「K A R Y Y N」と一致するもの

Anthony Naples - ele-king

 ハウス・ミュージック界の若いタレントとしては日本でも抜群の人気を誇る、現在23歳のアンソニー・ネイプルスが初来日する。7月18日(金)と19日(土)、大阪と東京でDJを披露する予定だ。
 アンソニー・ネイプルスは、2012年の暮れにNYの〈Mister Saturday Night 〉レーベルの第一弾としてリリースされた「Mad Disrespect」でデビューしている。メロディアスでムーディーなハウスだが、若さではち切れんばかりのリズムがあって、都内のレコード店ではあっという間に売り切れた1枚である。評判は瞬く間に広まって、フォー・テットや!!!といった有名どころからリミックスを依頼されたほど。2013年にUKの〈The Trilogy Tapes〉からリリースされた「El Portal 」は、ele-kingの年間チャートのハウス部門の1位に選ばれている。
 なお、今回の来日公演、新アルバムのリリースを間近に控えているNYのフォルティDLも同行する。今週末のカイル・ホールに引き続いて、実にフレッシュな、かなり良いメンツと言えるのではないでしょうか。
 以下、来日ギグまでおよそ1週間と迫ったアンソニー・ネイプルスが簡単に喋ってくれました。


こんにちわ、初来日を楽しみにしているele-kingです。

AN:ありがとう! 僕も日本に行くのを楽しみにしているよ! 

ハウス以外にも、いろいろな音楽を聴いているようですね。ブラック・ダイス、エイフェックス・ツイン、アーサー・ラッセル……アメリカで、エイフェックス・ツインを聴く15歳は珍しいんじゃないですか?

AN:そんなに珍しくもないよ。僕は、まわりの多くの人たちと同じようにラジオを聴いたり、両親の好みに影響をうけて育った。やがて、それに飽きたとしてもインターネットやまわりのクールな友だちから、そういった音楽を見つけたり、知ったりすることは簡単なことだった。僕がサウスフロリダにいた頃、一軒のレコードショップがあった。そのオーナーが、僕らとまったく同じような趣味をしていることに気づいてから、僕らに似た系統でもっと面白いものをどんどん紹介してくれるようになった。音楽に触れるのは本当に自然なことだったと思う。
 僕がエレクトロニック・ミュージックの世界に入ったのは、高校生に入学したばかりの頃だった。ギターに飽き飽きしていたんで、SP-303とか404みたいなサンプラーやシンセに触ってみることにした。めちゃくちゃな配線にしたり、曲がったキーボードとか、そんなもので友だちとたくさんジャムみたいなことをした。
 僕が2009年にNYに越してから、いわゆるクラブとかパーティに 「出かける」とか、まぁ遊び歩くだとか、するようになってからだね、本当の意味でエレクトロニック・ミュージックにインスパイアされるようになったのは。やっぱり、ただヘッドフォンで音楽を聴くだけではなく、そういう環境こそが僕に影響をおよぼしているんだと思う。

生まれは?

AN:生まれたのはフロリダ州のマイアミのはずれで、2009年にNYに越した。いまはロサンゼルスに移って1ヶ月くらいかな。

影響を受けたダンス・ミュージックのプロデューサーは?

AN:多すぎる(笑)! すべてのNYの人たち……音楽活動をはじめた頃はもちろんラリー・レヴァンからアーサー・ラッセル、ウォルター・ギボンズに影響されたし、で、それからUKのほうに興味が向くようになって、その頃はジョイ・オービソン、フローティング・ポインツ、ピアソン・サウンドなどからもインスパイアされた。探求しながら、理解を深めていったんだ。なかでも、とりわけのめり込んだのは、NYに来た頃に初めて買ったアクトレスの 『Hazyville』というアルバムだったな。自分のコンピュータといくつかのサンプルさえあれば、こんなすごいことができるってことを、僕に気づかせてくれたんだ。

先品にハウス・ミュージックのスタイルが多いのは何故でしょうか?

AN:そのときはハウス・ミュージックを作るってことがすごく新鮮に感じられたんだよ。本当の意味でハウスをジャンルとして理解した時期だったし、その頃はNYエリアのパーティに出向くたびにローカルのひとたちやNYにやってくる世界中のDJから新しいトラックを聴くことができた。それは僕にとってすごく刺激的だった。ほんとにエキサイティングなことだったんだ。
 NYを去ってロサンゼルスに住んでるいまは、そういった環境からは少し離れてしまっているように感じるね。ロスはNYやヨーロッパにくらべると、そこまでクラブ・カルチャーが発達しているわけではないからね。でも、この距離感はいま、クラブの環境のなかで聴く音楽やそういったツールとしての音楽について考える代わりに、音楽を本当に深く聴くことに集中させてくれている。それは僕がこれからやろうとしていることに確実に影響してくるよ。とにかく、クラブ・カルチャーは僕にとってはいまだに新しいものだから、どんな意味を持つかってことを言葉にするのは難しいな。

どのような経緯で〈Mister Saturday Night〉のレーベルの第一弾としてあなたの「Mad Disrespect」がリリースされる運びとなったのでしょう?

AN:彼らのパーティに行ってメーリングリストにサインアップしただけだよ。しばらくしてそのメールで彼らがはじめようとしているレーベルがデモを募集していることを知った。そしたら彼らが連絡をくれて、そこからリリースが決まったのさ。何も特別なことはないよ!

では、グラスゴーの〈Rubadub〉とは、どうして知り合ったのですか?

AN:〈Mister Saturday Night〉のひとたちと変わらない。僕は初期の頃、彼らにすごくサポートしてもらった。彼らが作品をつくろうってタイミングで声がかかって作品を提供した。僕はグラスゴーで彼らに会って仲良くなってたし、それも僕にとってはすごく自然なことだったよ。

ご自身のレーベル〈Proibito〉のコンセプト、そして、あなたのような若い世代とってヴァイナルで作品を出すことにはどんな意味があるのか知りたいと思います。

AN:僕は自分のレーベル〈Priibito〉の作品はHard Waxからデジタルでリリースしているし、たぶん他のところからもすぐ同じように配信されると思う。〈Mister Saturday Night〉の最初の2枚のシングルもデジタル配信をされる。〈Rubadub〉に関して言えば、デジタル配信はないだろうけど、でもどうせすべてがインターネット上にあるんだ。ヴァイナルは僕にとってはただの媒体だよ。僕は媒体を気にしたり、より好んだりはしていない。1日中YouTubeで音楽を聴いたりするし、それはヴァイナルでもカセットテープでもCDでもほかのものでも同じ。僕はこれに関して少しも「良い子」でいようと思わない。本当に好きでそれが手に入るなら、どんな形であれ買えばいいと思うし、もし買う余裕がないなら僕らにはYouTubeがあるじゃん(笑)。

アルバムについてはもう考えがありますか?

AN:来年中にはフルレングスのLPを2枚つくりたいと思っているけど、どうなることやら。1枚でもリリースできれば、ハッピーだな。やりとげる時間はあると思ってるけど、まずつくってみないといけない。でも結局は量よりも質にこだわるとは思うから、まぁやってみるよ。

一緒に来日するフォルティDLとはふだんから仲良しなんでしょうか?

AN:僕はイージーゴーイングな人間だから、シーンの誰とでも仲良くする。そして、たまに僕のことを嫌いなやつがインターネットに悪口を書いているのを見るとすごくヘコんだりする。USシーンがすごく健全に機能しようとしているときに、過去のNYの保護者みたいなひとたちが若い人たちがやっていることに対して大きな敵意をもつことは残念に思うよ。でもそれも全部僕の糧になると思うし、音楽をつくっていてライヴをしているすべての人たちにとってもそうだと思う。だから、それはそれ。
 フォルティDLに関して言えば、1度サンフランシスコで共演したことがあって、そのときは素晴らしかった。だから今回もそのときのようになるか、それ以上になるって確信しているよ。

LAに越してしまったという話ですが、現在のNYには、あなたのような若いプロデューサーがたくさんいるのでしょうか?

AN:ああ、そりゃあもう、ありがたいことにたくさんいるよ。そしてそれがNYだけのことじゃないと良いと思う。僕はシンプルなセットで音楽をつくっているんだ。200ドルで買った中古のPCにAlbetonのコピー、それにレコードだとかYouTubeから取ってきたサンプルだけ。誰にでもできるし、テクノロジーは誰にでも使えるようにできてる、だからみんながやるべきだ。もし誰かがこれを読んで、読むことをやめて、インターネットから数時間離れて、音楽をつくってみてもらえたらうれしいな。なにが自分につくれるかなんて誰にもわからないよ!

日本では、あなたの「Mad Disrespect」がリリースされたとき、いきなり反響がありました。今回の来日を楽しみにしているファンは多いと思います。

AN:あたりまえのことをする! いい人たちに出会って、いいレコードをかけて、新しいものを食べて、ただ本当に楽しい時間を過ごすだけのことさ。僕が知っている環境とは全然違った日本に行くことを本当に楽しみにしているし、それはいいことだよ。すばらしいに決まってるでしょう!

■ ANTHONY NAPLES、FALTY DL来日情報!

[大阪]
2014.07.18(金曜日)
@CIRCUS
Open : 22:00
Door : Y3500+1d _ Adv : Y3000+1d
Line up : FALTY DL & ANTHONY NAPLES, sou, peperkraft, YASHIRO

[東京]
2014.07.19(土曜日)
@代官山UNIT
Open : 23:00
Door : Y4000+1d _ Adv : Y3500+1d _ beatkart先行(*100枚限定) : Y3000+1d
Line up : FALTY DL & ANTHONY NAPLES, ALTZ, DJ YOGURT, NAOKI SHINOHARA, SEKITOVA, METOME, MADEGG

https://www.beatink.com/Events/FaltyDL/

The Antlers - ele-king

 ゲイの同僚からジ・アントラーズの新譜CDを貸してもらった。
 彼は別の保育施設に転職することになった。職場で一番仲が良かった人間が去るのはやはり寂しい。
 「君は非ヨーロッパ圏から来た非ホワイトな外国人だし、僕はゲイだ。あるグループの英国人父兄には絶対に受け入れられない保育士なんだよ」
 と言った彼とは、おもむろに不快な視線をこちらに向ける保護者(この層は白人だけではない)だの、「You are yellow! Your skin is so yellow!」と4歳のお嬢さんに言われても耐えなければならない純商業的保育施設従業員の辛みだの、といった非常にアンクールな、頑なにはなりたくないけどやっぱマイノリティーだといろいろあるんだよね。みたいなことをランチ休憩に愚痴り合える仲だった。
 だから、そんな同僚がいなくなるのはとてもサッドだ。そんな心情にジ・アントラーズの新譜は妙にフィットした。なんでまた50歳にもなろうというばばあがこんなおセンチなものを聴いてるんだ。という気はするが、今年の夏は気分が下向きである。

 おセンチ・ロックというのは今世紀のUKポップ&ロックの人気ジャンルだ。代表的なバンドはコールドプレイやキーン。メロディアスで感傷的というのは英国には昔からあったジャンルだが、これらのバンドには例えばザ・スミスのような暗さの突き抜けはなかった。
 が、一方でUSのジ・アントラーズの『Hospice』を聴いた時には、お。と思った。『Burst Apart』を聴いた時は、グリズリー・ベアやん。と思った。で、5枚目にあたる『Familiars』では、“Palace”という曲の物寂しいブラス音が妙に沁みて日本の小学校の下校時間を思い出し、こりゃブライトンの浜辺でブルーグレーの空を見上げながらぼんやり聴く曲だな。と思っていると、The AntlersがYoutubeで公開した同曲のイメージ写真に、数年前に燃え落ちたブライトンの埠頭娯楽施設の写真が使われていた。
 なんでまたニューヨークのバンドがブライトンなのか。
 レヴューしてくれと呼ばれたような気がした。

               ********

 SAD、PAIN、BEAUTY。といった言葉がだいたい彼らのレヴューにはよく使われている。ヴォーカルのピーター・シルバーマンの声(楽曲によっては女声にしか聞こえない)が圧倒的に劇的で、儚げに震えたり、ひゃーーーと唐突にビロードのような高音で裏返ったりするので、THEATRICALやMOODYもよく使われる形容詞だ。まあ若いうちならこういうのもいいのだろうが、婆さんの年齢になってくるとアルバムを通じてエモーショナルな世界を展開されると「うへー。」となって普通は途中で止める。だから、「お。」とは思ったもののThe Antlersをまともに聴くことはなかったのだ。
 が、今回の『Familiars』はアルバムを通して何度でも聴ける。JAZZYになったからだろう。「夕暮れブラス」みたいなホーンの音がとても新鮮で、ひたすら床を這いつくばって悲しがっている感じではなく、それに飽きて起き上がり、ベランダから夏の空を見ている感じがある。
 陰気だったり、感傷的だったり、内省的だったりすることをサッドと呼ぶなら、近年のUSはサッド・ソング流行りだ。サン・キル・ムーン、ベック、ラナ・デル・レイ。セイント・ヴィンセントのアニーが「泣きながら歌ったら1テイクで済んだ曲がある」と言っているインタヴューを読んだが、いったいみんな何がそんなに悲しいのか。
 しかしサッド・ソングというものは、泣いている自分を幽体離脱したもうひとりの自分が外側から見ていなければエレガントには聞こえない。そういう意味では、『Familiars』は珍しくエレガントなサッド・ソングズ・アルバムと言えよう。いみじくも本作で一番素晴らしい楽曲のタイトルは“ドッペルゲンガー”という。

僕が鏡の後ろに閉じ込められている時、僕の声は聞こえる?
 僕の静かなる熱狂のせいで吠えてしまう僕の分身の声が?"Doppelgänger"

 US産のジ・アントラーズは、本アルバムでザ・スミスとシガー・ロスの間に位置するエレガントなバンドに成長した。そのエレガンスとは「醒め」や「客観性」という言葉でもいい。が、それは音楽やリリックスを作ることに対するある種の「硬質さ」でもあろう。

               *******

 さて、今月はモリッシーの新作アルバムが控えている。
 いよいよサッド・ソング界のキングの登場である。客観性と主観性のあいだにある境界線を縦横無尽に行き来するあのキングの新譜を期待して、わたしは寝ることにする。

interview with Ike Yard - ele-king

ダーク・アンビエントがもっとも盛んなのは、これといった特定の場所というよりも、おそらく僕たちの脳内だ。「ダークネスに対する大衆の欲望を甘く見るな」という台詞は、2012年のUKで話題になった。

 アイク・ヤードは、今日のゴシック/インダストリアル・リヴァイヴァルにおいて、人気レーベルの〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉あたりを中心に再評価されているベテラン、NYを拠点とするステュワート・アーガブライトのプロジェクトで、彼は他にもヒップホップ・プロジェクトのデスコメット・クルー、ダーク・アンビエント/インダストリアルのブラック・レイン、退廃的なシンセポップのドミナトリックス……などでの活動でも知られている。ちなみにデスコメット・クルーにはアフロ・フューチャリズムの先駆者、故ラメルジーも関わっていた。

