一種の願望だったりするんでしょうか?

三船:そうだな、どちらもですね。どちらか、ではない。来るかもしれない/来たらいいのに/もしかしたらもう来ているのかもしれない……現在、過去、未来、すべて入っているというか。

三船さんから出てきたイメージなんですか?

三船:そうですね、以前の『化け物山と合唱団』(2012年)をつくっていた頃から、少しずつ発想していたものではあります。「氷河期」っていうものがずっとあったなあ。それを「何かにならないかな」ってずっと泳がせていましたね。

すごく大振りな言葉──喚起力というか、物語性も強い言葉ですよね。カタストロフィとしての氷河期、いちど世の中をリセットしてしまいたいというような意味合いが含まれていたりしますか?

三船:ぜんぜんないわけではないと思いますけどね。でも、聴く人がそれぞれ「氷河期」っていう言葉をどうイメージしてくれるのか。そのプロセスが大事だと思っています。自分自身も、音楽を聴いたり絵を見たりしたときに、それに接して自分なりの答えを出したという経験がとてもよいことだったと感じるから。そのためのスペースを残しておきたいとは思います。だから、とくに「リセット」にかぎったイメージではないですね。そこまで世の中を嫌ってはいないです(笑)。

ははは、たしかに。音からはヘイトみたいなものは感じないです。とはいえ、現実の世界に対する限りない違和感が核にあるんじゃないかなってふうには思いますけど、どうですか?

三船:ああー。

ストレートに世界を愛しているわけではないというか。

三船:ストレートには愛してないかもしれないけど、違和感というものはみんな持っているんじゃないですか。通奏低音のようにノイズが鳴っているという感じがします。

なるほど。今作はそれをなんとなく感覚的に盛り込んでみました、という感じではなくて、しっかりと三部展開がとられていますね。「氷河期」はその中心にある、すごく重要なイメージだと思います。それで、もうちょっと掘り下げてお訊きしたいんです。『ドラえもん』の劇場版みたいな──

三船:『ドラえもん』(笑)?

はい(笑)、そういうファンタジックなのどかさもなくはないと思うんですけど、もうちょっとシリアスなものじゃないかなあと。このなかの、世界との距離感というものは。詩的な飛躍の強さというか。

三船:うーん、そうだなあ……。

たとえば、あったかい時代じゃないですよね、氷河期というのは。生命が絶えたりもして。

三船:うん、「氷河期」っていうと、たとえば恐竜が絶滅した理由なんじゃないかと言われたり、何かが絶えてしまうんじゃないかというイメージはありますよね。生命が栄える印象はないかもしれないけど、でも、いまは氷河期なんじゃないかという学者さんもいて。

へえー!

三船:周期的に氷河期というものはやってきている、って。でもふつうにみんな生きているわけで、もしかしたら僕たちは、氷河期がやってきてももう絶えることができないのかもしれない……そこに克服とかパワーを見るか、絶望を見るか。そんなふうに空振ってる言葉としてもおもしろいなって思います。

絶えることができないのかもしれないと! すごい、人類規模の一大叙事詩じゃないですか。

三船:ふと、そんな環境の中に身を置いたらどうなるのかなあ、とか思って。このあいだもすごい大雪が降りましたよね。僕ら、これを外国に行って録ってきたんですけど、向こうに行くずっと前から「『氷河期』みたいなタイトルにしようか」っていうことを言ってたんです。そして帰ってきてみれば、何十年ぶりの寒波が来ていた(笑)。

おお、たしかに(笑)。すごい雪でしたよね。

三船:アメリカでも数十年に一度の大寒波に襲われて髪も凍るし、車は氷柱をつけて走っているし、帰国後にも日本で大雪に見舞われていちばんにやったことが雪かき。メンバーに「お前がそんなタイトルにするからだ!」って言われたんですよ。あのときは東京じゃないみたいな量の雪が降っていて……。「すみません!」って言いましたけどね(笑)。なんだか連れてきちゃったみたいで。

ははは。氷河期を連れてきちゃったんですね。

三船:公園とかへ行くと、子どもたちは狂ったように遊んでいましたけど……。

狂ったように(笑)。そうでしょうね。あの規模だとちょっとした祝祭感がありましたよね。

三船:そう、その祝祭感──子どもじゃなくなると薄らいでいくものかもしれないけど、でも僕たちはまだ遊べるかもしれない、そんな意味も(アルバムには)あったかもしれませんね。ほんと、大人からすれば雪かきを台無しにするような遊びをしているわけですけれども。



三船雅也

ああ、それは重要なお話ですね。中原さんは「氷河期」についてどうです?

中原:「真っ白」っていうイメージがあるし、それを含めて、この先につづく道筋が見える……ばーっと白い視界のなかに道が延びている感じなんです。だから、ファースト・アルバムということもあるし、自分では「道」という意味合いを感じていました。それにさっき三船も言ったように、それぞれの人が感じるためのスペースがあるなって。

道であったり、三船さんだったら生命の蠢きのようなものであったり、閉塞性とは逆の感じなんですね。

中原:閉ざされたイメージはとくにないですね。

三船:でも、まあ、「就職氷河期」とか言うしね。すごくキャッチーな言葉だし、氷河期のイメージも画一的だけど、でもその言葉をいちばん最初に考えた人のなかには、そういう「氷河期」があったってことだよね。

中原:人によってイメージがそれぞれある、というところだと思います。

三船:真っ白だしね。

なんか、時代は細部へ細部へと意識を尖らせる方向に向かっていて、なかなか「氷河期」のように大振りでファンタジックな表現は成立させづらいと思うんですよね。

三船:以前はポッケにメモ帳を入れて、アイディアを書き留めていましたけどね。あるときさらさらと、手が止まらなくなってできあがったりするんですよ。詞については、そういうときの感覚を信用しているかなあ。ラーメン屋であんまりラーメンがおいしくなかったっていうような感想も、きっと詞のなかに出てきていると思います。

ははは。でもラーメン屋のラーメンがおいしくなかった、という些末な日常表現はあまりされないじゃないですか? 「あるある日常」ではないし、そういうところから少し遠いところで書かれているというか。

三船:そうですね、なんだろうなあ。ミシェル・ゴンドリーとかスパイク・ジョーンズとか、扉を開けるとちがう世界に行っちゃったりするじゃないですか。ああいう飛躍の仕方を今回の作品はしているなって思います。普通の生活シーンはすごくリアリティに富んだセットなんだけど、突然、ダンボールの世界に行っちゃうとか、ああいう感じです。


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「じゃあ外国に行って録ってみたらおもしろいんじゃないか」っていう話を冗談でしていたんですよ。僕は前からそういうところに憧れがあったし、日本語でものを考えない人といっしょに音楽を作ったらどうなるんだろうっていうところにも興味があって。(三船)

それは曲の作り方というところにも結びついてくると思うんですが、別世界へのアクセス・ポイントという点では、今作のプロダクションについても言えるんじゃないですか。すごくきちんと録られていると思うんです。ぐっとクリアになって洗練された音で、丁寧にミックスされている。『化け物山と合唱団』とかは、もっとロウな感じが出ていたと思うんですよ。ラフというか。その感じが今回は抑えられて、きちんと録られることで、異世界とか幻想世界へのワープが容易になったという気もします。録音について考えていたことをきかせていただけますか?

三船:『化け物山~』のツアーで京都に行って、その帰りに高速道路を走っていたときに、「次はどうしようかなー」っていうことを考えていたんです。

あ、「次」という意識があったんですね。『化け物山~』の次、という。

三船:ありましたね。といっても、ほぼ最初のアイディアでもありますけれども。それで、「じゃあ外国に行って録ってみたらおもしろいんじゃないか」っていう話を冗談でしていたんですよ。僕は前からそういうところに憧れがあったし、日本語でものを考えない人といっしょに音楽を作ったらどうなるんだろうっていうところにも興味があって。別の言語で思考している人といっしょに仕事をすることがおもしろそうに思えました。前作の反省点もあるし、あのときの車の中では海外録音の話ですごく盛り上がったんですよ。「いいね、行こうよ」って言って。僕はインターネットでそういうスタジオを探したりするのが好きなので、「こことここ!」って15か所くらいを挙げて、選んでいきましたね。

あ、自分たち発信だったんですね。しかもけっこう絞り込んで。

三船:そうですね。音楽をやっていてよかったな、とか、心がどきどきしたりとか、そういう、魂が震えるような体験を大事にして音楽を作っていこうよって考えたときに、それに忠実であろうとした結果、こうなった(海外録音になった)という感じですかね。
 そしたらなぜか、本当にかたちになっていってしまった(笑)。

そうなんですね。ブライアン・マクティアーの名前もすでに出ていましたか?

