「K A R Y Y N」と一致するもの

Ariwo - ele-king

 フィジカルにこだわったのがいけませんでした。またしても半年かかってしまいました。キューバで新たに設立された〈マニャーナ・レコード〉からアリワならぬアリウォのデビュー・アルバムをようやく入手。パッと試聴した時はシャクルトン・ミーツ・アフロ・キューバン・ジャズといった感触で『マーラ・イン・キューバ』から思わぬ余波が生じているのかなと。アリウォとは西アフリカの言語、ヨルバ語で「ノイズ」のこと。マニャーナはスペイン語で「明日」。ゴングのデヴィッド・アレンが生前、「マニャーナ、マニャーナ」を連発していたことを思い出す(合掌)。
 ロンドンをベースにエレクトロニクス担当のイラン系1人+キューバ系3人の生演奏で構成されたアリウォは、昨年、キューバ初のインターナショナル・ エレクトロニック・ミュージック・フェスティヴァルでプラッドと共演し、ベスト・アクトの声が高かった。その模様がユーチューブで流れ、それ以前に行われていたボイラールームでのライヴ・パフォーマンスにも興味は集まった。一見、単調なのにどんどん盛り上がって行くスタイルはすでに確立されていて、エレクトロニクスとライヴ演奏が完全に融合している様子がそこでは確認できた。同フェスにはちなみに地元勢だけでなくイギリスからエイドリアン・シャーウッドクァンティック、アメリカからニコラス・ジャーやイタリアからはDJカラブ(本誌20号クラップ!クラップ!インタヴュー参照)ほか多数が参加。

 情熱的なトランペットが耳を引くので、プレスなどではアフロ・キューバンという性格が強調されているものの、全体的にはユーロ・ジャズの文脈にあるといえる。それがベーシック・チャンネルのようなクラブ・ミュージックとの接点を模索し、独自のスタイルに辿り着いたものと思われる。それこそブライアン・イーノとジョン・ハッセル(と故ナナ・ヴァスコンセロス)の『ポッシブル・ミュージック』(80)を現在の視点で移民たちが作り変えたようなものに聞こえてしまうというか。リズムが走り出すとドラムン・ベースにも近いものがあったり。もしくはキューバ系の3人はこれまでにもブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブなど様々な場で客演歴があるので、彼らをひとつのヴィジョンでポウヤ・エセイ(Pouya Ehsaei)がまとめたとしたらエイドリアン・シャーウッドがヒップホップのサポート・ミュージシャンたちをタックヘッドとして組織し直したときの契機にも重なるものがあるのかもしれない。シャーウッドがヒップホップにダブを掛け合わせたのと同じ要領で、アフロ・キューバン・ジャズとダブ・テクノを橋渡したのである。イラン系のポウヤ・エセイは2015年に〈エントラクト〉から『172』でソロ・デビューしていて、その時はイランの伝統音楽を素材にしたインダストリアル・ドローンを聞かせていた。宗教的なチャントなどをフィーチャーしているあたりはなるほどペルシャ音楽が背景にあることをうかがわせるので、どうしてキューバ音楽の演奏者たちと結びついたのかは不明。ゾロアスター教をテーマとした曲などもあるし。

 かつてキューバ発のパチャンガやデスカルガは国交が途絶えてからもアメリカの音楽に多大な影響を与えていた。カンディードやグロリア・エステファンはディスコにも大きな影響を与えていたし、ピッツブルのようにキューバを憎むあまりマッチョに磨きがかかっていくタイプもいただろう(それは米大統領選の裏テーマでもあリました)。ジャイルズ・ピーターソンが敷いたレールは着実にその流れをブリテン島におびき寄せている。ジャマイカのミュージシャンが現在はアメリカに進出したがるのとは対照的にキューバからイギリスへ向かう流れが生まれつつあるのだろう。人種の衝突からしか新しい音楽は生まれないかどうかはわからないけれど、こういったものがもっと出てくるとしたらカルチャー・クラッシュもグローバリゼイションもぜんぜんありでしょう。よくある先進国と途上国という組み合わせではなく、途上国同士によるトランスローカルな結びつきというのがいいと思う。

 コンガがいい感じで跳ね回っている。最終的には、しかし、そこかな。ピアノとドラムで明暗をはっきりと付けた『マーラ・イン・キューバ』よりも基調はやはりミニマルだし、等しく呪術的とはいえ、モノトーンなエレクトロニック・リズムの繰り返しをコンガがとっちらかしていくプロセスは実にスリリング。90年代のダンス・ミュージック・ファンにはファビオ・パラスだったり〈ゲリラ・レコーズ〉が高級になって戻ってきたような錯覚というか。


Garden City Movement - ele-king

 夏は終わる。必ず終わる。と思っていてもなかなか終わらないのも夏というものだ。今年の夏も長かった。日本はどこか亜熱帯な気候になってしまった。今や「エンドレス・サマー」は儚い夏の記憶というより、いつまでも終わらない夏に対する飽き飽きする感覚に近い。ロマンティックで、その一瞬、刹那にしかない楽園の記憶としての「エンドレス・サマー」は、既に一種のファンタジーだったのかもしれない。だが音楽はファンタジーである。ブライアン・ウィルソンはサーフィンができなかった。だから終わりゆく永遠の夏を音楽にすることができた。人は現実のむこうにファンタジーを感じるゆえに生きていける。夢のむこうへ。

 2001年にリリースされたフェネスの『エンドレス・サマー』以降、たとえば、マニュアル、グリム、イーサン・ローズなどエレクトロニカもまたビーチ・ボーイズ的な夏の記憶=エンドレス・サマーをポップスの並行世界的に継承してきた(00年代初頭のエレクトロニカが90年代のシカゴ音響派などのポストロックやハイ・ラマズなどのモンド・ポップを継承するものであったことの証でもある)のだが、今回紹介するイスラエルのユニット、ガーデン・シティ・ムーヴメントも、その系譜に加えてみたい。
 メンバーはRoi Avital(ヴォーカル、キーボード、ギター)、Joe Saar(ギター、サンプラー、キーボード)、Johnny Sharoni(ヴォーカル、ギター、サンプラー、パーカッション)の3人。イスラエルの人口第二の都市で「中東のヨーロッパ」とも呼ばれるテルアヴィヴで2013年に結成された。地元の優良インディ・レーベル〈BLDG5 Records〉からすでに4枚のEPをリリースしているユニットである。