 アイク・ヤードの復活はタイミングも良かった。ブリアルとコード9という、コンセプト的にも音響的にも今日のゴシック/インダストリアル・リヴァイヴァルないしはウィッチ・ハウスにもインスピレーションを与えたUKダブステップからの暗黒郷の使者が、『ピッチフォーク』がべた褒めしたお陰だろうか、ジャンルを越えた幅広いシーンで注目を集めた時期と重なった。世代的にも若い頃は(日本でいうサンリオ文庫世代)、J.G.バラードやフィリップ・K・ディック、ウィリアム・S・バロウズらの小説から影響を受けているアイク・ヤードにとって、時代は巡ってきたのである。


Ike Yard
Remixed [ボーナストラック4曲(DLコード)付き]

melting bot / Desire Records

IndustrialMinimalTechnoNoiseExperimental

Amazon iTunes

 先日リリースされた『Remixed』は、この1〜2年で、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から12インチとして発表されたリミックス・ヴァージョンを中心に収録したもので、リミキサー陣にはいま旬な人たちばかりがいる──テクノの側からも大々的に再評価されているレジス(Regis)、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉からはトロピック・オブ・キャンサー、〈トライアングル〉とヤング・エコーを往復するヴェッセル……、インダストリアル・ミニマルのパウェル、〈ヘッスル・オーディオ〉のバンドシェル、フレンチ・ダーク・エレクトロのアルノー・レボティーニ(ブラック・ストロボ)も参加。さらに日本盤では、コールド・ネーム、ジェシー・ルインズ、hanaliなど、日本人プロデューサーのリミックスがダウンロードできるカードが付いている。
 
 7月18日から3日間にわたって新潟県マウンテンパーク津南にて繰り広げられる野外フェスティヴァル「rural 2014」にて来日ライヴを披露するアイク・ヤードが話してくれた。

初めてレイム(Raime)を聴いて好きになったときに〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉に音源を送った。すぐに仲良くなって2010年にロンドンで会ったよ。実はまだいろいろリリースのプランがあって、いま進んでいるところだ。

80年代初頭のポストパンク時代に活動をしていたアイク・ヤードが、2010年『Nord』で復活した理由を教えてください。

ステュワート・アーガブライト:2010年の『Nord』は、2006年の再発『コレクション!1980-82 』からの自然な流れで、またやれるんじゃないかと思って再結成した。アイク・ヤードは2003年と2004年にあったデスコメット・クルーの再発と再結成に続いたカタチだ。
 両方に言えることだけど、再結成してどうなるかはまったくわからなかったし、再結成すること自体がまったく予想していなかった。幸運にもまた連絡を取り合ってこうやって作品を作れているし、やるたびにどんどん良くなっているよ。

『Nord』が出てからというもの、アイク・ヤード的なものへの共感はますます顕在化しています。昨今では、ディストピアをコンセプトにするエレクトロニック・ミュージックはさらに広がって、アイク・ヤードが本格的に再評価されました。

SA:そうだね。アイク・ヤードのサウンドは世代をまたいで広がり続けている。いま聴いてもユニークだし、グループとしての音の相互作用、サンプルなしの完全なライヴもできる。1982年には4つのシンセサイザーからひとつに絞った。再結成したときはコンピュータ、デジタルとアナログ機材を組み合わせた。『Nord』は再結成後の最初の1年をかけて作ったんだけど、ミックスでは日本での旅やヨーロッパで受けたインスピレーションが反映されている。

ブラック・レイン名義の作品も2年ほど前に〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉から再発されました。

SA:初めてレイム(Raime)を聴いて好きになったときに〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉に音源を送った。すぐに仲良くなって2010年にロンドンで会ったよ。実はまだいろいろリリースのプランがあって、いま進んでいるところだ。

今回の『Remixed』は、〈Desire Records〉と〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉との共同リリースになっていますが、このアイデアも〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉からだったのでしょうか?

SA:レジス(Regis)のエディットが入っている最初のEP「Regis / Monoton Versions 」は〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉との共同リリースで、その後は〈Desire Records〉からだ。
 レジスとの作業は完璧でお互い上手く意見を出し合えた。スタジオを一晩借りて、そこにカール(・レジス)が来て、ずっと遊んでいるような感じだった。3枚のEPにあるリミックス・ヴァージョンを1枚にするのは、とても意味があったと思う。他のリミックスも良かった。新しい発見がたくさんあった。レジスが"Loss"をリマスターしたときは、新しいリミックスかと思うくらい、まったく違った響きがあったよ。
 2012年のブラック・レインでの初めてのヨーロッパ・ツアーは、スイスのルツェルンでレイム、ベルリンでダルハウス、ロンドンでの〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉のショーケースはレイム、レジス、プルーリエントのドム、ラッセル・ハスウェル、トーマス・コナー、ブラック・レインと勢揃いの最高のナイトだった。

ちなみに、2006年には、あなたは〈ソウル・ジャズ〉の『New York Noise Vol.3』の編集を担当していますよね。

SA:〈ソウル・ジャズ〉は素晴らしいレーベルだ。ニューヨーカーとしてあの仕事はとても意味があった。まずは欲しいトラックのリストを上げて、何曲かは難しかったから他を探したり、もっと面白くなうように工夫した。ボリス・ポリスバンドを探していたら、ブラック・レインのオリジナル・メンバーがいたホールの向かいに住んでいたことがわかったが、そのときはすでに亡くなっていた。あのコンピの選曲は、当時の幅広いニューヨーク・サウンドをリスナーに提示している。

UKのダブステップのDJ/プロデューサーのコード9は、かつて、「アイク・ヤードこそ最初のダブステップ・バンドだ」と言ってましたが、ご存じでしたか?

SA:もちろん。コード9はニューヨークの東南にある小さなクラブに彼のショーを見に行ったときにコンタクトをとった。そのときにいろいろやりとりしたんだが、彼の発言は、どこかで「アイク・ヤードは20年前にダブステップをやっていた」から「アイク・ヤードは最初のダブステップ・バンド」に変わっていた。『Öst』のEPの引用はそうなっている。自分としては、当時の4人のグループがダブステップ的なライヴをできたんじゃないかってことで彼の言葉を解釈してる。

コード9やブリアルを聴いた感想を教えてください。

SA:ふたつとも好きだ。とくにコード9 & スペース・エイプの最初のリリースが気に入っている。最初のブリアルに関しては、聴き逃すは難しいんじゃないかな。ものすごくバズっていたからね。

[[SplitPage]]

レジスはタフだ。彼はまた上昇している。ニーチェが呼ぶ「超人」のように働いている。自分は、テクノと密接な関係にある。やっている音楽はミニマル・ミュージックでもある。

ダブステップ以降のアンダーグラウンドの動きと、あなたはどのようにして接触を持ったのですか?

SA:アイク・ヤードのリミックスが出たときに、シーンからフレッシュなサウンドとして受け取ってもらえたことが大きい。あと、ここ数年のインダストリアル・テクノ・リヴァイヴァルと偶然にも繋がった。僕たちのほかとは違った音、リズム、ビートが面白かったんだろう。

ヴェッセルも作品を出している〈トライアングル〉、ないしは〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉など、新世代のどんなところにあなたは共感を覚えますか?

SA:新しいリリースはチェックしている。いま誰が面白いのかもね。彼らは知っているし、彼らのやっていることをリスペクトしてる。エヴィアン・クライストを出している〈トライアングル〉のロビンから連絡が来て、レッドブル・アカデミーのスタジオでエヴィアンと1日中セッションしたこともある。
 〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉はブラック・レインの『Dark Pool』のリリース後にとても仲良くなった。パウェルはブラック・レインの最初のライヴで一緒になって友だちになった。トーマス・コナーとファクションもいた。〈RVNG Intl.〉のマットのリリース『FRKWYS』の第5弾にもコラボレーションで参加したよ。

『Remixed』のリミキサーの選定はあなたがやったのですか? 

SA:だいたいの部分は僕がやったね。リミックスのアイデアは〈Desire Records〉と企画して、好きなアーティストを並べて決めた。

リミキサーのメンツは、みな顔見知りなのですか?

SA:ほとんど会ったことがある。ない人はEメールでやりとりしている。日本のリミキサー陣はまだ話したことはない。あとイントラ・ムロスとレボティ二。ブラック・ストロボはとても好きだ。2003年のDJヘルの再発で、ドミナトリックス(Dominatrix)の「The Dominatrix Sleeps Tonight」では本当に良いリミックスをしてくれた。

レジスやパウェル、アルノー・レボティーニ(ブラック・ストロボ)のような……、クラブ・カルチャーから来ている音楽のどんなところが好きですか?

SA:時間があるときはできるだけ多くのアーティストを聴くようにしている。クラブの世界は、いま起きている新しいことがアーティストやDJのあいだで回転しているんだ。実際、同じように聴こえるものばかりだし、面白いと思えるモノはたいしてないんだが……。そう考えると、次々と押し寄せる流行の波のなかで生き抜いているレジスはタフだ。彼はまた上昇している。ニーチェが呼ぶ「超人」のように働いている。
 僕は、テクノと密接な関係にある。やっている音楽はミニマル・ミュージックでもある。他のアーティストを見つけるのも、コラボレーションするのも楽しい。新曲でヴォーカルを何曲か録って、アイク・ヤードのマイケルと僕とでザ・セイタン・クリエーチャーと“Sparkle"を共作した。そのときのサミュエル・ケリッジのリミックスはキラーだよ。〈Styles Upon Styles〉からリリースされている。音楽もビートもすごいと思ったから、JBLAのEPもリリースした。自分まわりの友だちと2012年にブリュッセルでジャムして作ったやつで(〈Desire Records〉から現在リリース)、〈L.I.E.S.〉のボス、ロン・モアリとスヴェンガリーゴーストとベーカーのリミックスもある! 最後に収録されているオルファン・スウォーズとのコラボでは、彼らが曲を作って僕が詞を書いた。クラブ・ミュージックと完全に呼べるものは、来年には発表できると思うよ。

とくに印象に残っているギグについて教えてください。

SA:6月にグローバル・ビーツ・フェスティヴァルで見たDrakha Brakha (ウクライナ語で「押す引く」)は良すぎるくらい良かった。キエフのアーティストで、エスノなヴォーカルやヴァイブレーション、オーガニックなサウンド、チェロ、パーカッションが入っている。彼らは自分たちの音楽を「エスノ・カオス」と呼んでいた。
 毎年夏に都市型のフリー・フェスティヴァルがあるが、自分にとってはとても良い経験だ。いつでも発見がある。レジス、ファクトリー・フロア、ヴェッセル、スヴェンガリーゴースト、シャドーラスト、ピート・スワンソン、ヴェロニカ・ヴァシカ……なんかとのクラブ・ナイトを僕もやりたい。

ダーク・アンビエント、インダストリアル・サウンドがもっとも盛り上がっている都市はどこでしょう?

SA:ダーク・アンビエントは、これまでにも多くの秀作がある。アイク・ヤードの4人目のメンバーでもあるフレッド(アイク・ヤードのリミックスEP第2弾でもレコンビナントとして参加)の曲は素晴らしく、『Strom Of Drone』というコンピレーションに収録されいたと思う。
 ドリフトしているドローンが好きだ。たとえば、アトム・ハートの、『Cool Memories』に収録されている曲、トーマス・コナーの『Gobi』と『Nunatak』、プルーリエント、シェイプド・ノイズ、クセナキス、大田高充の作品には深い味わいがある。
 ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』に触発されたブラック・レインの『Night City Tokyo』(1994)は、自分たちがイメージする浮遊した世界観をより正確に鮮明に描いていると思う。つまり、ダーク・アンビエントがもっとも盛んなのは、これといった特定の場所というよりも、おそらく僕たちの脳内だ。「ダークネスに対する大衆の欲望を甘く見るな」という台詞は、2012年のUKで話題になった。

東欧には行かれましたか? 

SA:おそらく東ヨーロッパは次のアルバムのタイミングで回るだろう。母親がウクライナのカルパティア人なんだ。コサックがあったところだ。で、僕の父親はドイツ人。母親方が石炭採鉱のファミリーで、ウェスト・ヴァージニアにいて、沿岸部に移り住んでいった。ウクライナ、キエフ、プラハ、ブタペスト、イスタンブールは是非行ってみたい。

日本流通盤には、コールド・ネーム、ジェシー・ルインズ、hanaliなど、日本人プロデューサーのリミックスがダウンロードできます。とくにあなたが気に入ったのは誰のリミックスですか?

SA:コールド・ネームしかまだ聴けてないけど、とても気にっている。

こう何10年もあなたがディストピア・コンセプトにこだわっている理由はなんでしょう?

SA:「ダーク」と考えらている事象を掘り下げるなら、あの頃はストリートが「ダーク」だったかもしれない。1978年のニューヨークは人種問題で荒れていた。その影響もあってダークだったと言えるけど、実際はそんなにダークではなかった。
 1981年にアイク・ヤードのメンバーに「もし電源が落ちて真っ暗になっても、僕たちはそこでも演奏し続ける方法を見つけよう」と伝えた。そのとき得た回答は、自分がロマンティックになることだった。
 自分たちには陰陽がある。暗闇の光を常に持っている。もっともダークだったストリートにおけるそのセンスは、やがて世渡り上手でいるための有効な手段となった。僕は、近未来のディストピアのなかで前向きに生きることを夢見ていなたわけではなかった。シド・ミードは、未来とは、1984年までの『時計仕掛けのオレンジ』、『ブレードランナー』、『エイリアン』、『ターミネーター』と同じように、世界をエンタテイメント化していると認識していた。
 ジョージ・ブッシュの政権に突入したとき、どのように彼がイラク戦争をはじめるか、その口実にアメリカの関心は高まった。彼の親父はサダム・フセインからの脅しを受けていた。が、当時のディストピアは、時代に反応したものではなかった。ヒストリー・チャンネルは『ザ・ダーク・エイジ』や『バーバリアンズ』といったシリーズをはじめたが、母親のウクライナと父親のドイツの血が入っている僕にとって、自分たちがバーバリアンであると信じていた。バーバリアンから来ているオリジナルのゴスに関して言えば、僕にドイツ人の血が流れているか定かではないけど、ドイツにいるときその何かを感じたことはある。自然環境、場所、そしてミステリーの狭間でね。
 2005年から2009年にかけてのディストピアについても言おう。ブラック・レインのベーシストのボーンズと再結成前のスワンズのノーマン・ウェストバーグは、ペイガニズム、アミニズム、ブーディカといったイングランド教、ドルイド教、その他クリスチャンにさせようとするすべての勢力に反した歌詞を根幹とした。新しい「ローマ」がどこで、それが誰であるかを見つけなければならない。そしてそれがいつ崩壊するのかも。

[[SplitPage]]

1981年にアイク・ヤードのメンバーに「もしも電源が落ちて真っ暗になっても、僕たちはそこでも演奏し続ける方法を見つけよう」と伝えた。そのとき得た回答は、自分がロマンティックになることだった。

80年代初頭、あなたはニューヨークとベルリンを往復しましたが、あれから30年後の現在、ニューヨークとベルリンはどのように変わったのでしょうか?