三船:出ていましたね。

じゃあ、本当に好きなんですね。

三船:ブライアン・マクティアーは、シャロン・ヴァン・エッテンが初めて日本ツアーをしたときに話しかけて、教えてもらってたんです。彼女はべろんべろんに酔っぱらっていましたけどね。ひどい……いや、本当にいいライヴでした。
 僕は、上から下まで埋め尽くすミックスがあんまり好きじゃないんですよ。最初は「おっ!」ってなるけど、ずっと聴いていられない。合理的なんだけど、何か違う。……あんなのは、日本人にアメ車作れって言っているようなものだなと思います。それに、アメ車作りたいなら向こうの人に聴かなきゃなって。

うんうん、なるほど。……しかし、アメ車の意識があるわけですか。

三船:いや、ないですよ(笑)! たとえです。

いやいや(笑)、土着の音をつくっているんじゃなくて、どこか外から日本を見つめるような視点があるんだなあと思いまして。

三船:そうですね、それがぶつかったときにどうなるのかなという興味がありますね。


僕たちが録ってもらいたいと思っている人がたまたまアメリカにいたというだけで。海外に行くことが目的ではなくて、録りたい音を録りにいきました。(中原)

「ガラパゴス」って言葉に顕著ですけど、ある閉塞性のなかで生まれてくる奇形的な表現に対して賛否あるじゃないですか。それは、「外は見なくていい」というヘンな開き直りに結び付く場合もあると思うんですが、対しておふたりの音は、わりと徹底的に日本の音楽を対象化するようなものだなと感じるんですよ。わざとじゃないかもしれませんが。まずもってアメリカ録音ですし。

三船:そうですね、対象化はしていると思います。ガラパゴスっていうのも、悪いだけでもいいだけでもないし。ただ、風通しが悪いなっていうことは感じますね。「世界ふしぎ発見」が好きなんですよ、僕(笑)。単純に、世界のいろんなところに行ってみたいなって思うし、日本にも見ていないところがいっぱいあるし。
 今回だって、たまたまアメリカだっただけで、岩手にしようかとか、今作だって半分は山梨の山小屋で録っているし……日本という国が嫌いということではぜんぜんないんです。ただ、今回外国に行くのは初めてだったんですけど、いろんなことが頭でっかちになっちゃっていて、少しガス抜きをしなきゃということは感じました。

中原さんはどうですか?

中原:海外に行って初めての体験というのはいろいろあったんですが、僕たちが録ってもらいたいと思っている人がたまたまアメリカにいたというだけで、とくに「海外に行ってきたぞー!」という感じではないんです。海外に行くことが目的ではなくて、録りたい音を録りにいきました。

なるほど、よくわかります! ところで、ボン・イヴェールだったりスフィアン・スティーヴンスだったりというアーティストたちへの共鳴があると思うんですが、どうですか? 彼らというのは、やっぱり、フォーク──アメリカやカナダというそれぞれの土地の歴史や、土着のものへの愛、あるいはその反転としての憎しみ、なんかの間で歌っていると思うんですね。そういう部分への共感は?

三船:共感はあるんですよ。でも、なんだろう……僕ら東京生まれの東京育ちだしなあ。

ははは。では山梨には何を求めたんですか?

三船:山梨は、あれです。僕たちはいわゆる「音楽スタジオ」っていうジャンルの部屋が好きじゃないんですよ。ライヴハウスも好きじゃない。なんか、そこの音に鳴っちゃうんですよね。それは避けたいし、音楽を作る環境じゃねえなってふうにも思います。

オーガ・ユー・アスホールも長野ですよね。

三船:すぐ近くですよ!

音環境については、ちょっと似たようなお考えを持っていらっしゃるかもしれないですね。

三船:それから、地元愛か……。ジャスティンは、ほんとに地元の兄ちゃん、って感じでしたよ。でも、いま「地元の音」っていうものが日本にあるかといえば、ないような気がするなあ。

音のアイデンティティって、単にヨナ抜きにすればいいのかっていうような話とちがいますからね。

三船:そうですね。東京に住んでいると、とくにそのへんはコンプレックスだったりはしますね。いろんな人間がたくさんいるし、ウチも3代東京に住んでますけど、アイデンティティっていうのが、あんまりないんですよね。何がここで鳴るべき音なんだろう、この景色に合う音楽ってなんなんだろう、っていうときに、なかなか合うなっていうものが思いつかない。


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スタジオ・ワークが好きなんですよ。変な音が入っているのがすごく好きで。ビーチ・ボーイズとかもそうだけど、スタジオでしか作れない音のすごさというか、そういうものが生み出すマジックとかが好きですね。(三船)

東京のどちらですか?

三船:僕は目黒ですね。

おお、目黒。

三船:とっても微妙な……、サンマぐらいですね。

ははは! 西東京の文化みたいなものともちょっと離れていますよね。

三船:うん、そうですね。

でも、小さいころの目黒の思い出が鳴っているという感じでもないですしね。知らないうちに、彼らの音と土地と国との関係の仕方に、自分たちにはないものを感じとって惹かれたのかもしれませんね。

三船:音楽的な土壌の豊かさ。それからアイディアの豊かさですかね。音色の感覚とか。子どもの工作のような感じで作っているところにときめくのかもしれません。

ローファイへの憧れってそんなに強くないですよね。きちんと録られていて、構築されていて。

三船:スタジオ・ワークが好きなんですよ。変な音が入っているのがすごく好きで。ビーチ・ボーイズとかもそうだけど、スタジオでしか作れない音のすごさというか、そういうものが生み出すマジックとかが好きですね。そういうところはあるかもしれません。

その妙味はありますよね。曲作りは基本的に三船さんですか? 中原さんは、三船さんの世界観や音楽性のなかで、とくにここを強調したい、ここを展開したいというようなところはありますか?

中原:先に歌詞があって、それに対しての解釈やイメージをふくらませるという場合もあるんですけど、もっと単純にサウンドとして自分の気持ちいい部分にはめていくということが多いですかね。

それをまたフィードバックして──

中原:そうですね。いっしょにスタジオに入って、これはいいね、悪いね、という判断をしていきます。

そこで2人組というところの特徴も出てくると思うんですが、音楽性を伸張していくというだけなら、単純に人数を増やすということも考えられるわけじゃないですか。2人以上はとくに必要ではない?

三船:必要なんですけど、気の合う友だちがいなかったということですね。シャイだし、僕ら。それに、音楽をやろうっていうことで集まったわけじゃなくて、もともと友だちだったふたりだから、よけいに近づきづらいんじゃないですかね。中学生の頃から続いているんですよ。

中原:最近は少しつながりもできてきましたけどね。



中原鉄也

でもたしかに、バンド同士のつながりとか、それが生むライヴ・シーンのなかから浮上してきたという感じではないですもんね。ちょっと独立したあり方だと思います。

三船:そうなんですよね(笑)。

ふたりで籠っているからこその雰囲気や音楽性というのはありますから。

三船:まあ、あんまりよくないなあとは思いながら……。

へえ? そうですかね? ライヴはそこまで頻繁にはやっていないんでしょうか。

三船:最近は、ちょこちょこと。がんばってはいます。

そうですよね。とくに意図的にライヴをしなかったというわけではないですよね。

三船:そういうわけではないですね。最近はとくに、頭の中で鳴っている音を外に出そうとすると、どうしても手が2本じゃ足りないなって思うことが多くて。それで、ゲストを呼んだりはしていますけどね。

『化け物山~』の生っぽさ、ある意味でのラフさは、今回はわりときれいに削られて構築性が高くなっている。そのことがこの『ロットバルトバロンの氷河期』の物語性や想像力をより生かしているというふうに感じるんですが、そのへんには意図があったりしますか?

三船:僕は、より生々しくなったなと感じるんですけどね。

中原:うん。

三船:前のほうが、ビニールを一枚かぶっていたというか。

中原:そうだね。

三船:膜が張られていたというか。それを破っていく感じでした。

なるほど、「生っぽさ」の解釈ですね。一発録りとか、ローファイとか、そうしたものが「生っぽさ」の記号になりすぎているかもしれません。──丁寧に手をかけられたプロダクションによって、テーマの生々しさがきちんと彫りだされている、と思いました。

三船:それはそうかもしれませんね。ただ、「洗練」ということに関しては観念的にしか言えなくて。前よりももっとプリミティヴになって、純度が上がったことは間違いないと思います。

中原:音にもっと隙間も生まれていますし。埋めてないです。

なるほど。

三船:余分なものが混ざっていないですね。引き算の美学を導入したわけではないんですが、前よりも油っ気がないというか(笑)。

油っ気(笑)。それはミュージシャンとしてのひとつの成長だったりするわけですか?

三船:うーん、なんか、前より楽しくなりましたね。というか、楽しい瞬間がそこにいっしょにレコードされてたらいいなって思っていました。そこは意識したつもりではありますね。だから、テクスチャーとかコンセプトをがちがちに決めていったのではなくて、スタジオで起きるハプニングとかを大事にしていて。大きなスケッチは見えていたけど、ディテールとかその場で起きたアクシデントを収めた一枚という感じなんですよね。

たしかに、まさに「隙間」がありますよね。

三船:台本がある感じにはしたくないな、というか。

はい。音としての豊饒さが目指されているのはとてもよく感じられます。


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僕はもともと戦闘機とか、第二次世界大戦中の戦艦とかが子どもの頃から好きなんですよ。(三船)

一方で、どうしても訊いてしまうのが「戦闘機」「爆撃機」といった詞が出てくる点についてなんですが。これは異世界の爆撃機ではなくて、我々の生きる社会や空気と地続きのところを飛ぶものですよね?

三船:うーん、社会的なこととか、政治的なこととか、生物的なこととかって、人間として生きる以上は避けて通れないことというか。(世界を構成する)要素のひとつだと思っているので、あまりそこを意識して遠ざけたり近づけたりということはしないですね。フラットに見ています。
 ただ、僕はもともと戦闘機とか、第二次世界大戦中の戦艦とかが子どもの頃から好きなんですよ。

おっと!