 イスラエルは遠い。北にはレバノン、北東にはシリア、東にはヨルダン、南にはエジプトだ。そして彼らからみても日本は遠い。だが今はインターネットがある。そもそもインディ・シーンの少ないイスラエルにあって、インターネットで繋がる外国のシーンの方がより「近い」感覚なのかもしれない。じっさい、ガーデン・シティ・ムーヴメントは、今のエレクトロニック・ポップ・ミュージックだ。
 と「今の」、と思わず書いてしまったが、本作『Move On』は、ガーデン・シティ・ムーヴメントの日本特別編集盤である。本盤は2013年の「Entertainment」と2014年の「Bengali Cinema」のEP 2枚に加えて、最新シングル「She's So Untouchable」や初フィジカル化の音源などを日本独自にコンパイルしたアルバムなのである。つまり2013年から2016年までの3年分のトラックが収録されているわけだ。MVにMayan Toledanoを起用し、YouTubeで200万再生を記録した“Move On”は2013年の曲だ(Mayan Toledanoはアーティストであり、彼らのレーベル〈Me and You〉共同創始者)。
 だが不思議と4年の月日を感じさせないのだ。たしかにジェイムス・ブレイク以降のサウンドなのだが、彼らの音楽には不思議と普遍性がある。エンドレス・サマーの感覚だ。それは少年/少女の記憶の封じ込めなのかもしれない。

 エレクトロニカといってもガーデン・シティ・ムーヴメントの曲はどれもインディ・ロック的であり、ネオ・ソウル的ともいえる。アルバムは1曲めから4曲めまでがEP「Entertainment」収録曲で、5曲めから8曲めまでがEP「Bengali Cinema」収録曲となっている。9曲めから12曲めまでがシングル「She's So Untouchable」収録の表題曲や12インチ・ミックス、コンピレーション・アルバムなどに収録された初フィジカル化の新曲などを収録している。
 1曲め“Casa Mila”からガーデン・シティ・ムーヴメントらしさがあふれている。エディットされたヴォーカルに、夏の夕暮れの空気を感じさせる電子音とコード、細やかなビート。2曲めは彼らの代表曲ともいえる“Move On”。ぐっとBPMを落としたトラックに甘いギターとヴォーカル、ゆったりしたビートの向こうに聴こえる微かな雨の音のような環境音の組み合わせも心地良い。ちなみに“Move On”は、Teen Dazeのリミックスも知られている。4曲め“The More You Make It”はヴォーカル・エディットが控えめになり、ディスコ・ソウル風味のキャッチーな曲を聴かせる。これは2016年のシングル曲“She's So Untouchable”に聴くことができる傾向で、とても良いと思う。


 5曲め以降の「Bengali Cinema」収録曲では7曲め“Lir”に注目したい。おだやかなアコースティック・ギターとエモーショナルな電子音。彼らの曲には、良質で控えめなエモーショナルさがあるのだが、それが楽曲のメロウさを際立たせている。ボーナス・トラック曲では“The Best Of Times?”が素晴らしい。2016年にリリースされた〈BLDG5〉のレーベル・コンピレーション・アルバム『Nightingale Floor Compilation』に収録されたトラックなのだが、夜の空気に満ちたネオ・ソウル的な曲だ。

 以上のように、幅広いリスナーにアピールできそうトラックばかりである。細やかにエディットされた電子音とヴォーカル/メロディ、フローティングする甘いコードのレイヤーは、聴き手を夢の中のビーチへと誘うようなメロウな感覚に満ちている。秋が来て、やがて冬が来ても永遠の夏を夢想したい。そんな永遠のポップ中毒者におすすめしたい1枚だ。
 何より本アルバムはアートワークといい曲の並びといいオリジナル・アルバムといっても過言ではない統一感がある。 ガーデン・シティ・ムーヴメントを初めて聴くリスナーにとって最高の入り口になるだろう。

KANDYTOWN - ele-king

 勢いが止まらない。メンバー各々が精力的にソロ活動を繰り広げるなか、今度はKANDYTOWN本体が動き出した。去る9月29日、かれらにとって2017年最初のリリースとなる新曲“Few Colors”が配信でリリースされたけれど、この度そのMVが公開された。メンバーたちが一堂に会し、同じブーツを着用している風景はじつに壮観である。今後もかれらの動向から目が離せそうにない。


東京の街を生きる幼馴染たち、総勢16名のヒップホップ・クルー:KANDYTOWN
2017年第1弾リリースとなる新曲“Few Colors”(ティンバーランド 2017年FALL&WINTERタイアップソング)のMUSIC VIDEOを遂に公開!

昨年11月に発売した1stアルバム『KANDYTOWN』がiTunes HIP HOPチャート1位を獲得し、各メンバーのソロ名義でのリリースも活発に行い話題のヒップホップ・クルー:KANDYTOWNが、ティンバーランドの2017年FALL&WINTERタイアップ・ソングとなっていることでも話題の2017年第1弾リリースとなる新曲“Few Colors”のMUSIC VIDEOを公開した!

これまでこの映像は“Few Colors”のiTunes Store限定バンドル特典としてしか見ることができなかったが、新曲“Few Colors”が配信されるや否や、各配信サイトのHIP HOPチャートの上位を賑わせている中での、まさに待望のMUSIC VIDEO公開となった! 今回のMUSIC VIDEOも、KANDYTOWN内のIO、YOUNG JUJUが所属するクリエイティヴ・チーム:TAXi FILMSが手掛けており、映像中では、ティンバーランドのアイコンとも言うべき、シックスインチプレミアムブーツを着用したメンバー全員が出演している。重厚感のある楽曲同様、これまで以上に深く、濃くKANDYTOWNの世界観を味わえる内容となっている。

そんな、KANDYTOWNはティンバーランドとのコラボレーションを記念して、MUSIC VIDEO同様にTAXi FILMSが手掛けたビジュアルを始めとしたスペシャル・コンテンツを擁した特設ウェブサイトもOPENしているので、是非チェックしてみよう!