SA:83年の春にベルリンに来たとき、デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノによる『ロウ』や『ヒーローズ』の匂いが漂っていた。その2枚は自分にとってとてつもない大きな作品だったから、ワクワクしていたものさ。
 アイク・ヤードのその当時の友だちはマラリア!で、彼女たちは78年に自分が組んだザ・フュータンツのメンバー、マーティン・フィッシャーの友だちでもあった。マラリア!とは、リエゾン・ダンジェルーズ (ベアテ・バルテルはマラリア!の古き友人)と一緒に79年にニューヨークに来たときに出会ったんだ。
 クロイツベルクではリエゾン・ダンジェルーズのクリスロ・ハースのスタジオで何週間か泊まったこともあったよ。まだ彼が使っていたオーバーハイムのシンセサイザーは自分のラックに残っている。
 当時のベルリンは、ブリクサとアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンが全盛期でね。初めて行ったときは幸運にも友だちがいろいろ案内してくれた。マラリア!のスーザン・クーンケがドレスデン・ストリートにあるスタジオで泊まらせてくれたり、ある日みんなで泳ぎに出かけようてなったときにイギー・ポップの彼女、エスターがすぐ上に住んでいることがわかったり……。78年から89年のナイト・クラビングは日記として出したいくらい良いストーリーがたくさんある。 そのときの古き良き西ベルリンは好きだった。いまのベルリンも好きだけどね。 83年以来、何回かニューヨークとベルリンを行き来してる。アイク・ヤードは8月25日にベルリンのコントートでライヴの予定があるよ。
 ニューヨークももちろん変わった。人生において80年代初期の「超」と言える文化的な爆発の一端は、いまでも人種問題に大きな跡を残してる。いまでも面白いやつらが来たり出たりしてるし、これまでもそうだった。女性はとくにすごい……まあ、これもいつだってそうか。音楽もどんどん目まぐるしく展開されて前に進む。
 〈L.I.E.S.〉をやっているロン・モアリは、近所のレコード屋によくいた。リチャード・ヘルとは向かいの14番地の道ばたで偶然会ったりする。
 しかし、ときが経つと、近所に誰がいるとか、状況がわからなくなってくるものだ。友だちも引っ越したり、家族を持ったりする。僕はイースト・ヴィレッジの北部にあるナイスなアパートに住んでいる。隔離されていて、とても静かだから仕事がしやすい。2012年のツアーではヨーロッパの20都市くらい回って、そのときはいろんな場所に住んだり、仕事もしてるが、ニューヨークがずっと僕の拠点だ。

最近のあなたにインスピレーションを与えた小説、映画などがあったら教えてください。

SA:以前も話したけど、僕のルーツは、J.G.バラード、P.K.ディック、ウィリアム・ギブソンだ。ワシントンDC郊外の高校に在籍していた多感な少年時代には、ウィリアム・バロウズの影響も大きかった。あとスタンリー・キューブリックだな。ドミナトリックスをやっていた頃の話だけど、1984年にワーナーにで会ったルビー・メリヤに「ソルジャー役で映画に出てみないか」と誘われたことがあった。フューチャリスティックな映画だったら良かったが、現代の戦争映画で自分が役を演じているという姿が想像つかなかった。が、しかし、その後、彼女は『フルメタル・ジャケット』のキャスティングをしていたってことがわかった(笑)。
 日本の映画では怪談モノが好きだし、黒澤明、今村昌平、若松孝二、鉄男、石井岳龍、森本晃司、大友克洋、アキラ、ネオ・トーキョー、川尻善昭『走る男』……なんかも好きだ。いまはK.W.ジーターとパオロ・バチガルピが気に入っている。
 ブラック・レインのアルバムでは、ふたつのサイエンス・フィクションが元になっていて、K.W.ジーター(P.K.ディックの弟子で、スター・トレックも含む多くの続編小説を生んだ作家)の『ブレード・ランナー2 :エッジ・オブ・ヒューマン』(1996)の小説。もうひとつはパオロ・バチガルピの『ザ・ウィンド・アップ・ガール』(2010)からのエミコの世界に出て来る新人類。
 いまちょうど著者のエヴァン・カルダー・ウィリアムスと、「今」を多次元のリアリティと様々な渦巻く陰謀を論じる新しい本と音楽のプロジェクトを書いている。
 もうひとつの本も進行中で、2000年頃から10年以上かけてロンドンのカルチャー・サイト、ディセンサスを取り入れてる。このスタイルの情報に基づいた書き方は、イニス・モード(意味を探さしたり、断定しないで大まかにスキャニングする)とジョン・ブラナー(『Stand On Zanzibar』、『Shockwave Rider』、『The Sheep Look Up』)に呼ばれている。ブラナーの『Stand On...』は、とくにウィリアム・ギブソンに影響を与えているようにも見えるね。

アイク・ヤードないしはあなた自身の今後の活動について話してください。

SA:早くアイク・ヤードの新しいEPを終わらせたい。新しい4曲はいまの自分たちを表している。そしてアルバムを終わらせること。『Nord』以降はメンバーが離ればなれで、みんな忙しいからなかなか進まなかった。
 次のアルバムは『Rejoy』と呼んでいる。日本の広告、日本語、英語を混ぜ合わせた言語で、アイク・ヤードにとっての新境地だ。ある楽曲では過去に作った歌詞も使われている。ケニーや僕のヴォーカルだけではなく、いろんなヴォーカルとも作業してる。アイク・ヤードのモードを変えてくれるかもしれない。
 また、新しいアルバムでは、ふたりの女性ヴォーカルがいる。日本のライヴの後、3人目ともレコーディングをする。そのなかのひとりは、エリカ・ベレという92年のブードゥー・プロジェクトで一緒になった人だ(日本ではヴィデオ・ドラッグ・シリーズの一部『ヴィデオ・ブードゥー』として知られている)。エリカは、昔はマドンナとも共演しているし、元々はダンサーだった。最初のリハーサルはマイケル・ギラ (スワンズ)と一緒でビックリしたね。
 新しいアルバムができた後は(EPは上手くいけば今年の終わりに〈Desire Records〉から、アルバムは来年以降)、「Night After Night」の再発にリミックスを付けて出そうかと思っている。ライヴ・アルバムもやりたい。
 あとは初期のブラック・レイン、ドミナトリックス、デスコメット・クルーのリリースも考えたい。サウンドトラックのコンピレーションも出るかもしれない。新しいテクノロジーを使いながら、新しいバンドも次のイヴェント、ホリゾンでやろうかとも思ってる。いまは何よりも日本でのライヴが楽しみだ。


※野外フェスティヴァル「rural 2014」にてアイク・ヤード、待望の初来日ライヴ! (レジスも同時出演!)

■rural 2014

7月19日(土)午前10時開場/正午開演
7月21日(月・祝日)正午終演/午後3時閉場 [2泊3日]
※7月18日(金)午後9時開場/午後10時開演 から前夜祭開催(入場料 2,000円 別途必要)

【会場】
マウンテンパーク津南(住所:新潟県津南町上郷上田甲1745-1)
https://www.manpaku.com/page_tour/index.html

【料金】
前売 3日通し券 12,000円
*販売期間:2014年5月16日(金)〜7月18日(金)
*オンライン販売:clubberia / Resident Advisor / disk union 及び rural website ( https://www.rural-jp.com/tickets/
*店頭販売:disk union(渋谷/新宿/下北沢/町田/吉祥寺/柏/千葉)/ テクニーク
*規定枚数に達しましたら当日券(15,000円)の販売はございません。

駐車料金(1台)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。

テント料金(1張)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。タープにもテント代金が必要になります。

前夜祭入場料(1人)2,000円
*当日エントランスでお支払いただきます。前夜祭だけのご参加はできません。



【出演】
〈OPEN AIR STAGE〉
Abdulla Rashim(Prologue/Northern Electronics/ARR) [LIVE]
AOKI takamasa(Raster-Noton/op.disc) [LIVE]
Benjamin Fehr(catenaccio records) [DJ]
Black Rain(ブラッケスト・エヴァー・ブラック) [LIVE]
Claudio PRC(Prologue) [DJ]
DJ NOBU(Future Terror/Bitta) [DJ]
DJ Skirt(Horizontal Ground/Semantica) [DJ]
Gonno(WC/Merkur/International Feel) [DJ]
Hubble(Sleep is commercial/Archipel) [LIVE]
Ike Yard(Desire) [LIVE]
Plaster(Stroboscopic Artefacts/Touchin'Bass/Kvitnu) [LIVE&DJ]
Positive Centre (Our Circula Sound) [LIVE]
REGIS(Downwards/Jealous God) [LIVE]
Samuel Kerridge(Downwards/Horizontal Ground) [LIVE]
Shawn O'Sullivan(Avian/L.I.E.S/The Corner) [DJ]

〈INDOOR STAGE〉
Abdulla Rashim(Prologue/Northern Electronics/ARR) [DJ]
AIDA(Copernicus/Factory) [DJ]
Ametsub [DJ]
asyl cahier(LSI Dream/FOULE) [DJ]
BOB ROGUE(Wiggle Room/Real Grooves) [LIVE]
BRUNA(VETA/A1S) [DJ]
Chris SSG(mnml ssg) [DJ]
circus(FANG/torus) [DJ]
David Dicembre(RA Japan) [DJ]
DJ YAZI(Black Terror/Twin Peaks) [DJ]
ENA(7even/Samurai Horo) [DJ]
GATE(from Nagoya) [LIVE]
Haruka(Future Terror/Twin Peaks) [DJ]
Kakiuchi(invisible/tanze) [DJ]
KOBA(form.) [DJ]
KO UMEHARA(-kikyu-) [DJ]
Matsusaka Daisuke(off-Tone) [DJ]
Naoki(addictedloop/from Niigata) [DJ]
NEHAN(FANG) [DJ]
'NOV' [DJ]
OCCA(SYNC/from Sapporo) [DJ]
OZMZO aka Sammy [DJ]
Qmico(olso/FOULE) [DJ]
raudica [LIVE]
sali (Nocturne/FOULE) [DJ]
SECO aka hiro3254(addictedloop) [DJ]
shimano(manosu) [DJ]
TAKAHASHI(VETA) [DJ]
Tasoko(from Okinawa) [DJ]
Tatsuoki(Broad/FBWC) [DJ]
TEANT(m.o.p.h delight/illU PHOTO) [DJ]
Wata Igarashi(DRONE) [Live&DJ Hybrid set]

< PRE PARTY >
Hubble (Sleep is commercial/Archipel) [DJ]
Benjamin Fehr (catenaccio records) [DJ]
kohei (tresur) [DJ]
KO-JAX [DJ]
NAO (addictedloop) [DJ]
YOSHIKI (op.disc/HiBRiDa) [DJ]

〈ruralとは…?〉
2009年にはじまった「rural」は、アーティストを選び抜く審美眼と自由な雰囲気作りによって、コアな音楽好きの間で徐々に認知度を上げ、2011年&2012年には「クラベリア」にて2年連続でフェスTOP20にランクイン。これまでにBasic Channel / Rhythm & Sound の Mark Ernestusをはじめ、DJ Pete aka Substance、Cio D'Or、Hubble、Milton Bradley、Brando Lupi、NESS、RØDHÅD、Claudio PRC、Cezar、Dino Sabatini、Sleeparchive、TR-101、Vladislav Delayなどテクノ、ミニマル、ダブ界のアンダーグラウンドなアーティストを来日させ、毎年来場者から賞賛を集めている野外パーティです。小規模・少人数でイベントを開催させることで、そのアンダーグラウンド・ポリシーを守り続けています。
https://www.rural-jp.com

ポスト・ドリーム・ポップの時代 - ele-king

「LAビート・シーンの鬼っ子」──フライング・ロータスに見初められ、年若くして〈ロウ・エンド・セオリー〉のレギュラー・パフォーマーとなり、間髪を入れず名門〈アンチコン〉からデビュー・アルバム『セルリアン』を発表したビート・メイカー、バス。アンファン・テリブルを地で行く彼はしかし、デビュー作から5年ほどの時間を経て、そのほとばしるエネルギーとエモーションのままに当初のアーティスト・モデルを大きく更新した。いまのバスは、ビートメイカーと呼ぶにはあまりに逸脱的な要素をあふれさせた存在だ。そしてセカンド・アルバム『オブシディアン』(2013年)制作期間中に重く患った経験は、バスの音をセルリアンから漆黒へと変え、わがままに愛くるしく錯綜しながら天を駆け回っていたビートメイキングを地の底へと叩き落とした。
しかしプロデューサーとしての充実はとどまることがない。落ち着くことなくより多くを求め、より切実に歌われる楽曲の数々に、バスのセカンド・ステージ──黒の時代のはじまりを垣間見たのが『オブシディアン』。そしてこのたびリリースされる『オーシャン・デス』は、その続編にして補遺、完結編ともなるであろうEPだ。本作発売に際して、ここまでのバスの歩みをディスク・レヴューで振り返ってみよう。

Cerulean
Anticon / Tugboat (2010)

Amazon Tower HMV iTunes

野田努

 バス、つまり「風呂」ことウィル・ウィーセンフェルドは、このアルバムのリリース当時、初来日を果たしてDOMMUNEにも出演した。ピザかなにかのコメディ映画の番組が終わったあとの30分のライヴで、かなりバタバタのセット転換のあとだったが、彼は動揺することなく、サンプラーの前に立つと自分の世界に入り込んだ。そして、音にあわせて、操作のひとつひとつに激しく身体を上下させた。それはじつにエモいライヴ・パフォーマンスで、この男は風呂場の鏡の前でライヴの練習をしていたに違いないと思うほど、動きがいちいち決まっていた。目も耳も惹きつけられ、わずか数分で、会場は彼のものとなった。
 当時、バスの音は、フライング・ロータスとトロ・イ・モワとの溝を埋めるものだと評されていたが、いまあらためて聴くとそのどちらにも近くないことがわかる。手法的には英国のゴールド・パンダに似ているが、バスの音楽はメロディアスで、キャッチーで、歌があり、つまりポップスとして成立しているのだ。

Pop Music / False B-Sides
Tugboat (2011)