三船:働く車とかが好きで……。人を殺した機械だっていう前に、単純にメカとして好きっていう。それでそんなモチーフが出てくるのかもしれません。

もうちょっと美学的なところで出てきているイメージなんですかね。

三船:そうかもしれませんね。

ただ、戦争というのは、それなりに緊張を強いられるテーマであるとも思います。それから、USインディにあって日本に薄いもののひとつでもありますね。

三船:うん。逆に、どうして避けるのか不思議だなと思いますね。生きている以上、転んでケガをするし、生きている以上ケンカもするだろうし、それと同じことです。無菌室にいるのもいいだろうけど、僕は実際にケンカもしたし、いじめられもいじめもしたし、そのなかで激しく後悔したこととか、やり返したいと思ったこととか、いろいろある。みんな、そうじゃないのかな?

中原:人それぞれだろうね。

三船:そうだね(笑)、人それぞれ。だから、逆に言えばそこまで戦争というテーマを意識しているわけではないです。無責任といえば無責任かもしれないけど。

中原:彼(三船氏)がもともと持っている性格かもしれないですね。思っていることはちゃんと言うし、何かを隠したりすることもないし。

状況をみて発言したりしなかったりするというような、計算があるわけではないと。

中原:そこまでないでしょうね。

その正直さみたいなものは、ヴォーカルの表現にも出ているかもしれませんね。すごくきれいに伸びていくヴォーカル。

中原:人柄が音に出るじゃないですか。彼の人柄の延長のようなものなのかなと思います。

なるほど。中原さんからそう分析をいただきましたが、どうですか?

三船:ありがとうございます! ……でも、どうなんでしょうね。

ははは!

中原:変に着飾ってはいない、ということですね。

絶対、着飾った音楽だとは感じませんからね。

三船:よかった(笑)。

ははは。この飾らなさが、ちゃんと評価されて信頼を得ているということに心を動かされますけどね。海外のファンの方なんかはどうですか?

三船:なんだろう、英語じゃないからどうだとか、歌詞がわからないとかって言われたことは一度もないですね。

ああー。そうなんですね。歌に出ているんですね。

三船:みんな勝手に解釈してくれますしね。「なんでこんな狭いところでやってるんだ!」って言ってもらったりしたこともあります。たまたま旅行で来ていたスウェーデン人のカップルがすごい喜んでくれて、そのお兄ちゃんのほうが、「CDいくらだ?」って、くしゃくしゃのお札を渡してくれたりとか(笑)。

中原:「それだけでいいよ」って(笑)。

そんなふうな交換が、音楽にとってはいちばん幸福なありかたかもしれないですよね。

三船:うん、おもしろかったですね。

詞にこだわって聴くのが失礼に思えてくる音楽ですけど、“バッファロー”っていうのもすごくアメリカですよね。

三船:バッファローっていうのも、飛行機の名前なんです。

あ、そうなんですか? なるほど、「あの戦闘機」の名前なわけですか!

三船:そうですね。ゼロ戦にボコボコにやられる、ドラえもんみたいなかたちのコロコロしたかわいい飛行機なんですよ。ほんとにぶりぶりしてかわいいやつなんですけどね(笑)。

へえー。この曲の詞は女の子のとらえかたがおもしろいですよね。これ、男の子だったら撃ち落しには行けないんですか?

三船:その詞は──よくわからないです(笑)。僕は(アーシュラ・K・)ル=グウィンって作家が好きで。『ゲド戦記』の作者としても知られる、60年代に活躍した女性作家ですけれど、彼女はフェミニストなんです。そして、ファンタジーの世界の中にフェミニズムに対するスタンスをすごく織り込んでいる。そういう影響があるかもしれません。いつか原書で読みたいなって思っているんですが……。

なるほどなあ。

三船:手塚治虫さんも、ものすごくかわいい女の子を描いたりするじゃないですか。誰かのインタヴューで、「手塚治虫はまるで女の子の心もいっしょに飲み込んで生まれてきたようだ」っていうような発言があったような気がするんですが……。男の子と女の子では明確にちがうところがあるけれど、男の子だからこう、女の子だからこう、ということのあいだに、実際はすごくグラデーションがあると思うんです。そこは、僕らの考えるべきスペースとして広がっているものじゃないかな。

へえー。そのグラデーションというかスケールのようなものを容れる幅が、おふたりの音楽のなかにはあるかもしれませんね。それがとても自然に目指されているのがいいですね。

三船:小学校低学年くらいの、男の子と女の子の間の垣根がない頃の感覚ですかね。その感じをやりたかったのかもしれません、いま思えば。

ああー。「あいだ」のものへの優しい視線があるのかもしれないですね。無理やり当てはめると、「氷河期」だって生命と死のあいだに厳しく横たわるものというか。あとは、日本とUS的なものとの不思議な狭間。


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あんまり東京に生まれたということを意識したことはないんですが、「帰る家」がある人はいいなって思ったりしたことはありますよ(笑)。(三船)

……東京生まれって、そこに何か関係あるんですかね?

三船:あんまり東京に生まれたということを意識したことはないんですが、「帰る家」がある人はいいなって思ったりしたことはありますよ(笑)。実家に帰るっていう感覚もよくわからないし、東京というところを目指して「上って」いくという感覚もないですし。

ふるさと的なものへの憧れはありますか?

三船:僕はありますね。原風景みたいなものへの、というか。

この、アー写に映った沼とかは? 原風景的なものだったりします?

三船:なんでしょうね?

中原:その写真はボツになったやつなんですが……。

ははは! これはボツですか。でも、ROTH BART BARONのふるさとのようなものが、どこかに像を結んでいたりするのかもしれませんね。

三船:なんだろう、そういうものを探しているところはありますね。

中原さんはどうですか?

中原:僕も東京生まれ、東京育ちなんで、帰る場所というようなものはあまりイメージできないですね。あったらいいな、という憧れはちょっとあります。


「上京」っていう感覚は、僕もわからないですね。目指すべき憧れの地というものもないから、そういうところではハングリーさが足りないかもしれないです。なんか、そんなふうに言われたりもします。(中原)

三船:お正月でたくさんの人がご実家に帰られたあとは、この辺はすごく静かで、おもしろいですよ。

中原:うん。それから「上京」っていう感覚は、僕もわからないですね。目指すべき憧れの地というものもないから、そういうところではハングリーさが足りないかもしれないです。なんか、そんなふうに言われたりもします。

ええっ! そうなんですか。でも、それと同じで、守りたい東京のイメージというものもとくにないかもしれないですね。

三船:でも、みんなが心に描く東京があるなら、守らなきゃいけないということになるんじゃないかな。……わかんない、みんなの勘違いが寄り集まっている街が東京だと思っているから。
 いま話していて思いだしたんですが、僕の父親はボートの修理工なんですよ。それで、台風のときなんかは、水かさが上がったり大洪水になったりするから、丘に泊めてある舟を縛っておかなきゃいけないんです。そうじゃないと商売上がったりだから、大人の人たちがものすごい勢いで作業をする。みんな半分水に浸かりながら必死にやっているのに、そんなことお構いなしに幼少期の僕は自転車に乗って遊びまわったりしていて……そういうことを強烈に覚えていますね。原風景のようなものかもしれません。

ボートってよるべないものでもありますから、なにか象徴的ですね。


それから、以前の『化け物山と合唱団』っていうタイトルにも入っていますけど、「合唱団」というものに何か思い入れがあったりしますか? 三船さんの声はひとりだけど、合唱的だと感じるときがあって。

三船:「クワイアー」っていうものが作り出すあの感じ……。宗教音楽にも感じるし、ボーイ・ソプラノを聴いたりしても感じるんですが、ああいう教会音楽のようなものは人間に向かって鳴っているものではないじゃないですか。人間を超越したものに向けられている音が好きなのかもしれないです。

ああー!

三船:……っていうとちょっと電波くんな感じになりますが(笑)。

ぜんぜん。まさに、です。よくわかります。

三船:バッハとかもそうですね。

だから日本っぽくないんですかね。空気に向かって、共感に向かって投げるのが日本的なポップ・ソングだとすれば、ROTH BART BARONのはある絶対的なものに向かって投げられる音というか。

三船:アンノウンなものに対してではなくて、見えないけれども人間がどこかで感じているはずのもの。ちょっと複雑だけど、そういうものに向けている気がします。いま思っただけですが。

なるほどなあ。神秘的っていうんじゃなくて、ふつうとちょっと違うところに向けて歌われているんですよ。

三船:向こうでも、「アンユージュアル」ってよく言われました。よくわかんないんですけど。

それ、どういうニュアンスなんでしょうね。わたしもよくわかりませんが、きっと何か本質的なことを言っているんでしょうね。

三船:ははは。べつに、そうなるように目指しているわけではないんですけどね。

最後にそのお話が訊けてよかったです。ありがとうございました。


Marshstepper - ele-king

 LAの日差しは危険である。真冬の日中だというのにTシャツ陽気でハンモックに揺られながらオレンジマン(猫)などをマッサージすれば、仕事や制作に関する悩みなどなんのその。いやぁ〜俺だいじょ〜ぶじゃ〜ん。

 オイ! 今月の家賃どうするよ! 俺もお前も金ないぞ!
 ルームメイトのアレックス・グレイの言葉に一気に日常に引き戻された。そう、これは例のごとく単なる吸い過ぎである。吸い過ぎて金もない。
 こんなときの貧乏音楽家の常套手段は機材売却である。僕は早速グレー・ホルガーに電話をかけ、買取を懇願した。グレーに連絡した理由は2つある。ひとつはグレーも僕もかなりキモいほどシンセヲタであること、もうひとつは彼のレーベルがかなりいい感じであることを確信していたからである。

 グレーの主たるプロジェクトは、ハイヴ・マインド(Hive Mind)とピュア・グラウンド(Pure Ground)である。前者はもう10年以上も継続するパワエレ/ノイズ/ドローンで、後者は数年前から開始されたミニマル・ウェーヴである。これらのサウンド嗜好を具現化する彼のレーベル、〈コンドリティック・サウンド(Chondritic Sound)〉はここ数年の西海岸ゴス・リヴァイヴァルにおける火付け役だと言っても過言ではない。

 いい歳こいてゴス回帰とかマジ恥ずかしくねぇのかよ! ダセェ!