【“Few Colors”YOUTUBE URL】
https://www.youtube.com/watch?v=pKb2qbY7ccg

【“Few Colors”作品詳細】

配信日:2017年9月29日(金)0:00
タイトル:Few Colors(ティンバーランド 2017 FALL&WINTERタイアップソング)
配信URL: https://lnk.to/KFQE0
備考: iTunes限定で特典にMUSIC VIDEOが付いたバンドル配信も決定。

【KANDYTOWN|Timberland特設ウェブサイト】
https://goo.gl/LFdZSK

【KANDYTOWN オフィシャルHP】
https://kandytownlife.com/

【KANDYTOWN WARNERMUSIC JAPAN HP内ARTIST PAGE】
https://wmg.jp/artist/kandytown/

【KANDYTOWN プロフィール】
東京の街を生きる幼馴染たち、総勢16名のヒップホップ・クルー。
2014年 free mixtape『KOLD TAPE』
2015年 street album『BLAKK MOTEL』『Kruise』
2016年 1st album『KANDYTOWN』
2017年 1st album『KANDYTOWN』(4LP)

RYU OKUBO × unico - ele-king

 オオクボリュウの絵が家具ブランド「unico」にも登場。クッションカバー、ラグ、チェアー、グラス、バブーシュ(最近流行の履物)、トートバッグ、などなど。個人的には、コウモリの絵のバブーシュを娘に買ってあげたい! あとはクッションカバー。家にこんなものがあったら、いいな-。

「RYU OKUBO × unico」
https://www.unico-fan.co.jp/feature/ryu_okubo

【対象店舗】
unico代官山/unico丸の内/unico吉祥寺/unico二子玉川/unico船橋/unico湘南/unico池袋/unico新宿/unico北千住/unico大宮/unico立川/unico武蔵小杉/unico神戸/unico梅田/unico堀江/unico福岡/unico札幌/unico名古屋/unico広島/オンラインショップ

DJ Yoshi Horino(UNKNOWN season) - ele-king

10.12. HOB 2nd anniv. feat. Chris Coco, Taro Yoda at bonobo(ゲストのお2人からインスパイアされた10曲)

近々のDJスケジュールです:


10.12.(Thu) House Of Bonobo 2nd Anniversary Pt.2 feat. Chris Coco at bonobo, Harajuku

10.20.(Fri) Plus at Suree, Ebisu

11.6.(Mon) Deep Monday at 頭バー, Ebisu

ハテナ・フランセ - ele-king

 現在日本では衆院選の真っ最中ですが、フランスでは9月24日に議会上院の選挙が行われたばかり。とはいえ上院は直接的な国民投票ではなく議員による投票なので、国民の関心も薄い。そんなわけで今回は6月の選挙で約2/3が初当選の議員が占めることになったフランスの下院議会、そして個人的に注目している議員フランソワ・リュファンのお話をしたく。
 先の下院選でマクロン大統領率いる新党、「共和国前進」は協力政党の「民主運動」と合わせると国民議会の6割に上る議席を獲得し大勝利を納めた。与党が過半数を占める議会となった選挙ではあったが、議員の顔ぶれは大きく変わった。これまでの2大政党の共和党は113議席、社会党は29議席史上最低の数字を記録。大統領選の最終決戦に残ったマリン・ルペンの率いる国民戦線は、大統領選時のルペンのディベートが振るわなかったせいで勢いを削がれたが、それでも前回の4倍に当たる8議席を獲得。そんな中で大統領選にも出馬したジャン=リュック・メランションの左派新政党、「屈しないフランス」がフランス議会で会派を形成できる15議席をからくも超えた17議席を獲得して健闘した。この党の中でも抜群の好感度を誇るのが先に触れたフランソワ・リュファンだ。

 現在42歳のリュファンは左寄りの季刊新聞Fakirの創刊者でありジャーナリスト。マイケル・ムーアに影響を受けて「メルシー、パトロン!(社長さま、ありがとう)」というドキュメンタリー映画を撮り50万人を動員する大ヒット記録した。ディオールやルイ・ヴィトンなどを傘下に持つLVMHのCEOにして世界で5本の指に入る大富豪、ベルナール・アルノーに、リストラされた工場労働者の老夫婦とともに立ち向かう様をユーモアたっぷりに描いた本作。世界最大とも言われるファッション・グループから送られてくる百戦錬磨な社員たちを相手に、職を失い家も失う危機に瀕した下層労働者階級の老夫婦を、弁護士などの援護なしにアイデアのみで窮地から救っていく様は「スターウォーズ ジェダイの帰還」でイウォークが帝国を工夫と団結力で倒したような爽快感だ。そして全編に散りばめられたベルナール・アルノー=富と冷酷な資本主義の象徴に対する、徹頭徹尾ふざけたおちょくり&反抗精神が、観る者に「何もできないと諦めていたけど、本当は自分でも何かできるかもしれない」という希望と政治参加を喚起した。この映画をきっかけにフランスではNuit Debout(夜、立ち上がれ)というデモ運動が始まり、パリならばレピュブリック広場で夜を徹して資本主義に偏った社会をどうしたら変えられるか討論が行われている。その活動はフランスだけでなくスペイン、ベルギー、ドイツ、イギリス、イタリアなど、ヨーロッパ中に広がってさえいる。その運動の中心となったフランソワ・リュファンが今年6月の下院選で初当選したのは当然の流れと言えるかもしれない。