Amazon Tower HMV iTunes

橋元優歩

 2010年のデビュー作『セルリアン』リリース後の音源を中心としたコンピレーション。2011年をツアーにあてて活動していたウィルが、ライヴへ足を運んでくれたファンのためのエクスクルーシヴな音源集として構想し、そもそもは配信でのみリリースされていた作品である。
 その名のとおりBサイドらしいラフな描線の上には、怜悧なセルリアンではなく、暖色系の何色かが柔らかく浮かび上がっている。思春期らしい攻撃性を持ったあの天衣無縫のビートメイクは、ここでは気まぐれに、愛らしく、遊びつかれて眠るように、カジュアルな隙を生み出している。かつてとは体制が異なっているものの、〈アンチコン〉が狭義のヒップホップではなく、エモやうたものとの縁を深く持った、じつにUSインディ的な良質レーベルだということを思い出させる。
 構築性における隙とともに、アコースティックな音づかいやラフなプロダクションもバスならではのビート・コンプレックスに空間的な広がりを与えていると言えるだろう。「フォールス」のニュアンスがしかとはつかめないが、それはBサイドの逆説として結像するものかもしれない。「B」という名の本物──ウィル自身も愛さずにはいられない、バスの偽りなきもう片面に光を当ててみせるコンピレーションである。

Obsidian
Anticon / Tugboat (2013)

Amazon Tower HMV iTunes

竹内正太郎

 暗い日曜日に、礼拝堂でウィッチハウスを聴きながらルイ=フェルディナン・セリーヌを読むようなもの、とでも言えばいいのだろうか。暗いといえば暗い。が、本人はそれを望んでさえいるのだろう。『夜の果てへの旅』よろしく、「生命の実感を味わうための身を切るような悲しみ」を探し求めるセカイの遭難者、というわけだ。そう、前作『セルリアン』は、LAビート・シーンとの照応を見せつけた広義のチルウェイヴと呼ぶべき何かだったが、この『オブシディアン』からはヒップホップ臭さやチルウェイヴ的なある種の軽さは後退し、あのホーリーなコーラスはストリングスやピアノなどのエレガントな調べの中で生まれ変わっている。ザ・ポスタル・サーヴィスのロングセラー、『ギヴ・アップ』にウィッチハウスのシャワーを浴びせてインダストリアルな加工を施したような何か、と言ってもいいかもしれない。LAビート・シーンの先達がこの期待株に望んだ方向性ではなかったかもしれないが、“アイアンワークス”や“インコンパーチブル”といった曲に耳を傾ければ、メインのビートの他に微細な凝ったビート(本人いわく「石を投げたり、それが欠けたりする音」)が脈打っているのがわかるだろう。グリッチも随所で利いている。他方、“マイアズマ・スカイ”はいつかのホット・チップを思わせるダンス・ナンバー、“ノー・アイズ”はパッション・ピットを思わせるシンセ・ポップに仕上がっており、すでにローカルなシーン語りの一部にしてしまっては窮屈な領域に向かっているのでは。

Pixies - Indie Cindy

Baths - Ocean Death EP
Anticon / Tugboat (2014)

木津 毅

セカンド・フル『オブシディアン』収録の“アース・デス”に対応しているであろうタイトルを持った5曲入りEP。「きみの身体を僕の墓場に埋めて(“オーシャン・デス”)」……アルバムから変わらず、死のイメージが抜き差しならないリレーションシップへの欲求と重なっている。 …つづきを読む


OG from Militant B - ele-king

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。レゲエのバイブスを放つボムを連チャンラクラク投下。Militant Bの他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしてもその名を聞くことができる。

今回のランキングは、ジャマイカンが送るこれもレゲエなの??曲特集です。年代問わず彼等のノリでやっちまおうぜ感とか大好きです。しかもレベルが高い!少しでも気になるものがあったらYoutubeとかCDとかレコードとか何でもいいので聴いてみてください。気づけばあなたもレゲエの虜!踊らずにはいられない!

7/1(火)吉祥寺cheeky
7/9(水)新宿open
7/20(日)中野heavysick
7/26(土)那覇loveball
7/31(木)新宿
8/1(金)熊本boot
8/2(土)福岡dark room
8/3(日)大分
8/5(火)吉祥寺cheeky
8/30(金)中野heavysick

飛び出せJAMAICAN! 2014.6.30


1
Shaggy - Bad Man Don't Cry - Big Yard
大人の男になりたい意を込めて。みんな大好きDelfonics/La La Means~使いの1曲。現場でもよくかけるし、そのままソウルにいったりします

2
Demarco - About My Money - Bassrunner
イントロからぶっとばされるデマルコによるハスラー賛歌。サウンドは攻めまくりハイパーな感じで、Dub Stepとか好きな人にも聴いてもらいたい。カラーヴァイナル
だけど7インチなのでよし

3
Beres Hammond - If There Is a Song - City Beat
フェイバリットシンガーの1人、ベレスハモンド。レゲエの中にソウルスピリット!この曲は朝方のクラブでボム!はじける爽快さ!裏面のLove Delightも最高!

4
Cedric 'Im' Brooks - Silent Force - Water Lily
今回唯一アルバムからのオススメ曲。まずタイトルがカッコいい!イントロのベースライン、オリエンタルなムードから一転!かけると反応が多い曲。有名曲とか再発盤とか関係なく良い曲はイイ!

5
Tessanne Chynn - Anything's Possible - Chimney
Rising Sun riddimからテッサンチンのブランニュー。このリディムの中でダントツに良い歌声を聴かせてくれたレディ。人生イロイロ、恐れず進め!元気が出る1曲です

6
Stephen Marley feat.Jr Gong&Buju - The Trafic Jam - Tuff Gong
ビートボックスにアンサーリディム、そこに3人のDeejay!そりゃもうWicked!!権力に屈するな!Doug E Fresh とViciousのfreaksとかけたりします

7
Jackie Mittoo - Hot Tomato - Studio One
ミットゥー先生によるファンクナンバー。こういうのをサラッとかけてると大人の印象。自分のは再発盤なんだけど、赤緑のスタワンのレーベルがツボです

8
Marcia Griffiths - Electric Boogie - Mango
Marcia89年作。この曲は、「とりあえずよく分からないけどノってこうぜっ!」って時に聴くと楽しいです。Bunny Wailerも同じ曲歌ってます

9
Shaggy - Hope - Big Yard
外で聴いてアガりたい曲。アルバムHot Shotから12インチカット。このアルバムは色んなタイプのレゲエが入っててこちらも一聴の価値あり。シャギー、ランキング2回登場はダテじゃない!

10
Gregory Isaacs - Too Good To Be True - Music Works
グレゴリーが歌うMusic Works産R&Bです。こういう感じをクラブで聴けるとニンマリ。裏面にはサックスマンDean Fraserのバージョンが入っててそっちも良いです

パスピエ - ele-king

 パスピエといえば、そのニューウェイヴ/テクノポップ性が特徴的だ。実際、リーダーの成田ハネダ自身、ジューシィ・フルーツやビブラトーンズなどの名前を出して語っている。なるほど、ファースト・フル・アルバム『演出家出演』収録の“フィーバー”は、背後のキーボードがニューウェイヴ・ポップ的で、たしかにジューシィ・フルーツやノー・コメンツ“東京ガール”なんかを思わせる。あるいは、『わたし開花したわ』あたりのシンセサイザーやヴォコーダーは、YMO周辺か。とくに“電波ジャック”“あきの日”なんかを聴くと、テクノ歌謡のような郷愁も感じられてよい。そう考えると、“チャイナタウン”“はいからさん”などは、YMO“東風”や矢野顕子“在広東少年”のような、テクノ・オリエンタリズムの系譜に置くことができるか。いずれにせよ、テクノ歌謡の香りが感じられるのがよい。ちなみに、ヴォーカルの大胡田なつきについては、「やくしまるえつこっぽい」とか「YUKIっぽい」といった声が多いようだ。それなりに同意するが、僕は「椎名林檎っぽい」と思った。いくつかの曲の歌い方と言葉の割り方が、とても椎名林檎っぽい。これもよく言われているようである。

 それにしても、この「~っぽい」の参照先が、国外でなく国内になったのはいつ頃だろう。90年代はどうだっただろうか。ミスチルはたしか「オアシスっぽい」とか言われていた気がする。ナンバーガールは「ソニック・ユースっぽい」だったか。単純化した議論は禁物だが、個人的な印象として言わせてもらえば、2000年代のなかばあたりから、とくにロック・バンド系の参照先が、いよいよJ-POPになっていた気がする。そうか、2000年代のなかばともなれば、べつに洋楽を参照しなくとも、J-POPがJ-POPとして自給自足できるようになっていたんだなあ。そんなことを考えながら、パスピエの過去作を聴いていた。
そして、新作の『幕の内ISM』だが、これがすこぶる清々しい。多彩なサウンドを追求しつつも、一方で、なんと堂々とJ-POP然としていることか。「堂々とJ-POP」とか言うと、嫌味を言っているように思うかもしれないけど、もちろんそんなことはない。堂々とJ-POPでいることは、先鋭的なバンドであることと同じくらい、たいへんな創意と工夫が必要なのだ。多彩なサウンドは、ニューウェイヴ/テクノポップという枠にとどまらない。パスピエの新作はこれまで以上に、J-POPであろうとしているように思える。
たとえば“七色の少年”がジュディ&マリーっぽい。そうかと思えば、“とおりゃんせ”冒頭、鋭いギターに4つ打ちのバスドラが重なる展開は、ここ数年のJロックと足並みを揃えているようでもある。もっともこの4つ打ちの潮流は、音楽ライターの柴那典がしばしば指摘するように、フェスへの対応という側面があって、ロック・フェスに感銘を受けた成田ハネダの趣向が反映されているのかもしれない。この鋭いギターと4つ打ちに、シンセサイザーのサウンドが加わると、どことなく最近のザゼンボーイズを思わせる“トーキョーシティ・アンダーグラウンド”になる。そして、そのシンセの音がさらに存在感を増すと、今度はモーニング娘。‘14とまではいかないが、少しEDM寄りになって“MATATABISTEP”となる。この多彩なサウンド。これぞ、同時代のJ-POPを貪欲に並べた、堂々たる「幕の内ISM」だ! 本誌インタヴューで成田が言う「POPの中のJ-POPバンド」というコンセプトが、いま書いたようなことを指すのかどうかは心許ないが、ともあれ、アルバムを通して、このハイブリッドなJ-POP感は心強い。ナンバーガールやザゼンボーイズは見え隠れするが、ピクシーズは見えない。EDMの感じはあるが、ニッキー・ミナージュやLMFAOを思い出すわけではない。サウンドへの野心はあるが、J-POPであることを手放さない。そのバランス感覚がとてもいい。だから、確信した。パスピエに対しては、ふるき良き80年代ニューウェイヴ/テクノポップの郷愁のみを感じ取るべきではない。彼らは、80年代のテクノ歌謡と00年代の4つ打ちロックを同時に見据えているバンドなのだ。ここを見誤ってはいけない。テクノ歌謡とJ-POPの高度なハイブリッドとして、パスピエは堂々たるJ-POPのたたずまいを獲得しているのだ。
 鋭く響くギターとダンス・ミュージックを融合させるセンス。ここには、マーク・スチュワートとアーサー・ラッセルを通過した向井秀徳の姿が、どうしても見える。パスピエが向井秀徳をどのくらい意識しているか/していないのかは知らないが、ジャケット・ワークや詞世界も、少し向井秀徳的である。そもそも、現在J-POPのフィールドで活躍するロック・バンドが、少なからずナンバーガールやザゼンボーイズの影響下にあったりする。とくに、00年代のJ-POPの潮流を築いたと言ってもいいだろうアジアン・カンフー・ジェネレーションは、“N・G・S”(Number Girl Syndrome)という曲を歌っていた。ああ、そういえば、「~っぽい」の参照先が国内のバンドに向けられるようになったと僕が思ったのは、他ならぬアジカンが登場したときだったなあ。00年代が終わりを迎えようとする時期に登場したパスピエは、そういうJ-POP史の流れのなかにいるのだ。

 だとすれば、本作のハイライトは、間違いなく“アジアン”という曲である。とくに出だし、「超高速 画期的な三原色 原則は相対感覚 どうしても気になるのクオリア」という抽象的な歌詞が、アジカンっぽい。と思ったら、途中、今度は歌い方が椎名林檎っぽくなる。椎名林檎の古風なセンスを経由して、さらにはナンバーガール的な五線譜縦並びのビートを駆使して、大胡田が「いろはにほへとちりぬるを~♪」と歌い上げる。ここにおいて“アジアン”は、“はいからさん”や“とおりゃんせ”などと同様、テクノ・オリエンタリズムの系譜に接続される。J-POP史を串刺しにした、めまいがするような情報量だ。
 つまり、この曲の題名である“アジアン”とは、00年代を代表するロック・バンドの表象(「アジアン」・カンフー・ジェネレーション)と、テクノ歌謡の表象(オリエンタリズムとしての「アジアン」)が合流した地点なのである。80年代テクノ歌謡と00年代4つ打ちロックを同時に見据えるパスピエは、J-POPの「幕の内ISM」である本作において、この場所――すなわち、「アジア」にたどり着いた。テクノ歌謡への郷愁だけでも、J-POPへのおもねりだけでも、駄目なのである。両方を見据える試みでこそ、パスピエの「アジア」は見出されるのだ。したがって、本稿の結論は、すでに大胡田が歌っている。

   未来と原始 遺伝子なら合わさって輪廻 ずっと探していた答えは たぶんアジア!

interview with Kyle Hall - ele-king

 最初のEPが出た2007年から、あるいはそれ以前から、大きな注目を集めていたカイル・ホールの初来日がやっと実現する。16歳でオマー・Sのレーベル〈FXHE〉から(14歳のときに作った曲で)登場し、翌年には自身のレーベル〈Wild Oats〉を設立。昨年には満を持してファースト・アルバム『The Boat Party』をリリースして高い評価を得た。そのサウンドには、デトロイトという特殊な音楽文化を持つ街で育まれたタフさと、若さと、希望が詰まっている。

 現在22歳の彼は、地元であるデトロイト市内を拠点に、世界を飛び回る人気DJとして、レーベル・オーナーとして、そしてプロデューサーとして、誰もが夢見るような生活を送っている……かのように見えるが、実はそれ故のストレスや悩みを抱えているようだ。
 今回、「せっかくの初来日だから」とインタヴューを申し込んだところ、実はいちど断られた。ここ最近はほとんど取材を受けていないという。二度目の懇願によって渋々承諾してくれたものの、当初はあまり乗り気ではなかった。話しているうちに、その理由が明らかになり、最終的には期待していた以上に深い対話が出来たと思う。そして彼の、いい意味での真面目さと成熟さが表れていると思う。本邦初の、1万字を超えるロング・インタヴューをじっくりお楽しみ下さい。


■KYLE HALL Asia Tour

2014年7月11日(金)
22:00〜
@代官山AIR

料金:3500円(フライヤー持参)、3000円(AIRメンバーズ)、2500円(23歳以下)、2000円(23時まで)

出演:
【MAIN】Kyle Hall(Wild Oats/from Detroit)、DJ Nobu(FUTURE TERROR/Bitta)、sauce81 ­Live­, You Forgot(Ugly.)
【LOUNGE】ya’man(THE OATH/Neon Lights)、Naoki Shinohara(Soul People)、Ryokei(How High?)、Hisacid(Tokyo Wasted)
【NoMad】O.O.C a.k.a Naoki Nishida(Jazzy Sport/O.O.C)、T.Seki(Sounds of Blackness)、Oibon(Champ)、mo2(smile village)、Masato Nakajima(Champ)


みんながオルタナティヴなサブカルチャーに属したがっていて、そのオピニオン・リーダー的なメディアの言いなりになっている。新しいサブカルチャーを創り出すために過去の歴史の解釈まで曲げられてしまっているようにさえ思う。インターネットは自分の意見を持っている人には素晴らしい道具だけど、ただのフォロワーには悪影響を及ぼすものだ。

日本語でのインタヴューは初めてなので、まず基本的なことから聞かせて下さい。

カイル・ホール(KH):あまりに基本的過ぎることは聞かないで欲しいな。最近あまりインタヴューを受けないようにしているんだけど、それはもう何度も何度も同じことを言い続けている気がするからなんだ。正直、「僕の言うことよりも、僕の音楽を聴いて下さい」って思う(笑)。それ以上に、あまり言うことはないよ。〈Wild Oats〉というレーベルをやっているから、それをチェックして下さい、くらいかな(笑)。

なるほど。わかりました。では、基本的な質問はやめましょう。私が聞いてみたいと思っていたことを、まず聞かせて下さい。音楽を作ることと、DJをすることは違う表現方法です。今回、あなたにとって初来日になりますから、日本のオーディエンスはあなたの作品は聴いているけど、DJプレイは聴いたことがないわけです。ですから、みんな「DJとしてのカイル・ホールはどうなのか?」ということに注目していると思います。ご自分ではどう思われますか? あなたにとって制作とDJの違いは? あなたの作品はDJとしてのあなたをも代弁していると思いますか?