 ルームメイトのマシュー・サリヴァンの憎まれ口もごもっとも。さすが同じく10年以上前にここでグレーとともにノイジシャンとして活動をはじめ、ニュー・ウェーヴ・オブ・LAハーシュノイズを作り上げた盟友の言葉には愛がある。うむ、たしかにピュア・グラウンドはピュンピュン、トテトテ、アーエーイーウーエーオーアーオーなモロな音に超低体温のヴォーカルが乗る、ただでさえショボいミニマル・ウェーヴをよりショボくローファイにしたその手のファンにはたまらないサウンドなのかもしれない。個人的にはもちろんハイヴ・マインドが好きなんだけども、来月からヨーロッパ・ツアーに遠征するピュア・グラウンドとこの記念すべき再発ヴァイナルにエールを送ろうではないか。

 後日、〈エセティック・ハウス(Ascetic House)〉が主催するフェスティヴァルが近所で開催され、グレーのハイヴ・マインドとマーシュステッパー(Marshstepper)を観に行った。エセティック・ハウス及びマーシュステッパーはアリゾナ発エコエコ・アザラク系レーベル、およびそれを主宰するメンバーを含むバンドである。
※ディストラクション・ユニット(Destruction Unit)のメンバー等と重複
 〈コンドリティック・サウンド〉と同じく彼等もまたこのムーヴメントの立役者だ。コンテンポラリーなコンセプトによるヴィジュアル、パフォーマンス・アートが彼らの魅力だ。フェスティヴァル会場である元韓国人教会のハコに踏み入れると中はやり過ぎな量のスモークが炊かれつづけ、ブルーのライティングに地下はストロボのみのやり過ぎなライティングの中、ゴス・キッズたちがドラッグにまみれる姿に僕は爆笑し、ゴス・リヴァイヴァル・ムーヴメントを認めざるを得なかった。

 マーシュステッパーのライヴも室内でガンガン火を炊いてるし、ブルーシートの上にローションをブチ撒いて半裸仮面のパフォーマーがヌルヌルでのたうち、そこにヴォーカルもガンガン暴れては転んで流血するすべてがやり過ぎで素晴らしいものであった。この音源もエセティック・ハウスが「今年の1月は毎日リリースするぜ!」的な無謀極まるやり過ぎ企画(素晴らしい!)の一環でリリースされたものであり、ニュー・ウェーヴ/ミニマル・ウェーヴにドゥーム・メタル、エクスペリメンタル/ドローンと彼らの嗜好を一皿においしく盛りつけたものに仕上がっている。〈コンドリティック〉からのリリースは視聴できるので興味を持った明らかにクレイジーな人のために貼っておこう。

(マーシュステッパーに関して本当は先月発売予定であった〈ダウンワーズ(Downwards)〉からの12インチをレヴューしたかったのであるが一向に発売する気配がないのでとりあえずこれで許してほしい)

 さて、話は冒頭に戻り、電話連絡後まもなく自宅まで駆けつけてくれたグレーに僕は勿論機材を売りつけ、(後日の件のフェスティバルにてハイヴ・マインドで使用し、熱いパフォーマンスを披露してくれていたからいいじゃないか)ついでにアレックス・グレイも自分の機材を売りつけ、何とか現金収入を得た僕とアレックスはさっそく出掛け、メキシカン・フードをたらふく平らげた後、ネタを買いに行った。あれ? 家賃は? まだ一週間あるからだいじょ〜ぶでしょ〜(以後ループ)。

Arca - ele-king

 5月16日(金曜日)、実験好きで知られる恵比寿リキッドルームで、アーカの来日がブッキングされていることはみなさんご存じでしょう。
 はい、カニエ・ウェストの『イーザス』に4曲も提供している人です。アトモス。フォー・ピースの前座も務めています。ベネズエラ出身ですが、メキシコのレーベルからも出したり、〈Hippos In Tanks〉(ローレル・ヘイローやハイプ・ウィリアムスのリリースで知られる)からはミックステープ『&&&&&』もリリースして、マサやんも大絶賛という……。



 アーカは、ヒップホップの突然変異です。デジタル世界の奇怪な生命体のようです。感情に訴えるものがあります。喩えるなら、15年ほど前に不気味に登場したクラウデッドをコンピュータの廃棄場で蘇らせたようですが、よりシュールで、美しく、そして得体の知れない妖気を発しています。
 いずれににしても注目の公演です。

Arca(DJ set)

2014.5.16 friday
LIQUIDROOM
open/start 21:00 - midnight
adv.(4.19 on sale!!)
⇒3,000yen→LIQUIDROOM店頭&メール予約
⇒3,300yen→PIA[P-code 230-898]、LAWSON[L-code 77636]、e+、DISK UNION(取渋谷クラブミュージックショップ/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ/吉祥寺店)、TECHNIQUE、and more

*20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)

info LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net


▼Arca
ArcaことAlejandro Ghersiはベネズエラ生まれ、現在はロンドンを拠点とするミュージシャン/プロデューサーである。2012年にリリースされた『Stretch 1』と『Stretch 2』(共にUNO NYC)と昨年リリースされた『&&&&& 』(セルフ・リリース)は非常に高く評価され、そのプロダクション・ワークはグーグルで検索可能な多くのアーティスト達から絶賛された。現在、テレパシーで相通じるという幼馴染みでもある映像アーティストJesse Kandaと『&&&&』を映像化した『Trauma』の制作に取り組んでいる。このマルチメディア作品は2014年に世界中で公開される予定である。

https://arca1000000.com/
https://soundcloud.com/arca-2/uenqifjr3yua


Modern Love Showcase - ele-king

 先日、ミリー&アンドレア名義にて、刺激的なアルバム『Drop The Vowels』をリリースしたばかりの、アンディ・ストットとマイルス・ウィテカー(デムダイク・ステア)が絶好のタイミングで来日する。アンディ・ストットはもちろんライヴPA。デムダイク・ステアはライヴとDJ。
 5月9日(金曜日)、代官山ユニット。共演は、KYOKA(アルバムをベルリンの〈ラスター・ノートン〉から出したばかり)、AOKI takamasa、Twin Peak ほか強力なメンツ。
 これは行くしかないでしょう。

■Modern Love Showcase meets Kyoka “IS(Is Superpowered)” Release Party

2014.5.9 FRIDAY @ DAIKANYAMA UNIT & SALOON

Live Acts: ANDY STOTT(Modern Love), DEMDIKE STARE(Modern Love), KYOKA(Raster-Noton, p*dis), AOKI takamasa(Raster-Noton, op.disc), miclodiet(Sludge-Tapes), Twin Peak(FUTURE TERROR, BLACK SMOKER)
DJs: Miles a.k.a. MLZ(DEMDIKE STARE), dj masda(CABARET), YASU(ARTEMIS, Make Some Noise)

Open/ Start 23:30-
¥3,500(Advance), ¥4,000(Door)
Information: 03-5459-8630(UNIT)
You must be 20 and over with photo ID.