 当選してからもリュファンの姿勢はジャーナリストそのもので、いわゆる社会の底辺で困難にあえぐ人たちの話を聞きに足を運び、徹底して大企業や政治家の不正や不誠実さを調べ上げ議会で追求する。例えば8月末に政府が発表した労働法改定案は、雇用者が今よりも解雇をしやすくしたり、賃金交渉が労働組合を通さないでも行えるような抜け道を誘導するような法案で、経営者、雇用者側に有利で市場原理主義のマクロンそのものといえるものだ。その法案に反対するべく、リュファンは大手スーパー、オーシャンの例を上げる。「売上を14%伸ばし株の配当も75%伸ばし、経営者のジェラール・ミュリエは260億ユーロの資産を持っているにもかかわらず、870人もが解雇された。この意識の高いみなさんの集まる議会で、我々はどうやって経済的弱者が経済的強者から搾取されることを防げるのか。共和国前進の議員諸君教えてくれ給え!」と、時に笑いを誘いながら正確なリサーチに基づきリュファンはしつこく問いかけ続ける。また最新のエピソードとしては、フランス最大の精肉会社ビガーの社員への不当な扱いを非難し、調査委員会で口座開示を求めた。もちろん企業側はのらりくらりと返答を避け、当然口座開示も拒否。それに対抗して民主運動の議員とともに正式な口座開示要請の手紙を送りつける様をもちろんSNSで公開。ただリュファン始め「屈しないフランス」などの議員たちが提出する修正案や法案などはことごとく「共和国前進」の議員たちの反対にあい、残念ながら通ることはないのだ。少なくとも今のところは。このように現在のフランス議会は既成の政治への否定に始まり、市場原理主義の「共和国前進」に対し彼らの行きすぎた資本主義を大きく引き戻そうと「屈しないフランス」などが抵抗する場になっている。「屈しないフランス」党首のジャン=リュック・メランションは、今後「共和国前進」の議員たちの造反が少しずつでも増えてくることを密かに狙っているようだが、どうなることやら。

 ただ個人的には野心と私利私欲に駆られた誠実さのかけらもない政治家ばかりなのだろうかと絶望しつつある今日この頃、社会の底辺で困窮する人々を救うために何をするべきかという使命感のもとに活動する政治家を目にすると、ちょっと希望を抱かされるし自分なりに社会貢献をしてみたくなったりするのだった。頑張れリュファン!  SNSフォローし続けるからね!

Oneohtrix Point Never - ele-king

 これは嬉しいお知らせです。11月3日に日本公開される映画『グッド・タイム』のディレクターズ・カット版サウンドトラックCDがリリースされます。こちら、なんと日本限定かつCD限定の試みとなっている模様。OPNによる『グッド・タイム』のサウンドトラックはすでにリリースされていますが、このディレクターズ・カット版は全曲フィルム・エディットで、オーダーも映画での流れに沿ったものとなっており、また未収録曲も追加されているとのこと。新曲の試聴はこちらから。

ONEOHTRIX POINT NEVER
カンヌを震撼させた映像すら飲み込む衝撃の映画音楽体験。
ロバート・パティンソン主演で注目の話題映画『グッド・タイム』
ディレクターズ・カット版サウンドトラックのCDリリースが決定!

本年度のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、主演のロバート・パティンソンが彼のキャリア史上最高の演技を披露していると話題を呼んでいる映画『グッド・タイム』。音楽を手がけたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンが、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞を受賞し、アメリカで8月に公開された際には、セレーナ・ゴメスや全米シングル・チャート1位をもつ人気シンガー、ザ・ウィークエンドなども大絶賛するなど大きな注目を集める中、日本でも11月3日(祝・金)よりシネマート新宿ほかにて全国公開が決定している。

11月3日公開 ロバート・パティンソン主演『グッド・タイム』予告編
https://www.finefilms.co.jp/goodtime/

また本映画のサウンドトラック・アルバムとしてワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが〈Warp Records〉から『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』をリリースしており、映画のエンディング・テーマにもなっている“The Pure and the Damned”でイギー・ポップとコラボレートしたことも大きな話題となった。映画の日本公開を1ヶ月後に控えた中、公開を記念して、全曲フィルム・エディットで収録されたディレクターズ・カット版『Good Time... Raw』の日本限定リリースが決定し、新曲“Elara to Alley”が解禁された。

Oneohtrix Point Never - Elara to Alley
https://pointnever.com/elara-to-bank

本作『Good Time... Raw』は言わば『グッド・タイム』のサントラの完全版だ。オリジナルのサントラは今年8月にもリリースされたが、サフディ兄弟の片割れであるジョシュ・サフディが「映画のままでサントラを聴きたい」とリクエストしたため、完全版の『Good Time... Raw』が制作されることになった。ゆえに本作は映画の流れに沿った曲順であり、イギー・ポップが参加した“The Pure and the Damned”含め、全曲がFilm Editで収録されているほか、8月リリースのオリジナル・ヴァージョンには収められなかった曲も追加収録されており、『グッド・タイム』の世界観をより深く理解するためにも必聴の作品だ。

そんな本作は、これまでのロパティンからすると新たな側面といえる音が多い。とりわけ耳を引くのは、シンセのアルペジオが多用されていることだ。オリジナル・アルバムではあまり強調されないメロディーも前面に出ており、ロパティンのサウンドにしてはキャッチーである。とはいえ、殺伐としたドライな映像が印象的な映画本編と共振するように、不穏な空気を醸す電子音が多いところには、ロパティンが持つアクの強さを見いだせる。それが顕著に見られるのは、メタルみたいな大仰さが映える“Bail Bonds”や、人工的な8ビット・シンセが響く“Flashback”などだろう。また、“6th Floor”“Ray Wake Up”“Entry To White Castle”では秘教的な雰囲気を創出しているが、その雰囲気に『AKIRA』の音楽で有名な芸能山城組の影がちらつくのも面白い。サフディ兄弟とロパティンは、共に『AKIRA』好きとしても知られているが、そうした嗜好は本作にもあきらかに表われてい る。

本作は、ロパティンなりに映画の世界観と上手くバランスを取ろうとする客観性と、アーティストとしてのエゴが絶妙に混ざりあった作品だ。そんな本作を聴いて連想するのは、映画『ロスト・リバー』の音楽を担当したジョニー・ジュエル、あるいはドラマ『ストレンジャー・シングス』の音楽で知名度を高めたカイル・ディクソン&マイケル・ステインあたりのサウンドだが、こうした近年注目されているアーティストに接近したのはなんとも興味深い。そういう意味で本作は、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの次なる一手としても重要な作品になるだろう。

話題映画『グッド・タイム』ディレクターズ・カット版サウンドトラック『Good Time... Raw』は、映画公開と同日の11月3日(祝・金)に日本限定、またCDフォーマット限定でリリースされる。また本作には、ジョシュ・サフディによるライナーノーツおよび、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンとジョシュ・サフディによるスペシャルな対談が封入される。また対象店舗にて、『Good Time... Raw』と『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』を2枚同時で購入すると、オリジナル・クリアファイルが先着でもらえる。


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time... Raw

cat no.: BRC-561
release date: 2017/11/03 FRI ON SALE
国内限定盤CD:ジョシュ・サフディによるライナーノーツ
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとジョシュ・サフディによるスペシャル対談封入
定価:¥2,000+税

【ご予約はこちら】
amazon: https://amzn.asia/gxW5H63

商品詳細はこちら:
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-561


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack

cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD:ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価:¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

商品詳細はこちら:
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558


映画『グッド・タイム』
2017年11月3日(祝・金)公開
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

ニューヨークの最下層で生きるコニーと知的障がい者の弟ニック。2人は銀行強盗を行うが、弟が捕まり投獄されてしまう。しかし獄中で暴れ病院へ送られると、それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、警察が監視するなか弟ニックを取り返そうとするが……。

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
© 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給ファインフィルムズ

interview with Ryohu - ele-king


Ryohu - Blur
LIQUOR&FOODS I.K / Less+ Project.