KH:その答えは……ノーだね。僕の作る音楽は、そのときどきの自分を表現しているので、DJをしているときの自分とは必ずしも重ならない。DJをするときは、自分がかけたいと思うレコード、僕はアナログ・レコードをプレイするので、それをレコード・バッグに詰めるところからはじまっている。持っているレコードを全部詰められるわけではないので、そこには制限があって、そのときの自分の気分、どちらかというと自己満足のために選んだレコードを持っていく。自己満足というのは、自分だけを楽しませるという意味ではなくて、自分が思う、その状況に最適であろうと考えるレコードを選ぶということ。その判断には、僕が考えるそれぞれのオーディエンスの趣向や、期待を考慮する。
 DJプレイというのは会話みたいなもので、まず僕がいくつか自分が聴きたいと思う曲をかけてみて、お客さんの反応を見る。そうすると、ダンスフロアにいる人たちの耳がどこにあるのか、ということが少しわかる。途中でフロアを離れる人もいれば、入って来る人もいるから、それを繰り返しながら状況を掴んでいく。でも、人はみんな違うし、土地によっても違いがあるから、なかなか難しい。人によって、そのパーティに期待してくるものも違う。特定のものを聴きたくて来る人もいれば、オープンに違ったものを受け入れる人もいる。そのDJの芸術性を評価しに来る人もいれば、DJが誰だかよく知らずにただ踊りに来ている人もいる。こういったいろんな人たちと自分の相互作用が、その夜のエネルギーとなるから、予想がつかないよね。

ラインナップや、出演順によっても受け取り方が変わりますよね。

KH:そうそう。例えば、前のDJがものすごく速いテンポだとか、大音量とかでプレイしていたら、その後に出るDJの印象がまた変わる。DJにもいろいろいるしね。例えば、「俺はみんなと一緒にパーティしに来たんだ」と言うDJもいるけど、必ずしもお客さんが楽しむ音楽で自分が楽しめるわけではないから、妥協を強いられることもある。でも僕にとっては妥協をする方が難しいから、それならお客さんをそこまで盛り上げなくても、自分がかけたい音楽をかけようと思うこともある。

DJはエンターテイナーというだけではないですもんね。

KH:そう! エンターテイナーとアーティストは違うと思う。そしてアーティストの方が、お客さんとの接点を見つけるのに時間と努力を要するよね。その接点がなかなか見つからないと、「僕が音楽スノッブ過ぎるのかな?」と自問することもあるけど、僕が本当にいいと思ってかけたものに反応してもらえることもある。逆に、自分はそんなに好きじゃないけど、きっとお客さんには受けるだろうと思ってかけたら、全然ダメだったり(笑)。本当に優れたアーティストは、お客さんを自分の世界に引き込んで、その良さを知ってもらうことが出来るんだろうけど。

個人的には、DJ本人が本当に好きでかけたいものをかけることがもっとも重要だと思いますけどね。

KH:僕もとても重要だと思う。でも、誰もがそういう風にやっているわけじゃない。よく、「これは(フロアで)機能する」という曲をかける人がいる。それってただのツールということだよね。でも、そういったツールをかけることで、次にかける本当に思い入れのある曲を引き立たせるというテクニックもある。そういう風に、最適なコンテクスト(背景/文脈)を準備するということもDJの醍醐味だと思う。

それを踏まえて聞きたいんですが、だとすると、あなたがまったく知らない場所、例えばまだ行ったことのない日本でプレイする際には、どのような準備をするんですか? すでにあなたはヨーロッパ各地でたくさんプレイしていますし、アメリカでもしていますよね。でも日本はそのどちらとも違います。

KH:そうだね、僕もそういう印象を持っているよ。ユニークな場所だってね。たしかに、ヨーロッパはどの国でやるにしてもだいたい状況を把握している。例えばロンドンは、ほぼ自分の好き勝手にやっても大丈夫なんだ(笑)。でもイタリアとか、その地域によっても、もう少しベーシックなところを押さえないといけないな、とか。
 日本については、僕が知っている限りでは、かなりアーティスティックにやっても受け入れてもらえるところだと認識している。でも、RAのドキュメンタリー(Real Scenes: Tokyo)を観て、もしかしたらもっと制限されているのかな、とも思ったり。実はもっとニッチに細分化されていて、僕に期待されていることと僕が実際にやりたいことはかけ離れている可能性もあるのかな、とも思う。

[[SplitPage]]

本当に頭がおかしくなりそうになるよ。だって、僕がどんなにクリエイティヴに面白いことをやっても、必ず「デトロイト版の」とか「デトロイト・サウンド」って言われちゃうんだから! セオ・パリッシュがどうのとか、必ず他の誰かとの比較で書かれる。

日本のオーディエンスはあなたにどんな期待をしていると思いますか?

KH:わからないよ! 僕のレコードの印象かな? あとは、デトロイトのレガシー(遺産)との連続性を期待されているということはいろんなところで感じるよ。過去20年間、デトロイトの他のDJたちがやってきたこと。オンラインで僕の記事を見ても、だいたいそれと比較されている。

それは嫌ですか?

KH:嫌だよ! 僕が作る音楽はすべて、他の誰かのフィルターを通して語られるんだ。例えば、僕が〈Hyperdub〉から曲を出すと、「〈Hyperdub〉からのデトロイト・サウンド」と言われる。「カイル・ホールがたまたま〈Hyperdub〉から曲を出しました」とはならないんだよ。ただのアートなのに、たくさんの先入観があるんだ。日本についても、そこがちょっと怖いな。僕個人を、いろんな冠を付けずにそのまま受け入れてくれたらいいんだけど……本当に頭がおかしくなりそうになるよ。いつも何らかの「箱」に入れられて。

そうですか! そんなに苦しんでいたとは。

KH:だって、僕がどんなにクリエイティヴに、面白いことをやっても、必ず「デトロイト版の」とか「デトロイト・サウンド」って言われちゃうんだから! セオ・パリッシュがどうのとか、必ず他の誰かとの比較で書かれる。

たしかに私も書きました……(苦笑)。

KH:つねに先に誰かがやったことと比較されて、僕はいちばんになれないんだ。聴く前からこういうものだって決めつけているから、その枠の外、他のコンテクストで捉えられない。何も先入観を持たずに、ただ音を聴いてくれたらって思うよ。

たしかにそれは嫌かもしれません。でも、まったく何の先入観も持たずに音楽を聴くというのは無理ですよね。あなたの作品を手に取っている、聴こうとしているという時点で、すでに何かの情報を参考にして興味を持っているわけですから。

KH:それはそうだ。だから、先入観をまったく持たないで欲しいとは言わない。何らかの期待や楽しみを持って聴いてくれるのは構わないけど、決めつけて欲しくないんだ。多くの場合、曲を聴く前の段階ですでに何らかのパッケージに入れられてしまっているから。曲そのものよりも、それについての情報で評価/判断している。
 僕は、いまの、人びとのカルチャーについての情報の受け取り方全般に問題があると思っている。メディアでそれを発信している人たちが、そのカルチャーをあまり理解していないと感じるから。個人的に新しい音楽を発見したり、出会ったりするんじゃなくて、そういうところから与えられた情報のみで判断してしまっている。

鋭い指摘です。でも、例えば私の場合は、他のデトロイトのアーティストなどから、あなたの曲やDJプレイを聴く前にあなたのことを聞いていたので、それで興味を持ちました。デトロイトの先輩たちから、とてもかわいがられている若者という印象だったので、それがそれほどあなたの重荷になっているとは意外でした。

KH:それもおとぎ話だよ!! 実際はそんなにイイ話ではないんだ。もちろん、自分の周りにいる人たちや育った環境をありがたく思う面もあるけど、それには良い面と悪い面がある。ビター・スゥートというかね。僕が先輩たちにかわいがられて育てられたというのは、メディアで書かれていること。ある時点では、僕より年上のデトロイトのDJは全員僕の師匠ってことになっていたんじゃないかと思うよ(笑)。たしかに交流はあったかもしれないけど、たぶん僕の年齢のせいだろうね……たしかに親切にしてくれた人もいっぱいいたけど、すべてを彼らに教わったわけじゃない。実際はどちらかというとその逆で、僕は孤独なことが多かった。ひとりで試行錯誤しながら音楽の作り方も学んでいった。いつも誰かと一緒にスタジオに入って教えてもらっていた、なんてことはないんだ。僕はインターネット世代だから、自分で調べていたよ。
 たしかに、90年代などはみんな音楽仲間がいて、一緒に機材や情報をシェアして音楽を作っていたのかもしれないけど、僕の世代は違う。そういう環境ではなかった。僕は13歳だったからね。まわりにそんな仲間はいなかった。リック・ウィルハイトのレコード屋(Vibes New & Rare)に行って話をしたりはしていたけど、それ以外のレコード屋の多くは無くなってしまったし、デトロイトのアーティストはほとんどいつもヨーロッパに出払ってしまっていて、地元にいない。オマー・Sは例外で、たしかに彼はいろんなことを教えてくれた。ディストリビューションのこととか、ビジネスのことも。僕の音楽もオープンな耳で聴いてくれた。彼は、僕を手助けしてくれたけど、他の人についてはそんなに……(笑)。僕の音楽は、まわりからの影響よりも、内面から生まれている部分が大きいんだ。いまだに多くの人が、僕を12歳みたいに思っているようだけど、もう立派な大人だよ! もう22歳なんだから!

22歳ですか……(!)。先ほど、DJをする際に、たくさんのレコードを持って行くことは出来ないので制限があると言っていましたよね。レコードでDJすることは、いわばオールドスクールな方法で、新しいテクノロジーを使えば、もっと多くの曲を持ち込んだりすることも可能です。しかも若いのに、どうしてレコードという不便なフォーマットを選んでいるんですか?

KH:逆にそれは僕が不思議に思うことなんだけど、DJに関するテクノロジーの進化って、利便性を高める方向に進んでいる。例えば、ピアノ奏者に、「なぜいまだにピアノを使って演奏してるの?」と聞く人は誰もいない。本物のピアノの音がいいからに決まってる! 僕はレコードの音が好きなのと、レコードでDJすることは楽器を弾くみたいに楽しめるから。CDやUSBなどのレコードからリップした(録音した)デジタル音源も使うけど、リップするとそのときの録音状態に左右されるから、レコードそのものとは音が違う。僕は違う針を使ってみたりして何パターンか録ったりするよ。レコードの方が目に見えて、手に触れるから愛着が湧く。ピッチコントローラーひとつを触っても、レコードだと何か生のものを触っているという感触が得られるけど、デジタルだと実感が湧かないというか、ヴァーチャルな感覚だよね。変な感じ。でもレコードにもいろいろあって、同じ曲でもプレスによって聴こえ方が全然違ったりする。例えば、〈Rush Hour〉が出してる古いシカゴのリプレスは、コンプレスされ過ぎていて全然音が良くない。リリースしている人たちの好みに変えられている。人によってどこをいいと思うかは違うからね。文化的背景によっても違うかもしれない。それまで聴いてきたレコードとか。
 ヨーロッパとアメリカの違いは、僕にとっては興味深いよ。アメリカのブラック・ミュージックとヨーロッパの人たちがアメリカの音を真似して作っている音楽とか! 彼らが考えるアメリカ音楽のいいところと僕らの聴き方は違っている。その交流があって、お互いが影響を受けたりしている。
 カール・クレイグの音楽なんかは、そのいい例だと思う。彼の音楽的な変化は、明らかにヨーロッパからの反響を反映していると思うな。ヨーロッパのレコードは、凄くヴォリュームとパンチがあるけど、それはクラブの環境がそういう風に設定されているから、そういう音が映えるんだと思う。でもアメリカに戻って来ると、それほど強烈じゃなくてもいいというか、みんなもっと音楽の内容を聴いているという感じがする。だから、しょっちゅう行き来していると混乱してしまう。ヨーロッパでやるときは、音を大きくし過ぎてしまう傾向があるな、僕は。

そうですね、そういう違いは面白いですよね。私個人の印象では、ヨーロッパでは機能的な踊りやすいダンス・ミュージックが好まれ、そうではない異質なものに対しては許容範囲が狭い。それと比較すると、日本のオーディエンスはとても許容範囲が広いと思いますし、予期していない音楽が聴こえてきても、その良さを受け入れようとします。だから、結論としては、カイル君は自分のやりたいように、好きなものを思いっきりプレイすればいいと思いますよ!