Ticket Outlet: PIA(P: 229-716), LAWSON TICKET(L: 76302), e+(eplus.jp), diskunion Club Music Shop(渋谷, 新宿, 下北沢), diskunion 吉祥寺, Jet Set Tokyo, TECHNIQUE, UNIT and Clubberia(www.clubberia.com/ja/store/)


Electronic Music in Mexico - ele-king

■メキシコ・エレクトロニックミュージックの現在

 メキシコの首都、メキシコシティに住んで7年が経った。
 よく人に、「なぜ、メキシコに住んでいるのか」と聞かれるが、いつまでたってもその理由をはっきりと答えられない。

 メキシコは好きだが、ここへやってきたのはスペイン語を本格的に勉強したかったからだ。かねてからラテンアメリカ文化のライターである以上、通訳の力を借りることなく、自分の言葉で興味のある対象にインタヴューしたいと思っていた。そこで、メキシコシティにある国立大学内のスペイン語学校が、ラテンアメリカのなかでも優れていると知り、留学することにした。その当時すでに34歳。遅い大学デビューである。1年ほどで帰国するつもりでいたが、貯金も底を尽きてしまい、帰れなくなった。
 私の実家は静岡県浜松市にあるが、家族たちから、追い打ちをかけるようにこう言われた。「この辺りに住んでいた出稼ぎのブラジル人やペルー人たちが国へ帰るほど日本は不景気だ。あんたが帰国後あてにしてた製造業での通訳の仕事も今はないみたいよ。いっそ、メキシコに居た方がいいんじゃない?」。
 そうか、覚悟を決めるしかない。幸いなことに、メキシコ在住の日本人ライターというので珍しがられ、ぼちぼち仕事も入るようになったので、なんとか食いつなげるかもと思い直した。
 石油や鉱山などの資源に恵まれ、日本の国土の約5倍の大きさのメキシコには、金は腐るほどあって景気がいいように見える。
 メキシコシティの目抜き通りは先進国並みのオフィスビルが建ち並ぶが、ちょっと通りを離れたらバラックの建物が並ぶ光景を見る。ヒップスターが高級自転車で町を徘徊する横では、ストリートチルドレンたちがシンナーを吸っている。
 権力者たちは権力を糧に横暴をふるうが、そこに取り入れられなかった者たちは忘れられた世界に生きるしかない。スペインの映画監督ルイス・ブニュエルがメキシコ在住時の60年以上前にメキシコシティで撮影し、子どもたちの厳しい運命を記した映画「忘れられた人びと」と何ら変わらぬ風景がそこにある。

 人口2000万人以上の大都会に居るにも関わらず、私の暮らしはモダンやアーバンライフからはほど遠い。いつでも偽札を掴まされるのではないか、所持品を盗まれるんじゃないかと注意をはらい、屋台だけではなく、高級レストランまで食中毒を起こす危険があるので、疑心暗鬼だ。緊急病棟に運ばれたときに、ベッドが不足していて、椅子に座ったまま2日間入院したこともある。独裁政権下でもないのに、デモに参加しただけで、刑務所に入れられる仲間がゴロゴロいる。
 この原稿を書いている今も、激しく雷が鳴り響き、また停電が起こるんじゃないかとひやひやしながら、パソコンのキーボードを打っている。ちなみに、私の住むダウンタウンの築60年の停電がよく起こるボロアパートは、ビル・ゲイツに次ぎ、世界で最も資産を持つ通信会社テルメックスの会長、カルロス・スリムの財団が大家である。メキシコシティでは、スリムのような投資家がゲットーの土地を買い漁り、ジェントリフィケーションが進んでいる。だから私が必死で稼いだ金は、家賃、携帯やネット使用料(テルメックスは国内の電話、ネットの市場をほぼ独占している)となって、スリム一家の資産の糧となっていく。
 フランスの詩人でシュルレアリスタのアンドレ・ブルトンが 、1938年に大学のシュルレアリスム講義のためにメキシコへ招待されたが、「なぜ私がメキシコに呼ばれたのかわからない。すでにメキシコは世界で最もシュールな国だ」と言ったのもうなずける話だ。
 だけど、たまらなく美味しいタコスに出会ったときや、市場のおばちゃんとたわいない世間話をして笑いがとれたときなどには、ああ、私もようやくメキシコに馴染めたんだな、という充足感で心が晴れるのだった。
 メキシコのシュールさも含め、たいていのことでは驚かなくなっている私ではあるが、未だに馴染めないのが、ここに立ちこめる暴力の匂いだ。
 メキシコの前大統領フェリーペ・カルデロンが2006年に施行した、麻薬組織撤廃政策において、ここ数年間のメキシコの治安状況は悪化し、現在までに抗争によって6万人以上の死者が出ている。気にしないようにしていても、ニュースではどこで死体が見つかったという話ばかりで、ふとした瞬間に不穏な気持ちになるのは否めない。
 残念ながら、世界中から麻薬組織の国とイメージされるようになってしまったメキシコだが、とくに米国との国境地帯での抗争が激化し、そのひとつの都市、ヌエボ・レオン州モンテレーは、クラブ内などでも銃撃戦で死者が出るほどだ。モンテレーは1990年代後半から、オルタナティヴ・ロックのバンドが続々生まれる音楽文化が豊かな土地だったが、いまでは夜には誰も出歩かないような状況が続いている。現地の企業や学校では、もし手榴弾が飛んできたらどう対応するのか、という講習が行われるほど危険な時もあった。

ティファナのグループ、ロス・マクアーノスが国境地帯の暴力に抵抗するために音楽をはじめた、と語る姿とモンテレーのフェスティヴァルの様子

 そんななか、モンテレーの若者たちが、暴力によって鬱屈した戒厳令状態を打開するために、2009年よりはじめたのが、エレクトロニックとオルタナティヴをメインにしたフェスティヴァルNRMAL (ノルマル)だ。モンテレー、ティファナ、そしてチワワ州シウダーフアレスなど、麻薬抗争の激戦区である国境周辺都市のアーティストたちをメインに集結し、少しずつ、海外アーティストも招くようになっていった。
ラテンアメリカのなかでも重要なフェスティヴァルになりつつある。

■フェスティヴァルNRMALメキシコシティのレポート

 フェスティヴァルNRMALは、今年2014年は、3月5〜9日までモンテレーで開催され、3月1日はメキシコシティでも初開催された。私はメキシコシティの方に参加したのだが、その会場は、なんとメキシコ国軍のスポーツ施設。入り口に銃を持った兵士たちが立っているのが異様だったが、中に入れば、サッカー・コートやロデオ場など4箇所に野外ステージが設置され、都会とは思えないようなのどかな雰囲気だ。
 サイケデリック・エレクトリックの伝説、シルバー・アップルズ(現在はシメオンのソロプロジェクト)や、デヴ・ハインズのエレポップなR&Bプロジェクト、ブラッド・オレンジなど、国内外の計31組が出演した。その過半数がメキシコを含めるスペイン語圏のアーティストたちだ。
 プログラムは、インディー系バンドとエレクトロニック・ミュージックのアーティストが交互に出演する構成で、ローカルの才能に発表の機会を与えるという意図からも、メキシコに蔓延するコマーシャリズムに乗ったフェスティヴァルとは全く異なる。
 今回もっとも素晴らしかったのは、チリの変態エレクトロ・レーベル〈COMEME(コメメ)〉を主宰する、マティアス・アグアヨと、アンデスの先住民音楽をコンセプトにした、ドラムとDJのデュオ、モストロとが組んだユニットといえよう。モストロが奏でる野性味あふれる音と、アグアヨの奇妙なエレクトロニック・ビートとラップが融和した祝祭的な音に、観客たちは覚醒したように踊り狂っていた。
 また、覆面黒装束で、ゴシックなデジタル・クンビアを演奏するコロンビアのトリオ、La mini TK del miedo(ラ・ミニ・テーカー・デル・ミエド)は、雄叫びをあげ続けて、観客を煙に巻いている感じが面白かった。
 いままで、さまざまなメキシコのフェスティヴァルに参加してきたが、誰もが知るアーティストばかりが出演するものよりも、意外性や発見があるほうがどれだけ刺激的か。
 今回のNRMALのメキシコシティでは、それなりに知名度があるアーティストが選出されていたが、本拠地モンテレーのほうがローカルのりで、はるかに盛り上がると聞くだけに、来年はぜひモンテレーまで足を運びたい。

FESTIVAL NRMALのオフィシャルビデオ

  • メインステージの前でくつろぐ参加者たち。芝生でリラックス © Elisa Lemus
  • 楽器販売のブース © Miho Nagaya
  • 雑貨とレモネードを販売するブース © Miho Nagaya
  • ブランコもあった © Miho Nagaya"
  • フードトラックが並び、充実した各国料理が食べられる © Miho Nagaya"
  • VANSが提供するスケート用ランページも © Miho Nagaya
  • ティファナ出身のフォークシンガー、Late Nite Howl © Miho Nagaya
  • 雑誌VICEの音楽プログラム、NOISEYが提供するステージ © Miho Nagaya
  • メヒカリ出身の新鋭テクノアーティストTrillones © Elisa Lemus
  • 会場はペットフレンドリー © Miho Nagaya
  • NRMALのスタッフたちは黒尽くめでクール © Miho Nagaya
  • マティアス・アグアヨとモストロのステージが始まる頃には満員に © Elisa Lemus
  • マティアス・アグアヨ © Miho Nagaya
  • コロンビアのLa mini TK del miedo © Elisa Lemus

 近年のNRMAL周辺の国境地帯のアーティストたちの動きは、はからずとも10年以上前の2000年初頭に国境地帯ティファナの若いアーティストたちが立ち上がった〈ノルテック(NORTE=北、TEC=テクノロジー)〉のムーヴメントと重なるところがある。
 1994年のNAFTA(北米自由貿易協定)によってメキシコで生産されたものは関税なしでアメリカに輸出でき、低賃金で労働力を得られるため、日系を含む多国籍企業が進出し、ティファナを含む国境近くの都市に工場地帯=マキラドーラを建立した。
 ティファナは、もともと、砂漠のなかに建てられた新興都市で、地方から移住してきた人たちの寄せ集め的に見られていた。首都のように伝統や歴史もなく、アメリカとメキシコの合間で、どちらにも属せないのがティファナの人びとだった。
 アイデンティティの不在をバネに、面白い文化を築きたいという若者たちのパワーによってはじまったのが、アート、音楽、文化をメインにしたムーヴメント、ノルテックだった。グラミーで幾度もノミネートされるなど、現在メジャーで活躍するメキシコのテクノ・コレクティヴの〈ノルテック〉は、その当時にこのムーヴメントの音楽部門として生まれた。
 そんなムーヴメントの中心で動いていたメンバーたちが2002年に設立したのが、ティファナのインディペンディエント・レーベル、〈STATIC DISCOS(スタティック・ディスコス。以下スタティック)〉だ。
 音楽ジャーナリストのEJIVAL(エヒバル)を代表に、〈KOMPAKT〉などの海外レーベルからもアルバムがリリースされる、バハ・カリフォルニア州メヒカリ出身のアーティスト、FAXと、ティファナ出身で、ノルテックの元メンバーのMURCOF(ムルコフ)が、レーベル・タイトルのマスタリングを手がける。FAXはデザイナーとして、アートワークも担当している。