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 グループとしても、それぞれのソロとしても、快進撃を続けるKANDYTOWN。その中でも、まだKANDYTOWNがこれほどまで名前をシーンで上げる以前から、ソロでのリリースや、Base Ball BearやSuchmosといったヒップホップ・シーン外のアーティストへの客演でも注目を集めていたラッパー/トラックメイカーのRyohu。それらに加えプロデュース・ワークや、ラッパーとして参加しているバンド Aun beatzでの動きなど、その活動の幅と創作意欲の高さは衆目を集めていたが、ソロでのリリースとしては「Green Room」や「All in One EP」などがあったものの、現場売りや限定リリースなど、そのリリースは大きな形ではなかった。しかし今回リリースとなる「Blur」は、インディ・リリースではあるが初の全国流通盤となり、その存在をより広い形で伝えることになる作品となるだろう。そして、そのアルバムはバンド ampleの河原太朗を共同プロデューサーに迎え、インタビューでも語られる通り、打ち込みによるヒップホップやクラブ・ミュージックならではの構造性と、バンドとしての音楽的なカラーの豊かさを両立させた作品として完成させた。ラップのアプローチとしても、これまでとも繋がるロマンティックで垢抜けたリリシズムに加え、そのイメージをやや変えるような創作性も垣間見え、そのポテンシャルを作品に塗り込める。確実な進歩を感じさせる、理屈を超えた「気持ちよさ」を感じさせる1枚だ。


やっぱりDJプレミアが多かったですね。リアル・タイムのものより、ナズとかジェル・ザ・ダマジャ、ブラック・ムーン、モブ・ディープみたいな、90年代クラシックを死ぬほど、もうぶち狂うぐらい聴いてて。

まずRyohuくんの音楽的な原点から教えてください。

Ryohu:子どもの頃からバスケやってて、試合で遠征する時はチーム・メイトの家族の車に分乗して会場まで行くんですけど、その中にロック好きなお父さんがいて、その車ではいつもボン・ジョヴィの“It's My Life”がかかってたんですよね。その曲が聴きたいがために、その車に乗ってたのを覚えてます(笑)。ラップはKICK THE CAN CREWとかRIP SLYMEみたいな、当時のポップ・チャートに登場してた人も聴いてたんだけど、最初に衝撃を受けたのはキングギドラの『最終兵器』でしたね。それが小5~6だったと思う。ギドラを聴いて、こういうラップ、ヒップホップがあるんだ、格好いいなってしっかり聴き始めて。世代的にも『空からの力』は後追いですね。

ハードコア・ヒップホップの方がピンときたと。

Ryohu:そうっすね。中学の時には妄走族のライヴも行ってたし。

それは意外!

Ryohu:妄走族はかなり聴いてましたね。雷家族も超好きだったし、練マザファッカーがテレビに出る前からD.Oさんの音源も聴いてて。

ある意味で、KANDYTOWNは世間的にはクールでお洒落な感じで受け取られている部分もあるし、実際にそういう部分もあるんだけど、IOくんは「BOOT STREET」で働いてたり、いわゆる渋谷宇田川カルチャーとも繋がりがあるんですよね。

Ryohu:やっぱり好きなものと、自分がアーティストとして提示したい自分らしいものって違うじゃないですか。だから、その意味でも最終的にハードコアな方向には行かなかったけど、やっぱりリスナーとしては影響を受けてましたね、特に当時は。そういうライヴって、やっぱり中学生なんてほぼいないんだけど、その中に同世代で来てたのがYUSHIで、そこで知り合ったんですよね。

学校の繋がりではないんですね。

Ryohu:俺やB.S.Cは普通の公立校で、YUSHIは和光中学に通ってて。

いわばストリートで出会ったと。

Ryohu:格好良く言えば(笑)。それでYUSHIやIO、KIKUMARUとか和光の人間とも遊ぶようになって。俺は駒場高校に進んで超真剣に部活でバスケやってたんだけど、遊ぶのは後にBANKROLLになる連中ばっかりでしたね。自分の高校の人間とはあんまり遊ばなかったし、行事も参加しないで、部活が終わったらBANKROLLの連中と遊ぶっていう。だから、学校では謎キャラだったと思います(笑)。

自分の高校にはラップを聴いてる人はいなかった?

Ryohu:いたと思うけど、BANKROLLのメンバーぐらい詳しかったり、感覚の合う人間はいなくて。

ではラップを始めたキッカケは?

Ryohu:せざるをえなくなったんですよね。

それはどういうこと?

Ryohu:YUSHIは中学からラップやってたし、一緒に遊んでる人間も高校に入るとみんなラップ始めて、遊ぶ時はみんなフリースタイルしてるんですよ。最初は「俺はいいわ」とか言ってたんですけど、結局みんなそうやって遊んでるから、つまんなくなるじゃないですか。それで「俺もラップするしかねえか」みたいな(笑)。本当はやりたいんだけど、恥ずかしいっていう気持ちが勝ってて踏み出せなかった部分もあって。それで一回やってみたら、あとはもう楽しくなっちゃって、インスト聴いたら曲書こうって感じだったし、MTRでひたすら録ってましたね。それは俺もそうだし、KANDYのメンツはみんな。だから世に出てない曲は山ほどありますよ。

当時、ラップを載っけてたビートは?