KH:そうか。わかった(笑)。でも、その一方で「日本人に受ける」とされている曲もいくつかあるんだよ。「日本でこれをかければ間違いない」ってね! それが本当かどうかは僕にはまだわからないけど、クリーンなキーボード・サウンドやベースラインが入っているような曲は、日本の人は好きなのかなと思う。ハウス/ブラック・ダンス・ミュージックにおいて、だけどね。黒人のDJが来ると、それが「純正の」サウンドなんだと期待するようなもの。

それはたしかにあるかもしれませんね……少し話は変わりますが、私があなたについてとくに面白く興味深いと思っているのは、UKの同世代のアーティストたち、例えばファンキンイーヴンとのコラボをしたり、ベース・ミュージック・シーンと交流があって〈Hyperdub〉からもリリースをしているところです。いわゆる、「デトロイト・シーン」だけでなく、ロンドンの地元のシーンにも入り込んでいる。そういう人がデトロイトから出てきたことはかつてなかったんじゃないでしょうか。

KH:そうだね、「デトロイト」ってひとつの軍隊でもあるかのようだからね(笑)。でも、あなた自身が言うように、それでも僕はデトロイト組からは抜け出せてない。

いや、それはそんなに悲観しなくても、まったく違うバックグラウンドを持った他のシーンに同士を見つけて、一緒に音楽をやっているということは素晴らしいじゃないですか。

KH:うん、UKに関してはとくに、それほどバックグラウンドの違いを感じないんだ。同じようなものを聴いて育ってきて、同じようなものを好んでいると思う。僕がロンドンで交流のある人たちは、僕と音楽の聴き方がとても似ている。ファンクやソウルといったブラック・ミュージックがずっと聴かれてきた土壌があるからだろうね。
 でも、〈Hyperdub〉とファンキンイーヴンは全然別の繋がり方で、〈Hyperdub〉は2008〜2009年頃に僕の出した曲を聴いて向こうからアプローチしてきたんだ。僕の音楽は、UKでいちばん反響があったし、実際にいちばん売れた。最初は、リミックスを依頼されたところから親交がはじまったんだ。ヨーロッパでいちばん、僕を歓迎してくれた人たちだった。

[[SplitPage]]

僕の場合は17歳でこういう環境に放り込まれたから、何もわかっていなかったよね。まわりと比べると、年齢の割には音楽的な理解なども成熟している方だとは思うけど、気持ちの面ではまったく成熟していなかった。

私の印象では、多くのデトロイト・ファンたちが、あなたが次なるムーディーマンかオマー・Sのような作品を出すことを期待していたのに対して、あなたは凄くユニークで風変わりなリリースで世に出てきた。とても実験的なリズムでした。それが、UKのポスト・ダブステップのシーンにおいて、よりしっくりと馴染んだんじゃないですか?

KH:それはあると思う。僕が彼らにとって面白いことをやっていたというだけでなく、彼ら自身も僕がUKの〈Thirdear〉、〈Warp〉、〈Ninja Tune〉といったレーベルでリミックスを手がけりトラックを提供したことで余計にハイプ化していったところもあると思うよ。自分自身はそこまでベース・ミュージックに傾倒しているとは思わないけど、ウエスト・ロンドンの音楽には大きな影響を受けていると思う。ディーゴの〈2000 Black〉とか。それが、いまのベース・ミュージックにも反映されているんだろうけど、その部分を認識している人は少ないかもしれないね。僕がブロークンビーツのレコードをかけても、彼ら(UKのお客さん)は誰も知らないんだもん(笑)! DJやアーティストは知っているかもしれないけど、オーディエンスは本当に知らない。

それは彼らが若いからじゃないですか? あなた自身の若いのに、何でそんなに知っているの(笑)?

KH:それはおかしいよ。誰だって、僕と同じくらい知ってていいはずさ。だってインターネットがあるじゃない! 知らない方がおかしいと思うけどな!

でもあなたは、明らかにロンドンのクラブで遊んでいる20代前半のキッズたちよりも古い音楽を知っていますよね。

KH:それはそうかも。ときどき違う言語を喋っているような気分になるよ(笑)。たしかに、僕の音楽の善し悪しの判断に、それが新しいものかどうかということは考慮されない。自分が楽しめるかどうか、というだけ。ジャンルや時代はあまり意識しない。音楽を知りはじめの頃は、ある程度それを参考にしなければいけない時期もあるけど、インターネットですぐに辿ることが出来るし、レコードを買うことも出来る。
 いまは、サブカルチャーが主流の時代だと思うんだよね。みんながオルタナティヴなサブカルチャーに属したがっていて、そのオピニオン・リーダー的なメディアの言いなりになっている。新しいサブカルチャーを創り出すために過去の歴史の解釈まで曲げられてしまっているようにさえ思う。そういう意味で、インターネットは、自分の意見を持っている人には素晴らしい道具だけど、ただのフォロワーには悪影響を及ぼすものだと思うな。

おっしゃる通りです。それに、クラブにはパーティ好きと音楽好きの二種類のお客さんがいると思うんです。パーティ好きの子たちも、本人たちは音楽が好きだと思っています。だからしょっちゅう遊びに行くんだけど、レーベルやアーティストの名前くらいは知っていても、それ以上にその音楽的ルーツを遡ったりはしない。

KH:そうそう! それもあるよね。そして、そういう子たちは、自分の好きなレーベルやプロモーターが薦める音楽をそのまま「良い音楽」だとして鵜呑みにする。そうやって好みが形成されているんじゃないかな。でも、それはある程度は人間の持つ性質で、まわりに認めてもらいたい、自分の居場所を見つけたいという欲求から来ているんだろうと思う。僕もそういう部分はあるし。人間の営みのあらゆるレヴェルで現れてくること。音楽の趣味に留まらず、自分のアイデンティティそのものだよね。
 「黒人の男性はどうあるべきか」とか、「ロンドンの白人の若者は遊びに行くときにどんな格好をしているべきか」とか(笑)。自分が属したいと思う集団と、自分も似たような格好になってくるもの。誰だって、みんなに愛されたいんだから! 愛されたいけど、個性的でもありたい、というジレンマだよね。

おっしゃる通りです! これだけ正直にいろいろ話してもらえて嬉しいですよ。でも、いろいろとフラストレーションを抱えているようでちょっと驚きました(笑)。

KH:ものすごくフラストレーションを抱えているよ!! もともと気分屋なところもあるのかもしれないけど、僕は嘘がつけない性格なんだ。とても調子が良くてすべてが上手くいっていると思うときもあるけど、その裏側が見えてしまったりすることもある。いろんなことを知れば知るほど、複雑な気持ちになるというかさ。

基本的に音楽メディアやクラブ・ミュージック産業そのものに、活動していくなかでフラストレーションを感じますか?

KH:そうだね、つねに葛藤を感じるからフラストレーションがあるんだと思う。僕はもともと、ツアーをして回ることが好きな方ではなくて、クラブにいてそこで入って来る情報には疲れてしまうことが多い。自分の目的を惑わせるというのかな。僕は、自分自身の核となる目的意識を持っている。でもその一方で、ある程度は流れに身をまかせたい自分もいる。日々の出会いを受け入れて生きていくこと。それだけで幸せに生きていける人もいるけど、自分のなかで達成したい欲求、自分のユニークな部分を発揮して達成したいこともある。そういう自分の内面から沸き上がって来ることと、周囲の人びとや出来事から受ける刺激やエネルギーで成し遂げられることもある。それが自分以外の人を幸せにすることもある。
 僕はつねにこのふたつの側面の葛藤を感じているんだよね。実際に外国に行ってツアーをして、いろんな人と交流すると音楽の聴き方や受け取り方も変化してくる。まわりを楽しませたいという気持ちから、無意識に自分を変えているところがある。でも、家に帰って来ると、「あんなことやこんなこともやらなければ!』と思う。家に戻って来ると、ツアー中とはまた価値観がガラリと変わるからなんだ。凄く変な感覚だよ。二重生活を送っているみたいな。音楽的にもね。
 自分でも、クラブに出かけたり外国に行ったりする前と比べて、自分の音楽が凄く変わったと思う。ただひとりで音楽を作ってリリースしていた頃と比べるとね。それは、おそらく僕が自分自身のことを知る前の早い時期から、こうした極端な変化にさらされたことも関係していると思う。自分が何者なのかを知るのって、時間がかかることだと思うんだ。一生それがわからないまま生きていく人もいると思うし。僕の場合は、17歳でこういう環境に放り込まれたから、何もわかっていなかったよね。まわりと比べると、年齢の割には音楽的な理解なども成熟している方だとは思うけど、気持ちの面ではまったく成熟していなかった。

私なんて22歳でも自分が誰だかなんてわかってなかったですよ! 17歳でデトロイトに住みながら、しょっちゅうヨーロッパのツアーをしていろんな人に会って……という体験をするのは消化するのが大変だったでしょうね。

KH:そうなんだ! 消化しきれなくて、そういう二面性が出来上がってしまう。海の向こうにいるときの自分と家にいるときの自分。自分が求めている以上の範囲の人付き合いをしなくてはいけないから、逆に感覚が麻痺してくる。DJがどうのこうのという以前に、人としてさ。ヨーロッパでは、自分が喋りたいとも思わない人と喋りたいとも思わないことを喋らないといけない、あるいは自分自身が望んでいる以上に、周囲を楽しませないといけない、という気分になるんだ。

家(地元)に居た方が落ち着きますか?

KH:イエスでありノーだね。落ち着く部分もあるけど、やはりここから脱出したいと感じることもある。地理的に、もっと気候のいいところがいいなと思ったりもする。例えば、LAに行ったりすると、もっと気候がいいから人も明るい。デトロイトにはデトロイト特有の、人間関係のめんどくささがある。ちょっと変な部分がね。

それほど大きいコミュニティではないですもんね、何となく想像はつきます。

KH:そう、あまり人が多くないからね。それにいまは、新しく移り住んできた人たちとずっとここに住んできた人たちとの間の摩擦があるし、単純に黒人と白人との間の摩擦もあるし、人と人が凄く分離されていると感じる。例えばレストランに食事に行くと、僕が黒人だからサービスがあまり良くないと感じることがある。他の町では感じないのに。ミッドタウンにいると、理由もなく警察に車を止められたり……ニューヨークではこんなことは起こらないのに。ニューヨークではみんな自分のことに忙しくて、価値観や美学もそれぞれにあり過ぎて、お互いをかまっていられない。競争が激しいから誰に対しても最高のサービスを提供しないと生き残れない。でもデトロイトでは人が少ないせいで、余計にお互いのことを干渉して、摩擦が起きている。黒人同士の変な摩擦も感じるよ。過去の歴史のせいで、埋め込まれてしまって消えない敵対心が残っていると思う。

どこか別の場所へ引っ越そうとは思ったことはありますか?

KH:いや、長期的に引っ越そうと思ったことはないな。

とくに、デトロイト・シーンとつねに関連づけられることが嫌だったら、どこか別の町に引っ越してしまうのが手っ取り早いのでは(笑)?

KH:あはは、そこまで嫌がっているわけではないよ! そういう意味で距離を置きたいという意味ではないんだ! 僕はデトロイト出身だからって自分のやっていることを判断されたくない、他のデトロイトのアーティストたちの副産物みたいな扱いをされたくないというだけで、デトロイトとの関係性を否定するつもりはないよ。ここに住んでいることの利点もあるんだ。良いところも、そして悪いところも。まず、ここに家を買ったから、ここが地元だし去るつもりはない。

22歳で家を買ったんですか!

KH:コンドミニアムだけどね。デトロイトのダウンタウンに。いまの状況を考えると、それが得策だと思ったし、それにここが僕の地元だから、自分の力で変えていきたいという気持ちもある。僕とジェイ・ダニエルでやっているパーティなんかも、僕ら自身がここで楽しめることをやりたいと思ってやっている。生活のためにならヨーロッパのギグだけこなしていればいいんだけど、地元の環境も変えていきたいからなんだよ。自分たちの居場所を確認する作業でもあるかな。

[[SplitPage]]

僕は「白人みたいな喋り方をする」と言われて、壁を感じた。自分の居場所を探すのに苦労したんだよね。そういうときに人はどうするかというと、自分の好きなことに没頭するようになる。僕の場合は、それが音楽だった。

以前、あなたのアルバム『Boat Party』の日本版CDにライナーノーツを書かせてもらったんですが、あなたがデトロイトの希望であると書いて締めくくったんです。もしかしたら、若さを強調されることも自分では嫌かもしれませんが、その若さで完全にDIYでレーベルをやって、音楽を制作して、しかもジェイ・ダニエルやMガンといった地元の同世代の若い子たちをそこから紹介している。率直に凄いと思いますよ!

KH:たまたま僕の場合は他より少し若いときにはじめたというだけで、やっていることはそれほど珍しいことじゃないんじゃないかなぁ。

その若さで、自分がやりたいことの方向性が定まっていて、しかも実行に移しているというだけで本当に凄いと思います! 自分が16歳の頃なんて音楽のことすら大して知りませんでしたよ。

KH:それはもしかしたら、僕の場合は「何も考えずに適当に生きる」というオプションがなかったからかもしれないな。僕の場合はすべてが目の前で選択を迫ってくるような環境だったから、ぼんやりとしている余裕はなかったというか。僕は姉がいるんだけど、ひとりっ子みたいな育ち方をしたんだ。だから、退屈だったら自分で遊びを考えなければいけなかった。僕は単純に、他のアーティストとプレイしているだけでもいい、という選択肢があることを知らなかった(笑)。何か変化を起こしたければ、自分でやるしかないと思い込んでいたんだ。子供の頃から、「もっとこうなればいいな」と思うことがたくさんあったし、その変化への欲求が原動力になると思っていた。デトロイトは、他の多くの町よりも嫌なところ、過酷なところが目につきやすい町だからね。年上の人と付き合うことが多かったことも影響しているかな。もっと若いときに、リック・ウィルハイトのレコード屋に通っていたことはすでに話したけど、僕の交友関係や情報源になっていたのは、僕の両親くらいの年齢の人が多かった。
 デトロイトでは、自分の社会的・文化的な立ち位置によって、かなりの部分の人格が決まる。例えばどんな喋り方をするか、どうして僕の好むような音楽を好きになったか、ということもだいたい説明がつく。例えばデトロイト市内の人口はほとんどが黒人で、ほとんどの子供は市内の公立学校に行く。でも、公立学校は問題を抱えているところが多い。僕の場合は平均的か、もしかしたら平均よりも恵まれた環境で両親にもちゃんとケアしてもらって育って来た。僕は市内ではなく郊外の学校に入れてもらったから、より広い視野を持てたと思う。エレクトロニック・ミュージックについて知ったのも、郊外の白人学校に通っている友だちからだった。彼らは黒人だったけど、白人ばかりの学校に行っていたんだ。
 だからかなり早い時期から、自分は何者なのか、ということを意識させられ続けていたと思う。まわりは白人の子ばかりで、僕が住んでいたデトロイト市内は「危険なところ」という見方をしていることを知ったり、例えば僕はカトリックの学校に行ったから、市内によくいる、結婚していない両親のあいだに生まれた子は地獄に行くって教えられたり……こういうことが子供にとっては重いプレッシャーになる。だから、郊外の学校から市内の自分の家に戻ると、自分がエイリアンに感じるんだ。逆にまわりの黒人の子供たちがどんなことをやっているかわからなくなるから。
 僕はその後、高校は市内の学校、Detroit School of Artsに進学した。公立だけど良い学校とされている。でも、やはり公立だから、そこに来ている子たちは僕とは違った育ち方をしていたりする。ものの見方も違うし、人との付き合い方も違った。僕は「白人みたいな喋り方をする」と言われて、壁を感じた。自分の居場所を探すのに苦労したんだよね。そういうときに人はどうするかというと、自分の好きなことに没頭するようになる。僕の場合は、それが音楽だった。僕の母はシンガーで、音楽をやっている友だちがたくさんいた。そのなかでもとくに仲が良かったのがDJレイボーンという人で、彼が僕にレコードでのDJの仕方を教えてくれた。それが僕の楽しみになって、音楽を通じて仲間が見つかった。

私個人も似たような体験をしたので良くわかります! 私の経験から言うと、ハイスクールで負け組だった子の方が、その後活躍しますよね!