〈Static関連写真〉

 FAXの『Resonancia』とMURCOFの『Martes』の2タイトルを皮切りに、現在までに64タイトルをリリースし、レーベルアーティストたちが、スペインのSonarやカナダのMUTEKといった国際フェスティヴァルにたびたび招聘されるまでに成長した。
 なかでも5月に来日公演が行われるMURCOFは、ジャズトランぺッターのエリック・トラファズとタブラ奏者タルヴィン・シンと組んで世界ツアーをし、テクノの曲を弾くクラシックピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ・シュリメやヨーロッパ現代音楽界のアーティストたちともコラボレーションするなど、幅広く活躍し、最も成功しているアーティストといえよう。

MURCOFがフランスのヴィジュアル・アーティストAntiVJとコラボレーションし、ブラジルで演奏したときの映像。

 いまもなお、メキシコおよび、ラテンアメリカのシーンを牽引するレーベル、〈スタティック〉代表のエヒバルに、現在のメキシコのエレクトロニック・ミュージックについて、メールインタヴューした。彼は、前述のフェスティヴァルNRMALやMUTEKメキシコ版の制作に携わっている。

 「〈スタティック〉をはじめた頃は、国内で僕らのやってるエレクトロニック・ミュージックを誰も理解していなかったが、両フェスティヴァルが開催されるようになって、ようやく一般に認知された。両フェスティヴァルの立ち上げから関わっていることを誇りに思うよ。メキシコのフェスティヴァルのほとんどは大企業スポンサーのコマーシャリズム優先だが、NRMALもMUTEKも、個性を重視したフェスティヴァルがメキシコでやれる可能性を広げた。今年のメキシコシティでのNRMALの開催も成功したと思う。新しい才能に注目し、知る人ぞ知るカルト的アーティストも加えたフェスティヴァルは、リスナーを育てる良い機会だし、来年はさらに成長していくだろう。メキシコの問題は、ショービジネス界を独占するイベント企業が、すべて横取りし、ほかのフェスティヴァルの成長を阻むこと。さらにメキシコは海外アーティストへの支援は惜しみなく、法外なギャラを支払うが、国内アーティストに対するリスペクトがほとんどない。 だからこそ、NRMALやMUTEKみたいなフェスティヴァルに関わるほうが面白い。僕たちは新しく先鋭的な音楽を求めているわけで、儲け話が第一じゃないからね」

 〈スタティック〉は今年で12年を迎えたが、インディペンディエントのレーベルをここまで続けるのは簡単ではない。

 「音楽への愛があったからやってこれた。僕たちの目的は、国外でも通用するようなメキシコの才能を見つけ、紹介していくこと。正直、失敗も多いけど、それが僕たちを止める理由にはならない。何も失うものはないし、その失敗を糧に、学んだことのほうが大きい。〈スタティック〉では、2012年からCDの製造をほぼ停止し、ネットでのダウンロードによってリリースしているが、タイトルによってはCDも製造する。昨年は、アナログをリリースし、いくつかのカタログアイテムをカセットテープにする計画もある。最近では本の出版も行っているんだ。近い将来、コーヒーとビールの製造もはじめたい。というのも、いまや、多くの人びとがCDやレコードなど実体のあるものを買おうとしていないから。そのいっぽうで、ダウンロードもそれほど盛況じゃないし、この現実を受け止めなきゃいけない」

 エヒバルは、ちょっと後ろ向きな発言をしつつも、最新の〈スタティック〉のタイトルはとても充実していると嬉しそうに語る。

 「FAXはEP『MOTION』をリリースしたばかりだ。メキシコでもっとも洗練されたエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーといえる。アルゼンチンのMicrosfera(ミクロスフェラ)はハウス感覚のポップで美しい歌を交えたアルバム『Sunny Day』を生んだ。ハリスコ州グアダラハラ出身のMacario(マカリオ)のニュー・アルバム『To Pure』にも注目だ。そして、バハ・カリフォルニア州、エンセナーダ出身のChilds(チャイルズ)のセカンドアルバムのリリースを間もなく控えている。ものすごい傑作だよ。あとは、リリース予定のメキシコシティのCamille Mandoki(カミーユ・マンドキ)は、美しい声を持ち、実験的なアンビエントで素晴らしい。ティファナの作家、ハビエル・フェルナンデスとカルラ・ビラプドゥーアの音楽寄りな書籍も出版予定だ。スタティック以外では、ティファナ出身のフォークシンガー、Late Nite Howl(レイト・ナイト・オウル)がとても有望だし、メキシコシティのWhite Visitation(ホワイト・ビジテーション)もアンビエント・テクノの若手として、海外でも評価されている。メキシコシティ出身で現在ニューヨーク在住のÑaka Ñaka(ニャカ・ニャカ)も面白い。これらの新しい才能たちは、もう〈スタティック〉のようなレーベルの力を必要としないで、彼ら自身で成長していっている」

〈Static Discosの最新作のアルバムジャケット〉

 実は約10年前の2004年にティファナを訪れ、エヒバルと、その妻のノエミにインタヴューをしたことがある(後にremix誌2005年5月号の「メキシコのエレクトロニカ」の記事となって掲載された)。当時エヒバルは、ティファナのマキラドーラ内の工場で働きながらレーベルを運営していた。私はその際にノエミが言った、「ティファナは歴史も文化もないし、あまりに田舎でうんざりすることだらけよ。でも、そんな状況で育ったからこそ私たちには豊かな創造力がある」という言葉に感銘を受けたのだった。MURCOFが2006年にスペインへ移住した当時は、エヒバルとノエミも移住を考えていたが、現在もティファナを拠点にしている。

 「以前とだいぶ変わり、メキシコもずいぶん状況が良くなってきた。そして、ティファナを愛していることや、ここから何かを起こすことの方が重要だと気づかされたんだ。ヨーロッパへ行って基盤を作るのは日に日に難しくなっているし、競争も激しい。僕たちはMURCOFがヨーロッパの不況にも負けずに活動し続けていることを嬉しく思う。ただ、いろいろな意味でティファナは10年前と変わらない問題を抱え続けている。
 この土地の音楽ムーヴメントは大波のようにやってきて、優れた人びととともにメキシコシティや海外へ去って行き、ティファナには残らない。だからまたゼロから取り組まなければならない。それでもティファナは、本当に創造性を刺激する場所だ。いつでも何か面白いことを計画している人びとがいて、いまは音楽だけでなく、食文化や、社会組織(アクティヴィズム)の面において新しいことが起こり始めている。ノルテックのような国境ムーヴメントは今後起こりうる可能性はあるが、音楽だけが独り立ちできる状況ではなく、他の新しいムーヴメントと、音楽をどう絡めるかにかかっているだろう」

 以前から音楽ジャーナリストとしても活躍する彼だが、それだけでやっていくのは厳しいという。
 「生活のために、政治家や社会活動の対外向けテキストを執筆したり、ソーシャル・メディア対策の仕事をしている。工場で働いていた頃は、経済的に安定していたけれど、僕の魂は悲しみにくれていた。いまはその日暮らしだけど、以前よりはずっと幸せだ。とにかく、支援すべき面白いプロジェクトを探し続け、〈スタティック〉でリリースしていきたい。音楽と文学と魂が震えるような感覚を探し続けることに、僕は決して疲れることはないだろう」

 私は思わず、彼の言葉を自分の立場に置き換えていた。
 私がなぜメキシコにいるかの答えはいまだに見つからないし、見つからなくてもいいような気がする。でも、この言葉をきくために、いままでがあったような気がしてならない。
 思い込みだろうか? まあ、思い込みでもいいじゃないか。


〈メキシコの注目アーティストたち〉

■Los Macuanos(ロス・マクアノス)https://soundcloud.com/losmacuanos

ロサンゼルスにあるメキシコのビールメーカー、インディオが運営する文化センターで公演した際のインタヴューとライヴ映像。

2013年にNACIONAL RECORDS(チリのMC、アナ・ティジュやマヌ・チャオもリリースするロサンゼルスのハイブリッドレーベル)から「El Origen」で全世界デビューを果たしたティファナとサンディエゴ出身の3人組。オールドスクールなテクノとメキシコの大衆歌謡やトロピカル音楽をミックスし、〈メキシコ版クラフトワーク〉や〈国境のYMO〉とも呼ばれる。同アルバム収録曲「Las memorias de faro」が、2014年FIFA ワールドカップ、ブラジル大会の公式サウンドトラックに収録 され、南北アメリカ大陸で注目を集める。