Ryohu:やっぱりDJプレミアが多かったですね。リアル・タイムのものより、ナズとかジェル・ザ・ダマジャ、ブラック・ムーン、モブ・ディープみたいな、90年代クラシックを死ぬほど、もうぶち狂うぐらい聴いてて。当時、俺らが格好いいと思ってたライフ・スタイルに、90sのNYヒップホップが近い部分があったと思うんですよね。夜、集団でオーバー・サイズ着て、歩いてたり溜まってるみたいな感じがかっけえっていう。俺らの遊ぶ時もそういう感じでしたね。

高校卒業ぐらいのタイミングで、ズットズレテルズにも参加しますね。後にOKAMOTO'Sに繋がるグループですが、Ryohuくんはどういう経緯で入ったの?

Ryohu:なんなんすかね?

それを聞いてるんだけどさ(笑)。

Ryohu:いや、なんかやろう、ぐらいだったと思いますね。あんまり深い意味はなかったと思います。

話によると、和光の卒業イベントのために結成したんだけど、賞金が欲しくて「閃光ライオット」にもチャレンジしたということですが。

Ryohu:そんな感じだったかもしれない(笑)。でもとにかく一緒にいて、バンドのジャム・セッションに合わせて、YUSHIと俺がフリースタイルするって感じで、とにかく一緒に音楽をやってましたね。実際には半年ぐらいしか活動してないけど、その間ズレテルズのメンバーととにかく一緒に音楽を作ってましたね。それでハマ(オカモト)くんが当時、ズレテルズとは別にEdBUSっていうバンドのサポートやってて、その流れで下北沢GARAGEに出入りしてたんですよね。それで、その年の「閃光ライオット」に出た挫・人間とか関取花ちゃん、ブライアン新世界たちと一緒に、ズレテルズ主催でGARAGEでイヴェントをやったんですよ。そこで当時店長だった出口(和宏)さんが俺のことを気に入ってくれて、それからGARAGEに出入りするようになって。それで当時MPC1000を買って――確か楽器屋に取りに行くのに、IOの車で送ってもらった記憶があります――トラックメイクも始めたんですよね。MPC1000は持ち運びができたんで、夜な夜なGARAGEに機材を持ってって、楽屋兼事務所に溜まってるみんなと、朝まで一緒に曲作ったり。そこでコイちゃん(小出祐介、Base Ball Bear)に出会ったんですよね。

ベボベの“クチビル・ディテクティヴ”に参加したのも、GARAGEの流れだったんですね。

Ryohu:そうですね。あと、閃光ライオットでコイちゃんが審査員だったっていうのもあって。ただ俺はバンドを全然聴いてなかったんで、出会った時にベボベのことも、コイちゃんのことも知らなかったんですよ。それよりも、やたらラップの上手い人って印象でしたね。それで事務所で一緒に遊び終わった後に、そのまま飯食いに行ったんですよね。それで下北の駅前を通ったら「ベボベ武道館」っていうポスターが貼ってあって、一緒にいた人に「これ、コイちゃんのバンド」って言われて、「え、スゴいことですよね、武道館ワンマンて」って(笑)。同じようにGARAGEで出会った(ペトロールズの長岡)亮介さんも知らなかったんで、ライヴを見て「めっちゃギター黒いっすね」とか軽く言ったりして。亮介さんには「マジあの時はすみませんでした」って今も謝ってるんですけど(笑)、単純に生意気な奴って感じだったと思いますね。

同時期には元SIMI LABのQNの別名義、EARTH NO MADの「MUD DAY」にも参加しますね。

Ryohu:BANKROLLは町田のFLAVAとかでライヴをやってたんで、同じようにFLAVAに出てたSIMI LABとも繋がってたんですよね。そこでQNから、「別名義でリリースするからRyohuも入ってくれない?」ってオファーをもらって。で、歌詞書かないでいって、フリースタイルで録って、その時間をタイトルにするっていう(笑)。

いい加減だな~。

Ryohu:もうしっかりしなさいよ、って感じですよ、いまから振り返ると(笑)。

ふと「考えるの止めよう、山に登ろう」と思って、ひとりで山に登ったんですよね。

そうやっていろんなオファーがあったけど、ソロ作にはたどり着いていませんね。

Ryohu:リリースの勧めもあったんですけど、そういうモードじゃなかったというか、俺自身、実際に何をしたいのかが、自分でわかってなくて。だからリリースとかよりも、遊んでたかったっぽいですね。勿論、そこには音楽が付随してて、いろんな出会いだったりがあって、そこで新しい音楽の遊び方を覚えたりはしてるんだけど、「リリース」とか「制作」には自分から向かわなかった。

それはBANKROLLやKANDYTOWNとして動きたかったという部分もある?

Ryohu:正直、それはハナからなかったですね(笑)。なんならIOと超しょうもないこと――かつ完全に俺が悪い内容で――喧嘩してて、1年ぐらい口きいてなかったんじゃないかな、KANDYの仲間と一緒にいたりするのに(笑)。かつ、GARAGEに出入りするようになってたんで、KANDYよりも、そっちが遊ぶ中心になってて。ライヴもやってたけど、人に求められるからやるっていうか。自分からっていう感じでは正直なかったかもしれないですね。

その意味では、アーティストとしてやってこうと思ったタイミングは?

Ryohu:それこそベボベの作品に何作か参加させてもらって、普通に音楽でお金もらってるんだなとは感じてたけど、その時はこれを仕事にしようとは思ってなかったんですね。でも、22~3ぐらいのタイミングで、ふと、ちゃんとしなきゃな、音楽をちゃんとやってみようかな、と思ったんですけど、でもやり方がわかんねえ、みたいな、ただただ時間だけが過ぎてくみたいな期間があって。その中で音楽と向き合うために、11年に「Green Room」を作ったんですけど(リリースは13年)、とにかく暗くなっちゃって。それでふと「考えるの止めよう、山に登ろう」と思って、ひとりで山に登ったんですよね。

また急激な展開(笑)。

Ryohu:体動かしたほうがいいかなって(笑)。その帰りに、KANDYのメンバーではないんだけど、その周りにいる仲間に出会って、「これはもうこの環の中からは逃れられないってことだし、それでいいんだな」って。そこで、スゴくいろんなことに関して軽く考えられるようになったんですよね。

「Blur」に収録される“The More, The Better”には、山の話が出てきますが。

Ryohu:その時に書いたリリックなんですよ。自分の中でのもがきとか、悩みの霧が晴れて、もっと簡単に考えていいんだ、って思った時の曲で。tengal6を手がけたのもその時期じゃなかったかな。

ラップ・アイドル lyrical schoolの前身である、tengal6の「まちがう」に収録された“ルービックキューブ”などを手がけられましたね。アイドルの制作に参加したキッカケは?