KH:ははは。そうかもしれない。自分のことに集中出来るからかもね。ハイスクールの頃から恵まれていて、そのまま調子良くいく人もいるけどね! まあ僕の場合はそうではなかった。僕は同年代の子にはそれほど共感できなかったから、上の世代の人たちに音楽のことを教えてもらって、こういう好みになっているんだと思う。

自分に置き換えて考えると、15〜16歳の音楽に興味を持っている子が自分の近くにいたら、喜んで何でも教えてあげちゃうと思うんですよね。やはりリック・ウィルハイトのような年上の人たちからかわいがられたでしょう?

KH:リックは本当にそうだったね。彼は音楽の知識を人に伝えるのが大好きなんだ。単純にレコードの話をするのが好きだしね。そうじゃない人もたくさんいるよ。教えたくない、話さないって人も! まだお前には早いとか、もっと努力しないと得られないものだとか、そういう風な態度の人もね。デトロイトのダンス・ミュージックのシーンは、若者に解放されたものではなかった。どこへ行っても、いつも僕が最年少だった。若い人たちにとって魅力があるものではなかったとも言える。お母さんと同じ年の人たちとつるみたくない、とかね(笑)。
 人気のあるダンス系のミュージシャンは、ヨーロッパにファン基盤があって、地元にはあまりない。地元の若者たちにその魅力を伝える方法すらなかったと言える。世代間の隔たりは大きいと思うね。僕が高校に行っていたときも、「こんなのゲイの音楽だ」とか、「年寄りの音楽だ」、「何だこのゴミみたいな音楽」って言われていたもん。

そんな(笑)! でもいまは、あなたやジェイ・ダニエルが一緒にパーティをやったりしているじゃないですか? 少しは若い子たち、あなたと同世代の子たちも興味を持ちはじめたと思いますか?

KH:うん! いまはまったく状況が変わったと思う。僕自身も、自分がこの世界に足を踏み入れたときよりもずっと楽観的だよ。僕は自分の経験を、なるべく多くの人とシェアしたいと思っているから、僕が「いい」と言えば、僕のことを好きでいてくれる人が興味を持ってくれるんじゃないかと思う。僕がやっていることに興味を持って聴いてくれる若い子もいるし、実際にパーティにも来てくれるよ。
 僕らがMotor City Wineというバーでパーティをやりはじめたときは、年齢制限の問題があった。アメリカで若い子がダンス・ミュージックに興味を持たない理由のひとつが、この年齢制限だと思う。ほとんどの州では21歳以上じゃないとクラブに入れないから。飲酒が21歳からだからね。
 でもいまは、僕がある種前の世代といまの世代の架け橋になっているのかな、と思う。年上の人たちに聞いてもたぶん若い子のシーンは知らないと思うけど(笑)、確実に出来てきていると思うよ。だから、僕は希望を持っている。音楽を作っている子がたくさんいるし、これから大きくなってくると思う。僕より若い子もいっぱいるし、もともとこういう音楽に興味があってデトロイトに移り住んで来ている若い子もいる。

素晴らしい! それは嬉しいですね。このインタヴューがあなたのDJツアーの宣伝になるかは疑問ですが(笑)、インタヴューとしてはとてもいい内容になったと思います。ありがとうございます。

KH:DJの宣伝のためのインタヴューなんて、意味がないよ! 僕は逆にこういう話が出来て良かったと思っている。ありがとう!

あなたのDJを楽しむに当たって日本のお客さんには、先入観なしに、自然な反応を素直に出してくれたらいいですね。

KH:そうだね、そうしてもらえるのがいちばんありがたい。

最後に何か今後のプロジェクトなどの告知はありますか?

KH:あまり先に情報は出さない主義だけど……近々、〈Wild Oats〉から、必ずしもデトロイト出身ではない若いアーティストを紹介していくので、注目していて下さい。いい音楽を用意していますから!



■KYLE HALL Asia Tour

2014年7月11日(金)
22:00〜
@代官山AIR

料金:3500円(フライヤー持参)、3000円(AIRメンバーズ)、2500円(23歳以下)、2000円(23時まで)

出演:
【MAIN】Kyle Hall(Wild Oats/from Detroit)、DJ Nobu(FUTURE TERROR/Bitta)、sauce81 ­Live­, You Forgot(Ugly.)
【LOUNGE】ya’man(THE OATH/Neon Lights)、Naoki Shinohara(Soul People)、Ryokei(How High?)、Hisacid(Tokyo Wasted)
【NoMad】O.O.C a.k.a Naoki Nishida(Jazzy Sport/O.O.C)、T.Seki(Sounds of Blackness)、Oibon(Champ)、mo2(smile village)、Masato Nakajima(Champ)

TETSUJI TANAKA - ele-king

★祝!代官山UNIT10周年!記念すべき一夜はドラム&ベースのベスト・クラブナイト、Hospitalityを主宰するHospital Recordsの首領、ロンドン・エレクトリシティが今一押しの新鋭、ETHERWOOD(エザウッド)を引き連れて来日! 
2013年のベスト・ニューカマーDJ、ベスト・ニューカマー・プロデューサーの二冠に輝き、最も注目すべきアーティストである。ソウルフルかつエモーショナルミな極上のサウンドスケープがいよいよ体感できる!

UNIT 10th ANNIVERSARY
DBS presents "HOSPITAL+MED SCHOOL"

2014.07.12 (SAT) @ UNIT
feat. LONDON ELEKTRICITY (Hospital, UK)
ETHERWOOD (Hospital/Med School,UK) with: TETSUJI TANAKA , DJ MIYU vj/laser: SO IN THE HOUSE Painting : The Spilt Ink. 
HOSPITAL SHOP Sweets Shop : **Little Oven** 
open/start 23:30 adv.3,300yen door 3,700yen
https://www.dbs-tokyo.com/top.html

<TETSUJI TANAKA DJ SCHEDULE>
7/10 dommune Hospital Podcast
7/12 dbs presents HOSPITAL x MED SCHOOL @UNIT
7/17 OUR SIGNAL@AIR
7/20 INFINITY SENSE @AOYAMA 0
7/26 (day) amaimono night @mogra
7/26 (night) Thuggin Bass @bar granma Mito

8/1 block.party @asia +「encode」リリースパーティー
8/9 (day)@豊洲MAGIC BEACH
8/23 TBA
8/29 @大阪TBA
8/30 @amate-raxi

9/4 TBA
9/5 TBA
9/14 (day) Russeluno 14 STRINGS @津カントリークラブ三重
9/14 (Night) @UNIT
9/20 TBA
9/26 エキサイトシリーズ @R-LOUNGE
9/27 Thuggin Bass「encode」リリースパーティー@bar granma Mito

<RELEASE INFORMATION>
自身が所属するelenic productinsから
TT & NAVE名義の1stアルバムがリリースされます。8/1(FRI)block.party@asiaでリリース・パーティーライブと先行販売予定。
↓アルバム特設サイト
https://tt-nave-elenic.crossgroove.jp.net/

↓今後の各種スケジュールやDJ BOOKING、制作などこちらまで。
https://elenic-productions.crossgroove.jp.net/

<RADIO出演>
今年4月で4年目に突入した日本唯一のドラムンベース専門ラジオ番組"block.fm Localize!!"
毎週水曜日22:30~24:00にてレギュラー・オンエア!!
DRUM & BASS SHOW BY TETSUJI TANAKA & CARDZ
https://block.fm/program/localize/
https://twitter.com/TETSUJI_TANAKA

TETSUJI TANAKA HOSPITAL ALL TIME TOP 10 CHART


1
LONDON ELEKTRICITY / Rewind

2
PETER NICE TRIO / Harp Of Gold

3
LONDON ELEKTRICITY / Remember The Future

4
LENNY FONTANA presents BLACK SUN / Spread Love
(NU:TONE REMIX)

5
HIGH CONTRAST / Basement Tracks

6
DANNY BYRD / Soul Function

7
LOGISTICS / Together

8
CARLITO + ADDICTION / The Ride

9
SONIC / All I Wanna Do

10
CONCORD DAWN / You Don’t Have To Run

前説:
 定住地ヲ持タズ、定職ニモ就カズ、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ、慾ハナク、決シテ瞋ラズ、イツモシヅカニワラッテヰル、一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜ヲタべ……。
 思わず宮沢先生の一節を口ずさんでしまうこの男のドリフター・ライフスタイルに僕はいつだって尊敬の念を抱いてしまう。実際に彼がおもむろにポケットから生のニンジンを取り出し、カリポリ食べながらマスタリングをしている姿に僕が唖然としていると、「どうした? 何か変か?」と屈託のない眼差しで不思議そうに首をかしげていたり。いや、変じゃないよね。単にそんな人を僕がみたことなかっただけだよね。むしろジャンク・スナックを喰らうよりぜんぜんいいよね。彼と過ごしていると、僕自身の生活感覚を改めて考え直させられるような場面が多々あるのだ。アメリカのフードスタンプ制度や、その他の各国々においても、あらゆる生活保護プログラムを最大限に利用して創作活動を続けるアーティストたちに、日本人である僕はいつもインスパイアされてきた。彼らにたかられるのにもウンザリしてきているんだけども。

 〈ハンデビス(Hundebiss)〉のドラキュラ・ルイス(Dracula Lewis)ことシモーネ・トラブッチの手引きの下、ソーン・レザー(SEWN LEATHER)としては最後のヨーロッパ・ツアーを終え、スカル・カタログ(SKULL KATALOG)としての初めてのツアー、そして彼自身初めてのジャパン・ツアーを強行しようとしているこの男。80'sホラー・ムーヴィーから抜け出してきたような風貌、めちゃくちゃなライヴ・パフォーマンス、僕がみてきたアーティストの中で間違いなくもっともキャラが立つ(てか、ほぼ漫画のキャラ)USアンダーグラウンド最大の問題児の全貌が、いま明かされようとしている。

 というわけで、今回はずっこけノイズ放浪記番外編! 僕の主宰する〈crooked tapes〉がお届けする、このスカル・カタログ・ジャパン・ツアーをより楽しんでもらうために、来日直前インタヴューをお届けしたい。来週月曜(7月7日)にはDOMMUNEにも出演するので、この機会に観られるだけ観ていただけたらうれしいです。

■スカル・カタログ / バイオグラフィー
1987年、ニューオリンズにて生を受ける。
パンテラのフィリップ・アンセルモの又従兄弟。
2002年に観たノーティカル・アルマナック(Nautical Almanac)のショウに感銘を受け、音楽活動を開始。
〈DAF〉やジ・ノーマル(The Normal)、ソフト・セル(Soft Cell)やスロッビング・グリッスル(Throbbing Gristle)等に影響を受け、2006年12月よりソーン・レザー(SEWN LEATHER)を始動する。
これまで〈ハンデビス(Hundebiss)〉や〈フレンス・アンド・リレイティヴ(Friends and Relative)〉、〈アメリカン・テープス(American Tapes)〉や〈ナイト・ピープル(Night People)〉等、数多くのレーベルからさまざまなフォーマットによる音源をリリース。
2007年より国内外でのツアーを頻発。
これまでDJドッグ・ディック(DJ Dog Dick)やナーワルツ・オブ・サウンド(Narwhalz of Sound)、レーザー・プードル(Laser Poodle)、ドラキュラ・ルイス(Dracula Lewis)、シークレット・アビューズ(Secret Abuse)、アース・クラウン(Earth Crown)、ヴィデオ・ヒッポス(Video Hippos)やホアクス(Hoax)等、ボーダレスにアーティストやバンドとステージ/フロアを共有してきた。
2013年暮れ、ソーン・レザーからスカル・カタログ(SKULL KATALOG)へ改名。
2014年夏、スカル・カタログとして初のミニ・ツアーが〈Crooked Tapes〉によって日本で強行されようとしている。USアンダーグラウンドきっての問題児の狂気を見逃してはならない。

俺たちは「エンド・タイム(最後の時)」を生きているわけじゃない。世界はとっくに終ってるんだよ。

やぁ、ソーン・レザーとして最後となったヨーロッパ・ツアーはどうだった?

(スカル・カタログ):よう! ヨーロッパはいつ行ってもクレイジーだぜ。フィンランドはとくにヤバかった。とりたてて何も期待せずに行ったら、完全に狂ってたよ。地元のテレビのヤツが取材に来てさ、ソイツのインダストリアル・ミュージックのショウのためにインタヴューを受けたり、同じ日にナイン・インチ・ナイルズとコールド・ケイヴが近所でプレイしてたから、俺らのショウのゲスト・リストにトレント・レズナーが入ってたんだよ! 結局来なかったけど……。
 次の日がオフだったから、ハコにそのまま残っていた3人とずっと飲んでてさ、その中のひとりのジョナスってデッカイやつが、次の日のベルリンのショウまでノリで航空券買っていっしょに来やがったんだよ。アコギだけ持って飛行機乗ってきて、ロック・スター気取りでさ。シモーネ(ドラキュラ・ルイス)がマネージャーのフリしたりして。フィンランド人はイケてるぜ。

ムハハ。グダグダだね。シモーネの〈ハンデビス・レコーズ〉からリリースされたソーン・レザーのラスト・アルバム『フリーク・オン・ハシシ/ロングボーディング・イズ・クライム』なんだけど、ソーン・レザーのラストを飾るのにふさわしい、素晴らしくヴァラエティに富んだ、ドラマティックなレコードだよね。このアルバムに込められたコンセプトとかあるわけ?