■MOCK THE ZUMA(モクテスマ) https://soundcloud.com/mockdazuma


MOC THE ZUMA © Miho Nagaya 

メキシコでも最も注目される才能ある若者のひとりで、ダブステップ、アブストラクト・ヒップホップに影響を受けたその音は、いびつで強烈なインパクトを持つ。国境の町、チワワ州シウダーフアレス出身で、同都市は1990年代から現在まで女性たちが誘拐され、1000人以上が行方不明または殺害されているが、誰が犯人なのか未だに解決されていない。そして麻薬組織の抗争の激戦区であり、メキシコで最も危険な場所である。ロサンゼルスの新聞、LA TIME〈World Now〉で、2011年当時19歳だったモクテスマが、「僕の音楽はビザールな現実から影響を受けている」とインタヴューに答え、世に衝撃を与えた。

■Trillones(トリジョネス)https://soundcloud.com/trillones


Trillones © Static Discos

〈スタティック〉からEP『From The Trees To The Satelites』でデビューした、メヒカリ出身のアーティスト。スペインで最も読まれている新聞El Paisの記事「ラテンアメリカで注目すべきエレクトロニック・ミュージックの5名」の一人として選ばれたニューカマー。同郷のFAXとは親交が厚く、FAXとともにメキシコ北部の先住民音楽と、アンビエント、ロックを融合したユニットのRancho Shampoo (ランチョ・シャンプー)に参加する。

■MURCOF 2014年来日ツアー情報
5月3日、4日 東京 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014 会場 東京フォーラム (詳細https://www.lfj.jp/lfj_2014/performance/artist/detail/art_79.html
5月9日 新潟 Red Race Riot "Sensación de bienestar de días de entusiasmo" 会場 Solero (詳細 https://www.redraceriot.com/index2.html

interview with John Frusciante - ele-king

 「囲い込むこと」「容れ物」といった意味をもつ単語である「enclosure」をタイトルに冠したアルバムをリリースしたのは、かつてレッド・ホット・チリ・ペッパーズにおいて泥臭いカッティング・リフやブルージーなギター・ソロで聴衆を沸かせ、惜しまれつつも2009年に脱退すると、エレクトロニクスを駆使したまったく新たな音楽の探究へと乗り出していったギタリスト、ジョン・フルシアンテである。
 本盤はそうした彼の5年にわたる仕事を総括するものであり、抒情的でときに陰鬱な歌声とサンプリングされた種々雑多なドラム・パターンがポリリズミックに絡み合う、実験的でありながらもソング・ライターとしての資質をいかんなく発揮した、まさに集大成と呼ぶにふさわしい作品だ。いつものようにバルーチャ・ハシム氏によって行われた公式インタヴューにおいて、彼は次のように述べている。

 伝統的なソングライティングを非伝統的な方法でプロデュースするということがコンセプトだよ。ポップ・ソングを書いたけどプロデュースの方法によって、まったくポップ・ミュージックのコンテクストから外しているんだ。ここ30年間のエレクトロニック・ミュージックのプロダクション方法を使っているけどソングライティングは60年代や70年代のスタイルを継承している。伝統的な音楽の思考をモダンなエレクトロニック・ミュージックの思考と融合させたんだ。

00年代の音楽シーンをいわゆる「ミクスチャー」と呼ばれた強烈なファンク・ロック・スタイルで風靡し、いまなお支持の衰えないモンスター・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリストとして活躍したジョン・フルシアンテ。欠員を埋める形で中途から加入した彼は、しかし、バンドに叙情的でエモーショナルな「歌」の力を呼び込み、名ギタリストであるとともに名ソングライターとしての力量を遺憾なく発揮した。後のソロ活動においては多様なミュージシャンたちと関わりながら精力的にアルバム・リリースを重ねている。その求道的なまでの音楽探求の姿に心酔する方も多いのではないだろうか。

 このようなコンセプトがもっとも活かされた楽曲は“ラン”だろう。歌をリズムの基盤とすることによって、さまざまなドラム・パターンの組み合わせを試みることができるようになる。ジャンルは違うがジャズの帝王マイルス・デイヴィスが『ネフェルティティ』において実践してみせたような、メロディー/ハーモニーとリズムの役割を逆転させることによって、闊達なドラミングを楽曲の原動力にするという発想。もちろん、ジョンの場合はさらに歌がある。4つ刻みで発展していく歌にたいして3、5、7あるいはその2倍の数で分割しようとする無謀な取り組みは、しかしたしかに成功している。

 あの曲ではどのバンドもやったことがないようなドラムを取り入れている。歌はスローな4/4だけど小節ごとにドラムの拍子が変わっていく。でもぴったり4/4の歌と合う。小節の中でドラムのスピードが変わっていくように聴こえるよ。ギターとヴォーカルを先にレコーディングしたけど、そこにはまるようにさまざまな拍子のドラムを切り刻んでおいた。あの曲を作るのは楽しかったよ。ブラック・サバスっぽい曲を作って、スローな曲であればいろいろな拍子のドラムをはめ込めると思ったんだ。

 ジョンはグルーヴについてはどのように考えているのだろうか?

 グルーヴというのはつまり音符と音符の間の「間」のことなんだ。ドラム・プログラミングをやるようになってから、すべての音楽は「間」の作り方に基づいていることがわかった。60年代と70年代のブラック・サバスは「間」の作り方が得意だった。彼らは巨大な空間を音で作り出したし、彼らほど広々としたグルーヴを演奏しているバンドはいなかった。

 グルーヴが「間」であり、そこから生み出されるのが「巨大な空間」であるという。ジョンは『エンクロージャー』について、「おもに空間を埋めることに焦点を当てて」おり、「スペースに音を埋め尽くす作業」に専念したのだとも語っている。こうしたキーワードに照らし合わせてみると、ジャケットが禅における円相図のようにも見えてくるだろう。

 赤い枠に囲まれたジョンは語る。

 音楽というのはひとりの人間よりも大きな存在であり人間の知識よりも遥かに賢い存在なんだ。(……)音楽を作る行為は俺よりも大きな存在の中に入り込んで包み込まれるような感覚なんだ。(……)だから、自分の周りに円を描いたのは音楽を作ったり演奏しているときの自分が感じる「包み込まれる」感覚を意味している。

 「enclosure」とはつまり、音楽に関わること、しかし思いのままに音を取り扱うのではなく、遥かに偉大な「音楽」のなかであるがままに包みこまれるということだったのである。しかしジョンと禅の関わりを云々することを遮るように、彼はこうも述べる。

 音楽そのものがメッセージなんだ(……)音楽そのものがコミュニケーションの手段なんだ。音楽は情報であり何かを伝える方法だ。音楽というのは受け取って与えるものだ。

 音楽はメッセージである。同時に、コミュニケーションの手段でもある。わたしたちは彼の音楽を聴くときに、音楽に乗せて運ばれてきたなにものかを受け取ると同時に、音楽そのものを受け取る。だから、ジョンが語ることのすべては、じつは彼の音楽に耳を傾けることで受け取ることもできるのである。

ジョン・フルシアンテ、集大成

ジョン・フルシアンテのニュー・アルバム『Enclosure』。
2012年の『PBX Funicular Intaglio Zone』にはじまる、エレクトロニクスを大きくフィーチャーした近作数タイトルの集大成、一連の作品の最終作となる節目のアルバムだ。
日本盤には限定ボーナスも多数収録されている(日本盤ボーナス・トラック2曲/Blu-spec CD 2/ジョン・フルシアンテ超ロングインタビュー/歌詞対訳)。

 『Enclosure』は、過去5年間における音楽での目標をすべて達成した作品なんだ。 このアルバムはブラック・ナイツの『Medieval Chamber』と同時期にレコーディングされ、サウンドが違うかもしれないけど、同じクリエイティヴ・プロセスによって生み出された。 一つの作品から学んだことが、もう一つの作品にフィードバックした。
 『Enclosure』は『PBX』からはじまった僕の音楽による最後のメッセージだ。
ジョン

Enclosure, upon its completion, was the record which represented the achievement of all the musical goals I had been aiming at for the previous 5 years. It was recorded simultaneously with Black Knights' Medieval Chamber, and as different as the two albums appear to be, they represent one investigative creative thought process. What I learned from one fed directly into the other. Enclosure is presently my last word on the musical statement which began with PBX.
John

■John Frusciante / Enclosure
日本盤特典:9曲+日本盤ボーナストラック2曲=全11曲収録/Blu-spec CD 2/
ジョン・フルシアンテ超ロングインタビュー/歌詞対訳付
税込価格:2,300円
発売日:2014.04.08
レーベル:RUSH x AWDR/LR
収録曲:
1.Shining Desert
2.Sleep
3.Run
4.Stage
5.Fanfare
6.Cinch
7.Zone
8.Crowded
9.Excuses
10.日本盤ボーナストラック
11.日本盤ボーナストラック

Tower HMV Tower

O.K?Tropical Ghetto HP
https://www.tropicalghetto.com/

PICK UP DJ スケジュール
・4/28 (月) 東京都 “”Second MORE of LOVE “” at 下北沢 more
・5/3 (土) 神奈川県 ””PRINS THOMAS III ALBUM RELEASE PARTY-man II man-”” at 江の島OPPA-LA
・5/1 (木) 東京都””光る夜”” at 新宿 open
・5/24 (土) 沖縄県 “”O.K?Tropical Ghetto feat. クボタタケシ”” at 熱血社交場 a.k.a NEKKE 2
・5/30(金) & 5/31(土) タイ “”GIANT SWING 4th anniversary party”” atバンコク
・6/7 (土) 神奈川県””Apache”” at江の島OPPA-LA w/KZA (Force Of Nature) / A-THUG / stickey

JAPANESE 7inch Records


1
坪山 豊 - ワイド節 - 奄美民謡ンナルフォンレコード

1
Yasu-Pacino - Spy vs Spy Remix - HONEY RECORD

1
KEN2-D SPECIAL - I Fought The Law (Re:DUB) - Reality Bites Recordings

1
田我流 feat. Big Ben - 墓場のDigger - 桃源響RECORDS

1
坂本慎太郎 - Wine Glass Women - zelonerecords/republic records

1
RC Succession - Love Me Tender (非売品) - Eastworld

1
50 (5lack × Olive Oil) - 早朝の戦士 (A Lata Mete Ill Remix) - 高田音楽制作事務所 × Oilworks Rec.