Ryohu:ミュージシャンのリキヒダカともGARAGEで繋がったんですけど、彼の繋がりでtengal6のプロデューサーのキム・ヤスヒロくんから連絡をもらって「ラップの指導をやってくんない?」って。それでオーディションぐらいから関わらせてもらったんですよね。

そして、KANDYTOWNが14年に初のミックス「KOLD TAPE」をWEBにアップして、その1年後には「BLAKK MOTEL」「Kruise'」をリリースして、いよいよ本格的に動き始めることになりますね。Ryohuくんはそれと並行して、Suchmos「THE BAY」に収録された“GIRL (feat. Ryohu)”にも参加と。

Ryohu:やっぱりKANDYが注目され始めたのは個人的に嬉しかったですよ。それまでほとんど俺しか表に出てなかったんで、リリースはこれから動こうぜっていうキッカケにもなって。去年フル・アルバム『KANDYTOWN』まで上手いこと進めたし、その流れに沿ってそれぞれのソロもリリースされて、普通に嬉しいみたいな。雑誌の表紙も何人もやってるし、「みんなで、有名になるの良くねえ?」って感じでもあるし、一方で勝ち負けじゃないけど、みんな頑張ってるから俺も負けられねえ、っていう気持ちにもさせられて。

IOくんやYOUNG JUJUくんたちは全国流通作をリリースしていますが、Ryohuくんは現場売りが中心でしたね。昨年リリースの「All in One EP」も流通としてはライヴ会場やタワーレコード限定のリリースでした。

Ryohu:結局、関わる人間が増えれば増えるほど、いろんなことがあるし、ものづくりをする上で、あまり人に関わらせたくなかったというか、アーティストが一番でありたかったんですよね。俺が作った俺の音楽なんだから、って。「Green Room」の頃までは、まだとんがってたと思いますね。「All in One EP」はそれが晴れて、自分からいろんな人に働きかけたら、みんな快く引き受けてくれて。そこで「頼んでもいいんだ、手伝ってくれるんだ」って発見もあったんですよね。それで「Blur」は全国流通で展開しようって。

バンドだとありえない音楽構造で作曲するのは、ヒップホップのトラックメイカーができることだけど、バンドとしての素晴らしさは、やっぱりバンドにしか出せないですよね。そのふたつを組み合わせたくて。

その「Blur」ですが、バンド ampelの河原太朗さんを共同プロデューサーに起用した、バンド・サウンドが基調になった作品ですね。

Ryohu:生音を使ったらどうなるんだろうっていうのは興味あったんですよね。それがキッカケで、太朗ちゃんに声をかけて。

作り方としてはどのように?

Ryohu:俺は楽器ができないんで「こういう感じの曲を作りたい」「こういう曲にしたい」っていうザックリしたイメージを太朗ちゃんに伝えて、それを「こういう感じ?」って組み立ててもらうんですよね。それで「それがいい」「コード感はもう少し明るめ」「これに合うのはこういうドラムだね」とか、ディスカッションで進めていった感じですね。だから、土台を作る時はふたりで部屋にずっとこもってましたね、2日間(笑)。ただ、ドラムは打ち込みにしたかったんですよ。

それはなぜ?

Ryohu:バンドで制作したのは、あまりヒップホップ・サウンドにしすぎないようにっていうイメージだったんですが、でも一方でクラブ対応にはしたくて。

音圧や低音部の響きは、やはり打ち込みならではの強さがありますね。

Ryohu:ジョーイ・バッドアスとかケンドリック・ラマーが提示するような、それぐらいのベースじゃないと物足りないと思ったんですよね。

個人的にはチャンス・ザ・ラッパーのアプローチにも近いモノを感じました。

Ryohu:バンドだとありえない音楽構造で作曲するのは、ヒップホップのトラックメイカーができることだけど、バンドとしての素晴らしさは、やっぱりバンドにしか出せないですよね。そのふたつを組み合わせたくて。

その意味でもKANDYで求められてるものと、Aun beatzやRyohuくんのソロで求められてるものの、両方を納得させられる作品になっていると感じました。また「Blur」というタイトルだけど、リリックは情景がしっかり見えるような構成になっているのと同時に、「君」や「あなた」という二人称が多くて、それは「聴いてるあなた」といったような、具体的な相手が想定されてるのかなとも思えて。

Ryohu:自分の中で見えてる景色があって、その中に登場してる人に向けてる感じですね。「Blur」は単にぼんやりっていう意味じゃなくて、そうなるには何色かが足されて「Blur」になると思うんですよ。例えば、夜と朝、昼と夜が混じり合う微妙な時間とか。その感じが自分にとって「Blur」。だから、それぞれの楽曲にはカラーがあるけど、それが混ざり合ってこの作品ができているので、タイトルを「Blur」にしたんですよね。

今までの作品もそうですが、全体的にロマンティックだし、Ryohuくんはロマンチストだなと。

Ryohu:ロマンティックあふれ出てますか、今回も(笑)。

言わなきゃ良かった(笑)。

Ryohu:俺も含め、KANDYはジェントルマンですから。女の人に優しいのは大事じゃん、っていう。確かに、普通に考えたらクソ恥ずかしいことを書いてるとは思うんですよ。特に“All in One”とか。でも恥ずかしいけど、それを超えて格好いいことを書いてるから、言えちゃうんですよね。“Say My Name”とかも照れるようなリリックではあるけど、格好いいから言えちゃうと思うし、格好いいものを作れば、それは肯定されると思うんですよね。

ただ“Desserts”では、ややサイコパスとも言える男も形にしていて。しかもビートが変わるタイミングで、どんどん狂気じみていくのも面白い。

Ryohu:ストリーテリングとして、愛の表現をもっと狂気じみた感じにしてみたんですよね。だから俺の愛し方ではないんで、勘違いされたらやだなーとか思いながら書きました(笑)。

Ryohuくんのプロジェクトとしては、外部仕事も含めたソロ、Aun beatz、KANDYTOWN、トラックメイクが挙げられると思いますが、その違いは?