SK:う~ん……、ぶっちゃけそれ作ったのは相当前のことだからさ、そのとき何考えてたのかぜんぜん憶えてないんだよね。俺を取り巻いていた当時の状況を反映したものだと思うよ。ソーン・レザーの発展と終焉さ。このプロジェクトに対するある種のお別れを作りたかったのがあるけど、あのときそう思っていたかどうかはわからないね……。

あ、言っちゃうんだ(笑)。ぶっちゃけ僕も君がそれマスタリングしてたの憶えてるんだけど、たしか2012年にLAにいたときだよね? でも、お世辞を抜きにしても、ソーン・レザーとしてのベストじゃないかな。ヘヴィで、グシャグシャにロウで、それでいてエモいし、くそハードコア。

SK:ありがとう! そうそう。ほとんどは俺があのときLAに滞在していたくそ狭い部屋(LA郊外にある通称「ウーマン」というクラスト・アーティスト・レジデンス)で作りあげたね。

君がいつも作る造語みたいのっていいよね。最近の名言があったら教えて。

SK:最近作った新しい言い回しは思い当たらないな。だけどスカル・カタログの曲で、“ポスト・ワールド・オーダー(世界後秩序)”っていう、俺の見解を示す新しい言葉を掲げたんだ。基本的には「ニュー・ワールド・オーダー(新世界秩序)」のもっと極端なヴァージョンさ。俺的には「エンド・オブ・ワールド(世界の終焉)」はもう起きたんだ。俺たちは「エンド・タイム(最後の時)」を生きているわけじゃない。世界はとっくに終ってるんだよ。「ドゥームズ・デイ(審判の日)」を待っているなんて連中は的外れだし、「ドゥームズ・デイ」がすでに起きた事件だなんて考えるには混乱しすぎてんのさ。

いいね。すげぇそう思うよ。じゃなきゃこんな放射能汚染大国に人が住んでるわけないもんな。ほとんどの人々はまだ世の中がまだどうにかなってるって無理矢理思ってる/思わされてるからね。

SK:マジでその通りさ。

つーか、いまどこがヤサなの? こないだまでマサチューセッツのノーサンプトンにいたらしいじゃない。

SK:いまはカリフォルニア。カラッカラだぜ。

ソーン・レザーは死んだんだ。俺が“スモーク・オブ・ザ・パンク”(初期の代表曲)をやるのを期待してショウに来ないでほしいね。

ソーン・レザーはどうしちゃったわけ? なんでスカル・カタログになっちゃったの?

SK:もう長らくその名前に飽きてたんだ。俺が2006年にソーン・レザーを始動したときと、いまの自分とをこれ以上同一視できないしな。当時の俺はとにかく電子音楽とかノイズのショウでプレイしたかったんだ。ぜんぜんそういったシーンに不平があったわけじゃないけど、いまはロックンロールなバンドともっとプレイしたいんだよ。たとえどんなバンドでも、自分たちなりのロックンロールを表現している連中とね。そんなのばっかり聴いているから、最近の電子音楽なんてほとんど聴いてねぇよ。コンテイナー(Container)とその他ちょこっとは別だけどな!!!! 俺は客といっしょに騒いでハコをブッ壊すようなギグをプレイしたいんだ。観客がただ俺のことを怖がっていたり、ドラッグや酒をあおってそのへんに突っ立ってるようなんじゃなくなくて。つーか、そもそもショウに来てドラッグやって酒やって突っ立ってるって、どういうことだよ? 場はエナジーを求めてるんだよ? 連中は殻を破るべきじゃん、ゆでたまごになっちまうんじゃなくてさ。わかるっしょ? 俺的には、名前を変えることでソーン・レザーがやってきたことと差別化して異なった何かになればいいと思ってるかな。俺がいまやってるのはソーン・レザーじゃねぇ、スカル・カタログなんだ。だからソーン・レザーは死んだんだ。俺が“スモーク・オブ・ザ・パンク”(初期の代表曲)をやるのを期待してショウに来ないでほしいね。ありゃもう6年もやってねぇし、やる気もないね。

スカル・カタログの音はソーン・レザーと比べて(いくらか)キチっとしてるよね。

SK:その通りさ。他に方法ないしね。機材も使いこなせるようになったし、新しいのも入れたしね。カセットは使ってないよ。これは俺にとっていいことだね。場所を節約できるし音もいい。音がずさんなハコでエフェクトをこなすのはマジで難しいけど。

実験性は減ったけどパワフルな楽曲になったよね。リリックのテーマとかも変化してるのかな?

SK:リリックも進化してると思うぜ。俺はいつだって自分の身のまわりのことやこの世界でおきているクソッタレについて唱ってるんだ。

最近のゴス・リヴァイヴァル・ムーヴメントってすごいけどどう思う?

SK:ぶっちゃけそういった「最近何が起こってんのか」なんてことはぜんぜんわかんないんだけどさ、なんだってキッズはいつだって同じ格好してんのさ? 俺的には、ゴスだのパンクだのハードコアだの、シーンのキッズの格好をみるたびに変だなって思うよ。だって、すげぇ制服っぽいじゃん。まるでバカなガキがタンブラーだかなんだかに指示されてるみたいだよ。トレンチコートにブラブラ系のイヤリング、鋲付きのフィンガーレス・グローヴとか、最近の80年代の映画みたいなパンクはアリだけどな。唯一パンク・コミュニティに関しては、人々は変わりモンの思想を身にまとうことでコミュニティを引き立たせるってのはあるよ。みんなを異なるヴァージョンの同じ「変わり者」に見せるのさ。

あらゆるタイプの人間とツルんで、発展のためにあらゆる音楽を聴くべきだと思う。単にパンク・シーンのためだけじゃなくて人類全体のためにな!

 ……って、こんなんマジでいい加減にしてくれよって感じだよ! ユース・オブ・トゥデイは80年代に「ブレーク・ダウン・ザ・ウォール(壁を壊せ)」って言っていた。俺はその言葉を何よりも2014年の「パンク」シーンに与えたい気がするね。俺はパンクが自分自身を箱の中に押し込めるモンだなんて思ったこともねぇし、あらゆるタイプの人間とツルんで、発展のためにあらゆる音楽を聴くべきだと思う。単にパンク・シーンのためだけじゃなくて人類全体のためにな! インターネットだかなんだかのせいで均質化されたクソッタレなんかファックなんだよ。もし誰かが心から「ゴス」でも何でものめり込んでるなら、いいよ。イケてるよ。だけど空っぽの「リヴァイヴァル」なんて全部ファックだぜ。

ソーン・レザーが死んだのは、君が言うそういった空っぽの「リヴァイヴァル」への離別の意味もあったりするのかな?

SK:う~ん……いや、それはさっきも言ったけど単に俺が自分の過去のクソとこれ以上関わりたくなかったからだよ。単に過去の自分のスタイルから離別したかったってだけ。

最近君らがはしゃいでたトリップ・メタルって一体なに?


空っぽの「リヴァイヴァル」なんて全部ファックだぜ。

SK:ジョン・オルソン(ウルフ・アイズ)があるインタヴューの流れの中で言ってたんだよ。「ノイズ・ミュージックは完全に終わった」「ウルフ・アイズはトリップ・メタル・バンドだ」……ってね。なにがトリップ・メタルだか聴きゃなんとなくわかるだろ? でも定義できないんだよ。あらゆる定義の試みは不毛だ。人々は永遠にそれが何であるのか、何がトリップ・メタルと呼べるのか、思いを巡らせていくだろうよ。
 ドッグ・レザーはスクラップ・メタル・バンドだぜ!

DJドッグ・ディック(犬チン)との合体ユニット、ドッグ・レザーはまだやってる?

SK:……いや。だけども、できればもうすぐ引退を発表したいな。

うわー、悲しいなぁ……。君たちが近いうちにスカル・ディック(骨チン)を結成することを夢見てるよ。

SK:ハハハ、いいぜ。いつか必ずやってやるぜ!

最近イケてるバンドといっしょにやったりした?

SK:モントリオールのバンドでペルヴィック・フロア(Pelvic Floor)はヤバい。ギリシャのバンドでバズーカ(Bazooka)ってのがクソヤバいんだけど、いっしょにやったことはないな。最近ちゃんといろんなバンドとやれてないよ。ホアクス(HOAX)とのツアーは最高すぎたけど。

ホアクスはヤバかったよね。彼ら解散したってきいたんだけどマジ? ……てか、君は昨年末までノーサンプトンで彼らのところに転がりこんでなかった?

SK:そうさ。ホアクスのジェシーとイアンはいまLAに住んでるよ。俺は昨年末までドラマーのジャイボのところで過ごしてたよ。彼はいまモーロン(MORON)って新しいバンドをやっててそれもヤバい。

……つーかなに、知らなかったんだけど、君ってパンテラのフィルの又従兄弟なの? それってマジ? なんかそれにまつわるイイ話ないの?

俺がバックステージ・パスを持ってヴィニー・ポール(パンテラのドラマー)のとこに行って「ヘイ! フィルに会わせてくれない? 俺フィルの従兄弟なんだ!」って言ったんだよ。そしたら彼は俺を見ながら「誰もがフィルの従兄弟さ!」ってね。

SK:ヘヘン! マジだぜ。会ったことないけどな! フィルの母ちゃんはクールだぜ。若い頃に彼女に何回か会ったことがあるんだ。彼女はいつもクールなパンテラのマーチをくれたし、パンテラやスレイヤー、それにモービッド・エンジェルのショウに入れてくれたんだよ。あれはたしか俺が14歳のときだな。俺がバックステージ・パスを持ってヴィニー・ポール(パンテラのドラマー)のとこに行って「ヘイ! フィルに会わせてくれない? 俺フィルの従兄弟なんだ!」って言ったんだよ。そしたら彼は俺を見ながら「誰もがフィルの従兄弟さ!」ってね。いまだにそれがマジでどういう意味だったのかわからないけど。まぁとにかく、スレイヤーのメンバーが俺と俺の友だちに話しかけてくれたし、彼らはマジでクールだったね。どうよ?

最ッ高……(笑)! イイ話だわ……それ。自分で呼んでおいてなんなんだけど、君がもうすぐこっちに来るなんて信じられないよ。ショウ以外で果たしたい野望はあるか? あとスケボーは持って来いよな。

SK:この野郎! もちろんスケボーは持ってくぜ! もし金に持ち合わせがあればクールなTシャツとかカセットをゲットしたいぜ! レコードショップ・ベースは行きたい! 全パンクスとハングアウトしたいぜ!

■あぁ……最後の以外はどうにかできるわ(笑)。

宣伝:

■SKULL KATALOG SPENDING LOUD JAPAN TOUR 2014
頭蓋骨の目録/爆音浪費日本道中二〇一四


7月11日(金)新宿ロフト
7月12日(土)西横浜エルプエンテ
7月13日(日)札幌The HAKATA
7月19日(土)大宮ヒソミネ
7月20日(日)幡ヶ谷フォレストリミット

■SKULL KATALOG SPENDING LOUD JAPAN TOUR 2014 INTRODUCTION
緊急特番!
頭蓋骨の目録/爆音浪費日本道中二〇一四開会宣言
CROOKED TAPES TV

7月7日(月)Dommune
出演
食品まつり
黒電話666
SKULL KATALOG
※エアロビ有り
…and more ?

■SKULL KATALOG SPENDING LOUD JAPAN TOUR 2014 FINAL
頭蓋骨の目録/爆音浪費日本道中二〇一四最終公演
CROOKED TAPES NIGHT

7月20日(日)幡ヶ谷フォレストリミット


出演
SKULL KATALOG
PAIN JERK
DREAMPV$HER
黒パイプ
§=§
MCKOMICKLINICK&WATTER
KΣITO
DJ 1drink
DJ ケンジルビエン
DJ 7e
※エアロビ有り
友情出演:
Vinnie Smiths

21時より
¥2000 + 1 drink

more info:
www.crooked-tapes.com
ryo@crooked-tapes.com

Fatima - ele-king

 先日ロンドンから帰ってきたばかりの友だちが言うには、いまは「ジャズが来ている」そうだ。流行りモノが好きな僕は、そういうひと言が気になってしまうのだが、UKは、クラブ・カルチャーにおいてジャズ/ファンク/ソウルがセットとなって周期的に流行る。ele-kingでもここ1~2年はその手のモノが紹介されているが、あるクラブ世代の固まりがある程度の年齢に達すると、ジャズ/ソウル/ファンクにアプローチする人は少なくなく、いまはダブステップ世代にとってそういう時期なのだろう。
 そういえば、昨年はセオ・パリッシュによる〈ブラック・ジャズ〉(70年代のスピリチュアル・ジャズを代表するLAのレーベル)の編集盤もあったが、今年はサン・ラー生誕100周年でもある。ラー100年の記事は、海外のインディ系の多くのサイトでも載っている(彼は1914年、大正3年生まれなのだ)。

 クラブ・ミュージックで言えば、フローティング・ポインツ(サム・シェファード)は、そのスジでもっとも評価の高いプロデューサーだ。彼はいまだにアルバムを出していないのだが、何枚かのシングルによって(とくに2011年の「Shadows EP」と「Faruxz / Marilyn」は必聴)、その他大勢のジャジーな連中との格の違いを見せている。ゆえに彼が運営に関わる〈エグロ〉からソロ・デビューした、スウェーデン出身ロンドン在住の女性シンガー、ファティマのフル・アルバムを楽しみにしていなかったファンなどいないだろう。

 録音はロンドンとLAでおこなわれている。アルバムをサポートするメンツはかなり良い。サム・シェファードはもちろんのこと、デトロイトのセオ・パリッシュ、〈ストーンズ・スロー〉のオー・ノー、サーラーのシャフィーク・フセイン、LAのコンピュータ・ジェイ、リーヴィングからもカセットを出しているナレッジ、ケンドリック・ラマーのアルバムにも参加しているスクープ・デヴィル、ロンドンのfLako……とまあ、一流(?)どころが揃っている。
 しかし、一流どころを揃えれば必ずしも試合に勝てるわけではないことは、ワールドカップをご覧の方にはおわかりだろう。チリやメキシコのようなチームは、がんばって最後まで見て良かった……と思わせる試合をした。ファティマの『イエロー・メモリーズ』がそのレヴェルに達しているかどうかは疑わしいが、確実に言えるのは、ここには過去を活かした魅力的な「現在」があることだ。

 現在──ローリン・ヒルやジル・スコットで育った90年代の子供の上品な歌の背後には、モダンなビートが軽やかに鳴っている。1曲目の“Do Better”(シェファードpro)は、70年代ソウル風のドラマティックなホーンセクションではじまるが、アルバムはレトロに囚われない。マッドリブの弟によるヒップホップ・ビーツの“Technology”、コンピュータ・ジェイ(とシャフィーク・フセイン)によるネバっこファンク“Circle”、スクープ・デヴィルのうねりをもった“Ridin Round (Sky High)”……と、前半は、ヒップホップ・ファンとしての彼女の好みが展開されている。
 そして、ジャズ/ソウル・スタイルの“Biggest Joke Of All”(シェファードpro)、最高にチルな“Underwater”(ナレッジpro)など、古さを活かした曲を混ぜながら、『イエロー・メモリーズ』はUKらしい折衷主義を更新する。真夜中のダウンテンポ“Talk”(シェファードpro)から最後の曲“Gave Me My Name”(シェファードpro)にかけてのメランコリーも悪くはない。 
 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727