1
Popo Johny - キーストーン - Akazuchi Rec × SMR Records

1
Boogie Man - Step Up - カエルスタジオ JPN

1
Karamushi & Friends - Asia Unite - Fantastic Karamuseed

1
水前寺清子 - 三百六十五歩のマーチ - CROWN

Millie & Andrea - ele-king

 1(800)999-9999は、ホームレス、自殺、家出、虐待など、アメリカで、緊急時に対応するフリーダイヤルの電話番号だ。ふたりの老人が座るバス停には、そして次のように書かれている。「何故なら、路上の生活とは行き止まりである(その先に人生はない)」
 先のない人生──この暗示的かつリアルな言葉、バスを待つふたりの老人──この暗示的かつリアルな場面は、見事にミリー&アンドレアのデビュー・アルバムの音楽に意味を与えている。無理もない、事態の深刻さは日本でも同じ。僕は、日本でロック・バンドをやっている連中の一部がよく口にする「ジジイ/ババア」という言葉を笑って言えるほど良い社会を生きていない。身内に高齢者がいる人にはよくわかる話だ。人生をデッドエンドにしているのは特定の世代ではないのだ。

 マイルス・ウィッテカー(デムダイク・ステア)とアンドレア(アンディ・ストット)のコンビは、しかし、この見事なアートワークに反して、「先」を探索している。

 『ドロップ・ザ・ヴォウルズ』は、純然たる新作というわけではない。既発の曲がふたつほど混じっている。ミリー&アンドレアは、Discogsを見ると2008年にはじまっている。マイルス・ウィテカーに紙エレキングが取材したのは2012年の初頭だったが、そのとき彼は、「自分たちの音楽はたぶん他の誰よりも正直なだけだ」と言った。
 また、彼は紙エレキングにおいて、自分のフェイヴァリット10枚の最初にナズの『イルマティック』を挙げている。
 あるいは、アンディ・ストットの来日時のライヴを思い出してもらってもいい。あのときもジャングル/レイヴ・ミュージックへと展開したものだが……

 昨年の、ミニマリズムをダーク・アンビエント的に咀嚼したマイルス・ウィテカーのソロ『Faint Hearted』(https://www.ele-king.net/review/album/003212/)もユニークな作品だったが、コンセプトとして「追い詰められた我らの時代を描く」ということを言えるなら──ウィテカーが言うところの正直な表現という意味において──、昨年のザ・ストレンジャー(ザ・ケアテイカー、ウィテカーが尊敬するひとり)のアルバムの世界観にも近く、しかもジャングル・リヴァイヴァル/ハウス・リヴァイヴァルと「リヴァイヴァル」続きの現代にあって、アントールドのアルバムと同様に、『ドロップ・ザ・ヴォウルズ』には、結局は後戻りできないという感じも良く出ている。
 まあ、アートワークの良さもたしかに大きい。『ラグジュアリー・プロブレムス』もあの写真でなかったら……と自分の耳を疑いたくなるほど、〈モダン・ラヴ〉はうまいことをやっている。また、本人たちは「正直……」と言うものの、ベタな日本人からすると、いかにも英国風のアイロニーも効いていて、アルバムには“Stay Ugly”すなわち「醜くくいつづけよ」などという曲がある。「stayなんたら」はひとつのモットーでありクリシェだが、スマートなのものは信じるなとでも言いたげな逆説的な曲名である。

 実際、これはスマートなジャングルではない。単純明快なグルーヴではないし、目から血を流している少女でもない。折衷的で、無残にも圧縮機で潰されたごときジャングルに喩えられる。“Temper Tantrum”(オリジナルは2009年)のようにレイヴ・ミュージックとして機能すしやすい曲もあるが、気持ちに突き刺さるのは“Stay Ugly”のような、奇妙極まりない曲だ。

 それでも、誰もがこのアルバムに秘められた享楽性を否定できないだろう。ミニマル・テクノ調の“Spectral Source”からはアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックとしての楽しみの感覚が滲み出ている。ジュークめいたエレクトロ・スタイルの“Corrosive(腐食)”は、僕にはドレクシアへのオマージュにも聴こえる。近年のブリアルの支離滅裂さからすれば、ずいぶんと聴きやすい。
 ジャングルの新解釈(ニュー・スクール)とテクノとの結合という観点では、マンチェスターのアコード(Akkord)とも重なるところはあるのかもしれない。ジャングルというスタイルには、アンダーグラウンド・ミュージックが良かった時代の記憶があるばかりではなく、音楽的にもまだ開拓する余地があり、横断的に、そしていろんなアプローチを取り入れることができるのだ。
 とはいえ、ひとつの曲のなかの階層は、こちらがより深い。タイトル曲の“Drop The Vowels”は、装飾性のない、パーカッシヴなブレイクビートと低く暗い音響との掛け合いだ。マイルスの、デムダイク・ステアにおけるダーク・アンビエント/ドローンの実験と、そしてアンディ・ストットのダンス・ビートとが刺激的な一体化を見せている。
 つまり、全8曲というのは物足りないようにも感じるが、幸いなことに、事態の深刻さによって身動きが取れないほど圧せられているわけではないようだ。このアルバムには動きの感覚、リズムがある。いたずらに微笑みはしないだけだ、正直な表現として。

TETSUJI TANAKA - ele-king

日本のD&B/DUBSTEPの総本山/パイオニアイベント我らがdbsで奇跡の共演LEEBANNON x SOURCE DIRECTが実現!!
ニンジャ・チューンから衝撃アルバム「オルタネイト/エンディングス」を放った奇才リー・バノンが急襲!
そして90’s ドラムンベースを急進させたダークの権化。あのレジェンド、ソース・ダイレクトが実に17年振りの来日!!
ジャングル/ドラムンベースが勃発してから20年、時を経て今新たに甦る爆発する漆黒ビーツ!!
LB x SD奇跡の競演を見逃すな!!TETSUJI TANAKAも90’s dnb setでメインフロアのトリとして出演します!!
https://www.dbs-tokyo.com/top.html

<DJ SCHEDULE>
4/19 dbs FT. LEE BANNON & SOURCE DIRECT @UNIT
4/27 TT BD 2014 @ 青山ever
5/4 INTERGALACTIC @ WOMB
5/11 TBA @青山fai
and more...

自身が所属、主宰するelenic productinsがプレオープンしました。
今後のスケジュールやDJ BOOKING、制作などこちらまで。
https://elenic-productions.crossgroove.jp.net/

<RADIO出演>
4月で4年目に突入した日本唯一のドラムンベース専門ラジオ番組"block.fm Localize!!"
毎週水曜日22:30~24:00にてレギュラー・オンエア!!
DRUM & BASS SHOW BY TETSUJI TANAKA & CARDZ
https://block.fm/program/localize/
https://twitter.com/TETSUJI_TANAKA

<リリース情報>
1/27 Bandcamp、2/28 UK iTunesワールドリリースTT & NAVE REMIX収録!

OPUS IIIとして活躍後、世界中のチャートを席巻したTIESTOとの共作「Just Be」やBT、ULRICH SCHNAUSSなど数多くの名曲やクラブアンセムを歌い、手掛けてきたUKを代表するレジェンダリー・シンガーKirsty Hawkshaw主宰のニューレーベルWELLHEAD RECORDSから日本を代表してTT & NAVEがビッグ・リリース!!

TOBIAS ZALDUA / Let It Go with Kirsty Hawkshaw (TT & NAVE Remix)
https://wellheadrecords.bandcamp.com/track/let-it-go-tt-nave
https://soundcloud.com/tobiaszaldua/let-it-go-tt-nave-with-kirsty

TETSUJI TANAKA Dark dnb/jungle set chart


1
ABSOLUTE ZERO & SUBPHONICS / Code / RENEGADE HARDWARE

2
NASTY HABITS / Shadow Boxing (OM UNIT REMIX) / 31 RECORDS

3
SOURCE DIRECT / Snake Style / SOURCE DIRECT RECORDINGS

4
BAD COMPANY /The Nine / BC RECORDINGS

5
ED RUSH & OPTICAL / Funktion / V RECORDINGS

6
RUFIGE KRU /Dark Metal / RAZORS EDGE

7
OM UNIT /Timelines / METALHEADZ

8
FLYTRONIX / Contemporary Accousticz Jam(ORIGIN UNKNOWN REMIX) / MOVING SHADOW

9
GROOVERIDER / Where's Jack The Ripper? / HIGHER GROUND

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SPECIAL FORCES / Exocet / PHOTEK PRODUCTIONS
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