Ryohu:KANDYはいまだにみんなで集まって遊びの延長で作るって感じだし、BANKROLLの頃と変わらないですね、俺自身は。トラック提供は基本的にKANDYのメンバーに向けてなんですが、「こういうのがあってもいいんじゃない」みたいな、提供するメンバーが今まで選んできたものとはちょっと違ったり、ギリギリのラインを攻める感じですね。Aunはバンドが作ってきたサウンドに対して、どう返すかっていうチャレンジ。ソロは完全に自分に没入したオタクって感じですね。だから自分の作品が一番難しいですね。誰かと作る作品は、こうした方が面白いかもとか、こういうのが欲しいとかが浮かぶけど、自分のこととなると、どうしたらいいのかなって悩みますね。だから、いろんな動きがそれぞれ良い息抜きになってるんですよ。

外仕事だとエゴを通せない部分もあるし、ソロだけだと煮詰まるし……。

Ryohu:ソロだけだったらリリースしないかもしれないですね。ずっと自分の中で作ってて、それに飽きたらリリースしないで捨てちゃうかもしれない(笑)。だからいろ0んなアプローチがあることで、一生音楽を作り続けられると思うし、関わってくれる皆さんありがとうございますって感じですね。

[10/17追記]

ラッパー/DJでありながら、KANDYTOWNのメンバーであり、Suchmosやペトロールズへの客演参加を行い、ヒップホップとロックをクロスオーバーして活動の幅を広げているアーティスト、Ryohu(呂布)。待望の初全国流通盤EP『Blur』がリリースを迎えたばかりだが、Ryohuと親交深いアーティストの皆さんよりコメント・メッセージが到着!

HIP HOPとMUSIC、
LIFEとSTYLE、
SETAGAYAとSEKAI、
Ryohuは『接着剤』なんだよね。
軽やかさ、柔軟さが、唯一無二。
もんのすんごく、
期待しています!!!!!
――Mummy-D (Rhymester)

〈完璧じゃならない絵に〉(“Say My Name”)というフレーズがたまらなく好きだ。
言い切っているようで、言っていない部分がすごく多い。
だからこそ、漠然とした大事なことが漠然としたまま迫ってくる。
この手渡し方に、Ryohuの感性や在り方が詰まっていると思う。
そして、作品の額縁には「Blur」つまり『曖昧』という題が。
少なくとも完璧にRyohuだよ。
――小出祐介(Base Ball Bear)

気取ってなくて素直、芯があって少し無骨、世代差を感じない人懐こさ、結果としてすごく虫が好く。
出会った時から変わらないRyohuの印象そのままの音楽だね。リリースおめでとう!
雰囲気が好きなアルバム、“って事だけは確か”。
――三浦淳悟(ペトロールズ)

いつも1番暖かくて1番クール。それで、今1番カッコいい。
――オカモトショウ(OKAMOTO'S)

呂布くんの声は軽やかさと切なさと、すこしファニーさ、グッとくるものが全部入っているのだ。
なんでそんなセクシーなのさ?
――オカモトコウキ(OKAMOTO'S)

気持ちよかった、ありがとう。
――ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)

タイトなラップでキメるB-boyは無条件でカッコ良いということを再確認させられました。
――オカモトレイジ(OKAMOTO'S)

また、『Blur』の発売を記念して開催される、12/8(金)の渋谷WWWにてRyohu “Blur” Release Partyのチケット一般販売もスタート。
ゲスト・アーティストはSIMI LABに決定!
前売購入者には特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape「No Pay No Play」をプレゼントとなるので、是非お買い逃しないように。

【イベント情報】

Ryohu “Blur” Release Party

12/8 (Fri) @ Shibuya WWW
OPEN 18:30 / START 19:30
ADV ¥3,000(+1D) / DOOR ¥3,600(+1D)
※前売購入者特典として、Ryohuによる選曲音源を収録したExclusive Cassette Tape「No Pay No Play」をプレゼント

出演者:
Ryohu (Band Set)
SIMI LAB [10/17追記]

10/5(木)~ e+にて先行販売開始
https://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002240412P0050001P006001P0030001

10/14(土)〜 プレイガイド一般発売
▼チケットぴあ 【Pコード:347-789】
https://t.pia.jp/
※電話予約あり:0570-02-9999

▼ローソンチケット 【Lコード:76979】
https://l-tike.com/order/?gLcode=76979
※電話予約なし

▼WWW店頭
03-5458-7685

Riddim Chango Records - ele-king

Latest top tunes by Riddim Chango Records (1TA & HIROSHI)

CD HATA from Dachambo - ele-king

Ambient / Downtempo DJ Chart 10曲


MASTERED HISSNOISEよりアンビエントドローンの拡大解釈カセットテープ、CD HATA / Inner Science『Metempsychosis』カセットストアデイ 2017にあわせ 10/14 リリース
https://cdhata.wixsite.com/cdhata/rerease

10/14(土)
竜王 Music Park 2017
@竜王パークホテル&竜王スノーパーク

石野卓球(電気グルーヴ), CD HATA &MASARU, Hiroyuki Arakawa etc…
フェイスブックイベントページ
https://www.facebook.com/events/286121068533834/

10/15(日)
LALLAPALOOZA 2017
@BUCKLE KÔBÔ

A.mochi, CD HATA, HARUKA, MAYURI, TAKAMI etc…
フェイスブックイベントページ
https://www.facebook.com/events/258009298028889/

11/23(木 祝日)~11/25(土)
Liquid Drop Groove open air in OKINAWA
@乙羽岳森林公園キャンプ場 (沖縄)

Marcus Henriksson aka Minilogue, Son Kite, Mixmaster Morris, CD HATA etc…
フェイスブックイベントページ
https://www.facebook.com/events/445574802508769/?ti=icl

『CD HATA』
ホームページ https://cdhata.wixsite.com/cdhata
facebook https://www.facebook.com/CDHATADachambo
Twitter https://twitter.com/DJHATA_Dachambo
mixcloud https://www.mixcloud.com/CDHATA/
soundcloud https://soundcloud.com/cdhatadachambo

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727